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骨巨細胞腫〔Giant cell tumor of bone〕

1 疾患概要■ 概念・定義骨巨細胞腫は、病理組織学的に破骨細胞様多核巨細胞がみられる良性骨腫瘍であり、1818年にCooper氏により初めて報告された1)。2013年に改訂されたWHO分類(第4版)では2)、「OSTEOCLASTIC GIANT CELL RICH TUMOURS」の項にIntermediate (locally aggressive、rarely metastasizing) として分類されている。そして「A benign but locally aggressive primary bone neoplasm」と記載されているように、組織学的に良性であっても、局所再発や、まれに肺転移も来す腫瘍である。また、骨巨細胞腫に併存して、あるいは以前骨巨細胞腫が存在した部位に高悪性度肉腫が発生することがあり、これは2013年のWHO分類でmalignancy in GCTと総称されている。■ 疫学発生頻度は原発性骨腫瘍の約8.5%、原発性良性骨腫瘍の約12.3%であり3)、好発年齢は20~30代である。好発部位は、脛骨近位や大腿骨遠位、上腕骨近位、橈骨遠位などの長管骨骨端部であるが、比較的早期に発見された腫瘍は骨幹端に存在するものが多く、骨幹端に発生して速やかに骨端に広がる腫瘍と考えられる。しばしば、脊椎、骨盤などの体幹にも発生する。■ 病因骨巨細胞腫は、主に単核の単球細胞、多核巨細胞、紡錘形細胞で構成されており(図1)、腫瘍の本体は、間質に存在する紡錘形細胞と考えられている。そして、これらの細胞の起源については、単球細胞と多核巨細胞がマクロファージ由来、間質の紡錘形細胞が間葉系幹細胞由来と考えられている4)。本腫瘍に関するこれまでの分子生物学的研究から、間質の紡錘形細胞がRANKLを、多核巨細胞はその受容体であるRANKを高率に発現しており5)、このRANKL-RANKシグナルが骨巨細胞腫の病態形成に深く関わっていることが明らかとなっている。画像を拡大する■ 症状特異的な症状はなく、発生部位の腫脹、熱感、疼痛が主で、関節周囲に発生することから、荷重による疼痛や関節可動域制限を認めることが多い。また、腫瘍の増大が速く、これらの症状が発現してから進行するまでの期間が短く、病的骨折を生じて発見されることもある。■ 分類一般的にX線所見による病期分類6)を用いることが多く、再発などの予後と相関する。Grade1境界明瞭で薄い辺縁硬化を伴い骨皮質が正常Grade2境界明瞭だが辺縁硬化がなく骨皮質の菲薄化を認めるGrade3境界不明瞭で浸潤性および活動性を示し骨皮質の破壊と軟部組織への進展を認める■ 予後エアドリルを併用した病巣掻爬や電気メス、アルゴンビームなどの補助療法を追加する手術を行った場合、再発率は10~25%と報告されており、腫瘍を一塊として切除した場合の再発はこれより少ない。局所再発の多くは、術後2年以内であるが、長期経過後の再発も報告されている。また、約1~2%の例で肺転移を認めることがあり、非常にまれではあるが、肺転移巣の大きさや数、部位によっては死亡する例も存在する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)画像検査(1)単純X線腫瘍は長管骨の骨幹端から骨端にかけての骨溶解像として描出される(図2)。腫瘍は偏心性に存在することが多く辺縁硬化像を伴うことは少ない。腫瘍が進行した場合、皮質骨は菲薄化と膨隆を伴いシェル状となる。また、時に皮質骨が消失することもある。その他、特徴的な所見としては腫瘍内部の隔壁構造がsoap-bubble appearanceを呈する場合がある。画像を拡大する(2)CT菲薄化した皮質骨の評価に有用である。(3)MRI骨髄内や骨外への腫瘍進展を捉えるために有用である。一般的に、腫瘍はT1強調像で等~低信号、T2強調像で高信号を示し、ガドリニウム(Gd)によりよく造影される。しかし、進行した場合、病巣内に出血に伴うヘモジデリン沈着、嚢胞形成、壊死などの多彩な変化を生じる。出血に伴い2次性の動脈瘤様骨嚢腫に発展した場合は、液面形成像(fluid-fluid level)を呈することもある。2)病理検査破骨細胞類似の多核巨細胞と単核の間質細胞からなる組織像を示す。腫瘍の辺縁に反応性骨形成がみられることがあるが、腫瘍による骨形成は通常みられない(図1)。■ 鑑別診断画像上の鑑別診断としては、良性では単純性骨嚢腫、動脈瘤様骨嚢腫、軟骨芽細胞腫など、悪性では通常型骨肉腫、血管拡張型骨肉腫、未分化高悪性度多形肉腫、がんの骨転移などが挙げられる。骨巨細胞腫は、好発年齢・部位と特徴的な画像所見により、診断は可能だが、最終診断には生検による病理検査が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 外科的治療他の良性骨腫瘍と同様に掻爬を行い、骨欠損部は骨移植や骨セメントで充填することが一般的である。ただし、鋭匙などによる単純な掻爬では再発率が高く、エアドリルの使用、掻爬後のフェノール処置、電気メスやアルゴンビームなどで焼灼など補助療法を追加した外科的治療を行うことが必要である7)。