サイト内検索

検索結果 合計:140件 表示位置:1 - 20

1.

女性の低体重/低栄養症候群のステートメントを公開/日本肥満学会

 日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏〔千葉大学 学長〕)は、4月17日に「女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome:FUS)ステートメント」を公開した。 わが国の20代女性では、2割前後が低体重(BMI<18.5)であり、先進国の中でもとくに高率である。そして、こうした低体重や低栄養は骨量低下や月経周期異常をはじめとする女性の健康に関わるさまざまな障害と関連していることが知られている。その一方で、わが国では、ソーシャルネットワークサービス(SNS)やファッション誌などを通じ「痩せ=美」という価値観が深く浸透し、これに起因する強い痩身願望があると考えられている。そのため糖尿病や肥満症の治療薬であるGLP-1受容体作動薬の適応外使用が「安易な痩身法」として紹介され、社会問題となっている。 こうした環境の中で、今まで低体重や低栄養に対する系統的アプローチは不十分であったことから日本肥満学会は、日本骨粗鬆症学会、日本産科婦人科学会、日本小児内分泌学会、日本女性医学学会、日本心理学会と協同してワーキンググループ(委員長:小川 渉氏〔神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科 教授〕)を立ち上げた。 このワーキンググループでは、骨量の低下や月経周期異常、体調不良を伴う低体重や低栄養の状態を、新たな症候群として位置付け、診断基準や予防指針の整備を目的とすると同時に、本課題の解決方法についても議論を進めている。 今回公開されたステートメントでは、閉経前までの成人女性を中心とした低体重の増加の問題点を整理し、新たな疾患概念の名称・定義・スティグマ対策を示すとともに、その改善策を論じている。若年女性の低体重を診たらFUSを想起してみよう ステートメントは、低体重および低栄養による健康リスクや症状に触れ、具体例としてエストロゲン低下などによる骨量低下および骨粗鬆症、月経周期異常、妊孕性および児の健康リスク、鉄や葉酸など微量元素やビタミン不足による健康障害、糖尿病発症となる代謝異常、筋量低下によるサルコペニア様状態、痩身願望からくる摂食障害、そのほか倦怠感や睡眠障害などの精神・神経・全身症状を挙げ、低体重などの問題点を指摘している。 そして、低体重に対する介入の枠組みが確立されていないこと、教育現場などでも啓発が十分とはいえないこと、糖尿病や肥満症治療薬が不適切使用されていることから作成されたとステートメント作成の背景を述べている。 先述のワーキンググループでは、新たな疾患概念として、女性における低体重・低栄養と健康障害の関連を示す症候群の名称として、FUSを提案し、18歳以上で閉経前までの成人女性を対象にFUSに含まれる主な疾患や状態を次のように示している。・低栄養・体組成の異常 BMI<18.5、低筋肉量・筋力低下、栄養素不足(ビタミンD・葉酸・亜鉛・鉄・カルシウムなど)、貧血(鉄欠乏性貧血など)・性ホルモンの異常 月経周期異常(視床下部性無月経・希発月経)・骨代謝の異常 低骨密度(骨粗鬆症または骨減少症)・その他の代謝異常 耐糖能異常、低T3症候群、脂質異常症・循環・血液の異常 徐脈、低血圧・精神・神経・全身症状 精神症状(抑うつ、不安など)、身体症状(全身倦怠感、睡眠障害など)、身体活動低下 また、ステートメントでは、FUSの提唱でスティグマを生じないように配慮すると記している。今後FUSのガイドラインを策定し、広く啓発 FUSの原因として「体質性痩せ」、「SNSなどメディアの影響によるやせ志向」、「社会経済的要因・貧困などによる低栄養」の3つを掲げ、原因ごとの対処法、たとえば、「体質性痩せ」では健康診断時の栄養指導や必要なエネルギー、ビタミンやミネラルの十分な摂取の推奨などが記されている。 そして、これからの方向性として、「ガイドラインの策定」、「健診制度への組み込み」、「教育・産業界との連携」、「戦略的イノベーション創造プログラム (SIP)との連携」を掲げている。 提言では、「今後は診断基準や予防・介入プログラムの充実を図り、医療・教育・行政・産業界が一体となった総合的アプローチを推進する必要がある。これらの取り組みが、日本の若年女性の健康改善と次世代の健康促進に寄与することが期待される」と結んでいる。

2.

転倒リスクの高い2型糖尿病治療薬は?/筑波大

 骨格筋量の低下によって転倒リスクが増大することが知られており、一部の2型糖尿病治療薬は体重減少作用が強く、骨格筋量の減少を引き起こすことで転倒リスクを増大させる可能性が示唆されている。この課題について筑波大学システム情報系知能機能工学域の鈴木 康裕氏らの研究グループは、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に転倒と糖尿病治療薬との関連を調査した。その結果、SGLT2阻害薬は転倒の危険因子であることが明らかになった。この結果はScientific Reports誌2025年3月17日号に掲載された。SGLT2阻害薬処方時は転倒リスクも考慮 研究グループは、いくつかの糖尿病治療薬、とくにSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が、筋肉および除脂肪体重の減少を引き起こすことと、転倒の関連を評価した。方法は、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に、毎年1回転倒調査を最長5年間実施。転倒の危険因子は離散時間生存分析モデルを用いて同定した。 主な結果は以下のとおり。・調査では、471例の参加者を中央値2年間にわたって観察した。・参加者の年齢中央値は64歳で、転倒発生率は100人年当たり17.1件だった。・独立した転倒の危険因子は、「転倒歴」、「SGLT2阻害薬の使用」、「年齢」であった。・SGLT2阻害薬のみ使用のオッズ比(OR)は1.80(95%信頼区間[CI]:1.10~2.92)、GLP-1受容体作動薬のみ使用のORは1.61(95%CI:0.88~2.84)、両方使用のORは2.89(95%CI:1.27~6.56)だった。・SGLT2阻害薬の使用は、転倒の独立危険因子だったが、GLP-1受容体作動薬の効果は統計学的に有意ではなかった。・SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用は、転倒のリスクを有意に増加させた。 この結果から研究グループでは「2型糖尿病患者にこれらの薬剤を処方する際には、転倒のリスクを考慮することが重要」と示唆している。

3.

