サイト内検索|page:6

検索結果 合計:5042件 表示位置:101 - 120

101.

世界の主要な20の疾病負担要因、男性の健康損失が女性を上回る

 2021年の世界疾病負担研究(GBD 2021)のデータを用いた新たな研究で、女性と男性の間には、疾病負担の主要な20の要因において依然として格差が存在し、過去30年の間にその是正があまり進んでいないことが示された。全体的に、男性は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や交通事故など早期死亡につながる要因の影響を受けやすいのに対し、女性は筋骨格系の疾患や精神障害など致命的ではないが長期にわたり健康損失をもたらす要因の影響を受けやすいことが示されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のVedavati Patwardhan氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Public Health」5月号に掲載された。 Patwardhan氏らは、GBD 2021のデータを用いて、1990年から2021年における10歳以上の人を対象に、世界および7つの地域における上位20の疾病負担要因の障害調整生存年(DALY)率について、男女別に比較した。DALYとは、障害や疾患などによる健康損失を考慮して調整した指標であり、1DALYとは1年間の健康な生活の損失を意味する。20の疾病負担要因は、COVID-19、心筋梗塞、交通事故、脳卒中、呼吸器がん、肝硬変およびその他の慢性肝臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰痛、うつ病、結核、頭痛、不安症(不安障害)、筋骨格系疾患、転倒、下気道感染症、慢性腎臓病、アルツハイマー病およびその他の認知症、糖尿病、HIV/エイズ、加齢性難聴およびその他の難聴であった。 その結果、2021年では、検討した20要因のうちCOVID-19や肝臓病など13要因で男性のDALYは女性よりも高いことが推定された。男女差が最も顕著だったのはCOVID-19で、年齢調整DALY(10万人当たり)は男性で3,978、女性で2,211であり、男性の健康負担は女性に比べて44.5%高かった。COVID-19の負担は地域を問わず男性の方が高かったが、特に差が大きかったのはサハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ諸国、カリブ海諸国だった。 DALYの男女差の絶対値が2番目に大きかった要因は心筋梗塞で、10万人当たりのDALYは男性で3,599、女性で1,987であり、男性の健康負担は女性より44.7%高かった。地域別に見ると、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアでは男女差が大きかった。 また、女性に比べて男性に多い要因は、年齢が低いほどリスク増加が小さい傾向が認められたが、交通事故による負傷は例外であり、世界中で10〜24歳の若い男性で不釣り合いに多く発生していた。 一方、女性は長期的な健康損失をもたらす疾患において男性よりもDALYが高い傾向が見られた。特にDALYの男女差が顕著だったのは、腰痛(絶対差478.5)、うつ病(同348.3)、頭痛(332.9)であった。また、女性には、人生の早い段階からより深刻な症状に悩まされ、その症状は年齢とともに悪化する傾向も認められた。 論文の共著者である米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のGabriela Gil氏は、「女性の健康損失の大きな要因、特に筋骨格系疾患と精神疾患は十分に注目されているとは言えない。女性のヘルスケアに対しては、性や生殖に関する懸念などこれまで医療制度や研究資金が優先してきた領域を超えた、より広範な取り組みが必要なことは明らかだ」と述べている。 論文の上席著者であるIHMEのLuisa Sorio Flor氏は、「これらの結果は、女性と男性では経時的に変動したり蓄積されたりする多くの生物学的要因と社会的要因が異なっており、その結果、人生の各段階や世界の地域ごとに経験する健康状態や疾患が異なることを明示している」との見方を示す。その上で、「今後の課題は、性別やジェンダーを考慮した上で、さまざまな集団において、早期から罹患率や早期死亡の主な原因を予防・治療する方法を設計して実施し、評価することだ」と述べている。

102.

糖尿病関連腎臓病、日本人の病的バリアントが明らかに

 糖尿病関連腎臓病(DKD)は2型糖尿病の長期合併症であり、心血管系合併症や死亡率の高さに関連している。今回、日本国内におけるDKD患者の病原性変異について明らかにした研究結果が報告された。研究は東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科の羽柴豊大氏らによるもので、詳細は「Journal of Diabetes Investigation」に4月8日掲載された。 DKDは、長期の糖尿病罹病期間と糖尿病網膜症の合併に基づき、腎生検を必要とせずに臨床的に診断される。糖尿病患者の中には、同様に血糖コントロールを行っているにもかかわらず、腎機能障害を発症する患者としない患者がいることから、遺伝的要因が糖尿病およびDKD発症の根底にある可能性がある。実際、2021年には米国の1型および2型糖尿病を患うDKD患者370名を対象とした研究から、白人患者の22%で病原性変異が特定されている。しかし、この割合は民族やデータベースの更新状況によって異なっている可能性も否定できない。このような背景を踏まえ、著者らは最新のデータベースを用いて、日本の2型糖尿病を伴うDKD患者のサンプルから全ゲノム配列解析(WGS)を実施し、病原性変異を持つ患者の割合を決定することとした。 本研究には、東京大学糖尿病性腎疾患コホートよりWGSの検体提供に同意した79人(平均年齢72歳)のDKD患者が組み入れられた。全体の25名(31.6%)に糖尿病網膜症が認められ、9名(11.4%)に腎臓病の家族歴があった。 WGSの結果、27人(34.1%)の患者で、24の遺伝子(29の部位)に位置する病原性変異が同定された。すべての変異はヘテロ接合型であり、ホモ接合型は検出されなかった。同定されたヘテロ接合型病原性変異は、大きく、糸球体症関連(23.7%)、尿細管間質性腎炎関連(36.8%)、嚢胞性腎疾患/繊毛病関連(10.5%)、その他疾患関連(28.9%)に分類された。 27人の患者で同定された変異のうち、常染色体顕性(優性)遺伝パターンに関連し、疾患の発症に潜在的に影響を及ぼすものを「診断的変異」と定義した。診断的変異は7つの遺伝子(ABCC6、ALPL、ASXL1、BMPR2、GCM2、PAX2、WT1)において10人(12.7%)の患者で認められた。これらの遺伝子はすべて常染色体顕性遺伝性疾患と関連していた。 本研究の結果について著者らは、「日本では、相当数のDKD患者において腎臓関連のヘテロ接合型病原性変異が特定された。これらの知見は、この変異に民族間の差異が存在する可能性を示唆しており、データベースの更新が変異検出に与える影響を浮き彫りにしている」と述べている。今回、DKD患者で認められた変異の臨床的意義については、「依然として不明であり、その意義をさらに検討するためにはより大規模なコホート研究が必要」と付け加えた。 本研究の限界点として、サンプル数が少なく、日本国内の単一施設のコホート研究であったことから、一般化に制約があることが挙げられる。また、WGS解析はDKD集団のみを対象としており、健常者や腎障害のない糖尿病患者との比較が行われなかったため、本研究は記述的研究にとどまるものとされている。

103.

