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手首骨折直後の激しい痛みは複合性局所疼痛症候群発症のレッドフラッグか?

 複合性局所疼痛症候群(CRPS)は手首骨折後にみられることがあるが、その発生頻度等は報告によって大きく異なっている。南オーストラリア大学のG. Lorimer Moseley氏らは大規模な前向きコホート研究を行い、手首を骨折し非手術療法で管理された患者の26例に1例がCRPSを発症し、骨折後早期の疼痛が強いとCRPSの発症リスクが増大することを明らかにした。同氏は、骨折後2日間の疼痛が平均してどのくらいかを患者に質問し、0~10の数値化スケールで5以上の場合はCRPSの警告ととらえるべき、とまとめている。Journal of Pain誌2014年1月号(オンライン版2013年11月21日号)の掲載報告。 研究グループは、骨折クリニック3施設を受診した手首骨折受傷患者計1,549例を1施設にて非手術療法により管理し、骨折後1週間以内と、4ヵ月後に評価した。 疼痛強度には0~10の数値的評価スケール(NRS)を、CRPSの診断には既存の基準を用いた。 主な結果は以下のとおり。・手首骨折4ヵ月後におけるCRPSの発生率は3.8%(95%信頼区間:2.9~4.8%)であった。・4つの臨床評価(pain、reaction time、dysynchiria、swelling)に基づいた予測モデルは、骨折後にCRPSを発症するであろう患者(C index:0.99)と、発症しないであろう患者を明確に識別した。・疼痛強度のみの評価でも、ほぼ同程度に識別可能であった(C index:0.98)。・非手術療法で管理された手首骨折患者26例に1例が、CRPSを呈した。・骨折後2日間の疼痛スケールが5/10以上の場合は、CRPSのレッドフラッグと考えるべきである。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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シリコンによる補強が椎体圧迫骨折の二次骨折リスクを軽減

 骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対し、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)というアクリル樹脂を用いた椎骨補強による治療が広く行われているが、合併症として処置部に隣接する椎骨の二次骨折が知られている。この二次骨折は、椎骨と比較してPMMAの剛性が高いことによると考えられることから、骨に近い生体力学的特性を有しているシリコンがPMMAの代替として期待されている。ドイツ・ミュンスター大学病院のTobias L. Schulte氏らは、初めてシリコンとPMMAを用いた椎体補強時の剛性を比較し、シリコンにより二次骨折のリスクが軽減される可能性があることを示唆した。シリコンによる椎骨補強は骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対する治療の選択肢となりうるとまとめている。European Spine Journal誌2013年12月号(オンライン版2013年7月24日号)の掲載報告。 研究グループは、本検討でPMMAあるいはシリコンで補強した椎骨の生体力学的な違い、とくに剛性を調べることを目的とした。 検討には、骨粗鬆症であるが圧迫骨折がないことを確認した40体のヒトの脊椎(T10-L5)を用い、標準的な方法で楔状骨折を作成し、4群に分けてPMMAまたはシリコンを各々2つの充填率(16%および35%)で椎体に注入した。 次いで、無処置椎体、充填椎体および周期的負荷を与えた充填椎体について、低負荷時(100~500 N)の剛性を測定した。また、充填椎体に破断強度の20~65パーセントの高負荷(5,000サイクル=0.5Hz)を与えた場合の剛性を測定した。 主な結果は以下のとおり。・低負荷時剛性は、無処置椎体に比べ周期的負荷処置後にPMMA充填椎体で増加(充填率35%群で115%、16%群で110%)、シリコン充填椎体で低下した(それぞれ87%および82%)。・高負荷時剛性は、無処置椎体に比べPMMA充填率35%群で361%、16%群で304%、シリコン充填率35%群で243%、16%群で222%であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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腰椎固定術の手術時間の長さは術後合併症のリスク増加と関連

 腰椎固定術は慢性腰痛などの治療に広く用いられている。これまでさまざまな外科分野で手術時間の長さが、術後合併症発生率および死亡率の増加と相関することが示されているが、腰椎手術において検討した大規模研究はなかった。米国・ロザリンド・フランクリン医科大学のBobby D Kim氏らは、データベースを用いた後ろ向き研究により、腰椎手術においても手術時間の増加が多彩な合併症と関連していることを明らかにした。「手術時間は腰椎固定術の質の重要な評価尺度であり、患者の予後改善には手術時間を短縮する戦略と手術時間の長さと関連する危険因子を同定するさらなる研究が必要だ」とまとめている。Spine誌オンライン版2013年12月20日の掲載報告。 研究チームは、単一レベルの腰椎固定術の予後に対する手術時間の影響を調べることを目的に、米国外科学会の手術の質改善プログラム(ACS-NSQIP)データベースを用い、2006~2011年に腰椎固定術を受けた全患者の手術時間、術後30日の合併症発生率および死亡率を解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は4,588例で、平均手術時間は197±105分であった。 ・多変量ロジスティック回帰分析の結果、手術時間の増加は全合併症(オッズ比[OR]:2.09~5.73)、内科的合併症(OR:2.18~6.21)、外科的合併症(OR:1.65~2.90)、表層の手術部位感染(SSI)(OR:2.65~3.97)および術後輸血(OR:3.25~12.19)のリスク増加と関連した。・5時間を超える手術時間は再手術(OR:2.17)、臓器/腔SSI(OR:9.72)、敗血症/敗血症性ショック(OR:4.41)、創傷離開(OR:10.98)、および深部静脈血栓症(OR:17.22)のリスク増加と関連した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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よいメタ解析、悪いメタ解析?(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(171)より-

心房細動の脳卒中予防の適応取得を目指した、いわゆる新規経口抗凝固薬の開発試験の結果が出揃った。最後に残っていたのはTIMI groupの主導するENGAGE-TIMI 48試験であった。試験対象となったエドキサバンは、日本の第一三共の薬剤であったが、試験は実績のあるTIMI groupに持って行かれてしまった。ENGAGE TIMI 48試験は2013年11月のAHAにおいて発表された。それまでTIMI group以外のものは試験結果にアクセスすることはできない。最後に残った心房細動の脳卒中予防試験の結果を抱えているTIMI groupは、新規経口抗凝固薬の臨床試験の情報について昨年の11月まで圧倒的に有利な状況にあった。 その有利な地位を利用して「心房細動の脳卒中予防の第三相開発」の結果をメタ解析したのが本論文である。2013年11月には世界の全ての人がENGAGE TIMI 48試験の結果にアクセスできるようになったとはいえ、その前から結果をみて準備をしていたTIMI groupの優位性は明らかである。この論文は「メタ解析」ではあるが、筆者の目にはよいメタ解析には見えない。 イベント発症リスクの低減した現在、数万例の症例を薬剤Aと薬剤Bに割り振って「薬剤Aと薬剤Bには差異がない」という臨床的仮説を検証するランダム化比較試験の困難性は増している。この困難なランダム化比較試験を10年後に行なっても、第三相試験の治験として行なっても、医師主導研究で行なっても、高齢の症例に行なっても、腎障害の症例に行なっても、日本で行なっても、金持ちに行なっても、一貫性があるか否かを検証する「メタ解析」は筆者の目にはよいメタ解析である。 1996年にAntiplatelet Trialistsにより、2002年、2007年にAntithrombotic Trialistsにより施行されたアスピリンの試験のメタ解析は「よいメタ解析」の代表である。Ruffらのメタ解析は、新薬の認可承認を得るために開発企業が必死の修飾を行なった薬剤開発の「第三相」試験のメタ解析である。過去の標準治療(ワルファリン)と新薬の有効性、安全性を比較した各試験は、当局の審査に耐えることを主目的に、各国毎に治験慣れした特殊な施設から登録された症例により構成されている。 「メタ解析」しても対象症例の一般性は広まらない。むしろ、各試験と真実の世界の差異を増幅してしまう。Ruffらは本メタ解析の限界を十分に理解しているので、論文の結論を「Our findings offer clinicians a more comprehensive picture of the new oral anticoagulants as a therapeutic option to reduce the risk of stroke in this patient population」としている。決して、本メタ解析により個別の第三相試験以上のインパクトが生まれたとは主張していない。読者も限界を理解して本メタ解析を読むべきである。Ruffらは、同時期に心房細動を合併したアテローム血栓症のサブ解析を発表しており、臨床家にはこちらの方が参考になる(Ruff CT, et al. Int J Cardiol. 2014; 170 : 413-418)。 Evidence Based Medicineの世界は人工的な世界である。筆者のように20年以上医者をやっている専門家の見解よりも、ランダム化比較試験の結果に科学性があるとする。1つのランダム化比較試験の結果よりも、複数のランダム化比較試験の結果のエビデンスレベルが高いと規定してある。この人工的な世界のルールに基づいて「診療ガイドライン」が作成され、初学者は「診療ガイドライン」に基づいた医療を質の高い医療と判断する。専門家の見解よりも「ランダム化比較試験の結果に基づいた医療」が「質が高い」のは、最初に定義したEvidence Based Medicineの世界に限局される。 実診療の世界では、ランダム化比較試験の集積に基づいて行なう医療と、経験を積んだ臨床医の判断に基づいた医療のアウトカムに差があるか否かは誰も知らない。Evidence Based Medicineの世界は、民主主義の議会で多数派が作る法律により支配される世界に類似している。人間の営む社会であれば、人工的な法律を仮に正しいとしても大きな矛盾はないかも知れないが、医学、医療は詳細、微細な自然現象の観察から真実を見いだす自然科学の領域である。Evidence Based Medicineの世界はそれなりに完結した論理体系ではあるが、その世界の常識は、必ずしも真実の世界の常識ではないことに注意しよう。 本メタ解析はメタ解析ではあるが、Evidence Based Medicineの骨子を決めたときに想定した、独立した多くの研究のメタ解析ではない。同一クラスの薬剤が同時期に開発、認可承認されるケースが増えている。開発品の、開発試験の「メタ解析」をエビデンスレベルの高い「メタ解析」と混同しないようにしよう。

