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GIP増加が肥満に対しても好影響をもたらす?

 これまでGIPは、齧歯動物において膵β細胞の増殖促進効果と、脂肪細胞における脂肪蓄積効果の両方を発揮することが明らかになっており、そのためGIP受容体アゴニストとアンタゴニストの両方が、2型糖尿病の治療薬になり得るとして検討されてきた。 しかし、今回、Kim SJ氏らの検討から、GIPを過剰発現させたトランスジェニック(Tg)マウスにおいて、膵β細胞機能、耐糖能、インスリン感受性の改善が認められ、さらに食餌誘発性肥満についても減少させたという結果が示された。2012年7月17日、PLoS One誌で公開された報告。この結果から、栄養過多状態におけるGIP過剰発現は、グルコース恒常性の改善とともに、脂肪減少効果をもたらす可能性があることが示唆された。 GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)は、食事によるブドウ糖刺激がもたらすインスリン分泌を促進する消化管ホルモンで、最近では、インクレチンホルモンとして注目されている。 本研究は、「GIPレベルの慢性的増加がグルコース恒常性に対しては改善効果をもたらすが、脂肪蓄積を促進させる」という仮説をトランスジェニック(Tg)マウスモデルを用いて検証したものである。主な結果は以下のとおり。・GIP Tgマウスで、膵β細胞機能、耐糖能、インスリン感受性の改善が認められ、さらに食餌誘発性肥満についても減少させた。・GIP Tgマウスで、高脂肪食により誘導された体脂肪量の減少が認められた。・脂肪組織マクロファージの浸潤と肝脂肪の両方が大きく減少した。・脂質代謝や炎症性のシグナリング経路に関係する多くの遺伝子が、下方制御されていることが明らかになった。・GIP Tgマウスにおける脂肪減少は、視床下部におけるGIP過剰発現がもたらす、エネルギー摂取量の減少と関係していた。

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遺伝子タイプで、2型糖尿病リスクを予測?

遺伝子タイプは一生にわたって変化しないため、青年期の時点から2型糖尿病の高リスク例を同定できる可能性がある。Vassy JL氏らは、遺伝子スコアに基づく糖尿病予測モデルが、臨床上の危険因子のみに基づく糖尿病予測モデルを上回る可能性があるとして、検討を行った。この結果、遺伝子スコアに基づく糖尿病予測モデルは、白人および黒人の若年成人における、25年にわたる2型糖尿病の発症を予測するが、臨床上の危険因子に基づく糖尿病予測モデルを超えるには至らない、ということが明らかになった。Diabetologia誌オンライン版2012年7月11日付に報告されたCARDIA研究(The Coronary Artery Risk Development in Young Adults study)の結果。対象は、若年成人(18~30歳、平均年齢:25歳)で、成人期半ばまで経過観察が行われた。38の遺伝子多様体(variant)スコアの有無別に、青年期に評価された臨床上の危険因子(年齢、性別、人種、糖尿病の家族歴、BMI、平均動脈圧、空腹時血糖値、HDLコレステロール、TG)に基づく2型糖尿病の予測モデルを用いてCox回帰分析を行った。これらモデルは、C統計量と連続的な純再分類改善スコア(NRI)とで比較された。 主な結果は以下のとおり。 ・2,439人の参加者のうち、830人(34%)は黒人で、ベースライン時BMI≥30kg/m2が249人(10%)であった。・フォローアップ期間(平均23.9年)の間に、215人(8.8%)の参加者が、2型糖尿病を発症した。・全モデルにおいて遺伝子スコアは、有意差をもって糖尿病発症を予測した。ハザード比は1.08(95%CI:1.04~1.13)であった。・全モデルで遺伝子スコアによる、再分類改善傾向がみられた(連続的NRI:0.285、95%CI:0.126~0.433)。しかし、有意差はなかった(C統計:遺伝子スコアあり0.824、遺伝子スコアなし 0.829)。人種層別解析も同様の結果であった。 (ケアネット 佐藤 寿美) 〔関連情報〕 動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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SGLT3は、腎臓におけるNaトランスポーター?

新規糖尿病治療薬として、腎臓のグルコース再吸収に関与する輸送体である、SGLT2選択的阻害薬の開発が進んでいる。一方で、SGLT3については、SGLT2と高い類似性を示すものの、ヒトの腎臓における存在と機能的役割についてはほとんど知られていなかった。今回、Kothinti RK氏らにより、ヒトの腎組織および近位尿細管培養細胞(HK-2)におけるSGLT3の mRNAとタンパク質の発現についての研究結果が発表された。この結果、SGLT3は、ヒトの近位尿細管に発現が認められ、新規のナトリウムトランスポーターとして機能している可能性が示唆された。著者は、糖尿病患者において、近位尿細管でのSGLT3のアップレギュレーションが、腎機能障害や過剰濾過進行中のネフロン部位での、ナトリウム輸送を増加させている可能性があると述べている。Eur J Pharmacol誌オンライン版2012年7月2日付の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・ヒトの腎組織(in vivo)、およびHK-2(in vitro)の両方で、ヒトSGLT3(hSGLT3)とタンパク質の発現が示された。 また、hSGLT3の強力なアゴニストである、イミノ糖のデオキシノジリマイシン(DNJ)で処理後のヒトのCOS-7細胞、およびHK-2細胞における、hSGLT3過剰発現に伴うタンパク質活性を調べたところ、結果は以下のとおりであった。 ・COS-7細胞においてhSGLT3を過剰発現させたところ、グルコース輸送に影響を与えることなく、細胞内のナトリウム濃度は3倍まで増加した。・HK-2細胞において、DNJ(50μM)処理により、hSGLT3を過剰発現させたところ、ナトリウム濃度は5.5倍増加したが、この効果はSGLT阻害薬であるフロリジン(50μM)により完全に阻害された。 (ケアネット 佐藤 寿美) 関連情報 ・動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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糖尿病を有するNSTE-ACSに、侵襲的治療は有効

