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抗がん剤で劇症1型糖尿病を発症させない

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、5月18日、本年1月29日に公表した「免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について」に追記として「免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関するRecommendation」を加えた。 Recommendationでは、劇症1型糖尿病を「発症後直ちに治療を開始しなければ致死的」と警告を発するとともに、疾患の存在を想定した早期発見と適切な対処を呼びかけている。また、血糖値の検査・確認、専門医へのコンサルテーション、糖尿病治療の早期開始、患者への事前説明、ステロイド薬使用の注意などを5項目にわたり推奨している。 免疫チェックポイント阻害薬であるヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(オプジーボ)を使用した推定4,888人中12人(0.25%)に、1型糖尿病(劇症、急性発症ともに)が発症したことが報告された(使用期間:2014年7月4日~2016年3月31日)。 そこで同学会では、免疫チェックポイント阻害薬投与患者における1型糖尿病発症に対応するため、Recommendationを発表したものである。Recommendation1) 投与開始前および投与開始後、来院日ごとに、高血糖症状の有無を確認し、血糖値を測定する。2) 測定値は当日主治医が確認し、高血糖症状を認めるか、検査に異常値(空腹時126mg/dL以上、あるいは随時200mg/dL以上)を認めた場合は、可及的速やかに糖尿病を専門とする医師(不在の場合は担当内科医)にコンサルトし、糖尿病の確定診断、病型診断を行う。3) 1型糖尿病と診断されるか、あるいはそれが強く疑われれば、当日から糖尿病の治療を開始する。4) 患者には、劇症1型糖尿病を含む1型糖尿病発症の可能性や、注意すべき症状についてあらかじめ十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿)を自覚したら予定来院日でなくても受診または直ちに治療担当医に連絡するよう指導しておく。5) 該当薬の「適正使用ガイド」に、過度の免疫反応による副作用が疑われる場合に投与を検討する薬剤として記載されている副腎皮質ホルモン剤は、免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病の改善に効果があるというエビデンスはなく、血糖値を著しく上昇させる危険があるため1型糖尿病重症化予防に対しては現時点では推奨されない。また、他の副作用抑制のためにステロイド剤を投与する場合は、血糖値をさらに著しく上昇させる危険性があるため、最大限の注意を払う。「【追記】免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について 」(日本糖尿病学会)の詳細についてはこちら。(ケアネット)関連ニュースがん治療で気付いてほしい1型糖尿病

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関節リウマチ、従来型合成DMARDsを用いた3剤併用の効果/BMJ

 関節リウマチ(RA)に対し、従来型合成DMARDsを用いた3剤併用(メトトレキサート[MTX]+サラゾスルファピリジン+ヒドロキシクロロキン)は、現在最もよく処方されている生物学的DMARDs+MTXと同程度、疾患活動性コントロールに対する効果があり、MTX未治療および既治療の患者を問わず概して忍容性も良好である。カナダ・カルガリー大学のGlen S Hazlewood氏らが、Cochraneシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、明らかにした。これまでに生物学的DMARDs+MTX併用療法は、MTX単独療法よりも疾患活動性のコントロールに優れていることがメタ解析の結果、報告されていたが、MTXと従来型合成DMARDsの有用性については検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2016年4月21日号掲載の報告。生物学的製剤、JAK阻害薬などと比較した効果をメタ解析 研究グループは、MTX未治療または効果不十分のRA成人患者に対するMTX単独と、MTX+従来型合成DMARDsの併用、または生物学的製剤、もしくはJAK阻害薬トファシチニブとの併用を評価する、システマティックレビューとベイズ統計のランダム効果ネットワークメタ解析を行った。2016年1月19日時点でMedline、Embase、Cochrane Centralのデータベース、2009~15年の欧米2大RA学会の要約、2大臨床登録試験サイト(Clinical Trials.govほか)を検索し、さらにCochrane reviewsの手動検索を実施。MTXと他のあらゆるDMARDs、またはDMARDs併用と比較した無作為化もしくは準無作為化試験で、治療間比較のネットワークエビデンス構築に寄与していたものを選択した。 主要評価項目は、ACR50反応率(主要臨床的改善)、X線画像所見での疾患進行、有害事象による投与中断とした。 比較療法間に統計的有意差があるか否かは、効果なしを除外して算出した95%信頼区間(CI)を評価し、97.5%超確率で優越性が認められる場合とした。MTX未治療患者でのACR50、56~67%で類似 検索により得られたのは患者3万7,000例超が参加した158試験のデータで、各アウトカムについて、10~53試験からデータを分析に包含した。 MTX未治療患者集団についての検討では、ACR50反応率についてMTX単独よりも統計的に効果が優れていることを示す療法として、3剤併用療法、生物学的製剤(アバタセプト、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、トシリズマブ)、トファシチニブが認められた。推定ACR50反応率はMTX単独41%に対し、これらの治療は56~67%の範囲で類似していた。 MTXとアダリムマブまたはエタネルセプト、セルトリズマブペゴルもしくはインフリキシマブとの併用は、X線所見上の疾患進行についてMTX単独よりも有意に優れていた。しかし、年間の推定平均変化値は、臨床的意義がある最小差(Sharpスコア5)よりも小さかった。 3剤併用療法は、MTX+インフリキシマブよりも有害事象による投与中断が有意に少なかった。 一方、MTX効果不十分の集団についての検討では、ACR50反応率についてMTX単独よりも統計的に効果が優れていることを示す療法として、3剤併用療法、MTX+ヒドロキシクロロキン、MTX+レフルノミド、MTX+金療法、MTX+大半の生物学的製剤、MTX+トファシチニブが認められた。推定ACR50反応率は、3剤併用療法は61%、その他は27~70%と広範囲にわたっていた。 X線所見上の疾患進行についてMTX単独と比較して統計的に優れている療法はなかった。 MTX+アバタセプトは、有害事象による投与中断率が複数の治療と比べて統計的に有意に低かった。 著者は、「検討の結果は、3剤併用療法が、MTX未治療または効果不十分の患者両者で効果があることを示すものであった。また、疾患活動性コントロールについてMTX+生物学的製剤と統計的に有意差はないことも示された」と述べ、「3剤併用療法のコストは生物学的製剤の10~20分の1と低いことを考慮し、初回あるいはMTX効果不十分後のいずれにおいても、有効な治療選択肢とすべきである」とまとめている。

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pembrolizumab、進行性悪性黒色腫に有望/JAMA

