サイト内検索|page:3

検索結果 合計:63件 表示位置:41 - 60

41.

第21回 処方ミスは誰の責任?主治医か薬剤師か、はたまた双方か!?

■今回のテーマのポイント1.呼吸器疾患で一番訴訟が多い疾患は肺がんであり、争点としては、健診における見落としおよび診断の遅れが多い2.薬剤師は、自らの責任において用法・用量などを含めた処方せんの内容について問題がないか確認をしなければならない(薬剤師法24条)3.医師の書いた処方箋が誤っていた場合、それを修正させなかった薬剤師も誤投与に対し責任を負う事件の概要60歳男性(X)。平成17年3月、頸部リンパ節腫脹精査目的にてA病院に入院しました。検査の結果、右中下葉間を原発とする肺腺がん(T2N3M1(膵、リンパ節転移):StageIV)と診断されました。4月13日より、Xに対し、化学療法が開始されたものの、徐々にXの全身状態は悪化していき、8月末には脳転移も認められるようになりました。10月よりXの主治医はW医師および3年目の医師(後期研修医)Yに変更となりました。Xの全身状態は悪く、10月11日には、発熱、胸部CT上両肺野にびまん性のスリガラス状陰影が認められました。Y医師は、抗がん剤(ビノレルビン)による薬剤性肺障害を疑い、ステロイドパルス療法を開始しましたが、改善しませんでした。β‐Dグルカンが79.6pg/mLと上昇していたことから、Y医師は、ニューモシスチスカリニ肺炎を疑い、18日よりST合剤(商品名:バクトラミン)を開始しました。治療によりβ‐Dグルカンは低下し、胸部CT上もスリガラス状陰影の改善が認められたものの、バクトラミン®によると考えられる嘔気・嘔吐が増悪したため、28日の回診時に呼吸器科部長Z医師よりY医師に対し、ペンタミジンイセチオン(商品名:ベナンバックス)に変更するよう指示がなされました。Y医師は、W医師に対し、ベナンバックス®の投与量を尋ねたところ、「書いてある通りでよい」旨指示されたため、医薬品集をみてベナンバックス®の投与量を決めることとしました。なお、W医師は、午後外勤であったため、上記やり取りの後、Y医師が実際に処方するのを確認せずに病院を離れました。ところが、Y医師は、ベナンバックス®の投与量(4mg/kg/日)を決定する際に、誤って医薬品集のバクトラミン®(15~20mg/kg/日)の項をみて計算してしまったため、結果として、5倍量の注射オーダーがなされてしまいました。A病院では、薬剤の処方にオーダリングシステムが導入されていたものの、過量投与への警告機能は薬剤の1回量について設定されているのみで、投与回数や1日量については設定がされていませんでした。そのために、本件のベナンバックス®の処方に対して警告が発せられなかったこともあり、調剤した薬剤師および調剤監査に当たった薬剤師は過量投与に気づきませんでした。その結果、Xは、収縮期血圧が70mmHgまで低下し、意識状態の悪化、奇異性呼吸が認められるようになり、11月10日、Xは、低血糖による遷延性中枢神経障害、肝不全、腎不全により死亡してしまいました。これに対し、Xの遺族は、病院だけでなく、主治医であった後期研修医YおよびWならびに呼吸器センター部長Z、さらに調剤した薬剤師および監査した薬剤師2名の計6名の医師・薬剤師に対し、約1億800万円の損害賠償請求を行いました。事件の判決●主治医の後期研修医Yの責任:有責「被告Y医師は、臨床経験3年目の後期研修医であったけれども、医師法16条の2の定める2年間の義務的な臨床研修は修了しており、また、後期研修医といえども、当然、医師資格を有しており、行える医療行為の範囲に法律上制限はなく、しかも、前記のとおり、被告Y医師の過失は、医師としての経験の蓄積や専門性等と直接関係のない人間の行動における初歩的な注意義務の範疇に属するものである」●主治医W医師の責任:無責「ベナンバックスへの薬剤変更が決定された10月28日、被告W医師は、外勤のため、被告病院を離れなければならないという事情があり、被告Y医師から、投与量について相談をされた際に、書いてあるとおりでよいと、概括的ながら、添付文書や医薬品集に記載されている投与量で投与する旨の指示は出している。そして、被告W医師としては、特別の事情がない限り、被告Y医師が、医薬品集などで投与量を確認し、その記載の量で投与するであろうことを期待することは、むしろ当然であるといえる。すなわち、本件事故は、被告Y医師が、医薬品集の左右の頁を見間違えて処方指示をしたという初歩的な間違いに起因するものであるが、このような過誤は通常想定し難いものであって、被告W医師において、このような過誤まで予想して、被告Y医師に対し、あらかじめ、具体的な投与量についてまで、指示をすべき注意義務があったとは直ちには認められないというべきである」●呼吸器センター部長Z医師の責任:無責「被告Z医師は、Xの主治医や担当医ではなく、呼吸器センター内科部長として、週に2回の回診の際、チャートラウンドにおいて、各患者の様子について担当医師らから報告を受け治療方針等を議論し、前期研修医を同行し、患者の回診をするなどしていた。本件でも、Xの診療を直接に担当していたわけではなく、チャートラウンドなどを通して、主治医や担当医の報告を受けて、治療方針を議論するなど、各医師への一般的な指導監督、教育などの役割を担っていたといえる。被告Z医師は、10月28日のチャートラウンドにおいて、被告Y医師からXの容態について報告を受け、薬剤をベナンバックスに変更することを指示している。その際、ベナンバックスの投与量や投与回数、副作用への注意などについては、特に被告Y医師に対して具体的な指示をしていない。しかし、被告Z医師の前示のとおりの役割や関与の在り方から見ても、10月28日当時で約95名にのぼる被告病院呼吸器センター内科の入院患者一人一人について、極めて限られた時間で行われるチャートラウンド等の場において、使用薬剤やその投与量の具体的な指示までを行うべき注意義務を一般的に認めることは難しいといわざるを得ない」●薬剤師3名の責任:有責「薬剤師法24条は、「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と定めている。これは、医薬品の専門家である薬剤師に、医師の処方意図を把握し、疑義がある場合に、医師に照会する義務を負わせたものであると解される。そして、薬剤師の薬学上の知識、技術、経験等の専門性からすれば、かかる疑義照会義務は、薬剤の名称、薬剤の分量、用法・用量等について、網羅的に記載され、特定されているかといった形式的な点のみならず、その用法・用量が適正か否か、相互作用の確認等の実質的な内容にも及ぶものであり、原則として、これら処方せんの内容についても確認し、疑義がある場合には、処方せんを交付した医師等に問合せて照会する注意義務を含むものというべきである。・・・(中略)・・・薬剤師はその専門性から、原則として、用法・用量等を含む処方せんの内容について確認し、疑義がある場合は、処方医に照会する注意義務を負っているといえるところ、特に、ベナンバックスは普段調剤しないような不慣れな医薬品であり、劇薬指定もされ、重大な副作用を生じ得る医薬品であること、処方せんの内容が、本来の投与量をわずかに超えたというものではなく、5倍もの用量であったことなどを考慮すれば、被告薬剤師としては、医薬品集やベナンバックスの添付文書などで用法・用量を確認するなどして、処方せんの内容について確認し、本来の投与量の5倍もの用量を投与することについて、処方医である被告Y医師に対し、疑義を照会すべき義務があったというべきである」(*判決文中、下線は筆者による加筆)(東京地判平成23年2月10日判タ1344号90頁)ポイント解説1)呼吸器疾患の訴訟の現状今回は、呼吸器疾患です。呼吸器疾患で最も訴訟となっているのは肺がんです(表1)。やはり、どの診療科においても、重篤な疾患が訴訟となりやすくなっています。肺がんの訴訟は、原告勝訴率が52.9%とやや高い一方で、認容額はそれなり(平均3,200万円)というのが特徴です(表2)。これは、肺がんが、がんの中では5年生存率が比較的低い(予後が不良)ことが原因であると考えられます。すなわち、訴訟においては、不法行為責任が認められた後に、当該生じた損害を金銭に換算し、損害額を決定するのですが、肺がんのように5年生存率が低い疾患の場合、損害額の多くを占める逸失利益があまり認められなくなるのです。逸失利益とは、「もし医療過誤がなかった場合、どれくらい収入を得ることができたか」ですので、まったく同じ態様(たとえば術後管理の瑕疵)の過失であったとしても、生命予後が比較的良好な胃がんの患者(ここ10年間の検索可能判決によると平均6,520万円)と肺がんの患者では、認められる逸失利益に大きな違いが出てくることとなるのです。肺がんの訴訟において、最も多く争われるのが第17回でご紹介した健診による見落としなどであり、その次に多いのが診断の遅れと手技ミスです(表2)。また、表2をみていて気づくかもしれませんが、福島大野病院事件医師逮捕があった平成18年の前後で原告勝訴率が66.7%(平成18年以前)から37.5%(平成18年以降)と大きく落ち込んでいる点です。これは、医療崩壊に司法が加担したことに対する反省なのか、医療訴訟ブームによる濫訴が原因なのか、負け筋は示談されてしまい判決までいかないことが原因なのかなど、さまざまな理由によると考えられますが、結果として、医療訴訟全体において原告勝訴率が低下しており、肺がんにおいても同様のトレンドに沿った形(平成18年以前 40%前後、平成18年以降 25%前後)となっているのです。2)処方ミスは誰の責任?今回紹介した事例は、肺がん訴訟の典型事例ではありませんが、チーム医療を考えるにあたり非常によいテーマとなる事例といえます。本件では、病院だけでなく、医師、薬剤師を含めた多数の個人までもが被告とされました。その結果、各専門職および専門職内における役割の責任につき、裁判所がどのように考えているかをみることができる興味深い事例といえます。チーム医療とはいえ、病院スタッフはそれぞれ専門領域を持つプロフェッションです。国家資格もあり、法律上業務独占が認められています。したがって、チーム医療とはいっても、それぞれの専門領域については、各専門家が責任を負うこととなり、原則として他の職種が連帯責任を負うことはありません。これを法律的にいうと「信頼の原則」といいます。「信頼の原則」とは、「行為者は、第三者が適切な行動に出ることを信頼することが不相当な事情がない場合には、それを前提として適切な行為をすれば足り、その信頼が裏切られた結果として損害が生じたとしても、過失責任を問われることはない」という原則で、いちいち他の者がミスをしていないか確認しなければならないとなると円滑な社会活動を行うことが困難となることから、社会通念上相当な範囲については、他人を信頼して行動しても構わないという考えで、この原則は、医療従事者間においても適用されます。それでは、本事例のような処方箋の書き間違えは、誰の責任となるのでしょうか。医師法、薬剤師法上、医薬分業が定められています。すなわち、「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない」(医師法22条)とされ、これを受けて、「薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない」(薬剤師法23条1項)とされています。そして、薬のプロである薬剤師は、「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない」(薬剤師法24条)とされており、患者に投与される薬は原則として、薬剤師が防波堤として、最終的なチェックをすることとなっています。したがって、法が予定する薬の処方に関する安全は、薬剤師に大きく頼っているといえます。本判決においても、処方ミスを水際で食い止めることが薬剤師に課せられた法的義務であることから、薬剤師は医師の処方箋が正しい内容であると信頼することは許されず、自らの責任において用法・用量などを含む処方せんの内容について確認しなければならないとされたのです。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京地判平成23年2月10日判タ1344号90頁

