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Vol. 3 No. 3 大動脈弁狭窄症患者の特徴

有田 武史 氏九州大学病院ハートセンター内科はじめに大動脈弁狭窄症(AS)患者が増えている。大動脈弁狭窄はリウマチ性のものと加齢変性によるものの2つの原因によるものがほとんどである。リウマチ性弁膜症の新規発症症例は激減しており、大部分は加齢変性によるものである。加えて近年の診断技術の評価、ならびに診断基準の変化(進化)が新規ASの診断数を増やしている。本稿では近年の日本におけるAS患者の特徴につき概説を行う。AS患者の背景ASは加齢とともに増加し、平均年齢は明らかに他の弁膜症よりも高齢である。75歳以上の患者9,723人をメタ解析した報告によれば、75歳以上の3.4%に重症ASが認められた1)。また解析数は少ないが、日本からの報告では、重症ASの平均年齢は78.4歳であり、85 歳以上が10%に認められた2)。大動脈弁閉鎖不全や僧房弁閉鎖不全は弁尖の逸脱や弁尖変性などが原因のほとんどであるのに対して、加齢変性によるASは弁の基部から石灰化を中心とした弁変性が進行し弁全体の硬化につながるのが特徴的である。弁交連部が癒合しあたかも二尖弁のように見えることもあるが、基本的には先天性二尖弁のrapheと異なり交連癒合そのものはそれほど強くない。弁の硬化のメカニズムについては、従来より骨代謝の観点、動脈硬化の観点、炎症の観点などから研究されてきた。確かに大動脈弁の大動脈側は血管内皮に被覆されており、高齢者に多く認められる病態であることから、大動脈弁狭窄は動脈硬化または血行動態的に負荷を受け続けた“なれの果て”のようにいわれることもある。しかしながら近年の報告では、大動脈弁硬化症から狭窄症への進展には石灰化と骨化のメカニズムが深く関与しており、能動的な炎症のプロセスが関与していることがわかってきている3)。骨粗鬆症、大動脈弁狭窄、動脈硬化は、脂肪沈着をはじめ多くの共通のプロセスをもつ(本誌p.9図1を参照)4)。しかしながら、動脈硬化を進展抑制または退行させることが証明されているスタチン製剤やアンギオテンシン阻害薬は、大動脈弁狭窄の進行を抑制することはできなかったことがいくつかの研究より明らかになっている。同様に、骨粗鬆症の薬もASの進行を抑制するまでには至らなかった。近年、骨化のメカニズムに炎症が関与しているとの研究が多くなされ、抗炎症薬(例えば低用量メトトレキサート)のASの進行抑制に対する効果を検証する研究も行われている5)。透析患者においてASは高率に認められる。透析患者においては副甲状腺機能亢進症を続発的に認めることが多く、カルシウムおよびリンの代謝の変調が弁硬化/弁狭窄をもたらすことは容易に理解できる。しかしながら、続発性副甲状腺機能亢進症の治療薬で透析患者におけるASの進展を抑制したというエビデンスはない。このように硬化性ASの病態は炎症・動脈硬化・石灰化・骨化のメカニズムが複合的に関与している。単純に“動脈硬化のなれの果て”ではないことをよく理解し、診療にあたることが肝要である。心エコーによる診断ASの診断は、いまではもっぱらドプラーエコーを用いた連続の式により弁口面積ならびに弁前後の圧較差を求めることで診断する。面積では弁口面積1.0cm2以下または体表面積補正弁口面積0.6cm/m2以下を重症とし、圧較差では平均圧較差で40mmHg以上を重症とする。重症度という意味ではこの二変数のみで評価することは可能であるが、弁の形態・機能、左室の形態・機能という観点からはいくらかの多様性がある。1. 弁硬化のパターン通常、硬化性ASの大動脈弁の病変は交連部ではなく弁尖の基部または底部から始まる。NCCには冠動脈開口部がなく、そのためNCCにはよりずり応力がかかることから石灰化が進みやすいとされる4)。一般的にはリウマチ性ASでは交連部癒着が高度であり、硬化性ASでは交連部は変性がみられるのみで癒合に乏しい(本誌p.10図2を参照)6)。後天性二尖弁と俗に呼ばれる交連部が癒着した三尖大動脈弁狭窄も散見されるが、rapheの高さによって先天性二尖弁とは区別される(先天性は弁尖縁の高さよりもrapheが低い)7)。後天性二尖弁の原因は以前はリウマチ性が多いとされてきたが、硬化性ASにおいても可動性がほとんどないために癒合しているように見えるものもあり注意が必要である。2. 左室の形態・機能大動脈弁位で圧較差があるため、左室にとっての後負荷は甚大なものとなり、通常左室は求心性左室肥大を呈することが多い。しかしながらMRIを用いたDweckらの報告によれば、ASを有する左室では左室肥大を呈さないまま左室内腔の狭小化した、いわゆる求心性リモデリングした左室もしばしば認められる。Dweckらによれば、左室肥大の程度は大動脈弁弁口面積とは関係なく、求心性肥大のほかにも正常形態(12%)、求心性リモデリング(12%)、非代償化(11%)などが認められたという(本誌p.11図3を参照)8)。重症ASでなぜ左室肥大が起こらないのか、機序についてはまだ確立したものはないが、左室重量は大動脈弁狭窄の重症度とは関係がなく、むしろ性別や高血圧の程度、その他の弁機能異常などと関係が強く、また症状との関係が強いことが他の研究でも示唆されている。正常の重症ASに関しては、左室重量が治療法選択の面でも注意が必要である。low gradient ASはASなのか?Doppler法による弁口面積測定が一般的になるにつれ面積としては十分に狭いが圧較差がそれほどでもないという症例をしばしば経験するようになった。近年では重症AS(AVAi<0.6cm2/m2)をflowとpressure gradientの2変数によって4群に分けることで層別化を図ろうとする考えがある。Lance-llottiらは、無症候性重症ASを4群に分けてフォローし、low flow, low gradient ASが最も予後が悪く、次にいずれかのhigh gradient ASがつづき、normal flow, low gradient ASは比較的予後がよいという報告を行った(本誌p.12 図4を参照)9)。Flowはvelocity x areaであり、gradientとvelocityは二乗比例の関係にある。