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抗凝固薬の中和薬:マッチポンプと言われないためには…(解説:後藤 信哉 氏)-715

 手術などの侵襲的介入時におけるヘパリンの抗凝固効果はプロタミンにより中和可能であり、経口抗凝固薬は外来通院中の症例が使用しているので、ワルファリンの抗凝固効果は新鮮凍結血漿により即座に、ビタミンKの追加により緩除に中和できることを知っていても、中和薬の必要性を強く感じる場合は少なかった。止血と血栓は裏腹の関係にあるので、急性期の血栓、止血の両者を管理する必要のある症例の多くは入院症例であり、その多くは調節可能な経静脈的抗凝固療法を受けていた。 モニタリングせずに使用する経口抗トロンビン、抗Xa薬(いわゆるNOACs、DOACs)は、血栓イベントリスクの高い機械弁、僧帽弁狭窄症では使われていない。緊急手術が必要な状態になった場合、重篤な出血が薬剤により惹起されたとき、薬剤投与を中止して止血できるまで、どの程度の時間が必要であるかがわからない。プロトロンビンを濃縮した血液製剤などを使うと直感的に止血を実感できる。本研究ではトロンビンの酵素作用を直接阻害するダビガトランに中和抗体を作用させれば、即座に抗トロンビン効果は消失することを示した。臨床的な止血効果をおそらく医師は現場で実感したと想定するが、臨床試験にて有効性を数値で示すことはできなかった。 血液凝固カスケードは液相の反応が広く知られるが、現実の血液凝固の重要部分は活性化血小板膜上にて起こる。Xaは血小板上のプロトロンビナーゼ複合体の形成に未知の複雑なメカニズムで作用するので、Xaのおとりではプロトロンビン時間が正常化しても血栓イベントは増えるような結果であった。ダビガトランの抗体の作用は、Xa阻害薬の中和薬よりは作用が直線的である。それでも、「抗凝固薬を不必要に多用して、自然歴ではない出血イベントを多発させ、抗凝固薬の中和薬を多用する」のは、マッチポンプ的で患者にも社会にも不利益をもたらす。抗Xa薬の中和薬よりは直線的だがダビガトラン抗体に価値があるのかどうか、現時点では筆者にもわからない。 放置すれば近未来ほぼ確実に血栓イベントが起こる症例に、抗凝固薬を限局的に使用する世界が筆者には効率的に思える。

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遅発性ジスキネジア治療に期待される薬剤は

 遅発性ジスキネジア(TD)は、ドパミン受容体アンタゴニストによる抗精神病薬治療を受けている患者で起こりうる。TDは、その有病率と患者の生活への悪影響にもかかわらず、確立された治療法がなく、薬理学的治療の比較対照試験によるエビデンスも限られている。米国・ペンシルベニア大学のStanley N. Caroff氏らは、TDまたは薬物誘発性運動障害の治療に関する文献レビューを行った。Expert review of neurotherapeutics誌オンライン版2017年7月31日号の報告。 2007~16年に発表されたTDに関する英語論文を、PubMedから“tardive dyskinesia”(TD)もしくは“drug-induced movement disorder”(薬物誘発性運動障害)および“treatment”の語句で検索した。選択したのはTD治療のための薬理学的作用を評価した研究で、合計26件(メタ解析:5件、RCT:12件、オープンラベル:9件)をレビューした。 専門家の主な解説は以下のとおり。・TDの治療には段階的なアプローチが必要である。・TD治療前に、抗精神病薬の最適化を検討すべきである。・いくつかの最近の研究データからは、抗精神病薬の切り替え、またはアマンタジン、レベチラセタム、piracetam、ゾニサミド、プロプラノール、ビタミンB6、特定の規制されていない漢方薬の使用でTD改善の可能性が示されているが、これらの改善意義は不明であり、RCTによるさらなる検討が必要である。・また、新規の小胞モノアミントランスポーター2阻害薬の第III相試験による最近のエビデンスでは、TD症状の重症度に対する有意な効果が認められ、これらの薬剤が、今後のTD治療を変える可能性があることを示唆している。■関連記事遅発性ジスキネジアへの対処に新たな知見遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学統合失調症のEPS発現にカルバマゼピン処方が関連

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幼児へのビタミンDはかぜ予防に有用か?/JAMA

 健康な1~5歳児に、毎日のビタミンDサプリメントを2,000IU投与しても、同400IUの投与と比較して、冬期の上気道感染症は減らないことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のMary Aglipay氏らによる無作為化試験の結果、示された。これまでの疫学的研究で、血清25-ヒドロキシビタミンDの低値とウイルス性上気道感染症の高リスクとの関連を支持するデータが示されていたが、冬期のビタミンD補給が小児のリスクを軽減するかについては明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は「ウイルス性上気道感染症予防を目的とした、小児における日常的な高用量ビタミンD補給は支持されない」とまとめている。JAMA誌2017年7月18日号掲載の報告。冬期の最低4ヵ月間、高用量(2,000IU) vs.標準用量(400IU)投与で評価 検討は、オンタリオ州トロント市(北緯43度に位置)で、複数のプライマリケアが参加する研究ネットワーク「TARGet Kids!」に登録された1~5歳児を対象とし、2011年9月13日~2015年6月30日に行われた。 研究グループは参加児703例を、2,000IU/日のビタミンDサプリメントを受ける群(高用量群349例)または同400IU/日を受ける群(標準用量群354例)に無作為に割り付けて追跡した。サプリメントの投与は保護者の管理の下、登録(9~11月)からフォローアップ(翌年4~5月)の間、冬期(9月~翌年5月)の最低4ヵ月間に行われた。 主要アウトカムは、冬期の間に、保護者によって採取された鼻腔用スワブ検体によりラボで確認されたウイルス性上気道感染症例とした。副次アウトカムは、インフルエンザ感染症、非インフルエンザ感染症、保護者報告による上気道疾患、初回上気道感染症までの期間、試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値であった。上気道感染症発症に有意差なし、初回発症までの期間も有意差みられず 無作為化を受けた703例(平均年齢2.7歳、男児57.7%)のうち、試験を完遂したのは699例(99.4%)であった。 小児1例当たりに確認された上気道感染症の報告数は、高用量群1.05回(95%信頼区間[CI]:0.91~1.19)、標準用量群1.03回(同:0.90~1.16)で、両群間に統計的有意差はみられなかった(発症率比[RR]:0.97、95%CI:0.80~1.16)。 初回上気道感染症までの期間についても、統計的有意差は示されなかった。具体的な同期間は、高用量群は3.95ヵ月(95%CI:3.02~5.95)、標準用量群3.29ヵ月(同:2.66~4.14)。また、保護者報告による上気道疾患についても有意差はなかった(高用量群625件 vs.標準用量群600件、発症RR:1.01、95%CI:0.88~1.16)。 試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値は、高用量群48.7ng/mL(95%CI:46.9~50.5)、標準用量群は36.8ng/mL(同:35.4~38.2)であった。

