サイト内検索|page:16

検索結果 合計:427件 表示位置:301 - 320

301.

日本発!家族性パーキンソン病患者におけるGBA遺伝子変異研究

 グルコセレブロシダーゼ(GBA)遺伝子変異がレビー小体形成を促進し、その結果、より重篤な家族性パーキンソン病もしくはレビー小体型認知症を引き起こす可能性があることが、順天堂大学のYuanzhe Li 氏らによって明らかとなった。Neurobiology of aging誌2014年4月号掲載の報告。 パーキンソン病(PD)患者において、GBA遺伝子が危険因子であることが知られている。本研究では、日本人の144家族のうち147例の家族性パーキンソン病患者と対照被験者100例のデータから、GBA遺伝子のエクソン配列とエクソン/イントロンの境界配列を決定した。 主な結果は以下のとおり。・家族のなかで初めて罹患したPD患者144例のうち27例(18.8%)で、ゴーシェ病変異として知られるGBA遺伝子のヘテロ接合変異が認められ、GBA遺伝子のヘテロ接合変異が強く家族性パーキンソン病と関連していることが示唆された。(オッズ比: 22.9、95%信頼区間: 3.1~171.2)・関連する頻度は、常染色体劣性PDに比べて常染色体優性PD(ADPD)で有意に高かった。・臨床的評価によると、GBA遺伝子変異を有するPD患者では、精神医学的な問題および/または認知機能低下を伴うL-ドパ反応性パーキンソニズムのようなPDもしくはレビー小体型認知症(DLB)の典型的な症状を示した。・興味深いことに、GBA遺伝子変異を有するPD患者では、心筋I-123-メタヨードベンジルグアニジン取り込みが減少していた。・今回の知見では、GBA遺伝子のヘテロ接合変異が、とくに常染色体優性PDの家族性PDにおいて強い危険因子であることがわかった。・GBA遺伝子のヘテロ接合変異をもつ患者のなかには、DLBの臨床症状を示す患者もいた。

302.

てんかん患者 発作後の運転再開時期は

 てんかん患者が、原因が明らかな誘発性発作もしくは、非誘発性発作を初めて起こしてから運転を再開できる時期に関する定量的なデータが、オーストラリア・Royal Perth HospitalのBrown JW氏らによって示された。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌オンライン版4月25日掲載の報告。 初発発作後にてんかんを再発するリスクは40~50%であり、このリスクが最も高い初発発作後早期の段階で運転を制限することは正当な指導である。しかしながら、この制限は、患者が運転する資格がないために生じる、職業的、教育的、社会的な制約とのバランスを考慮する必要がある。初発発作後の運転制限推奨期間は、事故の許容可能な相対リスク(事故リスク比:ARR)に関する社会の認識を含むさまざまな要因の影響を受け、管轄区域によっても大きく異なっている。運転制限の設定にあたり、個別化されたリスク評価や全面的なガイドラインに基づくなどのアプローチも考えられるが、どちらも発作再発リスクの正確なデータが必要となる。 本研究では、初発発作を起こした1,386例のてんかん患者を前向きに調査・解析を行った。発作の再発は、生存分析を用いて評価された。発作の再発リスクの範囲およびARRから求められる運転すべきでない期間を算出した。加えて、実際に運転中に起きた発作についても、追跡期間中、前向きに観察された。 主な結果は以下のとおり。・非誘発性発作を初めて起こした患者の運転制限期間8ヵ月の間、および原因が明らかな誘発性発作を初めて起こした患者の運転制限期間5ヵ月の間、運転中の発作リスクは、1,000人あたり1.04人、ARRは2.6であり、発作の再発リスクは、1ヵ月ごとに2.5%ずつ減少した。・発作が再発した患者のうち、月次リスクが1/1,000以下に減少した6ヵ月後に、14例(2%)が運転中に発作を再発した。

303.

てんかん診療に福祉制度の活用を!

2014年4月23日(水)、東京都品川区で開催された大塚製薬株式会社・ユーシービージャパン株式会社共催の「てんかんアカデミー」にて、ソーシャルワーカーの漆畑 眞人氏(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院 医療福祉相談室長)が「てんかん診療ですぐに活用できる福祉制度」をテーマに講演を行った。福祉制度を活用する意義とはてんかん患者は、治療によって肉体的・精神的「健康」という大きな成果を得ることができる。ただし、その生活はさまざまな社会的障害を抱えることがある。てんかんの医療は、こうした社会的障害にも目を向けて、患者の生活安定とその有意義な人生につながることで、より大きな成果をみることができる。福祉制度の活用は、患者のこのような生活実現を支援するうえで重要なもののひとつである。てんかんで利用可能な福祉制度のうち、主なものには、1)自立支援医療(精神通院)2)精神障害者保健福祉手帳3)障害年金の3つがある。しかしながら、それぞれの制度に対する患者・家族および医療従事者の認知が十分でないため、必ずしもすべてのてんかん患者には支援が行き届いていない現状がある。てんかん患者にとって、これらの福祉制度を活用することは、一方で、医療費の心配をなくして、てんかん治療の中断を防ぐとともに、他方で、患者とその家族の生活安定をはかるものとなる。そうすれば、安定した生活基盤をもとに、患者とその家族が病気や障害を抱えつつも自分自身で納得して満足できる人生を送ることについて、医療が大きな貢献をしていくことができるようになる。(1)自立支援医療(精神通院医療)自立支援医療(精神通院医療)制度は、障害者が人格を尊重されて自立生活を営めるようにすることを目的としているが、直接的には医療費助成制度である。この制度を活用することで、患者は指定医療機関でのてんかん通院医療費が1割負担となる。上限月額も定められているため患者負担が少なくおさえられ、治療を継続しやすい環境が整う。自治体によってはさらに上乗せ助成される場合もあるため、各自治体のホームページなどを参考にされたい。区市町村役所にて手続きが可能である。“精神通院”とあるが、診断書を作成する医師が精神科に限定されるわけではなく、てんかんを含む精神障害の診断または治療に従事する指定医療機関の医師であれば、診療科は問われない。また、「指定医療機関」の認定にあたっては、各種医療・福祉制度の紹介や説明、カウンセリングの実施等が行える体制整備のほかは、主として担当する医師がてんかん医療に3年以上従事していれば指定基準を満たすため、積極的に活用していただきたい。なお、「福祉制度の紹介や説明」とは必ずしもすべての制度を詳細に渡って情報提供することが想定されているわけではない。実際には行政機関窓口等に行って詳しく聞くように助言することだけでも十分である。(関連リンク)厚生労働省『自立支援医療(精神通院医療)について』(PDF)(2)精神障害者保健福祉手帳精神障害者保健福祉手帳は、精神障害者の社会復帰、自立と社会参加の支援を受けやすくすることを目的としている。具体的な支援例としては、公共交通機関の料金割引、公共施設の入場料無料、税金の減額などがある。申請窓口は居住地の保健所や市区役所など自治体によって異なるが、都道府県知事が発行する。ただし、自立支援医療(精神通院医療)制度が「病気治療」について適用されるのに対し、精神障害者保健福祉手帳は「一定の精神障害の状態にあること」が必要とされることから、てんかんと診断された日から6ヵ月が経過している必要がある。診断書の作成医は、精神保健指定医その他てんかんを含む精神障害の診断または治療に従事する医師である。ここでも診療科を問わない。てんかん患者の精神障害等級はてんかん発作の種類と頻度によって、1級から3級に分けられている。等級基準は公開されている。等級を判断する際のポイントは、患者の診察室での様子だけではなく、患者が一人住まいとなった時の日常生活を「想像」して判断する必要があるため、患者の側にいる家族や、保健所保健師、ケアマネージャーなどの地域での支援者から情報をもらうと参考になる。(関連リンク)東京都の場合:東京都福祉保健局 東京都立中部総合精神保健福祉センター「精神障害者保健福祉手帳制度の手続き」(3)障害年金障害年金は、所得保障により障害者の経済的な生活支援を目的としている。ここでも診断書作成医は、てんかんにおいては精神科以外の診療科医師も作成が可能である。障害年金も精神障害者保健福祉手帳と同様に障害等級が定められており、等級判定の手続きが必要となる。なお、障害年金を受給していれば、年金証書等を添付するだけで同じ等級の精神障害者保健福祉手帳を取得することができる。しかし、精神障害者保健福祉手帳があっても障害年金の等級判定手続きはあらためて必要となるため、注意が必要である。また、障害年金の場合は、障害等級の該当性のほかに、保険料の納付要件も必要である。(関連リンク)日本年金機構『障害基礎年金を受けられるとき』障害年金サポートセンター『障害年金の受給までの流れ』制度を活用するうえでのデメリットとは主な3つの福祉制度をみると、患者においてはメリットが大きいように思えるが、デメリットはあるのだろうか。デメリットと考えることには人それぞれの個別性もある。たとえば、精神障害者保健福祉手帳を取得することで自分が「精神障害者である」というレッテルを貼られたくない人もいる。また、自分の周りや職場に知られたくないという人にとっては、制度上は知られないよう個人情報保護が図られているものの、事実上は情報が漏れてしまう可能性がないとはいえない。逆に、職場環境としては、てんかん患者であることを知られた上で安全配慮を受けて仕事をすることもありうる。福祉制度提案の際には、患者とのコミュニケーションをしっかりと図る必要があるだろう。以上のようなデメリットも考慮したうえで、各々の患者が納得して福祉制度を活用することが重要である。てんかん医療は、肉体的・精神的「健康」をめざすとともに患者の生活にも目を向けて福祉制度を積極的に取り込むことを期待されている。多くのてんかん患者が制度活用によって生活を安定させ、それぞれにとっての実りのある有意義な人生を歩んでいくことができる。患者にとってはこのような大きな目標を医療従事者と共有でき、日々の医療の成果はこのような生活の実現に大きく貢献するものとなる。(ケアネット)

304.

