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DOACとスタチンの併用による出血リスク

 直接経口抗凝固薬(DOAC)はスタチンと併用されることが多い。しかし、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用は、出血リスクを高める可能性が考えられている。それは、DOACがP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されるが、アトルバスタチンとシンバスタチンもP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されることから、両者が競合する可能性があるためである。しかし、これらの臨床的な影響は明らかになっていない。そこで、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngel Ys Wong氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用と出血、心血管イベント、死亡との関連を検討した。その結果、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンには、臨床的な相互作用は認められなかった。ただし、アトルバスタチンまたはシンバスタチンを使用中にDOACの使用を開始した場合、出血や死亡のリスクが高かった。本研究結果は、British Journal of General Practice誌オンライン版2024年11月28日号で報告された。 本研究は、英国のClinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumデータベースを用いて、コホート研究とケースクロスオーバー研究に分けて実施した。コホート研究では、2011~19年に初めてDOACが処方された患者を対象とした。DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンを併用した集団(アトルバスタチン群、シンバスタチン群)と、DOACとその他のスタチン(フルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン)を併用した集団(その他のスタチン群)に分類し、出血(消化管出血、頭蓋内出血、その他の出血)、心血管イベント(虚血性脳卒中、心筋梗塞、心血管死)、死亡のリスクを比較した。ケースクロスオーバー研究は、DOACまたはスタチン開始のタイミングが及ぼす影響について、患者自身をコントロールとして比較することを目的として実施した。対象は、DOACやスタチンの使用期間中に初めて出血、心血管イベント、死亡が認められた患者とした。 主な結果は以下のとおり。【コホート研究】・DOACが処方された患者は39万7,459例で、そのうちアトルバスタチンを併用した患者は7万318例、シンバスタチンを併用した患者は3万8,724例が抽出された。・アトルバスタチン群は、その他のスタチン群と比較して、出血、心血管イベント、死亡のいずれについてもリスクの有意な上昇はみられなかった。・シンバスタチン群は、その他のスタチン群と比較して、出血、心血管イベントのリスクの有意な上昇はみられなかった。死亡についてはシンバスタチン群でリスク上昇がみられたが(ハザード比[HR]:1.49、99%信頼区間[CI]:1.02~2.18)、年齢を詳細に調整することで、影響は減弱した(HR:1.44、99%CI:0.98~2.10)。【ケースクロスオーバー研究】・アトルバスタチン使用中にDOACの使用を開始した患者、シンバスタチン使用中にDOACの使用を開始した患者において、出血や死亡のリスクが上昇した。・DOAC使用中にアトルバスタチンの使用を開始した患者、DOACを使用中にシンバスタチンを使用した患者では、同様の傾向は認められなかった。 なお、ケースクロスオーバー研究において、スタチン使用中にDOACの使用を開始した患者で出血や死亡のリスクが高かったことについて、著者らは「薬物相互作用ではなく、DOAC開始時の患者の状態(臨床的脆弱性)が影響していると考えられる」と考察したが、「アトルバスタチンまたはシンバスタチン使用中にDOACの使用を開始する際は、出血や死亡のリスクが高いため注意が必要である」とも述べている。

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完璧なHIV感染予防法にアクセスできるのは?(解説:岡慎一氏)

 年2回の注射で完璧にHIV感染を予防できることは、PURPOSE 1試験にて、最も予防が難しいといわれていたアフリカ女性ですでに証明されている。今回の試験は、PURPOSE 2試験と呼ばれ、男性同性愛者やトランスジェンダーなどその他の感染リスクの高い人すべてを組み入れたHIV感染予防の研究である。結果は、PURPOSE 1試験同様、ほぼ完璧に予防できるという事が示された。 これらの試験で用いられた画期的新薬は、レナカパビルという新しい機序の薬剤であり、多剤耐性ウイルスを持つHIV患者の治療薬としては、すでに認可されている。日本で、この薬剤を治療に用いた場合の医療費は、年間約700万円である。 この薬剤を開発した会社は、6つのGeneric Companyに低・低中所得国の120ヵ国にGeneric薬の供給を認め、18のHIV感染率の高い国に対して、Generic薬が供給されるまでの間の薬剤の提供を約束した。しかし、欧米の国々では、正規品での薬剤使用となるため、この高価な予防薬にアクセスできる人は、かなり限られると予想される。有効な薬剤に対するアクセスの不平等は、1996年強力な多剤併用療法が可能となった時に、南北格差として問題となった。この解決のため、先進国の製薬会社は、途上国でのGeneric薬の使用を認めるようになった。 今回の処置もその一環ともいえる。しかし、今回は、先進国が有効な薬剤にアクセスできないという逆の不平等が問題となっている。この問題がどのように解決されていくのか、日本の現状とも照らし注視していきたい。

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1日1回投与の高カリウム血症改善薬「ビルタサ懸濁用散分包8.4g」【最新!DI情報】第29回

1日1回投与の高カリウム血症改善薬「ビルタサ懸濁用散分包8.4g」今回は、高カリウム血症改善薬「パチロマーソルビテクスカルシウム(商品名:ビルタサ懸濁用散分包8.4g、製造販売元:ゼリア新薬工業)」を紹介します。本剤はナトリウムを含まないため、食塩制限が必要な慢性腎臓病や心不全を併存する高カリウム血症患者にも使用することができ、1日1回投与のため良好なアドヒアランスが期待されています。<効能・効果>高カリウム血症の適応で、2024年9月24日に製造販売承認を取得しました。本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用しません。<用法・用量>通常、成人には、パチロマーとして8.4gを開始用量とし、水で懸濁して1日1回経口投与します。以後、血清カリウム値や患者の状態に応じて適宜増減しますが、最高用量は1日1回25.2gです。なお、増量する場合は8.4gずつとし、増量間隔は1週間以上空けます。<安全性>重大な副作用には、低カリウム血症(4.6%)、腸管穿孔、腸閉塞(いずれも頻度不明)があります。重篤な低カリウム血症が発現した場合は生命の危機に陥ることがあるため、用法・用量を遵守することが重要です。また、血清カリウム値に影響を及ぼす薬剤の用量に変更が生じた場合は、血清力リウム値の変動に注意が必要です。その他の副作用は、便秘(14.5%)、下痢、腹部膨満(いずれも1~2%未満)、鼓腸、低マグネシウム血症(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.本剤は高カリウム血症を改善する薬です。2.水に懸濁して、1日1回服用します。3.飲み忘れた場合は、同日中に服用してください。翌日以降に決して2回分を服用しないでください。4.服用中は、排便状況を確認し、便秘に引き続き持続する腹痛、嘔吐などの症状が現れた場合には、速やかに医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>高カリウム血症は、軽度ではほとんど症状のない非症候性ですが、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを超えると心筋脱分極が促進し、心電図の変化および不整脈が生じます。腎不全や心不全患者、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(RAASi)などの薬剤の使用によって生じることがあります。治療目標は、血清カリウム値を正常範囲内に維持することであり、急性期だけでなく長期的に血清カリウム値を管理することが重要です。また、高カリウム血症を伴う患者において、RAASiの減量や中止は心腎疾患の悪化につながる可能性があるため、RAASi治療の継続率を高めるためにもカリウム値の管理が必要です。パチロマーソルビテクスカルシウムは、カルシウム塩とD-ソルビトールを含む非吸収性の陽イオン吸着ポリマーです。このポリマーは、消化管内腔のカリウムと結合し、糞中へのカリウム排泄を増加させることで、体内のカリウムを除去し、血清カリウム値を低下させます。本剤は、ナトリウムを含まないため、食塩制限が必要な慢性腎臓病や心不全を併存する高カリウム血症患者にも使用できます。また、従来の高カリウム血症治療薬は、1日に複数回の服用が必要でしたが、本剤は1日1回投与であるため、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。ただし、本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用できません。日本人の高カリウム血症患者を対象とした国内第III相試験(ZG-801-02)において、主要評価項目である二重盲検期4週後での二重盲検期ベースラインからの血清カリウム値変化量の調整済み平均値は、本剤群で-0.02mEq/L(95%信頼区間:-0.19~0.15)、プラセボ群で0.78mEq/L(同:0.60~0.96)でした。群間差は-0.80mEq/L(同:-1.05~-0.54)であり、両群間で有意差が認められました(p<0.001)。また、二重盲検期中のRAASi投与患者において、本剤およびプラセボ群のRAASi用量維持割合は、それぞれ84.6%(同:65.2~95.6)および53.6%(同:33.9~72.4)でした。群間差は31.0%(同:5.8~53.6)であり、本剤群のRAASi治療継続率は、プラセボ群に対して有意に高いことが示されました(p=0.019)。

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ビタミンB3はCOPD患者の肺の炎症を軽減する?

