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国連ミレニアム開発目標を達成するための効果的な介入方法

国連ミレニアム開発目標(MDGs)は、世界的に重大な貧困、健康および持続的な諸問題に関して具体的目標を立て2015年までに達成するというものである。しかし現状では目標日時までの達成は非常に難しいことがわかってきており、目標達成のための計画および資源配分を効果的に行い、1つの介入で複数のMDG達成に寄与できないかが検討課題となっている。 ハーバード大学(アメリカ)Initiative for Global HealthのEmmanuela Gakidou氏らは、環境および栄養改善を目標とするMDGsへの介入の、乳幼児死亡率低下への寄与、および介入対象が置かれている経済状況によっての差異などを調査し、より有効な介入のあり方について検討を行った。JAMA誌10月24日号掲載の報告から。環境・栄養改善介入の影響を乳幼児死亡率の低下で比較検証栄養改善を目標とするMDGでは小児栄養の改善を掲げており、環境改善を目標とするMDGはクリーンな水・衛生環境・燃料を提供するというものである。小児栄養および環境に関するリスク因子に対する介入の影響を、経済状況によって5段階に階層化したモデル集団の乳幼児死亡率をを比較することで評価を行った。経済状況、小児低体重、水・衛生・家庭用燃料に関するデータは、ラテンアメリカおよびカリブ海、南アジアとサハラ以南のアフリカ42カ国を対象として統計されたDemographic Health Surveysを参照。疾患特有の乳幼児死亡率に関するデータは、WHOのものを参照した。その他MDGに関するリスク因子の各データは、システマティックレビューおよびメタ解析による疫学研究を参照した。貧困層からの介入で改善率はさらにアップする5歳未満のすべての小児を対象に実行した小児栄養の改善、クリーンな水・衛生環境・家庭用燃料の提供は、ラテンアメリカとカリブ海地域で49,700人(14%)、南アジアでは80万人(24%)、サハラ以南のアフリカでは147万人(31%)の小児死亡の年次低下をもたらすことが推定された。これらは、乳幼児死亡率のMDGにおける低下目標値と現状格差との30~48%に相当する。MDGs全体で想定した場合、同様の環境・栄養改善の介入の半分の範囲を、もし最初に貧困層から行いやや裕福な層へと展開していった場合、乳幼児死亡率は前述の各地域でそれぞれ26,900人、51万、102万となると推定された。反対に裕福な世帯から行った場合は、これらの期待値は貧困層から行った場合の30%~75%に留まる。Gakidou氏らは、MDGs全体を想定しての環境・栄養改善の介入が、実質的に乳幼児死亡率を目標とするMDGにも寄与する。統合的な介入マネジメントを、貧困層を優先して行うことで、その効果は最大のものにできると結論付けた。(武藤まき:医療ライター)

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MRSA感染は院内ではなく公衆衛生問題

米国疾病管理予防センター(CDC)のメチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)研究者チームによって行われた本研究は、MRSA感染症の疫学的状況を正確に把握することで、必要に応じ新たな予防対策を講じることを目的としたものである。 従来は病院発症、院内感染ばかりが注目されていたが、ER(救急救命室)受け入れ患者の感染症の原因として最も多いのがMRSAであるなど疫学的変化が起きており、コミュニティを対象とする調査の必要性が提起されていた。JAMA誌10月17日号報告より。コミュニティを対象に調査調査はCDCのActive Bacterial Core Surveillance(ABCs)/Emerging Infections Program Networkに関与している全米9つのコミュニティを対象に行われた。2004年7月から2005年12月までの同ネットワークデータからMRSA感染の発現率と分布状況を調べ、2005年の米国におけるMRSA感染症の負担の度合いが推定するというもの。MRSA感染報告は、疫学的定義として、「医療機関関連:コミュニティで感染(Community-onset)あるいは病院で感染(Hospital-onset)」と「コミュニティ関連(community-associated):医療機関関連のリスク因子を有さない患者」を定め分類された。推定MRSA発現率は10万人当たり31.8対象調査期間中に観察されたMRSA発症例は8,987例。大部分が「医療機関関連」に分類されるもので、内訳は58.4%(5,250例)がコミュニティで感染、26.6%(2,389例)が病院で感染となっている。一方、医療機関関連のリスク因子を有さない「コミュニティ関連」の感染は13.7%(1,234例)だった。その他に「分類不可」に類するものが1.3%(114例)あった。2005年におけるMRSA発現率は、10万人当たり31.8と推定された。出現率は65歳以上で最も高く(10万人当たり127.7)、黒人(同66.5)、男性(同37.5)も高い。調査期間中の病院での死亡は1,598例。2005年における死亡率は10万人当たり6.3と推定された。また、すべての調査対象地域で「医療機関関連」後に「コミュニティ関連」が発生するという傾向があった。CDCは、「MRSA感染は主に医療機関に関連しているが、集中治療室、急性期病院など施設に限ったことではなく、公衆衛生問題として取り組む必要がある」と結論づけた。(武藤まき:医療ライター)

