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KRAS G12C変異陽性肺がんの新しい治療選択肢、ソトラシブ/日本臨床腫瘍学会

 2022年、KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する2次治療の新たな選択肢として承認されたソトラシブについて、日本臨床腫瘍学会メディカルセミナーにて、愛知県がんセンターの藤原 豊氏が解説した。 肺がん、とくに肺腺がんには多くの遺伝子変異がある。今回ソトラシブが適応となるKRAS G12C変異は日本における扁平上皮非小細胞肺がんの4.1%程度であり、男性、喫煙者に多いことがわかっている。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対する従来の初回標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん剤の併用である。しかし、KRAS変異陽性の場合、陰性に比べて細胞障害性抗がん剤の効果が乏しく、とくに2次治療での効果は限定的であり、新しい治療選択肢が望まれていた。KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験成績 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験、CodeBreaK100試験の概要は以下の通り。・対象:KRAS G12C変異陽性進行非小細胞肺がんで抗PD-1/PD-L1免疫治療および/またはプラチナ製剤を含む化学治療の前治療歴があり(前治療数は3つ以下)、RECIST1.1に基づく測定可能病変を有し、ESOG PS 0、1・方法:ソトラシブ960mgを1日1回経口投与(増悪、治療不耐性、同意撤回などまで投与を継続)・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、奏効までの期間(TTR)、安全性 患者背景は男女同等、アジアからは19名が参加している。前治療で化学療法、免疫療法を受けていた割合はどちらも9割を超えていた。 KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんに対するソトラシブの臨床試験主な結果は以下の通り。・主要評価項目であるORRは37.1%(95%信頼区間:28.6~46.2)であり、副次評価項目のDCRは80.6%(95%信頼区間:72.6~87.2)であった。DORの中央値は11.1ヵ月(95%信頼区間:6.9~NE)。・安全性については、全Gradeの副作用が69.8%、Grade3が19.8%、Grade4が0.8%であった。多く見られた副作用は下痢、悪心、ALT・AST増加などであった。KRAS G12C変異陽性肺がんの2次治療はどう変わるか 肺がん診療ガイドラインでは2021年の段階で、すでにソトラシブがKRAS G12C変異陽性に2次治療以降でソトラシブ単剤療法を推奨すると記載されている。 藤原氏は今後の治療戦略について、「1次治療開始時にKRAS G12C遺伝子変異検査を実施し、結果を把握しておけば、2次治療が必要になった場合にすぐにソトラシブを使えると考えている。初回の検査でKRAS G12C変異を確認しておくことが重要」と述べた。

302.

食道扁平上皮がん、術前の3剤併用化学療法でOS延長(JCOG1109)/日本臨床腫瘍学会

 切除可能局所進行食道がんの術前療法は、日本では5-FU+シスプラチン(CF療法)が標準療法だが、欧米においては化学放射線療法が標準となっている。日本と海外は術式や組織型が異なるため、海外の臨床試験の結果をそのまま受け入れるのは難しいと考えられていたが、CF療法にドセタキセルを加えたDCF療法が頭頸部がんなどで有望な効果を示しており、食道がん術前治療でも有望な成績が報告されている。JCOG1109試験が食道扁平上皮がんの術前DCF療法の有用性を世界で初めて示唆 これを受け、切除可能な局所進行扁平上皮食道がん患者を対象に、術前療法としてCF療法、DCF療法、CF療法+放射線療法(CF-RT)の3群を比較したJCOG1109試験が行われ、その結果を第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で加藤 健氏(国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科)が発表した。[JCOG1109試験]・対象:治療歴のない切除可能局所進行食道がん患者(PS0~1)・試験群:以下の3群に1対1対1の割合で無作為に割り付けCF群:シスプラチン+5-FU(3週ごと2コース)DCF群:ドセタキセル+シスプラチン+5-FU(3週ごと3コース)CF-RT群:シスプラチン+5-FU+放射線(4週毎2コース)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率、安全性など 切除可能局所進行扁平上皮食道がんの術前療法としてCF療法、DCF療法、CF療法+放射線療法を比較したJCOG1109試験の主な結果は以下のとおり。・2012年12月~2018年7月に日本の44施設から601例が登録され、CF群:199例、DCF群:202例、CF+RT群:200例に無作為に割り付けられた。・3年生存割合は、CF群62.6%(95%信頼区間:55.5~68.9%)に対しDCF群72.1%(95%信頼区:65.4~77.8%)と10%近く高く、ハザード比0.68(95%信頼区間:0.50~0.92、p=0.006)とDCF群の優越性が示された。また、CF+RT群の3年生存割合は68%(61.3~74.3%)で、CF群との比較においてハザード比0.84(0.63~1.12、p=0.12)と、CF+RT群の優越性は示されなかった。・有害事象については、Grade3以上の発熱性好中球減少がDCF群で16.3%とやや多かったが、支持療法を適切に行うことで対応可能な範囲だった。また周術期合併症発生割合については明らかな違いは見られなかった。 加藤氏はJCOG1109試験の結果は「1月に開催された米国臨床腫瘍学会消化器シンポジウム(ASCO-GI)で発表され、今後の食道扁平上皮がんに対する術前DCF療法の有用性を世界で初めて示した試験となった。今後同対象に対する新たな標準治療になると考えられる」とした。さらに免疫チェックポイント阻害薬を術前DCF療法に併用する研究(JCOG1804E)が進行中だという。

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食道がん1次治療におけるニボルマブ+イピリムマブとニボルマブ+化学療法、日本人サブ解析(CheckMate-648)/日本臨床腫瘍学会