42.

重症薬疹

薬剤性とウイルス性の発疹症の鑑別法について教えてください。これは難しい質問です。薬剤によって出来る発疹とウイルスによって出来る発疹はメカニズムが似ています。薬剤もウイルスもMHC(主要組織適合遺伝子複合体)を介してT細胞に抗原認識されるという点では同じであり、実際の鑑別も簡単ではありません。ただ、ウイルスには流行がありますし、麻疹や風疹などウイルスでは抗体価が上がります。鑑別では、これらの情報を有効活用すべきだと思います。重症薬疹の、ごく初期の場合の見分け方を教えてください。初期段階での重症化予測については盛んに研究を行っているものの、まだ結論にはたどり着かない状態です。“軽く見える薬疹が2日後に非常に重症になる”といった症例を臨床の場でも経験することがあります。実際、初期であればあるほど見分けは難しく、大きな問題です。しいてコツをあげれば、思い込みを捨てて経過を良く観察する事でしょう。経過を良く見ていると、問題の発疹の原因や悪化要因となっている病気の本態やその赴く方向・勢いが顕になり、おかしいと点に気づくようになります。そこが非常に大事な点だと思います。重症化する薬疹の診断基準や早期診断の項目で、とくに重要な項目はありますか?粘膜疹と高熱の発現は重要です。とくに熱については、高熱がなければウイルス関与の薬疹ではない事が多いといえます。いずれにせよ、この2項目が出た場合は、注意しなければいけないと思います。また一般検査では、白血球増多と白血球減少のどちらも要注意で、血液像で核左方移動を伴う好中球増多がるのなのか、異形リンパ球の出現とその増加があるのか、また特殊検査になりますがTh2の活性化を示唆する血清TARC値の上昇が見られるのかも、薬疹の病型・重症度・病勢を推定・判定する上で重要です。マイコプラズマ感染症に続発する皮疹と薬疹を鑑別する方法はありますか?この2つはきわめて似ています。しかしながら、マイコプラズマに続発する場合は、気道が障害される傾向がありますし、胸部所見からの情報も得られます。また子供よりも大人の方が鑑別難しい症例が多いといえます。これも一番のコツは経過をじっと観察し、通常の定型的薬疹と違うことに気づくことだと思います。同じ薬剤でも薬疹の臨床型には個人差があるが、その要因を知りたい。難しい質問ですが、その患者さんの持っている免疫応答性とそれに影響を及ぼす遺伝的・非遺伝的な各種要因に関係した患者さんの持っている特性などが影響するのでしょう。SJSからTENへの移行とありますが、病理組織学的に両者は別疾患と聞いたことがあります。疾患連続性について御教授ください。これにはいろいろな意見があります。SJSは、通常SJSの発疹の拡大と病勢の伸展・進行によりTENに移行します。しかし、TENの場合、SJSを経ないで現れるものもあります。そのため、現時点ではSJSからTENに移行するものは一群として考えているといってよいと思います。免疫グロブリンは、軽症でも粘膜疹があれば早期投与した方が良いのでしょうか?免疫グロブリンを用いるのは、通常の治療で治らない場合と明らかにウイルス感染があるなど免疫グロブリンの明らかな適応がある場合などに限ります。このような症例を除いては、早期に使わないのが原則だと考えます。また、高価であり保険の問題もありますので、当然ながら安易な処方は避けるべきでしょう。AGEPにおける、ステロイド投与適応の指標は?AGEPには原因薬を中止して治る例とそうでない例があります。ステロイド適応は原因薬をやめて治らない場合ですね。なお、AGEPの場合は、TENやSJSとは異なり比較的低用量のステロイドでも治る症例があることに留意すべきものと思われます。初期に判断が難しい際には、全身ステロイドは控えるべきですか?判断が困難な場合は、第一の選択肢は、まず専門医に紹介するべきでしょう。中途半端な治療の後、悪化してわれわれの施設に来られる患者さんも少なくありません。こういった医療が最も良くないといえるでしょう。そういう意味で、病気に寄り添い、責任を持ってとことん病気を見切ることが重要です。その経過中に無理だと判断したら専門の医師に紹介した方が良いといえます。重症薬疹の原因薬剤として意外なもの(あまり認識されていないもの)はありますか?抗痙攣薬、消炎鎮痛解熱薬(NSAIDs)、抗菌薬、痛風治療薬などが原因薬としてよく取り上げられますが、どんな薬剤でも起こり得ると思った方が良いと思います。被疑薬の特定が困難である場合、治療のために全て薬剤を中止することが多いですが、どのように因果関係を証明したらよいでしょうか?とくに多剤内服中の方について病気の程度によりますが、軽くて余裕があれば、怪しい薬剤から抜いていって、良くなったらその薬剤が原因である可能性が高いわけです。一方、薬疹の進行が激しく一刻の猶予もない場合は、すべて中止したほうが良いと考えます。そして、その症状が治るか収まるかして、ステロイドなどの治療薬を中止できるか、ある程度まで減量できた時に、推定される原因薬剤を用いて、患者さんの末梢血に由来するリンパ球の刺激培養(in vitroリンパ球刺激試験)を実施し、出来れば、in vivoのパッチテストも行い、原因薬を診断・推定することは今後の予防という視点からも重要です。

43.

