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EGFR exon20挿入変異にamivantamab+化学療法(PAPILLON)/ESMO2023

 EGFR exon20挿入変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、EGFR・MET二重特異性抗体amivantamabと化学療法の併用を評価する国際無作為化比較第III相試験PAPILLONの結果を、フランス・キューリー研究所のNicolas Girard氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。 未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCの治療成績は芳しくなく、全生存期間(OS)中央値は16〜24ヵ月である。同バリアントは、従来のEGFR-TKIに対する感受性がなく、免疫チェックポイント阻害薬もベネフィットを示せていない。・対象:未治療のEGFR exon20挿入変異陽性NSCLC・試験群:amivantamab+化学療法(amivantamab群、153例)・対照群:化学療法(化学療法群、155例)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、OS、PFS2、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は14.9ヵ月であった。・BICR評価のPFS中央値はamivantamab群11.4ヵ月、化学療法群6.7ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.395、95%信頼区間[CI]:0.30~0.53、p<0.0001)。12ヵ月PFSはそれぞれ48%と13%、18ヵ月PFSはそれぞれ31%と3%であった。・すべてのPFSサブグループにおいて、amivantamab群が良好であった。・BICR評価のORRはamivantamab群73%、化学療法群47%であった(オッズ比[OR]:3.0、95%CI:1.8〜4.8、p<0.0001)。・DOR中央値はamivantamab群9.7ヵ月、化学療法群4.4ヵ月であった。・PFS2中央値はamivantamab群未到達、化学療法群17.2ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(HR:0.493、95%CI:0.32〜0.76、p=0.001)。・OS中央値は未到達であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。・OS中央値はamivantamab群未到達、化学療法群24.4ヵ月であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。 Girard氏は、この試験の結果から、EGFR exon20挿入変異NSCLCに対するamivantamab+化学療法の1次治療は新たな標準治療であることを示した、と述べた。

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ER+/HER2-乳がんの術前ニボルマブ、pCRを有意に改善(CheckMate 7FL)/ESMO2023

 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相CheckMate 7FL試験の結果、術前化学療法および術後内分泌療法にニボルマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善し、さらにPD-L1陽性集団ではより良好であったことを、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSherene Loi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。・対象:ER+/HER2-、T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、Grade2(かつER 1~10%)またはGrade3(かつER≧1%)の新たに診断された乳がん患者 510例・試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(3週ごと)+パクリタキセル(毎週)→ニボルマブ+AC療法(隔週または3週ごと)→手術→ニボルマブ(4週ごと)+内分泌療法 257例・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 253例・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/is ypN0)[副次評価項目]PD-L1陽性集団のpCR、全体およびPD-L1陽性集団の腫瘍残存率(RCB)、安全性・層別化因子:PD-L1発現状況、Grade、腋窩リンパ節転移、AC療法の投与スケジュール 2022年4月に主要評価項目は修正ITT集団のpCR率のみに修正され、PD-L1陽性集団のpCR率は副次評価項目となった。今回がCheckMate 7FL試験結果の初報告で、全体およびPD-L1陽性集団のpCRとRCBが報告された。 主な結果は以下のとおり。・ニボルマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は50歳/51歳、Grade3が98%/99%以上、StageIII期が46%/42%、PD-L1 IC≧1%が34%/33%、腋窩リンパ節転移陽性が80%/79%で、両群でバランスがとれていた。・修正ITT集団全体のpCR率は、ニボルマブ群24.5%、プラセボ群13.8%で、ニボルマブ群が有意に高かった(調整差10.5%[95%信頼区間[CI]:4.0~16.9]、オッズ比[OR]:2.05、p=0.0021)。・PD-L1陽性集団におけるpCR率は、ニボルマブ群44.3%、プラセボ群20.2%(調整差:24.1%[95%CI:10.7~37.5]、OR:3.11)であった。なお、PD-L1陰性集団では14.2%/10.7%であった。・リンパ節転移の有無、Stage、年齢、AC療法の治療スケジュールにかかわらずニボルマブ群のほうがpCR率は良好であった。・全体におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群30.7%、プラセボ群21.3%(調整差:9.2%[95%CI:2.0~16.5]、OR:1.65)であった。・PD-L1陽性集団におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群54.5%、プラセボ群26.2%(調整差:28.5%[95%CI:14.6~42.4]、OR:3.49)であった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、ニボルマブ群35%、プラセボ群32%に発現し、安全性プロファイルは既報と一致していた。免疫介在性有害事象はニボルマブ群のほうが多かった。ニボルマブ群では死亡が2例(肺炎、肝炎)認められた。 これらの結果より、Loi氏は「高リスクのER+/HER2-早期乳がん患者の術前化学療法にニボルマブを追加することで、pCRは10.5%改善するとともにRCB 0~1率も9.2%改善した。この恩恵はPD-L1陽性集団でより大きかった。安全性プロファイルはこれまでと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで「バイオマーカーに関する追加データは今後の学会で発表する予定である」とまとめた。

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胃がん1次治療、周術期ペムブロリズマブはEFS延長せず(KEYNOTE-585)/ESMO2023

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部(G/GEJ)がん患者における免疫チェックポイント阻害薬の開発が進められているが、今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023)において術後療法にニボルマブの上乗せを検証したATTRACTION-5試験では上乗せ効果は示されなかった。同じくG/GEJがん患者を対象として、術前術後の化学療法にペムブロリズマブの上乗せ効果を検証した無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-585試験においても、無イベント生存期間(EFS)に有意な延長はみられなかったことがすでに報告されている。本試験の詳細について、国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。・対象:未治療の局所進行、切除可能G/GEJがん、PS0~1・試験群(メインコホート):術前にペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン+カペシタビンまたはシスプラチン+5-FU)を3サイクル、術後にペムブロリズマブ+化学療法を3サイクル実施、さらにペムブロリズマブ単剤を最大11サイクル投与(ペムブロ群)・対照群:術前・術後にプラセボ+化学療法、さらにプラセボ単剤投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効率(pCR率)、EFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]安全性 主な結果は以下のとおり。・804例が登録され、ペムブロ群とプラセボ群に1対1で割り付けられた。追跡期間中央値は47.7ヵ月だった。アジア人47%、欧米人26%、その他27%だった。・pCR率はペムブロ群で12.9%(95%信頼区間[CI]:9.8~16.6)、プラセボ群で2.0%(95%CI:0.9~3.9)だった。・EFSはペムブロ群で改善したが(中央値44.4ヵ月vs.25.3ヵ月、HR:0.81、95%CI:0.67~0.99、p=0.0198)、わずかな差であったものの、事前に規定された有意差を示すには至らなかった。・OS中央値はペムブロ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月で、有意差はなかった。・Grade3以上の薬物関連有害事象はペムブロ群で64%、プラセボ群で63%で発生した。 設楽氏は「未治療の局所進行切除可能G/GEJがん患者において、周術期のペムブロ+化学療法は残念ながらEFSに有意な改善はみられなかったが、pCR率は大幅に改善した。周術期における免疫チェックポイント阻害薬の有効性を確かめるためには、さらなる研究が必要だ」とした。 続いて発表された、本試験同様に胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬投与を検討するMATTERHORN試験(術前化学療法にデュルバルマブ上乗せ)がポジティブな結果となったことを踏まえ、発表後のディスカッションでは、差異が出た要因や適切な化学療法の種類、恩恵を受ける患者の特性などについて、盛んな議論が交わされた。

