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FDA、ペムブロリズマブの食道がん1次治療を承認/Merck

 メルク社は、2021年3月23日、米国食品医薬品局(FDA)が、局所進行または転移のある食道または胃食道接合部(GEJ)がん治療に抗PD-1抗体ペムブロリズマブを承認したと発表。この承認は組織学的またはPD-L1発現状態に関係なくOSおよびPFSを改善した第III相KEYNOTE-590試験の結果に基づくもの。  KEYNOTE-590試験では、FU+シスプラチン群に比べ、ペムブロリズマブとFU+シスプラチン併用群では、OSリスクが27%(HR:0.73、95%CI:0.62〜0.86、p<0.0001)、PFSリスクが35%(HR:0.65 、95%CI:0.55〜0.76、p<0.0001)減少した。また、奏効率も、ペムブロリズマブとFU+シスプラチン併用群は45%、FU+シスプラチン群は29%とペムブロリズマブとFU+シスプラチン併用群で良好であった(p<0.0001)。

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非扁平上皮NSCLC、KEYNOTE-189のOSおよび日本人試験のアップデート/日本臨床腫瘍学会

 転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-189試験。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、関西医科大学の倉田 宝保氏が全集団の全生存期間(OS)と日本人サブセットのアップデートを発表した。・対象:再発・転移のある無治療のStageIV非扁平上皮NSCLC患者・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド)3週ごと4サイクル後、ペメトレキセド3週ごと最大35サイクル)(ペムブロリズマブ+Chemo群)・対照群:プラセボ+化学療法(ペムブロリズマブ併用群と同一用法・用量)(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性[探索的評価項目]PD-L1発現(TPS)別OS、PFS、ORR、2次治療後までを含めたPFS(PFS2)など 主な結果は以下のとおり。・全集団のOS追跡期間中央値は46.3ヵ月、日本人サブセットの追跡期間中央値は33.8ヵ月であった。・全集団のOSはペムブロリズマブ+Chemo群22.0ヵ月、Chemo群10.6ヵ月、3年OS率はペムブロリズマブ+Chemo群31.3%、Chemo群17.4%であった(HR:0.60、95%CI:0.50~0.72)。・全集団のPFSはペムブロリズマブ+Chemo群9.0ヵ月、Chemo群4.9ヵ月、3年PFS率はペムブロリズマブ+Chemo群11.8%、Chemo群1.3%であった(HR:0.50、95%CI:0.41~0.59)。・40例の日本人患者はペムブロリズマブ+Chemo群25例、Chemo群15例に無作為に割り付けられた。・日本人のOS中央値はペムブロリズマブ+Chemo群は未達、Chemo群25.9ヵ月であった(HR:0.44、95%CI:0.19〜1.04)。・日本人のPFS中央値はペムブロリズマブ+Chemo群17.4ヵ月、Chemo群は7.1ヵ月であった(HR:0.76、95%CI:0.37〜1.55)。・日本人のORRはペムブロリズマブ+Chemo群56.0%、Chemo群は33.3%であった。・全集団のGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)発現率はペンブロリズマブ+Chemo群52.1%、Chemo群42.1%、日本人集団のGrade3以上のTRAE発現率はペンブロリズマブ+Chemo群60.0%、Chemo群46.7%であった。

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ペムブロリズマブ+化学療法の食道がん1次治療、日本人の結果(KEYNOTE-590)/日本臨床腫瘍学会

 切除不能な局所進行または転移のある食道腺がん、食道扁平上皮がん、Siewert I型食道胃接合部腺がん患者に対する1次治療として化学療法とペムブロリズマブの併用療法と化学療法を比較する無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-590試験の日本人集団における結果を第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO VIrtual2021)で、埼玉県立がんセンターの原 浩樹氏が発表した。・対象:未治療の転移を有する食道腺がん・扁平上皮がん、食道胃接合部Siewert Type1腺がん患者(PS 0~1)・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン+5-FU)3週ごと最大35サイクル(ペムブロリズマブ+化学療法群、373例)・対照群:化学療法(同上)(化学療法群、376例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・日本人集団は141例で、ペムブロリズマブ+化学療法群74例、化学療法群67例に無作為に割付けられた。・日本人集団は全ITT集団と比べ、患者の年齢が高く(68.0歳 vs.63.0歳)、ECOG PS0が多く(71.6% vs.40.2%)、食道扁平上皮がんが多かった(89.4% vs.73.2%)。・日本人集団のOS中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群17.6ヵ月、化学療法群11.7ヵ月であった(HR:0.71、95% CI:0.47~1.09)。・日本人集団のPFS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群6.3ヵ月、化学療法群6.0ヵ月であった(HR:0.58、95% CI:0.40~0.84)。・日本人集団のORRはペムブロリズマブ+化学療法群56.8%、化学療法群は38.8%、DoR中央値はそれぞれ8.3ヵ月と6.1ヵ月であった。・日本人集団のGrade3以上の有害事象(AE)発現割合は、ペムブロリズマブ+化学療法群74.3%、化学療法群61.2%であった。日本人サブセットでITT集団より多くみられたAEは、悪心嘔吐、食欲不振、好中球減少、白血球減少、口内炎であった。

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悪性胸膜中皮腫の1次治療、ニボルマブ+イピリムマブがOS改善/Lancet

 未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の治療において、ニボルマブ+イピリムマブ療法は標準的化学療法と比較して、全生存(OS)期間を4ヵ月延長し、安全性プロファイルは同程度であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのPaul Baas氏らが行った「CheckMate 743試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月30日号で報告された。MPMの承認済みの全身化学療法レジメンは、生存に関する有益性は中等度であり、転帰は不良だという。ニボルマブ+イピリムマブ療法は、非小細胞肺がんの1次治療を含む他の腫瘍で臨床的有益性が示されている。日本を含む21ヵ国103施設が参加する無作為化第III相試験 本研究は、ニボルマブ+イピリムマブ療法はMPMのOSを改善するとの仮説の検証を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2016年11月~2018年4月の期間に、日本を含む21ヵ国103施設で患者登録が実施された(Bristol Myers Squibbの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の組織学的に確定された切除不能MPMで、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。 被験者は、ニボルマブ(3mg/kg、2週ごと、静脈内投与)+イピリムマブ(1mg/kg、6週ごと、静脈内投与)を投与する群(最長2年間)、またはプラチナ製剤(シスプラチン[75mg/m2、静脈内投与]またはカルボプラチン[AUC=5mg/mL/分、静脈内投与])+ペメトレキセド(500mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群(最大6サイクル)(化学療法群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目はOS期間(無作為化から全死因死亡の日まで)とした。副次評価項目は、無増悪生存(PFS)期間、客観的奏効率、奏効期間などであった。安全性の評価は、少なくとも1回の投与を受けた全患者で行った。PFS期間、客観的奏効率は同程度 605例が登録され、ニボルマブ+イピリムマブ群に303例、化学療法群には302例が割り付けられた。全体の年齢中央値は69歳(IQR:64~75)、467例(77%)が男性であった。また、456例(75%)が上皮型MPMだった。 事前に規定された中間解析(データベースロック日:2020年4月3日、フォローアップ期間中央値:29.7ヵ月[IQR:26.7~32.9])では、OS期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群が18.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.8~21.4)と、化学療法群の14.1ヵ月(12.4~16.2)と比較して有意に延長した(ハザード比[HR]:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.0020)。また、1年OS率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が68%(95%CI:62.3~72.8)、化学療法群は58%(51.7~63.2)であり、2年OS率はそれぞれ41%(35.1~46.5)および27%(21.9~32.4)だった。 シスプラチン(13.7ヵ月)とカルボプラチン(15.0ヵ月)で、OS期間中央値に差はみられなかった。また、OS期間のHR(化学療法群との比較)は、非上皮型(0.46、95%CI:0.31~0.68)が上皮型(0.86、0.69~1.08)よりも良好であったが、OS期間中央値(非上皮型18.1ヵ月vs.上皮型18.7ヵ月)には組織型の違いによる差はなかった。 PFS期間中央値は両群でほぼ同等であった(ニボルマブ+イピリムマブ群6.8ヵ月、化学療法群7.2ヵ月、HR:1.00、95%CI:0.82~1.21)が、2年PFS率はニボルマブ+イピリムマブ群で高かった(16% vs.7%)。 客観的奏効率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が40%、化学療法群は43%であり、ニボルマブ+イピリムマブ群で完全奏効(CR)が5例(2%)に認められた。病勢コントロール率(CR+部分奏効[PR]+安定[SD])は、ニボルマブ+イピリムマブ群が77%、化学療法群は85%で、奏効までの期間中央値はそれぞれ2.7ヵ月および2.5ヵ月であった。また、奏効期間中央値は、それぞれ11.0ヵ月および6.7ヵ月だった。 Grade3/4の有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群が30%(91/300例)、化学療法群は32%(91/284例)で報告された。治療関連死は、ニボルマブ+イピリムマブ群が3例(1%、肺臓炎、脳炎、心不全)、化学療法群は1例(<1%、骨髄抑制)で発現した。 著者は、「これらの知見は、未治療の切除不能MPMの治療における、画期的医薬品(first-in-class)とされるニボルマブ+イピリムマブ療法の使用を支持するものである」としている。これらの結果に基づき、このレジメンは2020年10月、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。

