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進行期古典的ホジキンリンパ腫の1次治療、BrECADDが有効/Lancet

 進行期の古典的ホジキンリンパ腫の成人患者に対する1次治療において、ブレオマイシン+エトポシド+ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プロカルバジン+prednisone(eBEACOPP)療法と比較して、2サイクル施行後のPET所見に基づくbrentuximab vedotin+エトポシド+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ダカルバジン+デキサメタゾン(BrECADD)療法は、忍容性が高く、無増悪生存(PFS)率を有意に改善することが、ドイツ・ケルン大学のPeter Borchmann氏らAustralasian Leukaemia and Lymphoma Groupが実施した「HD21試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月3日号に掲載された。9ヵ国233施設の無作為化第III相試験 HD21試験は、欧州7ヵ国とオーストラリア、ニュージーランドの合計9ヵ国233施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2016年7月~2020年8月に患者を登録した(Takeda Oncologyの助成を受けた)。 新規に診断された進行期の古典的ホジキンリンパ腫(Ann Arbor病期分類のStageIII/IV、B症状を呈するStageII、リスク因子として大きな縦隔病変および節外病変のいずれか、または両方を有する)で、60歳以下の成人患者1,482例(ITT集団)を登録し、BrECADD群に742例、eBEACOPP群に740例を無作為に割り付けた。 両群とも試験薬を21日間隔で投与した。2サイクル(PET-2)および最終サイクルの終了後にPETまたはCTによる奏効の評価を行い、PET-2の所見に基づきその後のサイクル数を決定した。 主要評価項目は、(1)担当医評価による忍容性(投与開始から終了後30日までの治療関連疾患の発生)、および(2)有効性(PFS)に関するBrECADD群のeBEACOPP群に対する非劣性とし、非劣性マージンを6%に設定した。治療関連疾患は、有害事象共通用語規準(CTCAE)のGrade3/4の急性非血液学的臓器毒性、およびGrade4の急性血液毒性と定義した。PFSの優越性を確認 ベースラインの全体の年齢中央値は31歳(四分位範囲[IQR]:24~42)、644例(44%)が女性で、1,352例(91%)が白人であった。 1つ以上の治療関連疾患が発生した患者は、eBEACOPP群が732例中430例(59%)であったのに対し、BrECADD群では738例中312例(42%)と有意に少なかった(相対リスク:0.72、95%信頼区間[CI]:0.65~0.80、p<0.0001)。 PFSの中間解析で、BrECADD群の非劣性が確認されたため優越性の検定を行った。追跡期間中央値48ヵ月の時点における4年PFS率は、eBEACOPP群が90.9%(95%CI:88.7~93.1)であったのと比較して、BrECADD群は94.3%(92.6~96.1)と有意に良好だった(ハザード比[HR]:0.66、95%CI:0.45~0.97、p=0.035)。 また、4年全生存率は、BrECADD群が98.6%(95%CI:97.7~99.5)、eBEACOPP群は98.2%(97.2~99.3)であった。血液学的治療関連疾患が有意に少ない 血液学的治療関連疾患は、eBEACOPP群では732例中382例(52%)で発現したのに対し、BrECADD群では738例中231例(31%)と有意に少なかった(p<0.0001)。これは、赤血球輸血(52% vs.24%)および血小板輸血(34% vs.17%)がBrECADD群で少なかったことに反映されている。Grade3以上の感染症の発生(19% vs.20%)は両群で同程度であった。 ホジキンリンパ腫による死亡は、BrECADD群で3例、eBEACOPP群で1例に認めた。治療関連死はeBEACOPP群で3例にみられた。また、2次がんは、BrECADD群で742例中19例(3%)、eBEACOPP群で740例中13例(2%)に発生した。 著者は、「この第III相試験の結果に基づき、BrECADDは新規に診断された進行期古典的ホジキンリンパ腫の成人患者に対する標準的な治療選択肢となることが期待される」としている。

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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、QOLの評価(KEYNOTE-522)

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)への術前・術後のペムブロリズマブ追加を検討したKEYNOTE-522試験で、主要評価項目の病理学的完全奏効と無イベント生存期間の有意な改善はすでに報告されている。今回、副次評価項目の患者報告アウトカムにおいてペムブロリズマブ追加による実質的な差は認められなかったことを、シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏らがJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版2024年6月24日号で報告した。 本試験の対象は、治療歴のない高リスク早期TNBC患者で、術前にペムブロリズマブ(3週ごと)+パクリタキセル+カルボプラチンを4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン(またはエピルビシン)を4サイクル、術後にペムブロリズマブを最長9サイクル投与する群と、術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与する群に2対1に無作為に割り付けられた。事前に規定された副次評価項目のEORTC QLQ-C30およびQLQ-BR23について、ベースライン(術前、術後の1サイクル目の1日目)から、完遂率/コンプライアンス率60%/80%以上であった最後の週までの変化の最小二乗平均の群間差を縦断モデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・完遂率/コンプライアンス率が60%/80%以上の最後の週は、術前では21週、術後では24週であった。・術前では、ベースラインから21週目までの変化の最小二乗平均の群間差(ペムブロリズマブ+化学療法[762例]vs.プラセボ+化学療法[383例])は、GHS/QOLが-1.04(95%信頼区間[CI]:-3.46~1.38)、情緒機能が-0.69(同:-3.13~1.75)、身体機能が-2.85(同:-5.11~-0.60)であった。・術後では、ベースラインから24週目までの変化の最小二乗平均の群間差(ペムブロリズマブ[539例]vs.プラセボ[308例])は、GHS/QOLが-0.41(95%CI:-2.60~1.77)、情緒機能が-0.60(同:-2.99~1.79)、身体機能が-1.57(同:-3.36~0.21)であった。

