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ICU入室COVID-19重篤例、抗血小板療法は有効か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重篤例では、抗血小板薬による治療はこれを使用しない場合と比較して、集中治療室(ICU)で呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けない生存日数が延長される可能性は低く、生存退院例の割合も改善されないことが、英国・ブリストル大学のCharlotte A. Bradbury氏らREMAP-CAP Writing Committee for the REMAP-CAP Investigatorsが実施した「REMAP-CAP試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2022年3月22日号で報告された。8ヵ国105施設の適応プラットフォーム試験 本研究は、重度の肺炎患者における最良の治療法を確立するために、複数の介入を反復的に検証する適応プラットフォーム試験で、COVID-19患者ではこれまでにコルチコステロイド、抗凝固薬、抗ウイルス薬、IL-6受容体拮抗薬、回復期患者血漿の研究結果が報告されており、今回は抗血小板療法の有用性について検討が行われた(欧州連合のPlatform for European Preparedness Against[Re-]Emerging Epidemics[PREPARE]などの助成を受けた)。 この試験では、2020年10月30日~2021年6月23日の期間に8ヵ国105施設で患者の登録が行われ、90日間追跡された(最終追跡終了日2021年7月26日)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的にCOVID-19が疑われるか微生物学的に確定され、ICUに入室して呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けている患者であった。呼吸器系臓器補助は侵襲的または非侵襲的な機械的人工換気の導入、心血管系臓器補助は昇圧薬または強心薬の投与と定義された。 被験者は、非盲検下にアスピリン、P2Y12阻害薬、抗血小板療法なし(対照群)の3つの群に無作為に割り付けられた。標準治療として抗凝固薬による血栓予防療法が施行され、これとの併用で最長14日間、院内での介入が行われた。 主要エンドポイントは、21日間における臓器補助不要期間(ICUで呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けない生存日数)とされた。院内死亡を-1、臓器補助なしでの21日間の生存を22とし、この範囲内で評価が行われた。主解析では、累積ロジスティックモデルのベイズ解析が用いられ、オッズ比が1を超える場合に改善と判定された。無益性により患者登録は中止に アスピリン群とP2Y12阻害薬群は、適応解析で事前に規定された同等性の基準を満たし、次の段階の解析のために抗血小板薬群として統計学的に統合された。また、事前に規定された無益性による中止基準を満たしたため、2021年6月24日、本試験の患者登録は中止された。 全体で1,549例(年齢中央値57歳、女性521例[33.6%])が登録され、アスピリン群に565例、P2Y12阻害薬群に455例、対照群に529例が割り付けられた。 臓器補助不要期間中央値は、抗血小板薬群および対照群ともに7(IQR:-1~16)であった。抗血小板薬群の対照群に対する有効性の補正オッズ比中央値は1.02(95%信用区間[CrI]:0.86~1.23)で、無益性の事後確率は95.7%であり、無益性が確認された(オッズ比が1.2未満となる無益性の事後確率が、95%を超える場合に無益性ありと判定)。また、生存例における臓器補助不要期間中央値は、両群とも14だった。 生存退院患者の割合は、抗血小板薬群が71.5%(723/1,011例)、対照群は67.9%(354/521例)であった。補正後オッズ比中央値は1.27(95%CrI:0.99~1.62)、補正後絶対群間差は5%(95%CrI:-0.2~9.5)で、有効性の事後確率は97%であり、有効性は示されなかった(オッズ比が1を超える有効性の事後確率が、99%を超える場合に有効性ありと判定)。 大出血は、抗血小板薬群が2.1%、対照群は0.4%で発生した。補正後オッズ比は2.97(95%CrI:1.23~8.28)、補正後絶対リスク増加は0.8%(95%CrI:0.1~2.7)で、有害性の事後確率は99.4%であった。 著者は、「抗血小板薬は、臓器補助不要期間に関して無益性が確認されたが、生存退院を改善する確率は97%で、死亡を5%低減し、90日間の解析では生存を改善する確率は99.7%であった。本試験に参加した8ヵ国では、抗血小板薬は安価で広範に入手可能で、投与も容易であることから、世界規模での適用が可能かもしれない」と考察している。

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関節型若年性特発性関節炎〔pJIA:Polyarticular Juvenile Idiopathic Arthritis〕

