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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第61回

第61回:ALK-TKIの使い分け、irAEへのステロイド長期使用(視聴者からの質問)キーワード肺がんメラノーマALK-TKIアレクチニブirAE動画書き起こしはこちら音声だけをお聞きになりたい方はこちら //playstopmutemax volumeUpdate RequiredTo play the media you will need to either update your browser to a recent version or update your Flash plugin.こんにちは。ダートマス大学腫瘍内科の白井敬祐です。今日はこのプログラムを見てくださっている方からの質問があるので、お答えしたいと思います。1つ目はALKインヒビターをどのように使っているか、ということなんですけども、J-ALEX、Global ALEX study両方で、アレクチニブのPFSの結果がでたので、アレクチニブを1stラインに使うことが多くなっています。ただ、アレクチニブが効かなくなったときはどうするのかということで、リキッドバイオプシーを使って研究を進めるという話を聞いたことあるんですけど、そこに使われるGUARDANTという会社のキット、ALKインヒビター耐性のさまざまなミューテーションについて結果を出してくるので、それを使うことが多くなっています。リキッド・バイオプシーのメリットとしては、病気が進行したときに、繰り返しできる…やはりティシュー・バイオプシーに比べるとやりやすいということなんですけど、ただコストがかかるので、日本では1回の診断につき1回のみと聞いたことがありますが、アメリカでもそれを何回まで許すか、どこまで保険会社が払ってくれるかというのは、まだはっきりしてないようです。数年前にAlice Shaw先生というMGH(Massachusetts General Hospital)の先生が出した論文でも、そういうものを使うことで、kinaseインヒビターをリサイクルできるということがあったので、刻々と変わってく可能性があるものを追跡するというのは、学問的には非常に興味のあるところです。ただ、耐性のミューテーションに対して、この薬が効くとか効かないとか、今一覧表みたいなものが出てるんですけれども、必ずしもそれでは一概には言えないようなこともあるのでそれがまだ難しいところですね。ローラチニブという薬が今、compassionate use、まだFDAには認可されてないけども、そういう特殊なミューテーションがあった場合にはFDAに手紙を書くことで、使うことが許可されるというような状況になっています。効果があることがわかっている薬を、少しでも早く患者さんに届けようというところでしょうか。実際、イピリムマブでも認可数ヵ月前から使いましたし、キイトルーダもそういう状況にありました。もう1つの質問はirAEですね。Immune relaed adverse eventに対してステロイドを長期に使用することがあるかもしれないですけど、どういったところに注意をするかというご質問をいただいたんですけど、ほとんどのirAEのステロイドというのは、僕の印象では9割5分以上は結局中止できるんですけども、確かに中には多発性筋痛症のような感じの方で、5mgとか10mg程度のプレドニゾロンを長く使われている方はいます。何回も7.5とか5とかにテーパリンしようとすると痛みが強くなって日常生活に支障を来たす方はおられますね。そういう方には、骨粗鬆症も考えてビタミンDとカルシウムを飲んでもらったりしてるんですが、それも実際どの程度効果があるのか、わからないところは多いです。あと、やはりホルモン補充…たとえば甲状腺ホルモンとか、副腎不全になってステロイドの補充が必要という人は、ほとんどの場合、長く補充することが必要なようです。2月24日に、NCCNとASCOの共同のirAEに対するガイドラインが出たことは、以前も紹介させていただいたと思うんですけれども。流れとしては昔に乗り比べると、ステロイドから早めにインフリキシマブなどを使うことが多くなってきている印象はあります。抗炎症薬も、新しいものが出てきているので、消化器の先生と一緒に診ながら、新しいインフリキシマブではない抗炎症薬を使っている患者も数人います。この間アジュバントのニボルマブが認可になったんですけれども、クローン病をアクティブに治療されてる方が、StageIIIのメラノーマで来られて、その方は今ニボルマブとクローン病に対するmab(monoclonal antibody)を併用しながら治療しています。どういう結果になるかは、まだわからないですけれど、StageIVに関しては、自己免疫疾患に対するmabを使いながら、メラノーマに対するmabを使っても抗腫瘍効果があったという報告が、ケースレポートレベルでは出ています。大きな臨床試験グループ、ALLIANCEなどではそういう自己免疫疾患がある患者に対する、抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体を使うことに対する臨床試験(正確にデータを取ろうということなんですけど)そういう臨床試験も始まるようです。ハーバードとかスローンケタリングになると、たとえば消化器の先生でもirAEのcolitisといった消化器症状を専門にした、若手の研究者の方がたくさん出てきて(います)。そういうことで臨床の知見、経験値は上がってくるものだと考えています。アレクチニブ、未治療ALK陽性非小細胞肺がんに奏効/NEJMShaw AT,et al.Resensitization to Crizotinib by the Lorlatinib ALK Resistance Mutation L1198F.N Engl J Med.2016;374:54-61

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軽症喘息へのSMART療法 vs.ブデソニド維持療法/NEJM

 軽症喘息患者に対する52週間の治療において、ブデソニド・ホルモテロール配合剤(商品名:シムビコート)の頓用はブデソニド維持療法(1日2回投与)と比較し、重症喘息増悪の発生という点では非劣性が認められたが、症状の改善は劣っていた。ただし、ブデソニド・ホルモテロール頓用患者では吸入ステロイド薬(ICS)の使用量がブデソニド維持療法患者の約4分の1であった。南アフリカ・ケープタウン大学のEric D. Bateman氏らが、軽症喘息患者を対象とした多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「Symbicort Given as Needed in Mild Asthma 2(SYGMA2)」試験の結果を報告した。軽症喘息患者は、発作時に短時間作用性β2刺激薬(SABA)の吸入を用いることが多く、ICS維持療法のアドヒアランスは不良である。即効性吸入β2刺激薬+ICSの頓用は、こうした患者の症状改善や増悪リスクに対する新たな治療法となる可能性があった。NEJM誌2018年5月17日号掲載の報告。25ヵ国354施設の軽症喘息患者約4,200例で重症増悪発生率を評価 研究グループは、2014年11月~2017年8月に、日常的なICS定期投与の適応がある12歳以上の軽症喘息患者4,215例を、ブデソニド・ホルモテロール頓用群(プラセボ1日2回投与+ブデソニド・ホルモテロール[ブデソニド200μg、ホルモテロール6μg]頓用)(2,089例)と、ブデソニド維持療法群(ブデソニド200μg1日2回投与+テルブタリン0.5mg頓用)(2,087例)に無作為に割り付け、52週間治療を行った。 主要評価項目は、重症喘息増悪の年間発生率で、ブデソニド・ホルモテロール頓用群のブデソニド維持療法群に対する非劣性マージンは1.2と規定した。副次評価項目として、喘息症状に関し、5項目の喘息管理質問票(Asthma Control Questionnaire-5:ACQ-5、0点[障害なし]~6点[最大の障害])で評価した。重症増悪発生率は非劣性、症状コントロールは劣性 重症増悪の年間発生率は、ブデソニド・ホルモテロール頓用群0.11(95%信頼区間[CI]:0.10~0.13)、ブデソニド維持療法群0.12(95%CI 0.10~0.14)であり、ブデソニド・ホルモテロール頓用群は重症増悪という点ではブデソニド維持療法に対して非劣性であることが認められた(率比:0.97、95%信頼上限1.16)。 ICSの1日使用量の中央値は、ブデソニド・ホルモテロール頓用群(66μg)が、ブデソニド維持療法群(267μg)よりも低値であった。初回増悪までの期間は、両群で類似していた(ハザード比:0.96、95%CI:0.78~1.17)。ACQ-5のベースラインからの改善は、ブデソニド維持療法のほうが優れていた(群間差:0.11、95%CI:0.07~0.15)。

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第1回 経口ステロイドは短期服用でも有害事象リスク増【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 経口ステロイド薬は多岐にわたる疾患に使われていて、多くの疾患の治療に必須の薬剤であることに疑いの余地はありません。しかし、長期服用した場合の有害事象もよく知られているところです。では、経口ステロイド薬を短期服用した場合はどうなのでしょうか? 私は、短期服用した場合の有害事象はそれほど多くはないだろう、となんとなく思っていたのですが、その認識を改める契機となった研究を紹介します。Short term use of oral corticosteroids and related harms among adults in the United States: population based cohort study.Waljee AK ,et al. BMJ. 2017;357:j1415.この研究は、2012~14年にかけて、医療保険に加入している18~64歳の米国人154万8,945例の記録を分析したものです。そのうち32万7,452例(21.1%)が何らかの病気に対して少なくとも1回以上、短期的にステロイド薬を服用していました。論文内では30日未満を短期と定義し、30日~5ヵ月にわたり追跡調査を行っています。5分の1の人が、3年間で1回は経口ステロイド薬を使用していたというのは、本邦とは使用の感覚が少し違うのかもしれません。組み入れられている患者の条件は次のとおりでした。・平均年齢:服用群45.5±11.6歳、非服用群44.1±12.2歳・服用期間:平均6日間(四分位範囲:6~12日)、7日以上服用は47.4%(15万5,171例)・基礎疾患や過去1年以内のステロイド使用歴なし・prednisone当量の服用量:中央値20mg/日(四分位範囲:17.5~36.8mg/日)、40mg/日以上は23.4%(7万6,701例)・主な服用理由:上気道感染症、椎間板障害、アレルギー、気管支炎、下気道疾患(これら5症状が全体の約半数)アウトカムとして服用開始30日以内および31~90日の敗血症、深部静脈血栓症、骨折リスクを評価しています。平均6日間服用で敗血症、深部静脈血栓症、骨折リスクが上昇ステロイド薬服用群で1,000人・年当たりの発生頻度がもっとも高かったのは骨折(21.4件)、次いで静脈血栓塞栓症(4.6件)、敗血症による入院(1.8件)です。下記の表のように、5~30日目の非服用群の自然発生リスクと比較して、服用群の敗血症リスクは5.30倍、静脈血栓症リスクは3.33倍、骨折リスクが1.87倍という結果で、いずれも統計学的に有意差があります。1日20mg以下という比較的低用量であっても有意差は保持されていますが、高用量になるほどリスクが増加する傾向にあります。リスク上昇傾向は31~90日後には下がるものの、それでも服用者総計の敗血症は2.91倍、静脈血栓塞栓症は1.44倍、骨折は1.40倍と有意差は保持されています。相対的な数値ですので実臨床上の感覚としては大幅に増えるというほどのものではないかもしれませんが、一定の認識は持っておいたほうがよさそうです。ちなみに、40mg以上服用の5~30日の発症率比が20~39mg/日よりも低く出ているものもありますが、症例数が少なく信頼区間の幅が極めて広いため、これをもってして20~39mg/日よりリスクが低いとは言い切れません。また、31~90日目の有害事象発症率比はやはり高用量になるほど大きい傾向にあります。画像を拡大するステロイド薬の服用理由別のリスク評価はどうなのでしょうか? ステロイド薬の服用に至った理由は呼吸器系症状か筋骨格系症状かによらず、ステロイド薬服用群では各リスクが上昇する傾向が示唆されています。筋骨格系症状で服用した群の発症率比がやや多いようですが、単純に服用量が多かったという可能性も考えられます。画像を拡大するなお、年齢別、性別、人種別でのリスク評価では、おおむね年齢が高いほどリスクが上がる傾向があるようですが、人種差や性差はさほど見られませんでした。本研究の結果をもって、実際の処方提案などの介入方法を変えるという類のものではなさそうですが、経口ステロイド薬の有害事象のモニタリングは服用が短期間、低用量であっても相応の注意をもって行ったほうがよさそうです。Short term use of oral corticosteroids and related harms among adults in the United States: population based cohort study.Waljee AK ,et al. BMJ. 2017;12;357:j1415.

