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第141回 医師免許を持った映画監督、大森一樹氏を偲ぶ。青春映画の名作『ヒポクラテスたち』を今観て思うこと

1980年度「キネ旬」日本映画第3位の名作こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。いよいよ年末です。年始年末の休暇、毎年私はシリーズものの古い映画をまとめて観直すことにしています。『ゴッドファーザー』(監督:フランシス・F・コッポラ)、『インファナル・アフェア』(監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック)、『仁義なき戦い』(監督:深作 欣二)などをこれまで観てきました。今年は何を観直そうかと思案しているのですが、ディズニープラスで配信していた『マンダロリアン』(『スター・ウォーズ』シリーズの外伝です)が意外と面白かったので、『スター・ウォーズ』のエピソード4〜5(最初に発表されたシリーズ。監督:ジョージ・ルーカス他)を観直してみようかと思っています。ちなみに『マンダロリアン』は、日本の昔の時代劇ドラマ『子連れ狼』のようで、西部劇、時代劇好きにもお薦めです。ということで、今回は11月12日に急性骨髄性白血病のため死去した映画監督、大森 一樹氏について書いてみたいと思います。大森氏は1952年生まれ、京都府立医科大学を卒業し医師免許を持った映画監督でした。日本の映画監督で医師出身というのは、私が知る限り大森氏だけだと思います。その大森氏、高校時代から映画制作を開始し、京都府立医大在学中には映画自主上映グループを結成、本格的に映画を作っていました。1978年、26歳の時に『オレンジロード急行』で商業映画デビューを果たし、1980年の『ヒポクラテスたち』で評価を確立しました。1981年には村上 春樹の処女作『風の歌を聴け』を小林 薫主演で映画化しています。なお、『ヒポクラテスたち』は1980年度キネマ旬報ベストテン日本映画部門第3位に輝いています。大森氏は比較的若い世代には、『ゴジラvsビオランテ』(1989年)や『ゴジラvsキングギドラ』(1991年)の監督・脚本を担当したことでも知られますが、私は個人的には『ヒポクラテスたち』が大森氏の代表作だと思います。70年代後半の医学生を描いた青春群像劇『ヒポクラテスたち』は大森氏自身の青春時代、70年代後半の医学生を描いた群像劇です。簡単にあらすじを紹介しましょう。京都の洛北医科大学の最終年に在学している荻野 愛作(古尾谷 雅人)はポリクリと呼ばれる臨床実習の真っ最中。同じ班には既に妻子持ちの加藤 健二(柄本 明)、有名産婦人科病院の息子、河本 一郎(光田 昌弘)、秀才の大場修(狩場 勉)、野球少年の王 龍明(西塚 肇)、紅一点の木村 みどり(伊藤 蘭)がいます。彼の住まう寮には、留年を続ける牢名主のような本田 俊平(斎藤 洋介)をはじめとした一癖も二癖もある先輩後輩がくすぶっています。学生運動は既に下火ですが、森永砒素ミルク事件や医師の税優遇問題などで左翼社会運動に身を染める南田 慎太郎(内藤 剛志)が印象的です。舞鶴出身の荻野は、中原 順子(真喜志 きさ子)という大学の図書館で働く高校時代の同級生と付き合っています。産婦人科の実習真っ最中に、順子は妊娠に気づきます。研究室から妊娠検査薬を盗み出し確認後、京都市内の小さな産院で堕胎をします。しかしその後、順子の容態は急変し、結局、郷里に帰ることを余儀なくされます。手術の見学や出産の実習、妊婦への問診や患者への直診など、彼らは医師になるための階段を一歩一歩上っていきますが、愛作はまだ自分がどんな医師になるのか、何科を専門とするのかさえ明確に決められません。また、木村 みどりは現場での体験に耐えられず、医師になることをやめると宣言します。それでも国家試験を目指す愛作に、ある知らせがもたらされ、愛作は次第に精神的に追い詰められて行きます。出世作となったこの映画のこの役が彼の将来を予言かこの映画、その後、映画やテレビで活躍する多くのバイプレーヤーがたくさん出演し、映画全体を引き締めています。さらに、病院専門の盗人役に鈴木 清順氏(映画監督)、小児科の教授に手塚 治虫氏(漫画家、大阪大学医学部出身)、精神科の先生に北山 修氏(精神科医でミュージシャン、京都府立医大出身)と特別出演もバラエティーに富んでいます。ロケ地は大森氏の母校である京都府立医大や同校の橘井寮などが使われています。70年代半ば~後半頃の雰囲気が色濃く漂っており、今見ると古臭さも感じられますが、モラトリアム期の若者に特有の一瞬の狂気や挫折感は、40年以上経った今観ても、共感するところが多いと思います。伊藤 蘭は、1978年にキャンディーズが解散してからしばらく沈黙しており、本作が芸能界復帰作となり、本格的に女優の道を歩むきっかけとなりました。なお、彼女が「蘭」というタバコを吸うシーンもあります。主役の古尾谷 雅人は70年代、日活ロマンポルノなどで活躍していましたが、この作品でメジャーな存在となりました。堂本 剛が主演したテレビドラマ、『金田一少年の事件簿』(1995年)の剣持 勇警部役はハマリ役でした。この映画では、図体ばかりでかくて気持ちが優しい青年を好演していますが、出世作となったこの役が彼の将来を予言したかのように、2003年、自ら命を断っています。鴨川の川べりで青春に苦悩していた医師たちの末路は?この映画には無資格堕胎、森永砒素ミルク訴訟、24時間年中無休診療で医療界に旋風を巻き起こしていた徳洲会など、1980年前後の医療事件ネタも盛り込まれています。京都府立医大については、本連載では今年、「第99回 背景に府立医大と京大のジッツ争い?滋賀・大津市民病院で医師の大量退職が発覚」などで、同大出身元理事長によるパワーハラスメント事件を取り上げました。前理事長は大森氏が大学に在籍していた時代より若干後の世代と思われますが、仮に鴨川の川べりで青春に苦悩していた医師たちの末路があの事件だとすると、少々情けなさ過ぎるオチだなとこの映画を観直して思った次第です。『ヒポクラテスたち』は、amazonプライムなどの配信サービスで観ることができます。日本の医療映画としても歴史に残る名作です。未見の方はぜひ観てみて下さい。

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070)皮膚科外来を通して感じる季節感【Dr.デルぽんの診察室観察日記】(ブログより転載)

第70回 皮膚科外来を通して感じる季節感(『デルマな日常』より転載)デルにちは〜☆ 今日も元気なデルぽんでーす!今日も皮膚科勤務医のさり気ない日常風景を漫画にしたよ!本日のデル日は…!『皮膚科外来で感じる四季の移り変わり』です☆どうぞ〜〜〜↓↓えー他科も多少あるかと思いますが、皮膚科はかなーり季節と天候の影響を受けます!!汗とか!乾燥とか!湿気とか!虫とか紫外線の影響を、たぶんに受けまくる皮膚という臓器。耳鼻科・眼科も花粉の季節は忙しいかな?泌尿器は年中変わらないのかな、、、精神科は春かな?ニュースでへんな事件ふえる季節、春…皮膚科はいつが忙しいかっていうとね、がぜん夏!!!!皮膚科の夏ッ!!!夏の環境って皮膚にはあんまり宜しくないんだよね。ムレたりなんだり。あと虫とか活発になるねん。蜂刺され虫刺され等々。プールが始まると水イボが流行り(と言うかこの時期になると幼稚園・保育園に言われて連れてくる親多し。出来たらすぐ取る、これ秘訣)水虫も湿気を味方に水を得た魚のように息を吹き返し。蚊に刺されては掻きむしりとびひになって病院へ来るという(爪は短く・清潔にね☆)。えー。夏場は汗をかいてじっとりするから保湿は要らないかっていうと実はそんなことはない。汗っていうのは乾燥肌には刺激になるのです。ほらしょっぱいでしょ。痒くなるでしょ。夏場こそシャワーの後にはさっぱり保湿してほしいなとデルぽんはおもいます。肌弱い子はね。夏は行水!そして保湿!これに限る。夏は紫外線も強いし夏休みレジャーで日焼けしすぎたとか。蕁麻疹が増えるのも夏。沖縄でシュノーケリング一時間したって言って両足けっこうな潰瘍作ってきたひといたよね…みんな沖縄レジャーはちゃんと日焼け止めしような。そいで気候が落ち着き秋になると少しホッとした時間が持て、冬場になると今度は乾燥で悪化した老人やアトピーが増えるという、そんな仕組みになっております。あとなんか年末年始は帯状疱疹が多い!!一年の疲れが出るのか?!とまあそんな具合に。外来やってると、四季の移り変わりを感じますよというお話でしたーん☆ではでは。まったねー!アデュー!※この記事は、Dr.デルぽんのご厚意により『デルマな日常』から転載させていただきました。(転載元:『デルマな日常』2016年06月30日 皮膚科外来を通して感じる季節感)

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薬剤師の店舗常駐義務が緩和、なぜかオンライン面談は求められる【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第102回