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ASCO2024 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、1964年の創立以来「がんが予防または治癒されすべてのサバイバーが健康である世界」というビジョンを掲げ活動してきた、がん治療研究のための学会であり、世界各国に5万人近くの会員を有する。年1回の総会は、世界のがん研究者が注目する研究成果が発表される機会であり、2024年は5月31日から6月4日まで米国イリノイ州のシカゴで行われた。COVID-19のまん延があった2020~22年にかけてon-line参加のシステムが整い、現地参加と何ら変わりなく学会参加が可能となったため、今年はon-lineでの参加を選択した。泌尿器科腫瘍の演題は、Oral Abstract Session 18(前立腺9、腎5、膀胱4)、Rapid Oral Abstract Session 18(前立腺8、腎4、膀胱4、陰茎1、副腎1)、Poster Session 112で構成されていた。ASCOはPractice Changingな重要演題をPlenary Sessionとして5演題選出するが、今年は泌尿器カテゴリーからは選出されなかった。Practice Changingな演題ではなかったが、新しい見地を与えてくれる演題が多数あり、ディスカッションは盛り上がっていた。今回はその中から4演題を取り上げ報告する。Oral Abstract Session 腎/膀胱4508 淡明細胞腎がん1次治療のアベルマブ+アキシチニブ、PFSを延長(JAVELIN Renal 101試験)Avelumab + axitinib vs sunitinib in patients (pts) with advanced renal cell carcinoma (aRCC): Final overall survival (OS) analysis from the JAVELIN Renal 101 phase 3 trial.Robert J. Motzer, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NYJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 4508)JAVELIN Renal 101試験は、転移性淡明細胞腎がんにおける1次治療としてアベルマブ+アキシチニブ(AVE+AXI)をスニチニブ(SUN)と比較するランダム化第III相試験であり、無増悪生存期間(PFS)の延長が示され、すでに報告されている。この転移性腎細胞がんにおける1次治療の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の組み合わせは、そのほかにもペムブロリズマブ+レンバチニブ、ニボルマブ+カボザンチニブ、ペムブロリズマブ+アキシチニブがあり、いずれも全生存期間(OS)の延長が報告されているだけに、このAVE+AXIのOS結果も注目されていた。この報告は、フォローアップ期間最小値68ヵ月における最終解析である。プライマリ・エンドポイントは2つ設定され、PD-L1陽性の転移性腎細胞がんにおける中央判定によるPFSとOSである。全体集団における解析はセカンダリ・エンドポイントに設定されていた。PD-L1陽性集団のOS中央値は、SUN 36.2ヵ月、AVE+AXI 43.2ヵ月、ハザード比 (HR):0.86(95%信頼区間[CI]:0.701~1.057、p=0.0755)であり、ネガティブな結果であった。全体集団でのOS中央値は、SUN 38.9ヵ月、AVE+AXI 44.8ヵ月、HR:0.88(95%CI:0.749~1.039、p=0.0669)であり、こちらも有意差なしの結果となった。全体集団のOSのサブグループ解析では、とくに効果不良を示唆する群はないが、IMDCリスク分類のPoorリスクにおいてはSUNとの差は開く傾向(HR:0.63、95%CI:0.43~0.92)があった。有害事象(AE)に関し、Grade3以上の重篤なAEはSUN群61.5%とAVE+AXI群66.8%であったが、AVE+AXIにおける免疫関連有害事象(irAE)は全体で50.7%、重篤なものは14.7%であった。この結果により、ICI+TKI療法のすべての治療成績がそろったことになる。ICI単剤においては、抗Programmed death(PD)-1抗体か抗PD-ligand(L)1かの違いによる影響があるかどうか確かな証拠はないが、抗PD-1抗体のみがOS延長を証明できたことになる。またTKI単剤の比較において、VEGFR(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor)を強く阻害しつつ耐性化にも対応できる新世代のTKIであるカボザンチニブとレンバチニブのレジメンがより良い治療成績を示した。試験間における患者背景の差はあるものの、薬効の違いもICI+TKI療法の効果に影響しているのではないかと感じる。とはいえ、目の前の患者にICI+ICI療法かICI+TKI療法か、いずれを選択するのがベストかの問いに答えられる臨床試験は行われておらず、PFSやOSだけでなく奏効割合や病勢増悪割合、合併症、治療環境なども加味し、患者との話し合いの下で決定していく現状は今後も変わらないだろう。Oral Abstract Session 前立腺/陰茎/精巣LBA5000 去勢抵抗性前立腺がんのカバジタキセル+アビラテロン併用療法はPFSを延長(CHAARTED2試験)Cabazitaxel with abiraterone versus abiraterone alone randomized trial for extensive disease following docetaxel: The CHAARTED2 trial of the ECOG-ACRIN Cancer Research Group (EA8153). Christos Kyriakopoulos, University of Wisconsin Carbone Cancer Center, Madison, WIJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 17; abstr LBA5000)CHAARTED試験は、転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC)におけるアンドロゲン除去療法(ADT)に加えUpfrontにドセタキセル(DTX)を6サイクル行うことでOS延長が証明された重要な試験であった。これにより、DTXがアンドロゲン耐性クローンも含め初期に量を減らすことに寄与する、という仮説が立証されたと考えられている。CHAARTED2試験は、初回にDTXが行われた患者に対し、アンドロゲン受容体(AR)阻害薬に加えカバジタキセル(CBZ)をさらに加えることで、AR阻害薬の効果が延長するかを検討するランダム化比較第II相試験であった。3サイクル以上のDTX治療歴があるmCRPC患者を、アビラテロン(ABI)1,000mg+プレドニゾロン(PSL)10mg群とABI+PSLに加えCBZ 25mg/m2 3週ごとを6サイクルまで行う群に1:1でランダム化した。プライマリ・エンドポイントはPFS延長(HR:0.67、α=0.10、β=0.10)と設定された。患者背景は、Gleason score 8~10が83%、High-volumeが76%含まれる集団であり、両群にバランスよく割り付けられていた。PFS中央値は、ABI+PSL群で9.9ヵ月、ABI+PSL+CBZ群で14.9ヵ月、HR:0.73(80%CI:0.59~0.90、p=0.049)と有意差を認めた。セカンダリ・エンドポイントのOSは、HR0.93であり、今回の検討ではアンダーパワーではあるが有意差を認めなかった。AEでは、重篤なものは26.7%と42.2%であり、ABI+PSL+CBZ群で多く報告された。Kyriakopoulos氏は、CBZ追加によるOS延長は認められなかったものの、PFSやPSA(Prostate Specific Antigen)増悪までの期間の延長は認められたことから仮説は証明できたことを報告した。とはいえ、現在のmCSPCの初期治療は3剤併用療法(AR阻害薬+DTX+ADT)であることから、日常診療に与える影響は限られると結んだ。Rapid Oral Abstract Session 前立腺/陰茎/精巣5009 陰茎がん1次治療のペムブロリズマブ併用化学療法(HERCULES試験)A phase II trial of pembrolizumab plus platinum-based chemotherapy as first-line systemic therapy in advanced penile cancer: HERCULES (LACOG 0218) trial.Fernando Cotait Maluf, Hospital Beneficencia Portuguesa de Sao Paulo and Hospital Israelita Albert Einstein; LACOG (Latin American Cooperative Oncology Group), Sao Paulo, BrazilJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 5009)希少がんである進行陰茎がんにおける1次治療の免疫療法追加のエビデンスが報告された。陰茎がんの発生は、アフリカやアジア、中南米などの低所得国に多いことが知られているが、ブラジルで行われた単群第II相試験の結果である。陰茎がんの標準治療として無治療と比較したランダム化試験はないが、プラチナ併用レジメンを基本としている。NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインによると、preferred regimenとして3剤併用のTIP療法(パクリタキセル+イホスファミド+シスプラチン)、other recommended regimenとしてFP療法(5FU+シスプラチン)が提示されている。TIP療法はFP療法と比べると、奏効割合が40%程度と高いが、AEの割合も高く忍容性は問題となることが多い。Maluf氏らは、初発の転移性陰茎がん患者に対し、シスプラチン70mg/m2あるいはカルボプラチンAUC 5 day1と5FU 1,000mg/m2 day1~4に加えペムブロリズマブ200mgを3週間ごとに6サイクル実施後、ペムブロリズマブのみを維持療法として34サイクル実施するレジメンの治療成績を報告した。プライマリ・エンドポイントは奏効割合であり、統計設定は奏効割合期待値40%、閾値20%、両側α=0.1、β=0.215として33症例が必要であると計画された。患者37例が登録され、年齢中央値56歳、白人40.5%が含まれていた。奏効割合は39.4%(95%CI:22.9~57.9%)でありポジティブな結果であった。PFS中央値は5.4ヵ月(95%CI:2.7~7.2)、OS中央値は9.6ヵ月(95%CI:6.4~13.2)であった。サブグループ解析では、TMB(Tumor Mutational Burden)高値(≧10)と低値(<10)の奏効割合は75%と36.4%、HPV-16陽性と陰性では55.6%と35%であり、PD-L1陽性、陰性による一定の傾向はなかった。AEは全Gradeで91.9%、Grade3以上で51.4%であり、治療関連死はなかった。このHERCULES試験により、ペムブロリズマブ+FP療法は転移性陰茎がんの新たな治療オプションとなった、と報告された。日本においてこのレジメンは保険承認が得られず適用は困難だが、陰茎がんが希少がんであることを考慮すると、診断時より遺伝子パネル検査を行うことでICI使用の機会を逃さないよう注意を払う必要がある。Rapid Oral Abstract Session 腎/膀胱4510 尿膜管がん1次治療のmFOLFINOX療法(ULTMA試験)A multicenter phase II study of modified FOLFIRINOX for first-line treatment for advanced urachal cancer (ULTMA; KCSG GU20-03).Jae-Lyun Lee, Asan Medical Center, University of Ulsan College of Medicine, Seoul, South KoreaJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 4510)希少がんの重要なエビデンスとして、膀胱尿膜管がんの単群第II相試験の結果も注目すべき演題の1つである。尿膜管がんは膀胱がんのうち1%未満の発生割合で、標準治療が確立していないがんであるが、病理組織の特徴は消化器がんに類似することから、5FU系、プラチナ系薬剤での治療が適用されることが多く、その有効性が報告されている。Lee氏らは、modified FOLFIRINOXレジメン(オキサリプラチン85mg/m2 day1、イリノテカン150mg/m2 day1、ロイコボリン400mg/m2 day1、5FU 2,400mg day1をそれぞれ2時間、1.5時間、2時間、46時間かけて静注)に、支持療法としてペグフィルグラスチム6mg皮下注を3日目、予防的抗菌薬として少なくとも最初の2サイクルはレボフロキサシン750mgを4~7日目に内服し、2週間を1サイクルとして最大12サイクルまで継続する治療プロトコールを開発し、その治療成績を報告した。プライマリ・エンドポイントは奏効割合であり、期待値35%、閾値17%、α=0.05、β=0.2に設定された。2021年4月~2023年11月の2年7ヵ月間に韓国の5施設で実施した試験であった。患者背景は、年齢中央値50歳(28~68)、PSは0/1がそれぞれ3/18例であった。奏効割合は61.9%(95%CI:41.1~82.7)であり、病勢増悪例は0例であった。PFS中央値は9.3ヵ月(95%CI:6.7~11.9)、OS中央値は19.7ヵ月(95%CI:14.3~25.1)であった。安全性では、Grade 3以上の重篤なものは、貧血2例、好中球減少1例、血小板減少1例、嘔気1例、下痢1例であったが、Grade2の発生は、血小板減少3例、嘔気8例、嘔吐2例、下痢1例、口内炎3例、倦怠感6例、末梢神経障害5例であった。発熱性好中球減少症や治療関連死は認めなかった。演者らは、mFOLFIRINOX療法は膀胱尿膜管がんの新たな治療選択肢として考慮されるべきであると締めくくった。尿膜管がんでも大腸がんと同様に、triplet therapyがdoublet therapyより数値上高い奏効割合を示すことができた試験であったのは、生物学的特性が類似していることを反映すると思われる。また、毒性の強いレジメンに安全性を高める工夫が最大限盛り込まれたプロトコールになっていることで、今回の良い結果を生んだと思われた。この試験の患者背景で特徴的なのは、患者の年齢が若いことと、PS不良例は含まれていないことも重要なポイントである。

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aggressive ATLに対する同種造血幹細胞移植の有効性(JCOG0907)/ASCO2024

