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非小細胞肺がん、アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用における予防的抗凝固療法に関する合同ステートメント/日本臨床腫瘍学会ほか

 日本臨床腫瘍学会、日本腫瘍循環器学会、日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌治療学会、日本血栓止血学会、日本静脈学会は2025年12月8日、非小細胞肺がん(NSCLC)のアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法における予防的抗凝固療法の適正使用に関する合同ステートメントを発表した。 EGFR遺伝子変異陽性の切除不能進行・再発NSCLCに対する新たな治療戦略として二重特異性モノクローナル抗体であるアミバンタマブと第3世代EGFR-TKIラゼルチニブの併用療法が臨床導入された。アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法では、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症が高頻度であることが国内外の臨床試験により報告されている。このためVTE発症予防を目的として、併用療法開始後4ヵ月間にわたる直接経口抗凝固薬アピキサバンの投与が2025年3月27日付で厚生労働省保険局医療課により承認された。 しかし、本邦における診療ガイドラインでは外来化学療法時の抗がん薬によるVTE発症の予防目的で施行される抗凝固療法において推奨する抗凝固薬に関する記載がなく、同時にアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法治療中のNSCLC患者に対するアピキサバンの臨床的経験は限られているのが現状である。そこで、今回承認された新たながん治療法を安全かつ適正に導入するために、患者の安全性を最優先に考慮する必要があることから本ステートメントが発出された。ステートメント 「EGFR変異陽性の進行・再発NSCLCに対してアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法を施行する患者において、静脈血栓塞栓症予防を目的としてアピキサバン2.5mgを1日2回、4ヵ月間投与する。活動性悪性腫瘍症例に対しアピキサバンによる予防的抗凝固療法を施行するにあたり日本人では血中濃度が高くなることが知られているが、アピキサバン2.5mg1日2回投与の出血リスクについては安全性が確認されていない。そこで出血(ISTH基準の大出血*)などの重篤な合併症を生じるリスクを理解した上で、使用薬の特性、投与方法、薬剤相互作用を考慮した慎重な対応が必要である。そして、これらの治療は抗凝固療法に精通した腫瘍循環器医(循環器医)等と連携の取れる体制の下で実施されることが望ましい。」*:ISTH基準の大出血:実質的な障害をもたらす出血(脳出血、消化管出血、関節内出血など)、失明に至る眼内出血、2単位以上の輸血を要する出血

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CKDへのSGLT2阻害薬、糖尿病・UACRを問わずアウトカム改善/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)患者におけるSGLT2阻害薬の効果については不確実性が存在し、欧米のガイドラインでは糖尿病の状態や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に基づき推奨の強さが異なる。英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists’ Consortium(SMART-C)は、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能や入院、死亡のアウトカムに関して明確な絶対的便益(absolute benefit)を有するとメタ解析の結果を報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年11月7日号で発表された。8件の無作為化臨床試験のメタ解析 研究グループは、糖尿病の有無およびUACR(200mg/g以上、200mg/g未満)で層別化した臨床試験の参加者において、SGLT2阻害薬の使用が有効性や安全性のアウトカムに及ぼす相対的および絶対的な影響の評価を目的にメタ解析を行った。 対象は、腎疾患での使用の適応を有するSGLT2阻害薬について検討し、腎アウトカムの経過やベースラインのアルブミン尿のデータを記録した8件の無作為化臨床試験であった。 主要アウトカムとして、SGLT2阻害薬の使用が臨床的な有効性と安全性に及ぼす影響を評価した。糖尿病の有無にかかわらず、有効性のアウトカムが改善 SGLT2阻害薬とプラセボを比較した試験の参加者5万8,816例(平均年齢64[SD 10]歳、女性35%、糖尿病4万8,946例、非糖尿病9,870例)を解析の対象とした。 プラセボ群と比較してSGLT2阻害薬群では、次の4つの有効性のアウトカムが糖尿病の有無を問わず改善した(非糖尿病患者の総死亡を除く)。(1)腎疾患進行率が低下(糖尿病患者:SGLT2阻害薬群33件/1,000人年vs.プラセボ群48件/1,000人年、ハザード比[HR]:0.65[95%信頼区間[CI]:0.60~0.70]、非糖尿病患者:32件vs.46件、0.74[0.63~0.85])(2)急性腎障害(AKI)の発生率が低下(糖尿病患者:14件vs.18件、0.77[0.69~0.87]、非糖尿病患者:13件vs.18件、0.72[0.56~0.92])(3)総入院の発生率が低下(糖尿病患者:202件vs.231件、0.90[0.87~0.92]、非糖尿病患者:203件vs.237件、0.89[0.83~0.95])(4)総死亡の発生率が低下(糖尿病患者:42件vs.47件、0.86[0.80~0.91]、非糖尿病患者:42件vs.48件、0.91[0.78~1.05])アルブミン尿による層別化は不要 このようなSGLT2阻害薬の糖尿病の有無別のHRは、さらにUACR 200mg/g以上とUACR 200mg/g未満に分けて検討した場合も同様に良好であった。 たとえば、UACR 200mg/g以上で絶対リスクが高い場合でも、このサブグループでは腎疾患進行(糖尿病患者のHR:0.65[95%CI:0.59~0.71]、非糖尿病患者のHR:0.71[95%CI:0.60~0.84])に対するSGLT2阻害薬の絶対的便益が明らかに大きいと推定された。また、UACR 200mg/g未満の患者では、他の有効性のアウトカム、とくに入院(0.91[0.88~0.94]、0.89[0.82~0.98])に関して明らかな絶対的便益を認めた。 さらに、非心不全の患者集団や、推定糸球体濾過量が60mL/分/1.73m2未満の患者の解析でも、このSGLT2阻害薬の絶対的便益が保持されていた。 著者は、「これらのデータは、CKD患者におけるSGLT2阻害薬の使用に関するガイドラインの推奨から、アルブミン尿の値による患者の層別化を削除することを支持し、より広範な使用の根拠となるものである」としている。

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ガイドライン順守率が精神疾患の長期アウトカムに及ぼす影響〜統合失調症とうつ病におけるEGUIDEプロジェクト

 精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)は、精神科医に対してガイドラインの教育の講習を行い、統合失調症およびうつ病のガイドライン順守治療を促進することを目的として、日本で開始されたプロジェクトである。参加医師への短期的な効果は、すでに報告されていたが、長期的および施設全体への効果は依然として不明であった。国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、ガイドライン順守による治療が、施設間で時間の経過とともに改善するかどうかを評価した。その結果、潜在的な拡散効果またはスピルオーバー効果が示唆された。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年12月号の報告。 2016〜23年に、精神科施設298件を対象としたプロスペクティブ観察研究を実施した。統合失調症患者1万9,623例とうつ病患者9,805例の退院時処方箋および治療データを収集した。ガイドライン順守は、11の統合失調症品質指標(QI-S)と7つのうつ病品質指標(QI-D)を用いて評価した。年齢、性別、施設で調整した後、多重比較ではBonferroni補正を用いたロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症については、11のQI-Sのうち7つにおいて、前年比で有意な改善が認められた。改善された項目には、治療抵抗性統合失調症の診断評価(42.2%→62.5%)、修正型電気けいれん療法(mECT)の使用(6.1%→11.8%)、抗コリン薬を使用しない(70.7%→81.7%)などが挙げられた。・うつ病については、7つのQI-Dのうち3つにおいて、前年比で有意な改善が認められた。改善された項目には、重症度診断の評価(51.2%→77.0%)、mECTの使用(12.8%→26.6%)などが挙げられた。・とくに、認知行動療法(CBT)の実施が減少した。・これらの知見は、すべての施設において、参加していない臨床医に対しても長期的な行動変化が及んでいることを示唆している。 著者らは「EGUIDE講習を受けた精神科医が施設内にいることで、施設レベルのガイドラインを順守した治療の持続的な改善が認められた。これらの結果は、個々の教育的利益だけでなく、実践文化の浸透、すなわちスピルオーバー効果によって精神科医療の質が向上することを示唆している。このことから、治療実践を大規模に改善するには、継続的な教育努力が不可欠である」と結論付けている。

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災害避難で車中泊は危険なのか?【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第11回