副作用リスクが高い第1類医薬品の販売では、店舗における薬剤師の常駐が義務付けられていますが、その常駐義務を2024年6月までに緩和し、オンライン面談による販売を可能とする方針が明らかになりました。政府は、副作用リスクの高い一般用医薬品の販売について、店舗における薬剤師の常駐義務を緩和する方針を固めた。テレビ電話やオンライン会議で薬剤師が面談することで販売を認める。都市部に偏在する薬剤師が遠隔で対応できれば、薬剤師不足に直面する地方などでも幅広い薬を購入できるようになる。(中略)都市部の利用者にとっても、薬剤師不在の時間帯でも購入できる利点がある。厚労省は過剰購入などを防ぐため、今後、在庫管理のあり方などを検討する。(2022年12月19日付 読売新聞オンライン)第1類医薬品は、第2類や第3類医薬品と比べてとくに副作用のリスクが高く、安全性において注意を要する医薬品であり、店舗における薬剤師の常駐・情報提供が義務付けられています。ドラッグストアのような薬剤師がいない店舗販売業の店舗では、そもそも第1類医薬品を販売することはできません。薬剤師不在時間の対応ルールはありますが、それは「第2類や第3類医薬品であれば登録販売者が販売できますよ」というものです。第1類医薬品は薬剤師の不在時には販売できず、第1類医薬品の陳列棚のシャッターを下ろしたり、販売できない旨を掲示したりするなどの対応が求められています。しかし、薬剤師の地域偏在が問題になって久しく、地方では薬剤師不足により第1類医薬品を販売するドラッグストアが少ないという問題があります。市場規模でいうと、要指導医薬品を含む市販薬のうち、第1類医薬品が占める割合は約5%程度です。量としては少なくても、地方だからといって医薬品の入手が困難という状況は改善すべきでしょう。とはいえ、都市部で働く薬剤師を移動させるということも難しいので、デジタル技術が発展した今、対面や駐在といった「アナログ規制」を見直してルールを変更する運びになりました。インターネット販売ならオンライン面談不要なのに…今回の規制緩和によって、オンライン面談で薬剤師が情報提供することで、地方や薬剤師の不在時間でも幅広い薬剤を購入できるようになることが期待されています。すでにインターネットでは適正使用の確認だけで第1類医薬品が購入可能なのに、なぜ店舗販売の場合はオンライン面談が求められるのだろうという疑問も若干感じますが、それでも購入者の利便性は向上するでしょう。オンライン面談であっても情報提供をしっかりと行えばさほど大きな問題は起きないとは思いますが、第1類医薬品は医療用医薬品から要指導医薬品にスイッチし、その後第1類医薬品にリスク区分が変更されたものなどもあります。また、副作用のリスクが高いからこそ、販売する薬局などに薬剤師の常駐を求めていたという経緯があります。個人的には規制緩和賛成派ですが、それによって一般の方に健康被害が生じることのないよう、きちんと法整備するとともに、対応・周知方法の検討を徹底していかなければならないと思います。

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乳がん領域、Practice changeにつながる重要な発表【Oncology主要トピックス2022 乳がん編】【Oncologyインタビュー】第43回

