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妊娠中の体重増加と母体および新生児の臨床アウトカムの関連/BMJ

 オーストラリア・モナシュ大学のRebecca F. Goldstein氏らは、世界のさまざまな地域および所得水準の妊産婦を対象とした観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行い、米国医学研究所(IOM)の推奨値を超える妊娠中の体重増加(GWG)は、アウトカムが不良となるリスクの増加と関連していることを示した。著者は、「今回の結果は、WHOが推進している世界各地の周産期アウトカムの改善に向けたGWG基準の最適化プロセスに役立つだろう」としている。BMJ誌2025年11月19日号掲載の報告。コホート研究40件、妊婦約161万人についてレビュー&解析 研究グループは、Embase、EBM Reviews、Medline、Medline In-Process、その他のデータベースを用い、2009年~2024年5月1日に発表された論文を検索した。適格基準は、18歳超の単胎妊娠の女性300例超を対象とし、妊娠前BMIカテゴリー別の総GWG、ならびに研究で定義されたBMIおよびGWG別のアウトカムが報告されている観察研究とした。言語は問わなかった。 主要アウトカムは、出生体重、帝王切開率、妊娠高血圧症候群、早産、在胎不当過小/過大児、低出生体重、巨大児、新生児集中治療室(NICU)入室、呼吸窮迫症候群、高ビリルビン血症、および妊娠糖尿病とした。 検索の結果、2万1,729件の研究が同定され、適格と判定された計40件のコホート研究(妊産婦計160万8,711例)がレビューに包含された。体重増加がIOM推奨値を下回ると、早産、低出生体重児などが増加 コホート全体で、低体重が6%(6万5,114例)、正常体重が53%(60万7,258例)、過体重が19%(21万5,183例)、肥満が22%(25万2,970例)であった(データ入手は114万252例、WHO分類およびアジア人のBMI分類の両方を含む研究で定義されたBMI分類に基づく)。妊娠終了時、GWGがIOM推奨値を下回っていたのは23%、上回ったのは45%であった。 WHOのBMI基準を用いたところ、IOM推奨値を下回るGWGは、出生体重の低下(平均差:-184.54、95%信頼区間[CI]:-278.03~-91.06)、帝王切開分娩(オッズ比[OR]:0.90、95%CI:0.84~0.97)、在胎不当過大児(0.67、0.61~0.74)、巨大児(0.68、0.58~0.80)の低いリスク、早産(1.63、1.33~1.90)、在胎不当過小児(1.49、1.37~1.61)、低出生体重児(1.78、1.48~2.13)、呼吸窮迫症候群(1.29、1.01~1.63)の高いリスクと関連していた。上回ると、帝王切開、妊娠高血圧症候群、在胎不当過大児などが増加 一方、IOM推奨値を上回るGWGは、出生体重の増加(平均差:118.33、95%CI:53.80~182.85)、帝王切開分娩(OR:1.37、95%CI:1.30~1.44)、妊娠高血圧症候群(1.37、1.28~1.48)、在胎不当過大児(1.77、1.62~1.94)、巨大児(1.78、1.60~1.99)、およびNICU入室(1.26、1.09~1.45)の高いリスク、早産(0.71、0.64~0.79)および在胎不当過小児(0.69、0.64~0.75)の低いリスクと関連していた。 アジア人のBMI基準では、GWGが推奨値を下回ると、妊娠高血圧症候群(OR:3.58、95%CI:1.37~9.39)および早産(1.69、1.25~2.30)の高いリスク、在胎不当過大児(0.80、0.72~0.89)の低いリスクと関連し、GWGが推奨値を上回ると帝王切開(1.37、1.29~1.46)および在胎不当過大児(1.76、1.42~2.18)の高いリスク、在胎不当過小児(0.62、0.53~0.74)および低出生体重(0.44、0.31~0.6)の低いリスクと関連した。

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IgA腎症、sibeprenlimabは蛋白尿を有意に減少/NEJM

 IgA腎症患者において、sibeprenlimabはプラセボと比較して蛋白尿を有意に減少させたことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らVISIONARY Trial Investigators Groupが行った、第III相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「VISIONARY試験」の中間解析の結果で示された。IgA腎症の病態形成には、a proliferation-inducing ligand(APRIL)というサイトカインが深く関わると考えられている。sibeprenlimabはヒト化IgG2モノクローナル抗体で、APRILに選択的に結合して阻害する。第II相のENVISION試験では、sibeprenlimabの4週ごと12ヵ月間の静脈内投与により、蛋白尿の減少と推算糸球体濾過量(eGFR)の安定がみられ血清APRIL値の抑制に伴いガラクトース欠損IgA1値が低下した。安全性プロファイルは許容範囲内であった。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。sibeprenlimab 400mg vs.プラセボ、4週ごと100週間皮下投与を評価 VISIONARY試験は31ヵ国240施設で行われ、IgA腎症患者における腎機能温存能の評価を目的に、支持療法との併用によるsibeprenlimab 400mgの4週ごと皮下投与の有効性と安全性を評価した。 生検でIgA腎症と確認された成人患者を、sibeprenlimab 400mgまたはプラセボを4週ごと100週間にわたり皮下投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 今回の中間解析における主要有効性エンドポイントは、ベースラインと比較した9ヵ月時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比であった。 重要な副次エンドポイント(試験完了時に評価)は、24ヵ月にわたるeGFRスロープ(年率換算)であった。その他の副次エンドポイントは、血清免疫グロブリン値の変化、安全性などだった。また、探索的エンドポイントとして、ガラクトース欠損IgA1値および血清APRIL値の変化、随時尿の尿蛋白/クレアチニン比、血尿、および蛋白尿の寛解などが含まれた。24時間尿蛋白/クレアチニン比、sibeprenlimab群がプラセボ群より51.2%低下 計510例が無作為化された(sibeprenlimab群259例、プラセボ群251例)。事前に規定された中間解析(データカットオフ日:2024年9月4日)には、9ヵ月時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比の評価を完了した試験登録当初の320例(sibeprenlimab群152例、プラセボ群168例)が包含された。 両群のベースライン特性は類似していた。320例のうち男性が62.5%、アジア人が59.1%を占め、97.5%がRA系阻害薬を、40.0%がSGLT2阻害薬をそれぞれ試験前に服用していた。年齢中央値は42歳、平均eGFRは63.4mL/分/1.73m2、24時間尿蛋白/クレアチニン比中央値は1.25であった。初回腎生検から無作為化までの期間中央値は1.5年で、おおむねIgA腎症と診断された患者を代表する試験集団であった。 9ヵ月時点で、24時間尿蛋白/クレアチニン比は、sibeprenlimab群では顕著な低下(-50.2%)が認められた一方、プラセボ群では上昇(2.1%)が認められた。24時間尿蛋白/クレアチニン比の補正後幾何最小二乗平均値は、sibeprenlimab群がプラセボ群と比較して51.2%(96.5%信頼区間:42.9~58.2)有意に低かった(p<0.001)。 またsibeprenlimab群では、血清APRIL値が95.8%、病原性ガラクトース欠損IgA1値が67.1%、それぞれベースラインから低下していた。 安全性プロファイルは両群で類似していた。死亡例の報告はなく、治療期間中に報告された重篤な有害事象の発現頻度は、sibeprenlimab群3.5%、プラセボ群4.4%であった。

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日常生活のルーティンの乱れが片頭痛を誘発か

 片頭痛を回避したいなら、退屈な日常生活のルーティンを守る方が良いようだ。新たな研究で、日々のルーティンを大きく乱す予想外の出来事(サプライザル)は、その後12〜24時間以内の片頭痛の発生リスクの上昇に強く関連していることが明らかになった。食べ過ぎや飲み過ぎ、夜更かし、ストレスフルな出来事、予想外のニュース、急激な気分の変化などは、身体に予想外の負荷を与え、片頭痛を引き起こす可能性があるという。米ハーバード大学医学大学院麻酔・救急・疼痛医学分野のDana Turner氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。 今回の研究では、2021年4月から2024年12月にかけて登録された片頭痛患者109人(年齢中央値35歳、女性93.5%)のデータが分析された。研究参加者は、片頭痛の発作と考えられる誘因を日記に記録した。Turner氏らは、参加者ごとに片頭痛の行動・感情・環境的誘因の平均値を算出し、そこから予想外のずれが見られた日を調べた。 その結果、サプライザルの程度が大きい出来事は、その他の要因や個人差を調整した後でも、12時間以内の片頭痛リスクを56%、24時間以内のリスクを88%高めることが示された。 こうした結果を受けてTurner氏らは、「この研究結果は、個人の経験が通常のパターンからどの程度逸脱しているかが、近い将来の片頭痛リスクを予測する指標となり得ることを示している。この研究結果は、片頭痛の治療では、考えられる一連の原因にとどまらず、日常生活の予測不可能で状況依存的な特徴を考慮したパーソン・センタード・アプローチが重要であることを支持している」と結論付けている。 米ノースウェル頭痛センター所長のNoah Rosen氏は、この結果について、「その大部分が私も含めた多くの人々が抱いている片頭痛のイメージ、すなわち刺激の変化に対する過剰な反応として現れることが多いというイメージに一致している」とニュースリリースの中で述べている。また、同氏は「われわれの身体は、適切な量の食事、睡眠、水分補給により恒常性(ホメオスタシス)を維持している。片頭痛はその一部が乱れたときに作動する警報システムのようなものかもしれない」と付け加えている。 このことは、片頭痛患者のうち特定の誘因を特定できている人の割合が70%にとどまる理由かもしれないとRosen氏は言う。片頭痛患者は通常からのずれではなく、特定の要因を見つけようとしているのだ。同氏は、「サプライザルとは、日常の活動から外れていたり、普段とは異なる反応が求められたりすることと言えるだろう。突然のストレスフルな出来事には、トラウマになる経験や喧嘩、予想外の悪いニュース、あるいは良いニュースも含まれる。仕事、学校、家庭での日常の活動が他の出来事によって中断されるような状況もこれに該当する」と説明している。 Turner氏らは今後の研究で、「予想外の出来事を調査するためのより精度の高い方法を探るべきである」と述べている。また、こうした方法が見つかれば、片頭痛患者が発作に備える助けになる可能性があるとの見方を示している。

