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食事療法の見直しへ日本糖尿病学会が動き出す

 食の欧米化や糖質制限の流行、高齢者の低栄養が問題となる昨今、日本人における食事療法の見直しが迫られている。2018年11月5日、日本糖尿病学会が主催する「食事療法に関するシンポジウム」が、5年ぶりに開催された。講演には、座長に羽田 勝計氏(「糖尿病診療ガイドライン2016」策定に関する委員会委員長)と荒木 栄一氏(「糖尿病診療ガイドライン2019」策定に関する委員会委員長)を迎え、5名の糖尿病専門医らが登壇した。 また、パネルディスカッションには、さまざまな観点からの意見を求めるべく、5つの団体(日本老年医学会、日本腎臓学会、日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本病態栄養学会、日本糖尿病協会)の代表が参加した。 本稿では講演の概要をお届けする。糖尿病食事療法でのBMI 22を基準としたエネルギー設定の問題点 宇都宮 一典氏(食事療法に関する委員会委員長)は「総エネルギー摂取量設定法をめぐる課題」をテーマに講演を行った。宇都宮氏は、食事療法の目的は、糖尿病の代謝異常の是正による合併症の抑制にあるとし「患者の条件を考慮した個別化の検討が必要」と述べた。なかでも、エネルギー設定が最も重要であることから、「これまで、標準体重を基に一律に総エネルギー摂取量を設定してきたが、エネルギー必要量には個人差が著しく、個々のさまざまなデータ(脂質、血圧など)の改善度を評価し、順守性もみながら設定すべき」と、改めて強調した。 また、死亡率の低いBMI 22を、標準体重としてエネルギー設定することの問題点として、海外と日本のデータを基にコメント。1)患者の死亡率が低いBMIは20~25の幅があり、また、75歳以上の後期高齢者の場合、そのBMIは25以上2)体重が増えるほど消費エネルギーは増加し、肥満者ほどエネルギー設定との乖離が増す3)国際的には実体重当たりで表記されており、比較することが難しいなどを挙げた。ただし、日本ではBMI 22を標準体重とすることが広く普及しており、十分なコンセンサスの形成が必要、と結んだ。糖尿病患者の食事療法におけるエネルギー必要量は? 勝川 史憲氏(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター)は「糖尿病患者のエネルギー必要量:エビデンスと歴史的経緯について」を講演した。 糖尿病患者の体重当たりの総エネルギー必要量に対して、「根拠となるデータが公表されていない」と指摘する勝川氏は、エネルギー消費量の計算においてゴールデンスタンダードな二重標識水法について解説。この方法は、自由行動下のエネルギー消費量を精度高く測定する方法であるが、コストが高く多人数の測定が困難であるという。 同氏がこの方法を用いた海外を含む4つの文献データを基に、総エネルギー消費量とBMIをプロットしたところ、「糖尿病患者のエネルギー必要量は健康な人と差がない、もしくは5~6%程度高め」という結果となった。これを踏まえ、食事療法における過少なエネルギー処方が、減量の不良や高齢者の虚弱に繋がることを指摘した。また、種々の食事調査と二重標識水法による総エネルギー消費量を評価した研究結果を挙げ、「太った人の食事調査ほど当てにならない」とコメントした。 最後に、時代変遷と食品の変化について語った同氏は、「昭和から平成にかけて食事のポーションサイズが大きくなっている」と述べ、「戦後間もない時代はMサイズの卵が80kcal/個だったのが、現在は同サイズが100kcal/個へと大きくなっている」と現状に適したわかりやすいエネルギー単位の検討について訴えた。高齢者糖尿病の食事療法の目的にフレイル・サルコペニアの予防 荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター/日本老年医学会)は「健康寿命を目指した高齢者糖尿病の食事療法」について、J-EDIT試験を中心に講演を行った。 高齢者糖尿病の食事療法の目的は、過剰摂取だけではなく、合併症予防やQOLの維持・向上、そして、これからは老年症候群と言われる認知症やサルコペニア、フレイルなどの予防が重要となる。荒木氏はさまざまな国内外の文献を示しながら、糖尿病患者のフレイル・サルコペニアのリスクを提示し、筋肉量、筋力や歩行速度の低下を指摘。同氏は、「ビタミンD低下はサルコペニア、ビタミンB2やカロチン摂取低下は認知機能低下、タンパク質摂取低下は筋肉量および下肢機能低下などのフレイルに関連する」と述べ、「タンパク質1.0g~1.5g/kg体重の摂取がサルコペニアの予防に大切である」と解説した。このほか、ロイシンを考慮した食事療法も推奨した。 J-EDIT試験の結果を踏まえ同氏は、「後期高齢者はタンパク質摂取が低い群で死亡リスクが高くなる。さらに、「緑黄色野菜の摂取量がHbA1cや中性脂肪値にも影響する」と、栄養成分ごとのリスクについて訴えた。糖尿病の食事療法で肥満患者以外へのカロリー制限を中止 “現在の糖尿病診療ガイドラインの食事法は根拠がない”と訴える山田 悟氏(北里大学北里研究所病院糖尿病センター)は「エビデンスで考える(日本人)2型糖尿病の食事療法」をテーマに講演した。 かつて、同氏が所属する病院でも、カロリー制限や脂質制限を推奨してきた。しかし、2016年にカロリー食によるサルコペニアリスクを示す論文報告を受けたのを機に、肥満患者以外へのカロリー制限を中止したという。 そもそも、欧米の糖尿病患者は太っていることが多い。一方で、日本人の糖尿病患者はBMI 24前後の患者が多く、体重管理のためのエネルギー処方は不要と考えられる。同氏は、「現在の治療法は、高血糖ではなく肥満の治療法である。非肥満患者に肥満治療食が提供されていてナンセンスである」とコメント。また、カロリー制限では脂質・タンパク質摂取によるインクレチン分泌を利用できないため、血糖管理には向かない。「理論的意義も実際の有効性も安全性も担保されていない」と、指摘した。 現在、ハーバード大学におけるメタボリックドミノの新モデルでは、糖質の過剰摂取が最上流として着目されており、実際、日本国内外で糖質制限食のエビデンスはそろっている。今後の糖尿病診療ガイドライン改訂に向けて同氏は、「日本人の糖尿病食事療法にエビデンスのある、多様な食事法の導入を目指していくべき」と提言した。糖尿病食事療法のための食品交換表は食事の実態と乖離 綿田 裕孝氏(「食品交換表」編集委員会委員長)が「糖尿病食事療法の指導状況の調査ー食品交換表の使用実態を中心にー」をテーマに講演した。 2013年11月に改訂された「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」は、現在の食品成分を緻密に反映した内容となっており、患者が摂取した食品を正確に把握すれば食事療法の実践に有効である。一方で、「現代社会において簡単に使いやすい、いろいろな食習慣・環境の人が使えるという定義どおりのものになっているかどうかは疑問が残る」と同氏は指摘。 この食品交換表の活用における実態を把握するために、今年6月に日本糖尿病学会に所属する管理栄養士らを対象にアンケート調査が行われた。その結果、食品交換表をあまり使用しない、まったく使用しないと回答した人が約40%に上り、その理由として、食事療法の対象となる患者のうち、調理する習慣がない、調理ができなくなった、中食・外食・コンビニ利用者が約90%占めるなど、現代の患者背景を考えると、調理を基盤とした食品交換表を使用するのが困難である、といった問題が浮き彫りとなった。 この結果より、同氏は、「食品交換表が食事の実態や指導したい内容と乖離している点が問題である。一方、写真が多い表は好まれて使用されているので、これらの結果を踏まえて検討していきたい」と締めくくった。■関連記事糖尿病発症や最適な食事療法を個別提示糖尿病食事療法の選択肢を増やす「緩やかな糖質制限」ハンドブック

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サルコペニア嚥下障害は誤嚥性肺炎などの入院が引き金に

 元気だったはずの高齢者が、入院後に低栄養で寝たきりになるのはなぜか。2018年11月10、11日の2日間、第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会が開催された。2日目に行われた「栄養の視点からみたサルコペニア・フレイル対策」のシンポジウムでは、若林 秀隆氏(横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科)が「栄養の視点からみたサルコペニアの摂食嚥下障害対策」について講演した。誤嚥性肺炎で救急搬送されサルコペニアの嚥下障害になる “嚥下障害があり、食べられないから低栄養になる”という流れはごく普通である。若林氏は、「低栄養があると嚥下障害を来すことがあり、これはリハビリテーションだけでは改善することができない。つまり、栄養改善が要」と、本来とは逆ともとれる低栄養のメカニズムについて解説した。 若林氏によると、一見、元気な老人でも実はサルコペニアを発症している可能性があるという。たとえば、喉のフレイル(嚥下障害ではないが正常より衰えている状態)が原因となり、誤嚥性肺炎を発症。その後、救急搬送され寝たきりや嚥下障害になる場合がある。この原因について同氏は、「急性期病院で誤嚥性肺炎を発症すると“根拠のない安静”や“禁食”がオーダされやすい」と、嚥下、腸管や心臓機能などの適切な評価がなされていない点を指摘。さらに、「病院内での不適切な安静臥床と栄養管理や肺炎の急性炎症による筋肉の分解でサルコペニアを生じる結果、これまで外出や食事が可能であった方でも寝たきりや嚥下障害となる」と、入院後の管理体制を問題視した。サルコペニアによる嚥下障害の定義とは 同氏らを含む4学会(日本サルコペニア・フレイル学会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本嚥下医学会)は、サルコペニアによる嚥下障害を立証し、メカニズム、診断、治療、今後の展望に関する統一的見解を提言するために、ポジションペーパーを作成している1)。 この合同学会において、サルコペニアによる嚥下障害を以下のように定義している。1)全身の筋肉と嚥下関連筋の両者にサルコペニアを認める2)脳卒中など明らかな摂食嚥下障害の原因疾患が存在し、その疾患による摂食嚥下障害と考えられる場合は除外する3)神経筋疾患による筋肉量減少や筋力低下、そして摂食嚥下障害はサルコペニアの摂食嚥下障害には含めない ポジションペーパーに採用された研究の一部には、今年発表された基礎研究も含まれる。これによると、誤嚥性肺炎では舌や横隔膜で筋分解が亢進し、筋萎縮が生じることが示された2)。これについて同氏は、「人間でも同様のメカニズムにおいて呼吸筋、全身の骨格筋、嚥下筋の筋萎縮が引き起こされ、最終的に寝たきりに至るのでは」と、研究結果を踏まえた人体への影響を説明。さらに、同氏が行った嚥下関連筋のレジスタンストレーニングに関するRCT3)を示し、摂食嚥下障害の原因がサルコペニアの場合、栄養改善を行いながらレジスタンストレーニングを行うと改善しやすい傾向であることを解説した。急性期病院患者のサルコペニア嚥下障害の有病割合は32% 急性期病院の実態として、嚥下リハ患者のサルコペニア有病割合は49%を占め、患者の2人に1人がサルコペニアであることが判明している4)。さらに、患者全体ではサルコペニア嚥下障害の有病割合は32%と、3人に1人はサルコペニアの嚥下障害を有し、急性期病院で起こりがちな、“とりあえず安静”、“とりあえず禁食”、“とりあえず水電解質輸液のみ”によって引き起こされている。これを『医原性サルコペニア』と呼び、同氏は「サルコペニアによる嚥下障害の患者は、他の嚥下障害よりも予後が悪いため予防が重要」と予防の大切さを訴えた5)。サルコペニアによる摂食嚥下障害の予防・治療へ攻めの栄養管理 今後の展望として、サルコペニアによる摂食嚥下障害の予防、治療への介入研究、管理栄養士の積極的な介入を必要が必要であると述べ、それに有用な“攻めの栄養管理“を以下のように提唱した。・(痩せている)実体重の場合:エネルギー必要量=エネルギー消費量±蓄積量(200~750kcal/day)・理想体重の場合:35kcal/kg/day 最後に同氏は、「サルコペニアは地域での予防、軽微な状態で発見し介入することが重要」と述べ、リハ栄養診断やゴール設定など、リハ栄養における5つのステップ5)の活用を求めた。■参考1)Fujishima I, et al. Sarcopenia and dysphagia: Position paper by four professional organizations. Geriatr Gerontol Int, in press2)Komatsu R, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2018;9:643-653.3)Wakabayashi H, et al. Nutrition. 2018;48:111-116.4)Wakabayashi H, et al. J Nutr Health Aging. 2018 Oct 16.5) Nagano A, et al. Rehabilitation nutrition for iatrogenic sarcopenia and sarcopenic dysphagia. J Nutr Health Aging, in press■関連記事初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊高齢者のフレイル予防には口腔ケアと食環境整備を「食べる」ことは高齢者には大問題

