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インスリン療法開始後のスタチンの影響

 スタチンは、糖尿病の新規発症リスクを増大させ、血糖コントロールに悪影響を及ぼす可能性があるが、2型糖尿病患者のインスリン療法開始後の血糖応答および転帰への影響は不明である。今回、英国・ノッティンガム大学のUchenna Anyanwagu氏らの研究で、通常治療中の2型糖尿病患者のインスリン療法開始後、スタチン併用者の短期血糖コントロールはあまり良好ではなかったものの、主要心血管イベントリスクは大幅に低かったことが報告された。Cardiovascular diabetology誌2017年8月22日号に掲載。 本研究は、英国のHealth Improvement Network(THIN)UKデータベースを使用し、インスリン療法を開始した2型糖尿病患者1万2,725例での後ろ向きコホート研究。6、12、24、36ヵ月でのHbA1cの変化、死亡および3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)の5年リスクを、新たにインスリン療法を開始した患者において、スタチン使用者(1万682例)と非使用者(2,043例)で比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて、異なるアウトカムのハザード比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・コホートの平均年齢は58.7±14.0歳(男性51%)であり、ベースラインHbA1cの平均値は8.7±1.8%であった。・インスリン療法開始後初期に、スタチン使用者に比べて非使用者でHbA1c値の大きな減少がみられ、その減少は短期で有意であった(6ヵ月で-0.34% vs.-0.26%、平均差:-0.09%、p=0.004)が、長期では有意ではなかった(3年で-0.31% vs.-0.35%、平均差:0.05%、p=0.344)。・スタチン使用者と非使用者の心血管イベント(3-point MACE)は、それぞれ878件と217件であった(1,000人年当たり20.7 vs.30.9、調整ハザード比:1.36、95%CI:1.15~1.62、p<0.0001)。・各スタチンでのサブグループ解析では、スタチン非使用者に比べて、すべてのスタチンで試験期間を通じてHbA1cが高かった(p<0.05)。・アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチンにおける3-point MACEの調整ハザード比は、それぞれ0.82(95%CI:0.68~0.98)、0.67(同:0.55~0.82)、0.56(同:0.39~0.81)、0.78(同:0.60~1.01)であった。

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出産前搾乳は低リスク糖尿病妊婦において安全に実施できる(解説:住谷哲氏)-720

 肥満人口の増大に伴い糖尿病妊婦も増加している。糖尿病妊婦からの出生児は子宮内で高血糖の環境にあるため高インスリン状態にあり、分娩後は一過性低血糖を来すことがある。そのため分娩後NICUでの管理が必要になることが少なくない。初乳(colostrum)は通常の乳汁に比べてグルコース濃度が高く、出生児の低血糖を予防するために適切である。そこで、わが国ではあまりないと思われるが、欧米の一部では糖尿病妊婦に対する出産前搾乳が推奨されている。一方で、妊娠後期の搾乳はオキシトシン分泌を介して子宮収縮を促進することから、出生児の合併症を増加させる可能性も懸念されている。そこで糖尿病妊婦における出産前搾乳の有益性に関するコクランのシステマティックレビューが実施されたが、エビデンスが存在しないため有益性は不明とされていた1)。 本試験はこの「糖尿病妊婦の出産前搾乳は出生児に対して有益かつ安全か?」との臨床的疑問に回答を試みたものである。対象は9割以上が妊娠糖尿病(GDM)であり、残りが妊娠前糖尿病(pre-existing diabetes、1型糖尿病および2型糖尿病の両者を含む)である。多くの除外基準が設定されており(詳細は論文を参照されたい)、低リスク妊婦のみが対象となっている。対象患者は妊娠36週から搾乳する群と対照群に無作為に分けられたが、試験デザインから盲検化は不可能であり、データ回収、解析などを盲検化したPROBE(Prospective Randomized Open Blinded-Endpoint)法に近い方法が用いられた。 その結果、出生児のNICUへの入院率は両群に有意差はなく、出産前搾乳は低リスク糖尿病妊婦において安全に実施できると考えられた。ただし著者らが強調しているように、この試験の結果は多くの除外基準をクリアした低リスク妊婦のみに適用可能であり、すべての糖尿病妊婦に適用できるかは現時点では不明である。 本試験は、これまで慣習として広く実施されてきた医療行為(糖尿病妊婦における出産前搾乳)を臨床的疑問として定式化し、因果関係を証明するのに最も適切であるRCTを用いてその有益性を明らかにした。臨床的疑問の定式化はEBMの第一歩であるが、これは既存のエビデンスに基づいて眼前の臨床的疑問を解決する第一歩であるのみならず、自ら新たなエビデンスを創造するための第一歩でもある。本論文を読んで筆者はそれを再認識させられた。

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第11回 GLP-1受容体作動薬による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第11回】GLP-1受容体作動薬による治療のキホン―どのような患者さんが良い適応になりますか?また導入の判断となる指標があれば教えてください。 食事から吸収された糖質などの刺激により、消化管から消化管ホルモンであるGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)が血中に分泌されると、血行性に膵β細胞上のGIP受容体とGLP-1受容体にそれぞれ結合し、インスリン分泌が促進されます。その作用を応用したのがインクレチン関連薬と呼ばれるDPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬で、GLP-1受容体作動薬は、膵β細胞上にあるGLP-1受容体に結合して、インスリン分泌を促進させます。 インクレチン関連薬は、膵β細胞内で代謝されたグルコースによるインスリン分泌の惹起経路を増幅させることで、インスリン分泌を促進させます。つまり、グルコースによるインスリン分泌惹起経路が働いて初めて、インクレチンによる増幅作用が働くことになります。そのため、GLP-1受容体作動薬のインスリン分泌作用は、グルコース濃度依存性であり、単独では低血糖を起こさないという特徴があります。 GLP-1受容体作動薬のもう1つ大きな特徴は「体重減少」です。GLP-1受容体は食欲をつかさどる視床下部にもあり、GLP-1受容体作動薬により、食欲が抑制されることで、体重減少効果が得られます。また、胃内容物の排泄抑制作用もあり、それによる体重減少効果、さらには、食後血糖の上昇抑制も期待できます。GLP-1受容体作動薬は、非肥満、肥満のいずれでも血糖低下効果は得られますが、とくに「体重減少」については、他の薬剤を上回る効果が得られるため、肥満の患者さんが良い適応であると考えています。ただ、GLP-1受容体作動薬は注射薬であるため、抵抗を示す患者さんも少なくありません。高用量のSU薬を含むいくつかの経口薬を使用しているにもかかわらず、良好な血糖コントロールが得られない患者さんで、体重減少も期待したいような場合に検討するとよいのではないでしょうか。―DPP-4阻害薬との作用機序や適応の違いについて教えてください。 GLP-1受容体作動薬が、膵β細胞上にあるGLP-1受容体に結合してインスリン分泌を促進させる、直接的に作用する薬剤であるのに対し、DPP-4阻害薬は、GIPおよびGLP-1が分泌された後に、それらを急速に分解する酵素であるDPP-4の活性を阻害して、GIPとGLP-1の不活化を抑制する、すなわち、間接的に作用する薬剤です。いずれも、前述のように、グルコース濃度依存性であり、単独では低血糖を起こさない薬剤ですが、DPP-4阻害薬は“生理的レベル”で効果を発揮するのに対し、GLP-1受容体作動薬は“非生理的レベル”で効果を発揮するため、DPP-4阻害薬は「体重増加を来さない」という効果が得られ、GLP-1受容体作動薬は「体重を減少させる」という効果が期待できます。“体重増加を来さない”で血糖を低下させる、“体重を減少させて”血糖を低下させる、という目的で使い分けるのがよいと思います。 ただ、DPP-4阻害薬は経口薬で、GLP-1受容体作動薬は注射薬です。導入のしやすさという点でも違いはありますが、今は、週1回投与のGLP-1受容体作動薬もあります。「週に1回なら」「自分で打つのはいやだけど、医療従事者に打ってもらうのであれば」という患者さんもいらっしゃいます。週1回製剤の中には、針の取り付けが不要なものもあり、取り扱いが非常に簡便なものもありますし、「“週に1回だけ”ならどうですか?」「ご自分で打つのが難しければ、週に1回、病院に来て打つのはどうですか?」というやり方で導入するのも良い方法です。―投与量の調整方法について教えてください。 GLP-1受容体作動薬はインスリン製剤と同じ注射薬ですが、インスリン製剤のような細やかな投与量の調整をする必要はありません。ただし、副作用としてみられる下痢や便秘、嘔気などの消化器症状が投与初期に認められるため1)、1回の投与量が決められている週1回の製剤ではなく、1日1回もしくは2回注射の製剤の場合は、最小用量から始め、様子をみながら、各製剤の添付文書に従って、増量していくのがよいでしょう。―適切な併用薬について教えてください。 前述のように、GLP-1受容体作動薬では、血糖低下以外に、体重減少効果が期待できます。さらなる体重減少という点で、体重減少効果のあるSGLT2阻害薬との併用※も効果的です。 (※2017年8月現在、日本でSGLT2阻害薬との併用が認められているのは、「リラグルチド(商品名:ビクトーザ)」、「リキセナチド(商品名:リスキミア)」と「デュラグルチド(商品名:トルリシティ)」のみ。) また、SGLT2阻害薬を使っていて、体重が増加してしまう場合に、体重減少を期待して、GLP-1受容体作動薬を上乗せするのもよいでしょう。実際に、海外で行われた、GLP-1受容体作動薬「エキセナチド(商品名:ビデュリオン)」と、SGLT2阻害薬「ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)」の併用の効果をみた「DURATION-8試験」で、それぞれの単独療法よりも、血糖低下および体重減少において効果が認められたことが示されました2)。 また、GLP-1受容体作動薬には、半減期の長い長時間作用型と、半減期の短い短時間作用型があり、短時間作用型では、高濃度のGLP-1が維持されないため、胃排泄の遅延作用に対するタキフィラキシー(効果減弱)が起こりにくいという特徴があります。胃排泄の遅延作用が継続するため、体重減少に加え、「食後高血糖の抑制作用」が期待できますが、空腹時高血糖の改善は得意ではないため、空腹時血糖値を低下させるSU薬やチアゾリジン薬、ビグアナイド(BG)薬、SGLT2阻害薬との併用が効果的です。一方、長時間作用型では、高濃度のGLP-1が維持されるため、空腹時の血糖低下作用が期待できます。食後高血糖を改善する速効型インスリン分泌促進薬やα-グルコシダーゼ阻害(GI)薬との併用がよいでしょう。ただし、SU薬や速効型インスリン分泌促進薬のように、インスリン分泌を直接惹起する経路に働く薬剤とそれを増幅させるGLP-1受容体作動薬を併用することはより効果的ではありますが、SU薬や速効型インスリン分泌促進薬の効果を増幅させることで、低血糖リスクが増加する恐れがあるため、慎重に投与する必要があります。―長期使用における安全性について教えてください。 インクレチン関連薬は、SU薬など古くから使われる糖尿病治療薬に比べると比較的新しい薬剤ですので、長期の安全性を懸念される方も多いと思います。GLP-1受容体作動薬では、DPP-4阻害薬と同様、膵炎や膵がんといった膵疾患との関連がいわれていますが、現時点で、GLP-1受容体作動薬においても、これら膵疾患への関連について、前向きに検討した報告はありません。ただ、GLP-1の薬理効果について、まだ十分解明されていない部分も多いため、長期安全性を含め、今後、未知な生理作用や副作用について、みていく必要はあります。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2016-2017. 文光堂;2016.2)Frias JP, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4:1004-1016.

