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第221回 「青カビは取ればいい」が招いた人災ー紅麹サプリ事件

3月以来、紅麹問題で揺れた小林製薬。同社は7月23日に一連の事案に関して外部の弁護士3人に依頼した事実検証委員会の調査報告書を公表するとともに、引責の形で代表取締役会長の小林 一雅氏と代表取締役社長の小林 章浩氏が代表取締役を辞任することを発表した。新たな代表取締役社長には専務取締役の山根 聡氏が昇格する。報道では創業家以外から初の社長という文字が目立つが、章浩氏は代表権こそないものの取締役補償担当として役員には残留し、一雅氏については役員から外れるものの特別顧問という形となる。私自身はこれまでの企業取材の経験から、必ずしも同族経営をネガティブなものとは見ていないが、それでもなお今回の人事には「いかにも同族経営らしい決着」と思ってしまう。一方で公表された調査報告書を読んだ率直な感想は「過度な悪意はない危機感の欠如」の一言に尽きる。紅麹は機能性表示食品?それとも特定保健用食品?まず、今回の件で同社が行政への報告までに約2ヵ月を要した理由について、「因果関係が明確な場合に限ると解釈していた」と報道されている。この点については、とりわけ医療従事者の多くは疑問を感じただろうと思う。生鮮食品による食中毒ならいざ知らず、何らかの物質や食品の摂取を通じて起こる有害事象の因果関係の特定には一定の時間を要することが少なくないからである。それゆえに医薬品には「有害事象」と「副作用・副反応」の2つの用語がある。さて、厚生労働大臣の武見 敬三氏までが「自分勝手な解釈で極めて遺憾」と評したこの解釈はなぜ生まれたのか? それが今回公表された調査報告書に記載されている。まず、機能性表示食品では、消費者庁の届出等ガイドライン1)において「届出者は、評価の結果、届出食品による健康被害の発生及び拡大のおそれがある場合は、消費者庁食品表示企画課へ速やかに報告する」と定めている。小林製薬側はこの規定を「健康被害の発生」と「健康被害の拡大のおそれ」の両方が満たされた場合に報告が必要になると解釈。ただし、どのような場合が「健康被害の発生」に該当するかが明確ではないと考えていたという。その結果、同社安全管理部が「特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領」2)で健康被害が生じ、行政報告が必要な場合として「当該食品に起因する危害のうち、死亡、重大な疾病等が発生するおそれがあることを示す知見を入手した場合」と規定されていることを援用し、さらに同規定の「起因する」の文言を「因果関係が明確である」と解釈。最終的に「因果関係が明確な場合に行政に報告する」との解釈を採用したという。何とも言い訳じみた…と思う人もいるかもしれないが、行政文書のわかりにくさを考えれば、このようなさまざまな文書の援用自体はありえなくはない。ただ、ここでは根本的な“ミス”が含まれている。そもそも援用した規定は特定保健用食品、いわゆるトクホのものであり、これにはヒトでの臨床試験が必要である。もっともその臨床試験の多くは数十例程度で行われ、臨床研究法の対象にもならず、この規模で起こり得る健康被害すべてが検出できるとは思わないが、臨床試験をやってもやらなくともよい機能性表示食品と比べればハードルは高く、審査も厳格である。報告書で気になったことこれ以外に報告書を読んでいて気になったことは、個人的に2点ある。1点目は医師から紅麹製品による健康被害が疑われる事例の報告を受けての初動である。1月15日に医師から紅麹製品を摂取していた患者が急性腎不全で入院し、透析治療中である旨の連絡を受けたのが第1例目。半月後の2月1日には別の病院の医師から同時に3例の報告を受けている。この間の半月については1例目を孤発症例と考えれば、無理もないかもしれない。しかし、同時3例の報告後、同社がこれら医師に面談連絡を取ったのは、第1例目の医師が2月8日、2番目の同時3例報告の医師には2月15日。結局面談が実現したのは、前者が2月29日、後者が2月22日だ。ちなみに両医師との面談日程候補期間は小林製薬側から月末を提示している。そして、これら医師に面談要請の連絡をするまでの間、同社では(1)シトリニン原因説、(2)モナコリンK原因説、(3)コンタミネーション原因説、の 3つの仮説が立てられ、分析を行う方針を決定していた。もちろん早急に原因を究明すべく仮説を立てたことには異論はないが、この仮説の絞り込みなども考えれば、より1日でも早く面談を実現すべきではなかったか? 繰り返しになるが、面談候補日を提示したのは小林製薬側である。青カビ発生は当たり前?そして最後に、これが報告書を読んで一番驚いたことだったが、検証委員会のヒアリングに対する大阪工場の現場担当者の証言だ。それによると、問題となった紅麹製品に用いられた原料ロットの製造時、乾燥工程で乾燥機が壊れて原料ロットの紅麹菌が一定時間乾燥されないまま放置されていたそう。加えて、紅麹培養タンクの蓋の内側に青カビが付着していたことを確認し、品質管理担当者に伝えたところ「青カビはある程度は混じることがある」旨を告げられたというのだ。ちなみに報告書ではこの証言について「本件問題の原因であるか否かは不明であるものの」と慎重な言い回しで記述している。この証言を読んで思い出したのが、個人的な話で恐縮だが、産婦人科医でもあった私の亡き父方の祖父とのエピソードだ。幼少期、正月に祖父宅を訪ねると、祖父はたいそう喜び、傍らの缶から切り餅を取り出し、祖母に私と祖父のために焼くように指示した。この時、5mmほどの青かびが3つほどついているのが目に入った。私が「おじいちゃん、それ…」と指さすと、祖父は座椅子のひじ掛けの下の物入れから小刀を取り出し、目の前でそれを削り取って、そのまま祖母に渡したのだ。明治生まれの極めてパターナリスティック(父権主義)な祖父に歯向かうことができず、結局、私はその餅を食べることになった。こうしたことは個人の範疇ならば、自己責任で済む。死者にムチ打つようで悪いが、この品質管理担当者は亡き祖父と同程度の認識で不特定多数の人が口にする紅麹製品を製造していたのか、とやや呆れてしまった。この問題はまだ原因究明中ではあるが、いずれにせよこの調査報告書は悪意のない危機意識が積み重なると、人の命までも奪いかねないという重大な教訓を伝えてくれていると言える。参考1)消費者庁:機能性表示食品の届出等に関するガイドライン2)消費者庁:特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領

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2型糖尿病薬で高K血症リスクが低いのは?/BMJ

 2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と比較して高カリウム血症のリスクが低いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のEdouard L. Fu氏らによる同国内の3つの医療保険請求データベースを用いた解析結果で示された。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬およびDPP-4阻害薬は、2型糖尿病の治療においてますます用いられるようになっているが、日常臨床における高カリウム血症の予防に関して、これらの薬剤の相対的な有効性は不明であった。著者は、「SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の各クラスにおける個々の薬剤で結果は一貫していることから、クラス効果が示唆される。このことは2型糖尿病患者、とくに高カリウム血症のリスクがある患者へのこれらの薬剤の使用を支持するものである」とまとめている。BMJ誌2024年6月26日号掲載の報告。傾向スコアマッチングでSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬の高K血症の発症を比較 研究グループは、2013年4月~2022年4月の3つの米国医療保険請求データベース(メディケア、Optum’s deidentified Clinformatics Data Mart、MarketScan)を用い、1対1の傾向スコアマッチングにより、新たに治療を開始したSGLT2阻害薬vs.DPP-4阻害薬(コホート1:77万8,908例)、GLP-1受容体作動薬vs.DPP-4阻害薬(コホート2:72万9,820例)、SGLT2阻害薬vs.GLP-1受容体作動薬(コホート3:87万3,460例)の3つのコホートを同定し解析した。 解析対象は、2型糖尿病と診断され、過去365日間に比較対象である2種類の薬剤のいずれかを使用しておらず、年齢18歳以上(メディケアの場合は65歳以上)、コホート登録前に12ヵ月以上継続して保険に加入していた患者であった。 主要アウトカムは、入院または外来における高カリウム血症の診断、副次アウトカムは、外来での追跡中における高カリウム血症(血清カリウム値5.5mmol/L以上)の発症、および入院または救急外来における高カリウム血症の診断とした。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬よりリスクが低い SGLT2阻害薬による治療開始は、DPP-4阻害薬より高カリウム血症の発症率が低く(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.73~0.78)、GLP-1受容体作動薬との比較でも発症率がわずかに低下した(HR:0.92、95%CI:0.89~0.95)。GLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬より高カリウム血症の発症率が低かった(HR:0.79、95%CI:0.77~0.82)。 3年間の絶対リスクは、SGLT2阻害薬(4.6%)がDPP-4阻害薬(7.0%)より2.4%(95%CI:2.1~2.7)低く、GLP-1受容体作動薬(5.7%)がDPP-4阻害薬(7.5%)より1.8%(95%CI:1.4~2.1)低く、SGLT2阻害薬(4.7%)がGLP-1受容体作動薬(6.0%)より1.2%(95%CI:0.9~1.5)低かった。 これらの結果は、副次アウトカム、および年齢、性別、人種、併存疾患、他の薬剤の使用、HbA1c値によって定義されたサブグループ間で一貫していた。SGLT2阻害薬ならびにGLP-1受容体作動薬のDPP-4阻害薬に対する絶対スケールでの有益性(率差)は、心不全、慢性腎臓病、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を使用している患者で最も大きかった。 DPP-4阻害薬と比較して高カリウム血症の発症率が低いことは、SGLT2阻害薬(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)およびGLP-1受容体作動薬(デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド)の個々の薬剤で一貫して観察された。

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第200回 相次ぐ往診サービスの終了、診療報酬改定の影響で経営困難に