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領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療

腎臓と泌尿器の専門医が得意分野を紹介「小児診療 Knowledge & Skill」第3巻腎・泌尿器疾患は、尿の生成・輸送を担う腎臓・尿管、蓄尿・排泄を担う膀胱・尿道の2つの領域にわたる。一連のしくみは密接に関わり、腎臓と泌尿器の専門医がともに得意分野を紹介。日本では3歳児検尿と学校検尿の普及により、小児科医が腎疾患の早期発見に寄与している。尿路感染症、夜尿症など身近な疾患から、専門的なネフローゼ症候群、糸球体疾患まで、臨床に活かすセレンディピティ。本書のポイント小児の腎臓病学と泌尿器科学の2つの領域を横断的にまとめたとらえ方が難解な腎・泌尿器疾患を14の章立てによりシステマティックに提示し、外来から専門医につなぐタイミングをコラムでガイド専門的な画像検査所見、病理所見、症例写真を多数紹介DOHaD、先天性腎尿路異常(CAKUT)が影響する小児の腎・泌尿器疾患、出生前から始まる慢性腎臓病(CKD)への予防を見据えた画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療定価9,350円(税込)判型B5判(並製)頁数376頁発行2025年11月総編集加藤元博(東京大学 教授)専門編集張田 豊(東京大学 准教授)ご購入はこちらご購入はこちら

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第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の「メリハリ」

診療報酬「本体」は引き上げの方向こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。師走となり、診療報酬改定の議論が白熱してきました。各紙報道によれば、診療報酬のうち医薬品などの「薬価」部分は小幅引き下げの見通しの一方、医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分は2024年度改定以上の引き上げが見込まれ、全体ではプラス改定となりそうです。12月7日のNHKも、「政権幹部の1人は『高市総理大臣は、引き上げに意欲を見せており、プラス改定になる方向だ』と話すなど、人件費などに充てられる『本体』の引き上げ幅が焦点となる見通しです」と報じています。最大の関心事は病院と診療所それぞれに対する配分引き上げ幅はもちろん重要ですが、医療関係者の最大の関心事は病院と診療所、それぞれに対する配分でしょう。医療経済実態調査や財政審の「秋の建議」など、次期改定を左右する様々な発表が相次ぎ、事態は混沌としています。全国各地の病院の窮状に加え、今年は日本維新の会が自民党との連立政権に加わったことで、診療所院長が主な構成員である日本医師会にとってはいつになく厳しい状況となっています。最近では新聞だけではなくテレビでも、病院経営の苦しさが連日のように報道されています。日本医師会は「財務省の『二項対立による分断』には、絶対に乗ってはいけない」(11月29日に開かれた九州医師会連合会における日本医師会の松本 吉郎会長の発言)と警戒感をあらわにしています。特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字関連する最近の発表をおさらいしましょう。まず、医療経済実態調査です。次期診療報酬の改定に向けた基礎的な資料となるものですが、病院の経営状況の悪さが改めてクローズアップされました。厚生労働省は11月26日、中医協の調査実施小委員会と総会で第25回医療経済実態調査の結果を公表しました。今回の調査は2023~24年度の経営状況が対象となり、1,167の病院(回答率50.2%)、医療法人立と個人立を合わせて2,232の診療所(同54.9%)から回答を得ています。それによると、一般病院の開設主体別では、医療法人(402施設)は2023年度がマイナス1.1%、2024年度がマイナス1.0%でほぼ横ばい、公立(130施設)はマイナス17.1%からマイナス18.5%へ悪化、国立(24施設)はマイナス5.8%からマイナス5.4%、公的(51施設)はマイナス5.5%からマイナス4.1%と若干改善したものの赤字幅は依然大きいままでした。医業損益は、病院全体で67.2%、一般病院で72.7%が赤字でした。経常損益でも病院全体で58.0%、一般病院で63.3%が赤字でした。とくに特定機能病院は70.7%、高度急性期病院は69.0%が経常赤字で、急性期病院の苦境が際立っていました。診療所経営も悪化したものの病院ほどではない一方、診療所ですが、医療法人立の無床診の損益率は2024年度が5.4%と、2023年度の9.3%から悪化しました。医療法人立の無床診の平均損益率は診療科で差が大きく、低かったのは外科(回答49施設)0.4%、精神科(25施設)1.6%、産婦人科(35施設)2.7%、整形外科(143施設)3.1%、内科(581施設)が4.2%、小児科(86施設)4.7%などでした。一方、高い収益を上げたのは耳鼻咽喉科(91施設)の9.5%、眼科(96施設)の8.7%、皮膚科(71施設)の8.1%などでした。なお、個人立の無床診療所は院長等の報酬が費用に含まれないために数値が高く出る傾向がありますが、2024年度は29.1%と、2023年度(32.3%)から低下しました。端的に言えば「病院はとても厳しい、診療所もそこそこ厳しいものの、病院ほどではない」というのが医療経済実態調査の結果ということになります。このままでは「分が悪過ぎる」と考えたのでしょうか? 日本医師会の江澤 和彦常任理事は12月3日の定例記者会見で、「病院・診療所共に経営の悪化は深刻であり、存続が危ぶまれる状況が明白になった」と指摘。「病院はすでに瀕死の状態であり、ある日突然倒産するという事態が全国で起きている」ことに危機感を示し、診療所も約4割が赤字であるとして、「規模が小さく脆弱な診療所は、これ以上少しでも逆風が吹けば、経営が立ち行かなくなる」と語り、危機に直面しているのは病院だけではないことを強調しました。財務省は「メリハリ」強調、診療所の診療報酬の適正化を提案医療経済実態調査が公表された6日後の12月2日には、財務省の財政制度等審議会(十倉 雅和会長・住友化学相談役)が、「2026年度予算の編成等に関する建議」(通称、秋の建議)を取りまとめ、片山 さつき財務相に手渡しました。秋の建議では2026年度診療報酬改定について「メリハリある診療報酬の配分を実現することは、財政当局や保険者にとって極めて重要なミッションと言えよう。これを実現するためには、医療機関の経営状況のデータを精緻に分析することが必要である。特に物価・賃金対応については、医療機関の種類・機能ごとの経営状況や費用構造に着目した上で、本来は過去の改定の際に取り組むべきであった適正化・効率化を遂行することも含め、メリハリときめ細やかさを両立させた対応を強く求めるものである」と「メリハリ」という言葉を何度も使って医療機関の種類・機能ごとに差を付けるべきだと主張しました。その上で、「1)赤字経営の診療所が顕著に増加しているという主張もあるが、医療機関の経営状況に関する厚生労働省等のデータによると、物価高騰の中でも、診療所の利益率や利益剰余金は全体として高水準を維持していること、2)他職業との相対比較における開業医の報酬水準の高さは国際的にも際立っていることなどを踏まえ、診療所の診療報酬を全体として適正化しつつ、地域医療に果たす役割も踏まえて、高度急性期・急性期を中心とする病院やかかりつけ医機能を十全に果たす医療機関の評価に重点化すべきである」と、診療報酬の病院への重点配分と診療所の診療報酬の適正化を改めて主張しています。11月に開かれた財政制度等審議会・分科会での主張とほぼ同じで、診療所をターゲットとしている点は変わりません。秋の建議の社会保障関連ではその他、「かかりつけ医機能の報酬上の評価」の再構築、リフィル処方箋の拡充、OTC類似薬を含む薬剤の自己負担の見直しなど提言しています。「かかりつけ医機能の報酬上の評価」は個々の診療報酬についても言及、かかりつけ医機能報告制度上、基本的な機能を有していない診療所の初診料・再診料の減算措置導入や、外来管理加算や特定疾患管理料、生活習慣病管理料などの適正化を求めています。なお、昨年の秋の建議まで、財務省が繰り返し提言してきた「診療報酬の地域別単価の導入」は、今回は盛り込まれませんでした。経団連、健保連、維新も「メリハリ」求めるこうした動きの中、診療報酬の「メリハリ」を求める声は各方面からも高まっています。経団連(日本経済団体連合会)は11月28日、健康保険組合連合会や日本労働組合総連合会(連合)など医療保険関係5団体と共に、上野 賢一郎・厚生労働大臣と面会し、2026年度診療報酬改定に関する共同要請を行いました。要請では、「高齢化に相当する医療費の増加に加え、医療の高度化等により医療費が高騰し続け、被保険者と事業主の保険料負担は既に限界に達している」状況下での診療報酬改定について、「基本診療料の単純な一律の引上げは、病床利用率や受療率の低下による影響を含めて医療機関の減収を医療費単価の増加によって補填する発想であり、患者負担と保険料負担の上昇に直結するだけでなく、医療機関・薬局の経営格差や真の地域貢献度が反映されず、非効率な医療を温存することになるため、妥当ではない」と従来の「単純な一律の引上げ」を批判、その上で、「優先順位を意識し、確実な適正化とセットで真にメリハリの効いた診療報酬改定を行うこと。その際には、診療所・薬局から病院へ財源を再配分する等、硬直化している医科・歯科・調剤の財源配分を柔軟に見直すこと」と、病院への重点配分を強く求めています。さらに、12月4日には日本維新の会が社会保障制度改革の推進を求める申し入れを高市 早苗首相に手渡しています。申し入れでは、2026年度診療報酬改定について、「診療所の経営状況の違いを踏まえた入院と外来のメリハリ付け、医科・歯科・調剤の固定的な配分の見直しなど診療報酬体系の抜本的な見直しを行うこと」を求めるとともに、「抜本的見直しの方向性について、中央社会保険医療協議会に任せることなく、年末に政治の意思として決定し、示すこと」を要請しました。「今やらないでいつやる?」と病院団体の関係者は思っているのでは日本医師会は「二項対立による分断」と言いますが、そもそも病院経営と診療所経営の”格差”を形作ってきた一因は日本医師会にもあるのではないでしょうか。年末に診療報酬の改定率が決まった後も、年明けの中央社会保険医療協議会総会で、2026年度診療報酬改定の答申が行われるまで「メリハリ」を巡る戦いは続くでしょう。「今やらないでいつやるんだ」と病院団体の関係者は思っているに違いありません。次期改定で本当の意味での「メリハリ」が付けられるかどうか、今後の議論の行方に注目したいと思います。