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デグルデクはグラルギンU100と比較して低血糖の発現リスクを低下(解説:小川 大輔 氏)-717

 先日このコラムでDEVOTE試験のコメントを執筆した。集めた資料を眺めていると、「DEVOTE試験でデグルデクが低血糖の発現を低下させることが証明された」という記事や専門家のコメントが多いことに気付いた。 確かに間違いではないのだが、本来この試験はFDAから心血管への安全性に対して懸念を示されたこともあり、心血管イベントの発現をグラルギンU100と比較した試験である。低血糖の発現は主要評価項目ではないし、論文を読めばすぐにわかることだが、アブストラクトの結語やディスカッションの結論に低血糖の発現に関する記載は一切ない。それなのに副次評価項目である低血糖ばかり取り上げられている。DEVOTE試験とまったく関連はないのだが、ふとPROactive試験1)を思い出したのは私だけだろうか。 一方、1型糖尿病患者を対象としたSWITCH 1試験と2型糖尿病患者を対象としたSWITCH 2試験は、いずれもデグルデクをグラルギンU100と比較した、主要評価項目が低血糖の発現件数の試験である。デグルデクまたはグラルギンU100に、ボーラスインスリンとしてインスリンアスパルト(SWITCH 1試験)または経口血糖降下薬(SWITCH 2試験)を併用する治療を、デグルデクとグラルギンU100をクロスオーバーして32週間ずつ、計64週間行われた。 その結果、SWITCH 1および2試験において、デグルデクはグラルギンU100と比較して、主要評価項目である治療維持期間における重大なまたは血糖値確定症候性低血糖の発現件数を有意に低下させた。また、全治療期間を通じても、デグルデクはグラルギンU100と比較して低血糖の発現件数を有意に低下させた。 このSWITCH試験でデグルデクとグラルギンU100をクロスオーバーして、デグルデクのほうが低血糖の頻度が少ないことが示された。では、もう1つの持続時間の長い持効型インスリンであるグラルギンU300とデグルデクを比較したらどうなるか。現時点ではSWITCH試験と同様の検討はなく、どちらがより低血糖の発現が少ないかは不明である。次はぜひ持続時間の長いインスリン同士、デグルデクとグラルギンU300をクロスオーバーして効果と低血糖を比較する試験を行ってほしい。

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心血管への悪影響の懸念を払拭したインスリン デグルデク(解説:小川 大輔 氏)-713

 持効型インスリンであるグラルギンの登場により、糖尿病の治療は以前よりも安全に、また十分に行えるようになった。そして、より作用時間の長いインスリン デグルデクは、さらに低血糖を回避しながら確実に血糖コントロールを行う手段として期待されていた。 デグルデクは日本では2012年に承認されたが、米国では2013年にFDAが心血管への悪影響の懸念があるとして承認を見送った経緯がある。FDAからの「宿題」に対して行われた試験がこのDEVOTE試験である。 心血管疾患または慢性腎臓病を有する50歳以上、または心血管危険因子を有する60歳以上の2型糖尿病患者7,637例を対象とした、ランダム化二重盲検試験であり、標準治療にデグルデクを追加する群またはグラルギン U100を追加する群に1:1でランダムに割り付け、空腹時血糖値71~126mg/dLを目標に治療を行い、主要評価項目の発生が633例以上に達するまで継続する試験デザインであった。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合心血管イベント(3ポイントMACE)が最初に発現するまでの時間である。また副次評価項目は重大な低血糖の発現件数とされた。 主要評価項目である3ポイントMACEのイベント発生は、デグルデク群とグラルギン群の間で有意差は認められず、グラルギン U100に対するデグルデクの非劣性が示された。副次評価項目に関しては両群間に有意差が認められ、デグルデク群はグラルギン U100群に比べて重大な低血糖の発現件数が有意に低下した。 グラルギン U100は、2012年に発表されたORIGIN試験で心血管への安全性が証明されている1)。今回の試験結果により、心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において、デグルデクはグラルギン U100に比べて心血管イベント発生に関して非劣性が確認され、当初FDAから疑問を呈されていた心血管への悪影響の懸念はようやく払拭されたことになった。ただ、心血管イベントのリスクが低い糖尿病患者での安全性、またより長い期間使用した場合の安全性(DEVOTEの試験期間は約2年)はまだ不明であり、今後の検討に期待したい。■参考1) ORIGIN Trial Investigators, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 319-328.

