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拡張型心筋症の遺伝子構造はアフリカ系と欧州系患者とで異なっている(解説:原田和昌氏)

 次世代シークエンスを用いた網羅的な心筋症遺伝子解析による心筋症の病態解明とそれを用いたプレシジョン・メディシンに期待が集まっている。米国・DCMコンソーシアムのDCM Precision Medicine Studyのこれまでの調査によれば、拡張型心筋症(DCM)患者の約30%が家族性DCMであり、黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも家族性DCMのリスクが高くアウトカムが不良であった。しかし、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものであった。 米国・オハイオ州立大学のJordan氏らは、DCMに関係する36の遺伝子について、アフリカ系、欧州系、ネイティブ・アメリカンの患者を対象に、ゲノム祖先ごとに変異遺伝子構造を比較した。アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる、臨床的に治療標的として介入が期待される変異遺伝子(バリアント)を有する割合が低かった。 アフリカ系DCM患者は、タイチン(TTN)遺伝子や、病気を引き起こすメカニズムとして機能欠失が予測されるその他の遺伝子について、欧州系患者に比べ、臨床的に治療標的として介入が期待されるバリアントの割合が低かった。しかし、病原性/病原性の可能性/意義不明のいずれかに判定されたバリアント数は、アフリカ系患者と欧州系患者で同程度であった。これは、アフリカ系患者には主にミスセンス変異による、非TTN遺伝子の予測されない機能欠失バリアントで意義不明のものが多く認められたためであった。 DCMの40~50%にこれまで30種類以上の遺伝子変異が同定されているが、原因遺伝子としてはTTN変異が最多であり全体の25%を占める。さらにMYH7、TNNT2、心筋トロポニンC(TNNC1)など心筋サルコメアの関連遺伝子がこれに続く。TTN変異を有するDCMの表現型は比較的軽度であり、標準的心不全治療が奏効し左室リバースリモデリングが高率に起こる。これに対し、ラミンA/C(LMNA)は核膜内膜の構成分子であるが、LMNA変異を有するDCMでは心筋障害に加えて肢体型筋ジストロフィーやEmery-Dreifuss型筋ジストロフィーなどの骨格筋障害を合併し、予後不良であることが知られている。このようにDCMは心筋サルコメア、細胞骨格、核骨格、ミトコンドリア、細胞内カルシウム調整に関する遺伝子などに多様な遺伝子変異を有する疾患である。 一方、日本におけるDCMの有病率は10万人に対して14.0人であり、DCMの20~35%が家族性といわれている。家族性DCMの80~90%が常染色体優性であるが、まれにX連鎖性や常染色体劣性の形式をとる場合もあるという。 本論文ではゲノム祖先ごとに遺伝子構造が異なる、また、アフリカ系DCM患者の臨床データが不足していると結論しているが、次世代シークエンスを用いたプレシジョン・メディシンを推進するためには、欧州系白人におけるゲノムデータや疾患の治療反応性との関係の情報だけでは不十分であり、(アジア人を含む)異なるゲノム祖先を持つ患者における遺伝子データベースの蓄積が必要であると考えられる。

902.

中国のゼロコロナ政策終了直後、超過死亡が急増か

 中国では、コロナパンデミックの開始から厳格なゼロコロナ政策によって罹患率と死亡率は低く抑えられていた。しかし、2022年12月のゼロコロナ政策の解除により、以降2ヵ月間、中国全土の30歳以上において推定187万人の超過死亡が発生したことが、米国・シアトルのFred Hutchinson Cancer Research CenterのHong Xiao氏らの研究チームによる調査で確認された。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 本調査では、北京市の北京大学と精華大学、黒竜江省のハルビン工業大学の2016年1月1日~2023年1月31日までの職員の公開された訃報記事データが用いられた。訃報記事は、年齢、性別、役職、雇用形態(現職、退職)に関係なく、死亡したすべての職員が含まれ、掲載のプロセスはCOVID-19の流行前も流行中も一貫して行われていた。本データから30歳以上の死亡率の相対的変化を推定した。前COVID-19期(2016年1月~2019年12月)、ゼロコロナ政策期(2020年1月~2022年11月)、ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)の3つの期間に分け、負の二項回帰モデルを使用した。また、中国のインターネット検索エンジンBaiduにて、総検索量に対する死に関連するワード(葬儀社、火葬、埋葬など)の検索の頻度(Baidu指数:BI)の相対的変化も推計し、大学における30歳以上の死亡率との相関関係も分析した。さらに、これらの数値を基に、中国のその他の地域における超過死亡率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・北京市と黒竜江省ともに、死亡数は2022年12月第4週にピークに達した。それと同時期の12月25日に、中国のほとんどの省で、死に関連するワードのネット検索のBIが最も高くなった。・ゼロコロナ政策の終了後、北京の2つの大学における死亡数は、予想死亡数に比べて大幅な増加を示し、2022年12月と2023年1月にそれぞれ403%(95%CI:351~461)と56%(95%CI:41~73)の増加を示した。ハルビン工業大学における死亡数は、2022年12月(12 vs.3、p<0.001)と2023年1月(19 vs.3、p<0.001)の両方で、予想された死亡数よりも統計的に有意に高かった。・ポスト・ゼロコロナ政策期の北京の大学での死亡のうち、男性は75.6%(95%信頼区間[CI]:65~84)、85歳以上は80.0%(95%CI:70~87)だった。85歳以上の死亡の割合は、前COVID-19期(51.9%)およびゼロコロナ政策期(62.3%)よりも高かった(p<0.001)。ハルビン工業大学でも同様のパターンがみられ、ポスト・ゼロコロナ政策期の死亡は、男性82.1%、85歳以上69.0%だった。・ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)では、中国全土で30歳以上の推定187万人(95%CI:71万~443万、1,000人当たり1.33人)の超過死亡が発生した。・チベットを除くすべての省で統計学的に有意な死亡率の増加が推計され、増加範囲は広西チワン族自治区の77%増(95%CI:24~197)から寧夏回族自治区の279%増(95%CI:109~658)であった。・超過死亡数は中国政府の公式推計値である6万人をはるかに上回ったが、超過死亡のパターンは、COVID-19に関連した病院での入院と死亡が2022年12月末にピークに達したという中国政府の報告と一致していた。 中国には包括的で一般に入手可能なデータが存在しないために、超過死亡数を推定するために行われた本研究において、中国のゼロコロナ政策の突然の解除が、全死因死亡率の有意な上昇と関連していることが明らかになった。著者は本結果について、COVID-19の集団への突然の伝播が集団死亡率に与える影響を理解するうえで重要だとまとめている。

903.