よってflowとgradientが乖離するような症例はareaが小さい、すなわち左室流出路が小さい症例ということになる。おそらくはそのような症例はS字状中隔の症例が多く、体格が小さく、弁輪部の石灰化も高度で測定の誤差もあるのかもしれないが、現象論としてnormal flow, low gradientのASは全例が予後不良ではないかもしれない、という認識をもつことが重要である。超高齢者のASの問題点:Frailtyの評価と老年医学的評価の重要性近年、TAVIを治療法の1つとして日常的に検討するようになり、超高齢者(85歳以上)を診察治療することが多くなってきた。上述のように弁口面積や左室機能形態を評価することはもちろん重要であるが高齢者はさまざまな身体的問題を抱えているのが普通である。認知機能障害、ふらつき、運動機能障害、栄養障害など、それらを総称して老年症候群と呼ぶが、老年症候群の1つとしてfrailty(虚弱、フレイル)が年齢とは独立した予後規定因子として近年広く認識されるようになった。Frailtyの特徴は(1)力が弱くなること、(2)倦怠感や日常動作がおっくうになること、(3)活動性が低下すること、(4)歩くのが遅くなること、(5)体重が減少すること、の5つに集約され、このうち3つ以上該当すればfrailtyありと考える10)。日本の介護保険制度との関連で考えると、frailtyありの状態(“フレイルの状態”)は要介護の前段階であり、この兆候を早期に診断し、介入することは極めて重要であると思われる。残念ながら、多くの病院勤務循環器内科医は専門医に過ぎず、治療適応外と判断された多くの高齢者に対して、人生の終わりまで寄り添うような診療はできていないのが実情であると思われる。または、外科手術の適応と判断したときから心臓外科にすべてを委ねてはいなかったか。今後TAVIが日常的な医療行為になるにつれ、循環器病棟は高齢者で溢れてくることが容易に予想される。平均寿命を優に超えてしまった患者に対して行う医療は、何を目的とすべきだろうか。予後の改善であろうか、QOLの改善であろうか。大動脈弁狭窄を解除することだけが治療の目的でないことは明白である。TAVIを施行するにあたっては、弁の状態、心血管機能の評価、他臓器の評価、老年医学的全身評価の4段階にわたる評価が重要である。そのうえで、TAVIの目的をどこに置くかということに関しては個々の症例により判断が異なるため、多職種から構成されるハートチームでの議論が必要不可欠である。文献1)Osnabrugge RL et al. Aortic stenosis in the elderly: disease prevalence and number of candidates for transcatheter aortic valve replacement: a meta-analysis and modeling study. J Am Coll Cardiol 2013; 62: 1002-1012.2)Ohno M et al. Current state of symptomatic aortic valve stenosis in the Japanese elderly. Circ J 2011; 75: 2474-2481.3)Lindman BR et al. Current management of calcific aortic stenosis. Circ Res 2013; 113: 223-237.4)Dweck MR et al. Calcific aortic stenosis: a disease of the valve and the myocardium. J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1854-1863.5)Everett BM et al. Rationale and design of the Cardiovascular Inflammation Reduction Trial: a test of the inflammatory hypothesis of atherothrombosis. Am Heart J 2013; 166: 199-207 e15.6)Baumgartner H et al. Echocardiographic assessment of valve stenosis: EAE/ASE recommendations for clinical practice. J Am Soc Echocardiogr 2009; 22: 1-23; quiz 101-102.7)Cardella JF et al. Association of the acquired bicuspid aortic valve with rheumatic disease of atrioventricular valves. Am J Cardiol 1989; 63: 876-877.8)Dweck MR et al. Left ventricular remodeling and hypertrophy in patients with aortic stenosis: insights from cardiovascular magnetic resonance. J Cardiovasc Magn Reson 2012; 14: 50.9)Lancellotti P et al. Clinical outcome in asymptomatic severe aortic stenosis: insights from the new proposed aortic stenosis grading classification. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 235-243.10)Fried LP et al. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56: M146-156.

