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ペリー症候群〔Perry syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ペリー症候群は、パーキンソニズム、うつ・アパシー、原因不明の体重減少、中枢性呼吸障害を来す常染色体優性の家族性パーキンソン病である。ペリー症候群はDCTN1遺伝子が原因遺伝子であり、病理学的にはTAR DNA-binding protein 43(TDP-43)プロテイノパチーに分類される1,2)。■ 疫学ペリー症候群は、世界でこれまでに20家系を超える報告があり、世界中に分布しているが、わが国からは5家系の報告がある。うち4家系は九州にみられるが、それぞれの変異は異なる。他の家族性パーキンソン病と比較しても、まれな疾患である。■ 病因ペリー症候群は、DCTN1遺伝子が原因遺伝子であり、DCTN1はダイナクチン複合体の最も大きなサブユニットであるp150gluedをコードする。ダイナクチン複合体は微小管に沿って細胞内輸送を行い、ペリー症候群の遺伝子変異はp150gluedの微小管結合部位あるいはその近傍に認める1)。培養細胞研究ではペリー症候群遺伝子変異を過剰発現させた細胞で微小管結合能低下が報告されている3)。病理学的検討によりパーキンソニズムは黒質のドパミン神経細胞脱落と、うつは縫線核や青斑核の神経細胞脱落と、中枢性呼吸障害は延髄腹外側のpre-Botzinger complex(注:Botzingerのoはウムラウトが付く)の神経細胞脱落との関連が報告されている4,5)。体重減少については、視床下部の神経細胞減少との関連の可能性が報告されている4)。ペリー症候群はTDP-43プロテイノパチーに分類されるが、筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭型認知症とはTDP-43凝集体の分布が異なり、ペリー症候群では脳幹部、基底核に局在するTDP-43病理がみられる。また、TDP-43凝集体は、neuronal cytoplasmic inclusions(NCIs)、neuronal intranuclear inclusions(NIIs)、dystrophic neurites(DNs)、axonal spheroids、oligodendroglial cytoplasmic inclusions(GCIs)、perivascular astrocytic inclusions(PVIs)に分類され、筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭型認知症ではNCIsやGCIsが多くみられるが、ペリー症候群ではNCIsやDNs、PVIsが多くみられる2)。ペリー症候群のTDP-43凝集体の電子顕微鏡像も筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭型認知症とは異なり、アルツハイマー病に類似している。筆者らの検討では、ペリー症候群脳ではさらにダイナクチン蛋白凝集もみられたが、これらは筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭型認知症ではみられなかった2)。以上よりペリー症候群は、筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭型認知症とは病理学的特徴が異なり、新たなTDP-43プロテイノパチーといえる。■ 症状・予後ペリー症候群は、パーキンソニズム、うつ・アパシー、原因不明の体重減少、中枢性呼吸障害の4徴候が特徴である。ペリー症候群は、孤発性パーキンソン病と比較して若年発症で経過が早く、わが国のペリー症候群の発症年齢は48歳前後で(範囲:35~70歳)、罹患期間が約5年(範囲:2~12年)である。筋強剛、動作緩慢、姿勢保持障害がみられ、体重は半年単位で10kg以上の減少がみられる症例が多い。うつやアパシーが高頻度でみられ、うつは重症であることが多い。睡眠障害の合併もみられ、不眠、中途覚醒の頻度が多い。夜間に呼吸不全に陥る症例が多く、死亡原因は呼吸不全、肺炎、自殺、突然死などである。認知機能障害や前頭葉症状、自律神経障害、嚥下障害、垂直性の眼球運動制限などの眼球運動障害の報告もある1)。これまでの家系報告では家系間において類似した臨床症状、臨床経過を呈すると報告されてきたが、大牟田家系(F52L変異)では他の家系と比較し、発症年齢が高く、進行も緩徐である1,3)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査頭部MRIで特異的な所見を示さないことが多いが、進行期に前頭葉萎縮を示す症例や脳血流SPECT検査で前頭葉に血流低下を認める症例もある1)。ドパミントランスポーターシンチグラフィやMIBG心筋シンチグラフィーでの取り込み低下の報告もある1,3)。■ 遺伝学的検査2009年に筆者らとメイヨー・クリニック(米国)のグループによりDCTN1原因遺伝子変異が発見され、現在までに9つの遺伝子変異(p.F52L、p.K56R、p.G67D、p.G71A、p.G71E、p.G71R、p.T72P、p.Q74P、p.Y78C)が報告されている。ペリー症候群の診断においてDCTN1遺伝子変異の検出が必要であるが、遺伝学的検査施行に先立って遺伝カウンセリングを行う必要がある。■ 鑑別診断他の遺伝性パーキンソン病や進行性核上性麻痺、MAPT変異を伴う前頭側頭葉変性症などが鑑別となる。病初期においては孤発性パーキンソン病と鑑別が困難な症例も存在する1,3)。垂直性眼球運動障害を呈するペリー症候群患者の症例もあり、進行性核上性麻痺との鑑別が必要である1)。わが国から、MAPT変異を伴う前頭側頭葉変性症患者で、ペリー症候群患者でみられる4徴候を呈した症例が報告されたが、剖検脳ではTDP-43病理はみられなかった6)。■ 診断基準筆者らは診断基準を作成した1)。作成した診断基準を次に示す。確実例は、(1)パーキンソニズムとパーキンソニズムの家族歴または中枢性の低換気や無呼吸の家族歴を伴い、DCTN1遺伝子変異を認める症例、(2)ペリー症候群の4徴候を認め、DCTN1遺伝子変異を認める症例、(3)ペリー症候群の4徴候を認め、神経病理学的検討で黒質の神経細胞死とTDP-43病理を認める症例である。ただし、DCTN1遺伝子変異以外の遺伝子変異がみられる場合は、黒質の神経細胞死とTDP-43病理を認めること、神経病理で他の神経変性疾患に特徴的な所見がみられた場合は、DCTN1遺伝子変異を検出する必要がある。ペリー症候群診断基準1)(A 症状)(主要症状(家族歴を含む)1)パーキンソニズム(動作緩慢、筋強剛、姿勢時振戦を含む振戦、姿勢保持障害のうち2つ以上の症状)2)うつまたはアパシー3)低換気や無呼吸などの呼吸障害(心疾患や呼吸器疾患に伴わない症状)4)原因不明の体重減少5)パーキンソニズムの家族歴または中枢性の低換気や無呼吸の家族歴支持症状1)5年以内の急速な症状の進行2)50歳未満の発症B 検査項目(遺伝子変異および病理所見)1)DCTN1遺伝子変異2)神経病理学的検討で黒質の神経細胞死とTDP-43病理(主に脳幹や基底核の神経細胞質内のTDP-43陽性の凝集体、神経細胞核やグリア細胞にTDP-43陽性凝集体が認められる)C 参考項目症状1)認知機能障害2)前頭葉症状3)眼球運動障害(垂直性の眼球運動制限など)4)自律神経障害5)睡眠障害検査所見1)頭部MRI/CTは正常もしくは前頭側頭葉の萎縮2)脳ドパミントランスポーターシンチグラフィで線条体への取り込み低下3)MIBG心筋シンチグラフィーで心筋への取り込み低下4)脳血流シンチグラフィーで前頭側頭葉の血流低下D 鑑別診断パーキンソン病、進行性核上性麻痺、MAPT変異を伴う前頭側頭葉変性症など<診断のカテゴリー>・確実1)主要症状の1)パーキンソニズムと5)パーキンソニズムの家族歴または中枢性の低換気や無呼吸の家族歴を伴い、検査項目の1)DCTN1遺伝子変異を認めること。2)主要症状の1)パーキンソニズム、2)うつまたはアパシー、3)低換気や無呼吸などの呼吸障害、4)原因不明の体重減少を伴い、検査項目の1)DCTN1遺伝子変異を認めるか、2)神経病理学的検討で黒質の神経細胞死とTDP-43病理を認めること。※DCTN1遺伝子変異以外の遺伝子変異もしくは神経病理で他の神経変性疾患に特徴的な所見がみられた場合は、検査項目の1)DCTN1遺伝子変異を認めるか、2)神経病理学的検討で黒質の神経細胞死とTDP-43病理を認めることの両方の基準を満たす必要がある。・ほぼ確実主要症状のすべての項目を満たす。・可能性がある主要症状の1)パーキンソニズムと5)パーキンソニズムの家族歴または中枢性の低換気や無呼吸の家族歴を伴い、支持症状の1)5年以内の急速な症状の進行または2)50歳未満の発症を認めること。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)L-dopa治療効果はほぼ全例にみられるが、孤発性パーキンソン病と比較して効果は乏しく、早期に運動合併症がみられる。孤発性パーキンソン病と同様にpundingや衝動制御障害の報告もある1)。うつに対して抗うつ薬などの薬物療法が考慮されるが効果は乏しい1)。中枢性呼吸障害に対しては、人工呼吸器管理が必要である。ペリー症候群患者で横隔膜ペーシングを導入した報告があり1)、人工呼吸器装着を回避できる画期的な治療法となる可能性がある。4 今後の展望ペリー症候群はパーキンソニズム、うつ・アパシー、原因不明の体重減少、中枢性呼吸障害の4徴候がみられ、DCTN1遺伝子が原因遺伝子で、病理学的にはTDP-43プロテイノパチーに分類される。筆者らは前述のようにペリー症候群の診断基準を作成し、臨床、病理、遺伝学的疾患概念としてペリー病への名称変更を提唱した1)。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター ペリー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Mishima T,et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2018;89:482-487.2)Mishima T, et al. J Neuropathol Exp Neurol. 2017;76:676-682.3)Araki E, et al. Mov Disord. 2014;29:1201-1204.4)Wider C, et al. Parkinsonism Relat Disord. 2009;15:281-286.5)Tsuboi Y, et al. Acta Neuropathol. 2008;115:263-268.6)Omoto M, et al. Neurology. 2012;78:762-764.公開履歴初回2018年07月24日

