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事例38 特定疾患療養管理料(退院後1月以内)の査定【斬らレセプト】

解説腰痛と慢性胃炎が主病の患者に対して、B000 特定疾患療養管理料を算定したところ、C事由(医学的理由により不適当、重複〔国民健康保険連合会〕)で査定となった。初診日、再診日と診療内容からみて算定は妥当と思われた。カルテを確認したところ「○○病院、肺炎のため入院 12/3 ENT(退院証明書を拝見)」の記載があった。同管理料は、退院の日から1月以内に行った管理の費用は入院基本料に含まれるものとするとされている。したがって、他院の退院であっても退院後1月以内は同管理料の算定はできない。医療機関から問われないといわない患者も多い。しばらく来院のない患者には、入院の有無をかならず確認すべきであろう。この査定の件数が著しく増えている。その理由として審査機関のコンピュータチェックでは、レセプト請求後、すぐに他院レセプトも併せて電子的に突合が行われていることが考えられる。今回のように、診療録内に記載されていることを見逃さないようにするには、退院後1月以内の患者であることがわかるように、しおりを診療録に挟むなどの視覚に訴える工夫が有効である。電子カルテの場合は、退院日が登録できる機能を有効に活用して、画面上で警告もしくは算定制限がかかるようにするとよいであろう。※ なお2016年4月の診療報酬改定で本特定疾患療養管理料は、「退院日から」が「当該保険医療機関から退院した日から」に要件が変更され、該当する場合は算定可能となりますのでご注意ください。

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アリピプラゾール持効性注射薬の安全性は

 米国・大塚製薬のArash Raoufinia氏らは、統合失調症患者に対するアリピプラゾール月1回投与(アリピプラゾール持効性注射薬400mg:AOM400)の導入について、薬物動態学的(PK)データ、PKシミュレーションおよび臨床試験を概説し発表した。すべてのデータ所見は、統合失調症患者へのAOM導入時の投与量は400mgとすることを支持するものであり、すでに経口アリピプラゾールを服用し症状が安定している患者への導入の有効性、安全性、忍容性が確認されていることなどを報告した。Current Medical Research & Opinion誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。 概説は、薬物動態学的(PK)試験データ、PKシミュレーションデータ、対照臨床試験および自然主義的研究のデータを対象としたものであった。 主な結果は以下の通り。・PKデータは、AOMの開始および維持用量について400mgを支持するものであった。・AOM400開始後のアリピプラゾールの血中濃度プロファイルは、経口アリピプラゾール10~30mg/日投与と一致していた。・PKシミュレーションおよび単剤投与臨床試験は、AOM400導入後7日間でアリピプラゾールの血中濃度が治療域に達することを示した。・患者間にばらつきがあったが、経口アリピプラゾールまたはその他抗精神病薬を服用時は、確実に治療域に達するのに必要と思われた重複期間は14日間であった。・臨床試験において、AOM400導入患者が経口アリピプラゾール(10~15mg/日で安定)を併用している場合、またはその他の抗精神病薬の継続服用が14日以内の場合は、4週間後に(平均血中濃度93~112ng/mL)、規定されているアリピプラゾールの治療濃度域(94.0~534.0ng/mL)に達した。・同じく臨床試験において、AOMの開始用量は400mgが有効であり忍容性が良好であった。・期間やデザインが異なる試験を包含して分析した結果、1,296/1,439例(90.1%)の患者がAOM400で開始し、用量の変更を必要としていなかった。・また同分析で、効果が認められず試験を中断したAOM400治療患者の割合は低かった(範囲:2.3~10.0%)。・自然主義的研究の事後解析では、AOM400開始前にその他経口抗精神病薬から経口アリピプラゾールに切り替える(cross-titration)場合、1週間超~4週間の期間が、1週間以内よりも忍容性が良好であった。このことは、切り替え期間中の有害事象発生による中断率の割合が低い(2.7%[7/239例] vs. 10.4%[5/48例])というエビデンスで支持されるものであった。・主要な維持療法試験におけるAOM400開始月の有効性および安全性は、経口アリピプラゾール10または30mg服用の患者集団と類似したものであった。・以上のように、PKデータ、PKシミュレーション、臨床試験からの所見はすべて、統合失調症患者への適切なAOM導入用量は400mgであることを示していた。・AOM導入前に経口アリピプラゾールに切り替える際、経口アリピプラゾール用量を漸増(目標用量10~30mg/日)する一方でそれまでの経口抗精神病薬を漸減するにあたっては、期間を1週間超~4週間とするのが有効な戦略と思われた。・AOM400の有効性、安全性、忍容性は、患者がすでに経口アリピプラゾール10または30mg/日服用もしくはその他の抗精神病治療で安定していたか否かにかかわらず、また同一の経口抗精神病薬をAOM400導入後14日間継続していた場合でも、類似したものであった。関連医療ニュース アリピプラゾール注射剤、維持療法の効果は アリピプラゾール経口剤⇒注射剤への切り替え、その安全性は 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

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NSAIDsは大腸がんを予防しうるか

 以前より、NSAIDsの使用が大腸がんのリスクを低減するという実質的なエビデンスがあるが、どのようなサブグループで化学的予防効果が副作用のリスクを上回るかについては特定されていない。米国・Fred Hutchinson Cancer Research CenterのXiaoliang Wang氏らは、VITAL試験のコホートを対象に、大腸がんのあらゆるリスク因子とNSAIDs使用との関連性を調べた。その結果、NSAIDsの高頻度・長期投与と大腸がんリスクとの関連性について、サブグループ間の有意差は認められなかったとしたうえで、「NSAIDsは他の因子に大きく影響されることなく、大腸がん予防において全体的に有益な役割を持つ」と結論付けた。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2015年1月22日号掲載の報告。 2000年から2002年の間に、計7万3,458例(50~76歳)がすべてのアンケートに回答した。そのうち674例が2010年までの間に大腸がんを発症した。主な結果は以下の通り。・層別解析において、いずれの種類のNSAIDsであっても高頻度・長期投与(週4日以上を4年以上)は、性別、BMI、身体活動レベル、喫煙、飲酒、スクリーニングや食事に関する因子で層別化したすべてのサブグループにおいて、統計的に有意な大腸がんリスクの減少に関与していた。・より強い関連性を示した群は、男性、肥満、大量飲酒者であった。しかしながら、これら3群ともその交互作用はその他の群との比較において統計学的な有意差に至らなかった。・この関連性は、大腸がんリスクの高スコア群(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.49~0.79)と低スコア群(ハザード比:0.61、95%信頼区間:0.42~0.88)において、ほぼ同じであった。・さらに、がんの部位や病期によって影響が異なるかを検討した。その結果、NSAIDsの使用は近位部vs遠位部の大腸がん(群間差のp=0.06)、もしくは遠隔転移病期vs局所病期(同p=0.04)のいずれにおいても大幅なリスク低減に関連していた。

