サイト内検索|page:14

検索結果 合計:411件 表示位置:261 - 280

261.

内科も外科も、今、左心耳がアツイ(解説:今中和人氏)-888

 本論文は、開心術のついでに左心耳を閉鎖すれば、後日の心原性塞栓が予防できて予後が改善する、という仮説を検証している。2009年からの約8年間に、全米のprivateないしMedicare被保険者7万5,782人が冠動脈バイパスか弁膜症手術を受け、その際5.8%(4,374人)が左心耳閉鎖術(LAAO)も受けた。このうち4,295人と、LAAOしなかった同数の患者とをマッチさせて、平均フォロー2.1年で比較した。LAAO群の患者分布に合わせているため、両群とも3/4にAFの既往があり、年齢68歳、単独バイパスが1,200例(オフポンプ900例)、弁手術が2,300例、バイパス+弁手術が750例程度であった。 結果は、1次エンドポイントである遠隔期の塞栓症と総死亡はLAAO群で有意に抑えられ、その差は経時的に拡大した。左房内血栓の9割は左心耳由来とされているから、ここだけ見ると素直に納得しそうになるのだが、2次エンドポイントである新規AF、遠隔期のAF関連の受診と入院は、逆に非LAAO群で有意に少ないという結果で一気に混乱し始める。 あれっ? AFが少ない群に血栓症が多発するなんて、おかしくないか? 実はAF既往の有無でサブグループ解析をすると、AF既往ありの患者ではLAAOは血栓症・総死亡ともHR0.7未満の強い抑制効果を示したが、AFの既往がない患者ではHR0.9以上で無効だった。しかしAF既往ありの患者が3/4を占めるので、全体ではLAAOは血栓症と総死亡を有意に抑制していた。一方、AF既往がある患者ではLAAOによる遠隔期のAFの増加はHR1.1程度とわずかだったが、1/4にあたるAF既往なしの患者でHR1.4以上の大幅増だったため、全体ではLAAO群で術後AFが有意に多くなった。 つまりLAAOはAFの既往がある患者にはとても有益だが、それ以外の患者にはやや有害、という結果だったのだが、AFの既往、弁膜症手術(とくに僧帽弁)、抗凝固療法が高率なLAAO群の患者構成をそのまま適用したため、「AFが少ない群に血栓症が多い」という不思議な、そしてmisleadingな結論が誕生した。もちろん、AFの既往がある心臓手術患者は3/4どころか少数派である。 さらにAFの「既往」という表現もひっかかる。既往と聞くと、手術時点ではAFでなかったかのような印象を受けるが、それでは新規AFが有意に少ない非LAAO群の血栓症がグングン増えたのが説明困難で、既往と言っても多くは手術時点で慢性AFかそれに準じる状態だったのだろう。実際、除細動歴も抗凝固療法もLAAO群に完璧にマッチされているし、本文には“prior”とか“history”と書かれているが、表では“AF at baseline”となっている。すなわち、心臓手術時点でAFか、頻繁にAFになる患者にはLAAOを積極的に施行し、そうでない患者では手を出さないのがよろしい、ということであろう。 なお本論文が一括しているLAAOであるが、閉鎖方法の議論が最近ホットで、単なるタバコ縫合ではかなりリークが多いが、2層に縫合しても遠隔期に3割程度が漏れるとの報告がある。一方、とくに左房壁の菲薄な症例での切除・縫合に伴う出血は、生命に関わるリスクであり、自動縫合器や外側からの閉鎖デバイスは本邦では保険適用とコストの問題のほか、正しく左心耳の基部を処置できるか、という本質的問題もある。Watchmanデバイスも登場し、AFと左心耳については、内科医も外科医も当分、目が離せない。

262.

不眠症とアルコール依存との関連

 アルコールを“睡眠補助”として使用した際のリスクを評価するため、米国・ウェイン州立大学のTimothy Roehrs氏らは、睡眠前のエタノールの鎮静・催眠効果での耐性の発現、その後のエタノール用量漸増、気分の変化、エタノール“愛好”について評価を行った。Sleep誌オンライン版2018年5月12日号の報告。 対象は、不眠症以外に関しては医学的および精神医学的に健康であり、アルコール依存および薬物乱用歴のない21~55歳の不眠症患者。試験1において、24例に対し睡眠前にエタノールを0.0、0.3、0.6g/kg(各々8例)投与し、夜間睡眠ポリグラフ(NPSG)を8時間収集した。試験2において、エタノール0.45g/kgまたはプラセボによる6日間の前処置を行った後、睡眠前のエタノールまたはプラセボのどちらを選ぶか、7日以上の選択の夜にわたり評価した。 主な結果は以下のとおり。・エタノール0.6g/kg投与は、総睡眠時間および第2夜の第3~4段階の睡眠を増加させたが、これらの効果は第6夜には失われた(p<0.05)。・6日間のエタノールでの前処置は、プラセボでの前処置と比較し、選択の夜におけるエタノール自己投与が多かった(p<0.03)。 著者らは「本研究は、不眠症患者の“睡眠補助”としてのアルコール使用に伴うリスクを明示する最初の研究である。エタノール投与開始の初期には、NPSGの睡眠および鎮静作用の自己報告が改善したが、第6夜には消失した。耐性については、睡眠前のエタノール自己投与の増加と関連が認められた」としている。■関連記事アルコール依存症患者における不眠症に関するメタ解析うつ病とアルコールとの関係:2014年英国調査よりアルコール依存症治療に期待される抗てんかん薬

263.

複合型ADHD児における運動能力がADHD症状と睡眠問題に及ぼす影響

 複合型注意欠如多動症(ADHD-Combined Type:ADHD-CT)の小児は、睡眠や運動に関する問題を有する割合が高いといわれている。オーストラリア・ディーキン大学のNicole Papadopoulos氏らは、小児においてADHD-CTの有無にかかわらず、運動能力がADHD症状と睡眠問題との関係を緩和するか、この緩和によりADHD診断に違いがあるかについて検討を行った。Behavioral sleep medicine誌オンライン版2018年3月12日号の報告。 対象は、8~15歳の初等教育男児70例。その内訳は、ADHD-CT群38例(平均年齢:10歳2ヵ月[SD:1歳6ヵ月])、対照(典型的な発達)群32例(平均年齢:9歳6ヵ月[1歳5ヵ月])。運動能力の評価はMovement Assessment Battery for Children第2版(MABC-2)、ADHD症状の評価はConners' Parent Rating Scale(CPRS)、親より報告された睡眠問題の評価はChildren's Sleep Habits Questionnaire(CSHQ)を用いて、それぞれ測定した。 主な結果は以下のとおり。・ADHD症状スコアが高く、運動能力スコアが低い小児において、睡眠問題がより多く報告された。・緩和効果は、ADHD-CT群で認められたが、対照群では認められなかった。 著者らは「本知見は、運動能力の低下したADHD症状がより重症な小児では、睡眠問題リスクが高くなる可能性があることを示唆している。睡眠介入を含むADHD-CT児の睡眠問題のリスクファクターを検討する際には、運動能力を考慮することの重要性も示唆している」としている。■関連記事ADHD発症しやすい家庭の傾向日本でのADHDスクリーニング精度の評価:弘前大学ADHDの小児および青年における意図しない怪我のリスクとADHD薬の影響

264.

中国人50万人における睡眠障害の特徴

 不十分な睡眠や不眠症は、身体的および精神的な健康状態に影響を及ぼす。英国・オックスフォード大学のYiping Chen氏らは、中国の都市部と農村部における睡眠パターンと不眠症の特徴や相関について調査を行った。Sleep medicine誌2018年4月号の報告。 本研究は、中国の10地域(都市部:5地域、農村部:5地域)における30~79歳の成人51万2,891例を対象とした横断的研究である。面接官が管理するラップトップベースのアンケートを用いて、睡眠パターン(睡眠持続時間、昼間の眠気、いびき)および不眠症状に関する詳細情報を収集した。睡眠パターンや不眠症状と、社会経済的、ライフスタイル、行動および健康関連の因子との関連について、ロジスティック回帰を用いて調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体として、平均睡眠時間は7.38時間(SD:1.37)であり、短時間睡眠(6時間以下)が23%、長時間睡眠(9時間以上)が16%と報告された。昼間の眠気は21%、頻繁ないびきは22%で報告された。・不眠症状は、全体の17%があると報告しており、男性(13%)よりも女性(19%)で多かった。また、その割合は、都市部(15%)よりも農村部(19%)で高く、独居者(23%)において高かった。・不眠症状を有する調整オッズ比(OR)が有意に高かったのは、うつ病エピソード患者(OR:6.10、95%CI:5.69~6.55)、全般性不安障害患者(OR:7.46、95%CI:6.65~8.37)、慢性疾患患者(OR:1.46、95%CI:1.44~1.49)であった。・対照的に、不眠症状のORは、昼間の眠気(OR:0.77、95%CI:0.75~0.78)や頻繁ないびき(OR:0.86、95%CI:0.84~0.87)の報告例で有意に低かった。 著者らは「中国の成人において、睡眠パターンは、社会経済的、ライフスタイル、健康関連の要因によって大きく異なっていた。不眠症状リスクは、精神的および身体的な健康状態の悪化と関連が認められた」としている。■関連記事不眠症になりやすい食事の傾向不眠症の人おすすめのリラクゼーション法とは睡眠不足だと認知症になりやすいのか

265.

