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肥満2型糖尿病に対するメタボリックサージェリーの展望

 わが国では、2014年4月に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術手術が保険適応になってから、すでに4年が経っている。このほかに実施されている3つの術式(腹腔鏡下スリーブバイパス術、腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術)はそれぞれ自費診療であったが、2型糖尿病を合併する重症肥満患者に対する腹腔鏡下スリーブバイパス術が、先進医療として2018年1月に認可された。この治療法の開発者であり普及を目指す、笠間 和典氏(四谷メディカルキューブ減量・糖尿病外科センター センター長)が2018年4月11日、メドトロニック株式会社本社にてメタボリックサージェリーについて講演した。日本の治療件数は認知度に相関 同氏によると2018年3月に開催されたアジア太平洋肥満代謝外科学会(APMBSS)でのNational reportの結果では、全手術件数トップはサウジアラビアの1万7,000件、それに対して日本は471件。隣国の台湾でも2,834件と日本と比較すると大きな乖離があり、「この原因は言うまでもなく認知度が低いためである」という。手術適応患者の要件 日本肥満学会によると、日本人の肥満症の定義であるBMI≧25は、WHOが定義するBMI≧30とは異なる。肥満患者はさまざまな合併症を伴っており、その中の1つが2型糖尿病である。患者は一生、糖尿病と共存するだけではなくさまざまな合併症も併発し、治療上多くの薬剤が必要となることから医療経済にも負担を強いることとなる。また、美容目的で施術される脂肪吸引と混同されがちなため、日本肥満症治療学会が手術適応患者を以下のように定義している。<肥満手術の要件>・年齢18歳以上、65歳以下・ 6ヵ月以上の内科的治療が行われているにもかかわらず、有意な体重減少および肥満に伴う合併症の改善が認められず、次のいずれかの条件を満たすもの 1)減量が目的の場合はBMI 35以上であること 2)合併疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の場合、糖尿病または糖尿病以外の2つ以上の合併疾患を有する場合は BMI 32以上であること腹腔鏡下スリーブバイパス術が体内にもたらす影響とは 海外で多く実施されている胃バイパス術は、術後体内に空置きされた胃が残ってしまう。日本人は胃がんのリスクが高いため、術後胃がん検査を行えないこの術式は不適である。また、現在日本で多くの実績を上げている腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は術後の合併症が少ないものの、重症2型糖尿病の改善率が低い。そこで、これらの長所を生かしたのが腹腔鏡下スリーブバイパス術である。この術式は胃の幽門と十二指腸とを吻合するため、ダンピングが少ない、潰瘍が少ない、胃の観察が通常の胃内視鏡でできるなどのメリットがある。それに加えて、糖尿病などの内分泌疾患の改善が報告されているという。そこで、同氏は減量外科治療のうち、スリーブバイパス術を受け、1年間経過観察された2型糖尿病の日本人75例のHbA1c、BMI、そして薬物離脱率を検証。対象患者のうち48%が術前にインスリンを使用し、糖尿病罹患期間は7.2±6.2年であった。結果は以下のとおり。・HbA1c<7.0%を達成したのは、術後1年後で93%だった。また、術後インスリンを離脱できたのは97%だった。・BMIは術前38.5から術後1年後27.2、5年後は28.4(p<0.001)と減少を維持できた。糖尿病外科誕生に期待 同氏は、「2型糖尿病患者が糖尿病のない人生を送るために、外科と内科が手を組んでメタボリックサージェリーを普及させる時が来た」と意気込みを語った。また、米国糖尿病学会(ADA)ガイドライン2017年版では“肥満を伴う糖尿病の治療”としてBMIに応じて外科治療を推奨する治療アルゴリズムが採用され、「糖尿病治療としての位置付けが確立した」と述べた。同ガイドラインでは、“糖尿病外科治療はBMI 27.5から32.4の内服や注射薬でも良好な血糖コントロールの得られないアジア人に対して、オプションとして考慮されるべきである”とされている。 最後に同氏は「安全が第一であり、これらが急速に普及した場合の問題に備え、日本内視鏡外科学会ならびに日本肥満症治療学会では、合同で腹腔鏡下肥満・糖尿病外科手術導入要件を発表して注意喚起を行っていく」と締めくくった。■参考日本肥満症治療学会編.日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013 年版)日本内視鏡外科学会および日本肥満症治療学会における腹腔鏡下肥満・糖尿病外科手術の導入要件

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第14回 オンライン診療、対象となるケースとならないケース【患者コミュニケーション塾】

オンライン診療、対象となるケースとならないケース情報通信機器の登場によって、離島やへき地などで遠隔診療を行えば医師不足を補えるのではないか、という考えのもと、1997年に遠隔診療と「医師は、自ら診察しないで治療を(中略)してはならない」という医師法第20条との関係が整理されました。その際、対象となるのは「離島、へき地、別表の患者」として、(別表)「在宅酸素療法を行っている患者、在宅難病患者、在宅糖尿病患者、在宅喘息患者、在宅高血圧患者、在宅アトピー性皮膚炎患者、褥瘡のある在宅療養患者、在宅脳血管障害療養患者、在宅がん患者」が示されたのです。ところが、2015年に「“遠隔診療の対象は1997年に示した患者に限定されず”、別表の患者は単なる“例示”であって、それ以外の患者でも認められる」としたことから、急速に対象が広がっていきました。さらに、2016年に「対面診療を行わず遠隔診療だけで診療を完結することは医師法違反になりうる」とされた通知が、翌2017年には「患者側の理由で診療が中断した場合は、ただちに医師法違反にならない」として、禁煙外来での柔軟な対応が認められ、テレビ電話や電子メール、SNSなどを組み合わせた診療が可能との通知が発出され、さらに一部で広がりをみせました。そこで、今後適切な普及を図るためにも、一定のルールが必要ということで、今年3月にオンライン診療のガイドライン(「オンライン診療の適切な実施に関する指針」)がまとめられました。その検討会に構成員として参加した立場から、このガイドラインについてご紹介したいと思います。このガイドラインでは、そもそも「遠隔医療」とは、情報通信機器を活用した健康増進や医療に関する行為と広く定義しています。そして、その遠隔医療の一部として、医師と患者が情報通信機器を通して診察をリアルタイムで行う行為を「オンライン診療」と定義しました。また、情報通信機器を用いて患者の状態を確認し、症状や訴えから疑わしい病気を判断して、受診すべき適切な科を選択するなど、最低限の医学的判断を行う行為を「オンライン受診勧奨」と位置付けて、これもガイドラインの対象にしています。一方、常識的にどう考えても受診するほどではない症状の人に「しばらく様子をみてはどうか」「受診の必要はない」といった指示を行うことや、医学的な判断を行わず「気になるようだったら内科を受診してみては?」といった一般的な受診の勧めをした場合は「遠隔医療相談」とし、ガイドラインの対象にはなりません。ただ、これらはいずれの境目にもグレーゾーンが存在するだけに、なかなか微妙なニュアンスによって判断が難しくなる部分もあるように思います。「医師と患者の直接的な関係がすでに存在していること」が基本ガイドラインでは、オンライン診療の基本理念として、①患者から日常生活の情報も得て、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと②情報通信機器へのアクセスしやすさを確保して、患者がより良い医療を得る機会を増やすこと③患者が治療に能動的に参画することで、治療の効果を最大化することとしています。これは何もオンライン診療に特別のことではなく、通常の医療でも基本となる事柄です。そして、医師と患者の直接的な関係がすでに存在している場合にオンライン診療が利用されることを基本として、最初から一度も直接会うことなくオンライン診療を行わないよう、「原則として初診は対面診療」を求めています。また、オンライン診療を行っている途中で、十分な情報が得られず適切な診断ができないと判断すれば、オンライン診療を中断して対面による診療に切り替えること、としています。また、オンライン診療では触診や聴診などができず、視覚的にも画像によっては直接見る場合と色合いなどが異なる場合があります。そのため、オンライン診療では対面診療に比べて、医師が直接取得できる情報が限定されます。そのようなオンライン診療上の不利益についても、事前に患者に説明しなければならない、としています。当然ながら、治験や臨床試験などを経ていないような、安全性が未確立な医療はオンライン診療で行うべきでないと明記されました。そして、オンライン診療における利点、生じる恐れのある不利益などについて患者がしっかり理解したうえで、患者が望んだ場合に実施されるべきであり、医師側の都合のみでオンライン診療を行ってはいけないとされています。次回はより具体的な場面を想定して、ガイドラインに示されているオンライン診療の適用について、例を挙げてご紹介します。