医師によるコロナのデマ情報、どう拡散された?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、ソーシャルメディア(SNS)上で、ワクチン、治療法、マスクなどに関する誤った医療情報が広く拡散されたことが社会問題となった。このような誤情報の拡散には、一部の医師も関わっていたことが知られている。COVID-19の誤情報について、情報の種類や、利用されたオンラインプラットフォーム、誤情報を発信した医師の特徴を明らかにするために、米国・マサチューセッツ大学のSahana Sule氏らの研究チームが調査を行った。JAMA Network Open誌2023年8月15日号に掲載の報告。 本調査では、2021年1月1日~2022年5月1日の期間に米国在住の医師によって拡散されたCOVID-19の誤情報を特定するため、SNS(Twitter、Facebook、Instagram、Parler、YouTube)およびニュースソース(The New York Times、National Public Radio)の構造化検索を行った。誤情報を発信した医師の免許取得州と専門分野を特定し、フォロワー数やメッセージの質的内容分析を行い、記述統計を用いて定量化した。COVID-19の誤情報は、評価期間中の米国疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスに裏付けされていない、またはそれに反する主張、CDCがカバーしていないトピックに関しては既存の科学的エビデンスに反する主張と定義した。 主な結果は以下のとおり。・評価期間中にCOVID-19の誤情報を伝えたことが確認された米国の医師は52人だった。うち50人は米国29州において医師免許を取得したことがあり、ほか2人は研究者だった。医師免許は1州以上で有効44人、無効3人、一時停止/取り消し4人、一部の州で停止/取り消し1人。専門は28分野にわたり、プライマリケアが最も多かった(18人、36%)。・16人(30.7%)が、America's Frontline Doctors※のような、誤った医療情報のプロパガンダを過去に行ったことがある団体に所属していた。・20人(38.5%)が5つ以上の異なるSNSに誤情報を投稿し、40人(76.9%)が5つ以上のオンラインプラットフォーム(ニュースなど)に登場した。最も利用されたSNSはTwitterで、37人(71.2%)が投稿していた。フォロワー数の中央値は6万7,400人(四分位範囲[IQR]:1万2,900~20万4,000人)。・誤情報は次の4カテゴリーに分類された:(1)ワクチンは安全ではない/効果がない、(2)マスクやソーシャルディスタンスはCOVID-19の感染リスクを減少させない、(3)臨床試験を終えていない/FDAの承認を受けていない薬剤を有効と主張する(イベルメクチン、ヒドロキシクロロキンなど)、(4)その他(国内外の政府や製薬企業に関連する陰謀論など)。・40人(76.9%)の医師は、4カテゴリーのうち1カテゴリー以上投稿していた。・カテゴリー別で投稿が多い順に、ワクチンに関する誤情報(42人、80.8%)、その他の誤情報(28人、53.8%)、薬剤に関する誤情報(27人、51.9%)。 本結果は、パンデミック中にさまざまな専門分野や地域の医師が誤情報の拡散という“インフォデミック”に加担したことを示唆している。研究チームが確認した限り、本研究はSNS上での医師によるCOVID-19誤情報の拡散に関する初めての研究だという。フェイクニュースを拡散することは、近年、医学の内外で利益を生む産業となっているという。医師による誤った情報の拡散に関連する潜在的な有害性の程度、これらの行動の動機、説明責任を向上するための法的・専門的手段を評価するために、さらなる研究が必要だと指摘している。※America's Frontline Doctorsは、遠隔医療サービスを実施し、主にCOVID-19に対するヒドロキシクロロキンとイベルメクチンを全国の患者に処方するために、1回の診察につき90ドルを請求し、少なくとも1,500万ドルの利益を得ている。このような団体は、パンデミックの公衆衛生上の危機、政治的分裂、社会的孤立という状況の中で、より声高に発言し、目立つようになっていた。

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心原性ショックを伴う急性心筋梗塞、VA-ECMOの有用性は?/NEJM

 心原性ショックを伴う急性心筋梗塞で早期血行再建を行う患者において、体外式生命維持装置(ECLS)とも呼ばれる静脈動脈-体外式膜型人工肺(VA-ECMO)を用いた治療は、薬物治療のみと比較し30日全死因死亡リスクを低下せず、むしろ中等度または重度の出血や治療を要する虚血性末梢血管疾患のリスクを高めることが示された。ドイツ・ライプチヒ大学のHolger Thiele氏らが、ドイツとスロベニアで行われた医師主導の多施設共同無作為化非盲検試験「ECLS-SHOCK試験」の結果を報告した。死亡に対するECLSの有効性に関するエビデンスはないにもかかわらず、梗塞関連心原性ショックの治療におけるECLSの使用が増加していた。NEJM誌オンライン版2023年8月26日号掲載の報告。主要アウトカムは30日全死因死亡 研究グループは、心原性ショックを伴う急性心筋梗塞で、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG)による早期の血行再建が予定されている18~80歳の患者を、ECLS+通常の薬物治療群(ECLS群)または通常の薬物治療のみの群(対照群)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、30日全死因死亡、安全性評価項目は中等度または重度の出血(BARC出血基準のタイプ3~5)、脳卒中、外科的治療またはカテーテル治療を要する虚血性末梢血管疾患などで、intention-to-treat解析にて評価した。30日全死因死亡率はECLS群47.8% vs.対照群49.0%で有意差なし 2019年6月~2022年11月に、877例がスクリーニングを受け、420例が無作為に割り付けられた。このうち同意が得られなかった3例を除く417例(ECLS群209例、対照群208例)が解析対象となった。 30日全死因死亡は、ECLS群で209例中100例(47.8%)、対照群で208例中102例(49.0%)に認められ、相対リスクは0.98(95%信頼区間[CI]:0.80~1.19、p=0.81)で有意差は認められなかった。事前に規定したサブグループ解析および事後解析でも、同様の結果であった。 その他の副次アウトカムである機械的換気期間中央値は、ECLS群7日(四分位範囲[IQR]:4~12)、対照群5日(3~9)であった(群間差中央値:1日、95%CI:0~2)。 安全性については、中等度または重度の出血の発現率はECLS群23.4%、対照群9.6%(相対リスク:2.44、95%CI:1.50~3.95)、外科的治療またはカテーテル治療を要する虚血性末梢血管疾患はそれぞれ11.0%および3.8%(2.86、1.31~6.25)であった。

