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日帰り経カテーテル大動脈弁置換術の安全性は?

 心臓弁置換術を受ける一部の患者は日帰り手術できる可能性のあることが、新たな研究で示された。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の実施日に退院した患者と、健康状態の懸念から入院継続となった「同日退院の適格者」との間で、予後に差は認められなかったという。英ジェームズ・クック大学病院の循環器専門医であるKrishnarpan Chatterjee氏らによるこの研究は、欧州心臓病学会(ESC)の部会の一つであるEuropean Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions(EAPCI)が主催する「EAPCI Summit 2026」(2月19〜20日、ドイツ・ミュンヘン)で発表された。 TAVIは、鼠径部の大腿動脈からカテーテルを挿入し、大動脈弁部まで進めて人工弁を留置する治療法である。Chatterjee氏は、「TAVI後の翌日退院は、技術の進歩やケアパスウェイ(ケアの計画)の効率化によって、近年広がりつつある。同日退院は、その次のステップだ。これは、厳密な基準で選ばれた患者においては安全であることが示されている」と述べている。 この研究では、2018年6月から2024年12月までの間にTAVIを受けた790人の患者の記録を調査した。このうち279人(35.3%)は、初期スクリーニングで、重度の末梢血管疾患がなく、すでにペースメーカーを植え込み済みか心拍リズムが正常で、手術当日の夜に自宅でのサポートが確保できることから、同日退院の適格基準を満たす患者と判断された。しかし、実際に予定通りに同日退院できたのは160人(57.3%)にとどまり、残りの患者は、不整脈、血管の問題、その他の健康上の理由で、医師により入院継続と判断された。同日退院した患者の平均年齢は80.4歳で、40%が女性であった。 同日退院群と入院継続群の臨床アウトカムを比較した結果、30日以内の死亡率は、同日退院群で1.8%、入院継続群で0.8%、30日以内の再入院率はそれぞれ4.4%と9.2%であり、いずれについても両群間に統計学的な有意差は認められなかった(P=0.472、P=0.102)。 Chatterjee氏は、「患者を慎重に選定すれば、TAVIを受けた患者の約5人に1人が、合併症リスクを増加させることなく安全にその日のうちに退院できることが示された。同日退院により、入院に伴う感染症やせん妄といった合併症のリスクが低下するため、この結果は患者にとって重要だ。また、医療資源の使用の削減にもつながる。同日退院に関するさらなる研究が必要だ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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1日1回経口投与の片頭痛発作の発症抑制薬「アクイプタ錠60mg/30mg/10mg」【最新!DI情報】第59回

1日1回経口投与の片頭痛発作の発症抑制薬「アクイプタ錠60mg/30mg/10mg」今回は、経口CGRP受容体拮抗薬「アトゲパント水和物(商品名:アクイプタ錠60mg/30mg/10mg、製造販売元:アッヴィ)」を紹介します。本剤は、1日1回経口投与の片頭痛の予防治療薬です。片頭痛発作の発症を抑制することで、患者さんの健康や生活の質の向上、社会における生産性の向上が期待されています。<効能・効果>片頭痛発作の発症抑制の適応で、2026年2月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアトゲパントとして60mgを1日1回経口投与します。なお、本剤投与開始後3ヵ月を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮します。3ヵ月以降も本剤投与を継続する場合には、定期的に投与継続の要否を検討し、頭痛発作発現の消失・軽減などにより日常生活に支障を来さなくなった場合には、本剤の投与中止を考慮します。<安全性>重大な副作用として、過敏症反応(頻度不明)があります。その他の副作用として、悪心、便秘、食欲減退、傾眠、体重減少、ALT/AST増加(いずれも1%以上)、疲労、そう痒症(いずれも0.1~1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、経口CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体拮抗薬で、片頭痛発作の発症抑制に用いられます。片頭痛発作時の治療だけでは日常生活に支障を来している人に使用されます。2.CGRPがCGRP受容体へ結合することを阻害し、片頭痛に関与するシグナルの伝達を阻害することで、片頭痛発作の発症を抑制します。3.この薬は起こってしまった頭痛発作を和らげる薬ではないので、この薬を服用中に頭痛発作が起こった場合には、必要に応じて頭痛発作治療薬を頓用で使用してください。<ここがポイント!>片頭痛は慢性の神経疾患であり、わが国における15歳以上の有病率は8.4%と報告されています。片頭痛が日常生活に及ぼす影響は、「いつも寝込む」が4%、「ときどき寝込む」が30%、「寝込まないが支障あり」が40%であり、全体の74%が何らかの形で日常生活に支障を来しています。このように日常生活への影響が認められる場合は、積極的な治療介入が必要です。片頭痛の治療は、発作に対する急性期治療および予防療法に大別されます。急性期治療薬としては、アセトアミノフェンやNSAIDs、トリプタン系薬剤、ラスミジタン、リメゲパント、エルゴタミン、制吐薬などが用いられます。予防療法は、片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障を来す頭痛が月に3日以上認められる患者において、積極的に実施を検討する必要があります。CGRPは、片頭痛の病態において重要な役割を果たす神経ペプチドです。三叉神経終末から放出されたCGRPがCGRP受容体に結合することで、硬膜血管周囲の血管拡張や神経原性炎症を引き起こし、片頭痛発作につながります。アトゲパント水和物は選択的経口CGRP受容体拮抗薬であり、CGRPの作用を阻害することで血管拡張や炎症を抑制し、片頭痛発作を予防します。本剤は経口CGRP受容体拮抗薬としてはリメゲパントに次ぐ2番目の薬剤ですが、今回承認された適応症は「片頭痛発作の発症抑制」のみであり、急性期治療に使用できない点に注意が必要です。なお、2025年12月に片頭痛発作の急性期治療に関する製造販売承認申請が行われており、近いうちに急性期治療にも使用できる可能性があります。本剤を調剤する際は、常に最新の情報を確認し、適応症を把握したうえで処方監査を行うことが重要です。慢性片頭痛患者を対象とした国際共同第III相試験(PROGRESS:3101-303-002試験)において、主要評価項目である投与開始12週間における平均月間片頭痛日数(MMD)のベースラインからの変化量は、本剤60mg群で-6.88日(95%信頼区間[CI]:-7.67~-6.08)、プラセボ群との差は-1.82日(95%CI:-2.89~-0.75)であり、プラセボ群に対する優越性が検証されました(p<0.001)。また、日本人反復性片頭痛患者を対象とした国内第II/III相試験(RELEASE:M22-056試験)においても、投与開始12週間における平均MMDのベースラインからの変化量は、本剤60mg群で-3.34日(95%CI:-3.83~-2.85)、プラセボ群との差は-2.10日(95%CI:-2.78~-1.43)であり、プラセボ群に対する優越性が検証されました(p<0.001)。

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地方在住のがん患者は手術のために都市部へ行くべきか

 地方のがん患者は、主要な医療機関で治療を受けるために長距離移動することが多いが、そうした長旅は、必ずしも必要ではないかもしれない。肺がんまたは大腸がん患者を対象にした新たな研究で、地元の病院で治療を受けた場合と都市部の医療機関へ移動して治療を受けた場合で、死亡率や手術の転帰に大きな差は認められなかったことが明らかになった。米ルイビル大学外科学分野のMichael Egger氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に2月11日掲載された。 Egger氏は、「地方に住むがん患者は、高品質で多職種が連携するがん治療を受ける機会を得られないことが多い。しかし、全ての患者が手術を受けるために長距離を移動できるわけではないし、すでに受け入れ能力の限界に達している都市部のハイボリューム施設にとっても持続可能ではない」とニュースリリースで指摘している。 Egger氏らは今回、SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)-メディケアのデータを用いて、地方在住で65歳以上の大腸がん患者1万383人および肺がん患者6,006人を対象に、がんの手術を地方で受けた場合と都市部で受けた場合の転帰を比較した。 肺がん患者では、75%(4,493人)、大腸がん患者では54%(5,633人)が都市部の病院で手術を受けていた。肺がん患者、大腸がん患者のいずれにおいても、地方で手術を受けた群(地方群)と都市部で手術を受けた群(都市部群)の間に、人口統計学的特徴やがんのステージについて有意な差は認められなかった。術後3カ月間の死亡率は、肺がん患者では地方群で5.2%、都市部群で4.8%、大腸がん患者ではそれぞれ7.3%と6.9%であり、いずれも有意な群間差は認められなかった。さらに、術後30日間の再入院率についても、肺がん患者では両群とも10.4%、大腸がん患者では両群とも14.0%であり、群間差は認められなかった。 一方で、都市部の病院で治療を受けた患者は、治療のためにより長距離を移動していた。具体的には、大腸がん患者の移動距離の中央値は、地方群での16マイル(約26km)に対して都市部群は49マイル(約79km)と約3倍の距離を移動していた。これを移動時間に換算すると、それぞれ23分と58分に相当した。肺がん患者でも、地方群で35マイル(約56km)、都市部群で61マイル(約98km)と都市部群の移動距離が長く、移動時間はそれぞれ49分と72分に相当した。 地方在住の患者の一部は、依然として必要な治療を受けるために都市部へ移動しなければならない場合はあるが、研究グループは、「今回の結果は、地域病院でも一定のがん手術を十分に提供できることを示している」と述べている。Egger氏は、「移動時間の長さや移動に伴う費用は、地方在住のがん患者の多くにとって大きな負担となり得る。医療システムが医療供給体制を地域ごとに再編していく中で、地元で治療を受けても問題ない患者と、より集約化された医療を受けることで利益を得られる患者を見極めることが重要になってくるだろう」と述べている。 研究グループは今後、地方と都市部の病院のうち、最良の結果を出している施設を分析し、何が優れていたのかを明らかにする予定だという。また、地方の病院が、手術以外のがん治療においても都市部の施設と同等のケアを提供しているかどうかも調べる計画があるとしている。