1 疾患概要■ 定義・分類若年性特発性関節炎(JIA)は16歳未満に発症し6週間以上持続する原因不明の慢性関節炎の総称である。発症から6ヵ月までの臨床像から、(1)全身型、(2)少関節炎、(3)rheumatoid factor(RF)陰性多関節炎、(4)RF陽性多関節炎、(5)乾癬性関節炎、(6)腱付着部炎関連関節炎、(7)分類不能型の7病型に分類され1)、また治療の視点から、全身型、関節型、症候性の3つに整理されている(図1)。図1 JIAの病型分類と関節型JIAの位置付け画像を拡大する6歳未満に発症した原因不明の慢性関節炎は、発症から6ヵ月以内の臨床症状や検査所見から7病型に分類される。また、治療の観点から、全身型JIA、関節型JIA、症候性JIAの3つに分類するが、このうち関節型JIAとは、主に少関節炎JIA、RF陰性およびRF陽性多関節炎JIAを指し、全身型JIAで発症し、全身症状が消退しても関節炎が遷延するものも含まれる。関節型JIAとは、主に(2)少関節炎JIAと(3)RF陰性および(4)RF陽性多関節型JIAの3病型を指す。少関節炎JIAと多関節炎JIAは炎症関節の数で区分されており、前者は4関節以下、後者は5関節以上と定義されている。また、(1)全身型JIAの約20%は、その後、全身症状(発熱、皮疹など)を伴わず関節炎が遷延する経過をとるため(全身型発症多関節炎)、関節型JIAに含められている。■ 疫学わが国のJIAの有病率は小児10万人当たり8.8~11.6と報告され、推定患者数は2,893人である。また、JIAの病型の比率2)は、全身型41.2%、少関節炎20.2%、RF陰性多関節炎13.7%、RF陽性多関節炎18.2%であることから、関節型JIAの患者数は約1,700人程度と推定される。■ 病因関節型JIAの病因は不明であるが、抗核抗体陽性例が多い少関節炎JIAやRF陽性多関節炎JIAは自己免疫疾患の1つと考えられている。また、後述する生物学的製剤biologic disease modifying anti-rheumatic drugs(bDMARDs)の有効性から、関節型JIAの病態形成にTNFやIL-6などの炎症性サイトカインや、T細胞活性化が関与していることは明らかである。■ 症状1)関節症状関節は腫脹・発赤し、疼痛やこわばり、痛みによる可動域制限を伴う。関節炎は、少関節炎JIAでは大関節(膝、足、手)に好発し、多関節炎JIAではこれに小関節(指趾、頸椎など)が加わる。しかし、小児では本人からの関節症状の訴えは少ない。これは小児では痛みを具体的に説明できず、痛みを避ける動作や姿勢を無意識にとっているためと考えられる。そのため、起床時の様子や午前中の歩行容姿、乳児ではおむつ交換時の激しい啼泣などから、保護者が異常に気付くことが多い。2)関節外症状関節症状に倦怠感や易疲労感を伴う。関節症状と同様、倦怠感は起床時や午前中に強いが、午後には改善して元気になる。そのため、学校では午前中の様子をさぼりや無気力と誤解されることがある。微熱を伴うこともあるが高熱とはならず、皮疹もみられない。少関節炎JIAを中心に、JIAの5~15%に前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)がみられる。関節炎発症から6年以内に発症することが多く、発症リスクとして、4歳未満発症と抗核抗体陽性が挙げられている。また、発症早期には自覚症状(眼痛、羞明)に乏しい。そのため、早期診断には眼症状がなくても定期的な眼科検診が欠かせない。■ 予後適切な治療により長期寛解が得られれば、JIAの約半数は無治療寛解(off medication寛解)を達成する。ただその可能性は病型で異なり、少関節炎JIAやRF陰性多関節炎では過半数が無治療寛解を達成するが、RF陽性多関節炎JIAや全身型発症多関節炎JIAでは、その達成率は低い(図2)。完治困難例の関節予後は不良であり、不可逆的な関節破壊による機能障害が進行し、日常生活に支障を来す。しかし、わが国では2008年にJIAに対する最初のbDMARDsが認可され、今後は重篤な機能障害に至る例は減少することが期待されている。少関節炎JIAに好発するぶどう膜炎は治療抵抗性であり、ステロイド点眼で寛解しても減量や中止後に再燃を繰り返す。そのため、眼合併症(帯状角膜変性、白内障、緑内障など)が経過とともに顕在化し、視機能が障害される。ぶどう膜炎についても、2016年にbDMARDsの1つであるアダリムマブ(adalimumab:ADA)が非感染性ぶどう膜炎で認可され、予後の改善が期待されている。図2 JIAの病型別累積無治療寛解率画像を拡大する鹿児島大学小児科で治療した全身型89例および多関節型JIA196例、合計285例のうち、すべての治療を中止し、2年間寛解状態を維持したものを、無治療寛解と定義し、その累積達成率を病型毎に検討した。その結果、JIA285例全体の累積無治療寛解率は罹病期間5年で33.1%であったが、病型別の達成率では、RF陽性多関節炎JIAと全身型発症多関節型JIAで低値であった。* 全身型で発症し、全身症状消失後も関節炎が遷延する病型**全身型で発症し、疾患活動期には関節炎と全身症状を伴う病型2 診断 (検査・鑑別診断も含む)持続する原因不明の関節炎がJIAの必須要件であるが、特異的な所見に乏しいために診断基準は確立されていない。したがって、臨床症状や検査所見を参考にJIAの可能性を検討し、鑑別疾患を除外して初めて診断される。■ 臨床症状関節炎は固定性・持続性で、しばしば倦怠感や易疲労性を伴う。関節症状(関節痛、こわばり感)は起床時や朝に強く、時間とともに改善する。高熱や皮疹はみられない。■ 検査所見抗環状シトルリン化ペプチド抗体(anti-cyclic citrullinated peptide antibody :ACPA)が陽性であればRF陽性多関節炎JIAの可能性が高い。一方RFは、RF陽性多関節炎JIAでは必須であるが、他のJIA病型では陰性であり、むしろシェーグレン症候群や混合性結合組織病での陽性率が高い。したがって、ACPAやRFが陰性でもJIAを否定できず、少関節炎JIAやRF陰性多関節炎JIAの可能性を検討する必要がある。MRIや関節エコー検査における肥厚した関節滑膜や炎症を示唆する所見は、関節型JIAの早期診断に有用であるが、JIAに特異的な所見ではない。一方、X線検査による関節裂隙の狭小化や骨糜爛などの破壊像はJIAに特異性が高いものの、早期診断には役立たない。MMP-3の増加は関節炎の存在や関節破壊の進行予知に有用である。しかし、健康幼児のMMP-3はほとんどが測定感度以下であるため、正常値であっても慎重に判断する。また、MMP-3の評価にはステロイドの影響を除外する必要がある。■ 鑑別疾患小児の関節痛に対する鑑別疾患を、疼痛部位や臨床経過、随伴症状、検査所見を含めて図3に示す。図3 疼痛部位や経過、臨床所見からみた小児の関節痛の鑑別疾患画像を拡大する年齢別には、乳幼児では悪性疾患(白血病)や自己炎症性疾患、年長児では他の膠原病やリウマチ性疾患、線維筋痛症、悪性疾患(骨肉腫)などを中心に鑑別する。一方、感染症や若年性皮膚筋炎との鑑別は全年齢にわたって必要である。関節炎に発熱や皮疹を伴う場合は、皮膚筋炎や全身性エリテマトーデスなどの膠原病疾患だけでなく、全身型JIAやブラウ症候群などの自己炎症性疾患を鑑別する。特に白血病や悪性疾患については、JIAとして治療を開始する前に除外しておくことは重要である。白血病を含む小児腫瘍性疾患1,275例を検討した報告では、発症時に関節炎を伴う例が102例(8%)存在し、これを関節型JIA 655例と比較したところ、「男児」、「単関節炎」、「股関節炎」、「全身症状」、「夜間痛や背部痛」が悪性疾患のリスク所見であった。特に白血病の初期は末梢血が正常であることが多く、骨髄検査で除外しておくことが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療目標関節型JIAの治療目標は関節炎病態に寛解を導入し、破壊性関節炎の発生や進行を抑止することである。一方、JIAの約半数は、治療寛解を長期維持した後に治療中止が可能で、その後も再燃せずに無治療寛解を維持する(図2)。そのため、関節型JIAにおいても、その最終的な治療目標は永続性のある無治療寛解(完治cure)であり、この点がRAとの最も大きな違いである。■ 治療評価1)診察時の評価関節痛や倦怠感、朝のこわばりの持続時間などで評価する。小児では訴えが不明確で評価が難しため、保護者からもたらされる日常生活の情報(歩行容姿や行動量などの変化)が参考になる。理学所見では、活動性関節炎(関節腫脹や圧痛)の数や、関節可動域の変化で評価する。検査では、炎症指標(CRP、赤沈、血清アミロイドA)やMMP-3、関節エコー所見などが参考になる。2)疾患活動性の総合評価27関節を評価するJuvenile Arthritis Disease Activity Score(JADAS)27が臨床評価に用いられている(図4)3)。RAで用いられるDAS28と異なり、少関節炎JIAで好発する足関節炎の評価が可能である。JADAS27の評価項目はVisual analog scale (VAS、0-10cm)による(1)医師および(2)患児(または保護者)の評価、(3)活動性関節炎数(0-27)、(4)標準化赤沈値([1時間値-20]/10、0-10)の4項目からなり、その合計スコア値(0-57)で評価する。なお、活動性関節炎とは、関節の腫脹または圧痛がある関節、圧痛がない場合は伸展屈曲負荷をかけた際に痛みがある関節と定義されている。また、JADAS27から標準化赤沈値を除いたスコア値を用いて、疾患活動性を寛解、低度、中等度、高度の4群にカテゴリー化するcut-off値も定義されている。3)寛解の種類と定義臨床寛解(clinical inactive disease)の定義は、(1)活動性関節炎、(2)活動性のぶどう膜炎、(3)赤沈値およびCRP値の異常、(4)発熱、皮疹、漿膜炎、脾腫、リンパ節腫脹がなく、(5)医師による総合評価が最小値で、(6)朝のこわばりが5分以下の6項目をすべて満たした状態である。また、この臨床寛解を治療により6ヵ月以上維持していれば治療(on medication)寛解、治療中止後も1年以上臨床寛解を維持していれば、無治療(off medication)寛解と分類される。図4 JADASを用いた関節型JIAの疾患活動性評価画像を拡大する医師および患児(または保護者)による総合評価、活動関節炎数、標準化赤沈値の集計したスコア値で疾患活動性を評価する。JADASには評価関節の数により、JADAS71、JADAS27、JADAS10の3つがあるが、臨床現場ではJADAS27が汎用されている。JADAS27では、DAS28で評価しない頸椎、両股関節、両足関節を評価する一方、DAS28で評価する両側の4-5MP関節、両肩関節は評価しない。疾患活動性を寛解、低活動性、中等度活動性、高度活動性の4群に分類する場合、標準化ESR値を除いた3項目の合計スコア値を用いる。その際のスコア値は、関節炎数が4関節以下の場合は、それぞれ0~1、0~1.5未満、1.5~8.5未満、8.5以上、関節炎数が5関節以上の場合は、それぞれ0~1、0~2.5未満、2.5~8.5未満、8.5以上と定義されている。■ 治療の実際(図5)4)関節型JIAの3病型のいずれも、以下の手順で治療を進める。また、治療開始後の臨床像の変化を、症状、理学所見、検査値、関節エコー、JADAS27などで評価し、治療の有効性と安全性を確認しながら治療を進める。図5 関節型JIAの治療手順画像を拡大する治療目標は無治療寛解である。予後不良因子のあるhigh risk群では、初期治療からNSAIDsにcsDMARDs(第1選択薬はMTX)を併用し、無効であれば生物学的製剤bDMARDsの追加併用を検討する。1)初期治療(1)1stステップ関節痛に対し、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を開始するとともに、予後不良因子(RF、ACPA、関節破壊像、日常生活に重要な頸椎・股・手関節などの関節炎)の有無を検討する。JIAに保険適用のあるNSAIDsは、イブプロフェン(30~40mg/kg/日、分3、最大2,400mg/日)とナプロキセン(10~20mg/kg/日、分2、最大1,000mg/日)に限られている。また、NSAIDsで疼痛コントロールが不十分でQOLが著しく低下している場合、少量ステロイド薬(glucocorticoid:GC)を併用することがある。ただ、GCはその強い抗炎症作用でCRP値や関節痛を改善させても、関節炎病態を寛解させない。そのためGCは2ndステップの治療効果が確認されるまでの橋渡し的な使用に限定すべきであり、漫然と継続してはならない。予後不良因子がある場合は、速やかに2ndステップの治療を開始する。予後不良因子がない場合はNSAIDsのみで経過を診るが、2週間経過しても改善が得られなければ、2ndステップの治療に移行する。(2)2nd ステップ従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(conventional synthetic disease modifying anti-rheumatic drugs:csDMARDs)をNSAIDsに追加併用する。第1選択薬はメトトレキサート(methotrexate:MTX)であり、globalな標準投与量は有効血中濃度(ピーク値5.8×10-7moles/L以上)が得られる10~15 mg/m2/週(分1、空腹時投与)である5)。しかし、わが国でのJIAでの承認投与量は4~10mg/m2/週であるため、MTX10mg/m2を週1回、空腹時に分1で投与するのが一般的な投与法である。また、副作用軽減を目的にフォリアミン5mgをMTX投与翌日に投与する。このMTXの投与量10mg/m2は、平均的な体格の小学生1年生で8mg、中学生1年生で15mgに相当する。RAでの上限投与量が16mgであることを考えれば、成人より相対的に高用量であるが、これは小児では、MTXの腎排泄が成人と比べて早いためである。そのため、小児では腎障害や骨髄抑制の発生は少ない。また、高齢者に多いMTXによる肺障害も極めてまれである。小児での主な副作用は嘔気や気分不良で、中学生以降の年長児ではほぼ必発である。そのため、訴えの強い小児では制吐剤の併用、就寝前の服用、剤型の変更などを検討する。なお、DMARDsには既感染の結核やB型肝炎ウイルス(HBV)を再活性化させる可能性がある。そのため、投与開始前に結核(T-spotや胸部Xp/CT)やHBV関連抗原/抗体(HBsAg、HBsAb、HBcAb)の検査を行って感染の有無を確認する。また、トキソプラズマやサイトメガロウイルス、ニューモシスチス肺炎や他の真菌感染症(β-D-glucan)の有無を検討しておくことも必要である。MTX開始後2ヵ月経過しても十分な効果が得られない場合、MTXを他のcsDMARDs (サラゾスルファピリジン[sulfasalazine]やイグラチモド[iguratimod/商品名:ケアラム]など)へ変更する選択肢もある。しかし、海外でその推奨度は低く、またcsDMARDsの効果発現までさらに数ヵ月を要すること、わが国ではJIAに保険適用のあるcsDMARDsはMTX以外にはないこともあり、他のcsDMARDsへの変更は現実的ではない。したがって、次の治療ステップである生物学的製剤(bDMARDs)の追加併用を検討する。(3)3rdステップ関節型JIAに保険適用のあるbDMARDsは、TNF阻害薬のエタネルセプト(Etanercept :ETA)とアダリムマブ(Adalimumab:ADA)、IL-6阻害薬のトシリズマブ(Tocilizumab :TCZ/同:アクテムラ)、T細胞選択的共刺激調整剤のアバタセプト(Abatacept:ABT/同:オレンシア)の4製剤のみである(表)。表 関節型JIAに保険適用のある生物学的製剤画像を拡大するa)TNF阻害薬ETNはTNF受容体(TNF-R2)とヒトIgG1Fcとの融合蛋白製剤であり、血中のTNFα/βと結合することで標的細胞表面上のTNF R2との結合を阻害し、TNFによる炎症誘導シグナルの伝達を抑制する。半減期が短く、0.4mg/kgを週2回皮下注で投与する。JIAで認可された剤形はETNを凍結乾燥させたバイアル製剤のみであり、家族が投与前に溶解液を調合する必要があった。その後、2019年にETN注射液を容れた目盛付きシリンジ製剤(同:エタネルセプトBS皮下注シリンジ「TY」が、また2022年にはエタネルセプトBS皮下注シリンジ「日医工」)がバイオシミラー製剤としてJIAで保険適用を取得し、利便性が向上した。ADAはTNF-αに対する完全ヒト型モノクローナル抗体で、中和抗体として標的細胞上のTNFα受容体へのTNF結合を阻害する。また、TNF産生を担う活性化細胞膜上に発現したTNFαとも結合し、補体を介した細胞傷害性(ADCC)によりTNF産生を抑制する。投与量は固定量で、体重30kg未満では20mgを、体重30kg以上では40mgを、2週毎に皮下注で投与する。わが国のJIA375例を対象とした市販後調査では、投与開始24週後のDAS寛解(DAS28-4/ESR<2.6)達成率は、治療開始時の21.7%から74.7%に増加し、また難治性のRF陽性多関節炎JIAや全身型発症多関節炎JIAにおいても、それぞれ61.9%、80.0%まで増加した。この市販後調査は、前向きの全例調査であることから、臨床現場(real world)での治療成績と考えられる。b)IL-6阻害薬TCZはIL-6受容体に対するヒト化モノクローナル抗体である。細胞膜上のIL-6受容体および流血中のsoluble IL-6受容体と結合し、IL-6のシグナル伝達を阻害し、炎症病態を制御する。4週ごとにTCZ 8mg/kgを点滴静注で投与する。RAに保険適用のある皮下注製剤や、TCZと同じ作用機序をもつサリルマブ(sarilumab/同:ケブザラ)はJIAでは未承認である。多関節型JIA132例を対象とした市販後調査(中間報告)では、投与開始28週後の医師による全般評価は、著効53%、有効42%であり、あわせて90%を超える例が有効と判断された。また、投与前と投与28週後の関節理学所見の変化を57例で検討すると、疼痛関節数(平均)は5.3から1.5へ、腫脹関節数(平均)は5.6から1.6へ減少し、赤沈値も32mm/時間から5mm/時間へと改善した。c)T細胞選択的阻害薬ABTはcytotoxic T lymphocyte associated antigen-4(CTLA-4)とヒトIgG1-Fcとの融合蛋白(CTLA-4-Ig)であり、抗原提示細胞(antigen presenting cell:APC)のCD80/86と強力に結合する。そのため、APCのCD80/86とT細胞のCD28との結合で得られる共刺激シグナルが競合的に遮断され、T細胞の過剰な活性化が抑制される。1回10mg/kgを4週ごとに点滴静注で投与する。皮下注製剤はJIAでは未承認である。1剤以上のcsDMARDに不応な関節型JIA190例を対象とした海外での臨床試験では、ACRpedi 50/70/90改善の達成率は投与4ヵ月時点でそれぞれ50/28/13%であった。また、引き続き行われた6ヵ月間のdouble blind期間においてABT群はプラセボ群と比較して有意な寛解維持率を示した。さらにその後の長期投与試験では、4年10ヵ月の時点でのACRpedi 50/70/90改善達成率はそれぞれ34/27/21%であり、有効性の長期継続が確認された。2)bDMARDs不応例の治療bDMARDs開始後は、その有効性と安全性を監視する。初めて導入したbDMARDsの投与開始3ヵ月後のDAS28が2.49以下であれば、2年以上の寛解が期待できるとした報告がある。しかし、臨床所見やJADASやDAS28スコアの改善が不十分で、bDMARDs不応と思われる場合は、治療変更が必要である。その際は、作用機序の異なる他のbDMARDsへのスイッチが推奨されている。Janus kinase(JAK)阻害薬は、分子標的合成(targeted synthetic:ts)DMARDsに分類され、bDMARDs不応例に対するスイッチ薬の候補である。JAKは、IL-2、 IFN-γ、IFN-αs、IL-12、IL-23、IL-6などの炎症性サイトカインの受容体に存在し、ATPと結合してそのシグナルを伝達する。JAK阻害薬はこのATP結合部位に競合的に結合し、炎症シグナル伝達を多面的に阻害することで抗炎症作用を発揮する。また、低分子化合物であるため内服で投与される。Rupertoらは、多関節炎JIA225例(関節型JIA184例、乾癬性関節炎20例、腱付着部炎関連関節炎21例)を対象にトファシニチブ(tofacitinib:TOF/同:ゼルヤンツ)の国際臨床試験を行った。まず18週にわたりTOF5mgを1日2回投与し、ACR30改善達成例を実薬群72例とプラセボ群70例の2群に分け、その後の再燃率を44週まで検討した。その結果、TOF群の再燃率は29%と低く、プラセボ群の53%と有意差を認めた(hazard比0.46、95%CI 0.27-0.79、p=0.0031)。現在、JIAに保険適用のあるJAK阻害薬はないが、バリシチニブ(baricitinib)の国際臨床試験がわが国でも進行中である。4 今後の展望疫学研究では、JIAを含む小児リウマチ性疾患の登録が進められている(PRICURE)。臨床研究では、前述のように関節型JIAに対するJAK阻害薬のバリシチニブの国際臨床試験が進行中である。5 主たる診療科小児科であるが、わが国の小児リウマチ専門医は約90名に過ぎず、また専門医のいる医療機関も特定の地域に偏在している。そのため、他の領域に専門性を持つ多くの小児科専門医が、小児リウマチ専門医と連携しながら関節型JIAの診療に携わっている。日本小児リウマチ学会ホームページの小児リウマチ診療支援MAPには、小児リウマチ診療に実績のある医療機関が掲載されている。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本小児リウマチ学会 小児リウマチ診療支援MAP(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 若年性特発性関節炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児リウマチ性疾患国際研究組織(PRINTO)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報JIA家族会「あすなろ会」(患者とその家族および支援者の会)1)Petty RE, et al. J Rheumatol. 2004;31: 390-392.2)武井修治,ほか. 小児慢性特定疾患治療研究事業の登録・管理・評価・情報提供に関する研究, 平成19年度総括・分担研究報告書2008.2008.p.102-111.3)Consolaro A, et al. Arthritis Rheum. 2009;61:658-666.4)小児リウマチ調査検討小委員会. 全身型以外の関節炎に対する治療、若年性特発性関節炎初期診療の手引き2015. メディカルレビュー社;2015.p.59-66.5)Wallace CA, et al. Arthritis Rheum. 1989;32:677-681.公開履歴初回2022年3月23日