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脳卒中リスク、ビタミンC摂取と反比例

 日本人における食事での抗酸化ビタミンの摂取と脳卒中発症の関連についてJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)で検討したところ、非喫煙者においてビタミンC摂取と脳卒中全体および脳梗塞発症との逆相関が認められた。European journal of clinical nutrition誌オンライン版2017年7月12日号に掲載。 本研究は、45~74歳の8万2,044人の日本人男女に対し、1995~1997年に食事摂取頻度調査票を用いて調査した。2009年末までの98万3,857人年の追跡期間中、脳卒中全体では3,541人、脳梗塞は2,138人に発症した。 主な結果は以下のとおり。・心血管リスク因子および選択された生活習慣因子の調整後、食事によるα-カロチン、β-カロチン、α-トコフェロール、ビタミンCの摂取量と脳卒中全体および脳梗塞の発症との間に逆相関はみられなかった。・現在の喫煙状況で層別化したところ、非喫煙者では食事によるビタミンC摂取量と脳卒中全体の発症とに逆相関がみられたが、喫煙者ではみられなかった。ビタミンC摂取の最低五分位に対する最高五分位の多変量ハザード比は以下のとおり。 非喫煙者:0.81(95%CI:0.68~0.96、傾向のp=0.03) 喫煙者 :1.03(95%CI:0.84~1.25、傾向のp=0.55)・脳梗塞については、非喫煙者の多変量ハザード比は0.76(95%CI:0.60~0.96、傾向のp=0.02)、喫煙者では1.00(95%CI:0.78~1.28、傾向のp=0.61)であった。

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X染色体遺伝性低リン血症〔XLH:X-linked hypophosphatemic rickets〕

1 疾患概要■ 定義X染色体遺伝性低リン血症(X連鎖性低リン血症性くる病)は、X連鎖性優性遺伝形式を示し、腎尿細管でのリン酸再吸収障害に基づく過リン酸尿、低リン血症、ビタミンD活性化障害、骨石灰化障害を呈する遺伝性疾患である。骨石灰化障害は、成長軟骨帯閉鎖以前に発症するものを「くる病」、成人期のものを「骨軟化症」と呼ぶ。本症はビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症とは異なり、天然型ビタミンD投与により完治しないことから、しばしばビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症とも呼ばれる。■ 疫学詳細は不明であるが、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究班」の全国調査から、わが国における年間発症症例数は117例(95%信頼区間 75-160)と推定されている。■ 病因・病態本症はX染色体に存在するPHEX(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)遺伝子の機能喪失に基づく。PHEX遺伝子は主として骨芽細胞や骨細胞に発現している。本症の原因であるPHEXの機能喪失は骨におけるFGF23の過剰産生をもたらし、このFGF23作用の過剰が尿中リン酸排泄増加による低リン血症やビタミンDの活性化障害を引き起こす(図1)。PHEXの機能喪失がFGF23の過剰産生をもたらす機序は明確になっていない。画像を拡大するFGF23は主として骨芽細胞や骨細胞で産生され、近位尿細管におけるIIa型およびIIc型のナトリウム/リン酸共輸送担体の発現を減少させることによりリン酸再吸収を抑制し、血清リン値を低下させる。また、FGF23は、ビタミンDの活性化酵素である1α水酸化酵素の発現を抑制して不活性化酵素である24水酸化酵素の発現を誘導することにより、活性型のビタミンDである1,25(OH)2Dの血中濃度を低下させる。1,25(OH)2Dの低下に伴う腸管でのリン吸収の抑制は血清リン値をさらに低下させる。リンはカルシウム(Ca)とともにハイドロキシアパタイトの主要構成成分であるため、本症における慢性的な低リン血症は、骨石灰化障害であるくる病や骨軟化症をもたらす。低リン血症性くる病・骨軟化症の中には、本症以外にもFGF23作用の過剰による疾患群が存在し、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と総称される(表)。画像を拡大する■ 症状尿中リン酸排泄増加、低リン血症、骨変形やO脚、関節腫脹、低身長、骨単純X線像としての杯様変化や毛羽立ちなどのくる病所見を認め、くる病はビタミンD抵抗性である。ビタミンDの活性化障害が存在するため、低リン血症が存在するにもかかわらず血中1,25(OH)2D値は上昇しない。ほかのくる病・骨軟化症と同様に、血清ALP値は上昇する。多くの場合、副甲状腺ホルモン(PTH)値は正常である。見逃されがちな症状として歯の異常が挙げられ、本症の患者はエナメル質欠損や象牙質石灰化障害、歯根膿瘍などを示す。成人では筋力低下や骨痛が主徴となる。また、後縦靱帯骨化症や腱付着部症(enthesopathy)をしばしば認める。■ 予後従来行われてきたリン酸製剤と活性型ビタミンDを用いた治療により本症患者の成長障害はある程度改善するが、成人身長は平均を下回る場合が多い。また、骨変形の完全な防止は困難であり、筋力低下や骨痛のため服薬が中止できないことが少なくない。前述したように、後縦靱帯骨化症や石灰化を伴うenthesopathyを合併しやすい。また、長期にわたる活性型ビタミンDの投与により尿中Ca排泄が増加し、腎機能に影響を及ぼす場合がある。2019年より、新規治療薬としてヒト型抗FGF23モノクローナル抗体(商品名:クリースビータ)が使用可能となったことから、今後、本疾患の予後が変化する可能性がある。2 診断骨石灰化障害であるくる病や骨軟化症には、本症のようなFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症のほか、ビタミンD欠乏性くる病やビタミンD依存症I型・II型、薬剤性くる病・骨軟化症、ファンコーニ症候群など、さまざまな疾患が含まれる。そこで、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究班」では、日本内分泌学会・日本骨代謝学会との合同で、「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」を作成し1)、学会ホームページ上で公開している。このマニュアルでは、くる病・骨軟化症の症例に遭遇したときには、まず血清リン値を評価し、低リン血症が存在すれば血中FGF23値の測定を行う。血清リン値の基準値は年齢で異なるので、注意が必要である。くる病・骨軟化症患者で低リン血症が存在し、血中intact FGF23値が30pg/mL以上であれば、FGF23関連くる病・骨軟化症と診断する(図2)。FGF23関連くる病・骨軟化症の診断または治療効果判定を目的としたFGF23の測定は、2019年より保険適用となっている。表に示した通り、FGF23関連くる病・骨軟化症には本症以外にもさまざまな疾患が含まれるので、腫瘍性骨軟化症などとの鑑別のために詳細な家族歴の調査が必要となるが、しばしば孤発例も報告されており、診断に苦慮する場合がある。こうした症例ではPHEX遺伝子検査が有用である。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症をはじめとするFGF23関連低リン血症性くる病においては、尿中リン酸排泄増加に加えビタミンD活性化障害を伴うため、従来、中性リン酸塩と活性型ビタミンDの併用投与が行われてきた。経口リン酸製剤(例:ホスリボン配合顆粒など)は20~60mg/kg/日を数回に分割して投与する。リン投与が過剰になると消化器症状や副甲状腺機能亢進症のリスクが高まる。活性型ビタミンDとしては通常、アルファカルシドール(1αOHD3)0.03~0.05μg/kg/日で開始し、血清Ca値や尿中Ca排泄を指標に投与量を調節する。成人における治療法は確立していない。活性型ビタミンD投与が長期にわたるため、腎エコー上、腎石灰化が高頻度に認められるが、腎機能の低下を来すことはまれである。近年、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症に対する新規治療薬として、ヒト型FGF23モノクローナル抗体ブロスマブが使用可能となった。XLHに対しては、成人患者では4週毎に1 mg/kg(ただし90 mg以下)を、小児患者では2週毎に0.8 mg/kgを皮下投与する。在宅自己注射も可能となっている。リン製剤や活性型ビタミンD投与による治療からブロスマブ投与に切り替える際には、それまでの治療を中止して血清リン値が低値になっていることを確認しなくてはならない。ブロスマブは血清リン値や症状に応じて増減するが、最高用量は2mg/kg/回(ただし90 mg以下)である。4 今後の展望2019年以降、血中FGF23測定が保険適用となり、ブロスマブが使用可能となったことから、XLHの診療は大きく変化しつつある。ブロスマブの導入により、XLHにおける身長予後や合併症が改善するかどうか、今後の検討が待たれる。5 主たる診療科小児科、内分泌内科、整形外科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療研究情報難病情報センター ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 原発性低リン血症性くる病(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会XLH Network(米国にある本疾患の患者会サイト。英文だが日本語選択も可能)1)Fukumoto S, et al. Endocr J. 2015;62:665–671.2)Carpenter TO, et al. J Bone Miner Res. 2011;26:1381–1388.3)Haffner D, et al. Nat Rev Nephrol. 2019;15:436–455.4)Carpenter TO, et al. New Engl J Med. 2018;378:1987–1998.5)Imel EA, et al. Lancet. 2019;393:2416–2427.公開履歴初回2017年06月13日更新2022年02月03日