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アリピプラゾールは急性躁病治療のファーストラインになりうるか

 急性躁病のファーストライン治療は薬物療法であり、まず初めに興奮、攻撃性、危険な行動を迅速にコントロールすることが目的とされている。非定型抗精神病薬アリピプラゾールは、躁病治療において、単独また他剤との併用いずれもが行われている。また、英国精神薬理学会(British Association of Psychopharmacology)のガイドラインでは、単独療法プラセボ対照試験において、アリピプラゾールを含む非定型抗精神病薬は急性躁病また混合性エピソードに有効であることが示唆されたとしている。そこで、英国・Oxford Health NHS Foundation TrustのRachel Brown氏らは、急性躁病症状または混合性エピソードの軽減について、アリピプラゾールの単独または他の抗躁薬との併用治療の有効性と忍容性を評価するとともに、プラセボまたは他剤との比較を行った。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年12月17日号の掲載報告。 研究グループは、急性躁病症状または混合性エピソードの軽減について、アリピプラゾールの単独または他の抗躁薬との併用治療の有効性と忍容性を評価するとともに、プラセボまたは他剤との比較を行った。また、アリピプラゾール治療に対する受容性、有害反応、またアリピプラゾール治療患者における全死亡率なども調べた。 評価は、Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Group's Specialised Registerにて2013年7月末以前に発表された文献を検索して行った。また、Bristol-Myers Squibb臨床試験レジスタ、WHO試験ポータル、ClinicalTrials.gov(2013年8月まで)の検索も行った。文献の適格基準は、急性躁病もしくは混合性エピソードの治療において、アリピプラゾールをプラセボあるいは他剤と比較した無作為化試験とした。2人のレビュワーがそれぞれ、有害事象など試験報告データを抽出し、バイアスを評価した。欠落データについては、医薬品製造会社または文献執筆者に問い合わせを行った。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、10試験(被験者3,340例)のデータが組み込まれた。・7試験(2,239例)が、アリピプラゾール単独療法とプラセボを比較したものであった。そのうち2試験が3比較アームを含んだ試験で、1試験はリチウムを(485例)、もう1つはハロペリドール(480例)を用いていた。・2試験は、アリピプラゾールを、バルプロ酸またはリチウムもしくはプラセボに追加した場合を比較したものであった(754例)。1試験は、アリピプラゾールとハロペリドールを比較したものであった(347例)。・全体のバイアスリスクは不明であった。また、大半の試験で被験者の脱落率が高く(8試験の各介入において20%超)、相対的な有効性の推定に影響がある可能性があった。・以上を前提とした解析の結果、アリピプラゾールは、プラセボと比べて、成人と小児・若者の躁症状の軽減に有効であることを示すエビデンス(格差はわずか)が認められた。軽減効果は、3週、4週時点でみられ6週時点ではみられなかった(Young Mania Rating Scale[YMRS]の3週時点のランダム効果による平均差[MD]:-3.66、95%信頼区間[CI]:-5.82~-2.05、6試験・1,819例、エビデンスの質:中程度)。・アリピプラゾールと他剤療法との比較は3試験(1試験は、成人対象のリチウム投与、2試験はハロペリドール)であった。躁症状の軽減について、アリピプラゾールと他剤療法との統計的な有意差は、3週時点(3週時点のランダム効果のYMRS MD:0.07、95%CI:-1.24~1.37、3試験・972例、エビデンスの質:中程度)、および12週までのいかなる時点においても示されなかった。・プラセボと比較して、アリピプラゾールは、運動障害をより多く引き起こしていた(Simpson Angus Scale[SAS]、Barnes Akathisia Scale[BAS]の測定と、参加者が報告したアカシジアによる、エビデンスの質:高度)。抗コリン作用性の薬物による治療を必要としていた患者で、より多く認められた(ランダム効果によるリスク比:3.28、95%CI:1.82~5.91、2試験:730例、エビデンスの質:高度)。・また、アリピプラゾール服用群は、胃腸障害(悪心[エビデンスの質:高度]、便秘)が多く、小児・若者でプロラクチン値の正常下限値以下への低下がみられた。・アリピプラゾールとその他治療とを比較した運動障害との関連に関するメタ解析には有意な不均一性があり、多くはリチウムとハロペリドールのさまざまな副作用プロファイルによるものであった。・3週間時点のメタ解析は、データ不足のためできなかった。しかし12週時点の解析において、ハロペリドールはアリピプラゾールよりも、有意に運動障害の発生が多かったことが、SAS、BASとAbnormal Involuntary Movement Scale(AIMS)、被験者報告のアカシジアの測定によって認められた。・一方12週時点までに、アリピプラゾールとリチウムとの差について、被験者報告のアカンジア(RR:2.97、95%CI:1.37~6.43、1試験・313例)を除き、SAS、BAS、AIMSに関しては研究者による報告はなかった。関連医療ニュース バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは? アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける?

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小児の原発性多汗症におけるイオントフォレーシス療法は有用?

 小児の原発性多汗症における水道水イオントフォレーシス(イオン導入)療法の有効性と安全性が、トルコのSeval Dogruk Kacar氏らにより調査・報告された。その結果、イオントフォレーシス療法は、有効性および信頼性において小児の原発性掌蹠多汗症、原発性腋窩多汗症に有用な治療であることが示された。これまで、小児におけるイオントフォレーシス療法の有効性について調査した研究は限られていた。 なお、日本においても水道水イオントフォレーシス療法は、原発性局所多汗症診療ガイドラインにより推奨されている。Cutaneous and Ocular Toxicology誌オンライン版2014年1月9日掲載の報告。 調査は、イオントフォレーシス療法を施行する18歳未満の原発性掌蹠多汗症患者21例を対象に、レトロスペクティブに実施された。多汗の程度は、VAS(視覚的評価スケール:visual analogue scale)を用いて評価され、0が症状の継続、10が症状の消失とされた。評価には、カルテより収集した臨床データと患者が回答したアンケートを用いた。 主な結果は以下のとおり。・水道水イオントフォレーシス療法を週5回の施行から開始し、5週目に週1回の施行に減少させた。さらに、維持療法として週1回の施行を6週間実施することが推奨された。・19例の被験者が所定の21回の施行を完遂した。・施行15回目のVAS中央値は5.89±1.49、治療終了時点では6.36±2.06であった。・7例では、治療終了後3ヵ月が経過しても多汗症が抑制された。・VASによる治療満足度の中央値は4.95±2.38であった(0が不満足、10が大いに満足)。・副作用の忍容性は良好であった。・イオントフォレーシス療法は、小児の原発性掌蹠多汗症、原発性腋窩多汗症に有用な治療法である。しかし、最大限の効果を得るためのセッション間隔やプロトコルについての解は得られていない。

