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気管支喘息で入院中に、自宅から持ち込んだ玩具で窒息した乳児例

小児科最終判決判例時報 1790号119-131頁概要気管支喘息、上気道炎と診断されて入院治療を受けていた1歳男児。家族の常時付添を許可しない完全看護体制の病院であり、母親は普段から一番気に入っていたおもちゃのコップを病室に持ち込んだ。入院翌日13:30頃看護師が訪室してみると、おもちゃのコップによって鼻と口が塞がれ心肺停止状態であり、ただちにコップを外して救急蘇生を行ったが、重度脳障害が発生した。詳細な経過患者情報平成4年5月21日生まれの1歳男児。既往症なし経過平成5年5月31日発熱、咳を主訴として総合病院小児科を受診し、喘息性気管支炎と診断された。6月1日容態が改善しないため同病院小児科を再診、別の医師から気管支喘息、上気道炎と診断され、念のため入院措置がとられた。この時患児は診察を待っている間も走り回るほど元気であり、気管支喘息以外には特段異常なし。同病院では完全看護体制がとられていたため、平日の面会時間は15:00~19:00までであり、母親が帰宅する時には泣いて離れようとしないため、普段から一番気に入っていた玩具を病室に持ち込んだ(「コンビコップがさね」:大小11個のプラスチック製コップ様の容器で、重ねたり、水や砂を入れたり、大きなものに小さなものを入れたりして遊ぶことができる玩具)。6月2日10:00喘鳴があり、息を吸った時のエア入りがやや悪く、湿性咳嗽(痰がらみの咳)、水様性鼻汁がでていたが、吸引するほどではなかった。12:40~12:50担当看護師が病室に入って観察、床頭台においてあった「コンビコップがさね」を3~4個とって患児に手渡した。13:00担当看護師が検温のため訪室したが、「コンビコップがさね」を重ねたりして遊んでいたので、検温は後回しにしていったん退室。13:30再び看護師が検温のために訪室すると、患児は仰向けになってベッドに横たわり、「コンビコップがさね」によって鼻と口が塞がれた状態であった。ただちにコップを強く引いて取り外したが、顔面蒼白、チアノーゼ、心肺停止状態であり、駆けつけた医師によって心肺蘇生が行われた。何とか心拍は再開したものの低酸素脳症に陥り、精神発達遅滞、痙性四肢麻痺、てんかんなどの重度後遺障害が残存した。当事者の主張患者側(原告)の主張患児は気管支喘息の大発作を起こしていたので、担当医師は玩具によって患児の身体に危険が及ばないように、少なくとも10分おきに病状観察をするよう看護師に指示する義務があった。完全看護体制をとっている以上、ナースコールを押すことができず危機回避能力もない幼児を担当する看護師は、頻繁に(せめて10分おきに)訪室して監視する義務があった。ナースコールもできず、付添人もいない幼児を病室に収容するのであれば、ナースステーションに患者動静を監視する監視装置をつけなければならない安全配慮義務があった。病院側(被告)の主張担当医師、担当看護師ともに、「コンビコップがさね」のような玩具で窒息が生じることなどまったく予見できなかったため、10分毎に訪室する義務はない。そして、完全看護といっても、すべての乳幼児に常時付き添う体制はとられていない。病室においても、カメラなどの監視装置を設置するような義務があるとは到底いえない。裁判所の判断事故の原因は、喘息の発作に関連した強い咳き込みによって陰圧が生じ、たまたま口元にあった玩具を払いのけることができなかったか、迷走神経反射で意識低下が起きたため玩具が口元を閉塞したことが考えられる。患児の病状のみに着目する限り、喘息の観察のために10分おきの観察を要するほど緊急を要していたとはいえないので、医師としての注意義務を怠ったとはいえない。幼児の行動や、与えた玩具がどのような身体的影響を及ぼすかについては予測困難であるから、看護師は頻繁に訪室して病状観察する義務があった。そのため、30分間訪室しなかったことは観察義務を怠ったといえるが、当時は別の患者の対応を行っていたことなどを考えると、看護師一人に訪室義務を負わせることはできない。しかし、家族の付添は面会時間を除いて認めないという完全看護体制の病院としては、予測困難な幼児の行動を見越して不測の事態が起こらないよう監視するのが医療機関として当然の義務である。そして、喘息に罹患していた幼児に呼吸困難が発生することは予測でき、玩具によって危険な状態が発生することもまったく予見できなかったわけではないから、そのような場合に備えて常時看護師が監視しうる体制を整えていなかったのは病院側の安全配慮義務違反である。原告側合計1億5,728万円の請求に対し、1億3,428万円の判決考察今回の事故は、喘息で入院中の幼児が、おもちゃのコップによって口と鼻を塞がれ、窒息して心肺停止状態になるという、たいへん不幸な出来事でした。もしこのおもちゃを用意したのが病院側であれば、このような紛争へ発展しても仕方がないと思いますが、問題となったおもちゃは幼児にとって普段から一番のお気に入りであり、完全看護の病院では一人で心細いだろうとのことで母親が自宅から持ち込んだものです。したがって、当然のことながら自宅でも同様の事故が起きた可能性は十分に考えられ、たまたま発生場所が病院であったという見方もできます。判決文をみると、わずか30分間看護師が病室を離れたことを問題視し、常時幼児を監視できる体制にしていなかった病院側に責任があると結論していますが、十分な説得力はありません。完全看護を採用している小児科病棟で、幼児は何をするかわからないからずっと付きっきりで監視する、などということはきわめて非現実的でしょう。そして、「玩具によって危険な状態が発生することもまったく予見できなかったわけではない」というのも、はじめて幼児に与えた玩具ではなく普段から慣れ親しんでいたお気に入りを与えたことを考えれば、かなり乱暴な考え方といえます。ちなみに、第1審では「病院側の責任はまったく無し」と判断されたあとの今回第2審判決であり、医療事故といってもきわめて単純な内容ですから、裁判官がかわっただけで正反対の判決がでるという、理解しがたい判決でした。今回の事例は、医師や看護師が当然とるべき医療行為を怠ったとか、重大なことを見落として患者の容態が悪化したというような内容ではけっしてありません。まさに不可抗力ともいえる不幸な事件であり、今後このような事故を予防するにはどうすればよいか、というような具体的な施策、監視体制というのもすぐには挙げられないと思います。にもかかわらず、「常時看護師が監視しうる体制を整えていなかったのは病院側の安全配慮義務違反である」とまで言い切るのであれば、どのようにすれば安全配慮義務を果たしたことになるのか、具体的に判示するべきだと思います。ただし医療現場をまったく知らない裁判官にとってそのような能力はなく、曖昧な理由に基づいてきわめて高額な賠償命令を出したことになります。このケースは現在最高裁判所で係争中ですので、ぜひとも良識ある最終判断が望まれますが、同様の事故が起きると同じような司法判断が下される可能性も十分に考えられます。とすれば医療機関側の具体的な対策としては、「入院中の幼児におもちゃを与えるのは、家族がいる時だけに限定する」というような対応を考えること以外に、不毛な医事紛争を避ける手段はないように思います。小児科