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第101回 私が見聞きした“アカン”医療機関(中編) オンライン診療、新しいタイプの“粗診粗療”が増える予感

18都道府県に出ていた「まん延防止等充填措置」がやっと解除こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。3月21日、18都道府県に出ていた「まん延防止等充填措置」が解除されました。全面解除は実に約2ヵ月半ぶりです。ただ、これからの時期、お花見、春休み、新学期、新年度などで宴会や移動が活発化します。「第7波」に備えた体制は怠りなく進めておく必要がありそうです。ところで、先週のこのコラムで、「鈴木 誠也選手はサンディエゴ・パドレス、菊池 雄星投手はトロント・ブルージェイズと合意したとの報道もありました」と書きましたが、鈴木選手の情報は一部スポーツ紙の勇み足による“誤報”でした。その後、鈴木選手は歴史あるシカゴ・カブスと合意、契約しました。契約金は5年総額8,500万ドル(約101億3,000万円)と伝えられており、日本人野手の渡米時の契約としては、4年総額4,800万ドルの福留 孝介(当時、カブス)を上回る史上最高額とのことです。カブスと言えば「ヤギの呪い(Curse of the Billy Goat)」で有名なチームです。鈴木選手が何らかの呪いに襲われることなく、大活躍することを願っています(「ヤギの呪い」自体は2016年のワールドシリーズ優勝で解けたと言われていますが…)。さて、今回も前回に引き続き、少し趣向を変え、最近私や知人が体験した“アカン”医療機関について、書いてみたいと思います。【その3】オンライン診療ゆえの“マイルド”処方に困った友人新型コロナウイルス感染症のオミクロン株に感染した友人の話です。症状は軽快し、PCR検査も陰性となって療養解除となったのですが、数週間経ってもひどい咳がなかなか止みません。とくに夜間がひどく、「これは『いつもの処方』が必要だ」と感じた彼は、時節柄、外来診療ではなく近所のクリニックでオンライン診療を受けることにしました。「いつもの処方」とはステロイド内服薬の服用です。これまでも風邪などで気管支がひどくやられると、炎症が治まらずひどい咳が遷延することがたびたびありました。そんなときだけ、知り合いの呼吸器内科医に頼んで、ステロイド(プレドニゾロンなど)を頓服で処方してもらっていたのです。ただ、その呼吸器内科医は最近、遠方の病院に異動してしまったため、今回は渋々、呼吸器内科も標榜し、オンライン診療にも対応している近所のクリニックをネットで見つけ、受診することにしたわけです。ステロイド内服薬を出せない、出さないオンライン診療医LINEを用いてのオンライン診療は、初めての体験でとても緊張したそうです。これまでの咳治療の経験も詳しく説明し、「スパッ」と咳が止まるステロイド内服薬の処方を頼んでみたのですが、願いは叶えられなかったそうです。「結局、吸入薬のサルタノールインヘラーとツムラ麦門冬湯エキス顆粒が出されただけだった。粘ってみたんだけど…」と友人。サルタノールインヘラーは、β2アドレナリン受容体刺激剤です。ステロイドも入っている吸入薬(ブデホルなど)もあるはずなのに、それも避け、漢方を気休めに上乗せするというのは、幾多のしつこい咳と戦ってきた彼にとっては、効き目があまり期待できない“マイルド”過ぎる処方でした。「オンラインで初診だと、マイルドで安全な処方をしたくなるのはわかるが、患者側の意見もきちんと聞いて欲しい。これで咳にまだ数週間悩まされると思うとウンザリだ。結局、次は外来に来てくれと言われたし…」と、オンライン診療に不満たらたらの友人でした。処方箋が届いたのは診療から5日後実はこの話、これだけで終わりませんでした。水曜日にオンライン診療を受診し、「処方箋は郵送します」と言われたのですが、2日後の金曜になっても処方箋が届かなかったのです。金曜夕刻に診療所に電話すると、夜8時過ぎに、クリニックの事務職員が薬(おそらく院内調剤)を持って自宅にやって来たそうです。「処方箋はちゃんと郵送したのですが」と弁明する職員でしたが、現物が届いたのは翌週月曜でした。これは全く“アカン”ですね。最終的に彼は、最初の処方では全く軽快しませんでした。翌週末に外来を訪れ、今度はステロイドも入ったブデホルを入手することができ、その後徐々に快方に向かったそうです。新しいタイプの“粗診粗療”が増えるのではオンライン診療については、処方箋のやり取りと、薬剤のデリバリーが障害になることがある、とも聞きます。クリニックから薬局にファクスやメールで処方箋を送るにしても、その薬局が患者の近所にあるか、宅配を行っていなければなりません。また、そうしたオンライン診療の処方箋に対応できる“かかりつけ”薬局を持っている人もまだ多くはありません。診療から薬剤入手までのインターバルの解消は、オンライン診療普及に向けた大きな課題の一つでしょう。オンライン診療については、「第96回 2022年診療報酬改定の内容決まる(前編)オンライン診療初診から恒久化、リフィル処方導入に日医が苦々しいコメント」でも詳しく書きました。こうした新しい動きに対し、日本医師会の今村 聡副会長は3月2日の定例会見で、自由診療下でオンライン診療を活用し、GLP-1受容体作動薬のダイエット目的での不適切処方が横行している状況について問題提起をしました。今村氏は、「本来の治療に用いる医薬品が不適切に流通して健康な方が使用してしまうというような状況は、国民の健康を守るという日本医師会の立場としては看過できない」と話したとのことです。オンライン診療のこうした“悪用”は確かに問題ですが、私自身は、逆に友人が経験したような、対面でないために慎重になり、治療効果が低い、“マイルド”過ぎる薬剤を処方してしまうという、新しいタイプの“粗診粗療”が増えることを危惧しています。ステロイドと同様、抗菌薬も初診からの投与を嫌う医師が多い印象があります。診断が適切なら問題はないのですが、結局、2回目からはリアルの対面受診を余儀なくされ、本来服用が必要な薬にたどり着くまでに通院回数が増えるとしたら、オンライン診療のメリットはほぼないに等しいと思うのですが、皆さんどうでしょう。次回も、引き続き“アカン”医療機関を紹介します(この項続く)。