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エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part1

CareNet.comではうつ病特集を配信するにあたって、事前に会員の先生方からうつ病診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、産業医科大学 杉田篤子先生にご回答いただきました。2回に分けて掲載します。今回は、精神科に行きたがらない患者さんへの対応、最初の抗うつ薬が効果不十分な場合の対応、抗うつ薬の減量・中止のタイミング、抗うつ薬と睡眠薬との併用、認知行動療法の効果についての質問です。精神科に紹介しても行きたがらない患者さんに対して、どのように対応したらよいでしょうか?うつ病では、睡眠欲、食欲、性欲などといった人間が生きていくうえで基本となる本能が損なわれていることが多く、その結果、さまざまな身体症状が出現するため、うつ病患者が最も多く受診するのは、内科といわれています。さらに、身体疾患のある患者さんはうつ病を高率に合併しています。希死念慮や自殺企図のリスクが高いとき、精神病像を伴うとき、双極性障害が疑われるとき、慢性化しているとき、抗うつ薬の反応が通常と異なるとき、産後うつ病などの際は、精神科へ紹介するタイミングです1)。しかし、専門医を受診させようと、「身体的問題がないから精神科を受診しなさい」という説明をすると、患者さんが「かかりつけ医から見捨てられるのではないか」と不安になり、拒否することがあります。さらに、精神的な問題が生じているという病識がないこともしばしばありますし、精神科への偏見を持っている方もいます。したがって、紹介する際は、主治医と精神科が協力して心身両面を支えていくという姿勢を示し、「専門家の意見を聞いてみましょう」、「主治医として今後も関わっていきます」ということを丁寧に説明するとよいでしょう。また、うつ病患者では不眠が生じる頻度が高いため、「睡眠障害について詳しい先生に診てもらいましょう」というのも方策です。自殺の危険性があるなど緊急時は、家族にも状況を説明して、協力を得る必要があります。1)堀 輝ほか. Medical Practice. 2011;28:1720-1729.最初の抗うつ薬の効果が不十分な場合、増量、薬剤変更、併用のうち、いずれがよいのでしょうか? また、併用療法について具体的に(相性のよい薬剤の組み合わせなど)お教えください。抗うつ薬を使用する際は、合理性のない抗うつ薬の多剤併用は行わず、第一選択薬を十分量・十分期間使用し、用量不足や観察期間不足による見かけの難治例をつくらないようにしなければなりません。抗うつ薬を低用量で使用して反応がない場合は、1)有害作用が臨床上問題にならない範囲で添付文書に従って十分量まで増量、2)十分量まで増やしてから4週間程度を目安に、ほとんど反応がない場合は薬物変更、3)一部の抑うつ症状に反応がみられるがそれ以上の改善がない場合(部分反応)は増強療法を行います。増強療法には、リチウムや甲状腺ホルモン、ラモトリギン、バルプロ酸、カルバマゼピン、非定型抗精神病薬が挙げられます(アリピプラゾールを除き、適応外)。原則は単剤ですが、場合によっては、例外的に、4)抗うつ薬の併用を考慮します。その場合は、ミルタザピンとSSRI/ SNRI1)、ミアンセリンとSSRI/ SNRI2)の併用がよいでしょう。1)Carpenter LL, et al. Biol Psychiatry. 2002;51:183-188.2)Maes M, et al. J Clin Psychopharmacol. 1999;19:177-182.抗うつ薬の減量・中止のタイミングを教えてください。早期に抗うつ薬を減量・中止することは再燃の危険性を高めます。薬物療法に反応後4~5ヵ月以内に抗うつ薬を中止した場合の再燃率は50~70%で、同時期に抗うつ薬を継続した群では0~20%であったと報告されています1)。とくに、寛解後4ヵ月までは再燃の危険性が高く、副作用が管理できれば、寛解後6ヵ月以上は急性期と同用量でコンプライアンスを保つことが重要です2,3)。寛解後26週は抗うつ薬の再燃予防効果が立証されており4)、欧米のガイドラインでは、副作用の問題がなければ初発の寛解後4~9ヵ月、またはそれ以上の期間、急性期と同用量で維持すべきとしています5~7)。うつ病相を繰り返す患者さんは再発危険率が高いですが、これらの再発性うつ病の患者に対して抗うつ薬を1~3年、急性期と同用量で継続使用した場合の再発予防効果が立証されています8)。したがって、再発例では2年以上にわたる抗うつ薬の維持療法が強く勧められています7)。なお、漸減中に抑うつ症状が悪化した場合は、減薬前の量にいったん戻すとよいでしょう。1)Zajecka J, et al. J Clin Psychiatry. 1999;60:389-394.2)Peretti S, et al. Acta Psychiatr Scand Suppl. 2000;403:17-25.3)Paykel ES, et al. J Affect Disord. 1988;14:83-95.4)Reimherr FW, et al. Am J Psychiatry. 1998;155:1247-1253.5)American Psychiatric Association. Am J Psychiatry. 2000;157:1-45.6)American Psychiatric Association. Practice guideline for the treatment of patients with major depressive disorder. 3rd ed. 2010. 7)Lam RW, et al. J Affect Disord. 2009;117(Suppl1):S26-43.8)Geddes JR, et al. Lancet. 2003;361:653-661.抗うつ薬と睡眠薬との併用について教えてください。不眠を有するうつ病患者の治療において、抗うつ薬の中で、アミトリプチリン、トラゾドン、ミアンセリン、ミルタザピンなどのような鎮静的な作用があり睡眠を改善させる薬剤は、抗うつ薬単剤で治療可能です。しかし、SSRIやSNRIなどのように鎮静作用が弱く、睡眠状態の悪化を招く可能性を有する抗うつ薬を使用する際は、睡眠薬を併用することになります。うつ病の不眠への効果がランダム化比較試験によって示されているのは、ゾルピデム1)とエスゾピクロン2)です。睡眠薬の使用時は、依存性、認知機能障害、閉塞性睡眠時無呼吸症状の悪化、奇異反応などの可能性がある点に留意し、漫然と長期間処方することは慎み、睡眠衛生的なアドバイスを積極的に行うべきです。とくに、不眠の改善のためには、朝は一定の時間に起床して外の光にあたることや飲酒を控えることなどは、睡眠薬を投与する前に指導したほうがよい事柄です。1)Asnis GM. J Clin Psychiatry. 1999;60:668-676.2)Fava M, et al. Biol Psychiatry. 2006;59:1052-1060.認知行動療法の効果について教えてください。認知行動療法は、人の感情や行動が、状況をどうとらえるか(認知の仕方)によって規定されるという理解のもとに、患者のうつ状態の発生や維持に関連している認知や行動を同定し、必要に応じた修正を行うことで気分を改善させる治療法です。認知行動療法は、うつ病に対して薬物療法と同等の効果を有し、とくに再発予防効果は、薬物療法に優るというエビデンスがあります1~6)。英国の診療ガイドラインでは、軽症~中等症のうつ病治療では薬物療法より優先して認知行動療法を実施することが推奨されています7)。また、薬物療法を行う場合に患者さんが精神科治療薬の服用を拒絶することがあり、薬物に対する認知に注意を払わなくてはなりませんが、認知行動療法を用いて薬物療法に対する非機能的認知を修正することにより、患者さんの服薬アドヒアランスを高める可能性もあり、薬物療法との併用の意義も大きいと考えられます8)。1)DeRubeis RJ, et al. Arch Gen Psychiatry. 2005;62:409-416.2)Miller IW, et al. Behav Ther. 1989;20:25-47.3)Stuart S, et al. Gen Hosp Psychiatry. 1997;19:42-50.4)Dobson KS, et al. J Consult Clin Psychol. 2008;76:468-477.5)Wampold BE, et al. J Affect Disord. 2002;68:159-165.6)Persons JB, et al. Arch Gen Psychiatry. 1996;53:283-290.7)National Institute for Health and Clinical Excellence. Depression (amended): management of depression in primary and secondary care: NICE guidance. London: National Institute for Health and Clinical Excellence; 2007.8)井上和臣. Pharma Med. 2002;20:41-45.※エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part2はこちら