 進行性悪性黒色腫の治療において、免疫チェックポイント阻害薬pembrolizumabは、高い有効性と良好な安全性を発揮することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAntoni Ribas氏らが行ったKEYNOTE-001試験の長期データの解析で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年4月19日号に掲載された。pembrolizumabは、プログラム細胞死1(PD-1)に対するヒト型モノクローナルIgG4-κ抗体であり、同試験の悪性黒色腫の拡大コホート奏効例のフォローアップ期間中央値11ヵ月時の解析では、投与スケジュールの違いやイピリムマブ投与歴の有無により25~52%の客観的奏効率が報告されている。4ヵ国、655例の第Ib相試験の長期的な統合データを解析 KEYNOTE-001試験は、さまざまながん種に対するpembrolizumabの安全性と抗腫瘍効果を評価する非盲検第Ib相試験であり、研究グループは今回、進行性悪性黒色腫の長期的な統合データの解析を行った(Merck社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、全身状態(ECOG PS)が0~1の切除不能な進行性悪性黒色腫の患者であった。イピリムマブの投与を受けていない患者は前治療レジメン数を1~2とし、同薬の投与を受けた患者はレジメン数に制限を設けなかった。 被験者は、pembrolizumab10mg/kgを2週ごとに投与する群、同10mg/kgを3週ごとに投与する群、同2mg/kgを3週ごとに投与する群に割り付けられ、病勢進行、耐用不能な毒性の発現、担当医が中止すべきと判断するまで継続された。 主要評価項目は、ベースライン時に測定可能性病変を有していた患者における確定された客観的奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])とし、中央判定を行った。 2011年12月~13年9月までに、オーストラリア、カナダ、フランス、米国の研究施設に655例が登録された。このうち135例が非無作為化コホート(イピリムマブ未治療:87例、同既治療:48例)で、520例は無作為化コホート(イピリムマブ未治療:226例、同既治療:294例)であった。奏効率33%、1年PFS 35%、OS 23ヵ月、Grade 3/4の有害事象14% ベースラインの全体の年齢中央値は61歳(範囲:18~94歳)、男性が62%(405例)であり、測定可能病変は655例中581例に認められた。フォローアップ期間中央値は15ヵ月(範囲:8~29ヵ月)であった。 客観的奏効率は33%(194/581例、95%信頼区間[CI]:30~37)であり、前治療を受けていない例では45%(60/133例、同:36~54)に達した。イピリムマブ既治療例は29%(87/304例)、未治療例は39%(107/277例)だった。 最終的なデータ・カットオフ日(2014年10月18日)の時点で、測定可能病変以外の患者を含めた全体の奏効例のうち、74%(152/205例)で奏効が持続しており(前治療のない患者では82%[53/65例])、奏効期間が1年以上の患者は44%(90/205例)、6ヵ月以上は79%(162/205例)であった。 1年無増悪生存(PFS)率は、全体では35%(95%CI:31~39)であり、前治療なしの患者では52%(同:43~60)であった。 全体の全生存(OS)期間中央値は23ヵ月(95%CI:20~29)であり、1年OS率は66%(同:62~69)、2年OS率は49%(同:44~53)であった。前治療なしの患者では、それぞれ31ヵ月(同:24~未到達)、73%(同:65~79)、60%(同:51~68)だった。 PFSおよびOSは、イピリムマブによる治療歴のある患者とない患者でほぼ同じであった。 Grade3/4の治療関連有害事象を1件以上経験した患者の割合は14%(92/655例)であり、治療関連有害事象による治療中止は4%(27/655例)であった。また、治療関連の重篤な有害事象は9%(59/655例)にみられた。治療関連死は認めなかった。 著者は、「これらの結果は、もう1つの抗PD-1抗体製剤であるニボルマブの同様の試験(奏効率31%、1年OS率62%、2年OS率43%)と類似していた」としている。