また、関節に浸潤し、軟骨下骨の温存が困難な例や、腫瘍により骨構築が破綻した場合は、切除を行い、骨欠損部を腫瘍用人工関節や人工骨頭で再建することもある。橈骨遠位端発生例では、腫瘍の活動性が高く、切除を行い関節固定で再建することが多い。■ 薬物療法骨転移による病的骨折などの骨関連事象を制御する目的で用いられているゾレドロン酸を切除困難な骨巨細胞腫に使用し、その有用性を述べた報告もある8)。筆者も使用経験があり、骨巨細胞腫に対する治療選択肢の1つと考えている。しかし、明らかな骨形成など明確な変化が得られることは少なく、また、保険適用外であることが問題である。骨巨細胞腫の治療上、革新的な変化が起きたのは、本疾患に対して抗RANKL抗体であるデノスマブの臨床試験が行われ、その結果を受けて2013年6月に米国食品医薬品局(FDA)が、骨巨細胞腫に対する適応を承認したことである。デノスマブは、すでに「多発性骨髄腫による骨病変および固形がん骨転移による骨病変」に対して2012年4月に保険収載され、現在多くの骨転移患者に用いられている。2013年3月には「骨粗鬆症」に対しても保険適用されている。骨巨細胞腫に関しては、FDAの承認後、わが国でも「切除不能または重度の後遺障害が残る手術が予定されている骨巨細胞腫患者」を対象として国内第II相臨床試験が行われ、2014年5月に骨巨細胞腫に対する追加承認を取得、骨巨細胞腫に対して用いることが可能となった。デノスマブは、RANKLを標的とするヒト型モノクローナル抗体製剤である。RANKL は、破骨細胞および破骨細胞前駆細胞表面のRANKに結合し、破骨細胞の形成、機能、生存に関わる分子であり、骨巨細胞腫の病態形成にも深く関与している5)。デノスマブによりRANKLが阻害されることにより、破骨細胞様多核巨細胞が消失し、腫瘍による骨破壊が抑制される。また、腫瘍内に骨形成が起こり、疼痛などの自覚症状も改善する。■ その他脊椎や骨盤など、解剖学的に切除が困難な部位に発生した場合には、腫瘍の進行を制御する目的で動脈塞栓術が試みられている。同じく切除不能例に対する放射線治療も行われてきたが、照射後の悪性化が問題となり、現在ではあまり行われていない。4 今後の展望骨巨細胞腫患者に対するデノスマブの有用性と安全性を明らかにする目的で、米国Amgen社により、骨巨細胞腫患者を対象とした臨床試験(20040215試験および20062004試験)が海外で実施された。いずれの試験においても、安全性と高い抗腫瘍効果が認められ9-11)、これら2試験の成績を基に、骨巨細胞腫に対する承認申請が米国Amgen社により行われ、米国では2013年6月に承認された。わが国においても、「切除不能または重度の後遺障害が残る手術が予定されている骨巨細胞腫患者」を対象に臨床試験が行われ、2013年6月にデノスマブが希少疾病用医薬品に指定され、「骨巨細胞腫」を効能・効果として、2014年5月に承認が得られている。筆者は、現時点での本疾患に対するデノスマブの適用を、「骨格の成熟した12歳以上の骨巨細胞腫患者で切除不可能な場合、もしくは切除に伴い重篤な機能障害を生じる場合」と限定して考えている。デノスマブの出現は、切除困難な骨巨細胞腫患者に大きな変化をもたらしたことは明らかである。しかし、エビデンスのある治療戦略はまだ明らかにされていない。術前投与と縮小手術の詳細や中長期の治療成績に関してもまだ不明である。今後、前向き多施設臨床試験などで、これらの問題を明らかにする必要があると考える。5 主たる診療科整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍相談コーナー(一般利用者向けのまとまった情報)特定非営利活動法人 骨軟部肉腫治療研究会(医療従事者向けのまとまった情報)1)Cooper A, et al. Surgical essays. 3rd ed. Cox & Son; 1818.2)World Health Organization Classification of Tumours of Soft Tissue and Bone. IARC Press; 2013.3)日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍委員会 編. 全国骨腫瘍登録一覧表(平成23年度). 国立がん研究センター; 2011.4)Wulling M, et al, Hum Pathol. 2003; 34: 983-993.5)Morgan T, et al. Am J Pathol. 2005; 167: 117-128.6)Campanacci M, et al. J Bone Joint Surg Am. 1987; 69: 106-114.7)岩本幸英 編. 骨・軟部腫瘍外科の要点と盲点(整形外科Knack & Pitfalls). 文光堂; 2005. p.210-213.8)Balke M, et al. BMC Cancer. 2010; 10: 462.9)Thomas D, et al. Lancet Oncol. 2010; 11: 275-280.10)Branstetter DG, et al. Clin Cancer Res. 2012; 18: 4415-4424.11)Chawla S, et al. Lancet Oncol. 2013; 14: 901-908.