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ワルファリン服用者の骨は脆い?(解説:後藤 信哉 氏)-676

 ワルファリンは、ビタミンK依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する抗凝固薬である。ワルファリン服用者にはビタミンKの摂取制限を指導する。ビタミンKは「ビタミン」であるため、摂取制限により「ビタミン」不足の症状が起こる場合がある。ビタミンKを必要とする生体反応として骨代謝は重要である。ワルファリンはビタミンK依存性の凝固蛋白の機能的完成を阻害して、血液凝固を阻害する。骨の石灰化に必須のオステオカルシンの活性化にもビタミンKが必要である。ビタミンK摂取制限、ワルファリンの服用により、出血以外に骨粗鬆症も懸念される。もともと高齢で骨が弱い症例が、ワルファリン治療の対象となる。臨床的仮説として「ワルファリンの服用者では非服用者よりも骨粗鬆症性骨折が増える」とするのは妥当である。 本研究は香港の無名化臨床データベースを用いた。ワルファリンとダビガトランの服用はランダム化されていない。リスク因子などをそろえるpropensity matchを行っているが、臨床医がワルファリンまたはダビガトランを選択した個別の理由があると考えると、リスク因子がそろってワルファリン群とダビガトラン群がランダムに割り付けられていないことが本研究の限界である。2年程度の観察にて、骨粗鬆症性骨折はダビガトラン群の1.0%、ワルファリン群の1.5%に起こった。ランダム化比較試験が示した年間3%以上の重篤な出血の半分以下ではあるが、ワルファリン使用例では骨折にも注意が必要である。 50年の経験を有するワルファリンの欠点を、臨床医は十分に理解している。心房細動症例に起こる心原性脳塞栓症は予防したい。しかし、抗凝固薬には欠点がある。ワルファリンの欠点のうち、一部はNOACsにより改善できた。しかし、重篤な出血を起こすNOACsは安心して長期服用できる薬ではない。ブームに乗ってNOACsの使用推奨をするよりも、NOACsの出血の問題を克服できる次世代の薬剤開発に、時間とエネルギーを割くべきである。 本研究では香港の無名化(annotated)臨床データを用いている。電子カルテから個人を特定できる情報をすべて抜き取って院内のサーバーに蓄積する。そのannotatedな臨床データを日本中から集めて解析すれば、日本のデータを使って多くのclinical questionに関する回答を不完全ながら得ることができる。これはアカデミアの研究というよりも、コンピューターによる自動化で可能な事務仕事といえるレベルでできる。オープンソースにして誰もが解析可能とすれば、日本の臨床研究の質を楽に、一気に引き上げることができる。法整備ができれば、電子カルテ業界は競ってpopulation scienceのデータ化を容易にできるシステムを作ると思う。多くの人が自分でデータベースを操作してみれば、臨床医も「エビデンス」の限界を直感できるであろう。技術的には十分可能と思うので、あとは国民のコンセンサスの問題である。

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授乳婦はビタミンD欠乏リスクが4倍

 授乳中の女性はそうでない女性と比較して、ビタミンD欠乏症になるリスクが有意に高いことがドイツの横断的研究から明らかになった。 ビタミンD欠乏症による健康への有害性は認知されてきているものの、授乳婦におけるビタミンDの状態に関する研究はこれまであまり実施されてこなかった。 2017年4月19日にInternational Breastfeeding Journalに掲載されたSandra Gellert氏(ドイツ・ハノーファー大学)らによる研究では、German“Vitamin and mineral status among German women”studyから、124例の授乳婦と同数の年齢およびサンプル採取時期をマッチさせた妊娠・授乳をしていない女性について横断的研究を実施した。参加者は2013年4月~2015年3月にかけて登録され、ビタミンDのサプリメントは摂取していなかった。 その結果、授乳婦におけるビタミンD欠乏症(血清25(OH)D濃度25.0nmol/L未満)は26.6%を占め、ビタミンD不足(50.0nmol/L未満)でみると75.8%であり、これらは対照群より有意に高かった(対照群はそれぞれ12.9%、p=0.007、58.9%、p=0.004)。多重ロジスティック回帰分析によると、授乳婦のビタミンD欠乏リスクは対照群の4倍であった(オッズ比[OR]:4.0、95%信頼区間[CI]:1.8~8.7)。 一方で、血清25(OH)D濃度が適正範囲内(75.0~124.9nmol/L)であった授乳婦はわずか5.6%しかいなかった。また、ビタミンD過剰症はいずれの群でも認められなかった。 ビタミンD不足および欠乏の発生にはいずれの群においても季節性が認められた。授乳婦では、夏が最も適正範囲内の値である割合が高く、冬と春は欠乏リスクが高かった(OR:2.6、p=0.029)。また、住んでいる地域によってもリスクに差がみられた。 著者らは、授乳婦のビタミンD欠乏は乳児に影響を与える可能性があるため、十分な摂取もしくは日照時間が得られない場合にはサプリメントで補うことも選択肢になりうることを指摘した。しかしながら、適切なビタミンD濃度を得るためにどのくらいの用量のビタミンDサプリメントが必要なのかについては、さらなる検討が必要である、と記している。

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AFの抗凝固療法での骨折リスク、ダビガトランは低減/JAMA

