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バーチャル映像を見ながらのトレッドミルで転倒が減少/Lancet

 トレッドミルにバーチャルリアリティ(VR)を組み合わせた介入が高齢者の転倒リスク防止に有用であることを、イスラエル・テルアビブ大学のAnat Mirelman氏らが、トレッドミル単独と比較した無作為化比較試験の結果、報告した。転倒リスクは、加齢に伴う運動機能と認知機能低下の進展に伴い増大する。これまでに多くの転倒予防の介入が提案されているが、運動・認知の両機能をターゲットとした統合的アプローチのものはなかった。Lancet誌オンライン版2016年8月11日号掲載の報告。トレッドミル単独と比較、6週間介入後6ヵ月間の転倒発生を評価 研究グループは、安全に歩行するための認識的側面と機動性の両者をターゲットとした、トレッドミルトレーニングと非没入型VRを組み合わせた介入が、トレッドミルトレーニング単独よりも転倒が減少すると仮定し検証試験を行った。 5ヵ国(ベルギー、イスラエル、イタリア、オランダ、英国)の5つの臨床施設で実施。60~90歳、転倒の高リスク(試験前の半年間で2回以上の転倒あり)、および多様な運動的および認識的側面を有する被験者を集めて、コンピュータ無作為化法で2群に割り付けた。そのうち一方にはトレッドミル+VR介入を、もう一方にはトレッドミルのみ介入を、いずれも週3回、6週間行った。1セッションは約45分で、患者個々の能力に合わせて構造化された介入が行われた。割り付けでは患者特性(原因不明の転倒歴あり、軽度認知障害、パーキンソン病)と性別のサブグループに、試験施設ごとにも層別化。グループ割り付けは介入に関わらない第3者によって行われた。 VRシステムは、モーションキャプチャーカメラとコンピュータシミュレーション映像から成り、被験者はモーションキャプチャーカメラを装着してトレッドミル歩行を、眼前の大型画面に映し出された映像を見ながら行う。とくに高齢者の転倒リスク軽減を目的に、障壁、複数の経路、また継続的な歩行調整を要する気を逸らせるものといった実在するチャレンジグなものが投影された。 主要アウトカムは、介入終了後6ヵ月間の転倒発生率。評価は修正intention-to-treat集団で行った。組み合わせ群の単独群に対する転倒発生率比は0.58 2013年1月6日~2015年4月3日の間に、302例がトレッドミル+VRの組み合わせ群(154例)、トレッドミル単独群(148例)に無作為に割り付けられた。事前規定の修正intention-to-treat解析には、282例(93%、組み合わせ群146例、単独群136例)のデータが包含された。両群被験者の特性は類似しており、年齢中央値は74.0歳と73.0歳、男性67%と62%、教育年数中央値は両群13.0年、MMSEスコア(30点満点)中央値28.0と28.5、処方薬数中央値5.0と6.0などであった。 介入前の転倒発生率は、両群で類似しており、6ヵ月間で組み合わせ群10.7(SD 35.6)回、単独群11.9(39.5)回であった。 しかし介入後6ヵ月間は、組み合わせ群の発生が6.00(95%信頼区間[CI]:4.36~8.25)回と有意に減少した(介入前比較のp<0.0001)。一方、単独群の発生は8.27(5.55~12.31)回と有意には減少しなかった(同p=0.49)。 介入後6ヵ月間の両群の転倒発生率を比較したところ、組み合わせ群のほうが有意に低率であった(発生率比:0.58、95%CI:0.36~0.96、p=0.033)。 サブグループでみると、原因不明の転倒歴あり群(組み合わせ群57例、単独群52例)の介入後6ヵ月間の転倒発生は5.10 vs.0.89回(p=0.10)、軽度認知障害群(23例、20例)では2.35 vs.1.28回(p=0.99)、パーキンソン病群(66例、64例)は8.06 vs.16.48回(p=0.01)であった。 安全性の評価は治療割付がされた全患者を対象に行われた。介入関連の有害事象について報告はなかった。

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広汎性発達障害に日本で使用されている薬剤は:東北大学

 日本において、広汎性発達障害(PDD)に適応を有する薬剤は、ピモジドだけである。いくつかの抗精神病薬は、日本でも適応外で使用されているが、これら薬剤の処方および使用に関する詳細は不明な点が多い。東北大学の佐藤 倫広氏らは、日本のPDD児における薬物治療の実態を明らかにするため調査を行った。World journal of pediatrics誌オンライン版2016年6月10日号の報告。 2005~10年に新規でPDD(ICD-10:F84)と診断された18歳未満の小児3,276例のデータを、日本医療データセンターの請求データより抽出した。処方率は、それぞれの薬剤が処方されたPDD患者の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・2010年以前には、ATC分類で神経系に属する薬剤のうち、非定型抗精神病薬、他の抗精神病薬、精神刺激薬、他のすべての中枢神経系作用薬、抗けいれん薬、非バルビツール酸系薬、パーキンソン病/症候群薬の処方が有意に増加していた(trend p≦0.02)。・リスペリドンの処方率は一貫して増加しており、2010年には6.9%に達していた(trend p<0.0001)。これは、調査対象の抗精神病薬のうち最も高かった。・アリピプラゾールの処方率も増加しており、2010年には1.9%に達していた(trend p<0.0001)。・ピモジドの処方率には変化がなく、2010年は0.4%と低率であった。 著者らは「ピモジドと比較し、リスペリドン、アリピプラゾール、他の向精神薬の処方率が増加している。日本人小児に対するこれら薬物の安全性データは十分でないため、今後の安全性評価が必要とされる」としている。関連医療ニュース 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? 抗精神病薬の適応外処方、年代別の傾向を調査 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状

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ニーマン・ピック病C型〔NPC : Niemann-Pick disease type C〕

