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アブレーション周術期の抗凝固、ダビガトランが有用/NEJM

 心房細動(AF)へのカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法において、ダビガトランの継続投与はワルファリンに比べ大出血イベントの発生が少ないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス医学研究所のHugh Calkins氏らが行ったRE-CIRCUIT試験で示された。脳卒中や全身性塞栓症は発現しなかったという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月19日号に掲載された。ダビガトランなどの非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、ワルファリンよりも安全性が優れる可能性が示唆されているが、これを検証したデータはこれまでなかった。635例で大出血を評価する無作為化試験 本研究は、日本を含む11ヵ国104施設が参加する非盲検無作為化対照比較試験であり、2015年4月~2016年7月に患者登録が行われた(Boehringer Ingelheim社の助成による)。 カテーテルアブレーションが予定されている発作性および持続性の非弁膜症性AF患者が、2つの抗凝固薬に無作為に割り付けられた。このうち実際にアブレーションを受けた635例(ダビガトラン群:317例、ワルファリン群:318例)が解析の対象となった。 ダビガトランは150mgを1日2回投与し、ワルファリンは国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標値とした。アブレーションは4~8週間の継続的抗凝固療法後に施行され、アブレーション中および施行後8週間の継続的抗凝固療法が行われた。 主要評価項目は、アブレーション中および施行後8週間までの大出血の発生とし、副次評価項目には血栓塞栓症などの出血イベントが含まれた。大出血イベント:1.6 vs.6.9% ベースラインの平均年齢は、ダビガトラン群が59.1歳、ワルファリン群は59.3歳、男性がそれぞれ72.6%、77.0%を占めた。発作性AFが67.2%、68.9%であり、平均活性化全血凝固時間は330秒、342秒、平均CHA2DS2-VAScスコアは2.0、2.2であった。 アブレーション中および施行後8週間までの大出血イベントの発生率は、ダビガトラン群が1.6%(5例)と、ワルファリン群の6.9%(22例)に比べ有意に低かった(リスクの絶対差:-5.3%、95%信頼区間[CI]:-8.4~-2.2、p<0.001)。ダビガトラン群の相対的なリスク低下率は77.2%であった。Cox比例ハザード解析では、ハザード比(HR)は0.22(95%CI:0.08~0.59)だった。 ダビガトラン群は、大出血イベントのうち心膜タンポナーデ(1 vs.6件)および鼠径部血腫(0 vs.8件)が少なく、アブレーション中~施行後1週間の大出血(4 vs.17件)が少なかった。また、ダビガトラン群の大出血のうち、処置を要したのは心膜タンポナーデの4例(心膜ドレナージ)のみで、特異的中和薬イダルシズマブを要する患者はいなかった。 ダビガトラン群では脳卒中、全身性塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)は認めず、ワルファリン群ではTIAが1例にみられた。小出血イベントの頻度は両群でほぼ同等であった(ダビガトラン群:18.6%、ワルファリン群:17.0%)。また、大出血と血栓塞栓イベント(脳卒中、全身性塞栓症、TIA)の複合エンドポイントの発生率は、ダビガトラン群が低かった(1.6 vs.7.2%)。 重篤な有害事象は、ダビガトラン群の18.6%、ワルファリン群の22.2%にみられたが、致死的イベントは発現しなかった。重度有害事象はダビガトラン群で少なく(3.3 vs.6.2%)、投与中止の原因となった有害事象の頻度は両群とも低かった(5.6 vs.2.4%)。 著者は、「ダビガトランの大出血イベントの抑制作用は、より特異的な作用機序に関連する可能性があり、凝固因子産生の抑制作用よりも、直接的なトロンビン阻害作用によると考えられる」とし、「これらのアウトカムは、ダビガトランの有用性が示されたRE-LY試験の結果と一致する」と指摘している。

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脳卒中発症AF患者の8割強、適切な抗凝固療法を受けず/JAMA

 抗血栓療法は心房細動患者の脳卒中を予防するが、地域診療では十分に活用されていないことも多いという。米国・デューク大学医療センターのYing Xian氏らPROSPER試験の研究グループは、急性虚血性脳卒中を発症した心房細動患者約9万5,000例を調査し、脳卒中発症前に適切な経口抗凝固療法を受けていたのは16%に過ぎず、30%は抗血栓療法をまったく受けていない実態を明らかにした。JAMA誌2017年3月14日号掲載の報告。抗血栓療法の有無別の脳卒中重症度を後ろ向きに評価 PROSPER試験は、心房細動の既往歴のある急性虚血性脳卒中患者において、脳卒中の発症前にガイドラインが推奨する抗血栓療法を受けていない患者と、各種抗血栓療法を受けた患者の脳卒中の重症度および院内アウトカムの評価を行うレトロスペクティブな観察研究である(米国患者中心アウトカム研究所[PCORI]の助成による)。 対象は、2012年10月~2015年3月に、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)によるGet With the Guidelines–Stroke(GWTG-Stroke)プログラムに参加した心房細動の既往歴のある急性虚血性脳卒中患者9万4,474例(平均年齢:79.9[SD 11.0]歳、女性:57.0%)であった。 主要評価項目は、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS、0~42点、点が高いほど重症度が重く、≧16点は中等度~重度を表す)による脳卒中の重症度および院内死亡率とした。高リスク例でさえ84%が適切な治療を受けていない 7万9,008例(83.6%)が脳卒中発症前に適切な抗凝固療法を受けておらず、脳卒中発症時に治療量(国際標準化比[INR]≧2)のワルファリンが投与されていたのは7,176例(7.6%)、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の投与を受けていたのは8,290例(8.8%)に過ぎなかった。 また、脳卒中発症時に1万2,751例(13.5%)が治療量に満たない(INR<2)ワルファリンの投与を受け、3万7,674例(39.9%)は抗血小板薬のみが投与されており、2万8,583例(30.3%)は抗血栓療法をまったく受けていなかった。 高リスク(脳卒中発症前のCHA2DS2-VASc≧2)の患者9万1,155例(96.5%)のうち、7万6,071例(83.5%)が脳卒中発症前に適切な抗凝固療法(治療量ワルファリンまたはNOAC)を受けていなかった。 中等度~重度脳卒中の未補正の発症率は、治療量ワルファリン(INR≧2)群が15.8%(95%信頼区間[CI]:14.8~16.7%)、NOAC群は17.5%(16.6~18.4%)であり、非投与群の27.1%(26.6~27.7%)、抗血小板薬単独群の24.8%(24.3~25.3%)、非治療量ワルファリン(INR<2)群の25.8%(25.0~26.6%)に比べて低かった(p<0.001)。 院内死亡の未補正発症率も、治療量ワルファリン群が6.4%(95%CI:5.8~7.0%)、NOAC群は6.3%(5.7~6.8%)と、非投与群の9.3%(8.9~9.6%)、抗血小板薬単独群の8.1%(7.8~8.3%)、非治療量ワルファリン群の8.8%(8.3~9.3%)に比し低かった(p<0.001)。 交絡因子で補正すると、非投与群に比べ、治療量ワルファリン群、NOAC群、抗血小板薬単独群は中等度~重度脳卒中のオッズが有意に低く(補正オッズ比:0.56[95%CI:0.51~0.60]、0.65[0.61~0.71]、0.88[0.84~0.92])、院内死亡率も有意に良好であった(同:0.75[0.67~0.85]、0.79[0.72~0.88]、0.83[0.78~0.88])。 著者は、「脳卒中発症前に何らかの経口抗凝固薬の投与を受けていたのは30%で、ワルファリン投与患者の64%は治療量に満たない用量(INR<2)であり、脳卒中発症前の血栓塞栓症リスクが高い患者でさえ、84%がガイドラインで推奨された抗凝固療法を受けていなかった」とまとめている。

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心房細動患者のCCrとイベントの関連、日本の実臨床では?