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足関節捻挫、脛腓靱帯部でも保存的治療で競技に復帰可能

 脛腓靱帯結合捻挫は足関節外側捻挫と比較して、長期的な故障の原因となり得る。米国・MedStar Union Memorial HospitalのDaryl C. Osbahr氏らは、ナショナルフットボールリーグ(NFL)に所属するあるチームについて調査し、(1)脛腓靱帯結合捻挫は足関節外側捻挫と比較し重大な障害の原因となる、しかし(2)損傷の重症度にもよるがどちらも保存的治療で競技に復帰できることが多い、ことなどを明らかにした。そのうえで、脛腓靱帯結合損傷に対して、「最新の治療アルゴリズムを用いて、より積極的な保存的治療が支持される」とまとめている。Orthopedics誌2013年11月号の掲載報告。 研究チームは、足関節捻挫を識別し、より良い管理ができるよう、NFLのあるチームのデータベースを用いて、15年間にわたる脛腓靱帯結合捻挫と足関節外側捻挫について調査した。 対象は脛腓靱帯結合捻挫36例、足関節外側捻挫53例であった。 また、NFLのチームドクター32名に、脛腓靱帯結合損傷および足関節外側捻挫の治療に関してアンケート調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・原因は、脛腓靱帯結合捻挫が直接的な衝突、足関節外側捻挫がねじれであった(p=0.034)。・全例、保存的治療が行われていた。 ・プレーできなかった平均期間は、脛腓靱帯結合捻挫群が15.4日、足関節外側捻挫群が6.5日であった(p≦0.001)。・NFLのチームドクターは、脛腓靱帯結合損傷に対しては離開の程度によって治療法を変えるが、足関節外側捻挫に対しては保存的治療を勧めた。 ・脛腓靱帯結合損傷は、足関節外側捻挫に比べると長いリハビリ期間を要するものの、以前の報告のように復帰まで長期間を要することはなさそうであった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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【寄稿】トピックス いわゆる「新型(現代型)うつ病」

いわゆる「新型(現代型)うつ病」の特徴いわゆる「新型(現代型)うつ病」は、マスメディアを通じて、社会的に広く浸透しているが、精神医学的に厳密な定義はなされていない。うつ病学会もこれを医学用語として認めていない。“新型”や“現代型”と呼ばれる「うつ病」は、伝統的な中高年に多くみられる執着気質やメランコリー親和型性格を基盤にしている、重症になりやすい内因性うつ病とは異なり、(1)若年者に多く、全体に軽症で、訴える症状は軽症のうつ病と判断しにくい(2)仕事では抑うつ的になる、あるいは仕事を回避する傾向があるが、余暇は楽しく過ごせる(3)仕事や学業上の困難をきっかけに発症する(4)病前性格として、“成熟度が低く、規範や秩序あるいは他者への配慮に乏しい”などといった特徴がある。「非定型うつ病」は、歴史的にはさまざまな定義が与えられており、最近の米国精神医学会診断基準(DSM-IV)では、大うつ病のうち、過食、過眠、鉛のような体の重さ、対人関係を拒絶されることへの過敏性など、特定の症状を有するうつ病と定義されている。この場合、正確には「非定型の特徴を伴う大うつ病」と呼ぶが、マスメディアで使われる「非定型うつ病」は、教科書的なうつ病のプロトタイプに合致しないうつ病・抑うつ状態を広く指して用いられ、「新型(現代型)うつ病」とほぼ同義に扱われることもある。若年者のうつ病・抑うつ状態は、古くは、ステューデントアパシー(Walters)、退却神経症(笠原嘉)、逃避型抑うつ(広瀬徹也)、近年では、さらに未熟型うつ病(阿部隆明)、現代型うつ病(松浪克文)、ディスチミア親和型(樽味伸)などと提唱されており、いずれも上記(1)~(4)の特徴を持っているが、それぞれに切り口が異なり、異なる病理を描き出している。また、いずれもメランコリー親和型性格を基盤としたうつ病に比べて抗うつ薬の効果が弱く、軽症ながら難治な病態である。安易な決めつけは“誤診”につながるいわゆる「新型(現代型)うつ病」の特徴は、「そもそもうつ病に特徴的なものか」という議論もある。近年の日本では経済の低迷が長く続き、職場に余裕がなくなっており、労働者の心身の負担も増えている。とくに、勤務経験が少なく技能の習熟度が低い若年者にとって、うつ病・抑うつ状態が増えやすい労働環境に変化した可能性がある。しかも若年者では、精神的な成熟度が低く、規範や秩序あるいは他者への配慮に乏しいことは、精神発達の段階からみても、ただちに病的であると決めつけられない。近年の社会の風潮が、規範や役割意識を以前ほど強調しなくなってきているため、若年者でその傾向が強まり、精神的成熟に年数がかかるようになった可能性もある。若年は、双極性障害のうつ病相や統合失調症の好発年齢であり、学生から社会人となり適応障害を起こしやすい時期でもある。とくに発達障害の方は適応困難になりやすい。これらの鑑別診断がきわめて難しく、精神科医が診断面接を数多く重ねて、初めて見えてくるものであり、安易にいわゆる「新型(現代型)うつ病」と決めつけることは“誤診”につながる。時に、自殺のリスクを有することもあり、内因性疾患であるか否かを慎重に吟味したうえで、環境的要因や性格を把握する必要がある。最初から、患者さんの性格の問題を取り上げるのではなく、治療者が、うつ病を十把ひとからげにせず、一人ひとりの抱える問題をきめ細かく分析し、適切に対応することが重要である。以下に、いわゆる「新型(現代型)うつ病」を疑われ、精神科を受診した症例を示す。【症例】30代の男性大学卒業後、すぐに電気系の会社へ入社した。妻と子供1人の3人暮らし。本人は本社勤務を希望していたが、X-2年、地方の事業所勤務で、機械部品開発の担当となった。X-1年、頭痛、下痢が出現した。X年、抑うつ気分、不安、イライラが顕在化し、ある日、仕事を投げ出すような形で早退し、以降欠勤した。精神科を受診し、抑うつ状態と診断され、休業して自宅療養となった。3ヵ月間の療養後、症状が改善したため一旦は復職したが、2週間で症状が再燃し、再び休業した。休職後すぐに復職を希望し、「休職期間中は傷病手当で受け取り額が目減りするため、生活が苦しい」と言い、復職すると3ヵ月で休職に至った。その後、2ヵ月休職し、休職・復職を計3回繰り返した。休職中は、趣味のゴルフに出かけたり、家族と海外旅行に出かけたりしていた。一方で、「上司の声を聞くだけでも気分が沈む、今の職場では続けられない」と上司への不満が強く、復職しても人間関係のストレスから、抑うつ状態が再発していた。出勤してもしばしば遅刻し、ボーっとしていた。本症例は、本社勤務を希望していたにもかかわらず、思い通りにならず、地方勤務となったことに不満を持ち、職場環境への適応ができず、抑うつ、不安、頭痛、下痢などの身体症状を来した適応障害の1例である。職場を離れての自宅療養により症状は改善するが、元の職場に戻ると症状は悪化していた。精神療法、薬物療法だけでなく、環境調整が治療上、重要となった。いわゆる「新型(現代型)うつ病」への対応いわゆる「新型(現代型)うつ病」の治療は、患者さん一人ひとりが持つ心理的、生物的、社会的要因を分析したうえで、状態に合わせて、精神療法、薬物療法、心理教育、環境調整、リハビリテーションを組み合わせて行う必要がある。薬物療法の効果は限定的であるため、精神療法や心理教育、環境調整、リハビリテーションのウエイトが増す。精神療法では、個人精神療法よりも集団体験で安心感を得て、依存欲求を満たせる「中集団療法」の有効性が報告されている。作業療法士をはじめとした治療スタッフが、患者の攻撃性を受容しつつ、内心の変化を観察し続けることが重要であり、治療にも発達や育成の視点を取り入れることが大切である。心理教育やリハビリテーションにおいては、生活習慣の指導として、規則正しい生活リズムや、禁酒などの指導も有用である。生活の記録表の作成を指導したり、定期的な運動を意識づけることも必要である。英国NICEのうつ病治療ガイドラインでは、軽症うつ病に対してはルーチンで抗うつ薬を処方しないように記載されている一方、運動療法を推奨している。運動療法は、専門家の指導のもと、プログラムされた運動を1週間に最大3回まで、1回当たり45分から1時間、10週間から12週間行うのがよいとされている。有酸素運動はうつ病や不安な気分の改善に有効であるとの多くの報告があり、運動強度が高いほうが抑うつ症状はより軽減する傾向があるが、低強度でも効果はあり、身体活動量は生活習慣病予防と同程度で十分である。筆者も、産業医として勤務した企業において、勤労者を対象に5人1組のチームを作り、チーム対抗で歩数を競うというウォーキングプログラムを実施したところ、もともと運動習慣がなかった者の睡眠状態の改善や抑うつ度の低下、不安度の低下、社会適応度の向上などがみられ、新たなメンタルヘルスの不調者が出現するのを予防し、うつ病による休業者を減少させることができた経験がある。環境調整を行うためには、主治医と職場の管理者や産業医との連携を密にして、本人の適性評価と理解に努めることや、主に上司との関係を軸に、「弱さの是正」ではなく、「適性を活かす」対応が必要である。いわゆる「新型(現代型)うつ病」の者に対しての陰性感情は慎み、気長な「認知療法的」な対応や、適度に励まし背中を押すような関わりを行い、人間的な成長を促すことも大切である。いわゆる「新型(現代型)うつ病」を「うつ病」から排除してネガティブに捉えるのではなく、適切に診断を行うことや、「うつ病」といわゆる「新型(現代型)うつ病」は異なる対応が必要になるということを認識しておくことが必要である。