「胃癌治療ガイドライン」改訂のポイント~外科治療編~/日本胃癌学会

 2025年3月、「胃癌治療ガイドライン」(日本胃癌学会編)が改訂された。2021年から4年ぶりの改訂で、第7版となる。3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会では、「胃癌治療ガイドライン第7版 改訂のポイント」と題したシンポジウムが開催され、外科治療、内視鏡治療、薬物療法の3つのパートに分け、改訂ポイントが解説された。改訂点の多かった外科治療と薬物療法の主な改訂ポイントを2回に分けて紹介する。本稿では外科治療に関する主な改訂点を取り上げる。「薬物療法編」はこちら【外科治療の改訂ポイント】木下 敬弘氏(国立がん研究センター東病院 胃外科) 総論部分の大きな改訂点としては、胃の切除範囲として従来の6つの術式に加えて「胃亜全摘術(小彎側をほぼ全長に渡って切離し、短胃動脈を一部切離する幽門側の胃切除)」を追加したこと、これまであいまいだったコンバージョン手術の定義を「初回診察時に根治切除不能と診断され薬物療法が導入された症例で、薬物療法が奏効した後に根治切除を企図して行われる手術」と定めたことがある。クリニカル・クエスチョンに関する改訂点としては、「低侵襲手術の推奨度を全体的に強化」、「コンバージョン手術の推奨度を変更」、「胃切除後長期障害・高齢患者に関するCQを追加」、「病態進行(PD)の適応・断端陽性例などのCQを追加」が大きな点だ。具体的に新設・変更された主なCQは以下となっている。CQ1-1【変更】切除可能な胃癌に対して、腹腔鏡下手術は推奨されるか?・標準治療の選択肢の一つとして腹腔鏡下幽門側胃切除術は行うことを強く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さA)・c StageI胃癌に対して胃全摘術、噴門側胃切除術は行うことを強く推奨する。(合意率78%、エビデンスの強さC)CQ1-2【変更】切除可能な胃癌に対して、ロボット支援手術は推奨されるか?・切除可能な胃癌に対して、ロボット支援手術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「前版では、ロボット支援手術はStageIまでの推奨だったが、今版からその記載が外れ、より広範な推奨となった。現在行われているJCOG1907試験(胃がんにおけるロボット支援下胃切除術の腹腔鏡下胃切除術に対する優越性を検証するランダム化比較試験)の結果によって、将来的には推奨度が変わる可能性がある」CQ1-3【新設】進行胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術は推奨されるか?・標準治療の選択肢の一つとして進行胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術は行うことを弱く推奨する。(合意率90%、エビデンスの強さC)「多くの後ろ向き研究で、腹腔鏡下胃全摘術は手術時間は延長するものの、出血量は少なく、再発・生存期間で開腹手術と差がないと報告されている。現在、韓国で胃全摘を要する進行胃がんを対象とした後ろ向き試験(KLASS-06)が行われており、登録が完了した段階だ」CQ1-4【新設】術前化学療法に対する低侵襲手術(腹腔鏡下手術/ロボット支援手術)は推奨されるか?・術前化学療法に対して、低侵襲手術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「欧州と中国から、腹腔鏡下手術と開腹手術を比較した前向き研究の報告がある。生存期間や術後短期成績においては差がないと考えられるが、観察期間が短く、エビデンスレベルは高くないと判断した」CQ2-3【新設】胃上部の癌に対して噴門側の極小胃を温存した幽門側胃切除術は推奨されるか?・適切な切除断端が確保できれば、胃上部の早期癌に対して噴門側の極小胃を温存した幽門側胃切除術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「新たに設定した胃亜全摘術に関するCQとなる。後ろ向き研究のレビューで、手術時間、合併症発生割合、術後栄養状態、術後障害などの点において胃全摘術よりも優れている可能性が示唆されている」CQ3-3【新設】十二指腸浸潤・膵頭部浸潤を来した進行胃癌に対して膵頭十二指腸切除は推奨されるか?・十二指腸浸潤・膵頭部浸潤を来した進行胃癌に対して膵頭十二指腸切除を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「リンパ節転移が比較的軽度で、R0切除が得られる、患者の全身状態が良好という条件を満たした場合に、行うことを弱く推奨とした」CQ5-2【変更】Conversion手術は推奨されるか?(術後化学療法も含む)・StageIV胃癌症例に対してconversion手術を行うことは、現時点ではエビデンスに乏しく明確な推奨ができない。(合意率78.9%、エビデンスの強さC)・また、conversion手術でR0切除が達成されたStageIV胃癌に対しては、術後補助化学療法に関する明確な推奨ができない。(合意率78.9%、エビデンスの強さC)「前版では、『化学療法により一定の抗腫瘍効果が得られ、R0切除が可能と判断される』との条件付きで『弱く推奨』としていたが、今回は投票結果が80%に至らず、推奨が出せなかった。化学療法が奏効した患者を対象にconversion手術を行い、その生存期間を報告した研究は単群の後ろ向き研究が大半で、患者選択バイアスも大きい。現在、国内で化学療法奏効例に対するConversion surgeryの意義を検討する第III相試験JCOG2301が進行中だ」CQ5-3【新設】出血/狭窄の姑息切除やバイパス手術、ステント留置術は推奨されるか?・出血/狭窄の姑息切除やバイパス手術、ステント留置術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さD)「ステントは短期的な有用性は高いが長期的には再狭窄のリスクがある。胃空腸バイパスは短期的な合併症リスクは高いものの長期的なQOL維持に優れているとの報告が多いなど、それぞれの特徴を理解して選択することが重要だ」CQ5-4【新設】CY1に対する胃切除術は推奨されるか?(術後化学療法も含む)・胃切除時にCY1が判明した場合は、手術を先行し、術後化学療法を行うことを弱く推奨する。(合意率94.7%、エビデンスの強さC)・また、初回治療前に審査腹腔鏡でCY1が判明した場合は、化学療法後にCY0になった時点で胃切除を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)胃がんは、2パターンに分けた推奨となった。胃切除後に化学療法を行うことにより、再現性をもって25%前後の5年生存率が示されている。また、化学療法でCY0に陰転化した場合、5年生存率は34.2%と高く、陰転化なし群と比較したハザード比は2.04と報告されている」CQ6-3【新設】食道胃接合部癌に対する腹腔鏡下手術/ロボット支援手術は推奨されるか?・食道胃接合部癌に対する手術療法として、腹腔鏡下手術またはロボット支援手術を行うことを弱く推奨する。(合意率70%、エビデンスの強さD)「食道胃接合部がんを対象に、開腹と腹腔鏡下手術を比較したランダム化比較試験の報告はない。単施設後ろ向き比較研究や症例集積研究においては、低侵襲手術で出血量が少なく、早期回復が認められたと報告されている」CQ7-2【新設】残胃癌に対して腹腔鏡下手術/ロボット支援手術は推奨されるか?・残胃癌に対する腹腔鏡下手術/ロボット支援手術について、現時点では明確な推奨ができない。(合意率70%、エビデンスの強さD)CQ7-3【新設】残胃空腸吻合部の残胃癌に対して空腸間膜リンパ節郭清は推奨されるか?・残胃空腸吻合部の残胃癌に対して、空腸間膜リンパ節郭清を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)CQ8【新設】切除断端が永久標本で陽性と診断された場合に再手術は推奨されるか?・胃切除後に永久標本で切除断端が陽性と診断された場合の再手術に関しては明確な推奨ができない。(合意率100%、エビデンスの強さD)「後ろ向き研究で、早期がんでは切除断端陽性を予後不良因子とする報告が多いが、高度進行例では再手術の意義は薄れる可能性が示唆されている」CQ9【新設】胃切除後長期障害への対応・CQ9-1:脾摘後の肺炎球菌のワクチンの接種:弱く推奨(合意率90%、エビデンスの強さD)・CQ9-2:胃全摘後のVitB12投与:弱く推奨(合意率90%、エビデンスの強さC)・CQ9-3:胃切除後のヘリコバクター・ピロリ除菌:明確な推奨ができない(合意率100%、エビデンスの強さC)CQ10-1【新設】手術の術式を決める際に、年齢を考慮することは推奨されるか?・高齢者に対してはリンパ節郭清範囲を縮小した縮小手術や低侵襲手術を行うことを弱く推奨する。(合意率70%、エビデンスの強さD)CQ10-4【新設】高齢者・サルコペニア患者に対する周術期の栄養/運動療法は推奨されるか?・高齢者・サルコペニア患者に対する周術期の栄養/運動療法については明確な推奨ができない。(合意率94.7%、エビデンスの強さD)「長期生存と術後合併症についてレビューした。術後合併症については減少可能性が示唆されるが、対象患者と介入方法のばらつきが大きく、エビデンスに乏しいと判断した」

4.

