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2型糖尿病の死亡リスクは高くない?/NEJM

 5つのリスク因子が、ガイドラインで定められた目標値の範囲内にある2型糖尿病患者は、死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスクが一般人口とほとんど変わらず過剰ではないことが、スウェーデン・イエーテボリ大学のAidin Rawshani氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年8月16日号に掲載された。2型糖尿病患者は、死亡や心血管アウトカムのリスクが一般人口に比べ2~4倍高いとされる。この2型糖尿病に関連する過剰なリスクが、現行のエビデンスに基づく治療や複数のリスク因子の修正によって、どの程度軽減し、あるいは消失する可能性があるのかは不明であった。目標値範囲外のリスク因子数とアウトカムの関連を評価 研究グループは、2型糖尿病患者における死亡および心血管イベントの過剰リスクが低減あるいは消失するかを検討するコホート研究を行った(スウェーデン地方自治体協議会[SALAR]などの助成による)。 1998年1月1日~2012年12月31日の期間に、スウェーデンの全国糖尿病登録(Swedish National Diabetes Register)の2型糖尿病患者27万1,174例(糖尿病群)と、年齢、性別、地域(県)をマッチさせた非糖尿病の地域住民135万5,870例(対照群)を解析に含めた。 年齢別(≧80、≧65~<80、≧55~<65、<55歳)および5つのリスク因子(糖化ヘモグロビン値の上昇[≧7.0%]、LDLコレステロール値の上昇[≧97mg/dL]、アルブミン尿[微量・顕性アルブミン尿]、喫煙[試験登録時]、血圧の上昇[≧140/80mmHg])の有無別に解析を行った。 Cox回帰を用いて、目標値の範囲外のリスク因子の数と関連する4つのアウトカム(死亡、急性心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院)の過剰リスクを評価した。また、種々のリスク因子と心血管アウトカムとの関連も検討した。若年患者はリスク増分が大きい、死亡の最強予測因子は喫煙 フォローアップ期間中央値は5.7年で、この間に17万5,345例が死亡した。ベースライン時に5つのリスク因子の完全なデータが得られた2型糖尿病患者は9万6,673例(35.6%)であった。両群とも平均年齢は60.58歳で、女性が49.4%だった。 糖尿病群は対照群に比べ、目標値の範囲外のリスク因子の数が0から5つへと増加するに従って、4つのアウトカムのハザード比(HR)が段階的に上昇した。糖尿病に関連する死亡および心血管イベントのリスクの増分は、加齢に伴って段階的に減少し、<55歳の集団が最も大きく、≧80歳の集団が最も小さかった。また、急性心筋梗塞のHRは、目標値範囲外のリスク因子が1つもない≧80歳の患者が、対照群に比べ最も低かった(HR:0.72、95%信頼区間[CI]:0.49~1.07)。 5つのリスク因子がすべて目標値の範囲内の糖尿病患者は、対照群との比較における全死因死亡HRが1.06(95%CI:1.00~1.12)であり、わずかにリスクが高い傾向がみられたが、急性心筋梗塞のHRは0.84(95%CI:0.75~0.93)とむしろリスクは低く、脳卒中のHRは0.95(95%CI:0.84~1.07)と有意差を認めなかった。一方、目標値の範囲外のリスク因子がない糖尿病群の心不全による入院のリスクは、対照群よりも有意に高かった(HR:1.45、95%CI:1.34~1.57)。 死亡の最も強い予測因子は喫煙であり、次いで身体活動、婚姻状況、糖化ヘモグロビン値、スタチンの使用の順であった。同様に、急性心筋梗塞の予測因子は、糖化ヘモグロビン値、収縮期血圧、LDLコレステロール値、身体活動、喫煙の順で、脳卒中は糖化ヘモグロビン値、収縮期血圧、糖尿病罹患期間、身体活動、心房細動の順、心不全による入院は心房細動、BMI、身体活動、推定糸球体濾過量、糖化ヘモグロビン値の順だった。 著者は、「理論上、5つのリスク因子を目標値の範囲内に保持すれば、急性心筋梗塞の過剰リスクは消失するが、心不全による入院のリスクは実質的に過剰なまま残る」とまとめ、「若年患者では、目標値の範囲外のリスク因子の数が多いほど、有害な心血管アウトカムの相対的リスクが増大したことから、より積極的な治療が利益をもたらす可能性が示唆される」と指摘している。

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第2回 プラバスタチンの処方/カモスタットの処方/クエチアピンの処方と検査/肝硬変での検査【レセプト査定の回避術 】

事例5 プラバスタチンの処方脂質異常症の重症患者に、プラバスタチン10mg 2錠を処方した。●査定点プラバスタチン10mg 1錠が査定された。解説を見る●解説添付文書で、年齢・症状により適宜増減し、重症の場合は1日20mgまで増量できることになっていましたが、レセプトに「重症」のコメントが追記されていませんでした。コメントとして「重症」が求められます。事例6 カモスタットの処方逆流性食道炎の患者に、カモスタット100mg 6錠を処方した。●査定点カモスタット100mg 6錠が査定された。解説を見る●解説(1)カモスタットの添付文書で「カモスタット100mg 6錠」の傷病名は「慢性膵炎における急性症状の緩解」のため査定されました。(2)「逆流性食道炎」では、カモスタットの処方は認められていません。「術後」の「逆流性食道炎」では認められています。なお、「術後逆流性食道炎」では、カモスタット100mg 3錠の処方となります。事例7 クエチアピンの処方と検査統合失調症でクエチアピン錠25mg 3錠を継続処方している患者に、HbA1c検査を施行した。●査定点HbA1c検査が査定された。解説を見る●解説統合失調症にクエチアピン錠を投与すると、添付文書の「重要な基本的注意」で「著しい血糖値の上昇から、糖尿病検査」が求められています。このような場合には、糖尿病の疑いを追記するのではなく、「患者は『クエチアピン錠投与により著しい血糖値の上昇』を受けやすく、添付文書の【重要な基本的注意】によりHbA1c検査施行を必要とした」と症状詳記することが望ましいといえます。事例8 肝硬変での検査肝硬変でヘパプラスチンテストを施行した。●査定点ヘパプラスチンテストが査定された。解説を見る●解説ヘパプラスチンテストの保険請求では、「他の検査で代替できない理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること」となっています。コメントの記載がないため査定されています。

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スタチンと特発性炎症性筋炎が関連

 オーストラリア・アデレード大学のGillian E. Caughey氏らの大規模な症例対照研究によって、スタチンの使用と特発性炎症性筋炎(idiopathic inflammatory myositis:IIM)が有意に関連することが示唆された。著者らは「世界的にスタチン使用が増加していることから、このまれな副作用についての認識が高まることが必要」としている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2018年7月30日号に掲載。 本研究は集団ベースの症例対照研究で、症例群はSouth Australian Myositis Databaseで1990~2014年に組織学的に確認された40歳以上のIIM患者(n=221)で、対照群はNorth West Adelaide Health Studyから年齢・性別でマッチ(対照:症例=3:1)させた(n=662)。条件付きロジスティック回帰を用いて、2016年6月1日~2017年7月14日にデータを分析した。主要アウトカムは、炎症性筋疾患の尤度に関する未調整のオッズ比および糖尿病・心血管疾患で調整した後のオッズ比と95%信頼区間(95%CI)。 主な結果は以下のとおり。・計221例が症例群の適格基準を満たした。平均年齢(SD)は62.2(10.8)歳で、女性が132例(59.7%)であった。・IIMの診断時のスタチン曝露は、221症例のうち68例(30.8%)、対照群662人のうち142人(21.5%)であった(p=0.005)。・IIM患者のスタチン曝露の尤度は、対照の約2倍であった(調整オッズ比:1.79、95%CI:1.23~2.60、p=0.001)。・壊死性筋炎の患者を除外しても、同様の結果が観察された(調整オッズ比:1.92、95%CI:1.29~2.86、p=0.001)。