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全身麻酔と認知症リスクに関するコホート研究

 全身麻酔が認知症リスクを増加させる可能性があることについて、関心が高まっている。しかし、麻酔とその後の認知症との関連については、まだよくわかっていない。韓国・翰林大学校のClara Tammy Kim氏らは、全身麻酔実施後に認知症リスクが増加するかについて検討を行った。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2018年3月29日号の報告。 2003年1月~2013年12月までの50歳以上の21万9,423例を対象に、Korean National Health Insurance Service-National Sample Cohortのデータベース分析を用いて、人口ベースのプロスペクティブコホート研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・全身麻酔群4万4,956例、対照群17万4,469例を、12年間フォローアップした。・全身麻酔の経験に関連する認知症リスクは、性別、年齢、ヘルスケア訪問頻度、併存疾患などのすべての共変量で調整した後、増加していた(ハザード比:1.285、95%CI:1.262~1.384、時間依存型Coxハザードモデル)。・さらに、投与した麻酔薬の数、全身麻酔の回数、累積時間、手術における臓器カテゴリは、認知症リスクと関連が認められた。 著者らは「認知症による社会的な負担の増大を考えると、全身麻酔後の患者に対する認知症の注意深い観察や予防ガイドラインが必要とされる」としている。■関連記事高齢者に不向きな抗うつ薬の使用とその後の認知症リスクとの関連電気けいれん療法での麻酔薬使用、残された課題は?乳がんの手術方法とうつ病発症に関するメタ解析

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床屋が医者の仕事、再び:ロス・バーバーショップ試験(解説:桑島巖氏)-841

 理髪店の店頭で、ぐるぐる回る、赤・青・白のらせん状マークは、元来理髪師が瀉血治療という医者の仕事も兼ねていたことからきているという説がある。再び床屋さんが医者の仕事にタッチするという興味ある論文が発表された。 米国の黒人男性は血圧コントロール不十分で、脳卒中や心筋梗塞などによる死亡が白人や黒人女性に比べて多い。その一因として高血圧に対する意識が低く、治療を受ける環境も十分でないことから、黒人の血圧管理の啓蒙と治療意識の促進が国策として求められている。このLos Angeles Barbershop試験はNIHの国立心肺血液研究所の支援によって行われたランダム化比較試験である。理髪店ごとにランダム化するクラスターランダム化が採用されている。 理髪店の常連客に自動血圧計によって血圧を測定してもらい、2回のスクリーニングで140mmHg以上の黒人男性を対象としている。介入群(介入理髪店群28店舗、139例)では、高血圧知識のある薬剤師による生活改善指導と降圧薬の処方を受けた。コントロール群(24店舗180例)では、理髪師が高血圧についての説明を行い、生活習慣の改善を促すとともに医療機関の受診を促した。 結果として6ヵ月後の平均血圧は、介入群では152.8mmHgから125.8mmHgに、コントロール群では154.6mmHgから145.4mmHに下降。その降圧度は各々27.0mmHg、9.3mmHgで、介入群の方が有意に大きかった。 理髪師は古来、外科治療も行っていたことは知られているが、一般人が定期的に接する理髪店が、生活習慣病の改善に寄与できる可能性を示している。 しかし、わが国とは事情が異なることも留意する必要がある。第一にわが国では職場や地域での定期健診が行き渡っており、高血圧をスクリーニングする環境が整備されているため、米国のような経済や人種による医療の恩恵に対する格差が格段はない。しかし、健康に無関心な中高年や中小企業で働く人々にとっては、高血圧を意識付ける1つの手段にはなりうる可能性がある。 本研究ではいくつかのLimitationがある。介入群では25ドル支給、薬剤費用と交通費を支給したとの記載があるが、それであれば被検者の治療に対するモチベーションも違ってくる可能性がある。また薬剤師は、米国のガイドラインに従い130mmHgを目標にしているのに対して、医師は140mmHgを降圧目標にしている可能性があり、このことが結果に影響しているかもしれない。

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高齢者への抗がん剤治療は有効か

 4月4日(水)、都内で日本肺癌学会主催の第19回 肺がん医療向上委員会が開催された。「高齢者肺がんへの抗がん剤治療は有効か? 無効か?」をテーマに津端 由佳里氏(島根大学医学部 内科学講座)が登壇し、全国に先んじて高齢化が進む島根県での診療の現状を踏まえ、高齢肺がん患者における抗がん剤治療について講演した。「肺がん診療ガイドライン」での推奨は? 初めに津端氏は、本講演では高齢者の定義を後期高齢者に当たる75歳以上として進めることを説明したうえで、「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン2017年版」(日本肺癌学会編)で“75歳以上”との記載がある2つのクリニカルクエスチョン(CQ)を紹介した。 まず遺伝子変異陽性例については、75歳以上においてもEGFR、ALK、ROS1、BRAFといったそれぞれの遺伝子を標的とした分子標的治療薬が「GRADE 1」として強く推奨されている(CQ20)。同氏はゲフィチニブ1)やエルロチニブ2)の臨床試験結果も踏まえ、「分子標的薬の有効性・安全性は高齢者であっても期待できる」と述べた。 次に遺伝子変異陰性例(PD-L1<50%、もしくは不明)で全身状態が良好(PS 0-1)な場合については、ガイドラインでは細胞障害性抗がん剤単剤が、年齢によらず「GRADE 1」として推奨されている(CQ38)。ただし、カルボプラチン併用療法については「GRADE 2」と弱い推奨(提案)レベルに留まっており、「細胞障害性抗がん剤も高齢者に対してある程度効果は期待できるが、カルボプラチン併用療法については治療関連死が4.4%と高かったという報告3)があり、治療内容と副作用に十分注意しながら進める必要がある」と話した。 また、免疫チェックポイント阻害薬については、ガイドラインでは現状言及されていない。サブグループ解析を除き、結果が発表されている大規模臨床試験はCheckMate 1714)のみで、この試験では高齢者(70歳以上)に対するニボルマブ投与の安全性・有効性が70歳未満と比較して同等であることが確認されている。しかし、「エビデンスが蓄積されていないこと、欧米と日本における高齢者の定義(年齢)が異なることから、今後も国内でのデータを蓄積し、有効性について検討していく必要がある」とまとめた。治療し過ぎ、手控え過ぎをいかに避けるか 続いて同氏は、身体・生理機能の差が必ずしも年齢に依存しない高齢者では、治療法の選択は個々に行う必要があり、一律には判断できないことに言及。NCCNガイドラインでは高齢がん患者における治療方針決定フローが示されており、病状理解・治療目標の設定・化学療法のリスク評価という各段階において、高齢者機能評価(GA)実施の重要性が述べられていることを紹介した。しかし実際には、GAの実施には時間を要するほか、複数の手法が提案されているため、どのGAをどのタイミングで使用するかが決まっていない、という問題点を指摘。「とはいえ、何らかの形で機能評価を実施していかなくてはいけない」と話し、島根大学医学部附属病院での実践例として、電子カルテにGAを組み込んだ独自のシステムを紹介した。本システムは、決められた項目に沿って入力していくと評価できるもので、メディカルスタッフでも慣れれば3分、慣れなくても10分ほどで評価ができ、同院では75歳以上の肺がん患者にいずれかのタイミングで必ず実施するようにしているという。 最後に津端氏は医療費の問題にも言及。2018年3月の米国大統領諮問委員会によるがん治療薬の「経済的毒性」についての報告書5)によると、米国でのがん患者1人当たりの薬剤費が、1995年の5万4,100ドルから2013年には20万7,000ドルと約4倍に増加しているという。一方で同報告書では、がんによる死亡率がこの間に25%減少し、3人中2人は5年生存が可能になったというデータも報告されていることを紹介した。 同氏は、「価値に基づく価格設定の推進など、医療費の問題には医療者だけでなく社会全体で取り組んでいく必要がある。医師としては、目の前の患者一人ひとりにとって最善の医療を提供するために、患者ごとに異なる状況を適切に評価することはもちろん、希望に沿った治療選択のための十分な説明と情報提供を行う力を、日々高めていかなければならないと考えている」とまとめた。■参考1)Maemondo M, et al. J Thorac Oncol.2012;7(9);1417-1422.2)Goto K, et al.Lung Cancer.2013;82(1):109-114.3)Quoix E, et al.Lancet.2011;378(9796);1079-1088.4)Checkmate 171試験(Clinical Trials.gov)5)Promoting Value, Affordability, and Innovation in Cancer Drug Treatment (A Report to the President of the United States from the President’s Cancer Panel),2018