定年後も働きたい?医師が望むセカンドキャリア/医師1,000人アンケート

 近年、医師の定年後の過ごし方は多様化している。今回、CareNet.comでは、「医師の定年後の過ごし方」と題したアンケートを実施し、何歳まで働き続けたいかや、希望するセカンドキャリアなどを聞いた。対象はケアネット会員医師のうち、50代の勤務医が中心の1,002人で、内科系(545人)、外科系(282人)、その他診療科(175人)の3群に分けて傾向を調査した。何歳まで働くか? Q1では「何歳まで働きたいか」を聞いた。全体で最も多かった回答は「66~70歳まで」で28%、「61~65歳まで」が21%、「71~75歳まで」が22%だった。診療科系別にみると、「60歳まで」と回答した割合はその他診療科が12%で最も高く、「生涯現役」と回答した割合は内科系が13%でほかより若干高かった。定年後は非常勤の希望が最多 Q2では「定年後はどのような働き方を希望するか」を単一回答で聞いた。全体では、「非常勤・アルバイト」を希望する医師が65%と最も多く、「常勤」は24%、「就業は希望しない」は10%だった。診療科系別にみると、「常勤」を希望する割合は外科系がやや高く、「就業を希望しない」割合はその他診療科がやや高い傾向にあった。現勤務先か、ほかの医療機関に転職か Q3では「定年後に就業するなら、どのような仕事を希望するか」を複数回答で聞いた。全体では、「ほかの医療機関に転職」したい医師が52%、「現勤務先で継続」したい医師が49%と、この2つの選択肢が回答の上位を占めている。次いで、「産業医」11%、「僻地医療」8%、「就業は希望しない」8%、「医療コンサルタント」7%、「医療関連以外」7%と続いた。診療科系別にみると、「ほかの医療機関に転職」を希望する割合は外科系が最も高く、「現勤務先で継続」を希望する割合はその他診療科が最も高い傾向にあった。働く理由は「経済的な理由」だけではない Q4では「定年後も就業する理由」を複数回答で聞いた。「経済的な理由」が52%と最も多く、次いで「社会貢献」34%、「生涯現役」31%、「医師不足解消に貢献」22%となっている。診療科系別にみると、「経済的な理由」を挙げる割合はその他診療科と外科系がやや高く、「社会貢献」「生涯現役」「医師不足解消に貢献」を挙げる割合は、内科系がやや高い傾向にあった。「家族・周囲からの期待」の割合は、その他診療科でやや高い結果となった。仕事以外では旅行や趣味が人気 Q5では「就業以外で定年後にやりたいこと」を複数回答で聞いた。全体では、「旅行」が65%、「趣味」が61%と、この2つがとくに多い回答であった。そのほか、「健康維持活動」42%、「家族や友人と過ごす」32%などが上位に挙げられた。診療科系別にみると、「旅行」と回答した割合は外科系が最も高く、「健康維持活動」「家事」「医学以外の学習・資格取得」と回答した割合は、その他診療科で比較的高い結果となった。 Q6では、自由回答として「定年後にセカンドキャリアとして挑戦したいこと」を聞いた。医師の定年後のセカンドキャリアは、医療への貢献継続意向と異分野への挑戦意欲が共存しており、多岐にわたるユニークな回答が寄せられた。 回答を分類すると、「医療関連」「研究」「教育」が65件、「学び」「語学」が35件、「趣味」が33件、「社会貢献」が31件、「旅行」が23件、飲食業や不動産業などの「事業」が21件、「のんびり過ごしたい」というものが21件など、これらのカテゴリーに多くの回答が寄せられた。このほかより具体的なものとして、農業、創作活動、スポーツ、投資などの意見も少なくなかった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師の定年後の過ごし方/医師1,000人アンケート

104.

4時間ごとの口腔ケア・口腔咽頭吸引でVAE発生率が減少【論文から学ぶ看護の新常識】第16回

4時間ごとの口腔ケア・口腔咽頭吸引でVAE発生率が減少4時間ごとの口腔ケアと口腔咽頭吸引が、人工呼吸器関連イベント(VAE)を有意に減少させることが、Khanjana Borah氏らの研究により示された。Acute and Critical Care誌2023年11月号に掲載された。南インドの三次医療センター集中治療室で人工呼吸器管理を必要とする患者に対する、4時間ごとの口腔咽頭吸引が人工呼吸器関連イベントに及ぼす影響:ランダム化比較試験研究チームは、機械的人工呼吸管理(MV)を受けている患者における人工呼吸器関連イベント(VAE)に対して、4時間ごとの口腔ケアおよび口腔咽頭吸引を組み合わせた介入が、標準的な口腔ケアプロトコルと比較してどのような効果をもたらすかを検証するため、ランダム化比較試験を実施した。対象は、新たに気管挿管され、72時間以上の人工呼吸器管理が予測される患者120例であり、対照群または介入群に無作為に割り付けられた。介入群には、4時間ごとにクロルヘキシジン溶液を用いた口腔ケアと口腔咽頭吸引が実施された。対照群には、標準的な口腔ケア(クロルヘキシジン溶液を用い1日3回)と必要時の口腔咽頭吸引がおこなわれた。介入後3日目および7日目には、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の評価のため気管内吸引物の検査がおこなわれた。主な結果は以下の通り。両群のベースラインにおける臨床的特徴は均質であった。VAEの発生率は、介入群(56.7%)が、対照群(78.3%)と比較して、統計的に有意に低かった(p論文はこちらBorah K, et al. Acute Crit Care. 2023;38(4):460-468.

105.