<先週の動き>1.相次ぐ往診サービスの終了、診療報酬改定の影響で経営困難に2.美容医療トラブル急増、消費者保護のために規制強化へ/厚労省3.新たに3大学が心臓移植に参入、移植医療の逼迫改善を目指す4.紅麹サプリ問題、新たに76人の死亡例が判明/厚労省5.森光 敬子氏を医政局長に起用、初の女性医政局長が誕生/厚労省6.出産費用の保険適用へ議論開始、妊婦の負担軽減を目指す/厚労省1.相次ぐ往診サービスの終了、診療報酬改定の影響で経営困難に夜間や休日の往診サービスを提供する医療スタートアップが、2024年度の診療報酬改定により相次いで事業の縮小やサービスの提供を終了している。今春の診療報酬改定により往診報酬が大幅に減額されたことが、主な原因とされている。「キッズドクター」を運営するノーススターは、5月までに往診サービスを終了し、オンライン診療や健康相談に特化する方針を示した。また、「コールドクター」も3月末で往診サービスから撤退し、オンライン診療と医療相談にシフトしている。さらに、「家来るドクター」は、往診エリアの縮小と料金の引き上げを行い、最大手の「ファストドクター」も自己負担額を引き上げることを決定した。これらの事業者は、新型コロナウイルス感染症の影響下で自宅療養者の急増に対応し、往診サービスを拡大してきた。しかし、今回の診療報酬改定では「普段訪問診療を受けていない患者への夜間・休日の往診」が厳しく見直され、報酬が大幅に減額された。最も報酬が高い「深夜往診加算」は従来の2万3,000円から4,850円に減額されるケースもある。これら改定の結果、往診サービスの提供が経済的に困難となり、多くの事業者が撤退を余儀なくされている。ファストドクターの菊池 亮社長は「改定により往診サービスが縮小すると救急医療の負担増加につながる可能性がある」と懸念を示している。一方、往診サービスを頼りにしてきた自治体では、診療報酬改定の影響で公共サービスとしての往診の見直しが迫られている。とくに、高齢化が進み医療機関が少ない地域では、往診サービスの縮小が医療体制に深刻な影響を与える可能性がある。東京都医師会理事の西田 伸一医師は「今回の改定は不要な往診を減らすことが目的だが、在宅医療の充実には夜間・休日の往診サービスに特化した事業者も必要」と述べ、医療財源の最適化と救急医療のバランスが課題であると指摘している。参考1)夜間休日往診サービス、撤退・縮小相次ぐ 診療報酬減で(日経新聞)2)“往診サービス”続々終了、利用者負担増 理由は「診療報酬改定」?(withnews)2.美容医療トラブル急増、消費者保護のために規制強化へ/厚労省厚生労働省は、美容医療に関するトラブルが急増していることを受け、6月27日に「美容医療の適切な実施に関する検討会」の初会合を開催した。検討会では、やけどや皮膚障害などの健康被害に関する相談が、2018~2023年度にかけて倍増し、2023年度には796件に達したことが報告された。相談件数は、新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に減少したものの美容医療の施術回数も急増しており、2022年度には373万件を超え、とくに非外科的手技が大幅に増加していた。一方で、美容医療に従事する医師の数も増加し、おもに若い世代の医師が多くを占めていた。消費者庁によれば、美容医療サービスに関する相談件数は2019年度の2,036件から2023年度には6,264件に増加がみられており、具体的なトラブルの例として、脱毛後にシミが残ったり、リフトアップ後に神経麻痺が生じたりするケースについて報告があった。また、料金トラブルも多く、たとえば発毛治療の費用が予想以上に高額になることがある。美容医療の多くは自由診療であり、料金や診療内容の妥当性を審査する制度がないことが問題視されている。これに対し、厚労省では、ガイドラインの策定やルール作りの必要性を議論しており、年内を目途に取りまとめを行う予定。さらに、医師資格を持たない者が施術を行うケースや、医師不在のクリニックでのトラブルも指摘され、これらの問題に対する対策が求められている。消費者が被害を避けるために、消費者庁などは美容医療を受ける前に確認すべきチェックリストを作成し、リスクや副作用を十分に理解した上で医療機関を選ぶことを推奨している。厚労省の検討会では、医療行為に関する法的な線引きや、モラルに欠ける医師に対する取り締まりの強化を議論し、美容医療に関する安全性の向上を目指し、年内にも報告書をまとめる方針となっている。参考1)第1回美容医療の適切な実施に関する検討会(厚労省)2)美容医療「危害」の相談倍増、5年間で やけどや皮膚障害など(CB news)3)“美容医療で健康被害” 対策話し合う検討会 議論開始 厚労省(NHK)4)美容医療巡る健康被害、国が対策議論 医師不在の事例も(日経新聞)3.新たに3大学が心臓移植に参入、移植医療の逼迫改善を目指す6月27日、東京医科歯科大学、岡山大学、愛媛大学が新たに心臓移植を実施する方針を発表した。日本心臓移植学会の調査では、2023年に心臓移植を断念せざるを得なかった例が16件あり、移植施設の人員や病床不足が原因となっていた。3大学の参入により、全国の心臓移植施設は14ヵ所に増え、医療体制の逼迫解消が期待される。東京医科歯科大学は、東京大学と近距離にあり、東京大学での移植断念例が多い現状を踏まえ、東大との連携を視野に入れている。今年10月には東京工業大学と統合し、新大学「東京科学大学」として心臓移植を実施することで、実力のアピールを図る狙いもある。岡山大学は現在、肺、肝臓、腎臓の移植を行っており、心臓移植施設となれば中国地方で唯一の存在となる。愛媛大学は、四国初の心臓移植施設として登録され、現在は実施に向けた準備を進めている。心臓移植を行うには、日本循環器学会などの協議会の推薦を受け、日本医学会の委員会で選定される必要がある。さらに、臓器あっせん機関「日本臓器移植ネットワーク(JOT)」に登録されることが必要条件。東京医科歯科大学と岡山大学は、来年度にも申請を予定し、愛媛大学はすでに登録を完了している。心臓移植に詳しい福嶌 教偉氏(千里金蘭大学長)は、「移植施設が増え、待機患者の偏りが緩和されれば、臓器の受け入れを断念する問題を解決する一助となる」と期待を寄せる。医療機関の多くは収益性が低いため、心臓移植に新たに参入する動きが鈍かったが、今回の3大学の参入は移植を待つ患者にとっては朗報となる。厚生労働省も移植医療体制の強化に向け、待機患者が複数の施設に登録できる仕組みを進める方針を示している。これにより、東大で受け入れが難しい場合、連携する東京医科歯科大学で手術を受けるなどの選択肢が増えることが期待されている。参考1)心臓移植断念の防止へ一歩、3大学が参入へ…収益性低く国公立に偏り(読売新聞)2)心移植に東京医科歯科・岡山・愛媛の3大学参入へ…医療のひっ迫改善に期待(同)3)四国初 愛媛大附属病院が心臓移植施設に認定(NHK)4.紅麹サプリ問題、新たに76人の死亡例が判明/厚労省小林製薬が販売する「紅麹」サプリメントを巡る健康被害問題で、摂取との関連性が疑われる死者数が新たに76人に上ることが判明した。同社は3月に5人と公表して以来、厚生労働省への報告を怠っており、今回の発覚は厚労省からの問い合わせが契機となった。厚労省は、6月13日に小林製薬に問い合わせた際、「新たな死亡事例はない」との回答を受けたが、翌14日に「調査中の事例がある」と一転して報告があった。最終的に27日に170人の死者についての相談が寄せられていることが明らかになり、28日のうち76人について調査中と報告された。これに対し、武見 敬三厚労相は記者会見で「小林製薬だけに任せておけない」と不信感を示し、今後は厚労省が詳細な指示を出す方針を明らかにした。小林製薬は、これまでは腎疾患と診断されたケースのみを報告対象としていたと説明したが、厚労省は3月の時点で因果関係が不明でも早急に報告するようにと指示していた。消費者庁はこれを受けて、機能性表示食品制度の見直しを進め、9月1日から健康被害情報の報告を義務化する方針を示している。今回の問題をきっかけに、政府は機能性表示食品の製造・販売事業者に対し、医師の診断がある健康被害情報を因果関係にかかわらず速やかに報告することを義務付ける再発防止策を決定した。また、食品表示基準も改正され、2026年9月からはパッケージ表示に「国による評価を受けていない」「医薬品ではない」などの記載が義務化される予定。小林製薬の対応について、消費者問題のある専門家は「消費者を軽んじている」と指摘し、情報開示と透明性の確保が欠かせないと批判している。また、台湾では30人が同社に対して集団訴訟を起こす予定であり、同社への批判は国際的にも広がっている。参考1)小林製薬またも後手 「紅麹」死亡疑い76人、国に報告せず(日経新聞)2)厚労省の問い合わせで発覚=小林製薬側から報告なし-紅麹問題(時事通信)3)「小林製薬だけに任せられない」 3月にも問題視された報告漏れ(毎日新聞)4)「紅麹」死者調査の報告3月以降なし、武見厚労相「もう任せておけない」…小林製薬「確認を重視」と釈明(読売新聞)5.森光 敬子氏を医政局長に起用、初の女性医政局長が誕生/厚労省2024年6月28日に厚生労働省は、新たな事務次官に伊原 和人保険局長を起用する人事を発表した。発令は7月5日付で、現次官の大島 一博氏は退官する。伊原氏は、東京大学法学部卒業後、1987年に旧厚生省に入省し、厚労省政策企画官、大臣官房総務課企画官、健康局総務課長、医政局長などを歴任し、2022年より現職。今回の人事では、医政局長に森光 敬子危機管理・医務技術総括審議官が就任することも発表された。森光氏は、佐賀医科大学医学部を卒業後、1992年に旧厚生省に入省。医薬安全局監視指導課医療監視専門官や厚労省保険局医療課長などを歴任し、2023年9月から現職を務めていた。森光氏の就任により、医政局長に女性が初めて就任することになる。さらに、保険局長には鹿沼 均政策統括官(総合政策担当)が起用される。鹿沼氏は、東京大学経済学部卒業後、1990年に旧厚生省に入省し、保険局総務課長や大臣官房審議官(医療保険担当)、首相秘書官などを歴任してきた。今回の人事発表について、武見 敬三厚労相は「適材適所の人事」と評価しつつ、女性幹部のさらなる登用に努める考えを示した。参考1)厚労事務次官に伊原和人氏起用へ 医政局長など歴任(CB news)2)医政局長に森光敬子氏を起用へ、女性初 保険局長は鹿沼均氏 厚労省人事(同)3)厚労次官に伊原氏(日経新聞)6.出産費用の保険適用へ議論開始、妊婦の負担軽減を目指す/厚労省厚生労働省は、2026年度からの出産費用の保険適用について話し合う有識者検討会の初会合を6月26日に開催した。現在、出産費用は帝王切開などを除き保険適用外であり、国が「出産育児一時金」として原則50万円を支給している。検討会では、保険適用の範囲や全国一律の公定価格の在り方などを議論し、来春を目途に妊産婦の経済的負担軽減策の方向性をまとめる予定。この検討は少子化対策の一環として進められており、2022年度時点の出産費用の全国平均額は約48万2,000円で、都道府県別では最も低い熊本県が約36万円、最も高い東京都が約60万円となり、地域間格差が顕著となっている。保険適用により、出産費用の地域差を縮小し、経済的負担を軽減することが期待される。会合では、保険適用による医療機関の経営悪化を懸念する声が上がったほか、産婦人科医の一部からは、保険適用によって減収となり、分娩を取り扱う医療機関が減少する可能性が指摘された。これを受け、厚労省は出産を担う病院やクリニックの経営実態を調査し、適切な診療報酬の設定を検討する方針を確認した。現在、正常分娩で出産育児一時金が支給されているが、一時金の増額に伴い、医療機関の出産費用も上昇しているため、十分な負担軽減につながっていないとの指摘がある。2022年度の正常分娩の平均費用は54万円で、10年間で12%上昇した。検討会では、出産費用の保険適用によって「天井知らず」の出産費用に歯止めをかけることが狙いだが、産科医側は自由な料金設定ができなくなることによる経営悪化を懸念している。出産は昼夜関係なく発生するため、夜間の受け入れ体制も整える必要があり、医師の働き方改革も考慮しなければならない。今後の議論のポイントは大きく4つある。1つ目は保険適用時の診療報酬設定であり、高めの報酬を求める声があるが、費用抑制の目的から逸脱しないようにする必要がある。2つ目は保険適用の範囲であり、無痛分娩や助産所での出産の扱いを議論する必要がある。3つ目は妊婦側の費用負担であり、自己負担が発生しない仕組みを求める声がある。最後に、給付を増やす場合の財源に関する議論も重要である。厚労省では、2025年春を目途に検討会としての意見をまとめ、2026年度から自己負担を求めない方向にする予定。参考1)第1回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」資料(厚労省)2)出産費用、保険適用で初会合 妊婦の自己負担焦点に(日経新聞)3)出産費用への医療保険適用巡り初会合 厚労省、26年度から自己負担求めない方向で検討(産経新聞)4)自己負担分は?閉院可能性など影響指摘も 出産の保険適用で検討会(朝日新聞)5)分娩医療機関が24年間でほぼ半減 産婦人科医は増加、厚労省集計(CB news)

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CKD-MBDガイドライン改訂に向けて新たな治療の方向性を議論/日本透析医学会

 日本透析医学会による『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン』の改訂に向けたポイントについて、2024年6月9日、同学会学術集会・総会のシンポジウム「CKD-MBDガイドライン 新時代」にて発表があった。 講演冒頭に濱野 高行氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科・人工透析部)がCKD-MBDガイドライン改訂方針について、「CKD-MBDの個別化医療を目指して、さまざまなデータを解析して検討を積み重ねてきた。新しいガイドラインでは、患者の背景に合わせた診療の実現へつなげるためのユーザーフレンドリーな内容になるよう努めていきたい」とコメント。続いて、6人の医師が今後のCKD-MBDガイドライン改訂のポイントに関して解説した。CKD-MBDガイドライン改訂で実臨床に則したプラクティスポイント作成を目指す 保存期CKD-MBDについて、藤崎 毅一郎氏(飯塚病院 腎臓内科)から低カルシウム血症・高リン血症のプラクティスポイントに関する提案があった。低カルシウム血症では、「まずは補正カルシウム値を確認。その後、低カルシウム血症を誘発する薬剤の確認やintact PTH(iPTH)、リン、マグネシウムを測定し、二次性副甲状腺機能亢進症の確認を行ったうえで、カルシウム製剤または活性型ビタミンD製剤の投与を検討すること」とし、高リン血症に関しても補正カルシウム値の確認を行ったうえで、「低い場合にはカルシウム含有リン吸着薬、正常であれば鉄欠乏の有無を考慮したうえで鉄含有、非含有リン吸着薬の投与を検討すること」とコメントした。最後にガイドラインの改訂に向けて、「実臨床に則したプラクティスポイントの作成を目指して検討を続けていく」と述べた。CKD-MBDへの関心が低い医師でも使えるフローチャートを 血液透析患者における血清カルシウム、リンの管理目標値について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。理事会へ提出された素案によると、血清カルシウムの下限は8.4mg/dL以上のまま、上限に関しては9.5mg/dL未満、血清リンに関しても下限は3.5mg/dL以上のまま、上限は5.5mg/dL未満が管理目標値として検討されている。同氏は、血清カルシウム、リンの管理について、「カルシミメティクスや骨粗鬆症治療薬によってカルシウムが下がりやすい環境にもあるため、低カルシウム血症には注意すること。血清リンに関しては年齢や栄養状態をよく考慮して検討すること。原疾患が糖尿病、動脈硬化性疾患の既往がある場合には目標値の上限を下げて管理することも検討する必要がある」とコメント。また、「CKD-MBDにそれほど関心がない先生方にとっても、フローチャートなどを使って診療の手助けになるものを示していくことが大切である」と述べた。CKD-MBDガイドライン改訂で患者の背景に応じたリン低下薬選択を支援 前回のCKD-MBDガイドライン以降、多くのリン低下薬が登場し、患者に合わせた薬剤選択の重要性が注目されている。山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)からは、患者特性に基づくリン低下薬の選択について提案があった。リン低下薬を選択する際の切り口として、「リン低下だけでなく薬剤による多面的な効果、便秘などの消化器症状、PPIやH2ブロッカーなど胃酸分泌抑制薬による影響、服薬錠数や医療経済など、リン低下薬の特性だけでなく患者背景に合わせて使い分けることが大切である」と改訂に向けたポイントを述べた。プラクティスポイントとして、リン低下薬選択に関するアプローチの仕方を示した「一覧表」の紹介もあった。同氏は一覧表に関して、「基本的には患者と相談してリン低下薬を選択していくことになるが、どうやって患者に合わせて使い分けていくべきか、視覚的にわかりやすいツールがあれば判断しやすいのではないか」とコメントした。PTHの管理・治療の個別化へ向けて 血液透析患者における副甲状腺機能の評価と管理について、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科学)からPTHの管理を中心に提案があった。同氏は、「PTH管理においても治療の個別化が必要である」とし、管理目標値としてiPTH 240pg/mL以下の範囲で症例ごとに個別化すること、とコメントした。具体的には、骨折リスクの高い症例(高齢・女性・低BMI・骨代謝マーカー上昇)では管理目標値を低く設定する、カルシミメティクスを使用する場合にはiPTHの下限値を設けない、活性型ビタミンD製剤を単独で使用する場合は高カルシウム血症を避けるため下限値を60pg/mLとすることなどであった。内科的治療に関しては、PTHが管理目標値より高い場合には、血清カルシウム値や患者背景に基づいて活性型ビタミンD製剤、カルシミメティクスによって管理を検討すること、血清カルシウム値が管理目標値内にあって腫大腺や65歳以上、心血管石灰化、心不全リスク、骨折リスク、高リン血症を有するなど、1つでも該当する場合にはカルシミメティクスの使用や併用をより積極的に考慮することなどを挙げた。また、内科的治療に抵抗する重度の二次性副甲状腺機能亢進症の場合には副甲状腺摘出術の適応となるが、こちらも症例ごとに検討していく必要があると述べた。CKD-MBDにおける骨折リスクの評価・管理のポイントとは CKD-MBDにおける骨折リスクへの介入について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)からプラクティスポイントに関する解説があった。評価・管理のポイントとして、「脆弱性骨折の有無や骨密度検査および血清ALP値による骨代謝の評価を行い、骨折リスクが高い場合には、運動、転倒防止、栄養状態の改善、禁煙指導を実施したうえで、カルシミメティクスの投与を優先してPTHを低く管理することが重要である」とコメント。同氏は、それでも骨密度の改善が得られない、または骨代謝マーカーの亢進が認められる場合には、骨粗鬆症治療薬の投与を検討するよう提案した。また、透析・保存期CKD患者に対する骨粗鬆症治療薬の選択に関しては、使用制限や投与における注意点が薬剤別にまとめられた表を作成し、CKD患者においてリスクの高い骨粗鬆症治療薬もあるため、ヒートマップを活用する形で警鐘を鳴らしていくことなども必要であると述べた。CKD-MBDガイドライン改訂に向けた管理目標値の提案 腹膜透析患者におけるMBDについて、長谷川 毅氏(昭和大学 統括研究推進センター研究推進部門/医学部内科学講座腎臓内科学部門)からCKD-MBDガイドライン改訂に向けたポイントに関する解説があった。同氏は「リン低下薬に関しては十分なシステマティック・レビュー、メタ解析による報告がないため、血液透析患者での推奨に準拠すること。CKD-MBDの管理目標値に関しては、生命予後の観点から、リン、カルシウムを目標値内でも低めの値、残腎機能保護、血液透析への移行防止のために、リン、PTHを目標値内でも低めの値を目標とすること」と提案。また、プラクティスポイントとして、残腎機能のある症例でカルシミメティクスを使用することでリンの管理が難しくなる可能性があること、腹膜透析液のカルシウム濃度は血清カルシウム値、PTH値をみて選択することを挙げた。