災害避難で車中泊は危険なのか?大規模災害の後、体育館が避難所として運営され、多くの避難者が生活していますが、避難所ではなく自家用車の中で生活している避難者も多くいるようです。避難所管理医師として、車中泊をする避難者の健康管理を行政から依頼されました。どのようなケアをすればいいでしょうか?車中泊する人は多い大規模災害時、避難所の収容限界や感染対策、プライバシーの問題から「車中泊」を選ぶ避難者は少なくありません。車中泊であれば、他人の物音に悩まされることもなく、周囲に気を使わずに夜中でもパソコンやスマートフォンを操作できます。実際、2016年の熊本地震では、避難者の6~7割が一時的に車中泊を経験しました1)。一方、震災関連死した被災者の約3割が車中泊経験者でした2)。こうした経緯から、車中泊は「避けるべきリスク」として語られがちです。しかし、指定避難所が満員である場合や、家族・ペットの事情などを考慮すると、多くの被災者にとって「積極的に選ばれる避難手段」となっているのが現実です。車中泊は血栓症のリスクなのか?医療者が注目すべきは、この避難様式が深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PTE)のリスク因子となる点です3~5)。熊本地震後の調査では、車中泊経験者のDVT発症率は約10%に達し、心肺停止に至る重症PTEの症例も報告されています6)。このような事実から、「車中泊は極力避けるべき」と主張する支援者もおられます。しかし近年の研究では、問題の本質は「車中泊」そのものではなく、その過ごし方と環境にあることが示されています。とくに以下の要因がリスクを高めるといわれています。長時間の下肢屈曲保持(座席での就寝など)トイレ不足による水分制限 → 脱水・血液濃縮下肢運動不足 → 筋ポンプ機能の低下高齢、肥満、静脈瘤、悪性腫瘍、妊産婦、血栓症などの家族歴経口避妊薬や睡眠薬などの服薬歴寒冷環境や強いストレスによる交感神経の緊張車中泊中の血栓症の予防はどうするか?これらのリスクを有する避難者に対しては、車内でも可能な非薬物的予防が有効であり、避難所を預かる医師として、以下のような適切なアドバイスが必要です。足を伸ばせる姿勢を確保する弾性ストッキングや保温具を活用し、下肢を冷やさない1~2時間ごとの足関節運動や体位変換を行う簡易トイレを活用してトイレの不安を減らし、水分を十分に摂取するハイリスク群に対しては、薬物療法としてDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)の予防的投与も一案です。しかし、腎機能障害時の出血リスクが高まり、とくに災害時は脱水環境になりやすいため、慎重な判断が求められます。現実的には薬物よりも、まずは非薬物的な予防と環境整備を優先すべきでしょう。災害時の車中泊を一律に「危険」と断じるのではなく、適切な介入と支援を行うことで、DVTやPTEは予防することができます。われわれ医療者は、やみくもにリスクばかり強調するのではなく、避難行動の多様性を尊重しながら、あらゆる状況で被災者の健康を守れる体制を事前に整えておく必要があります。 1) 熊本県. 平成28年熊本地震における車中泊の状況について. 2023年10月15日 2) 日本経済新聞. 熊本地震1年 関連死の犠牲者、3割が車中泊を経験. 2017年4月16日 3) 日本循環器学会/日本高血圧学会/日本心臓病学会合同ガイドライン. 2014年版 災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン 4) Sato K, et al. Risk Factors and Prevalence of Deep Vein Thrombosis After the 2016 Kumamoto Earthquakes. Circ J. 2019;83:1342-1348. 5) Sueta D, et al. Venous Thromboembolism Caused by Spending a Night in a Vehicle After an Earthquake (Night in a Vehicle After the 2016 Kumamoto Earthquake). Can J Cardiol. 2018;34:813.e9-813.e10. 6) 坂本 憲治ほか. 熊本地震後に発生した静脈血栓塞栓症と対策プロジェクト. 日本血栓止血学会誌. 2022;33:648-654.

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血圧コントロールに地域差、降圧目標達成が高い/低い都道府県は?/東北医科薬科大ほか

 日本における降圧治療開始後の血圧コントロール状況には、地域間で格差が存在し、降圧目標達成割合は医師の偏在や脳血管疾患死亡と関連していることが、岩部 悠太郎氏(東北医科薬科大学)らによる大規模なリアルワールドデータ解析で示された。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』1)では、年齢にかかわらず降圧目標を「130/80mmHg未満(診察室血圧)」としているが、本研究では治療開始後にこの目標を達成できた患者は26.7%にとどまった。本研究結果は、Hypertension Research誌オンライン版2025年11月18日号で報告された。 研究グループは、協会けんぽの健診データ(2015~22年度)を使用して、降圧治療を開始したと判断された40~74歳の男女131万8,437例を抽出し、後ろ向きコホート研究を実施した。降圧治療開始前後の健診データから、治療後の降圧目標(130/80mmHg未満[診察室血圧])達成割合を評価した。また、都道府県別の降圧目標達成割合の格差を算出するとともに、脳血管疾患死亡や医療資源指標(医師偏在指標など)との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・降圧治療開始前の平均血圧は148.3/92.4mmHgで、治療開始後は134.1/83.1mmHgへ低下した。・治療開始後に降圧目標(130/80mmHg未満)を達成した患者の割合は、全体で26.7%であった。・都道府県別の降圧目標達成割合は、未調整解析では最大10.2%の差があった。調整後でも7.4%の差が認められた。・調整後の降圧目標達成割合が上位/下位の府県は以下のとおり。【上位】 1位:香川県(26.2%) 2位:沖縄県(25.9%) 3位:高知県(24.4%) 4位:滋賀県(24.4%) 5位:大阪府(24.4%) 6位:熊本県(24.4%)【下位】 43位:群馬県(20.4%) 44位:山口県(20.2%) 45位:山形県(19.8%) 46位:鳥取県(19.5%) 47位:和歌山県(18.8%)・調整後の都道府県別の140/90mmHg未満の達成割合は、49.4%(和歌山県)~58.9%(宮崎県)の範囲であった。・生態学的分析の結果、降圧目標達成割合が1%上昇するごとに、10万例当たりの脳血管疾患死亡は3.5例減少した。・医師偏在指標は、降圧目標達成割合と有意な正の相関を示した(r=0.47、p<0.001)。これは、地域の医師供給量が多いほど血圧管理が良好であることを示唆するものである。 本研究結果について、著者らは「本研究で観察された血圧コントロールの地域差は、医療従事者数と関連する可能性が示された。また、医療従事者の偏在改善によって、血圧コントロールの地域差が縮小し、脳血管疾患死亡の地域差の縮小にもつながる可能性が示唆された」と述べている。

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ピロリ菌が重いつわりを長引かせる可能性、妊婦を対象とした研究から示唆

 妊娠中の「つわり」は多くの人が経験する症状であるが、中には吐き気や嘔吐が重く、入院が必要になるケースもある。こうした重いつわり(悪阻)で入院した妊婦164人を解析したところ、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)に対する抗体(IgG)が陽性である人は入院が長引く傾向があることが分かった。妊娠前や妊娠初期にピロリ菌のチェックを行うことで、対応を早められる可能性があるという。研究は、日本医科大学武蔵小杉病院女性診療科・産科の倉品隆平氏、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は10月6日付けで「Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に掲載された。 妊娠悪阻は妊娠の0.3〜2%にみられる重度のつわりで、持続する嘔吐や体重減少により入院を要することも多い。進行すると電解質異常や肝・腎機能障害、ビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症(意識障害やふらつきを伴う急性脳症)などを生じることがある。原因としてヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)や胎盤容積の大きさなどが知られるが、近年はピロリ菌感染との関連も指摘されている。しかし、日本人妊婦における感染と重症度や入院期間との関係は十分に検討されていない。本研究では、重度妊娠悪阻で入院した症例を対象に、入院時の各種指標とピロリ菌に対するIgG抗体の有無が入院期間に及ぼす影響を後ろ向きに検討した。 本研究では、2011年1月~2023年6月までに日本医科大学付属病院または日本医科大学武蔵小杉病院で入院治療を要した重度妊娠悪阻患者164人が含まれた。患者はまず、抗H. pylori IgG抗体の有無(陽性群 vs 陰性群)に基づき2群に分けられた。その後、すべての患者を長期入院群(21日以上)と短期入院群(21日未満)に分類して、二次解析が行われた。統計手法には、マン・ホイットニーのU検定、t検定、フィッシャーの正確確率検定、ロジスティック回帰分析が適宜用いられた。 解析対象164人中、抗H. pylori IgG抗体陽性の患者は23人(14.0%)、陰性は141人(86.0%)であった。これら2群の入院期間を比較したところ、抗H. pylori IgG抗体陽性群の入院中央値(範囲)は24日(6〜70日)であり、陰性群の中央値15日(2〜80日)と比べて有意に長かった(P=0.032)。 次に長期入院群と短期入院群を比較したところ、長期入院群では尿ケトン体強陽性(3≦)の割合(P=0.036)や抗H. pylori IgG陽性の割合(P=0.022)が有意に高かった。入院時の検査所見を比較すると、長期入院群では血清遊離サイロキシン(FT4)値が有意に高かったが、その他の検査項目に有意差は認められなかった。 多変量ロジスティック回帰分析の結果、単変量解析で有意だった因子を調整後も、入院長期化の独立したリスク因子として確認されたのは抗H. pylori IgG陽性のみであった(オッズ比〔OR〕 4.665、95%信頼区間〔CI〕 1.613~13.489、P=0.004)。尿ケトン体強陽性は入院期間延長の傾向を示したが、統計的有意差は認められなかった(OR 2.169、95%CI 0.97~4.85、P=0.059)。一方、尿ケトン体強陽性の有無で患者を層別すると、陽性群の入院中央値は19日(4〜80日)、陰性群の12日(2〜55日)であり、有意に入院期間が延長されていた(P=0.001)。 著者らは「今回の研究結果から、抗H. pylori IgG抗体の検査で、重度の悪阻で入院が長引きやすい妊婦を特定できる可能性が示唆された。抗体陽性の妊婦は、入院中により注意深く観察されることで、体調管理の助けになると考えられる。また、妊娠前からの準備(プレコンセプションケア)が、悪阻の予防策として有効かもしれない」と述べている。 また、著者らは、妊娠前のピロリ菌スクリーニングや除菌の有効性については現時点では仮説にすぎず、本研究はその可能性を示すにとどまると説明している。今後は、ガイドラインや保険制度の見直しを含め、前向き研究で有効性や費用対効果を検証することが重要だとしている。