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第95回 ロジスティック回帰分析かプロビット回帰分析か【統計のそこが知りたい!】

第95回 ロジスティック回帰分析かプロビット回帰分析かロジスティック回帰分析とプロビット回帰分析は、医療統計において2値の結果(例:疾患の有無、治療の成功と失敗)を予測・解析する際によく用いられる手法です。これらの手法は、複数の要因(説明変数)から2値の結果(目的変数)を予測する多変量解析の一種です。しかし、両者には理論的背景や適用方法に違いがあり、論文を読む際にはその違いを理解しておくことが重要です。今回は、ロジスティック回帰分析とプロビット回帰分析ついて解説します。■ロジスティック回帰分析(logistic regression analysis)とはロジスティック回帰分析は、目的変数が2値(0または1)の場合に適用されます。この手法では、説明変数と目的変数の関係についてロジスティック関数を用いてモデル化します。具体的には、ある事象が発生する確率をオッズとして表現し、そのオッズの対数(log-odds)を説明変数の線形結合で表します。このモデルは、オッズ比を直接的に解釈できるため、医療分野でのリスク評価や要因解析において広く利用されています(図1、2)。■プロビット回帰分析(probit regression analysis)とはプロビット回帰分析も目的変数が2値の場合に適用されますが、こちらは正規分布を基盤としています。具体的には、説明変数の線形結合を標準正規分布の累積分布関数に適用し、事象が発生する確率をモデル化します。プロビットモデルは、誤差項が正規分布に従うと仮定しており、心理学や経済学の分野でよく用いられます(図1、2)。※「probit」は、考案者のチェスター・ブリス氏が「probability」+「unit」から命名しました。図1 ロジスティック回帰分析とプロビット回帰分析のモデル式画像を拡大する図2 ロジスティック回帰分析とプロビット回帰分析のグラフ画像を拡大する図2は年収と持ち家の関係を調べたアンケートの結果を例に説明します。年収をx、持ち家の人をy=1、持ち家でない人をy=0として散布図を描くと図2の左図のようになりました。xとyで単回帰分析をすると、回帰直線は負の値や1以上の値がでてきて、うまくありません。そこで直線の代わりに、xが大きくなるにつれて1に近付き、xが小さくなるにつれて0に近付くような関数を用いて回帰分析をしようというのが、ロジスティック回帰分析やプロビット回帰分析です。x→+∞で1,x→-∞で0となるような関数として、f(x)やΦ(x)が選ばれています。f(x)、Φ(x)のグラフは図2の右図になります。図2の左図のようなグラフを得ることができれば、yの値は年収xの人が持ち家である確率を表していると解釈できます。得られたデータ(xi、yi)から、α、βを求めるには「最尤法」を用います。プロビット回帰分析であれば、尤度関数をyiと設定します。線形回帰の場合と異なり、α、βの最尤値は(xi、yi)を用いて表すことはできません。■ロジスティック回帰分析とプロビット回帰分析の違い(1)ロジスティック回帰は、ロジスティック分布、プロビット回帰は正規分布を仮定しています。(2)ロジスティック回帰では、ロジット関数(log-oddsの逆関数)、プロビット回帰ではプロビット関数(標準正規分布の累積分布関数の逆関数)を使用します。(3)ロジスティック回帰は、計算が比較的簡単でオッズ比の解釈が直感的に理解することができます。その一方で、プロビット回帰は正規分布の累積分布関数の逆関数を計算する必要があり、数値計算が複雑になることがあります。■使い分けのポイントロジスティック回帰とプロビット回帰の選択は以下の点を考慮して行います:(1)データの特性説明変数が広範な範囲の値を取る場合、ロジスティック回帰の方が適しています。これは、ロジスティック分布の裾が重い(0への近付き方が遅い)ため、極端な値に対してもモデルが柔軟に対応できるからです。(2)計算の容易さロジスティック回帰は計算が比較的簡単です。その一方で、プロビット回帰は計算が複雑になることがあります。(3)解釈のしやすさロジスティック回帰では、オッズ比を直接解釈できるため、医療分野でのリスク評価に適しています。プロビット回帰では、結果の解釈がやや直感的でわかりにくい場合があります。■ロジスティック回帰分析と対数オッズは関連があるロジスティック回帰分析の式でとおくと、となります。確率pに対して、をオッズ(odds)、を対数オッズまたはpのロジット関数と言います。ロジスティック回帰分析とは、対数オッズを1次式で表すモデルを用いた回帰分析であると言えます。説明変数をk個にして、y=f(α+β1x1+…+βkxk) y=∅(α+β1x1+…+βkxk)をモデルにした場合も同様に、ロジスティック回帰分析、プロビット回帰分析と言います。なお、(x1,x2,…,xk,y)(yは0または1)型の予測は判別分析でも分析は可能です。しかしながら、この回帰分析のように予測値が0から1までの実数値で返ってくるわけではありません。■論文を読む際の注意点論文でこれらの手法が使用されている場合、以下の点に注意してください。(1)モデル選択の理由論文の著者がなぜロジスティック回帰やプロビット回帰を選択したのか、その理由を確認しましょう。データの特性や研究の目的に応じて適切な手法が選ばれているかを判断する材料となります。(2)結果の解釈ロジスティック回帰の結果として提示されるオッズ比は、ある要因が目的変数に与える影響を示しています。その一方で、プロビット回帰の係数は直接的な解釈が難しいため、平均限界効果などの指標を確認すると良いでしょう。(3)モデルの適合度モデルがデータにどの程度適合しているか、適切な指標(たとえば擬似R2やAICなど)を用いて評価されているかを確認しましょう。ロジスティック回帰分析とプロビット回帰分析は、2値データを予測・解析する際によく用いられる手法です。それぞれの特性や適用条件を理解し、データの特性や研究目的に応じて適切に使い分けることが重要です。論文を読む際には、使用されているモデルの選択理由や結果の解釈に注意をすることが大切です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問18 ロジスティック回帰分析とは?質問19 ロジスティック回帰分析の判別スコアと判別精度とは?質問20 ロジスティック回帰分析のオッズ比とは?統計のそこが知りたい!第64回 ロジスティック回帰分析とは?第65回 ロジスティック回帰分析のオッズ比?

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末梢動脈疾患(PAD)の症状改善にメトホルミンは無効(解説:小川大輔氏)

 末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease;PAD)は、動脈に脂肪やコレステロールが蓄積する動脈硬化によって、腹部大動脈から下肢の動脈が狭くなり血流が制限される疾患である。これにより、歩行時の足の痛み(間欠性跛行)などの症状が生じる。症状はゆっくりと現れることが多いが、急激に悪化する場合もある。主な原因は動脈壁への脂肪、コレステロールなどの蓄積、いわゆるアテローム性動脈硬化と考えられている。PADの患者は動脈硬化を原因とする狭心症や脳梗塞を合併することが多いため、下肢だけでなく全身の動脈硬化症の評価も必要となる。 PADの治療としては、禁煙、生活習慣病の管理、運動療法、薬物療法、血行再建術などがある。PADの最大の原因は喫煙であり、禁煙は必須の治療である。糖尿病、高血圧症、脂質異常症があればそれらの治療も行う。運動療法は血流改善や新しい血管(側副血行路)の発達を促すため、痛みが生じない範囲でのウォーキングなどの運動は有効である。血行再建術は、運動療法やシロスタゾールなどの薬物療法で症状の改善が見られない場合や重症の場合に検討される。カテーテル治療(血管内治療)やバイパス手術はPADの部位や患者の状態を考慮して実施される。 PADは歩行障害を引き起こす重篤な循環器疾患であり、効果的な治療法が限られている。そこで今回非糖尿病のPAD患者に対し、2型糖尿病の治療薬であるメトホルミンを6ヵ月間投与し、歩行能力に与える効果を検証したランダム化二重盲検試験が実施された1)。その結果、メトホルミンはPAD患者の歩行能力改善には効果がないと結論付けられた。 メトホルミンは主に肝臓での糖新生を抑制したり、筋肉や脂肪組織でのブドウ糖の取り込みを促進したりすることによって血糖値を下げる効果がある。その他、血管内皮細胞におけるAMP活性化プロテインキナーゼの活性化、酸化ストレスの抑制、内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化などの作用も報告されている2)。メトホルミンのこれらの“pleiotropic effects”による血管内皮機能の改善により、PAD患者の血流改善や歩行時間延長を期待され、この試験が実施された。 メトホルミンがPAD患者の歩行能力改善に効果がなかった理由として、喫煙率が約30%と高かったことや、インスリン抵抗性の強くない症例が多かったこと、また観察期間が6ヵ月と短かったことなどが考えられる。その他の可能性として、著者らはPAD患者の骨格筋や血管内皮でAMP活性化プロテインキナーゼがすでに最大活性化されているため、メトホルミンの追加効果が得られなかった可能性を考察している。 いずれにしても今回の研究でPADの歩行障害に対するメトホルミンの効果はないことが示された。今後は異なる作用機序を持つ治療薬の開発や、PADの複雑な病態に対処する新たなアプローチの研究が求められる。またそれ以前に、完全禁煙や肥満の是正、厳格な血圧管理など、現状できることをまずはきちんと行うことが重要である。