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高齢者のフレイル予防には口腔ケアと食環境整備を

 外来栄養指導は医師の指示があった患者だけ…という状況が変わり始めている。2018年11月10、11日の2日間において、第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会が開催された。2日目に行われた「栄養の視点からみたサルコペニア・フレイル対策」のシンポジウムでは、本川 佳子氏(東京都健康長寿医療センター研究所口腔保健と栄養)が「地域在住高齢者の食品摂取多様性とフレイル重症度との関わり」について講演した。地域在住高齢者が入院してしまう前に 高齢期では加齢による恒常性の低下などにより低栄養が起こりやすくなる。国民健康・栄養調査の報告によると、地域に暮らす65歳以上の5人に1人が低栄養傾向にあり、今後も後期高齢者の増加により、さらに増加すると見込まれている。 低栄養は、合併症、創傷治癒の遅延をもたらし死亡率の増加につながるため、本川氏は、「早期からしっかり対策することが重要」とし、「高齢化が進む今、その方々のフレイル予防を基軸にした栄養管理をしっかり行い、くさびを打つことで施設移行者を1人でも減らすことが喫緊の課題」と現況を示した。 これまでの地域在住高齢者におけるフレイル予防の研究は、ビタミン、タンパク質など特定の栄養素を中心に行われる傾向であったが、同氏は、「特定の栄養素というよりも、“良いと言われている食品や栄養素を含む食事を食べる”といった、日常の食事をどのように改善できるかが重要」とし、簡便な指標の利用を提唱。また、フレイル重症度にどのような栄養指標が関連するかを検討した『板橋お達者検診2011コホート研究』では、食品摂取多様性スコア、血清アルブミン値などを用いて栄養評価を行った。その結果、フレイルの発症や重症化を予防するための指標として、食品摂取多様性が有効であることが明らかになったという。これを踏まえて同氏は、「このスコアが高い人は、タンパク質や抗酸化ビタミンの摂取ができていたと考えられる。さらに、別の先行研究でも同スコアを特定高齢者に使用したところ、食品摂取の多様性が向上した」と、同スコアの有用性について語った。日本発のオーラルフレイルとは 前述した食品摂取多様性の維持には、口腔機能との関連が重要と言われている。これは滑舌低下、食べこぼしなどの些細な衰えにより、食欲の低下と共に食品摂取の多様性が低下するからであり、オーラルフレイルと呼ばれている。 同氏が地域在住高齢者に対して口腔機能のアンケートを行ったところ、嚥下や咀嚼を含む口腔機能の低下を感じる者が20~30%も存在していたという。また、咀嚼能力とサルコペニア・低栄養の関係についてキシリトール咀嚼力判定ガムを用いて調べたところ、咀嚼力が無い参加者はタンパク質や脂質、鉄などの栄養素が低値であった。とくに食品では肉類の摂取不足が判明した。さらに咀嚼能力とサルコペニア・低栄養の有症率について検討し、同氏は、「咀嚼能力はサルコペニア・低栄養と有意に関連する」ことを結論付けた。配食、コンビニ・スーパーなどを利用した食環境の整備を 最後に同氏は講演を振り返り、「得られた知見を現場にどのように還元していくかが問題」と今後の課題を提示した。現在、厚生労働省が配食サービスの普及を推進していることを紹介し、支援する必要性を訴えた。さらに、「高齢者が最も利用する食事サービスは市販弁当などの購入や外食であるため、食環境整備がそれらの一助となる必要がある」と付け加えた。 在宅療養者などに対しては、「全国の栄養・ケアステーションに所属する訪問栄養士などに相談する」ことを推奨し、管理栄養士による在宅医療の拡充にも期待を寄せた。■参考厚生労働省:地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理日本栄養士会:全国の栄養・ケアステーション

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高齢者が筋肉をつける毎日の食事とは

 現在わが国では、高齢者の寝たきり防止と健康寿命をいかに延伸させるかが、喫緊の課題となっている。いわゆるフレイルやサルコペニアの予防と筋力の維持は重要事項であるが、それには毎日の食事が大切な要素となる。 2018年10月31日、味の素株式会社は、都内で「シニアの筋肉づくり最前線 ~栄養バランスの良い食事とロイシン高配合必須アミノ酸による新提案~」をテーマにメディアセミナーを開催した。セミナーでは、栄養学、運動生理学のエキスパートのほか、料理家の浜内 千波氏も登壇し、考案した料理とそのレシピを説明した。高齢者の筋肉の維持と増加に必要なたんぱく質の量 はじめに「筋肉づくりの観点から見た日本人のたんぱく質摂取の現状と課題」をテーマに、高田 和子氏(国立健康・栄養研究所 栄養ガイドライン研究室長)が、サルコペニアを予防する1日のたんぱく質必要摂取量を解説した。 「国民健康・栄養調査(2012年版)」を資料に説明。筋肉の維持と増加のためには成人1日あたり体重1kgにつき1.0~1.2gのたんぱく質が必要であり、健康な高齢者でも同じ量が、慢性疾患のある高齢者では1.2~1.5gが必要であるとされる。また、「サルコぺニア診療ガイドライン 2017」(日本サルコペニア・フレイル学会 編)では、1日1kgあたり1.0g以上のたんぱく質摂取が強く推奨され、同様に「フレイル診療ガイドライン 2018年版」(日本老年医学会、長寿医療研究センター 発行)では、栄養状態はフレイルと関係し、微量栄養や血清ビタミンD低値はリスクとなると記載されている。実際摂取量を計測した研究では、高齢になればなるほどたんぱく質必要量の1.2gに満たない割合が男女ともに増え、また、いずれの年代でも女性では朝・昼食では基準値以下であることが判明したという。 サルコペニアに着目したアミノ酸の摂取推奨量では、たんぱく質25~30g摂取時にロイシンが2.5~2.8g含まれると、たんぱく質同化の閾値が高くなるという報告があり、「必須アミノ酸混合物を食事に追加するとよい」と提案を行った。その一方で、日本人のロイシン摂取量の研究では、男女ともに全年代の半数近くが1日必要量が摂取できていなかったという1)。 以上から同氏は、高齢者は筋肉をつける「たんぱく質の摂取量をもう少し増やす必要があり、各食事での摂取量や質も考慮する必要がある。日本人の適量については、今後さらなる研究が必要」と課題を呈示し、説明を終えた。高齢者はレジスタンス運動後の必須アミノ酸で筋肉を増やす 次に藤田 聡氏(立命館大学スポーツ健康科学部 教授)を講師に迎え、「必須アミノ酸ロイシンと運動による筋肉づくり」をテーマにレクチャーが行われた。 加齢に伴い骨格筋量は減少し、60代からその減少は加速する。減少を抑えるためには、筋肉量の維持・増大が必要であり、食事で良質なたんぱく質を摂取する必要がある。その際、たんぱく質を筋肉に合成するスイッチとして、アミノ酸が不可欠となる。このアミノ酸の中でもロイシンは重要であり、空腹時でも筋肉合成をオンにする作用があることが報告されている。また、ロイシン濃度は筋肉の合成量に比例して影響するとされているが、高齢者になるとロイシンに抵抗性が発生するため、筋肉の合成がうまくいかず徐々に筋肉が減少するという2)。そのため高齢者では、ロイシンをはじめとするアミノ酸摂取を強化し、食事から摂る必要があると指摘した。 筋肉の合成につき、たとえば筋トレなどのレジスタンス運動後は、筋たんぱく質の合成が急激に刺激されることがわかっており、とくに単回のレジスタンス運動でも、運動後その合成効果は2日間持続することが報告されている。 同氏は、最後にアドバイスとして「高齢者は、スクワットなどの手軽なレジスタンス運動後に必須アミノ酸を摂取することで、筋肉の合成を促進させ、フレイルやサルコペニアの予防に役立てることができる」と述べ、レクチャーを終えた。高齢者はたんぱく質が少ない傾向にあり栄養が偏りがち つづいて高田氏、藤田氏に加え、料理研究家の浜内 千波氏、同社取締役の木村 毅氏も加わり、「筋肉づくりに大切なたんぱく質がしっかり摂れる、簡単で美味しい食事とロイシン高配合必須アミノ酸の活用のススメ」をテーマに意見交換が行われた。発言では「高齢者では肉魚が少ない傾向にあり栄養が偏りがち」「朝食が簡単すぎ、少食すぎるのは問題」「できれば毎食5g程度のたんぱく質が必要」「肉や魚だけでなく、乳製品や大豆製品からもたんぱく質は摂れるので、飽きない献立作りが必要」など、日ごろから高齢者が筋肉をつける食事で注意すべきポイントが語られた。 また、よい食生活の合言葉である「さ(魚)あ(油)に(肉)ぎ(牛乳)や(野菜)か(海藻)い(イモ)た(卵)だ(大豆)く(果物)」(東京都健康長寿医療センター研究所が開発した食品摂取多様性スコアを基に作成されたロコモチャレンジ! 推進協議会考案)をテーマに考案されたレシピが、浜内氏より発表された。料理の特徴として、栄養バランスはもちろん、減塩、血糖値の維持、咀嚼のくせ付けなどに注意を払い作成されたという。 最後に一言として、高田氏は「たんぱく質の摂取の研究はこれからの課題。毎食少しの工夫でうまく摂ってほしい」、藤田氏は「筋肉量が多い人ほど病気の予後が良い。良質なたんぱく質の摂取を意識し筋肉を維持してほしい」、浜内氏は「食事が体を作る。今のライフスタイルに合わせて。食事にも気をかけてほしい」、最後に木村氏は「栄養バランスといいメニューをどう提供するか。健康長寿の延伸に資する製品を提供していきたい」とそれぞれ述べ、終了した。