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女性の顔のしわ、食習慣と関連

 顔のしわに対するさまざまな食習慣の影響についてはほとんど知られていない。オランダ・エラスムス大学医療センターのSelma Mekic氏らは、地域の高齢者を対象とした集団ベースコホート研究において、食習慣が女性の顔のしわに影響していることを明らかにした。横断研究のため因果関係を証明することはできず、健康志向の行動が結果に影響した可能性はあるものの、著者は、「健康的な食事が顔のしわを減らすと強調すれば、世界的な疾患予防戦略は恩恵にあずかるかもしれない」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年3月27日号掲載の報告。 研究グループは、地域の高齢者を対象としたRotterdam Studyの参加者2,753例を対象に、食事と顔のしわとの関連を調査した。 しわは、顔写真から顔の皮膚全体に占める割合としてデジタル的に定量化した。食事の評価には食物摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire)を用い、Dutch Healthy Diet Index(DHDI)のアドヒアランスを算出するとともに、主成分分析(PCA)を用いて男女別に関連する摂取食品を抽出した。 すべての摂取食品ならびにDHDIとしわの重症度との関連について、多変量線形回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・オランダのガイドラインの高い遵守度は、女性の顔のしわの少なさと相関していた。・男性では、同様の相関はみられなかった。・PCAの結果、女性は赤身の肉やスナック類の摂取が多い人にしわが多かった。一方で、果物の摂取が多い人は、しわが少なかった。

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減塩によるポピュレーション予防戦略の推進を!(解説:有馬久富氏)-840

 食塩摂取は高血圧の確立された危険因子であり、減塩により血圧は有意に低下することが示されている1)。そのため、2012年に発表されたWHO(世界保健機関)のナトリウム摂取量に関するガイドラインでは、一般成人の食塩摂取量を5g/日未満にすべきとしている2)。 今回、米国NHANES(国民健康栄養調査)の対象者から無作為抽出された827名を対象に24時間蓄尿検査を実施した成績がJAMAに報告された3)。その結果、20~69歳の米国人における食塩摂取量推定値は、平均9.2g(男性10.7g、女性7.7g)であった。本研究は、米国人を代表するサンプルにおいて、24時間蓄尿法を用いて厳格に食塩摂取量を推定した、非常に重要な研究であるといえる。 一方、日本人の一般住民において24時間蓄尿を用いて厳密に塩分摂取量を推定した研究は少ないが、1996~99年に実施されたINTERMAP研究における日本国内4地域の40~59歳の男女における食塩摂取量推定値は、男性で平均12.3g、女性で10.9gであった4)。2016年の国民健康・栄養調査結果では、国民1人1日当たりの食塩摂取量は平均9.9g(男性10.8g、女性9.2g)であり、低下傾向にある5)。対象・推定方法が異なるため厳密な比較はできないが、今回発表された米国の成績と比べると、とくに女性において日本人の食塩摂取量が多いようにみえる。 前述したように、WHOは、一般成人の食塩摂取量を5g/日未満にすべきと推奨している2)。日本では、食事摂取基準(2015年版)6)が食塩摂取量男性8g未満・女性7g未満を、健康日本21(第2次)7)が平均食塩摂取量8gを目標としている。本邦の食塩摂取量は低下傾向にあるが、これらの目標値には到達していない。今後、高齢化とともに絶対数が増加すると見込まれる循環器疾患を予防していくうえで、高血圧者を対象とするハイリスク戦略に加えて、国民全体の血圧分布を低い方向にシフトさせるポピュレーション戦略は必要不可欠である。国をあげての減塩対策をさらに推進し、目標まで食塩摂取量を減らしていく必要がある。■参考1)Graudal NA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;11:CD004022.2)World Health Organization. Sodium intake for adults and children ;2012.3)Cogswell ME, et al. JAMA. 2018 Mar 7. [Epub ahead of print]4)Stamler J, et al. J Hum Hypertens. 2003;17:655-775.5)厚生労働省健康局健康課栄養指導室. 平成28年国民健康・栄養調査結果報告. 厚生労働省;2017.6)厚生労働省健康局がん対策・健康増進課栄養指導室.「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書. 厚生労働省;2014.7)厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会 次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会. 健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料. 厚生労働省;2012.

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全身性エリテマトーデス〔SLE:Systemic Lupus Erythematosus〕

