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マントル細胞リンパ腫〔MCL: Mantle cell lymphoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma:MCL)は、1992年にBanks氏らにより独立した疾患単位として提唱された悪性リンパ腫である。WHO分類第4版では、核不整を伴う小型、中型のリンパ球が単調に増殖するB細胞腫瘍であり、Cyclin D1遺伝子の転座を伴うと定義される1)。■ 疫学MCLは、非ホジキンリンパ腫の3~10%を占め、中年から高年層に多く、好発年齢は60歳前後で、男性に多く発症する1)。わが国においては、悪性リンパ腫の2~4%程度と報告されており、比較的まれな病理組織型である。■ 病因14q32に存在する免疫グロブリン重鎖遺伝子(IgH)と11q13に存在するCCND1遺伝子の相互転座 t(11;14)(q13;q32)により、Cyclin D1の過剰発現が生じて腫瘍細胞増殖を促進すると考えられている。さらに近年の分子生物学的研究の成果により、染色体転座に加えMCL発症に重要な役割を果たしていると考えられる遺伝子変異が同定されている。DNA修復に関わるATM遺伝子、クロマチン修飾に関わるWHSK1、MLL2およびMEF2B遺伝子、NFκBに関わるBIRC3遺伝子、Notchシグナルに関わるNOTCH1/2遺伝子などである。また、MCLの一部においてB細胞受容体(B-cell receptor:BCR)を介したシグナル伝達が恒常的に活性化しており、染色体転座および遺伝子変異と同様にMCLの発症に関与していると考えられている。とくにNFκBやBCRシグナルに関わる分子は、MCLにおける重要な治療標的と考えられるようになり、それらを標的とした分子標的薬の臨床導入も検討されている。Cyclin D1陰性例がMCLの5%以下に認められるが、そのような症例はCyclin D2、D3の過剰発現が確認されており、少数例の解析ではあるが、Cyclin D1陽性の典型例と陰性例で臨床的特徴や予後は変わらないと報告されている。■ 症状MCLの初発症状は、その他の非ホジキンリンパ腫と同様にリンパ節腫大で発症することが多く、特有の症状はない。しかし、MCLは90%近い患者において初発時に臨床病期III期・IV期の進行期であり、表在リンパ節腫大・脾腫以外に、節外病変に伴う症状を高頻度に認める。骨髄浸潤は50~70%に認める。消化管浸潤が20~30%に認められるため、腹部膨満・腹痛・下痢などの消化器症状を主訴として、消化器内科を受診して発見される患者も比較的多い。また、眼窩の腫脹で眼科を受診し、リンパ腫が疑われる場合もあり、多彩な症状で発見されることが特徴である。■ 分類MCLは、病理組織学的に腫瘍細胞は小型~中型の比較的均一な細胞の増殖からなり、腫瘍細胞にはアポトーシス像や分裂像をほとんど認めず、このような形態を示す例が9割近くを占める。その他に芽球様型(blastoid variant)、多形性型(pleomorphic variant)および小細胞型(small cell variant)と呼ばれる細胞形態学的亜型に分類される。さらに、腫瘍の組織構築によりびまん性、結節性およびマントルゾーンパターンに分類される。芽球様型および多形性型は、高悪性度型として予後不良と考えられている1)。■ 予後MCLの予後予測は、中高悪性度リンパ腫に対する予後予測因子である国際予後指標(international prognostic index:IPI)によりおおむね予測が可能であるが、より正確に予後を予測するモデルとしてMCL国際予後指標(mantle cell lymphoma IPI:MIPI)が提唱された2)。MIPIは、年齢、performance status(PS)、LDHおよび白血球数の4つの因子によりlow/intermediate/highの3群のリスクに分類するものである。全生存期間(overall survival:OS)中央値は、low risk群で中央値に到達せず、intermediate risk群 51ヵ月、high risk群 29ヵ月であり、予後層別化が可能であった。一方でMIPIは、計算式によりスコアを求める必要があるため煩雑であることから(図1)、より簡便にしたsimplified MIPI(s-MIPI)が提唱された(図2)。s-MIPIによる各群のOS中央値は、low risk群で中央値に到達せず、intermediate risk群 51ヵ月、high risk群 29ヵ月であった。さらにKi-67陽性強度が独立した予後因子であるとされている。画像を拡大する画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 病理組織学的診断MCLの診断は、リンパ節生検などによる腫瘍組織の病理組織学的診断がもっとも重要である。生検検体は、可能な限り新鮮検体、ホルマリン固定検体および凍結保存検体の3種類に分別して処理すべきである。ホルマリン固定検体を用いたHE染色にて形態学的に悪性リンパ腫が疑われれば、免疫組織学的検査を追加する。MCLはCD20などのB細胞マーカーに加えて、CD5が陽性で、Cyclin D1が腫瘍細胞の核に陽性となる。また、新鮮検体を用いてflow cytometry法により細胞表面抗原検索を併せて行う。通常MCLは、CD5、CD19、 CD20、 CD22、 CD79aが陽性で、CD10およびCD23が陰性である。染色体分析では、t(11;14)(q13;q32)が陽性となることが多く、病理組織学的診断を補強する意味で有用である。病理組織学的に、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫および辺縁帯リンパ腫などが鑑別となる。そのため、免疫組織学的検査や細胞表面抗原検査の所見が、鑑別上重要である。■ 臨床病期診断悪性リンパ腫の治療方針を決定するうえで、臨床病期診断は重要である。リンパ節病変の評価として頸部から骨盤部のCT、骨髄検査が必須である。また、近年悪性リンパ腫の臨床病期診断におけるFDG-PETの有用性が指摘されており可能な限り実施する。その他、MCLは前述のように、消化管病変を有することが多いため、上部消化管内視鏡に加え、下部消化管内視鏡検査を行うことが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブと高用量シタラビンを併用した強力な寛解導入療法に引き続いて、自家造血幹細胞移植大量化学療法(自家移植)を実施する治療戦略が、現時点でもっとも良好な病勢制御が期待でき、自家移植の適応を有する65歳以下の未治療進行期MCL患者における標準的治療法である。Geisler氏らの北欧グループによるR-maxi-CHOP/大量シタラビン療法3)やMD Anderson Cancer CenterによるHyperCVAD/MA療法4)の報告が、いずれも第II相試験の結果ではあるが、その根拠となっている。わが国においては、日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)よりR-high-CHOP/CHASER療法に引き続く、LEED療法を前処置とした自家移植の有効性が報告されている5)。自家移植の適応のない65歳を超える高齢のMCL患者では、わが国においてはR-CHOP療法が標準的治療法の1つとして位置付けられている。CHOP療法とR-CHOP療法を比較した臨床試験において、奏効割合でR-CHOP療法が有意に優れていたが、OSには有意差は認められなかった6)。一方、メタ解析では、リツキシマブ併用化学療法が化学療法群と比較してOSを延長することが示され、R-CHOP療法を含むリツキシマブ併用化学療法が標準的治療法と位置付けられた7)。また、R-CHOP療法とそれに引き続くリツキシマブ維持療法はOSを延長することが報告されている8)。ドイツからの報告では、R-CHOP療法と比較してベンダムスチン(商品名: トレアキシン)とリツキシマブ併用(BR)療法で有意にOSが延長したと報告された9)。さらにプロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ(同: ベルケイド)を併用したVR-CAP療法が、R-CHOP療法と比較して無増悪生存期間を延長することが第III相試験で示された10)。いずれも試験治療群が標準的治療法となり得るデータであった。わが国においてもMCLを含むB細胞リンパ腫に対するリツキシマブ維持療法および未治療MCLに対するボルテゾミブが保険承認され、さらにMCLを含む未治療低悪性度B細胞リンパ腫に対し、2016年12月に適応が拡大された。MCLにおいてB細胞受容体シグナルの恒常的活性化が認められており、同シグナルに関わるBruton’s tyrosine kinase(BTK)が有望な治療標的と考えられる。イブルチニブ(同:イムブルビカ)は、経口BTK阻害薬であり、再発・治療抵抗性MCLに対して高い有効性が示された11)。わが国においても再発・治療抵抗性MCLに対して2016年12月に適応が拡大され、再発・治療抵抗性MCLに対する重要な治療選択肢の1つに位置付けられている。4 今後の展望65歳以上の未治療MCL患者を対象とするイブルチニブ併用BR療法の有効性を検討する国際共同ランダム化第III相試験が、わが国も含めた国際共同試験として実施されている。同試験の結果により、自家移植非適応未治療MCL患者に対する新たな標準的治療法が、確立される可能性がある。また、免疫調整薬(Immunomodulatory drug: IMiD)であるレナリドミドは、リツキシマブとの併用で未治療MCLに対して第II相試験により高い有効性が示されており12)、MCLに対する今後の臨床開発が期待されている。5 主たる診療科血液内科、血液腫瘍科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報National Comprehensive Cancer Network(NCCN)NCCN guidelines for treatment of cancer by site: Non-Hodgkin lymphomas(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)European Society for Medical Oncology (ESMO)ESMO guidelines: Haematological malignancies(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Swerdlow SH, et al. WHO classification of tumours of haematopoietic and lymphoid tissues. 4th ed. World Health Organization;2008.2)Hoster E, et al. Blood. 2008;111:558-565.3)Geisler CH, et al. Br J Haematol. 2012;158:355-362.4)Bernstein SH, et al. Ann Oncol. 2013;24:1587-1593.5)Ogura M, et al. ASCO annual meeting 2015. Abstract #8565.6)Lenz G, et al. J Clin Oncol. 2005;23:1984-1992.7)Schulz H, et al. J Natl Cancer Inst. 2007;99:706-714.8)Kluin-Nelemans HC, et al. N Engl J Med. 2012;367:520-531.9)Rummel MJ, et al. Lancet. 2013;381:1203-1210.10)Robak T, et al. N Engl J Med. 2015;372:944-953.11)Wang ML, et al. N Engl J Med. 2013;369:507-516.12)Ruan J, et al. N Engl J Med. 2015;373:1835-1844.公開履歴初回2015年07月14日更新2017年05月23日

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再生不良性貧血、免疫抑制療法+エルトロンボパグが有望/NEJM

