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多剤耐性結核、PA-824を含む3剤併用レジメンが有望

 薬剤感受性の多剤耐性結核の新規治療法として、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド併用療法は適切なレジメンであり、今後、開発を進める価値があることが、南アフリカ共和国Stellenbosch大学のAndreas H Diacon氏らの検討で示された。薬剤抵抗性の結核による世界的な疾病負担を軽減するには、投与期間が短く耐性になりにくい新規薬剤の開発が求められる。近年、種々の新規抗結核薬の臨床評価が進められ、なかでもbedaquiline(ジアリルキノリン、TMC207)とPA-824(nitroimidazo-oxazine)は用量依存性の早期殺菌活性(early bactericidal activity; EBA)が確認され有望視されている。Lancet誌2012年9月15日号(オンライン版2012年7月23日号)掲載の報告。6つのレジメンのEBAを無作為化試験で評価研究グループは、肺結核に対する新規多剤併用レジメン14日間投与法の将来的な開発の適合性を評価するために、EBAに関するプロスペクティブな無作為化試験を行った。2010年10月7日~2011年8月19日までに、南アフリカ・ケープタウン市の病院に入院した薬剤感受性の単純性肺結核患者(18~65歳)を対象とした。これらの患者が、bedaquiline単独、bedaquiline+ピラジナミド、PA-824+ピラジナミド、bedaquiline+PA-824、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミドあるいは陽性対照としての標準的抗結核治療(イソニアジド+リファンピシン+ピラジナミド+エタンブトール)を施行する群に無作為に割り付けられた。治療開始前の2日間、夜間の喀痰を採取し、開始後は毎日、薬剤投与までに喀痰を採取した。喀痰の液体培養中のM tuberculosisのコロニー形成単位(CFU)および陽性化までの時間(TTP)を測定した。主要評価項目は14日EBAとし、喀痰1mL中のlog10CFUの毎日の変化率を評価した。3剤併用レジメンのEBAが最良、標準治療に匹敵85例が登録され、標準治療群に10例、各治療レジメン群には15例ずつが割り付けられた。平均14日EBAは、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド群(13例、0.233[SD 0.128])が最も優れ、bedaquiline単独群(14例、0.061[SD 0.068])やbedaquiline+ピラジナミド群(15例、0.131[0.102])、bedaquiline+PA-824群(14例、0.114[0.050])との間に有意差を認めたが、PA-824+ピラジナミド群(14例、0.154[0.040])とは有意な差はなく、標準治療(10例、0.140[SD 0.094])との同等性が確認された。いずれのレジメンも忍容性は良好で、安全性が確かめられた。PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド群の1例が、プロトコールで事前に規定された判定基準に基づき、補正QT間隔の過度の延長で治療中止となった。著者は、「PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド併用療法は少なくとも標準治療と同等の有効性を示し、薬剤感受性の多剤耐性結核菌の治療として適切なレジメンである可能性が示唆される」と結論し、「多剤併用療法のEBA試験は、新たな抗結核治療レジメンの開発に要する時間の短縮化に寄与する可能性がある」と指摘している。

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君も医師として「国際協力師」にならないか?