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食事前の10秒をください!?(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者この間、ネットを見ていたら「食事前の10秒だけください」と書かれている写真があって。医師 それで?(患者の話に興味を示す)患者 最後まで読んだら健康食品の広告で、食事前に飲むのに10秒もかからないって話みたいで。画 いわみせいじ痩せた人もいるって書いてあるし、今だけお得だからつい購入したのですが、全然、効果はなかったです…。医師 そうでしたか。せっかく食事前の10秒を使うなら、お金もかからずにもっと良い方法がありますよ!患者 それはどんな方法ですか?医師 食事前に、これから食べる食事を記録することです。食べた後ではなくてね。患者 なるほど。それなら、食べ過ぎないかもしれませんね。(納得した顔)ポイント食事前に食べる予定の食事を記録する習慣を作ることがダイエットにつながることを上手に説明します。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第195回 「かかりつけ医機能報告制度」が来年4月から施行へ、特定機能病院は対象外/厚労省

<先週の動き>1.「かかりつけ医機能報告制度」が来年4月から施行へ、特定機能病院は対象外/厚労省2.診療報酬改定で医療現場の賃上げを促進、医師会も協力/厚労省3.医師の偏在解消へ、都道府県に医療機関ごとの医師数把握を検討/厚労省4.臓器移植手術断念の理由はICU満床が最多-緊急調査結果/日本移植学会5.紅麹サプリ問題を受けて機能性表示食品の規制強化へ/消費者庁6.対面診察なしで処方箋の交付が常態化、医師法違反が発覚/登米市1.「かかりつけ医機能報告制度」が来年4月から施行へ、特定機能病院は対象外/厚労省厚生労働省は、5月24日に「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を開催し、来年4月から施行される「かかりつけ医機能報告制度」の枠組みについて議論を行なった。この中で、厚労省側から新制度の具体案が示され、厚労省に対する報告は医療機能情報提供制度と併せて毎年1~3月に行うこととし、特定機能病院と歯科の医療機関は対象外とした。新制度の目的は、時間外診療などの「かかりつけ医機能」を地域ごとに強化し、地域の患者が適切な医療機関を選択できるようにするためであり、病院や診療所は「日常的な診療を総合的・継続的に行う機能」(1号機能)を都道府県に報告し、診療時間外の診療や入退院時の支援、在宅医療の提供、介護との連携などの機能(2号機能)も報告する必要がある。また、報告制度の対象外の医療機関についても検討が進められている。「1号機能」報告に関しては、かかりつけ医機能に関する研修修了者や総合診療専門医の有無、特定の診療領域ごとの1次診療対応能力などについて議論された。これらの報告データは地域ごとの「協議の場」で共有され、地域の医療機能の底上げや病院・診療所の役割分担が議論される。厚労省は、時間外診療や在宅医療、介護との連携については市町村単位で、入退院時の支援については2次医療圏単位で協議を行い、都道府県単位で全体を統合・調整する協議の場を提案している。各医療機関から報告された「かかりつけ医機能」のうち、地域の患者が受診先を選択するのに役立つ情報は医療機能情報提供制度(ナビイ)に盛り込まれる予定。厚労省は、次回以降の分科会でさらに具体案を示し、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法の改正に基づく省令・告示の改正、かかりつけ医機能報告システム構築に向けた準備を行い、かかりつけ医機能が発揮される社会の実現に向けた取り組みを強化する。参考1)第5回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会(厚労省)2)「かかりつけ医機能」、毎年1-3月に報告 特定機能病院は対象外、厚労省が具体案(CB news)3)医療情報ネット(ナビイ)2.診療報酬改定で医療現場の賃上げを促進、医師会も協力/厚労省厚生労働省は、今回の診療報酬改定で初診料や再診料、入院基本料を引き上げる増収分について、医療従事者の賃上げの原資となることを推進する。武見 敬三厚生労働大臣は、6月から施行される診療報酬改定について、医療関係団体の代表者との意見交換会を開催し、増収分が確実に人件費に充てられるよう要請した。今回の改定では、初診料が30円増の2,910円、再診料が20円増の750円となり、賃上げする医療機関ではさらに加算される。入院基本料も1日当たり50~1,040円上がる。患者の自己負担額は、かかった医療費の1~3割増加することになる。賃上げを実現するために新設された「ベースアップ評価料」では、賃金改善計画書や賃金改善実績報告書の作成・提出が算定要件となっているが、日本医師会の松本 吉郎会長は、「この計画書の作成が『最大のネック』」として現場での困難を指摘した。武見大臣は「医療機関での賃上げは非常に重要」と述べ、医療関係団体に協力を求めた。厚労省では賃上げの取り組みを支援するため、YouTubeなどで解説動画を通じて理解促進を図っているが、職種ごとの計画書作成や専任スタッフの確保が難しい診療所にとっては依然として課題が多い。松本会長は「日本医師会として賃上げが実現できるよう取り組む」と述べた。厚労省は、看護師や医療技師、若手勤務医など幅広い職種での賃上げを目指し、政府としても財政的支援を検討している。賃上げを通じて医療現場の人手不足を緩和し、デフレからの脱却を図る狙いがある。参考1)ベースアップ評価料等について(厚労省)2)“診療報酬が引き上げ 増収分は確実に人件費に” 武見厚労相(NHK)3)「医療機関で賃上げを」 武見厚労相、医師会長と会談(日経新聞)4)6月から初・再診時に負担増 医療従事者の賃上げで-診療報酬改定(時事通信)3.医師の偏在解消へ、都道府県に医療機関ごとの医師数把握を検討/厚労省厚生労働省と財政制度等審議会が、医師の地域偏在を是正するため、新たな施策を提案していることが明らかになった。財務省の諮問機関である財政制度等審議会は、5月21日に、春の建議「我が国の財務運営の進むべき方向」を公表した。この中で大都市への診療所の集中を是正するため、診療所過剰地域における診療報酬単価の引き下げや、医師過剰地域での新規開業規制を提言した。厚労省の将来推計では、2030年頃に医師数が供給過剰になると見込まれ、医師の診療所・病院間および地域間の偏在解消が急務となっている。厚労省は、医療機関ごとに必要な医師数を都道府県に把握させる方針を検討しており、これを「医師確保計画」に記載することを義務付ける。また、都道府県知事に開業条件を提示できる権限を強める方向で調整を進めている。この計画は、2次医療圏ごとに確保すべき医師数の目標を設定し、3年ごとに見直すことで、医師の適正な配置を図ることを目的としている。地域間の医師偏在是正策として、診療所過剰地域では診療報酬の単価を引き下げ、不足地域では高く設定することが提案されている。これにより、過剰地域から不足地域への医療資源の移行を促進する狙いがある。また、ドイツ、フランスのように診療科別・地域別の定員制を導入し、新規開業規制を検討することも求められている。さらに、厚労省は、大学病院などからの医師派遣に依存する医療機関の実態を把握し、派遣が必要な医師数も計画に記載することを検討している。国は、必要に応じて医師確保に必要な費用を財政的に支援することも考えている。医師数は2022年までの過去10年で4万人増え、34万人を超えたが、都市部での増加が顕著で、地域間格差が依然として大きい。厚労省は、医師少数区域での勤務経験がある医師を管理者とする病院を拡大し、医師の循環を図ることも検討している。武見 敬三厚生労働大臣は、医師の偏在を規制によって管理する必要性を強調し、地域ごとに医師数を割り当てる手法に言及していたが、現時点では地域ごとの割り当てには踏み込んでいない。これらの施策を通じて、医師の偏在を解消し、地域医療の充実を図ることが期待されている。参考1)診療所過剰地域の診療報酬単価引き下げなどを提言-財政審・春の建議(医事新報)2)診療所の報酬適正化を提言、財政審 偏在解消策として(CB news)3)我が国の財政運営の進むべき方向(財政制度等審議会/財務省)4)医療機関ごとの必要な医師数、都道府県に把握義務化 厚労省検討(朝日新聞)5)必要医師数、医療機関ごとに都道府県で把握 厚労省検討(日経新聞)4.臓器移植手術断念の理由はICU満床が最多-緊急調査結果/日本移植学会2023年に脳死者から提供された臓器の移植手術を断念したケースが、東京大学、京都大学、東北大学の3大学で計62件に上ることが日本移植学会の緊急調査で明らかになった。断念理由の最も多い回答は「ICUが満床」であり、全体の3割を占めた。そのほかの理由としては「手術室の態勢が整わない」、「同日に2件の移植手術を実施した翌日は移植しない院内ルール」などが挙げられ、施設や人員の脆弱性が浮き彫りとなった。断念件数は東大36件、京大19件、東北大7件で、臓器別では肺36件、肝臓16件、心臓10件であった。ドナーの臓器は日本臓器移植ネットワークが斡旋し、待機患者リストに基づき移植施設に受け入れを要請する。62件のうち54件はほかの施設で移植が行われたが、8件は受け入れが拒否され臓器が移植に使われなかった。とくに京大では受け入れを断念した患者が死亡した事例もあった。断念の背景には、脳死下の臓器提供の増加により、待機患者の多い3大学に受け入れ要請が集中している現状がある。2023年は過去最多の132人が脳死ドナーとなり、計352件の移植手術が行われた。東大88件、京大36件、東北大34件が主要な移植実施施設だった。参考1)臓器提供数/移植数(日本臓器移植ネットワーク)2)臓器移植断念、3大学で昨年62件…緊急調査への回答「ICU満床だった」が3割(読売新聞)5.紅麹サプリ問題を受けて機能性表示食品の規制強化へ/消費者庁小林製薬(大阪)の紅麹成分を含むサプリメントを摂取した人々が腎臓病などを発症した問題を受け、消費者庁は5月23日「機能性表示食品を巡る検討会」を開き、機能性表示食品の制度見直しを提言した。この提言には、健康被害の報告を迅速に行うためのルールの明確化や製造・品質管理に関する基準を設けることが含まれている。とくにサプリメント形状の製品に対しては、適正製造規範(GMP)の義務化が提案された。これに伴い、政府と与党はGMPの認証を取得した工場での製造を義務付ける方針を発表。現在は医薬品に対して義務化されているGMPが、今後はサプリメントにも適用されることになる。さらに、健康被害が発生した場合の報告義務化も検討されており、消費者庁は月内にこれらの再発防止策を公表する予定。一方、小林製薬の紅麹サプリメント問題について、厚生労働省と大阪市が合同で行った調査により、約2,000人が健康被害を訴えたことが明らかになった。この調査では、発症した人の約7割が2023年11月~2024年3月の間に発症しており、とくに中高年の女性に多くの被害が出ていることが示された。消費者庁は、この調査結果をもとに、健康被害の原因物質についてさらに分析を進める予定。消費者庁の検討会では、GMPに関連してサプリメント製造工場での原材料の受け入れ検査の厳格化や、製品の均質性と設計通りの製造が求められることが提言された。これにより、健康被害の再発防止と消費者の安全確保が図られることが期待されている。参考1)第6回 機能性表示食品を巡る検討会(消費者庁)2)紅麹コレステヘルプ等に関する事例数(小林製薬)3)健康被害事例の疫学調査結果(大阪市)4)機能性食品、報告・管理を実質義務化 消費者庁見直しへ(日経新聞)5)機能性表示食品のサプリにGMPを義務づけへ 紅麹問題受け(毎日新聞)6)サプリメントで病気発症 機能性表示食品 制度見直しの報告書案(NHK)6.対面診察なしで処方箋の交付が常態化、医師法違反が発覚/登米市宮城県登米市立米谷病院の発熱外来において、医師が対面診察を行わずに診断や処方箋交付を行っていたことが明らかになった。新型コロナウイルス感染症の特例期間を除き、医師法では医師による診察が義務付けられているが、同病院では患者が車で訪れた際、看護師が窓越しに受付けを行い、検査技師が新型コロナとインフルエンザの検査を実施。その結果、軽症と判断された場合で、患者が医師の診察を希望しない場合は対面診察をせずに薬が処方されていた。病院側は、感染者が多い時期に患者を長時間待たせることを避けるための措置だったと説明しているが、医師法に違反するとの指摘を受け、今月17日からすべての患者に対面診察を実施するように切り替えた。登米市は、「医療報酬の返却など、監督官庁に求められた処分に真摯に向き合います」とコメントしている。参考1)発熱外来で対面診察せずに医療行為 登米市立米谷病院(仙台放送)【動画】2)発熱外来、対面診察せず処方箋交付 宮城・登米市立米谷病院で常態化 専門家「医師法に違反」(河北新報)

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国内初の1日1回投与の低亜鉛血症治療薬「ジンタス錠25mg/50mg」【最新!DI情報】第15回

