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STEMIの最終的な梗塞サイズの縮小、ステロイドパルスは有効か?/ESC2024

 ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者の臨床転帰を左右する決定因子として、最終的な梗塞サイズが挙げられる。今回、最終的な梗塞サイズを縮小させる可能性がある方法として、梗塞早期でのグルココルチコイドのパルス療法による効果を検証するため、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJasmine Melissa Madsen氏らが医師主導二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を実施した。その結果、STEMI患者に対し、入院前治療としてグルココルチコイドのパルス療法を行っても、3ヵ月後の最終的な梗塞サイズは縮小しなかったことが示された。この研究は8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のセッションで報告され、JAMA Cardiology誌オンライン版2024年8月30日号オンライン版に同時掲載された。 本研究は、18歳以上で急性胸痛から12時間未満、心電図でSTEMIと診断された患者を対象に、2022年11月14日~2023年10月17日にデンマーク国立病院のRigshospitaletで実施された。最終追跡調査は2024年1月17日までであった。 対象者は入院前の段階で、グルココルチコイド(メチルプレドニゾロン250mg)静注群、またはプラセボ(9%NaCl 4mL)投与群に1対1で無作為に割り付けられ、Rigshospitaletで心臓MRI検査(CMR)のために受け入れられ次第すぐに、割り付け薬剤のボーラス投与が行われた。主要評価項目は3ヵ月後のCMRによる最終的な梗塞サイズ。副次評価項目は急性期および3ヵ月後のCMR結果、心臓バイオマーカーのピーク、3ヵ月後の臨床転帰、有害事象であった。 主な結果は以下のとおり。・割り付け後に適格基準を満たしたSTEMI患者530例の内訳は、年齢中央値65歳([四分位範囲[IQR]:56~75]、男性:418例(78.9%)だった。そのうち主要評価項目の評価を行うことができたのは401例(76%)で、グルココルチコイド群198例、プラセボ群203例だった。・最終的な梗塞サイズの中央値は治療群間で差はなかった(グルココルチコイド群5%[IQR:2~11]vs.プラセボ群6%[IQR:2~13]、p=0.24)。・ただし、プラセボ群と比較して、グルココルチコイド群では梗塞サイズが小さく(オッズ比[OR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.61~1.00)、微小血管閉塞(microvascular obstruction:MO)が少なく(相対リスク比[RR]:0.83、95%CI:0.71~0.99)、左室駆出率が有意に高かった(平均差:4.44%、95%CI:2.01~6.87)。・副次評価項目である心筋サルベージインデックス(MSI)や各種心筋マーカー(トロポニンTやCK-MBのピークなど)も両群間で差はなかった。・有害事象のうち30件(4%)は感染症に関連し、5件(0.7%)は皮膚合併症に関連したものであった。 本結果に対し、研究者らは「対象者の最終的な梗塞サイズが予想よりも小さかったため、この試験は検出力が不十分だった可能性がある」としている。

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肺炎の診断の半数以上は後に変更される

 肺炎の診断を誤る医師は少なくないようだ。肺炎の診断について、初期診断と退院時の診断が一致していないケースは半数以上に上ることが、200万件以上の入院データの解析から明らかになった。これは、肺炎症例の半数以上で、肺炎の初期診断が誤診であり最終的に別の病気の診断が下されたか、あるいは初期診断時に肺炎が見逃されていたかのどちらかであることを意味する。米ユタ・ヘルス大学のBarbara Jones氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に8月6日掲載された。Jones氏は、「肺炎は、明確に診断できる疾患のように見えるかもしれないが、実際には、肺炎に似た他の病気と混同されて診断されているケースがかなりの割合を占める」と述べている。 今回の研究では、全米118カ所の退役軍人(VA)医療センターの238万3,899件の医療記録を用いて、救急外来(ED)から入院した患者の間で肺炎の初期診断と退院時の診断、および放射線学的診断が一致するかどうかを人工知能(AI)に解析させた。また、臨床メモに記された診断の不確実性や患者の疾患の重症度、治療内容、および転帰についても比較した。 その結果、全体の13.3%が初期診断または退院時に肺炎と診断され、肺炎の治療を受けていたことが明らかになった。このうち、9.1%は初期診断で肺炎、10.0%は退院時に肺炎と診断されていた。初期診断と退院時の診断の不一致度は57%に上った。また、初期の胸部画像で肺炎の兆候が認められ、退院時に肺炎と診断された患者のうち、33%は初期診断で肺炎と診断されていなかった。一方、肺炎の初期診断を受けた患者のうち、36%は退院時に肺炎と診断されておらず、21%は初期の胸部画像で肺炎の兆候が確認されていなかった。 臨床メモには、診断に対する不確実性に関する言及が随所で見られ、EDの診療メモでは58%、退院時の診療メモでは48%で不確実性について言及されていた。治療として、27%の患者が利尿薬、36%がコルチコステロイド、10%が抗菌薬、コルチコステロイド、および利尿薬を入院後24時間以内に投与されていた。さらに、初期診断と退院時の診断が一致していなかった患者では、臨床メモの中に不確実性に関する言及が多く見られ、追加の治療を受けることも多かったが、他の患者と比べて病状が特に悪化していたわけではなかった。初期診断と退院時の診断が一致した患者に比べて、診断が不一致だった患者のうち、初期診断で肺炎が見過ごされていた患者でのみ、30日死亡率が有意に上昇していた(10.6%対14.4%)。 こうした結果を受けてJones氏は、「医師も患者も、肺炎は診断が難しい疾患であることを肝に銘じ、柔軟に治療を進めるべきだ」と述べている。同氏はさらに、「患者も臨床医も回復に注意を払い、治療を施しても症状が軽快しない場合には、肺炎という診断に疑問を持つ必要がある」とユタ・ヘルス大学のニュースリリースで述べている。

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糖尿病黄斑浮腫へのSGLT2阻害薬使用で注射回数減

 糖尿病黄斑浮腫患者に対するSGLT2阻害薬の使用は、ステロイド薬のトリアムシノロンアセトニド(TA)注射頻度の減少と関連しており、非侵襲的かつ低コストの補助療法となる可能性があるとの研究結果が発表された。君津中央病院糖尿病・内分泌・代謝内科の石橋亮一氏と千葉大学眼科、糖尿病・代謝・内分泌内科、人工知能(AI)医学による研究チームによる研究であり、「Journal of Diabetes Investigation」に6月14日掲載された。 増殖糖尿病網膜症による失明は、近年減少傾向ではあるが、糖尿病黄斑浮腫は、中高年の社会生活の質を低下させる重要な視力障害の原因となっている。糖尿病黄斑浮腫の第一選択薬は抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射だが、眼球への頻回の注射と、高額な医療費が患者の負担となり、また奏功しない患者の存在も次第に明らかとなり、ステロイドテノン嚢下注射(STTA)なども選択される。ただし、TA投与も侵襲的な局所注射療法であり、眼圧上昇などの特有の副作用がある。 一方、2型糖尿病などに広く用いられている経口薬のSGLT2阻害薬は、糖尿病黄斑浮腫への治療効果が報告されている。著者らの過去の研究では、抗VEGF薬投与歴のある糖尿病黄斑浮腫患者において、SGLT2阻害薬の使用が抗VEGF薬の投与頻度の減少と関連することを明らかにした。 著者らは今回の研究では、糖尿病黄斑浮腫へのTA投与に着目し、SGLT2阻害薬の有効性を評価するため、日本の保険請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究を行った。糖尿病黄斑浮腫を合併する糖尿病患者を対象とし、他の眼疾患(加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、脈絡膜新生血管など)への抗VEGF薬投与歴のある患者などは除外した。2014年以降のSGLT2阻害薬または他の糖尿病治療薬の使用開始日を指標日とし、指標日以降のTAのテノン嚢下または硝子体への投与頻度などを解析した。 傾向スコアマッチングを行い、SGLT2阻害薬使用群1,206人(平均年齢54±9歳、男性63%)と非使用群1,206人(同54±10歳、61%)が選択された。平均追跡期間はSGLT2阻害薬使用群が2.3±1.5年(2,727人年)、非使用群が3.4±2.1年(4,141人年)だった。観察開始時点で糖尿病関連眼疾患を合併していた患者は、SGLT2阻害薬使用群で852人(71%)、非使用群で858人(71%)、抗VEGF薬投与歴のある患者は同順に46人(3.8%)、15人(1.2%)、TA投与歴のある患者は55人(4.6%)、56人(4.6%)だった。 TAの投与頻度は、SGLT2阻害薬使用群で1,000人年当たり63.8回、非使用群で同94.9回だった。生存時間解析を行ったところ、SGLT2阻害薬は、初回のTA投与(ハザード比0.66、95%信頼区間0.50~0.87)、2回目のTA投与(同0.53、0.35~0.80)、3回目のTA投与(同0.44、0.25~0.80)が必要となるリスクをそれぞれ有意に低下させることが明らかとなった。さらに、さまざまな臨床背景によりサブグループ解析を行った結果、SGLT2阻害薬によるTAの投与頻度の減少効果は一貫して認められた。また硝子体手術の頻度も初回は2群間で差はなかったものの、2回目で有意に減少していた(同0.51、0.29~0.91)。 以上の結果から著者らは、「SGLT2阻害薬は、糖尿病黄斑浮腫に対する新たな非侵襲的かつ低コストの補助療法となる可能性がある」と結論付けている。SGLT2阻害薬の効果の基礎となるメカニズムとしては、局所代謝の改善、虚血の改善、浮腫の軽減などが考えられると説明した上で、SGLT2阻害薬の併用は糖尿病黄斑浮腫の発症予防などの報告もされていることから、より早期の糖尿病黄斑浮腫でより有効な可能性を指摘し、今後さらなる研究が必要だとしている。

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最近増加している好酸球性食道炎に生物学的製剤は有効か?(解説:上村直実氏)

