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特発性肺線維症患者へのアセチルシステインは本当に有用か/NEJM

 肺機能障害が軽度~中等度の特発性肺線維症患者について、努力性肺活量(FVC)の維持に関してアセチルシステイン(商品名:ムコフィリンほか)は、プラセボと比べて有意なベネフィットをもたらさなかったことが、Fernando J. Martinez氏らIdiopathic Pulmonary Fibrosis Clinical Research Networkによる無作為化試験の結果、明らかにされた。これまでアセチルシステインは特発性肺線維症の治療として有用であることが示唆されていたが、プラセボ対照の試験データが不足していた。NEJM誌2014年5月29日号(オンライン版2014年5月18日号)掲載の報告より。60週間のFVCの変化を主要アウトカムに、プラセボ群と比較 検討は二重盲検プラセボ対照試験にて、当初は肺機能障害が軽度~中等度の特発性肺線維症患者を、3剤併用治療(プレドニゾン+アザチオプリン+アセチルシステイン)群、アセチルシステイン単独治療群、プラセボ群の3群に無作為に割り付け60週間追跡するプランであった。しかし3剤併用群で安全性への懸念が生じたため試験を中断し、同群を除外して2群(アセチルシステインvs. プラセボ)で試験を続行した(その他の条件などは変更せず)。 主要アウトカムは、60週間のFVCの変化であった。FVCの変化、および死亡率、急性増悪についても有意差なし アセチルシステイン群には133例が、プラセボ群には131例が登録された。ベースライン時の両群の被験者特性は類似しており、平均年齢67歳、女性が22%、平均FVCは予測値の73%、一酸化炭素拡散能は予測値の45%などであった。 結果、60週時点でアセチルシステイン群とプラセボ群との間にFVCの変化について、有意な差はみられなかった(-0.18L vs.-0.19L 、p=0.77)。 また、死亡率(4.9%vs. 2.5%、log-rank検定p=0.30)、急性増悪(両群とも2.3%、p>0.99)についても有意差はみられなかった。

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若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに

 10代の若年発症統合失調症患者では、神経学的ソフトサイン(neurological soft signs:NSS)の有病率およびスコアが高いことが明らかとなった。NSSは、中枢神経系の特定領域を限定せず、また特定の神経症症候群にも属さないわずかな脳の発達障害を示すサインである。一般的に統合失調症のような疾患症例で観察され、とくに18歳未満の若年発症における脳発達モデルの裏付けとなる。実際にNSSは、統合失調症患者における臨床的、認知的、電気生理学的および脳の障害を反映する神経解剖学的なマーカーに属しているという。検討を行ったチュニジア・Razi病院のS. Bourgou Gaha氏らは、「それらは脳の構造的な異常を示すもので、脳の発達障害に帰結し、脳の発達障害に関する病理学的な仮説を裏付けるものである」と述べている。Encephale誌オンライン版2014年5月19日号の掲載報告。 研究グループは、若年発症統合失調症と診断された思春期の患者におけるNSSの有病率、スコア、その後の経過について健常対照との比較を行った。検討では、NSSと人口統計学的・臨床的特性および治療特性との相互関係について調べた。試験は、同院の小児精神科部門で思春期患者12例を集めて行われた。患者はKiddie SAD PL補足版DSM-IVで統合失調症と診断されていた。また、年齢、教育レベルで適合させた、家族に精神疾患患者がおらず本人にも治療歴のない12例の健康対照と比較した。患者の臨床症状は陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価を行った。NSSは、Krebs氏らが2000年に行った2群について検討したNeurological Soft Signs Examinationで評価した。尺度は23項目から構成され、運動協調性、運動統合機能、知覚統合、不随意運動と左右の機能分化の質などを調べた。 主な結果は以下のとおり。・調査対象者の平均年齢は、14.7歳であった。平均発病年齢は12.2歳で、男女比は1.4対1、教育を受けた期間(レベル)は7.4年であった。・PANSS平均総スコアは74.3点であった。・抗精神病薬の1日平均投与量(クロルプロマジン換算)は、523.9mg/日であった。4例の患者が、抗精神病薬の単独強化療法を受けていた一方で、その他の患者は2つの神経遮断薬の投与を受けていた。・NSSの有病率は100%(カットオフ値11)で、総スコアの平均値は29.3±4.1であった。スコアが最も高かったのは運動協調性であった(10.1)。・対照群では総スコアの平均値は7±1.3であった。・患者と対照では、すべてのNSSのサブスコアについて非常に有意な格差が認められた。・患者において、年齢とNSS総スコア(p=0.05、r=-0.57)、および知覚統合スコア(p=0.04、r=-0.58)との間にいずれも逆相関の関連がみられた。・また、NSS総スコアは、教育レベルが低いこととも関連していた(p=0.03、r=-0.61)。・NSSスコアとPANSSスコアまたは抗精神病薬の1日投与量との間には、相関性はみられなかった。関連医療ニュース 統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか 双極性障害における神経回路異常が明らかに 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所  担当者へのご意見箱はこちら

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肺腺がんの分子標的薬選択に多重アッセイ法が有用か/JAMA

 腫瘍形成ドライバー(がん化と増殖に関わる遺伝子変異)をターゲットとする治療薬(分子標的薬)の開発は、肺腺がん患者の治療を変貌させたといわれる。米国・スローンケタリング記念がんセンターのMark G. Kris氏らLung Cancer Mutation Consortiumは、試験担当医が適切に標的治療薬を選択でき、患者を臨床試験に登録できるよう、肺がんの腫瘍形成ドライバーの10遺伝子について検査する多重アッセイを用いて検討した。その結果、検討した肺腺がん患者の64%でターゲットとなるドライバーが検出され、医師が治療法を選択するうえで多重アッセイ法が有用であることが示されたという。JAMA誌2014年5月21日号掲載の報告より。10遺伝子の発現頻度と、分子標的薬治療の割合と生存を評価 本検討は、肺腺がん患者の腫瘍形成ドライバーの検出頻度を明らかにし、特定ドライバーをターゲットとした治療の選択および生存評価に、そのデータを活用することが目的だった。 2009~2012年に米国14地点において、転移性肺腺がんで、全身状態(PS)が0~2の患者を登録し、10遺伝子について調べ、患者、および治療法と生存に関する情報を集めた。検討では、10遺伝子について調べた後、その結果を用いて適合したターゲット治療を選択した。 主要評価項目は、10遺伝子の発現頻度と、分子標的薬治療を受けた患者の割合、生存率とした。遺伝子を検出し分子標的薬治療を受けていた患者の生存は有意に延長 試験期間中に、1,007例の患者が1遺伝子以上の検査を受け、733例が10遺伝子の検査を受けた。 結果、733例のうち466例(64%)の患者で、腫瘍形成ドライバーが見つかった。検査した腫瘍733例のうち見つかったドライバーの内訳は、KRASが182例(25%)、感作EGFRが122例(17%)、ALK再配列が57例(8%)、その他のEGFRが29例(4%)、2以上の遺伝子が見つかったのは24例(3%)、ERBB2(HER2)が19例(3%)、BRAFが16例(2%)、PIK3CAが6例(1%未満)、MET増幅5例(1%未満)、NRASが5例(1%未満)、MEK1が1例(1%未満)、AKT1はゼロだった。 生存期間中央値は、腫瘍形成ドライバーを有し分子標的薬治療を受けていた260例は3.5年(範囲[IQR]:1.96~7.70)、腫瘍形成ドライバーを有していたが分子標的薬治療は受けていなかった318例は2.4年(IQR:0.88~6.20)だった(傾向スコア補正後ハザード比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.53~0.9、p=0.006)。 結果を踏まえて著者は、「ドライバーと適合した治療を受けていた患者の生存は延長したが、それが標的治療に基づくものかを調べる無作為化試験を行うことが必要である」とまとめている。

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うつぶせ寝にしておいた生後3日目の新生児が急死したケース

