サイト内検索

検索結果 合計:97件 表示位置:1 - 20

1.

高カリウム血症時はソリタ-T1で万事OK?【ケースで学ぶ輸液オーダー】第7回

高カリウム血症時はソリタ-T1で万事OK?カリウムの入っていない輸液といえば、まず誰もが初期研修医時代にソリタ-T1号輸液と教わりますよね。では、輸液療法中に高カリウム血症になった場合、正常化するまでとりあえずソリタ-T1を続けておけば万事OKなのでしょうか?症例70歳男性、大腸穿孔による急性汎発性腹膜炎術後体重60kg併存疾患高血圧、慢性腎臓病術後の腸管麻痺が持続しているため、腸管機能回復までの間は絶食としてしばらく中心静脈栄養を行うことになりました。右上腕に挿入したシングルルーメンの末梢挿入式中心静脈カテーテルから、術後10日目時点でエルネオパNF2号1日2,000mLの栄養輸液を行っています。この間、術後の創痛に対し、フルルビプロフェン アキセチルを1日3回点滴していました。後期研修医A君は、併存疾患の慢性腎臓病に留意し、NSAIDs投与に伴う腎機能低下を来していないか確認するため、そろそろBUNやCrをチェックすべきと考えました1)。採血を行ったところ、BUNはやや上昇、Crは横ばい、Kは6.0mEq/Lと上昇していました。幸い心電図異常は認めません。A君「輸液をカリウムフリーにしなくては…」A君は急いで本日の2本目の点滴をソリタ-T1 500mLに変更し、向こう3日間はソリタ-T1を1日2,000mL投与するオーダーを出しました。すると翌日朝、A君は病棟看護師にコールされました。看護師「患者さんが冷や汗をかいています。簡易血糖が20です!」高カリウム血症には常にソリタ-T1?ソリタ-T1はカリウムフリーということは誰もが知っています。しかし、その糖濃度はどれだけなのか答えられますか? エルネオパNF2号とソリタ-T1、皆さんおなじみのソリタ-T3のエネルギー、糖濃度、ナトリウムとカリウムの含有量を比較してみましょう(図1)。図1 1L当たりのエネルギー、糖、ナトリウム、カリウム含有量比較画像を拡大するソリタ-T1のエネルギーや糖濃度の低さが際立ちますね。一方、ナトリウムは生理食塩水の半分以上と多く設定されています。それもそのはず、ソリタ-T1は生理食塩水と5%ブドウ糖液を1対1で混合した組成がもとになっているからです。当然アミノ酸も含んでいません。救急の現場で詳細のわからない患者さんに、とりあえずカリウムフリーで輸液したい場合の生理食塩水500mL。高カリウム血症が判明している患者さんの維持輸液を開始するときに、とりあえずカリウムフリーでソリタ-T1 500mL。このような「とりあえず」は全然問題ありません。しかし、本症例のように、栄養輸液をしばらく行ってから生じた高カリウム血症に対しては、それに起因する症状がなければ、急いでソリタ-T1に走らずに落ち着いてカリウムフリーの栄養輸液メニューを作ってみましょう。所属施設の薬剤師と相談し、あらかじめ院内で自作メニューの組成を決めていると便利ですよ。NST薬剤師によるカリウムフリーメニュー作りのコツ基本的には、カリウム非含有のTPN輸液基本液(糖・電解質輸液)とアミノ酸製剤を組み合わせ、そこに総合ビタミン製剤と微量元素製剤を加えて調剤します。以下のコツを踏まえ、エルネオパNF2号に近い組成のカリウム非含有TPN製剤を作成してみましょう。コツ1直前まで投与していたTPNキット製剤の組成(とくに水分量、糖質量、アミノ酸量、ナトリウム量、ビタミン、微量元素)に近づけることを意識する。本症例では、エルネオパNF2号の組成に近づけることを目標に輸液メニューを作成。コツ2調製回数がなるべく少なく済むよう、所属施設の採用品を組み合わせることを意識する。調製回数を減らすことで、調製時間の短縮に加え、不溶性微粒子や細菌などの混入リスクの低減にもつながる。これらのコツを踏まえ、当院で作成しているエルネオパNF2号に近い組成のカリウムフリーメニューを示します(表1)。当院では重い点滴をぶらさげて歩行する患者さんの転倒リスクを考慮し、1バッグ当たりの水分は約1kg程度までとなるよう工夫しています。また、電子カルテ内の医師オーダーセットにカリウムフリーメニューを登録し、簡便かつ安全な処方を可能としています2)。表1 エルネオパNF2号類似Kフリー自作製剤と本家の比較画像を拡大する本症例の分析本症例は、慢性腎臓病の患者さんへNSAIDsを定期的に投与し、腎障害が増悪して高カリウム血症を来しました。A君の頭には、カリウムなし=ソリタ-T1の回路しかなく、あわてて高カロリー輸液をソリタ-T1に変更し、漫然と継続したことで低血糖を招きました。その後、薬剤師に相談してエルネオパNF2号類似のカリウム非含有TPN製剤を調整してもらい、カリウム値が正常化するまで使用しました。高カリウム血症には常にソリタ-T1でよいわけではありません。あらかじめ自院でカリウムフリーの輸液メニューを作っておき、共有すると便利です。ワルファリン服用患者ではビタミンK含有量の違いに注意エルネオパNF2号2,000mLに含有されているフィトナジオン(ビタミンK1)は、2mgから0.150mgへ減量された経緯があります。国内に上市されている総合ビタミン剤の多くはフィトナジオン2mgを含有しており、これを含む自作のカリウム非含有TPN製剤にエルネオパNFから切り替えると、ビタミンK含有量がエルネオパNFよりも多くなり、ワルファリン服用中の患者さんでは相互作用で効果が減弱する恐れがあります。ワルファリン服用患者の適切なビタミンK摂取量は150μg/日と報告されており3)、このような場合はPT-INRのモニタリング強化、または直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)への変更を検討しましょう。1)Baker M, et al. Am J Kidney Dis. 2020;76:546-557.2)カリウムフリー輸液を組み立てよう!:下馬栄養倶楽部(参照 2026年9月3日)3)佐藤陽子ほか. 食品衛生学雑誌. 2015;56:157-165.

2.

TAVI後のNOAC単剤はアスピリンを上回るか?/JAMA

 重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)後の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)単剤療法は、アスピリン(ASA)単剤療法と比較し、低吸収性弁尖肥厚(HALT)の存在で定義した弁尖血栓症の発生率を有意に低下させるとともに、出血、血栓塞栓性イベントまたは死亡のリスクに関して非劣性であった。ノルウェー・オスロ大学のChristopher S. Dodgson氏らが、同国内でTAVIの大部分を担う3施設(3次病院2施設、地域病院1施設)において実施された無作為化非盲検評価者盲検試験「Anticoagulation vs Acetylsalicylic Acid After Transcatheter Aortic Valve Implantation:ACASA-TAVI試験」の結果を報告した。より若く健康状態が良好な重症大動脈弁狭窄症患者に対してTAVIを施行する機会が増えており、TAVI後の抗血栓療法は、弁の耐久性および臨床アウトカムを最適化するうえで重視されるようになっている。著者は「今回の結果は、特定の患者において、TAVI後は抗凝固薬単剤療法が有用となりうることを示唆するものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年8月30日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。NOAC群vs.ASA群、12ヵ月時の弁尖血栓症の発生と安全性を比較 研究グループは、重症大動脈弁狭窄症に対するTAVIが成功(Valve Academic Research Consortium 3[VARC-3]基準に基づく)した65~80歳の患者を、NOAC群またはASA群に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間治療を行った。 NOAC群では、TAVI後72時間以内に利用可能であった第Xa因子阻害薬の投与を標準用量で開始し、選択した薬剤の推奨事項にのっとり用量を減量調整した。ASA群では用量調整は行われず、ASA 75mgを投与した。 主要評価項目は、有効性と安全性を評価する共主要評価項目(co-primary end point)戦略を採用することが事前に規定された。有効性の主要評価項目はTAVI弁尖血栓症で、12ヵ月時の盲検下中央判定による4次元心臓CTでのHALTの存在と定義された。安全性の主要評価項目は、12ヵ月時におけるVARC-3基準に基づく出血イベント、血栓塞栓性イベント、全死因死亡の複合とした。NOAC群で、HALT発生が有意に低下、出血・血栓塞栓・死亡リスクは非劣性 2021年12月3日~2025年6月24日に1,983例がスクリーニングされ、うち360例が無作為化された。最終追跡評価日は2026年5月19日。患者背景は、平均年齢74.5歳(SD 3.7)、女性134例(37%)であった。336例が試験を完了した(各群168例)。 主要有効性評価項目である弁尖血栓症は、NOAC群で167例中27例(16.2%)、ASA群で168例中48例(28.6%)に認められた(リスク比:0.55、95%信頼区間[CI]:0.37~0.82、p=0.004)。 主要安全性評価項目である複合イベントは、NOAC群で13例(7.5%)、ASA群で19例(10.6%)に認められた(リスク群間差:-3.3%、95%CI:-9.5~2.8、非劣性のp<0.001)。

3.

