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日本初のがん悪液質治療薬「エドルミズ錠50mg」【下平博士のDIノート】第72回

日本初のがん悪液質治療薬「エドルミズ錠50mg」今回は、グレリン様作用薬「アナモレリン塩酸塩錠(商品名:エドルミズ錠50mg、製造販売元:小野薬品工業)」を紹介します。本剤は、国内初のがん悪液質の治療薬であり、食欲増進や筋肉増強、体重増加作用によって患者QOLや薬物療法の忍容性が向上することが期待されています。<効能・効果>本剤は、非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんにおけるがん悪液質の適応で、2021年1月22日に承認され、4月21日に薬価収載されています。なお、切除不能な進行・再発の適応がん、栄養療法などで効果不十分、6ヵ月以内に5%以上の体重減少と食欲不振があり、かつ以下の(1)〜(3)のうち2つ以上を認める患者に使用することとされています。(1)疲労または倦怠感(2)全身の筋力低下(3)CRP値0.5mg/dL超、ヘモグロビン値12g/dL未満またはアルブミン値3.2g/dL未満のいずれか1つ以上食事の経口摂取が困難または消化吸収不良の患者には使用できません。<用法・用量>通常、成人にはアナモレリン塩酸塩として100mg(2錠)を1日1回、空腹時に経口投与します。本剤は食事の影響を受けるため、服用後1時間は食事摂取を控えます。本剤投与により体重増加または食欲改善が認められない場合は、投与開始3週後をめどに原則中止します。なお、12週間を超える本剤の投与経験はなく、体重や問診により食欲を確認するなど、定期的に投与継続の必要性を検討します。<安全性>国内第II相試験および第III相試験(ONO-7643-03、04、05試験)の安全性評価対象187例中84例(44.9%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、γ-GTP増加12例(6.4%)、グリコヘモグロビン増加11例(5.9%)でした(承認時)。重大な副作用として、刺激伝導系抑制(10.7%)、高血糖(4.3%)、糖尿病の悪化(4.3%)、肝機能障害(6.4%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、がんによる食欲不振や体重減少などの症状を改善します。脳の視床下部に作用して食欲を増進させ、脳下垂体に作用して成長ホルモンの分泌を高めることで筋肉がつくられ、体重が増加します。2.本剤は空腹時に服用し、服用後1時間は食事をしないでください。食後服用では効果が低下することがあります。3.服用中に検査で心電図の異常がみられた場合や、めまい、気を失う、立ちくらみ、脈が遅くなる、息切れなどが現れた場合は、すぐに主治医に相談してください。4.糖尿病の悪化や高血糖を引き起こすことがあります。体がだるい、体重が減る、喉が渇く、水を多く飲む、尿量が増えるなどの症状が現れた場合は、速やかに病院か薬局に連絡してください。<Shimo's eyes>日本初の「がん悪液質」に対する治療薬が誕生しました。がん悪液質とは、がんに伴う代謝異常により、食欲低下と骨格筋の持続的な減少を認める多因子性の症候群です。がん患者のQOLを低下させ、予後を悪化させる因子であると考えられていますが、これまで有効な治療方法は確立されていませんでした。本剤は、食欲を制御する体内ペプチドホルモンの一種であるグレリンと同様の働きをする経口低分子のグレリン様作用薬です。食欲中枢へ作用して食欲を増進させるとともに、分泌された成長ホルモンが肝臓に働くことでインスリン様成長因子-1が放出され、筋タンパク合成を促進して体重を増加させます。使用に当たってまず注意すべきは、すべてのがん種が適応ではなく、非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんに限られている点です。また、がん悪液質は「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」の3つのステージに分類されますが、前悪液質は本剤による治療の対象からは除外されます。本剤は、食事の影響を受けるため、服用時間の指導が重要ですが、アドヒアランスが低下しないように患者の生活リズムに合わせた服用タイミングのアドバイスを行いましょう。一方で、経口の食事摂取が困難または消化吸収不良の患者には使用できない点にも注意が必要です。服薬後のフォローアップとしては、治療開始3週後をめどに効果が認められない場合は、原則投与を中止します。患者向け資材の中に「効果と副作用のチェックシート」があるので、こちらも活用しましょう。重大な副作用として「刺激伝導系抑制」が現れる恐れがあるため、うっ血性心不全、高度の刺激伝導系障害がある患者には禁忌です。中等度以上の肝機能障害のある患者や、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ボリコナゾールなどを服用中の患者にも禁忌となっています。なお、警告として、「本剤はがん悪液質の診断および治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例にのみ投与すること。また、本剤投与開始に先立ち、患者またはその家族に本剤のベネフィットおよびリスクを十分説明し、理解したことを確認したうえで投与を開始すること」とされています。現時点ではがん悪液質に関する明確な基準や共通認識が確立されているとは言えないため、しっかりと患者さんの状態をフォローしましょう。参考1)PMDA 添付文書 エドルミズ錠50mg

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 内分泌・代謝

第1回 糖尿病(1)第2回 糖尿病(2)第3回 下垂体疾患 副甲状腺疾患 骨粗鬆症第4回 甲状腺疾患第5回 代謝性疾患第6回 副腎疾患 二次性高血圧 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。内分泌・代謝については、聖路加国際病院内分泌代謝科の能登洋先生がレクチャーします。糖尿病、脂質異常症、高尿酸症といった代謝性疾患は、それぞれの診断基準となる数値をきちんと把握し、適切な治療でコントロールすることが大切です。内分泌疾患は、内分泌系の仕組みを総合的に捉え、各ホルモンの作用と、多岐にわたる疾患の特徴を押さえます。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 糖尿病(1)内分泌・代謝の第1回は、糖尿病の病態と診断について解説します。糖尿病には、1型、2型、その他、妊娠糖尿病の4つの病型があり、血糖値とHbA1cの数値、既往歴から鑑別します。急激な高血糖によって引き起こされる糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態、あるいは過度の治療による低血糖。命にかかわることもあるため、試験でよく問われるテーマです。第2回 糖尿病(2)内分泌・代謝の第2回は、糖尿病の治療について解説します。治療のポイントは、多様な薬剤の使い分け。各治療薬の作用機序、効果と副作用、禁忌事項を確認します。インスリン療法で重要なのが、用量調節の際の責任インスリンという概念。妊娠糖尿病は、胎児への影響を考慮して、通常の糖尿病よりも診断基準が厳しく、血糖コントロール目標値を厳格に管理することが推奨されています。第3回 下垂体疾患 副甲状腺疾患 骨粗鬆症さまざまなホルモンを分泌する下垂体。初めにホルモンの種類と全身の標的器官を押さえます。下垂体ホルモンの過剰分泌や分泌低下によって引き起こされる各疾患も要チェック。副甲状腺ホルモン疾患の鑑別には、カルシウムとリンの値に注目します。骨粗鬆症は、一般的に加齢により発症しますが、内分泌疾患、薬物、糖尿病など、特定の誘因によって発症する場合もあります。骨粗鬆症の各治療薬について、機序と使用法を確認します。第4回 甲状腺疾患内分泌・代謝の第4回は、甲状腺疾患について解説します。バセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、プランマー病など、複数の疾患に起因する甲状腺中毒症。この甲状腺中毒症が重症化した甲状腺クリーゼは、致死率が高いので要注意。甲状腺機能低下症の代表的な疾患は、橋本病、粘液水腫性昏睡です。甲状腺腫瘍について、最新のガイドラインにおける治療方針を確認します。第5回 代謝性疾患脂質異常症の診断基準は、LDL-C、HDL-C、中性脂肪を数値別にチェック。総コレステロールから善玉コレステロールを除いた”non-HDL-C”という新たな指標が注目されています。幼少期から動脈硬化性疾患を起こす原発性高コレステロール血症の治療には、PCSK-9阻害薬が近年効果を発揮しています。高齢者の場合は、過度な減量は禁物。軽い肥満の方が死亡リスクを下げます。高尿酸血症は、原因疾患と合併症の有無によって治療薬の使い分けがポイントです。第6回 副腎疾患 二次性高血圧副腎から産出分泌されるホルモンには、アルドステロン、コルチゾール、カテコルアミンがありますが、副腎に腫瘍ができてホルモンが過剰分泌されると、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、パラガングリオーマといった疾患が引き起こされます。内分泌疾患により発症する二次性高血圧は、原因疾患を治療することで改善できます。各疾患に関わるホルモン、注目すべき検査所見、鑑別診断、治療の流れを確認します。