小児科最終判決判例タイムズ 988号264-271頁概要体重3,460g、身長51cm、正常分娩で出産した新生児。授乳は良好であったが、生後3日目の授乳後にミルクを吐き、腹満もみられたため、再度吐く可能性を考慮してうつぶせ寝で寝かせた。ところがその45分後に全身チアノーゼ、心肺停止状態で発見され、ただちに行われた救急蘇生により何とか自己心拍と自発呼吸が再開した。ところが低酸素脳症が原因で重度の脳性麻痺となり、気道分泌物による窒息のため生後7ヵ月で死亡した。詳細な経過経過1995年1月5日03:00陣痛が始まったためそれまで通院していた総合病院に入院。05:43正常分娩にて、体重3,460g、身長51cmの男児を出産。心拍数や呼吸などに異常はなかった。ミルクなど合計84cc1月6日ミルクなど合計204cc1月7日ミルクなど合計402cc1月8日03:00母親が授乳。04:00かん高く泣いたため看護師がミルクを授乳し、コットに仰向け寝で寝かせた。05:40さらに泣いたため、おやつとしてミルクを授乳(このとき担当看護師は授乳していないと主張)、そのときの排気でミルクを吐き、さらに腹満もあったことから、再度吐く可能性を考慮してうつぶせ寝(顔は横向き)で寝かせた(このときの勤務は深夜帯で、看護師1名が新生児室の新生児6~7名と、NICU室の重症児を含む3~4名の新生児を担当、NICU室から新生児室はみえない位置関係)。06:25それから約45分後、朝の授乳開始のため母親にわたそうとしたところ、顔を真下に向けた状態でうつぶせ寝となっており、抱き上げると全身チアノーゼ、呼吸停止状態であった(母親は枕代わりのタオルに直径6~7cmの吐乳を確認したと申告したが、担当看護師は嘔吐はなかったと反論)。ただちにNICU室に移し、産婦人科医師にコールするともに酸素投与、背中のタッピングを行ったが、反応なし。06:30産婦人科医師が到着し、心臓マッサージとバギングを行いつつ気管内挿管を試みたが気管内挿管できず、小児科医師の応援を要請。そのときミルク残査を含む液体が噴出したので吸引を行う。06:35小児科医師が到着して気管内挿管を試みたが挿管できず。06:40別の医師により挿管が完了した。このとき、吸引により乳白色の液体が吸引された。まもなく心拍音が聴取できるようになった。06:53自発呼吸が出現したが微弱であり、バギングが継続された。07:10口腔内から唾液様の液体が多量に吸引、挿管チューブからはごく少量の淡黄色液体が吸引された。07:35自発呼吸、心拍は安定し、クベースに収容された。しかし、低酸素脳症による重度の脳障害が発生した。08:30担当医師から、「戻したミルクを再度飲み込み、それが肺に入ったため事故が生じた」という説明あり。10:30産婦人科、および小児科担当医師から、「事故の原因としてミルクの誤嚥が考えられる、挿管チューブより粘調なミルクかすのようなものが多量に引けた、肺炎を想定し早めに抗菌薬を投与する」との説明を受けた(一連の説明の中で未然型乳幼児突然死症候群とは告げられていない)。8月9日気道分泌物による窒息のため死亡。カルテの記載(1)産婦人科入院記録「tapping吸引にて気管内よりmilk多量に引ける」(2)小児科入院記録「挿管よりmilk残査多量に吸引できる。milk誤嚥による窒息→呼吸停止→心臓停止の可能性大、誤嚥の原因は不明」「チューブより粘調なmilkかすのようなもの多量に引け、吸引性肺炎を想定し、早めに抗菌薬使用としました」当事者の主張患者側(原告)の主張うつぶせ寝にしたために吐乳吸引を引き起こして窒息し、発見が遅れたために心肺停止に至った。病院側(被告)の主張吐乳の事実はないので、うつぶせ寝が心肺停止の原因ではない。心肺停止で発見された時口、鼻、周囲にはミルクの付着や嘔吐の形跡はなかったうつぶせ寝では吐物は下に位置するので、位置的に上方になる気管に吐物がはいることはない窒息するほどの吐物誤嚥があれば、新生児であっても不穏な体動を示し看護師が気づくはずである蘇生時にみられた気管内からのミルク吸引は、バギングや心臓マッサージによって気管内に入ったものである嘔吐したミルクを誤嚥して窒息したのであれば、挿管チューブから細小泡沫が存在したはずである死亡原因は未然型乳幼児突然死症候群(SIDS)である裁判所の判断うつぶせ寝にしたことにより、ふとんや枕などで鼻口部が圧迫され低酸素状態となり、嘔吐に引き続き吐物を吸引して窒息した結果、心肺停止となったもので、乳幼児突然死症候群ではない。1.心肺停止で発見された時口、鼻、周囲にはミルクの付着や嘔吐の形跡はなかったと主張するが、母親が枕代わりに使用していたタオルに黄色い吐乳のようなシミを確認していること、動揺しながら少しでも早く蘇生措置を行おうとした看護師、そして、事故が起きた新生児室を通らず直接NICU室に出入りした医師は嘔吐の痕跡を確認できる状況ではなかったため、嘔吐の形跡がなかったという証言は採用できない2.うつぶせ寝では吐物は下に位置するので、位置的に上方になる気管に吐物がはいることはないと主張するが、うつぶせ寝にした場合に気道は食道よりも下になるため、咽喉頭部にたまった吐瀉物を吸引しやすくなるものである3.窒息するほどの吐物誤嚥があれば、新生児であっても不穏な体動を示し看護師が気づくはずであると主張するが、生後3日の乳幼児の運動能力からいって、寝具などに移動した痕跡がなくても不自然ではなく、また、新生児室はNICU室からはみえない位置関係なので看護師が気づかなくても不自然ではない4.蘇生時にみられた気管内からのミルク吸引は、バギングや心臓マッサージによって気管内に入ったものであるとするが、当時の担当医師は口から吹き出したミルク残査を吸引した後で心臓マッサージをしているので、この際に吐瀉された液体が後になって大量に気管内に移動したとは考えられない5.嘔吐したミルクを誤嚥して窒息したのであれば、挿管チューブから細小泡沫が存在したはずであるとするが、本件では粘調性の低いサラサラしたミルク様のものが引け、固まりや気泡は認めなかったと主張するが、担当医師のカルテには「粘調なmilkかすのようなもの大量にひけ」と記載していて、陳述内容と異なる。最小泡沫の存在はミルク誤嚥による窒息を確認する有力な方法ではあるがそれが唯一の方法ではない6.死亡原因は乳幼児突然死症候群(SIDS)であると主張するが、未然型乳幼児突然死症候群があったことを窺わせる何らかの徴候があったことを立証することはできない原告側合計6,881万円の請求に対し、4,855万円の判決考察乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、健康と思われていた乳幼児が主に睡眠中に死亡しているのを発見され、死亡直前の状況や剖検によってもその原因が解明できないという疾患です。1940年頃から欧米で注目され、1969年には米国において一疾患単位として定義され、わが国でも1981年に定義が行なわれました。近年になって、オランダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドから、うつぶせ寝をやめて仰向け寝とすることで、SIDSの発症頻度が低下したという報告が相次いでなされました。■この現象の解釈として(1)うつぶせ寝がSIDSの発症のリスクファクターとして働き、うつぶせ寝に伴うより深い睡眠、さらに覚醒反応遅延が関与して、SIDSの発症に間接的に関わっていたとする考え(小児科診療2000年3月号335頁)(2)うつぶせ寝を止めることにより単純にうつぶせ寝に伴う窒息死が減少したものとする考え。この場合、以前のSIDSとされていた症例には、なかにはうつぶせに伴う窒息死とされるべき症例も多く含まれていたということになる本件は病院側が未然型乳幼児突然死症候群と主張したように、救急蘇生が奏効していったんは救命することができましたので、いわゆる「乳幼児突発性危急事態:apparent life threatening event(ALTE)」という病態となります。厚生省研究班(当時)の定義によると、ALTEは「それまでの健康状態および既往歴からその発症が予想できず、しかも児が死亡するのではないかと観察者におもわしめるような無呼吸、チアノーゼ、顔面蒼白、筋緊張低下、呼吸窮迫などのエピソードで、その回復に強い刺激や蘇生処置を要したもののうちで原因が不詳のもの」とされています。本件では、気管内からミルク様のものを多量に吸引したという事実がありますので、何らかの原因で「嘔吐」したことと、その吐物を「誤嚥」して窒息したことは明らかであると思います。しかし、裁判でも最大の争点となったように、うつぶせ寝によって引き起こされた吐乳・窒息であったのか、それとも原因が不詳のALTE(未然型SIDS)と判断するべきなのか、本当のところはよくわからないと思います。そもそも、SIDSやALTEと判断する決め手となるような検査方法はなく、診断方法自体が除外診断となるため、さらに問題を複雑にしていると思います。もちろん、原告側の主張のように、吐乳が原因で窒息となり、その遠因としてうつぶせ寝にしたことが関与していたという可能性は十分に考えられます。しかし、生まれてから3日間まったく異常がみられなかったこの乳児に対し、今回の出来事を予見するのはまず不可能ではないでしょうか。裁判記録を読んでみると、当時の看護師はほかにも重症の新生児を担当していたので、とくに異常のみられないこの児に付きっきりの看護をするとは思えず、職務上の怠慢があったとか、不誠実な看護を施したとはけっしていえないと思います。もし、新生児室ではなく母親に預けられた段階で今回の出来事が発生していれば、「不幸な出来事」として誰もが納得し、裁判には至らなかったと思います。にもかかわらず、看護師の管理下で「うつぶせ寝にした」という事実だけが大きく取り上げられてしまい、医学的には適切と思える病院側の主張をことごとく否定し、高額賠償の判決へと至りました。もし、病院側に明らかな怠慢や過失が認められたのであれば、このような判決でも納得せざるを得ないのですが、けっしてそのようなことはなかったと思います。そのためもあってか本件は控訴へと至りましたが、一方で病院側の説明にも問題点を指摘することができると思います。それは事故直後から「戻したミルクを再度飲み込み、それが肺に入った」と担当医師は家族に説明し、「誤嚥、窒息」とカルテに記載したにもかかわらず、あとになってから「未然型乳幼児突然死症候群」を主張したり、容態急変時に「嘔吐はない」と異なる内容の証言をして、今回の不幸な出来事は不可抗力であったとしました。どうもこのような一貫しない主張に対し、裁判官の心証が大きく患者側に傾いたのではないかと思います。近年では、乳幼児をうつぶせ寝とすることに対する過剰な反応がみられますので、本件のような不幸な事故の際にうつぶせ寝としていたことがわかると、医療機関側にとってはきわめて不利になると思います。一方でうつぶせ寝にすることのメリットも確かにあり、とくに未熟児や病児には仰向けよりも生理学的に有利であることが示されていますが、SIDS予防キャンペーンなどで「仰向け寝にすること」が推奨されている以上、それに準じた方針を選択せざるを得ないと思います。小児科