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ステント留置後DAPTの至適期間は?/Lancet

 薬剤溶出ステント留置後1年超の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、心筋梗塞およびステント塞栓症のリスクは低いが、死亡リスクは増大することが明らかにされた。同群の死亡増大は、心臓死の減少分よりも非心血管死の増大分が大きかったためであった。イタリア・ボローニャ大学のTullio Palmerini氏らがネットワークメタ解析の結果、報告した。直近の試験報告でも、ステント留置後DAPTの至適期間は不明なままであった。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告より。短期vs. 長期、6ヵ月以下vs. 1年vs. 1年超について評価 研究グループは異なるDAPT戦略の死亡およびその他アウトカムを、ペアワイズおよびベイジアン・ネットワークメタ解析で調べた。2014年11月20日時点でMedline、Embase、Cochraneデータベース、国際会議録を対象に、薬剤溶出ステント留置後、異なるDAPT期間を比較している無作為化試験を検索した。試験デザイン、包含・除外基準、サンプルの特色、臨床的アウトカムを抽出し、試験ごとにDAPT期間群を短期群vs. 長期群、6ヵ月以下群vs. 1年群vs. 1年超群に分類して比較した。 分析は、頻度論的(frequentist)法とベイジアン法の両アプローチで行った。長期DAPTは死亡リスクを増大するが、一概に否定はできない 2011年12月16日~2014年11月16日に発表された10試験を特定した。無作為化を受けた患者3万1,666例が含まれていた。 頻度論的ペアワイズメタ解析の結果、短期DAPT群のほうが長期DAPT群よりも、全死因死亡が有意に低下した(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.69~0.98、p=0.02、治療必要数[NNT]=325例、試験全体で有意な不均一性なし)。 短期DAPT群の死亡抑制には、非心臓死の有意な減少が寄与していた(同:0.67、0.51~0.89、p=0.006、NNT=347例)。心臓死は同程度であった(同0.93、0.73~1.17、p=0.52)。 また、短期DAPT群は重大出血リスクを低下したが、心筋梗塞およびステント塞栓症のリスクは高かった。 同様の結果は、事前情報なしフレームワークのベイジアン分析でもみられた。 ネットワークメタ解析では、6ヵ月以下および1年DAPT群は、1年超DAPT群よりも、心筋梗塞およびステント塞栓症のリスクは高く、死亡リスクは低かった。 なお6ヵ月以下DAPT群は、1年DAPT群と比べて、死亡、心筋梗塞、ステント塞栓症の発生率は同程度であった。重大出血リスクは低かった。 これらの結果について著者は、長期DAPTを一概に否定するものではなく、「われわれは、患者個別のベネフィット-リスクに十分注意して行うことを推奨する」とまとめている。さらに、「今後の研究で、長期DAPTのベネフィットvs. リスクバランスの影響を、人口統計学的、検査ベースおよび遺伝子変異でモデル化することが求められる」と述べている。