 重症再生不良性貧血患者に対する免疫抑制療法へのエルトロンボパグの追加は、血液学的奏効率の著明な改善と関連することが示された。米国・国立衛生研究所のDanielle M Townsley氏らが、治療歴のない重症再生不良性貧血患者を対象に、標準免疫抑制療法とエルトロンボパグの併用について検討した第I/II相試験の結果を報告した。後天性再生不良性貧血は、免疫介在性の骨髄破壊により生じ、免疫抑制療法が有効であるが、残存する幹細胞数の減少によりその効果が限られる可能性がある。これまでの研究で、免疫抑制療法では難治性の再生不良性貧血患者において、エルトロンボパグ(合成トロンボポエチン受容体作動薬)の投与により、約半数の患者で臨床的に有意な血球数の増加が得られることが示されていた。NEJM誌2017年4月20日号掲載の報告。エルトロンボパグ併用を過去の臨床試験における標準的な免疫抑制療法と比較 研究グループは2012年6月~2015年11月に、免疫抑制療法(抗胸腺細胞グロブリンとシクロスポリン)+エルトロンボパグの第I/II相試験(研究者主導の非無作為化歴史的コホート対照研究)に連続症例92例を登録した。登録したコホートを、エルトロンボパグの投与開始時期および期間により3つに分類(コホート1:14日目~6ヵ月、コホート2:14日目~3ヵ月、コホート3:1日目~6ヵ月)。この3つのコホートについて個別に解析を行い、歴史的コホート(過去の無作為化比較対照試験においてウマ抗胸腺細胞グロブリン+シクロスポリンの投与を受けた102例)と比較した。 主要評価項目は、6ヵ月時の血液学的完全寛解(CHR)、副次評価項目は全般的血液学的寛解(OHR)、生存、再発、骨髄がんへのクローン進化などであった。エルトロンボパグ併用で、6ヵ月時に3分の1以上の患者が完全寛解 6ヵ月時のCHR率はコホート1で33%、コホート2で26%、コホート3で58%、OHR率はそれぞれ80%、87%、94%であった。 3つのコホートを合わせた全体のCHR率およびOHR率は、歴史的コホートより高かった(歴史的コホートのCHR率は10%、OHR率は66%)。追跡期間中央値2年における生存率は97%であった(試験期間中の死亡は1例で、非血液学的な原因によるものだった)。骨髄細胞密度、CD34陽性細胞数、および初期造血前駆細胞発現頻度の顕著な増加が確認された。再発およびクローン進化の割合については、過去の経験と類似していた。患者2例に重篤な皮疹が生じ、エルトロンボパグは早期に中止された。 今回の結果を検証するため、欧州において大規模無作為化プラセボ対照比較試験(RACE試験)が進行中である。著者は、「今回の長期追跡データとRACE試験により、その後の再発と骨髄がんリスクをより明確にできると考えられる」と述べている。

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初発統合失調症患者の脳変化を調査

 統合失調症患者では、進行性の脳体積減少が認められ、抗精神病薬曝露との関連が報告されている。南アフリカ・ステレンボッシュ大学のR Emsley氏らは、抗精神病薬ナイーブの初発エピソード統合失調症患者における脳体積の変化と抗精神病薬の投与量との関連を調査した。Psychological medicine誌オンライン版2017年3月28日号の報告。 抗精神病薬ナイーブの初回エピソード統合失調症または統合失調感情障害に対し、flupenthixol decanoateデポ製剤の最低有効量で治療された患者23例とマッチした健常者53例を対象に、ベースラインから12ヵ月までの灰白質および白質体積の変化量を比較した。総抗精神病薬投与量を正確に計算し、脳体積の変化との関連を調べた。体積の変化と治療との関連は、治療レスポンス(精神病理学的、機能的変化)および治療関連副作用(錐体外路症状、体重増加)の観点からさらに調査した。主な結果は以下のとおり。・患者群(-4.6[6.6]%)では、対照群(-1.12[4.0]%)と比較し過度な皮質体積減少が観察されたが(p=0.009)、皮質下灰白質体積および白質体積の変化に有意な差は認められなかった。・重回帰モデルでは、皮質体積の変化で唯一の有意な予測因子は、総抗精神病薬投与量であった(p=0.04)。・皮質体積の変化は、精神病理学的、機能的、錐体外路症状の変化、BMIまたは年齢、性別、未治療の精神疾患持続期間との間に有意な関連を示さなかった。 著者らは「抗精神病薬治療に伴う脳体積減少は、アウトカムの悪い患者だけでなく、また抗精神病薬の最低有効用量でも起こりうる。治療レスポンスまたは治療関連副作用との関連性の欠如は、少なくとも短期間での神経毒性を反映する皮質体積減少を意味している。一方で、体積の減少は、抗精神病薬の治療ベネフィットとは関連していなかった」としている。関連医療ニュース 統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学 統合失調症、大脳皮質下領域の新発見:東京大学 統合失調症患者の性生活に対する満足度は

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RA治療評価には「患者の主観」も重要

 2017年4月17日、東京において日本イーライリリー株式会社主催で「関節リウマチにおけるPROの重要性と患者さんの求めるQOL」と題したプレスセミナーが開催され、リウマチ医療における最新のPRO(患者報告アウトカム)1)研究に携わるオックスフォード大学のピーター・C・テイラー氏より、関節リウマチ(RA)治療においてPROが果たす役割や、PROを用いた患者とリウマチ医による疾患管理の重要性などが語られた。RA治療は「寛解」や「低疾患活動性」を目指せる時代に かつて、RAは、強い疼痛や変形が生じる「不治の病」として恐れられてきたが、近年、リウマチ治療は大きく進展し、新たな薬剤の登場によって「寛解」や「低疾患活動性」を目指せる時代となった。現在の治療は、目標達成に向けた治療「Treat to Target」の概念に基づき、関節破壊の進行を抑え、長期予後の改善、とくに身体機能障害の防止と生命予後を改善することが重要視されている。PROという評価基準 一方で、治療の進歩にかかわらず、残存する症状(倦怠感・関節に限らない痛み・朝のこわばり)やそれらの評価などを含むPROという評価基準への注目が高まりつつある。医師と患者では治療目標に乖離があり、RAの改善に対する評価が異なるためである。具体的にいえば、医師は「症状のコントロールと長期障害の予防」を目標に治療を行っているが、患者は「今日のこの痛みを何とかしたい」、「日常の活動ができるようになりたい」と考えている。患者にとって、腫脹や圧痛関節数が改善しただけではRAが改善したとはいえないのである。そのため、患者自身が語る症状や健康状態をもとに、疾患がもたらす負担や治療アウトカムを評価するPROの考え方は、RA患者のQOL向上・医療の質の向上に非常に有効であると考えられる。RAの評価に使用されるPROの種類 PROは、患者が待合室で規定の用紙に記入するか、電子フォームに入力する。記入には数分しかかからず、スコアの計算も簡単であるという。RAの評価に使用されるPROの種類としては、下記が挙げられる。 ・健康状態全般:SF-36、VAS、FACIT、MOS、Sleep ・健康効用値:EQ-5D、HUI ・疾患特異的項目:HAQ-DI ・疾患が患者へ及ぼす影響:RAID ・疾患活動性:RAPID、RADAI、PASS-II、Pt-DAS28、OMERACT Flare Q「患者はPROを通じて、自身の疾患管理に関与していることを実感でき、治療満足度が上がる」とテイラー氏は語る。PROの重要性に対する認識は高まりつつある RA治療においては、臨床徴候のみならず、疾患の影響全体を勘案することが重要である。また、多くの医療機関では、1人の医師が長期観察を実施するのは非現実的である。そして、リウマチ医の診察時に毎回関節数の評価を実施できない可能性もある。これらを鑑みると、PROの評価により別次元からの情報を得て、治療の意思決定を行うことは必要不可欠であると考えられる。第10回OMERACT2)会議では、PROにより患者主観をアウトカム評価に取り入れることの重要性が強調され、現在は臨床試験へのPROの適用を規制当局より求められることも増えているという。「患者の主観は重要であり、医師による評価指標より有益な場合もある」とテイラー氏は強調し、講演を締めくくった。RA患者の治療満足度向上のために、PROを役立ててみてはいかがだろうか。1)PRO(Patient-reported outcome)とは、“臨床医やその他の誰かによる解釈を介さない、患者から直接得られた患者の健康状態(症状や満足度)に関するあらゆる報告”を指す。FDA 2009指針を参照2)Outcome Measures in Rheumatology

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研修と組み合わせた2つの強化インスリン療法を比較/BMJ

 1型糖尿病患者の治療において、インスリンポンプ療法に、フレキシブル強化インスリン治療に関する体系的な研修を加えても、頻回注射法(MDI)と比較して血糖コントロール、低血糖、心理社会的転帰に、教育によるベネフィットの増強は得られないことが、英国・シェフィールド大学のSimon Heller氏らが行ったREPOSE試験で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2017年3月30日号に掲載された。英国では、1型糖尿病のインスリンポンプ療法は、これ以外の方法では日常生活に支障を来す低血糖を起こさずに良好な血糖コントロールが達成できない患者には価値があるとされる。より広範なインスリンポンプ療法の使用については不確実な点が多く、これまでに行われたMDIとの比較試験は症例数が少なく、試験期間が短いものしかなかったという。研修と組み合わせた2つの強化インスリン療法を比較 REPOSEは、フレキシブルなインスリン治療の研修を受けた1型糖尿病患者において、インスリンポンプ療法とMDIの有効性を比較するプラグマティックな非盲検クラスター無作為化試験(英国医療技術評価プログラムなどの助成による)。 対象は、強化インスリン療法を受ける意思があり、インスリンポンプ療法およびMDIへの好みがない成人1型糖尿病患者であった。イングランドの5施設とスコットランドの3施設で、各施設最大40例の登録を行い、5~8例を1組とする研修コースに患者を割り当てた。 被験者には、フレキシブルな強化インスリン療法(正常な摂食に対する用量調整[dose adjustment for normal eating:DAFNE])に関する体系的な研修が行われた。研修コース(クラスター)が、ポンプ群またはMDI群にランダムに割り付けられ、2年間の治療が行われた。 主要評価項目は、ベースラインのHbA1c値≧7.5%の患者における2年後のHbA1c値の変化およびHbA1c値≦7.5%(2004 NICE推奨値)の達成率とした。副次評価項目には、体重、インスリン用量、中等度~重度低血糖のエピソードが含まれ、QOL、治療満足度の評価も行った。 317例(46コース)がランダム化の対象となった(ポンプ群156例、MDI群161例)。267例が研修コースに参加し、ITT解析には260例(それぞれ132例、128例)が含まれた。2年間の追跡データが得られたのは248例(128例、120例)だった。両群とも全般に転帰が改善、推奨値の達成は少ない ベースラインの全体の平均年齢は40.7歳、男性が60%であった。HbA1c値はポンプ群がわずかに高かった(9.3 vs.9.0%)。9%がHbA1c値<7.5%だった。 ベースラインのHbA1c値≧7.5%の235例(ポンプ群119例、MDI群116例)は、2年後のHbA1c値がそれぞれ0.85%、0.42%低下した。補正後のベースラインからの変化の平均差は-0.24%(95%信頼区間[CI]:-0.53~0.05)であり、ポンプ群で良好な傾向がみられたものの有意な差はなかった(p=0.10)。 ベースラインのHbA1c値にかかわらず、2年後のHbA1c値≦7.5%達成率は、ポンプ群が25.0%、MDI群は23.3%であり、両群に有意な差を認めなかった(オッズ比:1.22、95%CI:0.62~2.39、p=0.57)。 重度低血糖の発現は少なく、全体で25例に49件みられた。2年後の補正発生率は、両群に差はなかった(罹患率比:1.13、95%CI:0.51~2.51、p=0.77)。全体の年間発生件数は、ベースライン前の0.17から追跡期間中に0.10へと低下した。ベースライン前と比較した2年後の罹患率比は0.46(0.24~0.89、p=0.02)と有意な差が認められた。 体重は試験期間を通じてほぼ一定で、両群に有意な差はなかった。総インスリン投与量は両群とも減少し、12ヵ月時にはポンプ群の減少量が有意に多かった(補正差:-0.07、95%CI:-0.13~-0.01、p=0.02)が、2年後にはこの差は消失した(-0.05、-0.11~0.02、p=0.15)。 ほとんどの心理社会的指標は両群に差はなかったが、ポンプ群は治療満足度が大幅に改善され(p<0.001)、糖尿病特異的QOLのうち身体機能に関する日常のいら立ち事(daily hassle of functions)および食事制限が12ヵ月時(それぞれ、p=0.02、p=0.01)、2年時(p=0.01、p=0.004)にポンプ群で有意に優れた。 著者は、「両群とも、HbA1c値、低血糖の発現が低下し、社会心理的指標が改善したが、血糖値がガイドラインの推奨値を達成した患者はほとんどいなかった」とまとめ、「これらの結果は、血糖コントロールが不良な患者では、強力な自己管理に向けた研修の効果が確立されるまでは、インスリンポンプ療法の使用は支持されないことを意味する」と指摘している。