 ビタミンB3を毎日摂取することで、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の肺の炎症が軽減する可能性のあることが、小規模な臨床試験で明らかになった。コペンハーゲン大学(デンマーク)のMorten Scheibye-Knudsen氏らによるこの研究結果は、「Nature Aging」に11月15日掲載された。Scheibye-Knudsen氏は、「炎症は、COPD患者の肺機能を低下させる可能性があるため、この結果が意味するところは大きい」と述べている。 COPD患者は、肺炎やインフルエンザ、その他の重篤な呼吸器感染症に罹患しやすく、罹患した場合には致命的となることもある。Scheibye-Knudsen氏らは、安定期COPD患者40人(平均年齢71.9歳)と、年齢や性別、BMIが類似した健康な対照20人(平均年齢70.9歳)を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、COPDに対するニコチンアミドリボシド(NR)の効果を評価した。NRはビタミンB3の一種である。COPD患者と対照は、それぞれの群内で、6週間にわたりNR(2g)またはプラセボを摂取する群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象者は12週間後に追跡調査を受けた。主要評価項目は、炎症マーカーであるインターロイキン8(IL8)のベースラインから6週間目までの変化量とした。 その結果、COPD患者では、IL8の変化量の最小二乗平均値が、NR群で−46.2%、プラセボ群で13.4%であることが明らかになった。両群間の治療効果の差は−52.6%(95%信頼区間−75.7〜−7.6%、P=0.030)であり、NR群ではプラセボ群に比べてIL8の値が有意に低下していた。このようなNRの効果は12週間後も持続しており、治療効果の差は−63.7%(同−85.7〜−7.8%、P=0.034)と推定された。 次に、NR摂取により体内のNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)のレベルがどの程度変化するのかをCOPD患者と対照との間で比較・検討した。NAD+は、免疫機能や炎症などの加齢に関連した複数の経路に関与する中心的な分子として注目されており、ヒトや動物では加齢とともに減少することも知られている。ベースライン時のNAD+の最小二乗平均値は、COPD患者で31.9μM、対照で34.8μMであったが、6週間後には、COPD患者のNR群で71.1μM、対照のNR群で49.4μMに上昇していた。しかし、プラセボ群では、COPD患者でも対照でもNAD+に有意な変化が認められなかった。COPD患者では対照に比べて、NR摂取によるNAD+の増加量が多かったものの、この差は統計学的に有意ではなかった。 Scheibye-Knudsen氏は、「われわれの体内では、加齢に伴いNAD+の代謝も進むようだ。NAD+の減少は、喫煙により生じるようなDNA損傷後にも見られる」と話している。この研究で、ビタミンB3(NR)の摂取によりNAD+レベルが上昇し、細胞の老化の兆候が抑えられたことから、同氏は、「NAD+は、今後の研究と治療の対象となる可能性がある」と述べている。 Scheibye-Knudsen氏は、「この研究結果を確認し、NRのCOPD治療における長期的な効果を判断するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。研究グループは、そのために、より大規模な研究を計画しているところだという。Scheibye-Knudsen氏は、「この研究が、COPD患者に新たな治療選択肢への道を切り開くことを期待している」と話している。

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最新 網膜循環疾患コンプリートガイド-所見・検査,疾患と診断・治療のすべて

大きく様変わりした網膜循環疾患診療のすべてがここに!「眼科診療エクレール」第6巻網膜循環疾患の病態評価は長い間、視力検査、眼底検査、フルオレセイン蛍光眼底造影が中心であったが、近年、急速に進歩した眼底画像検査-とくにOCTの普及やOCTAの導入によって、網膜循環疾患の病態理解は飛躍的に深まっている。また、網膜循環疾患の治療は長い間、血管新生の予防・退縮を行う網膜光凝固が中心であり、黄斑浮腫に対しては満足のいく治療結果を得られていなかったが、近年の抗VEGF薬の登場により、黄斑浮腫の治療は劇的に改善した。本書では、経験豊富なエキスパートが、最新のエビデンスに基づいて、網膜循環疾患の所見・検査、疾患と診断・治療について網羅的に詳しく解説。大きく変化した網膜循環疾患の診療のすべてがここにある。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する最新 網膜循環疾患コンプリートガイド-所見・検査,疾患と診断・治療のすべて定価16,500円(税込)判型B5判頁数336頁発行2024年11月担当編集辻川 明孝(京都大学教授)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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向精神薬誘発性尿閉リスクの高い薬剤は〜国内医薬品副作用データベース

 向精神薬は、抗ムスカリン作動性およびその他のメカニズムにより尿閉を引き起こすことが報告されている。しかし、尿閉は致死的な問題ではないため、あまり気にされていなかった。東邦大学の植草 秀介氏らは、国内医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、向精神薬に関連する尿閉の発生率を調査した。Drugs-Real World Outcomes誌2024年12月号の報告。 JADERデータベースを用いて、74種類の向精神薬における尿閉のレポートオッズ比を算出した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、尿閉に対する性別、基礎疾患、年齢の影響を調整した。変数選択には、性別、年齢、前立腺肥大症、うつ病、各薬剤の段階的選択を含めた。 主な結果は以下のとおり。・88万7,704件の報告のうち、尿閉は4,653件(0.52%)であった。・尿閉は、男性で0.79%(42万9,372例中3,401例)、女性で0.43%(41万5,358例中1,797例)。・年齢に関しては、60歳未満で0.31%(28万8,676例中892例)、60歳以上で0.68%(50万6,907例中3,463例)。・基礎疾患では、前立腺肥大症ありが8.22%(1万1,316例中930例)、なしが0.43%(87万6,388例中3,723例)。・さらに、うつ病ありが1.99%(1万6,959例中337例)、なしが0.50%(87万745例中4,316例)。・全体として、検出基準を満たした向精神薬は38種類であった。・ロジスティック回帰分析には、識別可能な年齢および性別の患者78万3,083例を含めた。・選択された変数は、性別、年齢、前立腺肥大症、うつ病および23種類の薬剤であった。主な薬剤の調整されたレポートオッズ比(ROR)の95%信頼区間は、次のとおりであった。【クエチアピン】1.46〜2.81【クロルプロマジン】1.29〜3.13【エチゾラム】1.47〜3.09【マプロチリン】1.99〜8.34【ミルタザピン】1.37〜2.88【デュロキセチン】2.15〜4.21 著者らは「多くの向精神薬は、尿閉を誘発することが明らかとなった。これは、薬理学的効果に起因する可能性がある。とくに尿閉のリスク因子を有する患者では、適切なモニタリングが求められる」と結論付けている。

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重度母体合併症、その後の出産減少と関連/JAMA

 最初の出産で重度の母体合併症(SMM)を発症した女性はその後の出産の可能性が低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のEleni Tsamantioti氏らによるコホート研究の結果において示された。SMMを経験した女性は健康問題が長く続く可能性があり、SMMと将来の妊娠の可能性との関連性は不明であった。著者は、「SMMの既往歴がある女性には、適切な生殖カウンセリングと出産前ケアの強化が非常に重要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年11月25日号掲載の報告。スウェーデンの初産女性約105万人を対象に解析 研究グループは、スウェーデンの出生登録(Medical Birth Register)および患者登録(National Patient Register)のデータを用い、コホート研究を実施した。 対象は、1999年1月1日~2021年12月31日の間の初産女性104万6,974例で、初産時の妊娠22週から出産後42日以内のSMMを特定するとともに、出産後43日目から2回目の出産に至った妊娠の最終月経初日まで、または死亡、移住あるいは2021年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した。 SMMは、次の14種類からなる複合イベントと定義した。(1)重症妊娠高血圧腎症、HELLP(溶血、肝酵素上昇、血小板減少)症候群、子癇、(2)重症出血、(3)手術合併症、(4)子宮全摘、(5)敗血症、(6)肺塞栓症・産科的塞栓症、播種性血管内凝固症候群、ショック、(7)心合併症、(8)急性腎不全、透析、(9)重度の子宮破裂、(10)脳血管障害、(11)妊娠中・分娩時・産褥期の麻酔合併症、(12)重度の精神疾患、(13)人工呼吸、(14)その他(重症鎌状赤血球貧血症、急性および亜急性肝不全、急性呼吸促迫症候群、てんかん重積状態を含む)。 主要アウトカムは、2回目の出産(生児出産または在胎22週以降の胎児死亡と定義される死産)とし、多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、初産時SMMと2回目出産率またはその期間との関連について解析した。初産時SMM発症女性は発症しなかった女性より2回目出産率が低い 解析対象104万6,974例中、初産時にSMMが認められた女性は3万6,790例(3.5%)であった。初産時SMMを発症した女性は発症しなかった女性と比較して、2回目出産率が低かった(1,000人年当たり136.6 vs.182.4)。 母体の特性を補正後も、初産時のSMMは調査期間中の2回目出産率の低下と関連しており(補正後ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.87~0.89)、とくに初産時の重度子宮破裂(0.48、0.27~0.85)、心合併症(0.49、0.41~0.58)、脳血管障害(0.60、0.50~0.73)、および重度精神疾患(0.48、0.44~0.53)で顕著であった。 同胞分析の結果、これらの関連性は家族性交絡の影響を受けていないことが示された。