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高齢者うつ病に対するアリピプラゾール増強療法に関連する錐体外路症状の臨床的予測因子

 治療抵抗性高齢者うつ病(LLD:late-life depression)に対するアリピプラゾール増強療法は、効果的な治療法である。しかし、アリピプラゾールは、パーキンソン病やアカシジアのような錐体外路症状(EPS)を引き起こす可能性があり、これが治療中止の一因となることがある。カナダ・トロント大学のJonathan H. Hsu氏らは、アリピプラゾール増強療法を行っている治療抵抗性LLD患者におけるアカシジアやパーキンソン病の臨床的経過および予測因子について調査を行った。The Journal of clinical psychiatry誌2018年6月19日号の報告。 2009~13年にベンラファキシン治療で寛解が得られなかった高齢うつ病患者を対象に、アリピプラゾールまたはプラセボ増強療法にランダムに割り付け、12週間治療を行った。対象者は60歳以上で、DSM-IV-TRにおいて中等症以上の症状を伴う、うつ病エピソードを有する患者とした。アカシジアおよびパーキンソン病は、Barnesアカシジア尺度(BAS)および錐体外路系副作用評価尺度(SAS)を用いて、来院時に測定を行った。予備解析では、年齢、性別、民族性、体重、医学的合併症、ベースライン時の不安重症度、うつ病の重症度、頓服薬を含む併用薬剤、アリピプラゾール投与量を含む潜在的な臨床予測因子および相関について広範囲に検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・アカシジアが発現した患者は、アリピプラゾール群では90例中24例(26.7%)プラセボ群では90例中11例(12.2%)であった。・うつ病の重症度の高さは、治療誘発性アカシジアの主な予測因子であった。・アカシジアが発現した対象者は、(とくにアリピプラゾール投与量を減らすことで)時間とともに症状が改善した。・パーキンソン病が発現した患者は、アリピプラゾール群91例中15例(16.5%)であったが、臨床的予測因子または相関関係は見つからなかった。 著者らは「アカシジアは、アリピプラゾールの一般的な副作用ではあるものの、概して軽度であり、減量することで改善が認められる。ベースラインのうつ病がより重度な患者は、アカシジアをより注意深く監視することが求められる。治療抵抗性LLDに対する抗精神病薬増強療法に伴う薬剤誘発性EPSの経過や予測因子を理解するためには、より多くの研究が必要とされる」としている。■関連記事日本のデータベースから各種抗精神病薬のEPS発現を分析アリピプラゾール増強が有効な治療抵抗性うつ病患者の3つの特徴抗精神病薬誘発性遅発性ジスキネジアのためのコリン作動薬

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第9回 患者さん宅を訪問したら救急車が...【はらこしなみの在宅訪問日誌】

こんにちは。在宅訪問専任の薬剤師・はらこしなみです。外来処方箋を薬局に持ってきてくれていた患者さんが...外来処方箋を薬局に持ってきていたころから関わっていたパーキンソン病の患者さん。在宅訪問に移行しています。ある日、患者さんのお宅に伺うと、救急車が。救急隊員に心臓マッサージをされているところを目の当たりにしました。きっと戻ってきてくれる!祈るしかなかったストレッチャーに乗せられて救急搬送されていく姿を見送り、薬局に戻りました。でも、その姿が頭から離れず、帰宅してご飯を食べていても、お風呂に入っていても思い出してしまう。こんなさよならは嫌だ。きっと戻ってきてくれる!と信じて祈っていました。翌日、ケアマネさんの顔をみて、結果が判ってしまいました。運ばれた病院で、いったん心臓が動いたそうですが、大量の痰が詰まっており、窒息。戻らなかった...と。ここ最近、痰が絡むのをどうにかできないか?とケアマネさんから相談があり、内服薬を試したり、吸引するなら、どうやる?誰ができる?と、先生を含めて話していたところでした。もっと早く、もっと何かできなかったのか?悔しく残念です。自分では吸引できず、周りに頼れる人がいなかった...。家族が吸引している患者さん、自分で吸引できる患者さんの姿を思い出し、うらやましく思ってしまいました。そして、痰が詰まって人は死ぬのだ。と怖くなりました。きっと苦しかっただろう...と、こちらも胸が苦しくなります。自分ができることをもう一度考えて、患者さんの様子をよく見て、こんな思いはもうしないように...と心に決めました。