「医師のキャリアパスを考える医学生の会」主催(代表:秋葉春菜氏〔東京女子医科大学医学部4年〕)の第17回勉強会が、2012年8月19日(日)、東京医科歯科大学・湯島キャンパスにおいて開催された。当日は夏休みの期間中にも関わらず医学生、社会人を中心に約40名超が参加した。今回は医師でNPO法人宇宙船地球号代表の山本敏晴氏を講師に迎え、「海外で、国境を越えて活躍している医療関係者達~宇宙船地球号にご搭乗中の皆様へ~」と題し、講演を行った。国際協力を俯瞰するはじめに山本氏の自己紹介のあと、「国際協力とは何か」と題して、現在の国際協力の種類や体制、これからの展開についてレクチャーが行われた。最も強調されていた内容は、『国際協力』は、無給のボランティアとして行うだけではなく、有給の仕事として行う方法もある、ということだった。その就職場所となる組織は、大きく分けて4つある。〔1〕国際機関(国連(WHO、ユニセフ等)など)、〔2〕政府機関(外務省の国際協力機構(JICA)など)、〔3〕民間のNGO(非政府組織)、〔4〕民間の企業(開発コンサルタント会社など)。以上の、いずれの組織でも、医師などが雇用され、有給の仕事として国際協力を行っている人が多数いるという。〔1〕の国連職員等の場合、アメリカの国家公務員に準じた給与が支払われ、勤務年数と昇進に伴い増額されていく。〔2〕の日本のJICA専門家などの場合、日本の一般的な勤務医と同等か、それ以上の給与が支払われる。〔3〕のNGOの場合、薄給または無給である。例えば、山本氏がかつて所属した「国境なき医師団」の場合は、2012年現在、毎月約13万円程度が支払われる。〔4〕は日本政府の外務省から国際協力事業を受注する「会社」で、医療・公衆衛生分野の事業を実施する場合もある。その場合、医師なども雇用される。〔1〕国連職員等と〔2〕JICA専門家等の場合、国家公務員と同等以上の待遇で途上国等へ派遣されるので、待遇(給与、年金、保険など)は国内並みに安定する。また、国際協力と聞くと、途上国の田舎で、電気も水道もない生活を送ると思っている人が多いが、そのようなことはなく、(〔1〕と〔2〕の場合は)派遣国の首都にいくことが多く、そこにある高級ホテル等に泊まることが多い。業務は派遣先の国の(医療・公衆衛生に関わる)政策立案(及びその政策の実施補助)などが主体であるなどと述べた。一方で、〔3〕のNGOでのボランティアの場合、収入は低いため、仮にそれに参加したとしても、自分や家族の生活費を捻出できないため、持続的な活動を行うことはできず、半年から2年程度で止めてしまう人が多い。このため、継続的に国際協力を行っている人の8割以上は、〔1〕、〔2〕、〔4〕のいずれかの方法で、有給のプロとして国際協力を行っているという。ただし、〔1〕、〔2〕、〔4〕では途上国の保健省(日本の厚生労働省に相当)への政策提言・アドバイスが、主な仕事となるため、医師が自分で患者の診察や治療をすることは、ほぼない。このため、「自分で直接、患者さんを診療するタイプの国際協力」を行いたい場合、お金にはならないが、〔3〕のNGOのボランティアとして行うしかない。中庸案としては、日本赤十字社が日本各地で運営する病院で、普段は勤務をしておき、自然災害が途上国で起きた際に、それに対する(日赤からの)緊急援助として(短期間の間だけ)出動する、という方法もある。いずれにしても、「『なんらかの形で持続的に国際協力に従事している人々』のことを、山本氏は『国際協力師』と呼び、数年前から、その概念を普及しているのだ」と語った。シエラレオネの現実次に「世界で一番いのちが短い国 シエラレオネ」の説明が行われた。銀座・新宿等で多数の写真展を開催している山本氏が、自ら撮影した写真を示しつつ、現地の内戦の様子や「なぜ平均寿命が短いのか?」が語られた。だがまず、山本氏は、同国の「素晴らしさ」について、触れだした。意外なことに、「持続可能な社会」という意味では、日本の方が「途上国」で、シエラレオネの方が「先進国」だと言う。同国の田舎では、日本の江戸時代のような生活をしており、電気などはない。このため、高度な医療はできない。よって、悪く言えば、近代文明から遅れていると言えるが、よく言えば、「(将来枯渇してしまう石油などのエネルギーに依存しないため)持続可能な生活を、ずっと営んでいるのだ」と言う。このためむしろ、「同国に国際協力をしてあげる」というよりも、「日本人が(江戸時代までは行っていたのに)忘れてしまった「持続可能な社会」(未来まで、ずっと続けていける(医療も含めた)生活のスタイル)を思い出させてくれる国であった」と山本氏は言う。次に、山本氏は、シエラレオネが、ボロボロになっていった経緯を説明した。シエラレオネでは、ダイヤモンドが採れる。これを狙って、欧米の営利企業が、その採掘を巡り同国で紛争を起こした。内戦だけでなく、隣国リベリアからの軍事侵攻も発生し、人々の生活は崩壊していった。多くの医療施設が破壊され、多くの医師や看護師が、国外に逃亡してしまった。その結果、乳児死亡率も、5歳までに子どもが死んでしまう割合(5歳未満子ども死亡率)も、ともに「世界最悪」という国になってしまった(2000年頃)。また、5歳まで生き残った子どもたちも、争う軍事組織らのいずれかに「子ども兵」として雇われ、麻薬漬けにされたまま、「戦争の道具」(生きた兵器)として戦場に連れていかれる。こうして、平均寿命34歳(2002年ユニセフの統計で世界最低)という国ができあがってしまった。こうした現状に対し、山本氏は、自らが現地で医療活動を行うだけでなく、自分が日本に帰ってしまった後も、未来永劫、シエラレオネで続けていけるような「医療システム」の構築を目指した。現地で医療機関(病院と診療所、さらにその連携制度など)を創設し、そこで働く医療従事者の人材育成を行った。そして、これからこうした国々へ支援にいこうという聴講者へ「現地の言葉を覚えること」、「現地の文化と伝統医療を尊重すること」、「西洋医学や日本の医療の手法を、一方的に押し付けないこと」など、体験者ならではのアドバイスを送った。アフガニスタンの現実続いてアフガニスタンに赴任した時の話題となり、同地では、(患者を診る医師としてではなく)プロジェクト・リーダー(コーディネーター)として、同国北部領域における母子保健のシステム構築に従事していたことを語った。同国では現在も(政府とタリバーン等の軍閥間での)紛争が続いており、「世界で一番、妊産婦死亡率が高い」ことと、その理由などが述べられた。国際協力師として世界に関わらないか最後に再び、国際協力を行っていく形として、民間NGOの無給のボランティアとして途上国に派遣されるだけでなく、有給のプロとして、例えば、JICAなどの専門家として赴任する選択肢もあることを強調した。また、今後国際協力を行っていこうという聴講生に向けて、(最も医療が遅れているとされる)アフリカ諸国で国際協力をやりたいのであれば、フランス語を習得した方がいいという助言をした。アフリカ諸国は、昔、フランスの植民地だった国が多いためである。さらに、(途上国の病院等の見学ツアーである)「スタディーツアー」や「ワークキャンプ」を一度は体験してみるのもよいと勧めた。その他、公衆衛生分野(予防、水と衛生など)であれば、医師でなくとも参加できるので医師以外の方でも大学院で「公衆衛生学修士」をとって、参加して欲しいと述べた。それに関連して、「世界を見て思ったことは、予防医学こそが究極の医療ではないかと思う」と述べ講演を終えた。質疑応答次のような質問が、山本氏に寄せられ、一つ一つに丁寧に回答されていた。――援助や支援の在り方について国際協力には、(1)地震などの自然災害の直後や、紛争地帯の中に入っていく「緊急援助」と、(2)それらが落ち着き、途上国の政府や地方自治体が、ある程度、正常に機能している時に行う、「開発援助」がある。(1)と(2)では、まったく違うことをする。(1)は、直接的な(狭義の)医療を行うことが多いが、(2)では、途上国政府への政策提言など、医療システムや公衆衛生の構築(広義の医療)をすることが多い。貧しい途上国への開発援助は、昔は、(マラリアや肺炎などに対する)感染症対策と母子保健(乳児死亡率の改善、妊産婦死亡率の改善など)の改善を目的としていた。ところが、(国連が定めたミレニアム開発目標の終わる)2015年以降、WHOは、大きく方針を変える予定だ。今後は、途上国でも、糖尿病、高血圧などの生活習慣病(いわゆる成人病)が増える傾向にあるため、それらに対する対策(治療と予防)が、主流になる可能性が高い。ちなみに、国際協力の世界では、そうした疾患のことを、「非感染性疾患(NCD)」と言う。――現在の山本氏の活動について現在は、直接的な国際協力(狭い意味での国際協力)からは離れ、『国際協力師』を増やすことを主な活動としている。運営しているNPOの活動は3つある。(1)『国際協力師』を直接的に増やすために、本を執筆したり、啓発するためのさまざまなサイト(ホームページ、ブログ、ツイッター等)を制作している。(2)『お絵描きイベント』という、ちょっと変わった活動もしている。世界中の人々に「あなたの大切なものは何ですか?」と質問をし、その絵を描いてもらい、そこから導き出される、その国の『社会背景に眠っている問題点』を洗い出し、各国の問題をわかりやすく説明し、さらにそれに対し各組織が行っている国際協力活動を紹介する事業を行っている。世界の約70ヵ国・地域で実施した。書籍版が4冊(小学館等から)出版されており、またウェブサイトとしても公開している。(3)一般の企業に対して、「企業の社会的責任(CSR)」のランキングを付けている。利益を追求するだけでなく、環境への配慮を行い、社会貢献も実施するような企業を増やしていくためだ。2年に一度、ウェブサイト上で公開している。同様に、「病院の社会的責任(HSR)」に関するランキングも、現在、検討中である。要するに、すべての組織に、「持続可能性」への配慮を行うように啓発をしている。――国連のミレニアム開発目標(MDGs)2015の評価と意義についてMDGsは大体達成できていると思うが、数字的には、妊産婦死亡率の低下と乳児死亡率の低下が達成できていない。これはこれからの課題だと思う。ただ、この目標を定めたことで先進国が巨額のお金を出資し、資金ができ、一定の効果はあったので評価できると思う。――海外の地域医療で役立ったこと、また逆に日本に持ち込んで役立ったことは?アフリカの田舎では、医師がいないか、足りない。このため、看護師(または、普通の村人で、ある程度の研修を受けた人)が、病気を診断したり治療したりしている。看護師や村人では判断できない、難しい症例の場合は、携帯電話のSMS(ショート・メッセージ・サービス)を使って、首都などにいる医師に連絡をする。こうしたことは、途上国で当たり前のように行われている。日本では、医師法があるため、「医師でなければ診断や治療をしてはいけない」ことになっているが、日本の無医村や離島も、アフリカの田舎に近い場合がある。よって、アフリカの真似をして、日本でも、IT機器(携帯電話やパソコン等)を使って、遠隔地医療を「医師でない人が行って、どうしても医師が必要な場合は、医師がIT技術でアドバイスを送る」ということも考えられる。日本では、毎年、医療費が増加しており、国の借金も膨らんでいる。今後、さらに高齢化社会になるため、毎年1兆円ずつ、国の社会保障費(医療・公衆衛生・年金など)が増えていくことがわかっている。その理由の一つが、医者の人件費が高いことである。一般の日本人の平均年収は430万円だが、医師のそれは1,500万円をはるかに超える。このような「高い」人件費を使わずに、今後の日本の医療を実施していく必要がある。「お金をかけないで行う」、あるいは「費用対効果」を考えるということも、これからの医師には必要だ。2000年から導入された介護保険制度は、まさにこれである。高齢化社会を迎え、また国の財政が破綻しかかっている中、医療従事者であっても、「患者さんにその時点で最高の医療を(予算などまったく気にせず)提供する」ことだけを考えるのではなく、なるべく、お金をかけず、環境にも優しく(電気をあまり消費せず、ゴミをあまり出さないように配慮して)医療システムが未来まで続けていけるように配慮することが必要である。最後にスタッフの伊藤大樹氏(東京医科歯科大学医学部4年)が「国際協力の貴重なお話を有難うございました。これからも充実した勉強会を開催していきますのでよろしくお願いします。また、会では協力いただけるスタッフを募集しています。気軽に参加ください」と閉会挨拶をのべ、3時間にわたる勉強会を終了した。■講演者略歴■関連リンクNPO法人「宇宙船地球号」山本敏晴ブログ* * * * * *医師のキャリアパスを考える医学生の会

