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胃がん1次治療のzolbetuximab、2試験の日本人サブグループ解析結果(SPOTLIGHT・GLOW)/日本臨床腫瘍学会

 CLDN18.2陽性、HER2陰性で、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がん患者において、CLDN18.2を標的とするモノクローナル抗体zolbetuximabは日本において保険承認申請中であり、近日中の承認が見込まれている。この承認申請の根拠となった第III相SPOTLIGHT試験およびGLOW試験の日本人サブグループの解析結果が、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表された。【SPOTLIGHT試験】 がん研有明病院の山口 研成氏がPresidential Session 4で発表した。・対象:CLDN18.2陽性、HER2陰性、PS0~1、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がんの成人患者・評価項目: [主要評価項目]無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など・試験群:zolbetuximab(800mg/m2、その後600mg/m2を3週ごと)+mFOLFOX6(2週ごと):zolbetuximab群・対照群:プラセボ+mFOLFOX6(2週ごと):プラセボ群 [全体集団]zolbetuximab群(283例)、プラセボ群(282例)・PFS中央値:zolbetuximab群10.61ヵ月、プラセボ群8.67ヵ月(ハザード比[HR]:0.751)・OS中央値:zolbetuximab群18.23ヵ月、プラセボ群15.54ヵ月(HR:0.750)・ORR:zolbetuximab群60.7%、プラセボ群62.1%・有害事象:Grade3以上は、zolbetuximab群で279例中242例(87%)、プラセボ群で278例中216例(78%)。主なGrade3以上の有害事象は悪心、嘔吐、食欲減退で、治療関連死は、zolbetuximab群で5例(2%)、プラセボ群で4例(1%)報告された。 [日本人サブグループ]zolbetuximab群(32例)、プラセボ群(33例)・PFS中央値:zolbetuximab群18.07ヵ月、プラセボ群8.28ヵ月(HR:0.493)・OS中央値:zolbetuximab群23.10ヵ月、プラセボ群17.71ヵ月(HR:0.719)・ORR:zolbetuximab群70.8%、プラセボ群53.8%・有害事象:Grade3以上は、zolbetuximab群で31例中24例(77.4%)、プラセボ群で32例中22例(68.8%)。主な有害事象は嘔吐(zolbetuximab群90.3%対プラセボ群53.1%)、末梢神経障害(74.2%対46.9%)、食欲減退(71.0%対53.1%) 。Grade3以上の有害事象は好中球減少症(54.8%対50.0%)が多かった。【GLOW試験】 国立がん研究センター中央病院の庄司 広和氏がOral Session 3で発表した。・対象:CLDN18.2陽性、HER2陰性、PS0~1、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がんの成人患者・評価項目: [主要評価項目]PFS [副次評価項目]OS、ORR、安全性など ・試験群:zolbetuximab(800mg/m2、その後600mg/m2を3週ごと)+CAPOX(21日ごと):zolbetuximab群・対照群:プラセボ++CAPOX(21日ごと):プラセボ群 [全体集団]zolbetuximab群(254例)、プラセボ群(253例)・PFS中央値:zolbetuximab群8.21ヵ月、プラセボ群6.80ヵ月(HR:0.687)・OS中央値:zolbetuximab群14.39ヵ月、プラセボ群12.16ヵ月(HR:0.771)・ORR:zolbetuximab群53.8%、プラセボ群48.8%・有害事象:zolbetuximab群で最も発現頻度の高かった有害事象は、悪心(68.5%)、嘔吐(66.1%対)、食欲減退(41.3%)だった。 [日本人サブグループ]zolbetuximab群(24例)、プラセボ群(27例)・PFS中央値:zolbetuximab群20.80ヵ月、プラセボ群8.28ヵ月(HR:0.352)・OS中央値:zolbetuximab群24.18ヵ月、プラセボ群14.69ヵ月(HR:0.494)・ORR:zolbetuximab群68.8%、プラセボ群61.9%・有害事象:多かった有害事象は末梢神経障害(zolbetuximab群79.2%対プラセボ群51.9%)、嘔吐(62.5%対55.6%)、食欲減退(54.2%対51.9%) だった。Grade3以上有害事象の発生率は大きな差はなかった(58.3%対63.0%)。 この2試験の結果を受け、Presidential Session 4では韓国・Yonsei Cancer HospitalのSun Young Rha氏がディスカッサントとなり、議論が行われた。Rha氏は「SPOTLIGHT試験とGLOW試験はほぼ同時期に同デザインで行われた試験である。SPOTLIGHT試験は全体集団と日本人集団で大きな傾向は同じだったが、日本人集団はPFSが良好だった。GLOW試験では日本人のPFSが全体集団と比較して非常に長く、両群に差も付いた。OSも全体集団より良好な結果だ。日本人の参加例が少ないためかもしれないが、これらの要因については今後の検討が必要だろう。胃がん1次治療は免疫チェックポイント阻害薬とzolbetuximabの比較など、多くの検討課題が出ている。人種間の比較やリアルワールドデータの検討も重要だ」とした。

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肺がん診療ガイドライン2023押さえておきたい3つのポイント【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第4回

第4回:肺がん診療ガイドライン2023押さえておきたい3つのポイントパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター 呼吸器内科 二宮 貴一朗 氏参考1)日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2023(オンライン版)関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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2030年末までにグローバル売上の3分の1をオンコロジーにする/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年2月19日、都内でオンコロジーメディアラウンドテーブルを開催した。 社長のケネット・ブライスティング氏はオンコロジー領域の展開に関する全体像を説明した。 ギリアドはグローバル戦略として、2030年末までに売り上げの3分の1をオンコロジー領域にするという目標を掲げている。日本法人でも、従来のウイルスや炎症に加え、オンコロジーを新たな注力領域とした。すでに、2023年のAxi-Cel(商品名:イエスカルタ)販売承継、24年には抗Trop-2抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)の乳がんに対する国内製造承認を申請している。25年以降は、肺がんなど固形がんに対するSGの追加適応、急性リンパ性白血病およびメルケル細胞リンパ腫を適応とした同社2剤目となるCAR-T brexucabtagene autoleucel(Brexu-Cel)の上市を計画している。 開発本部長の表 雅之氏は固形がんにおけるSGの展開について説明した。Trop-2は上皮細胞の膜表面タンパクで細胞内シグナル伝達に関与する。さらにTrop-2高発現は、がんの予後不良因子であることが知られる。SGはTrop-2を標的とした抗体とイリノテカンの活性代謝物SN-38の抗体複合体として抗腫瘍活性を発揮する。 SGはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)、HR+/HER2-乳がん、および尿路上皮がん治療薬として海外で承認されている。日本では2024年1月、第III相ASCENT試験1)および国内第II相ASCENT-J02試験2)の結果を基に、2ライン以上の治療歴のある進行TNBCに対する製造承認申請をした。乳がんに対してはさらに、TNBCの1次治療3)、HER2-例の術後補助療法4)、HR+例(3次治療および内分泌療法抵抗例)5)についての治験もグローバルで行われている。 SGの開発は非小細胞肺がん(NSCLC)でも進行中である。今年(2024年)1月にプレス発表された既治療のNSCLCにおける第III相EVOKE-01試験では、主要評価項目(全生存期間[OS])は未達であったものの、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)無効例では3ヵ月以上OSを延長したと発表している6)。NSCLCではさらに、1次治療での試験7)、ICIとの併用8)も進行中である。 そのほか胃・食道胃接合部がん、頭頸部がん、小細胞肺がん、子宮内膜がん、大腸がん、膵がんでSGのグローバル臨床試験が進行している。日本ではTNBC、HR+HER2-乳がん、膀胱がん、NSCLCで治験を実施中である。 ブライスティング氏は今後の開発について、多くの製薬企業やバイオテック企業と連携して開発を推進したいとしている。また、昨今問題となっているドラッグロス問題に関連して、グローバルの試験には日本法人として第III相から参加していきたいと述べた。■参考1)ASCENT試験(Clinical Trials.gov)2)ASCENT‐J02試験(jRCT)3)ASCENT-03試験(Clinical Trials.gov)4)SASCIA試験(Clinical Trials.gov)5)TROPiCS-02試験(Clinical Trials.gov)6)EVOKE-01試験(Clinical Trials.gov)7)EVOKE-02試験(Clinical Trials.gov)8)EVOKE-03試験(Clinical Trials.gov)