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がん悪液質とグレリン様作用薬

 近年、グレリン様作用薬が、がん患者の悪液質症状の改善・軽減効果を示すことが大規模臨床試験で報告され注目を浴びている。そのような中、がん悪液質とグレリンの関係について、日本臨床栄養学会総会・日本臨床栄養協会総会の第16回大連合大会において、国立がん研究センター東病院の光永 修一氏が発表した。がん悪液質とは? がん悪液質は「通常の栄養サポートでは完全に回復することが困難で、進行性の機能障害をもたらし、著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝機能障害」(EPCRCガイドライン)と定義される。診断については、「(がん患者における)過去6ヵ月間で5%を超える体重減少がある」「BMI 20未満の患者で2%を超える体重減少がある」または「2%を超える体重減少とサルコペニアを認める」という基準が国際的コンセンサスを得ている。 がん悪液質の頻度は高く、緩和ケアがん患者では46%、進行肺がん初回化学療法前で14%、膵がん診断時では63%との研究結果がある。 がん悪液質患者の予後は悪く、緩和ケア外来、膵がん診断時ともに悪液質があると全生存期間が有意に低下している。また、がん悪液質の増悪と体重減少は相関することが明らかになっており、初回化学療法前のNSCLCの試験では、体重減少が大きいほど悪液質症状が強くなり、治療前および治療中の体重減少が大きいと生命予後が悪くなることが明らかとなっている。がん悪液質の4つの症状と3つの病期 がん悪液質の症状は多様である。そのさまざまな症状が相まって、患者のQOLを悪化させ、予後を悪化させる。がん悪液質の特徴的な症状としては、体重減少(Storage)、食欲不振(Intake)、CRP上昇などの病勢の悪化(Potential)、身体機能の低下(Performance)という4つ(SIPP)がある。 これら症状の程度によって、がん悪液質は「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」の3段階の病期に分類される。「前悪液質」は、代謝異常は伴うが、体重減少5%以下で比較的症状の軽度な段階。「悪液質」は、過去6ヵ月間で5%超の体重減少、といった前述の定義を満たし、食欲不振や全身炎症を伴う段階。「不応性悪液質」は、異化状態が進み、全身状態が低下し、治療抵抗性に陥っている段階とされる。グレリン様作用薬が悪液質患者の食欲を速やかに改善 がん悪液質は、「前悪液質」段階で治療を開始することで、高い介入効果が期待されている。そのため、悪液質誘導分子、炎症性サイトカイン、食欲に関わる神経内分泌調節不全といった、悪液質の初期段階に関与する標的に焦点を当てた、治療方法の開発が進んでいる。 その中で、グレリンは、食欲とともに、タンパク同化、消化器症状の緩和を促すことから、神経内分泌不全に対する効果が期待されている。また、がん悪液質患者では、内因性グレリンの作用が発揮されにくい可能性が示唆されている。 そのような中、外因性グレリンとしてグレリン様作用薬anamorelinの介入が研究されている。anamorelinは、第II相試験において良好な成績を示し、その後、NSCLCの悪液質患者を対象とした、第III相ROMANA1、ROMANA2試験が行われた。ROMANA1、2ともに500例近い患者が登録され、anamorelin群とプラセボ群で比較検討された。主要評価項目は、除脂肪体重および握力の変化量である。結果、主要評価項目の1つである除脂肪体重は、ROMANA1、2ともにanamorelin群で有意に優れていた。また、その改善は速やかであった。さらに、食欲についてもROMANA1、2ともに速やかに改善し、その後も改善は有意に持続していた。しかし、握力の改善は認められなかった。有害事象については、軽度の消化器症状が若干増加するものの、それ以外はプラセボと大きな違いはなかった。わが国でも、消化器がんと肺がんで第II相試験が行われ、国際的な第III相試験と同様の結果が報告されており、グレリン様作用薬anamorelinはがん悪液質治療の選択肢の1つとして期待されている。〔11月9日 記事の一部を修正しました〕■関連記事日本人肺がんの悪液質に対するanamorelin二重盲検試験の結果(ONO-7643-04)サルコペニア、カヘキシア…心不全リスク因子の最新知識※医師限定肺がん最新情報ピックアップ Doctors’Picksはこちら

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サルコペニア、カヘキシア…心不全リスク因子の最新知識【東大心不全】

急増する心不全。そのような中、従来はわからなかった心不全とリスク因子の関係が解明されつつある。最近注目されるサルコペニア、カヘキシアに焦点を当て、心不全との関係を東京大学循環器内科 石田 純一氏に聞いた。近年の心不全リスク因子に関する研究の動向を教えてください。従来、心不全に併存するリスク因子、予後増悪因子としては動脈硬化の素因以外に慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、貧血、炎症が知られていました。画像を拡大するその中で、過去約20年で体組成の変化、とくに体組成減少が新たな心不全のリスク因子、予後増悪因子として注目を集め始めています。いわゆるサルコペニア、カヘキシア(悪液質)と呼ばれるものです。「サルコペニア」はギリシャ語が語源で、肉や筋肉を意味する「サルクス」と減少を意味する「ペニア」を合わせて筋肉減少を指します。一般に加齢に伴う筋肉減少が一次性サルコペニア、活動低下あるいは慢性疾患に伴うものが二次性のサルコペニアと分類されています。画像を拡大する「カヘキシア」も語源はギリシャ語の「カコス」と「ヘキス」で、英語で言えばバッド・コンディション、これを日本語にすると悪液質となります。最近の定義としては、骨格筋だけではなく、体組成全体の減少を意味します。いわゆる心不全やがんなどの慢性疾患に合併する全身性の消耗状態と捉えられます。サルコペニアの場合、従来は加齢に伴う筋肉減少はある種当然のことと考えられていましたが、実際には減少する人としない人がいます。そしてサルコペニア、カヘキシアともに心不全患者で併存する場合は、併存しない場合と比較して心不全の予後が悪いということがわかりました。サルコペニア、カヘキシアはどのように診断をするのでしょうか?サルコペニアは1989年に提唱された新しい概念である一方で、カヘキシアは用語としては長らく存在していましたが、病態としての概念ができたのは近年のことなので、まだ必ずしも統一された診断基準はありません。サルコペニアについては、2つ重要な要素があるといわれています。1つは筋肉の量的減少、もう1つが筋力あるいは身体能力の低下です。実はこの2つは同じ意味と捉えられがちですが、筋肉量減少とそのまま相関して筋力低下に反映されるものではないので、2つをそれぞれ評価することが重要だといわれています。カヘキシアについてもガイドラインなどはありませんが、心不全に併存する場合、論文などでは、過去の6~12ヵ月以内に5%以上の体重減少と定義している場合が多いと思います。ただ、カヘキシアの診断では要注意点があります。心不全やがんの場合は水分貯留による浮腫が発生しがちです。しかし、浮腫はカヘキシアの定義である体重減少とは逆の体重増加ファクターです。つまり、実際には筋肉や脂肪は減少しているのに、浮腫でそれがマスクされてしまっている可能性もあるのです。そのため前述の体重減少5%以上は、この浮腫分を含まない状態として評価しなければならない困難さがあります。これが、カヘキシアに対する取り組みを困難にしている理由の1つにもなっています。心不全に併存するサルコペニア、カヘキシアの割合はどのくらいなのでしょうか。この数字も報告によってさまざまですが、概説するとサルコペニアの併存率は30~50%、カヘキシアが5~20%といわれています。しかもこの2つはどこに着目するかという違いなので、双方が併存するケースもありえます。サルコペニア、カヘキシアが心不全の予後悪化につながる機序はどのように解釈されているのでしょうか。現在は疫学的に予後悪化因子と捉えられているのみで、まだ詳しい機序は解明されていません。そもそもサルコペニアの場合、サルコペニア自体の機序が十分に解明されていないという事情もあります。一般論的には心筋の量と働きが正常ならば血液循環も正常なので、骨格筋が減少するサルコペニアやカヘキシアでは、心筋も減少することで心臓が正常に機能しなくなり、心不全が悪化すると推定されていますが、エビデンスがあるわけではありません。ただ、がんに伴うカヘキシアでは心臓萎縮を疑わせる心臓重量低下の報告があるので、骨格筋減少と心筋減少に一定の相関があると推察されています。近年では欧米を中心に、心不全患者で肥満あるいは肥満傾向の患者のほうが、予後が良いという“obesity paradox”が報告されています。もともと肥満は心不全発症のリスク因子として確定していますが、ひとたび心不全を発症した場合は、極度の肥満は論外ですが、体重がやや多めの患者さんのほうが予後は良好とのデータがあるのは確かです。このため以前は、肥満がある心不全患者では体重減少を図るべきとされていましたが、最近の欧州でのコンセンサスではBMI 35超でなければ無理に痩せる必要はないと記述しています。しかし、人種差なども考慮すれば、これを日本人に機械的に適用することはできません。日本で欧州のコンセンサスを反映させるならば、どの程度のBMIが許容できるのかは今後の課題だと思います。一方、obesity paradoxのような現象が認められてしまうのはBMIの限界ともいえます。BMIは指標としては使いやすいのですが、筋肉と脂肪の比率や代謝状況を反映していません。心不全でBMIを考慮する際には、より多面的な視点も必要だと考えています。サルコペニア、カヘキシアへの対処、治療法の現状を教えてください。画像を拡大する現在、サルコペニアやカヘキシアでの筋肉減少は、タンパク質の分解(異化)と合成(同化)のバランスの中で、分解亢進あるいは合成低下のいずれか、またはその双方が同時に起きていると考えられています。そこで、タンパク質分解の亢進に関与しているマイオスタチンの働きを抑制する物質を治療へ応用しようとの検討が、がんのカヘキシアで行われましたが、ヒトでの臨床試験で筋肉量増加は認められたものの筋力増強は認められず、開発は頓挫しました。もう1つ注目されているのが、タンパク質の合成を促進するアナモレリン(anamoreline)です。この薬剤は、欧州で臨床の無作為比較試験まで行われています。日本でも肺がんのカヘキシア患者を対象に無作為化比較試験まで実施されています。結果、筋肉量を増加することが明らかになっています。筋力増強は明らかになっていないものの、本邦での開発は継続中です。もっとも私が知る限り、心不全に併存するサルコペニア、カヘキシアでこうした化合物の臨床試験が行われた形跡はありません。心不全で臨床試験を行えば、がんとは違った結果が出る可能性はあると思います。結局、こうした化合物は、非常に多面的な要素が大きいサルコペニアやカヘキシアのシグナリングの中の1つにアプローチするにすぎないのが、際立った臨床成績が得られない理由とも推察されています。その意味では、すでに消化器外科などで多用され、食欲増進ホルモンのグレリンに作用するほか、比較的多面的な効果も示唆されている漢方薬の六君子湯(リックンシトウ)なども、今後のサルコペニアやカヘキシアの治療に対する可能性を秘めているかもしれません。薬剤開発以外ではいかがでしょう?現時点ではまだエビデンスが十分とはいえないのですが、運動療法、いわゆる有酸素運動はサルコペニアやカヘキシアの有無にかかわらず、心不全の予後、身体能力、QOLの改善にも効果的と指摘されています。ことサルコペニアやカヘキシアに関していえば、運動療法が前述の異化・同化のバランス崩壊に効果を示しているのだろうと推測されています。ただ、激しい運動は心不全ではリスクとなりますので、安全性・有効性の観点から、従来からある心臓リハビリの法則にのっとって、個々の患者さんごとに適した運動量、運動強度を考える必要があります。プライマリケアの先生方にお伝えしたいことがあれば教えてください。サルコペニアについては、2016年に、世界保健機関(WHO)が公表している「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)」に入るようになりましたが、カヘキシアとともにまだ認知度は高くはないと思われます。その意味では、まずはサルコペニア、カヘキシアという病態があり、慢性心不全に併存した場合に予後悪化因子になるということを知っていただきたいと思います。現時点で打てる対策は、安全な運動療法になりますが、心臓を中心に考えたトータルケアで、サルコペニアやカヘキシアへの注意は欠いてはならないことを念頭に置いていただければ幸いです。講師紹介