非ST上昇型急性冠症候群(NSTE‐ACS)患者への早期の侵襲的治療は、ACC/AHAガイドラインで推奨されている。しかし、糖尿病を有するNSTE-ACS患者に対する侵襲的治療が、ベネフィットをもたらすかどうかを主目的に解析した臨床試験は、これまでなかった。今回、この検討結果がO'Donoghue ML氏らにより発表された。この結果、糖尿病患者への早期の侵襲的治療は、非糖尿病患者と比べ、全心血管イベントの相対リスクは同等ではあったが、再発性の非致死的心筋梗塞(MI)リスクを有意に低下させることが明らかになった。著者は、これらの結果は、最新のガイドラインが推奨している糖尿病を有するような高リスクのNSTE-ACS患者に対する、侵襲的治療を支持するものだ、と述べている。本試験は9件の無作為化臨床試験のメタアナリシスの結果。対象はNSTE-ACS患者9,904例。フォローアップ期間は12ヵ月。心血管イベントリスクは、糖尿病の有無と無作為化された治療戦略(侵襲的治療または保守的治療)で層別化され、解析された。相対リスク(RR)比と絶対リスクの減少については変量効果モデルを用いてデータ統合がなされた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象者9,904例のうち、1,789例(18.1%)が糖尿病であった。・侵襲的治療の保守的治療に対する、死亡、非致死的心筋梗塞(MI)、または急性冠症候群による再入院のRRは、糖尿病患者(RR:0.87、95%CI:0.73‐1.03)と、非糖尿病患者(RR:0.86、95%CI:0.70‐1.06、交互作用p=0.83)で同等であった。・侵襲的治療は、糖尿病患者に対しては非致死的MIを減少させた(RR:0.71、95%CI:0.55~0.92)が、非糖尿病患者では減少させなかった(RR:0.98、95%CI:0.74~1.29、交互作用p= 0.09)。・侵襲的治療によるMIの絶対リスク減少率は、糖尿病患者の方が非糖尿病患者よりも大きかった(絶対リスク減少率:3.7% vs 0.1%、交互作用p= 0.02)。死亡または脳卒中において、両群間に有意差は認められなかった(交互作用p=0.68、p=0.20) (ケアネット 佐藤 寿美)  〔関連情報〕  ・動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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SGLT1/2阻害薬LX4211の有効性

新しい作用機序を持つ経口の2型糖尿病治療薬であるSGLT1/2阻害薬LX4211の試験結果が、B Zambrowicz氏らによりClinical Pharmacology & Therapeutics誌Early Online Publication 2012年6月27日付で報告された。この結果、LX4211はプラセボと比べて、消化器症状などの有害事象を増加させることなく、空腹時血糖値やHbA1c値を有意に改善させることが明らかになった。SGLT2は腎臓のグルコース再吸収に関与する輸送体である。SGLT2阻害による血糖コントロール改善が示されており、現在、複数のSGLT2選択的阻害薬が開発段階にある。SGLT1を介さず、SGLT2に選択性の高い阻害薬が多く開発されているのは、主に腸管のグルコース輸送体として存在するSGLT1の腎臓のグルコース再吸収への貢献がわずか10%であることや、SGLT1欠損患者ではグルコースとガラクトースの吸収不良に起因する重篤な消化器症状が示唆される等が理由とされていた。しかしRoux-en-Y法による肥満外科手術や難消化性でん粉摂取後は、遠位小腸および大腸へのグルコース輸送が増加しても、消化器症状を発現することなく耐糖能を改善できている。これは、GLP-1分泌によるものと考えられている。このことから、SGLT1/2阻害薬も、選択的SGLT2阻害薬同様に、消化器症状に影響を与えずに、腸管からのグルコース吸収を遅延させ血糖コントロールを改善できるのではないかと、今回検討が行われた。試験対象は、38歳~64歳の2型糖尿病患者36例。プラセボ群、LX4211の150mg投与群、同300 mg投与群、の3群に無作為に割り付け、1日1回経口投与を28日間継続した。主な結果は以下のとおり。 ・LX4211群はプラセボ群と比較して、28日後の空腹時血糖値、耐糖能、およびHbA1c値を含む血糖コントロール指標を有意に改善した。・24時間UGE値は1日後、14日後、28日後においてプラセボ群と比較し、LX4211群で有意に増加した。・LX4211群は、プラセボと比較して、血清トリグリセリド値を有意に低下させた。また、有意差は認められなかったが、体重と血圧は減少傾向、GLP-1濃度は増加傾向を認めた。・有害事象発現は3群間で同等であり、緊急性尿路感染症、性器感染症、低血糖などはみられず、重篤な有害事象の報告はなかった。心血管イベント発現、心電図所見の有意な変化も認められなかった。(ケアネット 佐藤 寿美)〔関連情報〕 動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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ミグリトールが内臓脂肪と心血管リスク因子を減少させる:琉球大、徳島大

αグルコシダーゼ阻害薬であるミグリトールは、内臓脂肪やインスリン必要量を減少させることにより抗肥満作用を有する可能性が示された。琉球大と徳島大の共同研究グループにより明らかにされた。(Int J Cardiol誌 2012年6月19日オンライン版)薬物ナイーブのメタボリックシンドローム患者を継続的に募集し、協力が得られた111例が対象。これらはライフスタイル改善単独群(LSM)、またはLSM に加えミグリトール(50mg×3回/日)を投与した群(ミグリトール群)に無作為に割り付けられた。主な結果は以下のとおり。 ・治療12週後、ミグリトール群(n=42)において、LSM群(n=43)に比べ、体重(5.1%)、BMI(4.9%)および腹囲径が減少した。・75 g経口ブドウ糖負荷試験により、ミグリトール群のみで、インスリンとグルコースの血漿中濃度が低下した。・内臓脂肪面積は、LSM群に比べ、ミグリトール群で大幅に減少した(LSM群:ベースライン184 vs 12週後 174cm2, p

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仏サノフィとジョスリン糖尿病センターが提携、糖尿病の新薬開発へ

フランス、サノフィ社とハーバード大学医学部付属の教育研究機関であるジョスリン糖尿病センターは19日(現地時間)、糖尿病と関連疾患の治療に向けた新薬開発を促進する新たな研究提携契約を締結したことを発表した。今回の提携は、米国マサチューセッツ州ボストンで開催された2012年バイオ国際会議(Bio International Convention)において発表されたもの。サノフィ・アベンティス株式会社が29日に報告した。ジョスリン糖尿病センターは糖尿病の研究と治療に豊富な経験を有する施設で、今回の提携契約では糖尿病とこれに関連する代謝障害における4つの領域を重要分野とし、糖尿病の後期合併症の治療に用いるバイオ医薬品や低分子医薬品の候補となる新規物質や、効果を絞り込んだ新規インスリンアナログの創薬を目指すという。また、インスリン抵抗性やパーソナライズド・メディシン(個別化医療)にも取り組み、糖尿病患者の生活改善を目標とする研究も行うとのこと。仏サノフィ社の国際研究開発部門のエリアス・ザフーニ氏は、「サノフィ糖尿病領域部門とジョスリン糖尿病センターという糖尿病治療における二大陣営の提携は、糖尿病の本質をより良く理解し、新しい治療法の開発に向けた新たな道筋を示す可能性があります。また本提携は、糖尿病の管理とケアの改善と革新的な研究戦略の策定に向けたサノフィの取り組みを示すものでもあります」と述べている。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=2D5DBFA3-0C5B-46EE-BA20-58C480CA99F2.pdf