 進行食道扁平上皮がんの1次治療における免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用、および免疫チェックポイント阻害薬2剤併用の有用性を示したCheckMate-648試験。2022年2月に開催された第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)において、本試験の日本人サブグループの解析結果を、神奈川県立がんセンターの尾形 高士氏が発表した。[CheckMate-648試験]・対象:未治療の切除不能な進行または転移のある食道扁平上皮がん患者・試験群:以下の3群に1対1の割合で無作為に割り付けニボイピ群:ニボルマブ3mg/kgを2週ごと+イピリムマブ1mg/kgを6週ごとニボケモ群:ニボルマブ240mgを2週ごと+化学療法(4週を1サイクルとして、1~5日目までフルオロウラシル800mg/m2、1日目シスプラチン80mg/m2)ケモ群:化学療法単独・評価項目:[主要評価項目]PD-L1発現率が1%以上(TPS≥1%)の患者における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全体集団のOSおよびPFS、TPS≥1%および全体集団の奏効率(ORR) 日本人サブグループにおける主な結果は以下のとおり。・全970例のうち、日本人は394例(ニボイピ群:131例、ニボケモ群:126例、ケモ群:137例)が登録された。最短フォローアップ期間は12.9カ月であった。[OS中央値]TPS≥1%ニボイピ群 20.2カ月、ニボケモ群17.3カ月、ケモ群9.0カ月(ハザード比[95%信頼区間]ニボイピvs.ケモ群. 0.46[0.30~0.71]、ニボケモ群vs.ケモ群. 0.53[0.35~0.82])。日本人全体集団ニボイピ群 17.6カ月、ニボケモ群15.5カ月、ケモ群11.0カ月(ハザード比[95%信頼区間]ニボイピ群vs.ケモ群. 0.68[0.51~0.92]、ニボケモ群vs.ケモ群. 0.73[0.54~0.99])。[PFS中央値]TPS≥1%ニボイピ群5.4カ月、ニボケモ群7.0カ月、ケモ群4.2カ月(ハザード比[95%信頼区間]ニボイピ群vs.ケモ群. 0.84[0.54~1.32]、ニボケモ群vs.ケモ群. 0.56[0.36~0.89])。日本人全体集団ニボイピ群4.2カ月、ニボケモ群6.8カ月、ケモ群4.3カ月(ハザード比[95%信頼区間]ニボイピ群vs.ケモ群. 1.16[0.85~1.57]、ニボケモ群vs.ケモ群. 0.76[0.56~1.03])。[ORR]TPS≥1%ニボイピ群44(32~57)%、ニボケモ群65(51~76)%、ケモ群17(9~28)%日本人全体集団ニボイピ群36(28~45)%、ニボケモ群56(47~65)%、ケモ群24(17~32)%・治療関連有害事象はニボイピ群85%(うちGrade3以上37%)、ニボケモ群99%(同49%)、ケモ群93%(同36%)の発現率であった。 尾形氏は「日本人サブグループ解析の結果は全体集団と大きな差はなく、本結果より、日本人においても進行食道扁平上皮がんに対する1次治療としてニボイピまたはニボケモの併用療法は新しい治療選択肢になり得ると考えられる」としている。

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化学療法+ニボルマブ+ベバシズマブによるNSCLC1次治療の全生存期間(TASUKI-52)/日本臨床腫瘍学会

 非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対するニボルマブとプラチナダブレットおよびベバシズマブ併用の1次治療を評価する国際無作為化二重盲検第III相TASUKI-52試験の全生存期間(OS)の成績が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表された。同併用群はOSについても改善を示した。・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・最小追跡期間は19.4ヵ月であった。・OS中央値はニボルマブ群30.8ヵ月、プラセボ群24.7ヵ月、とニボルマブ群で有意に良好であった(HR:0.74、95%CI:0.58~0.94、p=0.0135)・18ヵ月OS率はニボルマブ群69.0%、プラセボ群61.9%、24ヵ月OS率はそれぞれ59.8%と50.3%で、その差は開いている。・OSのサブグループ解析では、ほとんどの項目でニボルマブ群が優位であった。・PD-L1発現レベルによるOSのHRはPD-L1<1%集団で0.84、1~49%集団で0.59、≧50%で0.83、と発現レベルをとわずニボルマブ群で良い傾向であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は、ニボルマブ群98.5%に対しプラセボ群99.6%、治療中止にいたったTRAEはそれぞれ16.5%と4.4%であった。 この結果は、非扁平上皮NSCLCの1次治療におけるニボルマブとプラチナ含有化学療法およびベバシズマブの併用をさらに支持するものだと発表者は述べている。

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PD-L1高発現NSCLC1次治療に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブの効果(WJOG@Be)/ J Immunother Cancer

 非小細胞肺がん(NSCLC)において、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用の可能性が議論されている。PD-L1阻害薬アテゾリズマブと血管新生阻害薬ベバシズマブの併用は第III相IMpower150試験で検討されているが、化学療法がベースの検討であり、アテゾリズマブ+ベバシズマブのみの有用性評価ではない。 そのような中、NSCLCに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブの評価が、九州がんセンターの瀬戸貴司氏らによる第II相単群WJOG@Be試験で検討されている。同試験結果がJournal for immunotherapy of cancer誌で発表され、未治療のPD-L1高発現NSCLCに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブの可能性が示唆されている。・対象:未治療のPD-L1高発現(TPS≧50)非扁平上皮NSCLC(PS 0〜1)・介入:アテゾリズマブ1,200mg+ベバシズマブ15mg/kg 3週ごと最大2年間、病勢進行あるいは忍容不能な副作用発現まで投与・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・登録39例のうちCRは0例、PRは25例で、ORR は64.1%であった。・12ヵ月PFS率は54.9%、12ヵ月OS率は70.6%であった。・25例の奏効患者のDoR中央値は10.4ヵ月であった。・重篤な有害事象(AE)は12例23項目で発現したが、Grade4以上のものはなかった。・治療中断は19例で、12例は疾患進行、2例は免疫関連AEによるものであった。 今回の結果を受けて著者は、アテゾリズマブとベバシズマブの併用はPD-L1高発現の非扁平上皮NSCLCに対し、可能性のある治療法であると述べている。

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ニボルマブ+カボザンチニブ、腎細胞がん1次治療の2年間追跡で持続的な生存ベネフィットを示す(CheckMate-9ER)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブとExelixis社は、2022年2月14日、第III相CheckMate -9ER試験の2年間の追跡調査の解析結果を発表した。同解析では、進行腎細胞がん(RCC)のファーストライン治療において、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法が、スニチニブと比較して、持続的な生存および奏効ベネフィット、並びに健康関連の生活の質(HRQOL)の改善を示した。 これらの最新のデータは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)2022年泌尿器がんシンポジウムのポスタープレゼンテーションで発表される。 全患者集団の結果は以下のとおり。・OS:OSの最終解析では、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法群は、スニチニブ群と比較して、引き続き、OSの中央値(併用療法群37.7ヵ月 vs.スニチニブ群34.3ヵ月)で意義のある改善を示し、死亡リスクを30%低減した[ハザード比(HR):0.70、95%信頼区間(CI):0.55~0.90]。・PFS:PFSベネフィットは維持され、併用療法群はスニチニブ群と比較して、PFS中央値を2倍に延長した(併用療法群16.6ヵ月 vs.スニチニブ群8.3ヵ月、HR 0.56、95%CI:0.46〜0.68)。・ORRおよびDORORRベネフィットは維持され、併用療法群は、スニチニブ群と比較して、2倍近くのORRを示した(55.7%vs.28.4%)。DOR中央値は、スニチニブ群の15.1ヵ月と比較して、併用療法群で23.1ヵ月であり、奏効期間もより持続的であった。・CR:CR率は、併用療法群で12.4%、スニチニブ群では5.2%であった。・安全性:全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)が、併用療法群(320例)の97.2%、スニチニブ群(320例)の93.1%に認められた。Grade3以上のTRAEは、併用療法群で60.5%%、スニチニブ群で54.1%であった。

