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高血圧に対するアルドステロン合成酵素阻害薬Lorundrostatの効果(解説:石川讓治氏)

 アルドステロンが高血圧性臓器障害に影響を与えていると考えられており、いくつかのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が、現在、臨床で使用可能である。lorundrostatはアルドステロン合成阻害をする降圧薬として開発されている。本研究において、2剤以上の降圧薬を用いても目標血圧レベルに達していない高血圧患者に対して、アルドステロン合成阻害薬lorundrostatを投与し、その投与量、投与回数による降圧度および安全性を比較している。研究1では血漿レニン活性が低い患者、研究2では高い患者を選択して投与し、いずれの投与方法においてもlorundrostatはプラセボと比較して有意に血圧を低下させ、高カリウム血症は6例に認められたのみであった。 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は治療抵抗性高血圧に使用されることが多く、治療抵抗性高血圧は、サイアザイド系利尿薬を含む3剤以上の降圧薬でも目標血圧に達しない高血圧と定義されている。本研究の対象には、3剤以上の降圧薬の内服者も含まれているが、サイアザイド系利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の内服者の割合に各群間でばらつきが認められた。今後は、lorundrostatにおける(1)治療抵抗性高血圧に対する効果、(2)ACEIやARBに対する相加効果、(3)サイアザイド系利尿薬との降圧効果の比較、(4)ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬との比較など、今後、われわれが実臨床で使用していくためのデータの積み重ねが必要であると思われた。

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睡眠の質を高めるため、多くの医師がしていることは?/1,000人アンケート

 2024年4月から医師の働き方改革の新制度がスタートするが、長時間労働に端を発する医師の過労問題は改善されていないのが現状である。そのような中、睡眠は健康管理の重要カテゴリーとして医学界を筆頭にさまざまな業界で注目されているが、長時間労働者の象徴とも言える医師は果たして睡眠時間を確保できているのだろうか―。そこで、ケアネットでは多忙を極める医師の睡眠時間の実態を調査するために「睡眠状況、睡眠への意識について」のアンケートを実施。回答結果を診療科別、年代別、病床数別に抽出した。平均睡眠時間/睡眠の質に満足、全体の48% 今回は平均睡眠時間(当直時を除く)や睡眠に対する満足度、気になっていることについてそれぞれ質問した。平均睡眠時間や睡眠の質に満足していると回答した割合が半数以上であった診療科は全9科(血液内科、皮膚科、泌尿器科、精神科/心療内科、神経内科、腎臓内科、総合診療科、耳鼻咽喉科、内科)であった。一方、満足している回答者が少なかったのは、眼科(25%)、産婦人科(30%)、放射線科(31%)と続き、臨床研修医(37%)も満足できていない実態が明らかになった。また、年代別の満足度を見ると70代以上(59%)、40代(50%)、60代(49%)と続いた。1日の平均睡眠時間、6時間が最多 経済協力開発機構(OECD)が33ヵ国を対象に行った「1日の睡眠時間(睡眠に充てる時間)」に関する調査によると、日本人の睡眠時間は7時間22分と33ヵ国平均(8時間28分)と比較しても1時間以上短い。さらに「スタンフォード式 最高の睡眠」の著者である株式会社プレインスリープ創業者/最高研究顧問の西野 精治氏らが調査した日本人の平均睡眠時間は6時間43分と報告されている。これらを参考に、ここでは「睡眠時間5時間以下を睡眠時間が短い」と定義すると、本アンケート全体では4人に1人が睡眠不足であり、血液内科、総合診療科、麻酔科、小児科などが該当した。ただし、血液内科においては睡眠時間が短くても現状に満足していると回答している人が多く、睡眠時間が長い=満足、につながるわけではないことも言えるのではないだろうか。ちなみに、こちらも年代で見てみると、睡眠への満足度が高かった70代の3割超は5時間睡眠であった。医師が睡眠時に気になっていること 続いて「医師自身が睡眠時において気にしていること」を尋ねたところ、回答者の2/3が睡眠中の悩みを抱えており、最も多かったのは中途覚醒で、50代以上の回答が多かった。そのほか、いびき、入眠障害も年齢層問わず悩みの種として挙げられた。睡眠の質向上のため、マットレスや枕にこだわる 今回のアンケートでは医師が睡眠のためにこだわっている物事、活用している物も聞いてみた。その結果、枕と回答した人が最も多く(397人)、オススメ商品として「テンピュール」「じぶんまくら」を多数が挙げていた。次にマットレス/布団(317人)と回答した人が多く、「エアウィーヴ」「コアラマットレス」「シモンズ」などが選ばれていた。また、睡眠のために、「ヤクルト1000」などの乳酸菌飲料やサプリメントの摂取、就寝時間や食事時間など時間管理を挙げる人も多かった。 なお、厚生労働省は今年3月、睡眠について気になっているけれど対処法がわからずに悩んでいる人、肥満、高血圧、糖尿病などの疾患がある人を含む幅広い人を対象に作成された『良い目覚めは良い眠りから知っているようで知らない睡眠のこと』というパンフレットとともにその解説書を公開しており、患者への生活指導のみならず医師にも役立つツールなので、ぜひ参考にされたい。 このほか、医師の睡眠実態の詳細ほか、以下のアンケ―ト結果では医師が個人の見解でオススメする寝具、意識して取り入れている物の一覧も公開している。『医師の平均睡眠時間、睡眠への満足度は?』<アンケート概要>目的:睡眠が健康管理の重要なカテゴリーとして注目されていることから、多忙な医師の睡眠状況、睡眠に対する意識を調査した。対象:ケアネット会員医師 1,000人調査日:2023年8月24日方法:インターネット

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飲酒時のウコンの効果は?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第240回

飲酒時のウコンの効果は? Unsplashより使用コロナ禍も落ち着き、飲み会が増えてきたかもしれません。学会でも懇親会が催されることが増えました。さて、久しぶりにアルコールを飲むと「大丈夫だろうか」と健康が気になるところです。医学的にエビデンスがあるのかないのかよくわからないけど、ウコンを飲んでいるという人もいるかもしれません。Zhao HL, et al.Negative effects of curcumin on liver injury induced by alcohol.Phytother Res. 2012 Dec;26(12):1857-1863.この研究は、クルクミンがアルコールを摂取したマウスの肝臓にどのような影響を与えるか調べたものです。クルクミンは、ウコンに含まれるポリフェノールの一種で、これが肝臓によいとされています。マウスに対してクルクミンとエタノール(アルコール)を注射し、肝臓の組織を顕微鏡で観察したところ、クルクミンがエタノールによる肝障害を保護するどころか、むしろ悪化させている可能性が指摘されました。あれ? 真逆の結果です。ウコンはCMで放送されるくらいですから、その効果を支持する報告はもちろんたくさんあります。飲酒前のウコンの有効性を検証した研究では、クルクミンを摂取した場合にアセトアルデヒド濃度の上昇が抑制され、もともとγ-GTPが高い人に対しても肝臓の逸脱酵素の数値を改善させる効果があると報告されています1)。相反する結果もありますから、もしかすると、ヒトを1,000人ずつくらい集めてウコンの効果を比較しても、統計学的な差を生むほどの効果はないのかもしれません。何かしらのサプリメントでアルコール性肝障害を予防するくらいなら、飲み会の席で、目の前にある1杯のアルコールを減らしたほうが効果的かもしれません。まあ、それを言ってしまうとこの話はおしまいなのですが。世の中に「効果がある」と謳われている健康食品の多くは、大規模な臨床試験を行われていないことが問題で、日常的に密接に関わるものなので、もう少し検討してほしいなあと思っています。マウスに対する10の効果がヒトに対しても10であると捉えられていて、1つ1つの事象が飛躍の積み重ねになっている健康食品もあります。1)Shimatsu A, et al. Clinical application of “Curcumin”, a multi-functional substance. Anti-Aging Med. 2012;9:75-83.

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第174回 アルツハイマー病治療に役立ちうる変異タウ除去タンパク質TRIM11を同定