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全国在宅医療・介護連携研修フォーラム

在宅医療と介護における多職種連携の在り方を考える『全国在宅医療・介護連携研修フォーラム』をお届けします。主催は、国立長寿医療研究センターと東京大学高齢社会総合研究機構。滋賀県、横須賀市、大阪府など成功事例を交え、課題と対策を多角的に検証する。講師番組一覧 【全9回】番組1主催者挨拶番組2来賓挨拶番組3趣旨説明番組4在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会の紹介番組5各地における在宅医療・介護連携研修の取り組み <都道府県~市町村レベルの取り組み例:大阪府>番組6各地における在宅医療・介護連携研修の取り組み<都道府県レベルの取り組み例:滋賀県>番組7各地における在宅医療・介護連携研修の取り組み<市町村レベルの取り組み例:横須賀市>番組8共催者より今後に向けて番組9閉会挨拶

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事例46 ウルソデオキシコール酸(商品名: ウルソ)錠 100mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、ウルソデオキシコール酸(ウルソ®)錠100mg 6錠をアルコール性肝硬変であって、慢性肝不全の患者に投与したところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)として100mg 3錠に査定となった。査定事由の検討のために同剤の添付文書を確認してみた。1日量600mgの摘要は、「原発性胆汁性肝硬変(PBC)又はC型慢性肝疾患における肝機能の改善」と記載されている。他には慢性肝疾患における肝機能の改善などが認められており、1日量150mgを標準に年齢、症状により増減すると設定されている。したがって、傷病名欄にPBCとC型慢性肝炎の記載がないことを理由に査定となったと考えられる。また、事例のアルコール性肝硬変は、PBCまたはC型慢性肝疾患に相当せずに添付文書上の慢性肝疾患の区分に分類される。必要とした場合に適宜の増減が定められているものの、1日量600mgの投与は通常量の4倍であり、PBCまたはC型慢性肝疾患に対する投与量と同じ量となるため過剰であると判断されたものであろう。通常量の倍量投与が認められたのは、肝不全があるためと考えられる。投与量によって適用傷病名が異なる場合は、傷病名との整合性をご確認いただきたい。