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非定型抗精神病薬との併用、相互作用に関するレビュー

 統合失調症や双極性障害の治療では抗精神病薬や抗うつ薬、気分安定薬、抗てんかん薬などさまざまな薬剤が用いられることも少なくない。米国・マーサー大学のWilliam Klugh Kennedy氏らは、第二世代抗精神病薬(SGA)について、臨床において重要となる薬物相互作用を明らかにすることを目的に文献レビューを行った。その結果、SGAには臨床において重大な薬物相互作用の可能性を増大するさまざまな因子があることを報告し、臨床医はそれらについて十分に認識すべきであると述べている。CNS Drugs誌オンライン版2013年10月30日号の掲載報告。 本レビューは、SGAが統合失調症、双極性障害およびその他精神病において主軸の治療となってきたこと、また抗うつ薬、抗てんかん薬と共に用いられる頻度が高く、さまざまな薬物動態学的、薬力学的およびファーマシューティカルのメカニズムにより薬物相互作用が起きる可能性が知られていることなどを踏まえて行われた。 主な知見は以下のとおり。・各SGAの薬物動態学的プロファイル(とくに第1相、第2相試験の代謝について)は、有意な薬物相互作用の可能性を示唆するものである。・薬力学的相互作用は、薬剤が類似のレセプター部位活性を有する時に引き起こされ、付加的あるいは拮抗的な効果を、薬物血中濃度を変化させることなくもたらす可能性があった。さらに、薬物相互作用のトランスポーターが漸増を続け、薬物動態学的および薬力学的相互作用を生じる可能性があった。・ファーマシューティカルな相互作用は、薬物の吸収前に配合禁忌薬物が摂取された場合に生じる。・多くのSGAの薬物血中濃度は、近似の範囲値であった。薬物相互作用は、これら薬剤の濃度が著しく増減した場合に、有害事象や臨床的有効性を低下させる可能性があった。・SGAの最も重大な臨床的薬物相互作用は、シトクロムP450(CYP)システムで起きていた。そしてSGAの薬物相互作用のほぼすべては、創薬、プレ臨床の開発の段階で、既知のCYP発現誘導または抑制因子を用いた標準化されたin vivoまたはin vitroの試験において特定されていた。・治療薬モニタリングプログラム後は、臨床試験と症例報告において、しばしば、さらなる重大な薬物相互作用を特定する方法が報告されている。・複数薬物間の相互作用があるSGAの中には、SSRIとの併用により重大な薬物相互作用が生じる可能性があった。・カルバマゼピンやバルプロ酸のような抗てんかん作用のある気分安定薬や、フェノバルビタールやフェニトインのようなその他の抗てんかん薬は、SGAの血中濃度を減少する可能性があった。・プロテアーゼ阻害薬やフルオロキノロン系のような抗菌薬も同様に重要であった。・用量依存性と時間依存性は、SGAの薬物相互作用に影響する、さらに2つの重大な因子であった。・喫煙をする精神疾患患者の頻度は非常に高いが、喫煙はCYP1A2発現を誘導する可能性があり、それによりSGAの血中濃度を低下する可能性がある。・ジプラシドン、ルラシドン(いずれも国内未承認)は、薬物吸収を促進するため食事と共に摂取することが推奨されている。そうしないと、バイオアベイラビリティが低下する可能性がある。・以上を踏まえて著者は、「臨床医は、SGAの臨床で重大な薬物相互作用を増大する可能性のあるさまざまな因子について認識しておかなくてはならない。そして、最大な効果をもたらし、有害事象は最小限とするよう患者を十分にモニタリングする必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証 抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学