今年も乳がん領域では今後の標準治療を変え得る重要な研究結果が報告された。大きく分類すると1)HER2低発現と新規薬物療法、2)CDK4/6阻害薬のOS結果、3)CDK4/6阻害薬耐性後の治療戦略となる。その他の話題も少し加えてまとめてみたい。1)HER2低発現に対する新規薬物療法:DESTINY-Breast04試験・TROPiCS-02試験DESTINY-Breast04試験トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はHER2 抗体薬物複合体(ADC)製剤であり、DESTINY-Breast01、02、03試験の結果から、HER2陽性で転移を有する乳がんの2次治療以降の標準治療である。ASCO2022のプレナリーセッションでHER2低発現に対するDESTINY-Breast04試験の結果が報告された。HER2低発現は今回新たに注目された新たな分類であり、IHC2+/ISH-またはIHC1+と定義され、全乳がんの約50%程度を占めると考えられる。T-DXdはBystander effectの結果、HER2低発現の腫瘍に対しても効果を示す。DESTINY-Breast04試験は1~2ラインの化学療法を受けたHER2低発現の転移を有する乳がん患者(N=557)を対象に、T-DXd群と治験医師選択治療(TPC)群(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択)が比較された。主要評価項目は、ホルモン受容体陽性(HR)陽性患者における盲検下独立中央判定による無増悪生存期間(PFS)で、副次評価項目は全体集団におけるPFS、HR陽性患者および全体集団における全生存期間(OS)などだった。T-DXd群(N=373、HR陽性89%)、TPC群(N=184、HR陽性90%)で、脳転移は約5%であった。転移乳がんとして前治療化学療法レジメン中央値は1で、HR陽性乳がんでは内分泌療法は前治療で中央値2レジメン、CDK4/6阻害薬は約65%で使用されていた。主要評価項目であるHR陽性患者におけるPFS中央値は、T-DXd群10.1ヵ月、TPC群5.4ヵ月でT-DXd投与群で有意に延長していた。全体集団でもPFS中央値はT-DXd群、TPC群それぞれ9.9ヵ月vs. 5.1ヵ月でありT-DXd群で有意に延長していた。OSも同様にHR陽性(23.9ヵ月vs. 17.5ヵ月)、全体集団(23.4ヵ月vs. 16.8ヵ月)であり、T-DXd群で有意に延長していた。全体の約1割程度の患者であるがHR陰性集団(N=58:トリプルネガティブ乳がん)の解析も探索的解析として行われたがPFS(8.5ヵ月vs. 2.9ヵ月)、OS(18.2ヵ月vs. 8.3ヵ月)ともにT-DXd群で良好であった。奏効率に関してはHR陽性で52.6%vs. 16.3%、HR陰性で50.0%vs. 16.7%であった。またHER2発現(IHC1+vs IHC2+/ISH-)で奏効率に差はなかった。薬剤性肺障害(ILD)はT-DXd群の12.1%に認められたが、ほとんどがGrade2以下で10.0%、Grade5は0.8%(3/371)だった。これらの結果より新たな乳がんカテゴリーであるHER2低発現に対してT-DXdは標準治療となり、プレナリーセッション発表後は盛大なスタンディングオベーションが起こった。このようにADC製剤の登場により新たなサブタイプとしてHER2低発現が脚光を浴びることとなった。HER2低発現(とくにHER2 0と1+の境界について)の定義についても今後の検討課題である。TROPiCS-02試験Trop-2は腫瘍増殖に関連している分子で、乳がんではサブタイプによらず約80%に発現している。Sacituzumab Govitecan(SG)は抗Trop-2抗体にトポイソメラーゼI阻害剤をペイロードとしたTrop-2 ADCである。転移を有するトリプルネガティブ乳がんではASCENT試験の結果を受け米国ではすでに承認されている。転移を有するHR陽性乳がんを対象としてはTROPiCS-02試験が行われ、ASCO2022でPFS最終解析とESMO2022でOS第2回中間解析の結果が報告された。転移を有するHR陽性乳がん患者で内分泌療法、CDK4/6阻害薬、タキサン既治療、転移乳がんとして2~4ラインの化学療法を受けた543例を対象に、SG群(272人)とTPC群(271人:カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、エリブリンから選択)が比較された。主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFSでSG群が5.5ヵ月、TPC群が4.0ヵ月でありSG群で有意に延長した。OS第2回中間解析の結果、中央値はSG群14.4ヵ月vs. TPC群11.2ヵ月で統計学的に有意な延長がみられた。奏効率はSG群21%、TPC群が14%であった。SG群で多くみられた有害事象は好中球減少、貧血、白血球減少、下痢、嘔気、脱毛などであった。これらの結果からSGは前治療としてCDK4/6阻害薬を含む内分泌療法、少なくとも2レジメン以上の化学療法などを濃厚に受けたHR乳がんに対して臨床的に意味のある治療選択肢となり得ると思われる。対象としては上記のDESTINY Breast 04試験と重なる部分もあるが、TROPiCS-02試験の方がやや前治療が多く入っており、またHER2 0も含み一致はしていない。今後この標的分子の異なる両ADC製剤をどのように使い分け、どの順に使っていくのか、またその耐性機序についても解明が必要となる。画像を拡大する2)CDK4/6阻害薬のOS結果:PALOMA-2試験・MONARCH 3試験PALOMA-2試験PALOMA-2は、閉経後転移を有するHR陽性乳がんに対する1次治療としてCDK4/6阻害薬であるパルボシクリブとアロマターゼ阻害薬であるレトロゾール併用群(併用群:N=444)と、プラセボとレトロゾールの群(単独群N=222)にランダム化されたフェーズ第III相試験である。これまでにパルボシクリブ併用でPFSが有意に延長することが示されている。ASCO2022でPALOMA-2試験のOS結果が報告された。OS中央値は併用群53.9ヵ月 vs単独群51.2ヵ月、HR 0.956(95% CI:0.777~1.177)p=0.3378で有意差を認めなかった。OSサブグループ解析では、PS 1/2、無病生存期間(DFI)12ヵ月超、内分泌療法既治療、骨転移のみの患者で併用群が良好な傾向を示した。本邦未承認薬ribociclibのMONALEESA-2では、併用群のOSの有意な延長が既に示されており、PALOMA-2の結果とは大きく異なった。その違いについては1)CDK4/6阻害薬としての薬効の違い、2)後治療の影響、3)対象とする集団の違いなどが考えられる。1)についてはPFSに関してどのCDK4/6阻害薬もほぼ同様の結果が示されているが、生物学的活性、阻害作用を示す分子が異なるとの報告もある。2)の後治療が影響した可能性については増悪後のCDK4/6阻害薬の使用はMONALEESA-2では併用群で21.7%、単独群で34.4%とPALOMA-2より高かった。HR陽性乳がんでは増悪後の生存期間が長く、後治療がOS結果に影響を及ぼした可能性はあるが、今回のPALOMA-2の報告では詳細は不明で今後の報告を待つ必要がある。3)に関して、2つの試験は同じ1次治療の試験であるが、大きく異なっている。PALOMA-2では術後内分泌療法中または終了後1年以下での再発症例が22%含まれていたのに対し、MONALEESA-2では全員術後内分泌療法終了後1年超経過した症例が対象であった。この術後内分泌療法中または終了後1年以下の集団は内分泌療法感受性が低い集団であり、パルボシクリブは内分泌療法抵抗性に対しては効果が弱い可能性が示唆されているため、PALOMA-2でこの内分泌療法抵抗性の集団を一部含んだことにより、効果の差が薄まった可能性がある。今回の発表では、ほぼ同様の患者を対象とした第II相試験のPALOMA-1試験とPALOMA-2試験の統合解析でDFI 12ヵ月超でのOSサブグループ結果も示されたが、併用群64.0ヵ月、単独群44.6ヵ月であり、HR:0.736、 95%CI:0.780~1.120であり、MONALEESA-2のOSハザード比0.76に近似する値であった。しかしこれは統合解析のサブグループ解析であり、あくまで参考値の評価である。MONARCH 3試験本邦では別のCDK4/6阻害薬であるアベマシクリブも承認されているが、この薬剤の1次治療試験であるMONARCH 3の第2回OS中間解析結果がESMO2022で報告された。まだ中間解析であり、残念ながら統計学的有意差は示されなかったが、OS中央値は併用群で67.1ヵ月、単独郡で54.4ヵ月(HR:0.754、95%CI:0.584~0.974)であった。この結果は前述のMONALEESA-2とほぼ同様であり、来年解析予定のOS最終解析が非常に楽しみな結果であった。MONARCH 3はMONALEESA-2と同じく、術後内分泌療法終了後1年超経過した患者が対象であった。以上より、これまでPFSでは差を認めなかったCDK4/6阻害薬であるが、異なるOSの結果が得られたことは今後の処方に少なからず影響することが予想される。薬剤選択の際には効果のみならず、有害事象(骨髄抑制、下痢など)、患者の価値観などの情報を共有し、ともに薬剤選択をする(Shared decision making: SDM)が重要となる。画像を拡大する3)CDK4/6阻害薬耐性後の治療戦略:AKT阻害薬、経口SERD、CDK4/6阻害薬継続CDK4/6阻害薬増悪後の治療に関してこれまでエビデンスはなく、「乳癌診療ガイドライン2022年版」のFRQ10aでは、「一次内分泌療法として、アロマターゼ阻害薬とサイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の併用療法を行った場合、閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳がんの二次内分泌療法として何が推奨されるか?」に対して、二次内分泌療法として、・最適な治療法は確立しておらず、耐性機序を考慮した臨床試験が進行中である、との記載がある。主なものとしては1)CDK4/6阻害薬既治療例に対するPTEN/PI3K/AKT/mTOR経路、2)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のESR1変異、3)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のその他の機序、4)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のCDK4/6阻害薬の継続の治療開発が行われている。3)-1)CDK4/6阻害薬既治療例に対するPTEN/PI3K/AKT/mTOR経路阻害:AKT阻害薬capivasertib(CAPItello-291試験)今年のSABCSではこのうちAKT阻害薬capivasertibの第III相試験であるCAPItello-291試験の報告があった。閉経前/後のホルモン受容体陽性進行・再発乳がん患者を対象(AI投与中/後に再発・進行、転移再発に対する治療歴として2ライン以下の内分泌療法、1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容)として、試験治療群capivasertib+フルベストラント、対照群プラセボ+フルベストラントが比較された。主要評価項目は全体集団およびAKT経路に変異(≧1のPIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子変異)を有する患者におけるPFSであった。約69%でCDK4/6阻害薬が前治療として使用されていた。AKT経路に変異を有する患者は44%vs. 38%だった。全体集団におけるPFS中央値は、プラセボ群3.6ヵ月に対しcapivasertib群7.2ヵ月で有意に改善した。またAKT経路に変異を有する患者でもPFS中央値は、プラセボ群3.1ヵ月に対しcapivasertib群は7.3ヵ月で有意に改善した。capivasertibで多く報告されたGrade3以上以上の有害事象は、下痢(9.3% vs. 0.3%)、斑状丘疹(6.2%vs. 0%)、発疹(5.4%vs. 0.3%)、高血糖(2.3%vs. 0.3%)だった。治療中止につながる有害事象の発生は、13.0% vs. 2.3%であり、効果と有害事象のバランスは考慮しなければならないものの、CDK4/6阻害薬治療後の新たな治療選択肢として期待できる結果であった。3)-2) AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のESR1変異:経口SERD (SERENA-2試験・EMERALD試験)これまで選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)は臀部筋肉注射のフルベストラントが標準治療として使用されているが、ESR変異に対して抗腫瘍効果を発揮することが期待される経口SERDが複数開発されている。このうちcamizestrantとelacestrantの報告があった。経口SERDであるcamizestrantの第II相SERENA-2試験の結果がSABCS2022で報告された。HR陽性の閉経後進行乳がん患者(1ライン以上の内分泌療法後の再発または進行で内分泌療法・化学療法は1ライン以下)を対象に試験群:camizestrant75mg(C75)群74例、camizestrant150mg(C150)群73例と対照群:フルベストラント(F)群73例が比較された。術後内分泌療法歴ありが66.7%、転移再発乳がんに対して化学療法ありが19.2%、内分泌療法ありが68.8%、CDK4/6阻害薬による治療歴ありは49.6%だった。ESR1変異ありが36.7%だった。主要評価項目のPFS中央値は、F群3.7ヵ月に対しC75群7.2ヵ月、C150群7.7ヵ月で、camizestrantの両用量群で有意に改善した。camizestrantのGrade3以上の有害事象は、血圧上昇、倦怠感・貧血・関節痛・ALT上昇・四肢痛・低ナトリウム血症であった。現在、SERENA-4およびSERENA-6の2つの第III相試験が進行中となっている。上記治験はいずれも日本からも参加している。もう1つ、経口SERDとしてelacestrantの第III相EMERALD試験のUpdate結果もSABCS2022で報告された。EMERALD試験は、HR陽性でCDK4/6阻害薬治療後に進行した男性および女性の閉経後乳がん患者(1~2ラインの内分泌療法歴[うち1ラインはCDK4/6阻害薬との併用]と1ライン以下の化学療法歴有)を対象としてelacestrantとフルベストラントが比較された初めての第III相試験であり、これまで主要評価項目であるPFSはelacestrant群で有意な延長が報告されていた。今回のSABCS2022では前治療におけるCDK4/6阻害薬の治療期間別の治療成績が報告された。CDK4/6阻害薬の投与期間を6ヵ月未満、6~12ヵ月、12~18ヵ月、18ヵ月以上と細かく分けてもelacestrant群でPFSは延長することが示された。elacestrantの主な有害事象は悪心、倦怠感、嘔吐、食欲不振、関節痛である。ESR1変異は転移再発治療としてCDK4/6阻害薬+AIを治療中に起こってくる耐性機序の1つであるが、新たに開発された経口SERDはその解決策として非常に有望である。長期の治療成績については今後の続報を待つ必要がある。3)-3) AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のCDK4/6阻害薬の継続(MAINTAIN試験)今回初めて前向き試験であるMAINTAIN試験の結果が報告された。MAINTAIN試験はHR陽性転移乳がんに対してCDK4/6阻害薬と内分泌療法後に増悪した症例に対してフルベストラントまたはエキセメスタンとribociclibを併用投与する群(併用群)と、フルベストラントまたはエキセメスタンとプラセボを投与する群(プラセボ群)が比較された。初回CDK4/6阻害薬としてパルボシクリブが86%で使われておりribociclibは10%強であった。主要評価項目のPFS中央値は併用群5.29ヵ月、プラセボ群2.76ヵ月で、HR:0.57(95%CI:0.39~0.95)、p=0.006と有意に併用群のPFSが延長した。奏効率は併用群20%、プラセボ群11%、臨床的有用率は併用群43%、プラセボ群25%でどちらも併用群で良好な結果であった。ESR1変異有無別では非常に症例数の少ないサブグループ解析ではあるがESR1変異なしでは併用群が優れている傾向を示したが、ESR1変異ありでは両群間に差を認めなかった。本試験は小規模な第II相試験であり、標準治療をすぐに変えるものではないが、CDK4/6阻害薬増悪後の後治療として、併用するホルモン治療を変更することでCDK4/6阻害薬の効果を維持できる可能性が示唆された。妊娠希望のあるHR陽性乳がん患者の新たなエビデンスPOSITIVE試験若年乳がん患者にとって妊孕性温存は重要な問題であり、特にHR陽性においては長期に術後補助内分泌療法が必要なため、内分泌療法を一時中断した場合のアウトカムが待望されていた。今回、SABCSにて内分泌療法を2年間中断した場合の乳がん再発の観点から見た安全性について、前向き単群試験のPOSITIVE試験の結果が報告された。対象は術後補助内分泌療法を18~30ヵ月間受けたStage I~IIIのHR陽性乳がん患者で、妊娠を希望し内分泌療法を中断する42歳以下の閉経前女性。内分泌療法を、wash out期間(3ヵ月)を含み、妊娠企図、妊娠、出産、授乳で2年間中断し、再開後5~10年追跡された。主要評価項目は乳がん無発症期間(BCFI)、副次評価項目は妊娠および出生児のアウトカムなどであった。2014年12月~2019年12月に518例が登録され、登録時の年齢中央値は37歳、75%が出産歴がなく、94%がStage I/IIであった。内分泌療法はタモキシフェン単独が最も多く(42%)、次いでタモキシフェン+卵巣機能抑制(36%)で、62%が術前もしくは術後化学療法を受けていた。追跡期間中央値41ヵ月においてBCFIイベントが44例に発生し、3年間累積発生率は8.9%だった。これはSOFT/TEXT試験(Breast. 2020)の対照コホートで算出した9.2%と同様だった。妊娠アウトカムを評価した497例中368例(74%)が1回以上妊娠し、317例(64%)が1回以上出産し、365児が誕生した。その後の内分泌療法は、競合リスク分析によると76%が再開し、8%は再開前に再発/死亡し、15%は再開していなかった。この結果はHR陽性乳がんとしてはフォローアップがまだ短いものの、妊娠を希望する若い乳がん患者が安全に内分泌療法を中断し、出産可能であることを示した重要な結果である。