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ニボルマブベースの非小細胞肺がん周術期レジメンが有効性示す(CheckMate 77T)/ESMO2023

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)におけるニボルマブベースの周術期レジメンが良好な結果を示した。 欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)において米国・MDアンダーソンがんセンターのTina Cascone氏が発表した、同集団に対する術前ニボルマブ+化学療法、術後ニボルマブを評価する無作為化二重盲検第III相CheckMate 77T試験の中間解析の結果である。・対象:切除可能なStageIIA〜IIIB (American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版) のNSCLC・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+プラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル→手術→ニボルマブ480mg 4週ごと1年間(NIVO+化学療法/NIVO群、n=229)・対照群:プラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル→手術→プラセボ4週ごと1年間(化学療法/PBO群、n=232)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価の無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)および主要な病理学的奏効(MPR)(ともに盲検下独立病理学審査[BIPR]評価)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は25.4ヵ月であった。・BICR評価のEFS中央値は、NIVO+化学療法/NIVO群は未到達、化学療法/PBO群は18.4ヵ月で、NIVO+化学療法/NIVO群で有意に改善していた(ハザード比[HR]:0.58、97.36%信頼区間[CI]:0.42〜0.81、p=0.00025)。・12ヵ月EFS率はNIVO+化学療法/NIVO群73%、化学療法/PBO群59%、18ヵ月EFS率はそれぞれ70%と50%であった。・BIPR評価のpCR率はNIVO+化学療法/NIVO群25.3%、化学療法/PBO群4.7%(オッズ比[OR]:6.64、95%CI:3.40〜12.97)、BIPR評価のMPR率はそれそれ35.4%と12.1%であった(OR:4.01 、95%CI:2.48〜6.49)。・全期間における全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は、NIVO+化学療法/NIVO群の89%、化学療法/PBO群の87%に発現した。術前期間のTRAE発現はそれぞれ86%と85%、術後期間のTRAE発現はそれぞれ50%と30%であった。 Cascone氏は、CheckMate 77T試験の結果は、ニボルマブベースの周術期レジメンが切除可能NSCLCにとって有望な新しい治療選択肢であることを支持するものだと結んだ。

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切除不能または転移を有する尿路上皮がん1次治療、化療へのニボルマブ追加でOS改善(CheckMate 901)/ESMO2023

 切除不能または転移を有する尿路上皮がんの1次治療として、シスプラチンベースの化学療法へのニボルマブの追加が全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。日本も参加している第III相CheckMate 901試験の結果を、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMichiel S. van der Heijden氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。なお本結果は、2023年10月22日にNEJM誌オンライン版へ同時掲載されている。・対象:シスプラチン適格、未治療の切除不能または転移を有する尿路上皮がん患者(18歳以上、ECOG PS 0~1)・試験群:ニボルマブ(360mg、1日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2、1日目・8日目)+シスプラチン(70mg/m2、1日目)を3週ごとに最大6サイクルまで→ニボルマブ(480mg)を4週ごとに疾患進行/許容できない毒性の発現または最大2年まで 304例・対照群:ゲムシタビン+シスプラチン 304例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるOS、PFS[副次評価項目]PD-L1≧1%におけるOS、PFS、健康関連QOL(HRQOL)[探索的評価項目]BICRによる奏効率(ORR)、安全性・層別化因子:PD-L1発現状況(≧1% vs.

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MSI-H胃がん1次治療のニボルマブ+イピリブマブ、初回奏効率62%(NO LIMIT/WJOG13320G)/ESMO2023

 ニボルマブと低用量イピリムマブの併用は、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)大腸がんの第1みた選択療法として有用性を示している。一方、胃・胃食道接合部がん(G/GEJ)におけるMSI-Hの患者は5%程度とされ、同レジメンのMSI-H胃がん1次治療に対する有用性をみた、医師主導、国内単群非盲検第II相NO LIMIT(WJOG13320G/CA209-7W7)試験の初回解析結果を、愛知県がんセンターの室 圭氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。・対象:未治療で切除不能の進行再発転移G/GEJ、MSI-H、PS0~1・試験群:ニボルマブ(240mg)2週ごと+イピリムマブ(1mg/kg)6週ごと、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2020年11月~2022年8月、国内75施設から935例がスクリーニングされ、29例が登録された。年齢中央値75(SD:54~84)歳、44.8%が男性であった。・データカットオフ(2022年12月12日)時点で、3例が完全奏効、15例が部分奏効を達成し、ORRは62.1%(95%信頼区間[CI]:42.3~79.3)であった。・DCRは79.3%(95%CI:60.3~92.0)であった。追跡期間中央値9.0ヵ月(SD:4.0~18.0)時点のPFS中央値は13.8ヵ月(95%CI:13.7~未達)、DORとOSは未達であった。・12ヵ月PFS率は73%(95%CI:52~86)、OS率は80%(95%CI:57~91)であった。・Grade3の有害事象が11例、Grade4が1例発現した。治療中止の最も多い理由は有害事象であったが、安全性プロファイルは既知のプロファイルと一致していた。治療関連死は観察されなかった。 室氏は「ニボルマブと低用量イピリムマブ併用によるケモフリー戦略は、MSI-HのG/GEJ患者において良好な忍容性とともに高く強固な有効性を示した。本試験は、胃がんMSI-H患者の1次治療における本レジメンの有用性を示した世界初の試験であり、引き続き長期フォローアップとバイオマーカー探索を行う予定」とした。 ディスカッサントのバレンシア大学病院・Tania C. Fleitas氏は、CheckMate 649試験(胃がん1次治療のニボルマブ+化学療法)、CheckMate 142試験(MSI-H大腸がんへのニボルマブ+イピリムマブ)を参照しつつ、「ニボルマブ+低用量イピリムマブは、MSI-H胃がん患者のORRに有意な影響を与えた。結果はほかの研究と一致しており、今後はさらに胃がん患者へのMSI検査、MSI-H患者への免疫療法を強く考慮すべきだろう」とした。

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HER2陽性胃がん、トラスツズマブ+化学療法のペムブロリズマブ上乗せは3年時も有用(KEYNOTE-811)/ESMO2023