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遺伝性ジストニア〔Dystonia〕

1 疾患概要■ 概念・定義ジストニアは、捻転性・反復性のパターンを持った異常な筋収縮により姿勢や動作が障害される病態と定義されているが、その本態は姿勢や自動運動など意識せずに遂行できる運動のプログラム単位の異常ということができる。(1)動作(または姿勢)特異性、(2)一定のパターンを持った動作である、(3)感覚トリックを有する(たとえば軽く健側の手で患側の手を触れることで症状が軽減するなど)という3点がそろう不随意運動である。過去には心因性疾患の1つとして捉えられることも多かったが、現在では基底核疾患の1つとされている。ジストニアを主徴として遺伝性を示す疾患には(1次性)遺伝性ジストニアと遺伝性神経変性疾患、遺伝性代謝疾患がある。遺伝性ジストニアは浸透率の低いものが多く、孤発性とみなされているものも多い。また、同じ遺伝子による病態であっても発症年齢などによる修飾が大きく同じ疾患と診断できない場合も多いとされている。■ 疫学難治性疾患研究の「ジストニアの病態と疫学に関する研究」研究班での調査によると、ジストニアの頻度は人口10万人あたり15~20例とされ、その中で遺伝性ジストニアの頻度は人口10万人あたり0.3例とされている。わが国における遺伝性ジストニアではDYT5ジストニア(瀬川病)の頻度が最も高く、次いでDYT1ジストニアが多いとされている。確定診断は遺伝子診断で行うが、「神経疾患の遺伝子診断ガイドライン2009」(日本神経学会)に示された手順に準じて行う必要がある。■ 病因ジストニアの発症メカニズムとしては、特定の姿勢や自動運動に際して不必要な筋の活動が見られ、基底核運動ループの筋を収縮させる直接路とその周辺の筋を抑制する間接路のバランスの破綻が想定されている。同じ基底核疾患であるパーキンソン病が、ドパミンの相対的な欠乏によって運動が遅く、小さくなるのと逆であるといえる。ジストニアにおいて、遺伝性ジストニアと孤発性ジストニアの原因がどう異なっているかは、まだ解明されていない。よって、両者の区分も実際は非常に難しく、遺伝性の判別が比較的容易であった発症年齢の若いタイプのジストニアから順に抽出され、定義され、遺伝性ジストニアというカテゴリーが確立されてきたといえる。よって、いまだ見出されていないタイプの遺伝性ジストニアが存在する可能性が示唆され、孤発性として分類されているものがあると予想される。■ 症状遺伝性ジストニアにおいて、DYTシリーズでは現在1~20まで分類があり、本稿では比較的頻度が高く、治療法の報告がある群を中心に症状を述べる。DYT1ジストニアは、全身性捻転性ジストニアで10歳前後の発症の場合に考慮すべきジストニアである。ジストニアが下肢か腕から始まり、全身に広がる。下肢発症の症例のほうが、より若年発症で全身に広がる頻度が高いといえる。進行により罹患部位の変形を来す。瀬川病(DYT5)は、わが国で発見されたドーパ反応性の遺伝性ジストニアで、常染色体優性遺伝形式をとるが不完全浸透で女性優位(4:1またはそれ以上)に発症する。家系により遺伝子変異部位は異なる。発症年齢は10歳以下が多く、下肢ジストニアで発症し、歩行障害を示す。体幹捻転の要素はない。尖足、内反尖足などの足の変形が多い。著明な日内変動を示し、昼から夕方にかけて症状が悪化し、睡眠によって改善する。固縮、姿勢時振戦があり低用量のL-dopaにより著明に改善する。DYT8ジストニア(発作性非運動誘発性ジスキネジア1)は、不完全浸透の常染色体優性遺伝であり、小児期に発症する。非運動誘発性の発作性のジストニア、舞踏アテトーゼが症状で、一側の上下肢に生じることが多いが、両側のことも体幹や顔面を含むこともある。アルコール・カフェイン摂取、緊張感、疲労などが誘因になるとされる。DYT10ジストニアは、反復発作性運動誘発性ジスキネジアであり、常染色体優性で小児期から成人期に発症する。急激な随意運動に伴って発作性のジストニアを一側の上下肢に生じ転倒する。両側のこともある。10~30秒で5分を超えない発作を1日に数十回~数日に1回の頻度で繰り返すとされる。DYT11ジストニアは、不完全浸透の常染色体優性遺伝で、小児期~青年期にミオクローヌスとジストニアを来す。ミオクローヌスは頸部、上肢に見られ、ジストニアは捻転ジストニア、頸部ジストニア、書痙などである。アルコールで著明に改善するとされており、精神科的異常を伴うことが多いとされる。DYT12ジストニアは、不完全浸透の常染色体優性遺伝であり、14~45歳に急性に発症し、数分~1ヵ月で症状は完成し、症状が固定するとされる。顔面口部に強いジストニアを呈する。肉体的あるいは心理的なストレスの後に発症する傾向がある。DYT18ジストニアは、小児期に発症する。運動練習、持続的な運動、とくに歩行の後でジストニア、舞踏アテトーゼ、バリスムなどの不随意運動を生じる。てんかん発作を伴うものが多い。頭部MRI検査で多系統萎縮症様の被殻尾側の異常所見やFDG-PET検査で異常側視床の取り込み低下を認める。■ 分類遺伝性ジストニアは、遺伝様式、ジストニアの発症年齢、全身性か局所性か、持続性か発作性かで分類される(表)。表 遺伝性ジストニアの分類I 1次性捻転ジストニア1)全身性ジストニアDYT1ジストニア、DYT2ジストニア、 DYT17ジストニア2)局所性・分節性ジストニアDYT4ジストニア、DYT6ジストニア、 DYT7ジストニア、DYT13ジストニアII ジストニア-パーキンソニズム1)ドパ反応性ジストニアDYT5ジストニア・DYT12ジストニア・DYT16ジストニア2)ミオクローヌスジストニアDYT11ジストニア・DYT15ジストニアIII 発作性ジストニアDYT8ジストニア・DYT9ジストニア・DYT10ジストニア・DYT18ジストニア・DYT19ジストニア・DYT20ジストニアIV 2次性ジストニア1)神経変性疾患(遺伝性神経変性疾患、遺伝性代謝性疾患に伴うジストニア)で頻度の高い疾患DYT3ジストニア・SCA1、2、3、17、PARK2、6、15、家族性痙性対麻痺、PANK(pantothenate kinase associated neurodegeneration)、有棘赤血球舞踏病、ハンチントン病、レーバー病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイ・サックス病)、ニーマン・ピック病C型、レット症候群2)代謝性疾患ウィルソン病■ 予後ジストニア自体で生命が脅かされることはない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)先述のように、「神経疾患の遺伝子診断ガイドライン2009」(日本神経学会)に示された手順に準じて、確定診断は遺伝子診断で行う必要がある。DYT1は、常染色体優性遺伝で原因遺伝子は9q34の150kbの領域に位置しており、TorsinA遺伝子のアミノ酸コード領域中のCAG欠失が見出された。この変異がDYT1の原因である。DYT5は、日本の瀬川 昌也氏らによってはじめて報告された。常染色体優性遺伝をとるが不完全浸透で女性に多い。GCH1遺伝子上の機能喪失型変異によって引き起こされることがわかっている。GCH1遺伝子は、ドパミン合成速度を制御する機能を持つ。GCH1遺伝子の機能喪失型変異による酵素活性の不足は、黒質線条体のドパミン作用性ニューロンにおけるドパミン減少を導き、このようなドパミン減少によってジストニア症状が引き起こされていると推測されている。これまでGCH1遺伝子には60以上の異なった変異が報告されている。このような高い変異率が実現されるメカニズムはいまだ不明である。DYT8は、不完全浸透型の常染色体優性遺伝形式を示し、原因遺伝子はMR-1(MIM609023)である。DYT10の原因遺伝子はPRRT2(proline-rich transmembrane protein 2)である。DYT11は、不完全浸透型の常染色体優性遺伝形式を示し、病因遺伝子産物はSGCE(ε-sarcoglycan)で平滑筋、神経系に分布する。DYT12は不完全浸透型の常染色体優性遺伝形式を示し、原因遺伝子はATP1A3である。DYT18は常染色体優性遺伝形式を示し、原因遺伝子はSLC2A1である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)局所性ジストニアの場合は、ボツリヌス治療が第1選択となる。とくに眼瞼痙攣と痙性斜頸に対するボツリヌス治療は高いエビデンスがある。ボツリヌス治療以外の薬物治療としては、眼瞼痙攣などの顔面ジストニアに対しては塩酸トリヘキシフェニジル(商品名:アーテン、トレミン)などの抗コリン薬、クロナゼパム(同:リボトリール、ランドセン)、ジアゼパム(同:ダイアップ)などのベンゾジアゼピンの効果が報告されている。痙性斜頸に対しては抗コリン薬、クロナゼパムやジアゼパムなどのベンゾジアゼピン、バクロフェン(同:ギャバロン、リオレサール)などが使われる。重症例では脳深部刺激療法(DBS)も考慮される。書頸などの上肢ジストニアにおいても、他の局所ジストニアと同様の内服治療を行う以外に、神経ブロックなどが効果的な場合もあるが、有効性は低いといわれている。全身性ジストニアにおいても、特定部位の筋弛緩が生活の質の改善または合併症の進行予防にボツリヌス治療は有効である。また、DYT1は淡蒼球のDBSが著効を呈する。DYT5などのドパ反応性ジストニアは少量のL-dopa(同:ドパストン、ドパゾール)が劇的に奏効する。ボツリヌス毒素の筋肉注射治療は、大量反復投与では毒素に対する抗体産生が作用を無効化するため問題になる。なお、使用に当たっては講習会出席により得られる資格が必要である。4 今後の展望ジストニアに対するボツリヌス治療単独では、治療困難な例も多く、そのような治療抵抗性のジストニアに対しては薬物治療の併用がすすめられる。ゾルピデム(商品名:マイスリーほか)は不眠症などの治療に用いられるが、50~70mg/日という高濃度のゾルピデム治療が視床や視床下核のGABAA受容体に結合し、また淡蒼球にもなんらかの影響を及ぼす結果、大脳基底核-視床-大脳皮質運動野の経路を直接的に、あるいは間接的に改善することでジストニアの治療につながっている可能性があり、治療抵抗性のジストニアに対し、ゾルピデムによる治療も新たな治療方法として期待できる。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 遺伝性ジストニア(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)梶龍兒ほか. 臨床神経. 2008;48:844-847.2)田宮元. Brain Nerve. 2005;57:935-944.3)長谷川一子. ジストニア. 中外医学社;2012.p.20-52.4)梶龍兒 編集. ジストニアのすべて―最新の治療指針. 診断と治療社;2013.p.93-94.公開履歴初回2018年06月26日

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肝臓移植ができない患者にも希望の光

 2018年6月6日、ファイザー株式会社は、「世界ATTR啓発デー(6月10日)」を前に都内においてATTRアミロイドーシスに関するプレスカンファレンスを開催した。カンファレンスでは、ATTRアミロイドーシスの診療の概要、とくに抗体治療の知見や患者からの切実な疾患への思いが語られた。1,000例以上の患者が推定されるATTR-FAP はじめに安東 由喜雄氏(熊本大学大学院 生命科学研究部 神経内科学分野 教授/国際アミロイドーシス学会 理事長)を講師に迎え、「進歩目覚ましい神経難病、ATTRアミロイドーシス診療最前線」をテーマに、ATTRアミロイドーシスの概要が説明された。 アミロイドーシスは、たんぱく質が遺伝子変異や加齢などにより線維化し、臓器などに沈着することで、さまざまな障害を起こすとされ、全身性と限局性に大きく分類される。全身性は、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)や老人性全身性アミロイドーシス(SSA)が知られており、限局性ではアルツハイマー病やパーキンソン病が知られている。今回は、全身性アミロイドーシスのFAPについて主に説明がなされた。 全身性アミロイドーシスのFAPやSSAは、トランスサイレチン型アミロイドーシスと呼ばれ、FAPは遺伝型ATTRで変異型TTRがアミロイドを形成し、20代から発症、末梢神経障害、浮腫・失神、消化管症候、腎障害、眼症状などを引き起こす。SSAは、主に70代から発症し、非遺伝型ATTRと呼ばれ、野生型TTRがアミロイドを形成し、心症候、手根管症状などを引き起こす。 そして、FAPでは、最近の研究より国内で40種以上の変異型が、全世界では140種以上の変異型の報告がされ、国内患者数は1,000例以上と推定されているという。また、従来は熊本県、長野県だけでみられた変異型が全国に広がっていることも確認されていると報告した。疑ったら熊本大学へ紹介を! FAPの診断では、患者病歴(とくに家族歴)、身体所見(FAPのRed-flag[四肢の疼痛、体重減少、排尿障害、下痢・便秘、浮腫、心室壁の肥厚など])、組織病理学的検査、遺伝学的検査(TTR遺伝子変異の同定)などにより確定診断がなされる。なかでも遺伝学的検査について安東氏は「熊本大学ではアミロイドーシス診療体制構築事業を行っており、全国から診断の受付をしている。専門医師不在の病院、開業の先生も本症を疑ったら当学に紹介をしていただきたい」と早期診断、早期発見の重要性を強調した。FAP治療の新次元を開いたタファミジス FAPの治療については、以前から肝移植が推奨されているが、肝移植をしてもなお眼症候の進行や心肥大など予後不良の例もあるという。また、肝移植では、発症後5年以内という期間制限の問題、移植ドナーの待機問題もあり、条件は厳しいと指摘する。 そんな中、わが国で2013年に承認・販売されたタファミジス(商品名:ビンダケル)は、こうした問題の解決の一助になると同氏は期待を寄せる。タファミジスは、肝臓産生のTTRを安定化させることで、アミロイドの線維化を防ぐ働きを持ち、安全に末梢神経障害の進行を抑制する効果を持つ。実際、タファミジスの発売後、肝移植手術数は減少しており、ある症例では、車いすの患者が肝移植と同薬を併用することで、症状が改善し、独歩になるまで回復したと紹介した。 最近では、肝臓に着目しTTRの発現を抑えるアンチセンス核酸(ASO)などの遺伝子抑制、沈着したアミロイドを除去する抗体治療も世界的に盛んに研究されている。 おわりに同氏は、「FAPをはじめとするアミロイドーシスでは、早期に症候から本症を疑い、組織からアミロイド沈着を検出することが重要である。早期治療介入のためには、早期診断が大切であり、今後も医療者をはじめ、社会への疾患の浸透を図るために、患者とともに疾患と戦っていく」とレクチャーを終えた。 次に患者・家族の会「道しるべの会」からFAP患者が登壇し、会の活動を説明。その後、「FAPは家系での発症が多く、患者家族は発症におびえていること」「肝移植後も予後が悪く、今後の疾患の進行に不安を覚えていること」「患者の経済的格差や受診格差もあること」など疾患への苦労や悩みを語るとともに、「移植に頼らない新薬や眼病変への新薬の開発」「肝移植でも使える免疫抑制剤の保険適用の拡大」「FAPへの医療者も含めた社会の理解」など期待を述べた。■参考TTRFAP.jp(ファイザー提供)熊本大学 医学部附属病院 アミロイドーシス診療センター■関連記事希少疾病ライブラリ 家族性アミロイドポリニューロパチー

