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高リスク尿路上皮がんの術後補助療法、ニボルマブが有効/NEJM

 根治手術を受けた高リスクの筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法において、ニボルマブはプラセボと比較して、6ヵ月後の無病生存率が統計学的に有意に高く、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現率≧1%の患者集団でも無病生存(DFS)率が優れることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDean F. Bajorin氏らが実施した「CheckMate 274試験」で示された。NEJM誌2021年6月3日号掲載の報告。29ヵ国156施設の国際的な無作為化第III相試験 研究グループは、高リスク筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法におけるニボルマブの有用性を評価する目的で、二重盲検無作為化対照比較第III相試験を行った(Bristol Myers Squibb、Ono Pharmaceuticalの助成による)。2016年4月~2020年1月の期間に、日本を含む29ヵ国156施設で参加者の無作為化が行われた。 対象は、根治手術を受けた再発リスクの高い尿路上皮がん(膀胱、尿管、腎盂を原発とする)で、全身状態(ECOG PS)が0または1の患者であり、シスプラチンベースの術前補助化学療法の有無は問われなかった。被験者は、術後補助療法としてニボルマブ(240mg、静脈内投与)またはプラセボを2週ごとに投与する群に1対1の割合で割り付けられた。投与期間は最長1年間であった。 主要エンドポイントは、intention-to-treat(ITT)集団およびPD-L1発現率≧1%の集団におけるDFS期間(無作為化の日から、初回再発[尿路・尿路外の局所再発または遠隔再発]までの期間、あるいは死亡)であった。尿路外の無再発生存期間を副次エンドポイントとした。尿路外再発は、骨盤内の軟部組織の再発または大動脈分岐部下の骨盤内リンパ節に関連する再発とした。DFS期間が約2倍に延長、治療関連の肺臓炎死が2例 本試験には709例が登録され、ニボルマブ群に353例(平均年齢65.3歳[範囲30~92]、男性75.1%)、プラセボ群に356例(65.9歳[42~88]、77.2%)が割り付けられた。PD-L1発現率≧1%の患者は、ニボルマブ群が140例(39.7%)、プラセボ群は142例(39.9%)であり、術前補助化学療法を受けていた患者はそれぞれ153例(43.3%)および155例(43.5%)であった。 ITT集団における無病生存期間は、ニボルマブ群が20.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.5~27.6)、プラセボ群は10.8ヵ月(8.3~13.9)であった。6ヵ月時の無病生存率は、ニボルマブ群が74.9%と、プラセボ群の60.3%に比べ有意に高率であった(再発または死亡のハザード比[HR]:0.70、98.22%CI:0.55~0.90、p<0.001)。また、PD-L1発現率≧1%の集団の6ヵ月無病生存率は、ニボルマブ群が74.5%であり、プラセボ群の55.7%に比し有意に良好だった(HR:0.55、98.72%CI:0.35~0.85、p<0.001)。 ITT集団における尿路外の無再発生存期間中央値は、ニボルマブ群が22.9ヵ月(95%CI:19.2~33.4)、プラセボ群は13.7ヵ月(8.4~20.3)であった。6ヵ月時の尿路外無再発生存率は、ニボルマブ群が77.0%、プラセボ群は62.7%であった(尿路外の再発または死亡のHR:0.72、0.59~0.89)。また、PD-L1発現率≧1%の集団の6ヵ月時の尿路外の無再発生存率は、ニボルマブ群が75.3%、プラセボ群は56.7%だった(HR:0.55、95%CI:0.39~0.79)。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ニボルマブ群が17.9%、プラセボ群は7.2%で発現した。ニボルマブ群で最も頻度の高い有害事象は、そう痒(23.1%)、疲労(17.4%)、下痢(16.8%)であり、Grade3以上ではリパーゼ上昇(5.1%)、アミラーゼ上昇(3.7%)、下痢(0.9%)、大腸炎(0.9%)、肺臓炎(0.9%)の頻度が高かった。治療関連の肺臓炎による死亡が、ニボルマブ群で2例認められた。 著者は、「無再発生存期間のサブグループ解析では、膀胱がん患者は腎盂がんや尿管がん患者よりも、また術前補助化学療法を受けた患者は受けていない患者よりも効果量が大きかったが、試験デザインを考慮すれば、これらは仮説生成的な知見と考えるべきである」としている。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNCSLS1次治療、2年フォローアップ(CheckMate 9LA)/ASCO2021

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法の無作為化第III相CheckMate9LA試験の2年間のフォローアップデータが米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表された。結果、同併用による生存ベネフィットが引き続き観察されている。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は最低 24.4ヵ月であった。・NIVO+IPI+Chemo群は40%、Chemo群では47%が全身療法の後治療を受けていた。・OS中央値はNIVO+IPI+Chemo群の15.8ヵ月に対して、Chemo群11.0ヵ月と、NIVO+IPI+Chemo群で良好なOSを維持した (ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.61~0.86)、2年OS率はそれぞれ、38%と26%であった。・PFS中央値はNIVO+IPI+Chemo群6.7ヵ月に対し、Chemo群では 5.3ヵ月であった (HR:0.67、95%CI:0.56~0.79)。2年PFS率はそれぞれ、20%と8%であった。・ORRは、NIVO+IPI+Chemo群38.0%、Chemo群では25.4%であった。・奏効期間(DoR)中央値はNIVO+IPI+Chemo群13.0ヵ月、Chemo群5.6ヵ月、2年DoR率はそれぞれ、34%と12%であった。・PD-L1発現別にみると、PD-L<1%のOS HRは0.67、PFS HRは0.68、≧1%のOS HRは0.70、PFS HRは0.67、≧50%のOS HRは0.67、PFS HRは0.59と、いずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・有効性はまた、組織形を問わずNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)発現率は、NIVO+IPI+Chemo群92%、Chemo群88%。Grade3/4のTRAE発現率はそれぞれ、48%と38%であった。新たな安全性シグナルは確認されていない。・Post Hoc解析の結果、TRAEによって治療中止となったNIVO+IPI+Chemo群のNIVO+IPI+Chemo群の2年OS率は54%(全集団の2年OS率は38%)と、治療中止による生存への悪影響はみられなかった。 発表者のドイツ・Martin Reck氏は、この2年間のフォローアップ結果は、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法が、進行NSCLCに対する有効な1次治療であることを支持するものだと述べた。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に適応拡大/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2021年5月27日、ニボルマブ(商品名:オプジーボとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法について、切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 今回の承認は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)であらかじめ計画されていた中間解析の結果に基づいたもの。 同解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、主要評価項目である全生存期間の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 悪性胸膜中皮腫に対する標準治療としては、ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が行われているが、今回の承認により、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が悪性胸膜中皮腫患者にとって新たな治療選択肢になるものと期待されている。

