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英語で「私なら~します」は?【1分★医療英語】第59回

第59回 英語で「私なら~します」は?What do you think is the best next step in this case?(この症例で、次のステップとして何が最善だと思いますか?)I would order an abdominal CT.(私なら、腹部CTをオーダーします)《例文1》I would start empiric antibiotics.(私なら、経験的な抗菌薬治療を開始します)《例文2》What medication would you choose?(あなたなら、どの薬を選択しますか?)《解説》今回ご紹介するのは、「私なら」「あなたなら」という仮定法を用いた表現です。「仮定法」というと、“if”を使うイメージかもしれませんが、日常会話では、“if”を使わずに仮定法が使われることがよくあります。“I would order an abdominal CT.”という文頭の文章の前に、“If I were you~”(もし私があなたなら)が省略されている、と考えるとわかりやすいかもしれません。結果として、「私なら、腹部CTをオーダーします」という意味になります。ここで注意が必要なのは、“I will do it.”と“I would do it.”では、「音は似ていても、意味は大きく異なる」ということです。たとえば、指導医との会話で、指導医が“I will do it.”と言った場合、それをやるのは指導医であり、下級医は任せておけばよい状況です。一方で、指導医が“I would do it.”と言ったのであれば、指導医は「私なら、それをやる」と言っているだけで実際に指導医がやるわけではなく、上下関係の中での発言であれば、少し丁寧に「それをやってください」と言っているのに近く、命令に近いニュアンスです。実は私も渡米したばかりの頃に、この聞き間違いをしたことがあります。指導医が“I would order…”と言っていたのを“I will order…”と勘違いして、「指導医がやってくれるのか」と思い込んでいたら、後で、「やっておいてと言ったのに、なんでオーダーしていないの?」と怒られたのです。その時、“I would…”の恐ろしさを知りました。一語の違いで意味が180度変わってしまうのです。“if”が登場しない仮定法、聞き間違いをするとこんな風に大きく意味が変わってしまうので、ぜひ注意して聞くようにしてください。講師紹介

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術中の超生理的酸素投与、臓器損傷リスクを増大/BMJ

 手術中の超生理的な酸素投与の増量は、急性腎障害(AKI)、心筋傷害および肺損傷の発生増大と関連することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのDavid R. McIlroy氏らによる検討で明らかにされた。全身麻酔下で手術を受けるほとんどの患者は、十分な動脈血酸素飽和度維持のために必要量以上の酸素を投与される。超生理的酸素投与の有害な影響は分子レベルで確認されているが、手術中のこれらの影響の臨床的関連は明らかになっていなかった。なお今回の結果について著者は、「示された臓器損傷の発生増大との関連について残余交絡を排除することはできない」として、「手術中の酸素投与に関する指針を示すために、些少でも臨床的に重要な影響が検出できる大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。BMJ誌2022年11月30日号掲載の報告。観察コホート試験で調査 研究グループは、手術中の超生理的酸素投与が術後の腎臓・心筋・肺損傷の発生減少または増加と関連するかどうかを観察コホート試験で調べた。 米国内42の医療センターが参加するMulticenter Perioperative Outcomes Groupデータレジストリを用いた。参加者は、2016年1月~2018年11月に、全身麻酔と気管内挿管による120分以上の手術を受けた入院成人患者であった。 超生理的酸素投与は、SpO2 >92%の間(分当たり)のFIO2 >21%の曲線下面積で定義(AUCFIO2)した。 主要エンドポイントは、AKI(Kidney Disease Improving Global Outcomes基準を用いて定義)、心筋傷害(術後72時間以内の血清トロポニン値が0.04ng/mL超と定義)、肺損傷(国際疾病分類の退院診断コードを使用して定義)であった。酸素曝露の増大と臓器損傷リスク増大との関連を確認 対象コホートは35万647例の患者で構成され、年齢中央値59歳(四分位範囲[IQR]:46~69)、女性18万546例(51.5%)、手術時間中央値205分(IQR:158~279)であった。 AKIは29万7,554例中1万9,207例(6.5%)、心筋傷害は32万527例中8,972例(2.8%)、肺損傷は31万2,161例中1万3,789例(4.4%)が診断された。 FIO2中央値は54.0%(IQR:47.5~60.0)であり、AUCFIO2は7,951%分(5,870~1万1,107)であった。これは、135分の手術中の80%のFIO2に相当するものであった。 ベースラインの共変量およびその他の潜在的な交絡変数を調整後、酸素曝露の増大は、AKI、心筋傷害、肺損傷のリスク増加と関連していた。AUCFIO2の75パーセンタイルに該当する患者は25パーセンタイルに該当する患者と比較して、AKIのオッズが26%(95%信頼区間[CI]:22~30)高く、心筋傷害のオッズは12%(7~17)高く、肺損傷のオッズは14%(12~16)高かった。これらの観察結果は、曝露の代替定義を評価し、コホートを制限、操作変数分析を行った感度解析で確認された。

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T-DXd、HER2+進行乳がん2次治療でOSを有意に改善(DESTINY-Breast03)/Lancet

 米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のSara A. Hurvitz氏らは、第III相非盲検無作為化試験「DESTINY-Breast03試験」のアップデート解析を行い、転移のあるHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較して全生存期間(OS)を有意に改善したことを報告した。また、先の中間解析で、T-DXdが2次治療の標準治療に位置付けられるに至った無増悪生存期間(PFS)中央値(未到達)について、今回の解析で、研究グループが知りうる限り「最長値(28.8ヵ月)が示された」ことを報告した。著者は、「今回のアップデート解析で、2次治療の標準治療としてのT-DXdを再確認した。また、T-DXdの管理可能な安全性プロファイルを、より長期にわたる治療期間において確認できた」と述べている。Lancet誌オンライン版2022年12月6日号掲載の報告。T-DXd vs.T-DM1の有効性と安全性を比較評価 DESTINY-Breast03試験は、T-DXd vs.T-DM1の有効性および安全性の比較を目的とし、北米、アジア、欧州、オーストラリアおよび南米の169試験施設で行われた。 18歳以上、HER2陽性で切除不能または転移のある乳がんで、トラスツズマブおよびタキサン系抗がん剤で既治療、ECOG PSが0~1、RECIST v1.1に基づく測定可能病変が1つ以上ある患者を適格とした。 患者は無作為に1対1の割合で、T-DXd 5.4mg/kgまたはT-DM1 3.6mg/kgを受ける群に割り付けられ、両群とも3週ごとに静脈内投与を受けた。無作為化は、ホルモン受容体の状態(陽性または陰性)、ペルツズマブの既治療、内臓系疾患による層別化を伴い、双方向ウェブベースシステムを通じて行われた。各階層内でバランスを考慮したブロック無作為化法が用いられた。患者と研究者は、受けた治療についてはマスキングされなかった。 主要評価項目はPFSで、盲検化され独立した中央レビューで評価した。主な副次評価項目はOSで、今回の事前に規定された2回目となるOS中間解析(データカットオフ日2022年7月25日)では、OS、有効性、安全性のアップデート結果が報告された。有効性解析は、全解析データを用いて行われ、安全性解析は、無作為化を受け、少なくとも1回試験薬の投与を受けたすべての患者を対象とした。PFSは28.8ヵ月vs.6.8ヵ月、OSのT-DXd vs.T-DM1のハザード比は0.64 2018年7月20日~2020年6月23日に、699例が適格性のスクリーニングを受け、524例が登録、T-DXd群(261例)、T-DM1群(263例)に無作為に割り付けられた。 2022年7月25日時点で治療を継続していたのは、T-DXd群75例(29%)、T-DM1群18例(7%)であった。試験追跡期間中央値は、T-DXd群28.4ヵ月(四分位範囲[IQR]:22.1~32.9)、T-DM1群26.5ヵ月(14.5~31.3)。 主要評価項目のPFS中央値は、T-DXd群28.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:22.4~37.9)、T-DM1群6.8ヵ月(5.6~8.2)であった(ハザード比[HR]:0.33、95%CI:0.26~0.43、名目上のp<0.0001)。 OS期間中央値は両群とも未到達であったが、T-DXd群はOSイベント例72例(28%)で未到達(95%CI:40.5ヵ月~推定不能)、T-DM1群は同97例(37%)で未到達(34.0ヵ月~推定不能)であった(HR:0.64、95%CI:0.47~0.87、p=0.0037)。 Grade3以上の治療による有害事象発現例数は、T-DXd群145例(56%)、T-DM1群135例(52%)で、両群で同程度であった。判定に基づく薬物関連の間質性肺疾患または肺炎の発生は、T-DXd群39例(15%)、T-DM1群8例(3%)。Grade4/5のイベントは両群共に報告されなかった。

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068)皮膚が教えてくれること。【Dr.デルぽんの診察室観察日記】(ブログより転載)