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成人喘息増悪予防、ICS/LABA戦略が有効かつ安全/BMJ

 喘息増悪の予防において、低用量吸入ステロイド薬+長時間作動型β2刺激薬(ICS/LABA)治療戦略が最も有効で安全であることが、オランダ・アムステルダム大学のRik J B Loymans氏によるネットワークメタ解析の結果、報告された。解析では若干の不均一性はみられたが、ICS/LABA維持療法+リリーバー、もしくは固定用量/日のICS/LABA療法の2つが同程度に有効かつ安全であることが示された。結果を踏まえて著者は、「低用量吸入ステロイド薬では不十分な場合、これら2つの戦略の選択が好ましく、ステップアップ治療の根拠となりうる」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年5月13日号掲載の報告。15の治療戦略とプラセボ介入データをネットワークメタ解析 喘息治療への長時間作動型β2刺激薬の追加は、吸入ステロイド薬を増量するよりも増悪予防において好ましいとされる。これまで、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)や同吸入ステロイド薬との合剤(ICS+LTRA)といった他の戦略と評価したいくつかのメタ解析は行われていたが、研究グループは、ネットワークメタ解析の手法を用いて、現在行われている維持療法戦略の有効性と安全性を比較した。 文献データの検索は、コクランシステマティックレビューにて行い、24週以上の維持療法について無作為化された喘息成人患者が参加しており、全文の中で喘息増悪が報告されていた試験を適格とした。 低用量吸入ステロイド療法を比較群として、主要有効性アウトカムは、重症の増悪発作の発生率とした。副次アウトカムは、中等度~重症の増悪発作率とした。また治療中断率を安全性のアウトカムとして評価した。 文献検索により解析には、15の治療戦略とプラセボを比較・追跡した64試験5万9,622人年のデータを組み込んだ。ICS/LABA以外の組み合わせ戦略は、吸入ステロイド薬に対する優越性示されず 分析の結果、重症増悪発作の予防の有効性は、ICS/LABA維持療法+リリーバーと固定用量/日のICS/LABA療法が同程度に最高位に位置づけられた。 低用量吸入ステロイド薬療法と比較して発生率比は、ICS/LABA維持療法+リリーバーが0.44(95%信頼区間[CI]:0.29~0.66)、固定用量/日のICS/LABA療法は0.51(同:(0.35~0.77)であった。 その他の組み合わせ治療戦略は、吸入ステロイド薬療法に対する優越性は示されず、すべての単剤治療は、低用量吸入ステロイド薬の単独療法に対して劣性であった。 安全性は、従来最善(ガイドラインベース)の診療で、維持療法+リリーバーの組み合わせが最も良好であった。

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アカンプロサートとナルトレキソンのアルコール依存症治療の減酒効果/JAMA

 外来でのアルコール依存症治療について、アカンプロサート(商品名:レグテクト)と経口ナルトレキソン(国内未承認)は、いずれも同等に再飲酒を防止する効果があることを、米国・ノースカロライナ大学のDaniel E. Jonas氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。アルコール依存症に対する薬物治療はあまり行われておらず、減酒薬治療を受けている人に限ってみれば10%未満であるという。研究グループは、大規模な報告例をレビューし、米国FDAおよびその他が承認する薬物療法の有効性、健康アウトカムの改善や有害事象について明らかにするため本検討を行った。JAMA誌2014年5月14日号の掲載報告。アカンプロサート、ナルトレキソンまたは両者を評価した試験が大半 研究グループは、PubMed、Cochrane Library、PsycINFO、CINAHL、EMBASE、FDAウェブサイト、臨床試験レジストリを介して、1970年1月1日~2014年3月1日の報告論文を検索。2名のレビュワーが、試験期間が12週間以上で適格アウトカムを報告していた無作為化試験、および健康アウトカムや有害事象を報告していた直接比較の前向きコホート試験を適格とし、論文の選択を行った。 メタ解析はランダム効果モデルを用いて行い、有益性に関する必要治療数(NNT)または有害性に関する必要治療数(NNH)を算出し、アルコール消費(あらゆる再飲酒、大量飲酒に回帰、飲酒日数など)、健康アウトカムのアクシデント(自動車衝突事故、外傷、QOL、機能性、死亡)、有害事象について評価した。 検索の結果、無作為化試験122本、コホート試験1本(計2万2,803例)を解析に組み込んだ。大半が、アカンプロサート(27試験、7,519例)、ナルトレキソン(53試験、9,140例)または両者を評価した試験だった。アカンプロサートと経口ナルトレキソンは同等の減酒効果 あらゆる再飲酒防止のNNTは、アカンプロサートは12(95%信頼区間[CI]:8~26、リスク差[RD]:-0.09、95%CI:-0.14~-0.04)、経口ナルトレキソン(50mg/日)は20(同:11~500、-0.05、-0.10~-0.002)だった。 大量飲酒回帰防止のNNTは、アカンプロサートでは改善との関連は認められなかった。経口ナルトレキソン(50mg/日)は12(同:8~26、-0.09、-0.13~-0.04)だった。 アカンプロサートとナルトレキソンの比較試験のメタ解析からは、あらゆる再飲酒(RD:0.02、95%CI:-0.03~0.08)、大量飲酒回帰(同:0.01、-0.05~0.06)について、両者間の統計的な有意差はみられなかった。 ナルトレキソン注射薬のメタ解析では、あらゆる再飲酒(同:-0.04、-0.10~0.03)、大量飲酒回帰(同:-0.01、-0.14~0.13)との関連はみられなかったが、大量飲酒日数短縮との関連はみられた(加重平均差[WMD]:-4.6%、95%CI:-8.5~-0.56%)。 一方、適応外薬では、ナルメフェン(国内未承認)とトピラマート(抗てんかん薬として商品名:トピナ)で中程度のエビデンスが認められた。ナルメフェンは、1ヵ月当たりの大量飲酒日数(WMD:-2.0、95%CI:-3.0~-1.0)、1日当たりの飲酒(同:-1.02、-1.77~-0.28)について、トピラマートは、%でみた大量飲酒日数(同:-9.0%、-15.3~-2.7%)、1日当たりの飲酒(同:-1.0、-1.6~-0.48)について効果がみられた。 ナルトレキソンとナルメフェンの、有害事象による試験中止のNNHは、48(95%CI:30~112)、12(同:7~50)であった。なおアカンプロサート、トピラマートでは、リスクについて有意な増大はみられなかった。 結果を踏まえて著者は、「アカンプロサートと経口ナルトレキソンは、減酒との関連が認められ、それらはアルコール依存症患者の飲酒アウトカム改善に最善のエビデンスを有していた。直接比較試験では、両者に有意な差はみられなかった」と述べ、「適応外薬では、ナルメフェンとトピラマートに若干だが改善と関連する中程度のエビデンスがみられた」とまとめ、投薬頻度や予想される有害事象および治療の有効性などの要因は薬物治療の選択においてガイドとなるだろうとまとめている。

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事例05 悪性腫瘍特異物質治療管理料に対する査定と適時調査での指摘【斬らレセプト】

解説ホジキン病の患者に悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定したところ、C事由(その他の医学的理由により適当と認められないもの)にて査定となった。同管理料は、検査項目D009腫瘍マーカーに分類される検査を実施し、その検査値をもって悪性腫瘍が確定した患者の計画的な治療管理を行った場合に算定ができる。算定の根拠とした「sIL-2R(可溶性インターロイキン2レセプター)」は、同管理料で規定される腫瘍マーカーに分類されており、悪性腫瘍病名も確定している。しかし、同検査の算定留意事項には、「非ホジキンリンパ腫又はATLであることが既に確定診断され(後略)」とある。医師は経過観察と診療計画への参考に検査を行ったものであるが、「ホジキン病」には保険適用が無いのである。また、査定の原因を調べるために診療録を見たところ、検査値も治療計画の要点も読み取れなかった。このような診療録への記載不備は、算定要件を満たさないとして適時調査や個別指導などの地方厚生局による運用確認で指摘され、多額の自主返還が求められる。定期的に診療録の記載内容の確認を行うことが、適時調査などへの対策につながるといえる。

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事例06 オセルタミビルの事務的入力誤りによる査定【斬らレセプト】

解説発熱を主訴に在宅療養支援診療所に休日受診した小学校高学年の患者。インフルエンザ反応陽性であったために、タミフル®ドライシロップを1日2回院内処方した。処方量がB理由(医学的に過剰・重複と認められるもの)として査定となった。同剤は、「小児に対してはオセルタミビルとして体重1㎏あたり1回2㎎を1日2回5日間経口投与、用量は1回75mgを限度、成人は1回75㎎を1日2回5日限度とする」と添付文書に記載されている。投与量の1日8gは、1回量に換算すると120㎎であり明らかに過量投与となる。原因を調べるため紙の診療録を確認すると、正しく5gと記載されていた。処方録にも誤りはなかった。原因は診療費計算入力の誤りであった。医師の処方記載に対して薬剤部は専門知識を活かして医師の記載を判読しているため、迷う記述であっても正しく判読できていた。しかし、医療費計算担当はまだ入ったばかりで5gとの手書き記載を正しく判読できなかったのである。思わぬところに査定の原因はあったが、多忙な医師に代わってベテラン職員による二次的レセプト点検(電子的チェック)が行われていれば防げていた査定であった。