国内初の1日1回投与の低亜鉛血症治療薬「ジンタス錠25mg/50mg」今回は、低亜鉛血症治療薬「ヒスチジン亜鉛水和物(商品名:ジンタス錠25mg/50mg、製造販売元:ノーベルファーマ)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用で亜鉛補充ができ、亜鉛欠乏による味覚障害、皮膚炎、脱毛、貧血などのさまざまな症状を改善することが期待されています。<効能・効果>低亜鉛血症の適応で、2024年3月26日に製造販売承認を取得しました。本剤は、食事などによる亜鉛摂取で十分な効果が期待できない患者に使用します。<用法・用量>通常、成人および体重30kg以上の小児では、亜鉛として1回50~100mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与します。なお、血清亜鉛濃度や患者の状態により、1日1回150mgを超えない範囲で適宜増減します。<安全性>亜鉛投与による重大な副作用に銅欠乏症(頻度不明)があり、銅欠乏まで進展した場合は貧血、白血球減少などを引き起こす恐れがあります。その他の副作用(1%以上)として、消化器症状(下痢、悪心、腹部不快感)、血清膵酵素(リパーゼ、アミラーゼ)上昇、貧血、浮動性めまいなどがあります。本剤投与中は、定期的(数ヵ月に1回程度)に血清亜鉛、銅、鉄を測定します。<患者さんへの指導例>1.亜鉛不足を改善するには、亜鉛を多く含む食事を積極的に摂取する食事療法が行われますが、不十分な場合には薬で補充します。2.必ず食後に服用してください。3.亜鉛を含むサプリメントや健康食品は摂取しないでください。4.亜鉛により銅の吸収が妨げられ、立ちくらみや歩きにくいなどの副作用が起こることがあります。気になる症状が現れたら、医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>亜鉛は300種類以上の酵素の活性化に必要な成分で、主な酵素にはDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、炭酸脱水酵素、アルカリホスファターゼ、アルコール脱水素酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼなどがあります。亜鉛は細胞分裂や核酸代謝などに関わっており、欠乏するとタンパク合成全般が低下し、皮膚炎、脱毛、貧血、味覚障害、発育障害、性腺機能不全、食欲低下、下痢、骨粗鬆症、創傷治癒遅延、易感染性などさまざまな症状を引き起こします。低亜鉛血症では亜鉛含有量の多い食品を積極的に摂取するよう推奨しますが、血清亜鉛値が低い場合、食事からの亜鉛摂取では不十分で亜鉛補充療法が必要です。補充療法には、酢酸亜鉛(商品名:ノベルジン)が使用されますが、亜鉛イオンによる悪心・嘔吐などの消化器系副作用が問題となっています。副作用により酢酸亜鉛製剤が使用できない場合は、ポラプレジンク(同:プロマックD錠)も使用されますが、亜鉛含有量が少ない上に適応外です。本剤は、ヒスチジン亜鉛水和物の錠剤であり、亜鉛イオンと錯体化することで亜鉛の吸収を向上させています。ヒスチジン亜鉛水和物は比較的安定な錯体構造であるため、消化管で解離する亜鉛イオンは無機亜鉛塩よりも少なく、酢酸亜鉛製剤に比べて悪心・嘔吐などの消化器系副作用が軽減されています。また、酢酸亜鉛製剤は通常、成人で1日2回の投与回数ですが、本剤は1日1回投与であり、服薬アドヒアランスの改善が期待できます。低亜鉛血症患者を対象とした国内第III相臨床試験(実薬対照非盲検試験)において、投与開始24週間後までに目標血清亜鉛濃度を8週間維持できた患者の割合は、本剤群で86.4%、酢酸亜鉛群で80.4%でした。両群の割合の差は6.0%(95%信頼区間:-4.2~16.3)で非劣性マージンの-15%を上回っているので、酢酸亜鉛群に対する本剤群の非劣性が示されました。なお、酢酸亜鉛製剤と異なり、現在の適応症は低亜鉛血症のみで、「ウィルソン病(肝レンズ核変性症)」の適応は有していません。

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第194回 マイナ保険証を救急搬送に活用開始、全国展開を目指す実証事業/総務省

<先週の動き>1.マイナ保険証を救急搬送に活用開始、全国展開を目指す実証事業/総務省2.高齢者施設の服薬は昼1回に統一で安全性向上を/老年薬学会3.医療機関のサイバーセキュリティ対策チェックリストを改訂/厚労省4.地域医療を支えるため、医学生への修学資金貸与制度の充実を提案/文科省5.紅麹サプリの健康被害受け、機能性表示食品の安全性の強化を/自民党6.介護保険料の地域差拡大、大阪市の介護保険料は全国最高の9,249円に/厚労省1.マイナ保険証を救急搬送に活用開始、全国展開を目指す実証事業/総務省2024年4月、マイナンバーカードを利用した保険証(マイナ保険証)の利用率が過去最高の6.56%に達したが、利用率の低さが依然として課題となっている。5月17日、総務省消防庁はマイナ保険証を活用した救急搬送の実証事業を開始すると発表した。神奈川、兵庫、宮崎の3消防本部で実施され、救急隊員が現場でマイナ保険証を読み取り、患者の情報を迅速に把握し、医療機関へ搬送する。実証結果を踏まえ、2025年度中に全国展開を目指す。厚生労働省は、データと住民基本台帳情報の突合による「紐付け誤り防止」や動画広報、利用率の高い自治体・医療関係団体の表彰などを実施しているほか、さらに医療機関での利用促進に向けた具体策も進められている。マイナ保険証の利用率は病院で13.73%、医科クリニックで5.87%、歯科クリニックで10.91%、調剤薬局で5.71%とされ、さらなるPRと支援が求められている状況。5月15日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会では、若年者世代へのPR強化や医療機関での声掛けの強化が提案され、専用レーンの設置や国家公務員の率先利用も呼びかけられている。その一方で、マイナ保険証に対する不信感も問題となっている。過去に他人の情報が紐付けられたり、保険診療の窓口負担の割合が誤って表示されたりするトラブルが相次ぎ、2024年4月までに新たに529件の紐付けミスが確認された。政府の点検作業で発覚した同様のミスは合計で9,000件を超えている。政府は、従来の健康保険証の新規発行を2024年12月2日から停止し、マイナ保険証の利用を基本とする方針を強化している。医療機関での利用促進策とともに、妊産婦支援の強化を目指す会議も設立され、正常分娩への保険適用が検討されている。これにより、マイナ保険証の普及と共に、医療サービスの質の向上が期待される。参考1)マイナ救急実証事業の開始(総務省消防庁)2)マイナ保険証の利用促進等について(厚労省)3)「マイナンバーカードによる医療機関受診」促進策を更に進めよ、正常分娩の保険適用も見据えた検討会設置-社保審・医療保険部会(1)(Gem Med )4)マイナ保険証、救急搬送に活用 23日から実証第1弾 総務省消防庁(時事通信)5)マイナンバーシステム、機能利用進まず 改善求められるデジタル庁(朝日新聞)2.高齢者施設の服薬は昼1回に統一で安全性向上を/老年薬学会5月17日に日本老年薬学会は、高齢者施設における服薬回数の簡素化を推奨する提言を発表した。この提言では、施設の入居者が多くの薬を服用している現状に対し、服薬回数を減らし、なるべく昼1回にまとめることを求めている。目的は、誤薬リスクを減らし、本人や職員の負担を軽減することである。高齢者施設では、認知機能や運動機能が低下した入居者が多く、複数薬を管理することが困難とされている。これに対し、職員数が多い昼間の時間帯に服薬を集約することで、誤薬のリスクを低減し、職員の負担が軽減できるとされる。具体的には、服薬のタイミングを昼に変更できる薬や効き目が長く続く薬に切り替えることが提案されている。提言の作成に関わった薬剤師の丸岡 弘治氏は、「服薬回数を減らすことは医療安全上のメリットにもつながる」と述べている。学会代表理事である秋下 雅弘氏も、「この取り組みはすべての高齢者に必要であり、今後は医療機関や在宅介護にも呼びかけたい」と語る。ただし、すべての薬が昼の服薬に適しているわけではなく、安全性や効果に影響がないかを慎重に確認する必要がある。提言では、医師や薬剤師が協議し、適切な薬を特定することが求められている。また、本人や家族への理解を得ること、療養場所が変わった際の見直しも重要となる。高齢者施設の服薬管理は、職員の勤務シフトに合わせて朝、昼、夕、眠前に行われているが、この提言に基づき、昼1回の服薬に簡素化することで、誤薬リスクの低下と負担軽減が期待されている。なお、提言は、老年薬学会のウェブサイトで公開されている。超高齢社会を迎えるわが国では、多数の併存疾患を抱える高齢者が増加しており、施設のマンパワー不足やポリファーマシーの問題が深刻となっている。服薬簡素化はこれらの課題に対応するための1つの解決策となり得る。今後も、医療・介護・福祉の専門職が協力し、提言の実施を進めることが求められている。参考1)高齢者施設の服薬簡素化提言(老年薬学会)2)高齢者施設での服薬は「昼1回」に 負担軽減へ老年薬学会が提言(毎日新聞)3)高齢者施設での服薬は昼1回に…飲み間違いや飲み忘れ防止、職員の負担減へ老年薬学会提言(読売新聞)3.医療機関のサイバーセキュリティ対策チェックリストを改訂/厚労省厚生労働省は「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」を2024年度版に改訂した。これにより、サーバへのセキュリティパッチ適用など、2023年度版では参考項目としていた事項が正式なチェック項目として追加された。このチェックリストは、厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づき、優先的に取り組むべきセキュリティ対策をまとめたもの。2024年度版では、サーバへのセキュリティパッチ適用、端末PCでのアクセス利用権限の設定、インシデント発生時のバックアップと復旧手順の確認などが正式なチェック項目となった。また、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)の策定については、今後、参考資料となる手引きを作成する予定。そのほか、このチェックリストには、医療法第25条第1項に基づく立ち入り検査時に使用されることが明記された。これにより、厚労省への問い合わせが多かった使用用途についての明確化が図られた。また、各チェック項目の末尾には、具体的なチェック内容を解説するマニュアルの章番号が追記されている。今回の改訂により、医療機関はセキュリティ対策の強化を図り、サイバー攻撃からの防御を一層強化することが求められる。厚労省は引き続き、医療機関のセキュリティ対策を支援し、患者情報の保護を進めていく方針。参考1)令和6年度版「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」及び「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリストマニュアル~医療機関・事業者向け~」について(厚労省)2)サイバーセキュリティ対策チェックリスト改訂、厚労省 サーバへのセキュリティパッチ適用を正式な項目に(CB news)4.地域医療を支えるため、医学生への修学資金貸与制度の充実を提案/文科省文部科学省は、5月17日に「医学教育の在り方に関する検討会」を開催し、診療参加型臨床実習の推進と充実を強調する第2次中間取りまとめ案を提示した。この中で、医師の偏在解消を図るための教育上の方策として、地域枠の医学学生に対する修学資金貸与制度の充実が、最も有効であるとする意見が出された。診療参加型臨床実習は、医学生が医師の指導監督の下で実際の医療行為を行うことで、診断・治療に関する思考力や対応力を養うもの。2021年の医師法改正により、一定基準を満たした学生が実習中に医療行為を行うことが可能となり、大学では実習の連続した配属期間を確保する取り組みが進められている。また、医師の地域偏在を解消するため、地域枠の活用が推進されている。特定診療科の範囲を選択する「診療科選定地域枠」や大学特別枠などが導入され、修学資金貸与制度を活用して地域医療への貢献を促すことが有効とされている。奈良県立医科大学の今村 知明教授は、「修学資金貸与制度の充実を求め、地域のニーズに応じた柔軟な運用が必要だ」と指摘するとともに、大学病院の役割として、教育・研究・診療の三役を担うことが強調され、国による後押しが求められている。とくに、大学病院で働く医師の待遇改善やキャリアインセンティブの提供が必要とされ、「大学病院がその役割を果たすためには、文科省や厚労省、自治体の連携が必要だ」と述べる。さらに医学研究の充実も重要な課題とされ、研究医枠の増員や研究環境の整備が求められた。若手研究者のキャリアパスを明確にし、研究を続けるモチベーションを高めるための支援が必要であると指摘されている。文科省は、今回の取りまとめを踏まえて、今後の医学教育に関する施策を進める方針。とくに、医師の地域偏在解消と医学研究の充実を図るため、大学や地域との連携を強化し、持続可能な医療提供体制の確立を目指す。参考1)第10回 今後の医学教育の在り方に関する検討会(文科省)2)第二次中間取りまとめ(案)(同)5.紅麹サプリの健康被害受け、機能性表示食品の安全性の強化を/自民党小林製薬(大阪)の「紅麹」サプリメントによる健康被害を受け、自民党は5月16日に政調、消費者問題調査会・厚生労働部会合同会議を開き、機能性表示食品の安全性を強化する提言案をまとめた。提言案では、健康被害情報の報告ルールの明確化や定期点検の義務化を求めており、安全性強化で消費者保護につなげたいとしている。自民党の消費者問題調査会と厚生労働部会の合同会議で示された提言案には、以下の内容が含まれている。健康被害情報の報告ルールの明確化:行政への報告対象や報告期限を明確にし、企業が報告義務を順守するよう求める。定期点検の義務化:事業者が食品の届け出内容を定期的に点検・自己評価し、その結果を消費者庁に報告しなければ販売できなくすることを提案。GMP認証の義務化:サプリメントの製造において、品質・衛生管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」の認証取得を義務付ける。さらに消費者庁の専門家検討会でも、以下の点が議論されている。報告義務の強化:企業が報告の是非を判断せず、症状の重篤度に関わらず健康被害を報告することを義務付ける方向で検討されている。また、情報公開基準を明確にすることで企業の風評被害の懸念を軽減する方策も議論されている。サプリメントの特化規制:成分が濃縮されたサプリメントの安全性を食品と同じ基準で評価できないため、サプリメントに特化した規制を求める声が上がっている。自民党は、この提言案を来週にも政府に提出する予定。これにより、機能性表示食品の安全性が強化され、消費者の健康被害を防ぐ取り組みが進むことが期待される。参考1)届け出後の定期点検義務化 機能性表示食品で自民原案(東京新聞)2)自民 紅麹問題再発防止へ ルール明確化など求め提言案まとめる(NHK)3)機能性表示食品の健康被害情報報告ルールの明確化も議論 消費者庁の検討会の見直しポイント(産経新聞)6.介護保険料の地域差拡大、大阪市の介護保険料は全国最高の9,249円に/厚労省厚生労働省は、各地の自治体など全国1,573の保険者を調査。介護保険の第1号保険料の全国の市町村の動向を取りまとめ、公表した。2024~26年度にかけて65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の全国平均は月額6,225円で、最も高いのは大阪市の9,249円、最も低いのは東京都小笠原村の3,374円だった。地域差の原因は、高齢者の割合や介護事業者の参入状況、自治体の財政状況が影響している。大阪市は単身高齢者が多く、保険料が高額な一方、小笠原村は高齢化率が低く、保険料が抑えられている。各自治体は保険料の引き上げを抑えるための対策を講じており、一例として千葉県栄町は、介護予防活動を推進し、保険料を低く抑えている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2039年には65歳以上の高齢者が3,900万人を超え、介護サービスの需要が高まり、保険料の上昇が予想されている。厚労省は、所得別の負担見直しやケアプランの有料化を検討している。淑徳大学の結城 康博教授は、「抜本的な制度改革がなければ地域間の格差が広がる」と指摘し、介護保険料は2000年の制度開始時の月2,911円から2040年には9,000円程度に達すると見込まれている。介護保険料の地域差は、今後も続くと予想され、国や各自治体は対応策を講じる必要がある。参考1)全国 介護保険料マップ(NHK)2)介護保険料、月6225円 24~26年度全国平均 65歳以上、3.5%増(日経新聞)3)上昇傾向の介護保険料 目立つ地域差 サービス利用減で引き下げも(朝日新聞)4)介護保険料“格差”今後も拡大か 若い世代にも影響(FNN)【動画】5)第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について(厚労省)

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認知症を予防する食品は?栄養、3つの小話【外来で役立つ!認知症Topics】第17回