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レナカパビル年2回投与、男性/ジェンダーダイバースのHIV曝露前予防に有効/NEJM

 男性およびジェンダーダイバースのHIV感染発生率は、レナカパビルの年2回皮下投与により、バックグラウンドおよびエムトリシタビン/テノホビル・ジソプロキシルフマル酸塩(F/TDF)投与と比較して89~96%有意に低下した。米国・エモリー大学のColleen F. Kelley氏らPURPOSE 2 Study Teamが、米国、ブラジル、タイ、南アフリカ、ペルー、アルゼンチンおよびメキシコの計92施設で実施した第III相無作為化二重盲検実薬対照比較試験「PURPOSE 2試験」において示された。年2回のレナカパビル皮下投与は、シスジェンダー女性におけるHIV曝露前予防(PrEP)に有効であることが示されているが、シスジェンダー男性、トランスジェンダー女性、トランスジェンダー男性およびジェンダーノンバイナリーにおけるレナカパビルPrEPの有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。16歳以上ジェンダーダイバース3,271例をレナカパビル群、F/TDF群に無作為化 PURPOSE 2試験の対象は、出生時の性別が男性とされたパートナーと性交渉をもつシスジェンダー・バイセクシュアル・その他の男性、トランスジェンダー女性、トランスジェンダー男性、およびノンバイナリージェンダーで、年齢が16歳以上、HIV感染状況が不明、スクリーニング前3ヵ月間にHIV検査またはPrEP使用歴がない人であった。 研究グループは、参加者をスクリーニングし、中央検査でHIV陰性が確認された人を、レナカパビル群(927mgを26週間ごとに2回皮下投与、プラセボ経口投与、ローディングとして1日目および2日目にレナカパビル300mg錠×2錠を経口投与)、またはF/TDF群(エムトリシタビン200mgとTDF 300mgを1日1回経口投与、プラセボを皮下投与およびローディングで経口投与)、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、HIV感染の発生であった。有効性の主要解析では、レナカパビル群のHIV感染発生率をバックグラウンドHIV感染発生率(スクリーニングでHIV陽性が確認された集団に基づくHIV感染発生率)と比較した。また副次解析として、レナカパビル群とF/TDF群のHIV感染発生率を比較した。 2021年6月28日~2023年12月12日に、4,807例がスクリーニングを受け、HIV検査の結果が得られた4,634例のうち378例(8.2%)がHIV感染と診断され、そのうち45例(11.9%)が最近の感染であった。バックグラウンドHIV感染発生率は、100人年当たり2.37(95%信頼区間[CI]:1.65~3.42)であった。 4,807例のうちHIV陰性で適格基準を満たした3,271例が、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与された。このうち、1日目にHIV感染が判明した症例を除く3,265例が修正ITT集団として有効性の解析対象となった(レナカパビル群2,179例、F/TDF群1,086例)。HIV感染の発生率、レナカパビル群2例vs.F/TDF群9例 解析対象3,265例のうち、11例のHIV感染の発生が観察された。レナカパビル群は2例(発生率0.10/100人年[95%CI:0.01~0.37])、F/TDF群は9例(0.93/100人年[0.43~1.77])であった。 レナカパビル群におけるHIV感染発生率は、バックグラウンドより96%(発生率比:0.04、95%CI:0.01~0.18、p<0.001)、F/TDF群より89%(0.11、0.02~0.51、p=0.002)、いずれも有意に低かった。 安全性に関する懸念は認められなかった。レナカパビル群では2,183例中26例(1.2%)、F/TDF群では1,088例中3例(0.3%)が、注射部位反応により投与を中止した。 著者は研究の限界として、レナカパビルが、治療経験が豊富な多剤耐性HIV患者のみに使用することが承認されており、対象者は限られていたことなどを挙げている。

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切除不能肝細胞がん1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブvs.レンバチニブまたはソラフェニブ、アジア人解析結果(CheckMate 9DW)/ESMO Asia2024

 切除不能肝細胞がん(HCC)に対する1次治療として、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法は、レンバチニブまたはソラフェニブ単剤療法と比較して全生存期間(OS)を有意に改善したことが、国際共同無作為化非盲検第III相CheckMate-9DW試験の結果示されている。今回、同試験のアジア人サブグループ解析結果を、香港・Queen Mary HospitalのThomas Yau氏が欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)で報告した。 全体集団において、追跡期間中央値35.2ヵ月におけるOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群23.7ヵ月vs.対照群20.6ヵ月で、ニボルマブ+イピリムマブ群における統計学的に有意な改善が認められた(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.65~0.96、p=0.018)。・対象:全身治療歴のない切除不能HCC患者(RECIST v1.1に基づく測定可能病変1つ以上、Child-Pughスコア5または6、ECOG PS 0または1、Vp4の高度な門脈侵襲なし) ・試験群(ニボルマブ+イピリムマブ群):ニボルマブ(1mg/kg)+イピリムマブ(3mg/kg)3週間隔で4サイクル→ニボルマブ(480mg)4週間隔 133例・対照群(治験責任医師による選択):レンバチニブ(8mg)1日1回またはソラフェニブ(400mg)1日2回 147例・評価項目:[主要評価項目]OS[副次評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)[その他の重要な探索的評価項目]RECIST v1.1に基づくBICRによる無増悪生存期間(PFS)、安全性・層別化因子:病因(HBV vs.HCV vs.非感染)、肉眼的血管浸潤(MVI)/肝外転移(EHS)の有無、α-フェトプロテイン(AFP、<400ng/mL vs.≧400ng/mL) 主な結果は以下のとおり。・対照群では94%がレンバチニブによる治療を受けていた。・ベースライン時点の患者背景は、年齢中央値がニボルマブ+イピリムマブ群64(範囲:37~85)歳vs.対照群66(32~89)歳、男性が79% vs.84%を占め、日本人は19% vs.21%含まれていた。HBVに起因する肝がんが62% vs.59%、HCVに起因する肝がんが18% vs.21%、AFP≧400ng/mLが38% vs.36%、局所治療歴ありが57% vs.60%であった。・追跡期間中央値35.7ヵ月におけるOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群34.0ヵ月vs.対照群22.5ヵ月で、全体集団と同様にニボルマブ+イピリムマブ群における臨床的に意味のある改善が認められた(HR:0.75、95%CI:0.54~1.03)。・OSベネフィットはすべてのサブグループでおおむね一貫していた。・ORRはニボルマブ+イピリムマブ群37%(完全奏効[CR]:10%、部分奏効[PR]:27%) vs.対照群14%(CR:<1%、PR:13%)であった。・病因別のORRは、HBVに起因する肝がんでニボルマブ+イピリムマブ群28% vs.対照群16%、HCVに起因する肝がんで63% vs.16%、非感染者で38% vs.3%であった。・PFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群9.8ヵ月vs.対照群9.0ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.52~0.99)で、18ヵ月PFS率は44% vs.20%、24ヵ月PFS率は40% vs.11%であった。・何らかの後治療を受けていたのはニボルマブ+イピリムマブ群56%(74例) vs.対照群63%(93例)で、全身療法として多かったのはニボルマブ+イピリムマブ群ではレンバチニブ(36例)、対照群ではアテゾリズマブ+ベバシズマブ(41例)であった。・治療期間中央値はニボルマブ+イピリムマブ群4.6ヵ月vs.対照群7.3ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ+イピリムマブ群43% vs.対照群45%で発現し、ニボルマブ+イピリムマブ群ではALT上昇(6%)、AST上昇(5%)、リパーゼ増加(5%)、対照群では高血圧(16%)、蛋白尿(10%)が多く認められた。・TRAEによる死亡はニボルマブ+イピリムマブ群で2例(自己免疫性肝炎、肝不全が1例ずつ)、対照群で1例(肝腎症候群)確認された。・何らかの免疫介在性有害事象がニボルマブ+イピリムマブ群の55%で発現し、甲状腺機能低下症(20%)、皮疹(17%)、肝炎(16%)が多く認められた。治療中止に至った免疫介在性有害事象は10%であった。 Yau氏はこれらの結果について、アジアにおける切除不能肝細胞がん患者に対するファーストラインの新たな標準治療として、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が有望であることを裏付けるものとコメントしている。

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うつ病に対する対人関係療法と抗うつ薬治療の比較〜IPDメタ解析