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CVD2次予防でのアスピリン、低所得国では不十分/JAMA

 アスピリンは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)のイベントを減少させ、CVD既往例の死亡率を改善する効果的で安価な選択肢とされる。米国・セントルイス・ワシントン大学のSang Gune K. Yoo氏らは、CVDの2次予防においてアスピリンは世界的に十分に使用されておらず、とくに低所得国での使用が少ないことを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号で報告された。51ヵ国の健康調査のデータを用いた横断研究 研究グループは、51の低・中・高所得国で2013~20年に実施された全国的な健康調査から収集した個々の参加者のデータを用いて横断研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。 参加者は年齢40~69歳の非妊娠成人で、対象となった健康調査には自己申告によるCVD既往歴とアスピリン使用に関するデータが含まれた。国別の1人当たりの所得水準、地域、個々の参加者の社会経済的な人口統計学データに基づき、自己申告によるCVDの2次予防におけるアスピリンの使用状況を評価した。 12万4,505人が解析に含まれた。年齢中央値は52歳(四分位範囲[IQR]:45~59)で、50.5%(IQR:49.9~51.1)が女性、53.4%(95%信頼区間[CI]:52.0~54.8)が農村部に居住していた。1万589人(8.2%)が自己申告によるCVDの既往歴を有していた。使用率は40.3%、WHO目標値を下回る CVD既往例における2次予防のためのアスピリン使用率は40.3%(95%CI:37.6~43.0)であった。 所得別の2次予防のためのアスピリン使用率は、低所得国(7ヵ国)が16.6%(95%CI:12.4~21.9)、低中所得国(23ヵ国)が24.5%(20.8~28.6)、高中所得国(14ヵ国)が51.1%(48.2~54.0)、高所得国(7ヵ国)は65.0%(59.1~70.4)だった。 CVDの2次予防におけるアスピリン使用率の世界保健機関(WHO)の目標値(適格者の50%以上)を満たした国は、ベラルーシ、チェコ、英国(評価はイングランドで行われた調査データに基づく)、イラン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、トルクメニスタン、米国であった。 CVD既往例では、若年より高齢、女性より男性、低学歴より高学歴、農村部より都市部居住者でアスピリンの使用率が高く、これらの個々の特性(年齢別、性別、学歴別、居住地別)では、所得が高い国ほど使用率が高くなる傾向を認めた。低所得国と比較して高所得国では、年齢別、性別、学歴別、居住地別の2次予防のためのアスピリン使用率が、相対的には2~5倍に達し、絶対的には20~60%大きかった。 著者は、「CVDを含む非感染性疾患による早期死亡を減少させるという目標を達成するには、国の保健政策と保健システムが、エビデンスに基づくアスピリンの使用を促進する方法を開発し、これを実践し、結果を評価する必要がある」としている。

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不安で眠れない時はどうしたらいい?【医学生お悩み相談ラヂオ】第7回

動画解説第7回は、医学部6年生の女性からのお悩み。卒業試験が徐々に近づくにつれ、不安感が増して眠れなくなるとのこと。大学受験とはまた違った緊張感に苦しんでいる様子です。卒業試験、マッチングで失敗も成功も経験してきたえど先生のアドバイスには説得力があります。

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臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMS

医学専門出版社がつくったしっかり学べるアートブック本書は、イユダエマさん(2021年大阪芸術大学デザイン学科グラフィックデザインコース卒業)による卒業制作作品「ORGAN ROOMS」をもとに制作したアートブックです。本作品は9つの臓器をそれぞれの部屋に見立ててその働きをわかりやすく表現したもので、大阪芸術大学卒業制作選抜展で公開された段階でも、医学的にかなり調べこんで制作されたものでした。単行本化にあたり、アートのよさを残しつつ、医学専門出版社として、より正しくわかりやすい表現にできないかと検討を重ねるとともに、アートブックとしてだけでなく、読み物としても楽しめるよう、臓器にまつわる豆知識を盛り込んでいます。なお、幅広い読者層を想定し、全ページにわたり振り仮名をつけています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMS定価2,750円(税込)判型A4判頁数42頁発行2023年7月著者ORGAN ROOMS編集部(編・著)

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統合失調症患者の認知機能を含む症状に対するメトホルミンの影響~メタ解析

