サイト内検索|page:57

検索結果 合計:3165件 表示位置:1121 - 1140

1121.

動脈硬化のリスク因子【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q35

動脈硬化のリスク因子Q35脂質異常症は動脈硬化のリスクの1つとして知られており、その管理について「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」で解説されている。2017年版から2022年版への改訂の際に追加となったリスクは?

1122.

心不全の分類とそれぞれの治療法Update【心不全診療Up to Date】第1回

第1回 心不全の分類とそれぞれの治療法UpdateKey Points心不全の分類として、まずはStage分類とLVEFによる分類を理解しよう心不全発症予防(Stage Aからの早期介入)の重要性を理解しようRAS阻害薬/ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬の偉大さを理解しようはじめに心不全の国際定義(universal definition)が日米欧の3つの心不全学会から昨年合同で提唱され、「器質的または機能的な心臓の異常を原因とする症候を呈し、Na利尿ペプチド上昇または肺・体うっ血の客観的エビデンスが認められる臨床症候群」とされた1)(図1)。また心不全のStage分類もそれぞれAt-risk for HF(Stage A)、Pre-HF(Stage B)、HF(Stage C)、Advanced HF(Stage D)と分かりやすく表現された(図1)。この心不全の予防、治療を理解する上で役立つ心不全の分類について、本稿では考えてみたい。画像を拡大する予防と治療を意識した心不全の分類まず覚えておくべき分類が、上記で記載した心不全Stage分類である(図1)。この分類は適切な治療介入を早期から行うことを目的にされており、とくにStage Aの段階からさらなるStage進展予防(心不全発症予防)を意識して、高血圧などのリスク因子に対する積極的な介入を行うことが極めて重要となる2)。次に、一番シンプルで有名な治療に関わる分類が、検査施行時の左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)による分類で、HFrEF(LVEF<40%、HF with reduced EF)、HFmrEF(LVEF 40~49%、HF with mildly reduced EF)、HFpEF(LVEF≧50%、HF with preserved EF)に分類される(図1)。またLVEFは経時的に変化し得るということも忘れてはならない。とくにLVEFが40%未満であった患者が治療経過で40%以上に改善した患者群は予後が良く、これをHFimpEF (HF with improved EF)と呼ぶ3)。つまり、同じLVEF40%台でも、HFimpHFは、LVEFの改善がないHFmrEFとは生物学的にも臨床的にも同義ではないのである4)。そもそもLVEFとは…と語りたいところではあるが、字数が足りずまたの機会とする。慢性心不全治療のエッセンス慢性心不全治療は大きく2つに分類される。1つはうっ血治療、もう1つは予後改善のための治療である。まず、うっ血に対しては利尿薬が必要不可欠であるが、ループ利尿薬は慢性心不全患者において神経体液性因子を活性化させる5)など予後不良因子の1つでもあり、うっ血の程度をマルチモダリティで適正に評価し、利尿薬はできる限り減らす努力が重要である6)。次に予後改善のための治療について考えていく。1. HFrEFに対する治療生命予後改善効果が示されている治療法の多くは、HFrEFに対するものであり、それには深い歴史がある。1984年に発表された慢性心不全に対するエナラプリルの有効性を検証した無作為化比較試験(RCT)を皮切りに、その後30年以上をかけて数多くのRCTが行われ(図2)、現在のエビデンスが構築された(図3)7-9)。偉大な先人達へ心からの敬意を表しつつ、詳細を説明していく。画像を拡大する画像を拡大するまず、すべてのHFrEF患者に対して生命予後改善効果が証明されている薬剤は、ACE阻害薬/ARNI、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、SGLT2阻害薬である(図3)。とくにARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬は、米国の映画に擬えて“the Fantastic Four”と呼ばれるようになって久しい10)。この4剤はすべて投与後早期から心不全入院抑制効果があるため、診断後早期に開始すべき薬剤である。また、一見安定しているように見える慢性心不全患者でも突然死が少なくないことをご存知だろうか11,12)。この“Fantastic Four”すべてに突然死予防効果もあり、症状がごく軽度(NYHA IIs)であってもぜひ積極的に投与を検討いただきたい13)。そして、この4剤を基本に、うっ血、心房細動、鉄欠乏、虚血、弁膜症の有無、QRS幅、心拍数に合わせて、さらなる治療を検討していくこととなる(図3)。2. HFmrEFに対する治療HFmrEFの発症機序や治療法に関する知識は、まだ完全に解明されているとはいえないが、現時点では、HFrEFにおいて予後改善効果のある4剤がHFmrEFにもある程度の効果を示すことから、この4剤を投与するという姿勢で良いと考えられる14-19)。では、LVEFがどれくらいまでこの4剤の効果が期待されるのか。HFmrEF/HFpEFを含めた慢性心不全に対するARB/ARNI、β遮断薬、MRAの有効性を検証したRCTの結果からは、LVEFが55%くらいまでは予後改善効果が期待される20)(図4)。つまり、左室収縮障害が少しでも伴えば、神経体液性因子が心不全の病態形成に重要な役割を果たしているものと考えられ、これらの薬剤が有用なのであろう。なお、SGLT2阻害薬においては、最近発表されたEmpagliflozinのLVEF>40%の慢性心不全に対する有効性を検証したEMPEROR-Preserved試験の結果、心血管死または心不全入院の複合リスク(主に心不全による入院リスク)を有意に低下させることが報告された。ただし、LVEFが65%を超えるとその効果は認めなかった19)(図4)。画像を拡大する3. HFpEFに対する治療HFpEFは、2000年代前半までは「拡張期心不全」と呼ばれ、小さな左心室に著しい左心室肥大があり、拡張機能不全が主要な病態生理学的異常であると考えられていた。しかし、2000年代初頭からHFpEFはより複雑で複数の病態生理を持ち、多臓器の機能障害があることが明らかになってきた。現在HFpEFは、高血圧性リモデリング、心室・血管の硬化、肥満、代謝ストレス、加齢、座りがちな生活習慣などが関与する多面的な多臓器疾患であり、その結果として心臓、血管、および骨格筋の予備能低下につながると考えられている21)。このことからHFpEFの治療法が一筋縄では行かないことは容易に想像できるであろう。実際、本邦の心不全ガイドラインにおいても、うっ血に対する利尿薬と併存症に対する治療しか明記されていない3)。ただ最新のACC/AHAガイドラインでは、上記EMPEROR-Preserved試験の結果も含めSGLT2阻害薬が推奨クラスIIa、ARNI、MRA、ARBが推奨クラスIIbとなっている2)。ARNI、MRA、ARBについては「LVEFが50%に近い患者でより大きな効果が期待できる」との文言付であり、その背景は上記で説明した通りである20)。よって、今後はこの潜在性左室収縮障害をいかに早期にわれわれが認識できるかが鍵となるであろう。以上の通り、HFpEFに対してはまだ確立した治療法がなく、この複雑な症候群であるHFpEFを比較的均一なサブグループに分類するPhenotypingが今後のHFpEF治療の鍵であり、これについては今後さらに深堀していく予定である。1)Bozkurt B,et al. J Card Fail. 2021 Mar 1:S1071-9164. 00050-6.2)Heidenreich PA, et al. Circulation. 2022 May 3;145:e895-e1032.3)Tsutsui H, et al. Circ J. 2019 Sep 25;83:2084-2184.4)Wilcox JE, et al. J Am Coll Cardiol. 2020 Aug 11;76:719-734.5)Bayliss J, et al. Br Heart J. 1987 Jan;57:17-22.6)Mullens W,et al. Eur J Heart Fail. 2019 Feb;21:137-155.7)Sharpe DN, et al. Circulation. 1984 Aug;70:271-8.8)Sharma A,et al. JACC Basic Transl Sci. 2022 Mar 2;7:504-517.9)McDonagh TA, et al. Eur Heart J. 2021 Sep 21;42:3599-3726.10)Bauersachs J. et al. Eur Heart J. 2021 Feb 11;42:681-683.11)Lancet.1999 Jun 12;353:2001-7.12)Kitai T, et al. JAMA Netw Open. 2020 May 1;3:e204296.13)Varshney AS, et al. Eur J Heart Fail. 2022 Mar;24:562-564.14)Vaduganathan M, et al. Eur Heart J. 2020 Jul 1;41:2356-2362.15)Solomon SD, et al. Circulation. 2020 Feb 4;141:352-361.16)Solomon SD, et al. Eur Heart J. 2016 Feb 1;37:455-62.17)Cleland JGF, et al. Eur Heart J. 2018 Jan 1;39:26-35.18)Lund LH, et al. Eur J Heart Fail. 2018 Aug;20:1230-1239.19)Butler J, et al. Eur Heart J. 2022 Feb 3;43:416-426.20)Böhm M, et al. Eur Heart J. 2020 Jul 1;41:2363-2365.21)Shah SJ. J Cardiovasc Transl Res. 2017 Jun;10:233-244.

