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高齢者の健康関連QOL低下の最も強い予測因子は?/名古屋大学

 最大12年間にわたり縦断的に収集された日本の地域在住高齢者データを用いて健康関連QOLの長期的な変化パターンとその予測因子を調査した結果、一部の健康関連QOLは一律に低下するのではなく、維持する群と急速に低下する群に分かれ、その分岐を最も強く予測していたのは睡眠の質の悪化であったことを、名古屋大学の大島 涼賀氏らが明らかにした。Scientific Reports誌2025年12月7日号掲載の報告。 主観的な身体・精神・社会的健康を包括的に評価する健康関連QOLは将来の死亡率や心血管疾患の発症などと関連することが報告されている。そのため、健康関連QOLは高齢者の健康状態を早期に捉えるうえで有用な指標となり得るが、これまでの研究は単一時点の評価が中心であり、時間経過による変化やその要因については十分に明らかにはなっていなかった。そこで研究グループは、2007~18年の「岩木健康増進プロジェクト健診」のデータを解析し、国際的な健康関連QOL指標であるSF-36下位尺度をもとに加齢に伴う身体的・精神的なQOLの変化を分析する縦断研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、2007~18年の岩木健康増進プロジェクト健診に参加した60歳以上の910人のデータを用いた。女性が588人(64.6%)で、年齢中央値は男女ともに64.0歳であった。・潜在クラス混合モデルで解析した結果、身体的役割機能と精神的役割機能は年齢とともに一律に低下するわけではなく、ベースライン時のスコアが同様に高値であっても維持する群と急速に低下する群に分かれた。・身体的役割機能と精神的役割機能の低下に共通する最も一貫して関連していた予測因子は睡眠の質の悪化であった。・身体的役割機能低下のその他の予測因子は、週1回以上の運動習慣がない、開眼片足立ちテストの成績不良であった。・精神的役割機能低下のその他の予測因子は、抑うつ傾向、過体重/肥満であった。・就寝時刻・入眠時刻・起床時刻などの睡眠習慣は、健康関連QOLと関連しなかった。 研究グループは「われわれの知る限り、本研究は日本の地域在住高齢者を対象とした健康関連QOLの長期的な変化とその予測因子を明らかにした初の報告である。日常生活機能に関連する健康関連QOLを維持するためには、日中の眠気を予防するために睡眠の質を向上させることが重要である」とまとめた。

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Orforglipronは抗肥満薬として2型糖尿病を合併した肥満症に対して有効である(解説:住谷哲氏)

 GLP-1はG蛋白質共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCR)の1つであるGLP-1受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達するが、そのシグナルにはGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン(arrestin)依存的シグナルとがある。前者はcAMPなどのセカンドメッセンジャーを介して細胞内Ca濃度を上昇させることでGLP-1作用を発揮する。後者は従来GLP-1受容体の脱感作を誘導すると考えられてきたが、近年その他の多様な細胞内シグナル伝達を担っていることが明らかになりつつある。 本試験で用いられたorforglipronは、もともと中外製薬で中分子医薬品として創薬されたOWL833が2018年にEli Lillyに導出されて臨床開発が継続されてきた薬剤であり、GLP-1受容体に結合してGタンパク質依存的シグナルのみを活性化しβアレスチン依存的シグナルを活性化しないことが知られている。このようにGPCRを介したGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン依存的シグナルとを選択的に活性化させる分子はバイアスドリガンド(biased ligand)と呼ばれる1)。 本試験はorforglipronの体重減少効果を主要評価項目として、2型糖尿病を合併した肥満患者を対象として実施された。結果は、36mgの投与による72週後の体重変化量は-9.6%であった。これはATTAIN-1で示された2型糖尿病を合併しない肥満患者における体重変化量の-11.2%と比較するとやや小さかった2)。参考までにこれまで報告されているGLP-1受容体作動薬の体重減少効果については、リラグルチド3mgの-6.0%、セマグルチド2.4mgの-9.6%、チルゼパチド15mgの-14.7%、経口セマグルチド14mgの-4.7%、同25mgの-7.3%と比較するとセマグルチド2.4mgとほぼ同等の体重減少効果が認められたことになる。 現在わが国では、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドとGIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチドが抗肥満薬として承認されているが、いずれも注射薬である。一方で、米国FDAは経口セマグルチド25mgを昨年12月に抗肥満薬として承認して、本年より発売開始予定である。経口セマグルチドはペプチドホルモンであるためバイオアベイラビリティが低く、服薬方法にかなりの制約があるのが難点であるが、orforglipronはその問題点をクリアしている。したがって、服薬アドヒアランスの点ではorforglipronに一日の長があるといえよう。いずれにせよ熾烈な抗肥満薬開発競争は、まだまだ続きそうである。

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試験本番で実力を100%出し切るための3ヵ条【研修医ケンスケのM6カレンダー】第10回

試験本番で実力を100%出し切るための3ヵ条さて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。改めまして、みなさま新年明けましておめでとうございます。2025年4月に始まったこの連載も、これまでに多くの医学生の方に読んでいただき、非常に嬉しく思います。「最強寒波」だの、「10年に1度」はふと毎年聞いているような気もしますが、今年の国家試験直前期も寒いですね。みなさまはいかがお過ごしでしょうか。さて、来月にはいよいよ試験本番を控える皆さんに、私から最後のメッセージをお送りします。見直しで確認すべき「2つ」(指差し確認も忘れずに!)皆さんは普段見直しで意識していることはありますか?基本的に医師国家試験は回答する時間が足りなくなる、というケースが少ないため、本番でも見直しが重要です。試験では次の2つを意識して見直しをしてください。1.何を問われているか2.主訴に立ち返る「何を問われているか」は非常に重要です。適切不適切、何個選ぶのか、の基本的なことは当然確認するとして、「この患者に対して〜」「直ちに〜」という言葉に敏感になりましょう。選択肢の中には問い方さえ変えれば正答になるものも含まれています。例えば、尿管結石の対応だから水分摂取励行/結石破砕術にすぐに飛びついてしまったが、実際には「今、目の前の患者に対して『まず』行うべき鎮痛(NSAIDsなど)」を問われていた、というケースは少なくありません。冷静になってみれば解けたというミスは非常にもったいないです。難問や割れ問題で間違えるよりも、こうした「拾えたはずの問題」を落としてしまうほうが、試験中の精神的ダメージははるかに大きくなります。ついては、見直しに余裕があるのなら、自信のない問題だけでなく「絶対合っている」と確信のある問題こそ、「何が問われているか」を再度確認してください。やや似た話ですが、「主訴に立ち返る」ことも同様に確認してください。同じ疾患でも主訴は様々です。甲状腺疾患のように多彩な症状を呈する症例もそうですが、心不全+肺炎のような複合病態においても、この症例では何が主訴であったのか?これを見失ってはいけません。そして、この「主訴に立ち返る」は実臨床でも非常に重要です。鑑別を絞ることはもちろん、治療経過で主訴がどのように変化していくのか意識することは医学的に大切なだけでなく、患者さんにとっても納得のいく治療に繋がります。だからこそ、医師国家試験でもきちんと主訴を把握できているかを問われる問題が多い印象があります。たとえ最終的な病態が特定できなくても、主訴に対する適切な対応を選び取ることができれば、それは一つの正解と言えます。実際、救急外来でもよく見かける話です。休み時間をどう過ごすのか、決めておく(ラウンジって良いですが、結局バタバタするのは私だけでしょうか?笑)2日間ある医師国家試験では開始前、昼休み、午後のブロック間の1日3回、合計で6回休み時間があります。試験会場は慣れた環境ではありません。トイレも混みやすい、他大学の友人にばったり会う、などイレギュラーが溢れています。休み時間の過ごし方に正解はありません。前のブロックの話題で周囲と雑談で盛り上がることもあります。自分は1人で黙々と過ごしたい、この分野だけは見返したい、そんな方もいます。休み時間に何かを見返したいのであれば、「これが出たら確実に得点できる」という得意分野を点検することをお勧めします。なんだかんだ休み時間は落ち着かないもの。集中して新しいことを会得するには向かない時間だと思います。だからこそ、確実に解ける箇所を「鉄壁」にするつもりで、知識にさらなる磨きをかけてください。実際に出題されたら「あれだ!」と飛びつかず「お、休み時間で見ると決めたやつ。ラッキー」と落ち着いて対応できる余裕を持ちましょう。ふと出てきた、新しい情報にビビらない医師国家試験に限った話ではないですが、何かと試験前は様々な噂が飛び交うものです。先月述べたように、各予備校が予想するトピックは一度目を通すことをお勧めしますが、本番前日や数日前であれば、無理に習得しようとしなくて構いません。新しく出題範囲に含まれたもの、トリッキーなトピックなどは目を引きがちですが、全体に占める割合は僅かです。結局、定番をいかに落とさないかが合格にとって最重要だと私は思います。直前であればインプットよりも、今ある知識を「正確にアウトプットできること」に注力しましょう。最後に(皆さんも、いざ出陣!)医学生のみなさんは、実にこれまで数々の試験を乗り越えてきたと思います。学内総合試験/各科試験、医学部入学試験、高校、中学、小学校、幼稚園、数え始めたらキリがないでしょう。緊張しても緊張しなくても、眠ることができてもできなくても、大丈夫。ただ、これまで学習してきたことをしっかりアウトプットしてきてください。どのみち4月以降に当直すれば、眠たい中でも同様に診療しなければならないのですから。講評してやる、くらいの余裕を持ってぜひ戦ってきてください!