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偽膜性大腸炎を診断できずに死亡に至ったケース

消化器最終判決判例時報 1654号102-111頁概要高血圧性小脳出血を発症した65歳男性、糖尿病、腎障害、および軽度の肝障害がみられていた。発症4日目に局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術を施行し、抗菌薬としてセフォタキシムナトリウム(商品名:クラフォラン)、ピペラシリンナトリウム(同:ペントシリン)を開始した。術後2日目から下痢が始まり、術後4日目から次第に頻度が増加し、38℃台の発熱と白血球増多、CRP上昇など、炎症所見が顕著となった。術後6日目にはDICが疑われる状態で、腎不全、呼吸・循環不全となり、術後12日目に死亡した。解剖の結果、空腸から直腸にかけて著しい偽膜性大腸炎の所見が得られた。詳細な経過患者情報65歳男性経過1991年3月2日11:00頃法事の最中に眩暈と嘔吐を来して歩行不能となり、近医を経てA総合病院脳神経外科に搬送され、頭部CTスキャンで右小脳出血(血腫の大きさは3.8×2.5×2.0cm)と診断された。意識清明であったが言語障害があり、脳圧降下薬の投与、高血圧の管理を中心とした保存的治療が行われた。3月6日若干の意識障害、右上肢の運動失調がみられたため、局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術が行われた。術後感染防止のため、第3世代セフェム(クラフォラン®)、広域ペニシリン(ペントシリン®)の静注投与が行われた。3月8日焦げ茶色の下痢と発熱。腰椎穿刺では髄膜炎が否定された。3月9日白血球15,000、CRP 0.5。3月10日下痢が5回あり、ロペラミド(同:ロペミン)投与(以後も継続された)。3月11日下痢が3回、白血球42,300、CRP 3.9。敗血症を疑い、γグロブリン追加。胸部X線写真異常なし、血液培養陰性。3月12日下痢が3回、チェーンストークス様呼吸出現。3月13日下痢が2回、血圧低下、腎機能低下、人工呼吸器装着、播種性血管内凝固症候群を疑い、メシル酸ガベキサート(同:エフオーワイ)開始。抗菌薬をアンピシリン(同:ビクシリン)、第3世代セフェム・セフタジジム(同:モダシン)、ミノサイクリン(同:ミノマイシン)に変更。以後徐々に尿量が減少して腎不全が進行し、感染や血圧低下などの全身状態悪化から人工透析もできないままであった。3月18日死亡。死体解剖の結果、空腸から直腸にかけて、著しい偽膜性大腸炎の所見が得られ、また、エンドトキシン血症の関与を示唆する肝臓小葉中心性新鮮壊死、著しい急性肝炎、下部尿管ネフローシス(ショック腎)が認められたため、偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、細菌が血中に侵入し、その産生するエンドトキシンによる敗血症が惹起されエンドトキシンショックとなって急性循環不全が引き起こされた結果の死亡と判断された。当事者の主張患者側(原告)の主張小脳出血は保存的に様子をみても血腫の自然吸収が期待できる症状であり、手術の適応がなかったのに手術を実施した。1.死因クラフォラン®およびペントシリン®を中心として、このほかにビクシリン®、モダシン®、ミノマイシン®などの抗菌薬を投与されたことによって偽膜性大腸炎を発症し、その症状が増悪して死亡したものである2.偽膜性大腸炎について3月10~13日頃までには抗菌薬に起因する偽膜性大腸炎を疑い、確定診断ができなくても原因と疑われる抗菌薬を中止し、偽膜性大腸炎に効果があるバンコマイシン®を投与すべきであったのに怠った。さらに偽膜性大腸炎には禁忌とされているロペミン®(腸管蠕動抑制剤)を投与し続けた病院側(被告)の主張高血圧性小脳出血の手術適応は、一般的には血腫の最大経が3cm以上とされており、最大経が3.8cmの小脳出血で、保存的加療を行ううちに軽い意識障害および脳幹症状が発現し、脳ヘルニアへの急速な移行が懸念されたため、手術適応はあったというべきである。1.死因初診時から高血圧性腎症、糖尿病性腎症、感染によるショックなどの基礎疾患を有し、これにより腎不全が進行して死亡した。偽膜性大腸炎の起炎菌Clostridium difficileの産生する毒素はエンテロトキシンおよびサイトトキシンであるから、本件でみられたエンドトキシン血症は、偽膜性大腸炎に起因するとは考えがたい。むしろエンドトキシンを産生するグラム陰性桿菌が腸管壁を通過し、糖尿病、肝障害などの基礎疾患により免疫機能が低下していたため、敗血症を発症し、多臓器不全に至ったものと考えられる2.偽膜性大腸炎について偽膜性大腸炎による症状は、腹痛、頻回の下痢(1日30回にも及ぶ下痢がみられることがある)、発熱、腸管麻痺による腹部膨満などであり、検査所見では白血球増加、電解質異常(とくに低カリウム血症)、低蛋白血症などを来す。本件の下痢は腐敗性下痢である可能性や、解熱薬の坐薬の影響が考えられた。本件の下痢は回数的にみて頻回とまではいえない。また、腹痛や腹部膨満はなく、血清カリウム値はむしろ上昇しており、白血球やCRPから炎症所見が著明であったので肺炎や敗血症は疑われたものの、偽膜性大腸炎を疑うことは困難であった裁判所の判断1. 死因本件ではClostridium difficileの存否を確認するための検査は行われていないが、抗菌薬以外に偽膜性大腸炎を発生させ得る具体的原因は窺われず、また、偽膜性大腸炎はClostridium difficileを起炎菌とする場合がきわめて多いため、本件で発症した偽膜性大腸炎は抗菌薬が原因と推認するのが合理的である。そして、Clostridium difficileにより発生した偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、腸管から血中にグラム陰性菌が侵入し、その産生するエンドトキシンにより敗血症が惹起され、ショック状態となって急性循環不全により死亡したものと推認することができる。2. 偽膜性大腸炎について一般的に医師にはさまざまな疾病の発生の可能性を考慮して治療に従事すべき医療専門家としての高度の注意義務があるのであって、本件の下痢の状況や白血球数などの炎症反応所見の推移は、かなり強く偽膜性大腸炎の発生を疑わせるものであると評価するのが相当である。病院側の主張する事実は、いずれも偽膜性大腸炎が発生していたことを疑いにくくする事情ではあるが、ロペミン®により下痢の回数がおさえられていた可能性を考慮して下痢の症状を観察するべきであった。そのため、3月11日から翌12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であり、その時点でバンコマイシン®の投与を開始し、かつロペミン®の投与を中止すれば、偽膜性大腸炎を軽快させることが可能であり、エンドトキシンショック状態に陥ることを未然に回避できた蓋然性が高い。2. 手術適応について高血圧性小脳出血を手術するべきであったかどうかの判断は示されなかった。原告側合計3,700万円の請求に対し、2,354万円の判決考察このケースは、脳外科手術後にみられた「下痢」に対し、かなり難しい判断を要求していると思います。判決文を読んでみると、頻回の下痢症状がみられたならばただちに(少なくとも下痢とひどい炎症所見がみられた翌日には)偽膜性大腸炎を疑い、確定診断のために大腸内視鏡検査などができないのならば、それまでの抗菌薬や止痢薬は中止してバンコマイシン®を投与せよ、という極端な結論となっています。もちろん、一般論として偽膜性大腸炎をまったく鑑別診断に挙げることができなかった点は問題なしとはいえませんが、日常臨床で抗菌薬を使用した場合、「下痢」というのはしばしばみられる合併症の一つであり、その場合程度がひどいと(たとえ偽膜性大腸炎を起こしていなくても)頻回の水様便になることはしばしば経験されます。そして、術後2日目にはじめて下痢が出現し、術後4日目から下痢が頻回になったという状況からみて、最初のうちは単純な抗菌薬の副作用による下痢と考え、止痢薬を投与するのはごく一般的かつ常識的な措置であったと思います。その上、術後に発熱をみた場合には腸以外の感染症、とくに脳外科の手術後であったので髄膜炎や肺炎、尿路感染症などをまず疑うのが普通でしょう。そのため、担当医師は術後2日目には腰椎穿刺による髄液検査を行っていますし(結果は髄膜炎なし)、胸部X線写真や血液検査も頻回に調べていますので、一般的な注意義務は果たしているのではないかと思います。ところが判決では、「頻回の下痢が始まった翌日の3月11日から3月12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であった」と断定しています。はたして、脳外科の手術後4日目に、頻回に下痢がみられたから即座に偽膜性大腸炎を疑い、発熱が続いていてもそれまでの抗菌薬をすべて中止して、バンコマイシン®だけを投与することができるのでしょうか。この時期はやはり脳外科術後の髄膜炎がもっとも心配されるので、そう簡単には抗菌薬を止めるわけにはいかないと考えるのがむしろ脳外科的常識ではないかと思います。実際のところ、脳外科手術後に偽膜性大腸炎がみられるのは比較的まれであり、それよりも髄膜炎とか肺炎の発症率の方が、はるかに高いのではないかと思います。にもかかわらず、まれな病態である偽膜性大腸炎を最初から重視するのは、少々危険な考え方ではないかという気までします。あくまでも推測ですが、脳外科の専門医であれば偽膜性大腸炎よりも髄膜炎、肺炎の方をまず心配するでしょうし、一方で消化器内科の専門医であればどちらかというと偽膜性大腸炎の可能性をすぐに考えるのではないかと思います。以上のように、本件は偽膜性大腸炎のことをまったく念頭に置かなかったために医療過誤とされてしまいましたが、今後はこの判例の考え方が裁判上のスタンダードとなる可能性が高いため、頻回の下痢と発熱、著しい炎症所見をみたならば、必ず偽膜性大腸炎のことを念頭に置いて検査を進め、便培養(嫌気性培養も含む)を行うことそして、事情が許すならば大腸内視鏡検査を行って確定診断をつけておくこと通常の抗菌薬を中止するのがためらわれたり、バンコマイシン®を投与したくないのであれば、その理由をきちんとカルテに記載することというような予防策を講じないと、医師側のミスと判断されてしまうことになると思います。なお本件でもう一つ気になることは、本件では手術直後から予防的な抗菌薬として、2種類もの抗菌薬が使用されている点です。クラフォラン®、ペントシリン®はともに髄液移行の良い抗菌薬ですので、その選択には問題ありません。しかし、手術時には明らかな感染症は確認されていないようなので、なぜ予防的な抗菌薬を1剤ではなくあえて2剤にしたのでしょうか。これについてはいろいろとご意見があろうかと思いますが、ことに本件のようなケースを知ると、抗菌薬の使用は必要最小限にするべきではないかと思います。消化器

