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インスリン デグルデクの配合製剤は、低血糖リスクが低い(vs二相性インスリンアスパルト-30)

新規のインスリン配合製剤「インスリンデグルデク/インスリンアスパルト」は、二相性インスリンアスパルト-30に比べ、低血糖発現頻度を有意に低下させつつ、同程度の血糖コントロールを示すことが明らかになった。フィンランドのNiskanen氏らによる報告(Eur J Endocrinol誌オンライン版2012年6月1日号掲載)。インスリンデグルデク/インスリンアスパルト(IDegAsp)は、超持効型のインスリンデグルデク(IDeg)を70%、超速効型のインスリンアスパルト(IAsp)を30%含有するインスリン製剤である。本試験の対象は、HbA1c(NGSP)値7.0~11.0%のインスリン治療未経験の2型糖尿病患者(18~75歳)。被験者をIDegAsp(IDeg70%/ IASP30%)群と、その代替製剤(AF)群(IDeg55%/ IAsp45%)と、二相性インスリンアスパルト-30(BIAsp 30)群の3群に分け、有効性と安全性を比較した。16週間のオープンラベルランダム化treat-to-target試験。被験者はIDegAsp群 (n=61)、 AF群 (n=59)、 BIAsp 30群 (n=62) に無作為に割り付けられた。全群でメトホルミンとの併用がみられた。インスリンは、朝食前と夕食前に投与され、朝食前と夕食前の血糖値が4.0~6.0 mmol / Lになるように用量が設定された。この結果、「インスリンデグルデク/インスリンアスパルト」は、二相性インスリンアスパルト-30に比べ、低血糖発現頻度を有意に低下させつつ、同程度の血糖コントロールを示すことが証明された。主な結果は以下のとおり。 ・試験終了時の平均HbA1c(NGSP)値は、IDegAsp群:6.7%、AF群:6.6%、BIAsp 30群:6.7%と、同程度であった。・試験終了までの4週間、確定低血糖の発現なくHbA1c値7.0%を達成した割合は、IDegAsp群で67%、AF群で53%、 BIAsp 30群で40%であった。・試験終了時の平均空腹時血糖値はIDegAsp群で有意に低かった(vs. BIAsp 30群)。その差は0.99 mmol /L (95%Cl:-1.68~0.29)。・確定低血糖の発現率はBIAsp 30群と比べ、IDegAsp群で58%のリスク低下を認めた(率比[rate ratio;RR]:0.42、95%CI:0.23~0.75 )。AF群も同様の結果であった(RR:0.92 、95%CI:0.54~ 1.57)。・夜間の確定低血糖発現率もBIAsp 30群と比べ、IDegAsp群、AF群において共に低かった。(RR:0.33、95%CI:0.09~1.14/RR:0.66、95%CI:0.22~1.93) (ケアネット 佐藤 寿美)

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CKD患者では血糖値の日内変動が大きく、食後血糖の急激な上昇が認められた

慶応義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科の細谷幸司氏は、第55回日本腎臓学会の口演にて、持続血糖測定装置(CGMs)を用いて観察した慢性腎臓病(CKD)患者の血糖日内変動について報告した。CKD患者では非糖尿病であっても、血糖日内変動が大きく、とくに食後高血糖が著明であることが明らかになった。飲酒と肝酵素上昇のどちらがCKDに関与しているのかCDK患者における糖代謝異常やインスリン抵抗性の亢進が報告されており、その原因として、腎機能低下に伴う炎症性サイトカインや活性酸素の産生、貧血、脂肪細胞機能不全、尿毒症、栄養不良、副甲状腺ホルモンの亢進、ビタミンD欠乏、代謝性アシドーシスなどが報告されている1)。しかし、CKD患者におけるHbA1cや空腹時血糖の実態は正確に把握されておらず、1日の血糖値の推移についても正確に調べられていなかった。そこで細谷氏らは、近年実用化されているCGMsを用い、CKD患者の血糖日内変動の実態について検討を行った。細谷氏らが用いたCGMsは、メドトロニック社のミニメドCGMS-Goldであり、皮下に留置したセンサを介して組織間質液中のグルコース濃度を24時間連続測定し、携帯型のモニタシステムに記録される。過去において、維持血液透析患者や腹膜透析患者の血糖変動を測定するためにCGMsを用いた検討はあったが、非糖尿病の非透析導入のCKD患者に対して、CGMsを用いて血糖日内変動を調べた研究はまだなかった。CKD患者では食後高血糖によるグルコーススパイクが心血管イベントに影響か細谷氏らは、CKD群として非糖尿病性腎症で透析導入目的にて入院したCKDステージ5の患者16名、またコントロール群として腎生検目的で入院した6名を含む正常者10名について、CGMsを用い36~48時間の血糖連続測定を行った。CGMsで得られた血糖日内変動のパラメータとして、平均血糖値、血糖変動値(SD値の平均)、血糖曲線下面積(AUC)、食後2時間の最大血糖値と最小血糖値の差、食後のAUCを比較した。コントロール群とCKD群との比較には、Mann-WhitneyのU検定を用いた。患者背景は、コントロール群とCKD群において年齢はそれぞれ53.9±19.1歳と57.67±11.4歳、HbA1cは5.0±0.41%と5.39±0.50%、eGFRは68.2±22.3mL/分と5±1.58mL/分(p<0.0001)であった。コントロール群およびCKD群で有意差のあった血液検査値は、尿素窒素(BUN)、クレアチニン値、総コレステロール、アルカリホスファターゼ(ALP)、GOT、尿酸、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット、血小板であった。血糖の日内変動パターンは、コントロール群では24時間を通して血糖値が安定していたのに対し、CKD群では血糖値の日内変動が大きく、とくに食後の血糖上昇が著明であった。コントロール群とCKD群において24時間血糖と夜間血糖を比較したところ、24時間血糖では平均血糖値(p<0.005)、血糖変動値(p<0.05)、AUC(p<0.005)のいずれにおいてもCKD群の方で有意に高かった。一方、夜間血糖ではCKD群の方が高い傾向にあるものの有意差はなかった。また、食後2時間血糖値と空腹時血糖の差は、朝食、昼食、夕食においてCKD群でコントロール群よりも大きく、とくに朝食では有意差(p<0.05)が認められた。全食事での比較においてもCKD群で食後と空腹時血糖の差は有意に大きかった(p<0.05)。食後2時間のAUCの比較では、朝食(p<0.005)、昼食(p<0.05)、夕食(p<0.05)、全食事(p<0.005)のすべてにおいて、CKD群が有意に高いことが示された。これらの結果より、細谷氏は「CKDステージ5の患者では腎機能の正常者と比べて、24時間平均血糖および血糖日内変動が増大し、とくに食後高血糖が著明に認められた」と述べた。持続的な高血糖よりも、グルコーススパイクと呼ばれる食後高血糖のような急峻な血糖変動が動脈硬化進展のリスクファクターである可能性が指摘されている2)。細谷氏は、CKD患者では非糖尿病であっても血糖日内変動が大きく、食後の間欠的な高血糖が認められ、このグルコーススパイクが心血管疾患に影響を与える可能性があると考察した。参考文献1)El-Atat FA et al:J Am Soc Nephrol 2004; 15: 2816-28272)Esposito K et al: Circulation 2004;110:214-219

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インスリングラルギンによる発がんリスクの増加は認められず