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自己免疫性溶血性貧血〔AIHA: autoimmune hemolytic anemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)は、赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体が産生され、抗原抗体反応の結果、赤血球が傷害を受け、赤血球の寿命が著しく短縮(溶血)し、貧血を来す。AIHAは、自己抗体の性状によって温式抗体によるものと、冷式抗体によるものに2大別される。温式抗体(warm-type autoantibody)による病型を単に自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と呼ぶことが多い。冷式抗体(cold-type autoantibody)による病型には、寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)とがある。温式抗体は体温付近で最大活性を示し、原則としてIgG抗体である。一方、冷式抗体は体温以下の低温で反応し、通常4℃で最大活性を示す。IgM寒冷凝集素とIgG二相性溶血素(Donath-Landsteiner抗体)が代表的である。時に温式抗体と冷式抗体の両者が検出されることがあり、混合型(mixed type)と呼ばれる。■ 疫学AIHAの推定患者数は100万人対3~10人、年間発症率は100万人対1~5人で、病型別比率は、温式AIHA90.4%、CAD7.7% 、PCH1.9%とされている。温式AIHAの特発性/続発性は、ほぼ同数に近いと考えられる。特発性温式AIHAは、小児期のピークを除いて二峰性に分布し、若年層(10~30歳で女性が優位)と老年層(50歳以後に増加し70代がピークで性差はない)に多くみられる。全体での男女比は1~2:3で女性にやや多い。CADのうち慢性特発性は40歳以後にほぼ限られ男性に目立つが、続発性は小児ないし若年成人に多い。PCHは、現在そのほとんどは小児期に限ってみられる。■ 病因自己抗体の出現機序として次のように整理されている。1)免疫応答機構は正常だが患者赤血球の抗原が変化して、異物ないし非自己と認識される。2)赤血球抗原に変化はないが、侵入微生物に対して産生された抗体が正常赤血球抗原と交差反応する。3)赤血球抗原に変化はないが、免疫系に内在する異常のために免疫的寛容が破綻する。4)すでに自己抗体産生を決定付けられている細胞が、単または多クローン性に増殖または活性化され、自己抗体が産生される。■ 症状1)温式AIHA臨床像は多様性に富み、発症の仕方も急激から潜行性まで幅広い。とくに急激発症では発熱、全身衰弱、心不全、呼吸困難、意識障害を伴うことがあり、ヘモグロビン尿や乏尿も受診理由となる。急激発症は小児や若年者に多く、高齢者では潜行性が多くなるが例外も多い。受診時の貧血は高度が多く、症状の強さには貧血の進行速度、心肺機能、基礎疾患などが関連する。黄疸もほぼ必発だが、肉眼的には比較的目立たない。特発性でのリンパ節腫大はまれである。脾腫の触知率は32~48%で、サイズも1~2横指程度が多い。温式AIHAの5~10%程度に直接クームス試験が陰性のものがあり、クームス陰性AIHAと呼ばれる。クームス試験が陽性にならない程度のIgG自己抗体が赤血球に結合しており、診断には赤血球結合IgG定量が有用である。クームス陽性AIHAと同様にステロイド反応性は良好である。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併する場合をエヴァンス症候群と呼び、特発性AIHAの10~20%程度を占める。2)寒冷凝集素症(CAD)臨床症状は溶血と末梢循環障害によるものからなる。感染に続発するCAD は、比較的急激に発症し、ヘモグロビン尿を伴い貧血も高度となることが多い。マイコプラズマ感染では、発症から2~3週後の肺炎の回復期に溶血症状を来す。血中には抗マイコプラズマ抗体が出現し、寒冷凝集素価が上昇する時期に一致する。溶血は2~3週で自己限定的に消退する。EBウイルス感染に伴う場合は症状の出現から1~3週後にみられ、溶血の持続は1ヵ月以内である。特発性慢性CADの発症は潜行性が多く慢性溶血が持続するが、寒冷曝露による溶血発作を認めることもある。循環障害の症状として、四肢末端・鼻尖・耳介のチアノーゼ、感覚異常、レイノー現象などがみられる。これは皮膚微小血管内でのスラッジングによる。クリオグロブリンによることもある。皮膚の網状皮斑を認めるが、下腿潰瘍はまれである。脾腫はあっても軽度である。3)発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)現在ではわずかに小児の感染後性と成人の特発性病型が残っている。以前よくみられた梅毒性の定型例では、寒冷曝露が溶血発作の誘因となり、発作性反復性の血管内溶血とヘモグロビン尿を来す。寒冷曝露から数分~数時間後に、背部痛、四肢痛、腹痛、頭痛、嘔吐、下痢、倦怠感に次いで、悪寒と発熱をみる。はじめの尿は赤色ないしポートワイン色調を示し、数時間続く。遅れて黄疸が出現する。肝脾腫はあっても軽度である。このような定型的臨床像は非梅毒性では少ない。急性ウイルス感染後の小児PCHは5歳以下に多く、男児に優位で、季節性、集簇性を認めることがある。発症が急激で溶血は激しく、腹痛、四肢痛、悪寒戦慄、ショック状態や心不全を来したり、ヘモグロビン尿に伴って急性腎不全を来すこともある。発作性・反復性がなく、寒冷曝露との関連も希薄で、ヘモグロビン尿も必発とはいえない。成人の慢性特発性病型はきわめてまれである。気温の変動とともに消長する血管内溶血が長期間にわたってみられる。■ 分類AIHAは臨床的な観点から、有意な基礎疾患ないし随伴疾患があるか否かによって、続発性(2次性)と特発性(1次性、原発性)に、また臨床経過によって急性と慢性とに区分される。基礎疾患としては全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患とリンパ免疫系疾患が代表的である。マイコプラズマや特定のウイルス感染の場合、卵巣腫瘍や一部の潰瘍性大腸炎に続発する場合などでは、基礎疾患の治癒や病変の切除とともにAIHAも消退し、臨床的な因果関係が認められる。 ■ 予後温式AIHAで基礎疾患のない特発例では、治療により1.5年までに40%の症例でクームス試験の陰性化がみられる。特発性AIHAの生命予後は5年で約80%、10年で約70%の生存率であるが、高齢者では予後不良である。続発性の予後は基礎疾患によって異なり、リンパ系疾患に比べてSLEなどの自己免疫性疾患に続発する場合のほうが良好である。CADは感染後2~3週の経過で消退し、再燃しない。リンパ増殖性疾患に続発するものは基礎疾患によって予後は異なるが、この場合でも溶血が管理の中心となることは少ない。小児の感染後性のPCH は発症から数日ないし数週で消退する。強い溶血による障害や腎不全を克服すれば一般に予後は良好であり、慢性化や再燃をみることはない。梅毒に伴う場合の多くは、駆梅療法によって溶血の軽減や消退をみる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)(図1 AIHAの診断フローチャート)最初に溶血性貧血としての一般的基準を満たすことを確認し、次いで疾患特異的な検査によって病型を確定する。溶血性貧血の診断基準と自己免疫性溶血性貧血の診断基準を表1と表2に示す。画像を拡大する血液検査や臨床症状から溶血性貧血を疑った場合は、直接クームス試験を行い、陽性の場合は特異的クームス試験で赤血球上のIgG と補体成分を確認する。補体のみ陽性の場合は、寒冷凝集素症(CAD)や発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)の鑑別のため、寒冷凝集素価測定とDonath-Landsteiner(DL)試験を行う。寒冷凝集素は、凝集価が1,000 倍以上、または1,000 倍未満でも30℃以上で凝集活性がある場合には病的意義があるとされる。スクリーニング検査として、患者血清(37~40℃下で分離)と生食に懸濁したO型赤血球を混和し、室温(20℃)に30~60分程度放置後、凝集を観察する。凝集が認められない場合は病的意義のない寒冷凝集素と考えられる。凝集がみられた場合には、さらに温度作動域の検討を行う。凝集素価が低値でもアルブミン法などで30℃以上での凝集が認められる場合は低力価寒冷凝集素症とする。DL 抗体の検出は、現在外注で依頼できる検査機関がないことから、自前の検査室で行う必要がある。直接クームス試験が陰性であったり、特異的クームス試験で補体のみ陽性の場合でも、症状などから温式AIHA が疑われる場合やほかの溶血性貧血が否定された場合は、赤血球結合IgG 定量を行うとクームス陰性AIHA と診断できることがある。温式AIHAと寒冷凝集素症が合併している場合は、混合型AIHA の診断となる。表1 溶血性貧血の診断基準(厚生労働省 特発性造血障害に関する調査研究班[平成16年度改訂])1)1)臨床所見として、通常、貧血と黄疸を認め、しばしば脾腫を触知する。ヘモグロビン尿や胆石を伴うことがある。2)以下の検査所見がみられる。(1)へモグロビン濃度低下(2)網赤血球増加(3)血清間接ビリルビン値上昇(4)尿中・便中ウロビリン体増加(5)血清ハプトグロビン値低下(6)骨髄赤芽球増加3)貧血と黄疸を伴うが、溶血を主因としない他の疾患(巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群、赤白血病、congenital dyserythropoietic anemia、肝胆道疾患、体質性黄疸など)を除外する。4)1)、2)によって溶血性貧血を疑い、3)によって他疾患を除外し、診断の確実性を増す。しかし、溶血性貧血の診断だけでは不十分であり、特異性の高い検査によって病型を確定する。表2 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断基準(厚生労働省 特発性造血障害に関する調査研究班[平成16年度改訂])1)1)溶血性貧血の診断基準を満たす。2)広スペクトル抗血清による直接クームス試験が陽性である。3)同種免疫性溶血性貧血(不適合輸血、新生児溶血性疾患)および薬剤起因性免疫性溶血性貧血を除外する。4)1)~3)によって診断するが、さらに抗赤血球自己抗体の反応至適温度によって、温式(37℃)の(1)と、冷式(4℃)の(2)および(3)に区分する。(1)温式自己免疫性溶血性貧血臨床像は症例差が大きい。特異抗血清による直接クームス試験でIgGのみ、またはIgGと補体成分が検出されるのが原則であるが、抗補体または広スペクトル抗血清でのみ陽性のこともある。診断は(2)、(3)の除外によってもよい。(2)寒冷凝集素症(CAD)血清中に寒冷凝集素価の上昇があり、寒冷曝露による溶血の悪化や慢性溶血がみられる。直接クームス試験では補体成分が検出される。(3)発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)ヘモグロビン尿を特徴とし、血清中に二相性溶血素(Donath-Landsteiner抗体)が検出される。5)以下によって経過分類と病因分類を行う。急性推定発病または診断から6ヵ月までに治癒する。慢性推定発病または診断から6ヵ月以上遷延する。特発性基礎疾患を認めない。続発性先行または随伴する基礎疾患を認める。6)参考(1)診断には赤血球の形態所見(球状赤血球、赤血球凝集など)も参考になる。(2)温式AIHAでは、常用法による直接クームス試験が陰性のことがある(クームス陰性AIHA)。この場合、患者赤血球結合IgGの定量が有用である。(3)特発性温式AIHAに特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が合併することがある(エヴァンス症候群)。また、寒冷凝集素価の上昇を伴う混合型もみられる。(4)寒冷凝集素症での溶血は寒冷凝集素価と平行するとは限らず、低力価でも溶血症状を示すことがある(低力価寒冷凝集素症)。(5)自己抗体の性状の判定には抗体遊出法などを行う。(6)基礎疾患には自己免疫疾患、リウマチ性疾患、リンパ増殖性疾患、免疫不全症、腫瘍、感染症(マイコプラズマ、ウイルス)などが含まれる。特発性で経過中にこれらの疾患が顕性化することがある。(7)薬剤起因性免疫性溶血性貧血でも広スペクトル抗血清による直接クームス試験が陽性となるので留意する。診断には臨床経過、薬剤中止の影響、薬剤特異性抗体の検出などが参考になる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 温式AIHAの治療(図2 特発性温式AIHAの治療フローチャート)画像を拡大する特発性の温式AIHAの治療では、副腎皮質ステロイド薬、摘脾術、免疫抑制薬が三本柱であり、そのうち副腎皮質ステロイド薬が第1選択である。特発性の80~90%はステロイド薬単独で管理が可能と考えられる。1)急性期:初期治療(寛解導入療法)ステロイド薬使用に対する重大な禁忌条件がなければ、プレドニゾロン換算で1.0mg/kgの大量(標準量)を連日経口投与する。高齢者や随伴疾患があるときは、減量投与が勧められる。約40%は4週までに血液学的寛解状態に達する。AIHAでは輸血はけっして安易に行わず、できる限り避けるべきとするのが一般的であるが、薬物治療が効果を発揮するまでの救命的な輸血は、機を失することなく行う必要がある。その場合、生命維持に必要なヘモグロビン濃度の維持を目標に行う。安全な輸血のため、輸血用血液の選択についてあらかじめ輸血部門と緊密な連携を取ることが勧められる。2)慢性期:ステロイド減量期ステロイド薬の減量は、状況が許すならば急がず、慎重なほうがよく、はじめの1ヵ月で初期量の約半量(中等量0.5mg/kg/日)とし、その後は溶血の安定度を確認しながら2週に5mgくらいのペースで減量し、10~15mg/日の初期維持量に入る。減量期に約5%で悪化をみるが、その際はいったん中等量(0.5mg/kg/日)まで増量する。3)寛解期:維持療法・治療中止時期ステロイド薬を初期維持量まで減量したら、網赤血球とクームス試験の推移をみて、ゆっくりとさらに減量を試み、平均5mg/日など最少維持量とする。直接クームス試験が陰性化し、数ヵ月以上経過しても再陽性化や溶血の再燃がみられず安定しているなら、維持療法をいったん中止して追跡することも可能となる。4)増悪期:再燃時、ステロイド不応例維持療法中に増悪傾向が明らかならば、早めに中等量まで増量し、寛解を得た後、再度減量する。ステロイド薬の維持量が15mg/日以上の場合、また副作用・合併症の出現があったり、悪化を繰り返すときは、2次・3次選択である摘脾や免疫抑制薬、抗体製剤の採用を積極的に考える。ステロイドによる初期治療に不応な場合は、まず悪性腫瘍などからの続発性AIHAの可能性を検索する。基礎疾患が認められない場合は、特発性温式AIHAとして複数の治療法が考慮されるが、優先順位や適応条件についての明確な基準はなく、患者の個別の状況により選択され、いずれの治療法もAIHAへの保険適用はない。唯一、摘脾とリツキシマブについては短期の有効性が実証されており、摘脾が標準的な2次治療として推奨されている。(1)摘脾脾臓は感作赤血球を処理する主要な臓器であり、自己抗体産生臓器でもある。わが国では特発性AIHAの約15%(欧米では25~57%)で摘脾が行われており、短期の有効性は約60%と高い。ステロイド投与が不要となる症例や20%程度に治癒症例もみられることから、ステロイド不応性AIHAの2次治療として推奨されている。(2)リツキシマブステロイド不応性温式AIHAに対する新たな治療法として注目されている。短期の有効性について多くの報告はあるが、まだ保険適用ではない。標準的治療としては375mg/m2を1週間おきに4回投与する。80%の有効率が報告されている。安全性に関しても大きな問題はない。短期間のステロイド投与を併用した低用量のリツキシマブ(100mg、4週ごと投与)も試みられている。(3)免疫抑制薬ステロイドに次ぐ薬物療法の2次選択として、シクロホスファミドやアザチオプリンなどが用いられる。主な作用は抗体産生抑制で、有効率は35~40%で、ステロイド薬の減量効果が主である。免疫抑制、催奇形性、発がん性、不妊症など副作用に注意が必要であり、有効であったとしても数ヵ月以上の長期投与は避ける。■ 冷式AIHAの治療保温が最も基本的である。室温、着衣、寝具などに十分な注意を払い、身体部分の露出や冷却を避ける。輸血や輸液の際の温度管理も問題となる。CADに対する副腎皮質ステロイド薬の有効性は温式AIHAに比しはるかに劣るが、激しい溶血の時期には短期間用いて有効とされることが多い。貧血が高度であれば、赤血球輸血も止むを得ないが、補体(C3d)を結合した患者赤血球が溶血に抵抗性となっているのに対し、輸注する赤血球はむしろ溶血しやすい点に留意する。摘脾は通常適応とはならない。リンパ腫に伴うときは、原疾患の化学療法が有効である。マイコプラズマ肺炎に伴うCADでは適切な抗菌薬を投与するが、溶血そのものに対する効果とは別であり、経過が自己限定的なので、保存療法によって自然経過を待つのが原則である。特発性慢性CADの治療として、リツキシマブ単独療法やリツキシマブ+フルダラビン併用療法が報告されている。■ PCHの治療小児で急性発症するPCHは、寒冷曝露との関連が明らかではないが、保温の必要性は同様である。急性溶血期を十分な支持療法で切り抜ける。溶血の抑制に副腎皮質ステロイド薬が用いられ、有効性は高い。小児PCHでは、摘脾を積極的に考慮する状況は少ない。貧血の進行が急速なら赤血球輸血も必要となるが、DL抗体はP特異性を示すことが多く、供血者赤血球は大多数がP陽性なので、溶血の悪化を招く恐れもある。急性腎不全では血液透析も必要となる。4 今後の展望AIHAの治療では、リツキシマブが登場したことで、ステロイド不応例などでの治療選択の幅が広がった。今後、自己抗原反応性T細胞などを対象にした疾患特異的な治療法の開発が期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 自己免疫性溶血性貧血(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)改訂版作成のためのワーキンググループ(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究). 自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド(平成26年度改訂版). 特発性造血障害に関する調査研究班.(参照2015.4.17)2)改訂版作成のためのワーキンググループ(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究). 自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド(平成28年度改訂版). 特発性造血障害に関する調査研究班. (参照2017)公開履歴初回2015年05月26日更新2017年04月04日