アルコール依存症患者における不眠症に関するメタ解析

 アルコール依存症患者における不眠症の有病率は、36~91%であり、アルコール離脱後も持続する可能性がある。禁酒患者の不眠症を、アカンプロサートが減少させることが示唆されている。フランス・モンペリエ大学のPascal Perney氏らは、アカンプロサートは実際に不眠症を軽減させるのか、そしてその作用機序をより理解するため、大規模臨床試験データベースを用いて有効性の評価を行った。Alcohol and alcoholism誌オンライン版2018年3月30日号の報告。 本研究の目的は、個々の患者データのメタ解析を行い、不眠症の軽減に対するアカンプロサートの有効性の評価をすることである。12件の研究より3,508例が抽出された。6ヵ月間のフォローアップ後、ベースラインからの平均不眠症減少率は、アカンプロサート群で45%、対照群で26%であった(p<0.001)。 不眠症が記録されたアカンプロサートに関するすべてのランダム化試験より、患者データを抽出してメタ解析を行った。主要評価項目は、ハミルトンうつ病・不安評価尺度より得られた短時間睡眠指数(SSI:Short Sleep Index)により測定された、6ヵ月のフォローアップ後の不眠症の変化とした。メタ解析は、ランダム化治療効果、ランダム化試験効果およびベースライン重症度の共変量の調整を伴う、2レベルマルチレベル(患者/試験)混合モデルを用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・12件の研究より3,508例が抽出された。そのうち不眠症の患者は59.8%(95%CI:58.1~61.4)であった。・精神疾患既往歴、重度の依存、独居、γ-GTレベル異常が、不眠症のリスク因子であった。・6ヵ月間のフォローアップ後、ベースラインからの平均SSI減少率は、アカンプロサート群で45%、対照群で26%であった(治療効果:19%、95%CI:12.5~25.5、p<0.001)。・単変量媒介モデルでは、不眠症に対する禁酒の媒介効果は、不眠症軽減に対するアカンプロサート全体的効果の55.7%であった。 著者らは「アルコール依存症患者では、不眠症が一般的に認められる。不眠症は、禁酒により減少するが、アカンプロサート治療で、より減少する」としている。■関連記事認知症発症に対するアルコール使用障害の影響に関するコホート研究アルコール依存症治療に期待される抗てんかん薬お酒はうつ病リスク増加にも関連

266.

全身性エリテマトーデス〔SLE:Systemic Lupus Erythematosus〕

1 疾患概要■ 概念・定義全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、自己免疫異常を基盤として発症し、多彩な自己抗体の産生により多臓器に障害を来す全身性炎症性疾患で、再燃と寛解を繰り返しながら病像が完成される。全身に多彩な病変を呈しうるが、個々人によって障害臓器やその程度が異なるため、それぞれに応じた管理と治療が必要となる。■ 疫学本疾患は指定難病に指定されており、令和元年(2019年)度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は6万1,835件であり、計算上の有病率は10万人中50人である。男女比は1対9で女性に多く、発症年齢は10~30代で大半を占める。■ 病因発症要因として、遺伝的背景要因に加えて、感染症や紫外線などの環境要因が引き金となり、発症することが考えられているが、不明点が多い。その病態は、抗dsDNA抗体を主体とする多彩な自己抗体の出現に加え、多岐にわたる免疫異常によって形成される。自然免疫と獲得免疫それぞれの段階で異常が指摘されており、樹状細胞・マクロファージを含めた貪食能を持つ抗原提示細胞、各種T細胞、B細胞、サイトカインなどの異常が病態に関与している。体内の細胞は常に破壊と産生を繰り返しているが、前述の引き金などを契機に体内の核酸物質が蓄積することで、異常な免疫反応が惹起され、自己抗体が産生され免疫複合体が形成される。そして、それらが各臓器に蓄積し、さらなる炎症・自己免疫を引き起こし、病態が形成されていく。■ 症状障害臓器に応じた症状が、同時もしくは経過中に異なる時期に出現しうる。初発症状として最も頻度が高いものは、発熱、関節症状、皮膚粘膜症状である。全身倦怠感やリンパ節腫脹を伴う。関節痛(関節炎)は通常骨破壊を伴わない。皮膚粘膜症状として、日光過敏症や露光部に一致した頬部紅斑のほかに、手指や四肢体幹部に多彩な皮疹を呈し、脱毛、口腔内潰瘍などを呈する。その他、レイノー現象、腎炎に関連した浮腫、肺病変や血管病変と関連した労作時呼吸困難、肺胞出血に伴う血痰、漿膜炎と関連した胸痛・腹痛、神経精神症状など、さまざまな症状を呈しうる。■ 分類SLEは障害臓器と重症度により治療内容が異なる。とくに重要臓器として、腎臓、中枢神経、肺を侵すものが挙げられ、生命および機能予後が著しく障害される可能性が高い障害である。ループス腎炎は組織学的に分類されており、International Society of Nephrology/Renal Pathology Society(ISN/RPS)分類が用いられている。神経精神ループス(Neuropsychiatric SLE:NPSLE)では大きく中枢神経病変と末梢神経病変に分類され、それぞれの中でさらに詳細な臨床分類がなされる。■ 予後生命予後は、1950年代は5年生存率がおよそ50%であったが、2007年のわが国の報告では10年生存率がおよそ90%、20年生存率はおよそ75%である1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)検査所見として、抗核抗体、抗(ds)DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、β2GPⅠ依存性抗カルジオリピン抗体など)が陽性となる。また、血清補体低値、免疫複合体高値、白血球減少(リンパ球減少)、血小板減少、溶血性貧血、直接クームス陽性を呈する。ループス腎炎合併の場合はeGFR低下、蛋白尿、赤血球尿、白血球尿、細胞性円柱が出現しうる。SLEの診断では1997年の米国リウマチ学会分類基準2)および2012年のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準3)を参考に、他疾患との鑑別を行い、総合的に判断する(表1、2)。2019年に欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が合同で作成した新しい分類基準4)が提唱された。今後はわが国においても本基準の検証を元に診療に用いられることが考えられる。画像を拡大する表2 Systemic Lupus International Collaborating Clinics 2012分類基準画像を拡大するループス腎炎が疑われる場合は、積極的に腎生検を行い、ISN/RPS分類による病型分類を行う。50~60%のNPSLESLE診断時か1年以内に発症する。感染症、代謝性疾患、薬剤性を除外する必要がある。髄液細胞数、蛋白の増加、糖の低下、髄液IL-6濃度高値であることがある。MRI、脳血流シンチ、脳波で鑑別を進める。貧血の進行を伴う呼吸困難、両側肺びまん性浸潤影あるいは斑状陰影を認めた場合は肺胞出血を考慮する。全身症状、リンパ節腫脹、関節炎を呈する鑑別疾患は、パルボウイルス、EBV、HIVを含むウイルス感染症、結核、悪性リンパ腫、血管炎症候群、他の膠原病および類縁疾患が挙がるが、感染症を契機に発症や再燃をすることや、他の膠原病を合併することもしばしばある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)SLEの基本的な治療薬はステロイド、免疫抑制薬、抗マラリア薬であるが、近年は生物学的製剤が承認され、複数の分子標的治療が世界的に試みられている。ステロイドおよび免疫抑制薬の選択と使用量については、障害臓器の種類と重症度(疾患活動性)、病型分類、合併症の有無によって異なる。治療の際には、(1)SLEのどの障害臓器を標的として治療をするのか、(2)何を治療指標として経過をみるのか、(3)出現しうる合併症は何かを明確にしながら進めていくことが重要である。SLEの治療選択については、『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』の記載にある通り、重要臓器障害があり、生命や機能的予後を脅かす場合は、ステロイド大量投与に加えて免疫抑制薬の併用が基本となる5)(図)。ステロイドは強力かつ有効な免疫抑制薬でありSLE治療の中心となっているが、免疫抑制薬と併用することで予後が改善される。ステロイドの使用量は治療標的臓器と重症度による。ステロイドパルス療法とは、メチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール)250~1,000mg/日を3日間点滴投与、大量ステロイドとはプレドニゾロン換算で30~100mg/日を点滴もしくは経口投与、中等量とは同じく7.5~30mg/日、少量とは7.5mg/日以下が目安となるが、体重により異なる6)(表3)。ステロイドの副作用はさまざまなものがあり、投与量と投与期間に依存して必発である。したがって、副作用予防と管理を適切に行う必要がある。また、大量のステロイドを長期に投与することは副作用の観点から行わず、再燃に注意しながら漸減する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する寛解導入療法として用いられる免疫抑制薬は、シクロホスファミド(同:エンドキサン)とミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)が主体となる(ループス腎炎の治療については別項参照)。治療抵抗性の場合、免疫抑制薬を変更するなど治療標的を変更しながら進めていく。病態や障害臓器の程度により、カルシニューリン阻害薬のシクロスポリン(同:サンディミュン、ネオーラル)、タクロリムス(同:プログラフ)やアザチオプリン(同:イムラン、アザニン)も用いられる。症例に応じてそれぞれの有効性と副作用の特徴を考慮しながら選択する(表4)。画像を拡大するリツキシマブは、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)および欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)/欧州腎臓学会-欧州透析移植学会(European Renal Association – European Dialysis and Transplant Association:ERA-EDTA)の推奨7,8)においては、既存の治療に抵抗性の場合に選択肢となりうるが、重症感染症や進行性多巣性白質脳症の注意は必要と考えられる。わが国ではネフローゼ症候群に対しては保険承認されているが、SLEそのものに対する保険適用はない。可溶型Bリンパ球刺激因子(B Lymphocyte Stimulator:BLyS)を中和する完全ヒト型モノクローナル抗体であるベリムマブ(同:ベンリスタ)は、既存治療で効果不十分のSLEに対する治療薬として、2017年にわが国で保険承認され、治療選択肢の1つとなっている9)。本稿執筆時点では、筋骨格系や皮膚病変にとくに有効であり、ステロイド減量効果、再燃抑制、障害蓄積の抑制に有効と考えられている。ループス腎炎に対しては一定の有効性を示す報告10)が出てきており、適切な症例選択が望まれる。NPSLEでの有効性はわかっていない。ヒドロキシクロロキン(同:プラケニル)は海外では古くから使用されていたが、わが国では2015年7月に適用承認された。全身症状、皮疹、関節炎などにとくに有効であり、SLEの予後改善、腎炎の再燃予防を示唆する報告がある。短期的には薬疹、長期的には網膜症などの副作用に注意を要し、治療開始前と開始後の定期的な眼科受診が必要である。アニフロルマブ(同:サフネロー)はSLE病態に関与しているI型インターフェロンα受容体のサブユニット1に対する抗体製剤であり、2021年9月にわが国でSLEの適応が承認された。臨床症状の改善、ステロイド減量効果が示された。一方で、アニフロルマブはウイルス感染制御に関与するインターフェロンシグナル伝達を阻害するため、感染症の発現リスクが増加する可能性が考えられている。執筆時点では全例市販後調査が行われており、日本リウマチ学会より適正使用の手引きが公開されている。実臨床での有効性と安全性が今後検証される。SLEの病態は複雑であり、臨床所見も多岐にわたるため、複数の診療科との連携を図りながら各々の臓器障害に対する治療および合併症に対して、妊娠や出産、授乳に対する配慮を含めて、個々に応じた管理が必要である。4 今後の展望本稿執筆時点では、世界でおよそ30種類もの新規治療薬の第II/III相臨床試験が進行中である。とくにB細胞、T細胞、共刺激経路、サイトカイン、細胞内シグナル伝達経路を標的とした分子標的治療薬が評価中である。また、異なる作用機序の薬剤を組み合わせる試みもなされている。SLEは集団としてヘテロであることから、適切な評価のためのアウトカムの設定方法や薬剤ごとのバイオマーカーの探索が同時に行われている。5 主たる診療科リウマチ・膠原病内科、皮膚科、腎臓内科、その他、障害臓器や治療合併症に応じて多くの診療科との連携が必要となる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 全身性エリテマトーデス(公費対象)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(膠原病患者とその家族の会)1)Funauchi M, et al. Rheumatol Int. 2007;27:243-249.2)Hochberg MC, et al. Arthritis Rheum. 1997;40:1725.3)Petri M, et al. Arthritis Rheum. 2012;64:2677-2686.4)Aringer M, et al. Ann Rheum Dis. 2019;78:1151-1159.5)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班),日本リウマチ学会(編):全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019.南山堂,2019.6)Buttgereit F, et al. Ann Rheum Dis. 2002;61:718-722.7)Hahn BH, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64:797-808.8)Bertsias GK, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1771-1782.9)Furie R, et al. Arthritis Rheum. 2011;63:3918-3930.10)Furie R, et al. N Engl J Med. 2020;383:1117-1128.公開履歴初回2018年04月10日更新2022年02月25日