 進行胃がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の有効性は化学療法との併用においてより効果を発揮することが示唆されており、最適なレジメンが検討されている。第III相KEYNOTE-811試験は、胃・胃食道接合部がん1次治療としてのペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法の有用性を示し、この結果を基に米国食品医薬品局(FDA)は2021年5月に本レジメンを承認している。2023年10月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのYelena Y. Janjigian氏がKEYNOTE-811試験の第3回中間解析結果を発表、同日にLancet誌に掲載された。KEYNOTE-811試験の第3回中間解析でペムブロリズマブ併用群がPFSを有意に改善・対象:未治療のHER2陽性胃・胃食道接合部がん、PS0~1・試験群:ペムブロリズマブ200mg+トラスツズマブ+標準化学療法(フルオロピリミジンおよびプラチナ製剤)を3週間ごと最大35サイクル(ペムブロ群)・対照群:プラセボ+トラスツズマブ+標準化学療法(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 KEYNOTE-811試験の第3回中間解析の主な結果は以下の通り。・698例がペムブロ群350例、ブラセボ群348例に割り付けられた。年齢中央値62歳、81%が男性であった。・第3回中間解析(追跡期間中央値:38.5ヵ月)において、全例でペムブロ群はプラセボ群に対してPFSを有意に改善した。PFS中央値はペムブロ群10.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.6~12.2)対プラセボ群8.1ヵ月(95%CI:7.1~8.6)、ハザード比(HR)0.73(95%CI:0.61~0.87、p=0.0002)であった。PD-L1<1の症例においては、この差はさらに開いた(10.9ヵ月対7.3ヵ月、HR:0.71、95%CI:0.59~0.86)。・全生存期間中央値は20.0ヵ月(95%CI:17.8~22.1)対16.8ヵ月(95%CI:15.0~18.7)、HR 0.84(95%CI:0.70~1.01)で、事前に規定された基準を満たさなかった。・Grade3以上の薬物関連有害事象はペムブロ群58%対プラセボ群50%、Grade5(死亡)は4例(1.1%)対3例(0.9%)で発現した。・ORRはペムブロ群73%対プラセボ群60%、DORは11.3ヵ月対9.5ヵ月であった。 Janjigian氏は「本試験は、切除不能でHER2陽性胃がん、とくにPD-L1高発現の患者において本レジメンによる1次療法の有用性を強く支持するものであり、毒性はこれまで報告されていたものと同様だった。OSは引き続き解析を行い、最終解析として報告予定」とした。このKEYNOTE-811試験の第3回中間解析結果を受け、欧州医薬品庁(EMA)は PD-L1<1の患者を対象に同レジメンを承認しており、ESMOガイドラインも同日にアップデートされた。

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術前ICI+化学療法でcCRの膀胱がん、膀胱温存可能か?/Nat Med

 筋層浸潤性膀胱がんは、膀胱全体を摘出する膀胱全摘除術が標準治療とされているが、尿路変向の必要があり、合併症や死亡のリスクも存在する。抗PD-1抗体薬と化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)の併用による術前化学療法で膀胱がん患者の40~50%で病理学的完全奏効(pCR)が得られることが報告されているが1,2)、pCRは膀胱全摘除術後に判定する必要がある。そこで米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のMatthew D. Galsky氏らの研究グループは、術前化学療法により臨床的完全奏効(cCR)を達成した患者が安全に膀胱全摘除術を回避できるか検討した。その結果、cCRが得られた患者33例中32例が膀胱全摘除術を回避し、32例における2年無転移生存率は97%であり、膀胱温存の可能性が示された。・試験デザイン:海外多施設共同第II相医師主導治験(HCRN GU16-257試験)・対象:経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)に基づき筋層浸潤性膀胱がん(cT2-4N0M0)と診断され、シスプラチンに適格の18歳以上の患者76例・治療:ゲムシタビン(1、8日目に1,000mg/m2)+シスプラチン(1日目に70mg/m2)+ニボルマブ(1日目に360mg)を4サイクル(21日1サイクル)投与した。cCRを達成し、膀胱全摘除術を回避した患者はニボルマブ(240mg、隔週)を8サイクル投与した。cCRを達成しなかった患者は術前化学療法後に膀胱全摘除術を実施することとした。・評価項目:[複合主要評価項目]cCR(生検、細胞診で悪性腫瘍なし、画像検査で局所再発/転移なし)達成率、cCRの陽性的中率(膀胱全摘除術を回避した患者:2年無転移生存、膀胱全摘除術を実施した患者:pT1N0未満で評価、95%信頼区間[CI]の下限値が80%超で複合主要評価項目達成)[副次評価項目]体細胞変異(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)およびTMB高値(≧10mut/Mb)とcCRの陽性的中率の関連、無転移生存期間(MFS)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・4サイクルの治療終了後に病期の再分類評価が行われた72例中、43%(33/72例)がcCRを達成した。・cCRを達成した患者の観察期間中央値は30ヵ月(範囲:18~42)であった。・cCRを達成した患者33例中32例が膀胱全摘除術を回避した。・cCRの陽性的中率は97%(95%CI:0.91~1)であり、複合主要評価項目を達成した。・cCRを達成した患者は達成しなかった患者と比較して、MFSおよびOSが有意に延長した(それぞれp=0.007、p=0.003)。・体細胞変異(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)およびTMB高値(≧10mut/Mb)はcCRの陽性的中率を改善しなかった。・Grade3以上の有害事象は75%の患者に発現し、主なものは好中球数減少(34%)、尿路感染(17%)、貧血(16%)であった。全Gradeの主な有害事象は疲労(76%)、貧血(75%)、好中球数減少(68%)、悪心(58%)であった。