1 疾患概要■ 概念・定義1, 2)ニーマン・ピック病は、多様な臨床症状と発病時期を示すがスフィンゴミエリンの蓄積する疾患として、1961年CrockerによりA型からD型に分類された。A型とB型はライソゾーム内の酸性スフィンゴミエリナーゼ遺伝子の欠陥による常染色体性劣性遺伝性疾患で、ニーマン・ピック病C型は細胞内脂質輸送に関与する分子の欠陥で起こる常染色体性劣性遺伝性疾患である。D型は、カナダのNova Scotia地方に集積するG992W変異を特徴とする若年型のC型である。■ 疫学C型の頻度は人種差がないといわれ、出生10~12万人に1人といわれている。発病時期は新生児期から成人期までと幅が広い。2015年12月の時点で日本では34例の患者の生存が確認されている。同時点での人口8,170万人のドイツでは101人、人口6,500万人の英国では86例で、人口比からすると日本では現在確認されている数の約5倍の患者が存在する可能性がある。■ 病因遺伝的原因は、細胞内脂質輸送小胞の膜タンパク質であるNPC1タンパク質をコードするNPC1遺伝子、またはライソゾーム内の可溶性たんぱく質でライソゾーム内のコレステロールと結合し、NPC1タンパク質に引き渡す機能を持つNPC2タンパク質をコードするNPC2遺伝子の欠陥による。その結果、細胞内の脂質輸送の障害を生じ、ライソゾーム/後期エンドソームにスフィンゴミエリン、コレステロールや糖脂質などの蓄積を起こし、内臓症状や神経症状を引き起こす。95%の患者はNPC1遺伝子変異による。NPC2遺伝子変異によるものは5%以下であり、わが国ではNPC2変異による患者はみつかっていない。■ 症状1)周産期型出生後まもなくから数週で、肝脾腫を伴う遷延性新生児胆汁うっ滞型の黄疸がみられる。通常は生後2~4ヵ月で改善するが、10%くらいでは、肝不全に移行し、6ヵ月までに死亡する例がある。2)乳児早期型生後間もなくか1ヵ月までに肝脾腫が気付かれ、6~8ヵ月頃に発達の遅れと筋緊張低下がみられる。1~2歳で発達の遅れが明らかになり、運動機能の退行、痙性麻痺が出現する。歩行を獲得できる例は少ない。眼球運動の異常は認められないことが多い。5歳以降まで生存することはまれである。3)乳児後期型通常は3~5歳ごろ、失調による転びやすさ、歩行障害で気付かれ、笑うと力が抜けるカタプレキシーが認められることが多い。神経症状が出る前に肝脾腫を指摘されていることがある。また、検査に協力できる場合には、垂直性核上性注視麻痺を認めることもある。知的な退行、けいれんを合併する。けいれんはコントロールしづらいこともある。その後、嚥下障害、構音障害、知的障害が進行し、痙性麻痺が進行して寝たきりになる。早期に嚥下障害が起こりやすく、胃瘻、気管切開を行うことが多い。7~15歳で死亡することが多い。わが国ではこの乳児後期型が比較的多い。また、この型では早期にまばたきが消失し、眼球の乾燥を防ぐケアが必要となる。4)若年型軽度の脾腫を乳幼児期に指摘されていることがあるが、神経症状が出現する6~15歳には脾腫を認めないこともある。書字困難や集中力の低下などによる学習面の困難さに気付かれ、発達障害や学習障害と診断されることもある。垂直性核上性注視麻痺はほとんどの例で認められ、初発症状のこともある。カタプレキシーを認めることもある。不器用さ、学習の困難さに続き、失調による歩行の不安定さがみられる。歩行が可能な時期に嚥下障害によるむせやすさ、構語障害を認めることが多く、発語が少なくなる。ジストニア、けいれんがみられることが多く、進行すると痙性麻痺を合併する。30歳かそれ以上まで生存することが多い。わが国でも比較的多く認められる。5)成人型成人になって神経症状がなく、脾腫のみで診断される例もまれながら存在するが、通常は脾腫はみられないことが多い。妄想、幻視、幻聴などの精神症状、攻撃性やひきこもりなどの行動異常を示すことが多い。精神症状や行動異常がみられ、数年後に小脳失調(76%)、垂直性核上性注視麻痺(75%)、構語障害(63%)、認知障害(61%)、運動障害(58%)、脾腫(54%)、精神症状(45%)、嚥下障害(37%)などがみられる。運動障害はジストニア、コレア(舞踏病)、パーキンソン症候群などを認める。■ 予後乳児早期型は5歳前後、乳児後期型は7~15歳、若年型は30~40歳、成人型は中年までの寿命といわれているが、気管切開、喉頭気管分離術などによる誤嚥性肺炎の防止と良好なケアで寿命は延長している。また、2012年に承認になったミグルスタット(商品名: ブレーザベス)によって予後が大きく変化する可能性がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ニーマン・ピック病C型の診断の補助のためにSuspicion Indexが開発されている。これらはC型とフィリピン染色で確定した71例、フィリピン染色が陰性であった64例、少なくとも症状が1つある対照群81例について、内臓症状、神経症状、精神症状について検討し、特異性の高い症状に高いスコアを与えたスクリーニングのための指標である。この指標は便利であるが、4歳以下で神経症状の出現の少ない例では誤診する可能性のあることに注意して使用していただきたい。現在、4歳以下で使えるSuspicion Indexが開発されつつある。このSuspicion Indexは、(http://www.npc-si.jp/public/)にアクセスして使用でき、評価が可能である。一般血液生化学で特異な異常所見はない。骨髄に泡沫細胞の出現をみることが多い。皮膚の培養線維芽細胞のフィリピン染色によって、細胞内の遊離型コレステロールの蓄積を明らかにすることで診断する。LDLコレステロールが多く含まれる血清(培地)を用いることが重要である。成人型では蓄積が少なく、明らかな蓄積があるようにみえない場合もあり注意が必要である。骨髄の泡沫細胞にも遊離型コレステロールの蓄積があり、フィリピン染色で遊離型コレステロールの蓄積が確認できれば診断できる。線維芽細胞のフィリピン染色は、秋田大学医学部附属病院小児科(担当:高橋 勉、tomy@med.akita-u.ac.jp)、大阪大学大学院医学系研究科生育小児科学(担当:酒井 規夫、norio@ped.med.osaka-u.ac.jp)、鳥取大学医学部附属病院脱神経小児科(担当:成田 綾、aya.luce@nifty.com)で対応が可能である。確定診断のためにはNPC1遺伝子、NPC2遺伝子の変異を同定する。95%以上の患者はNPC1遺伝子に変異があり、NPC2遺伝子に変異のある患者のわが国での報告はまだない。NPC1/NPC2遺伝子解析は鳥取大学生命機能研究支援エンター(担当:難波 栄二、ngmc@med.tottori-u.ac.jp)で対応が可能である。近年、遊離型コレステロールが非酵素反応で形成される酸化型ステロール(7-ケトコレステロール、コレスタン-3β、5α、6βトリオール)が、C型の血清で特異的に上昇していることが知られ、迅速な診断ができるようになっている1、2)。わが国では、一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療センター(担当者:藤崎 美和、衞藤 義勝、sentanken@mt.strins.or.jp、電話044-322-0654 電子音後、内線2758)で測定可能であり、連絡して承諾が得られるようであれば、凍結血清1~2mLを送る。さらに尿に異常な胆汁酸が出現することが東北大学医学部附属病院薬剤部から報告され9)、この異常も診断的価値が高い特異的な検査の可能性があり、現在精度の検証が進められている。診断的価値が高いと考えられる場合、また精度の検証のためにも、東北大学医学部附属病院へ連絡(担当者:前川 正充、m-maekawa@hosp.tohoku.ac.jp)して、凍結尿5mLを送っていただきたい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ ミグルスタット の治療効果C型の肝臓や脾臓には、遊離型コレステロール、スフィンゴミエリン、糖脂質(グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド)、遊離スフィンゴシン、スフィンガニンが蓄積している。一方、脳では、コレステロールやスフィンゴミエリンの蓄積はほとんどなく、スフィンゴ糖脂質、とくにガングリオシッドGM2とGM3の蓄積が顕著である。このような背景から、グルコシルセラミド合成酵素の阻害剤であるn-butyl-deoxynojirimycin(ミグルスタット)を用いてグルコシルセラミド合成を可逆的に阻害し、中枢神経系のグルコシルセラミドを基質とする糖脂質の合成を減少させることで、治療効果があることが動物で確認された。さらに若年型と成人型のC型患者で、嚥下障害と眼球運動が改善することが報告され、2009年EUで、2012年わが国でC型の神経症状の治療薬として承認された。ミグルスタットは、乳児後期型、若年型、成人型の嚥下機能の改善・安定化に効果があり、誤嚥を少なくし、乳児後期型から成人型C型の延命効果に大きく影響することが報告されている。また、若年型のカタプレキシーや乳児後期型の発達の改善がみられ、歩行機能、上肢機能、言語機能、核上性注視麻痺の安定化がみられることが報告されている。乳児早期型では、神経症状の出現前の早い時期に治療を開始すると効果がある可能性が指摘されているが、乳児後期型、若年型、成人型の神経症状の安定化に比較して効果が乏しい。また、脾腫や肝腫大などの内臓症状には、効果がないと報告されている。ミグルスタットの副作用として、下痢、鼓腸、腹痛などの消化器症状が、とくに治療開始後の数週間に多いと報告されている。この副作用はミグルスタットによる二糖分解酵素の阻害によって、炭水化物の分解・吸収が障害され、浸透圧性下痢、結腸発酵の結果起こると考えられている。ほとんどの場合ミグルスタット継続中に軽快することが多く、ロペラミド塩酸塩(商品名:ロペミンほか)によく反応する。また、食事中の二糖(ショ糖、乳糖、麦芽糖)の摂取を減らすことでミグルスタットの副作用を減らすことができる。さらには、ミグルスタットを少量から開始して、増量していくことで副作用を軽減できる。■ ニーマン・ピック病C型患者のその他の治療について2)C型のモデルマウスでは、細菌内毒素受容体Toll様受容体4の恒常的活性化によって、IL-6やIL-8が過剰に産生され、脳内の炎症反応が起こり、IL-6を遺伝的に抑制することで、マウスの寿命が延長することが示唆されている5)。また、モデルマウスに非ステロイド性抗炎症薬を投与すると神経症状の発症が遅延し、寿命が延長することが報告されており6)、C型患者で細菌感染を予防し、感染時の早期の抗菌薬投与と抗炎症薬の投与によって炎症を抑えることが勧められる。また、教科書には記載されていないが、C型患者では早期に瞬目反射が減弱・消失し、まばたきが減少し、この結果眼球が乾燥する。この瞬目反射の異常に対するミグルスタットの効果は不明である。C型患者のケアにあたっては、瞬目反射の減弱に注意し、減弱がある場合には、眼球の乾燥を防ぐために点眼薬を使用することが大切である。4 今後の展望シクロデキストリンは、細胞内コレステロール輸送を改善し、遊離型コレステロールの蓄積を軽減させると、静脈投与での効果が報告されている3)。シクロデキストリンは、髄液の移行が乏しく、人道的使用で髄注を行っている家族もあるが、今後アメリカを中心に臨床試験が行われる可能性がある。また、組み換えヒト熱ショックタンパク質70がニーマン・ピック病C型治療薬として開発されている。そのほか、FDAで承認された薬剤のなかでヒストン脱アセチル化阻害剤(トリコスタチンやLBH589)が、細胞レベルでコレステロールの蓄積を軽減させること4, 7)や筋小胞体からCaの遊離を抑制し、筋弛緩剤として用いられているダントロレンが変異したNPCタンパク質を安定化する8)ことなどが報告され、ミグルスタット以外の治療薬の臨床試験が始まる可能性が高い。5 主たる診療科小児科(小児神経科)、神経内科、精神科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患克服事業 ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班 ライソゾーム病に関して(各論)ニーマン・ピック病C型(医療従事者向けのまとまった情報)鳥取大学医学部N教授Website(ニーマン・ピック病C型の研究情報を多数記載。医療従事者向けのまとまった情報)NP-C Suspicion Index ツール(NPCを疑う症状のスコア化ができる。提供: アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社)The NPC-info.com Information for healthcare professionals に入り、Symptoms of niemann pick type C diseaseにて動画公開(ニーマン・ピック病C型に特徴的な症状のビデオ視聴が可能。提供: アクテリオン株式会社)患者会情報ニーマン・ピック病C型患者家族の会(患者とその患者家族の情報)1)大野耕策(編). ニーマン・ピック病C型の診断と治療.医薬ジャーナル社;2015.2)Vanier MT. Orphanet J Rare Dis.2010;5:16.3)Matsuo M, et al. Mol Genet Metab.2013;108:76-81.4)Pipalia NH, et al. Proc Natl Acad Sci USA.2011;108:5620-5625.5)Suzuki M, et al. J Neurosci.2007;27:1879-1891.6)Smith D, et al. Neurobiol Dis.2009;36:242-251.7)Maceyka M, et al. FEBS J.2013;280:6367-6372.8)Yu T, et al. Hum Mol Genet.2012;21:3205-3214.9)Maekawa M, et al. Steroids.2013;78:967-972.公開履歴初回2013年10月10日更新2016年04月19日