 心房細動(AF)患者における非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の投与量調節と禁忌患者の除外のために、クレアチニンクリアランス(CCr)が広く使用されているが、AF患者のCCrと有害な臨床転帰との関連をみたリアルワールドデータはほとんどない。今回、国立病院機構京都医療センターの阿部 充氏らは、日本のAF患者の大規模前向きコホートである「伏見心房細動患者登録研究」で、CCr 30mL/分未満の患者が脳卒中/全身塞栓症および大出血などのイベントと密接に関連していたことを報告した。The American Journal of Cardiology誌オンライン版2017年1月25日号に掲載。 本研究では、伏見心房細動患者登録研究における患者3,080例を、CCr 30mL/分未満、30~49mL/分、50mL/分以上の3群に分け、追跡期間中央値(1,076日)後に臨床的特徴と有害事象を評価した。 主な結果は以下のとおり。・事前に指定された因子の調整後、CCr 30mL/分未満の患者は50mL/分以上の患者と比べて、脳卒中/全身塞栓症(ハザード比[HR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.04~2.65、p=0.04)および大出血(HR:2.08、95%CI:1.23~3.39、p=0.008)のリスクが高かった。・CCr 30mL/分未満の患者は、全死因死亡、心不全による入院、心筋梗塞、全死因死亡および脳卒中/全身塞栓症の複合アウトカムのリスクも高かった。・CCr 30~49mL/分の患者では、脳卒中/全身塞栓症(HR:1.10、95%CI:0.76~1.58、p=0.6)や大出血(HR:0.98、95%CI:0.63~1.48、p=0.9)の超過リスクは認められなかった。

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抗血栓薬で硬膜下血腫リスク増大/JAMA

 抗血栓薬服用が硬膜下血腫リスクを増大することが、デンマーク・オーデンセ大学病院のDavid Gaist氏らによる、硬膜下血腫患者約1万例とその適合対照40万例を対象としたケースコントロール試験で明らかになった。なかでも、ビタミンK拮抗薬(VKA)の服用により、硬膜下血腫発症リスクは約3.7倍と大幅な増加が認められたという。また、2000~15年にかけて抗血栓薬服用率が2倍以上に増加し、一般集団における硬膜下血腫罹患率も約1.7倍に増加したことも明らかにされた。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。硬膜下血腫患者1万例と適合対照40万例を対象に試験 研究グループは、2000~15年に初発硬膜下血腫で入院し退院した20~89歳の患者1万10例(症例群)と、年齢、性別などを適合した40万380例(対照群)について、ケースコントロール試験を行い、抗血栓薬服用と硬膜下血腫発症との関連について検証した。 硬膜下血腫の発症と抗血栓薬の服用については、住民ベース地域データ(48万4,346例)とデンマーク全国データ(520万例)を基に特定した。条件付きロジスティック回帰分析を用いてオッズ比(OR)を求めた。併存疾患、教育や収入レベルの補正を行った。 関連を調べた抗血栓薬服用は、低用量アスピリン、クロピドグレル、VKA、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)と、複数の抗血栓薬の併用だった。VKAと低用量アスピリン併用、硬膜下血腫発症リスクは約4倍に 症例群の平均年齢は69.2歳、そのうち女性は34.6%で、抗血栓薬の服用率は47.3%だった。 硬膜下血腫のリスクは抗血栓薬の服用者で高いことが認められた。低用量アスピリン(服用者は症例群26.7% vs.対照群22.4%)に関する補正後ORは1.24(95%信頼区間[CI]:1.15~1.33)、クロピドグレル(5.0% vs.2.2%)は1.87(同:1.57~2.24)、DOAC(1.0% vs.0.6%)は1.73(同:1.31~2.28)、VKA(14.3% vs.4.9%)は3.69(同:3.38~4.03)だった。 VKAと他の抗血栓薬併用者の硬膜下血腫発症リスクが最も高く、VKA+低用量アスピリン併用(3.6% vs.1.1%)では、補正後ORは4.00(95%信頼区間:3.40~4.70)だった。クロピドグレルとの併用(0.3% vs.0.04%)では7.93(同:4.49~14.02)だった。 また、抗血栓薬の服用率は2000年の31.0/1,000人から、2015年は76.9/1,000人へと倍増していた(傾向p<0.001)。それに伴い硬膜下血腫罹患率も、2000年の10.9/10万人年から2015年は19.0/10万人年へと増大が認められた(傾向p<0.001)。なかでも増大幅が最も大きかったのは75歳超の高齢者で、2000年は55.1/10万人年であったが、2015年は99.7/10万人年だった(傾向p<0.001)。

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増加する多発性硬化症の第1選択薬となるか!?