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片頭痛の予防に抗てんかん薬、どの程度有用か

 片頭痛はしばしば慢性化・難治化する疾患である。海外では、重要の片頭痛患者に対し、抗てんかん薬が使用されている。インド・UP Rural Institute of Medical Sciences and ResearchのArchana Verma氏らは、成人の片頭痛予防に対する、抗てんかん薬レベチラセタム(商品名:イーケプラ、本疾患には国内未承認)の有効性および忍容性を評価した。Clinical neuropharmacology誌2013年11-12月号の報告。 片頭痛患者65例を対象とした、前向き無作為化プラセボ対照試験。対象患者は、レベチラセタム(LEV)群32例、プラセボ群33例に無作為に割り付けられた。試験完了症例数は、LEV群25例、プラセボ群27例であり、13例は早期に試験を中止した。LEVは250mg/日から投与を開始し、1週間おきに250mgずつ追加し、最終投与量である1000mg/日まで増量した。観察期間は3ヵ月間。 主な結果は以下のとおり。・LEV群ではプラセボ群と比較し、片頭痛の頻度(1ヵ月当たりの回数)が有意に減少し(ベースライン時5.17回[SD:1.19]→最後の4週間2.21回[1.47])、重症度も有意に減少した(2.75[0.44]→1.29[0.75])。・また、LEV群ではプラセボ群と比較し、症状コントロールのために使用する対症療法薬の投与量も有意に減少した(p<0.0001)。・頭痛頻度が50%以上減少した患者の割合は、LEV群64%、プラセボ群22%であった。・成人片頭痛患者へのレベチラセタム投与は、頭痛の頻度や重症度を改善し、対症療法薬の使用も軽減できることが示された。関連医療ニュース てんかん患者の頭痛、その危険因子は:山梨大学 抗てんかん薬による自殺リスク、どう対応すべきか 「片頭痛の慢性化」と「うつ」の関係

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新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証

 英国・UCL Institute of NeurologyのPhilip N. Patsalos氏らは、1989年以降に臨床導入された16種の新規の抗てんかん薬について、製剤間の薬物動態学的および薬力学的な相互作用に関するレビューを行った。てんかん患者の治療は生涯にわたることが多く、また複数の抗てんかん薬が処方されているのが一般的である。そのため相互作用がとくに重要になるが、今回のレビューでは、より新しい抗てんかん薬では相互作用が少ないことなどが明らかにされた。Clinical Pharmacokinetics誌2013年11月号の掲載報告。 本レビューの対象となった16種の抗てんかん薬は、レベチラセタム(イーケプラ)、ガバペンチン(ガバペン)、ラモトリギン(ラミクタール)、ルフィナミド(イノベロン)、スチリペントール(ディアコミット)、トピラマート(トピナ)、ゾニサミド(エクセグラン、エクセミド)、プレガバリン(本疾患には国内未承認)、エスリカルバゼピン酢酸塩、フェルバメート、ラコサミド、オクスカルバゼピン、ペランパネル、レチガビン、チアガビン、ビガバトリン(以上、国内未承認)であった。研究グループは、特定の相互作用の臨床的重要性の可能性について、わかりやすく相互作用試験の詳細を述べた。 主な知見は以下のとおり。・薬力学的相互作用は、主として相乗作用の副作用に関するものであったが、主な薬物動態学的相互作用は、肝酵素誘導または阻害に関するものであった。ただし、相乗作用の抗けいれんの例も存在した。・全体として、新しい抗てんかん薬は相互作用が少ないようであった。理由は大半が、腎に排出され肝代謝はされず(例:ガバペンチン、ラコサミド、レベチラセタム、トピラマート、ビガバトリン)、ほとんどが肝代謝誘導や阻害をしない(または最小限である)ためであった。・抗てんかん薬間の薬物動態学的相互作用については、総計139の詳述があった。・ガバペンチン、ラコサミド、チアガビン、ビガバトリン、ゾニサミドは、薬物動態学的相互作用が最も少なかった(5例未満)。・一方、多かったのは、ラモトリギン(17例)、フェルバメート(15例)、オクスカルバゼピン(14例)、ルフィナミド(13例)であった。・現時点では、フェルバメート、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、ペランパネル、プレガバリン、レチガビン、ルフィナミド、スチリペントール、ゾニサミドは、あらゆる薬力学的相互作用が認められていなかった。関連医療ニュース 難治性の部分発作を有する日本人てんかん患者へのLEV追加の有用性は? 検証!向精神薬とワルファリンの相互作用 抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は?

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日本の高齢者てんかん新規発症、半数以上が原因不明:産業医大