アルツハイマー病治療に役立ちうる変異タウ除去タンパク質TRIM11を同定微小管結合タンパク質タウを含有する細胞内の繊維状の塊を特徴とするアルツハイマー病やそのほか20を超える認知症や運動疾患はひっくるめてタウ病と呼ばれます。ゆらゆら浮かぶ独り身の単量体タウが繊維状の塊を形成する仕組みはこれまで謎でした。その謎を解き明かすべく、「TRIM」というタンパク質ひとそろいとタウ病のつながりが調べられました。TRIMは多すぎたり傷んだりして邪魔なタンパク質の除去、タンパク質の折り畳みの逸脱や凝集の予防、すでに凝集してしまったタンパク質の解散にどうやら携わることが知られています。70を超えるヒトのTRIMの解析のかいがあり、病気と関連するタウ変異体の凝集を阻止する3種類のTRIMが突き止められました1)。それら3種類の1つであるTRIM11の変異タウ除去作用はとりわけ強力でした。死後脳組織を調べた結果、アルツハイマー病患者23例のTRIM11はそうでない対照群14例に比べてだいぶ減っていました。ほかの2つのTRIM(TRIM10とTRIM55)はアルツハイマー病患者群と対照群の死後脳で大差ありませんでした。そうであるならTRIM11を増やすことでアルツハイマー病やそのほかのタウ病を治療できるかもしれません。どうやらその可能性はあるようで、タウ病を模したマウスにTRIM1遺伝子を導入して脳でのその発現を増やしたところタウ病変や神経炎症が抑制され、認知機能や身のこなしが改善しました。TRIM11の特徴からしてその発現を経口摂取可能な低分子薬で底上げすることは可能なようです。TRIM11が乏しくなることはタウ病に一枚かんでいるようであり、低分子薬などでのTRIM11発現回復は効果的な治療手段となりうると著者は言っています2)。筋肉増強サプリメントでアルツハイマー病治療TRIM11の発現を増やす経口薬の実現はまだまだ時間がかかりそうですが、筋肉美を追求するボディビルダーが筋肉増強のために常用することで知られる経口サプリメントにアルツハイマー病治療効果があるかもしれません。β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)は運動で筋肉量を増やしたり筋力を高めるのを助けたり運動能力を改善するためにボディビルダーや運動選手(アスリート)が常用するサプリメントとして知られています。HMBはおよそ無害で、たとえ長期間服用しても副作用もありません。Cellの姉妹誌Cell Reportsに今月中頃に発表された細胞やマウスでの研究の結果、HMBは脂肪酸代謝に寄与する核内受容体PPARαを活性化することで脳の海馬の機能を向上するとわかりました3)。また、HMBは脳のアミロイド病変を減らし、アルツハイマー病マウスの記憶や学習を改善しました。PPARαを欠如している海馬神経やマウスではHMBの有益効果は認められず、HMBはPPARαを介した仕組みで神経保護作用をもたらすようです。HMB補給をボディビルダーやアスリートだけのものとするのはもったいない話かもしれません。HMBはアルツハイマー病患者の記憶を守り、病気の進行を食い止める最も安全で手軽な手段となりうると研究者は言っています4)。参考1)Zhang ZY, et al. Science. 2023;381:eadd6696.2)Tau-regulating protein identified as a promising target for developing Alzheimer’s disease treatment / Eurekalert3)Paidi RK, et al. Cell Rep. 2023;42:112717.4)Bodybuilding supplement may help stave off Alzheimer’s / Eurekalert

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紫外線量と双極性障害リスクとの関係

 太陽光には、皮膚でのビタミンD生成を促す紫外線B(UVB)が含まれている。ビタミンDは、発育中から成人の脳機能にさまざまな影響を及ぼしている。しかし、多くの人々は、冬期にビタミンD生成を行ううえで十分なUVBを受けられない地域(北緯または南緯約40度以上)で生活を行っている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、世界の大規模サンプルを用いて、双極性障害の発症年齢とビタミンD生成に十分なUVBの閾値との関連性を調査した。その結果、UVBおよびビタミンDは、双極性障害発症に重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月22日号の報告。 北半球または南半球の41ヵ国75の収集サイトより、双極I型障害患者6,972例のデータを収集した。ビタミンD生成に十分なUVBの閾値と発症年齢との関係を評価した(閾値を1ヵ月以上下回る場合、気分障害の家族歴、出生コホートを含む)。すべての係数は、p≦0.001で推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、70ヵ国582の地域で双極性障害を発症していた(平均発症年齢:25.6歳)。・ビタミンD生成に十分なUVBの閾値を1ヵ月以上下回っていた患者の割合は、34.0%であった。・UVBの閾値を1ヵ月以上下回っている地域の双極性障害患者は、発症年齢が1.66歳若かった。・本研究の限界として、患者のビタミンDレベル 、ライフスタイル、サプリメント使用に関するデータが欠如していた点が挙げられる。・双極性障害におけるUVBとビタミンDの影響については、さらなる研究が求められる。

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オメガ3脂肪酸で心房細動リスクは増加する?しない?/JACC

 オメガ3脂肪酸の摂取が心房細動発症リスクを高めることを示唆する研究報告があるが、依然として議論の余地がある。今回、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのFrank Qian氏らが、世界的コンソーシアムにおける17の前向きコホート研究のデータを用いて、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の血中あるいは脂肪組織レベルと心房細動発症との関連を解析した結果、オメガ3脂肪酸の生体内レベルは心房細動発症リスクの増加に関連していなかった。本結果から、食事による習慣的なオメガ3脂肪酸の摂取は、心房細動発症リスクに関しては安全であることが示唆された。Journal of the American College of Cardiology誌2023年7月25日号に掲載。オメガ3脂肪酸と心房細動に関するベースラインデータを有する研究を解析 本研究では、血中または脂肪組織のオメガ3脂肪酸レベルと心房細動に関するベースラインデータを有する、世界的コンソーシアムの17の前向きコホート研究の参加者レベルのデータを用いた。各研究について、曝露、アウトカム、共変量、サブグループの定義を統一し、事前に規定された解析計画を用いてde novo解析を行った。 オメガ3脂肪酸レベルと心房細動リスクの関連を解析した主な結果は以下のとおり。・17コホートには北米、欧州、アジア、アフリカの 21ヵ国の5万4,799人が参加し、追跡期間中央値13.3年で7,720例の心房細動の発症が確認された。・多変量解析では、EPA値は心房細動の発症とは関連せず、五分位範囲でのハザード比(HR)は1.00(95%信頼区間[CI]:0.95~1.05)であった。・DPA、DHA、EPA+DHAのレベルが高い場合のHRは、それぞれ0.89(95%CI:0.83~0.95)、0.90(同:0.85~0.96)、0.93(同:0.87~0.99)で、心房細動リスクの低下と有意に関連していた。 今回の結果から、著者らは「心血管疾患患者や心血管疾患リスクが高い人々におけるサプリメントによる高用量のオメガ3脂肪酸摂取が、食事による習慣的な低用量のオメガ3脂肪酸摂取に必ずしも一般化できるわけではないことを示唆している」と結論している。

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サプリメント摂取の最大目的は「健康増進」/アイスタット

 サプリメントは私たちの生活に欠かせないアイテムとなっている。ちょっとした栄養補給や健康の増進、体質改善などに摂取されているが、一般的なサプリメントの摂取について、摂取する目的やその理由、効果や安全面などで何か傾向はあるのであろうか。株式会社アイスタットは6月22日に「サプリメント」に関するアンケートを行った。 アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員20~69歳の300人が対象。調査概要形式:Webアンケート形式調査期間:2023年6月22日回答者:セルフ型アンケートツールFreeasyに登録している300人(20~69歳)アンケート概要・サプリメントを毎日摂取している人は2割。今まで一度も摂取したことがない人は4割。・サプリメントを摂取しない理由の第1位は「お金」。・サプリメントを摂取するきっかけ・理由の第1位は「健康維持・促進のため」。・摂取したサプリメントの効能は「健康維持・促進」が最多、次に「特定の栄養素の補給」。・8割近くの人が症状の改善は「病医院」ではなく、「サプリメント」で。・サプリメントは「効果がある」と回答した人は3割。・サプリメントで健康被害にあったことがある人は約2割。・サプリメントで重視する点の第1位は「効き目・有効性」、第2位は「価格」。・負の生活習慣に該当していない人は、サプリメントを一度も摂取していない。毎日サプリメントを摂取する人は約2割 質問1で「健康食品のサプリメントを摂取しているか」(単回答)を聞いたところ、「今まで一度も摂取したことはない」が41.7%、「毎日」が23.0%、「以前は摂取、今は摂取していない」が21.3%の順で多かった。また、摂取経験の有無の分類では、「あり(58.3%)」が「なし(41.7%)」を上回り、6割近くの人に摂取経験がみられ、年代別では「毎日摂取している」を回答した人は「60代」で最も多かった。 質問2で摂取経験のない189人に「現在、健康食品のサプリメントを摂取しない理由」(複数回答)を聞いたところ、「お金がかかる」が42.9%、「特に理由はない」が38.1%、「効果が期待できない」が32.3%の順で回答が多かった。 質問3でサプリメントの摂取経験がある175人に「健康食品のサプリメントを摂取するきっかけ・理由」(複数回答)を聞いたところ、「健康維持・促進のため」が34.9%、「テレビ番組、CM、広告、新聞・雑誌をみて」が24.6%、「日ごろの栄養不足を補うため」が23.4%の順で多かった。明確な動機なく摂取される人も多い割合だった。 質問4でサプリメントの摂取経験がある175人に「摂取したことがある健康食品のサプリメント」(複数回答)を聞いたところ、「健康維持・促進」が51.4%、「特定の栄養素の補給」が32.6%、「疲労回復」が25.1%の順で多かった。また、1人当たりの摂取種類数を回答した個数から調べてみると「1種類」が44.6%、「2種類」が20.0%、「3種類」が19.4%と続いた。 質問5でサプリメントの摂取経験がある175人に「症状などを改善するために、病医院で診察を受けた経験があるか」(単回答)を聞いたところ、「診察を受けたことは一度もない」が78.9%、「ある」が21.1%の結果だった。回答者の8割近くが「病医院」ではなく、「サプリメント」で症状を改善していることが判明した。 質問6でサプリメントの摂取経験がある175人に「摂取したことがある健康食品のサプリメントの効果について」(単回答)として、最も印象に残るサプリメントの効果の有無について聞いたところ、「どちらでもない」が39.4%、「効果がある」が31.4%、「効果がない」が29.1%の順で多かった。 質問7でサプリメントの摂取経験がある175人に「サプリメントで健康被害にあったことがあるか」(複数回答)を聞いたところ、「なし」が78.3%で、8割近くの回答者が健康被害に遭っていなかった。一方、健康被害に遭った人で最も多かった症状は、「消化器症状(食欲不振や悪心など)」が8.6%、「神経症状(めまい、頭痛など)」が8.0%と多かった。 質問8で「サプリメントを摂取する・しないに関わらず、健康食品のサプリメントについて、重視する点」(複数回答)を聞いたところ、「効き目・有効性」が61.3%、「価格」が55.7%、「安全性」が48.3%、「成分」が23.7%の順で多かった。また、摂取状況別では、「毎日摂取している人」ほど「安全性」「効き目・有効性」「価格」「味の飲みやすさ」「認知度」の回答が多く、「毎日ではないが摂取の人」ほど「成分」「ネームバリューがあり、どこでも購入できる」の回答が多かった。 質問9で「生活習慣について」(複数回答)を聞いたところ、「ストレスがある」「適度な運動はしていない」「体調を崩しやすい」「肥満体型・ぽっちゃり体型である」「身体をゆっくりと休む時間(家でごろごろ)が週1回ない」「更年期障害に悩まされている」「持病がある」「規則正しい生活を送っていない」と回答した人は、サプリメントを「毎日摂取」している人が多かった。一方、マイナスイメージの生活習慣に該当しない人(上記に当てはまるものはない人)は、サプリメントを「一度も摂取したことがない」割合が最も多かった。