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パーキンソン病診療ガイドライン」7年ぶりに改訂

 2011年以来の改訂版となる「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」が5月15日に発行された。今回のガイドライン改訂では、パーキンソン病診療における最も重要な臨床課題として「早期パーキンソン病治療」と「運動合併症治療」を設定し、GRADEシステムに基づいてエビデンスレベルと推奨レベルの2軸による治療の推奨度が示された。「Minds診療ガイドライン作成の手引き(2014年版)」に準拠して作成され、治療だけでなく診断基準や病因、画像所見などについても幅広く解説されていることから、「治療ガイドライン」から「診療ガイドライン」に名称を変更している。 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」は日本神経学会を中心に、日本神経治療学会、日本脳神経外科学会、日本定位・機能神経外科学会、日本リハビリテーション医学会の協力のもとで作成された。また、看護師や薬剤師、患者らが参加するパネル会議を開催し、多職種による議論を経たうえで、推奨文の内容が決定されている。パーキンソン病診療ガイドラインはGRADEシステムに基づく2つのCQと50のQ&Aで構成 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」は、各抗パーキンソン病薬、手術療法やリハビリテーションについてそれぞれ有効性と安全性をまとめた第I編、早期および進行期の2つのCQについて推奨度、治療アルゴリズムを示した第II編、診断・治療における50の臨床課題についてQ&A方式でまとめた第III編で構成される。 第I編では、ドパミンアゴニスト徐放剤、アポモルヒネ皮下注射、イストラデフィリン、L-ドパ持続経腸療法など、前版「パーキンソン病治療ガイドライン2011」発行後の新しい治療法について情報が追加された。第II編では、「CQ1:早期パーキンソン病の治療はどのように行うべきか」、「CQ2:運動合併症に対する治療について」の2つのCQを設定。CQに対する推奨文には、1(強い:確実に行うことが強く推奨される場合)もしくは2(弱い:条件を選べば推奨できる場合)の推奨レベル、およびA~Dの4段階(最も高いものがA)のエビデンスレベルが明記されている。 第III編は、「パーキンソン病治療ガイドライン2011」における第II編の内容を改訂したもの。重要ではあるが、エビデンスが少ない臨床課題として、GRADEシステムに基づくCQとは区別する意味で、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」ではQ&Aとしてまとめられている。パーキンソン病診療ガイドラインでは早期はL-ドパを中心にドパミンアゴニストもしくはMAOB阻害薬 以下、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」での大きな改訂点である、第II編の2つのCQの概要を紹介する。■早期パーキンソン病は、診断後できるだけ早期に薬物療法を開始すべきか[CQ1-1] 推奨:特別の理由のない限りにおいて、診断後できるだけ早期に治療開始することを 提案する(2C:弱い推奨/エビデンスの質「低」) 付帯事項:早期介入による不利益に関する十分なエビデンスがないことから、治療を 開始する際は効果と副作用、コストなどのバランスを十分考慮する。■早期パーキンソン病の治療はL-ドパとL-ドパ以外の薬物療法(ドパミンアゴニストおよびMAOB阻害薬)のどちらで開始すべきか[CQ1-2] 推奨:運動障害により生活に支障をきたす場合、早期パーキンソン病の治療はL-ドパで 開始することを提案する(2C) 付帯事項:運動合併症リスクが高いと推定される場合はドパミンアゴニストもしくは MAOB阻害薬を考慮する。抗コリン薬やアマンタジンも選択肢となりえるが十分な根拠 がない。パーキンソン病診療ガイドラインでは進行期にどの治療法をアドオンするか推奨度を明示 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」のCQ2では、ウェアリングオフ(L-ドパを1日3回投与しても、薬の内服時間に関連した効果減弱がある)を呈する進行期パーキンソン病患者に追加する治療法について、それぞれ推奨度が示された。各推奨度と、付帯事項の概要については以下の通り。■ドパミンアゴニスト[CQ2-1] 推奨度:2A 付帯事項:60代前半対象のエビデンスに基づくため、高齢者への使用には注意を要 する。L-ドパとの併用によるオフ時間の短縮効果、L-ドパ減量効果、UPDRS partIII スコアの改善効果があり、副作用の発現に注意しながら使用することを提案する。■ドパミン付随薬・COMT阻害薬[CQ2-2-1] 推奨度:2B 付帯事項:なし・MAOB阻害薬[CQ2-2-2] 推奨度:2C 付帯事項:セレギリンのRCTが少なく、ラサギリンについては現時点で本邦における エビデンスが公開されていない・イストラデフィリン[CQ2-2-3]、ゾニサミド[CQ2-2-4] 推奨度:2C 付帯事項:本邦のみでの承認薬剤のため、海外での評価が定まっていない点に注意が 必要■脳深部刺激療法 推奨度:2 C 付帯事項:オフ時の運動症状改善、L-ドパ換算用量の減量効果があるが、認知 機能への影響のほか、合併症も起こりうるため、慎重に適応を判断する なお、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」のCQ1およびCQ2では、それぞれ章末に資料として、推奨度をもとにした治療アルゴリズムがフロー図の形で示されている。

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若年者の無症候性WPW症候群における致死的なイベントリスクは?【Dr.河田pick up】

 WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群を持つ若年者は突然死のリスクがあり、無症候の若年WPW症候群患者のマネージメントについては長い間議論されてきた。 この研究では、WPW症候群を持つ若年者のリスクの特性を調べるために、致死的なイベントを経験した患者とそうでない患者を比較している。米国・ユタ大学のSusan P. Etheridge氏らによる国際多施設共同研究で、JACC.Clinical Electrophysiology誌2018年4月号に掲載。 この後ろ向きの多施設共同研究では、21歳以下のWPW症候群患者でEPS(電気生理学的検査)が行われた912人を同定した。症例群は致死的なイベント(LTE)を有した患者で、LTEは突然死、回避された突然死、そして心房細動中の最も短いRR間隔 (shortest pre-excited RR interval in atrial fibrillation:SPERRI)が250ms以下、もしくは心房細動中に血行動態が保てなくなったもの、と定義されている。対照群はそれらのイベントのない患者であり、両群の臨床的な特徴とEPSのデータを比較した。致死的なイベントが起きた患者では、65%でLTEが初発症状 症例群(96例)は年齢が高く、症状や頻拍の既往が少ない傾向にあった。LTEが起きた際の平均年齢は14.1±3.9歳であった。LTEが初発症状であったのが65%であり、そのうち早期興奮を伴った心房細動が49%、回避された突然死が45%、そして突然死が6%であった。EPSで同定された3つのリスクは最も短いRR間隔、副伝導路の有効不応期 (accessory pathway effective refractory period:APERP) 、そして心房ペーシング中の早期興奮が見られる最短のペーシング間隔 (shortest paced cycle length with pre-excitation during atrial pacing:SPPCL) であり、これら3つはいずれも症例群で、対照群より短かった。致死的なイベントが起きた患者でも、37%でEPSのハイリスクな特徴を示さず 多変量解析の結果、致死的なイベントのリスク因子は、男性、Ebstein奇形、早い順行伝導が可能な副伝導路(APERP、SPERRI、あるいはSPPCL≤250ms)、複数の副伝導路、心房細動が誘発されることであった。症例群の86例中60例(69%)がEPSの際に少なくとも2つ以上のリスク項目の評価を受けた。そして、そのうち22例(37%)がEPSでのハイリスクな特徴を示さず、15例(25%)ではリスクが高い副伝導路およびAVRT(房室回帰性頻拍)のいずれも有していなかった。無症候の若年WPW患者でも突然死を起こす可能性有 本研究では、若年WPW患者は症状やハイリスクな特徴を有さずとも、突然死を起こす可能性があると結論付けている。WPW症候群のマネージメントは有症候、無症候に分けて行われてきたが、このマネージメントが必ずしも適切とは言えないかもしれない。EPSは症状よりもリスク評価において正確であるが、完璧なツールではない。また、EPSと同時にアブレーションを行うのが一般的であり、EPS後に無作為化した前向き研究を行うことは現実的ではない(副伝導路をEPSのみ行い放置するのは、一般的に極めてまれである)。アブレーションのリスクは一般的に高くはないが、若年者の場合は全身麻酔等も必要で、心臓が成長することも考慮しなければならず、症例ごとに評価、家族との話し合いのうえで管理していくことが必要と考えられる。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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抗コリン作用は認知症リスクを高める…となると現場は大変だ!(解説:岡村毅氏)-854