フランスのサノフィ社は11日、大規模な疫学プログラムの一環として、北欧諸国、南北カリフォルニアのカイザーパーマネンテ、およびノースカロライナ大学のそれぞれの独立した機関において行われた研究結果を発表した。ランタス(一般名:インスリングラルギン〔遺伝子組換え〕)による治療を受けている糖尿病患者は他のインスリン製剤による治療を受けている糖尿病患者に比べて発がんリスクの増加がみられないことがわかったという。このデータは、第72回米国糖尿病学会においても発表されている。日本国内には15日付でサノフィ・アベンティス株式会社が公表した。この疫学プログラムは、糖尿病患者における発がんリスクを評価し、大規模データベースから得たインスリングラルギンの投与に関する包括的なデータを作成することを目的として行われた。この目的で行われた観察研究プログラムとしては過去最大規模の研究になるという。同試験はこの種の研究としては大規模な研究で、インスリン使用例447,821例、150万/人/年の観察データの検討が行われた。平均追跡期間はインスリングラルギンの使用例は3.1年、他のインスリン製剤の使用例では3.5年だった。主要仮説に関する検討では、インスリン使用者全体の解析、およびヒトインスリンの使用者全体の解析のいずれにおいてもインスリングラルギン使用例は他のインスリン使用例に比べ、女性の乳癌(HR:1.12; 95% CI:0.99-1.27)、男性の前立腺癌(HR:1.11; 95% CI:1.00-1.24)、ならびに男性および女性の結腸直腸癌(HR:0.86, 95% CI:0.76-0.98)のリスクが上昇することを示すエビデンスは得られなかったという。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=D506EFB6-7512-427D-94B8-E12A6B55FB0C.pdf

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DPP-4阻害薬か、基礎インスリンか? -メトホルミン難治性2型糖尿病-(Lancet 6月16日発表)

コロンビア ハベリアナ大学のPablo Aschner氏は、16日、メトホルミン血糖コントロール不十分で、インスリン投与経験のない2型糖尿病における追加併用薬は、DPP-4阻害薬(シタグリプチン)より持効型インスリン (インスリングラルギン)が効果の面で優れており、安全面でも大きな問題がないことをLancet誌に発表した。これは17ヵ国、96施設が参加して実施されたEASIE(Evaluation of Insulin Glargine versus Sitagliptin in Insulin-naive Patients)試験の結果。研究費提供元はサノフィ。[国内での主たる販売名] メトホルミン・・・メトグルコ シタグリプチン・・・ジャヌビア、グラクティブ インスリングラルギン・・・ランタスメトホルミンを投与してもコントロール不良(HbA1cが7~11%)の、インスリン未治療の2型糖尿病患者(BMI 25~45、35~70歳)が対象となった。対象患者はメトホルミン+インスリングラルギン併用群250例(以下、基礎インスリン併用群)、メトホルミン+シタグリプチン併用群265例(以下、シタグリプチン併用群)のいずれかに無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治療24週後のHbA1cの変化。主な結果は、下記のとおり。1. 治療24週後のHbA1cの低下は、基礎インスリン併用群で有意に大きかった (基礎インスリン併用群1.72%低下 vs シタグリプチン併用群1.13%低下、  平均差=-0.59%、95%信頼区間=-0.77--0.42、P<0.0001)。2. HbA1c 7.0%未満達成率は、基礎インスリン併用群で有意に多かった  (68% vs 42%、P<0.0001)。3. HbA1c 6.5%未満達成率も、基礎インスリン併用群で有意に多かった  (40% vs 17%、P<0.0001)。4. 低血糖の頻度は基礎インスリン併用群のほうが有意に多かった (4.21回/患者・年 vs 0.50回/患者・年、P<0.0001)。  重篤な低血糖は3例 vs 1例。5. 重篤な有害事象は基礎インスリン併用群で15例(6%)、  シタグリプチン併用群で 8例(3%)。  有害事象による治療中止例は2例 vs 4例。(ケアネット 藤原 健次)

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糖尿病予備群および早期糖尿病の患者を対象としたORIGINの結果を発表

フランスのサノフィ社は11日(現地時間)、ORIGIN試験(Outcome Reduction with Initial Glargine Intervention)の結果を報告し、ランタス(一般名:インスリングラルギン〔遺伝子組換え〕)は標準的治療に比べ、心血管系イベントの発生に対して統計的に悪影響を及ぼさないことを発表した。また同試験の結果より、インスリングラルギンは糖尿病予備群から2型糖尿病への進行を遅らせること、また同薬の投与と癌のリスク上昇との間に関連を認めないことが明らかにされた。サノフィ・アベンティスが14日に報告した。また試験結果は、第72回米国糖尿病学会において発表され、New England Journal of Medicine (NEJM)のオンライン版にも掲載された。ORIGIN試験は、インスリングラルギンと標準的治療が心血管系イベントの発生に及ぼす影響を6年間にわたって比較したもの。同試験では、心血管系リスクが高い糖尿病予備群または早期2型糖尿病患者12,500例以上が世界各地で無作為化を受け、6,264例がインスリングラルギン群に割り付けられ、空腹時血糖が正常値となるまで投与量の調節が行われた。主要評価項目は、(1)心血管イベントによる死亡、非致死的な心筋梗塞、非致死的な脳卒中のいずれかの発症、ならびに(2)心血管イベントによる死亡、非致死的な心筋梗塞、非致死的な脳卒中、血行再建術の実施、心不全による入院のいずれかの発症の2項目とした。試験では、早期の血糖異常の患者の空腹時血糖を正常域に下げる治療は、心血管系イベント抑制に影響しないことが示された。(第1の主要評価項目のハザード比1.02, p=0.63, NS,第2の主要評価項目のハザード比1.04; p=0.27, NS)。インスリングラルギンの投与により血糖コントロールの目標値(空腹時血糖値の5.2 mmol/L、HbA1c 6.2%〔いずれも中央値〕)に到達し、6.2年間の追跡期間中を通じて維持された。また、インスリングラルギンと癌の発症リスク上昇との間には関連が認められなかったという(HR:1.00; p=0.97, NS)。癌全般について解析した場合、癌種別に解析した場合のいずれも、インスリングラルギンの使用者にリスク上昇を示唆する所見を認めなかったとのこと。試験の結果、インスリングラルギンは糖尿病予備群(IFG またはIGT)から2型糖尿病への進行を28%遅らせることを示しており(HR:0.72; p=0.006)、ほかにも副次評価項目として微小血管に関するイベント発症(腎症または網膜症の評価項目〔HR:0.97; p=0.43〕)や全死亡〔HR:0.98; p=0.70〕の検討がなされた。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=C2FC519A-337E-4613-9E57-D391A9BF9B0B.pdf