第68回 皮膚が教えてくれること。(『デルマな日常』より転載)デルにちわー!今日はちょっと頭痛いデルぽんだよ~☆このブログは、皮膚科勤務医デルぽんの正直どうでもいい日常をたまに熱っぽく語るお気楽絵日記漫画ブログです!以後お見知りおきを~☆さてさて。本日のデル日は。なんかちょっとメロドラマ風の三文記事タイトルにしてみました~☆どうぞ~~~えー。前回ちょっぴりいじけた漫画を描いてしまいましたが。皮膚は実に色んな物事を雄弁に語ってくれます。その人の癖や趣味、職業、年齢、幼少期の既往、生活環境や体調、この1週間に何をした・何処へ行った等々…長年皮膚と向き合っていると、色んなことがわかるようになり、それが皮膚科の楽しみのひとつかなあとおもっています。まあ、もちろんわかんないことも、沢山あるけどね!!!電車のなかとかは、比較的暇なので、気がついたら皮膚観察をしていることがままあります。美容師さんというのは本当にわかりやすく。パーマ液やシャンプーでなかなか治りにくい手湿疹をお持ちの方が多いです。まあ皮膚以前に見た目でわかるだろ、というツッコミは甘んじて受けます☆あと看護師さんや介護士さんなど手をとくに使うかたはそう。※とくにオペ看さん(たぶんストレスもある)アトピーの方というのは大人になり全身が綺麗になってきても手湿疹だけが残るという人がけっこう多い。この人はどんな背景を持った人かな~と思いながら皮膚を診ると、きっと皮膚科はもっと楽しくなるは・ず・・・☆ああ!頭痛いからこの辺で!それではまた~☆★ BYE~~☆※この記事は、Dr.デルぽんのご厚意により『デルマな日常』から転載させていただきました。(転載元:『デルマな日常』2016年06月23日 皮膚が教えてくれること。)

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医師の今年の旅行事情と“来年こそ行きたい場所”は?【CareNet.com会員アンケート結果発表】

2022年後半には入国時の条件を緩和する国が増え、国内では旅行支援の取り組みが始まりました。一方で11月からは第8波も到来し、まだまだコロナ禍以前と同じようには旅行を楽しむ状況になっていないかもしれませんが、CareNet.comの会員医師1,000人に、現在の状況と、来年こそ行きたい旅行先についてお聞きしました。行ったor行かない?/日帰りor宿泊? 今年1年の旅行事情は「今年1年どのような旅行(出張は除く)に行きましたか?」という問いに対し、約5割(471人)の医師が「住んでいる都道府県内で日帰りの旅行をした」と回答。「住んでいる都道府県外へ1泊以上の旅行をした」(364人)という回答、「住んでいる都道府県内で1泊以上の旅行をした」(159人)という回答が続いた。一方で約2割(235人)の医師が「旅行も帰省もしていない」と回答している。上記の問いについて年代別に回答をみてみると、「住んでいる都道府県内で日帰りの旅行をした」という回答は若い年代ほど多く、「旅行も帰省もしていない」という回答は年代が高くなるほど多い傾向がみられた。「万一の感染が気になる」「医療者だけ区別するのはおかしい」などさまざまな意見医療従事者が旅行に行くことについて、感じていることや意見があるかを聞いた問いでは、さまざまな意見が寄せられた。【院内の規定が厳しい/開業医や高齢者に対応していることの難しさ】勤務先の規定が厳しすぎる(50代、内科、200床以上)個人医院では医師の感染がそのまま医療経営に関係してくるので、まだまだ医師自身および同居家族は控えたほうがいい(60代、耳鼻咽喉科、0床)開業医は休診できない(60代、内科、0床)とくに高齢者施設に勤務しているものにとっては旅行にいける環境ではない(60代、脳神経外科、200床以上)【まわりの雰囲気や万一の感染が気になる】周りの目が気になる(30代、循環器内科、200床以上)行ける雰囲気ではない。ただし世間では行っており無力感を感じる(30代、内科、200床以上)万一感染し院内クラスターの原因になるようなことがあれば、非難は避けられない。インフルエンザなみの対応とならない限り、自主規制はやめられない(50代、放射線科、1~19床)万一感染した場合の影響を考えるとまだ旅行には行きづらい。人が少ない高級ホテル等に宿泊するなど工夫している(20代、内科、200床以上)【医療者を区別すべきでない/ストレスが爆発寸前】医療従事者とそれ以外を分ける必要はない(50代、眼科、0床)医療従事者だけ我慢するというのもおかしいと思うので、リスク管理をしたうえで自由にしたらいいと思う(40代、内科、0床)国民全体が緩和に動いている中、医療従事者に対してだけ厳しいのはよろしくない。クラスターすらも受け入れる世論が必要(30代、神経内科、100~199床)そろそろストレスが爆発してしまう。ある程度の感染対策をしてなら旅行はOKだと思う(60代、循環器内科、0床)【医療者だからこそ適切な感染対策ができる/旅行自体のリスクが高いとは思わない】医療従事者だからこそ、感染対策を適切に行いながら安全な旅行ができると思う(40代、呼吸器内科、1~19床)感染リスクを最小化した少人数のものならよいのでは? 医療従事者の感染リスクというだけで旅行を自粛していたらかなり長期間行けなくなると思う(50代、精神科、200床以上)医療従事者が世間から隔離されて生活しているわけではないので、自由に行ってよいと思う(50代、消化器外科、200床以上)マスクなどの対策、食事、大声でしゃべることを避けるなど基本的な対策を守り節度のある旅行なら大いに良いのではないか(60代、内科、20~99床)旅行自体の感染リスクが高いとは思わないので、構わない気がする。医療従事者だけが批判の対象になるのはもう違うかなという気がする(30代、精神科、0床)“来年こそ行きたい場所”ベスト51位 ハワイ最も多かった回答はやはり“ハワイ”。「暖かいところで安らぎたい」「リゾートの王様といえばやはりハワイ」「しがらみから解き放たれたい」「非日常を感じたい、綺麗な海を見たい」などの声が相次いだ。「コロナ禍以前は恒例の旅行先だったから」「新婚旅行にまだ行けていないから」といった声も。2位 海外2番目に多かったのは、「どこでもいいから海外に行きたい」という回答。「しばらく行けていないから」「withコロナになってきたからそろそろ行きたい」「ずっと行ってないので願望も込めて」などの声が聞かれた。「来年でなくてもよいが、コロナ禍が収束したら行きたい」という声も。ただし、円安を嘆く声も多く寄せられた。3位 沖縄「温暖な地域かつ国内旅行に行きたい」「国内でリゾートを感じたい」など、まずは国内で非日常を味わいたいという声とともに沖縄が3位にランクイン。「青い海が見たい!」「子供にとっては初めての海になるので、きれいな海を見せてあげたい」ときれいな海への渇望を感じさせる声も。4位 北海道北海道を挙げた医師から多く聞かれたのは「美味しいものが食べたい」「海産物が食べたい」「食べ歩きしたい」という北海道グルメに期待する声。「自然を満喫したい」「ゆっくりドライブしたい」「開放的な場所で家族とゆっくり過ごしたい」と沖縄同様国内で自然を満喫したいという意見も多かった。5位 温泉とにかくどこでもいいから温泉でゆっくりしたいという声も多数。具体的な地名が上がった中では、箱根や湯布院、乳頭温泉が人気だった。蔵王や別府に有馬や加賀、鬼怒川や和倉など、全国各地の温泉地の名前が寄せられた。アンケート概要アンケート名『2022年を総まとめ&来年へ!今年の漢字と来年こそ行きたい旅行先をお聞かせください』実施日   2022年11月3日調査方法  インターネット対象    CareNet.com会員医師有効回答数 1,000件