1 疾患概要■ 概念・定義全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、自己免疫異常を基盤として発症し、多彩な自己抗体の産生により多臓器に障害を来す全身性炎症性疾患で、再燃と寛解を繰り返しながら病像が完成される。全身に多彩な病変を呈しうるが、個々人によって障害臓器やその程度が異なるため、それぞれに応じた管理と治療が必要となる。■ 疫学本疾患は指定難病に指定されており、令和元年(2019年)度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は6万1,835件であり、計算上の有病率は10万人中50人である。男女比は1対9で女性に多く、発症年齢は10~30代で大半を占める。■ 病因発症要因として、遺伝的背景要因に加えて、感染症や紫外線などの環境要因が引き金となり、発症することが考えられているが、不明点が多い。その病態は、抗dsDNA抗体を主体とする多彩な自己抗体の出現に加え、多岐にわたる免疫異常によって形成される。自然免疫と獲得免疫それぞれの段階で異常が指摘されており、樹状細胞・マクロファージを含めた貪食能を持つ抗原提示細胞、各種T細胞、B細胞、サイトカインなどの異常が病態に関与している。体内の細胞は常に破壊と産生を繰り返しているが、前述の引き金などを契機に体内の核酸物質が蓄積することで、異常な免疫反応が惹起され、自己抗体が産生され免疫複合体が形成される。そして、それらが各臓器に蓄積し、さらなる炎症・自己免疫を引き起こし、病態が形成されていく。■ 症状障害臓器に応じた症状が、同時もしくは経過中に異なる時期に出現しうる。初発症状として最も頻度が高いものは、発熱、関節症状、皮膚粘膜症状である。全身倦怠感やリンパ節腫脹を伴う。関節痛(関節炎)は通常骨破壊を伴わない。皮膚粘膜症状として、日光過敏症や露光部に一致した頬部紅斑のほかに、手指や四肢体幹部に多彩な皮疹を呈し、脱毛、口腔内潰瘍などを呈する。その他、レイノー現象、腎炎に関連した浮腫、肺病変や血管病変と関連した労作時呼吸困難、肺胞出血に伴う血痰、漿膜炎と関連した胸痛・腹痛、神経精神症状など、さまざまな症状を呈しうる。■ 分類SLEは障害臓器と重症度により治療内容が異なる。とくに重要臓器として、腎臓、中枢神経、肺を侵すものが挙げられ、生命および機能予後が著しく障害される可能性が高い障害である。ループス腎炎は組織学的に分類されており、International Society of Nephrology/Renal Pathology Society(ISN/RPS)分類が用いられている。神経精神ループス(Neuropsychiatric SLE:NPSLE)では大きく中枢神経病変と末梢神経病変に分類され、それぞれの中でさらに詳細な臨床分類がなされる。■ 予後生命予後は、1950年代は5年生存率がおよそ50%であったが、2007年のわが国の報告では10年生存率がおよそ90%、20年生存率はおよそ75%である1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)検査所見として、抗核抗体、抗(ds)DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、β2GPⅠ依存性抗カルジオリピン抗体など)が陽性となる。また、血清補体低値、免疫複合体高値、白血球減少(リンパ球減少)、血小板減少、溶血性貧血、直接クームス陽性を呈する。ループス腎炎合併の場合はeGFR低下、蛋白尿、赤血球尿、白血球尿、細胞性円柱が出現しうる。SLEの診断では1997年の米国リウマチ学会分類基準2)および2012年のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準3)を参考に、他疾患との鑑別を行い、総合的に判断する(表1、2)。2019年に欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が合同で作成した新しい分類基準4)が提唱された。今後はわが国においても本基準の検証を元に診療に用いられることが考えられる。画像を拡大する表2 Systemic Lupus International Collaborating Clinics 2012分類基準画像を拡大するループス腎炎が疑われる場合は、積極的に腎生検を行い、ISN/RPS分類による病型分類を行う。50~60%のNPSLEはSLE診断時か1年以内に発症する。感染症、代謝性疾患、薬剤性を除外する必要がある。髄液細胞数、蛋白の増加、糖の低下、髄液IL-6濃度高値であることがある。MRI、脳血流シンチ、脳波で鑑別を進める。貧血の進行を伴う呼吸困難、両側肺びまん性浸潤影あるいは斑状陰影を認めた場合は肺胞出血を考慮する。全身症状、リンパ節腫脹、関節炎を呈する鑑別疾患は、パルボウイルス、EBV、HIVを含むウイルス感染症、結核、悪性リンパ腫、血管炎症候群、他の膠原病および類縁疾患が挙がるが、感染症を契機に発症や再燃をすることや、他の膠原病を合併することもしばしばある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)SLEの基本的な治療薬はステロイド、免疫抑制薬、抗マラリア薬であるが、近年は生物学的製剤が承認され、複数の分子標的治療が世界的に試みられている。ステロイドおよび免疫抑制薬の選択と使用量については、障害臓器の種類と重症度(疾患活動性)、病型分類、合併症の有無によって異なる。治療の際には、(1)SLEのどの障害臓器を標的として治療をするのか、(2)何を治療指標として経過をみるのか、(3)出現しうる合併症は何かを明確にしながら進めていくことが重要である。SLEの治療選択については、『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』の記載にある通り、重要臓器障害があり、生命や機能的予後を脅かす場合は、ステロイド大量投与に加えて免疫抑制薬の併用が基本となる5)(図)。ステロイドは強力かつ有効な免疫抑制薬でありSLE治療の中心となっているが、免疫抑制薬と併用することで予後が改善される。ステロイドの使用量は治療標的臓器と重症度による。ステロイドパルス療法とは、メチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール)250~1,000mg/日を3日間点滴投与、大量ステロイドとはプレドニゾロン換算で30~100mg/日を点滴もしくは経口投与、中等量とは同じく7.5~30mg/日、少量とは7.5mg/日以下が目安となるが、体重により異なる6)(表3)。ステロイドの副作用はさまざまなものがあり、投与量と投与期間に依存して必発である。したがって、副作用予防と管理を適切に行う必要がある。また、大量のステロイドを長期に投与することは副作用の観点から行わず、再燃に注意しながら漸減する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する寛解導入療法として用いられる免疫抑制薬は、シクロホスファミド(同:エンドキサン)とミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)が主体となる(ループス腎炎の治療については別項参照)。治療抵抗性の場合、免疫抑制薬を変更するなど治療標的を変更しながら進めていく。病態や障害臓器の程度により、カルシニューリン阻害薬のシクロスポリン(同:サンディミュン、ネオーラル)、タクロリムス(同:プログラフ)やアザチオプリン(同:イムラン、アザニン)も用いられる。症例に応じてそれぞれの有効性と副作用の特徴を考慮しながら選択する(表4)。画像を拡大するリツキシマブは、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)および欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)/欧州腎臓学会-欧州透析移植学会(European Renal Association – European Dialysis and Transplant Association:ERA-EDTA)の推奨7,8)においては、既存の治療に抵抗性の場合に選択肢となりうるが、重症感染症や進行性多巣性白質脳症の注意は必要と考えられる。わが国ではネフローゼ症候群に対しては保険承認されているが、SLEそのものに対する保険適用はない。可溶型Bリンパ球刺激因子(B Lymphocyte Stimulator:BLyS)を中和する完全ヒト型モノクローナル抗体であるベリムマブ(同:ベンリスタ)は、既存治療で効果不十分のSLEに対する治療薬として、2017年にわが国で保険承認され、治療選択肢の1つとなっている9)。本稿執筆時点では、筋骨格系や皮膚病変にとくに有効であり、ステロイド減量効果、再燃抑制、障害蓄積の抑制に有効と考えられている。ループス腎炎に対しては一定の有効性を示す報告10)が出てきており、適切な症例選択が望まれる。NPSLEでの有効性はわかっていない。ヒドロキシクロロキン(同:プラケニル)は海外では古くから使用されていたが、わが国では2015年7月に適用承認された。全身症状、皮疹、関節炎などにとくに有効であり、SLEの予後改善、腎炎の再燃予防を示唆する報告がある。短期的には薬疹、長期的には網膜症などの副作用に注意を要し、治療開始前と開始後の定期的な眼科受診が必要である。アニフロルマブ(同:サフネロー)はSLE病態に関与しているI型インターフェロンα受容体のサブユニット1に対する抗体製剤であり、2021年9月にわが国でSLEの適応が承認された。臨床症状の改善、ステロイド減量効果が示された。一方で、アニフロルマブはウイルス感染制御に関与するインターフェロンシグナル伝達を阻害するため、感染症の発現リスクが増加する可能性が考えられている。執筆時点では全例市販後調査が行われており、日本リウマチ学会より適正使用の手引きが公開されている。実臨床での有効性と安全性が今後検証される。SLEの病態は複雑であり、臨床所見も多岐にわたるため、複数の診療科との連携を図りながら各々の臓器障害に対する治療および合併症に対して、妊娠や出産、授乳に対する配慮を含めて、個々に応じた管理が必要である。4 今後の展望本稿執筆時点では、世界でおよそ30種類もの新規治療薬の第II/III相臨床試験が進行中である。とくにB細胞、T細胞、共刺激経路、サイトカイン、細胞内シグナル伝達経路を標的とした分子標的治療薬が評価中である。また、異なる作用機序の薬剤を組み合わせる試みもなされている。SLEは集団としてヘテロであることから、適切な評価のためのアウトカムの設定方法や薬剤ごとのバイオマーカーの探索が同時に行われている。5 主たる診療科リウマチ・膠原病内科、皮膚科、腎臓内科、その他、障害臓器や治療合併症に応じて多くの診療科との連携が必要となる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 全身性エリテマトーデス(公費対象)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(膠原病患者とその家族の会)1)Funauchi M, et al. Rheumatol Int. 2007;27:243-249.2)Hochberg MC, et al. Arthritis Rheum. 1997;40:1725.3)Petri M, et al. Arthritis Rheum. 2012;64:2677-2686.4)Aringer M, et al. Ann Rheum Dis. 2019;78:1151-1159.5)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班),日本リウマチ学会(編):全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019.南山堂,2019.6)Buttgereit F, et al. Ann Rheum Dis. 2002;61:718-722.7)Hahn BH, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64:797-808.8)Bertsias GK, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1771-1782.9)Furie R, et al. Arthritis Rheum. 2011;63:3918-3930.10)Furie R, et al. N Engl J Med. 2020;383:1117-1128.公開履歴初回2018年04月10日更新2022年02月25日