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進行食道扁平上皮がんの1次治療、ニボルマブを含むレジメンが有望/NEJM

 進行食道扁平上皮がん患者の1次治療では、抗プログラム細胞死1(PD-1)モノクローナル抗体ニボルマブ+化学療法の併用と、ニボルマブ+抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)抗体イピリムマブの併用は、化学療法単独と比較して、いずれのレジメンも全生存期間を有意に延長することが、大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学の土岐祐一郎氏らが実施した「CheckMate 648試験」で示された。新たな安全性のシグナルは確認されなかったという。研究の成果は、NEJM誌2022年2月3日号に掲載された。3群を比較するアジア主体の国際的な無作為化第III相試験 本研究は、進行食道扁平上皮がんの1次治療における免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用、および免疫チェックポイント阻害薬2剤併用の有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2017年6月~2019年11月の期間に、日本を含む26ヵ国182施設で参加者の登録が行われた(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、根治治療の適用がなく、進行病変に対する全身療法の治療歴のない切除不能な進行、再発、転移性の食道扁平上皮がん患者であり、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現の有無は問われなかった。 被験者は、ニボルマブ(240mg、2週ごと、静脈内投与)+化学療法(4週を1サイクルとして、1~5日目にフルオロウラシル800mg/m2[体表面積]を静脈内投与し、1日目にシスプラチン80mg/m2を静脈内投与)、ニボルマブ(3mg/kg[体重]、2週ごと、静脈内投与)+イピリムマブ(1mg/kg[体重]、6週ごと、静脈内投与)、化学療法単独の投与を受ける3つの群のいずれかに、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、全生存期間と無増悪生存期間とし、盲検下に独立の中央判定委員会によって判定された。検定は階層的に行われ、最初に腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者で、次いで患者全体(無作為に割り付けられた全患者)で実施された。 970例が無作為化の対象となった。ニボルマブ+化学療法群に321例(年齢中央値64歳、男性 79%)、ニボルマブ+イピリムマブ群に325例(63歳、83%)、化学療法単独群に324例(64歳、85%)が割り付けられた。680例(70%)がアジア人で、PD-L1の発現率が1%以上の患者は473例(49%)であった。奏効率と奏効期間も、ニボルマブを含むレジメンで良好な傾向 最も短い追跡期間が13ヵ月の時点における全生存期間中央値は、腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者では、ニボルマブ+化学療法群が15.4ヵ月、化学療法単独群は9.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、99.5%信頼区間[CI]:0.37~0.80、p<0.001)で、患者全体では、それぞれ13.2ヵ月および10.7ヵ月(HR:0.74、99.1%CI:0.58~0.96、p=0.002)であり、いずれもニボルマブ+化学療法群で有意に優れた。 また、全生存期間中央値のニボルマブ+イピリムマブ群と化学療法単独群との比較では、腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者(ニボルマブ+イピリムマブ群13.7ヵ月vs.化学療法単独群9.1ヵ月、HR:0.64、98.6%CI:0.46~0.90、p=0.001)および全体(12.7ヵ月vs.10.7ヵ月、HR:0.78、98.2%CI:0.62~0.98、p=0.01)のいずれにおいても、ニボルマブ+イピリムマブ群で有意に良好だった。 一方、無増悪生存期間は、腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者では、ニボルマブ+化学療法群が化学療法単独群よりも有意に延長した(6.9ヵ月vs.4.4ヵ月、HR:0.65、98.5%CI:0.46~0.92、p=0.002)が、全体では、両群間の差は事前に規定された有意差の境界(p=0.015)を満たさなかった(5.8ヵ月vs.5.6ヵ月、HR:0.81、98.5%CI:0.64~1.04、p=0.04)。 無増悪生存期間のニボルマブ+イピリムマブ群と化学療法単独群との比較では、腫瘍細胞のPD-L1の発現率が1%以上の患者(ニボルマブ+イピリムマブ群 4.0ヵ月vs.化学療法単独群4.4ヵ月、HR:1.02、98.5%CI:0.73~1.43、p=0.90)において統計学的有意差の基準を満たさなかったため、全体(2.9ヵ月vs.5.6ヵ月、HR:1.26、95%CI:1.04~1.52)での検定は行われなかった。 客観的奏効率(PD-L1発現率1%以上の患者:ニボルマブ+化学療法群53%、ニボルマブ+イピリムマブ群35%、化学療法単独群20%、全体:47%、28%、27%)はニボルマブ+化学療法群で最も高く、奏効期間中央値(8.4ヵ月、11.8ヵ月、5.7ヵ月/8.2ヵ月、11.1ヵ月、7.1ヵ月)はニボルマブ+イピリムマブ群で最も長かった。 Grade3または4の治療関連有害事象の発現率は、ニボルマブ+化学療法群が47%と最も高く、ニボルマブ+イピリムマブ群は32%,化学療法単独群は36%であった。重篤な治療関連有害事象はニボルマブ+化学療法群が24%、ニボルマブ+イピリムマブ群は32%にみられ、化学療法単独群の16%よりも高率であった。免疫学的原因の可能性がある治療関連有害事象の多くはGrade1または2だった。 著者は、「この研究は、ニボルマブ+化学療法とニボルマブ+イピリムマブの比較や、特定のサブグループにどの治療を用いるべきかを評価するようにはデザインされていない。ニボルマブを含む2つのレジメンの有効性を予測する人口統計学的因子の特性やベースラインの疾患特性を同定するには、新たな探索的な事後解析が、これに資する可能性がある」としている。

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肺がん2021Wrap Up (2)免疫チェックポイント阻害薬【肺がんインタビュー】 第74回