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サルコペニア、カヘキシア…心不全リスク因子の最新知識【東大心不全】

急増する心不全。そのような中、従来はわからなかった心不全とリスク因子の関係が解明されつつある。最近注目されるサルコペニア、カヘキシアに焦点を当て、心不全との関係を東京大学循環器内科 石田 純一氏に聞いた。近年の心不全リスク因子に関する研究の動向を教えてください。従来、心不全に併存するリスク因子、予後増悪因子としては動脈硬化の素因以外に慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、貧血、炎症が知られていました。画像を拡大するその中で、過去約20年で体組成の変化、とくに体組成減少が新たな心不全のリスク因子、予後増悪因子として注目を集め始めています。いわゆるサルコペニア、カヘキシア(悪液質)と呼ばれるものです。「サルコペニア」はギリシャ語が語源で、肉や筋肉を意味する「サルクス」と減少を意味する「ペニア」を合わせて筋肉減少を指します。一般に加齢に伴う筋肉減少が一次性サルコペニア、活動低下あるいは慢性疾患に伴うものが二次性のサルコペニアと分類されています。画像を拡大する「カヘキシア」も語源はギリシャ語の「カコス」と「ヘキス」で、英語で言えばバッド・コンディション、これを日本語にすると悪液質となります。最近の定義としては、骨格筋だけではなく、体組成全体の減少を意味します。いわゆる心不全やがんなどの慢性疾患に合併する全身性の消耗状態と捉えられます。サルコペニアの場合、従来は加齢に伴う筋肉減少はある種当然のことと考えられていましたが、実際には減少する人としない人がいます。そしてサルコペニア、カヘキシアともに心不全患者で併存する場合は、併存しない場合と比較して心不全の予後が悪いということがわかりました。サルコペニア、カヘキシアはどのように診断をするのでしょうか?サルコペニアは1989年に提唱された新しい概念である一方で、カヘキシアは用語としては長らく存在していましたが、病態としての概念ができたのは近年のことなので、まだ必ずしも統一された診断基準はありません。サルコペニアについては、2つ重要な要素があるといわれています。1つは筋肉の量的減少、もう1つが筋力あるいは身体能力の低下です。実はこの2つは同じ意味と捉えられがちですが、筋肉量減少とそのまま相関して筋力低下に反映されるものではないので、2つをそれぞれ評価することが重要だといわれています。カヘキシアについてもガイドラインなどはありませんが、心不全に併存する場合、論文などでは、過去の6~12ヵ月以内に5%以上の体重減少と定義している場合が多いと思います。ただ、カヘキシアの診断では要注意点があります。心不全やがんの場合は水分貯留による浮腫が発生しがちです。しかし、浮腫はカヘキシアの定義である体重減少とは逆の体重増加ファクターです。つまり、実際には筋肉や脂肪は減少しているのに、浮腫でそれがマスクされてしまっている可能性もあるのです。そのため前述の体重減少5%以上は、この浮腫分を含まない状態として評価しなければならない困難さがあります。これが、カヘキシアに対する取り組みを困難にしている理由の1つにもなっています。心不全に併存するサルコペニア、カヘキシアの割合はどのくらいなのでしょうか。この数字も報告によってさまざまですが、概説するとサルコペニアの併存率は30~50%、カヘキシアが5~20%といわれています。しかもこの2つはどこに着目するかという違いなので、双方が併存するケースもありえます。サルコペニア、カヘキシアが心不全の予後悪化につながる機序はどのように解釈されているのでしょうか。現在は疫学的に予後悪化因子と捉えられているのみで、まだ詳しい機序は解明されていません。そもそもサルコペニアの場合、サルコペニア自体の機序が十分に解明されていないという事情もあります。一般論的には心筋の量と働きが正常ならば血液循環も正常なので、骨格筋が減少するサルコペニアやカヘキシアでは、心筋も減少することで心臓が正常に機能しなくなり、心不全が悪化すると推定されていますが、エビデンスがあるわけではありません。ただ、がんに伴うカヘキシアでは心臓萎縮を疑わせる心臓重量低下の報告があるので、骨格筋減少と心筋減少に一定の相関があると推察されています。近年では欧米を中心に、心不全患者で肥満あるいは肥満傾向の患者のほうが、予後が良いという“obesity paradox”が報告されています。もともと肥満は心不全発症のリスク因子として確定していますが、ひとたび心不全を発症した場合は、極度の肥満は論外ですが、体重がやや多めの患者さんのほうが予後は良好とのデータがあるのは確かです。このため以前は、肥満がある心不全患者では体重減少を図るべきとされていましたが、最近の欧州でのコンセンサスではBMI 35超でなければ無理に痩せる必要はないと記述しています。しかし、人種差なども考慮すれば、これを日本人に機械的に適用することはできません。日本で欧州のコンセンサスを反映させるならば、どの程度のBMIが許容できるのかは今後の課題だと思います。一方、obesity paradoxのような現象が認められてしまうのはBMIの限界ともいえます。BMIは指標としては使いやすいのですが、筋肉と脂肪の比率や代謝状況を反映していません。心不全でBMIを考慮する際には、より多面的な視点も必要だと考えています。サルコペニア、カヘキシアへの対処、治療法の現状を教えてください。画像を拡大する現在、サルコペニアやカヘキシアでの筋肉減少は、タンパク質の分解(異化)と合成(同化)のバランスの中で、分解亢進あるいは合成低下のいずれか、またはその双方が同時に起きていると考えられています。そこで、タンパク質分解の亢進に関与しているマイオスタチンの働きを抑制する物質を治療へ応用しようとの検討が、がんのカヘキシアで行われましたが、ヒトでの臨床試験で筋肉量増加は認められたものの筋力増強は認められず、開発は頓挫しました。もう1つ注目されているのが、タンパク質の合成を促進するアナモレリン(anamoreline)です。この薬剤は、欧州で臨床の無作為比較試験まで行われています。日本でも肺がんのカヘキシア患者を対象に無作為化比較試験まで実施されています。結果、筋肉量を増加することが明らかになっています。筋力増強は明らかになっていないものの、本邦での開発は継続中です。もっとも私が知る限り、心不全に併存するサルコペニア、カヘキシアでこうした化合物の臨床試験が行われた形跡はありません。心不全で臨床試験を行えば、がんとは違った結果が出る可能性はあると思います。結局、こうした化合物は、非常に多面的な要素が大きいサルコペニアやカヘキシアのシグナリングの中の1つにアプローチするにすぎないのが、際立った臨床成績が得られない理由とも推察されています。その意味では、すでに消化器外科などで多用され、食欲増進ホルモンのグレリンに作用するほか、比較的多面的な効果も示唆されている漢方薬の六君子湯(リックンシトウ)なども、今後のサルコペニアやカヘキシアの治療に対する可能性を秘めているかもしれません。薬剤開発以外ではいかがでしょう?現時点ではまだエビデンスが十分とはいえないのですが、運動療法、いわゆる有酸素運動はサルコペニアやカヘキシアの有無にかかわらず、心不全の予後、身体能力、QOLの改善にも効果的と指摘されています。ことサルコペニアやカヘキシアに関していえば、運動療法が前述の異化・同化のバランス崩壊に効果を示しているのだろうと推測されています。ただ、激しい運動は心不全ではリスクとなりますので、安全性・有効性の観点から、従来からある心臓リハビリの法則にのっとって、個々の患者さんごとに適した運動量、運動強度を考える必要があります。プライマリケアの先生方にお伝えしたいことがあれば教えてください。サルコペニアについては、2016年に、世界保健機関(WHO)が公表している「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)」に入るようになりましたが、カヘキシアとともにまだ認知度は高くはないと思われます。その意味では、まずはサルコペニア、カヘキシアという病態があり、慢性心不全に併存した場合に予後悪化因子になるということを知っていただきたいと思います。現時点で打てる対策は、安全な運動療法になりますが、心臓を中心に考えたトータルケアで、サルコペニアやカヘキシアへの注意は欠いてはならないことを念頭に置いていただければ幸いです。講師紹介