 新規発症の日本人高齢者てんかんは、側頭葉てんかん例が最も多いが、病因が不明な非損傷性患者は52.8%に上ることが明らかにされた。治療については、抗てんかん薬1年以上服用者の96.3%で発作抑制が認められたという。産業医科大学の田中 章浩氏らが、過去6年間の電子カルテデータから特定した70例について分析した結果、報告した。Seizure誌2013年11月号の掲載報告。 疫学研究において、てんかんの罹患率が高齢者集団で最も高いことが示されている。研究グループは、急速に高齢化社会が進む中、高齢者てんかんは世界的に重要な健康問題であるとして本検討を行った。3次医療機関である同大学関連病院におけるてんかん治療部門の過去6年間にわたる電子カルテデータを検索し、高齢者(65歳以上)のてんかん患者を特定した。患者は全員、病歴聴取と身体診察、3T-MRIもしくはCT(またはその両方)、脳波(EEG)の検査を受けていた。てんかんの診断名、発症年齢、病因、抗てんかん薬投与の記録について分析した。 主な結果は以下のとおり。・過去6年で、65歳以降に新規てんかんを発症した患者は70例であった。・新規発症例の平均年齢は73.1歳であり、52.9%が男性であった。・二次性全般化発作を伴わない複雑部分発作(CPS)の頻度が最も高かった(33例、47.1%)。・側頭葉てんかんと診断された例が最も多かった(50例、71.4%)。・病因学的診断が、脳血管障害のある患者を含む50%近くの患者について可能であった。・52.8%の患者については、てんかんの明らかな原因が不明(非損傷性てんかんなど)であった。・72.9%(51例)の患者において、発作間欠期の脳波に焦点性てんかん様発射が認められた。・1年超の追跡が可能であった54例の患者のうち、42例(77.8%)が抗てんかん薬の単独療法を受けていた。そして52例(96.3%)は発作が1年以上起きていなかった。関連医療ニュース 難治性の部分発作を有する日本人てんかん患者へのLEV追加の有用性は? レベチラセタム、部分てんかん患者に対する1年間の使用結果レビュー:聖隷浜松病院 てんかんにVNSは有効、長期発作抑制効果も

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成人市中肺炎のリスクとなるライフスタイル・基礎疾患は?

 市中肺炎は、成人、とくに高齢者において高い罹患率および死亡率をもたらす。スペイン・バルセロナ大学のAntoni Torres氏らは、PubMedの構造化検索により、欧州における成人市中肺炎発症率の最新データとライフスタイルや市中肺炎の危険因子に関するデータを同定し、成人市中肺炎のリスク増加と喫煙などのライフスタイル因子や基礎疾患との関連を検討した。Thorax誌2013年11月号に掲載報告。市中肺炎のリスク増加に関連したライフスタイルの因子は? 主な結果は以下のとおり。・成人市中肺炎全体の年間発症率は、1,000人年当たり1.07~1.2、人口1,000人当たり1.54~1.7であり、年齢の上昇とともに増加した(65歳以上で1,000人年あたり14)。・男性のほうが、女性、慢性呼吸器疾患患者、HIV感染症患者より、市中肺炎発症率が高かった。・市中肺炎のリスク増加に関連したライフスタイルの因子は、喫煙、過度の飲酒、低体重、子どもや歯科衛生状態が悪い人々との定期的な接触であった。・合併症(慢性呼吸器疾患、慢性心血管疾患、脳血管疾患、パーキンソン病、てんかん、認知症、嚥下障害、HIV、慢性腎疾患、慢性肝疾患)が存在すると、市中肺炎リスクが2~4倍増加した。

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てんかん児は本当に外傷が多いのか

 小児てんかんを有した子どもは外傷が多いというエビデンスは、頭部外傷を除けば存在しないことが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のChristine B. Baca氏らが、地域住民コホートから特定した、患児とその健常な兄弟姉妹を対照群とした後ろ向きケースコントール評価にて報告した。Journal of Pediatrics誌オンライン版2013年9月18日号の掲載報告。 研究グループは住民ベースコホートから、9歳以前に小児てんかんと診断された青少年501例(平均年齢15.3歳)とその兄弟姉妹について、過去の損傷経験について調べ評価した。501例のうち133例は複雑部分発作例(神経学的検査結果が異常でIQが<80)、368例は単純部分発作例(神経学的検査結果は正常でIQが≧80)であった。また、単純部分発作例について適合した兄弟姉妹対照群は210例であった。被験者について、これまでに「治療を要した重大で深刻な外傷」の経験(てんかんの診断前または以後で)があるかを調べ、もしある場合は、要した治療の詳細も調べた。 主な結果は以下のとおり。・小児てんかん歴のある青少年の約半数(49.1%)が、外傷経験があると報告した。そのうち8.9%は手術/ 入院を要した。また、17.1%が発作に関連した外傷を有した。・発作に関連した外傷は、単純部分発作例のほうが複雑部分発作例よりも頻度が少なかった(13.6%対27.4%、p<0.01)。・外傷のタイプ別にみると、骨折25.2%(126例)、頭部外傷24.4%(122例)、その他外傷10.2%(51例)、歯の外傷8.4%(42例)、熱傷/ やけど8%(40例)であった。・単純部分発作例について兄弟姉妹対照群と比較した検討では、経験したすべての外傷(全体またはタイプ別)について発生は同程度であった。ただし、頭部外傷についてのみ患児群のほうがより発生が多くみられた(30.0%対19.5%、p<0.02)。・上記の結果を踏まえて、著者は「頭部外傷を除いて、てんかんを有した代表的小児コホートにおける外傷リスクが、適合させた兄弟姉妹対照と比較して増大するというエビデンスはみつからなかった。この所見は、患児が重篤な症例でなければ、あるいは外傷への安全策が広く用いられていれば、外傷リスクは増大しないことを示唆するものといえるだろう」とまとめている。関連医療ニュース てんかん患者、脳内ネットワークの一端が明らかに 「抗てんかん薬による自殺リスク」どう対応すべきか? 小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用