 2月15日、バイオジェン・ジャパン株式会社は、都内において多発性硬化症治療薬フマル酸ジメル「テクフィデラ カプセル120/240mg」の発売に伴うプレスセミナーを開催した。セミナーでは、多発性硬化症診療の最新の知見のほか、テクフィデラの今後の治療での位置付けなどが講演された。40年で40倍以上患者が増えた多発性硬化症 セミナーでは、吉良 潤一氏(九州大学大学院医学研究院 脳研 神経内科学 教授)を講師に迎え、「さまざまな課題をかかえる多発性硬化症~テクフィデラ承認の意義~」をテーマに講演が行われた。 はじめに多発性硬化症(MS)の疫学として、わが国では約1万9,000人を超える患者(指定難病医療受給者証所有者数)がおり、その数も1970年代との比較で40倍を超える数になっていること、毎年患者数は増加していることが説明された。 また、MSの発症では、遺伝因子と環境因子(たとえば高緯度、EBウイルス、ビタミンD欠乏、喫煙、生活の欧米化など)の相互作用が判明しているものの、明確な機序はいまだ解明されていないという。障害部位により多様な症状が出現 MSは、中枢神経の髄鞘が障害される脱髄性疾患であり、最近の研究では、確実なエビデンスはないものの中枢神経髄鞘抗原を標的とする自己免疫性疾患であるともいわれている。そのため、発症するとその多くが再発と寛解を繰り返し、再発寛解型、2次性進行型、1次性進行型の3つの類型に分類される。 症状は、脊髄、視神経、大脳、小脳、脳幹の部位で、それぞれ運動機能、感覚機能、自律神経、高次脳機能が障害され症状として現れる。たとえば、大脳の運動機能が障害されれば片麻痺や単麻痺が、視神経の感覚機能が障害されれば視力低下、視野欠損、中心暗点などの症状が出現する。特徴的な前駆症状としては、急に疲れやすくなったり、新しいことが覚えられないなどが挙げられるという。 診断としては、現在、有用なバイオマーカーがないために、除外診断による診断がなされる。また、MRIや髄液検査、誘発電位検査による検査所見で確定診断を行う。とくにMSでは早い時期から2次進行期(現在2次進行期に有効な治療はない)が始まるケースが多いために、MRI検査で病期進行のモニターが望まれる。MS治療薬の現状と課題 現在MSの治療は、発症後の再発寛解期に主に行われている。痙縮、疼痛などへの対症療法をはじめ、急性期にはステロイドパルス療法が施行される。また、MSでは再発予防のために疾患修飾薬(DMD)を使用し、進行を抑える治療が行われている。 現在DMDの第1選択薬は、インターフェロンβとグラチラマーがあり、さらに第2選択薬としてフィンゴリモド、ナタリズマブ、アレムツズマブが病勢により適応される。しかし、実臨床の場ではDMDの使用は、薬剤の価格ゆえに40~50%未満にとどまるという。また、第1選択薬が注射薬ということもあり、アドヒアランスの観点からも使いづらく、第2選択薬でも長期の使用で進行性多巣性白質脳症(PML)の発生リスクがあるなど注意が必要とされている。 DMDでは、妊婦や小児への負担が少なく、長期安全性があり、就労・就学にも差し支えのない治療薬の導入が望まれているという。患者さんに使いやすいDMDの登場 今回発売されたテクフィデラは、経口薬という特徴を持ち、抗炎症作用と神経保護作用の両輪でMSの進行を抑制する。2013年には米国で、2014年には欧州で承認され、すでに全世界で21万人が使用している。 治療効果として、海外治験では投与開始後2年間でみた年間再発率がプラセボ群(n=771)の0.37と比較して、テクフィデラ群(n=769)では0.19と49%減少していた。また、国際共同治験では、投与開始後の12~24週を観察した新規Gd造影病巣の総数でプラセボ群(n=113)の4.3と比較して、テクフィデラ群(n=111)では1.1と84%減少していた。 安全性では、報告数の多い順に潮紅、下痢、悪心、腹痛などの有害事象があるが、重篤な事象は報告されておらず、投与された最初の1ヵ月間での報告が多かったという。 処方のポイントは、少量から徐々に増やしていくこと、3ヵ月に1回は病状進行の様子をモニターすること、また、視神経脊髄炎に使用すると重篤な再発を起こすことから使用前に鑑別診断をすることが重要だという。 最後に吉良氏は私見として「フィンゴリモドと同等の作用があり、将来的に第1選択薬として使用されると期待している。経口薬という最大の特徴は患者さんの負担を軽くする」と展望を述べ、レクチャーを終えた。

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心房細動への低用量NOAC、ワルファリンに勝るか?/BMJ

 心房細動の治療において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、臨床に導入されて以降、低用量での使用が増加しているが、低用量NOACの有効性と安全性をワルファリンと比較したエビデンスは少ない。デンマーク・オールボー大学のPeter Bronnum Nielsen氏らは、安全性の主要アウトカムである出血は、低用量ダビガトランがワルファリンに比べ有意に少ないとの研究結果を、BMJ誌2017年2月10日号で報告した。5万5,000例以上で3つの低用量NOACを評価 研究グループは、経口抗凝固薬の使用歴のない心房細動患者において、アピキサバン(2.5mg、1日2回)、ダビガトラン(110mg、1日2回)、リバーロキサバン(15mg、1日1回)の臨床的有効性と安全性をワルファリンと比較するコホート研究を行った(Obel Family Foundationなどの助成による)。 解析には、デンマークの3つの全国的なレジストリデータを用いた。対象は、2011年8月~2016年2月に経口抗凝固薬の初回投与が処方された非弁膜症性心房細動患者とし、標準用量のNOAC(アピキサバン5mg、ダビガトラン150mg、リバーロキサバン20mg)を処方された患者は除外した。 ベースラインの患者集団の差を調整するために、治療の逆確率重み付け法(inverse probability of treatment weighted:IPTW)を用いて、4つの治療薬の傾向スコアを算出した。有効性の主要アウトカムは虚血性脳卒中/全身性塞栓症、安全性の主要アウトカムは出血イベントとした。 心房細動患者5万5,644例が解析の対象となった。アピキサバン群が4,400例(7.9%)、ダビガトラン群が8,875例(15.9%)、リバーロキサバン群が3,476例(6.3%)、ワルファリン群は3万8,893例(69.9%)であった。平均フォローアップ期間は2.3年で、アピキサバン群は1年と最短だった。出血リスクが20%低下、有効性に差はない ベースラインの全体の平均年齢は73.9(SD 12.7)歳で、71.0(SD 12.6)歳(ワルファリン群)~83.9(SD 8.2)歳(アピキサバン群)の幅がみられた。腎臓病の有病率は、アピキサバン群(9.5%)、リバーロキサバン群(9.1%)が、ダビガトラン群(3.9%)、ワルファリン群(8.3%)よりも高かった。 全般に、アピキサバン群は心不全、血栓塞栓症の既往、糖尿病、血管疾患などの併存疾患が多かった。したがって、脳卒中リスクの指標であるCHA2DS2-VAScスコアが4.3と最も高く、次いでダビガトラン群が3.8、リバーロキサバン群が3.6で、ワルファリン群は3.0と最も低かった。 フォローアップ期間1年時の虚血性脳卒中/全身性塞栓症の重み付けイベント発生率は、アピキサバン群が4.78%と最も高く、ダビガトラン群は3.31%、リバーロキサバン群は3.53%、ワルファリン群は3.74%であった。ワルファリン群と比較した1年時のハザード比(HR)は、アピキサバン群が1.19(95%信頼区間[CI]:0.95~1.49)と高い傾向がみられ、ダビガトラン群は0.89(0.77~1.03)、リバーロキサバン群は0.89(0.69~1.16)であり、低い傾向が認められたが、いずれも有意な差はなかった。 出血の重み付け1年イベント発生率は、アピキサバン群が5.12%、リバーロキサバン群が5.58%、ワルファリン群が5.11%とほぼ同様であったが、ダビガトラン群は4.09%であり、最も低かった。ワルファリン群と比較した1年時のHRは、アピキサバン群が0.96(95%CI:0.73~1.27)、リバーロキサバン群は1.06(0.87~1.29)と有意な差はなかったが、ダビガトラン群は0.80(0.70~0.92)であり、有意に低かった。2.5年時の出血イベント発生率も、ダビガトラン群はワルファリン群に比べ有意に良好だった(HR:0.84、95%CI:0.75~0.93)。 1年時の全死因死亡のリスクは、アピキサバン群の15.53%、リバーロキサバン群の15.81%に比べ、ダビガトラン群は10.50%、ワルファリン群は10.12%と低く、ワルファリン群と比較したHRはアピキサバン群が1.48(1.31~1.67)、リバーロキサバン群は1.52(1.36~1.70)と有意に高く、ダビガトラン群は1.04(0.96~1.13)であり、有意差はなかった。 著者は、「これらの結果は、われわれが以前に行った標準用量NOACの知見を拡張するものだが、最も異なる点は、標準用量では一致して全死因死亡がワルファリンよりも良好であったが、低用量では薬剤によって差がみられたことである」としている。