267.

夢遊病に関するシステマティックレビュー

 夢遊病を誘発する薬剤は、患者自身だけでなく他人に対しても傷害のリスクをもたらし、服薬アドヒアランスに対しても影響を及ぼす。オーストラリア・南オーストラリア大学のHelen M. Stallman氏らは、夢遊病リスクを高める可能性のある薬剤を特定するため、文献のシステマティックレビューを行った。Sleep medicine reviews誌2018年2月号の報告。 夢遊病(「sleepwalking」「somnambulism」)をキーワードとして、CINAHL、EMBASE、PsycINFO、PubMed、ScienceDirectより検索を行った。83件が抽出され、そのうち基準を満たした62件をレビュー対象とした。 主な結果は以下のとおり。・主に以下の4クラス(29薬剤)が、夢遊病のトリガーであると同定された。 (1)ベンゾジアゼピン受容体アゴニストおよび他のGABAモジュレーター (2)抗うつ薬および他のセロトニン作動薬 (3)抗精神病薬 (4)β遮断薬・薬剤誘発性夢遊病の最も強力なエビデンスは、ゾルピデムとsodium oxybateであった。・その他すべての関連は、症例報告に基づいていた。 著者らは「本研究は、臨床試験のリスクプロファイルにおける夢遊病の重要性を示唆しており、とくにGABAA受容体でのGABA活性およびセロトニン作動活性の増強、β遮断薬によるノルアドレナリン活性の遮断を伴う薬剤で注意が必要である。薬剤による夢遊病リスクの懸念がある場合には、患者に対し安全な睡眠環境についての教育を行い、夢遊病の発症または悪化を報告することが推奨され、発症した際の代替治療の検討を行うべきである」としている。■関連記事夢遊病にビペリデンは有望!?がん患者の悪夢に有効な治療法はベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は

268.