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小児呼吸器感染症、各症状の持続期間は?/BMJ

 小児呼吸器感染症の症状持続期間について、保護者に提示されているガイダンス内容と比べて、耳痛(7~8日)、感冒(15日)は長期であったことが、米国・ワシントン大学のMatthew Thompson氏らによるシステマティックレビューの結果、判明した。咽頭痛、急性咳嗽、細気管支炎、クループはガイダンス内容と一致していた。著者は、「今回の結果は、保護者および臨床医が呼吸器感染症を適切に見分けるのに有用である」として、新たなエビデンスに基づき現行ガイドラインを更新する必要があると提言している。BMJ誌オンライン版2013年12月24日号掲載の報告より。システマティックレビューで各症状の持続期間を評価 研究グループは、プライマリ・ケアおよび緊急治療部門を受診する、ありふれた小児呼吸器感染症の予想される症状持続期間を確定することを目的に、システマティックレビューを行った。検討したのは、耳痛、咽頭痛、咳(急性咳嗽、細気管支炎、クループなど)、感冒の症状についてであった。 PubMed、DARE、CINAHLを用いて2012年7月までの文献を検索した。プライマリ・ケアか緊急治療部門を受診した急性呼吸器感染症小児を対象とした無作為化対照試験もしくは観察試験で、高所得国で実施され、比較群に対照治療かプラセボあるいはOTC薬治療を設定していたものとした。試験の質の評価は、無作為化対照試験はCochraneバイアスリスクを用いて、観察試験はcritical appraisal skills programmeを用いて行った。 主要評価項目は、症状期間についての各試験データと、可能であればプールした1日平均頻度と95%信頼区間とし、また、各症状が小児の50%および90%で消失した時点までの日数を持続期間とした。耳痛、感冒についてガイダンスと大きな開き 検索した文献は2万2,182本で、そのうち適格基準を満たしたのは、無作為化対照試験23本、観察試験25本であった。解析に組み込んだ試験集団は、試験登録前の年齢、症状期間がさまざまであった。 各症状について解析した結果、小児の90%で症状が消失するまでの期間は、耳痛7~8日、咽頭痛2~7日、クループ2日、細気管支炎21日、急性咳嗽25日、感冒15日、非特異的呼吸器感染症状16日であった。 これらのうち、耳痛と感冒は、英国(NICE)および米国(CDC)で保護者に提示されているガイダンス内容と比べてかなり長期であった。たとえば、耳痛(90%で消失)は、NICEでは平均4日、CDCでは平均2~3日とされており、感冒(90%で消失)については、NICEは10~11日、CDCは14日未満とアドバイスしているという。一方で、一部にはガイダンス内容が過大であるものもあった(例:咽頭痛/扁桃炎をNICEは7日、CDCは14日)。 著者は、「症状持続期間の正確な推定が、適切な保護者の行動や抗菌薬使用に結びつけるうえで有用である」と述べ、新たなエビデンスに基づくガイドラインの更新の必要性を提言している。

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aHUS診断基準公表による、早期診断・早期治療に期待

 非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS)は、志賀毒素産生性大腸菌由来尿毒症症候群(Shiga toxin-producing E. coli hemolytic uremic syndrome:STEC-HUS)とADAMTS13 (a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs:member13)活性著減による血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP) 以外の血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy:TMA)と定義される。 aHUSの主徴は、「微小血管症性溶血性貧血」、「血小板減少」、「急性腎障害(acute kidney injury:AKI)」の3つである。 近年、このaHUSの病因として補体制御機構の異常が注目されている。50-60%の症例でH因子をはじめとするさまざまな補体制御因子の遺伝子異常が報告され、目下aHUSにおける病態解析は急速に進んでいる。 aHUSは、発症早期にはSTEC-HUSやTTPとの鑑別が必ずしも容易ではなく、積極的な治療が遅れると腎不全に進行するリスクが高い症候群であることから、早期に診断し、機を逃すことなく適切な治療を実施することが重要である。 これらを背景に、日本腎臓学会・日本小児科学会は非典型溶血性尿毒症症候群診断基準作成委員会を発足し、徳島大学大学院 発生発達医学講座(小児医学)香美 祥二 委員長、東京女子医科大学 腎臓小児科 服部 元史 氏、東京大学大学院 腎臓内科学、内分泌病態学 南学 正臣 氏らによってわが国で初めてとなる「非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診断基準」を公表した。 この診断基準の公表により、今後、日本におけるaHUS患者の早期診断・早期治療への道が開かれ、ひとりでも多くの患者さんの予後改善につながることが期待される。さらに、aHUS に対する治療のエビデンスを構築することにより、将来的に新しい治療ガイドラインの作成にも結び付くことが望まれる。「非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診断基準」の詳細は下記のいずれかのURLより閲覧いただけます。日本腎臓学会日本小児科学会

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脊柱管狭窄症の硬膜外ステロイド注射、より有効な注射経路は?