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NOAC登場で変わる世界の心房細動の脳卒中予防

 心房細動(AF)は世界中で最もよく遭遇する不整脈で、脳卒中のリスクが5倍に高まる危険性がある。抗凝固薬、とりわけビタミンK拮抗薬が長い間、心房細動患者の基礎であり、過去の臨床試験において、コントロール群やプラセボと比較して、虚血性脳卒中を64%、全死亡率を26%減少させることが明らかになっている。Gloria-AF(Global Registry on Long Term Oral Antithrombotic Treatment in Patients with AF)は、脳卒中のリスクがあり、新規に診断された非弁膜症性心房細動に対する前向きのグローバルレジストリである。オランダのHuisman氏らは、このレジストリを用いて、ダビガトラン登場前後における世界全体での抗凝固療法の種類と割合を比較、検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年2月号の掲載。86.1%がCHA2DS2-VAScスコア2以上のハイリスク患者、79.9%が抗凝固薬を使用 最初の非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)であるダビガトランが使用可能となり、フェーズ2の研究が開始された。本研究では、フェーズ2のベースラインにおける患者データを、NOAC以前(フェーズ1)に集められたデータと比較した。 フェーズ2では、1万5,641例の患者がレジストリに登録され(2011年11月~2014年12月)、このうち1万5,092例が研究基準を満たした。横断的分析には、研究基準を満たした患者の特徴を示し、それによりAFの特徴、医学的転帰、併存疾患、薬剤の情報が集められた。解析には記述統計学の手法が用いられた。 全体の45.5%は女性で、平均年齢中央値は71歳(四分位範囲:64~78歳)であった。患者の47.1%はヨーロッパ、以下、北米(22.5%)、アジア(20.3%)、ラテンアメリカ(6.0%)、中東/アフリカ(4.0%)であった。また、86.1%の患者が、CHA2DS2-VASc スコア2以上の脳梗塞ハイリスク患者であった。13.9%はCHA2DS2-VASc スコアが1で、脳梗塞のリスクは中等度と考えられた。 全体の79.9%が経口抗凝固薬を使用しており、47.6%はNOAC、32.3%がビタミンK拮抗薬(VKA)、12.1%が抗血小板薬を使用し、7.8%は抗凝固療法を受けていなかった。比較対象のフェーズ1(1,063例)における割合は、VKA32.8%、アセチルサリチル酸41.7%、無投薬20.2%であった。ヨーロッパ、北米では半数以上がNOAC、アジアでは27.7%にとどまる ヨーロッパでは、フェーズ2においてNOACがVKAよりも頻繁に使用されており(52.3% vs.37.8%)、6.0%の患者が抗血小板薬を内服し、3.8%が抗血栓療法を受けていなかった。  北米ではNOAC、VKA、抗血小板薬がそれぞれ、52.1%、26.2%、14.0%であり、7.5%は抗血栓療法を受けていなかった。 アジアでは、ヨーロッパや北米と比較するとNOACは27.7%で、それほど頻繁に使われておらず、VKA27.5%、抗血小板薬25.0%で、19.8%は抗血栓療法を受けていなかった。 GLORIA-AF試験で示された、新たに診断された非弁膜症性心房細動の患者のベースラインデータにおいて、NOACが実臨床で広く使用されており、ヨーロッパや北米ではVKAよりも頻繁に使用されていることが明らかになった。しかしながら、世界全体をみると、かなりの割合の患者が依然として十分な治療を受けておらず、その傾向はとくに北米とアジアで顕著であった。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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脳トレーニングで認知症予防、認知機能低下リスクが20~30%減

 精神的な刺激となる活動への取り組みと、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病のオッズ低下との、横断的な関連が報告されている。しかし、70歳以上の高齢者による精神的な刺激となる活動がMCI発症を予測するかについての縦断的アウトカムは、ほとんど知られていない。米国・メイヨー・クリニックのJanina Krell-Roesch氏らは、高齢者における精神的な刺激となる活動とMCI発症リスクとの関連を仮説検証し、アポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型の影響を評価した。JAMA neurology誌オンライン版2017年1月30日号の報告。 ミネソタ州オルムステッド郡のメイヨー・クリニック加齢研究の参加者を対象に、コホート研究を行った。ベースライン時に認知機能が正常であった70歳以上の高齢者について、MCI発症アウトカムをフォローアップした。調査期間は、2006年4月~2016年6月とした。ベースライン時、参加者は研究参加1年以内の精神的な刺激となる活動に関する情報を提供した。認知神経学的評価は、ベースライン時に実施し、その後15ヵ月間隔で実施した。認知機能の診断は、公表されている基準に基づき、専門家コンセンサスパネルにより行った。性別、年齢、教育レベルで調整した後、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、ハザード比(HR)および95%CIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・最終的には、認知機能が正常であった1,929人(ベースライン時の年齢中央値:77歳[四分位範囲:74~82歳]、女性率:50.4%[973人])を対象に、MCI発症のアウトカムをフォローアップした。・フォローアップ期間の中央値は4.0年であった。・MCI発症リスク低下と関連していた項目は以下であった。 ●ゲームのプレイ(HR:0.78、95%CI:0.65~0.95) ●手工芸(HR:0.72、95%CI:0.57~0.90) ●コンピュータの使用(HR:0.70、95%CI:0.57~0.85) ●社会活動(HR:0.77、95%CI:0.63~0.94)・APOEε4キャリアステータスによる層別解析では、精神的な刺激となる活動を行ったAPOEε4ノンキャリアのMCI発症リスクが最も低く(例えば、コンピュータの使用あり[HR:0.73、95%CI:0.58~0.92])、精神的な刺激となる活動を行っていないAPOEε4キャリアのMCI発症リスクが最も高かった(例えば、コンピュータの使用なし[HR:1.74、95%CI:1.33~2.27])。 著者らは「精神的な刺激となる活動を行っている認知機能が正常な高齢者は、MCI発症リスクが低下することが示唆された。この関連は、APOEε4キャリアステータスにより異なる可能性がある」としている。関連医療ニュース 米国の認知症有病率が低下、その要因は 認知症予防へのビタミンDや日光曝露、さらなる研究が求められる 魚を食べると認知症は予防できるのか

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認知症予防へのビタミンDや日光曝露、さらなる研究が求められる