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うつ病の死亡リスク調査、抗うつ薬治療の影響は?~メタ解析

 うつ病は早期死亡と関連していることが報告されている。しかし、抗うつ薬治療を含む増悪因子や保護因子にも焦点を当て、うつ病患者における全死亡リスクおよび原因別死亡リスクを包括的に検討したメタ解析はこれまでなかった。中国・香港大学のJoe Kwun Nam Chan氏らは、あらゆる原因および特定の原因によるうつ病、併存疾患を有するうつ病における死亡リスクを明らかにするため、コホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、推定値を統合した。World Psychiatry誌2025年10月号の報告。 抗うつ薬および電気けいれん療法(ECT)の影響、死亡リスクのその他の潜在的な調整因子を評価した。2025年1月26日までに公表された研究をEMBASE、MEDLINE、PsycINFOデータベースより検索し、ランダム効果モデルを用いて死亡率推定値を統合した。出版バイアス、サブグループ解析、メタ回帰分析、ニューカッスル・オタワ尺度を用いた研究の質の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・268件の研究(うつ病患者:1,084万2,094例、対照群:28億3,793万3,536例)が抽出された。・うつ病患者の全死亡率は、非うつ病患者/一般集団と比較し、2倍以上であった(相対リスク[RR]:2.10、95%信頼区間[CI]:1.87~2.35、I2=99.9%)。・とくに自殺(RR:9.89、95%CI:7.59~12.88、I2=99.6%)による死亡リスクが高く、自然死(RR:1.63、95%CI:1.51~1.75、I2=99.6%)でも上昇が認められた。・併存疾患をマッチングさせたうつ病患者と非うつ病患者との比較では、うつ病関連死亡リスクの有意な上昇も認められた(RR:1.29、95%CI:1.21~1.37、I2=99.9%)。・精神症状を伴ううつ病と伴わないうつ病(RR:1.61、95%CI:1.45~1.78、I2=6.3%)、治療抵抗性うつ病と非治療抵抗性うつ病(RR:1.27、95%CI:1.16~1.39、I2=85.3%)の間に、死亡リスクの差が認められた。・抗うつ薬の使用は抗うつ薬を使用しない場合と比較し、うつ病患者の全死亡率の有意な低下と関連していた(RR:0.79、95%CI:0.68~0.93、I2=99.2%)。・ECTの使用はECTを使用しない場合と比較し、全死亡(RR:0.73、95%CI:0.66~0.82、I2=0%)、自然死(RR:0.76、95%CI:0.59~0.97、I2=12.0%)、自殺(RR:0.67、95%CI:0.53~0.85、I2=32.3%)のリスク減少と関連していた。 著者らは「本研究結果は、うつ病における死亡リスクの上昇を裏付け、死亡リスクの上昇を示す臨床的に意義のある患者サブグループを特定し、抗うつ薬治療とECTによる死亡率低下効果を明らかにしている。身体的健康の改善と自殺リスクの軽減、抗うつ薬治療の最適化、精神病性うつ病や治療抵抗性うつ病の早期発見と効果的な介入などを推し進める多角的なアプローチは、依然として拡大しているうつ病における死亡率の格差の縮小に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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アトピー性皮膚炎治療薬のネモリズマブがかゆみを迅速に軽減

 最近承認された注射型のアトピー性皮膚炎(AD)治療薬ネモリズマブ(商品名Nemluvio)が、悩ましいこの疾患に苦しむ患者に迅速なかゆみの緩和をもたらすことが、新たな研究で示された。スイスの製薬会社であるガルデルマ社の研究者らの報告によると、治療開始からわずか2日でかゆみが軽減した患者の割合は、ネモリズマブを投与された群でプラセボを投与された群の3倍以上に上ることが示された。さらに、ネモリズマブ群では睡眠も改善した。ガルデルマ社治療用皮膚科学プログラム責任者であるChristophe Piketty氏らによるこの研究結果は、「Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology」に12月16日掲載された。 Piketty氏は、「今回の結果は、ネモリズマブがかゆみを迅速に軽減し、結果としてADや結節性痒疹(PN)患者の睡眠改善にもつながるという理解を強化するものだ」とニュースリリースで述べている。ガルデルマ社はネモリズマブの開発企業であり、本研究への資金提供も行っている。 米食品医薬品局(FDA)は2024年に、中等症〜重症のADおよびPNの治療薬としてネモリズマブを承認した。ADは、免疫系の異常によりアレルゲンや刺激物に対する皮膚の防御機能が低下することで発症する。モノクローナル抗体であるネモリズマブは、かゆみやその他のADの症状の原因となるサイトカインのIL-31が受容体に結合するのを阻害し、かゆみのシグナル伝達を遮断する。 この研究では、FDAが承認の根拠とした4件の臨床試験のデータの事後解析を実施し、投与初期(最初の14日間)のかゆみの改善について評価した。解析対象は、AD患者1,728人(ARCADIA1、2試験)とPN患者560人(OLYMPIA1、2試験)であった。対象者は毎日かゆみと睡眠障害の強さを自己報告した。かゆみはpeak pruritus numerical rating scale(PP-NRS)で、睡眠はsleep disturbance numerical rating scale(SD-NRS)で評価し、スコアがベースラインから4点以上低下した場合を改善と見なした。 その結果、投与2日目にPP-NRSに改善が認められたAD患者の割合は、ネモリズマブ群で10.7%であったのに対し、プラセボ群では2.9%にとどまっていた。同様に、投与2日目に改善が認められたPN患者の割合はそれぞれ17.2%と3.7%であった。SD-NRSに改善が認められた割合についても、AD患者ではネモリズマブ群9.9%、プラセボ群4.6%、PN患者ではそれぞれ13.4%と4.3%であり、ネモリズマブ群で有意な改善が見られた。さらに、投与14日目にPP-NRSに改善が認められたAD患者の割合は、ネモリズマブ群で25.5%、プラセボ群で8.9%、PN患者の割合は37.0%と10.2%であり、群間差は投与14日目まで拡大していた。 研究グループは、「かゆみは中等症〜重症のADおよびPN患者が最も苦痛に感じる症状であり、かゆみの迅速な改善は重要な治療目標だ」と指摘している。また、「かゆみを迅速に軽減し、疾患の重症度や患者の生活の質(QOL)に臨床的に有意な改善をもたらす治療法は、ADおよびPNの現在の治療選択肢において重要だ」と述べている。

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小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025

ガイドライン50点、6,449ページ分の要点がわかる「小児科」66巻12号(2025年12月臨時増刊号)小児診療にかかわる重要なガイドラインについて、作成委員の先生方が、一般小児科医が知っておくべき部分をダイジェスト形式で解説。さらに使用上の注意やガイドライン発表後に得られた知見も併せて紹介します。この1冊で、各領域における最新版のガイドライン情報をアップデート!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025定価9,350円(税込)判型B5判頁数316頁発行2025年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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ムコ多糖症II型、新たな酵素補充療法が有望な可能性/NEJM