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『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』改訂のポイント/日本腎臓学会

 6月9日~11日に開催された第66回日本腎臓学会学術総会で、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』が発表された。ガイドラインの改訂に伴い、「ここが変わった!CKD診療ガイドライン2023」と題して6名の演者より各章の改訂ポイントが語られた。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」第1~3章の改訂ポイント第1章 CKD診断とその臨床的意義/小杉 智規氏(名古屋大学大学院医学系研究科 腎臓内科学)・実臨床ではeGFR 5mL/分/1.73m2程度で透析が導入されていることから、CKD(慢性腎臓病)ステージG5※の定義が「末期腎不全(ESKD)」から「高度低下~末期腎不全」へ変更された。・国際的に用いられているeGFRの推算式(MDRD式、CKD-EPI式)と区別するため、日本人におけるeGFRの推算式は「JSN eGFR」と表記する。・一定の腎機能低下(1~3年間で血清Cr値の倍化、eGFR 40%もしくは30%の低下)や、5.0mL/分/1.73m2/年を超えるeGFRの低下はCKDの進行、予後予測因子となる。※GFR<15mL/分/1.73m2第2章 高血圧・CVD(心不全)/中川 直樹氏(旭川医科大学 内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野)・蛋白尿のある糖尿病合併CKD患者においては、ACE阻害薬/ARBの腎保護に関するエビデンスが存在するが、蛋白尿のないCKD患者においては、糖尿病合併の有無にかかわらず、ACE阻害薬/ARBの優位性を示す十分なエビデンスがない。したがって、ACE阻害薬/ARBの投与は糖尿病合併の有無ではなく、蛋白尿の有無を参考に検討する。・CKDステージG4※、G5における心不全治療薬の推奨クラスおよびエビデンスレベルが『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では次のとおり明記された。ACE阻害薬/ARB:2C、β遮断薬:2B、MRA:なしC、SGLT2阻害薬:2C、ARNI:2C、イバブラジン:なしD。※eGFR 15~29mL/分/1.73m2第3章 高血圧性腎硬化症・腎動脈狭窄症/大島 恵氏(金沢大学大学院 腎臓内科学)・2018年版では「腎硬化症・腎動脈狭窄症」としていたが、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では「高血圧性腎硬化症・腎動脈狭窄症」としている。高血圧性腎硬化症とは、持続した高血圧により生じた腎臓の病変である。・片側性腎動脈狭窄を伴うCKDに対する降圧薬として、RA系阻害薬はそのほかの降圧薬に比べて末期腎不全への進展、死亡リスクを抑制する可能性がある。ただし、急性腎障害発症のリスクがあるため注意が必要である。・動脈硬化性腎動脈狭窄症を伴うCKDに対しては、合併症のリスクを考慮し、血行再建術は一般的には行わない。ただし、治療抵抗性高血圧などを伴う場合には考慮してもよい。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」で腎性貧血を伴う患者のHb目標値が改定第4章 糖尿病性腎臓病/和田 淳氏(岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学)・尿アルブミンが増加すると末期腎不全・透析導入のリスクが有意に増加することから、糖尿病性腎臓病(DKD)患者では定期的な尿アルブミン測定が強く推奨される。・DKDの進展予防という観点では、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬の使用について十分なエビデンスはない。体液過剰が示唆されるDKD患者ではループ利尿薬、尿アルブミンの改善が必要なDKD患者ではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が推奨される。・糖尿病患者においては、DKDの発症、アルブミン尿の進行抑制が期待されるため集約的治療が推奨される。・DKD患者に対しては、腎予後の改善と心血管疾患発症抑制が期待されるため、SGLT2阻害薬の投与が推奨される。第9章 腎性貧血/田中 哲洋氏(東北大学大学院医学系研究科 腎・膠原病・内分泌内科学分野)・PREDICT試験、RADIANCE-CKD Studyの結果を踏まえて、腎性貧血を伴うCKD患者での赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療における適切なHb目標値が改定された。『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では、Hb13g/dL以上を目指さないこと、目標Hbの下限値は10g/dLを目安とし、個々の症例のQOLや背景因子、病態に応じて判断することが提案されている。・「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation(2020年9月29日版)」に関する記載が追記された。2022年11月、ロキサデュスタットの添付文書が改訂され、重要な基本的注意および重大な副作用として中枢性甲状腺機能低下症が追加されたことから、本剤投与中は定期的に甲状腺機能検査を行うなどの注意が必要である。第11章 薬物治療/深水 圭氏(久留米大学医学部 内科学講座腎臓内科部門)・球形吸着炭は末期腎不全への進展、死亡の抑制効果について明確ではないが、とくにCKDステージが進行する前の症例では、腎機能低下速度を遅延させる可能性がある。・代謝性アシドーシスを伴うCKDステージG3※~G5の患者では、炭酸水素ナトリウム投与により腎機能低下を抑制できる可能性があるが、浮腫悪化には注意が必要である。・糖尿病非合併のCKD患者において、蛋白尿を有する場合、腎機能低下の進展抑制、心血管疾患イベントおよび死亡の発生抑制が期待できるため、SGLT2阻害薬の投与が推奨される。・CKDステージG4、G5の患者では、RA系阻害薬の中止により生命予後を悪化させる可能性があることから、使用中のRA系阻害薬を一律には中止しないことが提案されている。※eGFR 30~59mL/分/1.73m2 なお、同学会から、より実臨床に即したガイドラインとして、「CKD診療ガイド2024」が発刊される予定である。

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CKD-MBDガイドライン改訂に向けたデータの吟味/日本透析医学会