 好酸球性消化管疾患は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の消化管のいずれかに好酸球が浸潤して炎症を引き起こすアレルギー性疾患の総称であるが、確定診断が難しいことから比較的まれな疾患で厚生労働省の指定難病として告示されている。胸焼け、腹痛、下痢といったさまざまな消化器症状を引き起こすが、一般的には好酸球性食道炎と胃から大腸までのいずれかもしくは複数の部位に炎症の主座を有する好酸球性胃腸炎に大別されているが、最近の診療現場では好酸球性食道炎が増加している。つかえ感や胸焼けを慢性的に自覚する患者に対して行われる上部消化管内視鏡検査で、本疾患に特徴的な内視鏡所見である縦走溝や輪状溝および白苔を認めた際に行う生検組織を用いた組織学的検査により確定診断されるケースが多いが、健康診断や人間ドックなどで受けた内視鏡検査の際に偶然発見される無症状の症例も増加している。本疾患が気管支喘息などのアレルギー性疾患の合併率が高いことも、留意しておくべきである。 わが国における好酸球性食道炎に対する治療は、保険適用になっていないプロトンポンプ阻害薬やステロイド吸入薬の内服が使用される場合が多いが、それでも症状が改善しない場合は、全身性ステロイドの内服や原因として疑われる食材を除去する食事療法が行われている。以上の一般的治療でも症状が難治性の場合、海外では生物学的製剤の開発が進みつつある。難治性のアトピー性皮膚炎や気管支喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療薬であるインターロイキンIL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデュピルマブが、好酸球性食道炎に対しても承認されている。すなわち、2022年12月22日号のNEJM誌に掲載された国際共同試験の結果において、12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象としたデュピルマブ週1回皮下投与は、組織学的寛解率を改善すると共に嚥下障害症状を軽減することが明らかとなり、さらに11歳以下の小児を対象とした第III相無作為化試験において組織学的所見の改善を認めた結果が、2024年6月27日号のNEJM誌に掲載されると同時に米国などで承認されている。 今回、好酸球を減少させる抗IL-5受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブの有用性と安全性を検証した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果も、2024年6月27日号のNEJM誌で報告された。試験の結果、好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。以前の報告から、ベンラリズマブは血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少をもたらす薬剤であり、好酸球性食道炎の治療薬としても期待されたが、浸潤好酸球の減少が症状の改善につながらなかった結果から、今後、好酸球浸潤と症状発現の機序が残された課題と思われる。 現在、国内においてPPIや生物学的製剤も含めて好酸球性食道炎に対して保険適用となっている薬剤は皆無であるが、今後、増加傾向のあるアレルギー疾患である好酸球性食道炎の新たな知見に注目しておく必要があると思われた。

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重篤な薬疹を起こしやすい経口抗菌薬は?/JAMA

 一般的に処方される経口抗菌薬の中には、マクロライド系薬と比較して救急外来受診または入院に至る重篤な皮膚有害反応(cADR)のリスクが高い薬剤があり、とくにスルホンアミド系とセファロスポリン系で最も高いことが、カナダ・トロント大学のErika Y. Lee氏らによるコホート内症例対照研究の結果で示された。重篤なcADRは、皮膚や内臓に生じる生命を脅かす可能性のある薬物過敏症反応である。抗菌薬はこれらの原因として知られているが、抗菌薬のクラス間でリスクを比較した研究はこれまでなかった。結果を踏まえて著者は、「処方者は、臨床的に適切な場合はリスクの低い抗菌薬を優先して使用すべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年8月8日号掲載の報告。経口抗菌薬のクラスと重篤なcADRの関連性について解析 研究グループは、2002年4月1日~2022年3月31日に、カナダ・オンタリオ州の行政保健データベースを用いて、コホート内症例対照研究を実施した。データソースは、65歳以上のオンタリオ州住民に処方された外来処方薬のデータを含むOntario Drug Benefit database、救急外来受診の詳細情報を含むCanadian Institute for Health Information(CIHI)National Ambulatory Care Reporting System、入院患者の診断と治療のデータを含むCIHI Discharge Abstract Database、オンタリオ州健康保険(Ontario Health Insurance Plan)データベースである。ICES(旧名称:Institute for Clinical Evaluative Sciences)でこれらのデータを個人レベルで連携し、分析した。 対象は、少なくとも1回経口抗菌薬を処方された66歳以上の患者で、このうち、処方後60日以内に重篤なcADRのため救急外来を受診または入院した患者を症例群、これらのイベントがなく各症例と年齢と性別をマッチさせた患者(症例1例当たり最大4例)を対照群とした。 主要解析では、条件付きロジスティック回帰分析を用い、マクロライド系抗菌薬を参照群として、抗菌薬のクラスと重篤なcADRとの関連を評価した。スルホンアミド系とセファロスポリン系で重篤なcADRのリスク大 20年の研究期間において、症例群2万1,758例、対照群8万7,025例を特定した(両群とも年齢中央値75歳、女性64.1%)。 多変量調整後、スルホンアミド系抗菌薬が重篤なcADRと最も強く関連しており、マクロライド系抗菌薬に対する補正後オッズ比(aOR)は2.9(95%信頼区間[CI]:2.7~3.1)であった。次いで、セファロスポリン系(2.6、2.5~2.8)、その他の抗菌薬(2.3、2.2~2.5)、ニトロフラントイン系(2.2、2.1~2.4)、ペニシリン系(1.4、1.3~1.5)、フルオロキノロン系(1.3、1.2~1.4)の順であった。 重篤なcADRの粗発現頻度が最も高かったのはセファロスポリン系(処方1,000件当たり4.92、95%CI:4.86~4.99)で、次いでスルホンアミド系(3.22、3.15~3.28)であった。 症例群2万1,758例のうち重篤なcADRで入院した患者は2,852例で、入院期間中央値は6日(四分位範囲[IQR]:3~13)、集中治療室への入室を要した患者は273例(9.6%)で、150例(5.3%)が病院で死亡した。 なお、著者は研究の限界として、ICD-10コードを使用してcADRを特定したが重篤なcADR専用のコードはなく本研究固有の定義を作成したこと、cADRを引き起こす可能性のある非ステロイド性抗炎症薬などの市販薬の使用については調査できなかったことなどを挙げている。

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自己免疫疾患を有するがん患者、免疫チェックポイント阻害薬によるirAEリスクは?

 自己免疫疾患を有するがん患者では、免疫チェックポイント阻害薬の投与によって免疫関連有害事象(irAE)が発現する割合は高いものの、これらは軽度で管理可能であり、がんへの反応性には影響がなかったことを、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaria A. Lopez-Olivo氏らが明らかにした。European Journal of Cancer誌2024年8月号掲載の報告。自己免疫疾患のあるがん患者は免疫チェックポイント阻害薬によるirAEの発現率が高かった 自己免疫疾患を有するがん患者は、免疫チェックポイント阻害薬のランダム化比較試験から除外されていることが多い。そこで研究グループは、自己免疫疾患の既往があり、免疫チェックポイント阻害薬を投与されたがん患者を含む観察試験と非対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、新規イベントや自己免疫疾患の再燃を含むirAEの発現率、irAEによる入院・死亡などを調査した。 研究グループは、5つの電子データベースを2023年11月まで検索した。研究の選択、データ収集、質の評価は2人の研究者によって独立して行われた。 自己免疫疾患を有するがん患者への免疫チェックポイント阻害薬投与によるirAEの発現率を調査した主な結果は以下のとおり。・解析には、95件の研究から、がんおよび自己免疫疾患の既往を有する2万3,897例が組み込まれた。がん種で多かったのは肺がん(30.7%)、皮膚がん(15.7%)であった。・自己免疫疾患のある患者は、自己免疫疾患のない患者と比較して、irAEの発現率が高かった(相対リスク:1.3、95%信頼区間[CI]:1.0~1.6)。・すべてのirAEの統合発現率(自己免疫疾患の再燃または新規イベント)は61%(95%CI:54~68)で、自己免疫疾患の再燃は36%(95%CI:30~43)、新規のirAE発現は23%(95%CI:16~30)であった。・自己免疫疾患が再燃した患者の半数はGrade3未満であり、乾癬/乾癬性関節炎(39%)、炎症性腸疾患(37%)、関節リウマチ(36%)の患者で多かった。・irAEが発現した患者の32%は入院を必要とし、irAEの治療として72%にコルチコステロイドが用いられた。irAEによる死亡率は0.07%であった。・自己免疫疾患のある患者とない患者の間で、免疫チェックポイント阻害薬に対するがんの反応性に統計的な有意差は認められなかった。 研究グループは「これらの結果から、免疫チェックポイント阻害薬は自己免疫疾患を有するがん患者にも使用可能であることが示唆されるが、患者の3分の1以上が自己免疫疾患の再燃を経験したり、入院を必要としたりするため、注意深いモニタリングが必要である。これらの知見は、がん専門医がモニタリングと管理の戦略を改善し、免疫チェックポイント阻害薬治療の利点を最大化しつつリスクを最小化するための重要な基盤となるものである」とまとめた。

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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるリサンキズマブの有用性 (解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、生物学的生物学的製剤や低分子化合物の出現により大きく変化している。わが国では、既存治療である5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等に対して効果不十分または不耐容となったUC患者には、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている(『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和5年度改訂版(令和6年3月31日)』厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度 総括・分担研究報告書)。しかしながら、中等度以上の活動性を有するUC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する治療薬が次々と開発されている。 今回、日本人を含む中等度から重度のUC患者を対象としたUCの寛解導入および寛解維持に対する新たなIL阻害薬であるリサンキズマブの有効性と安全性を検証した国際共同試験の結果が2024年7月22日号のJAMA誌に掲載された。なお、わが国の保険診療現場ではIL阻害薬としてIL-12とIL-23に共通するp40サブユニットを標的とするウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)とIL-23に特有のp19サブユニットを標的とするミリキズマブ(同:オンボー)が使用されている。 リサンキズマブ(同:スキリージ)はIL-23p19サブユニットを選択的に標的としてIL-23受容体を介したシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体であり、わが国でクローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎の治療薬として、すでに薬事承認および保険適用を有している。今回は、中等度以上のUCに対する寛解導入および寛解維持目的とした治療薬として2024年6月に薬事承認を取得している。なお、リサンキズマブはウステキヌマブと同じIL-12ファミリーに属する炎症性サイトカインを標的とするが、IL-23のp19サブユニットに対してのみ特異的に結合して大腸粘膜の炎症を抑えることから感染症や悪性腫瘍の発生リスクを軽減する可能性が期待されている。 今回も昨年承認されたミリキズマブと同様、国際共同治験の成績がトップジャーナルに掲載される前に薬事承認されていることは驚きであるが、今後は国際共同治験の結果がジャーナルに掲載される前に保険適用の承認を取得する薬剤が増加するものと思われる。 一方、難治性のUCに対する薬物療法に関する臨床現場からの要望としては、既存の薬物治療に抵抗性を示す患者を対象として、プラセボを対照とした臨床試験の結果から次々に市販されている生物学的製剤それぞれの役割と具体的な使用方法に関するガイドラインの改訂が必要と思われる。