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急性前骨髄球性白血病〔APL : acute promyelocytic leukemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は急性骨髄性白血病の1つで、FAB分類ではM3に分類される。大部分の症例でt(15;17)(q22;q12)を認め、15番染色体q22上のpromyelocytic leukemia(PML)遺伝子と17番染色体q12上のretinoic acid receptor α(RARA)遺伝子の融合遺伝子を形成するため、WHO分類ではt(15;17)(q22;q12); PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病という一疾患単位が設定されている。線溶亢進型の播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併し、脳出血など致命的な臓器出血を来しやすく、出血による早期死亡が寛解率を低下させていたが、ビタミンAの一種である全トランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid: ATRA、一般名:トレチノイン、商品名:ベサノイド)を寛解導入療法に用いることで、APL細胞を分化させるとともにDICが軽減され、きわめて高い寛解率が得られるようになった。また、APL細胞はP糖蛋白の発現が低く、アントラサイクリン系薬をはじめ抗腫瘍薬に対する感受性も高い。したがって十分な寛解後療法を行えば再発の危険性も低く、急性白血病の中では化学療法により完治を得る可能性が最も高い疾患と認識されている。■ 疫学わが国において白血病は、年に10万人当たり男性で約6人、女性で約4人に発症し、その約60%が急性骨髄性白血病、さらにその10~15%がAPLといわれている。世界的にみると、イタリアやスペインなど南ヨーロッパで発症率が高い。ほかの急性骨髄性白血病よりも発症年齢が若い傾向がある。■ 病因15番染色体q22上のPML遺伝子と17番染色体q12上のRARA遺伝子は、骨髄系細胞の増殖抑制、分化の調整を行うが、相互転座の結果PML-RARA融合遺伝子が形成されると、骨髄系細胞の分化が抑制され、前骨髄球レベルで分化を停止した細胞が腫瘍性に増殖することで発症すると考えられる。■ 症状1)出血最も重要な症状は出血で、主としてDICに起因する。皮膚の紫斑・点状出血のほか、歯肉出血、鼻出血などを来す。抜歯など、観血的な処置後の止血困難もしばしば診断のきっかけになる。脳出血など、致命的な出血も少なくない。2)貧血骨髄での赤血球産生低下と出血のため貧血となり、動悸、息切れ、疲れやすさなどを自覚する。3)感染、発熱正常な白血球、とくに好中球数が低下し、発熱性好中球減少症を起こしやすい。病原微生物として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌などの細菌、カンジダやアスペルギルスなど真菌が多い。感染部位として菌血症、肺炎が多いが、起因菌や感染部位が同定できないことも少なくない。■ 予後寛解導入療法に広くATRAが用いられるようになった1990年代以後、寛解率は90%を超えている。非寛解例の多くが出血による早期死亡であり、初期にDICをコントロールできるかどうかが生存に大きく影響する。いったん寛解に入り、十分な寛解後療法を行えば再発しにくく、70%以上の患者は無再発での長期生存が可能である。とくに白血球数が少なく(≦10,000/mm3)、血小板数が比較的保たれた(>40,000/mm3)症例では再発のリスクが低い1)。一方、地固め療法後にRQ-PCR法にてPML-RARAが消失しない、あるいはいったん消失したPML-RARAが再出現する場合は、血液学的再発のリスクが高い2)。ただし、再発した場合も多くは亜ヒ酸(一般名:三酸化ヒ素、商品名: トリセノックス)が奏効し、さらに自家造血幹細胞移植も有効であるため、急性白血病の中で最も予後良好といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 血液検査所見白血球数は減少していることが多い。APL細胞はアズール顆粒が充満しており、アウエル小体が束状に存在するFaggot細胞として存在するものもある。貧血もほぼ必発で大部分が正球性である。産生低下およびDICにより、血小板数は著しく低下する。DICのため、プロトロンビン時間(PT)延長、フィブリン分解産物(FDP)およびD-ダイマー高値、フィブリノーゲン低値を示す。DICは線溶亢進型で、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)ともに高値となる。アンチトロンビンは正常のことが多い。■ 骨髄所見骨髄は末梢血と同様の形態をもつAPL細胞が大部分を占め、正常な造血は著しく抑制される。APL細胞は、ペルオキシダーゼに強く染まり、細胞表面マーカーはCD13、CD33が陽性、CD34、HLA-DR陰性である。染色体および遺伝子検査では90%以上にt(15;17)(q22;q12)が、約98%にPML-RARA融合遺伝子が証明される。t(15;17)(q22;q12)以外の非定型染色体転座にt(5;17)(q35;q12); NPM1-RARA、t(11;17)(q23;q12); ZBTB16(PLZF)-RARA、t(11;17)(q13;q12); NUMA1-RARAなどがある。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ATRAを中心とした初回寛解導入療法、寛解導入後の地固め療法や維持療法、再発例に対する治療、造血幹細胞移植などがある。■ 初回寛解導入療法診断が確定したら、ATRAを寛解到達まで内服する。ATRA単独の寛解導入療法はATRAと従来の化学療法剤との併用療法に比べ寛解率に差はないが、再発のリスクが高いとする報告もあり3)、とくに診断時白血球数の多い症例、ATRA投与中に白血球数増加を来した症例、APL分化症候群を合併した症例では積極的にイダルビシン(商品名: イダマイシン)などのアントラサイクリンやシタラビン(同:キロサイド)を併用する。初回寛解導入療法中の重篤な合併症として、DICに伴う出血とAPL分化症候群がある。DICに伴う致命的な出血を予防するため、最低でも血小板数は50,000/mm3、フィブリノーゲンは150mg/dLを保つように血小板および新鮮凍結血漿の輸血を行うとともに、トロンボモジュリン(同:リコモジュリン)などDICに対する薬物療法を行う。APL分化症候群は、ATRAや亜ヒ酸の刺激を受けたAPL細胞から過剰産生される、さまざまな炎症性サイトカインやAPL細胞の接着分子発現増強などにより発症する。80%以上の患者に発熱や低酸素血症による呼吸困難が認められるほか、体重増加、浮腫、胸水、心嚢水、低血圧、腎不全などを来す。両側の間質性肺炎様のX線あるいはCT所見は診断に有用である。好発時期は寛解導入療法開始後1~2週間であり、ATRAや亜ヒ酸投与期間中に白血球数の増加を伴って発症することが多い。治療にはステロイドが有効で、重篤な場合はATRAや亜ヒ酸を中止するとともに、未投与であればアントラサイクリンやシタラビンを投与する。■ 地固め療法寛解導入後には、地固め療法としてイダルビシン、ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)などアントラサイクリンや同様の作用機序を有するミトキサントロン(同:ノバントロン)の3~5日間点滴を、約1ヵ月おきに2~4回繰り返す。シタラビンについては意見が分かれるが、診断時の白血球数が10,000/mm3未満の症例では、十分なアントラサイクリンが投与されればその意義は低く、むしろ再発を高める可能性もある一方で、10,000/mm3以上の症例では高用量での投与が有用と報告されている4)。■ 維持療法ATRAを中心とした維持療法は再発予防に有用である。通常、地固め療法終了後にATRA 14日間の内服を約3ヵ月間隔で2年間繰り返す。6-メルカプトプリン(同:ロイケリン)やメトトレキサート(同:メソトレキセート)の併用はさらに再発抑制効果を高める可能性がある5)。■ 再発例に対する治療亜ヒ酸が第1選択薬であり80%以上の再寛解が期待できる。ゲムツズマブ オゾガマイシン(同:マイロターグ)や合成レチノイド、タミバロテン(同:アムノレイク)も有用である。なお、血液学的寛解中であってもRQ-PCR法でPML-RARA陽性となった場合は再発と判断し、上記の再寛解導入療法を開始する。■ 造血幹細胞移植本症はATRAを中心とした化学療法が有効であり、通常第1寛解期には造血幹細胞移植は行わない。第2寛解期では造血幹細胞移植が推奨される。第2寛解期での自家造血幹細胞移植は、同種造血幹細胞移植に比べ再発率は高いものの治療関連死が少なく、全生存率は同種造血幹細胞移植を上回っている6)。そのため、地固め療法後にRQ-PCR法でPML-RARA陰性例には自家移植、陽性例には同種移植を考慮する。4 今後の展望今後もATRAを中心とした化学療法が治療の主体であると考えられる。診断時の白血球数や地固め療法後のPML-RARA融合遺伝子の有無など、リスクファクターによる層別化治療を寛解導入療法のみならず寛解後療法においても広く用いることにより、再発リスクと有害事象の軽減が図れると期待される。さらに寛解導入療法でのATRAと亜ヒ酸の併用や、地固め療法での亜ヒ酸の積極的使用により、治療成績はさらに向上する可能性がある。5 主たる診療科血液内科あるいは血液腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報JALSGホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)がんプロ.comホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公益財団法人先端医療振興財団 臨床研究情報センター「がん情報サイト」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つばさの広場(血液疾患患者とその家族の会)海好き(白血病患者とその家族の会)1)Sanz MA, et al. Blood. 2000; 96: 1247-1253.2)Gallagher RE, et al. Blood. 2003; 101: 2521-2528.3)Fenaux P, et al. Blood. 1999; 94: 1192-1200.4)Adès L, et al. Blood. 2008; 111: 1078-1084.5)Adès L, et al. Blood. 2010; 115: 1690-1696.6)de Botton S, et al. J Clin Oncol. 2005; 23: 120-126.公開履歴初回2014年03月20日更新2016年04月26日

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抗PD-L1抗体atezolizumab、既治療NSCLCのOS延長/Lancet

 既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、新規免疫チェックポイント阻害薬atezolizumabは、ドセタキセル(商品名:タキソテールほか)に比べ予後が良好であることが、米国・カイザーパーマネンテ医療センターのLouis Fehrenbacher氏らが行ったPOPLAR試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年3月9日号に掲載された。ニボルマブやペムブロリズマブがT細胞上のPD-1を標的とするのに対し、atezolizumabは腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞上に発現しているPD-L1(PD-1のリガンド)に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体で、T細胞上のPD-1だけでなくB7.1(CD80)との結合を阻害する。それゆえ、T細胞活性化阻害作用の抑制効果が抗PD-1抗体よりも高い可能性があり、またPD-L2とPD-1の相互作用には影響しないことから、免疫系の恒常性への影響を回避できると考えられている。ドセタキセルと比較する無作為化第II相試験 POPLAR試験は、既治療のNSCLC患者においてatezolizumabとドセタキセルの有用性を比較し、PD-L1発現レベルを評価する非盲検無作為化第II相試験(F Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、プラチナ製剤による化学療法後に病勢が進行したNSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、測定可能病変(RECIST ver.1.1)を有する患者であった。 被験者は、腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1の状態、組織型、前治療レジメン数で層別化され、atezolizumab(1,200mg、静脈内投与)またはドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群に無作為に割り付けられた。 免疫組織化学(IHC)検査に基づき、腫瘍細胞上のPD-L1(TC3:≧50%、TC2:5~50%、TC1:1~5%、TC0:<1%)および腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1(IC3:≧10%、IC2:5~10%、IC1:1~5%、IC0:<1%)をスコア化した。 主要評価項目は全生存期間(OS)とし、探索的解析としてバイオマーカーの評価を行った。 2013年8月5日~14年3月31日までに、13ヵ国61施設に287例が登録された。atezolizumab群に144例、ドセタキセル群には143例が割り付けられ、それぞれ142例、135例が1回以上の投与を受けた。OS中央値:約3ヵ月延長、PD-L1発現率が高いほど良好 年齢中央値は両群とも62歳、男性はatezolizumab群が65%、ドセタキセル群は53%であり、喫煙者/元喫煙者がそれぞれ81%、80%、前治療レジメン数は1が65%、67%、2が35%、33%だった。 OS中央値はatezolizumab群が12.6ヵ月であり、ドセタキセル群の9.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.53~0.99、p=0.04)。 また、OS中央値はPD-L1の発現率が高い患者ほど良好であった(TC3またはIC3=HR:0.49[0.22~1.07]、p=0.068/TC2/3またはIC2/3=HR:0.54[0.33~0.89]、p=0.014/TC1/2/3またはIC1/2/3=HR:0.59[0.40~0.85]、p=0.005/TC0およびIC0=HR:1.04[0.62~1.75]、p=0.871)。 既存免疫(エフェクターT細胞およびインターフェロン-γの関連遺伝子発現≧中央値で定義)を有する患者の探索的解析では、atezolizumab群のOS中央値が有意に改善された(HR:0.43、95%CI:0.24~0.77)。 atezolizumab群で頻度の高い全原因有害事象として、食欲減退、呼吸困難、悪心、下痢、発熱などが認められ、免疫関連有害事象としてAST上昇(4%)、ALT上昇(4%)、肺臓炎(3%)、腸炎(1%)、肝炎(1%)がみられた。 治療関連有害事象の発現率は、atezolizumab群が67%、ドセタキセル群は88%であった。有害事象による治療中止は、atezolizumab群が8%(11例)、ドセタキセル群は22%(30例)、Grade 3/4の治療関連有害事象はそれぞれ11%(16例)、39%(52例)であり、atezolizumab群で少なかった。治療関連死はatezolizumab群が<1%(1例:心不全)、ドセタキセル群は2%(3例:敗血症、急性呼吸窮迫症候群、原因不明)だった。 著者は、「atezolizumabはドセタキセルに比べ既治療のNSCLC患者の予後を改善した」とまとめ、「PD-L1の発現は、atezolizumabのベネフィットを予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆される」と指摘している。