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の抗凝固療法では、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)がワルファリンに比べ骨粗鬆症による骨折のリスクが低いことが、中国・香港大学のWallis C Y Lau氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。ワルファリンは、骨折リスクの増大が確認されているが、代替薬がないとの理由で数十年もの間、当然のように使用されている。一方、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)ダビガトランは、最近の動物実験で骨体積の増加、骨梁間隔の狭小化、骨代謝回転速度の低下をもたらすことが示され、骨粗鬆症性骨折のリスクを低減する可能性が示唆されている。リスクを後ろ向きに評価するコホート試験 本研究は、香港病院管理局が運営するClinical Data Analysis and Reporting System(CDARS)を用いて2つの抗凝固薬の骨粗鬆症性骨折リスクをレトロスペクティブに評価する地域住民ベースのコホート試験である。 CDARSの登録データから、2010年1月1日~2014年12月31日に新規にNVAFと診断された患者5万1,946例を同定した。このうち、傾向スコアを用いて1対2の割合で背景因子をマッチさせた初回投与例8,152例(ダビガトラン群:3,268例、ワルファリン群:4,884例)が解析の対象となった。 ポアソン回帰を用いて、2群の骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折および椎体骨折のリスクを比較した。罹患率比(IRR)および絶対リスク差(ARD)と、その95%信頼区間(CI)を算出した。転倒、骨折の既往例でリスク半減 ベースラインの全体の平均年齢は74(SD 11)歳、50%(4,052例)が女性であった。平均フォローアップ期間は501(SD 524)日だった。この間に、104例(1.3%)が骨粗鬆症性骨折を発症した(ダビガトラン群:32例[1.0%]、ワルファリン群:72例[1.5%])。初回投与から骨折発症までの期間中央値は、ダビガトラン群が222日(IQR:57~450)、ワルファリン群は267日(81~638)だった。 ポアソン回帰分析において、ダビガトラン群はワルファリン群に比べ骨粗鬆症性骨折のリスクが有意に低いことが示された。すなわち、100人年当たりの発症割合はそれぞれ0.7、1.1であり、100人年当たりの補正ARDは-0.68(95%CI:-0.38~-0.86)、補正IRRは0.38(0.22~0.66)であった(p<0.001)。また、投与期間が1年未満(1.1 vs.1.4/100人年、p=0.006)、1年以上(0.4 vs.0.9/100人年、p=0.002)の双方とも、ダビガトラン群のリスクが有意に低かった。 転倒、骨折、これら双方の既往歴がある患者では、ダビガトラン群のリスクが統計学的に有意に低かった(1.6 vs.3.6/100人年、ARD/100人年:-3.15、95%CI:-2.40~-3.45、IRR:0.12、95%CI:0.04~0.33、p<0.001)が、これらの既往歴がない患者では両群間に有意差は認めなかった(0.6 vs.0.7/100人年、ARD/100人年:-0.04、95%CI:0.67~-0.39、IRR:0.95、95%CI:0.45~1.96、p>0.99)(交互作用検定:p<0.001)。 事後解析では、ダビガトラン群は無治療の患者との比較でも、骨粗鬆症性骨折リスクが有意に良好であった(ARD/100人年:-0.62、95%CI:-0.25~-0.87、IRR:0.52、95%CI:0.33~0.81)。 著者は、「これら2つの薬剤と骨折リスクの関連の理解を深めるには、無作為化試験を含め、さらなる検討を要する」と指摘している。

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アブレーション周術期の抗凝固、ダビガトランが有用/NEJM

 心房細動(AF)へのカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法において、ダビガトランの継続投与はワルファリンに比べ大出血イベントの発生が少ないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス医学研究所のHugh Calkins氏らが行ったRE-CIRCUIT試験で示された。脳卒中や全身性塞栓症は発現しなかったという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月19日号に掲載された。ダビガトランなどの非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、ワルファリンよりも安全性が優れる可能性が示唆されているが、これを検証したデータはこれまでなかった。635例で大出血を評価する無作為化試験 本研究は、日本を含む11ヵ国104施設が参加する非盲検無作為化対照比較試験であり、2015年4月~2016年7月に患者登録が行われた(Boehringer Ingelheim社の助成による)。 カテーテルアブレーションが予定されている発作性および持続性の非弁膜症性AF患者が、2つの抗凝固薬に無作為に割り付けられた。このうち実際にアブレーションを受けた635例(ダビガトラン群:317例、ワルファリン群:318例)が解析の対象となった。 ダビガトランは150mgを1日2回投与し、ワルファリンは国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標値とした。アブレーションは4~8週間の継続的抗凝固療法後に施行され、アブレーション中および施行後8週間の継続的抗凝固療法が行われた。 主要評価項目は、アブレーション中および施行後8週間までの大出血の発生とし、副次評価項目には血栓塞栓症などの出血イベントが含まれた。大出血イベント:1.6 vs.6.9% ベースラインの平均年齢は、ダビガトラン群が59.1歳、ワルファリン群は59.3歳、男性がそれぞれ72.6%、77.0%を占めた。発作性AFが67.2%、68.9%であり、平均活性化全血凝固時間は330秒、342秒、平均CHA2DS2-VAScスコアは2.0、2.2であった。 アブレーション中および施行後8週間までの大出血イベントの発生率は、ダビガトラン群が1.6%(5例)と、ワルファリン群の6.9%(22例)に比べ有意に低かった(リスクの絶対差:-5.3%、95%信頼区間[CI]:-8.4~-2.2、p<0.001)。ダビガトラン群の相対的なリスク低下率は77.2%であった。Cox比例ハザード解析では、ハザード比(HR)は0.22(95%CI:0.08~0.59)だった。 ダビガトラン群は、大出血イベントのうち心膜タンポナーデ(1 vs.6件)および鼠径部血腫(0 vs.8件)が少なく、アブレーション中~施行後1週間の大出血(4 vs.17件)が少なかった。また、ダビガトラン群の大出血のうち、処置を要したのは心膜タンポナーデの4例(心膜ドレナージ)のみで、特異的中和薬イダルシズマブを要する患者はいなかった。 ダビガトラン群では脳卒中、全身性塞栓症、一過性脳虚血発作(TIA)は認めず、ワルファリン群ではTIAが1例にみられた。小出血イベントの頻度は両群でほぼ同等であった(ダビガトラン群:18.6%、ワルファリン群:17.0%)。また、大出血と血栓塞栓イベント(脳卒中、全身性塞栓症、TIA)の複合エンドポイントの発生率は、ダビガトラン群が低かった(1.6 vs.7.2%)。 重篤な有害事象は、ダビガトラン群の18.6%、ワルファリン群の22.2%にみられたが、致死的イベントは発現しなかった。重度有害事象はダビガトラン群で少なく(3.3 vs.6.2%)、投与中止の原因となった有害事象の頻度は両群とも低かった(5.6 vs.2.4%)。 著者は、「ダビガトランの大出血イベントの抑制作用は、より特異的な作用機序に関連する可能性があり、凝固因子産生の抑制作用よりも、直接的なトロンビン阻害作用によると考えられる」とし、「これらのアウトカムは、ダビガトランの有用性が示されたRE-LY試験の結果と一致する」と指摘している。

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脳卒中発症AF患者の8割強、適切な抗凝固療法を受けず/JAMA