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郷に入っても郷に従わず その4 ~食事の心理学

ハーバード大学リサーチフェロー大西 睦子 2012年5月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 前回のコラムで、人工甘味料と肥満や糖尿病の関係は、体の生理的反応と人間の行動的、心理的な要素が関与していることをお伝えしました。そこで今回は、『食べる』という行動が起こるまでの心理的な状況を、さらに深く考えたいと思います。例えば、みなさんが5人のお友達とレストランに行くことを想像してみてください。おそらく、5人とも違うメニューを選ぶことが多いと思います。私は和風パスタとチーズケーキを選んだのに、あなたはサラダにステーキを選んだ理由、それはなぜでしょうか。けっこう深い理由があるのです。1)嗜好最近の科学雑誌に、様々な文化の異なるヨーロッパ諸国において、1600人以上の子供たちを対象に、食事の嗜好と肥満の関係についての報告がありました。結果は、肥満の子供たちは、脂肪や糖分の多い食事を好んだということでした。動物実験で、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが、空腹感を抑えるだけではなく、食べ物の嗜好にも関与していることがわかってきました。例えば、レプチン濃度が低いと、空腹感が増強するだけではなく、食べ物による喜びも増加します。●ということは、人種や文化の違いにかかわらず、肥満の子供は、高脂肪で甘い食べ物を摂取することによる喜びが強いと考えられますね。2)学習私たちは生後まもなく、食に対する行動的、感情的な反応を覚えます。この頃、親は重要な役割を果たします。なぜなら母親の食事は母乳に移行し、後の子供の嗜好に大きく影響するためです。従って、特に母親の食の影響は強いと思われます。離乳後、子供は自分で食べ始めますが、新しい食べ物に拒否反応を示し、少なくとも繰り返し10回以上経験して、ようやく受け入れます。このころの経験も、後の好き嫌いに影響します。さらに、食べることは、罪と報酬の意味もあります。食事の量や食べるスピードも、親の影響が大きいと考えられています。『ぐずぐずしないで、早く残さず食べなさい。』なんて、親に叱られた経験はありませんか?子供は食べ物を残すことに罪を覚え、出されたものは全部食べる習慣がつきます。3)再学習私たちの食事の好みは幼少期の経験に決まると考えられていますが、大人になって、再学習することによって好みを変えられることも報告されています。●これは、いいニュースです。子供の頃の悪い習慣を、大人になって変えるチャンスがあるのですから。4)食欲ドーパミンは、連続した学習による行動の動機付け(associative learning)と関係している神経伝達物質です。食事開始後、ドーパミンの分泌が上昇し、食欲が増強します。重要なのは、連続した学習によって、食べ物を想像するだけで、ドーパミンが分泌されるようになるのです。例えば、食べ物の写真、料理の音やにおいでドーパミンが分泌され、食欲が増加します。ストレスでもドーパミンの分泌が増え、過食になります。コカイン、覚せい剤は、ドーパミン分放出させ快感を起こします。セロトニンはドーパミンをコントロールする神経伝達物質です。食欲を抑えるには、ドーパミン分泌を抑制し、セロトニンを放出することとなります。最近、インスリンやレプチンもドーパミンに影響を与えることも報告されています。●やる気、ご褒美、学習などに関わるドーパミンは、脳の『快楽物質』とも呼ばれています。ドーパミンをたくさん増やしたい!と思いがちですが、やはりバランスが大切と思います。それは、5)の中毒に関係するからです。5)習慣、依存、中毒これは大トピックです。習慣、依存、中毒には、行動(心理的)問題が大きく影響します。2010年に、動物実験により、過食による肥満の脳内の分子経路が、麻薬中毒者のものと同じだとする報告があり、大変な話題になりました。米国フロリダ州のポール・ケネディ准教授の研究チームは、コカイン中毒者の脳内ではドーパミンが大量に放出され、ドーパミン2受容体が過剰に刺激されていることは明らかになっていましたが、同様な変化を「食事中毒」のラットで証明したのです。●食に限らず、人生において、喜び、幸せは大切ですが、実際はそれだけではないと思います。苦しみ、悲しみを克服しつつ得る喜びを経験することが、人間の成長につながるのではないでしょうか。私もそうなりたいと思います。6)感情感情、例えば、喜び、怒り、悲しみ、不安も肥満に影響します。肥満のひとでは、食事摂取による感情の変化に違いがあるとも言われています。肥満の人は、食べることで報酬を得ます。●誰でも美味しい物を食べると嬉しくなりますが、嬉しさの度合いが肥満の人は強いようです。7)決定意思決定は、自動的に即座にされる経路(これはかなり訓練されています)と、ゆっくりですが、コントロールした上で行われる経路と2種類あります。食べる行為に、この決定は重要な役割があると思いますが、残念ながら、動物実験モデルをつくることが難しく、まだまだ不明な点が多い分野です。●例えばみなさんが飲み物を注文するとき、『とりあえず生ビール(メニュー見ずに注文する人もいると思いますが)』という人もいますし、メニューをよく読んで『このカクテル下さい。』という人もいます。自分で決められず『お勧めは何ですか。』と店員に聞く人もいます。どうしてこんなに人は最終的な意志決定が違うのでしょうか?最後に、肥満には、環境の影響も大きな問題になってきます。環境とは、車など、便利な社会になったため、人々が動かなくなった点、スーパーマーケット、コンビニなどで、高カロリーの食品を消費者が買いやすくしている点(そういった商品が増えた、安くなった、目に留まる位置に置いてある)などです。駅のキヨスクで、大根やキュウリが売っているのは見かけたことはありませんが、お菓子はすぐに買って、すぐに食べることができますよね。『不便、面倒』という言葉は、売り文句にはなりにくいですが、思っているほど悪くはないかもしれません。

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「Breaking up with Diabetes」にむけて ~第55回日本糖尿病学会年次学術集会 レポート~

 参加者が約1万3千人と、過去最大の規模となった今回の学術集会。演題数は2,284題と過去最高となり、「糖尿病領域」の盛り上がりを肌で感じられる学会であった。【依然、注目度の高い糖尿病領域】 実際、4月1日から実施となったHbA1c国際標準化や「糖尿病治療ガイド2012-2013」の発行など、今春も糖尿病領域の話題は豊富だ。理事長声明においても、理事長の門脇氏がHbA1c国際標準化に触れ、「糖尿病臨床・研究・治験のさらなる国際化を目指す」とともに、「診療におけるHbA1cの認知向上につなげたい」と述べた。 また、エビデンス構築の一環としてJ-DOIT3の概要が発表された。本試験では、強力な治療介入が糖尿病患者の健康寿命やQOLをどれだけ改善するかを検討する。門脇氏は、「重症低血糖は2例のみでありACCORD試験の200分の1にとどまっている」点から「過去の大規模臨床試験とは異なる新しい結論がみえてくるのでは」と期待を語った。【インクレチン関連薬の演題が急増】 注目が集まる糖尿病領域だが、やはりその引き金は「インクレチン関連薬」ではないだろうか。発売から一定期間を経て多くの臨床成績が集積され、インクレチン関連薬の演題はこの3年で格段に増加したという。 昨年までは各薬剤の「有効性」「安全性」の演題がほとんどであったが、今年は「1年間にわたる長期投与試験」「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」「DPP-4阻害薬間の切り替え症例」など一歩踏み込んだ切り口でのインクレチン関連薬の口演、ポスター発表を目にした。【見えてきた、2次無効例の存在】 長期投与試験の結果で印象的だったのは、一部で2次無効例の存在がみられたことであった。集積途中のデータとはいえ、期待のインクレチン関連薬でも、長期の血糖コントロールは一筋縄ではいかないという事実に、糖尿病治療の難しさを再認識させられた。患者自身の生活習慣の悪化という根本原因に、歯止めをかける治療が求められているのかもしれない。「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」は、昨年よりは踏み込んだ研究であったものの、残念ながら、「今後の長期的検討が必要」「多くの症例蓄積が必要」というまとめに変化はなく、今後予定される大規模臨床試験に期待がかかる。【インスリンからの切り替え・離脱例の増加】 一部の適応追加が影響したのかGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬ともに「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」がみられた。インスリン分泌能の保持された患者での順調な離脱例の報告もあったが、症例によってはやや危険と思われる離脱報告もあり、適正使用が重要と感じた。とくに、インスリン使用者のDPP-4阻害薬への切り替えについては血糖コントロールの点からも慎重さが求められるのではないだろうか。【次世代の薬 :SGLT2選択的阻害薬】 さて、インクレチン関連薬に続く新しい波、として期待される薬剤がある。「SGLT2選択的阻害薬」だ。原尿からのブドウ糖の再吸収を減らし、ブドウ糖を尿から排泄させる、という新規作用機序をもつ薬剤でありポスター、演題で取り上げられた。新薬セッションでは各開発メーカー担当者が座長より質問を受ける一幕もみられ、注目度の高さがうかがわれる。 現在開発中のSGLT2選択的阻害薬には、イプラグリフロジン(アステラス製薬/寿製薬)、ダパグリフロジン(米ブリストル・マイヤーズスクイブ/英アストラゼネカ)、トホグリフロジン(中外製薬)、カナグリフロジン(田辺三菱製薬)、ルセオグリフロジン(大正富山)、エンパグリフロジン(日本ベーリンガーインゲルハイム/リリー)等がある。【新規超持効型インスリン:デグルデクへの期待】 インスリンのトピックスとしては、開発中の新規超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)に注目したい。 デグルデクは、皮下でマルチヘキサマー(インスリン6量体の長鎖)を形成し、その後、亜鉛(Zn)の解離とともに端から1つずつモノマーとなって血中へ移行する。これにより緩徐に血中に吸収され、長時間にわたる作用を示す。今回、インスリン グラルギン(以下、グラルギン)に対する非劣性試験結果においてグラルギンと同等の血糖改善と低血糖のリスク低下が報告された。低血糖をきたしにくいインスリン製剤として期待される。【まとめ】 インクレチン関連薬発売から一定期間を経過し、臨床データは増加傾向にある。とはいえ、解明されていない事は多い。かたや、糖尿病有病率については依然増加し続けている。 門脇氏は「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」こそが糖尿病治療の最終目標である、と述べる。目標達成のためには根本的な糖尿病の予防・治療法の開発に継続して取り組む必要がありそうだ。【編集後記】 インクレチン関連薬発売を経て、糖尿病領域はにわかに活性化している。今がまさに過渡期であり、近い将来、新しいエビデンスや新薬、画期的な治療が現れ、「糖尿病治療を取り巻く現況」は大きく変化していくのかもしれない。今回はその前触れを感じさせる学会であった。 変化を迎えようとしているこの時代に糖尿病の予防・治療に関わる最新情報を発信できることは医療情報を発信する側の人間として幸運なことといえよう。 「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」の実現にむけ、我々も、タイムリーで適切な医療情報の伝達に努めていきたい。