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英語で「便秘」は?【1分★医療英語】第60回

第60回 英語で「便秘」は?My son recently has stomach pain.(うちの息子は、最近お腹が痛いと言っています)Is he constipated?(便秘気味ですか?)《例文1》Do you have any medications for constipation?(便秘に効く薬はありますか?)《例文2》How long have you been constipated?(どのくらいの期間、便秘なのですか?)《解説》今回は「便秘」にフォーカスを当てたいと思います。便秘を主訴とする、または腹痛の背景に便秘がある患者さんは頻繁に遭遇しますよね。便秘は“constipation”(コンスティペイション)で表すことができます。たとえば、「私は便秘気味です」であれば“I am constipated.”もしくは“I have constipation.”で表現することができます。どちらも正解ですが、前者のほうがよく聞く印象です。医療者同士での会話でも同様に“This patient is constipated.”と使ったり、“This constipated patient is~”のように形容詞として使ったりします。ちなみに、便秘には“obstipation”(アーブスティペイション)という言葉もあり、これは“severe form of constipation”、つまり「かなりひどい便秘症状」の際に時々用いられます。医療現場で使う「排便」という表現には、“bowel movement”が使われます。使い方としては、“Do you have any bowel movements yesterday?”(昨日排便はありましたか?)や、“How many bowel movements do you have per day?”(1日に何回排便しますか)といったように使用されます。小児領域に関しては、“poop”という表現がお子さんに伝わりやすいので、親が外来に来た際に、“She has not pooped for three days.”(うちの娘は3日間うんちが出ていません)と説明したり、医療者も“Do you poop every day?”(うんちは毎日出ていますか?)と聞いたりします。ただし、日本語の「うんち」のトーンなので、幼い子ども相手の使用に留めておくほうが無難でしょう。医療現場で大人の患者さんに使うと少しびっくりされるかもしれません。医療現場でたびたび遭遇する「便秘・排便」の表現を使いこなせるようになりましょう!講師紹介

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2022年、がん専門医に読まれた記事は?Doctors’Picksランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」は、2022年を通して、がん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。1位は新型コロナに関する話題だったが、その他は肺がん分野の話題が多数ランク入りしたほか、がん横断的なトピックスである新たな免疫療法の開発に関する話題(4位)や、米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)でプレナリーセッションに登壇した国立がんセンター東病院 消化管内科長・吉野 孝之氏の演題(6位)も大きな注目を集めた。【1位】3回目接種を受けた医療従事者の新型コロナ感染率は?(1/11)/JAMA 2022年1月10日にJAMA誌に掲載された、イスラエルの医療従事者におけるSARS-CoV-2感染の発生率とBNT162b2ワクチンの3回目接種との関連についての研究。ブースター接種から約1ヵ月間におけるSARS-CoV-2感染のハザード比は、2回接種者と比較して0.07(95%CI:0.02~0.20)と有意に低下することが示された。【2位】PD-L1高発現の1次治療、ICIにChemoを上乗せしてもOSの延長なし?(3/24)/Annals of Oncology PD-L1高発現の非扁平上皮非小細胞肺がん(Nsq-NSCLC)の1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に化学療法を上乗せする効果を見た試験。結果として上乗せ効果は認められなかったという。【3位】小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法+tiragolumabの成績/SKYSCRAPER-02(5/28)/ASCO ASCO2022で発表された、進展型小細胞肺がんの標準療法の1つであるアテゾリズマブ+カルボプラチン/エトポシドの併用療法に、抗TIGIT抗体tiragolumab追加併用の有効性を見たSKYSCRAPER-02試験。主要評価項目である全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかったという。【4位】PD-1阻害薬を超える!?新たな免疫療法PD1-IL2v開発の基礎(10/4)/nature PD-1を発現しているT細胞特異的に、IL-2R(βとγ)アゴニスト作用を持つ新たな免疫療法として、PD1-IL2vという薬剤が開発されたという報告。PD-1治療抵抗性のメラノーマに対して、PD-1阻害薬と比較しても圧倒的な効果を発揮したという、その作用機序を解説。【5位】おーちゃん先生のASCO2022 肺癌領域・オーラルセッションの予習 9000番台(5/30)/Doctors'Picks ASCO2022で発表される数千の演題の中から注目すべきものをエキスパート医師が事前にピックアップして紹介する恒例企画。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)がオーラルセッションを全解説した。 6~10位は以下のとおり。【6位】国立がんセンター東病院・吉野 孝之氏がプレナリーセッション登壇(6/2)/ASCO【7位】進行NSCLC、PD-1/L1阻害薬PD後のペムブロリズマブ継続の意義(2/7)/Clinical Cancer Research【8位】転移のある大腸がん、原発巣部位とゲノム異常の解析結果(5/9)/Target Oncol【9位】EGFR陽性NSCLCに対するオシメルチニブ/アファチニブ交替療法の有効性(4/13)/Lung Cancer【10位】ctDNAの臨床応用に関するESMOの推奨事項(7/14)/ESMO

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医学プレゼンの肝となるのは「見やすいグラフ」【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第6回

医学プレゼンの肝となるのは「見やすいグラフ」1)グラフはなるべく大きく作成する2)グラフの色を上手く使い分けて強調する3)2つ軸があるグラフを作成する学会発表では、ResultやDiscussionのスライドにおいて、いかに見やすいグラフをつくるかというのがカギです。文字ばかりのスライドでは聴衆は飽きてしまうため、なるべくグラフでビジュアルに訴えかけるようなスライドにするのが理想的です。つくるべきグラフは、研究の種類(例:症例報告、臨床研究、基礎研究など)や研究内容、データの種類、医局や科の好み・文化などにもよるため一概にはいえませんが、押さえておくべきポイントはいくつかあります。当然ですが、グラフは聴衆から見えないと意味がないため、なるべくスペースを確保して大きく作成するようにします。グラフのタイトル、単位、縦軸、横軸の説明、凡例などがわかりやすく、見やすい文字の大きさで記載されていることも確認しておきましょう。また、パワーポイントのデフォルトのグラフはカラフルなものが多いですが、その中で1つだけ強調したいという場合には、グレースケールのグラフを選択し、強調したいデータのみに色をつけるという工夫もできます〈図1〉。〈図1〉症例報告で臨床経過(Clinical course)を作る際、重要な検査データを時系列で示したいときに、〈図2〉のように単位が異なる複数のデータを1つのグラフにまとめる必要がでてきます。そういった時に役立つ、2軸あるグラフをつくる方法をご紹介します。まず新しい軸を作りたいグラフを右クリックし、「データ系列の書式設定」を選択します。その中で、「第2軸(上/右側)」をクリックすると〈図3〉、〈図4〉のように2軸があるグラフを作成できます。頻繁に使うテクニックですので、ぜひ覚えておきましょう。〈図2〉〈図3〉〈図4〉講師紹介

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周産期アウトカムに人種・民族性は影響するか/Lancet