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新規経口薬、移植後サイトメガロウイルス感染の予防効果を確認/NEJM

 同種造血細胞移植後レシピエントの疾患・死亡リスクの原因となっているサイトメガロウイルス(CMV)感染に対して、新規開発中のレテルモビル(AIC246)が有意に同感染発生を抑制したことが第II相試験の結果、示された。米国・MDアンダーソンがんセンターのRoy F. Chemaly氏らによる報告で、最高用量240mg/日で最大抗CMV活性が認められ、安全性プロファイルは忍容可能なものであったという。CMV感染に対する有効な治療法は確立しているが、臨床的に重大な毒性作用や薬剤耐性があることから、新たな治療オプションの開発が求められていた。NEJM誌2014年5月8日号掲載の報告。レテルモビル60、120、240mg/日の12週投与の有効性と安全性を検討 レテルモビルは、新たな作用機序を有する経口抗CMV薬である。第II相試験では、レテルモビル60、120、240mg/日の12週投与の有効性と安全性について、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて評価が行われた。 被験者は2010年3月~2011年10月に19施設(ドイツ9、米国10)から集められ、試験適格であった131例が各用量投与群およびプラセボ群に無作為に割り付けられ評価を受けた。 主要エンドポイントは、予防の失敗(原因を問わない)であった。その定義は試験薬投与の中止(CMV抗原またはDNAの検出、終末器官の疾患発生、その他の理由による)とし、被験者は毎週、CMV感染についてのサーベイランスを受けた。240mg/日群で最も抑制、安全性プロファイルはプラセボ群と類似 試験薬各用量群における全要因による予防失敗率は、投与量が増すにつれて低下が認められた。プラセボ群における予防失敗率は64%であったが、レテルモビル60mg/日群では48%(p=0.32)、120mg/日群では32%(対プラセボp=0.01)、240mg/日群では29%(同p=0.007)だった。 Kaplan-Meier分析の結果、予防失敗までの期間については240mg/日群でプラセボ群との比較による有意な差が認められた(p=0.002)。 安全性プロファイルは、いずれもプラセボ群と類似しており、血液毒性や腎毒性の徴候は認められなかった。

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統合失調症患者への抗精神病薬、神経メカニズムへの影響は

 統合失調症患者の記憶を含む認知機能は、機能的転帰と強く相関している。長期増強(LTP)は、記憶のための生理学的基礎であると考えられる神経メカニズムのひとつである。抗精神病薬は、ドパミン作動性伝達を変化させることにより、このLTPや認知機能を損なう可能性がある。カナダ・トロント大学のRae Price氏らは、LTPに対する抗精神病薬とD2アンタゴニストとの関係を評価するために、系統的レビューを実施した。Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry誌オンライン版2014年5月10日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・LTPと抗精神病薬に関する大部分の研究によると、抗精神病薬の急性投与は、野生型動物のLTP障害と関連していた。・対照的に、統合失調症動物モデルでは抗精神病薬の連用および急性投与のどちらもLTP障害との関連は認められなかった。・クロザピンとオランザピンを除く定型および非定型抗精神病薬、およびその他のD2アンタゴニストでは、同様の結果であった。・クロザピンでは、強直誘発の独立した増強要因であった。また、オランザピンでは、破傷風誘発の増強を促進していた。・これらの研究は、モデル動物で実施されており、統合失調症患者に対する抗精神病薬の影響は限定的である。・慢性的に抗精神病薬による治療を受けた統合失調症患者でのさらなる研究は、これら薬剤の効果を理解するうえで重要であると考えられる。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所 双極性障害における神経回路異常が明らかに

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成人ADHDをどう見極める

 成人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、双極性障害(BD)や境界性パーソナリティ障害(BPD)との鑑別が容易ではなく、しばしば同時に罹患している場合もある。そのため、誤診や効果のない治療を施すことにつながる可能性があり、場合によっては重篤かつ有害な転帰に至ることもある。ADHDおよびBD、BPDのいずれもが健康や機能性を大幅に損なうこと、またBDとBPDは自殺傾向と関連していることが知られていることから、英国・ロンドン大学のPhilip Asherson氏らは臨床医に最新の情報を提供するために検討を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2014年5月7日号の掲載報告。 レビューは、成人のADHD vs. BDまたはBPDの重複する症状と異なる症状について、またADHDとBDまたはBPDの鑑別診断、およびADHD-BDまたはADHD-BPDそれぞれの同時罹患の診断と治療について、最新の情報を提供することが目的であった。4つのデータベース、DMS最新版(DMS-5)、その他至適な文献、および臨床医の経験を探索した。 主な結果は以下のとおり。・成人ADHDにおける、BDまたはBPDの同時罹患者は20%未満である。・BDは気分が正常な期間もあり、症状の発現は必然的なものではなくエピソード的である。・ADHD-BD患者では、ADHDの症状はBDエピソード間に明確にみられる。・BPDとADHDは、特徴的な慢性症状および機能障害を伴う。・BPDとADHDの重複する症状には、衝動や情動の制御不全を含んでいる。・ADHDではみられずBPDでみられる症状には、現実/想像上での見捨てられ不安や自殺行為、自傷、慢性的な虚しさ、ストレスに関連したパラノイア/重篤な解離症状を、死にもの狂いで回避しようとすることなどを含んでいる。・専門家コンセンサスでは、ADHD-BD患者ではBDエピソードに対する治療をまず初めに行うことが推奨されている。これらの患者には、病期における治療(たとえば気分安定薬、次いで中枢神経刺激薬/アトモキセチン)が必要のようだとしている。・なお、中枢神経刺激薬またはアトモキセチンが、ADHD-BD患者の躁状態を悪化させるかどうかのデータは乏しくかつ決定的なものがない。・BPDは、主として精神療法が行われている。・BPDに対する弁証法的行動療法は、薬物治療の補助療法として、成人ADHD患者における治療を成功に導く可能性がある。・BPDの中核症状に対する十分なエビデンスのある薬物治療は存在しない。しかし、いくつかの薬物治療は個別の症状領域(たとえばADHDとBPDが共有する衝動性に関する領域)には効果がある場合がある。・経験的には、成人ADHDの治療はパーソナリティ障害を併存する場合に検討されるべきものである。・以上のように、治療の適切なターゲッティングと患者アウトカムの改善を確実なものとするためにも、正確にADHD、BD、BPDを診断することは重要である。しかしながら、成人ADHD、および同時にBDやBPDを有する人の治療についてはデータが不足しているのが現状である。関連医療ニュース 双極性障害とADHDは密接に関連 メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる EPA/DHAはADHD様行動を改善する可能性あり

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出血性ショックに対する輸血方法が不適切と判断されたケース