 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)のうち、急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型のATL(aggressive ATL)は予後不良で、化学療法による生存期間中央値は約1年と報告されている。一方、aggressive ATLへの同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)による3年全生存割合(OS)は約40%とされるが、その多くが後ろ向き解析に基づくものである。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、aggressive ATLに対するallo-HSCTの有効性と安全性を検証するため、第III相単群検証的試験(JCOG0907)を実施。琉球大学の福島 卓也氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で結果を発表した。・対象:allo-HSCTの実施に前向きな、未治療のaggressive ATL患者(血清抗HTLV-I抗体陽性、≦65歳[試験開始時は≦55歳に対する骨髄破壊的移植(MAST)のみであったが、2014 年9月にプロトコルを改訂し56~65歳に対する骨髄非破壊的移植(RIST)を組み込んだ]、ECOG PS≦3、十分な臓器機能を維持、中枢神経系浸潤なし)・治療プロトコル:1)導入化学療法(VCAP/AMP/VECP 療法※2014年9月に一時的にモガムリズマブ併用も可としたがその後不可とした)2)allo-HSCT[血縁ドナー]MAST:ブスルファン12.8mg/kg+シクロホスファミド120mg/kg、GVHD予防(シクロスポリン+short termメトトレキサート[sMTX])RIST:ブスルファン12.8mg/kg+フルダラビン180mg/m2、GVHD予防(シクロスポリン)[非血縁ドナー]MAST:全身放射線照射(12Gy)+シクロホスファミド120mg/kg、GVHD予防(タクロリムス+sMTX)RIST:ブスルファン+フルダラビン+全身放射線照射(2Gy)、GVHD予防(タクロリムス+sMTX)・評価項目:[主要評価項目]全登録患者における3年OS 主な結果は以下のとおり。・2010年9月~2020年6月に、110 例(急性型72例、リンパ腫型27例、予後不良因子を有する慢性型9例、予後不良因子のない慢性型1例、ホジキンリンパ腫1例)が登録された。年齢中央値は55(33~65)歳、男性/女性=54/56例、PS 0/1/2/3=56/49/3/2例であった。・何らかのallo-HSCTを受けた全92例の患者のうち、試験治療としてのallo-HSCT実施は41例(MAST 19例/RIST 22例、血縁12例/非血縁29例[試験移植群])、後治療としてのallo-HSCT実施は51例(MAST11例/RIST40例、血縁11例/非血縁15例/臍帯血25例[非試験移植群])で、後者のうち 35例が初回寛解中、16例が進行/再発後のallo-HSCT 実施であった。・登録された110例の3年OSは44.0%(90%信頼区間[CI]:36.0~51.6)で、目標とする閾値(両側90%CIの下限値25%)を上回り主要評価項目は達成された。・移植実施までの期間中央値は、試験移植群4.7ヵ月、非試験移植群4.3ヵ月で、両群に差を認めなかった。・年齢とPSで調整し、移植実施の有無を時間依存共変量とした多変量解析によるOSハザード比は、試験移植群vs.非試験移植群が0.92(95%CI:0.55~1.51)で試験移植群に延命効果を認めなかったが、upfront移植(試験移植群と非試験移植群のうち初回寛解中の移植実施例)vs.移植非実施群が0.65(0.33~1.31)で、upfront allo-HSCTは延命効果を示した。・ドナーソース別にみたOSハザード比は、非血縁vs.血縁が0.94(95%CI:0.49~1.79)、臍帯血vs.血縁が1.20(0.59~2.46)で、ドナーソース間で生存に有意差を認めなかった。・試験移植群41例のうち、治療関連死は血縁者間移植16.7%、非血縁者間移植20.7%で、一時的に試験中止とする基準を下回った。死亡全70例の死因は、原病34例、試験移植関連9例、非試験移植関連21例、その他の疾患6例であった。 福島氏は、未治療のaggressive ATLに対するallo-HSCT について、本試験で採用した移植法は延命効果が明確でなかったが、初回寛解時にできる限り早期に移植を実施する治療戦略であるupfront allo-HSCTは推奨されると結論付けた。

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人間の精巣からマイクロプラスチックを検出

 マイクロプラスチックが男性に特殊な危険をもたらす可能性を示唆する新たな知見が、米ニューメキシコ大学薬学部指導教授のMatthew Campen氏らの研究によって得られた。この研究では、人間の精巣の中には動物の精巣や人間の胎盤と比べて3倍ものマイクロプラスチックが存在していることが示された。この研究の詳細は、「Toxicological Sciences」5月15日号に掲載された。 Campen氏はCNNの取材に対して、「これは警戒すべき状況であり、注意深く見ていく必要がある」と語り、「われわれの体内にどれほど多くのプラスチックが存在しているのかが分かりつつあるところだ。この問題について重点的に研究して、マイクロプラスチックが不妊や精巣がん、その他のがんの発生に何らかの影響を与えているのかどうかを確認する必要がある」と語っている。 マイクロプラスチックの体内での動態に関するエビデンスはすでに蓄積が進んでいる。例えば、体内に取り込まれたマイクロプラスチックが主要な臓器の細胞や組織に侵入して細胞プロセスを阻害する可能性のあることや、マイクロプラスチックにビスフェノール類、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)、重金属などの内分泌かく乱化学物質が吸着する可能性のあることが、エビデンスとして示されている。 米国内分泌学会によれば、内分泌かく乱化学物質は、性器の奇形や生殖異常、女性の不妊や男性の精子数の減少を引き起こす可能性がある。特に男性の精子数に関しては、米国を含む世界の国々で過去50年間に50%以上減少したことが報告されている。 今回の研究でCampen氏らは、47匹の犬と、死亡時の年齢が16歳から88歳だった男性23人の精巣サンプルを用いて、12種類のマイクロプラスチックの量を調べて比較した。その結果、全てのサンプルからマイクロプラスチックが検出され、人間でのその濃度は犬の約3倍であることが明らかになった(犬:平均122.63μg/g、人間:328.44μg/g)。Campen氏は、犬は床に落ちたものを食べることを指摘した上で、「この結果から、われわれが自分たちの体の中に何を取り込んでいるのかが良く分かる」と話している。 また、研究グループは今回の研究で、男性が高齢になるほどより多くのマイクロプラスチックが見つかると予測していたが、実際にはそうではないことも示された。Campen氏は、「男性の生殖のピークである20歳から45歳までの間はマイクロプラスチック濃度が高く、55歳を過ぎると濃度は低下し始めるようだ。このことは、人体がこれらのマイクロプラスチックを除去できることを示唆している」と述べている。ただ、この結果のポジティブとはいえない側面として、若い人の精巣はエネルギー必要量が多いため、「精巣に、より多くのマイクロプラスチックが引き込まれる可能性がある」とCampen氏は付け加えている。 Campen氏らはさらに、今回の研究で確認された精巣組織中のマイクロプラスチック濃度を、同氏らの先行研究で確認された、62人の人間の胎盤中のマイクロプラスチック濃度と比較した。この研究では、調べた全ての胎盤サンプルから組織1g当たり6.5~790μg(平均126.8μg/g)のマイクロプラスチックが検出されていた。その結果、「精巣中のマイクロプラスチック濃度は胎盤で確認された濃度の3倍であった」とCampen氏はいう。ただし、同氏は「胎盤の寿命は約8カ月程度であることを考慮する必要がある」と付け加えている。 これらの結果を踏まえてCampen氏は、「われわれがさらされているプラスチックの数は、10~15年ごとに倍増しているのが現状だ。15年後に2倍、30年後に4倍の量にさらされたとき、何が起こるのだろうか。それが、今すぐに対策が必要な理由だ」と話し、警鐘を鳴らしている。

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高リスク早期乳がんへのテーラードdose-dense化学療法、10年時解析で無再発生存期間を改善(PANTHER)/ESMO BREAST 2024

 高リスク早期乳がん患者において、テーラードdose-dense化学療法は標準化学療法と比較して10年間の乳がん無再発生存期間(BCRFS)を改善し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のTheodoros Foukakis氏が、第III相PANTHER試験の長期追跡調査結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。・対象:18~65歳、リンパ節転移陽性もしくは高リスクリンパ節転移陰性で、初回手術後の乳がん患者・試験群(tdd群):白血球最下点を基にエピルビシン+シクロホスファミドを2週ごと4サイクル、その後ドセタキセルを2週ごと4サイクル(用量は前サイクルの血液毒性に応じて調整)・対照群(標準化学療法群):フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミドを3週ごと3サイクル、その後ドセタキセルを3週ごと3サイクル・評価項目:[主要評価項目]BCRFS[副次評価項目]5年無イベント生存期間(EFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、Grade3/4の有害事象発現率 主な結果は以下のとおり。・2007年2月~2011年9月にスウェーデン、ドイツ、オーストリアの施設から2,017例を登録、2,003例が解析対象とされ、両群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値10.3年において、tdd群は標準化学療法群と比較して主要評価項目であるBCRFSを有意に改善した(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.65~0.98、log-rank検定のp=0.041、10年イベント率:18.6% vs.22.3%、絶対差:3.7%±1.9%)。・BCRFSの改善は、ホルモン受容体やHER2の発現状況、病期、およびそのほかの人口統計学的・病理学的要因によらずサブグループ全体で認められたが、とくに50歳以上のホルモン受容体陽性患者でdose-denseスケジュールによる一貫したベネフィットがみられたほか、術後にトラスツズマブ投与を受けたHER2陽性患者では用量強化によるベネフィットがみられた。・DDFSはtdd群で有意な改善がみられたが(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、log-rank検定のp=0.039)、OSについては有意な差はみられなかった(HR:0.82、95%CI:0.65~1.04、log-rank検定のp=0.095)。 Foukakis氏は今回の結果を受けて、術後の高リスク早期乳がん患者において、dose-denseスケジュールは標準治療として考慮されるべきではないかとし、また毒性に応じた用量調整は化学療法を最適化するために有望な戦略であるとして、さらなる研究が必要と結んだ。

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未治療MCL、免疫化学療法+イブルチニブ±ASCT(TRIANGLE)/Lancet