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軽症喘息へのSMART療法は有益か/NEJM

 軽症喘息患者に対し、ブデソニド・ホルモテロール配合剤(商品名:シムビコート)の頓用は、テルブタリン頓用に比べ、喘息コントールおよび増悪リスクの軽減に優れることが示された。一方、ブデソニド維持療法(ブデソニド+テルブタリン頓用)に対しては、電子ダイアリーの週評価でみた喘息コントロールは劣性であることが示され、増悪リスクの軽減は同程度だった。増悪の頻度は、ブデソニドを含む2療法が、テルブタリンよりも低下した。また結果として、ブデソニド・ホルモテロール頓用群がブデソニド維持療法群よりも、グルココルチコイドの曝露が大幅に少なかった。カナダ・マックマスター大学のPaul M. O’Byrne氏らが、3,849例を対象に行った、52週の二重盲検無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年5月17日号で発表した。52週間追跡し、電子ダイアリーによる喘息コントロール良好の週の割合を比較 研究グループは、軽症喘息患者において、吸入ステロイド+短時間作用性β2刺激薬の頓用が、従来治療戦略に代わりうる可能性を検討した。 被験者は、12歳以上の軽症喘息患者3,849例。同グループは被験者を無作為に、テルブタリン群(プラセボ[2回/日]+テルブタリン[0.5mg、頓用])、ブデソニド・ホルモテロール群(プラセボ[2回/日]+ブデソニド・ホルモテロール配合剤[ブデソニド200μg+ホルモテロール6μg、頓用])、ブデソニド維持療法群(ブデソニド[200μg、2回/日]+テルブタリン[0.5mg、頓用])の3群に分け、いずれかを投与した。 試験の主要目的は、喘息症状スコアなどに関する電子ダイアリーを基に、喘息コントロールが良好だった週の割合について、ブデソニド・ホルモテロール頓用のテルブタリン頓用に対する優越性を検証することだった。コントロール良好、LABA/ICS群34.4%、SABA群31.1%、ICS+SABA群44.4% 被験者のうち3,836例(テルブタリン群1,277例、ブデソニド・ホルモテロール群1,277例、ブデソニド維持療法群1,282例)について、全解析と安全性データ分析を行った。 喘息コントロールが良好だった週の割合をみると、テルブタリン群31.1%に対し、ブデソニド・ホルモテロール群は34.4%と、その優越性が示された(オッズ比[OR]:1.14、95%信頼区間[CI]:1.00~1.30、p=0.046)。一方で、ブデソニド維持療法群の同割合は44.4%と、ブデソニド・ホルモテロール群の劣性が示された(OR:0.64、同:0.57~0.73)。 また重度増悪の年間発生頻度は、テルブタリン群が0.20、ブデソニド・ホルモテロール群が0.07、ブデソニド維持療法群が0.09だった。率比は、ブデソニド・ホルモテロール群対テルブタリン群が0.36、ブデソニド・ホルモテロール群対ブデソニド維持療法群が0.83だった。 なお、ブデソニド・ホルモテロール群の1日ステロイド定量噴霧吸入量の中央値は57μgで、ブデソニド維持療法群340μgの17%にとどまった。

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第2回 無菌室稼働から7回目、ドキドキの独り立ち!【はらこしなみの在宅訪問日誌】

在宅訪問専任薬剤師のはらこし なみです。責任と自己判断。1人でドキドキの混注先日の無菌室稼働から7回目。そろそろ体が先に動くようになってきて、「1人でも大丈夫だろう、次からはもう1人で」と決まりました。輸液やアンプルにアルコール吹き付けたり、トレーを消毒したり、シリンジやフィルターをそろえたり・・・入室前の準備をしつつ、緊張感も出てきて、もう一度マニュアルを読んで手技のチェック。一人で気楽かと思いきや、責任と自己判断という重みがのしかかり、ドキドキの混注になりました。一通り無菌操作を終え、無菌室すべての面・・・床、壁をアルコールで拭く掃除が、思いのほか大変でした。「でも、これはきっちりとやらないと!」と、アルコールにまみれながら終了。クリーンルームの外に出て、新鮮な空気が美味しく、ひと時ほっとします。でも、この輸液が何かトラブルを起こさないだろうか、チューブの詰まりはないか、体調はどうか、お届け時間は間に合うか・・・と、新たなドキドキが待っていました。腸閉塞の患者さんが在宅中心静脈栄養(TPN)の予定今、A病院に入院されている腸閉塞の患者さんが在宅中心静脈栄養(TPN)の予定です。※TPNは心臓に近い鎖骨の下を走る中心静脈にカテーテルを入れて、そのカテーテルに直接薬 剤や栄養剤を投与する方法。現在は・・・ラクトリン®ゲル液、フルカリック®。ロピオン®静注(静注用非ステロイド性鎮痛薬)を生食100mLに入れて側注管より注入。とのことでした。ロピオン®は在宅でいけますか?と先生より質問もあり、調べています。先生はロピオン®か、デュロテップ®でいくか、考え中のよう。しかし、新たな問題が・・・うすうす勘づいていたのですが、案の定、ロピオン®の安定性(生食 or ブドウ糖5%にmix)は3日間(72時間)までの資料しかなく、ロピオン®が乳濁性製剤のため、フィルターに目詰まりを起こす可能性がある、側管からフィルターを通さない方法が推奨される、とメーカーより回答をいただきました。うちの薬局の基準では、アンプル混中でTPNの場合はフィルター使用が前提。どうしたものか・・・??結局、ロピオン®が在宅には向かないことを先生にお伝えしました。処方提案もしたかったけれど、先生がお考えのデュロテップ®以外には思いつかず・・・。力不足を味わっていました。ところが、退院時処方を見ると、ハイペン®200mgが開始に!胃を全摘していない、完全に腸閉塞しているわけではないことから、退院までの間に内服を試して、可能になったそうです。"TPNだから経口投与はできない"と端から内服薬を除外していましたが、経口できるか否かはTPNかどうかではないこと、腸閉塞といっても様々な状態があり、まさに患者さん個々の状態にもよるのだということを学んだ一例でした・・・。日々精進です!

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ビタミンD依存症〔Vitamin D-dependent rickets〕