 言うまでもなく、さまざまな薬に抗コリン作用がある。とりわけ腹痛、鼻汁、頻尿などを止める効果があるので、風邪薬などの非常に身近な薬にも多く含まれるのである。 一方で抗コリン作用を持つ薬と認知症の関係が長年いわれている。アセチルコリン系は脳内の覚醒に関わるので、抗コリン作用を持つ薬剤を内服している間は認知機能が低下するといわれる。加えて、抗コリン作用を持つ薬を長年飲み続けると認知症発症のリスクが上がるともいわれている。それを検証したのが今回の論文である。 しかし、真の因果関係を検証するのは難しい。たとえば多くの抗うつ薬には抗コリン作用がある。そして、老年期のうつは認知症の危険因子あるいは初期症状でもある。したがって認知症になる前に内服していた薬を調べて、抗うつ薬などの抗コリン作用の強い薬剤を内服していた人が多いからといって、すぐに抗コリン作用が悪さをしたとも言い切れない。認知症の初期症状としてのうつ症状であったかもしれないからだ。 この論文は調整因子を幅広く取り、当該薬の(1)抗コリン作用の程度、(2)量、(3)薬効、(4)曝露時期で分けて詳細に検討しているので、臨床的価値が大きい。多くの薬剤が持つ抗コリン作用と認知症発症が関係するなら、多剤併用を避ける大きな根拠にもなろう。 多剤併用の弊害が広く知られるようになった。以前は「先生、これとこれとあれの症状もあるので、薬ください」などと大量の薬の処方を求められたものである。もちろん、いちいち諭すわけだが、こわもての患者さんに「症状があると言ってんだよ!」とか「言われたとおり処方しろよ!」などと悪態をつかれたことは皆さんもあることだろう。こういう経験を重ねると、プライマリケアの現場では、心折れて何も考えずに処方することになってしまう方もいるだろうなと思う。最近は「ダマされるな! 医者に出されても飲み続けてはいけない薬」(週刊現代2016年6月11日号)などといった記事のためか、受診はしたものの、かたくなに処方を拒絶する患者さんもいる。 人生の黄昏時には、体は思うようにならないものである。治らない症状を持つ人も多いことだろう。意味のない多剤併用は論外だが、命が有限であり、体は衰えていくものだということがわからずに焦燥に駆られた患者さんや家族に、一応症状はあり、何とか薬をくださいなどと言われては、こちらも困ってしまう。人間の弱さも引き受けた診療をするしかない、と言うと怒られてしまうだろうか。 さて、あらためて本論文を見てみよう。・まず単純な解析では、抗コリン作用が強いもの(ACB score of 3)では確かに認知症発症と関連している。・しかし認知症発症の15年以上前の曝露では、ほとんどの薬では関連は消え、三環系抗うつ薬等と泌尿器薬でははっきり残る。これらの薬が危険ともいえるし、たとえ15年以上前であっても、うつや頻尿は認知症の微細な初期症状なのかもしれない。・さらに、15年以上前の解析で、抗うつ薬の中でも抗コリン作用が弱いSSRIなど(ACB score of 1)では因果関係は明らかではなく、抗コリン作用が強い三環系抗うつ薬(ACB score of 3)では関係がある。となるとやはり抗コリン作用が悪さをしている可能性は大である。・とはいえ「強い抗うつ薬」を使う病態と「弱い抗うつ薬」を使う病態は明らかに異なる。前者のみが認知症発症と関連する可能性も、やや苦しいが、まだある。・抗パーキンソン薬は、直近の使用のみが関連している。認知症発症は、抗パーキンソン薬の影響ではなく、脳内の神経変性の進行を反映しているかもしれない。 まとめるとこうなる。抗コリン作用と認知症発症は、まだ解明されたとはいえない。ざっくり見れば関連はある。専門的に眺めると、事態はまだ複雑だ。三環系抗うつ薬や泌尿器系薬は、可能性は高い。とはいえ「臨床現場で処方ができない」とパニックになる必要はまったくない。同時に、なるべく少ない処方でマネジメントすることは常に心掛けねばならない。

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病気があっても働き続けられる職場作り

『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』を更新 厚生労働省は、2018年4月24日に『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』(2016年2月作成)に、難病に関する留意事項、企業・医療機関連携のためのマニュアルなどを追加・更新したガイドラインを発表した。 このガイドラインは、事業場が、がん、脳卒中などの疾病を抱える患者に対し、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするため、事業場における取組などをまとめたもの。「勤務状況を主治医に提供する際の様式例」などの様式例集のほか、支援制度、支援機関の情報、「企業・医療機関連携マニュアル」などが掲載されている。がん、脳卒中、肝疾患に難病を追加 今回、従来の留意事項の疾患である、がん、脳卒中、肝疾患に難病が追加された。「難病」については、「発病の機構が明らかでなく、治療法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなる疾病を指す」と定義し、就労世代に多い主な難病として「潰瘍性大腸炎、クローン病」「全身性エリテマトーデス」「パーキンソン病」を挙げ、疾患概要を説明している。 また、難病に共通してみられやすい症状として「全身的な体調の崩れやすさ-気力・体力の低下、疲れやすさなど」「発熱」「労作時の動悸・息切れ、筋力低下など」を示すとともに、これらに対して本ガイドラインでは、「難病治療の特徴を踏まえた対応」「メンタルヘルスへの配慮」「難病に対する不正確な理解・知識に伴う問題への対応」を企業などに求め、啓発している。■参考厚生労働省 治療と仕事の両立について■関連記事希少疾病ライブラリ 

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抗コリン薬、認知症発症と強く関連/BMJ

 英国・イースト・アングリア大学のKathryn Richardson氏らによる症例対照研究の結果、うつ病、泌尿器系およびパーキンソン病の治療に用いられる抗コリン薬の使用が、将来的な認知症発症と強く関連していることが明らかとなった。この関連は、認知症と診断される15~20年前の曝露でさえ観察されたという。ただし、消化器および心血管系の抗コリン薬では認知症との明らかな関連は認められなかった。これまで、抗コリン作用のある薬剤の使用が、短期的な認知障害と関連があることは知られていた。しかし、報告されている抗コリン薬の使用と将来的な認知機能低下や認知症発症との関連が、抗コリン作用に起因するかどうかは不明であった。BMJ誌2018年4月25日号掲載の報告。認知症患者約4万例と対照約28万例で抗コリン薬の曝露認知症リスクを評価 研究グループは、さまざまなクラスの抗コリン薬の曝露期間および曝露量と、その後の認知症発症との関連を評価する目的で、症例対照研究を行った。英国プライマリケア医の電子カルテを含むデータベース(Clinical Practice Research Datalink:CPRD)を用い、2006年4月~2015年7月に認知症と診断された65~99歳の患者4万770例と、認知症と診断されていない対照28万3,933例を特定し、Anticholinergic Cognitive Burden(ACB)スケールで分類された抗コリン薬の1日投与量について、曝露期間中全体およびサブクラス別に比較した。認知症と診断される4~20年前の抗コリン薬の処方が含まれた。 主要評価項目は、患者背景等の共変量について調整した認知症発症のオッズ比とし、多変量条件付きロジスティック回帰分析を用いて解析した。うつ病、泌尿器系、パーキンソン病治療の抗コリン薬で認知症リスクが増大 曝露期間中、ACBスコア3(明らかな抗コリン作用)に分類される抗コリン薬を1つ以上処方されていたのは、認知症患者1万4,453例(35%)、対照8万6,403例(30%)で、ACBスコア3の抗コリン薬の調整オッズ比は1.11(95%信頼区間[CI]:1.08~1.14)であった。認知症は、ACBスコアの平均値の増加と関連していた。 薬剤のクラス別では、ACBスコア3および1の消化器系薬や、ACBスコア1の心血管系薬の使用においては、認知症との明確な関連はみられなかった。 一方、ACBスコア3に分類される抗うつ薬・泌尿器系治療薬・抗パーキンソン病薬は、曝露が大きいほど認知症のリスクの増大がみられ、その関連性は認知症発症の15~20年前の抗コリン薬の曝露でも認められた。

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日本人の学歴・職歴と認知症の関連に糖尿病は関与するか

 欧米では、低い社会経済的地位(SES)と認知症との関連は生活習慣病(糖尿病)を介すると報告されている。しかし、わが国では低SESと認知症の関連は研究されていない。今回、敦賀看護大学(福井県)の中堀 伸枝氏らの研究から、低SESと認知症の間のメディエーターとして、生活習慣病の役割はきわめて小さいことが示唆された。BMC Geriatrics誌2018年4月27日号に掲載。 本研究は、富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いた後ろ向き症例対照研究である。富山県在住の65歳以上(入院および非入院)の人をサンプリングレート0.5%で無作為に選択、うち1,303人が参加に同意した(回答率84.8%)。全体として、認知症137人および認知症ではない対照1,039人を同定した。必要に応じて、参加者と家族または代理人との構造化インタビューを実施し、参加者の病歴、生活習慣(喫煙および飲酒)、SES(学歴および職歴)を調査した。Sobel検定を用いて、低SESが生活習慣病を介した認知症の危険因子である可能性を調べた。 主な結果は以下のとおり。・認知症のオッズ比(OR)は、低学歴(6年以下)の参加者で高学歴の参加者より高く(年齢・性別での調整OR:3.27、95%CI:1.84~5.81)、また、事務の職歴より肉体労働の職歴を持つ参加者で高かった(年齢・性別での調整OR:1.26、95%CI:0.80~1.98)。・職歴について調整後、低学歴の参加者における認知症のORは3.23~3.56であった。・以前の習慣的な飲酒歴および糖尿病・パーキンソン病・脳卒中・狭心症/心血管疾患の病歴が、認知症リスクを増加させることが認められた。・学歴は、飲酒、喫煙、糖尿病、パーキンソン病、脳卒中、心血管疾患に関連していなかった。・職歴は、糖尿病および脳卒中に関連していた。・低学歴と認知症の関連における糖尿病の役割は、きわめて限られていることが示された。