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第1回 高齢者糖尿病は何歳から? 何に注意が必要?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第1回 高齢者糖尿病は何歳から? 何に注意が必要?Q1 加齢と糖尿病の関係とは?糖尿病の頻度は加齢とともに増加します。平成28年度の国民栄養調査によると、70歳以上の高齢者で糖尿病が疑われる頻度は男性で23.2%、女性で16.8%となっています(図1)。また、糖尿病患者の中で70歳以上の割合は31.9%を占めています。加齢に伴う糖尿病患者の増加は、加齢に伴うインスリン抵抗性の増加、インスリンの追加分泌の低下、身体活動量の低下などが関係していると考えられています。画像を拡大するQ2 何歳以上を「高齢者糖尿病」として注意すべきでしょうか?高齢者糖尿病は一般に65歳以上の糖尿病を指しますが、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」では、75歳以上の後期高齢者と機能低下がある一部の前期高齢者が、「高齢者糖尿病」として、とくに注意すべき治療の対象とされています。これは、後期高齢者の糖尿病が前期高齢者の糖尿病と比較して、異なる特徴を示しているからです。第一に、高齢糖尿病患者を対象としたJ-EDIT研究における、MMSE(認知機能検査)の点数をみてみると、65~69歳の患者と比較して75歳以上の患者ではじめて有意に低下します(図2a)。また、日常生活動作であるADLも80歳以上で低下します。同じJ-EDIT研究で老研式活動能力指標を用いて、買い物、金銭管理などの手段的ADL、知的活動、社会的役割を含む高次ADLの障害数を評価したところ、80歳以上で有意に高次ADLの障害数が大きくなります(図2b)。画像を拡大するさらに、高齢者は加齢とともに体組成が大きく変化します。65歳以上の入院高齢糖尿病患者を対象に内臓脂肪面積100cm2以上の蓄積の頻度をみると、75歳以上で内臓脂肪蓄積が増加しています(図3a)。さらに、DEXA法で四肢の筋肉量(除脂肪量)をみると、男女ともに80歳以上で有意に低下しています(図3b)。この内臓脂肪の増加と筋肉量の低下は、インスリン抵抗性を大きくすることで、高齢者糖尿病の病態に大きく関わっています。画像を拡大する腎機能も75~80歳以上で有意に低下します。eGFRcreは筋肉量の影響を受けやすく、eGFRcysや血清シスタチンC濃度の加齢変化をみてみると、80歳以上で有意に増加しています(図4)。この腎機能障害は腎排泄性の薬剤(たとえばSU薬)の蓄積をもたらし、低血糖などの副作用を起こしやすくします。低血糖に関しても、80歳以上の患者で救急外来を受診する低血糖や重症低血糖が起こりやすいことが知られています。この重症低血糖の増加の原因は、上記の薬剤の蓄積しやすさに加えて、急性疾患によって食事摂取が低下しやすいこと、認知機能やADLの低下によって低血糖の対処能力が低下することが考えられます。合併症の中では、80歳以上の患者で脳卒中と心不全が起こりやすいことが知られています。上記に加えて、社会サポートが低下しやすいために、自立した生活を送ることが難しくなるだけでなく、インスリン注射などの糖尿病に関するセルフケアも困難になります。画像を拡大する Q3 「高齢者糖尿病」の治療目的・診断は若壮年者と違うのでしょうか?上記の理由から、「高齢者糖尿病」の治療目的は合併症の予防だけではなく、QOLの維持向上を目指し、さらに認知機能障害、ADL低下、サルコペニアなどの老年症候群を予防することにあります(図5)。また、QOLの維持・向上を図るためには、低血糖などを防ぎ、食のQOLを保つことも大切です。さらに、患者のみならず介護者の治療の負担を軽減することも大切です。なお、高齢者糖尿病の診断は若い人と同様に行います。画像を拡大する

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1日1回の牛乳摂取がサルコペニア予防に有効か~鳩山/草津コホート研究

 毎日普通乳を飲む習慣が、高齢者におけるサルコペニアの予防につながる可能性が示唆された。東京都健康長寿医療センター研究所の成田 美紀氏らが、日本の地域在宅高齢者を対象に、牛乳の摂取頻度とサルコペニアの有無との関連を検討したコホート研究により明らかにしたもの。第60回日本老年医学会学術集会(2018年6月14日~16日)において発表された。 本研究の対象は、鳩山コホート研究の2012年追跡調査対象者、および草津町研究の2013年高齢者健診受診者のうち、70歳以上でかつ簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)による食品摂取調査を行い、有効回答を得た810例(鳩山405例、草津405例)。牛乳の摂取状況は、普通乳あるいは低脂肪乳について、摂取頻度ごとに3群に分けて評価し、サルコペニアの診断にはAWGSの診断基準を用いた。 牛乳の摂取頻度とサルコペニアの有無との関連性は、多重ロジスティックモデルを用いて解析し、性、年齢、対象地域、総エネルギー摂取量(BDHQから推定)に加え、BMI(21.5未満、21.5以上25.0未満、25.0以上)、生活習慣(飲酒、喫煙および運動の習慣)、食品摂取の多様性スコア(牛乳の摂取頻度以外)および既往症(脊椎系疾患、骨粗鬆症の有無)について調整した。 主な結果は以下のとおり。・サルコペニア罹患者の割合は10.4%であった。・牛乳の摂取頻度(毎日1回以上、毎日1回未満、飲まない)の割合は、普通乳でそれぞれ52.9%、28.5%、18.6%、低脂肪乳で18.1%、16.4%、65.5%であった。・多変量解析の結果、普通乳を「飲まない」群に対する「毎日1回未満」と「毎日1回以上」の摂取群のサルコペニア保有リスク(多変量調整オッズ比)は、それぞれ0.47(95%信頼区間[CI]:0.22~1.03、p=0.059)、0.41(95%CI:0.20~0.83、p=0.013)となり、「毎日1回以上」摂取群で有意に低かった。・同じく低脂肪乳については、オッズ比はそれぞれ0.82(95%CI:0.36~1.85、p=0.627)、0.54(95%CI:0.20~1.47、p=0.225)であった。・サルコペニア罹患と有意な関連がみられたほかの要因は、高年齢1.16(95%CI:1.11~1.22、p<0.001)、BMI低値2.78(95%CI:1.56~4.96、p=0.001)、BMI高値0.41(95%CI:0.17~0.97、p=0.041)および脊椎系疾患の既往2.05(95%CI:1.08~3.91、p=0.029)であった。 発表者の成田氏は、「普通乳を飲む頻度が高い人では、総エネルギー摂取量や体重1kg当たりのタンパク質量が多く、PFC比におけるタンパク質・脂質比が上昇し、炭水化物比が減少している傾向がみられた。縦断研究で検証していく必要があるが、普通乳を毎日1回以上摂取することは、サルコペニア罹患に防御的であることが示唆された。高齢期における乳・乳製品の継続的な摂取は、筋肉量や身体機能の低下を抑制する可能性がある」とまとめた。

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世界初、大動脈プラーク破綻の撮影に成功

 動脈硬化病変である“プラーク”は、破綻により血栓を形成し、心筋梗塞などの致命的な虚血性疾患の原因となりうる。今回、大阪暁明館病院 心臓血管病センターの小松 誠氏らは、血管内視鏡を用いて、大動脈で破綻したプラークの発生、性状、大きさを調べることを目的に研究を行った。 結果として、大動脈プラークの自然破綻の様子が血管内視鏡の使用により初めて明らかにされ、コレステロール結晶の多彩な形状が実証された。本結果は、論文としてJournal of the American College of Cardiology誌2018年6月26日号に掲載。 本研究では、冠動脈疾患患者あるいは冠動脈疾患が疑われる患者324例に、血流維持型血管内視鏡を使用した大動脈内部の観察が行われた。その過程で、破綻したプラークの断片を採取し、偏光顕微鏡を用いて微小結晶状物質を分類し、大きさを測定した。 主な結果は以下のとおり。・324例中、262例(80.9%)の患者で、自然破綻した大動脈プラークが見つかった。そのうち120例は、横隔膜より下位で破綻していた。・96例から482個のサンプルが採取され、アテローム性物質237個(49.1%)、フィブリン244個(50.6%)、マクロファージ111個(23.0%)、石灰化127個(26.3%)が観察された。・サンプルとして得られたプラーク断片の長さの中央値は254μm、幅の中央値は148μmであった。・アテローム性物質に含まれるコレステロール結晶は、数層~数十層に折り重なって血中に遊離・飛散する“重層タイプ”と、1枚単位で遊離・飛散する“単層タイプ”があることがわかった。・アテローム性物質から分離されたコレステロール結晶の大きさは、40μm×30μmであり、ゴースト像の86μm×13μmと比較して、小さい傾向にあった。 この結果に対し、日本血管映像化研究機構は以下のように解釈している。 本研究では、プラーク破綻に伴い、大動脈中に飛散する微小コレステロール結晶の性状を、世界で初めて生体内で確認することに成功した。これまで、病理標本のゴースト像(標本を有機溶媒で洗浄した後に観察される、無数の細かい穴)としてしか認識されていなかったコレステロール結晶の、多彩な形状が実証された。 この遊離コレステロール結晶は、動脈血中のみに存在し、静脈血ではほとんど観察されないことから、末梢組織で濾過され、全身臓器中の毛細血管の塞栓子となっている可能性がある。すなわち、認知症やサルコペニア、慢性腎臓病などにおける虚血性細胞死の起因物質とも考えられ、今後の研究によっては、疾患概念を変える発見になるかもしれない。■参考NPO法人 日本血管映像化研究機構