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早期乳がん、診断率や生存率は人種間で異なる/JAMA

 米国で浸潤性乳がんと診断された女性のうち、早期乳がんの診断率やStage I診断後の生存率は、人種や民族の違いによって多彩であり、これは腫瘍の生物学的悪性度の違いで説明できる可能性があることが、カナダ・Women’s College HospitalのJavaid Iqbal氏らの検討で示された。乳がん管理プログラムの目標は、Stage I乳がんの割合を相対的に多くすることで、がん死亡率を減少させることとされる。そのためには、Stage I診断の関連因子やStage Iの検出率がよくない集団を同定することが重要である。JAMA誌2015年1月13日号掲載の報告。 8つの人種/民族別の悪性度を観察研究で評価 研究グループは、米国における人種/民族別のStage I乳がんの同定率を調査し、腫瘍の早期検出や、悪性度の生物学的な違いで民族間の差を説明できるかの検証を目的に、観察研究を行った(Canadian Institute of Health ResearchおよびCanada Researchの助成による)。 Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の18のレジストリー・データベースを用いて、2004~2011年に浸潤性乳がんと新規に診断された女性45万2,215例を同定した。8人種/民族(非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系白人、黒人、中国系、日系、南アジア系、その他のアジア系、他の民族系)別に、2.0cm以下の小サイズの腫瘍の生物学的悪性度(トリプルネガティブ乳がん、リンパ節転移、遠隔転移)の評価を行った。 8人種/民族別に、診断時のStage Iとより進行したStageのオッズ比(OR)およびStage I乳がんによる死亡のハザード比(HR)を算出した。最終フォローアップ日は2011年12月31日であった。 主要評価項目は、診断時のStageと、診断時年齢、収入、エストロゲン受容体(ER)の状態で補正した乳がん特異的7年生存率であった。 黒人女性はStage I診断率が低く、死亡率が高い Stage不明例やER不明例を除く37万3,563例が解析の対象となった。非ヒスパニック系白人が71.9%(26万8,675例)、黒人が10.4%(3万8,751例)、ヒスパニック系白人が9.4%(3万4,928例)、アジア系が6.7%(2万5,211例)、その他が1.6%(5,998例)であった。平均フォローアップ期間は40.6ヵ月、診断時平均年齢は60.5歳であった。 Stage I乳がん率は、非ヒスパニック系白人の50.8%に対し、日系人は56.1%と有意に高く(OR:1.23、95%信頼区間[CI]:1.15~1.31、p<0.001)、黒人は37.0%と有意に低かった(OR:0.65、95%CI:0.64~0.67、p<0.001)。 Stage I乳がんによる7年死亡率は、非ヒスパニック系白人の3.0%に比べ、黒人は6.2%と有意に高く(HR:1.57、95%CI:1.40~1.75、p<0.001)、南アジア系は1.7%と低い値を示したものの有意差はなかった(HR:0.48、95%CI:0.20~1.15、p=0.10)。 小サイズ乳がんによる死亡率は、非ヒスパニック系白人の4.6%に比し、黒人は9.0%と有意に高く(HR:1.96、95%CI:1.82~2.12、p<0.001)、収入およびERの状態で補正後も有意差は保持されていた(HR:1.56、95%CI:1.45~1.69、p<0.001)。 著者は、「このような早期乳がん診断率やStage I乳がんによる死亡率の人種/民族間のばらつきは、リンパ節転移や遠隔転移、トリプルネガティブ乳がんなどの生物学的な悪性度の差で統計学的に説明可能と考えられる」と結論している。

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事例37 真皮縫合加算の査定【斬らレセプト】

解説事例では、K000 創傷処理「注2」真皮縫合加算(露出部)がC事由(医学的理由による不適当)で査定となった。部位を確認すると右中指であった。指は露出部に分類されるが、真皮縫合加算は認められていない。診療報酬点数表には記載がないが、その理由を支払基金では「~(前略)~表在感覚(知覚)が不可欠な指において、この部分の損傷や瘢痕形成は可及的最小限にするべきであり真皮層に瘢痕を遺残する真皮縫合はむしろ有害である。指の背側面においては、真皮層が薄く真皮縫合は手技上不可能である。指の手術に際しては、特に手掌面において知覚障害の発生を防止するとともに、極力瘢痕拘縮を残さないことが重要である」と説明している。その他、手背は認められるが、真皮の存在しない眼瞼などへの算定は認められていないなど、細かく判断されている。真皮縫合を実施する部位が、加算可能な部位であることを確認して、算定をお願いしたい。

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統合失調症の慢性化に関連する遺伝子か

 米国・ピッツバーグ大学のD Arion氏らは、統合失調症患者では背外側前頭前皮質 (DLPFC)に存在する錐体細胞の活性に依存する作業記憶(ワーキングメモリー)の異常が生じていることに着目し、錐体細胞特異的な遺伝子発現の状況について検討を行った。その結果、統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的な遺伝子の発現が低下していること、これらは統合失調感情障害ではみられないことを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。 統合失調症はDLPFC回路の不全を反映する作業記憶の異常と関連する。作業記憶はDLPFCの第3層および第5層に存在する興奮性錐体細胞(第5層中には第3層よりも少なく分布)の活性に依存する。統合失調症患者のDLPFC灰白質の遺伝子発現プロファイルは複数の研究で示されているが、第3層および第5層に錐体細胞を認める2つのポピュレーションにおける細胞タイプ特異的なDNAからの転写産物発現に関してはほとんど知られていない。 そこで研究グループは、とくにDLPFCの第3層および第5層における遺伝子発現の情報は、統合失調症とそれに関連する疾患との相違について新しい、かつ明確な知見を提供するであろうと仮説を立てた。また、錐体細胞機能不全の自然史に関する新たな情報になるのではないかと考え、統合失調感情障害の診断、あるいは死亡時の薬物使用など、その他の因子が錐体ニューロンにおける遺伝子発現パターンに及ぼす影響の解明を試みた。検討は、統合失調症または統合失調感情障害を有する36例、および比較対照としてマッチさせた健常人を対象とし、各被験者のDLPFCの第3層または第5層における錐体細胞をレーザーマイクロダイセクション法により採取。同細胞のmRNAについて、マイクロアレイおよび定量PCRによりトランスクリプトーム解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・患者群では、ミトコンドリア(MT)内またはユビキチン-プロテアソーム系(UPS)機能における遺伝子発現が著しくダウンレギュレートされていた(MT関連経路およびUPS関連経路に対するp値はそれぞれ<10-7、<10-5)。・MT関連の遺伝子変異は第3層の錐体細胞で顕著に認められ、UPS関連の遺伝子変異は第5層の錐体細胞で顕著にみられた。・同じ被験者のDLPFC灰白質サンプルでは、これら変異の多くは発現が認められない、または発現程度が小さく、変異は錐体細胞特異的な所見であることが示唆された。・さらに、統合失調症患者における変異を反映する所見は、統合失調感情障害を有する被験者では発現がみられない、または発現程度が小さく(最も有意な共変数、p<10-6)、頻繁な統合失調症併存に寄与する因子ではなかった。・所見を踏まえて著者は「統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的なMTおよびUPS関連遺伝子の発現が低下していることが明らかとなった。これら細胞タイプ特異的なトランスクリプトームシグネチャーは、統合失調感情障害を特徴付けるものではないことから、分子細胞学を基盤とした臨床表現型の相違が生ずる可能性がある」と述べている。関連医療ニュース 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大  担当者へのご意見箱はこちら

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ハワイの認知症入院患者、日系人高齢者が多い

 ハワイで認知症と診断され入院している患者を調べたところ、ネイティブ・ハワイアンと日系人の高齢者が多いことが、米国・ハワイ大学のTetine L. Sentell氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「ネイティブ・ハワイアンと日系人高齢者集団に対する公衆衛生および臨床ケアにおいて、重要な意味がある」と指摘している。認知症入院患者はそうではない入院患者と比べて、コスト、入院期間、また死亡率が高いが、米国においてこれまでネイティブ・ハワイアンおよびアジア系サブグループの認知症に関するデータは限定的であった。Journal of the American Geriatrics Society誌2015年1月号(オンライン版2014年12月23日号)の掲載報告。 研究グループは、2006年12月~2010年12月にハワイで入院した全成人を対象に、認知症と診断された入院患者について、年齢階層別(18~59歳、60~69歳、70~79歳、80~89歳、90歳以上)にアジア系住民および太平洋諸島系の原住民(ネイティブ・ハワイアン、中国系、日系、フィリピン系)の割合を調べ、白人の割合と比較した。認知症診断はICD-9コードを用いて特定した。集団分母は、米国国勢調査を利用した。 主な結果は以下のとおり。・認知症診断歴のある入院患者1万3,465例を特定し分析した。・全年齢階層群で、ネイティブ・ハワイアンの認知症入院患者の割合(未補正)が最も高く、その他の人種よりも年齢は若い傾向がみられた。・補正後モデル(性別、居住地、加入保険)において、白人と比べてネイティブ・ハワイアンの認知症入院患者は90歳以上群を除き有意に高率であった。18~59歳群(aRR:1.50、95%信頼区間[CI]:0.84~2.69)、60~69歳群(同2.53、1.74~3.68)、70~79歳群(同2.19、1.78~2.69)、80~89歳群(同2.53、1.24~1.71)。・日系人では高齢者群で有意に高率であった。70~79歳群(aRR:1.30、95%CI:1.01~1.67)、80~89歳群(同1.29、1.05~1.57)、90歳以上群(同1.51、1.24~1.85)。・日系人の若い年齢群(18~59歳)は、白人よりも認知症患者は有意に少ないと思われた(aRR:0.40、95%CI:0.17~0.94)。関連医療ニュース アルツハイマー病への薬物治療は平均余命の延長に寄与しているのか:東北大学 低緯度地域では発揚気質が増強される可能性あり:大分大学 冬季うつ病、注意が必要な地域は  担当者へのご意見箱はこちら