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医師が抱く、「インスリン使用」への抵抗感  ~DAWN JAPAN Study~

インスリン療法は2型糖尿病において良好な血糖コントロールを実現する手段だが、一般的にインスリンの導入開始時期は遅れがちであると言われる。今回、天理よろづ相談所病院の石井氏らの研究で、「医師が抱くインスリン治療に対する心理的障壁」についての検討結果が明らかになった。2012年6月14日、PLoS One誌で公開された報告。本研究は、2004 年から2005年にかけて日本国内で実施された、インスリン療法に対する心理的障壁についての実態調査DAWN JAPAN研究(Diabetes Attitudes,Wishes, and Needs study-JAPAN)の結果をもとに行われた。対象は、日本糖尿病学会認定専門医師(n=77)、日本糖尿病学会会員医師(n=30)、日本糖尿病学会非会員医師(n=27)の計134名の医師 。新たに開発された27の質問項目から成る調査票を用いて実施された。この結果、医師側がインスリン療法に何らかの不安を抱いていることが示された。この不安がインスリンの導入開始時期の遅れにもつながっている可能性が考えられると著者は考察している。主な結果は以下のとおり。 ・参加医師によって治療されている患者は合計11,656名・患者の平均年齢は64.1歳、糖尿病罹病期間は平均121.6ヵ月、平均HbA1c(NGSP)値は7.5%で、全患者の27.4%でインスリンが使用されていた。・医師が抱く、インスリン治療に対する心理的障壁のうち、JDS認定専門医師群とJDS非会員医師群とで有意差のあった項目は、「インスリン療法の支援が可能な医療スタッフ(看護師・薬剤師)がいない」 (1.3% vs 55.5%)、「高齢者に対するインスリン療法に何らかの懸念がある」(38.1% vs 81.5%)、「インスリン導入のための患者指導や教育を行うことが困難」(16.9% vs 55.5%) であった。・医師がインスリン導入を患者に勧める際の平均HbA1c(NGSP)値は8.7%であった。しかし、自分自身にインスリン導入が必要になると仮定した場合には、その数値は8.2%まで減少した。(ケアネット 佐藤 寿美)〔関連情報〕 動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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新規2型糖尿病におけるインスリン持効型の投与は心血管疾患を増やすのか?

ORIGIN試験(Outcome Reduction with an Initial Glargine Intervention)研究グループは、11日、境界型を含む2型糖尿病患者に持効型インスリンを投与しても、従来治療に比べ、心血管イベント発生、がん発生に差を認めなかったことをNEJM誌オンライン速報版に発表した。このORIGIN試験では40ヵ国で2003年9月~2005年12月までに参加登録された症例を6年間追跡した。研究費提供元はサノフィ。 [国内での販売名] インスリングラルギン・・・ランタス空腹時血糖異常(IFG)、耐糖能異常(IGT)または新規2型糖尿病を受けた、心血管疾患イベント高リスク者12,537例が対象となった。対象患者は、2x2 factorialデザインにより、標準治療群とインスリングラルギン投与群(以下、持効型インスリン群)のいずれかに無作為に割り付けられた。その後ω3系多価不飽和脂肪酸投与群とプラセボ投与群にも無作為に割り付けられた。主要評価項目は、「非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+心血管死」の3項目から成る心血管疾患複合エンドポイント。副次評価項目は、主要評価項目に「血行再建術」と「心不全による入院」を加えた5項目から成る心血管疾患複合エンドポイント。主な結果は、下記のとおり。1. 追跡期間の中央値は6.2年。2. 主要評価項目である心血管疾患複合エンドポイント(3項目)の発生は、  持効型インスリン群2.94/100人・年、標準治療群2.85/100人・年。  ハザード比=1.02(95%信頼区間=0.94-1.11、P=0.63)。3. 心血管疾患複合エンドポイント(5項目)の発生は 、  持効型インスリン群5.52/100人・年、標準治療群5.28/100人・年。  ハザード比=1.04( 95%信頼区間=0.97〜1.11,P=0.27)。4. ベースライン時に糖尿病と診断されていない1,456例における  糖尿病新規発症率は、持効型インスリン群 30%、  標準治療群35%(オッズ比=0.80。95%信頼区間=0.64~1.00、P=0.05)。5. 重篤な低血糖は 持効型インスリン群で1.00/100人・年、  標準治療群で0.31/100人・年と、持効型インスリン群で有意に高率(P<0.001)。6. 平均体重の増加は 持効型効型インスリン群で1.6kg増、標準治療群で0.5kg減。7. 標準治療群に対する持効型インスリン群のがん発生のハザード比は  1.00(95%信頼区間=0.88〜1.13、P=0.97)。(ケアネット 藤原 健次)

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インスリン デグルデクの配合製剤は、低血糖リスクが低い(vs二相性インスリンアスパルト-30)

新規のインスリン配合製剤「インスリンデグルデク/インスリンアスパルト」は、二相性インスリンアスパルト-30に比べ、低血糖発現頻度を有意に低下させつつ、同程度の血糖コントロールを示すことが明らかになった。フィンランドのNiskanen氏らによる報告(Eur J Endocrinol誌オンライン版2012年6月1日号掲載)。インスリンデグルデク/インスリンアスパルト(IDegAsp)は、超持効型のインスリンデグルデク(IDeg)を70%、超速効型のインスリンアスパルト(IAsp)を30%含有するインスリン製剤である。本試験の対象は、HbA1c(NGSP)値7.0~11.0%のインスリン治療未経験の2型糖尿病患者(18~75歳)。被験者をIDegAsp(IDeg70%/ IASP30%)群と、その代替製剤(AF)群(IDeg55%/ IAsp45%)と、二相性インスリンアスパルト-30(BIAsp 30)群の3群に分け、有効性と安全性を比較した。16週間のオープンラベルランダム化treat-to-target試験。被験者はIDegAsp群 (n=61)、 AF群 (n=59)、 BIAsp 30群 (n=62) に無作為に割り付けられた。全群でメトホルミンとの併用がみられた。インスリンは、朝食前と夕食前に投与され、朝食前と夕食前の血糖値が4.0~6.0 mmol / Lになるように用量が設定された。この結果、「インスリンデグルデク/インスリンアスパルト」は、二相性インスリンアスパルト-30に比べ、低血糖発現頻度を有意に低下させつつ、同程度の血糖コントロールを示すことが証明された。主な結果は以下のとおり。 ・試験終了時の平均HbA1c(NGSP)値は、IDegAsp群:6.7%、AF群:6.6%、BIAsp 30群:6.7%と、同程度であった。・試験終了までの4週間、確定低血糖の発現なくHbA1c値7.0%を達成した割合は、IDegAsp群で67%、AF群で53%、 BIAsp 30群で40%であった。・試験終了時の平均空腹時血糖値はIDegAsp群で有意に低かった(vs. BIAsp 30群)。その差は0.99 mmol /L (95%Cl:-1.68~0.29)。・確定低血糖の発現率はBIAsp 30群と比べ、IDegAsp群で58%のリスク低下を認めた(率比[rate ratio;RR]:0.42、95%CI:0.23~0.75 )。AF群も同様の結果であった(RR:0.92 、95%CI:0.54~ 1.57)。・夜間の確定低血糖発現率もBIAsp 30群と比べ、IDegAsp群、AF群において共に低かった。(RR:0.33、95%CI:0.09~1.14/RR:0.66、95%CI:0.22~1.93) (ケアネット 佐藤 寿美)