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小児急性中耳炎原因菌に多剤耐性菌が出現

7価を有する複合ワクチン(PCV7)には含まれておらず、小児の急性中耳炎(AOM)を引き起こす原因となる肺炎球菌に、多剤耐性菌出現の可能性が懸念されている。 アメリカ・ロチェスター大学小児科のMichael E. Pichichero氏らは、AOMに罹患した患児の原因肺炎球菌の抗原型を調べ、その抗生物質感受性を調査した。JAMA誌10月17日号より。肺炎球菌の抗原型と抗生物質感受性を調査本研究は前向きコホート研究で、AOMを引き起こす肺炎球菌の負担変動を、特に抗原型と抗生物質感受性に注意を払いながら、複合ワクチンPCV7投与後継続的にモニタリングされた。対象となったのは、2003年9月~2006年6月の間にPCV7の投与を受けた小児。AOMの原因肺炎球菌の確認は鼓室穿刺術を用いて行われた。小児は全員、ロチェスター、ニューヨークの小児科で診療を受けている。AOMと診断された小児は1,816例。鼓室穿刺術は212例で実行され、59例で肺炎球菌感染が確認された。多剤耐性を有する抗原型19Aの肺炎球菌を9/59例で確認このうち9例で確認された菌株(2003~2004年:2例、2004~2005年:2例、2005~2006年:5例)は、新規の遺伝子型を有する抗原型19A。これはAOMに罹患した小児に用いることができるすべてのFDA承認抗生物質に耐性だった。4例の感染小児は2種類以上の抗生物質(高用量amoxicillinあるいはamoxicillin-clavulanateを含む)を用いても治療が失敗に終わった。結局、中耳腔換気用チューブが挿入されている。3例はceftriaxone注射剤投与で反復性AOMを、その他2例の感染は乳幼児期の早い段階で確認されていた。これらには手術以外の感染消散の手段としてlevofloxacinの投与が行われた。Pichichero氏らは、「PCV7ワクチン導入数年で、小児AOM治療に対するすべてのFDA承認抗生物質に耐性の肺炎球菌が出現していることが本研究で明らかとなった」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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人工妊娠中絶の世界的現況――MDG 5の達成に向けて