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喘息は睡眠時無呼吸の発症リスクを増大/JAMA

 喘息は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の新規発症リスク増大と関連していることが明らかにされた。米国・ウィリアム S. ミドルトン記念退役軍人病院のMihaela Teodorescu氏らが、ウィスコンシン州で行われている住民ベースの前向き疫学研究Wisconsin Sleep Cohort Studyの参加者を対象に、喘息とOSA発症との関係性を調べ報告した。OSAは喘息患者に多いことが知られている。しかしこれまで喘息とOSA発症との関連は検討されていなかったという。JAMA誌2015年1月13日号掲載の報告より。住民ベースの前向き試験で検討 Wisconsin Sleep Cohort Studyは1988年にスタートし、無作為抽出で集められたウィスコンシン州の成人労働者が、4年ごとに終夜睡眠ポリグラフ検査と健康関連のアンケート調査を受けていた。 研究グループは2013年3月までのデータを集めて、ベースライン時の2回の睡眠ポリグラフ検査で非OSAであった被験者(無呼吸低呼吸指数[AHI] 5回/時未満、治療歴なし)を適格とし評価の対象とした。 該当者が自己申告した医師に診断された喘息の罹患と罹病期間を入手し、その後の4年ごとの検査時点で認められたOSA(AHI 5回/時以上または持続陽圧呼吸療法を受けている)、または日中の傾眠を伴うOSAとの関連を評価した。喘息があると睡眠時無呼吸症候群の発症リスクは1.39倍 適格患者は547例(女性52%、ベースライン時平均年齢50[SD 8]歳)で、喘息を有していた被験者は81例、有していなかった被験者は466例であった。これら被験者が合計1,105件(喘息被験者167件、非喘息被験者938件)の4年ごとの追跡データを報告していた。 最初の4年時検査でOSA発症が認められたのは、喘息被験者群は22例(27%)、一方、非喘息被験者群は75例(16%)であった。 全追跡期間でのOSA発症の報告例は、喘息被験者群は45例(27%)、一方、非喘息被験者群は160例(17%)で、性別、年齢、ベースラインと追跡時変化のBMI、その他因子で補正後の喘息患者のOSA発症の相対リスク(RR)は1.39(95%信頼区間[CI]:1.06~1.82、p=0.03)であった。また、喘息は、傾眠を伴うOSAの新規発症とも関連していた。同発症報告は、喘息被験者群12例(7%)、非喘息被験者群21例(2%)で、RRは2.72(95%CI:1.26~5.89、p=0.045)だった。 喘息の罹病期間についても、OSA発症(喘息罹病期間が5年増大するごとのRR:1.07、95%CI:1.02~1.13、p=0.01)、傾眠を伴うOSA発症(同:1.18、1.07~1.31、p=0.02)との関連が認められた。 結果を踏まえて著者は、「この関連の基礎的メカニズムおよび喘息患者への定期的なOSA評価について調べる研究が求められる」と指摘している。

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肥満外科手術、中高年男性の長期生存を延長/JAMA

 重症肥満患者で胃バイパス術などの肥満外科手術を受けた人は受けなかった人と比べて、長期死亡率が有意に低いことが報告された。米国・ダーラム退役軍人医療センターのDavid E. Arterburn氏らが、肥満外科手術を受けた患者2,500例について行った後ろ向き多地域適合対照コホート試験の結果、1年時点では死亡率に有意差は示されなかったが、5年、10年時点の全死因死亡率は、肥満外科手術群が有意に低かったことが判明した。これまでの検討で肥満外科手術が重症肥満患者の生存を改善するというエビデンスは蓄積されてきたが、中高年(veteran)における有益性のエビデンスは示されていなかったという。著者は、「今回の結果は若い世代、それも女性が大半を占める集団で示された肥満外科手術の有益性を、さらに後押しするものとなった」とまとめている。JAMA誌2015年1月6日号掲載の報告より。肥満外科手術を受けた2,500例の長期生存を評価 試験は、2000~2011年にかけて全米の退役軍人医療センターで肥満外科手術を受けた患者2,500例を特定し、長期生存について、年齢、性別などで適合した対照群7,462例と比較した。生存比較はKaplan-Meier法を用いて推算し、層別化・補正後Cox回帰分析を用いて評価した。 肥満外科手術術式の内訳は、胃バイパス術74%、スリーブ状胃切除術15%、調節性胃バンディング術10%、その他1%であった。 主要アウトカムは全死因死亡率で、2013年まで追跡評価した。1年時点は有意差なし、5年、10年時点で肥満外科手術群は有意に延長 肥満外科手術群2,500例は平均年齢52歳、平均BMI値47、適合対照群7,462例は同53歳、46と両群の特性は同等であった。 14年間の試験終了時点で、死亡は肥満外科手術群263例(平均追跡期間6.9年)、適合対照群1,277例(同6.6年)であった。 Kaplan-Meier算出の推定死亡率(手術群vs. 適合対照群)は、1年時点2.4%vs. 1.7%であったが、5年時点は6.4%vs. 10.4%、また10年時点は13.8%vs. 23.9%であった。 補正後分析の結果、両群間の全死亡率はフォローアップ初年度には有意差は示されなかったが(ハザード比[HR]:1.28、95%信頼区間[CI]:0.98~1.68)、1~5年(同:0.45、0.36~0.56)、5~14年(同:0.47、0.39~0.58)は肥満外科手術群で死亡が有意に低下した。 両群間の中間時点(1年超~5年)および長期(5年超)の関連性は、糖尿病有無、性別、手術時期で定義したサブグループすべてにわたっており、有意差は認められなかった。

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骨巨細胞腫〔Giant cell tumor of bone〕