救急医療最終判決判例タイムズ 834号181-199頁概要大型トラックに右腰部を轢過された38歳女性。来院当初、意識は清明で血圧120/60mmHg、骨盤骨折の診断で入院となった。ところが、救急搬入されてから1時間15分後に血圧測定不能となり、大量の輸液・代用血漿を投与したが血圧を維持できず、腹腔内出血の診断で緊急手術となった。合計2,800mLの輸血を行うが効果はなく、受傷から9時間後に死亡した。詳細な経過患者情報とくに既往症のない38歳女性経過1982年9月2日13:50自転車に乗って交差点を直進中、左折しようとしていた大型トラックのバンパーと接触・転倒し、トラックの左前輪に右腰部を轢過された。14:00救急病院に到着。意識は清明で、轢かれた部分の痛みを訴えていた。血圧120/60mmHg、脈拍72/分。14:10X線室に移動し、腰部を中心としたX線撮影施行。X線室で測定した血圧は初診時と変化なし。14:25整形外科診察室前まで移動。14:35別患者のギプス巻きをしていた整形外科担当医が診察室の中でX線写真を読影。右仙腸関節・右恥骨上下枝(マルゲーヌ骨折)・左腸骨・左腸骨下枝・尾骨の骨折を確認し、直接本人を診察しないまま家族に以下の状況を説明した。骨盤が6箇所折れている膀胱か輸尿管がやられているかもしれない内臓損傷はX線では写らず検査が必要なので即時入院とする15:004階の入院病棟に到着。担当医の指示でハンモックベッドを用いた骨盤垂直牽引を行おうとしたが、ハンモックベッドの組立作業がうまくできなかった。15:15やむなく普通ベッドに寝かせバイタルサインをチェックしたところ、血圧測定不能。ただちに担当医師に連絡し、血管確保、輸液・代用血漿の急速注入を行うとともに、輸血用血液10単位を指示。15:20Hb 9.7g/dL、Ht 31%腹腔内出血による出血性ショックを疑い、外科医師の応援を要請、腹腔穿刺を行ったが出血はなく、後腹膜腔内の出血と診断した。15:35約20分間で輸液500mL、代用血漿2,000mL、昇圧剤の投与などを行ったがショック状態からの離脱できなかったので、開腹手術をすることにし、家族に説明した。15:45手術室入室。15:50輸血10単位が到着(輸血要請から35分後:この病院には輸血を常備しておらず、必要に応じて近くの輸血センターから取り寄せていた)、ただちに輸血の交差試験を行った。16:15輸血開始。16:20~18:30手術開始。単純X線写真では診断できなかった右仙腸関節一帯の粉砕骨折、下大静脈から左総腸骨静脈の分岐部に20mmの亀裂が確認された。腹腔内の大量の血腫を除去すると、腸管膜が一部裂けていたが新たな出血はなく、静脈亀裂部を縫合・結紮して手術を終了した。総出血量は3,210mL。手術中の輸血量1,800mL、輸液200mL、代用血漿1,500mLを併用するとともに、昇圧剤も使用したが、血圧上昇は得られなかった。19:00病室に戻るが、すでに瞳孔散大状態。さらに1,000mLの輸血が追加された。23:04各種治療の効果なく死亡確認。当事者の主張患者側(原告)の主張1.救急車で来院した患者をまったく診察せず1時間も放置し、診断が遅れた2.輸血の手配とその開始時間が遅れ、しかも輸血速度が遅すぎたために致命的となった3.手術中の止血措置がまずかった病院側(被告)の主張1.救急車で来院後、バイタルサインのチェック、X線撮影などをきちんと行っていて、患者を放置したなどということはない。来院当時担当医師は別患者のギプス巻きを行っていたので、それを放棄してまで(容態急変前の)患者につき沿うのは無理である。容態急変後はただちに血液の手配をしている。そして、地域の特殊性から血液はすべて予約注文制であり、院内には常備できないという事情がった(実際に輸血20単位注文したにもかかわらず、入手できたのは14単位であった)2.また輸血前には輸液1,000mLと代用血漿2,000mLの急速注入を行っているため、さらに失血した血液量と等量の急速輸血は循環血液量を過剰に増大させ、うっ血性心不全を起こしたり出血を助長したりする危険があるので、当時の判断は適切である3.手術所見では左総腸静脈の亀裂部、骨盤静脈叢および仙骨静脈叢からの湧き出すような多発性出血であり、血腫を除去すると新たな出血はみられなかったため、静脈縫合後は血腫によるタンポナーデ効果を期待するほかはなかった。このような多発性骨盤腔内出血の確実な止血方法は発見されていない裁判所の判断1.診断の遅れX線写真を読影して骨盤骨折が確認された時点で、きちんと患者を診察して直ぐに腹腔穿刺をしていれば、腹腔内出血と診断して直ぐに手術の準備ができたはずである(注:14:00救急来院、14:35X線読影、この時点で意識は清明で血圧120/60→このような状況で腹腔穿刺をするはずがない!!しかものちに行われた腹腔内穿刺では出血は確認されていない)2.血圧測定不能時の輸血速度は、30分間に2,000mLという基準があるのに、30分間に500mLしか輸血しなかったのは一般的な臨床水準を下回る医療行為である以上、早期診断義務違反、輸血速度確保義務違反によって死亡した可能性が高く、交通事故9割、医療過誤1割による死亡である(手術方法については臨床医学水準に背くものとはいえない)。原告側6,590万円の請求に対し、1,225万円の判決考察この事件は、腰部を大型トラックに轢過された骨盤骨折の患者さんが、来院直後は(腹腔内出血量が少なかったので)意識清明であったのに、次第に出血量が増えたため来院から1時間15分後にショック状態となり、さまざまな処置を講じたけれども救命できなかった、という概要です。担当医師はその場その場で適切な指示を出しているのがわかりますし、総腸骨静脈が裂けていたり、骨盤内には粉砕骨折があって完璧な止血はきわめて困難であったと思われますので、たとえどのような処置を講じていようとも救命は不可能であった可能性が高いと思います。本来であれば、交通事故の加害者に重大な責任があるというものなのに、ご遺族の不満がなぜ病院側に向いてしまったのか、非常に理解に苦しみます。「病院に行きさえすればどのような怪我でも治してくれるはずだ」、という過度の期待が背景にあるのかもしれません。そして、何よりも憤りを感じるのが、裁判官がまったく的外れの判決文を書いてしまっている点です。経過をご覧になった先生はすでにおわかりかと思いますが、もう一度この事件を時系列的に振り返ってみると、14:00救急病院に到着。意識清明、血圧120/60mmHg、脈拍72/分。14:10X線室に移動。撮影終了後の血圧は初診時と変化なし。14:25整形外科診察室前まで移動。14:35担当医師が読影し、家族に入院の説明。15:004階の入院病棟に到着(意識清明)。15:15血圧測定不能。15:20腹腔穿刺で出血は確認できず。後腹膜腔内の出血と判断。となっています。つまりこの裁判官は、意識障害のない、血圧低下のない、14:35の(=X線写真で骨盤骨折が確認された)状況からすぐさま、「骨盤骨折があるのならばただちに腹腔穿刺をするべきだ。そうすれば腹腔内出血と診断できるはずだ!」という判断を下しているのです。おそらく、法学部出身の優秀な法律家が、断片的な情報をつぎたして、医療現場の実態を知らずに空想の世界で作文をしてしまった、ということなのでしょう(この事件は控訴されていますので、このミスジャッジはぜひとも修正されなければなりません)。ただ医師側も反省すべきなのは、担当医師は患者を診察することなくX線写真だけで診断し、取り急ぎ家族へは入院の説明をしただけで病棟へ移送してしまったという点です。この時担当医師は、別患者のギプス巻きをわざわざ中断してまで、救急患者のフィルム読影と家族への説明を行ったという状況を考えれば、超多忙な外来業務中(それ以外にも数人のギプス巻き患者がいた)でやむを得なかったという見方もできます。しかし、裁判へと発展した理由の一つに「患者の診察もしないでX線だけで判断した」という家族の不満が背景にあります。そして、もしかすると、初期の段階で患者との会話、顔色や皮膚の様子、骨折部の視診などにより、ショックの前兆を捉えることができたのかもしれません(この約45分後に血圧測定不能となっている)。したがって、多忙ななかでも救急車で運ばれた重症患者はきちんと診察するという姿勢が大事だと思います。次に問題となるのが輸血速度です。このケースの来院から死亡するまでの出血や水分量を計算すると、 手術前手術中14:1014:10輸液500mL2,000mL1,000mL3,500mL代用血漿2,000mL1,500mL500mL4,000mL輸血 1,800mL1,000mL2,800mL出血量 3,210mL57mL3,267mLとなっています。この裁判で医療過誤と認定されたのは、輸血がセンターから到着してからの投与方法でした。輸血を開始したのは手術室に入室してから30分後、執刀の5分前であり、おそらく輸血の点滴ラインを全開にして急速輸血が行われていたと思います。そして、結果的には、約30分間の間に500mL(2.5パック)入りましたので、このくらいでよいだろう、十分ではないか、と多くの先生方がお考えになると思います。ところが資料にもあるように、出血性ショックに対する輸血速度としては、「血圧測定不能時=2,000mLを30分以内に急速輸血」と記載した文献があります。本件のような出血性ショックの緊急時には、血圧を維持するように50mLの注射器を用いてpumpingするケースもあると思いますが、その際にはとにかく早く輸血をするという意識が先に働くため、30分以内に2,000mL(10単位分)を輸血する、という明確な目標を設定するのは難しいのではないでしょうか。しかも緊急の開腹手術を行っている最中であり、輸血以外にもさまざまな配慮が必要ですから、あれもこれもというわけにはいかないと思います。しかし、裁判官が判決文を書く際の臨床医学水準というのは、論文や医学書に記載された内容を最優先しますので、本件のように出血性ショックで血圧測定不能例には30分に2,000mLの輸血をするという目安があるにもかかわらず、500mLの輸血しか行われていないことがわかると、「教科書通りにやっていないのでけしからん」という判断につながるのです。この点について病院側の、「輸血前には輸液500mLと代用血漿2,000mLの急速注入を行っているため、さらに失血した血液量と等量の急速輸血は循環血液量を過剰に増大させ、うっ血性心不全を起こしたり終結を助長したりする危険があるので、当時の判断は適切である」という論理展開は至極ごもっともなのですが、「あらゆる危険を考えて意図的に少な目の輸血をした」というのならなだしも、「輸血速度に配慮せず結果的に少量となった」というのでは、「大事な輸血という治療において配慮が足りないではないか」ということにつながります。この輸血速度や輸血量については、どの施設でも各担当医師によってまちまちであり、輸血後に問題が生じることさえなければ紛争には発展しません。ところがひとたび予測しない事態になると、あとから輸血に対する科学的根拠(なぜ輸血するのか、輸血量を決定した際の根拠、HbやHtなど輸血後に目標とする数値など)を求められる可能性が、かなり高くなりました。そこで輸血にあたっては、なるべく輸血ガイドラインを再確認しておくとともに、輸血という治療行為の根拠をしっかりとカルテに記載しておく必要があると思います。救急医療