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グラルギンU100使用中の1型糖尿病患者は低血糖を回避するためにデグルデクにSWITCHすべきか?(解説:住谷 哲 氏)-711

 DCCTおよびその後の延長試験であるEDICにおいて、厳格な血糖管理が1型糖尿病患者の細小血管障害および長期的には動脈硬化性心血管病(ASCVD)さらには総死亡を減少させることが明らかにされた1)。つまり1型糖尿病患者においては可能な限り正常血糖を目指す厳格なコントロールが望ましいといえる。しかし厳格な血糖管理は低血糖とのtrade-offであり、現実には可能な限り低血糖(とくに第三者の介助を必要とする重症低血糖 severe hypoglycemia)を生ずることなく血糖をコントロールすることが目標となる。将来的にclosed-loop insulin delivery systemまたは膵β細胞の再生が現実となればこの問題は解決するであろうが、当面は基礎インスリン(basal insulin)と食事インスリン(bolus insulin)からなるbasal-bolus therapy(BBT)を用いて、インスリン量を患者に応じて調節していくことになる。 本試験はより半減期の長い基礎インスリンであるデグルデクが、最も普及している基礎インスリンであるグラルギンU100に比べて低血糖が少ないかを検証したものである。理論上はグラルギンU100と比較して半減期が長く、より平坦な血糖降下作用を示すデグルデクのほうがより低血糖が少ないと考えられる。試験デザインは二重盲検無作為化クロスオーバー非劣性試験であり、クロスオーバー試験の弱点であるcarryoverの影響を最小にするように工夫された。主要評価項目は重症低血糖とBG<56mg/dLを伴う症候性低血糖の複合評価項目とされた。さらに2次評価項目は夜間低血糖(午前0時から6時までに生じた主要評価項目)である。 その結果、グラルギンU100に対するデグルデクの主要評価項目のrate ratio(RR)は0.89(95%CI:0.85~0.94、優位性検定p<0.001)であり、デグルデク群で有意に少なかった。同様に重症低血糖、夜間低血糖はそれぞれ0.65(0.48~0.89、優位性検定p=0.007)、0.64(0.56~0.73、優位性検定p<0.001)であり、両者ともにデグルデク群で有意に少なかった。 RCTの結果を実臨床に適用するときに常に問題となるのが一般化可能性 generalizabilityの問題である。おそらく本試験も例外ではないと思われる。対象患者は(1)1年以内に重症低血糖の既往がある、(2)腎機能異常がある(eGFR:30~59mL/min/1.73m2)、(3)低血糖無自覚症がある、(4)罹病期間が15年以上、(5)12週間以内に低血糖発作がある、以上のいずれかに該当する、低血糖を生じやすい患者が選ばれている。さらにTreat to targetを用いて、空腹時血糖が71~90mg/dL、毎食前血糖が71~108mg/dLになるようインスリンの増量が必要とされた。この血糖管理目標はきわめて厳格であり、あえて低血糖が容易に生じやすい状況下で試験が行われたともいえる。試験終了時のFPGがデグルデク、グラルギンU100両群ともに>130mg/dLであったことからも、低血糖に阻まれてインスリンが目標血糖値を達成するまで増量できなかった可能性が示唆される。したがって、本試験で得られたのと同じ結果が、上述した(1)~(5)に該当しない患者に対して、より緩やかな目標血糖値に基づいてインスリン投与を実施した場合に、得られるかは明らかではない。しかし本試験は、デグルデクがグラルギンU100に比べて、より少ない低血糖で同様の血糖管理を達成可能であることを明らかにした。グラルギンU100使用中で低血糖の壁に阻まれて目標血糖値を達成できない患者に対しては、グラルギンU100からデグルデクへのSWITCHを考慮するのも選択肢の1つであると思われる。

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治療抵抗性統合失調症、クロザピン+フルボキサミンの効果は

 多くの研究において、フルボキサミンは、クロザピンとの著しい薬物動態および薬理学的相互作用を有することが報告されている。台湾・台北医学大学のMong-Liang Lu氏らは、統合失調症患者へのクロザピン治療における代謝パラメータや精神病理に対するフルボキサミンの効果を評価するため、12週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2017年7月5日号の報告。 対象は、DSM-IVで統合失調症と診断された85例。フルボキサミン50mg/日+クロザピン100mg/日またはクロザピン300mg/日の2群に無作為に割り付けた。ベースラインおよび介入後4、8、12週目の代謝パラメータ、精神病理、薬物レベルを評価した。クロザピン、ノルクロザピン、クロザピンN-オキシドおよびフルボキサミンの血中レベルは、紫外検出高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は、両群間で有意な差は認められなかった。・クロザピンとフルボキサミンの併用療法は、クロザピン単独療法と比較し、体重、インスリン抵抗性およびインスリン、グルコース、トリグリセリドレベルの増加を有意に減少させた。・両群ともに、PANSS総スコア、陰性尺度スコアの有意な改善が認められた。・併用療法群は、単独療法群と比較し、PANSS総合精神病理尺度スコアの有意な改善が認められた。・血中クロザピンレベルは、両群間で差異は認められなかった。・単独療法群は、併用療法群と比較し、ノルクロザピンおよびクロザピンN-オキシドレベルが高かった。 著者らは「統合失調症患者に対するクロザピンとフルボキサミンの12週間併用療法は、クロザピン単独療法と比較し、臨床効果を減弱させることなく、体重増加や代謝異常を緩和することが可能である。これらの所見は、短期間の研究であるため、慎重に解釈する必要がある」としている。■関連記事治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのかクロザピン誘発性代謝系副作用への有効な介入は統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か:藤田保健衛生大学

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デグルデクvs.グラルギン、2型糖尿病低血糖リスクに違い/JAMA

 2型糖尿病患者において、基礎インスリン デグルデク(以下、デグルデク)はインスリン グラルギンU100(以下、グラルギン)と比較して、低血糖発現頻度の低下と関連することが示された。米国・ワシントン大学のCarol Wysham氏らによる無作為化試験「SWITCH 2」の結果で、JAMA誌2017年7月4日号で発表された。インスリン治療を受ける2型糖尿病患者において、低血糖は重大なリスクであり血糖コントロールに負の影響を及ぼす。デグルデク→グラルギン投与またはグラルギン→デグルデク投与に1対1の割合で割り付け SWITCH 2試験は2014年1月~2015年12月に、米国152施設において、2×32週間の治療期間(それぞれ、至適用量調整期16週+維持期16週)で実施された二重盲検無作為化クロスオーバーtreat-to-target試験。被験者は、低血糖リスクを1つ以上有する基礎インスリン治療を受ける2型糖尿病患者で、経口血糖降下薬の服用の有無は問わなかった。 被験者は721例で、デグルデク→グラルギン投与(361例)またはグラルギン→デグルデク投与(360例)に1対1の割合で、およびそれぞれ投与時期を朝1回投与または夕方1回投与に1対1の割合で、無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、維持期におけるすべての重大な(米国糖尿病学会の定義に基づく)、または血糖値(<56mg/dL)で確定した、症候性低血糖の発現頻度(件/曝露患者年[patient-years of exposure:PYE])。副次評価項目は、夜間の症候性低血糖(0:01 am~5:59 amに発現した重大なまたは血糖値確定症候性低血糖)の発現頻度、維持期に重大な低血糖を発現した患者の割合などであった。デグルデクのほうがグラルギンより症候性低血糖の発現頻度が低い 無作為化された721例(平均年齢61.4[SD 10.5]歳、男性53.1%)のうち、580例(80.4%)が試験を完遂した。 維持期におけるすべての症候性低血糖の発現頻度は、デグルデク群185.6件/100PYE、グラルギン群265.4件/100PYEで、デグルデク群が有意に低かった(率比[RR]:0.70[95%信頼区間[CI]:0.61~0.80]、p<0.001、差:-23.66件/100PYE[95%CI:-33.98~-13.33])。同エピソードを発現した患者の割合は、デグルデク群22.5%、グラルギン群31.6%であった(差:-9.1%、95%CI:-13.1~-5.0)。 夜間の症候性低血糖の発現頻度は、デグルデク群55.2件/100PYE、グラルギン群93.6件/100PYEで、デグルデク群が有意に低かった(RR:0.58[95%CI:0.46~0.74]、p<0.001、差:-7.41件/100PYE[95%CI:-11.98~-2.85])。同エピソードを発現した患者の割合は、デグルデク群9.7%、グラルギン群14.7%であった(差:-5.1%、95%CI:-8.1~-2.0)。 維持期において重大な低血糖を発現した患者の割合は、デグルデク群1.6%(95%CI:0.6~2.7)、グラルギン群2.4%(95%CI:1.1~3.7)であった(McNemar検定のp=0.35、リスク差:-0.8%[95%CI:-2.2~0.5])。 なお、全治療期間においても、すべてのおよび夜間の症候性低血糖の発現頻度について、デグルデク群がグラルギン群よりも有意に低かったことが認められた。