1 疾患概要■ 概念・定義骨巨細胞腫は、病理組織学的に破骨細胞様多核巨細胞がみられる良性骨腫瘍であり、1818年にCooper氏により初めて報告された1)。2013年に改訂されたWHO分類(第4版)では2)、「OSTEOCLASTIC GIANT CELL RICH TUMOURS」の項にIntermediate (locally aggressive、rarely metastasizing) として分類されている。そして「A benign but locally aggressive primary bone neoplasm」と記載されているように、組織学的に良性であっても、局所再発や、まれに肺転移も来す腫瘍である。また、骨巨細胞腫に併存して、あるいは以前骨巨細胞腫が存在した部位に高悪性度肉腫が発生することがあり、これは2013年のWHO分類でmalignancy in GCTと総称されている。■ 疫学発生頻度は原発性骨腫瘍の約8.5%、原発性良性骨腫瘍の約12.3%であり3)、好発年齢は20~30代である。好発部位は、脛骨近位や大腿骨遠位、上腕骨近位、橈骨遠位などの長管骨骨端部であるが、比較的早期に発見された腫瘍は骨幹端に存在するものが多く、骨幹端に発生して速やかに骨端に広がる腫瘍と考えられる。しばしば、脊椎、骨盤などの体幹にも発生する。■ 病因骨巨細胞腫は、主に単核の単球細胞、多核巨細胞、紡錘形細胞で構成されており(図1)、腫瘍の本体は、間質に存在する紡錘形細胞と考えられている。そして、これらの細胞の起源については、単球細胞と多核巨細胞がマクロファージ由来、間質の紡錘形細胞が間葉系幹細胞由来と考えられている4)。本腫瘍に関するこれまでの分子生物学的研究から、間質の紡錘形細胞がRANKLを、多核巨細胞はその受容体であるRANKを高率に発現しており5)、このRANKL-RANKシグナルが骨巨細胞腫の病態形成に深く関わっていることが明らかとなっている。画像を拡大する■ 症状特異的な症状はなく、発生部位の腫脹、熱感、疼痛が主で、関節周囲に発生することから、荷重による疼痛や関節可動域制限を認めることが多い。また、腫瘍の増大が速く、これらの症状が発現してから進行するまでの期間が短く、病的骨折を生じて発見されることもある。■ 分類一般的にX線所見による病期分類6)を用いることが多く、再発などの予後と相関する。Grade1境界明瞭で薄い辺縁硬化を伴い骨皮質が正常Grade2境界明瞭だが辺縁硬化がなく骨皮質の菲薄化を認めるGrade3境界不明瞭で浸潤性および活動性を示し骨皮質の破壊と軟部組織への進展を認める■ 予後エアドリルを併用した病巣掻爬や電気メス、アルゴンビームなどの補助療法を追加する手術を行った場合、再発率は10~25%と報告されており、腫瘍を一塊として切除した場合の再発はこれより少ない。局所再発の多くは、術後2年以内であるが、長期経過後の再発も報告されている。また、約1~2%の例で肺転移を認めることがあり、非常にまれではあるが、肺転移巣の大きさや数、部位によっては死亡する例も存在する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)画像検査(1)単純X線腫瘍は長管骨の骨幹端から骨端にかけての骨溶解像として描出される(図2)。腫瘍は偏心性に存在することが多く辺縁硬化像を伴うことは少ない。腫瘍が進行した場合、皮質骨は菲薄化と膨隆を伴いシェル状となる。また、時に皮質骨が消失することもある。その他、特徴的な所見としては腫瘍内部の隔壁構造がsoap-bubble appearanceを呈する場合がある。画像を拡大する(2)CT菲薄化した皮質骨の評価に有用である。(3)MRI骨髄内や骨外への腫瘍進展を捉えるために有用である。一般的に、腫瘍はT1強調像で等~低信号、T2強調像で高信号を示し、ガドリニウム(Gd)によりよく造影される。しかし、進行した場合、病巣内に出血に伴うヘモジデリン沈着、嚢胞形成、壊死などの多彩な変化を生じる。出血に伴い2次性の動脈瘤様骨嚢腫に発展した場合は、液面形成像(fluid-fluid level)を呈することもある。2)病理検査破骨細胞類似の多核巨細胞と単核の間質細胞からなる組織像を示す。腫瘍の辺縁に反応性骨形成がみられることがあるが、腫瘍による骨形成は通常みられない(図1)。■ 鑑別診断画像上の鑑別診断としては、良性では単純性骨嚢腫、動脈瘤様骨嚢腫、軟骨芽細胞腫など、悪性では通常型骨肉腫、血管拡張型骨肉腫、未分化高悪性度多形肉腫、がんの骨転移などが挙げられる。骨巨細胞腫は、好発年齢・部位と特徴的な画像所見により、診断は可能だが、最終診断には生検による病理検査が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 外科的治療他の良性骨腫瘍と同様に掻爬を行い、骨欠損部は骨移植や骨セメントで充填することが一般的である。ただし、鋭匙などによる単純な掻爬では再発率が高く、エアドリルの使用、掻爬後のフェノール処置、電気メスやアルゴンビームなどで焼灼など補助療法を追加した外科的治療を行うことが必要である7)。また、関節に浸潤し、軟骨下骨の温存が困難な例や、腫瘍により骨構築が破綻した場合は、切除を行い、骨欠損部を腫瘍用人工関節や人工骨頭で再建することもある。橈骨遠位端発生例では、腫瘍の活動性が高く、切除を行い関節固定で再建することが多い。■ 薬物療法骨転移による病的骨折などの骨関連事象を制御する目的で用いられているゾレドロン酸を切除困難な骨巨細胞腫に使用し、その有用性を述べた報告もある8)。筆者も使用経験があり、骨巨細胞腫に対する治療選択肢の1つと考えている。しかし、明らかな骨形成など明確な変化が得られることは少なく、また、保険適用外であることが問題である。骨巨細胞腫の治療上、革新的な変化が起きたのは、本疾患に対して抗RANKL抗体であるデノスマブの臨床試験が行われ、その結果を受けて2013年6月に米国食品医薬品局(FDA)が、骨巨細胞腫に対する適応を承認したことである。デノスマブは、すでに「多発性骨髄腫による骨病変および固形がん骨転移による骨病変」に対して2012年4月に保険収載され、現在多くの骨転移患者に用いられている。2013年3月には「骨粗鬆症」に対しても保険適用されている。骨巨細胞腫に関しては、FDAの承認後、わが国でも「切除不能または重度の後遺障害が残る手術が予定されている骨巨細胞腫患者」を対象として国内第II相臨床試験が行われ、2014年5月に骨巨細胞腫に対する追加承認を取得、骨巨細胞腫に対して用いることが可能となった。デノスマブは、RANKLを標的とするヒト型モノクローナル抗体製剤である。RANKL は、破骨細胞および破骨細胞前駆細胞表面のRANKに結合し、破骨細胞の形成、機能、生存に関わる分子であり、骨巨細胞腫の病態形成にも深く関与している5)。デノスマブによりRANKLが阻害されることにより、破骨細胞様多核巨細胞が消失し、腫瘍による骨破壊が抑制される。また、腫瘍内に骨形成が起こり、疼痛などの自覚症状も改善する。■ その他脊椎や骨盤など、解剖学的に切除が困難な部位に発生した場合には、腫瘍の進行を制御する目的で動脈塞栓術が試みられている。同じく切除不能例に対する放射線治療も行われてきたが、照射後の悪性化が問題となり、現在ではあまり行われていない。4 今後の展望骨巨細胞腫患者に対するデノスマブの有用性と安全性を明らかにする目的で、米国Amgen社により、骨巨細胞腫患者を対象とした臨床試験(20040215試験および20062004試験)が海外で実施された。いずれの試験においても、安全性と高い抗腫瘍効果が認められ9-11)、これら2試験の成績を基に、骨巨細胞腫に対する承認申請が米国Amgen社により行われ、米国では2013年6月に承認された。わが国においても、「切除不能または重度の後遺障害が残る手術が予定されている骨巨細胞腫患者」を対象に臨床試験が行われ、2013年6月にデノスマブが希少疾病用医薬品に指定され、「骨巨細胞腫」を効能・効果として、2014年5月に承認が得られている。筆者は、現時点での本疾患に対するデノスマブの適用を、「骨格の成熟した12歳以上の骨巨細胞腫患者で切除不可能な場合、もしくは切除に伴い重篤な機能障害を生じる場合」と限定して考えている。デノスマブの出現は、切除困難な骨巨細胞腫患者に大きな変化をもたらしたことは明らかである。しかし、エビデンスのある治療戦略はまだ明らかにされていない。術前投与と縮小手術の詳細や中長期の治療成績に関してもまだ不明である。今後、前向き多施設臨床試験などで、これらの問題を明らかにする必要があると考える。5 主たる診療科整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍相談コーナー(一般利用者向けのまとまった情報)特定非営利活動法人 骨軟部肉腫治療研究会(医療従事者向けのまとまった情報)1)Cooper A, et al. Surgical essays. 3rd ed. Cox & Son; 1818.2)World Health Organization Classification of Tumours of Soft Tissue and Bone. IARC Press; 2013.3)日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍委員会 編. 全国骨腫瘍登録一覧表(平成23年度). 国立がん研究センター; 2011.4)Wulling M, et al, Hum Pathol. 2003; 34: 983-993.5)Morgan T, et al. Am J Pathol. 2005; 167: 117-128.6)Campanacci M, et al. J Bone Joint Surg Am. 1987; 69: 106-114.7)岩本幸英 編. 骨・軟部腫瘍外科の要点と盲点(整形外科Knack & Pitfalls). 文光堂; 2005. p.210-213.8)Balke M, et al. BMC Cancer. 2010; 10: 462.9)Thomas D, et al. Lancet Oncol. 2010; 11: 275-280.10)Branstetter DG, et al. Clin Cancer Res. 2012; 18: 4415-4424.11)Chawla S, et al. Lancet Oncol. 2013; 14: 901-908.