再生不良性貧血〔AA : aplastic anemia〕

再生不良性貧血のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義再生不良性貧血は、末梢血でのすべての血球の減少(汎血球減少)と骨髄の細胞密度の低下(低形成)を特徴とする症候群である。同じ徴候を示す疾患群から、概念のより明確なほかの疾患を除外することによって診断することができる。病気の本態は「骨髄毒性を示す薬剤の影響がないにもかかわらず、造血幹細胞が持続的に減少した状態」である。再生不良性貧血という病名は、鉄欠乏性貧血や悪性貧血などのように、不足している栄養素を補充すれば改善する貧血とは異なり、血液細胞が再生しにくいという意味で付けられたが、治療方法が進歩した現在では、再生不良性貧血の骨髄は必ずしも「再生不良」とはいえないので、この病名は現実に即さなくなってきている。■ 疫学臨床調査個人票による調査では、2004~2012年の9年間の罹患数は約9,500(年間約1,000人)、罹患率は8.2(/100万人年)と推計された。罹患率の性比(女/男)は1.16であり、男女とも10~20歳代と70~80歳代でピークが認められ、高齢のピークの方が大きかった1)。これは欧米諸国の約3倍の発生率である。■ 病因成因によってFanconi貧血、dyskeratosis congenitaなどの先天性と後天性に分けられる。後天性の再生不良性貧血には原因不明の一次性と、クロラムフェニコールをはじめとするさまざまな薬剤や放射線被曝・ベンゼンなど化学物質による二次性がある。一次性(特発性)再生不良性貧血は、何らかのウイルスや環境因子が引き金になって起こると考えられているが詳細は不明である。わが国では特発性が大部分(90%)を占める。また、そのほかに特殊型として肝炎後再生不良性貧血は、A型、B型、C型などの既知のウイルス以外の原因による急性肝炎発症後1~3ヵ月で発症する。若年の男性に比較的多く重症化しやすいが、免疫抑制療法に対する反応性は特発性再生不良性貧血と変わらない。再生不良性貧血-発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)症候群は、臨床的には再生不良性貧血でありながら、末梢血中にglycosylphosphadidylinositol(GPI)アンカー膜蛋白の欠失した血球が増加しており、溶血を伴う状態を指す。そのなかには、発症時から再生不良性貧血‐PNH症候群状態のもの(骨髄不全型のPNH)と、再生不良性貧血と診断されたのち長期間を経てPNHに移行するもの(二次性PNH)の2種類がある。再生不良性貧血の重症度は、血球減少の程度によって表1のように5段階に分けられている1)。画像を拡大する特発性再生不良性貧血の約70%は抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(anti-thymocyte globulin:ATG、商品名:サイモグロブリン)やシクロスポリン(CsA〔同:ネオーラル〕)などの免疫抑制療法によって改善することから、免疫学的機序による造血幹細胞の破壊・抑制が多くの例で関与していると考えられている。しかし、免疫反応の標的となる自己抗原は同定されていない。再生不良性貧血の約60%に、GPIアンカー膜蛋白の欠失したPNH形質の血球(PNH型血球)が検出されることや、第6染色体短腕の片親性二倍体により細胞傷害性T細胞からの攻撃を免れて造血を支持するようになった造血幹細胞由来の血球が約25%の例で検出されること2,3)などが、免疫病態の関与を裏付けている。一方、Fanconi貧血のように、特定の遺伝子異常によって発症する先天性再生不良性貧血が存在することや、特発性再生不良性貧血と診断されていた例のなかにテロメラーゼ関連の遺伝子異常を持つ例があることなどから、一部の例では造血幹細胞自身に異常があると考えられている。ただし、これらの遺伝子異常が検出される頻度は非常に低い。免疫抑制療法が効かない再生不良性貧血例のなかには、骨髄が脂肪髄であったために再生不良性貧血として治療されたが、その後短期間で異常細胞が顕在化し、診断が造血器悪性腫瘍に変更される例も含まれている。さらに、免疫抑制療法が効かないからといって、必ずしも免疫病態が関与していないという訳ではない。そのなかには、(1)免疫異常による発病から治療までの時間が経ち過ぎているために効果が出にくい、(2)免疫抑制療法の強さが不十分である、(3)免疫学的攻撃による造血幹細胞の枯渇が激しいために造血が回復しえない、などの理由で免疫抑制療法に反応しない例もある。このため、発病して間もない再生不良性貧血のほとんどは、造血幹細胞に対する何らかの免疫学的攻撃によって起こっていると考えたほうがよい。■ 症状息切れ・動悸・めまいなどの貧血症状と、皮下出血斑・歯肉出血・鼻出血などの出血傾向がみられる。好中球減少の強い例では発熱がみられる。軽症・中等症例や、貧血の進行が遅い重症例では無症状のこともある。他覚症状として顔面蒼白、貧血様の眼瞼結膜、皮下出血、歯肉出血などがみられる。■ 予後かつては重症例の50%が半年以内に死亡するとされていた。最近では血小板輸血、抗菌薬、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などの支持療法が進歩し、免疫抑制療法や骨髄移植が発症後早期に行われるようになったため、約7割の患者が輸血不要となるまで改善し、9割が長期生存するようになっている。一部の重症例や、発症後長期間を経過した例は免疫抑制療法によっても改善せず、定期的な赤血球輸血・血小板輸血を必要とする。赤血球輸血が40単位を超えると糖尿病・心不全・肝障害などの鉄過剰症による症状が現れる。最近では、デフェラシロクス(商品名:エクジェイド)による鉄キレート療法が行われるようになったため、輸血依存例の予後の改善が期待されている。一方、免疫抑制療法により改善した長期生存例の約5%が骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)、5~10%がPNHに移行する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 末梢血所見通常は赤血球、白血球、血小板のすべてが減少する。重症度の低い例では貧血と血小板減少だけしか認めないこともある。急性型では正球性正色素性、慢性型では通常大球性を示し、すべての例で網赤血球の増加を伴わない。重症例では好中球だけではなくリンパ球も減少する。■ 血液生化学検査血液生化学検査では血清鉄、鉄飽和率、血中エリスロポエチン値、トロンボポエチン値などの増加がみられる。とくにトロンボポエチンの増加は、前白血病状態との鑑別に重要である。トロンボポエチンが300pg/mL未満であれば再生不良性貧血は否定的である4)。■ 骨髄穿刺・生検所見再生不良性貧血と診断するためには両者を行うことが必須である。骨髄生検では細胞成分の占める割合が全体の30%以下に減少している。なかでも巨核球・幼若顆粒球・赤芽球の著しい減少が特徴的である。骨髄細胞が残存している場合には多くの例で赤芽球に異形成が認められる。好中球にも異形成を認めることがあるが、その割合が全好中球の10%を超えることはない。巨核球は減少しているため、異形成の有無は評価できないことが多い。ステージ4までの再生不良性貧血では、穿刺する場所によって骨髄が正形成または過形成を示すことがあるが、そのような場合でも巨核球は通常減少している。染色体は原則として正常であるが、病的意義の明らかでない染色体異常を少数認めることがある。■ 病理腸骨からの骨髄生検では細胞成分の占める割合が全体の30%以下に減少し、重症例では完全に脂肪髄化する(図1)。ただし、ステージ 1~3の患者では、細胞成分の多い部分が残存していることが多い。画像を拡大する■ 骨髄MRI骨髄穿刺・生検で評価できる骨髄は一部に限られるため、骨髄細胞密度を評価するためには胸腰椎を脂肪抑制画像で評価することが望ましい。重症再生不良性貧血例の胸腰椎をMRIで検索するとSTIR法では均一な低信号となり、T1強調画像では高信号を示す。ステージ3より重症度の低い例の胸腰椎画像は、残存する造血巣のため不均一なパターンを示す。■ フローサイトメトリーによるCD55・CD59陰性血球の検出Decay accelerating factor(DAF、CD55)、homologous restriction factor(HRF、CD59)などのGPIアンカー膜蛋白の欠失した血球の有無を、感度の高いフローサイトメトリーを用いて検索すると、明らかな溶血を伴わない再生不良性貧血患者の約半数に少数のCD55・CD59陰性血球が検出される。このようなPNH形質の血球陽性例は陰性例に比べて免疫抑制療法が効きやすく、また予後もよいことが知られている5)。■ 診断基準・鑑別診断わが国で使用されている診断基準を表2に示す1)。画像を拡大する再生不良性貧血との鑑別がとくに問題となるのは、MDS(2008年分類)のなかでも芽球の割合が少ないrefractory cytopenia with unilineage dysplasia(RCUD)、refractory cytopenia with multilineage dysplasia(RCMD)、idiopathic cytopenia of undetermined significance(ICUS)、骨髄不全の程度が強いPNH、欧米型の有毛細胞白血病などである。RCUD、RCMDまたはICUSが疑われる症例において、巨核球増加を伴わない血小板減少や血漿トロンボポエチンの上昇がみられる場合には、再生不良性貧血と同様の免疫病態による骨髄不全を考えたほうがよい。PNH形質血球の増加がみられる骨髄不全のうち、網赤血球の増加(>10万/μL)、正常上限の1.5倍を超えるLDH値の上昇、間接ビリルビンの上昇、ヘモグロビン尿などの溶血所見がみられる場合には、骨髄不全型PNHと診断する。骨髄生検上細網線維の増加や、血清可溶性インターロイキン2レセプター値の著増などがみられる場合は、有毛細胞白血病を疑う。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ ステージ1、2に対する治療輸血を必要としないこの重症度で、血球減少の進行がみられない場合には、血球減少が自然に回復する可能性があるため、無治療で経過をみることが勧められてきた。しかし、再生不良性貧血では診断から治療までの期間が長くなるほど免疫抑制療法の奏効率が低くなるため、診断後はできるだけ早期にCsAを投与して効果の有無をみたほうがよい。とくに血小板減少が先行する例は、免疫抑制療法に反応して改善することが多いので、血小板減少が軽度であっても、少量のCsAを短期間投与し反応性をみることが望ましい。図2は筆者の私案を示している。画像を拡大する■ 重症例(ステージ3以上など)に対する治療この重症度の患者に対する治療方針(筆者私案)を図3に示す。画像を拡大する患者が40歳以下でHLAの一致する同胞ドナーが得られる場合には、同種骨髄移植が第一選択の治療方法である。とくに20歳未満の患者では治療関連死亡の確率が低く、長期生存率も90%前後が期待できるため、最初から骨髄移植を行うことが勧められる。40歳以上の高齢患者に対してはATG・CsAか、ATG・CsA・エルトロンボパグ(ELT〔商品名:レボレード〕)併用療法を行う。サイモグロブリンの市販後調査によると、ステージ4・5例およびステージ2・3例におけるATG+CsAの有効率はそれぞれ44%(219/502)、64%(171/268)とされている。ELTは、ATG+CsAと同時またはATG+CsAの2週間後から併用することにより、ウマATG+CsAの有効率が90%まで向上することが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の臨床研究により示された6)。日本でも2017年8月より保険適用が認められ、初回のATG+CsA療法後に併用することが可能になっている。これにより、日本で唯一使用できるサイモグロブリンの有効率が高まる可能性がある。ただし、NIHの臨床試験では、2年間で約12%の症例に、第7染色体異常を中心とする新たな染色体異常が出現していることから、ELT併用によって異常造血幹細胞の増殖が誘発される可能性は否定できない。このため、若年患者に対する初回治療にELTを併用するかどうかは、患者の重症度、罹病期間、免疫病態マーカーの有無などを考慮して判断することが勧められる。とくに、治療前に骨髄FISH検査で第7染色体欠失細胞がないかどうかを確認する必要がある。保険で認められているサイモグロブリンの投与量は2.5~3.75mg/kgと幅が広く、至適投与量についてはよく分かっていない。サイモグロブリンは、リンフォグロブリンに比べて免疫抑制作用が強いため、サイトメガロウイルスやEBウイルスの再活性化のリスクが高いとされている。このため、治療後2~3週以降はできる限り頻回にEBウイルスコピー数をモニタリングする必要がある。重症例のうち初診時から好中球がほとんどなく、G-CSF投与後も好中球がまったく増えない劇症型の場合には、緊急的な臍帯血移植やHLA部分一致血縁ドナーからの移植適応がある。■ 難治例に対する治療免疫抑制療法が無効であった場合、初回治療としてELTが使用されなかった例に対しては約40%にELTの効果が期待できる7)。メテノロンやダナゾール(保険適用外)も重症度の低い一部の例には有効である。これらの薬物療法にすべて抵抗性であった場合には、非血縁ドナーからの骨髄移植の適応がある。支持療法としては、貧血症状の強さに応じて、ヘモグロビンで7g/dL以上を目安に1回あたり400mLの赤血球濃厚液‐LRを輸血する。輸血によって血清フェリチン値が1,000ng/mL以上となった場合には経口鉄キレート剤のデフェラシロクスを投与し、輸血後鉄過剰症による臓器障害を防ぐ。血小板数が1万/μL以下となっても、明らかな出血傾向がなければ予防的血小板輸血は通常行わないが、感染症を併発している場合や出血傾向が強いときには、血小板数が2万/μL以上となるように輸血を行う。4 今後の展望再生不良性貧血の発症の引き金となる自己抗原が同定されれば、その抗原に対する抗体や抗原特異的なT細胞を検出することによって、造血幹細胞に対する免疫的な攻撃によって起こった骨髄不全、すなわち再生不良性貧血であることが積極的に診断できるようになる。自己抗原やそれに対する特異的なT細胞が同定されれば、現在用いられているATGやCsAのような非特異的な免疫抑制剤ではなく、より選択的な治療法が開発される可能性がある。また、近年使用できるようになったELTは、治療抵抗性の再生不良性貧血に対しても約40%に奏効する画期的な薬剤であるが、どのような症例に奏効し、またどのような症例に染色体異常が誘発されるのか(ELTを使用すべきではないのか)は不明である。これらを明らかにするために前向きの臨床試験と定期的なゲノム解析が必要である。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)特発性造血障害に関する調査研究班(資料)(再生不良性貧血診療の参照ガイドがダウンロードできる)公的助成情報難病情報センター 再生不良性貧血(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報再生つばさの会(再生不良性貧血の患者と家族の会の情報)1)再生不良性貧血の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ. 再生不良性貧血診療の参照ガイド 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業特発性造血障害に関する調査研究班:特発性造血障害疾患の診療の参照ガイド(平成22年度改訂版); 2011. p3-32.2)Katagiri T, et al. Blood. 2011; 118: 6601-6609.3)Maruyama H, et al. Exp Hematol. 2016; 44: 931-939 e933.4)Seiki Y, et al. Haematologica. 2013; 98: 901-907.5)Sugimori C, et al. Blood. 2006; 107: 1308-1314.6)Townsley DM, et al. N Engl J Med. 2017; 376: 1540-1550.7)Olnes MJ, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 11-19.公開履歴初回2013年09月26日更新2018年01月23日

269.