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妊娠中の潜在性甲状腺疾患治療は児のIQを改善するか/NEJM

 妊娠8~20週の妊婦の潜在性甲状腺機能低下症または低サイロキシン血症に、甲状腺ホルモン補充療法を行っても、児の5歳までの認知アウトカムは改善しないことが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのBrian M Casey氏らの検討で示された。妊娠中の潜在性甲状腺疾患は、児のIQが正常値より低いなどの有害なアウトカムに関連する可能性が指摘されている。レボチロキシンは、3歳児の認知機能を改善しないとのエビデンス(CATS試験)があるにもかかわらず、欧米のいくつかのガイドラインではいまだに推奨されているという。NEJM誌2017年3月2日号掲載の報告。約1,200例の妊婦を疾患別の2つの試験で評価 研究グループは、児のIQに及ぼす妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症と低サイロキシン血症のスクリーニング、およびサイロキシン補充療法の有効性を評価するために、2つの多施設共同プラセボ対照無作為化試験を実施した(Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Developmentなどの助成による)。 妊娠8~20週の単胎妊娠女性において、潜在性甲状腺機能低下症および低サイロキシン血症のスクリーニングを行った。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモンが≧4.00mU/L、遊離サイロキシン(T4)が正常値(0.86~1.90ng/dL[11~24pmol/L])と定義し、低サイロキシン血症は、甲状腺刺激ホルモンが正常値(0.08~3.99mU/L)、遊離T4が低値(<0.86ng/dL)と定義した。 試験は2つの疾患別に行い、被験者はレボチロキシンを投与する群またはプラセボ群にランダムに割り付けられた。甲状腺機能は毎月評価し、甲状腺刺激ホルモン(サイロトロピン)または遊離T4の正常値を達成するためにレボチロキシンの用量を調整し、プラセボは偽調整を行った。児には、発達および行動の評価が年1回、5年間行われた。 主要評価項目は、5歳時のIQスコア(検査データがない場合は3歳時)または3歳未満での死亡とした。IQの評価には、幼児版ウェクスラー知能検査(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence III[WPPSI-III])を用いた。 2006年10月~2009年10月に、潜在性甲状腺機能低下症677例(レボチロキシン群:339例、プラセボ群:338例)と、低サイロキシン血症526例(265例、261例)が登録された。割り付け時の平均妊娠週数は、それぞれ16.7週、17.8週であった。児のIQ、母子のアウトカムに差はない ベースラインの平均年齢は、潜在性甲状腺機能低下症のレボチロキシン群が27.7±5.7歳、プラセボ群は27.3±5.7歳、低サイロキシン血症はそれぞれ27.8±5.7歳、28.0±5.8歳であった。また、平均妊娠期間は、潜在性甲状腺機能低下症のレボチロキシン群が39.1±2.5週、プラセボ群は38.9±3.1週(p=0.57)、低サイロキシン血症はそれぞれ39.0±2.4週、38.8±3.1週(p=0.46)であった。 児の4%(47例、潜在性甲状腺機能低下症:28例、低サイロキシン血症:19例)で、IQのデータが得られなかった。妊婦および新生児の有害なアウトカムの頻度は低く、2つの試験とも2つの群に差はみられなかった。 潜在性甲状腺機能低下症の試験では、児のIQスコア中央値はレボチロキシン群が97(95%信頼区間[CI]:94~99)、プラセボ群は94(92~96)であり(差:0、95%CI:-3~2、p=0.71)、有意な差は認めなかった。また、低サイロキシン血症の試験では、レボチロキシン群が94(91~95)、プラセボ群は91(89~93)であり(-1、-4~1、p=0.30)、やはり有意差はなかった。 12、24ヵ月時のBayley乳幼児発達検査第3版(Bayley-III)の認知、運動、言語の各項目などを含む副次評価項目は、いずれも2つの試験の2つの群に差はみられなかった。 著者は、「本研究の結果は、英国とイタリアで2万1,846例の妊婦を対象に実施されたCATS試験と一致する」としている。

