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腎細胞がん、ニボルマブ+イピリムマブによるアジュバント療法のサブグループ解析(CheckMate 914)/ASCO2023

 未治療の進行期腎細胞がん(RCC)に対するニボルマブ+イピリムマブ療法は、長期にわたる有効性と忍容性が報告されている。一方、術後RCCにおいて同レジメンのアジュバント療法を評価するCheckMate 914試験(PartA)では、無病生存期間(DFS)への恩恵は示されていない。 米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)では、この理由を明らかにするため、CheckMate 914試験(PartA)のサブグループ解析について、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのRobert J. Motzer氏が発表した。・対象:根治的腎摘除術または腎部分切除術を施行された再発リスクが中等度~高度の限局性淡明細胞型RCC症例・試験群:ニボルマブを2週ごと、イピリムマブを6週ごと24週間投与(NivoIpi群:405例)・対照群:2種のプラセボを2週ごとと6週ごとに24週間投与(Pla群:411例)・評価項目:[主要評価項目] 盲検下独立中央判定(BICR)によるDFS[副次評価項目] 安全性、全生存期間 主な結果は以下のとおり。・重要なサブグループ解析としてTNMステージ、病理グレード、肉腫様、PD-L1発現を取り上げたが、TNMステージ、病理グレードについては、DFSとの明らかな関連が認められなかった。・PD-L1≧1%症例(102例)におけるNivoIpi群対Pla群のDFS HRは0.40(95%信頼区間[CI]:0.19~0.84)、一方、PD-L1<1%症例(625例)におけるDFS HRは1.14(同:0.85~1.54)であった。・肉腫様症例(40例)におけるDFS HRは0.29(95%CI:0.09〜0.91)であった。・NivoIpi群における早期治療中断を投与回数6回以下と6回超で評価した。結果、投与回数6回以下に対する6回超のDFS HRは0.74(95%CI:0.48~1.13)と、早期治療中断でDFSが不良な傾向にあった。・患者報告による健康関連QOLは、全般的評価スケールであるEQ-5D-3Lと、腎がん治療に特化した機能評価スケールであるFKSI-19で評価した。結果、両スケールともに臨床上意義のある差は認められなかった。

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進行腎細胞がん、免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か/Lancet

 免疫チェックポイント阻害薬の投与中または投与後に病勢が進行した腎細胞がん患者の治療において、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブの併用療法はカボザンチニブ単独療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善せず、重篤な有害事象が増加したことが、米国・シティ・オブ・ホープ総合がんセンターのSumanta Kumar Pal氏らが実施した「CONTACT-03試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年6月5日号に掲載された。15ヵ国の無作為化第III相試験 CONTACT-03試験は日本を含む15ヵ国135施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2020年7月~2021年12月に患者のスクリーニングが行われた(F Hoffmann-La RocheとExelixisの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、全身状態が良好(Karnofsky performance statusスコア70%以上)で、組織学的に局所進行または転移性腎細胞がんと確定され、1次または2次治療において免疫チェックポイント阻害薬の投与中または投与後に画像上で病勢の進行が認められた患者であった。 被験者は、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと、静脈内投与)+カボザンチニブ(60mg、1日1回、経口投与)の投与を受ける群(併用群)、またはカボザンチニブ単独の投与を受ける群(単独群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、PFS(盲検下に独立の中央判定による)およびOSの2つで、intention-to-treat解析が行われた。奏効率は同じ、奏効期間は2ヵ月短い 522例が登録され、併用群に263例(年齢中央値62歳、女性22%)、単独群に259例(63歳、24%)が割り付けられた。追跡期間中央値は15.2ヵ月だった。前治療で投与された免疫チェックポイント阻害薬は、1次治療ではイピリムマブ+ニボルマブ(併用群31%、単独群27%)、2次治療ではニボルマブ単独(それぞれ87%、93%)が使用されていた。 PFS中央値は、併用群10.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.8~12.3)、単独群10.8ヵ月(10.0~12.5)であり、両群間に有意な差は認められなかった(増悪または死亡のハザード比[HR]:1.03、95%CI:0.83~1.28、p=0.78)。また、OS中央値は、併用群25.7ヵ月(21.5~評価不能)、単独群は評価不能(21.1~評価不能)であり、両群間に有意差はみられなかった(死亡のHR:0.94、95%CI:0.70~1.27、p=0.69)。 客観的奏効(中央判定)は、併用群105例(41%)、単独群104例(41%)で得られた。奏効期間中央値は、それぞれ12.7ヵ月、14.8ヵ月だった。 頻度の高い有害事象として、両群とも下痢(併用群171例[65%]、単独群181例[71%])、手掌・足底発赤知覚不全症候群(101例[39%]、105例[41%])、食欲減退(100例[38%]、97例[38%])がみられた。 重篤な有害事象は、併用群の262例中126例(48%)、単独群の256例中84例(33%)で発現した。試験薬の投与中止の原因となった有害事象はそれぞれ41例(16%)、10例(4%)、減量/中断の原因となった有害事象は240例(92%)、223例(87%)、死亡の原因となった有害事象は17例(6%)、9例(4%)で認められた。 著者は、「これらの結果は、臨床試験以外では、腎細胞がん患者においては免疫チェックポイント阻害薬の逐次的な使用を控えるべきであることを示唆する。また、免疫チェックポイント阻害薬の再投与があらゆるがん種で標準治療とならないうちに、前向き臨床試験で評価することの重要性を強調するものである」としている。

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高齢NSCLCのICI治療に化学療法の併用は必要か?(NEJ057)/ASCO2023