 世界の20の高所得国と上位中所得国の、周産期アウトカムに関する人種および民族性の影響について解析した結果、母体特性を調整後、白人女性の産児との比較において、十分なサービスを受けていないグループで黒人女性の産児の周産期アウトカムが、評価した項目すべてで不良であることが示された。他のグループ(南アジア系、ヒスパニック系、その他)では、アウトカム項目によりリスクに差異があった。また、周産期有害アウトカムへの人種・民族性の影響について、地域差は認められなかった。英国・バーミンガム大学のJameela Sheikh氏らInternational Prediction of Pregnancy Complications(IPPIC)Collaborative Networkが、妊娠219万8,655例のメタ解析を行い、Lancet誌2022年12月10日号で報告した。これまで、妊娠アウトカムへの人種・民族性の影響に関するエビデンスは、特定の国および医療制度内で行われた個々の研究に限定されていた。新生児死亡、死産、早産、SGA児への人種・民族性の影響を評価 研究グループは、高所得国と上位中所得国の妊娠アウトカムへの人種・民族性の影響を評価し、格差がある場合はその大きさが地域によって異なるかを確認した。IPPICネットワークの妊娠合併症に関する試験データを用いて、個々の参加者データ(IPD)メタ解析を行った。 完全データセットは、94試験、53ヵ国の453万9,640例の妊娠から構成された。解析は、2以上の人種・民族グループ(白人、黒人、南アジア系、ヒスパニック系、その他)の周産期アウトカム(新生児死亡、死産、早産、在胎不当過小[SGA]児)を報告していた試験を対象とした。評価は2段階ランダム効果IPDメタ解析法にて行い、有向非巡回グラフ(directed acyclic graph:DAG)で選択した交絡変数(母親の年齢、BMI値、出産歴、教育レベル)に対する多重代入法を行った。 主要アウトカムは、新生児死亡と死産。副次アウトカムは、早産、SGA児であった。人種・民族と周産期アウトカムの関連を、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて推算。白人女性を対照群とするオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)値を報告し評価した。また、地域ごとの試験のサブグループ解析も行った。白人女性の産児と比べて黒人女性の産児は、新生児死亡・死亡リスクは2倍 20の高所得国と上位中所得国からの51試験、妊娠219万8,655例が、今回のIPDメタ解析の包含基準を満たした。 新生児死亡のリスクは、白人女性の産児と比べて黒人女性の産児は2倍高かった(OR:2.00、95%CI:1.44~2.78)。死産も同様であり(2.16、1.46~3.19)、また早産のリスク(1.65、1.46~1.88)、SGA児のリスク(1.39、1.13~1.72)も高かった。 ヒスパニック系女性の産児は、白人女性の産児と比べて新生児死亡リスクが3倍高かった(OR:3.34、95%CI:2.77~4.02)。南アジア系女性の産児は早産(1.26、1.07~1.48)、SGA児(1.61、1.32~1.95)のリスクが高かった。人種・民族性の早産およびSGA児への影響は地域による差異はみられなかった。

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069)外来でできる肩こり・腰痛対策【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第69回 外来でできる肩こり・腰痛対策ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆ふだん、座りっぱなしでパソコンと向きあうことの多い外来作業。もちろん合間に患者さんの診察で立ち上がったり、処置でベッドサイドに移ったりすることもありますが、基本的には座って画面に打ちこむ姿勢が長くなりがちです。外来が長引いてくると、だんだんと肩がこってきたり、腰が張ってきたり、目や頭が疲れてくる…よくあることですね。私が個人的に取り入れている肩・腰のこり対策について、まとめてみます。まず姿勢ですが、背中が丸まっていると、腰や肩に負担がくる感じがあるので、(1)腹筋に力を入れて、お腹をへこませるようにしてお腹を締める(2)肩甲骨を後ろに引き、体の前を張るようにして胸を開く(3)背中から腰が一直線になるよう、骨盤を立てて座る(腰を寝かせない)と、この3点を意識するようにしています。おへそをへこませて、肩甲骨を引いて背筋を伸ばすと、自然とこの姿勢になります。姿勢を正そうと力んでしまうと、逆に肩がこってしまうので、肩の力は抜くのがポイントです。次に、肩がこってきたな~と感じたら、(1)手を後ろで組む(2)胸を開くようにして、ぐーっと腕を伸ばしてストレッチと、外来中の、ちょっとした隙間時間に、この動きを取り入れるようにしています。腕をぐーっと引きながら首を左右に倒すと、首周りの筋肉もほぐれて、よい感じになります。最後に、診察・処置で意識しているポイント。主に腰を曲げる姿勢になりがちな動作に関しては、(1)背筋をまっすぐにしたまま、しゃがむようにする(腰を曲げないよう意識)(2)ベッドサイドの処置では、患者用の足台に自分が腰かけ、処置をするといった工夫をしています。足の診察でしゃがむ際には、腰や背中が丸まらないよう、背筋をまっすぐにしたまま動くことを意識しています。また、高さのバランス的に、どうしても猫背になりがちなベッドサイドの処置は、丸椅子ではなく足台に座ることで、背筋がまっすぐの姿勢で処置できるようになります。こうした工夫を取り入れてから、肩や腰の張りが改善されました。参考になるかわかりませんが、肩こり腰痛にお悩みの先生がおられましたら、ぜひ1度お試しください。それでは、また〜!

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英語で「私なら~します」は?【1分★医療英語】第59回

第59回 英語で「私なら~します」は?What do you think is the best next step in this case?(この症例で、次のステップとして何が最善だと思いますか?)I would order an abdominal CT.(私なら、腹部CTをオーダーします)《例文1》I would start empiric antibiotics.(私なら、経験的な抗菌薬治療を開始します)《例文2》What medication would you choose?(あなたなら、どの薬を選択しますか?)《解説》今回ご紹介するのは、「私なら」「あなたなら」という仮定法を用いた表現です。「仮定法」というと、“if”を使うイメージかもしれませんが、日常会話では、“if”を使わずに仮定法が使われることがよくあります。“I would order an abdominal CT.”という文頭の文章の前に、“If I were you~”(もし私があなたなら)が省略されている、と考えるとわかりやすいかもしれません。結果として、「私なら、腹部CTをオーダーします」という意味になります。ここで注意が必要なのは、“I will do it.”と“I would do it.”では、「音は似ていても、意味は大きく異なる」ということです。たとえば、指導医との会話で、指導医が“I will do it.”と言った場合、それをやるのは指導医であり、下級医は任せておけばよい状況です。一方で、指導医が“I would do it.”と言ったのであれば、指導医は「私なら、それをやる」と言っているだけで実際に指導医がやるわけではなく、上下関係の中での発言であれば、少し丁寧に「それをやってください」と言っているのに近く、命令に近いニュアンスです。実は私も渡米したばかりの頃に、この聞き間違いをしたことがあります。指導医が“I would order…”と言っていたのを“I will order…”と勘違いして、「指導医がやってくれるのか」と思い込んでいたら、後で、「やっておいてと言ったのに、なんでオーダーしていないの?」と怒られたのです。その時、“I would…”の恐ろしさを知りました。一語の違いで意味が180度変わってしまうのです。“if”が登場しない仮定法、聞き間違いをするとこんな風に大きく意味が変わってしまうので、ぜひ注意して聞くようにしてください。講師紹介

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術中の超生理的酸素投与、臓器損傷リスクを増大/BMJ

 手術中の超生理的な酸素投与の増量は、急性腎障害(AKI)、心筋傷害および肺損傷の発生増大と関連することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのDavid R. McIlroy氏らによる検討で明らかにされた。全身麻酔下で手術を受けるほとんどの患者は、十分な動脈血酸素飽和度維持のために必要量以上の酸素を投与される。超生理的酸素投与の有害な影響は分子レベルで確認されているが、手術中のこれらの影響の臨床的関連は明らかになっていなかった。なお今回の結果について著者は、「示された臓器損傷の発生増大との関連について残余交絡を排除することはできない」として、「手術中の酸素投与に関する指針を示すために、些少でも臨床的に重要な影響が検出できる大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。BMJ誌2022年11月30日号掲載の報告。観察コホート試験で調査 研究グループは、手術中の超生理的酸素投与が術後の腎臓・心筋・肺損傷の発生減少または増加と関連するかどうかを観察コホート試験で調べた。 米国内42の医療センターが参加するMulticenter Perioperative Outcomes Groupデータレジストリを用いた。参加者は、2016年1月~2018年11月に、全身麻酔と気管内挿管による120分以上の手術を受けた入院成人患者であった。 超生理的酸素投与は、SpO2 >92%の間(分当たり)のFIO2 >21%の曲線下面積で定義(AUCFIO2)した。 主要エンドポイントは、AKI(Kidney Disease Improving Global Outcomes基準を用いて定義)、心筋傷害(術後72時間以内の血清トロポニン値が0.04ng/mL超と定義)、肺損傷(国際疾病分類の退院診断コードを使用して定義)であった。酸素曝露の増大と臓器損傷リスク増大との関連を確認 対象コホートは35万647例の患者で構成され、年齢中央値59歳(四分位範囲[IQR]:46~69)、女性18万546例(51.5%)、手術時間中央値205分(IQR:158~279)であった。 AKIは29万7,554例中1万9,207例(6.5%)、心筋傷害は32万527例中8,972例(2.8%)、肺損傷は31万2,161例中1万3,789例(4.4%)が診断された。 FIO2中央値は54.0%(IQR:47.5~60.0)であり、AUCFIO2は7,951%分(5,870~1万1,107)であった。これは、135分の手術中の80%のFIO2に相当するものであった。 ベースラインの共変量およびその他の潜在的な交絡変数を調整後、酸素曝露の増大は、AKI、心筋傷害、肺損傷のリスク増加と関連していた。AUCFIO2の75パーセンタイルに該当する患者は25パーセンタイルに該当する患者と比較して、AKIのオッズが26%(95%信頼区間[CI]:22~30)高く、心筋傷害のオッズは12%(7~17)高く、肺損傷のオッズは14%(12~16)高かった。これらの観察結果は、曝露の代替定義を評価し、コホートを制限、操作変数分析を行った感度解析で確認された。