 腰部脊柱管狭窄症において、硬膜外ステロイド注射は短期的な疼痛改善に有効であることはよく知られているが、その注射経路によって効果に違いがあることがギリシャ・ヨアニナ大学病院のAvraam Ploumis氏らの研究で明らかになった。坐骨神経痛を有する腰部脊柱管狭窄症患者を対象とした検討で、注射6ヵ月後の疼痛改善は、仙骨注射より経椎間孔注射のほうが優れていた。Pain Medicine誌オンライン版2013年12月16日の掲載報告。 研究グループは、坐骨神経痛を有する腰部脊柱管狭窄症患者31例(平均年齢62歳)を対象に、仙骨硬膜外ステロイド注射(CESI)と経椎間孔硬膜外ステロイド注射(TFESI)の有効性を前向きに比較検討した。 研究は2施設にて行い、一方の施設の患者11例がCESI、他方の施設の20例がTFESIを受けた。注射は全例、同じ医師が行った。 主要評価項目は注射6ヵ月後における疼痛消失または50%以上の疼痛改善(視覚的アナログスケール[VAS]による)、副次的評価項目は注射6ヵ月後における機能改善(オスウェストリー障害指数[ODI]15ポイント以上)であった。 主な結果は以下のとおり。・注射6ヵ月後に疼痛緩和が得られた患者の割合は、CESI群(54.54%)に比べTFESI群(90%)が有意に高かった。・注射6ヵ月後の機能改善は、TFESI群では全例で認められたのに対し、CESI群ではわずか3例(27.27%)であった。 ・CESI群の2例は、注射15日後に2回目の注射を受け、3~6ヵ月の間に除圧術を受けた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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子だくさんの女性は変形性膝関節症を発症もしくは増悪しやすい

 変形性膝関節症(OA)のリスクを有する高齢女性は、経産回数がX線学的OA(ROA)や人工膝関節置換術(KR)と関連することが明らかになった。米国・カリフォルニア大学デービス校のBarton L. Wise氏らが、OAおよびそのハイリスク患者を対象とした多施設変形性関節症研究MOST(Multicenter Osteoarthritis Study)を解析したもので、とくに4人を超える子供を有する女性で強い関連がみられるという。Osteoarthritis and Cartilage2013年12月号(オンライン版2013年9月30日)の掲載報告。 MOSTは、50歳から79歳の症候性OAを有する、またはOAを発症するリスクが高い患者を対象とした縦断的観察研究である。研究グループは、参加者のうち経産回数を報告した女性1,618例(平均年齢:62.6歳、平均BMI:30.7kg/m2、WOMAC疼痛スコア:3.7)について解析した。 ベースライン時と30ヵ月後にX線検査を行い、ROA(ケルグレン/ローレンス分類でグレード2以上)およびKRについて評価し、これらの発生と経産回数との関連を解析した。 主な結果は以下のとおり。・30ヵ月間でKRは115例、ROAは134例を認めた。 ・出産回数が1回に比べ5~12回の被験者では、KRの相対リスクが2.7倍(95%信頼区間:1.0~7.3)、ROAが2.6倍(同:1.2~5.3)であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~

腰痛診療ガイドライン策定の背景腰痛は一つの疾患単位ではなく、“症状”の名称であり、その背景には数多くの病態・疾患が潜んでいる。そして腰痛を有する患者数は非常に多く、わが国においては最も代表的なcommon disease(一般的な、ありふれた病気)、つまり「国民病」の一つとなっている。実際、日本人の有訴者率をみると、男性では1位、女性では2位と男女ともに腰痛は上位を占めている(平成22年 厚生労働省 国民生活基礎調査)。国民病であるがゆえに、腰痛に関する研究、文献や書籍は非常に多く存在している。また、一般向けの雑誌やテレビなどでも腰痛に関わる記事や番組の特集企画は後を絶たない。腰痛という国民病に対し、玉石混淆の情報が発信され氾濫している、というのが現状である。そうした背景を鑑み、われわれ整形外科医が運動器のエキスパートとしてすべきことは何か。本ガイドラインは、そうした想いから、日本整形外科学会が企画し日本腰痛学会が主体となって作成されたものである。その理念は、「腰痛治療のプライマリケアに焦点を絞り、腰痛に苦しむ患者さんに対して、正しく的確なトリアージを可能せしめること」である。腰痛に関して最も豊富な治療経験をもつ整形外科医はもちろん、内科をはじめとする各領域の先生方に対しても、EBMに則った適切な情報を提供するとともに、本ガイドラインを有効活用していただきたいと願っている。腰痛におけるトリアージの重要性腰痛というと、「腰部に存在する疼痛」という定義が成り立つが、その部位に関してはさまざまな見解がある。具体的には、「触知可能な最下端の肋骨と殿溝の間の領域」とするのが一般的である。有症期間については、急性、亜急性、慢性と分類される。3ヵ月以上持続する腰痛を「慢性腰痛」とし、発症から4週間未満を「急性腰痛」、そして慢性と急性の間、つまり4週間以上3ヵ月未満の腰痛を「亜急性腰痛」と定義した。原因からみると、「原因の明らかな腰痛」と「原因の明らかでない腰痛(非特異的腰痛)」に大別される。原因の明らかな腰痛の代表としては、腫瘍(原発性・転移性脊椎腫瘍)、感染(化膿性脊椎炎など)、外傷(椎体骨折など)の3つがとくに重要である。また、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、脊椎すべり症などの神経症状を伴う腰椎疾患もこれに含まれる。一方、非特異的腰痛は、前述したような明らかな原因のない腰痛、あるいは原因を特定できない腰痛を総称する言葉である。下肢症状を伴わない腰痛の場合、その85%が非特異的腰痛である。実際、広く長い脊柱の中で、どこに痛みの原因があるか、X-PやMRIにおける変性所見と症状が必ずしも一致するわけではなく、原因部位を特定することは困難である。よって、腰痛治療においては、初診での正しい鑑別(トリアージ)が非常に重要となってくる。何よりも大切なのは、注意深い問診と身体検査(診察)であり、これにより(1)危険信号(red flags)を有し重篤な脊椎疾患の合併が疑われる腰痛、(2)神経症状を伴う腰痛、(3)非特異的腰痛 という3つのトリアージを的確に行うことが大切である。日本整形外科学会、日本腰痛学会.腰痛診療ガイドライン2012.南江堂;2012.画像を拡大するプライマリ・ケアにおける問診では、発症以前の症状、治療歴、治療効果だけでなく、痛みの部位、症状の頻度、痛みの持続期間などを尋ね、脊椎以外の内科的疾患由来の腰痛の可能性を考慮する。とにかく、重篤な脊椎疾患(腫瘍、炎症、骨折など)を見逃さないことが非常に重要であり、そのためには危険信号(red flags)の有無をしっかりと見極めることが基本となる。危険信号がなく、神経症状もない場合には、「非特異的腰痛」と仮に判断する。そして4~6週間の保存的治療を行い、それによる改善の有無を観察する。そこで改善のない場合には、画像診断の再実施、危険信号の再評価、あるいは心因性要素の再評価によって、隠れている病気を探し出していただきたい。また、初診で危険信号がなくても、神経症状(足の痛み、しびれ、麻痺など)がみられる場合には、積極的に前述の再検査を行うべきである。そして、発熱や体重減少などの危険信号がある場合には、何か原疾患が隠れているのではないかという疑いをもって画像検査や血液検査をしっかりと行っていただきたい。原疾患が特定された場合には、それに応じた治療を進めるべきである。日本整形外科学会、日本腰痛学会.腰痛診療ガイドライン2012.南江堂;2012.画像を拡大する運動療法は腰痛に有効か運動療法には、ストレッチやエアロビクスなどさまざまな方法があるが、慢性腰痛に対する有効性には高いエビデンスがある。慢性腰痛における運動療法については、開始後1年以内で欠勤日数を軽減させ、職場復帰率を増加させるというデータがある。日本におけるランダム化比較試験においても、運動療法実施群での腰痛関連QOLの改善が良好であったという研究結果も出ている。このように、運動療法は慢性腰痛に対して強く推奨される治療法であるといえる。また、日常生活においても、以前は腰痛に対して安静にするよう指導することが多かったが、近年は動ける範囲で動くことを推奨している。一方、急性腰痛に対してはあまり効果がない。亜急性腰痛に対しても、効果はあるものの慢性腰痛の場合に比べると限定的であり、時期に応じた適切な運動療法を行うべきであろう。心理社会的因子と腰痛の関係心理社会的因子が腰痛の遷延に関与するというエビデンスをもった論文は多い。これはとくに慢性腰痛にみられる特徴である。具体的に挙げると、ストレス、うつ状態、過労、職場環境や収入への低い満足度、人間関係の不良などが慢性腰痛の出現や悪化に関与している。ここで一つ興味深いのは、慢性の肩の痛みや膝の痛みの場合にはそうした関与があまり指摘されていないことである。心理社会的因子は、肩や膝よりも腰との関係性が深いように思える。ただ、誤解しないでいただきたいのは、“慢性腰痛の患者さん=(イコール)うつ病”という単純な図式にはならない、ということである。慢性腰痛の患者さんがすべてうつ病だということはありえないし、慢性腰痛のすべての要因が精神的なものだと決めつけてしまうのは非常に危険なことである。個人的な見解としては、非特異性腰痛の原因の多くは、脊柱の支持組織、つまり椎間板や椎間関節の老化、筋力の低下、筋・筋膜などの支持性軟部組織の拘縮などによるものが多いと考えている。これは画像検査では発見しにくい部分であるし、また仮に椎間板が老化していても症状が出ないケースも多々あるため、その判断は難しい。ガイドライン策定から一年を経て 全国の先生方へ腰痛診断ガイドラインが策定されてから一年になる。その間、全国各地で講演を行ってきたが、EBMを重視する先生方が増えてきたように感じられた。腰痛は民間療法や代替療法などさまざまな治療法が散見される分野であるため、エビデンスを重視することは非常によい動きであり、歓迎すべきことだと受け止めている。薬物治療に関しても大変よく勉強されている先生が多かった。また、慢性腰痛における運動療法の有効性についても多くの先生が認識してくださっており、本ガイドラインが徐々に浸透してきていると肌で感じることができた。最後に付け加えておきたいのは、このガイドラインはあくまでも一つの目安でしかない、ということである。われわれガイドライン委員会でも、患者さん一人ひとり病態が異なるのにアルゴリズム(診断手順)にまとめられるのだろうか、という議論があった。しかし、common diseaseである腰痛に対し、数多くの情報が氾濫している昨今において、整形外科専門医だけでなく、一般の臨床医の先生方にも実地で活用していただけるような指針を打ち出すことは、腰痛に苦しむ患者さんのためにも意義のあることだという考えに至った次第である。先生方にはその点を念頭に入れて腰痛の診察にあたっていただきたい。そして専門医への紹介が必要な患者さんを見逃すことのないよう、的確なトリアージのために細心の注意を払っていただきたいと願ってやまない。