 ムコ多糖症II型(MPS II、ハンター症候群)は、イズロン酸-2-スルファターゼ活性の欠損によって発生する進行性のX染色体連鎖型のライソゾーム病で、神経系を含む臓器機能障害や早期死亡をもたらす。tividenofusp alfaは、イズロン酸-2-スルファターゼと改変トランスフェリン受容体(TfR)結合Fcドメインから成る、血液脳関門の通過が可能な融合タンパク質で、MPS IIの神経学的および末梢症状の治療を目的に開発が進められている新たな酵素補充療法(ERT)である。米国・University of North Carolina School of MedicineのJoseph Muenzer氏らは、小児男性患者を対象に行った、本薬のヒト初回投与の臨床試験の結果を報告した。NEJM誌2026年1月1日号掲載の報告。国際的な非盲検第I/II相試験 研究グループは、tividenofusp alfaの安全性および中枢神経系、末梢症状に対する効果の評価を目的に、国際的な非盲検第I/II相試験を実施した(Denali Therapeuticsの助成を受けた)。年齢18歳までのMPS IIの男性患者を対象とした。 tividenofusp alfa(週1回、静脈内投与)を24週間投与した後、80週間の安全性に関する延長試験と157週間の非盲検延長試験を行った(全261週)。 47例(用量設定コホート20例、15mg/kg投与コホート27例)を登録した。年齢中央値は5歳(四分位範囲:0.3~13)だった。44例(94%)が神経症状を伴うMPS IIで、3例(6%)は神経症状を伴わないMPS IIであり、15例(32%)がERTを受けた経験があった。注入反応の頻度が高いが管理可能 47例の全例で、3段階の試験期間中に少なくとも1件の有害事象を認め、最も高い重症度は、中等度が68%、重度が28%であった。死亡例の報告はなかった。治療関連の重篤な有害事象は3例(注入反応[infusion-related reaction]2例、貧血1例)に認めたが、これらの患者はすべて治療を継続した。 41例(87%)で、試験期間中に少なくとも1件の注入反応が発現し、最も頻度の高い有害事象であった。中等度が55%、重度が6%だった。注入反応の症状では、発熱、蕁麻疹、嘔吐の頻度が高く、ルーチンに前投薬を行ったにもかかわらず40%以上の参加者に発現した。 注入反応は全般に、担当医の判断による前投薬、注入速度の減速、減量によって管理可能であった。注入反応の発生は時間の経過とともに減少し、グルココルチコイドを含む前投薬も試験の進行に伴い減少した。ヘパラン硫酸値が低下、適応行動、肝臓容積も改善 その他の一般的な有害事象として、上気道感染症(60%)、発熱(55%)、咳嗽(47%)、嘔吐(43%)、下痢(40%)、発疹(40%)、貧血(38%)、新型コロナウイルス感染症(38%)、鼻漏(38%)を認めた。ベースライン時に19%(47例中9例)で貧血がみられたが、貧血を理由に試験を中止した参加者はいなかった。また、尿中総グリコサミノグリカン(GAG)値が悪化することはなく、改善の傾向を示した。 バイオマーカーについては、ベースラインと比較した24週時の脳脊髄液(CSF)中および尿中のヘパラン硫酸が、それぞれ91%および88%減少した。ヘパラン硫酸濃度の低下は153週目まで持続し、適応行動は安定化または改善した。ベースライン時に、24%(21例中5例)で肝臓容積に異常を認めたが、24週時には、これらを含む全例(18例中18例)で正常化または正常を維持していた。 著者は、「MPS II小児男性患者に対する週1回15mg/kgの静脈内投与によるtividenofusp alfa治療では、ERTの既知のリスクである注入反応を含む有害事象が高頻度に発現した」「中央値で2年間の治療により、基質の蓄積および神経細胞損傷の、中枢神経系および末梢のバイオマーカーが減少傾向を示し、臨床エンドポイント改善の可能性が示唆された」としている。

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早期から症状改善が期待できるうつ病治療薬「ザズベイカプセル30mg」【最新!DI情報】第55回

早期から症状改善が期待できるうつ病治療薬「ザズベイカプセル30mg」今回は、うつ病治療薬「ズラノロン(商品名:ザズベイカプセル30mg、製造販売元:塩野義製薬)」を紹介します。本剤は既存の抗うつ薬とは異なる作用機序を有するアロプレグナノロン様GABAA受容体機能賦活薬であり、投与開始後早期からの症状改善が期待されています。<効能・効果>うつ病・うつ状態の適応で、2025年12月22日に製造販売承認を取得しました。本剤は抑うつ症状が認められる患者の急性期治療に用いる薬剤であり、抑うつ症状が寛解または回復した患者における再燃・再発の予防を目的とした投与は行いません。<用法・用量>通常、成人にはズラノロンとして30mgを1日1回14日間夕食後に経口投与します。なお、本剤による治療を再度行う場合は、投与終了から6週間以上の間隔を空けます。<安全性>重大な副作用として、錯乱状態(頻度不明)があります。その他の副作用として、傾眠(20.0%)、めまい(12.6%)、頭痛、悪心、下痢、口渇・口内乾燥、ALT上昇、浮遊感、倦怠感(いずれも1~5%未満)、発疹、振戦、鎮静、注意力障害、健忘、嘔吐、腹部不快感、腹痛、AST上昇、γ-GTP上昇、歩行障害、酩酊感(いずれも1%未満)、嗜眠(頻度不明)があります。薬物依存を生じる恐れがあるので、用法・用量を遵守するとともに、本剤による治療を再度行う場合には、治療上の必要性を十分に検討する必要があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内の神経伝達物質の働きを高め、情報伝達を活性化することで、うつ症状を改善します。2.薬物依存を生じる恐れがあるので、用法・用量を必ず守ってください。3.アルコールはこの薬の作用に影響するため、飲酒は控えてください。4.眠気やめまいなどの副作用が現れることがあります。自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けてください。5.うつ病やうつ状態の人は死んでしまいたいと感じることがあります。不安感が強くなったり、死にたいと思ったりする症状が悪化する場合があるので、このような症状が現れた場合には、医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>うつ病は、抑うつ気分や不安、睡眠障害、意欲低下などにより日常の生活に支障を来す精神疾患です。疫学調査によれば、日本におけるうつ病の患者数は約500万例と推測されています。薬物治療には主に抗うつ薬が用いられますが、効果発現までに数週間を要し、継続的な服用が必要となるため、即効性のある治療薬が求められてきました。本剤は、既存の抗うつ薬とは異なる作用機序を有するアロプレグナノロン様GABAA受容体機能賦活薬です。ポストシナプス領域内外のGABAA受容体にポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)として作用し、GABAA受容体機能を増強します。これにより、うつ病態でみられる気分、不安、睡眠に関与する神経の興奮と抑制の均衡や協調的な神経ネットワーク活動の調節不全を改善します。本剤は、抑制系神経細胞に直接作用すると考えられているので、従来の抗うつ薬よりも迅速な効果発現が期待され、うつ症状が強く現れる急性期治療を目的に使用されます。本剤の用法・用量は1日1回14日間の経口投与です。十分な効果を得るとともに、副作用の日中に及ぼす影響を考慮して夕食後に30mg(1カプセル)を経口投与します。なお、本剤は再発・再燃予防を目的とした寛解後の維持期治療には使用できません。本剤による再治療を行う場合は、前回の投与終了から6週間以上の間隔を空ける必要があります。海外では、産後うつ病に対する治療薬として2023年8月に米国、2025年8月に英国、2025年9月に欧州で承認されています。日本人大うつ病性障害患者を対象とした国内第III相単剤検証試験(A3734試験)において、主要評価項目である15日時のハミルトンうつ病評価尺度17項目版(HAM-D17)合計スコアのベースラインからの変化量は、本剤30mg群で-7.43±0.40、プラセボ群で-6.23±0.41であり、2群間の調整平均値の差は-1.20(95%信頼区間:-2.32~-0.08)でした。本剤30mg群の15日時のHAM-D17合計スコアは、プラセボ群よりも統計学的に有意にベースラインから減少しました(p=0.0365)。

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加工食品、がん罹患リスクと関連する保存料は?/BMJ

 フランス・ソルボンヌ・パリ・ノール大学のAnais Hasenbohler氏らは大規模前向きコホート研究において、加工食品で広く使用されている保存料の摂取と、がん(全体、乳がん、前立腺がん)罹患率上昇に、複数の正の関連が観察されたことを報告した。保存料は、微生物や酸化による劣化を防ぐことで保存可能期間を延長する、包装食品に添加される物質。それら保存料については、in vivoおよびin vitroの実験的研究において、終末糖化産物(AGE)ならびに変異原性および潜在的発がん活性に関与する負の影響が示唆されていた。BMJ誌2026年1月7日号掲載の報告。大規模前向きコホートで、保存料の摂取量とがん罹患の関連を評価 保存料が添加された食品とがん罹患率の関連を大規模前向きコホートで調べる検討は、French NutriNet-Sante cohort(2009~23年)のデータを用いて行われた。 対象は、ベースラインで少なくとも2回の24時間食事記録を完了し、がんに罹患していない15歳以上10万5,260例であった。 研究グループは、ブランド加工食品に含まれている保存料の累積時間依存摂取量を、24時間食事記録を用いて評価し、3つの食品成分データベースとNutriNet-Santeデータベースを統合して加工食品に含まれる特定の食品添加物を調べ、事後的ラボ解析で最も頻繁に摂取された添加物と食品の組み合わせについて評価した。 参加者を、保存料(単一、グループ)別の摂取量で三分位に分類(第1三分位~第3三分位)し(参加者の3分の1以上が摂取していた保存料では参加者を性別に低・中・高摂取者の三分位に分類。それ以外は性別に中央値により非摂取者および低/高摂取者に分類)、摂取量とがん罹患率の関連を、潜在的交絡因子を補正した多変量比例ハザードCoxモデルを用いて解析した。数種の保存料で、摂取量が多いとがん罹患率が上昇 参加者の平均年齢は42.0歳(SD 14.5)、女性が78.7%であった。平均追跡期間7.57年(SD 4.56)において、4,226例ががん罹患の診断を受けていた(乳がん1,208例、前立腺がん508例、大腸がん352例、その他2,158例)。 数種の保存料について、摂取量が多いこととがん罹患率が高いことの関連が次のように認められた。・非抗酸化物質の総摂取量と(1)全がん(高摂取者vs.非摂取/低摂取者のハザード比[HR]:1.16[95%信頼区間[CI]:1.07~1.26、尤度比検定のp<0.001]、60歳時点の絶対がんリスクはそれぞれ13.3%vs.12.1%)および(2)乳がん(1.22[1.05~1.41、尤度比検定のp=0.02]、5.7%vs.4.8%)。・ソルビン酸の総摂取量(とくにソルビン酸カリウム)と、(1)全がん(1.14[1.04~1.24、尤度比検定のp=0.01]、13.4%vs.11.8%)および(2)乳がん(1.26[1.07~1.49、尤度比検定のp=0.02]、5.7%vs.4.6%)。・亜硫酸塩の総摂取量と、全がん(1.12[1.02~1.24、尤度比検定のp=0.03]、13.4%vs.11.9%)。・ピロ亜硫酸カリウムと、(1)全がん(1.11[1.03~1.20、尤度比検定のp=0.01]、13.5%vs.12.0%)および(2)乳がん(1.20[1.04~1.38、尤度比検定のp=0.01]、5.7%vs.4.9%)。・亜硝酸ナトリウムと、前立腺がん(1.32[1.02~1.70、傾向のp=0.03]、4.2%vs.3.4%)。・硝酸カリウムと(1)全がん(1.13[1.05~1.23、尤度比検定のp=0.001]、14.0%vs.12.0%)および(2)乳がん(1.22[1.05~1.41、尤度比検定のp=0.003]、5.9%vs.4.8%)。・酢酸塩の総摂取量と(1)全がん(1.15[1.06~1.25、尤度比検定のp=0.003]、14.3%vs.12.2%)および(2)乳がん(1.25[1.07~1.45、尤度比検定のp=0.02]、6.1%vs.4.9%)。・酢酸と全がん(1.12[1.01~1.25、尤度比検定のp=0.01]、14.4%vs.12.4%)。・エリソルビン酸ナトリウムと、(1)全がん(1.12[1.04~1.22、尤度比検定のp<0.001]、13.5%vs.11.9%)および(2)乳がん(1.21[1.04~1.41、尤度比検定のp=0.01]、5.7%vs.4.8%)。がんと関連しない保存料は17種のうち11種 個別に検証した保存料17種のうち11種は、がん罹患との関連が示されなかった。 著者は、「がん発症との関連をより深く理解するためには、健康関連バイオマーカーをベースとした疫学調査および実験的研究を行う必要があるが、もし今回の新たなデータが確認されれば、消費者保護強化の観点から、食品業界に対して添加物の使用規定の見直しを求めることになる。少なくとも今回得られた知見は、消費者に、加工食品は最小限にとどめ新鮮な食品を好んで食するよう推奨する根拠となるものである」とまとめている。