薬機法改正で調剤業務の外部委託が実現へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第152回

2025年5月14日、医薬品医療機器等法の一部を改正する法律案(薬機法の改正案)が参議院本会議において与野党の賛成多数で可決し、成立しました。前回の薬機法の改正は2019年でした。薬機法は5年をめどに見直しを検討することが決められているため、2024年から本改正に向けた議論が進められており、2025年2月に法案が提出されてこのたび可決されました。改正は大きく4項目あり、後発品の安定供給を確保するための基金設置や、製薬企業の責任役員の変更命令、ドラッグラグ・ロス解消に向けて医薬品開発が早期に行われるための措置などの医薬品の開発や流通に関する内容もあります。変更された項目の中で、皆さんの実務に大きく関連する可能性のある薬局機能の強化について詳しく見ていきましょう。1.調剤業務の外部委託調剤業務の一部を、別の薬局に外部委託できるようになります。薬局業界の業務フローが大きく変わる可能性がありますね。ただし、委託できるのは同じ都道府県内にある薬局です。対象となる業務は医薬品のピッキング・包装、事務作業で、患者対応や服薬指導は委託対象になりません。施行は2年以内とされています。2.若年者への購入制限ここ数年、中高生などの若年者が市販薬を乱用し、事件に発展するなどさまざまな問題が生じています。その対策として、市販薬の若年者への購入制限が設けられます。具体的には、咳止めや風邪薬など乱用の恐れのある医薬品の20歳未満への複数・大容量の販売が原則的に禁止されます。また、販売時は購入者の状況確認・情報提供を義務とします。万引きを防止するための顧客の手の届かない場所への商品陳列に関しては義務化が見送られたようですが、販売・情報提供を行う場所に継続的に専門家を配置することを求めています。施行は1年以内とされています。3.市販薬の販売規制の緩和現在でも市販薬を販売しているコンビニはありますが、薬剤師や登録販売者がその店舗にいることを条件としています。業界団体によると、市販薬を扱うコンビニは約5万7,000店のうち0.7%(23年2月時点)にとどまっているそうです。今回の改正後の具体的な方法としては、オンラインでの情報提供などを利用して購入可能にする仕組みを想定しています。薬局の薬剤師などが、ICTを活用し販売店舗の市販薬を遠隔で管理し購入者へ受け渡します。なお当面は、有資格者が所属する店舗と販売店舗は同一都道府県内にあることが条件です。有資格者のいないコンビニエンスストアでの市販薬購入が可能になるなど、小売業に新たなビジネスチャンスが生まれ、市場に大きな変化をもたらすかもしれません。施行は2年以内とされています。今回の改正薬機法の施行期日については「公布後6月以内に政令で定める日」とありますが、項目によって、施行日が異なります。「若年者への購入制限」が1年以内、「調剤業務の外部委託」「市販薬の販売規制の緩和」は2年以内とされています。次回は現状の課題を解決するための改正前回の2019年薬機法改正では何が変更されたか覚えていますか? 薬局が調剤のみならずOTC医薬品を含むすべての医薬品を安定的に提供する施設であること、薬剤師が医薬品の適正使用に必要な情報提供と薬学的知見に基づく指導を行う場所であることが規定され、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行わなければならないとする服薬フォローアップを義務付けたのが前回の改正でした。形式上は重要な改正であった一方、残念ながら薬局・医薬品販売業の業務を大きく変えるものにはなりませんでした。今回の改正は、現状の課題を解決するための改正とも言えます。すでに目の前に困っている人がいるという状況です。若年者の医薬品の乱用は減るのか、また市販薬はアクセスしやすくなる一方で安全性は確保されるのかといった難しい問題もあります。「コンビニで売るんだったら勝手にどうぞ」というスタンスではなく、どのように安全性を確保していくのか、薬の専門家である薬剤師の関与が必要なのは間違いありません。1.医薬品等の品質及び安全性の確保の強化【医薬品医療機器等法】(1)製造販売業者における医薬品品質保証責任者及び医薬品安全管理責任者の設置を法定化する。(2)指定する医薬品の製造販売業者に対して、副作用に係る情報収集等に関する計画の作成、実施を義務付ける。(3)法令違反等があった場合に、製造販売業者等の薬事に関する業務に責任を有する役員の変更命令を可能とする。2.医療用医薬品等の安定供給体制の強化等【医薬品医療機器等法、医薬基盤・健康・栄養研究所法、麻向法、医療法】(1)医療用医薬品の供給体制管理責任者の設置、出荷停止時の届出義務付け、供給不足時の増産等の必要な協力の要請等を法定化する。また、電子処方箋管理サービスのデータを活用し、需給状況のモニタリングを行う。(2)製造販売承認を一部変更する場合の手続について、変更が中程度である場合の類型等を設ける。(3)品質の確保された後発医薬品の安定供給の確保のための基金を設置する。3.より活発な創薬が行われる環境の整備【医薬品医療機器等法、医薬基盤・健康・栄養研究所法】(1)条件付き承認制度を見直し、臨床的有効性が合理的に予測可能である場合等の承認を可能とする。(2)医薬品の製造販売業者に対して、小児用医薬品開発の計画策定を努力義務化する。(3)革新的な新薬の実用化を支援するための基金を設置する。4.国民への医薬品の適正な提供のための薬局機能の強化等【医薬品医療機器等法、薬剤師法】(1)薬局の所在地の都道府県知事等の許可により、調剤業務の一部の外部委託を可能とする。(2)濫用のおそれのある医薬品の販売について、販売方法を見直し、若年者に対しては適正量に限って販売すること等を義務付ける。(3)薬剤師等による遠隔での管理の下で、薬剤師等が常駐しない店舗における一般用医薬品の販売を可能とする。

106.

SSI診療の最新動向を探る!

最新の知見を初学者にもわかりやすく解説「整形・災害外科」68巻5号(2025年4月臨時増刊号)整形外科の手術部位感染(SSI)の予防と治療について、「The International Consensus Meeting on Infection」の改訂作業メンバーも執筆者に加わり、最新のエビデンスを紹介しながら初学者にもわかりやすく解説している。抗菌薬については、整形外科感染症診療で頻用するものに厳選して正しい知識と使い方を紹介した。外科的アプローチについては、治療法が確立しつつある骨折関連感染症と股関節の人工関節周囲感染に絞り、治療方針、治療の実際についてまとめた。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するSSI診療の最新動向を探る!定価8,800円(税込)判型B5判頁数224頁発行2025年4月編集山田 浩司ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

107.

研修医の自殺、研修開始後3ヵ月が最多

 米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)が行った以前の調査によると、2000~14年の米国における研修医・フェローの主な死亡原因は自殺とがんであった1)。後続研究としてACGMEは2015~21年のデータを分析し、以前の結果と比較した。Nicholas A. Yaghmour氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2025年5月14日号に掲載された。 主要アウトカムは前回(2000~14年)と今回(2015~21年)の2つの期間における研修医・フェローの死亡率の差であった。副次的アウトカムは一般の同年代との死亡率の比較、専門分野別の死亡原因の差異だった。 主な結果は以下のとおり。・2015~21年に370万778人の研修医・フェローが96万1,755人年分の研修に参加した。この期間に161人(女性50人[31.1%]、年齢中央値31[SD 29~35]歳)が研修中に死亡した。・47人(29.2%)が自殺、28人(17.4%)ががん、22人(13.7%)がその他の疾患、22人(13.7%)が事故、21人(13.0%)が事故による中毒で死亡した。・がんによる死亡率は、前回から今回にかけて減少した。一方、自殺を含むその他の全原因による死亡率には変化がなかった。・両期間とも、自殺による死亡は研修1年目の最初の3ヵ月間に最も多く発生し(今回:9/47人)、研修の最初の1年間での発生が3割(同:14/47人)を占めた。・今回の研修医・フェローの全原因による死亡率(自殺含む)は、同年代の比較対象群と比べて低かった。・専門分野別では、自殺の死亡率が最も高かったのは病理診断科(10万人年当たり19.76人)、がんの死亡率が高かったのは精神科(10万人年当たり9.67人)、中毒の死亡率が高かったのは麻酔科(10万人年当たり15.46人)だった。 研究者らは「両期間を比較すると、がんによる死亡率が減少した一方、全原因による死亡率は変化しなかった。両期間中に観察された、研修直後の3ヵ月における自殺数は依然として懸念される。研修医支援に向けた今後の取り組みは、とくに初期のストレスの要因と軽減に焦点を当てる必要がある」としている。

108.