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第30回 医療に絶対を求める裁判所の結論への疑問

■今回のテーマのポイント1.乳腺疾患で一番訴訟が多いのは乳がんである2.乳がんに関する訴訟では、診断、手術適応、説明義務違反が主として争われている3.本事例における病理診断に対する裁判所の過失判断の枠組みには問題があり、再考の必要がある■事件のサマリ原告患者X被告Y病院 Z医師(病理医)争点診断ミスによる債務不履行責任結果原告勝訴、1,645万円の損害賠償事件の概要45歳女性(X)。平成13年10月、市の乳がん検診を受診し、左乳腺腫瘤を指摘されたことから、近医を受診し、超音波検査を受けたところ、やはり、同部に腫瘤が認められました。Xは、同月23日に精査のためY病院を受診し、A医師により、触診、超音波検査、マンモグラフィーおよび吸引細胞診などが行われました。超音波検査の結果は、乳がんを疑うとされましたが、マンモグラフィーではがんは指摘されませんでした。Y病院の病理医のZ医師は、Xの吸引細胞診の検体を観察し、細胞診検査報告書に、「血性で汚い背景です。クロマチン増量、核小体腫大、核大小不同を示す不規則重積性のみられるatypical cell(異型細胞)がみられます。Papilo tubular Ca(乳頭腺管がん)を考えます。診断PAP ClassⅤ(パパニコロウ分類)」などと記載してA医師に報告しました。以上から、A医師は、Xに対し、検査の結果、左乳腺腫瘤はがんであったと伝え、11月7日に、左乳房の非定型乳房切除術を行いました。ところが、切除検体を用いた病理診断の結果は、「全体像を総合的に検討すると、病変は、増殖が強く、典型的とはいえないが、乳管内乳頭腫である可能性を第一に考える」と診断されました。これに対し、Xは、不必要な手術を受けた結果、左肩関節の可動域制限および乳房再建手術を受けることとなったなどとして、Y病院および、病理医のZ医師に対し、約2,720万円の損害賠償請求を行いました事件の判決細胞診の判定としては、従来より、パパニコロウ分類が用いられている。このパパニコロウ分類においては、細胞診所見において異型細胞をみないものがクラスI、異型細胞はあるが悪性細胞をみないものがクラスII、悪性を疑わせる細胞をみるが確診できないものがクラスIII、悪性の疑いが極めて濃厚な異型細胞を認める場合がクラスIV、悪性と診断可能な異型細胞を認める場合がクラスVとされている。このように、クラスVとの診断は、疑いを超えて確診に至ったものであるから、クラスVというためには、診断時の所見に照らし、悪性と診断できる確実な根拠があることが必要であるというべきである。上記のとおり、本件では、術前の細胞診の結果、クラスVと診断されているにもかかわらず、術後の組織検査においては、被告病院を含む3つの医療機関において、いずれも良性である乳管内乳頭腫との診断がされており、術前の細胞診のプレパラートについても、他院において、クラスIIとの判定がされている。その上、本件当時被告病院に勤務していた細胞検査技師は、他施設の検査技師も悪性を疑うという意見であったこと及び被告病院で再度検討した結果としてもがんの可能性がないとは言い切れないとの判断であったことを陳述しているところ、これらの判断を上記分類に当てはめた結果については何ら言及されていないが、悪性を確診するとか、これを強く疑うとの記載がないことからすると、せいぜいクラスIIIに分類すべきとの判断と理解でき、この陳述からしても、被告Z医師の判定は誤りであったとうかがわれるところである。・・・・(判決文中略)・・・・上記で認定説示した事実と弁論の全趣旨によると、被告Z医師には、細胞診の検体からは良性の可能性も否定できず、さらに生検等によってこの点を精査すべきであったにもかかわらず(この点は、仮に、判定がクラスIVであっても同様である)、良性の可能性を疑う余地がないかのような判定をした点において、細胞診の診断を誤った過失があると認められる。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(東京地判平成18年6月23日判タ1246号274頁)ポイント解説■乳腺疾患の訴訟の現状今回は乳腺疾患です。乳腺疾患で最も訴訟が多いのは乳がんであり、疾患全体の中でその多くを占めています。乳がんに関する訴訟の原告勝訴率は、55.6%と高いのですが、平均認容額は、約1,387万円とそれほど高額とはなっていません(表1)。これは、乳がんに関する訴訟では、悪性疾患であるにもかかわらず、生存患者からの訴訟が多く、かつ、がん自体が根治していてもなお訴訟に到っていることが原因となっています。参考までに肝細胞がんに関する訴訟(20件)では、患者転帰が生存である率は4.8%しかなく、膵がんに関する訴訟(4件)では0%です。一方、乳がんに関する訴訟では、55.6%と高率であり、かつ、乳がん自体は根治している事例が3件(33.3%)もあります(表2)。乳がんに関する訴訟は大きく分けて3つの類型があります。1つは、本件で取り扱ったような誤診事例であり、もう1つは、不必要に拡大手術を行ったとして争われる事例であり、最後の1つが、説明義務違反の事例です。悪性疾患であることからか、不必要な拡大手術を行ったとして争われている事例では、原告勝訴事例はありません。しかし、良性の腫瘍を誤って悪性と診断し、切除した場合(誤診事例)には、原告が勝訴しています。やはり、結果が(後になってからではありますが)明らかである分、裁判所の判断が厳しくなるものと思われます。■病理医が訴えられ敗訴本件の判決で大きな問題といえるのは、病院とともに、病理医が個人として訴えられており、かつ、敗訴している点です(約1,645万円の損害賠償)。本判決の判断枠組みは非常にシンプルで、「ClassVは、悪性と診断できる確実な根拠があることが必要」であるところ、「他の病理医がClassIIと診断している」したがって、「良性の可能性を疑う余地があるのにClassVとしたのは過失」というものです(図)。しかし、この判断枠組みに従うと、後に他の病理医が良性と診断すると、過失と認定されることとなってしまいます。ご存じのとおり、病理診断には診断基準はあるものの、経験に基づく総合判断によることから、病理医により診断が分かれることがしばしばあります。そのような場合、結果として誤って悪性度を高く判断をしたら、過失と認定されるとなると、病理医は、ClassVと診断できなくなってしまいます。誰がみても明らかなものでない限り、Class Vと書けなくなってしまうとなると、Class IIIやIVとして要再検査とする病理診断が跋扈することとなり、患者は無駄な検査の負担を負うこととなりますし、場合によっては、治療の時期が遅れて生命に関わることもありえます(もし、仮に結果として悪性であったのに萎縮診断によりClass IIIと書いたため治療が遅れたとして訴訟された場合には、同一の判断枠組みを用いて過失はないと判断するのでしょうか)。もちろん、誰がみても明らかな水準の誤診であった場合には、病理医に責任があるとされることは止むを得ません。本事例がどちらであったかは判断できませんが、すくなくとも、本判決における判断の枠組みは、病理医に対し強い萎縮効果を持たせることは明白であり、その結果、過剰な検査などによる負担を負うのは患者です。現在は、だいぶ改善していますが、福島大野病院事件以前の判決では、このような現場を無視した過剰かつ、過酷な判決がしばしば見受けられました。司法と医療の相互理解を深め、萎縮効果を生むような判決が示されないよう努力していく必要があります。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京地判平成18年6月23日判タ1246号274頁