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妊娠糖尿病予防、とくに有効な介入手段は?/BMJ

 英国・リバプール大学のJohn Allotey氏らi-WIP Collaborative Groupは、被験者個人データ(IPD)に基づくメタ解析を行い、妊娠中のライフスタイル介入は、診断基準によるばらつきはあったが妊娠糖尿病を予防しうることを示した。妊娠中の身体活動と食事に基づく介入は、妊娠中の体重増加の抑制に効果的であることは示されているが、妊娠糖尿病への影響や、どのような介入が最も効果的かについてはエビデンスにばらつきがあった。BMJ誌2026年1月7日号掲載の報告。ライフスタイル介入の妊娠糖尿病への影響を2段階IPDメタ解析で検証 研究グループは、ライフスタイル介入の妊娠糖尿病への影響を評価するため、母体のBMI、年齢、出産回数、民族性、教育レベル、介入によって異なるかどうかを検討し、有効性に基づき介入を順位付けした。 主要な電子データベース(1990年1月~2025年4月)を利用し、妊娠中のライフスタイル介入(身体活動ベース、食事ベース、あるいは両者による)の妊娠糖尿病への影響に関する無作為化試験を対象にメタ解析を行った。 主要アウトカムは、あらゆる基準および英国国立医療技術評価機構(NICE)の基準で定義した妊娠糖尿病。その他のアウトカムは、国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)および修正IADPSG基準で定義した妊娠糖尿病などとした。 2段階IPDメタ解析で、要約オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)、相互作用(サブグループの影響)を、絶対リスク減少値と共に推算した。非IPD試験からの集計データは、可能な限りにおいてメタ解析に加えた。介入効果は、ネットワークメタ解析法を用いて順位付けした。あらゆる診断基準で定義した妊娠糖尿病が減少 無作為化試験104報(女性被験者3万5,993例)が解析対象に含まれた。IPDは68%の被験者(2万4,391例、54試験)について得られた。 ライフスタイル介入により、あらゆる診断基準で定義した妊娠糖尿病が減少した。IPD試験を含んだ解析では10%(OR:0.90[95%CI:0.80~1.02]、絶対リスク減少値:1.3%[95%CI:-0.3~2.6])、IPDおよび非IPD試験の統合解析では20%(OR:0.80[95%CI:0.73~0.88]、絶対リスク減少値:2.6%[95%CI:1.6~3.6])の減少が示された。一方、NICE基準を用いた場合は、減少がみられなかった(OR:0.98[95%CI:0.84~1.13])。 ライフスタイル介入により、IADPSG基準で定義した妊娠糖尿病についても減少が認められた。IPD試験を含んだ解析では14%(OR:0.86[95%CI:0.75~0.97]、絶対リスク減少値:2.7%[95%CI:0.6~5.0])、IPDおよび非IPD試験の統合解析では18%(OR:0.82[95%CI:0.72~0.93]、絶対リスク減少値:3.5%[95%CI:1.3~5.7])の減少が示された。母親の教育レベルを鑑み、集団形式で訓練された担当者による身体活動ベースの介入を 効果は、教育レベルを除き、母体特性によるばらつきはなかった。 すべての教育レベルの女性が介入によりベネフィットを得ていたが、その有益性は低教育レベルの女性では低かった(低vs.中の相互作用のOR:0.68[95%CI:0.51~0.90]、低vs.高の相互作用のOR:0.71[95%CI:0.54~0.93])。 有益性は、介入特性でばらつきはみられなかったが、集団形式(OR:0.81[95%CI:0.68~0.97]、絶対リスク減少値:2.5%[95%CI:0.4~4.3])、新たに訓練を受けたファシリテーター(OR:0.82[95%CI:0.69~0.96]、絶対リスク減少値:2.4%[95%CI:0.5~4.2])による場合の効果が大きかった。 妊娠糖尿病の予防に関する介入を順位付けした結果、身体活動ベースの介入が最も上位であった(平均ランク:1.1、95%CI:1~2)。 これらの結果を踏まえて著者は、「実施戦略では、母親の教育レベルによる不均衡に対処する必要があり、妊娠糖尿病予防の介入は集団形式とし、介入担当者のトレーニングを行うこと、介入は身体活動ベースを検討することが必要である」とまとめている。

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抗うつ薬の選択で死亡リスクに違いはあるか?

 うつ病は死亡リスクを著しく上昇させることが知られているが、抗うつ薬の使用が長期生存へ及ぼす影響は依然として不明である。中国・Shantou University Medical CollegeのXiaoyin Zhuang氏らは2005~18年の抗うつ薬の使用傾向を調査し、米国の全国代表コホートにおける、うつ病関連死亡率に及ぼす抗うつ薬の影響を定量化するため本研究を実施した。General Hospital Psychiatry誌2026年1・2月号の報告。 米国国民健康栄養調査(NHANES)の7サイクル分(2005~18年)のデータを解析した(成人:1万1,569人)。うつ病の定義は、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコア10以上とした。抗うつ薬の使用状況は薬局の認証で確認し、SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬(TCA)、その他に分類した。死亡率との関連性は2019年まで延長し評価した。加重ロジスティック回帰分析を用いて、社会人口統計学的特性、心血管代謝関連疾患、ライフスタイルで順次調整したうえで、うつ病と死亡率との関連性を評価した。媒介解析では、抗うつ薬のパスウェイ効果を定量化し、層別モデルではクラス固有のハザード比(HR)を検証した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病は単独で、全死亡リスクを61%増加させた(完全調整オッズ比:1.61、95%信頼区間:1.24〜2.08)。・抗うつ薬の使用は、うつ病による総死亡率の27.3%に影響を及ぼしていた(p<0.001)。・処方の傾向では、SSRIが主流であり(12.7%→20.1%)、SNRIが急速に増加(3.4%→6.1%)、TCAが減少(2.5%→1.8%)していることが示された。・重要点として、抗うつ薬クラスによって死亡率への影響が異なっていた。すなわち、SNRIは、死亡リスクの低下(HR:0.72)と関連し、SSRIは中立的であった(HR:0.93)。一方、TCAではリスク増加が認められた(HR:1.19)。 著者らは「うつ病は、併存疾患とは無関係に死亡率を大きく上昇させるが、抗うつ薬の選択はこのリスクを緩和することが示唆された。抗うつ薬の選択バイアスの影響が残存する可能性はあるものの、SNRIは生存率向上に有効であり、高リスク集団においてTCAよりもSNRIが優先的に使用されることを裏付けている。本結果は、抗うつ薬クラスがうつ病管理における重要な効果修飾因子であることを示しており、薬物疫学的エビデンスを実臨床に統合する必要性を示唆している」とまとめている。

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歯の本数と死因別死亡の関連を検証、入れ歯使用でリスクが減弱か——4.4万人の7年追跡研究