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と化学療法の併用の有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、日本国内の58施設における75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)が実施された。その結果、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)の発現率を増加させた。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、植松 真生氏(がん・感染症センター 都立駒込病院)が発表した。・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで治療を開始した1,245例(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR・ALK遺伝子変異を有する患者は除外)・評価項目:レジメン別にみたOSとPFS、PD-L1発現状況別にみたOSとPFS(傾向スコアマッチングを実施)、安全性 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値78歳(範囲:75~95歳)、男性78%、ECOG PS 0または1が84%、PD-L1陰性(Tumor Proportion Score[TPS]1%未満)/低発現(TPS 1~49%)/高発現(TPS 50%以上)/不明がそれぞれ22%/31%/33%/14%であった。・レジメンの割合は、ICI+化学療法28%、ICI単剤34%、プラチナダブレット25%、単剤化学療法12%であった。・レジメン別にみたOS中央値は、ICI+化学療法群20.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.1~23.6)、ICI単剤群19.8ヵ月(95%CI:16.5~23.8)、プラチナダブレット群12.8ヵ月(95%CI:10.7~15.6)、単剤化学療法群9.5ヵ月(95%CI:7.4~13.4)であった。・レジメン別にみたPFS中央値は、ICI+化学療法群7.7ヵ月(95%CI:6.5~8.7)、ICI単剤群7.7ヵ月(95%CI:6.6~8.8)、プラチナダブレット群5.4ヵ月(95%CI:4.8~5.7)、単剤化学療法群3.4ヵ月(95%CI:2.6~4.0)であった。・傾向スコアマッチング後のPD-L1発現状況別にみたOSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のハザード比[HR]は、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.98(95%CI:0.67~1.42)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.11(95%CI:0.65~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.92(95%CI:0.55~1.56)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・PD-L1発現状況別にみたPFSについて、ICI単剤群に対するICI+化学療法群のHRは、PD-L1陽性(TPS 1%以上)が0.92(95%CI:0.67~1.25)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)が1.22(95%CI:0.71~1.91)、PD-L1高発現(TPS 50%以上)が0.86(95%CI:0.56~1.31)であり、いずれのサブグループにおいても有意差は認められなかった。・Grade3以上のirAEは、ICI+化学療法群24.3%(86例)、ICI単剤群17.9%(76例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.03)。・肺臓炎の発現率(全Grade)は、ICI+化学療法群23.4%(83例)、ICI単剤群15.6%(66例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.006)。・ステロイドを必要としたirAEは、ICI+化学療法群32.5%(115例)、ICI単剤群24.7%(105例)に認められ、ICI+化学療法群が有意に高率であった(p=0.02)。 植松氏は、「リアルワールドにおいて、ICIと化学療法の併用はICI単剤と比較して、高齢NSCLC患者の生存成績を改善せず、Grade3以上のirAEの発現率を増加させた。本結果から、PD-L1陽性の高齢NSCLC患者には、ICI単剤での投与が推奨される可能性がある」とまとめた。

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進行NSCLC、腫瘍治療電場療法を標準治療に上乗せでOS改善(LUNAR)/ASCO2023

 腫瘍治療電場(TTフィールド)療法は、さまざまな機序で非侵襲的にがん細胞を死滅させる治療法で、すでに膠芽腫および悪性胸膜中皮腫に対する治療として、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている(本邦では、膠芽腫について薬事承認を取得[保険適用は初発膠芽腫のみ])。非小細胞肺がん(NSCLC)については、前臨床モデルで免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やタキサン系抗がん剤の効果を増強することが報告されている1-3)。そこで、転移を有するNSCLC患者を対象に、TTフィールド療法の標準治療への上乗せ効果を検証する海外第III相試験「LUNAR試験」が実施された。その結果、TTフィールド療法の上乗せにより、全生存期間(OS)が有意に改善した。本結果について、米国・エモリー大学Winship Cancer InstituteのTiciana Leal氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。・試験デザイン:海外第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ製剤で治療中または治療後に進行が認められた、転移を有する22歳以上のNSCLC患者276例・試験群(TTフィールド+標準治療群):TTフィールド療法(150kHzを1日18時間以上)+標準治療(ICI[ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブのいずれか]またはドセタキセルを治験担当医師が選択) 137例・対照群(標準治療群):上記と同様の標準治療 139例・評価項目:[主要評価項目]OS(TTフィールド+標準治療群vs.標準治療群)[主要な副次評価項目]OS(TTフィールド+ICI群vs.ICI群、TTフィールド+ドセタキセル群vs.ドセタキセル群)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、組織型別のOS、組織型別のPFS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の患者背景は、年齢中央値64歳(範囲:22~86歳)、男性が65%、ECOG PS 0/1が96%、前治療のライン数1が89%、ICIによる前治療歴ありが31%であった。・ITT集団におけるOS中央値は、標準治療群が9.9ヵ月であったのに対し、TTフィールド+標準治療群は13.2ヵ月であり、TTフィールド+標準治療群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.56~0.98、p=0.035)。1年OS率はそれぞれ42%、53%、3年OS率はそれぞれ7%、18%であった。・ICIによる治療を受けたサブグループにおけるOS中央値は、ICI群が10.8ヵ月であったのに対し、TTフィールド+ICI群は18.5ヵ月であり、TTフィールド+ICI群で有意に改善した(HR:0.63、95%CI:0.41~0.96、p=0.03)。・ドセタキセルによる治療を受けたサブグループにおけるOS中央値は、ドセタキセル群が8.7ヵ月、TTフィールド+ドセタキセル群が11.1ヵ月であり、有意差は認められなかった(HR:0.81、95%CI:0.55~1.19、p=0.28)。・組織型別のOS中央値は、非扁平上皮NSCLCで標準治療群が9.9ヵ月、TTフィールド+標準治療群が12.6ヵ月であった(HR:0.80、95%CI:0.54~1.16、p=0.28)。扁平上皮NSCLCでは、それぞれ10.1ヵ月、13.9ヵ月であった(HR:0.67、95%CI:0.44~1.01、p=0.05)。・ITT集団におけるPFS中央値は、標準治療群が4.1ヵ月、TTフィールド+標準治療群が4.8ヵ月であり、有意差は認められなかった(HR:0.85、95%CI:0.67~1.11、p=0.23)。・ITT集団におけるORRは、標準治療群が17%、TTフィールド+標準治療群が20%であり、有意差は認められなかった(p=0.5)。完全奏効(CR)は標準治療群が1例であったのに対し、TTフィールド+標準治療群が4例であった。・有害事象は、標準治療群の91%、TTフィールド+標準治療群の97%に発現した。皮膚炎がそれぞれ2%、43%に発現し、TTフィールド+標準治療群で多かったが、Grade3以上のものはそれぞれ0%、2%であった。肺臓炎や免疫関連有害事象の発現率は両群に差がみられなかった。TTフィールド療法に関連があると判断された有害事象に、Grade4以上のものはなかった。 本結果についてLeal氏は、「TTフィールド療法は第III相試験(LUNAR試験)において主要評価項目を達成した。TTフィールド療法は、プラチナ製剤で治療中または治療後に進行が認められた転移を有するNSCLCに対する標準治療の選択肢として考慮されるべきである」とまとめた。また、未治療の進行NSCLC患者を対象としたTTフィールド療法の標準治療への上乗せ効果を検討する試験も進行中とのことである。

