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COVID-19へのヒドロキシクロロキン、気管挿管・死亡リスク抑制せず/NEJM

 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として、ヒドロキシクロロキンが広く投与されているが、その使用を支持する頑健なエビデンスはなかったという。同国コロンビア大学のJoshua Geleris氏らは、ニューヨーク市の大規模医療センターでCOVID-19入院患者の調査を行い、本薬はこれらの患者において気管挿管や死亡のリスクを抑制しないと報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年5月7日号に掲載された。ヒドロキシクロロキンは、マラリアやリウマチ性疾患の治療に広く使用されており、抗炎症作用と抗ウイルス作用を持つことから、COVID-19に有効な可能性が示唆されている。米国では、2020年3月30日、食品医薬品局(FDA)が緊急時使用許可(Emergency Use Authorization)を発出し、臨床試験に登録されていないCOVID-19患者への使用が認可された。ガイドラインでは、肺炎のエビデンスがある入院患者に本薬の投与が推奨されており、世界中の数千例の急性期COVID-19患者に使用されているという。米国の単施設のコホート研究 研究グループは、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキンの使用は、気管挿管および死亡のリスクを抑制するとの仮説を立て、これを検証する目的でコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 対象は、2020年3月7日~4月8日の期間に、ニューヨーク市のマンハッタン区北部に位置する急性期病院であるニューヨーク・プレスビテリアン病院(NYP)-コロンビア大学アービング医療センター(CUIMC)に入院し、鼻咽頭または口咽頭拭い液を検体として用いた検査でSARS-CoV-2陽性の成人患者であった。 救急診療部受診から24時間以内に、気管挿管、死亡、他の施設へ転送となった患者は除外された。フォローアップは4月25日まで継続した。ヒドロキシクロロキンは、1日目に負荷投与量600mgを2回投与後、400mgを1日1回、4日間投与するレジメンが推奨された。 主要エンドポイントは気管挿管および死亡の複合としtime-to-event解析を行った。傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量Coxモデルを使用して、ヒドロキシクロロキンの投与を受けた患者と非投与患者を比較した。有益性、有害性とも排除されない、推奨はすでに削除 1,376例が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値22.5日の時点で、346例(25.1%)に主要エンドポイントのイベントが発生した(挿管されずに死亡166例、挿管180例)。データのカットオフ時(4月25日)には、232例が死亡(66例は挿管後)し、1,025例が生存退院しており、119例は入院中(挿管なしは24例のみ)だった。 1,376例中811例(58.9%)にヒドロキシクロロキンが投与され(投与期間中央値5日)、565例(45.7%)には投与されなかった。投与群の45.8%は救急診療部受診後24時間以内に、85.9%は48時間以内に投与が開始された。 傾向スコアでマッチさせていない患者では、ヒドロキシクロロキン投与量は、年齢層や性別、人種/民族、BMI、保険の有無、喫煙状況、他の薬剤の使用状況の違いで異なっていた。また、ベースラインの重症度は、投与群が非投与群に比べて高く、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素濃度(FIO2)比中央値は投与群が223、非投与群は360であった。 傾向スコアでマッチさせた患者は、投与群が811例、非投与群は274例だった。 未補正の粗解析では、ヒドロキシクロロキン投与群は非投与群に比べ、主要エンドポイントのイベント発生率が高かった(32.3%[262/811例]vs.14.9%[84/565例]、ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[CI]:1.84~3.02)。 一方、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量解析では、ヒドロキシクロロキンとイベント発生率に有意な関連は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.82~1.32)。 著者は、「この観察研究の結果は、デザインと95%CI値を考慮すると、ヒドロキシクロロキン治療の有益性と有害性のいずれをも排除しないが、現時点では、有効性を検証する無作為化臨床試験以外では、その使用を支持しない」としている。なお、NYP-CUIMCでは、すでにガイダンスを改訂し、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキン治療の推奨は削除されたという。

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高齢者特有のリスクを考慮した抗ヒスタミン薬の提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第20回

 今回は、抗ヒスタミン薬の追加提案について紹介します。高齢者で抗ヒスタミン薬を選択する際には、鎮静やせん妄などのリスクを十分に考慮する必要があります。経過をフォローすることで、漫然投与も防ぎましょう。患者情報75歳、男性(施設入居)基礎疾患:高血圧症、便秘症訪問診療の間隔:2週間に1回処方内容1.オルメサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後2.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後3.センノシド錠12mg 1錠 分1 夕食後4.d-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠2mg 3錠 分3 朝昼夕食後(今回追加)5.ヘパリン類似物質油性クリーム 50g 1日2回 全身に塗布(今回追加)6.ジフルプレドナート軟膏 10g 1日2回 体幹部位に塗布(今回追加)本症例のポイントこの患者さんは、全身の乾燥と体幹部に強い痒みを伴う湿疹があり、夜間も痒くて眠れないので飲み薬も出してほしい、という訴えを訪問診療の同行時に聴取しました。そこで医師より、しっかりとした作用が必要なのでd-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠2mgを1日3回でどうかという相談がありました。ここでの処方薬のポイントは3点あります。1.高齢者における第1世代抗ヒスタミン薬のリスク第1世代の抗ヒスタミン薬は、中枢神経を抑制して鎮静作用が強く生じることがあります。この患者さんが眠れないと訴えたことから、鎮静作用を期待している可能性もありますが、抗コリン作用などに伴う口渇や便秘、認知機能低下、せん妄があり、高齢者ではリスクが大きいと懸念されます。2.第2世代抗ヒスタミン薬の代謝と排泄経路、鎮静作用代替薬として、よりH1受容体に選択的に作用する第2世代抗ヒスタミン薬を検討しました。多くの薬剤が発売されていますが、高齢者では肝・腎機能などの低下を考慮して、安全に使用できる薬剤が望ましいです。また、鎮静の強さも各薬剤で違いがありますので、鎮静作用が比較的弱いフェキソフェナジン、ロラタジン、エピナスチンが適切と考えました。3.併用薬との相互作用相互作用の面では、現在服用中の酸化マグネシウムとフェキソフェナジンは併用注意です。酸化マグネシウムがフェキソフェナジンの作用を減弱させるため候補から外れました。服用回数の少なさも薬剤選択の大きなポイントですが、ロラタジンもエピナスチンも1日1回ですので、今回は腎臓への負担の少ないエピナスチンが妥当と考え、医師に提案しました。処方提案と経過医師には、冒頭の処方内容では、鎮静が強く生じて転倒するリスクがあり、口渇や便秘、認知機能低下、せん妄リスクもあることを伝えました。代替薬として、エピナスチン錠20mg(後発品)を提示し、服用薬との薬物相互作用もなく、腎機能への影響も少なく、服用回数も1回で済むことを紹介しました。医師からは、高齢者での第1世代抗ヒスタミン薬のリスクを軽視するわけにはいかないと返答があり、提案のとおりに変更されました。患者さんはエピナスチン錠を服用開始した翌日の夜には掻痒感が改善し、よく眠れたと聴取することができました。2週間後には皮疹もきれいに治っていたことから、エピナスチン錠を中止し、保湿剤によるスキンケアのみを継続することを医師に提案しました。この提案も採用され、保湿剤のみとなりましたが現在も経過は良好です。抗ヒスタミン薬は漫然と飲み続けているケースも多く見受けられますが、継続的にフォローして、治療終了を判断することも重要と考えます。画像を拡大する※2020年5月時点の薬価※肝・腎:肝機能低下、腎機能低下でそれぞれ血中濃度上昇の可能性あり1)各薬剤のインタビューフォーム2)「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院.3)谷内一彦ほか. 日耳鼻. 2009;112:99-103.

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脳内大血管閉塞に対するtenecteplaseの至適用量は?(解説:内山真一郎氏)-1227

 tenecteplaseはアルテプラーゼから遺伝子改変により作成された血栓溶解薬であり、アルテプラーゼより半減期が長く、フィブリン特異性も高い。海外のガイドラインではアルテプラーゼの代用薬として記載されているが、日本では開発も承認もされていない。 オリジナルのEXTEND-IA TNK試験では、0.25mg/kgのtenecteplaseはアルテプラーゼと比べて再灌流と臨床転帰が優れていたという結果が示されている。そこで、このPart 2試験では、脳内大血管閉塞例において血栓回収療法前に投与された0.40mg/kgのtenecteplaseが0.25mg/kgのtenecteplaseより優れているかどうかをPROBE試験により検討したが、0.40mg/kgが0.25mg/kgより有効であるという結果は示されなかったので、tenecteplaseの至適用量は0.25mg/kgであるというのが本試験の結論である。 いずれにせよ、海外では今後アルテプラーゼよりtenecteplaseが主体になると思われ、このままだとまた日本だけが取り残される危惧があるので、何らかの同等性を示す試験を行い、日本でも使用可能になることを期待したい。