「フレンチパラドックス」が赤ワインブームに火をつけた知人とレストラン等で食事をするとき、「ではワインでいこう」となることがある。銘柄などに詳しくない人の集まりなら、「赤か白か」程度の選択になる。このような場合、十中八九が赤で決まる。この20年近くはそうなったと思う。それ以前、筆者が20代から40歳頃にかけてはまったく逆だった。渋くて重い赤ワイン好きなどはまず例外的、ほぼ皆が甘く軽やかな味の白を選ぶのが常だった。それが1995年以降に逆転して今に続く赤ワインブームが定着する。その原因がフレンチパラドックスである。パラドックス、矛盾とは? 赤ワインで有名なフランスのボルドー地方などでは、動物性脂肪の摂取が多いのに冠状動脈疾患の発症率が少ないことを指す。加えて認知症の発症も少ないことが一流医学雑誌で報告された。そこに赤ワインが関係する可能性が指摘された。さらに白ワインに比べて赤ワインに多く含まれる抗酸化物質ポリフェノールに鍵があると考えられた。日本のマスコミでは、「みのもんた」による赤ワイン健康法のTV番組などもあって、わが国の赤ワイン人気は一気に爆発した。「まごたちわやさしい」バランスの良い地中海食さて外来で、「認知症にならない、脳に良い食品は何か?」と尋ねられることは多い。そこで筆者は、数年に1度は、認知症、予防、栄養などのキーワードでレビューを探して、読んでいる。最近の結論としては次のようになる。「TVのコマーシャルでやっているようなサプリではありません。食品の個々の栄養素とか成分でもないそうです。食材と栄養の組み合わせ、ここから相乗的に効果が生まれるようです」。つまり「まごたちわやさしい※」のようにまんべんなくバランス食を、ということだ。※「まごたちわやさしい」とは、バランスの良い食事の考え方で、取り入れたい食材の頭文字からできた言葉(ま:豆類、ご:ごま・ナッツ類、た:卵、ち:チーズ・乳製品、わ:わかめ・海藻類、や:野菜、さ:魚、し:しいたけ・キノコ類、い:いも)。そのような食事の代表は地中海食だろう。これについては、少なくとも疫学的に循環器疾患そして認知症の予防効果がある。つまり認知症ではない人における知的低下率を減少させ1)、アルツハイマー病の発症率を低下させるとレビューがなされている2)。このように疫学的に確立した食事パターンは地中海食しかない。この地中海食を患者さんに説明する際は、「動物性脂肪中心のいわば欧米食とは違う。欧米食に、魚や野菜という伝統的な和食風をアレンジ」とその特徴をまとめる。また地中海食の特徴とされる食品のうち、日本人には馴染みが薄い食品として以下を紹介している。精白されていない全粒穀物、豆類、ナッツ、そしてオリーブオイル、これらを摂取するのも良いかもしれないと説明する。なお最近では、地中海食は伝統的に孤食ではないことに注目するものもある。脳に不可欠なオメガ3不飽和脂肪酸を摂れる食品は?さて地中海食も和食も、1つのポイントが必須脂肪酸のオメガ3不飽和脂肪酸にあると思う3)。ヒト脳の60%は脂肪でできている。それだけに脂肪酸は脳の統制と機能を決定する最重要物質と考えられている。とくに必須脂肪酸は、健康維持のために必要であるにもかかわらず、体内では作れないため食事から摂取する必要があるものをいう。必須脂肪酸としては、オメガ6不飽和脂肪酸のリノール酸、オメガ3不飽和脂肪酸のα-リノレン酸が代表である。これらは脳の神経細胞膜の重要成分であるだけでなく、神経伝達物質を合成したり細胞膜の流動性を維持したりすることに関与している。さらに免疫機能の構成分子にも関与する。ヒト脳の成長は5、6歳頃には終了するが、必須脂肪酸のうちオメガ3不飽和脂肪酸は、その後も脳の発達に重要である。とくに食事から摂るDHA(ドコサヘキサエン酸)は網膜と大脳皮質には必要で、これがあって視力と脳の発達が可能になると考えられている。なおアルツハイマー病者では、脳の海馬、大脳皮質、小脳において必須脂肪酸が不足すると症状がさらに悪くなるという報告もある。こうした必須脂肪酸を食事から上手に摂取するなら、DHAやEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富なサンマ、サバ、マグロなど青魚が良いことが知られている。ところがオメガ3不飽和脂肪酸を含む植物油はあまりない。その例外は、シソ油、エゴマ油である。なおエゴマ油は、シソ科の植物“エゴマ”の種子を搾った油、シソ油は、シソの実を搾った油である。図. 脂肪酸の分類画像を拡大する赤ワインの認知症予防効果、現在の評価は?終わりに、赤ワインが認知症予防になるという説への現在の評価は、あまり信憑性がないとしている。酒を称賛する言葉に「酒は百薬の長」があるように、飲み方次第では赤ワインもそうだろう。そこで「赤ワインの適切な飲酒量は?」との質問には、なにかの医学雑誌で読んだTwo glasses of wine(約230mL≒日本酒1合のアルコール)とお答えしている。参考1)Sofi F, et al. Am J Clin Nutr. 2010;92:1189-1196.2)Singh B, et al. J Alzheimers Dis. 2014;39:271-282.3)Dighriri IM, et al. Cureus. 2022;14:e30091.

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かゆみが続く慢性搔痒

患者さん、その症状は皮膚瘙痒症ですよ!皮膚瘙痒(そうよう)症とは、「発疹(皮膚病変)がないのにもかかわらず、痒みを訴える」疾患です。以下、該当する項目はありませんか?□皮膚が乾燥している□50歳以上□急に痒みが襲ってくる□治療中の病気(腎疾患、肝疾患、血液疾患、感染症…)がある□薬・サプリメントを服用している□妊娠中◆ かゆみが続く“慢性掻痒”とは…・皮膚のかゆみが6週間以上続く・全身の皮膚がかゆい場合、体の一部にかゆみがある場合がある・慢性掻痒により生活の質(QOL)は著しく下がる・最も多い原因は、「乾皮症」「接触性皮膚炎」「アトピー性皮膚炎」、悪性腫瘍を含む全身疾患が慢性痒疹の原因となることもある出典:日本皮膚科学会ガイドラインー皮膚瘙痒症診療ガイドライン、Yosipovitch G, et al. .N Engl J Med. 2013;368:1625-1634.監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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5月2日 カルシウムの日【今日は何の日?】

【5月2日 カルシウムの日】〔由来〕丈夫な骨を作るために欠かせない「カルシウム」を摂ることの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に、骨(コ[5]ツ[2])の語呂合わせからワダカルシウム製薬が制定。関連コンテンツ第23回 高齢糖尿病患者の骨折リスク、骨粗鬆症にどう対応する?【高齢者糖尿病診療のコツ】緩和ケアでもよく経験する高カルシウム血症【非専門医のための緩和ケアTips】カルシウムってなあに?【患者説明用スライド】カルシウムを含む食材は何【患者説明用スライド】糖尿病患者、カルシウムサプリ常用でCVDリスク増

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第207回 消費者がいまだに不安抱える紅麹、医療者による適切な説明は?

小林製薬の紅麹サプリ問題はサプリそのものの服用者だけでなく、紅麹原料を染料に使う食品にまで不安が及んでいるのは周知のことだ。一部の食品会社では消費者からの問い合わせが殺到しているとも聞く。厚生労働省(以下、厚労省)は4月5日付1)で、小林製薬が紅麹原料を直接卸している52社、この当該企業52社などから小林製薬の紅麹原料を入手している173社の計225社について、健康被害の報告はないことを明らかにしている。しかし、やはり消費者の不安は尽きないようで、なぜか私個人にまで知人・友人から問い合わせがくる状況だ。先日はある医療従事者からまで「どう思う?」という連絡をもらった。実はこれらに対して私個人は「現時点ではこれ以上の健康被害が出る可能性は低いのではないか?」と回答している。なぜそう考えるかは過去2回、本連載(第205回、第206回)で触れた3月29日の小林製薬の記者会見で明らかにされた事実関係が「正しい」という前提に立って説明している。ある意味、性善説ではあるが、今はこれしか判断材料がないのが現実である。そこで記者会見で明らかにされた事実関係と、それをベースに私が“可能性が低い”と考える理由について、今回は述べておこうと思う。まず、問題になった紅麹原料について小林製薬が説明した製造過程は、米に水を加えて加熱をし、そこに紅麹菌を加えて培養する。培養終了時点で米、水、紅麹菌の混合物を再加熱し、それを粉砕してから一旦保管。この保管物は培養状態によって有効成分の含有量にバラツキがあるため、保管されたものを複数混合して濃度の均一化を図り、再度、加熱・殺菌し最終段階の紅麹原料が完成する。使う紅麹菌に関しては、親株と言われる菌株からその都度取り分けて培養しているという。この紅麹原料は、▽今回問題になった紅麹コレステヘルプなどに加工・販売(B to C:Business to Consumer)▽食品会社などへの出荷(B to B:Business to Business)、の2つの流通ルートに乗る。小林製薬によると、問題となっている2023年の製造分に関しては、紅麹菌の親株から2度取り分けて別々に培養してから紅麹原料の製造に使用。このうち一方をA株、もう一方をB株と仮定すると、A株からはB to Cが13ロット、B to Bが21ロットの合計34ロット、B株からはB to Bのみ54ロットの紅麹原料がそれぞれ製造され、全ロットのサンプルが残っており、小林製薬側では全サンプルの検査を終了した。この結果、A株のB to Cで4ロット、B to Bで6ロットからプベルル酸と思しき異常な物質が検出されたものの、B株では全サンプルから異常な物質は確認されなかったとしている。これらから、A株で製造された紅麹原料で問題が発生したことは一目瞭然といえる。つまり食品会社などへの販売用だったものはA株由来、B株由来が合計75ロットで、そのうちプベルル酸と思しきものが含まれていたのは6ロットと全体の12分の1未満に過ぎない。さてここで「6ロットもあるのだから健康被害が出る可能性は現時点では低いとは言えないのでは?」という意見もあるだろう。これについては(1)製品の性格上、サプリメントは原料を濃縮するため、有害物質が含まれていた場合はそれらも濃縮される恐れがある/食品用はごく一部を添加するため、含まれる紅麹原料は相対的にサプリメントよりも微量、(2)サプリメントの場合は健康状態の改善を期待して毎日摂取される可能性が高い/一般食品の場合は毎日食べ続ける食品はごく一部、で説明できる。現在、小林製薬から紅麹原料を購入して製品に使っていた食品会社などは、製品の自主回収を進めている。これは厚労省が平成16年に創設した「食品等の自主回収報告制度」に基づくもので、これら企業とその製品は厚労省のHPに一覧が掲載されている。これを見るとわかる通り、主な用途は食品の着色料としてで、毎日必ず摂取する可能性のある食品は少ない。ただし、よく見ると、味噌など食事に毎日使う可能性があるものも含まれている。これについての答えはまさに(1)となる。また、前述の一覧を見るとわかるが、そこには、健康への危険性の程度を示す「CLASS分類」が付記されている。それを見ると、ここに記載された一般食品について、行政側はすべてが「CLASSII(喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が低い場合)」あるいは「CLASSIII(喫食により健康被害の可能性が、ほとんど無い場合)」と評価している。これはまさに(1)が理由と考えられる。もちろんこの解釈の仕方には異議もあるかもしれない。だが、順当に考えるならばこうなるのではないだろうか。今回の一件、ともすると紅麹全体が悪のように考えられてしまいがちだが、小林製薬以外で製造されている紅麹では今のところ何も問題は指摘されていない。少なくとも私はこれらの点から「紅麹」という言葉を一括りにして過度に警戒しすぎるのは考えものと思っている。参考1)厚生労働省:小林製薬社製の紅麹を含む食品に係る確認結果について(令和6年4月5日)

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第206回 紅麴サプリ、小林製薬に問われた2つの論点(後編)