1123.

認知症リスク低下に寄与する1日当たりの歩数

 認知症予防ガイドラインでは身体活動を推奨しているが、認知症の発症と歩数やその強度との関連は明らかになっていない。南デンマーク大学のBorja Del Pozo Cruz氏らは、英国成人を対象に毎日の歩数やその強度とすべての原因による認知症発症との関連を調査した。その結果、歩数が多いほどすべての原因による認知症発症リスクが低く、1日当たり1万歩を少し下回る程度の歩数が、最も効果的であることが示唆された。JAMA Neurology誌オンライン版2022年9月6日号の報告。 UK Biobankの集団ベース・プロスペクティブコホート研究(2013年2月~2015年12月)を実施し、フォローアップ期間は6.9年、データ分析は2022年5月に行った。10万3,684人中、有効な歩数データを有する40~79歳の成人7万8,430人を分析対象に含め、認知症発症はレジストリベースで2021年10月までに確認した。歩数計から得られた1日の歩数、1分当たり40歩未満の偶発的な歩数、1分当たり40歩以上の意図的な歩数、1日の最も歩数の多い30分間(ピーク30分間)における1分当たりの歩数(必ずしも連続とは限らない)を分析した。主要アウトカムは、致死的および非致死的な認知症の発症とし、入院記録またはプライマリケア記録と関連付けて収集するか、死亡記録の死因を参照した。歩数との用量反応関連を評価するため、Spline Cox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象者は、平均年齢61.1±7.9歳、男性3万5,040人(44.7%)、女性4万3,390人(55.3%)、アジア人881人(1.1%)、黒人641人(0.8%)、混合人種427人(0.5%)、白人7万5,852人(96.7%)、その他または特定不能629人(0.8%)。・7万8,430人中866人が認知症を発症した(フォローアップ期間中央値:6.9年[6.4~7.5年]、平均年齢:68.3±5.6歳、男性:480人[55.4%]、女性:386人[44.6%]、アジア人:5人[0.6%]、黒人:6人[0.7%]、混合人種:4人[0.4%]、白人:821人[97.6%]、その他:6人[0.7%])。・分析では、1日の歩数と認知症発症との間に非線形の関連が認められた。・最大のリスク低下が認められた歩数は9,826歩(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.39~0.62)であり、リスクの低下が認められた最小の歩数は3,826歩(HR:0.75、95%CI:0.67~0.83)で、リスク低下は最大のリスク低下の50%であった。・偶発的な歩数で最もリスク低下が認められたのは3,677歩(HR:0.58、95%CI:0.44~0.72)、同じく意図的な歩数では6,315歩(HR:0.43、95%CI:0.32~0.58)、ピーク30分間の歩数では1分当たり112歩(HR:0.38、95%CI:0.24~0.60)であった。

1124.

低用量メトトレキサート、悪性黒色腫リスク増大と関連?

 メトトレキサート(MTX)は関節リウマチを含む炎症性疾患の治療で幅広く使用されているが、低用量MTX曝露は悪性黒色腫のリスク増大と関連することが、オーストラリア・アルフレッド病院のMabel K. Yan氏らが行ったシステマティック・レビューとメタ解析の結果、示された。ただし、著者は結果を踏まえて、「リスク増大の絶対値は取るに足らないもので、現実的な影響は無視できるものだ」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月31日号掲載の報告。 研究グループは、MTX曝露が悪性黒色腫のリスク増大と関連するかをシステマティック・レビューとメタ解析で調べた。 創刊~2022年5月12日のMEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.govを検索して、適格試験を特定。低用量MTX曝露被験者と非曝露被験者を比較して悪性黒色腫のオッズ比(OR)またはリスク比(RR)を評価していたケースコントロール試験、コホート試験、無作為化臨床試験(RCT)を適格試験とした。言語については限定しなかった。 2人のレビュアーがそれぞれ試験特性とアウトカムデータを抽出。Meta-analysis of Observational Studies in Epidemiology(MOOSE)ガイドラインを用いて解析を行い、試験の質の評価は、RCTはコクランバイアスリスクツールを用い、コホート試験とケースコントロール試験についてはJoanna Briggs Institute Checklistを用いた。 ケースコントロール試験からのオッズ比と、コホート試験またはRCTからの相対リスクまたはハザード比(HR)をプールし、ランダム効果モデルメタ解析を行った。 事前に規定したアウトカムは、低用量MTX曝露被験者と非曝露被験者を比較した悪性黒色腫のオッズ比、ハザード比、リスク比であった。 主な結果は以下のとおり。・検索により、17試験(RCT 8、コホート試験5、ケースコントロール試験4)が適格として包含された。・主要解析には、12試験・悪性黒色腫1万6,642例がプールされた。MTXの適応症は、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患であった。残りの5試験は不明であった。・曝露群は非曝露群と比較して、悪性黒色腫のリスクがわずかに増大した(プール相対リスク:1.15、95%信頼区間[CI]:1.08~1.22)。しかし、この関連は、最大規模の試験を除外して行った感度解析では維持されなかった(1.11、1.00~1.24)。・類似のリスク推定値は、MTX曝露群vs.免疫調節薬単独群または免疫調節薬+MTX群を比較群とするサブグループ解析や、MTXの適応症が関節リウマチの場合に示唆された。・悪性黒色腫の地理的罹患率を用いて算出した有害必要数(number needed to harm:NNH)は、オーストラリアでは1万8,630例、北米では4万1,425例であった。■関連記事メトトレキサート、重症円形脱毛症に有効

1125.

がん患者は血圧140/90未満でも心不全リスク増/東京大学ほか

 がん患者では、国内における正常域血圧の範囲内であっても心不全などの心血管疾患の発症リスクが上昇し、さらに血圧が高くなるほどそれらの発症リスクも高くなることを、東京大学の小室 一成氏、金子 英弘氏、佐賀大学の野出 孝一氏、香川大学の西山 成氏、滋賀医科大学の矢野 裕一朗氏らの研究グループが発表した。これまで、がん患者における高血圧と心血管疾患発症の関係や、どの程度の血圧値が疾患発症と関連するのか明らかではなかった。Journal of clinical oncology誌オンライン版2022年9月8日号掲載の報告。 本研究では、2005年1月~2020年4月までに健診・レセプトデータベースのJMDC Claims Databaseに登録され、乳がん、大腸・直腸がん、胃がんの既往を有する3万3,991例(年齢中央値53歳、34%が男性)を解析対象とした。血圧降下薬を服用中の患者や、心不全を含む心血管疾患の既往がある患者は除外された。主要アウトカムは、心不全の発症であった。 主な結果は以下のとおり。・平均観察期間2.6年(±2.2年)の間に、779例で心不全の発症が認められた。・米国ガイドラインに準じて分類した正常血圧(収縮期血圧120mmHg未満/拡張期血圧80mmHg未満)と比較した心不全のハザード比は、ステージ1高血圧(130~139mmHg/ 80~89mmHg)が1.24(95%信頼区間:1.03~1.49)、ステージ2 高血圧(140mmHg以上/ 90mmHg以上)が1.99(同:1.63~2.43)と血圧が上がるほど上昇した。・心不全以外の心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心房細動)においても、血圧上昇に伴う発症リスクの上昇が認められた。・この影響は、化学療法などの積極的ながん治療を行っている患者においても認められた。 高血圧は、がん患者においても高頻度に認められる併存症であるが、臨床においては血圧低下(食欲不振に伴う脱水など)が問題となることも多いため、高血圧については積極的な治療が行われない場面もあったと考えられる。それを踏まえて、研究グループは、「本研究において、がん患者では、降圧治療を受けていないステージ1高血圧やステージ2高血圧においても、心不全や他の心血管疾患のリスクが高かった。がん患者においても、適切な血圧コントロールが重要である」とまとめた。

1126.