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第22回 うつ傾向、うつ病【高齢者糖尿病診療のコツ】

第22回 うつ傾向、うつ病Q1 高齢者糖尿病とうつはどのような関係がありますか?糖尿病患者はうつ病や質問紙法で評価されるうつ傾向をきたしやすくなります。42の研究のメタ解析では、糖尿病患者は、約3割がうつ傾向を有し、約1割が面接法でうつ病と診断されます1)。1型、2型を問わず、糖尿病がない人と比べてうつ病の頻度が約2倍多くなっています1)。J-EDIT研究でも、高齢糖尿病患者の約39%は、GDS-15で評価したうつ傾向を有していました2)。うつ病があると糖尿病の発症は1.60倍で、一方、糖尿病があるとうつ病の発症リスクが1.15倍となり両者は双方向の関係があります3)。高齢糖尿病患者にうつ症状やうつ病が多い原因は高血糖、低血糖、糖尿病合併症、糖尿病治療、ADL低下、視力障害、尿失禁などが考えられます。糖尿病患者におけるうつ傾向は血糖コントロール状態と関連します。HbA1cが7.0%以上の糖尿病患者は、CES-Dで評価したうつ状態になりやすく、またうつ状態が再発しやすくなります4)。英国の追跡研究では、HbA1cが1%上昇するごとにうつ傾向のリスクが1.17倍になると報告されています5)。うつは血糖コントロールを悪化させ、さまざまな合併症を引き起こし、さらにうつを悪化させるという悪循環に陥る可能性もあります。一方、低血糖もうつ症状を増加させます。低血糖発作を起こした糖尿病患者はうつ病のリスクが1.73倍となりますが、この傾向は加齢とともに大きくなるとされています6)。J-EDIT研究でも、インスリン治療中でかつ低血糖の頻度が月1回以上あるとGDS-15で評価したうつ症状が多く見られました2)。一方、うつ病は重症低血糖のリスクになることが知られており7)、この両者も悪循環を形成しうることに注意する必要があります。糖尿病の合併症の中では神経障害による疼痛や身体の不安定さがうつ症状を引き起こします8)。また、糖尿病網膜症などによる視力障害、脳卒中、心血管障害などの大血管障害もうつのリスクとなります。糖尿病の治療状況自体もうつのリスクとなり得ます。逆に、社会的支援やボランティアなどの社会活動への参加、運動療法はうつに対し保護的に働きます。また、高齢者では肉親や友人との離別や死亡を意味するライフイベントが増加するとうつ病をきたしやすくなります。その他、女性、過去のうつ病の既往、社会的な孤立、家族関係の不良、介護環境の悪化もうつ傾向やうつ病発症の誘因となります。Q2 高齢者糖尿病にうつ(うつ傾向やうつ病)はどのような影響を及ぼしますか?うつは治療へのアドヒアランスを低下させ、血糖コントロール不良の原因となります。うつは高血糖のみならず、重症低血糖のリスクとなるため、治療に際しては十分な注意が必要です7)。うつがあると細小血管障害・大血管障害、要介護、死亡のリスクが高くなります。うつ傾向を合併した高齢糖尿病患者は、糖尿病もうつ傾向もない人と比べて、大血管症、細小血管症、要介護、死亡をそれぞれ2.4倍、8.6倍、6.9倍、4.9倍起こしやすく、うつ病を合併した場合も同様に糖尿病合併症、要介護、死亡をきたしやすいと報告されています9)。J-EDIT研究ではGDS-15が8点以上の糖尿病患者は年齢、性、HbA1c、収縮期血圧、non-HDL-C、HDL-Cを補正しても、脳卒中を2.56倍起こしやすいという結果が得られています2)。うつ病が脳卒中発症を増加させる機序は、1)視床・下垂体・副腎系の活性化によるコルチゾル増加や交感神経活性亢進、2)内皮細胞機能異常、3)血小板機能亢進、4)炎症マーカー増加などが考えられています。糖尿病患者におけるうつ病は認知症発症のリスクともなります10)。また、うつ病があるとフレイルのリスクは3.7倍、フレイルがあるとうつ病の発症は1.9倍起こりやすい11)ことが知られており、うつ傾向は心理的フレイルと呼ばれることもあります。糖尿病患者でうつ傾向やうつ病がある場合には認知機能障害やフレイルがないかをチェックすることが大切です。Q3 高齢者糖尿病ではどのようにうつを評価しますか?高齢者のうつ病ではうつの気分障害が目立たず、体重減少などの身体症状が前面に出るために、見逃されやすいことに注意する必要があります。うつ傾向は大うつ病とは異なり、一定期間持続する一定数以上のうつ症状を示し、GDS-15(高齢者うつスケール)などの質問票で評価します。一方、うつ病(大うつ病性障害)の診断はDSM-5に基づいて行います。うつ病は抑うつ気分、興味または喜びの喪失のいずれかがあてはまり、著しい体重減少(増加)または食欲低下、不眠または睡眠過多、易疲労感、精神運動制止または焦燥、無価値観・罪悪感、思考力・集中力の減退または決断困難、自殺企図の9項目中で5個以上満たすものを大うつ病と定義されます。スクリーニングツールとしてGDS-5、GDS-15、PHQ-9などが用いられていますが、GDS-5が簡便で使用しやすいと思います。GDS-5はうつ症状の評価に用いられますが、うつ症状と大うつ病の診断は必ずしも一致しないことに注意が必要です。うつ病の診断はDSM-5で行います。診断する際には、まず最初に物事に対してほとんど関心がない、楽しめないなど「興味・喜びの消失」や気分が落ち込む、憂うつになるなどの「抑うつ気分」の質問を行い、さらに食欲、睡眠などの質問をしていくとよいでしょう。不安・焦燥が強い、自殺念慮・企図がある、妄想、躁状態がみられる(既往がある)場合には早急に精神科専門医へのコンサルトが必要です。また、下記の治療で効果が得られない場合も精神科専門医へのコンサルトを行います。Q4 うつを合併した高齢者糖尿病はどのような治療を行いますか?うつ傾向、うつ病の対策では要因となる医学的要因を除去することが大切です。まず、低血糖を避けつつ、血糖をコントロールします。上記のように、低血糖は軽症でもうつ傾向を引き起こし、インスリン注射自体もうつの誘因となり得ます。したがって、2型糖尿病患者では可能な限りインスリンを離脱し、低血糖のリスクの少ない薬剤で治療することが大切です。一方で高血糖を下げることもうつの対策で重要です。軽度のうつ傾向であれば,心理的アプローチで医療スタッフによる傾聴やカウンセリングなどを行います。薬物療法単独と比較し、生活指導や心理療法を併用した方が治療効果は高まることが示されています12)。心理療法では認知行動療法が有効であるとされています。一般的に運動療法はうつ症状に対して有効であるとされ、運動を通して自信を取りもどし、他の人との関わりが増えることが利点です。運動教室やデイケアで運動療法を行うことで軽快するケースもあります。心理的アプローチで改善しない場合や中等度のうつ病の場合は抗うつ薬を使用します。実際に抗うつ薬による治療でうつだけでなく、血糖コントロールも有意に改善するという報告もあります13)。抗うつ薬ではまず、SSRI、SNRI、またはNaSSAが使用されます。SSRI やSNRI では服薬初期に嘔気・嘔吐の副作用が出やすいので,あらかじめそのことをお伝えし,必要であれば制吐薬を併用します。服薬初期に現れる副作用を乗り切れば,その後は問題なく服薬を継続できることが多いと思います。三環系抗うつ薬は不整脈、起立性低血圧、体重増加の関連が指摘されており、高齢者での使用は以前より少なくなっています。抗うつ薬は少量から開始し、忍容性を見ながら増量し、治療効果をみることが原則となります。通常量まで増量し、効果が得られない場合や自殺企図がある場合は精神科専門医への紹介が必要となります。糖尿病性合併症の有痛性神経障害はうつの原因になり得ます。両者は互いに影響を及ぼし、睡眠障害、移動度の低下、転倒、社会生活の制限をきたし、脳卒中、要介護のリスクを高めます(図1)。神経障害とうつを合併した患者では心理的アプローチ、フットケア、転倒予防を行います。また、セロトニン•ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチンはこうした患者に対してよい適応となります。神経障害に対してはカルシウムチャネルα2δ(アルファ2デルタ)リガンドのプレガバリンやミロガバリンも使用できますが、高齢者ではふらつき、転倒などに注意する必要があります。画像を拡大する1)Anderson RJ, et al. Diabetes Care 24:1069–1078, 2001.2)荒木 厚, 他.日本老年医学会雑誌52:4-10, 2015.3)Mezuk B, et al. Diabetes Care 31, 2383–2390, 2008.4)Maraldi C, et al. Arch Int Med 167: 1137-1141, 2007.5)Hamer M, et al. Psychol Med 41:1889-1896, 2011.6)Shao W, et al. Curr Med Res Opin 29:1609-1615, 2013.7)Katon WJ, et al. Ann Fam Med 11:245-250, 2013.8)Vileikyte L, et al. Diabetologia 52:1265-1273, 2009.9)Black SA, et al. Diabetes Care 26:2822-2828, 2003.10)Katon W et al. Arch Gen Psychiatry 69: 410–417, 2012.11)Soysal P, et al. Ageing Res Rev 36:78-87, 2017.12)Atlantis E, et al.BMJ Open 4, e004706,2014.13)Baumeister H, et al.Cochrane database Syst. Rev. 12, CD008381,2012.