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なぜ・どうやって患者に禁煙をすすめるか?/日本肺癌学会

 11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では、「禁煙を通して肺がん撲滅をめざす」と題したシンポジウムが行われ、この中で岡山済生会総合病院 がん化学療法センター長の川井 治之氏が「呼吸器内科医はなぜ・どうやって患者に禁煙をすすめているのか」と題した講演を行った。 冒頭に川井氏は、患者に禁煙を薦める理由として 1)喫煙は多くの呼吸器疾患の原因や悪化因子となる 2)がん治療への悪影響がある 3)がん治療後の2次(原発)がんの発生要因となる という基本事項を確認した。 1)について、今年に入って注目されたトピックスとして、COVID-19と喫煙の関係を紹介し、最新の研究を踏まえると「喫煙者は非喫煙者と比較して約2倍、新型コロナ感染症で重症化しやすい」1)というデータを共有した。 2)について、手術においては術後合併症発生率・術後死亡率・再手術の発生率がいずれも上がること、抗がん剤治療においてはイリノテカン・エルロチニブの全身曝露量を低下させ効果を減弱させる、シスプラチンの作用によるアポトーシスを阻害して耐性をもたらす、放射線治療においては治療効果の低下、治療関連毒性の増加など、各治療において広範囲に及ぶ悪影響があることを紹介した。さらに、小細胞肺がんの放射線化学療法中に喫煙を継続した場合、5年生存率が5%低下する2)、喫煙が肺がんの脳転移リスクを上昇させる3)といった研究結果も紹介した。 3)の喫煙関連の2次がんのリスク増については、喫煙者は治療後の肺がん発症リスクが6~24倍になること4)、2次がん発症のリスクが76%増加すること5)を指摘した。さらに診断時、3年以内に禁煙していた場合、現在の喫煙者と比較して死亡リスクが11%減少するというデータ6)を紹介し、喫煙の有害性、禁煙の有効性を改めて訴えた。相手に合わせて言葉を変え、あらゆる機会に介入 続けて、実際に診療にあたってどのように患者に禁煙をすすめるのかという点について、自身の実践を踏まえて紹介した。 初診時は、カルテのバイタルサイン欄に喫煙歴のチェック欄を設け、診療時に医療者が喫煙について触れる機会をつくる試みを紹介。この際、過去に喫煙歴のある患者は「(現在は)喫煙していない」と回答しがちなので、過去の喫煙歴も必ず聞くとよい、とアドバイスした。  「検診の胸部異常陰影で受診したが、CTでは異常がなかった」というケースの診療時では、「肺がんでなくてよかったですね。でもこのままタバコを吸っていると6人に1人は肺がんになります。良い機会ですから禁煙しませんか?」と伝え、40歳以下の患者であれば「喫煙者は寿命が10歳短くなりますが、今禁煙すれば寿命に対する影響をほぼなしにできますよ」と相手に響く言葉を添えたうえで禁煙外来につなぐことを紹介した。 さらに、非専門医が禁煙をすすめる際の手引きとして日本肺癌学会が翻訳・公開するNCCNガイドラインを推奨、自身のブログ・SNSを使った禁煙についての情報発信も紹介し、一般向けにわかりやすく禁煙の大切さを伝える重要性を訴えた。■参考1)Patanavanich R , et al. Nicotine & tobacco research. 2020 ;24:22;1653-1656.2)Videtic GMM, et al. J Clin Oncol. 2003;21:1544-9.3)Wu SY, et al. Int J Clin Exp Med. 2020;03:2174)The Health Consequences of Smoking—50 Years of Progress: A Report of the Surgeon General5)Tabuchi T, et al. Ann Oncol. 2013;24:2699-27046)Tabuchi T, et al. Int J Cancer. 2017;140:1789-1795.

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ペムブロリズマブと化学療法の併用、進行・再発食道がん1次治療に国内承認申請/MSD

 MSDは、2020年11月30日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、化学療法(シスプラチン+5-フルオロウラシル)との併用療法において、根治切除不能な進行・再発の食道癌に対する1次治療としての製造販売承認事項一部変更を承認申請したと発表。 今回の製造販売承認事項一部変更承認申請は、局所進行または転移性食道がんおよび食道胃接合部(GEJ)がんの1次治療として、キイトルーダと化学療法(シスプラチン+5-フルオロウラシル)との併用療法をプラセボ+化学療法と比較した、第III相KEYNOTE-590試験の結果に基づくもの。この試験でペムブロリズマブ併用療法群は化学療法に比べ、有意な延長を認めている。

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オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCの2次治療のOS結果(AURA3最終)/Ann Oncol

 第3世代EGFR-TKIオシメルチニブについて検討した、AURA3試験の最終解析結果が報告された。同試験においてオシメルチニブは、既治療のEGFR T790M変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、プラチナ併用化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および奏効率を有意に改善することが示されていた。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのV A Papadimitrakopoulou氏らは、最終的な全生存(OS)期間について解析を行い、オシメルチニブ群とプラチナ+ペメトレキセド群に統計学的な有意差は認められなかったと発表した。ただし、示された結果について著者は、プラチナ+ペメトレキセド群からオシメルチニブ群へのクロスオーバーが高率であったことを反映している可能性があると指摘している。Annals Oncology誌2020年11月号掲載の報告。 AURA3試験の対象は、EGFR-TKIによる1次治療中に病勢進行したEGFR T790M変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC成人患者。被験者は、オシメルチニブ群またはプラチナ+ペメトレキセド群(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド、3週ごと最大6サイクル)に、2対1の割合で無作為に割り付けられ追跡を受けた。 プラチナ+ペメトレキセド群では、盲検化独立中央評価によって病勢進行が確認された場合は、オシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。OSおよび安全性が副次評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・279例がオシメルチニブ群、140例がプラチナ+ペメトレキセド群(治療を受けたのは136例)に割り付けられた。・データカットオフ(2019年3月15日)時点での死亡は、オシメルチニブ群188例(67%)、プラチナ+ペメトレキセド群93例(66%)であった。・OS中央値は、オシメルチニブ群26.8ヵ月、プラチナ+ペメトレキセド群22.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.67~1.12、p=0.277)。・24ヵ月および36ヵ月の推定生存率(オシメルチニブ群 vs.プラチナ+ペメトレキセド群)は、それぞれ55% vs.43%、37% vs.30%であった。・クロスオーバー調整後のOSのHRは0.54(95%CI:0.18~1.6)であった。・最初の後治療または死亡までの期間は、オシメルチニブ群で有意に延長し、臨床的に意義のある利点が示された(HR:0.21、95%CI:0.16~0.28、p<0.001)。・データカットオフ時点では、プラチナ+ペメトレキセド群の73%(99/136例)がオシメルチニブ群にクロスオーバーしており、そのうち67%(66/99例)が死亡した。・主な治療関連有害事象は、オシメルチニブ群では下痢(32%、Grade3以上は1%)および発疹(32%、Grade3以上は<1%)、プラチナ+ペメトレキセド群では悪心(47%、Grade3以上は3%)であった。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2週間化学療法の肺がん1次治療、アジア人の成績は?(CheckMate9LA)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ニボルマブ+イピリムマブへの2週間の限定化学療法の追加治療を評価する第III相非盲検無作為化試験CheckMate9LA試験。そのアジア人サググループの解析が、第61回日本肺癌学会学術集会において埼玉県がんセンターの酒井 洋氏より発表された。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価のPFS、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・アジア人のOS中央値はNIVO+IPI+Chemo群未達に対しChemo群13.3ヵ月であった(HR:0.33)。・BICR評価のPFSはNIVO+IPI+Chemo群8.4ヵ月に対しChemo群5.4ヵ月であった(HR:0.47、1年PFSは35%対12%)。・BICR評価のORRはNIVO+IPI+Chemo群57%に対しChemo群23%であった。・奏効期間はNIVO+IPI+Chemo群7.0ヵ月に対しChemo群4.4ヵ月であった。・アジア人集団の全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はNIVO+IPI+Chemo群100%、Chemo群97%、Grade3〜4のTRAEはそれぞれ57%と60%であった。・免疫関連有害事象は全集団に比べアジア人で多くみられたが、その大半はGrade1〜2であった。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に国内申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年10月27日、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法について、切除不能な進 行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。 今回の承認申請は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法をプラチナ製剤を含む標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)の中間解析の結果に基づいている。 本解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、化学療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれ までに認められているものと一貫していた。