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NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブの術前・術後補助療法の無イベント生存期間(EFS)の成績が明らかにされた。 米国・スタンフォード大学のHeather Wakelee氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。KEYNOTE-671試験は、NSCLC患者を対象に周術期におけるペムブロリズマブの効果を評価した、無作為化二重盲検第III相試験。免疫チェックポイント阻害薬の術前・術後補助療法において、同試験は、デュルバルマブのAEGEAN試験に続き、toripalimabのNEOTORCH試験と共に有意な改善を示したことになる。・対象:切除可能なStage(AJCC第8版)II、IIIA、IIIB(N2)NSCLC患者・試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン+ゲムシタビンまたはペメトレキセド)3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mg 3週ごと最大13サイクル・対照群:プラセボ+化学療法(同上)3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボ3週ごと最大13サイクル・評価項目:[主要評価項目]EFSおよび全生存期間(OS)[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、主要な病理学的奏効(mPR) 主な結果は以下のとおり。・786例の登録患者をペムブロリズマブ群およびプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。・EFS中央値は、ペムブロリズマブ群未到達、プラセボ群17.0ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.72、p<0.00001)。・OS中央値は、ペムブロリズマブ群未到達、プラセボ群45.5ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.54〜0.99、p=0.02124)。・mPRはペムブロリズマブ群30.2%、プラセボ群11.0%、pCRはペムブロリズマブ群18.1%、プラセボ群4.0%であった。・治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群96.7%、プラセボ群95.0%で発現、免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群25.3%、プラセボ群10.5%で発現した。 このデータは、ペムブロリズマブを含む術前・術後補助療法が、切除可能なNSCLCの新たな治療選択肢となることを支持するものだと、Wakelee氏は述べた。

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切除不能肝細胞がんの1次治療、STRIDEレジメンでOS延長/AZ

 2023年4月4日(木)にアストラゼネカ主催のプレスセミナーが開催され、肝細胞がん治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる可能性について、千葉大学大学院医学研究院消化器内科学 教授の加藤 直也氏が語った。加藤氏は、「肝細胞がんは肝予備能を維持し、悪化させないことが大切。デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と2023年3月に薬価基準収載されたトレメリムマブ(製品名:イジュド)を併用するSTRIDEレジメンは肝臓に負担をかけにくく、理にかなっているのではないか」と述べた。外科的な治療が不可能なケースの多い肝細胞がんだが、薬物治療の新たな局面を迎え、長期生存率の向上が期待できそうだ。予後に大きく影響するのは“肝予備能” 肝細胞がんでは簡単に手術のできないケースが多く、手術ができる人はたった2割である。ただし、他がん腫と異なり、切除不能例であってもさまざまな治療選択肢がある。全生存期間延長を目標に据え、最適な治療選択を行うことが肝要である。 ただし、多くの選択肢を残すには肝予備能の維持が重要であり、予後に大きく影響する。加藤氏は、「肝予備能さえ保てれば、次の薬を試すことができる。複数の薬を使えるほうが予後は良くなる」と強調した。炎症なしタイプの肝細胞がんはプライミングの強化が必要 腫瘍細胞はCTLA-4、PD-1などが関与して誘導される免疫寛容により、免疫系からの攻撃を逃れている。免疫チェックポイント阻害薬は、この機能を阻害することで免疫系を活性化し腫瘍細胞を攻撃する薬だが、炎症の少ないがんには効きにくいと言われている。炎症が少なくてもキラーT細胞がある程度存在すればまだ有効であるが、そうでない場合は効果が薄い。炎症なしタイプが3分の2を占める肝細胞がんにおいて、免疫チェックポイント阻害薬の有効性を高めるには、プライミングの強化がまず必要である。デュルバルマブ、トレメリムマブは免疫だけで肝がんと戦える デュルバルマブとトレメリムマブの併用療法であるSTRIDEレジメンは、VEGF/VEGFR阻害なしの初めてのレジメンである。 プライミングフェーズとして、トレメリムマブがCTLA-4を介した免疫抑制経路を阻害し、T細胞の活性化を促す。そして、エフェクターフェーズで、デュルバルマブがPD-L1を介した免疫抑制経路を阻害し、T細胞によるアポトーシスを促す。両剤の併用によって、免疫反応の複数の段階で抗腫瘍活性をもたらすT細胞の活性化と機能増強が行われることで、抗腫瘍免疫を増強する。HIMALAYA試験の概要と結果 では、臨床試験の結果はどうだったのだろうか。本セミナーでは第III相ランダム化比較試験のHIMALAYA試験の結果が紹介された。 本試験ではトレメリムマブの初回1回投与、デュルバルマブ4週間隔で投与するSTRIDE群とソラフェニブ投与群、デュルバブマブ投与群で、 全生存期間(OS)などを比較した。 OS中央値はSTRIDE群で16.43ヵ月[95%信頼区間[CI]:14.16~19.58]、ソラフェニブ群で13.77ヵ月[95%CI:12.25~16.13]であり、STRIDE群でOSの有意な延長がみられた。 STRIDE群の主な有害事象は下痢、そう痒症、発疹など。また、免疫関連有害事象の発現率はSTIRIDE群で35.8%、Grade3以上の有害事象発生率は12.6%であった。 切除不能肝細胞がんでは、OSの延長を目標に、最適な治療選択を行うことが最も重要である。今回、トレメリムマブとデュルバルマブの併用療法が1次治療の選択肢に新たに追加された。加藤氏は、「炎症なしタイプが半数以上を占める肝細胞がんでは、まずプライミング強化が必要となる。この点において、STRIDEレジメンは理にかなったものであり、1次治療の新しい選択肢となる」と語った。

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ホジキンリンパ腫初回治療、ニボルマブ+AVD療法がPFSを改善(SWOG S1826)/ASCO2023