3月29日に大阪市内で開かれた紅麹サプリの健康被害に関する記者会見。冒頭でテレビ朝日の報道ステーションのキャスター下村 彩里氏の質問以降も、この時点で一切可能性として名前が挙がっていなかった原因物質に関する質問が相次いだ。以下、質問に対する小林製薬側の回答を会見での質疑応答の順に抜粋する。*梶田氏、渡邊氏とは、それぞれ同社の梶田 恵介氏(ヘルスケア事業部食品カテゴリー カテゴリー長)、渡邊 純氏(執行役員/信頼性保証本部 本部長)のこと。「(原因の可能性がある)想定していない成分は、だいぶ構造体は見えていますが、国の研究機関とともに解明を進めていきたいというふうに考えております。紅麹と言われる原料にはさまざまな成分が入っており、今回の想定していない成分と何らかの相互作用で悪影響を及ぼした可能性も現在は否定できない。(国の研究機関との連携による原因確定までは)プランが私どものほうにはまだ見えていないので、現時点は迅速に対応をしていくと回答させていただく」(梶田氏)「未知の成分と紅麹由来の成分が新しい生成物を引き起こしたことを否定はできないが、可能性は限りなく少ないと思っている。何か新しい成分が入ったことは、推定はしているが、国の研究機関とともにわれわれの持っている情報を提供しながら、迅速に解決に向けて進めていきたい」(梶田氏)「一刻も早く原因物質を特定し、それが疾患を起こしていたことを明確にしたいのですが、そこが非常に難しく、特定して発表するに至らないところ」(渡辺氏)「環状構造体ということしかわかっていないので、実際にはこれから論文調査を本格的に進めて解明していく計画」(梶田氏)「さまざまな構造体がわれわれの中では仮説があり、それぞれの腎疾患との関連性に大小がある。その1つには、そういう(腎疾患と関連がある)ものがあるが、それと今回の健康被害を紐付けてよいのか、われわれではまだ判断できていない」(梶田氏)質疑当初、原因物質についてはかなり暗中模索のようにも思えたが、「論文検索」や「仮説」などから、かなり絞り込まれているのがわかる。この時点で私自身は、小林製薬側は可能性の高い原因物質を1~2種類くらいに絞り込んでいるのではないと考えていた。というのもこの会見に先立つ3月22日の記者会見で小林製薬側が記者に配った補足資料(なぜか同社公式HPにはアップされていない)を入手しており、それによると3月16日時点で「一部の製品ロットと紅麹原料ロットにおいて通常は見られないピークを検出」という記述があったからだ。「ピーク」という表現からは、ガスあるいは液体のクロマトグラフ分析を実施したことをうかがわせていた。そして会見開始から約58分、前述の下村氏から数えること9番目の質問指名が自分に回ってきた。原因物質は混入したのか、生成されたのか前述した記者会見の補足資料で、未知の成分が紅麹原料と製品の双方の一部から検出されたと記述されていることから、 私はまず“今回の健康被害の原因物質と考えられるものは、紅麹原料の製造過程で混入あるいは生成されたと同社が考えているか”を尋ねた。これに対して山下 健司氏(執行役員/製造本部本部長)が「はい、そのように考えております」と回答した。続いて尋ねたのは、この時点での“紅麹原料の製造手順書と現場のオペレーションに相違がなかったかの調査の有無”である。これに対しても山下氏が「現時点で調査を進めている状況。この点で何らかの問題があったと今のところは認識していない」とのことだった。実は最も聞きたかったのは3番目の質問だった。クロマトグラフによる分析をしているなら、原因の可能性のある物質の分子量を特定できているのではないかということだった。これには梶田氏が回答した。私はその言葉を一つも漏らすまいと梶田氏のほうを凝視した。「われわれの推察ではだいたいわかっておりまして、150~250ぐらいの間の分子量ではなかろうかと、データではわかっている」数字が出た、と内心思った。ただ、私は引き続き質問を続けた。それはこれまで多くの医師が原因ではないかと疑っていたシトリニンの件である。それまでの小林製薬側の説明では「検出されなかった」としているが、これが本当にゼロを意味するのか、それとも検出限界以下だったかということだ。これについては梶田氏が「外部の機関で測定しまして不検出(すなわちゼロ)」だったと説明した。この後、ドラッグストアでの対応も聞いたが、ここでは詳細は省いておく。とりあえず合計5つの質問をして一旦切り上げた。ほかの記者もいるし、小林製薬側はすべての質問に答えるとあらかじめ言っているのだから、2回目の質問をすればよいと思ったのだ。「それでも1回の質疑で5問は多過ぎだろう」と批判されるかもしれないが、記者会見はすべて現場のみの勝負。小林製薬側も質問数は限定していなかった。ここで聞かないで、後でうっかり忘れてしまうこともなくはない。また、4人もの責任者が並んでいる以上、この場を逃す手はないからである。一部に「会見での質問はできるだけ絞って後で広報部門に確認すれば?」と、メディア関係者外のみならずメディア関係者内でも口にする人がいるが、これも私は違うと思っている。問い合わせを受けた担当者から上位に役職者が多いか否かで、同じ質問に対する相手の回答はかなり変化してくるのだ。有体に言えば、よりシャープな言葉も数多くの人を経るにしたがって丸くなり、ゼロ回答のような結果になることは少なくない。原因物質は低分子化合物さて会見の話に戻そう。分子量150~250という回答を得て、その後、私の頭の中はこのことで一杯になった。まず、この分子量は、大雑把に言えば低分子と高分子の境界のやや低分子よりになる。しかも、問題の製品が紅麹菌から作られることを考え合わせても、合成化合物よりも天然化合物の可能性が高い。ただ、分子量150~250の天然化合物といってもたくさんある。何だろうと思いながら、最初に疑われたシトリニンがカビ毒の1種、いわゆるマイコトキシン類だったことを思い出し、ほかの記者の質疑に耳をダンボにしながらも、スマートフォンで検索を始めた。なかなかこれぞというモノが見つからない。会見開始から約2時間。有料ネットニュースサイト「NewsPicks」副編集長の須田 桃子氏(元毎日新聞記者、「捏造の科学者 STAP細胞事件」で2015年に大宅壮一ノンフィクション賞受賞)がオンラインから質問をしていた。それに対する回答の中で梶田氏が「シトリニンの分析は終わり不検出、そのほかのカビ毒だと言われている成分も数種類分析をしてこちらも不検出」との説明が耳に入った。カビ毒ではないのか。振り出しに戻ったと思いながら、再びほかの記者の質疑応答に耳を傾けながら、合間に無駄とは知りつつ原因物質が何かについて思考をめぐらした。ちょうど16時20分、スマホに入っているFacebookメッセンジャーが立ち上がった。知人の大手紙記者からである。「16時からの厚労省会見では物質名を出していますよ。プベルル酸。青カビから出る物質で、抗マラリア薬。強い毒性のある抗生物質」は? 何だそれ? 確かに16時から厚生労働省、国立医薬品食品衛生研究所、小林製薬の合同会見があることは聞いていた。しかし、そっちで可能性のある物質名を出したとは。しかも、「プベルル酸って何?」。私自身は初めて聞く化合物である。2回目の指名を受けるために挙手し続けながら、再びスマホで検索をするが、ほとんどそれらしい情報がひっかからない。それから4分後、毎日新聞の記者が「厚生労働省が今、記者会見しているそうなんですが、未知の物質がプベルル酸と同定されたとの発表があったのですが、それについて説明をしてください」と質問した。これに対し、梶田氏は「われわれが意図しない成分の候補との一つとして、先ほど申し上げたプベルル酸をこれじゃなかろうかということで、厚労省に情報提供した。(人体への影響は)まだわれわれの文献調査等々が追いついていない」と回答した。毎日新聞の記者からは、会見冒頭から原因の可能性が高い物質名について小林製薬側は一切言及せず、同時進行の会見で厚労省側から発表があったことの齟齬も質問されたが、梶田氏は「われわれは事前に把握をしていなかった」と答えるに留まった。プベルル酸に対する小林製薬側の主張以後、プベルル酸に関する質問の小林製薬側の主な回答は以下のようなものだ。「プベルル酸の可能性に気付いたのは3月25日夜」「微量ながらも青カビから生成の可能性としてあるため、青カビが生えるようなところがないか、今、製造ラインすべてを点検中」「(プベルル酸の異性体の数は)最近、調査結果が明らかになったばかり。われわれはまだ把握できていない」「(プベルル酸と紅麹などの相互作用は)われわれは取り扱ったことがなく、どのような作用を持っているのかは、正直、わかっていない」。「(紅麹自体がプベルル酸を産生する可能性は)われわれが持っている分析(結果)からは生成しにくいと考えている」再び質問、プベルル酸の50%致死量は?会見開始から4時間5分。再び指名を受けた。この時点でもネット検索で確たる情報が得られなかったので、私は“プベルル酸の50%致死量(LD50:Lethal Dose 50)のデータを把握しているか”を尋ねた。梶田氏からは「そこまでの情報が把握できていない」との回答だった。2つ目の質問として、“今回のプベルル酸が検出された紅麹原料の大本である米、水、紅麹菌のサンプルが残っていないか”を尋ねたが、残っていないとのこと。加えて今回、同時並行の厚労省側の会見に小林製薬も参加しながら、プベルル酸の名称が公開されることを知らなかったことについて確認を求めたが、梶田氏によると「発表内容まではわれわれは把握していなかった」とのことだった。この後、5~6人の質問で会見は終了となった。外はすでに真っ暗になっており、私は急ぎ東京行きの新幹線に飛び乗った。この帰りの新幹線内で、「そうだ!」と思い付き、Google検索で「プベルル酸 acid」とAND検索を掛けた。そこから「puberulic acid」の単語が見つかった。会見場では焦っていたので、こんなことも思いつかなかったのだ。そこでPubMedにこのキーワードを入れたところ、ヒットした論文はわずか6本。これほど報告が少ない物質なのかと驚いた。となると、完全に原因として特定され、かつ混入した経路を特定するには、相当な時間がかかるだろう。これは長丁場の事件になると、改めて思っている。

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認知機能の低下抑制、マルチビタミンvs.カカオ抽出物

 市販のマルチビタミン・ミネラルサプリメント(商品名:Centrum Silver、以下「マルチビタミン」)の連日摂取が高齢者の認知機能に与える影響を詳細に調査したCOSMOS-Clinic試験の結果、マルチビタミンを摂取した群では、プラセボとしてカカオ抽出物(フラバノール500mg/日)を摂取した群よりも2年後のエピソード記憶が有意に良好で、サブスタディのメタ解析でも全体的な認知機能とエピソード記憶が有意に良好であったことを、米国・Massachusetts General HospitalのChirag M. Vyas氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌2024年3月号掲載の報告。 これまで、二重盲検無作為化2×2要因試験「COSMOS試験※」のサブスタディでは、電話やインターネットを用いた認知機能に関する評価において、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群よりも良好な結果であったことが報告されている。しかし、対面式の詳細な神経心理学的評価は行われていなかった。そこで研究グループは、神経心理学的評価を対面で行って認知機能の変化に対するマルチビタミンの影響を検証するとともに、COSMOS試験のサブスタディのメタ解析も実施した。※COSMOS試験:60歳以上の米国成人2万1,442例を対象として、マルチビタミンおよび/またはカカオ抽出物の連日摂取によって心血管疾患およびがん発症リスクが軽減するかどうかを調査した大規模試験。無作為化は2015年6月~2018年3月に行われ、2020年12月31日まで追跡された。 COSMOS-Clinicの解析対象は、60歳以上で、ベースラインおよび2年後に対面で神経心理学的評価(45分間)を受けた573例であった。主要アウトカムは11つのテストの平均標準化スコアによる全体的な認知機能で、副次アウトカムはエピソード記憶、実行機能/注意力であった。メタ解析には、3つのCOSMOS試験のサブスタディ(COSMOS-Clinic[573例、2年間、対面]、COSMOS-Mind[2,158例、3年間、電話]、COSMOS-Web[2,472例、3年間、インターネット])を用いた(重複する参加者を含めずに実施)。 主な結果は以下のとおり。COSMOS-Clinic試験・参加者はマルチビタミン群272例(平均年齢69.3歳、男性51.1%)、カカオ抽出物群301例(69.8歳、50.5%)に無作為に割り付けられた。両群ともに2年後でも90%超がアドヒアランス良好であった。・エピソード記憶については、マルチビタミン群の平均標準化スコア(高いほど良好)はベースライン時0.01、2年後0.36、カカオ抽出物群はそれぞれ-0.01、0.23、平均差は0.12[95%信頼区間[CI]:0.002~0.23])であり、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群と比較して統計的に有意な改善が認められた。・全体的な認知機能(平均差:0.06[95%CI:-0.003~0.13])および実行機能/注意力(0.04[-0.04~0.11])は、有意差はなかったもののマルチビタミン群で良好な傾向を示した。サブスタディのメタ解析・全体的な認知機能は、マルチビタミン群ではカカオ抽出物群と比較して、統計的に有意な改善が認められた(平均差:0.07[95%CI:0.03~0.11]、p=0.0009)。・エピソード記憶でも、マルチビタミン群では統計的に有意な改善が認められた(平均差:0.06[95%CI:0.03~0.10]、p=0.0007)。・マルチビタミン群の全体的な認知機能に対する効果は、2歳離れたカカオ抽出物群と同程度であり、マルチビタミン群の認知機能の老化を2年遅らせたことに相当する。

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腎臓学会が紅麹サプリ調査を実施、多い症状は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第129回

小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取し、死亡を含む腎障害などの健康被害が生じたという報告が相次いでいます。厚生労働省は、4月1日の時点で166人が入院したことが小林製薬からの報告で明らかになったと発表しました。被疑成分として「プベルル酸」が挙げられていますが、まだはっきりとはしていません。紅麹原料はさまざまな食品に含まれていることもあり、被害はさらに広がる可能性があります。厚生労働省と消費者庁は紅麹を使用した製品に由来する健康被害について、国民や事業者からの問い合わせに応える電話相談窓口を合同で設置するとしています。これらの報道を受け、日本腎臓学会は3月29日に学会員を対象とした「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケートを実施し、3日ほどで47例の報告が集まったとして4月1日に中間報告を発表しました。ものすごい早さで情報が収集され、ものすごい早さで中間報告が出されたことに驚いています。その中から、特徴を抜粋してお伝えします。患者は30~70歳代まで認められるが、40~69歳が約9割を占める。やや女性に多い。服用開始は約4割の人が1年以上前(服用開始時期2023年3月以前)で、服用期間が短期間の人(開始時期2023年12月、2024年1月、2月)も発症している。受診日は2023年11月以降で、1月以降の受診が約8割を占める。初診時の主訴は、半数以上が倦怠感や食思不振、尿の異常、腎機能障害。腹部症状や体重減少を訴える人も少なからずいる。発熱や嘔吐、頻尿、浮腫や体重増加などは比較的少ない。また、「紅麹コレステヘルプに関連した健康被害として、この中間報告でお示しした以外の病態を否定するものではありませんが、被疑剤を服用された場合、被疑剤の服用を中止するとともに、腎機能検査や尿蛋白に加えて、尿糖や血清カリウム値、尿酸値、リン値、HCO3-値の測定は重要」とありますので、上記に当てはまる場合は受診を勧めるほうがよさそうです。皆さんの薬局でも健康食品に関する相談や不安の声が寄せられているかもしれません。この件にまったく関係のない健康食品を摂取している人が不安になったり、ひいては医薬品の服用を急にやめてしまったりするなどの影響も生じかねません。今回は日本腎臓学会によって異例の早さで情報収集および中間報告がされましたが、4月末まで回答を受け付けていて、また改めて発表されるようです。ぜひこれらの情報を活用して患者さんの安心につなげたいですね。

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小林製薬サプリ摂取者、経過観察で注意すべき検査項目・フォローの目安