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パーキンソン病治療はどう変わっていくか

 パーキンソン病は「予後が悪い」と説明する医師もいる。しかし、パーキンソン病の予後は決して悪くなく、さらに最近の治療法の進歩によってより良い方向へ変化しつつある。 2016年4月6日、アッヴィ合同会社主催のプレスセミナー「パーキンソン病治療の現状と将来への期待」が行われた。講師は順天堂大学脳神経内科 服部 信孝氏と、全国パーキンソン病友の会常務理事の高本 久氏だ。パーキンソン病治療は今どのような課題があり、今後どう変わっていくのか。セミナーの内容から解説していく。パーキンソン病治療の抱える課題 パーキンソン病の主症状は「手足のふるえ」「筋肉のこわばり」「動作の鈍化」「バランスが取りづらさ」といった運動症状である。一方で、パーキンソン病では「便秘」「睡眠障害」「抑うつ」「関節の変性」「嗅覚障害」といった症状もみられ、これらは非運動症状と呼ばれる。非運動症状は、患者にとってパーキンソン病の症状だとわかりにくいことがある。そのため、受診先に内科・精神科・整形外科を選んでしまい、5~6年間も適切な診断・治療を受けられない患者もいるという。このような患者を「正しい受診先へと導く」ことは今後の大きな課題である。 また、治療法についても課題が挙げられる。全国パーキンソン病友の会が行ったアンケートでは、半分以上の患者が現在の治療に満足しておらず、とくに重症例ではその割合が多い(図1)。また、新しい治療法に対する意識についての質問では、90%以上の患者が「新しい治療法を試したい」という意向を示した(図2)。このことから、パーキンソン病の患者、とくに重症例の患者ではより良い治療法へのニーズが高いという現状がうかがえる。  図1画像を拡大する  図2画像を拡大するパーキンソン病治療はどう変わっていくのか では、今後どのような治療法が期待されているか。現在、薬物治療の中心はL-dopa内服療法であり、多くの患者が症状の改善を実感している。しかし、薬剤が過剰であると「ジスキネジア※1」に、薬剤が効かない・不足していると「オフ※2」になってしまうこと、そして「薬が適切に効いている時間(オン※3)」は病状の進行につれて狭まっていくことが問題になっている。そのためジスキネジアやオフ時間が出にくい薬物療法、または薬物療法以外の治療法に期待が集まっている。 ジスキネジアやオフ時間が出にくいと期待される治療法が「持続性ドパミン刺激療法」だ。ドパミン刺激が持続的になされ、ドパミンの血中濃度が安定することでジスキネジア、wearing off※4といった運動合併症を緩和・発現防止すると考えられている。現在、日本ではレボドパ/カルビドパ合剤を、携帯型注入ポンプ・チューブを介して直接的に十二指腸へ投与する「持続的十二指腸内投与」の治療薬の承認申請も進んでいる。また、薬物療法で症状の改善に限界がある場合には、「脳深部刺激療法」が治療選択肢となる。脳深部に電極を、胸部に小型刺激電源を埋め込み、両者をリード線でつないで脳の奥深くに電流を持続的に流し刺激を与える。この治療法によりジスキネジアやwearing-offの改善が期待でき、薬剤増量が困難な患者における有用な一手となりうる。 「持続的十二指腸内投与」、「脳深部刺激療法」は双方ともパーキンソン病患者のより良い症状改善につながる治療法であるが、手術が必要になるなど、患者と医師にとってはややハードルが高いといえる。服部氏は「海外では治療効果が優先されるが、日本では安全性が重要視される。これらの治療法を行う際、患者や医師のフォローをどのように充実させていくかが課題だ」と述べた。  また、その他の新規治療法として「水素水飲用」「COQ10服用」によるUPDRS※5の改善といったトピックスが注目を浴び、研究が進められている。(図3参照)  図3画像を拡大する パーキンソン病は症状が進行すると非常に多くの薬剤を服薬する必要があり、患者に大きな負担がかかる。また高齢化社会に伴い、パーキンソン病患者は増加すると予想されている。患者により良い治療の選択肢を提案していくためにも、新規治療法の研究には関心が高まっていくだろう。※1 ジスキネジア:体や手足がくねくねと勝手に動くなどの症状(不随意運動)※2 オフ:薬の効果が切れている時間※3 オン:薬が適切に効いている時間※4 wearing off:薬剤の薬効時間が短縮して、薬剤服用前に症状が悪化する現象※5 UPDRS:パーキンソン病統一スケール(Unified Parkinoson's Disease Rating Scale)、パーキンソン病の重症度を点数で表す指標

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パーキンソン病の男女比、加齢でどう変わる?

 男性は女性に比べ、高齢になるほどパーキンソン病を発症しやすいことが明らかとなった。パーキンソン病は女性よりも男性で1.5倍発症しやすいが、男女における発症率の差が年齢によって変化するかどうかはわかっていなかった。そこでフランス・健康監視研究所のMoisan F氏は国民健康保険データからの調査と、22件のコホート研究のメタ解析によって、パーキンソン病の有病率と発症率における男女比率を調査した。その結果、80歳を超える場合では女性よりも男性で発症率が1.6倍以上高まり、年齢に伴い男性の発症率がより高くなることを明らかにした。J Neurol Neurosurg Psychiatry誌オンライン版12月23日号の掲載報告。 研究グループはフランスの国民健康保険のデータを用い、14万9,672のパーキンソン病有症例(女性率50%)と2万5,438の発症例(女性率49%)を抽出した。抽出した症例に対してポアソン回帰分析を用い、有病率と発症率における男女比を全体/年齢別で算出した。 また、22のパーキンソン病に関するコホート研究(1万4,126例、女性率46%)をメタ解析し、年齢と有病率・発症率における男女比の関係を調べた。 主な結果は以下のとおり。・国民健康保険データから識別した症例において、年齢調整有病率・発症率は、女性よりも男性で高かった(男性:有病率=2.865、発症率=0.490、女性:有病率=1.934、発症率=0.328[単位:1000人年])・全体として、男性は女性と比較して有病率が1.48倍(95%CI:1.45~1.51, p<0.001)、発症率が1.49倍(95%CI:1.41~1.57、p<0.001)であった。・男女比はそれぞれ10歳ごとに、有病率で0.05、発症率で0.14増加した。・50歳未満の男女では発症率は大きく変わらず(男女比 <1.2、p>0.20)、80歳を超える場合では女性よりも男性で発症率が1.6倍以上高かった(p trend <0.001)。・コホート研究のメタ解析では、年齢に伴い女性よりも男性で発症率が高くなることが示された(10年ごとに0.26 倍、p trend=0.005)。 研究グループは「男女比が年齢の上昇とともに高まることは、年齢に伴ってパーキンソン病の病因が変化することを示唆している。この結果は、パーキンソン病の病因研究に新たな知見を与え得るだろう」と結論付けている。