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第41回 コロナ禍を吹っ飛ばせ!腕試し心電図クイズvol.2【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第41回:コロナ禍を吹っ飛ばせ!腕試し心電図クイズvol.2今回はゴールデン・ウイークに公開した心電図クイズの第2弾です。“息抜きに”と言いつつ、まぁまぁ骨のある問題を出しましたが、今までのレクチャーで扱った知識を総動員して今回も頑張ってみましょう。「面白い」と「ためになる」の両立を目指して、今回もDr.ヒロの心電図ワールドのはじまりです!症例提示83歳、男性。高血圧症、気管支喘息などで通院中。治療にはアムロジピン、テオフィリン(徐放錠)、プランルカスト、レルベア®を使用している。血圧134/90mmHg、脈拍97/分・不整。定期診察時の12誘導心電図を示す(図1)。*:クイズの性格上、自動診断結果の一部を非表示にしている(以下同)。(図1)入院時の心電図画像を拡大する【問題1】調律に関する以下の診断のうち、正しいものを2つ選べ。1)洞頻脈2)異所性心房頻拍3)心房期外収縮4)心室期外収縮(間入性)5)心室期外収縮(完全代償性)解答はこちら1)、5)解説はこちらR-R間隔が整な部分に時折おかしなQRS波が混じるようです。幅が正常(narrow)な部分はほぼ太枠3マスで、“イチニエフの法則”を満たすP波が定期的にも観察され、基本調律は「洞頻脈」で良いと思います。次に“線香とカタチと法被(はっぴ)が大事よね”を思い出してください。洞周期に「先行」するタイミングで出現し、洞収縮とは異なる「カタチ」で「幅」もワイド、P波もないですから、「心室期外収縮」(PVC)の診断は容易です。「完全代償性」か「間入性」は用語的にはやや難しく感じるかもしれませんね。でも大丈夫。後者は文字通り、洞周期の“間”にPVC“入り”込んでいるもので、PVC前後のP-P間隔は洞周期そのものです。一方の「(完全)代償性」のほうはと言えば、レクチャーでも扱った“ニバイニバーイの法則”を満たすものです。PVC前後のP-P(R-R)間隔が洞周期の2倍となることが特徴で、今回もこれに該当します。参考レクチャー:第21回、第26回【問題2】QRS電気軸に関して、最も適切なものを1つ選べ。また定性的評価も加えよ。1)-60°2)-15°3)0°4)+75°5)+120°解答はこちら2)定性的評価:軽度の左軸偏位解説はこちらQRS電気軸を数値で求める場合、まずは肢誘導を上からザーッと見直しましょう。6つのうち上下“トントン”のQRS波があればいいのですが、この心電図にはないようです。そんな時は“トントン法Neo”を使いましょう。肢誘導界の円座標を思い浮かべ、aVL → I → -aVR → II → aVF → III …の順にQRS波の向きを確認します。すると、IIとaVFの間で向きの逆転が起こりますから、この間に“トントン・ポイント”(TP)があるのです。IIの上向き具合とaVFの下向き具合は同程度と考えて、両者の中間(+75°)がTPということになります。求める電気軸は、TPに直交し、かつIが上向きですから、「-15°」が“トントン法Neo”による推定値となります。ちなみに、心電計による自動診断は「-14°」となっていました。「-30°~0°」の範囲は「左軸偏位」の中でも“軽度”の範疇で、正常範囲に準じた扱いがなされることもあります。定性的には、I:上向き、II:上向き、aVF:下向きであるケースが大半です。参考レクチャー:第8回、第9回、第11回【問題3】ほかの心電図所見として正しいものはどれか。1)反時計回転2)QT延長3)(左室)高電位4)PR(Q)延長5)ST上昇解答はこちら4)解説はこちら1)は胸部誘導の移行帯に関するものですが、本例ではV4とV5誘導の間で「R<S」から「R>S」に変わっており、反時計回転ではありません。2)のQT間隔も正常です(補正値[QTc]]437ms)。3)は、QRS波高は代表的なSokolow-Lyon index(SV1+RV5)や“(ブイ)シゴロ密集法”などにもかかりません。上級者ですとIとaVLのQRS波高が気になるかもしれませんが、惜しくも該当しません。PR(Q)間隔は、5mmちょっとで「230ms」と正常上限をオーバーしています(したがって4)が○)。ただし、この程度では「1度房室ブロック」の診断には及びません。5)の「ST上昇」はなく、むしろV4~V6で「ST低下」を認めます(I、aVLにも軽度あり)。参考レクチャー:第1回症例提示253歳、男性。近医で糖尿病の診断を受けているが、本人拒否もあり無投薬で経過観察されている。深夜1:30に救急要請。意識清明、血圧138/87mmHg、脈拍49/分・不整、酸素飽和度(SpO2)99%(室内気)。全身冷汗著明。本人曰く、「昨日ね、夕方6時くらいに焼き肉に行ったんです。たらふく食べて飲みました。10時過ぎに帰って、風呂に入って寝たんです。0時くらいに起きたら気持ち悪くて、ひどい下痢もしてて。何度も吐いて、胃が焼け付くくらい“熱い”んです。ちょっと生に近い状態の肉を食べたんで、あたったんですか?」とのこと。来院時の心電図を示す(図2)。(図2)来院時の心電図画像を拡大する【問題4】調律に関して正しいものを選べ。また、心拍数はいくらか。1)洞徐脈2)洞不整脈3)心房粗動4)心房細動5)心房静止解答はこちら4)心拍数:51/分(新・検脈法)解説はこちら心電図を見たら、まずは“レーサー・チェック”でしたね。ちなみに、後述しますが、ST変化に気をとられる余り、調律診断が疎かになるようなことはあってはならないと思います。R-R間隔は不整で、洞性P波も確認できません。そんな時に見るべきは、ボク一押しのV1誘導でした。本例はやや見つけにくいですが、“f(細動)波”が確認できます。振幅が1mmに満たず、いわゆる「fine AF」だと思いますが、2nd bestである下壁誘導ではグニャグニャ部分もあり、「心房細動」(AF)で良いでしょう。心拍数に関しては、「検脈法」です。シンプルに全体10秒間のQRS波の個数を数えて9×6=54/分としてもいいですが、肢誘導の右端、そして胸部誘導は両端のQRS波が“ちぎれて”いますから、これらを0.5個とカウントして、(4.5+3+0.5×2)×6=51/分として求める“新・検脈法”は、このように徐脈気味の時に真価を発揮します。心電計の値も見事に「51/分」となっていました。参考レクチャー:第4回、第29回【問題5】この段階でなすべきこととして、正しいものを2つ選べ。1)消化器科医をコールし、上部消化管内視鏡を依頼する。2)右側胸部誘導を記録する。3)点滴ルートを確保して硫酸アトロピンを投与する。4)体外式除細動器を準備する。5)硝酸イソソルビドを静注しつつ、循環器科医をコールして心エコーを依頼する。解答はこちら2)、4)解説はこちら下痢や嘔吐を主訴に来院しても、この心電図を見てしまったら、「急性胃腸炎」では済ませることはできません。胃カメラうんぬんは笑い話レベルとしても、症状的には消化器疾患と紛らわしい例であることは事実です。心電図では、II、III、aVF、さらにV4~V6に「ST上昇」を認め、逆にaVL、V1、V2などでは「ST低下」(対側性ST変化)が見られます。こういう場合、第一に「ST上昇型急性心筋梗塞」(STEMI)を疑うべきパターンになります。迷走神経に関連し、急性下壁梗塞で嘔吐が前面に出ることがあるというケースを過去のレクチャーでも扱っており、これも類似のケースです。「下痢」の合併は稀かとは思いますが、実際にこのような訴えもあることを知っておくと、診療の幅が広がります。下壁梗塞を疑う場合、何も考えずに右側胸部誘導をとることはガイドラインでも推奨されていますが、なかなか行われておらず現場では歯がゆく感じるところがあります(本ケースでも記録されていませんでした)。心筋梗塞の場合、徐脈ならアトロピン、ST上昇だから即ニトロという盲目的な対応は時に危険で、禁忌というケースもあることはご存じでしょうか?(参考:ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン[2013年改訂版])前者はNG、後者もいきなり静注は推奨できません。まずは救急カート、電気的除細動器を準備、とにかくすぐに循環器科医をコールして指示を仰ぐようにしましょう(一番先にすべきことは心エコーでないことは明らかかでしょう)。参考レクチャー:第27回、第31回【問題6】本症例の臨床診断として正しいものを1つ選べ。1)胆石仙痛発作2)急性胃腸炎3)急性心筋梗塞4)尿管結石5)肋間神経痛解答はこちら 3)解説はこちら前問の解説通り心電図的にはきれいなSTEMIで、傷害部位は左室の下壁と側壁です。心電図から責任血管が右冠動脈か左冠動脈回旋枝かを推測する方法もあることはある(確実ではないですが)ので、おいおい扱いましょう。緊急冠動脈造影では、右冠動脈遠位部の完全閉塞が確認され、そのままインターベンション(ステント留置)が行われました。症例提示387歳、女性。糖尿病、高血圧症、慢性腎臓病、陳旧性心筋梗塞で通院中。血圧162/69mmHg、脈拍86/分。定期診察時の12誘導心電図を示す(図3)。(図3)定期診察時の心電図画像を拡大する【問題7】異常Q波はいくつの誘導で認められるか。以下のうち、最も適切なものを選べ。1)0個(なし)2)2個3)3個4)5個5)7個解答はこちら5)解説はこちら古い(陳旧性)心筋梗塞の存在を示唆する「異常Q波」の拾い上げは2段階でしたね。まずはV1~V3誘導が陰性波から始まっていたら問答無用で“異常”です。V1はしっかりとした「QS型」で、V2、V3に認められる小さな“q波”―これらもすべて“アウト”(異常)です。V1~V3、そしてaVRを除く計8個の誘導では、幅と深さを意識した“1mmの法則(ルール)”が重要でした。II、III、aVFは幅的に“ヤバイだろ”と主張したげです(ここまでで6個)。残るV4は微妙ですが、幅も深さもほぼ1mmであること、そして何よりV3とほぼ同じQRS波形で片方(V3)がおかしければ、もう片方も自然に思えるセンスがDr.ヒロが求めるものの一つになります。ですから、今回は「7個」、これが正解です。参考レクチャー:第30回、第33回、第34回【問題8】壊死心筋(梗塞巣)として推定される部位は以下のうちどれか。すべて選べ。1)心室中隔2)左室前壁3)左室側壁4)左室後壁5)左室下壁解答はこちら1)、2)、5)解説はこちらこれは前問ができればオマケ的なものです。異常Q波を拾って、さらに解剖学(空間)的な隣接性、平たく言えば“お隣さんルール”。2つ以上の誘導セットでQ波があったら、その領域の心筋梗塞を疑うというシンプルなロジックです。CT画像を用いた心臓の水平断で宇宙人たちがカメラを構えていた図を覚えているでしょうか? V1が「心室中隔」、V2~V4は「前壁」、そしてII、III、aVFは「下壁」と対峙するのでしたね。このようなパターンでは、右冠動脈と左冠動脈前下行枝(LAD)とがそれぞれ別に詰まったというよりは、心尖部を越えて下壁中隔から下壁まで灌流するような大きなLAD(wrap-around / wrapped LAD)の梗塞であることが多いと思います。参考レクチャー:第17回症例提示481歳、女性。高血圧症、高尿酸血症、骨粗鬆症などで他院へ通院中。高齢で足腰が弱って通院困難を理由に転医希望、受診となった。心機能については無症状。血圧142/74mmHg、脈拍80/分・不整。初診時の12誘導心電図を示す(図4)。(図4)初診時の心電図画像を拡大する【問題9】心電図所見に関して正しいものをすべて選べ。1)上室外収縮2)心室期外収縮3)非伝導性心房期外収縮4)心房細動5)心室頻拍6)右軸偏位7)左軸偏位8)高度軸偏位(北西軸)9)完全右脚ブロック10)完全左脚ブロック解答はこちら1)、7)、10)解説はこちら最後はDr.ヒロ流“ドキ心”の真骨頂である所見拾いです。ゲーム感覚で漏れなく指摘して、気持ちよく終わりましょう。心電図自体は前半のものに比べればさほど難しくはないと思います。肢誘導3拍目、胸部誘導2、6拍目が「期外収縮」で、QRS幅はワイドですが、P波が先行し、洞収縮波形も含めてすべて同一のカタチですから、これは1)PACですね。“1画面”つまり全10秒間に3つ以上の期外収縮があったら、頭に「頻発性」とつけて結構なレベルです。なお、3)に関しては、予想される洞性P波のタイミングより早く、波形も異なるP波も認めるものの、直後にQRS波を伴わないパターンのPACですが、これは該当しません。4)と5)は基本調律に関するもので、いずれも該当しません。このように期外収縮がたくさん出るとAFチックに見えるので注意してくださいね。期外収縮以外のビートには、“イチニエフの法則”を満たすP波がQRS波手前の“定位置”におり、これは洞調律の証です。QRS電気軸は、定性的にI:上向き、aVF(II):下向きですから、「左軸偏位」(“トントン法”では「-60°」と求まる)ですね。その他、QRS波の「幅」に異常があることもわかりますね。ワイドでV1の「rS型」、I、aVL、V6でq波なくスラーを伴う「R型」ですので、「完全左脚ブロック」と診断してください。参考レクチャー:第1回、第19回【古都のこと~清水寺、音羽の滝】前回に引き続き清水寺の話をしたいと思います。ところで、清水寺の宗旨を知っていますか? いわゆる「~宗」というものです。正解は「北法相宗(きたほっそうしゅう)」*1。唐伝来の奈良仏教が、いかに京都にやって来たのかを知ることは、お寺の名称の起源を知ることでもあり、今回はそれをお話します。ある日、大和国(奈良県)の子島寺で修行した賢心(けんしん)は「木津川の北流に清泉を求めて行け」という霊夢に従い北を目指します。そして音羽の山中*2で輝くような清泉を発見し、そこで行叡居士(ぎょうえいこじ)から霊木を授かり、千手観音像を彫り、ここを観音霊地として草庵を結びます*3。それから2年後、音羽山に鹿狩りに来た坂上田村麻呂*4が修行中の賢心と出会い、観音霊地での殺生の罪を知り、観世音菩薩の功徳の話に深く感銘を受けます。これにより田村麻呂は仏門に帰依することとなります。その後、日本初の征夷大将軍に任命され、蝦夷平定から帰京した田村麻呂は798年(延暦17年)、自邸を寄進し、延鎮(えんちん)と改名した賢心とともに本堂を築き、音羽の滝の清らかな水にちなんで「清水寺」と名付けました。桓武天皇は清水寺を自らの御願寺と定め伽藍構築を支援し、大同5年(810年)には嵯峨天皇より「北観音寺」の宸筆(しんぴつ)が贈られ、鎮護国家の寺院の定めを受けたのです。以上が『続群書類従』による清水寺の始まりです。舞台に気を取られ、ふと見過ごしてしまいそうな「音羽の滝」に寺のルーツがあると知り、より一層キヨミズさんに興味が湧いてきますね。*1:南都六宗の一つで、唯識宗(ゆいしきしゅう)、応理円実宗(おうりえんじつしゅう)、慈恩宗(じおんしゅう)などとも呼ばれる。南都は奈良のこと。大本山は興福寺で、中世・近世において清水寺はその末寺であった。昭和40年(1965年)、北法相宗の本山として独立した。*2:山城国愛宕郡八坂郷の東山。当時は「乙輪」と呼ばれていた。*3:清水寺の開創とされる奈良時代末期の宝亀9年(778年)のこと。ボクが「舞台」と間違っていた奥の院付近が庵の場所とされ、真下に「音羽の滝(瀧)」がある。*4:奈良時代末期~平安時代の武人。身重の妻の病を癒やすため、鹿の生き血を求めたとされる。