老後を健康に過ごすには足の健康から始めよう/科研・楽天

 科研製薬は、足に関わる生活習慣の改善を目的に、楽天モバイルとの共同プロジェクト「満足プロジェクト」で業務提携契約を締結した。このプロジェクトは、楽天モバイルの健康寿命延伸サポートサービス「楽天シニア」(現在300万ダウンロード/約7割が50代以上)を通じ、足のお悩みを把握すると同時に、足の健康に関する正しい情報を提供することで、健康満足度の向上に貢献することを目指すものである。両社は、このプロジェクト発足について、3月14日に都内でメディアセミナーを開催し、高齢者の運動器障害の観点からロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」と略す)についての概要と足の悩みの観点から巻爪、白癬などの診療と満足プロジェクトの概要が紹介された。また、科研製薬では、2025年3月27日に医療従事者向けのウェブサイト「KAKEN Medical Pro」を開設し、各製品情報に加え、足の健康を守るための「足」の疾患に関連する情報も発信し、医療従事者をサポートする。ロコモサインで早期にロコモを察知 「『満足』はロコモ対策の必要条件だ」をテーマに大江 隆史氏(NTT東日本関東病院 院長/ロコモチャレンジ!推進協議会 委員長)が、高齢者の運動器障害の原因となるロコモとその判定方法、約2万人のロコモに関するアンケート結果の概要について説明した。 「『ロコモ』とは、運動器の障害により、移動機能が低下した状態で、進行すると要介護になる危険が高いもの」と定義されている。ロコモが進展することで、生活活動や移動制限を受け、さらに疼痛や柔軟性の低下、筋力低下を来し、骨粗鬆症や変形性関節症、サルコペニアなどにいたるとされる。 そのために早くロコモに気付くことが重要となるが、ロコモの評価には、「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3つテストの総合でロコモ度1~3で判定する。また、最近の研究からロコモになる前の最初の兆候も明らかになっている。とくに活動性について、「階段の昇降」「急ぎ足で歩く」「休まず歩き続ける」「スポーツや踊り」の1つにでも困難の自覚があれば、「ロコモサイン」として、早期の診療介入が望まれるという。 では、実際「ロコモ」はどの程度認知されているのであろうか。2024年12月~2025年1月にかけて楽天シニアアプリ登録者などで行われたアンケート結果を説明した(回答数1万9,299人)。 主な結果は以下のとおりだった。・「ロコモという言葉の認知度について」は、「はい」が50.2%、「いいえ」が48.9%だった。・「1日の歩数について」は、4,000~6,000歩が33.9%、8,000歩以上が26.3%、6,000~8,000歩が17.7%の順だった。・6,000歩以上歩く人では年齢によるロコモ度の差がなくなっていた。・「筋トレなどのやや強めの運動を1週間に合計どれくらいしているか」では、20分未満が67.2%、20分以上1時間未満が14.5%、2時間以上が7.7%の順で多かった。・やや強めの運動を1週間に1時間20分以上する人では年齢によるロコモ度の差がなくなっていた。爪は小さな運動器 「皮膚(爪)と足の健康との関係」をテーマに高山 かおる氏(川口総合病院 皮膚科 主任部長/足育研究会 代表理事)が、爪や足の皮膚からくる歩行障害や足爪に関するアンケート結果を説明した。 高齢者では、歩行障害、摂食障害、認知障害の順で活動が阻害される。歩行障害では、とくに爪の役割は重要だという。爪には、「指先の感覚を敏感にする」、「指先の保護」、「力のバランスをとる」という3つの働きがある。そして、足のトラブルは、皮膚と爪に表われ、日本臨床皮膚科学会の調査では、6人に1人が足爪に水虫が、7人に1人に足に水虫が、13人の1人に水虫があると報告されている。足爪のトラブルと転倒の関係では、足に何らかの問題があると、過去1年間に転倒しているリスクが高いこと、母趾爪甲の変形や肥厚は下肢機能低下をもたらすなどの報告がある。 つまずいたときに、姿勢制御の機能として、足底の触圧覚と足趾(と爪)による底面把持力により、転倒をしないように制御することから、爪に異常があると踏ん張りができないことから「爪は小さな運動器」とも言うことができる。 続いて「足爪の健康の意識調査」について、2024年9~10月にかけて楽天シニアアプリ登録者などに行われたアンケート結果を説明した(回答数2万984人)。 主な結果は以下のとおりだった。・「現在の爪の状態について」(複数回答)は、「異常なし」が50%、「水虫または過去に既往がある」が15%、「爪の肥厚またはボロボロと欠けた」が14%の順で多かった。・「アプリのコラム読後、医療機関へ受診しようと思ったか」では、「受診しない」が51%、「爪水虫に感染したら受診」が34%、「すぐ受診したい」が9%の順で多かった。・受診者または受診希望者に「なぜ治療したいか」(複数回答)では、「爪をきれいにしたい」が29%、「家族にうつさないため」が26%、「他の部位への感染を防ぐため」が24%の順で多く、「転倒リスク軽減のため」も9%でみられた。・「水虫が治ったら何をしたいか」では、「隠さずに足を出す」が21%、「いろんな人と交流したい」が20%、「履きたい靴を履きたい」が16%の順で多かった。・「健康記事のどの項目に1番興味を持ったか」では、「足爪の健康が健康寿命のカギ」が26%、「足爪、きれいに洗えていますか」が22%、「爪水虫はカビの1種」が14%の順で多かった。 おわりに高山氏は、「足爪を治療し、手入れすることで、きちんと歩く機能を維持し、健康寿命を延伸してもらいたい」と思いを語り、レクチャ-終えた。 この後のパネルディスカッションでは、足の健康啓発にこうしたアプリの利活用、複数の診療科連携による下肢機能維持などの提案がなされた。また、将来的に爪の画像を送ることでできるリモート診断やAI診断の可能性、集積されたビックデータを活用した健康指導なども期待したいと展望が語られた。 今回、科研製薬と楽天モバイルが提供する「満足プロジェクト」では、セミナー開催や「楽天シニア」内でのコラム掲載などを通じ、「歩く健康」をテーマとした足に関するさまざまな疾患の啓発活動のほか、今後、足に関する情報発信を強化するとともに、協働で健康寿命の延伸を目的とした実証事業なども実現するとしている。

6.