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1型糖尿病の低血糖リスク、デグルデク vs.グラルギン/JAMA

 1型糖尿病患者において、低血糖は良好な血糖コントロールの大きな障壁であり、重大な低血糖は昏睡や死亡につながるおそれがある。米国・Mountain Diabetes and Endocrine CenterのWendy Lane氏らは、1型糖尿病患者における症候性低血糖の発現について、インスリン デグルデク(以下、デグルデク)とインスリン グラルギンU100(以下、グラルギン)を比較した無作為化試験「SWITCH 1」で、デグルデクによる32週間の治療はグラルギンと比較して、症候性低血糖の発現を低下させることを明らかにした。JAMA誌2017年7月4日号掲載の報告。低血糖の発現についてデグルデクのグラルギンに対する非劣性を検証 SWITCH 1試験は2014年1月~2016年1月12日に、米国84施設およびポーランド6施設において、低血糖のリスク因子を1つ以上有する1型糖尿病成人患者501例を対象に、2×32週間の治療期間(それぞれ、至適用量調整期16週+維持期16週)で実施された二重盲検無作為化クロスオーバー非劣性試験であった。 被験者は、デグルデク→グラルギン投与(249例)およびグラルギン→デグルデク投与(252例)に1対1の割合で、かつそれぞれ投与時期を朝1回投与または夕方1回投与に1対1の割合で、無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、維持期におけるすべての重大な(米国糖尿病学会の定義に基づく)、または血糖値(<56mg/dL)で確定した、症候性低血糖の発現頻度(件/曝露人年[person-years’ exposure:PYE])。副次評価項目は、夜間の重大なまたは血糖値確定症候性低血糖の発現頻度、重大な低血糖を経験した患者の割合(どちらも維持期)などであった。主要評価項目などの非劣性マージンは、発現頻度の率比(RR)の両側95%信頼区間の上限値が1.10以下とし、非劣性が認められた場合は優越性を検証する両側検定を実施した。デグルデクのほうが全症候性低血糖の発現頻度が低い 無作為化された501例(平均年齢45.9歳、男性53.7%)のうち、395例(78.8%)が試験を完遂した。 維持期におけるすべての症候性低血糖の発現頻度は、デグルデク群2,200.9件/100PYE、グラルギン群2,462.7件/100PYEで、デグルデク群が有意に低かった(発現頻度のRR:0.89[95%信頼区間[CI]:0.85~0.94]、非劣性のp<0.001、優越性のp<0.001、発現頻度の差:-130.31件/100PYE[95%CI:-193.5~-67.16])。 維持期における夜間の症候性低血糖の発現頻度も、デグルデク群が有意に低いことが認められた(デグルデク群277.1件/100PYE、グラルギン群428.6件/100PYE、発現頻度のRR:0.64[95%CI:0.56~0.73]、非劣性のp<0.001、優越性のp<0.001、発現頻度の差:-61.94件/100PYE[95%CI:-83.85~-40.03])。 維持期に重大な低血糖を経験した患者の割合も、デグルデク群が低かった(デグルデク群10.3%[95%CI:7.3~13.3%]、グラルギン群17.1%[95%CI:13.4~20.8%]、McNemar検定のp=0.002、リスク差:-6.8%[95%CI:-10.8~-2.7])。

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DEVOTE 試験の臨床的意義

 2型糖尿病治療、とくにインスリン治療において低血糖管理は重要な問題だ。重症低血糖は心血管イベントリスク増加に関与し、患者さんの心理的負担も大きい。臨床でも、低血糖リスクの低いインスリン製剤を選択することが重要となる。これに関して今後の薬剤選択に影響を与えるデータが先日、ADAで発表された。心血管系リスクの高い2型糖尿病患者を対象にしたDEVOTE試験である。 DEVOTE試験の発表を受け、2017年7月4日都内にて、「インスリン治療の最新動向と今後の展望~第77回米国糖尿病学会の最新報告より~」と題するセミナーが開かれた(主催:ノボ ノルディスク ファーマ株式会社)。演者は、門脇 孝氏 (東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授)。 以下、セミナーの内容を記載する。二重盲検CVOT試験であるDEVOTE 試験 DEVOTE試験は、基礎インスリンインスリン デグルデクとインスリン グラルギンU100の2製剤を比較した二重盲検CVOT(心血管アウトカム)試験である。インスリン注射の臨床試験はオープンラベルで行われるものが多いが、本試験はバイアルを用いた二重盲検試験だ。この点について、門脇氏は「グラルギンかデグルデクか医療者側もわからない、という点は試験結果を評価するうえでも重要な点だ」とコメントした。 試験対象は、心血管リスクが高い2型糖尿病の成人患者7,637例(デグルデク群3,818例、グラルギン群3,819例)で、1日1回夕食~就寝の間に、デグルデク群またはグラルギン群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。デグルデク群はグラルギン群に対して、MACEで非劣性を示した 主要評価項目として、3-point MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)が設定された。その結果、デグルデクのグラルギンに対する非劣性が検証され(ハザード比:0.91、95%信頼区間[CI]:0.78~1.06、非劣性のp<0.001)、デグルデクはグラルギンと比較して心血管リスクを増加させないことが示された。 24ヵ月時点での2群の平均HbA1c値に有意差はなく、平均空腹時血糖値は、デグルデク群がグラルギン群よりも有意に低下していた(128±56 vs.136±57mg/dL、p<0.001)。重大な低血糖発現では、デグルデク群が優越性を示した 副次評価項目である重大な低血糖の発現件数に関しては、デグルデク群が優越性を示した(率比:0.60、95%信頼区間[CI]:0.48~0.76、優越性のp<0.001)。さらに、デグルデク群は夜間の重大な低血糖の発現件数を53%有意に低下させた。その他の有害事象の発生については、両群で差はなかった。 今回のDEVOTE試験では、心血管系リスクの高い2型糖尿病患者においてデグルデクが対照薬よりも重大な低血糖リスクが低いことが示された。これはデグルデクの他の臨床試験(BEGIN、SWITCH2)とも一貫性のある結果であった。「低血糖の心配がなければ、もっと積極的に治療する」と考える医師は多い インスリン治療において低血糖管理は重要な問題である。インスリン療法に対する医師の考えを調査した結果によると、「低血糖の心配がなければもっと積極的に治療する」との回答が7割を占めるという。医学的アウトカムも重要だが、低血糖への懸念が払拭され、患者さんのQOLが保たれるという、心理的アウトカムも同時に達成されることは、インスリン治療では重要といえるだろう。 門脇氏は、この点を踏まえ「DEVOTE試験で、デグルデクのMACEに関する非劣性と重大な低血糖リスクの有意な減少が検証されたことは、今後の治療選択においても意義深い結果である」と述べ、講演を終えた。

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インスリン デグルデク vs.グラルギン、心血管転帰は?/NEJM

 2つの基礎インスリン製剤デグルデク(商品名:トレシーバ)とグラルギン(同:ランタスほか)について、心血管イベントリスクが高い2型糖尿病患者を対象に有効性および安全性を比較検討した結果、デグルデクはグラルギンに対して、主要な心血管イベントの発生に関して非劣性であることが示された。米国・リサーチメディカルセンターのSteven P. Marso氏らが行った「DEVOTE」試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年6月12日号で発表された。デグルデクは1日1回投与の持効型インスリンで、小児~成人への使用が承認されている。先行研究では非盲検試験において、デグルデクはグラルギンよりも血糖降下の日内・日差変動が小さく低血糖の発生頻度も低いことが示されていたが、心血管安全性についてはデータが示されていなかった。20ヵ国438施設で7,637例について二重盲検無作為化試験 DEVOTE試験は20ヵ国438施設で、二重盲検無作為化、treat-to-target、心血管アウトカムevent-driven法にて行われた。対象は、心血管リスクが高い2型糖尿病の成人患者で、1日1回夕食~就寝の間に、インスリン デグルデクまたはインスリン グラルギン U100を投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、主要な心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の初発の複合で、評価はtime-to-event解析にて行われた。事前に規定された非劣性マージンは1.3であった。また、副次評価項目として重大な低血糖(米国糖尿病学会の定義で判定)、その夜間発生の頻度、イベント発現頻度などについて評価した。 2013年11月~2014年11月の間に、7,637例の患者が無作為化を受けた(デグルデク群3,818例、グラルギン群3,819例)。このうち6,509例(85.2%)が、心血管疾患または慢性腎臓病(CKD)と診断されていた。被験者のベースライン時の平均年齢は65.0歳、糖尿病の平均罹病期間は16.4年、平均糖化ヘモグロビン値は8.4±SD 1.7%。また、83.9%(6,409例)がベースラインでインスリン投与を受けていた。主要心血管イベントの発生、デグルデクはグラルギンに対し非劣性 主要アウトカムの発生は、デグルデク群325例(8.5%)、グラルギン群356例(9.3%)であった(ハザード比:0.91、95%信頼区間[CI]:0.78~1.06、非劣性のp<0.001)。 24ヵ月時点で、平均糖化ヘモグロビン値は、各群で7.5±1.2%で有意差はなかった(事後解析において推定治療差0.01%、95%CI:-0.05~0.07、p=0.78)。一方で、平均空腹時血糖値は、デグルデク群がグラルギン群よりも有意に低下した(128±56 vs. 136±57mg/dL、p<0.001)。 事前規定の重症低血糖の発生頻度は、デグルデク群187例(4.9%)、グラルギン群252例(6.6%)、絶対差は1.7%であった(率比:0.60、優越性のp<0.001、オッズ比:0.73、優越性のp<0.001)。 有害事象の発生について、両群で差はなかった。