 高齢者で歯を失うことは死亡リスクの上昇と関連することが知られてきたが、入れ歯やブリッジなどの補綴物がその影響をどこまで緩和するのかは明確ではなかった。今回、国内4.4万人を7年間追跡した研究で、残存歯が少ないほど複数の死因で死亡率が高まり、補綴物の使用でそのリスクが弱まる可能性が示された。研究は、東北大学大学院歯学研究科地域共生社会歯学講座国際歯科保健学分野のFaiz Abdurrahman氏、草間太郎氏、竹内研時氏らによるもので、詳細は11月19日付で「Scientific Reports」に掲載された。 う蝕(虫歯)や歯周病は世界で最も一般的な疾患の一つで、進行すると不可逆的な歯の喪失を招く。高齢期の歯の喪失は慢性疾患や死亡リスクの上昇と関連し、咀嚼低下による栄養障害、慢性炎症、フレイルの進行など複数の経路が指摘されている。しかし、こうしたリスクが死因ごとにどのように表れるか、また入れ歯やブリッジといった補綴物の使用がそれらをどの程度緩和しうるかは十分に明らかになっていない。本研究は、日本の地域在住高齢者を対象とする大規模コホートデータを用い、残存歯数と補綴物の使用状況が、多様な死因別死亡とどのように関連するかを、追跡データを基に検証した。 本研究では、日本老年学的評価研究(JAGES)の7年間の追跡調査データを解析した。アウトカムは全死亡率と死因別死亡率とし、がん、心血管、呼吸器などICD-10コードに基づく広い死因を対象とした。説明変数は、2010年JAGESベースライン質問票で収集した残存歯数と補綴物の使用有無から分類した。死亡リスクは、性別、年齢、所得、教育、併存疾患、生活習慣などを調整したCox回帰により、ハザード比〔HR〕および95%信頼区間〔CI〕を推定した。 解析には4万3,774人の参加者が含まれた(平均年齢73.7歳、女性53.2%)。中央値2,485日の追跡期間中に5,707人(13.0%)の死亡が確認された。全死亡率は1,000人年あたり20.7人だった。 残存歯が0~9本または10~19本の参加者は、20本以上の参加者に比べて全死因および死因別の死亡率が高かった。とくに、これらの群のうち補綴物を使用していない参加者では、補綴を使用している参加者よりも全死因死亡率が高かった。死因別では、消化器疾患と精神・行動障害を除き、補綴のない0~9本の群で最も高い死亡率を示した。 次に残存歯数と補綴物の使用有無を組み合わせた変数を説明変数としたCox回帰分析を行ったところ、補綴物を使用していない残存歯0~9本(HR 1.42、95%CI 1.30~1.56)および10~19本(HR 1.23、95%CI 1.10~1.37)の参加者は、20本以上の参加者よりも全死因死亡リスクが高かった。死因別では、補綴物を使用していない残存歯0~9本の参加者は、20本以上の参加者と比べて、がん(HR 1.31)、心血管疾患(HR 1.35)、呼吸器疾患(HR 1.72)、および外因死(HR 1.91)の死亡リスクが高かった(P<0.05)。同様に、補綴物を使用していない10~19本の参加者も、20本以上に比べて、がん(HR 1.19)および呼吸器疾患(HR 1.47)による死亡リスクが高かった(P<0.05)。 残存歯数ごとの層別化によるサブグループ解析では、残存歯が少ない群(とくに0~9本)で、補綴物を使用している参加者は使用していない参加者よりも、複数の死因でHRが1未満となり、死亡リスクが低くなる傾向がみられた。ただし、これらの差はいずれも統計学的に有意ではなかった。 著者らは、「歯の喪失は複数の特定死因による死亡リスクの上昇と関連していたが、歯科補綴物の使用によってそのリスクは軽減される可能性がある。生涯にわたる歯の喪失を抑え、補綴治療への公平なアクセスを確保することが、高齢化社会における健康アウトカムの改善に寄与すると考えられる」と述べている。

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炭酸脱水酵素阻害薬は睡眠時無呼吸症候群を改善(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の疫学と治療の現状 本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA:Obstructive Sleep Apnea)の人口当たりの発症頻度は男性で3~7%(40~60代に多発)、女性で2~5%(閉経後に多発)と報告されており、男女合わせて500万例以上、総人口の約4%にOSA患者が存在すると考えられている。本邦における成人OSAに対する有効な治療法としては経鼻/経口の持続陽圧呼吸(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)が中心的位置を占める。CPAP不適あるいは不認容の非肥満(BMI<30kg/m2)患者に対する植込み型舌下神経(XII神経)電気刺激も有効な方法である。その他、比較的軽症のOSA患者に対するマウスピースや特殊な原因に対する耳鼻科的・口腔外科的手術/処置が有効な場合もある。いずれにしろ、OSA患者に施行されている治療はCPAPに代表される機械的治療が中心であり、現在のところ、有効性が確認され、かつ、保険適用を受けた薬物治療は存在しない。 本邦におけるOSA患者に対するCPAPの導入率はCPAP必要患者の15%前後と低く、米国の70%を大きく下回っている。その意味で、本邦におけるOSA患者に対する治療は不十分であり、OSAを“扇の要”として関連する種々の疾患(病的肥満、糖尿病、治療抵抗性高血圧、冠動脈疾患、心房細動、心不全、脳卒中、大動脈解離、認知症など)の管理に少なからず影響を与えている(OSAを頂点とするMetabolic Domino現象)。さらに、OSA患者では明確な機序不明であるがメラノーマ、腎臓がん、膵臓がんなどの悪性腫瘍の発生率が高いことも注意すべき事項の1つである。以上の諸点を鑑みると、今回論評の対象としたRanderath氏らの論文で明らかにされた内服の炭酸脱水酵素(CA:Carbonic Anhydrase)阻害薬のOSA抑制効果は近未来のOSAに対する治療を質的に変化させる可能性がある。抗糖尿病薬GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名:マンジャロ)もOSAを改善することが報告されている(Malhotra A, et al. N Engl J Med. 2024;391:1193-1205.)。しかしながら、チルゼパチドは、あくまでも肥満の軽減を介して2次的に無呼吸頻度を低下させるものであり、OSA自体を1次的に改善させるものではない。それ故、チルゼパチドは今回の論評には含めない。 睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)には中枢性のもの(CSA:Central Sleep Apnea)も存在するが、その頻度はOSAに比べ有意に低いこと(SAS全体の10%以下)、発症機序に不明な点が多いことなどから本論評においては詳細な評価を割愛した。炭酸脱水酵素(CA)と睡眠時無呼吸の関係 CAは生体細胞に広く分布し、細胞内代謝の結果として産生されるCO2とH2Oとの反応を触媒しH2CO3を産生する。H2CO3はH+とHCO3ーに自然解離し、HCO3ーはクロライド・シフトを介して細胞外に排出、H+は細胞内の蛋白に吸着され細胞内pHは一定に維持される(生理的pH下ではγ-グロブリン以外の蛋白は陰イオンとして存在しH+と結合)。生体には臓器特異的に15~16種類に及ぶCAのアイソザイムが存在することが報告されており、各臓器において細胞内pHの恒常性維持に寄与している。このような細胞内環境下でCAの活性を阻害すると、細胞内でのCO2処理が遅延し細胞内CO2濃度が上昇、細胞内アシドーシスが招来される。その結果として、脳幹部(延髄、橋)に局在する呼吸中枢神経群(延髄表層に存在するCO2感受性の中枢化学受容体を含む)のCO2感受性が亢進し、換気応答が活性化される。さらに、細胞内アシドーシスは咽頭/喉頭に存在する上気道筋群の筋緊張を維持する。以上の機序を介して、CAの阻害は睡眠時の閉塞性無呼吸の発生を1次的に抑制するとされているが、これ以外の未知の機序が関係する可能性も指摘されている。CA阻害薬の分類と臨床 臨床的に使用可能なCA阻害薬には点眼薬と内服薬の2種類が存在する。点眼薬(商品名:ドルゾラミド、ブリンゾラミドなど)は主として眼圧低下と緑内障治療薬として使用される。内服薬のうち1954年に緑内障治療薬としてFDAに承認された歴史的薬剤であるアセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)は静注薬としても使用可能であり、緑内障以外にてんかん、メニエール病、急性高山病、尿路結石症の発作予防など幅広い保険適用を獲得している。最近認可された内服CA阻害薬として本論評の対象としたスルチアム(商品名:オスポロット)が存在するが、スルチアムは、本邦においては精神運動発作(てんかん)のみに使用が限定されている。CA阻害薬のOSAに対する治療効果-大規模研究の結果 SAS(OSA、CSA)発症にかかわる重要な因子としてCAが関与する化学反応が長年注目されてきたが確証が得られるには至らなかった。しかしながら、2020年、Christopher氏らはアセタゾラミド内服薬のSAS抑制効果に関して28研究(OSA:13研究、CSA:15研究)を基にメタ解析を施行した(Schmickl CN, et al. Chest. 2020;158:2632-2645.)。彼らの解析結果によると、アセタゾラミド内服(36~1,000mg/日)によってSAS患者の無呼吸/低呼吸指数(AHI:Apnea-Hypopnea Index)が37.7%(絶対値として13.8/時)低下すること、さらには、AHIの低下はOSA患者とCSA患者でほぼ同等であることが示された。アセタゾラミドによる無呼吸抑制効果は投与量依存性を示し、薬剤量が高いほど顕著であった。Christopher氏らの解析結果は、アセタゾラミドの内服がOSAのみならずCSAの治療にも有効である可能性を示している。 本論評の対象としたRanderath氏らの論文は、OSAに対するCA阻害薬スルチアムの効果を解析した第II相二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験(FLOW試験)の結果を報告した(欧州5ヵ国、28病院における治験)。対象は未治療、中等症以上のOSA患者298例で、プラセボ群(75例)、スルチアム100mg群(74例)、同200mg群(74例)、同300mg群(75例)の4群に振り分けられた。観察期間は、薬物投与量が一定になってから12週間(薬剤投与開始から15週間)と設定された。スルチアムの1日1回就寝前投与は、AHI、夜間低酸素血症、日中の傾眠傾向(Epworth Sleepiness Scaleによる評価)などOSAに付随する重要な症状を用量依存的に改善した。スルチアム投与によって重篤な有害事象は認められなかったが、知覚異常を中心とする中等症以下の多彩な有害事象が発生した。“治療効果と副反応”の比はスルチアム200mgの連日投与で最も高く、この用量がOSA治療に最も適していると結論された。 以上のように、OSA治療におけるCA阻害薬の有効性が実証されつつあり、本邦においてもCPAPにかわる新たな治療法としてCA阻害薬の内服治療の有効性を検証する臨床治験が早急に実施されることを期待するものである。この問題に関連して、2025年4月、本邦の塩野義製薬は米国Apnimed社と合弁会社を設立し(Shionogi-Apnimed Sleep Science)、睡眠時無呼吸症候群に対するスルチアムを含めた新たな薬物治療戦略を世界レベルで開始しており、今後の動向が注目される。