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統合失調症患者の心血管リスクと認知障害との関連~メタ解析

 統合失調症では、認知機能障害とメタボリックシンドローム(MetS)などの心血管リスクとの関連が報告されている。認知機能障害や心血管リスク因子は、一般集団においても認知機能を低下させ、統合失調症の認知障害の一因となりうる。大日本住友製薬の萩 勝彦氏らは、統合失調症患者の認知機能障害と心血管リスク因子、認知障害との関連について調査を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2021年3月3日号の報告。 Embase、Scopus、MEDLINE、PubMed、コクランデータベースより、2020年2月25日までに公表された研究を、キーワード(統合失調症、代謝系問題、認知機能)を使用して抽出した。会議録、臨床トライアルレジストリ、関連文献のリファレンスリストも併せて検索した。メタ解析には次の研究を含めた。(1)統合失調症または統合失調症感情障害を対象とした認知機能を調査した研究(2)MetS、糖尿病、肥満、過体重、脂質異常症、インスリン抵抗性などの心血管リスク因子とアウトカムとの関連を調査した研究(3)統合失調症または統合失調症感情障害の認知能力について、心血管リスク因子の有無により比較した研究。文献ごとに2~3人の独立したレビュアーによりデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施した。主要アウトカムは、臨床的に検証済みの尺度を用いて測定した全体的な認知機能とした。 主な結果は以下のとおり。・抽出された27件の研究をメタ解析に含めた(統合失調症患者:1万174例)。・MetSを有する統合失調症患者では、全体的な認知機能の欠損が認められた。 【統計学的に有意な欠損】 ●MetS(13研究、2,800例、エフェクトサイズ[ES]:0.31、95%CI:0.13~0.50、p=0.001) ●糖尿病(8研究、2,976例、ES:0.32、95%CI:0.23~0.42、p<0.001) ●高血圧(5研究、1,899例、ES:0.21、95%CI:0.11~0.31、p<0.001) 【有意差はないがより重度な欠損】 ●肥満(8研究、2,779例、p=0.20) ●過体重(8研究、2,825例、p=0.41) ●インスリン抵抗性(1研究、193例、p=0.18)・特定の認知領域に対する機能低下は、認知機能障害および心血管リスク因子と関連が認められた。 【5つの領域】 ●糖尿病 ES範囲:0.23(95%CI:0.12~0.33)~0.40(95%CI:0.20~0.61) 【4つの領域】 ●MetS ES範囲:0.15(95%CI:0.03~0.28)~0.40(95%CI:0.20~0.61) ●高血圧 ES範囲:0.15(95%CI:0.04~0.26)~0.27(95%CI:0.15~0.39) 著者らは「統合失調症患者の全体的な認知機能に対するMetS、糖尿病、高血圧の有意な関連が認められた」としている。

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高齢者糖尿病治療ガイド2021を発行/日本糖尿病学会・日本老年医学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木浩二郎)は、同学会と日本老年医学会で合同編集・執筆した『高齢者糖尿病治療ガイド2021』を同学会のホームページで3月24日に発表し、刊行した。 超高齢社会のわが国では、高齢者の糖尿病管理は深刻な問題であり、両学会は2015年4月に合同委員会を設置。「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」の策定・公表やさまざまなガイドを発行することで高齢者糖尿病診療に道筋を示してきた。高齢者糖尿病治療ガイド2021では11の具体的な症例を提示 今回改訂された高齢者糖尿病治療ガイド2021では、高齢糖尿病患者に多い認知症、サルコペニア・フレイル、“mulitimorbidity”などの併存症、介護保険など高齢者をサポートする諸制度などの高齢者糖尿病患者に特化した内容が掲載されている。また、読者の理解に役立つようにと「高用量SU薬投与中の高齢者」や「中等度の認知症」など11の具体的な症例を提示し、糖尿病診療に従事する医療者以外にでも参考にできるように工夫されている。 下記に高齢者糖尿病治療ガイド2021の主要な項目を示す。高齢者糖尿病治療ガイド2021主要な目次項目1.高齢者糖尿病の特徴2.高齢者糖尿病の診断3.高齢者糖尿病の総合機能評価4.高齢者糖尿病の治療方針5.高齢者糖尿病の食事療法6.高齢者糖尿病の運動療法7.高齢者糖尿病の薬物療法8.低血糖およびシックデイ9.高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドローム、サルコペニア肥満10.高齢者糖尿病における合併症とその対策11.高齢者に多い併存症とその対策12.さまざまな病態における糖尿病の治療13.高齢者糖尿病をサポートする制度具体的な症例(各項目の間に挿入)[症例1]2型糖尿病の高齢女性[症例2]カテゴリーIIの高齢女性[症例3]カテゴリーIIの高齢男性[症例4]高齢者で高用量SU薬を使用している患者への治療見直し[症例5]非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を合併した2型糖尿病[症例6]認知機能の低下でインスリンの自己注射が困難な症例[症例7]心血管疾患を合併する糖尿病患者にGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬を検討[症例8]カテゴリーII:手段的ADL低下例[症例9]カテゴリーIII:中等度の認知症例[症例10]認知症合併例の治療例[症例11]フレイル合併例の治療例付録/索引