 成人の古典的ホジキンリンパ腫の初回治療は、長らくABVD(ブレオマイシン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)療法が標準治療であったが、2022年にA+AVD(ブレンツキシマブ ベドチン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)療法がABVD療法と比較して全生存期間(OS)を延長したことが報告された。しかし、若い患者を中心に、長期間続く治療による毒性の問題が依然として残っている。 米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションとして、新たな標準療法となったA+AVD療法と、再発難治ホジキンリンパ腫の治療で有効性を示した抗PD-1抗体ニボルマブをAVD療法に加えたN-AVD療法を比較した第III相SWOG S1826試験の結果が、米国・シティ・オブ・ホープ総合がんセンターのAlex Francisco Herrera氏によって報告された。・対象:12歳以上、StageIII~IVのホジキンリンパ腫患者・試験群(N-AVD群):ニボルマブ+AVDを6サイクル。G-CSF製剤による好中球減少症予防治療は任意・対照群(A+AVD群):ブレンツキシマブ ベドチン+AVDを6サイクル。G-CSF製剤投与は必須・評価項目:[主要評価項目]無増悪存期間(PFS)[副次評価項目]OS、無イベント生存期間(EFS)、患者報告アウトカム(PROs)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2019年7月19日~2022年10月5日に976例が組み入れられ、N-AVD群(489例)とA+AVD群(487例)に無作為に割り付けられた。年齢中央値は27歳(12~83歳)、56%が男性、76%が白人であった。24%が18歳未満、10%が60歳以上、32%がIPSスコア4~7であった。・N-AVD群では30件のPFSイベントが発生し、A+AVD群では58件のPFSイベントが発生した。・追跡期間中央値12.1ヵ月時点で、PFSはN-AVD群で優れていた(ハザード比[HR]:0.48、99%信頼区間[CI]:0.27~0.87、p=0.0005)。1年PFS率はN-AVD群94%、A+AVD群86%だった。年齢、IPSスコア、Stage別のサブグループ解析でも同様の結果が得られた。・試験期間中の死亡はN-AVD群4例、A+AVD群11例、放射線治療を受けたのはN-AVD群2例、A+AVD群4例だった。・Grade3以上の血液関連の有害事象はN-AVD群48.4%(うち好中球減少症47%)、A+AVD群30.5%(同25%)、全Gradeの骨の痛みはN-AVD群8%、A+AVD群20%だった。発熱性好中球減少症、敗血症、感染症、ALT上昇、甲状腺機能低下症などの発生率は低く、両群で同等であった。 Herrera氏は「N-AVDはA+AVDに比べPFSを改善した。免疫関連の有害事象はほとんど観察されず、放射線療法を受けた患者は1%未満であった。OSとPROを評価するためにはより長いフォローアップが必要だが、本試験はホジキンリンパ腫の小児と成人の治療を進化させるための重要なステップである」とした。

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手術不能の胃がん・食道胃接合部がんに対する第1次選択療法の変革(解説:上村直実氏)

 従来の標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬(PD-L1阻害薬)ニポルマブの併用療法がHER2陰性の進行胃がんと食道胃接合部がんに対する1次治療の有用性が2021年にLancet誌にて報告され、現在では保険収載されて医療現場で実際に使用されている。さらに、FOLFOX療法など従来の化学療法にPD-L1阻害薬のみでなく、さまざまな分子標的薬の上乗せ効果が注目されている。 今回、HER2陰性かつタイトジャンクション分子の一部で胃粘膜上皮層のバリア機能や極性の調整に関与しているCLDN18.2陽性の切除不能な進行胃がんと食道胃接合部がんに対してCLDN18.2を標的としたモノクローナル抗体であるzolbetuximabをmFOLFOX6に追加した際の上乗せ効果を示した研究結果が2023年4月のLancet誌に報告された。この研究は日本を含む20ヵ国215施設が参画した国際共同RCTであり、論文の筆頭著者は日本の研究者である。 筆者には本研究結果の解釈で少し気になる点がある。主要評価項目である無増悪生存期間はプラセボ群に比べてzolbetuximab群が有意な生存期間の延長を認めているが、食道胃接合部がんのみを対象としたサブ解析では両群の生存期間に差を認めていない。上部消化管領域を専門とする臨床家にとって、通常の胃がんと食道胃接合部がんの両者は浸潤態度や発育速度において異なる生物学的特性を有することが知られており、両者を同一視して対象と取り扱う臨床研究デザインに違和感がある。 すなわち、『CLDN18.2陽性、HER2陰性、局所進行の切除不能または転移性の胃がん患者において、zolbetuximabとmFOLFOX6と併用した場合、プラセボとmFOLFOX6の併用に比べて無増悪生存率と全体生存率を著しく延長したことから第1選択治療となる可能性がある。ただし、zolbetuximabを食道胃接合部がんに対する第1選択薬として推奨するためには、さらなる検証を必要とする。』との解釈が妥当と思われた。いずれにせよ、PD-L1阻害薬の登場により、消化管がんに対する薬物療法の選択順序が大きく変化しており、最新の情報に注意しておく必要がある。 最後に、国際共同試験の結果を基にして新たに承認されている分子標的薬は非常に高価なものが多く、コストパフォーマンスを考慮すべき時代になっている。一方、日本の食道や胃など上部消化管がんの診療は、欧米とは大きく異なっており、内視鏡検査により発見される小さな早期がんを内視鏡的切除術により根治できている症例が非常に多いことを知った診療が期待される。

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ASCO2023スタート!注目演題を集めた特設サイトオープン

 6月2~6日(現地時間)まで、世界最大の腫瘍学会であるASCO2023(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。新型コロナ感染拡大の影響が薄まり、コロナ前の規模に戻りつつあるようだ。各種カンファレンスや交流会なども多く企画されている。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)では、ASCO2023のスタートに合わせ、5,000を超す演題の中から、複数のエキスパートが、専門分野の注目演題を計100題あまりピックアップ。学会期間スタートを控えてオープンした「ASCO2023特設サイト(医師会員限定)」では、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」「血液がん」「がん全般」のカテゴリに分け、ASCO視聴サイトの該当演題へのリンクを、エキスパートのコメントとともに紹介している。 各がん種別の注目演題の一部はこちら。【肺がん】・EGFR陽性NSCLCの術後補助療法としてのオシメルチニブ、3年OSは?/ADAURA・EGFR陽性NSCLCに対するEGFR-TKI vs. EGFR-TKI途中にシスプラチン+ペメトレキセド挿入/JCOG1404/WJOG8214L、AGAIN・NSCLCに対するDato-DXdとペムブロリズマブ±化学療法/TROPION-Lung08【乳がん】・HR+HER2-乳がんの術後療法、内分泌療法とribociclibの併用効果/NATALEE・HR+HER2-乳がんのCDK4/6阻害薬、1次治療か2次治療か/SONIA・StageIV乳がんにおける原発腫瘍切除の意義/JCOG1017【消化器がん】・局所進行直腸がん、術後化学療法の効果によって放射線療法を省略できるか/PROSPECT・KRAS G12C変異の既治療大腸がんに対するソトラシブ+パニツムマブにFOLFIRI上乗せ/CodeBreaK 101・StageIII胃がんに対する術後補助療法としてのニボルマブ+化学療法/ATTRACTION-5【泌尿器がん】・転移のある去勢抵抗性前立腺がんを対象とした177Lu-PSMA-617+オラパリブ/LuPARP・転移のある去勢抵抗性前立腺がん1次治療におけるエンザルタミド+タラゾパリブ/TALAPRO-2・ICI治療後の進行腎がんにおけるアテゾリズマブ+カボザンチニブ/CONTACT-03【造血器腫瘍】・未治療ホジキンリンパ腫におけるニボルマブ+AVD vs. A-AVD/SWOG S1826・未治療Ph陽性高齢ALLに対するイノツズマブ オゾガマイシン+ブリナツモマブのケモフリーレジメンの有用性/Alliance・未治療の多発性骨髄腫におけるエロツズマブ+KRd対KRd 学会終了後は、視聴レポートやまとめ記事なども続々アップしていく予定。 Doctors’Picks ASCO2023特設サイト(医師会員限定)