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早期肺がん、アテゾリズマブの補助療法が主要評価項目を達成(IMpower010)/Genentech

 RocheグループのGenentechは、2021年3月21日、アテゾリズマブをベストサポーティブケア(BSC)と比較する第III相IMpower010試験の中間分析において、主要評価項目の無病生存期間(DFS)を達成したと発表。 IMpower010は、Stage IB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、外科的切除とシスプラチンベースの補助療法(最大4サイクル)後のアジュバントにおけるアテゾリズマブの有効性と安全性をBSCと比較した国際第III非盲検試験。無作為割り付けは1,005例が対象となった。主要評価項目は、PD-L1陽性のStage II~IIIA、無作為化集団のStage II~IIIA、ITT集団のStage II~IIIAにおける、治験担当医判定のDFS。主な副次評価項目は、全体集団、ITT集団のStage IB~IIIAの全生存期間など。 この試験で、アテゾリズマブは手術および化学療法後の補助療法として、Stage II~IIIAのNSCLCにおいて統計学的に有意なDFSの改善を示した。DFSの改善は、PD-L1陽性集団で顕著であった。 Genentechは、IMpower010試験の結果を、今後の医学学会で発表し、米国食品医薬品局や欧州医薬品庁など世界の保健当局に提出するとしている。

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StageIII非小細胞肺がんCRT、化学療法で予後は変わるか。10年間の追跡結果(WJTOG0105)/JAMA Oncol

 StageIIIの非小細胞肺がんの化学放射線療法(CRT)10年後の累積毒性発現と長期転帰を評価する多施設第III相無作為化試験WJTOG0105が行われ、その結果が国立がん研究センター東病院の善家 義貴氏らによりJAMA Oncology誌に発表された。非小細胞肺がん440例を無作為に割り付け、 CRTの長期転帰を比較・対象:切除不能なStageIII非小細胞肺がん患者・試験群: 毎週イリノテカン+カルボプラチン 6サイクル+胸部放射線療法(TRT)60Gy→イリノテカン+カルボプラチン 2サイクル(B群) 毎週パクリタキセル+カルボプラチン 6サイクル+TRT 60Gy→パクリタキセル+カルボプラチン 2サイクル(C群)・対照群:マイトマイシン+ビンデシン+シスプラチン 4サイクル+TRT 60Gy(A群)・評価項目:[主要評価項目]CRT後10年の生存率[副次評価項目]CRT開始90日以降の毒性 StageIII非小細胞肺がんのCRT10年後の累積毒性発現と長期転帰を評価した主な結果は以下のとおり。・2001年9月〜2005年9月に、440例の患者がA群(146例)、B群(147例)、C群(147例)に無作為に割り付けられた。・CRTを受けた非小細胞肺がん患者の追跡期間中央値は11.9年であった。・全生存期間中央値はA群20.5ヵ月、B群19.8ヵ月、C群22.0ヵ月、10年生存率はそれぞれ13.6%、7.5%、15.2%で、治療群間に有意差はなかった。・10年無増悪生存率はA群8.5%、B群6.5%、C群11.1%であった。・Garde3/4の後期毒性はA群で3.4%(心臓0.7%、肺2.7%)に発現。肺にのみ発現したGarde3/4の毒性はB群3.4%、C群4.1%であった。 この非小細胞肺がんCRT開始から10年間の追跡において、C群はA群と同様の有効性と安全性プロファイルを示した。

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FDA、ペムブロリズマブの食道がん1次治療を承認/Merck

 メルク社は、2021年3月23日、米国食品医薬品局(FDA)が、局所進行または転移のある食道または胃食道接合部(GEJ)がん治療に抗PD-1抗体ペムブロリズマブを承認したと発表。この承認は組織学的またはPD-L1発現状態に関係なくOSおよびPFSを改善した第III相KEYNOTE-590試験の結果に基づくもの。  KEYNOTE-590試験では、FU+シスプラチン群に比べ、ペムブロリズマブとFU+シスプラチン併用群では、OSリスクが27%(HR:0.73、95%CI:0.62〜0.86、p<0.0001)、PFSリスクが35%(HR:0.65 、95%CI:0.55〜0.76、p<0.0001)減少した。また、奏効率も、ペムブロリズマブとFU+シスプラチン併用群は45%、FU+シスプラチン群は29%とペムブロリズマブとFU+シスプラチン併用群で良好であった(p<0.0001)。

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非扁平上皮NSCLC、KEYNOTE-189のOSおよび日本人試験のアップデート/日本臨床腫瘍学会

 転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-189試験。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、関西医科大学の倉田 宝保氏が全集団の全生存期間(OS)と日本人サブセットのアップデートを発表した。・対象:再発・転移のある無治療のStageIV非扁平上皮NSCLC患者・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド)3週ごと4サイクル後、ペメトレキセド3週ごと最大35サイクル)(ペムブロリズマブ+Chemo群)・対照群:プラセボ+化学療法(ペムブロリズマブ併用群と同一用法・用量)(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性[探索的評価項目]PD-L1発現(TPS)別OS、PFS、ORR、2次治療後までを含めたPFS(PFS2)など 主な結果は以下のとおり。・全集団のOS追跡期間中央値は46.3ヵ月、日本人サブセットの追跡期間中央値は33.8ヵ月であった。・全集団のOSはペムブロリズマブ+Chemo群22.0ヵ月、Chemo群10.6ヵ月、3年OS率はペムブロリズマブ+Chemo群31.3%、Chemo群17.4%であった(HR:0.60、95%CI:0.50~0.72)。・全集団のPFSはペムブロリズマブ+Chemo群9.0ヵ月、Chemo群4.9ヵ月、3年PFS率はペムブロリズマブ+Chemo群11.8%、Chemo群1.3%であった(HR:0.50、95%CI:0.41~0.59)。・40例の日本人患者はペムブロリズマブ+Chemo群25例、Chemo群15例に無作為に割り付けられた。・日本人のOS中央値はペムブロリズマブ+Chemo群は未達、Chemo群25.9ヵ月であった(HR:0.44、95%CI:0.19〜1.04)。・日本人のPFS中央値はペムブロリズマブ+Chemo群17.4ヵ月、Chemo群は7.1ヵ月であった(HR:0.76、95%CI:0.37〜1.55)。・日本人のORRはペムブロリズマブ+Chemo群56.0%、Chemo群は33.3%であった。・全集団のGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)発現率はペンブロリズマブ+Chemo群52.1%、Chemo群42.1%、日本人集団のGrade3以上のTRAE発現率はペンブロリズマブ+Chemo群60.0%、Chemo群46.7%であった。

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ペムブロリズマブ+化学療法の食道がん1次治療、日本人の結果(KEYNOTE-590)/日本臨床腫瘍学会