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日本人を含むアジア人を対象にした、リキシセナチド1日1回投与の有効性

アジア人の2型糖尿病患者を対象とした、リキシセナチド1日1回投与の有効性と安全性に関するデータが示された。スルホニル尿素薬(SU薬)併用の有無にかかわらず、基礎インスリン投与下で、GLP-1受容体作動薬のリキシセナチドを1日1回追加投与することで、プラセボ群に比べ、HbA1cが有意に低下することが明らかになった。これは、日本人を含むアジア人2型糖尿病患者を対象に検討した臨床第3相試験「GetGoal-L-Asia」試験の結果である。関西電力病院院長の清野氏らの報告によるもので、SU薬併用の有無にかかわらず、基礎インスリンを投与されている、日本、台湾、フィリピン、韓国のアジア4ヵ国から登録した311例(リキシセナチド群n=154、プラセボ群n=157)が対象。リキシセナチド追加による効果をHbA1c変化値の観点から検討することを目的に実施された。主要評価項目は24週後のHbA1c値の変化である。無作為化二重盲検比較試験。主な結果は以下のとおり。 ・リキシセナチド1日1回投与群の24週時点でのHbA1c値の変化は、プラセボと比べ-0.88%(95%信頼区間:-1.116~‐0.650 , p

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2型糖尿病肥満、薬物療法+外科的肥満手術で血糖コントロール有意に改善

2型糖尿病非コントロールの肥満患者について、薬物療法に加えて胃バイパス術など外科的肥満手術を行うことが、薬物療法単独よりも有意に血糖コントロールを達成するとの報告が発表された。米国・Bariatric and Metabolic InstituteのPhilip R. Schauer氏らが、無作為化非盲検単独施設試験の結果、報告したもので、これまでは観察研究においては、胃バイパス術などを受けた2型糖尿病患者における病状の改善が認められていた。NEJM誌2012年4月26日号(オンライン版2012年3月26日号)掲載報告より。150例を対象に薬物療法単独と外科的手術群の血糖コントロール改善を比較Schauer氏らによるSurgical Treatment and Medications Potentially Eradicate Diabetes Efficiently(STAMPEDE)試験は、2007年3月から2011年1月にクリーブランドクリニック単施設で行われた無作為化試験で、2型糖尿病を有するBMI 30~35以上の肥満患者を対象に、血糖コントロール達成について、薬物療法単独と外科的手術(Roux-en-Y胃バイパス術と胃切除術)を併用する群とを比較して行われた。被験者は150例、平均年齢は49±8歳、66%が女性であり、血糖値平均は9.2±1.5%であった。追跡期間は12ヵ月、主要エンドポイントは、治療12ヵ月後に血糖値6%以下に到達した患者の割合とした。被験者150例のうち93%が、12ヵ月の追跡期間を完了した。治療後の血糖値平均、薬物療法単独群7.5%に対し、胃バイパス術群6.4%、胃切除群6.6%結果、主要エンドポイントを達成した患者の割合は、薬物療法単独群12%(5/41例)に対し、胃バイパス術群42%(21/50例、P=0.002)、胃切除群37%(18/49例、P=0.008)だった。血糖コントロールは3群すべて改善したが、薬物療法単独群の改善された血糖値平均7.5±1.8%に比べて、胃バイパス術群は6.4±0.9%(P<0.001)、胃切除群は6.6±1.0%(P=0.003)だった。手術群はいずれも、術後は血糖降下薬、脂質低下薬、降圧薬の使用量が減少した。一方で、薬物療法群は増量していた。また、手術群はインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)も有意に改善していた。その他には、患者4例が再手術を受けていたが、死亡や命に関わるような合併症の発生例はなかった。研究グループは今回の結果を受け、さらなる無作為化試験での検証の必要性を提言している。

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インスリン デグルデク、2型糖尿病の低血糖、夜間低血糖を改善

 2型糖尿病に対する基礎・追加インスリン療法の基礎インスリンとして、インスリン デグルデクはインスリン グラルギン(商品名:ランタス)と同等の血糖コントロールを示し、夜間低血糖の発現率は有意に低いことが、アメリカ・ベイラー医科大学のAlan J Garber氏らが行ったBEGIN Basal-Bolus Type 2試験で示された。2型糖尿病における膵β細胞の機能不全の進行は、従来の基礎インスリン療法では阻止されず、病態は不可避的に増悪するという。デグルデクは新規の超持効型基礎インスリン製剤で、皮下投与するとマルチヘキサマー(多数の六量体からなる集合体)を形成し、緩徐かつ持続的に循環血中に吸収されるため、超長時間のPK/PDプロフィールを示し、グラルギンに比べインスリン作用の変動が小さいことが示唆されている。Lancet誌2012年4月21日号掲載の報告。基礎・追加インスリン療法におけるデグルデクの非劣性を検証 BEGIN Basal-Bolus Type 2試験は、2型糖尿病に対するインスリン デグルデクとインスリン グラルギンの有効性と安全性の非劣性を検証する非盲検無作為化第III相試験。低血糖の発現状況をより正確に評価するために、目標空腹時血糖値の達成に向けて用量を調整する「目標達成に向けた治療(treat-to-target)」として実施された。 2009年9月1日~2010年10月28日までに、12ヵ国123施設から、インスリン治療を3ヵ月以上施行後もHbA1c値が7.0~10.0%であった18歳以上の2型糖尿病患者が登録された。これらの患者が、デグルデクあるいはグラルギンを1日1回皮下注射する群に3対1の割合で無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 全例が1日3回の食事時にインスリン アスパルトによる追加インスリン療法を受けた。基礎インスリン療法は、朝食前の自己測定による血糖値3.9~<5.0mmol/L(=70.2~<90mg/dL)を目標に漸増された。 主要評価項目は、ベースラインから治療52週までのHbA1c値の変化とし、デグルデクのグラルギンに対する非劣性を評価した。低血糖(血糖値<3.1mmol/L[=55.8mg/dL]あるいは援助を必要とする重篤な病態)の発現状況についても検討した。より安全な治療選択肢となる可能性 1,006例が登録され、デグルデク群に755例、グラルギン群には251例が割り付けられ、それぞれ744例(99%)、248例(99%)が解析の対象となった(平均年齢58.9歳、平均罹病期間:13.5年、平均HbA1c値:8.3%、平均空腹時血糖値:9.2mmol/L[=165.6mg/dL])。試験完遂率はデグルデク群が82%(618例)、グラルギン群は84%(211例)だった。 治療1年後のHbA1c値の低下率はデグルデク群が1.1%、グラルギン群は1.2%(推定治療差:0.08%、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.21)であり、血糖コントロールにおけるデグルデクのグラルギンに対する非劣性が確証された。 低血糖の発現率はデグルデク群が11.1件/曝露人年と、グラルギン群の13.6件/曝露人年に比べ有意に低かった(推定率比:0.82、95%CI:0.69~0.99、p=0.0359)。同様に、夜間低血糖の発現率もそれぞれ1.4件/曝露人年、1.8件/曝露人年と有意差が認められた(推定率比:0.75、95%CI:0.58~0.99、p=0.0399)。 重度低血糖は両群とも発現率が低すぎて比較できないが、同等と推察された(デグルデク群:0.06件/曝露人年、グラルギン群:0.05件/曝露人年)。他の有害事象の発現状況は両群で同等だった。 著者は、「インスリン デグルデクによる基礎インスリン療法は、インスリン グラルギンに比べ夜間低血糖の発現率が低く、同等の血糖コントロールが達成されたことから、基礎・追加インスリン療法を要する長期化した2型糖尿病患者に対し、より安全な治療選択肢となる可能性がある」と結論している。