 未治療・65歳以下のマントル細胞リンパ腫(MCL)患者において、自家造血幹細胞移植(ASCT)+免疫化学療法へのイブルチニブ追加はASCT+免疫化学療法に対する優越性を示したが、ASCT後のイブルチニブの投与継続により有害事象が増加した。ドイツ・ミュンヘン大学病院のMartin Dreyling氏らEuropean Mantle Cell Lymphoma Networkが欧州13ヵ国およびイスラエルの165施設で実施した無作為化非盲検第III相優越性試験「TRIANGLE試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「導入療法および維持療法にイブルチニブを追加することは、65歳以下のMCL患者の1次治療の一部とすべきで、イブルチニブを含むレジメンにASCTを追加するかどうかはまだ決定されていない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年5月2日号掲載の報告。治療成功生存期間(FFS)を評価 TRIANGLE試験の対象は、組織学的にMCLと確定診断された未治療の、Ann Arbor病期II~IV、測定可能な病変が1つ以上、Eastern Cooperative Oncology Groupのパフォーマンスステータスが2以下の、ASCTの適応がある18~65歳の患者であった。 研究グループは、被験者をASCT+免疫化学療法群(A群)、ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群(A+I群)、免疫化学療法+イブルチニブ群(I群)の3群に、試験グループおよびMCL国際予後指標リスクで層別化し、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 3群とも導入免疫化学療法は、R-CHOP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone)と、R-DHAP(リツキシマブ+デキサメタゾン+シタラビン+シスプラチン)またはR-DHAOx(リツキシマブ+デキサメタゾン+シタラビン+オキサリプラチン)を交互に6サイクル行った。A+I群およびI群ではR-CHOPサイクルの1~19日目にイブルチニブ(560mg/日経口投与)を追加した。その後、A群およびA+I群ではASCTを施行し、A+I群ではASCT後に、I群では導入免疫化学療法に引き続き、イブルチニブによる維持療法(560mg/日経口投与)を2年間継続した。なお、3群とも、リツキシマブ維持療法を3年間追加することが可能であった。 主要評価項目は、治験責任医師評価による治療成功生存期間(failure-free survival:FFS[導入免疫化学療法終了時に安定、進行、または死亡のうちいずれかが最初に起こるまでの期間と定義])で、3つのペアワイズ片側ログランク検定により比較し、ITT解析を行った。 2016年7月29日~2020年12月28日に、計870例(男性662例、女性208例)が無作為化され(A群288例、A+I群292例、I群290例)、そのうち866例が導入療法を開始した。イブルチニブ併用+ASCTで3年治療成功生存率88%、ただしGrade3~5の有害事象が増加 追跡期間中央値31ヵ月において、3年FFS率はA群72%(95%信頼区間[CI]:67~79)、A+I群88%(84~92)であり、A+I群のA群に対する優越性が認められた(ハザード比[HR]:0.52、片側98.3%CI:0.00~0.86、片側p=0.0008)。一方、I群の3年FFS率は86%(95%CI:82~91)であり、A群のI群に対する優越性は示されなかった(HR:1.77、片側98.3%CI:0.00~3.76、片側p=0.9979)。A+I群とI群の比較検討は現在も進行中である。 有害事象については、導入療法中またはASCT中のGrade3~5の有害事象の発現率について、R-CHOP/R-DHAP療法とイブルチニブ併用R-CHOP/R-DHAP療法で差は認められなかった。 一方、維持療法中または追跡調査中においては、ASCT+イブルチニブ(A+I群)が、イブルチニブのみ(I群)やASCT(A群)と比較してGrade3~5の血液学的有害事象および感染症の発現率が高く、A+I群では血液学的有害事象50%(114/231例)、感染症25%(58/231例)、致死的感染症1%(2/231例)が、I群ではそれぞれ28%(74/269例)、19%(52/269例)、1%(2/269例)が、A群では21%(51/238例)、13%(32/238)、1%(3/238例)が報告された。

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乳がん免疫療法中の抗菌薬投与が予後に影響?

 ペムブロリズマブによる術前治療中のHER2陰性高リスク早期乳がん患者において、抗菌薬の投与と高い残存腫瘍量(RCB)との関連が示唆された。これまで、免疫療法中の抗菌薬への曝露が、さまざまな種類のがんにおいて臨床転帰に悪影響を与えることが報告されている。米国・ミネソタ大学のAmit A. Kulkarni氏らは、ISPY-2試験でペムブロリズマブが投与された4群について、抗菌薬への曝露がRCBおよび病理学的完全奏効(pCR)へ与える影響について評価した2次解析の結果を、NPJ Breast Cancer誌2024年3月26日号に報告した。 ISPY-2試験では、ペムブロリズマブの4サイクル投与と同時にパクリタキセルを12週間投与し、その後ドキソルビシンとシクロホスファミドを2~3週間ごとに4サイクル投与した。免疫療法(IO)と同時に少なくとも1回の抗菌薬の全身投与を受けた患者が抗菌薬曝露群に、それ以外のすべての患者が対照群に割り付けられた。 RCBインデックスとpCR率は、t検定とカイ二乗検定、線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを使用してそれぞれ両群間で比較された。 主な結果は以下のとおり。・66例が解析に含まれ、うち18例(27%)が抗菌薬投与を受けていた。・免疫療法中の抗菌薬の投与は、より高い平均RCBスコア(1.80±1.43 vs.1.08±1.41)および低いpCR率(27.8% vs.52.1%)と関連していた。・抗菌薬の投与とRCBスコアについて、多変量線形回帰分析においても有意な関連がみられた(RCBインデックス係数:0.86、95%信頼区間:0.20~1.53、p=0.01)。 著者らは、より大規模なコホートでの検証が必要としている。

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進行滑膜肉腫、T細胞受容体療法が有効/Lancet

 既治療のHLA-A*02およびMAGE-A4発現滑膜肉腫患者において、afamitresgene autoleucel(afami-cel)治療は持続的な奏効をもたらしたことが示された。米国・スローンケターリング記念がんセンターのSandra P. D'Angelo氏らが、カナダ、米国、欧州の23施設で実施された非無作為化非盲検第II相試験「SPEARHEAD-1試験」の3つのコホートのうち、主たる治験コホートであるコホート1の結果を報告した。afami-celは第I相試験において、忍容性および安全性が確認され有望な有効性が示されていた。著者は、「本研究は、T細胞受容体療法を用いて効果的に固形腫瘍を標的とした治療が可能であることを示し、このアプローチを他の固形悪性腫瘍にも広げる根拠を提供するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年3月27日号掲載の報告。afami-celを単回投与、主要評価項目は奏効率 研究グループは、HLA-A*02を有しMAGE-A4を発現する転移のあるまたは切除不能の滑膜肉腫または粘液型円形細胞型脂肪肉腫(細胞遺伝学的に確認)の16~75歳患者で、少なくとも1ラインのアントラサイクリンまたはイホスファミドを含む化学療法歴がある患者をコホート1として登録し、リンパ球除去後にafami-cel(導入用量範囲:1.0×109~10.0×109T細胞)を単回静脈内投与した。 主要評価項目は、修正ITT集団(afami-celの投与を受けた全患者)における奏効率(ORR)で、RECIST version1.1に基づき盲検下独立評価委員会によって評価された。また、とくに注目される有害事象(サイトカイン放出症候群、遷延性血球減少症、神経毒性)を含む有害事象がモニタリングされ、修正ITT集団について報告された。 なお、本試験のコホート1および2は追跡調査が現在も進行中であり、コホート3は募集中である。奏効率は全体で37%、滑膜肉腫39%、粘液型円形細胞型脂肪肉腫25% 2019年12月17日~2021年7月27日に、細胞遺伝学的に確認された滑膜肉腫(44例)および粘液型円形細胞型脂肪肉腫(8例)を有する患者52例がコホート1に登録され、afami-celが投与された。患者の化学療法歴は、中央値が3(四分位範囲[IQR]:2~4)であった。 追跡期間中央値32.6ヵ月(IQR:29.4~36.1)において、ORRは全体で37%(19/52例、95%信頼区間:24~51)、滑膜肉腫患者39%(17/44例、24~55)、粘液型円形細胞型脂肪肉腫患者25%(2/8例、3~65)であった。 サイトカイン放出症候群が、52例中37例(71%)に発現し、うち1例がGrade3であった。主なGrade3以上の有害事象は血球減少症で、52例中、リンパ球減少症が50例(96%)、好中球減少症が44例(85%)、白血球減少症が42例(81%)であった。治療に関連した死亡は報告されなかった。

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日本の乳がんの特性・治療・予後の変化~NCD乳がん登録46万例のデータ

 日本における2004~16年の乳がんの特性・治療・生存の動向について、川崎医科大学の岩本 高行氏らがBreast Cancer誌2024年3月号に報告した。これは、NCD(National Clinical Database)乳がん登録の45万7,878例のデータ(追跡期間中央値5.6年)に基づく日本乳癌学会による予後レポートである。 2004~08年の症例と2013~16年の症例を比較した主な結果は以下のとおり。・治療開始年齢の中央値は、2004~08年では57歳、2013~16年では60歳と上昇した。・Stage0~IIの割合は74.5%から78.3%に増加した。・エストロゲン受容体陽性の割合は74.8%から77.9%、プロゲステロン受容体陽性の割合は60.5%から68.1%に増加した。・(術前)術後補助化学療法は、タキサン(T)またはT-シクロホスファミド(C)レジメンは2.4%から8.2%に増加したが、(フルオロウラシル(F))アドリアマイシン(A)C-T/(F)エピルビシン(E)C-Tは18.6%から15.2%、(F)AC/(F)ECレジメンは13.5%から5.0%に減少した。・術(前)後HER2療法に関しては、トラスツズマブの使用が4.6%から10.5%に増加した。・センチネルリンパ節生検の実施率は37.1%から60.7%に増加し、腋窩リンパ節郭清の実施率は54.5%から22.6%に減少した。・HER2陽性乳がん患者では無病生存期間と全生存期間の改善が認められたが、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、トリプルネガティブ乳がん患者では明らかな傾向は認められなかった。