第74回 肺がん2021Wrap Up (2)免疫チェックポイント阻害薬出演:兵庫県立がんセンター 副院長(医療連携・医療情報担当) 兼 ゲノム医療・臨床試験センター長 呼吸器内科部長 里内 美弥子氏2021年肺がんの重要トピックを兵庫県立がんセンターの里内 美弥子氏が一挙に解説。これだけ見ておけば、今年の肺がん研究の要点がわかる。

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世界初、ニボルマブが原発不明がんの適応追加

 2022年1月19日、小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブは原発不明がんの治療薬として、適応追加承認を取得した免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)に関するプレスセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、原発不明がんへの適応拡大の意義や臨床試験結果などについて、中川 和彦氏(近畿大学 内科学 腫瘍内科部門)が説明した。原発不明がん~診断・治療における課題~ 原発不明がんは十分な検索にもかかわらず、原発巣が不明で、組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍のことを指す。全がん種のうち1~5%が原発不明がんとされている。しかし、原発不明がんに承認されている薬剤はこれまで存在せず、治療を行うためには何らかの病名を付ける必要があることから、正確な患者数は不明だ。 原発不明がんの治療における課題は治療方法が確立されていないことである。 15~20%存在する“予後良好群”(原発巣の推定が可能な患者群)では、ガイドラインで推奨される治療を実施するが、残りの80~85%の患者は“予後不良群”とされ、特定の治療方針が定められておらず、確立された標準治療が存在していなかった。NivoCUP試験の結果 今回は、原発不明がん患者の“予後不良群”を対象に、近畿大学病院の主導の下、ニボルマブを評価した医師主導治験「NivoCUP試験」の結果に基づき、適応拡大承認を取得した。 同試験では、56例の原発不明がん患者(化学療法既治療:45例、化学療法未治療:11例)に、ニボルマブを最大52サイクル(約2年)投与した。主要評価項目は化学療法既治療例における奏効率(独立した中央判定によるCRまたはPRの割合)であり、副次評価項目は全体集団での奏効率などだった。 主要評価項目である化学療法既治療例における奏効率は22.2%(95%CI:11.2~37.1)、さらに、奏効期間の中央値は12.4ヵ月だった。 化学療法未治療例を含めた全体集団における奏効率は21.4%(95%信頼区間:11.6~34.4)だった。 安全面については、全Gradeの副作用は62.5%、Grade3または4の副作用は19.6%で発現した。重篤な副作用は発現率16.1%、肺臓炎や腹水などであった。死亡に至った副作用は認められなかった。安全性プロファイルに関して、他の疾患におけるニボルマブのプロファイルと大きな差はなかった。ニボルマブ承認の意義 ニボルマブの適応追加承認により、原発不明がんに対して、世界に先駆けて日本で初めて抗悪性腫瘍剤が承認されることとなった。原発不明がんが保険適用の対象疾患として認められる、つまり、今後原発不明がんは研究の対象となり、生物学的な特性の解明や薬剤開発が進んでいくことが期待される。このことに大きな意義があると中川氏は語る。 「研究の対象にならないことほど患者さんにとって恐怖はない。自分の疾患がどの研究者からも研究されないということは、可能性がないということを意味する。しかし、今回ニボルマブが承認されたということが、日本の研究者に原発不明がんが伝わる“好機”になる」と、中川氏はニボルマブ承認の意義について述べ、講演を終えた。

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ゲフィチニブの非小細胞肺がんアジュバント、DFSとOSの結果(IMPACT)/JCO

 近年、非小細胞肺がん(NSCLC)のアジュバント療法として、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を使用したさまざまな臨床試験が実施されている。 このたび、吹田徳洲会病院の多田 弘人氏らが、アジュバント療法におけるゲフィチニブの有効性を検討した国内臨床試験、IMPACT試験の結果をJournal of Clinical Oncology誌2022年1月20日号で報告した。 IMPACT試験は、EGFR変異陽性患者に対する標準的なアジュバント療法であるシスプラチン+ビノレルビン療法を対照としたゲフィチニブのランダム化比較第III相試験であり、WJOG(西日本がん研究機構)が実施した。・対象:EGFR変異陽性(ex19delまたはL858R)でStageII〜IIIの完全切除後のNSCLC患者・試験群:ゲフィチニブ(250mg/日)を24ヵ月投与(Gef群)・対照群:シスプラチン(80mg/m2 day1)+ビノレルビン(25mg/m2 day1,8)を3週ごと4サイクル投与(CV群)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性と忍容性、再発様式など 主な結果は以下のとおり。・2011年9月〜2015年12月に232例が登録され、116例ずつ無作為に割り付けられた。・DFS中央値はGef群35.9ヵ月、CV群25.1ヵ月であった。しかし、カプランマイヤー曲線は術後4年前後で交差し、統計学的に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.67〜1.28、p=0.63)。・OSにも差はなく(HR:1.03、95%CI:0.65〜1.65、p=0.89)、5年OS率はGef群78.0%、CV群74.6%であった。・治療関連死はGef群では0例、CV群では3例報告された。 アジュバント療法におけるゲフィチニブ投与は、DFSとOSを延長しなかったが、同等のDFS、OSが認められたことから、プラチナダブレットのアジュバント療法が不適となる患者には有用かもしれない、と著者らは結論付けている。 なお、アジュバント療法におけるゲフィチニブの有効性を検討した海外の第III相試験として、中国で実施されたADJUVANT(CTONG1104)試験などが報告されている。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)レポート