理解されない患者の苦悩、新たなガイドライン、治療薬に期待

 2022年9月15日、アレクシオンファーマは「重症筋無力症ガイドライン改訂と適正使用に向けて」と題した重症筋無力症(以下、MG)の現状と新たなガイドラインに関するメディアセミナーを開催し、鈴木 重明氏(慶應義塾大学医学部神経内科 准教授)から「MGの現状」について、村井 弘之氏(国際医療福祉大学医学部 脳神経内科学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 脳神経内科 部長)から「2022年5月のMG診療ガイドラインの改訂ポイントとユルトミリス適応追加の意義」について、それぞれ講演が行われた。MGの現状と患者の負担 鈴木氏は講演で、MGの現状、症状、それに伴う患者負担などを解説した。MGは、日本全国で約30,000人の患者がいると推定される最も頻度の高い神経免疫疾患で、近年では、高齢発症の患者が増加傾向にある。患者の20%は眼症状のみの眼筋型、80%が全身型とされており、疲れやすいこと(易疲労性)と筋力低下などの症状に日内変動がみられることが本疾患の特徴とされている。MGの症状で最も代表的なのが眼瞼下垂である。これに加え、目の焦点が合わない(斜視)、物が二重に見える(複視)など目の症状は多く、最初に眼科を受診するケースも多いという。このほか、構音障害や嚥下障害、椅子から立ち上がれない、腕が上がらないなどの全身症状は、患者の日常生活をさまざまな角度から脅かし、呼吸が苦しいなどのケースでは、非常に重篤なクリーゼにつながることもある。これらの症状は、一定ではなく波があることが多い。朝は調子が良く、夜にかけて症状が悪くなる、活動によりすぐ疲れてしまうものの、休むと回復する、などである。症状の波が悪化に向かった場合、レスキュー治療が必要となってしまうことから、患者は次の症状増悪への不安や、先の予定の立てにくさなどに悩まされることになる。また、周囲から理解されない、就労が困難になる、限られた日常診療で気付かれない(症状がないように見えてしまい診断に至らない)など、患者は非常につらい状況に置かれていると鈴木氏は述べた。MG診療ガイドライン改訂のポイント 2022年5月、MG診療ガイドラインが改訂された(『重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022』)。今回の改訂では、(1)MGの新しい分類を示した、(2)MGの診断基準を改訂した、(3)漸増・漸減の高用量経口ステロイドは推奨しないと明記した、(4)難治性MGを定義した、(5)分子標的薬(補体阻害薬)を追加した、(6)LEMS(ランバート・イートン筋無力症候群)を初めて取り上げ診断基準を示した、(7)MGとLEMSの治療アルゴリズムを示した、の7つがポイントであると村井氏は言う。新しいMGの分類では、MGを眼筋型(OMG)と全身型(gMG)に分け、全身型をAChR抗体陽性の早期発症(g-EOMG)、後期発症(g-LOMG)、胸腺腫関連(g-TAMG)、AChR抗体陰性のMuSK抗体陽性(g-MuSKMG)、抗体陰性(g-SNMG)に分けることで全6つに分類された。また、新たな診断基準では、「支持的診断所見(血漿浄化療法によって改善を示した病歴がある)」が加わった。治療を行っていくうえでの基本的な考え方として、患者のQOLやメンタルヘルスを良好に保つことが重要視され、MM-5mg(経口プレドニゾロン5mg/日以下でminimal manifestationsレベル)の治療目標は踏襲、かつ完全寛解や早期MM-5mgに関連しないことから、漸増・漸減による高用量経口ステロイド療法は推奨されないと明記された。難治性MGについては、「複数の経口免疫治療薬による治療」あるいは「経口免疫治療薬と繰り返す非経口速効性治療を併用する治療」を一定期間行っても「十分な改善が得られない」あるいは「副作用や負担のため十分な治療の継続が困難である」場合と定義された。新たなMG診療ガイドラインと治療薬への期待 分子標的薬が加わったことで、治療戦略も変化した。現在では、胸腺摘除はあまり行われなくなり、ステロイドは初期から少量、免疫抑制薬の投与も初期から開始し、ステロイドを増量する代わりにEFT(早期速効性治療戦略)を繰り返していき、症状の波が抑えられない場合、分子標的薬を投与するといった治療の流れに変わってきた。今回の改訂版ガイドラインを参考にすることで、以前のようにステロイドを何十mgも使用することはなくなるだろうと、村井氏は強調した。 MGに対する新たな治療選択肢として加わったユルトミリスは、8週に1回の投与で症状の波を抑え、安定化が期待できることから、頻回な通院が大変な患者に対してとくに期待される薬剤である。村井氏は、今後MGに対してさまざまな分子標的薬が登場することが見込まれており、MG診療は新たなステージに入っている、だからこそMG患者を見逃さず、治療に結び付けていくことが重要だと訴え、講演を締めくくった。

1127.

日本人の脂質値の推移とコントロールの重要性(解説:三浦 伸一郎 氏)

 2022年8月23・30日号のJAMA誌に米国成人の脂質値の推移の研究が報告された。総コレステロール値は年齢調整後、2018年までの10年間で有意に改善していたが、注目されることはアジア人では改善を認めなかったことである。 日本人の脂質値の推移は、「健康日本21(第二次)」の計画の途中経過を見ると、2019年で血清総コレステロール値が240mg/dL以上の割合は男性12.9%、女性22.4%であった(「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」厚生労働省)。この10年間でみると、その割合は、男性で有意な変化はなかったが、女性では有意に増加していた。「健康日本21(第二次)」の脂質異常症(40~79歳)の減少目標は、総コレステロール240mg/dL以上の割合が男性10%、女性17%であり、かなり乖離があるのが現状である。 現在、脳心血管疾患の二次予防では、スタチンを中心とした脂質異常症治療薬による積極的脂質低下療法が実施されるようになってきたが、一次予防に対してはまだ議論の余地がある。JAMA誌の報告のもうひとつの要点は、スタチン服用者のコレステロールのコントロール率は10年間で有意な変化をもたらしていなかったことである。 日本では、2022年7月に日本動脈硬化学会より『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』が発表され、久山町スコアによる予測される10年間の動脈硬化性疾患発症予測モデルが新たに作成されている。一次予防患者では、単にコレステロール値のみでなく、この予測モデルを利用し、個々人に合わせた脂質管理目標値を設定する必要がある。さらに、生活習慣の修正と共に、必要があれば、一次予防でも治療薬による積極的脂質低下療法を考慮すべきと考える。さらに、脂質値を考える場合、総コレステロール値やLDLコレステロール値のみでなく、トリグリセライド値やHDLコレステロール値も考慮に入れた脂質管理が必要である。

1128.

認知症の急性興奮症状を軽減する感覚に基づく介入

 認知症患者の興奮症状の発生を長期間にわたり軽減するための介入として、感覚に基づく介入(Sensory-based Intervention)が一般的に行われている。しかし、この介入の即効性に関するエビデンスは十分ではない。香港理工大学のDaphne Sze Ki Cheung氏らは、認知症患者の興奮症状軽減に対して使用されている感覚に基づく介入を特定し、これら介入の即時効果を調査した。その結果、認知症患者において興奮症状軽減に対する感覚に基づく介入の即時効果を検討した研究はかなり不足しているものの、音楽関連の介入における限られたエビデンスは有望である可能性が示唆された。Aging & Mental Health誌オンライン版2022年9月8日号の報告。 PRISMA ガイドラインに従い、システマティックレビューを実施した。Embase、Medline、PsycINFO、CINAHLより、2022年3月2日までに公表された研究を検索した。介入中または介入開始15分以内に測定した興奮症状の軽減効果を評価した。分析には、英語で公表されたランダム化比較試験または準実験的研究を含めた。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は9件(ランダム化比較試験:2件、クロスオーバー試験:1件、準実験的研究:6件)であった。・すべての研究は西欧諸国で実施されており、対象者総数は246例であった。・音楽関連介入は、7件の研究で調査されており、副作用が発現することなく、興奮症状の軽減に効果的であることが示唆された。・すべての研究において、方法論的制限(単一群デザイン、盲検化、サンプルサイズの小ささ、正確性が不十分に報告された結果など)があった。・認知症患者の興奮症状に対する感覚に基づく介入効果を確認するためには、より厳密な研究が求められる。

1129.