nerandomilast、IPFとPPFの呼吸機能低下を抑制(FIBRONEER-IPF、ILD)/ATS2025

 ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬nerandomilastについて、国際共同第III相試験が2試験実施されている。特発性肺線維症(IPF)患者を対象とした「FIBRONEER-IPF試験」1)、進行性肺線維症(PPF)患者を対象とした「FIBRONEER-ILD試験」2)の結果が米国胸部学会国際会議(ATS2025 International Conference)で発表され、それぞれ2025年5月18、19日にNEJM誌へ同時掲載された。両試験において、nerandomilastは努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制した。【FIBRONEER-IPF試験】・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVC(FVCの予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLco(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIP[通常型間質性肺炎]またはprobable UIPパターンを有する)患者1,177例試験群1(低用量群):nerandomilast低用量(9mg、1日2回) 392例試験群2(高用量群):nerandomilast高用量(18mg、1日2回) 392例対照群(プラセボ群):プラセボ 393例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡のいずれかの発生 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は70.2歳、%FVC平均値は78.2%、%DLco平均値は50.9%であった。・抗線維化薬の併用状況は、ニンテダニブが45.5%、ピルフェニドンが32.3%、併用なしが22.3%であった。・抗線維化薬の併用ありの集団は、併用なしの集団と比べて、IPF診断から試験組み入れまでの期間が長い(3.7年vs.2.8年)、%FVCが低い(77.1% vs.82.2%)、%DLcoが低い(49.6% vs.55.2%)、酸素補給の実施割合が高い(22.5% vs.16.0%)傾向にあった。・主要評価項目の52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-183.5mLであったのに対し、低用量群が-138.6mL、高用量群が-114.7mLであり、いずれもプラセボ群と比較して有意にFVCの低下を抑制した(それぞれp=0.02、p<0.001)。nerandomilast投与群では、治療開始早期からFVCの低下が抑制され、76週時まで良好な傾向にあった。・抗線維化薬の併用の有無別にみると、抗線維化薬の併用なしの集団では、52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-148.7mLであったのに対し、低用量群が-70.4mL、高用量群が-79.2mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。・ニンテダニブを併用する集団では、プラセボ群が-191.6mLであったのに対し、低用量群が-130.7mL、高用量群が-118.5mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。・ピルフェニドンを併用する集団では、プラセボ群が-197.0mLであったのに対し、低用量群が-201.8mL、高用量群が-133.7mLであり、低用量群ではFVCの低下抑制はみられなかった。この要因として、ピルフェニドンを併用する集団ではnerandimilastの血漿中濃度が低く、薬物相互作用が考えられた。・主要な副次評価項目については、低用量群、高用量群のいずれもプラセボ群と比較して有意な改善はみられなかった。ただし、高用量群で全死亡が減少する傾向がみられた。・nerandimilast投与群で最も多く発現した有害事象は下痢であった(プラセボ群16.0%、低用量群31.1%、高用量群41.3%)。下痢は、とくにニンテダニブを併用する集団で多く(それぞれ26.6%、49.5%、61.8%)、下痢による投与中止は33例にみられたが、そのうち29例がニンテダニブを併用する集団であった。【FIBRONEER-ILD試験】・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVCが45%以上で、%DLcoが25%以上の18歳以上のPPF(12ヵ月以内のHRCTに基づき10%以上の線維化が認められたIPF以外の間質性肺疾患[ILD])患者1,176例試験群1(低用量群):nerandomilast低用量(9mg、1日2回) 393例試験群2(高用量群):nerandomilast高用量(18mg、1日2回) 391例対照群(プラセボ群):プラセボ 392例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡のいずれかの発生 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は66.4歳、%FVC平均値は70.1%、%DLco平均値は49.3%であった。UIPパターンまたはUIP-likeパターンを有する割合は71.4%であった。・抗線維化薬の併用状況は、ニンテダニブが43.7%であった。・PPFの分類は、自己免疫性ILDが27.6%、線維性過敏性肺炎が19.8%、分類不能型特発性間質性肺炎が19.6%、特発性非特異性間質性肺炎が19.4%、その他が13.5%であった。・主要評価項目の52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-165.8mLであったのに対し、低用量群が-84.6mL、高用量群が-98.6mLであり、いずれもプラセボ群と比較して有意にFVCの低下を抑制した(いずれもp<0.001)。nerandomilast投与群では、治療開始早期からFVCの低下が抑制され、52週時まで良好な傾向にあった。・抗線維化薬の併用の有無別にみると、抗線維化薬の併用なしの集団では、52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群が-154.1mLであったのに対し、低用量群が-82.3mL、高用量群が-95.2mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。・ニンテダニブを併用する集団では、プラセボ群が-180.9mLであったのに対し、低用量群が-87.8mL、高用量群が-102.9mLであり、FVCの低下が抑制される傾向にあった。・初回データベースロック時点において、主要な副次評価項目のイベント発生割合は、プラセボ群31.1%、低用量群28.0%、高用量群24.3%であり、低用量群(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.68~1.14)、高用量群(同:0.77、0.59~1.01)のいずれもプラセボ群と比較して数値的な改善傾向はみられたが、統計学的有意差はみられなかった。全死亡は低用量群(同:0.60、0.38~0.95)、高用量群(同:0.48、0.30~0.79)のいずれも減少する傾向がみられた。・nerandimilast投与群で最も多く発現した有害事象は下痢であり、とくにニンテダニブを併用する集団で多かった(プラセボ群36.5%、低用量群48.0%、高用量群49.1%)。

109.

臨床試験における患者・市民参画(解説:景山茂氏)

 臨床試験における患者・市民参画(patient and public involvement)は、臨床試験に患者あるいは一般市民が被験者として参加するだけでなく、試験の計画段階から参加することにより、試験計画書をより現場のニーズに合ったものとして、エンドポイントの設定についても患者の視点を踏まえたものとし、得られるエビデンスがより有用なものになるようにしようとする考え方である。 臨床試験における患者・市民参画は比較的最近の動きであって、CIOMS(Council for International Organizations of Medical Sciences、国際医学団体協議会)の報告書でも2014年の「医薬品リスク最小化のための実践的アプローチ」では、ごく簡単に触れられただけであったが、2022年の「医薬品の開発、規制、安全な使用への患者参画」において、ようやく詳しく取り上げられた。 本論文では、BMJ誌の他にN Engl J Med、JAMA、Lancetの4誌を対象に調査しているが、投稿規定で患者・市民参画を記載しているのはBMJ誌のみである。結果として、調査対象とした360論文のうち、患者・市民参画が報告されていたのは論文では64件(18%)、プロトコルでは56件(19%)のみであった。また、患者・市民参画の主な活動は各種の試験委員会への参画であった(64件の論文中44件、56件のプロトコル中39件)。 ランダム化比較試験を報告する為のチェックリストとフローチャートからなるCONSORT声明は従来、患者・市民参画に言及していなかったが、2025年版で初めてこれに言及している。一方、ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors、医学雑誌編集者国際委員会)は臨床研究の計画、実施、報告等の各段階での在り方について声明を発出し、とくに臨床試験の登録やdata sharingという先進的な考え方を提唱してきた。また、医学雑誌への投稿規定についてはICMJEの声明が国際的な標準となっている。しかし、ICMJEは現在のところ患者・市民参画については言及していない。 さて、患者や一般市民が臨床試験に参画するためには、臨床試験に関連した事柄をある程度以上理解しなければならない。上記のCIOMS報告書では患者および参画を希望する者は以下の研修が必要と述べている。(1)医薬品関連の科学、(2)健康関連の研究における倫理、(3)臨床試験の方法論や解釈、医薬品に関わる法律や規制。 患者・市民参画を実践することには課題も多いが、臨床試験計画書の改善や被験者のリクルートの視点のみでなく、人間を対象とする臨床試験をよりオープンな透明性の高い形で実践していくには、今後大いに検討すべき課題であるといえる。EBMにおいても、EBMはexternal evidenceのみに基づくのではなく、患者のpreference、および主治医の意見を統合して最善の医療を判断するとされている。患者のpreferenceを取り入れるために臨床試験への患者・市民参画は有用と考えられる。 AMED(日本医療研究開発機構)は昨年度より研究申請書に患者・市民参画に関する記載を求めている。また、PMDA(医薬品医療機器総合機構)も患者参画ガイダンスを2021年に発出しており、わが国においても患者・市民参画という考え方は徐々にではあるが確実に広がってきている。

114.