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脂質代謝遺伝子の発現を調節する高脂血症治療薬「パルモディア錠0.1mg」【下平博士のDIノート】第4回

脂質代謝遺伝子の発現を調節する高脂血症治療薬「パルモディア錠0.1mg」今回は、「ペマフィブラート錠0.1mg(商品名:パルモディア)」を紹介します。本剤は、フィブラート系薬に分類される高脂血症治療薬で、核内受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体PPARαに選択的に結合し、脂質代謝遺伝子の発現を調節することで、血中の中性脂肪(トリグリセライド:TG)を低下させるとともにHDL-コレステロール(HDL-C)を増加させる作用を有します。<効能・効果>高脂血症(家族性を含む)の適応で、2017年7月3日に承認され、2018年6月1日より販売されています。本剤は、選択的にPPARαに結合した後、PPARαの立体構造変化をもたらすことで、主に肝臓の脂質代謝に関わる遺伝子群の発現を選択的にモジュレート(調節)して、脂質代謝を改善します。なお、本剤をLDL-コレステロール(LDL-C)のみが高い高脂血症治療の第1選択薬として用いることはできません。<用法・用量>通常、成人にはペマフィブラートとして1回0.1mgを1日2回朝夕に経口投与します。年齢・症状に応じて適宜増減可能ですが、最大用量は1回0.2mgを1日2回までです。<禁忌>次の患者には投与しないこと重篤な肝障害、Child-Pugh分類B/Cの肝硬変のある患者あるいは胆道閉塞のある患者(肝障害の悪化、または本剤の血中濃度が上昇する恐れがある)胆石のある患者(胆石形成が報告されている)妊娠または妊娠している可能性のある患者シクロスポリン、リファンピシンを投与中の患者(併用により、本剤の血中濃度が著しく上昇する恐れがある)<臨床効果>第III相臨床試験であるフェノフィブラートとの比較検証試験において、TG高値かつHDL-C低値を示す脂質異常症患者223例に、本剤0.2mg/日または0.4mg/日を1日2回朝夕食後、もしくはフェノフィブラート錠106.6mg/日を1日1回朝食後で24週間投与しました。その結果、空腹時血清TGのベースラインからの変化率は、フェノフィブラート群が-39.685±1.942%であったのに対し、本剤0.2mg群は-46.226±1.977%、0.4mg群は-45.850±1.942%であり、本剤のフェノフィブラート群に対する非劣性が認められています(p≦0.01)。なお、TG高値を示す脂質異常症患者、2型糖尿病を合併した脂質異常症患者を対象とした長期投与試験において、52週にわたり空腹時血清TGの改善が維持されました。<副作用>承認時までに実施された臨床試験において、1,418例中206例(14.5%)に副作用が認められています。主な副作用は、胆石症20例(1.4%)、糖尿病(悪化を含む)20例(1.4%)、CK上昇12例(0.8%)でした。<患者さんへの指導例>1.中性脂肪を低下させ、善玉コレステロールを増やす薬です。2.足のしびれ・痙攣、力が入らない、覚えのない筋肉痛など、いつもと違う症状が現れたらすぐに連絡してください。3.禁煙・運動・食生活など、生活習慣の改善も併せて行いましょう。<Shimo's eyes>既存のフィブラート系薬は腎排泄型の薬剤であり、安全性の観点から腎機能障害患者、肝機能障害患者、スタチン系薬を服用中の患者では使用が制限されてきました。ペマフィブラートは、腎機能障害(eGFR:60mL/分/1.73m2未満)を有する高TG血症患者に1日0.4mgまで投与した場合であっても、正常腎機能被験者と比較して発現頻度が明らかに上昇するような有害事象は現時点では認められていません。また、本剤と各種スタチン系薬との相互作用が検討された臨床試験においても、併用による双方の薬剤の血中濃度には変化がなく、有害事象の発現頻度は上昇しなかったことが確認されています。これらのことから、本剤を腎機能障害患者が服用したり、スタチン系薬と併用したりすることによる横紋筋融解症の発現リスクは、ほかのフィブラート系薬と比較して低いことが予想されます。そのため、2022年10月に高度腎障害のある患者への禁忌が解除され、慎重投与に変更されました。本剤は胆汁排泄型の薬剤であるため、肝機能障害には注意が必要ですが、申請時資料において、フェノフィブラートに比べて肝機能障害の有害事象が少ないという可能性が示唆されるデータがあります。しかし、ペマフィブラートは、日本で開発された薬剤であり、海外では臨床試験が実施されているものの、まだ承認されていません。十分な臨床での使用経験がないため、今後の副作用報告に注視する必要があるでしょう。※2022年10月、添付文書改訂により一部内容の修正を行いました。