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HIV母子感染、抗レトロウイルス薬28週治療が有効:BAN試験

授乳に代わる安全な育児法がない環境においては、HIVに感染した母親あるいは未感染乳児に対する28週の抗レトロウイルス薬予防治療により、乳児へのHIV感染が減少することが、米国疾病対策予防センター(CDC)のDenise J Jamieson氏らの検討で示された。HIVの母子感染は世界的に減少傾向にあるが、医療資源が乏しい地域では解決すべき課題とされる。WHOは、医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、授乳期間中は母親あるいは乳児のいずれかに対する抗レトロウイルス薬の予防投与を推奨している。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年4月26日号)掲載の報告。母親あるいは乳児に対する予防治療の有効性を無作為化試験で評価BAN(Breastfeeding、 Antiretrovirals、 and Nutrition)試験は、HIV感染母親から子どもへの感染予防における母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週投与の有効性を検討する無作為化対照比較試験。2004年4月21日~2010年6月28日まで、アフリカ南東部の国マラウイの首都リロングウェ市で実施された。HIVに感染し、CD4陽性リンパ球細胞数≧250個/1μLの授乳期の母親2,369人とその乳児を対象とし、3つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けた。すべての母親と乳児に、ネビラピン(商品名:ビラミューン)(母親:200mg/kg、乳児:2mg/kg)を1回経口投与し、ジドブジン(商品名:レトロビル)(母親:300mg/kg、乳児:2mg/kg)+ラミブジン(商品名:エピビル)(母親:150mg/kg、乳児:4mg/kg)の合剤(母親は錠剤、乳児はシロップ)を1日2回、7日間投与した。対照群(668人)にはこれ以上の治療は行わなかった。母親に対する抗レトロウイルス薬3剤併用療法群(849人)には、ジドブジン+ラミブジン合剤(商品名:コンビビル)を28週投与し、ネビラピンは出産後最初の2週は1日1回、15日~28週は1日2回投与した。乳児に対するネビラピン療法群(852人)は、出生後最初の2週は10mg/kgを、3~18週は20mg/kgを、19~28週は30mg/kgをそれぞれ1日1回投与した。なお、ネビラピンは、その肝毒性に関するFDA勧告に基づき、2005年2月以降はネルフィナビル(商品名:ビラセプト)に、2006年2月以降はロピナビル+リトナビル合剤(商品名:カレトラ)に変更した。母親には産後24~28週の離乳が推奨された。治療割り付け情報は、現地の医療従事者と患者には知らされたが、それ以外の研究者にはマスクされた。主要評価項目は48週時の乳児のHIV感染とした。48週乳児HIV感染率:対照群7%、母親3剤併用群4%、乳児ネビラピン群4%母親3剤併用群の676組、乳児ネビラピン群の680組、対照群の542組が、48週のフォローアップを完遂した。産後28週以降は授乳を中止した母親は2つの介入群を合わせ96%、対照群は88%だった。生後2~48週の間にHIVに感染した乳児は、母親3剤併用群が30人、乳児ネビラピン群が25人、対照群は38人で、そのうち28人(30%)は28週の治療終了以降に感染していた(それぞれ9人、13人、6人)。48週までの乳児HIV感染リスクは、対照群の7%に比し、母親3剤併用群が4%(p=0.0273)、乳児ネビラピン群も4%(p=0.0027)と、いずれも有意に良好だった。乳児における重篤な有害事象の頻度は、治療期間中よりも治療終了後(29~48週)のほうが有意に高く(1.1件/100人・週 vs 0.7件/100人・週、p<0.0001)、下痢、マラリア、発育不良、結核、死亡のリスクが高かった。産後2~48週の間に9人の母親が死亡した(母親3剤併用群:1人、乳児ネビラピン群:2人、対照群:6人)。著者は、「医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週予防投与により乳児のHIV感染が減少するが、6ヵ月での離乳は乳児の罹病率を増加させる可能性がある」と結論している。なお、WHOは現在、本試験を含む知見に基づき、授乳期12ヵ月間の抗レトロウイルス薬予防治療を推奨しているという。(菅野守:医学ライター)

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世界の5歳未満児死亡の最新動向:2000~2010年

 2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向調査の結果、全体に減少はしていたものの、医学的に死因が特定され割合が約3%であったこと、減少には感染症による死亡減少が大きく寄与していたことなどが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学(米国)のLi Liu氏らによる調査の結果で、「小児生存戦略はもっと、感染症や新生児期の主因など死亡原因へ目を向けなくてはならない。2010~2015年以降の減少をより迅速なものとするには、最も頻度の高い共通した死因、特に肺炎と早産の合併症の減少を促進することが必要だ」と報告。「質の高いデータを集めて推定方法を強化する継続的努力が、将来の改善にとって必須である」と結論している。「Lancet誌2012年6月9日号(オンライン版2012年5月11日号)掲載報告より。5歳未満児死亡の約4割が新生児、死因別では64%が感染症で死亡 Liu氏らは、2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向を調査するため、生後0~27週間の新生児、1~59ヵ月の5歳未満児の死亡総数のアップデートデータを集めて解析した。データは各国固有の死因区分が適用されているため、各国間のデータ適合を図ったり、死亡率が高い国に対して同様の多変量ロジスティック回帰モデルなどを作成適用するなどして調整を図り、インドと中国に関しては、国別モデルを作成し検討した。 集計結果から地域と世界の推定値を導き出した。 結果、2010年の5歳未満児死亡760万人のうち、64.0%(487万9,000人)は感染症が原因であった。また死亡の40.3%(307万2,000人)は新生児だった。医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7% 新生児死亡の主な原因は、早産の合併症[14.1%、107万8,000人、誤差範囲(UR):0.916~1.325]、分娩関連合併症(9.4%、71万7,000人、UR:0.610~0.876)、敗血症または髄膜炎(5.2%、39万3,000人、UR:0.252~0.552)だった。 幼児では、肺炎(14.1%、107万1,000人、UR:0.977~1.176)、下痢(9.9%、75万1,000人、UR:0.538~1.031)、マラリア(7.4%、56万4,000人、UR:0.432~0.709)が最も多かった。 一方で、関連データ同定の努力にもかかわらず、2010年に医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7%(20万5,000人)にとどまった。 2000~2010年の間の世界の5歳未満児死亡の減少は200万人で、肺炎(45万1,000人減)、はしか(36万3,000人減)、下痢(35万9,000人減)が全体的な減少に寄与していた。 国連のミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満乳幼児死亡率を1990年の3分の1に低減)達成に十分な年率で減少していたのは、破傷風、はしか、AIDS、マラリア(アフリカ)のみであった。

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乳幼児へのマラリアワクチンRTS,S/AS01、疾患発症および重症化とも予防に効果