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新規抗体薬物複合体SG、既治療のNSCLCに対する第III相試験の結果(EVOKE-01)/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年1月22日、既治療の進行または転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に関するsacituzumab govitecan(SG)の第III相EVOKE-01試験において、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成できなかったと発表した。 EVOKE-01試験はプラチナベース化学療法や免疫チェックポイント阻害薬でPDとなった進行または転移のあるNSCLCを対象に、SGとドセタキセルを比較した試験である。 結果、主要評価項目であるOSは、SG群において良好な傾向が認められたものの、統計学的有意には至らなかった。もっとも、試験集団の60%超を占める、抗PD-1/L1抗体に奏効しなかったサブグループでは、対照群に比べてSG群で3ヵ月以上のOS延長が認められたとしている。 今回のデータは今後開催される医学学会で発表される。また、ギリアドは同試験の結果について規制当局との議論を予定している。 SGのNSCLCに関する臨床開発プログラムは、EVOKE-01以外にペムブロリズマブとの併用による第II相EVOKE-02試験、PD-L1高発現例の1次治療に関する第III相EVOKE-03試験が進行中である。

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腎臓がん患者でのニボルマブの皮下注は点滴静注に劣らず

 治療歴を有する腎細胞がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)の皮下注は、点滴静注と比べて薬物動態と奏効率について非劣性であることが、米ロズウェルパーク総合がんセンターのSaby George氏らが実施した臨床試験で示された。研究グループは、「この結果は、がん患者の時間と医療費の削減につながる可能性がある」と述べている。この研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿器がんシンポジウム(1月25~27日、米サンフランシスコ)で発表された。 George氏は、「ニボルマブの点滴静注は患者にとって大きな負担となる。ニボルマブを皮下注で投与できるのであれば、点滴椅子に1時間座っての治療が所要時間5分の注射で済むため、患者の治療体験は大幅に改善されるはずだ」と話す。 今回の試験では、ロズウェルパークを含む17カ国73カ所のがん治療センターで標準的な治療を受けた進行または転移性淡明細胞型腎細胞がん患者495人を、ヒトヒアルロニダーゼ配合のニボルマブを点滴静注で投与する群(247人、年齢中央値66歳)と皮下注で投与する群(248人、年齢中央値64歳)にランダムに割り付け、転帰を比較した。対象者は1〜2種類の標準的な化学療法をすでに受けていたが、免疫療法薬の使用は初めてだった。 その結果、ニボルマブの初回投与から28日目までの同薬の平均血中濃度と定常状態での同薬の最低血中濃度について、皮下注群は点滴静注群に対して非劣性であることが確認された(平均血中濃度:幾何平均比2.098、90%信頼区間2.001〜2.200、最低血中濃度:同1.774、1.633〜1.927)。また、盲検下独立中央判定委員会(BICR)が評価する客観的奏効率(ORR)は、皮下注群で24.2%、点滴静注群で18.2%であり、無増悪生存期間は前者で7.23カ月、後者で5.65カ月であった。 研究グループは、「ニボルマブは複数のがん種にわたって米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。そのため、今回、腎細胞がん患者に対して示された同薬の有効性は、他のがん治療にも適用できる可能性を示唆するものだ」との見方を示す。 一方George氏は、「これは患者にとっても医師にとっても画期的な成果だ。患者がニボルマブによる治療を容易に受けられるようになることは間違いない」とロズウェルパークのニュースリリースで述べている。同氏は、「ニボルマブの皮下注が可能になれば、クリニックでのニボルマブ投与が可能になり、患者を輸液センターに送る必要がなくなる。そうなれば、患者に薬剤が投与されるまでの時間も短縮されるだろう」と話す。また、クリニックでの投与が可能になれば、治療へのアクセスの問題も緩和されるため、都市部と地方のがん患者間の格差も縮小する可能性があると指摘している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。 このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。 18項目の推奨事項のうち、「強い推奨」とされたのは7項目あり、その内容は以下の4点にまとめられる。・皮膚上のアクネ菌を抑制する効果がある外用過酸化ベンゾイルの使用。・毛穴の詰まりを改善し、炎症を軽減するためのアダパレン、トレチノイン、タザロテン、トリファロテンなどの外用レチノイドの使用。・細菌と炎症レベル低減のための外用抗菌薬、またはドキシサイクリンなどの経口抗菌薬の使用。・上記の全ての薬剤を必要に応じて併用すること。 また、グッドプラクティスに関する5つの声明は、以下の通りである。・にきびの管理には、それぞれの薬剤の作用機序を考慮した併用療法が推奨される。・経口抗菌薬の使い過ぎは薬剤耐性菌の出現や抗菌薬関連の合併症発生につながり得るため、限定的な使用にとどめるべきである。・経口抗菌薬は、過酸化ベンゾイルなどの他の局所療法薬と併用することで薬剤耐性菌出現のリスクを低減させることができる。・大きいにきびや結節がある患者に対しては、炎症と痛みを早く和らげるためにコルチコステロイドの注射療法が勧められる。・上記の外用薬や経口薬が奏効しない重症患者に対しては、イソトレチノインによる治療を検討する。 最後に、AADが「条件付き」とし、ケースバイケースで医師の判断に委ねた推奨事項として、以下のものがある。・治療薬の候補には、にきびを誘発している可能性があるホルモンを標的とするクラスコテロンクリームもある。また、経口避妊薬やスピロノラクトンなどのホルモン治療薬もホルモンバランスを原因とするにきびの治療に役立つ可能性がある。・サリチル酸クリームは毛穴の詰まりを解消し、皮膚の角質を除去する効果がある。・アゼライン酸クリームは、毛穴の詰まりを解消し、細菌を死滅させ、にきび跡のシミを薄くする効果が期待できる。・経口のミノサイクリンまたはサレサイクリンは、にきびに関連する皮膚の細菌と戦い、炎症を和らげる効果が期待できる。 このほかAADは、ケミカルピーリング、レーザー、光治療器、マイクロニードルなどによるにきび治療を推奨するには、裏付けとなるエビデンスが少な過ぎると述べている。また、食習慣の改善、ビタミンや植物性製品などの代替療法を支持するエビデンスも不足しているとしている。さらに、ブロードバンド光治療、強力パルス光治療、アダパレン0.3%ゲルの使用は非推奨とされた。 Barbieri氏はAADのニュースリリースの中で、「われわれは、にきび患者の抱える懸念に取り組み、最善の治療法を決めるために努力を重ねてきた結果、これまで以上に多くの選択肢を患者に提供することができた。これと同じくらい重要なこととして、皮膚科医は、これらの治療選択肢の全てにアクセスできるようにしておくべきだ」と述べている。

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ニボルマブ、切除不能な進行・再発上皮系皮膚悪性腫瘍の効能追加承認/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブは2024年2月9日、小野薬品が、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 今回の承認は、慶應義塾大学病院主導の下、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍患者を対象に、ニボルマブの有効性および安全性を検討した医師主導治験(NMSC-PD1試験:KCTR-D014)の結果に基づいたもの。 同試験における中央判定奏効率は19.4%(6/31例、95%信頼区間:7.5〜37.5)を示し、主要評価項目を達成した。同試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、既報と同様であった。