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各認知症と尿酸との関連を分析

 血清尿酸(sUA)レベルと認知障害および認知症は関連しうる。この関連性は、認知症のサブタイプによってさまざまで、とくに脳血管性認知症(VaD)とアルツハイマー病(AD)やパーキンソン病関連認知症(PDD)との間では異なる。英国・グラスゴー大学のAamir A Khan氏らは、システマティックレビューとメタ解析により、sUAと認知障害および認知症との関連についてのすべての公開データを統合することを目的とし、検討を行った。Age (Dordrecht, Netherlands)誌2016年2月号(オンライン版2016年1月28日号)の報告。 検討には、sUAと任意の認知機能測定または認知症の臨床診断との関連を評価した研究が含まれた。AD、VaD、PDD、軽度認知障害(MCI)および混合型または未分化の患者によるサブグループ分析を事前に定義した。許可が得られたデータについて、バイアスリスクと一般化可能性を検討し、研究全般における関連性のプールされた基準を評価するため、メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・4,811件中、46件(1万6,688例)が選択基準を満たした。・対照と比較して、認知症の患者ではsUAが低かった(SDM:-0.33 [95%CI])。・AD(SDM:0.33[95%CI])とPDD(SDM:-0.67 [95%CI])では、認知症サブタイプとの関連性が明確に認められたがが、混合型(SDM:0.19 [95%CI])とVaD(SDM:-0.05 [95%CI])では認められなかった。・Mini-Mental State Examination(MMSE)とsUAレベルとの関連性は、PDD患者(summary r:0.16、p=0.003)を除き、関連が認められなかった(summary r:0.08、p=0.27)。 結果を踏まえ、著者らは「本結論は、臨床的な不均一性と試験のバイアスリスクにより限定的である」としたうえで、「sUAと認知症および認知障害との関連は、すべての認知症グループで一貫しているわけではなく、とくにVaD患者では他のサブタイプと異なる場合がある」とまとめている。関連医療ニュース レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究

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ウィルソン病〔Wilson disease〕

1 疾患概要■ 定義肝臓およびさまざまな臓器に銅が蓄積し、臓器障害を来す常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である。■ 疫学わが国での発症頻度は約3万5千人に1人、保因者は約120人に1人とされている。■ 病因・病態本症は、銅輸送ATPase(ATP7B)の遺伝子異常症で、ATP7Bが機能しないために発症する。ATP7B遺伝子の変異は症例によりさまざまで、300以上の変異が報告されている。正常では、ATP7Bは肝細胞から血液および胆汁への銅分泌を司どっており、血液中への銅分泌のほとんどは、セルロプラスミンとして分泌されている。ATP7Bが機能しない本症では、肝臓に銅が蓄積し、肝障害を来す。同時に血清セルロプラスミンおよび血清銅値が低下する。さらに肝臓に蓄積した銅は、オーバーフローし、血液中に出てセルロプラスミン非結合銅(アルブミンやアミノ酸に結合しており、一般に「フリー銅」といわれている)として増加し、増加したフリー銅が脳、腎臓などに蓄積し、臓器障害を来すとされている(図1)。画像を拡大する■ 症状・分類5歳以上のすべての年齢で発症する。40~50歳で発症する例もある。神経型は肝型に比較して、発症年齢は遅く、発症は8歳以上である。ウィルソン病は、症状・所見により、肝型(肝障害のみ)、肝神経型(肝機能異常と神経障害)、神経型(肝機能は異常がなく、神経・精神症状のみ)、溶血発作型、その他に分類される。本症での肝障害は非常に多彩で、たまたま行った検査で血清トランスアミナーゼ(ALT、AST)高値により発見される例(発症前)から、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変などで発症する例がある。神経症状の特徴はパーキンソン病様である。神経型でも肝臓に銅は蓄積しているが、一般肝機能検査値としては異常がみられないだけである。肝機能異常が認められなくても、表1の神経・精神症状の患者では、本症の鑑別のために血清セルロプラスミンと銅を調べるべきである。画像を拡大する神経・精神症状は多彩で、しばしば診断が遅れる。本症患者で当初はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などと誤診されていた例が報告されている。表1の「その他の症状」が初発症状を示す患者もいる。したがって、表1の症状・所見の患者で原因不明の場合は、本症を鑑別する必要がある。■ 予後本症に対する治療を行わないと、病状は進行する。肝型では、肝硬変、肝不全になり致命的になる。肝細胞がんを発症することもある。神経型では病状が進行してから治療を開始した場合、治療効果は非常に悪く、神経症状の改善がみられない場合もある。また、改善も非常に緩慢であることが多い。劇症型肝炎や溶血発作型では、迅速に対応しなければ致命的になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断に有効な検査を表2に示す。また、診断のフローチャートを図2に示す。表2の補足に示すように、診断が困難な場合がある。現在、遺伝子診断はオーファンネットジャパンに相談すれば実施してくれる。画像を拡大する症状から本症を鑑別する場合、まずは血清セルロプラスミンと銅を測定する。さらに尿中銅排泄量およびペニシラミン負荷試験で診断基準を満たせば、本症と診断できる。遺伝子変異が同定されれば確定診断できるが、臨床症状・検査所見で本症と診断できる患者でも変異が同定されない場合がある。確定診断に最も有効な検査は肝銅濃度高値である。しかし、劇症肝不全で肝細胞が著しく壊死している場合は、銅濃度は高くならないことがある。患者が診断されたら、家族検索を行い、発症前の患者を診断することも必要である。鑑別診断としては、肝型では、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎などが挙げられる。神経型はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などである。また、関節症状では関節リウマチ、心筋肥大では心筋症、血尿が初発症状では腎炎との鑑別が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症の治療薬として、キレート薬(トリエンチン、ペニシラミン)、亜鉛製剤がある(表3)。また、治療の時期により初期治療と維持治療に分けて考える。初期治療は、治療開始後数ヵ月で体内に蓄積した銅を排泄する時期でキレート薬を使用し、その後は維持治療として銅が蓄積しないように行う治療で、亜鉛製剤のみでよいとされている。画像を拡大する肝型では、トリエンチンまたはペニシラミンで開始する。神経型では、キレート薬、とくにペニシラミンは使用初期に神経症状を悪化させる率が高い。したがって神経型では、亜鉛製剤またはトリエンチンで治療を行うのが望ましい。ウィルソン病は、早期に診断し治療を開始することが重要である。とくに神経型では、症状が進行すると予後は不良である。早期に治療を開始すれば、症状は消失し、通常生活が可能である。しかし、怠薬し、急激な症状悪化を来す例が問題になっている。治療中は怠薬しないように支援することも大切である。劇症型肝炎、溶血発作型では、肝移植が適応になる。2010年現在、わが国での本症患者の肝移植数は累計で109例である。肝移植後は、本症の治療は不要である。発症前患者でも治療を行う。患者が妊娠した場合も治療は継続する。亜鉛製剤で治療を行っている場合は、妊娠前と同量または75mg/日にする。キレート薬の場合は、妊娠後期には、妊娠前の50~75%に減量する。4 今後の展望1)本症は症状が多彩であるために、しばしば誤診されていたり、診断までに年月がかかる例がある。発症前にマススクリーニングで、スクリーニングされる方法の開発と体制が構築されることが望まれる。2)神経型では、キレート薬治療で治療初期に症状が悪化する例が多い。神経型本症患者の神経症状の悪化を来さないテトラチオモリブデートが、米国で治験をされているが、まだ承認されていない。3)欧米では、本症の診断治療ガイドラインが発表されている。わが国では、2015年に「ウィルソン病診療指針」が発表された。5 主たる診療科小児科、神経内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報ウィルソン病友の会1)Roberts EA, et al. Hepatology. 2008; 47: 2089-2111.2)Kodama H, et al. Brain & Development.2011; 33: 243-251.3)European Association for the Study of the Liver. J Hepatology. 2012; 56: 671-685.4)Kodama H, et al. Current Drug Metabolism.2012; 13: 237-250.5)日本小児栄養消化器肝臓学会、他. 小児の栄養消化器肝臓病診療ガイドライン・指針.診断と治療社;2015.p.122-180.公開履歴初回2013年05月30日更新2016年02月02日