世界のマラリア罹患者は年間約2億2,500万人、うち死亡は78万1,000人に上り、ほとんどがアフリカの小児だという。そのような公衆衛生上の脅威であるマラリアに対して開発されたワクチンRTS,S/AS01が、5~17ヵ月児の臨床症状発症を約半分に抑え、重症化を予防し得ることが、RTS,S Clinical Trials Partnershipらにより行われている第3相試験の結果、報告された。試験は、アフリカ7ヵ国・11施設共同で行われており、本報告は同試験初の報告で、NEJM誌2011年11月17日号(オンライン版2011年10月18日号)で発表された。アフリカ7ヵ国・11施設で1万5,460例を登録し検討研究グループは、2009年3月~2011年1月に、アフリカ7ヵ国・11施設で、生後6~12週児(6,573例)と生後5~17ヵ月児(8,923例)の2つの年齢カテゴリーの乳児合わせて1万5,460例を登録し、RTS,S/AS01または比較のための非マラリアワクチンを接種した。主要エンドポイントは、プロトコルに従って3回のワクチン接種をすべて受けた5~17ヵ月児6,000例について解析した、ワクチン接種後12ヵ月間の有効性(マラリアの臨床症状発症に対するワクチン効果)とした。また、2つの年齢カテゴリーの重症マラリアへのワクチン有効性の評価は、250例の小児が重症マラリアを発症した時点で行われた。初回接種後14ヵ月時点、ワクチン有効性は3回接種児で55.8%ワクチンの初回接種後14ヵ月時点で、5~17ヵ月児6,000例の臨床的マラリアエピソードの発生率は、RTS,S/AS01群は0.32件/人・年、対照群は0.55件/人・年で、ワクチン有効性は、intention-to-treat集団(ワクチン接種を最低1回接種児)では50.4%(95%信頼区間:45.8~54.6)、パープロトコル集団(同3回接種児)では55.8%(97.5%信頼区間:50.6~60.4)であった。重症マラリアに対するワクチンの有効性は、intention-to-treat集団45.1%(95%信頼区間:23.8~60.5)、パープロトコル集団47.3%(同:22.4~64.2)であった。両年齢カテゴリー群合わせての重症マラリアに対するワクチンの有効性は、平均追跡期間11ヵ月のパープロトコル集団で34.8%(同:16.2~49.2)であった。重篤な有害事象の発生頻度は、2つの試験群で同程度だった。なお5~17ヵ月児群において、RTS,S/AS01ワクチン接種後の全身性痙攣発作の割合は、1.04件/1,000回接種(95%信頼区間:0.62~1.64)だった。(武藤まき:医療ライター)

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重症感染症児への輸液ボーラス投与、48時間死亡率を上昇

 ショック患者への急速早期の輸液蘇生術は、救急治療ガイドラインに示されており、小児科における生命維持訓練プログラムでも支持されている。しかし、処置法、用量、輸液の種類に留意したエビデンスはなく、集中ケア施設がまず利用できないアフリカのような、医療資源が限られた環境下でのショック患児や生命に関わるような重症感染症児への治療に対する輸液蘇生の役割は確立されていない。そこでケニア中央医学研究所(KEMRI)のKathryn Maitland氏らは、アフリカ東部3ヵ国で輸液蘇生の効果を調べる無作為化試験を行った。NEJM誌2011年6月30日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。アルブミンボーラス、生食ボーラスと対照群の3群に無作為化し48時間後の転帰を比較 研究グループは、ウガンダ、ケニア、タンザニアで、重症熱性疾患と循環不全で入院した小児を、5%アルブミン溶液20~40mL/kg体重ボーラス投与(アルブミンボーラス群)もしくは0.9%生食液20~40mL/kg体重ボーラス投与(生食ボーラス群)する群か、ボーラス投与しない群(対照群)の3群に無作為に割り付け検討した(A層試験)。このA層試験では、重症低血圧の小児は除外されB層試験にて、いずれかのボーラス投与群に無作為に割り付けられ検討された。 >被験児は全員、ガイドラインに基づく、適切な抗菌薬治療や静脈内維持輸液ならびに生命維持のためのトリアージや救急療法を受けた。なお、栄養失調または胃腸炎の患児は除外された。 主要エンドポイントは、48時間時点の死亡率とし、副次エンドポイントには、肺水腫、頭蓋内圧亢進、4週時点の死亡または神経学的後遺症の発生率などが含まれた。 A層試験は3,600例の登録を計画していたが、3,141例(アルブミンボーラス群1,050例、生食ボーラス群1,047例、対照群1,044例)が登録された時点でデータ安全モニタリング委員会の勧告により補充が停止された。 マラリアの保有率(全体で57%)、臨床的重症度は全群で同程度だった。ボーラス後48時間死亡率が有意に上昇 A層における48時間死亡率は、アルブミンボーラス群10.6%(1,050例中111例)、生食ボーラス群10.5%(1,047例中110例)、対照群7.3%(1,044例中76例)だった。生食ボーラス群 vs. 対照群の相対リスクは1.44(95%信頼区間:1.09~1.90、P=0.01)、アルブミンボーラス群vs.生食ボーラス群の相対リスクは1.01(同:0.78~1.29、P=0.96)、両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.45(同:1.13~1.86、P=0.003)だった。 4週時点の死亡率は、それぞれ12.2%、12.0%、8.7%だった(両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.39、P=0.004)。神経学的後遺症発生率は、2.2%、1.9%、2.0%だった(同1.03、P=0.92)だった。肺水腫または頭蓋内圧亢進の発生率は、2.6%、2.2%、1.7%だった(同1.46、P=0.17)。 B層では、死亡率がアルブミンボーラス群69%(13例中9例)、生食ボーラス群56%(16例中9例)だった(アルブミンボーラスの相対リスク:1.23、95%信頼区間:0.70~2.16、P=0.45)。 これらの結果は、施設間、サブグループ間(ショック重症度や、マラリア、昏睡、敗血症、アシドーシス、重症貧血の状態に基づく)で一貫して認められた。 研究グループは「医療資源が限られたアフリカでの重症循環不全児に対する輸液ボーラスは、48時間死亡率を有意に高める」と報告をまとめている。

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2015年へのカウントダウンに向け、妊婦、子どもの健康関連ODAは改善されたか?

2003~2008年の6年間で、開発途上国への妊婦、新生児、子どもの健康に関する政府開発援助(ODA)の供与額は増加したが、他の健康領域を含む総額も増加したため相対的に優先度には変化がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のCatherine Pitt氏らの調査で明らかとなった。効果的な介入を広範に行ってミレニアム開発目標(MDG)4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)およびMDG5A(2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する)を達成するには十分な資金が必要だが、2015年へのカウントダウンに向けた支援の優先国68ヵ国の多くがODAに依存しているのが現状だという。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年9月17日号)掲載の報告。ニーズが最も高い被援助国に対して供与すべきODAを調査研究グループは、2007年と2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対する援助の流れ、および以前に実施された2003~2006年の予測の達成度を解析した。研究グループが開発したODAの追跡法を用いて、2007年と2008年の経済協力開発機構(OECD)の援助活動の完全データベースを手作業でコード化して解析を行った。援助供与額および推定人口の新たなデータを用いて、2003~2006年のデータを改訂。妊婦および子どもの健康に関するニーズが最も高い被援助国に対して、援助国はどの程度のODA供与の対象とすべきかを解析し、2003~2008年の6年間の傾向を調査した。2007、2008年の妊婦、子どもの健康関連OADの70%以上が優先国へ全開発途上国における妊婦、新生児、子どもの健康関連の活動への支援として、2007年に47億米ドル、2008年には54億米ドルが供与されていた(2008年の不変ドル換算)。これらの総額は2003年から2008年までに105%増加したが、健康関連ODAの総額も同じく105%増加したため相対的には不変であった。2015年へのカウントダウンの優先国は、2007年に34億米ドル、2008年には41億米ドルを受け取っており、これは妊婦、新生児、子どもの健康に対する全供与額のそれぞれ71.6%、75.6%に相当するものだった。妊婦および子どもの死亡率が高い国へのODAは6年間で改善されていたが、この期間を通じて、死亡率がより低く所得が高い国に比べ一人当たりのODAがはるかに低い国もあった。2003~2008年のワクチン予防接種世界同盟(GAVI Alliance)の基金および世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)は、各国機関による中核的基金を上回っており、二国間共同基金も特にイギリスとアメリカによるものが著明に増加していた。著者は、「2003~2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対するODAの増加は歓迎すべきであり、より多くのニーズのある国へのODAの配分も多少改善している。にもかかわらず、これらの供与額の増加は他の健康分野に比べて優先順位が高くなったことを示すわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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2008年の5歳未満の子どもの死亡数、死因:MDG4達成に向けて

