サイト内検索|page:73

検索結果 合計:2892件 表示位置:1441 - 1460

1441.

第4回 動脈硬化で死なないためには?【今さら聞けない心リハ】

第4回 動脈硬化で死なないためには?今回のポイント心血管疾患患者にとって、食習慣の改善は運動と同様に大切画一的な指導ではなく、病状に応じた栄養指導が重要動脈硬化疾患の予防には〇〇を断つべし!?動脈硬化予防に良い食事とは?本連載の第1~3回では、主に運動療法について書きましたが、今回は心疾患患者に対する栄養指導についてお話します。心臓リハビリテーション(以下、心リハ)において、心疾患患者は何を食べるべきか(あるいは何を食べないべきか)ということは、実は運動と同じくらい、あるいはそれ以上に大切と考えられています。わが国の心血管疾患の治療ガイドラインには、食事についての記載はほとんど認められません。わずかに、減塩や適正なカロリーの摂取についての記載があるのみです。一方、米国のガイドラインではかなり多くのページが食事・栄養に割かれており、総説や論文も多数、毎年のように出されています。日本がフィットネス後進国と言われていることは第1回でも話しましたが、実は運動だけではなく食事についても関心のある医師が少ない状況です。高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などの生活習慣病の発症は、運動不足も関係しますが、食事が最も重要であるのは自明のことです。運動不足でも、食べなければ太れません。それでも、食事の根本的改善のないままに、各管理目標値を目指して薬物治療が開始されることが多いのではないでしょうか。では、動脈硬化の予防には実際どのような食事をとれば良いのでしょう。避けるべき食品はなんでしょうか。動脈硬化は、食事と運動だけでも改善できるのでしょうか?徹底的な食事療法と運動療法により冠動脈のプラーク(動脈硬化病変)が退縮することを実際に示した有名な臨床研究があります。カリフォルニア大学のOrnish氏らが1998年のJAMA誌に発表したもので、Ornish氏とその関係者は、現在もカリフォルニアを拠点にこの研究で示された有効性をもとに食事・運動療法の啓発活動を続けています。この研究では、中~高度の冠動脈疾患患者を「徹底的な食事療法・運動療法を行う介入群:28例」と、「ガイドラインで推奨されるレベルの食事療法・運動療法を行う対照群:20例」にランダムに割り付けし、冠動脈造影検査による冠動脈狭窄率の変化を5年間追跡しました。徹底的な食事療法とは、ホールフード・ベジタリアンダイエット、つまり未加工の野菜中心に油脂を使わず少ない調味料で調理するもので、脂質が占めるエネルギー量は全体の10%未満と非常に少ないものでした。また、介入群では食事療法とともに週5時間の有酸素運動を実施しました。一方、対照群でも食事中の脂質は30%未満に抑えられ、週3時間程度の有酸素運動を実施しました。1年後、介入群では37%の血清LDLコレステロール低下を認めるとともに評価部位の冠動脈の平均狭窄率が40%から37.8%に改善したのに対して、対照群ではLDLコレステロールは6%低下したものの、冠動脈の平均狭窄率は42.7%から46.1%に悪化しました。その後、対照群では過半数の患者において脂質異常症治療薬の内服が開始されましたが、5年後の両群の冠動脈狭窄率差はより顕著でした(介入群:37.3%、対照群:51.9%)。後に、同氏らはこのプログラムを冠動脈疾患の進行抑制だけではなく改善させるものとして、Intensive Cardiac Rehabilitation(包括型心リハ)と名付けています(図1)。(図1)画像を拡大するこの研究データには説得力があり、すでに1,854もの論文で引用されています(2019/11/21時点)。私の知る限り、ほかにはこのように明確に食事・運動療法の動脈硬化改善効果を示した研究はありません。Ornish食を続けるコツと適した人ホールフード・ベジタリアンダイエットは、いわゆる高血圧研究で有名なDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食とは異なり、乳製品や魚すらとりません。DASH食でさえ毎日続けるのは難しそうと感じた方には、よりハードルが高そうですが、研究に参加した患者の7割以上が、5年間この食事療法を継続できたようです。同氏によると、継続率が高いのは、これを実践した患者が速やかに自覚症状の改善を感じたからだそうです。ホールフード・ベジタリアンダイエットを本気で実践しようとすると、あれもこれも食べられませんし、それを理想と考えるなら、通常の入院食も不適切な食事です。それに、野菜は高いし調理も面倒…さまざまな事情により、実践を諦める人が多いでしょう。多くの患者にとって、同氏らの研究の中で対照群が実施したような、脂質30%未満という通常の診療で推奨されている一般的な食事療法が、許容できるぎりぎりのレベルかもしれません(一般的な食事療法でも、きっちりと指導を受け、さらに実践できている患者は多くないと思われます)。ただし、同氏の研究はあくまで中年の肥満型冠動脈疾患患者を対象にしたものであり、日本で診療する患者の多数派である高齢者を対象としていないことに注意が必要です。高齢の心疾患患者では低栄養のことも多く、そもそも野菜をかむ力すら衰えてしまっているようなオーラル・フレイルの患者も多いので、多量の野菜を摂取する必要のあるOrnish食は適応にならないでしょう。画一的な指導ではなく、患者の病状や生活環境に応じた指導が必要です。高齢の心疾患患者の場合には、少量でもしっかりとカロリーやタンパク質を補うことができるような食事のメニューを組む必要があります。これについては、第5回で詳しく説明しましょう。動脈硬化予防に食べてはいけない物最後に、“何を食べてはいけないか”―最近JACCで発表された心血管疾患予防のための栄養に関する臨床ガイドの記事を紹介します。ここでは、避けるべき食品、積極的に摂取すべき食品についてのリストとともに、詳細に記述されています。この臨床ガイドの中で、避けるべき食品としてまず挙げられているのが、「砂糖」。とくに果糖ブドウ糖液糖をはじめとする合成糖類です。砂糖の1日摂取量上限は25gまで、合成糖類は基本とらない、甘い飲料は飲んではいけないことが、エビデンスとともに記されています。詳しくリストを確認したい方は、原著をお読みください。塩のとり過ぎは高血圧を発症させるので減塩が大切ということは広く知られていますが、砂糖のとり過ぎに気を付けることも大事なのですね。ちなみに、私は甘いお菓子が大好きです。こうした情報を知ってからは、なるべく気を付けるようにしています…が、さっき頂き物のクッキーの小袋を食べてしまいました(汗)。徹底的な食事療法の実践は、なかなか難しいですね。「moderation kills」という言葉がありますが、よほどの決心がつかないと、「なるべく気を付ける」くらいの食事療法で満足してしまいそうです。読者の皆さまは、いかがでしょうか?<Dr.小笹の心リハこぼれ話>医師による栄養指導と真の対価心リハのメインは運動、食事は重要だけれど補助的役割。運動処方は医師がチェックするけれど、栄養指導は管理栄養士任せ…。心リハに携わり始めた頃は、正直、栄養については知識不足でした。そのため、患者さんに聞かれても、「塩分に気を付けてバランスの良い食事をとりましょう、具体的には栄養指導で聞いてくださいね」という、間違ってはいないものの何にも具体性がないことしか言えませんでした。現在、医学部には栄養学の講義はほとんどありません。栄養指導は管理栄養士任せという医師は多いと思われます。しかし、長年心リハで患者指導をするうちに、運動だけではだめなんだ、と気付かされるようになりました。毎日2時間も速歩でウォーキングしていてもHbA1cが8%を下回らない糖尿病患者さん、外来心リハに週3回通い、かつ自宅でも指導通り運動しているのに体重がまったく変わらないどころか逆に増えるような肥満患者さん。これらの患者さんたちは、明らかに食事に問題があるのです。今では、心リハの患者さんの栄養指導も管理栄養士にすべてお任せではなく、管理栄養士と一緒に個々の症例について介入ポイントを話合っています。それにしても、運動だけではなく、栄養指導や心リハで重要な心理ケア(ストレスマネジメントプログラム:SMP)について、1回1時間の心リハで行うことは時間的にかなり厳しいものがあります。今回紹介したOrnish氏の心リハプログラムは、米国で保険適応とされています。通常の心リハプログラムが1回1時間、週3回、12週間(合計36時間)の運動を中心としたものであるのに対して、包括型心リハでは1回4時間で運動、栄養指導、SMPを各1時間、そして残りの1時間がグループでの対話セッションで構成され、週2回、9週間(合計72時間)というもののようです(図1)。このような心リハを日本で実践するには、診療報酬制度の見直し、そして心リハを支えるマンパワーが必要です。日本でIntensive Cardiac Rehabilitation(包括型心リハ)を実現するには、今以上にコストがかかるということですね。でも、その投資は、冠動脈疾患の再発や悪化によりPCIやCABGなどの血行再建術を実施するコストに比べたら、十分価値があるのではないでしょうか。何より、患者さんにとっては疾患の再発や悪化がないことこそがHappyですよね!

1442.