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食道がん患者1次治療、ペムブロリズマブ+化学療法に期待(KEYNOTE-590)/ESMO2020

 国立がん研究センター中央病院の加藤 健氏は 、切除不能な局所進行・転移性食道がん・食道胃接合部がん患者に対する1次治療としてプラチナ化学療法と、化学療法とペムブロリズマブの併用療法を比較する無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-590試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。化学療法単独と比較してペムブロリズマブ併用が無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を統計学的に有意に改善したと報告した。・対象:未治療の転移を有する食道腺がん・扁平上皮がん、食道胃接合部Siewert Type1腺がん患者(PS 0~1)・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン+5-FU)3週ごと最大35サイクル(ペムブロリズマブ併用療法群、373例)・対照群:化学療法(同上)(化学療法単独群、376例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・CPS≧10の食道扁平上皮がんのOS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が13.9ヵ月、化学療法群が8.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.57、95%CI:0.43~0.75、p<0.0001)。・食道扁平上皮がん全体のOS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が12.6ヵ月、化学療法群が9.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.72、95%CI:0.60~0.88、p=0.0006)。・CPS≧10のOS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が13.5ヵ月、化学療法群が9.4 ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)。・全症例のOS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が12.4ヵ月、化学療法群が9.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.73、95%CI:0.62~0.86、p<0.0001)。・CPS≧10のPFS中央値は、ペムブロリズマブ併用療法群が7.5ヵ月、化学療法群が5.5 ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.51、95%CI:0.41~0.65、p<0.0001)。・全症例のPFS中央値はペムブロリズマブ併用療法群が6.3ヵ月、化学療法群が5.8ヵ月で、ペムブロリズマブ併用療法群で有意な延長を認めた(HR:0.65、95%CI:0.55~0.76、p<0.0001)。・ORRはペムブロリズマブ併用療法群が45.0%、化学療法群が29.3%であった(p<0.0001)。・Grade3以上の治療関連有害事象(AE)発現率はペムブロリズマブ併用療法群が71.9%、化学療法群が67.6%、Grade3以上の免疫関連AE発現率はペムブロリズマブ併用療法群が7.0%、化学療法群が2.2%あった。 今回の結果を受けて加藤氏は「ペムブロリズマブと化学療法の併用療法は、切除不能な局所進行および転移を有する食道がん患者に対する1次治療での新たな標準治療とすべきである」と強調した。

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進行または転移のある尿路上皮がんに対するアベルマブ維持療法(解説:宮嶋哲氏)-1299

 アベルマブはヒトPD-L1に対する抗体であり、2017年にFDAはプラチナ製剤を含む化学療法施行中または施行後に病勢進行を認めた局所進行または転移のある尿路上皮がんの治療薬としてアベルマブの適応を承認している。わが国では、根治切除不能または転移のある腎細胞がんを適応症として分子標的薬であるアキシチニブと併用で適応が承認されている。 プラチナ製剤主体の抗がん化学療法は進行尿路上皮がんの標準的1次療法であるが、無増悪生存期間と全生存期間はがん細胞の化学療法耐性獲得によって、その効果は限定的である。本研究はJAVELIN Bladder 100試験の第III相試験で、切除不能な局所進行または転移のある尿路上皮がんを有し、1次化学療法(ゲムシタビンとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用を4~6サイクル)で病勢進行を認めなかった患者を、best supportive care(BSC)に加えてアベルマブによる維持療法を行う群と行わないBSCのみのコントロール群に無作為に割り付けたものである。主要評価項目は全生存率(OS)とし無作為化された全患者(集団全体)とPD-L1陽性腫瘍を有する患者群で評価を行い、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)と安全性である。 無作為化された全症例700例では、アベルマブ維持療法群はコントロール群と比較してOSは有意に延長した。1年OSはアベルマブ群で71.3%、対照群で58.4%であった(OS中央値21.4ヵ月vs.14.3ヵ月、HR:0.69、P=0.001)。PD-L1陽性群においてもアベルマブによりOSは有意に延長し、1年OSはアベルマブ群で79.1%、コントロール群で60.4%であった(HR:0.56、P<0.001)。PFS中央値は全体ではアベルマブ群3.7ヵ月、コントロール群2.0ヵ月であり(病勢進行または死亡のHR:0.62)、PD-L1陽性集団ではそれぞれ5.7ヵ月と2.1ヵ月であった(HR:0.56)。有害事象の発現率はアベルマブ群98.0%、コントロール群77.7%であり、Grade3以上の有害事象の発現率はそれぞれ47.4%と25.2%であった。以上、1次化学療法で病勢進行を認めなかった尿路上皮がん患者において、アベルマブによる維持療法はBSCのみのコントロール群と比較してOSは有意に延長した。  アベルマブはわが国において尿路上皮がんで適応承認は受けていないが、今後プラチナ製剤を含む化学療法で病勢進行を認めた尿路上皮がんへの2次治療薬としての適応承認は近いと考えている。本薬剤は2020年6月に局所進行または転移を有する尿路上皮癌に対する1次療法の維持療法薬として、適応承認を米国FDAから獲得した。 我が国における今後の動向が注目される。