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がん免疫療法薬・安全性は「多職種連携」がカギ

 2016年2月17日、都内にて「がん免疫療法で変わる肺がん治療」をテーマにプレスセミナーが開催された(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ株式会社)。脚光を浴びているがん免疫療法、安全性は? ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は2014年9月に発売された、世界初の抗PD-1モノクローナル抗体で、がん免疫療法薬と呼ばれている。がん免疫療法は従来の化学療法や手術、放射線療法とはまったく異なる新たな治療法で、身体の免疫系に直接作用してがんと闘う機序を持つ。本邦において、ニボルマブは「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の2つの疾患に適応がある。免疫系に作用するという新しいアプローチと、治験時における有害事象、とくに骨髄抑制の少なさからがん治療において大きな期待を寄せられている。 しかし、使用経験の蓄積からこれまでの薬剤では経験のない免疫関連有害事象が報告されている。注意すべき、免疫関連有害事象とは? がん免疫療法薬は全身の臓器にも働きかけるといわれており、過度の免疫反応により免疫関連有害事象が複数の臓器で報告されている。演者の中西 洋一氏(九州大学大学院 呼吸器内科学分野 教授)は、とくに注意すべき副作用として間質性肺炎、重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害の4つを挙げた。 とくに劇症1型糖尿病は、インスリンを産生する膵島細胞の急速な破壊により急激に高血糖を来す。また、時には致死的であり、たとえ回復してもインスリン産生の枯渇により、血糖コントロール困難となり、社会生活に高度の支障を来す重大な疾患である。ニボルマブの臨床試験において、劇症1型糖尿病は報告されていなかったが、使用経験の蓄積により報告が上がってきた。2016年1月に日本腫瘍学会と日本糖尿病学会より、連名でステートメントが出たことは記憶に新しい1)。副作用に立ち向かうには? 九州大学病院の事例 上記の重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害などの副作用は必ずしもオプジーボを使用している医師の専門であるとはいえない。このような副作用に、どのように対応していけばよいのだろうか? 対応策の一例として、中西氏は九州大学病院の「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」を挙げた。同委員会では、副作用対策において、呼吸器内科・腫瘍内科・皮膚科など免疫療法実施診療科を、他の専門科や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどがサポートする、診療科・職域横断的なチェック体制づくりに取り組んでいる。専門外の医師をはじめとし、看護師・薬剤師などコメディカルとの連携によって、副作用の早期発見や適切な管理、細やかな対応が可能になるという。 ニボルマブは安全性の面以外にも、コストとの兼ね合い、バイオマーカーの探索、他剤との併用などさまざまな点に課題があるものの、これまで治療の選択肢に難渋していた患者にとって希望の光となりうる薬剤である。しかし、2016年2月より包括医療費支払い制度(DPC)の対象外となったため、今後さらなる使用患者数の増加が予想され、これに伴い予期せぬ副作用が生じる可能性も否定できない。治療医師のみならず、多職種が連携することで患者にとって最適な医療を行うことが望まれる。【参考】1)免疫チェックポイント阻害薬に関連した劇症 1 型糖尿病の発症について(PDFがダウンロードされます)

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多発性骨髄腫、最新の治療法と薬剤選択のコツは

 2016年2月15日、都内にて「多発性骨髄腫における最新治療」をテーマにメディアセミナー(主催:セルジーン株式会社)が開催された。本セミナーは、昨年末に未治療の多発性骨髄腫に対する追加承認を取得したレナリドミド(商品名:レブラミド)に関する最新の知見や、他の新規治療薬に関する情報が提供された。レナリドミドの追加承認に関するエビデンス レナリドミドが初発の多発性骨髄腫(以下、MM)治療に対する適応を取得した背景に、「FIRST試験」がある1)。本試験は、移植非適応患者における現在の標準治療であるMPT※)療法とレナリドミド+デキサメタゾン併用のLd※※)療法(継続治療群/18サイクル固定群)の3群間ランダム化比較試験である。この結果、以下の3点が示唆された。1. 継続的なLd療法群は他群より無増悪生存期間を有意に延長した2. 1の結果は75歳以上/未満でも同等の成績であった3. Ld療法において、両群における有害事象は75歳以上/未満で同程度であった 上記の結果から、Ld継続投与は高齢者にも安心して使用できる、移植非適応初発骨髄腫に対する標準治療になりうるとされた。レナリドミドの追加承認がもたらす影響 レナリドミドは2015年12月の効能・効果の追加承認取得を受けて、ファーストラインでの使用が可能となった。本邦において、これまで未治療MMではボルテゾミブが選択されるケースが多かったが、これからはレナリドミドも選ぶことができる。そのため、両薬剤の使い分けが重要になってくる。ボルテゾミブvsレナリドミド、最適な患者像を探る 演者の木崎 昌弘氏(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)は、2剤の使い分けのコツや利点について、以下のような考えを提案した。・レナリドミド:経口であるため幅広い患者に使用でき、副作用もマネジメントしやすい・ボルテゾミブ:幹細胞に影響を与えにくく、移植を考慮している患者にも使用しやすい。副作用の1つである末梢神経障害は、皮下投与にすることで軽減可能 各製剤の利点・欠点を考慮し、安全性を重要視したうえで適切な患者を選定していくことが重要であるという。選択肢が増え続ける多発性骨髄腫治療、今後の展望は? 現在サードラインの位置づけであるポマリドミドは、ボルテゾミブ/レナリドミド投与歴なしの患者に対する使用を念頭に置き、セカンドライン取得に向けた試験を開始している。また、がん免疫療法薬など新薬の開発も始まっている。 さらに、既存の治療に対するエビデンス収集も着々と進んでいる。たとえば、Ld継続治療において、レナリドミド長期投与における二次発がんと、ステイロイド長期投与における白内障が問題視されている。これらを評価するための市販後調査が現在進行中である。 多発性骨髄腫は現時点では完治が難しく、また、移植以外の外科的療法で治療を行うことができない。そのため、いかに多くの薬剤が開発されるかが重要になってくる。木崎氏は治療選択肢の増加と生存期間に強い相関があることを述べたうえで、今後の治療薬開発の意義を強調し、セミナーを結んだ。※)MPT療法:メルファラン/プレドニゾロン/サリドマイド併用※※)Ld療法:レナリドミド/低用量デキサメタゾン併用