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新たな作用機序の緑内障・高眼圧症点眼薬「セタネオ点眼液0.002%」【最新!DI情報】第52回

新たな作用機序の緑内障・高眼圧症点眼薬「セタネオ点眼液0.002%」今回は、緑内障・高眼圧症治療薬「セペタプロスト(商品名:セタネオ点眼液0.002%、製造販売元:参天製薬)」を紹介します。本剤は、FPおよびEP3受容体に結合・刺激することで眼圧を下降させる新たな作用機序の点眼薬であり、新たな緑内障・高眼圧症の治療選択肢として期待されています。<効能・効果>緑内障、高眼圧症の適応で、2025年8月25日に製造販売承認を取得し、2025年10月23日に発売されました。<用法・用量>1回1滴、1日1回点眼します。<安全性>重大な副作用として、虹彩色素沈着(0.3%)があります。その他の副作用として、結膜充血(29.6%)、睫毛の異常(睫毛が長く、太く、多くなるなど)(18.2%)、眼瞼部多毛(5%以上)、眼瞼色素沈着、眼瞼炎、点状角膜炎などの角膜障害、眼乾燥感、眼刺激(いずれも1~5%未満)、眼のそう痒感、結膜浮腫、眼脂(いずれも1%未満)、黄斑浮腫、眼瞼溝深化(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、緑内障や高眼圧症の治療に使用する点眼薬です。眼圧を調節する水分の排出を促進して眼圧を下げます。2.ソフトコンタクトレンズを装着している場合は、必ずレンズを外してから点眼してください。点眼後は5~10分以上間隔を空けてからレンズを再装着してください。3.点眼液が目の周りについたままになると、目の周りが黒ずむ、毛が濃くなる、まつげが長く太くなるなどの副作用が起こることがあります。濡らしたガーゼやティッシュで目の周囲をよくふき取るか、目を閉じて洗顔してください。<ここがポイント!>緑内障は、「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」と定義されています(緑内障診療ガイドライン)。緑内障は放置すると徐々に視野が狭まり、最終的には失明に至る可能性があり、わが国において中途失明の原因の第1位です。緑内障の視野障害の進行を抑制する唯一確実な治療法は眼圧の下降であり、眼圧下降薬による薬物治療が治療の中心となっています。第一選択薬としては、房水流出を促進するFP受容体作動薬やEP2受容体作動薬、房水産生を抑制するβ遮断薬が用いられます。治療は通常、単薬療法から開始されますが、効果が不十分な場合には多剤併用(配合点眼薬を含む)が行われます。ただし、多剤併用により点眼回数が増加すると、副作用の増加、アドヒアランスやQOLの低下などが懸念されるため、新たな作用機序を有する強力な眼圧下降薬の開発が進められてきました。本剤は、有効成分としてセペタプロストを含有する水性点眼薬です。セペタプロストは、プロドラッグであり、点眼後は主に角膜中で速やかに加水分解され、FPおよびEP3受容体に結合・刺激することで眼圧を下降させます。その眼圧降下作用は、ぶどう膜強膜流出路および線維柱帯流出路を介した房水流出促進によるものです。両眼が原発開放隅角緑内障または高眼圧症の患者を対象とした多施設共同無作為化評価者遮蔽並行群間比較試験(第III相検証試験)において、主要評価項目である点眼後4週におけるベースラインからの平均日中眼圧変化量(最小二乗平均値[LS Mean])は、本剤群で-5.77mmHg、ラタノプロスト点眼液群で-6.10mmHgでした。MMRM解析における投与群間差(本剤群-ラタノプロスト点眼液群)は0.32mmHg(95%信頼区間:-0.120~0.769mmHg)であり、信頼区間の上限値は非劣性マージンとして事前に規定した1.5mmHgを超えず、本剤群のラタノプロスト点眼液群に対する非劣性が検証されました。なお、信頼区間の上限値は0mmHg以上であったことから、本剤群のラタノプロスト点眼液群に対する優越性は検証されませんでした。

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がん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版 第3版

がん診療の現場で役立つ、せん妄に関する指針を3年ぶりに改訂!せん妄はがん医療の現場において高頻度で認められる病態であり、超高齢社会を迎えた日本では今後さらに、せん妄の予防と対策が重要となる。今版では、予防ではラメルテオンとオレキシン受容体拮抗薬に関する臨床疑問を、症状緩和では抗精神病薬とベンゾジアゼピン系薬・抗ヒスタミン薬の併用に関する臨床疑問を追加した。また総論の章には、臨床現場で重要となるアルコール離脱せん妄や術後せん妄をはじめとした7項目の解説が新たに追加されている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するがん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版 第3版定価3,300円(税込)判型B5判頁数264頁発行2025年9月編集日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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薬局の4割が在庫調整目的の不適切返品を実施?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第161回

本来、返品を含むような在庫調整はなるべく避けるべきですが、少しぎょっとするような調査結果が公表されました。厚生労働省は11月21日の中央社会保険医療協議会総会で、24年度診療報酬改定の特別調査の結果を報告。「流通改善ガイドライン」(GL)で自制を求めている、在庫調整を目的とした返品をしたことがあると答えた薬局が38.6%に上ったことを明らかにした。24年3月の改定版GLでは月末に返品して翌月に買い戻すような不適切な行為を「在庫調整」行為と規定。必ずしも薬局が正直に答えているとは限らないなかでも、約4割が不適切な返品を“自白”した格好だ。(2025年11月25日付 RISFAX)ご存じのように、医療用医薬品の価格は公的に定められた薬価によって決まっています。薬価は、医療費の公平性を保つために定期的に見直され、現在はおおむね2年に一度、4月に改定されます。特別な算定が行われなければ、基本的には薬価は下がっていきます。3月31日に薬局にある医薬品が、日をまたいで4月1日になるだけで資産価値が数%下がるということもあります。そのため、私が薬局長や薬局のエリア長をしていたときは、薬価改定のある3月末の在庫には気を付けていたことは事実です。今回の調査は、診療報酬・調剤報酬改定に向けた恒例の調査の一環で実施されました。8~9月に薬局1,500件を対象に調査票を送付し、690件の有効回答を得ています。返品経験といった流通改善に関する質問は、今回から新たに薬局向け調査にのみ追加されたものでした。おそらく、悪質な返品を行っている薬局がある程度あるということを事前に察知していたのでしょう。この調査の結果、在庫調整を目的とした返品をしたことがあると答えた薬局が38.6%に上ったとのことです。具体的には、3月中旬までは通常どおり発注・納品をして、余った医薬品を3月末にできる限り返品、月をまたいだ4月に改めて発注します。そうすることで、3月末の在庫金額を抑え、4月発注分は薬価が下がっているので安く仕入れることができます。また、さまざまな問題があるとされている医療用医薬品の流通過程を改善するための「流通改善ガイドライン」をそもそも「知らない」と答えた薬局が半数を超えたという結果も出ました。ということは、「え?この返品の何がいけないの?」と思っている薬局薬剤師が大多数となる可能性があります。これらの返品は、薬価改定の仕組みを用いた悪しき慣習とされており、流通ガイドラインのなかでも、「卸売販売業者、薬局・医療機関ともに慎むこと」とされています。メーカーや卸売業者は、コンプライアンスの一環としてこの流通改善ガイドラインを守っています。後発医薬品など必要な量の医薬品が届かないという現状に文句を言いたい気持ちはわからなくはないですが、不適切な返品が横行することで、流通量の把握や確保がより困難になり、最終的に薬局や医療機関に必要な量の医薬品が届かない…となる可能性があります。「薬局だけがこのガイドラインを遵守していない」とならぬよう、業界の一員としてガイドラインを一読し、日ごろの発注業務や商習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