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クローン病に対するリサンキズマブとウステキヌマブの直接比較(解説:上村直実氏)

 完全治癒が見込めないクローン病(CD)に対する治療方針は、病気の活動性をコントロールして患者の寛解状態をできるだけ長く維持し、日常生活のQOLに影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症の予防や治療が重要である。薬物治療に関しては、アミノサリチル酸塩(5-ASA)、免疫調整薬、ステロイドなどを用いた従来の治療法が無効な場合、ステロイド長期使用の副事象を考慮して、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなど腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が使用されることが多くなっている。しかし、中等症以上の活動性を有するCD症例の中には、抗TNF療法の効果が得られない患者、時間の経過とともに効果が消失する患者、あるいは副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する薬剤の追加が求められた結果、活動性とくに中等症から重症のクローン病に対しては、インターロイキン(IL)阻害薬(ウステキヌマブ、リサンキズマブなど)や抗インテグリン抗体薬(ベドリズマブ)などの生物学的製剤が使用されることが多くなっている。 新たに開発された生物学的製剤の有用性と安全性を検証するための臨床試験は薬事承認を目的としたものが多く、既存の治療において有効性に乏しい患者を対象としたプラセボ対照の無作為化比較試験(RCT)が常套手段となっており、実際の診療現場で治療方針に迷うことのある生物学的製剤同士を直接比較した検討は見当たらない。しかし、臨床現場での意思決定には先進的治療法の直接比較試験のデータがきわめて有意義である。 以前行われた唯一の直接比較試験として、中等症〜重症活動期のCD患者を対象として抗TNF薬のアダリムマブとIL阻害薬であるウステキヌマブ単剤療法の有効性を検討した結果、臨床的寛解率および種々の副次的評価項目(内視鏡的有効性、入院の低下率、ステロイドフリー率、腸管切除の減少率など、長期的な予後の改善に強く関連する項目)および安全性について両群間に有意な差は認められなかった(Sands BE, et al. Lancet. 2022;399:2200-2211.)。今回は、抗TNF療法が奏効しなかった中等症から重症の患者を対象として、IL阻害薬のリサンキズマブ(商品名:スキリージ)とウステキヌマブ(同:ステラーラ)の有用性と安全性を直接比較したオープンラベルの国際共同試験「SEQUENCE試験」の結果が2024年7月のNEJM誌に掲載された。24週目の臨床的寛解率は両群間に差がなかったが、48週目の内視鏡的寛解率はリサンキズマブ群が有意な優越性を示した結果であった。 オープンラベルでプラセボのない実薬同士の直接的な比較試験であり、成績には種々のバイアスが生ずると思われるが、診療の現場では個々の患者に対してどの薬剤が最適なのかに迷う機会が少なくなく、本試験のような高い有用性を有する薬剤同士の比較試験結果は診療現場にとって重要と思われる。今後、日本でも同様の精度の高いガチンコ勝負とともに、患者背景の違いにより薬剤の選択方法を示唆するような臨床研究を期待したい。

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COPD・喘息の早期診断の意義(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)は2021年の統計で1万6,384例の死亡者数と報告されており、「健康日本21(第三次)」でもCOPDの死亡率減少が目標として掲げられている。気管支喘息も、年々死亡者数は減少しているとはいえ、同じく2021年の統計で1,038例の死亡者数とされており、ガイドラインでも「喘息死を回避する」ことが目標とされている。いずれも疾患による死亡を減少させるために、病院に通院していない、適切に診断されていないような症例をあぶり出していくことが重要と考えられている。しかしながら、疾患啓発や適正な診断は容易ではない。現在、COPD前段階ということで、「Pre COPD」や「PRISm」といった概念が提唱されている。閉塞性換気障害は認めないが画像上での肺気腫や呼吸器症状を認めるような「Pre COPD」や、同じく1秒率が閉塞性換気障害の定義を満たさないが、%1秒量が80%未満となるような「PRISm」であるが、それらの早期発見や診断、そして治療介入などが死亡率の減少に寄与しているかどうかについては明らかになっていない。 今回NEJM誌から取り上げるカナダ・オタワ大学からの「UCAP Investigators」が行った報告では、症例発見法を用いたCOPD・気管支喘息の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療の利用が低減することが示された。約3万8,000例の中から、595例の未診断のCOPD・喘息が発見され、介入群と通常治療群に分けられ、呼吸器疾患による医療利用の発生率が評価されている。ガイドラインによる治療を順守するような呼吸器専門医の介入により、被検者の医療利用は有意に低下することが報告された。早期診断・治療を受けることにより、SGRQスコアとCATスコアや1秒量が改善することが示され、症例の健康維持に寄与することが期待されている。また、早期診断することにより、自らの病状の理解や自己管理の重要性を認識することも重要と考えられる。 一見、病気はすべて早期発見・早期治療が良いように思われるが、いくつかの問題点も考えられる。1つは軽症や無症状の症例が診断されることにより、生命予後に寄与しない治療が施される可能性がある。診断された患者は不安や精神的・心理的なストレスを抱えることも懸念される。2つ目に、限りある医療資源を消費してしまうことが推測される。呼吸器専門医や呼吸器疾患に携わる医療者は本邦でも潤沢にいるわけではなく、呼吸器専門医が不在の医療機関も少なくない。より重症や難治例のために専門医の意義があるわけで、軽症例や無症状の症例に対してどこまで介入できるか、忙しい日本の臨床の現場では現実的ではない部分が大きい。3つ目には薬物療法の早期開始により、副作用リスクがメリットを上回る可能性も不安視される。とくに吸入ステロイドによる局所の感染症や糖尿病や骨粗鬆症のリスクは、長期使用となると見逃すことはできないのだろう。 いずれにしても症例発見法は簡便であり多くの医療機関で導入可能と筆者は訴えているが、COPD・喘息の早期診断・早期介入が医療利用の低減のみならず、長期予後や死亡率の減少などにつながるかどうか、より長期的な検討が必要なのだろう。

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NSAIDの“有害な処方”、とくに注意すべき患者群とは/BMJ

 イングランドでは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の処方は5つの高リスク集団において、回避可能な害(avoidable harm)と医療費増加の継続的な原因であり、とくに慢性疾患を有する集団や経口抗凝固薬を使用している集団において急性イベント誘発の原因となっていることが、英国・マンチェスター大学のElizabeth M. Camacho氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2024年7月24日号で報告された。高リスク集団を対象とするイングランドのコホート研究 研究グループは、イングランドの高リスク集団における問題のある経口NSAID処方に関して、発生率、有害性、英国国民保健サービス(NHS)の費用の定量化を目的に、住民ベースのコホート研究を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。 対象は、経口NSAIDを処方された5つの高リスク集団(胃腸保護薬を使用していない高齢者[65歳以上]、経口抗凝固薬の併用者、心不全患者、慢性腎臓病患者、消化性潰瘍の既往歴を有する者)であった。有害な処方によりQALYが失われ、医療費が増加 NSAID処方が有害でなかった場合と比較して、有害な処方により質調整生存年(QALY)の損失と費用の増加を認めた。1例当たりのQALY損失の平均値は、「消化性潰瘍の既往歴」の0.01(95%信用区間[CrI]:0.01~0.02)から「慢性腎障害患者」の0.11(0.04~0.19)までの範囲であった。また、医療費増加の平均値は、「心不全」の14ポンド(=17ユーロ、18ドル)(95%CrI:-71~98、有意差なし)から「経口抗凝固薬の併用者」の1,097ポンド(236~2,542、有意差あり)までの範囲だった。 また、1,000例当たりの有害な処方の発生は、「消化性潰瘍の既往歴を有する者」の0.11から「胃腸保護薬を使用していない高齢者」の1.70までの範囲であった。害を及ぼす可能性が最も高いのは「経口抗凝固薬の併用者」 全体として、有害な処方の頻度が最も高かったのは「胃腸保護薬を使用していない高齢者」であり、1,929(95%CrI:1,416~2,452)QALYが失われ、246万ポンド(95%CrI:65万~468万)の費用を要した。また、有害な処方の影響が最も大きかったのは「経口抗凝固薬の併用者」で、2,143(95%CrI:894~4,073)QALYが失われ、費用は2,541万ポンド(95%CrI:525万~6,001万)であった。 10年間で総計6,335(95%CrI:4,471~8,658)QALYが失われ、イングランドのNHSは3,143万ポンド(95%CrI:928万~6,711万)の費用を要したと推定された。 著者は、「イングランドでは、高リスク集団において問題のあるNSAID処方が蔓延しており、65歳以上の高齢者では、年間10万7,000例が胃腸保護薬なしにNSAIDを処方されている。NSAIDは、経口抗凝固薬を使用している者に処方された場合に、最も害を及ぼす可能性がある」としている。

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AhR活性化を介してアトピー性皮膚炎/尋常性乾癬の症状を改善する外用薬「ブイタマークリーム1%」【最新!DI情報】第20回