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ゼロ・リスクか?ウィズ・リスクか?それが問題だ(解説:甲斐久史氏)

 早いもので20年ほど前、外勤先の内科クリニックでの昼下がり。「今朝から、とくにどこというわけではないが、何となく全身がきつい」と20歳代後半の女性が来院した。熱も貧血もないのに脈拍が120前後。血圧はもともと低いそうだが収縮期血圧は80mmHg弱。心音・呼吸音に明らかな異常はないが、皮膚が何となくジトーッと冷たい気がする。聞いてみると先週、2〜3日間、風邪にかかったとのこと。心電図をとってみた。洞性頻脈。PQ延長(0.30秒くらいだったか?)。ドヨヨーンとした嫌な波形のwide QRS。どのように患者さんに説明し納得してもらったかは覚えていないが、ドクターヘリでK大学病院に搬送した。救急車では小一時間かかるためでもあったが、当時導入されたばかりのドクターヘリを使ってみたいというミーハー心に負けた一面も否定できない。夕方、帰学するとその足でCCUを覗いてみた。「大げさですよ。スカでしたよ!」レジデントたちからの叱責(?)覚悟しつつ…。が、何と!その患者はPCPSにつながれていたのである。約10分のフライト中は順調であったが、CCU搬入直後に完全房室ブロック。あっという間に心室補充収縮も消失。直ちにその場でPCPSを挿入できたため事なきを得たとのこと。CCUスタッフの的確な治療もあり、彼女は、2~3日後にはPCPSを離脱し、その後も順調に回復。完璧な正常心電図に復し、心機能障害を残すこともなく退院した。循環器内科医には身に覚えのある“心筋炎、あるある話”と言えよう。 本稿の執筆時(2022年3月中旬)、オミクロン変異株による新型コロナウイルス感染拡大第6波の感染者数のピークは越えたとはいえ、期待されていた急激な感染者数減少はなかなか見通せず、死亡者数や重症者数も高水準で推移している。そのような中で、依然としてワクチンが、発症・重症化予防、感染予防(オミクロン変異株には期待できないようであるが)の現実的な切り札的存在であることに変わりはない。しかしながら、種々の要因のため3回目のワクチン接種は伸び悩んでいる。その中で、ワクチンの副反応、とりわけ最近、コミナティ(BNT162b2、ファイザー社)・スパイクバックス(mRNA-1273、モデルナ社)の添付文書にも記載された心筋炎・心膜炎への危惧の影響も大きいようである。 米国疾病予防管理センターのOsterらによれば、米国のワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)に基づく解析の結果、2020年12月〜2021年8月にmRNAワクチンを接種された12歳以上の約2億例(約3億5,000万回接種)のうち、心筋炎が1,626例(BNT162b2 947例、mRNA-1273 382例)でみられたという。心筋炎患者の年齢中央値は21歳、男性に多く(82%)、2回目接種後が多く、症状発症までの期間は2日(中央値)であった。ワクチン接種後7日以内の心筋炎の報告は、12〜15歳男性でBNT162b2 70.7例/100万回、16〜17歳男性でBNT162b2 105.9例/100万回、18〜24歳男性でBNT162b2 52.7例/100万回、mRNA-1273 56.3例/100万回であった。これらは、一般の心筋炎の発症頻度とされる80〜100例/100万人に匹敵する。なお、30歳未満の症例のうち詳細な臨床情報が得られたものは826例でそのうち98%が入院した。その87%が退院までに症状が消失した。治療は主に非ステロイド系抗炎症薬投与(87%)であった。最近の厚生労働省資料によれば、わが国の心筋炎・心膜炎の発症頻度は、10代男性でBNT162b2 3.7例/100万回、mRNA-1273 28.8例/100万回、20代男性でBNT162b2 9.6例/100万回、mRNA-1273 25.7例/100万回である。VAERSの報告と比較すると低めではあるが、やはり10〜20代男性では心筋症発症リスクが認められる。ただ、VAERSや厚生労働省のデータは受動的な報告システムであるため、心筋炎の報告が不完全であり情報の質も一貫していない恐れがあり、報告数が過小評価なのか過剰評価なのかさえ判断が難しい。 まったく健康な若者にワクチン接種することで、一定の割合で心筋症のリスクを負わせることに、社会や当の若者たちが不安を覚えることはよくわかる。しかし、そのリスクは一般住民が日常的に曝されている普通のウイルスなどにより引き起こされる心筋炎・心膜炎のリスクを超えるものではない。少なくとも急激に重症心不全に陥るような劇症心筋炎はまずみられないようである。一方、新型コロナウイルス感染症に実際に感染した場合、心筋症・心筋炎発症リスクは、わが国(15〜39歳男性)では834例/100万回、海外(12〜17歳男性)では450例/100万回にのぼる。われわれ医師としては、ワクチン接種のメリットがデメリットよりはるかに大きいことを、正しく冷静に社会に訴えていくのが妥当であろう。リスクを強いるのであれば、ワクチン接種者に胸痛、動悸、強い倦怠感や息切れなど心筋炎・心膜炎症状を自覚したら迷わず受診することを周知するとともに、ワクチン接種後には積極的に心筋炎・心膜炎を考慮した診察・検査を行い早期発見、早期治療を提供することがわれわれの責務と心得るべきであろう。ただ、心筋炎は、心不全進展とは全く別途に、心室頻拍、心室粗動、伝導障害により突然死を来す。この発症頻度の推定困難なリスクまで考えると悩みは深まる。 2年以上続く新型コロナウイルス感染症パンデミックを前にして、日本は、依然、ゼロ・コロナか? ウィズ・コロナか? という命題の前に右往左往している。その根源には、そもそもゼロ・リスクの人生などあり得ないのに、ウィズ・リスクの現実には目を背け、「日々安心が何より」を是とする筆者のような正常性バイアスがあるのではないか? かと思うと一点、自分に都合の良い情報ばかりに頼る確証バイアスに陥るし・・・。日常からリスクを正面に見据えたリスク・リテラシーの醸成は、わが国にとって喫緊の課題かもしれない。

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エルドハイム-チェスター病〔ECD:Erdheim-Chester disease〕

1 疾患概要■ 定義エルドハイム-チェスター病(Erdheim-Chester disease:ECD)は、1930年にJakob ErdheimとWilliam Chesterによって初めて報告された組織球症の一病型である。類縁疾患としてランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)が挙げられる。対称性の骨病変と特徴的な画像所見を有し、骨、心臓・大血管、皮膚、中枢神経、内分泌系、腎・後腹膜などの多臓器に浸潤しさまざまな症状を起こす全身疾患である。■ 疫学ECDはまれな疾患であり2004年の時点で報告数は世界で100例にも満たなかったが、ここ15年ほどで認知度が上昇したことにより報告数が増加した。2020年の報告では世界で1,500例以上とされており、国内でも2018年時点で81例が確認されている。好発年齢は40~70歳で、男性が約7割を占める。小児例はまれで、その多くがECDとLCHを合併する混合型組織球症に分類される。 ECDの1割に骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍を合併していたとの報告があり、これらの症例は非合併例と比べて高齢で混合組織球症の割合が多いとされている。■ 病因ECDが炎症性の疾患か、あるいは腫瘍性の疾患かは長らく不明であったが、近年の研究でMAPK(RAS-RAF-MEK-ERK)経路に関連した遺伝子変異が細胞の増殖や生存に関与していることが報告され、腫瘍性疾患と考えられるようになってきている。変異の半数以上はBRAF V600Eの異常である。■ 症状ECDの症状および臨床経過は侵襲臓器と広がりによって症例ごとに大きく異なってくる。病変が単一臓器に留まり無症状で経過する例もある一方、多発性・進行性の臓器障害を起こし診断から数ヵ月で死亡する例もある。最も一般的な症状は四肢の骨痛(下肢優位)で、全体の半数にみられる。そのほか、尿崩症・高プロラクチン血症・性腺ホルモン異常などの内分泌異常、小脳失調症・錐体路症状などの神経症状、冠動脈疾患、心膜炎、心タンポナーデなどの循環器系の異常に加え、眼球突出、黄色腫などの局所症状など非常に多彩である。その他、発熱・体重減少・倦怠感などの非特異的な全身症状がみられることもある。一人の患者がこれらの症状を複数併せ持つことも多く、その組み合わせもさまざまである(図、表1、2)。図 ECDの主要症候(Goyal G, et al. Mayo Clin Proc. 2019;94:2054-2071.より改変)表1 わが国におけるECD症例の臓器病変(出典:Erdheim-Chester病に関する調査研究)画像を拡大する表2 わが国におけるECD症例の症状(出典:Erdheim-Chester病に関する調査研究)画像を拡大する■ 分類WHO分類の改定第4版ではリンパ系腫瘍のうち、組織球および樹状細胞腫瘍に分類されている。また、2016年改定の組織球学会分類では「L」(ランゲルハンス)グループに分類されている。■ 予後ECDの予後はさまざまで、主に病変の部位と範囲に左右される。高齢患者、心病変、中枢神経病変を有する患者ではがいして予後不良である。2000年代前半の報告では3年生存率50%程度であったが、近年では診断と治療の進歩によって5年生存率80%程度にまで上昇してきている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ECDは症状が極めて多彩であることから診断が困難であり、過去の報告でも発症から診断までの中央期間は数ヵ月から数年と言われている。診断の主体は組織診断だが、症状や画像所見を含めて総合的に判断することになる。形態学的所見としては、泡沫状(黄色腫様)細胞質を持つ組織球の増殖と背景の線維化を認め、ほとんどの症例で好酸性細胞質を有する大型組織球やTouton型巨細胞が混在する。免疫組織学的所見としてCD68、CD163、CD14、FactorXIIIa、Fascinが陽性、CD1a、 CD207(Langerin)は陰性である。S-100蛋白は通常陰性だが陽性のこともある。ECD患者の約10~20%にLCHを合併し、同一生検組織中に両者の病変を認めることもある。画像所見としては、単純X線撮影における長管骨骨端部の両側対称性の骨硬化や99Tc骨シンチグラフィーにおける下肢優位の長管骨末端への対称性の異常集積を認める。PET-CTは診断だけでなく活動性の評価や治療効果判定にも有用である。CTの特徴的所見として大動脈周囲の軟部陰影(coated aorta)や腎周囲脂肪織の毛羽立ち像(hairy kidney)を認めることがある。診断時には中枢病変の精査のためのGd造影頭部MRIや血液検査にて内分泌疾患、下垂体前葉機能、腎機能、CRPの評価も行うことが推奨されている。造血器腫瘍を合併する例もあるため、血算異常を伴う場合は骨髄穿刺を検討すべきである。鑑別診断として、LCHのほかRosai-Dorfman病、若年性黄色肉芽腫、ALK陽性組織球症、反応性組織球症などが挙げられ、これらは免疫染色などによって鑑別される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)以前はLCHに準じて副腎皮質ステロイドや抗がん剤などによる治療が行われていたが、効果は限定的であった。その後interferon-α(IFN-α)が全生存期間を延長することが報告され、ガイドラインで第1選択薬として挙げられている。また、BRAF遺伝子変異陽性のECDに対するBRAF阻害薬の有効性も報告されており、2017年にはベムラフェニブが米国FDAで承認されている。ただし、わが国ではこれらの薬剤は保険適用外となっている。第1選択薬のIFN-αは300万単位を週3回皮下投与が通常量だが、重症例では600~900万単位週3回の高容量投与も考慮される。また、PEG-IFNαで135ugを週1回皮下投与、重症例では180ugを週1回投与する。これらは50~80%の奏効率が期待されるが、半数程度に疲労感、関節痛、筋肉痛、抑うつ症状などの副作用がみられ、忍容性が問題となる。BRAF阻害薬(ベムラフェニブ)はBRAF遺伝子変異陽性のECDに効果が認められているが、皮膚合併症(発疹、扁平上皮がん)、QT延長などの副作用があり、皮膚科診察、心電図検査などのモニタリングが必要である。副作用などでIFNαが使用できない症例についてはプリンアナログのクラドリビンなどが検討される。副腎皮質ステロイド、手術、放射線療法は急性期症状や局所症状の緩和に使用されることがあるが、単体治療としては推奨されない。その他、病変が限局性で症状が軽微な症例については対症療法のみで経過観察を行うこともある。4 今後の展望ECDの病態や臨床像は長らく不明であったが、ここ20年ほどで急速に病態解明が進み、報告数も増加してきている。ベムラフェニブ以外のBRAF阻害薬やMEK阻害薬などの分子標的療法の有用性も報告されており、今後のさらなる発展とわが国での保険適用が待たれる。5 主たる診療科内科、整形外科、皮膚科、眼科、脳神経外科など多岐にわたる※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本の研究.com  Erdheim-Chester病に関する疫学調査(医療従事者向けのまとまった情報)Erdheim-Chester Disease Global Alliance(医療従事者向けのまとまった情報)1)Diamond EL, et al. Blood. 2014;124:483-492.2)Toya T, et al. Haematologica. 2018;103:1815-1824.3)Goyal G, et al. Mayo Clin Proc. 2019;94:2054-2071.4)Haroche J, et al. Blood. 2020;135:1311-1318.5)Goyal G, et al. Blood. 2020;135:1929-1945.公開履歴初回2022年3月16日