 日本透析医学会による慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドラインが発表されてから10年以上が経過し、これまでに多くのデータが蓄積されてきた。そのデータを吟味し、今後のガイドラインのアップデートにつなげる目的として、2023年6月16日、日本透析医学会学術集会・総会のシンポジウム1「CKD-MBDガイドライン改訂に必要なデータを吟味する」にて、8名の医師からその方向性に関する報告と提案があった。血液透析患者における血清リン、カルシウム濃度の目標値の上限 日本透析医学会の統計調査データによる観察研究の結果を基に、血液透析患者における血清リン、カルシウムの管理について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。同氏は、「血清リンの下限は3.5mg/dLのまま、上限は現状の6.0mg/dLよりも少し厳しく管理することが望ましい。血清カルシウムも下限は現状の8.4mg/dLは必要であり、上限については10.0mg/dLのままでよいか、より厳しくしていく必要があるか、さらなる検討が必要である」と述べた。CKD-MBDガイドラインが発表されてから多くのリン吸着薬が登場 2012年にCKD-MBDガイドラインが発表されてから多くのリン吸着薬が登場し、実臨床で使用されている。その多彩なリン吸着薬をどのように使い分けていくべきか、ネットワークメタ解析による結果を基に山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)から提案があった。解析の結果、カルシウム含有リン吸着薬と比較して、塩酸セベラマーは総死亡リスクが有意に低下し、炭酸ランタンは冠動脈の石灰化が有意に低下した。心血管死亡リスクではリン吸着薬間で有意差は認められなかった。また、消化器症状のリスクは、ニコチン酸アミド、鉄含有リン吸着薬、塩酸セベラマー、炭酸ランタンの順で高くなっていた。この結果を踏まえて同氏は、エビデンスに基づいて薬剤を選択することはもちろん重要だが、日本人の特徴を考慮して、患者背景に即した自由な選択、個々の薬剤の特性を活かした選択を検討する必要があり、その参考指標を改訂時に公表できるよう準備を進めていくと述べた。インタクトPTH 240pg/mL以上で総死亡や心血管死亡リスクが上昇 わが国のPTHの管理目標値は、インタクトPTH60~240pg/mLと、海外と比較して厳格な設定となっている。ガイドラインの改訂に向けて、海外の基準値に合わせるべきか、より厳格な目標値を設定すべきか、日本透析医学会の統計調査データを基に、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科)からPTHと生命予後、骨折リスクとの関連について報告があった。生命予後の観点ではインタクトPTH 240pg/mL以上で総死亡や心血管死亡リスクが上昇、インタクトPTHを下げ過ぎることによるこれらのリスクは確認されなかった。一方、骨折リスクは死亡リスクよりも頻度は高く、PTHが高くなるほど、あらゆる骨折と大腿骨近位部骨折のリスクが上昇していた。高齢や低栄養、女性においてその傾向が強く、「骨折防止の観点でもPTHの管理はthe lower, the better?」とコメント。新しいPTHの管理目標をどのように設定すべきか、同氏は「生命予後の観点ではPTHの管理目標値の上限は240pg/mLとなるかもしれないが、骨折防止の観点ではより厳格なPTHの管理を目指すべきかもしれない。また、患者の背景を考慮して、個々に検討する必要がある」と述べた。 CKD・透析患者の骨の評価では、骨代謝マーカーにも注目 腎機能低下に伴って大腿部骨折のリスク増加に関しては、多くの観察研究で報告されており、CKDや透析患者において骨の評価・管理は重要な要素である。骨の評価について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)から骨脆弱性と骨密度に加えて骨代謝マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)も一緒に評価すべきと提案があった。ALPと骨折リスクの相関性をみた報告によると、インタクトPTHを十分に抑えた状況でもALPが高いと大腿部頸部骨折のリスクが高くなっていることが報告されており1)、「ALPも骨の評価の予後規定因子として考えるべき」とコメント。一方、骨の管理に関してはPTH管理のポイントとして駒場氏の報告でもあった「the lower, the better?」を採用し、適切に管理したうえで骨粗鬆症治療薬の使用を考慮し、薬剤選択は標準治療に準じて検討するように提案された。今後に向けて、同氏は他領域の医師にも骨粗鬆症治療薬によるリスクを認識してもらえるようヒートマップを活用した薬剤別の表の作成や、骨密度上昇効果と骨折予防効果を明確に分けて、エビデンスレベルがどの程度まであるか示したプラクティスポイントを調整中であると述べた。腹膜透析におけるCKD-MBDによる死亡リスクとは 血液透析ではカルシウム、リン、PTHと死亡リスクに関する報告はあるものの、腹膜透析に限定した報告は存在しない。日本透析医学会の統計調査のデータベースを用いた前向きコホート研究の結果から、カルシウム、リン、PTHを可能な限り低めに保つことで全死亡や心血管死亡などのアウトカムの改善につながる可能性があることがわかった。この結果に対して、村島 美穂氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科)は、「目標値の下限でコントロールすることを提案していきたい」とコメント。また、カルシミメティクスの投与に関して、残腎機能に注意を払う必要があると述べた。移植患者のCKD-MBDの管理とは 移植後のビスフォスフォネートや活性型ビタミンD製剤の効果、移植後を見据えた移植前のCKD-MBDの管理、移植後のCKD-MBDの管理について、河原崎 宏雄氏(帝京大学医学部附属溝口病院 第4内科)からシステマティック・レビューの紹介があった。同氏は、「ビスフォスフォネートでは骨折予防、活性型ビタミンD製剤ではPTH抑制に対して効果があるかもしれない。移植前のCKD-MBDでは、透析期間が長い、副甲状腺腫が大きい、シナカルセトの使用、移植前にカルシウムやPTHが高い場合には副甲状腺摘出術(PTx)を検討すること。そして、移植後のCKD-MBDでは高カルシウム血症に対してPTxやカルシミメティクスを検討すること」と述べた。CKD-MBDガイドラインに保存期における治療の開始時期 保存期CKDにおけるCKD-MBD治療の開始タイミングに関して、ガイドラインのClinical Questionに答えるための十分なエビデンスが存在しない状況にある。新しいCKD-MBDガイドラインの方向性について、藤井 直彦氏(兵庫県立西宮病院 腎臓内科)は、「保存期CKD患者における低カルシウム血症、高リン血症、高PTH血症のデータに注目し、CKD-MBD治療をどのタイミングで開始すればよいのか、アプローチ方法について検討中である」とコメント。保存期からカルシウム、リン、PTHを測定する目安をまとめたフローについても準備を進めていると述べた。小児におけるCKD-MBDの現状とは 日本透析医学会の統計調査データを基に小児腎不全患者におけるCKD-MBDの指標と成長、生命予後との関連について、今泉 貴広氏(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)から報告があった。小児腎不全患者はPTHの増加に伴い成長が鈍化する傾向にあり、カルシウム、リン、PTHのいずれも生存との関連はなかった。同氏は、「現在、ガイドラインで設定されているインタクトPTHの目標値を覆す根拠は得られなかった」とコメント。さらなる追加解析について検討していく必要があると述べた。

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患者情報から治療期間を評価して、漫然投与薬の中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第54回

 今回は、長期服用薬の治療期間を疑問に思い、患者情報を収集し直して漫然投与となりがちな薬剤の必要性を再考した症例を紹介します。副作用などの問題がなくても、治療の適応があるのかどうかを定期的に考える機会は必要です。急性疾患で処方された薬剤がいつまで必要なのか、慢性疾患であれば処方時点と現在で治療内容が妥当であるのか否かを、薬剤師の視点で評価しましょう。患者情報85歳、女性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム錠30mg 3錠 分3 毎食後2.トラネキサム酸錠250mg 3錠 分3 毎食後3.五苓散エキス顆粒 3包 分3 毎食後4.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは半年前の施設入居時から上記の処方薬を服用していました。処方監査を実施していた薬剤師が、採血結果もなく、病歴も認知症のみなのになぜ止血剤および鉄剤を飲んでいるのか不明であったため、基礎疾患や治療経過を収集する治療計画(Care plan)を立案しました。当然、出血既往があると予測はつきますし、そのための貧血治療と考えるのが妥当ですが、いつ・どこの・どの程度の出血なのか明確でないことに違和感がありました。担当薬剤師へ情報を引き継ぎ、担当薬剤師が施設訪問時に看護師と入居前に入院していた病院の看護サマリーと診療情報提供書を確認しました。すると、繰り返す転倒から慢性硬膜下血腫が生じ、1年前に穿頭血腫ドレナージ術を施行していたことがわかりました。術後の再出血予防および血腫サイズの縮小などを目的に現行の治療薬が処方され、クエン酸第一鉄もそのときの採血結果をもとに追加されていました。そこで現在の主治医が外科医であることから現行薬の必要性を相談することにしました。医師への相談と経過主治医に電話で、長期的に現行薬を服用していて服薬アドヒアランスは維持されていることを伝えたうえで、病歴の聴取、今後の脳外科受診などの予定について確認しました。また、今後の治療方針も確認しました。主治医は病歴を把握していたものの、現行薬を今後どうするかについては保留中だったそうで、前回の術後頭部CT画像の確認から現行薬の必要性はないだろうという返答がありました。また、貧血治療も採血予定(Hb、フェリチン、TIBC、MCVなど)を組んだので、そこで鉄剤の中止を検討するとのことでした。最後に医師より、長期服用薬の評価は緊急性がなければ後回しになってしまうことが多いので、こういうアシストはとても助かるとお礼がありました。患者さんは現在も施設で転倒もなく、出血イベントも起きずに生活しています。鉄剤もその後の採血結果で異常所見はなく、治療は終了となりました。薬が終了したことで本人の服薬負担も看護師の与薬負担も減らすことができました。このように、病歴確認と見直しを行い、漫然投与となりがちな薬剤について今一度治療の適応があるのかどうか考える機会は必要です。治療継続の必要可否について確認する薬剤師のアプローチも多剤併用を予防するポジティブアクションに繋がると実感しました。

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第167回 帯状疱疹ワクチンで認知症発現率低下 / タウリンでより健康に長生きできるかも

無作為化試験様の解析で帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難いことが関連おのずと無作為化試験のようになった英国・ウェールズの2集団の比較で帯状疱疹ワクチンzostavax接種と認知症が生じ難いことの関連が示されました1)。同地では2013年9月1日からzostavaxの接種が始まりました。zostavaxは80歳までの人にどうやらより有効とのことで、1933年9月2日以降に生まれた80歳未満の人が接種の対象となり、1933年9月2日より前に生まれた人は対象外でした。その日を挟む1925~42年生まれの約30万人(29万6,603人)の電子診療情報が解析され、zostavax接種対象の人はそうでない人に比べて認知症の発現率が8.5%低いことが示されました。接種対象者のうち実際に接種したのは半数ほどであることを踏まえた解析結果によるとワクチン接種は認知症発現率の約20%(19.9%)低下をもたらしました。生まれが1933年9月2日以降かその前かで区切った2集団の誕生日以外の全般的な違いといえばzostavax接種対象かそうでないかのみであり、その2集団はおのずから無作為化試験のような集団となっています。とはいえあくまでも診療録の解析結果であり、その効果の確証には試験が必要です。より新しい帯状疱疹ワクチンの試験がいくつか進行中で、それらの被験者の認知機能を検査してみたらどうだろうと著者は言っています2)。アミノ酸・タウリン補給でマウスの寿命が伸び、中年サルの体調が改善真核生物の世界で最も豊富なアミノ酸の1つであるタウリンはイカやタコそれに貝類などに多く含まれ、多くの栄養ドリンクやエナジードリンクの成分としても知られ、サプリメントとしても販売されています。ヒトにとってタウリンは準必須アミノ酸で、合成できるものの発達に十分な量を作ることができない幼いころには体外から取り込まねばなりません3)。幼いころのタウリン不足は老化関連疾患と関連する骨格筋、眼、中枢神経系(CNS)機能障害を引き起こします。そのタウリンの体内の巡りが老化に伴って減ることがマウス、サル、さらにはヒトで認められ、タウリンの体内の巡りを増やすことでマウスの健康で生きられる期間や寿命が伸び、中年サルの体調が改善しました4,5,6,7)。マウスやサルで認められたようなタウリンの健康増進効果がヒトでも期待しうることも英国の試験の記録の解析で示唆されました。解析されたのは英国・ノーフォーク州でのEPIC-Norfolk試験の被験者1万人超(1万1,966人)の記録で、血中のタウリンやタウリン関連代謝物が多いことはより痩身であることを示す体型指標と関連しました。また、2型糖尿病の有病率が低いこと、糖濃度が低いこと、炎症指標であるC反応性タンパク質(CRP)が少ないことなどとも関連し、タウリン欠乏のヒトの老化への寄与に見合う結果が得られています。アスリートやそうでない人を募って実施した試験で運動が血中のタウリンやタウリン関連代謝物を増やしうることも確認され、運動の健康向上効果のいくらかにタウリンやタウリン関連代謝物が寄与しているという予想に沿う結果も得られています。しかし早まってタウリンを補給するのは得策ではありません。ヒトがタウリンを補給することで健康が改善するかどうかや寿命が伸びるかどうかはわかっておらず、店頭で売られているタウリン含有サプリメントを健康維持や老化を遅らせることを目当てに早まって服用すべきでないと著者は言っています7)。タウリンの健康や寿命への効果は無作為化試験で検証しなければなりません5)。参考1)Causal evidence that herpes zoster vaccination prevents a proportion of dementia cases, May 25 2023. medRxiv.2)Does shingles vaccination cut dementia risk? Large study hints at a link / Nature3)MCGAUNN J, et al. Science. 2023;1010:380.4)SINGH P, et al. Science. 1012;380:eabn9257.5)Taurine May Be a Key to Longer and Healthier Life / Columbia University6)Amino acid in energy drinks makes mice live longer and healthier / Science7)Taurine supplement makes animals live longer - what it means for people is unclear / Nature