 統合失調症または統合失調感情障害患者の抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム(MetS)のマネジメントに対し、メトホルミンは優れた有効性を示す薬剤である。メトホルミンによる抗うつ効果や認知機能改善への影響も検討されているものの、これらの情報はシステマティックに評価されていなかった。イタリア・ミラノ大学のVera Battini氏らは、抗精神病薬治療中の統合失調症患者における認知機能およびその他の症状に対するメトホルミンの影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症の認知機能やその他の症状に対し、メトホルミンのある程度の効果が確認された。メトホルミンの潜在的な薬理学的効果を明らかにするためには、適切な尺度を用いた長期にわたる研究が必要であるとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年7月12日号の報告。 2022年2月までに公表された、統合失調症および統合失調感情障害と診断された後、体重増加の治療のために抗精神病薬の追加療法としてメトホルミン治療を実施した患者を対象に、精神症状および認知機能の変化を評価したランダム化比較試験(RCT)をPubMed、ClinicalTrials.gov、Embase、PsycINFO、WHO ICTRPのデータベースより検索した。 主な結果は以下のとおり。・該当したRCT19件のうち、適格基準を満たした12件をメタ解析に含めた。・安定期統合失調症患者において、24週間のメトホルミン治療により、良好な傾向が認められた(標準化平均差:-0.40[95%信頼区間[CI]:-0.82~0.01]、オッズ比:0.5[-2.4~3.4])。・統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価は、研究間の不均一性が低く、より良い影響が確認された。・1つの研究では、プラセボにおいてBACSの言語記憶サブドメインの好ましい変化が報告されていた(平均差:-16.3[95%CI:-23.65~8.42])。・最も報告された副作用は、胃腸障害、口腔乾燥症、錐体外路症状であった。・精神医学的有害事象、とくに統合失調症の再発に起因する症状も報告されていた。

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divarasib、既治療のKRAS G12C変異固形がんに有望/NEJM

 KRAS G12C変異陽性固形がんに対し、divarasibの単剤療法は持続的な臨床効果をもたらし、有害事象はほとんどがGrade2以下であった。カナダ・トロント大学のAdrian Sacher氏らが、12ヵ国35施設で実施された第I相試験「GO42144試験」の結果を報告した。divarasib(GDC-6036)は共有結合型KRAS G12C阻害薬で、in vitroにおいてソトラシブやadagrasibより高い効力と選択性を示すことが報告されていた。NEJM誌2023年8月24日号掲載の報告。非小細胞肺がん、大腸がん、その他の固形がんを対象に単剤療法の第I相試験を実施 研究グループは2020年7月29日〜2022年10月7日に、KRAS G12C変異を有する既治療の局所進行または転移を有する固形がん患者137例(非小細胞肺がん60例、大腸がん55例、その他の固形がん22例)に、divarasib 50~400mgを1日1回経口投与した。まず、50mgと100mgの単回用量漸増コホートに順次登録した後、3+3デザインを用いて200mgと400mgの用量漸増コホートに追加登録し、さらに400mgの用量拡大コホートに登録した。 試験の主要目的は安全性の評価であり、薬物動態、抗腫瘍効果、奏効および耐性のバイオマーカーについても評価した。忍容性は良好、奏効率は非小細胞肺がんで53%、大腸がんで29% 検討したいずれの用量(50mg、100mg、200mg、400mgを1日1回投与)においても、用量制限毒性および治療に関連した死亡は報告されなかった。 治療関連有害事象(TRAE)は127例(93%)に発現し、主な事象は悪心(74%)、下痢(61%)、嘔吐(58%)であった。Grade3のTRAEは15例(11%)に、Grade4は1例(1%)に発現した。TRAEにより19例(14%)で投与量が減量され、4例(3%)が投与を中止した。 抗腫瘍効果は、非小細胞肺がんで奏効率53.4%(95%信頼区間[CI]:39.9~66.7)、無増悪生存期間(PFS)中央値は13.1ヵ月(95%CI:8.8~推定不能)、大腸がん患者でそれぞれ29.1%(95%CI:17.6~42.9)、5.6ヵ月(95%CI:4.1~8.2)であった。その他の固形がん患者においても、奏効が観察された。 血中循環腫瘍DNAの経時的評価において、奏効に関連するKRAS G12C変異アレル頻度の低下が示され、divarasibに対する耐性に関与する可能性のあるゲノム変化が同定された。

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便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症

本邦初の慢性下痢症のガイドライン日本消化管学会編集による『便通異常症診療ガイドライン2023』の「慢性下痢症」編。Mindsの作成マニュアルに準拠し、臨床上の疑問をCQ(clinical question)、BQ(background question)、FRQ(future research question)に分けて解説。冒頭には診断・治療のためのフローチャートを掲載し、下痢症の定義・分類・診断基準から疫学、病態生理、診断検査、内科的治療について、最新知見を盛り込み、日常診療に必携の1冊となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症定価3,080円(税込)判型B5判頁数80頁発行2023年7月編集日本消化管学会電子版でご購入の場合はこちら

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手術見学で何も教えてもらえない【医学生お悩み相談ラヂオ】第6回

動画解説第6回は、医学部5年生の男性から。外科志望にもかかわらず、手術見学で縫合の練習しかさせてもらえないと、臨床実習に対する不安の声が届きました。多くの医学生や研修医の悩みに向き合ってきた民谷先生が、解決に導くある工夫を提案します。

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レビー小体型認知症のパーキンソニズムに対するゾニサミド補助療法

 レビー小体型認知症(DLB)患者のパーキンソニズムに対してレボドパで効果不十分な場合、レボドパの増量とゾニサミド併用の効果および安全性の違いについては、よくわかっていない。大阪大学の池田 学氏らは、レボドパ300mg/日以下で治療されたパーキンソニズムを伴うDLB患者を対象に、ゾニサミド25mg/日併用療法とレボドパ100mg/日増量療法の比較を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年7月20日号の報告。 本DUEL研究は、多施設共同ランダム化非盲検並行群間非劣性試験として実施された。観察期間中、レボドパ300mg/日以下で4週間投与を行った。その後患者は、ゾニサミド25mg/日併用群またはレボドパ100mg/日増量群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの平均変化とした。 主な結果は以下のとおり。・16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの調整平均変化は以下のとおりであった。【ゾニサミド併用群】16週目:-6.3、24週目:-4.4【レボドパ増量群】16週目:-0.8、24週目:2.0・24週目の調整平均差は、-6.4(95%信頼区間:-13.5~0.7)であり、信頼区間の上限値は、非劣性マージン(3.0)よりも低かった。・MDS-UPDRS Part II、Eating Questionnaire、EuroQol-5 dimension-5 level (EQ-5D-5L)、Zarit介護負担尺度、その他の副次的評価項目の総スコアは、両群間で差は認められなかった。・有害事象の発生率は、両群間で差は認められなかった。 その結果を踏まえて著者らは、「レボドパで効果不十分な場合、ゾニサミド25mg/日を併用することで、DLB患者の運動症状に中程度の効果が期待できる。しかし、本研究では、レボドパ増量が想定されているほどの効果が得られなかったため、ゾニサミド25mg/日併用がレボドパ100mg/日と同程度の効果があるかは、検証できなかった」としている。