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悪性胸膜中皮腫へのシスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ療法(解説:小林 英夫 氏)-478

 悪性胸膜中皮腫は早期発見が困難で、診断時点では進行期である症例が大多数を占める。2003年のVogelzang 氏らの報告に基づいて、ペメトレキセドが世界初の悪性胸膜中皮腫治療薬として米国で承認され、わが国でも2007年に薬価収載された。現在、悪性胸膜中皮腫標準化学療法はペメトレキセド+シスプラチン併用と認識されている。しかし、その治療成績は必ずしも満足できるレベルには到達しておらず、胸膜肺全摘除術や片側全胸郭照射などを組み合わせたマルチモダリティー療法などが検討されている。 こうした中、中皮腫において血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルが重大な役割を果たすことが示唆され、2010年以降いくつかの試験が実施された。そこで、VEGFをターゲットとする抗血管新生治療薬ベバシズマブの上乗せ効果について、Zalcman氏らによる本検討(第III相試験)が実施された。その結果、彼らは「循環器系の有害事象が増えるものの予想範囲内のものであり、ベバシズマブ上乗せは全生存期間(OS)を有意に改善する」とまとめている。Appendixを閲覧すると循環器系有害事象のほとんどは高血圧であった。 本研究デザインは、フランスの73病院において、18~75歳の切除不能悪性胸膜中皮腫、化学療法未治療、Eastern Cooperative Oncology Group PSスコア0~2、重大な心血管疾患の併存なし、CTで評価可能病変が少なくとも1つあり、余命12週超の症例が対象である。除外基準は、脳転移、抗血小板薬使用中、ビタミンK拮抗薬・ヘパリン・非ステロイド性抗炎症薬の投与中などであった。被験者は、ペメトレキセド+シスプラチン+ベバシズマブ投与のPCB群、またはベバシズマブの代わりにプラセボを投与するPC群に無作為に割り付け、3週間に1回を最大6サイクル、病勢進行または毒性効果が認められるまで投与した。主要アウトカムはOSである。 計448例が無作為化され、PCB群223例、PC群225例、男性75%、年齢中央値65.7歳、上皮型中皮腫81%であった。6サイクルを完遂したのは、PCB群74.9%、PC群76.0%。フォローアップ中央値は39.4ヵ月で両群に差はなかった。 主要アウトカムであるOS中央値は、PC群(16.1ヵ月、95%信頼区間[CI]:14.0~17.9)と比べPCB群(18.8ヵ月、15.9~22.6)で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.62~0.95、p=0.0167)。なお、PFS(無増悪生存)もPCB群で有意な改善が認められた(9.2ヵ月 vs.7.3ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.50~0.71、p<0.0001)。 Grade3/4の有害事象は、PCB群158/222例(71%)、PC群139/224例(62%)であった。PC群と比べてPCB群では、Grade3以上の高血圧症(51/222例[23%] vs.0例)、血栓イベント(13/222例[6%]vs. 2/224例[1%])の頻度が高かった。 これまで進行性悪性中皮腫へのペメトレキセド+カルボプラチン療法効果は、OS中央値は約12ヵ月、無増悪生存(PFS)中央値は約6ヵ月、とされていた。抗血管新生治療の上乗せ効果は期待できそうだが、それでも5年生存率は20%弱であり、さらなる検討が望まれる。また、血清VEGF値により治療効果に差が生じる可能性も示唆されており、今後、中皮腫のバイオマーカーとして活用していくことも考慮される。 悪性胸膜中皮腫の臨床試験は、現在本邦で4試験が実施されている。免疫チェックポイント阻害薬トレメリムマブ、がん抑制遺伝子アデノウイルスベクター、シスプラチン+ペメトレキセド+Napabucasin、アネツマブ・ラブタンシン、の第I、II相試験であり、どのような結果が得られるのか注視していきたい。なお、胸膜腫瘍WHO分類は2015年に改訂され、Journal of thoracic oncology誌2016年2月号(オンライン版2015年12月22日号)1)で発表されている。

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がん治療で気付いてほしい1型糖尿病

 1月29日、日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝氏)は、日本臨床腫瘍学会(理事長:大江 裕一郎氏)とともにお知らせとして「免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について」と題し、注意喚起を行った。 抗PD-1(programmed cell death-1)抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬は、抗がん剤として発売され、また現在も多くが開発されている。そのうち、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、従来の「根治切除不能な悪性黒色腫」に加え、2015年12月17日からは「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」にも承認され、2016年2月からは包括医療費支払制度の対象外となることもあり、使用患者の増加が予想されている。 そうしたなか、薬事承認以降に因果関係不明例を含め1型糖尿病(劇症1型糖尿病も含む)が7例(うち死亡例はなし)、副作用として報告されている(2015年11月に添付文書は改訂され、「1型糖尿病」が副作用として記載された)。(劇症)1型糖尿病の病態 1型糖尿病は、膵β細胞の破壊により絶対的インスリン欠乏に陥る疾患があり、とりわけ劇症1型糖尿病は、きわめて急激な発症経過をたどり、糖尿病症状出現から早ければ数日以内にインスリン分泌が完全に枯渇し、重篤なケトアシドーシスに陥る病態である。適切に診断し、ただちにインスリン治療を開始しなければ死亡する可能性が非常に高い。しかし、診断時に劇症1型糖尿病の可能性が念頭にないと、偶発的な高血糖として経過観察とされたり、通常の2型糖尿病として誤った対応がなされ、不幸な転帰をたどることも危惧される。 そこで、免疫チェックポイント阻害薬使用中に、急激な血糖値の上昇、もしくは口渇・多飲・多尿・全身倦怠感などの糖尿病症状の出現をみた際には、劇症1型糖尿病の可能性も考慮し、糖尿病専門医との緊密な連携のもと早急な対処が必要となる。また、患者に対しても、劇症1型糖尿病の可能性や、注意すべき症状について、あらかじめ十分に説明しておくことが求められるとしている。参考資料:劇症1型糖尿病診断基準(2012) 下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する。1. 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る(初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める)。2. 初診時の(随時)血糖値が288mg/dL(16.0 mmol/L)以上であり、かつHbA1c値(NGSP)<8.7%※である。3. 発症時の尿中Cペプチド<10μg/日、または、空腹時血清Cペプチド<0.3ng/mLかつグルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド<0.5ng/mLである。 ※劇症1型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は、必ずしもこの数字は該当しない。〔参考所見〕 A)原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である。 B)ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間の症例も存在する。 C)約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。 D)約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐など)を認める。 E)妊娠に関連して発症することがある。 F)HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている。詳しくは、「日本糖尿病学会 重要なお知らせ」まで