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2026年度調剤報酬改定、薬局に求められているものは?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第163回

令和8年度(2026年度)診療報酬改定の具体的な議論が交わされています。今回の改定はどのような方向性になるのでしょうか。スケジュ-ル感と併せて紹介します。まず、前回の令和6年度(2024年度)の調剤報酬改定のテ-マはどのようなものだったか覚えていますか? 中小規模の面薬局が優遇されるといった経過措置のような期間はもう終わりで、これからは調剤以外の機能と実績で算定しますよ、というメッセ-ジのような改定でした。調剤基本料および地域支援体制加算が見直しになり、調剤後薬剤管理指導加算を受け継いで調剤後薬剤管理指導料に格上げになりました。皆さんの薬局の売り上げは2年前に比べて上がりましたか?今回の改定についてはすでに年内に各論の審議や基本方針がおおむね決定され、改定率は診療報酬本体が+3.09%と引き上げになりました。これは1996年以来の高水準です。薬価・材料価格は-0.87%というマイナス改定ですが、全体では+2.22%のプラス改定となり、これは2014年度以来12年ぶりです。その中で調剤がどうなるかという議論はこれからですが、全体的にプラス改定の財源が確保できているというのは覚えておきたいところです。また、今回の診療報酬改定の全体については、4つの柱が掲げられています。物価高・人手不足対応2040年を見据えた医療体制(在宅・地域包括ケア)質の高い医療の実現(医療DX・ICT連携)制度の持続可能性向上(保険財政の安定)もちろん、調剤もこれに沿ってどこに点数をつけるのかという議論になるかと思います。具体的には、後発医薬品体制加算の廃止について議論が交わされています。後発医薬品の使用率を上げることを目的に20年間ほど設けられてきた加算ですが、現在の後発医薬品の使用率は財務省が目標としてきた90%超にすでに到達しています。気が付けば後発医薬品を使用することが当たり前になったという意味では、ひと時代が終わったのかなという気持ちになります。今回の改定で、使用率に加算をつける意味が問われています。また、調剤基本料1を算定している薬局の多さについても問題視されているようです。現在の調剤基本料1は中小薬局を対象にした基本料ですが、外来の処方箋の数量に依存するモデルというのは今回の改定で難しくなるかもしれません。1~2月には短冊と呼ばれる改定の項目が決まり、その後、その項目ごとに点数が決定していきます。また、前回の改定と同様に、今回も施行は6月になりそうです。今後の薬局に何が期待されているのか、議論に注目していきたいと思います。

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宅配食で血糖コントロールが改善する

 糖尿病の管理に適した宅配食が、血糖コントロールの改善につながることを示した研究結果が報告された。米アーカンソー大学のEliza Short氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Nutrition Education and Behavior」12月号に掲載された。 この研究では、宅配食を12週間利用した糖尿病患者は、HbA1cが有意に低下した。一方で、食事の質が健康的か否かを表す指標(Healthy Eating Index-2015〔HEI-2015〕)には有意な変化が見られなかった。このことから研究者らは、糖尿病患者が普段、非健康的な食品を選択して食べているとは言えず、むしろ、食品を宅配することによって、健康的な食品を手軽に入手できるようになることが、血糖コントロール状態の違いを生んだのではないかと考えている。 論文の筆頭著者であるShort氏は、「明らかになった結果は、食料不安を抱え、交通アクセスの不便さといった障壁を抱えている人々の糖尿病管理に、目に見える改善をもたらすためには、個々の患者に合わせて調整された食品を自宅に配達するという方法が有効である可能性を示している」と研究成果を総括。また、「多くの2型糖尿病患者にとって、健康的な食品を確実に入手できるということは、単に便利であるということにとどまらず、不可欠なヘルスケアとも言える」と、宅配食の意義を強調している。 この研究には、アーカンソー州内の五つのフードパントリー(食料不安を抱えている人に無償または低価格で食品を提供する支援活動)の利用者の中から、101人の2型糖尿病患者(平均年齢57.1±10.6歳、女性67.3%)が参加した。参加者には12週間にわたって毎週、食品ボックスを宅配。その食品ボックスの中身は、2019年の米国糖尿病学会(ADA)の食事療法ガイドラインに準拠し、でんぷん質の少ない野菜、全粒穀物、タンパク質食品、新鮮な果物などで構成されていた。 また、食品ボックスには、レシピおよび、そのレシピどおりに調理するために必要なその他の食材も含まれていた。さらに、糖尿病自己管理のための教育用資材も同梱されており、それらの資材は英語だけでなく、スペイン語、マーシャル語で書かれていた(同州には北太平洋マーシャル諸島出身者が多い)。研究期間中97%の参加者が、これらの食品と資材を完全に受け取ることができた。 宅配食を開始した時点のHbA1cは平均9.9±2.3%だった。これが宅配開始12週間後には9.1±2.0%となり、共変量を調整後に0.56パーセントポイントの有意な低下が確認された(P=0.01)。HEI-2015は開始時点が59.9±16.9、12週間後が59.5±13.0で有意な変化がなかった(P=0.47)。 研究者らは、「食習慣が発症リスクに関連している疾患の予防・治療にとって、栄養価の高い食品は『薬』とも言える。これからは、このような考え方に基づく領域が成長していくのではないか。本研究結果はその発展に寄与し得ると考えられる」と述べている。また、「今後の研究では、こうしたプログラムの参加者の健康に最も影響を与えるのはどの要素なのか(食品を宅配することか、教育用資材か、あるいはその両方なのか)を明らかにする必要がある」と付け加えている。

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第43回 最新ゲノム解析が解き明かす、人類と牛乳の意外な歴史