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虚血性僧帽弁逆流症、僧帽弁形成術vs.置換術のアウトカムは同等/NEJM

 虚血性僧帽弁逆流症に対し、僧帽弁形成術と置換術では、12ヵ月の左室収縮終末期容積係数(LVESVI)は同等であることが示された。死亡率も有意差はなかったが、中等度~重度の僧帽弁逆流症の再発率については、形成術群が置換術群より有意に高率だった。米国・ペンシルベニア大学のMichael A. Acker氏らが、251例の患者について行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。虚血性僧帽弁逆流症は、死亡リスクが高く、ガイドラインでは手術が推奨されているが、形成術か置換術かを支持するエビデンスは限定的であった。NEJM誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。僧帽弁形成術と置換術をそれぞれ実施、12ヵ月後のLVESVIを比較 Acker氏らは、重症虚血性僧帽弁逆流症の患者251例を無作為に2群に分け、一方には僧帽弁形成術を、もう一方には僧帽弁置換術を行い、その有効性と安全性を比較した。主要アウトカムは、12ヵ月後のLVESVIだった。 被験者の平均年齢は、68~69歳、男性は61~62%だった。LVESVI値、死亡率、主要有害心・脳血管イベント発生率ともに両群で同等 結果、12ヵ月後、僧帽弁形成術群の生存患者の平均LVESVI値は54.6(標準偏差:25.0)mL/m2であり、僧帽弁置換術群は60.7(同:31.5)mL/m2と、ベースライン時からの平均変化量はそれぞれ-6.6mL/m2と-6.8mL/m2だった。 死亡率は、形成術群が14.3%、置換術群が17.6%と、両群で有意差はなかった(形成術群の置換術群に対するハザード比:0.79、95%信頼区間:0.42~1.47、log-rank検定p=0.45)。また、死亡について補正を行った後のLVESVI値も、両群で有意差はなかった(Zスコア=1.33、p=0.18)。 一方、12ヵ月後の中等度~重度の僧帽弁逆流症の再発率は、形成術群32.6%に対し、置換術群では2.3%と有意に低かった(p<0.001)。 その他、12ヵ月後の主要有害心・脳血管イベントや、身体機能状態、生活の質についても、両群で有意差はなかった。

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院外心停止に対する機械的心肺蘇生、予後は手動と同等/JAMA

 院外心停止患者に対する、除細動併用の機械的心肺蘇生(CPR)と手動CPRとを比較した結果、4時間生存率に有意差は認められなかったことが判明した。スウェーデン・ウプサラ大学のSten Rubertsson氏らが、英・オランダを含めた3ヵ国6施設で登録された2,589例の院外心停止患者を対象に行った多施設共同無作為化試験「LINC」の結果、報告した。院外心停止に対する機械的CPRは、予後を改善する可能性が示唆されていたが、これまで大規模試験は行われていなかった。なお、6ヵ月時点までの神経学的アウトカムについても報告されているが、両群間に有意差はなく生存患者の94~99%のアウトカムが良好であったという。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告より。3ヵ国6施設2,589例を対象に無作為化試験 LINC(LUCAS in Cardiac Arrest)試験は、胸部圧迫とともに除細動で機械的に心マッサージを行う機械的CPR(LUCAS Chest Compression System、米国Physio-Control社/スウェーデンJolife AB社製)アルゴリズムが、ガイドラインに即して手動で行うCPRと比較して、4時間生存率を改善するかを明らかにすることを目的とした。被験者は2008年1月~2013年2月に、救急サービスまたは搬送先病院(スウェーデン4施設、英国1施設、オランダ1施設)に登録された院外心停止患者2,589例であった。無作為に、機械的CPR群1,300例、手動CPR群1,289例に割り付けられ、6ヵ月間フォローアップを受けた。 主要アウトカムは、4時間生存率。また、副次エンドポイントとして6ヵ月時点の脳機能カテゴリー(CPC)スコアで測定した神経学的アウトカムなども評価した。CPCスコアは、1、2をアウトカム良好と定義した。4時間生存率、6ヵ月後神経学的アウトカムに有意差みられず 結果、4時間生存率は、機械的CPR群23.6%(307/1,300例)、手動的CPR群23.7%(305/1,289例)で、有意差はみられなかった(リスク差:-0.05%、95%信頼区間[CI]:-3.3~3.2%、p<0.99)。 CPCスコア1、2の患者は、ICU退室時点では機械的CPR群7.5%(98例)、手動的CPR群6.4%(82例)(リスク差:1.18%、95%CI、-0.78~3.1%、p=0.25)であった。また、病院退院時ではそれぞれ8.3%(108例)、7.8%(100例)(同:0.55%、-1.5~2.6%、p=0.61)、1ヵ月時点では8.1%(105例)、7.3%(94例)(同:0.78%、-1.3~2.8%、p=0.46)、そして6ヵ月時点では8.5%(110例)、7.6%(98例)(同:0.86%、-1.2~3.0%、p=0.43)だった。 6ヵ月時点で生存していた患者でCPCスコアが1、2であった患者は、機械的CPR群99%・110/111例(スコア1:103例、同2:7例)、手動的CPR群94%・98/104例(スコア1:88例、同2:10例)だった。 これらの結果を踏まえて著者は、「日常診療において、機械的CPRアルゴリズムは、手動的CPRと比べて効果の改善には結びつかなかった」と結論している。