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第30回 医療に絶対を求める裁判所の結論への疑問

■今回のテーマのポイント1.乳腺疾患で一番訴訟が多いのは乳がんである2.乳がんに関する訴訟では、診断、手術適応、説明義務違反が主として争われている3.本事例における病理診断に対する裁判所の過失判断の枠組みには問題があり、再考の必要がある■事件のサマリ原告患者X被告Y病院 Z医師(病理医)争点診断ミスによる債務不履行責任結果原告勝訴、1,645万円の損害賠償事件の概要45歳女性(X)。平成13年10月、市の乳がん検診を受診し、左乳腺腫瘤を指摘されたことから、近医を受診し、超音波検査を受けたところ、やはり、同部に腫瘤が認められました。Xは、同月23日に精査のためY病院を受診し、A医師により、触診、超音波検査、マンモグラフィーおよび吸引細胞診などが行われました。超音波検査の結果は、乳がんを疑うとされましたが、マンモグラフィーではがんは指摘されませんでした。Y病院の病理医のZ医師は、Xの吸引細胞診の検体を観察し、細胞診検査報告書に、「血性で汚い背景です。クロマチン増量、核小体腫大、核大小不同を示す不規則重積性のみられるatypical cell(異型細胞)がみられます。Papilo tubular Ca(乳頭腺管がん)を考えます。診断PAP ClassⅤ(パパニコロウ分類)」などと記載してA医師に報告しました。以上から、A医師は、Xに対し、検査の結果、左乳腺腫瘤はがんであったと伝え、11月7日に、左乳房の非定型乳房切除術を行いました。ところが、切除検体を用いた病理診断の結果は、「全体像を総合的に検討すると、病変は、増殖が強く、典型的とはいえないが、乳管内乳頭腫である可能性を第一に考える」と診断されました。これに対し、Xは、不必要な手術を受けた結果、左肩関節の可動域制限および乳房再建手術を受けることとなったなどとして、Y病院および、病理医のZ医師に対し、約2,720万円の損害賠償請求を行いました事件の判決細胞診の判定としては、従来より、パパニコロウ分類が用いられている。このパパニコロウ分類においては、細胞診所見において異型細胞をみないものがクラスI、異型細胞はあるが悪性細胞をみないものがクラスII、悪性を疑わせる細胞をみるが確診できないものがクラスIII、悪性の疑いが極めて濃厚な異型細胞を認める場合がクラスIV、悪性と診断可能な異型細胞を認める場合がクラスVとされている。このように、クラスVとの診断は、疑いを超えて確診に至ったものであるから、クラスVというためには、診断時の所見に照らし、悪性と診断できる確実な根拠があることが必要であるというべきである。上記のとおり、本件では、術前の細胞診の結果、クラスVと診断されているにもかかわらず、術後の組織検査においては、被告病院を含む3つの医療機関において、いずれも良性である乳管内乳頭腫との診断がされており、術前の細胞診のプレパラートについても、他院において、クラスIIとの判定がされている。その上、本件当時被告病院に勤務していた細胞検査技師は、他施設の検査技師も悪性を疑うという意見であったこと及び被告病院で再度検討した結果としてもがんの可能性がないとは言い切れないとの判断であったことを陳述しているところ、これらの判断を上記分類に当てはめた結果については何ら言及されていないが、悪性を確診するとか、これを強く疑うとの記載がないことからすると、せいぜいクラスIIIに分類すべきとの判断と理解でき、この陳述からしても、被告Z医師の判定は誤りであったとうかがわれるところである。・・・・(判決文中略)・・・・上記で認定説示した事実と弁論の全趣旨によると、被告Z医師には、細胞診の検体からは良性の可能性も否定できず、さらに生検等によってこの点を精査すべきであったにもかかわらず(この点は、仮に、判定がクラスIVであっても同様である)、良性の可能性を疑う余地がないかのような判定をした点において、細胞診の診断を誤った過失があると認められる。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(東京地判平成18年6月23日判タ1246号274頁)ポイント解説■乳腺疾患の訴訟の現状今回は乳腺疾患です。乳腺疾患で最も訴訟が多いのは乳がんであり、疾患全体の中でその多くを占めています。乳がんに関する訴訟の原告勝訴率は、55.6%と高いのですが、平均認容額は、約1,387万円とそれほど高額とはなっていません(表1)。これは、乳がんに関する訴訟では、悪性疾患であるにもかかわらず、生存患者からの訴訟が多く、かつ、がん自体が根治していてもなお訴訟に到っていることが原因となっています。参考までに肝細胞がんに関する訴訟(20件)では、患者転帰が生存である率は4.8%しかなく、膵がんに関する訴訟(4件)では0%です。一方、乳がんに関する訴訟では、55.6%と高率であり、かつ、乳がん自体は根治している事例が3件(33.3%)もあります(表2)。乳がんに関する訴訟は大きく分けて3つの類型があります。1つは、本件で取り扱ったような誤診事例であり、もう1つは、不必要に拡大手術を行ったとして争われる事例であり、最後の1つが、説明義務違反の事例です。悪性疾患であることからか、不必要な拡大手術を行ったとして争われている事例では、原告勝訴事例はありません。しかし、良性の腫瘍を誤って悪性と診断し、切除した場合(誤診事例)には、原告が勝訴しています。やはり、結果が(後になってからではありますが)明らかである分、裁判所の判断が厳しくなるものと思われます。■病理医が訴えられ敗訴本件の判決で大きな問題といえるのは、病院とともに、病理医が個人として訴えられており、かつ、敗訴している点です(約1,645万円の損害賠償)。本判決の判断枠組みは非常にシンプルで、「ClassVは、悪性と診断できる確実な根拠があることが必要」であるところ、「他の病理医がClassIIと診断している」したがって、「良性の可能性を疑う余地があるのにClassVとしたのは過失」というものです(図)。しかし、この判断枠組みに従うと、後に他の病理医が良性と診断すると、過失と認定されることとなってしまいます。ご存じのとおり、病理診断には診断基準はあるものの、経験に基づく総合判断によることから、病理医により診断が分かれることがしばしばあります。そのような場合、結果として誤って悪性度を高く判断をしたら、過失と認定されるとなると、病理医は、ClassVと診断できなくなってしまいます。誰がみても明らかなものでない限り、Class Vと書けなくなってしまうとなると、Class IIIやIVとして要再検査とする病理診断が跋扈することとなり、患者は無駄な検査の負担を負うこととなりますし、場合によっては、治療の時期が遅れて生命に関わることもありえます(もし、仮に結果として悪性であったのに萎縮診断によりClass IIIと書いたため治療が遅れたとして訴訟された場合には、同一の判断枠組みを用いて過失はないと判断するのでしょうか)。もちろん、誰がみても明らかな水準の誤診であった場合には、病理医に責任があるとされることは止むを得ません。本事例がどちらであったかは判断できませんが、すくなくとも、本判決における判断の枠組みは、病理医に対し強い萎縮効果を持たせることは明白であり、その結果、過剰な検査などによる負担を負うのは患者です。現在は、だいぶ改善していますが、福島大野病院事件以前の判決では、このような現場を無視した過剰かつ、過酷な判決がしばしば見受けられました。司法と医療の相互理解を深め、萎縮効果を生むような判決が示されないよう努力していく必要があります。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京地判平成18年6月23日判タ1246号274頁

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1型糖尿病への強化治療、長期死亡を低減/JAMA

 1型糖尿病への血糖コントロール強化治療は、長期的な全死因死亡の低下に結び付くことが示された。米国・ピッツバーグ大学のTrevor J. Orchard氏らDCCT/EDIC研究グループが、同試験で平均6.5年間強化治療を行った被験者1,441例を、平均27年間追跡した結果、ハザード比(HR)0.67と死亡発生の低下が認められたという。また、血糖値と死亡との有意な関連も判明した。これまで、1型糖尿病への強化治療が死亡に影響するかどうかは明らかにされていなかった。JAMA誌2015年1月6日号掲載の報告より。6.5年間強化治療をした患者を27年間追跡、従来治療群と死亡を比較 研究グループは、DCCT(Diabetes Control and Complications Trial)コホートを長期に追跡し、強化治療群と従来治療群とで死亡率が異なるかを調べた。 DCCTは1983~1993年に行われ、その後被験者は複数施設(米国とカナダの大学医療センター27ヵ所)で観察研究(Epidemiology of Diabetes Control and Complications[EDIC])により2012年12月31日までフォローアップを受けた。 被験者は、糖尿病を有するが健康なボランティア1,441例で、ベースライン時の年齢が13~39歳であった。罹病期間は1~15年で、微小血管合併症はなく、高血圧症、心血管疾患、その他致死的疾患は有していなかった。 DCCTの間に被験者は、強化治療(血糖値が非糖尿病域となるよう)を受ける群(711例)または従来治療群(730例)に無作為に割り付けられる介入を受けた。平均6.5年間のDCCT終了後、強化治療は全被験者に教授・推奨され、糖尿病治療は各医師に移行された。 主要評価項目は、全死亡および特異的死亡で、毎年の家族・友人とのコンタクトで評価された。またその記録は平均追跡期間27年にわたって記録された。強化治療群のハザード比0.67、さらにHbA1c値と死亡との関連が有意 被験者のうち1,429例(99.2%)について情報を追跡できた。 全体では107例の死亡が報告され、従来治療群64例、強化治療群は43例であった。絶対リスク差は、10万人当たり-109例(95%信頼区間[CI]:-218~-1)で、全死因死亡リスクは強化治療群で低かった(ハザード比[HR]:0.67、95%CI:0.46~0.99、p=0.045)。 主な死亡要因は、心血管疾患(24例、22.4%)、がん(21例、19.6%)、急性糖尿病合併症(19例、17.8%)、そして事故または自殺(18例、16.8%)であった。 また、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値と、全死因死亡との有意な関連が認められた(HbA1cが相対値で10%増加するごとのHR:1.56、95%CI:1.35~1.81、p<0.001)。同様に、蛋白尿の発症も有意であった(同:2.20、1.46~3.31、p<0.001)。