 成人うつ病に対する第1選択介入は、抗うつ薬治療と対人関係療法であるが、長期的および抑うつ症状以外に対するアウトカムにおける相対的な有効性は、不明である。個別被験者データ(IPD)を用いたメタ解析は、従来のメタ解析よりも、より正確な効果推定値を算出可能である。米国・アリゾナ大学のZachary D. Cohen氏らは、対人関係療法と抗うつ薬治療における治療後およびフォローアップ期間中のさまざまなアウトカムを比較するため、IPDメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌オンライン版2024年11月4日号の報告。 2023年5月1日にシステマティックな文献検索を行い、成人うつ病患者を対象に対人関係療法と抗うつ薬治療を比較したランダム化試験を特定した。匿名化されたIPDをリクエストし、混合効果モデルを用いて分析した。事前に指定した主要アウトカムは、治療後の抑うつ症状の重症度とした。副次的アウトカムは、2つ以上の研究で評価された治療後およびフォローアップ期間中の指標とした。 主な結果は以下のとおり。・特定された15件の研究のうち、9件よりIPDが収集された(1,948例中1,536例、78.9%)。・治療後の抑うつ症状(d=0.088、p=0.103、1,530例)および社会的機能(d=0.026、p=0.624、1,213例)の指標では、有意な差が認められなかった。・より小規模なサンプルでは、抗うつ薬治療は、対人関係療法よりも、治療後の一般精神病理(d=0.276、p=0.023、307例)、機能不全(d=0.249、p=0.029、231例)の指標で、わずかに優れていたが、その他の副次的およびフォローアップ期間中のアウトカムでは、違いが認められなかった。 著者らは「対人関係療法と抗うつ薬治療の急性期および長期的な有効性を幅広く評価した初めてのメタ解析である本試験において、対人関係療法と抗うつ薬治療との間に有意な差は認められなかった」と報告し「うつ病治療に関する試験では、複数のアウトカム測定およびフォローアップ評価を含める必要がある」としている。

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重症三尖弁逆流、T-TEER+薬物療法vs.薬物療法単独/JAMA

 重症三尖弁逆流症患者において、至適薬物療法(OMT)に加えた三尖弁経カテーテルedge-to-edge修復術(T-TEER)の施行はOMT単独と比較して、三尖弁逆流症の重症度、および患者報告に基づく複合アウトカム(NYHA心機能分類クラス、患者全般評価[PGA])の改善が認められたことが、フランス・レンヌ大学のErwan Donal氏らTri-Fr Investigatorsによる無作為化試験「Tri.Fr試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。1年時点の複合臨床アウトカムを評価 Tri.Fr試験は、重症の症候性三尖弁逆流症患者におけるT-TEER+OMTとOMT単独の有効性を評価した研究者主導の前向き無作為化試験で、2021年3月18日~2023年3月13日に、フランスおよびベルギーの24施設で行われた。最終フォローアップは2024年4月。 心不全に対するOMTが30日以上行われているにもかかわらず、重症の症候性三尖弁逆流症を呈し、介入を要する他の心血管症状がないすべての患者が適格と見なされ、T-TEER+OMT群またはOMT単独群に1対1の割合で無作為化された。 主要アウトカムは、1年時点の複合臨床アウトカムで、NYHA心機能分類クラスの変化、PGAの変化、または主要心血管イベントの発生で構成された。副次アウトカムは、閉検定手順を用いて階層的に検定された。1つ目は三尖弁逆流の重症度で、独立した心エコーラボで評価が行われた。その他の副次アウトカムは、カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)スコアで評価したQOL、PGA、無作為化後12ヵ月時点の階層的複合アウトカム(全死因死亡、三尖弁手術、KCCQスコアの改善、または心不全による入院までの時間)などであった。複合臨床アウトカムの改善、T-TEER+OMT群74.1%、OMT単独群40.6% 患者計300例(平均年齢78[SD 6]歳、女性63.7%)が登録され、152例がT-TEER+OMT群に、148例がOMT単独群に無作為化された。 1年時点で複合臨床アウトカムが改善したのは、T-TEER+OMT群109例(74.1%)、OMT単独群58例(40.6%)であった。 三尖弁逆流症の重症度がmassive(4+)またはtorrential(5+)の患者の割合は、T-TEER+OMT群6.8%に対して、OMT単独群は53.5%であった(p<0.001)。 1年後の平均KCCQ臨床サマリースコアは、T-TEER+OMT群69.9(SD 25.5)、OMT単独群55.4(28.8)であった(p<0.001)。無作為化後12ヵ月時点の階層的複合アウトカムのwin ratioは、2.06(95%信頼区間:1.38~3.08)であった(p<0.001)。

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第242回 病院経営者には人ごとでない順天堂大の埼玉新病院建設断念、「コロナ禍前に建て替えをしていない病院はもう建て替え不可能、落ちこぼれていくだけ」と某コンサルタント

埼玉県がさいたま市に誘致し、新設予定だった順天堂大付属病院の建設計画が頓挫こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。俳優で歌手の中山 美穂さんの急死には驚きました。検視の結果、事件性はないことが確認され、「入浴中に起きた不慮の事故」と公表されました。朝日新聞等の報道によれば、事件性が疑われる場合に行われる「司法解剖」ではなく、「調査法解剖」が行われたとのことです。調査法解剖は、2013年に施行された「死因・身元調査法」に基づいて実施される比較的新しい解剖の制度です。犯罪捜査の手続きが行われていなくても、警察等が法医等の意見を踏まえて死因を明らかにする必要があると判断した場合に、遺族への事前説明のみで実施が可能とのことです。死亡推定時刻は12月6日午前3時~5時頃で「入浴中に起きた不慮の事故」ということは、飲んで浴槽で寝てしまったのかもしれません。私もぐでんぐでんに酔っ払い、家に帰って浴槽で寝てしまい、お湯が冷めて寒さを感じやっと起きたという経験や、ぶくぶくと溺れそうになって起きた経験があります。飲んでからのお風呂はいろいろな意味で危険ですね。忘年会シーズン、皆さんもお気を付けください。さて今回は、埼玉県がさいたま市の浦和美園地区に誘致し、新設予定だった順天堂大付属病院の建設計画が頓挫したニュースについて書いてみたいと思います。建築費などの高騰がその理由とのことですが、建て替えに悩む多くの病院経営者は人ごととは思えなかったのではないでしょうか。総事業費が当初予想した規模の2.6倍、2,186億円に達することが明らかに順天堂大学は11月29日、埼玉県がさいたま市の浦和美園地区に誘致し、新設予定だった順天堂大付属病院について、建設費高騰などを理由に計画を中止すると県に伝えました。東京新聞などの報道によれば、順大は11月27日の理事会で中止を決定、29日に代田 浩之学長、天野 篤理事らが県庁を訪れ、大野 元裕知事に報告したとのことです。代田学長は取材に「県民の皆さまにご期待をいただいたが、残念ながら断念することになった。大変申し訳なく思う」と謝罪、大野知事は、「これまでも大学からの申し出に対し、期限を延長するなどの措置をしてきた。その上でのこの報告は、大変遺憾だ」と述べたとのことです。順大は同日、同大のウェブサイトに「埼玉県浦和美園地区病院の整備計画中止について」と題するニュースリリースを発信、中止の主な理由について、「建築業界の急激な需要増や資材の高騰に加え、深刻な人手不足などの要因も重なり建築費が大幅に高騰し、さらにその他の費用も上昇した結果、総事業費が当初平成27年に予想した規模の2.6倍にあたる2,186億円に達することが明らかになりました」と記しています。800床で、建設予定地は約7万7,000m2、県は土地取得に55億5,000万円かける新病院は、県内の医師確保困難地域への医師派遣などを条件に、2015年の県医療審議会で順大による開院計画が採択されました。当初計画の病床数は800床で、建設予定地は約7万7000m2。県有地とさいたま市有地からなり、県は土地取得に55億5,000万円をかけていました。県が2018年に順大側と交わした確認書では、病院整備費用の2分の1を上限に補助することになっていました。度重なる延期の末、最終的に2027年11月の開院予定となっていましたが、今年7月末に順大から県に対し、2,186億円の総事業費、開院を20ヵ月延期する工期とともに「事業計画の見直しが必要との結論に至った」との通知が届けられていました。県は計画変更を希望する場合には申請書を速やかに提出するよう要請したものの申請書が提出されなかったことから、10月25日付で12月2日までに変更申請書を提出するよう求めていました。9年余りで建設費は2.3倍、機器・備品・システムは4.4倍に順大のWebサイトには、当初2015年1月に予想した総事業費が2024年7月には2.6倍まで膨らんだ状況が棒グラフで示されています。それによれば、2015年時点の総事業費は建設費709.5億円、機器・備品・システム124.3億円で合計834億円。それが2024年時点では建設費1640.3億円、機器・備品・システム546.2億円で合計2,186億円となっています。9年余りで建設費は2.3倍、機器・備品・システムは4.4倍になっており、医療機器やシステム(電子カルテ等)の方が高騰していることがわかります。ちなみに、建設費は昨年2023年11月予想では936.2億円とその時点までは漸増程度でしたが、その後8ヵ月余で704億円も増加している点も目を引きます。「6つの医学部附属病院を抱える本学は、かつてないほどの厳しい財政状況」と順大順大はWebサイトで次のように大学病院経営自体の苦境も吐露しています。「現在、新型コロナウイルス感染症の流行による病院運営への負の影響や、先進的な医薬品・診療材料の価格高騰などが原因で、多くの国立大学病院や都立病院では収支が赤字となり、その赤字幅が拡大する厳しい状況にあります。この厳しい状況は本学にとっても例外ではなく、令和6年4月から施行された医師の働き方改革への対応も含め、6つの医学部附属病院を抱える本学は、かつてないほどの厳しい財政状況に直面しています」。そして、「現在の診療報酬の下では急速な大幅増益が見込めないことから、当該事業に充当する予定の準備資金の確保及び開設後の運営資金の捻出することが難しい事態」となったため、病床規模を800床から500床程度に縮小するなどの検討も行ったが、「埼玉県民の皆様に貢献することができるための最先端医療機能を備え、かつDXを活用した未来型基幹病院の開設は到底困難」と判断した、としています。“未来型基幹病院”を目指したとしても、2,186億円はやや法外か?800床の病院で総事業費2,186億円(建設費1,640億円)というのは、“未来型基幹病院”を目指したとしても、やや法外な(あるいは相当ふっかけられた)金額と言えなくもありません。ちなみに、福祉医療機構のデータによれば、病院の「定員1人当たり建設費」は2023年度には2,387万2,000円でした。仮に800床だと約190億円になります。順大の新病院の建設費は昨年、2023年11月予想では936億円でしたから、この時点でも実に普通の病院の5倍の建設費だったことになります。もちろん、福祉医療機構のデータは回復期機能を中心とする民間病院の割合が比較的多く、超急性期病院や大学病院と単純比較はできませんが、当初計画において、病院の規模や装備面で相当“背伸び”をし過ぎていた感は否めません。順大医学部は学費下げの戦略などが奏功し、偏差値も上昇、私立医大の新御三家(慶應大、慈恵医大、順大)と呼ばれるほどになっています。また、関東に本院含む6病院を経営、その附属病院の展開戦略は、大学病院経営の“お手本”と言われたこともありました。しかし、コロナ禍、戦争、人口減、物価高、医師の働き方改革など、さまざまな要因が絡み合って起きている病院の経営環境の悪化が、イケイケだった順大の”未来型基幹病院”の夢を打ち砕いてしまったわけです。公立と民間の医療機関の再編・統合事例が増えていく可能性は高いとは言え、順大の撤退は、多くの病院経営者にとって人ごとではないでしょう。順大は総事業費が当初考えていた金額の2.6倍になったことを撤退の理由に挙げていますが、そうした厳しい状況はこれから建て替えを考える病院共通の問題だからです。2ヵ月ほど前に会ったある医療経営コンサルタントは、「病院の建設費が10年前の3〜4倍にもなっている。コロナ禍とウクライナ戦争の前に建て替えを行っていなかった病院は、もう実質建て替えは不可能。公立病院と統合するなどよほど大胆な手を打たないと、これからは落ちこぼれていくだけ」と話していました。実際、建築費などの高騰は、病院の再編・統合にも影響を及ぼしはじめています。民間病院と公立病院の再編事例が各地で増えていることもその表れです。代表的なのは2021年4月に兵庫県で設立された川西・猪名川(いながわ)地域ヘルスケアネットワーク(川西市)です。連携の目玉として市立川西病院(250床)と医療法人協和会の協立病院(313床)が合併、2022年9月に新たな場所で川西市立総合医療センター(405床)としてスタートを切りました。新病院は川西市が設立し、医療法人協和会は指定管理者として管理運営を担うことになりました。赤字続きだった市立川西病院の移転計画に、建物の老朽化などで同じく移転を計画していた医療法人協和会が乗るかたちで実現しました。再編・ネットワーク化を伴う公立病院のケースでは、病院事業債(特別分)の元利償還金の40%が普通交付税措置(通常25%)される、というスキームを活用しての再編です。事業費の相当部分を交付税で賄うことができるメリットは大きいと言えます。民間病院が独自で巨額の建設費を調達することが困難になってきた現在、こうしたスキームを活用した、公立と民間の医療機関の再編・統合事例が増えていく可能性は高いと考えられます。