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解熱鎮痛薬による頭痛誘発、その原因成分とは

 日本のテレビコマーシャルでお馴染みの解熱鎮痛薬「イブ」に含有されている成分が、韓国では2025年4月に違法薬物に指定されて持ち込み禁止となった。その成分は、日本人医師や薬剤師にはさほど認知度が高くないものの、近年の頭痛外来患者の増加の原因の1つになっている可能性があるという。今回、頭痛専門外来患者の市販薬(OTC医薬品)の服用状況などを研究する佐野 博美氏(京都大学大学院医学研究科 社会医学系専攻健康情報学)と共同研究者の平 憲二氏(プラメドプラス)が、日本社会薬学会第43年会にて「薬剤の使用過多による頭痛(medication-overuse headache:MOH、薬物乱用頭痛)」に関する報告をしたことから、解熱鎮痛薬に含まれる依存性成分や頭痛患者が増える実態について話を聞いた。解熱鎮痛薬に配合されている依存性成分の正体 海外での規制に至った原因成分とは、鎮静催眠成分のアリルイソプロピルアセチル尿素(ア尿素)である。OTC解熱鎮痛薬は、解熱鎮痛成分(アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)、制酸成分(乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウムなど)、生薬成分、無水カフェイン、その他成分、そして鎮静催眠成分(ア尿素、ブロモバレリル尿素[ブ尿素])などで構成される。今回問題とされたア尿素に焦点を当てた場合、イブシリーズでは5製品中4製品に配合されている。もちろんOTC 解熱鎮痛薬の成分として厚生労働省から認可を受けており、その前提で使用されているので国内の規制上は問題ない。 一方で、『頭痛の診療ガイドライン2021』のCQI-13(OTC医薬品による頭痛治療をどのように指導するか)では、OTC医薬品の不適切使用によるMOHを問題視しているものの、その具体的な要因は明らかにされていない1)。患者支持ダントツ、依存性成分が満足度の底上げか そこで佐野氏らは、「頭痛専門外来患者における市販薬の鎮痛薬服用状況:問診票を用いた記述疫学研究」において、片頭痛や緊張型頭痛のような一次性頭痛患者のOTC医薬品の利用率増加と医療機関受診率低下の原因を“OTC医薬品に含まれる依存性成分”と仮定し、3つの依存性成分(カフェイン、ア尿素、ブ尿素)が含まれている解熱鎮痛薬の使用状況を頭痛専門外来2施設で調査、初診患者の市販薬服用状況を明らかにした。 解析対象者は、普段使用している頭痛治療薬の種類を問診票に記載し、適格基準を満たした15歳以上の6,756例で、そのうち市販薬のみを服用し、商品名を明記していた1,128例をサブ解析した。その結果、約6割強がイブシリーズ(イブA錠EX、イブクイック頭痛薬DX、イブA錠、イブクイック頭痛薬、どのシリーズかは不明)を使用していたことが示された。なお、イブシリーズの場合、依存性成分を含まない『イブ』は2023年に販売中止されているため、「イブを使用=依存性成分を摂取」と判断された。使用されていたOTC医薬品の依存性成分の内訳については、カフェイン&ア尿素が最も多く(8割弱)、続いてカフェイン&ブ尿素、依存性3成分なし、カフェインのみ、依存性3成分すべてであった。医療にアクセスするも適正薬剤届かず 本集団の特徴として、佐野氏は「病院にアクセスしづらい働き世代で、とくに40代以上の女性が多かった。驚いたことに、対象者は重症度が高い患者であるにもかかわらず、その約2割が市販薬のみでコントロールしていた。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体製剤などの新薬にたどりつくべき患者がたどり着けずに市販薬を手にしている可能性がある」と片頭痛治療の実際に危機感を抱いた。これについて平氏は、「依存性成分が処方箋医薬品とは異なる配合(比率)で含まれるOTC医薬品に“効果がある”と考えている患者は一定数存在する。患者自身がいろいろ試した結果、効果を実感してOTC医薬品に依存していくのではないか」と指摘し「通院しているが、“治療は市販薬”という患者も少なくない」と現状を説明した。 本調査の限界として、「ロキソニンやバファリンは処方薬との区別ができなかったため、集計結果の信頼性が低い」と説明し、「依存性成分は処方箋医薬品にも含まれているため、実際には本研究結果より多くの患者が依存性成分を摂取している可能性がある。さらに、鎮静作用のある成分とカフェインを同時摂取することは薬理作用が強化され、依存リスクが高まる可能性があるにもかかわらず、本対象者の使用薬剤の約9割にはそれらが一緒に含有されていた」と述べた。「今後は処方箋医薬品も含めた解析を実施していきたい」としながら、「医師・薬剤師をはじめ、医療者にはこのような実態を理解したうえで、患者に接してほしい」ともコメントした。

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肝細胞癌診療ガイドライン 2025年版 第6版

新たな名称にて堂々改訂! 待望の第6版!今回から書名を「肝細胞癌診療ガイドライン」と改め、従来のCQに加えて「Future Research Question」を新設。一部推奨については「Good Practice Statement」として提示することとなった。また、薬物療法では新たなレジメンが加わり、放射線治療でも粒子線治療が保険適用になるなど、治療選択肢の拡充に伴い、解説もさらに充実した。肝細胞癌診療に携わる医療者の必携書、待望の改訂版!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する肝細胞癌診療ガイドライン 2025年版 第6版定価4,950円(税込)判型B5判頁数400頁発行2025年10月編集日本肝臓学会ご購入はこちらご購入はこちら

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子宮体がん再発後も妊孕性温存に挑戦~GL改訂も視野にクラウドファンディング実施/婦人科悪性腫瘍研究機構

 婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)の子宮体がん委員会副委員長や『子宮体がん治療ガイドライン 2023年版』の作成委員を務める山上 亘氏(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 教授)は、「子宮体癌/子宮内膜異型増殖症に対する任孕性温存治療後の子宮内再発に対する反復高用量黄体ホルモン療法に関する第II相試験」を継続するため、2025年10月16日よりクラウドファンディングを実施。第一目標金額680万円、第二目標金額980万円を達成し、現在、追加支援を募集している。一刻も早く、妊孕性温存希望者の子宮全摘回避を 『子宮体がん治療ガイドライン 2023年版』第6章のCQ29「妊孕性温存療法施行時に病変遺残がある、あるいは妊孕性温存療法後の子宮内再発に対して、保存的治療は勧められるか?」において、子宮内再発で妊孕性温存を強く希望する患者には、厳重な管理のもとに再度の黄体ホルモン療法(MPA療法)を提案することが示されている(推奨の強さ:2、エビデンスレベル:C)。しかし、本来再発例には子宮全摘出術を勧め、保存的治療を行わないことが推奨されているため、妊孕性温存を強く希望する患者であっても、子宮摘出されている例が全国的に散見されるという。そこで、山上氏らはこの状況を食い止めるため黄体ホルモン療法のエビデンス創出を目指し、再発後の子宮体がん・異型子宮内膜増殖症に対する再度の黄体ホルモン療法の有効性と安全性を検証する多施設前向き臨床試験(JGOG2051/KGOG2031)をスタートさせた。全国81施設および韓国・Korean Gynecologic Oncology Group(KGOG)協力のもと、2024年12月までに国内外から目標症例数115例の集積が完了している。 あとは経過観察、統計解析を残すところまできた本研究だが、ここに来て公的資金による継続的支援が困難となり、試験中止を余儀なくされている状況である。今後、ガイドラインに本試験結果を反映して若年者の子宮全摘出を回避する推奨を創出するためには、試験結果の論文化に向けてデータ解析をする必要があるため、追加の支援募集を始めた。これについて山上氏は、「本研究結果で再度のMPA療法の有効性が認められれば、安心して患者さんに治療選択肢を提案できるようになる。再発後も妊孕性温存を諦めないための新しい治療選択肢を確立していきたい」とし、「皆さまのお力をお借りして、本臨床試験により子宮体がん妊孕性温存療法の限界を見極めていきたい。その成果を患者さんに届け、1人でも多くの妊娠の希望を叶えたいと考える」と思いを述べた。【プロジェクト概要】・目標金額:第一目標680万円、第二目標980万円、現在追加支援募集中・募集期間:12月14日(日)午後11時まで・プロジェクトの目的:再発後の子宮体がん・子宮内膜異型増殖症に対する再度の黄体ホルモン療法の有効性と安全性を検証し、妊孕性温存希望患者への保存的治療を早期に普及させる・寄付金の使徒:データセンター費用、論文化に向けたデータ解析費用、成果発信のための国内外学会発表、論文化費用など

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日本の糖尿病診療の実態、地域・専門医/非専門医で差はあるか?/日本医師会レジストリ

 日本医師会が主導する大規模患者レジストリJ-DOME(Japan Medical Association Database of Clinical Medicine)のデータを用い、日本の糖尿病診療の現状を分析した研究結果が発表された。国際医療福祉大学の野田 光彦氏らによる本研究はJMA Journal誌2025年10月15日号に掲載された。 研究者らは、2022年度にJ-DOMEへ患者を登録した全国116の医療機関を対象に、2型糖尿病患者2,938例のデータを解析した。施設を地域別に7グループ(北海道・東北、北関東、南関東、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄)に分け、地域間の比較を行った。また、糖尿病専門医の在籍施設と非在籍施設の違いについても検討した。 主な結果は以下のとおり。・全国116の医療機関で2型糖尿病と診断された2,938例が解析対象となった。年齢中央値71(範囲:8~99)歳、男性1,567例(53%)、1機関当たりの平均患者数は25.3(範囲:1~150)例であった。・患者の全国平均のHbA1c値は6.96%、血圧は129.7/73.0mmHgで、脂質値(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)を含めたいずれの値も、地域間で有意差は認められなかった。・専門医在籍施設(45施設)と、非在籍施設(71施設)を比較したところ、HbA1cの平均値は、専門医施設(7.13%)が非専門医施設(6.86%)より有意に高値だった。これは、専門医施設で糖尿病網膜症(専門医施設22.8%vs.非専門医施設7.7%)や糖尿病性腎症(21.8%vs.16.1%)などの合併症を有する患者が多いためと推察された。なお、血圧や脂質管理の指標は、専門医と非専門医施設間で有意差は認められなかった。・一方、合併症の早期発見に直結する定期検査の受診率では、専門医施設と非専門医施設で差がみられた。眼科の定期検査受診率は、専門医施設で78.5%と高かったのに対し、非専門医施設では53.9%に留まった。尿中アルブミン定量検査受診率も専門医施設(62.5%)が非専門医施設(33.5%)に比べ、2倍近かった。 研究者らは、「本研究結果は、分析したどの地域でも全国平均からの大きな逸脱はみられず、日本全国で糖尿病ケアの水準が比較的均一であることが示された。これは診療ガイドラインの普及や医療の標準化によるものと考えられる。一方、糖尿病合併症の進行を抑制するために不可欠な定期検査の受診率では、専門医と非専門医施設で依然として大きな差が存在することも示された。大多数の患者を診療している非専門医施設における定期的な眼科受診や尿中アルブミン定量検査の実施を標準化し、底上げを図ることが、糖尿病医療の質全体を向上させるために重要だ。専門医と非専門医間の連携強化の推進とともに、非専門医に対する合併症検査の重要性の啓発と、実施体制の整備が急務となる」としている。