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がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?【見落とさない!がんの心毒性】第21回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別30代・男性主訴右下腿の腫脹・疼痛現病歴とくに既往症はなく、生来健康であった。陰嚢腫大を契機に右精巣腫瘍を指摘された。高位精巣摘除術で非セミノーマの診断となり、術後の血液検査で腫瘍マーカーの上昇(LDH、hCG-β、AFP)と、造影CT検査で領域リンパ節と傍大動脈リンパ節の多発転移(最大径4cm)、多発肺転移(最大径3cm)を指摘された。右精巣腫瘍(胚細胞腫瘍・非セミノーマ)、TNM分類はT2N2M1aS1、ステージIIIA、IGCCC分類の予後良好群と診断された。化学療法は腫瘍内科医が担当することとなった。腫瘍内科医は症例患者のステージ、リスク分類から、標準治療であるBEP療法 (ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン) 3コースを行う方針とした。BEP療法2コース後、腫瘍マーカーは正常範囲内まで改善したが、発熱性好中球減少症(FN:febrile neutropenia)や消化器毒性、倦怠感など化学療法に伴う有害事象があり、入院中も臥床時間が長い傾向にあった。1コース目でFNを発症したため、2コース目は二次予防的にG-CSF製剤を使用した。3コース目開始前日に右下腿の腫脹・疼痛の訴えがあり、血液検査を実施したところD-dimerが9.5μg/mLと高値であった。右下腿の腓腹筋の把握痛を認めたため、腫瘍内科医は深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)を疑い下肢静脈超音波検査を行ったところ、右大腿〜膝窩静脈に比較的新鮮と思われる血栓(中枢型DVT)を認めた。バイタルサインに問題はなく、呼吸困難や胸痛の訴えはなかったが、造影CT画像検査で左右の肺動脈に塞栓がみられ、肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)も合併していることがわかった。多発リンパ節転移、多発肺転移は化学療法導入前より縮小傾向にあり、リンパ節転移はいずれも短径1cm未満、肺転移も長径2cm未満となっており、化学療法は奏効していると思われた。【問題1】本症例の患者がDVT/PEを発症した原因や誘因について、正しいと思われる選択肢を3つ選んでください。a.長期臥床や骨盤リンパ節転移による下肢静脈の圧排による血流停滞が血栓形成の誘因となった。b.シスプラチンは一般的に血栓塞栓症のリスクが高い抗がん剤とされている。c.ブレオマイシンは一般的に血栓塞栓症のリスクが高い抗がん剤とされている。d.固形がんにおける化学療法中のDVTの発症頻度はがん種によって差があり、胚細胞腫瘍は比較的リスクが高いがん種である。e.化学療法による有害事象対策のための支持療法に使用する薬剤は血栓塞栓症のリスクにはならない。腫瘍内科医は本症例の患者におけるDVT/PEの治療について、循環器内科医にコンサルトした。心電図検査、心臓超音波検査で右室負荷所見は認めず、循環動態は保たれていると判断した。腫瘍内科医と循環器医で協議し、治療方針について検討を行った。【問題2】本症例の治療方針について、不適切な選択肢を1つ選んでください。a.腎機能や体重を確認し、経口薬であるDOACs(direct oral anticoagulants)でDVT/PEの治療を開始した。b.抗凝固薬を開始してもDVTが軽快せず、PEが悪化した場合に致死的になるリスクが高いと思われる場合はIVCフィルターを検討する方針とした。c.腫瘍マーカーの値やCTの結果から、胚細胞腫瘍の病勢はコントロールできているため、DVT/PEの治療を優先し、血栓・塞栓が画像上完全に消失したことを確認してから化学療法を再開する方針とした。d.化学療法がDVT/PEの誘因になった可能性は否定できないが、抗凝固薬を開始してDVT/PEの明らかな増悪がなければBEP療法の3コース目は減量せずに実施する方針とした。e.化学療法後に残存腫瘍に対する外科的切除術を行う可能性があるため、DVT/PEの治療状況や心機能の評価は循環器内科医が併診しながら慎重に経過を観察した。<Take home message>血管新生阻害薬やHER2阻害薬などの分子標的薬、または免疫チェックポイント阻害薬における循環器領域の有害事象が腫瘍循環器領域でのトピックになっているが、いわゆる抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)でも腫瘍循環器的プロブレムがみられることがある。それぞれの薬剤における頻度・致死性の高い有害事象を理解することは、腫瘍内科医、循環器内科医の双方にとって重要である。腫瘍内科医は「がんの治療は詳しいが、循環器の治療はよくわからない」。一方で、循環器内科医は「循環器の治療は詳しいが、がんの治療はよくわからない」。腫瘍内科医と循環器内科医が密に連携し、それぞれの専門領域の観点からベストと思われる対応を目指すことが、腫瘍循環器的プロブレムのより良い管理にとって必要である。1)Seng S, et al. J Clin Oncol. 2012;30:4416-4426.2)Oppelt P, et al. Vasc Med. 2015;20:153-161.3)Piketty AC, et al. Br J Cancer. 2005;93:909-914.4)Lauritsen J, et al. J Clin Oncol. 2020;38:584-592.5)Haddad TC, et al. Thromb Res. 2006;118:555-568.6)Khorana AA, et al. Cancer. 2005;104:2822-2829.7)Raskob GE, et al. N Engl J Med. 2018;378:615-624.8)Agnelli G, et al. N Engl J Med. 2020;382:1599-1607.9)Young AM, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2017-2023.10)Empowering urologists to provide the best possible care:Testicular Cancer11)Motzer RJ, et al. Cancer. 1990;66:857-861. 12)Mulder FI, et al. Blood. 2021;137:1959-1969.講師紹介

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TTF-1は肺腺がんにおけるICI+化学療法の効果予測因子となるか/日本呼吸器学会