1 疾患概要2 各タイプ別の病因、診断、治療3 主たる診療科4 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)1 疾患概要■ 概念・定義ビタミンD依存症は、ビタミンDの代謝異常症であり、本症の理解のために、ビタミンD代謝について理解しておく必要がある。ビタミンDは食物から摂取されるほか、ビタミンとしては例外的に、皮膚において紫外線のエネルギーを利用して生合成される1)。ビタミンDには構造の異なるD2(菌類由来)とD3(動物由来)があるが、生物学的にはほぼ同等の活性であり、この2つを合わせて「ビタミンD」と呼ぶ。ビタミンDが生理的作用を発揮するためには、水酸化を受ける必要がある。すなわち、食物として摂取されたビタミンDおよび皮膚で生合成されたビタミンDは、まず肝臓において25位が水酸化されて25(OH)Dとなり、さらに、腎臓において1α位が水酸化されて、1α,25(OH)2Dとなる(図1)1)。1α,25(OH)2Dは最も強い生物活性を有するので「活性型ビタミンD」と呼ぶ。血中25(OH)D濃度は体内のビタミンDの貯蔵量を反映するので、ビタミンD欠乏症の診断に用いられる2)。活性型ビタミンDの血中濃度は、副甲状腺ホルモン(PTH)、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)やリン濃度により厳密にコントロールされている1)。画像を拡大する食物として摂取されたビタミンDおよび皮膚で生合成されたビタミンDは、まず肝臓において25水酸化酵素(CYP2R1あるいはCYP27A1)により25位が水酸化されて25(OH)Dとなり、さらに、腎臓において1α水酸化酵素(CYP27B1)により1α位が水酸化されて、1α,25(OH)2Dとなる。1α,25(OH)2Dは標的細胞に存在するビタミンD受容体(VDR)と結合して、遺伝子の発現を調節する。薬剤代謝酵素CYP3A4の恒常活性化により、1α,25(OH)2Dは不活性な1α,23,25(OH)3Dあるいは4-beta-25(OH)2Dに代謝される。また、24位の水酸化は、ビタミンDに特異的な不活化の経路と考えられている。ビタミンD依存症は、生理量の天然型ビタミンDでは作用が不足する病気で、「ビタミンD不応症」とも呼ばれる。腎臓の1α水酸化障害がみられる場合をビタミンD依存症1型(1A型)、ビタミンD受容体に異常のある場合をビタミンD依存症2型という3)。両疾患とも常染色体劣性遺伝形式を示す。このほか、ビタミンD抵抗性を伴うが、病気の本態は腎臓からのリンの漏出である低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病(低リン血症性くる病)がある。すなわち、ビタミンD依存症とビタミンD抵抗症はともに、代謝や受容機構の異常によりビタミンD作用が発揮されにくい疾患であるが、別疾患であり、本稿では、ビタミンD依存症のみを取り扱う。また、小児の疾患はくる病で、成人期では骨軟化症であり、ビタミンD依存性くる病・骨軟化症と呼ばれることも多いが、本稿ではこの両者をまとめてビタミンD依存症と呼ぶこととする。■ 疫学ビタミンD依存症1・2型ともに非常にまれで、国内では合わせて数十名ほどの報告がある。遺伝子変異の種類としては、2つの遺伝子ともに50種類程度と報告されている4,5)。ともに、指定難病、小児慢性特定疾病となっている。2 各タイプ別の病因、診断、治療病因、診断などはサブタイプに分けて記述する。■ ビタミンD依存症1型(vitamin D-dependent rickets type 1, pseudovitamin D deficiency rickets, OMIM264700)ビタミンD依存症1型は、腎臓における25(OH)D-1α水酸化酵素活性の障害のため、活性型ビタミンDが産生されず、生後早期よりビタミンD欠乏症を呈する。英語では、dependencyという言葉を使用せず、偽性ビタミンD欠乏性くる病などと呼ばれることもある。本酵素はシトクロムP450に属するので、コードする遺伝子はCYP27B1と命名されている。ビタミンDの活性化障害が病態であるので、生理量のビタミンDには抵抗するのに対し(4週間の3,000~4,000単位ビタミンD治療に反応しない)、活性型ビタミンDを用いれば生理量(0.01~0.05μg/kg)で治癒させうる。1961年に最初にPraderらにより報告された、通常、常染色体劣性遺伝形式をとる疾患である。まれな疾患であり、わが国では十数例程度報告されている。しかし、フランス系カナダ人には多い。ヒト-1α水酸化酵素遺伝子構造が明らかにされて、ビタミンD依存症1型の遺伝子診断が可能である3)。活性型ビタミンD合成の鍵酵素であるビタミンD-1α水酸化酵素は、その発現がきわめて低いため、酵素自身の単離精製が困難であった。しかし、1997年、分子生物学的手法を用いて複数のグループにより本酵素のcDNAがクローニングされた。1α水酸化酵素遺伝子(CYP27B1)の発現は、1α,25(OH)2Dおよび線維芽細胞増殖因子23(FGF23)により負の制御を、PTHにより正の制御を受けている。1α位の水酸化が行われる部位は近位尿細管であるが、ビタミンD結合タンパク質(DBP)と複合体を形成した25(OH)Dは、近位尿細管細胞の刷子縁に発現しているメガリンにより近位尿細管細胞内に取り込まれる。取り込まれた25(OH)Dは、ミトコンドリアで1α位あるいは24位が水酸化される。この結果、産生された1α,25(OH)2Dおよび24,25(OH)2は、血中に放出される。症状としては、O脚などの下肢変形のほか、筋力低下が著しく処女歩行が遅れ、身長、体重の増加不良がみられる。臨床検査では低カルシウム血症、低リン血症、高ALP(alkaline phosphatase)血症、血中PTH高値が認められる。血中25(OH)Dは通常では正常で、血中1α,25(OH)2D値は低値をとる。治療としては、病初期にはビタミンD欠乏症の治療に準ずるが、活性型ビタミンDの維持療法が必要である。たとえば、アルファカルシドール(商品名:アルファロール、ワンアルファほか)0.01~0.05μg/kg・分1とする。■ ビタミンD依存症1B型(vitamin D hydroxylation-deficient rickets type 1B, pseudovitamin D deficiency rickets due to 25-hydroxylase deficiency, OMIM600081)25水酸化酵素(CYP2R1)の異常により、ビタミンDに不応性を示す疾患で、現在までに10家系に満たない症例しか報告されていない、とてもまれな疾患である6)。非常に低い血清25(OH)D値を呈し、重症のビタミンD欠乏症との鑑別が困難である。なお、CYP27A1も25位の水酸化を行う酵素として報告されているが、疾患との関係は不明である。■ ビタミンD依存症2型(vitamin D-dependent rickets type 2, hereditary vitamin D-resistant rickets, OMIM277440)VDR遺伝子に異常があり、活性型ビタミンDの作用が発揮されない病気をビタミンD依存症2型と呼ぶ。ビタミンD受容体異常が本疾患の本態であるので、まずビタミンD受容体(VDR)に関して解説する。VDRはステロイドホルモン受容体スーパーファミリーに属する核タンパクの一種である。アミノ基末端側にDNA結合領域が、カルボキシル基末端側にホルモン結合領域が存在する。DNA結合領域は、8個のシステインが2個の亜鉛結合指(zinc finger)を形成し、標的遺伝子のプロモーター領域に存在するビタミンD応答配列(vitamin D response element:VDRE)に結合する。ホルモン結合領域は、疎水性の高い“ポケット”を形成し、リガンドである1α,25(OH)2Dと結合する。さらに、ホルモン結合ドメインは二量体形成にも関与している。活性型ビタミンDが結合したVDRは、retinoid X受容体(RXR)と異種二量体を形成し、標的遺伝子のプロモーター上にあるVDREを認識して直接結合する。VDREにリガンド結合型VDRが結合すると、種々のコアクチベーター複合体がリクルートされ、転写が活性化される。VDRに異常があるので、生理量の活性型ビタミンD治療に抵抗する、くる病あるいは骨軟化症がみられる(図2)。また、無治療の場合、低カルシウム血症が重度となり、テタニーや痙攣を呈することが多い。半数程度に禿頭を伴う。生化学的に、低カルシウム血症と二次性副甲状腺機能亢進症を認めるにもかかわらず、通常血中1α,25(OH)2D濃度は上昇しており、受容体異常によるホルモン抵抗症の像を呈する。ビタミンD欠乏性くる病でも血中1α,25(OH)2D濃度が上昇することがあり、また、症状の軽快に比較的大量の活性型ビタミンD投与が必要な場合があるので、鑑別診断は慎重に行う必要がある。画像を拡大するビタミンD依存症2型患者のVDRの分子学的異常は、1988年にHughesらにより初めて2家系が報告されて以来、現在のところ50種類程度が明らかにされている5)。DNA結合ドメインのpoint mutationが最も多い。VDRに異常がなく、同様な病態を示す場合をビタミンD依存症2Bとして区別する場合があるが、その本態は不明であり、本稿では割愛する。治療はビタミンDの大量療法が基本であるが、その量は症例によりさまざまである。持続する低カルシウム血症に対しては、経静脈的あるいは経口的にカルシウムを十分投与する。VDRの機能がまったく喪失していると考えられる場合には、カルシウムの十分な補充が基本となる7)。処方例としては、アルファカルシドール1~5μg/kg・分1~2、乳酸カルシウム3~6g・分3などが挙げられるが、検査データなどを指標に用量の調整が必要である。自然寛解する症例の報告もある。■ ビタミンD依存症3型2018年、薬剤代謝酵素CYP3A4の異常によるくる病が、ビタミンD依存症3型として報告された8)。本変異は、活性型変異と考えられ、本来の代謝酵素の24位水酸化酵素より強力に1α,25(OH)2Dを代謝するために、ビタミンDに不応を示す。新しい疾患単位であり、今後、臨床像がより明らかにされていくものと期待される。■ 鑑別診断ビタミンD欠乏性くる病、ビタミンD抵抗性低リン血症性くる病・骨軟化症、腎性骨異栄養症(CKD-MBD)などがある。3 主たる診療科小児科、産科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。4 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター ビタミンD依存性くる病・骨軟化症の診断指針(PDF)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ビタミンD依存性くる病/骨軟化症(医療者、一般利用者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター ビタミンD依存性くる病(医療者、一般利用者向けのまとまった情報)1)Glorieux FH, et al. Bonekey Rep. 2014;3:524.2)日本小児内分泌学会 編集. 小児内分泌学 改訂第2版.診断と治療社;2016.p.480-484.3)Michalus I, et al. Clin Genet.2018. [Epub ahead of print]4)Durmaz E, et al. Clin Endocrinol. 2012;77:363-369.5)Malloy PJ, et al. Mol Genet Metab. 2014;111:33-40.6)Molin A, et al. J Bone Miner Res. 2017;32:1893-1899.7)Tamura M, et al. PLoS One. 2015;10:e0131157.8)Roizen JD, et al. J Clin Invest. 2018.[Epub ahead of print]公開履歴初回2018年05月22日

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慢性疼痛治療ガイドラインが発刊

 2018年3月、痛みに関連する7学会のメンバーが結集し作り上げた「慢性疼痛治療ガイドライン」(監修:厚生労働行政推進調査事業費補助金慢性の痛み政策研究事業「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」研究班、編集:慢性疼痛治療ガイドライン作成ワーキンググループ*)が発刊された。*ペインコンソーシアム(日本運動器疼痛学会、日本口腔顔面痛学会、日本疼痛学会、日本ペインクリニック学会、日本ペインリハビリテーション学会、日本慢性疼痛学会、日本腰痛学会)より選出された委員により構成慢性疼痛に対する施策はエアポケットとなっていた これまで、種々の疾患(がん、生活習慣病、感染症、精神疾患、難病など)への対策が日本政府により行われてきたが、慢性疼痛に対する施策は、エアポケットのように抜け落ちていた。しかし、最近、慢性疼痛に対する施策も国の事業として進められるようになり、前述の研究班とワーキンググループにより、All Japanの慢性疼痛治療ガイドラインが策定された。慢性疼痛治療ガイドラインは、全6章、51CQから成る 慢性疼痛治療ガイドラインは、全6章(総論、薬物療法、インターベンショナル治療、心理的アプローチ、リハビリテーション、集学的治療)から成り、全51個のクリニカルクエスチョン(CQ)が設定されている。慢性疼痛治療ガイドラインのエビデンスレベルは4段階で評価 慢性疼痛治療ガイドラインのCQに対するAnswerの部分には、推奨度およびエビデンスレベルが記されている。推奨度は、「1:する(しない)ことを強く推奨する」「2:する(しない)ことを弱く推奨する(提案する)」の2通りで提示されている。エビデンスレベルは、「A(強):効果の推定値に強く確信がある」「B(中):効果の推定値に中程度の確信がある」「C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である」「D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」と規定された。慢性疼痛とは 慢性疼痛は、国際疼痛学会(IASP)で「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」とされている。 慢性疼痛には「侵害受容性」「神経障害性」「心理社会的」などの要因があるが、これらは密接に関連している場合が多く、痛み以外に多彩な症状・徴候を伴っていることも多い。そのため、慢性疼痛治療ガイドラインでは、慢性疼痛の診断において最も重要なことは、正確な病態把握とされた。また、慢性疼痛の治療は、痛みの軽減が目標の1つであるが第一目標ではなく、作用をできるだけ少なくしながら痛みの管理を行い、QOLやADLを向上させることが重要であると記載されている。慢性疼痛治療ガイドラインには薬物療法の推奨度を詳細に記載 慢性疼痛治療ガイドラインでは、薬物療法の項に最も多くの紙面が割かれている。なお、本ガイドラインでは、「医療者は各項の推奨度のレベルのみを一読するのではなく、CQの本文、要約、解説を十分に読み込んだ上での試行・処方などを検討するようにお願いしたい」「一部、現在(平成30年3月現在)の保険診療上適応のない薬物や手技もあるが、薬物療法においては、添付文書などを熟読の上、治療に当たることが望ましい」と記載されている。 主な薬剤の推奨度、エビデンス総体の総括は以下のとおり。●非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)神経障害性疼痛:2D(使用しないことを弱く推奨する)頭痛・口腔顔面痛:2B(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:2C(使用しないことを弱く推奨する)●アセトアミノフェン運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)神経障害性疼痛:2D(使用しないことを弱く推奨する)頭痛・口腔顔面痛:1A(使用することを強く推奨する)線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)●プレガバリン運動器疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)神経障害性疼痛:1A(使用することを強く推奨する)頭痛・口腔顔面痛:2C(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:1A(使用することを強く推奨する)●デュロキセチン運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)神経障害性疼痛:1A(使用することを強く推奨する)頭痛・口腔顔面痛:2C(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:1A(使用することを強く推奨する)●抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬物)運動器疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)(エチゾラム)神経障害性疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)(クロナゼパム)頭痛・口腔顔面痛:2B(使用することを弱く推奨する)           (緊張型頭痛:エチゾラム、アルプラゾラム)           (口腔顔面痛:ジアゼパム、クロナゼパム)線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)●トラマドール運動器疼痛:1B(使用することを強く推奨する)神経障害性疼痛:1B(使用することを強く推奨する)頭痛・口腔顔面痛:推奨度なし線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)慢性疼痛治療ガイドラインには心理療法・集学的療法の推奨度も記載 心理療法として取り上げられた心理教育、行動療法、認知行動療法、マインドフルネス、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、慢性疼痛治療ガイドラインではいずれも推奨度1(行うことを強く推奨する)とされている。また、最近話題の集学的治療や集団認知行動療法(集団教育行動指導)も慢性疼痛治療ガイドラインでは推奨度1(施行することを強く推奨する)とされ、その重要性が示されている。