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完全人工膵臓開発における熾烈な競争(解説:住谷哲氏)-1371

 筆者は本連載1167回の『完全人工膵臓実現へのさらなる一歩』で、高血糖時に投与するcorrection bolusを自動化したControl-IQシステムについてコメントした。この点でControl-IQシステムに一歩遅れをとっていたMedtronicが新たに開発したシステムであるadvanced hybrid closed-loop system(AHCL)についての報告である。Medtronicはすでにhybrid closed-loop system(HCL)としてMiniMed 670Gを市場に送り出していたが、MiniMed 670Gにcorrection bolus投与自動化アルゴリズムを持つMD-Logic artificial pancreas algorithm(DreaMed Diabetes[イスラエル、ペタフ・ティクバ])を組み込んだAHCLを新たに開発した。MiniMed 670Gとハード(インスリンポンプとCGM)はまったく同一で、新しいソフトを搭載した機種になる。 試験の対象となったのは1型糖尿病のなかでも血糖管理が困難とされている思春期・若年成人(adolescents and young adults)1型糖尿病患者113人である。機種の違いを比較する試験でありmaskingは不可能であるが、対象患者間の個体差を最小にするために無作為化クロスオーバーデザインが用いられた。Correction bolus投与自動化による有益性を評価するのが試験目的であるので、日中における血糖値>180mg/dLの時間と、<54mg/dLの時間との2つの主要評価項目coprimary endpointが設定された。結果は、血糖値>180mg/dLの時間がHCL期間で34%、AHCL期間で37%(p<0.001)でありAHCLで有意に減少していた。 それではControl-IQシステムとadvanced MiniMed 670G(今回検討された新機種)のどちらが優れているだろうか? 両機種には機能に種々の相違点があるが、この疑問は両者のhead-to-head試験が実施されない限り(その実現可能性はきわめて低いが)答えられない。しかしControl-IQシステムは自己血糖測定によるCGMの較正が不要であるのに対して、MiniMed 670Gに搭載されたCGMは12時間ごとの較正が必要であり、この点ではControl-IQシステムが利便性に勝る。Control-IQシステムvs.MiniMed 670Gの勝者がいずれになるかは、食事の前に投与するmeal bolusの自動化をどちらが達成するかにかかっていると思われる。

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81歳にインスリン導入!糖尿病専門医の深謀【処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)81歳にインスリン導入!糖尿病専門医の深謀講師:三澤 美和氏 / 大阪医科大学附属病院 総合診療科動画解説今回から経口血糖降下薬がインスリンに変更された81歳の患者さん。「高齢者にインスリンを導入するのはハードルが高い」と言われているなか、三澤先生はなぜ切り替えを決断したのでしょうか。糖尿病専門医でもある三澤先生が考えた処方意図、インスリン導入時の検討事項などを解説します。

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「寝る前のインスリンを忘れてしまうのですが…」と話す女性編集者【スーパー服薬指導(5)】

スーパー服薬指導(5)「寝る前のインスリンを忘れてしまうのですが…」と話す女性編集者講師:近藤 剛弘氏 / 元 ファイン総合研究所 専務取締役動画解説外来にてインスリン治療を受けている女性が、就寝前の打ち忘れについて薬剤師に相談。本人の対応法を確認し、間違っていないことを説明し終えたところで、ぐぅーとお腹の鳴る音が薬局に響いた…

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妊娠糖尿病スクリーニング、1段階法 vs.2段階法/NEJM

 妊娠糖尿病のユニバーサルスクリーニングでは、推奨されている2つの方法のうち、1段階法は2段階法と比較して妊娠糖尿病の診断の割合が約2倍に高くなるが、周産期合併症と母体合併症に関連する主要アウトカムのリスクには、両スクリーニング法に有意な差はないことが、米国・カイザーパーマネンテ・ノースウェストのTeresa A. Hillier氏らが実施した「ScreenR2GDM試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年3月11日号で報告された。妊娠糖尿病は頻度の高い疾患であり、母体と周産期の有害なアウトカムのリスクが増大する。米国では、妊娠女性に妊娠24~28週時の妊娠糖尿病ユニバーサルスクリーニングが推奨されているが、2つの推奨スクリーニング法のどちらを使用すべきかに関して専門家の合意は得られていないという。米国の2施設の実践的無作為化試験 本研究は、米国のカイザーパーマネンテ・ノースウェストとカイザーパーマネンテ・ハワイで行われた実践的な無作為化直接比較試験であり、2014年6月~2017年12月の期間に患者登録が行われ、新生児の出生(2018年)までアウトカムのデータが収集された(米国ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健人間発達研究所[NICHD]の助成による)。 対象は、2つの参加施設を受診したすべての妊娠女性であった。被験者は、1段階スクリーニング法または2段階スクリーニング法を受ける群に無作為に割り付けられた。 1段階スクリーニング法では、ブドウ糖負荷試験が行われ、空腹時にブドウ糖75gを経口投与後に血糖値が測定された。2段階スクリーニング法では、GCT(glucose challenge test)として非空腹時にブドウ糖50gを経口投与後に血糖値が測定され、陽性の場合は、引き続きブドウ糖負荷試験として空腹時にブドウ糖100gを経口投与後に血糖値が測定された。 主要アウトカムは、妊娠糖尿病の診断、在胎不当過大児(在胎期間の標準出生時体重の>90パーセンタイル)、周産期の複合アウトカム(死産、新生児死亡、肩甲難産、骨折、分娩外傷に関連する腕または手の神経麻痺)、妊娠高血圧症または妊娠高血圧腎症、初回帝王切開の5つであった。副次アウトカムや安全性アウトカムにも差はない 合計2万3,792例の女性が妊娠糖尿病の2つのスクリーニング法に無作為化された(試験中に複数回妊娠した女性は、1種類以上のスクリーニング法に割り付けられた可能性がある)。1段階群が1万1,922例(平均母体年齢[±SD]29.4±5.5歳)、2段階群は1万1,870例(29.3±5.5歳)であった。割り付けられたスクリーニング法を実際に受けた妊婦の割合は、1段階群が66%と、2段階群の92%に比べて低かった。 妊娠糖尿病の診断を受けた女性の割合は、1段階群が16.5%、2段階群は8.5%であった(未補正相対リスク[RR]:1.94、97.5%信頼区間[CI]:1.79~2.11)。 intention-to-treat解析による他の主要アウトカムの発生率はいずれも、両群間に有意な差は認められなかった。すなわち、在胎不当過大児は1段階群8.9%、2段階群9.2%(補正前RR:0.95、97.5%CI:0.87~1.05)、周産期の複合アウトカムはそれぞれ3.1%および3.0%(1.04、0.88~1.23)、妊娠高血圧症/妊娠高血圧腎症は13.6%および13.5%(1.00、0.93~1.08)、初回帝王切開は24.0%および24.6%(0.98、0.93~1.02)であった。 妊娠糖尿病で補正後の解析、および妊娠糖尿病、事前に規定された他の共変量、スクリーニングの順守状況で補正後の解析でも、妊娠糖尿病の診断を除き、いずれの主要アウトカムにも有意な差はなかった。また、逆確率重み付け(inverse probability weighting)を行ったintention-to-treat解析でも、結果はほとんど変わらなかった。 副次アウトカム(巨大児[出生時体重>4,000g]、在胎不当過小児[在胎期間の標準出生時体重の≦10パーセンタイル]、インスリンや経口血糖降下薬による治療を要する妊娠糖尿病など)の多く、および周産期複合アウトカムの個々の構成要素、安全性アウトカム(新生児敗血症、新生児集中治療室への入室、早産など)についても、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「1段階スクリーニング法では順守率が低かったが、この違いを考慮した解析でも、結果はほぼ同様であった」とまとめ、「実践的な試験の性質として、医療従事者は割り付けられたスクリーニング法や診断結果を知りうるため、これがいくつかのアウトカムに影響を及ぼした可能性は排除できない」と指摘している。