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T-DXd、HER2+進行乳がん2次治療でOSを有意に改善(DESTINY-Breast03)/Lancet

 米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のSara A. Hurvitz氏らは、第III相非盲検無作為化試験「DESTINY-Breast03試験」のアップデート解析を行い、転移のあるHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較して全生存期間(OS)を有意に改善したことを報告した。また、先の中間解析で、T-DXdが2次治療の標準治療に位置付けられるに至った無増悪生存期間(PFS)中央値(未到達)について、今回の解析で、研究グループが知りうる限り「最長値(28.8ヵ月)が示された」ことを報告した。著者は、「今回のアップデート解析で、2次治療の標準治療としてのT-DXdを再確認した。また、T-DXdの管理可能な安全性プロファイルを、より長期にわたる治療期間において確認できた」と述べている。Lancet誌オンライン版2022年12月6日号掲載の報告。T-DXd vs.T-DM1の有効性と安全性を比較評価 DESTINY-Breast03試験は、T-DXd vs.T-DM1の有効性および安全性の比較を目的とし、北米、アジア、欧州、オーストラリアおよび南米の169試験施設で行われた。 18歳以上、HER2陽性で切除不能または転移のある乳がんで、トラスツズマブおよびタキサン系抗がん剤で既治療、ECOG PSが0~1、RECIST v1.1に基づく測定可能病変が1つ以上ある患者を適格とした。 患者は無作為に1対1の割合で、T-DXd 5.4mg/kgまたはT-DM1 3.6mg/kgを受ける群に割り付けられ、両群とも3週ごとに静脈内投与を受けた。無作為化は、ホルモン受容体の状態(陽性または陰性)、ペルツズマブの既治療、内臓系疾患による層別化を伴い、双方向ウェブベースシステムを通じて行われた。各階層内でバランスを考慮したブロック無作為化法が用いられた。患者と研究者は、受けた治療についてはマスキングされなかった。 主要評価項目はPFSで、盲検化され独立した中央レビューで評価した。主な副次評価項目はOSで、今回の事前に規定された2回目となるOS中間解析(データカットオフ日2022年7月25日)では、OS、有効性、安全性のアップデート結果が報告された。有効性解析は、全解析データを用いて行われ、安全性解析は、無作為化を受け、少なくとも1回試験薬の投与を受けたすべての患者を対象とした。PFSは28.8ヵ月vs.6.8ヵ月、OSのT-DXd vs.T-DM1のハザード比は0.64 2018年7月20日~2020年6月23日に、699例が適格性のスクリーニングを受け、524例が登録、T-DXd群(261例)、T-DM1群(263例)に無作為に割り付けられた。 2022年7月25日時点で治療を継続していたのは、T-DXd群75例(29%)、T-DM1群18例(7%)であった。試験追跡期間中央値は、T-DXd群28.4ヵ月(四分位範囲[IQR]:22.1~32.9)、T-DM1群26.5ヵ月(14.5~31.3)。 主要評価項目のPFS中央値は、T-DXd群28.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:22.4~37.9)、T-DM1群6.8ヵ月(5.6~8.2)であった(ハザード比[HR]:0.33、95%CI:0.26~0.43、名目上のp<0.0001)。 OS期間中央値は両群とも未到達であったが、T-DXd群はOSイベント例72例(28%)で未到達(95%CI:40.5ヵ月~推定不能)、T-DM1群は同97例(37%)で未到達(34.0ヵ月~推定不能)であった(HR:0.64、95%CI:0.47~0.87、p=0.0037)。 Grade3以上の治療による有害事象発現例数は、T-DXd群145例(56%)、T-DM1群135例(52%)で、両群で同程度であった。判定に基づく薬物関連の間質性肺疾患または肺炎の発生は、T-DXd群39例(15%)、T-DM1群8例(3%)。Grade4/5のイベントは両群共に報告されなかった。

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068)皮膚が教えてくれること。【Dr.デルぽんの診察室観察日記】(ブログより転載)

第68回 皮膚が教えてくれること。(『デルマな日常』より転載)デルにちわー!今日はちょっと頭痛いデルぽんだよ~☆このブログは、皮膚科勤務医デルぽんの正直どうでもいい日常をたまに熱っぽく語るお気楽絵日記漫画ブログです!以後お見知りおきを~☆さてさて。本日のデル日は。なんかちょっとメロドラマ風の三文記事タイトルにしてみました~☆どうぞ~~~えー。前回ちょっぴりいじけた漫画を描いてしまいましたが。皮膚は実に色んな物事を雄弁に語ってくれます。その人の癖や趣味、職業、年齢、幼少期の既往、生活環境や体調、この1週間に何をした・何処へ行った等々…長年皮膚と向き合っていると、色んなことがわかるようになり、それが皮膚科の楽しみのひとつかなあとおもっています。まあ、もちろんわかんないことも、沢山あるけどね!!!電車のなかとかは、比較的暇なので、気がついたら皮膚観察をしていることがままあります。美容師さんというのは本当にわかりやすく。パーマ液やシャンプーでなかなか治りにくい手湿疹をお持ちの方が多いです。まあ皮膚以前に見た目でわかるだろ、というツッコミは甘んじて受けます☆あと看護師さんや介護士さんなど手をとくに使うかたはそう。※とくにオペ看さん(たぶんストレスもある)アトピーの方というのは大人になり全身が綺麗になってきても手湿疹だけが残るという人がけっこう多い。この人はどんな背景を持った人かな~と思いながら皮膚を診ると、きっと皮膚科はもっと楽しくなるは・ず・・・☆ああ!頭痛いからこの辺で!それではまた~☆★ BYE~~☆※この記事は、Dr.デルぽんのご厚意により『デルマな日常』から転載させていただきました。(転載元:『デルマな日常』2016年06月23日 皮膚が教えてくれること。)

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医師の今年の旅行事情と“来年こそ行きたい場所”は?【CareNet.com会員アンケート結果発表】