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ICIによる心筋炎、現時点でわかっていること/日本腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は抗PD-1抗体のニボルマブが2014年に本邦で上市されて以来、抗PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体も登場し、現在では臓器横断的に幅広いがん種に対し、単独投与のみならず併用投与も行われるようになった。しかし、その一方でさまざまな免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、とくに循環器医も腫瘍医も恐れているirAEの1つに心筋炎がある。これは通常の心筋炎とは何が違い、どのように対処するべきなのだろうか―。9月30日~10月1日に開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会のシンポジウム『免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応』において、3名の医師が心筋炎のメカニズムや病態、実臨床での事例やその対応について発表した。irAE心筋炎でわかっていること、わかっていないこと Onco-Cardiology教育に力を入れる田尻 和子氏(国立がん研究センター東病院 循環器科長)によると、あいにく現時点ではこの病態の解明には至っていないが、心筋炎を起こす免疫細胞の種類とその働き、免疫細胞を制御している分子・シグナル・液性因子、心臓のT細胞は何を敵だと思って攻撃しているのか、などの疑問が沸いている状況だという。同氏はこれらの疑問点を詳細に解説したうえで、「なぜICI投与患者の約1%だけが心筋炎を発症するのか、そして従来の心筋炎よりなぜ予後が悪いのか」と2つの疑問を挙げた。 前者については「ICI治療前に存在する患者固有の特徴によるのか、またはICI投与によって生じた何らかの事象に関連するのか」と問題提起。また、「心筋に特異的なタンパクであるαミオシンを免疫細胞が敵だと思いこみ自己免疫性心筋炎が発症することは明らかになっている1-4)ものの、心筋炎にならなかったICI投与患者の心筋にもαミオシン反応性T細胞が存在することから、なんらかのウイルス感染が引き起こしている可能性、根底にある遺伝的感受性や腸内細菌の関与も考えられる」とコメントした。 さらに後者の疑問に対しては「いわゆる一般的な心筋炎というのは治療介入しなくとも自然軽快していくが、irAE心筋炎はステロイド抵抗性であったり、免疫応答がより強力(マクロファージの比率が多い、より高密度のリンパ球浸潤)であったりするのではないか。T細胞がICIにより永久的にリプログラムされて抑制シグナルに耐性を持ち、ICI投与終了後数年にわたる可能性も否めない。さらに、ウイルス感染が原因であればそのウイルスを除去すれば終わりだが、irAE心筋炎のT細胞が認識する抗原が腫瘍や心筋だった場合はそれらが除去されないために炎症が収束しないのではないか」と、仮説を挙げた。心筋炎の発症頻度は1%超、致死率は25~40%の可能性 続いて発表した清田 尚臣氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍センター)はirAEの特徴と実際の発症頻度について解説。「当初の発症頻度は0.09%程度と言われていたが、現在のRCTメタ解析などによると最大で5.8%に上り、近年の報告の多くは1%を超えている。つまり、想定していたよりも頻度や致死率が非常に高く、発症までの期間中央値は30日前後であることが各種論文から明らかになってきた」と述べた。同氏の施設では年間290例(ICI延べ処方件数3,341件)がICI治療を行っているが、「irAEの発症頻度を3%、致死率を30%と想定した場合、当院では年間9人が発症し、約3人が死亡することになる」と、いかに発症を抑えることが重要かを示した。 同氏はオンコロジストとしてできることについて、JAVELIN Renal 101試験5)でのMACEの定義や頻度を示し、「ICIを使用する前には脂質異常症などの既往、ベースライン時点での心電図とトロポニン測定などを実施して評価をしておくことが必要。検査所見のみで無症状の場合もあるが、心筋炎を疑う症状(息切れ、胸痛、浮腫、動悸、ショック症状など)がみられたら躊躇せずに、心電図、トロポニンやBNPの測定、心エコーを実施してほしい」と述べ、「irAE心筋炎はCCU管理が必要になる場合もあるため、疑った時点で早期に循環器医にコンサルテーションすることも必要」と連携の重要性も説明した。心筋炎に遭遇、実臨床での適切な対応策 循環器医の立場で登壇した及川 雅啓氏(福島県立医科大学 循環器内科学講座)は、実際にirAE心筋炎に遭遇しており、その際の対処法としてのステロイドの有用性、irAE後のICI再投与について言及した。 同氏の施設ではICI外来を設置し、患者・医療者の双方に負担がない取り組みを行っている。概要は以下のとおり。<福島県立医科大学附属病院のICI外来>・ICI治療が予定される場合、がん治療を行う各科にてトロポニンI、心電図、心エコーのオーダーを行い、循環器内科ICI外来(カルテ診)へ紹介する。・検査結果をカルテにて確認し、ICI開始後約1ヵ月、3ヵ月、以後3ヵ月ごとにトロポニンI測定ならびに心電図検査を実施する。・問題が生じた場合には、各科主治医に連絡を取り、今後の方針を検討する。 上記のフォローアップを受けた全271例のうち、トロポニンIの上昇(>0.05ng/mL)を認めたのは15例(5.5%)で、そのうちirAE心筋炎と診断されたのは4例(1.4%)だったという。この4例に対しては「ESCガイドライン6)に基づく治療として、ICIを中止し、心電図モニターを行った後、メチルプレドニゾロン500~1,000mg/dayを最低3日間実施した。これで改善すれば経口プレドニゾロン1mg/kg/dayに切り替え、ステロイド抵抗性がみられた場合には2ndラインとして免疫抑制薬の投与に切り替えが必要となる。本症例ではステロイド治療が奏効したが、重篤化前の治療介入が非常に重要であることが明らかであった」。 また、irAE心筋炎を診断する際の検査値について、「トロポニンIの持続上昇は臨床的な心筋炎に至る可能性が高いため、綿密なフォローアップが必要である」と説明し、さらに「肝機能異常やCPK上昇を伴っていることも報告7)されているが、実際に当院の症例でも同様の傾向が見られた。このような検査値にも注意を払うことが診断精度向上につながる」と補足した。 ICI再投与についてはJAMA誌での報告8)を示し、「irAE発症者6,123例のうち452例(7.4%)に行われ、再投与により28.8%でirAEが再発している。irAE心筋炎を発症した3例に再投与が行われ再発は0例であったが、例数が少なく判断が難しい。この結果を見る限りでは、現時点で再投与を積極的に行うことは難しいのではないか」と個人的見解を示した。 なお、本シンポジウムでは発表後に症例検討のパネルディスカッションが行われ、会場からの質問や相談が尽きず、盛況に終わった。■参考文献日本腫瘍循環器学会1)Munz C, et al. Nat Rev Immunol. 2009;9:246-258.2)Tajiri K, et al. Int J Mol Sci. 2021;22:794.3)Won T, et al. Cell Rep. 2022;41:1116114)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818-826.5)Rini BI, et al. J Clin Oncol. 2022;40:1929-1938.6)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;44:4229-4361.7)Vasbinder A, et al. JACC CardioOncol. 2022;4:689-700.8)Dolladille C, et al. JAMA Oncol. 2020;6:865-871.

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HR+乳がんで免疫チェックポイント阻害薬が期待できる可能性?/昭和大ほか