小児期早期のてんかん転倒発作、特徴が判明:東京女子医大

 東京女子医科大学の小国 弘量氏らは、小児期早期の症候性てんかんにおける転倒発作(epileptic drop attack:EDA)について、ミオクロニー失立発作(myoclonic-astatic epilepsy:MAE)との違いを明らかにする検討を行った。その結果、EDAは屈曲側でてんかん性スパスムス(ES)が起きる頻度が最も多く、MAEでみられるような典型的なけいれんの発生はまれであることを明らかにした。今回の所見を踏まえて著者は「臨床では、脳波所見でみられる棘徐波複合の周期的、限局的あるいは多巣性の発現が、ESによるEDAであることを示唆する可能性がある」とまとめている。Brain and Development誌オンライン版2014年4月11日号の掲載報告。 研究グループは、小児期の症候性てんかんにおけるEDAとMAEの違いを明らかにするため、ビデオポリグラフ試験の記録について、両者それぞれの人口統計学的データとともに比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、月齢7ヵ月~6歳までの間に症候性てんかんを有した21例と、EDAと記録され特発性MAEを有した20例であった。・ビデオポリグラフ試験でEDAが記録されたのは、症候性てんかん児においては総計188件(中央値8件)、特発性MAE児では182件(中央値7件)であった。・EDAが記録された症候性てんかん児における、EDAの発生はESによるものであった。そのうち15例の患者では、二相性の緩徐な弧を描く鋭徐波複合、あるいはフラットな背景脳波活動がみられ、4例において、atoticな発作に特徴的な棘徐波複合が、残り2例においてミオクロニー失立発作がみられた。・ESでのEDA発生は、15例のうち8例で周期的なものであった。また脳波検査において、限局性、多巣性、不規則多発性な棘徐波複合が判明した。・16例のMAE患者では、典型的な発作がみられたが、残り4例では、ミオクロニー屈曲発作がみられた。後者はいずれも、高振幅棘波あるいは多発棘波複合が単独でみられた。関連医療ニュース てんかんの原因遺伝子発見により臨床にどのような変化が起こったか 扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんの特徴は:国立精神・神経医療研究センター 小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用

305.

小児痙攣性てんかん、ロラゼパムの効果はジアゼパムと同等/JAMA

 小児の痙攣性てんかん発作重積状態に対して、ロラゼパム(商品名:ワイパックスほか)がジアゼパム(同:セルシンほか)よりも有効性や安全性が上回ることはなく、両者の治療効果は同等であることが判明した。米国・国立小児病院のJames M. Chamberlain氏らが、11病院を介して273例について行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。これまでに発表されたいくつかの試験結果では、ロラゼパムがジアゼパムより効果・安全性ともに高いことが示唆されていた。JAMA誌4月23・30日号掲載の報告より。被験者を2群に分け、ジアゼパムとロラゼパムを静注 研究グループは、2008年3月~2012年3月にかけて、生後3ヵ月~18歳未満の痙攣性てんかん発作重積状態で、米国内11ヵ所の小児用救急外来を訪れた患者、合わせて273例について試験を行った。 被験者を2群に分け、一方にはジアゼパム0.2mg/kg(140例)を、もう一方にはロラゼパム0.1mg/kg(133例)を静注した。必要に応じて、5分後に半分の用量を追加投与した。12分後にもてんかん発作が継続していた場合には、ホスフェニトイン(商品名:ホストイン)を静注した。 主要有効性アウトカムは、10分以内にてんかん発作重積状態が停止し、30分間無再発であったこととした。副次アウトカムには、てんかん発作の再発率、意識レベルの低下した鎮静状態(Riker Sedation- Agitation Scale[Riker]スコア3未満)の発現率、てんかん発作重積状態停止までの時間、ベースライン時精神状態への回復などを含んだ。 主要安全性アウトカムは、補助呼吸を必要としたかで評価した。 アウトカムの評価は、試験薬投与4時間後に行った。治療有効性は同等、鎮静状態の発現率のみロラゼパム群が高率 結果、主要アウトカムの発生率は、ジアゼパム群で72.1%(140例中101例)、ロラゼパム群で72.9%(133例中97例)と、有効性についての絶対差は0.8%(95%信頼区間[CI]:-11.4~9.8%)だった。補助呼吸を必要とした人は、両群ともに26例で、発生率でみるとジアゼパム群が16.0%、ロラゼパム群が17.6%と、絶対リスク差は1.6%(95%CI:-9.9~6.8%)だった。 副次アウトカムのうち両群で有意差がみられたのは、鎮静状態の発現率で、ロラゼパム群が66.9%に対しジアゼパム群は50%と、絶対リスク差は16.9%(同:6.1~27.7%)だった。

306.

治療抵抗性統合失調症女性、エストラジオールで症状改善

 多くの統合失調症女性は、現時点での最適な治療を受けているにもかかわらず症状が持続する。これについて先行研究では、エストロゲン療法の追加が効果的である可能性が示唆されていた。オーストラリア・モナシュ大学のJ Kulkarni氏らは、治療抵抗性の統合失調症女性に対するエストロゲン療法追加の有用性を検討する初の大規模臨床試験を行った。その結果、エストラジオール経皮投与は、プラセボと比較し陽性・陰性症状スコア(PANSS)をはじめとする症状スコアを有意に低下させ、とくに陽性症状に対して高い効果を示すことを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2014年4月15日号の掲載報告。  本試験は、治療抵抗性の統合失調症女性を対象とした初めての大規模無作為化比較試験であり、8週間にわたる3群の二重盲検無作為化対照試験で、2006~2011年に実施された。対象は、18~45歳(平均35歳)で、統合失調症または統合失調症様の障害を有しPANSS スコア60超、抗精神病薬を4週間以上服用しているが症状を認める女性183例であった。平均罹病期間は10年以上であった。エストラジオール200 μgおよび100 μgの経皮投与、またはプラセボパッチを投与した。主要アウトカムはPANSSスコアとし、試験を完了した180例についてベースライン時、7、14、28および56日目に評価した。認識力はベースライン時と56日目に神経心理検査RBANS(Repeatable Battery of Neuropsychological Status)を用いて評価した。データは潜在曲線モデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・エストラジオール100μg群、200 μg群とも、PANSS陽性スコア、全般スコアおよび総合症状スコアが、プラセボに比べて有意に低下した(p<0.01)。・その効果は、エストラジオール100μg群に比べ200 μg群のほうが大きかった。・エストラジオール200μg群では、PANSSのサブスケール陽性症状において最大の効果が認められた(エフェクトサイズ:0.44、p<0.01)。・以上のように本研究により、治療抵抗性の統合失調症女性、とくに陽性症状を呈する例において、エストラジオールは有効であり、臨床的意義のある追加治療であることが示された。関連医療ニュース 統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは 日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに 妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全

307.

てんかんの原因遺伝子発見により臨床にどのような変化が起こったか

 オーストラリア・メルボルン大学のIngrid E. Scheffer氏は、てんかん遺伝学が臨床にもたらした影響に関するレビューを行った。てんかん遺伝学は、てんかんの原因遺伝子が発見されて以降の19年間で変革をもたらしてきた。その結果、実際に多くの患者が診断可能となり、共存症や予後、遺伝カウンセリングに対する医療者の理解を深めるなど、臨床診療に変化がもたらされたという。Neuropediatrics誌2014年4月号(オンライン版2014年3月10日号)の掲載報告。 Scheffer氏は、てんかん遺伝子の発見に関連した臨床分子アプローチ概要について検証した。概要には、家族研究や、より最新の多重遺伝子パネルを用いた次世代シーケンスやwhole exome sequencingなどを含んだ。 主な結果は以下のとおり。・最近の研究は、てんかん遺伝学が臨床にどのような変化をもたらしたかを報告していた。・とくに注目されている遺伝子は、DEPDC5であった。・同遺伝子は、非病変性焦点性てんかんに関する初の遺伝子で、小家族での特発性焦点性てんかん患者の発病に関与している可能性があった。対照的に、常染色体優性焦点性てんかんを有する大家族ではまれであった。・DEPDC5は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の陰性レギュレーターで、DEPDC5突然変異を有する一部の患者は、結節性硬化症で示唆された二重衝撃仮説(two hit hypothesis)と類似した、皮質の形成異常を有する可能性があった。・てんかん遺伝学の臨床レベルの最も大きな影響は、てんかん性脳症患者に対するもので、多くの新たな突然変異の原因遺伝子が発見されるに至っていた。・以上のように、てんかん遺伝学は多くの患者の診断を可能とし、医療者が共存症や予後、遺伝カウンセリングについて理解することに寄与しており、臨床に変化をもたらしていることが示された。・遺伝子の発見は、治療選択に影響を与える可能性があるという点で重大であった。・分子レベルでの新たな洞察は、新たな治療法の開発に結びつく可能性がある。また、非病変性てんかんと、皮質形成異常に関連したてんかんとを遺伝学的にまとめることにもなる可能性があった。関連医療ニュース てんかん患者の精神疾患有病率は健常人の8倍 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定

308.

てんかん治療では、より高いゴール設定を!