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自宅コロナ死、4割は同居家族あり/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第109回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月7日に開催された。その中で「新型コロナ患者の自宅での死亡事例に関する自治体からの報告について」が報告された。 調査期間中776名の自宅で死亡した者の解析から、死亡者の79%が70代以上であり、基礎疾患がある者が69%、親族などと同居が42%いた。また、ワクチン接種歴も不明が34%で一番多いものの、「3回接種」も28%と多かった。 政府では、「Withコロナに向けた政策の考え方」に則り、今後必要な医療資機材の提供、国民への正確な知識の普及に努めるとしている。 以下に概要を示す。70代以上の高齢者で、基礎疾患がある人は死亡が多い【調査概要】期間: 2022年7月1日~8月31日地域:全国都道府県条件:新型コロナウイルス感染症患者(死後陽性確認者も含む)で自宅にて死亡した者を本年10月に都道府県を通じ、その年齢、基礎疾患、同居の有無、ワクチン接種歴、死亡に至るまでの経過などを調査(ただし自宅療養中に症状が悪化し、医療機関に入院した後に死亡した事例は除く)。【結果概要】 合計776名(男性460名、女性316名)(死亡時の年齢構成) 80代以上が58%、70代以上が21%、60代以上が9%(基礎疾患の有無) 「あり」が69%、「なし」が19%、「不明」が12%(ワクチンの接種歴) 「不明」が34%、「3回」が28%、「未接種」が20%(単身・同居などの状況) 「不明」が48%、「同居」が42%、「単身」が10% その他の事項は次のとおり。・死亡直前の診断時の症状の程度について、軽症・無症状が41.4%、中等症が13.1%、重症が7.1%、不明または死亡後診断が38.4%・生前に陽性が判明した者は70.1%、死後に陽性が判明した者は29.9%・発生届の届出日が死亡日よりも前であった事例が50.6%、発生届の届出日が死亡日と同日であった事例が31.2%、発生届の届出日が死亡日以降であった事例が17.9%、不明が0.3%・自宅療養の希望ありが22.8%、希望なしが10.3%、不明者および死後陽性が判明した者が66.9%発熱がなく、毎日訪問介護を受けていても死亡のケースも【具体的な死亡事例について】・救急搬送の搬入時の検査で陽性が判明したケース。・家族や親族などに自宅で倒れているところを発見されたケース。・陽性が判明したが、本人や家族の意思により自宅療養を希望したケース。・高齢であることや末期がんであることにより自宅での看取りを希望したケース。・自宅療養中に急速に重症化して死亡したケース。・同居家族から感染し、自宅での死亡につながったケース。・コロナ以外の要因で死亡し、死後に陽性が判明したケース。・入院や宿泊療養、治療を希望しないケース。・浴槽で意識がなくなっているところを同居家族に発見されたケース。・入院調整や宿泊療養の対象となるも、直後に死亡したケース。・主治医からの健康観察や訪問看護を受けていたものの、死亡したケース。・自宅訪問するも応答なく、警察に協力依頼を行ったケース。・症状があったが検査や受診を受けずに、死後に陽性が判明したケース。・家族は入院を希望していたが、自宅療養となり、死亡したケース。・発熱がなく、毎日訪問介護を受けていたが、死亡したケース。【自治体での取組事例】・体調の変化・悪化の早期把握のため、自宅療養開始時の説明、ホームページ、SMSなどで電話相談窓口への連絡を自宅療養者に対して周知。・療養者支援センターを開設。若年層にはSMSを利用して調査を実施し、保健所が電話で調査すべき対象者を重症化リスクが高い方に絞ることで連絡遅滞を防ぐ改善を行った。・陽性者からの要請があった場合、感染防護対策を行ったうえで、直ちに現場に向かう体制を施行。【今後の対応】 「Withコロナに向けた政策の考え方」の考え方に則り、入院治療が必要な患者への対応の強化、発熱外来や電話診療・オンライン診療の体制強化、治療薬の円滑な供給、健康フォローアップセンターの拡充と自己検査キットの確保などの対策を進めるとともに、国民への情報提供と重症化リスクなどに応じた外来受診・療養への協力の呼びかけなどに取り組んでいく。

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抗肥満薬「アライ」がダイレクトOTCとして薬局で購入可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第101回

脂質吸収抑制薬「オルリスタット(商品名:アライ)」の要指導医薬品としての承認が了承されました。久しぶりの新たなダイレクトOTCが誕生することになります。厚生労働省が11月28日に開催した薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会において肥満を対象とした大正製薬の「アライ」(成分名=オルリスタット)の要指導医薬品としての承認が了承された。同剤は、国内では医療用医薬品としての使用実績がない「ダイレクトOTC」で、国内初のOTCの肥満薬。承認は来年3月末の見込みで、2019年3月の申請から4年越しでの承認となる。(2022年11月29日付 日刊薬業) ダイレクトOTCという響きを久しぶりに聞きましたね。ダイレクトOTCとは、医療用医薬品としての使用実績がないままダイレクトにOTC医薬品として承認された医薬品です。原則として薬剤師のみが販売可能で、販売の際には薬の情報提供を行う必要があります。オルリスタットは、海外の多くの国ではすでに医療用医薬またはOTC医薬品として販売されている成分ですが、日本では2019年の申請からかなり慎重に審査され、ようやく要指導医薬品として承認の目途が立ちました。このオルリスタットの気になる作用機序は、消化管の中でリパーゼを不活性化し、食事に含まれる脂質の体内吸収を抑制することで、減量効果を得ようとするものです。効能・効果は「腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の人における内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)」で、食事や運動などの取り組みの補助的な位置付けとなっています。対象は18歳以上で、1日3回、食事中か食後1時間以内に1カプセル服用します。審査に時間を要した理由として、「いかに対象者を適切に選択するか、適正使用をどう確保するかが難しい品目で、それらを検討するのに時間がかかった」と報じられています。対象となる「腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の人」というのは、いわゆるメタボリックシンドロームの基準と同じで、本剤の必要のない人が過度なダイエットのために使用することを懸念しているのでしょう。なお、要指導医薬品ですのでオンラインでは販売できず、再審査期間が8年設定されます。1ヵ月前から腹囲や体重を記録し、薬剤師がチェックすでにインターネットなどでは「痩せ薬が承認!」などと話題になっていますので、販売されたらサプリメント感覚でオルリスタットを買いに来る患者さんも少なからずいると思います。主な副作用は、作用メカニズムに由来する脂肪便や下痢などですが、肝障害にも注意が必要です。処方薬としての実績がない成分であり、肥満を対象とした初めてのOTC医薬品ですので、痩せている人が使用して健康被害が続出!というのは避けなければなりません。不適切な患者さんの服用を避ける対策として、「服薬を始める1ヵ月前から腹囲や体重などを記録し、薬剤師のチェックを受け、6ヵ月服用しても効果がなければ使用をやめる」という使用上の注意が設けられるようです。久々のダイレクトOTCですので、販売を「薬局に任せてよかった」となることを期待しています。本当に本剤の服用が適しているかどうかを判断するとともに、副作用だけでなく過度な体重減少などが生じた場合の受診勧奨も忘れずに行いましょう。承認は2023年3月の予定ですが、現在パブリックコメントの募集が開始されています。年末までですので、興味のある方はコメントしてみてはいかがでしょうか。

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英語で「検査を行います」は?【1分★医療英語】第58回

第58回 英語で「検査を行います」は?So, what is the next step?(それで、次はどうしたらよいでしょうか?)We would like to run some tests to confirm the diagnosis.(診断を確定するために、いくつかの検査を行いたいと思います)《例文1》I need to run a test to rule out a heart attack.(心臓発作を除外するために検査が必要です)《例文2》I’m going to run a blood test to check your diabetes.(糖尿病を調べるために血液検査をします)《解説》“run”という動詞は「走る」以外にも、「(会社などを)経営する」、「(機械などを)動かす」といったさまざまな意味があります。“Run a test”で「検査を行う」という意味になり、検査について英語で説明する時によく使うフレーズです。また、“run”に関連したフレーズとしては、“I have a runny nose.”(鼻水が出ています)や、“I’m running late.”(少し遅れます)といった表現も、日常会話によく出てきます。講師紹介

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第56回 正規分布とは?【統計のそこが知りたい!】

第56回 正規分布とは?正規分布(Normal distribution)は統計・統計学を理解するうえで一番大切な確率分布です。正規分布は、体重や身長の分布や成績の分布などでよく見ることのある左右対称の分布ですが、左右対称でさえあれば正規分布といえるのでしょうか。具体例で正規分布とは何かをみていきましょう。表1のデータは、ある看護大学1年生の40人分の統計テストの得点と平均値、標準偏差を示したものです。表1 学生40人のテストの得点と平均値、標準偏差40人の得点について、どのように分布しているのかを調べるために階級幅10点の度数分布表(表2)を作成しました。表2 学生40人の度数分布表図の度数分布のグラフをみると、平均値付近が一番高く、平均値から離れるにつれて緩やかに低くなっています。グラフの形状は左右対称な釣り鐘型の分布、富士山型です。図左右対称・釣り鐘型の曲線が正規分布です。正規分布は統計学や自然科学、社会科学のさまざまな場面で複雑な現象を簡単に表すモデルとして用いられています。しかしながら、度数分布のグラフの形状が釣り鐘型の分布、富士山型であったとしても、尖りすぎた山型、なだらかすぎる山型の形状となる場合は、正規分布とは言えません。度数分布の形状が正規分布であるかを見極めるためには、統計学的に判定しなければなりません。正規分布かどうかを見極めるためによく使われる主な判定方法には、(1)歪度、尖度による判定(2)正規確率プロットによる判定(3)正規性の検定などがあります。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第40回 5数要約と箱ひげ図とは?第41回 外れ値とは?第47回 単相関係数の算出方法は?