 抗血栓療法は心房細動患者の脳卒中を予防するが、地域診療では十分に活用されていないことも多いという。米国・デューク大学医療センターのYing Xian氏らPROSPER試験の研究グループは、急性虚血性脳卒中を発症した心房細動患者約9万5,000例を調査し、脳卒中発症前に適切な経口抗凝固療法を受けていたのは16%に過ぎず、30%は抗血栓療法をまったく受けていない実態を明らかにした。JAMA誌2017年3月14日号掲載の報告。抗血栓療法の有無別の脳卒中重症度を後ろ向きに評価 PROSPER試験は、心房細動の既往歴のある急性虚血性脳卒中患者において、脳卒中の発症前にガイドラインが推奨する抗血栓療法を受けていない患者と、各種抗血栓療法を受けた患者の脳卒中の重症度および院内アウトカムの評価を行うレトロスペクティブな観察研究である(米国患者中心アウトカム研究所[PCORI]の助成による)。 対象は、2012年10月~2015年3月に、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)によるGet With the Guidelines–Stroke(GWTG-Stroke)プログラムに参加した心房細動の既往歴のある急性虚血性脳卒中患者9万4,474例(平均年齢:79.9[SD 11.0]歳、女性:57.0%)であった。 主要評価項目は、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS、0~42点、点が高いほど重症度が重く、≧16点は中等度~重度を表す)による脳卒中の重症度および院内死亡率とした。高リスク例でさえ84%が適切な治療を受けていない 7万9,008例(83.6%)が脳卒中発症前に適切な抗凝固療法を受けておらず、脳卒中発症時に治療量(国際標準化比[INR]≧2)のワルファリンが投与されていたのは7,176例(7.6%)、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の投与を受けていたのは8,290例(8.8%)に過ぎなかった。 また、脳卒中発症時に1万2,751例(13.5%)が治療量に満たない(INR<2)ワルファリンの投与を受け、3万7,674例(39.9%)は抗血小板薬のみが投与されており、2万8,583例(30.3%)は抗血栓療法をまったく受けていなかった。 高リスク(脳卒中発症前のCHA2DS2-VASc≧2)の患者9万1,155例(96.5%)のうち、7万6,071例(83.5%)が脳卒中発症前に適切な抗凝固療法(治療量ワルファリンまたはNOAC)を受けていなかった。 中等度~重度脳卒中の未補正の発症率は、治療量ワルファリン(INR≧2)群が15.8%(95%信頼区間[CI]:14.8~16.7%)、NOAC群は17.5%(16.6~18.4%)であり、非投与群の27.1%(26.6~27.7%)、抗血小板薬単独群の24.8%(24.3~25.3%)、非治療量ワルファリン(INR<2)群の25.8%(25.0~26.6%)に比べて低かった(p<0.001)。 院内死亡の未補正発症率も、治療量ワルファリン群が6.4%(95%CI:5.8~7.0%)、NOAC群は6.3%(5.7~6.8%)と、非投与群の9.3%(8.9~9.6%)、抗血小板薬単独群の8.1%(7.8~8.3%)、非治療量ワルファリン群の8.8%(8.3~9.3%)に比し低かった(p<0.001)。 交絡因子で補正すると、非投与群に比べ、治療量ワルファリン群、NOAC群、抗血小板薬単独群は中等度~重度脳卒中のオッズが有意に低く(補正オッズ比:0.56[95%CI:0.51~0.60]、0.65[0.61~0.71]、0.88[0.84~0.92])、院内死亡率も有意に良好であった(同:0.75[0.67~0.85]、0.79[0.72~0.88]、0.83[0.78~0.88])。 著者は、「脳卒中発症前に何らかの経口抗凝固薬の投与を受けていたのは30%で、ワルファリン投与患者の64%は治療量に満たない用量(INR<2)であり、脳卒中発症前の血栓塞栓症リスクが高い患者でさえ、84%がガイドラインで推奨された抗凝固療法を受けていなかった」とまとめている。

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心房細動患者のCCrとイベントの関連、日本の実臨床では?

 心房細動(AF)患者における非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の投与量調節と禁忌患者の除外のために、クレアチニンクリアランス(CCr)が広く使用されているが、AF患者のCCrと有害な臨床転帰との関連をみたリアルワールドデータはほとんどない。今回、国立病院機構京都医療センターの阿部 充氏らは、日本のAF患者の大規模前向きコホートである「伏見心房細動患者登録研究」で、CCr 30mL/分未満の患者が脳卒中/全身塞栓症および大出血などのイベントと密接に関連していたことを報告した。The American Journal of Cardiology誌オンライン版2017年1月25日号に掲載。 本研究では、伏見心房細動患者登録研究における患者3,080例を、CCr 30mL/分未満、30~49mL/分、50mL/分以上の3群に分け、追跡期間中央値(1,076日)後に臨床的特徴と有害事象を評価した。 主な結果は以下のとおり。・事前に指定された因子の調整後、CCr 30mL/分未満の患者は50mL/分以上の患者と比べて、脳卒中/全身塞栓症(ハザード比[HR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.04~2.65、p=0.04)および大出血(HR:2.08、95%CI:1.23~3.39、p=0.008)のリスクが高かった。・CCr 30mL/分未満の患者は、全死因死亡、心不全による入院、心筋梗塞、全死因死亡および脳卒中/全身塞栓症の複合アウトカムのリスクも高かった。・CCr 30~49mL/分の患者では、脳卒中/全身塞栓症(HR:1.10、95%CI:0.76~1.58、p=0.6)や大出血(HR:0.98、95%CI:0.63~1.48、p=0.9)の超過リスクは認められなかった。

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抗血栓薬で硬膜下血腫リスク増大/JAMA

 抗血栓薬服用が硬膜下血腫リスクを増大することが、デンマーク・オーデンセ大学病院のDavid Gaist氏らによる、硬膜下血腫患者約1万例とその適合対照40万例を対象としたケースコントロール試験で明らかになった。なかでも、ビタミンK拮抗薬(VKA)の服用により、硬膜下血腫発症リスクは約3.7倍と大幅な増加が認められたという。また、2000~15年にかけて抗血栓薬服用率が2倍以上に増加し、一般集団における硬膜下血腫罹患率も約1.7倍に増加したことも明らかにされた。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。硬膜下血腫患者1万例と適合対照40万例を対象に試験 研究グループは、2000~15年に初発硬膜下血腫で入院し退院した20~89歳の患者1万10例(症例群)と、年齢、性別などを適合した40万380例(対照群)について、ケースコントロール試験を行い、抗血栓薬服用と硬膜下血腫発症との関連について検証した。 硬膜下血腫の発症と抗血栓薬の服用については、住民ベース地域データ(48万4,346例)とデンマーク全国データ(520万例)を基に特定した。条件付きロジスティック回帰分析を用いてオッズ比(OR)を求めた。併存疾患、教育や収入レベルの補正を行った。 関連を調べた抗血栓薬服用は、低用量アスピリン、クロピドグレル、VKA、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)と、複数の抗血栓薬の併用だった。VKAと低用量アスピリン併用、硬膜下血腫発症リスクは約4倍に 症例群の平均年齢は69.2歳、そのうち女性は34.6%で、抗血栓薬の服用率は47.3%だった。 硬膜下血腫のリスクは抗血栓薬の服用者で高いことが認められた。低用量アスピリン(服用者は症例群26.7% vs.対照群22.4%)に関する補正後ORは1.24(95%信頼区間[CI]:1.15~1.33)、クロピドグレル(5.0% vs.2.2%)は1.87(同:1.57~2.24)、DOAC(1.0% vs.0.6%)は1.73(同:1.31~2.28)、VKA(14.3% vs.4.9%)は3.69(同:3.38~4.03)だった。 VKAと他の抗血栓薬併用者の硬膜下血腫発症リスクが最も高く、VKA+低用量アスピリン併用(3.6% vs.1.1%)では、補正後ORは4.00(95%信頼区間:3.40~4.70)だった。クロピドグレルとの併用(0.3% vs.0.04%)では7.93(同:4.49~14.02)だった。 また、抗血栓薬の服用率は2000年の31.0/1,000人から、2015年は76.9/1,000人へと倍増していた(傾向p<0.001)。それに伴い硬膜下血腫罹患率も、2000年の10.9/10万人年から2015年は19.0/10万人年へと増大が認められた(傾向p<0.001)。なかでも増大幅が最も大きかったのは75歳超の高齢者で、2000年は55.1/10万人年であったが、2015年は99.7/10万人年だった(傾向p<0.001)。

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増加する多発性硬化症の第1選択薬となるか!?