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難治アトピー、10年ぶりの新薬に期待

 2018年5月8日、サノフィ株式会社は、アトピー性皮膚炎(AD)に関するメディアセミナーを都内で開催した。本セミナーでは、「アトピー性皮膚炎初の生物学的製剤『デュピクセント(一般名:デュピルマブ)』治験のご報告~深刻な“Disease Burden”(疾病負荷)からの解放をめざして~」をテーマに、AD患者の経験談、新薬が拓くAD改善の可能性、治療の展望などが語られた。重症AD患者の日常生活を取り戻す可能性 田中 暁生氏(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 皮膚科学 准教授)が、AD標準治療とその課題、デュピルマブの投与症例などについて説明した。 ADは、皮膚バリア破壊、免疫・アレルギー異常、かゆみの3病態が互いに連動しているが、保湿剤、ステロイド外用薬、免疫抑制薬、内服抗ヒスタミン薬を適切に使用することで、重症を含めたほとんどの患者は、寛解状態(湿疹のない状態)を得ることが可能であるという。しかし、これらの治療は、毎日広範囲に外用薬を塗布するなど負担が大きいため、間違った使い方や誤解により効果が得られない例が存在する点を田中氏は指摘した。 デュピルマブは、ADの代表的な3つの病態すべてに作用し、症状を改善する可能性がある。治験を担当した同氏は、「デュピルマブにより疾患がコントロールされ、患者さんが今まで制限されていた日常生活を取り戻す症例を経験した。新たな治療選択肢の登場が、AD治療の歴史を変える転換点になることを期待する」と語った。ガイドラインを順守し、デュピルマブの適切な使用を 次に、佐伯 秀久氏(日本医科大学大学院 皮膚粘膜病態学 教授)が、デュピルマブの治験成績を説明し、AD治療における今後の期待などを述べた。 ADの評価尺度として、臨床徴候をスコア化したEASIが国際的に用いられている。国際共同第III相試験は、中等~重症の成人AD患者を対象に行われ、ステロイド外用薬(ストロング)との併用で、治療期間52週における、デュピルマブの有効性と安全性が検討された。その結果、16週時点でEASIスコアは平均80.1%低下し、その後52週まで維持された。副作用は注射部位反応、頭痛、アレルギー性結膜炎などが発現したが、重篤な有害事象は対照群と比較して、発生件数に大きな差は認められなかった(デュビルマブ群14例、対照群16例)。 デュピルマブは、2018年4月、最適使用推進ガイドラインが厚生労働省より策定され、投与対象の条件について具体的に定められている。佐伯氏は、「ADはまず標準治療をしっかり行うことが重要。デュピルマブは、重症難治例や、副作用などにより既存の薬剤を使用できない例などの、アンメットニーズを満たす薬剤として期待できる」と語った。 最後に両医師が、ADの病態は、良好な状態が長期間続くほど、その後の経過も良い傾向にあると示した。「適切な治療により症状が大きく改善され、維持できたら、徐々に薬を減らしたり、間隔を広げたりできる可能性は十分に見込めるので、AD患者は積極的に目的意識を持つことが重要」だと締めた。疾病負荷は良質なコミュニケーションで改善の可能性 ADは、増悪・寛解を繰り返す慢性疾患である。患者数の増加が続いており、2014年の総患者数は推計45万6,000人、その2~3割が中等症以上といわれている。2017年にサノフィ株式会社が行った意識調査によると、ADによる生活の質への影響は85.7%、精神面への影響は79.3%の患者が感じており、患者の疾病負荷への理解や認識は、症状改善のための大事なファクターと考えられる。 現在、治療はガイドラインに基づいて行われているが、医師とのコミュニケーションが不足しているほど、症状の改善・寛解の割合は低いままだったという。医師はこの現状を把握し、身体症状以外の負荷についてヒアリングを行うなど、患者の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを心掛けていくことが求められる。 ADの新薬は、ここ10年間登場していなかった。デュピルマブは、従来とはまったく異なる作用機序を持つため、既存治療で効果不十分な中等~重症患者に、待ち望まれた新薬と言える。なお、同薬は現在、コントロール不良の気管支喘息に対する適応の追加を申請中。■参考サノフィ株式会社 プレスリリース認定NPO法人 日本アレルギー友の会■関連記事アトピー性皮膚炎に初の抗体医薬品発売

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重症喘息のステロイド量は軽~中等症の20.8倍

 わが国では約800万人が喘息に罹患していると推定され、そのうち5~10%が、治療にもかかわらず重症の喘息であるといわれている。アストラゼネカ株式会社は、データベースから重症喘息患者を調査した非介入研究(KEIFU研究)の結果を、第58回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 本研究は、株式会社日本医療データセンターが保有する約300万人の保険データベースにおいて、2014年4月~2015年3月の1年間に、吸入ステロイド薬、または吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬の配合剤の、継続的な保険記録を有する対象1万579例を、「継続治療中の喘息患者」として実施された。保険請求記録から重症度およびコントロール状態を判定し、その後1年間の臨床経過との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象のうち、重症喘息と判断される患者は7.8%(823例)だった。・対象のうち、コントロール不良な重症喘息と判断される患者は2.5%(267例)だった。・研究組み入れ後1年間において、コントロール不良な重症喘息患者(A)は、軽症から中等症喘息患者(B)と比較して、入院日数は4.9倍(A:B=0.375±1.625日/月:0.076±1.035日/月)、経口ステロイド薬処方量は20.8倍(同=99.9±155.4mg/月:4.8±31.3mg/月)だった。 本研究結果は、今後論文発表される予定。■参考アストラゼネカ株式会社 プレスリリース

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身体能力低下の悪循環を断つ診療

 2018年4月19~21日の3日間、第104回 日本消化器病学会総会(会長 小池 和彦氏[東京大学医学部消化器内科 教授])が、「深化する多様性~消化器病学の未来を描く~」をテーマに、都内の京王プラザホテルにおいて開催された。期間中、消化器領域の最新の知見が、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップなどで講演された。 本稿では、その中で総会2日目に行われた招請講演の概要をお届けする。フレイル、サルコペニアに共通するのは「筋力と身体機能の低下」 招請講演は、肝疾患におけるサルコペニアとの関連から「フレイル・サルコペニアと慢性疾患管理」をテーマに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)を講師に迎えて行われた。 はじめに高齢者の亡くなる状態を概括、いわゆるピンピンコロリは1割程度であり、残りの高齢者は運動機能の低下により、寝たきりなどの介護状態で亡くなっていると述べ、その運動機能の低下にフレイルと(主に一次性)サルコペニアが関係していると指摘した。 フレイルは、「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表し、要介護状態に至る前段階として位置付けられている(ただし、可逆性はあるとされる)。また、サルコペニアは「高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下」と定義される。両病態はお互いに包含するものであり、とくに筋力と身体機能の低下は重複する。フレイル、サルコペニアは世界初のガイドラインなどで診療 診療については、『フレイル診療ガイド 2018年版』と『サルコペニア診療ガイドライン 2017年版』が世界で初めて刊行され、詳しく解説されている(消化器領域では『肝疾患におけるサルコペニアの判定基準』により二次性サルコペニアの診療が行われている)。 フレイルの診断は、現在統一された基準はなく、一例として身体的フレイルの代表的な診断法と位置付けられている“Cardiovascular Health Study基準”(CHS基準)を修正した日本版CHS(J-CHS)基準が提唱され、体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度、身体活動の5項目のうち3つ以上の該当でフレイルと判定される。スクリーニングでは、質問形式で要介護認定ともシンクロする「簡易フレイルインデックス」など使いやすいものが開発されている。 一方、サルコペニアも同様に統一基準はないが、Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によってアジア人向けの診断基準が作られ、年齢、握力、歩行速度、筋肉量により診断されるが、歩行速度など、わが国の実情に合わない点もあり注意が必要という(先の二次性サルコペニアの診断ではCT画像所見による筋肉量の測定がある)。 また、両病態とも筋肉量の測定など容易ではないが、外来で簡単にできる「指輪っかテスト」なども開発され、利用されている。 治療に関しては両病態ともに、レジスタンス運動を追加した運動療法や、十分な栄養を摂る栄養療法が行われる。詳細は先述のガイドラインなどに譲るが、「タンパク質」の摂取を例に一部を概略的に示すと、慢性腎不全の患者では腎臓機能維持の都合上、タンパク質の摂取が制限されるが、その制限が過ぎるとサルコペニアに進んでしまう。そのため、透析に進展させない程度のタンパク質の摂取を許すなど、患者のリスクとベネフィットを比較、検討して決めることが重要という。薬剤が6種類を超えるとハイリスク 続いて「ポリファーマシー」に触れ、ポリファーマシーはフレイルの危険因子であり、薬剤数が6種類を超えるとハイリスクになると指摘する(5種類以上で転倒のリスクが増す)。また、6種類以上の服用はサルコペニアの発症を1.6倍高めるというKashiwa studyの報告を示すとともに、広島県呉市のレセプト報告を例に85~89歳が一番多くの薬を服用している実態を紹介した。 消化器領域につき、「食欲低下」では非ステロイド性抗炎症薬、アスピリン、緩下薬などが、「便秘」では睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン)、三環系抗うつ薬などが、「ふらつき・転倒」では降圧薬、睡眠薬・抗不安薬、三環系抗うつ薬などが関係すると考えられ、「高齢者への処方時は、優先順位を決めて処方し、非専門領域についても注意してほしい」と語った。とくに「便秘」は抗コリン薬が原因になることが多いという。また、「GERD」についてはH2ブロッカーが認知機能を低下させる恐れがあるため注意が必要であり、第1選択薬のPPIでも漫然とした長期使用は避けるなど、必要に応じた使い方が望ましいという。 まとめとして、高齢者の生活改善では「規則正しい食事」「排泄機能の維持」「適切な睡眠習慣」が大切で、とくに「食事は服薬のアドヒアランス維持のためにも気を付けてもらいたい」とその重要性を指摘した。最後に秋下氏は「フレイル、サルコペニアは、身体的な負の悪循環を形成することを理解してもらいたい」と述べ、レクチャーを終えた。■参考第104回 日本消化器病学会総会■関連記事ニュース 初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊