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てんかんとQOL

てんかん患者のQOLは、患者の毎日の生活において重要な役割を果たし、QOLの改善には、障害や困難の重症度の緩和が大きく影響する。兼子 直氏(北東北てんかんセンター センター長)は「てんかんとQOL」と題して講演を行い、患者の状況(知的障害の有無、介護者とのコミュニケーション、身体障害による歩行障害の有無、施設入居の有無、家族による世話など)によってQOLに影響を与える因子の重要度は異なるとした。そのうえでQOLの改善を考慮するにあたり、個々の患者によって努力を集中すべき領域が異なることを認識する必要性を訴えた。また、てんかんにおけるQOLの予測因子について言及し、これまでの研究から予測因子として、「心理的要因、抗てんかん薬の有害な影響、発作の有無、知的障害および身体的併存症」などが挙げられていることを紹介した。このうち発作に関しては、発作が完全に抑制される場合、ほとんどのてんかん患者のQOLは一般人口のQOLとほぼ変わらないことが報告されているなど、発作抑制の重要性が示されている。また、抗てんかん薬の有害な影響および併存症としてのうつ病は、活動性てんかん患者の健康状態に最も悪い影響を及ぼすと考えられており、とくに、発作が抑制されていないてんかん患者では、これらの因子は発作頻度よりもQOLとのより強い関連が示されているとして、重視すべき因子であると述べた。兼子氏は最後に、「個々の患者はそれぞれに特徴があり、特別なケアの知識を必要としている。個別の患者の能力障害と環境との不均衡を最小にするよう、多くの困難な課題に立ち向かうべきである」とし、講演を結んだ。(ケアネット 萩原 充)

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韓国におけるてんかんの名称変更

韓国では、てんかんはかつて「癇疾」との名称で呼ばれ、てんかんに対する偏見も存在し、一般人、患者を含めて多くの韓国人にとって、てんかんは触れたくない病気、すなわち禁じられた病気とされてきた。最近は一般的な意識は改善傾向にあるものの、地方ではいまだに偏見の改善の意識は乏しいという。このような状況を改善すべく、韓国では癇疾の名称を変更するプロジェクトが行われ、現在は「脳電症」との名称に変更されている。Byung In Lee氏(延世大学校医科大学 神経内科学 教授)はこのプロジェクトの趣旨、進捗について講演した。「癇疾」もしくはかつて日本で用いられていた「癲癇」という名称は、北東アジアで何千年にもわたって使用されてきた経緯があり、その文字の意味から誤った概念が固定されてしまっている。Lee氏は、「疾患に対する誤った概念は不適切な疾患名を招き、不適切な疾患名はさらに概念を悪化させてしまい、疾患への偏見につながる」とし、そのため適切な名称を付与することで、てんかんに対する偏見を変えていく試みに至ったことを説明した。こうして、「てんかんの名称変更プロジェクト」が「てんかん名称変更事業特別委員会」のもとで進められた。新名称として、当初は10の候補が挙がったという。新名称を選択するにあたっては、癇疾という用語のもつネガティブな意味から離れ中立的であることてんかんの科学的根拠(脳内の神経細胞の異常な電気現象)を適切に反映すること多くの類似する用語(けいれん、発作、スパズムなど)と明確に区別できること名詞、形容詞として簡単に使えること国際的にも受け入れられる専門用語であることの4点を基準に選考。2009年6月、最終的に韓国てんかん学会総会にて新名称として「脳電症」が採用された。その後、2010~2011年の間に韓国の他の関連学会も公式名称として脳電症を承認したほか、韓国国会でも、脳電症は癇疾に代わる法令用語として承認され、名称変更過程は終了した。すでに、名称変更に続く取り組みとして、脳電症を公式用語としていくための活動を始めているという。Lee氏は講演を終えるにあたり、「てんかんへの偏見に抗する長い道のりにおいて、名称変更は始まりに過ぎず、これから長期間にわたり取り組むべき課題が山積している」と、偏見をなくすために行動を継続していくことの重要性を訴えた。(ケアネット 萩原 充)

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Stand up for epilepsy with one voice

国際抗てんかん連盟(ILAE)は、「てんかんが生活の妨げとなることのない世界」を目指して1909年に設立された組織である。ILAEで前理事長を務めたSolomon L. Moshé氏(アルバート・アインシュタイン医科大学 教授)は、てんかんをめぐる現在の課題とILAEの今後の取り組みについて講演した。ILAEは、世界各国の医療従事者・患者とそのケアを担う人々・行政機関・一般市民に対し、てんかんに関する教育と研究リソースを提供することを使命とし、「医療従事者にてんかんの予防・診断・治療・研究のための最新の知見を提供すること」、「最適かつ包括的なてんかんケアを支援すること」を目標として活動を行ってきた。しかし、現状では問題が山積しているという。てんかんは、一般の人々からの理解が乏しく、偏見の対象となりやすい疾患である。患者やその家族は、自分たちの状況を人目にさらしたがらず、このことは患者の治療・ケア・早期診断・医学研究・人権擁護―すなわち患者・家族の生活そのものに影響を与えている。また、研究・薬剤開発においては、「てんかん予備群を同定できる信頼性の高いバイオマーカーがなく、てんかんの予防医療を開発するうえでの重大な制約となっている」、「過去20年間に開発された薬剤は薬剤抵抗性てんかんにはほとんど効果がない」などの壁に突き当たっている。Moshé氏は、今後、治療・ケアの面での課題を国際的に解決していくには、「てんかん患者、NGOおよびWHO」「政府機関」「医療従事者」「研究者」の4者の連携が不可欠であることを強調。その理由として、てんかんの未知の原因の特定や新たな治療法・予防医療戦略の開発にはさらなる共同研究が必要であることを挙げ、連携により「各国の認可治療による知見への理解や専門性の高い研究活動への参加」、さらに「各国のさまざまな衛生調査・医療福祉サービスの理解」などが可能となるだろう、と展望を述べた。薬剤抵抗性てんかんについては前述のような問題はあるものの、近年の病態生理研究の進展とともに、薬剤抵抗性のメカニズムが解明されつつある。Moshé氏は、「研究が進展している今こそ、てんかんを取り巻く諸問題の改善のため、研究資金提供者を含めた関係者間の連携およびコミュニケーションが重要である」と訴え講演を結んだ。(ケアネット 萩原 充)