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事例36 尿沈渣の査定【斬らレセプト】

解説事例では、D002-2 尿沈渣(フローサイトメトリー法)とそれに対する尿・糞便等検査判断料がD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの/重複: 国保)にて査定となった。尿沈渣フローサイトメトリー法は、「D000尿中一般物質定性半定量検査若しくはD001尿中特殊物質定性定量検査において何らかの所見が認められ、又は診察の結果からその実施が必要と認められ、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱及び細菌を同時に測定した場合に算定する」とあり、「D002 尿沈渣(鏡検法)を併せて実施した場合は主たるもののみ算定する」とある。事例では尿沈渣(鏡検法)の実施がないので算定をしたという。しかし、S-M(D017 3 排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査)も併施されている。尿沈渣(フローサイトメトリー法)の注1には、「同一検体について当該検査とD017に掲げる排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査を併せて行った場合は、主たる検査の所定点数のみ算定する」とある。したがって、主たる所定点数であるS-Mのみが算定できるとして尿沈渣が査定となったものである。

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統合失調症患者のEPSと認知機能の関連は

 カナダ・トロント大学のGagan Fervaha氏らは、統合失調症患者における錐体外路症状(EPS)と、認知障害との関連を調べた。結果、EPSの重症度と認知テストの低スコアとが強く結び付いていることを実証した。EPSは統合失調症における最も一般的な運動障害である。同患者の運動障害は、抗精神病薬を服用していない患者でも認められるが、認知といった疾患のその他の特性との関連については十分に解明されていなかった。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年12月1日号の掲載報告。 検討は、統合失調症患者で、あらゆる抗精神病薬または抗コリン薬の投与を受けていない325例を対象に行われた。被験者は、Clinical Antipsychotic Treatment of Intervention Effectiveness試験のベースライン訪問に関与していた患者であった。EPSの評価には、Simpson-Angus尺度が用いられ、認知の評価は、総合的な神経心理学的テストにて行われた。EPSと認知テスト結果との関連性について、数的および分類学的両面から評価した。 主な結果は以下のとおり。・EPSの重症度がより大きいと、複合スコア評価による認知テストの結果は、より悪化するという有意な関連が認められた。・86例の患者はパーキンソン症候群を有していることが特定された。これらの患者は非パーキンソン症候群患者と比べて認知テストの結果は悪かった。・同所見は、精神病理、鎮静、アカシジア、ジスキネジアなどの重症度といった変数で補正後も有意なままであった。・これらの結果は、神経筋および神経認知の障害の基礎を成す病態生理が共通していることを示す。ただし、パーキンソン症候群がテストを受ける能力を障害している可能性もある。・いずれにせよ機序に関係なく、認知障害に関する推論は、EPSの存在を考慮すべきであることを示唆するものであり、認知試験の所見を媒介するその他の変数と同様の示唆を与えるものと思われた。関連医療ニュース 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は 統合失調症患者の認知機能低下への関連因子は 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学  担当者へのご意見箱はこちら

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4価HPVワクチン接種、多発性硬化症と関連なし/JAMA

 4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種は、多発性硬化症などの中枢神経系の脱髄疾患の発症とは関連がないことが、デンマーク・Statens Serum研究所のNikolai Madrid Scheller氏らの調査で示された。2006年に4価、その後2価ワクチンが登場して以降、HPVワクチンは世界で1億7,500万回以上接種されているが、多発性硬化症のほか視神経炎、横断性脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、視神経脊髄炎などの脱髄疾患との関連を示唆する症例が報告されている。ワクチンが免疫疾患を誘発する可能性のある機序として、分子相同性や自己反応性T細胞活性化が指摘されているが、HPVワクチンが多発性硬化症のリスクを真に増大させるか否かは不明であった。JAMA誌2015年1月6日号掲載の報告。2国の10~44歳の全女性のデータを解析 研究グループは、2006~2013年のデンマークおよびスウェーデンの10~44歳の全女性における4価HPVワクチンの接種状況および多発性硬化症などの中枢神経系の脱髄疾患の発症に関するデータを用い、これらの関連を検証した(Swedish Foundation for Strategic Research、Novo Nordisk Foundation、Danish Medical Research Council funded the studyの助成による)。 ポアソン回帰モデルを用いて、ワクチン接種者・非接種者に関するコホート解析および自己対照ケースシリーズ(self-controlled case-series)解析を行った。接種後2年(730日)のリスク期間におけるイベント発生率を比較し、発症の率比を推算した。 398万3,824人(デンマーク:156万5,964人、スウェーデン:241万7,860人)の女性が解析の対象となった。そのうち78万9,082人が合計192万7,581回の4価HPVワクチン接種を受けた。接種回数は、1回が78万9,082人、2回が67万687人、3回が46万7,812人であった。2つの解析はともに有意差なし 全体のフォローアップ期間は2,133万2,622人年であった。接種時の平均年齢は17.3歳であり、デンマークの18.5歳に比べスウェーデンは15.3歳と約3歳年少だった。フォローアップ期間中に多発性硬化症が4,322例、その他の脱髄疾患は3,300例に認められ、そのうち2年のリスク期間内の発症はそれぞれ73例、90例であった。 コホート解析では、多発性硬化症、その他の脱髄疾患の双方で、4価HPVワクチン接種に関連するリスクの増加は認めなかった。すなわち、多発性硬化症の粗発症率は、ワクチン接種群が10万人年当たり6.12件(95%信頼区間[CI]:4.86~7.69)、非接種群は21.54件(95%CI:20.90~22.20)であり、補正後の率比は0.90(95%CI:0.70~1.15)と有意な差はなかった。また、その他の脱髄疾患の粗発症率は、それぞれ7.54件(95%CI:6.13~9.27)、16.14件(95%CI:15.58~16.71件)、補正率比は1.00(95%CI:0.80~1.26)であり、やはり有意差は認めなかった。 同様に、自己対照ケースシリーズ解析による多発性硬化症の発症率は1.05(95%CI:0.79~1.38)、その他の脱髄疾患の発症率は1.14(95%CI:0.88~1.47)であり、いずれも有意な差はみられなかった。また、年齢別(10~29歳、30~44歳)、国別、リスク期間別(0~179日、180~364日、365~729日、730日以降)の解析でも、有意な差は認めなかった。 著者は、「4価HPVワクチンは多発性硬化症や他の脱髄疾患の発症とは関連がない。本試験の知見はこれらの因果関係への懸念を支持しない」と結論している。