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第1回 高齢者糖尿病は何歳から? 何に注意が必要?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第1回 高齢者糖尿病は何歳から? 何に注意が必要?Q1 加齢と糖尿病の関係とは?糖尿病の頻度は加齢とともに増加します。平成28年度の国民栄養調査によると、70歳以上の高齢者で糖尿病が疑われる頻度は男性で23.2%、女性で16.8%となっています(図1)。また、糖尿病患者の中で70歳以上の割合は31.9%を占めています。加齢に伴う糖尿病患者の増加は、加齢に伴うインスリン抵抗性の増加、インスリンの追加分泌の低下、身体活動量の低下などが関係していると考えられています。画像を拡大するQ2 何歳以上を「高齢者糖尿病」として注意すべきでしょうか?高齢者糖尿病は一般に65歳以上の糖尿病を指しますが、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」では、75歳以上の後期高齢者と機能低下がある一部の前期高齢者が、「高齢者糖尿病」として、とくに注意すべき治療の対象とされています。これは、後期高齢者の糖尿病が前期高齢者の糖尿病と比較して、異なる特徴を示しているからです。第一に、高齢糖尿病患者を対象としたJ-EDIT研究における、MMSE(認知機能検査)の点数をみてみると、65~69歳の患者と比較して75歳以上の患者ではじめて有意に低下します(図2a)。また、日常生活動作であるADLも80歳以上で低下します。同じJ-EDIT研究で老研式活動能力指標を用いて、買い物、金銭管理などの手段的ADL、知的活動、社会的役割を含む高次ADLの障害数を評価したところ、80歳以上で有意に高次ADLの障害数が大きくなります(図2b)。画像を拡大するさらに、高齢者は加齢とともに体組成が大きく変化します。65歳以上の入院高齢糖尿病患者を対象に内臓脂肪面積100cm2以上の蓄積の頻度をみると、75歳以上で内臓脂肪蓄積が増加しています(図3a)。さらに、DEXA法で四肢の筋肉量(除脂肪量)をみると、男女ともに80歳以上で有意に低下しています(図3b)。この内臓脂肪の増加と筋肉量の低下は、インスリン抵抗性を大きくすることで、高齢者糖尿病の病態に大きく関わっています。画像を拡大する腎機能も75~80歳以上で有意に低下します。eGFRcreは筋肉量の影響を受けやすく、eGFRcysや血清シスタチンC濃度の加齢変化をみてみると、80歳以上で有意に増加しています(図4)。この腎機能障害は腎排泄性の薬剤(たとえばSU薬)の蓄積をもたらし、低血糖などの副作用を起こしやすくします。低血糖に関しても、80歳以上の患者で救急外来を受診する低血糖や重症低血糖が起こりやすいことが知られています。この重症低血糖の増加の原因は、上記の薬剤の蓄積しやすさに加えて、急性疾患によって食事摂取が低下しやすいこと、認知機能やADLの低下によって低血糖の対処能力が低下することが考えられます。合併症の中では、80歳以上の患者で脳卒中と心不全が起こりやすいことが知られています。上記に加えて、社会サポートが低下しやすいために、自立した生活を送ることが難しくなるだけでなく、インスリン注射などの糖尿病に関するセルフケアも困難になります。画像を拡大する Q3 「高齢者糖尿病」の治療目的・診断は若壮年者と違うのでしょうか?上記の理由から、「高齢者糖尿病」の治療目的は合併症の予防だけではなく、QOLの維持向上を目指し、さらに認知機能障害、ADL低下、サルコペニアなどの老年症候群を予防することにあります(図5)。また、QOLの維持・向上を図るためには、低血糖などを防ぎ、食のQOLを保つことも大切です。さらに、患者のみならず介護者の治療の負担を軽減することも大切です。なお、高齢者糖尿病の診断は若い人と同様に行います。画像を拡大する

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高血圧・高脂血症の治療は認知症を予防するか

 アルツハイマー病(AD)と血管リスク因子(VRF)の関連について疫学的エビデンスはあるが、VRFの治療が認知症やADの発症率を低下させるのか不明である。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C. Larsson氏らが、認知症およびADの発症におけるVRFの治療の影響について系統的レビューとメタ分析で検討した結果、降圧薬とスタチンが認知症やADの発症率を低下させる可能性が示唆された。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2018年6月9日号に掲載。 著者らは、PubMedで2018年1月1日までに公表された関連研究から、認知症とAD発症率に対するVRF治療の影響を調査した無作為化比較試験(RCT)と前向き研究を同定した。 主な結果は以下のとおり。・8件のRCTと52件の前向き研究が同定された。・降圧治療により、RCT(5件、相対リスク[RR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.69~1.02)および前向き研究(3件、RR:0.77、95%CI:0.58~1.01)では、有意ではないが認知症リスクが低下し、前向き研究(5件、RR:0.78、95%CI:0.66~0.91)ではADリスクが低下した。・前向き研究において、スタチンによる高脂血症治療により認知症(17件、RR:0.77、95%CI:0.63~0.95)およびAD(13件、RR:0.86、95%CI:0.80~0.92)のリスクが低下したが、スタチン以外の脂質降下薬では低下しなかった。1件のRCTで、スタチンと認知症発症との関連は示されなかった。・1件のRCTおよび6件の前向き研究のデータから、血糖降下薬またはインスリン療法による認知症リスクへの有益な影響は示されなかった。

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高齢者の処方見直しで諸リスク低減へ

 2018年5月11日、日本老年医学会は、「高齢者とポリファーマシー」に関するメディアセミナーを都内で開催した。本学会が策定した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を踏まえ、医療現場でポリファーマシー対策に取り組む3人の演者が講演を行った。ポリファーマシーが老年症候群に拍車をかける? はじめに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)が、ポリファーマシー対策の動向について語った。わが国では6剤以上がポリファーマシーと定義され、薬剤性老年症候群などの原因として懸念されている。老年症候群は、転倒、記憶障害、意欲低下や排泄機能障害など、加齢・疾患によるものも含まれるが、その症状がポリファーマシーにより助長されている可能性を秋下氏は指摘した。 同氏は、「ポリファーマシーは、例えればさまざまなお酒を一度に飲むと悪酔いするようなもので、多剤服用のみを指すのではない。薬を減らす際には生活習慣の是正など、非薬物療法がより重要になる。医師・薬剤師を中心に、医療スタッフが連携する必要がある」と語った。3剤以上の見直しでリスク低減の可能性 次に、溝神 文博氏(国立長寿医療研究センター 薬剤部)が、院内でポリファーマシーを提案する「高齢者薬物療法適正化チーム」の活動について紹介した。チームは、内科・循環器内科の医師、薬剤師を中心に構成され、週1回カンファレンスを実施している。 チーム介入症例の解析では、薬物有害事象などが疑われる58症例に対し、平均4剤の見直し提案を行った。対象薬は降圧薬が最も多く、次いで消化器薬、糖尿病薬、スタチン系が多かった。結果、3剤以上削減した群で薬物有害事象の発生頻度が53%から9%と7日間で有意に減少し、60日後まで維持されていた。一方で、3剤未満の削減だと有意差がなく、60日後には再燃する傾向がみられた。 溝神氏は、「チーム結成によって意識変化が起こり、慎重に処方を行う医師が増加した。しかし、服薬環境も適正化されないと十分ではない。患者・家族への説明でポリファーマシーへの正しい理解を促し、地域レベルで対策する必要がある」と語った。短時間の睡眠が不眠症とは限らない? 最後に、水上 勝義氏(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授)が、向精神薬の適正使用について説明した。回復可能な認知症の原因として、1位がうつ病、2位が薬剤性という報告1)を挙げ、原則として非薬物療法を優先し、向精神薬は慎重に使用するよう呼びかけた。 高齢者が訴える不眠症に対し、水上氏は、「高齢になると深睡眠が減る傾向にある。しかし、日中の生活に支障がなければ、睡眠時間が短くても不眠症にならない」と指摘した。また、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)などに使用される抗精神病薬には、新規投与後6ヵ月まで死亡リスクが上昇するという報告2)があるという。同氏は、漢方薬の過剰投与にも言及し、「十分な治療効果が認められた患者では減量・中止を検討すべきだ」と語った。 さらに、スルピリドによる錐体外路症状、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によるアパシーの発現などの副作用を例に挙げ、「頻用される薬でも、高齢者には注意が必要。薬剤によって諸症状が出ている可能性も考慮すべき」と締めた。 本学会は、エビデンスが少ない高齢者医療における課題などに対し、具体的にどのような対応をするのか明確にするため、「健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画」を策定した。2018年6月、学術集会で発表予定。■参考文献1)Weytingh MD, et al. J Neurol. 1995;242:466-471.2)Arai H, et al. Alzheimers Dement. 2016;12:823-830.■参考一般社団法人 日本老年医学会第60回日本老年医学会学術集会■関連記事身体能力低下の悪循環を断つ診療