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ESMO2020レポート 肝胆膵腫瘍

レポーター紹介はじめにESMO VIRTUAL CONGRESS 2020はASCO 2020 Virtualに引き続き、オンラインでの開催となった。開催会場を模したトップページ上から各会場へとアクセスでき、これまでの開催のように人々が集う様子には新型コロナウイルス感染症の収束への願いが現れていた。本稿では肝胆膵領域からいくつかの演題を紹介したい。巨大肝細胞がんに対するFOLFOXを用いたHAICの有効性が示されるHepatic arterial infusion chemotherapy (HAIC) with oxaliplatin, fluorouracil, and leucovorin (FOLFOX) versus transarterial chemoembolization (TACE) for unresectable hepatocellular carcinoma (HCC): A randomised phase III trial 【Presentation ID:981O】Intermediate stageの手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞がんに対して行われるTACEの有効性は、巨大な肝細胞がんに対しては病勢制御割合は50%未満、全生存期間は9~13ヵ月といまだ十分とは言えない。FOLFOXを用いたHAICの第II相試験での良好な抗腫瘍効果を受けて、巨大な切除不能肝細胞がん患者におけるFOLFOXを用いたHAICおよびTACEを比較する無作為化第III相試験の結果が報告された。最大径7cm以上で大血管への浸潤もしくは肝外転移のない切除不能肝細胞がんを有する、Child-Pugh分類A、ECOG PS0または1の患者が適格とされた。登録された患者はHAIC(オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、1日目にフルオロウラシルボーラス400mg/m2、およびフルオロウラシル注入2,400mg/m2を24時間、3週間ごとに繰り返し6サイクルまで投与)またはTACE(エピルビシン50mg、ロバプラチン50mg、リピオドールおよびポリビニルアルコール粒子)に1対1で割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効割合(ORR)および安全性が評価された。データカットオフは2020年4月でフォローアップは継続されている。HAIC群に159例、TACE群に156例が登録された。患者背景に大きな差はなく、HAIC群/TACE群のHBV陽性例が88.1/90.4%、AFP 400ng/mL以上は52.2/48.1%であった。最大腫瘍径の中央値はHAIC群9.9cm(範囲:7~21.3)、TACE群9.7cm(7~19.8)であり、腫瘍数が3個以下であった症例はHAIC群51.6%、TACE群47.7%であった。治療回数の中央値はHAIC群で4回(2~5)、TACE群で2回(1~3)であった。治療のクロスオーバーはTACE群で多く、HAIC群では後治療として切除が行われた症例が多かった(p=0.004)。RECIST ver.1.1によるHAIC群のORRは45.9%とTACE群の17.9%に比べ有意に高かった(p< 0.001)。Modified RECISTによる評価でも同様にHAIC群が有意に高い結果であった(48.4% vs.32.7%、p=0.004)。主要評価項目であるOS中央値はHAIC群23.1ヵ月(95%信頼区間:18.23~27.97)、TACE群16.07ヵ月(95%信頼区間:14.26~17.88)であり、HAIC群で有意な延長を認めた(HR=0.58、95%信頼区間:18.23~27.97、p<0.001)。PFS中央値は、HAIC群9.63ヵ月(95%信頼区間:7.4~11.86)、TACE群5.4ヵ月(95%信頼区間:3.82~6.98)であり、HAIC群で有意に延長した(HR=0.55、95%信頼区間:0.43~0.71、p<0.001)。Grade3以上の治療関連有害事象はHAIC群で19%、TACE群で30%とHAIC群で少なかった(p=0.03)。巨大な切除不能肝細胞がんを有する患者に対するFOLFOXを用いたHAICはTACEに比べて有効性および安全性ともに良好であった。これまで本邦では5-FUおよびシスプラチンを併用したHAICは外科的切除およびその他の局所治療の適応とならない肝細胞がんを対象としてソラフェニブへの上乗せ効果を第III相試験で示すことができなかったことなどを含めて、標準治療とされてこなかった。しかし、今回のような巨大肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告、および門脈腫瘍栓を有する肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告などが続いており、今後の開発に注目していきたい。転移を有する膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が検討されるThe Canadian Cancer Trials Group PA.7 trial: Results of a randomized phase II study of gemcitabine (GEM) and nab-paclitaxel (Nab-P) vs. GEM, Nab-P, durvalumab (D) and tremelimumab (T) as first line therapy in metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma (mPDAC)【Presentation ID:LBA65】ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用療法(GnP)は転移を有する膵がんに対する標準的な1次治療として確立されている。一方で、DNAミスマッチ修復機構の欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を呈する場合を除き膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は限られたものとされるが、線維芽細胞を含めた腫瘍環境因子による免疫チェックポイント阻害薬の耐性はゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用により克服されるとの報告がある。これらを受け、抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(D)および抗CTLA-4抗体であるtremelimumab(T)をGnP療法に上乗せする4剤併用療法は、11例のsafety run-inコホートでの安全性が確認されたうえで、その有効性がランダム化第II相試験で検討された。試験はカナダ全域より28施設が参加し行われた。全身状態の保たれた未治療の転移のある膵管腺がんを有する患者が適格とされ、GnP群(ゲムシタビン、nab-パクリタキセルそれぞれ1,000mg/m2、125mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与、28日を1サイクル)または4剤併用群(GnP療法に加えてD 1,500mgおよびT 75mgを1日目に投与)の2群に2対1の割合でランダム割り付けされた。ECOG PS、術後補助化学療法歴の有無により層別化が行われた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性、ORRが設定された。OSの中央値をGnP群8.5ヵ月に対して4剤併用群13.1ヵ月(HR=0.65)、両側αエラー0.1、統計学的検出力0.8として150イベントが必要であると算出された。データカットオフは2020年3月15日とされた。4剤併用群に119例、GnP群に61例が割り付けられ、患者背景は両群に差はなかった。ECOG PS0/1は4剤併用群で22.7/77.3%、GnP群で23/77%、術後補助化学療法歴は4剤併用群で10.1%、GnP群で11.5%が有しており、アジア人が4剤併用群に8.4%、GnP群に9.8%含まれる集団であった。主要評価項目であるOSの中央値は4剤併用群9.8ヵ月(90%信頼区間:7.2~11.2)、GnP群8.8ヵ月(90%信頼区間:8.3~12.2)であり4剤併用群の優越性は示されなかった(層別HR=0.94、90%信頼区間:0.71~1.25、p=0.72)。PFSの中央値は4剤併用群5.5ヵ月(90%信頼区間:3.8~5.7)、GnP群5.4ヵ月(90%信頼区間:3.6~6.6)であった(層別HR=0.98、90%信頼区間:0.75~1.29、p=0.91)。ORRは4剤併用群30.3%、GnP群23.0%(オッズ比1.49、90%信頼区間:0.81~2.72、p=0.28)であり、PFS、ORRいずれも両群に有意な差はなかった。治療期間中のGrade3以上の有害事象は両群に差はなく4剤併用群で84%、GnP群で76%に認められ、倦怠感、血栓塞栓イベント、敗血症などが多かった。治療期間中のGrade3以上の検査値異常はおおむね同等であったが、リンパ球減少が4剤併用群で38%、GnP群で20%と4剤併用群で有意に高かった(p=0.02)。GnP療法へのデュルバルマブおよびtremelimumabの上乗せはOS、PFS、ORRいずれにおいても有意に改善することができなかった。現在cfDNAの網羅的遺伝子解析を用いて免疫学的観点からの有効性の探索が行われている。A multi-cohort phase II study of durvalumab plus tremelimumab for the treatment of patients (pts) with advanced neuroendocrine neoplasms (NENs) of gastroenteropancreatic or lung origin: The DUNE trial (GETNE 1601)【Presentation ID:1157O】TMB(tumor mutational burden)、PD-L1蛋白発現、およびリンパ球浸潤がいずれも低い、いわゆる「cold」な腫瘍である神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害の意義は限られたものである。しかしながら昨今、免疫チェックポイント阻害薬の併用がNENに対して良好な抗腫瘍効果を報告しており、今回抗PD-L1抗体であるデュルバルマブと抗CTLA-4抗体であるtremelimumabの併用療法がマルチコホート第II相試験で検討された。標準治療後に増悪した消化管、膵または肺を原発とする進行NENを有する患者が適格とされ、C1:ソマトスタチンアナログ(SSA)および分子標的薬または化学療法の治療歴を有する定型/非定型肺カルチノイド、C2:SSAおよび分子標的薬もしくは放射性核種療法の治療歴を有するGrade1/2消化管NEN、C3:化学療法、SSA、分子標的薬のうち2~4の治療歴を有するGrade1/2膵NENおよびC4:白金製剤を含む化学療法の治療歴を有するGrade3消化管および膵NENの4つのコホートに登録された。登録された患者はデュルバルマブ1,500mgおよびtremelimumab 75mgを4週ごとに4サイクルまで投与を受けた後、デュルバルマブ単剤療法を9サイクルまで継続して投与された。主要評価項目はC1からC3ではRECIST ver.1.1による9ヵ月時点の臨床的有効割合とされ、C4では9ヵ月時点の生存割合とされた。副次評価項目として安全性、PFS、OS、ORRおよび奏効期間(duration of response:DOR)が評価された。C1からC3では臨床的有効割合の閾値を30%、期待値を50%、C4では生存割合の閾値を13%、期待値を23%とし、片側αエラーを0.05、統計学的検出力を0.8として仮説検定に必要な症例数をそれぞれ28例および30例に設定された。C1/C2/C3/C4にそれぞれ27/31/32/33例が登録され、患者背景は以下のようであった。画像を拡大するC1からC3では主要評価項目である9ヵ月時点の臨床的有効割合はC1/C2/C3で7.4/32.3/25%であった。ORRはC1/C2/C3で0/0/6.9%(RECIST ver.1.1)および7.4/0/6.3%(irRECIST)であった。PFSはC1/C2/C3で5.3ヵ月(95%信頼区間:4.52~6.06)/8.0ヵ月(95%信頼区間:4.92~11.15)/8.1ヵ月(95%信頼区間:3.80~12.46)であった。C4では主要評価項目である9ヵ月時点の生存割合は36.1%(95%信頼区間:22.9~57)であった。ORRは7.2%(RECIST ver.1.1)および9.1%(irRECIST)であった。PFSは2.5ヵ月(95%信頼区間:21.5~2.75)であった。すべてのコホートにおける有害事象は倦怠感(43.1%)、下痢(31.7%)、掻痒(23.6%)などであった。進行消化管、膵および肺原発NETに対するデュルバルマブおよびtremelimumabの併用療法の抗腫瘍効果は十分なものではなかった。WHO grade3のNENに対する併用療法は事前に設定した統計学的設定を満たす結果であり、さらなる検討に資するものであった。これまで膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍はいずれもcold tumorとされ、免疫チェックポイント阻害薬の有効性は十分に示されていない。耐性克服のひとつの方向性として併用療法に大きな期待が寄せられていたが、今回の結果もまた厳しいものであった。免疫チェックポイント阻害薬の進行中のバイオマーカーの検討の結果が待たれるとともに、その他の薬剤との併用療法の開発などにも期待し、この領域における免疫療法の開発が継続していくことに期待したい。1次治療中にも転移を有する膵がん患者のQOLは損なわれているThe QOLIXANE trial - Real life QoL and efficacy data in 1st line pancreatic cancer from the prospective platform for outcome, quality of life, and translational research on pancreatic cancer (PARAGON) registry【Presentation ID:1525O】転移を有する膵がんは病勢が早く予後は不良である。GnP療法(ゲムシタビン+nab-パクリタキセル)はMPACT試験などの結果により転移を有する膵がんに対する1次治療として確立されているが、これを受ける患者のQOLに関する報告はいまだなかった。本研究は独95施設が参加する多施設共同前向き観察研究として行われ、GnP療法を受ける転移を有する膵がんが対象とされた。主要評価項目はITT集団における3ヵ月時点でのEORTC QLQ-C30のQoL/Global Health Status(GHS、全般的健康)が維持された患者の割合とされた。ベースラインと比較してスコアの変化が10ポイント未満であった場合に「QoL/GHS Scoreは維持された」と定義された。600人が登録され、患者背景は年齢の平均は68.7歳、男性/女性が58.2/41.8%、ECOG PS 0/1/2/3が32.0/48.7/12.3/1.5%、進行/再発は85.1/13.7%、膵頭部/体部/尾部は48.7/18.2/19.2%であった。GnP療法の投与サイクル数中央値(範囲)は4.0サイクル(0~12)で、45.7%で用量調整が行われており、後治療移行割合は48.5%であった。無増悪生存期間中央値は5.85ヵ月(95%信頼区間:5.23~6.25ヵ月)、全生存期間中央値は8.91ヵ月(95%信頼区間:7.89~10.19ヵ月)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は貧血3.9%、好中球減少症5.1%、白血球減少4.3%などで、22例(3.8%)の治療関連死亡が報告された。EORTC QLQ-C30はベースラインでは588例(98%)、3ヵ月時点、293例(48.8%)で評価が可能であった。主要評価項目である3ヵ月時点でQoL/GHS Scoreが維持された患者の割合は61%であった。QoL/GHS Scoreが維持された期間の中央値は4.68ヵ月(95%信頼区間:4.04~5.59ヵ月)であった。単変量解析ではその他のサブスケールと同様にベースラインのQoL/GHS Scoreは生存に有意に寄与した(HR=0.86、p<0.0001)。多変量解析ではEORTC QLQ-C30の各サブスケールのうち、機能スケールでは身体機能(HR=0.86、0.82~0.96、p=0.004)、症状スケールでは悪心・嘔吐(HR=1.06、1.01~1.13、p=0.33)がそれぞれ生存に有意に寄与するものであった。これまでゲムシタビン単剤療法、mFOLFIRINOX療法およびオラパリブなどの第III相試験におけるQOLに関する報告はされていたものの、GnP療法を受ける転移を有する膵がん患者のQOLの情報は不足していた。今回はリアルワールドデータとしてGnP療法を受ける患者のQOLに関する検討が報告された。実臨床でも実感することであるかもしれないが、GnP療法を継続できている患者においても病勢増悪より先にQOLが低下している。転移を有する膵がんに対して、本邦でも今年ナノリポソーム型イリノテカンが承認されるなど治療の選択肢は着実に広がっている。治療をつなぐためにも、このような検討がさらに進んでいくことに期待したい。おわりに今回紹介しきれなかったが、胆道がんにおけるmFOLFIRINOX療法の有効性の報告や、欧州らしく免疫チェックポイント阻害薬以外にも多くの神経内分泌腫瘍に関する演題が多く報告されていた。ASCOに引き続くオンライン開催であったが、世界の最新のエビデンスに日本にいながらにして触れることができるなどオンラインだからこそのメリットもある。新型コロナウイルス感染症の早い収束を願うとともに、がん克服に向けた努力がさらに加速することに期待したい。