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古くて新しい低糖質食は2型糖尿病治療の救世主になれるのか!(解説:島田俊夫氏)-1359

 今回取り上げるBMJ誌に2021年1月13日に掲載されたGoldenberg JZらの論文は、2型糖尿病患者への低/超低糖質食が糖尿病寛解に及ぼす効果と安全性に関して、出版済みおよび未出版のランダム化比較試験データを可能な限り利用し、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した結果報告であり、時宜にかなっている。温故知新の低糖質食 2型糖尿病に対して待望のヒト由来インスリンが治療に導入後、すでに長い年月が経過している。だが、正直言って期待されたような成果が出ているとは言い難い状況にある。インスリンが発見される以前に、2型糖尿病の治療食として“低糖質食”が使用されていた経緯がある1)。温故知新の教えのごとく、近頃、低糖質食が見直されている。糖質が体に合わない患者に糖質を全エネルギーの50~60%も摂ることを勧めることは、普通に考えれば論理性を欠いているように思える。栄養バランスの許す限り、低糖質食で治療することは古くて新しい2型糖尿病治療へのリバイバル治療になる。本論文はこのような観点からも、多くの読者に多大なインパクトを与えるのではないか。低糖質食は、ブームになっているが専門家にはいまひとつ人気がない。 その理由は、十分なエビデンスを検証できるだけの、良質な低糖質食に関するエビデンスを欠いていることが大きい。今回の論文の準備段階での苦労からも、十分な量と質が担保されたデータ確保が難しかったと推察する。悪戦苦闘の末、メタ解析、システマティックレビューにこぎ着けた印象を抱く。要約と糖質制限食への環境整備 本論文の結論を手短に言えば、1日130g未満の低糖質食を少なくとも6ヵ月間遵守できれば、大きな有害事象なく糖尿病の寛解を達成できる。今回のデータは研究期間が短い点に限界があることを念頭に置いたうえで、とりあえず低糖質食での治療が完遂できれば、糖尿病は寛解することを確認できたことに意味がある。もちろん、低糖質食をさらに厳しくやれば(1日50g未満)改善効果が消失し、悪玉コレステロールの上昇を認めている。その理由は超低糖質食の遵守破綻によると考えられており、成功するためには糖質制限を遵守完遂することが治療成功の必要条件になる。低糖質食は生涯を通して行う必要があるため、社会環境の整備も完遂のために急務と考えるが、現在すでにその環境が整いつつある。これまでの治療に対する問題点と、これからの食事療法と非依存薬物の併用療法への期待 インスリン抵抗性の改善なくして、インスリンによる治療の前途は必ずしも明るくはない(発がん、動脈硬化、易感染性の発生)。比較的新しい経口糖尿病薬SGLT2阻害剤は、インスリン濃度を上げず血糖を下げる薬として新しい切り口の経口糖尿病治療薬であり、単独での血糖降下作用は弱いが、低糖質食とのコラボでのより良い成果に期待する。 長期にわたる低糖質食の確実な予後改善効果の証明が待たれるところである。12ヵ月を過ぎると有効性が消失するとのメタ解析結果も出ており2)、一時的効果はあるが、永続的効果は目下、証明されていると言い切れない状況である。 低糖質食は、インスリンを上げない薬物治療との併用で手詰まり状態になっている2型糖尿病治療に、風穴を開けることができるのではと密かに思っている。

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スマホで糖尿病管理ができるアプリ登場/アボットジャパン

 アボットジャパン合同会社は、スマートフォンでスキャンすることで糖尿病患者の日常の糖尿病管理に用いることができる、わが国初のスマートフォンアプリ「FreeStyleリブレLink」の提供を2月10日より開始した。 “FreeStyleリブレ”(以下「リブレ」)は、持続グルコース測定技術を用いたデバイスで、50ヵ国(250万人以上)の人々がすでに使用している測定デバイス。わが国では2016年5月に製造販売承認を取得し、2017年1月に発売された。現在リブレは、糖尿病の病型を問わず「入院中の患者以外であって、強化インスリン療法を行っているものまたは強化インスリンを行った後に混合型インスリン製剤を1日2回以上使用しているもの」を対象に血糖自己測定器加算「C1507」が適用されている。また、その他のインスリン療法を施行中の患者がリブレを使用する際、月当たりの血糖自己測定(SMBG)回数を基に、血糖自己測定器加算「c1501-6」が適用されている。 今回提供が開始されたFreeStyleリブレLink(以下「アプリ」)は、リブレのセンサーと連動するよう設計されたモバイルアプリ。このアプリを搭載した互換性のあるスマートフォンでグルコース値を測定することができ、アプリを起動した互換性のあるスマートフォンでセンサーをスキャンすることで、グルコース値などのデータは、近距離無線通信によりスマートフォン上に表示される。 このアプリを利用することで、現在のグルコース値、血糖の変動傾向を示す矢印、および直近8時間の血糖変動(血糖トレンド)の把握ができ、最大90日分のデータによる血糖変動のトレンドや変動パターンを示すAGP(Ambulatory Glucose Profile)レポートを含む詳細な血糖データの表示をすることができる。また、インスリン投与のタイミング、食事や運動など、さまざまな出来事をノートとして追加することもできる。 同社では、このアプリの提供が「今後生活に関わるさまざまなデータを一体化させた血糖管理の実現に向けた、大きな1歩になると考えている」と期待を述べている。

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1型DM患者へのインスリンポンプ、従来型vs.次世代型/Lancet

 血糖管理がチャレンジングである1型糖尿病の青年および若年成人患者において、既存のMedtronic製のMiniMed 670Gハイブリッド型クローズドループ・システム(HCL)と比べて、その進化版である開発中のアドバンスハイブリッド型クローズドループ・システム(AHCL)は、低血糖症を増やすことなく高血糖症を抑制することが示された。米国・HealthPartners InstituteのRichard M. Bergenstal氏らが、4ヵ国7医療機関を通じて行った無作為化クロスオーバー試験「Fuzzy Logic Automated Insulin Regulation:FLAIR試験」の結果を発表した。著者は、「今回示されたAHCLの効果を確認するためにも、社会経済的要因で十分サービスを受けられない集団や、妊娠中および低血糖症に対する認識が低い患者における長期試験の実施が必要と思われる」と述べている。Lancet誌2021年1月16日号掲載の報告。 14~29歳の1型DM患者113例を対象に試験 FLAIR試験は2019年6月3日~8月22日に、米国、ドイツ、イスラエル、スロベニアの7つの内分泌系治療施設を通じて、診断後1年以上の14~29歳の1型糖尿病患者113例を対象に行われた。被験者は、インスリンポンプまたは頻回インスリン注射法を行っており、HbA1c値は7.0~11.0%(53~97mmol/mol)だった。 試験ポンプの使用法習得のためのrun-in期間の後、被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方は既存のHCLを、もう一方は開発中のAHCLを、それぞれ12週間使用し、その後クロスオーバーを受け(washoutなし)もう一方のインスリンポンプを12週間使用した。AHCLは、HCLと比べて、人工膵臓アルゴリズムの機能が強化され、5分ごとに自動修正ボーラスが配信されるなど新たな技術が施されている。 主要評価項目は2つで、日中(6時00分~23時59分)の血糖値180mg/dL超の時間の割合(優越性を評価)と、24時間の血糖値54mg/dL未満の時間の割合で(非劣性を評価、マージン2%)とした。解析は、intention to treat法にて実施。安全性は、治療割り付け全対象者について評価した。日中血糖値180mg/dL超の割合、従来型37%に対し次世代型は34% 被験者113例は、平均年齢19歳(SD 4)、女性70例(62%)だった。 日中血糖値180mg/dL超(>10.0mmol/L)の平均時間割合は、ベースライン42%(SD 13)、HCL使用期間37%(9)、AHCL使用期間34%(9)だった(AHCL-HCLの平均群間差:-3.00%、95%信頼区間[CI]:-3.97~-2.04、優越性のp<0.0001)。 24時間の血糖値54mg/dL未満の割合は、ベースライン0.46%(SD 0.42)、HCL使用期間0.50(0.35)、AHCL試用期間0.46%(0.33)だった(AHCL-HCLの平均群間差:-0.06%、95%CI:-0.11~-0.02、非劣性のp<0.0001)。 AHCLで重症低血糖症1例が発生したが、試験治療とは無関係と判断された。HCLでは発生は報告されなかった。