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診療所での効果的な感染対策例/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催された。その中で日本プライマリ・ケア連合学会より「診療所における効果的な感染対策の好事例の紹介」が報告された。 これは、本格的な冬を迎え、プライマリ・ケアの外来には発熱などの感冒様症状を訴える患者が増えると予想されていることに鑑み、これに備え、これまでの新型コロナ流行下で実践されてきたプライマリ・ケアでの効果的な感染対策の工夫例と発熱外来を設置・運用するうえでの工夫例をまとめたもので、以下に概要を示す。診療所における効果的な感染対策の工夫例【工夫1】待合室における感染対策・自家用車で来院している患者は車中で待機してもらう。・基本的な感染対策を徹底する。具体的には窓開け、サーキュレーターの活用、二酸化炭素モニターを設置する。【工夫2】診察・検体採取時の感染対策(1)院内のゾーニング・動線分離を行う・発熱・感冒様症状患者の駐車場と院内への動線を一般患者と分離する(例:矢印などで導線をわかりやすく表示する)。・発熱・感冒様症状患者用の診察スペースなどを確保する(例:パーティションによる簡易な分離/空き部屋などを診察室として活用など)。・空間的分離を行わない場合において、発熱・感冒様症状のある患者とそうでない患者を、時間的に分離して診察する。(2)個人防護具(PPE:Personal Protective Equipment)の着脱を工夫する・患者対応時にはサージカルマスクを常時装着し、飛沫曝露のリスクがある場合はアイシールド・フェイスシールドを装置する。・患者に手や体幹が直接接触する可能性がある場合は、手袋・ガウンも装着する。・1対応ごとに手指消毒を徹底する。手袋を使用する場合は、1対応毎に手袋を交換し手指消毒も徹底する。サージカルマスク、アイシールド・フェイスシールド、ガウンの交換は、大量の飛沫を浴びたり、それらが患者に直接接触した場合に限定してもよい。(3)検体採取の場所を工夫する・検体採取を屋外や駐車場(や車中)で行う(ただしプライバシーへの配慮は必要)。・唾液によるPCR検査・抗原定量検査や、鼻かみ液によるインフルエンザ迅速抗原検査を活用することで飛沫やエアロゾルの発生を抑える。(4)その他の感染対策上の工夫・難聴の患者と大声で会話することを避けるために、スマートフォンを用いた翻訳機器の音声認識・自動文字化機能を活用する。・患者にタブレット端末を渡して、オンラインで診療、説明などを行う。・上記のような感染対策が構造的に困難な場合は、時間的分離で対応する。【工夫3】処方・調剤における工夫・特例承認の経口抗ウイルス薬の処方に必要な同意書を電子化し、タブレット上でサインを得る。・発熱患者への処方・調剤の流れについて近隣調剤と共に確認し、感染対策の助言を行い、発熱患者が薬剤を受け取れる体制を構築する。・調剤薬局が近接している場合は、患者は自院駐車場の自家用車内で待機し、薬局から手渡しに向かう。・調剤薬局において電話やオンラインでの服薬指導や配送体制を構築する。発熱外来を設置・運用する上での課題と工夫例【課題1】通常診療よりも大きな作業負担を軽減する 初診患者が多くなるため、病歴・背景情報把握にかかる負担の軽減が必要・事前にWEB問診(インターネットによる問診)システムで情報収集する(例:企業が提供するWEB問診システムを活用し、対面診察の時間を短縮など)。・発熱・感冒様症状用の問診票を用意し、緊急性のある症状の有無、電話診療やオンライン診療の可否、新型コロナ感染症治療薬の適応などを事前に確認する。【課題2】院内感染が生じた場合の休業リスクに備える・日本医師会などが提供する休業補償保険に加入する。・医療機関の休業が生じても個別の訪問診療を維持するために、平時から地域の医療機関間での連携体制を整える(例:地域の在宅患者情報を共有するネットワークへの加入など)。・休業した場合でも可能な限り電話・オンライン診療を継続する。【課題3】かかりつけ患者に重症化リスクの高い患者が多い・院内各所での感染対策に工夫が必要。・電話・オンライン診療の適切な活用。【課題4】施設構造などの問題で理想的な感染対策が難しい・施設構造などの制約を踏まえた現実的かつ効果的な感染対策を工夫する。・時間的分離(診療時間の分割)による対応。・電話・オンライン診療の適切な活用。【課題5】発熱・感冒様症状患者への処方・調剤の流れを工夫する・上記【工夫3】を参照。【課題6】必要に応じて一部の患者にオンライン診療を適切に活用する・予約時の情報でオンライン対応できると判断した患者にはオンライン診療を提案する。・事前にWEB問診で情報を収集する。・企業が提供するオンライン診療システムの導入。・行政が設置するオンライン診療センターで診療を行う。【課題7】入居しているテナントの管理者の理解を得るよう努める・時間的分離を検討する(例:発熱・感冒様症状患者専用の診療時間帯、曜日を設けるなど)。・電話・オンライン診療の適切な活用。 なお、別添1では「PPE(個人用防護具)の着脱について」、別添2では「発熱等かぜ症状外来事前問診例」を図で表記している。