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慢性脳卒中に期待、神経幹細胞治療

 2015年3月19日、日本再生医療学会総会にて、米国・スタンフォード大学 脳神経外科 教授であるGary Steinberg氏が「Stem cell therapy for stroke(脳卒中の幹細胞治療)」と題して講演した。注目される脳卒中の神経幹細胞治療 脳卒中は世界の死因の第2位である。脳卒中は身体機能障害の主な原因であり、脳卒中による機能欠損には治療法がない。そのようななか、新たな治療法として神経幹細胞治療が注目を浴びている。神経幹細胞は多くの脳卒中の動物モデルの実験が行われ、栄養因子や成長因子、その他のタンパク質や分子を分泌し、生来からある脳の回復機能の強化により神経機能の再生に作用することが確認されている。多くの試験が行われており、ClinicalTrials.govによると現在17の幹細胞による虚血性脳卒中治療の臨床試験が進行中である。これらの試験では、種々の細胞由来の幹細胞が用いられ、さまざまな臨床ステージで行われている。投与経路も静脈、動脈、頭蓋内、クモ膜下(腔)内など多彩である。良好な結果を残した慢性脳卒中の臨床試験 Steinberg氏が紹介した臨床試験の中から、間葉系細胞由来の細胞医薬SB623の臨床試験の結果を紹介する。SB623はヒト間葉系細胞にNotch1遺伝子を導入した神経再生細胞である。脳卒中動物モデルでの神経再生作用と安全性が認められ、米国食品医薬品局(FDA)から治験を許可され、昨年試験を完了している。ちなみに、動物実験でシクロスポリンを使用せずに効果が認められたことから、臨床試験での免疫抑制薬の使用が除外されている。 このPhase I/IIa臨床試験はスタンフォード大学とピッツバーグ大学の共同で行われた。被験者は18~75歳の脳卒中患者18人。NIH脳卒中リスクスコア7以上。脳卒中発症後6ヵ月~36ヵ月経過し身体機能障害を有する。1次評価項目は安全性と神経学的機能改善効果で、投与6ヵ月から2年間評価される。投与は1回、局所麻酔下で随腔内の卒中部位の周囲に直接注入される。 有害事象の結果をみると、頭痛など軽度のものが多くを占めた。重度は硬膜下血腫、TIA(16ヵ月後)など4件。硬膜下血腫は移植の外科的手技によるもので、それ以外は細胞由来のものはみられなかった。サイトカイン(TNF-α、IL-6、IFN-γ)および細胞ドナーのHLA抗原に対する抗体レベルにも変化はみられなかった。 神経学的機能改善効果をみると、ESS(欧州脳卒中スコア)がベースラインに比べ、移植1ヵ月後で有意に改善(p=0.0024)、その後も改善は続き1年後も有意な改善を示していた(p=0.0012)。2年後の現在もその状況は続いている。その他、NIH脳卒中スコア、Fugl-Meyerスコアなどの神経機能評価指標も同様の結果を示している。 また、Steinberg氏は統計的な結果に加え、2人の有効例について患者のビデオを交え紹介した。2人とも重度な身体機能障害が2年以上続いていた症例だが、SB623投与1日目に上肢の運動がみられるなど運動機能に変化がみられる。その改善効果は1年後も持続してみられ、現在も改善は続いている。長年にわたり脳卒中に携わっている同氏も信じられないほどの驚きだったという。 治療前後の被験者の脳MRI画像をみると、1週間後に脳卒中所見ではないFLAIRシグナルが前運動野にみられる。シグナルは一過性で2ヵ月後には消失するが、この治療初期のFLAIRシグナルのサイズと神経学的改善が有意に相関することが明らかになった(p=0.016)。加えて、投与後に損傷部位の反対側の感覚運動皮質に出現するFDG PETの活性上昇が、NIH脳卒中スコアの改善と有意に相関していた(p=0.043)。「この試験の結果から、骨髄由来の間質細胞SB623による慢性脳卒中の治療は安全で実現可能な治療であろう」と同氏は述べた。脳卒中における神経幹細胞治療の今後 脳卒中における幹細胞治療はまだ初期段階であり、解決すべき多くの課題もある。しかし、将来期待できる治療法であり、今後は対照群を置いた臨床試験がより重要になるであろう。

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統合失調症へのECT、アジア諸国での実態調査

 2001~2009年のアジア人統合失調症患者に対する電気痙攣療法(ECT)の使用について、中国・澳門大学のYu-Tao Xiang氏らは調査を行った。その結果、過去10年間で中国において使用が増大していた一方、その他アジアの国および地域では低調に推移していた実態を報告した。結果について著者は、「アジアにおけるこの使用のばらつきの原因について、さらなる調査を行う必要がある」とまとめている。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2015年2月23日号の掲載報告。 アジア人統合失調症入院患者に対するECTの使用については、ほとんど明らかになっていない。研究グループは、2001~2009年間における使用の傾向と、人口統計学的および臨床的な相関があるか調べた。調査はアジアの9つの国と地域から、1ヵ月間のインタビューもしくはカルテレビューによって6,761例の統合失調症入院患者のデータを集めて行われた。患者の社会-人口統計学的および臨床的特性、処方されていた向精神薬、ECT使用について、標準化プロトコルおよびデータ収集法により記録して分析した。 主な結果は以下のとおり。・ECT使用率は、全サンプル中3.3%であった。・2001年は1.8%、2004年は3.3%、2009年は4.9%と有意に増大していた(p<0.0001)。・しかし、そうした増大傾向は、もっぱら中国におけるECT使用頻度の有意な増大(p<0.0001)と2009年時にサーベイに含まれたインドの使用頻度データの影響によるものであった。・国家間のばらつきが大きく、たとえば2001年は香港0%から中国5.9%、2004年はシンガポール0%から中国11.1%、2009年は香港0%に対し、インド13.8%、中国15.2%であった。・全サンプルの多変量ロジスティックス回帰分析の結果、ECTを受けた患者は非ECT患者と比べて、35~64歳群では少ないこと、直近の入院期間が短く陰性症状が少ないこと、第2世代抗精神病薬治療を受けている人が多い傾向が判明した(R2=0.264、p<0.001)。関連医療ニュース ECTが適応となる統合失調症患者は? 電気けいれん療法での麻酔薬使用、残された課題は? うつ病治療に対する、電気けいれん療法 vs 磁気けいれん療法  担当者へのご意見箱はこちら