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2型糖尿病の寛解に低炭水化物食は有効か?/BMJ

 低炭水化物食を6ヵ月間継続した2型糖尿病患者は、有害事象なく糖尿病が改善する可能性があることを、米国・テキサスA&M大学のJoshua Z. Goldenberg氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析により明らかにした。これまでのシステマティックレビューでは、低炭水化物食の定義が広く(総カロリーの45%未満)、糖尿病の寛解について評価されていなかった。ただし、今回の結果に関するエビデンスの質は低~中であり、著者は「何を糖尿病の寛解とするか、また、長期にわたる低炭水化物食の有効性、安全性および食生活の満足度について、さらなる議論が必要である」との見解を示している。BMJ誌2021年1月13日号掲載の報告。12週間以上の超低~低炭水化物食を評価した無作為化試験についてメタ解析 研究グループは、CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、CAB、臨床試験レジストリ(ClinicalTrials.govなど)および灰色文献ソース(BIOSIS Citation Index、ProQuest Dissertations & Theses Globalなど)から、2020年8月25日までに発表された研究を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 適格研究は、成人2型糖尿病患者を対象に、12週間以上の低炭水化物食(炭水化物摂取量が1日130g未満、または2,000kcal食の26%未満)もしくは超低炭水化物食(総カロリーの10%未満)を評価した無作為化試験とした。2人の著者が独立して適格性のスクリーニングおよびデータ抽出を行った。 主要評価項目は、糖尿病の寛解(糖尿病治療薬の使用の有無にかかわらずHbA1c<6.5%または空腹時血糖値<7.0mmol/L)、体重減少、HbA1c、空腹時血糖値および有害事象、副次評価項目は健康関連QOLおよび生化学的検査データで、6ヵ月(±3ヵ月)および12ヵ月(±3ヵ月)時の報告とした。 Cochrane RoB 2.0を用いてバイアスリスクを評価し、Revman(ver.5.3)およびRのメタパッケージ(ver.3.6.1)を用いてメタ解析を行い、リスク推定値および95%信頼区間(CI)を算出し、事前に設定した最小重要差にしたがって臨床的意義を評価した。また、GRADEアプローチにより、各評価項目のエビデンスの質を評価した。6ヵ月時の寛解達成率が高く体重減少も大きいが、12ヵ月時はQOLやLDL-C悪化も 23の研究(1,357例)が適格基準を満たし解析に組み込まれた。これらは、バイアスリスクの評価において、全体で40.6%が低いと判定された。 6ヵ月時における糖尿病寛解率は、治療薬使用の有無は問わずHbA1c<6.5%と定義した場合は、低炭水化物食群(57%、76/133例)が対照食群(31%、41/131例)より高率であった(リスク差:0.32[95%信頼区間[CI]:0.17~0.47]、8研究、264例、I2=58%、p=0.02、GRADE:中)。一方、治療薬なしでHbA1c<6.5%達成を糖尿病寛解と定義した場合、低炭水化物食の相対的効果は低下した(リスク差:0.05[95%CI:-0.05~0.14]、5研究、199例、GRADE:低)。 信頼性基準を満たしたサブグループ解析の結果、インスリン使用患者を含む研究では、低炭水化物食による寛解率は著しく低下したことが示された。 なお、12ヵ月時の糖尿病寛解率を報告した研究は3つと少なく、効果が小さいとするものから、糖尿病のリスクをわずかに増大するというものまで、結果はさまざまであった。 体重減少、トリグリセライドおよびインスリン感受性に関しては、6ヵ月時は低炭水化物食による臨床的に重要で大きな改善が認められたが、12ヵ月時には効果がみられなかった。 信頼性基準を満たしたサブグループ解析で、6ヵ月時の体重減少効果は、超低炭水化物食群のほうが、より制限の少ない低炭水化物食群よりも小さかった。ただし、この効果については食事療法の順守が影響していることが示され、超低炭水化物食のアドヒアランスが高い患者は低い患者と比較し、臨床的に重要な体重減少が認められた。 低炭水化物食は、6ヵ月時におけるQOLに有意な影響は及ぼさなかったが、12ヵ月時のQOLおよびLDLコレステロール値については、臨床的に重要な悪化が認められた。そのほか有害事象または血中脂質に関して、6ヵ月時および12ヵ月時のいずれにおいても、グループ間で有意または臨床的に重要な差はみられなかった。