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第138回 ご存じですか?ジェネリック供給不足の逼迫度

ジェネリック医薬品(以下、ジェネリック)を中心とした医薬品不足がさらに深刻化しているようだ。12月5日に日本製薬団体連合会(日薬連)安定確保委員会が、医療用医薬品を取り扱う企業に対して2022年8月末時点の自社製造販売承認取得品目の出荷状況を調査したアンケート結果を公表した。それによると、回答が寄せられた223社の1万5,036品目のうち「通常出荷」は71.8%に留まり、昨年同期の調査での79.6%から悪化傾向が見られたという。このうち「出荷停止」は全体の7.3%に当たる1,099品目で、昨年同期調査の4.8%(743品目)から増加。また、行政処分を受けた企業の出荷停止品目の影響もあり、「限定出荷(出荷調整)」は20.8%(3,135品目)で、こちらも昨年同期調査の15.5%(2,400品目)から増加した。ちなみに前年同期調査の回答は 218社、1万5,444品目なので、完全な比較はできないが、回答企業が増加したにもかかわらず、品目が減少したことについて同委員会では「行政処分を受けた企業による品目整理などの影響により、品目数は減少したと推測される」との分析を示している。いずれにせよ前回調査比で回答企業数増、品目数減の中で出荷停止、限定出荷品目の絶対数が増加していることを考えれば、完全な比較ではなくとも現在の医薬品供給状況が昨年よりもひっ迫していることは明らかである。そして出荷停止品目の90.7%、限定出荷品目の89.7%がジェネリックである。ご存じのように今回の医薬品不足は本を正せば、2020年12月にジェネリック専業メーカーの小林化工が製造していた抗真菌薬への睡眠導入薬成分の混入事件がきっかけである。事件の原因究明の結果、同社では承認書と異なる手順の製造という不正が常態化していたことが発覚。同社は薬機法に基づく史上最長の116日間の業務停止命令を受け、最終的には廃業に追い込まれた。この事件以降、ほぼ同様の不正がジェネリック専業メーカーで相次いで発見され、次々と業務改善命令や業務停止処分を受けた。主なものだけでも2021年3月の国内最大手・日医工(売上高約1,900億円)、同年9月の長生堂製薬(同約145億円)、2022年3月の共和薬品工業(同約287億円)、同年9月の辰巳化学(同約166億円)など。処方する医師には必ずしも馴染みのない社名も多いかもしれないが、安価なジェネリックの場合、日医工を含む上位3社が飛び抜けた売上高を有する以外は零細企業が多く、売上高100億円超の企業規模でも市場プレゼンスは小さくない。現在約1兆2,000億円強と推定される国内ジェネリック市場の中で、ここに名前を挙げた企業の売上高を合算すると約2,500億円なので、実に市場の6分の1以上を形成する企業が行政処分を受けたという異常事態だ。今回の日薬連調査では最近処分を受けた辰巳化学の影響は織り込まれていないので、直近の供給状況は日薬連発表より厳しいと考えざるを得ず、今後の供給状況も当面は厳しいと予想される。まずは小林化工以降のドミノ倒しのような不正発覚を見ていると、新たな不正が発覚する可能性は否定できない。そして、前述の日医工はアメリカ事業の不振に今回の行政処分による出荷停止・調整が追い打ちをかけ、事業再生ADRを適用し、国内投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズの出資を受けて再建を目指すことになった。しかも、来春には上場廃止の予定。これまで同社は国内ジェネリック専業メーカー最大手として不採算品目でも医療現場にニーズがあれば供給することをウリにしていたが、上場廃止までして再建に臨む以上、不採算品目の整理は避けられないだろう。現に11月には95品目もの販売中止を発表したが、同社の製造品目数は1,200品目超で国内トップだ。同社とジェネリック専業メーカー筆頭のつばぜり合いを続けてきた沢井製薬の約800品目の1.5倍もある。この点からもさらなる品目整理は避けられないだろう。そのツケは今のところ行政処分などを受けずに“平常運転”を続けているジェネリック専業メーカー各社に覆いかぶさる。しかし、零細企業でも1社で100品目程度を製造していることは稀ではないジェネリック専業メーカーの特徴が問題解決の最大の障害だ。一つの製造ラインを特定品目の製造のみに使うことはできず、複数品目を製造する。しかも、この複数品目は時期ごとに異なる。生産計画自体が複雑なモザイク状態で運営され、のりしろが少ない。現時点で行政処分と無縁な企業は、現在の供給状態に応えようとしてこの少ないのりしろすら排した“非常運転”になっている。それでも3割が供給不安というのが現状である。医療現場からすると「何とかしろ」と言いたくもなるだろうが、もはやない袖は振れない状態なのである。しかも、ここに来て各社の重荷になっているのは、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した世界的な物価高と日本特有の事情とも言える円安だ。ある業界関係者は「(ジェネリック製造に必要な)原薬の調達価格はものによっては昨年の2倍になっている」と嘆く。しかも、物価高で製造にかかる光熱費も上昇している。にもかかわらず、昨年から始まった毎年薬価改定で価格勝負のジェネリックは格好の引き下げターゲットになり、薬価がスパイラル的に低下し、原価率は上昇の一途となっている。こうした状況にもかかわらず、供給不安定解消を目指す関係各方面の努力の前に各種規制が立ちはだかる。10月9~10日に仙台で開催された日本薬剤師会学術大会で講演した日本ジェネリック製薬協会副会長の川俣 知己氏(日新製薬社長、本社:山形県)は、供給不安定解消のためにジェネリック専業メーカー同士が試みた「協力」が断念に追い込まれていたことを明らかにした。講演で川俣氏が語った「協力」とは、専業メーカー各社の生産能力や供給不安定品目の具体的な供給状況などを業界内で情報交換し、各社で製造を分担してこの危機を打開するというものだった。しかし、この件を上部団体である日薬連に相談したところ、公正取引委員会にお伺いを立てることになり、結果として得られた回答が「業界主導の生産調整は価格を高止まりさせる恐れがあるので認められない」とのものだったという。川俣氏は「われわれにとっては非常事態だったので、許容してもらいたかった」と無念そうに語った。一方、保険薬局の現場も規制に悩まされている。現状の少なからぬ品目の供給不安定な状況下で保険薬局が最も恐れるのは、予期せぬ長期処方の処方箋が持ち込まれることだ。東北地方のある保険薬局の薬剤師は次のように嘆く。「今は初来局の患者さんが持ち込む処方箋が30日処方というだけでもドキドキするのに、たまに60日処方の処方箋が持ち込まれると肝が冷える。とはいえ、何とかこちらも出そうと必死になる。ところがその必死さが裏目に出た経験もある」その経験とは60日処方の処方箋で指定された医薬品が同一ジェネリックメーカーのものですべて用意できず、処方医と患者の了解を取って同一成分の2社のジェネリックで何とか取りそろえたというものだ。この時は社会保険診療報酬支払基金の審査ではねられてしまったという。「たとえ同一成分であっても、万が一副作用が発生した際、どちらの製品が原因か判別不能になる恐れがあるため」という理由だ。今回の一件は行政処分を受けた企業は別にして、その他のジェネリック専業メーカー、医療現場、行政ともそれぞれの主張はいずれも一定の正当性を有する。だが、医療が「取り締まり行政」の下に置かれているという現状を考えれば、行政の采配ぶりが事態の解決に大きな影響を及ぼすことだけは確かだ。もちろん何もかも行政が悪いとは言わないが、今回の騒動を傍から見ると当事者の中で最も掛け声止まりのスタンスに見えて仕方がないのは、やはり行政である。そろそろ“重い腰”を上げて欲しいと願うのは、ないものねだりなのだろうか。

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医師が選ぶ「2022年の漢字」TOP5を発表!【CareNet.com会員アンケート】

12月12日は漢字の日。毎年この日に、京都の清水寺で発表される「今年の漢字」(主催:日本漢字能力検定協会)。本家より一足先に、CareNet.com医師会員1,029名に選んでいただいた「2022年の漢字」TOP5を発表します。1年を振り返ってみて、皆さんはどの漢字をイメージしましたか?第1位「戦」第1位には、104票の圧倒的な得票数で「戦」が選ばれました。2022年2月24日にロシアがウクライナへ軍事侵攻し、全世界が戦争の終結を願っているものの、冬を迎えた今も戦禍は続いています。長引くコロナとの戦いに加え、戦争による影響もあり、世界経済も不安定になった1年でした。「戦」を選んだ理由(コメント抜粋)ウクライナの戦争が長引いて庶民は物価高騰との戦いであるから。(50代 眼科/島根)ロシアによるウクライナ侵攻が最大のニュースだった。(40代 循環器内科/東京)ウクライナのように、突如侵略戦争の犠牲になる可能性について考えた。(30代 精神科/埼玉)ウクライナ侵略に正当性はない。(50代 小児科/神奈川)ウクライナにおける惨状を目の当たりにして。(50代 その他/群馬)ワンオペ育児に奔走、コロナと戦い世界的に戦争もあったから。(20代 麻酔科/北海道)第2位「乱」第2位には、「乱」がランクイン。過去にも何度か登場していて昨年は5位でしたが、混乱の世の中は変わらず、再浮上する結果となりました。第1位と同様に、ウクライナでの戦争や、オミクロン株に悩まされたコロナ禍、国内外の経済の混乱などが理由に挙げられました。 「乱」を選んだ理由(コメント抜粋)円安に拍車がかかったり、ミサイルが幾度も飛んできたり、乱れに乱れた1年だったと思うから。(40代 循環器内科/青森)相変わらず社会全体が混乱のさなかにあると感じました。(40代 外科/岡山)ウクライナに対するプーチンの乱暴。(50代 形成外科/北海道)戦争、コロナ、資源高、円安など混乱が続いているから。(40代 精神科/広島)ロシアによるウクライナ侵攻、為替の乱高下などが印象に残っているため。(20代 臨床研修医/香川)コロナ禍やウクライナ情勢、経済的な混乱を目の当たりしたから。(40代 腎臓内科/福岡)■第3位「安」第3位は「安」。全35票のうち27票で理由に挙げられたのが「円安」。一時は32年前の水準と並ぶ1ドル150円台を記録しました。また、7月の参院選で起きた安倍元総理の銃撃事件を挙げた方も見られ、複合的な理由から「安」が上位に入る結果となりました。 「安」を選んだ理由(コメント抜粋)数十年ぶりの円安ドル高、物価上昇など印象に残ったため。(50代 泌尿器科/鹿児島)安倍元総理の事件のインパクトの大きさと安全安心な世界になってほしい気持ちを込めて。(20代 内科/東京)円安が進んでいよいよ日本の国家としての危機が強まったから。(30代 内科/東京)安倍元首相の銃撃事件、急激な円安、安全保障問題など関連することが多いと感じた。(30代 内科/福岡)第4位「禍」昨年はトップだった「禍」ですが、ここにきて第4位に転落。コロナ禍は依然として続いていますが、今年は治療薬や2価ワクチンの登場などもあり、対抗する手段が増えたことで、収束の兆しが見えてきました。 「禍」を選んだ理由(コメント抜粋)医療逼迫にて行政にも振り回される1年となった。(50代 救急科/愛知)コロナが終わらない。(50代 内科/兵庫)コロナ禍は未だ終息せず、ウクライナの戦禍もあったから。(40代 麻酔科/愛知)第5位「耐」第5位は「耐」。オミクロン株の流行の波が何度もやってきた2022年、医療者には引き続き忍耐が強いられました。全国旅行支援のキャンペーンも開始されるなど、日本も解禁ムードに向かっています。来年こそは、これまで我慢していたことをできる日常が戻ってくるといいですね。 「耐」を選んだ理由(コメント抜粋)月並みだけど、コロナ禍で外出(旅行、飲み会など)を我慢してきた。忍耐のみ。(70代以上 膠原病・リウマチ科/神奈川)まだ旅行や宿泊へ行けずに耐えているから。全面解除になったら、ぜひ政府に医療者限定特別旅行期間をもうけてもらわないと、割に合わない。(50代 精神科/石川)値上げや円安で我慢が強いられる年だから。(40代 眼科/大阪)アンケート概要アンケート名『2022年を総まとめ&来年へ!今年の漢字と来年こそ行きたい旅行先をお聞かせください』実施日   2022年11月3日~10日調査方法  インターネット対象    CareNet.com会員医師有効回答数 1,029件