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臨床開発中止で患者2万超例分のデータが未公表/BMJ

 カナダ・マギル大学のAmanda Hakala氏らは、臨床開発中止となった薬物(stalled drugs)の試験報告へのアクセシビリティについて、登録試験を系統的に評価して定量化を行った。その結果、開発に成功し承認された薬物(licensed drugs)の試験公表率は75%に対し、開発が中止となった薬物については37%で、公表について両者に大きな差があることを明らかにした。著者は、「開発が遅れている薬物試験で収集された情報の大半が、研究や臨床に生かされてない」と述べ、「臨床研究における透明性、倫理性、説明責任を促進するポリシー改善を行うべきことが実証された」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年3月9日号掲載の報告。がん、心血管疾患または神経障害領域の登録試験の公表率を定量化 検討は、clinicaltrials.gov、Google Scholar、PubMed、Embaseなどを検索して、がん、心血管疾患、神経障害領域の「承認薬」と「臨床開発中止薬」の登録試験を調べ、公表状況を評価した。評価に組み込んだ「承認薬」の試験は、2005~2009年にFDAの承認を受けた薬物の試験で、「臨床開発中止薬」の試験は、2009年までに1つ以上の第III相試験が完了し2009年12月31日以降の臨床試験実施のエビデンスがないものを適格とした。 公表の適格基準は、2006年1月1日~2008年12月31日の間に1人以上の被験者を登録し主要アウトカムを報告していた、clinicaltrials.govへ登録されていた第II、IIIまたはIV相試験とした。公表率は承認薬試験75%に対し臨床開発中止となった薬の試験は37% 承認薬の登録試験の補正前公表率は75%(72/96例)に対し、臨床開発中止薬の試験は37%(30/81例)であった。公表率は、承認薬試験のほうが2.7倍良好であった(ハザード比:2.7、95%信頼区間[CI]:1.7~4.3)。 承認薬試験では、疾患タイプ、スポンサーシップ、試験フェーズ、試験地にかかわらず公表率が高かった。 承認薬試験との比較において、臨床開発中止薬試験の未公表率は、登録が完了していなかった試験で有意に高かった。 臨床開発中止薬試験に参加していた患者、総計2万135例分のデータが未公表であることが判明した。

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ガイドライン改善には個人データに基づくメタ解析の活用を/BMJ

 臨床ガイドラインの作成に当たり、被験者個人データ(IPD)に基づくメタ解析の引用の割合は4割未満であることが明らかにされた。英国・ロンドン大学のClaire L Vale氏らが、177の診療ガイドラインについて調べた結果、報告した。IPDに基づくメタ解析は、エビデンスのゴールド・スタンダードと考えられており、臨床ガイドライン作成の鍵となるエビデンスを示している可能性も大きいとされる。結果について著者は、「IPDに基づくシステマティック・レビューとメタ解析が、活用されていないことが示された」と述べ、「ガイドライン開発者はルーティンに質のよい最新のIPDメタ解析を探索すべきである。IPDメタ解析の活用増大が、ガイドラインの改善につながり、最新の最も信頼性のあるエビデンスに基づくケアを患者にルーティンに提供することが可能となる」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年3月6日号掲載の報告より。33のIPDに基づくメタ解析と177の臨床ガイドラインを検証 Vale氏らは、コクランIPDメタ解析メソッド・グループが管理するデータベースと、その他公表されたIPDに基づくメタ解析データベースから、33のIPDに基づくメタ解析と、それに対応する177の診療ガイドラインについて調査を行った。 ガイドラインへのIPDの活用について、評価を行った。IPDメタ解析を引用したガイドラインは37%のみ 結果、177のガイドラインのうち、マッチングするIPDメタ解析を引用していたのは、66件・37%に留まった。さらにそれら引用したメタ解析について、妥当性や信頼性などについて批判的視点で評価を行っていたのは、そのうちの22件・34%のみだった。 臨床ガイドラインのうち、マッチングするIPDメタ解析を直接根拠にして作成されたものは、66件中18件(27%)だった。 IPDメタ解析を引用していないガイドラインのうち、マッチングするIPDメタ解析の発表以降に作成しているものは、111件中23件(21%)にも上った。一方で、IPDメタ解析を引用しなかった明確な理由については、不明だった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第18回