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サン・アントニオ2015 レポート-2

レポーター紹介ポスターセッションに移る。ポスターでも重要な臨床試験の結果が報告されていた。FACE試験:リンパ節転移陽性ホルモン受容体陽性閉経後乳がんにおける、術後補助療法としてのレトロゾールとアナストロゾールとの第III相比較試験である。2005年12月から2008年3月までにレトロゾール2,061例、アナストロゾール2,075例が無作為に割り付けされた。レトロゾール群36.1%、アナストロゾール群38.1%が有害事象(15.1%対14.3%)や再発(9.5%対10.4%)のために継続中止となった。結果として5年無再発生存率、全生存率ともにまったく差がなかった。関節痛やホットフラッシュ、疲労感といった有害事象もまったく同等であった。試験開始当初はATAC試験とBIG1-98試験の間接的比較などから、リンパ節転移陽性例でのレトロゾールの優越性が期待されていたが、見事なまでに同等の結果となった。Neo-Shorter試験:リンパ節転移陽性乳がんに対して、FEC3サイクル→DOC3サイクルがAC4サイクル→DOC4サイクルと比較して治療効果が劣らないかを、術前化学療法で検証する第III相試験で、韓国からの報告である。フランスではPACS01試験の結果からFEC×3→DOC×3が標準化学療法の1つとなっている。しかし、多くの標準療法は4サイクル→4サイクルであり、レジメンを短縮しても良いのかという疑問があった。AC4-D4が80例、FEC3-D3が93例である。pCRはそれぞれ17.5%、12.9%であり、ほぼ同等の効果となっている。この程度の数値上の差では、生存率に差が出ることはまずないだろうと思われる。ACとFEC100は治療効果が変わらないことはすでに証明されている(参照)のでどちらでも良い。また、意見の相違はあるかもしれないが、DOCをweekly PTXに変えても何の問題もないと思われる。今後、3サイクル→3サイクルを標準治療の1つとして考えることも十分許容されるだろう。少なくとも患者にとって副作用がつらい状態のとき、3サイクル終了した時点で4サイクル頑張らないと治療効果が低下するかもしれないと言う必要はないだろう。GBG69は、weekly paclitaxel(80)とweekly nab-paclitaxel(150 or 125)に引き続くEC(90/600)の効果を比較するドイツの無作為化術前化学療法試験である。当初nab-paclitaxel(nP)を150で開始したが、減量と中止が多かったため途中から125に変更している。結局nP 150を229例に、nP 125を377例に施行した。投与中止した割合はnP 150で26.8%、nP 125で16.6%、P80で13.3%であった。最も大きな懸念事項である末梢性感覚神経障害はGrade3以上がそれぞれ14.5%、8.1%、2.7%に認められた。治療効果(pCR率)はnP 125で最も高かった。この結果からweekly nab-paclitaxel は150ではなく125が考慮されるべきである。しかし、125でもまだ毒性が強いように思う。彼らはさらにGeparX試験でレジメンの改善が可能か調べるようである。nab-paclitaxelの意義はアルコールを使わないこと、薬剤調製時間、投与時間が大きく短縮できること、アレルギーの心配が非常に少ないというところにもあるので、weekly paclitaxelと同等の効果が得られる程度でもっと減量することも考慮して良いのではないかと考える。