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便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症

便秘症の定義から治療まで最新知見を盛り込み、6年ぶりに改訂日本消化管学会編集による『便通異常症診療ガイドライン2023』の「慢性便秘症」編。Mindsの作成マニュアルに準拠し、臨床上の疑問をCQ(clinical question)、BQ(background question)、FRQ(future research question)に分けて解説。冒頭には診断・治療のためのフローチャートを掲載し、便秘症の定義・分類・診断基準から疫学、病態生理、診断検査、内科的治療について、前版以降の進歩や最新知見を盛り込み、日常診療に必携の1冊となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症定価3,300円(税込)判型B5判頁数144頁発行2023年7月編集日本消化管学会電子版でご購入の場合はこちら

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スマホによる介入、不健康な飲酒を抑制/BMJ

 不健康なアルコール使用を自己申告した大学生において、アルコール使用に対する介入としてスマートフォンのアプリケーションへのアクセスを提供することは、12ヵ月の追跡期間を通して平均飲酒量の抑制に有効であることが、スイス・ローザンヌ大学のNicolas Bertholet氏らが実施した無作為化比較試験の結果で示された。若年成人、とくに学生において、不健康なアルコール使用は発病や死亡の主な原因となっている。不健康なアルコール使用者に対する早期の公衆衛生的アプローチとして、世界保健機関(WHO)はスクリーニングと短期的介入を推奨しているが、スマートフォンによる介入の有効性については明らかではなかった。BMJ誌2023年8月16日号掲載の報告。スイスの大学生1,770例を介入群と対照群に無作為化 研究グループは、スイスの4つの高等教育機関(ローザンヌ大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、エコール・オテリエール・ド・ローザンヌ、University of Applied Sciences and Arts Western Switzerland’s School of Health)において参加者を募集した。アルコール使用障害特定テスト-簡易版(AUDIT-C)によるスクリーニングで不健康なアルコール使用が陽性(スコアが男性4点以上、女性3点以上)と判定され、試験への参加に同意した18歳以上の学生1,770例を、ブロック法で介入群(884例)と対照群(886例)に1対1の割合で無作為に割り付けた(盲検化)。介入群では、スマートフォンを用いたアルコール使用に対する簡単な介入(アプリケーションの提供)を行った。 主要アウトカムは、6ヵ月後における標準アルコール飲料(基準飲酒量[ドリンク]、スイスの1ドリンクは純粋エタノール10~12g相当)の1週間の飲酒数量。副次アウトカムは過去30日間の大量飲酒日数(男性5ドリンク以上、女性4ドリンク以上)、その他のアウトカムは、1回の最大飲酒量、アルコール関連事象、学業成績。それぞれ3ヵ月後、6ヵ月後および12ヵ月後に評価した。スマホによる介入で、1週間の基準飲酒量、大量飲酒日数、1回の最大飲酒量が低下 2021年4月26日~2022年5月30日の間に、1,770例が無作為化された(介入群884例、対照群886例)。平均年齢は22.4歳(SD 3.07)、女性が958例(54.1%)、学部生1,169例(66.0%)、修士課程533例(30.1%)、博士課程43例(2.4%)、その他の高等教育課程25例(1.4%)で、ベースラインの1週間の平均基準飲酒量は8.59ドリンク(SD 8.18)、大量飲酒日数は3.53日(同4.02)であった。 1,770例の追跡率は、3ヵ月後96.4%(1,706例)、6ヵ月後95.9%(1,697例)、12ヵ月後93.8%(1,660例)であった。 介入群の学生884例のうち、738例(83.5%)がアプリケーションをダウンロードした。介入は、1週間の基準飲酒量(発生率比:0.90、95%信頼区間[CI]:0.85~0.96)、大量飲酒日数(0.89、0.83~0.96)、1回の最大飲酒量(0.96、0.93~1.00)に関して有意な全体的効果を示し、追跡期間中の飲酒アウトカムは介入群で対照群より有意に低かった。一方、介入はアルコール関連事象や学業成績には影響しなかった。

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血尿診断ガイドライン2023

2013年版から10年ぶりの大幅改訂!血尿の原因疾患を診断する「血尿診断アルゴリズム」を提示わが国では母子保健法、学校保健法、労働安全衛生法、老人保健法などにより、生涯にわたり検尿を受けることが可能。こうした検尿での異常所見(潜血)が契機となって重篤な腎疾患や泌尿器疾患が発見されることも少なくない。本書は潜血が認められた患者における、血尿のタイプの判定と原因疾患の診断のためのガイドラインで、血尿の原因疾患を診断するための手順を初めて詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示。また、ワクチン接種後の血尿例の報告を受けて、最終章で「新型コロナワクチンと血尿」について解説している。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    血尿診断ガイドライン2023定価3,080円(税込)判型A4判頁数80頁発行2023年6月編集血尿診断ガイドライン改訂委員会Amazonでご購入の場合はこちら

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高血圧への第1選択としての利尿薬vs.他の降圧薬~コクランレビュー