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(前編)

【第1回 膠原病/アレルギー】 全13問膠原病/アレルギー領域は、アップデートが頻繁な分野でキャッチアップしていくのが大変だが、それだけに基本的なところで確実に得点することが重要となってくる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)これらの疾患とCoombsとGell分類の組み合わせで正しいものはどれか?1つ選べ(a)血清病 ― I型(b)クリオグロブリン血症 ― II型(c)特発性血小板減少性紫斑病 ― III型(d)アレルギー性接触皮膚炎 ― IV型(e)過敏性肺臓炎 ― I+IV型例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第2回 感染症】 全9問感染症領域については、時事問題や感染対策、予防に関する問題がよく出題される傾向がある。代表的な感染症に加え、新興・再興感染症の感染対策についてもしっかり押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)感染症について正しいものは次のうちどれか?1つ選べ(a)中東呼吸器症候群(MERS)は2類感染症であり、致死率は50%を超えるとされている(b)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は4類感染症に指定されており、マダニを媒介としヒト-ヒト感染の報告はない(c)デング熱は4類感染症に指定されており、前回と異なる血清型のデングウイルスに感染した場合、交差免疫により不顕性感染となることが多いと報告されている(d)ジカ熱は4類感染症に指定されており、デングウイルス同様ネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介とし、ギラン・バレー症候群のリスクとなる(e)カルバぺネム耐性腸内細菌科細菌は5類全数把握疾患に指定されており、保菌者も届出が必要とされる例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第3回 呼吸器】 全10問呼吸器の分野については、レントゲンやCTなどの画像から診断を回答させる問題が増えている。アトラス等で疾患別の画像所見をしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)次の記載で正しいものはどれか?1つ選べ(a)成人の急性上気道炎の原因として最も多いものはRSウイルスである(b)Centor criteriaは次の通りである1)38℃以上の発熱、2)基礎疾患なし、3)圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、4)白苔を伴う扁桃腫脹で行う溶連菌感染スコアリング(c)Ludwig’s anginaは菌血症による感染性血栓性頸静脈炎のことである(d)レミエール症候群は、Fusobacterium necrophorumなど嫌気性菌によるものが多い(e)初診外来で白苔を認める急性化膿性扁桃腺炎患者にアモキシシリンで治療した例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第4回 腎臓】 全7問腎臓領域については、ネフローゼ症候群に関する出題が多く、細部まで問われる傾向がある。とくにネフローゼ症候群に関してはしっかりと押さえておきたいところである。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性腎不全(ARF)と急性腎障害(AKI)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)「急性腎障害のためのKDIGO診療ガイドライン」ではAKIの定義として、24時間以内に血清Cr値が0.3mg/dL以上上昇、尿量<0.5mL/kg/時の状態が12時間以上持続する、という項目がある(b)FENa(Na排泄率)2.0%は腎前性腎不全を考える(c)急性尿細管壊死では、多尿が1~2週間持続し、尿中Naは20mEq/L以下であることが多い(d)急性尿細管壊死は消化管出血を合併することが多く、貧血になりやすい(e)尿中好酸球は、薬剤性急性尿細管間質性腎炎で検出され、その診断に有用なバイオマーカーである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第5回 内分泌】 全10問内分泌領域については、診断のための検査についての出題が多い。とくに甲状腺と副腎について問われることが多く、知識の整理が必要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)グレーブス病(バセドウ病)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)バセドウ病に認めるMerseburg3徴は、甲状腺腫・眼球突出・限局性粘液水腫である(b)アミオダロン、インターフェロン製剤は、誘発因子として報告されている(c)甲状腺眼症を合併している患者の治療の第1選択は131I内用療法である(d)抗甲状腺薬にはチアマゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)があり、妊娠・授乳中の患者はMMIの使用が推奨されている(e)131I内用療法の効果は早く、開始後1週間以内に治療効果を認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第6回 代謝】 全10問代謝領域については、治療薬について細部まで聞かれる傾向がある。メタボリックシンドロームとアディポカインは毎年出題されるので、しっかり押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)1型糖尿病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)家族歴は2型糖尿病より1型糖尿病に多く認める(b)1型糖尿病の死因で最多は感染症によるものである(c)緩徐進行1型糖尿病は、できるかぎり経口糖尿病薬で治療を行い、インスリン導入を遅らせるべきである(d)劇症1型糖尿病は、膵島関連自己抗体陽性の小児に発症することが多い(e)劇症1型糖尿病は、血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の上昇を認めることが多い例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第1回:(d)、第2回:(d)、第3回:(d)、第4回:(d)、第5回:(b)、第6回:(e)

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メトホルミン長期投与が1型糖尿病の心血管リスク削減か: REMOVAL試験

 メトホルミンが1型糖尿病患者においても血糖値を改善し、インスリン必要量を減少させる可能性が報告されているが、心血管系のベネフィットについては明らかになっていない。心血管リスクがある成人1型糖尿病患者を対象に、メトホルミンの心血管障害の軽減作用を評価したREMOVAL試験の結果、ADAのガイドラインで提案されている血糖コントロールに対する効果は持続的なものではなく、むしろLDLコレステロール削減や動脈硬化予防など、心血管系のリスク管理において役割を果たす可能性が明らかとなった。この結果は第77回米国糖尿病学会(ADA)年次集会で報告され、論文がLancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版に6月11日同時掲載された。 REMOVAL試験は、5ヵ国(オーストラリア、カナダ、デンマーク、オランダ、英国)、23の病院または診療所で、5年以上の1型糖尿病罹患歴があり、10の特定の心血管リスク因子(BMI≧27kg/m2、HbA1c値> 8.0%、強いCVDの家族歴等)のうち少なくとも3つを持つ、40歳以上の1型糖尿病患者を対象に行われた二重盲検プラセボ対照試験である。被験者は1日2回経口メトホルミン1,000mg投与群(点滴によるインスリン治療と併用)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、メトホルミンがアテローム性動脈硬化症を減少させるかどうかについて、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)の変化によって評価する3年間の追跡調査が行われた。 主要アウトカムは1年ごとの平均Far Wall CIMT値の変化で、反復測定に基づく修正intention-to-treat解析が行われた。副次アウトカムは、HbA1c値、LDLコレステロール、推定糸球体濾過量(eGFR)、体重、インスリン必要量、微量アルブミン尿(報告なし)、網膜症、および内皮機能とされた。 主な結果は以下のとおり。・3ヵ月間のリスク因子と血糖値の最適化期間を経て、428例の患者のうち、219例がメトホルミン投与群、209例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・平均CIMT値はメトホルミンによる有意な減少はなかったが(約-0.005mm/年、95%信頼区間[CI]:-0.012~0.002、p=0.1664)、最大CIMT値(3次アウトカム)は有意に減少した(-0.013mm/年、95%CI :-0.024~0.003、p=0.0093)。・メトホルミン投与群で、3年後のHbA1c値(ベースラインでのメトホルミン投与群:平均8.1%[SD 0.9]、プラセボ群:8.0%[SD 0.8])は減少していたが(-0.13%、95%CI:-0.22 ~-0.037、p=0.0060)、これは最初の3ヵ月以内の減少によるもので(-0.24%、-0.34~-0.13、p<0.0001)、その後は減少しなかった(p=0.0163 for visit-by-treatment interaction)。・メトホルミン投与群で、3年後の体重(-1.17kg、95%CI:-1.66~-0.69、p<0.0001)およびLDLコレステロール(-0.13mmol/L、95%CI:-0.24~-0.03、p=0.0117)が減少したが、eGFRは増加した(4.0mL/分/1.73m2、95%CI:2.19~5.82、p<0.0001)。またインスリン必要量の低下はみられなかった(体重1kg当たり-0.005単位、95%CI:-0.02~0.012、p=0.545)。・反応性充血指数または網膜症の有無により評価された内皮機能に影響はなかった。・治療中止はメトホルミン投与群59例(27%)、プラセボ投与群26例(12%)であり、主な原因は消化器系副作用の増加によるもので、メトホルミンによる低血糖症の増加はみられなかった(p=0.0002)。・メトホルミン投与群で5例、プラセボ群で2例が死亡したが、主任研究者により、本研究における治療との関連は判断されなかった。■参考ADA2017 Press ReleaseREMOVAL試験(Clinical Trials.gov)