2014年4月2日(水)、都内にて開催された、グラクソ・スミスクライン株式会社主催の第1回てんかんメディアセミナーにおいて、講師の東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野教授 中里 信和氏が「てんかん医療が抱える課題を解決するために」と題して講演を行った。まず冒頭に中里氏は、「てんかんでは本来、適切な診断と治療で7割以上の患者さんが発作をコントロールでき、普通の社会生活を営むことが可能だが、現状ではさまざまな課題によりあるべき医療が実現していない」ことを指摘した。その課題とは1)長時間ビデオ脳波同時記録の未普及2)診療ネットワークの未認知・未成熟3)医師患者間のコミュニケーション不足4)旧薬と新薬の使い分けの未周知5)公的支援制度の未活用に大別される。これらの課題について、グラクソ・スミスクライン株式会社が実施した「てんかん患者さんの意識調査」の結果を交えて解説が行われた。1)長時間ビデオ脳波同時記録の未普及てんかん発作が1年以上抑えられていない場合、長時間ビデオ脳波同時記録を受けることが推奨されるが、実際に検査を受けている患者さんは全体で7%、難治例でもわずか14.8%にとどまる。日本では先進諸外国と比較して本検査の診療報酬点数が著しく低いため、実施できる施設がきわめて限られていることが背景にある。本検査がもっと普及すれば、患者QOLが向上するだけでなく、不要な医療費の削減や、・生産性の向上で経済的利益がもたされ、わが国の財政に大きくプラスになる。2)診療ネットワークの未認知・未成熟日本全国には約100万人のてんかん患者がいるとされているが、専門医は400名あまりしかいないため、専門医とかかりつけ医との連携は欠かせない。現在わが国では「てんかん診療ネットワーク」の整備が進められているが、このネットワークの利用度・認知度を聞いたところ、「知らない」と答えた患者さんが7割以上を占めた。ここで重要なのは、主治医がもつ専門医資格の有無ではなく、患者にとって「発作ゼロ」「副作用ゼロ」「悩みゼロ」の治療ゴールをすべて達成できているかどうかである。患者は、てんかんをあきらめることなく、どれか1つでも欠けていたら、主治医に頼んで専門施設に紹介してもらうべきである。また医師の側にも、ひとりで診療せずネットワークを利用する必要性のあることを強く認識してもらいたい。3)医師患者間のコミュニケーション不足理想的な診察時間は初診の場合1時間、再診でも15分は必要だ。しかし本調査によると、初診時の診察時間は20分未満が半数以上を占め、再診時になると5分未満が半数近くを占める。多くの患者さんが発作以外にも悩みを抱えていることを考えると、現状の診察時間では医師が患者さんの悩みを十分に聞き取り、アドバイスを行うことは難しい。余裕をもった診療ができるよう、今後は医師以外の職種による診療補助や診療連携システムの充実を図るべきであろう。4)旧薬と新薬の使い分けの未周知多くは発作が消失している軽症例であっても、約4割の患者が副作用に悩んでいることが明らかになった。代表的な副作用である「眠気」「意欲の低下」「倦怠感」は従来の抗てんかん薬でとくに出現しやすい。主治医が副作用の少ない新規抗てんかん薬の知識を有し、かつ患者さんがこういった悩みを主治医に相談できていれば、副作用の少ない薬剤に切り替えていくことも可能であろう。なお、現在わが国では新規抗てんかん薬の単剤使用が保険診療上認められていないが、ラモトリギンをはじめとしたいくつかの新規抗てんかん薬においては、単剤使用が認められるよう申請が出されている。5)公的支援制度の未活用てんかん患者さんのための各種支援センターやさまざまな公的支援サービスがあるが、これらの認知・利用はほとんど進んでいない。各種支援センターに関しては、全体で約6割、難治例でも半数の患者さんがその存在を知らず、医師による情報提供が十分でない可能性があると中里氏は指摘した。なお、この調査の対象は現在てんかん治療中の20代以上の男女300例(うち8割が30~50代の働き盛りの年代)であることから、これまで述べたような課題が解決し、生産性が向上した場合の社会的インパクトは大きい。また、対象患者300例のうち8割が軽症例であるにもかかわらず、7割以上の患者が何らかの悩みを抱えている事実からも、医学的問題に加えて社会的問題の解決が重要であるという、てんかんの特殊性がわかる。最後に、「医学的な治療ゴールが達成できても、社会的な偏見を除去することは難しい。てんかんの多様性を理解してもらうためには、継続的な教育・啓発活動が重要である。」という、われわれメディアへのエールで講演は締めくくられた。

309.

てんかん患者の精神疾患有病率は健常人の8倍

 アイルランド・ボーモント病院のMaurice J Clancy氏らが行ったシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、てんかん患者において精神疾患を有する人は最大6%存在し、そのリスクは健常対照と比較して8倍高かったことが報告された。また、側頭葉てんかん患者で7%と、とくに高かったことも判明した。てんかんは、精神疾患のリスク因子であると思われてきたが、著者は、「今回明らかになった関連は、さらなる検討により、精神疾患の病因学的な手がかりが得られる可能性を示唆するものである」とまとめている。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年3月13日号の掲載報告。 リスクとしてのてんかんのエフェクトサイズについては、試験方法の違いやてんかんの診断基準の変化などもあり、試験間の所見にはばらつきがみられる。研究グループは、システマティックレビューとメタ解析にて、てんかん患者の精神疾患有病率、ならびに対照群と比較した推定リスクを評価する検討を行った。2010年9月時点でPubMed、OVIDMEDLINEなどの電子データベースをソースに文献検索を行った。検索キーは、有病率、発生率、割合、率、精神疾患、統合失調症、統合失調様障害、てんかん、発作、側頭葉てんかんであった。 主な結果は以下のとおり。・参考文献、文献参照リストも含めた検索の結果、215論文が特定された。そのうち58本(27%)がレビューに関連したデータを有していた。157本はさらなる詳細評価の結果、除外された。・レビュー包含試験のうち10%は、住民ベースの試験であった。・対照と比較した、てんかん患者の精神疾患リスクに関するプールオッズ比は、7.8であった。・てんかん患者における精神疾患のプール推定有病率は、5.6%(95%CI:4.8~6.4%)であった。・試験間の不均一性は大きかった。・側頭葉てんかん患者の精神疾患有病率は7%(同:4.9~9.1%)であった。てんかん患者の発作間欠期の精神疾患有病率は5.2%(同:3.3~7.2%)、発作後の精神疾患有病率は2%(同:1.2~2.8%)であった。関連医療ニュース 扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんの特徴は:国立精神・神経医療研究センター てんかん患者の頭痛、その危険因子は?:山梨大学 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か

310.