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ウェーバー・クリスチャン病〔WCD:Weber-Christian disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義WeberおよびChristianにより、再発性、非化膿性、有熱性の急性脂肪織炎として、今から90年ほど前に提唱されたまれな疾患で、女性に多い。他にも、“relapsing febrile nonsuppurative nodular panniculitis”という同義語がある。しかし、その後検査法が進歩し、以前ウェーバー・クリスチャン病として診断された中には悪性リンパ腫や深在性エリテマトーデス、α1-アンチトリプシン欠損症による脂肪織炎などを数多く含んでいたことが徐々に明らかになってくるにつれ、次第にこの病名は使われなくなってきている。1988年、Whiteらは、ウェーバー・クリスチャン病として報告された過去の報告30例を詳細に検討し、12例は結節性紅斑、6例は血栓性静脈炎で、他には外傷性脂肪織炎、細胞貪食組織球性脂肪織炎、皮下脂肪織炎様リンパ腫、白血病の皮下浸潤であったとしている1)。また、別の総説でも、かつてウェーバー・クリスチャン病として報告された疾患の多くは、バザン硬結性紅斑や膵疾患に伴う脂肪織炎であったとしている2)。いまだにこの病名での報告が散見されるが、その理由の1つに、安易にこの病名を使ってしまうことが挙げられる。さまざまな原因で起こる症候群と理解されるので、現在では「いわゆるウェーバー・クリスチャン病」とし、本症を独立疾患とみなさない立場の方が多い。■ 疫学上記の理由から明確な患者数などは統計的にとられておらず不明である。■ 病因現在も不明である。■ 症状元々の概念によると、全身症状を伴い、四肢、体幹に皮下結節や板状の硬結を多発性に呈し、皮膚表面の発赤、熱感、圧痛を伴うこともあり、時に潰瘍化する。再発を繰り返した結果、色素沈着や萎縮性の陥凹を残して瘢痕治癒する。■ 予後原因となる疾患により予後はわかれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査・診断末梢血中の炎症反応の上昇がみられるが、特異的なものはない。病理組織像は、非特異的な脂肪織炎、とくに急性期は脂肪小葉性脂肪織炎(lobular panniculitis)で、時間の経過とともに組織球、泡沫細胞が出現し、脂肪肉芽腫の像を呈し、その後線維化もみられる。血管炎を伴わない。■ 鑑別診断1)皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫下肢に好発し、結節性紅斑に似た臨床像(表面は発赤を伴う皮下硬結)を呈する。組織像は皮下脂肪織にCD8陽性T細胞が脂肪細胞を取り囲むように浸潤し(rimming)、核破砕物を貪食したマクロファージ(bean-bag cell)を認める。また、出血傾向や汎血球減少、肝脾腫などを伴う致死的なウェーバー・クリスチャン病は、“cytophagic histiocytic panniculitis”として報告されたが3)、その大部分は現在、皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫であると考えられている。2)深在性エリテマトーデス皮下脂肪織を炎症の主座とし、脂肪融解により臨床的に陥凹を来す。組織は、皮下脂肪織にリンパ球、組織球の浸潤、細小血管の閉塞、間質へのムチン沈着、晩期には石灰化もみられる。3)結節性紅斑下肢に好発する皮下硬結で、生検の時期によって組織像が異なる。晩期は脂肪肉芽腫もみられる。他にも、スウィート病、ベーチェット病、膵疾患、薬剤性のものなどを除外する必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)抗生剤内服は無効で、副腎皮質ステロイドの内服を主体に、反応が乏しい場合はステロイドパルスや免疫抑制剤なども考慮する。悪性リンパ腫に対しては化学療法を施行する。4 今後の展望ウェーバー・クリスチャン病という病名を使う際には上述のことを良く理解し、他疾患を確実に除外することを忘れてはならない。「いわゆるウェーバー・クリスチャン病」という診断名に満足せず、その原因をさらに特異的に探究していく姿勢を怠ってはならない。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患克服事業「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班」(医療従事者向けのまとまった情報)1)White JW, et al. J Am Acad Dermatol. 1998;39:56-62.2)Requena L, et al. J Am Acad Dermatol. 2001;45:325-361.3)Winkelmann RK, et al. Arch Intern Med. 1980;140:1460-1463.公開履歴初回2022年3月4日

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がん治療中の薬剤性間質性肺疾患、診断・治療における専門家の推奨/JCO

 抗がん剤は薬剤性間質性肺疾患の主な原因であり、原因薬剤としてブレオマイシン、エベロリムス、エルロチニブ、トラスツズマブ デルクステカン、免疫チェックポイント阻害薬などが挙げられる。薬剤性間質性肺疾患の特定と管理は難しく、抗がん剤によって引き起こされる間質性肺疾患の診断と治療に関する具体的なガイドラインは現在存在しない。今回、イタリア・IOV-Istituto Oncologico Veneto IRCCSのPierfranco Conte氏らの学際的グループが、公表文献と臨床専門知識に基づいて、がん患者の薬剤性間質性肺疾患の診断と治療における推奨事項を作成した。ESMO Open誌2022年2月23日号に掲載。 主な推奨事項は以下のとおりで、薬剤性間質性肺疾患の診断・治療における多職種連携の重要性を強調している。・診断手順の重要な要素は、身体検査と丁寧な病歴聴取、バイタルサイン(とくに呼吸数と動脈血酸素飽和度)の測定、関連のある臨床検査、スパイロメーターと一酸化炭素肺拡散能による呼吸機能検査、CT/画像診断である。・薬剤性間質性肺疾患の臨床症状やX線画像は、肺炎や間質性肺疾患と類似していることが多いため、感染性の原因を除外または確認するための微生物検査や血清学的検査を含む鑑別診断が重要である。・ほとんどの場合、薬剤性間質性肺疾患の治療には、抗がん剤の投与中止と短期ステロイド投与が必要である。薬剤性間質性肺疾患の再活性化を防ぐためにステロイドをゆっくり漸減する必要がある。・Grade3~4の薬剤性間質性肺疾患の患者は入院が必要で、多くの場合、酸素吸入と非侵襲的人工呼吸が必要である。侵襲的人工呼吸については、がんの予後を考慮して決定する必要がある。

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硬化性萎縮性苔癬〔LSA:lichen sclerosus et atrophicus〕