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CKD患者では血糖値の日内変動が大きく、食後血糖の急激な上昇が認められた

慶応義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科の細谷幸司氏は、第55回日本腎臓学会の口演にて、持続血糖測定装置(CGMs)を用いて観察した慢性腎臓病(CKD)患者の血糖日内変動について報告した。CKD患者では非糖尿病であっても、血糖日内変動が大きく、とくに食後高血糖が著明であることが明らかになった。飲酒と肝酵素上昇のどちらがCKDに関与しているのかCDK患者における糖代謝異常やインスリン抵抗性の亢進が報告されており、その原因として、腎機能低下に伴う炎症性サイトカインや活性酸素の産生、貧血、脂肪細胞機能不全、尿毒症、栄養不良、副甲状腺ホルモンの亢進、ビタミンD欠乏、代謝性アシドーシスなどが報告されている1)。しかし、CKD患者におけるHbA1cや空腹時血糖の実態は正確に把握されておらず、1日の血糖値の推移についても正確に調べられていなかった。そこで細谷氏らは、近年実用化されているCGMsを用い、CKD患者の血糖日内変動の実態について検討を行った。細谷氏らが用いたCGMsは、メドトロニック社のミニメドCGMS-Goldであり、皮下に留置したセンサを介して組織間質液中のグルコース濃度を24時間連続測定し、携帯型のモニタシステムに記録される。過去において、維持血液透析患者や腹膜透析患者の血糖変動を測定するためにCGMsを用いた検討はあったが、非糖尿病の非透析導入のCKD患者に対して、CGMsを用いて血糖日内変動を調べた研究はまだなかった。CKD患者では食後高血糖によるグルコーススパイクが心血管イベントに影響か細谷氏らは、CKD群として非糖尿病性腎症で透析導入目的にて入院したCKDステージ5の患者16名、またコントロール群として腎生検目的で入院した6名を含む正常者10名について、CGMsを用い36~48時間の血糖連続測定を行った。CGMsで得られた血糖日内変動のパラメータとして、平均血糖値、血糖変動値(SD値の平均)、血糖曲線下面積(AUC)、食後2時間の最大血糖値と最小血糖値の差、食後のAUCを比較した。コントロール群とCKD群との比較には、Mann-WhitneyのU検定を用いた。患者背景は、コントロール群とCKD群において年齢はそれぞれ53.9±19.1歳と57.67±11.4歳、HbA1cは5.0±0.41%と5.39±0.50%、eGFRは68.2±22.3mL/分と5±1.58mL/分(p<0.0001)であった。コントロール群およびCKD群で有意差のあった血液検査値は、尿素窒素(BUN)、クレアチニン値、総コレステロール、アルカリホスファターゼ(ALP)、GOT、尿酸、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット、血小板であった。血糖の日内変動パターンは、コントロール群では24時間を通して血糖値が安定していたのに対し、CKD群では血糖値の日内変動が大きく、とくに食後の血糖上昇が著明であった。コントロール群とCKD群において24時間血糖と夜間血糖を比較したところ、24時間血糖では平均血糖値(p<0.005)、血糖変動値(p<0.05)、AUC(p<0.005)のいずれにおいてもCKD群の方で有意に高かった。一方、夜間血糖ではCKD群の方が高い傾向にあるものの有意差はなかった。また、食後2時間血糖値と空腹時血糖の差は、朝食、昼食、夕食においてCKD群でコントロール群よりも大きく、とくに朝食では有意差(p<0.05)が認められた。全食事での比較においてもCKD群で食後と空腹時血糖の差は有意に大きかった(p<0.05)。食後2時間のAUCの比較では、朝食(p<0.005)、昼食(p<0.05)、夕食(p<0.05)、全食事(p<0.005)のすべてにおいて、CKD群が有意に高いことが示された。これらの結果より、細谷氏は「CKDステージ5の患者では腎機能の正常者と比べて、24時間平均血糖および血糖日内変動が増大し、とくに食後高血糖が著明に認められた」と述べた。持続的な高血糖よりも、グルコーススパイクと呼ばれる食後高血糖のような急峻な血糖変動が動脈硬化進展のリスクファクターである可能性が指摘されている2)。細谷氏は、CKD患者では非糖尿病であっても血糖日内変動が大きく、食後の間欠的な高血糖が認められ、このグルコーススパイクが心血管疾患に影響を与える可能性があると考察した。参考文献1)El-Atat FA et al:J Am Soc Nephrol 2004; 15: 2816-28272)Esposito K et al: Circulation 2004;110:214-219

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インスリングラルギンによる発がんリスクの増加は認められず

フランスのサノフィ社は11日、大規模な疫学プログラムの一環として、北欧諸国、南北カリフォルニアのカイザーパーマネンテ、およびノースカロライナ大学のそれぞれの独立した機関において行われた研究結果を発表した。ランタス(一般名:インスリングラルギン〔遺伝子組換え〕)による治療を受けている糖尿病患者は他のインスリン製剤による治療を受けている糖尿病患者に比べて発がんリスクの増加がみられないことがわかったという。このデータは、第72回米国糖尿病学会においても発表されている。日本国内には15日付でサノフィ・アベンティス株式会社が公表した。この疫学プログラムは、糖尿病患者における発がんリスクを評価し、大規模データベースから得たインスリングラルギンの投与に関する包括的なデータを作成することを目的として行われた。この目的で行われた観察研究プログラムとしては過去最大規模の研究になるという。同試験はこの種の研究としては大規模な研究で、インスリン使用例447,821例、150万/人/年の観察データの検討が行われた。平均追跡期間はインスリングラルギンの使用例は3.1年、他のインスリン製剤の使用例では3.5年だった。主要仮説に関する検討では、インスリン使用者全体の解析、およびヒトインスリンの使用者全体の解析のいずれにおいてもインスリングラルギン使用例は他のインスリン使用例に比べ、女性の乳癌(HR:1.12; 95% CI:0.99-1.27)、男性の前立腺癌(HR:1.11; 95% CI:1.00-1.24)、ならびに男性および女性の結腸直腸癌(HR:0.86, 95% CI:0.76-0.98)のリスクが上昇することを示すエビデンスは得られなかったという。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=D506EFB6-7512-427D-94B8-E12A6B55FB0C.pdf