降圧薬と認知症リスク~メタ解析

 認知症は、予防や治療戦略が難しい健康問題である。認知症を予防するうえで、特定の降圧薬使用が、認知症リスクを低下させるともいわれている。米国・国立衛生研究所のJie Ding氏らは、特定の降圧薬による血圧低下が認知症リスクに及ぼす影響について検討を行った。The Lancet. Neurology誌オンライン版2019年11月6日号の報告。高血圧患者に対する降圧薬使用は認知症リスクを低下させる 1980年1月1日~2019年1月1日までに公表された適格な観察研究より参加者データを収集し、メタ解析を実施した。適格基準は、コミュニティーの成人を対象としたプロスペクティブコホート研究、参加者2,000人超、5年以上の認知症イベントデータの収集、血圧測定および降圧薬の使用、認知症イベントに関する追加データを収集するための対面試験、死亡率のフォローアップを含む研究とした。ベースライン時の高血圧(SBP140mmHg以上またはDBP90mmHg以上)および正常血圧において、5つの降圧薬クラスを用いて、認知症やアルツハイマー病との関連を評価した。降圧薬服用確率に関連する交絡因子を制御するため、傾向スコアを用いた。研究固有の効果推定値は、変量効果のメタ解析を用いてプールした。 降圧薬と認知症との関連を評価した主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間7~22年間(中央値)のコミュニティーベースプロスペクティブコホート研究6件より得られた、55歳超の非認知症成人3万1,090人を解析対象とした。・認知症診断は3,728件、アルツハイマー病診断は1,741件であった。・高血圧群(1万5,537人)では、降圧薬を使用している患者は、使用していない患者と比較し、認知症発症リスク(ハザード比[HR]:0.88、95%CI:0.79~0.98、p=0.019)およびアルツハイマー病発症リスク(HR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.021)の低下が認められた。・認知症リスクに対して、降圧薬のクラス間で有意な差は認められなかった。・正常血圧群(1万5,553人)では、降圧薬使用と認知症またはアルツハイマー病との間に関連は認められなかった。 著者らは「高血圧患者に対する降圧薬使用は、認知症リスクを低下させる。しかし長期の観察では、特定の降圧薬が、他の降圧薬と比較し、認知症リスク低下に効果的であることは示唆されなかった。このことから、今後の高血圧臨床ガイドラインでは、認知症リスクに対する降圧薬の有益な効果を考慮すべきである」としている。

1443.

低用量コルヒチン、心筋梗塞後の虚血性心血管イベントを抑制/NEJM

 低用量コルヒチンは、心筋梗塞患者における虚血性心血管イベントのリスクをプラセボに比べ有意に低減することが、カナダ・モントリオール心臓研究所のJean-Claude Tardif氏らが行ったCOLCOT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。炎症は、アテローム性動脈硬化およびその合併症において重要な役割を担うことを示す実験的および臨床的なエビデンスがある。コルヒチンは、イヌサフランから抽出された抗炎症作用を有する経口薬で、痛風や家族性地中海熱、心膜炎の治療に使用されている。発症後30日以内の心筋梗塞の無作為化試験 本研究は、12ヵ国167施設が参加した医師主導の二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2015年12月~2018年8月の期間に患者登録が行われた(カナダ・ケベック州政府などの助成による)。 対象は、登録前の30日以内に心筋梗塞を発症し、経皮的血行再建術を受け、強化スタチン治療を含む国のガイドラインに準拠した治療を受けている成人患者であった。 被験者は、低用量コルヒチン(0.5mg、1日1回)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 有効性の主要エンドポイントは、心血管死、心停止からの蘇生、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院の複合とした。主要複合エンドポイント:5.5% vs.7.1% 4,745例が登録され、コルヒチン群に2,366例、プラセボ群には2,379例が割り付けられた。追跡期間中央値は22.6ヵ月だった。 ベースラインの全体の心筋梗塞発症後平均期間は13.5日、平均年齢は60.6歳、女性が19.2%であった。また、20.2%が糖尿病を有し、93.0%が心筋梗塞に対し経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けており、98.8%がアスピリン、97.9%が他の抗血小板薬、99.0%がスタチンの投与を受けていた。 主要複合エンドポイントの発生率は、コルヒチン群が5.5%と、プラセボ群の7.1%に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.61~0.96、p=0.02、log-rank検定)。 主要複合エンドポイントの構成要素のうち、心血管死(コルヒチン群0.8% vs.プラセボ群1.0%、HR:0.84、95%CI:0.46~1.52)、心停止後の蘇生(0.2% vs.0.3%、0.83、0.25~2.73)、心筋梗塞(3.8% vs.4.1%、0.91、0.68~1.21)の発生率には両群間に有意な差は認められなかったが、脳卒中(0.2% vs.0.8%、0.26、0.10~0.70)と血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院(1.1% vs.2.1%、0.50、0.31~0.81)の発生率はコルヒチン群で有意に低かった。 副次複合エンドポイント(心血管死、心停止後の蘇生、心筋梗塞、脳卒中)(コルヒチン群4.7% vs.プラセボ群5.5%、HR:0.85、95%CI:0.66~1.10)および有効性の探索的エンドポイントである死亡(1.8% vs.1.8%、0.98、0.64~1.49)、深部静脈血栓症/肺塞栓症(0.4% vs.0.3%、1.43、0.54~3.75)、心房細動(1.5% vs.1.7%、0.93、0.59~1.46)の発生率には、両群間に有意な差はみられなかった。 治療薬関連の有害事象は、コルヒチン群が16.0%、プラセボ群は15.8%で認められた。重篤な有害事象はそれぞれ16.4%、17.2%でみられた。消化器イベントの頻度が高く(コルヒチン群17.5%、プラセボ群17.6%)、そのうち下痢がコルヒチン群で9.7%、プラセボ群で8.9%(p=0.35)、悪心がそれぞれ1.8%、1.0%(p=0.02)で発現した。 著者は、「主要複合エンドポイントの改善は、主に脳卒中と血行再建術の原因となった狭心症による緊急入院の発生率の低下によってもたらされた」としている。

1444.

無症候性の大動脈弁狭窄症、保存的治療 vs.早期手術/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症患者において、追跡期間中の手術死亡または心血管死(複合エンドポイント)の発生率は、早期に弁置換術を施行した患者のほうが保存的治療を行った患者よりも有意に低いことが示された。韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らが、多施設共同試験「RECOVERY試験」の結果を報告した。重症大動脈弁狭窄症患者の3分の1から2分の1は診断時に無症状であるが、こうした患者における手術の時期と適応については依然として議論の余地があった。NEJM誌オンライン版2019年11月16日号掲載の報告。手術死亡と心血管死の複合エンドポイントを比較 RECOVERY試験(Randomized Comparison of Early Surgery versus Conventional Treatment in Very Severe Aortic Stenosis trial)は、2010年7月~2015年4月の期間に、無症候性の超重症大動脈弁狭窄症(大動脈弁口面積≦0.75cm2で、大動脈弁血流速度≧4.5m/秒または平均圧較差≧50mmHgのいずれか)患者145例を、早期手術群(73例)または現行ガイドラインの推奨に基づく保存的治療群(72例)のいずれかに無作為に割り付けて行われた。 主要評価項目は、術中または術後30日以内の死亡(手術死亡)、または追跡期間全体の心血管死の複合エンドポイント、主な副次評価項目は追跡期間中の全死因死亡とした。解析はintention-to-treat集団を対象とし、イベント累積発生率はKaplan-Meier法で推定し、log-rank検定を用いて比較した。また、層別Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。手術死亡の発生なし、早期手術群のイベント発生HRは0.09と有意に低下 早期手術群では、無作為化後2ヵ月以内に73例中69例(95%)で手術が実施され、手術死亡はなかった。 Intention-to-treat解析において、主要評価項目のイベントは早期手術群で1例(1%)、保存的治療群で11例(15%)発生した(HR:0.09、95%CI:0.01~0.67、p=0.003)。全死因死亡は、早期手術群5例(7%)、保存的治療群15例(21%)に発生した(HR:0.33、95%CI:0.12~0.90)。 保存的治療群では、突然死の累積発生率が4年時で4%、8年時で14%であった。 なお著者は、症例数および主要評価項目のイベント発生数が少ないこと、相対的に若い患者が組み込まれたことなどを研究の限界として挙げている。

1445.