 日光曝露や高ビタミンD状態は、認知症発症を予防するといわれている。オーストリア・クレムス継続教育大学のIsolde Sommer氏らは、経時的な日光曝露の欠如やビタミンD欠乏症が認知症と関連しているかを検討した。BMC geriatrics誌オンライン版2017年1月13日号の報告。 MEDLINE(PubMed経由)、Cochrane Library、EMBASE、SCOPUS、Web of Science、ICONDAおよび1990~2015年10月までの適切なレビュー記事のリファレンスリストをシステマティックに検索した。認知症リスクのサロゲートマーカーとしての日光曝露またはビタミンDの影響を評価するために、パブリッシュおよびノンパブリッシュデータのランダム効果メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・日光曝露と認知症リスクとの関連性を調査した単一研究は特定できなかった。・認知症リスクに対する血清ビタミンD濃度の影響に関するデータには、6件のコホート研究があった。・5件の研究のメタ解析では、重篤なビタミンD欠乏症患者(25nmol/L未満または7~28nmol/L)は、十分なビタミンDの供給を有する者(50nmol/L以上または54~159nmol/L)と比較し認知症リスクが高いことが示された(ポイント推定:1.54、95%CI:1.19~1.99、I2=20%)。・重篤なビタミンD欠乏症は、認知症発症リスクが高いと考えられるが、研究に含まれた観察研究の性質と残存または重要な交絡因子調整の欠如(例えば、ApoEε4遺伝子型)、ならびに日光曝露の代わりとなるビタミンD濃度と認知症リスクとの間接的な関係が含まれる。 著者らは「本レビューから、低ビタミンD濃度が認知症発症に影響すると考えられる。日光曝露と認知症リスクとの直接的および間接的関係を調査するための、さらなる研究が必要である。このような研究には、ビタミンD濃度または日光曝露と認知症アウトカムの均質で反復的な評価を伴う大規模コホート研究が必要である」としている。関連医療ニュース 魚を食べると認知症は予防できるのか 歩くのが遅いと認知症リスク大 米国の認知症有病率が低下、その要因は

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もしかしたら、食生活の改善でADHD発症を予防できるかも

 注意欠如・多動症(ADHD)は、栄養不足や不健全な食事と関連しているが、地中海式ダイエット食との関連を調査した報告は、これまでにない。スペイン・サン・ジョアン・デウ病院のAlejandra Rios-Hernandez氏らは、地中海式ダイエット食の低アドヒアランスとADHD診断の増加に正の相関があるかを検証した。Pediatrics誌オンライン版2017年2月号の報告。 新規にADHDと診断された小児および青年60例および性別と年齢をマッチさせた対照群60例を対象とした症例対照研究。ADHD診断は、DSM-IV-TRに基づき行われた。エネルギー、食事摂取、地中海式ダイエット食のアドヒアランス、家族背景を測定した。地中海式ダイエット食のアドヒアランスとADHDとの関連の検証には、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・地中海式ダイエット食の低アドヒアランスとADHD診断には関連が認められた(OR:7.07、95%CI:2.65~18.84、相対リスク:2.80、95%CI:1.54~5.25)。・潜在的な交絡因子で調整した後でも、本関連は有意なままであった。・果物、野菜、パスタ、ライスの低消費や、朝食を抜く、ファーストフード店での食事の高頻度がADHD診断と関連していた(p<0.05)。・砂糖、キャンディー、コーラ飲料、コーラ以外の清涼飲料水の高頻度(p<0.01)や脂肪魚類の低消費(p<0.05)は、ADHD診断の有病率上昇と関連していた。 著者らは「本横断的関連は、因果関係を示すものではないが、地中海式ダイエット食の低アドヒアランスがADHDの発症に役割を担っている可能性を示唆している。ADHDでは、特定の栄養素だけでなく、食事全体を考慮する必要があると考えられる」としている。関連医療ニュース ADHD発症や重症度にビタミン摂取が関連 小児ADHD、食事パターンで予防可能か 地中海ダイエットは認知症予防に効果があるのか

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うつ病、男女間で異なる特徴とは

 いくつかの研究によると、男女間でうつ病に関連した異なる症状が報告されているが、この関連を分析したシステマティックレビューやメタアナリシスはパブリッシュされていない。オーストラリア・Illawarra Health & Medical Research InstituteのAnna Cavanagh氏らは、うつ病に関連する症状の性差のエビデンスをレビューした。Harvard review of psychiatry誌2017年1・2月号の報告。 PubMed、Cochrane、PsycINFOのデータベースとリファレンスリストを調べた。32研究が基準を満たした。単極性うつ病の臨床サンプルおよびコミュニティサンプル10万8,260人を含んだ。32研究のすべてにおいて質を評価し、出版バイアスについて検討した。性差の影響を評価するため、32研究より抽出された26症状についてメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・本研究では、少数で重要な性別といくつかの症状との関連が示された。・うつ病男性は、女性と比較し、アルコールや薬物乱用(Hedges's g:0.26、95%CI:0.11~0.42)、リスクテイキング、脆弱な衝動性コントロール(g:0.58、95%CI:0.47~0.69)と関連していた。・うつ病女性は、抑うつ気分のようなうつ病の診断基準に含まれる症状(g:-0.20、95%CI:-0.33~-0.08)、摂食障害や体重変化(g:-0.20、95%CI:-0.28~-0.11)、睡眠障害(g:-0.11、95%CI:-0.19~-0.03)と関連していた。 著者らは「本結果は、物質使用と気分障害の有病率における性差に関する既存の研究結果と一致する。男性のうつ病を評価する際には、物質乱用、リスクテイキング、脆弱な衝動性コントロールをスクリーニングすることの有用性が強調される。うつ病と併存症状に関する性差を明らかにするためにも、今後の研究が必要とされる」としている。関連医療ニュース 統合失調症、男と女で妄想内容は異なる 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か 双極性障害、男女間で肥満割合に違いあり

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ADHD治療薬は将来のうつ病発症に影響するか

 注意欠如・多動症(ADHD)は、うつ病を含む精神疾患を高率に合併するといわれている。しかし、ADHD治療薬がうつ病リスクの増減と関連するかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ADHD治療薬の投与とうつ病との関連を検討した。Biological psychiatry誌2016年12月15日号の報告。 対象は、1960~98年にスウェーデンで生まれ、ADHDの診断を受けた患者3万8,752例。ADHD治療薬の処方、うつ病および他の精神疾患の診断、集団ベースのレジスタから得た人口統計学的要因に関するデータを入手した。ADHD治療薬の投与とうつ病との関連は、Cox比例ハザード回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・人口統計学的および臨床的交絡因子で調整後、ADHD治療薬の投与は、うつ病の長期リスク(3年後)低下との関連が認められた(HR:0.58、95%CI:0.51~0.67)。・ADHD治療薬の投与期間が長いほど、うつ病リスクは低かった。・また、ADHD治療薬の投与は、うつ病合併率の低下と関連しており、未投与患者と比較し、うつ病発症率が20%低下していた(HR:0.80、95%CI:0.70~0.92)。 著者らは「ADHD治療薬の投与は、その後のうつ病リスクを増加させないことが示唆された。むしろ、ADHD治療薬の投与は、その後のうつ病合併率の低下と関連していた」としている。関連医療ニュース ADHD発症や重症度にビタミン摂取が関連 成人ADHD、世界の調査結果発表 2つのADHD治療薬、安全性の違いは