「人工妊娠中絶は現代の最高度の人権に関わるジレンマであるがゆえに、科学的かつ客観的な情報が必須である」と著者は記す。そして、「微妙な問題であるためデータソースが限られ、正確な情報の入手が困難」とも。 望まない妊娠の低減を目的とする指針の策定には、人工妊娠中絶数の情報が重要である。また、妊婦の罹病および死亡の主な原因は安全でない妊娠中絶であることから、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals; MDGs、http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/)のひとつ「妊産婦の健康の改善」(MDG5)の達成に向けた進捗状況のモニタリングには危険な中絶の発生状況の把握も重要である。Guttmacher Institute(アメリカ・ニューヨーク市)のGilda Sedgh氏らは中絶率を世界規模で推計し、望まない妊娠や危険な中絶を減少させ安全な中絶を増加させる方策について考察を加えた。10月13日付Lancet誌掲載の報告から。1995~2003年の中絶数、中絶率を世界および地域レベルで解析各国の公式発表システムや調査報告、および公表された研究報告を用いて2003年度に実施された安全な人工妊娠中絶数を世界および地域レベルで算出した。危険な中絶の施行率の算出には病院データ、調査、その他の研究報告を用いた。中絶数の推計、中絶率の算出には人口統計学的方法を用いた。女性集団および出生数は国連の推計値を、地域の定義には国連分類を使用し、1995~2003年の中絶数、中絶率を解析した。中絶数、中絶率は低下、危険な中絶は増加、危険な中絶は途上国に集中1995年の中絶数4,600万件に対し、2003年は4,200万件に減少していた。2003年の人工妊娠中絶率は15~44歳の女性1,000人あたり29件であり、1995年の35件よりも低下していた。中絶率は、西ヨーロッパが1,000女性あたり12件と最も低く、北欧が17件、南欧が18件、北米(アメリカ、カナダ)が21件であった。全中絶のうち危険な中絶の割合は1995年の44%から2003年には48%に増加し、その97%以上が開発途上国で行われていた。2003年の全世界における100出生あたりの中絶率は31件であり、地域別には東欧で最も頻度が高かった(100出生あたり105件)。妊産婦死亡率低減の実現に向け、避妊の必要を満たし、中絶の安全を確保せよSedgh氏によれば、人工妊娠中絶の根本的な原因は望まない妊娠であるが、開発途上国では1億800万人の既婚女性が必要な避妊を行えず、避妊法を使用できない女性が毎年5,100万件の望まない妊娠をしているという。同氏は、「1995年から2003年にかけて全体の中絶率は開発途上国と先進国で同等であったが、危険な中絶は途上国に集中していた」「妊産婦死亡率の本質的な低減を実現し、妊産婦の健康を保護するには、避妊の必要を満たし、すべての中絶の安全を確保する必要がある」と総括している。(菅野 守:医学ライター)

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dabigatran etexilateの有効性・安全性はエノキサパリンと同程度:RE-NOVATE試験

関節置換術後のリスクとして静脈血栓塞栓症があり、その予防治療が術後および退院後も一定期間行われる。本稿は、その新しい予防治療剤として開発中の新規経口トロンビン阻害剤dabigatran etexilateに関する臨床試験RE-NOVATEの結果報告。LANCET誌9月15日号より。3,494例対象に無作為化二重盲見試験RE-NOVATEは欧州、南アフリカ、オーストラリアの115の医療センターにわたって行われた無作為化二重盲見試験で、人工股関節全置換術後の計3,494例を対象とする。対象は、dabigatran etexilate 220mg投与群1,157例または150 mg投与群1,174例(いずれも1日1回投与、術後1~4時間に半量投与で開始)と、エノキサパリン40mg投与群1,162例(1日1回投与、術前投与で開始)に無作為に割り付けられ実施された。主要評価項目は、静脈造影あるいは症候性に認められたすべての静脈血栓塞栓症の発生と、原因を問わない治療中のすべての死亡。試験結果には有効性解析の手法が用いられ、エノキサパリンとプラセボによる静脈血栓塞栓症発生率の絶対差を基礎とし、本試験の有効性マージンは7.7%と定義された。静脈血栓塞栓症予防への有効性および有害事象への安全性を確認投与期間の中央値は33日。有効性解析にかけられたのは220mg投与群880例、150 mg投与群874例、エノキサパリン投与群(対照群)897例だった。その他の症例は、主として静脈造影データの不足のため除外されている。主要評価項目が認められたのは、対照群6.7%(60/897例)に対し220mg投与群6.0%(53/880例、絶対差-0.7%、95%信頼区間:-2.9~1.6%)、150 mg投与群8.6%(75/874例、同1.9%、-0.6~4.4%)で、dabigatran etexilateはエノキサパリンと比べて非劣性であることが示された。また大出血の発生率に関しては、dabigatran etexilate投与群と対照群に有意差は認められなかった(220 mg投与:p = 0.44、150 mg投与:p = 0.60)。肝酵素濃度の上昇および急性冠動脈イベント発生についても有意差は認められなかった。以上の結果を踏まえ研究グループは、dabigatran etexilateの有効性と安全性はエノキサパリンと同程度であると結論付けている。

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高リスク糖尿病患者に対する積極的降圧療法の有用性が示される:ADVANCE試験