AF治療中に脳梗塞を招く潜在的要因とは

心房細動(AF)患者における経口抗凝固薬(OAC)投与は、脳梗塞予防の中心であるが、適切に治療されていても脳梗塞を発症する事例が存在する。こうしたブレークスルー脳梗塞(breakthrough ischemic stroke)の潜在的原因や、その後の予後への影響は十分に明らかになっていない。そこで、イタリア・University of L'AquilaのFederico De Santis氏らは、AFでOAC継続中に発症した脳梗塞患者を対象に、潜在的な原因と90日転帰との関連を検討した。その結果、潜在的な原因は約半数で認められ、90日以内の脳梗塞再発リスク上昇と関連していた。本研究結果は、Journal of Neurology誌オンライン版2026年8月17日号に掲載された。本研究は、欧州、北アフリカ、中東9ヵ国の脳卒中センター35施設のデータを用いた多施設共同後ろ向き観察研究で、2020年2月~2025年2月に、AFでOAC服用中に脳梗塞を発症した成人患者を対象に解析を行った。また、対象患者は、指標となる脳梗塞発症時にOACを継続的に服用している必要があり、直接経口抗凝固薬(DOAC)服用中の場合は「指標となる脳卒中発症前の7日間、服用を中断することなく、最後の服用が脳卒中症状発症の48時間前以内であること」、ビタミンK拮抗薬(VKA)服用中の場合は「最後の服用から脳卒中症状発症までの経過時間にかかわらず、国際標準化比(INR)が1.5以上であること」と定義された。ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因は、OACと相互作用しうる併用薬、活動性がん、心原性塞栓以外の競合する脳梗塞病因とした。主要評価項目は90日以内の新規脳梗塞で、副次評価項目は90日時点のmodified Rankin Scale(mRS)スコア分布、心筋梗塞、全死亡、血管死(致死的な虚血性または出血性脳卒中、突然心臓死、心筋梗塞、またはそのほかの血管イベントによる死亡)、安全性評価項目は中等度~重度出血および頭蓋内出血とした。主な結果は以下のとおり。・解析対象1,649例の年齢中央値は80.4歳(四分位範囲[IQR]:73.2~85.6、女性860例[52.2%])であった。発症時の服用薬剤はDOAC1,275例(77.3%)、VKA374例(22.7%)であった。・ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因が1つ以上認められた患者は724例(43.9%)で、潜在的原因が1つのみの患者は544例(33.0%)、複数の患者は180例(10.9%)であった。・潜在的原因の内訳は、OACと相互作用しうる併用薬が469例(28.4%)、心原性塞栓以外の競合する病因が401例(24.3%)、活動性がんが72例(4.4%)であった。併用薬ではプロトンポンプ阻害薬が450例(27.3%)と大半を占め、抗てんかん薬が31例(1.9%)、H2受容体拮抗薬が3例(0.2%)、デキサメタゾンが3例(0.2%)、ケトコナゾールが1例(0.1%)と続いた。・競合する病因では、頭蓋内/頭蓋外大血管アテローム性動脈硬化が240例(14.6%)で最も多かった。・潜在的原因の有無における結果は以下のとおり(その原因を有する患者vs.原因なしの患者)。・高血圧(87.3%vs.76.3%、p<0.001)・脂質異常症(58.1%vs.45.8%、p<0.001)・糖尿病(30.1%vs.24.3%、p=0.009)・心筋梗塞既往(29.3%vs.16.6%、p<0.001)・脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往(28.7%vs.21.8%、p=0.001)・慢性心不全(21.1%vs.13.4%、p<0.001)・慢性腎不全(20.4%vs.13.0%、p<0.001)・末梢動脈疾患(7.3%vs.2.9%、p<0.001)・90日追跡時点で、新規脳梗塞は57例(3.5%)、心筋梗塞は21例(1.3%)、全死亡は334例(20.3%、うち血管死は215例[13.0%])、中等度~重度出血は55例(3.3%)、頭蓋内出血は28例(1.7%)に認められた。・OAC再開までの期間中央値は7日(IQR:3~12)であった。・主要評価項目である90日以内の新規脳梗塞は、潜在的原因を1つ以上有する患者で4.8%、潜在的原因なしの患者で2.4%であり、潜在的原因を有する患者でリスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:2.04、95%信頼区間[CI]:1.18~3.53、p=0.011)。・一方、90日時点のmRSスコア分布のオッズ比は1.15(95%CI:0.97~1.37、p=0.106)で、90日以内の心筋梗塞(1.5%vs.1.1%、HR:1.70、95%CI:0.69~4.14、p=0.246)、90日以内の全死亡(22.7%vs.18.4%、HR:1.24、95%CI:0.99~1.55、p=0.057)、90日以内の血管死(13.7%vs.12.5%、HR:1.06、95%CI:0.80~1.40、p=0.697)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・安全性評価項目についても、中等度~重度出血(4.0%vs.2.8%、HR:1.38、95%CI:0.80~2.38、p=0.245)および頭蓋内出血(2.1%vs.1.4%、HR:1.48、95%CI:0.69~3.18、p=0.310)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・逆確率重み付け解析では、相互作用しうる併用薬あり818例となし831例が比較され、90日以内の新規脳梗塞は併用薬あり群4.3%、なし群4.0%で差はなかった(HR:1.08、95%CI:0.67~1.73、p=0.761)。一方、90日以内の心筋梗塞は併用薬あり群で2.3%、なし群で0.7%であり、併用薬あり群で有意に高かった(HR:3.26、95%CI:1.30~8.17、p=0.012)。本研究結果について著者らは、AFに対するOAC継続中に発症するブレークスルー脳梗塞では、薬物相互作用、心原性塞栓以外の脳梗塞病因、活動性がんといった同定可能で一部修正可能な潜在的原因が相当数で認められ、これらを体系的に同定し、積極的に管理することがブレークスルー脳梗塞の予防や2次予防の最適化につながる可能性があるとまとめている。

4.