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PHSは過去のもの?それとも現役?/医師1,000人アンケート

 医療現場のICT化による業務効率化が期待される中、厚生労働省も補助金制度を設けるなど、生産性向上を目指す支援策が行われている。しかし、現場の環境整備・活用状況には施設ごとに大きな差がある状況と考えられる。CareNet.comでは会員医師(勤務医)1,025人を対象に、勤務先で実際どのような環境が整えられているか、デバイスの貸与・使用状況とメールの使用状況についてアンケートを実施した(2026年2月19~20日実施)。勤務先からPCの貸与ありと回答した医師は約3割 勤務先からのパソコン(ノート・デスクトップどちらでも)貸与状況について聞いた結果、「自分専用で貸与あり」と回答したのは23.6%、「共用で貸与あり」と回答したのは9.2%で計32.8%となり、およそ7割の医師は勤務先からのパソコンの貸与はないという結果となった。タブレットについてはより少なく、「自分専用で貸与あり」が5.7%、「共用で貸与あり」が4.8%にとどまった。 年代別にみると、パソコンの貸与率(自分専用あるいは共用のいずれかで貸与あり)は年齢が高くなるほど上がり、20代では26.7%だったのに対し、60代では41.2%であった。また、病床数が少ない施設ほど貸与率が高い傾向がみられ、20~99床の施設勤務の医師では貸与ありとの回答が44.2%だったのに対し、200床以上の施設勤務の医師では30.2%であった。PHSは約7割が貸与ありと回答、スマホは2割強にとどまる 勤務先からのPHS貸与状況については、「自分専用で貸与あり」と回答したのは63.2%、「共用で貸与あり」と回答したのは7.9%で計71.1%となり、およそ7割が勤務先からPHSを貸与されていることがわかった。一方でスマートフォンの貸与は自分専用・共用で計23.9%にとどまった。 PHSの貸与状況について年代別に大きな差はみられなかったが、スマートフォンについては20~30代で貸与率がやや高い傾向がみられた(20代:計31.1%、30代:計29.2%)。また、スマートフォンは20~99床の施設(計7.7%)と比較して200床以上の施設(計26.1%)勤務の医師で貸与率が高かった。 スマートフォン貸与ありと回答した医師を対象にその用途について複数回答で聞いた質問では、「内線通話」が79.7%と最も多く、「電子カルテの閲覧・入力」は13.4%、「医療画像などの閲覧」は13.0%にとどまった。「グループチャット」との回答は36.0%だった。業務用メアドをチェックするツール、主力は私物デバイスか 勤務日に業務用メールアドレスをチェックする頻度について、使用するデバイスごとに聞いた質問では、貸与デバイスについては「使用しない/貸与なし」が53.4%だったのに対し、私物デバイスでは「使用しない」と回答した医師は26.0%であった。私物デバイスで業務用メールアドレスを1日1回以上チェックすると回答した医師は63.3%に上った。 年代別にみると、1日5回以上と頻回にチェックすると回答した医師は、デバイスを問わず50~60代で多く、20~30代で少ない傾向がみられた。 貸与デバイスからのネット接続状況など、その他のアンケート結果・詳細は以下のページに掲載中。「勤務先からのデバイス貸与・メールの使用状況/医師1,000人アンケート」

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GLP-1受容体作動薬、物質使用障害の予防や治療に有効か/BMJ

 GLP-1受容体作動薬の使用は、さまざまな物質使用障害(SUD)の発症リスク低下と一貫して関連し、複数の物質タイプにわたる幅広い予防効果があること、また、SUD既往患者においても有害な臨床アウトカムのリスク低下に関連していることが、米国退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムのMiao Cai氏らによる観察研究の結果で示された。GLP-1受容体作動薬の使用がアルコール、タバコ、大麻使用障害の発症および再発リスクを低下させることが示されていたが、他の物質に関するエビデンスや、SUD既往患者の臨床アウトカムの改善に有効かどうかを評価する大規模研究は不足していた。著者は、「今回のデータは、GLP-1受容体作動薬がさまざまなSUDの予防と治療の両方において潜在的な役割を果たす可能性を示唆しており、さらなる評価が必要である」とまとめている。BMJ誌2026年3月4日号掲載の報告。退役軍人の医療記録を用いて8件の実薬対照比較試験をエミュレーション 研究グループは、米国退役軍人省の電子医療記録を用いて新規投与開始者に関する8件の実薬対照標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った。内訳は、SUD既往のない患者における新規SUD発症に関する7試験(プロトコール1)と、SUD既往患者における有害アウトカムに関する1試験(プロトコール2)であった。 2型糖尿病を有する米国退役軍人60万6,434例をベース集団とし、患者を2つのプロトコールのいずれかに割り付け、最大3年間追跡した。 プロトコール1(主要試験)では、GLP-1受容体作動薬新規投与開始者12万4,001例およびSGLT2阻害薬新規投与開始者40万816例の計52万4,817例が、プロトコール2では、それぞれ1万6,768例および6万4,849例の計8万1,617例が対象となった。 主要アウトカムは、アルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイドの使用障害、その他のSUD発症、およびこれらの複合アウトカムとした。SUD既往患者における有害アウトカムには、SUD関連の救急外来受診、SUD関連入院、SUD関連死、薬物過剰摂取、自殺念慮または自殺企図などが含まれた。 ハザード比(HR)および3年間の純リスク差(NRD、1,000人当たり)を、逆確率重み付けを用いた原因特異的Cox生存モデルに基づいて報告した。アルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイド、他のSUD発症リスクの低下と関連 SGLT2阻害薬の開始と比較し、GLP-1受容体作動薬の開始は以下の使用障害のリスク低下と関連していた。・アルコール(HR:0.82[95%信頼区間[CI]:0.78~0.85]、NRD:-5.57[95%CI:-6.61~-4.53])・大麻(0.86[0.81~0.90]、-2.25[-3.00~-1.50])・コカイン(0.80[0.72~0.88]、-0.97[-1.37~-0.57])・ニコチン(0.80[0.74~0.87]、-1.64[-2.19~-1.09])・オピオイド(0.75[0.67~0.85]、-0.86[-1.19~-0.52]) また、主要アウトカムとした、その他のSUD発症(0.87[0.81~0.94]、-1.12[-1.68~-0.55])、複合アウトカム(0.86[0.83~0.88]、-6.61[-7.95~-5.26])のリスク低下も認められた。 SUD既往患者では、GLP-1受容体作動薬の投与開始は、次のリスク低下と関連していた。・SUD関連救急外来受診(HR:0.69[95%CI:0.61~0.78]、NRD:-8.92[-11.59~-6.25])・SUD関連入院(0.74[0.65~0.85]、-6.23[-8.73~-3.74])・SUD関連死(0.50[0.32~0.79]、-1.52[-2.32~-0.72])・薬物過剰摂取(0.61[0.42~0.88]、-1.49[-2.43~-0.55])・自殺念慮または自殺企図(0.75[0.67~0.83]、-9.95[-13.14~-6.77]) 治療アドヒアランスに基づく解析でも、新規SUD発症およびSUD既往患者における有害アウトカムの両方について、治療開始に基づく解析と一貫した結果が示された。

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「ポイント@ギフト(dポイント)」交換レート変更のお知らせ

このたび、ケアネットポイントの交換先である「ポイント@ギフト(dポイント)」につきまして、2026年4月1日(水)13:00より、交換レートを以下のとおり変更いたします。【変更前】 3月31日(火)13:59まで100pt=95ポイント分【変更後】 4月1日(水)13:00より100pt=90ポイント分※2026年3月31日(火)13:59までにお申し込みいただいた分は、現行のレート(100pt=95ポイント分)で交換いたします。※2026年3月31日(火)14:00~4月1日(水)13:00に、ポイント交換システムのメンテナンスを実施いたします。状況により、メンテナンスの時間帯は前後する場合がございます。ご利用中の皆さまにはご不便をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。ケアネットポイントの交換はこちらよりお手続きください。https://point.carenet.com/exchange※ログインが必要です