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心不全の入院後30日死亡率、国の経済レベルで3~5倍/JAMA

 世界40ヵ国の心不全(HF)患者2万3,341例を登録したG-CHFレジストリ研究の結果、HFの病因、治療、転帰には国の経済レベルによって差があることを、カナダ・マックマスター大学のPhilip Joseph氏らG-CHF Investigatorsが報告した。HFに関する疫学研究の多くは高所得国で実施されており、中・低所得国での比較可能なデータは限られていた。著者は、「今回のデータは、世界的にHFの予防と治療の改善に取り組むうえで有用と考えられる」とまとめている。JAMA誌2023年5月16日号掲載の報告。高・高中・低中・低所得国の、HFの原因、治療、入院、死亡を比較 研究グループは、経済発展のレベルが異なる国々の間で、HFの病因、治療、転帰にどのような違いがあるかを検討する目的で、2016~20年に5大陸40ヵ国の257施設からHF患者2万3,341例を登録し、前向きに追跡調査を行った。今回の解析では、2022年8月10日以前に記録された追跡調査期間中央値2.0年間のイベントに関する評価を行った。 40ヵ国の内訳は、研究開始時の世界銀行分類に基づき、高所得国17ヵ国8,691例(カナダ、米国、チリ、アイスランド、スウェーデン、アイルランド、英国、デンマーク、ドイツ、ポーランド、フランス、スイス、イタリア、ポルトガル、スペイン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)、高中所得国10ヵ国5,793例(メキシコ、コロンビア、エクアドル、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、トルコ、中国、ボツワナ、南アフリカ共和国)、低中所得国9ヵ国6,947例(ウクライナ、エジプト、スーダン、ナイジェリア、カメルーン、ケニア、パキスタン、インド、フィリピン)、低所得国4ヵ国1,910例(ウガンダ、タンザニア、モザンビーク、ネパール)である。 主要評価項目は、HFの原因、HF治療薬の使用、入院、死亡とした。低所得国で、標準的HF治療の割合が低く、死亡率が高い 登録患者の平均(±SD)年齢は63.1±14.9歳、9,119例(39.1%)は女性であった。 HFの原因として最も多かったのは虚血性心疾患(38.1%)、次いで高血圧(20.2%)、特発性拡張型心筋症(15.4%)であった。高所得国、高中所得国、低中所得国では虚血性心疾患が最も多い原因であり、低所得国では高血圧が最も多い原因であった。 駆出率が低下したHF患者(左室駆出率が40%以下)の治療では、β遮断薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を併用している患者の割合は、高所得国(51.1%)と高中所得国(61.9%)で高く、低中所得国(39.5%)と低所得国(45.7%)で低かった(p<0.001)。 100人年当たりの年齢・性別標準化死亡率は、高所得国が7.8(95%信頼区間[CI]:7.5~8.2)で最も低く、高中所得国9.3(8.8~9.9)、低中所得国15.7(15.0~16.4)、低所得国が19.1(17.6~20.7)で最も高かった。ベースラインの患者特性および慢性HF治療薬の使用に関して補正後も、死亡リスクは高所得国と比較し、低中所得国(ハザード比[HR]:1.48、95%CI:1.37~1.60)および低所得国(2.10、1.90~2.33)で有意に高いままであった。 高所得国および高中所得国では初回入院率が死亡率より高く(死亡に対する入院の比率:それぞれ3.8、2.4)、低中所得国では同程度(同1.1)、低所得国では初回入院率より死亡率が高かった(同0.6)。 初回入院後30日死亡率は、高所得国が6.7%と最も低く、次いで高中所得国9.7%、低中所得国21.1%で、低所得国が31.6%と最も高かった。ベースラインの患者特性および慢性HF治療薬の使用に関して補正後も、初回入院後30日死亡のリスクは高所得国に比べて低中所得国および低所得国で3~5倍高かった。

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2型糖尿病の薬物療法で最適な追加オプションは?(解説:小川大輔氏)

 GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の登場により、近年2型糖尿病の薬物療法が大きく変わった。既存の糖尿病治療薬では認められなかった、心血管イベントや腎不全を抑制する効果が数多く報告されたからだ。さまざまな糖尿病治療薬の中からどの薬剤を選択するか、その判断の一助になるネットワークメタ解析の論文がBMJ誌に発表された1)。 この論文の背景として、2年前の2021年に同じBMJ誌に掲載された論文について少し触れたい。この当時すでにGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬のエビデンスは集積しており、これら2製剤がこれまでの糖尿病治療薬と比較して全死亡、心血管死、非致死的心筋梗塞、腎不全、体重減少などのベネフィットがあることがネットワークメタ解析により明らかになった2)。また桑島 巖先生(J-CLEAR理事長)がこの論文に対するコメントを執筆しているのでご一読いただきたい3)。 今回の論文の新しい点は、従来治療薬に追加するオプションとして、最近登場したGIP/GLP-1受容体作動薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)の2製剤が加わったことである。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬、MR拮抗薬を含む13種類の薬剤の中から追加投与した場合の、死亡や心血管系および腎臓系の有害アウトカムの減少、体重減少などについてシステマティックレビューとネットワークメタ解析が実施された。 解析の結果、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬については全死亡、心血管死、非致死性心筋梗塞、心不全による入院、末期腎不全の抑制に有効であることが示されたが、これまでのRCTやネットワークメタ解析の結果と同様であり新規性はない。一方、MR拮抗薬のフィネレノンが全死亡、心不全による入院、末期腎不全の減少に効果的である可能性が示された点は新しい知見である。MR拮抗薬は糖尿病治療薬ではないが、腎臓系の有害アウトカムについてはSGLT2阻害薬より劣るものの効果がある可能性があり、心不全による入院や全死亡も低下させる可能性が示されたため、今後日常診療で使用される頻度が増えるだろう。 今回の解析で、13種類の製剤の中でGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬が心血管系および腎臓系の有害アウトカムや死亡の減少、さらにQOLの改善に最も効果があることが確認された。一方、GIP/GLP-1受容体作動薬については、体重減少効果は最も大きかったが、GLP-1受容体作動薬で認められる死亡や心血管・腎イベントの抑制効果は認められなかった。新しい薬剤のため解析対象となった試験が少ないことが影響しているのかもしれない。今後のGIP/GLP-1受容体作動薬の臨床研究に期待したい。 有害事象については、SGLT2阻害薬では性器感染症、GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬では胃腸障害、MR拮抗薬では入院を要する高カリウム血症のリスクが高かった。いずれも薬剤クラス固有のものであり、とくに目新しい有害事象の報告はなかった。 近年、ネットワークメタ解析を用いた臨床研究の論文が増えていると感じる。従来のメタ解析では2種類の治療薬の比較しかできないが、今回の論文のように3種類以上の比較を行うことができるのがネットワークメタ解析のメリットである。しかし、このネットワークメタ解析により、新たに大きなエビデンスが生み出されるというわけではないことに注意しなければならない4)。ネットワークメタ解析は、RCTよりエビデンスレベルは下がるものの、今回のように比較したい糖尿病治療薬が多数あるような場合には、治療の「次の一手」を選択する際に参考となるデータを提供してくれる手法である。

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2型DMの追加処方に有益なのは?~816試験をメタ解析/BMJ