 小林製薬が販売する機能性表示食品のサプリメント『紅麹コレステヘルプ(以下、サプリ)』による腎機能障害の発生が明らかとなってから約2週間が経過した。先生の下にも本サプリに関する相談が寄せられているだろうか。日本腎臓学会が独自で行った本サプリと腎障害の関連について調査したアンケートの中間報告1)から、少しずつサプリ摂取患者の臨床像が明らかになってきている。 そこで今回、日本腎臓学会副理事長である猪阪 善隆氏(大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科学 教授)に、摂取患者を診療する際に注意すべき点、患者から相談を受けた場合の対応について緊急取材した。猪阪氏は全国の医師に対し、「医師が診療する際に注意すべき点として、電解質異常や腎機能障害が改善されない症例は専門医へ紹介してほしい。また、患者に対して、“過度な心配は不要”であることを伝えてほしい」と呼び掛ける。その理由は―。Fanconi(ファンコニー)症候群 日本腎臓学会のアンケート中間報告によると、今回報告された症例の多くにFanconi症候群を疑う所見が目立っていたと示唆されている。このFanconi症候群とは、腎臓専門医でも診療経験を有する医師は少ない、比較的まれな疾患だという。本疾患の概要を以下に示す。◆疾患概念・定義:近位尿細管の全般性溶質輸送機能障害により、本来近位尿細管で再吸収される物質が尿中への過度の喪失を来す疾患群で、ブドウ糖(グルコース)、重炭酸塩、リン、尿酸、カリウム、一部のアミノ酸などの溶質再吸収が障害され、その結果として代謝性アシドーシス、電解質異常、脱水、くる病などを呈する2)。◆原因:原因は多岐にわたり、発症年齢も乳児期から成人と多様。先天性のものではDent病、ミトコンドリア脳筋症をはじめ、原因不明の症例が国内では多く、後天性(二次性)のものとしては悪性腫瘍やネフローゼ症候群のほか、一部の抗腫瘍薬(シスプラチンなど)、バルプロ酸、抗ウイルス薬などの薬剤の使用が起因している2)。近年ではNSAIDsによる報告もみられる。◆主な症状:代謝性アシドーシスの特徴ともいえる疲労や頭痛のほか、筋力低下や骨の痛みなど。 猪阪氏は本病態とアンケートの中間報告を総合し、「今回寄せられた症例の場合、1/4の患者にステロイドが使用されていた。今回は専門医による対応であったことから、間質性腎炎の診断・治療に準じて腎生検を行い、炎症レベルを考慮しての治療であった。一般内科の医師の場合には、まず被疑薬の中止を行い、注意深く経過観察を続けてもらいたい」と治療方法について説明した。中間報告後に明らかになった電解質異常 上述したFanconi症候群のような所見を疑うには、日常診療で行っている尿検査や生化学検査、血液学検査をオーダーするなかで、電解質の項目に注意を払う必要があると同氏は強調した。「集まった症例をみると電解質異常が多くみられた。カリウム(K)値は本疾患においても低K血症による不整脈発症の観点から重要ではあるが、今回とくに注意が必要なのは、一般的な血液検査に含まれないリン(P)や重炭酸イオン(HCO3-)の変化」と同氏は話した。その理由として「ナトリウム(Na)値やK値は日頃から注意すべき項目として目が行きがちだが、血清P値や血液ガス分析によるHCO3-濃度の測定は、非専門科では日常的に行う検査ではないので、ぜひ意識してオーダーし、経過を診ていただきたい」と述べ、「サプリの摂取を中止しても代謝性アシドーシスの状態が続いている場合もあるため、その場合には専門医の診断が必要」と説明した。また、「電解質異常がどこまで完全に回復してくるのかは今後の検証が待たれる」ともコメントした。電解質異常が残るような症例は専門医へ 専門医へ紹介するタイミングについて、同氏は「本サプリの問題が報道される前の時点では、腹痛などの症状を訴える→症状に応じた検査を実施→問診でサプリ摂取が判明→腎機能検査という診断の流れもあったようだ。しかし、今はサプリの影響が強く疑われ、すでに不安を抱えた患者さんは一通り受診を終えられているかと思う」と前置きをしたうえで、「被疑薬を中止した場合、約2週間で改善する傾向にある。中止したことで腎機能の改善がみられる場合は、そのままかかりつけ医での経過観察で問題ないため、正常値まで改善するのをフォローしてほしい。しかし、腎機能が十分改善しない場合や、上述のとおり電解質異常が残る場合には、早めに専門医へ紹介してほしい。また、症状が重症と考えられる患者についても同様」と紹介すべき患者の見極め方を説明した。 このほか、アンケート結果では尿の異常として血尿が報告されているが、これについては「サプリ摂取による腎障害が原因で生じたものではなく、潜在的にあった原疾患による可能性も考えられる」と説明した。また、本サプリを服用して来院した患者であっても、それ以外のサプリや薬剤を服用している可能性の高い患者も多いため、「原因をサプリに絞り込まずに鑑別していくことが必要」とも補足した。 なお、アンケート結果は5月に取りまとめて報告する予定であり、今年6月28~30日に横浜で開催される第67回日本腎臓学会学術総会でも緊急シンポジウムの開催が検討されている。

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第189回 紅麹サプリメント問題、無症状でも保険診療可能に/厚労省

<先週の動き>1.紅麹サプリメント問題、無症状でも保険診療可能に/厚労省2.オンライン初診での麻薬、向精神薬の処方制限強化へ/厚労省3.医療広告をさらに規制強化、事例解説書を更新/厚労省4.当直明けの手術を7割が実施、遅れる消化器外科医の働き方改革/消化器外科学会5.看護師の離職率は依然として高水準、タスクシフトや業務効率化を進めよ/看護協会6.未成年への経頭蓋磁気刺激治療(TMS)、専門家から倫理性に疑問/児童青年精神医学会1.紅麹サプリメント問題、無症状でも保険診療可能に/厚労省厚生労働省は、小林製薬の紅麹原料を含む機能性表示食品に関連する健康被害について、入院者数が延べ196人、受診者数が1,120人を超えたと発表した。この問題は国内で広がりをみせており、相談件数は約4万5,000件に上っている。厚労省は、無症状の人でも医師が必要と判断すれば、保険診療での診察や検査を許可する措置を講じた。立憲民主党は、このような健康被害があった場合に迅速な報告義務を課す制度改正を政府に要請する方針を明らかにした。また、小林製薬は、製品が安全に摂取できると言えないとの見解を示し、紅麹原料の製造過程で温水が混入するトラブルがあったことも公表したが、健康被害との直接的な関連は不明としている。この一連の問題に対し、消費者庁や厚労省は、紅麹を含む製品による健康被害の原因究明と、被害拡大防止のための対策を強化している。参考1)健康被害の状況等について[令和6年4月4日時点](厚労省)2)疑義解釈資料の送付について[その65](同)3)「紅麹を含む健康食品等を喫食した者」、無症状でも、医師が喫食歴等から必要と判断した場合には、保険診療で検査等実施可-厚労省(Gem Med)4)小林製薬「紅麹」、受診1,100人超 健康被害どこまで(日経新聞)5)健康被害で報告義務を=機能性食品、政府に要請へ-立民(時事通信)6)報告義務の法制化「必要あれば迅速に」 紅麹サプリ問題で武見厚労相(朝日新聞)7)紅麹製造タンクで温水混入トラブル、小林製薬「健康被害との関係不明」…公表2週間で受診1,100人超(読売新聞)2.オンライン初診での麻薬、向精神薬の処方制限強化へ/厚労省厚生労働省は、オンライン診療の適切な実施に関する新たな指針を公表し、特定の医薬品の処方に関する制限を明確にした。これにより、オンライン診療の初診では麻薬・向精神薬、抗がん剤、糖尿病治療薬などの特定薬剤の処方が禁止され、これらの情報を過去の診療情報として扱うこともできなくなる。この措置は、患者の基礎疾患や医薬品の適切な管理を確保するため、および不適切な処方を防ぐために導入された。オンライン診療では、患者から十分な情報を得ることが困難であり、医師と患者の本人確認が難しいため、安全性や有効性を保証するための規制が設けられている。厚労省は、新たな課題や医療・情報通信技術の進展に伴い、オンライン診療指針およびその解釈のQ&Aを更新し続けている。また、オンライン診療で糖尿病治療薬をダイエット薬として処方するなどの不適切な事例にも対処。これにより、医療機関はオンライン診療の際に、医師法や刑事訴訟法に基づく適切な手続きを踏むことが強く求められる。とくに、医師のなりすましや患者情報の誤りが疑われる場合は、警察との連携を含む厳格な対応が促されている。さらにオンライン診療では、基礎疾患の情報が不明な患者に対しては、薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤の処方を避け、8日分以上の薬剤処方を行わないことで、一定の診察頻度を確保し、患者観察を徹底することを求めている。参考1)「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A[令和6年4月改訂](厚労省)2)オンライン初診では麻薬や抗がん剤、糖尿病薬などの処方不可、オンライン診療の情報を「過去の診療情報」と扱うことも不可-厚労省(Gem Med)3.医療広告をさらに規制強化、事例解説書を更新/厚労省厚生労働省は、医療広告に関する規制をさらに強化を図るため、事例解説書の第4版を公表した。今回の改定では、誤解を招く誇大広告や、いかなる場合でも特定の処方箋医薬品を必ず受け取れるとする広告など、不適切な医療広告に対処する内容の改定となった。新たに追加された内容では、GLP-1受容体作動薬の美容・ダイエットを目的とした適応外使用に関する違反事例が散見されることに対応し、特定の処方箋医薬品を必ず受け取れる旨を広告することを禁止するほか、SNSや動画を含むデジタルメディア上での広告事例が含まれ、ビフォーアフター写真の説明が一切ないままの使用、治療内容やリスクに関する不十分な説明が禁止される事例が明確にされた。また、自院を最適または最先端の医療提供者と宣伝することも禁じられている。これらの更新は、患者が正確な情報に基づいて医療サービスを選択できるようにすることを目的とし、今後ガイドラインの遵守を求めていく。参考1)医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書[第4版](厚労省)2)医療広告「自院が最適な医療提供」はNG 厚労省が事例解説書・第4版(CB news)3)「必ず処方薬が受け取れる」はNG、オンライン診療広告 厚労省、解説書に事例追加(PNB)4)2024年3月 医療広告ガイドラインの変更点まとめ(ITreat)4.当直明けの手術を7割が実施、遅れる消化器外科医の働き方改革/消化器外科学会日本消化器外科学会が、昨年学会員に対して行った調査で、消化器外科医が直面している厳しい労働環境が明らかになった。2023年8月~9月にかけて65歳以下で、メールアドレスの登録がある会員1万5,723名(男性1万4,267名[90.7%]、女性1,456名[9.3%])を対象にアンケート調査を行ったところ、2,923人(18.6%)から回答を得た。その結果、月に80時間以上の時間外労働を報告した医師が全体の16.7%に上り、さらに100時間以上と回答する医師が7.6%と、「医師の働き方改革」で定められた年間960時間の上限を超える勤務をしていることがわかった。また、当直明けに手術を行う医師が7割以上を占め、「まれに手術の質が低下する」と回答した医師が63.3%に達した。この結果は、過酷な勤務条件が医療の質に潜在的なリスクをもたらしていることを示唆している。さらに、医師の働き方改革が導入される直前の調査では、労働環境の改善がみられるものの、賃金の改善が最も求められていることが明らかになった。医師は、兼業が収入の大きな部分を占め、とくに手術技術料としてのインセンティブの導入を望んでいる。また、次世代の医師に消化器外科を勧める会員は少数で、これは消化器外科医を取り巻く環境に対する懸念を反映したものとなった。同学会では、労働環境の改善、とくに賃金体系の見直しは、消化器外科医の減少に歯止めをかけ、消化器外科の将来を守るために積極的に取り組む必要があり、今後も高い品質の外科医療を提供し続けるために不可欠であると結論付けている。参考1)医師の働き方改革を目前にした消化器外科医の現状(日本消化器外科学会)2)消化器外科医の当直明け手術、「いつも」「しばしば」7割超…「まれに手術の質低下」は63%(読売新聞)5.看護師の離職率は依然として高水準、タスクシフトや業務効率化を進めよ/看護協会2022年度の看護職員の離職率が11.8%と高い水準で推移していることが、日本看護協会による病院看護実態調査で明らかになった。正規雇用の離職率は11.8%、新卒は10.2%、既卒は16.6%と報告されている。医療・介護ニーズの増加と現役世代数の減少が見込まれる中、医療機関における看護職員の離職防止が一層重要な課題となっている。また、看護職員の給与に関しては、勤続10年での税込平均給与が32万6,675円となっており、処遇改善評価料を取得した病院では、看護職員の給与アップ幅が大きくなっている。この調査結果は、看護職員の離職率が高い状況を背景に、看護職員のサポートと業務効率化が急務であることを示しており、看護職員から他職種へのタスク・シフトを進めることの重要性を強調している。これにより、医療現場での働きやすさの向上と医療提供体制の確保が求められている。同協会は、看護師の離職防止のために看護業務効率化ガイドを公表し、医療現場での業務効率化の事例を紹介している。この中で、業務効率化のプロセスやノウハウを示し、医師の働き方改革を支える看護職員の業務効率化に焦点を当てている。具体的な業務効率化の取り組みとしては、記録業務のセット化や音声入力機器の導入などが示されている。参考1)「2023年 病院看護実態調査」結果 新卒看護職員の離職率が10.2%と高止まり(日本看護協会)2)「看護業務効率化先進事例収集・周知事業」報告書(同)3)新卒の看護職員10人に1人が離職 23年病院看護実態調査 日看協(CB news)4)看護業務を効率化するガイドを公表、日看協 ホームページなどに掲載(同)5)コロナ感染症の影響もあり、2021年度・22年度の看護職員離職率は、正規雇用11.8%、新卒10.2%、既卒16.6%と高い水準-日看協(Gem Med)6.未成年への経頭蓋磁気刺激治療(TMS)、専門家から倫理性に疑問/児童青年精神医学会日本児童青年精神医学会は、18歳未満の子供や若年層への経頭蓋磁気刺激治療(TMS)の使用に対し、「非倫理的で危険性を伴う」との声明を発表し、この治療法の適用に強い倫理的懸念を示した。とくに発達障害を扱う精神科クリニックが、適応外でありながら、専門家の適正使用指針に反して、未成年者への施術を勧めるケースが問題視されている。TMSは、頭痛やけいれん発作などの副作用が報告されており、子供への有効性と安全性については現時点でエビデンスが不十分とされている。日本国内では2017年9月に厚生労働省が医療機器として薬事承認し、治療抵抗性うつ病への対応として帝人のNeuroStarによるrTMSを承認したが、日本精神神経学会は、とくに未成年者への施術にはさらなる臨床研究が必要としている。今回、同学会が指摘した倫理的な問題としては、一部のクリニックが患者の不安を利用し、高額な治療費用のためにローンを組ませる事例がある。今回の声明は、未成年者へのTMS治療の実施に当たっては慎重な検討を求めている。参考1)子どもに対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法に関する声明(日本児童青年精神医学会)2)反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針(改訂版)(日本精神神経学会)3)「非倫理的で危険」と学会声明 子どもへの頭部磁気治療で(東京新聞)

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第205回 紅麴サプリ、小林製薬に問われた2つの論点(前編)