心血管系高リスクあるいは既往を認める糖尿病患者では、血圧に関わりなくACE阻害薬+利尿薬を用いた降圧により血管系イベントが減少することが、 Lancet誌9月8日号に掲載されたADVANCE試験の結果より明らかになった。本研究は論文掲載に先立ち、欧州心臓病学会(ESC)において報告されている。高リスク糖尿病を対象、血圧は不問本試験の対象は55歳以上の2型糖尿病患者11,140例だが、心血管系イベント既往あるいは心血管系リスクを有する「心血管系高リスク」患者だった。心血管系リスクとされたのは「細小血管症」、「糖尿病性眼症」、「喫煙」、「脂質異常症」、「微量アルブミン尿」、「糖尿病歴10年以上」か「65歳以上」 ──である。試験参加に関し、血圧値は問われなかった。これら11,140例はACE阻害薬ペリンドプリルと利尿薬インダパミドの合剤を服用する「降圧薬群」(5,569例)と「プラセボ群」(5,571群)に無作為割り付けされ、二重盲検法で追跡された。試験開始時の背景因子は、平均年齢66歳、2型糖尿病発症平均年齢が58歳、32%に心血管系イベント既往を認めた。また降圧治療を受けていたのは69%、血圧平均値は145/81mmHgだった。1次評価項目は9%有意に減少4.3年間の平均追跡期間の血圧平均値は、「降圧薬群」で5.6/2.2mmHg有意に低かった。特に収縮期血圧は「降圧薬群」では試験開始6ヵ月後以降135mmHg前後が保たれていたのに対し、プラセボ群では常に140mmHg前後だった。その結果、1次評価項目である「大血管症(心血管系イベント)+細小血管症」の発生率は「プラセボ群」16.8%に対し「降圧薬群」では15.5%で、相対的に9%の有意な減少となった(95%信頼区間:0-17%、p=0.041)。年齢、試験開始時高血圧の有無や血管症既往の有無などで分けて検討しても、「降圧薬群」で1次評価項目が増加傾向を示すサブグループはなかった。また1次評価項目を大血管症と細小血管症に分けて比較すると「降圧薬群」における減少は有意差ではなくなるが、「主要冠動脈イベント」と「その他の冠動脈イベント(血行再建術施行や無症候性心筋虚血、不安定狭心症による入院)」を併せた「全冠動脈イベント」のリスクは相対的に14%、「降圧薬群」で有意に低下していた。同様に、「微量アルブミン尿出現」も「降圧薬群」において相対的に21%、有意にリスクが低下していた。これらより報告者らは、「ペリンドプリルとインダパミド合剤は、血圧の高低にかかわらず2型糖尿病患者の大血管症+細小血管症を減少させるだろう」と結論している。なお同号に掲載された「論評」ではUniversity of Texas(米国)のNorman M. Kaplan氏が、プラセボ群の83%が何らかの降圧薬(55%はペリンドプリル)を服用していたにもかかわらず5.6/2.2mmHgの血圧差があった点など、いくつか考慮すべきポイントを指摘している。(宇津貴史:医学レポーター)

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うつ病は健康状態を悪化する一番の要因:WHO報告

うつ病は世界中で重要な公衆衛生問題であり主要な病因の1つとなっている。また他の慢性疾患との共存で健康状態を悪化させることは、少数ではあるが先行研究として伝えられてきた。 Lancet誌9月8日号に掲載された本報告は、世界保健機構(WHO)のSaba Moussavi氏らによる世界健康調査(World Health Survey:WHS)からの、うつ病の健康状態への影響を分析した結果。うつ病単独の有病率は3.2%WHSは18歳以上成人の健康状態および健康に関するデータ収集を目的とした調査で、世界60ヵ国、245,404例の参加者データから、うつ病と、ICD-10に基づく4つの慢性疾患(狭心症、関節炎、喘息、糖尿病)に関する有病率および健康スコアの分析が行われた。単独疾患の1年有病率は糖尿病が最も低く2.0%(95%信頼区間1.8-2.2)、次いで低かったのがうつ病で3.2%(同3.0-3.5)、その他は喘息3.3%(同2.9-3.6)、関節炎4.1%(同3.8-4.3)、狭心症4.5%(同4.3-4.8)だった。有病率9.3%~23.0%のうつ病+慢性疾患の状態が最も健康を悪化一方で、うつ病+4つの慢性疾患のうちのどれか1つ以上の有病率は、平均9.3%~23.0%までにわたっており(うつ病+糖尿病:9.3%、うつ病+狭心症:10.7%など)、前述のうつ病単独有病率よりも有意に高い(p<0.0001)。また社会経済的要因と健康状態を調整した後の健康スコアの比較からは、国や各人口統計学的特性を問わず、うつ病が健康スコアのマイナス要因として最も大きく影響していることが明らかとなった。Saba 氏らは、「うつ病が慢性疾患よりも健康状態を大きく減退させることが明らかとなった。特にうつ病+慢性疾患が共存する疾病状態は、うつ病単独よりも、慢性疾患単独よりも、また複数の慢性疾患共存状態よりも健康を悪化させる。うつ病対策に最優先で取り組なければならない」とまとめている。