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双極性障害、ベンゾジアゼピン系薬の使用実態は

 米国・メイヨークリニックのWilliam V. Bobo氏らは、双極性障害研究「Bipolar CHOICE」の結果から、双極I型またはII型障害の外来患者について、疾患の複雑さとベンゾジアゼピン系薬使用について調べた。ベンゾジアゼピン系薬は双極性障害患者に広く処方されているが、同薬使用に最も関与する患者の双極性サブタイプや双極性の疾患面についてはほとんど明らかにされていなかった。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2015年2月号の掲載報告。 研究グループは、Bipolar CHOICE研究に登録された双極I型またはII型障害患者482例について、ベンゾジアゼピン系薬使用の割合や関連する因子を調べた。 ステップワイズ法によるロジスティック回帰分析にて、ベースラインでのベンゾジアゼピン系薬使用vs. 未使用モデルを評価した。 主な結果は以下のとおり。・482例のうち81例が、試験登録時にベンゾジアゼピン系薬の処方を受けていた。これらをベンゾジアゼピン系薬使用者とみなした。・二変量分析の結果、ベンゾジアゼピン系薬使用者は同薬未使用者との比較において、その他向精神薬の処方数が有意に多かった。また、ラモトリギンまたは抗うつ薬の処方が多い傾向がみられた。・ベンゾジアゼピン系薬使用者は傾向として、双極I型障害と診断され、不安障害を有している人が多いが、アルコールや薬物使用の障害は有していなかった。・また、同薬非使用者よりも、不安や抑うつ症状の経験が多く、自殺傾向がみられるが、焦燥感や躁症状の経験は多くなかった。・多変量モデルにおいて、ベンゾジアゼピン系薬使用の予測因子は、不安症状のレベル(診断に関係なく)、ラモトリギンの使用、併用する向精神薬の数、大学教育、世帯収入が高いことであった。・双極性障害におけるベンゾジアゼピン系薬使用は、不安障害の共存の診断とは関係なく、疾患の複雑さ(併用する向精神薬の多さ、不安症状の負荷が高いことで示される)がより大きいことと関連していた。・人口統計学的因子も、ベンゾジアゼピン系薬使用の重要な決定要因であった。同因子は、ベンゾジアゼピン系薬への処方アクセスや保険によるカバーと関連しているためと思われた。関連医療ニュース 双極性障害に対する非定型抗精神病薬比較 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか

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事例35 超音波断層撮影法(その他)の査定【斬らレセプト】

解説事例では、同日にD215 超音波検査(断層撮影法)を腹部と乳房の2部位に実施、それぞれ部位に応じた区分で算定した。算定要件には「同一患者につき同一月において同一検査を2回以上実施した場合における2回目以降の当該検査の費用は、所定点数の100分の90に相当する点数により算定する」とあったので、一方を100分の90で算定したという。しかし、その他区分がD(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を理由に査定となった。超音波断層検査の留意事項には、「超音波検査を同一の部位に同時に2以上の方法を併用する場合は、主たる検査方法により1回として算定する。また、同一の方法による場合は、部位数にかかわらず1回のみの算定とする」とある。よって、本事例では、1検査で実施した腹部と乳房に対する超音波検査は併せて1回のみの算定とすべきであったのである。同日に同一の方法で実施した超音波検査は、部位数にかかわらず併せて1回の算定とし、別日に同一の撮影方法を行った場合のみ100分の90で算定することができるのである。

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乾癬、生物学的製剤との併用療法についてレビュー

 米国・コロラドデンバー大学のApril W. Armstrong氏らは、乾癬患者の生物学的製剤を用いた治療について、他の全身性治療法との併用に関して、エビデンスに基づくガイダンス勧告を示すため、レビューを行った。その結果、推奨される組み合わせは推奨度が高い順に、メトトレキサートとの併用、アシトレチンとの併用、そして光線療法との併用であることなどを報告した。なおレビューの結果を踏まえて著者は「適切に選択された患者においては、慎重に組み合わせを選ぶことで、より大きな効果をもたらすことになり、毒性も最小限にすることができる」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2014年12月17日号の掲載報告。 多くの乾癬患者にとって生物学的製剤の単独療法は有効であるが、一部の患者は併用療法を必要とする。 研究グループは、エビデンスに基づく、生物学的製剤とその他の全身性治療の併用療法について最適治療の勧告を示すことを目的とした。検討した全身性療法は、光線療法、経口薬療法、他の生物学的製剤であった。 1946年1月1日~2013年6月18日の研究についてMEDLINEデータベースを検索し、Medical Board of the National Psoriasis Foundationが、ディスカッションと投票(voting)によって最適治療として推奨することに至っていたものをレビューした。 主な結果は以下のとおり。・中等度から重度の乾癬において、併用療法の有効性、安全性を評価した試験はほとんどなかった。・エタネルセプトやアダリムマブのような生物学的製剤を光線療法と併用することは、単独療法よりも疾患重症度のより大きな改善に結び付くようであった。・エタネルセプトとメトトレキサートの併用は、それぞれの単独療法よりも効果的であった。・インフリキシマブとメトトレキサートの併用は、インフリキシマブ単独よりもより大きな改善に結び付いた。・アシトレチンとの併用で、エタネルセプトは、より少ない用量で有効性を得ることができた。・短期使用のシクロスポリンについて、エタネルセプトまたはアダリムマブとの併用は、乾癬フレアをコントロールした。・Medical Board of the National Psoriasis Foundationの専門家の意見に基づき、好ましい第2療法としての併用療法の順位は、生物学的製剤とメトトレキサートの併用、生物学的製剤とアシトレチンの併用、そして生物学的製剤と光線療法の順であった。