2008年の世界193ヵ国における5歳未満の子どもの死亡数は879万5,000人、その死因の68%が感染症であることが、アメリカJohns Hopkins Bloomberg公衆衛生大学院のRobert E Black氏らによる系統的な解析で示された。子どもの死亡率は、社会経済的な発展や子どもへの生存介入が実行された結果として世界的に低下しているが、いまだに毎年880万人が5歳の誕生日を迎えられずに死亡している。ミレニアム開発目標4(MDG4)の目的は、「2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する」ことであるが、特に南アジアとサハラ砂漠以南のアフリカ諸国では達成が難しい状況にあり、その改善には子どもの死因に関する最新情報の収集が重要だという。Lancet誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月12日号)掲載の報告。2008年の193ヵ国における原因別の死亡数を算出研究グループは、5歳未満の子どもの主な死亡原因について、2008年の最新の推定データを報告した。多原因比例死亡モデル(multicause proportionate mortality model)を用いて生後0~27日の新生児、1~59ヵ月の小児の死亡を推定し、死因が予測可能な場合は単一原因死亡モデルを用い、健康状態登録データの解析を行った。中国とインドの新データは、以前に実施されていた統計モデルに基づく予測に代わって、これらの国で使用されている全国データを採用した。193ヵ国における死亡原因を推定し、5歳未満の子どもの国別の死亡率および出生率にこれらの推定値を当てはめることで、国、地域、世界の原因別の死亡数を算出した。死因の68%が感染症、41%が新生児、5ヵ国で49%を占めた2008 年における世界の5歳未満の子どもの死亡数は879万5,000人と推定され、そのうち68%(597万人)は感染症が原因で死亡しており、肺炎が18%(157万5,000人)、下痢が15%(133万6,000人)、マラリアが8%(73万2,000人)であった。死亡した子どもの41%(357万5,000人)が新生児であり、その最も重大な原因として早産合併症が12%(103万3,000人)、出生児仮死が9%(81万4,000人)、敗血症が6%(52万1,000人)、肺炎が4%(38万6,000人)を占めた。5ヵ国(インド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、パキスタン、中国)で、5歳未満の子どもの死亡の49%を占めた。著者は、「これら国別の子どもの主な死因の推定値は、国の計画や援助国の支援の焦点をどこに置くべきかを検討するうえで役立つであろう」とまとめ、「MDG4の達成は、妊婦、新生児、小児の健康状態への介入によって多大な死亡数の抑制に取り組むことでのみ可能となる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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侵襲性細菌感染症の遺伝子感受性

世界で年間死者500万人に達する結核やマラリアなどの侵襲性細菌感染症で、疾患感受性の個体差が一部で有意にみられることについては、栄養失調やHIV罹患など環境要因によると考えられているものの、実態としては謎のままである。そこで、シンガポール遺伝子研究所感染症疾患部門のChiea C. Khor氏らは、感染症病原体に対するヒト免疫応答に注目した。免疫応答の際には炎症性サイトカインが産生される。その反応が過剰となると(サイトカインシグナル伝達により)、マラリアなどの重症化を招くのではないか。一方でヒト免疫応答には、炎症反応をコントロールするサイトカインシグナル伝達抑制蛋白質CISHが存在し関与することも知られる。Khor氏らは、CISHが疾患感受性と関連しているのではないかと仮定し、検討を行った。NEJM誌2010年6月3日号(オンライン版2010年5月19日号)掲載より。8,402例の血液検体を用いて、CISH遺伝子多型と主要感染症感受性との関連を調査Khor氏らが注目したのは、病原体免疫応答にプリンシパルな炎症誘発性のサイトカインであるインターロイキン(IL)2と、そのIL-2において特にシグナル伝達をコントロールするCISH[Cytokine-inducible SRC homology 2(SH2)domain protein]。ガンビア、香港、ケニア、マラウイ、ベトナムで行われた感染症の症例対照研究(計7件)の対象者8,402例の血液検体を用いて、CISH遺伝子多型と主要感染症(菌血症、結核、重症マラリア)感受性との関連を調べた。なお研究グループは、これまでにこの対象者で20の免疫関連遺伝子の検討を行っている。CISH変異体と感染症感受性との関連を確認結果、複数のCISH遺伝子多型の変異アレルが、感染症の感受性増大と関連していることが認められた。またCISH関連遺伝子座で特定した一塩基多型遺伝子(SNP)5つ(-639、-292、-163、+1320、+3415)を、一つの多重SNPとみなした場合、CISH遺伝子変異体と主要感染症(菌血症、結核、重症マラリア)感受性との間の関連性が確認された[すべての比較P=3.8×10(-11)]。特に-292変異体は、関連するシグナル伝達のほとんどに関与していた[P=4.58×10(-7)]。また、-292変異体を有する成人被験者から採取した末梢血分子細胞は、野生型細胞と比べて、IL-2産生刺激に対する反応が弱く、CISH発現が25~40%少ないことも明らかになった。Khor氏は、「CISH変異体が、多様な感染症病原体に起因する疾患感受性と関連しており、サイトカインシグナル伝達抑制因子は種々の感染症に対する免疫に関与していることが示唆された。またCISH変異アレルを有するヒトでは、主要感染症のうちの一つの全リスクが18%以上増加した」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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コ・トリモキサゾール予防投与、ARTを開始したHIV感染者の死亡率を低減

3剤併用抗レトロウイルス療法(ART)を開始したHIV感染者に対し、コ・トリモキサゾール[トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST)合剤、商品名:バクタ、バクトラミンなど]を予防的に投与すると、死亡率が有意に低下することが、イギリス医学研究評議会(MRC)臨床試験ユニットのA S Walker氏らの検討で明らかとなった。コ・トリモキサゾールは、医療資源が不足する環境で市中肺炎の予防および治療に使用される安価な抗生物質である。本薬剤を予防投与すると、未治療のアフリカ人HIV感染者の死亡率が低減することが示されているが、このベネフィットは併用ARTと同時に投与しても維持されるかについては不明であったという。Lancet誌2010年4月10日号(オンライン版2010年3月29日号)掲載の報告。コ・トリモキサゾール投与と非投与を比較する観察研究研究グループは、アフリカ人の重症HIV感染者に対するART開始後のコ・トリモキサゾールの予防投与の有用性を評価する観察研究を実施した。対象は、2003年1月~2004年10月までにDART(Development of Anti-Retroviral Therapy in Africa)試験に登録されたCD4細胞数<200個/μLで、3剤併用ARTを開始した未治療の症候性HIV感染者(18歳以上)であった。コ・トリモキサゾール(トリメトプリム160mg+スルファメトキサゾール800mg)の予防投与(1日1回)はルーチンには行わず、無作為割り付けも実施せずに、担当医が個々に処方した。時間依存性の交絡を補正するために周辺構造モデルを用い、コ・トリモキサゾールの投与が臨床予後、CD4細胞数、BMIに及ぼす影響について検討した。死亡率が12週までは大幅に低下、効果は72週まで持続3,179例(コ・トリモキサゾール投与群1,959例、非投与群:1,220例)が登録された。全体の観察期間の総計は14,214年であり、そのうちコ・トリモキサゾール投与群は8,128人年(57%)であった。コ・トリモキサゾール使用の時間依存性の予測因子は、直近のCD4細胞数、ヘモグロビン値、BMI、ART開始後の当初の症状(WHO stage 3/4)であった。死亡率は、コ・トリモキサゾール投与群が非投与群に比べ有意に低下した(オッズ比:0.65、95%信頼区間:0.50~0.85、p=0.001)。コ・トリモキサゾール投与によって死亡リスクは12週までは大幅に低下し(同:0.41、同:0.27~0.65)、12~72週まではこれが維持された(同:0.56、同:0.37~0.86)が、72週以降は有意な差はなくなった(同:0.96、同:0.63~1.45、不均一性:p=0.02)。このような死亡率低下の変動は、コ・トリモキサゾールの投与期間や直近のCD4細胞数とは関連しなかった。コ・トリモキサゾールの予防投与によりマラリア感染の頻度が有意に低下し(オッズ比:0.74、95%信頼区間:0.63~0.88、p=0.0005)、その効果は投与期間と相関した。しかし、WHO stage 4の症状(同:0.86同:0.69~1.07、p=0.17)、CD4細胞数(非投与群との差:-3個/μL、p=0.50)、BMI(非投与群との差:-0.04kg/m2、p=0.68)には有意な効果を及ぼさなかった。著者は、「これらの結果はWHOガイドラインを補強するものである。3剤併用ARTを開始したアフリカ人HIV感染者には、少なくとも72週のコ・トリモキサゾールの予防投与を併用するという治療戦略の強い動機づけとなるだろう」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ツタンカーメン、死因は骨壊死とマラリアが重なってか!?