2022年後半には入国時の条件を緩和する国が増え、国内では旅行支援の取り組みが始まりました。一方で11月からは第8波も到来し、まだまだコロナ禍以前と同じようには旅行を楽しむ状況になっていないかもしれませんが、CareNet.comの会員医師1,000人に、現在の状況と、来年こそ行きたい旅行先についてお聞きしました。行ったor行かない?/日帰りor宿泊? 今年1年の旅行事情は「今年1年どのような旅行(出張は除く)に行きましたか?」という問いに対し、約5割(471人)の医師が「住んでいる都道府県内で日帰りの旅行をした」と回答。「住んでいる都道府県外へ1泊以上の旅行をした」(364人)という回答、「住んでいる都道府県内で1泊以上の旅行をした」(159人)という回答が続いた。一方で約2割(235人)の医師が「旅行も帰省もしていない」と回答している。上記の問いについて年代別に回答をみてみると、「住んでいる都道府県内で日帰りの旅行をした」という回答は若い年代ほど多く、「旅行も帰省もしていない」という回答は年代が高くなるほど多い傾向がみられた。「万一の感染が気になる」「医療者だけ区別するのはおかしい」などさまざまな意見医療従事者が旅行に行くことについて、感じていることや意見があるかを聞いた問いでは、さまざまな意見が寄せられた。【院内の規定が厳しい/開業医や高齢者に対応していることの難しさ】勤務先の規定が厳しすぎる(50代、内科、200床以上)個人医院では医師の感染がそのまま医療経営に関係してくるので、まだまだ医師自身および同居家族は控えたほうがいい(60代、耳鼻咽喉科、0床)開業医は休診できない(60代、内科、0床)とくに高齢者施設に勤務しているものにとっては旅行にいける環境ではない(60代、脳神経外科、200床以上)【まわりの雰囲気や万一の感染が気になる】周りの目が気になる(30代、循環器内科、200床以上)行ける雰囲気ではない。ただし世間では行っており無力感を感じる(30代、内科、200床以上)万一感染し院内クラスターの原因になるようなことがあれば、非難は避けられない。インフルエンザなみの対応とならない限り、自主規制はやめられない(50代、放射線科、1~19床)万一感染した場合の影響を考えるとまだ旅行には行きづらい。人が少ない高級ホテル等に宿泊するなど工夫している(20代、内科、200床以上)【医療者を区別すべきでない/ストレスが爆発寸前】医療従事者とそれ以外を分ける必要はない(50代、眼科、0床)医療従事者だけ我慢するというのもおかしいと思うので、リスク管理をしたうえで自由にしたらいいと思う(40代、内科、0床)国民全体が緩和に動いている中、医療従事者に対してだけ厳しいのはよろしくない。クラスターすらも受け入れる世論が必要(30代、神経内科、100~199床)そろそろストレスが爆発してしまう。ある程度の感染対策をしてなら旅行はOKだと思う(60代、循環器内科、0床)【医療者だからこそ適切な感染対策ができる/旅行自体のリスクが高いとは思わない】医療従事者だからこそ、感染対策を適切に行いながら安全な旅行ができると思う(40代、呼吸器内科、1~19床)感染リスクを最小化した少人数のものならよいのでは? 医療従事者の感染リスクというだけで旅行を自粛していたらかなり長期間行けなくなると思う(50代、精神科、200床以上)医療従事者が世間から隔離されて生活しているわけではないので、自由に行ってよいと思う(50代、消化器外科、200床以上)マスクなどの対策、食事、大声でしゃべることを避けるなど基本的な対策を守り節度のある旅行なら大いに良いのではないか(60代、内科、20~99床)旅行自体の感染リスクが高いとは思わないので、構わない気がする。医療従事者だけが批判の対象になるのはもう違うかなという気がする(30代、精神科、0床)“来年こそ行きたい場所”ベスト51位 ハワイ最も多かった回答はやはり“ハワイ”。「暖かいところで安らぎたい」「リゾートの王様といえばやはりハワイ」「しがらみから解き放たれたい」「非日常を感じたい、綺麗な海を見たい」などの声が相次いだ。「コロナ禍以前は恒例の旅行先だったから」「新婚旅行にまだ行けていないから」といった声も。2位 海外2番目に多かったのは、「どこでもいいから海外に行きたい」という回答。「しばらく行けていないから」「withコロナになってきたからそろそろ行きたい」「ずっと行ってないので願望も込めて」などの声が聞かれた。「来年でなくてもよいが、コロナ禍が収束したら行きたい」という声も。ただし、円安を嘆く声も多く寄せられた。3位 沖縄「温暖な地域かつ国内旅行に行きたい」「国内でリゾートを感じたい」など、まずは国内で非日常を味わいたいという声とともに沖縄が3位にランクイン。「青い海が見たい!」「子供にとっては初めての海になるので、きれいな海を見せてあげたい」ときれいな海への渇望を感じさせる声も。4位 北海道北海道を挙げた医師から多く聞かれたのは「美味しいものが食べたい」「海産物が食べたい」「食べ歩きしたい」という北海道グルメに期待する声。「自然を満喫したい」「ゆっくりドライブしたい」「開放的な場所で家族とゆっくり過ごしたい」と沖縄同様国内で自然を満喫したいという意見も多かった。5位 温泉とにかくどこでもいいから温泉でゆっくりしたいという声も多数。具体的な地名が上がった中では、箱根や湯布院、乳頭温泉が人気だった。蔵王や別府に有馬や加賀、鬼怒川や和倉など、全国各地の温泉地の名前が寄せられた。アンケート概要アンケート名『2022年を総まとめ&来年へ!今年の漢字と来年こそ行きたい旅行先をお聞かせください』実施日   2022年11月3日調査方法  インターネット対象    CareNet.com会員医師有効回答数 1,000件

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自宅コロナ死、4割は同居家族あり/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第109回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月7日に開催された。その中で「新型コロナ患者の自宅での死亡事例に関する自治体からの報告について」が報告された。 調査期間中776名の自宅で死亡した者の解析から、死亡者の79%が70代以上であり、基礎疾患がある者が69%、親族などと同居が42%いた。また、ワクチン接種歴も不明が34%で一番多いものの、「3回接種」も28%と多かった。 政府では、「Withコロナに向けた政策の考え方」に則り、今後必要な医療資機材の提供、国民への正確な知識の普及に努めるとしている。 以下に概要を示す。70代以上の高齢者で、基礎疾患がある人は死亡が多い【調査概要】期間: 2022年7月1日~8月31日地域:全国都道府県条件:新型コロナウイルス感染症患者(死後陽性確認者も含む)で自宅にて死亡した者を本年10月に都道府県を通じ、その年齢、基礎疾患、同居の有無、ワクチン接種歴、死亡に至るまでの経過などを調査(ただし自宅療養中に症状が悪化し、医療機関に入院した後に死亡した事例は除く)。【結果概要】 合計776名(男性460名、女性316名)(死亡時の年齢構成) 80代以上が58%、70代以上が21%、60代以上が9%(基礎疾患の有無) 「あり」が69%、「なし」が19%、「不明」が12%(ワクチンの接種歴) 「不明」が34%、「3回」が28%、「未接種」が20%(単身・同居などの状況) 「不明」が48%、「同居」が42%、「単身」が10% その他の事項は次のとおり。・死亡直前の診断時の症状の程度について、軽症・無症状が41.4%、中等症が13.1%、重症が7.1%、不明または死亡後診断が38.4%・生前に陽性が判明した者は70.1%、死後に陽性が判明した者は29.9%・発生届の届出日が死亡日よりも前であった事例が50.6%、発生届の届出日が死亡日と同日であった事例が31.2%、発生届の届出日が死亡日以降であった事例が17.9%、不明が0.3%・自宅療養の希望ありが22.8%、希望なしが10.3%、不明者および死後陽性が判明した者が66.9%発熱がなく、毎日訪問介護を受けていても死亡のケースも【具体的な死亡事例について】・救急搬送の搬入時の検査で陽性が判明したケース。・家族や親族などに自宅で倒れているところを発見されたケース。・陽性が判明したが、本人や家族の意思により自宅療養を希望したケース。・高齢であることや末期がんであることにより自宅での看取りを希望したケース。・自宅療養中に急速に重症化して死亡したケース。・同居家族から感染し、自宅での死亡につながったケース。・コロナ以外の要因で死亡し、死後に陽性が判明したケース。・入院や宿泊療養、治療を希望しないケース。・浴槽で意識がなくなっているところを同居家族に発見されたケース。・入院調整や宿泊療養の対象となるも、直後に死亡したケース。・主治医からの健康観察や訪問看護を受けていたものの、死亡したケース。・自宅訪問するも応答なく、警察に協力依頼を行ったケース。・症状があったが検査や受診を受けずに、死後に陽性が判明したケース。・家族は入院を希望していたが、自宅療養となり、死亡したケース。・発熱がなく、毎日訪問介護を受けていたが、死亡したケース。【自治体での取組事例】・体調の変化・悪化の早期把握のため、自宅療養開始時の説明、ホームページ、SMSなどで電話相談窓口への連絡を自宅療養者に対して周知。・療養者支援センターを開設。若年層にはSMSを利用して調査を実施し、保健所が電話で調査すべき対象者を重症化リスクが高い方に絞ることで連絡遅滞を防ぐ改善を行った。・陽性者からの要請があった場合、感染防護対策を行ったうえで、直ちに現場に向かう体制を施行。【今後の対応】 「Withコロナに向けた政策の考え方」の考え方に則り、入院治療が必要な患者への対応の強化、発熱外来や電話診療・オンライン診療の体制強化、治療薬の円滑な供給、健康フォローアップセンターの拡充と自己検査キットの確保などの対策を進めるとともに、国民への情報提供と重症化リスクなどに応じた外来受診・療養への協力の呼びかけなどに取り組んでいく。

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抗肥満薬「アライ」がダイレクトOTCとして薬局で購入可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第101回

脂質吸収抑制薬「オルリスタット(商品名:アライ)」の要指導医薬品としての承認が了承されました。久しぶりの新たなダイレクトOTCが誕生することになります。厚生労働省が11月28日に開催した薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会において肥満を対象とした大正製薬の「アライ」(成分名=オルリスタット)の要指導医薬品としての承認が了承された。同剤は、国内では医療用医薬品としての使用実績がない「ダイレクトOTC」で、国内初のOTCの肥満薬。承認は来年3月末の見込みで、2019年3月の申請から4年越しでの承認となる。(2022年11月29日付 日刊薬業) ダイレクトOTCという響きを久しぶりに聞きましたね。ダイレクトOTCとは、医療用医薬品としての使用実績がないままダイレクトにOTC医薬品として承認された医薬品です。原則として薬剤師のみが販売可能で、販売の際には薬の情報提供を行う必要があります。オルリスタットは、海外の多くの国ではすでに医療用医薬またはOTC医薬品として販売されている成分ですが、日本では2019年の申請からかなり慎重に審査され、ようやく要指導医薬品として承認の目途が立ちました。このオルリスタットの気になる作用機序は、消化管の中でリパーゼを不活性化し、食事に含まれる脂質の体内吸収を抑制することで、減量効果を得ようとするものです。効能・効果は「腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の人における内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)」で、食事や運動などの取り組みの補助的な位置付けとなっています。対象は18歳以上で、1日3回、食事中か食後1時間以内に1カプセル服用します。審査に時間を要した理由として、「いかに対象者を適切に選択するか、適正使用をどう確保するかが難しい品目で、それらを検討するのに時間がかかった」と報じられています。対象となる「腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の人」というのは、いわゆるメタボリックシンドロームの基準と同じで、本剤の必要のない人が過度なダイエットのために使用することを懸念しているのでしょう。なお、要指導医薬品ですのでオンラインでは販売できず、再審査期間が8年設定されます。1ヵ月前から腹囲や体重を記録し、薬剤師がチェックすでにインターネットなどでは「痩せ薬が承認!」などと話題になっていますので、販売されたらサプリメント感覚でオルリスタットを買いに来る患者さんも少なからずいると思います。主な副作用は、作用メカニズムに由来する脂肪便や下痢などですが、肝障害にも注意が必要です。処方薬としての実績がない成分であり、肥満を対象とした初めてのOTC医薬品ですので、痩せている人が使用して健康被害が続出!というのは避けなければなりません。不適切な患者さんの服用を避ける対策として、「服薬を始める1ヵ月前から腹囲や体重などを記録し、薬剤師のチェックを受け、6ヵ月服用しても効果がなければ使用をやめる」という使用上の注意が設けられるようです。久々のダイレクトOTCですので、販売を「薬局に任せてよかった」となることを期待しています。本当に本剤の服用が適しているかどうかを判断するとともに、副作用だけでなく過度な体重減少などが生じた場合の受診勧奨も忘れずに行いましょう。承認は2023年3月の予定ですが、現在パブリックコメントの募集が開始されています。年末までですので、興味のある方はコメントしてみてはいかがでしょうか。