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1型糖尿病への強化治療、長期死亡を低減/JAMA

 1型糖尿病への血糖コントロール強化治療は、長期的な全死因死亡の低下に結び付くことが示された。米国・ピッツバーグ大学のTrevor J. Orchard氏らDCCT/EDIC研究グループが、同試験で平均6.5年間強化治療を行った被験者1,441例を、平均27年間追跡した結果、ハザード比(HR)0.67と死亡発生の低下が認められたという。また、血糖値と死亡との有意な関連も判明した。これまで、1型糖尿病への強化治療が死亡に影響するかどうかは明らかにされていなかった。JAMA誌2015年1月6日号掲載の報告より。6.5年間強化治療をした患者を27年間追跡、従来治療群と死亡を比較 研究グループは、DCCT(Diabetes Control and Complications Trial)コホートを長期に追跡し、強化治療群と従来治療群とで死亡率が異なるかを調べた。 DCCTは1983~1993年に行われ、その後被験者は複数施設(米国とカナダの大学医療センター27ヵ所)で観察研究(Epidemiology of Diabetes Control and Complications[EDIC])により2012年12月31日までフォローアップを受けた。 被験者は、糖尿病を有するが健康なボランティア1,441例で、ベースライン時の年齢が13~39歳であった。罹病期間は1~15年で、微小血管合併症はなく、高血圧症、心血管疾患、その他致死的疾患は有していなかった。 DCCTの間に被験者は、強化治療(血糖値が非糖尿病域となるよう)を受ける群(711例)または従来治療群(730例)に無作為に割り付けられる介入を受けた。平均6.5年間のDCCT終了後、強化治療は全被験者に教授・推奨され、糖尿病治療は各医師に移行された。 主要評価項目は、全死亡および特異的死亡で、毎年の家族・友人とのコンタクトで評価された。またその記録は平均追跡期間27年にわたって記録された。強化治療群のハザード比0.67、さらにHbA1c値と死亡との関連が有意 被験者のうち1,429例(99.2%)について情報を追跡できた。 全体では107例の死亡が報告され、従来治療群64例、強化治療群は43例であった。絶対リスク差は、10万人当たり-109例(95%信頼区間[CI]:-218~-1)で、全死因死亡リスクは強化治療群で低かった(ハザード比[HR]:0.67、95%CI:0.46~0.99、p=0.045)。 主な死亡要因は、心血管疾患(24例、22.4%)、がん(21例、19.6%)、急性糖尿病合併症(19例、17.8%)、そして事故または自殺(18例、16.8%)であった。 また、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値と、全死因死亡との有意な関連が認められた(HbA1cが相対値で10%増加するごとのHR:1.56、95%CI:1.35~1.81、p<0.001)。同様に、蛋白尿の発症も有意であった(同:2.20、1.46~3.31、p<0.001)。

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事例36 尿沈渣の査定【斬らレセプト】

解説事例では、D002-2 尿沈渣(フローサイトメトリー法)とそれに対する尿・糞便等検査判断料がD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの/重複: 国保)にて査定となった。尿沈渣フローサイトメトリー法は、「D000尿中一般物質定性半定量検査若しくはD001尿中特殊物質定性定量検査において何らかの所見が認められ、又は診察の結果からその実施が必要と認められ、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱及び細菌を同時に測定した場合に算定する」とあり、「D002 尿沈渣(鏡検法)を併せて実施した場合は主たるもののみ算定する」とある。事例では尿沈渣(鏡検法)の実施がないので算定をしたという。しかし、S-M(D017 3 排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査)も併施されている。尿沈渣(フローサイトメトリー法)の注1には、「同一検体について当該検査とD017に掲げる排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査を併せて行った場合は、主たる検査の所定点数のみ算定する」とある。したがって、主たる所定点数であるS-Mのみが算定できるとして尿沈渣が査定となったものである。

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統合失調症患者のEPSと認知機能の関連は

 カナダ・トロント大学のGagan Fervaha氏らは、統合失調症患者における錐体外路症状(EPS)と、認知障害との関連を調べた。結果、EPSの重症度と認知テストの低スコアとが強く結び付いていることを実証した。EPSは統合失調症における最も一般的な運動障害である。同患者の運動障害は、抗精神病薬を服用していない患者でも認められるが、認知といった疾患のその他の特性との関連については十分に解明されていなかった。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年12月1日号の掲載報告。 検討は、統合失調症患者で、あらゆる抗精神病薬または抗コリン薬の投与を受けていない325例を対象に行われた。被験者は、Clinical Antipsychotic Treatment of Intervention Effectiveness試験のベースライン訪問に関与していた患者であった。EPSの評価には、Simpson-Angus尺度が用いられ、認知の評価は、総合的な神経心理学的テストにて行われた。EPSと認知テスト結果との関連性について、数的および分類学的両面から評価した。 主な結果は以下のとおり。・EPSの重症度がより大きいと、複合スコア評価による認知テストの結果は、より悪化するという有意な関連が認められた。・86例の患者はパーキンソン症候群を有していることが特定された。これらの患者は非パーキンソン症候群患者と比べて認知テストの結果は悪かった。・同所見は、精神病理、鎮静、アカシジア、ジスキネジアなどの重症度といった変数で補正後も有意なままであった。・これらの結果は、神経筋および神経認知の障害の基礎を成す病態生理が共通していることを示す。ただし、パーキンソン症候群がテストを受ける能力を障害している可能性もある。・いずれにせよ機序に関係なく、認知障害に関する推論は、EPSの存在を考慮すべきであることを示唆するものであり、認知試験の所見を媒介するその他の変数と同様の示唆を与えるものと思われた。関連医療ニュース 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は 統合失調症患者の認知機能低下への関連因子は 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学  担当者へのご意見箱はこちら

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4価HPVワクチン接種、多発性硬化症と関連なし/JAMA

 4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種は、多発性硬化症などの中枢神経系の脱髄疾患の発症とは関連がないことが、デンマーク・Statens Serum研究所のNikolai Madrid Scheller氏らの調査で示された。2006年に4価、その後2価ワクチンが登場して以降、HPVワクチンは世界で1億7,500万回以上接種されているが、多発性硬化症のほか視神経炎、横断性脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、視神経脊髄炎などの脱髄疾患との関連を示唆する症例が報告されている。ワクチンが免疫疾患を誘発する可能性のある機序として、分子相同性や自己反応性T細胞活性化が指摘されているが、HPVワクチンが多発性硬化症のリスクを真に増大させるか否かは不明であった。JAMA誌2015年1月6日号掲載の報告。2国の10~44歳の全女性のデータを解析 研究グループは、2006~2013年のデンマークおよびスウェーデンの10~44歳の全女性における4価HPVワクチンの接種状況および多発性硬化症などの中枢神経系の脱髄疾患の発症に関するデータを用い、これらの関連を検証した(Swedish Foundation for Strategic Research、Novo Nordisk Foundation、Danish Medical Research Council funded the studyの助成による)。 ポアソン回帰モデルを用いて、ワクチン接種者・非接種者に関するコホート解析および自己対照ケースシリーズ(self-controlled case-series)解析を行った。接種後2年(730日)のリスク期間におけるイベント発生率を比較し、発症の率比を推算した。 398万3,824人(デンマーク:156万5,964人、スウェーデン:241万7,860人)の女性が解析の対象となった。そのうち78万9,082人が合計192万7,581回の4価HPVワクチン接種を受けた。接種回数は、1回が78万9,082人、2回が67万687人、3回が46万7,812人であった。2つの解析はともに有意差なし 全体のフォローアップ期間は2,133万2,622人年であった。接種時の平均年齢は17.3歳であり、デンマークの18.5歳に比べスウェーデンは15.3歳と約3歳年少だった。フォローアップ期間中に多発性硬化症が4,322例、その他の脱髄疾患は3,300例に認められ、そのうち2年のリスク期間内の発症はそれぞれ73例、90例であった。 コホート解析では、多発性硬化症、その他の脱髄疾患の双方で、4価HPVワクチン接種に関連するリスクの増加は認めなかった。すなわち、多発性硬化症の粗発症率は、ワクチン接種群が10万人年当たり6.12件(95%信頼区間[CI]:4.86~7.69)、非接種群は21.54件(95%CI:20.90~22.20)であり、補正後の率比は0.90(95%CI:0.70~1.15)と有意な差はなかった。また、その他の脱髄疾患の粗発症率は、それぞれ7.54件(95%CI:6.13~9.27)、16.14件(95%CI:15.58~16.71件)、補正率比は1.00(95%CI:0.80~1.26)であり、やはり有意差は認めなかった。 同様に、自己対照ケースシリーズ解析による多発性硬化症の発症率は1.05(95%CI:0.79~1.38)、その他の脱髄疾患の発症率は1.14(95%CI:0.88~1.47)であり、いずれも有意な差はみられなかった。また、年齢別(10~29歳、30~44歳)、国別、リスク期間別(0~179日、180~364日、365~729日、730日以降)の解析でも、有意な差は認めなかった。 著者は、「4価HPVワクチンは多発性硬化症や他の脱髄疾患の発症とは関連がない。本試験の知見はこれらの因果関係への懸念を支持しない」と結論している。