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固形がん治療での制吐療法、オランザピン2.5mgが10mgに非劣性/Lancet Oncol

 オランザピンは効果的な制吐薬であるが、日中の傾眠を引き起こす。インド・Tata Memorial CentreのJyoti Bajpai氏らは、固形がん患者における催吐性の高い化学療法後の低用量オランザピン(2.5mg)と標準用量オランザピン(10mg)の有効性を比較することを目的に、単施設無作為化対照非盲検非劣性試験を実施。結果をLancet Oncology誌2024年2月号に報告した。 本試験はインドの3次医療施設で実施され、固形がんに対しドキソルビシン+シクロホスファミドまたは高用量シスプラチン投与を受けているECOG PS 0~2の13~75歳が対象。患者はブロックランダム化法(ブロックサイズ2または4)により2.5mg群(1日1回2.5mgを4日間経口投与)または10mg群(1日1回10mgを4日間経口投与)に1:1の割合で無作為に割り付けられ、性別、年齢(55歳以上または55歳未満)、および化学療法レジメンによって層別化された。研究スタッフは治療の割り当てを知らされていなかったが、患者は認識していた。 主要評価項目は、修正intent-to-treat(mITT)集団における全期間中(0~120時間)の完全制御(催吐エピソードなし、制吐薬追加なし、悪心なしまたは軽度の悪心で定義)。日中の傾眠は関心のある安全性評価項目とされた。非劣性は治療群間における完全制御割合の差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が非劣性マージン10%未満の場合と定義された。 主な結果は以下のとおり。・2021年2月9日~2023年5月30日に、356例が適格性について事前スクリーニングを受け、うち275例が登録され、両群に無作為に割り付けられた(2.5mg群:134例、10mg群:141例)。・267例(2.5mg群:132例、10mg群:135例)がmITT集団に含まれ、うち252例(94%)が女性、242例(91%)が乳がん患者であった。・2.5mg群では132例中59例(45%)、10mg群では135例中59例(44%)が全期間において完全制御を示した(群間差:-1.0%、片側95%CI:-100.0~9.0、p=0.87)。・全期間において、2.5mg群では10mg群に比べ、Gradeを問わず日中の傾眠が認められた患者(65% vs.90%、p<0.0001)および1日目に重篤な傾眠が認められた患者(5% vs.40%、p<0.0001)が有意に少なかった。 著者らは、催吐性の高い化学療法を受けている患者においてオランザピン2.5mgは10mgと比較して制吐効果が非劣性で、日中の傾眠を減少させることが示唆されたとし、新たな標準治療として考慮されるべきとしている。

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CLLの1次治療、MRDに基づくアプローチが有望/NEJM

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)の治療において、測定可能残存病変(measurable residual disease:MRD)に基づいて投与期間を最適化するイブルチニブ(ブルトン型チロシンキナーゼ[BTK]阻害薬)+ベネトクラクス(BCL-2阻害薬)療法はフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ(FCR)療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し全生存期間(OS)も良好で、感染症のリスクは同程度であるものの心臓の重度有害事象の頻度が高かったことが、英国・Leeds Cancer CentreのTalha Munir氏らが実施した「FLAIR試験」の中間解析で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年12月10日号で報告された。英国の無作為化第III相試験 FLAIR試験は、英国の96の病院が参加した非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2017年7月~2021年3月に患者の無作為化を行った(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。 未治療のCLLまたは小リンパ球性リンパ腫(SLL)で、FCRの適応と判定された患者を1対1対1の割合でイブルチニブ群、イブルチニブ+ベネトクラクス群、FCR群に割り付けた。本中間解析では、イブルチニブ+ベネトクラクス群およびFCR群の523例(年齢中央値62歳[四分位範囲[IQR]:56~67]、男性71.3%、イブルチニブ+ベネトクラクス群260例、FCR群263例)の結果を解析した。 イブルチニブ+ベネトクラクス群では、イブルチニブを単剤で2ヵ月間、1日1回経口投与したのち、ベネトクラクスを加えた併用投与を、アルゴリズムによるMRDに基づく中止基準を満たすか、病勢進行または許容できない毒性作用の発現に至るまで、最長で6年間実施した。FCRは、1サイクルを28日として6サイクル投与した。 主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、奏効率、MRD陰性の割合、安全性などとした。 3年無増悪生存率:97.2% vs.76.8% 追跡期間中央値43.7ヵ月の時点で、病勢進行または死亡した患者は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が12例(4.6%)、FCR群は75例(28.5%)であり、3年無増悪生存率はそれぞれ97.2%および76.8%であった。 両群ともPFS中央値には未到達であったが、病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.13(95%信頼区間[CI]:0.07~0.24)とイブルチニブ+ベネトクラクス群で有意に優れた(p<0.001)。また、免疫グロブリン重鎖可変部遺伝子(IGHV)変異陰性例ではイブルチニブ+ベネトクラクス群でPFS中央値が良好であった(HR:0.07、95%CI:0.02~0.19)が、陽性例ではこのような効果を認めなかった(0.54、0.21~1.38)。 OS中央値についても、両群とも未到達であったが、死亡のHRは0.31(95%CI:0.15~0.67)とイブルチニブ+ベネトクラクス群で良好であった。また、IGHV変異陰性例ではイブルチニブ+ベネトクラクス群でOS中央値が良好であった(HR:0.23、95%CI:0.06~0.81)が、陽性例ではこのような差はみられなかった(0.61、0.20~1.82)。 9ヵ月時の全奏効率は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が86.5%(225/260例)、FCR群は76.4%(201/263例)であり(補正後オッズ比[OR]:2.00、95%CI:1.26~3.16)、完全奏効率はそれぞれ59.2%(154例)および49.0%(129例)だった(1.51、1.07~2.14)。MRDに基づくアプローチで3年時までに58.0%が投与を中止 3年時までに、イブルチニブ+ベネトクラクス群で、MRD陰性となったために投与を中止した患者の割合は58.0%であった。同群では、5年時に65.9%で骨髄中のMRDが、92.7%で末梢血中のMRDが検出不能であった。また、9ヵ月時に骨髄中のMRD陰性であった患者の割合は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が41.5%、FCR群は48.3%だった。 1年以内に発生したGrade3~5の有害事象のうち頻度が最も高かったのは、好中球数減少(イブルチニブ+ベネトクラクス群10.3% vs.FCR群47.3%)、貧血(0.8% vs.15.5%)、血小板減少症(2.0% vs.10.0%)であった。感染症のリスクは両群でほぼ同様であったが、心臓の重度有害事象の割合はイブルチニブ+ベネトクラクス群で高かった(10.7% vs.0.4%)。死亡はイブルチニブ+ベネトクラクス群で8例、FCR群で23例に認め、それぞれ1例および6例が治療関連死の可能性があると判定された。 著者は、「末梢血においてMRD陰性となるまでプラトーはみられず、これはMRDに基づく治療の継続が正当であることを示唆する」としている。

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高リスクHER2+乳がん、術前療法へのアテゾリズマブ追加でpCR改善は(APTneo)/SABCS2023

 HER2陽性高リスク乳がんに対する術前補助療法として、トラスツズマブ(H)+ペルツズマブ(P)+化学療法は標準治療となっている。また、抗HER2療法に対する免疫系の寄与を示すデータが報告され、免疫チェックポイント阻害薬と抗HER2抗体の組み合わせが裏付けられている。イタリア・Fondazione MichelangeloのLuca Gianni氏らは、HP+化学療法へのアテゾリズマブ(±アントラサイクリン)の追加を評価することを目的として、第III相APTneo試験を実施。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で病理学的完全奏効(pCR)についてのデータを報告した。・対象:HER2陽性の切除可能または局所進行乳がん患者(化学療法未治療)・試験群AC+アテゾリズマブ併用群:AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)+アテゾリズマブ(1,200mg 3週ごと静脈内投与)×3サイクル→HPCT(トラスツズマブ+ペルツズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル)+アテゾリズマブ×3サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 218例アテゾリズマブ併用群:HPCT+アテゾリズマブ×6サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 220例・対照群:HPCT×6サイクル→手術→HP 223例・評価項目:[主要評価項目]試験群vs.対照群の無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]pCR、忍容性、予測マーカーの評価など 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおける患者特性は3群でバランスがとれており、年齢中央値は49~50歳、局所進行乳がんは44.1~45.3%、PD-L1陽性は29.8~30.9%、ホルモン受容体陽性は61.0~69.1%であった。・副次評価項目のpCR率は、対照群52.0%に対し試験群57.8%で有意な改善はみられなかった(p=0.091)。AC+アテゾリズマブ併用群のpCR率は61.9%で対照群と比較して有意に改善したが(p=0.022)、アテゾリズマブ併用群のpCR率(53.6%)と比較して有意な差はみられなかった(p=0.089)。・重篤な有害事象(SAE)は、対照群で6.8%、試験群で14.1%に発生した。AC療法による血液毒性のため、アテゾリズマブ併用群(11.6%)よりもAC+アテゾリズマブ併用群(16.7%)で頻度が高かった。・免疫関連のSAEはAC+アテゾリズマブ併用群で4.7%、アテゾリズマブ併用群で7.8%と頻度が高いわけではなく、臨床的にコントロール可能なものであった。 Gianni氏は、「HER2陽性の早期高リスクおよび局所進行乳がん患者において、HP+化学療法へのアテゾリズマブの追加は、数値としてpCR率の5.8%増加が確認されたものの統計学的有意差は得られなかった。探索的解析において、AC+アテゾリズマブ併用群におけるpCR率は統計学的に有意に高いことが示されており、アントラサイクリンの直接効果あるいはアテゾリズマブによるAC療法の機構的増強のいずれかが示唆されるのではないか」と結論付けている。同試験はEFSの解析まで現在も進行中。