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「正常高値」血圧は中年女性でもリスク:WHSサブ解析

「正常高値」血圧の中年女性は、「正常血圧」の同年代女性に比べ、10年間の心血管系イベントリスクが2倍近く有意に増加することが、米国における約4万人の女性を追跡した結果、明らかになった。Harvard Medical School(米国)のDavid Conen氏らによるWomen’s Health Studyのサブ解析。BMJ誌オンライン版8月19日付で早期公開された。本誌では9月1日号で掲載。「正常高値」群では「正常血圧」群に比べ有意にイベントが増加本解析に含まれたのは。45歳以上で心血管系疾患やその他重篤な疾患を有さない医療従事者の女性39,322例である。平均年齢は約55歳、喫煙者が15%弱、40%前後がホルモン補充療法を受けていた。28,863 例(73.4%)では高血圧を認めなかったが、そのうち17.3%(4,988例)は血圧130~139/85~89mmHgの「正常高値」血圧だった。一方、「正常血圧」(120~129/80~84mmHg)は39.2%(11,326例)、至適血圧(120/75mmHg未満)は43.5%だった(血圧分類は1999年WHO-ISH規準)。次に10.2年間の主要心血管系イベント発生リスクを上記血圧カテゴリー別に、多変量解析で年齢や肥満度などの背景因子を補正して比較した。「正常高値」群では「正常血圧」群に比べ有意にリスクが増加していた。すなわち、「正常高値」群のリスクを1とした場合、「正常血圧」群のリスクは0.61(95%信頼区間:0.48~0.76)だった。「正常血圧」群と「至適血圧」群のリスクには有意差はなかった。なお、主要心血管系イベントとされたのは「心筋梗塞、脳卒中、心血管死、死亡」である。「高血圧」移行後は2年間でイベントリスクが50%上昇観察期間中の「高血圧」への移行リスクも同様で、「正常血圧」群に比べ「正常高値」群では2倍近く、有意に上昇していた。ここで興味深いのは、「至適血圧」群では「正常血圧」群に比べ、高血圧移行リスクが有意に低い点である。「正常高値」群の移行リスクを1とすると、背景因子補正後の「正常血圧」群におけるリスクは0.42(95%信頼区間:0.40~0.44)だったのに対し、「至適血圧」群では0.17(95%信頼区間:0.16~0.18)となっていた。また、ひとたび「高血圧」に移行すると、48ヵ月以内の主要心血管系リスク発生のイベントは「非移行」群の約1.5倍へ有意に増加することも本研究では明らかになっている。筆者らは「正常血圧」と「正常高値」を「preheypertension(前高血圧)」と分類する現在の米国高血圧ガイドライン(JNC7)を批判し、「正常高値」群を特に高リスクとして予防に努める必要があると述べている。(宇津貴史:医学レポーター)

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高齢AF患者に対してもワルファリンはアスピリンよりも有用:BAFTAスタディ