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高齢者糖尿病の治療で避けたい治療薬

 2018年5月24日より3日間開催された第61回日本糖尿病学会年次学術集会(学会長:宇都宮 一典)にて「高齢者糖尿病の病態と診療のポイント」をテーマに、井藤 英喜氏(東京都健康長寿医療センター 理事長)が教育講演を行った。 本稿では教育講演の概要をお届けする。全糖尿病患者の約80%が60歳以上という現実 わが国の高齢者人口は、全人口の27%を超え、これに伴い60歳以上の糖尿病患者が全糖尿病患者の約80%を占める状況となった。こうした状況を受け、高齢糖尿病患者特有の症状や病態を考慮に入れ、欧米のガイドラインなどを参考に、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会により作成された『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』(南江堂)、『高齢者糖尿病治療ガイド2018』(文光堂)が発行された。ガイドラインでは、高齢者糖尿病を認知機能やADLなどの条件で3つのカテゴリーに分け、血糖コントロール目標値をカテゴリー別に7.0~8.5%未満に設定するとともに、重症低血糖が危惧される糖尿病薬を使用している場合は目標値に下限値を設けるなどの指針を示すものとなっている。高齢者糖尿病に特有な病態の理解が必要 高齢者糖尿病は2型がそのほとんどを占め、発症原因として生活習慣の集積に加え、臓器の加齢変化が指摘されている。また、患者は糖尿病に加え、高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症(ASO)、腎機能障害、がんなど多彩な疾患を合併していることが多く、多剤を併用しているケースが多い。多剤併用や糖尿病薬で起こる低血糖は、うつ、認知機能低下、QOLの低下、転倒・骨折など、さまざまな弊害をもたらす。とくに低血糖に関し、「高齢者では、無自覚、あるいは症状があっても非典型的な場合もあり、周囲からの注意も必要だ」と同氏は警鐘を鳴らす。また、糖尿病自体が、要介護の原因となる認知症や転倒・骨折などの老年症候群の危険因子であることが明らかにされており、「高齢者糖尿病の診療では、いかに老年症候群の発症・進展を予防するかも含め、考える必要がある」と同氏は指摘する。高齢者糖尿病の治療で大事なポイント 高齢者糖尿病の治療では、大きな目標として成人糖尿病と同じく「血管合併症の予防」があるが、同時に、高齢者では「健康寿命の延伸」「老年症候群の予防」「重症低血糖の予防」が重要であり、そのためには「患者背景に即した安全・妥当な治療」の実施が求められる。血糖に関しては、診療ガイドラインに記載されているとおり、年齢、認知機能、ADLの状況、併存疾患、使用薬剤を考慮に入れ、個々の症例に最適と考えられている血糖コントロール目標値を目安にコントロールする。 食事療法は、75歳以上の後期高齢者ではタンパク質摂取量が少ないほど死亡率が上昇する。そして、高齢者ではタンパク質摂取量が低下すると筋肉量や筋力が減少し、フレイルやサルコペニアなどの老年症候群が惹起されやすくなるといったことから、タンパク質を含む食品、肉や魚、さらに大豆、ミルク・乳製品、豆類などの摂取が推奨される。また、大豆製品や野菜、海藻などの摂取は、認知機能維持に有用という報告もあるので、高齢者ではとくにこれらの食品の摂取が勧められる。 運動療法は、定期的な身体活動が代謝異常の是正だけでなく、生命予後、ADLの維持、認知機能低下の抑制に有用であるとされる。歩行、水泳などに代表される有酸素運動、スクワット、ダンベルに代表されるレジスタンス運動のほかに、高齢者糖尿病では、片脚立ちなどのバランス運動が転倒予防に有効であり、これらを絡めて行う必要がある。 薬物療法では、ガイドライン記載のとおり、「低血糖の防止」「多剤併用への注意」が重要となる。とくに「低血糖を起こしやすいSU薬、グリニド薬、インスリンの使用はなるべく避け、使用する場合は、低血糖対策を立て、患者や介護者にその対処法を十分説明しておく必要がある。また、高齢者はシックデイになりやすいので、低血糖同様にそれへの対応・予防策の教育も大事だ」と同氏は指摘する。 最後に「高齢者糖尿病患者の診療は、患者のQOLの維持・向上、現在の生活の継続を支援するという視点から考えた治療を行い、患者の生活背景を考慮に入れ、起こりうる有害事象を避けながら治療を継続していくことが重要だ」と同氏は語り、講演を終えた。

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身体能力低下の悪循環を断つ診療

 2018年4月19~21日の3日間、第104回 日本消化器病学会総会(会長 小池 和彦氏[東京大学医学部消化器内科 教授])が、「深化する多様性~消化器病学の未来を描く~」をテーマに、都内の京王プラザホテルにおいて開催された。期間中、消化器領域の最新の知見が、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップなどで講演された。 本稿では、その中で総会2日目に行われた招請講演の概要をお届けする。フレイル、サルコペニアに共通するのは「筋力と身体機能の低下」 招請講演は、肝疾患におけるサルコペニアとの関連から「フレイル・サルコペニアと慢性疾患管理」をテーマに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)を講師に迎えて行われた。 はじめに高齢者の亡くなる状態を概括、いわゆるピンピンコロリは1割程度であり、残りの高齢者は運動機能の低下により、寝たきりなどの介護状態で亡くなっていると述べ、その運動機能の低下にフレイルと(主に一次性)サルコペニアが関係していると指摘した。 フレイルは、「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表し、要介護状態に至る前段階として位置付けられている(ただし、可逆性はあるとされる)。また、サルコペニアは「高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下」と定義される。両病態はお互いに包含するものであり、とくに筋力と身体機能の低下は重複する。フレイル、サルコペニアは世界初のガイドラインなどで診療 診療については、『フレイル診療ガイド 2018年版』と『サルコペニア診療ガイドライン 2017年版』が世界で初めて刊行され、詳しく解説されている(消化器領域では『肝疾患におけるサルコペニアの判定基準』により二次性サルコペニアの診療が行われている)。 フレイルの診断は、現在統一された基準はなく、一例として身体的フレイルの代表的な診断法と位置付けられている“Cardiovascular Health Study基準”(CHS基準)を修正した日本版CHS(J-CHS)基準が提唱され、体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度、身体活動の5項目のうち3つ以上の該当でフレイルと判定される。スクリーニングでは、質問形式で要介護認定ともシンクロする「簡易フレイルインデックス」など使いやすいものが開発されている。 一方、サルコペニアも同様に統一基準はないが、Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によってアジア人向けの診断基準が作られ、年齢、握力、歩行速度、筋肉量により診断されるが、歩行速度など、わが国の実情に合わない点もあり注意が必要という(先の二次性サルコペニアの診断ではCT画像所見による筋肉量の測定がある)。 また、両病態とも筋肉量の測定など容易ではないが、外来で簡単にできる「指輪っかテスト」なども開発され、利用されている。 治療に関しては両病態ともに、レジスタンス運動を追加した運動療法や、十分な栄養を摂る栄養療法が行われる。詳細は先述のガイドラインなどに譲るが、「タンパク質」の摂取を例に一部を概略的に示すと、慢性腎不全の患者では腎臓機能維持の都合上、タンパク質の摂取が制限されるが、その制限が過ぎるとサルコペニアに進んでしまう。そのため、透析に進展させない程度のタンパク質の摂取を許すなど、患者のリスクとベネフィットを比較、検討して決めることが重要という。薬剤が6種類を超えるとハイリスク 続いて「ポリファーマシー」に触れ、ポリファーマシーはフレイルの危険因子であり、薬剤数が6種類を超えるとハイリスクになると指摘する(5種類以上で転倒のリスクが増す)。また、6種類以上の服用はサルコペニアの発症を1.6倍高めるというKashiwa studyの報告を示すとともに、広島県呉市のレセプト報告を例に85~89歳が一番多くの薬を服用している実態を紹介した。 消化器領域につき、「食欲低下」では非ステロイド性抗炎症薬、アスピリン、緩下薬などが、「便秘」では睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン)、三環系抗うつ薬などが、「ふらつき・転倒」では降圧薬、睡眠薬・抗不安薬、三環系抗うつ薬などが関係すると考えられ、「高齢者への処方時は、優先順位を決めて処方し、非専門領域についても注意してほしい」と語った。とくに「便秘」は抗コリン薬が原因になることが多いという。また、「GERD」についてはH2ブロッカーが認知機能を低下させる恐れがあるため注意が必要であり、第1選択薬のPPIでも漫然とした長期使用は避けるなど、必要に応じた使い方が望ましいという。 まとめとして、高齢者の生活改善では「規則正しい食事」「排泄機能の維持」「適切な睡眠習慣」が大切で、とくに「食事は服薬のアドヒアランス維持のためにも気を付けてもらいたい」とその重要性を指摘した。最後に秋下氏は「フレイル、サルコペニアは、身体的な負の悪循環を形成することを理解してもらいたい」と述べ、レクチャーを終えた。■参考第104回 日本消化器病学会総会■関連記事ニュース 初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊

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初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊

 本邦初となる「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」が2017年12月25日に発刊されたことを受け、2018年1月10日、都内でプレスセミナー(日本サルコペニア・フレイル学会主催)が開催された。セミナーでは本ガイドラインの作成委員長を務めた荒井 秀典氏(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター長)が登壇し、サルコペニア診療ガイドライン作成の背景と、その概要について解説した。サルコペニア診療ガイドラインはCQ形式で定義・診断から治療まで サルコペニアは、2016年10月に国際疾病分類第10版(ICD-10)のコード(M62.84)を取得し、独立した疾患として国際的に認められた。転倒・骨折につながるなど高齢者の日常生活動作(ADL)低下のリスク因子となるほか、併存疾患の予後にも影響を及ぼすが、早期介入により維持・改善が可能な場合もあることが明らかになっている。しかし、現在のところ本邦の傷病分類には含まれておらず、国際的にも診断・治療の標準となるガイドラインは存在しない。これらを背景に、“現時点での標準的な診療情報を提供すること”を目的として日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年医学会、国立長寿医療研究センターが主体となり、ガイドライン作成が進められた。 サルコペニア診療ガイドラインは全編Clinical Question(CQ)形式で構成され、「サルコペニアの定義・診断」「サルコペニアの疫学」「サルコペニアの予防」「サルコペニアの治療」という4つの章ごとに全体で19のCQを設定。予防・治療に関しては、システマティックレビューによるエビデンスの評価に基づき、「エビデンスレベル」「推奨レベル」が提示されている。サルコペニア診療ガイドラインでは診断基準にAWGSのものを推奨 サルコペニアの診断に関しては、複数の基準が提唱されており、今回のガイドライン作成にあたってのレビューでは7種の診断基準が確認された。サルコペニア診療ガイドラインでは、アジア人を対象として設定されたAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の診断基準を推奨している。「ただし、診断に使われる骨格筋量の測定/分析装置(DXAあるいはBIA)のある医療機関は限られているため、日本人を対象として開発された“指輪っかテスト”等、誰にでもできるスクリーニング法が有用だ。握力テストと組み合わせることで、診療所などでもリスクの高い患者をスクリーニングすることが可能だろう」と荒井氏は述べた。 サルコペニア診療ガイドラインは今後5年ごとの改訂を目指している。荒井氏は最後に、「長期的なアウトカム等、診断から治療まで全体としてまだまだエビデンスが不足している。より簡便・正確な診断法、薬物療法を含む新たな治療法も今後開発されていくと思われ、5年後を目途にエビデンスを蓄積していきたい」とまとめた。

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第36回日本臨床運動療法学会学術集会 開催のご案内

 日本臨床運動療法学会(会長 木村 穣氏 関西医科大学 健康科学センター 教授)は、2017年9月2日(土)・3日(日)に、第36回の学術集会を大阪市にて開催する。テーマは「臨床医学と運動のさらなる融合」で、臨床における運動、スポーツ、身体活動に関する講演のほか、実技実習も予定されている。また、今回は学会初となる、参加者の不活動を予防する仕組みとして、セッションの合間に「レッツBSL(Break Sedentary Lifestyle)」と称したストレッチビデオの上映を行う。開催概要【開催日】2017年9月2日(土)・3日(日)【会場】メルパルク大阪(新大阪) 会場案内はこちら【主要プログラム】・会長講演  「臨床医学と運動のさらなる融合」  演者:木村 穣氏(関西医科大学 健康科学センター 教授)・特別講演  「エピジェネティクス入門 -その分子基盤から臨床応用まで-」  「ACSM EIM National Center 韓国および各国の現状と課題 The challenge of EIM Korea」・シンポジウム  「疾患別(乳がん、COPD、糖尿病、メタボなど)運動療法」  「運動指導士の臨床への架け橋をどう築くか」ほか・パネルディスカッション  「指定運動療法施設ガイドライン設立に向けての実態調査」(EIM Japan共同開催)  「糖尿病エネルギー必要量と身体活動」・教育講演  「運動療法の心理的恩恵-感情に注目した運動の効果-」  「サルコペニアと運動療法」ほか・実技実習  「CPX実習 & CPX症例検討会」  「木剣体操」ほか・ランチョンセミナー  「植え込みデバイス患者の包括的な心臓リハビリテーションを考える」  「CGM(持続血糖測定)の最新情報」※一般演題など詳細は、学会ホームページのプログラムをご覧ください。■参考第36回日本臨床運動療法学会学術集会ホームページフェイスブック

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肥満高齢者に対するダイエット+(有酸素運動+筋トレ)併用療法はフレイル防止に有効 ?(解説:島田 俊夫 氏)-689