全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019、本邦で初めて発刊

 2019年10月、日本初の『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』が発刊された。全身性エリテマトーデス(SLE)はさまざまな全身性疾患を伴うため、治療の標準化が困難であったことからガイドラインの作成着手までに時間を要してきた。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019は専門医を対象とし、SLEの臨床的多様性に対応する総合的なガイドラインとして作成されている。 サノフィ株式会社は2019年10月30日、メディアラウンドテーブル「本邦初の全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン発行~SLE診療の現在 医師と患者の立場から~」を開催。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン統括委員会の委員長を務めた渥美 達也氏(北海道大学大学院医学研究院免疫・代謝内科学教室 教授)が「SLE診療の標準化~全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン~」について講演した。会の後半では患者代表の後藤 眞理子氏(全国膠原病友の会神奈川県支部 支部長)を交えてトークセッションが行われた。臨床的多様性が強い疾患、全身性エリテマトーデスの治療目標 高血圧症は血圧を下げる、糖尿病は血糖値を下げるなど治療目的が非常に明確である。一方、全身性エリテマトーデスは多様な臓器病変を呈する症候群であることから、症状の出方や治療ゴールが個々によって異なり、ガイドラインの作成自体が困難を極めていた。また、これまでの治療では全身性エリテマトーデスの非可逆的な臓器病変やグルココルチコイドの長期大量投与に伴う合併症によって患者の生活の質の低下が問題になっていた。このことから渥美氏はガイドライン作成の前提条件について「“SLEの社会的寛解の維持”を治療目標に設定」とコメント。加えて、「患者さんにとって、生活活動を維持してもらうことが重要。とくに若年女性の労働生産性を落とさず家庭への生活ウェイトも置けるよう、患者の多様性を考慮したモニタリング項目が記載されている」とも説明した。 この“社会的寛解の維持“という定義については、「子供の運動会に参加するなど、自分の生活目標が達成されること。総合指標やそれぞれの臓器についての寛解を評価することが目的」と渥美氏は語った。全身性エリテマトーデス診療ガイドラインの日本と海外の違いは? 米国や欧州では2012年頃から全身性エリテマトーデスの臓器病変からループス腎炎を切り出したガイドラインなどが発刊され、日常臨床に用いられてきた。2018年には英国リウマチ学会がガイドラインを発刊、症状の時期や重症度が表で示されており利便性がある。その反面で「NHS(National Health Service:国営医療サービス)のためのガイドラインであるため、作成目的が医療費の償還である」と、海外ガイドラインの怖い側面について指摘した。 日本の全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019はこれとは異なり、さまざまな医療に対応でき、世界で1つの全身性エリテマトーデス診療アルゴリズムが盛り込まれている点が特徴的である。このアルゴリズムには二次療法の記載がなく、初回療法で寛解に入らない場合は三次治療に進む。これについて同氏は「初回療法はエビデンスがあるのに対し、二次治療としてのエビデンスが少ないため」とコメントした。このほか、推奨の強さは3段階に設定、重症度分類は英国GLに準じ、 軽症・中等症・重症に区分される。さらに、システマティックレビュー(腎炎、神経精神病変、皮膚病変、血液病変)またはナラティブレビューに基づく推奨文とその合意度も参照可能である。 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019の制作は厚生労働省の自己免疫研究班SLE分科会と日本リウマチ学会による共同作業で、日本臨床免疫学会、日本腎臓学会、日本小児リウマチ学会、日本皮膚科学会の協力を得ている。全身性エリテマトーデス診療ガイドラインでは治療ゴールを明確にした 続いて、渥美氏と後藤氏によるトークセッションが行われた。後藤氏は「全身性エリテマトーデスの症状なのか薬の副作用なのか言葉にしがたい症状が生じた時、それらを医師にうまく伝えられないのは辛い。たとえば、倦怠感という概念の受け捉え方は患者も医師も人それぞれ。なので医師に具体的な表現を求める」と、症状の言語化できない問題について訴えた。これに対し、渥美氏は「寛解後の特有症状である倦怠感には医学的改善方法がないため、医師は“そうですか”と受け流すような返答になってしまう。医師は活動性指標の1つとして患者の訴えをきちんと評価すべき」と回答した。また、「薬剤の追加がネックで症状変化を医師に伝えないこともある」との後藤氏のコメントに対して、渥美氏は「どんな治療を行い、どんな治療目標とするのか。これを話せる医師が現時点では少ないため、今回のガイドラインではそのゴールを明確にした」と答えた。 最後に後藤氏は「GLが作成されたことによって全国どこでも標準的な治療が受けられるのは嬉しい。これによって患者会のメンバーの人生が広がればと感じた」と喜びを漏らした。渥美氏は「SLEの病態は例外が多いため、改善しなかった場合の対応策の盛り込み、まれな症状に対するエビデンス構築などが必要」と、今後の課題を語った。

1446.

第15回 高齢糖尿病患者の高血圧、どこまで厳格に管理する?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第15回 高齢糖尿病患者の高血圧、どこまで厳格に管理する?Q1 やや高め?厳密?高齢糖尿病患者での降圧目標の目安日本高血圧学会は、5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を2019年4月に発表しました1)。その中で後期高齢者(75歳以上)の降圧目標は、従来の150/90mmHg未満から140/90mmHg未満に引き下げられています。また、忍容性があれば個人の症状や検査所見の変化に注意しながら、最終的には130/80mmHg未満を目標に治療することを求めています。さまざまな介入試験のメタ解析の評価・検討が行われた結果、高齢者においても高血圧治療によって心血管イベントや脳卒中イベントリスクが有意に低くなり、予後の改善が見込めると示唆されたためです。一方、糖尿病合併患者や蛋白尿陽性の慢性腎臓病(CKD)患者の降圧目標は、従来の130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)に据え置かれました。血圧が140/90mmHg以上を示した場合には、ただちに降圧薬を開始するとなっています(図)。欧米のガイドラインでは、糖尿病を合併した患者の場合、降圧目標は「140/80mmHg未満」や「140/85mmHg未満」と、比較的緩やかに設定されています2,3)。しかし日本では厳格な管理目標を維持することになりました。その理由の1つは、ACCORD-BP試験において厳格降圧群(目標収縮期血圧120mmHg未満)では通常降圧群(140mmHg未満)に比べて脳卒中が41%有意に減少したと報告されたためです4)。日本では欧米と比較して脳卒中の発症率が高いことから、脳卒中の発症予防に重きを置いた降圧目標を設定すべきと考えられ、「130/80mmHg未満」とされたのです。なお、JSH2019で設定された降圧目標は年齢と合併症に基づいて決められているため、降圧目標の設定基準を複数持つ状態が生じます。たとえば、75歳以上の高齢糖尿病患者の場合、糖尿病患者としてみると130/80mmHg未満ですが、後期高齢者としてみると140/90mmHg未満となり、2つの降圧目標が出来てしまいます。このように年齢と合併症の存在によって降圧目標が異なる場合、忍容性があれば130/80mmHg未満を目指すとされました。ただし高齢者では極端な降圧により臓器への血流障害を来す可能性も危惧されます。そのため、まずは140/90mmHgを目指し、達成できればその後緩徐に130/80mmHg未満を目指していけば良いと思われます。Q2 目標値にいかないことが多い・・・強化のタイミングや注意点は?糖尿病に合併した高血圧の降圧療法での第一選択は、微量アルブミン尿またはタンパク尿がある場合にはARBやACE阻害薬を考慮し、それ以外ではARB、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、少量のサイアザイド系利尿薬が推奨されています5)。高齢糖尿病患者さんでは腎機能障害を呈していることが多く、ARBやACE阻害薬のみでは十分な降圧効果が得られないこともあります。Ca拮抗薬や利尿薬等を併用したり用量を増加したりして血圧をコントロールします。この場合、多剤併用に至り、服薬管理が困難になることもありますので、薬物療法の単純化を行う必要があります。薬物療法の単純化には、1)1日1回の薬剤に変更して服薬回数を減らす2)薬剤を一包化して服薬を単純化する3)服薬管理の比較的簡単な合剤を使用して調整するなどの対策も有効です。高血圧症の多くは自覚症状がないため、治療に積極的になれないことが服薬管理困難の一因と思われます。ただし、高血圧を有する糖尿病患者では動脈硬化が進行しやすくなります。UKPDSの結果では、糖尿病患者において通常の血圧コントロール(154/87mmHg以下を目標)を行った群と、厳格な血圧コントロール(144/82mmHg以下を目標)を行った群で比較すると、厳格な血圧コントロールを行った群の方が糖尿病合併症発症リスクの有意な減少を認めました6)。患者さんは「透析はしたくない」等、腎障害に対して危機感を抱く方が多いため、腎機能を保持するには血圧コントロールが重要であることを説明すると、服薬に理解を示される場合が多いです。高齢糖尿病患者さんでは、神経障害の進行に伴い起立性低血圧を来すことも珍しくありません。そのため、家庭での収縮期血圧は少なくとも100mmHg以上を維持している方が安全でしょう。さらに、めまいやふらつきの訴えが増える場合には、降圧薬の減量や中止にて対応した方がADLやQOLを維持できると考えられます。起立性低血圧について、患者さんや家族、介護スタッフには、「悪性の病態ではないこと」「注意によって予防可能であること」「転倒打撲のリスクの方が問題であること」を説明し、急激な体位変換や頭位変換を避けるよう指導します。排便後は深呼吸後に立ち上がること、めまいが強い場合には一度仰臥位に戻り、状態が安定してから緩徐に起き上がることなどを実行すると、起立性低血圧に伴う転倒予防に役立ちます。また、状態の改善には血糖コントロールが重要であることも理解していただくと良いでしょう。病態の原因について説明を行い、具体的な対策を指導することで、恐怖感が軽減され、適切に対応できるようになります。高血圧を合併する高齢糖尿病患者さんに食事療法を行う際は、厳格な塩分制限による食欲低下や低栄養に注意が必要です。そのため、まずは「現在の摂取量の8割程度の摂取にとどめる」といった実行可能な塩分制限から開始することが重要です。Q3 80代や90代の超高齢者でも同じように管理しますか?SPRINTのサブ解析では、75歳以上の高齢者において、収縮期血圧の目標を120mmHg未満とした方が、心血管疾患の発症率が低いことが示されました。また、フレイルの程度に関わらず積極的降圧治療が予後を改善させるとも報告しています7)。この研究では非糖尿病患者を対象としていますが、80代や90代の超高齢糖尿病患者においても、降圧が予後改善につながる可能性があります。ただし、寝たきりなど身体能力の極めて低下した高血圧患者に対しては、降圧療法による予後改善効果は示されておらず、逆に予後が悪化することも懸念されています。高度の認知症や身体機能低下を来している場合には、従来通り個別判断での対応が望ましいと考えられます。とくに新規に降圧薬を開始する場合には、通常の半量程度から開始し、数ヵ月かけて徐々に降圧を図るなど、柔軟性のある対応で臨むことが良いと思われます。高齢糖尿病患者では、降圧薬増量による他臓器への影響や経済的負担増も考慮する必要があります。家族や介護スタッフの協力が得られればより良い調整が期待できますが、難しい場合には服薬アドヒアランスを考慮し、一包化や合剤の使用も検討が必要です。認知症が強い場合には、薬剤師と連携を取り、服薬カレンダーの設置や服薬支援のロボットを導入することなども効果的です。しかし、90歳以上の超高齢糖尿病患者さんでもADLが自立しており、元気な方も増えています。加齢と共に個人差は大きくなるため、あまり年齢にこだわる必要はないと考えられます。JSH 2019でも、提示した降圧目標はすべての患者における降圧目標ということではないと強調されていました。ガイドラインや最近の大規模試験の結果などを参考にしながら、個別に降圧目標を設定し対応することが重要です。1)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版;2019.2)American Diabetes Association. Standards of medical care in diabetes—2013. Diabetes Care. 2013;36: S11-66.3)Mancia G, et al.The Task Force for the management of arterial hypertension of the European Society of Hypertension(ESH) and of the European. 2013 ESH/ESC Guidelines for the management of arterial hypertension Society of Cardiology (ESC). J Hypertens. 2013;31:1281-1357.4)Cushman WC, et al. N Eng J Med. 2010;362:1575-1585.5)日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂,245-260, 2019.6)Tight blood pressure control and risk of macrovascular and microvascular complications in type 2 diabetes: UKPDS 38. UK prospective diabetes study group.BMJ.1998;317: 703-713.7)Williamson JD, et al. JAMA.315: 2673-2682, 2016.