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骨盤臓器脱、筋トレ3ヵ月で57%が症状改善/BMJ

 軽症の骨盤臓器脱の女性患者に対し、理学療法士(PT)が個別に提供する骨盤底筋力トレーニングの介入は経過観察のみの対照と比較して、骨盤底障害度評価項目(PFDI-20)スコアを有意に改善したが、臨床的意義のある差は示されなかった。オランダ・フローニンゲン大学医療センターのMarian Wiegersma氏らによるプライマリケア設定での無作為化試験の結果、報告された。BMJ誌オンライン版2014年12月22日号掲載の報告より。55歳以上の軽症骨盤臓器脱女性患者を対象に筋トレ介入vs.経過観察 試験は2009年10月14日~2012年10月19日に、オランダの15の一般医を通じて行われた。被験者は、55歳以上の軽症の骨盤臓器脱を有する女性でスクリーニングを行い選定し、骨盤底筋力トレーニングを受ける(介入)群と経過観察を行う(対照)群に割り付けた。除外基準は、臓器脱の治療中または前年に治療、骨盤臓器に悪性腫瘍、その他の婦人科系障害で治療中、重度/末期の疾患、運動機能障害、認知障害、オランダ語の理解が不十分であった。 介入は、骨盤底疾患の診断と治療について3年間の専門的訓練を受けた、オランダ骨盤理学療法士協会(Dutch Pelvic Physiotherapists' Organisation)の登録PTが行い、対面形式でホームエクササイズと組み合わせた骨盤底筋力トレーニングを個別に提供した。同一の基本的エクササイズを提供したうえで、各自の所見に合わせて修正した運動プログラムが提供された。 被験者は当初は週1回、PTを訪れエクササイズの指導などを受けたが、正しく骨盤底筋の収縮・弛緩運動ができているようであれば、訪問間隔を2~3週に1回と延期された。また週に3~5回、各日に2~3回の自宅エクササイズを実行するよう指導を受けた。 主要アウトカムは、介入開始後3ヵ月時点でPFDI-20を用いて評価した膀胱、腸、骨盤底症状の変化であった。副次アウトカムは、特異的・一般的QOL、性機能、臓器脱の程度、骨盤底筋機能の変化、および患者の主観的症状の変化などであった。3ヵ月後のPFDI-20評価で9.1ポイント、主観的症状改善評価では4倍強の差 287例が無作為に割り付けられ(介入群145例、対照群142例)、250例(87%)がフォローアップを完了した。介入群に割り付けられた被験者のうち、11例(8%)は介入を受けず、19例(13%)は早期に中断した。完了者が受けた介入回数の中央値は7回(範囲:5~9回)であった。フォローアップ時点で、59例(41%)がまだ介入が終了とはなっていなかった。 PFDI-20評価の結果、ベースラインから改善したスコアは、介入群のほうが対照群と比べて9.1ポイント(95%信頼区間[CI]:2.8~15.4)有意に大きかった(p=0.005)。ただし、両群差について臨床的意義があるとした仮定値(15ポイント)には達していなかった。 全症状の改善を報告したのは、介入群57%(82/145例)に対し、対照群は13%(18/142例)だった(p<0.001)。介入群のほうが4倍ほど主観的改善を報告した人が多いと思われた。 その他の副次アウトカムについては、両群間で有意な差がみられた項目はなかった。 上記を踏まえて著者は、「両群間で有意な差は示されたが臨床的関連は不明なままである」と述べ、「骨盤底筋トレーニングの成功要因を明らかにするため、また長期的効果を調べるためさらなる研究が必要である」とまとめている。

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抗うつ薬は有用か、てんかん患者のうつ

 てんかん患者のうつ病に対する治療として、抗うつ薬の有効性と安全性、けいれん発作再発に対する有効性を明らかにするため、英国・Leeds General InfirmaryのMelissa J Maguire氏らは8件の臨床試験をレビューした。その結果、抗うつ薬の有効性に対するエビデンスは非常に少なく、また質の高いエビデンスも存在しないことを明らかにし、同領域において大規模な比較臨床試験の必要性を指摘した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年12月3日号の掲載報告。 うつ病性障害は、てんかん患者の約3分の1に発症する一般的な精神的合併症であり、QOLに多大な悪影響をもたらす。しかし、いずれの抗うつ薬(あるいは種類)最良であるのか、また、けいれん発作を悪化させるリスクなどに関する情報が不確実なため、これらの患者がうつ病に対し適切な治療を受けていないことが懸念される。 研究グループは、これらの課題に取り組み、実臨床および今後の研究に向け情報を提供することを目的とし、てんかん患者のうつ病治療として、抗うつ薬に関する無作為化対照試験および前向き非無作為化試験から得られたエビデンスを統合し、レビューした。主要目的は、うつ症状の治療における抗うつ薬の有効性と安全性、けいれん発作再発に対する有効性の評価とした。 論文検索は、2014年5月31日までに発表された試験を含む、Cochrane Epilepsy Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL 2014, Issue 5)、MEDLINE(Ovid)、SCOPUS、PsycINFO、www.clinicaltrials.gov、その他国際会議議事録にて行い、言語による制限を設けなかった。 うつ症状に対し抗うつ薬治療を実施したてんかん小児および成人患者を対象とした、無作為化対照試験(RCT)および非無作為化コホート対照試験、非対照試験を検索した。介入群は、現行の抗てんかん薬レジメンに抗うつ薬を追加した患者とした。一方、対照群は現行のてんかん薬レジメンに、プラセボ、比較対照の抗うつ薬、心理療法のいずれかを追加、あるいは治療の追加なしの患者とした。 試験デザイン要素、患者背景、各試験のアウトカムを基にデータを抽出。主要アウトカムはうつ病スコアの変化(50%以上の改善を示した人数あるいは平均差)およびけいれん発作頻度の変化(発作の再発あるいはてんかん重積症の発作のどちらか、または両方を発症した患者の平均差あるいは人数)とした。副次アウトカムは有害事象、試験中止例数および中止理由とした。データ抽出は対象試験ごとに2人の執筆者がそれぞれ実施、これによりデータ抽出のクロスチェックとした。無作為化試験および非無作為化試験におけるバイアスの危険性を、コクラン共同計画の拡張バイアスリスク評価ツール(extended Cochrane Collaboration tool for assessing risk of bias)を使用して評価した。バイナリアウトカムは95%信頼区間(CI)を有するリスク比として示した。連続アウトカムは95%CIを伴う標準化平均差、そして95%信頼Clを伴う平均差として示した。可能であればメタ回帰法を用い、想定される不均一性の原因を調査する予定であったが、データ不足により断念した。 主な結果は以下のとおり。・8件の試験(RCTが3件と前向きコホート研究5件)、抗うつ薬治療中のてんかん患者471例を対象にレビューを行った。・RCTはすべて、抗うつ薬と実薬、プラセボまたは無治療との比較を行った単施設での試験であった。・5件の非無作為化前向きコホート研究は、主に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によりうつ病治療中の部分てんかん患者におけるアウトカムを報告するものであった。・すべてのRCTおよび1件の前向きコホート研究については、バイアスのリスクが不明確と評価された。他の4件の前向きコホート研究については、バイアスのリスクが高いと評価された。・うつ病スコアが50%以上改善した割合に対するメタ解析は、比較した治療が異なっていたため実施できなかった。・記述的分析の結果、レスポンダー率は、投与された抗うつ薬の種類によって24%~97%の幅が認められた。・うつ病スコアの平均差に関しては、シタロプラムを用いた2件の前向きコホート研究(計88例)の限定的なメタ解析が実施可能であった。同分析では、うつ病スコアにおける効果予測1.17 (95%CI:0.96~1.38)であり、エビデンスの質は低かった。・てんかん発作頻度に関するRCTのデータがなく、また前向きコホート研究においても、比較対照となる治療が異なるためメタ解析は実施できなかった。記述的分析の結果、SSRIを用いた3件の試験において、発作頻度の有意な上昇は認められなかった。・抗うつ薬の中止理由として、無効よりも有害事象によるものが多かった。・SSRIに関する有害事象として嘔気、めまい、鎮静、胃腸障害、性機能障害が報告された。・3件の比較研究を通し、解析に使用した試験の規模が小さく、比較のために参照した試験が各1件のみであるという理由から、エビデンスの質は中程度と評価した。・最後の比較研究に関しては、2件の参照試験における試験方法に問題があるという点でエビデンスの質が低いと評価した。・てんかん関連うつ症状に対する、抗うつ薬の有効性に関するエビデンスは非常に少なく、ベンラファキシンがうつ症状に対し統計学的に有意な効果を示した小規模なRCTが1件あるのみであった。・てんかん患者のうつ症状治療に際し、抗うつ薬またはその種類の選択に関し情報を提供する質の高いエビデンスはなかった。・今回のレビューでは、SSRIによる発作悪化という観点から、安全性に関するエビデンスの質は低く、また発作に使用できる抗うつ薬の種類や安全性の判定に使用可能な比較対照データはなかった。心理療法は、患者が抗うつ薬の服用を好まない場合や許容できない有害事象のある場合に対して考慮されるが、現在のところ、てんかん患者のうつ病治療として抗うつ薬と心理療法を比較しているデータはなかった。うつ病を有するてんかん患者を対象とした、さらに踏み込んだ抗うつ薬および心理療法に関する大規模コホート比較臨床試験が将来のよりよい治療計画のために必要である。関連医療ニュース どの尺度が最適か、てんかん患者のうつ病検出 てんかん患者のうつ病有病率は高い パロキセチンは他の抗うつ薬よりも優れているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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S3-02. NSABP B-36 A randomized phase III trial comparing six cycles of 5-fluorouracil (5-FU), epirubicin, and cyclophosphamide (FEC) to four cycles of adriamycin and cyclophosphamide (AC) in patients with node-negative breast cancer(Geyer Jr CE, USA)