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4週ごとのFGF21アナログ製剤efimosfermin alfa皮下注射24週治療はMASH(F2/F3)の活動性および線維化ステージを改善する(解説:相澤良夫氏)

 FGF21アナログ製剤はMASHの治療薬として高い期待が寄せられている。すでにefruxiferminやpegozaferminは第III相試験で良好な治療効果と安全性が確認され、MASH代償性肝硬変に対しても線維化ステージの改善効果も示されている。わが国でも最近FGF21アナログ製剤の臨床治験が申請され、開始されている。 FGF21は多様な生理作用を有し、心臓代謝性疾患の危険因子である脂質異常症や糖尿病の改善効果が示され、FGF21アナログ製剤は単にMASHを改善するだけでなくMASHに合併して、その予後に影響を及ぼす代謝異常に対しても有用性が示されている。 efimosferminはFGF21のN端にIgGのFcを強固に結合し、さらに蛋白分解酵素の作用点に変異を導入して安定化させることにより血中半減期を著しく延長させたアナログで、月1回(4週ごと)の皮下投与で十分な薬理効果を発揮する薬剤である。従来製剤の週1回投与に比べて煩雑さが軽減されるという利点があり、他のFGF21アナログ製剤と同等以上のMASH治療効果を発揮する可能性がある。副作用は従来のFGF21アナログ製剤と同等で軽度から中等度の消化器症状が主体であり、安全性、忍容性が高い。 今回の第II相試験は短期間で症例数が少なく、より長期の安全性や代償性肝硬変に対する治療効果は確認されていない。efimosferminはefruxiferminなどの先行FGF21アナログ製剤に臨床試験で後れを取っているものの、注射回数が少なくて済み、先行薬よりも強力な治療効果を発揮する可能性がある薬剤と思われる。今後の臨床試験結果が大いに期待される。

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アナフィラキシー補助治療薬、2つの選択肢

アナフィラキシー発現時の補助治療薬、2つの選択肢投与経路用量設定有効性アドレナリン点鼻液(商品名:ネフィー)アドレナリン自己注射製剤(商品名:エピペン)経鼻投与筋肉内注射(太もも前外側)・1mg:体重15〜30kg未満・0.15mg:体重15〜30kg未満・2mg:体重30kg以上(成人含む)・0.3mg :体重30kg以上(成人含む)・試験において、全患者が1回投与で初期症状を改善・改善までの時間(中央値)は16分・アナフィラキシー時の循環動態を改善し、入院リスクを減少・改善までの時間は約10分主な利点針がない、携帯しやすいアナフィラキシー治療の第1選択薬として、使用実績が豊富特徴的な副作用咳嗽、鼻粘膜紅斑、鼻部不快感、口の感覚鈍麻など動悸、頭痛、めまい、不安、注射部位疼痛など使用上の注意・鼻茸、鼻骨折や鼻損傷の既往歴、鼻の手術歴等を有する患者では、本剤の吸収が十分ではない可能性・点鼻後には必ず医療機関を受診することその他臨床データが不足している(⾷物経口負荷試験[OFC]データのみ)・手指への誤注射に注意が必要・注射後には必ず医療機関を受診すること長年の歴史と臨床上の使用経験データが豊富監修:海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院臨床研究センター センター長)参考:ネフィー、エピペン各添付文書、Ebisawa M, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2025;13:2787-2794.Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第309回 臨床医が扱い慣れたGLP-1薬なら依存症治療の敷居を低くできそう

セマグルチドやチルゼパチドなどのGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)の使用が、アルコールやその他の薬物乱用を生じ難くするらしいことを示す大規模観察試験結果がまた1つ報告されました1-4)。BMJ誌に今回報告されたのは、米国の2型糖尿病の退役軍人の解析結果です。言わずもがなGLP-1薬は膵臓の受容体に働いてインスリン分泌を促します。しかしそれだけでなく、脳でも作用することが知られ、薬物乱用やアルコール依存を促す脳の報酬回路へのGLP-1薬の働きが盛んに検討されています4)。試験ではそのように脳でも働くGLP-1薬か、腎臓でもっぱら働くエンパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬を使い始めた60万例超の経過が調べられました。3年間追跡したところ、薬物依存症の既往がない人のGLP-1薬使用は大麻、アルコール、コカイン、ニコチン、オピオイドの依存症の発生率がSGLT2阻害薬使用に比べて14%低いことと関連しました。すでに依存症の人の薬物乱用と関連した救急科受診、入院、オーバードーズの割合の比較でもGLP-1薬使用に分があり、SGLT2阻害薬に比べてそれぞれ約30%、25%、40%低いことが示されました。薬物乱用と関連する死亡や自殺念慮/自殺企図もGLP-1薬使用群がより少なく、SGLT2阻害薬群に比べてそれぞれ50%と25%低い割合で済んでいました。依存症へのGLP-1薬の効果は無作為化試験でも示されつつあります。昨年2月にはアルコール依存患者の飲酒量を減らすセマグルチド週1回注射の効果を裏付けた無作為化試験が報告されています5)。進行中の試験もあり、GLP-1薬の類いのmazdutideのアルコール依存治療を調べているプラセボ対照無作為化第II相試験がLillyの手によって実施されています。結果は今夏8月に判明するようです6)。セマグルチドの別の無作為化試験も米国立薬物乱用研究所(NIDA)医師のLorenzo Leggio氏の主導で進行中です7)。Leggio氏は、たいていが治療されないままのアルコール依存症の治療にGLP-1薬の類いが光明をもたらしうると考えています4)。日本もおよそ似たような状況と思われますが、Leggio氏によるとアルコール依存症患者のほぼ全員の98%は米国で承認されているアルコール依存治療薬を手にしていません。その原因の一端は臨床医のほとんどが依存症治療薬に精通していないことにあるとLeggio氏は言っています。アルコール依存症とは対照的に、糖尿病患者のほとんどの85%超は米国で承認された治療を受けており、臨床医はGLP-1薬を含む糖尿病薬の扱いに手慣れています。GLP-1薬が誰にでも効くというわけにはいかないでしょうが、もし効果の裏付けが済んでGLP-1薬による依存症治療が承認されたら専門医限定という垣根を超えて普及するだろうとLeggio氏は示唆しています。それに、糖尿病治療として社会的により受け入れられているGLP-1薬なら依存症の薬物治療への偏見も減らせるかもしれません4)。米国などでは承認されているnaltrexoneなどのめぼしい依存症治療薬が未承認の日本では、あくまでも有効性が確立して承認されればの話ですが、臨床医が扱いに慣れたGLP-1薬による依存症治療はとくに重宝されそうです。参考1)Cai M, et al. BMJ. 2026;392:e086886.2)GLP-1 diabetes drugs linked to reduced risk of addiction and substance-related death / Eurekalert3)GLP-1 medications get at the heart of addiction: study / Eurekalert4)GLP-1 drugs linked to lower addiction rates in large study of veterans / Science5)Hendershot CS, et al. JAMA Psychiatry. 2025;82:395-405.6)ClinicalTrials.gov(NCT06817356)7)ClinicalTrials.gov(STAR)

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胃がんリスク因子の年齢別解析、ピロリ感染と喫煙が高齢で増加

 胃がんは依然として世界的ながん死亡の主要な原因の1つであり、その発症には感染、生活習慣、遺伝など複数の要因が関与する。中国の病院を対象とした後ろ向き研究により、胃がん患者におけるリスク因子の分布が年齢層によって異なる可能性が示された。Frontiers in Oncology誌2026年1月22日号掲載の報告。 本研究では、中国南部の複数の3次医療機関で診断された胃がん患者903例を対象とし、アンケート調査により生活習慣や臨床背景に関する情報を収集した。解析対象は、18~30歳(50例)、31~55歳(163例)、56歳以上(690例)の3つの年齢群に分類された。評価項目には、Helicobacter pylori(H. pylori)感染、喫煙歴、肥満、萎縮性胃炎、食習慣、既往歴、胃がん家族歴などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・年齢群によってリスク因子の分布に明確な違いが認められた。H. pyloriの感染率と喫煙率は年齢とともに有意に増加した。・燻製・焼いた食品の摂取は、とくに高齢者において胃がんリスクと有意な関連を示した(オッズ比[OR]:2.05、95%信頼区間[CI]:1.29~3.27、p=0.002)。肥満および果物・野菜の摂取量不足は統計的に有意な関連を示さなかった。・高齢群では、H. pylori感染、喫煙、燻製・焼いた食品の摂取といった環境要因への長期曝露が多く、これらが累積的に胃がん発症リスクを高めている可能性が示唆された。・一方、若年患者ではこれらの生活習慣関連因子の影響は比較的小さく、相対的に家族歴やその他の要因が重要となる可能性が示された。 研究者らは、本研究の臨床的意義として、年齢層に応じた予防介入の必要性を挙げている。具体的には、高齢者ではH. pylori感染検査と除菌プログラム、若年~中年期ではH. pylori除菌、禁煙指導、食習慣の改善などを実施することで、将来的な胃がん発症リスクの低減につながる可能性があるとした。