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FDA、悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ/イピリムマブの1次治療を承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年10月3日、切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の成人患者の1次治療に、ニボルマブとイピリムマブの併用を承認した。適応症はニボルマブ360mg 3週間ごとイピリムマブ1mg/kg 6週間ごと投与。 今回の承認は、切除不能MPM患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用と、シスプラチンまたはカルボプラチンとペメトレキセドの標準併用化学療法を評価した無作為化非盲検試験第III相CheckMate743試験の中間解析の結果に基づくもの。 世界肺癌学会(WCLC2020)で発表された結果によると、ニボルマブ・イピリムマブの全生存期間(OS)の中央値18.1ヵ月に対し、化学療法は14.1ヵ月であった(HR:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.002)。 盲検化独立中央評価委員会(BICR)によるPFS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ6.8ヵ月に対し、化学療法で7.2ヵ月であった(HR、1.00; 95%CI、0.82-1.21)。2年PFSは、ニボルマブ・イピリムマブ16%に対し、化学療法7%であった。

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尿路上皮がんに対するペムブロリズマブ+化学療法の結果(KEYNOTE-361)/ESMO2020

 進行尿路上皮がんの1次治療として、ペムブロリズマブとプラチナ系化学療法薬の併用投与は、化学療法のみに比べ、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の統計学的に有意な延長を示さなかったことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、米国・ミシガン大学のAjjai Alva氏から発表された。 このKEYNOTE-361試験は、オープンラベル第III相のグローバル試験であり、症例はペムブロリズマブ+化学療法群(Pem+CT群)、ペムブロリズマブ単独群(Pem群)、化学療法群(CT群)の3群に割り付けられた。・対象:局所進行または転移のある尿路上皮がん患者で、PS0~2、進行病変に対する全身療法が行われていない1,010例・試験群:[Pem+CT群]ペムブロリズマブ200mgを3週ごと化学療法薬を最長6サイクルまで投与し、その後、維持治療としてペムブロリズマブ200mgを3週ごと最長29サイクル[Pem群]ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最長35サイクル・対照群:CT群はゲムシタビン(1,000mg/m2)と、シスプラチン(70mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5)を主治医が選択して投与した。化学療法薬は最長6サイクル・評価項目:[主要評価項目]盲検下中央判定によるPFSおよびOS[副次評価項目]盲検下中央判定による奏効率、病勢制御率、奏効期間、および安全性・統計学的設計:全集団(ITT)におけるPem+CT群対CT群のPFSとOSの優越性を検証。優越性が示された場合、PD-L1陽性(CPS≧10)集団でのPem群対CT群のOSの非劣性、次にOS優越性を検証 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値は31.7ヵ月であった。・ITTにおける盲検下中央判定のPFS中央値は、Pem+CT群で8.3ヵ月、CT群で7.1ヵ月、HR0.78(95%CI:0.65~0.93)、p=0.0033であった。これは予め設定されたp値の閾値0.0019を達成できず、統計学的な有意差は示されなかった。・ITTでのOS中央値は、Pem+CT群17.0ヵ月、CT群14.3ヵ月で、HR0.86(95%CI:0.72~1.02)、p=0.0407であった。これも予め設定されたp値の閾値0.0142を達成できず、統計学的な有意差は示されなかった。12ヵ月OS率は61.8%と56.0%だった。・CPS≧10の集団を対象とした探索的解析でのOS中央値は、Pem群16.1ヵ月、CT群15.2ヵ月で、HR1.01(95%CI:0.77~1.32)であった。・抗PD-1/PD-L1抗体による後治療を受けた患者はそれぞれPem+CT群6.6%、Pem群4.6%、CT群48.0%であった。・奏効率はPem+CT群54.7%、Pem群30.3%、CT群44.9%であった。・奏効期間中央値はそれぞれ8.5ヵ月、28.2ヵ月、6.2ヵ月だった。・Grade3~5の有害事象は、Pem+CT群87.4%、Pem群62.9%、CT群81.9%であった。有害事象による死亡はそれぞれ9.2%、8.6%、2.6%だった。有害事象による投薬中止は30.9%、15.9%、18.1%であった。

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進行尿路上皮がんの維持療法にアベルマブが有効(JAVELIN Bladder 100)/NEJM

 局所進行または転移のある尿路上皮がんへの1次化学療法の維持療法において、アベルマブ+支持療法(BSC)はBSCのみの場合と比較し、全生存(OS)を有意に延長することが明らかにされた。英国・Queen Mary University of LondonのThomas Powles氏らが、進行尿路上皮がん患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相試験「JAVELIN Bladder 100試験」の結果を報告した。プラチナ併用化学療法は進行尿路上皮がんに対する標準的な1次治療であるが、多くの場合、化学療法耐性のため無増悪生存(PFS)やOSは限られていた。NEJM誌2020年9月24日号掲載の報告。1次化学療法後の進行尿路上皮がん患者700例でアベルマブ+BSC vs.BSC 研究グループは、2016年5月11日~2019年6月4日の期間に、29ヵ国197施設で被験者を募り試験を行った。 対象は、1次化学療法(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチンの4~6サイクル)後に病勢進行が認められなかった、切除不能の局所進行または転移がある尿路上皮がん患者700例。維持療法としてアベルマブ10mg/kgを2週間ごと+BSCを行うアベルマブ群とBSCのみの対照群のいずれかに無作為に割り付けた。 主要評価項目はOSで、無作為化された全患者集団およびPD-L1陽性集団にてそれぞれ評価した。副次評価項目はPFSと安全性であった。アベルマブ+BSCでOS期間が有意に延長 データカットオフ2019年10月21日時点で、全患者集団においてOSは、対照群と比較してアベルマブ群で有意に延長した(OS中央値:14.3ヵ月vs.21.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.86、p=0.001)。1年OS率は、アベルマブ群71.3%、対照群58.4%であった。 PD-L1陽性患者においても、アベルマブ群でOSの有意な延長が認められ(HR:0.56、95%CI:0.40~0.79、p<0.001)、1年OS率はアベルマブ群79.1%、対照群60.4%であった。 PFS期間中央値は、全患者集団においてアベルマブ群3.7ヵ月、対照群2.0ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.52~0.75)、PD-L1陽性患者においてそれぞれ5.7ヵ月、2.1ヵ月であった(0.56、0.43~0.73)。 有害事象の発現率はアベルマブ群98.0%、対照群77.7%、Grade3以上の有害事象の発現率はそれぞれ47.4%、25.2%であった。