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「教育レベル」が看護管理者のメンタルヘルスを左右する?【論文から学ぶ看護の新常識】第42回

「教育レベル」が看護管理者のメンタルヘルスを左右する?COVID-19後の看護管理者を対象とした研究により、最も多く見られた問題は「ストレス」と「心理的苦痛」であり、特に「個人の学歴」がそれらの有意な予測因子であることが示された。Majed Mowanes Alruwaili氏の研究で、Journal of Nursing Management誌2024年6月14日号に掲載の報告を紹介する。COVID-19後の時代における看護管理者の心理的プロファイル:看護リーダーシップへの示唆サウジアラビアの看護管理者における抑うつ、不安、ストレス、および心理的苦痛のレベルを調査するために、横断研究を実施した。2023年8月から2024年2月にかけて、アラビア語翻訳版の抑うつ・不安・ストレス尺度(The Depression Anxiety Stress Scales-21:DASS-21)を使用し、オンラインプラットフォームにてデータを収集した。データ分析には重回帰分析を用いた。主な結果は以下の通り。COVID-19後の時代において、看護管理者の間で最も多くみられる問題は「ストレス」と「心理的苦痛」であった。個人の最終学歴は、不安(B=−1.60、95%信頼区間[CI]:−2.83~−0.38)、ストレス(B=−1.78、95%CI:−3.32~−0.25)、および心理的苦痛(B=−4.83、95%CI:−8.38~1.28)に対する唯一の有意な予測因子であった(いずれもp<0.05)。看護管理者の国籍は、ストレスの結果と相関していた(B=2.48、95%CI:0.35~4.61、p<0.05)。看護管理者は、危機的状況にさらされた場合、ストレスや全般的なメンタルヘルスの問題に苦しむ可能性が極めて高い。管理者の抑うつ、不安、ストレスを軽減するため、適切なタスクの委任を含むさまざまな戦略が検討できる。医療現場の最前線で指揮を執る看護管理者に対する期待と業務負荷は高まっています。今回紹介するのは、サウジアラビアの看護管理者を対象に行われた精神衛生に関する横断研究です。COVID-19パンデミック以降実施されたこの調査において、看護管理者の中で最も頻繁にみられた問題は「ストレス」と「心理的苦痛」でした。本研究で最も注目すべき発見は、「個人の学歴」が心理的苦痛の有意な予測因子であった点です。これは、修士号保有者ほど、高度な教育課程で培われる批判的思考や問題解決能力、そして広い視野が、パンデミックのような未曾有の危機において、複雑な状況を整理し対処するための強力な「武器」として機能したためと考えられます。逆に言えば、十分な教育的準備なしに管理職の重責を担うことは、精神的リスクを高める可能性があるということです。この知見は、日本の臨床現場のリーダー育成においても重要な意味を持ちます。高度な専門教育を受けた高度実践看護師、そして管理職が学ぶ知識やスキルは、単に業務をこなすためだけのものではなく、組織的な重圧や困難な意思決定に伴うストレスから、自身のメンタルヘルスを守るための「防波堤」にもなります。今後のキャリア支援においても、管理職に任命するだけでなく、その役割に見合った教育の機会を十分に提供することが求められます。最後に、管理者の皆さん!いつもマネジメントお疲れ様です!学びを力に変えて、どうか自身を追い込み過ぎず、無理しすぎないようにしてくださいね。論文はこちらAlruwaili MM. J Nurs Manag. 2024;2024:8428954.

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第296回 脳の水はけをよくする手術がアルツハイマー病患者に有効

脳の水はけをよくする手術がアルツハイマー病患者に有効脳全域の水流を生み出す細道が10年以上前に見つかり、以来、その謎めいた水路がアルツハイマー病などの神経変性疾患に寄与しているかどうかが検討されるようになりました。今や時代は進み、その流れを改善する方法が実際にヒトで試験されるに至っています。米国・サンディエゴでの先月11月中旬のSociety for Neuroscience(SfN)学会では、脳の水流を改善する薬やその他の手段の手始めの検討の有望な成果をいくつかのチームが発表しています。動物やヒトの脳から有毒なタンパク質を除去しうることや、神経変性疾患を模すマウスの症状を回復するなどの効果が得られています1)。とくに中国での取り組みは随分と先を行っており、アルツハイマー病の特徴のタンパク質を洗い流すのを後押しする手術をヒトに施した成果がこの10月初めに報告されました。その成功の宣言を心配する向きがある一方で歓迎もされました。その有望な成果に触発された米国の外科医のチームは、よりしっかりとした臨床試験を計画しており、早ければ来年早々にアルツハイマー病患者の組み入れを始めるつもりです。手術の試みはとても信じられないとワシントン大学の神経科学者Jeffrey Iliff氏はScience誌に話しています。しかし、13年前には知る由もなかった脳の水路が見つかったように、手術は効かないといういわれはないと同氏は言っています。さかのぼること13年ほど前の2012年に、他でもないIliff氏とその同僚が脳の細胞のアストロサイトによって形成される脳の水路一帯を初めて報告しました2)。Iliff氏らはそれをグリンパティック経路と名付けました。グリンパティック経路は脳の血管の周りに形成され、収縮と弛緩を繰り返すことで脳脊髄液(CSF)を押し出します。そうして血管に沿って流れていく間に脳の奥深くからの老廃物が回収され、髄膜リンパ管を経由して首のリンパ節に至り、やがては血流に排出されます。グリンパティック経路の活動は就寝中に最も盛んで、不眠、外傷性脳損傷(TBI)、脳血管疾患で妨げられます。そのような何らかの要因で脳の洗浄が滞ることと認知症を生じやすくなることの関連が調べられるようになっており、たとえばIliff氏らがmedRxiv誌に最近掲載した研究成果では、ヒトのグリンパティック経路がアルツハイマー病を特徴づける2つのタンパク質、ベータアミロイドとタウを睡眠中に脳の外に排出することが示されています3)。中国で開発された脳を洗い流す外科処置はリンパ浮腫の一般的な治療手段に似たもので、dcLVA(deep cervical lymphovenous anastomosis)と呼ばれます。dcLVAは首のリンパ節やリンパ管を頸静脈に繋いで脳の排水の向上を目指します。2020年に中国の形成外科医のQingping Xie氏がアルツハイマー病患者にdcLVAを初めて施しました。今やXie氏はその治療を中国やその他の国に向けて宣伝しています。他にも熱心な研究者は多いらしく、最近の報告によると今年7月1日時点で30弱の臨床試験の登録があり、アルツハイマー病患者およそ1,300例が組み入れられたか組み入れ予定となっています4)。先に触れたとおり、この10月初めには中国の鄭州大学のJianping Ye氏らが最もまとまった症例数のdcLVA手術の成績を報告しました。同国の軽~中等度のアルツハイマー病患者41例にdcLVAが施され、脳の排水の指標とされたAβやタウの血液やCSFの値の改善が3ヵ月時点の検査でおよそ3例に2例以上にみられました5)。また、病院での3ヵ月時点の認知機能検査で18例中9例のアルツハイマー病は進行が止まってむしろ回復傾向にありました。Ye氏らの報告には批判の声もあり、その中には中国の神経外科医からのものも含まれます。アルツハイマー病を脳のリンパ浮腫の一種とみなすYe氏らの考えを疑う研究者もいます。グリンパティック経路の不調の多くはアストロサイトの内側を発端としており1)、詰まりを取り除けば済むという話ではなさそうだからです。一方、Ye氏らの試験がだいぶ拙いとは知りつつもその有望な成績に見入ってしまった研究者もいます。米国のエール大学の形成外科医のBohdan Pomahac氏はdcLVAをさらに突っ込んで研究すべく、ワシントン大学のチームと組んで動物実験を行っています。すべてうまくいって今月の資金集めが済んだら、慎重に選定した初期アルツハイマー病患者にdcLVAを施す臨床試験をPomahac氏は開始するつもりです1)。手術ではなく薬で脳の水はけをよくする試みも研究されており、家の配管を定期的に掃除するように脳のグリンパティック経路を定期的または日常的に手入れする手段がやがては実現するかもしれません。参考1)Brain’s ‘plumbing’ inspires new Alzheimer’s strategies-and controversial surgeries / Science 2)Iliff JJ, et al. Sci Transl Med. 2012;4:147ra111.3)Dagum P, et al. The glymphatic system clears amyloid beta and tau from brain to plasma in humans. medRxiv. 2025 Oct 16.4)Lahmar T, et al. J Prev Alzheimers Dis. 2026;13:100335.5)Ma X, et al. J Alzheimers Dis Rep. 2025;9:25424823251384244.