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トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(3)【消化器がんインタビュー】第14回

第14回 トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(3)出演:愛知県がんセンター 薬物療法部 室 圭氏ニボルマブを含むレジメンが承認されたHER2陰性切除不能胃がんの1次治療。今後もペムブロリズマブ、抗CLDN18.2抗体zolbetuximabも選択肢として加わる可能性がある。HER2陰性胃がんの1次治療はどう変わっていくのか?3名のエキスパートに聞いた。

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悪性黒色腫への個別化mRNAワクチン+ペムブロリズマブの効果は?(KEYNOTE-942)/Lancet

 完全切除後の高リスク悪性黒色腫に対する術後補助療法として、個別化mRNAがんワクチンmRNA-4157(V940)とペムブロリズマブの併用療法は、ペムブロリズマブ単剤療法と比較し、無再発生存期間(RFS)を延長し、安全性プロファイルは管理可能であった。米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center at NYU Langone HealthのJeffrey S. Weber氏らが、米国およびオーストラリアで実施した第IIb相無作為化非盲検試験「KEYNOTE-942試験」の結果を報告した。免疫チェックポイント阻害薬は、切除後のIIB~IV期悪性黒色腫に対する標準的な術後補助療法であるが、多くの患者が再発する。mRNA-4157は、脂質ナノ粒子製剤中に最大34個のネオアンチゲンをコードするmRNAを含む個別化ワクチンで、個人の腫瘍mutanomeとヒト白血球抗原(HLA)タイプに特異的に合わせて調製されている。著者は、「今回の結果は、mRNAに基づく個別化ネオアンチゲン療法の術後補助療法における有益性を示すエビデンスとなる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月18日号掲載の報告。主要評価項目は無再発生存期間(RFS) 研究グループは、切除可能なIIIB~IV期(IIIB期は前回の手術から3ヵ月以内の再発のみ適格)の悪性黒色腫を有する18歳以上で、ペムブロリズマブ初回投与の13週間前までに完全切除術を受け、試験開始時に臨床的および放射線学的に無病であり、ECOG PSが0または1の患者を、mRNA-4157+ペムブロリズマブ併用療法(併用療法群)またはペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)に、病期で層別化して2対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。mRNA-4157は1mgを3週間間隔で最大9回筋肉内投与、ペムブロリズマブは200mgを3週間間隔で最大18回静脈内投与した。 主要評価項目は、ITT集団におけるRFS、副次評価項目は無遠隔転移生存、安全性などであった。ペムブロリズマブ単剤に対するmRNA-4157併用のハザード比は0.561 2019年7月18日~2021年9月30日に、157例が併用療法群(107例)および単剤療法群(50例)に割り付けられた。追跡期間中央値は、それぞれ23ヵ月および24ヵ月であった。 データカットオフ時点(2022年11月14日)で、再発または死亡のイベントは併用療法群で24例(22%)、単剤療法群で20例(40%)に発生し、RFSは併用療法群が単剤療法群と比べて延長し(再発または死亡のハザード比[HR]:0.561、95%信頼区間[CI]:0.309~1.017、両側p=0.053)、18ヵ月RFS率はそれぞれ79%(95%CI:69.0~85.6)、62%(95%CI:46.9~74.3)であった。 治療関連有害事象の多くはGrare1または2であり、Grare3以上は併用療法群でmRNA-4157関連事象12例(12%)、ペムブロリズマブ関連事象24例(23%)、単剤療法群でペムブロリズマブ関連事象9例(18%)であった。 有害事象によりペムブロリズマブの投与を中止した患者は、併用療法群で26例(25%)、単剤療法群で9例(18%)であった。免疫関連有害事象は、併用療法群で37例(36%)、単剤療法群で18例(36%)に認められた。

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進行大腸がんでの免疫療法、治療中止後もその効果は持続か

 免疫チェックポイント阻害薬による治療を中止した進行大腸がん患者の多くは、治療中止から2年後でもがんが進行していないことが、新たな研究で確認された。本研究論文の上席著者である米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの消化器腫瘍内科のVan Karlyle Morris氏は、「ほとんどの患者のがんが治療中止後も進行しなかったという事実は、医師から治療の中止を提案された患者を安堵させるはずだ」と話している。 免疫チェックポイント阻害薬は、多くの大腸がん患者に新たな希望をもたらしている。通常、この治療薬により腫瘍が収縮するか安定化した場合には、医師は患者に治療の中止を提案する。当然のことながら、患者は、効果が現れている上に副作用も少ない治療を中止することに不安を抱く。Morris氏は、「ステージ4の大腸がん患者が、治療を中止した場合の再発リスクを心配するのは当然だ。この研究に着手した当初、われわれはそのリスクがどの程度のものなのかを知らなかった」と米国がん学会のニュースリリースで述べている。 この研究では、DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)/高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の転移性大腸がんまたは進行大腸がんと診断され、2014年から2022年の間に免疫療法を受けて奏効が確認された患者64人(免疫療法開始時の年齢中央値64歳)の医療データが後ろ向きに評価された。これらの患者は、治療開始時にがんの切除は不可能と判断され、キイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)やオプジーボ(一般名ニボルマブ)などのヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体単剤での、あるいはヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体との併用による免疫療法を受け、治療効果(48人)または副作用(16人)を理由に免疫療法を中止していた。免疫療法を受けた期間の中央値は17.6カ月(範囲1.3〜51.9カ月)だった。 その結果、治療中止から中央値22.6カ月(範囲0.3〜71.7カ月)後でも88%(56/64人)の患者でがんは進行していないことが確認された。全患者での無増悪生存期間の中央値は53.9カ月であり、治療中止から1、2、3年後の無増悪生存率は、同順で98%、91%、84%と推定された。この結果は、免疫療法の中止理由にかかわりなく同様であった。8人の患者で認められた再発/進行は肺転移とのみ有意な関連を示し、共存変異や原発巣の位置、免疫療法との関連は有意ではなかった。再発/進行が認められた8人中7人で免疫療法が再開され、治療完了時には全員で奏効または病勢の安定が認められたという。最終的に2人が死亡したが、うち1人の死因はがんとは無関係だった。 Morris氏は、「BRAF遺伝子変異を持つ患者の治療を中止するのは気が進まないという話をがん専門医からよく聞くが、この研究では、変異の有無とがん再発の可能性との間に関連性は認められなかった」と述べている。 ただし、研究グループは、本研究が単施設で実施された小規模な後ろ向き研究である点を強調している。本研究は米国国立がん研究所(NCI)から資金提供を受けて実施された。

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トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(2)【消化器がんインタビュー】第14回

第14回 トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(2)出演:岐阜大学医学部附属 がんセンター 牧山 明資氏ニボルマブを含むレジメンが承認されたHER2陰性切除不能胃がんの1次治療。今後もペムブロリズマブ、抗CLDN18.2抗体zolbetuximabも選択肢として加わる可能性がある。HER2陰性胃がんの1次治療はどう変わっていくのか?3名のエキスパートに聞いた。

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非小細胞肺がん周術期内科と外科でDiscussion【肺がんインタビュー】 第97回

第97回 非小細胞肺がん周術期内科と外科でDiscussionニボルマブの術前補助療法が適応追加となり非小細胞肺がんの周術期治療は新時代を迎える。これら新治療の優れた有効性を生かすためには、診療科の枠を超えたコンセンサスが必要となる。今回は日本の肺がん治療における内科と外科のオピニオンリーダーに症例を基に議論いただいた。出演<ファシリテーター>近畿大学 光冨 徹哉氏(兼プレゼンター)<パネリスト>(五十音順)国立がん研究センター東病院 青景 圭樹氏静岡県立静岡がんセンター 釼持 広知氏国立がん研究センター中央病院 堀之内 秀仁氏(兼プレゼンター)北九州市立医療センター 松原 太一氏