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ラニビズマブ、PRPより増殖糖尿病網膜症の悪化抑制

 増殖糖尿病網膜症(PDR)に対する汎網膜光凝固(PRP)またはラニビズマブによる治療の有用性について、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のSusan B Bressler氏らは、PDR悪化の観点から評価した。その結果、ラニビズマブはPRPと比較してPDRの増悪が少なく、とくに中心窩に及ぶ糖尿病黄斑浮腫を認めなかった眼において顕著であることが示された。著者は、「抗VEGF療法はPRPより頻繁に通院する必要があるが、PDRに対し、少なくとも2年はPRPの代替療法としてラニビズマブを使用することを支持するさらなるエビデンスが得られた」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2017年2月1日号掲載の報告。 研究グループは、米国の55施設において無作為化試験を実施した。対象は、PRPの治療歴がなく、視力が20/320以上の成人PDR患者305例394眼で、PRP群またはラニビズマブ(0.5mg/0.05mL硝子体内注射)群に無作為に割り付けた。 評価項目は、無作為化からPDR悪化(硝子体出血、網膜剥離、前眼部血管新生、または血管新生緑内障の初回発生として定義される複合アウトカム)までの期間などであった。 主な結果は以下のとおり。・2年間でPDR悪化の累積発生率は、PRP群42%に対し、ラニビズマブ群は34%であった(ハザード比[HR]:1.33、99%信頼区間[CI]:0.90~1.98、p=0.063)。・ベースラインにおける糖尿病網膜症重症度(ETDRSスケールによる)の高さは、治療群に関係なく、PDR悪化リスクの増大と関連していた(高度群:64%、中等度群23%、HR:3.97、99%CI:2.48~6.36、p<0.001)。・PRP群において、パターン照射は従来のシングル・スポットPRPと比較し、初回PRPを完了するための照射回数や設定スポット数に関係なく、PDR悪化のリスクが高かった(60% vs.39%、HR:2.04、99%CI:1.02~4.08、p=0.008)。・両群とも、ベースライン時に視力が低下した中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫を認めた眼はラニビズマブの投与を要したため、これらを除いた眼におけるサブグループ解析を行ったところ、PDR悪化率はPRP群(45%)がラニビズマブ群(31%)より大きかった(HR:1.62、99%CI:1.01~2.60、p=0.008)。

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骨髄異形成症候群の予後層別化、遺伝子変異解析で可能に/NEJM

 骨髄異形成症候群(MDS)患者に同種造血幹細胞移植を行う際は、遺伝子変異を解析することで、予後を層別化するとともに、骨髄破壊的または非破壊的前処置のどちらが有用かを特定することが可能なことを、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのR Coleman Lindsley氏らが、遺伝子プロファイリングによる研究の結果、明らかにした。同種造血幹細胞移植はMDSに対する唯一の根治療法であるが、再発後の死亡や移植関連合併症による移植後死亡率が高く、どのような患者が最も移植の恩恵を受けるかを予測することは重要な課題である。遺伝子変異はMDS発症の一因であり臨床表現型と密接に関連していることから、遺伝子変異によって同種造血幹細胞移植後の臨床転帰を予測できる可能性が示唆されていた。NEJM誌2017年2月9日号掲載の報告。MDS患者約1,500例の血液検体から129の遺伝子を解析 研究グループは、2005~14年に国際造血細胞移植研究機構(CIBMTR)に登録されたMDS患者1,514例の移植前に採取された血液検体を用い、骨髄性がんや骨髄不全症候群の病因であることが既知または疑われる129の遺伝子について標的変異解析を実施し、全生存期間、再発および無再発死亡など移植後転帰と遺伝子変異との関連を検証した。TP53変異患者の移植後予後は不良 TP53変異が19%の患者で確認され、変異なしと比較して年齢などの重要な臨床変数を補正しても生存期間および再発までの期間が有意に短いことが示された(いずれもp<0.001)。TP53変異のない40歳以上の患者においては、RASシグナル伝達経路の遺伝子変異ありで変異なしと比較し、再発のために生存期間が短く(p=0.004)、JAK2変異ありは無再発死亡のため生存期間が短かった(p=0.001)。 TP53変異による予後への有害な影響は、骨髄非破壊的前処置を受けた患者と骨髄破壊的前処置を受けた患者で類似していた。一方、RAS経路変異による再発への有害な影響は、骨髄非破壊的前処置を受けた患者のみ、RAS経路変異なしと比較して顕著であった。また、若年成人においては、4%の患者がTP53変異とともにシュワッハマン・ダイアモンド症候群関連遺伝子SBDSの複合ヘテロ接合体変異を有しており、予後不良と関連していた。 P53調節因子PPM1D変異は、原発性MDS患者(3%)と比較して、治療関連MDS患者(15%)で高率に認められた(p<0.001)。

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統合失調症、男と女で妄想内容は異なる

 統合失調症患者において男性と女性で妄想の頻度や妄想内容に違いがあるのかを、オーストリア・インスブルック大学のV Rossler氏らが検討を行った。Fortschritte der Neurologie-Psychiatrie誌2016年11月号の報告。 2008~11年にドイツの精神科病院に入院したすべての統合失調症患者の医療記録を分析した。対象は、統合失調症と診断された妄想型入院患者182例(女性:90例、男性92例)。 主な結果は以下のとおり。・男性と女性で妄想の頻度に差は認められなかった。・しかし、妄想の内容の分析では、相違が明らかであった。・関係妄想を有する女性では、男性と比較し、より頻繁に「監視されている」と感じていた。・関係妄想を有する男性は、不特定の人を妄想に巻き込む傾向を示し、より頻繁に「自分のことが話されている」と感じていた。・女性における誇大妄想は、より頻繁に、他人との重要な関係に基づいて構成されていた。関連医療ニュース 統合失調症の妄想低減へ、新たな介入方法 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か 性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大(鷹野 敦夫)【訂正のお知らせ】本文内に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2016年12月13日)。

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ヒトの感知能力を司る遺伝子を特定/NEJM

 ヒトの機械知覚(mechanosensation)を司る遺伝子PIEZO2を特定したことを、米国立補完統合衛生センター(NCCIH)のAlexander T. Chesler氏らが発表した。機械知覚とは、感知能力(触覚と自己受容によって認知範囲が喚起される)のことであり、機械刺激を検出し変換する能力に依存する。ヒトや動物に、周辺環境に関する重大な情報を提供し、社会生活を送るうえで重要かつ必要となる感覚であるが、その基礎をなす分子・神経メカニズムは、十分に解明されていなかった。研究グループは、マウスモデルで機械知覚に必須であることが示されたストレッチ依存性イオンチャネルPIEZO2に着目し、ヒトにおける役割を調べた。NEJM誌2016年10月6日号(オンライン版2016年9月21日号)掲載の報告。特異的症状を有する2人の進行性脊柱側弯症患者を対象に調査 研究グループは、進行性脊柱側弯症などの標準診断分類に適合しない、特異的な神経筋および骨格を有する2人の患者について、全エクソームシーケンス解析を行った。また、in vitroおよびメッセンジャーRNA解析、機能的脳画像検査、心理身体および運動テストを行い、蛋白質機能と身体知覚への変異遺伝子の影響を調べた。変異遺伝子の身体知覚への影響が明らかに その結果、いずれの患者においてもPIEZO2に複合体不活性化変異が認められた。そして、有毛皮膚において触覚認知識別能力の選択的な喪失が認められた一方で、特異的な弱い機械刺激には反応を示した。 患者に目隠しをして視覚機能を奪うと、自己受容が著しく低下し、運動失調とディスメトリア(四肢の運動距離測定障害)が著しく増悪した。一方で、自己受容にかなり依存していると思われるタスク(歩くこと、話すこと、書くこと)の実行能力は維持されていた。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第31回

第31回:膝の痛みにおける非外科的治療監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 人口の高齢化に伴い、整形外科領域で保存的治療(非外科的治療)を行っている方を多く見かけます。また、プライマリケア医が遭遇する頻度の高い疾患・症候群としてかぜ症候群、胃腸炎などと並んで「痛み・関節炎症状」が挙げられており1)、今後ますます外来で関節痛、関節炎に対する保存的治療の重要性が増すことが予想されます。今回の記事では、膝の痛みの原因として「変形性膝関節症」「膝蓋大腿疼痛症候群」「半月板・腱・靱帯の損傷」が取り上げられ、それぞれの非外科的治療について解説されていますので、ご紹介します。 以下、American Family Physician 2015年11月15日号2) より1.変形性膝関節症理学療法・運動療法:非外科的治療の基礎であり、ストレッチ、筋力強化(大腿四頭筋訓練)、運動プログラムが効果的である。また、BMI25以上の患者には減量が推奨され、有酸素運動とストレッチを組み合わせるとさらに効果的とされている。自宅で行う運動療法は専門家によるものと同様の効果がある。薬物療法:アセトアミノフェンとNSAIDsが第1選択と考えられている。無作為化試験ではアセトアミノフェンは投与量に関係なくイブプロフェンと同程度に効果的であることが示され、さらに5つのRCTの系統的なレビューでは、アセトアミノフェンは、その効果と副作用がNSAIDsより少ないことから、第1選択薬として考慮すべきとされている。NSAIDsは長期に使用すべきでないが、短期間ならプラセボより効果があるとしている。ビタミンD、グルコサミン・コンドロイチンサプリメントについては、疼痛に対する効果が証明されていない。関節内注射:関節内ステロイド注射について、コクランレビューでは、疼痛緩和の効果は1~2週間のみとしている。アメリカ整形外科学会ではステロイド関節内注射を推奨しておらず、使用するとしても3か月に1回以上投与するべきではないとしている。ヒアルロン酸注射(viscosupplementation)については、2012年の質の高いシステマティックレビューでは、プラセボと比較して何ら臨床的な効果は示されなかったと結論されている。※いずれの場合も、人工関節のある患者には感染のリスクとなるため、関節穿刺は避けるべきである。装具療法:矯正装具 (足底板やサポーター)の使用が害を及ぼすというエビデンスはなく、変形性関節症を含めた膝の慢性的な摩耗による症状に対して、有用なオプションといえる。2.膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS;Patellofemoral pain syndrome)理学療法・運動療法:筋力トレーニングとストレッチが第1選択の治療になる。テーピングはコクランレビューでは疼痛に顕著な効果がないとしているが、最近のメタ分析では早期のテーピングが疼痛を改善するという報告もある。経皮的電気刺激やバイオフィードバック、カイロプラクティックを支持するエビデンスはない。薬物療法:疼痛に対してNSAIDsの短期間投与が効果的だという限られたデータしかない。装具療法:理学療法併用の有無にかかわらず疼痛緩和に効果的である。しかし、膝蓋矯正装具の効果を臨床的に裏付けるエビデンスはなく、患者への有益性を裏付けるデータもないことに留意する。3.半月板、腱、靱帯の損傷理学療法・運動療法:第1選択の治療である。退行性の半月板損傷や変性は、変形性関節症の原因となる。ロッキングやキャッチングがあれば整形外科医に紹介する。薬物療法:NSAIDsは短期の疼痛緩和に有用だが、治療の効果はまだはっきりしていない。関節内注射:大腿四頭筋や膝蓋腱など、体重のかかる腱へのステロイド注射は避けるべきだが、保存的治療で効果がない場合は、腸脛靭帯摩擦症候群(ランナー膝)の患者へのステロイド投与は許容される治療法である。慢性膝蓋腱障害と変形性関節症の疼痛と機能をわずかに改善させたという報告がある。装具療法:短期間の使用は靭帯断裂や膝蓋骨骨折といった外傷の直後であれば膝の保護に役立つ。一度あるいは二度の内側側副靱帯損傷には、装具使用に加え、経口鎮痛薬と早期からの理学療法が効果的である。一般的に装具療法は、腸脛靭帯摩擦症候群(ランナー膝)または膝蓋下腱障害といった膝の使い過ぎに使用される。前十字靱帯部分損傷には、急性期に装具を使用すれば保存的治療に効果があるかもしれないが、完全断裂は専門医に紹介する。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 田中勝巳ほか. プライマリ・ケア. 2007;30:344-351. 2) Jones BQ, et al. Am Fam Physician. 2015;92:875-883.