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DPP-4阻害薬か、基礎インスリンか? -メトホルミン難治性2型糖尿病-(Lancet 6月16日発表)

コロンビア ハベリアナ大学のPablo Aschner氏は、16日、メトホルミン血糖コントロール不十分で、インスリン投与経験のない2型糖尿病における追加併用薬は、DPP-4阻害薬(シタグリプチン)より持効型インスリン (インスリングラルギン)が効果の面で優れており、安全面でも大きな問題がないことをLancet誌に発表した。これは17ヵ国、96施設が参加して実施されたEASIE(Evaluation of Insulin Glargine versus Sitagliptin in Insulin-naive Patients)試験の結果。研究費提供元はサノフィ。[国内での主たる販売名] メトホルミン・・・メトグルコ シタグリプチン・・・ジャヌビア、グラクティブ インスリングラルギン・・・ランタスメトホルミンを投与してもコントロール不良(HbA1cが7~11%)の、インスリン未治療の2型糖尿病患者(BMI 25~45、35~70歳)が対象となった。対象患者はメトホルミン+インスリングラルギン併用群250例(以下、基礎インスリン併用群)、メトホルミン+シタグリプチン併用群265例(以下、シタグリプチン併用群)のいずれかに無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治療24週後のHbA1cの変化。主な結果は、下記のとおり。1. 治療24週後のHbA1cの低下は、基礎インスリン併用群で有意に大きかった (基礎インスリン併用群1.72%低下 vs シタグリプチン併用群1.13%低下、  平均差=-0.59%、95%信頼区間=-0.77--0.42、P<0.0001)。2. HbA1c 7.0%未満達成率は、基礎インスリン併用群で有意に多かった  (68% vs 42%、P<0.0001)。3. HbA1c 6.5%未満達成率も、基礎インスリン併用群で有意に多かった  (40% vs 17%、P<0.0001)。4. 低血糖の頻度は基礎インスリン併用群のほうが有意に多かった (4.21回/患者・年 vs 0.50回/患者・年、P<0.0001)。  重篤な低血糖は3例 vs 1例。5. 重篤な有害事象は基礎インスリン併用群で15例(6%)、  シタグリプチン併用群で 8例(3%)。  有害事象による治療中止例は2例 vs 4例。(ケアネット 藤原 健次)

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糖尿病予備群および早期糖尿病の患者を対象としたORIGINの結果を発表

フランスのサノフィ社は11日(現地時間)、ORIGIN試験(Outcome Reduction with Initial Glargine Intervention)の結果を報告し、ランタス(一般名:インスリングラルギン〔遺伝子組換え〕)は標準的治療に比べ、心血管系イベントの発生に対して統計的に悪影響を及ぼさないことを発表した。また同試験の結果より、インスリングラルギンは糖尿病予備群から2型糖尿病への進行を遅らせること、また同薬の投与と癌のリスク上昇との間に関連を認めないことが明らかにされた。サノフィ・アベンティスが14日に報告した。また試験結果は、第72回米国糖尿病学会において発表され、New England Journal of Medicine (NEJM)のオンライン版にも掲載された。ORIGIN試験は、インスリングラルギンと標準的治療が心血管系イベントの発生に及ぼす影響を6年間にわたって比較したもの。同試験では、心血管系リスクが高い糖尿病予備群または早期2型糖尿病患者12,500例以上が世界各地で無作為化を受け、6,264例がインスリングラルギン群に割り付けられ、空腹時血糖が正常値となるまで投与量の調節が行われた。主要評価項目は、(1)心血管イベントによる死亡、非致死的な心筋梗塞、非致死的な脳卒中のいずれかの発症、ならびに(2)心血管イベントによる死亡、非致死的な心筋梗塞、非致死的な脳卒中、血行再建術の実施、心不全による入院のいずれかの発症の2項目とした。試験では、早期の血糖異常の患者の空腹時血糖を正常域に下げる治療は、心血管系イベント抑制に影響しないことが示された。(第1の主要評価項目のハザード比1.02, p=0.63, NS,第2の主要評価項目のハザード比1.04; p=0.27, NS)。インスリングラルギンの投与により血糖コントロールの目標値(空腹時血糖値の5.2 mmol/L、HbA1c 6.2%〔いずれも中央値〕)に到達し、6.2年間の追跡期間中を通じて維持された。また、インスリングラルギンと癌の発症リスク上昇との間には関連が認められなかったという(HR:1.00; p=0.97, NS)。癌全般について解析した場合、癌種別に解析した場合のいずれも、インスリングラルギンの使用者にリスク上昇を示唆する所見を認めなかったとのこと。試験の結果、インスリングラルギンは糖尿病予備群(IFG またはIGT)から2型糖尿病への進行を28%遅らせることを示しており(HR:0.72; p=0.006)、ほかにも副次評価項目として微小血管に関するイベント発症(腎症または網膜症の評価項目〔HR:0.97; p=0.43〕)や全死亡〔HR:0.98; p=0.70〕の検討がなされた。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=C2FC519A-337E-4613-9E57-D391A9BF9B0B.pdf