ケアネットDVD 販売終了のお知らせ【2025年6月20日 公開】

ケアネットDVD 販売終了のお知らせ【2025年6月20日 公開】 日頃よりケアネットをご愛顧いただき、誠にありがとうございます。ケアネットDVDは、2025年6月20日を以て販売を終了いたしました。これまでにケアネットDVDで販売していたタイトルにつきましては、臨床医学チャンネルCareNeTVにて引き続き配信しておりますので、今後はCareNeTVをご利用いただけますと幸いです。※一部、CareNeTVでの配信が終了しているタイトルもございます。今後ともケアネットをご愛顧のほどお願い申し上げます。本件に関するご質問、ご不明な点はこちらよりご連絡ください。

115.

「がんと栄養」に正しい情報を!がん患者さんのための栄養治療ガイドライン発刊

 日本栄養治療学会(JSPEN)は2025年2月、『がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版』(金原出版)を刊行した。JSPENが患者向けガイドラインを作成するのは初めての試みだ。5月14日には刊行記念のプレスセミナーが開催され、比企 直樹氏(北里大学医学部 上部消化管外科学)と犬飼 道雄氏(岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター)が登壇し、ガイドライン作成の経緯や狙いを解説した。【比企氏】 世の中には「〇〇を食べると健康に良い」といった根拠の乏しい情報があふれている。とくにがんに関しては、科学的根拠のない栄養療法や補助食品の情報があふれており、患者や家族が正しい情報を得ることに苦労している。一方で、最近ではがん治療と栄養療法に関連した研究が増え、「どの栄養素を、どれだけ摂取すれば、どんな効果があるか」に関するエビデンスが蓄積されてきた。実際、がんの薬物療法や手術治療において、栄養治療が副作用の軽減や合併症の予防に寄与することが明らかになっている。こうした背景から、患者さんが正しい情報を得られるよう、情報を整理するために作成されたのがこのガイドラインだ。 JSPENは約2万4,000名の会員を抱える世界最大級の臨床栄養学の学会であり、会員の職種は医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など多岐にわたる。実際、医療現場において栄養治療はNST(栄養サポートチーム)として多職種で担うことが多く、こうした医療者向けに昨年10月に『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 総論編』(金原出版)を刊行した。入院期間中はNSTが支援できるだろうが、外来治療中や退院後に不安になったときに、今回の患者向けガイドラインを使ってもらえればと考えている。患者さんの目に留まりやすいようポップな雰囲気の表紙にし、イラストを使うなどの工夫をした。全国のがん診療連携拠点病院を中心に1,000冊以上を寄付する取り組みも行っており、ぜひ手にとっていただきたい。【犬飼氏】 本ガイドライン作成に先立ち、がん患者へのアンケートを行った。334人から回答があり、Webアンケートだったこともあり、乳がんや血液がんの比較的若年層が多かった。「がん治療中の悩み」として多く挙がった項目としては、「リハビリテーションや運動療法、生活の仕方」が最多で29%、「食事のメニュー」が23%、「薬物療法の際の食事や栄養」が20%だった。口腔状態(9%)や手術後の栄養(5%)の項目は挙げる人が比較的少なかった。術後の栄養指導は診療報酬加算があり、医療機関が一般的に行っていることが不安解消につながったのではと分析している。 栄養に関するアンケートのつもりが、「リハビリに関する悩み」が最多という結果を受け、ガイドラインでは46のQ&Aのうち、リハビリに関するものを9つ設定した。また、口腔に関する悩みは少なかったものの、口腔環境が食欲不振や味覚障害に影響することを知らない人も多いと考え、口腔関連で7つのQ&Aを設定した。その他が栄養に関するQ&Aという構成だ。 がん薬物療法では、副作用の重症度を評価する指標であるCTCAEを使って、副作用の程度にかかわらず、それに応じた栄養治療の必要性が示されている。「がんになると体重が減って当たり前」と考える患者や家族も多いが、体重を維持することでQOL向上や副作用の軽減、治療の成績や予後の改善につながることがわかっている。こうした背景から、「がん治療中、体重は維持したほうがよいですか?」というQ&Aを設け、体重維持の重要性を強調している。がんによる体重減少には「食べられないで痩せる」と「食べていても痩せる」という2つの要因があり、前者はうつや吐き気、味覚障害、口内炎などが原因であることも多く、介入による改善が期待できる。ただし、「体重を減らすな、しっかり食べろ」と言うだけでは、食欲不振などで食べられず、ストレスを感じる患者・家族もいるだろう。そうした場合にお勧めの食品や調理法を提示し、栄養剤や点滴などの方法もあることを紹介した。 がん治療前に口腔ケアをすることで、手術の合併症や口内炎の悪化を防ぐことも知ってほしい。体力低下には有酸素運動が有効で、患者には「栄養・運動・社会参加」のバランスが大切であることを伝えている。「がん治療のさまざまな場面で、多職種が適切に栄養治療をサポートする」というメッセージを込めた。このガイドラインが、患者や家族が医療者に悩みを相談するきっかけになればと考えている。『がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版』定価:2,420円(税込)判型:B5判頁数:144頁(カラー図数:34枚)発行:2025年2月編集:日本栄養治療学会目次・1章 がんにならないために・2章 がんになったら・3章 薬物療法が始まったら・4章 手術が決まったら・手術をしたら・5章 がん治療後について・6章 緩和医療において書籍情報はこちら

116.