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第303回 診療報酬改定プラス分は相殺?イラン情勢が及ぼす病院の電気代を試算

INDEXイラン情勢が日本に及ぼす影響ホルムズ海峡封鎖による電力価格への影響診療報酬改定「プラス分」は相殺?イラン情勢が日本に及ぼす影響いやはや、厄介な事態になったと思っている。米国とイスラエルによるイラン攻撃のことである。私は出張先で夕刻、一報に接した。米国のトランプ大統領は攻撃開始翌日の2026年3月1日、「戦闘は約4週間続く可能性がある」と述べたが、わずか1日後の2日にホワイトハウスで行った演説では「当初は4〜5週間と見込んでいたが、必要ならはるかに長く続ける能力がある」と“軌道修正”した。開戦当初はイランの核開発の断念とともに体制転換を示唆し、同国の最高指導者であるアリー・ハメネイ師を空爆で殺害までしたものの、最近ではイラン海軍や弾道ミサイル能力の破壊を公言するなど、その目的・目標も揺れ動いている。朝令暮改はもはやトランプ大統領の十八番だが、そもそも国土面積が日本の4倍以上の世界第17位、国軍・約60万人に加えもう1つの軍事組織であるイスラム革命防衛隊・約12万人を有するイランは、米国・イスラエルと比べれば軍事力は劣るが、それはあくまでスペック上でのこと。米国・イスラエル両国とも全兵力をイランに割けるわけではないので、体制転換が少しでも念頭にあるならば長期化は避けられない。そうなると日本での日常生活はもちろん、医療にも影響を及ぼすことは必至といえる。ホルムズ海峡封鎖による電力価格への影響実際、イランのイスラム革命防衛隊が世界のLNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)の約2割が通過するホルムズ海峡の封鎖を宣言。さらに、カタールにあるLNG生産施設がイランのドローン攻撃を受けて生産を一時停止し、アジア向けのLNG価格は約40%上昇したと報じられた。一番影響が及びそうなのは、エネルギー関連である光熱水費、とくにどの医療機関でもなくてはならない電気の料金である。なんとなく電気料金の伝票を眺めている人も少なくないと思うので、あらためて解説すると、日本の電気料金の構造は、基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金の4つの合計となっている。このうち、「燃料費調整額」は電力会社の発電燃料として使われるLNG、石炭、原油の輸入価格の変動を電気料金に反映させる制度として1996年に導入された。要は短期的な世界のエネルギー需要に基づく価格が、これを通じて料金にも反映される仕組みである。この燃料費調整額の計算プロセスは、直近3ヵ月の燃料輸入価格の平均値として計算する。具体的には各電力会社で発電燃料として使用されるLNG、石炭、原油の割合は違うため、各電力会社が定めた各燃料の係数をかけて平均燃料価格を算出する。そして各電力会社には、料金認可時に決められた基準燃料価格があり、計算した平均燃料価格との差額を基準係数と呼ばれる数字で割って1kWhあたりの燃料費調整額が決定する。もっとも輸入統計の確定までのタイムラグがあるため、直近の燃料費の高騰が実際の電気料金に反映されるのは約3〜5ヵ月遅れとなる。細かな計算式は省くが、LNGが発電燃料の35%、電気料金の40%が燃料費という仮定を置くと、LNG価格だけが10%上昇した場合、計算上の電気料金は約1.4%上昇するといわれている。もっともLNG価格が上がると、石炭価格の連動上昇や電力市場価格上昇、電力会社の調達コスト増などがあり、実際の電気料金上昇率は2〜4%になるのが一般的。これを前提にすると、前出のLNG価格40%上昇の場合、電気料金の支払額は8〜16%上昇する計算になる。診療報酬改定「プラス分」は相殺?これが医療機関の電気料金にどう跳ね返ってくるかだ。ここでウクライナ紛争勃発後の2022年10月に茨城県保険医協会が行った物価高騰に関するアンケート結果の中で、代表例として病院の回答(37施設)を取り上げてみる。ここでは2021年と2022年の8月請求分を比較しているが、回答施設の平均病床数や契約電力会社、料金プランが不明のため、37病院の平均電力使用量が約16万kWhをベースに試算をしてみたい。病院での電気契約は多くが業務用の高圧電気である。ここで東京電力を例にとる。同社の高圧電気プランは、燃料費調整と市場価格調整の両方を行う「ベーシックプラン」と、市場価格の変動を受けずに燃料費調整のみを適用する「市場調整ゼロプラン」がある。最新の燃料費調整額を適用すると約16万kWhの電気料金はベーシックプランで約414万円、市場調整ゼロプランで約441万円。電気料金が8〜16%上昇するならば、月当たりの電気料金は前者で約33〜66万円、後者で35〜70万円、それぞれ上昇することになる。さて、先ほどの茨城県保険医協会の回答病院の平均病床数はわからないものの、一般的に保険医協会に加盟する病院は100〜200床の病院が多い。また、その病床稼働率は70〜80%が最も多いとされる。仮に200床で病床稼働率を中央値の75%とすると、稼働病床は150床。先日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会は、2026年度報酬改定において、入院時生活療養(I)・(II)のうち、光熱水費用の1日当たりの金額を60円引き上げると答申した。仮にそうだとしたら26年春以降は光熱水費分が月当たり27万円引き上がることになるが、LNG価格が40%上昇した場合は完全に足が出る計算である。LNG価格の上昇率が30%でもほぼ赤字、20%でようやくトントンか赤字である。しかも、この先の価格上昇は不透明だ。(表)LNG価格高騰による電気料金上昇と診療報酬改定の影響(試算)画像を拡大するまた、この情勢下では原油価格も上昇するため、当然ながら病院で使用されるディスポーザブル資材なども価格上昇が予想される。そう考えると、せっかく26年改定で手当てされた物価高騰分の診療報酬引き上げも水の泡になってしまうかもしれない。

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慢性片頭痛に対する抗CGRP抗体とCGRP受容体拮抗薬併用療法の有用性は?

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をターゲットとした単独療法を受けている患者は、片頭痛症状への治療反応が遅延する場合がある。また、このような治療を受けている患者は、妥当な期間内に片頭痛症状の軽減がみられないこともある。一部の臨床医は、相乗効果を高めることを目的として、CGRP分子および受容体を標的とする低分子拮抗薬(SMA)とリガンドモノクローナル抗体(L-mAb)の併用療法を選択している。米国・ハワイ大学のHo Hyun Lee氏らは、相乗効果のあるSMAとL-mAbの併用療法を受けている患者におけるCGRP併用療法の安全性と有効性を、CGRP単独療法と比較するため、実臨床におけるレトロスペクティブレビューを実施した。Pain Physician誌2026年1月号の報告。 本研究は、米国の神経内科ケアセンター1施設におけるレトロスペクティブマッチングコホート研究として実施した。2018年5月〜2024年2月にCGRP阻害薬(L-mAb[フレマネズマブ、ガルカネズマブ、eptinezumab]、SMA[ubrogepant、リメゲパント、アトゲパント]、またはL-mAbとSMAの併用)による治療を受けた18歳以上の慢性片頭痛患者90例を対象に分析を行った。本研究では、L-mAbとSMAの併用療法を受けた27例の患者と、L-mAb単独療法またはSMA単独療法を受けた63例の患者を、年齢と性別でマッチングさせ、比較した。変数は、現在の年齢、診断時年齢、性別、ボツリヌス毒素Aの使用、頭痛の頻度、持続時間、重症度、治療前および治療後3ヵ月の関連症状とした。両治療群において有害事象が記録された。すべての仮説検定は両側検定で実施し、p値<0.05で有意と判断した。 主な結果は以下のとおり。・CGRP単独療法では頭痛の重症度が10%減少したのに対し、CGRP併用療法では20%減少した(p=0.039)。・CGRP併用療法を受けた患者では、頭痛日数が平均4日の減少(最大14日減少)が認められた。一方、CGRP単独療法を受けた患者では、頭痛日数の変化が認められなかったが、この結果に統計的に有意な差は認められなかった(p=0.112)。・その他の片頭痛関連症状については、両群間で有意な差は認められなかった。・CGRP単独療法群およびCGRP併用療法群における有害事象は軽度であり、重篤な有害事象や治療中止は報告されなかった。 著者らは、本研究の限界として、サンプルサイズが比較的小さいこと、研究デザインがレトロスペクティブであること、新規CGRP薬が使用されていないこと、交絡因子をコントロールできないこと、患者間で少数のCGRP阻害薬が主に使用されていることなどが挙げられるとしながらも「CGRP併用療法は、有意な有害事象を引き起こすことなく、頭痛の重症度を軽減することで、片頭痛の症状コントロールを強化する可能性がある」としている。しかし「これらの知見は、より大規模なサンプルサイズを用いたランダム化プラセボ対照臨床試験によって確認する必要がある」としている。

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第305回 ホスピス型住宅の最大手、アンビス運営の「医心館」に厚労省と地方厚生局が合同調査を開始、診療報酬大幅見直しで住宅型有料老人ホームは事業モデルの再編迫られる