1447.

第3回 論文を読むのは目の前の患者のため

第3回 論文を読むのは目の前の患者のため―どのような方法で知識を得ようとしていますか?山﨑:書籍を読んだり人に聞いたりいろいろなウェブサイトを見たりはしますが、基本は泥縄式です。患者応対してうまく説明できなかった事例をファイリングしては調べていたので、必要に迫られて論文にあたることも増えました。そこから関連情報をひも付けて知識を広げました。たとえば、診療ガイドラインの推奨で判断がつかないことは多いですし、そういうときにどう説明すればいいか考えて調べて自分なりにわかりやすい言葉に落とし込むことは心掛けていました。患者さんの疑問を解決する情報を提供できるはずなのに、知識不足でできず後悔した経験も勉強を後押ししました。鈴木:疑問があったときは、最初は書籍とかガイドラインで調べると思いますが、その患者さんが何にも当てはまらないときに文献をあたれると、最終的な裏付けが自分でできるようになれるのかな、って思います。山﨑:そうですね。文献を読んでいてよかったと思うのは、ふとした患者の疑問に回答できることが増えたことや薬のリスクやベネフィットの感覚値がついたこと、情報の限界を感じられたことですね。たとえば、患者さんからつらい副作用発現の連絡を受けたときに、その薬剤を中止したらその程度症状発現のリスクが高まるのか推論できれば提案が変わりますし、抗菌薬を1日2回服用と3回服用の効果の違いの根拠を知っているだけでも別の提案ができます。時にはわからないことをこういう理由でわからないと言えることも大切かと思います。たくさん調べて役に立たなかったことも多いですが、役立った瞬間は少なくはなかったと感じています。笹川:人の得意分野は、書く、読む、聞く、話すなどいろいろなものがあると思いますが、得意なところを重点的に伸ばしていけばいいと思っています。私は自分で論文にあたるのは苦手だったので、得意な人が調べてまとめてくれたコラムや記事などを読んで勉強しています。知識は深いほうがいいのでしょうが、やはり得意不得意があって全部の分野が得意になるのは難しいんですよね。実際の業務では広く全体的にカバーするのも重要だと思っています。鈴木:全分野は無理なので、まずは自分が関わる頻度の高い診療科や患者さんの分野を頑張って深くしていけばいいのではないでしょうか。いろいろなことに手を付けるのではなく、目の前にいる患者さんにどういう人が多いのかを考えるほうが効率がいいですし。山﨑:確かに、疑問について調べるきっかけはいつも患者さんからもらっていました。目の前に課題があるわけですから、そこから深堀りしていましたね。鈴木:論文を使うのはかなり応用編だと思いますが、週刊誌のような雑誌にたまに載る「飲んではいけない薬」リストについて聞かれたときは論文が役に立ちますよね。山﨑:別の根拠を示して、こういう理由であなたは飲んだほうがいいと説明できると患者さんに安心してもらえます。実名で発信して輝け!―薬剤師の情報発信についてどう思いますか?笹川:薬剤師のブログなどはとても参考になりますが、ペンネームで執筆されていることが多いです。私は実名で発信することが大切だと思っていて、名前を伏せているのはもったいないと思っています。実名を出すのってリスクありますか?山﨑:私は匿名でホームページを運営していましたが、実名のほうが信頼は得やすいのでベターだとは思います。実名で運営していた時期もあって、結果的に日に2,000~3,000のアクセスが来るようになり、頻繁に詳細な病態や検査値など個人情報を添付して病気の相談をしてくる方が出てきました。無視するのも気の毒で回答していたのですが、身が持たなくて実名で運営するのを休止しました。患者さんの本当の悩みに触れた瞬間でもあり、信頼をおいてくれたからこそ相談してくれたのだと思いますが、目の前の医療従事者ではなく見ず知らずの私にネット上で判断を仰ぐことの危険性を問題視していたというのもあります。鈴木:私は実名を出したらいいと思っています。コラムを掲載していると、知り合いの薬剤師とかから反応があったりして、刺激を与えられている気がします。自分でもできるんじゃないか、わからないことがあれば鈴木に聞けばいいんじゃないかって。みんなで情報共有していくという意味でも実名の意味はあると思います。所属している薬局で取り組んでいることもアピールしたいですし。そうすると、そこの薬局の薬剤師はみんなできているんだな、って思うじゃないですか。笹川:輪が広がっていくと先生自身にもほかの薬局にもいい影響がありそうですね。私は勉強会をよく行っていますが、始めたきっかけは薬剤師が全然勉強していないことにモヤモヤを感じていたからなんです。本を読まない、情報を得ようとしない薬剤師もいて、差が顕著でしたので。それなら、これだけ知っていれば服薬指導できるということを教えたかったんです。もともと教えるのが好きで教師になりたかったので、エンターテインメント性を持たせて面白くやるということを心掛けました。鈴木:自分も講習会で積極的に講義していますが、根底には教えていきたい、伝えていきたいという思いがあります。みんなで頑張っていこうよ、っていうメッセージを出すためにそういう機会を積極的にもらっています。笹川:自分が接することのできる患者さんは限られていますから、自分だけが知っていても仕方ないんですよ。もっと発信して広げていけば、薬剤師全体の底上げになると思っています。―次回は、医師との関わり方について伺います。

1448.

乳がん家族歴による検診開始年齢を検討/JAMA Oncol

 乳がん検診ガイドラインでは、リスクの高い女性は早期検診が必要としているが、乳がんの家族歴のある女性に対する指針は限られている。今回、ドイツ・German Cancer Research Center(DKFZ)のTrasias Mukama氏らが、500万人以上の女性が含まれるスウェーデンの全国的コホート研究で、家族歴ごとのリスクに相当する乳がん検診の開始年齢を検討した。JAMA Oncology誌オンライン版2019年11月14日号に掲載。 本研究はSwedish family-cancer data setを用いて、少なくとも1人の第1度近親者がいる、1932年以降に生まれたすべての女性(509万9,172人)を対象とした。1958年1月1日~2015年12月31日のデータを収集し、2017年10月1日~2019年3月31日に分析した。第1度および第2度近親者における乳がんの家族歴、浸潤性乳がん罹患について調査し、全対象における40歳・45歳・50歳での10年累積罹患率に達する年齢を家族歴ごとに評価した。 主な結果は以下のとおり。・本研究に参加した509万9,172人の女性のうち、11万8,953人(2.3%)が浸潤性乳がんと診断された。10万2,751人(86.4%、診断時の平均[SD]年齢:55.9 [11.1]歳)は、乳がん診断時に第1度および第2度近親者に家族歴がなかった。・リスクに基づき特定された乳がん検診の推奨開始年齢は、乳がんと診断された第1度および第2度近親者の人数と第1度近親者の診断年齢によって変化した。たとえば、一般集団の推奨開始年齢が50歳のとき、全対象における50歳での10年累積罹患率(2.2%)に達する年齢をみると、乳がんの第1度近親者が2人以上でいずれかが50歳前に診断されている場合は27歳であり、いずれも50歳以降に診断されている場合は36歳であった。 著者は、「本研究は、集団ベースの登録に基づく乳がん検診において、リスクに基づいた推奨開始年齢を特定している。これらの結果は、乳がん患者の近親者に対する現在の検診ガイドラインを補完する質の高いエビデンスとして役立つかもしれない」と述べている。

1449.

大腸内視鏡検査陰性、次回は本当に10年後でいいのか?/BMJ

 大腸内視鏡スクリーニング検査で陰性だった受診者集団について、フォローアップ5年以内にあらゆる腫瘍が20%超で検出されたが、進行がん(advanced neoplasm)の検出は10年以内でもまれであることが明らかにされた。ドイツ・German Cancer Research Center(DKFZ)のThomas Heisser氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で、著者は「示された所見は、大腸内視鏡スクリーニング検査の陰性者について、次回受診は現在の推奨間隔で十分である可能性を示すものであった。さらなる検討を行い、適切な勧告とするため経験的基礎を強化し、受診間隔の延長についてもさらに調査する必要がある」と述べている。大腸内視鏡スクリーニングで大腸がんの前兆が認められない標準的リスクの受診者について、米国や欧州の主要なガイドラインでは、次回スクリーニングは10年後を推奨している。しかし、この受診間隔を支持するエビデンスは限定的で、勧告の大半が医療費支払いデータやがんレジストリを根拠としたものであり、勧告に基づくフォローアップスクリーニングのアウトカムデータはほとんどなかった。BMJ誌2019年11月13日号掲載の報告。入手可能な全試験をシステマティック・レビュー&メタ解析 研究グループは、大腸内視鏡スクリーニングの陰性者に対する、フォローアップ時の大腸腺腫・がんの有病率に関するエビデンス(受診間隔と性別で層別化)をレビュー・要約するため、PubMed、Web of Science、Embaseをデータソースとして検索し、入手可能なすべての試験報告を対象にシステマティック・レビューとメタ解析を行った。 検索で適格としたのは、大腸内視鏡検査で陰性(腺腫なし)と診断された大腸がんの標準的リスクの参加者について、大腸内視鏡のフォローアップ検査を行いそのアウトカムを評価していた試験とした。 2人の研究者がそれぞれ特定された試験の特色と結果を抽出し、標準化された方法で質の評価を行った。あらゆる腫瘍の検出は、1~5年、5~10年、10年超間隔群のいずれも20%超 検索により28試験が特定された(コホート試験22、断面調査5、ケースコントロール試験1)。大腸内視鏡検査のフォローアップ間隔は、1~5年が17試験、5~10年が16試験、10年超は3試験であった。 あらゆる腫瘍の推定有病率は、フォローアップ間隔が1~5年群20.7%(95%信頼区間[CI]:15.8~25.5)、5~10年群23.0%(18.0~28.0)、10年超群21.9%(14.9~29.0)であった。あらゆる進行がんの推定有病率は、それぞれ2.8%(2.0~3.7)、3.2%(2.2~4.1)、7.0%(5.3~8.7)であった。 性別の検討も行われていたのは7試験であった。フォローアップ間隔と性別を層別化した推定有病率は一貫して、女性よりも男性で高率であった。

1450.