収縮機能の良しあしにかかわらず心不全へのSGLT2阻害薬の有効性を確認、しかし副作用に対する注意は不可欠(解説:桑島巌氏)

 糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬がいまや心不全治療薬として大ブレークしている。心不全でも収縮機能が低下しているHFrEF(heart failure with reduced EF)に対する有効性は多くの大規模臨床試験で証明されていたが、収縮機能が良好な心不全(HFpEF)に対する有用性は明らかではなかった。 しかしDELIVER試験(2021年)とEMPEROR-Preserved試験(2022年)という2つの大規模臨床試験によってHFpEFに対する有効性も確認され、心不全治療薬としての適応範囲は大きく広がる可能性が示された。 本論文は、この2つのtrialに加えて、DAPA-HFとEMPEROR-ReducedというHFrEFに関するtrial、さらに全ての心不全に対する有用性を検証したSOLOIST-WHFの合計5試験、2万1,947例の被験者を対象としてメタ解析したものである。主要エンドポイントは、ランダム化時点から、心血管死または心不全による入院までの期間である。 その結果、HFpEFに対する有用性が2トライアルのメタ解析で明らかになったのみならず、収縮機能が低下した心不全を加えた5つの臨床試験でも、心不全死、および入院に対する予後改善効果が明らかになった。 これにより、SGLT2阻害薬は、糖尿病の有無や収縮機能のいかんにかかわらず心不全全般に有効であるという根拠が示されたことになり、心不全ガイドラインにも大きく影響するであろう。 しかしいずれの試験でも高度の腎障害例が対象例から除外されていることや対象例のeGFR平均値がSOLOIST-WHFの49.7mL/min/1.73m2以外の試験ではいずれも60以上であることは留意しておく必要がある。 本試験はあくまでも心不全の予後に関するメタ解析であり、臨床現場では、尿路感染症、脱水などの個々の有害事象には十分注意すべきである。

1130.

ROSCした患者の血圧管理目標値はどのくらいがよいか?(解説:江口和男氏)

 本研究は、院外心停止で蘇生され生存した昏睡状態の患者さんについて、平均血圧目標を63mmHgで保つ群と、77mmHgで保つ群にランダム化し予後を比較するという研究であった。主要アウトカムはあらゆる原因による死亡または神経学的予後不良状態での90日以内の退院の複合、2次アウトカムは血清神経特異エノラーゼ(NSE)レベル(高いと予後不良)、あらゆる原因による死亡、Montreal Cognitive Assessmentの点数(0~30の範囲で高いと認知機能良好)、そして、3ヵ月におけるmodified Rankin scaleおよびCerebral Performance Category(CPC)であった。 本研究の対象者の平均年齢は62~3歳であるが、18歳から90歳と広い年齢層にわたっている。対象者の8割が男性、約9割にバイスタンダーCPRが施行され、心停止の原因はほとんどが心原性で、約85%が電気ショックで蘇生可能な不整脈(VfやPulseless VT)であった。本研究のクリニカルクエスチョンは、脳保護を行うのに平均血圧を高め(77mmHg)に保つのがよいか、低め(63mmHg)がよいかというものであった。ちなみに、これらの平均血圧目標値を収縮期、拡張期血圧に直してみると、たとえば、平均血圧77mmHg→110/60mmHg、平均血圧63mmHg→84/52mmHg程度となる。 ガイドライン(Soar J, et al. Resuscitation. 2020;156:A80-A119.)では、ショック患者の血圧目標値として平均血圧65mmHg以上に保つと記載されており、2021年版ではAvoid hypotension (< 65 mmHg). Target mean arterial pressure (MAP) to achieve adequate urine output and normal or decreasing lactate(Nolan JP, et al. Intensive Care Med. 2021;47:369-421.)と記載されている。これまでは、観察研究や小規模のRCTしかなく、高血圧や動脈硬化の進んだ患者では高めにキープすべきという報告や、高めに保つために増量したカテコラミンにより催不整脈作用があった等、実際にどのくらいのレベルに血圧を保つのがよいかcontroversialであった。 本研究は各群400例弱と十分な症例数があり、この議論に決着をつけるのに十分なエビデンスが得られたと言えよう。結果として、急性冠症候群など心原性の心肺停止患者において、高血圧既往者においても高い血圧目標値のほうがよいという結果は得られなかった。一方で高い目標値の群ではカテコラミンの使用量は多かったものの不整脈などの有害事象の頻度を増やすこともなかった。この結果はseptic shock、vasodilatory shockを対象としたメタ解析の結果(Lamontagne F, et al. Intensive Care Med. 2018;44:12-21. )と同様であった。 したがって、ショックで心肺蘇生した昏睡状態の患者においては、ガイドラインどおりの平均血圧<65mmHgさえ避ければ、65mmHgぎりぎりでも77mmHgと高めの血圧値でも生命予後や神経学的予後に差がないということが明らかになった。ICUやCCUに入室中の患者であっても、血圧は刻々と変動するものであり、上記の2つの平均血圧目標に厳密に管理できるものでもなく、ある程度の血圧変動の幅は許容範囲ということになる。高血圧患者のように高くなりすぎて臓器障害が進行するというセッティングでもない。尿量が保てて、乳酸値が低下していく程度の臓器潅流を維持できる程度の血圧が重要であるという2021年版ガイドラインの結果を支持するものであった。もちろん、蘇生後とはいえ個別の治療が重要であるが、蘇生後の血行動態モニタリングと管理目標において、ガイドラインに加えられるであろう重要なエビデンスである。

1131.

アトピー性皮膚炎、JAK阻害薬はVTE発生と関連するか?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者、とくにJAK阻害薬による治療を受ける患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高くなるなのか。これまで明らかになっていなかったこの懸念について、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らがシステマティック・レビューとメタ解析を行い、現状で入手可能なエビデンスで、ADあるいはJAK阻害薬とVTEリスク増大の関連を示すものはないことを明らかにした。著者は、「今回の解析結果は、臨床医がAD患者にJAK阻害薬を処方する際の参考となるだろう」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。 研究グループは、ADとVTE発生の関連を調べ、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発生リスクを評価した。 MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceのデータベースを、それぞれ創刊から2022年2月5日まで、言語や地理的制限を設けずに検索。ADとVTEの関連を調べたコホート試験、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTEイベントを報告していた無作為化比較試験(RCT)を適格とした。最初に検索した論文の約0.7%が適格基準を満たした。 データは、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)ガイドラインに準拠して抽出・包含し、包含したコホート試験とRCTのバイアスリスクは、Newcastle-Ottawa ScaleおよびCochrane Risk of Bias Tool 2で評価。ランダム効果モデル解析で、VTE発生の統合ハザード比(HR)およびリスク差を算出し、評価した。 主要評価項目は、VTE発生とADのHR、およびJAK阻害薬治療を受けるAD患者とプラセボまたはデュピルマブ治療を受けるAD患者のVTE発生のリスク差であった。 主な結果は以下のとおり。・コホート試験2件とRCT 15件の被験者46万6,993例が包含された。・メタ解析では、ADとVTE発生の有意な関連は認められなかった(HR:0.95、95%信頼区間[CI]:0.62~1.45、VTE発生率:0.23イベント/100患者年)。・全体では、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発症者は0.05%(5,722例中3例)であったのに対して、プラセボまたはデュピルマブ治療を受けるAD患者のVTE発症者は0.03%(3,065例中1例)であった(Mantel-Haenszel検定によるリスク差:0[95%CI:0~0])。・VTE発生率は、JAK阻害薬を受けるAD患者で0.15イベント/100患者年、プラセボを受けるAD患者では0.12イベント/100患者年であった。・これらの解析所見は、4種のJAK阻害薬(アブロシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、SHR0302)においても同様だった。

1132.