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COPDの3剤併用療法、2剤併用と比較/NEJM

 COPDに対する3剤併用療法(吸入ステロイド+LAMA+LABA)は、2剤併用療法(吸入ステロイド-LABA、またはLAMA-LABA)よりも有益なのか。米国・グラクソ・スミスクラインのDavid A. Lipson氏らによる第III相無作為化二重盲検並行群間試験「IMPACT試験」の結果、3剤併用療法(フルチカゾン+ウメクリジニウム+ビランテロール)は、2剤併用療法(フルチカゾン-ビランテロール、またはウメクリジニウム-ビランテロール)よりも、中等度~重度のCOPD増悪を有意に抑制したことが示された。また、COPDによる入院も低減したという。NEJM誌オンライン版2018年4月18日号掲載の報告。COPD患者1万355例が参加、中等度~重度COPD増悪の年間発生率を評価 IMPACT試験は2014年6月~2017年7月に、37ヵ国から被験者を募り行われた。登録されたのは、40歳以上、症候性COPDが認められる(COPDアセスメントテスト[CAT]スコア[範囲0~40、高スコアほどより症候性、臨床的に意味のあるスコア差は最低2]が10以上)、FEV1が予測正常値の50%未満および前年に中等度~重度のCOPD増悪を経験、またはFEV1が予測正常値の50~80%および前年に中等度の増悪2回もしくは重度の増悪1回を経験している患者であった。 COPD患者1万355例が参加し、1日1回投与の、フルチカゾン(吸入ステロイド)100μg+ウメクリジニウム(LAMA)62.5μg+ビランテロール(LABA)25μgの3剤併用療法を受ける群と、フルチカゾン-ビランテロール(それぞれ100μg、25μg)かウメクリジニウム-ビランテロール(それぞれ62.5μg、25μg)の2剤併用療法を受ける群に無作為に割り付けられ、52週間にわたる試験が行われた。いずれの療法も、エリプタ吸入器を用いた単回投与で行われた。 主要評価項目は、試験薬投与期間中における中等度~重度COPD増悪の年間発生率であった。3剤併用0.91件/年、吸入ステロイド-LABA 1.07件/年、LAMA-LABA 1.21件/年 主要アウトカムは、3剤併用群が0.91件/年であったのに対し、フルチカゾン-ビランテロール群は1.07件/年(3剤併用療法群との率比[RR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.80~0.90、差:15%、p<0.001)、ウメクリジニウム-ビランテロール群は1.21件/年(0.75、0.70~0.81、25%、p<0.001)であった。 重度増悪による入院の年間発生件数は、3剤併用療法群0.13件であったのに対し、ウメクリジニウム-ビランテロール群は0.19件であった(RR:0.66、0.56~0.78、差:34%、p<0.001)。フルチカゾン-ビランテロール群は0.15件であった(RR:0.87、0.76~1.01、13%、p=0.06)。 肺炎の発生は、ウメクリジニウム-ビランテロール(LAMA-LABA)群よりも、吸入ステロイドを用いた群で高率に認められた。また、臨床的に診断された肺炎のリスク(初回イベント発生までの時間で解析)は、ウメクリジニウム-ビランテロール(LAMA-LABA)群との比較において、3剤併用療法群で有意に高率であった(ハザード比:1.53、95%CI:1.22~1.92、p<0.001)。

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COPD新ガイドライン、第1選択薬など5年ぶり見直し

 2018年4月、大阪で開催された第58回日本呼吸器学会において、同月20日に発刊された『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]』の改訂ポイントについて、久留米大学 呼吸器内科 川山 智隆氏が紹介した。前回の2013年から5年ぶりとなる今回の改訂では、日本人と欧米人の相違が指摘されている点を考慮し、近年の本邦での報告を重視している。新たな診断アプローチへ FEV1/FVC(1秒率)70%未満が診断の基本となっていた。しかし、1秒率は年齢により低下することから、基準を一律に70%未満とすると、高齢者では偽陽性が、若年者では擬陽性が増える。この過小診断や過剰診断を防ぐため、年齢に合わせた肺の正常下限値(LLN)を定めた。このLLNを1秒率70%未満と共に使用することとしている。長期管理を鑑みた4つの管理目標 COPDは長期的な経過をたどる疾患であるため、生命予後だけでなく、現状の改善として2項目(症状およびQOLの改善、運動耐容能と身体活動の向上および維持)、将来のリスク低減として2項目(増悪の予防、全身合併症および肺合併症の予防・診断・治療)の、4項目の管理目標を定めた。LAMAとICSの位置付け変更、高流量鼻カニュラ酸素療法の追加 安定期の管理の薬物療法では、長時間性気管支拡張薬の位置付けを一部変更した。従来、長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)に優先順位は付けていなかったが、今回の改訂では、最近のエビデンスを鑑み、LAMAを第1選択薬として優先。LABAは、「あるいはLABA」との記載となった。LAMA/LABA配合剤については、LAMA、LABA単剤からのステップアップ治療として、重症度が上がるにつれ大きくなる位置付けとなった。 また、吸入ステロイド薬(ICS)についても位置付けが変更された。同薬は従来、喘息の合併または増悪を繰り返す症例についての使用が推奨されていたが、今回の改訂では近年の研究結果を鑑み、喘息合併例のみの推奨とした。この内容については、COPDガイドラインに先立って発刊された『喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)診断と治療の手引き2018』に沿ったものとなった。 非薬物療法については、高流量の高濃度酸素を経鼻で投与できる高流量鼻カニュラ酸素療法が適応となったことから、今回の改訂では、酸素療法において、非侵襲的陽圧換気療法開始前(高CO2血症がない状態)での使用を推奨している。

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持続型気管支喘息におけるSMART療法について(解説:小林英夫 氏)-845

 本論文のSMART(single maintenance and reliever therapy)とは、吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)の合剤を、定期治療にも喘息発作時の一時的対応のいずれにも用いる治療戦略の意で、すでに知られた略語である。なお、SMARTをSymbicort maintenance and reliever therapyの略とする記載もある。これはシムビコートに含まれるホルモテロールが、LABAではあるが即効性と用量依存性気管支拡張作用を有することから提唱されたもので、本邦では1日最大12吸入が保険適応を得ている。さて、喘息発作時の対応として短時間作用性β2刺激薬(SABA)を追加吸入することが標準治療となって久しい。SMARTの長所は、喘息発作時に日常管理薬1剤で対応可能なため、SABAを追加する対応と比してより簡便という点が挙げられる。簡便ではあっても効果はどうなのかという点を本論文は検証しており、SMART療法群で喘息増悪リスクが低かったと報告している。 従来から取り上げられているが、SMARTの欠点には患者が自由に薬剤の増減ができると誤認し、過剰増量、自己減量、喘息悪化でないときにも吸入してしまうといった注意点があり、導入時には十分な説明が必須である。筆者が同療法を導入する際には、自覚症状のみではなくピークフロー値も測定し、安定時の80%以上に回復しなければ早々に外来受診するよう指導している。また、日本で販売されているICS+LABA合剤ではシムビコート以外はSMART療法に適さないことにも注意しておきたい。 JAMA同一号には同一著者らからもう1つ喘息関連論文が掲載されている。そちらは長時間作用性抗コリン薬(LAMA)吸入の役割をメタ解析し、ICS単剤よりLAMA追加で喘息増悪リスクが低下すること、またICS+LABA吸入群と比しICS+LABA+LAMA吸入群はさらなる増悪低下を示さなかったと結論している。両論文に関してJAMA同号にeditorialが掲載されており、LABAとLAMAの位置付けと研究方法の問題点が解説されている。

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アトピー性皮膚炎に初の抗体医薬品発売

 サノフィ株式会社は、2018年4月23日、「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とした、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤デュピルマブ(商品名:デュピクセント皮下注300mgシリンジ)を発売した。アトピー性皮膚炎治療薬として、初めての抗体医薬品である。 デュピルマブは、IL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)に特異的に結合し、Th2サイトカインであるIL-4およびIL-13の両シグナル伝達を阻害する、遺伝子組換えヒト型モノクローナル抗体である。臨床試験では、ステロイド外用薬の効果が不十分な中等~重症の成人アトピー性皮膚炎患者を対象に、ステロイド外用薬との併用療法または単独療法で、有効性と安全性が確認された。 アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする慢性炎症性疾患である。中等~重症例では、広範な発疹を特徴とし、持続する激しい難治性のかゆみ、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮、毛細血管出血を伴うことがある。かゆみは、患者にとって最も大きな負担であり、体力消耗、睡眠障害、不安や抑うつ症状の原因ともなり、生活の質に影響を及ぼす。デュピルマブは、既存の抗炎症外用薬で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者への、新たな選択肢として期待されている。 デュピルマブは、安全装置付きプレフィルド・シリンジで、自己注射可能な1回使いきりの製剤。初回は600mg(2キット)、2回目以降は300mgを2週間隔で皮下注射する。薬価は8万1,640円。 原則として、抗炎症・保湿外用薬と併用で使用する。他のアレルギー性疾患を併発している場合、症状が急変する恐れがあるので、注意が必要となる。 現在、コントロール不良の気管支喘息に対する適応の追加申請中。■参考サノフィ株式会社 プレスリリース(PDFがダウンロードされます)