ダイナペニック肥満は心血管疾患のリスク因子―久山町24年間の縦断解析

 肥満でありながら筋力が低下した状態を指す「ダイナペニック肥満」が、心血管疾患(CVD)発症の独立したリスク因子であることが、久山町研究から明らかになった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の瀬戸山優氏、本田貴紀氏、二宮利治氏らの研究によるもので、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に論文が10月8日掲載された。 筋肉量の多寡にかかわらず筋力が低下した状態を「ダイナペニア」といい、筋肉量と筋力がともに低下した状態である「サルコペニア」と並び、死亡リスク上昇を含む予後不良のハイリスク状態とされている。さらに、その状態に肥満が加わったサルコペニア肥満やダイナペニック肥満では、CVDのリスクも高まる可能性が示されている。しかしダイナペニック肥満に関してはCVDとの関連の知見がまだ少なく、海外からの報告がわずかにあるのみであり、かつ結果に一貫性がない。これを背景として本研究グループは、1961年に国内疫学研究の嚆矢として福岡県糟屋郡久山町でスタートし、現在も住民の約7割が参加している「久山町研究」のデータを用いた検討を行った。 解析対象は、1988~2012年に毎年健康診断を受けていて、ベースライン時にCVD既往のなかった40~79歳の日本人2,490人(平均年齢57.7±10.6歳、男性42.5%)。握力が年齢・性別の第1三分位群(握力が弱い方から3分の1)に該当し、かつ肥満(BMI25以上)に該当する場合を「ダイナペニック肥満」と定義すると、全体の5.4%がこれに該当した。 中央値24年(四分位範囲15~24)の追跡で482人にCVDイベント(脳卒中324件、冠動脈性心疾患〔CHD〕209件)が発生した。交絡因子(年齢、性別、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心電図異常など)を調整後に、握力の最高三分位群かつ普通体重(BMI18.5~24.9)の群(全体の23.9%)を基準として、ほかの群のCVDリスクを比較した。 その結果、ダイナペニック肥満群でのみ、CVD(ハザード比〔HR〕1.49〔95%信頼区間1.03~2.17〕)および脳卒中(HR1.65〔同1.06~2.57〕)の有意なリスク上昇が認められた。肥満でも握力低下のない群(第2~3三分位群)のCVDリスクは基準群と有意差がなく、また、やせ(BMI18.5未満)や普通体重の場合は握力にかかわらずCVDリスクに有意差がなかった。なお、CHDについてはダイナペニック肥満群のリスクも、基準群と有意差がなかった(HR1.19〔0.65~2.20〕)。 65歳未満/以上で層別化した解析では、65歳未満でダイナペニック肥満によるCVDリスクがより高いことが示された(HR1.66〔1.04~2.65〕)。一方、65歳以上では有意な関連を認めなかった(HR1.18〔0.61~2.27〕)。 続いて行った媒介分析からは、ダイナペニック肥満とCVDリスク上昇との関連の14.6%を炎症(高感度C反応性蛋白〔hs-CRP〕)、9.7%をインスリン抵抗性(HOMA-IR)で説明可能であり、特に65歳未満ではhs-CRPが13.8%、HOMA-IRが12.2%を説明していて、インスリン抵抗性の関与が強いことが示唆された。 著者らは、「握力とBMIで定義したダイナペニック肥満は、日本の地域住民におけるCVD発症のリスク因子であることが明らかになった。この関連性は、65歳未満でより顕著であり、炎症とインスリン抵抗性の上昇がこの関連性を部分的に媒介している」と総括。また、「われわれの研究結果は、CVD予防における中年期の筋力の低下抑止と、適切な体重管理の重要性を示唆するものと言える」と付け加えている。

7.

11月14日 アンチエイジングの日【今日は何の日?】

【11月14日 アンチエイジングの日】〔由来〕「いい(11)とし(14)」(良い歳)と読む語呂合わせから、アンチエイジングネットワークが2007年に制定。生活習慣病を予防する予防医学の定着と、年齢を経ても「見た目の若さ」を保ち続ける方法の認知拡大が目的。関連コンテンツ“抗加齢医学”の実学創造~北里 柴三郎博士の思いを継いで~週どのくらい身体を動かすと良い?[成人編]【患者説明用スライド】コーヒーの成分トリゴネリンが老化に伴う筋肉消耗を防ぐ【バイオの火曜日】男性機能の維持にも、テストステロン増加に最適な運動/日本抗加齢医学会手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会

8.

ビタミンD値が低いとサルコペニアのリスクが高い可能性

 血清ビタミンD値が低い高齢者は骨格質量指数(SMI)が低くて握力が弱く、サルコペニアのリスクが高い可能性のあることが報告された。大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学の赤坂憲氏らの研究結果であり、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に8月1日掲載された。 サルコペニアは筋肉の量や筋力が低下した状態であり、移動困難や転倒・骨折、さらに寝たきりなどのリスクが高くなる。また日本の高齢者対象研究から、サルコペニア該当者は死亡リスクが男性で2.0倍、女性で2.3倍高いことも報告されている。 サルコペニアの予防・改善方法として現状では、筋肉に適度な負荷のかかる運動、および、タンパク質を中心とする十分な栄養素摂取が推奨されており、治療薬はまだない。一方、骨粗鬆症治療薬として用いられているビタミンD(VD)に、サルコペニアに対する保護的作用もある可能性が近年報告されてきている。ただし、一般人口におけるVDレベルとサルコペニアリスクとの関連は不明点が少なくない。これを背景として赤坂氏らは、東京都と兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究(SONIC研究)のデータを用いて、年齢層別に横断的解析を行った。 SONIC研究参加者のうち、年齢層で分けた際のサンプル数が十分な70歳代(平均年齢75.9±0.9歳、男性54.2%)と、90歳代(92.5±1.6歳、男性37.5%)を解析対象とした。全員が自立して生活していた。 血清25(OH)D(以下、血清VDと省略)の平均は、70歳代では21.6±5.0ng/mLであり、35.8%が欠乏症(20ng/mL未満)だった。90歳代では平均23.4±9.1ng/mLであり、43.8%が欠乏症だった。なお、VDは日光曝露によって皮膚で生成されるため、日照時間の違いを考慮して季節性を検討したところ、70歳代の男性では、冬季測定群に比べて夏季測定群の方が有意に高値だった。 サルコペニアのリスク評価に用いられている、SMI、握力、歩行速度、および、BMIや血清アルブミン、血清クレアチニンと、血清VDとの関連を単回帰分析で検討すると、年齢層にかかわらず、SMIと握力が血清VDと有意に正相関し、その他の因子は関連が見られなかった。それぞれの相関係数(r)は、以下の通り。70歳代の血清VDとSMIは0.21、血清VDと握力は0.30(ともにP<0.0001)、90歳代の血清VDとSMIは0.29(P=0.049)、血清VDと握力は0.34(P=0.018)。 続いて、SMIおよび握力を従属変数、性別を含むその他の因子を独立変数とする重回帰分析を施行した。その結果、70歳代のSMIについては、血清VDが有意な正の関連因子として特定された(β=0.066、P=0.013)。一方、70歳代の握力に関しては、血清VDは独立した関連が示されなかった。また90歳代では、SMI、握力ともに血清VDは独立した関連因子でなかった。 著者らは本研究の限界点として、横断的解析であり因果関係は不明なこと、日光曝露時間や栄養素摂取量が測定されていないことなどを挙げた上で、「地域在住の自立した高齢者では、血清VDレベルはSMIや握力と関連しているが、歩行速度とは関連のないことが明らかになった。この結果は90歳代よりも70歳代で明確だった」と総括。また、「さらなる研究が必要だが、血清VDレベルを維持することが骨格筋量の維持に寄与する可能性があるのではないか」と付け加えている。

9.

高齢男性の筋肉量、食事摂取量に左右されず?