ミスト(前編)【信じ込む心(宗教)】

今回のキーワード信じ込む原始宗教同調崇拝モラル(集団規範)社会構造「なんでこんなにみんなで一生懸命になるの?」皆さんは、単なる利益追求をしない医療機関などで、同僚と一致団結して働いていて、すがすがしく思う一方、「自分は特別には得しないのになんでこんなにみんなで一生懸命になってしまうんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?そのわけは「そうするのが良いから」と信じ込んでいるわけです。それでは、なぜ「信じ込む心」は起きるのでしょうか?実は、この心理には、集団の安定や一体化のために駆り立てられている心理が関係していることがよくあります。さらに、それは宗教と同じくする根っこの心理でもあります。今回は、「信じ込む心」をテーマに、2007年の映画「ミスト」を取り上げます。そして、自己愛、社会性の心理を掘り下げ、そこから宗教の起源の心理に迫っていきたいと思っています。これらの心理を、新しい科学の分野である進化精神医学や進化心理学の視点から解き明かし、私たちはこの信じ込む心とどううまく付き合っていけば良いのかをいっしょに考えていきましょう。私たちはなぜ争うのか?―自己愛性舞台はある田舎町。最初のシーンで、大嵐の後、主人公のデヴィッドの庭にあるボート小屋は、隣人のノートンさんの倒れた枯れ木によって、破壊されていました。デヴィッドは「3年前に切ってくれと頼んでたのに」と苛立ちます。以前からデヴィッドは土地の境界線争いでノートンさんともめており、仲が悪かったのです。このように、私たちは常日頃から隣人トラブルによる争いに悩まされます。規模が大きくなれば、それは領土問題などの隣国トラブルになります。もともと私たち人間を含む多くの動物は、このような縄張り争いの行動をとります。私たちの遺伝子は、縄張りを守ることで心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?私たち人間を含む動物の祖先は、もともと食糧や繁殖のパートナーなどの資源が限られた環境で自分の縄張りのための争い(競争)を本能的に行ってきました。そして、約700万年前にチンパンジーとの共通の祖先と分かれた人間は、この利己的な行動を動機付ける心理、つまり自分が大事であるという心理(自己愛)を進化させてきました。そして、この心理を持っている種が子孫をより残してきたわけです。さらに、約1万年前に狩猟採集による移動から農耕牧畜による定住へと私たちの生活スタイルが大きく変わりました。この時から、土地などのさまざまな所有権の概念が芽生え、争いは激化していったのです。私たちはなぜ助け合うのか?―社会性デヴィッドは状況を伝えにノートンさん宅に行きます。すると、ノートンさんの方は、枯れ木によって愛車のクラシックカーが大破していたのでした。デヴィッドは「気の毒に。心から同情するよ」と気遣います。それを聞いたノートンさんは笑みを浮かべ「そう言ってくれると嬉しいよ」「(ボート小屋については)後で保険会社の連絡先を伝える」と心を許したのでした。そして、「もしかして今日、町に行く予定はある?」とデヴィッドに尋ねます。こうして、町まで同乗させてほしいというノートンさんの申し出にデヴィッドは応じるのです。このように、私たちは、助け合うこと(協力)をきっかけにしてお互いの心の距離を縮め、親近感や友情を芽生えさせることもできます。私たちの遺伝子は、助けることを心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?私たち人間の祖先は、300~400万年前にアフリカの森から草原へ出ました。その時は、猛獣の襲撃や飢餓などの脅威があり、まだまだ弱々しい存在でした。しかし、私たちの祖先は、生き延びるために、血縁関係をもとに共同体(集団)の人数を増やしていき、助け合ったのです。そして、この助け合いを動機付ける心理、つまり相手(集団)が大事であるという心理(社会性、利他性)を進化させてきました(社会脳)。そして、この心理をより持っている種の共同体が子孫をより残してきたわけです。私たちは、自己愛性によって利己的であると同時に、社会性によって利他的でもあるのです。私たちはなぜ噂好きなのか?―情報への嗜好性町に向かう車の中で、すれ違う軍隊の車両を見てノートンさんは「きみは地元民だ」「『アローヘッド計画』、何か知らないか?」とデヴィッドに訊ねます。近くの山の上には軍の基地があるからです。デヴィッドは「ミサイル防衛に関する研究らしい」「きみも知ってるだろ」と答えます。ノートンさんは「基地には墜落したUFOと宇宙人の冷凍死体があるって聞いたよ」と冗談めかして言うと、デヴィッドは「エドナ(町の知り合い)だな」「歩くタブロイド紙だからな」と答え、噂話をして盛り上がります。このように、私たちは噂話を楽しみます。私たちの遺伝子は、噂をすることを心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?私たちは助け合い(協力)をするようになって、生存確率を高めました。しかし、同時に、協力して得た資源を横取りする種、つまり裏切り者に悩まされるようになりました。「ただ乗り遺伝子(フリーライダー)」です。この遺伝子は、みんながお金を払って乗り物に乗っているのに、1人だけただで乗ろうとするような心理を駆り立てます。私たちは、助け合いの心理を進化させる中で、実はこの困った心理も進化させてしまったのです。なぜなら進化の本来の姿は競争だからです。私たちの祖先は、信頼による協力と騙しによる競争の心理を器用に使い分けて、バランスを取りながら進化してきたのでした。つまり、私たちの心の中には、信頼の心と同時に、常に裏切りの心が潜んでいるわけです。そんな中、約20万年前に私たちの祖先が現生人類(ホモ・サピエンス)に進化してから、喉(のど)も進化して、複雑な発声ができるようになり、言葉を話すようになりました。そして、言葉によってその場にいない人のことを伝え合い、裏切り者を事前に知ることができるようになりました。さらに、裏切りに対する抑止も働き、お互いの人間関係がよりスムーズになったのです。こうして、噂を話す行動を動機付ける心理、つまり相手や自分の評判(情報)を気にする心理(情報への嗜好性)を進化させてきました。そして、この心理をより持っている種の共同体は、子孫をより残してきたわけです。かつては、共同体のあるメンバーの裏切りが成功したら、残りのメンバーたちの生存が脅かされる状況があったのでしょう。だからこそ、現代の私たちは良い噂よりも悪い噂に敏感です。自分についての悪口はもちろんですが、他人についての悪口や裏話にもつい聞き耳を立ててしまいます。私たちのおしゃべりの大半は、共通に知っている人の新しい噂話の共有であると言えます。ですので、テレビの事件報道、ゴシップ特集、ワイドショーの視聴率が良いのもうなずけます。表1 自己愛性と社会性の違い自己愛性社会性特徴競い合い(競争)利己的騙し、裏切り助け合い(協力)利他的信頼私たちはなぜ感謝の言葉を口にするのか?―互恵性の確認町のスーパーマーケットで、ノートンさんはデヴィッドに「今日は助かったよ。ありがとう」とお礼を言います。いっしょに連れられてきたデヴィッドの幼い息子ビリーはその言葉を聞いて、「友達になれたの?」「ケンカしないね」とデヴィッドに訊ねてきます。デヴィッドは「どうかな。これから友達になれそうかな」とほほ笑みます。このように、私たちは好意、感謝、同情などの気持ちをあえて言葉にして確認し合います。その言葉だけでは相手に何も物理的に得になることはありません。しかし、私たちの遺伝子は、そうすることを心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?その理由は好意、感謝、同情という抽象的な言葉が、助け合いの心理の証となり、将来的な見返りがなされるシンボルの役割を果たすようになったからです(返報性、互恵性)。こうして、私たち人間の祖先は、約10万年前には、様々なシンボルを用いるようになりました。シンボルは、言葉だけでなく、首飾りなどの贈り物(トークン)や貨幣にも発展していきます。私たちはなぜまとまるのが難しいのか?―認知のずれデヴィッドたちがスーパーマーケットで買い物をしていると、突然、非常サイレンが鳴り渡り、外では辺り一面に濃い霧(ミスト)が立ち込め覆い尽くします。そして、人々を飲み込んだ霧の中からは、次々と悲鳴や絶命の叫び声が聞こえてきます。ある男性は「霧の中に何かいる!」「ドアを閉めろ!」と血だらけになりながら、スーパーマーケットの中に駆け込みます。ガラス越しに見える外の濃い真っ白な霧の世界では、想像もできない何かが起こっているのです。こうして、デヴィッドたちを含む数十人の買い物客たちは、スーパーマーケットに閉じ込められてしまいます。食糧には困りませんが、電話、テレビ、ラジオなどのあらゆる通信機器が機能せず、助けも来ず、先行きも見えず、彼らは完全に孤立しています。その後、霧の中から現れた巨大なタコの触手のような吸盤によって、ある店員が皮膚を丸ごと剥ぎ取られた上に連れ去られます。このあり得ない状況をデヴィッドたちの限られた数人がまず目の当たりにします。一方、ノートンさんは、弁護士でもあることから、デヴィッドの話を「証拠が足りない」として信じられず、自然災害だと決め付けてしまいます。状況が分からない不安から苛立ちが募り、デヴィッドとノートンさんはせっかく仲直りしていたのに、また言い争いを始めます。そして、ノートンさんは、しびれを切らします。助けを求めるために、数人を引き連れて外の霧の中に入っていくのです。スーパーマーケットにたまたま居合わせた数十人の群集は、まさに原始の時代の閉ざされた1つの共同体に見立てられます。運命共同体です。約20万年前には、私たちの祖先は、最大100~150人(ダンバー数)くらいの閉鎖的な共同体(集団)をそれぞれつくっていました。しかし、集団全員の考えは毎回必ずしも一致するわけではありません。情報が不確かであればあるほど、意見の違い(認知のずれ)が起こり、裏切りや争いを招きやすくなります。私たちは何によってまとまるのか?―(1)知識や知恵(文化)買い物客の中からは、「隣町の工場から出た汚染物質の雲だよ」「化学薬品の爆発だろう」と様々な憶測が飛び交います。こうして、憶測が憶測を呼び、伝えられていきます。このように、私たちは、人間関係の噂話だけでなく、その延長として、環境のあらゆることについての噂話(情報)も伝達し合います(情報の嗜好性)。約20万年前に私たちの祖先が言葉を話すようになってから、噂話は、単にその時の共同体のメンバーの間だけでなく、祖先からの教えとして世代を超えて語り継がれていくようになりました。それは、共通の生きる知識や知恵(文化)として、共同体の生存の確率を高める役割も果たしていたことでしょう。こうして、この文化によって、私たち人間は、遺伝子の突然変異による進化よりも、早く広く環境に適応することができるようになりました。つまり、文化は、「第2の遺伝子」とも言えそうです。私たちは何によってまとまるのか?―(2)宗教スーパーマーケットにいる買い物客の中で、カーモディさんはもともと信心深い人です。しかし、同時に信仰への勧誘に熱心すぎたため、町の変わり者として人々からは距離を置かれていました。しかし、あり得ない異様な事態の中、彼女は存在感を発揮し始めます。彼女は恐怖におののく人々に「外は死よ」「この世の終わり」「ついに審判の日が来たの」「間違いない」「あなたたちは罪深い人生を送ってきた」「神のご意志には逆らえない」「見ようとしない者ほど盲目な者はいない」「その目を開いて真実を悟りなさい」と熱心に説き始めます。そして、自分たちの状況を聖書の教えになぞらえ、「今夜、闇と共に怪物が襲ってきて、誰かの命を奪う」と予言します。そして、その予言が当たってしまいます。人々には、さもずばり的中させたかに見えてしまうのです。すると、人々は、今まで聞く耳を持とうとしていなかったのに、次々と彼女の話に耳を傾け始め、「信徒の群れ」になっていくのです。一体、何が起きているのでしょうか?カーモディさんの導く信仰心によって、人々は感情的に結び付きを強めていきます。信仰の秘めたる力です。この信仰が組織化され制度化されたものが宗教です。そもそも宗教(religion)の語源は、ラテン語の「再び結ぶ(religare)」に由来しています。この宗教の秘めたる力の正体は何か?なぜ宗教に染まるのか?そもそもなぜ宗教はあるのか?これらの疑問を踏まえて、宗教の本質から私たちの心の本質を探っていきましょう。宗教の起源(原始宗教)には、3つの要素があります。宗教の起源とは?―(1)同調周りの人が目の前で次々と死んでいくという極限状況の中、デヴィッドたち数人を除くほとんどの人々がカーモディさんの元に集まります。彼女がその信者たちに「共に神の道を歩みたい」と呼びかけると、彼らは揃って「償いだ!」と同じ言葉を唱え、エネルギッシュに1つにまとまっていきます。このように、人々は、同じ言葉を唱えたり拝んだり、一緒に歌を歌ったり、ダンスでリズムを合わせたりして一体感を高めます。私たち人間の遺伝子は、同じ発声や動作をすることを心地良く感じるようにプログラムされているようです。それはなぜでしょうか?私たち人間の祖先は、助け合い(協力)をする中で、共同体のメンバーの和を乱さないように周りを意識して(心の理論)、周りに調子を合わせる心理(同調)を進化させてきました。20万年前よりもさらに遡った原始の時代では、複雑な発声がまだできませんでした。しかし、その代わりに唸り声などの音を合わせたり、歩調を合わせたりして、協力するサインを出していたでしょう(サイン言語、非言語的コミュニケーション)。