 肺腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の効果予測因子として、TTF‐1(Thyroid transcription factor-1)の可能性が研究されている。 TTF-1は甲状腺・肺・脳で認められる遺伝子調節タンパクである。肺腺がんにおいても、TTF−1との研究が報告されている。 肺腺がんではTTF-1陽性が多く60〜80%を占め、陰性は20〜40%である。TTF-1陽性例に比べ、陰性例は予後不良であるとされる。また、TTF-1の発現の有無は、化学療法薬ペメトレキセドの効果に影響を及ぼすとの報告がある。しかし、肺腺がんにおける、ICIとペメトレキセドを含む化学療法との併用療法とTTF-1発現の関係については十分に研究されていない。第63回日本呼吸器学会学術講演会でも、肺腺がんとTTF-1の関係を検討した研究がいくつか報告された。TTF-1は肺腺がんに対するICI+化学療法の効果予測因子 肺腺がんにおける、TTF-1のICI+化学療法の効果予測因子として可能性を検討した多施設後方視的研究が行われた。その結果を、兵庫県立淡路医療センターの桐生 辰徳氏が発表した。対象はICI+化学療法を施行した再発進行肺腺がん患者101例で、免疫染色強度と腫瘍細胞割合で陽性と陰性に分けて検討した。 研究の結果、奏効率(ORR)はTTF-1陽性では51.7%、陰性では35.7%であった(p=0.141)。無増悪生存期間(PFS)中央値は陽性では7.6ヵ月、陰性では6.4ヵ月であった(p=0.056)。さらにICI+化学療法を、ペメトレキセド使用レジメンとタキサン使用レジメンに分けて検討した。ペメトレキセド使用群のPFS中央値は、TTF-1陽性例で8.5ヵ月、陰性例では5.3ヵ月であった(p=0.005)。一方、タキサン使用群のPFS中央値は、陽性例で7.3ヵ月、陰性例では6.4ヵ月であった(p=0.587)。 陽性と陰性のORRおよびPFSの結果から、TTF-1は肺腺がんにおけるICI+化学療法の効果予測因子である可能性が示された。また、ペメトレキセドを使用したICI+化学療法レジメンではTTF-1陰性例で抗腫瘍活性が低い可能性が示唆され、タキサンを使用したICI+化学療法レジメンでは陽性と陰性での差が少なかった。肺腺がんに対するペメトレキセド・ICI併用レジメンの抗腫瘍効果とTTF-1発現 ペメトレキセドは肺腺がんの治療において欠かせない化学療法薬だが、上記研究で傾向がみられるように、TTF-1陽性例に比べ、陰性例で効果が劣る可能性が示唆されている。 日本医科大学の高嶋 紗衣氏は、自施設の肺腺がん症例において、ペメトレキセドを使用したICI+化学療法レジメンとTTF-1発現の関係を後方視的に研究した。2016〜22年に日本医科大学において、肺腺がんと診断されTTF-1染色を行った後、化学療法を行った333例のうち、ペメトレキセド+プラチナ化学療法+ICIレジメンを施行した患者46例で、TTF-1発現別に予後と治療効果を検討している。 研究の結果、ORRはTTF-1陽性で51.4%、陰性では22.2%、全生存期間中央値は陽性で30.1ヵ月、陰性では6.53ヵ月であった(p=0.08)。 上記の桐生氏の発表および従来の報告同様、ペメトレキセド+プラチナ化学療法は、ICI併用においてもTTF-1陰性肺腺がんでは抗腫瘍効果が低い傾向が示された。ただし、「今回の試験では、TTF-1陰性の症例が少ないことは大きなlimitationであり、今後の追加研究が必要だ」と高嶋氏は述べた。

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進行腎細胞がん1次治療、カボザンチニブ+NIVO+IPIがPFS改善(COSMIC-313)/NEJM

 予後予測分類が中リスクまたは高リスクで未治療の進行腎細胞がん患者において、チロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブとニボルマブ+イピリムマブの併用療法はニボルマブ+イピリムマブと比較して、1年時の無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したが、Grade 3/4の有害事象の頻度は高かったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のToni K. Choueiri氏らが実施した「COSMIC-313試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年5月11日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 COSMIC-313試験は、北米、欧州、南米、アジアなどの諸国の施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年6月~2021年3月の期間に患者の無作為割り付けが行われた(米国・Exelixisの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、未治療の進行淡明細胞型腎細胞がんを有し、予後が国際転移性腎細胞がんデータベースコンソーシアム(IMDC)の分類で中リスクまたは高リスクの患者を、ニボルマブ(3mg/kg体重、静注)+イピリムマブ(1mg/kg体重、静注)との併用で、カボザンチニブ(40mg/日、経口、実験群)またはプラセボ(経口、対照群)を投与する群に無作為に割り付けた。 ニボルマブ+イピリムマブは3週に1回、4サイクル投与され、その後ニボルマブ維持療法(480mg、4週に1回)が最長で2年間施行された。 主要評価項目はPFSであり、無作為化の対象となった最初の550例(PFS集団)について独立の審査委員会が盲検下で評価した。完全奏効率は両群とも3% 855例(intention-to-treat集団)が登録され、実験群に428例(年齢中央値61歳、男性76%)、対照群に427例(60歳、73%)が割り付けられた。PFS集団は、実験群が276例(61歳、77%)、対照群は274例(60歳、74%)だった。全体の約65%が腎摘出術を受けていた。 PFS集団における12ヵ月時のPFS達成見込みは、対照群が0.49であったのに対し、実験群は0.57と有意に優れた(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.94、p=0.01)。PFS中央値は、実験群が未到達(95%CI:14.0~未到達)、対照群は11.3ヵ月(7.7~18.2)だった。 また、盲検下の独立審査委員会によるPFS集団における奏効率は、実験群が43%、対照群は36%であり、このうち完全奏効率はいずれも3%であった。病勢コントロール率はそれぞれ86%、72%、奏効までの期間中央値は2.4ヵ月、2.3ヵ月、奏効期間中央値はいずれの群も未到達だった。 Grade3/4の有害事象は、実験群が79%、対照群は56%で発現した。対照群に比べ実験群で頻度の高かった有害事象として、ALT値上昇(27% vs.6%)、AST値上昇(20% vs.5%)、高血圧(10% vs.3%)が認められた。投与中止をもたらした試験薬関連の有害事象の割合は、実験群が45%、対照群は24%であった。 著者は、「先行研究と比較して両群とも完全奏効率が低かったが、これは腎摘出術を受けていない患者の割合が他の第III相試験に比べて高く、腎腫瘍の残存病変を有する患者が多かったためと考えられる。今後、長期のフォローアップで完全奏効率が上昇するかはわからない」としている。現在、全生存期間の解析のためのフォローアップが継続中だという。

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間質性肺炎合併肺癌の薬物療法、改訂GLの推奨は?/日本呼吸器学会