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第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?Q1 COVID-19流行による受診機会減少、運動不足解消への具体的な対応策は?COVID-19流行に不安を感じ、受診を控える患者さんは少なくありません。適切な通院間隔は個々の症例によって異なるため、一概には言えませんが、通院間隔が短いほうが血糖コントロールが良好となる傾向があります。糖尿病診療において血糖測定(およびHbA1c測定)は重要な要素であるため、自己血糖測定を行っていない場合にオンラインや電話診療のみで加療をするのは困難です。したがって、血糖コントロールが良好な状態が維持できていれば通院間隔を延長する(最大3ヵ月)、もともと不良であったり、悪化傾向がみられる場合には通院間隔を短縮するといった柔軟な対応が必要です。患者さんの背景にもよりますが、HbA1c 6%台であれば3ヵ月ごと(インスリン使用者は除く)、7%台であれば2ヵ月ごと、8%台であれば1ヵ月ごとなどの目安を患者さんに提示し、受診の必要性を理解していただくことも効果的です。COVID-19流行に伴い外出機会や活動量が低下した高齢糖尿病患者さんも多く経験します。高齢者は活動量が低下すると容易に筋力が低下しますので、活動量の維持は重要です。1人あるいは同居者とのウォーキングで感染リスクが高まることはまずないと考えますので、可能な方には、人込みを避けたウォーキングを推奨しています。また、室内でできる運動としてラジオ体操や当センター研究所 社会参加と地域保健チームで開発された「本日の8ミッション」などを提示しています。「本日の8ミッション」は、つま先あげや、ももあげ、スクワットなどからなり、チェックシートがホームページよりダウンロードできます。また、座位行動時間に注目した指導も有効です。ADA(米国糖尿病学会)によるStandards of medical care in diabetes 2020では座位行動時間の短縮が推奨されています。30分以上座り続けないことで血糖値が改善するといわれており1)、自宅にいても30分に1回は立ち上がるよう患者さんに指導しています。Q2 誤嚥性肺炎の効果的な予防法について教えてください高齢者肺炎の多くを占めると考えられているのが誤嚥性肺炎です。糖尿病患者は脳梗塞による嚥下障害や高血糖による免疫能低下を介し、誤嚥性肺炎のリスクが高いと考えられます。誤嚥性肺炎は、睡眠中などに口腔内の細菌が唾液とともに下気道に流入する不顕性誤嚥により生じると考えられており、口腔内を清潔に保つことが重要です。コロナ禍の現在でも歯磨き習慣の確認や口腔内のセルフチェックを促すことは重要です。嚥下機能が低下している場合には、嚥下機能の回復を目指したリハビリ(通院が困難な場合は在宅でも可能)や嚥下状態に合わせた適切な食形態への変更が必要です。鎮静薬や睡眠薬、抗コリン薬などの口腔内乾燥をきたす薬剤は嚥下障害をきたしやすいため、適切な使用がなされているか評価する必要があります。また、肺炎一般の予防として肺炎球菌やインフルエンザワクチンの接種も有効です。肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンとも肺炎による入院減少が示されており、両者の併用により、さらに入院頻度が減少することが示されています2)。なお、経鼻胃管や胃瘻造設による誤嚥性肺炎の予防効果は示されていません。Q3 尿路感染症の効果的な予防法・無症候性細菌尿への対応は?糖尿病は尿路感染症のリスクであることが知られており、そのリスクは血糖コントロール不良(HbA1c 8.5%以上)により高くなります3)。また、糖尿病患者では男女とも無症候性細菌尿の頻度が高いことも知られていますが4)、一部の例外(妊婦、好中球減少、泌尿器処置前)を除き、無症候性細菌尿に対するスクリーニングや治療は推奨されません5)。ただし、SGLT-2阻害薬の使用は尿路感染症のリスクとなる可能性があるため、現時点で明確なエビデンスがあるわけではありませんが、使用開始前に評価し、無症候性細菌尿が認められれば、使用を慎重に検討する必要があると考えます。閉経後女性140名を対象とした無作為比較試験では、1.5L以上の飲水により単純性膀胱炎の発症を50%低下することが示されています6)。膀胱炎を繰り返す場合には神経因性膀胱を念頭とした残尿測定やエコーによる尿路閉塞の有無を確認する必要があります。再発性尿路感染症予防におけるクランベリージュースの有効性を検討した研究では、50歳以上の女性においてその有効性が示されていますが7)、否定的な意見もあり8)注意を要します。Q4 歯周病に対する評価や歯科との連携について高齢糖尿病患者では歯周病の罹患率が高く、血糖コントロールが不良であると歯周病が悪化しやすいことが知られています。歯周病が重症化すると血糖コントロールが悪化します。逆に治療により歯周病による炎症が改善すると血糖コントロールも改善することが報告されています9)。歯周病による歯牙の喪失は嚥下障害のリスクとなるほか、オーラルフレイルを介し、身体的フレイルおよびサルコペニアのリスクとなる可能性があるため、歯周病の評価・治療は重要です。高齢糖尿病患者で歯牙の喪失または歯周病があると健康関連のQOL低下は1.25倍おこりやすく、過去12ヵ月間歯科治療を受けていないと1.34倍QOL低下をきたしやすいという米国の70,363人の調査結果も出ています10)。歯科との連携に際し、日本糖尿病協会が発行している「糖尿病連携手帳」を利用することが多いです。「糖尿病連携手帳」にはHbA1cなどの検査結果を記載するページとともに眼科・歯科の検査結果を記載するページもあり、受診時に患者さんに持参していただくことで情報の共有が可能です。もともとの状態や血糖コントロール状況にもよりますが、一般に3~6ヵ月間隔での評価が推奨されています。1)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2020 Jan;43:S48-S65.2)Kuo CS, et al.Medicine (Baltimore). 2016 Jun;95:e4064.3)McGovern AP, et al.Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Apr;4:303-4.4)Renko M, et al.Diabetes Care. 2011 Jan;34:230-55)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015-尿路感染症・男性性器感染症-,日本化学療法学会雑誌 Vol. 64, p1-3,2016年1月.6)Hooton TM, et al.JAMA Intern Med. 2018 Nov 1;178:1509-1515.7)Takahashi S, et al.J Infect Chemother 2013 Feb;19:112-7.8)Nicolle LE. JAMA. 2016 Nov 8;316:1873-1874.9)Munenaga Y, et al.Diabetes Res Clin Pract. 2013 Apr;100:53-60.10)Huang DL, et al.J Am Geriatr Soc. 2013 Oct;61:1782-8.

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炎症性サイトカインとβ細胞機能(解説:住谷哲氏)-1342

 1型糖尿病は膵島関連自己抗体が陽性の1A型と陰性の1B型に大別される。1A型は抗体陽性であるが正常耐糖能であるstage 1、耐糖能異常はあるが糖尿病を発症していないstage 2、そして糖尿病を発症してインスリン投与が必要となるstage 3へ進行するとされている1)。自己抗体が陽性であることから発症に何らかの自己免疫異常が関与していることは間違いないと考えられ、これまでに多くの介入試験が実施されてきたが、現在でもその発症予防は確立されていない。 1型糖尿病は一般に急性発症の疾患と理解されているが、実はほとんどの患者(劇症型は除く)では発症直後にβ細胞機能が完全に廃絶するのではなく、数週間から数ヵ月の間に次第に廃絶していくことが知られている。したがって、stage 3の患者をターゲットとして、自己免疫異常を是正することでβ細胞機能の廃絶を抑制することが試みられるようになった。本試験もこの考えに基づいており、対象となったのはstage 3に移行して100日以内で、インスリン分泌能がある程度残存している若年(6~21歳)患者とされた。自己免疫異常を是正する介入としては、抗TNF-α抗体であるゴリムマブが投与された。 結果は、ゴリムマブの投与により52週後の血清C-ペプチド分泌量はプラセボに比較して有意に高値であった。さらにβ細胞のストレス状態の指標であるプロインスリン/C-ペプチド比もゴリムマブ群で有意に低値であった。つまりゴリムマブ投与により進行性のβ細胞機能の廃絶が抑制されたことが明らかとなった。 本試験の対象は発症直後の1A型糖尿病患者であるが、この結果は2型糖尿病患者における進行性のβ細胞機能低下progressive β-cell failureを抑制する観点からも非常に興味ある結果である。炎症性サイトカインは、細胞内インスリンシグナルを阻害することでインスリン抵抗性を惹起する。しかし2型糖尿病が進行性である理由はインスリン抵抗性ではなく、進行性のβ細胞機能低下にあるとされている。glycemic durabilityを評価したADOPT2)においてチアゾリジン薬であるrosiglitazoneが最も有効であったことが報告されており、PPARγを介したrosiglitazoneの抗炎症作用が関与していると推測された。さらに前糖尿病から2型糖尿病への移行にもβ細胞機能低下が深く関与しているが、この過程も同じチアゾリジン薬であるピオグリタゾンにより抑制されることが示されている3)。しかしこれらの結果からは、チアゾリジン薬の抗炎症作用が2型糖尿病におけるβ細胞機能低下を抑制したか否かが証明されたわけではない。 本試験結果の意義は、炎症性サイトカインであるTNF-αを阻害することで進行性のβ細胞機能低下が抑制されることが証明された点にある。まだまだ検討されるべき課題は多いが、2型糖尿病治療においても抗炎症作用を考慮した血糖降下薬の選択が今後ますます重要となるかもしれない。

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SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendationを改訂/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2014年に策定された「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」を改訂し、2020年12月25日に第6版を公表した。 2017年9月以降より発売されているSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の配合薬の留意点、成人1型糖尿病患者におけるインスリン製剤との併用療法でのケトアシドーシスのリスクや注意点についてなどについて記載されている。学会では、これらの情報がさらに広く共有されることで、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されるように注意を促している。SGLT2阻害薬の適正使用に関する8つの Recommendation1)1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。2)インスリンやSU薬などインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。3)75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。4)脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。5)発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。また、手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。6)全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis:正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。7)本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。8)尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。そのほかの記載事項・副作用の事例と対策・重症低血糖・ケトアシドーシス・脱水・脳梗塞等・皮膚症状・尿路・性器感染症