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早期TN乳がん術後化療にアテゾ追加、iDFSを改善せず中止(ALEXANDRA/IMpassion030)/SABCS2023

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術後補助療法として、標準的なアントラサイクリンおよびタキサンベースの化学療法にアテゾリズマブを追加した第III相ALEXANDRA/ IMpassion030試験の中間解析の結果、アテゾリズマブを上乗せしても無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善せず、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は増加したことを、ベルギー・Institut Jules BordetのMichail Ignatiadis氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。・対象:中央病理学検査で手術可能と判断されて手術を受けたStageII/IIIの早期TNBC患者 2,199例・試験群:対照群の化学療法に加え、アテゾリズマブ840mgを2週ごと、10サイクル→アテゾリズマブ1,200mgを3週間ごと、計1年間(アテゾリズマブ群:1,101例)・対照群:パクリタキセル80mg/m2を週1回、12サイクル→アントラサイクリン(エピルビシン90mg/m2またはドキソルビシン60mg/m2)+シクロホスファミド600mg/m2を2週間ごと、4サイクル(化学療法群:1,098例)・評価項目:[主要評価項目]ITT集団におけるiDFS[副次評価項目]PD-L1陽性およびリンパ節陽性のサブグループにおけるiDFS、全生存期間(OS)、安全性など・層別化因子:手術の種類(乳房温存術/乳房切除術)、リンパ節転移(0/1~3/≧4)、PD-L1発現(IC 0/≧1%) 予定症例数は2,300例であったが、2022年11月14日に独立データ監視委員会(IDMC)の勧告に基づき、試験は一時中止された。2023年2月、IDMCが有効性と無益性の早期中間解析を行うため、計画されていたiDFSイベントの解析対象数が下方修正された。無益性の境界のハザード比(HR)は1に設定された。2023年3月15日のIDMC勧告で主要評価項目が無益性の境界を越えたため、試験は中止となった。今回発表されたデータは2023年2月17日のデータカットオフ日に基づくもの。 主な結果は以下のとおり。・2018年8月~2022年11月に2,199例が登録され、両群に1:1に無作為に割り付けられた。アテゾリズマブ群および化学療法群の年齢中央値は53歳/53歳、StageIIは84.9%/85.6%、リンパ節転移陽性は47.6%/47.8%、PD-L1陽性は71.3%/71.2%、乳房切除術施行は52.4%/52.4%で、両群でバランスがとれていた。・追跡期間中央値25ヵ月(範囲:0~53)の時点で、239/2,199例(10.9%)のiDFSイベントが観察された。アテゾリズマブ群では127/1,101例(11.5%)、化学療法群では112/1,098例(10.2%)に発生し、HRは1.12(95%信頼区間[CI]:0.87~1.45、p=0.37)で、事前に規定された無益性の境界を越えた。・PD-L1陽性のサブグループ(1,567例)では、iDFSイベントはアテゾリズマブ群77/785例(9.8%)、化学療法群73/782例(9.3%)に発生し、HRは1.03(95%CI:0.75~1.42)であった。・OSイベントが発生したのは、アテゾリズマブ群61例(5.5%)、化学療法群49例(4.5%)で、HRは1.20(95%CI:0.82~1.75)であった。・Grade3以上のTRAEは、アテゾリズマブ群587例(53.7%)、化学療法群472例(43.5%)に発現し、死亡は2例(0.2%)および1例(<0.1%)であった。何らかの薬剤の中止に至ったのは185例(16.9%)および60例(5.5%)であった。安全性プロファイルとは既知のものと一致していた。 これらの結果より、Ignatiadis氏は「ITT集団におけるiDFSのHRは、事前に規定された無益性の境界を越えるとともに有害事象も増え、早期TNBC患者に対する術後補助化学療法へのアテゾリズマブ追加は支持されないものとなった。試験データは2023年11月17日のカットオフまで更新され、結果を公表する予定である」とまとめた。

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転移乳がんのエリブリン2投2休、後治療のPFSを有意に延長/日本癌治療学会

 転移を有する乳がん患者にエリブリンを標準スケジュールである21日周期(21日ごとに1・8日目に投与:2投1休)で投与する場合と比較して、28日周期(28日ごとに1・8日目に投与:2投2休)の投与は後治療の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)は有意差はなかったものの延長傾向にあったことを、市立四日市病院の水野 豊氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。 エリブリンは腫瘍免疫微小環境の改善効果により、後治療の良好な効果が推測されている。しかし、血液毒性などの有害事象のため標準の21日周期では治療の中断・中止を余儀なくされることがある。これまでエリブリンを1・15日目に投与する28日周期の投与スケジュールにおけるPFSはすでに報告されているが、異なる投与スケジュールが後治療の効果に与える影響を調べた研究はなかった。そこで水野氏らは、エリブリンの異なる治療スケジュールと後治療のPFSの関連を評価するために研究を実施した。 エリブリン治療はまず標準スケジュールである21日周期の1・8日目投与で開始し、2サイクル目の1日目に好中球数が1,500mm3以上であれば標準スケジュールを継続し(2投1休群)、1,500mm3未満であった場合は28日周期の1・8日目投与に変更してその後も28日周期を継続した(2投2休群)。3サイクル目以降も同様に1日目の好中球数が1,500mm3以上かどうかでスケジュールを検討した。 対象は、転移を有する乳がん患者81例(うちde novo StageIVが23例[28%])で、年齢中央値は67歳(範囲:39~90歳)であった。主な転移部位は骨(48%)、肝臓(40%)、所属リンパ節(38%)、肺(32%)。ER/PgR陽性が63%、トリプルネガティブが37%。前治療の化学療法歴なしが31%、1ラインが44%、2ライン以上が25%であった。 主な結果は以下のとおり。<エリブリン治療>・奏効率は9%、病勢コントロール率は30%、臨床的有用率は56%であった。・全体のPFS中央値は6.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.5~8.6)であった。治療スケジュール別のPFS中央値は、2投1休群(49例)が6.1ヵ月(95%CI:3.4~8.4)、2投2休群(32例)が8.6ヵ月(95%CI:5.1~13.0)で有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.149)。・全体のOS中央値は20.6ヵ月(95%CI:14.6~27.1)であった。2投1休群は17.1ヵ月(95%CI:10.2~21.1)、2投2休群は27.1ヵ月(95%CI:14.6~30.9)で、PFSと同様に有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.0833)。<後治療>・後治療を行ったのは47例で、多かったレジメンはパクリタキセル+ベバシズマブ(32%)、AC/EC療法(19%)、カペシタビン±シクロホスファミド(13%)、S-1(11%)、内分泌療法(11%)などであった。・全体のPFS中央値は4.9ヵ月(95%CI:3.0~8.1)であった。2投1休群は3.3ヵ月(95%CI:2.8~5.6)であった一方、2投2休群では10.4ヵ月(95%CI:2.1~14.5)で有意に改善した(p=0.0195)。・OS中央値は2投1休群17.1ヵ月(95%CI:10.9~21.1)、2投2休群28.5ヵ月(95%CI:14.6~53.5)で延長傾向にあった(p=0.0965)。 これらの結果より、水野氏は「エリブリンの標準とは異なる2投2休の投与スケジュールはPFSおよびOSを延長させ、さらに後治療にも好影響をもたらす」とまとめるとともに、質疑応答で「十分に血球を回復させるために2週間休薬することが重要だと考える。好中球数が減少していたとしてもしっかりと回復させる期間が得られ、それによって後治療に好影響をもたらすのではないか」と見解を述べた。

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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS改善、5年後も持続(KEYNOTE-522)/ESMO2023

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)が有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことがすでに報告されている。今回、第6回中間解析(追跡期間中央値63.1ヵ月)でのEFSを解析した結果、pCRの結果にかかわらず、術前化学療法単独と比べて臨床的に意味のあるEFS改善が持続していたことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。・対象:未治療の転移のないTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群、784例)・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群、390例)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、OS、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・今回の解析(データカットオフ:2023年3月23日)において、EFSイベントがペムブロリズマブ群で18.5%、プラセボ群で27.7%に認められた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.49~0.81)。5年EFS率はペムブロリズマブ群81.3%、プラセボ群72.3%だった。・ペムブロリズマブによるEFSベネフィットは、PD-L1発現やリンパ節転移の有無など、事前に規定したサブグループで一貫していた。・事前に規定された非ランダム化探索的解析におけるpCRの結果別の5年EFS率は、pCR例でペムブロリズマブ群92.2% vs.プラセボ群88.2%、非pCR例でペムブロリズマブ群62.6% vs.プラセボ群52.3%であった。・5年遠隔無増悪/遠隔無再発生存率は、ペムブロリズマブ群84.4%、プラセボ群76.8%であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.84)。 Schmid氏は「これらの結果は、ペムブロリズマブとプラチナを含む術前補助療法後、pCRの結果によらずペムブロリズマブによる術後補助療法を行うレジメンを、高リスク早期TNBC患者に対する標準治療としてさらに支持する」と述べた。