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未成年2型糖尿病患者の最適な治療は?(4月29日掲載NEJMオンライン速報版より)

メトホルミン単独療法で血糖コントロールが不十分な10-17歳の2型糖尿病患者に対する次の治療選択肢として、チアゾリジン薬の追加併用療法が、メトホルミン単独療法を継続するより有意に血糖を管理できることが、無作為化比較試験The Treatment Options for Type 2 Diabetes in Adolescents and Youth (TODAY) 試験の結果より明らかになった。この結果は4月29日、NEJM誌オンライン速報版に発表された。メトホルミン単独療法でHbA1c≧8%の未成年2型糖尿病患者を無作為化割り付け研究グループは、1日2回のメトホルミン(1,000mg/日)投与においても、HbA1c値が8%未満にコントロールできなかった10-17歳の2型糖尿病患者699例を、 1) メトホルミン単独療法群 2) メトホルミン+チアゾリジン薬(ロシグリタゾン)併用療法群 3) メトホルミン+減量を重要視した生活習慣改善強化群の3群に無作為に割り付けし、主要評価項目を「血糖コントロールの喪失」とし、各治療法を比較検証した。「血糖コントロールの喪失」は、6ヵ月にわたるHbA1c値8%以上の持続またはインスリン治療の必要な持続的な代謝不全と定義された。主な結果は下記のとおり。 1. 平均追跡期間は3.86年 2. 「血糖コントロールの喪失」と判定された症例は319例(45.6%)   1) メトホルミン単独療法群:51.7% (232例中120例)   2) チアゾリジン薬併用療法群:38.6% (233例中90例)   3) 生活習慣改善強化群:46.6% (234例中109例) 3. チアゾリジン薬併用療法群は、メトホルミン単独療法群に比べ、   有意に血糖コントロール喪失が少なかった(P = 0.006)。 4. 生活習慣改善強化群は、メトホルミン単独療法群、   チアゾリジン薬併用療法群のいずれの治療法とも有意な差がなかった。 5. チアゾリジン薬併用療法は、非ヒスパニック系黒人で効果が弱く、   少女で効果が強かった。

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DPP-4阻害薬、メトホルミン単独で目標血糖値非達成例の二次治療として有効

 ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を発揮することが、ギリシャ・アリストテレス大学のThomas Karagiannis氏らの検討で示された。経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者のHbA1cを著明に低下させ、体重増加や低血糖のリスクも少ない。種々の血糖降下薬に関する間接的なメタ解析では、二次治療薬としてのDPP-4阻害薬は他の薬剤と同等のHbA1c低下効果を有することが示唆されているが、既存の2型糖尿病の治療ガイドラインはDPP-4阻害薬の使用に関するエビデンスが十分ではないという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。DPP-4阻害薬の有効性と安全性をメタ解析で評価研究グループは、2型糖尿病の成人患者におけるDPP-4阻害薬の有効性と安全性の評価を目的に、無作為化試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。論文の収集には、データベース(Medline、Embase、Cochrane Library)、会議記録、試験登録、製薬会社のウェブサイトを使用した。解析の対象は、単独療法としてのDPP-4阻害薬とメトホルミンあるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬と他の血糖降下薬(スルホニル尿素薬、ピオグリタゾン、グルカゴン様ペプチド1[GLP-1]作動薬、基礎インスリン)を比較した無作為化対照比較試験であり、HbA1cのベースラインからの変動について評価した試験とした。主要評価項目はHbA1cの変動、副次的評価項目はHbA1c<7%達成率、体重の変化、有害事象による治療中止率、重篤な有害事象の発生率などとした。HbA1c低下効果はメトホルミンに劣るが、悪心、下痢、嘔吐が少ない1万3,881例が参加した19試験に関する27編の論文が解析の対象となった。DPP-4阻害薬群は7,136例、他の血糖降下薬群は6,745例だった。抄録のみの1試験を除き、主要評価項目に関するバイアスのリスク評価を行ったところ、3論文では低かったが、9論文は不明、14論文は高いという結果だった。メトホルミン単独療法との比較では、DPP-4阻害薬はHbA1c低下効果(加重平均差[WMD]:0.20、95%信頼区間[CI]:0.08~0.32)および体重減少効果(WMD:1.5、95%CI:0.9~2.11)が低かった。二次治療におけるDPP-4阻害薬のHbA1c低下効果はGLP-1作動薬に比べて劣り(WMD:0.49、95%CI:0.31~0.67)、ピオグリタゾンとは同等で(WMD:0.09、95%CI:-0.07~0.24)、HbA1c<7%の達成率はスルホニル尿素薬を上回らなかった(リスク比:1.06、95%CI:0.98~1.14)。体重の変動については、DPP-4阻害薬はスルホニル尿素薬(WMD:-1.92、95%CI:-2.34~-1.49)やピオグリタゾン(WMD:-2.96、95%CI:-4.13~-1.78)よりも良好だったが、GLP-1作動薬ほどではなかった(WMD:1.56、95%CI:0.94~2.18)。二次治療としてのDPP-4阻害薬とメトホルミン単独あるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬、ピオグリタゾン、GLP-1作動薬に関する試験では、いずれの治療群も低血糖の発生数は最小限であった。メトホルミン+DPP-4阻害薬とメトホルミン+スルホニル尿素薬併用療法の比較試験のほとんどでは、低血糖のリスクはスルホニル尿素薬を含む群でより高かった。重篤な有害事象の発生率はピオグリタゾンよりもDPP-4阻害薬で低かった。悪心、下痢、嘔吐の発生率はDPP-4阻害薬よりもメトホルミンやGLP-1作動薬で高かった。鼻咽頭炎、上気道感染症、尿路感染症のリスクはDPP-4阻害薬と他の薬剤で差はなかった。著者は、「DPP-4阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を有するが、コストや長期的な安全性についても考慮する必要がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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治療を完遂したがん患者、運動によりQOLが改善