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サン・アントニオ2015 レポート-1

レポーター紹介はじめに2015年SABCSは12月4日から8日までの会期で開催された。外は比較的暖かく、過ごしやすい気候であった。基礎的な内容も口演で多く取り上げられ、難しい内容のものも多くあったが、私たちの臨床を変える、あるいは臨床的に意義のある発表も多く、個人的には久しぶりに充実感があった。最初の話題は何と言っても、京都大学の戸井 雅和先生が口演で発表された、日本と韓国共同で行われた第III相試験CREATE-X(JBCRG-04)の結果であろう。HER2陰性乳がんに対して術前化学療法(アントラサイクリン、タキサン、あるいはその組み合わせ)後に手術を行ってnon-pCRであった場合に、術後標準治療を行う群とカペシタビン8サイクル(2,500mg/m2/day、day1~14、repeat every 3 weeks)を上乗せする群に割り付けて、予後をみたものである。適格基準はStageI~IIIBと広く、年齢も20~74歳と幅がある。計910例を各群455例ずつに割り振り5年間経過観察した。ホルモン受容体陽性が約60%で、リンパ節転移が残存していたのは約60%であった。術前化学療法としてはA-Tを逐次投与したものが約80%を占め、5-FUは約60%の症例で使われていた。カペシタビンを8サイクル規定投与量で継続できたのは37.9%、減量し継続できたのは37.1%、中止は25%であった。カペシタビン群の有害事象として、下痢は3.0%と低く、手足症候群は全グレードで72.3%、Grade3は10.9%に認められた。5年無再発生存率はカペシタビン群74.1%、コントロール群67.7%(p=0.00524)、5年全生存率も89.2%対83.9%(p<0.01)と有意にカペシタビン群で良好であった。サブグループ解析では、どのグループでもカペシタビン群で良好な傾向であった。ホルモン受容体の有無によらなかったが、陰性でより効果が高い傾向にはあった。正式に論文化されるのを待ちたいが、術前化学療法後に腫瘍が残存しステージが高く、予後不良な乳がんに対して有効な治療であることは間違いなさそうであり、どのように実臨床に取り込んでいくか議論が必要だろう。また、毒性の程度が日本人と異なる欧米で、どの程度受け入れられるかも注目されるところである。ルミナルA乳がんは一般に予後良好で、早期であれば全身治療は内分泌療法単独で良いと一般的に考えられている。DBCG77B無作為化比較試験から、ハイリスクのルミナルA乳がんを選択し予後を比較した結果が報告された。DBCG77B試験は腫瘍径5cm以上またはリンパ節転移陽性の閉経前乳がんに対し、classic CMF(C:130mg/m2)、oral cyclophosphamide(130mg/m2、2週投与2週休薬、12サイクル)、levamisole、化学療法なしの4群に分けて予後をみたものであるが、前2群はlevamisole群や化学療法なし群と比較して25年全生存率を改善している (Ejlertsen B, et al. Cancer;116:2081-2089.)。classic CMFに関しては、2014年SABCSレポート(NSABP B-36:リンパ節転移陰性乳がんにおいて6サイクルのFECと4サイクルのACを比較する無作為化第III相試験)を参照してほしい。ルミナルAの定義は免疫染色でER陽性、PR 20%以上、Ki67 13%以上、CK5/6陰性、EGFR陰性とした。 今回の研究では、1,146例のうち633例で免疫染色結果が利用でき、165例がルミナルAに分類された。633例の特徴は1,146例全体と比べN+例の比率がやや高く、化学療法施行例がわずかに多かった。浸潤がんの10年無再発生存率は、非ルミナルAでは化学療法の効果が明らかであったのに対し、ルミナルA群ではまったく差がなかった(化学療法あり134例、なし31例)。25年全生存率も同様であった。非ルミナルAのうちHER2タイプでは浸潤がんの10年無再発生存率に全く差がなく、HER2陽性乳がんにおけるCMFの効果の弱さを裏付けるものであった。DBCG77Bはかなり古い試験であり、内分泌療法が行われていないなどいくつかの問題点はある。しかし、ルミナルAはリンパ節転移陽性であっても、化学療法のベネフィットがないということはリーズナブルな結果と考えられる。現在NCCNガイドラインによれば、オンコタイプDxもリンパ節転移陽性(1~3個)に対して適応しうることが記載されており、低リスクに対しては化学療法のベネフィットが得られないだろうと考えられるようになっている。また、乳がんサブタイプとオンコタイプDxの再発リスクの間には強い相関もあり、私自身はこの結果にとくに驚くものではない(Fan C, et al. N Engl J Med. 2006;355:560-569.)。むしろDBCG77B試験をあらためて読み、classic CMFとoral cyclophosphamideの間に差がないことのほうが驚きであった。本邦では、再発乳がんにおいてoral cyclophosphamideと5-FU系薬剤との併用の有効性が検討され、5-FU系薬剤の効果がむしろ強調されてきたが、実はoral cyclophosphamideのほうがより重要なのかもしれない。デジタルマンモグラフィが2Dであるのに対して、トモシンセシスは3Dマンモグラフィである。2D に3Dを加えることにより、2D単独と比較して浸潤がんの発見が40%増加し、疑陽性率が15%低下することが報告されており(Skaane P, et al. Radiology. 2013;267:47-56.)、他の研究も同様の結果となっている(Ciatto S, et al: Lancet Oncol. 2013;14:583-589、Friedewald SM, et al. JAMA.2014;311:2499-2507)。しかし、3Dを加えることで、被曝量の増加(約2倍)、圧迫時間の延長(ただし圧迫圧は減少)、装置のコスト、装置の耐久性、トレーニング、読影時間の延長が問題となる。そこで3Dから擬似的に合成した2D画像(合成2D)により(3Dは選択して読影)、読影時間の問題を解決するか試みた研究が英国から報告された。2,589乳房のうち280乳房のみが3D読影を必要とした。3D読影を行わないことにより、10乳房のM3と1乳房のM4を見逃したのみであり、そのうち乳がんであったのは2乳房のみであった。研究の限界としては、経験豊富な放射線科医1名の読影であり、スクリーニングの場面ではないことがある。しかし、見落としを最小限にしながら読影時間を短縮するのに、合成2Dは有用な方法と考えられる。臨床の現場では、通常のマンモグラフィ検診で要精査とされた中に疑陽性(とくにFAD)が多いことに驚く。患者はそのことにより、夜も眠れず不安を抱えて病院を受診する。超音波検診も含めて、疑陽性を極力減らすための努力が必要である。ビスホスホネート製剤は閉経後乳がんに対する遠隔再発、骨転移を減らし、乳がんによる死亡率を低下させることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)のメタ分析から示されている(参照)。今回は、デノスマブの生存率向上効果がABCSG-18試験(オーストリアとスウェーデン)によって示された。ホルモン受容体陽性閉経後乳がんにおいて術後補助療法として、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬と共に6ヵ月ごとにデノスマブを60mg投与する群とプラセボ群に分け、3,425例が無作為に割り付けられた。デノスマブの投与期間は規定されていない。おそらく5年程度は使用されているのだろう。結果として、無再発生存期間はデノスマブ群でわずかに高かった(p=0.0510)。サブグループ解析では、腫瘍径2cm以上ではより明らかであった(p=0.0419)。これは、より再発率の高いグループで効果が明瞭になるということだろう。顎骨壊死は1例もなかったが、これは特筆すべきである。本試験のプロトコルには、治療開始前や治療中の予防的な口腔ケアについては何ら記載されていない。顎骨壊死がなかった理由として、投与量が少ないためか、6ヵ月ごとの投与ではほとんど問題にならないのか、あるいはオーストリアやスウェーデンでは口腔ケアが当たり前になっているのか不明である。また、治療期間中カルシウムとビタミンDの服用を強く推奨するという記載にとどまっていて規定にはなっていないようだが、重篤な低カルシウム血症も起きていないようである。ただし、このあたりも、臨床で使用する際には一応注意はしておいたほうが良いだろう。閉経後乳がんにおいては、進行度の高いほど骨標的療法の生存率への効果が高いと考えられ、実臨床でも考慮すべき時期になったといえる。

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既治療PD-L1陽性NSCLCへのpembrolizumabの有効性を確認/Lancet

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、pembrolizumabは標準治療に比べ全生存期間(OS)を延長し、良好なベネフィット・リスク比を有することが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S Herbst氏らが行ったKEYNOTE-010試験で示された。免疫療法はNSCLCの新たな治療パラダイムであり、活性化B細胞やT細胞表面のPD-1受容体を標的とする免疫チェックポイント阻害薬が有望視されている。pembrolizumabは、PD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体であり、米国では第Ib相試験(KEYNOTE-001試験)のデータに基づき、プラチナ製剤ベースレジメンによる治療中または治療後に病勢が進行した転移性NSCLCの治療薬として迅速承認を取得している。Lancet誌オンライン版2015年12月18日号掲載の報告。2種の用量をドセタキセルと比較する第II/III相試験 KEYNOTE-010試験は、既治療のPD-L1(PD-1のリガンド)陽性NSCLCに対するpembrolizumabの有用性を評価する非盲検無作為化第II/III相試験(Merck & Co助成)。 対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤ベースの2剤併用療法やチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR変異陽性例、ALK転座陽性例)による治療後に病勢が進行し、PD-L1陽性(腫瘍細胞の1%以上にPD-L1が発現)と判定された進行NSCLCとした。 被験者は、pembrolizumab 2mg/kg、同10mg/kg、ドセタキセル75mg/m2をそれぞれ3週ごとに静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。治療期間は24ヵ月であった。 主要評価項目は、全例および腫瘍細胞の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるOSおよび無増悪生存期間(PFS)とした。有意性の閾値は、OSがp<0.00825(片側検定)、PFSはp<0.001に設定した。 2013年8月28日~2015年2月27日に、日本を含む24ヵ国202施設に1,034例が登録され、pembrolizumab 2mg/kg群に345例、同10mg/kg群に346例、ドセタキセル群には343例が割り付けられた。それぞれ344例、346例、343例がITT解析の対象となり、そのうち139例、151例、152例がPD-L1≧50%であった。PD-L1≧50%ではOS、PFSとも有意に延長、高用量群でも有害事象が少ない 年齢中央値は、pembrolizumab 2mg/kg群と同10mg/kg群が63.0歳、ドセタキセル群は62.0歳であり、男性はそれぞれ62%、62%、61%であった。東アジア人が、19%、18%、18%含まれ、元喫煙者/喫煙者は81%、82%、78%、治療ライン数が3以上の患者は8%、10%、8%だった。 2015年9月30日までに521例が死亡した。OS中央値は、2mg/kg群が10.4ヵ月、10mg/kg群が12.7ヵ月、ドセタキセル群は8.5ヵ月であり、ドセタキセル群と比較して2mg/kg群が29%(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.88、p=0.0008)、10mg/kgは39%(0.61、0.49~0.75、p<0.0001)有意に延長した。 OSのサブグループ解析では、すべてのサブグループでpembrolizumab群(2群を統合)が良好であり、その多くで有意差が認められた。65歳以上、ECOG PS 0、扁平上皮がん、EGFR変異型では有意差がないのに対し、それぞれ65歳未満、ECOG PS 1、腺がん、EGFR野生型では有意差が認められた。 PFS中央値は、それぞれ3.9ヵ月、4.0ヵ月、4.0ヵ月であり、ドセタキセル群との比較で有意な差は認めなかった(2mg/kg群:p=0.07、10mg/kg群:p=0.004)。サブグループ解析では、女性、ECOG PS 0、EGFR変異型では有意差がなかったのに対し、それぞれ男性、ECOG PS 1、EGFR野生型ではpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であったが、組織型による効果の差はなかった。 PD-L1≧50%の患者では、OS中央値が2mg/kg群で46%(14.9 vs.8.2ヵ月、HR:0.54、95%CI:0.38~0.77、p=0.0002)、10mg/kg群では50%(17.3 vs.8.2ヵ月、0.50、0.36~0.70、p<0.0001)有意に改善した。この集団では、PFS中央値も2mg/kg群で41%(5.0 vs.4.1ヵ月、0.59、0.44~0.78、p=0.0001)、10mg/kg群でも41%(5.2 vs.4.1ヵ月、0.59、0.45~0.78、p<0.0001)有意に改善した。 なお、PD-L1発現が1~49%の患者では、OSがpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であった(HR:0.76、95%CI:0.60~0.96)が、PFSには差がなかった(1.04、0.85~1.27)。 有害事象の発現率は2mg/kg群が63%(215/339例)、10mg/kg群が66%(226/343例)、ドセタキセル群は81%(251/309例)であった。pembrolizumab群で頻度の高いものとして、食欲不振、疲労、悪心、皮疹が認められた(9~14%)。 pembrolizumabでとくに注意すべき有害事象では、甲状腺機能低下症、肺臓炎、甲状腺機能亢進症の頻度が高かった(4~8%)。 Grade3~5の治療関連有害事象の発現率は、2mg/kg群が13%(43/339例)、10mg/kg群が16%(55/343例)、ドセタキセル群は35%(109/309例)であり、pembrolizumab群で頻度が低かった。 著者は、「pembrolizumabは、プラチナ製剤ベースの治療後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLCの新たな治療選択肢であり、EGFR変異やALK転座のみられる患者にも適切な治療法である。PD-L1は、本薬によるベネフィットを得る可能性が高い患者を同定するバイオマーカーとして妥当と考えられる」としている。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第13回