 HR+/HER2-の転移を有する乳がん患者を対象に、CDK4/6阻害薬アベマシクリブが免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブの効果を増強するメカニズムを調べた医師主導治験の結果、血清サイトカイン解析でTNF関連因子やIL-11の増加、末梢血単核細胞解析で制御性T細胞の低下、肝組織でCD8+リンパ球の浸潤が認められ、CDK4/6阻害薬が免疫チェックポイント阻害薬の免疫活性化と相乗的に働くことを、昭和大学の鶴谷 純司氏や吉村 清氏らの研究グループが明らかにした。Journal for ImmunoTherapy of Cancer誌2023年9月13日号掲載の報告。 HR+の乳がんでは免疫チェックポイント阻害薬の有効性は乏しいと考えられているが、動物実験ではCDK4/6阻害薬が抗PD-1/PD-L1抗体の効果を相乗的に増加させたことが報告されている。そこで研究グループは、CDK4/6阻害薬で免疫チェックポイント阻害薬の作用を増強することができれば、これまで効果が乏しいとされてきた患者でも有用になり得ると考え、非無作為化多施設共同第II相NEWFLAME試験を行った。 HR+/HER2-の転移乳がん患者17例を対象に、1次治療または2次治療として、ニボルマブ240mg(2週間ごと)+アベマシクリブ150mg(1日2回)+フルベストラントまたはレトロゾールを投与し、有効性と安全性を評価した。主要評価項目は奏効率(ORR)で、副次的評価項目は安全性、無増悪生存期間、全生存期間であった。 主な結果は以下のとおり。・安全性の懸念による試験早期終了までの2019年6月~2020年7月に17例が登録された(フルベストラント群12例[1例除外]、レトロゾール群5例)。・ORRはフルベストラント群で54.5%(6/11例)、レトロゾール群で40.0%(2/5例)であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、フルベストラント群で11例(92%)、レトロゾール群で5例(100%)に発現した。最も一般的なGrade3以上のTRAEは好中球減少症(7例[58.3%]、3例[60.0%])で、次いでALT値上昇(5例[41.6%]、2例[40.0%])であった。レトロゾール群では間質性肺疾患による治療関連死が1例発生した。肝臓に関連したGrade3以上の有害事象は7例(58.3%)、3例(60.0%)に発現した。・血清サイトカイン解析でリンパ球を活性化するTNF関連因子やIL-11の増加、末梢血単核細胞解析で免疫を制御する制御性T細胞の低下、さらに肝障害を起こした肝組織でCD8+リンパ球の浸潤が認められ、CDK4/6阻害薬が免疫チェックポイント阻害薬の免疫活性化と相乗的に働くことが確認された。 これらの結果より、研究グループは「ニボルマブとアベマシクリブの併用療法は有効であったが、重篤で長引く免疫関連の有害事象が認められた」としたうえで、プレスリリースで「免疫チェックポイント阻害薬の効果を上げる併用薬は重要。免疫活性化のメカニズム解明により、新たな治療法の開発や副作用の低減が期待される」とコメントした。

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9月15日 世界リンパ腫デー【今日は何の日?】

【9月15日 世界リンパ腫デー】〔由来〕世界50ヵ国、75の悪性リンパ腫患者会・関連支援団体で構成されている世界リンパ腫連合が、2004年よりこの日を「世界リンパ腫デー」として制定。安らぎと新たな命の息吹を表すライムグリーン色のリボンをシンボルに、世界的な疾患啓発活動を展開している。関連コンテンツASCO2023 レポート 血液腫瘍濾胞性リンパ腫フォーラム早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJMホジキンリンパ腫初回治療、ニボルマブ+AVD療法がPFSを改善(SWOG S1826)/ASCO2023進行期皮膚T細胞リンパ腫への同種HSCT、PFSを有意に延長/Lancet

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がんサバイバーの心不全発症、医療者の知識不足も原因か/日本腫瘍循環器学会

 9月30日(土)~10月1日(日)の2日間、神戸にて第6回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催される(大会長:平田 健一氏[神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野])。それに先立ち、大会長による学会の見どころ紹介のほか、実際にがんサバイバーで心不全を発症した女性がつらい胸の内を語った。がん治療を始める前に、病歴にもっと目を向けてほしかった 今回のメディアセミナーに患者代表として参加した女性は、10代で悪性リンパ腫の治療のために抗がん剤を使用。それから十数年以上経過した後に健康診断で乳がんを指摘されて乳房温存手術を受けたが、その後にリンパ節転移を認めたため、抗がん剤(計8コース)を行うことになったという。しかし、あと2コースを残し重症心不全を発症した。幸いにも植込み型補助人工心臓(VAD)の臨床試験に参加し、現在に至る。 この女性は医療機関にかかる際には必ず病歴を申告していたそうだが、治療の際に医療者から“抗がん剤の種類によっては生涯使用できる薬剤量の上限があること”を知らされず、「後になって知った」と話した。今回、過去の治療量が反映されなかったことが原因で心不全を発症したそうだが「乳がん治療のための抗がん剤を始める際は、むくみや動悸については説明があったものの、抗がん剤が心臓に与える影響や病歴について何も触れられなかったことはとても残念だった。5コース目の際に看護師に頻脈を指摘されたがそれ以上のことはなかった。VADは命を救ってくれたが私の人生の救いにはまったくなっていない。日常生活では制約だらけでやりたいことは何もできない」と悔しさをにじませた。「生きるために選択した治療が生きる希望を失う状況を作り出してしまったことは悔しく、残念でならない」とする一方で、「医療者や医療が進歩することを期待している」と医療現場の発展を切に願った。 これに対し小室氏は、医療界における腫瘍循環器の認知度の低さ、がん治療医と循環器医の連携不足が根本原因とし「彼女の訴えは、治療歴の影響を鑑みて別の抗がん剤治療の選択はなかったのか、心保護薬投与の要否を検討したのかなど、われわれにさまざまな問題を提起してくださった。患者さんががん治療を完遂できるよう研究を進めていきたい」とコメントした。 前述の女性のような苦しみを抱える患者を産み出さないために、がん治療医にも循環器医にも治療歴の聴取もさることながら、心毒性に注意が必要な薬剤やその対処法を患者と共有しておくことも求められる。そのような情報のアップデートのためにも4年ぶりの現地開催となる本学術集会が診療科の垣根を越え、多くの医療者の意見交換の場となることを期待する。さまざまな学会と協働し、問題解決に立ち向かう 大会長の平田氏は「今年3月に発刊されたOnco-cardiologyガイドラインについて、今回のガイドラインセッションにて現状のエビデンスや今後の課題について各執筆者による解説が行われる。これに関し、2022年に発表されたESCのCardio-Oncology Guidelineの筆頭著者であるAlexander Lyon氏(英国・Royal Brompton Hospital)にもお越しいただき、循環器のさまざまなお話を伺う予定」と説明した。また、代表理事の小室 一成氏が本学会の注力している活動内容やその将来展望について代表理事講演で触れることについても説明した。 主な見どころは以下のとおり。<代表理事講演>10月1日(日)13:00~13:30「日本腫瘍循環器学会の課題と将来展望」座長:南 博信氏(神戸大学内科学講座 腫瘍・血液内科学分野)演者:小室 一成氏(東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学)<ガイドラインセッション>9月30日(土)14:00~15:30座長:向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター)   南 博信氏(神戸大学内科学講座 腫瘍・血液内科学分野)演者:矢野 真吾氏(東京慈恵会医科大学 腫瘍血液内科)   山田 博胤氏(徳島大学 循環器内科)   郡司 匡弘氏(東京慈恵会医科大学 腫瘍血液内科)   澤木 正孝氏(愛知県がんセンター 乳腺科)   赤澤 宏氏(東京大学 循環器内科)   朝井 洋晶氏   (邑楽館林医療企業団 公立館林厚生病院 医療部 内科兼血液・腫瘍内科)   庄司 正昭氏   (国立がん研究センター中央病院 総合内科・がん救急科・循環器内科)15:40~17:10座長:泉 知里氏(国立循環器病研究センター)   佐瀬 一洋氏(順天堂大学大学院医学研究科 臨床薬理学)演者:窓岩 清治氏(東京都済生会中央病院 臨床検査科)   山内 寛彦氏(がん研有明病院 血液腫瘍科)   田村 祐大氏(国際医療福祉大学 循環器内科)   坂東 泰子氏(三重大学大学院医学系研究科 基礎系講座分子生理学分野)   下村 昭彦氏(国立国際医療研究センター 乳腺・腫瘍内科)<シンポジウム>9月30日(土)9:00~10:30「腫瘍と循環器疾患を繋ぐ鍵:clonal hematopoiesis」10月1日(日)9:00~10:30「がん患者に起こる心血管イベントの予防と早期発見-チーム医療の役割-」/日本がんサポーティブケア学会共同企画10:40~11:50「腫瘍循環器をメジャーにするために」/広報委員会企画13:40~15:10「免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応」15:20~16:50「小児・AYAがんサバイバーにおいてがん治療後出現する晩期心毒性への対応」/AYAがんの医療と支援のあり方研究会共同企画15:20~16:50「第4期がんプロにおける腫瘍循環器学教育」/学術委員会企画<Keynote Lecture>9月30日(土)11:20~12:10「Onco-cardiology and echocardiography (GLS)」Speaker:Eun Kyoung Kim氏(Samsung Medical Center)<ストロークオンコロジー特別企画シンポジウム>10月1日(日)10:50~11:50「がん合併脳卒中の治療をどうするか」 このほか、教育セッションでは双方が学び合い、コミュニケーションをとっていくために必要な知識として、「腫瘍循環器学の基本(1)~循環器専門医からがん専門医へ~」「腫瘍循環器学の基本(2)~がん専門医から循環器専門医へ~」「肺がん治療の現状」「放射線治療と心血管障害」などの講演が行われる。