 2月15日、バイオジェン・ジャパン株式会社は、都内において多発性硬化症治療薬フマル酸ジメル「テクフィデラ カプセル120/240mg」の発売に伴うプレスセミナーを開催した。セミナーでは、多発性硬化症診療の最新の知見のほか、テクフィデラの今後の治療での位置付けなどが講演された。40年で40倍以上患者が増えた多発性硬化症 セミナーでは、吉良 潤一氏(九州大学大学院医学研究院 脳研 神経内科学 教授)を講師に迎え、「さまざまな課題をかかえる多発性硬化症~テクフィデラ承認の意義~」をテーマに講演が行われた。 はじめに多発性硬化症(MS)の疫学として、わが国では約1万9,000人を超える患者(指定難病医療受給者証所有者数)がおり、その数も1970年代との比較で40倍を超える数になっていること、毎年患者数は増加していることが説明された。 また、MSの発症では、遺伝因子と環境因子(たとえば高緯度、EBウイルス、ビタミンD欠乏、喫煙、生活の欧米化など)の相互作用が判明しているものの、明確な機序はいまだ解明されていないという。障害部位により多様な症状が出現 MSは、中枢神経の髄鞘が障害される脱髄性疾患であり、最近の研究では、確実なエビデンスはないものの中枢神経髄鞘抗原を標的とする自己免疫性疾患であるともいわれている。そのため、発症するとその多くが再発と寛解を繰り返し、再発寛解型、2次性進行型、1次性進行型の3つの類型に分類される。 症状は、脊髄、視神経、大脳、小脳、脳幹の部位で、それぞれ運動機能、感覚機能、自律神経、高次脳機能が障害され症状として現れる。たとえば、大脳の運動機能が障害されれば片麻痺や単麻痺が、視神経の感覚機能が障害されれば視力低下、視野欠損、中心暗点などの症状が出現する。特徴的な前駆症状としては、急に疲れやすくなったり、新しいことが覚えられないなどが挙げられるという。 診断としては、現在、有用なバイオマーカーがないために、除外診断による診断がなされる。また、MRIや髄液検査、誘発電位検査による検査所見で確定診断を行う。とくにMSでは早い時期から2次進行期(現在2次進行期に有効な治療はない)が始まるケースが多いために、MRI検査で病期進行のモニターが望まれる。MS治療薬の現状と課題 現在MSの治療は、発症後の再発寛解期に主に行われている。痙縮、疼痛などへの対症療法をはじめ、急性期にはステロイドパルス療法が施行される。また、MSでは再発予防のために疾患修飾薬(DMD)を使用し、進行を抑える治療が行われている。 現在DMDの第1選択薬は、インターフェロンβとグラチラマーがあり、さらに第2選択薬としてフィンゴリモド、ナタリズマブ、アレムツズマブが病勢により適応される。しかし、実臨床の場ではDMDの使用は、薬剤の価格ゆえに40~50%未満にとどまるという。また、第1選択薬が注射薬ということもあり、アドヒアランスの観点からも使いづらく、第2選択薬でも長期の使用で進行性多巣性白質脳症(PML)の発生リスクがあるなど注意が必要とされている。 DMDでは、妊婦や小児への負担が少なく、長期安全性があり、就労・就学にも差し支えのない治療薬の導入が望まれているという。患者さんに使いやすいDMDの登場 今回発売されたテクフィデラは、経口薬という特徴を持ち、抗炎症作用と神経保護作用の両輪でMSの進行を抑制する。2013年には米国で、2014年には欧州で承認され、すでに全世界で21万人が使用している。 治療効果として、海外治験では投与開始後2年間でみた年間再発率がプラセボ群(n=771)の0.37と比較して、テクフィデラ群(n=769)では0.19と49%減少していた。また、国際共同治験では、投与開始後の12~24週を観察した新規Gd造影病巣の総数でプラセボ群(n=113)の4.3と比較して、テクフィデラ群(n=111)では1.1と84%減少していた。 安全性では、報告数の多い順に潮紅、下痢、悪心、腹痛などの有害事象があるが、重篤な事象は報告されておらず、投与された最初の1ヵ月間での報告が多かったという。 処方のポイントは、少量から徐々に増やしていくこと、3ヵ月に1回は病状進行の様子をモニターすること、また、視神経脊髄炎に使用すると重篤な再発を起こすことから使用前に鑑別診断をすることが重要だという。 最後に吉良氏は私見として「フィンゴリモドと同等の作用があり、将来的に第1選択薬として使用されると期待している。経口薬という最大の特徴は患者さんの負担を軽くする」と展望を述べ、レクチャーを終えた。

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心房細動への低用量NOAC、ワルファリンに勝るか?/BMJ

 心房細動の治療において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、臨床に導入されて以降、低用量での使用が増加しているが、低用量NOACの有効性と安全性をワルファリンと比較したエビデンスは少ない。デンマーク・オールボー大学のPeter Bronnum Nielsen氏らは、安全性の主要アウトカムである出血は、低用量ダビガトランがワルファリンに比べ有意に少ないとの研究結果を、BMJ誌2017年2月10日号で報告した。5万5,000例以上で3つの低用量NOACを評価 研究グループは、経口抗凝固薬の使用歴のない心房細動患者において、アピキサバン(2.5mg、1日2回)、ダビガトラン(110mg、1日2回)、リバーロキサバン(15mg、1日1回)の臨床的有効性と安全性をワルファリンと比較するコホート研究を行った(Obel Family Foundationなどの助成による)。 解析には、デンマークの3つの全国的なレジストリデータを用いた。対象は、2011年8月~2016年2月に経口抗凝固薬の初回投与が処方された非弁膜症性心房細動患者とし、標準用量のNOAC(アピキサバン5mg、ダビガトラン150mg、リバーロキサバン20mg)を処方された患者は除外した。 ベースラインの患者集団の差を調整するために、治療の逆確率重み付け法(inverse probability of treatment weighted:IPTW)を用いて、4つの治療薬の傾向スコアを算出した。有効性の主要アウトカムは虚血性脳卒中/全身性塞栓症、安全性の主要アウトカムは出血イベントとした。 心房細動患者5万5,644例が解析の対象となった。アピキサバン群が4,400例(7.9%)、ダビガトラン群が8,875例(15.9%)、リバーロキサバン群が3,476例(6.3%)、ワルファリン群は3万8,893例(69.9%)であった。平均フォローアップ期間は2.3年で、アピキサバン群は1年と最短だった。出血リスクが20%低下、有効性に差はない ベースラインの全体の平均年齢は73.9(SD 12.7)歳で、71.0(SD 12.6)歳(ワルファリン群)~83.9(SD 8.2)歳(アピキサバン群)の幅がみられた。腎臓病の有病率は、アピキサバン群(9.5%)、リバーロキサバン群(9.1%)が、ダビガトラン群(3.9%)、ワルファリン群(8.3%)よりも高かった。 全般に、アピキサバン群は心不全、血栓塞栓症の既往、糖尿病、血管疾患などの併存疾患が多かった。したがって、脳卒中リスクの指標であるCHA2DS2-VAScスコアが4.3と最も高く、次いでダビガトラン群が3.8、リバーロキサバン群が3.6で、ワルファリン群は3.0と最も低かった。 フォローアップ期間1年時の虚血性脳卒中/全身性塞栓症の重み付けイベント発生率は、アピキサバン群が4.78%と最も高く、ダビガトラン群は3.31%、リバーロキサバン群は3.53%、ワルファリン群は3.74%であった。ワルファリン群と比較した1年時のハザード比(HR)は、アピキサバン群が1.19(95%信頼区間[CI]:0.95~1.49)と高い傾向がみられ、ダビガトラン群は0.89(0.77~1.03)、リバーロキサバン群は0.89(0.69~1.16)であり、低い傾向が認められたが、いずれも有意な差はなかった。 出血の重み付け1年イベント発生率は、アピキサバン群が5.12%、リバーロキサバン群が5.58%、ワルファリン群が5.11%とほぼ同様であったが、ダビガトラン群は4.09%であり、最も低かった。ワルファリン群と比較した1年時のHRは、アピキサバン群が0.96(95%CI:0.73~1.27)、リバーロキサバン群は1.06(0.87~1.29)と有意な差はなかったが、ダビガトラン群は0.80(0.70~0.92)であり、有意に低かった。2.5年時の出血イベント発生率も、ダビガトラン群はワルファリン群に比べ有意に良好だった(HR:0.84、95%CI:0.75~0.93)。 1年時の全死因死亡のリスクは、アピキサバン群の15.53%、リバーロキサバン群の15.81%に比べ、ダビガトラン群は10.50%、ワルファリン群は10.12%と低く、ワルファリン群と比較したHRはアピキサバン群が1.48(1.31~1.67)、リバーロキサバン群は1.52(1.36~1.70)と有意に高く、ダビガトラン群は1.04(0.96~1.13)であり、有意差はなかった。 著者は、「これらの結果は、われわれが以前に行った標準用量NOACの知見を拡張するものだが、最も異なる点は、標準用量では一致して全死因死亡がワルファリンよりも良好であったが、低用量では薬剤によって差がみられたことである」としている。