このように、周りに調子を合わせることで、連帯感や共通の意識を強め、共同体への帰属意識(集団同一性)を高めました。そして、この心理をより多く持っている種の共同体ほど助け合い、生存確率が高まっていたわけです。このように、同じ発声や動作を繰り返すことで、共同体が1つにまとまりました。そして、それは音楽やダンスのリズムとして儀式化されていきました。この儀式こそが、現代の私たちが宗教と呼ぶものの起源の1つの要素となっているのではないかと思います。つまり、宗教という制度が先にあったのではなく、同調の心理を高めるために行っていた儀式が先にあり、それが制度化されて後に宗教と呼ばれるになったと考えられます。この同調の心理は、現代ではコミュニケーションのテクニックとして意識的に利用されています。例えば、さりげなく相手と同じしぐさをしたり口癖を言うことで、相手からの好感を高めることができます(ミラーリング)。また、「似た者夫婦」とは、仲の良い夫婦が無意識のうちに同調の心理を高めていると言えます。昔から「類は友を呼ぶ」とはよく言ったものです。宗教の起源とは?―(2)崇拝 1. 超越的な存在デヴィッドは、買い物に出かける前、湖の対岸から大きく立ち込めて来た不気味な霧を見て、妻に「2つの前線がぶつかって起きた現象さ」「おれは気象予報士じゃないけどね」と説明して、納得しようとしていました。このように、現代の私たちは、自然現象を科学的にとらえようとします。そこに、恐怖はありません。しかし、科学が発展していない原始の時代はどうだったでしょうか?地震、嵐、雷などの様々な災いを招く自然の脅威や謎に対して説明する役割を果たしたのは、超越的な存在への崇拝であったと考えられます。その理由はこうです。私たちの祖先は、助け合い(協力)と競い合い(競争)の狭間で、相手の心を読む、つまり相手の視点に立つ心理を進化させてきました(心の理論)。その相手は、人間だけでなく、自然や動物などあらゆるものへと広がりました。つまり、自然や動物とも協力関係を築こうと、それらを崇拝したのです(アニミズム)。相手の視点に立つのは同時に、外から自分自身を見る視点でもあり、さらには過去・現在・未来という時間軸の全体像を見る視点でもあります(メタ認知)。こうして、約10万年前にシンボルを用いる心理(抽象的思考)が発達してからは「自分は死んだらどうなるのだろう?」「世界は何でできているのだろう?」と死後の世界や自然環境に対して好奇心や恐怖を抱くようになりました。この好奇心や恐怖から、自然を観察し、気候の変化や動物の行動のパターンを予測しようとしました。そして、少しずつ、自然をコントロールできるようになりました。例えば、水がないなら井戸を掘り、風除けがないなら石壁を作りました。大きな土木工事も行うようになりました。また、実験的に植物や動物を管理するようになりました。こうして、自然の環境は変えられるという発想が生まれていきました。その時、コントロールしている側とされている側の両方の視点に立つことができるようになったのです。そして、自分たちを支配している超越的な存在を意識するようになったのです。宗教の起源とは?―(2)崇拝 2. 神秘体験スーパーマーケットにたまたま居合わせたある軍人は、カーモディさんに問い詰められて、真相を打ち明けます。「この世界は異次元空間に囲まれていて、軍の科学者がそこに『窓』を開けたんだ」「事故で向こうの世界がこっちに来た」と。まさにカーモディさんが「大地は忌まわしい汚物(=霧)を吐き、残忍で汚れた恐ろしい魔物(=見たこともない生物)が解き放たれた」と説いた教えに重なります。原始の時代の私たちの祖先が意識した超自然界は、この「異次元空間」に見立てることができます。そして、この超自然界を確信させたのは、夢見やトランスなどの神秘体験であると思われます。夢見は、すでに亡くなった家族と夢で再会することがあるため、神秘的な意味付けがされたでしょう。亡くなった家族は、あの世という超自然界で生きていると思えたのです。こうして、すでに超自然界に旅立った祖先たちを、超自然界で自分たちを見守ってくれる存在として崇め奉りました(祖先崇拝)。画像また、トランスは、同調の心理を高めるための儀式を延々とやっている最中に、重度の疲労から意識がもうろうとして体験される錯覚や幻覚です(せん妄)。夢との連続性があり、白昼夢とも言えます。これは、苦行という儀式を強いる古くからの宗教と重なります。こうして、トランスも、超自然界との交信の場という神秘的な意味付けがなされたでしょう。例えば、幻聴は、超自然界からのメッセージ、つまりお告げと受け止められます。そこから、予知夢、正夢という過剰な意味付けもなされたでしょう。さらに、トランスは、薬草や毒キノコによって、より手軽に体験できることが後に発見されます。そして、金縛り(睡眠麻痺)、幽体離脱(体脱体験)や臨死体験など様々な精神症状も、神秘的な意味付けがされるようになりました。それは、超自然界を垣間見て、魂の存在を確信する体験です。てんかん発作もまた、超自然界に近付ける神聖な病であると解釈されました。統合失調症の妄想は、現代では「自分は巨大な闇の組織に操られている」という訴えが典型的です。しかし、その訴えは、原始の時代では、超自然界を確信しているというだけのごく当たり前のことだったでしょう。このように、いくつかの精神症状は、神秘体験との共通点があり、原始の時代には一定の役目を果たしていた可能性も考えられます。宗教の起源とは?―(2)崇拝 3. 心の拠りどころ(愛着)カーモディさんの教えに従い、スーパーマーケットで信者と化した人々は、神に祈りを捧げます。このように、原始の時代の人々も、自然崇拝(アニミズム)や祖先崇拝から、超越的な存在そのもの、つまり神を崇拝するようになっていきました(神仏信仰)。彼らは、その見返り(恩)として、恵み(恩恵)、慈しみ(慈悲)、そして助け(救済)を求めました。それは、協力関係を超えて、保護者(母親)と子どもの関係です。そこから、神が、人間を含む万物を創り上げた生みの親であるという発想が生まれます。神(母親)が人間(子ども)を無条件に守ること(母性)を意識することで、人間が神に無条件に守られていると信じ込む心理(愛着)が働きます。こうして、神の存在は、人々が共通して信じる心の拠りどころとなっていくのです。そこには、母親に抱かれる赤ん坊になったような安らぎがあります。母性や愛着の心理と同じように、信仰の心理にも、オキシトシンという精神状態を安定させるホルモンが関係している可能性が考えられます。神という保護者に見守られていると確信しているからこそ、そして、全ては神の思し召し(意図)という解釈がなされるからこそ、自らの死への恐れや大切な人の死への悲しみなどを引き起こす不運や災難にも、意味を見いだし、受け入れ、乗り越えることができるようになりました。「信じる者は救われる」という言い回しは、的を射ています。神の恩恵や救済を信じてすがることで、愛着の心理であるオキシトシンが活性化して、ストレス耐性を高めるメカニズムが考えられるからです。これが、宗教的な寛大さや寛容さの源でもあります。それは同時に、心の拠りどころを共有することで、個人だけでなく、共同体(集団)の結束力(協力関係)も強めるというメリットもあります。例えば、昔から、神の超越的な力で病気を治してもらうために、お祈り(ヒーリングダンス)、お祓い、お参りなどがなされてきました。もちろん科学的には効果はなく、病気は治りません。しかし、これらの行為は、みんなが揃って何かをするという同調の心理を高めます。同調もまた、オキシトシンを活性化させます。この心理とあいまって、結果的に人々の心を一体化させ、不安におののく集団への癒しの役目を果たしていたのでした。このように、心の拠りどころを共有することで、共同体が1つにまとまりました。そして、それは、共同体の中で、超越的な存在(神)への崇拝として制度化されていきました。これこそが、現代の私たちが宗教と呼ぶものの起源の1つの要素となっているのではないかと思います。つまり、神の存在が先にあったのではなく、人々が共通に抱いていた超越的な存在が先にあり、それが後に神と呼ばれるようになったのでしょう。また、宗教という制度が先にあったのではなく、超越的な存在(神)への崇拝が先にあり、それが制度化されて後に宗教と呼ばれるになったと考えられます。「なぜ神はいるのか?」という宗教的、哲学的な問いへの答えはなかなか見つかりません。しかし、「なぜ神はいると思うのか?」という進化心理学的な問いへの答えは、このような人間の心理を根拠に説明することができます。宗教の起源とは?―(3)モラル(集団規範)デヴィッドたち数人のグループは、カーモディさんの一団を尻目に話し合います。「ここは文明社会よ」と言う女性に、デヴィッドは「都市(文明社会)が機能していて、警察通報できるならね」「でもひとたび闇の中に置かれ、恐怖を抱くと人は無法状態になる」「粗暴で原始的に」「恐怖にさらされると人はどんなことでもする」と答えます。さらに別の男性は「人間は根本的に異常な生き物だよ」「部屋に2人以上いれば最後は殺し合うんだ」「だから政治と宗教がある」と付け加えます。デヴィッドたちは、状況を鋭く言い当てています。スーパーマーケットに閉じ込められてから、その外では、科学では説明できないことが次々と起こっています。これは、まさに原始の時代の自然環境に見立てられます。そこは、次に何が起きるか予測ができず、翻弄されるばかりの恐ろしい世界です。原始の時代、このような恐怖に安心感や安全感を与え、共同体を平穏に保つ役割を果たしたのは、すでに超自然界に旅立った祖先たちによって語り継がれてきた教えだったでしょう。そして、その教えは、やがて生きる道しるべや戒めとして普遍性を帯びていき、共同体のメンバーに同じ考えを根付かせて同じ方向を向かせる拠りどころとなったのです。つまりはモラル(集団規範)です。このモラルを自分たちが守っているかどうかを、超自然界にいる祖先、さらには絶対的な存在(神)が見張っていると人々は解釈しました。見守られていることは、見方を変えれば、見張られていることでもあります。神は、保護者(母性)の役割だけでなく、監視者(父性)の役割も果たしていることが分かります。こうして、モラルは、人々に共通の意識を生み出し、そこからより高度な秩序が生まれました。このように、モラルを持つことで共同体が1つにまとまりました。そして、それは政治などのルール作りの源になっています。このモラルによる社会構造こそが、現代の私たちが宗教と呼ぶものの起源の1つの要素となっているのではないかと思います。つまり、宗教という制度が先にあったのではなく、モラルによる社会構造が先にあり、それが制度化されて後に宗教と呼ばれるになったと考えられます。表2 宗教の3つの要素同調崇拝モラル(集団規範)特徴同じ発声や動作を繰り返すことによる一体感同じ思いを持つことによる一体感神秘体験による強化神の保護による集団の安全感(心の拠りどころ)神の監視による秩序形成ルール作りの源医療機関で働く私たちは?これまで考えてきた宗教の3つの要素から、宗教とは、原始の時代から共同体を1つにまとめ上げるシステム(社会構造)そのものであることが分かります。私たちの祖先は、原始の時代からこのシステムと共に歩んできました。そして、人間の文明の進歩に大きな役割を果たしてきました。その1つとして挙げられるのが、大陸大移動(グレートジャーニー)の促進説です。20万年前に現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生してから、寒冷期(氷河期)と温暖期が繰り返されていました。しかし、最初は温暖期になってもなかなか人類は広がりません。しかし、6万年前の4回目の温暖期で突然、私たちの祖先は大胆な移動を始めたのです。その理由こそ、当時に出来上がった宗教が共同体の絆を強くしていたからであるという可能性が考えられます。現代の社会で、宗教そのものは原始の時代ほど大きな役割を果たしていません。なぜなら、現代の私たちは、ルール(法律)と科学によって理性的な社会生活を送っているからです。しかし、逆に、私たちが組織(集団)になる時、そして一致団結する時、得てして原始の時代の宗教的な心が目を覚ましやすくなります。それは、集団の安定のために、相手と同じ行動や考えを好み(同調)、何かを拠りどころとして信じ込み(崇拝)、従いやすくなる心理(集団規範)です。これは、私たちの本質的な心理です。例えば、医療機関という組織(集団)で働く私たちは、みな白衣を着て自分たちしか分からない専門用語を駆使して、職業倫理や崇高な理念を持ち、組織の独自のルールにも従っています。それ自体は、すばらしいことです。この心理があるからこそ、医療機関の組織は、単なる利益集団にはなりません。また、このように組織に染まる仕組みが分かっているからこそ、組織では、新人教育で泊まり込みの合宿などをさせて、この心理を芽生えさせ、感化させようとするわけです。私たちの社会(集団)は、程度の差はあれ、この心理により、うまく回っていると言えます。しかし、この心理に魅力がある一方で、危うさもあります。例えば、それはマインドコントロールです。私たちは、この心理の魅力と同時に、危うさもよく知っておく必要があります。次回は、その危うさやデメリットであるマインドコントロールについて、さらに深く掘り下げていき、私たちの組織のあり方や私たちの生き方そのものを見つめ直してみたいと思います。果たしてカーモディさんの説く教えによって1つになった彼らに未来はあるのでしょうか?1)ニコラス・ウェイド:宗教を生み出す本能、NTT出版、20112)NHKスペシャル取材班:ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか、角川書店、20123)進化と人間行動:長谷川眞理子、長谷川寿一、放送大学教材、2007