 高血圧患者における死亡率、心血管イベントの発生率、有害事象による中止率などについて、第1選択薬としてのサイアザイド系利尿薬と他のクラスの降圧薬を比較したシステマティックレビューの結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMarcia Reinhart氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年7月13日号に報告した。 2021年3月までのCochrane Hypertension Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、および臨床試験登録が検索された。対象は1年以上の無作為化比較試験で、第1選択薬としての利尿薬と他の降圧薬の比較、および死亡率とその他のアウトカム(重篤な有害事象、総心血管系イベント、脳卒中、冠動脈性心疾患[CHD]、うっ血性心不全、有害作用による中止)が明確に定義されているものとした。 主な結果は以下のとおり。・9万例超が対象の、26の比較群を含む20件の無作為化試験が解析された。・今回の結果は、2型糖尿病を含む複数の合併症を有する50〜75歳の男女高血圧患者における第1選択薬に関するものである。・第1選択薬としてのサイアザイド系およびサイアザイド系類似利尿薬が、β遮断薬(6試験)、Ca拮抗薬(8試験)、ACE阻害薬(5試験)、およびα遮断薬(3試験)と比較された。・他の比較対照には、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、アリスキレン(直接的レニン阻害薬)、およびクロニジン(中枢作用薬)が含まれていたが、データが不十分だった。・重篤な有害事象の総数に関するデータを報告した研究は3件のみで、利尿薬とCa拮抗薬を比較した研究が2件、直接的レニン阻害薬と比較した研究が1件だった。β遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(リスク比[RR]:0.96[95%信頼区間:0.84~1.10]、5試験/1万8,241例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(5.4% vs.4.8%、RR:0.88[0.78~1.00]、絶対リスク減少[ARR]:0.6%、4試験/1万8,135例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:0.85[0.66~1.09]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、CHD(RR:0.91[0.78~1.07]、4試験/1万8,135例/確実性:低)、心不全(RR:0.69[0.40~1.19]、1試験/6,569 例/確実性:低)。・有害作用による中止(10.1% vs.7.9%、RR:0.78[0.71~0.85]、ARR:2.2%、5試験/1万8,501例/確実性:中程度)。Ca拮抗薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.02[0.96~1.08]、7試験/3万5,417例/確実性:中程度)。・重篤な有害事象(RR:1.09[0.97~1.24]、2試験/7,204例/確実性:低)。・総心血管イベント(14.3% vs.13.3%、RR:0.93[0.89~0.98]、ARR:1.0%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・脳卒中(RR:1.06[0.95~1.18]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.00[0.93~1.08]、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)、心不全(4.4% vs.3.2%、RR:0.74[0.66~0.82]、ARR:1.2%、6試験/3万5,217例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(7.6% vs.6.2%、RR:0.81[0.75~0.88]、ARR:1.4%、7試験/3万3,908例/確実性:低)。ACE阻害薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:1.00[0.95~1.07]、3試験/3万961例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(RR:0.97[0.92~1.02]、3試験/3万900例/確実性:低)。・脳卒中(4.7% vs.4.1%、RR:0.89[0.80~0.99]、ARR:0.6%、3試験/3万900例/確実性:中程度)、CHD(RR:1.03[0.96~1.12]、3試験/3万900例/確実性:中程度)、心不全(RR:0.94[0.84~1.04]、2試験/3万392例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(3.9% vs.2.9%、RR:0.73[0.64~0.84]、ARR:1.0%、3試験/2万5,254例/確実性:中程度)。α遮断薬と比較したサイアザイド系利尿薬:・全死亡率(RR:0.98[0.88~1.09]、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・総心血管イベント(12.1% vs.9.0%、RR:0.74[0.69~0.80]、ARR:3.1%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)。・脳卒中(2.7% vs.2.3%、RR:0.86[0.73~1.01]、ARR:0.4%、2試験/2万4,396例/確実性:中程度)、CHD(RR:0.98[0.86~1.11]、2試験/2万4,396例/確実性:低)、心不全(5.4% vs.2.8%、RR:0.51[0.45~0.58]、ARR:2.6%、1試験/2万4,316例/確実性:中程度)。・有害作用による中止(1.3% vs.0.9%、RR:0.70[0.54~0.89]、ARR:0.4%、3試験/2万4,772例/確実性:低)。 著者らは、本結果を以下のようにまとめている。・利尿薬と他のクラスの降圧薬の間で、おそらく死亡率に差はない。・利尿薬はβ遮断薬と比較して、心血管イベントをおそらく減少させる。・利尿薬はCa拮抗薬と比較して、心血管イベントと心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はACE阻害薬と比較して、脳卒中をおそらくわずかに減少させる。・利尿薬はα遮断薬と比較して、心血管イベント、脳卒中、心不全をおそらく減少させる。・利尿薬はβ遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬と比較して、有害作用による中止がおそらく少ない。

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間質性肺疾患の急性増悪、ニンテダニブの新規投与は有効か?