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トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(1)【消化器がんインタビュー】第14回

第14回 トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(1)出演:一宮西病院 腫瘍内科 松本 俊彦氏ニボルマブを含むレジメンが承認されたHER2陰性切除不能胃がんの1次治療。今後もペムブロリズマブ、抗CLDN18.2抗体zolbetuximabも選択肢として加わる可能性がある。HER2陰性胃がんの1次治療はどう変わっていくのか?3名のエキスパートに聞いた。

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高リスクHER2+乳がん、術前療法へのアテゾリズマブ追加でpCR改善は(APTneo)/SABCS2023

 HER2陽性高リスク乳がんに対する術前補助療法として、トラスツズマブ(H)+ペルツズマブ(P)+化学療法は標準治療となっている。また、抗HER2療法に対する免疫系の寄与を示すデータが報告され、免疫チェックポイント阻害薬と抗HER2抗体の組み合わせが裏付けられている。イタリア・Fondazione MichelangeloのLuca Gianni氏らは、HP+化学療法へのアテゾリズマブ(±アントラサイクリン)の追加を評価することを目的として、第III相APTneo試験を実施。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で病理学的完全奏効(pCR)についてのデータを報告した。・対象:HER2陽性の切除可能または局所進行乳がん患者(化学療法未治療)・試験群AC+アテゾリズマブ併用群:AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)+アテゾリズマブ(1,200mg 3週ごと静脈内投与)×3サイクル→HPCT(トラスツズマブ+ペルツズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル)+アテゾリズマブ×3サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 218例アテゾリズマブ併用群:HPCT+アテゾリズマブ×6サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 220例・対照群:HPCT×6サイクル→手術→HP 223例・評価項目:[主要評価項目]試験群vs.対照群の無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]pCR、忍容性、予測マーカーの評価など 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおける患者特性は3群でバランスがとれており、年齢中央値は49~50歳、局所進行乳がんは44.1~45.3%、PD-L1陽性は29.8~30.9%、ホルモン受容体陽性は61.0~69.1%であった。・副次評価項目のpCR率は、対照群52.0%に対し試験群57.8%で有意な改善はみられなかった(p=0.091)。AC+アテゾリズマブ併用群のpCR率は61.9%で対照群と比較して有意に改善したが(p=0.022)、アテゾリズマブ併用群のpCR率(53.6%)と比較して有意な差はみられなかった(p=0.089)。・重篤な有害事象(SAE)は、対照群で6.8%、試験群で14.1%に発生した。AC療法による血液毒性のため、アテゾリズマブ併用群(11.6%)よりもAC+アテゾリズマブ併用群(16.7%)で頻度が高かった。・免疫関連のSAEはAC+アテゾリズマブ併用群で4.7%、アテゾリズマブ併用群で7.8%と頻度が高いわけではなく、臨床的にコントロール可能なものであった。 Gianni氏は、「HER2陽性の早期高リスクおよび局所進行乳がん患者において、HP+化学療法へのアテゾリズマブの追加は、数値としてpCR率の5.8%増加が確認されたものの統計学的有意差は得られなかった。探索的解析において、AC+アテゾリズマブ併用群におけるpCR率は統計学的に有意に高いことが示されており、アントラサイクリンの直接効果あるいはアテゾリズマブによるAC療法の機構的増強のいずれかが示唆されるのではないか」と結論付けている。同試験はEFSの解析まで現在も進行中。

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TN乳がん術前免疫化療前・後のニボルマブ単剤、pCRに有意差なし(BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N)/SABCS2023

 StageI~IIBのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、12週間のニボルマブ+非アンスラサイクリン系抗がん剤の術前免疫化学療法の前または後にニボルマブ単剤治療を組み合わせた第II相BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N試験の結果、ニボルマブ単剤治療の順番にかかわらず有望な病理学的完全奏効(pCR)率を示したことを、オーストラリア・Newcastle大学のNicholas Zdenkowski氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023、12月5~9日)で発表した。 これまで、早期TNBC患者に対する抗PD-L1抗体薬+化学療法の術前免疫化学療法では、すべての薬剤を同時に開始するよりも、抗PD-L1抗体薬を先行して投与したほうがより良好なpCRが得られたという報告1)がある。pCRは良好な予後と関連し、化学療法の期間の短縮が期待されていることから、研究グループはTNBC患者に対するニボルマブ単剤とニボルマブ+化学療法併用の治療戦略を明らかにするために研究を行った。・対象:StageI~IIBのTNBC患者 108例・試験群:ニボルマブ(240mg、2週間)→ニボルマブ(360mg、21日ごと)+カルボプラチン(AUC5、21日ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、21日ごとの1・8・15日目)を4サイクル→手術【ニボ先行群:53例】・対照群:ニボルマブ(360mg、21日ごと)+カルボプラチン(AUC5、21日ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、21日ごとの1・8・15日目)を4サイクル→ニボルマブ(240mg)→手術【ニボ後行群:55例】・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)[副次評価項目]腫瘍残存率(RCB)、安全性、PD-L1陽性(≧1%)集団および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)高値(≧30%)集団におけるpCR、無イベント生存期間(EFS)・層別化因子:年齢(40歳未満/以上) 主な結果は以下のとおり。・2020年7月~2022年4月に110例が両群に無作為に割り付けられ、治療を開始した108例が解析対象となった。追跡期間中央値は12ヵ月であった。・ベースライン時のニボ先行群およびニボ後行群の患者特性は、年齢40歳未満が26%/16%、閉経周辺期が53%/55%、StageIが34%/35%、TIL高値が34%/33%、PLD1陽性が43%/51%、Ki67中央値がそれぞれ70%であった。・pCR率は全体で53%(90%信頼区間:44~61)、ニボ先行群は51%(39~63)、ニボ後行群は55%(43~66)で、ニボルマブ単剤治療の先行によるpCRの優位性は認められなかった。・PD-L1発現状況によるpCR率は、陽性集団では71%、陰性集団では33%であった。・TIL値によるpCR率は、高値集団では67%、低値集団では47%であった。・全体のRCB 0~1の割合は69%で、ニボ先行群は64%、ニボ後行群は73%であった。・忍容性は良好で、新たな安全性シグナルは認められなかった。・EFSは未成熟であった。

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再発・進行子宮頸がん、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法がOS・PFS改善(BEATcc)/Lancet