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NOAC登場で変わる世界の心房細動の脳卒中予防

 心房細動(AF)は世界中で最もよく遭遇する不整脈で、脳卒中のリスクが5倍に高まる危険性がある。抗凝固薬、とりわけビタミンK拮抗薬が長い間、心房細動患者の基礎であり、過去の臨床試験において、コントロール群やプラセボと比較して、虚血性脳卒中を64%、全死亡率を26%減少させることが明らかになっている。Gloria-AF(Global Registry on Long Term Oral Antithrombotic Treatment in Patients with AF)は、脳卒中のリスクがあり、新規に診断された非弁膜症性心房細動に対する前向きのグローバルレジストリである。オランダのHuisman氏らは、このレジストリを用いて、ダビガトラン登場前後における世界全体での抗凝固療法の種類と割合を比較、検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年2月号の掲載。86.1%がCHA2DS2-VAScスコア2以上のハイリスク患者、79.9%が抗凝固薬を使用 最初の非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)であるダビガトランが使用可能となり、フェーズ2の研究が開始された。本研究では、フェーズ2のベースラインにおける患者データを、NOAC以前(フェーズ1)に集められたデータと比較した。 フェーズ2では、1万5,641例の患者がレジストリに登録され(2011年11月~2014年12月)、このうち1万5,092例が研究基準を満たした。横断的分析には、研究基準を満たした患者の特徴を示し、それによりAFの特徴、医学的転帰、併存疾患、薬剤の情報が集められた。解析には記述統計学の手法が用いられた。 全体の45.5%は女性で、平均年齢中央値は71歳(四分位範囲:64~78歳)であった。患者の47.1%はヨーロッパ、以下、北米(22.5%)、アジア(20.3%)、ラテンアメリカ(6.0%)、中東/アフリカ(4.0%)であった。また、86.1%の患者が、CHA2DS2-VASc スコア2以上の脳梗塞ハイリスク患者であった。13.9%はCHA2DS2-VASc スコアが1で、脳梗塞のリスクは中等度と考えられた。 全体の79.9%が経口抗凝固薬を使用しており、47.6%はNOAC、32.3%がビタミンK拮抗薬(VKA)、12.1%が抗血小板薬を使用し、7.8%は抗凝固療法を受けていなかった。比較対象のフェーズ1(1,063例)における割合は、VKA32.8%、アセチルサリチル酸41.7%、無投薬20.2%であった。ヨーロッパ、北米では半数以上がNOAC、アジアでは27.7%にとどまる ヨーロッパでは、フェーズ2においてNOACがVKAよりも頻繁に使用されており(52.3% vs.37.8%)、6.0%の患者が抗血小板薬を内服し、3.8%が抗血栓療法を受けていなかった。  北米ではNOAC、VKA、抗血小板薬がそれぞれ、52.1%、26.2%、14.0%であり、7.5%は抗血栓療法を受けていなかった。 アジアでは、ヨーロッパや北米と比較するとNOACは27.7%で、それほど頻繁に使われておらず、VKA27.5%、抗血小板薬25.0%で、19.8%は抗血栓療法を受けていなかった。 GLORIA-AF試験で示された、新たに診断された非弁膜症性心房細動の患者のベースラインデータにおいて、NOACが実臨床で広く使用されており、ヨーロッパや北米ではVKAよりも頻繁に使用されていることが明らかになった。しかしながら、世界全体をみると、かなりの割合の患者が依然として十分な治療を受けておらず、その傾向はとくに北米とアジアで顕著であった。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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脳トレーニングで認知症予防、認知機能低下リスクが20~30%減

 精神的な刺激となる活動への取り組みと、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病のオッズ低下との、横断的な関連が報告されている。しかし、70歳以上の高齢者による精神的な刺激となる活動がMCI発症を予測するかについての縦断的アウトカムは、ほとんど知られていない。米国・メイヨー・クリニックのJanina Krell-Roesch氏らは、高齢者における精神的な刺激となる活動とMCI発症リスクとの関連を仮説検証し、アポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型の影響を評価した。JAMA neurology誌オンライン版2017年1月30日号の報告。 ミネソタ州オルムステッド郡のメイヨー・クリニック加齢研究の参加者を対象に、コホート研究を行った。ベースライン時に認知機能が正常であった70歳以上の高齢者について、MCI発症アウトカムをフォローアップした。調査期間は、2006年4月~2016年6月とした。ベースライン時、参加者は研究参加1年以内の精神的な刺激となる活動に関する情報を提供した。認知神経学的評価は、ベースライン時に実施し、その後15ヵ月間隔で実施した。認知機能の診断は、公表されている基準に基づき、専門家コンセンサスパネルにより行った。性別、年齢、教育レベルで調整した後、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、ハザード比(HR)および95%CIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・最終的には、認知機能が正常であった1,929人(ベースライン時の年齢中央値:77歳[四分位範囲:74~82歳]、女性率:50.4%[973人])を対象に、MCI発症のアウトカムをフォローアップした。・フォローアップ期間の中央値は4.0年であった。・MCI発症リスク低下と関連していた項目は以下であった。 ●ゲームのプレイ(HR:0.78、95%CI:0.65~0.95) ●手工芸(HR:0.72、95%CI:0.57~0.90) ●コンピュータの使用(HR:0.70、95%CI:0.57~0.85) ●社会活動(HR:0.77、95%CI:0.63~0.94)・APOEε4キャリアステータスによる層別解析では、精神的な刺激となる活動を行ったAPOEε4ノンキャリアのMCI発症リスクが最も低く(例えば、コンピュータの使用あり[HR:0.73、95%CI:0.58~0.92])、精神的な刺激となる活動を行っていないAPOEε4キャリアのMCI発症リスクが最も高かった(例えば、コンピュータの使用なし[HR:1.74、95%CI:1.33~2.27])。 著者らは「精神的な刺激となる活動を行っている認知機能が正常な高齢者は、MCI発症リスクが低下することが示唆された。この関連は、APOEε4キャリアステータスにより異なる可能性がある」としている。関連医療ニュース 米国の認知症有病率が低下、その要因は 認知症予防へのビタミンDや日光曝露、さらなる研究が求められる 魚を食べると認知症は予防できるのか