 切除不能な局所進行または転移のある食道腺がん、食道扁平上皮がん、Siewert I型食道胃接合部腺がん患者に対する1次治療として化学療法とペムブロリズマブの併用療法と化学療法を比較する無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-590試験の日本人集団における結果を第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO VIrtual2021)で、埼玉県立がんセンターの原 浩樹氏が発表した。・対象:未治療の転移を有する食道腺がん・扁平上皮がん、食道胃接合部Siewert Type1腺がん患者(PS 0~1)・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン+5-FU)3週ごと最大35サイクル(ペムブロリズマブ+化学療法群、373例)・対照群:化学療法(同上)(化学療法群、376例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・日本人集団は141例で、ペムブロリズマブ+化学療法群74例、化学療法群67例に無作為に割付けられた。・日本人集団は全ITT集団と比べ、患者の年齢が高く(68.0歳 vs.63.0歳)、ECOG PS0が多く(71.6% vs.40.2%)、食道扁平上皮がんが多かった(89.4% vs.73.2%)。・日本人集団のOS中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群17.6ヵ月、化学療法群11.7ヵ月であった(HR:0.71、95% CI:0.47~1.09)。・日本人集団のPFS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群6.3ヵ月、化学療法群6.0ヵ月であった(HR:0.58、95% CI:0.40~0.84)。・日本人集団のORRはペムブロリズマブ+化学療法群56.8%、化学療法群は38.8%、DoR中央値はそれぞれ8.3ヵ月と6.1ヵ月であった。・日本人集団のGrade3以上の有害事象(AE)発現割合は、ペムブロリズマブ+化学療法群74.3%、化学療法群61.2%であった。日本人サブセットでITT集団より多くみられたAEは、悪心嘔吐、食欲不振、好中球減少、白血球減少、口内炎であった。

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悪性胸膜中皮腫の1次治療、ニボルマブ+イピリムマブがOS改善/Lancet

 未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の治療において、ニボルマブ+イピリムマブ療法は標準的化学療法と比較して、全生存(OS)期間を4ヵ月延長し、安全性プロファイルは同程度であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのPaul Baas氏らが行った「CheckMate 743試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月30日号で報告された。MPMの承認済みの全身化学療法レジメンは、生存に関する有益性は中等度であり、転帰は不良だという。ニボルマブ+イピリムマブ療法は、非小細胞肺がんの1次治療を含む他の腫瘍で臨床的有益性が示されている。日本を含む21ヵ国103施設が参加する無作為化第III相試験 本研究は、ニボルマブ+イピリムマブ療法はMPMのOSを改善するとの仮説の検証を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2016年11月~2018年4月の期間に、日本を含む21ヵ国103施設で患者登録が実施された(Bristol Myers Squibbの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の組織学的に確定された切除不能MPMで、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。 被験者は、ニボルマブ(3mg/kg、2週ごと、静脈内投与)+イピリムマブ(1mg/kg、6週ごと、静脈内投与)を投与する群(最長2年間)、またはプラチナ製剤(シスプラチン[75mg/m2、静脈内投与]またはカルボプラチン[AUC=5mg/mL/分、静脈内投与])+ペメトレキセド(500mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群(最大6サイクル)(化学療法群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目はOS期間(無作為化から全死因死亡の日まで)とした。副次評価項目は、無増悪生存(PFS)期間、客観的奏効率、奏効期間などであった。安全性の評価は、少なくとも1回の投与を受けた全患者で行った。PFS期間、客観的奏効率は同程度 605例が登録され、ニボルマブ+イピリムマブ群に303例、化学療法群には302例が割り付けられた。全体の年齢中央値は69歳(IQR:64~75)、467例(77%)が男性であった。また、456例(75%)が上皮型MPMだった。 事前に規定された中間解析(データベースロック日:2020年4月3日、フォローアップ期間中央値:29.7ヵ月[IQR:26.7~32.9])では、OS期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群が18.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.8~21.4)と、化学療法群の14.1ヵ月(12.4~16.2)と比較して有意に延長した(ハザード比[HR]:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.0020)。また、1年OS率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が68%(95%CI:62.3~72.8)、化学療法群は58%(51.7~63.2)であり、2年OS率はそれぞれ41%(35.1~46.5)および27%(21.9~32.4)だった。 シスプラチン(13.7ヵ月)とカルボプラチン(15.0ヵ月)で、OS期間中央値に差はみられなかった。また、OS期間のHR(化学療法群との比較)は、非上皮型(0.46、95%CI:0.31~0.68)が上皮型(0.86、0.69~1.08)よりも良好であったが、OS期間中央値(非上皮型18.1ヵ月vs.上皮型18.7ヵ月)には組織型の違いによる差はなかった。 PFS期間中央値は両群でほぼ同等であった(ニボルマブ+イピリムマブ群6.8ヵ月、化学療法群7.2ヵ月、HR:1.00、95%CI:0.82~1.21)が、2年PFS率はニボルマブ+イピリムマブ群で高かった(16% vs.7%)。 客観的奏効率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が40%、化学療法群は43%であり、ニボルマブ+イピリムマブ群で完全奏効(CR)が5例(2%)に認められた。病勢コントロール率(CR+部分奏効[PR]+安定[SD])は、ニボルマブ+イピリムマブ群が77%、化学療法群は85%で、奏効までの期間中央値はそれぞれ2.7ヵ月および2.5ヵ月であった。また、奏効期間中央値は、それぞれ11.0ヵ月および6.7ヵ月だった。 Grade3/4の有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群が30%(91/300例)、化学療法群は32%(91/284例)で報告された。治療関連死は、ニボルマブ+イピリムマブ群が3例(1%、肺臓炎、脳炎、心不全)、化学療法群は1例(<1%、骨髄抑制)で発現した。 著者は、「これらの知見は、未治療の切除不能MPMの治療における、画期的医薬品(first-in-class)とされるニボルマブ+イピリムマブ療法の使用を支持するものである」としている。これらの結果に基づき、このレジメンは2020年10月、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。