これまでのメタ解析では確認されなかった75歳以上の心房細動(AF)患者に対するワルファリンの有用性だが、Lancet誌8月11日号に掲載された BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged)スタディの結果によれば、ワルファリンによる出血性合併症の増加は必ずしも脳塞栓症・脳梗塞の減少による有用性を相殺しないという。英国 University of BirminghamのJonathan Mant氏らが報告した。平均年齢81.5歳、血圧140/80mmHgの973例が対象BAFTA スタディの対象は一般医を受診している75歳以上のAF患者973例(平均年齢81.5歳)。ワルファリン(目標INR:2~3)群(488例)とアスピリン75mg/日群(485例)に無作為化され、オープンラベルで追跡され、イベント評価は割り付けをブラインドされた研究者が行なった。両群とも約 40%がワルファリンを服用していたが試験薬以外は服用を中止した。42%が服用していたアスピリンも同様だった。試験開始時の血圧は約140/80mmHg、収縮期血圧が160mmHgを超えていたのはワルファリン群13%、アスピリン群16%だった。ワルファリン群に出血性合併症増加なし平均2.7年間の追跡期間後、1次評価項目である「脳卒中死、後遺症を伴う脳卒中、その他の脳出血、確定診断のついた脳塞栓症」発生頻度はワルファリン群 1.8%/年(24件)、アスピリン群3.8%/年(48例)で、ワルファリン群において相対的に52%の有意(p=0.0027)な減少が認められた。年齢、性別等のサブグループ別に比較しても、ワルファリン群で増加傾向の見られたグループはなかった。一方、ワルファリン群で懸念されていた脳出血は、「死亡・後遺症を伴う脳出血」発生率が0.5%/年でアスピリン群の0.4%/年と同等(p=0.83)、また「その他の脳出血」も発生率はワルファリン群0.2%/年、アスピリン群0.1%/年と差はなかった(p=0.65)。筆者らはこれらより、高齢者AFに対する抗凝固療法の有用性は過小評価されているのではないかと主張する。しかし本試験で用いられたアスピリン75mg/日という用量はAFASAK試験においてすでに、虚血性脳イベント予防作用がプラセボと同等だと明らかになっている。(宇津貴史:医学レポーター)

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重症血友病A男児への第VIII因子の有効な投与法

1960年代に行われた小規模試験の結果を受け、血友病性関節症の予防に第VIII因子の投与が有効であることが推奨され臨床家の間に広がった。その後 1980年代に、血漿由来の第VIII因子がヒト免疫不全や肝炎ウイルスに汚染されていることが判明し予防的治療は激減。1992年にアメリカで血友病患者への安全投与を見据えた組み換え型第VIII因子が承認されたが、投与の開始時期、投与量、期間については明らかになっていない。 コロラド大学保健科学センターのMarilyn J. Manco-Johnson氏らは、重症の血友病Aの男児を対象に無作為化試験を行い、有効な方法について検証した。NEJM誌8月9日号の報告から。生後30ヵ月未満65例を予防治療群と発症時治療群に割り付け無作為化試験は、生後30ヵ月未満の重症の血友病Aの男児(65例)を、予防的治療群(32例)と関節内出血発症時に強化注入を行う対照群(33例)とに割り付け行われた。前者は、組み換え型第VIII因子を1日おきに25 IU/kg投与。関節内出血が起きた場合は40 IUを投与し、その後また予防的投与が続けられた。後者は発症時に、第VIII因子を3回以上、最低80 IU/kg投与した(最初に40 IU、24時間後と72時間後に20 IU)。主要評価項目は、X線またはMRIによってindex joint(足関節、膝、肘)で検出された骨・軟骨傷害の発生率とした。予防治療群のほうが正常の割合高く出血回数少ない男児6歳時に、MRI上で正常なindex joint構成が認められたのは、予防群93%、発症時治療群55%だった。MRIで発見された発症時治療群の関節障害の相対リスクは、予防治療群に比べて6.1だった(95%信頼区間1.5-24.4)。研究終了時点での関節内出血およびその他部位を含めた総出血の平均年間回数は、発症時治療群で予防治療群より多かった(両群間比較に関してP<0.001)。また、予防治療群の2例で第VIII因子の高い抗体価が認められ、発症時治療群の3例で致命的な出血を呈する症例があった。中心静脈カテーテル留置に関連した入院と感染症については両群間で有意差は見られなかった。Manco-Johnson氏らは、「組み換え型第VIII因子の予防的投与は、関節障害を予防し、重篤な血友病A男児の関節およびその他の出血頻度を減少させる」と結論付けている。(朝田哲明:医療ライター)

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