レポーター紹介2021年12月7日から10日まで4日間にわたり、SABCS 2021がハイブリッド形式で開催された。米国では現地サンアントニオに集まって学会が行われ、近い将来、日常が戻ってくる予兆を感じさせるものであった。もう2年リバーウォークを歩いておらず寂しい気持ちでいっぱいであるが、今年も乳がんについて網羅的に勉強する良い機会となった。今年のSABCSは直接日常臨床を変えるものは多くなかったが、近い将来どのように変化していくかを示唆するものが多かった。今回は、それらの中から4演題を紹介する。EMERALD試験近年、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(selective estrogen receptor degrader:SERD)の開発が非常に活発に行われ、製薬企業は各社しのぎを削っている状況である。その中で、初の第III相試験の結果としてSABCSで報告されたのがelacestrantのEMERALD試験である。SERDは理論的にホルモン耐性の中で最も強力なESR1変異に有効な薬剤として知られるが、elacestrantは現在臨床で使えるSERDであるフルベストラントよりさらに効果が高いことが基礎実験で示されている。本試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法の治療歴があるホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がん(metastatic breast cancer:MBC)において、主治医選択治療に対するelacestrantの優越性を検証したランダム化試験である。主治医選択治療としてはフルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンが許容されていた。主要評価項目は全患者における無増悪生存期間(progression free survival:PFS)と、ESR1変異のある患者(mESR1)におけるPFSであった。477例がランダム化され、239例がelacestrant群に、238例が標準治療群に割り付けられた。主要評価項目の全患者におけるPFSにおいて、elacestrant群で2.79ヵ月、標準治療群で1.91ヵ月(ハザード比[HR]:0.697、95%CI:0.552~0.880、p=0.0018)とelacestrant群で有意に良好であった。さらにmESR1では3.78ヵ月 vs.1.87ヵ月(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)であり、mESR1でより効果が高かった。同効薬であるフルベストラントとの比較においても同様の傾向であり、elacestrantが有意に良好であった。全生存期間(overall survival:OS)は統計学的有意差を認めなかったものの、全患者でもmESR1でもelacestrantで良好な傾向を認めた。有害事象はelacestrantで多い傾向を認めたが、Grade3以上の有害事象は7.2%であり、頻度としてはさほど高くないと考えられた。とくに悪心の頻度が高かった。現在、経口SERDは多くの試験が行われており、近い将来、標準治療の1つとなっていくと考えられる。PADA-1試験ホルモン受容体陽性MBCにおいて、1次治療としてアロマターゼ阻害薬(aromatase inhibitor:AI)ベースの治療が有効であるか、SERDベースの治療が推奨されるかは1つの大きな議論となっている。とくにESR1変異によるAI耐性をSERDで回避可能かを検証する試験が実施されてきた。PADA-1試験はそのような試験の1つであり、循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を用いた治療戦略を検証した試験である。PADA-1試験ではAI+パルボシクリブによる治療中にctDNAによるESR1変異が検出され、画像上の病勢進行(progressive disease:PD)が認められない患者を対象として、AI+パルボシクリブ継続とフルベストラント+パルボシクリブへの治療変更をランダム化し、主要評価項目として安全性と主治医判断によるPFSを検証した。1,017例のAI+パルボシクリブ投与中の患者が登録され、279例でctDNAによるESR1変異が検出された。172例でPDが認められずランダム化が実施され、84例がAI継続、88例がフルベストラントへのスイッチに割り付けられた。術後治療としてAI治療歴のある患者が35%前後、ctDNAによるESR1変異が見つかるまでの期間が12ヵ月以上ある患者が60%強であった。ランダム化後のPFSはAI群で5.7ヵ月に対しフルベストラント群で11.9ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)と、約6ヵ月の差をもってフルベストラント群で有意に良好であった。サブグループ解析では、ほとんどのグループでフルベストラント群が良好であった。骨転移単独ではAI群で良好な傾向が見られたが、症例数が少なく結論は出せない。毒性は両群で大きな差はなく、頻度の高い有害事象は血球減少であり、パルボシクリブによるものと考えられた。AI群でPD後にフルベストラントへクロスオーバーした患者のクロスオーバー後のPFSは3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)であり、AI治療中と合計してもPFSはフルベストラント群で良好であった。現在、日本では繰り返し測定できる承認されたctDNAアッセイはないが、今後ctDNAによるモニタリングを行いながら、画像上のPDの前に治療を変更する戦略が標準治療となってくる可能性がある。TROPION-PanTumor01試験皆さんご存じように、現在は多数の抗体医薬複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)が開発されている。2019年のSABCSで発表されたトラスツズマブ デルクステカン(trastuzumab deruxtecan:T-DXd)の有効性を見た時の驚きは記憶に新しい。また、2020年のESMOで発表され、すでに米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration:FDA)に承認されているsacituzumab govitecan(SG)も、トリプルネガティブ乳がん(Triple-Negative Breast Cancer:TNBC)の治療を大きく変えた。datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、SGと同様にTrophoblast Cell-Surface Antigen 2(TROP-2)を標的分子としたADCで、ペイロードとしてDXdが結合されている。TROPION-PanTumor01試験はDato-DXdの安全性を確認する第I相試験で、非小細胞肺がん、TNBC、HR+/HER2-乳がんなどで拡大パートの開発が実施されている。SABCSでは、そのうちTNBCパートの結果が発表された。44例の患者が登録され、現在13例(30%)が治療継続中である。前治療歴の中央値は3レジメンで、2ライン以上の治療歴のある患者が68%であった。30%にTopo I阻害薬ベースのADC(SG、T-DXdなど)の治療歴があった。奏効率は34%、Topo I阻害薬ベースのADC治療歴がない患者に限ると52%であり、高い有効性を示した。Grade3以上の有害事象は45%で認め、頻度の高い有害事象は悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛、血液毒性などであった。TNBC治療ではすでに免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)やPARP阻害薬が標準治療となっているが、新たなADC製剤への期待も大きく、TNBCの治療戦略は今後大きく変わる可能性が高い。KEYNOTE-522試験転移TNBCではICIが標準治療となった。PD-L1陽性転移TNBCでは、アテゾリズマブとnab-PTXの併用、あるいはペムブロリズマブと化学療法の併用が1次治療の標準治療である。TNBCに対するICIの開発は術前でも活発に行われており、KEYNOTE-522試験はその1つである。本試験では術前化学療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル→アンスラサイクリンにペムブロリズマブ/プラセボを上乗せすることの有効性を、病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)と無イベント生存(event free survival:EFS)を主要評価項目として検証した。術後は、ペムブロリズマブ/プラセボがpCR/non-pCRにかかわらず投与された。pCRの結果は以前に発表され、ペムブロリズマブの上乗せ効果が証明されていたが、EFSについてはESMOならびに今回のSABCSで詳細が発表されている。本試験では1,174例が登録され、784例がペムブロリズマブ群に、390例がプラセボ群に2:1で割り付けられた。3年EFSはペムブロリズマブ群で84.5%、プラセボ群で76.8%(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82、p=0.00031)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。今回の発表では打ち切りの条件をさまざまに変更したsensitivity analysisが実施されたが、いずれも主解析と同様の結果であり、ペムブロリズマブの有効性が再確認された。リンパ節転移の陽陰性、病期(StageII or III)でのサブ解析も実施されたが、ベースラインのリスクにかかわらず上乗せ効果があることが示された。悩ましいのは、(今回の発表には含まれていないが)pCR、non-pCRのいずれにおいてもペムブロリズマブのEFSに対する上乗せ効果があることである。すでに国内から出されたエビデンスによって、TNBCの術前化学療法でnon-pCRの場合にはカペシタビンが術後治療の標準治療である(国内未承認)。また、生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異がある場合はPARP阻害薬であるオラパリブが術後治療の候補となる(国内未承認)。今回の結果をもって、術前化学療法とペムブロリズマブの併用を実施した場合は、術後にペムブロリズマブを使用することが標準治療となる。その場合に、他の治療(カペシタビン、オラパリブ)とどのように使い分けていくのか(あるいは併用のエビデンスを出していくのか)、今後の議論が重要となってくるであろう。

