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2014年9月3日(水)、グラクソ・スミスクライン株式会社は「てんかんの薬物療法の課題と今後の展望」をテーマに、都内で第2回てんかんメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、大澤 真木子氏(日本てんかん学会理事長)より「学会・医師の立場から見た本邦のてんかん診療における課題・背景」と題した講演、山本 貴道氏(聖隷浜松病院院長補佐/てんかんセンター長)より「本邦におけるてんかん診療の現況と新規抗てんかん薬ラミクタール単剤療法認可の意義」と題した講演が行われた。てんかん治療の現状わが国のてんかん患者の割合は、およそ100人に1人と言われている。てんかんは、子供に多いが、近年高齢者における発症率も上昇傾向にあり1)、幅広い年齢で発症する脳神経の疾患である。てんかんの治療には薬物治療と外科治療があるが、通常は薬物治療が行われ、これは基本的に単剤治療が主である。その理由としては、約6割の患者が1剤で発作をコントロールできていること2)、副作用や薬物間相互作用の軽減による安全性の確保などが挙げられる。新規抗てんかん薬の課題しかしながら、近年相次いで発売されている新規抗てんかん薬は、わが国では併用療法での承認にとどまり、単剤で用いることができていなかった。そのため、いまだに旧来薬中心の治療が行われ、新規抗てんかん薬における単剤療法時の副作用データや、単剤療法の第一選択薬としての治療実績に関するデータが十分に収集できていない現状であった。新規抗てんかん薬単剤治療の利点わが国とは異なり欧米などでは、単剤療法の第一選択薬として新規抗てんかん薬が処方されるケースも少なくない3)。これは、新規抗てんかん薬は、従来の抗てんかん薬よりも、重篤となりやすい晩期型の副作用(脳症、白血球減少、再生不良性貧血など)が現れにくいという特徴があるためである4)。このような状況の中、ようやくわが国でも、先月初めて新規抗てんかん薬ラミクタールの単剤療法が承認された。現時点でラミクタール単剤療法の経験は未だ多くはないが、投与初期の漸増段階から効果が発揮され、患者の約9割が発作の消失ないし減少に至ることが報告されている5)。とくに、全身けいれんを起こすような症例では有効性が高く、第一選択となりうる。また、妊娠を希望している、もしくは将来的に妊娠を視野に入れている女性も、ラミクタール単剤療法が適していると言え、今回の単剤療法の承認によって従来薬からラミクタールへのさらなるシフトが起こる可能性がある。今回の承認により、てんかん患者が受ける身体的負担が軽減し、患者の生活の質をより高く保つことができる可能性が出てきた。さらに、医療者側にとっても、てんかんを治療するうえで薬剤の選択肢が広がったことは喜ばしく、このたびの承認の意義は大きいと言えよう。1)Cloyd J, et al. Epilepsy Res. 2006; 68 suppl 1: S39-S48.2)Kwan P, et al. N Engl J Med. 2000; 342: 314-319.3)Pickrell WO, et al. Seizure. 2014; 23: 77-80.4)Schmidt D, et al. BMJ. 2014; 348: g254.5)Yamamoto T, et al. Brain & Nerve. 2014; 66: 59-69.