AhR活性化を介してアトピー性皮膚炎/尋常性乾癬の症状を改善する外用薬「ブイタマークリーム1%」今回は、アトピー性皮膚炎/尋常性乾癬治療薬「タピナロフクリーム(商品名:ブイタマークリーム1%、製造販売元:日本たばこ産業)を紹介します。本剤は、リガンド依存的な転写因子AhRの活性化を介して炎症性サイトカインを低下させ、抗酸化分子の発現を誘導して皮膚の炎症を抑制するとともに、皮膚バリア機能を改善させる新しい作用機序の薬剤です。<効能・効果>アトピー性皮膚炎および尋常性乾癬の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>●アトピー性皮膚炎通常、成人および12歳以上の小児には、1日1回、適量を患部に塗布します。治療開始8週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。●尋常性乾癬通常、成人には、1日1回、適量を患部に塗布します。治療開始12週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。<安全性>主な副作用に、適用部位毛包炎(17.0%)、頭痛、接触皮膚炎、適用部位ざ瘡(5%以上)があります。その他、毛包炎、ざ瘡、乾癬、アトピー性皮膚炎、適用部位刺激感、適用部位そう痒感、適用部位変色、適用部位多毛症、適用部位湿疹(1~5%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の症状緩和・進行抑制に効果がある非ステロイド性のクリーム薬です2.皮膚感染症を増悪させることがあるので、皮膚感染症があるときは必ず医師または薬剤師に申し出てください。3.この薬で症状の改善が認められないときは、使用を中止することがあります。4.アトピー性皮膚炎では、12歳未満の小児には使用できません。尋常性乾癬では、小児には使用できません。 <ここがポイント!>アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返す、強い痒みを伴う炎症性皮膚疾患です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がない状態への導入およびその維持です。薬物療法にはステロイド外用薬を中心に、タクロリムス外用薬やデルゴシチニブ外用薬などが使用されます。ステロイドでは特有の副作用、その他の外用薬では対象患者や塗布に関する制限などがあり、使用には注意が必要です。慢性の皮膚疾患である尋常性乾癬は、遺伝的、環境的および免疫学的要因などの複数の要因で発症します。治療にはステロイド外用薬が用いられますが、局所の副作用発現などに注意が必要です。本剤は、非ステロイド性の低分子の芳香族炭化水素受容体調節薬(therapeutic AhR modulating agent:TAMA)で、既存薬と異なる作用機序を有するアトピー性皮膚炎および尋常性乾癬の治療薬です。リガンド依存性転写因子であるAhRの活性化を介して炎症性サイトカインの産生を抑制し、またNrf2経路を活性化させて抗酸化分子の遺伝子発現を誘導してアトピー性皮膚炎および尋常性乾癬における皮膚の炎症を抑えます。さらに、皮膚バリア機能関連タンパク質の発現を誘導して皮膚バリア機能を改善します。使用対象年齢は、アトピー性皮膚炎では成人および12歳以上の小児、尋常性乾癬では成人です。現在、小児のアトピー性皮膚炎に対する臨床試験を実施しており、今後の適応拡大が期待されます。アトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相比較試験および継続投与試験(ZBB4-1試験)において、投与8週時のIGA反応率(IGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上改善した患者の割合)は、本剤1%群が20.24%、基剤クリーム群が2.24%で、2群間の差は18.0%(95%信頼区間[CI]:10.0~25.9)であり、本剤1%の優越性が示されました。また、尋常性乾癬患者を対象とした国内第III相比較試験および継続投与試験(ZBA4-1試験)において、投与12週時のPGA反応率(PGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上改善した被験者の割合)は、本剤1%群が20.06%、基剤クリーム群が2.50%で、2群間の差(本剤1%群-基剤クリーム群)は18.1%(95%CI:8.3~27.9)であり、本剤1%の優越性が示されました。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎、ネモリズマブ追加で治療成功率が向上/Lancet

 そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年の治療において、基礎治療(局所コルチコステロイド[TCS]±局所カルシニューリン阻害薬[TCI])単独と比較して、基礎治療+ネモリズマブ(インターロイキン-31受容体サブユニットα拮抗薬)は、治療成功および皮膚症状改善の達成率の向上をもたらし、安全性プロファイルは両群でほぼ同様であることが、米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らが実施した2つの臨床試験(ARCADIA 1試験、ARCADIA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年8月3日号に掲載された。同じデザインの2つの無作為化プラセボ対照第III相試験 ARCADIA 1試験とARCADIA 2試験は、同じデザインの48週の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、ARCADIA 1試験は2019年8月~2021年9月に14ヵ国161施設で、ARCADIA 2試験は2019年8月~2022年11月に11ヵ国120施設で患者を登録した(Galdermaの助成を受けた)。 2つの試験とも、年齢12歳以上、そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎(登録の2年以上前に診断)で、TCS±TCIによる治療で効果が不十分であった患者を対象とした。 被験者を、基礎治療(TCS±TCI)との併用で、ネモリズマブ30mg(ベースラインの負荷用量60mg)を4週に1回皮下投与する群、またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは2つで、16週目の時点でのInvestigator's Global Assessment(IGA)に基づく治療成功(IGAが0[皮膚病変消失]または1[同ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上の改善)、およびEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI-75)とした。9つの主な副次エンドポイントもすべて有意に改善 2つの試験に合計1,728例を登録した。ネモリズマブ群に1,142例(ARCADIA 1試験620例[平均年齢33.5歳、女性48%]、ARCADIA 2試験522例[34.9歳、52%])、プラセボ群に586例(321例[33.3歳、45%]、265例[35.2歳、51%])を割り付けた。 両試験とも2つの主要エンドポイントを満たした。16週時のIGAに基づく治療成功の割合はプラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に優れた(ARCADIA 1試験:36% vs.25%、補正後群間差:11.5%[97.5%信頼区間[CI]:4.7~18.3]、p=0.0003/ARCADIA 2試験:38% vs.26%、12.2%[4.6~19.8]、p=0.0006)。 また、EASI-75の達成割合も、プラセボ群に比しネモリズマブ群で有意に良好だった(ARCADIA 1試験:44% vs.29%、補正後群間差:14.9%[97.5%CI:7.8~22.0]、p<0.0001/ARCADIA 2試験:42% vs.30%、12.5%[4.6~20.3]、p=0.0006)。 9つの主な副次エンドポイント(そう痒[Peak Pruritus Numerical Rating Scale:PP-NRS]、睡眠[Sleep Disturbance Numerical Rating Scale:SD-NRS]など)はいずれも、ネモリズマブ群で有意な有益性を認めた。ネモリズマブ関連の可能性がある有害事象は1% 安全性プロファイルは両群でほぼ同様だった。少なくとも1件の試験治療下における有害事象を発現した患者は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で50%(306/616例)、ARCADIA 2試験で41%(215/519例)、プラセボ群ではそれぞれ45%(146/321例)および44%(117/263例)であった。このうち重篤な有害事象は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で1%(6例)、ARCADIA 2試験で3%(13例)、プラセボ群ではそれぞれ1%(4例)および1%(3例)であった。 ネモリズマブ関連の可能性がある治療関連有害事象は、ARCADIA 2試験で5例(1%)に10件報告された。 著者は、「アトピー性皮膚炎は多面的な病態生理を有する疾患で、臨床においてはさまざまな作用機序を有する薬剤を必要とするため、有効な治療法の探索を継続することは重要である」と述べた。

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「かゆみのない」世界の実現には?初期治療とアレルギー結膜炎新薬の役割

参天製薬は、5月に持続性・経眼瞼アレルギー性結膜炎治療剤「アレジオン眼瞼クリーム0.5%」(一般名:エピナスチン塩酸塩、以下アレジオンクリーム)を発売した。これを受け、7月にアレルギー疾患の現状と新薬が果たす役割をテーマとした「『かゆみのない世界』の実現を目指す“これからの”アレルギー結膜炎治療とは」と題したプレスセミナーを行った。日本人の2人に1人がアレルギー性結膜炎、もはや国民病(海老原氏)セミナーでは、順天堂大学の海老原 伸行氏が「アレルギー性結膜炎の病態と疫学、薬物治療について」と題した講演を行った。――アレルギー性疾患の有病率を見ると、アレルギー性結膜疾患が48.7%、アレルギー性鼻炎が36.5%、日本人の2人に1人は何かしらのアレルギーを持っているわけで、もはや国民病といえる。アレルギーの原因を見ると、日本人を対象としたIgE抗体価の調査1)では、39の調査項目のうちスギが58.7%と最多、ヒノキ34.2%など草木類が多いものの、ダニやハウスダストも36~7%と高い。また複数の抗原に反応する「多重抗原陽性者」も多く、7割近くが2つ以上の抗原に反応し、最大で30項目に反応した人もいた。こうした多重抗原陽性者はアレルギー症状が重症かつ罹患期間も長くなる傾向がある。アレルギー症状の中でもっとも多いのが「目のかゆみ」で、100%近い患者が自覚症状がある。かゆみは患者のQOLに大きく影響し、かゆみを筆頭としたアレルギー症状が仕事や勉強に影響を来している、というアンケート結果も多数ある。患者へのアンケートで抗アレルギー点眼薬に求めるものを聞いたところ、計86%の人が「まったく・ほとんどかゆみを感じない状態」を期待しており、薬剤への期待は大きい。現在、アレルギー性結膜炎に使える抗アレルギー薬は、ヒスタミンH1受容体拮抗薬とメディエーター遊離抑制薬があり、ヒスタミンH1受容体拮抗薬が主流だ。現在、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の点眼薬は5剤あり、うち4剤が1日4回投与、1剤が1日2回投与となっている。ここに新たに加わったのが今回発売されたアレジオンクリームで、これだけが1日1回投与となる。投与回数が重要な理由は、点眼薬は内服薬よりもアドヒアランスが低く、投与回数が少ないほどアドヒアランスを高めやすいためだ。アレルギー疾患は初期療法が重要だが、このことがあまり知られていない。多くの患者さんは症状を自覚してから点眼をはじめるが、自覚症状の出る前、具体的には花粉飛散の2週間程度前から点眼をはじめることで症状を抑えられる、というエビデンスがある2)。ただ、自覚症状のない状況における1日4回の点眼はハードルが高い。こうした面からも投与回数が少ない薬剤は受け入れられやすいだろう。症状がなくても、用法通りに点眼することでかゆみを抑えられる(高村氏)続いて、元東京女子医科大学眼科教授・高村 悦子氏が「アレルギー性結膜炎治療の変遷」と題した講演を行った。――抗アレルギー薬が発売されるまで、アレルギー性結膜炎の治療薬はステロイドの点眼薬しかなかった。ステロイド点眼薬は眼圧上昇や感染症の悪化といった副作用があり、毎日使い続けられる薬剤を、というニーズから開発されたのが抗アレルギー点眼薬だった。しかしながら、現在でも多くの患者が「目のかゆみ」を訴えている。症状が改善しない理由の1つに、点眼薬が用法通りに使われていないことがある。1日4回投与する抗ヒスタミン点眼薬を処方された患者に対し、実際の使い方を聞いたアンケート3)では、「症状がひどいとき」は67.3%の人が規定通りの4回もしくはそれ以上の回数を点眼していたが、「症状がラクなとき」はこの割合は10.6%まで急落していた。本来、症状の有り無しにかかわらず、用法を遵守することで薬剤の有効性が上がるが、点眼薬ではこれがなかなか難しく、対症療法的に使われている実態が明らかになった。私自身、このアンケート結果を見て「投与回数に気を取られ、症状がなくても用法遵守することの重要性を患者さんにきちんと伝えていただろうか?」と反省した。以後は、発症期間中はかゆみの有無にかかわらず、用法遵守で点眼するという「プロアクティブ点眼」を積極的に啓蒙するようにしている。とはいえ、この名称では取っ付きにくいので、独自で「あらかじめ点眼」と言い換え、スライドを使って「症状がなくても、用法通りに点眼することでかゆみを抑えられる。あるいは軽くすることができる」と説明している。「あらかじめ点眼」の患者説明用スライド(高村氏作成)画像を拡大するまた、別のアンケート4)では、4回点眼よりも2回点眼の薬剤を処方された人のほうが適正使用していた比率が高く、投与回数が少ないほうがアドヒアランスが高いことが確認された。4回投与だった点眼薬に2回投与が登場し、今回発売されたアレジオンクリームではじめて投与回数が1回になった。投与時間も規定がなく、1日1回塗ればよい。とくに幼児や学童期、身体が不自由な方、認知症の高齢者など、自分での点眼が難しい人とケアする人にとって、1日1回、塗ればよいという手軽さは大きな利点となるはずだ。アレルギー性結膜炎の治療は、洗眼薬によるセルフケア、花粉飛散前の初期療法、花粉飛散時期の用法遵守の点眼の組み合わせが肝要だ。症状が発生してからの対症療法ではなく、かゆみの有無にかかわらず用法遵守で点眼する症状を予防する『あらかじめ点眼』を普及させるため、新たな薬剤に期待したい。アレジオン3製剤の比較画像を拡大する最後に、参天製薬製品開発本部の小山 真治氏が、今回の製品開発の狙いなどについて話した。「1日1回投与を実現するにあたり、効果が長期に持続するクリームという剤形を選択した。結果として幼児や高齢者といった点眼がうまくできない方のニーズも汲み取ることができた。眼瞼クリーム1本当たりの薬価は2回投与の点眼薬に比較して少し高くなるが、1日1回の塗布で使用量も限られるため、トータルの患者負担は大きくは変わらないと考えている。まぶたに塗布するクリーム状の眼薬は独自技術であり、ニーズに応じて他剤に拡大することも検討したい」と説明した。1)岡本 茂樹ほか. 2017年度日本眼科アレルギー学会アレルギー性結膜疾患実態調査. 日本眼科学会雑誌. 2022;126:625-635. 2)深川 和己ほか. 季節性アレルギー性結膜炎に対するエピナスチン塩酸塩点眼薬による初期療法の効果. アレルギー・免疫. 2015;22:1270-1280.3)深川 和己ほか. 季節性アレルギー性結膜炎患者におけるWebアンケートを用いた抗ヒスタミン点眼薬の点眼遵守状況によるQOLへの影響.アレルギーの臨床. 2019;39:29-41.4)福島 敦樹ほか. 季節性アレルギー性結膜炎患者における1日2回の抗ヒスタミン点眼薬の使用状況,自覚症状およびQOLへの影響. アレルギーの臨床. 2021;41:37-46.