 『特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)』では「特発性肺線維症(IPF)急性増悪患者に抗線維化薬を新たに投与することは推奨されるか?」というクリニカルクエスチョン(CQ)が設定されており、推奨は「IPF急性増悪患者に対して抗線維化薬を新たに投与しないことを提案する(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:D[非常に低])」となっている。このような推奨の理由として、抗線維化薬であるニンテダニブ、ピルフェニドンをIPF急性増悪時に新たに投与する場合の有効性が明らかになっていないことがある。とくにニンテダニブについては、後ろ向き研究を含めて症例報告以外に報告がない1)。そこで、順天堂大学医学部医学研究科の加藤 元康氏らの研究グループは、「間質性肺疾患(ILD)の急性増悪発症後にニンテダニブ投与が行われた症例のニンテダニブの有効性と安全性を確認する後方視的検討」という研究を実施した。その結果、ニンテダニブは90日死亡率と急性増悪の再発までの期間を改善した。本研究結果は、Scientific Reports誌オンライン版2023年8月2日号で報告された。 2014年4月~2022年3月にILDの急性増悪を発症した患者のうち、急性増悪前にニンテダニブが投与されていない33例を対象とした。対象を急性増悪後3~35日にニンテダニブによる治療を開始した11例(ニンテダニブ群)、急性増悪後にニンテダニブが投与されなかった22例(対照群)に分類し、急性増悪後の生存期間、90日死亡率、急性増悪の再発までの期間などを比較した。また、安全性も検討した。 主な結果は以下のとおり。・ニンテダニブ群は対照群と比較して、平均年齢が高かったが(ニンテダニブ群:80.54歳、対照群:73.59歳)、その他の患者背景に有意な違いはなかった。・IPFと診断されていた患者の割合は、ニンテダニブ群90.9%(10/11例)、対照群63.6%(14/22例)であった。・急性増悪後の生存期間中央値は、ニンテダニブ群213日に対して、対照群75日であった(ハザード比[HR]:0.349、p=0.090、一般化Wilcoxon検定)。・90日死亡率は、ニンテダニブ群36.36%、対照群54.44%であり、ニンテダニブ群が有意に改善した(HR:0.2256、p=0.048、一般化Wilcoxon検定)。・急性増悪の再発までの期間は、ニンテダニブ群が対照群と比較して有意に改善した(HR:0.142、p=0.016、一般化Wilcoxon検定)。・急性増悪後90日死亡の独立した危険因子は、PaO2(動脈血酸素分圧)/FiO2(吸入酸素濃度)比高値(オッズ比:0.989、95%信頼区間:0.974~0.997、p=0.009)、ニンテダニブ不使用(同:0.107、0.009~0.696、p=0.016)であった(ロジスティック回帰分析)。・ニンテダニブ群において、重篤な副作用やニンテダニブによる治療に関連する死亡は認められなかった。・ニンテダニブ群の主な副作用は下痢、悪心/食欲不振、肝機能障害であり、発現率はそれぞれ9.09%、9.09%、18.18%であった。 著者らは「例数の少ない後ろ向き研究であること」などを本研究の限界としてあげつつ、「ILDの急性増悪後の治療にニンテダニブを追加することで、重篤な副作用を伴わずに良好な臨床転帰が得られる可能性があるため、ニンテダニブはILDの急性増悪に対する有用な治療選択肢となりうる」とまとめた。

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第175回 進行虫垂がんを宣告されたある医師の決断(前編) 医師になった子への医業継承を念頭にまず取り組んだこと

医師ががんになったらどんな行動を取るのか?こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この年齢になると、友人たちが次々とがんに罹っていきます。2年ほど前は、大学の山のクラブの先輩2人に相次いで食道がんが見つかりました。昨年は、ライブ友だちの女性が乳がんに、先月には演劇友だちの女性に子宮体がんが見つかり、先週にはやはり大学のクラブの別の先輩に大腸がんが見つかりました。仕事柄か、がんが見つかると私に連絡が来て、「何かアドバイスを」と言われます。医療機関の選び方や治療法などについて、わかる範囲でアドバイスをするのですが、「セカンドオピニオンとは」の説明から始めなければならない場合もあり、なかなか大変です。ところで、一般人ではなく、がんに詳しいはずの医師ががんになったらどんな行動を取るのでしょう。冷静にがん宣告を受けるのでしょうか、それとも…。『続“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営を超えて』に学ぶ今年3月、ある医師が進行がんになった経緯を綴った、興味深い医療経営書が出版されました。『続“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営を超えて』(東 謙二著、日経メディカル開発)です。がん宣告を受けた医師の立ち振る舞いとして、参考になる部分もあるので、今回はこの本を紹介します。熊本で63床の病院を経営する東(あずま)謙二氏は、九州では名の知れた病院経営者です。2008年から2023年まで15年間、日経メディカルオンラインでコラム「“虎”の病院経営日記」を連載。また、熊本では若手の病院・診療所経営者の悩みごとや愚痴を聞いたりもするリーダー的存在です。ちなみに“虎”とは、お酒好きであることから付いたあだ名のようです。私も幾度か酒席に同席したことがありますが、まあ、子虎というより大虎の印象です。その東氏に進行した虫垂がんが見つかったのは2019年、51歳の時でした。虫垂炎を発症、摘出手術後に行った病理検査で、漿膜浸潤をきたした低分化腺がんと診断されたのです。虫垂がんはそもそもが珍しい病気で、大腸がん全体の1%にも満たないとされています。虫垂炎との区別が難しく、早期発見が極めて困難なため、虫垂炎として手術をして初めてがんが見つかるケースが少なくないそうです。そう言えば、昨年だか有名芸能人が似たような経緯で入院していましたが、ひょっとすると…。それはさておき、虫垂がんはご存知のように、普通の大腸がんよりもたちの悪い、予後不良のがんです。本書にはその闘病の経緯とともに、自分の死後も病院を存続させるために行った、さまざまな経営改革についても詳しく書かれています。がん宣告で迫られた病院の経営改革東氏がまず取り組んだのが、医療法人の持分放棄でした。それまでは持分ありの医療法人でしたが、がん宣告を機に、それまで持分を有していた親族の説得に取り掛かり、2021年に持分なしへの移行を実現しています。持分放棄をしたことについて東氏は同書で、「医療法人の永続性という観点に立つと、この持分が大きな足かせになるからです」と書いています。「持分のある医療法人においては、社員から出資持分の払い戻し請求が行われると、医療法人が多額のお金を用意する必要が出てきます。(中略)。ただ、当院の場合は、払い戻し請求のリスクよりも、次の世代に引き継いだときに、巨額の相続税、贈与税が発生するリスクを避けたかったという意味合いが大きい」(同書)とのことです。同族経営を行う医療法人では、今でも持分ありのところが多いと思いますが、評価額が莫大になってしまった場合、持分は時として経営の根幹を揺るがすトラブルの種ともなります。東氏はそのリスクをなくし、将来的に医師になった子への“承継”をスムーズに進めるため、持分放棄を行ったわけです。「様々な改革を行う上で、進行がんになったことはプラスに働いた」東氏はその他に、院長職を辞して理事長専任になるなど、組織の改変にも取り組みました。病院団体の支部長など、対外的な業務が増えてきたことに加え、「がんの手術後、余命もわからないし、もう手術前とは同じように働けないと考え」(同書)たからだそうです。なお、医療法人の持分なしへの移行や、理事長と院長の役割分担については、10年以上前からその必要性は認識していたそうです。東氏は「がんになり、次の世代への継承をすぐにでも考えなければならなくなったとき(中略)、これはもう本腰を入れないといけないぞと考えた」と書き、持分を持つ親族たちへの説得に取り掛かりました。親族には「俺はもういつポッと死んでもおかしくない。そうしたらまた大変な相続税がいるんだよ」と半ば脅し気味に説得したとのことです。東氏は、「様々な改革を行う上で、進行がんになったことはプラスに働いた」と本書を締めくくっています。サブタイトル、「コバンザメ医療経営を超えて」の意味なお、本書のサブタイトルが「コバンザメ医療経営を超えて」となっているのは、2017年に出版された前著『“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営のススメ』へのアンチテーゼとなっているためのようです。東氏が経営する東病院は68床という小規模ながら、熊本大学病院や済生会熊本病院、熊本中央病院など数多くの基幹病院に囲まれており、医療連携が現在ほど重要視されていない2000年代初めから、それらの後方病院としての役割やサブアキュート機能を強化した経営を行ってきました。大病院との連携に重点を置き、“コバンザメ”に徹するという意味で、「コバンザメ医療経営」と言われてきました。しかし、本書で東氏は、「もはや、どんな規模の病院も連携なしにやっていけません。われわれのような中小の民間病院は基幹病院からの受け入れなしには経営できないし、基幹病院も患者を早く退院させ、中小病院に受け入れてもらわないと成り立ちません。(中略)。“コバンザメ経営”という言葉はもう死語ではないでしょうか」と書き、これからは後方病院が患者に相応しい前方(基幹病院)を選ぶ時代が来る、と主張しています。サブタイトルの「コバンザメ医療経営を超えて」にはその決意が込められているわけです。本書は、中小病院のこれからの役割、立ち位置を考える上でも参考になるでしょう。ところで、本書には「中小病院が生き残るための20箇条」という章が設けられています。次回は、中小病院だけではなく、診療所の開業医にも役立ちそうな20箇条について紹介したいと思います。(この項続く)