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COVID-19と乳がん診療ガイドライン―欧米学会発表まとめ(吉村吾郎氏)

新型コロナウイルス (COVID-19) パンデミック下での乳がん診療の優先順位をどう考えるべきか。欧米関連学会が発表したガイドラインを市立岸和田市民病院 乳腺外科部長 吉村 吾郎氏が解説する。新型コロナウイルス (COVID-19) パンデミック下での乳がん診療について、欧州臨床腫瘍学会 European Society for Medical Oncology Cancer (ESMO) 1) と米国乳がん関連学会2)がガイドラインを作成している。いずれのガイドラインも COVID-19 リスクの最小化と診療利益の最大化を目的とする、乳がん患者の優先順位付けを推奨している。その内容に大差はなく、診療内容別に高優先度/中優先度/低優先度に分類し、米国ガイドラインは中および低優先度をさらに3段階に細分している。本邦の臨床事情に合わせて若干改変した両ガイドラインの概略を以下に記載する。【外来診療】○高優先度感染や血腫などで病状が不安定な術後患者発熱性好中球減少症や難治性疼痛など腫瘍学的緊急事態浸潤性乳がんの新規診断○中優先度非浸潤性乳がんの新規診断化学療法や放射線療法中の患者病状が安定している術後患者○低優先度良性疾患の定期診察経口アジュバント剤投与中、あるいは治療を受けていない乳がん患者の定期診察生存確認を目的とする乳がん患者の定期診察【診断】○高優先度重症乳房膿瘍や深刻な術後合併症評価目的の診断しこりやその他乳がんが疑われる自覚症状を有する症例に対する診断臨床的に明らかな局所再発で、根治切除が可能な病変に対する診断○中優先度マンモグラフィ検診で BI-RADS カテゴリ4または5病変の診断転移再発が疑われ、生検が必要とされる乳がん患者への診断○低優先度マンモグラフィ検診BRCAキャリアなど高リスク例に対する検診マンモグラフィ検診で BI-RADS カテゴリ3病変の診断無症状の初期乳がん患者に対するフォローアップ診断【手術療法】○高優先度緊急で切開ドレナージを要する乳房膿瘍および乳房血腫自家組織乳房再建の全層虚血術前化学療法を終了した、あるいは術前化学療法中に病状が進行した乳がん患者トリプルネガティブ乳がん、あるいはHER2陽性乳がん患者で、術前化学療法を選択しない場合○中優先度ホルモンレセプター陽性/HER2陰性/低グレード/低増殖性のがんで、術前ホルモン療法の適応となる乳がん患者臨床診断と針生検結果が不一致で、浸潤性乳がんの可能性が高い病変に対する外科生検○低優先度良性病変に対する外科切除広範囲高グレード非浸潤性乳管がんを除く、非浸潤性乳がん臨床診断と針生検結果が不一致で、良性の可能性が高い病変に対する外科生検二次乳房再建手術乳がん高リスク例に対するリスク軽減手術【放射線療法】○高優先度出血や疼痛を伴う手術適応のない局所領域病変に対する緩和照射急性脊髄圧迫、症候性脳転移、その他の腫瘍学的緊急事態症例に対する緩和照射高リスク乳がん症例に対する術後照射 (炎症性乳がん/リンパ節転移陽性/トリプルネガティブ乳がん/HER2陽性乳がん/術前化学療法後に残存病変あり/40歳未満)○中優先度65歳未満でホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性の中間リスク乳がんに対する術後照射○低優先度非浸潤性乳がんに対する術後照射65歳以上でホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性の低リスク乳がんに対する術後照射【初期乳がんに対する薬物療法】○高優先度トリプルネガティブ乳がんに対する術前および術後化学療法HER2 陽性乳がん患者に対する抗 HER2 療法併用の術前および術後化学療法炎症性乳がん患者に対する術前化学療法すでに開始された術前/術後化学療法高リスクのホルモンレセプター陽性かつ HER2 陰性乳がんに対する術前および術後ホルモン療法±化学療法術前ホルモン療法○具体的推奨事項化学療法と放射線療法の適応となるホルモンレセプター陽性症例において、放射線療法の先行は許容されるホルモンレセプター陽性かつHER2 陰性で臨床ステージI-II乳がんでは、6~12ヶ月間の術前ホルモン療法がオプションとなるホルモンレセプター陽性かつHER2 陰性で化学療法の適応となる乳がん症例では、術前化学療法がオプションとなる通院回数を減らす目的での化学療法スケジュール変更 (毎週投与を2週間または3週間毎投与に変更) は許容される。好中球減少症リスクを最小限とするため、G-CSF 製剤を併用し、抗生剤投与も行うべきである。免疫抑制を避けるため、デキサメタゾンは必要に応じて制限すべきである低リスク、あるいは心大血管疾患やその他の合併症を有する HER2 陽性乳がん症例では、術後の抗 HER2 療法の期間を6ヵ月に短縮することはオプションとなるLHRH アナログ製剤を、通院回数を減らすために長時間作用型へ変更すること、患者自身または訪問看護師による在宅投与することを、ケースバイケースで相談するアロマターゼ阻害剤を投与されている症例では、骨量検査を中止する (ベースラインおよびフォローアップとも)可能であれば、自宅の近くの医療機関で画像検査や血液検査を実施する可能であれば、遠隔医療による副作用のモニタリングを実施する【進行再発乳がんに対する薬物療法】○高優先度高カルシウム血症、耐えられない痛み、有症状の胸水貯留、脳転移など、腫瘍学的緊急事態症例に対する薬物療法重篤内蔵転移に対する薬物療法予後を改善する可能性の高い一次治療ラインでの化学療法、内分泌療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬○中優先度予後を改善する可能性のある二次、三次以降の治療ラインでの薬物療法○低優先度緊急性の低い高Ca血症や疼痛コントロール目的での骨修飾薬 (ゾレドロン酸、デノスマブ)○具体的推奨事項化学療法が推奨される場合、通院回数を減らす目的での経口薬治療は許容される通院回数を減らす目的での化学療法スケジュール変更 (毎週投与を2週間または3週間毎投与に変更) は許容される発熱性好中球減少症リスクの低いレジメンを選択することは許容される化学療法による好中球減少症リスクを最小限とするため、G-CSF 製剤を併用し、抗生剤投与も行うべきである。免疫抑制を避けるため、デキサメタゾンは必要に応じて制限すべきであるトラスツズマブとペルツズマブの投与間隔を延長することは許容される (例:4週毎投与)腫瘍量の少ない HER2 陽性転移性乳がんでトラスツズマブやペルツズマブによる治療が2年間以上にわたり行われている症例では、病状経過を3〜6ヵ月ごとにモニターしながら抗 HER2 療法の中止を考慮する耐容性を最適化し、有害事象を最小化するため、標的治療剤を減量投与することは許容される転移再発乳がん一次治療としての標的治療剤 (CDK4/6阻害剤、mTOR阻害剤、PIK3CA 阻害剤) とホルモン療法の併用を、ホルモン療法単独とすることは許容されるCDK4/6阻害剤による好中球減少症と COVID-19 発症リスクの関連は明らかではなく、感染徴候を注意深く観察し、COVID-19 を疑い症状が出現した場合は速やかに治療を中止する免疫チェックポイント阻害剤とCOVID-19 発症リスクの関連は明らかではなく、感染徴候を注意深く観察し、COVID-19 を疑い症状が出現した場合は速やかに治療を中止するLHRH アナログ製剤を、通院回数を減らすために長時間作用型へ変更すること、患者自身または訪問看護師による在宅投与することを、ケースバイケースで相談する多職種キャンサーボードでの議論と患者の希望を踏まえて、晩期治療ラインにおける休薬、最善支持療法、投与間隔の拡大、低容量維持療法は許容される骨転移患者に対する骨修飾薬は、通院回数を最小限にして投与されるべきである病状が安定している転移性乳がん症例では、ステージング目的の定期診察や画像検査の間隔を空ける抗 HER2療法中の心機能モニター検査は、臨床的に安定していれば遅らせることが許容される可能であれば、自宅の近くの医療機関で画像検査や血液検査を実施する可能であれば、遠隔医療による副作用のモニタリングを実施する1.ESMO magagement and treastment adapeted recommentaions in the COVID-19 ERA: Breast cancer. 2.Recommendations for prioritization, treatment, and triage of breast cancer patients during the COVID‐19 pandemic. the COVID‐19 pandemic breast cancer consortium.