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認知症以前のMCIが狙われる、新手の「準詐欺」とは?【外来で役立つ!認知症Topics】第24回

特殊詐欺の増加とその背景3、4年前に弁護士との飲み会があり、オレオレ詐欺など特殊詐欺の動向に話が及んだ。このとき1人の弁護士がこう語った。「NHKによる注意勧告など広く知れ渡るようになり、手口も周知されてきた。そうそう新手もないだろうから特殊詐欺は減っていくだろう。その分、荒っぽい強盗が増えるんじゃないか」。今日振り返ると、「闇バイト」に代表される後者については、まさにそのとおりになった。ところが、前者の特殊詐欺については大外れになってしまった。というのは、図に示すように、法務省および警察庁の発表によれば、特殊詐欺の認知件数は2004年(平成16年)をピークに減少していたが、2011年(平成23年)から増加傾向に転じ1)、2023年(令和5年)には過去15年間で最多となったからだ2)。そして2023年度の被害額は400億円台となった。図. 特殊詐欺 認知状況・被害総額の推移(参考2より)画像を拡大する手口別では「架空料金請求型」が大幅に増加した。中でも目立つのが、それらの4割を占めた「サポート詐欺」3)だ。ウイルスに感染したと虚偽の警告をパソコンに表示させ、復旧を名目に金銭を要求するものだという。警察庁はサポート詐欺が増えた背景として、犯人側にとっての効率の良さを指摘する。偽の警告にだまされて復旧を求める被害者側から電話がかかってくるため、オレオレ詐欺のように不特定多数に電話をかける必要がないからだという。こうした背景があるからこそと考えるのだが、最近「認知機能障害のある高齢者における消費者トラブルに関する医療福祉関係者向けアンケート」4)を消費者庁が実施している。私も実際にやってみたが、これは認知症と軽度認知障害(MCI)の当事者が被害者となるこの種のトラブルの実態を調査するものだとわかった。特殊詐欺は認知症以前の人が狙われやすい特殊詐欺といわれるこの手の経済的犯罪の源流はオレオレ詐欺だろう。そして預貯金詐欺、還付金詐欺、架空料金請求、国際ロマンス詐欺などがある。当院には、「オレオレ詐欺にやられたうちのお袋は認知症ではないか?」といった類の受診が年間に10例くらいあるだろうか? ところが経験的に、どうも認知症者は被害者にならないようだ。被害者の多くは認知的に正常、もしくはときにMCIの人だ。筆者はこの結果にずっとなるほどと納得してきた。というのは、特殊詐欺に引っかかるにはかなりの理解力も行動力も必要だ。認知症レベルになるとそれはない。逆に認知症の人は、訪問販売やTVショッピングのように手続きが簡単なものの契約をすることが多い。新手の「準詐欺」、被害の実態は?最近驚いたのが、筆者が担当する患者さんが経験され、NHKのニュースでも見た「準詐欺」の報道だ。いくらか難しい法律用語が含まれるが、この準詐欺罪とは、「刑法に規定された犯罪。18歳未満の児童の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させる。欺罔(きもう:だまし)行為が行われておらず、詐欺罪の規定で捕捉しきれないが、相手方の意思に瑕疵(かし:欠陥)の有る状態を利用する点で詐欺罪に類似することから、詐欺罪に準ずる犯罪類型として処罰する」とある。準詐欺に遭った患者さんが経験したのは、築43年のおんぼろマンションの風呂場だけを800万円で購入する取引を承諾して押印し、契約が成立した事件である。購入動機、捺印の状況など中核に関する本人の記憶は曖昧であった。「投機心をそそられた、投資になると思った、儲かるから、銀行金利が安いから」というもっともらしい発言の反面、「マンションを買う気はなかった、判子を貸してくれと言われたから、押すだけだからと言われたから、貸してあげた。私はなにも買わない、ただ判子を押せと言われたのでそのとおりにした」と矛盾したことも述べた。これとは別に、訪問時にお土産をもらったこと、相手側が自分を持ち上げて気持ちが良くなったという意味の発言が筆者の印象に残った。ちなみにこの方の改定長谷川式は24点、またMMSEは21点でありMCIの診断をしている。「準詐欺罪」の成立には、被害者が「物事を判断する能力が著しく低下した状態」だったことを立証する必要がある。MCIのように認知症と診断されていない場合には、立件のハードルは高い。「詐欺罪」についても、マンションの価格が相場より高額だっただけでは罪に問うのは難しく、契約した人がどんな誘われ方をしたのかを覚えていないケースも多いため、立件にはハードルがある。また、認知症の診断がない人の場合には、業者側が「1人で生活できているし、会話もできたので判断能力に問題ないと思った。納得して契約してもらった」などと言い逃れする可能性も指摘されている。高齢者の心を論じるとき、その基本は孤独や寂しさにある。「巧言令色鮮し仁」は高齢者には通じないと書いた作家がある。こうした経済犯罪につながる契約が成立する背景には、孤独や寂しさを巧みに衝いてくる巧言令色があるのかもしれない。参考1)法務省. 令和5年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/3 その他の刑法犯2)警察庁. 特殊詐欺認知・検挙状況等(令和5年・確定値)について3)警察庁. サポート詐欺対策4)消費者庁. 認知機能障害のある高齢者における消費者トラブルに関する医療福祉関係者向けアンケート