4時間31分。長丁場が予想されたとはいえ、これだけの時間を費やした記者会見は久しぶりだった。3月29日に大阪市で行われた紅麹サプリ問題に関する小林製薬の記者会見のことである。改めて今回の顛末を振り返っておきたい。ことが表面化したのは3月22日。小林製薬が同社の機能性表示食品『紅麹コレステヘルプ』を摂取した人で腎障害などが発生し、同製品と使用している紅麹原料の分析から一部に意図しない成分が含まれている可能性が判明したと公表。同社の紅麹関連製品の使用中止を呼びかけ、製品の自主回収も表明した。同時点で発表された健康被害が疑わしい事例は、入院6例(うち5例は退院)、通院7例だったが、3月25日までに入院は26例に増加。翌3月26日には摂取との因果関係が疑われる死亡者1例がいたことが公表され、事態は一気に深刻化した。3月27日には生前に紅麹コレステヘルプを摂取していた死亡者2例が追加で報告された。同日、同業者から「明後日(29日)、小林製薬が大阪でこの件の記者会見を開くらしい」との情報が飛び込んで来た。私は「さて、どうしよう?」とやや考え込んでしまった。29日は2ヵ月前から参加を予定していた午後7時スタートの講演会が東京駅近くで開催される。経験上、午後4時過ぎに終了すれば、なんとか間に合う。小林製薬は上場企業であるため、午前の会見はないだろう。内容次第で午後の株価が大荒れ模様になるからだ。現在はテレビ各社が会見をネットでリアルタイム配信する時代なので、市場が閉まる午後3時スタートが有力と予想し、オンラインとのハイブリッド会見ならば、オンラインで参加しようと半ば決めていた。翌28日、小林製薬の会見開催情報が確実に流れるであろう大手メディアの記者と専門紙記者の2人に会見情報が入ったら教えて欲しいと伝えると、そのうち1人からは午後2時過ぎに「大阪市内で午後だけは確か」と教えられた。午後5時過ぎ、「午後2時」の一報が大手メディア記者から入り、間髪置かずに専門紙記者からも同じ情報が入った。ここから30分以内に情報提供をお願いしていなかった記者2人からも同じ情報が入ってきた。ありがたいことである。結局、予定していた講演会の演者の話は後日どこかで聞ける可能性は十分あるが、小林製薬のこの会見はこの日しかないと思い、某旅行サイトのホームページ(HP)で大阪市内のホテルを探し始めた。しかし、同日夜の大阪市中心部のホテルは、最安値で1万1,000円超。何度もHPをリロードしていると、突如6,000円台のホテルが表示された。即時に予約し、荷物をまとめて本来翌日するはずだった雑事を済ませて東京駅に向かい、新大阪行きの新幹線に飛び乗った。大阪市内のホテルに到着したのは日をまたいだ午前0時過ぎだった。新幹線内で今回の件に関する資料を大量に読んでいたせいか、ホテルに着くなり睡魔に襲われ、服を着たままベッドの上で眠りこけてしまった。目を覚ましたのは午前6時過ぎ。急いで入浴し、コーヒーを何杯も飲みながら午前11時のチェックアウトまで再び資料に目を通し、質問項目を練った。チェックアウト後、早めに大盛りの昼食。体重管理が日常化したここ数年、大盛りの外食は極力避けていたが、長丁場が予想されたための選択だった。29日、記者会見当日。会見場所のJR大阪駅近くの貸会議室のあるビルには午後1時10分頃に到着したが、すでにエントランスはベルトパーテーションが設置され、テレビカメラが参集していた。誘導している小林製薬社員に会見参加のために来場したことを告げると、「23」という印字された整理券を渡された。開始前にこの順でエレベーターに案内するという。そこで手持ち無沙汰にしていると、顔見知りのあるメディアの若い女性記者が「知っている人がいた」と駆け寄ってきた。どうやら還暦が見え始めているオジサン記者の私は、薬局前のオレンジのゾウさん「サトちゃん」のような役回りらしい(笑)。この女性記者が「お昼、食べそこなったんですよね」とぼやくので、「長丁場だろうから食べておいたほうが良いよ。そこにコンビニあったでしょう」と伝え、私は彼女の荷物番となった。いざ会見へ午後1時40分過ぎ、小林製薬社員による会場への誘導が始まった。会場内に入った時点で、小林製薬社長の小林 章浩氏を含む幹部4人が着席予定のテーブル前の記者席は埋まっていたため、私は司会者ボックス前の最前列に陣取った。机の上には資料が2枚。1枚は現在同社HPにも掲載されている「紅麹関連製品の使用中止のお願いと自主回収のお知らせ(第6報)」。もう1枚は「参考資料」と題するものだったが、それを確認する前に社員が一斉に資料を差し替えるとして回収し始めた。改めて差し替えられた資料を見ると、3月28日午後10時現在の健康被害状況として死亡者5人、入院者114人と記載されていた。また、同資料にはお客様からのお問い合わせ対応(一次対応)状況として、3月28日時点で電話回線数110回線、応答率約30%であり、4月4日以降は280回線、応答率50~80%の見込みとなっていた。間もなく小林氏、渡邊 純氏(執行役員/信頼性保証本部 本部長)、山下 健司氏(執行役員/製造本部 本部長)、梶田 恵介氏(ヘルスケア事業部食品カテゴリー カテゴリー長)が会場に入り、一斉にひな壇に並んだ。冒頭には小林氏からあいさつがあった。長くなるがあえて全文を再現する。皆さま、本日は先週に引き続きまして、お忙しい中、記者会見にお越しをいただきまして本当に申し訳ございません。現在、当社が製造いたします紅麹を摂取することによる腎疾患等の発生問題によりまして、非常に多くの皆さまにご心痛、ご不安をおかけしており、今回の件が社会問題にまで発展しておりますことを深くお詫び申し上げます。国内外で弊社製品をご使用のお客様、弊社の原料を使用いただき製造販売されていらっしゃいます皆さま、それをお使いになっていらっしゃいます皆さま、弊社が問題を起こしてしまいました紅麹に携わるすべての皆さま、健康食品を含む飲食物を製造販売されていらっしゃる皆さま、そして日々の診療・治療にあたってくださっていらっしゃいます医療機関の皆さま、本件について相談に乗っていただき、ご指導いただいております官公庁・自治体の皆さま、それぞれに対し、言葉に尽くせない大変なご迷惑をおかけしております。まずはお亡くなりになりましたお客さまのご冥福をお祈りし、ご遺族の皆さまに心からお悔やみを申し上げます。また、現在も入院中・治療中の方が数多くいらっしゃることも承知しております。一刻も早いご回復をお祈りしております。この度は国内外の大切なお客様やお取引先さまに多大なるご迷惑をおかけいたしました。加えて、弊社を取り巻くすべての皆さまに多大なる不安・恐れを与えまして、大変な思いをさせてしまったことと、深刻な社会問題にまで、招いてしまったことにつきまして、改めて深くお詫びを申し上げます。また、本件の公表が先週3月22日となってしまったことにつきまして、厳しいご批判、ご指摘をいただいております。これらを真摯に受け止め、深く反省しております。現在、私どもには日々多くの問い合わせやお叱りのお声を頂戴しております。弊社は今後も入院中、治療中の方をはじめ、お客さまや関係するすべての皆さまへ丁寧な対応を続けてまいります。加えて今回の事態の全容の解明、これ以上の被害の拡大防止と原因の究明、お客さまへの丁寧な説明と補償を含めた真摯な対応、品質管理体制はもちろん、危機管理体制の改善、それらに社を挙げて、また外部の専門家の知見にもしっかり耳を傾けながら、全身全霊取り組んで参ります。この度は本当に申し訳ございませんでした。小林氏のこのあいさつ後、4氏は深々と頭を下げた。続いて渡邊氏より配布されていた参考資料の説明があり、今後の原因究明について、政府、厚生労働省や国の研究機関も主導的に関わっていく旨も説明された。ここから質疑に移ったが、司会者から本日はすべての質問に対応すると告げられた。やはり長丁場は必至だ。当初から私は記者の質問はほぼ2点に集約されると予想していた。1つはこの時点でまだ公表されていなかった「意図しない成分」の正体、もう1つはこの間の小林製薬側の対応の“遅れ”についてだ。後者はやや解説が必要だ。まず、小林製薬側の発表に沿って今回の事態のタイムラインをまとめてみる。小林製薬、発表までのタイムラインまず、今回の紅麹サプリを摂取中に腎障害を起こしたとする1例目の報告が医師から小林製薬に届いたのが1月15日。1月31日には摂取者本人、2月1日には1人の医師から同時に3例が同社に報告された。その後、2月6日に渡邊氏が社長の小林氏にこの件を報告。同社に報告した医師からは紅麹から産生される可能性があるマイコトキシンの1種・シトリニンを疑う指摘があったが、同月16日には紅麹原料全ロットの分析結果からシトリニンが検出されなかったことが判明した。その後、同社では届け出た医師との面談や有識者との協議、度重なる経営執行会議の開催などを行いながら、研究部門、安全管理部門で調査を進め、3月16日に一部の紅麹原料と製品から未知の物質の存在を示唆する結果を得て、3月22日に開いた記者会見でこの問題を公表した。原因の可能性が高い物質が特定されたのが3月16日であることを考えれば、3月22日の公表は遅いとは断言しにくいが、一般的な感覚からすると、社長への報告から世間一般への公表まで1ヵ月半を要しているのは、「遅いのではないか?」となってしまうのはやむを得ないと言える。記者からの質問始まるさて、質疑開始と同時に私も含め、かなり多数が挙手したが、トップバッタ―となったのは通路挟んで隣の席に座っていたテレビ朝日・報道ステーションのアナウンサー下村 彩里氏だった。下村氏の最初の質問は、医師の報告から公表までの経過の確認とそれを踏まえたうえで「(報告から公表までの期間は)原因究明のためだったと思われますが、その間にも亡くなった方がいらっしゃいます。このことはどう思われますか?」というもの。確かにこれまでの報告では1月以降に摂取を開始した方でも被害は発生している。「大変に重大なことが起きてしまったと感じております」と回答した渡邊氏に対して、「今おっしゃった、社内での体制というのは十分だったと思いますか」と畳みかける下村氏。渡邊氏は次のように回答した。「実際には原因究明という言葉を使わせていただいておりますが、その理由は状況把握とともに原因物質だけでなく、できるだけ早く体の中で何が起きているのかがわかれば、多くのお医者さまが治療可能になると思います。その点を究明するためにも、原因のほうを追求していたと考えております」この直後、小林氏が引き継いで語り始めた。「もうちょっと早く公表ができれば防げたかということでございましたら、こちらのご批判に対しては私ども言葉もございません」下村氏からは原因物質についての質問が続いた。私自身の関心はこちらのほうだった。これについては梶田氏が「この1週間で(原因物質の)構造まではだいぶ見えてきております。しかしながら、昨日、厚生労働省に報告に行きまして、これから先はわれわれ1社で判断するのではなく、情報提供をしながら国の研究機関とともに解明を進めていく形になりましたので、現時点ではどの構造体かはまだ解明できておりません。この場では控えさせていただこうと思っております」と回答した。その後、私は挙手しながら自分に質問が回ってくるチャンスを待った。後編へ続く

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第91回 紅麹コレステヘルプ関連腎障害の臨床データ

illustACより使用前回に引き続き「紅麹問題」の続編です。発酵食品に使われている麹や、添加物としての紅麹色素について、各企業に問い合わせが殺到しているそうです。この間、某牛丼店に行ったとき、「紅ショウガにも紅麹が入っているらしい」と近くの客が話しているのを耳にしました。たとえば、私の手元にあるものでは、カップラーメンやスナック菓子にも入っていますが、着色料としての使用が腎障害を起こすことは現時点ではないと考えられます。基本的に小林製薬関連以外の紅麹については安全です。前回書いたように、紅麹は「シトリニン」というマイコトキシンを産生する可能性が指摘されていましたが、小林製薬が使用している紅麹は、このトキシンを産生しない株であることが示されています。そのため、「別の成分」が腎障害の原因になったのではないかとされています。被疑成分として厚労省は「プベルル酸」を挙げていますが、腎障害の原因が同成分であることは確定しておらず、あくまで可能性の1つとして提示されたに過ぎません。さて、日本腎臓学会の紅麹コレステヘルプに関連した腎障害のアンケート調査結果(中間報告)が公開されています1)。これによると以下のような特徴があるとされています。(1)患者は30~70代まで認められるが、40~69歳が約9割を占める。(2)服用開始は約4割の人が1年以上前(服用開始時期2023年3月以前)だが、服用期間が短期間の人(開始時期2023年12月、2024年1月、2月)も発症している。(3)Fanconi症候群様の所見(表)。(4)腎生検(34例)では尿細管間質性腎炎、尿細管壊死、急性尿細管障害が主な病変。(5)透析療法を必要としたのは2症例のみで、ステロイド治療を行ったのが4分の1、被疑剤の中止のみが4分の3程度。画像を拡大する表. 紅麹コレステヘルプに関連した腎障害(参考文献1より筆者作成)報道では死亡例がドラスティックに取り上げられていますが、どこまで紅麹に関連しているかはコメントが難しいところかと思います。日本腎臓学会のレポートでは、透析治療を要した2症例のうち、1症例は透析から離脱しており、維持透析に移行した症例については糸球体腎炎の経過に矛盾しないことから、コレステヘルプとの関連性は低いとされています。紅麹がヨーロッパで規制されていることから、「紅麹を使うなんてそもそもおかしい」という論調もありますが、アジア諸国やアメリカでも紅麹はサプリメントとして売られていますので、紅麹そのものが悪というのは少し言い過ぎだと思います。拡大解釈されて、紅麹色素が使用されている他社製品にも風評被害が出ていますが、冒頭で書いた紅ショウガなどで使われているものと今回の紅麹は、まったく製造方法が異なるものです。過熱報道の側面が強いように思いますので、曇りなき眼で見定めたいところです。参考文献・参考サイト1)日本腎臓学会. 「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケート調査(中間報告)

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小林製薬のサプリ問題、日本腎臓学会がアンケート中間報告

 小林製薬が製造販売する『紅麹コレステヘルプ』摂取者の腎障害を含む健康被害の報告が相次いでいる―。これを受け、日本腎臓学会は3月29日より学会員を対象とした「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケートを開始。中間報告として、3月31日19時時点で47例の報告が寄せられ、本アンケートでは死亡例はなかったことを明らかにした。 本学会理事長の南学 正臣氏(東京大学大学院医学系研究科 科長・医学部長)と副理事長の猪阪 善隆氏(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授)は「健康被害と紅麹コレステヘルプとの因果関係については科学的な検証が必要と考えております。原因物質については、候補物質に関する報道がなされていますが、今後、厚生労働省が国立医薬品食品衛生研究所とともに網羅的探索かつ発生機構の解明を行うことになっています。紅麹コレステヘルプに関連した健康被害として、この中間報告でお示しした以外の病態を否定するものではありませんが、被疑薬を服用された場合、被疑薬の服用を中止するとともに、腎機能検査や尿蛋白に加えて、尿糖や血清カリウム値、尿酸値、リン値、HCO3-値の測定は重要と思われます。今回の報告は中間報告であり、暫定的なものであることをご理解の上、診療にお役立てください」としている。 報告された患者背景や臨床所見については、日本腎臓学会のホームページ内の『「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケート調査(中間報告)』に詳細が示されている。 なお、本アンケートは問題となっているサプリメント摂取者の臨床的特徴の概要を調査し、一般診療に役立てることを目的に実施されており、日本腎臓学会の会員医師を対象に4月30日まで回答を受け付けている。

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