 肥満治療をダイエットのみで行えば高齢者では筋肉、骨量の減少を加速し、サルコペニア、オステオペニアが生じやすい。肥満は一般集団では多数の疾患の危険因子となる1)一方で、高齢者では肥満パラドックス2)が注目を浴びている。それゆえ過度な減量を避け、食事・運動療法を適宜組み合わせ、体力・筋力温存維持に努めることが健康寿命の延長につながる。本研究はDennis T. Villareal氏らによるNEJM誌2017年5月18日号に掲載された、高齢者肥満治療の重要ポイントを指摘した興味深い論文である。方法:160人の肥満高齢者を対象とした臨床試験で、体重減量により生じるフレイルや筋肉・骨量の減少を防ぐために複数の運動モデルの効果が試された。参加者は4群からなり、体重調整プログラム3群([1]有酸素運動プログラム、[2]筋肉トレーニング・プログラム、[3]両者の併用プログラム)と、コントロール群(ダイエット、運動療法なし)に無作為に割り付けた。 主要評価項目はベースラインから6ヵ月間の身体機能検査スコアの変化(スコア範囲:0~36、高スコアはより良好な機能を示す)、副次評価項目は他のフレイル尺度、身体成分、骨密度、身体機能の変化とした。結果:全体で141人(88%)が研究を完遂した。身体スコアは、有酸素運動群(29.3から33.2点に)、筋トレ単独群(28.8から32.7点に)ともに14%増加した。併用群は21%(27.9から33.4点に)と大幅に増加した(いずれもボンフェローニ補正後、p=0.01およびp=0.02)。同スコアは運動実施群すべてで対照群よりも大幅に増加した(いずれの群間比較においてp<0.001)。最大酸素消費量(mL/kg/分)は併用群17%(17.2から20.3に)、有酸素運動群18%(17.6から20.9に)で、筋トレ群8%(17.0から18.3に)に比べ大幅に増加した(両方ともp<0.001)。筋力は有酸素運動単独群で4%(265から270kgに)と小幅な増加にとどまったが、併用療法群18%(272から320kgに)、筋トレ群19%(288から337kgに)はともに大幅に増加した(両方の比較に対してp<0.001)。体重はすべての運動実施群で9%減少したが、対照群では有意な体重変化はなかった。股関節骨密度(g/cm2)も同様に、併用療法群1%(1.010から0.996に)、筋トレ群0.5%(1.047から1.041に)と両群で減少するも、有酸素運動群の3%(1.018から0.991に)と比較し減少の程度は軽かった。また、除脂肪体重も併用療法群3%(56.5から54.8kgに)、筋トレ群2%(58.1から57.1kgに)と両群で減少したが、有酸素運動群5%(55.0から52.3kgに)の減少と比べ、わずかな減少にとどまった(すべての比較に対してp<0.05)。 運動に関連した有害事象は筋・骨格障害などが報告された。コメント:本論文でダイエット+(有酸素運動+筋トレ)併用運動療法群が高齢肥満者のダイエット単独治療の問題点であるサルコペニアやオステオペニアを防止しながら適切な肥満是正可能な治療法だと報告した。著者の結論に賛同したいが症例数が少なく、症例の偏りもあり結論を一般化するには症例の蓄積が必要と考える。また、高齢者では潜在的心疾患患者が含まれる可能性も高く、運動療法中の事故を回避するため治療前リスク評価は必要不可欠である。日常生活に今回の結論をうまく取り入れれば高齢者を脅かす認知障害、フレイルを含む生活習慣病対策になるかもしれない。 ■参考1)Calle EE, et al. N Engl J Med. 1999;341:1097-1105.2)Oreopoulos A, et al. Clin Geriatr Med. 2009;25:643-659.

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高齢者の肥満、有酸素運動+筋トレの併用が有効/NEJM

 肥満高齢者に対し食事による減量プログラムと運動療法を行う際、有酸素運動と筋力トレーニングを併せて実施することで、有酸素運動または筋力トレーニングのみを実施する場合に比べ、半年後の身体機能はより大幅に向上することが示された。米国・ベイラー医科大学のDennis T. Villareal氏らが、160例の高齢者を対象に行った無作為化比較試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年5月18日号で発表した。肥満はフレイルの原因となるが、減量は加齢に伴う筋量および骨量の低下を加速させ、結果としてサルコペニアやオステオペニアを生じさせるのではと指摘されていた。有酸素運動、筋力トレーニングとその併用を比較 研究グループは、肥満高齢者160例を対象に、減量によるフレイルからの回復や筋量・骨量の減少予防に資する、より効果的な運動の種類について検証した。 被験者を無作為に4群に分け、うち3群は減量プログラムとともにそれぞれ1)有酸素運動、2)筋力トレーニング、3)有酸素運動と筋力トレーニングを併用した。4)対照群には減量プログラムも運動療法も行わなかった。 主要評価項目は、ベースラインから6ヵ月後の、身体機能テスト(Physical Performance Test:0~36点で、高いほど身体機能が良好)の点数の変化とした。副次的評価項目は、その他のフレイルに関する指標、骨密度、身体機能の変化などとした。除脂肪体重の減少、有酸素運動群で5%と最大 被験者のうち試験を完了したのは141例(88%)だった。 身体機能テストのスコア変化は、1)有酸素運動群が14%(29.3から33.2点に)増加、2)筋トレ群が14%(28.8から32.7点に)増加だったのに対し、3)有酸素運動+筋トレ群は21%(27.9から33.4点に)増加と、より大幅に上昇した(それぞれボンフェローニ補正後、p=0.01、p=0.02)。また、すべての運動群は対照群と比べ、同点数が大幅に増加した(いずれもp<0.001)。 最大酸素消費量は、3)有酸素運動+筋トレ群(17%増)と1)有酸素運動群(18%増)が、2)筋トレ群(8%増)より大幅に増加した(いずれもp<0.001)。 筋力については、3)有酸素運動+筋トレ群(18%増)と2)筋トレ群(19%増)が、1)有酸素運動群(4%増)より大幅に増加した(いずれもp<0.001)。体重は、すべての運動群で9%減少したのに対し、4)対照群では有意な変化は認められなかった。 一方、除脂肪体重は、1)有酸素運動群では5%低下だったのに対し、3)有酸素運動+筋トレ群と2)筋トレ群ではそれぞれ3%低下、2%低下と、減少率はより小幅にとどまった(いずれもp<0.05)。股関節骨密度低下についても同様に、1)有酸素運動群が3%低下に対し、3)有酸素運動+筋トレ群と2)筋トレ群ではそれぞれ1%低下、0.5%低下にとどまった(いずれもp<0.05)。 運動関連の有害事象は、筋骨格損傷などが報告された。