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POEMS(クロウ-深瀬)症候群

1 疾患概要■ 概念・定義POEMS症候群の名称は、polyneuropathy、organomegaly、endocrinopathy、M-protein、skin changeの頭文字に由来する。「クロウ-深瀬症候群」、「高月病」とも呼ばれる。名称のとおり、多発ニューロパチーを中核症状とし、肝脾腫などの臓器腫大、内分泌異常、皮膚変化(色素沈着、剛毛、血管腫など)という多彩な症状を呈し、M蛋白を伴う全身性の疾患である。症状は多彩であるが、その病態基盤は形質細胞異常(plasma cell dyscrasia)とサイトカインである血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の上昇であると考えられている。多発ニューロパチーが中核症状となることが多い一方で、plasma cell dyscrasia由来の疾患でもあり、神経内科または血液内科で診療することが多い。2015年1月に、新規に指定難病の1つとなった。■ 疫学わが国で行われた2003年の全国調査に基づく推定有病率は、10万人当たり0.3人であり、いわゆる希少疾病である。しかし、その多彩な症状ゆえに、診断が困難な例も少なくなく、実際の有病率はもう少し高い可能性がある。平均発症年齢は50代であるが、30代の発症もまれではない。男性に多い。■ 病因上述のごとく、POEMS症候群の病態の中心はplasma cell dyscrasiaとVEGFの上昇であると推定されている。VEGFは血管新生作用以外に強い血管透過性亢進作用を持ち、本症候群で特徴的に認められる浮腫、胸腹水などの所見とよく合致する。しかし、plasma cell dyscrasiaとVEGF上昇がどのように関連するかについては、現時点では不明である。また、多発ニューロパチー、内分泌異常、皮膚異常などの症状が生じるメカニズムについても明確になっていない。VEGF上昇とともに、TNFα、IL6、IL-12を含む複数の炎症性サイトカインの上昇も確認されており、複雑な病態に関与している可能性が高い。■ 症状POEMS症候群で認められる臨床症状として頻度が高いのは、多発ニューロパチー、浮腫、皮膚変化、リンパ節腫脹、女性化乳房である。典型的な多発ニューロパチーは、下肢優位の四肢遠位のしびれと筋力低下を呈する。重症度は症例により異なり、アキレス腱反射の低下のみの症例から重度の四肢麻痺の症例まで存在する。また、数ヵ月の経過で、歩行に介助が必要になるまで進行する例が多い。通常、浮腫は下腿以遠に目立つ。進行例では、明確な圧痕を残すほど顕著となり、腹部、上肢、顔面にも浮腫が出現する。皮膚変化は、色素沈着、剛毛の頻度が高い。色素沈着は独特のやや赤味を帯びた褐色を呈する(図)。剛毛は前腕や下腿に目立つ。画像を拡大する■ 予後POEMS症候群の機能・生命予後は、適切な治療が行われない場合、不良である。機能予後は、多発ニューロパチーの重症度に依存する。無治療では過半数の症例が、発症1年以内に杖歩行となる。また、1980年代は適切な治療が行われなかったため、平均生存期間は33ヵ月と報告されている。近年、疾患の認知度向上による診断技術の向上、ならびに骨髄腫治療の本症候群への応用による治療の進歩で、予後は大幅に改善しつつある。しかし、急速な悪化を認めうる疾患であり、また多臓器障害が生じることも少なくないので、治療方針検討や経過観察には、慎重を期す必要がある。低アルブミン血症、初回治療への反応性不良、高齢(50歳以上)、肺高血圧、胸水、腎機能障害などが、予後不良因子として挙げられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)POEMS症候群の診断は診断基準に基づいて行われる。しかし、類似の診断基準が複数あり、いずれも感度・特異度について検討されていないのが、現在の問題点である。国際的に最も代表的な基準は、2012年のCochrane database systematic reviewで採用されているものである。しかし、わが国では、下表の診断基準が指定難病の認定に使用されている。本診断基準の特徴は、単クローン性形質細胞増殖が検出できない例であっても、積極的に診断できる点において優れている。そのため、日常診療で運用する上では、下表の診断基準を用いる方が、診断感度も高く、利便性にも優れる。表 POEMS症候群の診断基準●大基準多発ニューロパチー血清VEGF上昇(1,000 pg/mL以上)M蛋白(血清または尿中M蛋白陽性 [免疫固定法により確認] )●小基準骨硬化性病変、キャッスルマン病、臓器腫大、浮腫、胸水、腹水、心嚢水、内分泌異常*(副腎、甲状腺、下垂体、性腺、副甲状腺、膵臓機能)、皮膚異常(色素沈着、剛毛、血管腫、チアノーゼ、爪床蒼白)、乳頭浮腫、血小板増多(1)Definite:大基準3つ+小基準 少なくとも1つ(2)Probable:大基準2つ+小基準 少なくとも1つ*糖尿病と甲状腺機能異常は有病率が高いため、これのみでは本基準を満たさない。引用: Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.以下に、検査、診断に際しての注意点を列記する。1)多発ニューロパチー明確な自覚症状を認めない場合もあり、神経伝導検査によるニューロパチーの有無の検索と性状の確認は必須である。原則は、本症候群のニューロパチーの性状は脱髄と二次的軸索変性である。非常に軽症例では、ごくわずかの異常しか認められない場合もある。2)単クローン性の形質細胞増殖血液・尿のM蛋白のスクリーニングにより、大部分の症例では検出可能である。しかし、POEMS症候群ではM蛋白の量は非常に微量のため、免疫固定法による確認が必須である。M蛋白のサブクラスの多くはIgGまたはIgAのλ型である。3)VEGF外注検査会社で測定可能である。VEGF値の測定は、診断確定、治療効果判定に非常に有用であるが、現時点では保険適用にないことが大きな問題点である。血清・血漿のいずれで測定すべきかの結論は出ていない。しかし、指定難病の認定は血清で行われている。外注検査会社に「血清で測定」の指示にて依頼する。4)骨病変硬化性変化が一般的である。しかし、溶骨性変化や混合性変化を認めることもある。胸腹水の検索目的で施行した胸腹骨盤部のCT検査の骨条件で胸骨、椎体、骨盤などの硬化性病変をスクリーニングすることが可能である。さらに精査を進める際には、PET検査が有用である。5)内分泌障害性腺機能異常、甲状腺機能異常、耐糖能異常、副腎機能異常などの頻度が高い。スクリーニング検査として、LH・FSH・E2(エストラジオール)・テストステロン・TSH・FT3・FT4・血糖・インスリン・ACTH・コルチゾールなどの検査を行う。鑑別診断として問題となりやすいのは、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)、ALアミロイドーシスである。POEMS症候群の進行例では、浮腫・皮膚障害をはじめ、多彩な典型的症状を伴うため、鑑別が問題となることは少ない。しかし、発症初期で臨床症状や検査所見が揃わない場合には、ニューロパチーの臨床および神経伝導検査所見を詳細に比較することにより、鑑別が可能となる。CIDPの典型例の臨床症状は、左右対称性のしびれと近位筋を含む筋力低下であり、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈するPOEMS症候群とは臨床症状が異なる。しかし、CIDP、POEMS症候群とも、神経伝導検査は脱髄所見を示すこと、CIDPのほうが有病率・認知度ともに高いことが影響し、POEMS症候群がCIDPと初期診断される確率は高い。典型的CIDPの多くの症例では、ステロイド、免疫グロブリン、血漿交換などの治療に反応する。したがって、治療抵抗例では診断の再考が必要な場合がある。ALアミロイドーシスは、POEMS症候群と同様、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈する。しかし、神経伝導検査では軸索変性所見を呈するため、POEMS症候群とは異なる。その他、大量の胸水や腹水単独で発症する例もあり、原因が特定できない場合には、本症候群を鑑別疾患の1つとして挙げることも考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)POEMS症候群の症状は多彩であるが、治療のターゲットはplasma cell dyscrasiaである。そのため、近年は骨髄腫の治療法が本症候群に応用されている。治療方針の原則は、若年者では自家移植、高齢者では免疫調整薬が第1選択とされてきた。移植適応年齢の上限は、65歳から70歳へと、近年引き上げられつつある。自家移植に伴う関連死や再発のリスクが明確になりつつあることを考慮すると、若年軽症例、とくに30代の患者では、リスクとベネフィットおよび長期にわたる疾患コントロールの観点から、移植が第1選択とは必ずしもいい切れなくなってきている。そのような症例では、免疫調整薬が第1選択となる可能性がある。以下に、現在有効であると考えられている治療法について概説する。しかし、いずれも保険適用がないのが、問題点となっている。■ 自己末梢血幹細胞を伴う高用量化学療法通常、骨髄腫とほぼ同様の方法で行われている。自己末梢血幹細胞採取は、顆粒球コロニー刺激因子単独またはシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)併用で行われる。続いて、高用量のメルファラン(同:アルケラン)による前処置後に幹細胞移植が行われる。最近では、移植前にサリドマイド(同:サレド)、レナリドミド(同:レブラミド)やボルテゾミブ(同:ベルケイド)などの前治療を行い、病勢をコントロールしてから、自家移植へ進むこともある。移植後、VEGF値は約1~3ヵ月で速やかに低下し、引き続き臨床症状全般の改善が生じる。移植後の再発に関する報告も増えつつあり、無増悪生存率は1年で98%、5年で75%とされる。再発後の治療の選択肢としては再移植、サリドマイドなどの免疫調整薬などが選択されることが多い。■ 免疫調整薬現時点における免疫調整薬の選択肢は、サリドマイド、レナリドミドである。サリドマイド、レナリドミドとも、やはり骨髄腫と同様の用法・用量で使用されており、デキサメタゾン(同:レナデックス、デカドロンなど)が通常併用される。ポマリドミド(同:ポマリスト)は、レナリドミドの次に開発された免疫調整薬であるが、本症候群への使用の報告はまだない。サリドマイドは、本症候群における有効性が、プラセボ対照二重盲検ランダム化群間比較試験で、唯一示されている薬剤である。前記試験は、わが国において医師主導治験として実施されており、適用取得に向けて準備中である。レナリドミドについても、単群オープン試験が報告されており、やはり有効性が示されている。副作用として、サリドマイドでは徐脈、末梢神経障害などに、レナリドミドでは骨髄抑制に、とくに注意が必要である。若年軽症例では、現時点では自家移植ではなく免疫調整薬を選択しても、将来的には自家移植の適応となる可能性がある。その際には、レナリドミドの長期使用により、幹細胞採取が困難となる可能性があるため、長期的な展望の下に、薬剤の選択と治療期間の検討を行う必要がある。■ プロテアソーム阻害薬骨髄腫治療薬として主要な位置付けとなっているプロテアソーム阻害薬も、POEMS症候群に有効な可能性がある。本症候群においては、ボルテゾミブの有効性についての症例報告が集積されつつある。臨床試験の報告はない。カルフィルゾミブ(同:カイプロリス)については、1例の報告のみで、神経症状の安定化が認められたとされる。イキサゾミブ(同:ニンラーロ)については、現在、米国で臨床試験が進行中である。用法・用量は、骨髄腫と同様に使用されることが多い。しかし、プロテアソーム阻害薬の注意すべき副作用として、末梢神経障害がある。そのため、投与中は末梢神経障害の発現に注意しつつ、投与間隔の延長や治療の中断を考慮する。ボルテゾミブに関しての報告が最も多く、効果の発現が免疫調整薬と比較し、速やかな可能性がある。亜急性進行を示す例において、選択肢の1つとなる可能性がある。4 今後の展望現在、骨髄腫治療薬は、早いスピードで開発が進んでいる。これまでの免疫調整薬・プロテアソーム阻害薬の本症候群における有効性を鑑みると、新規薬もおそらく有効である可能性が高い。そのため、本症候群に応用できる選択肢が、今後も引き続き増加することが予測される。現時点では、本症候群における新規治療の試みは、希少かつ重篤な疾患であるがゆえに、1~数例の報告が主体である。しかし、サリドマイドの本症候群への適応拡大のために行われたランダム化群間比較試験のように、今後は適切な臨床試験を可能な限り行い、エビデンスを積み重ね、治療戦略を構築する試みを継続すべきである。治療の進歩に伴い、本症候群の認知度は確実に向上しており、早期診断・治療の加速により、予後は明らかに改善しつつある。また、稀少疾病の新規治療開発を加速させる手段の1つとして、本症候群の症例登録システムも構築されている。全国に散在している症例の情報を集積し、新規治療の有効性や予後について明らかにすることが目的である。さらに、未来の新規治療薬の臨床試験においては、適応となりうる患者に迅速に情報を届けることも、もう1つの主要な目的である。一方で、診断・病勢のマーカーとなるVEGF測定や有効とされる新規治療が、いまだ1つも保険適用とされていないことが、すべての患者さんが、いずれの医療機関でも標準的な診療を受けることへの大きな障壁となっている。このような問題点に関しても、今後の解決が期待される。5 主たる診療科神経内科または血液内科 ※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター クロウ・深瀬症候群(一般利用者と医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 J-POST trial(医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 患者登録システム(一般利用者と医療者向けの症例登録の窓口)患者会情報POEMS症候群 サポートグループ(本症の患者および家族の会)1)Kuwabara S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;6:CD006828.2)Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.3)Dispenzieri A. Am J Hematol. 2014;89:214-223.4)Misawa S, et al. Lancet Neurol. 2016;15:1129-1137.5)Jaccard A. Hematol Oncol Clin North Am. 2018;32:141-151.6)Nozza A, et al. Br J Haematol. 2017;179:748-755.7)Mitsutake A, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018.[Epub ahead of print]公開履歴初回2015年07月28日更新2018年04月24日