治療を終えたがん患者では、運動によってQOLの改善を含め種々の好ましい効果が得られることが、中国・香港大学のDaniel Y T Fong氏らの検討で示された。がんサバイバー(cancer survivor)は、治療終了後に診断前と同等の生活を期待するが、治療の影響で疲労感が増大したり、身体活動性やQOLが低下することが多い。がん治療を完遂した患者における運動の効果に関する最近のメタ解析では、試験の不均一性の増大が指摘されており、その原因は異なるドメインあるいは異なる方法でアウトカムを評価した試験が混在しているためだという。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。治療を終えたがん患者における運動の効果を評価研究グループは、がん治療を完遂した成人がん患者における運動の効果を評価するために、無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。2名の研究者が別個に、データベース(CINAHL、Google Scholar)を検索し、メタ解析や総説の文献を調査して、試験データの抽出と試験の質の評価を行った。対象は、ホルモン療法を除くがん治療を受けた成人患者における運動の効果を評価した無作為化対照比較試験であった。34試験を解析、22試験は乳がん患者が対象34の無作為化対照比較試験が解析の対象となり、そのうち22試験(65%)が乳がん患者に関するものであった。多くが有酸素運動の効果を評価した試験で、筋力トレーニングを加えた試験もあった。運動期間(中央値)は13週(3~60週)で、多くの試験が無運動群を対照群としていた。乳がん患者の試験では、運動によりインスリン様成長因子(IGF)-1、ベンチプレス、レッグプレス、疲労、うつ状態、QOLの改善が得られた。他の癌種の試験を統合すると、体格指数(BMI)、体重、最大酸素消費量、最大パワー出力、6分間歩行距離、右手握力、QOLの有意な改善効果が認められた。試験の不均一性の原因としては、年齢、試験の質、試験の規模、運動のタイプや期間が考えられた。本研究の結論には出版バイアスの影響はなかった。著者は、「運動は、治療を終えた乳がん患者の生理機能、身体組成、身体機能、心理的なアウトカム、QOLに良好な効果を示した。乳がん以外のがん患者でも、運動はBMIや体重の減少などとともにQOLを改善し、好ましい効果が確認された」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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小児・青年期の身体活動時間が長いと、心血管代謝リスク因子は良好に

小児・青年期の身体活動時間が長いほど、座位時間の総量にかかわらず、心血管代謝に関するリスク因子は良好であることが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学アデンブルックス病院代謝科学研究所のUlf Ekelund氏らが、2万人超の4~18歳に対して行ったメタ解析の結果、報告したもので、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。これまで、健康児における身体活動時間と座位時間との複合でみた心血管代謝リスクとの関連についてはあまり検討されていなかった。被験者の中等度~強度の身体活動時間の平均値は1日30分研究グループは、1998~2009年にかけて行われた14試験に参加した4~18歳のデータベース「Children’s Accelerometry Database」から、計2万871人のデータについてメタ解析を行った。中等度~強度の身体活動(moderate- to vigorous-intensity physical activity:MVPA)時間、座位時間と、ウエスト周囲、収縮期血圧、空腹時トリグリセリド値、HDLコレステロール値、インスリン値の関連を分析した。被験者の、MVPA時間の平均値は1日30分(SD:21)、座位時間は1日354分(同:96)だった。MVPA時間が長いと心血管代謝アウトカムは良好、座位時間が長い群で格差が顕著MVPA時間は、すべての心血管代謝アウトカムと有意に関連しており、性別や年齢、日中活動時間、座位時間、ウエスト周囲とは独立していた。一方で座位時間は、いずれの心血管代謝アウトカムとも関連しておらず、MVPA時間と関連していなかった。被験者データは、MVPA時間と座位時間をそれぞれ三分位範囲(短・中・長時間)に層別化して検討された。層別化に基づく複合解析の結果、MVPA時間は長いほど心血管代謝リスク因子は良好であることが認められた。その関連は、座位時間、三分位範囲いずれの群においても認められた。MVPA時間の長短によるアウトカムの格差は、座位時間がより短いほど大きかった。具体的には、MVPA時間の長時間群と短時間群とのウエスト周囲格差の平均値は、座位時間長時間群では5.6cmだったのに対し、短時間群では3.6cmだった。また、MVPA長時間の群と短時間群との収縮期血圧格差の平均値は、座位時間長時間群で0.7mmHg、短時間群では2.5 mmHgだった。HDLコレステロール値の同格差平均値も、それぞれ-2.6mg/dLと-4.5mg/dLだった。トリグリセリド値とインスリン値の格差も同様だった。これらのアウトカム格差をもたらしたMVPA長時間群の同時間は35分/日以上であり、一方短時間群の同時間は18分/日未満だった。被験者のうち6,413人を2.1年間前向きに追跡した解析結果では、MVPA時間と座位時間の複合はフォローアップ時において、ウエスト周囲とは関連していなかったが、基線でウエスト周囲が大きかった群は座位時間が長時間であることとの関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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発症間もない1型糖尿病患者に対するミョウバンGAD

1型糖尿病患者に対するアルミアジュバントGAD65(ミョウバンGAD)の投与は、刺激時Cペプチド消失の抑制も、臨床転帰の改善も有意ではなかったことが報告された。GAD65(グルタミン酸デカルボキラーゼ65kDアイソフォーム)は、1型糖尿病における主要な自己抗原である。スウェーデン・Linkoping大学小児科部門のJohnny Ludvigsson氏らによる検討で、ミョウバンGADは発症間もない1型糖尿病患者のβ細胞機能を維持させるのではないかと仮説を立て、334例の10代の患者を対象とする15ヵ月間にわたる、多施設共同二重盲検無作為化試験を行った。NEJM誌2012年2月2日号掲載報告より。3群に無作為化し、15ヵ月間の刺激時血清Cペプチド値の変化を検討試験は、欧州9ヵ国63のクリニックを通じて、1型糖尿病患者で、空腹時Cペプチド値0.3ng/mL超、血清中に抗GAD65自己抗体が検出された10~20歳の334例を対象に行われた。被験者は診断確定後3ヵ月以内に、無作為に3群(ミョウバンGADを4回投与する群、ミョウバンGADを2回投与+プラセボ2回投与群、プラセボを4回投与する群)に割り付けられた。主要アウトカムは、基線受診時と15ヵ月時点の受診時との、刺激時血清Cペプチド値の変化(混合食事負荷試験後)とした。副次アウトカムは、糖化ヘモグロビン値、平均インスリン1日量、低血糖発生率、空腹時および刺激時血清Cペプチド値などであった。プラセボ群と比較して有意な差が認められず結果、刺激時Cペプチド値は3群で同等で、15ヵ月時点の主要アウトカムについて、ミョウバンGAD群(4回投与群と2回投与群)の複合とプラセボ群とを比較しても有意な差は認められなかった(P=0.10)。ミョウバンGAD投与が、インスリン使用量、糖化ヘモグロビン値、低血糖発生率に与える影響についても、プラセボ群と比べて有意であることは認められなかった。有害事象の発生は3群ともに低く、軽度であり、有意差は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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民間減量プログラム参加者の減量効果は、プライマリ・ケア医による減量治療の2倍