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日本におけるてんかん児のキャリーオーバー問題について

小児てんかんは、50~60%が小児期に発作が寛解する一方で、残りの40~50%の患者がてんかんを成人期に持ち越すキャリーオーバーの問題がある。小国 弘量氏(東京女子医科大学 小児科 教授)は、わが国におけるてんかんのキャリーオーバー問題の現状について講演した。キャリーオーバーにおいては、小児科から成人科への転科が問題となる。その時期と方法が、医師と患者・家族の双方にとって重要である。しかし、小児神経科医と神経内科医では、患者・家族との関係性、およびてんかん・併存症に対する治療の方法が異なり、現状では成人科への転科に障壁が存在している。小国氏は、引き継ぎ・転科においては、双方の科が関与するのが最良の策であると訴えた。続いて小国氏は、てんかんのキャリーオーバーにおける現状について、小児神経科医および神経内科医へのアンケート結果を紹介した。小児神経科医へのアンケート結果からは、診療しているてんかん患者のうち27%が成人患者と、小児神経科医が多数の成人患者の診療に関わっている状況が報告された。また、成人患者の診療においては、小児神経科医の76%が精神・心理的合併症の治療に困難を感じていることや、患者・家族が転科を嫌がったり、紹介できる成人科のてんかん専門医が地域にいないために、小児神経科医が成人科への転科を勧めていないという実態を紹介した。神経内科医へのアンケート結果では、神経内科医の46%がキャリーオーバー問題を認知しており、78%がてんかんの診療に困難を感じていた。とくにキャリーオーバー患者に対しては、「小児期からの経過が把握しにくい、小児期特有のてんかん症候群に不慣れである」などの理由のため、引き受け時に困難を感じるとの回答がみられたという。小国氏は、これらのアンケートにみられた、成人科のてんかん専門医が不足している問題の背景として、「成人のてんかん診療を担う科として精神科から神経内科への移行が遅れた」というわが国特有の伝統的な医療制度が原因であると指摘。「今後、転科をスムーズにするためのシステムの確立には、てんかん診療に携わる複数の診療科間の連携に加え、全国規模のてんかん教育活動が急務である」と訴え、講演を締めくくった。(ケアネット 萩原 充)

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てんかんと社会」国際シンポジウム

2013年8月24日、国際シンポジウム「てんかんと社会」が都内にて開催された。100人に1人が発症する「てんかん」は、患者によって原因・症状・予後はさまざまであるが、てんかんへの誤解・偏見の問題はいまだに解消されていない。シンポジウムでは、てんかんへの偏見・治療・ケアに対する、国内外での取り組みについて討論された。てんかんが生活の妨げにならない社会とするための、現状の課題と今後の展望について報告する。

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てんかんと偏見 ~その本質は何か~

中里 信和氏(東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野 教授)は「てんかんと偏見 ~その本質は何か~」と題して講演を行った。てんかんは反復性の脳の異常活動(てんかん発作)を特徴とする疾患で、さまざまな臨床症状および検査所見が伴うことも忘れてはならない。有病率は約1%であり、発症率では乳幼児期と高齢期で高い。一言で「てんかん」といっても、原因や発作型、合併症、予後などは患者さんによりさまざまであり、「病名だけで一括りにできない」ことを中里氏は強調した。てんかん診療においては、問診が非常に重要であり、中里氏は病歴、生活歴などの聞き取りを含め、一人の患者さんに1時間ほどかけて診察するという。脳波検査も必須であるが決して万能ではない。理想的には入院の上、発作の瞬間を捕捉するビデオ脳波モニタリング検査が重要であるとした。てんかんでは、適切な治療で約7割の症例は発作をコントロールできるという。また、てんかんは誤解や偏見・差別と深い関係がある疾患でもある。中里氏は、Twitterで積極的な情報発信をしていることで知られており、フォロワーとのやりとりを踏まえ、誤解や偏見・差別を解消させるには教育が重要であると説いた。てんかんの患者のすべてが適切な治療を受けられれば、GNP(国民総生産)が0.4%上昇するというデータを、中里氏は最後に紹介し、てんかんの診療改革は、日本社会全体にとっても有益であることを訴え、講演を結んだ。(ケアネット 有田衣里)