「牛乳を飲むと、なんだかおなかの調子が悪くなる。」 そんな経験を持つ人は、日本人だけでなく世界中に少なくありません。実は、大人になっても牛乳に含まれる糖(乳糖)を分解できる「ラクターゼ持続性」という体質を持っているのは、人類全体で見れば少数派なのです。 なぜ一部の人だけが牛乳を飲めるように進化したのか? これまでは「牧畜を始め、ミルクを飲むことが生存に有利だったから」というシンプルな説が信じられてきました。しかし、昨年末に発表された最新の研究は、そんな定説を覆す驚きの事実を明らかにしました。南アジアの大規模なゲノム解析から見えてきたのは、遺伝子と文化、そして「ヨーグルト」が織りなす、人類の巧みな生存戦略だったのです1)。「飲める遺伝子」は、生存競争の結果ではなかった? 長年、生物学の教科書では、大人になっても牛乳を分解できる能力(ラクターゼ持続性)は、「自然選択」の代表例として語られてきました。つまり、牧畜が盛んな地域では、ミルクを栄養源として摂取できる人が生き残りやすく、その結果、「牛乳を飲める遺伝子」が爆発的に広まったというストーリーです。 実際、ヨーロッパの人々においては、この説明は正しいと考えられています。しかし、世界最大級の乳製品の生産・消費地である「南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ)」に目を向けると、この定説に綻びが見え始めました。 米国・カリフォルニア大学バークレー校などの研究チームは、インド、パキスタン、バングラデシュの現代人および古代人、計8,000人以上というかつてない規模のゲノム解析を行いました2)。南アジアの人々は日常的にミルクや乳製品を摂取しています。ならば、ヨーロッパと同じように、ミルクを消化する遺伝子が「生存に有利だから」という理由で強く選択され、広まっているはずです。 しかし、結果は予想外のものでした。 解析の結果、南アジアの人々が持っている「ミルクを飲める遺伝子変異」は、ヨーロッパの人々が持っているものと同じタイプであることがわかりました。ところが、南アジアのほとんどの集団において、この遺伝子の頻度は「生存競争(自然選択)」によって増えた痕跡を示していなかったのです。 では、なぜ彼らはこの遺伝子を持っていたのでしょうか? 答えは「移民」でした。 研究チームは、この遺伝子の分布が、約3,500年以上前に北方からやってきた遊牧民の遺伝子の濃さと、ほぼ完全に比例していることを突き止めました。つまり、多くの南アジアの人にとって、ミルクを飲める遺伝子は、厳しい生存競争を勝ち抜くために獲得した「武器」ではなく、単に先祖が移動してきた際に一緒に持ち込まれたにすぎなかったのです。「例外」が証明する、過酷な環境とミルクの力 「ミルクを飲めること」が生存に必須ではなかった。そう結論付けられそうになった研究ですが、データの中には「例外」も存在しました。 それは、南インドの「トダ族」と、パキスタンの「グジャール族」という2つの集団です。 この2つのグループでのみ、ミルクを消化する遺伝子の頻度が異常に高かったのです。その割合は、偶然や単なる先祖の影響では説明がつかないレベルでした。統計的な分析の結果、彼らの遺伝子には、過去数千年の間に「この遺伝子を持っていなければ生き残れなかった」と言えるほど、強力な自然選択が働いた痕跡が見つかりました。 それでは、なぜ彼らだけが? その鍵は、彼らのライフスタイルにあります。トダ族もグジャール族も、伝統的にバッファローや牛を飼育し、その生活のすべてを乳製品に依存する牧畜民だそうです。 ヨーロッパの古代牧畜民と同様、厳しい環境下で、ミルク以外の食料が手に入りにくい状況にあった彼らにとって、ミルクを「生のまま」栄養にできるかどうかは、まさに生死を分ける問題だったのでしょう。この発見は、「環境が極端に厳しく、ミルクに依存せざるを得ない状況」にあって初めて、遺伝子が強力に進化することを示唆しています。「おなかがゴロゴロしない」ための人類の知恵 しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。トダ族やグジャール族以外の南アジアの人々も、日常的に乳製品をたくさん食べています。遺伝的な進化(自然選択)が起きていないのなら、彼らはおなかを壊しながら無理して食べていたのでしょうか? 研究者たちが注目しているのは、「文化的な適応」です。 南アジアの食文化の中心は、ダヒ(ヨーグルト)、パニール(チーズ)、ギー(澄ましバター)。これらはすべて、発酵や加工の過程を経た食品です。実は、ミルクを発酵させてヨーグルトやチーズにすると、おなかの不調の原因となる「乳糖(ラクトース)」が大幅に減少します。 つまり、多くの人が、自分の遺伝子(体質)を進化させるのを待つのではなく、食べ方(文化)を工夫することで、ミルクの栄養を享受してきたのです。これを「遺伝子と文化の共進化」と呼びます。つまり、乳糖を分解できない問題を遺伝子で解決した人と文化で解決した人がそれぞれいたわけです。 遺伝子で解決した人 トダ族、グジャール族、北欧の人など(生のミルクに依存せざるを得なかった) 文化(加工)で解決した人 その他の多くの南アジアの人、そしておそらく日本人の祖先も?(発酵技術で乳糖を減らした) 「牛乳が体に合う・合わない」は、単なる好き嫌いではなく、数千年にわたる先祖の移動と、厳しい環境を生き抜いた歴史の結果です。そして同時に、もし自分の体質に合わなくても、人類は「料理」や「加工」という知恵を使って、その壁を乗り越えてきました。 「スーパーでヨーグルトを買う」という何気ない行為も、実は、遺伝子の進化を「知恵」で補ってきた人類の壮大な歴史の一部なのかもしれません。そんなことを考えると、次に口にする乳製品はまたちょっと違った味わいになるかもしれません。 1) Price M. Roots of milk drinking revealed by South Asian genomes. Science. 2026 Jan;391:12-13. 2) Kerdoncuff E, et al. Revisiting the evolution of lactase persistence: insights from South Asian genomes. bioRxiv. 2025 Nov 6. [Preprint]

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日本における統合失調症患者の退院後の治療失敗と関連する因子は?

 統合失調症スペクトラム症は、社会機能障害を引き起こす最も重篤な精神疾患の1つである。統合失調症スペクトラム症患者は再発しやすく、入院を必要とする患者では、より再発リスクが高いため、退院後の治療失敗を予防することが不可欠である。北里大学の斉藤 善貴氏らは、精神科入院による治療を行った統合失調症スペクトラム症患者における退院後の治療失敗に関連する因子を明らかにするため、レトロスペクティブ研究を実施した。PCN Reports誌2025年10月7日号の報告。 対象は、2014年1月〜2021年12月に北里大学病院および北里大学東病院の精神科に入院した統合失調症スペクトラム症およびその他の精神病性障害と診断された859例。治療失敗の定義は、退院後1年以内の外来治療中止、精神科入院、死亡とした。 主な結果は以下のとおり。・治療失敗患者は、859例中201例(23.4%)であった。・抗精神病薬多剤併用療法患者の治療失敗率は29.0%であり、多剤併用療法を行っていなかった患者と比較し、有意に高かった。・さらに、入院中に自宅での外泊を試行した患者における治療失敗率は20.8%であり、試行しなかった患者と比較し、有意に低かった。 著者らは「統合失調症スペクトラム症患者において、退院時の抗精神病薬多剤併用は治療失敗と関連していた。さらに、入院中に自宅での試験的な外泊を行うことは、治療失敗の予防に寄与する可能性が示唆された」とし「統合失調症スペクトラム症患者の治療失敗を予防するには、退院後に焦点を当て、薬物療法の最適化と社会的・環境的調整の実施が必要である」と結論付けている。

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再発・難治性濾胞性リンパ腫、タファシタマブ追加でPFS改善(inMIND)/Lancet

 濾胞性リンパ腫は長期生存率が高いが、一般的に根治が困難で、寛解と再発を繰り返すことから複数の治療ラインが求められている。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLaurie H. Sehn氏らによる「inMIND試験」において、再発・難治性濾胞性リンパ腫の治療では、レナリドミド+リツキシマブへの追加薬剤として、プラセボと比較しFc改変型抗CD19抗体タファシタマブは、統計学的に有意で臨床的に意義のある無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらし、全奏効割合や奏効期間も良好で、安全性プロファイルは許容可能であることが示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年12月5日号で報告された。世界210施設の無作為化プラセボ対照比較試験 inMIND試験は、日本を含む世界210施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年4月~2023年8月に参加者を登録した(Incyteの助成を受けた)。 年齢18歳以上、組織学的にCD19+およびCD20+の濾胞性リンパ腫と確定され、1ライン以上の全身療法(抗CD20モノクローナル抗体を含む)を受けた後に再発または不応の病変を有する患者を対象とした。 被験者を、タファシタマブ(28日を1サイクルとし、1~3サイクル目は1・8・15・22日に、4~12サイクル目は1・15日に12mg/kgを静注投与)を最大12サイクル投与する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。全例に、レナリドミド+リツキシマブを投与した。 主要評価項目は、ITT集団におけるPFS(無作為化の時点から初回の病勢進行、再発、全原因による死亡までの期間)とし、各施設の担当医がLugano分類(2014)に従って評価した。安全性は、無作為化の対象となった患者のうち少なくとも1回の試験薬の投与を受けた集団で評価した。全生存期間のデータは不十分 548例(ITT集団)を登録した。273例をタファシタマブ群に、275例をプラセボ群に割り付けた。ITT集団の年齢中央値は64歳(範囲:31~88)で、249例(45%)が女性であった。 ベースラインで、433例(79%)が濾胞性リンパ腫国際予後指標で中または高リスクであり、患者全体の前治療ライン数中央値は1(範囲:1~10)で、248例(45%)が2ライン以上の前治療を受けていた。173例(32%)に初回診断から24ヵ月以内の病勢進行(POD24)を認め、209例(38%)が直近の前治療に不応で、233例(43%)は抗CD20モノクローナル抗体に不応の治療歴を有していた。 追跡期間中央値14.1ヵ月の時点で、担当医判定によるPFS中央値は、プラセボ群が13.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.5~16.4)であったのに対し、タファシタマブ群は22.4ヵ月(95%CI:19.2~評価不能)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.43、95%CI:0.32~0.58、p<0.0001)。 独立審査委員会の判定によるPFS中央値も、タファシタマブ群で有意に延長した(未到達[95%CI:19.3~評価不能]vs.16.0ヵ月[95%CI:13.9~21.1]、HR:0.41、95%CI:0.29~0.56、p<0.0001)。 PFSのサブグループ解析では、POD24の有無、抗CD20抗体の不応歴の有無、前治療ライン数(1ライン、2ライン以上)、地理的地域の違い(欧州、北米、その他)を問わず、いずれの集団でもタファシタマブ群で有意に優れた。 全奏効割合(完全奏効、部分奏効:84%vs.72%、オッズ比:2.0、95%CI:1.30~3.02、p=0.0014)、奏効期間中央値(21.2ヵ月vs.13.6ヵ月、HR:0.47、95%CI:0.33~0.68、p<0.0001)、後治療開始までの期間中央値(未到達vs.28.8ヵ月、HR:0.45、95%CI:0.31~0.64、p<0.0001)は、いずれもタファシタマブ群で有意に良好だった。一方、全生存期間のデータは不十分であり、全体的な解析は追跡期間5年の時点で行う予定とされる。標準治療の新たな選択肢となる可能性 いずれかの群で患者の20%以上に発現した有害事象は、好中球減少(タファシタマブ群133例[49%]vs.プラセボ群123例[45%])、下痢(103例[38%]vs.77例[28%])、COVID-19(86例[31%]vs.64例[24%])、便秘(80例[29%]vs.67例[25%])などであった。 また、Grade3または4の有害事象(タファシタマブ群195例[71%]vs.プラセボ群189例[69%])、および重篤な有害事象(99例[36%]vs.86例[32%])の発現率は両群で同程度だった。 試験期間中にタファシタマブ群で15例(6%)、プラセボ群で23例(9%)が死亡し、それぞれ5例(2%)および17例(6%)が病勢進行による死亡だった。タファシタマブ群では治療関連有害事象による死亡例は認めなかったが、プラセボ群では2例(1%)に治療関連の致死的な有害事象が発現した。 著者は、「この3剤併用療法は3次医療機関だけでなく地域医療においても実施可能であるため、とくに現在選択肢が少ない2次治療として、再発・難治性濾胞性リンパ腫患者の標準治療の新たな選択肢となる可能性が示唆される」「タファシタマブ治療後の患者におけるCD19発現の解析が、その後の治療の決定の指針となる情報をもたらすと考えられる」としている。