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第9回 SGLT2阻害薬による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第9回】SGLT2阻害薬による治療のキホン―どのような患者さんに適しているのでしょうか。 健康成人では、1日に約180gのグルコースが腎臓の糸球体でろ過され、一旦、尿中に排泄されますが、尿中に排泄されたグルコースは、近位尿細管の細胞膜上に発現しているトランスポーター(共輸送体)であるSGLTを介して再吸収され、血液中に運ばれます。SGLTには1~5の5つのサブタイプがあり、腎臓にはSGLT1およびSGLT2が発現していますが、近位尿細管におけるグルコースの再吸収は、約90%はSGLT2が、残りの約10%をSGLT1が担っています1)。 SGLT2阻害薬は、選択的にSGLT2を阻害し、近位尿細管におけるグルコースの再吸収を阻害して、そのまま尿中に排泄させることで、血糖を低下させます。インスリン分泌を介さずに血糖を低下させるという特徴に加え、血糖低下以外にも、尿糖排泄によるエネルギー漏出の代償として、体重減少が期待できるという特徴があります(約65~80g程度のグルコースが排出され、1日当たり260~360kcalのエネルギー消費に相当2))。尿糖排泄は血糖依存性で、血糖値が高ければ高いほど尿糖排泄量は増加するため、食後の高血糖改善に適しているように思えますが、尿細管での再吸収阻害による尿糖排泄速度が、食後の腸管からの糖の吸収速度には追いつかないため、どちらかというと食後よりも空腹時に対する効果が期待できます。そのため、空腹時血糖値が高く、肥満があり、高インスリン血症を来しているような患者さんが適しています。 単独、併用、いずれにおいても血糖低下効果は期待できますが、これまでのインスリン分泌やインスリン感受性に働きかけて血糖を低下させる薬剤とまったく異なる作用機序であるため、第1選択薬として用いるよりも、第2、第3の薬剤として用いることで、他の薬剤との併用による上乗せ効果を得やすいという特徴があります。 SGLT2阻害薬は、インスリン分泌を介さずに、尿中への糖の排泄を促進することで、強力、かつ速やかに血糖を低下させるため、糖毒性が軽減できることが明らかになっています3)。他の経口血糖降下薬を使っていても血糖コントロール不良で、高血糖が持続し、糖毒性を来していると考えられる患者さんに上乗せすることで、膵β細胞を休ませながら、速やかに血糖を低下させ、糖毒性を解除するという使い方ができます。 糖毒性が解除されると、それまで使っていた薬剤の効果が増強されます。例えば、DPP-4阻害薬を使っていても血糖コントロール不良な患者さんの場合、高血糖状態の持続により、膵β細胞のGLP-1受容体の発現が低下してしまいます。そのため、DPP-4阻害薬の効果が十分発揮できていない可能性があります。そこにSGLT2阻害薬を上乗せすると、インスリン分泌を介さない速やかかつ強力な血糖低下作用により、急速に糖毒性が解除され、ブドウ糖応答インスリン分泌(食後のインスリン追加分泌)が回復します。加えて、低下していたGLP-1受容体の発現が増加し、それにより、高血糖状態が持続していた時に効きの悪かったDPP-4阻害薬の効果が増強されるようになります。実際に、フロリジンを投与した膵切除高血糖ラットで、膵臓β細胞におけるGLP-1受容体の増加がみられたことが報告されています4)。 糖毒性が解除され、既存の薬剤の効果が増強されると、急激に血糖値が下がってくる恐れがあるため、低血糖を惹起しやすいSU薬などを併用している場合は注意が必要です。高用量のSU薬を使っている場合は、SGLT2阻害薬を併用する際には、減量を検討したほうがよいでしょう。 SGLT2阻害薬については、血糖低下作用以外に、体重減少が期待でき、体重についても、血糖低下と同様、投与初期から効果がみられるため、それを期待して肥満の患者さんに投与することがありますが、前述したように、尿糖排泄により、エネルギーが漏出するため、最初は体重が減少するものの、しばらくするとエネルギーの枯渇により空腹感が増したり、甘いものが食べたくなるなどして、体重が増加してしまうケースがあります。実際に、自由摂餌下でSGLT-2阻害薬を投与した食餌性肥満ラットにおいて、摂餌量の増加が認められたことが報告されています5)。SGLT2阻害薬を投与した患者さんでは、定期的に食事療法をチェックし、問題があれば見直す必要があります。 SGLT2阻害薬を使っていて、体重が増加してしまうような患者さんに対して、食欲抑制効果を有するGLP-1受容体作動薬を併用するのも良い方法です※。実際に、海外で行われた、GLP-1受容体作動薬エキセナチド(商品名:ビデュリオン)と、ダパグリフロジンの併用療法の効果をみたDULATION-8試験で、それぞれの単独療法よりも、血糖低下および体重減少において効果が認められたことが示されています6)。 ※現在、日本でSGLT2阻害薬との併用が認められているのは、1日1回投与のリラグルチド(商品名:ビクトーザ)と週1回投与のデュラグルチド(商品名:トルリシティ)のみ。―各製剤の特徴について教えてください。 2014年に最初のSGLT2阻害薬が発売され、今では6種類7製剤のSGLT2阻害薬が臨床使用できるようになりました(2016年3月現在)。これらSGLT2阻害薬の血糖低下作用はおおむね同等と思っていますが、私は、腎でグルコースの再吸収を担うSGLT2と同じファミリーであるSGLT1に注目しています。 前述したように、腎における糖の再吸収の約90%はSGLT2阻害薬が主にターゲットとしているSGLT2によりますが、残り10%はSGLT1が担っています1)。SGLT1は主に小腸上部に存在し、腸管からの糖の吸収・再吸収という役割を担っています7)。SGLT2に選択性が高いSGLT2阻害薬の場合、腎における糖の再吸収抑制という点ではよいのですが、食直後に消化管から糖が吸収されるスピードに、尿細管での糖の再吸収阻害がどうしても追いつかない、つまり食後の高血糖を十分是正できない、という問題が出てきます。これがSGLT2阻害薬の弱点でもあるのですが、SGLT2阻害薬の中にはSGLT2に対する選択性が低い、つまりSGLT1の阻害作用を持つ薬剤もあり、そのような薬剤では、食後の小腸における糖の吸収遅延による食後高血糖の改善が期待できます。実際に、健康成人を対象に、SGLT2に対する選択性が低いカナグリフロジン(商品名:カナグル)とプラセボを投与した無作為化二重盲検比較試験で、カナグリフロジンで、小腸での糖の吸収を遅らせ、食後の血糖上昇を抑制したという報告があります8)。また、健康成人を対象に、カナグリフロジンと、カナグリフロジンに比べてSGLT2に対する選択性が高いダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の薬力学的効果を比較した無作為化二重盲検クロスオーバー試験で、カナグリフロジンで食事負荷試験後の血糖上昇を抑制したことが報告されています9)。これは、小腸における糖の吸収遅延により食後高血糖を改善するα-GIと同じ作用と考えてよいでしょう。このSGLT1の小腸における糖の吸収・再吸収という作用に着目し、SGLT2とSGLT1の両方を阻害するデュアルインヒビターが現在、海外では開発中です。―尿路感染症や性器感染症が心配です。実際、どのくらいの頻度で発生するのでしょうか。 SGLT2阻害薬では、尿糖排泄作用により、尿中の糖が増えることで、尿路および生殖器が易感染状態となり、尿路感染症や性器感染症が発現しやすくなる可能性があります。発現頻度については、各薬剤の治験および市販後調査の結果が発表されていますので、そちらを参考にしていただければと思います。 SGLT2阻害薬を処方する際には、尿路感染症や性器感染症が発現しやすくなることをあらかじめ患者さんに伝えたうえで、尿意を我慢しないこと、陰部を清潔に保つことを心掛けてもらい、排尿痛や残尿感、陰部のかゆみ、尿の濁りなどがあればすぐに受診するよう、伝えます。また、適宜、問診や検査を行って発見に努めるようにします。―高齢者における安全性はどのように考えればよいのでしょうか。 尿糖排泄を促進するSGLT2阻害薬では、浸透圧利尿作用が働き、頻尿・多尿になり、体液量が減少するために、脱水症状を起こすことがあります。この循環動態の変化に基づく副作用として、引き続き重症の脱水と脳梗塞の発生が報告されているため、脱水には十分注意する必要があります。高齢者は特に脱水を起こしやすいため、高齢者への投与は無理をせず、慎重に行います。 日本糖尿病学会による「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation(2016年5月12日改訂)」10)では、高齢者に対するSGLT2阻害薬の使用については、「75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する」としています。 SGLT2阻害薬の尿糖排泄促進作用は、血糖に依存します。つまり、血糖値が高ければ高いほど、尿へ排泄される糖の量が多くなるため、尿量も増加します。そのため、血糖値が高い投与初期は、とくに注意する必要があります。患者さんには、SGLT2阻害薬で脱水を生じる可能性があることを伝えたうえで、意識して水分を多く摂取するよう指導します。尿量が指標になるため、尿量が多いと感じたら、いつもより水分を多めに摂取するように、というのもよいでしょう。また、夜に糖質の多い食事をたくさん食べてしまうと、夜間の尿量が増え、排尿のために睡眠が妨げられてしまうことがあります。快適な睡眠のためにも、夜は糖質の多い食事を控えるのもよいでしょう。発熱や嘔吐・下痢などがあるとき、食欲がなく、食事が十分とれないときには(シックデイ)、脱水の原因にもなりますので、休薬してもらいます。 SGLT2阻害薬を投与しているときは、血液検査所見で脱水がないかどうかを定期的に観察します。脱水の代表的な指標はヘマトクリット(Ht)値ですが、腎に作用するSGLT2阻害薬では、腎から分泌され、赤血球の産生を促すホルモンである、エリスロポエチンに影響を及ぼす可能性が指摘されていますので、合わせてBUNやCreでみるのがよいと思います。1)Fujita Y, et al. J Diabetes Investig. 2014;5:265-275. 2)羽田勝計、門脇孝、荒木栄一編. 糖尿病最新の治療2016-2018. 南江堂;2016.3)Bailey CJ. Trends Pharmacol Sci. 2011;32:63-71.4)Gang Xu et al. Diabetes 2007; 56: 1551-15585)Devemy J et al. Obesity 2012; 20(8):1645-16526)Frias JP, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4:1004-1016.7)稲垣暢也編. 糖輸送体の基礎を知る. SGLT阻害薬のすべて. 先端医学社;2014.8)Polidori D, et al. Diabetes Care. 2013;36:2154-2161.9)Sha S, et al. Diabetes Obes Metab. 2015;17:188-197.10)SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation. 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」

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159)肥満サイクルからの脱出に向けて【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者中性脂肪が、なかなか減らないんです。医師中性脂肪はエネルギー源ですから、まずは体を動かすことが大切ですね。患者動かすこと?医師そうです。家でゴロゴロしていると、何かをつまみたくなります。患者確かに。医師そうすると、体脂肪が増えて、動きたくなくなります。患者それ、私です!医師それが「肥満サイクル」です!ここから抜け出すためには、ゴロゴロしないことが大切です。患者はい。わかりました。なるべく外へ出かけるようにします。●ポイントフレイルサイクル(加齢による食欲・食事量低下→低栄養→サルコペニア→動かない→食欲低下)と比較しての説明もできます

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45歳から考える運動器のライフプラン

 11月29日、ロコモ チャレンジ!推進協議会主催のイベント、第3回ロコモサロンが、都内において開催された。イベントでは、ロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」)の普及の道程を振り返るとともに、国をはじめとする行政の取り組み、同会に所属している組織のロコモへの取り組み事例などが報告された。気が付かないうちに進む運動器の衰え はじめに同会の委員長である大江隆史氏(NTT東日本関東病院 手術部長/整形外科主任医長)が、「ロコモ提唱から9年の軌跡と今後の展望」と題して講演を行った。 2007年にロコモが提唱されて以来、ロコモチェック、ロコモ度テスト、さらに多くの疫学研究がなされるとともに、広報活動にも力を入れてきたことを振り返った。また、2010年には日本整形外科学会の外部委託事業としてロコモ チャレンジ!推進協議会が設立され、ロコモアドバイスドクター、ロコモメイトの新設など新たな取り組みを実施、全国の市町村への支援も報告された。 ロコモの認知度については、2012年の調査開始時点で17.3%だったものが、本年2016年には47.3%へと推移。とくに70歳以上の女性では74.1%の認知度なのに対し、20~29歳の女性(31.1%)、40~49歳の男性(35.5%)のように青壮・中年層での認知度が低いことが課題だと報告された。 今後10年の展望として、さらに啓発活動を実施するとともに、ロコモ度テストの年齢・性別の参考値の策定、高齢者の運動療法の評価へのロコモ度テストの導入、高齢者の健康に関するほかの概念(たとえばフレイル、サルコペニア)との整理、長寿化への対応などを見据え取り組んでいくという。 最後に大江氏は、「運動器障害は知らないうちに進行する障害である。たとえば平均寿命が90歳まで延びるとしたら、折り返し年齢の45歳ころから運動器のライフプランを考え、骨粗鬆症など運動器疾患への治療はもちろん、柔軟性低下、姿勢変化、筋力低下などにも早期に介入することで、運動器の健康を保つことが大切。その指標にロコモチャレンジを活用してもらいたい」と希望を述べた。3つの政策で健康長寿国を目指す仕組みづくり ヘルスケア産業の創出を支援する経済産業省の富原早夏氏(同省商務情報政策局ヘルスケア産業課統括補佐)が、生涯現役社会を目指すための3つの大きな政策を説明した。 同省では、高齢者が仕事をリタイヤしても社会参画する将来を見据え、とくに疾患進展防止サービスを推進することで、健康寿命の延長を目指すとしている。そのために、公的保険以外の疾病予防・健康管理サービスの活用や新産業の創出を支援していくという。 政策の1つ目は「健康経営」(健康保持・増進への取り組みが将来収益を高める投資と考え、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること)を推進することで、職域の健康管理を通じ、企業価値を高める施策(たとえば自治体による企業表彰、低利融資などのインセンティブ)を講じるとしている。  2つ目は、IoTを活用した大規模な健康情報データリンクで、それらを健康の維持に役立てる。たとえば登録者の歩数・活動量、身長、体重、血圧などを収集・分析することで、今後の行動変容のエビデンスとし、健康政策に役立てることなどが計画される。 3つ目は、地域の高齢者の多様なニーズに応え、適切なサービスを行うため医療機関に加え、それを補完する機能をもつサービスを創出していく。具体的には、公的保険外サービスで健康への気づき事業(受診勧奨)の創設や健康維持のフィットネスサービスの充実を目指すものである。そのために、関係する産業協議会の設置などを行い、地域ぐるみで切れ目のない、健康サービスの提供ができる仕組みづくりを展開していく。 最後に富原氏は、「こうしたサービスのビジネスパッケージ化を経済産業省として、支援していく」と今後の展望を述べた。進む企業の健康への取り組み 後半では、ロコモ!チャレンジ推進協議会の協賛企業・団体から取り組み事例が紹介された。 JFEスチール株式会社では、過去に転倒災害と運動器疾患が多かったことから、社内で「安全体力®」機能テストを実施し、リスク回避に役立てているほか、宮崎市では、地元の宮崎大学と協力し、ロコモ健診やロコモメイト養成講座による啓発・広報活動を行っているという。そのほか、アルケア株式会社では、大磯町(神奈川県)と連携した取り組みで、ロコモ健診・指導をした結果、疾病予防へどれだけ貢献したか医療経済の側面から効果を示した。また、日本シグマックス株式会社は、中国へのロコモ概念の普及事業を紹介した。参考サイト【特集】骨粗鬆症