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スルピリドをいま一度評価する

 スルピリドは、有害事象の頻度が低く、統合失調症の陰性症状に有効とされる比較的古い抗精神病薬である。相対的に安価でもあるスルピリドは、いくつかの新規非定型抗精神病薬と神経薬理学的プロファイルが類似する。中国・上海交通大学医学院のJijun Wang氏らは、統合失調症に対するスルピリドの有用性をプラセボと比較評価するメタ解析を行った。その結果、プラセボに対する優越性を示すエビデンスはきわめて限られており、著者は、「良好なエビデンスが得られるまでは、臨床試験ではなく実臨床のデータを参考として使用すべきであろう」と報告している。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2014年4月11月号の掲載報告。スルピリドの精神疾患に対する効果をプラセボと比較 本研究は、統合失調症および重大なその他の精神疾患に対するスルピリドの効果をプラセボと比較評価することを目的として行われた。Cochrane Schizophrenia Group Trials Register(2008年9月)、ならびに引用から特定されたすべての試験のreferenceを検索した。製薬企業や著者と連絡をとり追加情報も得た。検索は、2012年11月7日時点でアップデートし、統合失調症および統合失調症様の精神疾患を対象としたスルピリドとプラセボの無作為化比較試験(RCT)すべてを検索対象とした。主要アウトカムは、全般的状態の臨床的に有意な改善とした。文献と抄録を独自に詳細に調査して文献を入手し、再調査してそれらの質を評価した。データはIMOとJWを用いて抽出。ランダム効果リスク比(RR)を用いて二分法のデータを解析し、95%信頼区間(CI)を算出した。連続変数データが含まれている場合は、ランダム効果平均差(MD)を95%CIとともに解析した。スルピリドの優越性を示すエビデンスはきわめて限られていた スルピリドの効果をプラセボと比較した主な結果は以下のとおり。 ・2012年の検索において、新しい試験は含まれていなかった。・レビューしたところ、スルピリドとプラセボの短期比較を行った2件の試験(計113例)が含まれていた。・いずれの試験においても、主要アウトカム(全般的状態:臨床的に有意な改善)および副次アウトカム(QOL・重篤な有害事象・安全性評価)に関する報告はなかった。・精神状態に関しては、陽性症状、陰性症状とも2群間で明らかな差はみられなかった。・Manchester scaleで測定した陽性症状は分布に偏りがあったため、メタ解析には含めなかった(18例、RCT 1件、エビデンスの質:きわめて低い)。・Manchester scaleで測定した陰性症状もまた明らかな差は示されなかった(18例、RCT 1件、MD:-3.0、95%CI:-1.66~1.06、エビデンスの質:きわめて低い)。・試験を3ヵ月間継続していた者はほとんどいなかった(113例、RCT 2件、RR:1.00、95%CI:0.25~4.00)。・Current Behaviour Schedule(CBS)により、プラセボ群における1つのサブスコアで、社会的行動の有意な改善が認められた(18例、RCT 1件、MD:-2.90、95%CI:-5.60~-0.20)。・全般的アウトカム、サービスの使用、有害事象など多くの重要なアウトカムに関するデータはまったく報告されていなかった。・以上、スルピリドは効果的な抗精神病薬であるものの、無作為化比較試験によるプラセボに対する優越性を示すエビデンスはきわめて限られていた。

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53歳時の身体能力でも長生きできるかを識別可能/BMJ

 身体能力テストの結果がよい人は全死因死亡率が低いことが、地域の高齢者を対象とした試験においては一貫して示されている。英国・ロンドン大学のRachel Cooper氏らは、それより若い世代でも、同様の関連が認められるかを検討した。53歳時の身体能力を3つのテストで調べ、13年間追跡した結果、ベースライン時の身体能力が低かったり、テストを受けられなかった人では、死亡率がより高かったことを報告した。結果を踏まえて著者は、「この若い世代でも同様のテストで、健康長寿を達成できそうな人と、できそうもない人を特定できるようだ」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年4月29日号掲載の報告より。53歳時の身体能力結果と、その後13年間の死亡率との関連を分析 検討は、イングランド、スコットランド、ウェールズにて行われたコホート研究「MRC National Survey of Health and Development」の参加者を対象に行われた。53歳時に行われた3つの共通した身体能力テスト(握力、いすからの立ち上がり動作速度、立位バランス時間)の各スコアおよび複合スコアと、全死因死亡との関連を調べることが目的だった。また、それらのテストを受けられなかった人の死亡率との関連が認められるかについても調べた。 主要評価項目は、53歳時(1999年)~66歳時(2012年)の間の全死因死亡とした。複合スコア最低位群の全死因死亡率は、最高位群の3.68倍 被験者は、53歳時の身体能力データがあり、国民保健サービス(NHS)の死亡通知登録にリンクしていた男性1,355例、女性1,411例だった。 追跡13年間の死亡は、177例(がん死亡88例、心血管疾患死亡47例、その他42例)、5.1例/1,000人年だった。 分析の結果、53歳時に3テストを受けられなかった人およびスコアが五分位範囲の最低位群だった人は、同最高位群の人と比べて死亡率が高いことが示された。たとえば、複合スコアでみた場合、最低位群の人の全死因死亡率は最高位群の3.68倍(95%信頼区間[CI]:2.03~6.68)だった。さらに、3テストをいずれも受けられなかった人は、すべてを受けた人と比べて同8.40倍(同:4.35~16.23)だった。 一連の異なるテストの組み合わせモデルを尤度比検定により比較した結果、全3つのテストを行うことがモデル適合を改善し、予測能を最も高めること(Harrell's C統計値:0.71、95%CI:0.65~0.77)が判明した。 また、3テストの中では、立位バランス時間が、その他2つの測定値よりもより強く死亡率と関連するというエビデンスが見つかった。

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小児結核、遺伝子診断で鑑別精度改善へ/NEJM

 英国・サセックス大学のSuzanne T. Anderson氏ら共同研究グループ(ILULU Consortium and KIDS TB Study Group)は、アフリカにおける小児結核の診断について、他疾患との鑑別に有用なデータが得られたことを報告した。小児結核については、微生物学的診断の困難さから真の世界的負荷はどれぐらいなのか明らかとなっていない。また過小診断により重篤になってからや死亡後に結核であったと確認されることも少なくなく、診断の改善が求められている。研究グループは、宿主血液の転写シグネチャーを用いることで、HIV感染の有無を問わずアフリカの小児における結核と他の疾患との鑑別が可能であるという仮説を立て検証試験を行った。NEJM誌2014年5月1日号掲載の報告より。診断シグネチャーを、宿主血液のRNA発現ゲノムワイド解析により特定 研究グループは、2008年2月~2011年1月にかけて、結核の疑いありとして評価を受けた南アフリカの小児655例、マラウイの小児701例、ケニアの小児1,599例について前向きコホート研究を行った。 被験児を診断結果に基づき、培養で確認された結核群、培養陰性の結核群、結核以外の疾患群、潜在性結核感染群に分類。結核とその他の疾患および潜在性結核感染とを鑑別した診断シグネチャーを、宿主血液のRNA発現ゲノムワイド解析により特定を行った。他疾患との鑑別感度82.9%、特異度83.6% 結果、南アフリカとマラウイの患児において、結核と他の疾患とを鑑別した51の転写シグネチャーを特定した(開発コホート)。 同データに基づくリスクスコアを、ケニアの患児(検証コホート)に当てはめて分析した結果、培養で確認された結核の診断に対して、感度は82.9%(95%信頼区間[CI]:68.6~94.3%)、特異度は83.6%(同:74.6~92.7%)を示した。 Mycobacterium tuberculosis培養陰性だったが結核治療を受けた患児(結核の可能性が非常に高い/可能性が高い/可能性がある患児)では、感度(実際の結核有病率との推定比較で算出)は、それぞれ62.5~82.3%、42.1~80.8%、35.3~79.6%だった。 対照的に、M. tuberculosisのDNA分子を検出するXpert MTB/RIF検査の感度は、培養で確認された結核群では54.3%(95%CI:37.1~68.6%)だった。また、培養陰性だったが結核治療を受けた患児のサブグループ群ではそれぞれ25.0~35.7%、5.3~13.3%、0%だった。同検査の特異度は100%だった。 これらの結果から著者は、「RNA発現シグネチャーから、アフリカの小児においてHIV感染の有無を問わず、結核と他の疾患との鑑別に有用なデータが得られた」と結論している。