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女性は男性よりも運動から得られる効果が大きい

 女性は男性に比べて、大幅に少ない運動量でより多くの効果を得られるようだ。新たな研究で、男性と女性が同量の運動をした場合、女性での冠動脈疾患(CHD)による死亡リスクの低下に対する運動の効果は男性の3倍以上であったことが示された。厦門大学(中国)心臓血管研究所のJiajin Chen氏らによるこの研究結果は、「Nature Cardiovascular Research」に10月27日掲載された。 この研究では、英国の長期健康研究プロジェクトであるUKバイオバンクの参加者のうち、CHDのない8万243人を対象にCHDの発症リスクを、またCHD患者5,169人を対象に全死因死亡リスクを評価した。活動量計で測定された活動量を基に、対象者を複数のガイドラインで推奨されている「週150分の中〜高強度運動(MVPA)」の遵守者と非遵守者に分け、比較検討した。 その結果、ガイドライン遵守者では非遵守者に比べてCHD発症リスクが女性では22%、男性では17%低いことが示された。また、CHDリスクを30%減らすには、女性では週に250分のMVPAで十分であるのに対し、男性では530分必要であることも判明した。さらに、CHD患者の死亡リスクは、ガイドライン遵守の女性で70%低下したのに対し、男性では19%の低下にとどまっていた。 Chen氏らは、「これらの結果は、『万人に当てはまる』運動ガイドラインは、男女が同じ量の運動から同等の効果が得られると想定している点で誤っていることを示している」と指摘している。また同氏らは、「女性は男性と比べて、半分の運動時間で同等の健康効果が得られる。この結果は、女性に運動を促す可能性がある」と述べている。 研究グループは、女性の方が運動によく反応する傾向があることの理由はいくつか考えられるとし、「生理学的に、女性の体内のエストロゲン濃度は男性よりもはるかに高い。エストロゲンは、身体活動中の体脂肪の減少を促進する可能性がある」と説明している。また、「男性と女性の筋肉量の構成には決定的な違いがあり、それが女性の方が運動による効果が大きい理由を説明する可能性がある」と指摘している。 本論文の付随論評を執筆した、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院で女性心臓健康プログラムのディレクターを務めるEmily Lau氏は、「この研究は、男性と女性に対する身体活動を推奨する上で、画一的なアプローチを用いることはできないし、用いるべきでもないことを強く示している」と話す。同氏は、「身体活動においては女性の方が明らかに有利であるにもかかわらず、過去の研究では、女性は一貫して身体活動量が少なく、推奨量を達成する見込みも低いことが示されている。このことは、身体活動の推奨量を女性向けに調整する必要があることを浮き彫りにしている」と述べている。

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ポンペ病〔Pompe Disease〕

1 疾患概要■ 定義ポンペ病(糖原病II型)は、グリコーゲンを分解するライソゾーム酵素である酸性アルファグルコシダーゼ活性の欠損または低下によるライソゾーム病である。疾患遺伝子はGAA、遺伝形式は常染色体潜性である。ポンペ病は、「乳児型」と「遅発型」に分類され、乳児型では乳児期早期にフロッピーインファント、肥大型心筋症、呼吸不全を発症し、遅発型では幼児期以降に肢帯筋優位の筋力低下や呼吸筋の筋力低下を発症する。■ 疫学ポンペ病の発生頻度は、およそ4万人に1人と推測され、約25%が乳児型であるとされる。■ 病因GAA遺伝子の両アレル性病的バリアントにより酸性アルファグルコシダーゼが欠損または低下し、組織のライソゾーム内に分解されないグリコーゲンが蓄積し、主に心筋や骨格筋が罹患する。オートファジーの機能不全も病態に関与することが明らかにされている。■ 症状乳児型では乳児期早期にフロッピーインファント、筋力低下、肥大型心筋症、呼吸不全を発症し、進行する。肝腫大、巨舌も出現する。遅発型では発症時期は小児期から成人期までさまざまであり、肢帯筋優位の筋力低下や呼吸筋筋力低下を発症し、緩徐に進行し、歩行障害や呼吸不全を来す。鼻声、翼状肩甲、傍脊柱筋萎縮を認めることが多い。ポンペ病の症状は、多器官に及んでいることが明らかになってきており、Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群などの不整脈、脳血管障害、聴力障害、胃腸症状などを来すこともある。■ 分類酸性アルファグルコシダーゼ活性の完全欠損による乳児型と活性低下(部分欠損)による遅発型に分類される。遅発型には小児型、若年型、成人型が含まれる。■ 予後乳児型ポンペ病では、生後2ヵ月~数ヵ月に、哺乳力低下、全身の筋力低下、運動発達の遅れ、体重増加不良、心不全症状などを発症し、自然経過では、多くは1歳頃までに死亡する。酵素補充療法により生命予後が改善され、人工呼吸管理を必要とするリスクが減少している。遅発型ポンペ病の自然経過では、1歳以降に、歩行障害、運動時易疲労が出現し、運動機能障害、呼吸不全が進行し、車椅子や人工呼吸管理が必要となる。酵素補充療法により呼吸機能の悪化が抑制され、運動機能が改善されている。2 診断■ 検査所見1)乳児型ポンペ病血液検査血清CK高値(5,000IU/L程度)AST、ALT高値、BNP高値胸部X線&nbsp心拡大心電図 P波振幅増大、PR間隔短縮、QRS高電位心臓超音波検査心筋肥厚、左室駆出率低下生検筋病理所見&nbsp:生検筋病理所見ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、多数の空胞PAS染色→空胞内PAS染色陽性物質の蓄積(グリコーゲン蓄積を示す)酸ホスファターゼ染色陽性2)遅発型ポンペ病血液検査血清CK高値骨格筋CT小児型では大腿部筋の高吸収域、成人型では低吸収または筋萎縮筋電図 筋原性変化、しばしばミオトニー放電が出現呼吸機能検査肺活量と努力肺活量の低下生検筋病理所見特徴的な所見は顕著ではない。■ 確定診断酸性アルファグルコシダーゼ活性低下またはGAA遺伝子に両アレル性の病的バリアントを認めた場合に診断確定とする。酸性アルファグルコシダーゼ活性は濾紙血、リンパ球、生検筋組織などを用いて測定される。酸性アルファグルコシダーゼ活性が低下するがポンペ病を発症しない偽欠損となるバリアントc.1726G>A(p.Gly576Ser)が存在するため診断の際に注意を要する。■ 鑑別疾患乳児型ポンペ病の鑑別すべき疾患には脊髄性筋萎縮症、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、ミトコンドリア病などがある。遅発型ポンペ病では、肢帯型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、多発性筋炎などが挙げられる。他の筋疾患と比較し、遅発型ポンペ病では、歩行可能な時期に先行し、呼吸不全が出現することが特徴的とされる。3 治療■ 酵素補充療法ポンペ病に対し、2007年からヒト酸性アルファグルコシダーゼの遺伝子組み換え酵素製剤であるアルグルコシダーゼアルファ(商品名:マイオザイム)、2021年からアバルグルコシダーゼアルファ(同:ネクスビアザイム)による酵素補充療法が行われている。酵素はマンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介し細胞内に取り込まれるが、アバルグルコシダーゼアルファは、横隔膜や骨格筋などへの酵素製剤の取り込みを増大させるため、酸化シアル酸残基にM6Pを結合させた改良型酵素製剤である。2025年からは遅発型ポンペ病に対し、高レベルのM6PやビスーM6P N-グリカンを結合させた酵素製剤シパグルコシダーゼアルファ(同:ポムビリティ)とポンペ病治療酵素安定化剤(シャペロン療法)としてミグルスタット(同:オプフォルダ)を併用する治療も行われるようになった。酵素製剤はいずれも2週間に1回静脈投与を行う。■ 呼吸機能の管理と治療ポンペ病の呼吸機能は、肋間筋や横隔膜の筋力低下を反映し、仰臥位の機能は座位に比し低下するので呼吸理学療法を行う。呼吸不全が進行した場合、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)または侵襲的陽圧換気療法(IPPV)を行う。遅発型ポンペ病では、歩行可能な時期に先行し呼吸不全が出現するため、呼吸機能を定期的に評価する。■ 心機能・不整脈の管理と治療乳児型では生後早期から心肥大が出現することが多い。酵素補充療法は、心肥大を改善させる。ポンペ病ではWPW症候群などの不整脈が高率に出現するため、不整脈に対する薬物療法やカテーテルアブレーションを必要とする症例がある。■ 脊柱側弯症の管理と治療脊柱側弯症に対し外科手術を行う。■ 理学療法関節の変形・拘縮予防のため、理学療法士の介入や、補装具を導入する。最大運動強度の60~70%までの有酸素運動が推奨されている。4 今後の展望(治験中・研究中の診断法や治療薬剤など)ポンペ病の新生児スクリーニング検査が広く実施されるようになっている。とくに乳児型ポンペ病においては、早期治療開始が重要であり、米国でもRUSP(Recommendation Uniform Screening Panel)により新生児スクリーニングを実施する疾患として推奨されている。2025年時点では、公費助成がある自治体は少ないが、今後さらに広がることが期待されている。ポンペ病に対する遺伝子治療の開発は、海外の臨床治験として肝臓を標的としたAAV8-GAAの静脈内投与が遅発型ポンペ病に対して実施され、心筋、骨格筋、中枢神経を標的としたAAV-9-GAAの静脈内投与が乳児型ポンペ病に対して実施された。遺伝子治療の臨床現場への導入が期待されている。5 主たる診療科・紹介すべき診療科主たる診療科:小児科(小児神経、小児循環器)、脳神経内科(運動機能、脳血管障害、白質病変)紹介すべき診療科:リハビリテーション科、循環器内科、呼吸器内科、脳外科(脳血管障害)、耳鼻咽喉科(難聴)、整形外科(脊柱側弯症)、産科(母胎管理)、遺伝子診療科など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター ポンペ病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ライソゾーム病中のポンペ病 (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ライソゾーム病、ペルオキシゾーム病(副腎白質ジストロフィーを含む)における早期診断・早期治療を可能とする診療提供体制の確立に関する研究 (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本先天代謝異常学会 編集. ポンペ病診療ガイドライン2018. 診断と治療社.2018.2)Ditters IAM, et al. Lancet Child Adolesc Health. 2022;6:28-37.3)Sawada T, et al. Orphanet J Rare Dis. 2021;16:516.公開履歴初回2025年11月20日