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高齢者糖尿病診療ガイドライン2017発刊

 「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」による「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」(2016年5月)を受け、2017年5月開催の第60回 日本糖尿病学会年次学術集会において、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』(編・著 日本老年医学会・日本糖尿病学会)が書籍として発刊された。高齢者糖尿病診療ガイドライン2017はCQ方式で15項目に分けて記載 『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』はクリニカルクエスチョン(以下「CQ」)方式でまとめられ、CQ一覧を冒頭に示し、これに対する要約、本文、引用文献(必要により参考資料)のフォーマットで記されている。そして、可能な場合はエビデンスレベル(レベル1+および1~4)、推奨グレード(AおよびB)を付している。 『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』の具体的な内容としては、I.高齢者糖尿病の背景・特徴、II.高齢者糖尿病の診断・病態、III.高齢者糖尿病の総合機能評価、IV.高齢者糖尿病の合併症評価、V.血糖コントロールと認知症、VI.血糖コントロールと身体機能低下、VII.高齢者糖尿病の血糖コントロール目標、VIII.高齢者糖尿病の食事療法、IX.高齢者糖尿病の運動療法、X.高齢者糖尿病の経口血糖降下薬治療とGLP-1受容体作動薬治療、XI.高齢者糖尿病のインスリン療法、XII.高齢者糖尿病の低血糖対策とシックデイ対策、XIII.高齢者糖尿病の高血圧、脂質異常症、XIV.介護施設入所者の糖尿病、XV.高齢者糖尿病の終末期ケア、と大きく15項目に分けて記載されている。時間がないときは高齢者糖尿病診療ガイドラインの要約だけでも通読 高齢者糖尿病患者に特有の身体的特徴などを踏まえて、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』では次のように示されている。たとえば「低血糖」について、「高齢者糖尿病の低血糖にはどのような特徴があるか?」のCQに対し、要約では「高齢者の低血糖は、自律神経症状である発汗、動悸、手のふるえなどの症状が減弱し、無自覚低血糖や重症低血糖を起こしやすい。低血糖の悪影響が出やすい」と端的に示されている。また、食事療法の「高齢者における食事のナトリウム制限(減塩)は有効か?」では、「高齢者においても減塩は血圧を改善する(推奨グレードA)」と記されており、運動療法の「高齢者糖尿病において運動療法は血糖コントロール、認知機能、ADL、うつやQOLの改善に有効か?」では、「高齢者糖尿病でも定期的な身体活動、歩行などの運動療法は、代謝異常の是正だけでなく、生命予後、ADLの維持、認知機能低下の抑制にも有効である(推奨グレードA)」と記載されている。 今後、さらに増えると予測される高齢者糖尿病患者の診療に、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』をお役立ていただきたい。