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糖尿病治療ガイド2020-2021が完成/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、『糖尿病治療ガイド2020-2021』を発行した。本書は、糖尿病診療の基本的な考え方から最新情報までをわかりやすくまとめたガイドで専門医はもとより、非専門の医師、他の医療スタッフなどにも広く活用されている。糖尿病治療ガイド2020-2021は食事療法を大幅に改訂 今回の糖尿病治療ガイド2020-2021の改訂では、11章に「病態やライフステージに基づいた治療の実例」を新設し、全面的に内容をアップデートした。 糖尿病治療ガイド2020-2021で改訂された主な項目は次のとおり。・4章「食事療法」の記載内容を、『糖尿病診療ガイドライン2019』に合わせ大幅に改訂。・初版以来、基本変更がされていなかった「糖尿病治療の目標」と「インスリン非依存状態の治療」の図を大幅に改訂。・6章「薬物療法」と付録「血糖降下薬一覧表」を2020年4月現在の薬剤情報にアップデート。・具体的な治療薬の選択基準を示すべく、11章「病態やライフステージに基づいた治療の実例」を新設。 本書の序文では、「日々進歩している糖尿病治療の理解に役立ち、毎日の診療に一層活用されることを願ってやまない」と診療での活用に期待を寄せている。■糖尿病治療ガイド2020-2021主な目次項目 1.糖尿病 疾患の考え方 2.診断 3.治療 4.食事療法 5.運動療法 6.薬物療法 7.糖尿病合併症とその対策 8.低血糖およびシックデイ 9.ライフステージごとの糖尿病 10.専門医に依頼すべきポイント 11.病態やライフステージに基づいた治療の実例 付録/索引

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クロピドグレル、70歳以上の非ST上昇ACS患者に有用/Lancet

 70歳以上の非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)高齢患者において、クロピドグレルはチカグレロル/プラスグレルに比べ、全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中・出血の複合エンドポイントを増加することなく出血リスクを減少させることが認められ、チカグレロルの代替としてクロピドグレルが好ましいことが示された。オランダ・St Antonius HospitalのMarieke Gimbel氏らが、非盲検無作為化比較試験「POPular AGE試験」の結果を報告した。最近のガイドラインでは、ACS後の患者に、チカグレロルまたはプラスグレルを用いた強力な抗血小板療法が推奨されているが、高齢患者における最適な抗血小板療法に関するデータは乏しかった。著者は、「とくに出血リスクが高い高齢患者では、クロピドグレルがP2Y12阻害薬の代替となるだろう」とまとめている。Lancet誌2020年4月25日号掲載の報告。クロピドグレルと、チカグレロルまたはプラスグレルを比較 研究グループは、オランダの12施設(病院10施設、大学病院2施設)において、70歳以上のNSTE-ACS患者を登録し、インターネットでの無作為化法(ブロックサイズ6)を用い、クロピドグレル群またはチカグレロル/プラスグレル群に1対1の割合で無作為に割り付け、1年間投与した。 クロピドグレル群では負荷投与300mgまたは600mg、維持投与75mgを1日1回、チカグレロル/プラスグレル群では医師の裁量でどちらかを選択し(ただし、脳卒中または一過性脳虚血発作の既往患者にはチカグレロルを投与)、チカグレロルは負荷投与180mg、維持投与90mgを1日2回、プラスグレルは負荷投与60mg、維持投与10mgを1日1回(75歳以上または体重60kg未満は5mgを1日1回)とした。治療群の割り付けは、患者と治療担当医師は認識していたが、評価者は盲検化された。 主要評価項目は、PLATO基準に基づく大出血または小出血(優越性の検証)、ならびに全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中・PLATO基準に基づく大出血または小出血の複合エンドポイント(ネットクリニカルベネフィット)とした(非劣性の検証マージン2%)。追跡期間は12ヵ月で、intention-to-treat解析で評価した。クロピドグレルで、クリニカルベネフィットの非劣性と出血リスクの有意な低下 2013年6月10日~2018年10月17日に、計1,002例がクロピドグレル群(500例)およびチカグレロル/プラスグレル群(502例)に無作為に割り付けられた。チカグレロル/プラスグレル群では475例(95%)でチカグレロルが投与された(以下、チカグレロル群)。 チカグレロル群で47%(238/502例)、クロピドグレル群で22%(112/500例)が早期中止となった。 PLATO基準の大出血/小出血は、チカグレロル群(24%、118/502例)と比較して、クロピドグレル群(18%、88/500例)で有意に低下した(ハザード比:0.71、95%信頼区間[CI]:0.54~0.94、優越性のp=0.02)。また、複合エンドポイントのイベントはクロピドグレル群で28%(139例)、チカグレロル群で32%(161例)に認められ、ネットクリニカルベネフィットに関して、チカグレロルに対するクロピドグレルの非劣性が示された(絶対リスク差:-4%、95%CI:-10.0~1.4、非劣性のp=0.03)。 治療中止の主な理由は、出血(38例)、呼吸困難(40例)、経口抗凝固薬による治療の必要性(35例)であった。

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新型コロナ、抗原検出用キットの活用に関するガイドライン発表/厚労省

 5月13日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」(富士レビオ)が製造販売承認を取得した。これを受け、厚生労働省では同日開催された第40回厚生科学審議会感染症部会において、「SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」について審議、了承した。ガイドラインでは、これまでに得られている科学的知見に基づき、同キットの最適な使用を推進する観点から、考え方や留意事項が示されている。陽性の場合は確定診断に使用可、無症状者や陰性確認には適さない 同キットは、酵素免疫反応を測定原理としたイムノクロマト法による、鼻咽頭ぬぐい液中に含まれるSARS-CoV-2の抗原を、迅速かつ簡便に検出するもの。特別な検査機器を要さず、簡便かつ短時間(約30分間)で検査結果を得ることができる。使用対象となる患者については、「医師が、新型コロナウイルス感染症を疑う症状があると判断した者に対して、必要性を認めた時に使用する」と明記。同キットで陽性となった場合は、確定診断とすることができる。 一方で、核酸増幅法(PCR)と比較して検出に一定以上のウイルス量が必要であることから、「現時点では、無症状者に対する使用、無症状者に対するスクリーニング検査目的の使用、陰性確認等目的の使用は、適切な検出性能を発揮できず、適さない」とされている。ただし、緊急入院を要する患者で症状の有無の判断が困難な場合については、症状があるものと判断される。また、陰性の場合には、確定診断のため、医師の判断においてPCR検査を行う必要があるとされ、当面は、PCR検査と抗原検査を併用して使用することを求めている。 退院判定の際の活用については、検出にPCR検査と比較して一定以上のウイルス量が必要なこと、PCR検査との一致性に関するエビデンスが十分ではないことから、適さないとされている。クラスターが発生している医療機関、施設等の濃厚接触者等に対する検査については、感染の疑いが高い者はPCR検査との併用、それ以外の者は抗原検査を実施することも検討されるとしている。臨床試験でのPCR検査との陽性一致率は? RT-PCR法と性能を比較した2つの試験結果が示されており、国内臨床検体(72例)を用いた試験では、陽性一致率37%(10/27例)、陰性一致率98%(44/45例)、であった。陽性検体についての陽性一致率を、RT-PCR法テスト試料中の換算RNAコピー数(推定値)に応じて比較すると、100コピー/テスト以上の検体に対して一致率83%(5/6例)、30コピー/テスト以上の検体に対しては一致率50%(6/12例)であった。  行政検査検体(124例)を用いた試験では、陽性一致率66.7%(16/24例)、陰性一致率 100%(100例/100例)、全体一致率94%(116例/12例)であった。1,600コピー/テスト以上の検体に対して一致率100%(12/1例)、400コピー/テスト以上の検体に対しては一致率93%(14/15例)、100コピー/テスト以上の検体に対しては 一致率83%(15/18例)であった。 本キットでは承認条件として、・承認時のデータが極めて限られていることから、製造販売後に臨床性能を評価可能な適切な試験を実施すること。・製造販売後に実保存条件での安定性試験を実施すること。 の2点が求められており1)、ガイドラインでも、今後、臨床研究によりさらなる評価を実施することとしており、評価結果が得られた場合には、速やかに反映させると明記されている。まずは発生数の多い地域の帰国者・接触者外来、特定機能病院から供給開始 本キットの供給が十分になるまでは、検査の需給がひっ迫することを想定し、また、陰性時はPCR検査での確認が必要になるケースも想定されることから、患者発生数の多い都道府県における帰国者・接触者外来(地域・外来検査センターを含む)および全国の特定機能病院から供給を開始し、生産量の拡大状況を確認しつつ、対象地域およびPCR検査を実施できる医療機関を中心に供給対象を拡大していく。富士レビオのプレスリリースによると、週20万テストの生産体制を国内に構築しているという2)。 ガイドラインでは上記のほか、検体採取方法なども図示されている、また、今回示された運用は、当面の間のものであり、本キットに係る知見等は、引き続き研究により、知見を収集すると明記され、最新の知見をもとにガイドラインの見直しが適宜行われるとされている。

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双極性障害とアルコール使用障害

 これまでの研究において、双極性障害(BD)患者のアルコール使用障害(AUD)の合併が報告されているが、BD患者のアルコール使用パターンはよくわかっていない。英国・ウスター大学のKatherine Gordon-Smith氏らは、大規模英国サンプルを用いて、生涯で最も大きい平均週間アルコール消費量の調査を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年4月2日号の報告。 定期的な飲酒経験のある双極I型障害の女性1,203例および男性673例を対象に、半構造化インタビューを実施した。 主な結果は以下のとおり。・現在の英国推奨アルコール摂取ガイドラインの2倍以上定期的に飲酒していた患者は、女性で52.3%、男性で73.6%であった。・男女ともに、生涯アルコール消費量の増加と有意な関連が認められたのは以下の項目であった。 ●自殺企図:女性(OR:1.82、p<0.001)、男性(OR:1.48、p=0.005) ●ラピッドサイクリング:女性(OR:1.89、p<0.001)、男性(OR:1.88、p<0.001)・女性のみで、アルコール消費量の増加と有意な関連が認められたのは以下の項目であった。 ●うつ病エピソード(OR:1.35、p<0.001) ●躁病エピソード(OR:1.30、p<0.004) ●最も悪い躁病エピソード中の機能障害の少なさ(OR:1.02、p<0.001) ●精神科入院の減少(OR:0.51、p<0.001) ●パニック症の合併(OR:2.16、p<0.001) ●摂食障害の合併(OR:2.37、p<0.001) 著者らは「実臨床において、BD患者のアルコール消費量に関する詳細な情報を収集する意義は大きいと考えられる。アルコール消費量が多いからといって、必ずしもAUDの基準に達しているわけではないが、BDの疾患経過、とくに女性の摂食障害の合併を予測するうえで役立つであろう」としている。