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早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれから【心不全診療Up to Date】第10回

第10回 早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれからKey Points早期発見がなぜ重要か?心アミロイドーシスに対して今できる治療は?心アミロイドーシス治療のこれから早期発見がなぜ重要か?〜心アミロイドーシス治療の今とこれから〜前回は心アミロイドーシスの種類や特徴、有病率などに触れた。今回は早期発見の意義について触れていこう。早速だが、心アミロイドーシスの早期発見がなぜ必要なのだろうか。その理由はただ一つ、早期に治療を開始すればするほど、治療のメリットが大きいからである。ではなぜ早期治療のメリットが大きいかというと、アミロイドが沈着する過程を治療するには、『アミロイド前駆蛋白の産生やアミロイド線維の集積を阻害するか』『臓器に一旦沈着したアミロイドの除去を促すか』が標的となるが、現在われわれができる治療は前者のみで、後者は最近ようやく第I相試験の結果が出たところで1)、まだ日常診療には使用できない。つまり、今できる治療は今以上にアミロイドを沈着させないようにするしかないため、まだ臓器へのアミロイド沈着が少ない早期から治療を開始したほうが、予後改善効果が高いというわけである。それでは、具体的な治療法をみていこう。心アミロイドーシスの治療は、(1)合併症の治療と予防、(2)特異的な治療によるアミロイド沈着の停止または遅延、の2つに大きく分けられる。心アミロイドーシスの合併症への対策は、心不全以外にも、不整脈、伝導障害、血栓塞栓症、重度大動脈狭窄症に対する治療など、注意すべきものがさまざまあり、詳細は図5をご覧いただきたい。(図5)心アミロイドーシスの心臓合併症と併存疾患の治療画像を拡大するとくに、心不全を伴う場合、『心不全予後改善薬の投与をどうするか』はとても重要なポイントである。実臨床において、どの薬剤がどのように使用され、予後との関連はどうであるか、という点について、最近イギリスから興味深い報告があった2)。この研究は、2000~22年にNational Amyloidosis CentreでATTR心アミロイドーシスと診断された2,371例(平均年齢:78歳、男性:90%、ATTRwt:78%、平均LVEF:48%)を対象に、心不全予後改善薬(β遮断薬、RAS阻害薬[ACEi/ARB]、MR拮抗薬)の処方パターン、用量、中断率と予後との関連を調べたものである。その結果は図6の通りであるが、とくに予後との関連が興味深い。それぞれの処方率は、β遮断薬が55%、RAS阻害薬が57%、MR拮抗薬が39%で、β遮断薬とRAS阻害薬はしばしば中断されていたが、低用量のβ遮断薬は、HFrEF(EF≦40%)患者の死亡リスク軽減と関連していた。一方、MR拮抗薬はほとんどの症例で継続されており、すべての心不全症例(とくにEF>40%)に対して死亡リスク軽減と関連していた。もちろん、前向きRCTで確認する必要があるが、とても重要な報告であると考える。(図6)ATTR心アミロイドーシスに対する心不全従来治療と予後の関連画像を拡大するそして、近年の医学の進歩により、心アミロイドーシスに対する特異的な治療も出てきている。その治療法は心アミロイドーシスの病型により異なるため、病型ごとに説明していく。ALアミロイドーシスまず、ALアミロイドーシスに対する特異的な治療の基本は、アミロイド前駆蛋白であるFLC(free light chain)の産生を抑制することであり、基礎となる血液疾患に対する治療法に大きく依存している3,4)。具体的には、骨髄でモノクローナルに増殖しているCD38陽性形質細胞を選択的に攻撃する抗体薬であるダラツムマブ、プロテアソームを阻害する分子標的薬であるボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン、メルファランなどの薬剤や自己末梢血幹細胞移植も治療の選択肢になるが、さらなる詳細は成書に譲ることとする。ATTRアミロイドーシス次に、ATTRアミロイドーシスに対する治療について、TTRの歴史とTTRアミロイド線維生成経路を見ながら考えていこう(図7)。(図7)ATTR心アミロイドーシス治療の今とこれから画像を拡大するTTRは127アミノ酸残基からなる血漿タンパク質で、ホモ四量体として肝臓で産生され、血液中においても四量体として存在する。1940年代後半から1950年代前半にかけて発見されたTTRは、栄養状態の指標として用いられていたことから、以前はプレアルブミンと呼ばれていた。この名前は、ゲル電気泳動でアルブミンよりも先に移動することに由来する。プレアルブミンはサイロキシンとレチノール結合タンパク質の輸送を行うことがその後にわかり、1980年にTTRという名称が正式に採用された5)。TTRがアミロイドを形成するには、自然構造である四量体から単量体への解離と単量体の変性が必要であることから、ATTRアミロイドーシスに対する特異的な治療としては、変異型および野生型TTRの産生を特異的に抑制する薬剤(TTR silencers)と、TTRの四量体を安定化し、単量体への解離を抑制する薬剤(TTR stabilizers)がある。なお、アミロイド線維を除去し、組織浸潤を回復させる薬剤(抗TTR抗体製剤)は現在第I相試験が終了1)したところで、まだ実用化には至っていないが、画期的な薬剤であり、今後の展開が大変期待されている(図7)。ちなみに、従来のTTR(プレアルブミン)測定法は、四量体のみを測定するものであるため、ATTRアミロイドーシス症例では血中TTR濃度は低下し、後で述べるTTR安定化薬投与後は上昇することになり、早期診断や予後予測に有用となる可能性があるという報告もある6,7)。これらの薬剤のなかで、RCTで効果が検証された最初の薬剤がタファミジスであり、現在本邦でも生存期間が十分に見込まれるATTR心アミロイドーシス患者に対して2019年3月から保険適用されている。タファミジスは、TTR四量体の2つのサイロキシン結合部位に結合し、その四量体構造を安定化させ、アミロイド形成を抑制するTTR安定化薬(TTR stabilizers)である。第III相ATTR-ACT試験(年齢中央値:75歳、男性:90%)では、ATTRvまたはATTRwt心筋症患者(ATTRwt:76%)において、プラセボと比較して、治療30ヵ月後に全死亡および心血管関連入院が30%減少し、QOL低下が緩やかになることが示された9)。つまり、ATTR-ACT試験は、(1)HFpEFにおける死亡率および心不全入院の減少が初めて示された薬物療法(2)ATTRアミロイドーシスにおける死亡率と病的状態の減少が初めて示された薬物療法(3)末梢性や神経ホルモン調節ではなく心筋に対して中心的に作用してハードエンドポイントへの効果を実証した初めての心不全治療薬これら“3つの初めて”を成し遂げた試験と言える8)。ただし、タファミジスはかなり高額な薬剤(2020年当時、1カプセル43,672.8円、年間の薬剤費は1人あたり6,376万円)であり、米国からも費用対効果に関する論文が発表9)され、費用対効果を高めるためには、92.6%(ビックリ!)の薬価引き下げが必要との報告もあるくらいであり、費用対効果もしっかり考えて処方すべき薬剤であろう。なお、同じTTR安定化薬であるAG10についても、症候性ATTR心筋症患者を対象に、第III相試験(ATTRibute-CM)が現在進行中である。また、TTR silencersとしては、TTR mRNAを選択的に分解して、遺伝子レベルでTTRの産生を特異的に抑制するsiRNA製剤(核酸医薬)であるパチシランが、ATTRvアミロイドーシスの治療薬として本邦でも2019年6月から保険適用されている。そして、現在ATTRwtも含めたATTR心筋症患者に対するパチシランの有効性を検証する第III相試験(APOLLO-B)が進行中である。そして、冒頭でも少し述べた通り、最も切望されている図7の(3)に相当する治療、つまり、抗体を介したATTR線維の貪食と組織からのATTR沈着物の除去を誘導することにより、ATTRを消失させる画期的な治療薬(遺伝子組換えヒト抗ATTRモノクローナルIgG1抗体)の研究も進みつつあり、今年5月に第I相試験(first-in-human)の結果がなんとNEJM誌に掲載され、安全性が確認された1)。その論文には実際に薬剤を使用した患者の画像所見が掲載されているが、沈着したアミロイドが除去されていることを示唆する所見が認められており、今後の第II相、第III相試験の結果が期待される。以上、今回は、早期診断、早期治療がきわめて重要な心アミロイドーシスを取り上げてみた。ぜひ明日からの診療に活かしていただければ幸いである。1)Garcia-Pavia P, et al. N Engl J Med. 2023 May 20.[Epub ahead of print]2)Ioannou A, et al. Eur Heart J. 2023 May 22. [Epub ahead of print]3)Palladini G, et al. Blood. 2016;128:159-168.4)Garcia-Pavia P, et al. Eur Heart J. 2021;42:1554-1568.5)Robbins J, et al.Clin Chem Lab Med. 2002;40:1183-1190.6)Hanson JLS, et al. Circ Heart Fail. 2018;11:e004000.7)Greve AM, et al. JAMA Cardiol. 2021;6:258-266.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med. 2018;379:1007-1016.9)Kazi DS, et al. Circulation. 2020;141:1214-1224.