病的肥満に対する袖状胃切除術 vs.ルーワイ胃バイパス術/JAMA

 病的肥満患者を対象とした、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術と腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術の比較検討で、術後5年時点での超過BMI減少率に有意差は確認されなかったことが示された。スイス・St ClaraspitalのRalph Peterli氏らが、減量、併存疾患の変化、QOLの改善、有害事象という点で、両手術の間で違いがあるかを検証した無作為化比較試験「SM-BOSS試験」の結果を報告した。病的肥満の治療において、スリーブ状胃切除術の使用が増加しているが、標準治療であるルーワイ胃バイパス術と比較した場合の、スリーブ状胃切除術の長期成績は不明であった。JAMA誌2018年1月16日号掲載の報告。病的肥満約200例で、スリーブ状胃切除術とルーワイ胃バイパス術を比較 SM-BOSS試験(Swiss Multicenter Bypass or Sleeve Study)は、2007年1月~2011年11月にスイスの肥満症治療センター4施設で実施された(最終追跡調査は2017年3月)。 減量手術を検討した病的肥満患者3,971例のうち、217例を登録し、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(SG)群(107例)または腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術(RYGB)群(110例)のいずれかに無作為に割り付け、5年間追跡した。 主要評価項目は体重減少で、超過BMI減少率(100×[ベースラインBMI値-追跡時BMI値]/[ベースラインBMI値-25])で算出した。併存疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸、胃食道逆流、関節痛、うつ、高尿酸血症)の変化および有害事象についても、探索的評価項目とした。5年後の超過BMI減少率に、両術式間で有意差なし 登録された217例(平均年齢45.5歳、女性72%、平均BMI値43.9)のうち、205例(94.5%)が試験を完遂した。 SG群とRYGB群とで、術後5年時の超過BMI減少率に有意差は確認されなかった(61.1% vs.68.3%、絶対差:-7.18%[95%CI:-14.30~-0.06]、多重比較補正後のp=0.22)。 胃食道逆流症は、RYGB群のほうがSG群より改善率が高く(60.4% vs.25.0%)、悪化(症状の悪化または治療の増加)率は低かった(6.3% vs.31.8%)。再手術または処置が必要となった患者数は、SG群101例中16例(15.8%)、RYGB群104例中23例(22.1%)であった。 なお、探索的評価項目の2型糖尿病については検出力が不足しており、厳格に管理された状況下での無作為化試験であるため一般化の可能性は低いなど、研究の限界について著者は指摘している。

270.

病的肥満にスリーブ状胃切除術vs.ルーワイ胃バイパス術/JAMA

 病的肥満患者に対し、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術に比べ、5年後の超過体重減少率において、その効果は同等ではないことが明らかにされた。また、ルーワイ胃バイパス術のほうがスリーブ状胃切除術と比べて5年後の超過体重減少率はより大きかったが、その差は事前規定の同等性マージンに照らして統計的に有意ではなかった。フィンランド・トゥルク大学のPaulina Salminen氏らが、240例を対象に行った多施設共同非盲検無作為化試験「SLEEVEPASS試験」の結果で、JAMA誌2018年1月16日号で発表された。同研究グループによれば、腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術と比較した長期的エビデンスがないにもかかわらず、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の施術件数は急増しているという。5年間追跡し超過体重減少率や併存疾患などを比較 SLEEVEPASS試験は、2008年3月~2010年6月に18~60歳の病的肥満患者240例を対象に行われた。 被験者は無作為に2群に分けられ、一方には腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(121例)が、もう一方には腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術(119例)が施術された。研究グループは、術後5年間追跡し、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術に対する有効性の同等性を検証した。 主要エンドポイントは超過体重減少率(%EWL)で、事前に規定した臨床的同等性マージンは-9~9%EWL。副次エンドポイントは、併存疾患の解消や生活の質(QOL)の改善、すべての有害事象(全罹患率)および死亡率などだった。有効性に有意差なし、QOLや治療関連死亡率も同等 被験者240例の平均年齢は48歳(SD 9)、ベースライン平均BMI値は45.9(SD 6.0)、女性は69.6%だった。80.4%が5年間の追跡を完了した。ベースライン時、2型糖尿病の罹患率は42.1%、脂質異常症は34.6%、高血圧症は70.8%だった。 5年後の推定平均%EWL値は、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術群が49%(95%信頼区間[CI]:45~52)だったのに対し、腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術群は57%(同:53~61)だった。胃バイパス術群のほうが高率で群間差は8.2%(同:3.2~13.2)であったが、信頼区間値が事前に規定したマージン内になく、同等性の基準は満たしていなかった。 一方で、2型糖尿病の完全または部分寛解が認められたのは、胃切除術群37%(41例中15例)、胃バイパス術群45%(40例中18例)だった(p>0.99)。脂質異常症治療薬の服用を中止した患者は、それぞれ47%、60%(p=0.15)、高血圧症治療薬の服用を中止した患者は、それぞれ29%、51%(p=0.02)だった。 QOL(p=0.85)や治療関連死亡率も、両群間で統計的有意差はなかった。5年後の全罹患率は、胃切除術群19%(23例)、胃バイパス術群26%(31例)だった(p=0.19)。

271.

睡眠時間長いと糖尿病リスク高、日系人で強い関連

 米国・ハワイ大学がんセンターのGertraud Maskarinec氏らが、日系アメリカ人を含む約15万人の多民族コホートにおいて2型糖尿病発症と睡眠時間の関連を調査したところ、睡眠時間が長い(9時間以上)と2型糖尿病リスクが12%高く、これは、炎症・脂質プロファイルの悪化・アディポネクチンの低下が介在する可能性が示唆された。Sleep health誌2018年2月号に掲載。 本研究は、ハワイおよびカリフォルニアにおける多民族コホートでの前向き研究で、1993~96年に参加者を募集した。参加者は、白人、アフリカ系アメリカ人、日系アメリカ人、ハワイ先住民、ラテン系の15万1,691人で、9,695人はバイオマーカーが測定された。睡眠持続時間はコホート参加時に自己申告され、糖尿病の状況は3種類のアンケートで入手、3種類の管理データで確認した。バイオマーカーは、参加後9.6±2.1年間、標準測定法により測定した。時変アウトカムとしての糖尿病リスクをCox回帰により推定した。 主な結果は以下のとおり。・7.9±3.5年の追跡期間中、8,487例が糖尿病の新規発症と診断された。・7~8時間の睡眠時間と比較して、9時間以上では高い発症率(ハザード比:1.12、95%CI:1.04〜2.11)と有意に関連した。6時間以下では発症率が4%高かったが有意ではなかった(95%CI:0.99~1.09)。他の民族より日系アメリカ人において、また併存疾患のない参加者において関連が強かった。・睡眠時間は、CRPおよびトリグリライドと正相関し、HDLコレステロールおよびアディポネクチンと逆相関したが、レプチンレベルおよびインスリン抵抗性指数とは関連しなかった。

272.

不眠症患者におけるスボレキサントの覚醒状態軽減効果に関する分析

 中途覚醒を減少させるスボレキサントの効果について、米国・メルク・アンド・カンパニーのVladimir Svetnik氏らは、覚醒発作の持続時間および頻度に関して調査を行った。Sleep誌オンライン版2017年11月3日号の報告。 スボレキサント(40/30mg、20/15mg)またはプラセボの投与を行った不眠症患者1,518例を対象とした臨床試験データの睡眠ポリグラフの記録より、長いまたは短い覚醒発作の回数および時間、睡眠の質と発作特性との関連を分析した。覚醒および睡眠発作の特性について、不眠症患者におけるスボレキサントと実験的に一過性不眠症を誘発させた健康な被験者におけるゾルピデムに関して比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・スボレキサントは、プラセボと比較し、長い覚醒発作(2分超)の回数や時間を減少させ、短い覚醒発作(2分以内)の回数や時間を増加させた。・第1夜目における長い覚醒発作の時間は、32~54分短縮され、短い覚醒発作の時間は、2~6分増加した。・スボレキサントは、プラセボと比較し、長い覚醒から睡眠に戻る時間が平均して2倍速かった。・長い覚醒発作に費やした時間が短縮されることは、プラセボに対し自己報告により睡眠の質が良好/優れるとするオッズ比が1.59~2.19であった。・短い覚醒発作に費やした時間がわずかに増加しても、オッズ比に影響を及ぼさなかった。・スボレキサントの高用量投与(40/30mg)では、この所見がより顕著であった。・スボレキサントの覚醒および睡眠発作の特性は、入眠初期段階のすべての期間において覚醒および睡眠発作の回数を同様に減少させたゾルピデムとは異なっていた。 著者らは「スボレキサントは、長い覚醒発作を減少させることにより、中途覚醒を減少させる。そして、このことが睡眠の質に良い影響を及ぼす」としている。■関連記事2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは新規不眠症治療薬は安全に使用できるか不眠症になりやすい食事の傾向

273.