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さまざまな不眠症診療ガイドラインのシステマティックレビュー

 不眠症治療に関する臨床診療ガイドライン(CPG)の質および推奨事項の評価、エビデンスの要約を通じた適切な薬理学的治療へのアルゴリズム的アプローチに関するガイダンスの提供を目的に、シンガポール・センカン総合病院のSu Yin Seow氏らがシステマティックレビューを実施した。その結果、不眠症に対する薬物治療の適応はすべてのCPGで共通していたが、第1選択薬では違いが認められ、また、ほとんどのCPGで薬物治療後のすべての臨床的考慮事項に関する推奨事項の記載はなかった。Journal of Psychiatric Practice誌2022年11月1日号の報告。 PubMed、EMBASEのデータベース、ガイドライン、リポジトリ、専門家協会のWebサイトより検索を行った。CPGの質の評価には、AGREE-REXにより補完されたガイドライン評価ツールAGREE IIを用いた。不眠症患者に対する薬物治療のアルゴリズム的アプローチを検討する際に臨床医が考慮する重要な臨床上の問題は、学術チームが特定を行った。CPGの推奨事項の特徴を明らかにし、推奨マトリクスを介して要約するため、メタ合成アプローチを用いた。 主な結果は以下のとおり。・包含基準を満たしたCPG 10件を評価した。・全体的な質の評価では、高評価が4件、中程度の評価が3件であった。・ほとんどのCPGにおいて、不眠症に対する薬物療法は、認知行動療法またはその他の非薬理学的介入が利用できなかった場合、失敗した場合、患者より拒否された場合にのみ推奨されていた。・薬剤の種類、投与量、治療期間に関する推奨事項は、さまざまかつ非特異的であった。・CPGの中で、特殊な集団への薬物療法に関する推奨事項を記載しているものは、ほとんどなかった。

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ドイツで医療活動を行うためにまずはドイツ語から【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第20回

医療活動がどうこう言う前に、ドイツで就労ビザを手に入れるためにはドイツ語の試験に合格する必要があります。英語だとTOEIC、TOEFL、IELTSなど沢山の試験がありますが、ドイツ語の試験は語学学校である“Goethe Institute”(ゲーテ・インスティトゥートと読みます)が主催する試験が公のドイツ語の資格として用いられています。これは以前第16回でも触れました。ドイツ語のレベルはどうはかるドイツ語だけでなく、ヨーロッパの言語はヨーロッパ言語共通参考枠(CEFR)という基準でレベル付けされています。それぞれの言語が「A1・A2・B1・B2・C1・C2」とレベル分けされます。そして、ドイツではEU外から来た人が就労ビザを得るためにはドイツ語のB2レベルの試験に受かる必要があります(EU内からの移民の場合はB1で良いそうです)。医療活動を行うための資格を取る前提として、まずはこのB2の取得が必要となります。このゲーテのテストは日本だと東京・大阪で受けることができます。試験の内容は“Lesen、Schreiben、Hoeren、Sprechen”で構成されています。それぞれ「読む、書く、聴く、話す」という意味です。この試験に合格するには大体1〜2年ほどドイツ語を勉強する必要があると言われています。しかしですね…あくまで試験である以上、対策はちゃんと練れます。過去問とか模擬試験を片っ端から解いて、頑張って対策を練って合格を掴み取ったときの合格証書が写真です。「Schreiben(書く)」試験は結構きつい合格ラインは60%なんでギリッギリですが、まあ受かれば良しです。この「Schreiben(書く)」という項目ですが、普通にドイツ語をペラペラ話す語学学校時代のクラスメートですら「Schreibenだけどうにもならん」って言う曲者の単元です。試験内容は提示された新聞記事に対して賛成なり反対なりの意見を180単語で書くものですが、分量が多くて結構大変です。そこで試験前に「どんな内容を問われても『それっぽい言い回し』で賛成を伝える文章」を作りました。単語をすり替えるだけで120単語くらいの文章ができちゃうようなやつを。あとはちょこちょこ肉付けすれば180単語埋まる訳です。試験全体を通して、問題の形式はしっかり決まっているので、上記のような対策が練れるテストになっています。他の単元に関しても、あれこれ対策を練って挑みました。最近はネットを使えば模擬試験も購入できるようになりましたので、独学でもどんどん勉強できるようになっています。

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英語で「それでいいですか?」は?【1分★医療英語】第57回

第57回 英語で「それでいいですか?」は?I’d like to meet you in 2 weeks’ time.Would that be OK with you?(2週間後に再診します。それでいいですか?)Sure, thanks!(もちろんです。ありがとうございます!)《例文1》Would that be OK with you if I take the blood sample again?(再度、採血を行うことになってもよいですか?)《例文2》Are you comfortable for me to start the procedure?(検査を始めても大丈夫ですか?)《解説》許可を得る際の質問方法はいろいろな表現がありますが、もっとも簡単な聞き方は“OK”を使って、“Are you OK with〜?”または“Is that OK with you?”と聞く方法です。また、「上手くいく」という意味の“work”を使って、“Does that work for you?”と聞くこともできます。もう少し丁寧に聞く場合には、“Are you comfortable with〜?”(〜で大丈夫ですか?)、“May I do〜?”(〜してもよいですか?)などの表現があります。そのほか、“Do you mind if I do〜?”という言い方もよく使われます。直訳すると、「私が〜をしたら嫌ですか?」という意味になり、“No”という返事が来た場合には「嫌ではないです(OKです)」という意味になることに注意しましょう。講師紹介

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ソトロビマブ、高リスクCOVID-19で優れた重症化予防効果/BMJ

 オミクロンBA.1およびBA.2変異株が優勢な時期のイングランドでは、重症化のリスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の日常診療において、中和モノクローナル抗体ソトロビマブは抗ウイルス薬モルヌピラビルと比較して、28日以内の重症化の予防効果が優れ、60日の時点でも結果はほぼ同様であったことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBang Zheng氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年11月16日号で報告された。イングランドのEHRデータを用いたコホート研究 研究グループは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し、COVID-19による重症転帰のリスクが高い患者において、重症化の予防効果をソトロビマブとモルヌピラビルで比較する目的でコホート研究を行った(UK Research and Innovation[UKRI]などの助成を受けた)。 本研究は、OpenSAFELY-TPPプラットフォーム(国民保健サービス[NHS]の電子健康記録[EHR]の解析のための、安全で透明性の高いオープンソースのソフトウエアプラットフォーム)を用いた実臨床コホート研究であり、イングランドの総合診療(GP)施設に登録している2,400万人から、患者レベルのEHRデータが取得された。 2021年12月16日以降に、ソトロビマブまたはモルヌピラビルによる治療を受けた、COVID-19による重症化リスクが高い成人COVID-19患者が対象となった。主要アウトカムは、治療開始から28日以内のCOVID-19による入院およびCOVID-19による死亡であった。さまざまな解析法で、矛盾のないほぼ同様の結果 2021年12月16日~2022年2月10日の期間に、3,331例がソトロビマブ、2,689例がモルヌピラビルによる治療を受けた。全体(6,020例)の平均年齢は52.3(SD 16.0)歳、58.8%が女性、88.7%が白人で、87.6%はCOVID-19ワクチンを3回以上接種していた。 治療開始から28日以内に、87例(1.4%)がSARS-CoV-2感染により入院または死亡した(ソトロビマブ群32例、モルヌピラビル群55例)。 居住地域で層別化したCox比例ハザードモデルでは、人口統計学的因子、高リスクコホート分類、ワクチン接種状況、暦年、BMI、その他の併存疾患で補正すると、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群に比べ、COVID-19による入院または死亡のリスクが大幅に低かった(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.33~0.88、p=0.01)。 傾向スコアで重み付けしたCoxモデル(HR:0.50、95%CI:0.31~0.81、p=0.005)および完全ワクチン接種者に限定した解析(HR:0.53、95%CI:0.31~0.90、p=0.02)でも、これと矛盾のない結果が得られた。また、他の因子の有無による層別解析でも、実質的な効果の修正は検出されなかった(交互作用検定のp値はすべて>0.10)。さらに、この結果は、イングランドでオミクロンBA.2が優勢だった2022年2月16日~5月1日の期間に治療を受けた患者の探索的解析でもほぼ同様であった。 治療開始から60日以内(95例[1.58%]がCOVID-19で入院または死亡、ソトロビマブ群34例、モルヌピラビル群61例)の層別Cox回帰分析でも、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群よりもCOVID-19による入院・死亡の予防効果が優れた(4つのモデルのHRの範囲は0.46~0.51、すべてp<0.05)。 著者は、「これらの結果は、入院を要さないCOVID-19患者の治療において、モルヌピラビルよりもソトロビマブを優先する現行ガイドラインを支持するものである」としている。