サイアザイドに重大な副作用追加、ループ利尿薬は見送り/厚労省

 2025年5月20日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、該当医薬品の副作用の項などに追記がなされる。サイアザイド系、ループ利尿薬の全16製品を検討 スルホンアミド構造を有する炭酸脱水酵素阻害薬(経口剤、注射剤)、サイアザイド系利尿薬について、「急性近視、閉塞隅角緑内障および脈絡膜滲出」に関する国内外の副作用症例や公表文献の評価などから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。これまで海外では、サイアザイド系利尿薬(サイアザイド類似利尿薬含む)およびアセタゾラミドを含む利尿薬について、急性近視、閉塞隅角緑内障および脈絡膜滲出に関するリスク評価または措置が行われており、スルホンアミド構造を有する医薬品と急性近視、閉塞隅角緑内障および脈絡膜滲出のリスクとの関連性を示唆する報告が挙がっていた。なお、ループ利尿薬3製品(フロセミド、トラセミド、アゾセミド)については、改訂が検討されたが指示には至らなかった。※2025年5月26日20時、本文中に誤りがあり、一部修正(フロセミド、トラセミド、アゾセミドを削除)しました。 改訂の対象医薬品は全13製品(サイアザイド系利尿剤、同成分とARBの配合剤)で、9製品の添付文書の「重要な基本的注意」の項目に「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」に関する注意を、また、「副作用」の重大な副作用の項に「脈絡膜滲出」あるいは「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」が追記される。その他の4製品については、ほかのサイアザイド系薬剤で副作用が現れた旨の報告が追記される。<対象医薬品>※2025年5月26日20時、フロセミド、トラセミド、アゾセミドを削除しました。・アセタゾラミド(商品名:ダイアモックス錠ほか)・アセタゾラミドナトリウム(同:ダイアモックス注射用)・インダパミド(同:ナトリックス錠ほか)・メフルシド(同:バイカロン錠ほか)・ヒドロクロロチアジド(同:ヒドロクロロチアジド錠)・ベンチルヒドロクロロチアジド(同:ベハイド錠)・トリクロルメチアジド(同:フルイトラン錠ほか)・カンデサルタン シレキセチル・ヒドロクロロチアジド(同:エカード配合錠LD/HDほか)・テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド(同:ミコンビ配合錠AP/BPほか)・テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩・ヒドロクロロチアジド(同:ミカトリオ配合錠)・バルサルタン・ヒドロクロロチアジド(同:コディオ配合錠MD/EXほか)・ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド(同:プレミネント配合錠LD/HDほか)・イルベサルタン・トリクロルメチアジド(同:イルトラ配合錠LD/HD)ドンペリドン、妊婦禁忌が削除 このほか改訂指示が出されたものとして、ドンペリドンの「禁忌」から妊婦または妊娠している可能性のある女性が削除される。 厚生労働省の妊婦・授乳婦を対象とした薬の適正使用推進事業の情報提供ワーキンググループ(WG)は、「女性が妊娠に気付いていなかった場合に、結果的に妊婦に対して本薬を処方される事例が一定数存在しており、そのような事例において、妊娠判明後に本薬が妊婦禁忌であることを知った女性が妊娠を継続するかどうか不安を抱え、人工妊娠中絶を選択する可能性がある」ことを指摘。また、『産婦人科診療ガイドライン-産科編2023』において、「妊娠初期のみに使用された場合、臨床的に有意な胎児への影響はないと判断してよい医薬品」として本薬の記載があること、当該ガイドラインにて本薬の服用により奇形発生の頻度や危険度が上昇するとは考えられない旨の根拠が示されている点などを踏まえて、今回の判断に至った。

117.

降圧薬の心血管リスク低減効果、朝服用vs.就寝前服用/JAMA

 降圧薬の就寝前服用は安全であるが、朝の服用と比較して心血管リスクを有意に低減しなかったことが、カナダ・University of AlbertaのScott R. Garrison氏らが、プライマリケアの外来成人高血圧症患者を対象として実施した無作為化試験で示された。降圧薬を朝ではなく就寝前に服用することが心血管リスクを低減させるかどうかについては、先行研究の大規模臨床試験における知見が一致しておらず不明のままである。また、降圧薬の就寝前服用については、緑内障による視力低下やその他の低血圧症/虚血性の副作用を引き起こす可能性が懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「降圧薬の服用時間は、降圧治療のリスクやベネフィットに影響を与えない。むしろ患者の希望に即して決めるべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年5月12日号掲載の報告。カナダのプライマリケアで試験、朝服用vs.就寝前服用を評価 研究グループは、降圧薬の朝服用と就寝前服用の、死亡および主要心血管イベント(MACE)に与える影響を、プラグマティックな多施設共同非盲検無作為化・エンドポイント評価者盲検化試験で調べた。被験者は、カナダの5つの州にある436人のプライマリケア臨床医を通じて集めた、少なくとも1種類の1日1回投与の降圧薬の投与を受けている地域在住の成人高血圧症患者であった。募集期間は2017年3月31日~2022年5月26日、最終追跡調査は2023年12月22日であった。 被験者は、すべての1日1回投与の降圧薬を朝に服用する群(朝服用群)もしくは就寝前に服用する群(就寝前服用群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要複合アウトカムは、全死因死亡またはMACE(脳卒中、急性冠症候群または心不全による入院/救急外来[ED]受診)の初回発生までの期間であった。あらゆる予定外入院/ED受診、視覚機能、認知機能、転倒および/または骨折に関連した安全性アウトカムも評価した。主要複合アウトカムイベントの発生、安全性に有意差なし 計3,357例が無作為化された(就寝前服用群1,677例、朝服用群1,680例)。被験者は全体で女性56%、年齢中央値67歳であり、併存疾患は糖尿病が18%、冠動脈疾患既往が11%、慢性腎臓病が7%であった。また、単剤治療を受けている被験者が53.7%であり、降圧薬の種類はACE阻害薬36%、ARB 30%、Ca阻害薬29%などであった。 全体として追跡調査期間中央値4.6年において、主要複合アウトカムイベントの発生率は、100患者年当たりで就寝前服用群2.30、朝服用群2.44であった(補正後ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.77~1.19、p=0.70)。 100患者年当たりの主要アウトカムの項目別発生率(死亡:就寝前服用群1.11 vs.朝服用群1.28[補正後HR:0.90、95%CI:0.67~1.22、p=0.50]など)、あらゆる予定外入院/ED受診の発生率(23.26 vs.25.15[0.93、0.85~1.02、p=0.10])および安全性について、両群間で差は認められなかった。とくに、転倒の自己申告率(4.9%vs.5.0%、p=0.47)や100患者年当たりの骨折(非脊椎骨折:2.18 vs.2.40[0.92、0.74~1.14、p=0.44]、大腿骨近位部骨折:0.27 vs.0.43[0.65、0.37~1.15、p=0.14])、緑内障の新規診断(0.60 vs.0.54[1.13、0.73~1.74、p=0.58])、18ヵ月間の認知機能低下(26.0%vs.26.5%、p=0.82)について差はみられなかった。

118.