 古代エジプトのツタンカーメン王の死因は、無血管性骨壊死と熱帯熱マラリアによる可能性が高いことが判明した。また、ツタンカーメン王の両親のミイラについても、特定された。エジプト考古最高評議会のZahi Hawass氏らが「King Tutankhamun Family Project」の中で、エジプト新王国時代の16体のミイラについて遺伝子指紋法やCTスキャンなどによる詳細な調査を行った結果、明らかにしたもの。JAMA誌2010年2月17日号で発表した。遺伝子指紋法でツタンカーメン王直系の5世代特定 同研究グループは、2007年9月~2009年10月にかけて、紀元前1410~1324年頃のツタンカーメン王の家系のものと考えられるミイラ11体と、紀元前1550~1479年頃のミイラ5体について、人類学、放射線学、遺伝学のそれぞれの視点から詳しい調査を行った。 遺伝子指紋法によって、ツタンカーメン直系の5世代(娘2人、両親、祖父母、曽祖父母(そうそふぼ)が特定された。その中で、KV55ミイラ(アクエンアテン王;Akhenaten)とKV35YLミイラ(名前は不特定)が、ツタンカーメンの両親であることが判明した。ツタンカーメンに先天性異常の蓄積や第2ケーラー病 また、ツタンカーメン家には、いくつかの先天性異常の蓄積が認められた。ただし、女性化乳房や頭蓋骨融合といったアントレー・ビクスラー症候群の兆候や、マルファン症候群の兆候はみられなかった。 CTスキャンによる調査では、ツタンカーメン王に、第2ケーラー病を含むいくつかの病理学的所見が認められた。ただし、いずれも致死性のものではなかった。 一方で、ツタンカーメン王を含む4体のミイラから、熱帯熱マラリア(plasmodium falciparum)が診断された。こうした結果を総合し、研究グループは、ツタンカーメン王は無血管性骨壊死と熱帯熱マラリアによって死亡したのではないかと推測、「歩行障害やマラリアに罹っていたことは、彼の墓から、杖や死後の世界で使うための薬が発見されていることからも支持される」としている。

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大幸薬品『二酸化塩素スプレー』の蚊に対する忌避作用について共同発表

大幸薬品株式会社は20日、自治医科大学 医動物学 松岡裕之教授と共同研究を行い、17日に東京で開催された「日本衛生動物学会東日本支部会」(主催:日本衛生動物学会)にて「二酸化塩素スプレーの蚊に対する忌避作用について」という演題で、二酸化塩素スプレーがハマダラカに対し、忌避作用とマラリアの発症率について共同発表したと報告した。この発表の内容は、可溶化した二酸化塩素(ClO2)をスプレーしたマウス群と、水(H20)をスプレーしたマウス群に対するハマダラカ(ハマダラカには事前にネズミマラリアを感染させておいた)の吸血行動を比較実験したところ、二酸化塩素をスプレーしたマウス群は水をスプレーしたマウス群に比べ、吸血したハマダラカ数の有意な減少を記録し(P

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バングラデシュでのIMCI(総合的小児疾患管理戦略)、死亡率低下の効果確認できず

世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF)は、5歳未満児の下痢や肺炎、マラリア、麻疹および栄養失調による死亡を減らすため、Integrated Management Childhood Illness(IMCI、総合的小児疾患管理)戦略を1990年代半ばより開始した。その成果の一端について、5歳未満児の健康および栄養状態に関するIMCIの影響を、バングラデシュInternational Centre for Diarrhoeal Disease ResearchのShams E Arifeen氏らが、集団無作為化試験で評価を行った。Lancet2009年8月1日号より。従事者へのスキルアップ等介入強化群と通常ヘルスサービス群を比較試験は、バングラデシュMatlab小管区の、20の国立初期医療施設およびそれら施設の管轄区域(人口約350,000)で行われた。被験者は、IMCI(介入群、10の集団)か通常のヘルスサービス(対照群、10の集団)にランダムに割り当てられた。IMCIは2002年2月に開始され、公衆衛生従事者に対するスキルアップ訓練、健康システムの改善、家族・地域ケアの推進の3つの要素から構成されている。評価は、家庭および医療施設でのサーベイ、そして介入群と対照群の栄養状態、死亡率の変化を含んだ。主要エンドポイントは、生後7日~59ヵ月の死亡率とし、intention to treat解析にて検討された。ポジティブな変化は見られる5歳未満児の年間死亡率の低下は、IMCI群と対照群とで同等だった(8.6%対7.8%)。ただし、直近2年(2006~2007年)では、IMCI群の死亡率のほうが13.4%(95%信頼区間:14.2~34.3)、対照群よりも低かった。IMCI群のほうが死亡が、1,000生存出産児当たり4.2(同:-4.1~12.4、p=0.30)少なかった。IMCI実行は、公衆衛生従事者のスキルの改善、健康システムを支援し、家族および地域ケアの拡充、疾患ケアに対するケアニーズを増大させることにつながっていた。IMCI対象エリアでは、対照エリアよりも6ヵ月未満乳児を、母乳だけで育てている割合が10.1%(同:2.65~17.62)高かった(76%対65%)。また、生後24~59歳未満児での発育障害の割合が、IMCI群のほうがより迅速に低下していた(有病率の差:-7.33、95%信頼区間:-13.83~-0.83)。Arifeen氏は、「IMCIは、すべての結果、成果指標で、ポジティブな変化と関連していた。母乳育児は増強され、発育障害は減少していた。しかしながら、今回の評価対象期間内で見る限り、死亡率への効果はもたらされていなかった」とまとめている。

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低~中所得国への世界的基金やNGOによる健康支援が大幅に増大