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抜歯時の抗凝固療法に介入してDOACの休薬期間を適正化【うまくいく!処方提案プラクティス】第64回

 今回は、歯科治療に伴う直接経口抗凝固薬(DOAC)の休薬期間について、最新のガイドラインに基づいて介入した事例を紹介します。適切な周術期管理によって、経過は良好なままDOACの服用継続が実現しました。患者情報80歳、女性(施設入所中)基礎疾患認知症、統合失調症、心房細動(CHA2DS2-VAScスコア※:4点[年齢2点、女性1点、高血圧1点])※CHA2DS2-VAScスコア:範囲0~9点、点数が高いほど梗塞リスクが大きい処方内容1.アピキサバン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後2.リスペリドン錠1mg 1錠 分1 夕食後3.トラゾドン錠25mg 1錠 分1 就寝前4.酪酸菌製剤錠 3錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは歯科治療(単純抜歯1本)の予定があり、施設看護師より「訪問診療医から1週間のDOACの休薬指示が出たので抜薬の対応をしてほしい」と連絡がありました。しかし、抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン1)では、出血時の対応が可能な医療機関で行うことを前提に、DOAC単剤による抗凝固薬投与患者に対して、休薬下の抜歯よりもDOAC継続下で抜歯をすることが推奨されています。また、Steffelらの報告2)によると、DOACの周術期管理において、低出血リスク手術では24時間の休薬で十分とされています。アピキサバンの薬物動態データ3)では消失半減期が約12時間であることからも、7日間の休薬は過剰と考えられます。医師への提案と経過そこで、医療機関に電話で疑義照会し、看護師を介して医師に情報提供を行いました。まず、CHA2DS2-VAScスコアは4点で塞栓リスクが高く、認知症による活動性低下および向精神薬併用による鎮静作用もあるため、休薬により血栓リスクがさらに高まることが懸念されます。一方で出血リスクはあるものの、単純抜歯1本(低リスク処置)であり、抗血小板薬は非併用であることから、局所止血処置は可能と考えられることを伝えました。そのうえで、抜歯は病院ではなく診療所で行うことや、アピキサバンの血中濃度ピーク時(服用後3~3.5時間)3)に抜歯が行われて出血リスクがあることも懸念事項として伝えしました。医師からは、アピキサバンの半減期が約12時間である程度効果が残ることから、処置当日のみの休薬が妥当と判断されました。施設看護師にも変更内容について情報共有し、抜歯後の止血状況や口腔ケア時の出血状況で問題があれば相談するように伝えました。その後の経過を看護師と連携をとりながら確認したところ、抜歯時の出血は問題なく、血栓症状の発現もなく、術後の経過は良好なままDOACを服用継続できていました。本事例を通じて、(1)周術期管理における過剰な休薬の危険性、(2)エビデンスに基づく介入の重要性、(3)薬剤師による能動的な情報提供の意義を感じました。まとめ1.エビデンスに基づく評価:ガイドラインの適切な活用、患者個別のリスク評価、薬物動態データの考慮2.多職種連携の実践:医師との情報共有、歯科医師との連携、施設スタッフへの情報提供1)日本有病者歯科医療学会ほか編. 抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版.学術社;2020.2)Steffel J, et al. Eur Heart J. 2018;39:1330-1393.3)エリキュース錠 医薬品インタビューフォーム(第13版)

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統合失調症患者が考える抗精神病薬減量の動機と経験

 統合失調症患者の多くは、時間の経過とともに、抗精神病薬の減量または中止を望んでいる。デンマークでは、政府の資金で専門外来クリニックが設立され、抗精神病薬の減量指導が行われてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のAlexander Nostdal氏らは、クリニック通院患者における抗精神病薬減量の動機および過去の経験に関するデータを収集し、報告を行った。Psychiatric Services誌2024年11月1日号の報告。 対象患者は、抗精神病薬の中止または減量についての動機に関する自由記述式調査に回答した。過去の投薬中止経験、症状、動機、副作用レベルに関する情報も併せて収集した。 主な結果は以下のとおり。・88例中76例(86%)が調査に回答した。・抗精神病薬を中止した主な動機は、副作用(71%)、抗精神病薬服用の必要性に関する不安(29%)であった。・その他の要因には、長期的な影響への懸念、診断への同意、効果不十分の経験、服薬によるスティグマを感じるなどが挙げられた。・抗精神病薬中止に関する過去の経験は42例から報告され、そのうち23例は再発経験を報告した。・ほとんどの患者は、減量(75例中73例、97%)または中止(75例中62例、83%)を実現可能だと考えていた。 著者らは「専門家の指導による抗精神病薬の減量の動機付け要因は、中止を選択した患者を対象とした過去の研究結果と一致していた。抗精神病薬中止による再発を経験した患者においても、そのほとんどが減量または中止が実現可能であると考えていた。最適な治療連携を行ううえで、患者の動機と信念を理解することは最も重要である。指示に従い減量を行うことで、抗精神病薬の突然の中止や根拠のない中止を減らすことが可能である」と結論付けている。

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医師の「スーツ」事情、所持数や予算は?/医師1,000人アンケート

 ビジネスパーソンにとってユニフォーム的な存在である「スーツ」。一方、医師の仕事着といえば白衣のイメージがあるが、実際には勤務中に何を着ているのか?スーツを着る機会はいつなのか?ケアネット会員の男性医師を対象に、仕事中の服装やスーツの所有状況などについてアンケート形式で聞いた。対象:ケアネット会員の男性医師1,008人(30代以下、40代、50代、60代以上の年代別で各252人)実施日:2024年10月30日診療中の服装、若手ほどスクラブ派が多数、ベテランはワイシャツ&白衣派も 「Q1. 診察中の服装として、最も多い服装は?」(単一回答)との質問では、「スクラブのみ」「スクラブ&白衣」が同率の27%だった。とくに30代以下の若手医師では7割以上が「スクラブのみ」もしくは「スクラブ+白衣派」だった。一方、ベテランになると「ケーシー」や「スラックス+ワイシャツ(=スーツのジャケットなしの服装)&白衣」という回答が増えた。年配の医師は開業している割合が高く、検査や手技をする機会が限られる、手術を行う機会が減る、といった事情も影響していそうだ。実際、「スラックス+ワイシャツ&白衣」の回答は20床未満の診療所の勤務者で最も多かった(16%)。「その他」の回答としては外科系の医師を中心に「術衣」「術衣+白衣」との回答が目立った。スーツを着るのは「学会参加時」、所有数は3着以内が7割 「Q2. 勤務中にスーツを着るシチュエーションを挙げてください」(複数回答)との質問には「学会に参加するとき」が751人(75%)と最多となった。その後には「講演をするとき」が528人(52%)、「会食・パーティ」が289人(29%)などとなった。一方で、「着る機会はない」「ほぼない」との回答も複数あった。 「Q3. 現在、スーツを何着持っていますか?」(数値で回答)との質問には、平均3.4着、中央値2着という結果だった。0着12人(1%)、1着156人(16%)、2着337人(34%)、3着202人(20%)と3着以内で7割、以後4着95人(9%)、5着101人(10%)と5着以内で9割を占めた。一方で、「50着」「30着」という回答もあった。購入場所は量販店が半数、予算は年齢が上がるにつれ変化 「Q4. 通常、スーツをどこで買うことが最も多いですか?」との質問には洋服の青山、スーツセレクトなどのスーツ量販店が最多で半数近く(47%)を占め、続いてデパート・ブランド店(39%)だった。「Q5. スーツ1着(上下一式)のおおよその予算はいくらですか?」への回答では全体では「5~8万円台」が最多で32%、続いて「2~4万円台」が30%だった。年齢が上がるにつれ量販店での割合が減る一方で、デパート・ブランド店やオーダースーツ専門店の割合が上がり、同時に1着当たりの予算も上がる傾向があった。1着当たりの予算が2万円以下とした人は20代では13%だったが、60代では6%と半分以下に減り、一方で5~8万円台との回答は20代で28%だったが、60代以上では42%に増え、9万円以上との回答者も35%存在した。機能性重視が大半だが、オーダーメイドへの憧れの声も 最後に「Q6.スーツに対する思いや要望」を自由回答で聞いたところ、「動きやすいものがいちばん」(消化器内科・20代)、「洗濯がしやすいもの」(循環器内科・40代)、「伸縮性の良いもの」(循環器内科・40代)、「ポケットがめちゃくちゃ多いもの」(消化器外科・60代)など、機能面の要望に集中した。とくに「学会出張時、シワになりにくい」(糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)との回答は多数あった。「内科とはいえ処置の機会が多いため、季節を問わず常に半袖のケーシー。スーツ着用の機会はほとんどないので、とにかく安いものが良い」(内科・60代)といった実用的な回答が目立った。 一方で、「イタリアンスタイルが体格に合う」(内科・60代)、「ずっとアルマーニに決めている」(循環器内科・60代)、「普段は着ないので、着る時は楽しみたい。オーダースーツは裏地もこだわることができるし、生地を決めている時も楽しい」(循環器内科・30代)という、“スーツこだわり派”からの回答もあった。「オーダーメイドスーツを作りたいが敷居が高い」(糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)という回答も10人近くから寄せられており、「状況が許せばオーダースーツに挑戦したい」という層も一定数いるようだ。アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。スーツに関するアンケート/医師1,000人アンケート