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切除不能悪性黒色腫の1次治療、relatlimab・ニボルマブ併用が有効/NEJM

 未治療の転移のあるまたは切除不能の悪性黒色腫患者の治療において、2つの免疫チェックポイント阻害薬relatlimab(抗リンパ球活性化遺伝子3[LAG-3]抗体)とニボルマブ(抗プログラム細胞死1[PD-1]抗体)の併用は、標準治療であるニボルマブ単剤と比較して、無増悪生存期間を有意に延長し、併用による新たな安全性への懸念は認められないことが、米国・テキサス大学MD AndersonがんセンターのHussein A. Tawbi氏らが実施した「RELATIVITY-047試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年1月6日号で報告された。国際的な無作為化第II/III相試験 研究グループは、未治療の転移のあるまたは切除不能の悪性黒色腫における、relatlimabとニボルマブの併用によるLAG-3とPD-1の阻害の有効性と安全性を評価する目的で、二重盲検無作為化第II/III相試験を行った(Bristol Myers Squibbの助成による)。本試験には、北米、中米、南米、欧州、オーストラリア、ニュージーランドの111施設が参加し、2018年5月~2020年12月の期間に患者の登録が行われた。 対象は、年齢12歳以上、StageIII/IVの切除不能の悪性黒色腫で、腫瘍組織の評価でLAG-3とPD-L1の発現が認められ、治療歴のない患者であった。術後または術前治療として、PD-1阻害薬、CTLA-4阻害薬、BRAF阻害薬、MEK阻害薬、BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用の投与を受けた患者は、再発の6ヵ月以上前に治療を終了している場合、インターフェロンの投与を受けた患者は、最終投与が無作為化の6週間以上前の場合に、対象に含まれた。 被験者は、固定用量のrelatlimab(160mg)+ニボルマブ(480mg)またはニボルマブ(480mg)単剤を、4週ごとに60分間で静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、無増悪生存期間(無作為化の日から病勢進行または死亡の日までの期間)とされ、独立の中央判定委員会が盲検下に評価した。無増悪生存期間が約2倍に、リスクは25%減少 714例(年齢中央値63.0歳[範囲:20~94]、女性298例[41.7%])が登録され、relatlimab+ニボルマブ併用群に355例、ニボルマブ単剤群に359例が割り付けられた。データベースのロックの時点(2021年3月9日)で、追跡期間中央値は13.2ヵ月であった。治療中止の割合は65.8%(併用群66.8%、単剤群64.9%)で、最も多い中止の理由は病勢進行(36.3%、46.0%)だった。 無増悪生存期間中央値は、併用群が10.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.4~15.7)と、単剤群の4.6ヵ月(3.4~5.6)に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.62~0.92、p=0.006[log-rank検定])。また、12ヵ月時の無増悪生存率は、併用群が47.7%(95%CI:41.8~53.2)、単剤群は36.0%(30.5~41.6)であった。 主なサブグループのすべてで、無増悪生存期間中央値は併用群のほうが良好であった。LAG-3発現率が≧1%の患者では、無増悪生存期間中央値は併用群で有意に優れ(12.58ヵ月vs.4.76ヵ月、HR:0.75、95%CI:0.59~0.95)、LAG-3発現率<1%の患者では併用群で良好な傾向がみられたものの有意差はなかった(4.83ヵ月vs.2.79ヵ月、0.78、0.54~1.15)。 Grade 3/4の治療関連有害事象は、併用群が18.9%、単剤群は9.7%で発現した。併用群で最も頻度の高いGrade 3/4の治療関連有害事象は、リパーゼ値上昇(1.7%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇(1.4%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ値上昇(1.4%)、疲労(1.1%)であった。治療中止の原因となった治療関連有害事象は、併用群が14.6%、単剤群は6.7%で認められた。 死亡例は、併用群が3例(0.8%、血球貪食性リンパ組織球症、急性肺水腫、肺臓炎)、単剤群は2例(0.6%、敗血症/心筋炎、肺炎)であり、いずれも担当医によって治療関連死と判定された。併用群で最も頻度の高い免疫関連有害事象は、甲状腺機能低下症/甲状腺炎(18.0%)、皮疹(9.3%)、下痢/大腸炎(6.8%)だった。併用群の1.7%で心筋炎が発現したが、全例が完全に回復した。 著者は、「併用群では、無増悪生存期間中央値の延長に伴って有害事象がわずかに増加したが、健康関連QOLは両群で同程度であった」とし、「本試験の結果は、悪性黒色腫患者における、PD-1とともにLAG-3を遮断する治療の妥当性を示しており、LAG-3はPD-1とCTLA-4に続く、臨床的有益性をもたらす第3の免疫チェックポイント経路として確立されたと考えられる」としている。

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早期乳がん術前化学療法、pCRは代替エンドポイントには役不足/BMJ