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未治療小児患者への抗精神病薬投与、その影響は

 未治療の小児および未成年者における抗精神病薬の神経学的有害事象への影響について調べた結果、リスペリドンはジスキネジアおよびパーキンソニズムの出現リスクが高いこと、一方でクエチアピンは神経学的有害事象が少ない抗精神病薬であることが明らかにされた。スペインのマドリード・コンプルテンセ大学のMargarita Garcia-Amador氏らが、平均年齢14.4歳の265例について調べ報告した。また、遅発性ジスキネジアリスク増について、低年齢、精神疾患、治療が予測因子であることも報告した。結果を踏まえて著者らは、「抗精神病薬は、未治療および未治療に類する小児集団の神経学的有害事象を増加する。慎重にモニタリングする必要がある」と述べている。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2015年12月号の掲載報告。 研究グループは、未治療(および未治療に類する)小児および未成年者を対象とした抗精神病薬治療の1年間の多施設共同観察研究を行い、抗精神病薬の神経学的有害事象への影響について、人口統計学的、臨床的、治療的要因を評価した。最も使用されている3種の抗精神病薬を投与した被験者サブサンプルと、抗精神病薬未治の被験者サブサンプルを用いて2つのサブ解析を実施した。総ジスキネジアスコア(DyskinesiaS)、総パーキンソンスコア(ParkinsonS)、総UKU-認知機能スコアを算出して評価。また、ロジスティック回帰法で、Schooler-Kaine基準判定後に定義された遅発性ジスキネジアのリスク因子を分析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された被験者は、DSN-4のさまざまな第1軸疾患患者265例(平均年齢14.4[SD:2.9]歳)であった。・観察期間1年において、DyskinesiaS(p<0.001)およびParkinsonS(p<0.001)の増加を認めた。・リスペリドンはクエチアピンに比べ、DyskinesiaSの増加と関連していた(p<0.001)。・クエチアピンと比べて、リスペリドン(p<0.001)、オランザピン(p=0.02)のParkinsonS増加が有意に高かった。・総UKU認識スコアは、観察期間中に低下した。・抗精神病薬未治療患者の解析においても、有意な結果が得られた。・観察期間中に15例(5.8%)がSchooler-Kane基準を満たす遅発性ジスキネジアDを呈した。・観察期間中の遅発性ジスキネジアと関連していたのは、低年齢、精神症状歴、高い累積曝露期間であった。関連医療ニュース 小児への抗精神病薬使用で推奨される血糖検査、その実施率は 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状 青年期統合失調症の早期寛解にアリピプラゾールは有用か?  担当者へのご意見箱はこちら

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パーキンソン病への免荷歩行リハビリ どれほど有効?

 パーキンソン病患者のリハビリテーションの1つとして、機械で足元にかかる重みを軽減した状態で流れるベルトの上を歩行する「部分免荷トレッドミル歩行訓練(PWSTT)」がある。PWSTTのパーキンソン病患者における有用性はこれまで検討されてきたが、運動を行わない場合や、従来の歩行訓練を行った場合と比較した検証はない。このことから、米国イリノイ大学のMohan Ganesan氏らは前向きに研究を行い、運動を行わない群、従来の歩行訓練を行った群と比較して、PWSTを行った群で歩行能力指標が有意に改善することを明らかにした。Archives of physical medicine and rehabilitation誌2015年9月号掲載の報告。 研究グループは、安定量のドパミン受容体作動薬を使用中の特発性パーキンソン病患者60例(平均年齢58歳[SD 15±8.7])を、「歩行訓練を行わない群」「従来の歩行訓練群」「PWSTT群」(各群n=20)の3群に無作為に割り付けた。歩行訓練はどちらも1日30分、週4日間、4週間実施した。主要アウトカムは臨床的重症度と歩行能力指標とした。臨床的重症度はパーキンソン病統一スケール(UPDRS)とそのサブスコアで測定した。歩行能力指標は歩く速度・左右のステップの長さとその変動係数であり、2分間のトレッドミル歩行と10m歩行テストより測定・算出された。アウトカムは、ベースライン時および2週、4週時に評価した。 主な結果は以下のとおり。・「従来の歩行訓練群」と「PWSTT群」では、4週間の歩行訓練により、UPDRS総スコアの有意な改善が見られた。(ベースライン時 vs.4週時 各々p=0.03、p<0.001)・「PWSTT群」は、ベースラインと比較して、4週時においてすべてのUPDRSサブスコア、すべての歩行能力指標で有意な改善を示した。・「PWSTT群」は、「従来の歩行訓練群」と比較して、4週時にすべての歩行能力指標を有意に改善した。 研究グループは、「PWSTTは、パーキンソン病患者における臨床および歩行能力のアウトカムを改善するための有望な介入ツールだ」と結論付けている。

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非精神科医のための、高齢者のうつの特徴と治療法(解説:岡村 毅 氏)-436

 本論文は、高齢者のうつ病治療において治療抵抗性の場合に、抗うつ薬に加えてアリピプラゾールを加える増強療法が、効果に優れ、忍容性も良好であることを示したものである。 明日からの臨床に役立つ、きわめて臨床的な論文だ。では、どう役に立つのかを精神科以外の方々にわかりやすく説明してみたい。 現在、わが国の高齢者は人口の25%を超え、今後40%にまで上昇する。高齢期は、喪失体験、体の病気、社会的役割の変化(多くは減少する)が一般に多くみられ、心理的苦悩は大きい。さらに、単身独居高齢者が増えている。苦悩を緩衝するのは家族や仲間やコミュニティであるが、そういった機会がない高齢者も多い。加えて、高齢期の経済格差は苛烈であり、経済苦を抱える方は多い。うつ病になりやすいのである(細かいことであるが本研究では60歳以上を高齢者としているが、ご承知のとおり、わが国では65歳以上を高齢者とする)。 調査によれば、わが国でうつ病の方がまず受診するのは、精神科・心療内科ではなく、多くの場合内科である。プライマリケアを担う皆さまの外来には、多くの高齢のうつ病の方が受診していることであろうし、今後も増え続けるであろう。 ここから先は、精神科特有のおしゃべりに聞こえるかもしれないが、「こころ」という見えないものを対象とし、また「ことば」で多くが表出される内的世界を、やはり「ことば」で捉えなければならないという精神科特有の事情をご理解いただきたい。さて、高齢期のうつ病はいくつか特徴があるとされてきた。 なかでも、高齢期の焦燥うつ病(agitated depression)はしばしば言及される概念である。うつ病とは元気がなくなり思考が制止した状態と思っている方もいるかもしれないが、焦燥感に苛まれながら多くのことばを語る患者さんもいる。彼らの思考は制止していない、ただ1ヵ所をぐるぐると巡っているだけである。これをうつ状態と躁状態の混合状態と考えた、いにしえの人々もいた。この考え方は、実はうつ病と思っている病態の多くに躁が隠れている(Bipolar spectrum)という、近年の考え方に合致するものであり、精神疾患の分類とは何かという根源的問題を提起する。 おしゃべりが過ぎたので臨床に戻ると、焦燥が非常に強い高齢者のうつは、治療に抵抗性であることが多く、まずは落ち着かねば基本中の基本である休養すら取れないため、抗うつ薬の次に(抗うつ薬内部のクラス変更や抗うつ薬併用ではなく)抗精神病薬による増強療法を選択することが多い。個人的には、SSRIなどで焦燥が賦活されて大変つらい思いをされていた高齢者の方を紹介され、抗精神病薬を少量導入したところ、劇的に改善したという経験は多い。ただし、抗精神病薬の有害事象(パーキンソン症状など)は高齢者には出現しやすいので、専門医でなければ使用を躊躇してしまうかもしれない。パーキンソン症状の少ないクエチアピンという手もあるが、代謝系の副作用が問題になる。 よって今回の報告は、このような方にアリピプラゾールを使うときのリスクベネフィットの評価において、非常に大きな臨床的意思決定の基盤をもたらしてくれた。明日からの臨床に役立つであろう。 さて、おしゃべりに戻ろう。本報告では焦燥うつ病という概念は出てこない。最近のうつ病一般の分類においては「軽症」、「中等・重症だが(妄想などの)精神病症状はない」、「中等・重症で精神病症状を伴う」とすることが支配的で、焦燥うつ病や躁うつ混合状態などは一般的でなく、エビデンスとする(社会に還元する)にはこの思考に乗らねばならない。しかし、実地臨床においては焦燥うつ病は使える概念であり、専門医以上の精神科医は皆知っている概念である。 説明は以上であるが、伝わったであろうか。精神科医はついおしゃべりが過ぎる傾向があるが、私のつたないコラムで、精神科の臨床が一方で最新のエビデンスに目を配りつつ、一方では現在支配的ではない思想も知識として知っていなければならず、また最終的には目の前の個人の固有のQOLを目指すものである、という感じでやっていますということが伝われば本望である。