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肥満外科手術の骨折リスク、術前も術後も高い/BMJ

 肥満外科手術患者は術前も術後も骨折リスクが高いことが、カナダ・ケベック州CHU研究センターのCatherine Rousseau氏らによる検討の結果、明らかにされた。年齢・性別で適合した肥満者と非肥満者を対照群としたコホート内症例対照試験の結果による。また、発生部位も特定され、術前は肥満に関連した骨折だったが術後は骨粗鬆症にみられる骨折パターンに変化していた。胆膵路転換術(biliopancreatic diversion)を受けた人では明らかな骨折リスクが認められたことも判明、胃バイパス手術(Roux-en-Y gastric bypass)、スリーブ状胃切除術(sleeve gastrectomy)については断定的な結果は得られなかったという。BMJ誌オンライン版7月27日号掲載の報告。コホート内症例対照試験で手術群と肥満・非肥満対照群を比較 肥満外科手術が骨折リスクを増大するのかどうかを調べる検討は、2001~14年にカナダ・ケベック州で同手術を受けた患者を、同州の医療管理データベースから選択し後ろ向きコホート内症例対照試験にて行われた。該当患者は1万2,676例(介入群、女性72.3%、平均年齢42[SD 11])、年齢・性別で適合した肥満者3万8,028例と非肥満者12万6,760例(対照群)を組み込んだ。 骨折の発生率および部位を介入群と対照群で比較。また、骨折リスクについて、各群、および2006~14年については手術法別に、術前と術後を比較した。骨折既往、併存疾患数、社会的貧困度、居住地域で補正した条件付き多変量ポアソン回帰分析モデルを用いた。術後の骨折は骨粗鬆症パターンに変化 肥満外科手術を受けた介入群の患者は、術前においても、肥満・非肥満者の対照群よりも骨折の発生率が高い傾向が認められた。介入群の術前の骨折発生率10.5%に対し、肥満群は8.1%、非肥満群は6.6%であった。 術後平均4.4年後では、介入群のほうが骨折が起きやすい状況であることがみてとれた。同群の発生率は4.1%で、肥満群は2.7%、非肥満群は2.4%であった。介入群の術後補正後骨折相対リスクは、対肥満群1.38(95%信頼区間[CI]:1.23~1.55)、対非肥満群1.44(同:1.29~1.59)と有意に高率であった。 また術前では、介入群は対照群と比べて、下肢遠位部の骨折リスクが高く、上肢骨折リスクは低く、脊椎、股関節・大腿骨・骨盤の骨折リスクは同程度であった。しかし術後は、下肢遠位部の相対リスクは低減し(0.66、95%CI:0.56~0.78)、変わって上肢(1.64、1.40~1.93)、脊椎(1.78、1.08~2.93)、骨盤・股関節・大腿骨(2.52、1.78~3.59)のリスクが増大した。  術式別にみた検討では、骨折リスクの増大は、胆膵路転換術例でのみ認められた。 これらの結果を踏まえて著者は、「骨折リスクアセスメントとマネジメントを肥満外科手術の一連として行う必要がある」とまとめている。

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総合内科専門医試験対策 “苦手”科目をクイック復習 2016

第1回 内分泌第2回 腎臓第3回 血液第4回 膠原病 第5回 神経 日本内科学会の認定医・専門医制度が大きく変わろうとしているなか、受験者が急増しているのが総合内科専門医。今後は、現行の総合内科専門医から移行する「新・内科専門医」が従来の内科認定医に代わり、すべての内科系専門医の"基礎資格"になるとみられているからです。内科の中でもついおろそかになりがちな、内分泌、腎臓、血液、膠原病、神経をピックアップした本番組は、2016年の試験に向けてより実践に即した演習問題を追加し、さらにバージョンアップしました。講師は、医師国家試験予備校で試験対策講義に豊富な経験を持つ民谷健太郎氏。苦手意識がある科目だけでも一通りチェックすれば、自信を持って試験に臨めます。第1回 内分泌初回は内分泌。「負荷試験」「甲状腺疾患」「Cushing症候群」など、基本であるにもかかわらす、専門科に進んでしまうとつい忘れてしまいがちな内容を、民谷氏が独自で作成した図解を用いて、わかりやすく解説していきます。試験対策はもちろん、内科全般の復習にも役立ちます。第2回 腎臓第2回は腎臓。多くの方がつまずくであろう腎生検に着目し、民谷氏オリジナルのアニメーションで腎臓の解剖生理を徹底解説。この領域では基本を知ることが多くの問題を読み解く鍵となります。また「ネフローゼ症候群」を振り分けるキーワードなど、試験対策のための“コツ”も満載です。第3回 血液複雑な疾患が多く苦手意識を持ちやすい血液領域ですが、「ハプトグロビン」「Coombs試験」など、血液内科で使用される専門用語に慣れておくことが自信につながります。血管を中心に骨髄、肝臓、脾臓という全体像をイラストで解説。また参考症例で注目すべき血液所見、覚えておくべき塗抹標本の所見を紹介します。第4回 膠原病 第4回の膠原病。全身のさまざまな臓器に障害を来すため、その分広範囲の勉強が必要と思われがちですが、ずばり強化すべきは関節リウマチとSLE!出題頻度がとても高いんです!特異度の高い自己抗体さえ覚えてしまえば、あっさり解けてしまう問題が多いのも特徴。もちろん苦手な人の多い血管炎症候群のポイントについても紹介しています。第5回 神経第5回は神経。プライマリの現場でもよく出くわすcommonな疾患を取り扱っていますが、試験で混乱しないためのヒントが満載です。神経領域では、似たような疾患名でも扱う薬剤や検査が全く異なります。薬理作用を理解して、きちんと整理することが試験攻略の近道です。

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糖尿病治療薬、死亡・心血管リスクを下げる組み合わせは?/BMJ

 糖尿病治療薬の単独療法あるいは併用療法は、使用する薬剤によって心血管疾患(CVD)・心不全・死亡リスクに臨床的に重大な差があり、概してグリプチン系もしくはグリタゾン系(チアゾリジン系)を用いた場合はこれらを使用しない場合と比べて、CVD・心不全・死亡のリスクが低いことが明らかになった。英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが、英国プライマリケアのデータベースを用いた2型糖尿病患者のコホート研究の結果、報告した。これまでいくつかの糖尿病治療薬は、臨床試験や市販後調査において心不全のリスク増加との関連が示唆され、総合的なリスクとベネフィットに関する懸念が高まったことから、大規模な2型糖尿病患者集団での糖尿病治療薬長期使用による臨床的アウトカムのリスク定量化が望まれていた。著者は、「今回の結果は、服薬アドヒアランスの程度や服薬量に関する情報はなく、適応による交絡を受けているが、糖尿病治療薬の処方に影響するかもしれない」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年7月13日号掲載の報告。英国プライマリケア約1,200施設の2型糖尿病患者約47万例を追跡 研究グループは、2007年4月1日~2015年1月31日の間、英国プライマリケア1,243施設のデータベース「QResearch」を用い、25~84歳の2型糖尿病患者46万9,688例を対象に前向きコホート研究を行った。 主要評価項目は、患者の診療記録、死亡または入院記録に基づくCVD、心不全の初発あるいは全死因死亡の記録で、糖尿病治療薬(グリタゾン系、グリプチン系、メトホルミン、SU薬、インスリン、その他)の単独または併用投与との関連について、潜在的交絡変数を補正したCox比例ハザードモデルにて解析した。リスク低下に寄与する単独または併用療法が明らかに 追跡期間中、1つ以上の糖尿病治療薬の処方を受けた患者は27万4,324例(58.4%)で、グリタゾン系が2万1,308例(4.5%)、グリプチン系が3万2,533例(6.9%)、メトホルミン25万6,024例(54.5%)、SU薬13万4,570例(28.7%)、インスリン1万9,791例(4.2%)であった。 グリプチン系の使用は、非使用と比較し、全死因死亡のリスクが18%低下、心不全リスクが14%低下したが、CVDリスクの有意な変化は認められなかった。一方、グリタゾン系使用では、全死因死亡リスクが23%、心不全リスクが26%、CVDリスクも25%有意に低下した。 無治療(糖尿病治療薬の処方を受けていなかった期間)と比較すると、グリプチン系単独療法ではいずれのリスクとも有意な関連はなかったが、グリプチン+メトホルミン2剤併用療法は3つのアウトカムすべてでリスクが有意に低下し(リスク低下:心不全38%、CVD33%、全死亡48%)、グリプチン+メトホルミン+SU薬3剤併用療法も同様であった(同:心不全40%、CVD30%、全死亡51%)。 無治療(糖尿病治療薬の処方を受けていなかった期間)と比較して、グリタゾン系単独療法は心不全リスクが50%低下し、グリタゾン系+SU薬の2剤併用療法では心不全35%、CVD25%のリスク低下が認められた。また、グリタゾン系+メトホルミンの2剤併用療法は、3つのアウトカムすべてのリスクが有意に低下した(心不全50%、CVD54%、全死因死亡45%)。グリタゾン系+SU薬+メトホルミンの3剤併用療法も同様であった(心不全46%、CVD41%、全死因死亡56%)。

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結節性多発動脈炎〔PAN: polyarteritis nodosa〕