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スタチンと認知症・軽度認知障害リスクに関するメタ解析

 すべての認知症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症や軽度認知障害のリスクとスタチン使用との関連について、台湾・Kaohsiung Veterans General HospitalのChe-Sheng Chu氏らが、システマティックレビュー、メタ解析を実施した。Scientific reports誌2018年4月11日号の報告。 2017年12月27日までの、成人におけるスタチンの使用と認知機能低下に関する研究を、主要な電子データベースより検索を行った。各研究の効果量を統合するため、相対リスク(RR)を算出するランダム効果メタ解析を実施した。スタチン使用はすべての認知症リスクの有意な低下と関連 成人におけるスタチンの使用と認知機能低下に関する研究の主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしていた研究は、25報であった。・スタチン使用と認知症リスクとの関連は以下のとおり。 ●すべての認知症リスクの有意な低下と関連(16報、調整RR:0.849、95%CI:0.787~0.916、p=0.000) ●アルツハイマー型認知症リスクの有意な低下と関連(14報、調整RR:0.719、95%CI:0.576~0.899、p=0.004) ●軽度認知障害リスクの有意な低下と関連(6報、調整RR:0.737、95%CI:0.556~0.976、p=0.033) ●血管性認知症と有意な関連は認められなかった(3報、調整RR:1.012、95%CI:0.620~1.652、p=0.961)・サブグループ解析では、水溶性スタチンは、すべての認知症リスク低下と関連が認められ(調整RR:0.877、95%CI:0.818~0.940、p=0.000)、アルツハイマー型認知症リスクが低くなる可能性が示唆された(調整RR:0.619、95%CI:0.383~1.000、p=0.050)。・脂溶性スタチンは、アルツハイマー型認知症リスク低下と関連が認められたが(調整RR:0.639、95%CI:0.449~0.908、p=0.013)、すべての認知症との関連は認められなかった(調整RR:0.738、95%CI:0.475~1.146、p=0.176)。 著者らは「本メタ解析では、スタチンの使用は、すべての認知症、アルツハイマー型認知症、軽度認知障害のリスク低下と関連が認められたが、血管性認知症リスク低下との関連は認められなかった」としている。

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コレステロールの吸収と合成を阻害する初の配合錠「アトーゼット配合錠LD/HD」【下平博士のDIノート】第1回

コレステロールの吸収と合成を阻害する初の配合錠「アトーゼット配合錠LD/HD」今回は、高コレステロール血症治療薬「エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム水和物配合錠LD/HD(商品名:アトーゼット)」を紹介します。コレステロールの吸収と合成をともに阻害するため、単独投与よりもLDLコレステロール値を低下させる可能性、また、1剤の服用で済むのでアドヒアランス向上や患者負担の軽減が期待できます。<効能・効果>高コレステロール血症、家族性コレステロール血症の適応で、2017年9月27日に承認され、2018年4月23日より販売されています。本剤は、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブと、HMG-CoA還元酵素阻害薬であるアトルバスタチンの配合剤です。異なる作用機序の成分を配合することで、小腸でのコレステロールおよび植物ステロールの吸収阻害作用と、肝臓でのコレステロール合成阻害作用により、血液中のコレステロールを低下させることが期待されます。なお、本剤を高コレステロール血症、家族性コレステロール血症治療の第1選択薬として用いることはできません。<用法・用量>通常、成人には1日1回1錠を食後に経口投与します。エゼチミブ/アトルバスタチンの含量は、LD錠が10mg/10mg、HD錠が10mg/20mgとなっており、アトルバスタチンの用量は、年齢、症状により適宜増減可能です。高コレステロール血症の場合はアトルバスタチンとして最大20mg、家族性高コレステロール血症の場合は最大40mgまで増量できます。<臨床効果>日本人高コレステロール血症患者309例を対象とした国内第III相二重盲検比較試験において、ベースラインからのLDLコレステロール変化率は、エゼチミブ10mg+アトルバスタチン10mg併用群はエゼチミブ10mgおよびアトルバスタチン10mgの各単独群との間、エゼチミブ10mg+アトルバスタチン20mg併用群はエゼチミブ10mgおよびアトルバスタチン20mgの各単独群との間に有意差が認められました。<副作用>国内の臨床試験では、臨床検査値異常を含む副作用が272例中4例(1.5%)に認められています。主な副作用は、胃炎、腹部膨満感、便秘などの消化器症状と、ALT増加、AST増加、γ-GTP増加、Al-P増加などの臨床検査値異常でした。<患者さんへの指導例>1.コレステロール吸収を抑える成分と、コレステロール合成を抑える成分の2種類が配合され、心血管系疾患の危険性を少なくすることが期待できます。2.一緒に飲んではいけない薬や避けたほうがよい薬がありますので、ほかに服用している薬があれば、必ず医師・薬剤師に伝えてください。3.手足のしびれ、筋力低下、筋肉痛、赤褐色の尿など[横紋筋融解症の前駆症状]がみられた場合や、これまでと違うだるさ、食欲不振、吐き気、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる症状[肝機能低下]がみられた場合はすぐに連絡してください。<Shimo's eyes>本剤を高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症の第1選択薬として使用すること、またはアトルバスタチン以外の同効薬の単独投与(ゼチーア錠も該当)からの切り替えは、原則として認められていないので注意が必要です。切り替えが下記に該当しない場合は疑義照会をする必要があります。【LD錠の適用】(1)エゼチミブ10mg+アトルバスタチン10mg併用、(2)アトルバスタチン10mgで効果不十分な場合【HD錠の適用】(1)エゼチミブ10mg+アトルバスタチン20mg併用、(2)アトルバスタチン20mg、(3)エゼチミブ10mg+アトルバスタチン10mg併用またはエゼチミブ/アトルバスタチン配合錠LDで効果不十分な場合本剤の薬価はLD錠、HD錠ともにゼチーア錠と同額のため、ゼチーア錠とリピトール錠あるいは後発のアトルバスタチン錠をそれぞれ単剤で併用するよりも医療費が軽減されます。アドヒアランスの向上も期待できるので、両剤を必要とする患者さんにとってメリットを感じやすいでしょう。通常、新薬の発売から1年間は14日分しか投与できないという処方日数制限がありますが、本剤の場合、既存薬のゼチーア錠とリピトール錠の併用療法は実質的に1年以上の臨床使用経験があるため、処方日数制限の対象外となっています。