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高齢化社会とてんかん

赤松 直樹 氏(産業医科大学 神経内科 准教授)は、「高齢化社会とてんかん」と題して講演を行った。まず冒頭で、てんかんはかつて「小児の疾患」と捉えられることが多かったが、高齢者人口の増加に伴い、高齢者のてんかんの発症率も増加傾向にあるという現況を紹介した。高齢者のてんかんについて、わが国における大規模研究のデータはまだないものの、米国てんかん協会(American Epilepsy Society: AES)の研究によれば、てんかん治療患者の約3分の1は高齢者であるという。高齢者てんかんで多くみられる複雑部分発作は、認知症による異常行動との鑑別が難しく、誤診される場合も多いため、結果としててんかんが見逃され、診断の遅れや誤りにつながっている。また、認知症患者ではてんかん発症リスクが10~20%と高いが、この発症率の高さはあまり知られていないようである。赤松氏は、てんかん診断のポイントについて、まず基本として「問診」と「脳波」を挙げた。また、発作型を念頭においた診断、鑑別診断も重要であり、高齢者てんかんでは初発発作から治療を開始することも多いという。また赤松氏は、高齢者てんかんの臨床的特徴を明らかにするべく、産業医科大学てんかん専門外来を受診した高齢者てんかん患者125人を対象として行った比較検討において、高齢者てんかんは65歳以上で発症する割合が高い症候群診断は、発症年齢にかかわらず側頭葉てんかんが最も多い発作型は複雑部分発作、二次性全般化発作が多いが、高齢発症では複雑部分発作の割合がより高くなる発症原因は明らかでない症例が最も多く、発症時期が高齢であるほどその確率が高い傾向にある。原因が明らかな症例では、脳血管障害が最も多い高齢発症では9割近くの症例が単剤で治療されているといった結果をデータと共に紹介した。最後に、てんかんの診断が高齢者に与える影響として、発作による転倒・骨折、内服による副作用といった「日常生活」に関するもの、偏見や不安などの「心理面」に関するものを挙げた。そして、「高齢者てんかん治療の際にはこうした高齢者特有の問題に配慮することが重要である」という言葉で講演を結んだ。(ケアネット 有田衣里)

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てんかんと運転免許

てんかんなどの意識障害を伴う疾患が関係する道路交通法が可決・成立し、一定の病気*と関連して生じた交通死傷事故の処罰に関する法律をまとめた刑事法新法を策定しようとする動きがある(添付資料1)。しかし、これらの法改正がてんかんやその他の疾患に対する偏見や誤解を助長する可能性があると懸念されており、日本てんかん学会をはじめ関連学会では、これらの法改正について協議を重ねている。【道路交通法改正】2013年5月に日本てんかん学会と日本てんかん協会の共催で開かれた、緊急シンポジウム(「事故をなくしたい-病気や障害と自動車社会の共存をめざして-」)の中で、道路交通法改正に関して、「排除の論理が優先しており、実効性に疑問があるばかりか、差別社会につながりかねない。関連支援法の整備や数年後の見直しなどの付帯決議が必要である」との提言が出された。これにより、2013年6月7日衆議院本会議で可決した改正道路交通法には、付帯決議が追加された(添付資料2)。詳細な通報ガイドラインや運用基準の見直しについては、関連学会と警察庁で協議を重ねている。【刑事法新法】2013年8月に開かれた法的問題検討委員会・関連学会合同会議では、今回の刑事法新法が一定の病気*を理由に刑罰が加重されるという法律であるため、問題視する声が大きかった。これらの病気による事故率が他の要因と比較して高いという医学的根拠はなく、疾患に対する差別を助長しかねず、疾患の適切な治療を阻害しかねない。今後、関連学会の連名にて、新法の慎重な運用と付帯決議追加の要望書を提出する予定である。* 一定の病気とは、統合失調症、てんかん、再発性失神、無自覚性の低血糖症、躁うつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害をいう。添付資料1画像を拡大する添付資料2画像を拡大する(ケアネット 岸田有希子)

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日本のてんかん医療と社会 ~その新しい姿をめざして~

近年、てんかんと申告せずに自動車を運転したために発生した事故が多く、虚偽回答に対する罰則を強化しようとする動きもみられている。厚生労働省「てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究」班代表の大槻泰介氏(国立精神・神経医療研究センター てんかんセンター センター長)は、「罰則強化だけでは事故を減らす解決策にならない。運転をしなければならないてんかん患者への対策と、医師によるてんかんの申告が“患者への支援”と“よりよい医療”に結びつく仕組みを考える必要がある」と訴える。大槻氏は、日本のてんかん医療における問題点は、てんかんを担当する診療科および行政の担当部署が不明確であり、これまでてんかんという疾患を中軸に据えた対策がなされてこなかったことだという。具体的には以下のような問題点が挙げられる。(1)地域保健、地域医療、専門医療の整備が不十分。(2)患者が必要とする医療・福祉・生活支援の実態が把握されていない。(3)自動車運転事故等てんかん医療が直面する社会的課題に対し、組織の枠組みを超えた適切な対応がとれない。そこで厚生労働省研究班では、医療資源の有効活用と診療レベルの向上を目的とした対策に取り組んでいる。まず、スムーズに専門医・専門施設へ紹介できるように、紹介料の加算など診療報酬への反映を含めた診療連携システムの構築を行っている。また、地域のどこで誰がどのようにてんかん治療を行っているのかを医師も患者さんも把握することができるように、てんかん診療ネットワークのサイトを構築してんかん診療モデルの提案を行っている。このような対策により、新しいてんかん医療システムの提言と実現が期待されている。最後に大槻氏は、「てんかん医療と社会は深く関わらざるを得ない。しかしながら、わが国ではてんかん医療に関わる行政の責任部署が不明確なことが問題である。そのため、日本てんかん学会には日本のてんかん医療の現状を変える強いリーダーシップが求められている。」と述べている。てんかん診療ネットワーク http://www.ecn-japan.com/(ケアネット 岸田有希子)