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SGLT2阻害薬【心不全診療Up to Date】第3回

第3回 SGLT2阻害薬Key PointsSGLT2阻害薬 栄光の軌跡1)リンゴとSGLT2阻害薬の甘い関係?2)SGLT2阻害薬のエビデンス、作用機序は?3)最も注意すべき副作用は?はじめにSGLTとは、sodium glucose co-transporter(ナトリウム・グルコース共役輸送体)の略であり、ナトリウムイオン(Na+)の細胞内外の濃度差を利用してNa+と糖(グルコース)を同時に細胞内に取り込む役割を担っているトランスポーターである1)。このSGLTにはSGLT1-6のアイソフォームがあり2)、その1つであるSGLT2の活性を阻害するのがSGLT2阻害薬である。SGLT2は、ほぼすべてが腎臓の近位尿細管起始部の管腔側に選択的に発現しており、Na+とグルコースを1:1の割合で共輸送することで、尿糖再吸収のおよそ90%を担っている(残りの10%はSGLT1を介して再吸収)1)。このように、SGLT2阻害薬は、近位尿細管でのグルコース再吸収を阻害し、尿糖の排泄を増やすことから、血糖を下げ、糖毒性を軽減し、糖尿病の病態を改善させる薬剤として当初開発された。しかし現在、この薬は心不全治療薬として脚光を浴びている。本稿ではその栄光の軌跡、エビデンス、作用機序について考えていきたい。1. リンゴとSGLT2阻害薬の甘い関係SGLT2阻害薬はどのようにしてこの世に生まれたのか。そこには日本人研究者が重要な役割を担っていた。SGLT2阻害薬のリード化合物であるフロリジン(ポリフェノールの一種)は、1835年にピーターセン氏(フランス)によって『リンゴの樹皮』から抽出された。その約50年後にフォンメリング氏(ドイツ)によってフロリジンの尿糖排泄促進作用が報告された(Von Mering, J. "Über künstlichen diabetes." Centralbl Med Wiss 22 (1886):531.)。そこから約100年の時を経て、糖尿病モデル動物でのフロリジンの抗糖尿病効果(インスリン作用を介さない血糖降下作用、インスリン抵抗性改善、インスリン分泌能回復)が証明された。また時を同じくして1987年に小腸からSGLT1が発見され、フロリジンがその阻害薬であることが報告された3)。その7年後(1994年)に腎臓からSGLT1と類似した構造を持つSGLT2が同定され4)、創薬に向けた研究が進んでいった。そして1999年ついに田辺製薬(当時)より世界初の経口フロリジン誘導体(T-1095)の糖尿病モデル動物に対する糖尿病治療効果が報告された5)。ただ、フロリジンは小腸にも存在するSGLT1をも阻害するため、下痢等の消化器症状を引き起こす恐れがある6)。こうして誕生したのが現在の“選択的”SGLT2阻害薬であり、『糖を尿に出して糖尿病を治す(turning symptoms into therapy)』という逆転の発想から生まれた実にユニークな薬剤なのである7)。2. SGLT2阻害薬のエビデンスと作用機序1)SGLT2阻害薬のエビデンス 現在・過去・未来上記のとおり、SGLT2阻害薬は当初糖尿病治療薬として開発されたため、有効性を検証するためにまず行われた大規模臨床試験は2型糖尿病患者を対象としたものであった(図1)。最初に実施された心血管アウトカム試験が2015年に発表されたエンパグリフロジンを用いたEMPA-REG OUTCOME[対象:心血管疾患既往の2型糖尿病患者7,020名(二次予防)]であり、その結果は誰も予想しえなかった衝撃的なものであった。まず、主要エンドポイントである3P-MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中の心血管複合エンドポイント)の相対リスクを、エンパグリフロジンがプラセボとの比較で14%有意に減少させ、これは3P-MACEを主要エンドポイントとする2型糖尿病を対象にした試験の中で、初めての快挙であった。その中でもとくに心血管死のリスクを38%減少させ、また心不全入院のリスクも35%減少させることも分かり、さらなるインパクトを与えた。その後同様に、CANVAS試験(2017年)ではカナグリフロジンが、DECLARE-TIMI 58試験(2019年)ではダパグリフロジンが、心血管イベントハイリスクの2型糖尿病患者(一次予防含む)の心血管イベントを減少させるという結果が報告された。つまり、『どうやらSGLT2阻害薬には心保護作用がありそうだ。ただこれらの試験の対象患者の多くは心不全を合併していない糖尿病患者であり、心不全患者を対象とした試験でしっかり検証すべきだ』という流れになったわけである(図1、図2)。画像を拡大する画像を拡大するこのような背景から、まずHFrEF(LVEF≦40%)に対するSGLT2阻害薬の心血管イベント抑制効果を検証するために、ダパグリフロジンを用いたDAPA-HF試験とエンパグリフロジンを用いたEMPEROR-Reduced試験が実施された(図1)。結果は、両試験ともに、標準治療へのSGLT2阻害薬の追加が、糖尿病の有無にかかわらず、心血管死または心不全入院のリスクを26%有意に低下させることが示され8)、さらなる衝撃が走った。そうなると、次に気になるのが、もちろんLVEF>40%の慢性心不全ではどうか、ということであろう。その疑問について検証した試験が、エンパグリフロジンを用いたEMPEROR-Preserved試験とダパグリフロジンを用いたDELIVER試験である(図1)。まず初めに結果が発表されたのが、EMPEROR-Preserved試験で、エンパグリフロジンを心不全に対する推奨療法を受けている患者(LVEF>40%)に追加した結果、心血管死または心不全入院の初回発現がプラセボ群と比較して21%有意に低下していた9)。この効果はLVEF≧50%の症例でも同様であった。この結果をもって、最新の米国心不全診療ガイドラインではHFpEFへのSGLT2阻害薬の投与がClass 2aの推奨となった10)。そして、最近DELIVER試験の結果も発表され、ダパグリフロジンは、LVEF>40%の慢性心不全患者の心血管死または心不全悪化(心不全入院+緊急受診)のリスクを18%有意に抑制させた11)。よって、2つのRCTでHFpEFに対するポジティブな結果が出たため、今後のガイドラインでは、EFに関わらず慢性心不全へのSGLT2阻害薬の投与がClass 1へ格上げされる可能性が高い12)。ただし、これらの試験は、NT-proBNPが上昇しているHFpEF(洞調律では300pg/mL、心房細動では600pg/mL以上)が対象であり、運動負荷検査をして初めてHFpEFと診断されるNT-proBNPがまだ上昇していない症例は含まれておらず、すべてのHFpEFでこの薬剤が有効かどうかは不明である。そして、今後も虚血領域、腎不全領域などで数多くのエビデンスが出てくる予定であり、この薬剤の効果がどこまで広がるのか、引き続き目が離せない(図3)。画像を拡大する2)SGLT2阻害薬はなぜ心不全に有効なのか?SGLT2阻害薬がなぜ心不全に有効なのか。そして今回の本題ではないが、SGLT2阻害薬には腎保護作用もあり、そのような心腎保護作用のメカニズムは何なのか。図4で示したとおり、さまざまなメカニズムが提唱されているが、どれがメインなのかは分かっておらず、それが真実なのかもしれない。つまり、これらのさまざまな心腎保護へ働くメカニズムが複合的に絡み合っての結果であると考えられる。個人的にはこの薬剤の心不全への効果は、腎臓への良い効果が主な理由と考えており、熱く語りたいところではあるが、字数足りずまたの機会とさせていただく。ただ、これは今も議論のつきないテーマであり、今後より詳細なメカニズムの解明が進んでいくものと期待される。画像を拡大する3. 最も注意すべき副作用、それは…注意すべき副作用は、正常血糖ケトアシドーシス(Euglycemic DKA)、尿路感染症、脱水である。とくにケトアシドーシスはかなり稀な副作用(DAPA-HF試験における発現率は、糖尿病患者で0.3%、非糖尿病患者では0%)ではあるが、見逃されると予後に関わることもあり、どのような患者でとくに注意すべきか把握しておかれると良い。まず、日常診療で最も起こりうる状況は、非心臓手術の前にSGLT2阻害薬が継続投与されていた時であろう(そのメカニズムは図5を参照)。術後のケトアシドーシスや尿路感染症のリスクを最小限に抑えるために、手術の少なくとも3日前からのSGLT2阻害薬の中止が推奨されていることはぜひ覚えておいていただきたい13)。また、著明なインスリン分泌低下を認める症例(インスリン長期治療を受けているなど)にも注意が必要であり、体重減少の有無や過度な糖質制限をしていないかなどしっかり確認しておこう。血糖値正常に騙されず、ケトアシドーシスを疑った場合は、速やかに血液ガス分析にてpH低下やアニオンギャップ増加がないかを確認するとともに、血清ケトン濃度を測定し,鑑別を行う必要がある。なお、日本糖尿病学会からその他の副作用も含め『SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」14)が公表されており、ぜひ一読をお勧めしたい。このような副作用もしっかり理解した上で、心不全患者さんを診られた際は、これほどのエビデンスがあるSGLT2阻害薬が投与されているか、されていなければなぜ投与されていないか、を必ず確認いただきたい。画像を拡大する1)Ferrannini E, et al. Nat Rev Endocrinol. 2012;8:495-502.2)Wright EM, et al. Physiol Rev. 2011;91:733-94.3)Hediger MA, et al. Nature. 1987;330:379-81.4)Kanai Y, et al. J Clin Invest. 1994;93:397-404.5)Oku A, et al. Diabetes. 1999;48:1794-800.6)Gerich JE. Diabet Med. 2010;27:136-42.7)Diamant M, Morsink LM. Lancet. 2013;38:917-8.8)Zannad F, et al. Lancet. 2020;396:819-829.9)Anker SD, et al. N Engl J Med. 2021;385:1451-1461.10)Heidenreich PA, et al. Circulation. 2022 May 3;145:e895-e1032.11)Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2022;387:1089-1098.12)Vaduganathan M, et al. Lancet. 2022;400:757-767.13)FDA Drug Safety Communication. FDA revises labels of SGLT2 inhibitors for diabetes to include warnings about too much acid in the blood and serious urinary tract infections.14)日本糖尿病学会. 糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation

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「肥満」との違いは?肥満症診療ガイドライン改訂

 11月24日に日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学医学部附属病院長])は、『肥満症診療ガイドライン2022』についてプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、肥満症の現況や治療に関する解説と今回刊行されたガイドラインの概要が説明された。また、本ガイドラインは12月2・3日に那覇市で開催される第43回日本肥満学会(会長:益崎 裕章氏[琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 教授])で発刊される。肥満症とはBMI25以上で何らかの健康障害がある人 はじめに理事長の横手 幸太郎氏が「わが国における肥満症の現況と肥満症診療ガイドライン2022の位置づけ」をテーマに講演を行った。 肥満とは、「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」をいい、わが国ではBMI25以上が肥満とされている。その数は、年を経て全世界で増えており、とくにアメリカやアフリカで増加している。 肥満になると糖尿病、高血圧、脂質異常症などの健康障害のほか、膝・腰・足首などへの運動器障害、睡眠時無呼吸症候群などが生じるリスクが高くなる。 そこで、BMIが25以上あり、一定の健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風など11項目)がある人を「肥満症」として、医学的に治療が必要な対象者としている(BMI35以上は高度肥満症)。 肥満症の治療は、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法、外科療法と5つの考え方があり、他職種連携によるチーム医療がなされる必要がある。実際、一番身近な保健指導の介入により6ヵ月後のHbA1cは-0.2%減少、中性脂肪は-81.5%減少など改善効果が報告されている1)。 肥満に関して最近のトピックスとしては、若い女性にはBMI18.5未満の「やせ過ぎ」の女性がむしろ増えていることやそのやせ過ぎが将来的に骨粗鬆症や不妊のリスクとなること、高齢者の肥満ではフレイルなどとの関連も考慮し、無理な減量よりも筋肉量維持や増強に心がけることなども指摘されている。 横手氏は終わりに本ガイドラインの目的について「体重を減らすことにメリットがある。『やせるべき人』を選び出す、そして、適切に治療と予防を行うことである」と述べ講演を終えた。小児や高齢者の肥満にも言及 続いて、同学会のガイドライン作成委員会委員長の小川 渉氏(神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科 教授)が「肥満症診療ガイドライン2022の改訂のポイント」をテーマに、今回の改訂内容や今後の展望などを解説した。 本ガイドラインは、2006年、2016年と発刊され、今回の2022年版では、主に「肥満症治療の目標と学会が目指すもの」「高度肥満症」「小児の肥満」「高齢者の肥満」「肥満症の治療薬」「コラム」について改訂が行われた。 「肥満症治療の目標と学会が目指すもの」と「高度肥満症」では、肥満症治療指針について「肥満症」と「高度肥満症」とで目標、治療などの治療方針が異なることが記載された。とくに肥満の外科治療の減量・代謝改善手術では保険適用の内容などが改訂された。薬物治療についてはGLP-1受容体作動薬の治験に関して言及され、セマグルチドの68週後の体重変化率についてプラセボ-2.1%に対し、セマグルチド-13.2%と有意な体重減少があったこと、また、本試験が学会の定める肥満症の診断基準に基づいて作成されたプロトコ-ルで実施された試験であることなどが記載されている2)。 「高齢者の肥満」では、日本老年医学会のガイドラインの内容 と統一性を考慮して改訂され、 高齢者肥満症の減量目標をフレイル予防と健康障害発症予防の両者も考慮し「BMI22~25」の範囲とすることが記載され、過剰な減量には留意が必要とされている。 「小児の肥満」では、将来の成長を考慮しBMIではなく、肥満度で判定し、身体面だけでなく、肥満に伴う「いじめ」など生活面への配慮も記載されている。 「肥満症の治療薬」では、「肥満の治療」ではなく、「肥満症の治療」という基本概念のもと、記載の整備と概念を明確化したほか、改訂では製薬企業の開発担当者とも意見交換を行い、評価基準と適応基準は必ず同一ではないことが記載されている。 その他、今回の改訂では「肥満へのスティグマ」についても触れられ、肥満の原因が個人への帰責事由という偏見からくる社会的スティグマと肥満を自分自身の責任とする個人的スティグマへの配慮が述べられている。 最後に小川氏は「肥満症の課題は、認知度がまだ低く、社会的な浸透もメタボリックシンドローム(72.5%)や肥満(81.8%)と比較しても、肥満症(58.3%)は低い。このガイドラインが、診療に役立つだけでなく社会の啓発に寄与することを期待する」と抱負を述べ、レクチャーを終えた。

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第22回 電話・FAX・郵送が必要なコロナ治療薬「アナログ処方」の不可解

エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)を使うタイミングは?世間では「ゾコーバすげぇぜ!」みたいな報道が多いですが、有効性については少し落ち着いてみてほしいと思います。新型コロナの診断がついた途端「よっしゃ、ゾコーバや!」というのは適切とは言えません。「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版」(2022年11月22日)では、以下のように記載されています1)。一般に、重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善することを念頭に、対症療法で経過を見ることができることから、エンシトレルビル等、重症化リスク因子のない軽症~中等症の患者に投与可能な症状を軽減する効果のある抗ウイルス薬については、症状を考慮した上で投与を判断すべきである。また、重症化リスク因子のある軽症~中等症の患者に投与する抗ウイルス薬は、重症化予防に効果が確認されているレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルによる治療を検討すべきである。重症化リスクがある軽症者には、その他の抗ウイルス薬がよいとされており、重症化リスクがない軽症者にはそもそも治療が必要なのかどうかという議論になります。とはいえ、いろいろなエビデンスが今後出てくるかもしれませんので、全然ダメじゃんとバッサリ切ってしまうのではなく、もう少し長い目線で見ていくほうがよさそうに思います。抗ウイルス薬処方の手間が多すぎるそれにしても、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)を使い始めた頃から、新型コロナの抗ウイルス薬の処方手続きが煩雑過ぎる問題が解決していません。本当に煩雑で、「処方させたくないのかな」と思うくらいです。ゾコーバも、これまでと同じように登録センターに医療機関と調剤薬局が登録する必要があります。また、処方に際して同意書を書いてもらって、調剤薬局に電話で一報を入れて、その後適格性情報チェックリストと処方箋をFAXして、原本を郵送するという「例の手順」になっています(図1)。画像を拡大する図1. ゾコーバの処方手順(参考資料2より筆者作成)変異ウイルス東京都の変異ウイルスモニタリングを見ていると、BA.5がまだ主流ではあるものの、BQ.1.1、BN.1、BF.7などの変異ウイルスが増えています(図2)。チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)はまだ効果を残していますが、変異ウイルスが出回るとこれも推奨されなくなるかもしれません。図2. 東京都の変異ウイルス(参考資料3より引用)抗体薬の位置付けが下がって、抗ウイルス薬への期待が相対的に高まっているからこそ、エビデンスに基づいてベストな選択肢を選ぶようにしたいものです。参考文献・参考サイト1)日本感染症学会 COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版2)厚生労働省 新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(ゾコーバ錠125mg)の医療機関及び薬局への配分について3)東京都 モニタリング項目の分析(令和4年11月24日公表)

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