 転移、治療抵抗性、再発のいずれかを有する子宮頸がんにおいて、ベバシズマブ+プラチナ製剤を含む化学療法へのアテゾリズマブの上乗せは、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)ともに有意に延長することが、スペイン・バルデブロン腫瘍学研究所のAna Oaknin氏らが行った研究者主導の第III相無作為化非盲検試験「BEATcc試験」の結果で示された。転移のあるまたは再発の子宮頸がんに対しては、GOG240試験でベバシズマブ+化学療法が標準的な1次治療として確立されており、今回のBEATcc試験(ENGOT-Cx10/GEICO 68-C/JGOG1084/GOG-3030)ではこれに加えて免疫チェックポイント阻害薬の上乗せを評価した。結果を踏まえて著者は、アテゾリズマブの追加について「1次治療の新たな選択肢と見なすべきである」としている。Lancet誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。日本、欧州、米国の医療機関92ヵ所で試験 BEATcc試験は、日本、欧州、米国の医療機関92ヵ所で行われた。対象は測定可能な病変を有し、転移(StageIVB)、治療抵抗性、再発のいずれかを認める子宮頸がんで、未治療、手術・放射線療法が非適応の18歳以上の患者であった。 被験者は1対1の割合で無作為に2群に分けられ、標準療法(シスプラチン50mg/m2またはカルボプラチンAUC5、パクリタキセル175mg/m2、ベバシズマブ15mg/kg、いずれも3週ごとに投与)、または標準療法にアテゾリズマブ1,200mg(3週ごとに投与)を上乗せするアテゾリズマブ併用療法を受けた。病勢進行、許容できない毒性、患者の離脱もしくは死亡まで治療を継続した。併用化学放射線療法歴の有無、組織学的分類(扁平上皮がん、腺扁平上皮がんを含む腺がん)、プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチン)で層別化した。 主要評価項目は2つで、RECISTに基づく治験責任医師評価のPFSと、ITT集団におけるOSとした。PFS中央値、標準療法群10.4ヵ月、アテゾリズマブ併用群13.7ヵ月 2018年10月8日~2021年8月20日に、適格性の評価を受けた519例中410例が試験に登録された(アテゾリズマブ併用群206例、標準療法群204例)。ベースラインでの両群の特性は類似しており、年齢中央値はアテゾリズマブ併用群51.0歳(四分位範囲[IQR]:43.0~60.0)、標準療法群52.5歳(43.5~61.0)、ECOG PS0は67%と63%であった。また、410例のうち263例(64%)が手術の有無にかかわらず化学療法既往で、90例(22%)が試験登録時にStageIVBであった。日本人の参加は、アテゾリズマブ併用群30例(15%)、標準療法群26例(13%)。 主要解析のデータカットオフ時点(2023年7月17日)で、全集団の追跡期間中央値は32.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:31.2~34.6)。同時点のPFS中央値は、アテゾリズマブ併用群13.7ヵ月(95%CI:12.3~16.6)、標準療法群10.4ヵ月(9.7~11.7)だった(ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)。 また、中間解析(データカットオフ時点)でのOS中央値は、アテゾリズマブ併用群32.1ヵ月(95%CI:25.3~36.8)、標準療法群22.8ヵ月(20.3~28.0)だった(HR:0.68、95%CI:0.52~0.88、p=0.0046)。 Grade3以上の有害事象の発現は、アテゾリズマブ併用群79%、標準療法群75%。アテゾリズマブ併用群で発現増大が認められた有害事象は、Grade1~2の下痢、関節痛、発熱、発疹だった。

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HER2陽性胃がん・食道胃接合部腺がんの初期治療における免疫チェックポイント阻害薬と標準化学療法併用の有効性(解説:上村直実氏)

 手術不能な胃がん・食道胃接合部腺がんに対する薬物療法として、20年以上前から5-FUを代表とするフッ化ピリミジン系薬剤とシスプラチンやオキサリプラチンなどのプラチナ系薬剤の併用療法(FP療法)が標準的化学療法となっていた。その後、細胞増殖に関わるHER2遺伝子の有無による分類がなされ、HER2陽性の胃がん・食道胃接合部腺がんに対するFP療法に抗HER2抗体であるトラスツズマブを加えたレジメンが標準治療として確立している。 一方、最近、免疫チェックポイント阻害薬の登場に伴って、手術不能な消化器がんに対する薬物療法が大きく様変わりしており、切除不能なHER2陰性胃がんに対しては、FP療法に免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブやペムブロリズマブを加えた3剤併用治療が標準治療レジメンとして確立しつつある。今回は、HER2陽性の胃がん・食道胃接合部腺がんに対して、標準治療であるトラスツズマブ+FP療法に抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用する有用性を検証する試験結果が、2023年10月16日のLancet誌オンライン版に掲載された。この報告は中間解析であるが、ペムブロリズマブ群の無増悪生存期間がプラセボ群に比べて有意に延長された結果が示されている。なお、本試験は継続中であり、厳密に言えば、今後の最終結果を待つ必要もあるが、切除不能胃がんに対する1次治療に免疫チェックポイント阻害薬を含むレジメンが一般的になるものと思われた。 最後に、本年の3月、zolbetuximabに関する論文に対するコメントでも指摘したのだが、臨床現場では、通常の胃がんと食道胃接合部腺がんの両者は浸潤様式や発育速度において異なる生物学的特性を有することが多いことが知られていることから、両疾患をひとまとめにするのではなく、適切な臨床研究デザインによる精緻なエビデンスが期待される。

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治療歴のあるHER2+転移乳がん、アベルマブ追加でPFS改善(AVIATOR/TBCRC045)/SABCS2023

 治療歴のあるHER2+転移乳がんに対して、標準治療である化学療法+トラスツズマブに、抗PD-L1抗体であるアベルマブを追加することで無増悪生存期間(PFS)が有意に改善することが示された。一方、化学療法+トラスツズマブ+アベルマブに、4-1BBアゴニストであるutomilumabを追加してもPFSの改善はみられなかった。米国・Dana-Farber Cancer InstituteのAdrienne G. Waks氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。 本試験は、HER2+転移乳がんに対して、化学療法+トラスツズマブにアベルマブおよびutomilumabを併用した場合の有効性と安全性を検討した無作為化第II相試験である。・対象:トラスツズマブ/ペルツズマブ/T-DM1の治療歴がある進行HER2+乳がん(ビノレルビン/免疫チェックポイント阻害薬の治療歴がある患者は除外)100例・試験方法:ビノレルビン+トラスツズマブ(NH)群、ビノレルビン+トラスツズマブ+アベルマブ(NHA)群、ビノレルビン+トラスツズマブ+アベルマブ+utomilumab(NHAU)群に1:2:2で無作為に割り付け・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性/忍容性※当初、NHA群とNH群、NHAU群とNHA群で比較予定だったが、2021年utomilumabの開発が中止され、中間無益性解析でNHAU群のNHA群に対するPFSのハザード比(HR)が1.14(p=0.32)であったことからNHAU群を終了した。 主な結果は以下のとおり。・NHA群(45例)は NH群(18例)に比べて PFS を有意に改善し(HR:0.56、90%信頼区間[CI]:0.31~0.91、片側log rank検定p=0.025)、中央値はNH群2.0ヵ月、NHA群3.8ヵ月だった。・ORRは、NH群11.1%に対してNHA群20.0%、DOR中央値は、NH群が評価不能、NHA群が15.8ヵ月だった。・患者全体において、治療前の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が10%以上の患者では10%未満の患者よりPFSが良好な傾向を示した(HR:0.55、90%CI:0.29~1.04)。一方、PD-L1 CPSが1以上と1未満でPFSに差はみられなかった(HR:0.77、90%CI:0.43~1.36)。・Grade3/4の試験治療下における有害事象(TEAE)は、NH群61.1%、NHA群62.2%とほぼ同等だった。NHA群でGrade3の免疫関連有害事象が2例発現した(副腎機能不全、AST上昇)。予期しないTEAEは認められなかった。 Waks氏は「治療歴のあるHER2+転移乳がんに対する免疫チェックポイント阻害のさらなる研究が必要」と述べた。

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第189回 エクソソーム療法で死亡事故?日本再生医療学会が規制を求める中、真偽不明の“噂”が拡散し再生医療業界混乱中