1 疾患概要■ 概念・定義外陰部に好発する難治性炎症性疾患である。男性の陰茎部に生じるbalanitis xerotica obliterans、女性の外陰部にみられるkraurosis vulvaeやhypoplastic dystrophyと呼ばれる疾患も本症と同義である。■ 疫学性差は男女比が1:9と、圧倒的に女性の罹患者が多い。初経前と閉経後の2つの年齢層に発症のピークがある。男性例は30~50歳の壮年層に発症頻度が高い。■ 病因不明であるが、Borrelia burgdorferi感染の関与が示唆されたことはあるが、菌体が同定された報告は無く、現在では否定的と考えられている。■ 症状女性外陰部の病変は、象牙色調の浸潤を触れる硬化性または萎縮性の紅色局面が主体で、びらん、水疱、紫斑、出血を伴うことがある(図1)。図1 女性外陰部の硬化性苔癬大陰唇から膣口にびらん、苔癬化、脱色素斑が混在する。劇痒と形容される強い瘙痒感や、灼熱感を訴えることが多い。約3割で肛門周囲にも病変がみられ、外陰部から肛門周囲にかけて「8の字型」と称される連続病変を呈することがある(図2)。図2 外陰部から肛囲までの8の字病変肛門部では萎縮した白色調の病変が広がり、さまざまな程度で色素脱失や色素沈着が混在することが多い。同部の皮膚粘膜境界部に生じた場合には、尿道口や腟口部の狭窄を来たしうる。経過中に瘢痕を生じやすく、進展すると癒着による小陰唇の消失や陰核包皮の癒着・閉鎖、陰核の埋没などを来す。通常は腟や子宮頸部などの粘膜部位は侵さないが、辺縁の皮膚病変からびらん、亀裂、腟口部の狭窄が進展した場合には、自発痛や排尿痛、性交痛を生じることがある。その一方、高齢者では無症状の場合もあり、健診で初めて指摘されることもある。男性例は、成人では包皮、冠状溝、亀頭部、小児では通常包皮に生じる。女性例に比べて瘙痒が主症状になることは少なく、陰茎や肛囲の病変はまれである。高度の包茎や癒着による尿道口の狭小化のため、排尿異常を生じることがある。■ 分類性差を問わず、ほとんどが外陰部のみに限局する。外陰部以外の病変が併存することや、外陰部外のみの症例もあるが、諸外国と比べてわが国では極めてまれである。■ 予後長期の罹患に伴って上皮系悪性腫瘍(ほとんどが有棘細胞がん)が本症の5~11%で出現し、最も予後に影響する。また、溶血性貧血、白斑、自己免疫性水疱症のような自己免疫疾患や臓器特異的な自己抗体が検出される症例が、おのおの全体の2割と4割に合併することが知られており、予後に関わるものもある。中でも甲状腺疾患が12%、次いで白斑が6%と多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 諸検査1)皮膚生検と病理組織学的所見病理組織学的に不全角化を伴う過角化、毛孔性角栓を伴う様々な厚さの表皮肥厚や液状変性を認め、完成期には萎縮して表皮突起が平坦化する。直下の真皮浅層では、毛細血管拡張やリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤に加え、膠原線維が均一化した無構造物「硝子様均質化(ヒアリン化, hyalinization)」が特徴的である(図3)。生検組織の蛍光抗体直接法では、免疫グロブリンや補体の沈着は通常認めない。図3 外陰部硬化性苔癬の病理組織像過角化、表皮突起の不規則化と消失、真皮上層の毛細血管拡張とヒアリン化、リンパ球浸潤を特徴とする。2)血液学的所見一般血液・生化学検査は正常であることが多く、本疾患の診断や病勢把握に有益な保険適応内のバイオマーカーは存在しない。上述のように、10~30%に自己免疫異常(抗甲状腺抗体、抗BP180抗体など)を認めることがある。■ 鑑別疾患外陰部カンジダ症を含む股部白癬、扁平苔癬、乳房外パジェット病、粘膜類天疱瘡、限局性強皮症(モルフェア)、白斑、円板状ループスエリテマトーデスなどを鑑別する必要がある。■ 合併症進行すると尿道狭窄や性交障害など、排尿や外陰部の機能障害を来すことがある。女性外陰部の硬化性苔癬では7~11%、また表皮が肥厚した病変では約30%に有棘細胞がんが出現するとの報告がある(図4)。図4 有棘細胞がんを合併した女性外陰部の硬化性苔癬右大陰唇から小陰唇の病変部内に隆起性の腫瘤を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療目標ほとんどの症例が難治であり、各種治療に難渋することが多い。長期にわたって症状のコントロールが不良な症例では局所発癌の頻度が高まるため、通常の治療に抵抗する場合は、まず症状の緩和とその維持を目指す。■ 治療内容1)初期治療局所へのステロイド外用剤が第1選択である。外陰部は他の部位と比べて薬の吸収率が良いものの(42倍 vs. 0.14~13倍:前腕内側の吸収率を1とした場合)、治療効果を優先して、欧米やわが国のガイドラインでは強めのステロイド外用剤の使用が推奨されている。掻爬行為によって症状が悪化するため、抗ヒスタミン薬などを併用して瘙痒のコントロールを行うこともある。2)治療後期症状が軽快したのちも無治療ではなく、保湿剤による外陰部の保護を継続することで、再燃やそのピークが抑えられる場合が多い。3)治療抵抗例保険適応外ではあるが、ステロイド外用に加えてタクロリムス含有軟膏の併用や、局所への光線療法が奏効する場合もある。男性の場合、既存の包茎が症状の遷延化を招くことが多いため、症状に応じて専門科への紹介を考慮する。4)合併症への治療硬化性苔癬における外科的治療は、悪性腫瘍合併例の病変部切除や尿道口狭窄例の尿道拡張術や尿道再建手術などに限って行う。4 今後の展望■ 治療外用療法が基本となるため、ステロイド以外の抗炎症作用ならびに免疫抑制効果をもつ外用剤が期待されている。上述したタクロリムス外用や活性型ビタミンD3外用剤、局所紫外線療法の奏効例が報告されている(本邦保険適用外)。全身療法ではシクロスポリンやバリシチニブ(JAK阻害薬)の内服が奏効した報告がある。■ 診断本症の確定診断には皮膚生検による病理組織所見の確認が必須であるが、女性の罹患者が多く、病変部がプライベートパーツであることから、生検が困難な症例も少なくない。患者血清中の細胞外基質extracellular matrix protein 1(ECM1)に対するIgG抗体を用いた血清診断が、非侵襲的かつ経過中の病勢の把握に有用バイオマーカーになる可能性が指摘されている。いまだ本抗体の病的意義は不明であり、今後の検討が待たれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚科学会 硬化性萎縮性苔癬 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)1)長谷川 稔ほか. 日皮会誌. 2016;126:2251-2257.2)強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン作成委員会.全身性強皮症・限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン 2017. 金原出版;2017.3)Lewis FM, et al. Br J Dermatol. 2018;178:839-853.4)Kirtschig G, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017;31:e81-e83.5)Oyama N, et al. Lancet. 2003;362:118-123.公開履歴初回2022年3月2日

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ステロイド配合錠の減薬提案時にヒヤッとした事例【うまくいく!処方提案プラクティス】第45回

 今回は、ステロイド・抗ヒスタミン配合錠を中止する際に注意すべきポイントを紹介します。ステロイドを長期投与中に急激に減量・中止した場合、コルチゾールの需要増大により急性副腎不全に似た離脱症状(withdrawal症候群)が出現する恐れがあります。ステロイド配合錠でも同様に考える必要がありますが、減薬提案時にそれを見落としており、ヒヤッとした事例でした。患者情報69歳、男性(介護施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、うっ滞性皮膚炎服薬管理施設職員処方内容1.クエチアピン錠25mg 1錠 分1 就寝前2.チアプリド錠25mg 6錠 分3 毎食後3.クエチアピン錠12.5mg 3錠 分3 毎食後4.ルパタジン錠10mg 1錠 分1 就寝前5.ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 4錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんの2回目の訪問診療時の血液検査結果はHbA1c:7.5%で、初回介入時よりも上昇していました。医師は糖尿病の基礎疾患こそないものの、長期的なステロイド使用により血糖異常に至っていると判断しました。うっ滞性皮膚炎の掻痒感も安定していたことから、医師と相談し、ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠を中止し、炎症や掻痒感の強い部分に関しては外用ステロイド薬の塗布で対応することになりました。薬局に戻り、同行時の記録を見直していたところ、以前書籍1)で読んだベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠(ベタメタゾン0.25mg/錠)の中止により離脱症状を来した事例を思い出し、今回の急激な中止は問題ではないかと気付きました。ベタメタゾン1mg(4錠分)=プレドニゾロン換算約6mgに相当し、数年間服用していたことから、この患者さんは副腎が萎縮(副腎機能低下)している可能性があります。もしこのまま急に中止した場合、全身倦怠感、脱力感、食思不振、悪心、嘔吐、不穏、頭痛、筋痛、関節痛などのステロイド離脱症候群が生じ、患者さんの負担になる恐れがあると考えました。漸減するにしても、副腎の回復を念頭に置いて時間をかけて慎重に行う必要があるため、トレーシングレポートとしてまとめることとしました。処方提案と経過下記のトレーシングレポート内容を医師に提出し、医師が話せる時間帯に電話で指示を確認することにしました。対象薬剤ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠報告内容本剤の急激な中断で副腎不全による離脱症候群が出現し、全身倦怠感、脱力感、食思不振、悪心、嘔吐、不穏、頭痛、筋痛、関節痛などの症状が生じる懸念があります。過去に別の事例で、長期的に服用していたプレドニゾロン換算5mgの中止に伴う下痢と食思不振が副腎不全の影響であったことを思い出しました。本件の現行量がプレドニゾロン換算約6mgに相当しますので、長期投与していることから副腎萎縮の可能性があります。訪問診療時にお伝えできず申し訳ございません。提案内容副腎不全の懸念から、下記(1)→(3)の段階的な減量はいかがでしょうか。(1)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 2錠 朝食後に減量。2週間様子見。(2)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 1錠 朝食後に減量。2週間様子見。(3)ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠 中止。その後、トレーシングレポートを確認した医師より電話があり、提案の内容で指示変更の承認を得ることができました。その後の患者さんの様子ですが、リバウンドで皮膚炎の症状が悪化することはなく、また離脱症状の出現もなく無事にベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合錠を中止することができました。1)矢吹拓. 薬の上手な出し方&やめ方. 医学書院;2020.2)PfizerPRO「ステロイド・プラクティス」

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ウパダシチニブ+TCS、日本人アトピー性皮膚炎患者への安全性確認

 日本人のアトピー性皮膚炎(AD)の治療として、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ウパダシチニブ+ステロイド外用薬(TCS)併用の安全性を検討した、京都府立医科大学の加藤 則人氏らによる第III相無作為化二重盲検試験「Rising Up試験」の24週の中間解析結果が発表された。ウパダシチニブに関する既報の知見と、概して一致した結果が示され、安全性について新たなリスクは検出されなかったという。JAAD International誌2022年3月号掲載の報告。 Rising Up試験は、12~75歳の日本人の中等症~重症AD患者を対象とし、被験者を無作為に1対1対1の3群に割り付け、(1)ウパダシチニブ15mg+TCS、(2)ウパダシチニブ30mg+TCS、(3)プラセボ+TCSをそれぞれ投与した。安全性は、有害事象と検査データに基づき評価した。 主な結果は以下のとおり。・272例(成人243例、未成年29例)が無作為化を受けた(治療開始は2018年11月17日)。・重篤な有害事象の発現頻度は24週時点で、ウパダシチニブ+TCS投与の両群がプラセボ+TCS群よりも高率であったが、用量間では類似していた(15mg+TCS群:56%、30mg+TCS群:64%、プラセボ+TCS群:42%)。・ウパダシチニブ+TCS投与群はプラセボ+TCS群と比べて、にきびの発現頻度が高かった(すべて軽症~中等症、治療中止となった症例なし)。発現頻度は、15mg+TCS群13.2%、30mg+TCS群19.8%、プラセボ+TCS群5.6%。・さらに、15mg+TCS群よりも30mg+TCS群で、帯状疱疹(30mg+TCS群:4.4% vs.15mg+TCS群:0%)、貧血(1.1% vs.0%)、好中球減少症(4.4% vs.1.1%)の発現頻度が高かった。なお、これらのイベントはプラセボ+TCS群では報告されなかった。・血栓塞栓性イベント、悪性腫瘍、消化管穿孔、活動性結核、死亡の発生は報告されなかった。