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第241回 相変わらず診療所開業医をターゲットとする財務省、財政制度等審議会「秋の建議」の注目点

「診療所開業医=日本医師会」がまたまたカチンとくる内容こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は一昨年秋にも登った埼玉県・奥武蔵の伊豆ヶ岳に行って来ました。西武秩父線の吾野駅から子ノ権現、天目指峠を経て伊豆ヶ岳、正丸峠を経て正丸駅に下りるいつものコースです。子ノ権現までの山道のイチョウの黄葉や、伊豆ヶ岳周辺のカエデの紅葉、正丸峠にある奥村茶屋名物のジンギスカンなどを堪能して帰路につきました。このコース、昨年は左足の中手骨を骨折していて行っていません。その前の2022年は苗場山で痛めた右膝をかばいながらの登山、2021年は正丸峠からの下りで転倒し、左手小指を骨折しました。個人的に何かと整形外科と縁があるので少々不安でしたが、今年は特に何のイベントも起きず無事下山できました。ちなみに、正丸峠はしげの秀一の漫画「頭文字(イニシャル)D」にも登場する、かつての“走り屋”の聖地でもあります。車で秩父を訪れる方は、ハイカーと“走り屋”が混在する歴史的レストラン、奥村茶屋をぜひ訪れてみてください。さて、今回は財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会が11月29日に2025年度の予算編成に向けた意見書(令和7年度予算の編成等に関する建議、通称「秋の建議」)をとりまとめ、加藤 勝信財務相に提出しましたので、その内容について書いてみたいと思います。昨年のように、翌年に診療報酬改定を控えた年の秋の建議には、財務省の考えを反映させた厳しい提言や大胆な施策案が盛り込まれることが多く、昨年などは診療報酬本体マイナス改定が適当だとし、とくに診療所に入る報酬の単価を5.5%程度引き下げるよう求め、日本医師会などの大きな反発を招きました(「第188回 診療報酬改定シリーズ本格化(後編) 『財務省による医療界を分断するような動きがある』と日医・松本会長、『私たちは、財務省の奴隷なのでしょうか』と都医・尾崎会長。その財務省は地域別診療報酬を提案」)。今年の「秋の建議」も総じて「診療所開業医=日本医師会」がまたまたカチンとくる内容になっており、医療について財務省の主要ターゲットが相変わらず診療所(とくに大都市の)であることが伺えます。「自由開業制・自由標榜制が、医師の偏在の拡大につながっている」「秋の建議」の医療分野の重点項目としては、創薬力強化、薬価改定、医師偏在対策などが並びました。このうち、厚生労働省で今、「総合的な対策パッケージ」の策定が進められている医師偏在対策については、「自由開業制・自由標榜制が、医師の偏在の拡大につながっている。(中略)地域間、診療科間、病院・診療所間の医師偏在を解決するためには、保険医療機関の指定を含む公的保険上の指定権限の在り方にまで踏み込んだ実効的な規制を導入することが不可欠」として、「外来医師多数区域での保険医の新規参入に一定の制限を設けることはもとより、さらに、既存の保険医療機関も含めて需給調整を行う仕組みを創設する」といった手法の導入を提言しています。また、かねてより財務省が提言してきた「診療所の偏在是正のための診療報酬の地域別単価の導入」も再度盛り込まれました。地域別単価については本連載の「第209回 これぞ財務省の執念? 財政審・財政制度分科会で財務省が地域別単価導入を再び提言、医師過剰地域での開業制限も」などでも度々書いてきたことです。秋の建議でも「医師偏在対策として、地域別診療報酬の仕組みを活用し、報酬面からも診療所過剰地域から診療所不足地域への医療資源のシフトを促していくべきである。なお、当面の措置として、診療所過剰地域における1点当たり単価(10円)の引下げを先行させ、それによる公費節減効果を活用して医師不足地域における対策を別途強化することも考えられる」としています。建議ではさらに、医師偏在対策をエビデンスベースで進めるためには、診療科ごとの医師偏在指標が必要であるにもかかわらず、そうした指標が存在しないことの問題点も指摘、「例えば『○○科のサービスが特に過剰な地域』について、都道府県や地域医療関係者が客観的・絶対的な形で判断できるような『医師偏在指標』に拠った基準を速やかに策定すべき」としています。この診療科ごとの医師偏在指標の提案は今回初めて出てきた項目です。将来的には標榜科目の制限にもつながっていく提案だと言えます。もっと知事がぐいぐい地域医療提供体制のリストラに介入しろ!「秋の建議」では、現在検討中が進められている新しい地域医療構想についても提言しています。「現状投影に基づく医療ニーズを入院・外来・在宅医療・介護の間で割り当てるという発想ではなく、患者像の変化(需要面での変容)に加えて、希少な医療資源を最大限活用する観点から、各医療機関における入院・外来機能の役割分担の明確化・集約化を加速させることによる地域医療提供体制の効率化(供給面での取組)をしっかりと反映した必要病床数や外来需要等の推計に立脚したものであるべき」といった至極真っ当な提言に続き、「医療法において、地域の会議における協議が整わない場合には、地域で不足している病床機能を提供するよう、個別の病院に指示・要請・勧告できるとの規定があるが、ほとんど発動実績はない」として、「各医療機関に対し、病床の機能分化・連携や病床数の縮減など、構想と整合的な対応を行うよう求めるに際して、国の保険医療機関の指定の在り方の検討と合わせ、知事の権限強化を図るべきである」と、知事の権限強化が必要であると強調しています。要は「もっと知事がぐいぐい地域医療提供体制のリストラに介入しろ!」と言っているわけです。2025年が目標年の地域医療構想の達成具合を考えれば、こちらも真っ当な提言と言えるでしょう。建議にはその他、原則全ての医薬品を対象にした毎年薬価改定の実施、バイオシミラーが出ているバイオ先発品の一部に選定療養を導入すること、セルフメディケーション推進策(医薬品の有用性に応じた自己負担率の設定、薬剤費の定額自己負担の導入、OTC類似薬の自己負担の検討など)、リフィル処方の推進に向けた取り組みなども盛り込まれました。日本医師会は自由開業・標榜の制限、診療報酬の地域別単価の導入、セルフメディケーション推進などの提案に反対を表明ところで、「秋の建議」に向けて財政制度等審議会の財政制度分科会が11月13日に社会保障に関する議論を行い、資料を公表した段階で、日本医師会は自由開業・標榜の制限、診療報酬の地域別単価の導入、セルフメディケーション推進などの提案に反対を表明しています。11月22日付の日経メディカルなどの報道によれば、11月20日に開かれた定例記者会見で日医会長の松本 吉郎氏は、「国民皆保険制度の下で、誰もがどこでも一定の自己負担で適切な診療を受けられることを基本的な理念とし、被保険者間の公平性を期する観点から全国一律の点数が公定価格として設定されている」として1点10円の堅持を強調、セルフメディケーション推進については「薬剤師による的確な受診勧奨・情報共有、医療機関との連携が重要である」として断固反対の姿勢を示しました。また自由開業・標榜の制限については、「職業選択の自由に抵触する」としてこちらも強く反対しています。大都市と地方の土地代や物価差などの実情や、現実には患者は実感できずその存在すら疑わしい医療機関と薬剤師の情報共有・連携などを考えると、松本会長の反論の説得力は極めて弱いと言えるでしょう。それにしても、厚生労働大臣を何度も務め、親日本医師会とも見られる加藤氏が財務大臣になっても、診療報酬の地域別単価導入など、日本医師会が嫌がることを相変わらず提言してくるあたり、財務省の執拗さ、執念を改めて感じることができます。加藤大臣下の財務省と日医との今後の“戦い”に注目したいと思います。

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新たな筋萎縮性側索硬化症治療薬「ロゼバラミン筋注用25mg」【最新!DI情報】第28回