ビスホスホネート関連大腿骨不完全骨折には外科的治療が有効

 ビスホスホネート系薬剤が誘発する大腿骨不完全骨折の予後に関するレトロスペクティブな調査の結果、外科的治療のほうが保存的治療と比較し、より早く症状を消失させるとともに治癒に至らせる割合が高いことが報告された。調査を行った米国・ニューヨーク大学関節疾患病院のKenneth A. Egol氏らは、外科的治療はビスホスホネート関連大腿骨不完全骨折の症状緩和に有効であり、患者に対し予防的手術の効果の可能性について助言すべきである、とまとめている。Journal of Orthopaedic Trauma誌2013年6月27日号の掲載報告。 対象は、難治性の症状を有するかまたはX線所見にて骨折線の進行が認められたビスホスホネート関連大腿骨不完全骨折患者31例(不完全骨折43件)で、不完全骨折に対し保存的治療または外科的治療が行われた。 対象者は、全例女性で、平均年齢69.2歳(範囲:46~92歳)、ビスホスホネート治療の平均期間は9.1年(範囲:5~20年)だった。 X線所見とShort Musculoskeletal Functional Assessment(SMFA)により、予後を評価した。 主な結果は以下のとおり。・不完全骨折の49%(21/43件)は、切迫骨折や保存的治療無効のため最終的に外科的治療を行った。・外科的治療群では、81%で疼痛が消失し、100%でX線所見上治癒が確認された。治癒までの平均期間は7.1ヵ月(範囲1.5~12ヵ月)であった。 ・保存的治療群で疼痛消失が得られたのは64%であり、平均11ヵ月でX線所見上治癒が確認されたのはわずか18%であった。・SMFA機能障害指数は、外科的治療群のほうが保存的治療群より良好であった(保存的治療群 19.7 vs外科的治療群 25.7、p=0.0017)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

44.

関節リウマチの医療費の抑制は可能か?(コメンテーター:杉原 毅彦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(116)より-

生物学的製剤(TNF阻害薬 IL-6阻害薬 T細胞選択的阻害薬)の登場により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールが可能となったが、関節リウマチの医療費が高騰している。もっともスタンダードな治療法であるメトトレキサート(MTX)で疾患活動性のコントロールが不十分であると判断した場合、リウマチ専門医はTNF阻害薬をMTXに追加することが増えてきた。 今回の無作為比較試験(RCT)では、TNF阻害薬をMTXに追加する代わりに、生物学的製剤より薬価の低い古典的な抗リウマチ薬2剤を追加しても、両群で同じように疾患活動性が抑制されることが示された。このことは、医療経済的な観点から考えると、今後MTX無効例に対してTNF阻害薬を使用する前に古典的抗リウマチ薬の多剤併用を試すことが主流となる可能性を秘めているが、いくつかの問題点がある。 現在の治療目標は、関節炎の程度を、低疾患活動性あるいは寛解にコントロールすることであることが、世界中のリウマチ医のコンセンサスとなっているが、今回のRCTではエントリーできた症例数が予定より少なく、当初のプライマリーエンドポイント、低疾患活動性の達成率の比較を評価できなくなり、途中でプライマリーエンドポイントが変更となっている。変更したプライマリーエンドポイントにおいては、MTXと古典的抗リウマチ薬の多剤併用と、MTXとTNF阻害薬の併用に差を認めなかったが、低疾患活動性や寛解の達成率はMTXとTNF阻害薬併用のほうが優れていた。また、有意差はないが、MTXとTNF阻害薬の併用で関節破壊進行が抑制される傾向にあった。 また今回RCTで試された古典的抗リウマチ薬は抗マラリア薬で、日本では発売中止となっている薬剤であった。本邦でも、MTXで効果不十分なRA患者に、MTXに追加することで有効性が認められている古典的抗リウマチ薬がいくつかある。生物学的製剤の開始の遅れが関節破壊を進行させてしまうことが示されている現状においても、古典的抗リウマチ薬とMTXの多剤併用療法が、MTXと生物学的製剤の併用療法の代わりとなりうるのか検討することは、医療経済的側面から重要であろう。

45.

強直性脊椎炎に対する治療効果の評価には腰痛や疲労も重要

 強直性脊椎炎(AS)患者を対象としたエタネルセプト(商品名:エンブレル)とスルファサラジン(サラゾスルファピリジン、商品名:アザルフィジンほか)またはプラセボとを比較した臨床試験4件の解析から、夜間腰痛の軽減が疲労の改善につながることが示唆された。カタール・ハマド医療法人のMohammed Hammoudeh氏らは、治療反応性の評価にあたり、腰痛や疲労のような患者報告アウトカムを調べることなくC反応性蛋白(CRP)のみで評価することは誤解を招くおそれがある、とまとめている。Journal of International Medical Research誌オンライン版2013年6月26日の掲載報告。 ASにおける炎症、夜間腰痛および疲労と治療(12週間)との関連を調べるため、エタネルセプト、スルファサラジンまたはプラセボのいずれかを1回以上投与され、試験開始後に1回以上評価されたAS患者のデータが含まれる4件の臨床試験データを併合解析した(解析対象計1,283例/エタネルセプト群867例、スルファサラジン群187例、プラセボ群229例)。 炎症はCRP、夜間腰痛は視覚的アナログスケール(VAS)、疲労は強直性脊椎炎疾患活動性指標(BASDAI)にて評価し、線形回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・夜間腰痛の改善は疲労の改善の有意な予測因子であり、夜間腰痛と疲労との間には有意な相関が認められた。しかし、CRPとの相関はみられなかった。・エタネルセプトはスルファサラジンまたはプラセボと比較して、夜間腰痛および疲労を有意に改善した。・夜間腰痛の改善あるいは疲労の改善とCRPの改善との関連は弱かった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

46.

MTX無効の関節リウマチへのDMARDs 3剤併用、MTX+エタネルセプトに非劣性/NEJM

 メトトレキサート(MTX)単剤療法の効果が十分でない関節リウマチ(RA)患者に対し、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の3剤併用療法(MTX+サラゾスルファピリジン+ヒドロキシクロロキン)の効果は、MTX+エタネルセプトの2剤併用療法に対し非劣性であることが、米国・ネブラスカ大学医療センターのJames R. O’Dell氏らが実施したCSP 551 RACAT試験で示された。本試験は、欧州リウマチ学会(EULAR、スペイン・マドリード市)で報告され、NEJM誌オンライン版2013年6月11日号に掲載された。RAの治療はMTXで開始されることが多いが、MTX単剤で疾患活動性が低下する患者は約30%にすぎない。MTXの効果が不十分な場合に使用可能な生物学的製剤やDMARDsはいくつかあるが、RAは現在、糖尿病よりも治療コストの高い疾患となっており、その費用の大部分を生物学的製剤が占めるという。(※ヒドロキシクロロキンは国内未承認)非劣性を二重盲検無作為化試験で検証 CSP 551 RACAT試験は、MTX単剤療法が無効なRAの治療における、MTXへのサラゾスルファピリジン+ヒドロキシクロロキン追加3剤併用療法の、MTXへのエタネルセプト追加2剤併用療法に対する非劣性を検証する二重盲検無作為化試験。 MTX単剤療法の効果が不十分であったRA患者が3剤併用群または2剤併用群に無作為に割り付けられ、48週の治療が行われた。治療24週の時点で効果が得られなかった患者は、二重盲検下にもう一方の治療群へ切り替えられた。 主要評価項目は、48週後の疾患活動性スコア(DAS28)の変化とした。3剤から2剤併用への切り替えが費用対効果に優れる可能性 2007年7月~2010年12月までに353例が登録され、3剤併用群に178例(平均年齢:57.8歳、女性:43.3%、平均DAS28スコア:5.8)、2剤併用群には175例(56.0歳、48.6%、5.9)が割り付けられた。 両群ともに、治療24週時にDAS28の有意な改善効果が認められ(いずれもベースラインとの比較でp=0.001)、治療の切り替えを要した患者はいずれの群も27%であった。 両群ともに、治療切り替え例は切り替え後にDAS28が有意に改善し(いずれもp<0.001)、切り替え後の効果に群間差はみられなかった(p=0.08)。 ベースラインから治療48週までに、DAS28は3剤併用群で2.1低下し、2剤併用群では2.3低下した(p=0.26)。DAS28の変化の差の95%信頼区間[CI]上限値は0.41であり、非劣性のマージンである0.60よりも低かったことから、3剤併用群は2剤併用群に対し非劣性であることが示された(非劣性検定:p=0.002)。 X線画像上の疾患進行、疼痛、健康関連QOLなどの副次的評価項目や、主な治療関連有害事象の発現頻度に群間差は認めなかった。 著者は、「3剤併用療法の臨床的ベネフィットは2剤併用療法に対し非劣性であることが示された」と結論し、「MTXが無効なRAでは、まずMTXに従来のDMARDs 2剤を追加した3剤併用療法を施行し、効果が十分でない場合にMTX+エタネルセプトによる2剤併用療法に切り替える戦略が、費用対効果に優れる治療法となる可能性がある」と指摘している。

47.