抗凝固療法適応の心房細動患者、左心耳閉鎖術の非劣性を確認/NEJM

 抗凝固療法適応の心房細動患者において、Watchman Flx(米国・Boston Scientific製)デバイスを用いた左心耳閉鎖術は非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)療法と比較し、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合エンドポイントに関して非劣性、かつ3年時の手技に関連しない出血に関して優越性が示された。米国・Cedars-Sinai Smidt Heart InstituteのShephal K. Doshi氏らCHAMPION-AF Investigatorsが、16ヵ国の141施設で実施中の無作為化試験「CHAMPION-AF試験」の、3年追跡解析結果を報告した。心房細動患者では、脳卒中予防のための経口抗凝固療法は出血リスクによって制限される。左心耳閉鎖術は、長期抗凝固療法が適さない患者で検討されるが、抗凝固療法適応患者における臨床的意義は確認されていなかった。NEJM誌2026年6月4日号掲載の報告。抗凝固療法適応の脳卒中リスクが高い心房細動患者を無作為化 研究グループは、抗凝固療法の適応となる脳卒中のリスクが高い心房細動患者(CHA2DS2-VAScスコアが男性は≧2、女性は≧3[スコア範囲:0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高いことを示す])を、Watchman Flxデバイスを用いた左心耳閉鎖術群(デバイス群)またはNOAC群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 デバイス群では、無作為化14日以内にデバイスを留置し、その後3ヵ月間、NOAC+アスピリン併用療法、NOAC単剤療法、または抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)のいずれかを行った後、アスピリンまたはP2Y12阻害薬の単剤療法を推奨した。NOAC群のレジメンは、標準臨床ガイドラインに準拠した。 有効性の主要エンドポイントは、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合で、非劣性マージンを4.8%とした。安全性の主要エンドポイントは、3年時の手技に関連しない出血(ISTH基準の大出血または臨床的に重要な非大出血)とし、有意水準両側0.05で優越性を評価した。3年時の心血管死・脳卒中・全身性塞栓症の複合、デバイス群5.7%vs.NOAC群4.8% 計3,000例が無作為化された(デバイス群1,499例、NOAC群1,501例)。患者背景は、平均(±SD)年齢71.7±7.5歳、女性が31.9%で、平均CHA2DS2-VAScスコアは3.5±1.3であった。 3年時の有効性の主要エンドポイントのイベントは、デバイス群で81例(Kaplan-Meier推定値5.7%)、NOAC群で65例(4.8%)に発生した。群間差は0.9%(95%信頼区間[CI]:-0.8~2.6)であり、95%CIの上限が事前に設定された非劣性マージンを下回った(非劣性のp<0.001)。 安全性の主要エンドポイントのイベントは、デバイス群で154例(Kaplan-Meier推定値10.9%)、NOAC群で260例(19.0%)に発生した。ハザード比は0.55(95%CI:0.45~0.67)で、優越性が示された(優越性のp<0.001)。 なお、著者らは、非劣性マージンを絶対値で設定したこと、使用した左心耳閉鎖デバイスは1種類のみであったこと、対象患者の大半はCHA2DS2-VAScスコアが4以下であったため最もリスクの高い患者には一般化できない可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

5.

日本の心房細動患者、1年後の死亡・脳卒中・血栓塞栓症の発生率は?

 日本の心房細動患者は、経口抗凝固薬の使用率が81%と高く、1年後の全死亡率は0.1%と低く、脳卒中/血栓塞栓症の発生率も0.1%と低いことが、APHRS-AFレジストリ(Asia-Pacific Heart Rhythm Society Atrial Fibrillation Registry)の日本人における1年時の解析で示された。日本医科大学の淀川 顕司氏らがJournal of Arrhythmia誌2026年2月8日号で発表した。 APHRS-AFレジストリはアジアの大都市圏における前向き研究で、心房細動患者のベースライン特性、治療、臨床アウトカムについて重要な情報を提供する。今回、本レジストリに登録された日本人患者の1年間の追跡調査データを解析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された4,666例のうち、794例が2015~17年に日本の主な循環器センター28施設から登録された。平均年齢は65.7歳、男性が69.0%で、主な併存疾患は高血圧(37.5%)、脂質異常症(29.0%)、心不全(15.9%)、糖尿病(15.0%)であった。平均CHADS2スコアは1.0、CHA2DS2-VAScスコアは2.0、HAS-BLEDスコアは1.1であった。・登録時の経口抗凝固薬の使用率は81%で、そのうち7%がビタミンK拮抗薬、74%が直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を処方されていた。患者の57.8%がカテーテルアブレーション施行予定であった。・1年間の追跡調査を実施した743例において、1年全死亡率は0.1%(1例、心不全)で、脳卒中/血栓塞栓症発生率も0.1%(1例、肺塞栓症)であった。大出血イベントは0.7%(5例[頭蓋内出血3例、下部消化管出血1例、軟部組織出血1例])に認められた。

6.

納豆が心房細動リスクを下げる?~日本人前向き研究

 大豆食品の摂取量が多いと心血管疾患を予防する可能性があることが報告されているが、心房細動予防においては解明されていない。今回、国立循環器病研究センターのParamita Khairan氏らが、都市部の日本人一般集団を対象とした前向きコホート研究で、大豆食品およびその栄養素(イソフラボン、ビタミンK)における心房細動発症率との関連を調査したところ、女性でのみ、納豆およびビタミンKの摂取量が多いと心房細動リスクが低いことが示された。The Journal of Nutrition誌2026年1月号に掲載。 本研究はベースライン調査時に食物摂取頻度質問票を回答した30~90歳の男女5,278人が対象で、心房細動は12誘導心電図検査、健康診断、医療記録、死亡診断書を用いて診断した。多変量調整Cox回帰分析を用いて、大豆食品(納豆、味噌、豆腐)、大豆、イソフラボン、ビタミンKの残差法によるエネルギー調整摂取量の三分位群における心房細動発症率のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・6万6,487人年(平均12.6年)の追跡期間中、心房細動発症が222例であった。・女性では、納豆摂取量が最も少ない群(T1)と比べ、最も多い群(T3)で心房細動リスクが低かった(HR:0.44、95%CI:0.24~0.80)が、男性では関連は認められなかった(T1に対するT3のHR:0.97、95%CI:0.65~1.43)。・味噌については、男性でのみ中程度の摂取量と低い心房細動リスクが関連していた。・ビタミンK摂取量が最も多い三分位群の女性は、最も少ない三分位群と比較して、心房細動リスクが67%減少した(HR:0.33、95%CI:0.15~0.71)。・男女とも、大豆食品全体、豆腐、大豆、イソフラボンの摂取量と心房細動リスクとの関連は認められなかった。

7.

新生児に対するビタミンK投与を拒否する親が増加傾向

 米国では、1961年に全ての新生児に対するビタミンKの筋肉内投与が開始されて以来、ビタミンK欠乏性出血症がほぼ解消された。ビタミンKは、血液凝固を助ける目的で投与される薬剤であり、ワクチンではない。しかし新たな研究で、近年、新生児へのビタミンK注射を拒否する親が増えていることが明らかにされた。研究グループは、注射の拒否により新生児が深刻な出血リスクにさらされる可能性があると警告している。米フィラデルフィア小児病院の新生児専門医であるKristan Scott氏らによるこの研究結果は、「The Journal of the American Medical Association(JAMA)」に12月8日掲載された。 この研究でScott氏らは、2017年から2024年の間に米国50州にある403カ所の病院で、妊娠35〜43週で生まれた509万6,633人の新生児の医療記録を調べた。その結果、全体の3.92%に当たる19万9,571人がビタミンKの注射を受けていないことが明らかになった。注射を受けていない新生児の割合は、2017年の2.92%から2024年の5.18%へと有意に増加しており、特に新型コロナウイルス感染症パンデミック以降に急増していた。この結果についてScott氏は、「増加自体は驚くことではないが、増加の大きさには驚いた」とNBCニュースに語っている。 新生児のビタミンK体内濃度は非常に低い。米疾病対策センター(CDC)によると、ビタミンKの投与を受けない場合、危険な出血を起こす可能性が80倍以上高くなるという。出血は、生後6カ月までの間にあざや内出血などの形で現れる可能性があり、最も重篤な場合には障害や死亡につながる脳出血が生じることもある。 このことを踏まえてScott氏は、「われわれは、出血リスクのある新生児の集団を作り出しているに等しい。本当に心配なのは脳出血、つまり脳卒中だ。脳出血が起こると、最終的には死に至る可能性がある」と話している。 専門家らは、オンライン上の誤情報やビタミンK注射とワクチンの混同が、こうした傾向の根底にあるのではないかと疑っている。この研究には関与していない米テキサス小児病院の新生児科医であるTiffany McKee-Garrett氏は、「親は、ビタミンK注射をワクチン接種と同等に捉えている」とNBCニュースに語っている。 一部の国では、新生児に経口ビタミンKを投与している。しかし医師らは、経口ビタミンKは信頼性が低く、場合によっては複数回投与する必要があるのに対し、ビタミンKの注射は1回の投与で効果があるとしている。 米NYC Health + Hospitalsの新生児科医であるIvan Hand氏は、「ビタミンK欠乏性出血症は予防可能であり、そもそも発生していること自体が問題だ」と話す。医師らは、現状のようなビタミンK投与が拒否される状態が続けば、出血イベントの発生数が増加する可能性が高いとの見方を示している。Hand氏は、「ビタミンK投与は極めて効果的であるが、人々はそのことを十分に理解していない。重度の出血を起こした乳児を見たことがないため、そのようなことは起こらないと思っているのだ。しかし、それが見られないのは、われわれがそうした乳児の治療をしているからだ」と話している。

8.