 病理学的完全奏効(pCR)は、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)のいずれについても、臨床試験の代替エンドポイントとして不十分であることが、イタリア・European Institute of Oncology(IEO)のFabio Conforti氏らが実施した、早期乳がんを対象とする術前化学療法の無作為化臨床試験に関するシステマティックレビューおよびメタ解析で確認された。米国食品医薬品局(FDA)は、早期乳がんの術前化学療法を検証する無作為化臨床試験において、pCRをDFSおよびOSの代替エンドポイントとすることを承認している。しかし、先行のメタ解析(試験数に限界があった)で認められたpCRとDFSおよびOSとの間の強い相関関係は、患者レベルであり試験レベルではなく、pCRを代替エンドポイントとすることについては議論の的となっていた。著者は、「今回示された結果は、pCRを早期乳がん術前化学療法の主要エンドポイントとして規定すべきではないことを示すものである」とまとめている。BMJ誌2021年12月21日号掲載の報告。54件のRCTをメタ解析、試験レベルで検証 研究グループは、Medline、EmbaseおよびScopusを用い、2020年12月1日までに発表された、術前化学療法の単独または他の治療(抗HER2薬、標的治療薬、抗血管薬、ビスホスホネート、免疫チェックポイント阻害薬など)との併用を検証した無作為化臨床試験を特定し、pCRとDFSまたはOSの試験レベルでの関連性を解析した。 治療効果推定値(DFSおよびOSのハザード比、pCRの相対リスク)を対数変換した後、加重回帰解析を実施し、決定係数(R2)を用いて関連性を定量化した。また、実験群における治療法の種類、pCRの定義(乳房およびリンパ節vs.乳房のみ)、疾患の生物学的特性(HER2陽性またはトリプルネガティブ乳がん)によって試験を層別化し、事前に計画されたサブグループ解析の結果の異質性を検証するとともに、DFS/OSのハザード比に関する代替閾値効果についても評価した。 無作為化臨床試験54件(計3万2,611例)が本解析に組み込まれた。DFSおよびOSとの関連は弱く、OSの代替エンドポイントとはならず pCRの対数(相対リスク)と、DFS(R2=0.14、95%信頼区間[CI]:0.00~0.29)およびOS(0.08、0.00~0.22)の対数(ハザード比)との間に観察された関連性は弱いものであった。全サブグループ解析において、pCRの定義、実験群における治療法の種類、疾患の生物学的特性にかかわらず、同様の結果が得られた。 代替閾値効果は、DFSに関しては5.19であったが、OSについては推定できなかった。 3つの感度解析(登録患者200例未満の小規模試験を除外、追跡期間中央値24ヵ月未満の試験を除外、pCRの相対リスクを治療群間のpCR率の絶対差に置き換え)の結果、一貫した結果が確認された。

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2021年、がん専門医に読まれた記事は?「Doctors’Picks」ランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)は、2021年にがん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。がん横断的なトピックスやCOVID-19とがんに関連する記事のほか、米国腫瘍学会(ASCO)関連の話題が多くランクインしている。【1位】おーちゃん先生のASCO2021肺がん領域・オーラルセッション/Doctors'Picks 6月に行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)。4,500を超える演題から注目すべきものをエキスパート医師がピックアップして紹介。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)が「CheckMate-9LA試験の2年アップデート」「IMpower130、IMpower132、IMpower150 の免疫関連の有害事象を分析」などを選定した。【2位】がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開/CareNet.com 3月末、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。【3位】ASCO 乳がん 注目演題まとめ(1)オーラル/周術期/Doctors'Picks ASCO注目演題、乳がん分野は寺田 満雄氏(名古屋市立大学)が全オーラル演題をチェックしたうえで注目すべき10演題を選定、サマリーと共に紹介した。【4位】リキッドバイオプシーを用いたがん遺伝子パネル検査が国内で初承認/日経メディカル 3月、中外製薬は血液検体を用いて固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングを行う検査「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」の承認獲得を発表。リキッドバイオプシーを用いたがん遺伝子パネル検査は国内初承認となる。進行固形がん患者を対象に、血液中の循環腫瘍 DNA(ctDNA)を用いて324個のがん関連遺伝子を解析する。【5位】免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象…メカニズムと緩和戦略/Nature Reviews Drug Discovery チェックポイント阻害薬(ICI)治療に関連した免疫関連有害事象(irAE)の発生と、発生を予測するバイオマーカーを特定し、発症を抑制するメカニズムを解説する論文がNature Reviews Drug Discovery誌に掲載された。6~10位は以下のとおり。【6位】ASCO 消化器がん 注目演題まとめ/Doctors'Picks【7位】固形がん患者における新型コロナワクチン接種後の抗体価/Annals of Oncology【8位】がん免疫療法患者に対するCOVID-19ワクチン接種/SITC【9位】IMpower150試験、EGFR陽性・肝/脳メタ解析の最終報告/Journal of Thoracic Oncology【10位】「オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム」の保険適用を了承/中医協

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世界初、RET融合遺伝子TKIのセルペルカチニブ発売/日本イーライリリー

 2021年9月末にセルペルカチニブ(商品名:レットヴィモ)が「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」に対する治療薬として世界で初めて承認され、日本イーライリリーは発売に合わせ12月16日にプレスセミナーを開催した。セルペルカチニブはRET融合遺伝子陽性のがんでRETキナーゼを選択的に阻害 日本における肺がんの罹患全国推定数は約12万人(2017年)、がん種別の死亡数では男女とも1位(2019年)。従来の手術、化学療法、放射線療法に加え、近年の分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場により、治療が著しく進化している。セミナーでは国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏が、肺がんにおける遺伝子治療の現状やセルペルカチニブ承認の基となったデータを解説した。 セルペルカチニブはチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の1つで、RET融合遺伝子変異はNSCLCの約2%に発生する希少変異。RET融合遺伝子陽性のがんでは、がん細胞の増殖と生存がRETキナーゼの活性化に依存しており、活性化されたRETキナーゼを選択的に阻害することで腫瘍の増殖を阻害する、というのが作用機序となる。 現在NSCLCではEGFR、ALK、ROS1、BRAF、NTRL、MET、そして今回のRETを含めた7つの変異をターゲットとした薬剤が承認済だが、発現頻度の高いEGFR、ALK変異等をターゲットにした薬剤が優先して開発されてきた経緯がある。後藤氏は「希少変異は製薬メーカー主導の開発が難しいため、国立がん研究センターを中心とした研究基盤であるLC-SCRUM-Asiaで遺伝子変異解析と医師主導治験を進めてきた」と説明した。 今回のセルペルカチニブの承認は、国際共同治験LIBRETTO-001の結果を受けたもの。後藤氏は「参加16ヵ国83施設746例中、日本からは13施設64例が参加し、大きな役割を果たした」と紹介した。LIBRETTO-001におけるセルペルカチニブの奏効率(CR+PR)は未治療例で70.5%(95%CI:54.8~83.2)、既治療例で56.9%(49.8~63.8)。「従来の化学療法の奏効率は30%程度、ICI単剤の場合15%程度なので、セルペルカチニブに限らずTKIは非常に奏効率が高い」(後藤氏)。さらにセルペルカチニブは中枢神経系に対する奏効率も82%と高く、脳転移に対する効果も期待される。 有害事象としては、高血圧36.6%(Grade3以上19.2%)、ALT増加32.6%(同9.8%)、AST増加32.6%(同8.3%)が高頻度だった。後藤氏は「セルペルカチニブはRETの選択性が高いために全体的に毒性が低く、外来でも十分マネジメントは可能と考える。発疹をはじめとした過敏症が認められるケースがあったが、そうしたケースも休薬・減薬とステロイド投薬で対応できており、投薬中止例はほとんどなかった」と解説した。 最後に「今後1、2年で肺がんではHER2、KRAS、EGFRエクソン20挿入変異に対するTKIも臨床応用されるようになり、遺伝子解析と個別化医療がさらに一般的なものとなるだろう」とした。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用のNSCLC1次治療、4年追跡結果(CheckMate 227)/日本肺癌学会