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第56回

第56回:腎がんのゲームチェンジャーキーワード腎細胞がんメラノーマ動画書き起こしはこちら音声だけをお聞きになりたい方はこちら //playstopmutemax volumeUpdate RequiredTo play the media you will need to either update your browser to a recent version or update your Flash plugin.こんにちは。ダートマス大学腫瘍内科の白井敬祐です。3月末、こちらではまだ雪がふったり、朝晩は氷点下になることがあったんですが、やっと雪が少しずつ融けてきて、春らしい雰囲気になってきました。ただ、油断はできないようで、来週もまだ朝晩は氷点下になるときがあるようなので、タイヤの交換は、もうちょっと待とうかなと思っています。(このビデオは3月間末に収録したものです)今日お話ししたいのは、腎がんですね。腎がんで、立て続けに、確実にPractice Changingになると思われる発表が出たので、報告したいと思います。またまた、Immune Checkpoint阻害薬の話になってしまいます。サンフランシスコで開かれたASCO-GUで発表されたのがMotzer先生(Sloan-Kettering Cancer Centerの先生ですけれども)のアテゾリズマブとベバシズマブ(アバスチン)を組み合わせた1st lineのPhaseIIIトライアルです。現在の標準治療とされるスニチニブと比べた試験なのですけれども、そこでOverall Response Rateが43%対35%で、Progression Free Survivalが11ヵ月と7ヵ月、Hazard Ratioが0.74(だったと思うんですけども)、と大きな差が認められました。副作用もアテゾリズマブとアバスチンのほうが少なかった、ということで、非常に大きく取り上げられています。腎がんは、ソラフェニブやスニチニブが出てから、かなり長い間1st lineは、それだったのですけど、大きく変わる可能性が出てきました。その発表の一週間後ぐらい、3月21日付けのNew England Journalに、これも1st authorはMotzer先生なんですけれども、イピリムマブとニボルマブのコンビネーション(アメリカではメラノーマに認可されているのですが)対スニチニブのPhaseIII試験、これも1st lineでの試験の結果がNEJMに掲載されました。注意しないといけないのは、今現在アメリカでメラノーマに認可されているイピリムマブ(の用量)は3g/kg、ニボルマブが1mg/㎏、3週おきなんですけれども、この臨床試験では、イピリムマブは1mg/kgでニボルマブは3mg/kgです。これは、腎がんのPhaseIで効果に差がなく、しかも副作用が少なかった、ということで採用されたようです。メラノーマに関してもPhaseIIIで、イピ3・ニボ1 versus イピ1・ニボ3の試験が、登録はすべて終わっています。結果発表待ちですが、副作用が低くて同じだけの効果がみられれば、メラノーマのほうも投与量が変わってくるかもしれません。(この試験での)Response Rateは42%対27%、スニチニブが27%ですね。特筆すべきなのは、Complete Responseがイピ・ニボのコンビネーション群で9%にみられたということです。従来、腎がんとかメラノーマでは、High Doseインターロイキン2療法でComplete Responseがみられることがあるというのは、よく知られた事実なのですが、それよりもさらに高いCR rate(メラノーマでもここまで高いCR rateはなかったと思うんですけど)が報告されています。非常に画期的な点だと思います。うちの腎がんの同僚からも、「ケイスケ、これから副作用についていろいろ聞くと思うから、よろしく頼む」ということを言われました。イピリムマブ、ニボルマブの組み合わせは、腎がんでは認可されてないのですけども、いずれも実際の臨床で使える薬なので、これだけPhaseIIIではっきりした結果が出ると、保険会社にこのNEJMのペーパーを付けて申請をすれば、認可される可能性もあります。もちろんNCCNガイドライン、あるいはNCCNのConpendium(便覧)に、この療法が掲載されると、多くの保険会社はFDAの認可の前に、許可をすることがあります。この辺が、ちょっと面白いところではあります。Atezolizumab Plus Bevacizumab Improves Progression-Free Survival in First-Line Treatment of Advanced Renal Cell Carcinoma進行性腎細胞がんの1次治療、ニボルマブとイピリムマブ併用が有効/NEJMMotzer RJ, et al. N Engl J Med. 2018 Mar 21. [Epub ahead of print]

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心不全を予防するために何をすべきか/日本循環器学会

 高齢者の増加と共に心不全患者数も増加し、わが国は、心不全パンデミック時代に直面しようとしている。そのような中、今後、心不全については治療だけでなく、予防という観点が重要となる。2018年3月23~25日に大阪で開催された、第82回日本循環器学会学術集会プレナリーセッションで、わが国の心不全予防について、佐賀大学 循環器内科 田中 敦史氏が講演した。バイオマーカーによるプレ・クリニカルからの先制医療 心不全の発症には、さまざまな要素が関連することから、患者それぞれのステージに合った、適切な介入が必要になってくる。田中氏はNT-proBNPの活用について紹介した。 久山町研究において、NT-proBNP値の上昇は、たとえ軽度でも、将来的な心血管疾患のリスク上昇に関連していることが報告されている。また、平成20~21年に佐賀県浦之崎病院(現:伊万里松浦病院)において実施した、就労世代におけるNT-proBNPと各検査項目との関連解析では、全体の20%がリスク群まで上昇していることが判明した。NT-proBNPはhs-トロポニンTなどの心筋障害マーカーとも相関する事から、一般就労世代のバイオマーカーとして、先制医療に活用可能であると考えられる。心不全予防に有望なSGLT2阻害薬 心不全予防では、基礎疾患管理も重要である。SGLT2阻害薬は今回改訂された心不全ガイドラインでもハイリスク糖尿病患者の心不全予防の第1選択の1つとして捉えられている。EMPA-REG試験、CANVAS試験、いずれにおいても心不全死または心不全入院を減少させている。さらに、現在、カナグリフロジンを用いて、慢性心不全を合併した2型糖尿病においてNT-proBNPの変化を評価するCANDLE研究が始まっている。再入院予防の戦略 心不全は、入院を繰り返すことで、悪化していく。心不全の再入院の頻度は退院後30日以内で25%に上る。カナダの研究では、心不全入院患者、心血管系のアウトカムに関しては、平均5~6日の入院期間が最も良好であった。限られた期間の中で、患者の医学的、社会的側面を含むさまざまな要素を評価すること。また、地域に戻った後のシームレスなケアが、心不全再入院予防の鍵となるであろうと田中氏は述べた。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第44回

第44回:CKD(慢性腎臓病)の評価方法監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 2002 年に米国で提唱されたChronic Kidney Disease(慢性腎臓病:CKD)の概念は、現在、世界中に普及し、日常の外来でも多く遭遇します。厚生労働省「平成26年患者調査の概況」によると、国内のCKD総患者数は29万6,000人(男性18万5,000人、女性11万人)とされています。 今回は、CKDの検出や初期評価に関してまとめましたので、参考にしてみて下さい。なお、国内では「CKD診療ガイド」1)や「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」2)が上梓されています。この機会にぜひ併せてご覧ください。 以下、American family physician 2017年12月15日号3)より【CKD定義・重症度分類】本邦指針では、下記の定義が定められている1)。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。とくに、0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のAlb尿)の存在が重要(2)GFR<60 mL/分/1.73 m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3 ヵ月以上持続する。CKDの重症度分類に関しては、2012年KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)において、従来の糸球体濾過量(GFR)のみによる病期分類がGFR と尿蛋白Alb尿を組合せた形式となり、著聞されている通りです。【CKD評価時のClinical recommendation】CKD評価時のClinical recommendationとしては、下記の項目が挙げられている。なお、Evidence RatingはいずれもC(=consensus, disease oriented evidence, usual practice, expert opinion, or case series)である。GFRの初期評価には、血清Cre値と血清Cre値を用いたeGFRを用いるべきである。CKD患者の初期評価における早朝スポット尿のAlb/Cre比は、タンパク尿評価よりも好ましい。血中シスタチンCは、血清Cre値が上昇しているが、既知のCKD、危険因子、Alb尿症も有しない患者において、GFRの減少が偽陽性かどうかを決めるときに測定すべきである。CKDは、eGFRおよびAlb尿症の程度を用いて分類されるべきである。CKDを有する患者は、少なくとも年一回、血清Hb値を測定すべきであり、CKDの重症度でその頻度を増す。骨密度のルーチン評価は、結果が不正確である可能性があるため、eGFR<45mL /分/1.73m2の患者では行わない。ステージ3a~5の CKD(eGFR<45mL /分/1.73m2)の患者評価には、血清Ca、P、副甲状腺ホルモン、ALPおよび25‐ヒドロキシビタミンD値の測定が含まれるべきである。【CKDを疑う際の初期診断アプローチ】下記の表を参考に、CKDのリスクや病因を評価する。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 社団法人 日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」 2) 社団法人 日本腎臓学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」 3) Gaitonde DY, et al. Am Fam Physician. 2017 Dec 15.