311.

メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる

 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、ドパミンおよびノルアドレナリン作動性神経伝達を介する前頭前皮質の変化に伴う神経発達障害である。神経ステロイド(アロプレグナノロン、デヒドロエピアンドロステロンなど) は、さまざまな神経伝達物質の分泌を調節する。スペイン・Complejo Hospitalario GranadaのAntonio Molina-Carballo氏らは、小児ADHD患者を対象とし、神経ステロイドの濃度ならびにメチルフェニデート服薬による臨床症状への効果および神経ステロイド濃度への影響を検討した。その結果、ADHDのタイプにより神経ステロイドはそれぞれ異なったベースライン濃度を示し、メチルフェニデートに対して異なる反応を呈することを報告した。Psychopharmacology誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 本研究は、小児ADHDにおけるアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度と日内変動を明らかにするとともに、メチルフェニデート継続服薬による臨床症状への効果およびこれら2種類の神経ステロイドの濃度への影響を明らかにすることを目的とした。対象は、5~14歳の小児148例で、DSM-IV-TR分類でADHDと診断され、“attention deficit and hyperactivity scale”によるサブタイプと“Children's Depression Inventory”によるサブグループが明らかになっているADHD群(107例)と対照群(41例)であった。両群とも20時と9時に血液サンプルを採取し、ADHD群では治療開始4.61±2.29ヵ月後にも血液を採取しアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロン濃度を測定した。Stata 12.0を用いて年齢と性別で調整した因子分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・メチルフェニデートの投与により、うつ症状を伴わないinattentiveサブタイプのADHD患者においてアロプレグナノロン濃度が2倍に増加した(27.26 ± 12.90 vs. 12.67 ±6.22ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うADHDサブタイプではデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度が高く、メチルフェニデート投与後はわずかな増加を認めたが統計学的有意差はなかった (7.74 ± 11.46 vs. 6.18 ±5.99 ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うinattentiveサブタイプのADHD患者において、デヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度は低かったが、メチルフェニデート投与後にはさらに減少した。・ADHDサブタイプおよびサブグループによって、神経ステロイドはその種類によりベースライン濃度が異なり、メチルフェニデートに対して異なる反応を示す。これらの異なる反応性は、ADHDサブタイプや併存症の臨床マーカーになる可能性がある。関連医療ニュース ADHDに対するメチルフェニデートの評価は 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か

312.

扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんの特徴は:国立精神・神経医療研究センター

 国立精神・神経医療研究センターの木村 有喜男氏らは、片側性の扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんについて、臨床的、形態学的および病理学的特徴を明らかにする検討を行った。23例のMR画像を分析した結果、皮質形成異常が扁桃体腫大の病理診断の1つとなりうること、また一部の患者では皮質形成異常が側頭極にまで及んでいる可能性があることなどを報告した。Journal of Neuroimaging誌オンライン版2014年3月5日号の掲載報告。 本検討は、23例の側頭葉てんかんで同側性の扁桃体腫大を伴う患者の、臨床データおよび画像データをレトロスペクティブに検討した。23例のうち14例についてはFreeSurferおよびvoxel based morphometry(VBM)により、3.0テスラMRI画像データが入手できた対照20例との比較で形態学的な分析を行った。また手術例2例については病理学的検討も行った。 主な結果は以下のとおり。・被験者は2例を除き、薬物療法にて無発作または劇的改善をみた。・手術例の病理学的検討から、いずれも扁桃体から同側の側頭極まで皮質形成異常が認められたことが示された。・FreeSurferにより、患側と健側とに有意な扁桃体容積差が認められた。・VBMにより、患者14例のうち7例で(50%)、扁桃体腫大側における側頭極の灰白質量に有意な増大が認められた。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン部分アゴニスト、新たなてんかん治療薬として期待 新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証 日本の高齢者てんかん新規発症、半数以上が原因不明:産業医大

313.

バルプロ酸の増毛効果を確認、AGA治療の選択肢に?

 韓国・ソウル大学校医科大学のSeong Jin Jo氏らは無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い、バルプロ酸の局所投与(スプレータイプ)の有意な増毛効果を確認し、男性型脱毛症(AGA)の選択肢となりうることを報告した。有害事象も認められたが、プラセボとの有意差はみられず、なかには心室頻拍を呈した被験者もいたが試験薬との関連は認められなかったという。Journal of Dermatology誌オンライン版2014年2月18日号の掲載報告。 抗てんかん薬として広く用いられているバルプロ酸は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3βを阻害し、Wnt/β-カテニン経路を起動する作用を有する。研究グループは、この作用機序が毛髪の発育サイクルおよび成長期への誘導と関連していることに着目し、AGA治療におけるバルプロ酸(VPA)スプレー投与の有効性を評価する検討を行った。 中等度のAGA男性患者を被験者に、VPAスプレー(バルプロ酸ナトリウム8.3%含有)またはプラセボスプレーを24週間にわたり投与し比較した。主要有効性エンドポイントは、フォトトリコグラム分析評価による毛髪数の変化であった。 主な結果は以下のとおり。・中等度AGA男性患者40例が登録され、27例が良好なコンプライアンスでプロトコルを完了した。・VPA群(15例)とプラセボ群(12例)には、ベースライン時の年齢、脱毛症罹病期間、総毛髪数に統計的有意差はなかった。・結果、総毛髪数の変化は、VPA群がプラセボ群よりも有意に大きかった(p=0.047)。・有害事象は両群においてみられた。大半は軽度で自然治癒し、発現率は同程度であった(p=0.72)。・VPA群で心室頻拍を呈した被験者がいたが、VPAスプレーに関連したものとは思われなかった。・以上を踏まえて著者は、「VPAの局所投与は、われわれの被験者の総毛髪数を増加させた。したがってAGA治療の選択肢となりうるものである」とまとめている。

314.