生成AIを活用して作った 「ブラック・ジャック」の新作が発表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週(11月23日)発売の週刊少年チャンピオンに、「ブラック・ジャック」の新作が発表されました。手塚治虫の漫画、「ブラック・ジャック」については、1ヵ月前、本連載の「第185回 六本木で開催中の『ブラック・ジャック展』で考えた、“黒い医者”たちと医療・医師の普遍性」でも取り上げました。この時、OpenAIの「GPT-4」やStability AIの「Stable Diffusion」などの生成AIを活用して「ブラック・ジャック」の新作を制作する試みが進行中だと書いたのですが、その新作がいよいよ発表されたのです。ということで、週刊少年チャンピオンを買おうと近所の書店に出掛けたのですが、どこにもありません。近所のコンビニも数軒覗いたのですが、やはり在庫がありません。書店もコンビニも、少年誌で置いてあったのは少年ジャンプと少年マガジンばかり。発行部数・流通量が少ない雑誌はこうまで手に入りにくいものかと驚いた次第です。ちなみに漫画雑誌の新刊はアマゾンでは冊子版は流通しておらず、電子版(Kindle)でしか読めないようです。半ば諦めていたところ、たまたま出先のコンビニに飲み物を買いに入ったところ、1冊だけ週刊少年チャンピオンが残っており、なんとか現物を入手することができました。「ブラック・ジャック」掲載を見越して発行部数や流通量にもAIを活用してほしかった…、と思いました。手塚 治虫氏の長男、手塚 眞氏が中心となった「TEZUKA2023プロジェクト」による「ブラック・ジャック」の新作、「機械の心臓-Heartbeat Mark II」(33ページの読み切り)ですが、大学のAI研究者や有名映画監督も入った大プロジェクトの割に、作品はこの程度かと少々肩透かしをくらった、というのが正直な感想です。AIといえども、やはり“神様”には勝てないのだな、と思った次第です。エクソソーム療法、「将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と日本再生医療学会が提言さて、今回は、一部で話題となっている「エクソソーム療法」について書いてみたいと思います。11月10日の厚生労働省の再生医療等評価部会で、日本再生医療学会はエクソソーム療法が美容クリニックなどの自由診療で広がっている現状を踏まえ、「将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と提言しました。「エクソソーム療法で死亡例が出ている」といった情報も一部に流れているようです。この情報はデマの可能性もあり、業界は混乱に陥っています。美容やアンチエイジングを目的に他家細胞由来の細胞培養上清液やエクソソームを自由診療で投与エクソソームは、直径100nm程度の細胞外小胞(EVs:Extracellular Vesicles)と呼ばれるものの1種です。EVsは細胞が分泌する物質で、組織の再生を促す成長因子や細胞間の情報伝達物質を含んだエクソソームなどからなっており、医療分野での活用が期待されています。国内でも、美容やアンチエイジングを目的に、他家細胞由来の細胞培養上清液や、上清液から抽出したとされるエクソソームを自由診療で投与する医療機関が増えています。これらを通称「エクソソーム療法」と呼んでいます。もっとも、有効性や安全性が確認され、治療法として承認されているものはまだありません。インターネットで「エクソソーム療法」を検索すると、数多くの自由診療クリニックがヒットします。それらのクリニックでは、エクソソームを含んだ幹細胞由来の細胞培養上清液やエクソソームについて、皮膚の再生、創傷治癒の促進、老化防止、疲労回復、ED(勃起不全)改善などに効果ありと、まるで万能の不老薬のように宣伝しています。再生医療等安全性確保法の対象外のため提供計画の提出、副作用などの報告の義務なし11月10日の厚生労働省の再生医療評価部会で、日本再生医療学会の岡野 栄之理事長(慶應義塾大学医学部 生理学教室 教授)は、「再生医療という名目で、多くのクリニック等で自由診療として行われている現状や、感染症のリスク等を鑑み、製造過程等を含めて、将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と主張しました。同学会は、2023年10月27日、「再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直しに関する提言」を行い、エクソソームを含むEVsを再生医療新法の対象とするよう提言していますが、それを改めて再生医療評価部会の場ででも訴えたわけです。背景には、老化防止をうたう美容クリニックなどにおいて自由診療によるエクソソーム療法が急拡大していることがあります。現状、日本では細胞培養上清液やエクソソームは細胞断片であり、細胞には当たらないと整理されており、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)の対象外となっています。同法が施行されたのは2014年、主に自由診療でがん免疫療法(自家の免疫細胞を培養し投与)を行っていた医療機関における安全性確保のためでした。この時はEVsによる治療自体がまだ認知されておらず、規制対象にはなりませんでした。そのため、現在、細胞培養上清液やエクソソームを医療機関で投与する際、同法で定められた認定再生医療等委員会の審査や再生医療等提供計画の提出、副作用の報告といった煩雑な手続きは課せられません。これがエクソソーム療法の急拡大につながっているわけです。「交差汚染管理が不十分な場合などに敗血症等重篤な事故を引き起こす可能性がある」しかし、EVsは、「主に細胞から調製されるという点において細胞加工物と類似のリスクを有しており、交差汚染管理が不十分な場合などに敗血症等重篤な事故を引き起こす可能性がある」(再生医療等評価部会・岡野氏資料より)ことから、日本再生医療学会は「科学的根拠に基づき、グローバルスタンダードに則ったEVs治療の開発を進めるために、産学官の協力が必要である。EVsの定義、効能、品質管理に基づいた安心、安全なEVsの治療応用のガイドライン作成は急務であり、その為に、何らかの班研究あるいはワーキング・グループ等を構築し、問題点の精査が必要」と提言したわけです。再生医療抗加齢学会が「幹細胞培養上清液を使用した治療に関し、患者が死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表ところで、日本再生医療学会がエクソソーム療法の規制の必要性を求める2週間ほど前、「エクソソーム投与後に死亡」との情報が一部に流れ、関係者が色めき立ちました。情報の出どころは再生医療抗加齢学会。10月11日、同学会の森下 竜一理事長(大阪大学大学院 医学系研究科臨床遺伝子治療学寄付講座 教授)が、同学会のウェブサイトで「幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について」というタイトルで声明を出したのです。声明は、「当学会では、幹細胞培養上清液を使用した治療に関し、患者が死亡するという事象が発生したという情報に接しております」として、「幹細胞培養上清液及びエクソソームの静脈投与につきましては、医療水準として未確立の療法であり、その有効性・安全性について、エビデンスに基づく十分な検討をお願いいたします」と注意喚起をしました。前述したように、エクソソーム療法は再生医療等安全性確保法の対象外のため、仮に死亡事例が発生しても医療機関は同法に則って報告する義務はありません。ということは、そうした事例を国が把握することもできません。ということで、関連学会が注意喚起することはそれなりに意味のあることです。11月9日付のリスファクスも再生医療抗加齢学会の死亡事案の声明を受け、「エクソソーム創薬、死亡事案で規制急務」というニュースを掲載しています。ただ、その記事では、「学会は本紙に『事案』は会員外の施設と回答し、詳細や施設名は開示していない」としています。「死亡例」は本当にあったのか?噂になった医療機関、学会、厚労省も否定学会が「死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表したにもかかわらず、どこの施設での事象かわからないという状況は、再生医療やエクソソーム療法に携わる関係者に少なからぬ混乱を巻き起こしているようです。「死亡はデマではないか?」という声も聞こえてきます。11月15日付の日経バイオテクは「『エクソソームの投与後に死亡』の噂を追う」と記事を掲載しています。同記事は、「同学会(再生医療抗加齢学会)によれば、学会の会員や会員企業は死亡事例に関係しておらず、外部から寄せられた情報だと言います。噂で名前が挙がっている自由診療の医療機関や、自由診療でエクソソームの投与を手掛ける医師などにも当たってみましたが、『そうした事例は無い』『全く知らない』と否定されました。(中略)。さらに、日本再生医療学会も、本誌に対して『死亡事故があったとは考えていない』とコメント。厚生労働省の関係者も『正直、分からないというのが本音だ。情報の出所が把握できていない』と話していました」と書き、取材時点で死亡事例の情報は確認できなかったとしています。学会同士の対立説、関連企業に対する牽制説も仮に「死亡」がガセ情報だとしたら、一体背後で何が起こっているのでしょうか。真偽のほどはわかりませんが、日本再生医療学会の関係者と再生医療抗加齢学会の関係者の対立説や、幹細胞培養上清液やエクソソームを製造する企業(学会幹部が株を保有している企業もあると聞きます)への牽制説も流れているようです。エクソソーム療法の規制や注意喚起が必要だ、という点は理解できます。しかし、仮にも学会という組織が情報の裏も取らないで「死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表することは、無責任過ぎるのではないでしょうか。無用な混乱は、再生医療に携わる医療機関や企業の信頼性にも影響します。再生医療抗加齢学会は早急に「死亡情報」の“エビデンス”を開示するべきです。もし虚偽情報だったなら、早急に訂正を出すべきではないでしょうか。