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なぜ・どうやって患者に禁煙をすすめるか?/日本肺癌学会

 11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では、「禁煙を通して肺がん撲滅をめざす」と題したシンポジウムが行われ、この中で岡山済生会総合病院 がん化学療法センター長の川井 治之氏が「呼吸器内科医はなぜ・どうやって患者に禁煙をすすめているのか」と題した講演を行った。 冒頭に川井氏は、患者に禁煙を薦める理由として 1)喫煙は多くの呼吸器疾患の原因や悪化因子となる 2)がん治療への悪影響がある 3)がん治療後の2次(原発)がんの発生要因となる という基本事項を確認した。 1)について、今年に入って注目されたトピックスとして、COVID-19と喫煙の関係を紹介し、最新の研究を踏まえると「喫煙者は非喫煙者と比較して約2倍、新型コロナ感染症で重症化しやすい」1)というデータを共有した。 2)について、手術においては術後合併症発生率・術後死亡率・再手術の発生率がいずれも上がること、抗がん剤治療においてはイリノテカン・エルロチニブの全身曝露量を低下させ効果を減弱させる、シスプラチンの作用によるアポトーシスを阻害して耐性をもたらす、放射線治療においては治療効果の低下、治療関連毒性の増加など、各治療において広範囲に及ぶ悪影響があることを紹介した。さらに、小細胞肺がんの放射線化学療法中に喫煙を継続した場合、5年生存率が5%低下する2)、喫煙が肺がんの脳転移リスクを上昇させる3)といった研究結果も紹介した。 3)の喫煙関連の2次がんのリスク増については、喫煙者は治療後の肺がん発症リスクが6~24倍になること4)、2次がん発症のリスクが76%増加すること5)を指摘した。さらに診断時、3年以内に禁煙していた場合、現在の喫煙者と比較して死亡リスクが11%減少するというデータ6)を紹介し、喫煙の有害性、禁煙の有効性を改めて訴えた。相手に合わせて言葉を変え、あらゆる機会に介入 続けて、実際に診療にあたってどのように患者に禁煙をすすめるのかという点について、自身の実践を踏まえて紹介した。 初診時は、カルテのバイタルサイン欄に喫煙歴のチェック欄を設け、診療時に医療者が喫煙について触れる機会をつくる試みを紹介。この際、過去に喫煙歴のある患者は「(現在は)喫煙していない」と回答しがちなので、過去の喫煙歴も必ず聞くとよい、とアドバイスした。  「検診の胸部異常陰影で受診したが、CTでは異常がなかった」というケースの診療時では、「肺がんでなくてよかったですね。でもこのままタバコを吸っていると6人に1人は肺がんになります。良い機会ですから禁煙しませんか?」と伝え、40歳以下の患者であれば「喫煙者は寿命が10歳短くなりますが、今禁煙すれば寿命に対する影響をほぼなしにできますよ」と相手に響く言葉を添えたうえで禁煙外来につなぐことを紹介した。 さらに、非専門医が禁煙をすすめる際の手引きとして日本肺癌学会が翻訳・公開するNCCNガイドラインを推奨、自身のブログ・SNSを使った禁煙についての情報発信も紹介し、一般向けにわかりやすく禁煙の大切さを伝える重要性を訴えた。■参考1)Patanavanich R , et al. Nicotine & tobacco research. 2020 ;24:22;1653-1656.2)Videtic GMM, et al. J Clin Oncol. 2003;21:1544-9.3)Wu SY, et al. Int J Clin Exp Med. 2020;03:2174)The Health Consequences of Smoking—50 Years of Progress: A Report of the Surgeon General5)Tabuchi T, et al. Ann Oncol. 2013;24:2699-27046)Tabuchi T, et al. Int J Cancer. 2017;140:1789-1795.

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ペムブロリズマブと化学療法の併用、進行・再発食道がん1次治療に国内承認申請/MSD

 MSDは、2020年11月30日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、化学療法(シスプラチン+5-フルオロウラシル)との併用療法において、根治切除不能な進行・再発の食道癌に対する1次治療としての製造販売承認事項一部変更を承認申請したと発表。 今回の製造販売承認事項一部変更承認申請は、局所進行または転移性食道がんおよび食道胃接合部(GEJ)がんの1次治療として、キイトルーダと化学療法(シスプラチン+5-フルオロウラシル)との併用療法をプラセボ+化学療法と比較した、第III相KEYNOTE-590試験の結果に基づくもの。この試験でペムブロリズマブ併用療法群は化学療法に比べ、有意な延長を認めている。

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オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCの2次治療のOS結果(AURA3最終)/Ann Oncol

 第3世代EGFR-TKIオシメルチニブについて検討した、AURA3試験の最終解析結果が報告された。同試験においてオシメルチニブは、既治療のEGFR T790M変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、プラチナ併用化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および奏効率を有意に改善することが示されていた。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのV A Papadimitrakopoulou氏らは、最終的な全生存(OS)期間について解析を行い、オシメルチニブ群とプラチナ+ペメトレキセド群に統計学的な有意差は認められなかったと発表した。ただし、示された結果について著者は、プラチナ+ペメトレキセド群からオシメルチニブ群へのクロスオーバーが高率であったことを反映している可能性があると指摘している。Annals Oncology誌2020年11月号掲載の報告。 AURA3試験の対象は、EGFR-TKIによる1次治療中に病勢進行したEGFR T790M変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC成人患者。被験者は、オシメルチニブ群またはプラチナ+ペメトレキセド群(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド、3週ごと最大6サイクル)に、2対1の割合で無作為に割り付けられ追跡を受けた。 プラチナ+ペメトレキセド群では、盲検化独立中央評価によって病勢進行が確認された場合は、オシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。OSおよび安全性が副次評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・279例がオシメルチニブ群、140例がプラチナ+ペメトレキセド群(治療を受けたのは136例)に割り付けられた。・データカットオフ(2019年3月15日)時点での死亡は、オシメルチニブ群188例(67%)、プラチナ+ペメトレキセド群93例(66%)であった。・OS中央値は、オシメルチニブ群26.8ヵ月、プラチナ+ペメトレキセド群22.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.67~1.12、p=0.277)。・24ヵ月および36ヵ月の推定生存率(オシメルチニブ群 vs.プラチナ+ペメトレキセド群)は、それぞれ55% vs.43%、37% vs.30%であった。・クロスオーバー調整後のOSのHRは0.54(95%CI:0.18~1.6)であった。・最初の後治療または死亡までの期間は、オシメルチニブ群で有意に延長し、臨床的に意義のある利点が示された(HR:0.21、95%CI:0.16~0.28、p<0.001)。・データカットオフ時点では、プラチナ+ペメトレキセド群の73%(99/136例)がオシメルチニブ群にクロスオーバーしており、そのうち67%(66/99例)が死亡した。・主な治療関連有害事象は、オシメルチニブ群では下痢(32%、Grade3以上は1%)および発疹(32%、Grade3以上は<1%)、プラチナ+ペメトレキセド群では悪心(47%、Grade3以上は3%)であった。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2週間化学療法の肺がん1次治療、アジア人の成績は?(CheckMate9LA)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ニボルマブ+イピリムマブへの2週間の限定化学療法の追加治療を評価する第III相非盲検無作為化試験CheckMate9LA試験。そのアジア人サググループの解析が、第61回日本肺癌学会学術集会において埼玉県がんセンターの酒井 洋氏より発表された。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価のPFS、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・アジア人のOS中央値はNIVO+IPI+Chemo群未達に対しChemo群13.3ヵ月であった(HR:0.33)。・BICR評価のPFSはNIVO+IPI+Chemo群8.4ヵ月に対しChemo群5.4ヵ月であった(HR:0.47、1年PFSは35%対12%)。・BICR評価のORRはNIVO+IPI+Chemo群57%に対しChemo群23%であった。・奏効期間はNIVO+IPI+Chemo群7.0ヵ月に対しChemo群4.4ヵ月であった。・アジア人集団の全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はNIVO+IPI+Chemo群100%、Chemo群97%、Grade3〜4のTRAEはそれぞれ57%と60%であった。・免疫関連有害事象は全集団に比べアジア人で多くみられたが、その大半はGrade1〜2であった。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に国内申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年10月27日、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法について、切除不能な進 行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。 今回の承認申請は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法をプラチナ製剤を含む標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)の中間解析の結果に基づいている。 本解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、化学療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれ までに認められているものと一貫していた。