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血栓回収ハンズオン【Dr. 中島の 新・徒然草】(218)

二百十八の段 血栓回収ハンズオン「血栓回収のハンズオンをやるから興味ある方は参加してください」と大学の脳外科医局から関連病院に呼びかけがあったので、ある土曜日に出かけてきました。血栓回収というのは、脳梗塞の急性期に血管内治療により主幹動脈から血栓を機械的に除去して脳血流の再灌流を図る治療法です。これまでは t-PA を静脈注射して血栓溶解を図っていたのですが、次第に血栓回収療法がメインになりつつあるように思います。脳外科医を名乗るからにはこの治療ができなくてはならない、ということで昨年から大学の医局主催で練習会が始まりました。昨年は70人の参加、今年はそれ以上の参加者数だということで、その人気ぶりというか皆の感じている必要性がよく分かります。昨年は70代の先生も参加して周囲を驚かせていましたが、今年の最年長は60代、某病院の副院長先生でした。また医学生や初期研修医向けのブースもあり、シミュレーターやゲームを使って血管内治療の面白さを体感してもらい、できればリクルートにつなげようという試みがなされていました。会場は、とあるビルの1フロアです。現役の脳外科医用には、ガイディングカテーテルのシステム組立て用のテーブルと模型から血栓回収を行うテーブルの2種類があり、順に練習するようになっていました。私なんかは血管内治療どころか血管造影すら何年もやっていないので、三方活栓やらインサーターやらトルクデバイスやら、わけのわからないモノに囲まれて戸惑ってしまいました。それでも若いインストラクターに教えてもらいながら練習しているうちに、徐々にサマになってきたような気がします。昭和とか平成初期卒業の先生の中には遠巻きにして眺めているだけの人も大勢居たので、「取り残されているのは自分だけじゃないんだ」と、何となく安心しました。練習会の後半はガイディングカテーテルのシステム組み立てのタイムトライアルです。完全にバラバラにした部品を使ってシステムを組み立てるというものです。単に時間を測るのも面白くないので、2人で向かいあっての対決方式でした。当院のレジデント達が対決しましたが、雑談しながら2人とも手慣れた感じで組み立てていきます。感心して見ていたところに現れた某先生。ミもフタもない一言を放ちました。某先生「タイム・イズ・マネーとか言われているのに、1から組み立てるのって無駄やんか。最初から組み立ててあるパッケージとか無いわけ?」この先生は日頃パーキンソン病やてんかんなどを専門にしているだけあって、血管内治療医の汗と涙にはあまり理解がありません。でも正論といえば正論です。つい私も言ってしまいました。中島「いくらゴルゴ13だって、相手に攻撃されてからM16を組み立てているようではアカンやろ」インストラクター「確かに最初から組み立ててあるシステムがあったら便利ですよね。どうしてそういうものがないのかな?」レジデント「こうやって組み立てるのも無駄といえば無駄な気がしてきました」中島「まあまあ、若者は要らんこと考えずに頑張っといたらエエんや」そんなこんなで晴れた休日の午後、血栓回収の練習でいい汗をかくことができました。ハンズオンの後は最年長先生の挨拶です。最年長「われわれが若い時にこんな練習会があったら良かったのに、と思います。心から今の若い人が羨ましい!」まったくその通りだわい、と私も思います。ところで、ちょっと気になって調べてみたところ、急性期脳梗塞治療の場合は「タイム・イズ・マネー」じゃなくて、「タイム・イズ・ブレイン」が正しいようです。まあ、マネーでもブレインでも大事なものには違いありませんが。というわけで最後に1句血栓を 老いも若きも 回収す

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.1

第1回 腎臓 第2回 代謝 第3回 内分泌 第4回 血液 内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第1巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第1回 腎臓 疾患をしっかり区別するためには解剖生理が非常に重要です。とくに腎の場合は、どこの部位で起こる障害かということをしっかり整理する必要があります。民谷式オリジナルのアニメーションでは腎疾患を大きく3つに分類。疾患を振り分けるコツをしっかりとレクチャーします。第2回 代謝 代謝のセクションではまず、物質が体内に入って分解・合成される流れをしっかりとおさらいします。物質の流れをもう一度理解すると、機能低下している箇所に必要な治療や薬剤といった知識がすんなりと頭に入ります。民谷式オリジナルのシェーマを参考に、代謝領域攻略のポイントをしっかりとつかんでください。第3回 内分泌 内分泌領域ではまず、それぞれの臓器の解剖生理をしっかり覚えることが、試験攻略の近道です。民谷式オリジナルのシェーマはわかりやすく簡略化してあるので、物質の流れが阻害されるとどんな病態になりどんな症状になるのか、すんなりと頭に入ります。第4回 血液 血液分野では、どこでなにが起こっているのかを考えるのが、頭を整理するうえで非常に大切です。また、日常診療では、骨髄標本と血液標本を間違えることはありませんが、ペーパーテストでは起こり得ることです。必ず、何を見ているかを確認する癖をつけましょう。

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.2

第5回 膠原病/アレルギー 第6回 神経 第7回 循環器1 第8回 循環器2  内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第2巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第5回 膠原病/アレルギー 膠原病の領域は、類縁疾患を含めると疾患が非常に多く、症状が多彩なのが特徴です。民谷式では疾患を大きく3つに分類し、それぞれの特徴をオリジナルのシェーマと症例問題をもとに解説していきます。第6回 神経 神経の疾患は非常に多岐にわたりますが、どこが障害してどんな症状が出るかを理解するためには、まずは正常な状態を理解するのが得策。わかりやすく簡略化してある民谷式のオリジナルシェーマで重要疾患の病態生理を再整理してください。第7回 循環器1 出題範囲が広い循環器領域で、まず押さえるべき疾患は虚血性心疾患と心不全。狭心症と心筋梗塞の病態の違いや心電図の見方、エコーの基本となる解剖生理など、基礎をしっかりと復習します。第8回 循環器2 出題範囲が広い循環器領域。循環器の後半は弁膜症と心筋症、そして不整脈について復習します。心臓で起こったことが、心電図ではどう見えるのか?民谷式のシェーマを用いてわかりやすく解説しているので、知識の整理に役立ちます。

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.3

第9回  消化器(肝胆膵) 第10回 消化器(消化管) 第11回 感染症 第12回 呼吸器 内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第3巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第9回 消化器(肝胆膵)出題数の多い消化器領域は、まずは民谷式の解剖図を用いて肝臓の病態や疾患を解説します。ミクロの視点で疾患を整理していくと、長い臨床問題を論理的な筋道を追いながらスムーズに解いていけるようになります。また、この領域でとくに出題が多いのはIgG関連疾患。試験に役立つポイントが丸わかりです。第10回 消化器(消化管) 出題数の多い消化器領域の消化管領域について取り上げます。まずは消化管の壁断面をおさらいしてから、それぞれの疾患について掘り下げていきます。クローン病と潰瘍性大腸炎、マロリー・ワイス症候群と特発性食道破裂。症状が似たの疾患の区別も、民谷式オリジナルシェーマを用いた解説ですんなりと頭に入ります。第11回 感染症 感染症の領域では、原因微生物・薬理学・臨床症状を総合して理解することが大切になります。民谷式でわかりやすくまとめた表で一つひとつ整理していくと、長い臨床問題を短い時間で解くためのポイントがわかっていきます。さらにどの抗菌薬がどこまでカバーしているかをまとめた表は、試験に必ず役に立ちます。第12回 呼吸器 呼吸器領域では、肺の疾患を中心におさらいしていきます。民谷式オリジナルの簡略化したシェーマでまずは全体の流れを掴みます。臨床問題では、低酸素血症と二酸化炭素が不足している状態をしっかり分けて考えることが、問題文を読み解くヒントになります。