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ホモシスチン尿症〔homocystinuria〕

1 疾患概要■ 概念・定義ホモシスチン尿症は先天性アミノ酸代謝異常症の一種であり、メチオニンの代謝産物であるホモシステインが血中に蓄積することにより発症する1)。図にメチオニンの代謝経路を示す。メチオニンは、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼによりS-アデノシルメチオニン(SAM)に変換、さらに脱メチル化することでS-アデノシルホモシステイン(SAH)が生成される。SAHが加水分解されるとホモシステインが生成される。ホモシステインはシスタチオニンβ合成酵素(CBS)によりシスタチオニン合成されるだけでなく、メチオニン合成酵素(MS)、もしくはベタインホモシステインによる再メチル化経路をたどり、メチオニンに変換される。CBSの異常は、ホモシスチン尿症I型もしくは古典的ホモシスチン尿症と称され、血中ホモシステイン値、メチオニン値が高値となる。II型はMSの補酵素である細胞内コバラミン(ビタミンB12、Cb1)の代謝異常、III型はN5、N10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)の障害による葉酸代謝異常であり、II型、III型ともに再メチル化によるメチオニン合成が障害されるため、メチオニン値が低下し、ホモシステイン増加する。ホモシスチン尿症I型は頻度が最も多いとされており、新生児マススクリーニングではメチオニン増加を指標としてスクリーニングが行われている。図 メチオニン代謝経路画像を拡大する■ 疫学CBS欠損症は常染色体劣性遺伝を呈する疾患であり、発症頻度は1,800~90万人に1人と推測されているが、わが国での患者発見頻度は、約80万人に1人である1,2)。■ 病因CBSの活性低下によりホモシステインが蓄積すると、ホモシステインは酸化されて二量体であるホモシスチンが尿中に排泄される。また、蓄積したホモシステインはメチオニンへと再メチル化が促され、血中メチオニンが上昇し、シスタチオニンとシステインが欠乏する。ホモシステインはチオール基を介して生体内の種々のタンパクとも結合する。その過程で生成されるスーパーオキサイドなどにより、血管内皮細胞障害を来すと考えられている。また、ホモシステインがフィブリリンの機能を障害するため、マルファン症候群様の、眼症状や骨格異常を発現すると考えられている1)。■ 症状古典的ホモシスチン尿症の臨床症状は骨格系の異常、眼症状、中枢神経症状、血管系の障が認められる1)。1)中枢神経系異常知的障害、てんかん、精神症状(パーソナリティ障害、不安、抑うつなど)2)骨格異常骨粗鬆症、高身長、くも状指、側弯症、鳩胸、凹足、外反膝(マルファン症候群様体型)3)眼症状水晶体亜脱臼に伴う近視(無治療では10歳までに80%以上の症例で水晶体亜脱臼を呈する)、緑内障4)血管系障害冠動脈血栓症、肺塞栓、脳血栓塞栓症、大動脈解離血栓症■ 分類CBSはビタミンB6(ピリドキシン)を補酵素とする。CBS欠損症には大量のビタミンB6投与により血中メチオニン、ホモシステインが低下するビタミンB6反応型と、低下しないビタミンB6不応型がある。欧米白人ではビタミンB6反応型が約半数を占めるが、日本人ではまれである1)。■ 予後早期に治療導入され、適切にコントロールが行われた症例では、全般的に予後良好とされているが、長期的予後は明らかにされていない。ビタミンB6不応型において無治療の場合には、生命予後は著明に悪化する。ビタミンB6反応型の生命予後は明らかになってない3)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)一般血液検査・尿検査では特徴的な所見は認めない。以下の診断の根拠となる特殊検査のうち、血中メチオニン高値(1.2mg/dL〔80μmol/L〕)以上、かつ総ホモシステイン基準値(60μmol/L)以上を満たせば、CBS欠損症の確定診断とする1)。■ 診断の根拠となる特殊検査1)血中メチオニン高値:1.2mg/dL(80μmol/L)以上〔基準値:0.3~0.6mg/dL(20~40μmol/L)〕2)高ホモシステイン血症:60μmol/L以上(基準値:15μmol/L以下)3)尿中ホモシスチン排泄:基準値が検出されない。4)線維芽細胞、あるいはリンパ芽球でのCBS活性低下5)遺伝子解析:CBS遺伝子の両アレルに病因として病原性変異を認める。■ 鑑別診断臨床症状からはマルファン症候群や血栓性疾患との鑑別が必要である3)。生化学的検査所見からの診断を以下に示す、メチオニン高値、またはホモシステイン高値を来す疾患が鑑別に挙がる1)。1)高メチオニン血症を来す疾患(1)メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ欠損症(2)シトリン欠損症(3)新生児肝炎などの肝機能異常2)高ホモシステイン血症(広義の「ホモシスチン尿症」)を来す疾患(1)メチオニン合成酵素欠損症(2)MTHFR欠損症(ホモシスチン尿症II型)(3)ホモシスチン尿症を伴うメチルマロン酸血症(コバラミン代謝異常症C型など)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ホモシスチン尿症の治療目標は、臨床症状の緩和や発症リスクを減らすために、血中ホモシステイン値を正常範囲でコントロールすることである。■ 食事療法メチオニンの摂取制限を実施し、血中メチオニン濃度を1mg/dL(67μmol/L)以下に保つようにする。ヨーロッパのガイドラインにおいては、ビタミンB6反応性ホモシスチン尿症では、総ホモシステイン<50μmol/Lを目標とすることが推奨されている3)。新生児・乳児期には許容量かつ必要量のメチオニンを母乳、一般粉乳、離乳食などから摂取し、不足分のカロリー、必須アミノ酸などは治療乳メチオニン除去粉乳(商品名:雪印S-26)から補給する1)。幼年期以降の献立は、食事療法ガイドブック(特殊ミルク事務局のホームページより入手可能)を参考にする1)。血中ホモシステイン値のコントロールが不良(100μmol/L以上)の場合には、血栓塞栓症のリスクが高まるため、厳格な食事療法を継続する必要性がある。■ L-シスチン補充ホモシステインの下流にあるL-シスチンを補充する。メチオニン除去乳(同:雪印S-26)にはL-シスチンが添加されている。市販されているL-シスチンのサプリメントを併用することもある1)。■ ビタミンB6大量投与ビタミンB6反応型か否かの確認は、ホモシスチン尿症の確定診断後、まず低メチオニン・高シスチン食事療法を行い、生後6ヵ月時に検査を行う。入院のうえ、食事を普通食にした後に、ピリドキシン40mg/kg/日を10日間経口投与する。血中メチオニン、ホモシスチン値の低下が認められた場合には投与量を漸減し、有効最小必要量を定め継続投与する。反応がなければ食事療法を再開し、体重が12.5kgに達する2~3歳時に再度ピリドキシン500mg/日の経口投与を10日間試みる1)。ビタミンB6反応型では、CBS活性を上昇させるためにピリドキシンの大量投与(30~40mg/kg/日)を併用する。ビタミンB6を併用することで食事療法の緩和が可能であることが多い。■ ベタインベタイン(同:サイスタダン)は再メチル化の代替経路を促進し、過剰なホモシステインをメチオニンへと変換し、血中ホモシステイン値を低下させることができる。ベタインの投与量は11歳以上には1回3g、11歳未満では50mg/kg/日を1日2回経口投与する。ただしベタイン単独でホモシステイン値を50μmol/L以下にコントロールすることは困難であり、食事療法との併用が必要である。ベタイン投与により血中メチオニン上昇を伴う脳浮腫が報告されており、メチオニン値が15mg/dL(1,000μmol/L)を超える場合には、ベタインや自然蛋白摂取量を減量する1)。■ 葉酸、ビタミンB12CBS欠損症では、血中葉酸、ビタミンB12が低下する場合があり、適宜補充する。4 今後の展望CBS欠損症の新規治療法として、ケミカルシャペロン療法の検討がなされている4)。また酵素補充療法の治験が欧米で進行中であり、結果が待たれる。5 主たる診療科小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報先天代謝異常学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)特殊ミルク事務局(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本先天代謝異常学会 編集. 新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019.2019.p.35-42.2)Jean-Marie Saudubray, et al. Inborn Metabolic Diseases Diagnosis and Treatment 6th Ed.Springer-verlag.;2016.p.314-316.3)Morris AA, et al. J Inherit Metab Dis. 2017;40:49-74.4)Melenovska P, et al. J Inherit Metab Dis. 2015;38:287-294.公開履歴初回2020年05月12日

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急性上部消化管出血に対する緊急内視鏡の適切な施行時期は(解説:上村直実氏)-1225

 吐血や下血を主訴とする急性上部消化管出血の死亡率および外科的手術を減少するために、発症から24時間以内の緊急内視鏡検査が推奨されている。日本の臨床現場でも緊急内視鏡の施行が早ければ早いほど救命率が増加すると考えられているものの、緊急内視鏡検査をいつでも施行できる診療体制を有する施設は限られていることも事実である。 最近、重篤な急性上部消化管出血症例を対象として緊急内視鏡検査の適正な時期を検証する目的で、消化器科へ紹介された後6時間以内に検査する緊急施行群と6時間から24時間以内の早期施行群に分けたRCTが行われた結果、検査施行時期が生命予後や再出血率に影響しないことがNEJM誌に発表された。緊急群に比べて早期施行群では薬剤による酸分泌抑制の時間が長いため、検査施行時には露出血管を伴い内視鏡治療を必要とする重篤な潰瘍病変が減少して、技術的にも内視鏡治療が奏効する割合が上昇したために緊急群と早期群が同等の結果となったことが推察されている。 なお、薬剤の有用性を比較する場合と違って、内視鏡診療に関する最適な方法を検討した結果を日本の臨床に適用しようとすると、内視鏡技術の格差が問題となることが多い。今回の臨床研究が実施された中文大学は香港で最も内視鏡診療のレベルが高く、十分なマンパワーを有し、高度な医療機器が整備された施設であり、内視鏡治療法も日本と同様の止血クリップまたは接触熱凝固のいずれかを用いており、出血性の食道静脈瘤と胃静脈瘤にはそれぞれバンド結紮とシアノアクリレート注入を行っていることから、わが国の内視鏡診療にとっても重要な知見である。 『非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドライン2015』(日本消化器内視鏡学会)に緊急内視鏡の適正な施行時期に関する記載がなく、今回の研究結果から緊急内視鏡検査を急ぐより、患者の全身状態を把握するとともに、当該施設における体制を十分に考慮した対応を事前に考えておくことが肝要であり、さらには消化器内科への紹介前の酸分泌抑制薬投与が重要であることが示唆された。