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ペムブロリズマブ+化学療法、食道がん1次治療で生存改善(KEYNOTE-590)/Merck

 Merck社は、2020年8月19日、局所進行または転移のある食道がん患者の1次治療に対する第III相KEYNOTE-590試験において、ペムブロリズマブと化学療法の併用が主要評価項目を達成したと発表。 同試験の中間解析では、ペムブロリズマブと化学療法(シスプラチン+5-FU)の併用は、化学療法(同)と比較して、OSおよびPFSを統計的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。また、主要副次評価項目である客観的奏効率(ORR)も有意に改善したとしている。試験の結果は、欧州腫瘍学会(ESMO)2020Virtual Congressで発表される予定。 ペムブロリズマブは現在、PD-L1発現(CPS≧10)再発局所進行または転移のある食道扁平上皮がんの2次治療に単剤療法として中国と米国で承認されている。

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デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんに国内適応拡大/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年8月21日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について、化学療法(エトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を適応症に厚生労働省より承認を取得したと発表。 デュルバルマブに対する今回の承認は、デュルバルマブと化学療法との併用療法が、化学療法単独との比較において、統計学的に有意で臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した第III相CASPIAN試験の結果に基づいている。 2019年6月、CASPIAN試験において、デュルバルマブと化学療法との併用療法は、化学療法単独との比較で主要評価項目であるOSの延長を示し、死亡リスクを27%低下させた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.59~0.91、p=0.0047)。OS中央値は化学療法単独群の10.3ヵ月に対し、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では13.0ヵ月であった。また、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では、客観的奏効率(Confirmed)の増加(化学療法単独群58%に対して、デュルバルマブと化学療法との併用療法群68%)が示され、化学療法にデュルバルマブを追加することで、肺がん関連の症状が悪化するまでの期間が延長することが示された。 最新の解析データでは、追跡期間中央値が2年を超えた時点でも、デュルバルマブと化学療法との併用療法による持続的な有効性が示され(OSハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62 ~0.91、p=0.0032)、OS中央値は化学療法単独群の10.5ヵ月に対し、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では12.9ヵ月であった。デュルバルマブと化学療法との併用療法の安全性および忍容性は、これらの医薬品の既知の安全性プロファイルと一致していた。 デュルバルマブとエトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチンとの併用療法は、のES-SCLCの1次治療薬として、米国および世界中の数ヵ国で承認されている。

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肺がん1次治療における抗PD-1抗体sintilimab+化学療法の成績(ORIENT-11)/WCLC2020

 新たな抗PD-1抗体sintilimabの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)における有効性は、第Ib相試験で示された。この結果を基に、無作為化二重盲検第III相ORIENT-11試験が行われ、その初回解析の結果を中国・Sun Yat-Sen University Cancer Centreの Zhang Li氏が、世界肺癌学会WCLC2020Virtual Presidential Symposiumで発表した。sintilimabがPFSを有意に延長・対象:未治療の局所進行または転移のあるNSCLC患者・試験群:sintilimab(200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5) 3週ごと4サイクル投与→sintilimab+ペメトレキセド維持療法(sintilimab群)・対照群:プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ 3週ごと4サイクル投与→ペメトレキセド維持療法(化学療法群) 化学療法群のsintilimab群へのクロスオーバーは許容された。・評価項目: [主要評価項目]独立放射線審査委員会評価の無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、客観的奏効期間(ORR)、効果発現までの時間、安全性 sintilimabのNSCLCにおける有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・対照患者397例はsintilimab群266例、プラセボ群131例に2対1で無作為に割り付けられた。プラセボ群のsintilimabへのクロスオーバーは35例(31.3%)であった。・追跡期間中央値8.9ヵ月でのPFS中央値は、sintilimab群8.9ヵ月、化学療法群5.0ヵ月と、sintilimab群で有意に長かった(HR:0.482、95%CI:0.362〜0.643、p<0.00001)。・OS中央値は、両群とも未達であった(HR:0.609、95CI:0.400〜0.926、p=0.01921)。・ORRは、sintilimab群51.9%、化学療法群で29.8%であった。・Grade3以上の有害事象発現率は、sintilimab併用群61.7%、プラセボ併用群58.8%であった。 Discussantである米国・Karmanos Cancer Canterの長阪 美沙子氏は、当試験が東アジアのデータであることを重要であるとした。また、PFS、OSは他の免疫チェックポイント阻害薬のNSCLC1次治療のデータと匹敵するものだとしながら、PFSの改善がOSの改善に結びつかないこともあることから、長期のフォローアップの必要性を強調した。 この試験の結果は、Journal of Thoracic Oncology誌2020年8月8日オンライン版にも同時掲載された。

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NSCLC術後補助療法、ペメトレキセド+シスプラチンの有効性は?/JCO

 完全切除のStageII~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後補助療法としてのペメトレキセド+シスプラチンの有効性について、ビノレルビン+シスプラチンと比較した第III相無作為化非盲検試験の結果が示された。静岡がんセンター呼吸器内科の釼持 広知氏らによる報告で、ペメトレキセド+シスプラチンの優越性は示されなかったが、補助化学療法として忍容性は良好であることが示されたという。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年5月14日号の掲載報告。 試験は、日本国内7つの臨床試験グループに属する50施設で行われた。被験者は、病理学的に完全切除が確認されたStageII~IIIA(TNM 7th editionに基づく)の非扁平上皮NSCLC患者で、ペメトレキセド(500mg/m2、day1)+シスプラチン(75mg/m2、day1)またはビノレルビン(25mg/m2、day1およびday8)+シスプラチン(80mg/m2、day1)のいずれかを投与する群に無作為に割り付けた。年齢、性別、病理学的ステージ、EGFR変異、試験地で層別化も行った。 割付治療は、3週間ごと4サイクルで計画。主要評価項目は、修正intent-to-treat集団(非適格患者を除外)において評価した無再発生存(RFS)であった。 主な結果は以下のとおり。・2012年3月~2016年8月に、804例が登録された(ペメトレキセド+シスプラチン群402例、ビノレルビン+シスプラチン群402例)。・適格患者は784例で、410例(52%)がStageIIIAで、192例(24%)がEGFR変異陽性であった。・追跡期間中央値45.2ヵ月時点で、RFS期間中央値はビノレルビン+シスプラチン群37.3ヵ月に対し、ペメトレキセド+シスプラチン群38.9ヵ月であった(ハザード比:0.98、95%信頼区間[CI]:0.81~1.20、片側検定のp=0.474)。・ビノレルビン+シスプラチン群のほうがペメトレキセド+シスプラチン群よりも、Grade3/4毒性(11.6% vs.0.3%)、および貧血(9.3% vs.2.8%)について報告頻度が高かった。・治療に関連した死亡は、各群1例ずつ報告された。