DES留置後1年以上の心房細動、NOAC単剤vs.NOAC+クロピドグレル併用/NEJM

 1年以上前に薬剤溶出ステント(DES)の留置を受けた心房細動患者において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)単剤療法はNOAC+クロピドグレルの併用療法と比較し、全臨床的有害事象(NACE)に関して非劣性であることが認められた。韓国・Yonsei University College of MedicineのSeung-Jun Lee氏らが、同国32施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検非劣性試験「Appropriate Duration of Antiplatelet and Thrombotic Strategy after 12 Months in Patients with Atrial Fibrillation Treated with Drug-Eluting Stents trial:ADAPT AF-DES試験」の結果を報告した。ガイドラインの推奨にもかかわらず、DES留置後の心房細動患者におけるNOAC単剤療法の使用に関するエビデンスは依然として限られていた。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。第2または第3世代DES留置後1年以上の高リスク心房細動患者が対象 研究グループは、心房細動と診断され、登録の1年以上前に第2世代または第3世代のDESを留置するPCIを受け、CHA2DS2-VAScスコアが2以上の19~85歳の患者を、NOAC単剤療法群またはNOAC+クロピドグレル併用療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 NOACは担当医師の選択としたが、試験ではアピキサバンまたはリバーロキサバンのみを使用した。 主要エンドポイントは、無作為化後12ヵ月時点における全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、全身性塞栓症または大出血もしくは臨床的に重要な非大出血の複合であるNACEで、非劣性マージンは主要エンドポイント発現率の群間差の片側97.6%信頼区間(CI)の上限が3.0%とし、ITT解析を行った。なお、非劣性が認められた場合、主要エンドポイントにおけるNOAC単剤療法の優越性を第1種過誤率4.8%(両側)として検定することが事前に規定された。12ヵ月時のNACE発現率、単剤群9.6%vs.併用群17.2% 2020年4月~2024年5月に計1,283例がスクリーニングされ、このうち960例が無作為化された(単剤療法群482例、併用療法群478例)。平均年齢は71.1歳、女性が21.4%であった。 主要エンドポイントのイベントは単剤療法群で46例(Kaplan-Meier推定値9.6%)、併用療法群で82例(17.2%)に発現し、絶対群間差は-7.6%(95.2%CI:-11.9~-3.3、非劣性のp<0.001)、ハザード比(HR)は0.54(95.2%CI:-0.37~0.77、優越性のp<0.001)であった。 大出血もしくは臨床的に重要な非大出血は、単剤療法群で25例(5.2%)、併用療法群で63例(13.2%)に発現した(HR:0.38、95%CI:0.24~0.60)。大出血の発現率はそれぞれ2.3%および6.1%(HR:0.37、95%CI:0.18~0.74)、臨床的に重要な非大出血の発現率は2.9%および7.1%(0.40、0.21~0.74)であった。

9.

骨粗鬆症、予防には若年からの対策が重要/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーは、10月20日の世界骨粗鬆症デーに関連し、疾患啓発イベント「親子で話す骨のこと」を開催した。慶應義塾大学 整形外科 教授の中村 雅也氏、歌手の早見 優氏が登壇し、若年期からの骨粗鬆症予防の重要性を伝えた。 骨粗鬆症の患者数は毎年増加傾向にあり、2023年のデータで受診者数は138万人、うち9割以上を女性が占める1)。中村氏は「女性は閉経後から骨密度が急速に低下し、70代以降では骨折リスクが大幅に上昇する。患者数増加は高齢化に加え、疾患への意識向上による受診増加も要因だと考えられる」と解説した。さらに中村氏は、「骨粗鬆症は進行するまで自覚症状が乏しいため、注意を払われにくい。高齢になって転倒や骨折を経験してから骨の健康を考えるのでは遅い。閉経期を迎える40~50代から骨密度変化に関心を持ち、早期に介入することが重要」と強調した。 そして、さらに早期からの介入の重要性についても言及。「骨の健康は中年~高齢期だけの問題ではない。骨密度のピークは10〜20代で形成されるが、20代で骨量が低い人は、その後の減少がより顕著になる傾向がある」と指摘。若い時期の十分な栄養、運動、日光浴によるビタミンD合成といった生活習慣が、将来の骨折リスクを左右するとした。「若い女性は過度なダイエットで十分な栄養素を摂れていないケースが多く、これが骨密度のピークを下げている可能性がある」と指摘した。さらに、運動と日光曝露の重要性も指摘、「日焼けを気にして屋内に閉じこもる人もいるが、少しの時間でも日光に当たり、体を動かすことが大切だ」とした。2人の娘の親である早見氏も「10代のしっかりとした食生活や運動による“骨貯金”が、40~50代になって効いてくるということですね」と応じた。骨粗鬆症に関する最新のエビデンスと推奨事項・40~50代では閉経後に骨密度が低下しやすくなる一方、10~20代の骨密度にも注目が集まっている。20代は骨密度のピークを迎える時期だが、生活習慣によってそのピーク値は変動し、将来の骨密度に影響を与えるとされる。若い時期の過度なダイエットや運動が骨密度低下の引き金になる可能性もある。・国内の大学による20年以上の追跡調査では、20代で骨密度が低かった人は、40代でより骨密度が低下しやすい傾向があることが明らかになっている。・骨への機械的刺激が骨形成を促進するため、骨密度を高めるためには、負荷のかかる下肢運動(階段昇降、かかと上げ、軽いジャンプなど)などが効果的。・運動環境にも注意が必要。日光を浴びない屋内ジムだけで運動していると、骨を強くするために必要なビタミンDの生成が不足する可能性がある。紫外線を気にする人が多いが、朝15分程度の日光浴でも十分な効果が期待できる。・カルシウムだけでなく、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質、ミネラルなどをバランスよく摂取することが骨の健康維持には不可欠。 中村氏は、臨床現場での課題として「骨粗鬆症は診断の機会が限られている」ことを指摘。とくに閉経前後や長期ステロイド使用中の女性、低BMI、家族歴を有する患者など、ハイリスク群への骨密度測定(DXA)の積極的実施を推奨した。中村氏は「骨粗鬆症の予防は、家庭での会話から始まる」とし、親世代が自身の骨の健康に関心を持ち、子供世代と共に学ぶことで、ライフコースを通じた骨粗鬆症予防の文化が形成されることの重要性を訴えた。

10.

肺機能に有利なビタミンはどれ?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第277回

肺機能に有利なビタミンはどれ?ここで、問題です。肺機能に最も有利なビタミンは何でしょうか。「うーん、ビタミンCかビタミンBかなあ…」……違います!Chen YC, et al. Associations between vitamin A and K intake and lung function in the general US population: evidence from NHANES 2007-2012. Front Nutr . 2024 Sep 20;11:1417489.1つ目の研究は、ビタミンAとKの摂取と肺機能の関係を評価することを目的としたものです。この横断的研究は、20~79歳の成人を対象とし、2007~12年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを利用しました。肺機能は、1秒量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、そしてこれらの比である1秒率(FEV₁/FVC)を測定することで評価しました。ビタミンAとKの摂取と結果の関連性を判断するために回帰モデルが用いられました。1万34人の参加者(米国の成人1億4,296万5,892人)のデータが分析された。関連する交絡因子を調整した後、多変量解析により、ビタミンA摂取量の1µg/日の増加ごとに、FEV1が0.03mL増加(p=0.004)し、FVCが0.04mL増加すること(p<0.001)と関連していることが明らかになりました。さらに、ビタミンK摂取量の1µg/日の増加ごとに、FEV1の0.11mL増加と有意に関連していました(p=0.022)。1秒率や気道閉塞とは関連していませんでした。以上のことから、アメリカの比較的健康な集団では、ビタミンAまたはKの摂取量が多いと、スパイロメトリーで評価した肺機能の向上と独立して関連していることが示されました。Mongey R, et al. Effect of vitamin A on adult lung function: a triangulation of evidence approachThorax. 2025 Feb 12. [Epub ahead of print]2つ目の研究は、観察データと遺伝子データの両方から得たエビデンスから、成人の肺機能に対するビタミンAの影響を調査することを目的とした、UKバイオバンクの解析です。食事によるビタミンA摂取量(総ビタミンA、カロチン、レチノール)とFVC、1秒率との関連性を調査しました。次に、メンデルランダム化を使用してこれらの関連性の因果関係を評価し、ビタミンAに関連する39の遺伝子が成人の肺機能に与える影響と、ビタミンA摂取量との相互作用を調査しました。その結果、観察分析では、カロチン摂取量とFVCのみ(100µg/日増加ごとに13.3mL、p=2.9×10-9)の間に正の相関が見られ、喫煙者では相関が強いものの、レチノール摂取量とFVCまたは1秒率との相関は見られませんでした。メンデルランダム化でも同様に、血清βカロチンがFVCのみに有益な効果を示し、血清レチノールがFVCにも1秒率にも影響を与えないことが示されました。―――というわけで、上記2つの研究からは、ビタミンAのカロチンが最も肺にイイ!ということになりますね。

11.