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慢性肝疾患リスクを低減する遺伝要因が明らかに/NEJM

 HSD17B13のスプライス変異体rs72613567:TAが、脂肪肝や脂肪性肝炎への進展リスク低下と関連することが、米国・Regeneron Genetics CenterのNoura S. Abul-Husn氏らによる検討で明らかになった。約4万7,000例を対象にした「DiscovEHRヒト遺伝学試験」のエクソーム解析データに加え、複数のコホート試験などを基にした検証結果で、NEJM誌2018年3月22日号で発表された。慢性肝疾患の基礎を成す遺伝要因は、新たな治療ターゲットを明らかにできる可能性があることから、解明への期待が寄せられていた。ALT・AST値に関連の遺伝子変異体を特定 研究グループは、DiscovEHRヒト遺伝学試験の被験者4万6,544例のエクソーム解析データと電子保健医療記録(EHR)を基に、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値と血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値に関連する遺伝子変異体を特定した。 特定した変異体について、他の3つのコホート(被験者数1万2,527例)で再現性を確認した。そのうえで、DiscovEHR試験と2つの独立コホート(被験者数3万7,173例)で、慢性肝疾患の臨床的診断との関連性を評価した。さらに2,391例のヒト肝臓検体において、肝疾患の病理組織学的重症度との関連についても評価を行った。アルコール性肝硬変、rs72613567:TAでリスク低下 肝脂肪滴蛋白17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素13をコードする「HSD17B13」のスプライス変異体(rs72613567:TA)が、ALT低下(p=4.2×10-12)とAST低下(p=6.2×10-10)と関連していることが確認された。 DiscovEHR試験の被験者について調べたところ、同変異体はアルコール性肝障害のリスク低下や(ヘテロ接合では42%低下[95%信頼区間[CI]:20~58]、ホモ接合では53%低下[95%CI:3~77])、非アルコール性肝障害のリスク低下(それぞれ、17%[95%CI:8~25]と30%[同:13~43]の低下)と関連が認められた。 また同変異体は、アルコール性肝硬変のリスク低下や(それぞれ42%[95%CI:14~61]と73%[同:15~91]の低下)、非アルコール性肝硬変のリスク低下(それぞれ26%[95%CI:7~40]と49%[同:15~69]の低下)と関連した。こうしたリスク低下との関連性については、2つの独立コホートでも確認された。 ヒト肝臓検体による評価では、rs72613567:TAは非アルコール性脂肪性肝炎のリスク低下と関連していたものの、脂肪肝のリスク低下とは関連がなかった。 rs72613567:TAは、肝損傷リスクを増加するPNPLA3 p.I148Mアレルによる肝損傷を軽減し、不安定で正常より短い蛋白となり、酵素活性が低下した。

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全身性エリテマトーデス〔SLE:Systemic Lupus Erythematosus〕

1 疾患概要■ 概念・定義全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、自己免疫異常を基盤として発症し、多彩な自己抗体の産生により多臓器に障害を来す全身性炎症性疾患で、再燃と寛解を繰り返しながら病像が完成される。全身に多彩な病変を呈しうるが、個々人によって障害臓器やその程度が異なるため、それぞれに応じた管理と治療が必要となる。■ 疫学本疾患は指定難病に指定されており、令和元年(2019年)度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は6万1,835件であり、計算上の有病率は10万人中50人である。男女比は1対9で女性に多く、発症年齢は10~30代で大半を占める。■ 病因発症要因として、遺伝的背景要因に加えて、感染症や紫外線などの環境要因が引き金となり、発症することが考えられているが、不明点が多い。その病態は、抗dsDNA抗体を主体とする多彩な自己抗体の出現に加え、多岐にわたる免疫異常によって形成される。自然免疫と獲得免疫それぞれの段階で異常が指摘されており、樹状細胞・マクロファージを含めた貪食能を持つ抗原提示細胞、各種T細胞、B細胞、サイトカインなどの異常が病態に関与している。体内の細胞は常に破壊と産生を繰り返しているが、前述の引き金などを契機に体内の核酸物質が蓄積することで、異常な免疫反応が惹起され、自己抗体が産生され免疫複合体が形成される。そして、それらが各臓器に蓄積し、さらなる炎症・自己免疫を引き起こし、病態が形成されていく。■ 症状障害臓器に応じた症状が、同時もしくは経過中に異なる時期に出現しうる。初発症状として最も頻度が高いものは、発熱、関節症状、皮膚粘膜症状である。全身倦怠感やリンパ節腫脹を伴う。関節痛(関節炎)は通常骨破壊を伴わない。皮膚粘膜症状として、日光過敏症や露光部に一致した頬部紅斑のほかに、手指や四肢体幹部に多彩な皮疹を呈し、脱毛、口腔内潰瘍などを呈する。その他、レイノー現象、腎炎に関連した浮腫、肺病変や血管病変と関連した労作時呼吸困難、肺胞出血に伴う血痰、漿膜炎と関連した胸痛・腹痛、神経精神症状など、さまざまな症状を呈しうる。■ 分類SLEは障害臓器と重症度により治療内容が異なる。とくに重要臓器として、腎臓、中枢神経、肺を侵すものが挙げられ、生命および機能予後が著しく障害される可能性が高い障害である。ループス腎炎は組織学的に分類されており、International Society of Nephrology/Renal Pathology Society(ISN/RPS)分類が用いられている。神経精神ループス(Neuropsychiatric SLE:NPSLE)では大きく中枢神経病変と末梢神経病変に分類され、それぞれの中でさらに詳細な臨床分類がなされる。■ 予後生命予後は、1950年代は5年生存率がおよそ50%であったが、2007年のわが国の報告では10年生存率がおよそ90%、20年生存率はおよそ75%である1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)検査所見として、抗核抗体、抗(ds)DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、β2GPⅠ依存性抗カルジオリピン抗体など)が陽性となる。また、血清補体低値、免疫複合体高値、白血球減少(リンパ球減少)、血小板減少、溶血性貧血、直接クームス陽性を呈する。ループス腎炎合併の場合はeGFR低下、蛋白尿、赤血球尿、白血球尿、細胞性円柱が出現しうる。SLEの診断では1997年の米国リウマチ学会分類基準2)および2012年のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準3)を参考に、他疾患との鑑別を行い、総合的に判断する(表1、2)。2019年に欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が合同で作成した新しい分類基準4)が提唱された。今後はわが国においても本基準の検証を元に診療に用いられることが考えられる。画像を拡大する表2 Systemic Lupus International Collaborating Clinics 2012分類基準画像を拡大するループス腎炎が疑われる場合は、積極的に腎生検を行い、ISN/RPS分類による病型分類を行う。50~60%のNPSLEはSLE診断時か1年以内に発症する。感染症、代謝性疾患、薬剤性を除外する必要がある。髄液細胞数、蛋白の増加、糖の低下、髄液IL-6濃度高値であることがある。MRI、脳血流シンチ、脳波で鑑別を進める。貧血の進行を伴う呼吸困難、両側肺びまん性浸潤影あるいは斑状陰影を認めた場合は肺胞出血を考慮する。全身症状、リンパ節腫脹、関節炎を呈する鑑別疾患は、パルボウイルス、EBV、HIVを含むウイルス感染症、結核、悪性リンパ腫、血管炎症候群、他の膠原病および類縁疾患が挙がるが、感染症を契機に発症や再燃をすることや、他の膠原病を合併することもしばしばある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)SLEの基本的な治療薬はステロイド、免疫抑制薬、抗マラリア薬であるが、近年は生物学的製剤が承認され、複数の分子標的治療が世界的に試みられている。ステロイドおよび免疫抑制薬の選択と使用量については、障害臓器の種類と重症度(疾患活動性)、病型分類、合併症の有無によって異なる。治療の際には、(1)SLEのどの障害臓器を標的として治療をするのか、(2)何を治療指標として経過をみるのか、(3)出現しうる合併症は何かを明確にしながら進めていくことが重要である。SLEの治療選択については、『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』の記載にある通り、重要臓器障害があり、生命や機能的予後を脅かす場合は、ステロイド大量投与に加えて免疫抑制薬の併用が基本となる5)(図)。ステロイドは強力かつ有効な免疫抑制薬でありSLE治療の中心となっているが、免疫抑制薬と併用することで予後が改善される。ステロイドの使用量は治療標的臓器と重症度による。ステロイドパルス療法とは、メチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール)250~1,000mg/日を3日間点滴投与、大量ステロイドとはプレドニゾロン換算で30~100mg/日を点滴もしくは経口投与、中等量とは同じく7.5~30mg/日、少量とは7.5mg/日以下が目安となるが、体重により異なる6)(表3)。ステロイドの副作用はさまざまなものがあり、投与量と投与期間に依存して必発である。したがって、副作用予防と管理を適切に行う必要がある。また、大量のステロイドを長期に投与することは副作用の観点から行わず、再燃に注意しながら漸減する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する寛解導入療法として用いられる免疫抑制薬は、シクロホスファミド(同:エンドキサン)とミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)が主体となる(ループス腎炎の治療については別項参照)。治療抵抗性の場合、免疫抑制薬を変更するなど治療標的を変更しながら進めていく。病態や障害臓器の程度により、カルシニューリン阻害薬のシクロスポリン(同:サンディミュン、ネオーラル)、タクロリムス(同:プログラフ)やアザチオプリン(同:イムラン、アザニン)も用いられる。症例に応じてそれぞれの有効性と副作用の特徴を考慮しながら選択する(表4)。画像を拡大するリツキシマブは、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)および欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)/欧州腎臓学会-欧州透析移植学会(European Renal Association – European Dialysis and Transplant Association:ERA-EDTA)の推奨7,8)においては、既存の治療に抵抗性の場合に選択肢となりうるが、重症感染症や進行性多巣性白質脳症の注意は必要と考えられる。わが国ではネフローゼ症候群に対しては保険承認されているが、SLEそのものに対する保険適用はない。可溶型Bリンパ球刺激因子(B Lymphocyte Stimulator:BLyS)を中和する完全ヒト型モノクローナル抗体であるベリムマブ(同:ベンリスタ)は、既存治療で効果不十分のSLEに対する治療薬として、2017年にわが国で保険承認され、治療選択肢の1つとなっている9)。本稿執筆時点では、筋骨格系や皮膚病変にとくに有効であり、ステロイド減量効果、再燃抑制、障害蓄積の抑制に有効と考えられている。ループス腎炎に対しては一定の有効性を示す報告10)が出てきており、適切な症例選択が望まれる。NPSLEでの有効性はわかっていない。ヒドロキシクロロキン(同:プラケニル)は海外では古くから使用されていたが、わが国では2015年7月に適用承認された。全身症状、皮疹、関節炎などにとくに有効であり、SLEの予後改善、腎炎の再燃予防を示唆する報告がある。短期的には薬疹、長期的には網膜症などの副作用に注意を要し、治療開始前と開始後の定期的な眼科受診が必要である。アニフロルマブ(同:サフネロー)はSLE病態に関与しているI型インターフェロンα受容体のサブユニット1に対する抗体製剤であり、2021年9月にわが国でSLEの適応が承認された。臨床症状の改善、ステロイド減量効果が示された。一方で、アニフロルマブはウイルス感染制御に関与するインターフェロンシグナル伝達を阻害するため、感染症の発現リスクが増加する可能性が考えられている。執筆時点では全例市販後調査が行われており、日本リウマチ学会より適正使用の手引きが公開されている。実臨床での有効性と安全性が今後検証される。SLEの病態は複雑であり、臨床所見も多岐にわたるため、複数の診療科との連携を図りながら各々の臓器障害に対する治療および合併症に対して、妊娠や出産、授乳に対する配慮を含めて、個々に応じた管理が必要である。4 今後の展望本稿執筆時点では、世界でおよそ30種類もの新規治療薬の第II/III相臨床試験が進行中である。とくにB細胞、T細胞、共刺激経路、サイトカイン、細胞内シグナル伝達経路を標的とした分子標的治療薬が評価中である。また、異なる作用機序の薬剤を組み合わせる試みもなされている。SLEは集団としてヘテロであることから、適切な評価のためのアウトカムの設定方法や薬剤ごとのバイオマーカーの探索が同時に行われている。5 主たる診療科リウマチ・膠原病内科、皮膚科、腎臓内科、その他、障害臓器や治療合併症に応じて多くの診療科との連携が必要となる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 全身性エリテマトーデス(公費対象)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(膠原病患者とその家族の会)1)Funauchi M, et al. Rheumatol Int. 2007;27:243-249.2)Hochberg MC, et al. Arthritis Rheum. 1997;40:1725.3)Petri M, et al. Arthritis Rheum. 2012;64:2677-2686.4)Aringer M, et al. Ann Rheum Dis. 2019;78:1151-1159.5)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班),日本リウマチ学会(編):全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019.南山堂,2019.6)Buttgereit F, et al. Ann Rheum Dis. 2002;61:718-722.7)Hahn BH, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64:797-808.8)Bertsias GK, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1771-1782.9)Furie R, et al. Arthritis Rheum. 2011;63:3918-3930.10)Furie R, et al. N Engl J Med. 2020;383:1117-1128.公開履歴初回2018年04月10日更新2022年02月25日