皮膚科外来施設でのMRSA、過去3年間で17.0%増

 Zabielinski M氏らが米国マイアミ大学病院の皮膚科外来施設において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の相対的な検出割合の動向などを調べた結果、MRSAが2008~2010年の3年間で17.0%増加していたことが明らかになった。また、MRSAはシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンほか)への感受性が増していた一方で、MSSAはシプロフロキサシン、クリンダマイシン(同:ダラシン)、ゲンタマイシン(同:ゲンタシン)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤、同:バクタほか)への耐性が増大していたことも報告した。JAMA Dermatology誌2013年4月号(オンライン版2013年1月16日号)の掲載報告。 本調査は、皮膚科外来施設でのMRSA、MSSAの検出割合の変化、および黄色ブドウ球菌分離株の抗菌薬感受性プロファイルを調べることを目的とした。  2005年1月1日~2010年12月31日の各年データ、および2011年1月1日~6月30日までの半年間の各月データから、皮膚培養組織分離株データをそれぞれ後ろ向きに集め分析した。 主な結果は以下のとおり。・2005年1月1日~2011年6月30日の間、成人から小児の患者にわたる合計387例から分離した黄色ブドウ球菌株について分析した。・全体におけるMRSAの相対的割合は35.7%、MSSAは64.3%であった。・試験終了前の6ヵ月間では、MRSAは33.3%、MSSAは66.7%であった。・MRSAの相対的割合は、2008年1月1日~2010年12月31日が、2005年1月1日~2007年12月31日と比べて有意に高かったことが明らかになった(45.3%対28.3%、p=0.001)。・抗菌薬感受性プロファイルについては、MRSAのシプロフロキサシンへの感受性が増加していた一方で、MSSAではシプロフロキサシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、ST合剤への耐性が増していた。

49.

エキスパートに聞く!「関節リウマチ」Q&A part2

CareNet.comでは4月の関節リウマチ特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より関節リウマチ診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、慶應義塾大学 花岡 洋成先生にご回答いただきました。今回は生物学的製剤の投与方法や新規薬剤に関する質問です。生物学的製剤の開始時期について教えてください。また、開始時にルーチンで実施する検査を教えてください。日本リウマチ学会より、関節リウマチに対するTNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプト使用ガイドラインが発行されている。これに基づくと、1.既存の抗リウマチ薬通常量を3ヵ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者(コントロール不良の目安として、圧痛関節数6関節以上、腫脹関節数6関節以上、CRP 2.0mg/dL以上あるいはESR 28mm/hr以上)や、画像検査における進行性の骨びらんを認める患者、DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上の患者2.既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、さらに予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性または画像検査における骨びらんを認める)を有する患者には、メトトレキサート(MTX)との併用による使用を考慮するとある。開始時のルーチンで施行する検査は、上記ガイドラインに記されている禁忌・要注意事項に該当する患者を除外する目的で、以下の検査を行う。白血球分画を含む末梢血検査、β-Dグルカン、胸部X線、ツベルクリン反応、クォンティフェロン(QFT)、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体また開始後の骨破壊の進展を評価するために、生物学的製剤開始前の関節X線を撮影することが多い。生物学的製剤の休薬や中止の判断基準を教えてください。いくつかの生物学的製剤で、休薬後、寛解や低疾患活動性を維持できるか(バイオフリー)を検証されている。日本発のエビデンスで最初の報告はRRR studyである(Ann Rheum Dis. 2010; 69: 1286-1291)。これはインフリキシマブによって低疾患活動性および寛解を24週間以上維持できた患者を対象に、インフリキシマブを中止し、その1年後の休薬達成率を確認したものである。その結果、55%が休薬を達成し続けた。ここで、休薬を達成し続けられた群は、そうでない群と比較して罹病期間が短く(4.7 vs 8.6年、p=0.02)、mTSS(modified total sharp score)が低値(46.9 vs 97.2、p=0.02)であると報告されている。他の製剤については検証中のものが多く確定的なことは言えないが、早期例で骨破壊が少なく、深い寛解を維持できた症例はバイオフリー寛解を維持しやすいようである。生物学的製剤投与中の感染症の早期発見方法について教えてください。わが国で施行した市販後全例調査の結果、生物学的製剤使用者の1~2%で重篤な細菌性肺炎の報告があった。ただし、早期発見する確実な手段はない。重要なことは感染症のリスクを評価し、リスクが高い症例は注意深く慎重に観察していくことである。さらに、事前の肺炎球菌ワクチンや冬期のインフルエンザワクチン接種を推奨する。生物学的製剤において感染症のリスクとして共通しているのは、ステロイドの内服、既存の肺病変、高齢、長期罹患などである(Arthritis Rheum. 2006; 54: 628-634)。さらに、インフリキシマブでは投与開始20~60日に細菌性肺炎の発症が増加する(Ann Rheum Dis. 2008; 67: 189-194)。よって投与2ヵ月以内は注意しながら診療する。また、トシリズマブ投与例ではCRPは上昇しないことが知られているため、スクリーニングの画像検査を積極的に行うことが望ましい。また、ニューモシスチス肺炎も0.2~0.3%程度報告されている。これについては、β-Dグルカンの測定を定期的に行い、労作時呼吸困難や咳嗽などを訴えた症例は慎重に精査を進めていく。間質性肺炎を合併した関節リウマチ患者に対して、どのように治療したらよいでしょうか?間質性肺疾患合併例ではMTX肺炎を誘発する懸念があるため、MTXを軸とした管理ができないことがある。米国リウマチ学会の治療推奨(Arthritis Care Res. 2012; 64: 625-639)などに基づき治療戦略を決定するが、一般的にわが国では、まず推奨度Aの抗リウマチ薬(ブシラミン、サラゾスルファピリジン、タクロリムスなど)で疾患活動性のコントロールを試みることが多い。これで活動性が抑制できなければ生物学的製剤の適応を考慮する。例外的に、活動性がきわめて高く、予後不良因子を有する症例や短期間で骨破壊が進行する症例などでは、生物学的製剤を積極的に第一選択薬として用いることもある。この場合、MTX併用を必須とするインフリキシマブは投与できない。よって、残りの製剤のどれかを選択することになるが、「既存の肺病変」の存在は生物学的製剤において重篤感染症やニューモシスチス肺炎などのリスク因子になりうる(N Engl J Med. 2007; 357 : 1874-1876)ため、リスクとベネフィットを考慮して治療方針を決定する。JAK阻害薬(トファシチニブ)など、新規薬剤の可能性について教えてください。生物学的製剤の登場によって関節リウマチの診療は大きく変わった。これらは劇的な効果をもたらしたが、無効例も存在することは間違いなく、TNFやIL-6などの阻害だけでは病態を十分制御できないことを示唆している。これを受けて、現在、新規治療薬として1,000kDa以下の低分子化合物の開発が進行しており、なかでもJAK阻害薬の有効性が臨床でも確認されている。FDAが、2012年11月に関節リウマチの治療薬として、JAK1/JAK3阻害薬であるトファシチニブを認可した。承認用量である5mg 1日2回12週間の投与によって、12.5%の寛解率を示した(Arthritis Rheum. 2012; 64: 617-629)。その効果は生物学的製剤に匹敵する。一方、JAK阻害によって多数のサイトカインシグナルが阻害され、炎症と免疫に与える影響は複雑である。高分子化合物である生物学的製剤が細胞外の受容体に作用するのに対して、低分子化合物であるJAK阻害薬は細胞内で作用する。細胞内で作用した同薬剤が、最終的にヒトにおける長期安全性にどのような影響を及ぼすのか、今後の解明が待たれる。

50.