TAVI周術期の経口抗凝固薬、継続vs.中断/NEJM

 経口抗凝固療法の適応を有する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)施行患者において、周術期の経口抗凝固薬継続は中断と比較し、TAVI後30日以内の心血管死、全脳卒中、心筋梗塞、主要血管合併症または大出血の複合アウトカムに関する非劣性は認められなかった。オランダ・St. Antonius HospitalのDirk Jan van Ginkel氏らが、欧州22施設で実施された医師主導の無作為化非盲検非劣性試験「Periprocedural Continuation versus Interruption of Oral Anticoagulant Drugs during Transcatheter Aortic Valve Implantation trial:POPular PAUSE TAVI試験」の結果を報告した。TAVIを受ける患者の3分の1は、併存疾患のため経口抗凝固薬の適応がある。TAVI中の経口抗凝固薬中断は出血リスクを軽減する可能性がある一方で、継続は血栓塞栓性イベントのリスクを軽減する可能性があった。NEJM誌オンライン版2024年8月31日号掲載の報告。約869例を無作為化、主要アウトカムは心血管死、全脳卒中、心筋梗塞等の複合 研究グループは、長期間経口抗凝固薬の投与を受けており大腿動脈または鎖骨下動脈アプローチによるTAVIを受ける予定の患者を、周術期に経口抗凝固薬を継続する群または中断する群に、施設および経口抗凝固薬の種類(ビタミンK拮抗薬、直接経口抗凝固薬)で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた。 中断群では、ダビガトラン投与中の腎不全合併患者を除き、直接経口抗凝固薬を投与中の患者はTAVIの48時間前、ダビガトラン投与中でeGFRが50~80mL/分/1.73m2の患者は72時間前、同30~50mL/分/1.73m2未満の患者は96時間前に中断した。ビタミンK拮抗薬投与中の患者では、acenocoumarolはTAVIの72時間前、phenprocoumonおよびワルファリンは120時間前に中断した。ヘパリンまたは低分子ヘパリンによるブリッジングは開始しなかった。TAVI後は、いずれも術者または担当医が安全と判断した時点で再開した。 継続群では、TAVI当日も含めて経口抗凝固薬を継続した。 主要アウトカムは、TAVI後30日以内の心血管死、全脳卒中、心筋梗塞、主要血管合併症、または大出血(VARC-3基準の2以上)の複合であった。主要解析は、無作為割り付けされた全患者のうち、TAVIが予定日の5日以上前にキャンセルされた患者を除いた修正ITT集団を対象とした。 2020年11月~2023年12月に計869例が無作為に割り付けられ(継続群435例、中断群434例)、858例が修正ITT集団となった(それぞれ431例、427例)。16.5% vs.14.8%、継続群の非劣性は示されず 主要アウトカムの複合イベントは、継続群で71例(16.5%)、中断群で63例(14.8%)に発生した。絶対群間差(リスク差)は1.7%ポイント(95%信頼区間[CI]:-3.1~6.6、非劣性のp=0.18)で、事前に設定した非劣性マージン(4.0%)を満たさなかった。 副次アウトカムである血栓塞栓性イベントは、継続群で38例(8.8%)、中断群で35例(8.2%)に発生した(群間リスク差:0.6%ポイント、95%CI:-3.1~4.4)。また、全出血は、それぞれ134例(31.1%)、91例(21.3%)に認められた(9.8%ポイント、3.9~15.6)。 なお、著者は、非盲検試験であること、神経学的検査や神経画像検査は行われなかったこと、血栓塞栓症と出血の2つのアウトカムではなく主要複合アウトカムとして非劣性の検出力が設定されたこと、ほぼ全例で大腿動脈アプローチが用いられたため本結果をTAVIの他の血管アクセスアプローチに一般化できないことなどを、研究の限界として挙げている。

12.

完全磁気浮上LVAD装着の重症心不全、アスピリンは不要?/JAMA

 完全磁気浮上の左心補助人工心臓(LVAD)を装着した重症心不全患者において、ビタミンK拮抗薬(VKA)による抗血栓療法は、VKA+アスピリンと比較して血栓塞栓症のリスクが増加することはなく、出血イベントを減少させる。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが、北米、欧州、オーストラリアなど9ヵ国の51施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Antiplatelet Removal and Hemocompatibility Events With the HeartMate 3 Pump trial:ARIES-HM3試験」の結果を報告した。LVADは重症心不全患者の生活の質と生命予後を向上させるが、非外科的出血イベントは最も一般的な合併症である。連続流LVADでは、抗血小板薬としてのアスピリンをVKAとともに使用することが義務付けられているが、有効性と安全性に関して決定的なエビデンスはないままであった。JAMA誌オンライン版2023年11月11日号掲載の報告。VKA+プラセボvs. VKA+アスピリンで無イベント生存と出血を比較 研究グループは、完全磁気浮上のLVADであるHeartMate 3(HM3)を装着し、その後はHM3以外の機械的循環補助を必要としない重症心不全患者を、装着後2~7日目にプラセボ群とアスピリン(100mg/日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、VKA療法(目標国際標準比[INR]:2.0~3.0)とともに投与した 主要エンドポイントは、HM3装着後14日以内に投与中止を要する外科的合併症またはイベントが発生した患者を除いた主要解析対象集団における、12ヵ月時の非外科的血液適合性関連主要有害イベント(脳卒中、ポンプ血栓症、非外科的大出血、または末梢動脈血栓塞栓症など)のない生存(無イベント生存)の複合で、プラセボ群のアスピリン群に対する非劣性マージンは片側97.5%信頼限界の下限-10%とした。また、重要な副次エンドポイントを、主要解析対象集団における非外科的出血イベントの発生頻度とした。VKA+プラセボで1年無イベント生存率は6%高く、出血イベントは減少 2020年7月~2022年9月の期間に、628例が無作為化された(プラセボ群314例、アスピリン群314例)。このうち、主要解析対象集団は589例(プラセボ群296例、アスピリン群293例)で、患者背景は77%が男性、61%が白人で、追跡期間中央値は14ヵ月であった。 12ヵ月時点の無イベント生存率は、プラセボ群74.2%、アスピリン群68.1%であり、プラセボ群が高く、プラセボ群のアスピリン群に対する非劣性が示された(群間差:6.0%、片側97.5%信頼限界の下限:-1.6%、p<0.001)。 非外科的出血イベントの発生頻度はプラセボ群25.9/100患者年、アスピリン群39.5/100患者年で、アスピリンの回避は非外科的出血イベントの減少と関連していた(相対リスク:0.66、95%信頼区間:0.51~0.85、p=0.002)。 プラセボ群で脳卒中またはその他の血栓塞栓性イベントの増加は認められず、この結果は患者のサブグループ間で一致していた。

13.