 間質性肺炎(IP)には肺癌が合併することが多く、IP合併肺癌に対する治療は急性増悪を引き起こすことが問題になる。近年、肺癌の薬物療法は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が主流となり、IP合併肺癌に対する薬物療法について、さまざまな検討がなされている。2023年4月に改訂された特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)では、これらのエビデンスを基に、合併肺癌に関して新たに3つのCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、合計6つとなった。合併肺癌に関するCQと関連するエビデンスについて、岸 一馬氏(東邦大学医学部内科学講座 呼吸器内科学分野 教授)が第63回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。改訂GLの合併肺癌に関するCQと推奨 特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)は、慢性期、急性増悪、合併肺癌、肺高血圧症、進行期の5つのセクションで構成され、今回から肺高血圧症と進行期が追加された。合併肺癌に関するCQは3つ追加された(CQ20-1、20-2、21)1)。 IP合併肺癌のCQとポイントは以下のとおり。CQ17:IPF(特発性肺線維症)を含むIP合併肺癌患者に外科治療は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、IP合併例肺癌手術例の予後を調べた研究では、StageIAであっても5年生存率が59%にとどまっていたことが報告されている2)。その理由として、術後急性増悪による死亡の多さがある。IP合併肺癌1,763例を対象とした後ろ向き研究では、急性増悪が9.3%に発現し、死亡率は43.9%であった3)。術後急性増悪のリスク因子からリスク予測モデルが作成され、その有用性を検討した前向きコホート研究REVEAL-IP Studyが実施された。その結果、術後急性増悪は1,094例中71例(6.5%)に発現し、そのうち39.4%が死亡したが、後ろ向き研究時よりも改善傾向にあった。CQ18:IPFを含むIP合併肺癌患者に術後急性増悪の予防投薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、ステロイドなどの術前予防投薬を行っても術後急性増悪の発現率は低下しないことが報告されている3)。その後、少数例の検討ではあるがピルフェニドンが術後急性増悪の発現リスクを低下させることが報告され、現在IPF合併肺癌患者を対象として周術期ピルフェニドン治療の有用性を検討する無作為化比較試験が実施されている4)。CQ19:IPFを含むIP合併肺癌患者に細胞傷害性抗がん薬は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、IP合併非小細胞肺癌(NSCLC)に対する初回化学療法の前向き試験が複数実施されており、急性増悪の頻度は12%以内で、近年は全生存期間中央値(MST)が15ヵ月を超えている。また、2022年12月には、化学療法とBest Supportive Care(BSC)を後ろ向きに比較した研究結果が報告された。傾向スコアマッチングを行っても、化学療法群はBSC群と比較して全生存期間(OS)が有意に延長した5)。CQ20-1:IPFを含むIP合併肺癌患者に血管新生阻害に関与する分子標的治療薬は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2 エビデンスの強さ:D(非常に低) エビデンスは少ないものの、化学療法にベバシズマブを上乗せしても急性増悪の発現は増加せず、無増悪生存期間(PFS)を延長する傾向が報告されている。また、推奨の決定に関するシステマティックレビューには含まれなかったが、世界で初めてIPF合併NSCLCを対象にニンテダニブの化学療法への上乗せ効果を検討した国内第III相無作為化比較試験(J-SONIC試験)の結果が本邦から報告された。主要評価項目の無イベント生存率(EFS)について、化学療法+ニンテダニブ群は化学療法群と比較して有意差は認められなかったが、奏効率(ORR)は化学療法群が56.0%であったのに対し、化学療法+ニンテダニブ群は69.0%と有意に高かった(p<0.05)。また、PFSについて、中央値は化学療法群が5.5ヵ月であったのに対し、化学療法+ニンテダニブ群は6.2ヵ月であり、有意に延長した(ハザード比:0.68、95%信頼区間[CI]:0.50~0.92)。OSについては、全体では両群間に有意差はなかったが、非扁平上皮NSCLC、GAP StageIのサブグループにおいて、化学療法+ニンテダニブ群が有意に改善した。急性増悪の頻度は、化学療法群1.6%、化学療法+ニンテダニブ群4.1%、全体でも2.9%と低かった6)。CQ20-2:IPFを含むIP合併肺癌患者にドライバー遺伝子変異に対する分子標的治療薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案または推奨 推奨の強さ:現段階では結論付けない エビデンスの強さ:D(非常に低) 推奨の強さについて、現段階では結論付けないとされた。これについては、パネル委員の全員が投与しないことを提案または推奨したが、一定の基準に達しなかったため、推奨の強さは決定されなかった。このような推奨となった一因として、日本人の肺癌患者を対象としてゲフィチニブと化学療法を比較した試験において、ゲフィチニブ群で間質性肺疾患(ILD)の頻度が高く(ゲフィチニブ群4.0%、化学療法群2.1%、オッズ比[OR]:3.2)、ILDによる死亡率が30%を超えたことなどが挙げられる7)。CQ21:IPFを含むIP合併肺癌患者に免疫チェックポイント阻害薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2 エビデンスの強さ:D(非常に低) IP合併肺癌に対するICIの効果を検討したメタ解析の結果が報告されている。10試験(ILDのある患者179例)が対象となり、そのうち8試験が本邦の報告であった。ORRについて、ILDのある群(34%)はILDのない群(24%)と比較して有意に良好であった(OR:1.99、95%CI:1.31~3.00)。一方、ILDのある群は免疫関連有害事象(irAE)の発現率が有意に高率であった(OR:3.23、95%CI:2.06~5.06)。ICIによる肺臓炎についても、ILDのある群(全Grade:27%、Grade3以上:15%)はILDのない群(同10%、4%)と比較して有意に高率であった(OR:2.91、95%CI:1.47~5.74)8)。また、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、IP合併肺癌におけるICIの薬剤性肺障害に関する後ろ向き研究を実施した。その結果、200例が対象となり、薬剤性肺障害は30.5%に認められた(Grade3以上:15.5%、Grade5:4.5%)。多変量解析の結果、重篤な薬剤性肺障害の危険因子として、IPFあり、IP診断時のSP-D(肺サーファクタントプロテインD)値高値、ICI投与前のCRP値高値が同定された。また、irAEが発現した患者はPFSとOSが有意に良好であり、IP非合併NSCLCにおける過去の報告と一致していた。IP合併肺癌に関する現状のまとめ 岸氏は、IP合併肺癌に関する現状について、以下のようにまとめた。・日本からIP合併肺癌に関するステートメントと特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)が発刊された。・IP合併肺癌の発生予防、治療による急性増悪に関して抗線維化薬の有用性が報告された。・IP合併進行NSCLCに対してカルボプラチン+タキサン、小細胞肺癌(SCLC)に対してプラチナ製剤+エトポシドは標準治療と考えられる。・IP合併肺癌に対するICIにより約30%に薬剤性肺障害が生じるが、比較的良好な治療成績が報告されている。・IP合併肺癌の治療は、リスクとベネフィットを慎重に検討し、患者の希望も踏まえて決定することが重要である。特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)編集:「特発性肺線維症の治療ガイドライン」作成委員会定価:3,300円(税込)発行年月:2023年4月判型:A4頁数:140頁■参考文献1)「特発性肺線維症の治療ガイドライン」作成委員会編集. 特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版). 南江堂;20232)Sato T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2015;149:64-70.3)Sato T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2014;147:1604-1611.4)Sakairi Y, et al. J Thorac Dis. 2023;15:1489-1493.5)Miyamoto A, et al. Respir Investig. 2023;61:284-295.6)Otsubo K, et al. Eur Respir J. 2022;60:2200380.7)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2008;177:1348-1357.8)Zhang M, et al. Chest. 2022;161:1675-1686.