血管外ICD、誘発された心室性不整脈で高い除細動成功率/NEJM

 血管外植込み型除細動器(ICD)は、主に従来の経静脈ICDの血管リスクを回避するために開発が進められている。米国・メイヨークリニックのPaul Friedman氏らは、Extravascular ICD Pivotal Studyにおいて、血管外ICD(Medtronic製)は安全に植込みが可能で、植込み時に誘発された心室性不整脈を検出してこれを高率に停止でき、重大な合併症の頻度は高くないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月28日号に掲載された。17ヵ国46施設の非無作為化単群市販前試験 本研究は、血管外ICDの長期的な安全性と有効性の評価を目的とする前向きの非無作為化単群市販前試験であり、2019年9月~2021年10月の期間に、17ヵ国46施設で参加者の登録が行われた(Medtronicの助成による)。 対象は、国際的なガイドラインに基づき、1次または2次予防としてのICDに関して、クラスIまたはIIaの適応がある患者とされた。徐脈時ペーシングまたは心臓再同期療法を要する患者や、胸骨切開を受けた患者は除外された。被験者は、胸骨下に1本のリードを植え込む血管外ICDシステムの留置を受けた。 有効性の主要エンドポイントは、血管外ICD植込み時の除細動の成功とされた。除細動が成功した患者の割合の片側97.5%信頼区間(CI)の下限が88%を超えた場合に、有効性の目標を達成したと判定された。 安全性の主要エンドポイントは、6ヵ月時に、血管外ICDのシステムまたは手技に関連する重大な合併症がない場合とされた。このような合併症がない患者の割合の片側97.5%CIの下限が79%を超えた場合に、安全性の目標を達成したと判定された。抗頻拍ペーシング成功率は50.8% 356例が登録され、316例(平均[±SD]年齢53.8±13.1歳、女性25.3%)が血管外ICDの対象となり、このうち40例が血管外ICDの施行前に脱落した。ベースラインの平均BMIは28.0±5.6、平均左室駆出率は38.9±15.4だった。 植込み時に心室性不整脈が誘発され、除細動テストプロトコルを完了した302例のうち、除細動が成功した患者の割合は98.7%(片側97.5%CIの下限は96.6%、達成目標である88%との比較でp<0.001)であり、有効性の目標が達成された。316例中299例(94.6%)はICDシステムが作動した状態で退院した。 6ヵ月時に、Kaplan-Meier法によるシステム・手技関連の重大な合併症がなかった患者の割合は92.6%(片側97.5%CIの下限は89.0%、達成目標である79%との比較でp<0.001)であり、安全性の目標が達成された。植込み手技中の重大な合併症は報告がなかった。6ヵ月時に、316例中23例(7.3%)で25件の重大な合併症が観察された。 一般化推定方程式で評価された抗頻拍ペーシングの成功率は50.8%(95%CI:23.3~77.8)であった。一方、合計で29例が、81件の不整脈エピソードに対し118回の不適切なショックの作動を受けていた。また、10.6ヵ月の平均追跡期間中に、8件で血管外ICDを交換せずにシステムの摘出が行われた。 著者は、「本研究の結果は、血管外ICDでは胸骨下に電極を留置することで、血管外留置の利点を保持しつつ、pause-preventionペーシングや抗頻拍ペーシングが可能となり、低エネルギーでの除細動がもたらされるとの仮説を支持するものである」としている。

1133.

コロナ潜伏期間は変異株ごとに短縮、年齢による違いも~メタ解析

 新型コロナウイルスの変異株の進化に伴い、アルファ株からオミクロン株へ、その潜伏期間が徐々に短縮していることが示唆された。また、小児および高齢患者で潜伏期間が長い傾向がみられている。中国・北京大学のYu Wu氏らは、それぞれの変異株によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の潜伏期間を体系的に評価することを目的にシステマティックレビューとメタ解析を実施。JAMA Network Open誌オンライン版2022年8月22日号に報告した。 2019年12月1日~2022年2月10日に、PubMed、EMBASE、ScienceDirectが検索され、PRISMAガイドラインに基づきレビュー担当者が適格な研究からデータを個別に抽出した。パラメータ等は、変量効果モデルによるメタ解析から明らかにされた。潜伏期間は感染から徴候や症状の発症までの時間と定義され、主要評価項目はSARS-CoV-2株ごとの潜伏期間の平均推定値とされた。 主な結果は以下のとおり。・8,112例を対象とした合計142件の研究が含まれた。・潜伏期間について、プールされた平均推定値は6.57日(95%信頼区間[CI]:6.26~6.88、範囲:1.80~18.87日)だった。・アルファ、ベータ、デルタ、およびオミクロン株の潜伏期間について、それぞれ1研究(6,374例)、1研究(10例)、6研究(2,368例)、および 5研究(829 例)のデータが収集された。・変異株ごとにみた平均潜伏期間は、アルファ株で5.00日(95%CI:4.94~5.06日)、ベータ株で4.50日(95%CI:1.83~7.17 日)、デルタ株は4.41日(95%CI:3.76~5.05日)、およびオミクロン株で3.42日(95%CI:2.88~3.96日)だった。・年齢および重症度ごとにみた平均潜伏期間は、高齢患者(60歳以上)で7.43日(95%CI:5.75~9.11日)、小児患者(18 歳以下)で8.82日(95%CI:8.19~9.45 日)だった。また、重症でない患者では 6.99 日(95%CI:6.07~7.92日)、重症の患者では6.69日(95%CI:4.53~8.85日)だった。  著者らは、本結果は新型コロナウイルスがCOVID-19パンデミックを通して継続的に進化および変異し、さまざまな形の感染性および病原性を持つ変異株を生成したことを示唆しているとし、変異株の潜伏期間を特定することは、隔離期間を決定するうえで重要な要素だとしている。

1134.

オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰(解説:寺田教彦氏)

 ニルマトレルビルは、本邦では商品名「パキロビッドパック(以下パキロビッド)」としてCOVID-19重症化予防薬として用いられている。「パキロビッド」はニルマトレルビルをリトナビルでブーストした薬剤であり、効果的な経口抗ウイルス薬である。ただし、リトナビル成分のため、併用禁忌や併用注意の薬剤が多いことが知られており、投薬時には投薬歴を確認する必要がある。 同薬剤は、症状を伴うCOVID-19に罹患した、重症化リスクの高いワクチン未接種の成人を対象とした試験(EPIC-HR試験)においてプラセボと比較して、入院または死亡のリスクを88%低減させ、高い有効性を示した(Hammond JS, et al. N Engl J Med. 2022;386:1397-1408.)。有効性の直接比較はされていないが、同様の患者集団で報告されたレムデシビルの有効性に匹敵し(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)、モルヌピラビルの有効性に勝る可能性もあり(Jayk Bernal A, et al. N Engl J Med. 2022;386:509-520.)、本邦でも外来患者で重症化リスクの高い患者に用いられている。 2022年9月現在、新型コロナウイルスはオミクロン株が流行しているが、EPIC-HR試験はデルタ株流行下で行われた研究である。ニルマトレルビルのオミクロン株に対する抗ウイルス薬は実験室上のデータではあるが、BA.2.12.1、BA.4、BA.5の各系統の増殖を効果的に抑制することが示されたため、(Takashita E, et al. N Engl J Med. 2022;387:468-470.)、オミクロン株流行下でも有効性を期待され使用されていた。 ただし、オミクロン株流行下での同薬剤の有効性を臨床現場で評価したデータではないため、オミクロン株流行中のニルマトレルビル投与はCOVID-19重症化予防にどの程度寄与するかはエビデンスが乏しかった。今回の研究で、オミクロン株が急増しているイスラエルで、ニルマトレルビルの無作為化対照試験が行われ、オミクロン株でも重症化予防効果を確認することができた。さらに、実臨床で参考にできるポイントとして、ワクチン接種や罹患に伴う免疫状況や年齢によるサブグループ解析が行われている点がある。 EPIC-HR試験の対象と本邦の執筆時のCOVID-19罹患者の差異として、流行株が異なること以外にワクチン接種の有無があるだろう。本邦では新型コロナウイルスワクチン接種は進み、重症化する患者の減少に寄与した。しかし、ワクチンを接種していても高齢者や重症化リスクの高い患者の中には咽頭痛や倦怠感が強くなり、入院を要する患者がいることも事実である。2022年9月の本邦ではワクチン未接種者、COVID-19未罹患者の診療を行うことはあるが、それよりもワクチン接種済み患者や、COVID-19罹患歴のある患者の診療の機会のほうが多い。ワクチン接種歴のある患者についても、ニルマトレルビル投与は有意な重症化予防効果が得られるかは不明確であったが、本研究では免疫状態に関してもサブグループ解析を実施しており参考にできる。 本研究で、65歳以上の患者でCOVID-19による入院率は、ニルマトレルビル投与患者では14.7例/10万人日に対して、非投与群では58.9/10万人日(補正ハザード比:0.27、95%CI:0.15~0.49)であり、死亡ハザード比は0.21(95%CI:0.05~0.82)と有意差が認められた。 それに対して40~64歳の患者に関しては、COVID-19による入院率は、ニルマトレルビル投与患者では15.2例/10万人日に対して、非投与群では15.8/10万人日(補正ハザード比 0.74、95%CI:0.35~1.58)であり、死亡ハザード比は1.32 (95%CI:0.16~10.75)だった。 以上より、本文では65歳以上の患者では、ニルマトレルビル投与により入院率や死亡率は低下をしたが、65歳未満の成人に関しては明らかなメリットは判明しなかったと結論付けている。 確かに、上記の40~64歳未満の患者では有意差はないが、免疫状態も加味したサブグループ解析では、結果がやや異なる。ニルマトレルビルを投与された40~64歳患者で、入院調整ハザード比は免疫を有している患者では1.13(95%CI:0.50~2.58)ではあるが、免疫のない患者では0.23(95%CI:0.03~1.67)であった。 本研究の結果から、「パキロビッド」をどのような患者に用いるかについて考える。 臨床的な問題としては、重症化リスクにはさまざまな因子があり、ワクチン接種状況や年齢などの因子も関与するため、画一的に抗ウイルス薬の適応は決めることは難しいが、NIHのCOVID-19治療ガイドライン(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints Last Updated: May 13, 2022)では、抗ウイルス薬の使用を優先させるべきリスク集団を提案している。 今回の結果を参考にすると、65歳以上の重症化リスクがある場合はワクチン接種済(グループ3)でも、ワクチン接種なし(グループ2)でも投与のメリットが確認され、40~64歳でも重症化のリスクはあるがワクチン未接種(グループ2)ならば投与のメリットはありそうである。 最終的には個々の症例で検討する必要はあるが、本研究結果からも抗ウイルス薬の使用を優先させるべきリスク集団で3以上のグループで「パキロビッド」の投与は理にかなっていそうである。 流行株がオミクロン株に変化し、デルタ株と比較して入院を要したり重症化したりする率は低下してきた(Menni C, et al. Lancet. 2022;399:1618-1624.)。しかし、オミクロン株でもCOVID-19に伴い原疾患が悪化したり、もともと身体機能に余力が乏しい患者では入院を要したりすることもあり、内服で高い重症化予防率を示す「パキロビッド」は患者の重症化および入院予防の一助になる。抗ウイルス薬は高価な薬剤であり、また副作用を起こすこともあるため、慎重に適応を考える必要はあるが、投与が好ましい患者には適切に使われることを期待したい。 また、オミクロン株に対する抗ウイルス薬の効果に関しては、本論文以降に発表された研究で、オミクロン株BA.2流行中の香港において、モルヌピラビルとニルマトレルビル・リトナビル投与により、死亡、疾患進行、酸素療法をどの程度回避できるかの報告がある(Wong CKH, et al. Lancet Infect Dis. 2022 Aug 24. [Epub ahead of print])。コントロール群と比較してモルヌピラビル群は52%、ニルマトレルビル・リトナビル群は66%死亡リスクが減少していた。抗ウイルス薬のhead-to-headの比較ではないが、こちらの結果からも重症化リスクの高い外来患者では、可能な限り「パキロビッド」が投与できるように調整してみることが好ましいかもしれない。