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添付文書改訂:アクテムラが新型コロナ中等症II以上に適応追加/ジャディアンスに慢性心不全追加/エフィエントに脳血管障害の再発抑制追加/アジルバに小児適応追加/レルミナに子宮内膜症の疼痛改善追加【下平博士のDIノート】第92回

アクテムラ点滴静注用:新型コロナ中等症II以上に適応追加<対象薬剤>トシリズマブ(遺伝子組換え)(商品名:アクテムラ点滴静注用80mg/200mg/400mg、製造販売元:中外製薬)<承認年月>2022年1月<改訂項目>[追加]効能・効果SARS-CoV-2による肺炎酸素投与、人工呼吸器管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。[追加]用法・用量通常、成人には、副腎皮質ステロイド薬との併用において、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを点滴静注します。症状が改善しない場合には、初回投与終了から8時間以上の間隔をあけて、同量を1回追加投与できます。<Shimo's eyes>本剤は、国産初の抗体医薬品として、2005年にキャッスルマン病、2008年に関節リウマチの適応を取得して、現在は世界110ヵ国以上で承認されているヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体です。今回、新型コロナによる肺炎の効能が追加されました。これまで中等症II以上の患者に適応を持つ、レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用)、バリシチニブ(同:オルミエント錠)、デキサメタゾン(同:デカドロン)の3製剤に本剤が加わり、新たな治療選択肢となります。新型コロナ患者の一部では、IL-6を含む複数のサイトカインの発現亢進を特徴とする炎症状態により呼吸不全を起こすことが知られており、同剤投与による炎症抑制が期待されています。参考中外製薬 薬剤師向けサイト アクテムラ点滴静注用80mg・200mg・400mgジャディアンス:慢性心不全(HFrEF)の適応追加<対象薬剤>エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス錠10mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)<承認年月>2021年11月<改訂項目>[追加]効能・効果慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。[追加]用法・用量通常、成人にはエンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前または朝食後に経口投与します。<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬としては、すでにダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が慢性心不全の適応を2020年11月に追加しており、本剤は2剤目の薬剤となります。2022年1月現在、添付文書には「左室駆出率の保たれた慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者(HFrEF)に投与すること」と記載されていますが、HFpEF患者を対象とした第III相試験においても、2021年8月に良好な結果1)が報告されています。なお、本剤25mg錠には慢性心不全の適応はありません。参考エンパグリフロジンの慢性心不全への承認取得/日本ベーリンガーインゲルハイム・日本イーライリリー1)エンパグリフロジン、糖尿病の有無を問わずHFpEFに有効/NEJMエフィエント:脳血管障害後の再発抑制が追加<対象薬剤>プラスグレル塩酸塩(商品名:エフィエント錠2.5mg/3.75mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2021年12月<改訂項目>[追加]効能・効果虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化または小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)[追加]用法・用量通常、成人には、プラスグレルとして3.75mgを1日1回経口投与する。<Shimo's eyes>『脳卒中治療ガイドライン2021』では、非心原性脳梗塞の再発抑制に対しては抗血小板薬(クロピドグレル、アスピリンまたはシロスタゾール)の投与が勧められていますが、本剤の適応は、「大血管アテローム硬化または小血管の閉塞を伴う虚血性脳血管障害後の再発抑制」に限定されました。なお、適応追加の対象は2.5mg錠および3.75mg錠のみです。今回の改訂で、空腹時は食後投与と比較してCmaxが増加するため、空腹時の投与は避けることが望ましい旨の記載が追記されました。用法に「食後投与」は明記されていないので注意しましょう。既存薬のクロピドグレルは、主にCYP2C19によって代謝されるため、遺伝子多型による影響を受けやすいことが懸念されていますが、本剤は、ヒトカルボキシルエステラーゼ、CYP3AおよびCYP2B6などで代謝されて活性体となるプロドラッグであり、遺伝子多型の影響を受けにくいとされています。参考第一三共 医療関係者向けサイト エフィエント錠アジルバ:小児適応追加、新剤型として顆粒剤が登場<対象薬剤>アジルサルタン(商品名:アジルバ顆粒1%、同錠10mg/20mg/40mg、製造販売元:武田薬品工業)<承認年月>2021年9月<改訂項目>[追加]用法・用量<小児>通常、6歳以上の小児には、アジルサルタンとして体重50kg未満の場合は2.5mg、体重50kg以上の場合は5mgを1日1回経口投与から開始します。なお、年齢、体重、症状により適宜増減が可能ですが、1日最大投与量は体重50kg未満の場合は20mg、体重50kg以上の場合は40mgです。<Shimo's eyes>アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるアジルサルタンに、小児に対する用法および用量が追加されました。また、新剤型として顆粒剤も発売されました。顆粒剤は、成人にも小児にも適応がありますが、小児の開始用量である2.5~5mgを投与する際に便利です。参考武田薬品工業 医療関係者向けサイト アジルバレルミナ:子宮内膜症に基づく疼痛改善の適応が追加<対象薬剤>レルゴリクス(商品名:レルミナ錠40mg、製造販売元:あすか製薬)<承認年月>2021年12月<改訂項目>[追加]効能・効果子宮内膜症に基づく疼痛の改善<Shimo's eyes>本剤は、経口GnRHアンタゴニストであり、2019年1月に子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善で承認を取得しています。子宮筋腫に続き、子宮内膜症患者を対象とした第III相試験の結果が報告されたことから、今回新たな適応が承認されました。本剤は下垂体のGnRH受容体を阻害することにより、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を阻害します。その結果、エストロゲンおよびプロゲステロンが抑制され、子宮内膜症の主な症状である骨盤痛を改善します。参考あすか製薬 医療関係者向け情報サイト レルミナ錠40mg

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mRNAワクチンの心筋炎リスク、年齢・男女別に2億人を解析/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種後の心筋炎リスクは、男女とも複数の年齢層で上昇し、とくに12~24歳の男性で2回目接種後に高かった。米国疾病予防管理センター(CDC)のMatthew E. Oster氏らが、米国の受動的なワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)を基にした解析結果を報告した。著者は、「心筋炎のリスクは、COVID-19ワクチン接種のメリットに照らして検討する必要がある」とまとめている。JAMA誌2022年1月25日号掲載の報告。米国VAERSへの心筋炎の報告を検証 研究グループは、2020年12月14日~2021年8月31日に、mRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer/BioNTech製]またはmRNA-1273[Moderna製])を接種した米国の12歳以上の1億9,240万5,448例を対象に、接種後に発生した心筋炎のVAERSへの報告について解析した(データカットオフ日2021年9月30日)。 主要評価項目は心筋炎、副次評価項目は心膜炎の発生。VAERSへの心筋炎の報告は、CDCの医師および公衆衛生の専門家が検討し、CDCの心筋炎(疑いまたは確定)の定義を満たしているかを確認し、すべての年齢層についてまとめた。 年齢別および男女別に、粗報告率を算出するとともに、心筋炎の予測率を2017~19年の医療費請求データを用いて算出した。また、30歳未満で心筋炎の疑いあるいは確定した症例については、医学的評価および臨床医のインタビューを行い、可能な限り臨床経過(発症前の症状、確定診断検査の結果、治療、早期転帰など)をまとめた。2回目接種後の16~17歳・男性で心筋炎報告率が最も高く約1万人に1人 調査期間中、mRNAワクチンの接種は1億9,240万5,448例において計3億5,410万845回行われた。VAERSへの心筋炎の報告は1,991例で、このうちCDCの定義を満たした心筋炎患者1,626例が解析対象となった。心筋炎患者の年齢中央値は21歳(IQR:16~31)、症状発現までの期間中央値は2日(IQR:1~3)で、1,334例(82%)が男性であった。 mRNAワクチン接種後7日以内の心筋炎の報告は、BNT162b2ワクチン接種者が947例、mRNA-1273ワクチン接種者が382例であった。接種後7日以内の心筋炎粗報告率は、ワクチンの種類、性別、年齢層、1回目または2回目接種で異なっていたが、男女とも複数の年齢層で予測率を越えた。 ワクチン接種100万回当たりの心筋炎報告率は、12~15歳男性(BNT162b2ワクチン70.7)、16~17歳男性(BNT162b2ワクチン105.9)、18~24歳男性(BNT162b2ワクチン52.4、mRNA-1273ワクチン56.3)において2回目接種後に高かった。 詳細な臨床情報が得られた30歳未満の心筋炎患者は826例で、そのうちトロポニン値上昇が98%(792/809例)、心電図異常が72%(569/794例)、MRI所見異常が72%(223/312例)に認められた。96%(784/813例)が入院し、このうち87%(577/661例)は退院までに症状が消失した。最も多かった治療は、非ステロイド性抗炎症薬が87%(589/676例)であった。 なお、著者は研究の限界として、VAERSは受動的な報告システムであるため、心筋炎の報告が不完全で情報の質が多様であり、過少報告または過剰報告の両方があり得ること、ワクチン接種のデータはCDCへ報告された者に限られているため不完全であった可能性があることなどを挙げている。

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ステロイド外用剤「最強」に「中」追加はなぜ?【処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)ステロイド外用剤「最強」に「中」追加はなぜ?講師:眞弓 久則氏 / 眞弓循環器科クリニック院長動画解説「ストロンゲスト」のステロイド外用剤を使用していた17歳の女性に、「マイルド」の製剤が追加されました。弱い薬への「切り替え」ではなく、「追加」した狙いとは何なのでしょうか。

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吸入配合剤に併用された漢方【処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)吸入配合剤に併用された漢方講師:眞弓 久則氏 / 眞弓循環器科クリニック院長動画解説若い女性に柴胡清肝湯が処方されました。併用薬はステロイド・β刺激配合吸入薬とアジスロマイシン。なぜ、この患者にこの薬なのか、眞弓先生こだわりの漢方薬の選択について語ります。