過体重、肥満者の減量達成について、プライマリ・ケア医による標準的な減量治療と、プライマリ・ケア医が地域ベースの民間健康プログラム提供者へと対象者を紹介した場合とを比較した結果、後者のほうが2倍量の減量を達成したことが報告された。過体重、肥満者の増大により、プライマリ・ケアと地域ベースでの減量のための効果的なアプローチが必要とされているなか、英国・MRC Human Nutrition ResearchのSusan A Jebb氏ら研究グループが、オーストラリア、ドイツ、英国の3ヵ国で772例の過体重または肥満者を対象に、前述の比較について検討する平行群非盲検無作為化試験を行った。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載報告より。12ヵ月間の減量治療群と民間減量プログラム参加群との効果を比較試験は2007年9月~2008年11月の間に、オーストラリア70ヵ所、ドイツ39ヵ所、英国6ヵ所の診療所から772例の過体重または肥満の成人患者を集めて行われた。被験者は18歳以上、BMI値27~35で、腹囲女性>88cm/男性>102cm、非インスリン治療中の2型糖尿病など肥満関連のリスク因子を1つ以上有していた。被験者はコンピュータ無作為化システムによって、各国臨床ガイドラインに即した標準治療を受ける群(395例)と、自由参加の民間プログラム「Weight Watchers」を受ける群(377例)とに割り付けられ、いずれも12ヵ月間にわたる介入を受け、その後12ヵ月間追跡された。Weight Watchersは、週1ミーティングで、体重測定、食事や運動のアドバイス、動機づけ、グループ支援を提供するプログラム(http://www.weightwatchers.com/index.aspx)。主要アウトカムは、12ヵ月間の体重変化とし、解析は、intention to treatおよび12ヵ月間の評価を完遂した人について行われた。民間減量プログラムのほうが臨床的に有用の可能性12ヵ月間の評価を完遂したのは、民間プログラム群は230例(61%)、標準治療群は214例(54%)だった。全例解析の結果、民間プログラム群の被験者の減量は、標準治療群の2倍以上を達成していた。すなわち、12ヵ月時点での体重変化の中央値は、LOCF法(途中脱落者のデータについて最終測定値を用いて解析を行う方法)では、民間プログラム群-5.06kg(SE 0.31)に対し、標準治療群は-2.25kg(同0.21)で、補正後格差は-2.77kg(95%信頼区間:-3.50~-2.03)だった。BOCF法(基線データを用いて解析を行う方法)では、民間プログラム群-4.06kg(SE 0.31)に対し、標準治療群は-1.77kg(同0.19)で、補正後格差は-2.29kg(95%信頼区間:-2.99~-1.58)だった。12ヵ月間の評価完遂者を対象とした解析では、民間プログラム群-6.65kg(SE 0.43)に対し、標準治療群は-3.26kg(同0.33)で、補正後格差は-3.16kg(95%信頼区間:-4.23~-2.11)だった。試験参加に関連した有害事象を報告した被験者はいなかった。著者は、「民間減量プログラムへ紹介するほうが、臨床的に有用で、体重管理の早期介入を果たし、より大きな減量効果を達成する可能性がある」と結論している。

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2型糖尿病治療薬 リオベル(一般名:アログリプチン安息香酸塩/ピオグリタゾン塩酸塩配合錠)

 2011年7月、アログリプチン安息香酸塩/ピオグリタゾン塩酸塩配合錠(商品名:リオベル配合錠LD,同配合錠HD)が2型糖尿病を適応として製造販売承認を取得した。製剤は低用量のLD製剤と高用量のHD製剤の2規格。アログリプチン(商品名:ネシーナ)の含量(25mg)が一定で、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)の含量(15mg、30mg)のみ差がある。糖尿病の2大病態を改善 アログリプチンとピオグリタゾンの組み合わせは、薬理学的作用から糖尿病の2大病態であるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性を改善すると期待される。DPP-4阻害薬であるアログリプチンのインスリン分泌促進作用はブドウ糖濃度依存性であり単独投与では低血糖をおこしにくい。またアログリプチンは他のDPP-4阻害薬と比べ、DPP-4に対する選択性が高い1)という特徴をもつ。一方のピオグリタゾンはインスリン抵抗性の改善を介して血糖降下作用を発揮する薬剤であり、インスリン分泌促進作用がないため単独投与での低血糖の危険は少ないといわれる。また大血管障害既往例への心血管イベント発症抑制2)を示したPROactiveに代表される多数のエビデンスを有している。組み合わせにより期待される相乗効果 2剤の併用による血糖改善作用は承認時のデータで示されている。ピオグリタゾン単独療法で効果不十分例に対し、アログリプチン25mgを追加投与したところ、投与12週時点におけるHbA1c変化量は-0.97%3)であった。また血糖降下作用に加え、db/db マウスを用いた膵保護作用の検討では、アログリプチンならびにピオグリタゾン単独投与でも、膵のインスリン含量はプラセボ群よりも有意に増加したが、両剤の併用でさらに相乗的な膵インスリン含量の増加が認められた4)。アドヒアランスの向上は糖尿病治療に好影響を与える 糖尿病患者の多くは高血圧や脂質異常症などの他疾患を合併しているため、服薬錠数が多く服薬タイミングも様々である。リオベル配合錠は、1日1回1錠の服用で済むことから、服薬アドヒアランスの向上に有効である。アドヒアランスの向上は、より良好な血糖コントロールの達成につながるとの報告もあり、糖尿病治療ではアドヒアランスを意識した治療が重要といえる。使用にあたっての注意点 リオベル配合錠は、既に発売されている配合剤のソニアスやメタクト同様、「2型糖尿病の第一選択薬としないこと」と添付文書に記載されており、投与対象は、原則として両剤を併用し常態が安定している患者、もしくはピオグリタゾン単独で効果不十分な患者となる。承認時までの臨床試験では165例中の42例(25.5%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められており、これらを含め、各単剤で報告のある副作用にも十分な注意が必要である。ピオグリタゾンとアログリプチンでは、これまでに重大な副作用として、心不全の増悪あるいは発症、浮腫、肝機能障害、黄疸、低血糖症状、横紋筋融解症、間質性肺炎、胃潰瘍の再燃が報告されているので、使用に当たってはこれらの副作用にも十分に注意したい。ピオグリタゾンについては、海外の疫学研究5)において、主要解析である全体の解析では膀胱癌の発生リスクの増加はみられないものの、治療期間による層別解析ではピオグリタゾンの長期間の投与によりわずかなリスクの増加という注意喚起もあるため、本剤の有効性と膀胱癌のリスクを事前に説明し、投与後は血尿、頻尿、排尿痛等の症状を経過観察する等、適切に使用することが重要である。まとめ 糖尿病治療では患者さんの病態の多様性に応じて薬剤を使い分けることが多い。そのため、配合剤の選択が一様に普及しづらい一面もある。しかし、服薬錠数が減れば、患者さんにとっての負担が軽減されるのも事実だ。患者さんがインスリン分泌不全とインスリン抵抗性とを併せ持つ病態の場合、今後は、リオベル配合錠が有用な治療選択肢のひとつとなるだろう。

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ICU重症成人患者への静脈栄養法は8日目以降開始のほうがアウトカム良好