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Guardant360 CDx、HER2変異陽性NSCLCにおけるT‐DXdのコンパニオン診断として承認/ガーダントヘルスジャパン

 ガーダントヘルスジャパンは、がん化学療法後に増悪したHER2遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ、以下 T-DXd)の適応判定補助を目的としたコンパニオン診断として、リキッドバイオプシー「Guardant360 CDx がん遺伝子パネル」(Guardant360 CDx)に対する製造販売承認事項一部変更承認を2023年8月28日付で厚生労働省から取得した。 HER2遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)の70%を占める、非扁平上皮NSCLCの2〜4%に認められる。 Guardant360 CDxのT-DXdに対するコンパニオン診断の適応は、2022年8月に米国食品医薬品局によって承認されており、日本においても同様に承認されたもの。 Guardant360 CDxはコンパニオン診断薬として、ペムブロリズマブの適応となるMSI-High陽性固形がん患者、ニボルマブの適応となるMSI-High陽性直腸・結腸がん患者、ソトラシブの適応となるKRAS G12C陽性非小細胞肺がん患者にも承認されている。

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ネオアジュバント/サンドイッチ療法レビュー【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第16回

第16回 ネオアジュバント/サンドイッチ療法レビュー参考John V Heymach JV,et al. Design and Rationale for a Phase III, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Neoadjuvant Durvalumab + Chemotherapy Followed by Adjuvant Durvalumab for the Treatment of Patients With Resectable Stages II and III non-small-cell Lung Cancer: The AEGEAN Trial. Clin Lung Cancer.2022;233:e247-e251. 術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023Wakelee H, et.al.Perioperative Pembrolizumab for Early-Stage Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med.2023;389:491-503.NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023Patrick M Forde PM,et.al. Neoadjuvant Nivolumab plus Chemotherapy in Resectable Lung Cancer. N Engl J Med.2022;386:1973-1985.NSCLCの術前補助療法、ニボルマブ追加でEFS延長(CheckMate-816)/NEJM周術期非小細胞肺がんに対する化学療法+toripalimabのEFS中間解析(Neotorch)/ASCO2023

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ハイパーサーミア診療ガイドラインで各がん種の治療推奨度を明確に

 『ハイパーサーミア診療ガイドライン』の初版が発刊された。今回、ガイドライン作成委員会委員長の高橋 健夫氏(埼玉医科大学総合医療センター放射線腫瘍科)に実臨床におけるハイパーサーミアの使用経験や推奨されるがん種などについて話を聞いた。ハイパーサーミアのガイドラインでエビデンスを示す必要があった ハイパーサーミアとは39~45℃の熱を用いた温熱療法のことで、主に放射線治療や化学療法の治療効果を高める目的で用いられている。その歴史は意外にも古く、1980年代に放射線治療の補助療法として導入、1990年代には電磁波温熱療法として保険収載され、その臨床実績は30年以上に及ぶ。本治療は、生体では腫瘍のほうが正常組織よりも温度上昇しやすい点を応用した“43℃以上での直接的な殺細胞効果”が報告されているほか、抗がん剤の細胞膜の透過性亢進、熱ショックタンパク質を介した免疫賦活などの生物学的なメリットなどが示されている。しかし、どのような患者に優先的に勧めるべきか明確に示した指針は認められない、実施可能施設の少なさ、専門的な知識や経験を有するハイパーサーミア治療医が限れているなどの点から認知度がまだまだ低い治療法である。そこで日本ハイパーサーミア学会では2017年にガイドライン作成委員会が発足し、約7年の時を経てガイドラインの発刊に至った。これに対し高橋氏は「治療内容、適応などに関して認知度が低く、時に民間療法との区別がつきにくいイメージがあり、ハイパーサーミアの定義ならびに各がん種に対するエビデンスをガイドラインで示す必要があった。欧州では標準治療として組み込まれているものの、2000年代をピークに臨床研究の数がなかなか増えず、最新のエビデンスが少ない点は本書でも難点になっている」とコメントした。 ハイパーサーミアは“電子レンジ”のような原理を用いてラジオ波で細胞内部を温めることが重要となるため、温度上昇の得やすい臓器・部位かどうかが判断材料の1つになり、これは直腸・膀胱・子宮などの消化管や生殖器で効果が得られやすい理由の1つである。今回のハイパーサーミア診療ガイドライン作成にあたり、各学会のガイドラインと整合性を取るためにさまざまな学会と調整したと同氏は話す。たとえば、昨年発刊された『膵癌診療ガイドライン2022年版 第6版』のCQでは、現時点では推奨なし(エビデンスの強さ:非常に弱い)の記載ではあるが、導入化学療法を施行した後に行われる化学放射線療法にハイパーサーミアを加えるか否かのランダム化比較試験が施行されており、その報告1)が今注目されている。また、頭頸部がんや放射線治療に抵抗性である肉腫などでもハイパーサーミアの効果が期待できる。一方、「肺は空気を含み他臓器に比べ温まりにくい問題がある」とハイパーサーミア治療が効果的な臓器、効果が得にくい臓器があることを示した。ハイパーサーミア診療ガイドラインに腹膜播種に対する抗腫瘍効果 また、今回の注目すべき点として、同氏は「これまでは再発治療への対応が多く、初回治療から用いることができる選択肢を示した点は大きい」とし、「予後不良の腹膜播種の術中に行う腹腔内化学療法において、ハイパーサーミアは灌流液を41~43℃に加温して抗腫瘍効果を高める。腹膜播種は化学療法の感受性が低かったが、加温により長期予後が改善されている」と話した。 ハイパーサーミア診療ガイドラインのクリニカルクエスチョン(CQ)は以下のとおり。―――CQ1 頭頸部がんに対してハイパーサーミアは推奨されるか?CQ2 乳がん局所・領域リンパ節再発に対する放射線治療にハイパーサーミアの併用は勧められるか?CQ3 食道がんに対してハイパーサーミアは推奨されるか?CQ4 非小細胞がんに対してハイパーサーミアは推奨されるか?CQ5 膵がんに対してハイパーサーミアは推奨されるか?CQ6 直腸がんに対してハイパーサーミアは推奨されるか?CQ7 膀胱がんに対してハイパーサーミアは推奨されるか?CQ8 子宮頸がんに対してハイパーサーミアは推奨されるか?CQ9 悪性黒色腫に対して放射線治療とハイパーサーミアの併用療法は推奨されるか?CQ10 軟部肉腫に対してハイパーサーミアは推奨されるか?CQ11 腹膜播種に対してハイパーサーミアは推奨されるか?――― 患者さんへのメリット・デメリットについては、「全身影響が少ないので副作用も少なく済む。ただし、本治療は温熱抵抗性が生じるために1回/週のペースで実施する。放射線の照射前後などのタイミングは問わず、治療になるべく近い日程で加温することが推奨される。そして、保険適用のしばりがない点などは患者さんへのメリットになる。デメリットには、認定施設数が少ない点」を挙げ、「本書の発刊を好機とし、国内での導入施設数を増やし国内の多施設共同研究を進めていきたい」と述べた。 最後に、「ハイパーサーミアの効果はさまざまな治療に味付けをする、いわば引き立て役である。将来的には本治療の免疫賦活効果が免疫チェックポイント阻害薬などとの併用によって好影響をもたらすのではないか」と将来性を語った。 なお、9月8~9日に神奈川県の伊勢原市民文化会館にて日本ハイパーサーミア学会第40回大会が開催され、シンポジウムでも本書に関する話題を取り上げる予定だ。