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心不全ガイドラインを統合·改訂(後編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会が、新たな心不全診療ガイドラインを公表した。本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。今回は後編。(前編はこちら)新たな心不全ガイドラインは診断フローチャートを簡略化 慢性心不全診断のフローチャートは、2010年版ガイドラインから大幅に簡略化された。基本的には欧州心臓病学会(ESC)の2016年版ガイドライン(Ponikowski P, et al. Eur Heart J.2016;37:2129-2200)を下敷きとしながらも、わが国の実態を踏まえ、画像診断を重視するチャートになっている。急性心不全治療のフローチャートも新規作成 「時間経過と病態を踏まえた急性心不全治療フローチャート」や、「重症心不全に対する補助人口心臓治療のアルゴリズム」の作成、「併存症の病態と治療」に関する記載の充実も新たな心不全診療ガイドラインの主要な改訂ポイントのひとつである。併存症は、心房細動、心室不整脈、徐脈性不整脈、冠動脈疾患、弁膜症、高血圧、糖尿病、CKD・心腎症候群、高尿酸血症・痛風、COPD・喘息、貧血、睡眠呼吸障害について記載されている。心不全合併高血圧には、4種薬剤が推奨クラスI、エビデンスレベルA 新たな心不全診療ガイドラインでは、高血圧を合併したHFrEFに対する薬物治療は、ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬に忍容性のない患者に対する投与)、β遮断薬、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の[推奨クラス、エビデンスレベル]が[I、A]、利尿薬が同上[I、B]、カルシウム拮抗薬が同上[IIa、B]とされた。なお、長時間作用型のジヒドロピリジン系以外のカルシウム拮抗薬は陰性変力作用のため使用を避けるべきと注記されている。 高血圧を合併したHFpEFに対する治療は、適切な血圧管理が同上[I、B]、基礎疾患の探索と治療が同上[I、C]とされた。心不全合併糖尿病には、包括的アプローチとSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)を推奨 心不全を合併した糖尿病に対する治療は、食事や運動など一般的な生活習慣の改善も含めた包括的アプローチが同上[I、A]、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が同上[IIa、A]、チアゾリジン薬が同上[III、A]とされた。CKD合併心不全は、CKDステージで推奨レベルが異なる CKD合併心不全に対する薬物治療は、CKDステージ3とステージ4~5に分けて記載されている。 CKDステージ3においては、β遮断薬、ACE阻害薬、MRAが同上[I、A]、ARBが同上[I、B]、ループ利尿薬が同上[I、C]となっている。CKDステージ4~5においては、β遮断薬が同上[IIa、B]、ACE阻害薬が同上[IIb、B]、ARB、MRAが同上[IIb、C]、ループ利尿薬が同上[IIa、C]とされた。新たな心不全ガイドラインでは血清尿酸値にも注目 心不全を伴う高尿酸血症の管理においては、血清尿酸値の心不全の予後マーカーとしての利用が[IIa、B]、心不全患者における高尿酸血症への治療介入が[IIb、B]とされた。国内未承認の治療法も参考までに紹介 海外ではすでに臨床応用されているにもかかわらず、国内では未承認の治療薬やデバイスがある。ARB/NEP阻害薬(ARNI)や、Ifチャネル阻害薬などだ。これらの薬剤は「今後期待される治療」という章で、開発中の治療と並び紹介されている。

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降圧治療における家庭血圧測定の有効性(解説:石川讓治氏)-833

 家庭血圧が外来血圧よりも優れた高血圧性臓器障害や心血管イベントの予測因子であることが多くの疫学研究において報告されているが、家庭血圧を指標とした降圧治療が、外来血圧を指標とした血圧治療よりも優れていることを示した報告はない。Staessenらは同じ血圧レベルと目標値として降圧治療を行った場合、外来血圧を指標とした降圧治療の方が家庭血圧を指標とした降圧治療よりも、24時間自由行動下血圧レベルが低値であったことを報告しており、必ずしも家庭血圧を指標とした降圧治療が厳格な血圧コントロールとはならないと考えられてきた。しかし、過去の疫学研究において、外来血圧は家庭血圧よりやや高めになる傾向があることが報告されており、多くの高血圧治療ガイドラインにおいては外来血圧140/90mmHgに相当するのが家庭血圧135/85mmHgであると考えられている。そのため、Staessenら1)の研究結果を実際の臨床に当てはめるには困難があった。 TASMINH4研究では2)、現在の高血圧治療ガイドラインに沿った降圧レベルを目標として、遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定、自己による家庭血圧測定、通常の外来血圧測定の3群に無作為割り付けして、外来血圧値を比較している。12ヵ月後の外来収縮期血圧は、通常外来血圧測定群と比較して、遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定群で4.7mmHg、自己家庭血圧測定群で3.5mmHg低値であった。この差に起因する因子として、追加された降圧薬の数が有意に遠隔モニタリングによる家庭血圧測定群および自己家庭血圧測定群に多かったことが起因しており、家庭血圧を指標とした方が医師患者ともに、躊躇なく降圧薬を増量できていた。遠隔モニタリングによる家庭血圧測定群では、定期的に家庭血圧値がウェブサイトでグラフ表示され、目標血圧よりも高ければ、テキストメールで患者に受診が促されている。また自己家庭血圧測定群においても、1ヵ月に1回封筒で血圧値を記入して医師に郵送し、目標血圧よりも高ければ患者に受診が勧められている。本研究におけるアウトカムが、24時間自由行動下血圧ではなく、介入対象である外来血圧値であることが本研究における結果の解釈を難しくさせているが、受診回数は各群で有意差なく、家庭血圧測定は複数日、複数回の“平均血圧値”であり、偶然の外来血圧上昇ではないとの判断が速やかに降圧薬を増量することの動機付けになっているものと思われる3)。遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定群と自己家庭血圧測定群では有意差は認められなかった。 TASMINH4研究対象者2)は平均66.9歳で、起立性低血圧、認知症、心房細動、慢性腎臓病の患者が除外されており、本研究の結果を家庭血圧測定が困難となる高齢者に当てはめることは困難である。正確な外来血圧測定を行えば、外来血圧が家庭血圧よりも低い値になることが報告されている4)。家庭血圧測定同様に、正確な外来血圧の測定も重要であることは、本研究の外来血圧がアウトカムであることよりも明らかである。

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心不全ガイドラインを統合·改訂(前編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会から新たな心不全診療ガイドラインが公表された。本ガイドラインは、11学会(日本循環器学会、日本心不全学会、日本胸部外科学会、日本高血圧学会、日本心エコー図学会、日本心臓血管外科学会、日本心臓病学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本超音波医学会、日本糖尿病学会、日本不整脈心電学会)、班員31名、協力員25名、外部評価員6名という巨大な組織により策定されたものである。 公表を受け、日本循環器学会学術集会(3月23~25日、大阪)では、ガイドライン作成班による報告セッションが組まれ、班長を務めた筒井裕之氏(九州大学)が説明した。講演内容を含め、本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。心不全の定義を明確化 まず、これまで不明確であった心不全の定義が明確化された。新しい定義は「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」というものである。 加えて、非医療従事者向けの定義も書き込まれた。「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」というものである。心不全という疾患は不可逆性に進行し、命に関わる状態である点が明記されている。進行過程を4つのステージに区分。ステージごとの治療最適化を目指す 心不全が進行性の疾患である点も強調され、発症前から治療抵抗性に至るまでの過程が「A」から「D」の4ステージに分けられた(A:器質的心疾患がなく危険因子のあるステージ、B:器質的心疾患があるステージ、C:心不全症候のある(既往も含む)心不全ステージ、D:治療抵抗性心不全ステージ)。2001年に、米国ガイドラインが導入した捉え方である(Yancy CW, et al. Circulation.2013;128:e240)。また、ステージごとに治療目標が設定された。これにより、ステージごとに適切な治療が提供されることが期待されている。心不全発症前から積極介入。「予防」に注力 前回ガイドラインとの最大の違いは、まだ心不全を発症していないステージ「A」と「B」が治療対象となっている点である。心疾患危険因子のみを有する「ステージA」では、それら危険因子の管理により、心不全発症のリスク因子である器質的心疾患発症の「予防」を図り、虚血性心疾患や左室肥大など器質的病変が生じている「ステージB」では、心不全発症の「予防」が推奨されている。 このように新ガイドラインは、心不全の「発症予防」にも力をいれている。「心不全予防」という章も、「心不全治療の基本方針」の前に新設された。その中には、高血圧、冠動脈疾患、肥満・糖尿病、喫煙、アルコール、身体活動・運動の項が設定され、心血管病既往のある2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が推奨クラスI、エビデンスレベルAとして推奨された理由が特筆されている。薬剤治療はEFの高低で3類型に分けて整理 心不全に対する治療の考え方も、大きく変わった。「ステージC」心不全例に対しては、左室収縮能(EF)に応じた治療の選択が推奨されるようになった。EF「40%未満」の「HFrEF」、「40-50」の「HFmrEF」、「50以上」の「HFpEF」ごとに治療方針は異なる(なお心不全の「分類」の項では、この3類型に、HFrEFから治療によりEFが40%以上に回復した「HFpEF improved、HFrecEF」という類型を加えた4類型が示されている)。 もっともHFpEFとHFmrEFに関しては、現時点では予後改善の確たるエビデンスがない。そのため、HFpEFに対しては「心不全症状を軽減させることを目的とした負荷軽減療法、心不全増悪に結びつく併存症に対する治療」が基本とされ、HFmrEFについては「この領域の心不全例でのデータはまだ確実なものがなく、今後の検討を要する」と記載するに留まっている。「緩和ケア」を初めて明記·詳述 心不全発症例に対する「緩和ケア」の推奨も、今回改訂の大きな目玉である。この「緩和ケア」に関し筒井氏は、同日夕方に行われたガイドライン記者会見において、「心不全患者への緩和ケアは終末期医療に限定されない」点を強調した。緩和ケアは「ステージC」の段階から推奨されている。つまり、病状末期の「ステージD」に限定されていない。これは心不全の進展はさまざまな因子に影響を受けるため個人差が大きく、「終末期」がいつ訪れるか予知が困難なためである。この点は、経過の予想が比較的容易ながん治療と大きく異なる。そのため心不全では、発症直後から緩和ケアを行うべきだというのが、新ガイドラインの立場である。