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郷に入っても郷に従わず その4 ~食事の心理学

ハーバード大学リサーチフェロー大西 睦子 2012年5月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 前回のコラムで、人工甘味料と肥満や糖尿病の関係は、体の生理的反応と人間の行動的、心理的な要素が関与していることをお伝えしました。そこで今回は、『食べる』という行動が起こるまでの心理的な状況を、さらに深く考えたいと思います。例えば、みなさんが5人のお友達とレストランに行くことを想像してみてください。おそらく、5人とも違うメニューを選ぶことが多いと思います。私は和風パスタとチーズケーキを選んだのに、あなたはサラダにステーキを選んだ理由、それはなぜでしょうか。けっこう深い理由があるのです。1)嗜好最近の科学雑誌に、様々な文化の異なるヨーロッパ諸国において、1600人以上の子供たちを対象に、食事の嗜好と肥満の関係についての報告がありました。結果は、肥満の子供たちは、脂肪や糖分の多い食事を好んだということでした。動物実験で、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが、空腹感を抑えるだけではなく、食べ物の嗜好にも関与していることがわかってきました。例えば、レプチン濃度が低いと、空腹感が増強するだけではなく、食べ物による喜びも増加します。●ということは、人種や文化の違いにかかわらず、肥満の子供は、高脂肪で甘い食べ物を摂取することによる喜びが強いと考えられますね。2)学習私たちは生後まもなく、食に対する行動的、感情的な反応を覚えます。この頃、親は重要な役割を果たします。なぜなら母親の食事は母乳に移行し、後の子供の嗜好に大きく影響するためです。従って、特に母親の食の影響は強いと思われます。離乳後、子供は自分で食べ始めますが、新しい食べ物に拒否反応を示し、少なくとも繰り返し10回以上経験して、ようやく受け入れます。このころの経験も、後の好き嫌いに影響します。さらに、食べることは、罪と報酬の意味もあります。食事の量や食べるスピードも、親の影響が大きいと考えられています。『ぐずぐずしないで、早く残さず食べなさい。』なんて、親に叱られた経験はありませんか?子供は食べ物を残すことに罪を覚え、出されたものは全部食べる習慣がつきます。3)再学習私たちの食事の好みは幼少期の経験に決まると考えられていますが、大人になって、再学習することによって好みを変えられることも報告されています。●これは、いいニュースです。子供の頃の悪い習慣を、大人になって変えるチャンスがあるのですから。4)食欲ドーパミンは、連続した学習による行動の動機付け(associative learning)と関係している神経伝達物質です。食事開始後、ドーパミンの分泌が上昇し、食欲が増強します。重要なのは、連続した学習によって、食べ物を想像するだけで、ドーパミンが分泌されるようになるのです。例えば、食べ物の写真、料理の音やにおいでドーパミンが分泌され、食欲が増加します。ストレスでもドーパミンの分泌が増え、過食になります。コカイン、覚せい剤は、ドーパミン分放出させ快感を起こします。セロトニンはドーパミンをコントロールする神経伝達物質です。食欲を抑えるには、ドーパミン分泌を抑制し、セロトニンを放出することとなります。最近、インスリンやレプチンもドーパミンに影響を与えることも報告されています。●やる気、ご褒美、学習などに関わるドーパミンは、脳の『快楽物質』とも呼ばれています。ドーパミンをたくさん増やしたい!と思いがちですが、やはりバランスが大切と思います。それは、5)の中毒に関係するからです。5)習慣、依存、中毒これは大トピックです。習慣、依存、中毒には、行動(心理的)問題が大きく影響します。2010年に、動物実験により、過食による肥満の脳内の分子経路が、麻薬中毒者のものと同じだとする報告があり、大変な話題になりました。米国フロリダ州のポール・ケネディ准教授の研究チームは、コカイン中毒者の脳内ではドーパミンが大量に放出され、ドーパミン2受容体が過剰に刺激されていることは明らかになっていましたが、同様な変化を「食事中毒」のラットで証明したのです。●食に限らず、人生において、喜び、幸せは大切ですが、実際はそれだけではないと思います。苦しみ、悲しみを克服しつつ得る喜びを経験することが、人間の成長につながるのではないでしょうか。私もそうなりたいと思います。6)感情感情、例えば、喜び、怒り、悲しみ、不安も肥満に影響します。肥満のひとでは、食事摂取による感情の変化に違いがあるとも言われています。肥満の人は、食べることで報酬を得ます。●誰でも美味しい物を食べると嬉しくなりますが、嬉しさの度合いが肥満の人は強いようです。7)決定意思決定は、自動的に即座にされる経路(これはかなり訓練されています)と、ゆっくりですが、コントロールした上で行われる経路と2種類あります。食べる行為に、この決定は重要な役割があると思いますが、残念ながら、動物実験モデルをつくることが難しく、まだまだ不明な点が多い分野です。●例えばみなさんが飲み物を注文するとき、『とりあえず生ビール(メニュー見ずに注文する人もいると思いますが)』という人もいますし、メニューをよく読んで『このカクテル下さい。』という人もいます。自分で決められず『お勧めは何ですか。』と店員に聞く人もいます。どうしてこんなに人は最終的な意志決定が違うのでしょうか?最後に、肥満には、環境の影響も大きな問題になってきます。環境とは、車など、便利な社会になったため、人々が動かなくなった点、スーパーマーケット、コンビニなどで、高カロリーの食品を消費者が買いやすくしている点(そういった商品が増えた、安くなった、目に留まる位置に置いてある)などです。駅のキヨスクで、大根やキュウリが売っているのは見かけたことはありませんが、お菓子はすぐに買って、すぐに食べることができますよね。『不便、面倒』という言葉は、売り文句にはなりにくいですが、思っているほど悪くはないかもしれません。

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「Breaking up with Diabetes」にむけて ~第55回日本糖尿病学会年次学術集会 レポート~