急増する電子タバコ関連肺損傷の臨床像が明らかに/Lancet

 電子タバコまたはベイピング関連肺損傷(lung injury associated with e-cigarettes or vaping:EVALI)は、重度の肺損傷や、全身および消化器症状と関連する新たな疾患であり、重症度は多岐にわたること、多くが抗菌薬やステロイドで治療されているが、臨床的に改善しても異常が残存する患者が多いことが、多施設共同前向き観察コホート研究で示された。米国・Intermountain HealthcareのDenitza P. Blagev氏らが報告した。米国では2019年3月からEVALIの発生が急増し現在も報告が相次いでいるが、本疾患の原因、診断、治療および経過は明らかになっていなかった。著者は、「EVALIの臨床診断は、感染症や他の肺疾患とオーバーラップしているままで、原因、適切な治療および長期的アウトカムを理解するには本疾患を疑う高度な指標が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2019年11月8日号掲載の報告。米国ユタ州の総合医療システムで、前向き観察研究を実施 研究グループは2019年6月27日~10月4日の期間で、米国ユタ州の総合医療システムIntermountain Healthcareにおいて確認されたEVALI患者全例のデータを収集した。 中央管理組織としてソルトレークシティーに拠点を置くTeleCritical Careに肺疾患専門医および救命救急医からなる委員会を設け、症例の検証と分析を行った。また、カルテの再評価とユタ州保健局が実施した患者面接から、患者の症状、治療および退院後2週間のデータを抽出し、短期追跡結果をまとめた。電子タバコ関連肺損傷では、呼吸器症状のみならず消化器症状も顕著 Intermountain Healthcareの13施設において確認されたEVALI患者は60例であった。 60例中、33例(55%)が集中治療室(ICU)に入室し、53例(88%)が全身症状、59例(98%)が呼吸器症状、54例(90%)が消化器症状を呈していた。 57例(95%)にステロイドが投与され、54例(90%)はオーバーラップした症状と診断の不確実性のために抗菌薬が投与されていた。 6例(10%)は、2週間以内にICUまたは病院に再入院となった。そのうち3例(50%)は電子タバコまたはベイピングを再開していた。 退院後2週間の追跡調査を行った26例において、全例で臨床症状が改善しX線検査でも急性所見の改善は認められたが、症例の多くが、X線検査(15例中10例、67%)および肺機能検査(9例中6例、67%)で異常の残存が確認された。 死亡は2例であった。2例ともEVALIが死因ではなかったが寄与因子と考えられた。 なお、TeleCritical Careの委員会は今回の調査結果を基に、EVALIの診断と治療のガイドライン案を作成し公表もしている。

1451.

急性期全般不安症に対する第1選択薬の有効性、受容性比較~メタ解析

 全般性不安症(GAD)の第1選択薬としては、SSRIやSNRIがガイドラインで推奨されている。中国・西安交通大学のHairong He氏らは、これら第1選択薬の有効性、受容性を比較するため、ネットワークメタ解析を用いて、エビデンスのアップデートを行った。Journal of Psychiatric Research誌2019年11月号の報告。 成人GADの急性期治療に使用された11種類の薬剤のプラセボ対照および直接比較試験について、1980~2019年1月1日のエビデンスを電子データベースより検索した。各研究より、人口統計、臨床、治療に関するデータを抽出した。主要アウトカムは、有効性(ハミルトン不安尺度の合計スコアのベースラインからの変化)および受容性(すべての原因による治療中止)とした。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたランダム化比較試験は、41件であった。・有効性に関しては、fluoxetineとボルチオキセチンを除くすべての薬剤において、プラセボよりも有効であった。ハミルトン不安尺度スコアの加重平均差は、エスシタロプラムの-3.2(95%信頼区間[CI]:-4.2~-2.2)からvilazodoneの-1.8(95%CI:-3.1~-0.55)の範囲であった。・受容性については、vilazodone(オッズ比:1.7、95%CI:1.1~2.7)のみがプラセボよりも悪化が認められており、その他の薬剤では有意な差は認められなかった。・直接比較試験では、ボルチオキセチンは、受容性および忍容性が優れていたが、有効性と奏効率が悪かった。・全体として、デュロキセチンとエスシタロプラムは有効性が高く、ボルチオキセチンは受容性が良好であった。

1452.

がん悪液質のステージと診断基準「知っている」~医師の3割/日本癌治療学会

 がん悪液質は食欲不振・体重減少・筋肉減少・疲労などを主な症状とし、進行がん患者の50~80%に発症する重大な合併症であり、がん患者のQOL低下、全生存期間や治療効果にも影響する原因として問題視されている。しかしながら、がん悪液質は治療対象として十分に認識されていない可能性があり、医療従事者(医師・メディカルスタッフ)のがん悪液質に対する疾患理解度や、食欲不振・体重減少に対する問題意識の程度、がん患者自身が食欲不振や体重減少でどのくらい困っているのか、といった実態は明らかとなっていない。そのような中、小野薬品工業メディカルアフェアーズ統括部の森本 貴洋氏は、がん悪液質への疾患理解度とがん悪液質の症状(食欲不振、体重減少など)に対する認識の実態を明らかにすることを目的としてWebアンケート調査を行い、第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日、福岡)で報告した。 Webアンケート調査は2019年7月に行われた。対象は、肺・胃・食道・大腸・肝臓・胆道・膵臓がんのいずれかのがん患者を直近3ヵ月以内に5例以上診療した医師500名、がん治療に携わるメディカルスタッフ(看護師、薬剤師、栄養士など)500名、そして、前記がん腫のいずれかのがんを罹患し1年以内にがん治療のために医療機関に入院・通院経験がある20歳以上のがん患者500名、前記がん種のいずれかのがん患者に対し、生活を共にする家族500名であった。質問は、(1)がんに伴う食欲不振・体重減少に関する日常の評価・測定状況、(2)食欲不振・体重減少に対する治療介入状況、(3)がん悪液質の診断基準に対する理解と治療介入状況について合計30問で構成された。本学会では、(3)がん悪液質の診断基準に対する理解と治療介入状況について報告された。 主な結果は以下のとおり。・「がん悪液質という言葉をご存じですか」の質問に対して、「よく知っている」または「ある程度知っている」と回答した割合は、医師ではそれぞれ51.6%と43.6%、メディカルスタッフでは33.0%と43.8%、患者では3.2%と5.0%、家族では2.3%と12.2%であった。これらの結果より、がん悪液質という言葉の認知度は、医療従事者では高いものの、治療対象となる患者・家族では低いことが明らかとなった。・「EPCRC(European Palliative Care Research Collaborative)による『がん悪液質のステージと診断基準』をご存じですか」の質問に対して、「知っている」と回答した医師は33.1%、メディカルスタッフは33.9%であった。これらの結果から、医療従事者のがん悪液質という言葉自体の認知度は高いものの、診断基準の認知度は低いことが明らかとなった。・「がん悪液質という言葉からどのような状態を連想されますか」の質問に対する回答では、「PS不良」が医師で75.2%、メディカルスタッフは70.6%と最も多く、続いて「栄養不良」「がんの末期症状」が多かった。これらの結果から、医療従事者はがん悪液質という言葉からは、がん患者の終末期の状態を連想していることが明らかとなった。・『EPCRCがん悪液質のステージと診断基準』の提示前後で、医師が想起するがん悪液質患者数がどのように変化するかを質問した。提示前ではその割合(がん悪液質を想起する患者の割合)は28.1%(8,366例中2,354例)であったのに対し、提示後は51.5%(8,366例中4,309例)に増加した。この結果は、終末期の状態として想起されていたがん悪液質が、診断基準の提示によってより早期から発症する合併症であると認識されたためだと考えられる。・「がん悪液質の診断と治療に関する課題は何ですか」の質問に対して医師の回答は、「治療選択肢がない」52.8%、「明確な診断基準がない」40.2%、「治療ガイドラインがない」27.6%であった。 上記の結果から、医療従事者(医師・メディカルスタッフ)だけでなく、がん患者やその家族に対しても、がん悪液質の診断基準と治療の重要性の啓発・教育活動をしていくこの必要性が示唆された。

1453.