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日本人の進行・転移胸腺腫、ステロイドが有効か

 何らかの前治療歴を有する局所進行または転移を有する胸腺腫患者において、ステロイドが抗腫瘍効果を示す可能性が示された。新潟大学の田中 知宏氏らがRespiratory Investigation誌2024年7月4日号で報告した。 国立がん研究センターにおいて、2010年1月~2021年3月にステロイド単剤(プレドニゾロンまたはデキサメタゾン)による治療を受けた局所進行または転移を有する胸腺腫患者13例を対象として、後ろ向き研究を実施した。評価項目は、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などとした。 主な結果は以下のとおり。・胸腺腫のWHO分類の内訳はABが3例(23%)、B1が1例(8%)、B2が5例(38%)、B3が4例(31%)であった。・対象患者は、手術、放射線療法、化学療法のうち、少なくとも1つ以上の治療歴があった。・ステロイドの初期用量は、プレドニゾロン換算で0.9mg/kg/日(範囲:0.4~1.1)であった。・ORRは53.8%(7/13例)で、SDは38.5%(5/13例)であった。・奏効までの期間の中央値は21日(範囲:6~88)であった。・PFS中央値は5.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.5~9.6)であった・OS中央値は25.3ヵ月(95%CI:7.1~推定不能)であった。・WHO分類B3の患者は良好な治療反応を示す傾向にあった(ORR:75%、PFS中央値:10.6ヵ月、OS中央値:45.0ヵ月)。 本研究結果について、著者らは「局所進行または転移を有する胸腺腫患者において、ステロイド単剤が抗腫瘍効果を示した。先行研究において、アントラサイクリンを含む化学療法でのORRは59.0%、カルボプラチン+パクリタキセルでのORRは42.9%、ペメトレキセド単剤でのORRは26.0%であったことが報告されており、ステロイド単剤は化学療法と同等の効果を示すことが示唆される。ステロイドによる治療は、手術や放射線療法、化学療法に失敗した患者にとって、有望な治療選択肢の1つになると考えられる。今後の研究では、最適な初期用量や治療期間の確立が必要である」と考察した。

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慢性手湿疹、デルゴシチニブ外用薬が有効/Lancet

 中等症~重症の慢性手湿疹を有し、基本的なスキンケアやコルチコステロイド外用薬では十分にコントロールできない患者の治療において、基剤を含み有効成分を含まないクリームと比較してヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬デルゴシチニブを含有するクリームは、16週の投与で高い有効性を示し、忍容性も良好であることが、カナダ・Innovaderm ResearchのRobert Bissonnette氏らtrial investigatorsが実施した2つの臨床試験(DELTA 1試験、DELTA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月18日号で報告された。同一デザインの2つの無作為化第III相試験 DELTA 1試験とDELTA 2試験は、いずれも基剤を対照とした二重盲検無作為化第III相試験であり、DELTA 1は2021年5月~2022年10月に6ヵ国53施設で、DELTA 2は2021年5月~2023年1月に7ヵ国50施設で患者を登録した(LEO Pharmaの助成を受けた)。 両試験とも、年齢18歳以上、中等症~重症の慢性手湿疹と診断され、スクリーニング時から過去1年以内にコルチコステロイド外用薬の効果が不十分か、医学的に推奨されなかった患者を対象とした。手湿疹の重症度は、Investigator's Global Assessment for Chronic Hand Eczema(IGA-CHE)の修正版(5段階:0[皮膚病変消失]、1[同ほぼ消失]、2[軽症]、3[中等症]、4[重症])に準拠した。 被験者を、デルゴシチニブ クリーム20mg/g(1日2回)を塗布する群または基剤クリームを塗布する群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、16週の時点におけるIGA-CHEに基づく治療成功とした。治療成功は、IGA-CHEスコアが0(皮膚病変消失)または1(同ほぼ消失)で、ベースラインから16週目までに少なくとも2段階の改善を達成した場合と定義した。主な副次エンドポイントもすべて有意に良好 DELTA 1試験は487例(年齢中央値44.0歳[四分位範囲:32.0~55.0]、女性306例[63%])を、DELTA 2試験は473例(44.0歳[33.0~56.0]、312例[66%])を登録した。DELTA 1試験の325例とDELTA 2試験の314例をデルゴシチニブ群に、それぞれ162例と159例を基剤群に割り付けた。 16週の時点で、治療成功を達成した患者の割合は、DELTA 1試験では基剤群が9.9%(16/162例)であったのに対しデルゴシチニブ群は19.7%(64/325例)(群間差:9.8%、95%信頼区間[CI]:3.6~16.1、p=0.0055)、DELTA 2試験では基剤群の6.9%(11/159例)に比べデルゴシチニブ群は29.1%(91/313例)(22.2%、15.8~28.5、p<0.0001)と、どちらの試験も有意に優れた。 2つの試験の双方とも、主な副次エンドポイント(4および8週時のIGA-CHEに基づく治療成功、手湿疹重症度指数[HECSI]、手湿疹症状日誌[HESD]、皮膚疾患の生活の質指標[DLQI]など)はすべて、デルゴシチニブ群で有意に良好だった。有害事象の頻度は、2試験とも両群で同程度 有害事象を報告した患者の割合は、デルゴシチニブ群がDELTA 1試験で45%(147/325例)、DELTA 2試験で46%(143/313例)、基剤群はそれぞれ51%(82/162例)および45%(71/159例)であり、2つの試験とも両群で同程度であった。 2%以上の患者に発現した最も頻度の高い有害事象は、新型コロナウイルス感染症(デルゴシチニブ群:DELTA 1試験11%、DELTA 2試験12%、基剤群:DELTA 1試験9%、DELTA 2試験13%)、鼻咽頭炎(7%、9%、7%、6%)、頭痛(3%、2%、6%、6%)であった。また、重篤な有害事象(2%、2%、2%、2%)の頻度も同程度であったが、試験薬関連の可能性がある有害事象(4%、8%、7%、7%)はDELTA 1試験ではデルゴシチニブ群で少なく、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(1%、4%、<1%、3%)は2つの試験ともデルゴシチニブ群で少なかった。 著者は、「これらのデータは、デルゴシチニブ クリームは、治療が困難な場合が多いこの患者集団において、臨床徴候や症状の緩和のための革新的な治療選択肢となることを示唆する」「デルゴシチニブ クリームは、限られた皮膚領域に局所的に適用されるため、全身投与に伴う安全性の懸念なしに、JAK阻害薬による治療の有益性が得られる可能性がある」としている。

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口腔がんが日本人で増加傾向、その最大要因とはー診療ガイドライン改訂