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのニボルマブとイピリムマブの併用療法は、PD-L1の発現状態、非扁平上皮がんまたは扁平上皮がんの組織型にかかわらず、化学療法と比較して長期的な生存効果を示すことがCheckMate 227試験の4年間追跡結果から示された。この結果の概要が、第62回日本肺癌学会学術集会において、がん研究会有明病院の西尾誠人氏によって紹介された。ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのハザード比は0.76・対象:未治療のPD-L1発現1%以上(Part1a)および1%未満(Part1b)のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者(PS 0~1、組織型問わず)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ併用群(NIVO+IPI群)     ニボルマブ単剤群(TPS1%以上)(NIVO群)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)(NIVO+Chemo群)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独(Chemo群)・評価項目:[複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群の無増悪生存期間(PFS)、PD-L1発現(≧1%)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群の全生存期間(OS)[副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるNIVO群対Chemo群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のPFS、そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・PD-L1発現率1%以上の患者集団(1,189例)のOS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群、ニボルマブ単独療法群、化学療法群でそれぞれ17.1ヵ月、15.7ヵ月、14.9ヵ月であり、4年OS率はそれぞれ29%、21%、18%であった。・ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのハザード比(HR)は、0.76(95%信頼区間[CI]:0.65~0.90)であった。・以上の結果は、非扁平上皮がんと扁平上皮がんで層別して解析しても一貫していた。・PD-L1発現率1%未満の患者集団(550例)のOS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群、ニボルマブ/化学療法併用群、化学療法群でそれぞれ17.2ヵ月、15.2ヵ月、12.2ヵ月であり、ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのHRは0.64(95%CI:0.51~0.81)であった。・4年間の長期観察において、安全性に関する新たな懸念は示されなかった。

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ICIによる非小細胞肺がんの術前・術後補助療法の有効性を探る(CheckMate 77T試験)/日本肺癌学会

 最近のStageIIAからIIIBの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後の5年生存率は50%以下であり、その治療効果は十分とはいえず、何らかの追加治療が必要とされてきた。 1990年代から化学療法を用いた術前補助療法が行われてきたが、最近は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場。周術期治療への可能性が期待されている。そこで、化学療法にICIを加えた周術期治療の有用性を検証するCheckMate 77T試験が現在進行しており、その概要が第62回日本肺癌学会学術集会において、神奈川県立がんセンターの伊藤宏之氏から紹介された。 StageIIIAのNSCLC患者46例を対象に、化学療法にニボルマブを併用する術前補助療法の後に手術を施行する第II相試験として、NADIM試験が実施された。その結果、残存するがん細胞の面積ががん組織中に占める割合が 10%以下の症例の割合を表すmajor pathological response(MPR)が83%、病理学的完全奏効(pCR)は59%との良好な成績を示し、18か月後の無増悪生存率は81%、全生存率は91%となっていた。この結果を受け、第III相試験としてCheckMate 77T試験がデザインされた。 CheckMate 77T試験は、切除可能なNSCLC患者を対象に、組織型に基づく化学療法にニボルマブ360mgまたはプラセボを加えた術前補助療法を行い、さらに術後補助療法としてニボルマブ480mgまたはプラセボを1年間投与する無作為化二重盲検第III相試験である。主要評価項目は盲検下独立中央評価委員会(BICR)による無イベント生存期間(EFS)、主な副次評価項目としてBICRによる全生存期間(OS)、pCR、およびMPR、安全性と忍容性などについても評価される。 対象は、切除可能なStage IIAからIIIBのNSCLCで、ECOG PS が0~1の患者。EGFR/ALK変異、脳転移、自己免疫疾患もしくはその疑いがある患者は除外された。 現在、日本を含む21ヵ国から115施設が参加し、2024年9月の修了を目指して試験が進行している。伊藤氏は、これまでICIは内科領域の治療で使われる薬剤であったが、今後は外科領域における周術期治療においても使用されるようになる可能性が高いとの期待を示した。

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固形がん患者へのブースター接種、抗体価の変化は?/JAMA Oncol

 積極的な治療を受けている固形がん患者では新型コロナウイルス感染症により予後が悪化するリスクが高く、また、化学療法を受けているがん患者ではBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)による体液性応答が低下することが報告されている。今回、イスラエル・Hadassah Medical CenterのYakir Rottenberg氏らが、主に化学療法を受けた固形がん患者でのBNT162b2ワクチンの3回目(ブースター)接種後30日未満の体液性応答を調査したところ、ほとんどの症例でブースター接種後早期に抗体反応がみられたことがわかった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年11月23日号に掲載。ブースター接種後にほぼすべてのがん患者で高い抗体価 本研究の対象は、Hadassah Medical Centerにおいて化学療法、生物学的製剤、免疫チェックポイント阻害薬、もしくはこれらの組み合わせで治療された固形がん患者で、BNT162b2ワクチンを2回接種していた患者。血液サンプルの採取日の中央値は、ブースター接種後13日(範囲:1~29)で、スパイクタンパク質結合抗体について分析した。 がん患者のブースター接種後の体液性応答を調査した主な結果は以下のとおり。・2021年8月15日~9月5日に37例がブースター接種後に血清学的検査を受けた。2回目接種とブースター接種との間隔の中央値は214日(範囲:172~229)、2回目接種と2回目接種後抗体測定の間隔の中央値は86日(範囲:30~203)だった。・年齢中央値は67歳(範囲:43~88)で、11例(30%)は転移がなく、19例(51%)は化学療法を受けていた。・1例(40代、dose-dense AC療法後パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブによる術後補助療法中)を除いた患者が血清学的検査で陽性だった。さらに、化学療法の有無に関係なく、2回目接種後の反応が中程度または最小だったがん患者で、ほぼすべてのがん患者が高い抗体価を示し、有意に抗体価が増加した。・多重線形回帰の結果、2回目接種後の抗体価(p<0.001)と高齢者(p=0.03)がブースター接種後の高い抗体価と関連した。一方、性別、化学療法の有無、3回目接種と抗体検査の間隔との関連はみられなかった。

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