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レビー小体病変を伴うアルツハイマー病、その特徴は

 遅発性アルツハイマー病(AD)では、しばしばレビー小体病変が認められる。韓国・仁済大学校医科大学のEun Joo Chung氏らは、レビー小体病変の存在がADの臨床表現型や症状進行に影響を及ぼすかどうかを検討する目的で、レトロスペクティブな病理学的コホート研究を行った。その結果、AD病変とレビー小体病変の両方を有する患者とAD病変のみの患者とでは臨床表現型が異なり、両者を識別できることが明らかとなった。著者らは、「ADにおけるレビー小体の頻度やレビー小体とAPOEε4アレルとの関係から、ADとレビー小体の病理学的なメカニズムは共通していることが示唆される」とまとめている。JAMA Neurology誌オンライン版2015年5月18日号の掲載報告。 研究グループは、米国・国立老化研究所とレーガン研究所による神経病理学的診断基準で、ADである可能性が高い(または中間)の基準を満たした531例の剖検例について、死亡前2年以内の臨床評価と剖検により得られた神経病理学的評価を解析した。主な結果は以下のとおり。・死亡年齢(平均[SD])は、レビー小体を伴うAD(LB併存AD)患者が、レビー小体を伴わないAD(非併存AD)患者より、統計学的に有意に低かった(77.9 [9.5]歳vs. 80.2 [11.1]歳、p=0.01)。・認知症発症年齢(平均[SD])も、LB併存AD患者が非併存AD患者より有意に低かった(70.0 [9.9]歳vs. 72.2 [12.3]歳、p=0.03)。・女性より男性のほうが、LB併存AD患者が多かった(p=0.01)。・1つ以上のAPOEε4アレル保有者の割合は、LB併存AD患者が非併存AD患者より有意に高かった(p=0.03)。・Neuropsychiatric Inventory Questionnaireスコア(平均[SD])は、年齢、性別、教育、老人斑/拡散斑の頻度、神経原線維変化ステージで補正後も、LB併存AD患者(6.59 [1.44]、95%信頼区間[CI]:3.75~9.42)が、非併存AD患者(5.49[1.39]、同:2.76~8.23)より有意に高かった(p=0.04)。・同様にパーキンソン病統一スケール(UPDRS)の運動スコアも、LB併存AD患者(0.81 [0.18]、95%CI:0.45~1.17)が、非併存AD患者(0.54 [0.18]、同:0.19~0.88)より有意に高かった(p<0.001)。関連医療ニュース 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は せん妄はレビー小体型認知症のサイン

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パーキンソン病はスマホで検出可能

 パーキンソン病は専門医による診断が不可欠であるが、これまで専門医の診断をサポートする遠隔非侵襲的客観テストはほとんどなかった。そこで英国・アストン大学のS Arora氏らは、スマートフォンを用いたパーキンソン病診断の有用性についてパイロットスタディを行った。その結果、スマートフォンを用いてパーキンソン病の症状を評価することは可能であり、診断サポートツールとして潜在的な価値があることがわかった。Parkinsonism & Related Disorders誌オンライン版2015年3月7日号の掲載報告。 本試験の対象者は、パーキンソン病患者10例と対照群10例。被験者は統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)を含めたベースライン評価をクリニックで行い、声・姿勢・歩行・指タッピング・反応時間を測定するためのスマートフォンアプリが入ったアンドロイド携帯を支給された。 被験者はスマートフォンを自宅に持ち帰り、1日4回5つのタスクを1ヵ月間実施した。試験期間中、週に1回パーキンソン病の専門医による遠隔医療が行われ、固縮とバランス評価を除いたUPDRSが評価された。5つのタスクの記録について統計的分析を行い、1)パーキンソン病の有無が判別可能か、2)UPDRSの運動領域の変化を予測できるか、を検討した。 主な結果は以下のとおり。・20例の参加者は試験期間中(平均34.4日)、自宅や地域で1日平均2.7回テストを行った(遵守率68.9%)。・5つのタスクの解析結果は、パーキンソン病患者と対照群とで異なっていた。・パーキンソン病の検出感度は96.2%(標準偏差[SD]:2%)、特異度は96.9%(SD:1.9%)であった。・UPDRS(範囲:11~34)の運動領域の変化予測における平均誤差は1.26(SD:0.16)であった。

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山中伸弥氏が語るiPS細胞研究の発展と課題

 2015年3月19日、日本再生医療学会にて、京都大学 iPS細胞研究所(Center for iPS Cell Research and Application, Kyoto University、以下CiRA)の山中 伸弥氏が「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」と題して講演した。進むiPS細胞再生医療 理化学研究所などのiPS細胞を使った加齢黄斑変性患者を対象とした臨床研究が承認され、iPS細胞研究の医療応用に向けて大きな一歩を踏み出した。CiRAでもいくつもの研究が進んでいる。パーキンソン病:ドパミン産生神経細胞の高純度の作製に成功し、現在サルのパーキンソン病モデルを用いて効果と安全性を検証中である。良好な結果であることから、年内に臨床研究の申請へと進める予定である。iPS細胞による輸血:血小板の元である巨核球、赤血球前駆細胞作製に成功。とくに血小板は大量培養のシステムを確立している。早い段階で臨床研究に入ると予想される。血小板も赤血球も放射線を当てることができ、増殖性の残っている細胞はすべて殺せるため安全性を確保できるという。本邦は急速な高齢化により今後10年以内に献血だけでは輸血が補えなくなると予想される。このように献血を補うアプローチは喫緊の課題だ。糖尿病:2次元カルチャーと3次元カルチャーでアプローチしている。2次元カルチャーでは、すでにiPS細胞からインスリン産生細胞の作製に成功している。マウスへの移植で血中のヒトC-ペプチドが増加することも確認されている。将来糖尿病の再生医療を実現。また3次元カルチャーでは、iPS細胞から膵臓を丸ごとつくることを目指す。現在、膵臓のオルガノイド作製に成功しており、今後の発展に期待がかかる。心筋再生治療:大阪大学では、すでに骨格筋芽細胞シートで重症心不全に対する良好な成績をあげているが、iPS細胞由来の心筋細胞シートについても大阪大学との共同研究で、作製に成功。動物での改善が示されている。さらに、心筋細胞シートに加え、心筋、内皮細胞、血管壁細胞で構成された心臓細胞シートの作製に成功。こちらも動物モデルで有意な心機能の改善が確認されている。心臓移植の待機中に亡くなる方も少なくない。そのような患者の延命につながると期待される。関節疾患:関節軟部疾患に対する再生医療アプローチを行っており、ヒトiPS細胞からの軟骨細胞作製に成功している。iPS細胞由来の軟骨細胞の移植により外傷等比較的欠損が小さい症例への治療に期待がかかる。筋ジストロフィー:筋ジストロフィー患者由来のiPS細胞から骨格筋幹細胞を作製し、この細胞を筋ジストロフィーモデルの免疫不全マウスへ移植することで病態の再現に成功。今後臨床応用を目指す。iPS細胞によるがん免疫の若返り:T細胞などの免疫細胞はがん細胞を攻撃するが、加齢に伴い免疫細胞は疲弊し、がん細胞の増殖転移が進む。そこで、がん細胞を攻撃する特定のT細胞を採取し、その細胞からiPS細胞を誘導・増殖させ、攻撃特性を持ったT細胞を再び作製することに成功している。がんに対する将来の治療として期待される。再生医療用iPS細胞ストック 倫理問題、費用、時間など多くの面で自家移植には限界がある。iPS細胞による再生医療を実現するためには、他家移植が主流となる。CiRAではiPS細胞をストックする計画を進めている。京大病院のiPS外来では患者の診察とともにiPS細胞ドナー候補ボランティアから献血を行っている。採取した血液はCiRA内のCPCに持ち込まれ、iPS細胞の樹立を行っている。  しかしながら、拒絶反応を減らすためにはHLAの一致が必要。HLAは膨大なバリエーションがあり、一致する確率はきわめて低い。効率よく一致させるためには、HLAホモドナーからの細胞作製が必須だ。日本人で最頻度のHLAタイプのホモドナー1人からiPS細胞をつくると、日本人の20%をカバーできる。違うホモで作製すると80%、140人で95%がカバーできる。最初の目標は日本人の50%のカバーだという。とはいえ、数十人のホモドナーを見つけるには数十万人を調べる必要がある。そのため、臍帯血バンク、日本赤十字社、骨髄バンクといったHLAの情報を管理している外部との連携を進めている。医療応用に必要な人材の確保 iPS細胞の研究には研究者だけでなく、優秀な技術員、規制専門家、契約専門家、知財専門家、広報専門家、事務職員など多くの人材が必要である。一方、国立大学の定員ポストは研究員のみである。実際のCiRAでは300人以上が雇用されているが、無期雇用は1割で、残りの9割は有期雇用である。これは国立大学の研究機関に共通する課題であり、安定雇用に活用できる運営費交付金の割合を増やすよう要望している。 とはいえ、米国では州からの援助は予算の5%。残りの95%はトップがさまざまなスポンサーから集め、安定的な雇用を確保している。そのため、CiRAもiPS細胞基金を立ち上げ、山中氏自ら活動し、研究者の長期雇用、研究環境改善、若手研究者教育に資金を募っているという。iPS細胞研究基金HP