 地域在住高齢者の筋肉量の多寡と食事・栄養素摂取量の関係を、性別に検討した結果が報告された。女性で筋肉量の少ない人は食事摂取量が少ないが、男性はそのような差がないという。順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の加賀英義氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Geriatrics」に7月18日掲載された。著者らは、性差に配慮したサルコペニア予防戦略の必要性を指摘している。 高齢社会の進展とともにサルコペニア(筋肉量や筋力低下)対策が公衆衛生上の喫緊の課題となっている。筋肉量や筋力を高めるために、タンパク質を中心とする十分な栄養素摂取が推奨されているが、高齢者の筋肉量と栄養素摂取量の関連については不明点も残されている。そこで加賀氏らは、都市在住高齢者コホート研究である「文京ヘルススタディ」のベースラインデータを横断的に解析し、詳細な検討を行った。 解析対象は東京都文京区に住む65~84歳の高齢者1,618人(平均年齢73.1±5.4歳、男性42.0%)。生体インピーダンス法で測定した四肢骨格筋量を基に骨格筋量指数(SMI)を算出し、アジアのサルコペニア診断基準(男性は7.0kg/m2未満、女性は5.7kg/m2未満)に基づいて二分すると、男性の31.1%、女性の43.3%が低SMIと判定された。男性・女性ともに低SMI群は、年齢が高く、BMIが低値だった。ただし体脂肪率については、女性は低SMI群で低値だったが(29.6対32.7%、P<0.001)、男性は有意差がないという(24.3対24.6%、P=0.544)、性別による違いが認められた。 食事・栄養素摂取量は、簡易型自記式食事歴質問票で調査した。年齢、身長、体重、身体活動量で調整後、女性は低SMI群の方が、摂取エネルギー量と主要栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)の摂取量が有意に少なく、また微量栄養素(ビタミン、ミネラル)についてもその多くで、低SMI群の摂取量が有意に少なかった。その一方、男性では、低SMI群と高SMI群とで摂取エネルギー量や主要栄養素の摂取量に有意差がなく、また大半の微量栄養素の摂取量も有意差がなかった(マンガンと銅のみ低SMI群で低値)。 食品の摂取量を比べた場合、男性は全ての食品群で差が観察されなかった。女性では、脂肪分の多い魚や豆腐、油揚げは低SMI群の摂取量が少なく、反対に小麦製品の摂取量は高SMI群の方が少なかった。 著者らは本研究が横断研究であるという限界点を挙げた上で、「都市在住高齢者の筋肉量の多寡と食事・栄養素摂取量の関係には性差が存在しており、サルコペニア予防のための栄養介入では性別を考慮する必要があるのではないか。女性に対しては摂取エネルギー量を全体的に増やすようにアドバイスすることが重要と考えられる」と結論付けている。他方、男性については低SMI群と高SMI群とで摂取エネルギー量および、ほぼ全ての栄養素・食品の摂取量に有意差が認められなかったため、「サルコペニアの予防法を探るさらなる研究が必要」としている。 なお、論文の考察では、男性において食事や栄養素の摂取量に差がないにもかかわらずSMIに差が生じるメカニズムとして、消化・吸収や体タンパク質の同化・異化の違いなどが関与している可能性が述べられている。また、有意水準未満ながら、低SMI群では米の摂取量が少ない一方でパンの摂取量が多く、さらに動物性タンパク質の摂取量も非有意ながら低SMI群で少なかったことなどが記されている。

10.

高齢者へのImpellaの安全性・有効性~J-PVADレジストリより/日本心臓病学会

 補助循環用ポンプカテーテルImpellaは、左室機能を補助するための経カテーテル的補助人工心臓(PVAD:percutaneous ventricular assist device)で、唯一、国内承認されているものだ。2017年の承認から7年が経過し、国内の高齢者への安全性や有効性が徐々に明らかになってきている。今回、樋口 亮介氏 (榊原記念病院 循環器内科)が「心原性ショックを合併した後期高齢者におけるImpellaの成績:J-PVADレジストリからの検討」と題し、9月27~29日に仙台で開催された第72回日本心臓病学会学術集会の高齢化社会における循環器診療に関するシンポジウムで発表した。 今回の結果によると、高齢者におけるImpellaの安全プロファイルは非高齢者と比較して概ね同等であり、短期予後は不良であるものの受容可能な結果であった。なお、本発表内容はCirculation Report誌2024年10月29日号オンライン版に掲載された。 樋口氏らは日本におけるImpellaの全例登録研究であるJ-PVADレジストリに登録された2020年2月~2022年12月までにImpellaを挿入した患者のうち75歳以上を高齢者とし、非高齢者のデータと比較・解析した。主要評価項目は30日死亡で、副次評価項目はPVAD関連合併症(輸血を要する出血、心タンポナーデ、脳卒中、溶血、下肢虚血、急性腎障害、敗血症、治療を要する血管合併症)であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者5,718例のうち75歳以上の高齢者は1,807例(31.6%)で、年齢中央値は80歳(四分位:77~83)であった。・解析対象の高齢者の特徴は、体格指数(BMI)が小さい、急性冠症候群が多い、心筋炎が少ないなどが挙げられた。・高齢者では肝腎機能に関連するT-BilやCreが高く、Alb値が低かった一方で、院外心停止(OHCA)の発生、ECMO併用は少なかった。・30日死亡は高齢者が非高齢者よりも多く認められ(38.9% vs.32.5%)、ハザード比(HR)は1.29(95%信頼区間:1.18~1.41、p<0.0001)であった。また、75〜79歳、80~84歳、85歳以上の3群の間では30日死亡に差はみられなかった。・PVAD関連合併症の多くは高齢者と非高齢者で同等であったが、心タンポナーデ(3.5% vs.1.8%)、下肢虚血(5.6% vs.3.5%)にて、わずかな差を認めた。・多変量解析の結果、75歳以上、BMI、心筋炎、不整脈の既往、ショックの重症度、肝腎障害、合併症としての下肢虚血がImpella挿入後の死亡と関連していた。・研究限界は、PVADを選択しなかった患者データが含まれていない、高齢者特異的パラメータが含まれていない、フォローアップ期間が限定的、イベント判定委員会の設置がなかったなどであった。 本研究を振り返り、同氏は「75歳以上であることはHRをみるとネガティブな因子であるが、死亡率の増加は受容可能な程度。高齢者の中でも補助循環装置を使用することで予後が見込める背景の患者を臨床医が見極め、その上でPVADを使用した結果ではないか」と説明した。また、世界的に心原性ショックを合併した高齢者やECMOを使用する高齢者が増加していることを受け、「暦年齢だけではなく、フレイル、サルコペニア、マルチモビディティなどの高齢者要素を含んだ包括的評価が心原性ショックを合併する高齢者に対して必要」ともコメントした。

11.

患者さんの自己流運動へのチェックも大事(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師最近、足腰が弱ってきて…。立ち上がるときに「よっこいしょ!」なんてかけ声が必要だったりして…。ハハハ…。それ、私です。何か、対策はされていますか?たまに、スクワットをしているんですが…。どんな風にされていますか?こんな感じです(実演)…回数は50回くらいです。なるほど。…もっと効果的な「7秒スクワット」というのがありますよ。患者 7秒スクワット、どんなスクワットなんですか?(興味津々)画 いわみせいじ医師 ちょっと、やってみましょうか。(実演)5秒かけてゆっくりと腰を落としていきます(伸張性収縮)。そのあと2秒間キープします(等尺性収縮)。そして、反動をつけずに立ち上がります(短縮性収縮)。患者 これ結構、効きますね。今までの私がやっていたスクワットとは全然、違いますね。どのくらいの回数をやったらいいですか?医師 1セット10回を3回。これを週に2回からスタートしてみてください。患者 はい、わかりました。頑張ってやってみます(嬉しそうな顔)ポイント自己流ではなく、筋グリコーゲンを使い切る効果的なスクワットの方法について実演を交えながら説明します。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

12.

こんな歩き方も運動療法の一方法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者最近、体力の低下を感じてきて…年ですかね。いえいえ、年のせいなんかではありませんよ。最近、運動はどうされていますか?頑張って…歩いているつもりなんですが…だんだん歩くのが遅くなって…。なるほど。確かに、頑張って歩いていても、ダラダラ歩いているだけでは年とともに体力は低下しますからね。やっぱり。どんな運動をしたらいいですかね?お勧めは「インターバル速歩」です。インターバル速歩?そうです。ダラダラ歩くのではなくて、「はや歩き」と「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すことです。確かに、さっさと歩くのは長く続かないので…ダラダラと長く歩いていました。どのくらいの速さで歩いたらいいですか?画 いわみせいじそうですね。全速力の6~7割程度、「ややきつい」ぐらいですかね。3分くらい少し早めに歩くと脈が上がってくると思いますよ。なるほど。どのくらいの頻度でやればいいですか。まずは、「はや歩き」を3分間、「ゆっくり歩き」を3分間、合計6分間を1セットとして、1日5セット以上、これを週4日以上行うと効果的ですよ。わかりました。頑張ってやってみます(嬉しそうな顔)ポイントインターバル速歩のやり方や到達目標(週に4日、20セット以上)を具体的に説明します。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

13.