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終末期がん患者の反跳性離脱症状を発見して処方再開を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第70回

 今回は、終末期がん患者における薬剤性の反跳性離脱症状を早期に発見し、処方再開を提案した症例を紹介します。がん患者では、疼痛管理や不眠に対して複数の薬剤が併用されることがありますが、全身状態の悪化に伴い服用が困難になることがあります。服用困難という理由だけで急に中止するのではなく、離脱症状のリスクを総合的に評価し、適切な漸減・代替薬への切り替えを検討することが重要です。患者情報79歳、男性(施設入居)基礎疾患小細胞肺がん(T2aN3M1c、StageIV ED)、頸髄損傷後遺症、神経因性膀胱、狭心症(時期不明)治療経過2025年6月に小細胞肺がんと診断され、7月より薬物治療(カルボプラチン+エトポシド+デュルバルマブ)を開始した。しかし発熱性好中球減少症・敗血症性ショックにより再入院。8月に家族へ病状を説明した後、緩和ケアへ移行する方針となり、施設へ転院・入居となった。社会・生活環境ほぼ寝たきり状態、自宅受け入れ困難のため施設入居ADLほぼ寝たきり状態処方内容1.ベザフィブラート錠50mg 1錠 分1 朝食後2.アジルサルタンOD錠20mg 1錠 分1 朝食後3.エチゾラム錠0.5mg 1錠 分1 就寝前4.クロピドグレル錠75mg 1錠 分1 朝食後5.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 夕食後6レンボレキサント錠5mg 1錠 分1 就寝前7.トラマドール・アセトアミノフェン配合錠 3錠 分3 毎食後8.ドキサゾシン錠1mg 1錠 分1 就寝前9.トラゾドン錠25mg 2錠 分1 就寝前10.プレガバリンOD錠75mg 1錠 分1 就寝前11.フロセミド錠20mg 1錠 分1 朝食後12.ロスバスタチン錠2.5mg 1錠 分1 夕食後13.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイント施設に入居して約1ヵ月後、誤嚥リスクと覚醒(意識)レベルの低下により全内服薬が一時中止となりました。食事摂取量は0~5割とムラがあり、尿路感染症に対してST合剤内服を開始しました。その後、患者さんは右足先の疼痛を訴え、アセトアミノフェン坐剤を開始しても効果が不十分な状態となりました。傾眠傾向にはあるものの、夜間の入眠困難もありました。問題点の評価患者さんの状態から、プレガバリン(半減期約6時間)とトラゾドン(半減期約6時間)の中断により、反跳性離脱症状が出現した可能性があると考えました。プレガバリンは電位依存性Caチャネルのα2δサブユニットに結合し、神経伝達物質の放出を抑制する薬剤であり、突然の中止により不眠、悪心、疼痛の増悪などの離脱症状が出現することが報告されています。トラゾドンについても、抗うつ薬の中止後症候群として不安、不眠、自律神経症状(悪心・嘔吐)が出現することがあります。また、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠の中断による除痛効果の喪失と、プレガバリンの中断による中枢性GABA様調節の急変が、疼痛と自律神経症状の悪化に関与している可能性もあります。頸髄損傷後遺症を有する本患者にとって、プレガバリンは神経障害性疼痛の管理に有効かつ重要な薬剤と推察しました。医師への提案と経過診察へ同行した際に、医師に以下の内容を伝えました。【現状報告】全内服薬中止後に右足先の疼痛が持続し、アセトアミノフェン坐剤では十分な除痛効果が得られていない。夜間の入眠困難が続いている。傾眠傾向はあるものの睡眠の質が低下している。【懸念事項】プレガバリンとトラゾドンの急な中止により反跳性離脱症状が出現している可能性がある。プレガバリンは神経障害性疼痛の管理に有効であり、頸髄損傷後遺症を有する患者にとって重要な薬剤である。プレガバリンの中止により中枢性GABA様調節の急変が自律神経症状の悪化に寄与している可能性がある。その上で、プレガバリン75mg 1錠とトラゾドン25mg 1錠を就寝前に再開することを提案しました。就寝前の1回投与にすることで服薬負担を最小限にしつつ、離脱症状の軽減と疼痛・睡眠の改善を図ることができるためです。また、疼痛と睡眠状態のモニタリングを継続し、効果判定を行うことも提案しました。医師に提案を採用いただき、プレガバリン75mg 1錠とトラゾドン25mg 1錠を就寝前に再開することになりました。再開後、疼痛は軽減傾向を示し、アセトアミノフェン坐剤の使用頻度も減少しました。睡眠状態も改善し、夜間の入眠が得られるようになりました。覚醒(意識)レベルについても徐々に軽快しました。振り返りと終末期がん患者での注意点本症例では、疼痛の増悪が単に疾患の進行によるものではなく、プレガバリンの離脱による反跳性の症状である可能性を考慮しました。このような薬剤性の症状を見逃さないためには、処方歴の確認と薬剤の薬理作用・半減期の理解が不可欠です。さらに、症状の原因を多角的に評価することが重要になるため、医師や施設スタッフとの密な連携により、症状の経時的変化を把握して適切なタイミングで処方調整を提案することが求められます。終末期がん患者における薬物療法の最適化では、不要な薬剤を中止することも重要ですが、必要な薬剤を適切に継続・再開することも同様に重要です。本症例では、離脱症状のリスクを評価し、患者さんのQOL維持のために必要な薬剤の再開を提案することで、服薬負担を最小限にしつつ離脱症状を回避することができました。薬剤師として、薬剤の薬理作用と離脱症状のリスクを理解し、患者さんの症状変化を注意深く観察することで、終末期患者の苦痛緩和に貢献できます。参考文献1)厚生労働省医薬食品局:医薬品・医療機器等安全性情報No.308(2013年12月)2)トラゾドン添付文書情報