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ロコモの普及は若年からが大事

 日本整形外科学会は10月8日の「骨と関節の日」を前に、都内にて「ロコモ度テストでロコモを測ろう!」をテーマに、プレスセミナーを開催した。 セミナーでは、同学会の進めるロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下「ロコモ」と略す)普及への今後の取り組みや若年からのロコモ対策の重要性などが説明された。2022年には国民の8割が認知するロコモへ向けて はじめに同学会理事長である丸毛 啓史氏(東京慈恵会医科大学 整形外科 教授)が、2007年に提唱し、長年取り組んできたロコモの啓発・普及活動について説明した。 ロコモとは、「運動器の障害により移動機能の低下を来した状態」と定義する。介護原因の4分の1を運動器疾患が占めていることから、健康寿命延長の目的と相まって、「健康日本21」でも取り上げられている。 具体的目標としては、国民への「ロコモ」の認知度を2022年までに80%まで引き上げる(2012年17.3%)とともに、足腰に痛みのある高齢者を同年までに1,000人当たり男性で200人(2010年218人)、女性で260人(同291人)に減少させることを目的としている。 ロコモの認知度は2012年には17.3%、2015年には44.4%、2016年には47.3%と徐々に増加しているが、まだまだ若年者には浸透していないのが問題だという。骨量上限は20歳までで決まる 続いて石橋 英明氏(伊奈病院 整形外科部長)が、「ロコモ度テストでロコモを測ろう! 生涯を通じた運動器の健康と“早めの察知”の重要性」と題し、ロコモ度テスト普及の展望と若年からのロコモ認識の重要性を説明した。 現在、要支援・要介護認定者がわが国では621万人と報告されている。また、2025年には、70歳代後半が人口のピーク世代となる中で、いかに高齢者が自立しつつ健康寿命を延長するかが喫緊の課題となっている。 運動器からみた自立の基本とは「立って、歩いて、また座る」ができることであり、たとえば「立ち上がりテスト」でいえば、40cmの高さのイスや台に座っている状態から片脚で立ち上がることができれば、十分な下肢筋力があるとされる。こうした運動器の変化に早く気付くために提唱されたのが「ロコモ」であり、客観的に調べるために開発されたのが「ロコモ度テスト」である。 ロコモ度テストは、次の3つで構成される。・立ち上がりテスト:40cmのイスや台から片脚で立ち上がることができるかどうか・2ステップテスト:2歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値(1.3未満でロコモの始まり)・ロコモ25:身体活動状態に対する25の質問 これらの結果により、ロコモ度1(ロコモが始まった状態)、ロコモ度2(ロコモが進行した状態)を設定し、運動習慣と栄養改善の指導、運動器疾患の有無の評価、必要により診療を行っていくものである。 ロコモについて知っておきたいこととして、骨量と筋量の減少がある。骨量は20歳まで著明に増加し、女性は閉経前後から、男性は60歳から低下する。同じく40代以降で毎年筋量は0.5~1.0%ずつ低下する。とくに骨量は、20歳以降は増加することがなく、骨量の上限は成長期の運動習慣が重要になってくるという1)。 成長期・若年期から骨量・筋量への配慮が大切だが、現代のように運動習慣の欠如やダイエットなど栄養摂取のアンバランス化が、将来の骨量・筋量へ影響してくることは、あまり知られていない。 たとえば、若年女性への筋量調査では、半数がサルコペニアに該当したという報告もあり2)、将来のロコモリスクを避けるためにも、さらに年代を下げてロコモへの啓発活動が重要になる。「ロコモアドバイス大賞」でアイデア募集 啓発活動として一例をあげると、働く20~30代の女性向けに「まるのうち保健室」を期間限定で設置し、健康相談や骨量測定、ロコモ度テストなどを実施。広く知識の普及に努めているほか、日本整形外科学会では、「ロコモアドバイス大賞」を創設し、ロコモの予防・改善のための運動、栄養、生活習慣に関するアイデアや声かけといった「ロコモ予防のためのアドバイス」を一般から広く募集するという(関係するテーマで150文字以内。締切は11月30日まで。大賞などには賞金)。 最後に石橋氏は、「ロコモ度テストを通じて、全年代への運動器の健康意識を強化することで、ロコモの認知と理解から対策の実行・定着へと進展させ、2022年にはロコモの認知度80%達成へとつなげていきたい」とその思いを語り、レクチャーを終えた。関連リンク ロコモチャレンジ!ロコモアドバイス大賞に関するお知らせ

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「食べる」ことは高齢者には大問題

 5月9日、日本老年医学会は、6月に開催される「第58回 日本老年医学会学術集会」を前にプレスセミナーを都内で開催した。セミナーでは、同会の活動状況、学術集会の概要が説明されるとともに、「高齢者の低栄養、咀嚼機能、嚥下障害」の3つのテーマについて、レクチャーが行われた。 はじめに学会理事長の楽木 宏実氏(大阪大学大学院医学系研究科老年病・循環器内科学 教授)が、学会の活動を報告。「フレイル」(高齢者における健常な状態と要介護状態の中間の状態)の概念を社会に普及させる活動のほか、先日の熊本地震へ支援として行った「一般救護者用 災害時高齢者医療マニュアル」の配布活動などについて説明した。 続いて、学術集会会長の森本 茂人氏(金沢医科大学高齢医学科 主任教授)が、6月8日より金沢市で開催される学術集会(テーマ「地域で創る健康長寿と老年医学」)について、諸学会との共催シンポジウムの内容や高齢者診療のディベートセッションの概要を説明した。意外に見落とされている高齢者の栄養問題 講演では、葛谷 雅文氏(名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学 教授)が、「地域高齢者の栄養に関する諸問題」をテーマに、低栄養が高齢者の生命予後に及ぼすリスクについて説明した。 現代人のライフステージでは、加齢などが原因でだいたい約70歳前後で体重は減少に転じていく。この体重減少に低栄養状態が加わるとフレイル、サルコペニア、転倒・骨折、感染症などのリスクが高まっていくという。 高齢者の体重減少・低栄養の要因としては、社会的要因(独居、介護不足など)、疾病ならびに薬剤(臓器不全や摂食・嚥下障害、薬の副作用など)、加齢(食欲低下など)、精神・心理的要因(うつ、認知機能障害など)、その他(一般健康情報のミスリードなど)が考えられている。 低栄養状態になった場合、どのようなリスクが高まるのか。KAIDEC Study(n=1,142)によれば、要介護度が上昇するにつれ、低栄養を示すスコアである簡易栄養状態評価表(MNA®-SF)の数値が上昇すること、摂食・嚥下障害重症度分類(DSS)で問題ありとされる割合も増えることが示唆されている。また、栄養不良の高齢者は、生命予後、入院、施設入所のいずれの項目でもリスクが高く、肥満者よりも健康障害を起こしやすいことが示唆されているという。 現在、平均寿命と健康寿命の差の縮小を目指して、さまざまな施策が、医療・介護の面で行われている。厚生労働省の調査によれば、介護が必要となる原因の半数は老年症候群関連であり、その2番目にフレイルが挙げられている。そのため、フレイル予防が、健康寿命延長につながる。 フレイルは、(1)歩行速度(2)握力(3)体重減少(4)倦怠感(5)活動度などで評価される。フレイルの有症率は、年齢とともに増加する。時にはサルコペニアなどと合併していることもあり、高齢者の筋肉を維持し、減少させないことが重要である。予防・介入方法としては、レジスタント運動や、低栄養を予防する食事(とくにタンパク質、アミノ酸、ビタミンDなどを十分に摂取)が必要とされる。 葛谷氏は、「高齢者医療の現場では、栄養への問題意識は医療者・患者ともにまだ希薄である。高齢者の低栄養対策では、75歳前後ではフレイルの予防、85歳前後では要介護状態での低栄養といった2つの局面を考える必要がある。医療者はこれらに意識を向け、栄養不良を予防することで救える高齢者を見逃してはならない」とレクチャーを結んだ。実は高度な運動能が必要な「咀嚼」 次に、「咀嚼」について菊谷 武氏(日本歯科大学 教授/口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長)が、「咀嚼機能が支える高齢長寿社会」をテーマに口腔リハビリテーションの視点から講演を行った。 厚生労働省の歯科疾患実態調査によれば、2011年時点の80歳で28歯中20歯以上を残している高齢者は全体の25.1%と報告され、年々その数は増加しているという。歯の状態は低栄養発症リスクにも関係し、義歯(入れ歯)咬合維持群はそのリスクが1.7倍、咬合崩壊群では3.2倍になるという。また、窒息の発症をエンドポイントに調べた研究(n=486)によれば、3年間で51例に発症し、その独立した危険因子として、臼歯部(奥歯)の咬合不良、認知機能の低下、食事の自立が示唆されている。 要介護高齢者の歯科受診状況は、定期的に歯科受診をしている人はわずか15%、過去3ヵ月に症状があって受診が10%、受診していないは75%にも上っており、適切な口腔の診療や指導を受けていない実態が示された。 食事の摂取で重要な働きをする咀嚼は、口腔の巧みな運動能と関連しており、咀嚼力は「咬合支持×口の力強さ、巧みな動き×認知機能」で機能する。咀嚼は、歯の本数だけでなく、舌の機能と運動能に関係し、運動能が弱まると、食物を一塊として飲み込めず、窒息のリスクが高くなる。また、菊谷氏らが行った摂食状況、摂食形態実態調査によれば、自己の摂食嚥下機能に合致した食事をしている高齢者は32%であり、残り68%はリスクを抱えたまま食事をしている実態が示された。 最後に「咀嚼を運動機能と捉えた場合、要介護高齢者は、舌圧が低く、機能訓練の必要がある。口腔サルコペニアを防止する取り組みが大切であり、継続した歯科診療や口腔リハビリテーションが必要」とレクチャーを終えた。嚥下障害は地域連携で対応 最後に、嚥下障害が起こすリスクとその対応について、藤谷 順子氏(国立研究開発法人国立国際医療研究センターリハビリテーション科医長)が、「在宅高齢者の嚥下障害とその対応」と題して解説を行った。 食事は、高齢者の楽しみの1つであり、外出などの生活行動とも直結するほか、健康維持、疾病予防にも大切な役割を果たしている。現在、嚥下障害をもつ高齢者は、一般医療機関(病棟)で14.7%、老人保健施設で29.5%、訪問看護ステーションで17.7%にも上り、嚥下障害に起因する誤嚥性肺炎が問題となっている。誤嚥性肺炎は、年間30万人が罹患していると推定され、治療後の経過は自宅退院が43%、医療・介護施設が37%、死亡が20%となっている1)。 問題は、退院時のADLであり、自立して食事できる人が全体の33%、自立歩行できる人が24%と、一度でも罹患すると自宅退院者でも要介護状態になりやすいことが示唆されている2)。また、高齢になればなるほど嚥下の力が落ちていき、飲み込んだつもりで窒息する、誤嚥が多いことも報告された。 咀嚼・嚥下機能低下による誤嚥性肺炎予防のためには、嚥下機能などの早期検査、在宅などでのリハビリテーション訓練の実施が求められ、これらは健康寿命を延ばすためにも重要となる。 とくに在宅高齢者の嚥下障害対応としては、軽度であれば地域で行われている啓発活動や介護事業、機能改善や低栄養の予防を図る対応、専門家の利用が望ましい。また、嚥下障害があれば、基幹病院などを巻き込んだ地域包括ケア(例:新宿ごっくんプロジェクト)などが必要とされる。 最後に藤谷氏は、「嚥下リハビリテーションの基本は、現在の嚥下能力でもおいしく食べる機会を持ち、食べることにハンデがあってもできるだけQOLの高い生活を送れるようにすること。下り坂でも、その時々でできることを、外来などでも指導していってもらいたい」と理念を述べ、レクチャーを終了した。参考文献1)山脇正永.総合リハ.2009;37:105-109.2)Yagi M, et al. Geriatr Gerontol Int.2015 Oct 13.[Epub ahead of print]関連リンク第58回 日本老年医学会学術総会高齢者災害医療支援新宿ごっくんプロジェクト~摂食嚥下機能支援~(嚥下観察シートなど書式あり)

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