第13回:米国オンコロジストのweb活用勉強法ビデオレター中で紹介しているwebサイトMedscape Oncology:www.medscape.com/oncologyClinical Care Options Oncology:www.clinicaloptions.com/Oncology.aspxResearch to Practice:www.researchtopractice.comGrace(Global Resourch for Advancing Cancer Education):cancergrace.orgASCO University:university.asco.orgTargeted Oncology:targetedonc.com

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抗がん薬副作用マネジメントの進展

 2015年12月10日都内にて、「抗がん薬副作用マネジメントの進展」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である久保田 馨氏(日本医科大学附属病院 がん診療センター部長)は、抗がん薬の副作用対策を中心に講演。患者さんの負担を考えながら予防・対処する大切さを語った。 以下、セミナーの内容を記載する。【はじめに】 本セミナーでは「細胞障害性抗がん薬」の副作用のうち、好中球減少症とシスプラチン投与時の対処、さらに「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の副作用対策について述べる。【安易な予防的G-CSF投与は避けるべき】 「細胞障害性抗がん薬」で、注意すべき副作用に「発熱性好中球減少症」がある。この対処としては、以下の3点が推奨される。・リスクファクターの検討・単剤での有効性が確認されている薬剤の選択・発熱性好中球減少20%以上のレジメンでのG-CSF予防投与 ただし、最後の予防的G-CSF投与には注意が必要だ。過去、臨床では好中球減少が認められれば、発熱がない場合であってもG-CSF投与が行われてきた。 たとえば、発熱性好中球減少時の抗菌薬投与には、明らかな生存率改善のエビデンスがある。しかし、G-CSF投与を抗菌薬と同様に考えてはいけない。低リスク例へのG-CSF予防投与はエビデンスがなく、現状のガイドラインを鑑みても適切ではない。薬剤追加は、場合によってはがん患者のQOLを低くすることもある。それを上回るメリットがない限り、医療者は慎重になるべきである。【つらい悪心/嘔吐には適切な制吐薬を】 抗がん剤による悪心・嘔吐は患者にとって、最もつらい症状と言われており、QOL悪化につながる。実際、「がん化学療法で患者が最も嫌う副作用2005」の調査結果1)によると、コントロール不良の悪心/嘔吐(CINV)は死亡と同程度の位置付けであった。とくに、シスプラチンは催吐性リスクが高く、悪心・嘔吐の予防のために、適切な制吐薬を使用すべきである。2013 ASCO総会において発表されたTRIPLE試験では、パロノセトロンが遅発期において有意に悪心・嘔吐を抑制したことが示されている。高度催吐性化学療法時には、パロノセトロン+デキサメタゾン+アプレピタントの併用で悪心・嘔吐を予防することを推奨したい。【短時間輸液療法への期待】 患者さんは1回当たりの治療時間が長引くことを嫌がる。シスプラチン投与では輸液や利尿薬を使用し腎障害の軽減を図るわけだが、投与前後の輸液投与に4時間以上、薬剤の点滴に2時間以上かかるため、トータルで10時間以上かかってしまう。単純に尿量を確保する目的での大量補液は、外来治療が進む昨今の状況には合わず、そこまでして投与しても、Grade2以上の血清クレアチニン上昇は2割程度報告されていた2)。 そこで、マグネシウム補充がシスプラチン起因性腎障害抑制につながるとの報告3)を基に、久保田氏の所属施設を中心にマグネシウム補充を取り入れた形で短時間輸液療法を行うこととした。トータル3時間半の投与法で検討した結果、97.8%の患者でGrad2以上の腎障害の出現はなかった4)。 このように、現時点でもがん患者のQOL向上を目指す治療方法は研究され、実施されつつある。【分子標的薬、免疫CP阻害薬の副作用対策】 「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の副作用は、「細胞障害性抗がん薬」の副作用とは位置付けが異なる。 分子標的薬の副作用は、その標的を持つ正常細胞に限定して現れる。たとえば、抗EGFR抗体薬やEGFRチロシンキナーゼ阻害薬による皮膚症状などが代表的だ。この対策として、久保田氏の所属施設では、医療者用のスキンケア指導パンフレットを作成し活用している。保湿剤の一覧や塗布法、爪の切り方、入院・外来時スキンケア指導フローなどを共有することで、適切な対処につながる。 また、重大な副作用として「間質性肺炎」も注意が必要だ。投与4週以内の発症が多いので、患者さんには「発熱」「空咳」「息切れ」が出たら必ず来院するよう伝えることが大切だ。 最近登場した免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、体内の多岐にわたる場所で起こる可能性がある。下垂体機能低下などホルモン異常による倦怠感なども、見逃さないよう注意が必要である。これまでの薬と異なり、投与10ヵ月後など有害事象がかなり遅れて発現するケースも報告されている。多くが外来で投与されることから、患者や家族へ事前説明をしっかりと行うことを意識していただきたい。【まとめ】 抗がん薬治療では副作用マネジメントが重要となる。薬剤の作用機序や薬物動態を正しく理解することは、副作用の適切な対処につながる。医療者側は、ぜひ正しい知識を持って、患者さんのために積極的な副作用対策を行っていただきたい。

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