欧州のICU終末期医療、延命治療めぐる実態は?/JAMA

 欧州のICUにおける終末期(エンドオブライフ)の方針決定について、16年前の調査時と比べて、延命治療の制限が有意に増大しており、延命治療の制限を受けなかった死亡は有意に減少していたことが判明した。イスラエル・ヘブライ大学のCharles L. Sprung氏らが、1999~2000年に行ったICUにおける終末期医療に関する研究「Ethicus-1」対象の欧州22ヵ所のICUについて、2015~16年に前向き観察研究「Ethicus-2」を行い明らかにし、JAMA誌オンライン版2019年10月2日号で発表した。ICUにおける終末期の方針決定は世界中で日々起きているが、ここ10年間で欧州での終末期医療に関する考え方、法律、勧告・ガイドラインに変化が生じており、ICUでの方針決定が変化している可能性が示唆されていた。1999~2000年調査対象施設を2015~16年に調査し比較 Ethicus-2研究は、1999年1月~2000年7月に行ったEthicus-1研究で対象とした欧州ICUの22ヵ所を対象に行われた。2015年9月~2016年10月の、継続する6ヵ月の期間中に、各ICUで死亡または延命治療の制限を行った患者について調べた。 患者を死亡まで、または初回の延命治療制限に関する決定から2ヵ月後まで追跡し、終末期アウトカムを(1)心肺蘇生(CPR)を含む延命治療を開始しない、(2)延命治療を中断、(3)死亡までの経過を積極的に短縮、(4)CPR失敗、(5)脳死の5つの相互排他的カテゴリーに分類。アウトカムはシニア集中治療専門医によって確定された。 主要アウトカムは、患者が(1)~(3)の治療制限を受けたかどうかで、Ethicus-1研究とEthicus-2研究の結果を比較し、その変化を検証した。延命治療を開始しないが50%に、中断も38.8%に増加 Ethicus-2研究では、対象期間中にICUに入室した1万3,625例のうち、死亡または延命治療の制限を行った1,785例(13.1%)を解析に包含した。Ethicus-1研究の被験者(2,807例)の年齢中央値は67歳(IQR:54~75)に対し、Ethicus-2研究の被験者の年齢中央値は70歳(59~79)で有意差があった(p<0.001)。女性の割合は、それぞれ38.7%、39.6%で類似していた(p=0.58)。 延命治療の制限を受けた患者は、Ethicus-1研究1,918例(68.3%)に対し、Ethicus-2研究は1,601例(89.7%)と有意に増大していた(群間差:21.4%、95%信頼区間[CI]:19.2~23.6、p<0.001)。「延命治療を開始しない」を選択した患者は、Ethicus-1試験1,143例(40.7%)に対し、Ethicus-2試験は892例(50%)と有意に増大しており(群間差:9.3%、95%CI:6.4~12.3、p<0.001)、「延命治療を中断」を選択した患者の割合も、それぞれ695例(24.8%)、692例(38.8%)と有意に増大していた(群間差:14.0%、95%CI:11.2~16.8、p<0.001)。 一方で、「CPRの失敗」はEthicus-1研究628例(22.4%)に対し、Ethicus-2研究は110例(6.2%)と有意に減少し(群間差:-16.2%、95%CI:-18.1~-14.3、p<0.001)、「脳死」もそれぞれ261例(9.3%)、74例(4.1%)と有意に減少した(群間差:-5.2%、95%CI:-6.6~-3.8、p<0.001)。また、「死亡までの経過を積極的に短縮」もそれぞれ80例(2.9%)、17例(1.0%)と有意に減少した(群間差:-1.9%、95%CI:-2.7~-1.1、p<0.001)。 研究グループは試験の結果を踏まえて、欧州のICUにおける終末期医療の実態には経年的変化が認められるとしながら、ICU入室中に治療制限を受けなかったが容態が改善して生存退院した患者を除外しており、示された所見については限定的だと述べている。

1454.

「酸化コレステロール」を含んだ食品は食べないのが一番/日本動脈硬化学会

 メタボリックシンドロームにしばしば合併する脂肪肝だが、実は動脈硬化リスクも伴う。自覚症状に乏しいことから、一般メディアでは“隠れ脂肪肝”などと呼ばれ、患者から質問されることも珍しくない。しかし、脂肪肝だからと言って、ただ“脂モノ”を控えるという対処は正しくないという。 先日、日本動脈硬化学会(理事長:山下 静也)が開催したセミナーにて、動脈硬化と関連の深い「脂肪肝/脂肪肝炎」と「酸化コレステロール」について、2人の専門医が解説した。脂肪肝/脂肪肝炎は、肝硬変・肝がんだけでなく心血管疾患リスクにも はじめに、小関 正博氏(大阪大学大学院 医学系研究科循環器内科)が、脂肪肝の病態とリスクについて講演を行った。アルコールの影響を受けていない脂肪肝は、脂肪が肝臓に蓄積した「非アルコール性脂肪肝(NAFL)」と、さらに炎症や線維化を伴った「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に分類される。しかし、区別が難しいため、NAFLとNASHの総称として「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」とも呼ばれる。 NASHは、炎症を繰り返すうちに線維化が進み(肝硬変)、肝がんに至るケースもあるとわかってきた。20年ほど前は、「脂肪肝は、がんにならない」と言われていたが、ウイルス性肝炎由来の肝細胞がんが治療法の進歩により減り、相対的に、脂肪肝炎由来のがん症例の増加が浮き彫りになっているという。 小関氏は、「NASHがウイルス性肝炎と決定的に違うのは、虚血性心疾患のリスクを伴う点。米国において、NAFLD患者は肝がんより心血管疾患で死亡する例のほうが多いという報告1)もある。脂肪肝と脂肪肝炎は、今後さまざまな診療科が連携して診療していくべき疾患だ」と強調した。線維化の段階を評価し、NASHが疑われる場合は専門医へ NAFLDは、肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病と高率に合併し、国内の有病率は、男性では40~59歳の40%以上、女性では60~69歳の30%以上との報告がある。また、NAFLD患者の生存率は、肝線維化と強く関連することがわかっている。 脂肪肝は、腹部エコーで腎皮質よりも白く映る(肝腎コントラスト陽性)所見により、健診などで発覚し、その後は『NAFLD/NASH診療ガイドライン20142)』のチャートに従って診断される。線維化の段階を評価するためには、FIB-4 index(肝線維化の進行度を非侵襲的に推測するためのスコアリングシステム/日本肝臓学会)や、MR Elastographyを用いた画像化による方法があり、NASHが疑われる場合は、専門医の受診が勧められる。動脈硬化性疾患のリスクに潜む“隠れ脂肪肝”を、今後見過ごすわけにはいかない。酸化コレステロールが「超悪玉コレステロール」のプラーク形成促進 次に、的場 哲哉氏(九州大学病院 循環器内科)が、酸化コレステロールと動脈硬化の関連性について説明した。動脈硬化は、高血圧、脂質異常症、糖尿病などによってダメージを受けた血管壁に、LDLが入り込むことで進行する。 通常、LDLはコレステロールを肝臓から末梢に運んでいるが、生活習慣病の人には、血管壁に入り込みやすい、小型で密度の高いLDL(small dense LDL)が存在するという。これは、“超悪玉コレステロール”とも呼ばれ、近年注目を集めている。このsmall dense LDLが、動脈硬化を強力に誘発すると考えられ、血清脂質値が正常にもかかわらず、動脈硬化を引き起こした例も報告されている。 血管壁に入り込んだLDLは、「酸化」されることで白血球のターゲットとなり、プラークの形成をもたらす。LDLの酸化反応は、身近な食品中にも含まれる「酸化コレステロール」によって促進され、とくに、small dense LDLは酸化しやすい。 つまり、動脈硬化を防ぐためには、酸化コレステロールが多く含まれる食品を避けたほうがよい。例えとして、焼き鳥の皮の部分、インスタントラーメンの麺、マーガリンやマヨネーズの変色した部分、二度揚げされた揚げ物、漬け込み保存された魚卵、加工肉食品、するめやビーフジャーキーなどUV照射を受けた食品などが挙げられた。酸化コレステロールを含んだ食品は食べないのが一番 続いて的場氏は、酸化コレステロールと心血管疾患との関連を裏付ける研究結果を紹介した。経皮的冠動脈インターベンション後の治療薬による効果をスタチン単独とスタチン+エゼチミブでランダム比較した「CuVIC Trial3)」では、冠動脈疾患患者において、血中酸化コレステロール高値が、LDL-コレステロール高値とともに冠動脈内皮機能障害と関連することが明らかになった。この内皮機能障害は、エゼチミブのコレステロール吸収阻害作用によって軽減されることが示された。 酸化コレステロールについてはさまざまな研究が行われているが、まだ解明できていない点も多く、現行のガイドラインには記載されていない。酸化コレステロールをバイオマーカーや治療標的として利用するためには、引き続き研究を重ねる必要がある。 同氏は、「酸化コレステロールを特異的に下げる薬はまだない。まずは酸化コレステロールの摂取を避け、食事療法と運動療法を組み合せた生活習慣の改善が重要」と締めくくった。

1455.