1日も早く自宅に帰りたい-入院中に生じる廃用症候群/転倒を防ぐには?【こんなときどうする?高齢者診療】第4回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年7月に扱ったテーマ「転倒予防+α」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。転倒・廃用症候群の予防は、入院・外来を問わず高齢者診療に欠かせません。その背景と介入方法を症例から考えてみましょう。90歳女性。 既往症は高血圧、膝関節症。認知機能は保たれている。バルサルタンとアセトアミノフェンを服用。独居でADL/IADLはほぼ自立。買い物で重いものを運ぶのは難しいと感じている。3日前からの排尿痛と発熱で救急受診。急性腎盂腎炎の診断。入院して抗菌薬による治療を開始。本人は1日も早く帰宅し、自宅での自立生活を再開したいと希望している。原疾患の治療に加えて、自立生活を再開できる状態を作ることが入院中の治療・ケアのゴールになりますが、入院中に著しい身体機能低下を来す患者は少なくないのが実情ではないでしょうか。入院が高齢者に及ぼす影響まず、その背景を確認しましょう。入院中の高齢者は87~100%の時間をベッド上で過ごすといわれています1)。入院期間のほとんどがベッド上での生活となれば、当然、身体活動量は低下します。その他に、慣れ親しんだ自宅と異なる環境により、睡眠障害や口に合わない食事などで食欲不振、栄養不良に陥ることも珍しくありません。これらが引き金になり、筋肉量や有酸素能力が低下したり、歩行に必要な体のバランス機能や認知機能などが低下したりします。ちなみに、20~30代をピークに筋肉量の減少が始まることが多く、有酸素運動能力は25歳を過ぎると10年ごとに約10%減少していくともいわれています2-5)。加齢に伴う変化としての身体機能低下に、入院による負の変化が加わることで、廃用症候群のリスクが極めて高くなるのです。さらに悪いことに、こうした機能低下によって転倒をきっかけに入院した高齢患者が退院後6カ月以内に転倒する割合は約40%。そのうち15%は転倒により再入院に至るという研究もあります1)。そのほかに施設入所の増加、フレイルの悪化、ひいては死亡率の上昇などが生じます。急性疾患の治療を目的とした入院自体が機能低下の悪循環に入る原因になってしまうのです。入院中に生じる廃用症候群・転倒の悪循環を止めるには?このことから、身体機能低下を予防することは原疾患の治療と並ぶ重要な介入であることがわかると思います。ここからは、入院中の機能低下を最小限に抑えて、可能な限り身体機能を維持または強化し、患者の「家に帰りたい」という願いを叶える方法を探りましょう。まずアセスメントです。ここでは、簡単にできる機能評価・簡易転倒リスクのスクリーニング方法を2つ紹介します。1つめは、以下に挙げる4つの質問を使う方法です。(1)ベッドや椅子から自分で起き上がれますか?(2)自分で着替えや入浴ができますか?(3)自分で食事の準備ができますか?(4)自分で買い物ができますか?1つでも「いいえ」がある場合は、より詳しい問診やリハビリテーションチームに機能評価を依頼するなど、詳細な評価を検討します。また同時に、視力や聴力の程度、過去1年の転倒歴、歩行や転倒に関しての本人の不安なども、転倒リスクを見積もるために有用な質問です。2つめは、TUG(Timed up and Go)テストです。椅子から立ち上がって普通の速度で3m歩いてもらい、方向を変えて戻ってくるまでにかかる時間を計ります。10秒未満で正常、20秒未満でなんとか移動能力が保たれた状態、30秒未満では歩行とバランスに障害があり補助具が必要な状態と判断します。入院患者のアセスメントでは、15秒以上かかる場合は理学療法士に詳しいアセスメントや助言を求めるとよいでしょう。医師が押さえておくべき運動処方の原則さて、患者の状態を把握できたら次はどのような運動介入を行うかです。ここでは、「歩行のみ」のトレーニングはかえって転倒のリスクを高めるということを覚えておきましょう。転倒予防やADLの維持をサポートするには、筋力トレーニング、有酸素運動、バランストレーニング、歩行/移動トレーニングなどの複数の運動療法を組み合わせて、バランスよく総合的に鍛えることが重要です。そのほかにも関節可動域訓練などさまざまな訓練がありますから、患者の状態に合わせてリハビリテーションチームと共に計画を立ててみましょう。 外来での転倒予防のポイントはオンラインサロンでサロンでは外来患者のケースで、転倒リスクになる薬剤や外来でのチェックポイントや介入のコツを解説しています。また、サロンメンバーからの質問「高齢患者に運動を続けてもらうコツ」について、樋口先生はもちろん、職種も働くセッティングも異なるサロンメンバーが経験を持ち寄り、よりよい介入方法をディスカッションしています。参考1)Faizo S, et al. Appl Nurs Res. 2020:51:151189.2)Janssen I, et al.J Appl Physiol (1985). 2000;89:81-88.3)Mitchell WK, et al. Front Physiol. 2012 Jul 11:3:260.4)Hawkins S, et al. Sports Med. 2003;33:877-888.5)Kim CH, et al. PLoS One. 2016;11:e0160275.

14.

7月17日 理学療法の日【今日は何の日?】

【7月17日 理学療法の日】〔由来〕昭和40年に理学療法士について定めた法律「理学療法士及び作業療法士法」が公布され、翌41年に第1回理学療法士国家試験が実施された。この試験に合格した110名の理学療法士によって結成されたのが「日本理学療法士協会」。この日を記念して同協会が制定し、この日の前後に全国で理学療法に関係する医療、介護のイベントが開催されている。関連コンテンツ任天堂リングフィットと理学療法の組み合わせが有効?【Dr.倉原の“おどろき”医学論文】過度の運動はいうほど有害ではなくむしろ寿命を延ばしうる【バイオの火曜日】転倒リスクが低減する運動は週何分?歩行を守るために気付いてほしい脚の異常/日本フットケア・足病医学会肩関節脱臼のリハビリテーション、理学療法は有効か?/BMJ

15.

亜鉛の測定が推奨される症状・タイミングは?