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簡単な便秘対策は、トイレを我慢しない

 2018年3月27日、株式会社ツムラ後援による第4回Kampo Academiaプレスセミナーが都内において開催された。今回のテーマは「便秘における漢方薬の再認識」。セミナーでは、日常診療で見過ごされやすい便秘の機序、影響、治療での漢方薬の役割、対策についてレクチャーが行われた。思い当たる? 7~8人に1人は便秘症状 セミナーでは、中島 淳氏(横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授)を講師に迎え、「~腸内環境は気になるけれど、“たかが便秘”と自己流の対策で悪化させていませんか?~便秘における漢方薬の再認識」をテーマに講演が行われた。 便秘の中でも、慢性の便秘は日本人の7~8人に1人は症状があるとされている(厚生労働省「平成25年(2013年)国民生活基礎調査」)。 そして、便秘とは、「排便回数の減少」と「排便困難症」が相まった病態であるとされ、ホルモンの関係から患者は女性で圧倒的に多い(ただし高齢になるにつれ性差は縮小)。長期間にわたり罹患し、治癒することは難しいとされる。その原因として、一番問題となるのは「便意の我慢」であり、そのほか間違えたダイエットや加齢による大腸運動の低下、薬剤によるものなどがあるという。 便秘が日常生活に及ぼす影響として、放置により疾患の原因となる可能性があり、便秘が続くと腸内環境はどんどん悪化する。また、便秘はQOLを下げるので、日常活動性や労働生産性の低下を招き、職場の欠勤率を上昇させるという報告もある。 慢性便秘症の分類には、「便秘型IBS」「機能性便秘」「薬剤性便秘」「症候性便秘」「器質性便秘」の5つがあり、薬剤性では抗うつ薬や抗コリン薬など、症候性では糖尿病、パーキンソン病など、器質性では大腸がん、炎症性腸疾患などに、とくに注意が必要だという。患者が満足する便秘治療とは 便秘の治療としては、かかりつけ医、消化器内科、胃腸科、肛門科、内科が主診療科となるが、「医療者の意識改革も必要であり、便秘の治療では、単に排便ができるようになるだけでなく、患者満足度の高い治療を行うことが重要」と中島氏は指摘する。たとえば、刺激性下剤により排便がされたとしても、水様便で下痢のままでは、患者満足度は低いままである。そうならないためには、「完全排便を目指す」「便形状の正常化(ブリストルスケールで“4”)」「初診で刺激性下剤を出さない」の3点に加え、便形状の聞き取りなどの外来でのフォローが重要だという。 現在、便秘で処方される治療薬としては、緩下剤(便をやわらかくし、排便促進作用)、刺激性下剤(腸を刺激し、強制的に排便させる作用)、漢方薬(体質や症状に合わせて選択できる)の3種類がある。緩下剤では、酸化マグネシウムがわが国では広く処方されているが、高マグネシウム血症への注意や併用注意薬の多さが短所であり、刺激性下剤であるセンノシドなどでは、連用することで習慣性、依存性が生じ、効果が低下することが指摘されている(海外では頓用で使用される)。 その点、漢方薬は、患者の安心感が高く、作用の強弱が選択でき、便秘周辺症状(腹部膨満など)にも対応できることで最近見直されているという。 具体的には、「大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)」「麻子仁丸(マシニンガン)」「潤腸湯(ジュンチョウトウ)」「桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)」「防風通聖散(ボウフウツウショウサン)」「大建中湯(ダイケンチュウトウ)」の6種類が、便秘の治療で使われる代表的な漢方薬である。 各漢方薬の特徴として、次の点が挙げられる。「大黄甘草湯」は、比較的作用が強くエビデンスもあるが、高齢者には注意が必要である。「麻子仁丸」は、高齢者に適している。「潤腸湯」は効果がマイルドで軽症から中等症の患者や高齢者に適している。「桂枝加芍薬大黄湯」は、腹部膨満感や腹痛、ガス排出など便秘周辺症状にも効果がある。「防風通聖散」は、作用が弱いもののゆっくりと効果を発揮し、中高年に適している。「大建中湯」は、作用が弱いものの、下腹部の重さ、痛みなどの便秘周辺症状にも適している。「このように多種の漢方薬をうまく使いこなすことで、患者のさまざまな訴えに対応することができる。ただし、妊婦、産婦、授乳婦への投与について安全性が確立されていないので処方には慎重な判断が必要」と、同氏は注意を促す。便秘対策は生活習慣の改善と排便姿勢から 便秘対策としては、食物繊維・運動・水分不足といった生活習慣の是正が重要であり、子供のころからトイレを我慢しない行動も大事だという。また、排便の姿勢について、和式トイレのしゃがんだ姿勢が理想だが、洋式トイレが主流の現代では、前かがみ35度の前傾姿勢で排便するのが望ましいとしている。 まとめとして同氏は、「患者の半分以上が便秘治療に不満足の今、満足度の向上が必要である。自己流ではなく自分に適した対策のため、便秘は放置せずに医師に相談する。漢方薬を服用する際は、正しく理解して服用し、自己判断せずに専門医に処方してもらうことが大切だ」と語り、レクチャーを終えた。■参考日本東洋医学会漢方のお医者さん探し

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パーキンソン病におけるエキセナチド週1回投与の効果(解説:山本康正 氏)-736

【目的】 2型糖尿病に使用されているglucagon-like peptide-1(GLP-1)の受容体作動薬であるエキセナチドには、げっ歯類において神経毒により作成されたパーキンソン病モデルで神経保護作用・神経修復作用があることが示されている。著者らは以前に、少数例のオープンラベル試験でエキセナチドがパーキンソン病患者の運動・認知機能障害を改善した結果を得ており、今回パーキンソン病患者に対するエキセナチドの効果を、single-centre, randomized, double-blind, placebo-controlled trialによって確認する試験を行った。【方法】 25~75歳のQueen Square Brain Bank criteriaで評価された特発性パーキンソン病患者で、ドーパミン治療がなされているがwearing offを有し、治療下においてYahl分類が2.5以下の患者を対象とした。通常のドーパミン系治療に加えて、エキセナチド2mgとプラセボの週1回皮下注射を48週間行い、12週間のwash out期間の後、評価を行った。患者は12週ごとに受診し、抗パーキンソン病薬服用後8時間以上あけたoff-medication stateにおいて、運動・非運動症状や認知機能、心理テスト等の総合的評価がなされた。最初と60週目にドーパミンの働きを見る検査であるDaTscan(ダットスキャン)を行った。1次エンドポイントは、60週目にMovement Disorders Society Unified Parkinson's Disease Rating Scale(MDS-UPDRS)のmotor subscale part3を用いて評価したスコアの差である。【結果】 62例がエントリーされ、32例がエキセナチド、30例がプラセボに割り付けられた。最終60週目において、MDS-UPDRS-part3はプラセボ群で2.1点悪化し、エキセナチド群で1.0点改善した。調整後の差は-3.5点で、エキセナチド群で有意に改善した(p=0.031)。ちなみに48週目の時点では、-4.3点の差でエキセナチド群が勝っていた(p=0.0026)。認知機能、非運動症状、QOL、気分、ジスキネジア等に差はなかった。DaTscan imagingでは、1回目に比べて2回目は両群とも低下傾向にあったが、エキセナチド群で低下はより軽度であった。【考察】 48週目のみならず12週間のwash out期間の後もエキセナチドの効果が持続していたことは注目すべきであり、これはエキセナチド持続の長い症候改善作用を有するためなのか、あるいは、疾患の病態生理に影響を与えた結果なのかは今後の検討が待たれる。【解説】 パーキンソン病は年月とともに進行性で、進行期には、不随意運動、幻覚、起立性低血圧や頑固な便秘など自律神経障害も出現して難渋することが多い。ドーパミン受容体作動薬やモノアミン酸化酵素阻害薬に神経保護作用が期待されているが、さらに新規の神経保護作用を有する薬剤が待たれている。エキセナチドは2型糖尿病に使用されているGLP-1の受容体作動薬であるが、今回の試験では従来の抗パーキンソン病薬に追加することで、運動症状の改善のみならず12週間のwash out期間の後も効果が持続していた。このことは、単に持続作用が長いことを示しているのかもしれないが、疾患の病態生理に作用し神経保護作用を有する可能性があり期待される。

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国立国際医療研究センター総合診療科presents 内科インテンシブレビュー2017 (2枚組)