新たな筋萎縮性側索硬化症治療薬「ロゼバラミン筋注用25mg」今回は、筋萎縮性側索硬化症用剤「メコバラミン(商品名:ロゼバラミン筋注用25mg、製造販売元:エーザイ)」を紹介します。本剤は、治療薬が限られている筋萎縮性側索硬化症の新たな選択肢として、運動機能の低下抑制が期待されています。<効能・効果>筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制の適応で、2024年9月24日に製造販売承認を取得し、11月20日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には、メコバラミンとして50mgを1日1回、週2回、筋肉内に注射します。本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師または医師の直接の監督の下で行います。在宅自己注射は、医師がその妥当性を慎重に検討し、患者またはその家族が適切に使用可能と判断した場合にのみ適用されます。<安全性>重大な副作用には、アナフィラキシー(頻度不明)があります。本剤の臨床試験ではアナフィラキシーの副作用報告はありませんでしたが、低用量メコバラミン製剤でアナフィラキシーが報告されています。その他の副作用は、白血球数増加、注射部位反応(いずれも1%以上)、発疹、頭痛(いずれも1%未満)、発熱感、発汗(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.筋委縮性側索硬化症(ALS)の進行によって生じる運動機能の低下を抑制する薬です。2.1日1回、週2回、筋肉内に注射します。3.注射は、医療関係者や医師の指導を受けた上で、患者本人またはご家族が行うことができます。4.在宅自己注射のために処方された薬剤の入ったバイアルは、処方された際に入っていた外箱や遮光した箱に入れた状態で保管してください。5.自己判断で使用を中止したり、量を加減したりせず、医師の指示に従ってください。<ここがポイント!>筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンが変性する進行性の難治性神経変性疾患です。症状は一般的に四肢の筋力低下から始まり、構音障害(発音困難)や嚥下障害が生じます。発症から2〜4年で呼吸筋麻痺による呼吸不全に進行し、人工呼吸器の装着で延命が可能ですが最終的には死に至ります。治療薬としては、ALSの機能障害の進行を抑制するリルゾールやエダラボンが使用されていますが、現在のところ確立された根治療法はありません。メコバラミンは、活性型ビタミンB12の一種であり、末梢神経障害やビタミンB12欠乏症による巨赤芽球性貧血の治療薬として使用されてきました。一方、以前より高用量のメコバラミンがALS患者に対し有効である可能性が示唆されていました。このため、エーザイはALS患者を対象に治験を実施し、2015年5月に新薬承認申請を行いましたが、追加試験が必要と判断されて2016年3月に申請を取り下げました。その後、医師主導治験として実施された高用量メコバラミンのALS患者に対する第III相試験において、高用量メコバラミンの有効性、安全性および忍容性が確認されたことから、再度承認申請が行われました。ALSに対するメコバラミンの作用機序の詳細は解明されていませんが、ホモシステイン誘発細胞死の抑制によるものと考えられています。孤発性または家族性ALS患者を対象とした医師主導の国内第III相試験(国内763試験)において、主要評価項目であるベースラインから治療期16週目までの日本語版改訂ALS Functional Rating Scale(ALSFRS-R)の合計点数の変化量は、プラセボ群が-4.6、本剤50mg群が-2.7でした。群間差(本剤50mg群-プラセボ群)は2.0(95%信頼区間:0.4~3.5、p=0.012)であり、本剤50mg群のプラセボに対する優越性が検証されました。

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妊娠中のビタミンD摂取は子どもの骨を強くする

 妊娠中のビタミンDの摂取は、子どもの骨と筋肉の発達に良い影響をもたらすようだ。英サウサンプトン大学MRC Lifecourse Epidemiology CentreのRebecca Moon氏らによる研究で、妊娠中にビタミンDのサプリメントを摂取した女性の子どもは、摂取していなかった女性の子どもに比べて、6〜7歳時の骨密度(BMD)と除脂肪体重が高い傾向にあることが明らかにされた。この研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」11月号に掲載された。Moon氏は、「小児期に得られたこのような骨の健康への良い影響は、一生続く可能性がある」と話している。 ビタミンDは、人間の皮膚が日光(紫外線)を浴びると生成されるため「太陽のビタミン」とも呼ばれ、骨の発達と健康に重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、ビタミンDは、丈夫な骨、歯、筋肉の健康に必要なミネラルであるカルシウムとリン酸のレベルを調節する働きを持つ。 今回の研究では、妊娠14週未満で単胎妊娠中の英国の妊婦(体内でのビタミンDの過不足の指標である血液中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25~100nmol/L)を対象に、妊娠中のビタミンD摂取と子どもの骨の健康との関連がランダム化比較試験により検討された。対象とされた妊婦は、妊娠14~17週目から出産までの期間、1日1,000IUのコレカルシフェロール(ビタミンDの一種であるビタミンD3)を摂取する群(介入群)とプラセボを摂取する群(対照群)にランダムに割り付けられた。これらの妊婦から生まれた子どもは、4歳および6~7歳のときに追跡調査を受けた。 6〜7歳時の追跡調査を受けた454人のうち447人は、DXA法(二重エネルギーX線吸収法)により頭部を除く全身、および腰椎の骨の検査を受け、骨面積、骨塩量(BMC)、BMD、および骨塩見かけ密度(BMAD)が評価された。解析の結果、介入群の子どもではプラセボ群の子どもと比較して、6〜7歳時の頭部を除く全身のBMCが0.15標準偏差(SD)(95%信頼区間0.04~0.26)、BMDが0.18SD(同0.06~0.31)、BMADが0.18SD(同0.04~0.32)、除脂肪体重が0.09SD(同0.00~0.17)高いことが明らかになった。 こうした結果を受けてMoon氏は、「妊婦に対するビタミンD摂取による早期介入は、子どもの骨を強化し、将来の骨粗鬆症や骨折のリスク低下につながることから、重要な公衆衛生戦略となる」と述べている。 では、妊娠中のビタミンD摂取が、どのようにして子どもの骨の健康に良い影響を与えるのだろうか。Moon氏らはサウサンプトン大学のニュースリリースで、2018年に同氏らが行った研究では、子宮内の余分なビタミンDが、「ビタミンD代謝経路に関わる胎児の遺伝子の活動を変化させる」ことが示唆されたと述べている。さらに、2022年に同氏らが発表した研究では、妊娠中のビタミンD摂取により帝王切開と子どものアトピー性皮膚炎のリスクが低下する可能性が示されるなど、妊娠中のビタミンD摂取にはその他のベネフィットがあることも示唆されているという。

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前立腺肥大症治療薬のタダラフィルが2型糖尿病リスクを抑制

 前立腺肥大症(BPH)の治療に用いられているタダラフィルが、2型糖尿病(T2DM)発症リスクを低下させる可能性が報告された。京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野の高山厚氏らによる研究の結果であり、論文が「Journal of Internal Medicine」に9月17日掲載された。 タダラフィルはホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5i)と呼ばれるタイプの薬で、血管内皮細胞からの一酸化窒素の放出を増やして血管を拡張する作用があり、BPHのほかに勃起障害(ED)や肺高血圧症の治療に用いられている。近年、T2DMの発症に血管内皮機能の低下が関与していることが明らかになり、理論的にはPDE5iがT2DMリスクを抑制する可能性が想定される。ただし、そのエビデンスはまだ少ない。これを背景として高山氏らは、リアルワールドデータを用いて実際の臨床試験をエミュレート(模倣)し、観察研究でありながら介入効果を予測し得る、ターゲットトライアルエミュレーションによる検証を行った。 研究には、日本の人口の約13%をカバーする医療費請求データベースの情報を用いた。2014年5月~2023年1月にBPHと診断され、タダラフィル(5mg/日)の処方、またはα遮断薬の処方の記録がある40歳以上の男性患者から、糖尿病の既往(診断、血糖降下薬の処方、HbA1c6.5%以上の検査値で把握)、タダラフィルとα遮断薬の併用、薬剤使用禁忌症例などを除外。タダラフィル群5,180人、α遮断薬群2万46人を特定し、T2DMの発症、処方中止・変更、死亡、保険脱退、または最長5年経過のいずれかに該当するまで追跡した。なお、α遮断薬はBPH治療薬として広く使われている薬で、T2DMリスクには影響を及ぼさないとされている。 ベースライン時点において、タダラフィル群の方がわずかに若年でHbA1cが低かったものの有意差はなく、その他の臨床指標もよく一致していた。追跡期間は、タダラフィル群が中央値27.7カ月、α遮断薬群は同31.3カ月だった。T2DMの発症率は、タダラフィル群では1,000人年当たり5.4(95%信頼区間4.0~7.2)、α遮断薬群は同8.8(7.8~9.8)と計算され、タダラフィルの処方はT2DM発症リスクの低下と関連していた(リスク比〔RR〕0.47〔0.39~0.62〕、5年間の累積発症率差-0.031〔-0.040~-0.019〕)。 前糖尿病(HbA1c5.7%以上)に該当するか否かで二分した上での解析(前糖尿病ではRR0.49〔0.40~0.69〕、HbA1c5.7%未満ではRR0.34〔0.20~0.63〕)や、肥満(BMI25以上)の有無で二分した解析(肥満ではRR0.61〔0.43~0.80〕、非肥満ではRR0.38〔0.24~0.62〕)でも、全てのサブグループで全体解析同様の結果が示された。また、感度分析として、T2DM発症の定義などを変更した15パターンでの解析を行ったが、結果は一貫していた。 著者らは、保険非適用のPDE5i処方(ED治療目的)が把握されていないことや残余交絡が存在する可能性などを研究の限界点として挙げた上で、「BPH男性の治療におけるタダラフィルの処方はα遮断薬の処方と比較して、T2DM発症リスクの低下と関連しているようだ。この関連のメカニズムを明らかにし、同薬のメリットを得られる集団の特徴をより詳細かつ明確にする必要がある」と述べている。

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