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第10回 インスリン療法のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第10回】インスリン療法のキホン―インスリン治療の開始はどのように判断したらよいでしょうか。内服から切り替える場合の基準、製剤選択についても教えてください。 インスリン治療の適応には、インスリン依存状態(1型糖尿病)や高血糖性の昏睡を来した状態(糖尿病ケトアシドーシスなど)、重度の肝・腎障害の合併、糖尿病合併妊婦などの「絶対的適応」と、インスリン非依存状態(2型糖尿病)が対象の「相対的適応」があります。2型糖尿病の場合、「著明な高血糖(空腹時血糖値250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL)を認める」「経口薬のみでは良好な血糖コントロールが得られない」「やせ型で栄養状態が低下」「糖毒性を積極的に解除する必要がある」などが相対的な適応とされています1)(絶対的適応の場合は、専門医に相談)。 インスリン以外で治療中の2型糖尿病患者さんで、たとえば高用量のSU薬に加え、作用機序の異なる薬剤を併用しているにも関わらず、空腹時血糖値が250mg/dLを超える状態が数ヵ月続く場合は、インスリン治療を検討します。その際、内因性インスリンを評価するために、空腹時血中Cペプチドもみるとよいでしょう。朝食前血中Cペプチドの正常値は1.0~3.5ng/mL(0.5ng/mL以下でインスリン依存状態)で、低値であればあるほど、内因性インスリン分泌が低下しており、インスリン療法が必要です。空腹時血中Cペプチドが0.8ng/mL以下であれば、インスリン治療適応と考えてよいと思います。 インスリン導入にあたって、入院と外来の2つの方法があり、インスリンの絶対的適応では入院が望ましく、また、2型糖尿病でも可能であれば入院がよいですが、外来での導入も可能です。導入方法には、内服薬からの切り替えと、現在服用している経口薬を続けながらインスリンを併用するBOT(Basal Supported Oral Therapy)があります。 健康な成人のインスリン分泌は、1日中少しずつ分泌される「基礎分泌(Basal)」と食後の血糖上昇に合わせて瞬時に分泌される「追加分泌(Bolus)」からなります。インスリン治療では、健康な成人にできるだけ近いインスリン分泌パターンを作り、1日の血糖値の動きを正常域内に収めることが求められるため、基礎分泌と追加分泌を補う必要があります。そのため、切り替えの場合は、基礎分泌を補う目的で「中間型」もしくは「持効型」のインスリンを1日1~2回、追加分泌を補う目的で食事毎に「速効型」もしくは「超速効型」のインスリンを注射する「Basal-Bolus療法」が基本です。 経口薬にインスリンを上乗せするBOTでは、作用発現が遅く、ほぼ1日にわたり持続的な作用を示し、基礎分泌を補う「持効型溶解インスリン製剤」を追加します。持効型溶解インスリン製剤は主に空腹時血糖値を低下させるので、併用する(継続する)経口薬は食後の血糖低下効果を持つ薬剤がよいです。インスリン製剤で外因性インスリンを補うことで、疲弊している膵β細胞を休ませ、糖毒性を解除することが期待できます。糖毒性が解除されると、既存の経口薬の効果が増強されることがあるので、血糖低下状況をみながら、インスリンを中止し、経口薬のみに戻すことも可能です。―外来でインスリンを導入する方法と注意点について教えてください。 外来でインスリンを導入する場合、血糖自己測定(SMBG)と頻回の通院(週1回)が必要になります。SMBGは、インスリン治療を行う2型糖尿病でも保険が適用されますが、1日2回までとなっていますので※、その範囲で測定する場合は、1回は朝食前空腹時血糖値に、残り1回は昼食前血糖値あるいは夕食前血糖値と交互にするとよいでしょう。朝食前血糖値が高いと、下駄を履いたまま1日が始まり、全体的に血糖値が底上げされた状態になります。まずは朝食前血糖値をしっかり下げること、そして、そこが落ち着いたら食後高血糖をコントロールしましょう。※血糖自己測定に基づく指導を行った場合、インスリン自己注射指導管理料に加算して、血糖自己測定を1日に1回、2回または3回以上行っているものに対して、それぞれ400点、580点または860点を加算することとされている。 その際、注意することは、朝食前空腹時血糖値を“下げすぎない”ことです。インスリン治療の問題に「体重増加」がありますが、下げすぎると強い空腹感から食べてしまい、体重増加を来します。また、もう1つインスリン治療で問題になるのが「低血糖」です。朝食前空腹時血糖値を下げすぎてしまうと、その前の夜間に低血糖を起こしてしまう可能性があります。強化療法による2型糖尿病患者さんの心血管障害の発症抑制を検討したものの、死亡率が予想を上回ったために早期終了となった「ACCORD:Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes」では、強化療法による厳格な血糖コントロールによって生じた重症低血糖が、死亡リスク増大と関連したことが示されました2)。また、夜間低血糖については、不整脈との関連も示唆されています3)。朝食前血糖値は120~130mg/dLを目指すようにし、100mg/dLを下回らないようにしましょう。さらに、血糖コントロール長期不良例では、急激に血糖を低下させると網膜症や神経障害が悪化する可能性があるので1)、徐々に目標値に近づけましょう。―インスリンの初回投与量の設定について教えてください。 インスリン導入の際には、入院か外来で適切な投与量(単位)を決めますが、開始時の投与量は体重1kg当たり1日0.2~0.3単位(8~12単位)、体重1kg当たり1日0.4~0.5単位(20~30単位)まで増量することが多いとされています1)。単位の変更は、「責任インスリン(その血糖値に最も影響を及ぼしているインスリン)」で決めます。SMBGを同時に開始しますが、Basal-Bolus療法を行っている場合、たとえば昼食前の血糖値が高ければ、その血糖値に影響を及ぼしている朝のBolusを見直す、夕食前の血糖値が高ければ、その血糖値に影響を及ぼしている昼のBolusを見直す、また、朝食前の血糖値が高ければ、朝食前血糖値に影響を及ぼすBasalを見直します。その患者さんに適したインスリン量を決めるにあたり、SMBGの記録は大変重要です。―独居の高齢患者さんや認知機能低下のある患者さんに対するインスリン導入に悩みます。どのように判断したらよいでしょうか? 独居の高齢者でも、認知機能に問題がなく自分で管理できればインスリン治療は可能ですし、認知機能が低下していても、同居家族や補助者がきちんと管理できれば問題ありません。 インスリン治療で最も怖いのは低血糖です。昏睡に至ることもあり、前述のように、心血管疾患との関連も示されています。インスリン導入にあたり、決められた量を決められた時間に打つことができるかどうかを確認することも大切ですが、低血糖管理、とくに低血糖を予防することができるかどうかを見極めることが重要です。インスリン治療を行っている場合、まず、食事を1日3回、必要十分量とる必要があります。とくに高齢者の場合、インスリンを投与し、いざ食事しようとしたら、いつもの量が食べられなかった、ということがしばしばあります。―シックデイのインスリン投与はどのようにしたらよいでしょうか。インスリンの種類による対応の違いと患者さんへの説明の仕方を教えてください。 シックデイで食事がとれない場合は、まず、食事を工夫してできるだけ普段と同じカロリーの食事がとれるようにし、インスリン注射はやめないようにします。どうしても食事がとれないときは、医師や看護師、薬剤師などに相談してもらいますが、その際も、基礎分泌を補うBasalは食事とは関係がないので、中止しないようにします。SMBGもやめないようにしてもらいます。また、できるだけ水分摂取を心がけてもらい、吐き気や嘔吐のために水分もとることができないときは連絡してもらいます。―心理的抵抗がある患者さんにインスリンを導入する場合は、どのように指導したらよいでしょうか? 近年のインスリン製剤の開発や注射器具の改良、簡便なSMBG機器の出現により、患者さんの負担を最小限にしたインスリン治療ができるようになっています。2型糖尿病患者さんにも、幅広く受け入れてもらえるようになりました。しかしそれでもまだ、「インスリン(注射)」と聞くと「最後の治療」と感じてしまう患者さんもいます。そのような患者さんには、「決して最後の治療ではないこと」「インスリンにより糖毒性が解除されれば、また経口薬でのコントロールに戻ることができるようになる」などを説明し、心理的障壁を取り除くようにします。「自分で打つのはいやだけど、医療従事者が打つなら」という患者さんもいます。そのような方で、たとえばリタイアされていて時間があるような場合は、1日1回、持効型溶解インスリン製剤を打ちに来院してもらうという方法をとるのもよいでしょう。また、注射に慣れていただくために、週1回のGLP1-受容体作動薬を来院して打つ、あるいはご自分で打つことから始め、慣れてからインスリンを導入するという手もあります。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2016-2017. 文光堂;2016.2)Bonds DE, et al. BMJ. 2010;340:b4909.3)Chow E, et al. Diabetes. 2014;63:1738-1747.

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新たなアンチセンス薬、動脈硬化進展を抑制/NEJM

 マウスAngptl3遺伝子を標的とするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)は、マウスのアテローム性動脈硬化の進展を抑制し、アテローム生成性リポ蛋白を低下させることが、米国・Ionis Pharmaceuticals社のMark J. Graham氏らの検討で示された。ASOの第I相試験では、ヒトANGPTL3遺伝子を標的とする戦略の有用性を示唆する知見が得られた。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年5月24日号に掲載された。疫学研究やゲノムワイド関連分析により、アンジオポエチン様3をコードするANGPTL3遺伝子の機能喪失型変異は、血漿リポ蛋白の低下と関連することが示されている。開発中のIONIS-ANGPTL3-LRxは、肝のANGPTL3 mRNAを標的とする第2世代リガンド結合アンチセンス薬(GalNAc結合ASO薬)である。治療標的の可能性を前臨床と無作為化第I相試験で評価 研究グループは、心血管疾患のリスク低減における、循環代謝性疾患の治療標的としてのANGPTL3遺伝子の意義を評価するために、前臨床試験と二重盲検プラセボ対照無作為化第I相試験を行った(Ionis Pharmaceuticals社の助成による)。 前臨床試験では、マウスを用いて、血漿脂質値、トリグリセライド(TG)・クリアランス、肝TG含量、インスリン感受性、アテローム性動脈硬化に及ぼすASOの効果を評価した。 引き続き、第I相試験で健常成人ボランティア44例を、ASOの単回皮下投与(20、40、80mg)、6回皮下投与(10、20、40、60mg/週×6週)、それぞれのプラセボ投与群にランダムに割り付け、安全性、副作用、薬物動態、薬力学の評価を行い、脂質値、リポ蛋白の変動について検討した。用量依存的にANGPTL3蛋白、脂質値が低下 ASO投与マウスでは、用量依存的に肝臓でのAngptl3 mRNA、Angptl3蛋白、TG、LDLコレステロール(LDL-C)が低下するとともに、肝TG含量とアテローム性動脈硬化の進展が抑制され、インスリン感受性が増大した。 ヒトの単回投与(被験薬群:9例、プラセボ群:3例)の検討では、15日時のANGPTL3蛋白、TG、VLDL-C、非HDL-C、総コレステロール(TC)の値が低下するとともに、ベースラインからの平均低下率が増大し、用量依存性の傾向が認められた。これらの結果には、有意な差はみられなかったが、サンプル数が少ないのが原因と推察された。 6回投与(被験薬群:24例、プラセボ群:8例)の検討では、43日(最終投与から1週後)時のANGPTL3蛋白の発現が、すべての用量でプラセボ群に比べ有意に抑制された(すべて、p<0.01)。また、ANGPTL3蛋白のベースラインから43日時の平均低下率は、10mg群が46.6%(プラセボ群との比較で、p=0.001)、20mg群が72.5%(p=0.003)、40mg群が81.3%(p=0.001)、60mg群は84.5%(p=0.001)と、用量依存的に増大した。 さらに、6回投与では、TG(各用量の43日時の平均低下率:33.2、63.1、53.8、50.4%)、LDL-C(1.3、4.3、25.4、32.9%)、VLDL-C(27.9、60.0、48.5、48.7%)、非HDL-C(10.0、17.6、31.1、36.6%)、アポリポ蛋白B(3.4、13.3、25.7、22.2%)、アポリポ蛋白C-III(18.9、57.8、50.7、58.8%)も、全般に高用量で低下率が高く、40mg群と60mg群は、これら6つの項目の低下率がすべてプラセボ群に比べ有意に増大した。 試験期間中に重篤な有害事象は発現しなかった。6回投与の20mg群の1例が5回目投与後にフォローアップできなくなったが、これ以外に投与中止は認めなかった。また、注射部位反応の報告はなく、単回投与では有害事象は発現しなかった。6回投与では、3例に頭痛(プラセボ群の1例を含む)、3例にめまい(プラセボ群の2例を含む)がみられた。