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魚を食べると認知症は予防できるのか

 ここ20年の研究では、魚類およびDHAなどのn-3脂肪酸が高齢者のアルツハイマー病を含む認知機能低下を抑制することが示唆されている。スウェーデン・ウプサラ大学のTommy Cederholm氏は、2015~16年の研究結果をレビューした。Current opinion in clinical nutrition and metabolic care誌オンライン版2016年12月12日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・1件のプロスペクティブコホート研究より、高齢者ケア施設入居者の脳解剖では、海産物の摂取と神経性プラークおよび神経原線維変化との関連が認められた。・5年間の大規模介入研究より、n-3脂肪酸補充患者または対照患者において、認知機能への影響は認められなかった。・コミュニティ患者を対象とした2件のメタアナリシスより、高魚類摂取は、認知機能を保持することが認められた。・記憶愁訴の高齢者は、n-3脂肪酸の補充により、記憶課題に関する皮質血流を改善する可能性がある。・アルツハイマー病患者のレポートからの再計算では、血清n-3脂肪酸の増加と認知機能改善には用量反応性が示唆された。・しかし、コクランレビュー(3件の無作為化対照試験)では、n-3脂肪酸は、軽度/中等度アルツハイマー病患者において任意の6ヵ月間でメリットがないと結論付けた。 著者らは「魚類やDHAの摂取は、記憶愁訴やMCI高齢者において予防的メリットを有する可能性があり、軽度/中等度アルツハイマー病患者のサブグループにおいても、このようなメリットがあると考えられる」とし、「より一層の研究が必要である」としている。関連医療ニュース 日本食は認知症予防によい:東北大 魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当か EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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ADHD発症や重症度にビタミン摂取が関連

 ビタミンを含む微量栄養素は、ADHDの症状レベルを低下させることが報告されているが、ADHDのビタミンレベルに関するデータは希薄である。ノルウェー・ベルゲン大学のElisabeth Toverud Landaas氏らは、若年成人ADHD患者および対照群におけるビタミン濃度、ADHD診断および精神医学的症状との関連を調査した。BJPsych open誌2016年11月号(オンライン版2016年12月13日号)の報告。ADHD診断はビタミンB2、B6、B9の低濃度と関連 18~40歳のADHD患者133例、対照群131例を対象に、8種類のビタミンおよびニコチン代謝産物コチニンを分析し、ADHD症状および併存疾患についてもレポートした。 ADHD患者におけるビタミン濃度と精神医学的症状との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・ビタミンB2、B6、B9の低濃度とADHD診断が関連し、ビタミンB2、B6の低濃度が症状重症度と関連していた。・喫煙者は、ビタミンB2、B9レベルが低かった。 著者らは「ADHDは、いくつかのビタミン低レベル群でより発症していたが、患者サブグループにおいてこれら微量栄養素の食事摂取が適切でないと考えられる」とし、「ADHDの食事介入試験により、これらの患者を特定することが重要である」と結論づけている。関連医療ニュース 成人ADHD、世界の調査結果発表 うつ病とビタミンDとの関連、どこまで研究は進んでいるのか EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸による置換は冠動脈疾患リスクを低下させる!(解説:島田 俊夫 氏)-631

 私たちは、炭水化物、脂肪、タンパク質と少量のミネラル、ビタミンを摂取することによりエネルギーを獲得している。しかしながら、炭水化物の過剰摂取と運動不足が糖尿病・肥満の主要因になっている。糖質制限は治療上重要だが、適切な供給カロリーを維持するためには炭水化物以外の栄養素からエネルギーを獲得することが必要となる1)。1g当たりの産生カロリーは、炭水化物4kcal、脂肪9kcal、タンパク質4kcalのエネルギーを産生する。単純計算から、糖質制限食は代替エネルギーを脂肪またはタンパク質から取らざるを得ない。飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸置換することは冠動脈疾患死を減らす 今回取り上げた、BMJ誌2016年11月23日号に掲載された米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のGeng Zong氏らが、米国男女大規模コホート2試験で1984~2012年の看護師健康調査に参加した女性7万3,147例と、1986~2010年の医療従事者追跡調査に参加した4万2,635例の2つのコホートによる前向き縦断コホート試験により、飽和脂肪酸の冠動脈疾患への関与に対して解析を行った。本研究の被験者はベースラインでは主たる慢性疾患を認めない人のみを対象とした。 被験者のうち、冠動脈疾患の発生(n=7,035)は自己申告により、関連死は全米死亡記録や親戚縁者、郵便局からの報告により裏付けられた。冠動脈疾患症例については診療記録により確認が行われた。 その結果、追跡期間中の総エネルギー摂取量に占める飽和脂肪酸の割合は9.0~11.3%で、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)とステアリン酸(18:0、8.8~10.7%エネルギー)が主な構成脂肪酸であった。これら4種の脂肪酸は、冠動脈疾患発症と強い相関を示し、スペアマンの順位相関係数は0.38~0.93(すべてのp<0.001)であった。 生活習慣要因と総エネルギー摂取量については多変量調整後、各々の飽和脂肪酸の摂取量の最高5分位数群 vs.最小5分位数群のハザード比は、タウリン酸が1.07(95%信頼区間[CI]:0.99~1.15、傾向p=0.05)、ミリスチン酸が1.13(1.05~1.22、傾向p<0.001)、パルミチン酸が1.18(1.09~1.27、傾向p<0.001)、ステアリン酸が1.18(1.09~1.28、傾向p<0.001)、4種複合飽和脂肪酸で1.18(同:1.09~1.28、傾向p<0.001)であった。 4種の飽和脂肪酸から摂取するエネルギーの1%相当分を、多価不飽和脂肪酸で置換することにより同ハザード比は0.92(p<0.001)に、また1価不飽和脂肪酸で置換すると0.95(p=0.08)、全粒炭水化物で0.94(p<0.001)、植物性タンパク質で0.93(p=0.01)とリスクの減少がみられた。また、単体ではパルミチン酸での置換がリスクを最も低下させ、ハザード比は多価不飽和脂肪酸の置換で0.88(p=0.002)、1価不飽和脂肪酸で0.92(p=0.01)、植物性タンパク質で0.89(p=0.01)であった。糖質制限食使用上の注意点 糖質制限食の重要性がクローズアップされている今日、代替エネルギーを脂肪から取ることは一見理にかなっているが、本論文の結果から脂肪酸の質が重要となり2)3)、飽和脂肪酸の摂取を抑え、多価不飽和脂肪酸または1価不飽和脂肪酸、植物性タンパク質を糖質代替エネルギー源とすることは、糖質制限食の弱点強化につながる可能性を示唆する。