1 疾患概要■ 概念・定義主として中型の筋性動脈が侵される壊死性動脈炎である。国際的な血管炎の分類であるChapel Hill Consensus Conference 2012分類(CHCC2012)1)では、血管炎を障害される血管のサイズにより分類しており、本疾患はmedium vessel vasculitis(中型血管炎)に分類されている。剖検時に動脈に沿って粟粒大から豌豆大の小結節が多発して認められる場合があり、KussmaulとMaierにより結節性動脈周囲炎として1866年に提唱された。現在では、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)の呼称が一般的に用いられている。本症の壊死性動脈炎は、肝臓、胆嚢、脾臓、消化管、腸間膜、腎泌尿生殖器、皮膚、骨格筋、中枢神経系、心臓、肺など全身に認め、とくに血管の分岐部が侵されやすい。肺では気管支動脈に病変を認め、肺動脈が侵されることはまれである。原則として腎糸球体は侵されない。■ 疫学50~60歳に好発し、男女比では男性にやや多い。厚生労働省より結節性動脈周囲炎として、特定疾患医療受給者証を交付された患者数は2011年の時点でおよそ9,000人であるが、この中には顕微鏡的多発血管炎の患者も含まれているので、PANの患者が実際にどのくらい存在するかは不明である。しかしながら、PANの患者数は顕微鏡的多発血管炎に比べて圧倒的に少なく、500人未満と推定される。2006年以降、PANと顕微鏡的多発血管炎は別個に登録されるようになったため、今後その実数が明らかになるものと思われる。■ 病因不明である。アデノシンデアミナーゼ2(adenosine deaminase 2: ADA2)の一塩基多型による先天的機能欠損が、小児期のPAN類似血管症の原因となることが報告されている2、3)が、成人例でADA2の量的または質的異常があるとの報告はない。本疾患に特徴的な自己抗体は知られていない。■ 症状発熱や全身倦怠感、体重減少のほか、急速進行性腎障害、高血圧、中枢神経症状、消化器症状、紫斑、皮膚潰瘍、末梢神経障害などの多彩な症状を呈する。■ 分類本症の組織学的病期はArkinにより、I期:変性期、II期:炎症期、III期:肉芽期、IV期:瘢痕期に分類されている(Arkin分類)。変性期には内膜から中膜にかけて、浮腫とフィブリノイド変性が認められる。炎症期には中膜から外膜にかけて、好中球、時に好酸球、リンパ球、形質細胞が浸潤し、フィブリノイド壊死は血管全層に及ぶ。その結果、内弾性板は破壊され、断裂、消失する。炎症期が過ぎると、組織球や線維芽細胞が外膜より侵入し、肉芽期に入る。肉芽期には内膜増殖が起こり、血管内腔が閉塞するほど高度になることがある。瘢痕期では、炎症細胞浸潤はほとんどみられず、血管壁は線維性組織に置換される。このような場合でも、弾性線維染色を行うと内弾性板の断裂が認められ、診断に有用である。また、これら各期の病変が、同一症例内に同時期に混在して認められることも特徴である。■ 予後本症の予後は急性期の治療によるところが大きい。副腎皮質ステロイドによる治療を基本としたフランスの臨床研究では、57例中48例(84.2%)が初期治療により寛解し、残りの9例中8例も免疫抑制薬の併用などにより寛解導入されている4)。しかしながら、寛解導入された56例中、26例(46.4%)で再燃しており、再燃率は比較的高いといえる。5年生存率は90%強である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省指定難病診断基準(難治性血管炎に関する調査研究班2006年改訂)に基づいて行われる(表1)。重症度に応じて、1度~5度に分類される(表2)。表1 結節性多発動脈炎の診断基準(厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班2006年改訂)【主要項目】1) 主要症候(1)発熱(38℃以上、2週以上)と体重減少(6ヵ月以内に6kg以上)(2)高血圧(3)急速に進行する腎不全、腎梗塞(4)脳出血、脳梗塞(5)心筋梗塞、虚血性心疾患、心膜炎、心不全(6)胸膜炎(7)消化管出血、腸閉塞(8)多発性単神経炎(9)皮下結節、皮膚潰瘍、壊疽、紫斑(10)多関節痛(炎)、筋痛(炎)、筋力低下2) 組織所見中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在3) 血管造影所見腹部大動脈分枝(とくに腎内小動脈)の多発小動脈瘤と狭窄・閉塞4) 判定(1)確実(definite)主要症候2項目以上と組織所見のある例(2)疑い(probable)(a)主要症候2項目以上と血管造影所見の存在する例(b)主要症候のうち(1)を含む6項目以上存在する例5) 参考となる検査所見(1)白血球増加(10,000/μL以上)(2)血小板増加(400,000/μL以上)(3)赤沈亢進(4)CRP強陽性6) 鑑別診断(1)顕微鏡的多発血管炎(2)多発血管炎性肉芽腫症(旧称:ウェゲナー肉芽腫症)(3)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧称:アレルギー性肉芽腫性血管炎)(4)川崎病動脈炎(5)膠原病(SLE、RAなど)(6)IgA血管炎(旧称:紫斑病性血管炎)【参考事項】(1)組織学的にI期:変性期、II期:急性炎症期、III期:肉芽期、IV期:瘢痕期の4つの病期に分類される。(2)臨床的にI、II期病変は全身の血管の高度の炎症を反映する症候、III、IV期病変は侵された臓器の虚血を反映する症候を呈する。(3)除外項目の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが、特徴的な症候と検査所見から鑑別できる。表2 結節性多発動脈炎の重症度分類●1度ステロイドを含む免疫抑制薬の維持量ないしは投薬なしで1年以上病状が安定し、臓器病変および合併症を認めず、日常生活に支障なく寛解状態にある患者(血管拡張剤、降圧剤、抗凝固剤などによる治療は行ってもよい)。●2度ステロイドを含む免疫抑制療法の治療と定期的外来通院を必要とするも、臓器病変と合併症は併存しても軽微であり、介助なしで日常生活に支障のない患者。●3度機能不全に至る臓器病変(腎、肺、心、精神・神経、消化管など)ないし合併症(感染症、圧迫骨折、消化管潰瘍、糖尿病など)を有し、しばしば再燃により入院または入院に準じた免疫抑制療法ないし合併症に対する治療を必要とし、日常生活に支障を来している患者。臓器病変の程度は注1のa~hのいずれかを認める。●4度臓器の機能と生命予後に深く関わる臓器病変(腎不全、呼吸不全、消化管出血、中枢神経障害、運動障害を伴う末梢神経障害、四肢壊死など)ないしは合併症(重症感染症など)が認められ、免疫抑制療法を含む厳重な治療管理ないし合併症に対する治療を必要とし、少なからず入院治療、時に一部介助を要し、日常生活に支障のある患者。臓器病変の程度は注2のa~hのいずれかを認める。●5度重篤な不可逆性臓器機能不全(腎不全、心不全、呼吸不全、意識障害・認知障害、消化管手術、消化・吸収障害、肝不全など)と重篤な合併症(重症感染症、DICなど)を伴い、入院を含む厳重な治療管理と少なからず介助を必要とし、日常生活が著しく支障を来している患者。これには、人工透析、在宅酸素療法、経管栄養などの治療を要する患者も含まれる。臓器病変の程度は注3のa~hのいずれかを認める。注1:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により軽度の呼吸不全を認め、PaO2が60~70Torr。b.NYHA2度の心不全徴候を認め、心電図上陳旧性心筋梗塞、心房細動(粗動)、期外収縮あるいはST低下(0.2mV以上)の1つ以上を認める。c.血清クレアチニン値が2.5~4.9mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.09~0.2の視力障害。e.拇指を含む2関節以上の指・趾切断。f.末梢神経障害による1肢の機能障害(筋力3)。g.脳血管障害による軽度の片麻痺(筋力6)。h.血管炎による便潜血反応中等度以上陽性、コーヒー残渣物の嘔吐。注2:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により中等度の呼吸不全を認め、PaO2が50~59Torr。b.NYHA3度の心不全徴候を認め、胸部X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人口ペースメーカーの装着のいずれかを認める。c.血清クレアチニン値が5.0~7.9mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.02~0.08の視力障害。e.1肢以上の手・足関節より中枢側における切断。f.末梢神経障害による2肢の機能障害(筋力3)。g.脳血管障害による著しい片麻痺(筋力3)。h.血管炎による肉眼的下血、嘔吐を認める。注3:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により高度の呼吸不全を認め、PaO2が50Torr 未満。b.NYHA4度の心不全徴候を認め、胸部X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人口ペースメーカーの装着、のいずれか2つ以上を認める。c.血清クレアチニン値が8.0mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.01以下の視力障害。e.2肢以上の手・足関節より中枢側の切断。f.末梢神経障害による3肢以上の機能障害(筋力3)、もしくは1肢以上の筋力全廃(筋力2以下)。g.脳血管障害による完全片麻痺(筋力2以下)。h.血管炎による消化管切除術を施行。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)2006~2007年度合同研究班による『血管炎症候群の診療ガイドライン』の中で、「寛解導入療法と寛解維持療法の指針」が示されているので、以下に示す。■ 寛解導入療法1)副腎皮質ステロイドプレドニゾロン0.5~1mg/kg/日(40~60mg/日)を重症度に応じて経口投与する。腎、脳、消化管など生命予後に関わる臓器障害を認めるような重症例では、パルス療法すなわちメチルプレドニゾロン大量点滴静注療法(メチルプレドニゾロン500~1,000mg + 5%ブドウ糖溶液500mLを2~3時間かけ点滴静注、3日間連続)を行う。後療法としてプレドニゾロン0.5~0.8mg/日の投与を行う5)。2)ステロイド治療に反応しない場合シクロホスファミド点滴静注療法(intravenous cyclophosphamide:IVCY)または経口シクロホスファミド(CY)の経口投与(0.5~2mg/kg/日)を行う。IVCYは、シクロホスファミド500~600mg/生理食塩水または5%ブドウ糖溶液500mLを2~3時間かけて点滴静注し、4週間間隔、計6回を目安に行う6、7)。IVCY治療中は白血球減少に注意し3,000/㎜3以下にならないように次回のIVCY量を減量する。なお、CYは腎排泄性のため腎機能低下に応じて減量投与を行う(クラスIIb、レベルC)8)。表3に年齢、腎機能に応じたIVCY量を示す。なお、IVCYは経口CYに比べて有効性は同等だが副作用が少ないと報告されている9)。画像を拡大するその他の免疫抑制薬としてアザチオプリン、メトトレキセートも用いられる(クラスIIb、レベルC)9)。いずれも腎排泄性である。アザチオプリンは腎機能低下時には減量が必要であり、メトトレキセートは腎不全には禁忌である。3)重要臓器傷害の重症例肺・腎・消化管・膵などの重要臓器を2ヵ所以上傷害された重症例では、ステロイドパルスと共に血漿交換療法を行い、生命予後を改善させるようにする(クラスIIb、レベルC)10、11)。4)HBウイルス肝炎併発例活動性のHBウイルス肝炎を伴っている場合には、抗ウイルス薬および免疫複合体除去目的で血漿交換療法を併用する(クラスIIb、レベルC)5、6)。■ 寛解維持療法初期治療による寛解導入後は、再燃のないことを確認しつつ副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン)を漸減し維持量(5~10mg/日)とする。副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の治療期間は原則として2年を超えない(クラスIIb、レベルC)12)。CYは3ヵ月間用い、その後寛解維持薬として、より副作用の少ないアザチオプリンに変更し、半年~1年間用いる(クラスIIb、レベルC)13)。なお、免疫抑制薬、血漿交換療法は、本疾患に対する保険適用薬でないため、投薬時には十分なインフォームドコンセントが必要である。4 今後の展望血管炎症候群の中でも、顕微鏡的多発血管炎などのANCA関連血管炎の病因・病態解明が進み、新規治療法が考案されてきているのに対し、PANに対する基礎研究ならびに臨床研究は、ここ数年あまり大きな進展が得られていないのが実情である。とはいえ、厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班をはじめとする地道な基礎的・臨床的研究が継続されており、その中からブレイクスルーが生まれることが期待される。5 主たる診療科膠原病・リウマチ科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 結節性多発動脈炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本血管病理研究会(医療従事者向けのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Zhou Q, et al. New Engl J Med.2014;370:911-920.3)Navon Elkan P, et al. New Engl J Med.2014;370:921-931.4)Samson M, et al. Autoimmun Rev. 2014;13:197-205.5)中林公正ほか. ANCA関連血管炎の治療指針. 厚生労働省厚生科学特定疾患対策研究事業難治性血管炎に対する研究班(橋本博史編). 2002;19-23.6)Gayraud M, et al. Br J Rheumatol. 1997;36:1290-1297.7)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 2003;49:93-100.8)難病医学研究財団/難病情報センター 免疫疾患調査研究班(難治性血管炎に関する調査研究班). IVCY治療における年齢、腎機能に応じたシクロホスファミドの投与量設定表. 難病情報センター. (参照 2015.1月26日)9)Jayne D. Curr Opin Rheumatol. 2001;13:48-55.10)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 1995;38:1638-1645.11)寺田典生ほか. 日内会誌. 1988;77:494-498.12)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 1998;41:2100-2105.13)Jayne D, et al. N Engl J Med. 2003;349:36-44.公開履歴初回2015年05月15日更新2016年06月07日

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合成性ホルモン・ダナゾールでテロメア伸長を確認/NEJM