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後悔しないがんの病院と名医の探し方

がん患者のための情報サイト「イシュラン」編集長が解説!「病院・医師選びに迷ったら、ランキング本よりも本書を」- 高野 利実先生(がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長)「科学的思考の教科書であり、迷いへの道しるべ」- 勅使川原 真衣氏(がんサバイバー・著述家)すぐに役立つチェックポイント(1)コミュニケーションで名医を見極める、3つのチェックポイント(2)あなたとの“相性”がわかる、医師のコミュニケーション4タイプ(3)がん種別ガイドライン一覧(4)がん種別専門医一覧QRコード名医の本音に迫るインタビューも掲載さらに、全国の患者から信頼を集める4人の「がんの名医」へのインタビューも収録。医師たちが語る「信頼される医者の条件」は、単なる技術や実績だけではなく、患者とのコミュニケーション、相性、説明の姿勢、治療への向き合い方といった“人間性”にも及びます。柏木 伸一郎先生(大阪公立大学附属病院)野口 晋佐先生(医療法人松野敬愛会能代病院院長)藤野 孝介先生(熊本大学病院)木下 貴之先生(国立病院機構東京医療センター)業界インサイダーの専門的な知見とリアルな声著者は医療コンサルタント/医療情報サイト編集者として、長年多くのがん治療医やがん患者・家族と向き合ってきた経験を持ち、最新の治療法にも精通しています。業界のインサイダーだからこそ持てる、医師や病院に関する専門的な知見と、現場のリアルな声が、本書に込められています。「がん診療連携拠点病院」とは何なの?「がんセンター」「大学病院」など、病院の種類と特徴の違いとは?自分のがん種に強い専門医をどう探す?手術件数が多い病院を選ぶべきというのは本当か?Google検索や口コミ情報に頼っても大丈夫?主治医との相性をどう見分ける?標準治療と自由診療、どう考えたら良いの?セカンドオピニオンを申し出ると、主治医の機嫌を損ねるのでは?画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する後悔しないがんの病院と名医の探し方定価2,200円(税込)判型A5判頁数224頁発行2025年8月著者鈴木 英介ご購入はこちらご購入はこちら

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小児の急性陰嚢症【すぐに使える小児診療のヒント】第8回

小児の急性陰嚢症腹痛を訴えて受診する男児の中には、急性陰嚢症が隠れている可能性があります。発症頻度は高くありませんが、診断や治療の遅れにより精巣機能を失うと将来の精神的・肉体的・妊孕性に及ぼす影響は非常に大きいため、適切な対応が求められます。症例9歳、男児。起床時からの下腹部痛と嘔吐を主訴に受診した。下痢はない。児は「吐きそう、お腹が痛い」と訴えるのみで、陰嚢の症状は問われなければ言及しなかった。診察時に左陰嚢の発赤・腫脹・圧痛を認めた。左陰嚢は挙上し横位で、精巣挙筋反射は消失していた。症状や超音波検査から精巣捻転症が強く疑われ、緊急で外科的介入が行われた。急性陰嚢症は、急性発症の陰嚢の疼痛や腫脹を主訴とする病態の総称であり、精巣捻転症、付属小体捻転症、急性精巣上体炎をはじめ多くの鑑別疾患が挙がります。原因として最も注意すべき精巣捻転症を中心にまとめてみましょう。精巣捻転症精巣捻転症は、急性陰嚢症の中でもとくに診断・治療が遅れると精巣壊死・精巣機能消失に陥る可能性のある緊急疾患です。病因として重要なのは、解剖学的な精巣の懸垂異常(suspension anomaly)です。精巣鞘膜が通常より高い位置で精索に付着していると、精巣が鞘膜腔内でぶら下がっている状態が釣り鐘のように見えるbell-clapper deformityと呼ばれる状態となり、捻転しやすくなります。左:正常、右:鞘膜腔の異常拡大(bell-clapper deformity)思春期にはアンドロゲンによって精巣容積が思春期前の5~6倍に急激に増加するため、より捻転が生じやすくなるとされています。発症は夜間や早朝に多く、寒冷刺激が誘引となるという説もあります。左右で比較すると左側に多く発症すると言われ、これは左側の精索が右側に比べて長いことが関係しているとされています。精巣温存には、発症から6時間(少なくとも12時間)以内の整復が望まれます。特徴的な症状としては、腹腔神経節が刺激されることによる悪心・嘔吐が26~69%に伴います。画像を拡大する診断のポイント「腹痛」「嘔吐」の症例も陰嚢をチェック!症状が「いつから」を明確に!精巣血流の有無だけで判断してはいけない!強く疑われる場合にはためらわず泌尿器科医に相談を!問診突然の発症か? 徐々に増悪してきたか? 朝方か日中か? 痛みが先か腫れが先か? など詳しく聴取しましょう。不完全捻転や捻転の自然解除を繰り返していることがあるため、これまでに同様のエピソードがないかも確認しておきます。また、精巣温存には6時間以内の介入が望ましいとされており、発症がいつなのかはカギになるため、はっきりさせておくことも重要です。診察精巣捻転症は「思春期の男子が陰嚢痛で受診する」と認識されがちですが、前述のとおり腹痛・悪心・嘔吐など非特異的な症状で始まることも少なくなく、初診時に陰嚢痛を訴えない例も多くみられます。とくに小児では「恥ずかしい」「うまく説明できない」ことがあり、医療者が意識的に陰嚢を診なければ見逃されることがあるので注意が必要です。腹痛や嘔吐を主訴に受診したとしても、陰嚢を確認する習慣をつけましょう。診察の手順としては、まず視診、精巣挙筋反射の確認、陰嚢皮膚および内容物の触診の順で行うのが良いとされています。1.視診まず、陰皮膚の色調、腫脹の有無、精巣の位置を確認します。皮膚の所見として、陰嚢の発赤・腫脹は精巣捻転症、付属小体捻転症、急性精巣上体炎のそれぞれにおいて起こり得る所見であり、鑑別に有用ではありません。しかし、発症から12~24時間経過していても陰嚢皮膚が比較的正常である場合には精巣捻転症である確率は低いと言えます。後述しますが、付属小体捻転症の特徴的皮膚所見として、梗塞を起こした精巣付属小体が皮膚を通して青黒い点(blue dot sign)として認める場合もあります。また、位置も重要です。一般的には左精巣は右に比べてやや低位に存在しますが、「横位・挙上」は精巣捻転症の診断において感度83%、特異度90%とともに良好であることが知られています。2.精巣挙筋反射精巣捻転症においては、精巣挙筋反射(大腿内側を刺激すると精巣が上昇する反射)は90~100%欠如するため有用です。精巣挙筋反射が同定されれば精巣捻転は否定的ですが、精巣挙筋反射が消失しているからと言って精巣捻転とは言い切れず、その他の鑑別が必要であることには注意が必要です。3.触診精巣の触診は、親指と人差し指、中指で愛護的に行います。腫脹、疼痛の有無や部位、拳上の有無、方向などを確認します。精巣上体についても腫脹、疼痛、位置を確認しましょう。TWIST(Testicular Workup for Ischemia and Suspected Torsion)スコアは身体所見と病歴のみで精巣捻転症らしさを予測できるという点が魅力です。5点以上なら精巣捻転症を強く疑い、逆に2点以下なら精巣捻転症の可能性は低いと判断されます。これのみで診断することは推奨されませんが、補助的な評価として非常に有用であると考えられます。冒頭の症例は、TWISTスコア7点と高値で、症状のみでもいかに精巣捻転症らしいかを物語っています。超音波検査精巣捻転症の最も有用な検査は超音波検査です。精索から精巣・精巣上体へのつながりを観察して、捻転部の精索がcoilingする、いわゆるwhirlpool signの有無を検索することが最も重要です。カラードプラ超音波検査で精巣血流の有無を評価することも多いですが、血流の温存された精巣捻転症も存在するため、精巣血流の有無だけで判断してはいけません(感度63~90%)。精巣上体の血流が亢進している場合においては、精巣上体炎などが疑わしく、精巣捻転は否定的です。診察時の説明と心理的配慮患者の多くは思春期であり、プライバシーへの配慮は不可欠です。診察室のドアやカーテンを閉め、バスタオルなどを準備しておくといった環境づくりを心がけましょう。保護者が同席している場合も、本人の気持ちを尊重する必要があります。腹痛のみを訴えて受診した患者に対して下着の中を確認するのは、医療者にとっても心理的ハードルが高い場面かもしれません。その際には、診察の意図を率直に伝えることが大切です。「とても大事なことなので、見逃したくないと思っていること」「早い段階では本人も気がついていないことがあること」の説明を添え、本人や保護者の理解を得てから診察を行う姿勢が望まれます。精巣温存のためには、早期診断・早期治療が何より重要です。その実現には、発症直後に受診してもらうための社会的啓発も欠かせません。近年では、学校教育における男子生徒や保護者への啓発、SNSを通じた情報発信も行われつつあります。適切な危機感と正しい知識が広まり、安心して受診できる環境が整うことを願います。今回は、いつも穏やかでいるように心掛けている小児科医たちでもピリッと緊張感が走る疾患の1つである急性陰嚢症についてお話しました。寒さも深まる今日このごろですが、暖かくしてお過ごしください。ひとことメモ:中心となる鑑別疾患■付属小体捻転症精巣垂(ミュラー管由来)や精巣上体垂(ウォルフ管由来)などの付属小体が捻転するもので、学童期や思春期に好発します。長さは1~8mm程度で有茎性のものが捻転を起こしやすく、90%が精巣垂、10%が精巣上体垂の捻転と報告されています。特徴的な皮膚所見として、10~32%でblue dot signとして観察されることがあり、同定された場合には非常に特異度の高い所見であるとされています。思春期に起きやすい理由としては、エストロゲン分泌が亢進してミュラー管由来である精巣垂が増大することなどが挙げられます。付属小体捻転症であれば原則手術の必要はなく、鎮痛薬での対応が可能です。捻転した付属小体が虚血性に壊死すれば症状は消失しますが、数週間以上かかる場合もあり、疼痛や不快感が長期に続く場合には付属小体の外科的切除を行うこともあります。■急性精巣上体炎一般的には尿路からの感染が、射精管から精管を経由して精巣上体に達し発症します。細菌性尿路感染のほかに、無菌尿の射精管への逆流による化学的刺激、ウイルス感染、外傷などの関与が指摘されています。最近の研究では、膿尿や尿培養陽性率は0~4.1%と非常に低いと言われており、検尿異常を認めないものの大半は全身のウイルス感染が先行した後の炎症性変化と考えられています。細菌性尿路感染が原因となっているものでは、乳児ではE.coliやE.faecalisなど、性活動期以降になると淋菌やクラミジアなどが起因菌となることが多く、それらを念頭に置いて治療内容を選択します。ただし繰り返す場合には、異所性尿管、尿道狭窄、後部尿道弁、膀胱尿管逆流、神経因性膀胱などの泌尿生殖器の器質的・機能的異常がないか立ち返って確認することが重要となります。参考資料 1) 急性陰嚢症診療ガイドライン2014年版 2) Pogorelic Z, et al. J Pediatr Urol. 2013;9:793-797. 3) Takeshita H, et al. Int J Urol. 2022;29:42-48. 4) Choudhury P, et al. Pediatr Surg Int. 2023;39:137.