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長門流 認定内科医試験BINGO! 総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.2

第5回 内分泌 第6回 代謝 第7回 消化器(消化管)第8回 消化器(肝胆膵) 認定内科医試験に向けた全3巻の実践講座の第2巻です。重要ワードは「頻出」。長年試験問題を分析し続けている長門先生が、実際の試験問題に近い予想問題を作成し、頻出ポイントをテンポよく解説します。もちろん最新のガイドラインのアップデートにも対応。各科目で試験に問われやすいポイントを押さえていますので、認定内科医試験はもちろん、総合内科専門医試験を受ける先生方も確実に得点アップにつながります。年々難しくなっているといわれる内科系試験。このDVDでぜひ合格を勝ち取ってください。第5回 内分泌 内分泌の領域では、検査をどの順に進めて診断確定を行うかまで、細かく問われる傾向があります。とくに、甲状腺と副腎について出題が多いので、知識を整理しておきましょう。妊婦や授乳婦への禁忌項目も要チェックです。第6回 代謝代謝領域では、メタボリックシンドロームとアデポカインは近年、毎年出題されています。また、インスリンを含む糖尿病治療薬については細かく問われる傾向があります。薬剤の作用・適応・副作用・特徴をしっかり整理しておきましょう。第7回 消化器(消化管)消化管の領域では、潰瘍性大腸炎とクローン病ついて、毎年出題されています。両疾患の違いもポイントになるので、試験の「出るところ」をしっかり確認して確実に得点をとれるようにしましょう。長門流の予想問題では、新しいガイドラインの改訂にも対応しています。ぜひチェックしてください!第8回 消化器(肝胆膵)肝胆膵の領域では、肝炎ウイルスの特徴、肝細胞がんの新しい治療アルゴリズムについての出題が多い傾向があります。また、2015年に改訂があった「急性膵炎診療ガイドライン」からの出題も予想されます。この番組で頻出ポイントをしっかり押さえて、試験勉強を効率的に行ってください。

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インスリン療法、1年後のHbA1cと投与量の増加は?~日本人コホート

 日本の前向きコホート研究(Diabetes Distress and Care Registry at Tenri:DDCRT)において、2型糖尿病患者への4つのインスリン療法のレジメンによる血糖コントロールについて調査したところ、多くの患者が1年後にHbA1cレベルおよびインスリン投与量の増加を示したことがわかった。インスリン投与量の増加については、基礎-ボーラス療法群で最も少なかったという。Journal of diabetes investigation誌オンライン版2017年5月11日号に掲載。 本研究は、天理よろづ相談所病院(奈良県)の内分泌内科に通院する糖尿病患者を対象とした大規模レジストリで、1年以上インスリン療法を受けている2型糖尿病患者757例について調査した。インスリン療法は、「持効型インスリン・1日1回」をレジメン1、「混合型インスリン・1日2回」をレジメン2、「混合型インスリン・1日3回」をレジメン3、「基礎-追加インスリン療法(Basal-Bolus療法)」をレジメン4とした。主要アウトカムは、0.5%を超えるHbA1cレベルの増加および1年後の1日インスリン投与量の増加で、血糖コントロールとインスリン投与量の差を調べるために多変量解析を行い、潜在的な交絡因子を調整した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時における平均HbA1cは7.8%、インスリン治療の平均継続期間は11.3年であった。・0.5%超のHbA1c増加は、レジメン1~4で順に22.8%、24.9%、20.7%、29.3%の患者に認められ、また4レジメン間に有意差はなかった。・1日のインスリン投与量の増加は、レジメン1~4で順に62.3%、68.8%、65.3%、38.6%の患者に認められた(p<0.001)。・多変量回帰分析では、レジメン4を受けた患者は、レジメン2を受けた患者よりもインスリン投与量の増加が必要となるオッズが有意に低かった(調整オッズ比0.24、95%信頼区間:0.14~0.41、p<0.001)。

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1型糖尿病における強化インスリン療法:頻回注射法と持続皮下インスリン注入法の比較(解説:小川 大輔 氏)-677

強化インスリン療法 インスリン分泌には、1日を通して分泌される「基礎分泌」と、食べ物を食べた時に分泌される「追加分泌」がある。1型糖尿病のインスリン治療は、基礎分泌と追加分泌をインスリン製剤で補う「強化インスリン療法」が基本となる。 強化インスリン療法には主に2つの方法、ペン型の注入器でインスリン製剤を皮下に注射する「頻回注射法」と、インスリンポンプという機械でインスリンを注入する「持続皮下インスリン注入法」がある。頻回注射法と持続皮下インスリン注入法 頻回注射法は2種類のインスリン製剤を用いて、通常は基礎分泌を補うために持効型インスリンを1日1~2回注射し、追加分泌を補うために超速効型インスリンを1日3回各食事の直前に注射する。 持続皮下インスリン注入法は超速効型インスリン製剤をインスリンポンプにセットし、あらかじめ設定した速度でインスリンを皮下へ持続的に注入することによって基礎分泌を補う。また、ポンプのボタン操作で食事の前にインスリンを追加で注入し追加分泌を補う。 頻回注射法は手技が簡便であるが、1日4~5回皮下注射を行う必要がある。一方、持続皮下インスリン注入法は機械の操作がやや難しいが、皮膚に留置するカニューレの交換は2~3日に1回のため穿刺の回数は少なくて済む。1型糖尿病の治療:頻回注射法と持続皮下インスリン注入法の比較 1型糖尿病の治療では、低血糖をできるだけ回避しながら血糖コントロールを良好に保つことが求められる。強化インスリン療法には上述の2種類の方法があり、それぞれ長所と短所がある。これまでに持続皮下インスリン注入法は頻回注射法と比較し、血糖コントロールをより改善する、あるいは重症低血糖の頻度が低下するという報告が散見されるが、いずれも症例数が少なく、期間も短いため明確な結論は得られていない。 今回のREPOSE試験では、成人の1型糖尿病267症例を対象に、持続皮下インスリン注入法群と頻回注射法群の2群に割り付けてHbA1cの低下や重症低血糖の頻度を2年間にわたり観察した。また両群とも割り付ける前にインスリン治療に関する教育が行われた。結果であるが、HbA1cレベルは持続皮下インスリン注入法群でより低下する傾向がみられたが両群間で有意差はなかった。重症低血糖の頻度は両群とも低下したが、両群間で有意差は認めなかった。また心理社会的指標は治療に対する満足感やQOLに関する一部の項目で持続皮下インスリン注入法のほうが有意に改善したが、両群間で有意差はなかった。 持続皮下インスリン注入法群が頻回注射法群よりも、血糖コントロールが有意に改善しなかった理由は不明である。1つの可能性として、持続皮下インスリン注入法および頻回注射法への好みがない患者を2群に振り分けており、持続皮下インスリン注入法群でインスリンポンプを使用するモチベーションがあまりなかったのかもしれない。今回の研究では、両群とも血糖コントロールは改善したもののガイドラインで推奨されているレベルには到達しておらず、コントロール不良の成人1型糖尿病に対して持続皮下インスリン注入法を積極的に推奨することを支持する結果は得られなかった。

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第1回 運動療法でインスリンの効果を高めよう【できる!糖尿病の運動療法】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「糖尿病ネットワーク(http://www.dm-net.co.jp/)」の動画ページが開きます。■今回の内容「糖尿病ネットワーク」「糖尿病リソースガイド」を運営する創新社がお届けする「糖尿病3分間ラーニング」。今回は「運動」がインスリン分泌へ及ぼす影響を学習します。運動には、筋力の増強、心肺機能の向上、屋外活動の増加、骨粗鬆症の予防、ストレス解消などの効果があるといわれています。では、糖尿病患者が運動をすると、どんなメリットがあるでしょうか。運動療法は、体重の減少だけでなく、運動することでインスリンの分泌をうながし、血糖コントロールに役立つというメリットがあります。そのほか高血糖の抑制と、これに伴う治療薬の効果を上げるなど、多くのメリットがあるようです。詳しくは、上の画像をクリックして、動画でご確認ください。

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