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双極性障害、ベンゾジアゼピン系薬の使用実態は

 米国・メイヨークリニックのWilliam V. Bobo氏らは、双極性障害研究「Bipolar CHOICE」の結果から、双極I型またはII型障害の外来患者について、疾患の複雑さとベンゾジアゼピン系薬使用について調べた。ベンゾジアゼピン系薬は双極性障害患者に広く処方されているが、同薬使用に最も関与する患者の双極性サブタイプや双極性の疾患面についてはほとんど明らかにされていなかった。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2015年2月号の掲載報告。 研究グループは、Bipolar CHOICE研究に登録された双極I型またはII型障害患者482例について、ベンゾジアゼピン系薬使用の割合や関連する因子を調べた。 ステップワイズ法によるロジスティック回帰分析にて、ベースラインでのベンゾジアゼピン系薬使用vs. 未使用モデルを評価した。 主な結果は以下のとおり。・482例のうち81例が、試験登録時にベンゾジアゼピン系薬の処方を受けていた。これらをベンゾジアゼピン系薬使用者とみなした。・二変量分析の結果、ベンゾジアゼピン系薬使用者は同薬未使用者との比較において、その他向精神薬の処方数が有意に多かった。また、ラモトリギンまたは抗うつ薬の処方が多い傾向がみられた。・ベンゾジアゼピン系薬使用者は傾向として、双極I型障害と診断され、不安障害を有している人が多いが、アルコールや薬物使用の障害は有していなかった。・また、同薬非使用者よりも、不安や抑うつ症状の経験が多く、自殺傾向がみられるが、焦燥感や躁症状の経験は多くなかった。・多変量モデルにおいて、ベンゾジアゼピン系薬使用の予測因子は、不安症状のレベル(診断に関係なく)、ラモトリギンの使用、併用する向精神薬の数、大学教育、世帯収入が高いことであった。・双極性障害におけるベンゾジアゼピン系薬使用は、不安障害の共存の診断とは関係なく、疾患の複雑さ(併用する向精神薬の多さ、不安症状の負荷が高いことで示される)がより大きいことと関連していた。・人口統計学的因子も、ベンゾジアゼピン系薬使用の重要な決定要因であった。同因子は、ベンゾジアゼピン系薬への処方アクセスや保険によるカバーと関連しているためと思われた。関連医療ニュース 双極性障害に対する非定型抗精神病薬比較 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか

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事例35 超音波断層撮影法(その他)の査定【斬らレセプト】

解説事例では、同日にD215 超音波検査(断層撮影法)を腹部と乳房の2部位に実施、それぞれ部位に応じた区分で算定した。算定要件には「同一患者につき同一月において同一検査を2回以上実施した場合における2回目以降の当該検査の費用は、所定点数の100分の90に相当する点数により算定する」とあったので、一方を100分の90で算定したという。しかし、その他区分がD(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を理由に査定となった。超音波断層検査の留意事項には、「超音波検査を同一の部位に同時に2以上の方法を併用する場合は、主たる検査方法により1回として算定する。また、同一の方法による場合は、部位数にかかわらず1回のみの算定とする」とある。よって、本事例では、1検査で実施した腹部と乳房に対する超音波検査は併せて1回のみの算定とすべきであったのである。同日に同一の方法で実施した超音波検査は、部位数にかかわらず併せて1回の算定とし、別日に同一の撮影方法を行った場合のみ100分の90で算定することができるのである。

3878.

乾癬、生物学的製剤との併用療法についてレビュー

 米国・コロラドデンバー大学のApril W. Armstrong氏らは、乾癬患者の生物学的製剤を用いた治療について、他の全身性治療法との併用に関して、エビデンスに基づくガイダンス勧告を示すため、レビューを行った。その結果、推奨される組み合わせは推奨度が高い順に、メトトレキサートとの併用、アシトレチンとの併用、そして光線療法との併用であることなどを報告した。なおレビューの結果を踏まえて著者は「適切に選択された患者においては、慎重に組み合わせを選ぶことで、より大きな効果をもたらすことになり、毒性も最小限にすることができる」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2014年12月17日号の掲載報告。 多くの乾癬患者にとって生物学的製剤の単独療法は有効であるが、一部の患者は併用療法を必要とする。 研究グループは、エビデンスに基づく、生物学的製剤とその他の全身性治療の併用療法について最適治療の勧告を示すことを目的とした。検討した全身性療法は、光線療法、経口薬療法、他の生物学的製剤であった。 1946年1月1日~2013年6月18日の研究についてMEDLINEデータベースを検索し、Medical Board of the National Psoriasis Foundationが、ディスカッションと投票(voting)によって最適治療として推奨することに至っていたものをレビューした。 主な結果は以下のとおり。・中等度から重度の乾癬において、併用療法の有効性、安全性を評価した試験はほとんどなかった。・エタネルセプトやアダリムマブのような生物学的製剤を光線療法と併用することは、単独療法よりも疾患重症度のより大きな改善に結び付くようであった。・エタネルセプトとメトトレキサートの併用は、それぞれの単独療法よりも効果的であった。・インフリキシマブとメトトレキサートの併用は、インフリキシマブ単独よりもより大きな改善に結び付いた。・アシトレチンとの併用で、エタネルセプトは、より少ない用量で有効性を得ることができた。・短期使用のシクロスポリンについて、エタネルセプトまたはアダリムマブとの併用は、乾癬フレアをコントロールした。・Medical Board of the National Psoriasis Foundationの専門家の意見に基づき、好ましい第2療法としての併用療法の順位は、生物学的製剤とメトトレキサートの併用、生物学的製剤とアシトレチンの併用、そして生物学的製剤と光線療法の順であった。

3879.