 テロメア疾患患者に対し、合成性ホルモンのダナゾールの経口投与による治療によって、テロメア伸長がもたらされたことが示された。米国立心肺血液研究所(NHLBI)のDanielle M. Townsley氏らが同疾患患者を集めて行った第I-II相前向き試験の結果で、NEJM誌2016年5月19日号にて発表された。テロメア維持・修復の遺伝子異常は、骨髄不全、肝硬変、肺線維症を引き起こすこと、またがんに対する感受性を高めることが知られている。歴史的に、骨髄不全症候群の治療としてアンドロゲンが有用とされてきたが、組織培養と動物モデルにおける検討で、性ホルモンがテロメラーゼ遺伝子発現を調節することが確認されていた。テロメア疾患患者27例に1日800mg、24ヵ月間経口投与 検討は、テロメア疾患患者に、合成性ホルモンダナゾールを1日800mg、24ヵ月間経口投与して行われた。 治療目標は、テロメア短縮の抑制で、主要有効性エンドポイントは、24ヵ月時点の評価において、テロメア短縮が年換算で20%減少することとした。主要安全性エンドポイントは、治療毒性であった。また、治療の血液学的効果を複数のポイントで調べ、副次的有効性エンドポイントとして評価した。 登録された被験者は、27例(年齢中央値41歳、女性15例)であった。テロメア伸長は6ヵ月、12ヵ月時点でも76~89%で確認 本試験は、被験者27例のうち、主要エンドポイントを評価できた12例全例において、テロメア短縮の抑制が認めら、早期に中止となった。intention-to-treat解析における主要有効性エンドポイント達成率は、12/27例(44%、95%信頼区間[CI]:26~64)であった。 また、意外なことに、ほぼ全患者(11/12例、92%)が、ベースラインと比較して24ヵ月時点でテロメアの伸長が認められた(平均伸長:386bp、95%CI:178~593)。 探索的解析の結果、同様の伸長は、6ヵ月時点でも76%(16/21例、平均伸長:175bp、95%CI:79~271)、12ヵ月時点でも89%(16/18例、同:360bp、209~512)で認められた。 血液学的効果は、3ヵ月時点での評価(19/24例の79%対象)、24ヵ月時点での評価(10/12例の83%対象)において認められた。 ダナゾールの既知の有害作用の発現として、肝酵素上昇が41%、筋痙攣が33%(いずれもGrade2未満)報告された。

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全般性不安症でよく見られる不眠、その関連因子は

 睡眠障害は、全般性不安症(GAD)の重要な診断基準の1つである。不眠症の有病率に関連する因子および不眠関連因子がQOLに及ぼす影響について、スペイン・Hospital General Universitario Gregorio MaranonのF Ferre Navarrete氏らは、多施設共同前向き横断観察研究にて検討を行った。Behavioral sleep medicine誌オンライン版2016年5月11日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・多変量解析の結果、不眠症(ISI 8以上)と最も関連する要因は、GADの重症度(OR:9.253[for severe GAD]、95%CI:1.914~44.730、p=0.006)、痛みの干渉(OR:1.018、95%CI:1.003~1.033、p=0.016)、うつ症状(OR:1.059、95%CI:1.019~1.101、p=0.004)であった。・不眠は、QOLとの関連が認められなかった。 本検討により、GAD患者において、不眠症は一般的によく見られる健康状態であり、不安の重症度やうつ症状、痛みの干渉と関連することが示唆された。関連医療ニュース 社交不安症に対するエスシタロプラムの効果は うつ病や不安障害患者は、季節性の症状変化を実感! 不眠症の人おすすめのリラクゼーション法とは

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糖尿病治療薬、効果の高い組み合わせは?/BMJ

 成人2型糖尿病患者に対し、メトホルミン単剤療法に比べ、メトホルミン+グリプチン、またはグリタゾンの2剤併用療法は、高血糖症リスクを2~4割低下すること、またグリタゾンもしくはグリプチンの単剤療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、重度腎不全リスクが約2.6倍高いことなどが明らかにされた。英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが、約47万例の2型糖尿病患者を対象に行ったコホート試験の結果で、BMJ誌オンライン版2016年3月30日号で発表した。グリタゾンやグリプチンの臨床試験エビデンスの多くは、HbA1c値といった代替エンドポイントをベースとしたもので、合併症を減らすといった臨床的エンドポイントを評価するものではなかったという。研究グループは、2型糖尿病で長期間投薬治療を受ける大規模集団を対象に、臨床的アウトカムのリスクを定量化する検討を行った。英国1,200ヵ所以上のプライマリケア診療所で約47万例を追跡 2007年4月1日~15年1月31日の間に、英国プライマリケアのデータベース「QResearchデータベース」に参加する診療所1,243ヵ所を通じて、46万9,688例の2型糖尿病患者について前向きコホート試験を行った。被験者の年齢は25~84歳だった。 血糖降下薬(グリタゾン、グリプチン、メトホルミン、SU薬、インスリンその他)の単剤または組み合わせ投与と、切断術、失明、重度腎不全、高血糖症、低血糖症の初発診断記録との関連、および死亡、入院記録との関連を、潜在的交絡因子を補正後、Coxモデルを用いてハザード比(HR)を算出して調べた。単剤、2剤または3剤併用のメリット、リスクが明らかに 追跡期間中にグリタゾンの処方を受けたのは2万1,308例(4.5%)、グリプチンの処方を受けたのは3万2,533例(6.9%)だった。 グリタゾン使用は、非使用に比べ、失明リスクが約3割低かった(補正後ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.57~0.89、発症率:14.4件/1万人年)。一方で低血糖症リスクは約2割増大した(同:1.22、1.10~1.37、65.1件/1万人年)。 グリプチン使用では、低血糖症リスク低下との関連が認められた(同:0.86、0.77~0.96、45.8件/1万人年)。 一方で、被験者のうちグリタゾンやグリプチン単剤療法を行った割合は低かったものの、メトホルミン単剤療法に比べ、重度腎不全リスクは約2.6倍の増大がみられた(補正後HR:2.55、95%CI:1.13~5.74)。 併用に関しては、メトホルミン+グリプチン、またはメトホルミン+グリタゾンの2剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、いずれも高血糖症リスクは低下した(それぞれの補正後HRは0.78と0.60)。 メトホルミン+SU薬+グリタゾンの3剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、失明リスクを3割強減少した(同:0.67、同:0.48~0.94)。 メトホルミン+SU薬+グリタゾンまたはグリプチンの各3剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、低血糖症リスクを5~6倍に増大したものの(それぞれ補正後HR:5.07、6.32)、同リスクはメトホルミン+SU薬の2剤併用療法と同程度だった(同:6.03)。

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フィーバー國松の不明熱コンサルト

第1回 循環器内科「パパッとエコーでわからないもの」 第2回 消化器内科「内視鏡、やってみたけど」 第3回 呼吸器内科「肺は大丈夫だけど、苦しい」 第4回 腎臓内科「腎臓がやられているというだけで…」 第5回 血液内科「骨髄検査は正常です」 第6回 神経内科「答えは脳ではない」 第7回 膠原病内科「それでもスティル病とは言えない」 第8回 感染症内科「ほかに何があるでしょうか?」 循環器、消化器、呼吸器…どんな臓器の専門医でも日々の専門診療のなかでなかなか原因が突き止められない「熱」に直面することがあります。そんな専門医が抱える不明熱を「熱」のスペシャリスト・フィーバー國松が徹底分析。各科で遭遇しやすいキホンの熱から、検査ではわからない困った熱まで、それらの鑑別方法、対処法を詳しく解説します。 国立国際医療研究センター病院で不明熱外来を担う講師は、院内外の各科からさまざまな不明熱のコンサルトを受け、日々、その発熱の原因究明に挑んでいます。本DVDで取り上げるのは、循環器、消化器、呼吸器、腎臓、血液、神経、膠原病、感染症の8領域。「熱」に自信を持って立ち向かえる!発熱診療の強力な手がかりをお届けします!第1回 循環器内科「パパッとエコーでわからないもの」第1回は循環器内科編。循環器内科でみられるキホンの不明熱、検査ですぐにはわからない困った不明熱を解説します。「循環器疾患で来たはずなのに発熱が続いている…」「救命後に下がらない熱…」特に入院中の患者によくみられる不明熱のさまざまな可能性と、原因究明のためのアプローチを、熱のスペシャリスト・國松淳和氏がご紹介します。第2回 消化器内科「内視鏡、やってみたけど」第2回は消化器内科編。自己免疫疾患から機能性疾患まで、幅広くさまざまな疾患を扱う消化器内科医が、しばしば遭遇する不明熱について解説します。内視鏡や生検では診断のつかない、困った熱の原因を探るためのヒントを紹介します。10歳代から20年以上続く発熱と腹痛の原因疾患とは…!?第3回 呼吸器内科「肺は大丈夫だけど、苦しい」第3回は呼吸器内科編。不明熱のコンサルトを受けることも多い呼吸器内科医が、本当に困る不明熱について解説します。呼吸器という限られた臓器のなかで感染症から、まれな悪性疾患まで、さまざまな疾患の可能性がありうる領域です。特に混乱しやすいのが、原因が呼吸器疾患でなかった場合…肺炎と肺炎随伴胸水と考えていた患者が、実は横隔膜下膿瘍だったなど。見落としがちな疾患をリストアップして紹介します。第4回 腎臓内科「腎臓がやられているというだけで…」第4回は腎臓内科編。腎臓内科で不明熱に遭遇した場合、熱源が疑えても「造影剤を使用しにくい」「試験的な投薬をしにくい」という問題があります。腎機能障害患者の不明熱に対して想起すべき鑑別疾患、絶対に行うべき検査について解説します。また、長期透析という特別な背景を持つ患者の不明熱については、どうアプローチすべきなのか!? 國松氏がコンサルトを受けた実際の症例も紹介。 第5回 血液内科「骨髄検査は正常です」第5回は血液内科編。「不明熱と血球減少」は臨床内科医にとって鬼門!そのため血球減少の相談が血液内科の先生に集中しがちです。そんな他科からのコンサルトや、基礎疾患のわからない外来患者を効率よく診断するために、血球減少を来すキホンの疾患リスト、ウイルス性疾患の鑑別点を紹介します。抗体検査はもちろん必要ですが、時として素早い臨床診断も重要です。第6回 神経内科「答えは脳ではない」第6回は神経内科編。”Help me! Help me!” は神経内科医が押さえておきたい熱が出る12病態の頭文字!病態ごとに想起すべき疾患名をリストアップして解説します。また、「循環器内科のまれで重篤な疾患」と勘違いされがちな感染性心内膜炎(IE)についてもレクチャー。心原性脳塞栓症の患者が来たら、まずはIEのハイリスク群からチェックしましょう!よくある疾患でも、その裏に隠れている疾患を見逃さないための注意が必要です。第7回 膠原病内科「それでもスティル病とは言えない」第7回は膠原病科編。発熱のコンサルトに慣れている膠原病科の先生は、その原因疾患が膠原病であれば困ることはありません。困るのはやはり、最大かつ永遠の好敵手であるリンパ腫!SLEや成人スティル病など、臨床診断を行う膠原病科医にとって、病理組織検査でなければ診断できないものこそ難問です。そんな膠原病科の不明熱について、熱のスペシャリスト國松淳和先生が、症例診断も交えて解説します。第8回 感染症内科「ほかに何があるでしょうか?」日頃から不明熱の精査に慣れている感染症内科の先生方が困るのは、感染症を検討し尽くしても診断のつかない不明熱!皮疹、高サイトカイン、菌血症様という代表的な症候から臨床診断するコツや、不明熱精査と同時に始める「不明熱治療」という考え方と方法について解説します。症例検討は、ほぼ無症候で40度以上の発熱を2年間も繰り返す12歳女児。その最終診断とは?

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