急性脳梗塞の血栓除去術、術前ビタミンK拮抗薬は出血リスク?/JAMA

 急性期脳梗塞で血管内血栓除去術(EVT)を受けた患者では、術前のビタミンK拮抗薬(VKA)の使用と術後の症候性頭蓋内出血(sICH)には関連がないが、国際標準比(INR)が1.7を超えるサブグループではVKAの使用はsICH発生のリスクを高めることが、米国・デューク大学医学大学院のBrian Mac Grory氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日号で報告された。米国594病院の後ろ向きコホート研究 研究グループは、EVTを受ける脳梗塞患者における術前のVKAの使用とアウトカムとの関連を明らかにする目的で、後ろ向きコホート研究を行った(ARAMIS registry[Daiichi Sankyo、Genentech、Janssenの助成で運営]の支援を受けた)。 解析には、米国心臓協会(AHA)のGet With the Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke) Programの2015年10月~2020年3月のデータを用いた。対象は、米国の594の病院に入院し、最終健常確認時刻から6時間以内にEVTの施行が選択された大血管閉塞による急性期脳梗塞患者であった。VKA以外の抗凝固薬や抗凝固薬の併用療法を受けた患者は除外した。 主要エンドポイントはsICHの発生であり、病院到着前7日以内のVKAの使用の有無別に評価した。5つの副次エンドポイントにも有意差なし 3万2,715例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:60~82]、女性50.7%)が登録された。このうち3,087例(9.4%)(INR中央値:1.5[IQR:1.2~1.9])が病院到着前にVKAを使用しており、2万9,628例(90.6%)(1.1[1.0~1.1])は使用していなかった。 sICHの発生率は、VKA使用群6.8%(211/3,087例)、非使用群6.4%(1,904/2万9,628例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後オッズ比[OR]:1.12[95%信頼区間[CI]:0.94~1.35]、補正後リスク差:0.69%[95%CI:-0.39~1.77])。 また、次の5つの副次エンドポイントにも有意差はみられなかった。(1)36時間以内の生命を脅かす重篤な全身性出血(VKA使用群1.2% vs.非使用群1.0%)、(2)その他の重篤な合併症(5.1% vs.5.0%)、(3)再灌流療法の合併症(12.8% vs.12.2%)、(4)院内死亡(16.2% vs.13.1%)、(5)院内死亡またはホスピスへの転院(27.1% vs.20.6%)。 入院時INRが記録された2,415例のうち、1,585例はINRが1.7以下(INR中央値:1.3[IQR:1.1~1.5])、830例は1.7以上(2.1[IQR:1.9~2.5])であった。sICHのサブグループ解析では、INR 1.7以上の830例におけるsICHの発生率は、VKA使用群が8.3%と、非使用群の6.4%に比べ有意に高率であった(補正後OR:1.88[95%CI:1.33~2.65]、補正後リスク差:4.03%[95%CI:1.53~6.53])のに対し、1.7以下の1,585例では、それぞれ6.7%、6.4%であり、両群間に有意差はなかった(1.24[0.87~1.76]、1.13%[95%CI:-0.79~3.04])。 著者は、「本研究では、EVTを受けることが決まった患者のみを対象としており(EVTを受ける可能性があり、VKA治療を受けている患者全体ではない)、そのため指標イベントバイアス(index event bias)や合流点バイアス(collider bias)が生じる可能性がある。したがって、試験デザインによるバイアスの影響を受けやすく、解釈には注意を要する」としている。

14.

リウマチ性心疾患AF、ビタミンK拮抗薬がリバーロキサバンより有効/NEJM

 リウマチ性心疾患のAF(心房細動)患者において、ビタミンK拮抗薬治療はリバーロキサバン治療よりも、心血管イベントまたは死亡の複合発生率が低く、出血の発生率は両群で有意差はないことが、カナダ・マックマスター大学のStuart J. Connolly氏らによる4,565例を対象とした非盲検無作為化試験の結果、示された。リウマチ性心疾患の心房細動患者における心血管イベントの予防について、第Xa因子阻害薬の試験は限られていた。NEJM誌オンライン版2022年8月28日号掲載の報告。リバーロキサバンのビタミンK拮抗薬に対する非劣性を検証 研究グループは、心エコーでリウマチ性心疾患が確認された心房細動で、CHA2DS2VAScスコアが2以上(スコア範囲0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高い)、僧帽弁口面積2cm2以下、左心房もやもやエコー、左房血栓のいずれかが認められた患者を登録し試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはリバーロキサバン標準量を、もう一方には用量調節にてビタミンK拮抗薬を投与した。 有効性に関する主要アウトカムは、脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血管疾患(心臓性、非心臓性)または原因不明による死亡の複合だった。安全性に関する主要アウトカムは、国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血。 研究グループは、リバーロキサバンがビタミンK拮抗薬に対し、非劣性であると仮説を立て検証した。死亡率もリバーロキサバン群がビタミンK拮抗薬群より高率 被験者は4,565例で、うち4,531例(リバーロキサバン群2,275例、ビタミンK拮抗薬群2,256例)を対象に最終解析を行った。被験者の平均年齢は50.5歳、72.3%が女性だった。 試験薬を完全に中止した割合は、すべての評価時点でリバーロキサバン群がビタミンK拮抗薬群より高率だった。 ITT解析では、主要複合アウトカムの発生は、リバーロキサバン群2,275例中560例、ビタミンK拮抗薬群2,256例中446例で認められた(比例ハザード比:1.25、95%信頼区間[CI]:1.10~1.41)。生存曲線は非比例であったため、境界内平均生存期間(RMST)分析を行った。主要複合アウトカムのRMSTは、ビタミンK拮抗薬群が1,675日に対し、リバーロキサバン群は1,599日で有意差が認められた(群間差:-76日、95%CI:-121~-31、p<0.001)。 死亡率は、リバーロキサバン群がビタミンK拮抗薬群より高かった(RMST:リバーロキサバン群1,608日vs.ビタミンK拮抗薬群1,680日、群間差:-72日、95%CI:-117~-28)。 大出血発生率は、両群で有意差は認められなかった。リバーロキサバン群40例、ビタミンK拮抗薬群56例で発生が認められ(比例ハザード比:0.76、95%CI:0.51~1.15)、RMSTはそれぞれ1,965日、1,954日だった(群間差:11、95%CI:-5~28、p=0.18)。

15.

第124回 ワルファリン解毒酵素が半世紀超を経てついに判明

1936年にデンマークの生化学者Henrik Dam氏が発見したビタミンKは同氏の母国語で凝固を意味するkoagulationにちなんで名付けられ、その由来の通り血液凝固を促します1)。ビタミンKがとる姿はいくつかありますが、血液凝固に携わるのは1つで、ビタミンKヒドロキノン(VKH2)と呼ばれる還元型です。VKH2へのビタミンKの還元には世界で最もよく使われている抗凝固薬ワルファリンによって阻害されるビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)またはワルファリンに邪魔されない別の還元経路が携わります。ワルファリンに阻害されない(warfarin-resistant)ビタミンK還元酵素は半世紀以上前にその存在が予想されましたが今までわからずじまいでした。ドイツ・ミュンヘンのヘルムホルツ研究所のチームによる新たな研究でVKH2の抗酸化作用がフェロトーシスと呼ばれる細胞死を防ぐ役割を担い、VKH2を維持してそのフェロトーシス阻止作用を支えるビタミンK還元酵素FSP1が同定されました。そしてその還元酵素FSP1こそ半世紀以上前にその存在が予想されたワルファリンに阻害されないビタミンK還元酵素であることが判明しました2,3)。高用量のビタミンKはワルファリン過剰による脳出血などの副作用(ワルファリン中毒)を食い止める解毒作用があります。そのビタミンKのワルファリン中毒解消作用をFSP1が介することもマウス実験で示されています。ワルファリン過剰投与FSP1欠損マウスをビタミンK治療してもプロトロンビン時間は非常に長いままであり、ほぼ全頭が主に脳出血により死なねばなりませんでした。一方、FSP1遺伝子があるマウスは高用量ビタミンK治療で救われ、FSP1はワルファリン中毒の解毒作用に携わることが裏付けられました。フェロトーシスの新たな抑制因子FSP1を発見した今回の成果はアルツハイマー病や急な臓器損傷などのフェロトーシスと関連するらしい病気の数々の新規治療の開発に役立つでしょう。また、フェロトーシスは原核生物や植物から哺乳類に至る種々の生物に備わり、どうやら最古の細胞死の一つらしく、ゆえにそのフェロトーシス阻止を担うビタミンKは自然界で最初に誕生した抗酸化成分の一つかもしれません3)。 参考1)Long-sought mediator of vitamin K recycling discovered / Nature2)Mishima E, et al. Nature. 2022 Aug 3. [Epub ahead of print]3)Vitamin K prevents cell death: a new function for a long-known molecule / Eurekalert

16.