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食道がん患者1次治療、ペムブロリズマブ+化学療法に期待(KEYNOTE-590)/ESMO2020

 国立がん研究センター中央病院の加藤 健氏は 、切除不能な局所進行・転移性食道がん・食道胃接合部がん患者に対する1次治療としてプラチナ化学療法と、化学療法とペムブロリズマブの併用療法を比較する無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-590試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。化学療法単独と比較してペムブロリズマブ併用が無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を統計学的に有意に改善したと報告した。・対象:未治療の転移を有する食道腺がん・扁平上皮がん、食道胃接合部Siewert Type1腺がん患者(PS 0~1)・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン+5-FU)3週ごと最大35サイクル(ペムブロリズマブ併用療法群、373例)・対照群:化学療法(同上)(化学療法単独群、376例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・CPS≧10の食道扁平上皮がんのOS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が13.9ヵ月、化学療法群が8.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.57、95%CI:0.43~0.75、p<0.0001)。・食道扁平上皮がん全体のOS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が12.6ヵ月、化学療法群が9.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.72、95%CI:0.60~0.88、p=0.0006)。・CPS≧10のOS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が13.5ヵ月、化学療法群が9.4 ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)。・全症例のOS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が12.4ヵ月、化学療法群が9.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.73、95%CI:0.62~0.86、p<0.0001)。・CPS≧10のPFS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が7.5ヵ月、化学療法群が5.5 ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.51、95%CI:0.41~0.65、p<0.0001)。・全症例のPFS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が6.3ヵ月、化学療法群が5.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.65、95%CI:0.55~0.76、p<0.0001)。・ORRはペムブロリズマブ併用療法群が45.0%、化学療法群が29.3%であった(p<0.0001)。・Grade3以上の治療関連有害事象(AE)発現率はペムブロリズマブ併用療法群が71.9%、化学療法群が67.6%、Grade3以上の免疫関連AE発現率はペムブロリズマブ併用療法群が7.0%、化学療法群が2.2%あった。 今回の結果を受けて加藤氏は「ペムブロリズマブと化学療法の併用療法は、切除不能な局所進行および転移を有する食道がん患者に対する1次治療での新たな標準治療とすべきである」と強調した。

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進行または転移のある尿路上皮がんに対するアベルマブ維持療法(解説:宮嶋哲氏)-1299

 アベルマブはヒトPD-L1に対する抗体であり、2017年にFDAはプラチナ製剤を含む化学療法施行中または施行後に病勢進行を認めた局所進行または転移のある尿路上皮がんの治療薬としてアベルマブの適応を承認している。わが国では、根治切除不能または転移のある腎細胞がんを適応症として分子標的薬であるアキシチニブと併用で適応が承認されている。 プラチナ製剤主体の抗がん化学療法は進行尿路上皮がんの標準的1次療法であるが、無増悪生存期間と全生存期間はがん細胞の化学療法耐性獲得によって、その効果は限定的である。本研究はJAVELIN Bladder 100試験の第III相試験で、切除不能な局所進行または転移のある尿路上皮がんを有し、1次化学療法(ゲムシタビンとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用を4~6サイクル)で病勢進行を認めなかった患者を、best supportive care(BSC)に加えてアベルマブによる維持療法を行う群と行わないBSCのみのコントロール群に無作為に割り付けたものである。主要評価項目は全生存率(OS)とし無作為化された全患者(集団全体)とPD-L1陽性腫瘍を有する患者群で評価を行い、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)と安全性である。 無作為化された全症例700例では、アベルマブ維持療法群はコントロール群と比較してOSは有意に延長した。1年OSはアベルマブ群で71.3%、対照群で58.4%であった(OS中央値21.4ヵ月vs.14.3ヵ月、HR:0.69、P=0.001)。PD-L1陽性群においてもアベルマブによりOSは有意に延長し、1年OSはアベルマブ群で79.1%、コントロール群で60.4%であった(HR:0.56、P<0.001)。PFS中央値は全体ではアベルマブ群3.7ヵ月、コントロール群2.0ヵ月であり(病勢進行または死亡のHR:0.62)、PD-L1陽性集団ではそれぞれ5.7ヵ月と2.1ヵ月であった(HR:0.56)。有害事象の発現率はアベルマブ群98.0%、コントロール群77.7%であり、Grade3以上の有害事象の発現率はそれぞれ47.4%と25.2%であった。以上、1次化学療法で病勢進行を認めなかった尿路上皮がん患者において、アベルマブによる維持療法はBSCのみのコントロール群と比較してOSは有意に延長した。  アベルマブはわが国において尿路上皮がんで適応承認は受けていないが、今後プラチナ製剤を含む化学療法で病勢進行を認めた尿路上皮がんへの2次治療薬としての適応承認は近いと考えている。本薬剤は2020年6月に局所進行または転移を有する尿路上皮癌に対する1次療法の維持療法薬として、適応承認を米国FDAから獲得した。 我が国における今後の動向が注目される。