 近年、健康維持に重要な栄養素として注目を浴びる亜鉛。小児の発育や味覚異常に影響することはよく知られているが、ここ数十年で国内外の研究報告からさまざまな生理作用に関与していることが明らかになっている。先般、国内レセプトデータを解析して日本人の亜鉛不足者の特徴を発表1)した横川 博英氏(順天堂大学医学部総合診療科学講座 先任准教授)が「一般集団・患者群の血清亜鉛濃度の実際と低亜鉛血症患者の頻度やその臨床像」と題し、日本人の亜鉛欠乏の現状や検査の必要性について、6月4日に開催されたノーベルファーマのプレスセミナーにおいて解説した。亜鉛不足はなぜ起こる?年齢や性差は? 横川氏らが報告した研究1)からは、▽疾病の治療を受けている日本人の3人に1人は亜鉛欠乏症(60μg/dL)、▽加齢に伴い血清亜鉛濃度は低下、▽誤嚥性肺炎、褥瘡、サルコペニア、慢性腎臓病(CKD)を併存する患者の50%以上が亜鉛欠乏症で、その関連は誤嚥性肺炎、褥瘡、サルコペニア、COVID-19、CKDの順に高い、▽利尿薬、甲状腺ホルモン治療薬、貧血治療薬、全身性抗菌薬による治療患者の50%以上が亜鉛欠乏症で、その関連は利尿薬、全身性抗菌薬、貧血治療薬、甲状腺ホルモン治療薬の順に高い、などが示唆され、この結果に対し「これらの治療薬を使わなければならない患者の状態では亜鉛欠乏を引き起こすことが多い、と解釈するのが妥当」と同氏は補足した。 また、性別や年齢でこの結果を振り返ると、男性の場合は60歳以上から、女性では70歳以上から血清亜鉛濃度の低下が顕著になっている。加えて、厚生労働省の国民健康・栄養調査報告2)おける亜鉛摂取データによると、男性は全年齢において亜鉛摂取量が不足しているのに対し、女性では50代までは摂取量が不足しているも60~70代の摂取量は推奨量と同等であった。 これを踏まえると、栄養素や健康に対する意識の差が血清亜鉛濃度にも表れている可能性がある。実際に日本人の亜鉛不足には摂取食品の変化が影響しており、「日本人が低亜鉛に陥っている原因の1つは、元来の主食である米の消費量が減り、米や雑穀から得られる亜鉛などの摂取量が低下していること。米飯(精白米)の100gあたりの亜鉛含有量は多くはない(0.6mg)ものの、主食の役割を考えるとその影響は大きい。このほかにも亜鉛を多く含む上記3品には牡蠣(13.2mg)、豚レバー(6.9mg)、牛肩ロース(5.6mg)がある3)ので、これらの摂取を意識した食生活が重要」と食事に対する意識を促した。亜鉛不足による症状 そもそも亜鉛とは、生体内の300種以上の酵素、サイトカイン、ホルモンなどに関与している栄養素で、主に筋肉(60%)、骨(20~30%)、皮膚・毛髪(8%)、肝臓(4~6%)、消化管・膵臓(2.8%)、脾臓(1.6%)などに分布している。そのため、小児の身長の伸びや味覚の維持をはじめ、皮膚代謝、生殖機能、骨格の発達、精神・行動、免疫機能にまでその影響は及ぶ。そして、亜鉛不足に関連する症状を以下のように列挙すると、身長の伸びを除き、実は高齢者にみられる症状の多くと合致することから、横川氏は「“加齢によるもの”に留めてしまうのではなく、このような症状がある場合には、一度、亜鉛測定することを推奨する」と注意喚起した。<亜鉛不足に関連する症状>味がわからない、食欲がない、皮膚炎、生殖機能の低下、脱毛、傷が治りにくい、元気がない、貧血、骨粗鬆症、口内炎、風邪をひきやすい、下痢、身長の伸びが悪い亜鉛を測定するタイミング この10年で医療機関での亜鉛の検査数4)は加速度的に増加し、メディカル・データ・ビジョンの急性期病院の医療情報データベースを用いて亜鉛を検査した診療科比率を算出したところ、外来では内科(19%)、小児科(10%)、外科(8%)で、入院では内科(27%)、腎臓内科(7%)、外科(6%)で主に検査が行われており、「褥瘡管理や経管栄養などを行っている患者への栄養アセスメントの観点から検査件数が増加傾向にある」と見解を示した。では、前述のような亜鉛欠乏を想起するような症状がない場合、亜鉛を測定するタイミングはあるのだろうか? 横川氏によれば、「特徴的な症状がなく、一見、不定愁訴のような訴えの場合でも、まず亜鉛欠乏も疑ってみることが、診断のきっかけになることもあり得る」と説明した。 最後に同氏は、「血清亜鉛濃度の低下は、腎疾患や肝疾患はもちろんのこと、加齢による亜鉛の消化管吸収低下が原因で生じることもある。そのため、消化器領域の診療においても上述のような症状がみられる患者に遭遇した際には、低亜鉛を意識した検査を行ってほしい。そして、亜鉛欠乏にも配慮した併存疾患の治療を行ってほしい」と締めくくった。

16.

ライフステージごとの運動で健康寿命の延伸を目指す/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、運動・健康スポーツ医学委員会(委員長:津下 一代氏[女子栄養大学 特任教授])の「令和4・5年度の運動・健康スポーツ医学委員会答申」ならびに医師会としてスポーツ庁長官の室伏 広治氏へ要望書を提出したことを常任理事の長島 公之氏(長島整形外科院長)が説明した。住民の健康寿命延伸は地域の多職種の連携で実現する 今回の答申は、「『健康スポーツ医学実践ガイド』(2022年6月発行)と『運動・スポーツ関連資源マップ作成』を通じて促進する地域の多職種連携について」と題され、全国の医師会を中心に医師と他の医療職種と地域が協同して、運動やスポーツを通じ、住民の健康寿命の延伸を目指す取り組みを記している。 とくに答申では、「学校医や産業医、かかりつけ医が運動について効果的に助言することが望ましい」とされ、「とくに慢性疾患を有する者に対しては、診察時に運動実施状況を確認し、助言、励まし、賞賛することが重要」としている。 『健康スポーツ医学実践ガイドの活用』では、健康スポーツ医と運動指導者の多職種連携推進講演会や健康スポーツ医学実践講習会などにおける普及を念頭に活用が期待されている。また、「運動・スポーツ関連資源マップ作成」では、令和4年度にマップ実用化に向けた事業として、規模の異なる4都市(岩手県北上市、千葉県館山市、東京都狛江市、大分県)をモデル地域としてマップ作成の試行事業を実施した結果、課題として地域のキーパーソンによるところが大きいこと、助成終了後にも機能する仕組みがないと行政は着手しにくいことなどが説明された。今後、課題解決のため、運動施設の情報を自動更新にすること、大手スポーツクラブなどは本部などの中央から積極的に情報提供すること、患者(住民)個人を中心に支援者をひも付けし情報提供できるようにすることなど対策が提言されている。 ライフステージ・対象別にみた運動については、下記のように課題と対策を述べている。(1)子供たちなどの学校保健 運動器検診により子供たちは、「運動過多」と「運動不足」で運動習慣が二極化している。運動器検診の実施では健康スポーツ医の参画や学校長のリーダーシップのもと、運動器の健康に興味を持ってもらうことが必要。(2)勤労世代などの産業医が押さえておきたい健康スポーツ医学 労働者では、身体活動量が低下することで起こる心身の不調が労働生産性の低下をもたらす。さらに業務範囲の拡大やメンタルヘルス不調により、労働経済にも悪影響を与える。疾病予防と生産性向上のため、労働環境の見直し、日常生活に密着した身体活動の向上が必要で、具体的には、休憩時間のストレッチ指導を組み入れることなど産業医からの提案も必要。(3)高齢者など介護予防・リハビリテーションにおける地域連携 身体不活動や運動不足は、非感染性疾患による死亡に影響する因子として、わが国では喫煙・高血圧に次いで3番目の危険因子とされている。国民に身体活動・運動の重要性が認知され、実践されることが健康寿命の延伸に必要である。そのため1次予防(健康増進、疾患予防)、2次予防(早期治療、重症化予防)、3次予防(再発防止)に、介護予防(フレイル対策、介護悪化抑制)を加えた横断的な健康作りの体制が必要。 最後に「健康スポーツ医学実践ガイドのさらなる活用に向けた提言」として研修会・講習会の開催、実践ガイドの各項目に対応した動画の作成、新しいコンテンツの導入が記述され、「運動・スポーツ関連資源マップの作成について」の提言として、スポーツ医などの地域の医師会活動、スポーツ庁や厚生労働省への提言などが今後の取り組みとして記されている。

17.