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WHOが結核の症例数や死亡者数の最新データを公表

 世界保健機関(WHO)が11月12日に公表した最新データによると、2024年の世界での結核の推定発症者数は2023年の1080万人から1%減の1070万人、結核による推定死亡者数は2023年の127万人から3%減の123万人といずれも減少した一方、新規診断数は2023年の820万件から微増して830万件であったという。2024年の新規診断数は推定発症者数の78%に当たり、いまだに多くの人が結核の診断を受けていないことが浮き彫りとなった。WHOは、診断、予防、治療において着実な進歩が見られる一方で、資金調達と医療への公平なアクセスにおける問題は残っており、これまでに得られた結核対策の成果が失われる恐れがあると指摘している。 結核は結核菌により引き起こされる感染症で、好発部位は肺である。結核の感染経路は、活動性結核の人の咳やくしゃみにより放出された菌を吸い込むことによる空気感染や飛沫感染である。世界人口の約4分の1が結核菌を保有しているが、実際に発病するのはごくわずかである。結核は、未治療で放置すると致命的になる可能性があり、依然として世界中で死亡原因の上位を占めている。 この報告書は、184のWHO加盟国・地域から報告されたデータに基づくもの。WHOは、新規診断数の増加は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に減少した診断数の回復を反映している可能性があるとの見方を示している。 一部の国や地域では、政治的関与や投資による結核対策の成果が着実に現れている。2015年から2024年の間に、WHOアフリカ地域では結核発症率が28%、死亡者数は46%減少した。ヨーロッパ地域ではさらに大きな改善が見られ、発症率は39%、死亡者数は49%減少した。同期間中に、100カ国以上が結核発症率を20%以上、65カ国が結核による死亡者数を35%以上減少させた。 ただし、結核を世界的に終息させるには、依然として高負荷国での取り組みを加速させる必要がある。2024年には、世界での結核発症者の87%が30カ国に集中しており、特に上位8カ国(インド、インドネシア、フィリピン、中国、パキスタン、ナイジェリア、コンゴ共和国、バングラデシュ)だけで67%を占めている。 その他、結核の迅速検査実施率は、2023年の48%から2024年には54%に増加したことや、薬剤感受性結核の治療の成功率は88%と依然として非常に高いこと、薬剤耐性結核を発症する人は減少傾向にあり、治療成功率も2023年の68%から2024年には71%に改善したことなど、結核治療の向上も確認された。 このような進歩が確認されたものの、WHOは、世界全体の結核終息戦略の進捗状況は目標達成にはほど遠い状況だと警鐘を鳴らす。大きな障害となっているのは、2020年以降停滞している結核対策への国際的な資金であり、2024年時点で、予防、診断、治療に使うことができた資金はわずか59億米ドル(1ドル157円換算で9263億円)に過ぎず、2027年までに設定された目標額である年間220億米ドル(約3兆4540億円)の4分の1強にとどまっている。WHOは、米国における最近の予算削減により結核対策の進展はさらに遅れる可能性があるとの懸念を示している。

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育児とキャリアの共存戦略―女性医師26名が語るジレンマ構造―

女性医師は仕事と子育てを両立できる?インタビューから構造的問題を分析!出産後、多くの女性が仕事と家庭のトレード・オフの問題に直面します。常勤を続ける者、離職する者、復帰を選ぶ者/選ばない者……。彼女たちの育児とキャリアに影響を与えたものは、一体何でしょうか?本書では、「女性医師」に焦点を当て、26名の当事者にインタビューを行いました。「女性医師」という専門的な職種ながら、彼女たちがぶつかる問題は、現代の日本で働く女性ならば誰しもに共通するものです。ハイキャリアな「医師」という仕事を選んだ女性でさえ、時には意にそぐわずキャリアを諦めることもある。その事実の裏にこそ、個人の「努力」だけでは埋められない構造的な問題が横たわっています。働く女性だけでなく、働く男性や家族、部下を持つ管理職や人事にまで読んでいただきたい1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する育児とキャリアの共存戦略―女性医師26名が語るジレンマ構造―定価2,178円(税込)判型四六判頁数240頁発行2025年11月著者内藤 眞弓ご購入はこちらご購入はこちら

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だれも教えてくれなかった ホルター心電図の読み方、使い方

はじめてでもデキる! 12誘導心電図にはない読み方が、ここにホルター心電図は24時間以上の日常における心臓の異常を記録することができ、リスクの高い不整脈や狭心症の診療上不可欠な検査となっている。しかし、膨大なデータから危険な心電図を鑑別することは容易ではない。本書では、発作の始まりから終わりまでの全貌を見渡すことができるホルター心電図の特性を活かした読み方、使い方を初心者にもわかりやすい内容で解説する。また、オーダー医にほめられること間違いなしのホルターレポートの「型」は、判読医必見である。「大量で長い心電図は苦手!」を、楽しいホルターライフへと変える道標となる本。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するだれも教えてくれなかった ホルター心電図の読み方、使い方定価3,520円(税込)判型A5判頁数160頁(図数:24枚、カラー図数:70枚)発行2025年11月著者荻ノ沢 泰司ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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ファーストクラスに乗ろう!【Dr. 中島の 新・徒然草】(609)

六百九の段 ファーストクラスに乗ろう!今年の新語・流行語大賞は高市首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」に決定したのだとか。確かに、2025年の日本を一言で表すに相応しい流行語のように思います。さて、今回は夢のファーストクラスについて。実は私の弟が『60歳からの世界一周旅行』という本を出版したので、その紹介も兼ねて述べたいと思います。サラリーマンの弟は趣味が旅行で、ポイ活やマイル修行はもちろんのこと、あらゆる航空会社の料金体系を研究してきました。その結果、驚くべき発見をしたのです。この本によると、2025年某月某日の某航空会社で羽田からニューヨークまでファーストクラスに乗ると、正規料金が片道219万円と超高額なのですが、羽田~ニューヨークを含む東回り世界一周航空券のファーストクラス正規料金は何と114万円ちょっと!この世界一周は全部で4便に乗ることになるのですが、これを別々に購入すると約630万円になるそうです。でもこの4便をまとめると114万円ですよ。しかも羽田~ニューヨークの片道料金より安い!「何かの間違いなんでねえの?」と思ってしまいます。もちろん114万円でも高額には違いありませんが、ケアネット読者なら手が届く料金ではないでしょうか。弟が実際にファーストクラスに乗ってみると、至れり尽くせりで、正規料金を支払っていても申し訳なく感じるほどのホスピタリティだったのだとか。とはいえ、「世界一周航空券なんか買ってしまったら、何日もかけて無理に地球を一周させられるんじゃないのか」という疑問が起こってきます。が、航空会社によっては1年間有効で3分割可能になっているそうです。これにはたくさんの細かいルールがあり、「日本国内での途中降機は2回まで」「出発空港に戻るとゲームオーバー」など、いろいろなことを頭に入れておかなくてはなりません。もう一つの疑問は、こういった格安航空券を入手するためには、マイルを貯める必要があるのでは、ということ。先に述べたように、今回紹介した世界一周航空券は正規料金なので、とくにマイル修行は必要ないのだとか。弟のポイ活やマイル修行は、ホテルチェーンや航空会社のステイタスを維持するためのものなので、今回のファーストクラス旅行とは別目的のようです。その他、いろいろなノウハウがこの本には書かれていますが、あまりにも多いので、読んでいて頭が痛くなりました。また、航空会社の料金体系は絶えず変化しているので、常に最新の情報を知っておく必要があるそうです。最後にサラリーマンならではの注意点に触れておきましょう。それは「決して空港で上司に出くわしてはならない」というもの。うっかりファーストクラスから降りてきたところを上司に目撃されたら、その後にどんな扱いが待っているか、わかったものではありません。「中島くんには海外勤務が向いていそうだね」とか言われて、離島営業所への異動もありえます。このことはくれぐれも気を付けるよう、著者自らが語っていました。まさしく「あるある」ですね。ということで、私なりに『60歳からの世界一周旅行』を語りました。ザッと目を通しただけなので、理解が間違っている部分があるかもしれません。興味を持った読者がおられたら、実際に本を手にとっていただくようお願いいたします。最後に1句 年末や ファーストクラス 夢にみる書籍情報60歳からの世界一周旅行ファーストクラスなのに、想像よりずっと安い! 買い方を工夫すれば誰でも世界の空へ定価1,760円(税込)頁数184頁著者中島 準発売日2025年11月27日出版セルバ出版ご購入はこちらご購入はこちら

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疱疹状皮膚炎〔dermatitis herpetiformis〕/ジューリング疱疹状皮膚炎〔dermatitis herpetiformis Duhring〕