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NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。 DPCデータを用いて、2010年7月~2021年3月にプラチナ製剤を含む化学療法を開始した進行NSCLC患者7万5,807例を抽出した。対象患者をICI使用の有無で2群に分類し(ICI併用群7,177例、単独療法群6万8,630例)、プラチナ製剤を含む化学療法開始後6ヵ月以内のVTE、ATE、院内死亡の発生率を検討した。背景因子を調整するため、生存時間分析には傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・VTEの発生率はICI併用群1.3%(96例)、単独療法群0.97%(665例)であった。ATEの発生率はそれぞれ0.52%(38例)、0.51%(351例)であった。院内死亡率はそれぞれ8.7%(626例)、12%(8,211例)であった。・傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析の結果、ICI併用群は単独療法群と比較してVTEリスクが有意に高かったが(部分分布ハザード比[SHR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.01~1.60)、ATEリスクに有意差はみられなかった(同:0.96、0.67~1.36)。・使用したICI別に同様の解析を行った結果、ペムブロリズマブを使用した場合にVTEリスクが有意に高かったが(SHR:1.29、95%CI:1.01~1.64)、アテゾリズマブを使用した場合にはVTEリスクに有意差はみられなかった(同:0.91、0.49~1.66)。・院内死亡リスクはICI併用群が有意に低かった(ハザード比:0.67、95%CI:0.62~0.74)。

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肝細胞がん1次治療、camrelizumab+rivoceranibがPFS改善/Lancet

 切除不能な肝細胞がんの1次治療において、抗PD-1抗体camrelizumabとVEGFR-2を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)rivoceranibの併用療法は、標準治療であるソラフェニブと比較して、無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、全生存期間(OS)も延長しており、安全性は管理可能で新たな安全性シグナルは確認されなかったことが、中国・Nanjing Medical UniversityのShukui Qin氏らが実施した「CARES-310試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月24日号に掲載された。13の国と地域の無作為化試験、8割以上がアジア人 CARES-310試験は、13の国と地域の95施設で実施された非盲検無作為化第III相試験であり、2019年6月28日~2021年3月24日に参加者の無作為化が行われた(中国・Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsと米国・Elevar Therapeuticsの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上の肝細胞がん患者で、バルセロナ臨床肝がん(Barcelona Clinic Liver Cancer:BCLC)病期分類のBまたはCであり、手術または局所領域療法後に病勢が進行し、全身療法による治療歴がなく、肝機能の障害度がChild-Pugh分類A、全身状態が良好(ECOG PS 0/1)な患者であった。 被験者を、camrelizumab(200mg、静注、2週ごと)+rivoceranib(250mg、経口、1日1回)、またはソラフェニブ(400mg、経口、1日2回)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、PFS(RECIST 1.1に基づき盲検下に独立審査委員会が評価)とOSの2つであり、後者は中間解析の結果を報告した。 543例を登録し、camrelizumab+rivoceranib併用群に272例(年齢中央値58歳[四分位範囲[IQR]:48~66]、男性83%、アジア人83%)、ソラフェニブ群に271例(56歳[47~64]、85%、83%)を割り付けた。全体の75%がB型肝炎ウイルスに起因する肝細胞がんであり、74%が脈管浸潤または肝外転移、あるいはこれら双方を有していた。客観的奏効率も良好 追跡期間中央値7.8ヵ月(IQR:4.1~10.6)の時点におけるPFS中央値は、ソラフェニブ群が3.7ヵ月(IQR:2.8~3.7)であったのに対し、併用群は5.6ヵ月(5.5~6.3)と有意に改善した(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.41~0.65、片側検定のp<0.0001)。 また、追跡期間中央値14.5ヵ月(IQR:9.1~18.7)の時点(2022年2月8日のOSに関する中間解析)でのOS中央値は、ソラフェニブ群の15.2ヵ月(IQR:13.0~18.5)に対し、併用群は22.1ヵ月(19.1~27.2)であり、有意に長かった(HR:0.62、95%CI:0.49~0.80、片側検定のp<0.0001)。 客観的奏効率(最良総合効果としての完全奏効または部分奏効の割合)は、併用群が25%(69/272例)、ソラフェニブ群は6%(16/271例)であり、併用群で有意に優れた(群間差:19%、95%CI:14~25、片側検定のp<0.0001)。 最も頻度の高いGrade3/4の治療関連有害事象は、高血圧(併用群38%[102/272例]vs.ソラフェニブ群15%[40/269例])、手掌・足底発赤知覚不全症候群(12%[33例]vs.15%[41例])、AST値上昇(17%[45例]vs.5%[14例])であった。 重篤な治療関連有害事象は、併用群24%(66例)、ソラフェニブ群6%(16例)で報告された。治療関連死が各群で1例ずつ認められた(併用群:多臓器不全症候群、ソラフェニブ群:呼吸不全と循環虚脱)。 著者は、「camrelizumab+rivoceranib併用療法は良好なベネフィット-リスクプロファイルを示したことから、切除不能肝細胞がんに対する新たな1次治療の選択肢となると考えられる。免疫併用レジメンに経口投与の抗血管新生TKIを組み込むことで、臨床医がより柔軟に治療法を選択できるようになる可能性がある」としている。