6月5日 ロコモ予防の日【今日は何の日?】

【6月5日 ロコモ予防の日】〔由来〕「ロ(6)コ(5)モ」と「ろ(6)うご(5)」(老後)と読む語呂合わせから、ロコモティブ・シンドロームの認知度を高め、その予防に関する正しい理解を広めることを目的に「ロコモティブ・シンドローム予防推進委員会」が制定。関連コンテンツ“ロコトレ”とは?【患者説明用スライド】7つの“ロコモチェック”【患者説明用スライド】ロコモティブ・シンドローム【診療よろず相談TV】20代より身長4cm以上低下、椎体骨折を疑う/日本整形外科学会終末期の運動機能の低下は死亡と関連するか/BMJ

19.

高齢者診療の困ったを解決するヒントは「老年医学」にあり!【こんなときどうする?高齢者診療】第1回

今回のテーマは、「なぜ今、老年医学が必要なのか?」です。このような症例に出会ったことはありませんか?85歳女性。自宅独居。糖尿病、高血圧、冠動脈疾患の既往有。呼吸苦を主訴に救急外来を受診。肺炎と診断し入院にて抗菌薬加療。肺炎の治療は適切に行われ呼吸苦症状も改善したが、自力歩行・経口摂取が困難になり自宅への帰宅不可能に。適切な診断と治療をして疾患は治ったにもかかわらず状況が悪化してしまう-高齢者診療でよく遭遇する場面かもしれません。老年医学はこうしたジレンマに向かい合うきっかけを提供し、すべての高齢者に対してQOLの維持・向上を図ること、また同時に心や体のさまざまな症状をコントロールするために体系化された学問です。老年医学の原則とアプローチ(「型」)を実践することで、困難事例に解決の糸口をみつけることができるようになります。老年医学の原則:コモンなことはコモンに起きる-老年症候群と多疾患併存日本における平均寿命と健康寿命はいずれも延伸していますが、平均寿命と健康寿命のギャップは医療の進歩にも関わらず顕著には短縮しておらず、女性で約12年、男性で約7~8年あります。1)この期間に多くの高齢者が抱える問題が2つあります。ひとつは老年症候群。たとえば記憶力の低下や抑うつ、転倒や失禁などの認知・身体機能の低下など、高齢者にコモンに起きる症状・兆候を「老年症候群」と総称します。もうひとつは、多疾患併存(multimorbidity)です。年齢に比例して併存疾患の数が多くなり、60歳以降では約20%が3つ以上の疾患を有しているという調査があります。2)高齢者の治療やケアをする場合、老年症候群と多疾患併存があるという前提で診察やケアにあたることが大切です。老年医学の型:5つのM老年症候群があり、多疾患併存状態にある高齢者の診療は、疾患の診断-治療という線形思考で解決しないことがほとんどです。そこで、複雑な状況を俯瞰するために「5つのM」というフレームを使います。要素は、大切なこと(Matters most)、薬(Medicine)、認知機能・こころ(Mind)、身体機能(Mobility)、複雑性・落としどころ(Multi-complexity)の5つです。今回のケースを5つのMを使って考えてみましょう。ポイントはMatters mostから考え始めること。「生きがい」・「大切なこと」といったことでもよいのですが、「今、患者/家族にとって一番の困りごとは何か、肺炎を治療した先の日々の生活に期待することは何か?」を入院加療の時点で考えられると、行うべき介入がさまざまな角度から検討できるようになります。今回のケースでは、肺炎治療後に自宅に帰り、自立した生活をできる限り続けることがゴールだったと考えてみましょう。そうすると、肺炎治療に加えて1人で歩行するための筋力維持が必要だと気付くでしょう。また筋力を維持するためには栄養状態にも気を配らなければなりません。それに気付けば理学療法士や管理栄養士など、その分野の専門職に相談するという選択肢もあります。また、肺炎治療中の絶対安静や絶食は、筋力や栄養状態の維持を同時に叶えるために適切な選択だろうか?本当に必要なのだろうか?と立ち止まって考えることもできます。しかし命に係わるかもしれない肺炎の治療は優先事項のひとつですから、落としどころとして、安静期間をできる限り短くできないか検討する、あるいはリハビリテーションの開始を早める、誤嚥のリスクを見極めて経口摂取を早期から進めていく、といった選択肢が出てくるかもしれません。100%正しい選択肢はありません。ですが5つのMで全体像を俯瞰すると、目の前の患者に対して、提供できる医療やケアの条件の中で、患者のゴールに近づく落としどころや優先順位を考えることができます。高齢者にかかわるすべての医療者で情報収集し共有する今回のケースでは、例として理学療法士や管理栄養士を出しましたが、その他にもさまざまな専門職が高齢者の医療に携わっています。医師は診断・治療といった医学的介入を職業の専門性として持つ一方で、患者とコミュニケーションできる時間が少ないために十分な「患者―医師関係」が構築しにくく、患者・家族が本当に大切にしていることが届きにくい場合があります。そのため、協働できる多職種の方とともに患者の情報を得る、そして彼らの専門性を活かして介入の方法やその分量のバランスをとること、落としどころを見つけることが医師に求められるスキルのひとつです。参考1)内閣府.令和5年度版高齢社会白書(全体版).第1章第2節高齢期の暮らしの動向.2)Miguel J. Divo,et al. Eur Respir J. 2014; 44(4): 1055–1068.

20.

慢性腎臓病の入院抑制を意図した電子記録+診療推進者介入の効果は証明されず(解説:浦信行氏)

 慢性腎臓病(CKD)、2型糖尿病、高血圧は腎不全に至る3大疾患であるが、これらを合併した症例に1年間の電子記録+診療推進者介入が入院を減少させるかを、非盲検クラスター無作為化試験で検討した成績がNEJM誌に報告された。その結果は4月17日公開のジャーナル四天王に詳述されているが、主要アウトカムと副次アウトカムのいずれも通常ケア群に対して有意な効果を示さなかった。 結果は1年という比較的短期間の検討であることが影響した可能性は否定できない。加えて腎機能障害の程度もeGFRで49mL/min程度、HbA1cで7.5%前後、血圧は133/73mmHg前後といずれも比較的コントロールされており、また使用薬剤もRA系阻害薬が68%ほどの症例に使用されており、通常ケア群においても良好な治療がなされていることで差がつきにくかった要素もあると思われる。関与した診療推進者は看護師あるいは薬剤師であった点も介入の限界をうかがわせる。腎機能障害に対する運動療法の効果や栄養摂取バランスの効果も注目されるようになった昨今、介入者がリハビリ職や栄養士であればどうであったか。フレイルやサルコペニア、栄養バランスに介入する試みであれば、違った結果を見られたかもしれない。BMIは33と肥満者が多いが、サルコペニア肥満も機序は異なるが心血管疾患の有意なリスクである。 話は異なるが、腎不全に至る3大疾患としてこの対象を抽出しており、急性腎障害はいずれも10%以上と多いが、アウトカムとしての透析導入は0.6~0.7%と低値にとどまっていた。一方、心血管疾患は20%前後と比較的多く、これら3大疾患は心血管系の重要なリスクであることが改めて確認された。なお、退院後30日以内の再入院が37%と著明な高値であるが、米国とわが国の入院医療の基本的立ち位置の違いが顕著に現れたといえるであろう。

検索結果 合計:140件 表示位置:1 - 20