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ASCO2020レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介2020 ASCO Virtual Scientific ProgramCOVID-19の影響で初のバーチャル開催となったASCO2020。オープニングセッションでは2019~20年のプレジデントであるDr. Howard A. “Skip” Burris IIIは冒頭のあいさつで、本会の約1年前に“Unite & Conquer: Accelerating Progress Together”というテーマを掲げた際には現在の世の中の在り方を想像だにしていなかったが、われわれの働き方、社交の仕方にとどまらず、ものの見方まで変えてしまったパンデミック状況下で、このテーマが新たな意味を持つことになったと述べています。確かに地域・人種・民族・性別・職種の多様性を超えて団結し進歩を加速することの必要性は、COVID-19という喫緊の課題を前により明確になりました。「われわれは今年の年次総会では同じ部屋にいませんが、これまで以上に団結しています」という言葉が印象的でした。さて、Scientific Programの中から注目の演題をピックアップして紹介するこのレポート、前立腺がん領域では新規ホルモン治療薬の臨床試験結果とPSMA-PET関連の報告が、尿路上皮がんと腎細胞がんでは免疫チェックポイント治療の話題が中心となっています。経口LHRHアンタゴニストは進行前立腺がんに対する抗アンドロゲン療法を変えるか経口LHRHアンタゴニストの安全性・有効性を検証したHERO試験(NCT03085095)の結果が口演発表で報告されました(Abstract#5602)。従来の進行性前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法(ADT)では、LHRHアゴニストあるいはアンタゴニストの注射が中心でしたが、1ヵ月から6ヵ月ごとの注射が必要になる点や、アゴニスト製剤の場合にはLHサージが起こる点などの問題点がありました。国際第III相HERO試験では初の経口GnRH受容体アンタゴニスト製剤であるレルゴリクスの安全性・有効性を、従来臨床で用いられている酢酸リュープロライド注射製剤と比較しました。本試験では去勢感受性進行性前立腺がん患者934例を2:1の比率で経口レルゴリクス(120mg/日)あるいは酢酸リュープロライド皮下注射(3ヵ月ごとに11.25あるいは22.5mg)に無作為割付を行いました。主要評価項目である血清テストステロン(T)値の去勢レベル(<50ng/dL)への抑制(29日目時点)とその維持(48週間)は、レルゴリクス群では96.7%(95%CI:94.9~97.9%)で、酢酸リュープロライド群の88.8%(84.6~91.8%)と比較して、非劣性・優位性ともに統計学的に証明されました。副次的評価項目として、4日目の去勢達成率も56対0%でレルゴリクス群が優れており、治療中断後のT回復を検討した184例の検討では、治療中止90日後のTレベルの中央値は、270.76対12.26ng/dLとレルゴリクス群が有意に優れていました。さらに、心血管イベントの発生率もレルゴリクス群において低いという結果が示されました(2.9対6.2%)。そのほかの点では、安全性と忍容性のプロファイルはほぼ同等でした。著者らは、酢酸リュープロライド皮下注射と比較してレルゴリクスは、素早く(4日目までに去勢達成率)より確実に(48週間にわたる去勢域維持)血清Tを抑制し、中止後はより早期にT回復をもたらし、心血管イベントを50%減少するなどの優位性を示し、今後進行性前立腺がん患者に対するADTにおいて新しい標準治療になる可能性があると結論付けています。なおレルゴリクスは本邦でも「子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善」を適応としてすでに承認を受けています(用量は40mg/日)。本試験の結果はASCO2020における発表に合わせてNEJM誌(Shore ND, et al. N Engl J Med. 2020;382:2187-2196.)に発表されました。PSMA関連診断/治療モダリティは前立腺がんマネージメントのGame Changerとして期待PSMA関連では、3演題が口演発表に採択され、その注目度の高さがあらためて浮き彫りになったかたちです。診断関連では、根治治療後の生化学的再発(BCR)を来した前立腺がん患者の病巣部位確定における18F-DCFPyL(PyL)を用いたPSMA-PET/CT検査の有用性を検証した前向き第III相CONDOR試験(NCT03739684)の結果が紹介されました(Abstract#5501)。根治的治療後にPSAが上昇(PSA中央値0.8ng/mL[範囲:0.2~98.4])し、CT、MRI、骨シンチグラフィーなどの標準的な画像検査では病巣がはっきりしなかった208例の前立腺がん患者がエントリーされ、PyL-PET/CTの所見を3人の評価者によって検討した結果、病巣が認められた患者の割合は69.3%(142/208例)でした。主要評価項目である病巣部位特定率は84.8%~87.0%で、63.9%の患者でPyL-PET/CTの所見を基に治療方針が変更されました。重篤な有害事象が認められたのは1例(過敏症)のみで、最も頻度が高かった有害事象は頭痛(4例)でした。PyL-PET/CTは、BCR患者において従来の画像検査では描出できない病巣の特定と、それに基づく治療方針決定に有用であると結論付けられています。また、診断関連ではもう1演題、前立腺全摘除術+骨盤内リンパ節郭清を受ける中〜高リスクの限局性前立腺がんの患者を前向きにエントリーし、術前の68Ga-PSMA-11 PETのリンパ節転移の診断精度を郭清リンパ節の病理所見(pN診断)を参照標準として評価した研究の結果が公表されました(Abstract#5502)。その結果、68Ga-PSMA-11 PETの感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率(95%CI)はそれぞれ、0.40(0.34~0.46)、0.95(0.92~0.97)、0.75(0.70~0.80)、0.81(0.76~0.85)だったとのことです。治療関連では、PSMAを発現する腫瘍に治療用β線を照射する放射性標識された小分子LuPSMAの安全性と治療効果を検証したランダム化第II相TheraP試験(NCT03392428)の結果も報告されました(Abstract#5500)。本試験ではドセタキセル不応性転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象とし、まず68Ga-PSMA-11および18F-FDG PET/CTを施行しました。両検査の結果、(1)PSMA強陽性の病変があること、(2)FDG陽性かつPSMA陰性の病変がないこと、という2つの条件を満たした患者をLuPSMA(6週ごと×最大6サイクル)あるいはカバジタキセル(20mg/m2/3週×10サイクル)による治療に無作為に割り付けました。主要評価項目は、PSAの50%以上の低下(PSA50-RR)で、副次的有効性エンドポイントには、PSA無増悪生存期間(PSA-PFS)および全生存期間(OS)が含まれていました。1次スクリーニングを受けた291例のうち200例がエントリー基準を満たし、LuPSMA群(n=99)あるいはカバジタキセル群(n=101)に割り付けられました。追跡期間の中央値は11.3ヵ月でした。PSA50-RRは、LuPSMA群のほうがカバジタキセル群よりも良好でした(65/99[66%、95%CI:56~75]vs.37/101[37%、95%CI:27~46]、p<0.001)。PSA-PFSにおいてもLuPSMAは有意に良好な結果を示しました(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)。OSデータは規定のイベント数に達していないため今回は示されていません。安全性に関して、Grade3〜4の有害事象(AE)発生率は、LuPSMA群で32%(31/98)に対し、カバジタキセル群では49%(42/85)でした。毒性による治療中止は、LuPSMA群で1%(1/98)、カバジタキセル群で4%(3/85)に認められました。治療に関連した死亡はありませんでした。著者らは上記要件を満たすmCRPC患者において、LuPSMAはカバジタキセルに比べてより治療活性が高く、AEが少ない治療法であると結論付けています。nmCRPC 3試験はだんご3兄弟かそれとも…前立腺がん領域ではこれ以外に、非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)を対象とした新規アンドロゲン受容体(AR)シグナル阻害薬治療のOSアウトカムに関する報告がありました。ARAMIS試験(NCT02200614, Abstract#5514)、PROSPER試験(NCT02003924, Abstract#5515)、SPARTAN試験(NCT01946204, Abstract#5516)はそれぞれPSA倍化時間(PSA-DT)<10ヵ月のnmCRPC患者を対象に、それぞれダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミドを投与する実薬群とプラセボ(PBO)群に2:1の比で割り付け、無転移生存(MFS)を主要評価項目としてその効果を検証するデザインで、すでにいずれの試験もMFSの延長を報告しています(ARAMIS試験 HR:0.41、95%CI:0.34~0.50、p<0.001 Fizazi K, et al. N Engl J Med. 2019;380:1235-1246.)(PROSPER試験 HR:0.29、95%CI:0.24~0.35、p<0.001 Hussain M, et al. N Engl J Med. 2018;378:2465-2674.)(SPARTAN試験 HR:0.28、95%CI:0.23~0.35、p<0.001 Smith MR, et al. N Engl J Med. 2018;378:1408-1418.)。今回発表されたOSに関する成績もMFSと同様、3試験ともほぼ同等と言ってよい結果でした(ARAMIS試験 未到達 対 未到達、HR:0.69、p=0.003)(PROSPER試験 67.0対56.3ヵ月、HR:0.73、p=0.0011)(SPARTAN試験 73.9対59.9ヵ月、HR:0.784、p=0.0161)。