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サン・アントニオ2016 レポート-1

レポーター紹介はじめに2016年SABCSは12月6日~10日まで5日間開催された。今年から会場が新しくなり、非常に快適であった。しかし、外は風も強くとても寒い日が続いた。メイン会場は従来と雰囲気は変わらないが、柱やスクリーンが障壁となって、座席によりスライドの見えにくいところが多かったのが難点である。来年より改善して欲しいところである。今回私たちの臨床をすぐに変えるようなものはほとんどなかった。しかし、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)をはじめとするがん免疫、ERやHER2も含めた体細胞変異、BRCA1/2以外の胚細胞変異、多遺伝子アッセイ、リキッドバイオプシー(循環癌細胞、セルフリーDNA)、マイクロRNA(miRNA)、がん幹細胞、腫瘍の不均一性といった話題は引き続き多くみられた。また、臨床試験デザインの演題も多く採用されていたように思う。まずはOral sessionから紹介する。NSABP B-42は閉経後乳がんにおいて、アロマターゼ阻害剤(AIs)を5年服用後(タモキシフェン3年以下服用も含む)に、さらにレトロゾールを5年延長した場合の効果をみる試験である。現在までにタモキシフェン5年服用後にレトロゾールを5年延長するMA.17試験でその有効性が示されている。MA.17R試験では、レトロゾール5年にさらにレトロゾール5年を追加したが、遠隔再発抑制効果はほとんどみられなかった。しかし、それ以前にタモキシフェンを5年使用していた患者も多く含まれているため、私たちが知りたい条件とは異なっていた。B-42試験では3,964例が2群に割り付けられた。約40%の患者が治療を完遂できず、そのうち治療拒否または中止は14%、有害事象によるものは10%であった。主要評価項目である無病生存期間は、7年でレトロゾール群84.7%、プラセボ群81.3%と有意差が認められた(p=0.048、 HR=0.85:0.73~0.99)。さらに遠隔再発もそれぞれ3.9%、5.8%で有意差を認めた(p=0.03、HR=0.72:0.53~0.97)。しかし全生存期間には差を認めなかった(92.3% vs.91.8%)。すなわち、アロマターゼ阻害剤5年にさらにレトロゾール5年を延長することによる利益は全体としてはわずかである。スライドでは示されなかったが、予後不良(リンパ節転移陽性など)群などでは効果が大きくなると思われる。そのため、TAM→TAM、TAM→AIs、AIs→AIs共に、より予後不良と考えられる患者には使うメリットがあろうと考えられ、個々の患者の状況により対策を立てるのが賢明である。DATA研究は2~3年のタモキシフェンの後に3年または6年のアナストロゾールを服用した際の効果を比較する第III相試験である。3年無病生存率は79.4% vs.83.1%で有意差はみられなかったが(p=0.07、HR=0.79:0.620~1.02)、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、pN+、化学療法施行例に限ると75.9% vs.86.0%で有意差が認められた(p=0.01、HR=0.58:0.39~0.89)。なお、全生存率にはまったく差は認められていない。まだ観察期間も短く、何ら結論は出せないが、他の延長試験と合わせて考えると、やはり再発リスクが高いグループでアロマターゼ阻害剤の延長を考慮したほうが良さそうである。BRCA1/2乳がんにおける体細胞遺伝子の変化について、メモリアル・スローンケタリングがんセンターから報告があった。BRCA1/2乳がんは先天的に一方のアレルのBRCA1/2遺伝子が変異により機能喪失しており、2ヒットとしてもう一方のアレルも何らかの理由で機能喪失すると乳がんに進展していく。BRCA1では29例中28例で両アレルが失活していたが、1例では失活しておらず散発性の乳がん発症と考えられた。両アレルの失活に伴い、その他の遺伝子変異がTP53-76%(ER陰性-95%、ER陽性-25%)、NF1-10%、PTEN-10%、RB1-7%に認められた。BRCA2では10例中全例でLOHが認められた。BRCA1/2胚細胞変異保有者における散発性乳がんの割合とBRCA1/2遺伝子変異に伴う他の体細胞遺伝子変異は、私も兼ねてより知りたかったことの1つだったのでここに紹介した次第である。すなわち、BRCA1/2遺伝子変異保有者ではその大半が遺伝性乳がんとして発症し、散発性乳がんはごくわずかであるということである。当然のことながら散発性乳がんは遺伝の有無にかかわらず発症する訳であるが、遺伝を持っている方は散発性乳がん発症に加え、より大きな遺伝性乳がん発症のリスクを持っていると考えられ、やはり個別化医療としての選択的なサーベイランスを行うことが大切であろう。化学療法に伴う脱毛を予防するための頭皮冷却に関する無作為化比較試験SCALPの結果が報告された。本研究はPaxmanの頭皮冷却装置が用いられているが、これは国内でもすでに薬事承認されている。182例の患者が無作為化割り付け(冷却群119例、非冷却群63例)され、1レジメンでの効果が検討された。その結果、非冷却群での脱毛は100%であったのに対し、冷却群では脱毛を50.5%予防できていた。薬剤別での予防率はタキサンで65.1%であったが、アントラサイクリンではわずか21.9%であった。冷却により強い不快感を訴えた方はわずかであった。比較的良好な結果を示しているといえるが、本報告の問題点として、薬剤の詳細(種類や投与量)がわからないこと、最も多く使われているアントラサイクリン+タキサンレジメンでの脱毛の割合が不明であることが挙げられる。また、パクリタキセルの毎週投与では頭皮冷却の回数が非常に増えてしまうことが懸念される。実地臨床では、時間が長くなり化学療法室を1例で長く占拠してしまうこと、化学療法室のスペース不足、誰に行うのか、といった問題があるのが現実であり、データ不足と相まって普及にはまだ困難を伴いそうである。アロマターゼ阻害剤関連の筋骨格系症状(AIMSS)に対するデュロキセチンの効果をみる無作為化比較試験の結果が報告された(SWOG S1202))。慢性疼痛の治療薬としてFDAで認可されているセロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬(SNRI)の1つであるデュロキセチンの効果をみたものである。299例の患者をデュロキセチンとプラセボを12週間内服する群にそれぞれ割り付け、QOL評価を行った。その結果、関節痛や関節のこわばりはデュロキセチン内服群で有意に改善傾向がみられ、QOLも有意に向上していた。しかしながら、その差はわずかにみえる。デュロキセチン群の方で明らかに有害事象が多いこと、プラセボ群でもそれなりの効果と有害事象が出ていることから、直ちにデュロキセチンを使うというよりは1つの提案をしてみたい。まずは何らかの副作用の少ない薬剤(たとえば漢方薬、ビタミンD3など)を使って効果を確認し、改善が不十分であればデュロキセチンに変えてみるなどすると、有害事象を最小限にしながら治療効果を上げることができるのではないか。

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治癒切除後の大腸がん予防、低用量アスピリンが最適か/BMJ