 中国・四川大学のQingyang Shi氏らはネットワークメタ解析を行い、2型糖尿病(DM)成人患者に対し、従来治療薬にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を追加投与する場合の実質的な有益性(心血管系および腎臓系の有害アウトカムと死亡の減少)は、フィネレノンとチルゼパチドに関する情報を追加することで、既知を上回るものとなることを明らかにした。著者は、「今回の結果は、2型DM患者の診療ガイドラインの最新アップデートには、科学的進歩の継続的な評価が必要であることを強調するものである」と述べている。BMJ誌2023年4月6日号掲載の報告。24週以上追跡のRCTを対象に解析 研究グループは、2型DM成人患者に対する薬物治療として、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(フィネレノンを含む)とチルゼパチド(二重GIP/GLP-1受容体作動薬)を既存の治療オプションに追加する有益性と有害性の比較を目的にシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 Ovid Medline、Embase、Cochrane Centralを用いて、2022年10月14日時点で検索。無作為化比較試験で、追跡期間24週以上を適格とし、クラスの異なる薬物治療と非薬物治療の組み合わせを体系的に比較している試験、無作為化比較試験のサブグループ解析、英語以外の試験論文は除外した。エビデンスの確実性についてはGRADEアプローチで評価した。816試験、被験者総数47万1,038例のデータを解析 解析には816試験、被験者総数47万1,038例、13の薬剤クラスの評価(すべての推定値は、標準治療との比較を参照したもの)が含まれた。 SGLT2阻害薬と、GLP-1受容体作動薬の追加投与は、全死因死亡を抑制した(それぞれオッズ比[OR]:0.88[95%信頼区間[CI]:0.83~0.94]、0.88[0.82~0.93]、いずれも高い確実性)。 非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬については、慢性腎臓病を併存する患者へのフィネレノン投与のみが解析に含まれ、全死因死亡抑制の可能性が示唆された(OR:0.89、95%CI:0.79~1.00、中程度の確実性)。その他の薬剤については、おそらくリスク低減はみられなかった。 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の追加投与については、心血管死、非致死的心筋梗塞、心不全による入院、末期腎不全を抑制する有益性が確認された。フィネレノンは、心不全による入院、末期腎不全をおそらく抑制し、心血管死も抑制する可能性が示された。 GLP-1受容体作動薬のみが、非致死的脳卒中を抑制することが示された。SGLT2阻害薬は他の薬剤に比べ、末期腎不全の抑制に優れていた。GLP-1受容体作動薬は生活の質(QOL)向上に効果を示し、SGLT2阻害薬とチルゼパチドもその可能性が示された。 報告された有害性は主に薬剤クラスに特異的なもので、SGLT2阻害薬による性器感染症、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬による重症胃腸有害イベント、フィネレノンによる高カリウム血症による入院などだった。 また、チルゼパチドは体重減少がおそらく最も顕著で(平均差:-8.57kg、中程度の確実性)、体重増加がおそらく最も顕著なのは基礎インスリン(平均差:2.15kg、中等度の確実性)とチアゾリジンジオン(平均差:2.81kg、中等度の確実性)だった。 SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、フィネレノンの絶対的有益性は、ベースラインの心血管・腎アウトカムリスクにより異なった。

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低炭水化物ダイエットはメタボになりやすい?

 炭水化物の摂取量について、推奨量を下回るとメタボリックシンドローム(MetS)の発症が低下するかどうか、現時点では関係性を示す一貫した証拠はない。今回、米国・オハイオ州立大学のDakota Dustin氏らが炭水化物の摂取量とMetSの有病率について研究した結果、炭水化物の推奨量を満たしている人よりも下回っている人のほうがMetSの発症率が高いことが明らかになった。Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics誌オンライン版2023年3月23日号掲載の報告。 本研究は、1999~2018年の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)の回答者から、食物と栄養摂取量とMetSのマーカーに関するデータを取得。そのデータを炭水化物・総脂肪・脂肪酸(飽和脂肪酸[SFA]、一価不飽和脂肪酸[MUFA]、および多価不飽和脂肪酸[PUFA])の摂取量で層別化し、MetSとの関連性を評価した横断研究である。 食品および栄養素(サプリメントからの摂取含む)の通常の摂取量は、米国・国立がん研究所(NCI)での摂取方法から推定された。炭水化物からのエネルギーが45%未満を「炭水化物の摂取推奨量を下回る」、炭水化物からのエネルギーが45~65%を「炭水化物の摂取推奨量を満たす」と定義した。MetSの診断基準は米国の診療ガイドライン1)に基づき、参加者をMetSと判定するには、8.5時間以上断食した朝に次の状態(腹囲の拡大、TG値の上昇、HDL-C値の低下、血圧上昇、血漿グルコース濃度の上昇)のうち3つが該当した場合とした。解析には多変量ロジスティック回帰モデルを用い、食事パターンとMetSの関連性をオッズ比で評価した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には20歳以上の妊娠・授乳していない1万9,078例の回答者が含まれ、炭水化物摂取量が推奨量を下回った群と満たした群の平均年齢はそれぞれ48歳だった。・炭水化物の摂取量が推奨量を下回ったのは女性が半数以上(53%)で、推奨量を満たしている人よりも、エネルギーの割合としてより多くのアルコールを摂取していた。・炭水化物の摂取量が推奨量を下回った人は、推奨量を満たした人に比べてMetSの有病率が1.067倍高かった(95%信頼区間[CI]:1.063~1.071、p

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アンチエイジング、未来の児を想像する力なり

第23回日本抗加齢医学会総会が2023年6月9日(金)~11日(日)の3日間、東京国際フォーラムにて開催される。今回のテーマは『老若男女の抗加齢 from womb to tomb(子宮から墓まで)』。大会長である大須賀 穣氏(東京大学大学院医学系研究科産婦人科学 教授)はこのテーマにどんなメッセージを込めたのか、話を聞いた。児の将来を見据えアンチエイジングを目指す産婦人科とは、女性患者さんの健康について広く長くお付き合いする診療科です。妊娠・出産のみならず、若年期の月経、更年期や更年期以降のホルモンに関することなど、あらゆる問題に耳を傾けるため、女性の家庭医という側面も持ち合わせています。そのため、産婦人科は抗加齢医学(アンチエイジング)に密接に関わり、診療の一部として学ぶのは当然のことだとも言えるでしょう。近年では胎児期またはそれ以前の環境がエピゲノムの変化や胎児(次世代)の健康に影響するという科学的知見も得られているため、女性や母体をケアすると同時に次世代を管理する役割が産婦人科医の中でも一層強まってきているのではないでしょうか。また、母体のやせや高齢出産の増加も合併症の増加の一つの要因になっていることは言うまでもありません。今、母になろうとしている女性の体重や血圧、血糖管理などは次世代が健康長寿になるかどうかを決める要素となるため非常に重要なんです。たとえば、内科医の皆さまには、妊娠前の健康状態が非常に重要であることを念頭に置き、若い女性を診察する場合には、妊娠する可能性を視野に入れ、やせが認められる場合には適正体重になるよう指導していただきたいのです。妊娠前の健康がご本人と未来の児のためであるということをどうかご理解ください。そして、食事から摂取用量が不足するビタミンや葉酸はサプリメントで取ることが望ましいため、その点もご指導いただきたいです。このような社会を皆で考えるべく、本大会では会長企画プログラム「妊娠出産の記憶とエイジング」「エイジングと妊娠出産」「生殖器のエイジングケア」などを予定しています。お腹にいるときからアンチエイジングを考慮する必要性、現状を科学的データよりご理解いただきたいと考えおります。今回、海外からは世界妊娠高血圧学会(ISSHP)の会長を務めるProf. Laura Magee氏(英・キングス・カレッジ・ロンドン)をお招きし、妊娠高血圧症候群と母親の将来リスクに関するご講演もお願いしています。大会長の一押しシンポジウムこのほか、招聘講演では大月 敏雄氏(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授/東京大学高齢社会総合研究機構メンバー)に高齢者に住みやすい町づくりやアンチエイジングに役立つ建築物に関するお話をしていただきます。教育講演では堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学 教授)による、アンチエイジングの視点から食に関する「選食の時代」を、田中 孝氏(田中消化器科内科クリニック 理事長)による「開業医が進めるアンチエイジング医療」の講演などを予定しています。一般演題には200を超える応募が寄せられ、盛り上がる予感です。事前参加の登録受付期間は4月21日(金)までですので、ご興味がある方はぜひご登録をお願いいたします。参考第23回日本抗加齢医学会総会

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スタチン不耐患者、bempedoic acidがCVリスクに有効か/NEJM

 スタチンの服用が困難なスタチン不耐(statin-intolerant)患者において、ATPクエン酸リアーゼ阻害薬ベンペド酸(bempedoic acid)はプラセボと比較し、LDLコレステロール値を低下し、主要有害心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈血行再建)のリスクを低下することが示された。一方でベンペド酸投与により、脳卒中、心血管死、全死因死亡のそれぞれのリスクは低減せず、また痛風や胆石症発生リスクはやや増大した。米国・クリーブランドクリニックのSteven E. Nissen氏らによる二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で、NEJM誌オンライン版2023年3月4日号で発表された。ベンペド酸は、LDL値を低下し筋肉関連の有害事象の発生リスクは低いが、心血管アウトカムへの影響は明らかになっていなかった。“スタチン不耐”でCVD、または高リスクの患者を対象に試験 研究グループは、容認できない副作用のためにスタチン服用ができない、または困難な患者(スタチン不耐患者)で、心血管疾患が認められるか、または同リスクの高い患者1万3,970例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方(6,992例)にはベンペド酸180mgを、もう一方(6,978例)にはプラセボを、それぞれ経口投与した。 主要エンドポイントは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈血行再建の4つのうちのいずれかの発生と定義した主要有害心血管イベントだった。心筋梗塞、冠動脈血行再建の発生率、ベンペド酸で各2割程度減少 追跡期間中央値は40.6ヵ月。ベースラインのLDLコレステロール値は、両群共に139.0mg/dLであり、6ヵ月後の低下幅は、ベンペド酸群がプラセボ群より29.2mg/dL大きく、減少率の群間差は21.1ポイントだった。 主要エンドポイントの発生率は、ベンペド酸群(11.7%)がプラセボ群(13.3%)より有意に低かった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.79~0.96、p=0.004)。 心血管死、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞の複合発生率は、8.2% vs.9.5%(HR:0.85、95%CI:0.76~0.96、p=0.006)、また心筋梗塞(致死的・非致死的)の発生率は3.7% vs.4.8%(0.77、0.66~0.91、p=0.002)、冠動脈血行再建の発生率は6.2% vs.7.6%(0.81、0.72~0.92、p=0.001)で、ベンペド酸群がプラセボ群より有意に低かった。 一方でベンペド酸は、脳卒中(致死的・非致死的)、心血管死、全死因死亡への有意な影響はみられなかった。さらに、痛風(ベンペド酸群3.1% vs.プラセボ群2.1%)、胆石症(2.2% vs.1.2%)の発生率はベンペド酸群で高く、同様に血清クレアチニン値、尿酸値、肝酵素値もベンペド酸群でわずかだが上昇が認められた。