SPARTAN試験は2次治療後のデータ(2nd PFS)を報告しているという点で後続治療も考慮した、実臨床における治療選択に有用な情報を提供しているといえますが、ARAMIS試験はダロルタミドの有害事象(AE)プロファイルとしてPBO群とまったく遜色ない成績を報告しており、腫瘍学的転帰に関する成績がほぼ同等な3薬剤の選択に当たってはダロルタミドに有利なデータであると考えられます。切除不能/転移性尿路上皮がん:免疫チェックポイント阻害薬はこう使え!?尿路上皮がん(UC)では免疫チェックポイント阻害薬を従来の全身治療のさまざまなセッティングで用いる試みが報告され、今後の標準治療を考えるうえで大きな影響を与える可能性を感じさせる内容でした。なかでもLate-breaking abstractとしてプレナリーでJAVELIN Bladder 100試験(NCT02603432)の中間解析結果が報告され、大きな注目を集めました(Abstract#LBA1)。この無作為化第III相試験ではプラチナベースの1次化学療法(4~6コースのG-CDDPあるいはG-CBDCA)によって奏効(CR/PR)または安定(SD)を示した進行UC患者を、抗PD-L1抗体製剤であるアベルマブによる維持療法(10mg/kg IV 2週間ごと)+支持療法(BSC)とBSCのみのいずれかに割り付けました(n=350 vs.350)。その結果、主要評価項目であるOSはアベルマブ+BSC群で有意に良好でした(21.4 対 14.3ヵ月、HR:0.69、95%CI:0.56~0.86、片側p=0.0005)。サブグループ解析ではアベルマブ+BSC群の優位性に関して一様な傾向が示されました。副次的評価項目であるPFSも有意に良好でした(HR:0.62、95%CI:0.52~0.75、p<0.001)。Grade3以上のAEはアベルマブ+BSC群の47.4%、BSC群の25.2%で認められたと報告されています。現在のプラチナ適格・進行UCに対する標準治療は、1次治療がプラチナベースの化学療法、2次治療でペムブロリズマブという流れですが、本治験の結果に伴ってアベルマブが承認されると、1次治療がCR/PR/SDだった場合に維持療法としてアベルマブを投与するのか、いったんoff-treatmentとして再燃時にペムブロリズマブを投与する方針とするのか、選択を迫られることになります。今回公表されたデータによれば、JAVELIN Bladder 100試験のBSC群では進行時に2次治療を受けた患者は75.3%(PD-L1/PD-1阻害薬治療は52.9%)だったとのことです。一部患者において進行時に状態の悪化によって2次治療が受けられなかった結果なのか、あるいは本来実施可能であった適切な2次治療が施されなかった結果なのかによって、大きく解釈が変わる可能性があります。いずれにしても、ほかの切除不能/転移性尿路上皮がんに対する1次治療に関する治験で、免疫チェックポイント阻害薬単独あるいは免疫チェックポイント阻害薬+化学療法の併用レジメンが軒並み苦戦している現状で、本試験の結果は大きなインパクトがあり、1次治療からの治療シークエンスが大きく影響を受けることは間違いないと考えられます。周術期補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬と効果予測バイオマーカーUCに関する口演発表では膀胱全摘除術後の術後補助療法としてのアテゾリズマブの効果を検証したIMvigor010試験(NCT02450331)の結果が公表されました(Abstract#5000)。本試験では膀胱全摘標本を用いた病理学的病期が、(1)ypT2-4aまたはypN+(ネオアジュバント化学療法を受けた患者の場合)もしくは(2)pT3-4aまたはpN+(ネオアジュバント化学療法を受けなかった患者の場合)と診断された患者を対象に、アテゾリズマブ(1,200mg IV 3週間ごと)あるいは経過観察の2群に1:1の無作為割付を行い、無再発生存(DFS)を主要評価項目としました。今回はDFSの最終解析とOSの中間解析の結果が示されましたが、いずれもアテゾリズマブ群の優位性を示すことができませんでした(DFS 19.4対16.6ヵ月、95%CI:15.9~24.8対11.2~24.8ヵ月、HR:0.89、95%CI:0.74~1.08、p=0.2466、OS 未到達 対 未到達、HR:0.85、95%CI:0.66~1.09、p=0.1951)。転移性UCを対象としたIMvigor130試験(Doctors' Picks 2020年5月20日もご参照ください)と比較して、AEによる治療中断率が高かったことが原因として示唆されています。今後このセッティングでの免疫チェックポイント阻害薬の位置付けがどうなるかについては不透明なままとなっています。周術期補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬の話題としては、無作為第II相DUTRENEO試験(NCT03472274)の結果がClinical Science Symposiumで報告されています(Abstract#5012)。本試験では、シスプラチン適格の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC,、cT2-T4a、N≦1、M0)と診断された患者を、まず腫瘍の炎症誘発性IFN-γシグネチャー(腫瘍免疫スコア、TIS)を基準に「ホット」あるいは「コールド」に分類しました。このTISは以前にPD-1経路阻害薬の効果を予測すると報告されています(Ayers M, et al. J Clin Invest. 2017;127:2930-2940.)。「ホット」と診断された患者は術前補助療法としてPD-L1阻害薬デュルバルマブ1,500mg+CTLA-4阻害薬tremelimumab 75mg×3サイクル(DU+TRE群)あるいはシスプラチンベースの化学療法(G-CDDPまたはdd-MVAC、標準CT群)に無作為割り付けされ、「コールド」と診断された患者は全例が化学療法に割り付けられました。合計61例がエントリーされ、「ホット」と診断された患者のうち22例が標準CTを、23例がDU+TREを受け、それぞれ36.4%(n=8)、34.8%(n=8)が主要評価項目であるpCRを達成しました(オッズ比:0.923、95%CI:0.26~3.24)。一方「コールド」と診断され標準CTを受けた16例の患者のうち68.8%(n=11)がpCRを達成しました。DU+TREの組み合わせは、MIBCに対する術前補助療法における効果的および安全なオプションであることが示されましたが、炎症誘発性IFN-γシグネチャーによる層別化では免疫チェックポイント阻害薬治療と標準化学療法のどちらから利益を得る可能性が高いかを予測することはできませんでした。免疫チェックポイント阻害薬治療の効果予測バイオマーカー研究としては、無作為第III相IMvigor130試験(NCT02807636)の患者における腫瘍の変異頻度(TMB)、PD-L1発現、Tエフェクター遺伝子発現(GE)および線維芽細胞TGF-β応答シグネチャー(F-TBRS)のバイオマーカーとしての有用性が報告されています(Abstract#5011)。これらのバイオマーカーは既報(Mariathasan S, et al. Nature. 2018;554:544-548.)によりアテゾリズマブ単独治療の効果予測因子として見いだされたものです。IMvigor130試験では転移性UC患者の1次治療としてアテゾリズマブ+プラチナベースの化学療法(PBC)、アテゾリズマブ単独、またはPBC単独に1:1:1で無作為割り付けされ、主要評価項目としてPFSとOSを検証しました(Doctors' Picks 2020年5月20日もご参照ください)。上記項目は本試験における探索的バイオマーカー分析の対象とされていました。全1,200例の組み入れ患者のうち851例でバイオマーカー解析が可能でした。PD-L1高発現(IC2/3)はアテゾリズマブ単独 対 PBCにおけるアテゾリズマブ群の良好なOSを予測し、さらにPD-L1高発現(IC2/3)と高TMB(>10変異/Mb)を組み合わせることによって、予測能が上昇しました。APOBEC関連変異は、アテゾリズマブ含有レジメンによるOSの改善と関連していました。このように、免疫チェックポイント阻害薬が進行性UCに対する1次治療あるいはMIBCに対する術前補助療法における治療オプションに入ってくるにつれて、治療効果予測に有用なバイオマーカーの重要性も高まってくることが予想されます。検体採取から検査を経て治療開始に至るまでの時間をいかに短縮できるかという点も、今後重要な課題となってくると思われます。腎細胞がん:免疫チェックポイント阻害薬+TKIの中長期予後腎細胞がん(RCC)領域は前立腺がん・尿路上皮がんに比べると今年はややおとなしい印象でしたが、その中で、KEYNOTE-426試験(NCT02853331)の追加フォローアップのデータが口演セッションで発表されたので取り上げたいと思います(Abstract#5001)。この試験では861例の進行性淡明細胞型RCC(cc-RCC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブ+アキシチニブとスニチニブを、OSとPFSを主要評価項目として比較しました。今回、中央値27.0ヵ月(範囲:0.1~38.4ヵ月)のフォローアップで、ペムブロリズマブ+アキシチニブ群のOS(HR:0.68、95%CI:0.55~0.85、p<0.001、24ヵ月OS 74% vs.66%)およびPFS(HR:0.71、95%CI:0.60~0.84、p<0.001、24ヵ月PFS 38% vs.27%)の延長効果が示されました。これらのベネフィットはIMDCリスク分類やPD-L1発現にかかわらず認められたということです。追加解析の結果、ペムブロリズマブ+アキシチニブ群においては腫瘍縮小率がOSと相関していたことも示されました。また、RCC領域でも免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測因子に関する探索的研究の結果が散見されました(Abstracts#5009, 5010)。おわりに総じて、前立腺がんでは新規ARシグナル阻害薬のより早期ステップでの使用とPSMA関連核医学検査/治療(いわゆるTheranostics)の話題が、UCとRCCでは免疫チェックポイント阻害薬のさまざまなセッティングにおける有効性・安全性と治療効果予測のためのバイオマーカー探索が中心となった年であったと考えられます。来年になるとAntibody-conjugated drug(ACD)も登場し、各腫瘍いよいよ「役者」が出そろってくることになり、治療効果予測のバイオマーカー探索、さらにはバイオマーカーベースの治療方針を決める前向き試験等が登場することを期待しています。

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