肺結核の家庭内接触、多剤耐性菌の感染リスクは?/BMJ

 肺結核患者の家庭内接触者では、多剤耐性菌は薬剤感受性菌に比べ結核感染リスクが高いが、結核症の発病リスクは両群に差はないことが、米国・ハーバード大学医学大学院のMercedes C. Becerra氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月24日号に掲載された。既報の分子疫学研究では、薬剤耐性結核菌株は感染可能であり、耐性株のクラスターは長期に存続可能であることが示されている。また、いくつかの研究では、家庭内接触による結核の感染リスクは薬剤耐性菌と感受性菌で差はないとされるが、最近の研究では、多剤耐性菌に曝露した家庭内接触者は薬剤感受性菌への曝露に比べ、結核症の発現の可能性が半減すると報告されている。ペルーのリマ市内106施設が参加した前向きコホート研究 研究グループは、肺結核患者の家庭内接触者における、薬剤耐性菌と結核感染/結核症発病リスクの関連を評価する目的で、前向きコホート研究を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 患者登録は、2009年9月~2012年9月の期間に、ペルーのリマ市内106ヵ所の健康センターで行われた。初発結核患者3,339例の家庭内接触者1万160例のうち、6,189例は薬剤感受性の結核菌株に曝露し、1,659例はイソニアジドまたはリファンピシンのいずれか一方に耐性の結核菌株、1,541例はこれら2剤の双方に耐性の結核菌株に曝露していた。 主要アウトカムは、結核感染(ツベルクリン反応検査陽性)と、12ヵ月後の活動性結核症の発病(喀痰塗抹陽性または胸部X線検査で診断)とした。多剤耐性菌は、感染リスクが8%高い 微生物学的に結核症と確定され、薬剤感受性検査を受けた初発患者3,339例のうち、1,274例(38%)が1剤以上に対し耐性で、538例(16%)が1剤のみに耐性(単剤耐性)、478例(14%)がイソニアジドとリファンピシンの双方に耐性(多剤耐性)、258例(7%)は複数の薬剤に耐性だが多剤耐性ではなかった(polyresistant、イソニアジドとリファンピシンの双方は含まない)。 登録時に、家庭内接触者のうち4,488例(44%)が結核菌に感染していた。イソニアジド単剤耐性結核の初発患者の家庭内接触者は、薬剤感受性結核に曝露した家庭内接触者に比べ、12ヵ月後までの感染リスクが16%(95%信頼区間[CI]:8~24)高かった。また、多剤耐性結核に曝露した家庭内接触者は、薬剤感受性結核に曝露した家庭内接触者と比較して、12ヵ月後までの感染リスクが8%(95%CI:4~13)高かった。 薬剤耐性結核に曝露した家庭内接触者と、薬剤感受性結核に曝露した家庭内接触者の間に、新規結核症の発病の相対ハザードに差は認められなかった(イソニアジド単剤耐性結核:補正後ハザード比:0.17、95%CI:0.02~1.26、多剤耐性結核:1.28、0.9~1.83)。 著者は、「これらの知見は、ガイドライン策定者に対し、感染および発病の早期発見と効果的な治療などにより、薬剤耐性と感受性の結核を標的とする行動を取るよう促すエビデンスをもたらす」としている。

1456.

TNM分類と取扱い規約は統合可能か?/日本癌治療学会

 本邦では、臓器別に各学会が作成する取扱い規約が使われてきたが、世界中の日本以外の国で主に使用されるのは国際対がん連合(UICC)/米国がん合同委員会(AJCC)によるTNM分類である。国際的な臨床試験への参加時や、論文投稿時に生じる齟齬への対応策はあるのか。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、がん研究会有明病院消化器外科の佐野 武氏が、「日本の取扱い規約とUICC/AJCC TNM分類は統合可能か? 」と題した講演を行った。TNM分類の用語や分類を混同するケースが問題 はじめに佐野氏は、取扱い規約とTNM分類の本質的な違いについて解説。取扱い規約が日本人患者のみを対象に、臓器ごとのルールに則り、病期・病理・治療・効果判定を扱っているのに対し、TNM分類はグローバルな使用を目的に、全臓器共通の原則に則り、臓器ごとの病期のみを扱うものである。両者の目的や枠組みの違いを混同すべきではなく、「TNM分類に従った治療などというものはない。日本の臨床医にとって、取扱い規約は目の前の患者に最も適した診断・治療法を探るための規約であり、独自の分類があることはメリットといえる」と話した。 問題は、TNM分類への正確な翻訳ができない、あるいは一部が似ているために用語や分類を混同するケースがある点だと同氏は指摘。胃がん領域では、2010年に国内で取扱い規約とガイドラインの改訂が行われ、同時期にTNM分類も改訂が予定されていた。両者を比較すると、例えば“M1”は胃癌取扱い規約では腹腔外転移を表すが、TNM分類では領域リンパ節転移以外の転移すべてを表していた。また領域リンパ節(N)の扱いや、深達度(T)で表す対象としてリンパ管侵襲(Ly)と静脈侵襲(V)を含むかどうか、なども異なっていた。TNM分類に翻訳可能な形に整理された胃癌取扱い規約 そこで、胃癌取扱い規約(第13版→第14版)および治療ガイドライン(第2版→第3版)の改訂にあたって、大規模な整理が行われた。最も大きな問題とされたのは、領域リンパ節の扱い。TNM分類では単純に転移リンパ節個数のみを評価するが、取扱い規約では各リンパ節に番号が振られ、どのリンパ節への転移かによってグルーピングし、病期を評価してきた歴史がある。表記としては同じN1~N3が、指し示す内容としては全く異なるものとなっていた。胃癌取扱い規約の第14版では、このグルーピングをなくし、ステージングについてはTNM分類と一致させる方向で改訂を行った。従来のリンパ節番号や肝転移(H)、腹膜転移(P)の考え方は残しつつも、TNM分類に翻訳可能な形に整理されている。 治療についてはガイドラインに移行させ、紙面上では規約独自のものは黒字、TNM分類と共通のものは青字と区別できるようにした。一方、同時期に行われていたTNM第6版から第7版への改訂過程において、AJCCは食道がんのみのデータに基づいて食道と胃でステージングを統一しようと動いていた。これに対し、日本側は日本と韓国のデータベースに基づく新たな胃がんのステージングを提案し、実際に採用された経緯がある。さらに、国際胃癌学会(IGCA)を通じて、世界中から2万例以上のデータを集めて解析した結果をもって提案した新たなステージングが、取扱い規約第15版およびTNM分類第8版に採用されている。 佐野氏は「日本が長年にわたり蓄積してきた詳細で正確なデータベースは国際的な分類の改訂にも貢献できるもの」と話し、UICC/AJCCに対する積極的な働きかけも必要であることを強調した。「両者を統合することはできないし、する必要はない」とし、「ただし、ステージングに関しては日本の規約がTNMを受け入れることで国際的な齟齬はなくなるであろう。わが国は、診断、病理、治療の分野で独自性を維持すればよいのではないか」として講演を締めくくった。TNM分類と読み替えできる「領域横断的がん取扱い規約」 国内に目を向けると、各取扱い規約の間で臓器別に異なる用語・記載法・記載順が採用され、改訂時期もバラバラな状態が続いてきた。国際的・臓器横断的なバスケット試験も増加する中、日本癌治療学会では日本病理学会と共同で、日本におけるがんの病期分類の標準化をめざして、「領域横断的がん取扱い規約 第1版」を刊行した。 本規約は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんなど22領域を網羅。病理医や腫瘍科医にとって大きなフラストレーションとなっていた「臓器によって情報の掲載順・掲載方法が異なる」点を改善し、臨床情報→原発巣→組織型→病期分類と記載順と形式を統一している。記号や用語の違いについても、本書における「総則」を冒頭で定義し、それとは異なる点については側注で解説している。また、TNM分類と共通の記述については青字で区別し、適宜側注で解説が加えられて、読み替えができるよう構成されている。

1457.

ありそうでなかった市中肺炎の教科書【Dr.倉原の“俺の本棚”】第24回

【第24回】ありそうでなかった市中肺炎の教科書呼吸器内科医が毎日のように出合う疾患が、市中肺炎。もちろん、かぜ症候群もコモンかつ大事な疾患ですが、両者の大きく違うところは、市中肺炎には適切な抗菌薬が必要であるという点です。病院では抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)活動がさかんになって、不適切な処方をしていると第三者からの指摘が入る時代になりました。外来市中肺炎にとりあえずレスピラトリーキノロンを処方していたら、「ちょww、おまww」と言われます。『亀田流 市中肺炎診療レクチャー 感染症医と呼吸器内科医の視点から』黒田 浩一/著. 中外医学社. 2019市中肺炎については、研修医~若手医師向けに多大なニーズがあるにも関わらず、これに特化した医学書ってほとんどありません。どういう患者さんに市中肺炎を疑い、診断した後どのように重症度を評価し、そしてどの抗菌薬を使うか。全部きれいにまとまっているのがこの本です。私は、自身の著書で結構“チャラさ”を出してしまう性格なのですが、本書筆者の黒田浩一先生はロジカル&インテレクチュアル&トラストワージーです。私よりも3学年若い新進気鋭の感染症科医で、呼吸器内科医もやっておられるというから、親近感爆発尊敬マックス。この本が出版された直後、アメリカ胸部学会(ATS)/アメリカ感染症学会(IDSA)の市中肺炎ガイドライン1)が刊行されたのですが、黒田先生は近年のエビデンスもしっかり拾われているため、最新のガイドラインとほぼ相違ない内容になっていたのには驚かされました。ちなみに、くだんのガイドラインには「外来の市中肺炎でイチイチGram染色なんてやらなくてもいいよ」と書いてあるのですが、ちょっと暴論かなぁと思っています。みなさん、やりますよね?この本の帯には、ちょっと面白いことが書かれています。「呼吸器内科医は『画像』に強いが『微生物』に弱い?感染症医は『微生物』に強いが『画像』に弱い?」。これってまさにその通りで、私たち呼吸器内科医はあまりGram染色の向こう側にある微生物のキャラクターには注目せず、画像所見に重きを置いて重症度を判断してしまいがちです。反面、感染症医は、相手にしている微生物がどういうヤツらなのか、その顔色や見た目を観察することに没入してしまう。もちろん、両者の長所を融合させてこそ、適切な市中肺炎診療と言えるわけですが、2職種を経験している黒田先生だからこそ、バランスのとれた本書が完成したのだと確信しています。エビデンスベースドの市中肺炎診療をてっとり早く学びたい人には、オススメの一冊。『亀田流 市中肺炎診療レクチャー 感染症医と呼吸器内科医の視点から』黒田 浩一/著出版社名中外医学社定価本体3,600円+税サイズA5判刊行年2019年1)Metlay JP, et al. Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.

1458.