統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは

 統合失調症の女性の妊娠・出産では、母体および出生児が複数の有害アウトカムを有するリスクが高いことが明らかにされた。カナダ・トロント大学のSN Vigod氏らが、後ろ向き住民コホート研究の結果、報告した。本検討は、多くの統合失調症を有する女性が妊娠するようになっており、母体および出生児のアウトカムに関する最新のデータが必要になっていたことから行われた。結果を踏まえて著者は、「注目すべきことは、健康格差を減らすための介入である」と提言している。BJOG誌オンライン版2014年1月21日号の掲載報告。統合失調症の妊娠・出産は妊娠高血圧腎症や静脈血栓塞栓症のリスク高 研究グループは、統合失調症を有する母体およびその出生児という潜在的に脆弱な集団の健康アウトカムを定量化することを目的に、カナダ・オンタリオ州の住民を対象に後ろ向きコホート研究を行った。2002~2010年にかけて、出産経験(死産を含む)のある女性住民15~49歳を対象とした。そのうち過去5年以内に統合失調症で入院経験がある、もしくは2つ以上の外来受診の請求記録がある人を、統合失調症を有する女性と定義した。主要母体アウトカムは、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症/子癇、静脈血栓塞栓症。主要新生児アウトカムは、未熟児生誕、在胎不当過小(SGA)で出生体重が軽量、在胎不当過大(LGA)で出生体重が重量であった。副次アウトカムには、付加的キーとなる健康格差指数などを含んだ。 統合失調症の女性の妊娠・出産における有害アウトカムリスクを研究した主な結果は以下のとおり。・統合失調症を有する被験者女性は1,391例であった。比較対照群(5年以内妊娠で精神科疾患診断歴のない女性)は43万2,358例を特定し検討した。・統合失調症女性は、妊娠高血圧腎症(補正後オッズ比:1.84、95%信頼区間:1.28~2.66)、静脈血栓塞栓症(同:1.72、1.04~2.85)、未熟児生誕(同:1.75、1.46~2.08)、SGA(同:1.49、1.19~1.86)、LGA(同:1.53、1.17~1.99)のリスクが高かった。・また、統合失調症の女性の妊娠・出産では、インテンシブな入院医療(高次周産期施設への搬送・母体ICU入院など)を必要とし、新生児罹患率も高率であった。関連医療ニュース 抗精神病薬や気分安定薬を服薬中の女性、妊娠・出産のリスクはどの程度 日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに:神戸大学 妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全

315.

知的障害者の約半数が向精神薬多剤併用

 知的障害者の多くは、精神疾患の診断がなされていなくても、攻撃的行動のマネジメント目的で向精神薬の投与を受けていることが知られている。しかし、これまでその投与経過については、とくに一般的な精神病薬だけでなく抗精神病薬が投与されているにもかかわらず、前向きに検討した報告がなかった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドン/チャリングクロス病院のS. Deb氏らは、攻撃的行動がみられる成人知的障害者への向精神薬投与の特徴と経過について、6ヵ月間にわたる初となるクリニックベースの前向き研究を行った。その結果、向精神薬だけでなく、抗精神病薬(通常量または高用量)との多剤併用療法が半数近くで行われていることなどを明らかにした。Journal of Intellectual Disability Research誌オンライン版2014年1月22日号の掲載報告。知的障害患者への抗精神病薬処方で攻撃的行動の重症度が有意に減少 研究グループは、地域のクリニックをベースに、100例の成人知的障害者で攻撃的行動がみられるサンプルを抽出し、6ヵ月間にわたり前向きに向精神薬の使用について追跡し、人口統計学的・精神医学的および攻撃的行動変数で比較した。 攻撃的行動がみられる成人知的障害者への向精神薬投与の特徴と経過について前向き研究を行った主な結果は以下のとおり。・向精神薬は、ベースライン時89%、追跡6ヵ月時点で90%の攻撃的行動がみられる成人知的障害患者に投与されていた。・最も投与の割合が高かった抗精神病薬はリスペリドンであった。続いてクロルプロマジン、ハロペリドール、オランザピン、ズクロペンチキソール(国内未承認)、クエチアピンであった。・その他一般的に用いられていた薬物の種類は、抗うつ薬のSSRI[シタロプラム(国内未承認)、パロキセチン、フルオキセチン(国内未承認)など]であり、続いて気分安定薬(カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムなど)であった。一方で、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム処方例の多くは、てんかん治療のために用いられていた。・攻撃的行動がみられる成人知的障害患者の多く(45%)が、ベースライン時に複数の種類の向精神薬を受けていた。同割合は、追跡6ヵ月時点ではわずかに減少し41%であった。・とくに抗精神病薬が処方されていた割合はベースライン時75%、追跡6ヵ月時点73%と同程度であった。多剤併用療法についてもそれぞれの時点で、10%、9%と同程度であった。・クロルプロマジン換算300mg/日以上の抗精神病薬を投与されていた患者は、ベースライン時に23%、追跡6ヵ月時点で20%であった。・一方で、攻撃的行動の重症度については、ベースライン時から追跡6ヵ月時点の間に全体的に有意に減少していた。・抗精神病薬の高用量処方は、より重度の攻撃的行動、物体への身体的攻撃、自傷行為、年齢が高いことと明らかな関連がみられた。しかしその他の人口統計学的変数、身体的健康状態または精神科診断との間には、有意な関連はみられなかった。・ベースライン時と追跡6ヵ月時点の間の、平均攻撃性重症度スコアの変化と抗精神病薬1日量の変化とには有意な相関性は何も認められなかった。・これらの結果を踏まえて著者は、「攻撃的行動がみられる成人知的障害者では、向精神薬の使用が一般的であることが示された。また一般的な精神病薬または高用量の抗精神病薬による向精神薬の多剤併用療法も一般的であることが示唆された。場合によっては、精神科医が変わることで、抗精神病薬が重複投与されている可能性もあった」と指摘している。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬との併用、相互作用に関するレビュー 抗精神病薬多剤併用による代謝関連への影響は? ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?!

316.

てんかん治療の改善は健康教育から始まる

 てんかん治療の格差は貧困国において最も大きい。ケニア・KEMRI(Kenyan Medical Research Institute)のFredrick Ibinda氏らは、健康教育プログラムにより治療アドヒアランスが改善するのか、無作為化試験にて評価を行った。農村地帯への1日の介入で行われた検討の結果、健康教育がてんかんに関する知識を向上することが示された。しかし1日だけの教育では、アドヒアランスの改善には結びつかなかったことも判明し、著者は「継続的な教育がアドヒアランスを改善する可能性があり、さらなる研究が必要である」と述べている。Epilepsia誌オンライン版2014年1月21日号の掲載報告。 ケニアの農村地帯への1日健康教育プログラム(キリフィてんかん教育プログラム)の有効性について検討した無作為化試験は、738例のてんかん患者を介入群と非介入(対照)群に割り付けて行われた。主要アウトカムは、抗てんかん薬(AED)のアドヒアランス状況で、血中薬物濃度(標準的な血液アッセイで測定、検査技師は割り付けをマスキング)にて評価した。副次アウトカムは、てんかん発作の頻度とKilifi Epilepsy Beliefs and Attitudes Scores(KEBAS)(訓練された介入スタッフにより行われた質問アンケートで評価)であった。データは、ベースライン時と介入群への教育介入後1年時点に集め分析した。また事後解析として、修正ポアソン回帰分析にて、アドヒアランス改善(AEDのベースライン時の非至適血中濃度からの変化で評価)、発作の減少、KEBASの改善に関連した因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時と介入後1年時点の両時点で評価が行われたのは581例であった。・試験終了時点で血液サンプルが入手できたのは、介入群105例、対照群86例であった。解析は、最もよく服用されていたAED(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン)について行われた。・結果、AED血中濃度ベースのアドヒアランスについて、介入群と対照群で有意差はみられなかった(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:0.74~2.90、p=0.28)。自己報告でみた場合も同様であった(同:1.00、0.71~1.40、p=1.00)。・一方で、介入群のほうが対照群よりも、てんかんの原因についての伝承、民間療法、ネガティブなステレオタイプに対する固定観念を持っている人が有意に少なかった。・発作の頻度については、差がなかった。・ベースライン時とフォローアップ時のデータを比較した結果、アドヒアランス(血中濃度で評価)は介入群(36%から81%、p<0.001)、対照群(38%から74%、p<0.001)ともに有意に増大した。・発作頻度が減少した(直近3ヵ月で3回以下)患者数は、介入群は62%から80%(p=0.002)、対照群67%から75%(p=0.04)と増大した。・治療アドヒアランスの改善(両群を統合して検討)は、てんかんリスクについてのポジティブな信条への変化(リスク比[RR]:2.00、95%CI:1.03~3.95)、および非伝統的宗教的信条への変化(同:2.01、1.01~3.99)と明らかな関連がみられた。・発作頻度の減少は、アドヒアランスの改善と関連していた(RR:1.72、95%CI:1.19~2.47)。・KEBASのポジティブな変化は、高次教育を受けたことと関連していた(非教育との比較でのRR:1.09、95%CI:1.05~1.14)。・以上のように、健康教育はてんかんについての知識を改善するが、1回だけではアドヒアランスは改善しないことが示された。しかしながら、将来的な検討で継続的教育はアドヒアランスを改善する可能性がある。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン部分アゴニスト、新たなてんかん治療薬として期待 日本の高齢者てんかん新規発症、半数以上が原因不明:産業医大 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か

317.