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日本人NSCLCへのICI、PPI使用者は化学療法の併用が必要か/京都府立医大ほか

 現在、PD-L1高発現の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する初回治療の選択肢として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法、複合免疫療法が用いられている。しかし、その使い分けの方法は明らかになっていない。また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗菌薬の使用歴があるNSCLC患者は、ICI単剤療法の効果が減弱する可能性が指摘されている1,2)。そこで、京都府立医科大学大学院の河内 勇人氏らは、ペムブロリズマブ単剤療法、複合免疫療法の効果と各薬剤の使用歴の関係について検討した。その結果、PPIの使用歴がある患者は、複合免疫療法の効果がペムブロリズマブ単剤療法と比較して良好であった。一方、PPIの使用歴がない場合は、治療効果に有意差は認められなかった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月11日号で報告された。 国内13施設において、初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)またはペムブロリズマブと化学療法の併用療法(併用療法群)を受けたPD-L1高発現(TPS≧50%)のNSCLC患者425例を後ろ向きに追跡し、治療開始時の薬剤使用歴(PPI、抗菌薬、ステロイド)を含む患者背景と治療効果の関連を検討した。単剤療法群と併用療法群の比較は、傾向スコアマッチングにより背景因子を揃えて行った。 主な結果は以下のとおり。・単剤療法群は271例(年齢中央値[範囲]:72歳[43~90]、男性:215例)併用療法群は154例(同:69歳[36~86]、男性:121例)が対象となった。・多変量解析の結果、単剤療法群においてPPI使用歴は、無増悪生存期間(PFS)の短縮に有意な関連があった(ハザード比[HR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.00~1.91、p=0.048)。一方、併用療法群では関連が認められなかった(同:0.83、0.48~1.45)。・多変量解析において、単剤療法群と併用療法群のいずれも、抗菌薬使用歴やステロイド使用歴とPFSには有意な関連が認められなかった。・PPI使用歴のある患者集団において、PFS中央値は単独療法群が5.7ヵ月であったのに対し、併用療法群は19.3ヵ月であり、併用療法群は単独療法群と比較してPFSが有意に改善した(HR:0.38、95%CI:0.20~0.72、p=0.002)。・同様に、全生存期間(OS)中央値は単独療法群が18.4ヵ月であったのに対し、併用療法群は未到達であり、併用療法群は単独療法群と比較してOSが有意に改善した(HR:0.43、95%CI:0.20~0.92、p=0.03)。・PPI使用歴のない患者集団において、PFS中央値は単独療法群が10.6ヵ月であったのに対し、併用療法群は18.8ヵ月であったが、併用療法群と単独療法群に有意差は認められなかった(HR:0.81、95%CI:0.56~1.17、p=0.26)。・同様に、OS中央値は単独療法群が29.9ヵ月であったのに対し、併用療法群は未到達であったが、併用療法群と単独療法群に有意差は認められなかった(HR:0.75、95%CI:0.48~1.18、p=0.21)。 著者らは、「PPIの使用歴が、PD-L1高発現のNSCLCに対するペムブロリズマブ単剤療法と複合免疫療法の治療選択の予測因子として、有用であるであることが示唆された。すなわち、いずれの治療選択肢も選択可能な患者では、PPIの使用歴がある場合、複合免疫療法が推奨される治療法であると考えられた」とまとめた。

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未治療の早期NSCLC、定位放射線+ニボルマブが有効/Lancet

 未治療の早期非小細胞肺がん(NSCLC)およびリンパ節転移陰性の孤立性肺実質再発NSCLC患者の治療において、定位放射線治療(SABR)+ニボルマブの併用(I-SABR)はSABR単独と比較して、4年無イベント生存率が有意に優れ、毒性は忍容可能であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJoe Y. Chang氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号に掲載された。テキサス州3病院の無作為化第II相試験 本研究は、米国テキサス州の3つの病院で実施された非盲検無作為化第II相試験であり、2017年6月~2022年3月の期間に参加者の無作為化が行われた(Bristol-Myers SquibbとMDアンダーソンがんセンターの提携機関などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の早期NSCLC(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版の病期分類でStageI~II[N0M0])、または孤立性の肺実質再発NSCLC(根治手術または化学放射線療法の施行前にTanyNanyM0)で、全身状態が良好(ECOG PSスコア0~2)な患者であった。 被験者を、I-SABRまたはSABRを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。I-SABR群では、ニボルマブ(480mg)を4週ごとに静脈内投与した。 主要評価項目は、4年無イベント生存率であった。イベントは、局所、領域、遠隔での再発、2次原発性肺がん、死亡とされた。PP集団とITT集団の双方で良好な結果 無作為化の対象となったのは156例(intention-to-treat[ITT]集団)で、割り付けた治療を実際に受けたのは141例(per-protocol[PP]集団)であった。PP集団では66例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:66~75]、女性70%)がI-SABR群、75例(年齢中央値72歳[IQR:66~78]、女性55%)がSABR群だった。 フォローアップ期間中央値33ヵ月の時点でのPP集団における4年無イベント生存率は、SABR群が53%(95%信頼区間[CI]:42~67)であったのに対し、I-SABR群は77%(66~91)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.38、95%CI:0.19~0.75、p=0.0056)。また、ITT集団でも同様の結果が示された(HR:0.42、95%CI:0.22~0.80、p=0.0080)。 SABR群では、Grade2の有害事象を3例(4%)に認めたのみで、Grade3以上の有害事象は発現しなかった。一方、I-SABR群では、10例(15%)でニボルマブに関連するGrade3の免疫関連有害事象(疲労2例、甲状腺機能亢進症1例など)を認めたが、Grade3の肺臓炎はなく、Grade4以上の毒性の発現もなかった。 著者は、「SABRへの免疫療法の追加により、治療歴のない早期NSCLCおよび孤立性肺実質再発NSCLC患者の転帰が改善することが示唆され、I-SABRはこれらの患者における治療選択肢となる可能性がある。本試験の結果は、現在進行中の第III相試験の重要な先例となるだろう」としている。

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