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COVID-19、糞便でのウイルス検出期間中央値が22日/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、呼吸器や血清検体と比較して糞便検体で持続期間が有意に長く、流行の予防と管理という点で糞便検体の管理を強化する必要性があることが明らかとなった。さらに、このウイルスは、重症患者の呼吸器組織ではウイルス量が高い状態が長期的に持続しピークが遅いことも確認された。中国・浙江大学のShufa Zheng氏らが、中国・浙江省の病院に入院した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の後ろ向きコホート研究の結果を報告した。2020年4月9日現在、世界中で150万人以上のCOVID-19患者がおり、その数は急増を続けている。これまで、SARS-CoV-2は呼吸器、糞便、血清および尿から検出されることは少数例の検討で報告されてきたが、重症度が異なる疾患進行中のウイルス量の変化はわかっていなかった。BMJ誌2020年4月21日号掲載の報告。COVID-19患者96例の糞便など約3,400検体について解析 研究グループは、中国・浙江省におけるCOVID-19流行の最初の4ヵ月での、疾患進行の段階が異なるCOVID-19患者におけるウイルス量を評価する目的で、指定病院に入院しSARS-CoV-2感染が確認された連続症例96例(軽症22例、重症74例)について、2020年1月19日~2020年3月20日のデータを解析した。 患者が入院後、可能な限り呼吸器(喀痰や唾液)、糞便、血清および尿の検体を毎日採取し、MagNA Pure 96を用いてウイルスを抽出し定量的RT-PCRを行った。Cycle threshold(Ct)値が38以下をSARS-CoV-2陽性とし、SARS-CoV-2 RNAウイルス量は、ウイルス量既知のスタンダードを用いて検量線を作成しCt値から算出した。電子カルテから疫学、臨床所見、臨床検査値、治療および転帰に関するデータを収集し、疾患重症度は中国新型コロナウイルス診療ガイドライン第6版に基づいて評価した。 96例から合計で3,497検体が採取され、SARS-CoV-2 RNAウイルス量が評価された。全例、喀痰および唾液の検体にて感染が確認された。約6割のCOVID-19患者で糞便からSARS-CoV-2検出 SARS-CoV-2 RNAは、COVID-19患者55例(59%)で糞便から、39例(41%)で血清から検出され、尿から検出されたのは1例であった。 COVID-19患者からSARS-CoV-2が検出された期間(ウイルス持続期間)の中央値は、糞便が22日[四分位範囲:17~31]で、呼吸器の18日[13~29]および血清の16日[11~21]と比較して有意に延長した(それぞれp=0.02およびp<0.001)。また、重症度別では、重症患者が21日[14~30]で、軽症患者の14日[10~21]と比較して有意に延長した(p=0.04)。 呼吸器検体の場合、軽症患者では発症後2週目にウイルス量がピークとなったが、重症患者では3週目もウイルス量高値が持続した。また、重症患者では、女性より男性で、60歳未満より60歳以上でウイルス持続期間が有意に長かった(いずれもp=0.01)。 なお著者は研究の限界として、単一施設でのコホート研究であること、ウイルス検出には多くの因子の影響を受けること、COVID-19流行の初期段階で適切な診断ができず糞便や尿検体が2月初旬まで収集されていないことなどを挙げている。

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慢性特発性偽性腸閉塞症〔CIPO:Chronic Idiopathic Intestinal Pseudo-obstruction〕

1 疾患概要■ 定義・疾患概念慢性特発性偽性腸閉塞症(Chronic Idiopathic Intestinal Pseudo-obstruction:CIPO)は腸管の輸送能が障害されることにより、機械的な閉塞機転がないにもかかわらず腹部膨満、腹痛、嘔吐などの消化管閉塞症状を引き起こす消化管運動異常疾患1)。■ 疫学わが国では約1,300人(推定)、平均年齢58歳、男女比1:1.4、症状発現から診断確定まで平均2年もかかる2,3)。■ 病因と病態病因は依然不明であるが家族内発症が報告されており、何らかの遺伝的要因が関与すると考えられている。本疾患は原因不明の腸管運動の低下・廃絶により、腸管内容の輸送能が低下して腹部膨満、嘔気・腹痛などの消化管閉塞症状、画像で鏡面像を特徴とする腸管拡張像を呈し、小腸の消化吸収機能の低下による栄養障害を呈していくものと考えられている(図1)。図1 CIPO臨床症状と病態画像を拡大する■ 分類病理学的検索により以下の分類が用いられている1)筋性Myopathy(非家族性先天性,非家族性後天性,家族性遺伝性)2)神経性Neuropathy(非家族性先天性、非家族性後天性、家族性遺伝性)3)間葉系細胞の異常Mesenchymopathy(カハールの介在細胞の異常、炎症性など)かつては障害消化管が大腸にのみ限局する大腸限局型偽性腸閉塞症(Chronic Colonic Pseudo-obstruction)が提唱されていたが、現在は巨大結腸症の範疇に入ると考えられている。■ 予後特発性は著しいQOLの低下を認めるが生命予後は悪くない。しかし、極端な体重減少では死亡することがあるので体重減少には注意が必要である(40kg以下になったら注意が必要で、入院により積極的栄養療法を行う)。続発性の予後は原疾患いよることが多く予後不良である。2 診断2,5)  (検査・鑑別診断も含む)【診断基準】(厚労省研究班診断基準)以下の7項目をすべて満たすもの(1)腹部膨満、嘔気・嘔吐、腹痛などの入院を要するような重篤な腸閉塞症状を長期に持続的または反復的に認める(2)新生児期発症では2ヵ月以上、乳児期以降の発症では6ヵ月以上の病悩期間を有する(3)画像診断では消化管の拡張と鏡面像を呈する*1)(4)消化管を閉塞する器質的な病変を認めない(5)腸管全層生検のHE染色で神経叢に形態異常を認めない(6)小児ではMegacystis microcolon intestinal hypoperistalsis syndrome(MMIHS)とSegmental Dilatation of intestineを除外する(7)続発性Chronic Intestinal Pseudo-Obstruction(CIPO)を除外する*2)*1)新生児期には,立位での腹部単純X線写真による鏡面像は,必ずしも必要としない。*2)除外すべき続発性CIPOを別表1に示す。別表1 続発性CIPO画像を拡大する〔重症度分類〕腹痛、腹部膨満、嘔気・嘔吐などの腸閉塞症状により、日常生活が著しく障害されており、かつ以下の3項目のうち、少なくとも1項目以上を満たすものを、重症例とする。(1)経静脈栄養を必要とする(2)経管栄養管理を必要とする(3)継続的な消化管減圧を必要とする*1)*1)消化管減圧とは、腸瘻、胃瘻、経鼻胃管、イレウス管、経肛門管などによる腸内容のドレナージをさす小腸運動異常の診断には小腸シネMRIが非常に有効である4)。3 治療 (治験中・研究中のものも含む) 治療は大きく分けて「栄養療法」と「消化管減圧療法」が行われる(図2)。別表1 続発性CIPO画像を拡大する■ 栄養療法腹部症状による食事量の減少、腸管の消化吸収能の低下による栄養障害の是正が治療では重要となる。まずは1回に食べる食事の量を極力減らした低残差食を1日多数回に分けて腸管の負担を減らすことからはじめ、体重減少などの程度に応じて成分栄養を用いた経管栄養や中心静脈療法が行われる。長期の在宅中心静脈療法になることがある。■ 腸管減圧療法腸管内圧亢進による直管壁の菲薄化とそれによる消化吸収能力の廃絶の進展防止のために早期から腸管減圧を積極的に行う。腹部膨満に対して非吸収性抗菌薬の投与を一定期間に限定して行う。減圧のタイミングを逸すると絞扼性イレウスを起こし、絶対的手術適応になることがある。減圧は急性期にはイレウス管や胃管を用いることが行われる。長期的にはこれまで小腸瘻が増設されたが、増設場所によっては1日3Lを超える排液がありその水電解質管理に難渋する。最近は早期から胃瘻経由の減圧チューブ(Jejunum tube)であるPEG-Jを入れて減圧ポイントをチューブ先端位置の変更できる侵襲性が低い内視鏡治療が行われる(チューブ長は60cmから120cmまで各種発売されている)。PEG-Jの登場で本疾患の入院期間が劇的に短縮され、腸管減圧による腹部症状の改善に加え、栄養状態の改善、社会復帰の促進がはかれるようになった6)。(図3)図3 3DCTによるPEG-J治療前後の比較画像を拡大する4 今後の展望厚生労働省研究班の研究および啓発で不要な外科手術例が減るようになってきた。今後は、いかに早く診断し、早期の減圧療法の介入が疾患による栄養障害やQOLの低下を阻止できるかが重要なポイントと思われる。わが国ではシネMRIで非侵襲的な診断ができるメリットを生かすべきであろう。小腸内細菌異常増殖(SIBO)に関しては、非吸収性の抗菌薬は保険適用がなかったが現在国内で治験中であり、保険適用で認められれば使うべき患者にタイムリーに使えるようになると期待される。本疾患の原因は以前不詳であるので、原因遺伝子の同定が原因療法のためには喫緊の課題であろう。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)慢性偽性腸閉塞症のインフォメーションサイト難病情報センター1)Stanghellini V, et al. Neurogastroenterol Motil. 2007;19:440-452.2)中島 淳. 慢性偽性腸閉塞症の診療ガイドChronicIntestinalPseudo-obstruction(CIPO) 平成23年厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究班編 第1版.2012.3)Iida H,et al. J Epidemiol. 2013;23:288-294.4)Ohkubo H,et al. Am J Gastroenterol. 2013;108:1130-1139.5)田口智章. ヒルシュスプルング病類縁疾患診療ガイドライン・実用版:平成26年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))「小児期からの希少難治性消化管疾患の移行期を包含するガイドラインの確立に関する研究」.2017.6)Ohkubo H,et al. Neurogastroenterol Motil. 2017;29.doi:10.1111/nmo.13127.公開履歴初回2020年04月14日

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VICTORIA試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1223