「メトトレキサートをいかに安全に使いこなせるか」が関節リウマチ治療の鍵

 関節リウマチ治療においては、アンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)をいかに安全に使いこなせるかが重要となる。第57回日本リウマチ学会総会・学術集会(4月18~20日、京都)における教育研修講演「DMARDsの適応と使い方」のなかで、京都府立医科大学大学院免疫内科学の川人 豊氏が非生物学的抗リウマチ薬(DMARDs)の問題点や使い方などを紹介した。メトトレキサートの最大目標投与量 現在、関節リウマチ診療では、早期診断、およびメトトレキサート(商品名:リウマトレックスなど)を始めとしたDMARDsによる早期治療開始が推奨されている。川人氏は、DMARDsの問題点として、副作用発現率が20~50%と高いことを挙げ、効果が出ている症例でも要注意であると注意を促した。そのため、副作用のモニタリングが重要であるとし、投与2週後の血液検査では血球減少や肝・腎機能のチェックが必須であること、その後も2~3週ごとに検査を行い、副作用出現がない用量まで増量すること、安定期に入れば4~6週ごとの経過観察も可能となることを説明した。 次に、川人氏はメトトレキサートがリウマチ治療のアンカードラッグであることから、この薬剤をいかに安全に使いこなせるかがポイントであると述べ、自身が行っているメトトレキサートの投与方法を紹介した。川人氏は、メトトレキサートの最大目標投与量を、体重(kg)×0.2~0.25mg/週とし、2週ごとに2mgずつ増量し、6~8週程度でこの用量になるようにしている。また、70歳以上の症例には8割程度の用量を考慮し、腎機能障害例に対してはGFR 60mL/分以下で減量、45mL/分以下で半量以下(もしくは中止も考慮)としていることを紹介した。 さらに、メトトレキサート投与患者における死亡症例511例の検討から、禁忌症例へは投与しないように注意すべきと忠告した。川人氏は、メトトレキサート以外のDMARDsについて紹介し、それらの使い分けとして、慢性気道感染症例にはサラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジンEN)、金チオリンゴ酸ナトリウム(同:シオゾール)、ミノサイクリン(同:ミノマイシンほか)、腎機能障害例にはミゾリビン(同:ブレディニン)(投与量は減量)、サラゾスルファピリジン、イグラチモド(同:ケアラム、コルベット)、高齢者にはアクタリット(同:オークル、モーバー)、ミゾリビン、少量のタクロリムス(同:プログラフ)が適しているのではないかと述べた。 3月に承認されたJAK阻害薬であるトファシチニブ(同:ゼルヤンツ)については、生物学的製剤並みの効果があり期待できる薬剤であるが、副作用を考慮し慎重に投与していくべきというのが世界における共通認識であると紹介した。しかしながら、メトトレキサートと生物学的製剤に加えて、経口JAK阻害薬が承認されたことによって、今後、治療戦略に変化が出てくるのではないか、との考えを述べた。関連コンテンツ特集「関節リウマチ」

51.

乾癬治療のターニングポイント

肉体的、精神的、社会的に大きな苦痛を強いる乾癬(Psoriasis)乾癬Psoriasisの歴史は古く、古代ギリシャの書物にも登場します。その後、19世紀初頭に英国のRobert Willanにより独立疾患として臨床的特徴が紹介されました。乾癬はよく目立つ紅斑、浸潤、鱗屑といったきわめて特徴的な皮膚症状を呈します。死に至る疾患ではないものの、進行すると全身に症状が拡大したり、関節炎を合併して重篤な状態に発展することがあります。患者さんにとっては肉体的のみならず精神的、社会的にも大きな苦痛やハンディキャップを強いられる疾患です。発症には遺伝的素因に加えさまざまな後天的、環境的因子が関与すると考えられています。典型的な乾癬皮疹画像を拡大する重症例(乾癬性紅皮症)画像を拡大する乾癬による関節炎と爪の変化画像を拡大する乾癬の病変部では表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖亢進が生じています。そのため、乾癬病変でのケラチノサイトのターンオーバーは3~4日と、正常組織の4週間に比べ著しく短縮しています。その結果ケラチノサイトの角層への成熟・分化が不十分となり、臨床的特徴の一つである銀白色の厚い鱗屑を形成します。また、紅斑は病巣部に浸潤してくるリンパ球が産生するサイトカインにより起こる炎症の結果です。乾癬は病態論の進展に伴って治療法が著しく変化、進展した疾患の一つです。免疫抑制剤シクロスポリンの治療効果が明らかになる以前は、乾癬の発症機序はケラチノサイトの異常(増殖亢進、分化不全)にあると考えられていました。そのためケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的とした治療法が開発されてきました。ケラチノサイト増殖抑制を狙った光線療法の登場1931年にゲッケルマン療法が発表されています。これはコールタール軟膏を塗布して太陽灯(水銀灯紫外線)を照射するという治療法です。日光浴が乾癬を改善することは昔から知られており、機序は不明ながらコールタールの何等かの成分が紫外線の作用を増強し、ケラチノサイトの過剰増殖を減少させることで効果を発揮すると考えられます。炎症を抑制する作用もあると思われます。欧米では今日でも使用される療法ですが、我が国ではほとんど実施されていません。1970年代には別の光線療法であるPUVA療法が発表されました。PUVAとはソラレンPsoralenのPと長波長紫外線UVAを組み合わせた治療名です。ソラレンは光増感物質で長波長紫外線(UVA)を照射されると、励起状態となって反応性が高まり、細胞内DNAの二重螺旋の間に結合して細胞分裂を抑制することが知られています。やはりケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的として始められた治療ですが、炎症(紅斑)を抑制する効果も知られています。紫外線療法は21世紀に入っても進化し、より簡便な方法として中波長紫外線UVBの単独照射法、さらにはUVBに含まれる非常に狭い波長閾の紫外線ナローバンドUVBが照射されるようになりました。日常の診療で効果を発揮しています。ケラチノサイト増殖抑制を狙った薬物療法の登場膿疱化:ステロイドによる副作用その間に薬物療法も進化していきます。1950年代に入り、ステロイド外用療法が登場しました。当初の製剤は抗炎症効果がそれほど強くはなかったものの、従来の外用薬と比べれば確かな効果があり、当時としては大きな朗報でした。それ以降、より強い作用を有する外用ステロイド製剤が次々に開発され、今日まで乾癬外用療法の基本となっています。以前は内服ステロイドを用いることもあったのですが、全身性副作用に加えて、膿胞性乾癬を引き起こすなどの問題もあり、用いられなくなりました。1959年に抗腫瘍薬・免疫抑制薬であるメトトレキサートを乾癬の治療に用いる試みが報告されています。これも当初はケラチノサイトに対する増殖抑制効果を期待したものでしたが、後から考えればリンパ球に対する免疫抑制効果をも併せ持った(むしろこちらが主体?)治療法といえます。日本ではリウマチによく使用されますが、乾癬に対する適応はありません。欧米では乾癬にも使用されています。1975年には、ビタミンA誘導体であるレチノイドの治療成績が報告されました。ビタミンAは上皮組織に作用するビタミンで、ケラチノサイトの増殖および分化をコントロールすることで、効果を発揮すると考えられます。乾癬以外にも多くの角化異常症に使われています。 本邦でも1985年にレチノイドの一種エトレチナートが承認され、現在も乾癬治療薬の選択肢の一つとなっていますが、胎児催奇形性の問題から慎重な投与が求められる薬剤です。1990年代にはビタミンD3外用療法が治療法の一つとして加わりました。そのきっかけは、骨粗鬆症の患者さんにビタミンD3製剤を投与したところ、その患者さんが罹患していた乾癬の皮疹がきれいになったことでした。その少し前にビタミンD3の全く新しい作用(細胞の増殖抑制、分化誘導作用)が明らかにされており、乾癬表皮ケラチノサイトの増殖亢進、分化不全を是正することで効果を発揮することが想定されました。そこで研究が開始され、偶然の臨床的観察から始まった治療法が、新たな乾癬治療外用薬として実を結びました。今日ステロイドと並んで外用療法の主役を担っています。私はこの臨床研究に直接関係しましたが、医学の進歩における偶然の契機の重要性を強く感じた体験となりました。ビタミンD3外用の効果塗布前画像を拡大する塗布4週後 > 印画像を拡大する新たな薬物療法の流れ…自己免疫年代は少し戻りますが、別の治療の流れが起こってきます。1979年に免疫抑制薬シクロスポリン療法の難治性乾癬に対する有効性が報告されました。これは臓器移植を受けた乾癬の患者さんで効果が確認されたことがきっかけとなり、研究が始まったものです。シクロスポリンはTリンパ球の作用を阻害しますから、乾癬の病態におけるTリンパ球の重要性が認識され、免疫異常説が一挙に花開いたといえます。シクロスポリンは本邦でも1992年に乾癬に対する使用が認可され、次に紹介する生物学的製剤の登場まで、難治性症例に対する最も確かな治療法として用いられて来ました。乾癬の病態解明はその後も進展し、現在は自己免疫・炎症説が主流となっています。それには真皮樹状細胞、Th1細胞、Th17細胞が重要で、樹状細胞が産生するIL-12がTh1細胞を、IL-23がTh17細胞を刺激し、IFN-γ、TNF-α、IL-17、IL-22などを産生させます。樹状細胞自身もTNF-αを産生します。これらが複雑なネットワークを形成して反応し合い、炎症を持続させるとともに表皮ケラチノサイトを活性化し、乾癬に特徴的な皮膚症状を示すのです。2010年代に入ると、分子細胞工学的手技を応用した生物学的製剤が登場してきました。インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブなどです。インフリキシマブ、アダリムマブはTNF-α、ウステキヌマブはIL-12、IL-23といった前述の炎症ネットワークで重要な役割を演じるサイトカインを阻害することで治療効果を発揮します。難治重症例に対する効果は劇的で、乾癬治療の歴史に新たなページを開いたと言えるでしょう。ほかにも多くの生物学的製剤が続々と開発途上にあり、乾癬の治療は今後大きく変わって行くかも知れません。現在の乾癬治療以上、乾癬治療の変遷について述べましたが、現在の治療は、軽症例ではステロイド外用剤とビタミンD3外用剤の単独または併用です。併用の場合にはsequential therapyなど、効果を最大限に発揮させる工夫がなされます。痒みの強い例では抗アレルギー薬の内服を併用します。効果が不十分な例では症例に応じてこれらに紫外線療法やエトレチナートを上乗せします。重症・難治例ではシクロスポリンや生物学的製剤を用います。重症・難治性の評価には皮疹の広がりや強さ、QOLの低下をBSA(Body Surface Area)、PASI(Psoriasis Area Severity Index)、PDI(Psoriasis Disability Index)などで数値化して判断します。おおむねこれらが10以上の例が適応とされます。ただし、関節炎を合併する例では関節症状の進行を予防する意味で、皮疹の程度は軽くても生物学的製剤の使用が勧められます。本邦において使用される製剤種 類一般名製品名剤 形ビタミンD3タカルシトールボンアルファボンアルファハイ外用ビタミンD3カルシポトリオールドボネックス外用ビタミンD3マキサカルシトールオキサロール外用レチノイドエトレチナートチガソン内服免疫抑制剤シクロスポリンネオーラルサンディミュン内服生物学的製剤インフリキシマブレミケード点滴静注生物学的製剤アダリムマブヒュミラ皮下注生物学的製剤ウステキヌマブステラーラ皮下注※ ステロイド外用剤は種類が多いので省略。乾癬にはストロング以上の製剤が必要である。これらの薬剤を使いこなすコツは、副作用をいかに防止するかでしょう。ステロイド外用剤は強いほど効果も確かですが、長期使用による皮膚副作用が避けられません。それを押さえるためにはビタミンD3外用薬との併用が大切で、ステロイドの使用量をできるだけ減らすよう努力します。軽症例の外用薬によるコントロールでは生活指導も大切です。シクロスポリンや生物学的製剤の使用に際しては皮膚がん予防の観点から、紫外線療法との併用は避けるべきです。また感染症とくに結核の合併には注意が必要です。乾癬治療に関わる先生方へ私が皮膚科を始めた昭和40年には弱いステロイド、ゲッケルマン療法、メトトレキサート以外の治療法はまだ存在していませんでした。今日の治療リストを眺めると乾癬研究の進歩の跡は歴然で、まさに夢のようです。とはいえ治療はまだ対症的で副作用の心配も残っており、完全からはほど遠いと言わなければなりません。今後も研究がさらに進歩し、より良い治療法が生み出される事を願っております。