骨盤臓器脱、筋トレ3ヵ月で57%が症状改善/BMJ

 軽症の骨盤臓器脱の女性患者に対し、理学療法士(PT)が個別に提供する骨盤底筋力トレーニングの介入は経過観察のみの対照と比較して、骨盤底障害度評価項目(PFDI-20)スコアを有意に改善したが、臨床的意義のある差は示されなかった。オランダ・フローニンゲン大学医療センターのMarian Wiegersma氏らによるプライマリケア設定での無作為化試験の結果、報告された。BMJ誌オンライン版2014年12月22日号掲載の報告より。55歳以上の軽症骨盤臓器脱女性患者を対象に筋トレ介入vs.経過観察 試験は2009年10月14日~2012年10月19日に、オランダの15の一般医を通じて行われた。被験者は、55歳以上の軽症の骨盤臓器脱を有する女性でスクリーニングを行い選定し、骨盤底筋力トレーニングを受ける(介入)群と経過観察を行う(対照)群に割り付けた。除外基準は、臓器脱の治療中または前年に治療、骨盤臓器に悪性腫瘍、その他の婦人科系障害で治療中、重度/末期の疾患、運動機能障害、認知障害、オランダ語の理解が不十分であった。 介入は、骨盤底疾患の診断と治療について3年間の専門的訓練を受けた、オランダ骨盤理学療法士協会(Dutch Pelvic Physiotherapists' Organisation)の登録PTが行い、対面形式でホームエクササイズと組み合わせた骨盤底筋力トレーニングを個別に提供した。同一の基本的エクササイズを提供したうえで、各自の所見に合わせて修正した運動プログラムが提供された。 被験者は当初は週1回、PTを訪れエクササイズの指導などを受けたが、正しく骨盤底筋の収縮・弛緩運動ができているようであれば、訪問間隔を2~3週に1回と延期された。また週に3~5回、各日に2~3回の自宅エクササイズを実行するよう指導を受けた。 主要アウトカムは、介入開始後3ヵ月時点でPFDI-20を用いて評価した膀胱、腸、骨盤底症状の変化であった。副次アウトカムは、特異的・一般的QOL、性機能、臓器脱の程度、骨盤底筋機能の変化、および患者の主観的症状の変化などであった。3ヵ月後のPFDI-20評価で9.1ポイント、主観的症状改善評価では4倍強の差 287例が無作為に割り付けられ(介入群145例、対照群142例)、250例(87%)がフォローアップを完了した。介入群に割り付けられた被験者のうち、11例(8%)は介入を受けず、19例(13%)は早期に中断した。完了者が受けた介入回数の中央値は7回(範囲:5~9回)であった。フォローアップ時点で、59例(41%)がまだ介入が終了とはなっていなかった。 PFDI-20評価の結果、ベースラインから改善したスコアは、介入群のほうが対照群と比べて9.1ポイント(95%信頼区間[CI]:2.8~15.4)有意に大きかった(p=0.005)。ただし、両群差について臨床的意義があるとした仮定値(15ポイント)には達していなかった。 全症状の改善を報告したのは、介入群57%(82/145例)に対し、対照群は13%(18/142例)だった(p<0.001)。介入群のほうが4倍ほど主観的改善を報告した人が多いと思われた。 その他の副次アウトカムについては、両群間で有意な差がみられた項目はなかった。 上記を踏まえて著者は、「両群間で有意な差は示されたが臨床的関連は不明なままである」と述べ、「骨盤底筋トレーニングの成功要因を明らかにするため、また長期的効果を調べるためさらなる研究が必要である」とまとめている。

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抗うつ薬は有用か、てんかん患者のうつ

 てんかん患者のうつ病に対する治療として、抗うつ薬の有効性と安全性、けいれん発作再発に対する有効性を明らかにするため、英国・Leeds General InfirmaryのMelissa J Maguire氏らは8件の臨床試験をレビューした。その結果、抗うつ薬の有効性に対するエビデンスは非常に少なく、また質の高いエビデンスも存在しないことを明らかにし、同領域において大規模な比較臨床試験の必要性を指摘した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年12月3日号の掲載報告。 うつ病性障害は、てんかん患者の約3分の1に発症する一般的な精神的合併症であり、QOLに多大な悪影響をもたらす。しかし、いずれの抗うつ薬(あるいは種類)最良であるのか、また、けいれん発作を悪化させるリスクなどに関する情報が不確実なため、これらの患者がうつ病に対し適切な治療を受けていないことが懸念される。 研究グループは、これらの課題に取り組み、実臨床および今後の研究に向け情報を提供することを目的とし、てんかん患者のうつ病治療として、抗うつ薬に関する無作為化対照試験および前向き非無作為化試験から得られたエビデンスを統合し、レビューした。主要目的は、うつ症状の治療における抗うつ薬の有効性と安全性、けいれん発作再発に対する有効性の評価とした。 論文検索は、2014年5月31日までに発表された試験を含む、Cochrane Epilepsy Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL 2014, Issue 5)、MEDLINE(Ovid)、SCOPUS、PsycINFO、www.clinicaltrials.gov、その他国際会議議事録にて行い、言語による制限を設けなかった。 うつ症状に対し抗うつ薬治療を実施したてんかん小児および成人患者を対象とした、無作為化対照試験(RCT)および非無作為化コホート対照試験、非対照試験を検索した。介入群は、現行の抗てんかん薬レジメンに抗うつ薬を追加した患者とした。一方、対照群は現行のてんかん薬レジメンに、プラセボ、比較対照の抗うつ薬、心理療法のいずれかを追加、あるいは治療の追加なしの患者とした。 試験デザイン要素、患者背景、各試験のアウトカムを基にデータを抽出。主要アウトカムはうつ病スコアの変化(50%以上の改善を示した人数あるいは平均差)およびけいれん発作頻度の変化(発作の再発あるいはてんかん重積症の発作のどちらか、または両方を発症した患者の平均差あるいは人数)とした。副次アウトカムは有害事象、試験中止例数および中止理由とした。データ抽出は対象試験ごとに2人の執筆者がそれぞれ実施、これによりデータ抽出のクロスチェックとした。無作為化試験および非無作為化試験におけるバイアスの危険性を、コクラン共同計画の拡張バイアスリスク評価ツール(extended Cochrane Collaboration tool for assessing risk of bias)を使用して評価した。バイナリアウトカムは95%信頼区間(CI)を有するリスク比として示した。連続アウトカムは95%CIを伴う標準化平均差、そして95%信頼Clを伴う平均差として示した。可能であればメタ回帰法を用い、想定される不均一性の原因を調査する予定であったが、データ不足により断念した。 主な結果は以下のとおり。・8件の試験(RCTが3件と前向きコホート研究5件)、抗うつ薬治療中のてんかん患者471例を対象にレビューを行った。・RCTはすべて、抗うつ薬と実薬、プラセボまたは無治療との比較を行った単施設での試験であった。・5件の非無作為化前向きコホート研究は、主に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によりうつ病治療中の部分てんかん患者におけるアウトカムを報告するものであった。・すべてのRCTおよび1件の前向きコホート研究については、バイアスのリスクが不明確と評価された。他の4件の前向きコホート研究については、バイアスのリスクが高いと評価された。・うつ病スコアが50%以上改善した割合に対するメタ解析は、比較した治療が異なっていたため実施できなかった。・記述的分析の結果、レスポンダー率は、投与された抗うつ薬の種類によって24%~97%の幅が認められた。・うつ病スコアの平均差に関しては、シタロプラムを用いた2件の前向きコホート研究(計88例)の限定的なメタ解析が実施可能であった。同分析では、うつ病スコアにおける効果予測1.17 (95%CI:0.96~1.38)であり、エビデンスの質は低かった。・てんかん発作頻度に関するRCTのデータがなく、また前向きコホート研究においても、比較対照となる治療が異なるためメタ解析は実施できなかった。記述的分析の結果、SSRIを用いた3件の試験において、発作頻度の有意な上昇は認められなかった。・抗うつ薬の中止理由として、無効よりも有害事象によるものが多かった。・SSRIに関する有害事象として嘔気、めまい、鎮静、胃腸障害、性機能障害が報告された。・3件の比較研究を通し、解析に使用した試験の規模が小さく、比較のために参照した試験が各1件のみであるという理由から、エビデンスの質は中程度と評価した。・最後の比較研究に関しては、2件の参照試験における試験方法に問題があるという点でエビデンスの質が低いと評価した。・てんかん関連うつ症状に対する、抗うつ薬の有効性に関するエビデンスは非常に少なく、ベンラファキシンがうつ症状に対し統計学的に有意な効果を示した小規模なRCTが1件あるのみであった。・てんかん患者のうつ症状治療に際し、抗うつ薬またはその種類の選択に関し情報を提供する質の高いエビデンスはなかった。・今回のレビューでは、SSRIによる発作悪化という観点から、安全性に関するエビデンスの質は低く、また発作に使用できる抗うつ薬の種類や安全性の判定に使用可能な比較対照データはなかった。心理療法は、患者が抗うつ薬の服用を好まない場合や許容できない有害事象のある場合に対して考慮されるが、現在のところ、てんかん患者のうつ病治療として抗うつ薬と心理療法を比較しているデータはなかった。うつ病を有するてんかん患者を対象とした、さらに踏み込んだ抗うつ薬および心理療法に関する大規模コホート比較臨床試験が将来のよりよい治療計画のために必要である。関連医療ニュース どの尺度が最適か、てんかん患者のうつ病検出 てんかん患者のうつ病有病率は高い パロキセチンは他の抗うつ薬よりも優れているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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