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難治性しゃっくり、抗精神病薬で治るのはなぜか

 しゃっくりは横隔膜のリズミカルな不随意運動であり、延髄や脊柱上の吃逆中枢の神経核機能阻害などさまざまな条件により引き起こされる。しゃっくりの病態に関与する神経伝達物質や受容体は十分に定義されていないが、ドパミンは重要な役割を果たすと考えられている。難治性のしゃっくりの治療には、クロルプロマジンや他の抗精神病薬が使用されることがあるが、その有効性は限られている。島根県・清和会西川病院の西川 正氏らは、難治性しゃっくり患者のエピソードを紹介した。Annals of general psychiatry誌オンライン版2015年3月5日号の報告。 本ケースレポートは、数週間または数ヵ月持続するストレス誘発性の難治性しゃっくりの2つのエピソードを経験した18歳の患者について報告するものである。 主な結果は以下のとおり。・どちらのエピソードでも、ハロペリドールを最初に使用したが、有意な効果は認められなかった。・対照的に、ドパミンとセロトニンに拮抗作用を有する第2世代抗精神病薬であるリスペリドンを使用すると、しゃっくりは6時間後に完全に止まった。・本ケースレポートは、1人の患者に対し2種類の抗精神病薬を使用し、薬物治療効果が明らかに異なった、数少ない症例報告の1つである。 結果を踏まえ、著者らは「しゃっくり症例の病態生理にはドパミン作動系に加え、セロトニン作動系が関与している可能性があり、リスペリドンのようなセロトニン作動性抗精神病薬を難治性しゃっくりの薬物治療選択肢として考慮すべきである」とまとめている。関連医療ニュース 強迫的行動の抑制にセロトニン5-HT2Aが重要 パーキンソン病患者でみられる衝動性にセロトニンが関与か EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症患者のEPSと認知機能の関連は

 カナダ・トロント大学のGagan Fervaha氏らは、統合失調症患者における錐体外路症状(EPS)と、認知障害との関連を調べた。結果、EPSの重症度と認知テストの低スコアとが強く結び付いていることを実証した。EPSは統合失調症における最も一般的な運動障害である。同患者の運動障害は、抗精神病薬を服用していない患者でも認められるが、認知といった疾患のその他の特性との関連については十分に解明されていなかった。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年12月1日号の掲載報告。 検討は、統合失調症患者で、あらゆる抗精神病薬または抗コリン薬の投与を受けていない325例を対象に行われた。被験者は、Clinical Antipsychotic Treatment of Intervention Effectiveness試験のベースライン訪問に関与していた患者であった。EPSの評価には、Simpson-Angus尺度が用いられ、認知の評価は、総合的な神経心理学的テストにて行われた。EPSと認知テスト結果との関連性について、数的および分類学的両面から評価した。 主な結果は以下のとおり。・EPSの重症度がより大きいと、複合スコア評価による認知テストの結果は、より悪化するという有意な関連が認められた。・86例の患者はパーキンソン症候群を有していることが特定された。これらの患者は非パーキンソン症候群患者と比べて認知テストの結果は悪かった。・同所見は、精神病理、鎮静、アカシジア、ジスキネジアなどの重症度といった変数で補正後も有意なままであった。・これらの結果は、神経筋および神経認知の障害の基礎を成す病態生理が共通していることを示す。ただし、パーキンソン症候群がテストを受ける能力を障害している可能性もある。・いずれにせよ機序に関係なく、認知障害に関する推論は、EPSの存在を考慮すべきであることを示唆するものであり、認知試験の所見を媒介するその他の変数と同様の示唆を与えるものと思われた。関連医療ニュース 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は 統合失調症患者の認知機能低下への関連因子は 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学  担当者へのご意見箱はこちら

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【医療ニュース トップ100】2014年、最も読まれた「押さえておくべき」医学論文は?