1 疾患概念■ 定義自己免疫性水疱症は、皮膚の自己抗原に対する自己抗体により全身の皮膚や粘膜に水疱性の皮膚病変を生じる難病で、多数の疾患に分類される1)。疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis:DH)/ジューリング疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis [Duhring])は自己免疫性水疱症の一型で、皮膚難病の1つである。公的な研究班としては、以前、厚生労働省難病研究班「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班(橋本班)」で研究されていたが、現在は中止している。また、厚労省難病研究班「稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究(秋山班)」では各種の自己免疫性水疱症の研究を行っているが、疱疹状皮膚炎は含まれていない。臨床的に主に水疱・紅斑・湿疹様病変を示し、病変生検皮膚の組織学的検査で真皮乳頭部の好中球性微小膿瘍と表皮下水疱を示し、蛍光抗体直接法検査で表皮基底膜部の下部にIgAの顆粒状沈着を認める。治療としてはジアフェニルスルホン(DDS)/ダプソン(商品名:レクチゾール)の内服が著効する。■ 疫学あらゆる年齢に発症するが、30~40歳に多い。欧米の白人、とくに北欧諸国、フィンランドで多くみられるが、アジア人や黒人ではまれである。わが国では非常に少なく、今までに100例程度しか報告がない2,3)。これは遺伝的背景があり、疱疹状皮膚炎に関連するHLA(HLA-B8、HLA-DR4、HLA-DQ2、HLA-DQ8など)がわが国には非常に少ないことが原因と考えられる。欧米では、疱疹状皮膚炎はグルテン過敏性腸炎を示すセリアック病の皮膚症状と考えられているが、わが国ではセリアック病の合併がほとんどない2,3)。わが国では蛍光抗体直接法で顆粒状のIgA沈着に加えて、細線維状のIgA沈着を示す症例が多いことも特徴である。■ 病因欧米ではセリアック病との関連が考えられているが、わが国では疱疹状皮膚炎とセリアック病の合併はほとんどないので、セリアック病やグルテン過敏性腸炎との関連は否定的である。表皮トランスグルタミナーゼ/トランスグルタミナーゼ3(TG3)に対するIgA自己抗体が、何らかの機序で表皮基底膜部に顆粒状に沈着することが原因である可能性がある。表皮細胞が産生するTG3が何らかの機序で、表皮下に移動し、そこで抗原抗体反応が生じる可能性が示唆されている。■ 症状全身、とくに肘、膝、臀部に、周辺に小水疱を環状に配列する浮腫性紅斑を認める(図1)。掻痒感が非常に強いため、掻破により湿疹様病変を生じる。粘膜疹は認めない。全身症状はない。欧米では、グルテン過敏性腸炎を示すが、わが国では認めない。図1 疱疹状皮膚炎の皮膚病変の臨床所見全身に、周辺に小水疱を環状に配列する浮腫性紅斑を認める。画像を拡大する■ 分類とくに細分類はない。しかし、蛍光抗体直接法で、顆粒状と細線維状のIgAの沈着を示す二型がある。臨床的にはその二型に差異はない。■ 予後非常に難治性で、長期にわたり、時には生涯にわたって、皮疹の出没を繰り返す。生命的予後は良い。2 診断 (検査、鑑別診断を含む)特徴的な皮疹の臨床症状に加えて、病変生検皮膚の組織学的検査で、表皮直下の真皮乳頭部に好中球性の微小膿瘍を示し、時に好酸球の浸潤も認める(図2)。それが進行したときは表皮下水疱を形成する。図2 疱疹状皮膚炎の病理組織所見表皮直下の真皮乳頭部に好中球性の微小膿瘍を認める。画像を拡大する蛍光抗体直接法で、表皮基底膜部の直下に顆粒状あるいは細線維状のIgAの沈着を示す(図3)。C3の沈着を認めることもあるが、他の免疫グロブリンや他の補体成分の沈着はない。皮膚切片を基質とした蛍光抗体間接法では、血中の自己抗体は検出されない。図3 疱疹状皮膚炎のIgAの蛍光抗体直接法所見表皮基底膜部直下に顆粒状のIgAの沈着を示す。画像を拡大する蛍光抗体間接法以外の各種血清検査で、さまざまな疱疹状皮膚炎特異的IgA抗体を検出する。欧米では、セリアック病に関連するIgA抗組織トランスグルタミナーゼ/トランスグルタミナーゼ2(TG2)自己抗体と、疱疹状皮膚炎に特異的なIgA抗表皮トランスグルタミナーゼ/TG3自己抗体が高率に検出される。しかし、わが国では、これらのIgA自己抗体が検出されないことが多い。欧米では、ほかにグリアジン、レチクリン、エンドミシウムに対するIgA自己抗体が検出され、診断に有用である。3 治療ジアフェニルスルホン(DDS)/ダプソン(商品名:レクチゾール)25~75mg/日内服が著効する。DDS使用時は、肝障害、薬剤性過敏症症候群、溶血性貧血などの副作用に注意が必要である。副作用などでDDSが使用できないときは、サラゾスルファピリジンやテトラサイクリン系抗菌薬の使用も考慮される。欧米ではグルテン除去食による治療が行われるが、わが国では、セリアック病の合併がないので、グルテン除去は行わない。4 今後の展望(治験中・研究中の診断法や治療薬剤など)欧米とわが国の疱疹状皮膚炎には、臨床的・免疫学的に大きな差異があるため、この違いの原因に関する研究が模索されている。現在、新しい治療薬の臨床試験・治験などは行われていない。5 主たる診療科皮膚科。グルテン過敏性腸炎を示すセリアック病を合併したときは消化器内科も併診する。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考となるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他の参考となるサイト)疱疹状皮膚炎に関連する公的な研究班は、以下に示す橋本班と秋山班がある。しかし、橋本班は、以前、疱疹状皮膚炎の研究を行っていたが、現在は中止している。また、秋山班では、いろいろな自己免疫性水疱症の研究を行っているが、疱疹状皮膚炎は含まれていない。診療、研究に関する情報厚生労働省の難治性疾患克服事業(難治性疾患政策研究事業)皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班(研究代表者:橋本 隆[大阪公立大学大学院医学系研究科皮膚病態学 特任教授])厚生労働省の難治性疾患克服事業(難治性疾患政策研究事業)稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究(研究代表者:秋山真志[国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学分野 教授])(医療従事者向けのまとまった情報)疱疹状皮膚炎を含めた各種の自己免疫性水疱症の診断検査は、現在、久留米大学医学部皮膚科と大阪公立大学大学院医学系研究科皮膚病態学(AIBDラボ)に依頼できる。また、現在、わが国には疱疹状皮膚炎の患者会はない。1)Hashimoto T, et al. Br J Dermatol. 2016;175:953-965.2)Ohata C, et al. Br J Dermatol. 2016;174:180-183.3)Ohata C, et al. Clin Dev Immunol. 2012;2012:562168.公開履歴初回2025年12月4日

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第39回 「不整脈ならカフェインは禁止」の常識が覆る?コーヒー愛好家に朗報