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ESMO2023 レポート 肺がん

レポーター紹介2023年のESMOはスペインのマドリードで開催されました。昨年・一昨年以上に参加人数が多かったようで、ポストコロナ時代の学会として大変盛況でした。さて、肺がん領域においてはPractice Changeにつながる可能性の高い重要な演題が多く発表されました。とくに、ここ2年間で劇的に進歩した肺がん周術期治療やEGFR・RETなどのdriver mutation陽性の進行例に対する新たな知見が複数報告されております。今回はその中から、7つの演題を取り上げ概括したいと思います。CheckMate77T試験切除可能なIIA~IIIB(N2)期の非小細胞肺がんを対象として、術前の化学療法を標準治療として、術前のニボルマブ+化学療法および術後のニボルマブ療法の優越性を検証した無作為化比較第III相試験である。CheckMate816試験を基に現在保険承認されている術前のニボルマブ+化学療法に術後1年間のニボルマブ療法を加えた、いわゆるサンドイッチレジメンである。主要評価項目は中央判定での無イベント生存期間(EFS)で、副次評価項目は中央判定での病理学的完全奏効(pCR)、中央判定での病理学的奏効(MPR)、全生存期間(OS)、安全性プロファイルが設定されていた。患者背景として、病期やPD-L1発現などはCheckMate816試験と同様であった。主要評価項目の結果としては、CheckMate816試験やほかのサンドイッチレジメンと同様にEFSを有意に延長し(ハザード比:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.81)、副次評価項目であるpCRやMPRも化学療法と比較して有意に良好であった(pCR:25.3% vs.4.7%、MPR:35.4% vs.12.1%)。EFSのサブ解析を見ても、おおむねどの集団においてもニボルマブ併用群で良好な結果であった。また、ほかのサンドイッチレジメンと同様にpCRやMPR別でのEFSの解析も行われ、こちらも今までと同様にpCRやMPRの有無でEFSに大きな差が認められた。安全性のデータも報告されたが、目新しい有害事象(AE)の報告はなく、過去の周術期ICIのレジメンと同様であった。本レジメンも将来的に保険承認されると予想されるが、ほかのペムブロリズマブやデュルバルマブなどのサンドイッチレジメンとの差別化が図れるようなデータは今回の報告からは見られなかった。ALINA試験本年のASCOで、EGFR遺伝子変異陽性肺がん完全切除例に対するオシメルチニブによる術後補助療法が、プラセボと比較してOSを有意に延長したことが大きな話題となったが、ESMOではALK遺伝子転座陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブの術後補助療法の有効性が報告された。UICC-7版でのIB~IIIA期のALK陽性非小細胞肺がんが対象で、標準治療であるプラチナ併用化学療法による補助療法に対するアレクチニブを2年間内服する術後補助療法の有効性を検証する無作為化比較第III 相試験である。主要評価項目は無病生存期間(DFS)で、副次評価項目はCNSのDFS、OS、安全性であった。主要評価項目はII~IIIA期で評価された後、ITT集団を対象として階層的に評価されるデザインであった。257例が登録されており、アジア人が約半数でIIIA期が約半数登録された試験であった。主要評価項目であるII~IIIA期DFSは、標準治療と比較してアレクチニブ群のハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.45)であり、ITT集団を対象とした解析でもハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.43)と、ともに主要評価項目を達成した。サブ解析でもほぼすべての集団でアレクチニブ群のDFSが良好であった。副次評価項目の1つであるCNSのDFSも、アレクチニブ群は標準治療と比較してハザード比は0.22(95%CI:0.08~0.58)と良好であった。再発後の治療はアレクチニブ群の約半数、標準治療群では約75%でALK-TKIが投与されており、今回の発表のデータカットオフ時点ではOSのイベントはわずか6例しか認められなかった。安全性は、Grade3以上は30%で治療関連の死亡は認められなかった。主なAEは、CPK上昇(約40%)、便秘(約40%)、AST上昇・ALT上昇(約40%前後)と、過去のALEX試験やJ-ALEX試験と同様のプロファイルであった。今回、DFSの良好な結果が報告されたが、オシメルチニブと同様にOSの延長にも寄与するかが今後期待される。ただ、ALK陽性肺がんの予後を考えると、数年後まで結果は出てこない可能性が高い。今回の結果からは、今後バイオマーカーの結果によって周術期治療戦略も進行期と同様に細分化されると考えられる。MARIPOSA試験EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する1次治療として確立しているオシメルチニブを標準治療とした、無作為化比較第III相試験である。試験治療群はEGFRとMETの二重特異性抗体であるamivantamabと第3世代EGFR-TKIであるlazertinibの2剤併用療法もしくはlazertinib単剤の3群の比較試験で、主要評価項目はamivantamab・lazertinib併用療法のオシメルチニブに対する中央判定によるPFSであった。 1,074例が登録され、amivantamab・lazertinib併用療法、オシメルチニブ療法、lazertinib療法に、それぞれ2:2:1に割り付けられた。EGFR変異の種別はExon19欠失が60%でL858R点変異が40%、約40%が脳転移を有していた。主要評価項目のPFSはamivantamab・lazertinib併用群で中央値23.7ヵ月、オシメルチニブ群で中央値16.6ヵ月、ハザード比0.70(95%CI:0.58~0.85)と、amivantamab・lazertinib併用群のオシメルチニブに対するPFS延長効果が証明され、主要評価項目を達成した。サブ解析では、おおむねどの集団においてもamivantamab・lazertinib併用群で良好な結果であったが、65歳以上の集団ではハザード比1.06であった。奏効率(ORR)は併用群およびオシメルチニブ群ともに約85%で、OSは今回の中間解析時点では2年時点で5%約の差(75% vs.69%)で併用群が良好であった。有効性について有望な結果が得られたamivantamab・lazertinib併用群であったが、AEが強く発現する点に注意する必要がある。Grade3以上のAEは75%で、皮膚障害・粘膜障害についてもGrade3以上がamivantamab・lazertinib併用群で強く発現していた。さらに特筆すべきは静脈血栓症(VTE)で、オシメルチニブ群の9%と比較して併用群では37%と高く、発症時期は中央値で84日と比較的早期に発症することが特徴である。現在実施されているamivantamab・lazertinib併用の治験では、治療開始後4ヵ月間は予防的抗凝固療法が推奨されているとのことであった。今回、オシメルチニブに対するPFS延長を示したamivantamab・lazertinib併用療法であるが、AEが強く発現する点から、個人的には今後オシメルチニブに完全に置き換わるよりは、使い分けが重要となってくると予想する。MARIPOSA-2試験先述したMARIPOSA試験と同じセッションで発表された本試験は、オシメルチニブに対して病勢増悪を来したEGFR遺伝子変異陽性例を対象として、カルボプラチン+ペメトレキセドによる化学療法を標準治療として、amivantamab+lazertinib+化学療法の4剤併用療法もしくはamivantamab+化学療法の3剤併用療法の3群に割り付ける無作為化比較第III相試験で、657例が登録された。主要評価項目は中央判定による4剤併用療法と化学療法を比較するPFSと、3剤併用療法と化学療法を比較したPFSである。