 第69回米国心臓病学会年次学術集会は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け開催は見送られたが、心不全増悪の既往を有する心不全患者5,050例を対象として、可溶型グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬の効果をプラセボ群と比較したVICTORIA試験の結果は2020年3月28日にWEB上で公開され、同日、New Engl J Med誌に掲載となった1)。結論として、左室駆出率(LVEF)が45%未満の症候性慢性心不全において、ガイドラインに準じた治療にsGC刺激薬であるvericiguat(1日1回、10mgまで増量)を追加投与することで、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを10%有意に減少させることが明らかになった(35.5% vs.38.5%、ハザード比[HR]0.90、95%信頼区間[CI]0.82~0.98、p=0.02)。ただし、心血管死単独、心不全入院単独では2群間に有意差を認めなかった。全死亡と心不全入院を合わせた複合エンドポイントは、1次エンドポイントと同様にvericiguat群でプラセボ群に比較し、有意に低率であった(HR:0.90、95%CI:0.83~0.98、p=0.02)。また、同薬剤の治療効果は、併用する心不全治療薬に関係なく、一貫して認められ、治験開始時のN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値が比較的低値の患者集団においてより有効であった。症候性低血圧や失神などの有害事象に有意差は認めず、従来の治療を行いつつも入院加療あるいは心不全増悪を来した症例に対して、良好な予後改善効果をもたらす新規治療薬として着目されるに至った。また、1件の主要アウトカムイベントを予防するために1年間の治療が必要な症例数(NNT:number needed to treat)は約24例であった。 心不全治療薬の中でも、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるsacubitril-バルサルタンは、sGC刺激薬と同様に膜結合型グアニル酸シクラーゼ(pGC)の活性化を介して細胞内のcGMPを増加させる薬剤であるが、同薬剤を併用している群においても有効性が示された意義は大きい。LVEFの低下した心不全(HFrEF)における一酸化窒素(NO)の利用能障害の存在は古くからいわれているが2-4)、あらためてNO-sGC-sGMP経路の重要性が示唆されたといえる。 心不全におけるNO利用能障害には、酸化ストレスなどによる血管内皮機能障害が関与しており、HFrEFの併存症として頻度の高い冠動脈疾患、高血圧、慢性腎臓病などでも血管内皮機能障害を認めることから5)、結果として血管拡張反応を減弱させ、前・後負荷を増大させることにより心不全を悪化させる要因となる。また、肺高血圧を合併した心不全においては、肺動脈における血管内皮機能障害も生じ6)、心不全の増悪因子になるほか、骨格筋における血管内皮機能障害は運動耐容能低下にも関与する7)。sGC刺激薬によるcGMP増加は、こうした全身における内皮機能障害を代償するとともに、心筋においては虚血の改善と同時に心筋細胞内のcGMP産生を増加させることで、プロテインキナーゼG(PKG)の活性化を介して心筋の拡張能を改善し、左室充満圧の上昇を抑制する可能性も考えられる。 VICTORIA試験では、治験開始時のNT-proBNP値が2,816pg/mlであり、最近行われたARNIを用いたPARADIGM-HF試験やSGLT2阻害薬を用いたDAPA-HF試験9)におけるNT-proBNP値の1,608pg/ml、1,437pg/mlに比べ高値であったが、sGC刺激薬の効果は、NT-proBNP値が低値であった全体の4分の3の患者集団で認められていた。したがって、1次エンドポイントの抑制効果がこれらの試験よりも低かった原因として、より重症の症例がエントリーされていた可能性があり、sGC刺激薬の効果を得るには、NT-proBNP値が著明に上昇し重症心不全に至る前の段階で追加投与すべきと考えられる。VICTORIA試験では、アジア人の登録が全体の22.4%を占めており、10mgに対するアドヒアランスも89%と良好であったことより、いずれ本邦においても入退院を繰り返す心不全症例に対して積極的な使用が推奨されるものと考えられる。引用文献1)Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 28. [Epub ahead of print]2)Kubo SH, et al. Circulation. 1991;84:1589-1596.3)Ramsey MW, et al. Circulation. 1995;92:3212-3219.4)Katz SD, et al. Circulation. 2005;111:310-314.5)Zuchi C, et al. Heart Fail Rev. 2020;25:21-30.6)Elkayam U, et al. J Card Fail. 2002;8:15-20.7)Carbone S, et al. Current Prob Cardiol. 2019:100417.8)McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.9)McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2019;381:1995-2008.

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アルコール使用障害に対する運動介入~メタ解析

 アルコール使用障害(AUD)患者に対する運動介入の影響について、トルコ・パムッカレ大学のFatih Gur氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。American Journal of Health Promotion誌オンライン版2020年3月26日号の報告。 2000~18年に公表された、成人AUD患者を対象に運動介入の有効性を評価した研究を、PubMed、Medline、Web of Science、Scopus、Academic Search complete、Sport Discuss、ERICデータベースより検索した。システマティックレビュー・メタ解析の標準的プロトコールおよび観察研究ガイドラインに基づき、データを抽出した。身体活動レベルおよびフィットネス(最大酸素摂取量[VO2max]、最大心拍数[HRmax])、うつ病、不安、自己効力感、QOL、アルコール消費(1日および1週間に消費される標準的な飲酒数)のデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・VO2max(標準平均差[SMD]:0.487、p<0.05)およびHRmax(SMD:0.717、p<0.05)による評価では、運動介入は、身体的なフィットネスを有意に改善した。・運動介入は、QOLにより評価されるメンタルヘルスを有意に改善したが(SMD:0.425、p<0.05)、うつ病、不安、自己効力感、アルコール消費では、有意な変化が認められなかった。・有酸素運動では、ヨガや混合した場合と比較し、うつ症状や不安症状の緩和が認められた。・運動時間も、うつ症状や不安症状に影響を及ぼしていた。 著者らは「AUD患者に対する運動介入は、効果的かつ持続可能な補助療法となりうる」としている。

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ペムブロリズマブ単剤は高齢患者にも有用かKEYNOTE-010、024、042統合解析【肺がんインタビュー】 第45回

第45回 ペムブロリズマブ単剤は高齢患者にも有用かKEYNOTE-010、024、042統合解析肺がん患者の多くは高齢者である。近年登場した免疫治療薬は、肺がん治療においても幅広く適用され始め、高齢肺がんにおいても、その有用性が期待される。しかし、臨床試験での高齢者のデータは少ない。そのような中、高齢者への有効性と安全性を評価した、ペムブロリズマブ単剤の大規模RCTの統合解析がLung Cancer誌で発表された。筆頭著者である野崎 要氏にこの試験から得られる新たな知見について聞いた。肺がん最大の高齢者データセット―この試験を実施した背景を教えていただけますか。ご存じのとおり、肺がん患者さんの多くは高齢者です。高齢者の定義は日本肺癌学会ガイドラインでは75歳となっています。免疫チェックポイント阻害薬が登場し、その使用機会も著しく増加していますが、免疫チェックポイント阻害薬のピボタル試験では65歳を境にした解析が多く、75歳以上のデータは数少ないのが現状です。そこで、ペムブロリズマブ単剤の3つのピボタル試験の統合解析から75歳以上の患者のデータを抽出し、75歳以上の高齢患者におけるペムブロリズマブ単剤の効果と安全性を評価しました。―3つのピボタル試験について教えていただけますか。KEYNOTE-010、024、042試験の3つです。これらはすべて企業(MSD)主導のグローバル試験です。KEYNOTE-010試験は2016年のLancet誌に結果が発表された既治療のPD-L1発現(1%以上)非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブ単剤の試験です。KEYNOTE-024試験は、1次治療のPD-L1高発現(50%以上)NSCLC患者に対するペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用化学療法の比較試験で、2016年、New England Journal of Medicine誌に結果が発表されました。私は、前勤務地でこの試験に施設の試験責任医師として参加しています。KEYNOTE-042試験は、同じく1次治療ですが、PD-L1発現(1%以上)NSCLC患者に対するペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用化学療法の比較試験で、2019年のLancet誌に結果が発表されています。画像を拡大する―試験デザインについて教えていただけますか。今回の研究では、前出のペムブロリズマブの3つのピボタル試験で、下記の4つの統合解析を行い、1次治療であるKEYNOTE-024、KEYNOTE-042試験については、下記の2つの統合解析を行いました。画像を拡大する高齢者へのペムブロリズマブ単剤治療、有効性、安全性とも若年者と同様―この研究の主な結果を教えていただけますか。3試験全体でみた75歳以上のペムブロリズマブ単剤の全生存期間(OS)は、化学療法に比べ有意に良好でした。PD-L1≧1%でのOSは、ペムブロリズマブ単剤15.7ヵ月に対し、化学療法は11.7ヵ月(HR:0.76)、PD-L1≧50%でのOSは19.2ヵ月vs.11.9ヵ月です(HR:0.40)。また、1次治療であるKEYNOTE-024と042における75歳以上のOSは、PD-L1≧50%で23.1ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.41)と、こちらもペムブロリズマブ単剤群は化学療法に比べ良好でした。―高齢患者の有害事象の発現についてはいかがでしたか。75歳以上における治療関連有害事象(TRAE)は、化学療法に比べ、ペムブロリズマブ単剤で少なく、全Gradeで68.5% vs.94.3%、Grade3以上では24.2% vs.61.0%でした。75歳以上と75歳未満を比べても同様でした。TRAE発現は75歳以上68.5%に対し75歳未満65.2%、免疫関連有害事象(irAE)発現は24.8% vs.25.0%と同等でした。―この研究は、264例という75歳以上では最大規模の試験となりますが、この結果を高齢者肺がんの実臨床にどう応用できるとお考えですか。当研究は、事後解析ですので、いくつかの限界(limitation)があります。組織型(ペムブロリズマブに扁平上皮がんが多い)、喫煙状況(ペムブロリズマブに喫煙者が多い)といった患者背景に偏りがあります。また、1次治療として行われた2試験(KEYNOTE-024と042)に参加できたのは、プラチナ併用療法に忍容性がある方で、実地臨床における高齢患者さんとはやや異なる可能性があります。また、PD-L1 1~49%のデータは示されていません。とはいえ、前向き試験によって抽出された臨床データで、ペムブロリズマブ単剤の有効性、有害事象も高齢者とそれ以外で大きく変わらないことが示されたことは重要だと思います。とくに、PD-L1高発現に対するペムブロリズマブの治療効果(OSカーブ)は75歳以上と75歳未満で変わらないように見えます。このようなことから、少なくともPD-L1高発現の全身状態の良い高齢者には積極的にペムブロリズマブを使用することを勧めて良い、ということはいえると思います。参考原著:Nosaki K, et al. Lung Cancer.2019;135:188-195.KEYNOTE-010: Herbst RS, et al. Lancet. 2016;387:1540-1550.KEYNOTE-024: Reck M, et al. N Engl J Med. 2016 ;375:1823-1833.KEYNOTE-042: Mok TSK, et al. Lancet. 2019;393:1819-1830.