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ESMO2020レポート 肝胆膵腫瘍

レポーター紹介はじめにESMO VIRTUAL CONGRESS 2020はASCO 2020 Virtualに引き続き、オンラインでの開催となった。開催会場を模したトップページ上から各会場へとアクセスでき、これまでの開催のように人々が集う様子には新型コロナウイルス感染症の収束への願いが現れていた。本稿では肝胆膵領域からいくつかの演題を紹介したい。巨大肝細胞がんに対するFOLFOXを用いたHAICの有効性が示されるHepatic arterial infusion chemotherapy (HAIC) with oxaliplatin, fluorouracil, and leucovorin (FOLFOX) versus transarterial chemoembolization (TACE) for unresectable hepatocellular carcinoma (HCC): A randomised phase III trial 【Presentation ID:981O】Intermediate stageの手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞がんに対して行われるTACEの有効性は、巨大な肝細胞がんに対しては病勢制御割合は50%未満、全生存期間は9~13ヵ月といまだ十分とは言えない。FOLFOXを用いたHAICの第II相試験での良好な抗腫瘍効果を受けて、巨大な切除不能肝細胞がん患者におけるFOLFOXを用いたHAICおよびTACEを比較する無作為化第III相試験の結果が報告された。最大径7cm以上で大血管への浸潤もしくは肝外転移のない切除不能肝細胞がんを有する、Child-Pugh分類A、ECOG PS0または1の患者が適格とされた。登録された患者はHAIC(オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、1日目にフルオロウラシルボーラス400mg/m2、およびフルオロウラシル注入2,400mg/m2を24時間、3週間ごとに繰り返し6サイクルまで投与)またはTACE(エピルビシン50mg、ロバプラチン50mg、リピオドールおよびポリビニルアルコール粒子)に1対1で割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効割合(ORR)および安全性が評価された。データカットオフは2020年4月でフォローアップは継続されている。HAIC群に159例、TACE群に156例が登録された。患者背景に大きな差はなく、HAIC群/TACE群のHBV陽性例が88.1/90.4%、AFP 400ng/mL以上は52.2/48.1%であった。最大腫瘍径の中央値はHAIC群9.9cm(範囲:7~21.3)、TACE群9.7cm(7~19.8)であり、腫瘍数が3個以下であった症例はHAIC群51.6%、TACE群47.7%であった。治療回数の中央値はHAIC群で4回(2~5)、TACE群で2回(1~3)であった。治療のクロスオーバーはTACE群で多く、HAIC群では後治療として切除が行われた症例が多かった(p=0.004)。RECIST ver.1.1によるHAIC群のORRは45.9%とTACE群の17.9%に比べ有意に高かった(p< 0.001)。Modified RECISTによる評価でも同様にHAIC群が有意に高い結果であった(48.4% vs.32.7%、p=0.004)。主要評価項目であるOS中央値はHAIC群23.1ヵ月(95%信頼区間:18.23~27.97)、TACE群16.07ヵ月(95%信頼区間:14.26~17.88)であり、HAIC群で有意な延長を認めた(HR=0.58、95%信頼区間:18.23~27.97、p<0.001)。PFS中央値は、HAIC群9.63ヵ月(95%信頼区間:7.4~11.86)、TACE群5.4ヵ月(95%信頼区間:3.82~6.98)であり、HAIC群で有意に延長した(HR=0.55、95%信頼区間:0.43~0.71、p<0.001)。Grade3以上の治療関連有害事象はHAIC群で19%、TACE群で30%とHAIC群で少なかった(p=0.03)。巨大な切除不能肝細胞がんを有する患者に対するFOLFOXを用いたHAICはTACEに比べて有効性および安全性ともに良好であった。これまで本邦では5-FUおよびシスプラチンを併用したHAICは外科的切除およびその他の局所治療の適応とならない肝細胞がんを対象としてソラフェニブへの上乗せ効果を第III相試験で示すことができなかったことなどを含めて、標準治療とされてこなかった。しかし、今回のような巨大肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告、および門脈腫瘍栓を有する肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告などが続いており、今後の開発に注目していきたい。転移を有する膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が検討されるThe Canadian Cancer Trials Group PA.7 trial: Results of a randomized phase II study of gemcitabine (GEM) and nab-paclitaxel (Nab-P) vs. GEM, Nab-P, durvalumab (D) and tremelimumab (T) as first line therapy in metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma (mPDAC)【Presentation ID:LBA65】ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用療法(GnP)は転移を有する膵がんに対する標準的な1次治療として確立されている。一方で、DNAミスマッチ修復機構の欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を呈する場合を除き膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は限られたものとされるが、線維芽細胞を含めた腫瘍環境因子による免疫チェックポイント阻害薬の耐性はゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用により克服されるとの報告がある。これらを受け、抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(D)および抗CTLA-4抗体であるtremelimumab(T)をGnP療法に上乗せする4剤併用療法は、11例のsafety run-inコホートでの安全性が確認されたうえで、その有効性がランダム化第II相試験で検討された。試験はカナダ全域より28施設が参加し行われた。全身状態の保たれた未治療の転移のある膵管腺がんを有する患者が適格とされ、GnP群(ゲムシタビン、nab-パクリタキセルそれぞれ1,000mg/m2、125mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与、28日を1サイクル)または4剤併用群(GnP療法に加えてD 1,500mgおよびT 75mgを1日目に投与)の2群に2対1の割合でランダム割り付けされた。ECOG PS、術後補助化学療法歴の有無により層別化が行われた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性、ORRが設定された。OSの中央値をGnP群8.5ヵ月に対して4剤併用群13.1ヵ月(HR=0.65)、両側αエラー0.1、統計学的検出力0.8として150イベントが必要であると算出された。データカットオフは2020年3月15日とされた。4剤併用群に119例、GnP群に61例が割り付けられ、患者背景は両群に差はなかった。ECOG PS0/1は4剤併用群で22.7/77.3%、GnP群で23/77%、術後補助化学療法歴は4剤併用群で10.1%、GnP群で11.5%が有しており、アジア人が4剤併用群に8.4%、GnP群に9.8%含まれる集団であった。主要評価項目であるOSの中央値は4剤併用群9.8ヵ月(90%信頼区間:7.2~11.2)、GnP群8.8ヵ月(90%信頼区間:8.3~12.2)であり4剤併用群の優越性は示されなかった(層別HR=0.94、90%信頼区間:0.71~1.25、p=0.72)。PFSの中央値は4剤併用群5.5ヵ月(90%信頼区間:3.8~5.7)、GnP群5.4ヵ月(90%信頼区間:3.6~6.6)であった(層別HR=0.98、90%信頼区間:0.75~1.29、p=0.91)。ORRは4剤併用群30.3%、GnP群23.0%(オッズ比1.49、90%信頼区間:0.81~2.72、p=0.28)であり、PFS、ORRいずれも両群に有意な差はなかった。