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第134回 全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府

<先週の動き>1.全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府2.かかりつけ医機能を制度化へ、かかりつけ医機能報告制度創設/厚労省3.新型コロナワクチン、無料接種は4月以降も継続、次回は今年の秋から/厚労省4.健康保険証廃止で「マイナ保険証」ない人には資格確認書を提供/政府5.臓器移植を無許可あっせんでNPO法人理事を逮捕、法外な料金も問題に/警視庁6.未承認薬の緊急避妊薬やイベルメクチンのアフィリエイト広告で逮捕/兵庫県警1.全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府政府は、2月10日に一定の収入(年収153万円以上)を超えるの75歳以上の高齢者の健康保険料の引き上げを含む、「全世代社会保障法案」(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。少子高齢化で財政が厳しい中、子ども・子育て支援の拡充、高齢者医療を全世代で公平に支えあうための高齢者医療制度の見直し、医療保険制度の基盤強化、医療・介護の連携機能および提供体制などの基盤強化を柱としている。具体的には「出産育児一時金」が今年の4月から50万円に引き上げられる財源について、75歳以上の高齢者にも財源の一部を負担してもらうほか、一定の年収を超える75歳以上の高齢者の保険料を現在の66万円を2024年度に73万円、2025年度に80万円と段階的に引き上げる。さらに74歳までの前期高齢者の医療費を現役世代が支援する仕組みでも、大企業の健康保険組合の負担を増やす一方で、中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」の負担を軽くする。この他、都道府県に対して、医療費適正化計画の立案の段階から、保険者と協議を行うことで、医療費適正化に向けた都道府県の役割、責務を明確化する。現在開会中の通常国会に提出し、成立を目指す。施行期日は、一部を除いて2024年4月1日となる。(参考)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(厚労省)75歳以上医療保険料引き上げ、法案閣議決定 年収153万円超から(毎日新聞)75歳以上の医療保険料、引き上げへ 政府 全世代型法案を閣議決定(JOINT)2.「かかりつけ医機能報告」を創設、かかりつけ医機能が制度化へ/厚労省政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代社会保障法案」(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。現行の医療機能情報提供制度を変更して、新たに「かかりつけ医機能報告制度」が創設される。厚生労働省によれば、慢性疾患を有する高齢者や継続的に医療を必要とする患者を地域で支えるために定められた機能([1]日常的な診療の総合的、継続的実施、[2]時間外診療、[3]急変時や入院時に患者を支援、[4]在宅医療の提供、[5]介護サービスなどとの連携など)について、医療機関から都道府県に報告を求める。都道府県知事はそのデータを確認し、地域の関係者との協議の場に報告するとともに公表する。厚生労働省は、かかりつけ医機能の報告が医療機関を縛るものではないとしており、必ずしもかかりつけ医制度を義務化するものではないとの立場。厚生労働省は医療法を改正して、2025年4月1日の施行を目指す。(参考)かかりつけ医機能が発揮される制度整備について(厚労省)「かかりつけ医機能」発揮へ制度整備、法案閣議決定 厚労相「地域で機能提供できる体制構築」(CB news)自民党厚労部会 全世代社会保障法案を部会長一任で了承 かかりつけ医機能の「確認」は行政行為にあらず(ミクスオンライン)「かかりつけ医」制度化、何が論点? 武藤正樹医師に聞く(上) 政府は患者登録制は見送り(東京新聞)「かかりつけ医」制度化、何が論点? 武藤正樹医師に聞く(下) 総合診療医の育成支援を(同)3. 新型コロナワクチン、無料接種は4月以降も継続、追加接種は今年の秋に実施/厚労省厚生労働省は2月8日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催し、今年3月末に無料接種の期限を迎える新型コロナウイルスワクチン接種について、4月以降もすべての接種対象者の無料接種を継続する方針を固め、さらに2023年度の追加接種の方針について、以下の通りとりまとめた。追加接種の対象者は高齢者などの重症化リスクがある人を優先するが、重症化リスクが高くない人であっても重症化が発生するため、引き続き無料接種を継続する。接種時期は、前回から1年が経過する今年秋から冬に実施予定だが、重症化リスクのある人については秋を前に接種を行う。また、子ども(5~11歳)や乳幼児(6ヵ月~4歳)は、接種開始から時間が短いため、接種期間を延長する。(参考)2023年度以降の新型コロナワクチンの接種の方針についての議論のとりまとめについて(厚労省)2023年度以降の新型コロナワクチンの接種の方針について(同)新型コロナワクチン、4月以降も無料接種継続へ 次回は今秋冬に(毎日新聞)新型コロナワクチン 秋から冬に次の接種 基本方針まとまる(NHK)コロナワクチン接種スケジュール「毎年秋冬が妥当」厚労省が厚科審部会に方針案提示(CB news)4.健康保険証廃止で「マイナ保険証」ない人には資格確認書を提供/政府政府は、2024年秋に行う健康保険証の廃止と、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への切り替えを前に、「マイナ保険証」の普及に向けて、取得を呼びかける広報を行っているが、2月5日時点マイナンバーカードの保有率は68.1%だが、健康保険証としての利用登録率は59.3%とまだ低い(2023年2月5日時点)。このため政府は、2024年の健康保険証の廃止後もマイナンバーカードを紛失した人や未取得の人が保険診療を受けられるように、保険証の情報を記載した「資格確認書」を提供する方向で検討を開始した。また、新生児についても、出生届の提出時に申請を受け付け、1歳未満の乳児には顔写真がないカードを交付する方針。政府は、具体化に向けてさらに検討を行い、法案を今国会に提出する見込み。(参考)“マイナ保険証”ない人には「資格確認書」提供で調整 政府(NHK)健康保険証廃止後の保険診療で具体案取りまとめ 政府(同)マイナ保険証未取得者に資格確認書 24年保険証廃止で政府調整(毎日新聞)マイナンバーカード交付状況について(総務省)政策データダッシュボード(ベータ版)(デジタル庁)5.臓器移植を無許可あっせんでNPO法人理事を逮捕、法外な料金も問題に/警視庁ベラルーシの病院での臓器移植を無許可であっせんしたとして、警視庁生活環境課は2月9日までに、NPO法人「難病患者支援の会」(横浜市)の理事を臓器移植法違反の疑いで逮捕した。同法人も同じ容疑で書類送検となる見込み。報道によると逮捕された菊池仁達容疑者らは、厚生労働省の許可を得ずに、臓器移植を希望する患者に対して海外渡航での臓器移植を斡旋し、手術後に合併症などで死亡するなど被害が出ているほか、費用を払い込んだにもかかわらず移植が行われず、死亡した患者の遺族へ返金がなされていないなど被害が発生していた。加藤厚労大臣は、記者会見でこの事件について「事実だとすれば大変遺憾」だとして、国内でも他に同様の事案が無いか、調査していく考えを示した。さらに「同様の事案が生じないよう、臓器提供に関する正確な情報を発信していく」と強調した。日本臓器移植ネットワークによれば、日本国内のドナー数は100万人当たり0.62とアメリカの41.88やドイツの11.22など世界各国に比べて、提供件数が低いままであり、今回のように待機患者が海外を目指すケースが後を絶たない。2008年の国際移植学会で「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすること」という主旨のイスタンブール宣言が出されたことで、わが国でも2009年に改正臓器移植法が成立し、2010年7月に全面施行となっている。(参考)臓器あっせん、患者は徹底捜査求める「移植費用の行方解明して」(読売新聞)臓器あっせん、別の日本人患者も死亡…ベラルーシで肝臓・腎臓を同時移植(同)相場の2倍要求か 臓器移植、無許可あっせん容疑の理事(日経新聞)「不透明」な海外移植あっせん 増えぬドナー、減らぬ希望者が背景に(朝日新聞)6.未承認薬の緊急避妊薬やイベルメクチンのアフィリエイト広告で逮捕/兵庫県警兵庫県警生活経済課は2月9日、緊急避妊薬やうつ病の治療薬など未承認の医薬品のアフィリエイト広告をインターネット上に掲載したとして、医薬品医療機器法(未承認医薬品の広告禁止)違反の疑いで、群馬県高崎市の男性(39)を逮捕した。調べによると、男性は副業でアフィリエイト(ネット広告)用のウェブサイトを複数開設し、アフィリエイト仲介業者を通して、毎月10万円前後の報酬を得ていた。Webサイトには、未承認の緊急避妊薬、抗うつ薬に加え、新型コロナウイルス感染症治療薬として未承認の「イベルメクチン」も掲載されていた。厚生労働省は2021年8月に医薬品医療機器等法を改正しており、医薬品等の誇大広告の規制の強化を打ち出している。第66条の条文には「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」とされている。規制対象は、広告主だけではなく、広告代理店・アフィリエイターなどの個人も対象となる。また、健康食品・サプリメント、健康・美容器具であっても、医療品のような効果を訴求して、薬機法に抵触する表現をすると医薬品であるとみなされ、課徴金の対象となる可能性があり、課徴金として「売上額」の4.5%を支払う必要がある。(参考)未承認の緊急避妊薬などをネット広告に 県警が群馬の男逮捕「本当に悪いのは輸入代行者」(神戸新聞)医薬品等の広告規制について(厚労省)アフィリエイト広告のしくみと法規制(国民生活センター)薬機法改正のポイントを分かりやすく解説!企業は何を対策すべき?(Letro)