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敗血症関連頻脈性不整脈に対して、ランジオロールが目標心拍数の達成と新規不整脈発生の抑制を示す(J-Land 3S)

 敗血症または敗血症性ショックにおける頻脈性不整脈に対して、従来治療にランジオロールを加えた治療が従来治療に比べ24時間後の心拍数60~94bpm達成率を有意に高め、168時間までの新規不整脈発生率を有意に低下することが、鹿児島大学の垣花 泰之氏らによるJ-Land 3Sで示された。詳細は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2020年3月31日号に掲載された。 敗血症関連頻脈性不整脈は、発症頻度が高く予後が悪い疾患である。しかし、現在のところ効果的な治療法は存在していない。そこで、垣花氏らは、超短時間作用型β遮断薬ランジオロールの本病態に対する有効性・安全性を検討した。従来の敗血症治療へのランジオロール追加試験に、日本の54施設が参加 本試験は、日本の54病院で多施設非盲検無作為化比較試験として実施された。対象は、集中治療室で敗血症管理のため臨床ガイドラインに従った従来の敗血症治療を受けた後に頻脈性不整脈を発症した患者で、従来の敗血症治療にランジオロール治療を追加する群(ランジオロール群)と従来の敗血症治療のみを受ける群(対照群)にオープンラベルで無作為に割り付けられた。ランジオロール群では、無作為化後2時間以内にランジオロール塩酸塩として毎分1μg/kgの初期用量で静脈内注入が行われ、最大20μg/kg/分まで増加可能とされた。 主要アウトカム項目は、無作為化後24時間における心拍数60〜94bpmを達成した患者割合であった。24時間後の心拍数60~94bpm達成率、168時間までの新規不整脈発生率を有意に改善 151例が登録され、ランジオロール群に76例、対照群に75例が割り付けられた。 主要アウトカム項目は、ランジオロール群55%(41/75例)、対照群33%(25/75例)となり、ランジオロール群で有意に高かった(p=0.0031)。 有害事象は、ランジオロール群、対照群において、それぞれ64%(49/77例)、59%(44/74例)で認められ、重篤な有害事象(死に至る有害事象を含む)は、12%(9/77例)、11%(8/74例)であった。ランジオロールに関連した重篤な有害事象は、血圧低下(3例)、心停止、心拍数低下、および駆出率低下(各1例)であった。 また、副次評価項目である168時間までの新規不整脈発生率は、ランジオロール群、対照群でそれぞれ9%(7/75例)、25%(19/75例)となり、ランジオロール群で有意に低く(p=0.015)、28日までの死亡率は、それぞれ12%(9/75例)、20%(15/75例)であった(p=0.22)。 垣花氏らは、「ランジオロールは敗血症関連頻脈性不整脈において、投与24時間後における心拍数60〜94bpm達成患者を有意に増やし、新規の不整脈発生率も有意に低減させ、許容性も高い薬剤であるが、低血圧リスクが存在するために血圧と心拍数の適切な監視の下で使用する必要がある」としている。

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うつ病の薬理学的マネジメント~日本の専門医のコンセンサス

 実臨床におけるうつ病治療は、常に従来のガイドラインに沿っているわけではない。慶應義塾大学の櫻井 準氏らは、精神科専門医を対象に、うつ病の治療オプションに関する調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年4月1日号の報告。 日本臨床精神神経薬理学会の認定精神科医を対象に、うつ病治療における23の臨床状況について、9段階のリッカート尺度(同意しない「1」~同意する「9」)を用いて、治療オプションの評価を依頼した。114件の回答が得られた。治療オプションを、1次、2次、3次治療に分類した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の第1選択薬は、主要な症状により以下のように異なっていた。 ●不安症状:エスシタロプラム(平均±標準偏差:7.8±1.7)、セルトラリン(7.3±1.7) ●興味の喪失:デュロキセチン(7.6±1.9)、ベンラファキシン(7.2±2.1) ●不眠症状:ミルタザピン(8.2±1.6) ●食欲不振:ミルタザピン(7.9±1.9) ●興奮および重度の焦燥感:ミルタザピン(7.4±2.0) ●自殺念慮:ミルタザピン(7.5±1.9)・1次治療に奏効しない場合の2次治療は、以下のとおりであった。 ●SSRIで奏効しない場合:SNRIへの切り替え(7.7±1.9)、ミルタザピンへの切り替え(7.4±2.0) ●SNRIで奏効しない場合:ミルタザピンへの切り替え(7.1±2.2) ●ミルタザピンで奏効しない場合:SNRIへの切り替え(7.0±2.0)・アリピプラゾール増強療法は、SSRI(7.1±2.3)またはSNRI(7.0±2.5)に対する部分的なレスポンスがみられた患者に対する1次治療と見なされていた。 著者らは「専門医のコンセンサスのエビデンスレベルは低く、本調査は、日本人の専門医のみが対象であった」としながらも、「臨床現場の専門医による推奨は有用であり、実際の臨床診療におけるガイドラインと情報に基づく意思決定を補助することができる。うつ病に対する薬理学的治療戦略は、患者の状況ごとのニーズと薬物療法プロファイルを考慮し、柔軟に対応すべきである」としている。

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COVID-19、各国腫瘍関連学会ががん治療のガイドラインを発表

 新型コロナウイルスの感染流行を受け、がん患者を感染から守り、治療をどう継続していくかについて、世界各国の腫瘍関連学会が提言やガイドラインを発表している。4月22日時点で発表されたもののなかから、主だったものをまとめた。国内でも、がん診療全般におけるガイドライン制定が見込まれている。米国臨床腫瘍学会(ASCO) がんとCOVID-19に関連する基本情報・これまでに発表された論文へのリンクのほか、専門家によるPPEやマスク装着をテーマとした動画セミナーを無料で公開している。https://www.asco.org/asco-coronavirus-information欧州臨床腫瘍学会(ESMO)  サイト上でがん種別、患者管理、緩和ケアなどの各種ガイドラインを発表するほか、がん種別に患者に対する治療の優先度分けを提示している。https://www.esmo.org/covid-19-and-cancer腫瘍外科学会(SSO) 乳がん、大腸がん、泌尿器がん、メラノーマなど、がん種ごとの患者の分類と治療の優先順位を提示。専門家によるポッドキャストを使ったヘルプガイドも公開している。https://www.surgonc.org/resources/covid-19-resources/欧州腫瘍外科学会(ESSO)  緊急の場合以外のクリニック受診を避けること、オンライン診療を取り入れること、など5つの項目の提言を行っている。https://www.essoweb.org/news/esso-statement-covid-19/米国外科学会(ACS) がんを中心に各領域別に手術の優先順位についての考え方をまとめたトリアージガイドラインを公開している。https://www.facs.org/covid-19/clinical-guidance/elective-case米国腫瘍放射線学会(ASTRO)  COVID-19推奨事項をはじめ、臨床的意思決定に直接関連する20項目のQ&A、有用な医学論文やウエブサイトへのリンクを掲載する。https://www.astro.org/Daily-Practice/COVID-19-Recommendations-and-Information欧州腫瘍放射線学会(ESTRO) 会長による声明のほか、関連する論文、資料などがまとめられている。https://www.estro.org/About/Newsroom/COVID-19-and-Radiotherapy

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がん患者のVTE治療、アピキサバンは低分子ヘパリンに非劣性/NEJM

 がん患者の静脈血栓塞栓症(VTE)の治療において、直接経口抗凝固薬(DOAC)アピキサバンは、低分子ヘパリン(LMWH)ダルテパリン皮下投与と比較して、VTE再発に関して非劣性で、消化管の大出血のリスクを増加させないことが、イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らが行った「Caravaggio試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月29日号に掲載された。現行の主要なガイドラインでは、がん患者のVTE治療にはLMWHが推奨され、最近、DOACであるエドキサバンとリバーロキサバンの使用の考慮が追加されたが、これらのDOACは出血のリスクが高いため有益性は限定的だという。LMWHと比較する無作為化非劣性試験 本研究は、がん患者のVTE治療におけるアピキサバンのダルテパリンに対する非劣性を検証する医師主導の非盲検無作為化非劣性試験である(Bristol-Myers SquibbとPfizerの提携組織の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、症候性または急性の近位型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)を有するがん患者であった。これらの患者が、アピキサバン群(10mg[1日2回]、7日間経口投与後、5mg[1日2回]を投与)、またはダルテパリン群(200 IU/kg[1日1回]、1ヵ月皮下投与後、150 IU/kg[1日1回]を投与)に無作為に割り付けられ、6ヵ月の治療が行われた。 有効性の主要アウトカムは、試験期間中に客観的に確定されたVTE再発(症候性のDVTまたはPEの再発)とした。安全性の主要アウトカムは大出血であった。事前に規定された非劣性マージンは、ハザード比(HR)の両側95%信頼区間(CI)上限値2.00とした。VTE再発:5.6% vs.7.9%、大出血:3.8% vs.4.0% 2017年4月~2019年6月までに、欧州9ヵ国、イスラエル、米国の119施設に1,155例が登録された。アピキサバン群が576例(平均年齢67.2[SD 11.3]歳、男性292例[50.7%])、ダルテパリン群は579例(67.2[10.9]歳、276例[47.7%])であった。治療期間中央値は、アピキサバン群が178日(IQR:106~183)、ダルテパリン群は175日(79~183)だった(p=0.15)。 ベースラインのPE±DVTは、アピキサバン群が52.8%、ダルテパリン群は57.7%、DVTはそれぞれ47.2%、42.3%、症候性DVTまたはPEは、79.9%、80.3%であった。また、活動性のがんは、アピキサバン群が97.0%、ダルテパリン群は97.6%、局所進行・再発または転移を有するがんは、それぞれ67.5%、68.4%だった。 VTE再発は、アピキサバン群が576例中32例(5.6%)、ダルテパリン群は579例中46例(7.9%)で認められ、アピキサバン群のダルテパリン群に対する非劣性が確認され、優越性は示されなかった(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.37~1.07、非劣性のp<0.001、優越性のp=0.09)。 このうち、DVT再発は、アピキサバン群が576例中13例(2.3%)、ダルテパリン群は579例中15例(2.6%)で発生し(HR:0.87、95%CI:0.34~2.21)、PE再発はそれぞれ576例中19例(3.3%)および579例中32例(5.5%)で発生した(0.54、0.29~1.03)。 大出血は、アピキサバン群が576例中22例(3.8%)、ダルテパリン群は579例中23例(4.0%)で発生し、両群間に有意な差はみられなかった(HR:0.82、95%CI:0.40~1.69、p=0.60)。消化管大出血は、アピキサバン群が576例中11例(1.9%)、ダルテパリン群は579例中10例(1.7%)で発生した(1.05、0.44~2.50)。 また、臨床的に重要な非大出血(アピキサバン群576例中52例[9.0%]vs.ダルテパリン群579例中35例[6.0%]、HR:1.42、95%CI:0.88~2.30)や、全死因死亡(576例中135例[23.4%]vs.579例中153例[26.4%]、0.82、0.62~1.09)の発生にも、両群間に差はなかった。 著者は、「これらのがん患者におけるアピキサバンの良好な安全性プロファイルは、一般集団のVTE治療におけるアピキサバンの無作為化試験の結果と一致する。これらの知見を合わせると、消化器がんを含め、アピキサバンが適応となるVTEを有するがん患者の割合が拡大する可能性がある」と指摘している。

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