COVID-19は糖尿病患者の院内死亡率を高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は高齢者や基礎疾患のある人で重症化しやすいことが知られているが、今回、治療中の糖尿病がCOVID-19による院内死亡率や人工呼吸器使用、血液透析といった腎代替療法の重大なリスク因子である、とする研究結果が報告された。研究は東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科の諏訪内浩紹氏、鈴木亮氏らによるもので、詳細は「PLOS One」に3月19日掲載された。 COVID-19は多臓器障害を伴い、重症化した場合は、急性呼吸窮迫症候群、急性腎障害、その他の臓器不全を引き起こすことが多い。日本ではCOVID-19による死亡率は比較的低いが、糖尿病患者の場合では死亡リスクの上昇が報告されている。一方で、糖尿病患者におけるCOVID-19の治療と転帰を検討する包括的な研究は依然として限られている。そのような背景から、著者らはCOVID-19が糖尿病患者に及ぼす影響を評価するために、多施設の後ろ向きコホート研究を実施した。本研究では、院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICUへの入院、血液透析(HD)、持続的血液濾過透析(CHDF)、医療リソースの利用状況に関する影響が検討された。 研究には、千葉県内38医療機関の診断群分類包括評価(DPC)データより、2020年2月1日~2021年11月31日までの間にCOVID-19と診断された1万1,601人が含まれた。この中から、18歳未満、妊娠中、糖尿病未治療の症例など計825人が除外され、最終的な解析対象を1万776人(対照群7,679人、糖尿病群3,097人)とした。連続変数とカテゴリ変数の比較には、それぞれスチューデントのt検定とフィッシャーの正確確率検定を使用した。 糖尿病群の患者は対照群の患者よりも平均年齢とBMIが高かった(67.4歳 vs 55.7歳、25.6kg/m2 vs 23.6kg/m2、各P<0.001)。糖尿病の治療に関しては、インスリン使用率は88.4%、経口血糖降下薬は44.2%であり、インスリン療法の割合が高かった。 COVID-19による平均入院日数は、糖尿病群で17.8±15.3日であり、対照群(10.2±8.5日)と比べて有意に延長された(P<0.001)。院内死亡率は、糖尿病群と対照群でそれぞれ、12.9%と3.5%であり、糖尿病群で高くなっていた(オッズ比OR 4.05〔95%信頼区間3.45~4.78〕、P<0.001)。また、年齢別のサブグループ解析を行った結果、50~59歳にORのピークがみられ(同12.8〔3.71~44.1〕、P<0.01)、この年齢層がCOVID-19による院内死亡の強いリスク因子であることが示唆された。 次に、糖尿病がアウトカム(院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICU入院、HD、CHDF)に及ぼす影響を検討するため回帰分析を行ったところ、糖尿病群の全てのアウトカムのORは対照群と比較して有意に高かった。また、年齢、性別、BMI、救急車の利用で調整した重回帰分析を行った場合でも、全てのアウトカムのORは有意なままであったことから、糖尿病がこれらのアウトカムの独立した因子であることが示された。 本研究について著者らは、「2020~2021年のDPCデータの解析から、糖尿病はCOVID-19における院内死亡率、人工呼吸器の使用、ICU入院、HD、CHDFの独立したリスク因子であることが示された。院内死亡率に関しては特に18~79歳の糖尿病群で対照群より高く、働き盛りの50~59歳で最もオッズ比が高かったことから、以降の若年世代に対してのワクチン接種勧奨や行動制限は有効だったのではないか」と述べている。 また、本研究の強みとして、レセプトデータをベースとしており、患者の使用している糖尿病治療薬などの臨床情報や、かかった医療費に関しての情報が含まれていた点を挙げており、「本研究はCOVID-19と糖尿病の臨床的特徴を明らかにし、将来の治療の改善に役立つものと考えている」と付け加えた。 本研究の限界点として、今回使用したDPCデータには、入院前の情報、臨床検査値やCOVID-19の重症度分類に関する情報、ワクチン接種に関する情報が含まれていないことを挙げている。

119.

第264回 日本の診療報酬改定の財源確保はますます困難に?米国のトランプ大統領の医薬品価格引き下げ政策の影響を考える

消費税が社会保障の重要財源になっていることを軽視・無視する政治家たちこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。夏の参院選をにらみ、消費税の扱いについて各党幹部からの発言が相次いでいます。とくに野党からの消費税減税・撤廃の声は強く、立憲民主党は来年4月から原則1年間、食料品の消費税をゼロにするよう求め、日本維新の会は食品にかかる消費税を再来年4月まで時限的に撤廃するよう求めています。この他、国民民主党は時限的に一律5%下げることを提案、共産党も将来的な廃止を目指して緊急で一律5%に引き下げるよう求めています。れいわ新選組は従来からの主張通り、消費税そのものを廃止するよう求めています。これに対し、自民党は社会保障などの財源になっていることを理由に、税率引き下げに依然否定的な考えを示しています。ただ、これも党執行部の意見であり、一部からは税率引き下げの声も出ているようです。不思議なのは、どの政党も消費税が社会保障の重要な財源になっていることを軽視(あるいは無視)しており、代替財源について大した案を示していないことです。私の自宅のポストに入っていた共産党のチラシなどは、「いますぐ消費税減税を」と書く一方、「国費投入で医療・介護の危機打開」とも書かれており、もはやわけがわかりません。「消費税率を下げる=社会保障財源を減らす」なのですから。さて、「わけがわからない」と言えば、米国のトランプ大統領が、米国内の医療用医薬品価格を引き下げる指示をする大統領令に署名したというニュースもある意味「わけがわからない」です。同様の政策をトランプ大統領は第1次政権の時にも敢行しようとしましたが、製薬会社の抵抗や連邦裁判所の大統領令一時差し止めにより頓挫しています。改めて打ち出された米国の医薬品価格引き下げ政策は、日本の医療にどんな影響を与えるのでしょうか。「世界の医薬品業界が最も恐れていた事態が起きた」トランプ大統領は5月11日(現地時間)、自身のSNSに医療用医薬品の価格について、「最恵国待遇(most favored nation:MFN)」政策を導入する大統領令に署名すると表明、翌12日に署名しました。このニュースを報じた5月12日付の日経バイオテクは、「世界の医薬品業界が最も恐れていた事態が起きたといっても過言ではない」と書いています。最恵国待遇とは、世界貿易機関(WTO)協定の基本原則の1つで、ある国に与えた貿易上の優遇措置をその他の加盟国にも同様に適用し、平等に扱うというルールです。トランプ大統領はこのルールを米国の医薬品価格に適用、米連邦政府が支払っている特定の医薬品の価格を、ほかの先進国が支払っている最も低い医薬品価格に連動させるとしています。各紙報道によれば、トランプ大統領は最恵国待遇政策の導入によって「医薬品価格を59%引き下げる」と主張したとのことです。「米国の医療用医薬品の価格は『研究開発費をカバーするため』として高い価格設定が正当化されてきた」とトランプ大統領大統領令に署名する前に開いた記者会見の席上、トランプ大統領は、「米国の医療用医薬品の価格は『研究開発費をカバーするため』として高い価格設定が正当化されてきたが、実際には他国が低い価格を設定しており、米国が不当に高い価格を支払ってきた」と主張、「この政策により、他国が医薬品の研究開発費を公正に負担するよう促され、米国と他国の薬価が同等になる。製薬企業が他国での不公平な価格交渉からも保護される仕組みだ」と語ったとのことです。今回の大統領令の対象となるのは、連邦政府が提供する公的医療保険制度のうち、65歳以上の高齢者や障がい者などを対象としたメディケア(Medicare)と、低所得者向けのメディケイド(Medicaid)で使用される医薬品とみられていますが、一部の医薬品に留まるのか、より広範な医薬品が対象になるのかは未定です。なお、製薬企業に対しては、大統領令の日から30日以内に、米保健福祉省長官が米メディケア・メディケイドサービスセンター管理者や関連する行政機関などの職員と連携し、製薬企業に最恵国待遇価格の目標値を伝達するとしています。「外国政府に医薬品にかかる費用を公平に負担させるのは正当」とPhRMAこうした動きに対し、米国研究製薬工業協会(PhRMA)は同日、声明を発表しています。日経バイオテクなどの報道によれば、PhRMAは米国で医薬品の価格が高い「本当の理由」として、「他国が正当な負担を負っていない」「中間業者が米国の医薬品価格を押し上げている」と指摘。米国で医薬品にかかる費用の50%は薬剤給付管理業者、保険会社、病院が受け取っているとして、「これらのお金を患者に直接渡すことで、患者負担が軽減し、欧州との価格差が大幅に縮まる」と主張したとのことです。またPhRMAは、政府が貿易交渉によって「外国政府に医薬品にかかる費用を公平に負担させるのは正当」と支持した一方で、医薬品価格の引き下げは「米国の患者や労働者の治療機会や治療の選択肢を減らすことになる」と反論もしています。トランプ大統領の考えを全面否定はせず、「他国が正当な負担を負っていない」、「外国政府に医薬品にかかる費用を公平に負担させるのは正当」などと、どちらかと言えばすり寄ったコメントをしている点はなかなか興味深いです。この段階でトランプ大統領を怒らせて、“業界いじめ”がさらに加速することを嫌ったためと考えられます。他国が米国の医薬品開発に「ただ乗り」しており、米国民だけが高値で薬剤を買っている状況は「不公平」就任以来、さまざまな政策を打ち出すものの、なかなか米国民のプラスが見えてこない状況で、「医薬品の価格を大幅に下げる」という政策は、確かに国民の共感を呼びそうです。米国は世界最大の創薬大国と言われていますが、創薬のための巨額の研究開発費が医薬品の価格に上乗せされていることで成立しているとの見方があります。ちなみに日本と異なり、米国では原則、製薬会社が独自に医薬品の価格を決めています。というわけで、他国が米国の医薬品開発に「ただ乗り」しており、米国民だけが高値で薬剤を買っている状況は「不公平」というのがトランプ大統領の考え方なのです。今後の具体的な政策としては、前述したようにメディケア、メディケイドで使用される医薬品の価格を下げることや、PhRMAも賛同している薬剤給付管理業者、保険会社、病院など中間業者の“取り分”を減らす施策を講じること、そして国外で製造された薬剤を米国で販売するメーカーには、薬価引き下げを要求するという流れになります。薬価引き下げに応じない国には追加関税を課す考えもトランプ大統領は示しています。そうした意味では、グローバルに展開する日本の製薬メーカーにとっては、米国の医薬品価格下げは大きなダメージとなるでしょう。日本の薬価はこれまで以上に“維持”、あるいは“引き上げ”圧力が高まるこの政策、第1次トランプ政権のときは頓挫しており、今回も実現するかどうかはまだわかりませんが、仮に実現した場合、日本の医療現場にはどんな影響が出るのでしょうか。約1ヵ月前、本連載「第259回 トランプ関税で2026年度診療報酬改定の財源確保に暗雲?国内では消費税率の減税論もくすぶり、医療費削減圧力はさらに増大の予感」では、トランプ大統領が4月2日に発表した全世界を対象とした相互関税について取り上げました。この時は、「仮に薬価改定による診療報酬財源の捻出法も税率低減のためのカードに使われることになれば、来年以降の診療報酬改定の財源確保に大きな影響が出ることになります」と書きました。日本の薬価についてはこれまで以上に“維持”、あるいは“引き上げ”圧力が高まりそうです。なぜならば、米国内での医薬品価格を下げれば米国の製薬企業の収益を圧迫するので、製薬企業には海外市場でその分稼いでもらわなければならないからです。トランプ政権が米国の医薬品開発に「ただ乗り」を許さない姿勢を強めてくれば、石破政権後の方針転換によって、2025年度中間年改定で革新的医薬品の薬価引き下げのルールを拡大するなどしてきた日本の薬価制度について大幅な見直しを迫ってくる可能性もあります。PhRMAは昨年末に欧州製薬団体連合会(EFPIA)と出した共同声明で、「予期せぬ決定により、企業の中には、10年以上前から長らく策定してきた綿密な投資回収計画の見直しを迫られ、数百億円もの損失を被る可能性がある」と中間年改定の政策を強く批判していました。ポピュリズム政治の割りを食うのは最終的に国民というわけで、2026年度診療報酬改定の財源確保はますます厳しいものとなりそうです。そして国内では、相変わらずの「消費税減税・撤廃」の議論。目先のことしか考えない国内外の政治家たちによるポピュリズム政治の割りを食うのは最終的に国民(とくに現役世代や子供たち)です。日本でも与野党含めた政治家たちがトランプ政権のやり方を批判していますが、少なくとも「消費税減税・撤廃」を叫ぶ政治家にその資格はまったくないのではないか、と考える今日この頃です。