 『口腔癌診療ガイドライン2023年版 第4版』が昨年11月に4年ぶりに改訂された。口腔がんは歯科医も治療を担う希少がんだが、口腔がんを口内炎などと見間違われるケースは稀ではないという。そこで今回、日本口腔腫瘍学会学術委員会『口腔癌診療ガイドライン』改定委員会の委員長を務めた栗田 浩氏(信州大学医学部歯科口腔外科学 教授)に口腔がんの疫学や鑑別診断などについて話を聞いた。 口腔癌診療ガイドライン2023年版では、日常的に出くわす臨床疑問に対してClinical Question(CQ)を設定、可能な限りのエビデンスを集め、GRADEアプローチに準じ推奨を提案している。希少がんであるがゆえ、少ないエビデンスから検証を行っていることもあり、FRQ(future research question)やBQ(background question)はなく、すべてがCQだ。同氏は「アナログな手法ではあるが、システマティック・レビューで明らかになっているCQの “隙間を埋める”ように、明らかにされていない部分のCQを作成し、全部で60個を掲載した」と作成経緯を説明した。口腔がんの好発年齢は50歳以降、インドや欧州で罹患率が高い 口腔がんとは、顎口腔領域に発生する悪性腫瘍の総称である。病理組織学的に口腔がんの90%以上は扁平上皮がんであり、そのほかには小唾液腺に由来する腺系がんや肉腫、悪性リンパ腫、転移性がんなどがあるが、口腔癌診療ガイドライン2023年版では最も頻度が高い口腔粘膜原発の扁平上皮がんを「口腔がん」として記している。 口腔がんの好発年齢は50歳以降で加齢とともに増加し、男女比3:2と男性に多いのが特徴である。これまで国内罹患数は年間5,000~8,000人で推移していたが、近年の罹患数は年間1万人と増加傾向にあるという。これについて栗田氏は「もともと世界的にはインドや欧州での罹患率が高いが、日本人で増えてきているのは高齢化が進んでいることが要因」とコメントした。部位別発生率については、2020年の口腔がん登録*の結果によると、舌(47.1%)、下顎歯肉(18.4%)、上顎歯肉(11.9%)、頬粘膜(8.6%)、口底(6.6%)、硬口蓋(2.6%)、下顎骨中心性(1.7%)、下唇(0.8%)で、初診時の頸部リンパ節の転移頻度は25%、遠隔転移は1%ほどである。*日本口腔外科学会および日本口腔腫瘍学会研修施設における調査。扁平上皮がん以外も含む。 また、口腔がんの場合、口腔以外の部位にがんが発生(重複がん)することがあり、重複がんの好発部位と発生頻度は上部消化管がんや肺がんが多く、11.0~16.2%に認められる。これはfield cancerizationの概念1,2)で口腔と咽頭、食道は同一の発がん環境にあると考えられているためである(口腔癌診療ガイドライン2023年版CQ1、p.80)。 これまで、全国がん登録を含め口腔がんの統計は口腔・咽頭を合算した罹患数の集計になっていたため、口腔がん単独としては信頼性の高いデータは得られていなかった。同氏は「咽頭がんと口腔がんでは性質が異なるので別個の疾患として捉えることが重要」と、口腔がんと咽頭がんは別物であることを強調し、「口腔癌診療ガイドライン2023年版に記されている罹患率は口腔がん登録のものを記しているため、全国がん登録の罹患状況とは異なる。その点に注意して口腔癌診療ガイドライン2023年版を手に取ってもらいたい。今後、口腔がんに特化したデータの収集を行うためにも口腔がん登録が厳正に進むことを期待する」と説明した。口腔癌診療ガイドライン、ハイリスク患者には放射線療法を提案 口腔がんが生じやすい部位や状態は、舌がん、歯肉がん、頬粘膜がんの順に発生しやすく、鑑別に挙げられる疾患として口内炎、歯肉炎、入れ歯による傷などがある。「もし、口内炎であれば通常は3~4日、長くても2週間で治る。この期間に治らない場合や入れ歯が合わないなどの原因をなくしても改善しない場合、そして、白板症、紅板症のような前がん病変が疑われる場合は歯科や口腔外科へ紹介してほしい。またステロイド含有製剤の長期投与はカンジダなど別疾患の原因となる可能性もあり避けてほしい」と話した。 口腔がんの治療は主に外科療法で、口腔を含む頭頸部がんにも多くの薬剤が承認されているが、薬物療法のみで根治が得られることは稀である。再発リスク因子(頸部リンパ節節外進展やその他リスク因子)がある場合には、術後化学放射線療法や術後放射線療法を行うことが提案されている(口腔癌診療ガイドライン2023年版CQ33、p.146)。外科手術や放射線療法の適応がない切除不能な進行がんや再発がんにおいては、第1選択薬としてペムブロリズマブ/白金製剤/5-FUなどが投与されるため、がん専門医と連携し有害事象への対応が求められる。口腔がんの予防・早期発見、まずは口腔内チェックから 口腔がんの主な危険因子(口腔癌診療ガイドライン2023年版CQ2~4、p.81~85)として喫煙や飲酒、合わない入れ歯による慢性的な刺激、そしてウイルス感染(ヒトパピローマウイルス[HPV]やヒト免疫不全ウイルス[HIV]など)が挙げられるが、「いずれも科学的根拠が乏しい。早期発見が最も重要であり、50歳を過ぎたら定期的な口腔内チェックが重要になる」と強調した。 現在、口腔以外の疾患で入院している患者では周術期などの口腔機能管理(口腔ケア、栄養アセスメントの観点からの口腔内チェックなど)が行われており、その際に口腔がんが発見されるケースもある。健康で病院受診をしていない人の場合には、近年では各歯科医師会主導の集団検診や人間ドックのオプションとして選択することがリスク回避の場として推奨される。同氏は「歯周病検診は口腔機能をチェックするために、口腔がん検診は生活習慣病の一貫として受けてほしい。口腔がん検診は目に見えるため容易に行えるほか、前がん病変、口腔扁平苔癬、鉄欠乏性貧血、梅毒による前がん状態などの発見にもつながる」と説明した。 最後に同氏は「口腔がんは簡単に見つけられるのに、発見機会が少ないがゆえに発見された時点で進行がんになっていることが多い。進行がんでは顔貌が変化する、食事は取りづらい、しゃべることが困難になるなど、人間の尊厳が奪われ、末期は悲惨な状況の患者が多い。そのような患者を一人でも減らすためにも早期発見が非常に重要」とし、「診察時に患者の話し方に違和感を覚えたり、食事量の低下がみられたりする場合には、患者の口腔変化を疑ってほしい」と締めくくった。

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第220回 コロナ第11波に反しワクチンが打てない!?その最大原因は…