原因不明の小児急性肝炎、英国44例の臨床像/NEJM

 2022年1月~3月に、英国・スコットランドの中部地域で小児の原因不明の急性肝炎が10例報告され、世界保健機関(WHO)は4月15日、Disease Outbreak Newsでこれに言及した。WHOはさらに、4月5日~5月26日までに33ヵ国で診断された同疾患の可能性例が少なくとも650例存在するとし、このうち222例(34.2%)は英国の症例であった。同国・Birmingham Women’s and Children’s NHS Foundation TrustのChayarani Kelgeri氏らは、今回、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎44例の臨床像、疾患の経過、初期のアウトカムについて報告した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年7月13日号に掲載された。3つのカテゴリーの臨床アウトカムを評価 研究グループは、2022年1月1日~4月11日の期間に、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎の小児について後ろ向きに検討を行った。 対象は、年齢10歳以下で、英国健康安全保障庁(UKHSA)による確定例の定義(2022年1月1日以降に10歳以下の小児で発症し、A~E型肝炎ウイルスや代謝性・遺伝性・先天性・機械的な原因に起因しない肝炎で、血清アミノトランスフェラーゼ値>500 IU/L)を満たした急性肝炎の患児であった。 これらの患児の医療記録が精査され、人口統計学的特性や臨床的特徴のほか、肝生化学検査、血清検査、肝臓指向性およびその他のウイルスの分子検査の結果と共に、画像上のアウトカムと臨床アウトカムが記録された。 治療は、同施設の急性肝不全プロトコールに準拠して実施され、広域スペクトル抗菌薬、抗真菌薬、プロトンポンプ阻害薬、ビタミンKの投与などが行われた。 臨床アウトカムは、(1)病態の改善(ビリルビン値およびアミノトランスフェラーゼ値の持続的な低下と、血液凝固能の正常化)、(2)肝移植、(3)死亡の3つのカテゴリーについて評価が行われた。90%でヒトアデノウイルスを検出、14%で肝移植、死亡例はない 急性肝炎で紹介された50例のうち、44例(年齢中央値4歳[範囲:1~7]、女児24例[55%])が確定例の定義を満たす肝炎を有していた。このうち13例が同施設に転院し、残りの患児は地元の施設で治療を受けた。2022年1月~4月の同施設への原因不明の急性肝炎による入院数および原因不明の急性肝不全による肝移植数は、いずれも2012~21年における年間症例数よりも多かった。 医療記録が入手できた患児(80%)は全例が白人であった。受診の主な理由は黄疸(93%[41/44例])が最も多く、次いで嘔吐(54%[24例])、下痢(32%[14例])、白色便(30%[13例])、腹痛(27%[12例])、嗜眠(23%[10例])の順だった。 ヒトアデノウイルスの分子検査を受けた30例では、27例(90%)が陽性であった。サイトメガロウイルス(CMV)は全例が陰性で、エプスタイン-バーウイルス(EBV)のカプシド抗原は2例が陽性で、核抗原は1例が陽性だった。 腹部超音波検査では、胆嚢壁肥厚が45%(20例)、軽度肝腫大が27%(12例)、軽度脾腫が18%(8例)で認められた。 38例(86%)は自然回復した。残りの6例(14%)は肝機能が持続的に悪化して急性肝不全に進展し、全例が肝移植を受けた。この6例中5例は急速に進行性の脳症を来し、黄疸発生から脳症発現までの間隔は6~7日だった。死亡例はなかった。肝移植を受けた6例を含む全例が自宅退院した。 UKHSAは、血液と肝組織のメタゲノム解析を行い、アデノ随伴ウイルス2やヘルペスウイルスを検出した。これらの所見の重要性については、現在、さらなる評価が進められている。 著者は、「多くの患児でヒトアデノウイルスが分離されたが、この疾患の病因におけるその役割は確立されていない」としている。

17.

NVAF患者における経皮的左心耳閉鎖術の有効性~初の全国規模データ(Terminator Registry)/日本循環器学会

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において、長期的な抗凝固療法に代わる治療法として経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)が世界的に行われている。ビタミンK拮抗薬と比較して、死亡率と出血イベントは有意に少なく、QOLは大きく改善されているが、欧米からのデータが中心で、日本におけるデータは十分ではない。第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11日~13日)で原 英彦氏(東邦大学医療センター大橋病院)が国内23施設による初の大規模観察研究TERMINATOR Registryから最初の集計結果を報告した。 2019年にLAAC用デバイス「WATCHMAN」が日本で承認され、現在はその後継となる新型デバイス「WATCHMAN FLX」が登場している。そこで本研究は、NVAFで血栓塞栓リスクの高い日本人患者を対象に、左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN generation-2.5、WATCHMAN FLX)によるLAACの長期実臨床成績を明らかにすることを目的に実施された。主要評価項目は死亡、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、後遺症を残す脳卒中、全身性塞栓症または開心術や重大な血管内インターベンションを要する左心耳閉鎖デバイスもしくは手技関連事象とされた。 主な結果は以下の通り。・2019年9月~2021年8月に各施設でLAACを受けた743例が対象。平均年齢:74.9(±8.8)歳、持続性/永続性心房細動:61.9%、平均CHA2DS2スコア:3.2(±1.2)、平均CHA2DS2-VAScスコア:4.7(±1.5)、平均HAS-BLEDスコア:3.4(±1.0)、Clinical Frailty Scale:3.4(±1.3)、DOACの不適切低用量処方が11.2%で確認された。・植込み成功率は98.9%、4.2%でデバイスリリースの基準であるPASSクライテリアを満たしていなかった。37.3%でpartial recaptureが行われた。・術後の有害事象については、心タンポナーデ:0.9%、心嚢液貯留:1.1%、デバイス脱落:0.2%、仮性動脈瘤:0.1%と全体的に低発生率だった。・デバイスごとの留置手技時間はWATCHMAN gen2.5:53±36分、WATCHMAN FLX:57±30分とほぼ同等で、両デバイスとも30mm以上のサイズが多く使用されていた。・死亡(原因不明)は0.9%、脳卒中は2.2%、出血イベントは5.7%、デバイス関連血栓(DRT)は2.8%で発生。ただし、DRTによる脳卒中はすべてmRS<2であった。・経口抗凝固薬の使用量は、退院時と比較し45日後には減少し、6ヵ月後にはさらに減少していた。 原氏は日本におけるLAACのリアルワールドデータは高い成功率を示し、6カ月間のフォローアップデータにおいてDRTなどの有害事象は他の研究と同等の低い発生率を示したとして、今後はより長期のフォローアップにより、この治療法が心房細動による心原性脳塞栓症を防ぎ、かつ出血イベントを減らすことができるかどうかを示していく必要があるとした。

18.

TAVR後の心房細動へのエドキサバン、日本人での解析(ENVISAGE-TAVI AF)/日本循環器学会

 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)成功後の心房細動患者に対するエドキサバンとビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を比較したENVISAGE-TAVI AF試験の日本人サブ解析の結果、臨床アウトカムにおけるエドキサバンとビタミンK拮抗薬の違いはごくわずかだったことを、帝京大学の渡邊 雄介氏が第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11~13日)のLate Breaking Clinical Trialsで報告した。 ENVISAGE-TAVI AF試験は、日本を含む14ヵ国173施設が参加した非盲検無作為化比較試験。TAVR成功後の心房細動患者においてエドキサバン(60mg/日もしくは30mg/日)とビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を最大3年間比較した。有効性に関する主要アウトカムは有害臨床イベント(全死因死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中、全身性塞栓イベント、人工弁血栓症、大出血)の複合、安全性に関する主要アウトカムは大出血だった。全体集団ではエドキサバン群がビタミンK拮抗薬群に対し非劣性を示すこと、および大出血発生率が高いことが報告されているが、わが国ではTAVRを受ける患者は小柄な女性が多く、抗血栓療法による出血リスクに影響する可能性がある。そこで、日本人においても全体の結果と一致するか評価するべくサブ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は159例(エドキサバン群82例、ビタミンK拮抗薬群77例)で、エドキサバン群とビタミンK拮抗薬群における平均年齢は84.3±4.7歳と83.4±4.0歳、体重は53.8±10.1kgと53.1±10.3kg、BMIは22.1±3.4と22.3±3.2、投与量を減量した患者の割合は85.4%と85.7%であった。・有害臨床イベントの累積発生率は日本人集団のほうが全体集団より低かった。エドキサバンのビタミンK拮抗薬に対するハザード比(HR)は、全体集団が1.05(95%CI:0.85~1.31)、日本人集団が0.85(同:0.38~1.90)と同様だった。・大出血の累積発生率は全体集団と日本人集団で同程度だった。エドキサバンのビタミンK拮抗薬に対するHRは、全体で1.41(95%CI:1.03~1.91)、日本人集団で1.17(同:0.45~3.05)と日本人集団で若干低かった。・消化管の大出血は、全体集団ではエドキサバン群で多かったが(5.4%/人年vs.2.7%/人年、HR:2.03、95%CI:1.28~3.22)、日本人集団ではエドキサバン群3例(2.8%/人年)、ビタミンK拮抗薬群4例(4.1%/人年)だった。 これらの結果から、渡邊氏は「エドキサバンがTAVR施行後の日本人心房細動患者に対するビタミンK拮抗薬の代替治療となりうることが示唆される」とまとめた。

19.