治療期間中のGrade3以上の有害事象は両群に差はなく4剤併用群で84%、GnP群で76%に認められ、倦怠感、血栓塞栓イベント、敗血症などが多かった。治療期間中のGrade3以上の検査値異常はおおむね同等であったが、リンパ球減少が4剤併用群で38%、GnP群で20%と4剤併用群で有意に高かった(p=0.02)。GnP療法へのデュルバルマブおよびtremelimumabの上乗せはOS、PFS、ORRいずれにおいても有意に改善することができなかった。現在cfDNAの網羅的遺伝子解析を用いて免疫学的観点からの有効性の探索が行われている。A multi-cohort phase II study of durvalumab plus tremelimumab for the treatment of patients (pts) with advanced neuroendocrine neoplasms (NENs) of gastroenteropancreatic or lung origin: The DUNE trial (GETNE 1601)【Presentation ID:1157O】TMB(tumor mutational burden)、PD-L1蛋白発現、およびリンパ球浸潤がいずれも低い、いわゆる「cold」な腫瘍である神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害の意義は限られたものである。しかしながら昨今、免疫チェックポイント阻害薬の併用がNENに対して良好な抗腫瘍効果を報告しており、今回抗PD-L1抗体であるデュルバルマブと抗CTLA-4抗体であるtremelimumabの併用療法がマルチコホート第II相試験で検討された。標準治療後に増悪した消化管、膵または肺を原発とする進行NENを有する患者が適格とされ、C1:ソマトスタチンアナログ(SSA)および分子標的薬または化学療法の治療歴を有する定型/非定型肺カルチノイド、C2:SSAおよび分子標的薬もしくは放射性核種療法の治療歴を有するGrade1/2消化管NEN、C3:化学療法、SSA、分子標的薬のうち2~4の治療歴を有するGrade1/2膵NENおよびC4:白金製剤を含む化学療法の治療歴を有するGrade3消化管および膵NENの4つのコホートに登録された。登録された患者はデュルバルマブ1,500mgおよびtremelimumab 75mgを4週ごとに4サイクルまで投与を受けた後、デュルバルマブ単剤療法を9サイクルまで継続して投与された。主要評価項目はC1からC3ではRECIST ver.1.1による9ヵ月時点の臨床的有効割合とされ、C4では9ヵ月時点の生存割合とされた。副次評価項目として安全性、PFS、OS、ORRおよび奏効期間(duration of response:DOR)が評価された。C1からC3では臨床的有効割合の閾値を30%、期待値を50%、C4では生存割合の閾値を13%、期待値を23%とし、片側αエラーを0.05、統計学的検出力を0.8として仮説検定に必要な症例数をそれぞれ28例および30例に設定された。C1/C2/C3/C4にそれぞれ27/31/32/33例が登録され、患者背景は以下のようであった。画像を拡大するC1からC3では主要評価項目である9ヵ月時点の臨床的有効割合はC1/C2/C3で7.4/32.3/25%であった。ORRはC1/C2/C3で0/0/6.9%(RECIST ver.1.1)および7.4/0/6.3%(irRECIST)であった。PFSはC1/C2/C3で5.3ヵ月(95%信頼区間:4.52~6.06)/8.0ヵ月(95%信頼区間:4.92~11.15)/8.1ヵ月(95%信頼区間:3.80~12.46)であった。C4では主要評価項目である9ヵ月時点の生存割合は36.1%(95%信頼区間:22.9~57)であった。ORRは7.2%(RECIST ver.1.1)および9.1%(irRECIST)であった。PFSは2.5ヵ月(95%信頼区間:21.5~2.75)であった。すべてのコホートにおける有害事象は倦怠感(43.1%)、下痢(31.7%)、掻痒(23.6%)などであった。進行消化管、膵および肺原発NETに対するデュルバルマブおよびtremelimumabの併用療法の抗腫瘍効果は十分なものではなかった。WHO grade3のNENに対する併用療法は事前に設定した統計学的設定を満たす結果であり、さらなる検討に資するものであった。これまで膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍はいずれもcold tumorとされ、免疫チェックポイント阻害薬の有効性は十分に示されていない。耐性克服のひとつの方向性として併用療法に大きな期待が寄せられていたが、今回の結果もまた厳しいものであった。免疫チェックポイント阻害薬の進行中のバイオマーカーの検討の結果が待たれるとともに、その他の薬剤との併用療法の開発などにも期待し、この領域における免疫療法の開発が継続していくことに期待したい。1次治療中にも転移を有する膵がん患者のQOLは損なわれているThe QOLIXANE trial - Real life QoL and efficacy data in 1st line pancreatic cancer from the prospective platform for outcome, quality of life, and translational research on pancreatic cancer (PARAGON) registry【Presentation ID:1525O】転移を有する膵がんは病勢が早く予後は不良である。GnP療法(ゲムシタビン+nab-パクリタキセル)はMPACT試験などの結果により転移を有する膵がんに対する1次治療として確立されているが、これを受ける患者のQOLに関する報告はいまだなかった。本研究は独95施設が参加する多施設共同前向き観察研究として行われ、GnP療法を受ける転移を有する膵がんが対象とされた。主要評価項目はITT集団における3ヵ月時点でのEORTC QLQ-C30のQoL/Global Health Status(GHS、全般的健康)が維持された患者の割合とされた。ベースラインと比較してスコアの変化が10ポイント未満であった場合に「QoL/GHS Scoreは維持された」と定義された。600人が登録され、患者背景は年齢の平均は68.7歳、男性/女性が58.2/41.8%、ECOG PS 0/1/2/3が32.0/48.7/12.3/1.5%、進行/再発は85.1/13.7%、膵頭部/体部/尾部は48.7/18.2/19.2%であった。GnP療法の投与サイクル数中央値(範囲)は4.0サイクル(0~12)で、45.7%で用量調整が行われており、後治療移行割合は48.5%であった。無増悪生存期間中央値は5.85ヵ月(95%信頼区間:5.23~6.25ヵ月)、全生存期間中央値は8.91ヵ月(95%信頼区間:7.89~10.19ヵ月)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は貧血3.9%、好中球減少症5.1%、白血球減少4.3%などで、22例(3.8%)の治療関連死亡が報告された。EORTC QLQ-C30はベースラインでは588例(98%)、3ヵ月時点、293例(48.8%)で評価が可能であった。主要評価項目である3ヵ月時点でQoL/GHS Scoreが維持された患者の割合は61%であった。QoL/GHS Scoreが維持された期間の中央値は4.68ヵ月(95%信頼区間:4.04~5.59ヵ月)であった。単変量解析ではその他のサブスケールと同様にベースラインのQoL/GHS Scoreは生存に有意に寄与した(HR=0.86、p<0.0001)。多変量解析ではEORTC QLQ-C30の各サブスケールのうち、機能スケールでは身体機能(HR=0.86、0.82~0.96、p=0.004)、症状スケールでは悪心・嘔吐(HR=1.06、1.01~1.13、p=0.33)がそれぞれ生存に有意に寄与するものであった。これまでゲムシタビン単剤療法、mFOLFIRINOX療法およびオラパリブなどの第III相試験におけるQOLに関する報告はされていたものの、GnP療法を受ける転移を有する膵がん患者のQOLの情報は不足していた。今回はリアルワールドデータとしてGnP療法を受ける患者のQOLに関する検討が報告された。実臨床でも実感することであるかもしれないが、GnP療法を継続できている患者においても病勢増悪より先にQOLが低下している。転移を有する膵がんに対して、本邦でも今年ナノリポソーム型イリノテカンが承認されるなど治療の選択肢は着実に広がっている。治療をつなぐためにも、このような検討がさらに進んでいくことに期待したい。おわりに今回紹介しきれなかったが、胆道がんにおけるmFOLFIRINOX療法の有効性の報告や、欧州らしく免疫チェックポイント阻害薬以外にも多くの神経内分泌腫瘍に関する演題が多く報告されていた。ASCOに引き続くオンライン開催であったが、世界の最新のエビデンスに日本にいながらにして触れることができるなどオンラインだからこそのメリットもある。新型コロナウイルス感染症の早い収束を願うとともに、がん克服に向けた努力がさらに加速することに期待したい。