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ポケット呼吸器診療2018

呼吸器診療で役立つマニュアルの最新版が登場!呼吸器領域の診療のお供として、絶大な支持を得ている『ポケット呼吸器診療』の最新版の登場です。今版では、改訂部分を色付けして変更点を強調、各種ガイドラインの改訂にも対応し、最新情報にアップデートしています。また、新項目として喀血、肺ノカルジア症、リンパ脈管筋腫症、胸腺腫・胸腺がん、気胸、肺血栓塞栓症などを追加しました。臨床で使える邪魔にならない小さなマニュアル(新書判)で、呼吸器疾患の診療手順/処方例/診療指針・ガイドラインを掲載しています。とくに患者さんへの病状説明のポイント、よくある質問の回答例の掲載も本書の特色です。著者の「実臨床で使用することを最優先に、不要な贅肉を極限までこそぎ落とした」という制作理念を具現化した本書は、呼吸器診療に携わる医療者は持っておきたい1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    ポケット呼吸器診療2018定価1,800円 + 税判型新書判頁数221頁発行2018年3月著者倉原 優監修林 清二Amazonでご購入の場合はこちら

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重症心不全への遠心流ポンプ、2年時も有用性持続/NEJM

 重症心不全患者への埋め込み型補助人工心臓による治療では、完全磁気浮上型遠心連続流ポンプ(HeartMate 3)が機械軸受軸流ポンプ(HeartMate II)に比べ、2年時の臨床アウトカムが良好であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが進めるMOMENTUM 3試験の2年間のフォローアップで示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年3月11日号に掲載された。遠心流ポンプは、デバイス内血栓症の防止を目的にデザインされた。本試験の早期解析では、6ヵ月時の臨床アウトカムは、遠心流ポンプが軸流ポンプに比べ改善したと報告されている。2年時の遠心流ポンプの非劣性と優越性を評価 MOMENTUM 3は、重症心不全患者における遠心流ポンプの軸流ポンプに対する非劣性と優越性を評価する非盲検無作為化試験である(Abbott社の助成による)。 対象は、ガイドラインで規定された医学的管理を行っても再発を認めた重症心不全患者であり、心臓移植への橋渡しか、恒久治療かは問わなかった。 主要エンドポイントは、2年時の後遺障害を伴う脳卒中(修正Rankinスコア[0~6点、点数が高いほど重症]>3点)の発現のない生存と、デバイス交換のための再手術またはデバイス不具合による除去が発生しない生存の複合であった。リスク差の非劣性マージンは、−10ポイントとした。 2014年9月~2015年11月の期間に、米国の69施設に366例が登録され、遠心流ポンプ群に190例、軸流ポンプ群には176例が割り付けられた。無イベント生存、ポンプ血栓症、脳卒中発症も改善 ベースラインの年齢中央値は、遠心流ポンプ群が65歳(範囲:19~81)、軸流ポンプ群は61歳(24~84)、男性がそれぞれ78.9%、81.2%を占めた。遠心流ポンプ群の1例、軸流ポンプ群の4例は植え込み術を受けなかった。 intention-to-treat(ITT)集団における2年時の主要エンドポイントの発生率は、遠心流ポンプ群が79.5%(151例)と、軸流ポンプ群の60.2%(106例)に対し非劣性(絶対差:19.2ポイント、95%信頼区間[CI]の下限値:9.8%、非劣性のp<0.001)であり、優越性(ハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.31~0.69、優越性のp<0.001)も示された。 ポンプ不具合による再手術の発生率は、遠心流ポンプ群が1.6%(3例)であり、軸流ポンプ群の17.0%(30例)に比べ有意に低かった(HR:0.08、95%CI:0.03~0.27、p<0.001)。また、死亡および後遺障害を伴う脳卒中の発生率は同等であったが、全脳卒中は遠心流ポンプ群が10.1%と、軸流ポンプ群の19.2%に比し有意に低かった(HR:0.47、95%CI:0.27~0.84、p=0.02)。 ITT集団におけるKaplan-Meier推定法による2年時の無イベント生存率(主要エンドポイント)は、遠心流ポンプ群が77.9%と、軸流ポンプ群の56.4%に比べ有意に優れた(HR:0.46、95%CI:0.31~0.69、log-rank検定のp<0.001)。 ポンプ血栓症(疑い)は、遠心流ポンプ群の1.1%(2例)にみられ、軸流ポンプ群の15.7%(27例、33件)に比べ有意に少なかった(HR:0.06、95%CI:0.01~0.26、p<0.001)。 脳卒中は、遠心流ポンプ群の10.1%(19例、22件)に発生し、軸流ポンプ群の19.2%(33例、43件)に比し有意に低率であり(HR:0.47、95%CI:0.27~0.84、p=0.02)、per-protocol集団における2年時の無脳卒中率はそれぞれ89.1%、76.3%(0.47、0.27~0.84、log-rank検定のp=0.008)と、遠心流ポンプ群が有意に良好であった。 出血は遠心流ポンプ群で少ない傾向を認めたが、有意な差はなかった(42.9 vs.52.3%、p=0.07)。死亡は、遠心流ポンプ群が30例、軸流ポンプ群は36例で、最も多い死因は両群とも右心不全、脳卒中、感染症であった。 著者は、「遠心流ポンプ群でポンプ血栓症の疑い例が2例みられたが、いずれもポンプ外での血栓形成に起因する可能性がある」と指摘している。

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APROCCHSS試験-敗血症性ショックに対するステロイド2剤併用(解説:小金丸博氏)-831

 敗血症性ショック患者に対するステロイドの有効性を検討した研究(APROCCHSS)がNEJMで発表された。過去に発表された研究では、「死亡率を改善する」と結論付けた研究(Ger-Inf-051))もあれば、「死亡率を改善しない」と結論付けた研究(CORTICUS22)、HYPRESS3)、ADRENAL4))もあり、有効性に関して一致した見解は得られていなかった。 本研究は、敗血症性ショックに対するヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾン投与の有効性を検討した多施設共同二重盲検ランダム化比較試験である。敗血症性ショックでICUへ入室した患者のうち、SOFAスコア3点、4点の重篤な臓器障害を2つ以上有し、ノルエピネフリンなどの血管作動薬を0.25μg/kg/min以上投与が必要な患者を対象とした。研究開始時は、活性化プロテインCとヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾンの2×2要因デザインで患者を組み込んでいたが、活性化プロテインCは試験途中で市場から撤退したため、その後はステロイド投与群とプラセボ投与群の2群で試験を継続した。その結果、プライマリアウトカムである90日死亡率はヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾン投与群で43.0%、プラセボ投与群で49.1%であり、ヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾン投与群が有意に低率だった(p=0.03)。また、セカンダリアウトカムであるICU退室時死亡率、退院時死亡率、180日死亡率もヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾン投与群が有意に低率だった。 本論文の考察の中で、敗血症性ショックに対するステロイドの有効性に関する見解が一致しない理由が2つ挙げられている。1つは、投与するステロイドの種類の違いである。ステロイドの有効性を示したAPROCCHSSとGer-Inf-05では、ヒドロコルチゾンにミネラルコルチコイドであるフルドロコルチゾンが併用投与されている。フルドロコルチゾンを投与することによってアドレナリン作動薬の反応改善が期待できるとされており、アドレナリン作動薬が必要な敗血症性ショックに対して有効性を示した可能性がある。2つ目は、患者重症度の違いである。本試験では高用量の血管作動薬投与が必要な患者が対象となっており、プラセボ投与群の90日死亡率は49.1%と高率だった(ADRENALのプラセボ投与群の90日死亡率は28.8%)。重篤な敗血症性ショック患者に対してステロイド投与が有効である可能性がある。現行の敗血症ガイドラインでは、十分な輸液と昇圧薬の投与でも血行動態が安定しない患者に対してはステロイド投与が推奨されており、重症敗血症例に対してステロイドを投与することは妥当性があると考える。