52.

乾癬治療のターニングポイント 質問/回答

ダーマトロジーエキスパートQ&A「乾癬治療のターニングポイント」において、乾癬治療に関する最新の情報をお送りしてきました。今回は、質問募集期間に視聴者の先生方からいただいた代表的な質問について、吉川邦彦先生にご回答いただきます。ビタミンD3外用剤にステロイド外用剤を併用する場合、どのランクのステロイドを用いるべき?できるだけ強いランクのステロイド(very strongからstrongest)と併用するのがよいと思います。強いステロイドで皮疹をできるだけ速やかにコントロールした上で、週5日はステロイド、週末2日はビタミンD3を使用します。それでコントロールが維持できていれば週5日をビタミンD3、週末をステロイドに、それでも経過良好ならビタミンD3単独でという具合に、段階的にステロイドの使用量を減らしていきます。途中で皮疹が悪化すれば前段階へ戻します(sequential therapy)。弱いステロイドは乾癬に対する効果が不明確なので、ステロイドの強さを減じていくよりは使用頻度、使用量を減じていくのが基本的な考え方です。ただし、顔面や間擦部位等では副作用防止のために弱めのステロイドを使用する必要があります。ビタミンD3外用剤とステロイド外用剤を混合した場合の効果は?効果は期待でき、外国では混合製剤が市販されています。ただし、酸性を示すステロイド製剤が数種類あり、それらとの混合ではビタミンDの分解が起こるため、避ける必要があります。紫外線療法において、照射部位以外の作用について、現在はどう考えられているのでしょうか?広範囲に照射する場合には全身的な免疫抑制効果もあるため、照射部位以外への効果も多少はあります。しかし、確かな作用として期待できるものではありませんから、基本的には照射部位への効果と考えた方がよいでしょう。生物学的製剤の適応、開始の判断基準はどのようなものでしょうか?乾癬の重症度判定基準BSA: Body Surface Area、PASI: Psoriasis Area Severity Index、PDI: Psoriasis Disability Indexなどで10以上を示すと重症例と考え、生物学的製剤の使用を考慮します。関節症状がみられる場合には機能障害防止のため、上記の基準を満たさない例でも早期の使用が勧められています。使用に際しては、結核など重篤な副作用を防止するための除外基準や注意事項が設定されていますから、十分な注意が必要です。インフリキシマブ(商品名:レミケード)などの生物学的製剤、シクロスポリン(商品名:ネオーラルなど)などの免疫抑制剤、エトレチナート(商品名:チガソン)のようなレチノイド、これらはどのように使い分ければよいでしょうか?一般論として言えばエトレチナート、シクロスポリン、インフリキシマブの順で使用を考慮すべきです。それぞれ1段階ずつ治療のランクが上がっていくと考えればよいと思います。後者になるほど、より確かな効果が期待できますが、同時に副作用に対する注意もより重要になるからです。ただし、エトレチナートでは催奇形性や骨、関節への影響、シクロスポリンでは血圧、腎機能への影響、インフリキシマブでは結核や他の慢性感染症、悪性腫瘍等患者さん個々で考慮すべき問題の重要性が異なりますから、使い分けについて一概には言えません。一段階飛ばして選択するケースもありえます。乾癬は治癒しない疾患との考えから、かゆみを抑える程度の治療しかできていませんでした。 生物学製剤で寛解するのでしょうか?寛解はあります。うまく使用し続ければ寛解期間を維持することも可能です。ただし、長期使用に際しては副作用に対する十分な注意が必要です。また、高価な薬剤ですから患者さんの経済的負担に対する配慮も必要です。専門医への紹介のタイミングについて教えてください。外用療法のみでは皮疹のコントロールが十分でなくなった場合、皮疹は少ないが目立つ部位に見られ(額、手、爪など)心理的、社会的ストレスが大きい場合、関節炎が合併している場合(放置すると関節の機能障害を残す)などが専門医へ紹介すべき状態です。皮疹の上に小膿疱が多発する場合はステロイドによる副作用(膿疱性乾癬)の可能性がありますから、やはり専門医に紹介すべきです。ステロイドを長期に外用し続けると白癬などの感染症を合併することもあります。これまでの乾癬皮疹と異なる皮疹が現れた場合は、鑑別のため専門医にコンサルトする必要があります。

54.

重度皮膚有害反応の医薬品特定にパッチテストが有用・安全

 重度皮膚有害反応(severe cutaneous adverse drug reactions:SCAR)の医薬品特定にパッチテストが有用かつ安全であることが、フランス・ナンシー大学のA. Barbaud氏らによる多施設共同研究の結果、示された。検討されたのは3つの主要なSCARである、急性汎発性膿疱性発疹症(AGEP)、薬剤性過敏症症候群(DRESS)、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症(SJS/TEN)であった。British Journal of Dermatology誌2013年3月号の掲載報告。 パッチテストは、遅延型薬物過敏症を再現できる可能性があるが、患者の医薬品に対する中程度の再曝露を伴う可能性がある。著者らは、SCARを引き起こしている医薬品の特定に、パッチテストが有用であるかについて調べた。 複数施設において、発症から1年以内のDRESS、AGEP、SJS/TENで紹介されてきた患者を対象とした。SCAR発症前2ヵ月から前週まで服用していたすべての医薬品について調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は134例で、男性が48例、平均年齢は51.7歳であった。パッチテストに用いられた医薬品は24種類であった。・パッチテストで陽性反応が確認されたのは、DRESS患者64%(46/72例)、AGEP患者58%(26/45例)、SJS/TEN患者24%(4/17例)であった。・再発が起きたのはAGEPの1例のみであった。・パッチテストの有用性は、医薬品の種類およびSCARの種類により異なった。たとえば、カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)は、DRESS症例では11/13例で陽性反応がみられたが、SJS/TEN症例では0/5例であった。・陽性反応の頻度が高かったのは、βラクタム系抗菌薬(22例)、プリスチナマイシン(11例)、DRESS症例におけるプロトンポンプ阻害薬(5例)であった。・一方で常に陰性であったのは、アロプリノール(商品名:ザイロリックほか)とサラゾスルファピリジン(同:サラゾピリンほか)であった。・DRESS患者18例のうち8例では、ウイルス再活性化とパッチテストの陽性反応が認められた。また、DRESS患者では、複数の薬品の有害反応の頻度が高く(症例のうち18%)、長年にわたって感作が持続していた。

55.