報告書公表後、「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」と明言していたアンビスこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。いよいよワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が始まりますね。日本チームのメンバーもさることながら、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)、カイル・シュワーバー(フィリーズ)、タリク・スクーバル(タイガース)らが出場する米国チームや、ブラディミール・ゲレーロJr.(フィリーズ)、フェルナンド・タティスJr.(パドレス)らが出場するドミニカ共和国チームも相当な戦力と思われます。問題はテレビ放送がなく、Netflixに入らないと視聴できないこと。調べてみると「広告つきスタンダード」料金で1ヵ月890円です。日本―台湾戦のある金曜から入って、WBC以外の時間はまだ観ていないドラマ、『愛の不時着』『イカゲーム』『全裸監督』『極悪女王』などを観てみようかと考えています。それこそNetflixの思うツボですが。さて今回は、ホスピス型住宅の最大手、アンビス(東京都中央区)が運営する「医心館」について、厚生労働省が2月、健康保険法に基づいて地方厚生局などと合同調査を開始したというニュースを取り上げます。昨年3月の問題発覚後、アンビスの親会社、アンビスホールディングス(東京都中央区、代表取締役CEO柴原 慶一)は、医心館において必要以上の頻回訪問等が行われ診療報酬不正請求があったとの報道に関し、2025年8月に特別調査委員会の報告書を公表し、「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」と結論付けました。「我々はシロだった」と嘯いていたわけですが、あの自信は一体なんだったのでしょうか。地方厚生局任せではなく厚労省自ら乗り出した理由は「国各地に展開していることや、請求額が多いこと」共同通信は2月21日、「【独自】ホスピス最大手に厚労省合同調査 医心館、訪問看護報酬の不正指摘」と題するニュースを発信しました。「独自」を冠したスクープ記事です。同記事は、「ホスピス型住宅の最大手『医心館』について、入居者への訪問看護で不正・過剰な診療報酬請求が指摘されていたことを受け、厚生労働省が今月、健康保険法に基づき、地方厚生局などと合同調査を始めたことが21日、関係者への取材で分かった」として、「厚労省は今年1月から全国調査を始め、8つの地方厚生局・支局が47都道府県で少なくとも1ヵ所ずつ実施している」とその調査規模を書いています。また、地方厚生局任せではなく厚労省自らも乗り出した理由について、「調査は通常、出先機関の厚生局が行うが、厚労省本省が乗り出して埼玉県内の医心館を対象に関東信越厚生局、県と合同で実施。医心館が全国各地に展開していることや、請求額が多いことが理由とみられる」と分析しています。訪問看護に関する合同調査は、一部の事業者による不正・過剰請求を受け2025年4月に新設された仕組みだそうです。調査は同業のサンウェルズ、ファーストナースなどにも共同通信は、医心館の不正請求について2025年3月23日付の配信記事「【独自】ホスピス最大手で不正か 全国120ヵ所『医心館』」でいち早くスクープ、アンビスホールディングスのグレーな調査結果公表後も、この問題を追ってきたメディアです。調査委員会の報告書公表後、一部メディアの中には、「(アンビス)社内では、独自調査として報道を続けてきた共同通信社に対する訴訟も求める声も高まっているようだ」と、共同通信がまるで完全な”誤報”を放ったかのように書くところもありました。しかし、結果は訴訟どころか厚労省と地方厚生局の合同調査です。いかにアンビスホールディングスの調査委員会の報告書が中途半端で、かつその結果の解釈自体も独善的だったかがわかります。なお、有料老人ホームの経営コンサルティングに長年携わってきたタムラプランニング&オペレーティング社長の田村 明孝氏が、同社のWebサイトに連載しているコラムの2月25日公開分(「アンビス・サンウェルズ・ファーストナース(ヴァティー)などの訪問看護不正事業者に調査の手~緩和ケア(ホスピス)ホーム診療報酬引き下げで経営は窮地に」)などによれば、厚労省の調査はサンウェルズ(金沢市、代表取締役社長・苗代 亮達)、ファーストナース(東京都港区、代表取締役・橋本 真奈歩)などにも入っているとのことです。「シロでした」と株主相手に表明する経営者の姿勢に、厚労省自体も強い不信感「医心館」の不正請求については、本連載でも「第280回 ターミナルケア・ビジネスの危うさ露呈、『医心館』で発覚した『実態ない診療報酬請求』、調査結果の解釈はシロなのかグレーなのか?(前編)」、「第281回 同(後編)」でも取り上げました。グレー、あるいはクロと見られるのに、「シロでした」と株主相手に表明する経営者の姿勢に対し、厚労省自体も強い不信感を抱いていたようで、同省は10月1日、中央社会保険医療協議会の総会で、有料老人ホームなどで訪問看護を過剰に提供する事業者への規制を強化する方針を明らかにしました。また、ホスピス型住宅で不正・過剰請求や入居者の不利益が生じていることに関連して、医療法人社団悠翔会の佐々木 淳理事長と、訪問看護の会社Graceの西村 直之代表取締役が厚労省を訪問、厚労副大臣らに要望書を提出、適正化を訴えるという動きもありました(「第285回 訪問看護と有料老人ホームに規制強化の動き、現場からは『こんなもので本当にホスピス型住宅における過剰なサービス提供にブレーキをかけられるのか』との厳しい声も」参照)。2026年度の診療報酬改定では、ホスピス型住宅等での訪問看護に大きなしばりがこうした、ホスピス型住宅などにおける訪問看護の不正請求を背景に、2026年度の診療報酬改定では、ホスピス型住宅等での訪問看護に大きなしばりがかけられることになりました。しばりの主な対象は、末期がん・難病などを対象とした「ホスピス型住宅」「高齢者向け住宅」に併設・隣接する訪問看護ステーションで、同一建物内の入居者に対して頻回に訪問看護を行っているケースです。具体的には、支払い方式が出来高から1日単位で評価する包括払いに変更され、「包括型訪問看護療養費」が導入されます。これまでは、訪問回数を増やすほど報酬が積み上がり、1人当たり月80~90万円に達するケースもありましたが、新制度では1日定額となり、多くの場合、半額程度に収束するとみられています。事業者は包括払いではなく、現行どおりの出来高払いを選択することも可能ですが、出来高払いを選ぶ場合、1回の訪問が20分未満であれば訪問看護基本療養費や各種加算を算定できないなど、短時間・頻回訪問を抑制するルールも導入されます。さらに、同一建物居住者への訪問看護に対して算定する「訪問看護基本療養費(II)」等については、同一建物内の利用者数(2人、3~9人、10~19人、20~49人、50人以上)と、1ヵ月の訪問日数(20日目まで/21日目以降等)によって点数が逓減する仕組みに再編されます。とくに利用者10人以上・高頻度訪問の建物では、21日目以降の評価が低くなるなど、「頻回・大量訪問」の報酬が下がります。住宅型有料老人ホームという事業モデルそのものがもう限界か末期がん、難病などの患者の受け入れ先として、そのニーズの高まりとともに、やりたい放題の運営で急成長を遂げてきたホスピス型住宅は、事業モデルの根本的な見直しを迫られることになるでしょう。一方で、これまで真面目に運営を行ってきたところも、今改定で大きな打撃を被ることになります。「ホスピス型住宅」に限らず、外部からの訪問看護や訪問介護で成り立ってきた住宅型有料老人ホームという事業モデルそのものが、もう限界に来ているのかもしれません。前出の田村氏は、連載コラムで「住宅型有料老人ホームは廃止、有料はすべて特定施設に」という提言を行っています。介護保険制度ができて四半世紀、“制度疲労”が激しい有料老人ホームにはこれぐらいの大胆な改革が必要かもしれません。