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FDA、悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ/イピリムマブの1次治療を承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年10月3日、切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の成人患者の1次治療に、ニボルマブとイピリムマブの併用を承認した。適応症はニボルマブ360mg 3週間ごとイピリムマブ1mg/kg 6週間ごと投与。 今回の承認は、切除不能MPM患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用と、シスプラチンまたはカルボプラチンとペメトレキセドの標準併用化学療法を評価した無作為化非盲検試験第III相CheckMate743試験の中間解析の結果に基づくもの。 世界肺癌学会(WCLC2020)で発表された結果によると、ニボルマブ・イピリムマブの全生存期間(OS)の中央値18.1ヵ月に対し、化学療法は14.1ヵ月であった(HR:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.002)。 盲検化独立中央評価委員会(BICR)によるPFS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ6.8ヵ月に対し、化学療法で7.2ヵ月であった(HR、1.00; 95%CI、0.82-1.21)。2年PFSは、ニボルマブ・イピリムマブ16%に対し、化学療法7%であった。

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尿路上皮がんに対するペムブロリズマブ+化学療法の結果(KEYNOTE-361)/ESMO2020

 進行尿路上皮がんの1次治療として、ペムブロリズマブとプラチナ系化学療法薬の併用投与は、化学療法のみに比べ、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の統計学的に有意な延長を示さなかったことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、米国・ミシガン大学のAjjai Alva氏から発表された。 このKEYNOTE-361試験は、オープンラベル第III相のグローバル試験であり、症例はペムブロリズマブ+化学療法群(Pem+CT群)、ペムブロリズマブ単独群(Pem群)、化学療法群(CT群)の3群に割り付けられた。・対象:局所進行または転移のある尿路上皮がん患者で、PS0~2、進行病変に対する全身療法が行われていない1,010例・試験群:[Pem+CT群]ペムブロリズマブ200mgを3週ごと化学療法薬を最長6サイクルまで投与し、その後、維持治療としてペムブロリズマブ200mgを3週ごと最長29サイクル[Pem群]ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最長35サイクル・対照群:CT群はゲムシタビン(1,000mg/m2)と、シスプラチン(70mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5)を主治医が選択して投与した。化学療法薬は最長6サイクル・評価項目:[主要評価項目]盲検下中央判定によるPFSおよびOS[副次評価項目]盲検下中央判定による奏効率、病勢制御率、奏効期間、および安全性・統計学的設計:全集団(ITT)におけるPem+CT群対CT群のPFSとOSの優越性を検証。優越性が示された場合、PD-L1陽性(CPS≧10)集団でのPem群対CT群のOSの非劣性、次にOS優越性を検証 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値は31.7ヵ月であった。・ITTにおける盲検下中央判定のPFS中央値は、Pem+CT群で8.3ヵ月、CT群で7.1ヵ月、HR0.78(95%CI:0.65~0.93)、p=0.0033であった。これは予め設定されたp値の閾値0.0019を達成できず、統計学的な有意差は示されなかった。・ITTでのOS中央値は、Pem+CT群17.0ヵ月、CT群14.3ヵ月で、HR0.86(95%CI:0.72~1.02)、p=0.0407であった。これも予め設定されたp値の閾値0.0142を達成できず、統計学的な有意差は示されなかった。12ヵ月OS率は61.8%と56.0%だった。・CPS≧10の集団を対象とした探索的解析でのOS中央値は、Pem群16.1ヵ月、CT群15.2ヵ月で、HR1.01(95%CI:0.77~1.32)であった。・抗PD-1/PD-L1抗体による後治療を受けた患者はそれぞれPem+CT群6.6%、Pem群4.6%、CT群48.0%であった。・奏効率はPem+CT群54.7%、Pem群30.3%、CT群44.9%であった。・奏効期間中央値はそれぞれ8.5ヵ月、28.2ヵ月、6.2ヵ月だった。・Grade3~5の有害事象は、Pem+CT群87.4%、Pem群62.9%、CT群81.9%であった。有害事象による死亡はそれぞれ9.2%、8.6%、2.6%だった。有害事象による投薬中止は30.9%、15.9%、18.1%であった。

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進行尿路上皮がんの維持療法にアベルマブが有効(JAVELIN Bladder 100)/NEJM

 局所進行または転移のある尿路上皮がんへの1次化学療法の維持療法において、アベルマブ+支持療法(BSC)はBSCのみの場合と比較し、全生存(OS)を有意に延長することが明らかにされた。英国・Queen Mary University of LondonのThomas Powles氏らが、進行尿路上皮がん患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相試験「JAVELIN Bladder 100試験」の結果を報告した。プラチナ併用化学療法は進行尿路上皮がんに対する標準的な1次治療であるが、多くの場合、化学療法耐性のため無増悪生存(PFS)やOSは限られていた。NEJM誌2020年9月24日号掲載の報告。1次化学療法後の進行尿路上皮がん患者700例でアベルマブ+BSC vs.BSC 研究グループは、2016年5月11日~2019年6月4日の期間に、29ヵ国197施設で被験者を募り試験を行った。 対象は、1次化学療法(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチンの4~6サイクル)後に病勢進行が認められなかった、切除不能の局所進行または転移がある尿路上皮がん患者700例。維持療法としてアベルマブ10mg/kgを2週間ごと+BSCを行うアベルマブ群とBSCのみの対照群のいずれかに無作為に割り付けた。 主要評価項目はOSで、無作為化された全患者集団およびPD-L1陽性集団にてそれぞれ評価した。副次評価項目はPFSと安全性であった。アベルマブ+BSCでOS期間が有意に延長 データカットオフ2019年10月21日時点で、全患者集団においてOSは、対照群と比較してアベルマブ群で有意に延長した(OS中央値:14.3ヵ月vs.21.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.86、p=0.001)。1年OS率は、アベルマブ群71.3%、対照群58.4%であった。 PD-L1陽性患者においても、アベルマブ群でOSの有意な延長が認められ(HR:0.56、95%CI:0.40~0.79、p<0.001)、1年OS率はアベルマブ群79.1%、対照群60.4%であった。 PFS期間中央値は、全患者集団においてアベルマブ群3.7ヵ月、対照群2.0ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.52~0.75)、PD-L1陽性患者においてそれぞれ5.7ヵ月、2.1ヵ月であった(0.56、0.43~0.73)。 有害事象の発現率はアベルマブ群98.0%、対照群77.7%、Grade3以上の有害事象の発現率はそれぞれ47.4%、25.2%であった。

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