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英語で「検査を行います」は?【1分★医療英語】第58回

第58回 英語で「検査を行います」は?So, what is the next step?(それで、次はどうしたらよいでしょうか?)We would like to run some tests to confirm the diagnosis.(診断を確定するために、いくつかの検査を行いたいと思います)《例文1》I need to run a test to rule out a heart attack.(心臓発作を除外するために検査が必要です)《例文2》I’m going to run a blood test to check your diabetes.(糖尿病を調べるために血液検査をします)《解説》“run”という動詞は「走る」以外にも、「(会社などを)経営する」、「(機械などを)動かす」といったさまざまな意味があります。“Run a test”で「検査を行う」という意味になり、検査について英語で説明する時によく使うフレーズです。また、“run”に関連したフレーズとしては、“I have a runny nose.”(鼻水が出ています)や、“I’m running late.”(少し遅れます)といった表現も、日常会話によく出てきます。講師紹介

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第56回 正規分布とは?【統計のそこが知りたい!】

第56回 正規分布とは?正規分布(Normal distribution)は統計・統計学を理解するうえで一番大切な確率分布です。正規分布は、体重や身長の分布や成績の分布などでよく見ることのある左右対称の分布ですが、左右対称でさえあれば正規分布といえるのでしょうか。具体例で正規分布とは何かをみていきましょう。表1のデータは、ある看護大学1年生の40人分の統計テストの得点と平均値、標準偏差を示したものです。表1 学生40人のテストの得点と平均値、標準偏差40人の得点について、どのように分布しているのかを調べるために階級幅10点の度数分布表(表2)を作成しました。表2 学生40人の度数分布表図の度数分布のグラフをみると、平均値付近が一番高く、平均値から離れるにつれて緩やかに低くなっています。グラフの形状は左右対称な釣り鐘型の分布、富士山型です。図左右対称・釣り鐘型の曲線が正規分布です。正規分布は統計学や自然科学、社会科学のさまざまな場面で複雑な現象を簡単に表すモデルとして用いられています。しかしながら、度数分布のグラフの形状が釣り鐘型の分布、富士山型であったとしても、尖りすぎた山型、なだらかすぎる山型の形状となる場合は、正規分布とは言えません。度数分布の形状が正規分布であるかを見極めるためには、統計学的に判定しなければなりません。正規分布かどうかを見極めるためによく使われる主な判定方法には、(1)歪度、尖度による判定(2)正規確率プロットによる判定(3)正規性の検定などがあります。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第40回 5数要約と箱ひげ図とは?第41回 外れ値とは?第47回 単相関係数の算出方法は?

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診療所での効果的な感染対策例/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催された。その中で日本プライマリ・ケア連合学会より「診療所における効果的な感染対策の好事例の紹介」が報告された。 これは、本格的な冬を迎え、プライマリ・ケアの外来には発熱などの感冒様症状を訴える患者が増えると予想されていることに鑑み、これに備え、これまでの新型コロナ流行下で実践されてきたプライマリ・ケアでの効果的な感染対策の工夫例と発熱外来を設置・運用するうえでの工夫例をまとめたもので、以下に概要を示す。診療所における効果的な感染対策の工夫例【工夫1】待合室における感染対策・自家用車で来院している患者は車中で待機してもらう。・基本的な感染対策を徹底する。具体的には窓開け、サーキュレーターの活用、二酸化炭素モニターを設置する。【工夫2】診察・検体採取時の感染対策(1)院内のゾーニング・動線分離を行う・発熱・感冒様症状患者の駐車場と院内への動線を一般患者と分離する(例:矢印などで導線をわかりやすく表示する)。・発熱・感冒様症状患者用の診察スペースなどを確保する(例:パーティションによる簡易な分離/空き部屋などを診察室として活用など)。・空間的分離を行わない場合において、発熱・感冒様症状のある患者とそうでない患者を、時間的に分離して診察する。(2)個人防護具(PPE:Personal Protective Equipment)の着脱を工夫する・患者対応時にはサージカルマスクを常時装着し、飛沫曝露のリスクがある場合はアイシールド・フェイスシールドを装置する。・患者に手や体幹が直接接触する可能性がある場合は、手袋・ガウンも装着する。・1対応ごとに手指消毒を徹底する。手袋を使用する場合は、1対応毎に手袋を交換し手指消毒も徹底する。サージカルマスク、アイシールド・フェイスシールド、ガウンの交換は、大量の飛沫を浴びたり、それらが患者に直接接触した場合に限定してもよい。(3)検体採取の場所を工夫する・検体採取を屋外や駐車場(や車中)で行う(ただしプライバシーへの配慮は必要)。・唾液によるPCR検査・抗原定量検査や、鼻かみ液によるインフルエンザ迅速抗原検査を活用することで飛沫やエアロゾルの発生を抑える。(4)その他の感染対策上の工夫・難聴の患者と大声で会話することを避けるために、スマートフォンを用いた翻訳機器の音声認識・自動文字化機能を活用する。・患者にタブレット端末を渡して、オンラインで診療、説明などを行う。・上記のような感染対策が構造的に困難な場合は、時間的分離で対応する。【工夫3】処方・調剤における工夫・特例承認の経口抗ウイルス薬の処方に必要な同意書を電子化し、タブレット上でサインを得る。・発熱患者への処方・調剤の流れについて近隣調剤と共に確認し、感染対策の助言を行い、発熱患者が薬剤を受け取れる体制を構築する。・調剤薬局が近接している場合は、患者は自院駐車場の自家用車内で待機し、薬局から手渡しに向かう。・調剤薬局において電話やオンラインでの服薬指導や配送体制を構築する。発熱外来を設置・運用する上での課題と工夫例【課題1】通常診療よりも大きな作業負担を軽減する 初診患者が多くなるため、病歴・背景情報把握にかかる負担の軽減が必要・事前にWEB問診(インターネットによる問診)システムで情報収集する(例:企業が提供するWEB問診システムを活用し、対面診察の時間を短縮など)。・発熱・感冒様症状用の問診票を用意し、緊急性のある症状の有無、電話診療やオンライン診療の可否、新型コロナ感染症治療薬の適応などを事前に確認する。【課題2】院内感染が生じた場合の休業リスクに備える・日本医師会などが提供する休業補償保険に加入する。・医療機関の休業が生じても個別の訪問診療を維持するために、平時から地域の医療機関間での連携体制を整える(例:地域の在宅患者情報を共有するネットワークへの加入など)。・休業した場合でも可能な限り電話・オンライン診療を継続する。【課題3】かかりつけ患者に重症化リスクの高い患者が多い・院内各所での感染対策に工夫が必要。・電話・オンライン診療の適切な活用。【課題4】施設構造などの問題で理想的な感染対策が難しい・施設構造などの制約を踏まえた現実的かつ効果的な感染対策を工夫する。・時間的分離(診療時間の分割)による対応。・電話・オンライン診療の適切な活用。【課題5】発熱・感冒様症状患者への処方・調剤の流れを工夫する・上記【工夫3】を参照。【課題6】必要に応じて一部の患者にオンライン診療を適切に活用する・予約時の情報でオンライン対応できると判断した患者にはオンライン診療を提案する。・事前にWEB問診で情報を収集する。・企業が提供するオンライン診療システムの導入。・行政が設置するオンライン診療センターで診療を行う。【課題7】入居しているテナントの管理者の理解を得るよう努める・時間的分離を検討する(例:発熱・感冒様症状患者専用の診療時間帯、曜日を設けるなど)。・電話・オンライン診療の適切な活用。 なお、別添1では「PPE(個人用防護具)の着脱について」、別添2では「発熱等かぜ症状外来事前問診例」を図で表記している。

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