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第148回 糖尿病の厄介な合併症にいとも単純な治療・アミノ酸補給が有効かもしれない

糖尿病患者のおよそ半数が主に手や足に生じる脱力、しびれ、痛みを伴う末梢神経障害を被ります。その厄介な糖尿病合併症になんとも単純な治療・アミノ酸補給が有効かもしれないことを示唆する研究成果が先週25日にNatureに掲載されました1)。米国・カリフォルニア州サンディエゴにある世界屈指の研究所・The Salk Institute(ソーク研究所)のChristian Metallo氏等のその報告によると、セリンのやりくりが不得手(恒常性異常)でセリンとグリシンが乏しいことは糖尿病マウスの末梢神経障害を生じやすくし、なんとセリンを補給するだけで糖尿病マウスの神経障害症状が緩和しました。アミノ酸は連なってタンパク質を作ります。また、神経系に豊富な特殊な脂質・スフィンゴ脂質の生成に不可欠です。アミノ酸の1つ・セリンが乏しいとスフィンゴ脂質を作るのに別のアミノ酸が使われるようになります。そうして作られるいつもと違うスフィンゴ脂質は蓄積して末梢の神経損傷にどうやら寄与します。Metallo氏が率いるチームはセリンの長期欠乏で末梢神経障害が生じるかどうかを調べるべくいつもの餌かセリン制限餌を最大12ヵ月間マウスに与えて様子を見ました。その結果、全身のセリンが乏しいことと高脂肪食の組み合わせは末梢神経障害の発生をどうやら早めると示唆され、糖尿病マウスにセリンを補給したところ末梢神経障害の進行を遅らせることができ、調子も良くなりました。また、スフィンゴ脂質の生成に使うアミノ酸をセリン以外へと切り替える酵素・セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)の阻害薬・マイリオシン(myriocin)も高脂肪のセリン制限食マウスの末梢神経障害症状をセリン補給と同様に減らしました。SPT活性抑制もセリン欠乏絡みの末梢神経障害を緩和する作用があるようです。マイリオシンは漢方で使われるきのこ・冬虫夏草から見つかりました。マイリオシンは西洋医学にも貢献しており、多発性硬化症(MS)の治療薬・イムセラの成分フィンゴリモドはそのマイリオシンを加工して作られた化合物です2)。余談はさておき、糖尿病患者の神経障害にどうやら加担するらしいことが今回の研究で示されたセリン欠乏はこれまでの研究で種々の神経変性疾患と関連することが知られています。たとえばMetallo氏らのチームは先立つ研究で失明疾患・黄斑部毛細血管拡張症2型(MacTel 2型)患者のセリンとスフィンゴ脂質の代謝異常を発見しています3)。マウスの実験でセリン欠乏はいつもと違うスフィンゴ脂質を増やして視力低下を招きました。そういう研究成果を背景にしてMacTel 2型患者へのセリンの効果や安全性を調べる臨床試験がすでに実施されています4)。それにアルツハイマー病へのセリンの臨床試験も進行中です5)。進行性で体を消耗させる非常にまれな末梢神経疾患・遺伝性感覚-自律神経性ニューロパチー1型(HSAN1)患者へのセリン高用量経口投与の無作為化試験では有望なことにプラセボを上回る病状指標CMTNS改善効果が示されています6)。糖尿病患者の末梢神経障害の主な手当ては血糖を減らすように食事を変えることです。それに加えて鎮痛薬、理学療法、つえや車いすなどの歩行補助具も使われます。末梢神経障害に効果があるかもしれないセリンは豆類(大豆、ひよこ豆、レンズ豆)、木の実、卵、肉、魚に豊富に含まれます。セリンのサプリメントは安価で店頭販売されていますが、神経障害を防ぐのにセリンのサプリメントを糖尿病患者に服用するように勧めることはできません。その前にヒトの体内でのセリンの振る舞いをもっと調べる必要があります。セリン補給で生じうる好ましくない作用の検討も必要です。セリン補給治療実現に向け、Metallo氏等のチームはまずはセリン負荷検査(STT)の開発に取り組んでいます7)。セリンやグリシンの欠乏を招くセリン恒常性異常を検出しうるSTTは糖尿病の診断で使われる糖負荷検査(OGTT)に似たもので、セリン摂取後のセリンの取り込みや廃棄の量を調べます。STTをすればセリンをやたら廃棄していて(elevated, postprandial serine disposal)神経障害をとくに生じやすい患者を同定できるかもしれません1)。上述のアルツハイマー病患者へのセリンの試験では体重1kg当たりセリン400 mgを摂取する負荷試験が採用されています。末梢神経障害を最も生じやすい患者をSTTで見極め、それらの患者に限って治療が施せるようになることをMetallo氏等は期待しています7)。参考1)Handzlik MK, et al. Nature. 2023 Jan 25. [Epub ahead of print]2)Chiba K. J Antibiot (Tokyo). 2020 Oct;73:666-678.3)Scerri TS, Nat Genet. 2017 Apr;49:559-567.4)SAFE試験(ClinicalTrials.gov)5)LSPI-2試験(ClinicalTrials.gov)6)Fridman V, et al. Neurology. 2019;92:e359-e370.7)Supplementation with amino acid serine eases neuropathy in diabetic mice / The Salk Institute

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服薬拒否の強いBPSD患者に適応外でブロナンセリンテープを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第52回

 今回は、環境変化により不穏となり、服薬拒否で経口投与が困難となった認知症患者さんについてです。ブロナンセリン貼付薬を導入することで、徐々に興奮や幻覚症状などが改善し、状態を安定させることができました。患者情報90歳、男性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、胃がん(積極的治療は希望せず)、鉄欠乏性貧血、前立腺がん(尿閉があり尿道カテーテル留置)、腎後性慢性腎不全介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.ランソプラゾールOD錠15mg 1錠 分1 朝食後2.クエン酸第一鉄錠50mg 4錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、施設入居の際に環境の変化から不穏になり、興奮や幻覚症状が現れ、帰宅願望も強くみられました。また、尿道バルーンが留置されていましたが、安静を守れず自己抜去するリスクがありました。入居当日に初回の訪問診療があったので、同行することにしました。診察前に看護師と患者さんの状況を確認しようとしたところ、患者さんはすでにベッドから転落しており、尿道カテーテルを引っ張って抜去する寸前でした。訴えを傾聴すると、「とんでもない牢獄に押し込まれた!」と大変興奮して落ちつかない状況でした。服薬・食事・移乗介助しようにも暴言と暴力行為があり介護抵抗が強かったため、看護師から不穏時の頓服薬の要望がありました。処方提案現状を踏まえると、認知症の行動・心理症状(BPSD)が強く、安静を維持できないことから治療の見直しが必要と考えました。とくに服薬拒否が強いため外用薬による治療コントロールが望ましいように思いました。そこで、抗精神病薬のブロナンセリンテープ20mgの導入を医師に提案することを検討しました。ブロナンセリンテープは、1日1回の長時間作用型の薬剤であり、抗幻覚作用も十分で、非鎮静系であることから認知機能や代謝系への影響が少ないとされている薬剤です1)。また、貼付薬ですので、内服薬の拒否・困難なケースでも安定した血中濃度を維持することができ、このような患者さんでは使いやすい薬剤です。しかし、BPSDに対する治療は保険適用外になるため、患者背景や治療適応について多職種と十分なコンセンサスを得る必要があります。<ブロナンセリンテープの提案理由>(1)ブロナンセリンテープは薬理学的プロファイルとして、ドパミンD2、D3受容体および5HT2A受容体への選択的拮抗作用を示し、それ以外のアドレナリンα1、5HT2c、ヒスタミンH1、ムスカリンM2受容体への親和性をほとんど持たない。そのため眠気、過鎮静、起立性低血圧、ふらつきなどの有害事象リスクが低いのが特徴であり2)、この患者への妥当性があると考えた。(2)貼付薬であるため、a.消化管吸収の影響による初回通過効果を回避、b.長時間作用型として安定した血中濃度を維持、c.嚥下困難、服薬拒否、経口摂取不可の患者にも投与可能、d.目視での服薬確認が容易、などの特徴がある2)。(3)有害事象としては、貼付部位の皮膚掻痒感、紅斑などに注意が必要だが、施設職員の協力を得てコントロールは可能と考えた。初診と経過初診が始まり、医師の状況考察からも環境調整のみでは対応が難しく、短期的にでも薬剤調整が必要という判断になりました。医師よりリスペリドン内用液はどうかと相談があったので、服薬拒否も介護抵抗も強く、安定した治療効果が必要なことを考えるとブロナンセリンテープ20mgがよいのではないかと提案しました。医師の承認の上、それでも発作的に症状が出るときは、リスペリドン0.5mgを頓用するという指示でまとまりました。すぐに医師より、患者および家族に今の心理状況や状態、ブロナンセリンテープの必要性の説明があり、承認が得られたため、当日届き次第の開始となりました。投与開始から3日目までは頓用のリスペリドンを使いながらですが徐々に興奮や幻覚症状などが改善し、7日目には穏やかな様子で皮膚症状もなく介護抵抗などもなくなりました。現在はリスペリドンの内服は終了し、ブロナンセリンテープ20mg単独で症状がコントロールできています。1)ブロナンセリンテープインタビューフォーム2)岩崎真三ほか. 最新精神医学, 2022;27:53-60.

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