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小細胞肺がんに対するICI+化学療法は、高齢患者でも治療選択肢/日本呼吸器学会

 小細胞肺がん(SCLC)の治療選択肢となっている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法は、高齢患者においても有効な選択肢である可能性が示された。日本医科大学千葉北総病院の清水 理光氏が第63回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 高齢化が進むわが国では、SCLCにおいても75歳以上の高齢患者が増加している。しかし、これらの患者集団に関する検討は十分ではない。清水氏らは、75歳以上の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対するICI+化学療法の有効性と安全性を検討した。2019年8月〜2023年3月に、同施設で1次治療にICI+化学療法を受けたES-SCLC患者を、後方視的に観察している。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)。75歳以上(n=8)と75歳未満(n=10)に分けて解析した。 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、75歳以上群で197日、75歳未満群では267日であった(p=0.394、95%信頼区間[CI]:95.7〜420.1)。・全生存期間(OS)中央値は、75歳以上群で500日超、75歳未満群では339日であった(p=0.359、95%CI:294.1〜370.9)。・ICI+化学療法のレジメン別のPFSは、デュルバルマブ+化学療法群で152日、アテゾリズマブ+化学療法群では197日超であった(p=0.812、95%CI:99.2〜294.8)。・奏効率は75歳以上群で50%、75歳未満群では60%であった。・Grade3以上の有害事象は、75歳以上群の50%、75歳未満群では60%に発現した(t-value=0.102)。 75歳以上の高齢者のES-SCLCに対するICI+化学療法は75歳未満と比較して奏効率、安全性ともに統計学的に有意な差はみられなかった。また、少数の解析ではあるがICIレジメン間でのPFSについても差は認められなかった。清水氏は、75歳以上の高齢者のES-SCLCにおいてもICI+化学療法は有効な選択肢となると述べている。

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高齢NSCLCにおけるKEYNOTE-189とIMpower130の比較/日本呼吸器学会

 70歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)における、2つの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法レジメンは同等の有効性を示すが、安全性プロファイルは異なることが示された。日本医科大学付属病院の戸塚 猛大氏が第63回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 ICI+化学療法はNSCLCの標準治療の1つである。NSCLCでは高齢患者の占める割合が多い。しかし、70歳以上の高齢NSCLCにおける治療の有効性や安全性は十分に検討されているとは言えない。戸塚氏らは同施設において、ICI+化学療法を受けた非扁平上皮NSCLC患者のデータを後ろ向きに収集し、70歳以上のNSCLCにおけるKEYNOTE-189レジメン(n=26)とIMpower130レジメン(n=13)の有効性と安全性を検討した。 主な結果は以下のとおり。・無増悪生存期間(PFS)はKEYNOTE-189レジメンは6.5ヵ月、IMpower130レジメンは8.1ヵ月であった(p=0.531)。・全生存期間(OS)はKEYNOTE-189レジメンは32.9ヵ月、IMpower130レジメンは22.9ヵ月であった(p=0.862)。・安全性プロファイルは両群で違う傾向にあり、Grade2以上の肺臓炎およびGrade2以上の腎障害の発現は、KEYNOTE-189レジメンでみられたが、IMpower130レジメンでは認められなかった。一方、Grade3以上の血液毒性はKEYNOTE-189レジメンに比べIMpower130レジメンで多くみられた。 70歳以上の非扁平上皮NSCLCにおいて、KEYNOTE-189レジメンとIMpower130レジメンの有効性には差は認められなかった。一方、有害事象の内容は異なることから戸塚氏は、安全性プロファイルを考慮して治療選択を行うべきだとの結論を示している。

199.

非小細胞肺がん免疫併用療法の多施設共同臨床試験に係る現状と重要な注意事項について/国立がん研究センター

 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、全国59施設で実施していた、未治療の進行・再発非小細胞肺がんに対する、化学療法+ペムブロリズマブ療法と化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法の有効性比較第III相試験(JCOG2007試験、特定臨床研究)において、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法患者で、予期範囲を超える約7.4%(148例中11例)の治療関連死亡が認められたため、試験継続困難と判断して2023年3月30日に同試験を中止した、と発表した。 同試験は2021年4月~2022年4月に261例の患者を登録したが、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法において、9例(6.9%)に治療関連死亡(肺臓炎3例、サイトカイン放出症候群2例、敗血症1例、心筋炎2例、血球貪食症候群1例)が起きたため登録を一時停止。その後、治療関連死亡患者に多く見られる特徴を見いだし、登録規準を変更したうえで2022年10月3日に登録を再開したが、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法患者に新たな治療関連死亡が起きた。安全性を高めた変更後の登録の規準をもってしても防げなかった治療関連死亡と考え、2023年3月30日にこの試験の中止を決定した、としている。 現在、同試験以外でニボルマブ+イピリムマブ併用療法を受けている未治療進行・再発非小細胞肺がんの患者に対しては、治療の効果や副作用を勘案した慎重な判断が必要なため、自己判断で治療を中断せず、必ず主治医と相談するよう勧告している。 詳細は国立がん研究センタープレスリリースを参照

200.

術前AC抵抗性TN乳がん、アテゾリズマブ+nab-PTXが有望/第II相試験

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では、抗PD-(L)1抗体による術前療法で病理学的完全奏効(pCR)率が改善されるが、免疫関連有害事象(irAE)の長期持続リスクのためリスク・ベネフィット比の最適化が重要である。最初の術前療法で臨床効果が不十分な場合はpCR率が低い(2~5%)ことから、免疫チェックポイント阻害薬が選択可能かもしれない。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのClinton Yam氏らは、術前ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)抵抗性のTNBC患者に対して、第2の術前療法としてアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルを投与する単群第II相試験を実施し、有望な結果が得られた。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年4月15日号に掲載。 本試験の対象は、StageI~IIIのAC抵抗性(AC 4サイクル後に病勢進行もしくは腫瘍体積の80%未満の減少)のTNBCで、第2の術前療法としてアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)+nab-パクリタキセル(100mg/m2、1週ごと12回)を投与後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)を投与した。 主な結果は以下のとおり。・2016年2月15日~2021年1月29日にAC抵抗性TNBCを37例登録した。・pCR/residual cancer burden(RCB)-I率は46%だった(ヒストリカルコントロール群:5%)。・新たな安全性シグナルは観察されなかった。・7例(19%)がirAEによりアテゾリズマブを中止した。

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