1135.

SGLT-2阻害薬、全心不全患者の心血管死・入院を抑制/Lancet

 心不全患者に対するSGLT-2阻害薬は、駆出率や治療施設の違いにかかわらず、心血管死または心不全による入院リスクを有意に低減することが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのMuthiah Vaduganathan氏らが、駆出率が軽度低下または駆出率が保持された心不全をそれぞれ対象にした大規模試験「DELIVER試験」「EMPEROR-Preserved試験」を含む計5試験、被験者総数2万1,947例を対象にメタ解析を行い明らかにした。SGLT-2阻害薬は、駆出率が低下した心不全患者の治療についてはガイドラインで強く推奨されている。しかし、駆出率が高い場合の臨床ベネフィットは確認されていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「SGLT-2阻害薬は、駆出率や治療施設の違いにかかわらず、すべて心不全患者の基礎的治療とみなすべきである」と述べている。Lancet誌2022年9月3日号掲載の報告。幅広い心不全患者を対象に調査 研究グループは、駆出率が低下または保持されている心不全患者を対象とした2つの大規模試験「DELIVER試験」「EMPEROR-Preserved試験」と、駆出率が低下した心不全患者を対象とした「DAPA-HF試験」「EMPEROR-Reduced試験」、駆出率を問わず心不全の悪化で入院した患者を対象とした「SOLOIST-WHF試験」について、事前規定のメタ解析を行い、心血管死および患者サブグループにおけるSGLT-2阻害薬の治療効果を調べた。 各試験データと共通エンドポイントを用い、固定効果メタ解析を行い、心不全の種々のエンドポイントに対するSGLT-2阻害薬の有効性を検証した。 今回のメタ解析の主要エンドポイントは、無作為化から心血管死または心不全による入院までの時間だった。また、注目されるサブグループで、主要エンドポイントの治療効果の不均一性を評価した。心血管死/心不全入院を20%低減 「DELIVER試験」と「EMPEROR-Preserved試験」の被験者総数1万2,251例において、SGLT-2阻害薬は心血管死または心不全による入院を低減し(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.73~0.87)、各イベントについても一貫して低減が認められた(心血管死のHR:0.88、95%CI:0.77~1.00、心不全による初回入院のHR:0.74、95%CI:0.67~0.83)。 より幅広い被験者を対象とした全5試験の被験者総数2万1,947例における解析でも、SGLT-2阻害薬は心血管死または心不全による入院リスクを低減し(HR:0.77、95%CI:0.72~0.82)、心血管死(0.87、0.79~0.95)、心不全による初回入院(0.72、0.67~0.78)、全死因死亡(0.92、0.86~0.99)のリスクも低減することが認められた。 これらの治療効果は、駆出率が軽度低下した心不全または保持された心不全を対象とした2試験において、また5試験すべてにおいても一貫して観察された。さらに、主要エンドポイントに関するSGLT-2阻害薬の治療効果は、評価した14のサブグループ(駆出率の違いなどを含む)でも概して一貫していた。

1136.

人工関節置換術後のVTE予防、アスピリンvs.エノキサパリン/JAMA

 股関節または膝関節の変形性関節症で人工関節置換術を受けた患者における静脈血栓塞栓症(VTE)の予防では、アスピリンはエノキサパリンと比較して、90日以内の症候性VTEの発現率が統計学的に有意に高く、死亡や大出血、再入院、再手術の頻度には差がないことが、オーストラリア・インガム応用医学研究所のVerinder S. Sidhu氏らが実施した「CRISTAL試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年8月23日号に掲載された。オーストラリアのレジストリ内クラスター無作為化非劣性試験 CRISTAL試験は、人工股関節置換術(THA)および人工膝関節置換術(TKA)に伴うVTEの予防における、アスピリンのエノキサパリン(低分子量ヘパリン)に対する非劣性の検証を目的とするレジストリ内クラスター無作為化クロスオーバー試験であり、2019年4月~2020年12月の期間に、オーストラリアの31の病院で参加者の登録が行われた(オーストラリア連邦政府の助成を受けた)。 クラスターは、参加施設募集の前年に年間250件以上のTHAまたはTKAを行っている病院とされた。対象は、年齢18歳以上で、試験参加施設でTHAまたはTKAを受けた患者であった。術前に抗凝固薬の投与を受けた患者や、試験薬が禁忌の患者は除外された。 試験参加施設は、THA施行後は35日間、TKA施行後は14日間、アスピリン(100mg/日、経口投与)またはエノキサパリン(40mg/日、皮下投与)の投与を行う群に無作為に割り付けられた。また、試験参加施設は、無作為割り付けされた薬剤群で目標登録患者数が達成された時点で、試験薬をクロスオーバーするよう求められた。 主要アウトカムは、術後90日以内の症候性VTE(肺塞栓症[PE]、膝下または膝上の深部静脈血栓症[DVT])であり、非劣性マージンは1%とされた。副次アウトカムは、90日以内の死亡や大出血など6項目が設定された。解析は、クロスオーバー前の無作為化された薬剤群で行われた。 本試験は、2回目の中間解析(2020年12月)で停止規則が満たされたため、データ安全性監視委員会により患者の登録の中止が勧告され、早期中止となった。膝下DVTがアスピリン群で有意に多い 本試験の当初の目標登録患者数は1万5,562例(各群251例ずつ×31施設)で、9,711例(62%)(年齢中央値68歳、女性56.8%)が登録された時点で中止となった。このうち9,203例(95%)が試験を完遂した。アスピリン群に5,675例、エノキサパリン群に4,036例が割り付けられた。 術後90日以内に、256例で症候性VTEが発現し、PEが79例、膝上のDVTが18例、膝下のDVTは174例で認められた。 90日以内の症候性VTE発現率は、アスピリン群が3.45%(187/5,416例)、エノキサパリン群は1.82%(69/3,787例)であり(推定群間差:1.97%、95%信頼区間[CI]:0.54~3.41)、アスピリン群の非劣性基準は満たされず、エノキサパリン群で統計学的に有意な優越性が示された(p=0.007)。 主要アウトカムの構成要件のうち、90日以内のPE、PEとDVTの双方、膝上のDVTの発現には有意差はなかったが、全DVT(p=0.003)と膝下のDVT(p=0.004)がエノキサパリン群で有意に少なかった。 また、副次アウトカムである90日以内の死亡、大出血、再入院、再手術、6ヵ月以内の再手術、薬剤アドヒアランスには、両群間に有意な差は認められなかった。 著者は、「最近のVTE予防に関する国際的なコンセンサス会議のガイドラインでは、アスピリンの使用が強く推奨されているが、これは症候性VTEと無症候性VTEを区別していない後ろ向き観察研究を多く含むネットワークメタ解析に基づいている」と指摘し、「これらの結果の解釈では、両群間のVTE発生の差は主に膝下のDVTの差によるもので、膝下DVTは膝上DVTやPEに比べ臨床的な重要性が低いことから、今回の知見の臨床的重要性は明確ではない」としている。