今年も、4大医学誌の論文を日本語で紹介する『ジャーナル四天王』をはじめ、1,000本以上の論文をニュース形式で紹介してきました。その中で、会員の先生方の関心の高かった論文は何だったのでしょう? ここでは、アクセス数の多いものから100本を紹介します。 1位 日本男性の勃起硬度はアレと関連していた (2014/11/13) 2位 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学 (2014/1/7) 3位 子供はよく遊ばせておいたほうがよい (2014/3/28) 4位 思春期の精神障害、多くは20代前半で消失/Lancet (2014/1/27) 5位 なぜコーヒーでがんリスクが低下? (2014/7/31) 6位 メロンでかゆくなる主要アレルゲンを確認 (2014/4/15) 7位 新たな輸液プロトコル、造影剤誘発急性腎障害の予防に有効/Lancet (2014/6/9) 8位 体幹を鍛える腹部ブレーシング、腰痛に効果 (2014/5/7) 9位 コーヒーを多く飲む人は顔のシミが少ない (2014/8/7) 10位 スタチンと糖尿病リスク増大の関連判明/Lancet (2014/10/9) 11位 スルピリドをいま一度評価する (2014/5/16) 12位 米国の高血圧ガイドライン(JNC8)のインパクト/JAMA (2014/4/16) 13位 インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet (2014/6/16) 14位 新規経口抗凝固薬4種vs.ワルファリン-心房細動患者のメタ解析-/Lancet (2013/12/25) 15位 アルコール依存症、薬物治療の減酒効果は?/JAMA (2014/5/29) 16位 SGLT2阻害薬「トホグリフロジン」の日本人への効果 (2014/2/28) 17位 大人のリンゴ病 4つの主要パターン (2014/7/29) 18位 脳動脈瘤、コイルvs. クリッピング、10年転帰/Lancet (2014/11/12) 19位 ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM (2014/9/8) 20位 アルツハイマーに有用な生薬はコレ (2014/11/14) 21位 塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM (2014/8/25) 22位 スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA (2014/4/14) 23位 食後血糖によい食事パターンは?(低脂肪vs低炭水化物vs地中海式) (2014/3/27) 24位 成人ADHDをどう見極める (2014/5/21) 25位 各種ダイエット法の減量効果/JAMA (2014/9/16) 26位 牛乳1日3杯以上で全死亡リスクが2倍/BMJ (2014/11/13) 27位 腰痛持ち女性、望ましい性交体位は? (2014/11/21) 28位 ロマンチックな恋愛は幸せか (2014/3/26) 29位 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 (2014/5/8) 30位 下肢静脈瘤、ベストな治療法は?/NEJM (2014/10/10) 31位 せん妄管理における各抗精神病薬の違いは (2014/9/18) 32位 降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA (2014/9/11) 33位 深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ (2014/3/20) 34位 StageII/III大腸がんでのD3郭清切除術「腹腔鏡下」vs「開腹」:ランダム化比較試験での短期成績(JCOG 0404) (2014/2/26) 35位 たった1つの質問で慢性腰痛患者のうつを評価できる (2014/2/21) 36位 スタチン時代にHDL上昇薬は必要か/BMJ (2014/8/7) 37位 就寝時、部屋は暗くしたほうがよいのか:奈良医大 (2014/8/29) 38位 認知症のBPSD改善に耳ツボ指圧が効果的 (2014/10/28) 39位 統合失調症患者の突然死、その主な原因は (2014/4/18) 40位 うつ病と殺虫剤、その関連が明らかに (2014/7/9) 41位 帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ (2014/5/26) 42位 慢性のかゆみ、治療改善に有用な因子とは? (2014/7/1) 43位 女性の顔の肝斑、なぜ起きる? (2014/5/8) 44位 DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet (2014/7/30) 45位 駆出率が保持された心不全での抗アルドステロン薬の効果は?/NEJM (2014/4/23) 46位 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は (2014/10/30) 47位 アトピー性皮膚炎患者が避けるべきスキンケア用品 (2014/2/6) 48位 タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究 (2014/6/18) 49位 世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見 (2014/10/17) 50位 円形脱毛症とビタミンDに深い関連あり (2014/4/10) 51位 不眠の薬物療法を減らすには (2014/7/23) 52位 オメプラゾールのメラニン阻害効果を確認 (2014/11/6) 53位 タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA (2014/1/16) 54位 ICUでの栄養療法、静脈と経腸は同等/NEJM (2014/10/15) 55位 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット (2014/3/17) 56位 COPDにマクロライド系抗菌薬の長期療法は有効か (2014/1/13) 57位 座りきりの生活は心にどのような影響を及ぼすか (2014/5/12) 58位 PSA検診は有用か:13年後の比較/Lancet (2014/8/22) 59位 気道感染症への抗菌薬治療 待機的処方 vs 即時処方/BMJ (2014/3/17) 60位 血圧と12の心血管疾患の関連が明らかに~最新の研究より/Lancet (2014/6/19) 61位 マンモグラフィ検診は乳がん死を抑制しない/BMJ (2014/2/21) 62位 機能性便秘へのプロバイオティクスの効果 (2014/8/14) 63位 超高齢の大腸がん患者に手術は有用か:国内での検討 (2014/2/14) 64位 糖尿病予防には歩くよりヨガ (2014/8/4) 65位 乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet (2014/3/31) 66位 75歳以上でのマンモグラフィ検診は有効か (2014/8/11) 67位 大腸がん術後の定期検査、全死亡率を減少させず/JAMA (2014/1/23) 68位 「歩行とバランスの乱れ」はアルツハイマーのサインかも (2014/5/13) 69位 食事由来の脂肪酸の摂取状況、国によって大きなばらつき/BMJ (2014/4/28) 70位 心房細動合併の心不全、β遮断薬で予後改善せず/Lancet (2014/9/19) 71位 薬剤溶出ステントの直接比較、1年と5年では異なる結果に/Lancet (2014/3/24) 72位 ピロリ除菌、糖尿病だと失敗リスク2倍超 (2014/8/21) 73位 認知症にスタチンは有用か (2014/7/25) 74位 RA系阻害薬服用高齢者、ST合剤併用で突然死リスク1.38倍/BMJ (2014/11/20) 75位 腰痛へのアセトアミノフェンの効果に疑問/Lancet (2014/8/6) 76位 食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究 (2014/9/12) 77位 うつになったら、休むべきか働き続けるべきか (2014/9/16) 78位 英プライマリケアの抗菌治療失敗が増加/BMJ (2014/10/1) 79位 総胆管結石疑い 術前精査は必要?/JAMA (2014/7/21) 80位 歩くスピードが遅くなると認知症のサイン (2014/10/8) 81位 前立腺がん、全摘vs.放射線療法/BMJ (2014/3/10) 82位 緑茶が認知機能低下リスクを減少~日本の前向き研究 (2014/6/3) 83位 高力価スタチンが糖尿病発症リスクを増大させる/BMJ (2014/6/16) 84位 乳がんの病理学的完全奏効は代替エンドポイントとして不適/Lancet (2014/2/27) 85位 Na摂取増による血圧上昇、高血圧・高齢者で大/NEJM (2014/8/28) 86位 抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与か (2014/8/15) 87位 歩数を2,000歩/日増加させれば心血管リスク8%低下/Lancet (2014/1/8) 88位 肩こりは頚椎X線で“みえる”のか (2014/3/19) 89位 地中海式ダイエットと糖尿病予防 (2014/4/7) 90位 閉塞性睡眠時無呼吸、CPAP vs. 夜間酸素補給/NEJM (2014/6/26) 91位 揚げ物は肥満遺伝子を活性化する?/BMJ (2014/4/3) 92位 6.5時間未満の睡眠で糖尿病リスク上昇 (2014/9/4) 93位 セロトニン症候群の発現メカニズムが判明 (2014/3/14) 94位 日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究 (2014/6/20) 95位 肥満→腰痛のメカニズムの一部が明らかに (2014/8/8) 96位 低炭水化物食 vs 低脂肪食 (2014/8/7) 97位 認知症患者の調子のよい日/ 悪い日、決め手となるのは (2014/3/21) 98位 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか (2014/7/2) 99位 血糖降下強化療法の評価―ACCORD試験続報/Lancet (2014/8/20) 100位 小児BCG接種、結核感染を2割予防/BMJ (2014/8/21) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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レビー小体型認知症の排尿障害、その頻度は:東邦大学

 レビー小体型認知症(DLB)は、認知症の中でも2番目に多い疾患であるが、DLB患者の下部尿路(LUT)機能については、これまで十分に検討されてこなかった。東邦大学医療センター佐倉病院の舘野 冬樹氏らは、尿流動態検査により、DLBのLUT機能を調べた。Movement disorders誌オンライン版2014年10月30日号の報告。 対象はDLB患者32例(男性:23例、女性:9例、年齢:59~86歳[平均:75.9歳]、罹病期間:0.2~17年[平均:3.3年])。すべての患者において筋電図-膀胱内圧測定を実施し、21例で括約筋の運動単位電位分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・DLB患者の91%はLUT症状を有していた(夜間頻尿[>8回]84%、尿失禁[>1回/週]50%)。・排尿筋過活動は87.1%でみられ、排尿後の残尿量は最小であった。・神経原性変化は50%で認められた。 LUT機能不全はDLBに共通の特徴であり、認知症や不動状態だけでなく、中枢および末梢の体性-自律神経障害に起因すると考えられる。関連医療ニュース レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 レビー小体型認知症、アルツハイマー型との違いは?

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レビー小体病を画像診断で層別解析

 パーキンソン病(PD)、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)は、レビー小体病(LBD)と総称される。神経症状を欠く一次性レビー小体病(pure psychiatric presentation:PPP)は、明らかなパーキンソン症候がなく、長年にわたり認知障害が続くという精神症状において、第四のサブタイプといえるかもしれない。石川県・粟津神経サナトリウムの小林 克治氏らは、60例のmeta-iodobenzylguanidine(MIBG)心筋シンチグラフィー検査の解析を行い、層別解析結果を報告した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2014年10月22日号の掲載報告。 本研究では、心筋MIBG検査で低集積がみられる被験者が、PPPを有するかを検討することが目的であった。心筋MIBGを受けた60例(女性28例、男性32例)を、精神医学的な画像診断に基づき、うつ病群(D群、27例)、単独幻視群(V群16例)、精神病群(P群17例)の3群に層別化した。56例については、脳SPECT検査も行われ、37例で血流低下が認められ、19例で異常所見はみられなかった。それらに基づき最終的な診断(PD、PDD、DLB、PPP)を、DSM-IV、統合パーキンソン病評価尺度(UPDRS)、Mini-mental state examination(MMSE)を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・D群(うつ病)患者のうち、40%はパーキンソン症候を伴わないうつ病と診断された。しかし、約50%は典型的なパーキンソン症候が認められた。・P群(精神病)患者の大半は、PDDまたはDLBの病像を呈した。・統計的分析により、「V-DLB後頭葉血流低下群」「SPECT異常なしD-PD群」「側頭葉血流低下P-PDD群」「SPECT異常なしD-PPP群」の4つの組み合わせが示された。・PPPは大うつ病性障害を特徴とし、LBD予備群、PDのうつの前駆症状の可能性がある。PDDを特徴付けるにあたり、精神病と認知症は質的に同等であった。関連医療ニュース レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 たった2つの質問で認知症ルールアウトが可能

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