120.

患者安全文化が向上すれば「看護ケアの未実施」は減る?【論文から学ぶ看護の新常識】第15回

患者安全文化が向上すれば「看護ケアの未実施」は減る?患者安全文化と「看護ケアの未実施」の関連を調べた最新の研究で、両者に明確な負の相関(安全文化が良いほど「看護ケアの未実施」が少ない)が示された。Leodoro J. Labrague氏らの研究で、Journal of Advanced Nursing誌オンライン版2025年1月23日で報告した。医療現場における患者安全文化と看護ケアの未実施との関連:システマティックレビューとメタアナリシス研究者らは、患者安全文化と「看護ケアの未実施(Missed Nursing Care:MNC)」との関連性に関する既存研究を評価・統合することを目的に、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。2010年以降に出版された査読付き論文を対象に、5つのデータベース(CINAHL、ProQuest、PubMed、ScienceDirect、Web of Science)で検索を行った。その結果、合計9件の研究が特定され、うち7件の研究(対象者総計1661例)がメタアナリシスの対象となった。主な結果は以下の通り。メタアナリシスの結果、全体の患者安全文化と看護ケアの未実施との間には有意な負の相関が認められ、プールされた相関係数は −0.205(95%信頼区間[CI]:−0.251~−0.158、p<0.001)であった。異質性は低度から中程度(I2=13.18%、95%CI:0.00~78.60)であり、出版バイアスの検定でも有意なバイアスは示されなかった(Eggerテスト:p=0.0603、Beggテスト:p=0.3476)。本研究の結果は、患者安全文化と看護ケアの未実施との間に有意な負の相関関係があることを強調している。とくに管理職のサポート、組織学習、および部署レベルの安全文化が、看護ケア未実施の予測因子としての役割を果たすことが示された。したがって、医療組織内における患者安全文化の強化は、看護ケアの未実施を軽減するための戦略的アプローチとなり得る。医療現場における患者安全文化と「看護ケアの未実施」の関係性を検証した本メタ分析は、看護の質と患者安全における重要な課題に光を当てるものです。研究の結果、患者安全文化が良好であるほど、必要な看護ケアが実施されない状態、すなわち「看護ケアの未実施」が少ないという明確な負の相関が確認されました。とくに、管理職による安全へのサポート、組織全体での学習の推進、そして病棟単位での安全文化の醸成が、「看護ケアの未実施」を防ぐ上で極めて重要であることが示されています。これは、看護師個人の努力や能力だけでなく、組織全体の文化とシステムが、日々の看護実践の質に深く関わっていることを強く示唆しています。「看護ケアの未実施」は、患者の回復遅延、感染リスクの増加、転倒や褥瘡の発生といった、多様な有害事象を引き起こす可能性があります。それに加え、必要なケアを十分に提供できない状況は、看護師の倫理的な苦痛や燃え尽き症候群の一因ともなり得ます。本研究の結果が示すように、組織的に患者安全文化を強化することは、こうした課題を軽減するための有効な方策となり得ます。具体的には、風通しの良い組織風土のもと、リーダーが安全確保に対する強い責任感を示し、発生したインシデントから学び改善に繋げる仕組みを構築すること、そして病棟単位で職員間の円滑なコミュニケーションと相互支援を推進する取り組みが不可欠です。これらの取り組みを通じて、看護師が質の高いケアを自信を持って提供できる環境が整備され、結果として患者の安全確保と看護ケア全体の質の向上に貢献できると考えられます。この研究は、患者安全文化への組織的な投資の重要性を裏付ける、強力なエビデンスを示すものです。論文はこちらLabrague LJ, Cayaban AR. J Adv Nurs. 2025 Jan 23. [Epub ahead of print]

検索結果 合計:5042件 表示位置:101 - 120