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PCI後のDAPT、6ヵ月 vs.12ヵ月以上/Lancet

 急性冠症候群に対する薬剤溶出ステント(DES)での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)において、6ヵ月投与群が12ヵ月以上投与群に対して、18ヵ月時点で評価した全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントの発生について非劣性であることが示された。一方で、心筋梗塞発症リスクは、6ヵ月投与群が約2.4倍高かった。韓国・成均館大学校のJoo-Yong Hahn氏らが、2,712例を対象に行った無作為化非劣性試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年3月9日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「DAPT投与は短期間が安全であるとの結論に達するには、厳しい結果が示された。過度の出血リスクがない急性冠症候群患者のPCI後のDAPT期間は、現行ガイドラインにのっとった12ヵ月以上が望ましいだろう」と述べている。18ヵ月時点の心血管イベントリスクを比較 研究グループは2012年9月5日~2015年12月31日に、韓国国内31ヵ所の医療機関を通じて、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞、ST上昇型心筋梗塞のいずれかが認められ、DESによるPCIを受けた患者2,712例について、非盲検無作為化非劣性試験を行った。急性冠症候群でPCI実施後のDAPT期間6ヵ月の群が、同じく12ヵ月以上の群に比べて非劣性かを評価した。 主要評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの複合エンドポイントとし、ITT解析で評価した。per protocol解析も行った。 副次評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の、主要評価項目に含まれた各イベントの発生、Academic Research Consortium(ARC)の定義に基づくdefinite/probableステント血栓症、BARC出血基準に基づくタイプ2~5の出血の発生だった。6ヵ月群の心筋梗塞リスクが2.41倍 被検者のうち、DAPTの6ヵ月投与群は1,357例、12ヵ月以上投与群は1,355例だった。P2Y12阻害薬としてクロピドグレルを用いたのは、6ヵ月群の1,082例(79.7%)、12ヵ月以上群の1,109例(81.8%)だった。 主要評価項目の発生は、6ヵ月群63例(累積イベント発生率:4.7%)、12ヵ月以上群56例(同:4.2%)で認められ、6ヵ月群の非劣性が示された(群間絶対リスク差:0.5%、片側上限値95%信頼区間[CI]:1.8%、事前規定の非劣性マージンは2.0%で非劣性のp=0.03)。 全死因死亡率は6ヵ月群が2.6%、12ヵ月以上群が2.9%と両群で同等だった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.57~1.42、p=0.90)。脳卒中発症率についても、それぞれ0.8%と0.9%であり、両群で同等だった(同:0.92、0.41~2.08、p=0.84)。 一方で心筋梗塞発症率については、6ヵ月群が1.8%に対し12ヵ月以上群が0.8%だった(HR:2.41、95%CI:1.15~5.05、p=0.02)。 ステント血栓症については、それぞれ1.1%と0.7%で、両群に有意差はなかった(p=0.32)。BARC出血基準2~5の出血発生頻度も、それぞれ2.7%、3.9%と有意差はなかった(p=0.09)。 per protocol解析の結果は、ITT解析の結果と類似していた。 著者は、「6ヵ月投与群の心筋梗塞リスクの増大と幅広い非劣性マージンによって、DAPTの短期間投与が安全であると結論付けることはできない」と述べている。

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心不全に関する記者発表会~日本循環器学会/日本心不全学会

 2018年3月19日、「最近よく耳にする心不全~心不全の解説と予防の重要性~」と題した記者発表会(主催:日本循環器学会、日本心不全学会)が開催された。 最初に小室 一成氏(日本循環器学会代表理事)が「イントロダクション」を、続いて斎藤 能彦氏(日本循環器学会学術委員会委員長)が「心不全啓発キャンペーン」、筒井 裕之氏(日本心不全学会理事長)が「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」を、最後に三谷 義英氏(日本循環器学会小児・成人先天性心疾患部会長)が「先天性心疾患の成人への移行医療に関する提言の概要」について講演した。 小室氏は、講演の中で、心不全患者の増加はもちろん、循環器疾患を原因とした介護人口、医療費の増加、心不全診療の課題等について紹介し、今後、心不全に対する社会および医療界の関心を上げることの重要性を説いた。 斎藤氏は、啓発キャンペーンの一環として行った一般向けおよびプライマリケア医向け啓発セミナーや、イメージキャラクターとして忍者ハットリくんを起用したポスター/バルーンの作成等、一般の人にも馴染みやすい方法で啓発を行っていることを発表し、心不全啓発成功への期待を述べた。 筒井氏は、講演の中で、今回の心不全ガイドラインには主に10の大きな改訂ポイントがあると述べ、心不全の定義を明確化したこと、心不全のリスクの進展ステージと治療目標を新たに作成したこと、心不全の発症・進展予防を重要視したことが紹介された。改訂ガイドラインは、3月24日、第82回日本循環器学会学術集会(大阪)のガイドライン委員会セッションで詳しく発表し、即日、学会ホームページに掲載する予定であるという。 三谷氏は、先天性心疾患例は、医療技術の進歩により成人例が増加する一方で、小児と成人診療科の連携が不足している現状を紹介し、その解決のために、先天性心疾患の成人への移行医療に関する提言を、本日(19日)厚生労働省に提出したと報告した。

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議論が続く多枝疾患患者への冠血行再建法、CABGかPCIか?(中川義久 氏)-829

 これまでも、多枝冠動脈疾患患者における長期成績は、CABGのほうがPCIよりも良好であることが複数の無作為化比較試験および患者登録研究の結果から示されてきた。しかし、その優位性は真のエンドポイントである死亡の差としてではなく、新規心筋梗塞発生リスクや、再血行再建リスクなども含めて解析した場合にCABGのほうが勝るという結論にとどまっていた。死亡に差がないのであれば、侵襲度の違いを念頭に置けばPCIの立ち位置を高く考慮してもよいという意見もあった。 今回、ここに新しい知見が加わった。オランダ・エラスムス大学のStuart J. Head氏らが、11の無作為化比較試験の総数約11,500例を対象に行ったプール解析の結果から、CABGがPCIよりも死亡に関して優位性があることをLancet誌で報告した。とくに、糖尿病を持つ患者や、冠動脈の病変が複雑でSYNTAXスコアが高値である患者ほど、その傾向は強かったという。 死亡という真のエンドポイントで差を示したことは、インパクトがある。一方で、このような過去のデータからのプール解析で常に問題になるのは、データの陳腐化という問題である。PCIの治療成績は常に改善してきている。SYNTAX II study1)は、PCIの治療成績の改善を印象付けた代表的な報告である。ステントの進化だけではなく、PCI治療成績向上の原動力として大きいのは、PCIの適応決定にFFRやiFRなどの生理学的評価を用いること、PCI手技の質をIVUSなどのイメージングデバイスを駆使することである。さらに、冠危険因子を管理する内科的治療の進歩も大きい。もちろんCABGにおいても、心臓血管外科の手術技術の進化がある。 現在、日本循環器学会/日本心臓血管外科学会の合同で、冠動脈血行再建ガイドライン改訂が進行中である。今回のStuart J. Head氏らの解析の結果は、このガイドライン策定作業においても議論の俎上に載ることであろう。日常臨床においては、これらのエビデンスを考慮しつつ個々の患者の病態や希望を含め、ハートチームとして循環器内科医・心臓外科医で共に議論していくことが肝要であろう。

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