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IgA腎症〔IgA nephropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgA腎症は、糸球体性血尿や蛋白尿などの検尿異常が持続し、腎生検で腎糸球体メサンギウム領域を中心としたIgA優位の免疫グロブリン沈着を認め、全身性疾患や慢性疾患など明らかな原因疾患を伴わない原発性糸球体腎炎である。確定診断には腎生検が必須である。■ 疫学IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、わが国を含む東アジアでとくに多いとされる。わが国では学校検尿や健康診断が普及しているため、無症候性血尿・蛋白尿を契機に若年~中年で診断される例が多い。一方、欧米では症候性の症例や腎機能障害を伴って初めて診断される例が多いとされる。■ 病因病因としては、「粘膜免疫異常により過剰産生された糖鎖異常IgA1が、自己抗体や補体と免疫複合体を形成し、糸球体メサンギウムに沈着して炎症と線維化を惹起する」というマルチヒット仮説が提唱されている。遺伝的素因も関与しており、HLA領域や粘膜免疫関連遺伝子の関連が報告されている。■ 症状多くは自覚症状に乏しく、持続する顕微鏡的血尿・軽度蛋白尿のみである。上気道感染や消化管感染の数日後に肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)を来す例が典型的である。進行例では浮腫、高血圧、倦怠感など慢性腎臓病(CKD)としての症状が出現する。■ 分類組織学的には腎糸球体メサンギウム増多所見が主体であるが、半月体形成、分節性硬化、全節性硬化など多彩な像をとる。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する。■ 予後かつての長期追跡では、診断後20年で約4割が慢性腎不全に至ると報告され、決して良性の腎炎ではないことが明らかとなった。近年では、早期発見・レニンアンギオテンシン(RA)系阻害薬の普及などにより予後は改善しつつあるが、蛋白尿が持続する例や腎機能障害を伴う例では依然としてCKD進行のリスクが高い。国際IgA腎症予測ツール(International IgAN Prediction Tool)により、臨床所見とMEST-Cスコアを組み合わせた予後予測も行われている。2 診断■ 検査1)尿検査持続する顕微鏡的血尿(尿定性検査に加え、尿沈査分析が必要。しばしば赤血球円柱がみられる)程度の異なる蛋白尿(しばしば0.3~1g/日程度から始まり得る)急性上気道炎や消化管感染後の一過性肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)2)血液検査血清クレアチニン、推算糸球体ろ過量(eGFR)で腎機能を評価する。血清IgA値はしばしば高値だが、診断的特異性は高くない。補体価は通常正常であり、低補体血症では他疾患を考慮する。3)腎生検IgA腎症の確定診断には腎生検が必要である。腎生検は、確定診断のみならず予後や治療反応性を予測する上でも重要である。光顕でメサンギウム増殖性糸球体腎炎を示し、免疫蛍光法でメサンギウム優位のIgA沈着(しばしばC3が共に沈着)を認める(図1、2)。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する(表)。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、IgA腎症が疑われる成人で蛋白尿0.5g/日以上が持続する場合、腎生検を考慮することが推奨されている。図1 IgA腎症の代表的な光顕所見画像を拡大する画像を拡大するa:メサンギウム細胞増多(↑)とメサンギウム基質増生(*)b:メサンギウムへの半球状沈着物(↑)c:管内細胞増多を示す糸球体糸球体毛細血管内の細胞数が増加し、管腔が狭小化している(↑)d:係蹄壊死この糸球体では毛細血管基底膜が断裂し(↑)、フィブリンの析出(*)がみられるe:細胞性半月体この糸球体の半月体は、ほとんどが細胞成分で占められているf:線維細胞性半月体この半月体は細胞成分10%以上50%未満で、細胞外基質は90%未満であるg:線維性半月体この半月体は細胞成分10%未満で、細胞外基質が90%以上を占めているh:分節性硬化点線で囲まれた部分に硬化がみられ、硬化はすべての係蹄には及んでいない(参考文献1、2より引用)図2 蛍光抗体法(IgA)画像を拡大する主にメサンギウム領域にIgAが高度に沈着している(参考文献1より引用)表 IgA腎症Oxford分類画像を拡大する■ 鑑別診断IgA腎症と類似する状態として、以下の疾患などと鑑別する必要がある。菲薄基底膜病、アルポート症候群など遺伝性血尿疾患IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病):紫斑、腹痛、関節痛など全身症状を伴う。感染関連糸球体腎炎(とくにMRSA感染に伴うIgA優位の感染関連糸球体腎炎)ループス腎炎など他の自己免疫性腎炎慢性肝疾患に伴う二次性IgA沈着症家族歴を含む臨床背景、血清学的検査、腎生検での所見を総合して診断する。3 治療■ 治療の基本方針治療の第1目標は、蛋白尿をできるだけ低く抑え(目標0.5g/日未満、理想的には0.3g/日未満)、腎機能低下速度を生理的なレベル(年間eGFR低下1mL/分/年未満)に近付けることである。■ 腎保護療法すべての患者に以下の腎保護療法が基本となる。生活習慣介入:減塩(食塩<6g/日が目安)、適正体重の維持、禁煙、適度な運動。血圧管理:目標<130/80mmHg(蛋白尿が多い例ではさらに厳格に)。RA系阻害薬:ACE阻害薬またはARBは蛋白尿減少と腎保護効果のエビデンスがあり、IgA腎症でも第1選択である。SGLT2阻害薬:糖尿病の有無にかかわらずCKD進行抑制効果が示されており、蛋白尿を伴うIgA腎症では追加投与が推奨されている。■ 免疫抑制療法腎保護療法を十分に行っても蛋白尿が持続し、腎機能低下が進行する例では免疫抑制療法を検討する。副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド):わが国のガイドラインでは、中等度以上の蛋白尿や組織学的重症例で、一定期間のステロイド療法が推奨されている。ただし、糖尿病、肥満、感染など副作用リスクが高い症例では慎重な適応判断が必要である。扁摘+ステロイドパルス療法:わが国では、口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用が長年行われており、蛋白尿の寛解や長期予後改善を示す国内データが蓄積している。その他の免疫抑制薬:シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などについては一定の効果報告もあるが、エビデンスは限定的であり、難治例や特別な状況に限って専門医のもとで検討されるべきである。■ 高リスク例・特殊病型急速進行性糸球体腎炎像(半月体多数、急激なeGFR低下)を示す例では、ステロイド大量療法にシクロホスファミドなどを併用する血管炎に類似した治療が行われるが、エビデンスは限られている。ネフローゼ症候群を呈する微小変化病合併IgA腎症などでは、ステロイド単独でも反応性が良い場合が多い。4 今後の展望■ 新たな診断・予後マーカー血中の糖鎖異常IgA1(galactose-deficient IgA1)やそれに対する自己抗体、補体関連マーカーなどがIgA腎症に特異的なバイオマーカー候補として研究されているが、現時点では診断や治療選択に用いる標準検査としては確立していない。国際IgAN予測ツールや病理MEST-Cスコアを活用したリスク層別化が進み、今後は個々の患者に応じた治療強度の決定に応用されることが期待される。■ 新規治療薬近年、IgA腎症の病態(粘膜免疫・補体・腎保護)を標的とした新規薬剤の開発が急速に進んでいる。標的放出型ブデソニド(Nefecon):回腸末端の腸管関連リンパ組織に到達するよう設計された経口ステロイドで、病的IgA1産生の抑制を目的とする。海外第III相試験では蛋白尿減少とeGFR低下抑制が示され、欧米などで承認されているが、わが国ではまだ使用できない。デュアルET-A/AT1受容体拮抗薬(sparsentan):ARB作用に加えエンドセリン受容体拮抗作用を併せ持ち、蛋白尿減少とeGFRスロープ改善を示している。補体阻害薬:経口補体因子B阻害薬iptacopanをはじめ、C5、C3、レクチン経路などを標的とした薬剤がIgA腎症で検証されており、一部は海外で承認されつつある。B細胞/BAFF・APRIL経路阻害薬:自己抗体産生抑制を目的としたataciceptや他の抗BAFF/APRIL抗体が臨床試験段階にある。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、「病的IgA産生と免疫複合体形成を抑える治療」と「すでに生じたネフロン喪失に伴うCKDの進行を抑える治療」を並行して行う2本立ての治療戦略が提案されている。わが国でも、支持療法にSGLT2阻害薬などを組み合わせつつ、新規薬剤が順次導入されれば、より早期から蛋白尿を強力に抑え、長期腎予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター IgA腎症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病治験ウェブ(難病に関する治験情報を簡単検索、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編集. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2020. 2020:東京医学社.2)厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業:進行性腎障害に関する調査研究班報告 IgA腎症分科会 IgA診療指針-第3版-補追 IgA腎症組織アトラス.日腎会誌. 2011;53:655-666.3)KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV).公開履歴初回2026年2月27日

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現在の認知症診断、その費用対効果は?

 アルツハイマー病および認知症は、世界において臨床的および経済的に大きな負担となっている。早期診断や介入は、疾患の進行を遅らせる可能性がある。現在の診断ガイドラインでは、臨床評価と併せて画像診断およびバイオマーカー分析を検討することが推奨されている。しかし、医療資源は限られているため、資源配分の指針として診断技術の費用対効果を検証する必要がある。カナダ・Western UniversityのMunira Kashem氏らは、アルツハイマー病または認知症の診断および/または進行フォローアップのための神経画像診断、バイオマーカー、その他の診断、スクリーニング戦略に関する経済評価研究をシステマティックにレビューした。Alzheimer's Research & Therapy誌2026年1月23日号の報告。 国、言語、出版期間を問わずMedline、Embase、PsycINFO、CINAHL、EconLitより網羅的に検索し、関連研究を抽出した。研究の質の評価には、医療経済基準に関するコンセンサス拡張版(Consensus on Health Economic Criteria-Extended:CHEC-Extended)チェックリストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・6,804件中21件の研究が適格基準を満たした。・これらの研究には、PET、SPECT、CT、MRIなどの神経画像技術(10件)、脳脊髄液および血液バイオマーカー(7件)、スクリーニングプログラム、機械学習に基づくモデル、多職種連携ケアアプローチなどの代替診断戦略(4件)の評価が含まれた。・画像技術を評価した研究のうち、6件は、費用対効果が高いとは認めなかった。・対照的に、脳脊髄液および血液バイオマーカーの研究では、これらの技術は費用対効果が高いと結論付けられたが、結果には多少のばらつきが認められた。・方法論的質スコアは、15〜95%の範囲であり、低品質から高品質の研究が混在していることが示された。・研究デザインと報告されたアウトカムの異質性のため、直接比較はできなかった。 著者らは「多くの研究は高品質であったが、研究目的、デザイン、アウトカムの異質性により、エビデンスの統合が制限された。今後の研究では、方法論の一貫性、透明性のある費用報告、新たな治療枠組みの統合を確保し、アルツハイマー病診断における経済的エビデンスの政策的妥当性および信頼性を向上させる必要がある」と結論付けている。