近年、低~中所得国への健康関連リソースの流入は実質的に増大しており、国連機関などを通じた援助が減る一方で、公的、私的な世界的基金や非政府組織(NGO)による支援が大幅に増えていることが、アメリカWashington大学健康指標評価研究所(IHME)のNirmala Ravishankar氏らの調査で明らかとなった。低~中所得国への世界的健康リソースに関する時宜を得た信頼性の高い情報提供の必要性は広く認知されるところだが、その現状はよくわかっていないという。Lancet誌6月20日号掲載の報告。DAH総額を算出、被援助国における支援の構成内容を分析研究グループは、1990~2007年の健康開発支援(development assistance for health; DAH)について包括的な評価を行った。DAHとは、「低~中所得国への開発支援を主目的とする公的あるいは私的な機関からの健康関連リソースの全流入」と定義した。複数のデータ源を利用して2007年のUSドル換算でDAHの年間総額を算出し、プロジェクトの統合データベースを構築して被援助国における支援の構成内容を分析した。DAHは約4倍に、global health initiativeの役割が大きいDAHは、1990年の56億ドルから2007年には218億ドルへ増大していた。国連機関や開発銀行を通じて導入されたDAHの割合は1990年から2007年にかけて減少したのに対し、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」「ワクチンと予防接種のための世界同盟(GAVI)」およびNGOが、増加するDAH負担の窓口となっていた。DAHは2002年以降急速に上昇しているが、これは特にアメリカからの公的助成金が増えたことや、私的な資金として慈善団体による寄付および企業供与の現物出資が増加したためである。2007年度のDAHで計画時の情報が入手できた145億ドルのうち、51億ドルがHIV/AIDSに配分され、結核には7億ドル、マラリアには8億ドル、保健セクター支援に9億ドルが割り当てられていた。低~中所得国が受けたDAHの総額は疾病負担と正の相関を示したのに対し、1人当たりのDAHは1人当たりの国内総生産(GDP)と負の相関を示した。著者は、「世界的な健康関連リソースは近年実質的に増大した。DAHの増加によってHIV/AIDS支援の増大が生じたが、他の領域への援助も拡大していた」とまとめ、「基金の流入には、世界的健康に関する制度状況の大きな変化が伴っており、いわゆる世界的基金やGAVIなどの世界的健康イニシアチブ(global health initiative)が資金の動員や関係づくりにおいて中心的な役割を担っていた」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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家庭での子どもの抗マラリア薬治療は過剰治療となり、効果も低い

マラリアの治療法として、発熱の見られる子どもに家庭でアルテメテル-ルメファントリン(artemether-lumefantrine)を投薬する方法は、治療の迅速化をうながすものの臨床効果はほとんどないことが、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院(LSHTM)のSarah G Staedke氏らがウガンダの都市部で実施した無作為化試験で判明した。マラリアの迅速で効果的な治療法を確立するために、発熱がある子どもに対する家庭での抗マラリア薬による推定治療が提唱されている。Lancet誌2009年5月9日号(オンライン版2009年4月14日号)掲載の報告。マラリア感染率が低い都市部で実施された無作為化対照比較試験研究グループは、マラリア感染率がきわめて低いウガンダの都市部において、アルテメテル-ルメファントリンの家庭での投薬が抗マラリア治療の施行頻度や臨床転帰に及ぼす影響を評価した。ウガンダの首都カンパラにおいて、325世帯から1~6歳の子ども437例が登録され、発熱性疾患に対する推定治療として家庭でアルテメテル-ルメファントリンの投薬を受ける群(225例)あるいは現在の標準治療を受ける群(212例)に無作為に割り付けられた。無作為割り付けは1ヵ月のパイロット期間ののちに行われた。患児はさらに12ヵ月間のフォローアップを受け、月1回の質問票や世話をする者が記述する日誌から患児の健康状態や治療に関する情報を得た。主要評価項目は治療頻度(/人年)とし、intention-to-treat変法による解析を行った。実質的に過剰治療、臨床効果は標準治療と同等データ収集以前に標準治療群の4例、家庭治療群の8例が除外され、解析の対象となったのはそれぞれ208例、217例であった。抗マラリア治療の施行頻度は、標準治療群の2.53/人年に比し家庭治療群は4.66/人年と約2倍(施行率比:1.72、p<0.0001)であったが、顕微鏡下に確認されたマラリア原虫の検出頻度は標準治療群の1.03/人年に対し家庭治療群は4.66/人年と約5倍に達した(検出率比:5.19、p<0.0001)。試験終了時に解析可能な臨床データが得られたのは、標準治療群176例、家庭治療群189例であり、おもな除外理由は試験地域からの転出あるいはフォローアップの不備であった。最終評価時に血中に原虫が確認された患児は、標準治療群の10%(17例)に対し家庭治療群は2%(4例)と有意に少なかった(p=0.006)が、貧血などの標準的なマラリア侵淫度指数に差はなかった。重篤な有害事象についてレトロスペクティブに調査したところ、両群に1例ずつ死亡例が見られた(標準治療群:呼吸不全と推定される、家庭治療群:重篤な肺炎、おそらく敗血症によると考えられる)。著者は、「家庭におけるマラリア治療は、発熱に対する治療の迅速化をうながすものの臨床効果はほとんどない」と結論し、「実質的に過剰治療となっていたことから、家庭でのアルテメテル-ルメファントリンの投薬は大都市部やマラリア感染率がきわめて低い地域における治療法としては適切でないことが示唆される」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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より予防効果が高いマラリアワクチンの開発

AS01Eをアジュバンドとして用いた新しいマラリアワクチンRTS,S/AS01Eの有効性を検討する無作為化二重盲検試験を行ったケニア中央医学研究所のPhilip Bejon氏らは、「候補として有望である」との報告を行った。NEJM誌2008年12月11日号(オンライン版2008年12月8日号)より。5~17ヵ月児894例を、新ワクチン接種群と狂犬病ワクチン接種群に無作為化マラリアワクチンRTS,Sは、それ自体はスポロゾイド周囲蛋白を目標とするもので、これまでAS02Aをアジュバンドとして用いることで、1~4歳児で30%のマラリア予防率を示したことが示されている。新しいマラリアワクチン開発に取り組むBejon氏らは、対象を5~17ヵ月児として、より免疫原性の高いAS01Eをアジュバンドとして用いた場合の有効性を、狂犬病ワクチン接種を対照群とする比較で検討した。対象児は、ケニアのKilifiとタンザニアのKorogweに居住する894例(プロトコールに基づく試験終了は809例)で、平均追跡期間は7.9ヵ月(範囲:4.5~10.5ヵ月)だった。全例解析による有効率49%マラリアを発症した患児数(初発もしくは単発)は、RTS,S/AS01Eワクチン接種群32例(/402例、8%)、対照群66例(/407例、16%)。RTS,S/AS01Eワクチンの有効率(補正後)は53%(95%信頼区間:28~69、P

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適切な抗マラリア薬併用療法はどれか?

マラリア薬併用療法はこれまで「クロロキン」をベースとしたものだったが、耐性が進み、「アーテミシニン」をベースとした新たな治療戦略がWHOによって推進されている。しかし、有効な対策には地域性を考慮した治療戦略が欠かせない。複数種のマラリア原虫が存在し年間を通して深刻な感染が見られるインドネシア・パプアニューギニアでは、どのような抗マラリア薬併用療法が適切か? 西オーストラリア大学医学・薬理学校のHarin A. Karunajeewa氏らは、従来療法とアーテミシニン系合剤ベースの3つの療法、計4つの療法に関するオープンラベル無作為化並行群間比較試験を行い、適切な治療戦略を検討した。NEJM誌2008年12月11日号(オンライン版2008年12月8日号)より。従来療法含む4療法を比較検討比較検討したのは、「クロロキン+スルファドキシン/ピリメタミン」(CQ-SP)従来療法と、「artesunate+スルファドキシン/ピリメタミン」(ARTS-SP)療法、「dihydroartemisinin+piperaquine」(DHA-PQ)療法、「artemether+lumefantrine」(AL)療法の4療法。2005年4月~2007年7月に、熱帯熱マラリア原虫:Plasmodium falciparum)もしくは三日熱マラリア原虫:P. vivax)に罹患したパプアニューギニアの生後6ヵ月~5歳児を対象に実行された。主要エンドポイントは、熱帯熱マラリア患児への治療開始後42日時点の臨床的・寄生虫学的奏効率、副次エンドポイントは三日熱マラリアへの治療開始後42日時点の同奏効率とした。熱帯熱マラリアにはAL療法、三日熱マラリアにはDHA-PQ療法発熱が見られスクリーニングを行ったのは2,802例。このうち熱帯熱マラリアは482例、三日熱マラリアは195例だった。熱帯熱マラリアに対する奏効率が最も高かったのは、AL療法(95.2%)だった。従来療法は81.5%(P=0.003)、ARTS-SP療法は85.4%(P=0.02)、DHA-PQ療法は88.0%(P=0.06)となっている。三日熱マラリアに対する奏効率が最も高かったのは、DHA-PQ療法(69.4%)で、その奏功率は他の3療法より2倍以上高かった。安全性の指標である皮疹の発現率については、ARTS-SP療法、DHA-PQ療法で従来療法より高かったことが報告されている(P=0.004)。(武藤まき:医療ライター)