1137.

糖尿病性神経障害性疼痛、併用薬による効果の違いは?/Lancet

 糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)に対する鎮痛効果は、アミトリプチリン+プレガバリン、プレガバリン+アミトリプチリン、デュロキセチン+プレガバリンで同等であり、単剤療法で効果不十分な場合に必要に応じて併用療法を行うことで、良好な忍容性と優れた鎮痛効果が得られることが、英国・シェフィールド大学のSolomon Tesfaye氏らが英国の13施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検クロスオーバー試験「OPTION-DM試験」の結果、示された。DPNPに対しては、多くのガイドラインで初期治療としてアミトリプチリン、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチンが推奨されているが、最適な薬剤あるいは併用すべきかについての比較検討はほとんど行われていなかった。OPTION-DM試験は、DPNP患者を対象とした過去最大かつ最長の直接比較のクロスオーバー試験であった。Lancet誌2022年8月27日号掲載の報告。DPNP患者140例を対象に、DN4の7日間平均疼痛スコアを評価 OPTION-DM試験の対象は、改訂トロント臨床神経障害スコア(mTCNS)が5以上の遠位対称性多発神経障害、および神経障害性疼痛4項目質問票(DN4)で7日間の1日平均疼痛(NRS)スコア(範囲0~10)が4以上の神経障害性疼痛を3ヵ月以上有する18歳以上のDPNP患者である。施設で層別化したブロックサイズ6または12の置換ブロック法を用い、アミトリプチリン+プレガバリン(A-P)、プレガバリン+アミトリプチリン(P-A)、デュロキセチン+プレガバリン(D-P)の3つの治療法を各16週間、次の順序で投与する6通りの投与群に、1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。A-P→D-P→P-A、A-P→P-A→D-P、D-P→A-P→P-A、D-P→P-A→A-P、P-A→D-P→A-P、P-A→A-P→D-P。 3つの治療法はいずれも、第1治療期6週間、第2治療期10週間から成り、第1治療期は単剤療法(A-PではA、D-PではD、P-AではP)を行い、6週後に7日間平均NRSスコアが3未満の奏効例は第2治療期も単剤療法を継続し、非奏効例では第2治療期に併用療法を行った。各治療期は最初の2週間を用量漸増期として、アミトリプチリン25mg/日、デュロキセチン30mg/日、プレガバリン150mg/日から投与を開始し、1日最大耐量(アミトリプチリン75mg/日、デュロキセチン120mg/日、プレガバリン600mg/日)に向けて用量を漸増した。 主要評価項目は、各治療法の最終週(16週時)に測定された7日間平均NRSスコアの治療群間差であった。 2017年11月14日~2019年7月29日に252例がスクリーニングされ、140例が6通りの治療順に無作為に割り付けられた。3つの治療法(A-P、P-A、D-P)で有効性に差はなし 無作為化された140例中、130例がいずれかの治療法を開始し(84例が少なくとも2つの治療法を完遂)、主要評価項目の解析対象となった。 16週時の7日間平均NRSスコア(平均±SD)はいずれも治療法も3.3±1.8であり、ベースライン(130例全体で6.6±1.5)から減少した。各治療法の平均差は、D-P vs.A-Pで-0.1(98.3%信頼区間[CI]:-0.5~0.3)、P-A vs.A-Pで-0.1(-0.5~0.3)、P-A vs.D-Pで0.0(-0.4~0.4)で、有意差は認められなかった。併用療法を受けた患者では、平均NRSスコアの減少が単剤療法を継続した患者より大きかった(1.0±1.3 vs.0.2±1.5)。 有害事象は、3つの治療法を比較すると(A-P vs.D-P vs.P-A)、P-Aではめまい(12% vs.16% vs.24%、p=0.036)、D-Pでは悪心(5% vs.23% vs.7%、p=0.0011)、A-Pでは口渇(32% vs.8% vs.17%、p=0.0003)の発現率が有意に高かった。

1138.

メポリズマブ、好酸球性喘息の小児患者で増悪を低減/Lancet

 都市部の低所得地域に居住する増悪を起こしやすい好酸球性喘息の小児患者において、インターロイキン-5(IL-5)に対するヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブによる表現型指向の治療法は、以前に成人で観察された有効性に比べれば劣るものの、プラセボとの比較で喘息増悪の回数の有意な減少をもたらすことが、米国・ウィスコンシン大学医学公衆衛生大学院のDaniel J. Jackson氏ら国立アレルギー・感染病研究所(NIAID)Inner City Asthma Consortiumが実施した「MUPPITS-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年8月13日号に掲載された。米国の都市部9施設の無作為化プラセボ対照比較試験 MUPPITS-2試験は、増悪を起こしやすい好酸球性喘息の小児患者の治療における、ガイドラインに基づく治療へのメポリズマブの上乗せ効果の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、米国の都市部9ヵ所の医療センターが参加し、2017年11月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(米国NIAIDとGlaxoSmithKlineの助成を受けた)。 対象は、年齢6~17歳、社会経済的に恵まれない地域に住み、増悪を起こしやすい喘息(前年に2回以上の増悪と定義)を有し、血中好酸球数≧150個/μLの患者であった。 被験者は、ガイドラインに基づく治療に加え、メポリズマブ(6~11歳:40mg、12~17歳:100mg)またはプラセボを4週ごとに皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、52週の投薬が行われた。患者、担当医、アウトカムの測定値を収集する研究者は、割り付け情報を知らされなかった。 主要アウトカムは、intention-to-treat集団における、52週の投与期間に全身コルチコステロイドによる治療を受けた重度の喘息増悪の数(増悪率/人年)とされた。また、鼻洗浄検体を用いたトランスクリプトミクスによるモジュール解析により、治療効果のメカニズムの評価が行われた。高リスク小児で増悪を回避するための新たな標的を確認 9都市(ボストン、シカゴ、シンシナティ、ダラス、デンバー、デトロイト、ニューヨーク、セントルイス、ワシントンDC)から290例(intention-to-treat集団)が登録され、メポリズマブ群に146例、プラセボ群に144例が割り付けられた。248例が試験を完遂した。全体の年齢中央値は10.0歳(IQR:9.0~13.0)、女性が43%で、人種は黒人/アフリカ系米国人が70%、白人が11%、民族はヒスパニック/ラテン系が25%であった。 52週の試験期間中に発生した喘息増悪の平均回数(増悪率/人年)は、メポリズマブ群が0.96(95%信頼区間[CI]:0.78~1.17)と、プラセボ群の1.30(1.08~1.57)に比べ有意に少なかった(率比:0.73、95%CI:0.56~0.96、p=0.027)。 喘息の初回増悪までの期間は、両群間に差はみられなかった(ハザード比:0.86、95%CI:0.63~1.18、p=0.36)。また、事後解析では、プラセボ群で強力な季節性の増悪パターンが認められたが、このパターンはメポリズマブによって有意に変化し(p=0.0006)、とくに秋の増悪のピークが鈍化した(オッズ比:0.64、95%CI:0.42~0.98、p=0.041)。 試験期間中に発現または悪化した有害事象は、メポリズマブ群が146例中42例(29%)、プラセボ群は144例中16例(11%)で認められた。注射部位反応はそれぞれ19例(13%)および7例(5%)で、皮膚/皮下組織障害は10例(7%)および1例(<1%)で、消化器障害は7例(5%)および3例(2%)で発現した。アナフィラキシーが5件(メポリズマブ群3件、プラセボ群2件)発生したが、いずれも試験薬との関連はなかった。 気道トランスクリプトーム解析では、メポリズマブ群とプラセボ群における喘息増悪リスクの差の促進因子として、好酸球と上皮に関連する複数の炎症経路が同定された。 著者は、「メポリズマブによる補助的治療は喘息の増悪を抑制したが、これ以外の喘息のアウトカムには影響を及ぼさなかった」とまとめ、「気道トランスクリプトーム解析により、これらの高リスクの小児における増悪による疾病負担を正確かつ効果的に軽減する可能性のある新たな標的が確認された。また、臨床試験で十分な数の被験者がおらず、喘息への罹患や死亡のリスクが最も高い都市部の黒人およびヒスパニック系の小児において、生物学的製剤や他の介入への治療反応を評価することの重要性が明らかとなった」としている。