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オールラウンド外来診療ガイドブック

診療にすぐ活かせる知識と判断力を集約自身の専門外の疾患に遭遇した時、あるいは患者から専門外の愁訴を相談された際に、医師は、(1)何をすべきか? (2)何をすべきでないか? (3)どの段階で専門医に紹介すべきか? という視点で、500の疾患・症状を、24分野の診療科のスペシャリスト474名が見開き2ページで解説する。病態の理解から診療のエッセンス、患者さんへの説明の工夫に至るまで「明日からの診療にすぐに活かせる知識と判断」が集約されている。ジェネラリストの診療の迷いを解き、明日からの外来診療に差がつくスペシャリストからの珠玉の処方箋。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するオールラウンド外来診療ガイドブック定価13,200円(税込)判型B5判(並製)頁数1,064頁発行2025年12月総編集宮地 良樹(京都大学名誉教授/静岡社会健康医学大学院大学学長)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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『がん患者におけるせん妄ガイドライン』改訂、抗精神病薬+ベンゾジアゼピン系薬など現場で多い処方を新規CQに 

 2025年9月、『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版』(日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会編、金原出版)が刊行された。2019年の初版から改訂を重ね、今回で第3版となる。日本サイコオンコロジー学会 ガイドライン策定委員会 せん妄小委員会委員長を務めた松田 能宣氏(国立病院機構近畿中央呼吸器センター心療内科/支持・緩和療法チーム)に改訂のポイントを聞いた。――「がん患者におけるせん妄」には、その他の臨床状況におけるせん妄とは異なる特徴がある。がん治療にはオピオイド、ステロイドなどの薬剤が多用されるが、それらが直接因子となったせん妄が多くみられる。さらに、近年では免疫チェックポイント阻害薬に代表されるがん免疫療法の普及に伴い、この副作用としてせん妄を発症する患者も増えている。また高カルシウム血症や脳転移など、がんに伴う身体的問題を背景としてせん妄を発症することもある。進行がん患者におけるせん妄は、その原因が複合的であることが多い。さらに、終末期におけるせん妄では身体的要因の改善が困難であり、治療目標をせん妄の回復からせん妄による苦痛の緩和に変更し、それに合わせてケアを組み立てていく必要もある。総論に7つの個別テーマを新設 2025年版は前版と比較して約40ページ増となった。総論では、「関連する病態についてより詳しく説明できるとよいのでは」という委員会の議論を経て、7つのテーマを追加した。 総論に追加したテーマは以下のようになっている。1.アルコール離脱せん妄(評価のためのスコア、薬物治療)2.術後せん妄(周術期神経認知障害、超高齢・がん外科治療の文脈も含む)3.低活動型せん妄(頻度・症状・鑑別・マネジメント)4.身体拘束に関する考え方(実態・葛藤・多職種アプローチ・法的倫理的視点)5.認知症に重畳するせん妄(頻度・リスク因子・評価・対応)6.せん妄とがん疼痛の合併(終末期、可逆的などで分岐する対応アルゴリズムなど)7.在宅におけるせん妄診療(介護者負担、投与経路制限、在宅継続の可否、在宅アルゴリズムなど) 「アルコール離脱せん妄」はがん患者に限ったものではないが、アルコールが関連するがん、たとえば頭頸部がんとの関連が深いため、別個に取り上げた。通常、せん妄治療にベンゾジアゼピン系薬を単剤で使うことはほぼないが、アルコール離脱せん妄の場合は適応となるなど、治療の独自性も高い。「術後せん妄」は、通常のがん患者におけるせん妄とはまた状況が異なり、頻度も高いため、改めて扱うこととした。 せん妄は「過活動型せん妄」「低活動型せん妄」「活動水準混合型」の3つに分類される。中でも低活動型せん妄は見逃しやすく、がん患者での頻度が高いために取り上げた。「身体拘束」は、これまで過活動型の患者に対し、安全性確保のために拘束するケースがあった。しかし、近年はその有害性が報告されるようになっており、拘束を最小限にするための多職種によるアプローチをまとめた。 高齢化社会の進行の中で「認知症」とせん妄を併発する患者が増えている。なかなか鑑別が難しいが、評価や対応についてまとめた。また、「せん妄とがん疼痛の合併」も非常に多いパターンで、中等度以上の痛みを伴うがん患者の3分の1以上がせん妄を合併している、との報告もある。ここには厚労省科研費里見班による報告があったので、そちらの治療アルゴリズムを掲載している。前版までは病院におけるせん妄治療が中心だったが、在宅医療におけるせん妄も増加していることを受け、介護者の存在や薬剤の制限など、在宅医療独自の状況を踏まえて項目を作成した。CQでは予防と併用療法の項目を追加 CQは4つ新設し、前版の12から15となった。増えたCQは以下のとおりとなっている。CQ3:ラメルテオン単独投与による予防は推奨されるか?CQ4:オレキシン受容体拮抗薬単独投与による予防は推奨されるか?いずれも「単独で投与しないことを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:D) 予防目的の薬物治療として、新規睡眠薬(ラメルテオン/オレキシン拮抗薬)を明示的に扱うようになったのが大きな変更点となる。いずれも現時点では予防に有効とのエビデンスは確立しておらず、「単独で投与しないことを提案する」との記載となった。予防には非薬物的介入が第1選択という点は前版から変わらないが、実臨床においてはせん妄予防よりも睡眠リズムをつくることを目的に新規睡眠薬を投与する医師が一定数いると予想され、こうした処方までを一概に否定するものではない。高リスク群など一部の集団においては「個々の患者の状況やリスクを適切に評価し、予防的投与の妥当性を判断することが必要」との点も明記した。CQ11:症状軽減を目的に、抗精神病薬+ベンゾジアゼピン系薬の併用投与は推奨されるか?「併用で投与することを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:C) このCQに関する文献は1件のみで、エビデンスとして質の高い研究ではあったものの、試験対象が「すでにハロペリドールを定時投与されている終末期の重症せん妄患者」に限定されていたことには注意が必要だ。よって、どんな症例でも併用投与を推奨するわけでなく、症例ごとの見極めが重要になる。また、試験の治療薬はロラゼパム注とハロペリドール注であったが、日本ではロラゼパム注が使われることは少なく、今後は日本で汎用されているベンゾジアゼピン系薬での検討や、重症例以外の検討が求められる。CQ12:症状軽減を目的に、抗精神病薬+抗ヒスタミン薬の併用投与は推奨されるか?「併用で投与しないことを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:D) せん妄に認められる不穏の症状に対して、抗ヒスタミン薬や抗精神病薬を用いることがあるが、抗ヒスタミン薬はせん妄の原因ともなり得るなど安全性の懸念も残る。検討対象となった観察研究では、併用投与によるアウトカム改善は認められなかったため、「併用で投与しないことを提案する」との記載になった。 がん患者のせん妄は、臨床試験が組みにくく、エビデンスが蓄積されにくい分野だ。理由としては、患者ごとにせん妄の原因が異なっているため試験の組み入れ条件をそろえることが難しい、終末期患者が多く同意取得が困難、といった背景がある。一方、患者数は多く、医療者・患者/家族ともケアに悩むことが多い分野でもある。今後も限られたエビデンスを集め、ガイドラインのアップデートや外部評価に努めたい。患者自身や家族がケアに関わることも多いので、同じ学会で作成する『がん患者における 気持ちのつらさガイドライン』『がん医療における 患者・医療者間のコミュニケーションガイドライン』と一緒に、患者向けガイドの作成も進めている。

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