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零売薬局を根絶か?「やむを得ない場合」の要件が激ムズ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第116回

処方箋医薬品以外の医療用医薬品の処方箋なしの販売(いわゆる「零売」)について、また規制が強化されそうです。厚生労働省の「医薬品の販売制度に関する検討会」は4日、非処方箋薬を患者へ直接販売する「零売」を大幅に規制する案を了承し、事実上、零売薬局を解体させる方向性でおおむね一致した。法令上、リスクの低い医療用薬は「やむを得ない場合」に薬局での直接販売を認めることとし、定義はまだあいまいだが「かかりつけ薬局」で対応させる内容。ただ、法律家の委員からは、零売薬局の「営業の自由」を制限しかねないとの懸念から、要件設定は「慎重に考えるべき」と忠告する声が上がった。(2023年8月7日付 RISFAX)この件に関しては、「まだ議論しているの?」「この前も通知が出たのでは?」と思う人も多いでしょう。約1年前の2022年8月5日に「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売方法等の再周知について」という通知が厚生労働省より出され、処方箋なしの販売方法が提示されました。「まず同様の効能効果を有する一般用医薬品を販売するか、その在庫がない場合は他薬局を紹介するなど、一般用医薬品の使用を勧める。それでも販売せざるを得ない場合は受診勧奨を行ったうえで販売する」という込み入った手順でした。また、「病院や診療所に行かなくても買える」「忙しくて時間がないため病院に行けない人へ」「時間の節約になる」などの広告は明確に不適切な表現とされ、行政からの指導が入るような雰囲気を醸し出していました。おそらくこの通知を出しても処方箋なしの販売を行う薬局は減らず、SNSなどでも「病院に行かなくても美白になる医薬品が買える!」などの広告が減らないことから、引き続きの対応が必要になったのでしょう。今回の会議では、「やむを得ない場合」においてのみ処方箋なしでの販売を行うことができるとし、その「やむを得ない場合」とはどういう場合か、またその販売に当たっての要件が整理されました。●販売が認められる「やむを得ない場合」について次のように整理してはどうか。次の(1)、(2)をいずれも満たす場合(1)医師に処方され服用している医療用医薬品が不測の事態で患者の手元にない状況となり、かつ、診療を受けられない場合(2)一般用医薬品で代用できない、もしくは、代用可能と考えられる一般用医薬品が容易に入手できない場合(例えば、当該薬局及び近隣の薬局等において在庫がない等)●販売に当たっては、上記の場合に、次の要件を課すよう整理してはどうか。(1)かかりつけ薬局(かかりつけ薬局の利用が難しい場合等の例外的な場合を除く)が販売すること(2)一時的に(反復・継続的に販売しない)、最小限度の量(事象発生時には休診日等でいけない、かかりつけの医療機関に受診するまでの間に必要な分。最大数日分等)に限り販売すること(3)適正な販売のために購入者の氏名等及び販売の状況を記録、受診している医療機関に報告することこの「やむを得ない場合」とその要件については、おおむね賛同されたと報道されています。ここで急にかかりつけ薬局が出てきたことに少しびっくりしていますが、本当にかかりつけ薬局としての機能をもって運営している薬局が、万が一、本当に「やむを得ない場合」において処方箋なしの販売を行うときにはこの要件や手順において運用するのでしょう。しかし、「わーい、この方法で販売できる!」と思えるほどの軽い内容でもないので、そもそも処方箋なしの販売以外の方法で対応することになると予想します。この内容が、処方箋なしの販売のみを行っている薬局に響くのかはわかりませんが、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の処方箋なしの販売は違法ではない」という点を裁判で争う姿勢をみせているところもあると聞きます。根本的な解決やみんなが納得する解釈に至るにはしばらく時間がかかりそうです。個人的には、医薬品を使用する患者さんに不利益のないよう、そして安全に使用してもらえるようなルールと理解が進むといいなと思います。

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