重症疾患でICUに入室となった成人患者への静脈栄養法の開始は、早期開始(48時間以内)するよりも後期開始(8日目以降)のほうが、回復が早く合併症が少ないことが明らかにされた。ベルギー・ルヴェン大学病院集中ケア内科学のMichael P. Casaer氏ら研究グループが行った4,640例を対象とする多施設共同無作為化試験の結果による。重症疾患は、摂食障害を来し重度の栄養障害、筋消耗、虚弱をもたらし回復を遅らせるため栄養療法が開始されるが、アウトカム改善については明らかになっていなかった。Casaer氏らは、投与ルート、タイミング、目標カロリー、栄養療法のタイプに着目し、特に議論となっている経腸栄養法単独では目標カロリーが達成できないICU重症成人患者への静脈栄養法開始のタイミングについて試験を行った。NEJM誌2011年8月11日号(オンライン版2011年6月29日号)掲載報告より。静脈栄養法開始について早期開始群と後期開始群とに無作為化し検討試験は、2007年8月1日~2010年11月8日の間にベルギー国内7つのICUから登録された、経腸栄養法では栄養不十分(栄養リスクスコア7段階で3以上)のICU成人患者4,640例を対象とし、静脈栄養法の早期開始(ヨーロッパのガイドラインに基づく)と後期開始(米国・カナダのガイドラインに基づく)とについて比較された。早期開始群(2,312例)は、ICU入室後48時間以内に静脈栄養が開始され、後期開始群(2,328例)は7日目においても栄養不十分な場合で8日目に開始された。経腸栄養の早期開始のプロトコルは両群同一に適用され、正常血糖達成にはインスリンが注入された。後期開始群の生存退室率・生存退院率が相対的に6.3%上回る結果、後期開始群の患者は、ICUからの早期生存退室率(ハザード比:1.06、95%信頼区間:1.00~1.13、P=0.04)と病院からの生存退院率(同1.06、1.00~1.13、P=0.04)が相対的に6.3%上回り、退院時の機能状態の低下を示す所見は認められなかった。ICU内死亡率、病院内死亡率、90日生存率は、両群で同程度だった。また後期開始群の患者は早期開始群患者と比較して、ICU感染症(22.8%対26.2%、P=0.008)、胆汁うっ滞発生率(P

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1型糖尿病に対するアバタセプト、膵β細胞の機能低下速度を抑制

早期の1型糖尿病患者に対し、関節リウマチ治療薬アバタセプト(商品名:オレンシア)を投与すると、膵β細胞の機能低下の速度が遅くなることが、米国・Joslin糖尿病センター(ボストン市)のTihamer Orban氏らの検討で示された。1型糖尿病の免疫病原性には膵β細胞を標的とするT細胞性の自己免疫反応が関与しており、T細胞の十分な活性化には、抗原提示細胞(APC)表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子上の抗原とT細胞受容体の相互作用に加え、APC上のCD80、CD86とT細胞上のCD28の相互作用という共刺激シグナルが必須である。アバタセプト(CTLA4-免疫グロブリン融合蛋白)は、この共刺激シグナルを遮断してT細胞の活性化を阻害するため、膵β細胞の機能低下を抑制して1型糖尿病の進展を遅延させる可能性があるという。Lancet誌2011年7月30日号(オンライン版2011年6月28日号)掲載の報告。北米で実施されたプラセボ対照無作為化第II相試験研究グル-プは、新規の1型糖尿病患者に対するアバタセプトの有効性を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験を実施した。2008年3月24日~2009年2月23日までに、アメリカとカナダの15施設から、過去100日以内に1型糖尿病と診断された6~45歳の患者が登録された。これらの患者が、アバタセプト(10mg/kg、最大1,000mg)あるいはプラセボを静注する群に2:1の割合で無作為に割り付けられ、第1、14、28日、以降は1ヵ月に1回、約2年にわたり合計27回の治療が行われた。主要評価項目は、膵臓のインスリン分泌能の指標として、フォローアップ2年の時点における混合食負荷試験から2時間の血清Cペプチド値曲線下面積(AUC)の幾何平均(ベースライン値で調整)とした。デ-タの評価が可能であった全患者についてintention-to-treat解析を行った。Cペプチド値AUCが有意に59%改善、機能低下が9.6ヵ月遅延112例が登録され、アバタセプト群に77例、プラセボ群には35例が割り付けられた。2年後の調整済みCペプチド値AUCは、アバタセプト群(73例)が0.378nmol/Lと、プラセボ群(30例)の0.238nmol/Lに比べ有意に59%(95%信頼区間:6.1~112)高い値を示した(p=0.0029)。この両群間の差は試験期間を通じて認められ、アバタセプト群では、Cペプチド値がプラセボ群と同じ程度にまで低下するのに要する期間が9.6ヵ月遅延すると推察されたことから、アバタセプトによりインスリン分泌能の低下が抑制されたと考えられる。注射関連の有害事象の発生率は、アバタセプト群が22%(17/77例、36件)、プラセボ群は17%(6/35例、11件)であり、有意な差は認めなかった。感染症[42%(32/77例) vs. 43%(15/35例)]や好中球減少[9%(7/77例) vs. 14%(5/35例)]の発生率も両群で同等であった。著者は、「アバタセプトは、共刺激シグナルを阻害することで2年にわたり膵β細胞の機能低下の速度を遅くした」とまとめ、「これにより、臨床的に1型糖尿病と診断される時期にはT細胞の活性化が起きていることが示唆される。一方、2年間のアバタセプト投与期間中、6ヵ月以降は膵β細胞機能の低下率がプラセボと同程度に達したことから、T細胞の活性化は経時的に減弱しており、機能低下に対する他の経路の関与が推測される。今後は、アバタセプト中止後の効果の持続を評価するために観察を続ける必要がある」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alumワクチン療法の可能性

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alum(水酸化アルミニウム配合グルタミン酸脱炭酸酵素)ワクチン療法について、無作為化二重盲検試験の結果、治療目標としたインスリン分泌の低下を抑制しなかったことが報告された。カナダ・トロント大学小児疾患病院のDiane K Wherrett氏らによる。GADは、1型糖尿病の自己免疫反応の主要なターゲットであり、非肥満性の自己免疫性糖尿病モデルのマウス実験では、糖尿病を予防する可能性が示されていた。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月27日号)掲載報告より。診断100日未満3~45歳145例を対象に、接種後1年間のインスリン分泌能を調査試験は、アメリカとカナダ15施設から登録され適格基準を満たした、1型糖尿病との診断が100日未満の3~45歳145例を対象に行われた。被験者は無作為に、GAD-alum 20μgの3回接種群(48例)、同2回接種+alum 1回接種群(49例)、alum 3回接種群(48例)の3つの治療群に割り付けられ、インスリン分泌能が維持されるかを観察した。主要評価項目は、1年時点の血清Cペプチド値(4時間混合食負荷試験の2時間値)の相乗平均曲線下面積(AUC)とし(基線で年齢、性、ペプチド値で補正)、副次評価項目は、HbA1cとインスリン投与量の変化、安全性などを含んだ。接種スケジュールは、基線、4週間後、さらにその8週間後だった。無作為化はコンピュータにて行われ、患者および治験担当者には割り付け情報は知らされなかった。3回接種、2回接種、alum接種の3群間で有意差認められず、免疫療法研究は発展途上結果、1年時点の血清Cペプチド値の2時間AUCは、GAD-alum接種群は0.412nmol/L(95%信頼区間:0.349~0.478)、GAD-alum+alum接種群は0.382nmol/L(95%信頼区間:0.322~0.446)、alum接種群は0.413nmol/L(95%信頼区間:0.351~0.477)で3群間に有意差は認められなかった。同集団平均値比は、GAD-alum接種群vs. alum接種群は0.998(95%信頼区間:0.779~1.22、p=0.98)、GAD-alum+alum接種群vs. alum接種群は0.926(同:0.720~1.13、p=0.50)で、3群間で同等だった。HbA1cとインスリン投与量の変化、有害事象の発生頻度および重症度について、3群間で差は認められなかった。Wherrett氏は、「新規1型糖尿病患者を対象とする4~12週にわたるGAD-alumの2回または3回接種によるワクチン療法により、1年間のインスリン分泌低下を変化することはなかった」と結論。しかし、「免疫療法は非常に望ましく、動物モデルでは有効であったが、ヒトに関してはいまだ発展途上である」として、レビュアーから、投与量・ルート、有効な耐性誘導などさらなる研究が必要だろうとの指摘があったことや、免疫療法の研究を進展させるには免疫調整マーカーの開発が必要であること、また低用量の免疫調整薬投与を含む、GAD療法の併用療法への応用の可能性について言及している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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