第18回:高齢者における意図しない体重減少へのアプローチ方法監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 高齢者の体重減少は、外来でよく出会う愁訴の1つです。まず真っ先に思い浮かぶのは悪性腫瘍ですが、それ以外にも考えるべき鑑別診断がいくつかあります。外来ではまず、食事摂取がどの程度できているかを、その方の社会的背景を踏まえて評価するかと思います。また、疾患を見つけた場合に治療が可能かどうかを想像しながら、検査の適応を判断しなければいけませんが、非常に個別性が高く、毎回悩ましい問題だと感じています。 以下、American Family Physician 2014年5月1日号1)より意図しない体重減少は高齢者の15~20%に起こり、ADLの低下、病院内での疾病罹患率の上昇、女性の大腿骨頚部骨折、全死亡率の上昇の原因となる。有意な体重減少とは、6~12ヵ月以内に5%以上の体重減少があった場合、などと定義されるが、このような意図しない体重減少に関する適切な評価や管理のためのガイドラインは、現在、存在していない。しかし、もし存在したとしても、このような非特異的な病態に対する適切な検査を決定するのは難しいだろう。体重は通常60歳代をピークとして、70歳代以降は毎年0.1~0.2kgずつ減少する。それ以上の減少であれば、年齢相応の体重減少とは言えない。最もよくある理由としては、悪性腫瘍、非悪性の胃腸疾患、うつや認知症といった精神疾患であるが、全体の割合としては、非悪性の疾患が悪性腫瘍を上回っている。また、6~28%は原因不明である。(表1) 【表1:意図しない高齢者の体重減少】 悪性腫瘍(19~36%) 原因不明(6~28%) 精神疾患(9~24%) 非悪性の胃腸疾患(9~19%) 内分泌(4~11%) 心肺疾患(9~10%) アルコール関連(8%) 感染症(4~8%) 神経疾患(7%) リウマチ関連(7%) 腎疾患(4%) 全身性炎症疾患(4%) 鑑別の記憶法としては、MEALS‐ON‐WHEELS[「食事宅配サービス」の意味、(注1)]あるいは高齢者の9D's(注2)として覚える。薬剤の副作用もよくある原因だが、しばしば見逃される。多剤服薬は味覚に干渉するとみられ、食思不振を生じ、体重減少の原因となりうる。さらには貧困、アルコール問題、孤立、財政的制約などといった、社会的な要素とも体重減少は関連している。Nutritional Health Checklist(表2)は栄養状態を簡単に評価するツールである。各項目に当てはまれば、質問の後ろにある得点を加算し、合計得点を算出する。0~2点は良好、3~5点は中等度のリスク、6点以上はハイリスクである。 【表2:Nutritional Health Checklist】 食事量が変わるような病状がある 2点 食事の回数が1日2回より少ない 3点 果物、野菜、乳製品の摂取が少ない 2点 ほとんど毎日3杯以上のビール、蒸留酒、ワインを飲んでいる 2点 食べるのが困難になるほどの歯や口腔の問題がある 2点 いつも必要なだけの食料を購入するお金がない 4点 ひとりで食事をする事が多い 1点 1日3種類以上の処方か市販薬を服用している 1点 過去6ヵ月で4.5kg以上の予期しない体重減少がある 2点 いつも買い物や料理、自力での食事摂取を身体的に行えない 2点 推奨される一般的な検査としては、CBC、肝・腎機能、電解質、甲状腺機能、CRP、血沈、血糖、LDH、脂質、蛋白・アルブミン、尿酸、尿検査がある。また、胸部レントゲン、便潜血検査は行うべきであり、腹部超音波も考慮されても良いかもしれない。これらの結果が正常だとしても、3~6ヵ月間の注意深い経過観察が必要である。治療には食事、栄養補助、薬物療法などがあるが、研究結果がさまざまであったり、副作用の問題があったりして、体重減少がある高齢者の死亡率を改善するような明確なエビデンスのある治療法は存在しない。(注1:MEALS‐ON‐WHEELS)M:Medication effects(薬剤性)E:Emotional problems, especially depression(気分障害、とくにうつ)A:Anorexia nervosa; Alcoholism(神経性食思不振症、アルコール依存症)L:Late-life paranoia(遅発性パラノイア)S:Swallowing disorders(嚥下の問題)O:Oral factors, such as poorly fitting dentures and caries(口腔内の要因、たとえば合っていない義歯、う歯など)N:No money(金銭的問題)W:Wandering and other dementia-related behaviors(徘徊、その他認知症関連行動)H:Hyperthyroidism, Hypothyroidism, Hyperparathyroidism, andHypoadrenalism(甲状腺機能亢進および低下、副甲状腺機能亢進、副腎機能低下)E:Enteric problems; Eating problems, such as inability to feed oneself(腸管の問題;摂食の問題、たとえば手助けなしに一人では食べられないなど)L:Low-salt and Low-cholesterol diet(低塩分、低コレステロール食)S:Stones; Social problems, Such as isolation and inability to obtain preferred foods(結石;社会的問題、たとえば孤独、好きな食べ物を手に入れられないなど)(注2:高齢者の9D's)Dementia(認知機能障害)Dentition(歯科領域の問題)Depression(抑うつ)Diarrhea(下痢)Disease [acute and chronic](急性・慢性疾患)Drugs(薬剤)Dysfunction [functional disability](機能障害)Dysgeusia(味覚異常)Dysphagia(嚥下困難)※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Gaddey HL, et al. Am Fam Physician. 2014; 89: 718-722.