急性期脳梗塞へのアルテプラーゼ、発症前NOAC服用でもリスク増大なし/JAMA

 アルテプラーゼ静注治療を受けた急性虚血性脳卒中患者において、発症前7日以内の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)服用者の頭蓋内出血リスクは、抗凝固薬非服用者と比べて大きく増大しないことが示された。米国・デューク大学のWayneho Kam氏らが、16万例超の患者を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果を報告した。現行のガイドラインでは、急性虚血性脳卒中発症前にNOACを服用していた場合、原則的にはアルテプラーゼ静注を使用しないよう勧告されている。JAMA誌オンライン版2022年2月10日号掲載の報告。米国内1,752ヵ所の医療機関、約16万3,000例を対象に試験 研究グループは2015年4月~2020年3月に、脳卒中診療の質改善プログラム「Get With The Guidelines-Stroke」(GWTG-Stroke)に登録する米国内1,752ヵ所の医療機関で、急性虚血性脳卒中発症後4.5時間以内にアルテプラーゼ静注治療を受けた16万3,038例を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。 被験者は、脳卒中発症前のNOAC服用者、抗凝固薬の非服用者であった。補完的に、抗凝固薬服用中に急性虚血性脳卒中や頭蓋内出血を発症した患者レジストリ「Addressing Real-world Anticoagulant Management Issues in Stroke」(ARAMIS)のデータも活用。脳卒中発症前NOAC服用患者への、アルテプラーゼ静注治療の安全性と機能性アウトカムについて、抗凝固薬の非服用者と比較した。 主要アウトカムは、アルテプラーゼ静注後36時間以内の症候性頭蓋内出血の発生だった。副次アウトカムは、院内死亡を含む安全性に関する4項目と、自宅への退院率を含む退院時に評価した機能性アウトカム7項目だった。症候性頭蓋内出血の発生率、NOAC服用群3.7%、抗凝固薬非服用群3.2% 被験者16万3,038例の年齢中央値は70歳(IQR:59~81)、女性は49.1%だった。このうち、脳卒中発症前のNOAC服用者(NOAC服用群)は2,207例(1.4%)、抗凝固薬の非服用者(非服用群)は16万831例(98.6%)だった。 NOAC服用群の年齢中央値は75歳(IQR:64~82)で、非服用群(同70歳、58~81)よりも高齢で、心血管系の併存疾患の罹患率が高く、脳卒中の程度もより重症だった(NIH脳卒中スケールの中央値、NOAC服用群:10[IQR:5~17]vs.非服用群:7[4~14])。 症候性頭蓋内出血の補正前発生率は、NOAC服用群3.7%(95%信頼区間[CI]:2.9~4.5)、非服用群3.2%(3.1~3.3)だった。ベースラインの臨床要因で補正後の症候性頭蓋内出血の発生リスクは、両群で同等だった(補正後オッズ比[OR]:0.88[95%CI:0.70~1.10]、補正後群間リスク差[RD]:-0.51%[95%CI:-1.36~0.34)。 副次アウトカムの安全性に関する項目は、院内死亡率(NOAC服用群6.3% vs.非服用群4.9%、補正後OR:0.84[95%CI:0.69~1.01]、補正後RD:-1.20%[-2.39~-0])を含めいずれも有意差はなかった。 機能性アウトカムについては、自宅への補正後退院率(NOAC服用群53.6% vs.非服用群45.9%、補正後OR:1.17[95%CI:1.06~1.29]、補正後RD:3.84%[1.46~6.22])など、7項目中4項目でNOAC服用群がより良好だった。

20.

エドキサバン、TAVR後の心房細動でビタミンK拮抗薬に非劣性/NEJM

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の成功後に心房細動がみられる患者(主に慢性心房細動)の治療において、経口直接第Xa因子阻害薬エドキサバンは、ビタミンK拮抗薬に対し有効性の主要アウトカムが非劣性であるが、優越性は不明であり、消化管出血が多いことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのNicolas M. Van Mieghem氏らが実施した「ENVISAGE-TAVI AF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号で報告された。14ヵ国173施設の非盲検無作為化試験 本研究は、日本を含む14ヵ国173施設が参加した非盲検無作為化試験であり、2017年4月~2020年1月の期間に参加者の登録が行われた(Daiichi Sankyoの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、重症大動脈弁狭窄症に対するTAVRが成功した後に、30秒以上持続する慢性または初発の心房細動がみられる患者であった。被験者は、エドキサバン(60mgまたは30mg、1日1回)またはビタミンK拮抗薬(ワルファリン、フェンプロクモン、アセノクマロール、フルインジオン)の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは、臨床的な有害イベント(全死因死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中、全身性血栓塞栓症、人工弁血栓症、大出血)の複合とされた。安全性の主要アウトカムは大出血であった。アウトカムの判定者には、割り付け情報が知らされなかった。 階層的検定計画に基づき、有効性および安全性の主要アウトカムの非劣性検定が連続的に行われた。ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限値が1.38を超えない場合に、エドキサバンの非劣性が確定された。大出血に関してエドキサバンの非劣性と優越性が確認された場合に、引き続き有効性の優越性検定を行うこととされた。有効性の主要アウトカム:100人年当たり17.3 vs.16.5 1,426例が登録され、エドキサバン群とビタミンK拮抗薬群に713例ずつが割り付けられた。全体の平均年齢は82.1歳、47.4%が女性であった。99%でTAVR施行前から心房細動がみられ、初発心房細動は15例のみだった。試験期間中に、エドキサバン群の30.2%(215例)、ビタミンK拮抗薬群の40.5%(289例)が投与を中止した。 有効性の主要アウトカムは、エドキサバン群の170例(17.3/100人年)、ビタミンK拮抗薬群の157例(16.5/100人年)で認められ(HR:1.05、95%CI:0.85~1.31、非劣性検定のp=0.01)、エドキサバン群のビタミンK拮抗薬群に対する非劣性が確定された。 大出血は、エドキサバン群の98例(9.7/100人年)、ビタミンK拮抗薬群の68例(7.0/100人年)でみられ(HR:1.40、95%CI:1.03~1.91、非劣性検定のp=0.93)、非劣性は確認されなかった。この差の原因は、主にエドキサバン群で消化管の大出血が多いためであった(56例[5.4/100人年]vs.27例[2.7/100人年]、HR:2.03、95%CI:1.28~3.22)。プロトンポンプ阻害薬が投与されていた患者の割合は、両群で同程度だった(71.7%、69.0%)。 この段階で、階層的検定が不成功となったため、エドキサバン群の優越性に関する正式な検定は行われなかった。 100人年当たりでみた全死因死亡の発生は、エドキサバン群が7.8、ビタミンK拮抗薬群は同9.1(HR:0.86、95%CI:0.64~1.15)であり、虚血性脳卒中はそれぞれ2.1および2.8(0.75、0.43~1.30)、心筋梗塞は1.1、0.7(1.65、0.65~4.14)、全身性血栓塞栓症は0.2、0.3(ハザード比は算出していない)であった。人工弁血栓症は両群で発現しなかった。また、100人年当たりでみた全死因死亡または脳卒中の発生は、エドキサバン群が10.0、ビタミンK拮抗薬群は11.7(HR:0.85、95%CI:0.66~1.11)だった。 著者は、「ビタミンK拮抗薬群では、投与中止例の割合が高かったことなどが、出血のアウトカムに影響を及ぼした可能性がある」としている。

検索結果 合計:97件 表示位置:1 - 20