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)ワクチンの特例臨時接種が今年3月末で終了し、2024年4月以降は65歳以上の高齢者と基礎疾患を有する60~64歳が秋冬1回の定期接種、そのほかの人は任意接種となる1)のは周知のことだ。現在は秋冬の定期接種に向けての準備期間となるが、実はこの時期、新型コロナワクチン“難民”が出現している。コロナワクチン難民?私がこのことを知ったのは6月に入ってすぐだ。友人から何の脈絡もなく「ちょっと教えてほしいんだけど、コロナの予防接種って任意になってからできるとこが少ないの? 仙台の人なんだけど、病院や行政や医師会に聞いてもみつからなくて埼玉で接種したって…」とのメッセージが送られてきた。今だから明かすと、この時は多忙だったことに加え、極めて特殊事例か最悪はガセネタだと思って既読スルーしてしまった。もっとも特例臨時接種終了後、接種可能な医療機関が減少するであろうことは容易に想像がついた。ご存じのように新型コロナのmRNAワクチンは保管管理に手間がかかる。現在、国内で承認されているのは、ファイザーのコミナティ、モデルナのスパイクバックス、第一三共のダイチロナの3種類。このうちコミナティとスパイクバックスは、出荷時は超低温で冷凍され、2~8℃の冷蔵庫で解凍後の保存可能期間はコミナティが10週間、スパイクバックスが30日間。いずれも再冷凍は不可だ。ダイチロナは冷蔵保存が可能で保管可能期間は7ヵ月とコミナティやスパイクバックスよりは扱いやすい。そして、1バイアル当たりはコミナティが6回接種分、スパイクバックスが10~20回接種分、ダイチロナは2回接種分で、1度針を刺したバイアルはコミナティ、スパイクバックスでは12時間以内、ダイチロナは24時間以内に使い切らねばならない。要はそれだけの接種希望者を一度に集めなければ、残りは廃棄になり、医療機関側はその分の損失を被るだけになる。この点を解決すべく、コミナティに関しては5月中旬に1人用バイアルが登場したばかりだ。とはいえ、まさか東北地方の首都と言ってもいい仙台で、新型コロナワクチンを接種できない事態はあるはずがないと思っていた。実際、友人からのメッセージにも「あれだけたくさんあったはずのワクチンがないって」との記述があったが、私も同じ考えだったのだ。しかし、数日後、たまたまこの友人と直接会う機会があり、そこで話を聞いて一定の信憑性があると感じた。大元の情報提供者は私の地元である仙台に在住。たまたま、以前の本連載で触れた父親が使い始めた車椅子の操作を確認するため帰省する予定だったので、実際に話を聞いてみることにした。任意接種できる場所、どこにもみつからない!情報提供者のAさんは40代の大学教員。20年ほど前から風邪をひくと咳が1~2ヵ月続く体質で、仙台に住み始めてから呼吸器科を受診し、咳喘息の診断を受けている。このため年1回ぐらいの頻度でステロイド吸入薬を頓用していたが、コロナ禍中にユニバーサルマスクが社会全体に浸透したおかげで、2020年以降は咳喘息の症状をほとんど経験しなかったという。新型コロナワクチンに関しては、いわゆる自己申告の基礎疾患保有者として優先接種対象となり、昨年9月に6回目の接種を終了していた。しかし、今年2月にAさんの子供の学校で新型コロナが大流行し、自身も家庭内感染をしてから事態は一変。新型コロナの主な症状が治まった後も咳の症状はひかない。しかも、「大きめの声を出すと、咳が止まらなくなる。ひどいときは喋れないぐらい」(Aさん)まで症状が悪化したそうだ。受診した医療機関で新型コロナ感染や咳喘息の既往を伝えたところ、診察した医師から「半年くらい症状が続くと思われます」と即答された。いわゆる後遺症である。私が話を聞いたのは6月下旬だったが、取材中にも一度ひどく咳込んで水を口にし、ステロイド薬も1日1回は吸入しなければならなくなっていた。二度と感染したくないと思ったAさんは3月中旬から新型コロナワクチンの任意接種ができそうな医療機関を探し始めた。しかし、当時はいくら検索しても、見つかるのは同月末の特例臨時接種終了の告知ばかり。厚生労働省にも直接連絡を取ってみたが、「任意接種できる医療機関の情報はとりまとめていないので、各医療機関に個別に問い合わせてください」との返答で、かかりつけの呼吸器内科も、今後、任意接種を自院で行うかは未定とのことだった。一旦は諦めたA氏だったが、コミナティの1人用バイアルが5月中旬にも承認の見通しと報じられていたため、5月のゴールデン・ウイーク中から再び接種可能な施設を探すために医療機関へ問い合わせを始めた。仙台市内の大学附属病院、公立・公的病院から順に電話で問い合わせ、いずれも「接種は行っていない」との回答を受けたという。その後は呼吸器内科がありそうな病院・クリニック、特例臨時接種時に接種を行っていた病院・クリニックなどにも電話をかけ続けたAさん曰く、「『盛ってませんか?』と言われることもあるが、100軒以上は電話した」という。しかし、仙台市内でこの時期、任意接種可能な医療機関はついに見つからなかった。Aさんはこのほかにも宮城県庁、仙台市役所、宮城県と仙台市の医師会にも問い合わせたが、いずれも「現時点で任意接種できる医療機関はわからず、そうした情報をとりまとめてもいない。とりあえずご意見は承るが、現時点で任意接種対応医療機関情報をとりまとめる予定はない」という趣旨の回答しか得られなかった。新型コロナワクチン求め、問い合わせ窓口巡りまた、ファイザー、モデルナ両社の一般向け相談窓口にも問い合わせをしたが、接種可能な医療機関情報の公表について、ファイザーは「まだそういう予定はない」、モデルナは「検討中」との回答。そして嬉しいことにモデルナ社への問い合わせ時に秋田県由利本荘市が同市内で任意接種可能な医療機関名の一覧をホームページ(HP)で公表していたことを知った。Aさんは仙台から車で由利本荘市に行くことも念頭に、HPに掲載されていた各医療機関に問い合わせたが、いずれの医療機関もこの時点では接種を始めていないことがわかった。そこでAさんは由利本荘市健康福祉部健康づくり課に連絡を取り、市外在住者であることを伝えたうえでリストの更新を要請した。その甲斐があってか、現在は同HPでは各医療機関の任意接種開始時期が記載されている。この時点でほぼ万事休すかに思われた。AさんはX(旧Twitter)でワクチン接種医療機関をまとめているアカウントをウォッチし、東京都内で何軒か任意接種が可能な医療機関は見つけてはいたが、いずれも東京駅からはさらに電車で1時間は要する場所。「これでは接種に行くのはほぼ1日がかりになる」と思っていた矢先、X上で偶然、新幹線で大宮まで約1時間、そこから在来線に乗り換えて10分ほどで行ける埼玉県さいたま市浦和区で接種可能なクリニックを発見した。同クリニックのHPで接種可能なことを確認して予約を入れ、仙台から新幹線で現地に向かい無事接種することができた。ワクチンの接種料金は1万6,000円。これに仙台から浦和までの新幹線と在来線の往復料金が2万1,000円強。合計4万円弱の費用がかかった。なんとも高価な接種となったが、多くの人にとってはそこまでの対応はほぼ不可能だ。こんなにも苦労したAさんだが、現在はモデルナだけが接種可能な医療機関を公表している2)など状況はやや改善している。そこでmRNAワクチンを供給する3社に私自身が今回の事例を説明し、各社の対応について問い合わせてみた。任意接種可能な医療機関について、各社の対応まず、モデルナ社によると、接種可能医療機関の公表は5月下旬にスタート。その経緯について、同社のコミュニケーションズ&メディア担当者は「どの施設でワクチン接種できるのか情報がなく困っている患者さんやご家族は多く、コールセンターへの問い合わせも多くあったため」と回答した。現時点では掲載に同意した医療機関のみ公開しており、「当社サイトを経由して、ワクチンを接種できたとの声もいただいている」という。ファイザーの広報部門は「当社への問い合わせの詳細な内容は回答できないが、ワクチン接種医療機関がみつけられず、困っている人が一部にいることなどは認識している。現時点では、一般人に医療用医薬品の宣伝を禁じる広告規制なども鑑み、接種可能医療機関の検索システムなどはHPに設けてはいない。ただ、接種希望者への適切な情報伝達は社としても重視をしており、その実現のために現在さまざまな可能性を検討中」とのこと。第一三共のコーポレートコミュニケーション部広報グループは「一般の方から当社相談窓口に接種医療機関などに関する問い合わせをいただいている事実はあるが、現時点で接種可能な医療機関リストなどを公開する予定はない」という。ちなみに広告規制との兼ね合いについて、すでに接種医療機関を公表しているモデルナに重ねて問い合わせしたところ、「社内の必要な承認プロセスと厚生労働省への確認も経たうえで公開している」とのことだった。今回、接種に至るまで驚くほど苦労したAさんに改めてこの事態をどう考えるかを尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。「何よりもまず、行政や医師会がきちんと動いてほしい。私がネット上を見る限り、今現在も接種希望者は一定数いる。私は強い接種希望があったから、埼玉県まで接種に行ったが、多くの人が同じことはできない。任意接種と言いつつ、地域によっては事実上接種不可能という現状は問題だと思う」少なくとも今回のような事例は、行政、医師会、製薬企業のそれぞれが単独で解決できるコトではないのは確かである。参考1)厚生労働省:新型コロナワクチンについて2))モデルナワクチン接種医療機関一覧

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日本のリアルワールドデータから考える高リスクmHNPCの治療選択(J-ROCK)

 転移を有するホルモン療法未治療前立腺がん(mHNPC)に対しては、アンドロゲン除去療法(ADT)+アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)やADT+ドセタキセル併用療法が登場し標準治療となっているが、日本の実臨床では従来のホルモン療法が依然として使われるケースも多い。高リスクmHNPCに対する日本での治療実態と臨床転帰を明らかにすることを目的に、多施設共同の前向き観察研究(J-ROCK試験)が実施され、3年時の第2回中間解析結果がEuropean Urology Oncology誌2024年6月号に報告された。本論文の筆頭著者である三宅 秀明氏(神戸大学大学院医学研究科腎泌尿器科学分野)に、今回の結果を踏まえたmHNPCの治療選択の考え方について話を聞いた。ADT単独またはCABが38%、ADT+ARSIまたはドセタキセルが62% J-ROCK試験は、日本国内の77施設で2019年5月1日以降に診断された、20歳以上の高リスク(Gleasonスコア≧8/≧3個の骨病変/内臓転移の3つのうち2つ以上を有する)mHNPC患者が対象。ADT単独またはCAB療法を受けた患者をコホート1、ADT+ARSI(アビラテロン+プレドニゾロン[AAP]/エンザルタミド/アパルタミド)またはADT+ドセタキセルによる治療を受けた患者をコホート2として、前立腺特異抗原(PSA)反応性、無増悪生存期間(PFS)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)までの期間、全生存期間(OS)、安全性などが評価された。 974例が登録され、コホート1が38.1%、コホート2が61.9%を占めた。この実臨床での使用状況について三宅氏は、「日本の状況として想定していたよりはコホート2が多い印象を受けた。ただし本試験の参加施設は大学病院や地域の基幹施設が中心で、日本全体を反映しているものとは必ずしも言えないことに注意が必要」と話す。コホート1ではCAB療法(250/371例、67.4%)が多く、コホート2ではADT+AAP(358/603例、59.4%)が最も多い結果となったが、コホート2の薬剤選択には承認時期が影響している可能性が考えられる。 コホート1とコホート2のベースラインの患者特性はそれぞれ、年齢中央値:75.0歳vs.72.0歳、PSA中央値:284.5ng/mL vs.358.1ng/mL、骨転移数:8.0 vs.10.0、Gleasonスコア8:39.4% vs.35.7%、9:52.3% vs.49.9%、10:7.3% vs.12.4%であり、年齢とGleasonスコアを除いて差はみられなかった。背景として、年齢が高い場合は副作用などを考慮して従来のホルモン剤、リスクが高い場合は新規ホルモン剤や抗がん剤との併用という選択がなされていることが想定される。三宅氏はリスクによる薬剤選択について、「昨年改訂された前立腺癌診療ガイドラインでは、リスクによらず原則としてARSIを初回から用いることが推奨された。超高齢、PS不良、経済的な事情で新規薬剤を希望しないというケースは考慮すべきだが、エビデンスからも初回からのARSIが推奨されている」とした。PFS、CRPCまでの期間、OS、PSA低下率はいずれもコホート2で良好 追跡期間中央値22.7ヵ月時点におけるPFS中央値は19.3ヵ月vs.34.3ヵ月(調整ハザード比[HR]:0.42、95%信頼区間[CI]:0.31~0.55)、CRPCまでの期間は15.7ヵ月vs.NE(調整HR:0.28、95%CI:0.23~0.36)、OSはNE vs.NE(調整HR:0.54、95%CI:0.35~0.82)といずれもコホート2で良好であった。 コホート治療開始後3ヵ月の時点で、PSA低下率90%以上の患者の割合は69.3% vs.87.6%、50%以上の患者の割合は83.6% vs.91.4%、PSA0.2ng/mL以下の達成者の割合は8.6% vs.28.5%、0.1ng/mL以下の達成者の割合は4.3% vs.20.4%とコホート2で良好であった。 三宅氏はこれらの結果について、少なくとも高リスク症例においては、従来のホルモン剤と比較して新規薬剤を使用することで予後を改善できることが日本のリアルワールドデータでも示されたとし、OSについても良好な傾向がみられており、今後の長期解析結果に注目していきたいとした。 なお、レジメン別にPSA低下率をみると、ADT+アパルタミドが他のARSIやドセタキセルと比較して良好な傾向を示している。三宅氏は、この結果が予後の延長につながっていくのかどうかについても、注視していきたいと話した。 安全性については、特筆すべき副作用(ADRSI)はコホート1で1.3%、コホート2で15.1%に認められ、最も多いADRSIは皮疹であり、ALT上昇、AST上昇が続いた。Grade3以上のADRSIはコホート1では認められなかったのに対し、コホート2では2.2%で発生した。有害事象による治療中止は、コホート1が4.3%、コホート2が13.9%、死亡例はそれぞれ1.9%と1.7%であった。 三宅氏は「有害事象が多いからという理由で新規薬剤の選択を躊躇する必要はまったくない」とし、有害事象による休薬や中止を含め予後が改善されたというデータが出ており、有害事象対策をより適切に・緻密に講じることで予後がより改善する可能性があることをポジティブに捉えていく必要があるのではないかと話した。どのARSIを使う? コホート2の中でどの薬剤を使うかについては、「抗がん剤を初回から使うことには患者さんに抵抗感がある場合も多いので、基本的にはまずARSIから選択していくことが原則となるだろう」と三宅氏。ARSIの各薬剤については、「それぞれの特徴を頭に入れながら選択していく形となる」と話した。アビラテロンはステロイドの併用が必要であり、アパルタミドでは皮疹、エンザルタミドでは疲労の頻度が高いことに注意が必要となる。 臨床試験結果および高リスク症例対象ではあるが日本のリアルワールドデータのいずれにおいても、従来のホルモン剤による治療と比較してARSIは予後を改善することが示された。三宅氏は、「積極的に新規薬剤を導入しつつ、有害事象には十分に注意をするということが、患者さんの予後改善につながっていく」として、原則として初回からARSIの使用を検討していく重要性を述べた。