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マラリアの疾病負担が大幅に軽減、西アフリカ・ガンビアの場合

西アフリカのガンビアでは、近年の国際的な取り組みによりマラリアの疾病負担が大幅に軽減されていることが、同国医療研究評議会研究所のSerign J Ceesay氏らが行った調査で確認された。マラリアはアフリカにおける主要疾患であり最大の死因でもある。同国では、マラリア管理の国際的な取り組みや財政支援が強化され、2003年以降、妊婦や5歳以下の子どもに対する介入が増加しているという。Lancet誌2008年11月1日号掲載の報告。マラリアの指標の変化をレトロスペクティブに解析研究グループは、ガンビアにおけるマラリアの指標の変化およびこれらの変化の要因、公衆衛生学的な意義について調査した。マラリアによる入院、死亡、血液検査の結果を確定するために、1つの病院(1999年1月~2007年12月、9年間)および3つの行政区の4つの医療施設(2001年1月~2007月12月、7年間)の原記録についてレトロスペクティブな解析を行った。1施設からは、小児の入院患者のヘモグロビン濃度およびマラリア入院患者の年齢構成に関する付加的なデータが得られた。陽性率、入院率、死亡率が大幅に改善、マラリア撲滅に向けた施策の検討を血液検査の記録が完全に残されていた4つの施設では、2003~2007年までにマラリア陽性率がそれぞれ82%、85%、73%、50%低減していた。完全な入院記録が残されていた3施設では、マラリアによる入院率がそれぞれ74%、69%、27%低減した。2つの施設ではマラリアによる死亡率が、それぞれ100%および90%低減した。2004年以降、全入院の平均ヘモグロビン濃度が12g/L増加し、小児のマラリアによる入院の平均年齢が3.9歳から5.6歳になった。著者は、「ガンビアにおけるマラリアの甚大な疾病負担は軽減しつつある。今回の結果は、公衆衛生学的な問題としてのマラリア撲滅に向けた施策の検討を促し、正確で継続的な調査の重要性を強調するものである」と結論し、「さらなるマラリアの抑制に向け、継続可能でプロスペクティブなモニタリング法を確立するための積極的な取り組みが求められる」としている。(菅野守:医学ライター)

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初のマラリア治療用合剤CoarsucamにWHO事前承認

サノフィ・アベンティス株式会社は10月22日、フランス、パリの本社と非営利団体「顧みられない病気のための新薬イニシアティブ(DNDi:Drugs for Neglected Diseases initiative)」が、アーテスネート(AS)とアモジアキン(AQ)2種類のマラリア治療薬による初の合剤 Coarsucam / Artesunate Amodiaquine Winthrop(ASAQ)が、世界保健機関(WHO)医薬品事前承認プログラムによる承認を取得したと発表した。事前承認されたASAQは、水溶性製剤であり、特に小児向けにデザインされた初のマラリア治療用合剤。WHO医薬品事前承認プログラムは、HIV/エイズ、マラリア、結核の領域において重要性が高く高品質な医薬品の入手利用を促進することを目的としている。WHOの品質基準を満たすと認められた製品は「事前承認薬リスト」に収載される。このリストは当初、国連機関が医薬品を調達するために利用していたが、現在は医薬品の大量購入に関わる多くの期間や組織にとって不可欠となっている。詳細はプレスリリースへhttp://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/medias/918457A7-645C-46E7-873D-4CA2B7FAA833.pdf

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人工着色料・食品添加物(AFCA)は子どもの多動性を増強する

9月上旬、本報告がLancet誌オンライン版に掲載されるや、欧米では大きな反響が巻き起こったという。この試験で用いられている人工着色料・食品添加物(AFCA)の多くは日本でも使用されているため、今後、本邦においても広範な議論が展開されることを期待したい。 AFCAの子どもの行動への影響が指摘されて30年以上が経過している。AFCAによる主な行動障害は多動性(過活動、衝動性、不注意)と推察されるため、この行動パターンを示す子どもは注意欠陥多動性障害(ADHD)でない場合でも、ADHDと診断されている可能性がある。また、最近のメタ解析ではADHDに対する有意な影響も示唆されている。 Donna McCann氏(イギリス・サザンプトン大学心理学科)らは、AFCAの摂取が子どもの行動に及ぼす影響を広範に評価するために、対象年齢を拡大した検討を行った。Lancet誌9月6日付オンライン版、11月3日付本誌掲載の報告。297名の子どもが2種類のAFCA含有ジュースとプラセボを飲用本研究は、3歳児153名、8~9歳児144名を対象とした二重盲検プラセボ対照無作為化クロスオーバー試験である。各年齢群とも同じプロトコールに従ってAFCAを含む2種類のジュース(ミックスAおよびB)あるいはプラセボを6週間飲用した。ミックスAには、人工着色料20mg[黄色5号5mg+カルモイシン(日本指定外)2.5mg+黄色4号7.5mg+赤色102号5mg]+保存料(安息香酸ナトリウム45mg)が、ミックスBには人工着色料30mg[黄色5号7.5mg+カルモイシン(日本指定外)7.5mg+キノリンイエロー(日本指定外)7.5mg+赤色40号7.5mg]+保存料(安息香酸ナトリウム45mg)が含まれた。3歳児には1袋56gのお菓子2袋に相当する量のジュースにミックスA、Bを混ぜ、8~9歳児には2袋相当にミックスAを、4袋相当にミックスBを混合した。主要評価項目は、観察された行動のスコアおよび教師、両親による点数化に基づく全体的多動性集計(GHA)とし、8~9歳児にはコンピュータによる注意力の検査も実施した。3歳児、8~9歳児ともに、AFCAによる有害作用を確認16名の3歳児および14名の8~9歳児が、行動とは無関係の原因で試験を完遂できなかった。ミックスAは、すべての3歳児においてプラセボに比し有意に多動性のレベルを上昇させた(p=0.044)が、ミックスBとプラセボには有意差は認めなかった。ジュースを85%以上飲用した3歳児に限定した解析でも同様の結果であった(p=0.02)。8~9歳児は、ジュースを85%以上飲用した場合に限定した解析でミックスA(p=0.023)、ミックスB(p=0.001)ともプラセボに比し有意に多動性レベルが上昇した。多動性をもたらす特定の有害物質は不明McCann氏は「食品中の人工着色料または保存料(もしくはその両方)は、一般集団における3歳児、8~9歳児の多動性を増強する」と結論している。また、同氏は「今回の試験では各ミックス中の特定の有害物質は決定できない」とし、「食品への人工着色料の添加は不要と考えられるが、安息香酸ナトリウムは重要な保存機能を持つため同一には扱えない」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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