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乳がん診断後の飲酒、予後との関係~メタ解析

 飲酒は乳がん罹患率に影響を及ぼすと考えられる一方で、乳がん診断後の予後との関連については十分に確立されていない。イタリア・University of GenovaのLuca Arecco氏らによる、約250万例を対象としたシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、飲酒は用量依存的な乳がんリスク増加と関連していた一方で、乳がん診断歴を有する患者においては飲酒と予後悪化の間に関連はみられなかった。Breast誌オンライン版2026年2月5日号に掲載の報告。 2025年5月1日までの文献が系統的に検索され、飲酒歴のある女性における乳がんの罹患率、再発率、および生存転帰を報告した、前向きおよび後ろ向き研究が対象とされた。アルコール摂取レベル(少量[≦10g/日または最小摂取群]、中程度[軽度と重度の閾値間の値]、多量[>20g/日または最大摂取群])に応じて解析が行われた。主要評価項目は、乳がんの罹患率、再発率、乳がん特異的生存期間(BCSS)、および全生存期間(OS)とした。統合相対リスク(RR)およびハザード比(HR)を、95%信頼区間(CI)とともに算出した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた5,208件の文献のうち、256万5,920例の女性を含む37件の研究が解析対象とされた。・乳がん罹患率について報告した17件の研究において、摂取レベルを問わず飲酒は乳がん罹患率の増加と関連していた(RR:1.17、95%CI:1.09~1.26、p<0.001)。・乳がん罹患率はアルコール摂取レベルに比例して増加し、少量でRR:1.13(95%CI:1.05~1.23、p=0.002)、中程度でRR:1.28(95%CI:1.18~1.39、p<0.001)、多量でRR:1.52(95%CI:1.38~1.67、p<0.001)であった。・乳がんの転帰について評価した20件の研究において、飲酒と乳がん再発率(RR:1.02、95%CI:0.93~1.11)およびBCSS(HR:0.93、95%CI:0.87~1.00)との間に関連は認められなかった。・少量および中程度の飲酒は、わずかにOSの改善と関連していた(それぞれHR:0.85[95%CI:0.78~0.92、p<0.001]およびHR:0.84[95%CI:0.75~0.94、p=0.002])。ただし、この結果について著者らは、残余交絡因子やその他のバイアスが影響している可能性があるとし、慎重な解釈が必要と考察している。

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更年期のホルモン補充療法、死亡は増加せず/BMJ

 45歳以降に初めて更年期ホルモン補充療法を受けた女性は、受けなかった女性と比較して死亡リスクは増加しないことが、デンマーク・Copenhagen University Hospital HerlevのAnders Pretzmann Mikkelsen氏らの調査で示された。これまでの研究では、更年期ホルモン補充療法後の死亡率は減少または変化なしと報告されていたが、方法論的な限界が指摘されていた。BMJ誌2026年2月18日号掲載の報告。デンマークの45歳以上の約88万例について追跡調査 研究グループは、デンマークに在住し、45歳時点で生存している1950~77年生まれのデンマーク人女性を、45歳の誕生日から2023年7月31日まで追跡した。デンマーク処方箋登録から、更年期ホルモン補充療法の情報が収集された。 主要アウトカムは、デンマークの中央個人登録簿(Central Persons Register)に記録された死亡、副次アウトカムは死因登録簿(Cause of Death Register)より特定した死因に基づく死因別死亡率(心血管疾患、がん、その他)であった。 更年期ホルモン補充療法が死亡リスクに及ぼす影響について、年齢、暦年、分娩回数、学歴、所得分類(四分位に基づく)、出生国、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、心房細動、弁膜症、心不全および44~45歳時の3回以上の医療機関利用歴で調整したCox回帰分析によりハザード比(HR)を推定し評価した。 1950~77年に生まれ45歳時点で生存していたデンマーク人女性は96万9,424例で、このうち、追跡開始前にホルモン補充療法の禁忌(血栓症素因、肝疾患、脳卒中や心筋梗塞を含む動脈血栓症、静脈血栓症、乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん)を有していた女性、45歳以前の更年期ホルモン補充療法または両側卵巣摘出の既往歴がある9万2,619例が除外され、適格基準を満たした87万6,805例を対象に解析した。更年期ホルモン補充療法非曝露に対する曝露の死亡の補正後HRは0.96 追跡期間中央値14.3年(四分位範囲[IQR]:7.9~21.0)において、87万6,805例のうち追跡終了日までに更年期ホルモン補充療法を少なくとも1回処方された女性は10万4,086例(11.9%)、死亡は4万7,594例(5.4%)であった。 更年期ホルモン補充療法曝露群の死亡発生率は1万人年当たり54.9に対し、非曝露群は35.5で、補正後HRは0.96(95%信頼区間[CI]:0.93~0.98)であった。更年期ホルモン補充療法の累積使用期間で層別化した場合の補正後HRは、1年未満で1.01(95%CI:0.98~1.05)、1~2.9年で0.94(0.89~0.98)、3~4.9年で0.90(0.84~0.95)、5~9.9年で0.89(0.84~0.95)、10年以上で0.98(0.90~1.07)であった。 死因別死亡率(心血管疾患、がん、その他)について、曝露群と非曝露群で明確な差は認められなかった。 45~54歳で両側卵巣摘出術を受け、追跡期間中に死亡した703例においては、更年期ホルモン補充療法曝露は非曝露と比較し死亡の補正後HRが27~34%低く、死亡時年齢の中央値は曝露群60.9歳(IQR:55.3~66.6)vs.非曝露群56.6歳(52.9~62.0)であった。

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都市生活者の心臓に良いのは芝生ではなく樹木

 都市部に暮らす人々では、自宅の周辺に樹木が多いという環境が、心血管疾患(CVD)リスクの低さと関連していることが明らかになった。しかしその一方、芝生や背の低い草地の広さは、CVDリスクの高さと関連しているという。 この研究は、米カリフォルニア大学デービス校のPeter James氏らによるもので、詳細は「Environmental Epidemiology」2月号に掲載された。論文の筆頭著者であるJames氏は、「われわれの研究結果は、公衆衛生介入において居住環境の樹木の保護と植樹を優先すべきであることを示唆している。そのような取り組みは、芝生を敷くといったことへの投資に比べて、心臓の健康にメリットをもたらす可能性が高い」と述べている。 James氏らは、Googleなどの情報ソースから入手した、米国の都市部のストリートビュー画像3億5000万枚以上を分析して、樹木や草地などの緑の広さを推定した。ストリートビュー画像を解析するという研究手法を採用した背景として、論文には以下のような説明がある。つまり、これまでにも衛星写真を用いて緑地の豊かさと住民の健康状態との関連を解析する研究は行われてきているが、その手法ではどのような植物の緑地なのかが区別されずに検討されていたとのことだ。James氏も、「衛星写真を用いた解析は多くの貴重な知見をもたらしてきたが、はるか上空からの視点に基づく解析であり、あらゆる植物をひとまとめにしてしまうため、植物の種類の違いという重要な点がマスクされてしまいかねない」としている。 今回の研究では、人工知能(AI)を用いてストリートビュー画像を解析。その地域を歩行する際に目にする可能性のある植物を、(1)樹木、(2)芝生、(3)その他(道路沿いの植え込みや草地など)という3種類に分類して、それぞれの広さを推定した。次に、米国の看護師対象疫学研究(NHS)の女性参加者約8万9,000人のCVDリスクと、各参加者の自宅から500m以内の上記(1)~(3)の広さとの関連を検討した。 その結果、(1)の面積が広いことはCVDリスクが4%低いことと関連していた(四分位範囲当たりのハザード比〔HR〕0.96〔95%信頼区間0.93~1.00〕)。それに対して(2)の面積が広いことはCVDリスクが6%高いことと関連し(HR1.06〔同1.02~1.11〕)、(3)の面積の広さはリスクの3%上昇と関連していた(HR1.03〔1.01~1.04〕)。 研究者らは、芝生や草地などの緑が多いことがCVDリスクの上昇に関連するという結果に驚きを述べている。この意外な関連の理由として、農薬使用量の増加、草刈りの際に生じる粉じんの影響、および、夏季の暑熱緩和作用が樹木に比べて乏しく、騒音や大気汚染の緩和作用も弱いことなど、複数の要因が考えられるとのことだ。そして、都市生活者の健康にとってどのような植物を増やすことが最も良いのかを正しく知るために、さらなる研究が必要だと指摘している。

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