早漏症にSSRI、NO濃度との関連を確認

 トルコ・Sisli Etfal研究教育病院のS. L. Kirecci氏らは、精漿中の一酸化窒素(NO)レベルと、早漏症に対するSSRIの有効性との関連について検討を行った。その結果、早漏症は精漿中NO濃度高値と関連しており、SSRI投与により精漿中NO濃度が減少し、さらに膣内挿入から射精までの時間が延長することを報告し、SSRIが早漏症に有効な可能性を示唆した。Andrologia誌オンライン版2013年12月20日号の掲載報告。 本研究の目的は、精漿中のNOレベルと、早漏症に対するSSRIの有効性との関連を明らかにすることであった。原発性早漏症(膣内挿入から射精までの時間[IELT]<1分)の男性16例(32.18±3.32歳)および健常男性11例(コントロール群)が登録された。健常男性はグループ1に、早漏症患者はグループ2と3の2群に無作為に割り付けられた。グループ2にはパロキセチン20mg/日、グループ3にはセルトラリン50mg/日がそれぞれ4週間投与された。ベースライン時および治療後の所見を3群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・早漏症患者におけるベースライン時の平均精漿中NO濃度は、健常男性と比較して有意に高かった(32.24±5.61μmL-1対19.71±3.50μmL-1)(p<0.001)。・IIEFスコア、IELTスコアとNO濃度との関連において、パロキセチンおよびセルトラリン群の間で有意な差は認められなかった。・最初の1ヵ月の最終日において、パロキセチンおよびセルトラリン群における平均IELTスコアは、ベースライン値と比較して有意に改善していた(p<0.001)。・パロキセチンおよびセルトラリンによる治療後、NO濃度はベースラインと比較し減少していた。・以上より、早漏症は精漿中NO濃度高値と有意に関連していることが示唆された。SSRI投与後の精漿中NO濃度の減少は、射精を遅らせる可能性がある。これらの結果を確認するため、また病態生理におけるNOの役割、早漏症治療について明らかにするためにさらなる研究が必要である。関連医療ニュース 早漏治療にはSSRI、トラマドールが有効?! 閉経期ホットフラッシュにSSRIが有効 片頭痛の予防に抗てんかん薬、どの程度有用か

318.

日本人多発性硬化症患者における認知機能障害の関連要因は:北海道医療センター

 多発性硬化症(MS)患者では認知機能障害がQOLに影響を及ぼしていること、また認知機能は抑うつや疲労感などと相関している可能性が示唆されていた。国立病院機構北海道医療センター臨床部長の新野 正明氏らは、日本人MS患者の認知機能障害について調べ、認知機能と無気力、疲労感、抑うつとの関連について評価を行った。その結果、同患者ではとくに情報処理速度の障害がみられ、認知機能障害が無気力や抑うつと関連していることなどを明らかにした。BMC Neurology誌2014年1月6日号の掲載報告。 患者184例と健康対照(年齢、性、教育レベルで適合)163例について、Brief Repeatable Battery of Neuropsychological(BRB-N)テストを行い、また、Apathy Scale(AS)、Fatigue Questionnaire(FQ)、ベックうつ病評価尺度第2版(BDI-II)を用いて評価を行った。両群の比較にはt検定を用いた。ピアソン相関分析にて2因子間の相関性を検討し、重回帰分析にて各因子がBRB-Nスコアに及ぼす影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者184例(うち女性135例)は、全国18施設から登録され、平均年齢は39.3歳(SD 10.1歳)、罹病期間は平均9.3年(SD 7.2年)、神経症状評価尺度(EDSS)は2.38(SD 2.04)であった。・BRB-Nテストは9項目について行ったが、そのすべてにおいて、MS患者群のほうが対照群よりも得点が有意に低く認知機能障害が大きかった。9項目の中では、Symbol Digit Modalities Test(SDMT)の得点差が最も大きかった。・AS(p<0.001)、FQ(p<0.0001)、BDI-II(p<0.0001)のスコアは、いずれもMS患者群で有意に高かった。・MS患者では、BRB-Nテストの大半のスコアと、ASおよびBDI-IIのスコアに相関が認められた。一方でFQのスコアとは相関がみられなかった。・以上のように、日本人MS患者では、認知機能の障害、とくに情報処理速度の障害がみられ、認知機能の低下と無気力、抑うつとが関連していた。ただし認知機能は、無気力/抑うつによる影響以上の低下がみられた。一方で、主観的疲労感と認知障害には関連がみられなかった。・これらの結果を踏まえて著者は、「MS患者の主観的疲労感や認知機能を改善しQOL向上を図るためには、それぞれ異なる治療アプローチが必要であることが示唆された」とまとめている。関連医療ニュース てんかん合併アルツハイマー病患者、より若年で認知機能が低下 多発性硬化症とてんかんの併発は偶然ではない!? −大規模人口ベースの記録照合研究より 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学

319.

ベンゾジアゼピン部分アゴニスト、新たなてんかん治療薬として期待

 ドイツ・Drug-Consult.NetのChris Rundfeldt氏らは、てんかんに対する新たな治療薬として、ベンゾジアゼピン(BZD)受容体部分アゴニストの可能性について言及した。現在、BZD受容体部分アゴニストとしてイミダゾロン誘導体のイメピトインが、イヌのてんかん治療薬として承認されており、従来のBZDでみられる有害事象、忍容性、依存性などの問題を解決する新たな治療薬としてヒトへの応用が期待されることを報告した。CNS Drugs誌オンライン版2013年12月号の掲載報告。 BZDは、多様なてんかん発作に対し幅広い抗てんかん活性を示すが、てんかんの治療に際しては、有害事象、有効性の欠如(忍容性)、身体および精神依存の形成などから使用に限界がある。BZDは、GABAA受容体のBZD認識部位(BZD受容体)に結合することにより、抑制性神経伝達物質GABAの正のアロステリック調節因子として機能する。従来のBZDであるジアゼパムやクロナゼパムなどは、同部位においてフルアゴニストとして作用する。そこでRundfeldt氏らは、これら化合物による前述のデメリットを解決する手段として、GABAA受容体のBZD認識部位において、より低い固有活性を有する部分アゴニストの開発が考えられることを指摘した。 部分アゴニストに関して得られている知見は以下のとおり。・ブレタゼニル、アベカルニル、アルピデム(いずれも国内未承認)を含む数種のBZD受容体の部分アゴニストまたはサブタイプの選択的化合物が、選択性の高い抗不安薬として開発されたが、適応症に「てんかん」は含まれていない。・最近、イミダゾロン誘導体のイメピトイン(ELB138)およびELB139が、GABAA受容体のBZD部位において低親和性の部分アゴニストとして作用することが示され、てんかん治療薬としてイメピトインの開発が進められた。・イメピトインは、げっ歯類および霊長類のモデルを用いた検討で、多様なけいれん発作に対し耐用量で広い抗けいれん活性を示した。・イメピトインは、その作用メカニズムから予想されるように、忍容性が不十分で、乱用傾向もみられた。・イメピトインは、ヒトよりもイヌで好ましい薬物動態プロファイルを示したことから、イヌのてんかん治療薬として開発が進んだ。イヌのてんかんモデルを用いた無作為化対照試験で示された抗てんかん薬としての有効性と高い忍容性、安全性に基づき、最近ヨーロッパでイメピトインがイヌのてんかん治療薬として承認された。・イヌのてんかんに対するイメピトインの好ましいプロファイルをきっかけに、ヒトのてんかんに対する新たな治療としてBZD受容体部分アゴニストへの関心が再び高まるものと期待される。関連医療ニュース 新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証 ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか 難治性の部分発作を有する日本人てんかん患者へのLEV追加の有用性は?

320.

認知症患者のニーズを引き出すアプリ:神奈川県立保健福祉大学

 認知症患者は進行に伴い、意思疎通が難しくなる。このような問題を解決するため、神奈川県立保健福祉大学の友利 幸之介氏らは、作業療法に当たっての作業選択意思決定支援ソフト「ADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice;エードック)」の活用基準を確定するため検討を行った。検討の結果、ADOCは中等度認知症患者における大切な作業を把握するのに役立つ可能性があることが示された。Disability and Rehabilitation : Assistive Technology誌オンライン版2013年12月24日号の掲載報告。 ADOCは、友利氏らが開発したiPadアプリケーションで、画面上でカードゲームをするように、日常生活上の作業が描かれた95枚のイラストを使って、患者自身が思う大切な作業とそうでない作業に振り分けてもらうことで意思を示してもらうというものである。 検討は、日本国内5つの医療施設から116例の患者を登録して行われた。作業療法士が認知症患者に、ADOCを用いてインタビューを行い、患者が思う大切な作業を確定した。主要介護者により、最も大切な作業を確定してもらい、Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いてカットオフ値を算出した。 主な結果は以下のとおり。・受信者動作特性曲線(ROC)分析の結果、ADOCを用いて大切な作業を選択可能なカットオフ値は、MMSEスコア8であることが示された。・感度は91.0%、特異度は74.1%であり、曲線下面積(AUC)値は0.89であった。・ADOCは、中等度認知症患者の大切な作業を引き出すのに役立つ可能がある。・また、ADOCのリハビリテーション的意義として次のような点を列挙した。■認知症が進行するにつれて、活動に関するニーズや要求を表明することは困難になっていく可能性がある。■iPadアプリ「ADOC」は、体系的な目標設定プロセスを通じて意思決定の共有促進に有用であり、MMSEスコア8以上の人において最も大切な作業を選択することが可能である。■ADOCは、中等度認知症患者の最も大切な作業を引き出すのに役立つ可能がある。関連医療ニュース 新たなアルツハイマー病薬へ、天然アルカロイドに脚光 認知症患者へタブレットPC導入、その影響は? てんかん治療で新たな展開、患者評価にクラウド活用

検索結果 合計:427件 表示位置:301 - 320