心臓に持病があるから、あるいは動悸が気になるからコーヒーを控えているという方も多いかもしれません。しかし、2025年11月にJAMA誌に掲載された最新の臨床試験「DECAF試験」1)が、その「常識」に大きな疑問を投げかけました。コーヒーを飲むことが、むしろ心房細動の再発予防につながるかもしれないというデータが報告されたのです。今回は、長年の医学的通説を覆す可能性のあるこの研究について、具体的なデータを交えながら解説していきます。「コーヒーは心臓に悪い」は迷信?「コーヒー(カフェイン)は不整脈の引き金になる」。これは長い間、医療現場でも患者さんの間でも広く信じられてきた通説でした。医師から「不整脈を抑えるために、コーヒーやお茶は控えましょう」と指導された経験がある方もいるかもしれません。実際に、この研究の参加者スクリーニングの段階でも、多くの患者さんが「コーヒーは発作の原因になる」と信じて参加を辞退したり、医師からのアドバイスで既にコーヒーを断っていたりしました。しかし、近年の観察研究(人々の生活習慣と病気の関連を観察する研究)では、コーヒーを飲む習慣がある人の方が、むしろ心房細動のリスクが低い、あるいは変わらないという結果が相次いで報告されていました。はたして、コーヒーは心臓にとって「毒なのか、薬なのか」。この矛盾に決着をつけるべく行われたのが、今回のランダム化比較試験「DECAF試験」です。これは、実際に患者さんをくじ引きで「コーヒーを飲むグループ」と「断つグループ」に分け、その後の経過を比較するという、コーヒーの影響を検証するのに信頼性のより高い研究手法です。200例の患者で検証、「飲む」vs.「断つ」の直接対決研究チームは、持続性の心房細動(または心房細動の既往がある心房粗動)を持ち、電気的除細動(電気ショックで心臓のリズムを正常に戻す治療)を受ける予定の患者200例を対象に調査を行いました。参加者はランダムに以下の2つのグループに分けられました。カフェイン摂取グループ(100例)1日1杯以上のカフェイン入りコーヒーを飲むことを推奨。カフェイン断ちグループ(100例)コーヒー(カフェインレス含む)やその他のカフェイン製品を完全に断つことを推奨。試験開始前の時点では、両グループとも平均して週に7杯(1日1杯程度)のコーヒーを飲んでいました。試験期間中、摂取グループはそのままの習慣を続け、カフェイン断ちグループは摂取量をゼロに近づけました。そして、電気ショックの治療によって正常なリズムを取り戻した後、6ヵ月間でどれだけの人が再び心房細動(または心房粗動)を起こすかを追跡しました。なんと、コーヒーを飲んだ方が再発しなかったその結果は、従来の「常識」とは正反対のものでした。6ヵ月の追跡期間中に不整脈が再発した人の割合は、以下のとおりでした。カフェイン断ちグループ:64%カフェイン摂取グループ:47%なんと、コーヒーを飲んでいたグループのほうが、再発率が明らかに低かったのです。統計的に分析すると、コーヒー摂取グループは断ちグループに比べて、再発のリスクが39%も低いという結果になりました。さらに、心房細動の再発だけでなく、入院や救急外来の受診といった有害事象についても比較が行われましたが、コーヒー摂取グループで悪影響が増えることはありませんでした。むしろ、不整脈に関連した入院の数は、コーヒー摂取グループのほうが少ない傾向さえ見られました。この結果は、「心房細動の再発防止のためにコーヒーはやめたほうがいい」という従来の指導が、必ずしも正しくない可能性を強く示唆しています。なぜカフェインが「心臓の保護」につながるのか?なぜ、刺激物であるはずのカフェインが、逆に不整脈を抑える結果となったのでしょうか。研究者たちはいくつかのメカニズムを推測しています。一つは、カフェインが「アデノシン受容体」をブロックするためです。アデノシンという物質は、心房細動を引き起こしやすくする作用があることが知られています。カフェインはこのアデノシンの働きを邪魔することで、結果的に不整脈の発生を抑えている可能性があります。また、コーヒーには抗炎症作用や抗酸化作用を持つ成分も含まれています。全身の炎症は心房細動のリスク因子の一つであるため、コーヒーが炎症を抑えることで心臓を守っている可能性も考えられます。さらに、興味深い視点として「運動量」の影響も挙げられています。過去の研究では、コーヒーを飲む人は1日の歩数が多い傾向にあることが示されています。適度な運動は心房細動の予防に有効であるため、コーヒーを飲むことで活動的になり、それが間接的に再発予防につながったのかもしれません。コーヒー好きは無理に我慢しなくてもいい?今回の研究は、心房細動の患者さん、とくにコーヒー好きの方にとっては朗報と言えるでしょう。これまでは再発を恐れて好きなコーヒーを我慢していたかもしれませんが、少なくとも1日1杯程度の適度な摂取であれば、我慢する必要がないばかりか、むしろ有益である可能性が出てきたからです。ただし、この結果を生活に取り入れる際にはいくつか注意点もあります。まず、この研究で推奨されたのは「1日1杯程度のコーヒー」であり、カフェインの過剰摂取や、エナジードリンクのような高濃度のカフェイン製品を推奨するものではありません。エナジードリンクには他の成分も含まれており、同様の効果があるかは不明です。また、この研究は電気的除細動を受けた後の患者さんを対象としています。すべてのタイプの不整脈患者さんに当てはまるかどうかは、まださらなる検証が必要です。しかし、少なくとも「不整脈と診断されたら一律にコーヒー禁止」という画一的な指導は見直されるべき時期に来ているようです。香り高いコーヒーを楽しむリラックスタイムが、実は心臓のリズムを整える助けになるかもしれない。私のようなコーヒー好きには、そんなうれしいニュースの大きな第一歩となる研究だったかもしれません。参考文献 参考文献・参考サイト 1) Wong CX, et al. Caffeinated Coffee Consumption or Abstinence to Reduce Atrial Fibrillation: The DECAF Randomized Clinical Trial. JAMA. 2025 Nov 9. [Epub ahead of print]

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夜間の人工光が心臓の健康に悪影響を与える

 人工的な光による夜間の過剰な照明の悪影響、いわゆる“光害”が、心臓病のリスクを高めることを示すデータが報告された。米マサチューセッツ総合病院のShady Abohashem氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)年次学術集会(AHA Scientific Sessions 2025、11月7~10日、ニューオーリンズ)で発表された。 この研究の解析対象は、2005~2008年に同院でPET検査またはCT検査を受けた466人(年齢中央値55歳、男性43%)。光害のレベルは、人工衛星のデータに基づき各地の夜間の人工光の強さを割り出したデータベースと、研究参加者の居住地住所を照らし合わせて把握した。 2018年末までの医療データを遡及的に追跡したところ、79人(17%)に重大な心臓病が記録されていた。解析の結果、夜間の人工光への曝露が多い人は、脳へのストレス、血管の炎症、そして重大な心臓病が多く認められた。これらのうち重大な心臓病については、夜間人工光への曝露量が1標準偏差多いごとに、5年間でのリスクが35%、10年間では22%上昇するという関連があった。この関連は、心臓病の既知のリスク因子、および、騒音公害や社会経済的地位といった、近年明らかになってきた新たなリスク因子の影響を調整後も、なお有意だった。 Abohashem氏は、「夜間の人工光への曝露がわずかに多いだけでも、脳と動脈へのストレスが増大するという関連が見いだされた。脳がストレスを感知すると免疫反応を引き起こし、血管に炎症を起こし得るシグナルが発せられる。このプロセスは、時間の経過とともに動脈硬化を進行させていき、やがて心臓発作や脳卒中のリスク上昇となって現れてくるのではないか」と述べている。なお、この研究では、交通騒音の激しい地域、所得水準の低い地域、および、ストレスを増大させる可能性のあるその他の環境因子のある地域の居住者では、重大な心臓病のリスクがより高いという傾向も観察された。 人工光による悪影響を回避する手段としてAbohashem氏は、「夜間は室内の照明が明るすぎないように調節して、寝室は暗くし、寝る前にはテレビや電子機器などの画面を見ないようにすると良い」とアドバイスしている。また研究者らは、「都市の不必要な屋外照明を減らしたり、街灯を遮蔽したり、人の動きに反応して点灯するセンサー付き照明に変えたりすることで、人々の健康を改善できるかもしれない」と述べている。 米ペンシルベニア州立大学の睡眠研究者でAHAの広報を担当しているJulio Fernandez-Mendoza氏は、「この研究結果は、夜間の過度の人工光への曝露を減らすことが公衆衛生上の課題であることを示唆しており、人工光の悪影響に関するエビデンスを補強するものだ」と述べている。同氏はまた、「夜間の人工光への過度な曝露が健康に悪く、特に心臓病のリスクを高めることは知られていたが、その悪影響がどのように生じるのかは分かっていなかった。本研究は、考えられるメカニズムの一つ、つまり脳がストレスに反応することの影響を検証しており、この領域の研究を大きく進歩させる知見と言えるのではないか」と付け加えている。なお、同氏は本研究に関与していない。 本研究の発表者らは今後、夜間の人工光への曝露を減らすことによって、心臓の健康状態が改善されるかどうかを調べることを予定している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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「アラーム疲労」が看護師の「共感疲労」を招く【論文から学ぶ看護の新常識】第41回

「アラーム疲労」が看護師の「共感疲労」を招くアラーム疲労スコアが高い看護師ほど、共感疲労も強い傾向が確認された。Hamdiye Banu Katran氏らの研究で、BMC Nursing誌2025年9月30日号に掲載の報告。外科系集中治療室看護師におけるアラーム疲労と共感疲労の関係性:横断的研究研究チームは、外科系集中治療室(SICU)に勤務する看護師を対象に、アラーム疲労と共感疲労の関係性を明らかにすることを目的として、記述的かつ横断的な相関研究を行った。トルコ東部の大学病院および州立病院のSICU看護師162名(SICU経験1年以上、回答率85.7%)を対象に、対面によるデータ収集を行った。調査には、社会人口学的特性調査票、アラーム疲労尺度(α=0.77)、および共感疲労短縮版尺度(α=0.91)を用いた。データ解析にはSPSS 27.0を使用し、正規性の確認、記述統計、ピアソンの相関分析、多変量線形回帰分析を行った。信頼性はクロンバックのα係数で評価し、欠損データ(5%未満)はリストワイズ法で除外した。主な結果は以下の通り。SICU看護師のアラーム疲労スコアの平均は23.77 ± 7.26、共感疲労スコアの平均は62.82 ± 26.66であった。アラーム疲労と共感疲労の間には、中程度の有意な正の相関が認められた(r=0.302、p<0.01)。アラームへの「否定的反応」には、「二次的外傷性ストレス」(r=0.419、p<0.01)および「燃え尽き」(r=0.374、p<0.01)、「共感疲労の総平均スコア」(r=0.417、p<0.01)との間で、中程度の有意な正の相関が認められた。一方、「肯定的反応」では、「燃え尽き」(r=-0.204、p<0.05)および「共感疲労の総平均スコア」(r=-0.158、p<0.05)との間で、弱い負の相関が認められた。回帰分析の結果、アラーム疲労が共感疲労を9%予測することが示された(R2=0.091、p<0.05)。社会人口統計学的要因と、アラーム疲労および共感疲労のレベルとの間には、有意な相関は認められなかった。アラーム疲労は共感疲労の重要な決定要因であり、看護師は中程度のアラーム疲労および共感疲労を有していることが確認された。医療機関は、アラーム管理の教育を強化し、看護師のウェルビーイングを支援する戦略を優先することが推奨される。SICUにおけるアラーム疲労と共感疲労の関連を示した本研究は、患者を守るためのアラームという技術進歩が、皮肉にも医療者に弊害をもたらしている実態を浮き彫りにしています。特筆すべきは、アラームに対する「否定的反応」が、職業的燃え尽きだけでなく、二次的外傷性ストレスとも中程度の相関(r=0.419)を示した点です。これは、絶え間ないアラームが単なる「うるささ」という認知負荷にとどまらず、看護師の心理的な負荷となり、結果として患者への共感を枯渇させることを示唆しています。共感疲労の分散の約9%がアラーム疲労で説明されるという結果は、残りの要因は当然あるものの、環境調整がメンタルヘルス対策の「最初の一手」となり得ることを示しています。アラーム音の管理は、もはや患者の快適性の問題にとどまらず、看護師の心を守る上でも必須の安全対策として再定義されるべきです。論文はこちらKatran HB, et al. BMC Nurs. 2025;24(1):1226.