シェーグレン症候群〔SS:Sjogren's syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義眼・口腔乾燥を主症状とし、多彩な全身臓器症状を呈し、慢性に経過する全身性自己免疫疾患である。疾患名は1933年に報告したスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレン(Henrik Sjogren *oはウムラウト)に由来する。■ 疫学中年以降の女性に好発(女性 vs.男性 14 vs.1)し、国内に少なくとも数万人(厚生労働省研究班推定)の罹患数とされ、潜在例はさらに多いと推定されている。■ 病因病理学的には、涙腺・唾液腺などの外分泌腺にリンパ球浸潤とそれに伴う腺構造破壊、線維化が認められる。免疫学的には、リンパ球・サイトカイン・ケモカイン異常、高IgG血症、多彩な自己抗体産生が認められる。■ 症状1)腺症状ドライアイ(眼乾燥)、ドライマウス(口腔乾燥)が二大症状である。気道粘膜、胃腸、膣、汗腺などの分泌腺障害に起因する乾燥症状を認める例もある。2)全身症状・腺外臓器病変(1)全身:微熱、倦怠感(2)甲状腺:慢性甲状腺炎(3)心血管:肺高血圧症(4)肺:間質性肺疾患(5)消化器:慢性胃炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変(6)腎臓:間質性腎炎、腎尿細管性アシドーシス(7)神経:末梢神経障害(三叉神経障害)、中枢神経障害(無菌性髄膜炎、横断性脊髄炎)(8)関節:多関節炎(9)皮膚:環状紅斑(疾患特異性が高い)、高ガンマグロブリン性紫斑(下腿点状出血斑)、薬疹(10)リンパ:単クローン性病変、悪性リンパ腫(11)精神:うつ病■ 分類本疾患のみを認める一次性(原発性)とほかの膠原病を合併する二次性(続発性)に分類される。■ 予後腺症状のみであれば生命予後は一般に良好である。腺外症状、とくに悪性リンパ腫を認める例では予後が不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見1)血液検査異常(1)腺障害:血清唾液腺アミラーゼ上昇(2)免疫異常:疾患標識自己抗体(抗SSA抗体、抗SSB抗体)・リウマトイド因子・抗核抗体陽性、高ガンマグロブリン血症、末梢リンパ球数減少を認める。2)腺機能検査異常涙液分泌低下は、シルマーテスト、涙液層破壊時間(BUT)により評価する。乾燥性角結膜炎は、ローズベンガル染色、フルオレセイン染色、リサミングリーン染色を用いて評価する。唾液分泌低下は、ガムテスト、サクソンテストにより評価、より客観的には唾液腺シンチグラフィーが用いられる。涙腺、唾液腺の形態は、超音波あるいはMRI検査により評価される。3)腺外臓器病変に応じた各種検査肺野およびリンパ節の評価についてはCT検査が有用である。また、間質性腎炎の評価には尿検査が行われる。● 診断で考慮すべき点潜在例も多く、その可能性を疑うことが診断への第一歩である。ドライアイ、ドライマウスの有無を問診し、典型例では問診のみで診断がつくこともある。本疾患が疑われた際は、診断基準に沿って確定診断を行うことが望ましい。しばしば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などの他の自己免疫疾患を合併する。診断のための検査が困難である場合には、専門施設への紹介を考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 腺症状1)眼点眼薬(人工涙液、ムチン/水分分泌促進薬、自己血清)、涙点プラグ挿入術、ドライアイ保護眼鏡装用2)口腔催唾薬(M3ムスカリン作動性アセチルコリン受容体刺激薬)、唾液噴霧薬がそれぞれ用いられる。■ 腺外症状 全身症状に対しては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられる。免疫学的な活動性が高く、臓器障害を呈する症例では、ステロイドおよび免疫抑制薬が用いられる。● 治療で考慮すべき点眼症状に対しては治療が比較的奏功する一方で、口腔乾燥症状は改善が乏しい例も多い。腺症状に対するステロイドの有用性は否定的である。リンパ増殖性疾患、悪性リンパ腫を含む腺外症状もまれではないため、注意深く経過観察する。腺外臓器病変、ほかの膠原病を有する例は、リウマチ内科専門医へのコンサルトを考慮する。不定愁訴が多い例もあるが、本疾患を正しく理解をしてもらえるようによく患者に説明する。4 今後の展望欧米では、抗CD20モノクローナル抗体の臨床試験が報告されているが、その有用性については十分確立されていない。リンパ球などの免疫担当細胞を標的とした新規治療薬の臨床試験が国際的に進められている。5 主たる診療科リウマチ科(全身倦怠感、関節痛、リンパ節腫脹)、眼科(眼乾燥症状)耳鼻咽喉科(リンパ節腫脹、唾液腺症状)、歯科・口腔外科(口腔・乾燥症状)、小児科(小児例)6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難病情報センター シェーグレン症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本シェーグレン症候群学会(医療従事者向けのまとまった情報)シェーグレン症候群財団ホームページ(米国)(医療従事者向けのまとまった情報)Up to date(医療従事者向けのまとまった情報)1)Firestein GS, et al. Kelley and Firestein’s Textbook of Rheumatology 10th edition.Philadelphia;Elsevier Saunders:2016.2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究班 編集. シェーグレン症候群診療ガイドライン2017年版.診断と治療社;2017.3)日本シェーグレン症候群学会 編集.シェーグレン症候群の診断と治療マニュアル 改訂第2版.診断と治療社;2014.公開履歴初回2017年12月12日

274.

生物学的製剤がSLE治療へ

 グラクソ・スミスクライン株式会社は、2017年11月28日、都内において「女性のライフコース選択に影響を及ぼす難病 全身性エリテマトーデス(SLE)治療における生物学的製剤への期待」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーは、同社から発売予定のベリムマブ(商品名:ベンリスタ)が、9月27日に製造販売の承認を取得したことを機に開催されたものである(薬価収載は11月22日)。セミナーでは、全身性エリテマトーデス(以下「SLE」と略す)の最新知見の講演のほか、同薬剤の説明も行われた。諸刃の剣のステロイド治療 はじめに竹内 勤氏(慶應義塾大学医学部 リウマチ膠原病内科 教授)が、「全身性エリテマトーデス(SLE)」をテーマに講演を行った。 SLEは、膠原病の原型で自己免疫病、結合組織病、リウマチ病の3要素が交差する難病であり、特徴的な症状として白血球減少、低補体血症、蛋白尿を呈する。推定患者数は6万人とされ、男女比では1:8と女性に多く発症する。 その多くは孤発性で、地域差はないが遺伝的要素は否定できないという。発症機序としては、ウイルス感染、紫外線、薬剤などの環境要因とHLAなどの遺伝要因の作用が考えられ、そのためにトレランス破綻、アポトーシス欠陥などが起こり、自己抗体の生成、免疫複合体、サイトカインの発生などが誘発されると考えられている。 診断では、次の臨床症状と抗体検査により確定診断される。SLEでは多彩な臨床症状を示し、発熱、関節炎、頬部紅斑(蝶形紅斑)、日光過敏、レイノー現象、腎障害などが現れる。とくに腎症状は50%近くで発生する。増悪と寛解を繰り返すSLEでは、ステロイド治療も相まって他の臓器ダメージを蓄積するために、臓器障害への対応が重要だという。 SLEの予後向上のポイントとしては、1)疾患活動性の速やかなコントロール、2)感染症、血管合併症対策、3)ステロイドの副作用を最小限にすることが求められ、治療でのステロイド減量をいかに行うかが課題だと指摘する。ステロイド減量ができ、再燃させないことへの期待 SLEの治療は、重症度に応じてプレドニゾロンによるステロイド療法が行われ、現在では大量に短い期間で投与する傾向にある。また、ステロイド単独での寛解導入も減少し、最近では免疫抑制薬との併用が増加しているという。 こうした治療環境の中で登場した生物学的製剤ベリムマブは、Bリンパ球刺激因子(BLyS)を標的とし、B細胞の生存の延長や増殖の補助刺激および抗原提示機能などを抑制する作用により、SLEの疾患活動性を低下させる治療薬である。 最後に竹内氏は、「こうした治療薬が登場することで、重症病態に有効で、活動性残存症例を寛解に導き、その状況を維持できる(再燃しない)効果があり、長期的なQOL改善が達成されることを期待したい。また、今後は転帰を指標とした評価も必要になる」と展望を語り、レクチャーを終えた。SLEの症状コントロールを容易に 続いて、ベリムマブの特徴について、同社の杉浦 亙氏(メディカル・アフェアーズ部門)が次のように説明を行った。 ベリムマブは、BLySに結合することで自己抗体の産生を抑え、SLEの疾患活動性を低下させる効果をもたらす。対象はSLEの既存治療で効果不十分な患者で、点滴製剤と皮下注製剤を提供するとしている。海外では2017年6月時点で、点滴製剤は70ヵ国以上で承認されている。 第III相国際共同試験(BLISS-NEA試験)は、疾患活動性を有するSLE患者707例をベリムマブ併用群とプラセボ併用群にランダム化し、SRI4(SLE Responder Index4)レスポンダー率、再燃率、ステロイド累積投与量、疲労感を最終評価として52週にわたり行われた。 SRI4レスポンダー率について、ベリムマブ併用群はプラセボ併用群に比べ約13%高く(p=0.0001)、再燃率ではベリムマブ併用群がプラセボ併用群に比べ約12%低下していた(p=0.0003)。また、ステロイドの累積投与量もプラセボ併用群4,758.13mgに対しベリムマブ併用群は4,190.00mgと有意に減少し(p=0.0005)、疲労感(FACIT-Fatigueスコア)の平均変化量はプラセボ併用群2.07に対しベリムマブ併用群4.77と有意に改善されていた(p<0.0003)。 また、安全性では、有害事象発現数に両群で差はなかった。

275.

“新型タバコ”でタバコの害なくせますか?