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事例45 レボフロキサシン(商品名: クラビット)点眼液の査定【斬らレセプト】

解説事例では、レボフロキサシン(クラビット®)点眼液を外用投与したところA事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。「全身アトピー性皮膚炎であり、同皮膚炎による眼瞼部の炎症に対して処方したが、なぜ査定となったのか」と問い合わせがあった。同点眼液の添付文書を見てみる。適応症に、「眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、眼科周術期の無菌化療法」とある。薬効は広範囲抗菌点眼薬に分類される。感染が明らかか、著しく疑われる傷病名の記載が必要な薬剤である。全身アトピー性皮膚炎の病名では、炎症はあるが感染を来しているかの判断はできない。また、保険診療では予防投与はできない。したがって、適応外使用もしくは不適当使用と判断されて査定となったものであろう。このことを説明し、必要を認めて投与した場合には、全身アトピー性皮膚炎の他に感染性眼瞼炎などの感染が読みとれる傷病名もしくはコメントを付与していただくようにお願いした。

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事例44 ECG(心電図検査)負荷12誘導の査定【斬らレセプト】

解説事例では「D209 負荷心電図検査1ECG負荷12誘導」がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)を理由に、「D208 心電図検査1 ECG12誘導」に減額査定となった。レセプトを見ると傷病名は「高血圧症」と「動脈硬化症」のみであり、コメントも見当たらない。負荷心電図は、身体に何らかの負荷をかけて心電図の異常の有無を検査する方法である。負荷とは、「運動負荷、薬剤負荷」をいい、負荷の種類および回数によらない。ただし、トレッドミルによる負荷心肺機能検査に対しては、D211に独立した項目が設定されている。したがって、レセプトに表示された病名だけでは、負荷をかけてまで検査を行う必要性についての判断がつかないことを理由に査定となったものであろう。本事例では、心電図に異常があると判断ができる病名もしくは強く疑ったコメントが必要であった。負荷心電図の算定にあたっては、同日に実施された心電図は一連として扱われて、別途に算定できないことにも留意されたい。

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