「日本版敗血症治療ガイドライン2020」の改訂ポイントを公開

 2019年10月2~4日に行われた第47回日本救急医学会総会・学術集会において、2020年夏に向け2回目の改訂作業が進む「日本版敗血症治療ガイドライン2020(J-SSCG2020)」の編集方針と改訂ポイントをテーマにしたパネルディスカッションが行われた。日本版敗血症治療ガイドライン2020改訂のポイント 冒頭に、2016年の日本版敗血症治療ガイドライン(J-SSCG2016)の作成委員会委員長を務めた藤田医科大学教授の西田 修氏が前回改訂を振り返った。「敗血症のガイドラインとしては『敗血症診療国際ガイドライン(SSCG)』があり、2004年に初版が刊行され、2020年には4回目の改訂が予定される同ガイドラインは国際的評価も高い。作成当初はこれを訳せばいいのでは、という声も多かった」と振り返った。敢えて日本版敗血症治療ガイドラインを作成した意義については、「日本独自の視点も大切にしながら、国際ガイドラインに劣らない質を追求し、それを人材育成につなげることを目指した」と述べた。日本版敗血症治療ガイドラインは当初は日本集中治療医学会が作成し、1回目の改訂にあたる日本版敗血症治療ガイドライン2016からは、同学会と日本救急医学会の合同作成となっている。 続いて、日本版敗血症治療ガイドライン2020作成委員会共同委員長を務める大阪大学准教授の小倉 裕司氏が、今回の改訂のポイントを述べた。「J-SSCG2016から委員は4割が入れ替わり、一般臨床の場で役立つ、SSCGにはない斬新な内容を取り入れる、時間的要素を取り入れ見せ方を工夫する、若手医師の積極的な参加を促して次世代育成を目指す、という4点を重視した」と述べた。 日本版敗血症治療ガイドライン2020の作成における特徴は以下のとおり。日本版敗血症治療ガイドライン2016から引き継がれた点も多い。・広い普及を目指す…一般の臨床家に使いやすく、質の高いガイドラインとする・適切な判断をサポート…臨床上必要なクリニカルクエスチョン(CQ)であれば、質の高いエビデンスの有無にかかわらず、すべてを取り上げる・質の担保/透明性の向上…若手メンバー中心に各領域を横断してサポートや査読を行う独立組織「アカデミックガイドライン推進班」を設置/パブリックコメントを複数回募集敗血症治療ガイドライン日本版独自の内容 日本版敗血症治療ガイドライン2020から新たに加わった内容・変更点は以下のとおり。・CQが89→117(予定)と約1.5倍に・神経集中治療・ストレス潰瘍・Patient-and family-centered care・Sepsis Treatment Systemの4領域を新たに追加・8領域の作成に多職種のワーキング・グループが参加・CQを24のバックグラウンドクエスチョン(BQ)と92のフォアグラウンドクエスチョン(FQ)に分け、FQはさらにエビデンスの強固さによって3つのグレードに分類 体温管理・ICU-AW、PICS、小児、神経集中治療の領域は、敗血症診療国際ガイドラインに含まれない日本版独自の内容となる。改訂ごとに増える内容を臨床の現場で有効に使ってもらうため、ダイジェスト版・電子版の発行とあわせ、今回新たにアプリ開発を進めるなど、多様な手段で新ガイドラインを提供する計画だ。また、ガイドライン策定にあたってのシステマティックレビューから複数の論文が生まれる、診療報酬改定に影響を与えるなど、副次的な効果も出ているという。また、敗血症に世間の関心が高まる中、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本感染症学会の3学会合同で一般向け情報サイト「敗血症.com」を設置・運営し、積極的な情報提供も行っている。 日本版敗血症治療ガイドライン2020は2020年春の公開、夏の刊行が予定されており、ダイジェスト版、英語版も続いて出版される。

1459.

高血圧の第1選択薬、単剤での有効性を比較/Lancet

 降圧治療の単剤療法を開始する際、サイアザイド(THZ)系/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬に比べて優れており、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、その他の第1選択薬4クラスの降圧薬に比べ有効性が劣ることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMarc A. Suchard氏らが行った系統的な国際的大規模解析の結果、示された。残余交絡や出版バイアスなども補正した包括的フレームワークを開発し、米国、日本、韓国などの490万例の患者データを解析して明らかにしたもので、その他の第1選択薬については、現行ガイドラインに合わせて降圧治療の単剤療法を開始した場合の有効性は同等であったという。高血圧に対する至適な単剤療法については曖昧なままで、ガイドラインでは、並存疾患がない場合はあらゆる主要な薬剤を第1選択薬に推奨されている。この選択肢について無作為化試験では精錬がされていなかった。Lancet誌オンライン版2019年10月24日号掲載の報告。高血圧の第1選択薬による治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較 研究グループは、数百万の患者の観察データを含む多くの薬剤の有効性アウトカムおよび安全性評価を比較可能とする、残余交絡、出版バイアス、p値ハッキングなどを最小限に補正したリアルワールドの包括的フレームワークを開発した。同フレームワークを用いて、6つの診療報酬請求データベースと、3つの電子診療録データベースについてシステマティックに解析を行い、高血圧の第1選択薬の降圧薬について治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較した。 有効性に関する主要アウトカムは3つ(急性心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中)、副次アウトカムは6つ、安全性に関するアウトカムは46で、相対リスクを算出して比較した。高血圧の第1選択薬のうち、THZ系利尿薬はACE阻害薬に比べ良好 患者データ490万例の解析において、全クラスおよびアウトカムを比較した2万2,000の補正後・傾向スコア補正後ハザード比を得た。 高血圧の第1選択薬による単剤療法を開始する際、ほとんどの比較推算値は治療薬クラス間に差は認められないことを示すものだった。しかし、THZ系/THZ系類似利尿薬は、ACE阻害薬に比べ、主要有効性アウトカムが有意に高かった。初回治療におけるリスクは、急性心筋梗塞のハザード比(HR)0.84(95%信頼区間[CI]:0.75~0.95、p=0.01)、心不全による入院が0.83(0.74~0.95、p=0.01)、脳卒中が0.83(0.74~0.95、p=0.01)だった。安全性プロファイルも、THZ系/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬よりも良好だった。 また、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の有効性は、その他の高血圧の第1選択薬4クラスの降圧薬(THZ系/THZ系類似利尿薬、ARB、ACE阻害薬、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)に比べ有効性は有意に劣っていた。

1460.

膀胱がん、ガイドライン4年ぶりに改訂/日本泌尿器腫瘍学会

 膀胱癌診療ガイドラインが2015年から4年ぶりに改訂された。日本泌尿器腫瘍学会第5回学術集会では、パネルディスカッション形式で膀胱癌診療ガイドラインの改訂ポイントについて解説した。 聖マリアンナ医科大学の菊地 栄次氏はStage IV膀胱がんの治療について、改訂された膀胱癌診療ガイドラインの6個のCQから一部を紹介した。・「局所進展例または骨盤内リンパ節転移を有する症例に対して膀胱全摘術は推奨されるか?(CQ19)」については、推奨の強さ2、エビデンス確実性Cで、「化学療法が有効であった症例には考慮することが推奨される」となっている。・「転移を有する膀胱がんに対する転移巣切除は推奨されるか?(CQ20)」については、推奨の強さ2、エビデンスの確実性Cで、「全身状態が良好な症例、病巣が単発で完全切除が可能な症例、化学療法が有効であった症例、病勢の進行が急速ではない症例等で転移巣切除を考慮することが推奨される」となっている。・「切除不能または転移を有する症例の1次治療としてGC療法は推奨されるか?(CQ21)」 については、推奨の強さ1、エビデンスの確実性Aで、「1次治療としてGC療法は推奨される」となっている。なお、2015年版の膀胱癌診療ガイドラインではM-VACとの比較であったが、今回はdose-dense M-VACとの比較である。・「1次治療抗がん化学療法後に再発または進行した局所進行性または転移性膀胱がんに対する免疫チェックポイント阻害薬使用は推奨されるか?(CG23)」については、「推奨の強さ1、エビデンスの確実性A で、「ペムブロリズマブを使用することが推奨される」となっている。なお、ESMO2019ではKEYNOTE-045の長期成績の結果が発表され、全生存期間(OS)は依然として有意差を示し、10%の完全奏効(CR)を得ている。 菊地氏は、今後のStage IV膀胱がん治療の展望として、外科的治療に対する臨床的意義の検証、さらなる新規薬物療法の登場、CDDP unfit例に対する新たな治療戦略への期待を挙げた。 高知大学の井上 啓史氏は、今回の膀胱癌診療ガイドラインにおける筋層非浸潤性膀胱がん(NIMBC)の腫瘍可視化技術の位置付けについて紹介した。・「膀胱がんの診断に腫瘍可視化技術(Photodynamic Diagnosis :PDD、narrow band imaging:NBI)は推奨されるか?(CQ1)」については、PDDは推奨の強さ1、エビデンスの確実性Aで、NBIは推奨の強さ1で、エビデンスの確実性Bで、「がん検出頻度が高まることから推奨される」となっている。・「NIMBCの治療の際にPDDやNBIは推奨されるか?(CQ4)」については、PDDは推奨の強さ1、エビデンスの確実性Aで「膀胱再発率の低下につながることから推奨される」、NBIは推奨の強さ2、エビデンスの確実性Bで「検出率を改善させるが、膀胱内再発率の低下につながるかは未確定である」となっている。 井上氏は、治療の始まりであるTUR-BTにおいては確実な切除と共に正確な診断が後治療に影響することから、今回の膀胱癌診療ガイドラインの改訂のなかでも腫瘍可視化技術の位置付けは、重要な項目の1つであるとしている。

検索結果 合計:2892件 表示位置:1441 - 1460