第1回 リンパ腫の臨床診断 “Internist's lymphoma” 第2回 パーキンソン病の話 第3回 大血管炎~IgG4関連疾患も含めて~第4回 Young Doctor’s Case Report 第5回 感染症診療のロジック~常に丹念に病態を詰め切る~ 第6回 呼吸器内科医から見た心不全 第7回 小腸疾患 Update 2017 第8回 NEJMへの道~2017 飛翔編~ 第9回 陰性感情を考える第10回 つつが虫病 シマからみる、シマでみる ~過去と現在、日本、沖縄、世界に眼をむけて~ 第11回 低K血症をスッキリ理解する Keep It Simple, Stupid. 第12回 “元気で長生き”を維持するために 科学的根拠に基づくヘルスメンテナンス 2017年1月14~15日の2日間にわたって開催された集中型セミナー「国立国際医療研究センター総合診療科 presents内科インテンシブレビュー」。臨床の最前線に立ち、若手医師教育にも熱意を注ぐ12医師の熱いレクチャーを一挙公開します。「学生・初期研修医向け」のレクチャーに飽きてしまった専門後期研修医、これを機に知識をアップデートしたいシニア医師、ちょっと背伸びしたい初期研修医の方々、有名講師による集中講義を堪能してください!第1回 リンパ腫の臨床診断 “Internist's lymphoma” 国立国際医療研究センター病院 総合診療科 國松淳和先生によるレクチャーは、病理で診断されるリンパ腫の"臨床診断”について。リンパ腫においては、診断確定が早いことは患者の予後やQOLに大いに関わります。臨床症状によって診断に迫ることができる"Internist's Lymphoma”の特徴や具体的な診断への道筋について解説します。第2回 パーキンソン病の話 外科医であり、化石学者でもあった英国のジェイムズ・パーキンソンパーキンソン病に関する論文を発表して今年で200年!神経内科医の井口正寛先生がその発見の歴史をひも解き、現在の臨床現場から、パーキンソン病を再評価します。スペシャリストならではの問診や身体所見による診断のコツや、井口先生が発見した驚きのマニアック論文は必見です!第3回 大血管炎~IgG4関連疾患も含めて~CareNeTV講師Dr.ハギーこと萩野昇先生が大血管炎を解説します!2016年欧州リウマチ学会で発表された最新情報など、アップデート満載な講義内容は、日々リウマチ学を研究する萩野先生ならでは。大血管炎は日常診療でよく診る疾患ではありませんが、2015~2016年にかけて新たな治療成果が発表されており、今、リウマチ・膠原病領域で注目されています。Dr.ハギーの軽妙なトークは必見!第4回 Young Doctor’s Case Report Young Doctor’s Case Reportとして九鬼隆家先生が腎機能障害の症例を紹介します。緊急外来で透析が施行された50代女性。問診によって23歳の娘にも血尿があることがわかり、母娘2人を診ることになりました。3世代にわたる家族歴の聴取などから、透析に至ったその原因疾患に迫ります!第5回 感染症診療のロジック~常に丹念に病態を詰め切る~ 感染症が疑われる場合、その患者がどこでどんな生活を送り、どのような経緯で病院にやってきたのか、患者の背景を探ることが大変重要です。とくに海外からの渡航者の場合は居住地であるその国をも理解しなければなりません。国際感染症センター長の大曲貴夫先生がここ1年で診られた数多くの症例のなかでもとくに「厳しかった」「考えさせられた」という2例を紹介。「あなたは常に病態を詰めきれているか?」大曲先生の熱いメッセージを御覧ください。第6回 呼吸器内科医から見た心不全 心不全診療における診療科間の押し相撲はもうやめたい!循環器内科に見送った心不全疑いの患者がブーメランのように返ってくる。本当に心不全ではないの?しかし本当に大切なのは、できるかぎり病態を確認して、患者にどのような治療が優先されるのかを判断すること。心不全にも呼吸器疾患が関与している場合もあります。すべての内科医に向けた櫻井隆之先生の熱いメッセージ!第7回 小腸疾患 Update 2017 第7回では、小腸疾患Updateとして、不明熱の原因疾患ともなるクローン病に関する知識をレクチャー。1970年代から罹患者数が300倍にまで増加し続けているクローン病。国立国際医療研究センター病院の櫻井俊之先生が消化器内科医の立場から、クローン病の疾患概念、好発年齢、診断基準、最新治療について解説。常識とは異なるクローン病診療の“実情”もホンネで語ります。第8回 NEJMへの道~2017 飛翔編~ NEJMへの掲載を目指して!NEJM掲載の経験を持つ忽那賢志先生がアクセプトされるコツを伝授します。「Clinical Pictureの投稿コーナーは挑戦しやすい」「コモンな疾患のレアな所見が狙い目」など、自身の経験から、症例選択や写真撮影のポイントを解説!日頃の臨床で、Clinical Pictureを撮るように心がけることが大事です。病態診断のため、知識の蓄積・共有のため、そしてNEJM投稿のため。これだと思う症例に出会ったら、ぜひ投稿してみてください!第9回 陰性感情を考える「この患者さん苦手だな…」アルコール依存や、ボーダー患者、はたまた普通の患者に対しても、「嫌だな」という感情はどんな医師でも起こりうるものです。そんな陰性感情はどう対処するべきかを、加藤温先生が精神科医の視点でレクチャーします。陥りやすい危ないケースからの回避方法や、明日から実践できる基本の対応方法を伝授。「本物は本物の顔をしていない」などドキっとする文句が満載です!第10回 つつが虫病 シマからみる、シマでみる ~過去と現在、日本、沖縄、世界に眼をむけて~ 「つつが虫病」はまだ終わっていない!かつて「死の風土病」と恐れられたつつが虫病。現在でも、毎年400人以上が日本各地で罹患し、依然として生命を脅かす疾病です。成田雅先生曰く、つつが虫病診療で重要な患者背景への認識を深めること、患者の全身を入念に診ることは総合診療医のスキルアップにつながる!多くの症例とダニハンティングの結果からわかるつつが虫病の実態を、ぜひ御覧ください。第11回 低K血症をスッキリ理解する Keep It Simple, Stupid. 須藤博先生の明快レクチャーで腎生理学の基本をマスターしましょう!キーワードは「タテとヨコ」「尿血血」の2つ、これさえ覚えれば簡単に低K血症の鑑別診断ができます。引き込まれる名講義と、個性的な5つの低K症例は必見!須藤先生を30分間罵倒した30代女性とは!?そのとき先生は…第12回 “元気で長生き”を維持するために 科学的根拠に基づくヘルスメンテナンス がん・心疾患・感染症・メンタルヘルスなど、さまざまなカテゴリーについての予防医療のエビデンスを総括した米国のUSPSTF(U.S. Preventive Services Task Force)。予防医療、すなわち適切なスクリーニングと予防知識の普及は、現代日本における必須項目の1つです。熱き指導医、佐田竜一先生がUSPSTFをもとに予防医療の大切さとがん種別検診の妥当性について解説します!

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GLP-1製剤、パーキンソン病の運動機能を改善/Lancet

 GLP-1受容体作動薬エキセナチドを中等度のパーキンソン病患者に投与すると、運動機能が改善する可能性があることが判明した。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDilan Athauda氏らが、62例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月3日号で発表した。エキセナチド2mgを48週間投与、60週後の運動機能変化を比較 Athauda氏らは2014年6月18日~2015年3月13日にかけて、25~75歳の中等度パーキンソン病の患者62例を無作為に2群に分け、通常服用している薬に加え、一方にはエキセナチド2mgを(32例)、もう一方にはプラセボを(30例)、それぞれ週1回48週にわたり皮下投与した。その後、試験薬を中止し12週間のウォッシュアウト後(60週時点)に最終評価を行った。 被験者は、Queen Square Brain Bank基準で特発性パーキンソン病の診断を受け、ドーパミン療法によるウェアリング・オフ現象を伴い、治療下の症状はホーン・ヤール重症度分類で2.5以下だった。患者および研究者は、治療割り付けについてマスキングされていた。 主要アウトカムは、実質的に非薬物治療下と定義される時点(60週)で評価したベースライン(0週)からの、国際運動障害学会が作成したパーキンソン病統一スケール「MDS-UPDRS」の運動機能サブスケール・パート3の変化値に関する両群間の補正後差だった。エキセナチド群で運動機能サブスケールは1.0ポイント改善 有効性解析には、無作為化後の追跡評価を完遂したエキセナチド群31例、プラセボ群29例が含まれた。 0~60週時のMDS-UPDRS・パート3スコアの変化値は、エキセナチド群が-1.0点(95%信頼区間[CI]:-2.6~0.7)と改善を示したのに対し、プラセボ群は2.1点(同:-0.6~4.8)と悪化が示された。両群の補正後平均差は-3.5点(同:-6.7~-0.3、p=0.0318)で有意差が認められた。 有害事象は、注射部位反応と消化器症状の発現が両群で最も頻度が高かった。重篤な有害事象は、エキセナチド群で6件、プラセボ群では2件報告されたが、いずれも試験による介入とは関連がないと判断された。 なお結果について著者は、「エキセナチドの陽性効果は、投与期間を過ぎてからも示されたが、エキセナチドがパーキンソン病の病態生理に影響を及ぼすのか、それとも単に持続的な症候性の作用が引き起こされただけなのかは不明である」と述べ、長期の検討を行い、エキセナチドの日常的な症状への効果を調べる必要があるとしている。

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悪性黒色腫とパーキンソン病、相互に発症リスク高

 米国・メイヨークリニックのLauren A. Dalvin氏らは、ロチェスター疫学プロジェクト(Rochester Epidemiology Project:REP)のデータを解析し、悪性黒色腫(皮膚および結膜、ブドウ膜)患者はパーキンソン病(PD)の、PD患者は悪性黒色腫の発症リスクが高く、両者に関連があることを明らかにした。著者は、「さらなる研究が必要であるが、今回の結果に基づき医師は、悪性黒色腫患者にはPDのリスクについてカウンセリングを行い、PD患者に対しては皮膚および眼の悪性黒色腫についてサーベイランスを行うことを検討すべきだろう」とまとめている。Mayo Clinic Proceedings誌2017年7月号掲載の報告。 研究グループは、REPのデータを用いて次の2つの解析(フェーズ1、フェーズ2)を行った。 フェーズ1は、1976年1月1日~2013年12月31日におけるミネソタ州オルムステッド郡のPD患者、および同患者1例当たりのマッチング対照3例を特定し、JMP統計ソフトウェアを用いたロジスティック回帰分析により、先行して悪性黒色腫を有するリスクをPD患者と対照とで比較した。 フェーズ2は、1976年1月1日~2014年12月31日におけるすべての悪性黒色腫患者と、同患者1例当たりのマッチング対照1例を特定し、Cox比例ハザードモデルにてインデックス日以降のPD発症リスクについて対照と比較するとともに、カプランマイヤー法によりPDの35年累積発症リスクを算出した。さらに、Cox比例ハザードモデルを用い、悪性黒色腫患者における転移性悪性黒色腫による死亡のリスクを、PDの有無で比較した。 主な結果は以下のとおり。・フェーズ1解析において、PD患者は対照と比較し、先行して悪性黒色腫を有するリスクが3.8倍高かった(95%信頼区間[CI]:2.1~6.8、p<0.001)。・フェーズ2解析において、悪性黒色腫患者は、PDの発症リスクが4.2倍高かった(95%CI:2.0~8.8、p<0.001)。・カプランマイヤー法によるPDの35年累積発症率は、悪性黒色腫患者11.8%、対照2.6%で、悪性黒色腫患者で高かった(p<0.001)。・転移性悪性黒色腫による死亡の相対リスクは、PDを有していない悪性黒色腫患者が、PDを有する悪性黒色腫患者と比較して10.5倍高かった(95%CI:1.5~72.2、p=0.02)。

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