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認知症予防へのビタミンDや日光曝露、さらなる研究が求められる

 日光曝露や高ビタミンD状態は、認知症発症を予防するといわれている。オーストリア・クレムス継続教育大学のIsolde Sommer氏らは、経時的な日光曝露の欠如やビタミンD欠乏症が認知症と関連しているかを検討した。BMC geriatrics誌オンライン版2017年1月13日号の報告。 MEDLINE(PubMed経由)、Cochrane Library、EMBASE、SCOPUS、Web of Science、ICONDAおよび1990~2015年10月までの適切なレビュー記事のリファレンスリストをシステマティックに検索した。認知症リスクのサロゲートマーカーとしての日光曝露またはビタミンDの影響を評価するために、パブリッシュおよびノンパブリッシュデータのランダム効果メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・日光曝露と認知症リスクとの関連性を調査した単一研究は特定できなかった。・認知症リスクに対する血清ビタミンD濃度の影響に関するデータには、6件のコホート研究があった。・5件の研究のメタ解析では、重篤なビタミンD欠乏症患者(25nmol/L未満または7~28nmol/L)は、十分なビタミンDの供給を有する者(50nmol/L以上または54~159nmol/L)と比較し認知症リスクが高いことが示された(ポイント推定:1.54、95%CI:1.19~1.99、I2=20%)。・重篤なビタミンD欠乏症は、認知症発症リスクが高いと考えられるが、研究に含まれた観察研究の性質と残存または重要な交絡因子調整の欠如(例えば、ApoEε4遺伝子型)、ならびに日光曝露の代わりとなるビタミンD濃度と認知症リスクとの間接的な関係が含まれる。 著者らは「本レビューから、低ビタミンD濃度が認知症発症に影響すると考えられる。日光曝露と認知症リスクとの直接的および間接的関係を調査するための、さらなる研究が必要である。このような研究には、ビタミンD濃度または日光曝露と認知症アウトカムの均質で反復的な評価を伴う大規模コホート研究が必要である」としている。関連医療ニュース 魚を食べると認知症は予防できるのか 歩くのが遅いと認知症リスク大 米国の認知症有病率が低下、その要因は

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もしかしたら、食生活の改善でADHD発症を予防できるかも

 注意欠如・多動症(ADHD)は、栄養不足や不健全な食事と関連しているが、地中海式ダイエット食との関連を調査した報告は、これまでにない。スペイン・サン・ジョアン・デウ病院のAlejandra Rios-Hernandez氏らは、地中海式ダイエット食の低アドヒアランスとADHD診断の増加に正の相関があるかを検証した。Pediatrics誌オンライン版2017年2月号の報告。 新規にADHDと診断された小児および青年60例および性別と年齢をマッチさせた対照群60例を対象とした症例対照研究。ADHD診断は、DSM-IV-TRに基づき行われた。エネルギー、食事摂取、地中海式ダイエット食のアドヒアランス、家族背景を測定した。地中海式ダイエット食のアドヒアランスとADHDとの関連の検証には、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・地中海式ダイエット食の低アドヒアランスとADHD診断には関連が認められた(OR:7.07、95%CI:2.65~18.84、相対リスク:2.80、95%CI:1.54~5.25)。・潜在的な交絡因子で調整した後でも、本関連は有意なままであった。・果物、野菜、パスタ、ライスの低消費や、朝食を抜く、ファーストフード店での食事の高頻度がADHD診断と関連していた(p<0.05)。・砂糖、キャンディー、コーラ飲料、コーラ以外の清涼飲料水の高頻度(p<0.01)や脂肪魚類の低消費(p<0.05)は、ADHD診断の有病率上昇と関連していた。 著者らは「本横断的関連は、因果関係を示すものではないが、地中海式ダイエット食の低アドヒアランスがADHDの発症に役割を担っている可能性を示唆している。ADHDでは、特定の栄養素だけでなく、食事全体を考慮する必要があると考えられる」としている。関連医療ニュース ADHD発症や重症度にビタミン摂取が関連 小児ADHD、食事パターンで予防可能か 地中海ダイエットは認知症予防に効果があるのか

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うつ病、男女間で異なる特徴とは

 いくつかの研究によると、男女間でうつ病に関連した異なる症状が報告されているが、この関連を分析したシステマティックレビューやメタアナリシスはパブリッシュされていない。オーストラリア・Illawarra Health & Medical Research InstituteのAnna Cavanagh氏らは、うつ病に関連する症状の性差のエビデンスをレビューした。Harvard review of psychiatry誌2017年1・2月号の報告。 PubMed、Cochrane、PsycINFOのデータベースとリファレンスリストを調べた。32研究が基準を満たした。単極性うつ病の臨床サンプルおよびコミュニティサンプル10万8,260人を含んだ。32研究のすべてにおいて質を評価し、出版バイアスについて検討した。性差の影響を評価するため、32研究より抽出された26症状についてメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・本研究では、少数で重要な性別といくつかの症状との関連が示された。・うつ病男性は、女性と比較し、アルコールや薬物乱用(Hedges's g:0.26、95%CI:0.11~0.42)、リスクテイキング、脆弱な衝動性コントロール(g:0.58、95%CI:0.47~0.69)と関連していた。・うつ病女性は、抑うつ気分のようなうつ病の診断基準に含まれる症状(g:-0.20、95%CI:-0.33~-0.08)、摂食障害や体重変化(g:-0.20、95%CI:-0.28~-0.11)、睡眠障害(g:-0.11、95%CI:-0.19~-0.03)と関連していた。 著者らは「本結果は、物質使用と気分障害の有病率における性差に関する既存の研究結果と一致する。男性のうつ病を評価する際には、物質乱用、リスクテイキング、脆弱な衝動性コントロールをスクリーニングすることの有用性が強調される。うつ病と併存症状に関する性差を明らかにするためにも、今後の研究が必要とされる」としている。関連医療ニュース 統合失調症、男と女で妄想内容は異なる 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か 双極性障害、男女間で肥満割合に違いあり

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ADHD治療薬は将来のうつ病発症に影響するか

 注意欠如・多動症(ADHD)は、うつ病を含む精神疾患を高率に合併するといわれている。しかし、ADHD治療薬がうつ病リスクの増減と関連するかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ADHD治療薬の投与とうつ病との関連を検討した。Biological psychiatry誌2016年12月15日号の報告。 対象は、1960~98年にスウェーデンで生まれ、ADHDの診断を受けた患者3万8,752例。ADHD治療薬の処方、うつ病および他の精神疾患の診断、集団ベースのレジスタから得た人口統計学的要因に関するデータを入手した。ADHD治療薬の投与とうつ病との関連は、Cox比例ハザード回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・人口統計学的および臨床的交絡因子で調整後、ADHD治療薬の投与は、うつ病の長期リスク(3年後)低下との関連が認められた(HR:0.58、95%CI:0.51~0.67)。・ADHD治療薬の投与期間が長いほど、うつ病リスクは低かった。・また、ADHD治療薬の投与は、うつ病合併率の低下と関連しており、未投与患者と比較し、うつ病発症率が20%低下していた(HR:0.80、95%CI:0.70~0.92)。 著者らは「ADHD治療薬の投与は、その後のうつ病リスクを増加させないことが示唆された。むしろ、ADHD治療薬の投与は、その後のうつ病合併率の低下と関連していた」としている。関連医療ニュース ADHD発症や重症度にビタミン摂取が関連 成人ADHD、世界の調査結果発表 2つのADHD治療薬、安全性の違いは

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