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片頭痛の予防薬は薬物乱用頭痛も減らす?

 慢性片頭痛に苦しんでいる人は、鎮痛薬を飲み過ぎると薬物乱用頭痛に襲われるという悪循環に陥ることがある。こうした中、片頭痛の予防薬として広く使用されているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬のatogepant(商品名Qulipta、日本国内未承認)が、薬物乱用頭痛の回避にも役立つ可能性のあることが、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のPeter Goadsby氏らの研究で示された。CGRPは、片頭痛を誘発するタンパク質の1つである。この研究の詳細は、「Neurology」に6月26日掲載された。 慢性片頭痛とは、頭痛が月に15日以上の頻度で起こり、そのうち8日以上が片頭痛の診断基準を満たしている状態と定義されている。今回の研究には、755人の慢性片頭痛患者が参加した。参加者の平均的な1カ月当たりの片頭痛の日数は18.6~19.2日、頭痛薬の使用日数は14.5~15.5日だった。また、頭痛薬の使用歴について報告があった参加者の3分の2に当たる500人(66.2%)が頭痛薬の使用過多の基準を満たしていた。この基準は、頭痛薬の種類がアスピリンやアセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の場合は月に15日以上、トリプタン製剤やエルゴタミン製剤の場合は月に10日以上、複数の頭痛薬を併用した場合は月に10日以上使用した場合と定義された。 参加者は12週間にわたって、1)atogepant 30mgを1日2回、2)atogepant 60mgを1日1回、3)プラセボを摂取する群のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、頭痛薬使用過多の基準を満たしていた患者のうち、プラセボを使用していた群と比べてatogepant 30mg群では1カ月当たりの片頭痛日数が約3日少なく(最小二乗平均の差−2.7日)、頭痛日数も約3日少なかった(同−2.8)。また、atogepant 60mg群では、プラセボ群と比べて片頭痛日数が約2日少なく(同−1.9)、頭痛日数も約2日少なかった(同−2.1)。Goadsby氏らによると、頭痛薬使用過多の基準を満たしていなかった研究参加者においても、同様の結果が示されたという。 さらに、頭痛薬使用過多の基準を満たしていた患者のうち、1カ月当たりの片頭痛の平均日数が50%以上減少した患者の割合は、プラセボ群の24.9%に対してatogepant 30mg群では44.7%、atogepant 60mg群では41.8%であることも示された。このほか、頭痛薬使用過多の基準を満たした患者の割合も、atogepant 30mg群では61.9%、atogepant 60mg群では52.1%減少したのに対し、プラセボ群では38.3%の減少にとどまっていた。 Goadsby氏は、「片頭痛持ちの人は、衰弱性の症状となることの多い頭痛を抑えるために鎮痛薬を多用する傾向がある。しかし、薬の使い過ぎは薬物乱用頭痛と呼ばれる頭痛を引き起こす可能性があるため、予防的な治療が必要だ」と言う。そして、「この結果に基づけば、atogepantによる治療は頭痛薬の使用量を減らし、薬物乱用頭痛の発生リスクを低下させ得ると考えられる。このことは、片頭痛を抱える人の生活の質(QOL)の向上をもたらす可能性がある」と「Neurology」のニュースリリースの中で述べている。ただし、今後、atogepantの有効性と安全性を評価するためのさらなる研究が必要である。 またGoadsby氏らは、今回の研究の限界として、頭痛や頭痛薬使用の状況が研究参加者の自己報告に基づいているため、報告が正確でない可能性も考えられることを挙げている。なお、この研究はatogepantを製造しているAbbVie社の資金提供により実施された。

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臨床現場で感じる甲状腺眼症診療の課題とは?/アムジェン

 アムジェンは、2024年6月20日に、甲状腺眼症の診療を取り巻く現状や課題をテーマとしたメディアセミナーを開催した。同セミナーでは、渡邊 奈津子氏(伊藤病院 内科部長)が甲状腺眼症の診断や治療について、神前 あい氏(オリンピア眼科病院 副院長)が甲状腺眼症の臨床経過についてそれぞれ語った。活動期の早期の治療が求められる甲状腺眼症 甲状腺眼症はバセドウ病やまれに橋本病に伴ってみられる眼窩組織の自己免疫性炎症性疾患であり、多岐にわたる眼症状を引き起こす。甲状腺は、甲状腺ホルモンを合成・分泌する役割を担っており、正常な状態では下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺のTSH受容体と結び付き、適量のホルモンが分泌される。しかし、バセドウ病では、TSH受容体に対する抗体が生成され、常にTSH受容体が刺激されて過剰なホルモンが分泌される。甲状腺眼症は、目の周囲の眼窩におけるTSH受容体が刺激されることで発症する。甲状腺眼症の病態は非常に広範であり、瞼、角膜、結膜、外眼筋、視神経、脂肪組織、涙腺など、さまざまな部位に影響を及ぼす。たとえば、涙腺の炎症によって涙が出にくくなったり、脂肪組織や外眼筋の肥大により眼球が飛び出したりするケースがある。最重症例では、視神経が圧迫されて視力障害や視神経萎縮が起こることもある。一方で、眼の症状については見落とされることがしばしばあり、臨床で問題となることもあるという。 甲状腺眼症においては、軽症から中等症の患者の約6割が自然に改善するとされるが、眼球突出や外眼筋障害の場合は治療介入が必要となる。治療法としては、活動期にステロイド治療や放射線治療を行うことが有効だが、活動期を過ぎてしまうとこれらの効果が薄れてしまう。そのため、重症度分類とClinical Activity Score(CAS)を用いた活動性評価を実施し、タイミングを見極めて治療を行うことが重要となる。また、活動性の評価にはMRIを用いた画像診断も推奨される。また、喫煙や甲状腺機能の管理、酸化ストレスなどの甲状腺眼症のリスク因子の管理が重要であり、初診時だけでなく定期的な目のチェックが必要である。 甲状腺眼症の患者は、視機能障害のみならず、見た目の変化や職業での制限、心理的な影響などによってQOLが損なわれることが多い。とくに複視や眼球突出がQOLに大きな影響を与えるとされるほか、若い女性では外見上の問題が深刻で、軽症であってもQOL改善のために治療を望む患者も多いことに注意が必要である。 渡邊氏は内科医として、眼科専門医と患者との三者間で連携し、甲状腺眼症の診療を行うことが重要であると強調した。甲状腺眼症の特徴的な所見とは 続く講演で神前氏は、自身の経験した症例から甲状腺眼症の治療と臨床経過について説明した。甲状腺眼症において、眼瞼や眼球突出などの症状の進行具合や重さは患者によって異なるという。甲状腺眼症の所見として最も多いのは眼瞼の症状で、バセドウ病を併発している場合はその症状の悪化に伴い、ミュラー筋の緊張により上眼瞼が開くことが多い。この症状はバセドウ病の治療で改善するが、上眼瞼挙筋の炎症や腫れが進行すると、瞼が腫れ、目が閉じにくくなることがある。神前氏の施設では約6割の患者がこの瞼の腫れを訴えているというが、一重まぶたが多い日本人では腫れがわかりにくいこともある。その場合は、目を下に向けると目が閉じにくいといった所見を確認することで鑑別できるという。また、眼球突出は脂肪や筋肉の腫れが原因で起こるが、黒目の下の白目が見えてくるという点が眼球突出を見極めるポイントとなる。アンメットニーズを満たす新たな治療への期待 甲状腺眼症の炎症が続いて眼の症状が悪化した場合は、炎症が治まる前に消炎治療が必要になる。日本での消炎治療としてはステロイド治療や放射線治療が用いられるが、消炎治療のみで改善しない場合には、手術が必要になることもある。また、2015年からは斜視に対するボツリヌス毒素注射も保険適用されている。瞼の腫れや見開きに対しては、ステロイドの局所注射が効果的であり、約6割の患者が1回の注射で症状が改善するという。複数回の注射を行うことで、瞼の見開きや腫れがさらに改善される。また、複視の治療では、ステロイドパルス治療や放射線治療が行われ、斜視が残った場合には手術が必要な症例もある。最重症例の圧迫性視神経症は、視神経が筋肉に圧迫されることで視力障害を引き起こす症状であり、ステロイドパルス治療や眼窩減圧手術が必要になることが多い。とくに視力が0.1以下の重症例では、手術が必要になる確率が高いという。 講演の最後に神前氏は、甲状腺眼症のアンメットニーズについて、現状の消炎治療では眼球突出の改善が難しく手術が必要になってしまうと語り、「ステロイド治療や放射線治療が効果のない症例に対しては新たな治療法が望まれる」と締めくくった。

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