Dr.岩田の感染症アップグレード―抗菌薬シリーズ―

第4回「ST合剤とアミノグリコシドで腕を上げろ!」第5回「本当は危ない!ニューキノロンとマクロライド」特典映像「感染症Q&A」 第4回「ST合剤とアミノグリコシドで腕を上げろ!」ST合剤とアミノグリコシド・・・そう聞いてもあまりピンとこない方が多いかも知れません。確かにちょっとプロ向きの抗菌薬。どちらも副作用が多く、アミノグリコシドは血中濃度のモニターが必要です。しかし、少なくとも外来で無造作に出されているニューキノロンなどよりも重要な抗菌薬なのです。まずはこの二つがいかに有用な抗菌薬であるかを学んでください。そして、副作用など煩わしい面もありますが、その特徴的な“クセ”を掴んでしまえばそれほど怖いものではないことを知ってください。またこの二つの薬は、いかに感染症や抗菌薬について熟練しているかを計る手頃な試金石と言ってよいでしょう。是非、マスターして臨床力をアップグレードしてください !第5回「本当は危ない!ニューキノロンとマクロライド」タイトルを見て「えっ」と思った先生はご用心ください。例えばニューキノロン系のレボフロキサシンを、外来で熱のある患者さんに何のためらいもなく出していませんか?あるいは、慢性の咳患者に、マクロライド系のアジスロマイシンを“とりあえず”出していませんか? 実はこれらは全て間違った抗菌薬の使い方なのです。「おそらく現在使われているニューキノロンやマクロライドの8割くらいが間違った使われ方をされているんではないでしょうか」と岩田先生。副作用が少ないから、使い慣れているから、と言って漫然と薬を出してはいけません。 第5回ではニューキノロンとマクロライド、そして、マクロライドの親戚クリンダマイシンとテリスロマイシンの正しい使い方を明解に解説します。特典映像「感染症Q&A」番組に参加していただいた研修医の皆さんからの感染症についての質問に岩田先生が答える、一問一答形式のスペシャル番組。「肺炎を治療しても治らない」「偽膜性腸炎のマネジメントは?」「ドラッグフィーバーを考えるのはどんなとき?」「アミノグリコシドってやっぱり怖い」などなど、現場ならではの疑問に岩田先生が明解回答。明日からすぐに使える感染症マネージメントのノウハウを習得していただけるはずです。

56.

Dr.岡田のアレルギー疾患大原則

第4回「鼻炎」第5回「副鼻腔炎」第6回「薬物(前編)」第7回「薬物(後編)」 第4回「鼻炎」鼻炎治療は、基本治療の3段階(抗ヒスタミン薬→点鼻ステロイド→短期経口ステロイド)と2つの補助療法(点鼻抗アレルギー薬と鼻閉改善薬)をしっかりつかめば単純化されます。第4回は図表と国際的なガイドラインを用いて解説します。もちろん、くしゃみの数を数えたりする必要はありません。そこで患者さんによって違う鼻炎の主症状に応じた薬剤の選択が一目でわかる表にしました。これは必見です! また、実際の症例を用いて、種類の多い抗ヒスタミン・アレルギー薬、点鼻ステロイドを特徴に応じて使い分け、第1選択薬を例示します。ステロイドは点鼻でもちょっと…という方のために、強力ではないものの副作用の心配が少ないインタールなどの効果を最大限に引き出す工夫も紹介します。第5回「副鼻腔炎」第5回は、外来で問題となることが多い遷延性の咳嗽を、アレルギーのほかにも副鼻腔炎、胃食道逆流症、上気道感染後の気道反応性の亢進、百日咳、喘息、咳喘息、Vocal cord dysfunctionなどの鑑別診断から治療まで、症例に基づいて解説します。 また、急性細菌性副鼻腔炎の診断に役立つ、画像を使わない診断基準などを紹介。治療法の確立していない慢性副鼻腔炎に関しても、代表的な診断と治療の選択肢をそれぞれの特徴を含めて示します。 そして最後に、最近話題の自然免疫と獲得免疫に関して、単純明快な図を使用して解説。ストレスや睡眠の影響などの最新知見を含めたミニレクチャーもあります。第6回「薬物(前編)」薬物アレルギーは臨床医なら誰でも避けて通れない問題ですが、なかなか系統的に勉強する機会がないのではないでしょうか。岡田先生の著書『アレルギー疾患診療マニュアル』では薬物アレルギーについて84ページも割いています。第6回と第7回はこの中から、本当に必要なエッセンスを解説します。 前編は、アレルギーの基本である、アレルギーだった場合のの鑑別はもとより、薬物アレルギーの危険因子、抗生物質アレルギーの交差反応、再投与してよいアレルギー反応と再投与が絶対禁忌の反応について解説します。そして、局所麻酔薬アレルギーやアスピリン・NSAIDアレルギーなどのよくあるアレルギーから、稀ではあるが重篤なスティーブンス・ジョンソン症候群やDIHS(薬剤性過敏症症候群)まで、広く深く網羅してます。第7回「薬物(後編)」後編も、具体的な症例をもとに、ペニシリン系抗菌薬とセフェム系/カルバペネム系抗菌薬の交差反応、β-ラクタム系抗生物質経口減感作プロトコール、ST合剤過敏症とその脱感作療法スケジュール、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死剥離症(TEN)の分類/薬剤別頻度、アスピリン喘息、COX-1とCOX-2の働き、局所麻酔薬アレルギーの検査法まで解説します。

57.

〔CLEAR! ジャーナル四天王(6)〕 女性の急性腎盂腎炎、抗菌薬の7日間投与が有効

急性腎盂腎炎の治療は、原因菌に感受性のある抗生物質を10~14日間投与するプロトコールが、本邦で長らく用いられてきた方法であろう。第一選択の薬剤は培養検査の結果が判明するまで、βラクタムあるいはニューキノロンが選択されるが、院内感染症対策部門の意向も取り入れて選ばれることと思う。 女性の単純性腎盂腎炎に関する診療ガイドラインには、Infectious Disease Society of AmericaおよびEuropean Society for Microbiology and Infectious Diseaseによる2010年版ガイドラインがある1)。これによると、フルオロキノロン耐性菌検出率が10%を超えない地域で入院の必要がない症例に対しては、シプロフロキサシン(500mg ×2回/日)を7日間投与というプロトコールが推奨されている。ただしその根拠となる研究は、シプロフロキサシン7日間とST合剤14日間との比較であり、対象症例は平均25歳、血液培養陽性症例は3%と、若年の軽症患者が主体であった2)。本研究はシプロフロキサシンの7日間と14日間投与との比較、しかも中高年症例(平均年齢46歳)、血液培養陽性症例27%と、ある程度対照症例に幅をもたせた研究であったが、7日間投与は14日間投与に劣らない結果となった。治療期間の短縮は患者さんにとって福音だし、医療経済的にもメリットがある。ただし、7日間投与の優良性はほかの抗菌薬にはかならずしも当てはまらないとしている。 この文章を執筆中、1週間程度の急性腎盂腎炎の治療を受け改善したのち、再発して筆者の外来を訪れた患者さんを拝見した。関節リウマチで少量ステロイド投与中の方だった。 今回はしっかり14日間の治療を行い、元気に退院された。シプロフロキサシンではなかったが、discussionの内容に合致していたので印象に残っている。

58.