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治療前のLDL-コレステロール値でLDL-コレステロール低下治療の効果が変わる?(解説:平山篤志氏)-852

 2010年のCTTによるメタ解析(26試験、17万人)でMore intensiveな治療がLess intensiveな治療よりMACE(全死亡、心血管死、脳梗塞、心筋梗塞、不安定狭心症、および血行再建施行)を減少させたことが報告された。ただ、これらはすべてスタチンを用いた治療でLDL-コレステロール値をターゲットとしたものではないこと、MACEの減少も治療前のLDL-コレステロール値に依存しなかったことから、2013年のACC/AHAのガイドラインに“Fire and Forget”として動脈硬化性血管疾患(ASCVD)にはLDL-コレステロールの値にかかわらず、ストロングスタチン使用が勧められる結果になった。 しかし、CTT解析後にスタチン以外の薬剤、すなわちコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブを用いたIMPROVE-IT、さらにはPCSK9阻害薬を用いたFOURIER試験など、非スタチンによるLDL-コレステロール低下の結果が報告されるようになり、今回新たな34試験27万人の対象でメタ解析の結果が報告された(CTTの解析に用いられた試験がすべて採用されているわけではない)。 その結果、More intensiveな治療がLess intensiveな治療よりアウトカムを改善したことはこれまでの解析と同じであったが、全死亡、心血管死亡において治療前のLDL-コレステロール値が高いほど有意に死亡率低下効果が認められた。心筋梗塞の発症も同様の結果であったが、脳梗塞については治療前の値の差は認められなかった。治療前のLDL-コレステロール値について、CTTによれば値にかかわらず有効であるとされていたが、本メタ解析の結果はLDL-コレステロール値が100mg/dL以上であれば死亡率も低下するということを示している。 近年、IMPROVE-ITもFOURIER試験も心筋梗塞や脳梗塞の発症は有意に低下させるが、死亡率低下効果がないのは、治療前のLDL-コレステロール値が100mg/dLであることが要因であると推論している。 このメタ解析は、LDL-コレステロール値の心血管イベントへ関与を示唆するとともに、“Lower the Better”を示したものである点で納得のいくものである。しかし、4Sが発表された1994年とFOURIERが発表された2017年の20年以上の間に、急性心筋梗塞の死亡率が再灌流療法により減少したこと、心筋梗塞の定義がBiomarkerの導入で死亡には至らない小梗塞まで含まれるようになったことも、LDL-コレステロール減少効果で死亡率に差が出なくなった原因かもしれない。 今後のメタ解析は、アウトカムが同一であるというだけなく、時代による治療の変遷も考慮した解析が必要である。

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やはり、スタチンはACSの早期の投与が勧められる(解説:平山篤志氏)-846

 非ST上昇型急性冠症候群に対して、アトルバスタチン80mgを投与することにより心血管イベントを有意に低減するMIRACL試験の結果は、スタチンの有用性を示すものとして大きなインパクトを与えた。その後の急性冠症候群(ACS)を対象としたスタチンの効果においても、ACSのより早期に投与することの有用性を示したものであった。ただ、PCI前のスタチン投与の有用性を示したARMYDA-ACSも1群85例とごく少数例の検討であり、ACSの有用性を示しても、どの時期に投与を開始すべきかについては、明らかでなかった。 SECURE-PCIは、PCIを予定するACS患者に24時間前にアトルバスタチン80mgを投与することの有用性をプラセボ対象に検討した試験で、結果としては有用性が認められなかった。しかし、注目しなければならないのは、PCIを施行した症例が約65%で非施行群が27%であり、PCIを施行した群で有意に30日間のイベントの低減効果があったということである。この結果は、これまでの小規模ではあるがACSでPCIを施行した試験での結果と一致していた。おそらく、スタチンの投与が早期のプラークの安定をもたらし、PCIによる機械的障害に伴う合併症を減少させた可能性がある。 一方、PCI非施行群では30日間のイベント低減効果は認められなかった。ただ、プラセボ群でも、その後にはスタチンを投与されているので、PCIを施行しなくてよい症例ではスタチンを投与しなくてよいというのではなく、スタチンの早期投与の意義がなかったというだけである。いずれにしろ、ACSの早期にスタチンを投与することは、PCIを施行することの多いわが国では有用であろう。

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糖尿病網膜症の日本人患者への強化スタチン療法:EMPATHY試験

 冠動脈疾患の既往歴のない、糖尿病網膜症合併高コレステロール血症患者に対するスタチン単独によるLDL-C低下療法は、通常治療と強化治療とで心血管イベントまたは心血管関連死に有意差は認められなかった。慶應義塾大学の伊藤 裕氏らが、EMPATHY試験の結果を報告した。著者は、「今回の結果は当初の予想より両群におけるLDL-Cの差が少なかった(36ヵ月時で27.7mg/dL)ため」との見解を示したうえで、「高リスク患者に対するtreat-to-target治療におけるLDL-C<70mg/dL達成のベネフィットについては、さらなる研究が必要である」とまとめている。Diabetes Care誌オンライン版2018年4月6日号掲載の報告。 EMPATHY試験は多施設共同試験で、PROBE(Prospective Randomized Open Blinded-Endpoint)法が用いられた。糖尿病網膜症および高コレステロール血症を合併し、かつ冠動脈疾患の既往歴のない30歳以上の2型糖尿病患者を、強化脂質管理群(LDLコレステロール<70mg/dLを目標、2,518例)と通常脂質管理群(LDL-C:100~120mg/dLを目標、2,524例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、心血管疾患発症または心血管疾患死であった。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間は37±13ヵ月であった。・36ヵ月時のLDL-Cは、強化脂質管理群76.5±21.6 mg/dL、通常脂質管理群104.1±22.1mg/dLであった(p<0.001)。・主要評価項目のイベントは、強化脂質管理群で129例、通常脂質管理群153例に発生した(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.67~1.07、p=0.15)。・両群のLDL-Cの差とイベント減少率との関係は、糖尿病患者の一次予防研究と一致していた。・探索的解析の結果、強化脂質管理群で脳イベントが有意に少ないことが示された(HR:0.52、95%CI:0.31~0.88、p=0.01)。・安全性は両群で差はなかった。