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進行CLLの1次治療、ベネトクラクス併用療法vs.免疫化学療法/NEJM

 進行慢性リンパ性白血病(CLL)で全身状態が良好な患者(すなわち併存病態の負担が少ない患者:fit patient)の1次治療として、ベネトクラクス+抗CD20抗体オビヌツズマブの併用療法は、イブルチニブ併用の有無にかかわらず、免疫化学療法よりも優れることが、ドイツ・ケルン大学のBarbara Eichhorst氏らによる第III相非盲検無作為化試験で示された。これまでに、同患者への1次治療としてのベネトクラクスと抗CD20抗体の併用について評価した無作為化試験は行われていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。15ヵ月時点の微小残存病変陰性とPFSを評価 試験はGerman CLL Study Group、HOVON CLL Study Group、Nordic CLL Study Groupによって行われ、欧州9ヵ国とイスラエルの159ヵ所で実施された。 研究グループは、TP53変異陰性の全身状態が良好なCLL患者を1対1対1対1の割合で無作為に4群に割り付け、(1)6サイクル免疫化学療法(フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ、またはベンダムスチン+リツキシマブ)、(2)12サイクルのベネトクラクス+リツキシマブの投与、(3)ベネトクラクス+オビヌツズマブの投与、(4)ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブの投与をそれぞれ行った。イブルチニブは、微小残存病変が2回連続して検出不能(陰性)後は中止し、そうでない場合は延長可能とした。 主要評価項目は、15ヵ月時点でのフローサイトメトリーで評価した微小残存病変の陰性(感度が<10-4[すなわちCLL細胞が1万個中1未満])および無増悪生存期間(PFS)であった。微小残存病変陰性、免疫化学療法群52.0%、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群86.5% 2016年12月13日~2019年10月13日に、合計926例が4群に無作為化された(免疫化学療法群229例、ベネトクラクス+リツキシマブ群237例、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群229例、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群231例)。 15ヵ月時点で、微小残存病変陰性であった患者の割合は、免疫化学療法群(52.0%、97.5%信頼区間[CI]:44.4~59.5)と比べて、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群(86.5%、80.6~91.1)、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群(92.2%、87.3~95.7)の両群で、統計学的に有意に高率であった(両群比較のp<0.001)。ベネトクラクス+リツキシマブ群は高率であったが有意ではなかった(57.0%、49.5~64.2、p=0.32)。 3年PFS率は、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群90.5%、免疫化学療法群75.5%であった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.32、97.5%CI:0.19~0.54、p<0.001)。また、3年時のPFSはベネトクラクス+オビヌツズマブ群でも有意に高率であった(87.7%、HR:0.42[97.5%CI:0.26~0.68]、p<0.001)が、ベネトクラクス+リツキシマブ群は高率ではあったが有意ではなかった(80.8%、0.79[0.53~1.18]、p=0.18)。 Grade3/4の感染症が、免疫化学療法群(18.5%)およびベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群(21.2%)で、ベネトクラクス+リツキシマブ群(10.5%)やベネトクラクス+オビヌツズマブ群(13.2%)よりも多くみられた。

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早期TN乳がん、術前後のアテゾリズマブ追加でEFS・DFS・OS改善(IMpassion031)/ESMO BREAST 2023

 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおける術前化学療法へのアテゾリズマブ追加および術後のアテゾリズマブ投与の有用性を検討した第III相IMpassion031試験の最終解析で、副次評価項目である無イベント生存期間(EFS)、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)の改善が示された。また探索的解析から、手術時に病理学的完全奏効(pCR)が得られた患者は予後良好なこと、pCRが得られず血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が残存していた患者は予後不良なことが示された。ブラジル・Hospital Sao Lucas da PUCRSのCarlos H. Barrios氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 本試験の主要評価項目であるpCR率については、PD-L1の有無(SP142によるIC:1%未満vs.1%以上)にかかわらず、アテゾリズマブ群が57.6%とプラセボ群(41.1%)に比べて有意に(p=0.0044)改善したことが報告されている。今回は、副次評価項目であるEFS、DFS、OS、安全性について最後の患者登録から3年後の最終解析と探索的バイオマーカー解析について報告された。・対象:原発巣が2cmを超える未治療のStageII~IIIの早期TN乳がん患者333例・試験群(アテゾリズマブ群、165例):術前にアテゾリズマブ(840mg、2週ごと)+nab-パクリタキセル(毎週)12週間投与後、アテゾリズマブ+ドキソルビシン+シクロホスファミド(2週ごと)8週間投与。術後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと)を11サイクル実施・対照群(プラセボ群、168例):術前にプラセボ+nab-パクリタキセル12週間投与後、プラセボ+ドキソルビシン+シクロホスファミド8週間投与し手術を実施(両群ともpCR未達の患者は、術後補助化学療法を許容) 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値40ヵ月前後(アテゾリズマブ群40.3ヵ月、プラセボ群39.4ヵ月)における最終解析において、pCRが得られず術後補助化学療法を受けたのは、アテゾリズマブ群70例中14例(20%)、プラセボ群99例中33例(33%)であった。・ITT集団におけるEFSのハザード比(HR)は0.76(95%信頼区間[CI]:0.47~1.21)で、PD-L1陽性(IC 1%以上)の患者では0.56(同:0.26~1.20)であった。・DFSのHRは0.76(95%CI:0.44~1.30)で、PD-L1患者では0.57(同:0.23~1.43)であった。・OSのHRは0.56(95%CI:0.30~1.04)で、PD-L1陽性患者では0.71(同:0.26~1.91)であった。・pCR状況別のEFSの探索的解析では、pCRが得られた患者では両群共に長期のEFSが良好であったが、pCRが得られなかった患者では両群共にEFSが不良で、pCRが長期予後を大きく左右していた。・アテゾリズマブにおける新たな安全性シグナルや治療関連死はみられなかった。・ctDNAにおける探索的解析によると、ctDNA陽性率はベースラインの94%から手術時に12%と減少し、ctDNA消失率はアテゾリズマブ群89%、プラセボ群86%と両群で同様だった。消失しなかった患者はpCRが得られなかった。・手術時にpCRが得られずctDNAが陽性だった患者はDFS、OSが不良だったが、アテゾリズマブ群でOSの数値的な改善がみられた(HR:0.31、95%CI:0.03~2.67)。 Barrios氏は「早期TN乳がんに対して、術前化学療法へのアテゾリズマブ追加で有意なpCRベネフィットが得られ、EFS、DFS、OSの改善につながった」とした。

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KMT2A-r ALL乳児、化学療法+ブリナツモマブでDFS改善/NEJM

 新規に診断されたKMT2A再構成陽性急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-r ALL)の乳児において、Interfant-06試験の化学療法へのブリナツモマブ追加投与は、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較し安全で有効性も高いことが確認された。オランダ・Princess Maxima Center for Pediatric OncologyのInge M. van der Sluis氏らが、多施設共同前向き単群第II相試験の結果を報告した。乳児のKMT2A-r ALLは、3年無イベント生存率が40%未満の進行性疾患で、多くが治療中に再発する。その再発率は、診断後1年以内で3分の2、2年以内では90%である。化学療法が強化されたにもかかわらず、この20数年、アウトカムは改善されていなかった。NEJM誌2023年4月27日号掲載の報告。1歳未満児を対象に、導入療法後ブリナツモマブを4週間投与 研究グループは、2018年7月~2021年7月に9ヵ国12施設にて、新たにKMT2A-r ALLと診断された1歳未満の乳児30例を登録し、Interfant-06試験で用いた導入療法を1ヵ月行った後、1コースのブリナツモマブ(体表面積1m2当たり15μg/日、4週間持続注入)を追加し、その後、Interfant-06プロトコールに従ってプロトコールIB(シクロホスファミド、シタラビン、メルカプトプリン)、MARMA(高用量シタラビン、高用量メトトレキサート、メルカプトプリン、アスパラギナーゼ)、OCTADAD(ビンクリスチン、デキサメタゾン、アスパラギナーゼ、ダウノルビシン、thioguanine、シタラビン、シクロホスファミド)、および維持療法(メルカプトプリン、メトトレキサート)を連続して行った。 主要評価項目は、臨床的に意義のある毒性(ブリナツモマブに起因する可能性のある、または確実に起因する毒性、およびブリナツモマブ投与中止または死亡に至った毒性と定義)、副次評価項目は微小残存病変(MRD)反応を含む抗白血病活性などであった。有害事象について評価し、有害事象のデータはブリナツモマブ注入開始から次のプロトコールIBの開始まで収集した。アウトカムに関するデータは、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較した。ブリナツモマブ投与終了時93%がMRD陰性または低値、2年全生存率は93.3% 追跡調査期間中央値は26.3ヵ月(範囲:3.9~48.2)で、30例全例がブリナツモマブ4週間投与を完了した。 主要評価項目の毒性イベントは発現しなかった。重篤な有害事象は9例に10件報告された(発熱4件、感染症4件、高血圧1件、嘔吐1件)。毒性プロファイルは、より年齢の高い患者で報告されたものと類似していた。 ブリナツモマブ投与終了時、30例中28例(93%)がMRD陰性(16例)またはMRD低値(<5×10-4、正常細胞1万個当たり白血病細胞5個未満)であった。化学療法を継続した全例が、その後の治療期間中にMRD陰性となった。 2年無病生存率は81.6%(95%信頼区間[CI]:60.8~92.0)、2年全生存率は93.3%(95%CI:75.9~98.3)であった。Interfant-06試験のヒストリカルコントロール(本試験の適格基準を満たし、導入療法終了時のMRDに関するデータが得られた214例)における2年無病生存率および2年全生存率は、49.4%(95%CI:42.5~56.0)および65.8%(95%CI:58.9~71.8)であった。

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