 世界保健機構(WHO)によれば、世界では年間700万人がタバコ類の使用により命を落としている。また、禁煙の早期実施により肺がんの発生が少なくなることも明らかになり、タバコを巡る規制は世界的に強まっている。そのような中、電子タバコや非燃焼加熱式タバコ(Heat–Not-Burn、以下HNB)といった“新型タバコ”の市場が拡大している。世界における新型タバコの状況 横浜で行われた世界肺癌学会(WCLC)では、米国・Human Rights and Tobacco Control NetworkのCarolyn M Dresler氏が「Current Status of Smoking Cessation」と題し、新型タバコを取り巻く世界の状況を紹介した。 電子タバコは、ニコチンを含むENDS(Electronic Nicotine Delivery Systems)とニコチンを含まないENNDS(Electronic Non-Nicotine Delivery Systems)に分かれる。電子タバコの規制については、国際的にもいまだに統一されていない。オーストラリア、シンガポール、カナダでは禁止されている一方、英国では従来型タバコからの切り替えを目的として使用を推奨している。日本では、ニコチンを含まないものに限り認められている。 HNBはその名の通り、タバコ葉を燃焼温度以下に加熱し(あるいは加熱発生させたエアロゾルをニコチン粉末に通過させて)、ニコチンを含むエアロゾルを肺内に送達するもの。フィリップ モリス インターナショナル(PMI)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)、JT(日本たばこ)インターナショナル(JTI)など世界の大手タバコ企業が競って、製品の開発と普及に力を注ぐ。PMIのアイコス、BATのiFuse(本邦ではグロー)、JTIのプルーム・テックがあり、いずれの製品も非常に好調な販売状況である。本邦においてもその好調ぶりは同様で、アイコスは2015年11月のオンライン上での発売開始から、2017年5月現在、市場シェアの8.8%を占めるまでに拡大しているという。PMIのCEO:Andre Calantzopoulos氏はNikkei Asian Reviewで「販売数から推定すると、論理的には5年間で転換点に達する。そこが、現状の燃焼系タバコの段階的廃止を政府と話し合う時期になるだろう」と述べている。 新型タバコの健康への影響はどうか。これについては、「議論の余地が残るところであり、さまざまなシステマティックレビューが発表されている」とDresler氏は述べた。同氏が紹介した米国国立がん研究所(NCI)による電子タバコ使用者の尿中の分析では、PHA、NNK、アクロレインといった有害物質は従来のタバコに比べ著明に減少している。しかし、ニコチンについては従来型タバコと差異がなかった。HNBについては、製造企業であるPMIによるアイコス使用5日および90日の有害物質の曝露結果が紹介された。その研究では、カーボンモノオキサイド、アクロレイン、ベンゼンなどの有害物質は禁煙者と同等の減少を示すという結果を公表している。 また、ニコチンを含む新型タバコが、喫煙者の喫煙行動に影響を与えるのか。この問題も議論の余地が残るところであるが、Dresler氏が紹介した2014~15年の全米タバコ調査(Current Population Survey-Tobacco Use Supplement:CPS-TUS)における、電子タバコ使用者と禁煙者の比較分析では、電子タバコ使用者と非使用者の3ヵ月時点での禁煙成功率は、電子タバコ使用者では8.2%、非使用者では4.8%と、電子タバコ使用者のほうが高い結果を示した。新型タバコの普及を憂慮する意見も多数 このような新型タバコの役割に期待する考えと共に、憂慮する意見も数多くある。日本呼吸器学会は新型タバコの国民の健康に対する影響や社会的影響について、「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに関する日本呼吸器学会の見解」を公式ホームページに掲載した。その内容は以下のとおり。 従来のタバコの代替品として新型タバコを推奨する考え方があるが、新型タバコの使用と病気や死亡リスクとの関連性については現時点では明らかでなく、科学的証拠が得られるまでには、かなりの時間を要し、「現時点では推測にすぎない」。新型タバコは、煙が出ない、あるいは煙が見えにくいとされているが、特殊なレーザー光を照射すると大量の“見えにくいエアロゾル”を呼出している。この呼出煙中には燃焼タバコと同レベルのニコチンや数倍の有害物質が含まれているとの報告があり、「新型タバコの使用は健康に悪影響がもたらされる可能性がある」としている。また、新型タバコの受動喫煙については、健康リスクの科学的証拠を得るには時間がかかるが、「使用者の呼出したエアロゾルが周囲に拡散するため受動喫煙による健康被害が生じる可能性がある」。「従来の燃焼式タバコと同様に、公共の場所、公共交通機関での使用は認められない」との見解を示した。 日本対がん協会の望月友美子氏も、新型タバコの広がりに懸念を示す。同じく世界肺癌学会(WCLC)のプレスセミナーにて以下のように述べた。 日本では近年、HNB製品が急速に広がりを示している。日本には多くの禁煙クリニックがあるが、アクセスが限定されており費用も高い。新型タバコ使用者は、禁煙クリニックに行く代わりに、コンビニエンスストアで簡単に手に入るHNB製品を購入することができる。これが禁煙活動の拡大を妨げてしまう可能性が懸念されるという。望月氏はまた、新型タバコの公共喫煙規制に対する問題点にも触れた。本邦で検討している受動喫煙防止法の議論の中に、新型タバコは含まれていない。東京都で定めた18歳未満の子どもの受動喫煙防止を求める「子どもを受動喫煙から守る条例」では、HNBも規制対象にしているが、全国で一定の基準はなく、地域により対応はさまざまである。この点についても、「後戻りができなくなる前に、新型タバコの取り扱いに対する厳格な規定を作る必要がある」と望月氏は述べた。■参考米国国立がん研究所(NCI)による電子たばこの研究フィリップ モリス インターナショナル社の研究全米たばこ調査による分析結果PMI CEO Andre Calantzopoulos氏インタビュー(Nikkei Asian Preview)非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解日本呼吸器学会の見解中に引用されているWHOの報告書東京都子どもを受動喫煙から守る条例

276.

~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【整形外科編】

第1回 筋骨格系の診察の基本 第2回 筋膜性疼痛とトリガーポイントについて 第3回 肉離れの診断と治療 第4回 むちうちと緊張性頭痛 第5回 肩関節の診察と五十肩 第6回 肩の痛みの鑑別第7回 腰痛の鑑別 第8回 腰痛のレッドフラッグ 第9回 腰痛の治療 第10回 膝痛の鑑別 第11回 膝関節穿刺 第12回 骨折を疑うときの診察と画像診断 第13回 骨折の初期対応 第14回 骨粗鬆症の診断と治療 「五十肩と言われたときどう診察する?」「専門医に紹介すべき腰痛は?」「膝関節穿刺のコツは?」などの整形外科領域の診療に関する疑問を、プライマリケア医視点で前野哲博氏が厳選。整形外科のスペシャリスト斉藤究氏が、日常診療に役立つノウハウを交えてそれらの疑問に答えます!第1回 筋骨格系の診察の基本 内科の診察であっても、よく診る患者から腰痛、膝痛など整形外科領域の相談を受けることもあるのではないでしょうか。整形外科といっても、実は問診が最も重要。単に痛い箇所を聞くだけでは、適切な治療につなげることはできません。問診で必ず確認すべきポイント、痛みの原因を特定するために押さえるべき診察項目を伝授します。第2回 筋膜性疼痛とトリガーポイントについて腰痛や肩こりなどの慢性的な痛みに対して、鎮痛薬を処方するしかないのでしょうか?筋膜性疼痛とトリガーポイントについて知っていると、内科でできる治療選択肢が増えます。今回は筋膜性疼痛の概念と、トリガーポイントを発見するアセスメントを紹介します。第3回 肉離れの診断と治療 内科でもよく出合う整形外科領域の訴え、肉離れはどこまで内科で診てよいのでしょうか?また内科で行うべき処置は?専門医に送るべきタイミングの判断まで、ズバリ回答します。第4回 むちうちと緊張性頭痛 むちうちの症状が長引く原因は、複数の要素が絡み合っていることだと斉藤先生は言います。なかには、緊張性頭痛をむちうち由来の症状と思っている場合も。今回は、患者の訴えが長引く原因を明らかにし、内科でできる対応を学びます。第5回 肩関節の診察と五十肩 患者さんから「五十肩」で肩が上がらない、と言われることはありませんか?いわゆる五十肩はおもに肩関節周囲炎です。今回は肩関節の診察方法、専門医に紹介すべき例、そしてプライマリケアで行える治療を挙げて、「五十肩」と言われたときの対応を解説します。 第6回 肩の痛みの鑑別肩が痛いといっても、痛みの部位やできない動作によって原因が異なります。今回は紹介すべき疾患と、保存的に診療してよい疾患を見分ける方法を、身体診察を交えて解説します。第7回 腰痛の鑑別 腰痛の8割以上が非特異的腰痛…つまり原因がわからない?これは画像検査では原因が見えないだけ。筋肉の触診や可動域の確認で診断ができるものが多くあります。しかも身体診察のコツを知れば、プライマリケアでも鑑別可能。ただし、鑑別疾患を理解していることが必須です。今回は非特異的腰痛の中で頻度が高い仙腸関節性腰痛や椎間関節性腰痛などを解説します。第8回 腰痛のレッドフラッグ 腰痛の大半は筋疲労などによる非特異的腰痛と考えても問題はないでしょう。とはいうものの、中には治療が必要な疾患も潜んでいます。拾い上げるべきレッドフラッグの症例を例に、腰痛に伴うどんな症状を見逃さずに拾い上げるべきか解説します。とくに注意すべきポイントは高齢者と若年者で異なります。それぞれの特徴的な訴えを押さえて、見逃さずに診断するコツをつかんでください。第9回 腰痛の治療 腰痛の治療はずっと湿布とNSAIDs…でいいのでしょうか?慢性化した場合ほど、全身状態の改善や心理的なケアといった取り組むべき課題があります。そしてそれらを解消していくことが、意外にも原因療法になるのです。腰痛だけでなく慢性疼痛全般に応用できる痛みの回避モデルとその対応方法は必見です。第10回 膝痛の鑑別 膝が痛いというと、真っ先に変形性膝関節症(OA)を鑑別に挙げていませんか?膝も画像偏重で診断してはダメ。まず重要なのは触診です。膝痛に関連する筋肉群を押さえておきましょう。その上で一見OAに見える症例や専門医への紹介が必要な事例の見分け方を解説します。第11回 膝関節穿刺 どんなときに膝関節穿刺が必要?引いた液で疾患の鑑別ができるので、やはり穿刺はしておきたいところ。今回はプライマリケアで膝関節穿刺を行うべきタイミングと、手技のポイントをコンパクトに解説します。ヒアルロン酸注射にも応用できる手技解説は必見です。第12回 骨折を疑うときの診察と画像診断 「骨折を見落としたくない!」これはプライマリケア医に共通の心配ではないでしょうか?今回は、骨折を疑うとき、何を見て、どう対処すればよいか、クリアカットに解説します。診察のポイントは画像より●●。これを押さえていれば、見落としを恐れることはなくなります!外来での遭遇頻度が高い、転倒や高齢者に起こりやすい骨折など、具体的な例を挙げて身体診察のコツも伝授します。第13回 骨折の初期対応 骨折を疑うときの初期対応はシンプル。対応のルールと、固定の方法をしっかり押さえておきましょう。基本に忠実に、かつ回復を妨げない固定のTIPSは必見です。第14回 骨粗鬆症の診断と治療 骨粗鬆症診療のキモは、検査、薬剤、フォロー。骨密度検査を勧めるべき患者の条件は初めに押さえましょう。スペシャリストが教える骨密度に応じた薬剤選択、長期服用による副作用が心配されるビスホスホネートの扱い方は必見です。

277.