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高齢者への高用量インフルワクチンの入院予防効果:FLUNITY-HD試験(解説:小金丸 博氏)

 高齢者に対する高用量不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV)の重症化予防効果を検証した国際共同プール解析「FLUNITY-HD試験」の結果が、Lancet誌オンライン版2025年10月17日号に報告された。標準用量インフルエンザワクチン(SD-IIV)では免疫応答が不十分なことが知られており、HD-IIVの高齢者における追加的な防御効果を明らかにすることを目的とした。 本試験は、デンマークのDANFLU-2試験(登録者:約33万人)とスペインのGALFLU試験(同:約13万人)という、同一デザインの実践的ランダム化比較試験を統合解析したものである。対象は65歳以上で、少なくとも1つの慢性疾患を有する者が約49%と重要なリスクグループが適切に含まれており、高齢者集団への一般化が可能であると思われる。いずれの試験も日常診療環境で実施され、主要評価項目は「インフルエンザまたは肺炎による入院」とされた。 その結果、HD-IIV接種群ではSD-IIV接種群と比較し、主要評価項目であるインフルエンザまたは肺炎による入院を8.8%低減させた。一方で、DANFLU-2試験単独では主要評価項目に有意差を認めなかった。HD-IIVの効果は季節や流行株の影響を受けやすい可能性があることや、インフルエンザ以外の病原体(肺炎球菌、マイコプラズマ、アデノウイルスなど)の流行が試験結果に影響した可能性が指摘されている。そのほか、副次評価項目である検査確定インフルエンザによる入院を約32%、心肺疾患による入院を約6%低減させており、インフルエンザによる入院の抑制効果は明確であった。また、HD-IIV接種群ではSD-IIV接種群と比較して、全原因による入院が2.2%減少した。これは、515人の高齢者にSD-IIVの代わりにHD-IIVを接種することで全原因による入院を1件予防できることを意味する。重篤な有害事象の発生は両群で同程度だった。 本試験は、高齢者において高用量インフルエンザワクチンが実際の重症転帰を減少させうることを大規模ランダム化試験で示した点で意義が大きい。インフルエンザワクチンの目的が「感染予防」から「重症化・入院予防」へとシフトする中で、より高い免疫原性を求める戦略として高用量ワクチンの価値が再確認された。とくに慢性心疾患や呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患を有する高齢者において、インフルエンザ感染が直接的に入院や心血管イベントを誘発することを考慮すれば、臨床的意義は大きい。 米国や欧州では高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンがすでに導入され、各国ガイドラインでも推奨されている。本邦では2024年12月に製造販売承認を取得し、60歳以上を対象に2026年秋から使用可能となる見込みである。このワクチンが定期接種に組み込まれるか、市場に安定供給されるかによって推奨される接種対象は左右されると思われるが、要介護施設入所者(フレイル高リスク群)、虚血性心疾患や慢性閉塞性肺疾患などの重症化リスクのある基礎疾患を持つ者、85歳以上の超高齢者や免疫不全者など抗体応答が弱いと想定される者では、積極的に高用量ワクチンを選択すべき集団として妥当であると考える。費用面では標準用量より高価だが、入院抑制による医療費削減効果も期待される(注:2025年11月19日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会「予防接種基本方針部会」は、高用量ワクチンを2026年10月から75歳以上の定期接種に追加する方針を了承した)。 FLUNITY-HD試験は、高用量インフルエンザワクチンが標準用量と比較して、65歳以上の高齢者の重症転帰を有意に減少させることを示した大規模ランダム化試験である。日本でも高齢者および基礎疾患を有する群への適用を念頭に、今後の季節性インフルエンザ予防戦略における選択肢として検討すべき重要なエビデンスといえる。

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女性のがん、39ヵ国の診断時期・治療を比較/Lancet

 英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のClaudia Allemani氏らVENUSCANCER Working Groupは、女性に多い3種類のがん(乳がん、子宮頸がん、卵巣がん)の治療提供状況について初めて世界規模で評価した「VENUSCANCERプロジェクト」の解析結果を報告した。低・中所得国では、早期がんと診断された女性がガイドラインに準拠した治療を受けやすくなってはいたが、早期診断される女性の割合は依然として非常に低いままであることを示した。著者は、「解析で得られた知見は、WHOの世界乳がんイニシアチブや子宮頸がん撲滅イニシアチブといった、がん対策への国際的な取り組みの実施とモニタリングを支援する重要なリアルワールドエビデンスである」としている。Lancet誌2025年11月15日号掲載の報告。ガイドライン準拠、診断~治療開始の期間中央値を評価、高所得国と低・中所得国の受療確率を分析 研究グループは、CONCORDプログラムに乳がん・卵巣がん・子宮頸がんのデータを提供した全322のがん登録に対して、VENUSCANCERプロジェクトへのデータ提供を要請し、世界39の国と地域における103のがん登録から得られた2015~18年のいずれかの1年間に乳がん、子宮頸がん、または卵巣がんと診断された女性の高精度データを解析した。高精度データには、診断時Stage、Stage分類手順、腫瘍グレード、バイオマーカー(ER、PR、HER2)、各治療法(手術、放射線療法、化学療法、内分泌療法、抗HER2療法)の初回治療コースおよび関連する日付が含まれた。 国または地域別に予後因子、国際臨床ガイドライン(ESMO、ASCO、NCCN)との整合性を示す主要な指標、および診断から治療開始までの期間中央値を評価した。年齢と腫瘍のサブタイプを調整し、高所得国と低・中所得国におけるガイドラインに沿った治療を受けられる確率を分析した。低・中所得国では、早期診断される女性の割合が依然として非常に低い 解析には、3種類のいずれか1つのがんと診断された女性計27万5,792例が包含された。乳がん診断者21万4,111例(77.6%)、子宮頸がん(上皮内がんを含む)診断者4万4,468例(16.1%)、卵巣がん診断者1万7,213例(6.2%)であった。 高所得国では、早期・リンパ節陰性のがんは乳がん診断者および子宮頸がん診断者の40%超を占めていたが、卵巣がん診断者では20%未満であった。一方、低・中所得国では、これらの割合は3つのがんすべてでおおむね20%未満であった。ただしキューバ(乳がん30%)、ロシア(子宮頸がん36%、卵巣がん27%)では高かった。 国際ガイドラインとの整合性には大きなばらつきが認められ、とくに早期乳がんに対する手術・放射線療法(ジョージア13%~フランス82%)、進行子宮頸がんに対する化学療法(モンゴル18%~カナダ90%)、転移のある卵巣がんに対する手術+化学療法併用(キューバ9%~米国53%)で顕著であった。 何らかの手術が提供されたのは、高所得国では78%、低・中所得国では56%であり、早期がんに対する初期治療(臨床ガイドラインに準拠した)は、乳がんと比べて子宮頸がんと卵巣がんのほうがより均一に行われていた。高所得国と低・中所得国のいずれにおいても、高齢女性(70~99歳)は50~69歳の女性との比較において臨床ガイドラインに準拠した初期治療を受ける確率が低かった。 早期がんの診断から治療までの期間中央値は、複数の高所得国では1ヵ月未満であったが、モンゴルの子宮頸がんおよびエクアドルの卵巣がんでは最大4ヵ月、モンゴルの乳がんでは最大1年であった。