登録前のオシメルチニブは、70%が1次治療、30%が2次治療で投与されていた。主要評価項目のPFSの結果は、4剤併用療法群の中央値が8.3ヵ月、3剤併用療法群の中央値が6.3ヵ月、化学療法群の中央値が4.2ヵ月で、それぞれハザード比が0.44(95%CI:0.35~0.56)、0.48(95%CI:0.36~0.64)と、4剤併用療法、3剤併用療法ともに化学療法に対する有意なPFS延長効果を証明した。サブ解析においても、すべての集団でPFSは良好な結果であった。ORRは両群63%程度(化学療法は36%)で頭蓋内のPFSも両群とも良好であった(4剤併用:12.8ヵ月、3剤併用:12.5ヵ月、化学療法:8.3ヵ月)。AEは先述したMARIPOSA試験同様に注意すべき点である。とくにlazertinibを加えた4剤併用療法では、Grade3以上のAEは92%、治療関連死亡は5%に認めた。3剤併用療法はGrade3以上のAEが72%であった。なかでも好中球減少や血小板減少などの血球減少は多く見られ、吐き気や倦怠感、食欲不振といった自覚症状として出てくるAEも4剤併用療法や3剤併用療法で多く認められた。血球減少が多く見られたことから、4剤併用療法のレジメンが見直され、lazertinibはカルボプラチン終了後に開始となるレジメンにmodifyされた。この修正後のレジメンの有効性・安全性データは今後評価予定となっている。今回、オシメルチニブ後の治療として有望な結果が得られたが、効果と安全性のバランスを考えると3剤併用療法がより使いやすい印象はある。先述したMARIPOSA試験と併せて、EGFR遺伝子変異陽性の最適な治療シークエンスが今後検討されることであろう。LIBRETTO-431試験本試験は肺腺がんの1~2%に認められるRET融合遺伝子陽性の非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、RET阻害薬であるセルペルカチニブを試験治療として、カルボプラチン+ペメトレキセド(+ペムブロリズマブ:investigator choice)療法を標準治療とした無作為化比較第III相試験である。標準治療群に割り付けられても病勢増悪後にセルペルカチニブにクロスオーバーが可能な試験である。主要評価項目は中央判定によるPFSであった。PFSはITT集団とITT-pembrolizumab(ITT-P)集団という2つの対象で評価された。261例が2:1に割り付けられた。約20%に脳転移を認め、40%強がPD-L1発現を認めた。主要評価項目であるPFSはITT-P集団でハザード比0.465(95%CI:0.309~0.699)、ITT集団で0.482(95%CI:0.331~0.700)と、規定された2つの集団でセルペルカチニブのPFSの有意な延長効果が証明された。サブ解析ではPD-L1陰性例よりも陽性例で良好な結果であった。セルペルカチニブのORRは83.7%(標準治療群:65.1%)、頭蓋内のORRも82.4%(標準治療群:58.3%)と、ともに良好な結果であった。CNS転移の累積発生率で見ても、12ヵ月時点で標準治療群が約20%であるのに対して、セルペルカチニブ群は5.5%とCNS転移をしっかりと抑えていることが示された。AEについては、セルペルカチニブの承認の元になった第I/II相試験であるLIBRETTO-001試験と同様のプロファイルであった。Grade3以上のAEは約70%に認められ、頻度の高いAEはAST上昇(Grade3以上13%)、ALT上昇(Grade3以上22%)、高血圧(Grade3以20%)、下痢(Grade3以上:1%)であった。約80%の症例でセルペルカチニブの用量変更が必要であったことも特筆すべきことである。今回の第III試験の報告で、RET融合遺伝子陽性例の1次治療としてセルペルカチニブは確立したものとなったと考える。本試験の結果は発表と同時にNew England Journal of Medicine誌にpublishされたことも報告された。TROPION-Lung01試験既治療の進行・再発非小細胞肺がんを対象として、ドセタキセル療法を標準治療としたdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)の優越性を検証する無作為化比較第III相試験である。Dato-DXdはTROP2を標的とした抗体薬物複合体である。EGFRやALKなどのdriver mutationを有する症例について、標的治療およびプラチナ併用化学療法(+ICI)の治療を終えた症例であれば組み込むことは可能であった。主要評価項目は中央判定によるPFSとOSであった。604例が1:1に割り付けられ、非扁平上皮がんが約80%、EGFR遺伝子変異陽性例は約15%登録されていた。主要評価項目のPFSはDato-DXd群で中央値が4.4ヵ月、ドセタキセル群で中央値が3.7ヵ月、ハザード比は0.75(95%CI:0.62~0.91)とDato-DXdの有意なPFS延長効果が示された。ORRはDato-DXd群は26.4%、ドセタキセル群では12.8%と、こちらもDato-DXd群で良好であった。PFSのサブ解析で特筆すべきは組織型での差であった。非扁平上皮がんではDato-DXd群のハザード比が0.63であったのに対して、扁平上皮がんでは1.38と組織型でDato-DXd療法の有効性が異なることが示唆された。今回の中間解析時点でのOSはDato-DXd vs.ドセタキセルで0.90(95%CI:0.72~1.13)であり、今後のフォローアップデータが待たれるところである。治療期間の中央値はDato-DXdが4.2ヵ月、ドセタキセルは2.8ヵ月であった。Dato-DXdのAEについて、Grade3以上のAEは25%、減量を要した症例の割合は20%と、どちらもドセタキセルと比較して低い傾向にあった。頻度の多いAEは口内炎(47%)、吐き気(34%)、脱毛(32%)であった。またDato-DXdに特徴的なAEとしてドライアイや流涙などの眼関連のAEが19%に発生した。また、ILDは8%で、7例(2%)にILDによる治療関連死亡が発生したことも注意すべきAEとして取り上げたい。これらの結果から、既治療の非扁平上皮がんに対してDato-DXdが重要な治療選択肢になりうると結論付けられた。ACHILLES/TORG1834試験最後に、本邦からの重要な第III相試験の報告を紹介する。TORGを中心に全国の臨床試験グループが参加して行われたインターグループスタディであるACHILLES試験の結果が、新潟県立がんセンター新潟病院の三浦 理氏より報告された。本試験は、EGFR遺伝子変異の中でExon19欠失もしくはL858R点変異を除く、いわゆるuncommon変異を有する未治療例を対象として、標準治療をプラチナ+ペメトレキセド、試験治療をアファチニブとして、PFSを主要評価項目に設定した無作為化比較試験である。109例が登録され、標準治療群とアファチニブ群に1:2に割り付けられた。変異の種類としてはG719Xが約40%と最も多く、L861Qが約18%であった。複数のuncommon変異を同時に有するcompound変異は約30%であった。ベースの脳転移は約30%に認めた。主要評価項目のPFSはアファチニブ群の中央値が10.6ヵ月、標準治療群では5.7ヵ月で、ハザード比は0.422(95%CI:0.256~0.694)であり、アファチニブの有意なPFS延長効果が示された。ORRはアファチニブで61.4%、標準治療で47.1%とアファチニブで良好であった。安全性は過去のLUX-Lung試験と同様のプロファイルであった。uncommon変異に対する初めての第III相試験であり、OSの結果が待たれるところであるが、同対象への標準治療としてアファチニブの地位はほかのEGFR-TKIよりリードしたものと考える。終わりに今回のESMOでは、取り上げた演題以外にもMini Oralやポスター発表で非常に興味深い発表が多かったです。今回のレポートが、多くの先生の臨床にお役に立てれば幸いです。

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