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ピロリ菌が重いつわりを長引かせる可能性、妊婦を対象とした研究から示唆

 妊娠中の「つわり」は多くの人が経験する症状であるが、中には吐き気や嘔吐が重く、入院が必要になるケースもある。こうした重いつわり(悪阻)で入院した妊婦164人を解析したところ、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)に対する抗体(IgG)が陽性である人は入院が長引く傾向があることが分かった。妊娠前や妊娠初期にピロリ菌のチェックを行うことで、対応を早められる可能性があるという。研究は、日本医科大学武蔵小杉病院女性診療科・産科の倉品隆平氏、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は10月6日付けで「Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に掲載された。 妊娠悪阻は妊娠の0.3〜2%にみられる重度のつわりで、持続する嘔吐や体重減少により入院を要することも多い。進行すると電解質異常や肝・腎機能障害、ビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症(意識障害やふらつきを伴う急性脳症)などを生じることがある。原因としてヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)や胎盤容積の大きさなどが知られるが、近年はピロリ菌感染との関連も指摘されている。しかし、日本人妊婦における感染と重症度や入院期間との関係は十分に検討されていない。本研究では、重度妊娠悪阻で入院した症例を対象に、入院時の各種指標とピロリ菌に対するIgG抗体の有無が入院期間に及ぼす影響を後ろ向きに検討した。 本研究では、2011年1月~2023年6月までに日本医科大学付属病院または日本医科大学武蔵小杉病院で入院治療を要した重度妊娠悪阻患者164人が含まれた。患者はまず、抗H. pylori IgG抗体の有無(陽性群 vs 陰性群)に基づき2群に分けられた。その後、すべての患者を長期入院群(21日以上)と短期入院群(21日未満)に分類して、二次解析が行われた。統計手法には、マン・ホイットニーのU検定、t検定、フィッシャーの正確確率検定、ロジスティック回帰分析が適宜用いられた。 解析対象164人中、抗H. pylori IgG抗体陽性の患者は23人(14.0%)、陰性は141人(86.0%)であった。これら2群の入院期間を比較したところ、抗H. pylori IgG抗体陽性群の入院中央値(範囲)は24日(6〜70日)であり、陰性群の中央値15日(2〜80日)と比べて有意に長かった(P=0.032)。 次に長期入院群と短期入院群を比較したところ、長期入院群では尿ケトン体強陽性(3≦)の割合(P=0.036)や抗H. pylori IgG陽性の割合(P=0.022)が有意に高かった。入院時の検査所見を比較すると、長期入院群では血清遊離サイロキシン(FT4)値が有意に高かったが、その他の検査項目に有意差は認められなかった。 多変量ロジスティック回帰分析の結果、単変量解析で有意だった因子を調整後も、入院長期化の独立したリスク因子として確認されたのは抗H. pylori IgG陽性のみであった(オッズ比〔OR〕 4.665、95%信頼区間〔CI〕 1.613~13.489、P=0.004)。尿ケトン体強陽性は入院期間延長の傾向を示したが、統計的有意差は認められなかった(OR 2.169、95%CI 0.97~4.85、P=0.059)。一方、尿ケトン体強陽性の有無で患者を層別すると、陽性群の入院中央値は19日(4〜80日)、陰性群の12日(2〜55日)であり、有意に入院期間が延長されていた(P=0.001)。 著者らは「今回の研究結果から、抗H. pylori IgG抗体の検査で、重度の悪阻で入院が長引きやすい妊婦を特定できる可能性が示唆された。抗体陽性の妊婦は、入院中により注意深く観察されることで、体調管理の助けになると考えられる。また、妊娠前からの準備(プレコンセプションケア)が、悪阻の予防策として有効かもしれない」と述べている。 また、著者らは、妊娠前のピロリ菌スクリーニングや除菌の有効性については現時点では仮説にすぎず、本研究はその可能性を示すにとどまると説明している。今後は、ガイドラインや保険制度の見直しを含め、前向き研究で有効性や費用対効果を検証することが重要だとしている。

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新たな作用機序の緑内障・高眼圧症点眼薬「セタネオ点眼液0.002%」【最新!DI情報】第52回

新たな作用機序の緑内障・高眼圧症点眼薬「セタネオ点眼液0.002%」今回は、緑内障・高眼圧症治療薬「セペタプロスト(商品名:セタネオ点眼液0.002%、製造販売元:参天製薬)」を紹介します。本剤は、FPおよびEP3受容体に結合・刺激することで眼圧を下降させる新たな作用機序の点眼薬であり、新たな緑内障・高眼圧症の治療選択肢として期待されています。<効能・効果>緑内障、高眼圧症の適応で、2025年8月25日に製造販売承認を取得し、2025年10月23日に発売されました。<用法・用量>1回1滴、1日1回点眼します。<安全性>重大な副作用として、虹彩色素沈着(0.3%)があります。その他の副作用として、結膜充血(29.6%)、睫毛の異常(睫毛が長く、太く、多くなるなど)(18.2%)、眼瞼部多毛(5%以上)、眼瞼色素沈着、眼瞼炎、点状角膜炎などの角膜障害、眼乾燥感、眼刺激(いずれも1~5%未満)、眼のそう痒感、結膜浮腫、眼脂(いずれも1%未満)、黄斑浮腫、眼瞼溝深化(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、緑内障や高眼圧症の治療に使用する点眼薬です。眼圧を調節する水分の排出を促進して眼圧を下げます。2.ソフトコンタクトレンズを装着している場合は、必ずレンズを外してから点眼してください。点眼後は5~10分以上間隔を空けてからレンズを再装着してください。3.点眼液が目の周りについたままになると、目の周りが黒ずむ、毛が濃くなる、まつげが長く太くなるなどの副作用が起こることがあります。濡らしたガーゼやティッシュで目の周囲をよくふき取るか、目を閉じて洗顔してください。<ここがポイント!>緑内障は、「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」と定義されています(緑内障診療ガイドライン)。緑内障は放置すると徐々に視野が狭まり、最終的には失明に至る可能性があり、わが国において中途失明の原因の第1位です。緑内障の視野障害の進行を抑制する唯一確実な治療法は眼圧の下降であり、眼圧下降薬による薬物治療が治療の中心となっています。第一選択薬としては、房水流出を促進するFP受容体作動薬やEP2受容体作動薬、房水産生を抑制するβ遮断薬が用いられます。治療は通常、単薬療法から開始されますが、効果が不十分な場合には多剤併用(配合点眼薬を含む)が行われます。ただし、多剤併用により点眼回数が増加すると、副作用の増加、アドヒアランスやQOLの低下などが懸念されるため、新たな作用機序を有する強力な眼圧下降薬の開発が進められてきました。本剤は、有効成分としてセペタプロストを含有する水性点眼薬です。セペタプロストは、プロドラッグであり、点眼後は主に角膜中で速やかに加水分解され、FPおよびEP3受容体に結合・刺激することで眼圧を下降させます。その眼圧降下作用は、ぶどう膜強膜流出路および線維柱帯流出路を介した房水流出促進によるものです。両眼が原発開放隅角緑内障または高眼圧症の患者を対象とした多施設共同無作為化評価者遮蔽並行群間比較試験(第III相検証試験)において、主要評価項目である点眼後4週におけるベースラインからの平均日中眼圧変化量(最小二乗平均値[LS Mean])は、本剤群で-5.77mmHg、ラタノプロスト点眼液群で-6.10mmHgでした。MMRM解析における投与群間差(本剤群-ラタノプロスト点眼液群)は0.32mmHg(95%信頼区間:-0.120~0.769mmHg)であり、信頼区間の上限値は非劣性マージンとして事前に規定した1.5mmHgを超えず、本剤群のラタノプロスト点眼液群に対する非劣性が検証されました。なお、信頼区間の上限値は0mmHg以上であったことから、本剤群のラタノプロスト点眼液群に対する優越性は検証されませんでした。

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