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意外な所に潜む血栓症のリスク/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月12日、井上 克枝氏(山梨大学 臨床検査医学)、野上 恵嗣氏(奈良県立医科大学 小児科)を座長に、シンポジウム6「意外な所に潜む血栓症のリスク」が行われた。Nan Wang氏(米国・Columbia University Irving Medical Center)、Hanny Al-Samkari氏(米国・The Peggy S. Blitz Endowed Chair in Hematology/Oncology, Massachusetts General Hospital/Harvard Medical School)、長尾 梓氏(関西医科大学附属病院 血液腫瘍内科)、成田 朋子氏(名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学)。JAK2V617Fクローン性造血とアテローム血栓症との関連 JAK2V617F(Jak2VF)クローン性造血は、アテローム血栓性の心血管疾患(CVD)との関連が指摘されている。Wang氏は、本シンポジウムにおいて、Jak2VFクローン性造血が動脈血栓症に及ぼす影響とそのメカニズムを評価した研究結果を報告した。 まず、3つのコホート研究を用いたメタ解析により、Jak2VFとCVD、血小板数、補正平均血小板容積との関連が確認された。また、マウスモデルでは20%または1.5%のJak2VFクローン性造血が動脈血栓症を促進し、血小板活性化を増加させることが示された。 Jak2VFクローン性造血は、前血小板形成および放出を促進し、血栓形成促進性の網状血小板数を増加させると考えられている。Gp1ba-Creを介して血小板におけるJak2VFを発現させたモデル(VFGp1ba)は、血小板数が増加した一方、白血球数には影響が見られなかった。このことから、VFGp1baは、血小板活性化と動脈血栓症を促進する可能性が示唆された。 また、Jak2VFクローン性造血では、変異型血小板と野生型(WT)血小板のいずれもが活性化しており、両者の間にクロストークが存在することが示唆された。Jak2VF血小板では、COX-1およびCOX-2が2~3倍に増加し、cPLA2の活性化とトロンボキサンA2産生の増加が認められた。一方、WT血小板は、活性化Jak2VF血小板由来の培養液に曝されるとさらに活性化し、この反応はトロンボキサン受容体拮抗薬により抑制された。さらに、低用量アスピリンは、VFGp1baマウスおよびJak2VFクローン性造血マウスで頸動脈血栓症を改善したが、WT対照マウスでは改善が見られなかった。 これらの結果を踏まえてWang氏は「Jak2VFクローン性造血によるアテローム性動脈硬化症の進行メカニズムにおいて、網状血小板の増加とトロンボキサンを介したクロストークが重要な役割を果たしており、アスピリンの潜在的な効果が期待される」と結論づけた。ITPにおける血栓症リスクとその管理 続いて、Al-Samkari氏が免疫性血小板減少症(ITP)における血栓症の重要なトピックスを紹介した。 ITPは、血小板破壊の増加と血小板産生の低下により生じる後天性自己免疫疾患である。さまざまな仮説に基づくメカニズムから、ITPは静脈血栓症および動脈血栓症のリスクを上昇させる可能性が指摘されている。実際、ITP患者の静脈血栓塞栓症のリスクは、一般集団の10~30倍と推定されている。また、トロンボポエチン受容体作動薬などの特定のITP治療薬は、血栓塞栓症リスクを上昇させる一方、脾臓チロシンキナーゼ阻害薬などの他の治療薬はリスクを低下させるとされている。 ITPにおける血栓症のリスク因子は、一般的な血栓症リスク因子に加え、年齢、脾臓摘出、複数回のITPの治療歴、免疫グロブリン静脈(IVIG)療法などが挙げられる。脾臓摘出後の生涯静脈血栓症リスクは3〜5倍に増加し、その発症率は7〜12%と報告されている。IVIG治療患者における血栓症リスクは約1%であり、血栓イベントの60%以上が注入後24時間以内に発生すると報告されている。とくに、45歳以上の患者や血栓イベントの既往歴を有する患者では、リスクがより高いと考えられる。 ITPにおける血栓症の治療について、Al-Samkari氏は次のように述べた。「出血がない場合であっても、血小板数が5万/μLを超える患者では抗凝固療法または抗血小板療法が通常適応となる。また、血小板数が3万/μL以上の場合には、年齢やその他のリスク因子を考慮しつつ、治療用量の抗凝固療法と抗血小板薬2剤併用療法を選択する必要がある」。日本人血友病患者のCVD管理のポイント 先天性血友病患者が胸痛を呈し、心エコー検査でST上昇が認められる場合には、緊急冠動脈インターベンションが必要となる。このような症例は、血友病患者の高齢化に伴い今後増加する可能性がある。 先天性血友病は、第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)の欠乏によって引き起こされるX連鎖性出血性疾患であり、その重症度は重症(活性1%未満)、中等症(1~5%)、軽症(5~40%)に分類される。2024年度の日本における血液凝固異常症全国調査によると、血友病Aは5,956例、血友病Bは1,345例であると報告されている。血友病患者は関節内出血などの深部出血を呈し、血友病性関節症の発症やQOL低下につながる可能性があることから、予防的な因子補充療法は依然として治療の基本である。 近年、血友病治療は目覚ましい進歩を遂げており、半減期を延長した凝固因子濃縮製剤、第VIII因子模倣二重特異性抗体、抗凝固経路を標的としたリバランス療法、そして海外でも利用可能となった遺伝子治療など、新たな治療選択肢が登場している。一方、日本では高齢の血友病患者が比較的少なかったことから、CVDなどの血栓性合併症はまれで、その管理のための確立したガイドラインや十分なデータが存在しなかった。しかし、非因子療法の普及や包括的ケアシステムの拡充に伴い、血友病患者の長期予後は改善しつつある。2024年の全国調査では、日本の血友病Aおよび血友病B患者の平均年齢は約40.2歳であり、患者集団の高齢化が進んでいることが明らかにされた。 2019年以降に40歳以上であった血友病患者599例をフォローアップしたADVANCEコホート研究では、5年間で17例の死亡が観察され、死亡時の平均年齢は62.4歳(中央値:58.0歳)であったことが報告されている。70〜90代まで生存した患者も報告されており、血友病患者の寿命が延長していることも示されている。日本人男性の平均寿命(約81歳)との差は依然としてあるものの、日本人血友病患者の平均寿命が延びていることを明確に示す結果となった。 重要なポイントとして、長尾氏は「日本人は欧米人よりも出血傾向が高いと考えられるため、日本人患者に合わせた個別化かつバランスの取れたCVD管理戦略が不可欠である」と指摘した。さらに「血友病患者のCVD管理のための、日本人特有のエビデンスに基づく臨床ガイドラインを早急に策定する必要がある」と述べ、講演を締めくくった。多発性骨髄腫における血栓症リスク がん患者は健康な人と比較して血栓イベントの発生リスクが4~7倍高いことが報告されている。多発性骨髄腫はその中でも血栓イベントの発生率が高い疾患の1つであり、患者の約10%において臨床経過中に血栓イベントが生じるとされている。 血栓イベントのリスク因子は多岐にわたり、患者関連因子、疾患関連因子、治療関連因子の3つに大別される。たとえば治療関連リスクとしては、レナリドミドなどの免疫調節薬とデキサメタゾンの併用が挙げられる。 多発性骨髄腫患者における血栓イベントの発生は、治療に影響を及ぼし、アウトカム不良につながるため、適切な予防と評価が重要となる。成田氏は「診断時および定期的な血栓症のスクリーニングが有益であり、免疫調節薬を併用療法で使用する場合には、血栓症の予防およびモニタリングがとくに重要となる」と指摘した。 現在、日本における多発性骨髄腫患者の血栓症に関する調査が進行中であり、その結果が待ち望まれている。

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