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てんかんにVNSは有効、長期発作抑制効果も

 現在、12歳以上のてんかん部分発作に対する補助療法として承認されている迷走神経刺激療法(VNS)。Aurora Epilepsy CenterのGeorge L. Morris III氏らは、VNSに関する一連のエビデンスを評価した。その結果、VNSは小児の発作、レノックス・ガストー症候群(LGS)関連発作、成人てんかんの気分障害の改善に効果が期待できること、また治療継続により発作抑制効果が高まることが示唆され、これらをエビデンスレベルCとして推奨した。Neurology誌オンライン版2013年8月28日号の掲載報告。 本研究では、VNSの有効性と安全性に関する1999年以降のエビデンスを評価することを目的とした。文献レビューを行い代表的な試験を選出し、米国神経学会(American Academy of Neurology)のevidence-based methodologyに従って分類した。 主な結果は以下のとおり。・VNSにより、部分てんかんまたは全般てんかんを有する小児470例の55%(95%信頼区間[CI]:50~59%)において、50%超の発作減少が認められた(13試験:Class III)。・VNSにより、LGSを有する患者113例の55%(95%CI:46~64%)において、50%超の発作減少が認められた(4試験:Class III)。・VNS装置の植込手術後1~5年の間に、発作が50%以上減少する患者の割合が7%増加した(2試験:Class III)。・成人てんかん患者31例において、VNSにより気分障害の指標であるstandard mood scaleの有意な改善が認められた(2試験:Class III)。・小児におけるVNS植込手術部位の感染リスクは、成人に比べ増加した(オッズ比:3.4、95%CI:1.0~11.2)。・VNSは、小児の発作(部分および全般)、LGS関連発作、成人てんかんの気分障害に対して有効な可能性がある。・VNSにより長期の発作抑制効果が期待される。・以上のことから、次の推奨が示された。「VNSは、小児の発作、LGS関連発作、成人てんかんの気分障害の改善に考慮されうる」(Level C)「VNSは長期発作抑制効果が期待できる」(Level C)「小児に対するVNS植込手術後は、局所感染を注意深くモニターすべきである」関連医療ニュース 難治性の部分発作を有する日本人てんかん患者へのLEV追加の有用性は?/a> 抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証 セロトニンが重要な役割を果たす!うつ病合併側頭葉てんかん

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脳腫瘍術後のけいれん予防にレベチラセタム有用

 韓国・ソウル大学ブンダン病院のYoung Jin Lee氏らは、開頭術後のけいれん予防として投与したレベチラセタムの有効性と安全性について、バルプロ酸と比較検討した。その結果、発作アウトカムは両薬剤で同程度であるが、レベチラセタムはバルプロ酸に比べ長期合併症の発現が少なく、副作用による薬剤変更やその他の抗けいれん薬の追加投与が少ないことを報告した。CNS Drugs誌オンライン版2013年8月7日号の掲載報告。脳腫瘍術後のけいれん発作はレベチラセタム群7.8%、バルプロ酸群6.5% 脳腫瘍手術後のけいれん予防を目的に、抗てんかん薬が周術期に広く用いられており、第二世代の抗てんかん薬であるレベチラセタムへの関心が高まっている。本研究は後ろ向きカルテレビューにより、テント上脳腫瘍に対する開頭術後のけいれん予防として投与したレベチラセタムの発作アウトカム、副作用、忍容性をバルプロ酸と比較検討した。対象は、2009~2012年の間に、ソウル大学ブンダン病院においてテント上脳腫瘍に対する開頭術が施行された連続症例282例であった。術前にレベチラセタムを服用していた患者は51例(18.1%)、バルプロ酸を服用していた患者は231例(81.9%)であった。両薬剤による術後の発作アウトカム(術後1ヵ月以内)および長期副作用を評価した。 脳腫瘍術後のけいれん予防として投与したレベチラセタムをバルプロ酸と比較検討した主な結果は以下のとおり。・レベチラセタム群の51例中4例(7.8%)、バルプロ酸群の231例中15例(6.5%)で脳腫瘍術後にけいれん発作が認められた(p=0.728)。・バルプロ酸群における長期合併症の発生率(26.8%、62/231例)は、レベチラセタム群(9.8%、5/51例)に比べ有意に高かった(p=0.010)。・バルプロ酸群では、肝毒性が10例、高アンモニア血症が20例、血液学的異常が10例(血小板減少6例、汎血球減少3例、白血球減少1例)に発現した。さらに、バルプロ酸群の89例(38.5%)は、副作用または発作のコントロール不良により薬剤変更またはその他の抗けいれん薬が追加された。・一方、レベチラセタム群で薬剤変更またはその他の抗けいれん薬が追加された症例はわずか9例(17.6%)であった(p=0.005)。・術後のけいれん発作コントロール率においてレベチラセタム群とバルプロ酸群の間で有意差はなかったが、安全性と忍容性においてはレベチラセタムのほうが優れている可能性がある。■関連記事小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証レベチラセタム、部分てんかん患者に対する1年間の使用結果レビュー:聖隷浜松病院抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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