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LDLコレステロールを推算する新方程式/JAMA

 LDLコレステロール(LDL-C)値推算法について、従来のFriedewald式よりも正確なガイドラインのリスク層別化に優れた新たな方程式が、米国・ジョンズ・ホプキンス大学チッカローネ心疾患予防センターのSeth S. Martin氏らにより開発された。Friedewald式は1972年に448例の患者のデータを分析して編み出された、LDL-C実測の手間とコストがかからない計算式であり、長年、研究や臨床の目標値として、また国際的ガイドライン等の主要目標として取り入れられてきた。新推算法は、従来式の「トリグリセリド(TG)/5」の5という固定係数の解消を図ったもので、135万人の脂質データを分析して新たに補正係数を作成し、それを用いた評価法を開発した。JAMA誌2013年11月20日号掲載の報告より。全米の小児~成人135万人の脂質データを分析し開発 従来のFriedewald式([総コレステロール値]-[HDL-C]-[TG/5])では、VLDL-Cに対するTG(TG:VLDL-C)比は5と固定されていたが、実際のTG:VLDL-C比はTG値とコレステロール値によって有意に変動する。研究グループは、TG:VLDL-C比に補正係数を用いることで標準脂質プロファイルからLDL-C推定値を導き出す新たな方程式の開発に取り組んだ。 係数開発には、2009年~2011年に、米国人(小児、若者、成人)135万908人の臨床脂質プロファイルの連続検体を用いた。コレステロール値は遠心分離法にて直接測定し、TG値も直接測定した。脂質分布は、全米健康栄養調査(NHANES)と適合させて行った。 検体は、無作為に開発群(90万605例)と検証群(45万303例)の各データセットに割り付けられ、臨床診療ガイドラインのLDLリスク分類の一致について、推定値と実測値を用いた場合を比較した。TG値400mg/dL未満のリスク分類一致率、85.4%から91.7%に有意に改善 開発群のTG:VLDL-C比中央値は、5.2(IQR:4.5~6.0)だった。TG:VLDL-C比とTG値およびnon-HDL-C値とのバリアンスは65%だった。 TG値とnon-HDL-C値を組み合わせて、新たに180通りのTG:VLDL-C比中央値を評価するセルテーブルを作成した。それを、検証群に適用し新たなLDL-C推算法を開発した。 その結果、TG値400mg/dL未満の患者において、LDL-C直接測定法によるガイドラインリスク分類との一致率が、従来のFriedewald式では85.4%(95%信頼区間[CI]:85.3~85.5%)であったが、新推算式では91.7%(同:91.6~91.8%)と有意に改善した(p<0.001)。 改善が最も大きかったのは、LDL-C値70mg/dL未満への分類で、とくにTG値が高値の患者において改善が大きかった。 すなわち、推定LDL-C値70mg/dL未満群において、実際にLDL-C値70mg/dL未満であったのは、TG値100~140mg/dL群では従来式79.9%(95%CI:79.3~80.4%)、新推算式94.3%(同:93.9~94.7%)、TG値150~199mg/dL群では、61.3%(同:60.3~62.3%)と92.4%(同:91.7~93.1%)、TG値200~399mg/dL群では、40.3%(同:39.4~41.3%)と84.0%(同:82.9~85.1%)だった。 上記の結果から著者は、「TG:VLDL-C比の補正係数を用いた新たなLDL-C推算法は、Friedewald式よりもより正確なガイドラインリスク分類を提供した」と結論している。そのうえで「外的妥当性の検証と臨床的意義についての評価が必要ではあるが、この新たな推算法の臨床導入は簡便でコストがかからないものだろう」と述べている。

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国際疼痛学会が神経障害性疼痛に対する侵襲的治療について新しい勧告を発表

 神経障害性疼痛は、薬物療法あるいは非侵襲的治療に不応性のことが多い。国際疼痛学会の神経障害性疼痛部会は、神経障害性疼痛の侵襲的治療に関するシステマティックレビュー、臨床試験および既存のガイドラインを評価し、勧告を発表した。同部会を代表し米国・ロチェスター大学のRobert H. Dworkin氏らは、今後の研究の優先事項としてはさまざまな侵襲的および非侵襲的治療の無作為臨床試験、長期研究および直接比較試験が挙げられる、とまとめている。PAIN誌2013年11月(オンライン版2013年6月7日)。 以下の末梢性および中枢性神経障害性疼痛患者における神経ブロック、脊髄電気刺激(SCS)、髄腔内薬物投与および脳神経外科的治療に関するエビデンスがまとめられた。・帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛(PHN)・有痛性糖尿病性およびほかの末梢神経障害・脊髄損傷後神経障害性疼痛、脳卒中後の中枢性疼痛・神経根障害および腰椎術後疼痛症候群(FBSS)・複合性局所疼痛症候群(CRPS)・三叉神経痛と末梢神経障害 主な勧告内容は以下のとおり。・質の高い臨床試験が不足しているため、強い推奨を行うことはできない。・有効性と安全性の程度を含むエビデンスの量および一貫性に基づき、以下の4治療を「弱い推奨」とする。 1)帯状疱疹に対する硬膜外注射 2)神経根障害に対するステロイド注射 3)FBSSに対するSCS 4)CRPSタイプ1に対するSCS・PHNに対する交感神経ブロック、神経根障害に対する高周波療法の使用は推奨しない。・これらの侵襲的治療は、可能な限り無作為化臨床試験の一部として行うか、または登録研究に記録するかのどちらかでなければならない。 ~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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ヒュー・ジャックマン氏が公表した基底細胞がんとは

 豪俳優のヒュー・ジャックマン氏が今月21日、鼻にできた基底細胞がんの治療を受けていたことを公表した。また、鼻にばんそうこうを貼った写真を公開し、定期的に診察を受けること、日焼け止めを使用することを呼びかけた。 基底細胞がんは、表皮の基底細胞に発生する悪性腫瘍。皮膚がんの中では、最も頻度が高いものの、転移はまれで予後はよい。原因は不明であるが、紫外線による光老化、外傷・熱傷の瘢痕、放射線が関与していると考えられている。 高齢者の顔面に好発し、性状はほくろと似ているが、ほくろよりも青黒く、進行すると腫瘤や潰瘍となる。詳細な臨床的評価とダーモスコピーの所見において他の色素性腫瘍と鑑別するが、診断が確定できない病変においては、生検を実施して確定する。 基底細胞がんの治療の第一選択は手術療法である。初回手術で病変を切除しきることができれば、根治の確率は高くなる。高齢者などで、外科切除が困難な場合は放射線療法、凍結療法、掻爬・電気凝固術などを検討する。 今回、ヒュー・ジャックマン氏は、妻のデボラ・リー・ファーネス氏の勧めにより、診察を受けることで、早期発見につながったとみられる。参考:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン作成委員会編.皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン

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ステント留置患者における非心臓手術時の心事故リスク(コメンテーター:大野 貴之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(147)より-

現行のガイドラインでは、冠動脈ステント留置術後の非心臓手術の実施時期について、薬剤溶出性ステント(DES)は1年後、ベアメタルステント(BMS)は6週間後に延期することを推奨しているが、その根拠となるエビデンスは限られていた。 米国・アラバマ大学のMary T. Hawn氏らによる研究グループは、冠動脈ステント留置後24ヵ月以内に手術を受けた4万1,989例の退役軍人(VA)および非VAの全米患者を対象とした後ろ向きコホート試験を行った。試験は、冠動脈ステント留置後に非心臓手術を受けた患者における有害心イベント発生のリスク因子を特定することを目的とした。 対象コホートのうち、冠動脈ステント留置術を受けていたのは12万4,844例(DES:47.6%、BMS:52.4%)だった。そのうち術後24ヵ月以内に非心臓手術を受けていたのは2万8,029例(22.5%、95%信頼区間[CI]:22.2~22.7%)で、うち術後30日MACE発生例は1,980例(4.7%、95%CI:4.5~4.9%)だった。 ステント留置術を実施してから非心臓手術をするまでの期間が短いほど、MACE発生率(全死因死亡・心筋梗塞・心血行再建術)は高く、6週間未満では11.6%、6週間~6ヵ月は6.4%、6~12ヵ月は4.2%、12~24ヵ月は3.5%だった(p<0.001)。DESはMACEとの関連はみられず、またDES、BMSともに、MACEリスクはステント留置術後6ヵ月以降は安定した。また抗血小板薬の周術期投与中止とMACE発生との関連は認められなかった。結果を踏まえて著者らは、「DESとBMSのステントタイプおよび手術のタイミングについて強調している、現行のガイドラインについて再評価する必要がある」と提言している。 わが国の実際の臨床現場でも、非心臓手術(がん手術など)の術前検査で冠動脈疾患が診断されることはよく経験する。このような場合で冠血行再建術が必要と考えられる場合には、術後抗血小板薬投与が必須ではない冠動脈バイパス手術も考慮するのが望ましい。

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