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COPD治療をLAMA/LABA+ステロイドに変更した理由【処方まる見えゼミナール(大橋ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(大橋ゼミ)COPD治療をLAMA/LABA+ステロイドに変更した理由講師:大橋 博樹氏 / 多摩ファミリークリニック院長動画解説COPDで通院中に急性増悪し、入院となった患者さん。入院中も診療していた大橋先生は、入院前・後で薬剤を大きく変更しました。この変更は単なる増悪? それとも別の疾患だった? 実際の処方意図や疾患概要を詳しく解説します。

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ステロイドのムーンフェイス、何とかならないかしら?【スーパー服薬指導(3)】

スーパー服薬指導(3)ステロイドのムーンフェイス、何とかならないかしら?講師:近藤 剛弘氏 / 元 ファイン総合研究所 専務取締役動画解説2週間前からプレドニゾロンの服用量が減った患者に、今回から睡眠導入剤が追加された。「これ以上薬の種類を増やしたくないの。」という悲痛な声に薬剤師は…。

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第97回 COVID-19後遺症様の症状が稀にワクチン接種後にも生じうる

イスラエルでもワクチンのCOVID-19後遺症予防効果あり去年9月に発表された英国での試験1)と同様に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種済みの人のSARS-CoV-2感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の主なものはどれも非接種の人に比べて少ないことがイスラエルでの試験でも示されました2,3)。もっと言うと、ワクチン接種済みの人のそれらの症状はSARS-CoV-2に感染したことのない人より多くもありませんでした。COVID-19後遺症全般についてはワクチンによる予防効果が認められなかった試験報告4)もありますが、エール大学の岩崎明子(Akiko Iwasaki)氏によれば今回のイスラエルでの試験や英国での試験結果はともあれ吉報です。「COVID-19後遺症は悲惨で、消耗を強いる。そうならないようにする手立ては何であれCOVID-19後遺症がこれ以上増えるのを防ぐのに必要であり、(その手立てを担いうるという)ワクチン接種理由がまた1つ増えた」と同氏は言っています2)。ワクチン接種後にも稀ながら生じうる後遺症ワクチンがCOVID-19後遺症を予防しうるとの期待がある一方で、その後遺症に似た症状がワクチン接種後に生じることが稀ながらあるようです5)。かつて幼稚園の先生をしていたBrianne Dressen氏は2020年11月にSARS-CoV-2ワクチンを接種し、その日の晩までに目がぼやけはじめました。また、貝殻を耳に当てているように音が変になりました。症状は急激に悪化し、やがては心拍異常や筋肉の脱力に見舞われ、電気ショックのような感覚を被るようになりました。Dressen氏はいまやそのほとんどの時間を暗い部屋で過ごし、歯を磨くことや幼い我が子に触れられるのさえ耐えることができません。医師がDressen氏を不安症と診断してからときが過ぎ、今から1年前の2021年1月になると米国国立衛生研究所(NIH)の研究者はDressen氏に降り掛かったような事態を把握し始め、Dressen氏や他の患者をNIH施設に招いて検査し、時には治療も施しました。しかし手がかりは少なく、Dressen氏が被ったような長く続く体調不良をワクチンが引き起こしたのかどうかは分からずじまいでした。NIHと患者のやり取りは昨年2021年の遅くまでに途絶えてしまいました。内々で研究は続いているとDressen氏等の調査を率いたNIHの研究者Avindra Nath氏は言うものの、唯一の頼みの綱であったNIHが手を引いたことに患者は困惑し、がっかりしています。NIHの研究は尻すぼみとなりましたが、ワクチン接種後の後遺症を理解することはそれらで悩む人の助けになるでしょうし、もしワクチンとの関連の仕組みが明らかになれば次世代のワクチン開発の参考になるに違いありません。また、そういう後遺症の恐れがある人を事前に同定可能になるかもしれません。カリフォルニア大学の免疫学者William Murphy氏はSARS-CoV-2スパイクタンパク質が誘発する自己免疫で感染後とワクチン接種後のどちらの長患いも説明できるかもしれないとの論説をNEJM誌に去年11月に発表しました6)。感染後やワクチン接種後の好ましい抗ウイルス効果と生じて欲しくない副作用の両方に免疫反応がどう寄与しているかをもっと基礎から調べる必要があります。Murphy氏はワクチン接種の支持者ですが、ワクチンを皆に安心して接種してもらうにはワクチン接種に安全性の心配はないと言って済ますのではなくワクチンについて隈なく調べ尽くすことが必要だと述べています5)。しかしMurphy氏の期待とは裏腹にNIHのNath氏が率いた患者研究は長続きしませんでした。NIHの研究には患者34人が参加し、そのうち14人がNIHで診られ、残り20人は血液検体、それに何人かは脳脊髄液(CSF)検体を提供しました。しばし治療も受けた患者もおり、たとえばステロイド高用量投与や免疫グロブリン静注(IVIG)が施されました。そのようにNIHは初めこそ患者を助けようとしていたにもかかわらずやがて患者との接触を断つようになりました。去年の9月のDressen氏の神経検査の予定は遠隔面談となり、12月になるとNath氏は患者を来させないようにしました。多くの患者を長期間治療するようにNIHは設えられておらず、患者の地元の担当医が手当てにあたるのが最良だとNath氏は言っています。しかしNath氏の言い分とは裏腹に医師には何もしてもらえないという患者もいますし、気のせいだと決めつけられることもあります。そうして表向きは梯子を外したNIHですが、エール大学の岩崎 明子氏はNIHのNath氏の協力を仰いでワクチン接種後の反応とCOVID-19後遺症がどう関連するかを調べることを計画しています。すでに患者との話が始まっており、血液や唾液などの検体を患者から集めるつもりです。また自己抗体を疑うドイツの研究者Harald Pruss氏はマウスへのSARS-CoV-2ワクチン接種後の自己抗体の特定に取り掛かっています。Pruss氏は感染後やワクチン接種後の患者の治療にもあたっており、患者の血液から抗体のほとんどを取り除く治療を調べる臨床試験を近々開始したいと考えています。自己抗体などの免疫系の関与は患者の体験でも示唆されており、ワクチン接種後に不調に陥った患者の何人かはScienceの取材に応じて免疫抑制剤でいくらか良くなったと言っています。NIHのNath氏も同様の効果を把握しており、免疫抑制/調節作用があるIVIGやステロイドによるCOVID-19後遺症治療を調べているNIH主催臨床試験結果がワクチン関連の合併症にも役立つことを期待しています。岩崎氏がワクチン開発にも着手COVID-19研究で何かと目に耳にすることが多いエール大学の岩崎氏の取り組みは今やワクチン開発にも及んでいます。先週26日にbioRxiv誌に発表された同氏率いるチームのマウス実験の結果、mRNAワクチン筋肉注射に続くSARS-CoV-2スパイクタンパク質やそのmRNAの点鼻投与で呼吸器粘膜の免疫を安全に底上げして感染や発病を防ぎうることが示されました7)。次の段階として、より大きな動物や臨床試験での安全性や有効性の検討が必要です8)。将来的には他の粘膜ウイルス病原体にも今回と似た手段が通用しそうであり、岩崎氏の活躍を見聞きすることは今後ますます多くなりそうです。参考1)Antonelli M,et al.Lancet Infect Dis. 2022 Jan;22:43-55. 2)Long-COVID symptoms less likely in vaccinated people, Israeli data say / Nature3)Association between vaccination status and reported incidence of post-acute COVID-19 symptoms in Israel: a cross-sectional study of patients tested between March 2020 and November 2021. medRxiv. January 17, 20224)Six-month sequelae of post-vaccination SARS-CoV-2 infection: a retrospective cohort study of 10,024 breakthrough infections. medRxiv. November 08, 20215)In rare cases, coronavirus vaccines may cause Long Covid-like symptoms. Science.6)Murphy WJ, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 27;386:394-396. 7)Unadjuvanted intranasal spike vaccine booster elicits robust protective mucosal immunity against sarbecoviruses. bioRxiv. January 26, 20228)岩崎 明子氏のTwitter投稿(2022年1月27日)

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COVID-19治療薬の特徴一覧を追加、薬物治療の考え方12版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、1月24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第12版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、適用・効果の追加承認がなされたトシリズマブ(商品名:アクテムラ)に関する記載が追加されたほか、他の治療薬の知見を更新し、現在使用できる治療薬4剤の特徴を記した一覧表が附表として追加された。 主な改訂点について、以下に抜粋する。総論【3. 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】 「重症化リスクが高い患者を対象とした治療薬の特徴で、巻末の附表参考」や「軽症例での薬物治療の適応の場合、感染病態および薬理作用の観点などからも、感染または発症から早期の治療開始が望ましい。また、中等症以上で全般的な薬物治療を検討」の文言変更。「予防接種歴のみで治療薬の適応を判断するしない」、「患者の病態など総合的に勘案して適応を決定する」ように追加。【4. 抗ウイルス薬等の選択】 オミクロン株には、カシリビマブ/イムデビマブは使用が推奨されないこと、妊娠および妊娠の可能性がある場合は、モヌルピラビルは使用できないことなどを追加。抗ウイルス薬について【レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用100mg)】・臨床報告について国内と海外記載を変更・投与時の注意点について投与期限(10日目まで)、小児への投与の注意点と推奨されない小児を追加記載【モルヌピラビル】・臨床報告について国内と海外記載を変更【ファビピラビル】・臨床報告について国内と海外記載を変更・薬剤提供は2021年12月27日で取り扱い終了の記載追加中和抗体薬について【カシリビマブ/イムデビマブ】・「発症抑制での投与時の注意点」を追加・In vitroでの変異株への効果を追加【ソトロビマブ】・備考でオミクロン株への評価を追加・「発症後での投与時の注意点」で重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与などの項目を追加免疫調整薬・免疫抑制薬【トシリズマブ】・海外での臨床報告を変更・国内での使用実績を変更・2022年1月の適応追加を追記・投与方法、投与時の注意点を変更(投与方法)通常、成人には、副腎皮質ステロイド薬との併用において、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを点滴静注する。症状が改善しない場合には、初回投与終了から8時間以上の間隔をあけて、トシリズマブして8mg/kgをさらに1回追加投与できる。(投与時の注意点)・酸素投与、人工呼吸器管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。・海外医師主導治験は室内気SpO2が92%未満または酸素投与中でCRP値7.5mg/dL以上のSARS-CoV-2による肺炎患者を対象として実施され、副腎皮質ステロイド薬併用下で本剤の有効性が確認されている。当該試験の内容を熟知し、本剤の有効性および安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。・海外医師主導治験では副腎皮質ステロイド薬を併用していない患者において本剤投与により全死亡割合が高くなる傾向が認められた。・バリシチニブとの併用について、有効性および安全性は確立していない。その他 附表として「重症リスクを有する軽症COVID-19患者への治療薬の特徴(2022年1月時点)」を追加 本手引きの詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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