寄稿 線維筋痛症の基本

廿日市記念病院リハビリテーション科戸田克広痛みは原因の観点から神経障害性疼痛(神経障害痛)と侵害受容性疼痛(侵害受容痛)およびその合併に分類され、世界標準の医学では心因性疼痛単独は存在しないという考えが主流である。通常、日本医学ではこれに心因性疼痛が加わる。線維筋痛症(Fibromyalgia、以下FM)およびその不全型は日本医学の心因性疼痛の大部分を占めるが、世界標準の医学では神経障害痛の中の中枢性神経障害痛に含まれる。医学的に説明のつかない症状や痛みを世界の慢性痛やリウマチの業界はFMやその不全型と診断、治療し、精神科の業界は身体表現性障害(身体化障害、疼痛性障害)と診断、治療している。FMの原因は不明であるが、脳の機能障害が原因という説が定説になっている。器質的な異常があるのかもしれないが、現時点の医学レベルでは明確な器質的異常は判明していない。脳の機能障害が原因で生じる中枢性過敏症候群という疾患群があり、うつ病、不安障害、慢性疲労症候群、FM、むずむず脚症候群、緊張型頭痛などがそれに含まれる。先進国においてはFMの有病率は約2%であるが、その不全型を含めると少なくとも20%の有病率になる。FMおよび不全型の診断基準は「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント -」に記載されている1)。医学的に説明のつかない痛みを訴える場合には、FMあるいはその不全型を疑うことが望ましい。FMもその不全型も治療は同一であるため、これらを区別する意義は臨床的にはほとんどない。薬物治療のみならず、禁煙、有酸素運動、患者教育、認知行動療法などが有効である。ただし、認知行動療法は具体的に何をすればよいかわからない部分が多く、それを行うことができる人間が少ないため、実施している施設は少ない。人工甘味料アスパルテームによりFMを発症した症例が報告されたため、その摂取中止が望ましい1)。当初は必ず一つの薬のみを上限量まで漸増し、有効か無効かを判定する必要がある。副作用のために増量不能となった場合や、満足できる鎮痛効果が得られた場合には、上限量を使用する必要はない。つまり、上限量を使用せずして無効と判断することや、不十分な鎮痛効果にもかかわらず上限量を使用しないことは適切ではない(副作用のために増量不能の場合を除く)。一つの薬の最適量が決まれば、患者さんが満足できる鎮痛効果が得られない限り、同様の方法により次の薬を追加する。これは国際疼痛学会が神経障害痛に一般論として推奨している薬物治療の方法である。2、3種類の薬を同時に投与することは望ましくない。どの薬が有効か不明になり、同じ薬を漫然と投与することになりやすいからである。世界標準のFMでは有効性の証拠の強い順に薬物を使用することが推奨されているが、その方法は臨床的にはあまり有用ではない。投薬の優先順位を決定する際には有効性の証拠の強さのみならず、実際に使用した経験も考慮する必要がある。さらに論文上の副作用、実際に経験した副作用、薬価も考慮する必要がある。FMは治癒することが少ない上に、FMにより死亡することも少ないため、30年以上の内服が必要になることがしばしばあるからである。FMの薬物治療においては適用外処方は不可避であるが、保険請求上の病名も考慮する必要がある。さらに、日本独特の風習である添付文書上の自動車運転禁止の問題も考慮する必要がある。抗痙攣薬、抗不安薬、睡眠薬、ほとんどの抗うつ薬を内服中には添付文書上自動車の運転は禁止されているが、それを遵守すると、少なくない患者さんの生活が破綻するばかりではなく、日本経済そのものが破綻する。以上の要因を総合して、薬物治療の優先順位を決めている1)。これにより医師の経験量によらず、ほぼ一定の治療効果を得ることができる。ただし、それには明確なエビデンスはないため、各医師が適宜変更していただきたい。副作用が少ないことを優先する場合や自動車の運転が必須の患者さんの場合には、眠気などの副作用が少ない薬を優先投与する必要がある。すなわち、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン) 、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、デキストロメトルファンを優先使用している。痛みが強い場合には、有効性の証拠が強い薬、すなわちアミトリプチリン、プレガバリン、ミルナシプラン、デュロキセチンを優先使用している。抗不安薬は常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的には使用せず、パニック発作の抑制目的にのみ使用し、かつ3ヵ月以内に中止すべきである。FMにアルプラゾラムが有効と抄録に書かれた論文2)があるが、本文中では有効性に関して偽薬と差がないという記載があるため、注意が必要である。ステロイドはFMには有害無益であり、ステロイドが有効な疾患が合併しない限り使用してはならない。昨年、日本の診療ガイドラインが報告された。筋緊張亢進型、腱付着部炎型、うつ型、およびその合併に分類する方法および各タイプ別に優先使用する薬は世界標準のFMとは異なっており、私が個人的に決めた優先順位と同様に明確なエビデンスに基づいていない。たとえば、腱付着部炎型にサラゾスルファピリジンやプレドニンが有効と記載されているが、それはFMに有効なのではなく、腱付着部炎を引き起こすFMとは異なる疾患に有効なのである。糖尿病型FMにインシュリンが有効という理論と同様である。薬を何種類併用してよいかという問題があるが、誰も正解を知らない。私は睡眠薬を除いて原則的に6種類まで併用している。1年以上投薬すると、中止しても痛みが悪化しないことがある。そのため、1年以上使用している薬は中止して、その効果が持続しているかどうかを確かめることが望ましい。引用文献1) CareNetホームページ カンファレンス Q&A:戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」2)Russell IJ et al: Treatment of primary fibrositis/fibromyalgia syndrome with ibuprofen and alprazolam. A double-blind, placebo-controlled study. Arthritis Rheum. 1991;34:552-560.

59.

ニューモシスチス肺炎治療薬「サムチレール内用懸濁液」発売

 グラクソ・スミスクラインは17日、同社のニューモシスチス肺炎治療薬「サムチレール内用懸濁液15%」(一般名:アトバコン、以下サムチレール)が薬価収載されたことを受け、同日より発売したことを発表した。サムチレールは世界20ヵ国以上でニューモシスチス肺炎治療・発症抑制薬として承認 サムチレールは、酵母様真菌であるニューモシスチス・イロベチーのミトコンドリア電子伝達系を選択的に阻害することにより抗ニューモシスチス活性を示すアトバコンを有効成分とするニューモシスチス肺炎治療・発症抑制薬。サムチレールはニューモシスチス肺炎治療の第一選択薬であるスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤(ST合剤)の使用が副作用により困難な患者の治療の選択肢となるという。しかし、HIV感染患者におけるニューモシスチス肺炎の治療および発症抑制のために投薬される場合に限り、特例的に発売時より14日間の投薬期間制限が対象外となる。 サムチレールは英GlaxoSmithKline社により開発され、2011年12月現在、世界20ヵ国以上でニューモシスチス肺炎に対する標準的な治療および発症抑制薬として承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2012_01/P1000730.html

60.

小児重症肺炎、地域の女性医療ワーカーによる診断と抗菌薬投与が有効

パキスタン農村部地域の女性医療ワーカー(LHW)は、小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、十分な役割を果たし得ることが、パキスタン・Aga Khan大学のSajid Soofi氏らの調査で示された。肺炎は世界的に5歳未満の小児の主要な罹病および死亡の原因である。パキスタンでは、肺炎による死亡率は都市部に比べ医療施設が少ない農村部で高く、自宅で死亡する患児が多いという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。女性医療ワーカーによる重症肺炎管理の有用性を評価研究グループは、重症肺炎の管理において、地域の医療従事者による経口抗菌薬投与が小児の自宅での死亡率の抑制に有効か否かを検証するために、パキスタン・シンド州の農村地域であるMatiari地区でクラスター無作為化試験を実施した。地域の女性医療ワーカー(LHW)が、肺炎(WHO定義)が疑われる介入群の小児のスクリーニングを行い、重症肺炎と診断した小児には自宅でアモキシシリンシロップ(90mg/kg、1日2回;商品名:クラバモックス)を5日間経口投与した。対照群の小児には、コトリモキサゾール(ST合剤)を1回経口投与したうえで、近隣の医療施設に入院させて抗菌薬を静注投与した。両群ともに、第2、3、6、14日目にLHWが小児の自宅を訪問してフォローアップを行った。主要評価項目は、登録後6日目までに発生した治療不成功とした。18の地区(クラスター)を介入群あるいは対照群に無作為に割り付けた。治療不成功率:介入群8%、対照群13%2008年2月13日~2010年3月15日までに、生後2~59ヵ月の小児が登録された。介入群は2,341例(年齢中央値13ヵ月、男児56%)が、対照群は2,069例(同:10ヵ月、55%)が解析の対象となった。治療不成功率は、介入群が8%(187/2,341例)、対照群は13%(273/2,069例)だった。調整済みリスク差は-5.2%(95%信頼区間:-13.7~3.3%)であった。第6日目までに2例が死亡し、第7~14日の間に1例が死亡した。重篤な有害事象は確認されなかった。著者は、「パキスタン農村部の小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、地域のLHWは十分な役割を果たすことができた」と結論づけ、「この戦略は、医療施設への紹介が困難な環境にある重症肺炎患児に対し有用であり、小児肺炎の発見や管理の鍵となると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

検索結果 合計:63件 表示位置:41 - 60