1139.

せん妄ガイドライン2022年版第2版の主な改訂点を解説

 日本サイコオンコロジー学会 / 日本がんサポーティブケア学会編『がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ 1 がん患者におけるせん妄ガイドライン 2022年版』(金原出版)を刊行した。2019年の初版に続く改訂2版となる。改訂作業にあたった京都大学医学部附属病院緩和ケアセンター/緩和医療科 精神科医の谷向 仁氏に、主な変更点やポイントを聞いた。 がん患者さんは精神的な問題を抱えることが多いのですが、その対応は医療者個人の診療経験などによってばらつきが認められています。この経験による判断はもちろん大切なのですが、一方でさまざまなバイアスによる影響も懸念されます。 『がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズ』は、がん患者さんの精神的問題に対する対応法の基本となる部分の均てん化を図ることを目的として、多くの医療分野で近年使用されている「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」に基づきまとめられています。 2019年の『せん妄ガイドライン』初版にはじまり、今夏刊行の『患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン』『遺族ケアガイドライン』、そして現在シリーズ4冊目となる不安と抑うつをテーマとした『がん患者の気持ちのつらさ(仮)』を作成中です。せん妄ガイドラインはオピオイドほかがん特有のトピックを主に解説 せん妄とは、身体的異常や使用薬剤が直接的原因となって引き起こされる意識障害です。あらゆる疾患で起こり得るものですが、がん患者ではその頻度が高く、特に終末期がん患者では80~90%に認められると報告されています。また、骨転移に伴う高カルシウム血症や脳転移、症状緩和の目的で使用されるオピオイドやステロイドなど、がん患者に特有ともいえる背景を有します。さらには、がん患者のみならず家族も含めてのケアが重要となります。 せん妄ガイドラインではこのようながん特有のせん妄に関するトピックに対して、がん患者でのこれまでの質の高い研究報告を中心にシステマティックレビューを行い、検討したものをまとめています。せん妄ガイドライン改訂版ではせん妄予防視点の臨床疑問を追加 せん妄ガイドライン2019年版を発刊以後、その内容について多くの紹介の機会を頂きました。その際、さまざまなコメントと共に、今後の改定に際しての要望も頂いておりました。今回のせん妄ガイドライン改訂版では、それらの貴重なご意見を可能な限り採用して補強するように努めました。せん妄ガイドライン第2版の主な改訂点は主に以下の通りです。1)総論5「終末期せん妄のケアとゴール」の章を新設2)総論6「病院の組織としてせん妄にどう取り組むか」の章を新設3)III章の臨床疑問に「1.予防のための非薬物療法」「2.予防のための抗精神病薬」「6.症状軽減のためのトラゾドン」の3つを追加4)IV章「臨床の手引き」を新設 せん妄は発症後の対応が中心であった一昔前と異なり、近年では「せん妄を発症させない」予防が非常に重要と考えられるようになってきています。2020年度診療報酬改定で新設された「せん妄ハイリスクケア加算」はまさにせん妄予防を評価するという流れを反映したものです。せん妄予防では医師、看護師、薬剤師など多職種によるチーム医療、そして、組織としての取り組みが非常に重要となります。 また、ガイドラインの結果を臨床にどのように活かすことができるかという具体的な手引きの要望も多く聞かれたことから、まず薬物療法についての解説を加えました。さらに、可逆性のせん妄対応とは大きく異なり、不可逆性の転帰が多い終末期せん妄に対する解説を充実させました。せん妄ガイドラインをがん診療に携わるすべての医療者に がん患者さんのせん妄に初めに遭遇するのは、せん妄診療を行う精神科医や心療内科医ではなく、がん治療に携わる医療者です。また、予防、早期発見と対応(原因検索とその対応)が大切であり、これらをチームで展開することが求められます。がん治療に携わる医師はもちろんのこと、看護師、薬剤師の方々などがん医療に携わるすべての医療者に手に取っていただき、せん妄ガイドラインを日々の診療に役立てていただきたいと思っています。書籍紹介『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2022年版』

1140.

急性期脳梗塞、遠隔虚血コンディショニングで機能予後改善/JAMA

 中等症の急性期脳梗塞成人患者において、症状発現後48時間以内に両側上肢を電子自動制御カフで圧迫・解除を繰り返す遠隔虚血コンディショニング(remote ischemic conditioning:RIC)治療を加えることで、通常の治療のみと比較し90日後の神経学的機能良好の可能性が有意に増加することを、中国・人民解放軍北部戦区総医院のHui-Sheng Chen氏らが、中国の55施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験「Remote Ischemic Conditioning for Acute Moderate Ischemic Stroke Study:RICAMIS試験」の結果、報告した。これまで、前臨床試験でRICが脳梗塞を抑制し神経学的アウトカムを改善することが示され、いくつかの臨床試験においてRICの安全性が報告されていたが、急性期脳梗塞患者におけるRICの有効性に関して明らかなエビデンスは得られていなかった。なお著者は、「RICの有効性を結論付ける前に、今回の結果を別の試験で再現する必要がある」とまとめている。JAMA誌2022年8月16日号掲載の報告。症状発現後48時間以内の中等症の脳梗塞患者約1,800例で検討 研究グループは、2018年12月26日~2021年1月19日の期間に、18歳以上で症状発現後48時間以内の中等症の急性期虚血性脳卒中患者(NIHSSスコアが6~16[スコア範囲:0~42、スコアが高いほど重度])1,893例を、RIC群(922例)または対照群(971例)に1対1の割合で無作為に割り付けた(最終追跡調査日2021年4月19日)。 RIC群では、ガイドラインで推奨されている治療(抗血小板薬、抗凝固薬、スタチンなど)に加え、RIC(両側上肢に電子自動制御のカフを装着し、200mmHgで5分間の圧迫と5分間の解除を1サイクルとして、5サイクル、計50分間繰り返す)を1日2回、10~14日間実施した。 対照群では、ガイドラインで推奨されている治療のみを行った。 主要評価項目は、90日時点の良好な機能アウトカム(mRSスコア:0~1)の患者割合とし、盲検下で評価された。90日後のmRS 0~1の割合は、RIC群67.4%、対照群62.0% 無作為化された1,893例(平均[±SD]年齢65±10.3歳、女性606例[34.1%])のうち、適格基準を満たさず臨床的判断により中止あるいは同意撤回などにより117例が除外され、1,776例(93.8%)が解析対象となった。 90日時点の機能予後良好の患者割合は、RIC群67.4%(582/863例)、対照群62.0%(566/913例)であり、群間リスク差は5.4%(95%信頼区間[CI]:1.0~9.9)、オッズ比は1.27(95%CI:1.05~1.54)と、両群間に有意差が認められた(p=0.02)。 有害事象の発現率は、RIC群6.8%(59/863例)、対照群5.6%(51/913例)であった。

検索結果 合計:3165件 表示位置:1121 - 1140