睡眠不足がADHDの有無にかかわらず小児に及ぼす負の影響

 睡眠に関する問題は、注意欠如多動症(ADHD)においてよく報告されているが、典型的な発達(TD)においてもよく見られる特徴である。英国・ロンドン大学(UCL)のFrances Le Cornu Knight氏らは、睡眠とADHD様行動や認知不注意との関連について、ADHD児とTD児においてどのように出現するかを検討した。Behavioral sleep medicine誌オンライン版2017年10月26日号の報告。 対象は、ADHDと診断された5~11歳の子供18例および年齢の一致したTD児20例。睡眠プロファイルは、子供の睡眠習慣に関するアンケートおよびアクチグラフ測定を用いて評価した。行動機能は、Conners' Parent Report Scaleを用い、注意力は、コンピューター化されたConners' Continuous Performance Taskを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・実際の睡眠時間に差がないにもかかわらず、ADHD群では睡眠の質が悪かった・TD児の睡眠の質の低下は、注意力と関連がないにもかかわらず、ADHD様行動の増加が予測された。・行動との関連がないにもかかわらず、ADHD児の注意力低下を予測する睡眠の質の低下に関して一貫した傾向が認められた。 著者らは「不十分な睡眠の質は、さまざまな形で発達のサブグループに影響を及ぼす。ADHD児では、睡眠不足が注意欠如を悪化させ、TD児では、ADHD様行動を誘発した。本知見は、小児期の過剰なADHD診断および睡眠に基づく介入の必要性を考えるうえで、重要な意味を持つ。まずは、すべての子供において、より良い睡眠習慣を促進することが重要である」としている。■関連記事ADHD発症しやすい家庭の傾向小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析ADHD児への運動効果は

278.

改訂版QDiabetesで2型糖尿病の10年リスクを予測/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが、2型糖尿病の絶対リスクを定量化する、モデルA~Cの3つの改訂版QDiabetesリスクモデルを開発・検証した。モデルAは血液検査を必要とせず、空腹時血糖値(モデルB)またはHbA1c(モデルC)を測定すべき患者の特定に利用でき、モデルBの2型糖尿病10年リスク予測は、介入や積極的な追跡調査を必要とする患者の特定に有用であるという。著者は、「臨床現場でモデルを使用する前に、血糖値をより完全に収集したデータセットで、モデルBとCの付加的な外部検証が必要だろう」とまとめている。BMJ誌2017年11月20日号掲載の報告。英国プライマリケア患者1,150万例のデータから予測モデルを開発 研究グループは、男性および女性の2型糖尿病10年リスクを推定するため、新たなリスク因子を加えた改訂版QDiabetes-2018予測アルゴリズムを作成し、その性能を現在使用している方法と比較する前向きコホート研究を行った。 QResearchデータベースに登録している一般診療所1,457施設のデータを用い(このうち1,094施設はスコアの開発に、363施設はスコアの検証に使用)、ベースライン時に糖尿病ではない25~84歳の1,150万例のデータを解析した。このうち、887万例を開発コホート、263万例を検証コホートとした。 開発コホートでは、Cox比例ハザードモデルにより、男女別に10年評価のリスク因子を抽出した。リスク因子は、すでにQDiabetesに含まれている年齢・民族・貧困・BMI・喫煙歴・糖尿病の家族歴・心血管疾患・高血圧治療歴・定期的なコルチコステロイド使用と、新たなリスク因子として非定型抗精神病薬、スタチン、統合失調症/双極性障害、学習障害、妊娠糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群を検証した。追加モデルには、空腹時血糖値とHbA1cを組み込んだ。検証コホートでは、男女別に、また年齢・民族・ベースライン時の疾患状態のサブグループ別に、較正と識別能を評価した。 主要評価項目は、一般診療所の診療録に記載された2型糖尿病の発症とした。改訂版は3種、空腹時血糖値を組み込んだモデルの識別能が最も高い 2型糖尿病の発症は、開発コホートでは4,272万観察人年において17万8,314件、検証コホートでは1,432万観察人年において6万2,326件が確認された。新規リスク因子のすべてが、本モデルの適格基準を満たし、モデルAには、年齢・民族・貧困・BMI・喫煙歴・糖尿病の家族歴・心血管疾患・高血圧治療歴・定期的なコルチコステロイド使用と、新規リスク因子の非定型抗精神病薬、スタチン、統合失調症/双極性障害、学習障害、妊娠糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群が組み込まれた。モデルBはモデルAに空腹時血糖値を、モデルCはモデルAにHbA1cを加えた。 A~Cの3つのモデルは、検証コホートにおいて良好な結果が得られ識別能が高かった。女性では、モデルBにおいてR2(2型糖尿病診断までにモデルで説明される変量)63.3%、D統計量2.69、C統計量0.89、男性ではそれぞれ58.4%、2.42、0.87であった。このモデルBは、現在National Health Serviceで推奨されている空腹時血糖値またはHbA1cに基づく診療との比較において、感度が最も高かった。ただし、空腹時血糖値、喫煙歴、BMIの完全なデータがあったのは、患者の16%のみであった。

279.

不眠症への指圧効果

 不眠症に対する低コストの代替治療法としての可能性を有する「自分自身による指圧」。中国・香港理工大学のWing-Fai Yeung氏らは、不眠症緩和を目的とした「自分自身による指圧」の短期的効果を評価するため、パイロット無作為化比較試験を行った。Journal of sleep research誌オンライン版2017年9月8日号の報告。 対象は、不眠症患者31例(平均年齢53.2歳、女性77.4%)。対象者は、「自分自身による指圧」(指圧群)または睡眠衛生教育(比較群)のいずれかのレッスンを受講するようランダム化された。指圧群の15例は、4週間毎日、自分自身で指圧をするよう指示された。比較群の16例は、睡眠衛生教育に従うよう指示された。主要アウトカムは、不眠重症度指数(ISI)とした。また、睡眠日誌、HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)、SF-6D(Short-form Six-Dimension)についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・8週目において、指圧群は比較群よりも、ISIスコアが有意に低かった(エフェクトサイズ:0.56、p=0.03)。・しかし、この有意差は、Bonferroni法で調整後、統計学的に有意なレベルに達しなかった。・副次的アウトカムに関しては、睡眠日誌に基づいた睡眠潜時および中途覚醒において中程度の群間エフェクトサイズの差が認められたが、統計学的に有意ではなかった。・指圧群のアドヒアランスは良好であり、92.3%の患者は、レッスン終了後も8週目まで指圧を実践していた。 著者らは「短期トレーニングによる[自分自身による指圧]は、不眠症を改善するために実現可能なアプローチの可能性がある。この効果は、より検出力のある試験で確認する必要がある」としている。■関連記事不眠症になりやすい食事の傾向音楽療法が不眠症に有用睡眠不足だと認知症になりやすいのか

280.

スマホ依存症になりやすい性格タイプ

 レバノン・Notre Dame University-LouaizeのJocelyne Matar Boumosleh氏らは、大学生サンプルにおけるスマートフォン依存症の有病率とうつ病や不安症との関連を評価した。PLOS ONE誌2017年8月4日号の報告。 対象は、レバノンの大学生688人(平均年齢:20.64±1.88歳、男性:53%)のランダムサンプル。社会人口統計学、大学、ライフスタイル、性格特性、スマートフォン使用に関連する項目について質問を行った。26項目のスマートフォン依存尺度(Smartphone Addiction Inventory:SPAI)、うつ病および全般不安症の2つの中心的なDSM-IV項目を構成する簡潔なスクリーニングPHQ-2およびGAD-2を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・スマートフォンに関連した強迫行動、機能障害、耐容性、禁断症状の有病率は非常に高かった。・深夜のスマートフォン使用によって日中の疲れを感じる人35.9%、睡眠の質が低下した人38.1%、スマートフォン使用により睡眠時間が4時間未満の人35.8%であった。・性別、居住地、週の労働時間、学部、学業成績、生活習慣(喫煙、アルコール摂取)、宗教は、スマートフォン依存症と関連が認められなかった。・一方、スマートフォン依存症と統計学的に有意な関連が示されたのは、性格タイプA、学年(2年 vs.3年)、スマートフォン使用開始年齢の低さ、平日の過度な使用、家族への電話に使用することなく娯楽のために使用、うつや不安症を有する、であった。・うつ病および不安症スコアは、交絡因子で調整した後、スマートフォン依存症の独立した正の予測因子であった。 著者らは「性格タイプAの若者が、高ストレスや低気分を経験すると、ストレスに対処するメカニズムや気分をコントロールするスキルが不足し、スマートフォン依存症に非常に陥りやすい可能性がある」としている。■関連記事スマホSNS、2時間日以上でうつ病リスク増加:名大女子学生の摂食障害への有効な対処法たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

検索結果 合計:411件 表示位置:261 - 280