 初発大腸腫瘍(colorectal neoplasia)または大腸がん(colorectal cancer)の治癒切除術を受けた患者における進行性異時性腫瘍の予防では、非アスピリン非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の効果が最も高いが、リスク・ベネフィットのプロファイルは低用量アスピリンが最も良好であることが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のParambir S Dulai氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2016年12月5日号に掲載された。大腸腫瘍(管状腺腫、がん)の既往のある患者における大腸がんの化学予防薬として、多くの栄養補助食品や薬剤が検討され、無作為化対照比較試験ではさまざまな有効性が示されている。一方、既報のメタ解析では、進行性異時性腫瘍のリスク低減に、アスピリンや非アスピリンNSAIDが有効な可能性が示唆されているが、直接比較試験はなく、相対的な有効性や安全性は不明だという。10種の戦略に関する14試験のネットワークメタ解析 研究グループは、大腸腫瘍の既往のある患者を対象に、進行性異時性腫瘍(初発腫瘍の切除後に発生)の予防における候補薬(低用量および高用量アスピリン、非アスピリンNSAID[セレコキシブ、スリンダク]、カルシウム、ビタミンD、葉酸の単独または併用)の有効性と安全性を評価するために、文献の系統的レビューとメタ解析を行った。 2015年10月15日の時点で、医学データベース(Medline、Embase、Web of Science)に登録された文献を検索し、臨床試験登録にも当たった。有効性の主要アウトカムは進行性異時性腫瘍のリスク、安全性の主要アウトカムは重篤な有害事象(死亡、有害事象による入院、重度消化管出血、血管合併症、有害事象による治療中止)とした。 ベイジアンネットワークメタ解析を行い、surface under the cumulative ranking (SUCRA)を用いて薬剤の相対的な順位を評価した。SUCRAは、1(その薬剤が他の薬剤より完全に優れる)~0(その薬剤が他の薬剤より完全に劣る)の範囲で算出した。エビデンスの質は、GRADE基準で評価した。 10種類の介入戦略を比較した14件の無作為化試験(1万2,234例)が解析の対象となった。これら14試験は1999~2015年に実施され、すべて多施設共同二重盲検プラセボ対照試験であり、11試験はアドヒアランスを最適化するために導入期間が設けられていた。非アスピリンNSAIDは低リスク例に限定 プラセボとの比較で、3~5年間の進行性異時性腫瘍の予防効果が最も高いと判定されたのは非アスピリンNSAID(オッズ比[OR]:0.37、95%信用区間(credible interval:CrI):0.24~0.53、SUCRA=0.98、エビデンスの質:高)であり、次いで低用量アスピリン(0.71、0.41~1.23、SUCRA=0.67、エビデンスの質:低)であった。 一方、安全性は、低用量アスピリンが最も高かった(OR:0.78、95%CrI:0.43~1.38、SUCRA=0.84)のに対し、非アスピリンNSAIDはカルシウムに次いで2番目に低かった(1.23、0.95~1.64、SUCRA=0.26)。 高用量アスピリンの効果(OR:1.12、95%CrI:0.59~2.10、SUCRA=0.58)は、低用量アスピリンとほぼ同等であったが、安全性プロファイル(SUCRA=0.51)は劣っていた。 著者は、「非アスピリンNSAIDの、重篤な有害事象のリスクを超える進行性異時性腫瘍予防のベネフィットは、初発腫瘍が低リスクの患者に限られると考えられる。低用量アスピリンは、予防効果は2番目で信頼性も低いが、安全性が最も優れるため、ベースラインの腫瘍リスクにかかわらず、大腸がんの化学予防薬とみなしてよいと考えられる」としている。

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統合失調症、男と女で妄想内容は異なる

 統合失調症患者において男性と女性で妄想の頻度や妄想内容に違いがあるのかを、オーストリア・インスブルック大学のV Rossler氏らが検討を行った。Fortschritte der Neurologie-Psychiatrie誌2016年11月号の報告。 2008~11年にドイツの精神科病院に入院したすべての統合失調症患者の医療記録を分析した。対象は、統合失調症と診断された妄想型入院患者182例(女性:90例、男性92例)。 主な結果は以下のとおり。・男性と女性で妄想の頻度に差は認められなかった。・しかし、妄想の内容の分析では、相違が明らかであった。・関係妄想を有する女性では、男性と比較し、より頻繁に「監視されている」と感じていた。・関係妄想を有する男性は、不特定の人を妄想に巻き込む傾向を示し、より頻繁に「自分のことが話されている」と感じていた。・女性における誇大妄想は、より頻繁に、他人との重要な関係に基づいて構成されていた。関連医療ニュース 統合失調症の妄想低減へ、新たな介入方法 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か 性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大(鷹野 敦夫)【訂正のお知らせ】本文内に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2016年12月13日)。

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食事が喫煙者の肺機能保護に関わる可能性

 禁煙だけでなく、食事が喫煙者の肺機能保護に関わる可能性が、スペインのSorli-Aguilar M氏らによる研究で明らかになった。BMC Pulmonary Medicine誌2016年11月25日号掲載の報告。 食事が肺機能に対して与える影響はあまり知られていない。肺機能低下の主な原因は喫煙だが、食習慣との関連も示唆されている。野菜や果物に含まれる抗酸化ビタミン(C、D、E、β-カロテン)や各種ミネラル、食物繊維、フィトケミカル、そして魚介類に含まれるオメガ-3脂肪酸の摂取が呼吸器の健康と関連するとされる一方で、加工肉や過度のアルコール摂取は肺機能低下と関連するという報告も存在する。 本研究では、呼吸器疾患を持たない喫煙者(n=207、35~70歳)を対象に、食事パターンと肺機能の関連が検討された。対象者の食事パターンは、食物摂取頻度調査の結果を主成分分析(PCA)にかけることで決定された。肺機能の低下はFVC<80%、FEV1<80%、FEV1/FVC<0.7のいずれかまたは複数該当する場合とされ、 ロジスティック回帰分析によって解析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・肺機能低下は47名(22.7%)の対象者でみられ、男性の対象者でより多くみられた(男性30.8%、女性16.4%)。・対象者の食事パターンは、主にアルコール摂取型、西洋型、地中海型の3つのパターンに区分された。 ◆アルコール摂取型:  ワイン、ビール、蒸留酒などアルコール飲料の摂取が多い群 ◆西洋型:  肉類、乳製品、甘い飲料、菓子類の摂取が多く、果物、野菜、魚の摂取が少ない群 ◆地中海型:  鶏肉、卵、魚、野菜、芋類、果物、ナッツ、ドライフルーツの摂取が多い群・アルコール摂取型の食事パターンで肺機能低下との関連がみられ(オッズ比[OR]:4.56、95%信頼区間[CI]:1.58~13.18)、とくに女性においてその影響が大きかった(OR:11.47、95%CI:2.25~58.47)。・西洋型の食事パターンは、女性においてのみ肺機能低下との関連がみられた(OR:5.62、95%CI:1.17~27.02)。・地中海型の食事パターンと肺機能低下には関連がみられなかった(OR:0.71、95%CI:0.28~1.79)。・禁煙に加えて、食事パターンの見直しが肺機能保護に役立つ可能性がある。

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脳内脂肪酸と精神症状との関連を検証:富山大

 n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)レベルと精神障害との関連を調べた研究では、死後脳に関して、白質ではなく主に灰白質の分析に焦点が当てられてきた。富山大学の浜崎 景氏らは、統合失調症、双極性障害、うつ病患者の死後の脳組織において、PUFAレベルが白質の最大領域である脳梁に異常を示しているのかを調査した。European psychiatry誌オンライン版2016年11月4日号の報告。 対象患者は、統合失調症15例、双極性障害15例、うつ病15例、そして、コントロール15例とし、比較評価を行った。死後の脳梁におけるリン脂質中の脂肪酸は、薄層クロマトグラフィとガスクロマトグラフィにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・これまでのいくつかの研究とは対照的に、患者とコントロールの脳梁内のPUFAまたは他の脂肪酸レベルとの間に有意な差は認められなかった。・性別によるサブ解析でも、同様の結果が得られた。・精神障害の診断の有無にかかわらず、自殺者と非自殺者の間のPUFAには有意な差は認められなかった。 著者らは「精神疾患患者では、健常コントロールと比較して、死後の脳梁におけるn-3PUFA欠損を示さず、脳梁はPUFA代謝異常に関連しない可能性がある。この分野における研究はまだ初期段階であり、さらなる調査が必要である」としている。関連医療ニュース 双極性障害エピソードと脂肪酸の関連を検証 EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか 統合失調症の再発予防、ω-3脂肪酸+α-LAは有用か

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