 参加者が約1万3千人と、過去最大の規模となった今回の学術集会。演題数は2,284題と過去最高となり、「糖尿病領域」の盛り上がりを肌で感じられる学会であった。【依然、注目度の高い糖尿病領域】 実際、4月1日から実施となったHbA1c国際標準化や「糖尿病治療ガイド2012-2013」の発行など、今春も糖尿病領域の話題は豊富だ。理事長声明においても、理事長の門脇氏がHbA1c国際標準化に触れ、「糖尿病臨床・研究・治験のさらなる国際化を目指す」とともに、「診療におけるHbA1cの認知向上につなげたい」と述べた。 また、エビデンス構築の一環としてJ-DOIT3の概要が発表された。本試験では、強力な治療介入が糖尿病患者の健康寿命やQOLをどれだけ改善するかを検討する。門脇氏は、「重症低血糖は2例のみでありACCORD試験の200分の1にとどまっている」点から「過去の大規模臨床試験とは異なる新しい結論がみえてくるのでは」と期待を語った。【インクレチン関連薬の演題が急増】 注目が集まる糖尿病領域だが、やはりその引き金は「インクレチン関連薬」ではないだろうか。発売から一定期間を経て多くの臨床成績が集積され、インクレチン関連薬の演題はこの3年で格段に増加したという。 昨年までは各薬剤の「有効性」「安全性」の演題がほとんどであったが、今年は「1年間にわたる長期投与試験」「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」「DPP-4阻害薬間の切り替え症例」など一歩踏み込んだ切り口でのインクレチン関連薬の口演、ポスター発表を目にした。【見えてきた、2次無効例の存在】 長期投与試験の結果で印象的だったのは、一部で2次無効例の存在がみられたことであった。集積途中のデータとはいえ、期待のインクレチン関連薬でも、長期の血糖コントロールは一筋縄ではいかないという事実に、糖尿病治療の難しさを再認識させられた。患者自身の生活習慣の悪化という根本原因に、歯止めをかける治療が求められているのかもしれない。「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」は、昨年よりは踏み込んだ研究であったものの、残念ながら、「今後の長期的検討が必要」「多くの症例蓄積が必要」というまとめに変化はなく、今後予定される大規模臨床試験に期待がかかる。【インスリンからの切り替え・離脱例の増加】 一部の適応追加が影響したのかGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬ともに「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」がみられた。インスリン分泌能の保持された患者での順調な離脱例の報告もあったが、症例によってはやや危険と思われる離脱報告もあり、適正使用が重要と感じた。とくに、インスリン使用者のDPP-4阻害薬への切り替えについては血糖コントロールの点からも慎重さが求められるのではないだろうか。【次世代の薬 :SGLT2選択的阻害薬】 さて、インクレチン関連薬に続く新しい波、として期待される薬剤がある。「SGLT2選択的阻害薬」だ。原尿からのブドウ糖の再吸収を減らし、ブドウ糖を尿から排泄させる、という新規作用機序をもつ薬剤でありポスター、演題で取り上げられた。新薬セッションでは各開発メーカー担当者が座長より質問を受ける一幕もみられ、注目度の高さがうかがわれる。 現在開発中のSGLT2選択的阻害薬には、イプラグリフロジン(アステラス製薬/寿製薬)、ダパグリフロジン(米ブリストル・マイヤーズスクイブ/英アストラゼネカ)、トホグリフロジン(中外製薬)、カナグリフロジン(田辺三菱製薬)、ルセオグリフロジン(大正富山)、エンパグリフロジン(日本ベーリンガーインゲルハイム/リリー)等がある。【新規超持効型インスリン:デグルデクへの期待】 インスリンのトピックスとしては、開発中の新規超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)に注目したい。 デグルデクは、皮下でマルチヘキサマー(インスリン6量体の長鎖)を形成し、その後、亜鉛(Zn)の解離とともに端から1つずつモノマーとなって血中へ移行する。これにより緩徐に血中に吸収され、長時間にわたる作用を示す。今回、インスリン グラルギン(以下、グラルギン)に対する非劣性試験結果においてグラルギンと同等の血糖改善と低血糖のリスク低下が報告された。低血糖をきたしにくいインスリン製剤として期待される。【まとめ】 インクレチン関連薬発売から一定期間を経過し、臨床データは増加傾向にある。とはいえ、解明されていない事は多い。かたや、糖尿病有病率については依然増加し続けている。 門脇氏は「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」こそが糖尿病治療の最終目標である、と述べる。目標達成のためには根本的な糖尿病の予防・治療法の開発に継続して取り組む必要がありそうだ。【編集後記】 インクレチン関連薬発売を経て、糖尿病領域はにわかに活性化している。今がまさに過渡期であり、近い将来、新しいエビデンスや新薬、画期的な治療が現れ、「糖尿病治療を取り巻く現況」は大きく変化していくのかもしれない。今回はその前触れを感じさせる学会であった。 変化を迎えようとしているこの時代に糖尿病の予防・治療に関わる最新情報を発信できることは医療情報を発信する側の人間として幸運なことといえよう。 「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」の実現にむけ、我々も、タイムリーで適切な医療情報の伝達に努めていきたい。

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日本人を含むアジア人を対象にした、リキシセナチド1日1回投与の有効性

アジア人の2型糖尿病患者を対象とした、リキシセナチド1日1回投与の有効性と安全性に関するデータが示された。スルホニル尿素薬(SU薬)併用の有無にかかわらず、基礎インスリン投与下で、GLP-1受容体作動薬のリキシセナチドを1日1回追加投与することで、プラセボ群に比べ、HbA1cが有意に低下することが明らかになった。これは、日本人を含むアジア人2型糖尿病患者を対象に検討した臨床第3相試験「GetGoal-L-Asia」試験の結果である。関西電力病院院長の清野氏らの報告によるもので、SU薬併用の有無にかかわらず、基礎インスリンを投与されている、日本、台湾、フィリピン、韓国のアジア4ヵ国から登録した311例(リキシセナチド群n=154、プラセボ群n=157)が対象。リキシセナチド追加による効果をHbA1c変化値の観点から検討することを目的に実施された。主要評価項目は24週後のHbA1c値の変化である。無作為化二重盲検比較試験。主な結果は以下のとおり。 ・リキシセナチド1日1回投与群の24週時点でのHbA1c値の変化は、プラセボと比べ-0.88%(95%信頼区間:-1.116~‐0.650 , p

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2型糖尿病肥満、薬物療法+外科的肥満手術で血糖コントロール有意に改善

2型糖尿病非コントロールの肥満患者について、薬物療法に加えて胃バイパス術など外科的肥満手術を行うことが、薬物療法単独よりも有意に血糖コントロールを達成するとの報告が発表された。米国・Bariatric and Metabolic InstituteのPhilip R. Schauer氏らが、無作為化非盲検単独施設試験の結果、報告したもので、これまでは観察研究においては、胃バイパス術などを受けた2型糖尿病患者における病状の改善が認められていた。NEJM誌2012年4月26日号(オンライン版2012年3月26日号)掲載報告より。150例を対象に薬物療法単独と外科的手術群の血糖コントロール改善を比較Schauer氏らによるSurgical Treatment and Medications Potentially Eradicate Diabetes Efficiently(STAMPEDE)試験は、2007年3月から2011年1月にクリーブランドクリニック単施設で行われた無作為化試験で、2型糖尿病を有するBMI 30~35以上の肥満患者を対象に、血糖コントロール達成について、薬物療法単独と外科的手術(Roux-en-Y胃バイパス術と胃切除術)を併用する群とを比較して行われた。被験者は150例、平均年齢は49±8歳、66%が女性であり、血糖値平均は9.2±1.5%であった。追跡期間は12ヵ月、主要エンドポイントは、治療12ヵ月後に血糖値6%以下に到達した患者の割合とした。被験者150例のうち93%が、12ヵ月の追跡期間を完了した。治療後の血糖値平均、薬物療法単独群7.5%に対し、胃バイパス術群6.4%、胃切除群6.6%結果、主要エンドポイントを達成した患者の割合は、薬物療法単独群12%(5/41例)に対し、胃バイパス術群42%(21/50例、P=0.002)、胃切除群37%(18/49例、P=0.008)だった。血糖コントロールは3群すべて改善したが、薬物療法単独群の改善された血糖値平均7.5±1.8%に比べて、胃バイパス術群は6.4±0.9%(P<0.001)、胃切除群は6.6±1.0%(P=0.003)だった。手術群はいずれも、術後は血糖降下薬、脂質低下薬、降圧薬の使用量が減少した。一方で、薬物療法群は増量していた。また、手術群はインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)も有意に改善していた。その他には、患者4例が再手術を受けていたが、死亡や命に関わるような合併症の発生例はなかった。研究グループは今回の結果を受け、さらなる無作為化試験での検証の必要性を提言している。