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強化脂質低下療法はベース値が高いほど有益/JAMA

 米国・Inova Heart and Vascular InstituteのEliano P. Navarese氏らは、被験者約27万例を含む34件の無作為化試験のメタ解析において、LDLコレステロール(LDL-C)低下療法の強化は非強化と比べて、ベースラインのLDL-C値がより高い患者で、総死亡(total mortality)および心血管死のリスクを低下させることを明らかにした。また、ベースラインのLDL-C値が100mg/dL未満では、この関連性は確認されず、著者は「LDL-C低下療法で最も大きなベネフィットが得られるのは、ベースラインのLDL-C値が高い患者である可能性が示唆された」とまとめている。JAMA誌2018年4月17日号掲載の報告より。無作為化試験34件、約27万例のデータをメタ解析 研究グループは、電子データベース(Cochrane、MEDLINE、EMBASE、TCTMD、ClinicalTrials.gov、major congress proceedings)を用い、2018年2月2日までに発表された、スタチン、エゼチミブおよびPCSK9阻害薬の無作為化試験を検索し、研究者2人がデータを抽出するとともにバイアスリスクを評価した。試験介入群は、「強化療法」(強力な薬理学的介入)、または「非強化療法」(弱作用、プラセボまたは対照)に分類された。 主要評価項目は総死亡率および心血管死亡率とし、ランダム効果メタ回帰モデルおよびメタ解析を用い、ベースラインのLDL-C値と死亡、主要心血管イベント(MACE)などの低下との関連性を評価した。 検索により計34試験が特定され、強化療法13万6,299例、非強化療法13万3,989例、計27万288例がメタ解析に組み込まれた。関連が確認されたのは、ベースラインLDL-C値100mg/dL以上の場合のみ 全死因死亡率は、強化療法群が非強化療法群よりも低かったが(7.08% vs.7.70%、率比[RR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.88~0.96)、ベースラインLDL-C値によってばらつきがみられた。 メタ回帰分析において、強化療法はベースラインLDL-C値が高いほど全死因死亡率もより低くなる関連が認められた(ベースラインLDL-C値の40mg/dL上昇当たりのRRの変化:0.91、95%CI:0.86~0.96、p=0.001/絶対リスク差[ARD]:-1.05症例/1,000人年、95%CI:-1.59~-0.51)。同様の関連は、メタ解析では、ベースラインLDL-C値が100mg/dL以上の場合にのみ確認された(相互作用のp<0.001)。 心血管死亡率も同様に、強化療法群が非強化療法群よりも低く(3.48% vs.4.07%、RR:0.84、95%CI:0.79~0.89)、ベースラインLDL-C値によってばらつきがみられた。メタ回帰分析において、強化療法はベースラインLDL-C高値ほど心血管死亡率減少との関連が示され(ベースラインLDL-C値の40mg/dL上昇当たりのRRの変化:0.86、95%CI:0.80~0.94、p<0.001/ARD:-1.0症例/1,000人年、95%CI:-1.51~-0.45)、同様の関連はメタ解析では、ベースラインLDL-C値100mg/dL以上の場合にのみ確認された(相互作用のp<0.001)。 メタ解析において、全死因死亡率が最も減少したのは、ベースラインLDL-C値が160mg/dL以上の患者を対象とした試験であった(RR:0.72、95%CI:0.62~0.84、p<0.001、1,000人年当たり死亡は4.3減少)。強化療法は、ベースラインLDL-C値が高いほど、心筋梗塞、血管再建術およびMACEのリスクもより減少する関連が認められた。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第44回

第44回:CKD(慢性腎臓病)の評価方法監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 2002 年に米国で提唱されたChronic Kidney Disease(慢性腎臓病:CKD)の概念は、現在、世界中に普及し、日常の外来でも多く遭遇します。厚生労働省「平成26年患者調査の概況」によると、国内のCKD総患者数は29万6,000人(男性18万5,000人、女性11万人)とされています。 今回は、CKDの検出や初期評価に関してまとめましたので、参考にしてみて下さい。なお、国内では「CKD診療ガイド」1)や「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」2)が上梓されています。この機会にぜひ併せてご覧ください。 以下、American family physician 2017年12月15日号3)より【CKD定義・重症度分類】本邦指針では、下記の定義が定められている1)。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。とくに、0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のAlb尿)の存在が重要(2)GFR<60 mL/分/1.73 m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3 ヵ月以上持続する。CKDの重症度分類に関しては、2012年KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)において、従来の糸球体濾過量(GFR)のみによる病期分類がGFR と尿蛋白Alb尿を組合せた形式となり、著聞されている通りです。【CKD評価時のClinical recommendation】CKD評価時のClinical recommendationとしては、下記の項目が挙げられている。なお、Evidence RatingはいずれもC(=consensus, disease oriented evidence, usual practice, expert opinion, or case series)である。GFRの初期評価には、血清Cre値と血清Cre値を用いたeGFRを用いるべきである。CKD患者の初期評価における早朝スポット尿のAlb/Cre比は、タンパク尿評価よりも好ましい。血中シスタチンCは、血清Cre値が上昇しているが、既知のCKD、危険因子、Alb尿症も有しない患者において、GFRの減少が偽陽性かどうかを決めるときに測定すべきである。CKDは、eGFRおよびAlb尿症の程度を用いて分類されるべきである。CKDを有する患者は、少なくとも年一回、血清Hb値を測定すべきであり、CKDの重症度でその頻度を増す。骨密度のルーチン評価は、結果が不正確である可能性があるため、eGFR<45mL /分/1.73m2の患者では行わない。ステージ3a~5の CKD(eGFR<45mL /分/1.73m2)の患者評価には、血清Ca、P、副甲状腺ホルモン、ALPおよび25‐ヒドロキシビタミンD値の測定が含まれるべきである。【CKDを疑う際の初期診断アプローチ】下記の表を参考に、CKDのリスクや病因を評価する。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 社団法人 日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」 2) 社団法人 日本腎臓学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」 3) Gaitonde DY, et al. Am Fam Physician. 2017 Dec 15.

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PCI予定のACSにスタチンのローディング投与は有益か/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による侵襲的管理(確定診断や冠動脈再建術の系統的評価を目的とした冠動脈造影)が予定されている急性冠症候群(ACS)患者に、アトルバスタチンの周術期ローディング投与を行っても、30日主要心血管イベント(MACE)発生率は低下せず、こうした患者へのアトルバスタチンのローディング投与を日常的に使用することは支持されないことが明らかとなった。ブラジル・Research Institute-Heart HospitalのOtavio Berwanger氏らが、同国53施設で実施した多施設無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「SECURE-PCI試験」の結果を報告した。これまで、大規模無作為化臨床試験において、心血管疾患の1次および2次予防としてのスタチンの有効性および安全性は確立されていたが、ACSで侵襲的管理が予定されている患者において、スタチンのローディング投与の臨床転帰への影響は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2018年3月11日号掲載の報告。30日MACE発生率をアトルバスタチンとプラセボで比較 研究グループは、2012年4月18日~2017年10月6日に、冠動脈造影に引き続き解剖学的に可能な場合はPCIを施行する予定のACS患者4,191例を、アトルバスタチン群(2,087例)とプラセボ群(2,104例)に無作為に割り付けた。アトルバスタチン群では、PCI施行前と施行24時間後にアトルバスタチン80mgを、プラセボ群では同様にプラセボを投与し、両群ともその後はアトルバスタチン40mg/日を30日間投与した。 主要評価項目は、30日MACE(全死因死亡・急性心筋梗塞・脳卒中・予定外の緊急再血行再建術の複合)発生率。30日アウトカムの最終フォローアップは2017年11月6日であった。ローディング投与の有効性は、無作為化された全例(intention-to-treat集団)を対象に、Cox回帰分析を用いハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で評価した。30日MACE発生率はローディング投与6.2%、プラセボ7.1%で有意差なし 無作為化を受けた4,191例(平均年齢61.8[SD 11.5]歳、女性1,085例[25.9%])のうち、4,163例(99.3%)が30日間のフォローアップを完遂した。また、2,710例(64.7%)がPCI、333例(8%)が冠動脈バイパス術、1,144例(27.3%)が内科的管理のみを受けた。 30日MACE発生率は、アトルバスタチン群6.2%(130例)、プラセボ群7.1%(149例)で、絶対差0.85%(95%CI:-0.70~2.41%)、HRは0.88(95%CI:0.69~1.11、p=0.27)であった。肝不全の症例は報告されなかったが、横紋筋融解症がプラセボ群でのみ3例(0.1%)報告された。 著者は研究の限界として、PCIが施行されなかったACS患者を組み込んでいること、最終的にACSの確定診断がつかなかった患者が約3%含まれていたことなどを挙げている。