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安すぎる名著【Dr.倉原の“俺の本棚”】第4回

【第4回】安すぎる名著こんにちは倉原です。チャラ書評、ウザ書評という新しい分野を開拓している最近です。「倉原先生、 “この先生の本だったら読んでみたい!”っていうドクターいませんか?」と聞かれて、一時期「萩野先生ですね」とルーチンで返していた時期があります。そんな私の迷惑発言と関係しているのかどうかは不明ですが、Dr.ハギーこと萩野 昇先生の本が刊行されました。ちなみに萩野先生の名前を“荻”野先生と間違うと、漏れなくFacebookにアップされるのでみなさん注意してください。『ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療』萩野 昇/著. 医学書院. 2018通読した感想を述べましょう。あまりにも、安すぎる。何考えてんだ、医学書院! (←冗談なので怒らないでくださいね)この本は、リウマトロジストのための専門書というよりも、広く内科を診る医師向けに書かれたものです。しかし、その内容は恐ろしいほど濃厚です。内科医にとっては、「ステロイドの使い方」は必読の章。プレドニゾロンが増量されるに連れ、どういう作用が台頭してくるのか、なぜステロイドパルス療法がメチルプレドニゾロンなのか、などが解説されています。この本を読んで、ちょっと自身のプラクティスを見直そうかと思いました。私は「勉強になったなぁ」と思うところに蛍光ペンでマーカーを付けるのですが、1ページの半分以上がマーカーになってしまっていることに気付き、この本のヤバさに気が付きました。このままでは、この本だけで蛍光ペンのインクがなくなってしまう!この本の至る所に注釈が加えられているですが、その多くは「Huggy’s Memo」というミニコラムです。1つだけ紹介しましょう。プロフェッショナルのリウマトロジストが書いた、こんなよもやま話がほぼ全ページにびっしり書き込まれているんですよ。Huggy’s Memo※“palpable purpura”を「Lは舌先を硬口蓋につけて、Rは舌先を歯根部に近づけるが接しない」ことを意識して発音すると、舌が痙攣しそうになる。私、研修医のときpalpable purpuraの症例をローレンス・ティアニー先生の前で発表したことがあるのですが、関根 勤さんのジャイアント馬場のモノマネみたいな発音を20回くらい修正されたのを思い出します。萩野先生には、お互い仮面ライダービルドファンとしてFacebookで絡んでいただいているのですが、毎度毎度、選ぶ言葉のセンスに心動かされています。あの先生が医学書を書いたら、とんでもない出来になるんだろうなぁと思っていたら、予想を超える逸品が出てきました。膠原病の分野は、出版医学書が多くありません。そのため、その初動に悩んでいる医師も多くいると思います。この本、2倍の値段の7,600円でも買いですよ。『ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療』萩野 昇/著出版社名医学書院定価本体3,800円+税サイズB5版刊行年2018年 関連番組のご紹介( CareNeTV )Dr.ハギーの関節リウマチ手とり足とり~まずは触ってみる~早期介入編Dr.ハギーの関節リウマチ 手とり足とり~もっと工夫してみる~ 長期罹患編※視聴には有料の会員登録が必要です。

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多発性硬化症の症状は個人差が大きく確定診断まで約3年を待つ

 2018年3月29日、バイオジェン・ジャパン株式会社とエーザイ株式会社は、多発性硬化症に関するメディアセミナーを都内で共同開催した。セミナーでは、女性に多い本症について、疾患概要だけでなく、女性視点から闘病への悩みなども取り上げられた。多発性硬化症は全国で約2万人が苦しむ難病 セミナーでは、清水 優子氏(東京女子医科大学病院 神経内科 准教授)を講師に迎え、「多発性硬化症の治療選択-女性患者のアンメットニーズとライフステージ」をテーマに講演が行われた。 多発性硬化症は、中枢神経系の自己免疫性脱髄疾患であり、ミエリン(髄鞘)が障害されることで、視力障害や運動麻痺、排尿障害、感覚障害など、さまざまな症状を引き起こす。多発性硬化症の症状出現の仕方・時間は、患者の個人差も大きく、診断に苦慮する難病である。なお、多発性硬化症の診断では、一般的な問診・検査に加え、MRI検査により、ほぼ確定診断が行われる。主な診療は、神経内科が担当するが、眼科、整形外科、一般内科で気付かれる例も多いという。 多発性硬化症の発症年齢は20~30代にあり、患者は女性に多い。発症原因は不明で、わが国では患者数が年々増加しており2015年度で1万9,389例の患者が登録されている(特定疾患医療受給者証交付件数)。また、多発性硬化症の特徴として、治療が奏効しても再燃と寛解を繰り返し、徐々に症状の重症度が上がっていき(発症初期から進行性の経過をとる一次性進行型はまれ)、進行型の予測も難しいという。多発性硬化症の症状を疑ったらMRI検査へ 多発性硬化症の治療では、初発から再発寛解までの時間が、治療のゴールデンタイムと言われる。この時間に確定診断が行われ、きちんとした治療が行われるかどうかで予後が変わるという。しかしながら、初発の症状では、多発性硬化症と診断される例が少なく、確定診断まで平均3.7年かかるという報告もある(バイオジェン・ジャパンと全国多発性硬化症友の会との合同アンケート調査より)。「初発症状である温度変化による症状の悪化(ウートフ現象)、手足の突っ張り感、脱力、過労やストレス、風邪などの易感染、出産後3ヵ月間などの主訴から診断初期で、いかに本症を思い浮かべ、MRIなどの検査に送ることができるかが、治療を左右する」と清水氏は指摘する。 急性期、慢性期、再発防止の3期に分けて多発性硬化症の治療薬は使われる。急性期ではステロイド・パルス療法、血液浄化療法が、慢性期では対症療法、リハビリテーションが、再発防止ではインターフェロンβ1a/b、グラチラマー、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、ナタリズマブが、個々の患者病態に合わせて選択されている。しかし、完全寛解まで至る治療薬は現在ない。多発性硬化症患者の妊娠・出産の悩みに応える 続いて多発性硬化症の女性患者の出産、妊娠について解説を行った。多発性硬化症の発症時期は、こうしたイベントと重なることが多く、女性患者にとっては切実な問題だという。実際、妊娠、出産に関しては、病態が管理できているのであれば、いずれも問題はないという。ただ、妊娠中は免疫寛容が母体に働くために多発性硬化症の症状は安定または軽くなるものの、「出産後早期は、再発リスクがあり、注意が必要だ」と同氏は述べる。また、生まれてくる胎児への影響はなく、授乳も多発性硬化症の再発リスクにもならないが、「不妊治療については、悪化させる報告もあるので、妊娠を希望する場合、病態の安定化が重要だ」と同氏は指摘する。多発性硬化症の症状に周囲の理解が大事 女性患者の就労に関しては、脱力、しびれ感、目のかすみなどの症状が、外観から理解されにくく、誤解を受けやすいことから悩みを抱えている現状が紹介された。先に紹介したアンケート調査を引用し、「疾患により仕事内容の変更・異動、転職・退職を経験したことがあるか?」(n=210)との問いに複数回答ながら「退職」(34.3%)、仕事内容の変更(21.9%)、「就職をあきらめた」(19.5%)の順で回答が寄せられ、就労の難しさをうかがわせた。体が思うように動かない、多発性硬化症の症状の説明が周囲に難しいなどの理由により仕事に就きたいが就労できない状況が、さらに経済状態を悪化させ不安感を増大させるなどして、女性患者を負のスパイラルに陥らせていることを指摘した。 最後に清水氏は「女性にとって多発性硬化症の罹患年齢は、働き盛り、妊娠・出産の世代に重なる。そのため医療者をはじめとする一般社会の理解がないと、これらの問題解決は難しい。多発性硬化症の社会認識と理解・啓発、就労関係の整備が実現され、患者の社会貢献ができることを望む」と期待を述べ、レクチャーを終えた。

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一時的に吸入ステロイドを4倍量にすると喘息増悪リスクが2割減少する(解説:小林 英夫 氏)-835

 吸入ステロイド薬が気管支喘息管理の基本であることは言うまでもない。吸入ステロイドですべての喘息増悪は抑制できないものの、吸入量増加によりさらなる症状改善を図るという発想から、本研究は必然的なテーマであろう。2004年のLancetとThoraxに、吸入量を2倍にしてもあまり効果が得られなかったことが報告されているため、今回の研究は4倍量吸入により30%の増悪抑制効果が得られるかどうかを証明するというデザインが採用された。得られた結果は19%の増悪抑制効果で、当初の設定目標には届かなかった。 一時的に吸入量を増加し喘息悪化に対応するという治療選択はこれまでも実施されており、著者もしばしば活用している。それでも、本論文の結果が日本において同様かどうかには、いくつかクリアすべき学術的な論点があろうかと思われる。まず、本邦での喘息男女比はほぼ同等とされるが、本論文では女性が68%である。男女での服薬アドヒアランス差の存在はよく知られている。吸入ステロイドの4割はベクロメタゾンを使用しているが、日本での処方実態とはかなり異なっている。吸入増量のタイミングと決定が患者自身に任されている点は、エントリ基準がどの程度遵守されたか、やや危惧される。そして最も気になった背景は、約7割の症例は他薬との複合薬を吸入しており、ステロイド単剤は3割にとどまる点である。複合薬の内容は記載されていないが、通常は長時間作用型β2刺激薬との合剤と推測される。喘息増悪抑制効果がステロイドのみでもたらされたのか、それとも合剤の効果なのか、もう少し解析が必要ではないだろうか。 NEJMでは本論文前段に(意図的配列と思えるが)、小児喘息発作予防のために一時的に吸入ステロイド5倍量を投与する試験結果が連続して掲載されていた1)。そこでは重症喘息発作抑制効果は確認されなかった。当然ながら小児と成人の疾患差や登録症例数が異なることなど同次元の比較はできないが、その編集方針の妙に感じ入った。

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