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インスリン デグルデク、2型糖尿病の低血糖、夜間低血糖を改善

 2型糖尿病に対する基礎・追加インスリン療法の基礎インスリンとして、インスリン デグルデクはインスリン グラルギン(商品名:ランタス)と同等の血糖コントロールを示し、夜間低血糖の発現率は有意に低いことが、アメリカ・ベイラー医科大学のAlan J Garber氏らが行ったBEGIN Basal-Bolus Type 2試験で示された。2型糖尿病における膵β細胞の機能不全の進行は、従来の基礎インスリン療法では阻止されず、病態は不可避的に増悪するという。デグルデクは新規の超持効型基礎インスリン製剤で、皮下投与するとマルチヘキサマー(多数の六量体からなる集合体)を形成し、緩徐かつ持続的に循環血中に吸収されるため、超長時間のPK/PDプロフィールを示し、グラルギンに比べインスリン作用の変動が小さいことが示唆されている。Lancet誌2012年4月21日号掲載の報告。基礎・追加インスリン療法におけるデグルデクの非劣性を検証 BEGIN Basal-Bolus Type 2試験は、2型糖尿病に対するインスリン デグルデクとインスリン グラルギンの有効性と安全性の非劣性を検証する非盲検無作為化第III相試験。低血糖の発現状況をより正確に評価するために、目標空腹時血糖値の達成に向けて用量を調整する「目標達成に向けた治療(treat-to-target)」として実施された。 2009年9月1日~2010年10月28日までに、12ヵ国123施設から、インスリン治療を3ヵ月以上施行後もHbA1c値が7.0~10.0%であった18歳以上の2型糖尿病患者が登録された。これらの患者が、デグルデクあるいはグラルギンを1日1回皮下注射する群に3対1の割合で無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 全例が1日3回の食事時にインスリン アスパルトによる追加インスリン療法を受けた。基礎インスリン療法は、朝食前の自己測定による血糖値3.9~<5.0mmol/L(=70.2~<90mg/dL)を目標に漸増された。 主要評価項目は、ベースラインから治療52週までのHbA1c値の変化とし、デグルデクのグラルギンに対する非劣性を評価した。低血糖(血糖値<3.1mmol/L[=55.8mg/dL]あるいは援助を必要とする重篤な病態)の発現状況についても検討した。より安全な治療選択肢となる可能性 1,006例が登録され、デグルデク群に755例、グラルギン群には251例が割り付けられ、それぞれ744例(99%)、248例(99%)が解析の対象となった(平均年齢58.9歳、平均罹病期間:13.5年、平均HbA1c値:8.3%、平均空腹時血糖値:9.2mmol/L[=165.6mg/dL])。試験完遂率はデグルデク群が82%(618例)、グラルギン群は84%(211例)だった。 治療1年後のHbA1c値の低下率はデグルデク群が1.1%、グラルギン群は1.2%(推定治療差:0.08%、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.21)であり、血糖コントロールにおけるデグルデクのグラルギンに対する非劣性が確証された。 低血糖の発現率はデグルデク群が11.1件/曝露人年と、グラルギン群の13.6件/曝露人年に比べ有意に低かった(推定率比:0.82、95%CI:0.69~0.99、p=0.0359)。同様に、夜間低血糖の発現率もそれぞれ1.4件/曝露人年、1.8件/曝露人年と有意差が認められた(推定率比:0.75、95%CI:0.58~0.99、p=0.0399)。 重度低血糖は両群とも発現率が低すぎて比較できないが、同等と推察された(デグルデク群:0.06件/曝露人年、グラルギン群:0.05件/曝露人年)。他の有害事象の発現状況は両群で同等だった。 著者は、「インスリン デグルデクによる基礎インスリン療法は、インスリン グラルギンに比べ夜間低血糖の発現率が低く、同等の血糖コントロールが達成されたことから、基礎・追加インスリン療法を要する長期化した2型糖尿病患者に対し、より安全な治療選択肢となる可能性がある」と結論している。

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未成年2型糖尿病患者の最適な治療は?(4月29日掲載NEJMオンライン速報版より)

メトホルミン単独療法で血糖コントロールが不十分な10-17歳の2型糖尿病患者に対する次の治療選択肢として、チアゾリジン薬の追加併用療法が、メトホルミン単独療法を継続するより有意に血糖を管理できることが、無作為化比較試験The Treatment Options for Type 2 Diabetes in Adolescents and Youth (TODAY) 試験の結果より明らかになった。この結果は4月29日、NEJM誌オンライン速報版に発表された。メトホルミン単独療法でHbA1c≧8%の未成年2型糖尿病患者を無作為化割り付け研究グループは、1日2回のメトホルミン(1,000mg/日)投与においても、HbA1c値が8%未満にコントロールできなかった10-17歳の2型糖尿病患者699例を、 1) メトホルミン単独療法群 2) メトホルミン+チアゾリジン薬(ロシグリタゾン)併用療法群 3) メトホルミン+減量を重要視した生活習慣改善強化群の3群に無作為に割り付けし、主要評価項目を「血糖コントロールの喪失」とし、各治療法を比較検証した。「血糖コントロールの喪失」は、6ヵ月にわたるHbA1c値8%以上の持続またはインスリン治療の必要な持続的な代謝不全と定義された。主な結果は下記のとおり。 1. 平均追跡期間は3.86年 2. 「血糖コントロールの喪失」と判定された症例は319例(45.6%)   1) メトホルミン単独療法群:51.7% (232例中120例)   2) チアゾリジン薬併用療法群:38.6% (233例中90例)   3) 生活習慣改善強化群:46.6% (234例中109例) 3. チアゾリジン薬併用療法群は、メトホルミン単独療法群に比べ、   有意に血糖コントロール喪失が少なかった(P = 0.006)。 4. 生活習慣改善強化群は、メトホルミン単独療法群、   チアゾリジン薬併用療法群のいずれの治療法とも有意な差がなかった。 5. チアゾリジン薬併用療法は、非ヒスパニック系黒人で効果が弱く、   少女で効果が強かった。

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