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統合失調症に対するスタチン併用療法のメタ解析

 統合失調症の陰性症状に対するスタチン併用療法のベネフィットに関しては、相反する結果が報告されている。中国・南京医科大学のHong Shen氏らは、統合失調症の精神症状改善のために、スタチン併用療法が有用であるかについて検討を行った。Psychiatry research誌オンライン版2018年2月5日号の報告。 CENTRAL、PubMed、Embase、MEDLINEよりデータを検索した。検索に使用したキーワードは、スタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、lovastatin、mevastatin、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、cerivastatinおよび統合失調症、統合失調感情障害、精神病とした。包括基準は、統合失調症成人患者を対象とし、PANSSまたはSANSスコアにて評価を行った抗精神病薬とスタチンまたはプラセボのランダム化比較試験(RCT)とした。データの無い報告、同一研究による複数の報告は、除外対象とした。スタチン併用療法の有無にかかわらず、統合失調症患者の精神症状を比較するため、メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・6件のRCTより、339例(治療群:169例、プラセボ群:170例)が抽出された。・全体的な効果については、スタチン併用療法を実施した患者において、PANSSの陽性および陰性症状スコアの有意な低下が認められた。 著者らは「本メタ解析により、スタチン併用療法は、精神症状(陰性症状または陽性症状)を改善可能であることが初めて明らかにされた」としている。■関連記事慢性期統合失調症、陰性症状に有効な補助療法統合失調症への補助療法、その影響は:昭和大認知症にスタチンは有用か

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脳卒中再発予防に望ましいLDL-C値は? J-STARS事後解析

 脳卒中の再発を予防するために望ましいLDLコレステロール値を調べるために、J-STARS研究(Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke、脳血管疾患の再発に対するスタチンの予防効果に関する研究、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験)の事後解析が実施された。その結果、スタチン使用について調整後、無作為化後のLDLコレステロールが80~100mg/dLの群で、脳卒中および一過性虚血発作の複合リスクが低いことが示された。Stroke誌オンライン版2018年3月6日号に掲載。 本解析では、被験者(n=1,578)を無作為化後最終観察までのLDLコレステロールの平均値で20mg/dLごとにグループ分けした。ベースライン時LDLコレステロール、ベースライン時BMI、高血圧、糖尿病、スタチン使用について調整し、調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を各グループについて分析した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化後最終観察までのLDLコレステロールは、プラバスタチン群で104.1±19.3 mg/dL、対照群で126.1±20.6mg/dLであった。・脳卒中および一過性脳虚血発作、全血管イベントの調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが80~100mg/dLのグループで低かった(傾向のpはそれぞれ0.23、0.25)。・アテローム血栓性梗塞に対する調整HRは、ベースライン時LDLコレステロール値を調整後、スタチン使用により有意に減少した(HR:0.39、95%CI:0.19~0.83)。・アテローム血栓性梗塞、頭蓋内出血の調整HRは、無作為化後LDL-コレステロール値によるサブグループ間で類似していた(傾向のpはそれぞれ0.50、0.37)。・ラクナ梗塞の調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが100~120mg/dLのグループで低かった(HR:0.45、95%CI:0.20~0.99、傾向のp=0.41)。

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パンジェノタイプのDAA療法の登場と今後に残された課題(解説:中村郁夫氏)-825

 本論文は、遺伝子型1型および3型のHCVを有するC型慢性肝炎症例に対する、グレカプレビル・ピブレンタスビル併用療法の治療効果および安全性に関するランダム化・オープンラベル・多施設で行われた第III相試験の結果の報告である。合計1,208症例に対し、8週間および12週間投与が行われ、SVR12(治療終了後12週におけるHCV陰性化)の割合は、遺伝子型1型(ENDURANCE-1試験):8週投与群99.1%、12週投与群99.7%。遺伝子型3型:8週投与群/12週投与群とも95%と高率であった。 本論文で検討されたグレカプレビル・ピブレンタスビルの合剤は、本邦初の「IFNフリー・リバビリンフリー・パンジェノタイプ」のDirect-acting Antivirals(DAA)製剤として、昨年の11月にマヴィレット(アッヴィ合同会社)として薬価収載された。従来のDAA併用療法は、1種類の遺伝子型のHCVに対するものであったが、本治療は、いわゆる「パンジェノタイプ」:複数の遺伝子型のHCVに効果のある治療法である。さらに、治療期間が、慢性肝炎症例は8週間、肝硬変症例は12週間と従来のDAA製剤と比べて短縮された。ただし、併用禁忌薬として、アトルバスタチンが含まれている点には注意が必要である。 本邦において、第III相試験まで進んだDAA療法は残り1剤であるという状況、また、遺伝子型3型の症例が欧米と比較してごく少数であるという背景を勘案すると、本邦におけるHCVに対するDAA治療の開発は、いよいよ最終段階を迎えたと考えられる。しかし、今後に残された課題として、DAA療法不成功例に生じた高度の耐性変異に対する治療、また、非代償性肝硬変症例に対する治療の検討が必要である。

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低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究

 低用量スタチンを服用している日本人の糖尿病新規発症リスクはこれまで検討されていない。今回、秋田大学医学部附属病院薬剤部の加藤 正太郎氏らは、低用量スタチン服用患者を、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けて糖尿病新規発症リスクを評価した。その結果、高力価スタチン群では低力価スタチン群と比べ有意に発症リスクが高かった。さらに、ステロイドや免疫抑制薬との併用で発症リスクが上昇するため、注意が必要と指摘している。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2018年2月26日号に掲載。 本研究は、スタチン治療を開始した日本人患者2,554例の後ろ向きコホート研究である。同じスタチンの同じ用量を服用している患者のみ登録し、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けた。アウトカムはスタチン治療中の糖尿病新規発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・本コホートにおける糖尿病新規発症率は7.4%(n=190)であった。・カプランマイヤー生存曲線により、低力価スタチン服用患者に比べ高力価スタチン服用患者において糖尿病新規発症率が有意に高いことが示された(p<0.001、log-rank検定)。・Cox比例ハザード回帰分析により、糖尿病新規発症リスクを有意に増加させる因子として、ベースライン時の空腹時血糖、高力価スタチン使用、男性、Ca拮抗薬・免疫抑制薬・ステロイドとの併用が特定された。

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