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新型コロナとインフル、死亡率・症状の違いは?/BMJ

 季節性インフルエンザ入院患者と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者は肺外臓器障害・死亡リスクの上昇(死亡リスクは約5倍)、および医療資源使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間など)の増加と関連していることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。研究グループは、先行研究での季節性インフルエンザとCOVID-19の臨床症状や死亡率の比較は、それぞれ異なるデータおよび統計的手法を用いて行われ、「リンゴとリンゴ」での比較ではなかったとして、米国退役軍人省の入院データを用いて評価を行ったという。結果を踏まえて著者は、「本調査結果は、COVID-19と季節性インフルエンザの比較リスクに関する世界的な議論への情報提供になるとともに、COVID-19パンデミックへの継続的な対策に役立つ可能性があるだろう」と述べている。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。米国退役軍人の医療データを用いて違いを検証 研究グループは、米国退役軍人省の電子医療データベース(1,255のヘルスケア組織[170の医療センター、1,074の外来クリニックなど]を含む)を用いて、コホート研究を行った。 2020年2月1日~6月17日にCOVID-19で入院した患者(3,641例)と、2017~19年に季節性インフルエンザで入院した患者(1万2,676例)に関するデータを用いて、両者の臨床症状と死亡のリスクの違いを比較した。 主要評価項目は、臨床症状、医療資源の使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間)、死亡のリスクで、doubly robust法を用いて傾向スコアを構築し、また、共変量を用いてアウトカムモデルを補正して評価を行った。死亡率の違いは、CKDまたは認知症の75歳以上、黒人の肥満、糖尿病、CKDで顕著 季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、急性腎障害(オッズ比[OR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.37~1.69)、腎代替療法(4.11、3.13~5.40)、インスリン使用(1.86、1.62~2.14)、重度の敗血症性ショック(4.04、3.38~4.83)、昇圧薬使用(3.95、3.46~4.51)、肺塞栓症(1.50、1.18~1.90)、深部静脈血栓症(1.50、1.20~1.88)、脳卒中(1.62、1.17~2.24)、急性心筋炎(7.82、3.53~17.36)、不整脈および心突然死(1.76、1.40~2.20)、トロポニン値上昇(1.75、1.50~2.05)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値上昇(3.16、2.91~3.43)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値上昇(2.65、2.43~2.88)、横紋筋融解症(1.84、1.54~2.18)のリスクが高かった。 季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、死亡(ハザード比[HR]:4.97、95%CI:4.42~5.58)、人工呼吸器の使用(4.01、3.53~4.54)、ICU入室(2.41、2.25~2.59)および入院日数の増加(3.00、2.20~3.80)のリスクも高かった。 COVID-19入院患者と季節性インフルエンザ入院患者100人当たりの死亡率の違いは、慢性腎臓病または認知症の75歳以上の高齢者と、黒人種の肥満、糖尿病または慢性腎臓病で最も顕著だった。

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「セイブル」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第31回

第31回 「セイブル」の名称の由来は?販売名セイブル®錠25mg、セイブル®錠50mg、セイブル®錠75mgセイブル®OD錠25mg、セイブル®OD錠50mg、セイブル®OD錠75mg一般名(和名[命名法])ミグリトール(JAN)効能又は効果糖尿病の食後過血糖の改善(ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤、ビグアナイド系薬剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)用法及び用量通常、成人にはミグリトールとして1回50mgを1日3回毎食直前に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら1回量を75mgまで増量することができる。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液及びインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]2.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]3.本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者4.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2020年12月23日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年8月改訂(第18版)医薬品インタビューフォーム「セイブル®錠25mg・50mg・75mg/セイブル®OD錠25mg・50mg・75mg」2)三和化学研究所:医薬品一覧

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世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠3mg/7mg/14mg」【下平博士のDIノート】第64回

世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠3mg/7mg/14mg」今回は、2型糖尿病治療薬「セマグルチド(商品名:リベルサス錠3mg/7mg/14mg、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は、世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬であり、注射剤に抵抗がある患者さんであってもQOLを損ねずに良好な血糖コントロールを得られることが期待できます。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2020年6月29日に承認、同年11月18日に薬価収載されています。<用法・用量>通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として1日1回3mgを開始用量として経口投与し、4週間以上投与した後に1日1回7mgの維持用量に増量します。1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgまで増量することができます。なお、本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、1日の最初の飲水・食事前にコップ半分の水(約120mL以下)とともに本剤を服用します。服用時および服用後少なくとも30分は、飲食およびほかの薬剤の経口摂取を避ける必要があります。分割や粉砕、かみ砕いて服用することはできません。<安全性>日本人が参加した第III相臨床試験(併合データ)において、安全性評価対象症例3,290例中1,166例(35.4%)に副作用が認められました。主な副作用は、悪心355例(10.8%)、下痢204例(6.2%)、食欲減退147例(4.5%)、便秘143例(4.3%)、嘔吐142例(4.3%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、急性膵炎(0.1%)、低血糖(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は膵臓に作用して、血糖値が高くなった際にインスリンの分泌を促すことで血糖値を下げます。2.1日の最初の飲食の前に、空腹の状態でコップ約半分の水とともに服用してください。その後の飲食や他剤の服用は、本剤の服用から少なくとも30分経ってからにしてください。3.本剤は吸湿性が強いため、服用直前にシートから取り出してください。また、割ったりかんだりしないでください。4.冷や汗が出る、血の気が引く、手足の震えなど、低血糖が考えられる症状が発現した場合は、速やかに砂糖かブドウ糖が含まれる飲食物を摂取してください。高所作業、自動車の運転などを行う際は十分に注意してください。5.胃の不快感、便秘、下痢などの消化器症状が起こることがあります。症状が長く続く場合や、嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛などが現れた場合は、すぐに病院か薬局に連絡してください。<Shimo's eyes>本剤は初の経口GLP-1受容体作動薬であり、同成分の皮下注製剤(商品名:オゼンピック)は一足早く発売されています。GLP-1受容体作動薬は分子量が大きいため、胃からの吸収が難しく、消化酵素により分解されやすいこともあり、これまで注射剤しかありませんでした。本剤は、サルカプロザートナトリウム(SNAC)と呼ばれる吸収促進剤を添加することで、胃からの吸収が促進され、生物学的利用能が高まったことから経口投与が可能となりました。本剤の吸収は錠剤表面の周辺部に限定されることから、SNACの含有量の差異および物理的に2つの錠剤が胃内に存在すると本剤の吸収に影響を及ぼす可能性があるため、本剤14mgを投与する際に7mg錠を2錠で投与することはできません。また、本剤のシートをミシン目以外で切って保管すると、湿気などの影響を受ける恐れがあります。そのため、調剤の際はとくに注意が必要です。臨床効果については、2型糖尿病患者を対象とした2つの国内試験、国際共同試験、海外臨床試験などで、HbA1cの持続的な改善効果が示されました。また、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン、DPP-4阻害薬、さらにGLP-1受容体作動薬リラグルチド皮下注などとの比較試験においても、HbA1cや体重の低下量は同等かより良好な結果を示しています。本剤を含むGLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、いずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有しており、併用した場合の有効性および安全性は確認されていないため、両剤が処方されている場合は疑義照会が必要です。本剤の吸収は胃の内容物により低下するため、起床後に空腹の状態で服用し、その後の30分間は何も飲食してはいけないなど、特別な注意が必要です。患者さんの理解度を確かめながら指導とフォローアップをしっかり行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 リベルサス錠3mg/リベルサス錠7mg/リベルサス錠14mg

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