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CliPS -Clinical Presentation Stadium- @TOKYO2013

第1回「突然の片麻痺、構音障害」第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」第3回「診断の目利きになる」第4回「Good Morning, NY!」第5回「不明熱」第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」第7回「Shock」第8回「外見の医療」第9回「What a good case!」第10回「首を動かすと電気が走る」第11回「木を診て森も診る」第12回「なぜキズを縫うのか」第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」第15回「患者満足度」第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」第18回「原因不明を繰り返す発熱」第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」第20回「眼科での恐怖の糖尿病」第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」第22回「失神恐るるに足らず?」第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」【特典映像】魅せる!伝える!プレゼンの極意 『CliPS(Clinical Presentation Stadium)』は、限られた時間の中で、プレゼンター自身が経験した「とっておきの患者エピソード」や聞いた人が「きっと誰かに話したくなる」興味深い症例を「症例の面白さ(学び)」と「語りの妙(プレゼンスキル)」で魅せるプレゼンテーションの競演です。プレゼンターは、ケアネットでお馴染みの達人講師から若手医師・研修医まで。散りばめられたクリニカルパール。ツイストの効いたストーリー。ユーモアとウィットに富んだプレゼンの数々は、年齢、診療科にかかわりなく、医療者のハートをつかむことでしょう。あなたも『CliPS』の世界を楽しみ、学んで下さい!第1回「突然の片麻痺、構音障害」このタイトル『突然の片麻痺、構音障害』のような患者さんをみたとき、どのようなことを思い浮かべるでしょうか? おそらく診断は脳梗塞で良いだろうと。そして、治療計画、リハビリ、再発予防、介護状況など様々な側面にまで考えは及ぶでしょう。そういった様々な脳梗塞のマネージメントのうち、一番最初の診断のところでしていただきたい「あること」についてお話しします。患者さんの血液を採った時、一滴だけあることに使っていただきたいのです。第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」近年、認知機能障害の患者さんに出会う機会は増えています。そして、その際にはしばしば「病歴のとりづらさ」や「診察への抵抗」に苦慮します。今回登場された伊藤先生も、正直言って、それらの患者さんには煩わしさや苦手意識を感じていたそうです。今回ご紹介する患者さんに出会うまでは・・・。治らないと思っていた病気が治るって素晴らしい!そんな症例です。第3回「診断の目利きになる」山中先生が日々の診断で気をつけていることはなんでしょうか?「はじめの1分間が何より大切」、「患者さんと眼の高さを合わせる」、「患者さんは本当のことを言ってくれない」、「キーワードから読み解く」、「診断の80%は問診による」、「典型的な症状をパッケージにして問う」など。診断の達人である山中先生の『攻める問診』メソッドの原点がここに表されています。患者さんの心をつかみ、効果的な病歴聴取や診察を行うためのさまざまなTIPSをご紹介いただきます。山中先生の話芸の素晴らしさにグイと引き込まれること必至です。第4回「Good Morning, NY!」岡田先生が、研修時代を過ごされたニューヨークでのお話。異国の病院で生き残るために、「日本人らしさ」と一貫した態度で信頼を勝ち得たそうです。2年目に出会った原因不明で発熱が続き、意識不明の患者さんとの感動的なエピソードを語っていただきます。第5回「不明熱」 不明熱をテーマに、膠原病科の岸本先生が、2ヶ月間も熱が下がらず、10kgの体重減、消化管に潰瘍、動脈瘤のある、36歳男性の症例をご紹介いただきます。学習的視点も踏まえた岸本先生の分かりやすいプレゼンテ-ションも必見です。第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」 呼吸困難をテーマに2つの症例を紹介いただきます。呼吸困難で典型的な疾患が心不全と肺炎。鑑別のキーポイントは、検査所見で十分でしょうか。一見ありふれた症例も、SOAPの順序を誤ると、、、非常に重要なメッセージが導き出されます。第7回「Shock」とびきり印象的なショックの症例を紹介します。イタリアンレストランに勤務されている61歳の男性。主訴は「気分が悪い」。ショック状態ですが、熱はなく、サチュレーションも正常。不思議なことに、毎年1回、同様の症状がでると。さて、この患者さんは?第8回「外見の医療」形成外科医の立場から人の「外見」という機能を語ります。顔の機能のうち「外見」という機能は、生命に直接関係ないものの、社会生活を営む上で需要な役割を果たしています。近い未来、「顔」の移植ということもあり得るのでしょうか?第9回「What a good case!」症例は29歳の女性。発熱と前胸部痛を主訴に見つかった肺多発結節影の症例。診断は?そして、採用された治療選択は?岡田先生の分かりやすいトークと意外性と重要な教訓に満ちたプレゼンテーションをお楽しみください。第10回「首を動かすと電気が走る」山中先生のかつて失敗して「痛い目」にあった症例です。60歳の男性で、主訴は「首を動かすと電気が走る」とのこと。しかし、発熱、耳が聞こえない、心雑音など異常箇所が増えていきます。せひ心に留めていただきたい教訓的なプレゼンテーションです。第11回「木を診て森も診る」46歳男性の糖尿病患者さん。 HbA1C が,この半年間で10.5%まで悪化。教育入院やインスリン導入を勧めるも、「それは出来ない」と強い拒絶。この背景にはいくつかの社会的・心理学的な要因があったのです。家庭医視点のプレゼンテーションです。第12回「なぜキズを縫うのか」なぜ傷を縫うのでしょうか? 額の傷を昨日縫合されたばかりの患者さんが紹介されてきたとき、菅原先生はすぐに抜糸をしてしまいました。なぜ?傷の治るメカニズムや、縫合のメリット/デメリットなどを形成外科のプロがわかりやすく解説します。第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」慢性的な下部腹痛の症例。半年前から明け方に臍周囲から下腹部の張るような痛みで覚醒するも、排便で症状は改善。内視鏡検査では大腸メラノーシスと痔を指摘されたのみで、身体所見も血液検査も異常なし。過敏性腸症候群?実際は・・・?第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」高齢者の血圧の「日内変動」からいろいろなものが見えてくる。ある1ポイントの血圧だけでなく、幅広い視点からの血圧管理が必要。明日の高血圧治療にすぐに役立つプレゼンテーション!第15回「患者満足度」患者満足度にもっとも影響を与える因子は「医師」。その「医師」は患者満足度を上げるには、何をすればいいのでしょうか。岸本先生が研修医時代に学んだ心構えとは?第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」ガイドラインはどのくらい大切なのでしょうか。プラセボ効果の歴史を振り返りつつ、ガイドラインの背景にあるものに注目。第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」EBMだけでは対応できない稀なケースには、XBM(経験に基づく医療)で治療に臨まなければなりません。さて、今回の症例では?第18回「原因不明を繰り返す発熱」総合診療科の外来では「不明熱」の患者さんが多く訪れます。今回の「不明熱」に対して、記者出身の医師がしつこく問診を繰り返した結果、浮かび上がってきた答えは・・・。第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」ボツリヌス療法と、経皮的電気刺激(TENS)とを併用して治療を行った症例についての報告です。さて、まったく動かすことのできなくなった患者さんの上肢には、どの程度の改善が見られたのでしょうか。第20回「眼科での恐怖の糖尿病」眼科医の視点から糖尿病を考えてみます。日本人の失明原因の第2位(1位の緑内障と僅差)が糖尿病網膜症となっています。内科医と眼科医の連携はまだまだ十分ではないと言えそうです。第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」症例は70代男性の胸痛。1~2週間チクチクした鋭い痛みが一日中持続、緊急性は低そうです。検査をしても特徴的な所見に乏しく決め手に欠けました。さて、どんな疾患なのでしょう?実は大きなヒントがこの一見奇妙なタイトルに凝縮されているのです。第22回「失神恐るるに足らず?」患者が突然、目の前で意識を失って倒れたとします。まず一番最初に行うべきことは?「失神」は原因疾患によって予後が異なるため早期の正しい見極めが重要です。76歳女性の症例を題材に、日常臨床で遭遇する「失神」への対応を解説していただきます。第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」症例は82歳男性。背部痛を主訴に救急外来に搬送。しかしバイタルや検査では異常はなく痛み止めのみ処方。その一週間後に再び搬送された患者さんは激しい痛みを訴えているが、やはりバイタルは安定。ところが…。研修医時代の苦い経験を語ります。第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」症例は59歳男性。悪性関節リウマチ、Caplan症候群という既往を持ち、強く免疫抑制をかけられている患者。発熱やだるさを主訴に歩いて外来受診。5日後、胸部CTで浸潤影があり入院。しかし肺炎を疑う呼吸器症状がありません。次に打つべき手とは?第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」症例は22歳の女性。回転性めまいの後2分程度の初発痙攣があり救急搬送。診察・検査の結果、特記すべき所見はほぼ見あたらず、LAC5.1とやや上昇を認めるのみ。原因不明のまま「重篤な疾患はルールアウトされた」と判断。ところが全くの誤りでした。

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