NSABP B-36:リンパ節転移陰性乳がんにおいて6サイクルのFECと4サイクルのACを比較する無作為化第III相試験投与量はAC(60/600)x4、FEC(500/100/500) x6である(図1)。もともとはCOX2阻害剤であるセレコキシブの効果もみるための2x2要因試験であった。しかし、心毒性の問題からセレコキシブの投与は中止となり、2群として試験は継続された。主要評価項目はリンパ節転移陰性乳がんにおいてFEC-100がACよりDFSの延長において優れているかを評価するものである。副次的評価項目はOSの延長、毒性の比較、QOLの違いをみることである。統計学的仮説は、5年のDFSがACとFEC-100とで84.7%から89.2%に改善することをみるのに0.75のハザード比を検出することである。そのために80%の検出力で385のイベントが必要とされた。DFSの違いはタイプ1エラーレベル両側α=0.05で検定する層別化log rankテストで、ハザード比と信頼区間はCoxハザードモデルで評価した。【図1】図1を拡大する2014年1月31日の時点で、400のDFSイベントが報告されため、試験を終了し、予定された分析を行った。中央観察期間は82.8ヵ月(7年)であった。年齢は50歳未満が約40%、ホルモン受容体陰性が約35%、腫瘍径2cm未満が50.0%、グレード3が43~44%であった。人種は白人が約85%であった。乳房部分切除術は68%で施行され、トラスツズマブは10~11%で投与された。グレード3~4の毒性発現率は倦怠感、好中球減少性発熱、感染、口腔粘膜炎、血小板減少、血栓塞栓のイベントはいずれもFEC-100で高かった。化学療法中の死亡はACで2例(腸炎、その他の死)、FEC-100で5例(好中球減少性発熱、血栓塞栓症、心内膜炎、その他の突然死、その他の死)に認められた。DFS、OSともにまったく差を認めなかった(図2a,b)。本試験でのACのDFSは82.3%と仮説通りであり、FEC-100でも82.1%と数値上もまったく変化をもたらさなかったことから、リンパ節転移陰性陽性にかかわらず、この結果は十分われわれに意義をもたらすものである。遠隔再発もACで66例(4.8%)、FEC-100で63例(4.7%)と同等であった。サブセット解析ではERの状況で傾向に差があるが、薬剤の性質が類似していることから、この違いを意味のあるものと捉えることはできない(図3)。【図2a】図2aを拡大する【図2b】図2bを拡大する【図3】図3を拡大するつまりA(ドキソルビシン)をE(エピルビシン)にしても、投与量を増やしても、サイクル数を増やしても治療効果は上がらないということである。さて、ここで過去の報告を簡単に整理してみよう。多くのデータからAと同等の効果を及ぼすにはEは1.2から1.5程度(おそらく1.5)の増量が必要である。すなわちA60とE90がほぼ同等と推測される。一方、うっ血性心不全5%の発生頻度は、Aでは累積投与量400(Cancer. 2003; 97: 2869-2879.)、Eでは920(J Clin Oncol. 1998; 16:3502-3508.)となっているが、評価基準も対象も異なっており、安全性に関してもEがAより優っているとは安易に判断しないほうがよい。ドキソルビシンの投与量による効果の違いCALGB8541: N+において、CAFの投与量は300/30/300、400/40/400よりも600/60/600が治療効果が高い(J Natl Cancer Inst. 1998; 90: 1205-1211.)。CALGB9344: N+において、ACの投与量を60/600、75/600、90/600と上げても治療効果は変わらない(J Clin Oncol. 2003; 21: 976-983.)。Eも同様に限界を超えるとは通常考えにくいことから、E90程度が至適投与量と考えたほうがよいだろう。過去には主にCMFとの比較において、アントラサイクリンの投与量による効果が検証されているが、注意しなければならないのは、治療効果はconventional CMF>iv CMFなので、あくまでconventional CMFと比較したデータをみなければならない(conventional CMFは、classical CMF、oral CMFとも呼ばれている)。ドキソルビシンのサイクル数による効果の違いCALGB40101:N0から3ケ(N0が94%を占める)において、AC4サイクルと6サイクルで4年のRFSは変わらない(J Clin Oncol. 2012; 30: 4071-34076.)。本試験では単独のパクリタキセル(80mg/m2 毎週投与または175mg/m2 2週毎投与)でも4サイクルと6サイクルで比較しており、やはり全く差はなかった。ドキソルビシンとCMFの比較NSABP B-15: N+において、3年でAC (60/600) x4 =conventional CMF(J Clin Oncol. 1990; 8: 1483-1496.)。SWOG 8897: ハイリスクのN0において、CAF(60) x6 = conventional CMF.(J Clin Oncol. 2005; 23: 8313-8321.)。エピルビシンとCMFの比較(エピルビシンの投与量比較を含む)FASG05: N+において、10年で FEC (500/50/500) x6 < FEC (500/100/500) x6 (J Clin Oncol. 2005; 23: 2686-2693.)。N+において、4年でEC (60/500) x8 < EC (100/830) x8 = conventional CMF (J Clin Oncol. 2001; 19: 3103-3110.)。ICCG: N+ において、4.5年で FEC (600/50/600) x6 = conventional CMF (J Clin Oncol. 1996; 14: 35-45.)。NCIC.CTG MA.5: N+において、10年でCE(60x2)F = conventional CMF(J Clin Oncol. 2005; 23: 5166-5170.)。※ HER2過剰発現別にみると、HER2陰性では差がないが、陽性では有意差あり(OSにおける多変量解析)(Clin Cancer Res. 2012; 18: 2402-2412.)。Dose denseItaly: N0〜N+において、FEC(600/60/600) x6 2 weeks = 3 weeks(J Natl Cancer Inst. 2005; 97: 1724-1733.)。※ HER2過剰発現別にみると、HER2陰性で差ないが、陽性では有意差あり(OSにおける多変量解析)(Br J Cancer. 2005; 93: 7-14.)。またコントロール群がそもそも標準ではなく、何ら参考にならない試験もある。例…GEICAM: N0〜N+において、3-week FAC(500/50/500)x6 > 3-week CMF(600/60/600) x6 (Ann Oncol. 2003; 14: 833-842.)。このようにみてくると、乳がん術後補助療法においてエピルビシンがドキソルビシンに優っているとする根拠はそもそも乏しかったことがわかる。エピルビシンのコストはドキソルビシンよりも高いため、私たちはこのことを十分踏まえながら薬剤選択を行う必要があるだろう。【注】AC:ドキソルビシン+シクロホスファミドFEC:フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミドCMF:シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル

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「第29回日本医学会総会 2015 関西」事前参加登録 締切迫る!(1月31日)

 「第29回日本医学会総会 2015 関西」の開催が近づいてまいりました。メインテーマ「医学と医療の革新を目指して―健康社会を共に生きるきずなの構築―」のもと、少子超高齢社会に突入した現在が抱える医学・医療の問題について話し合います。 在宅医療や介護、終末期医療、持続可能な医療制度のほか、iPS細胞やロボット手術などの最先端医療、予防医学につながる先制医療、感染症のグローバル化など。多岐にわたるこれらの課題を「20の柱」に整理し分野横断的に議論します。 医学・医療を取り巻く課題の先送りは許されません。「第29回日本医学会総会 2015 関西」ではこれらの課題に正面から向き合います。一人でも多くの方のご参加をお待ちしています。1月31日(土)まで、事前登録受付中! 参加費割引と特典が付いており、お得です。参加登録はこちらから⇒ http://isoukai2015.jp/registration/【事前登録の特典】(1)「産業医セッション」事前申込(席数限定)   最新の残席情報⇒ https://reg-isoukai2015.jp/public/application/add/42(2)プレミアムツアー(先着順)  『普段見られない/入ることができない/体験できない』をテーマに、  総会参加者向けにプレミアムツアーをご用意いたしました。(3)託児室無料サービス(お申込みは1月30日まで)  詳しい情報はこちらから ⇒ http://isoukai2015.jp/registration/nursery.html■開催概要 学術講演    4月11日(土)~13日(月) 国立京都国際会館ほか 学術展示    4月10日(金)~13日(月) 京都市勧業館「みやこめっせ」ほか 一般公開展示  3月28日(土)~4月5日(日)神戸国際展示場ほか 医学史展    2月11日(水・祝)~4月12日(日) 京都大学総合博物館 医総会WEEK  4月4日(土)~12日(日) 京都劇場、メルパルク京都ほか■特別プログラム(敬称略) 開会講演 山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所) 記念講演 日野原 重明(一般財団法人 聖路加国際メディカルセンター) 閉会講演 稲盛 和夫(京セラ株式会社)■学術講演「20の柱」 公式ホームページでは、学術講演「20の柱」の要点をQ&A形式で掲載しています。 詳細はhttp://isoukai2015.jp/program/をご覧ください。■産業医セッション産業医セッションも残席が少なくなっておりますので、お早目にご登録ください! 詳しくは⇒http://isoukai2015.jp/registration/credits.html 残席情報⇒https://reg-isoukai2015.jp/public/application/add/42「第29回日本医学会総会 2015 関西」ホームページhttp://isoukai2015.jp/index.html

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事例34 鼻出血止血法の査定【斬らレセプト】

解説事例では、両側に実施したJ108 鼻出血止血法の1回分が算定要件誤りを表すD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)として査定となった。算定要件をみてみると、鼻出血止血法が区分される処置の部の通則6に「対称器官に係る処置の各区分の所定点数は、特に規定する場合を除き、両側の器官の処置料に係る点数とする」とある。特に規定する場合とは、「点数項目名の後に(片側)と表示されている場合」を指す。鼻出血止血法には(片側)の表示がない。一側、両側の区別なく1回につき所定点数を算定することとなる。また、1回につきとは「診察料の算定ごとに1回」と解釈されている。レセプトをみてみると診察料は初診料1回のみの算定であった。したがって、鼻出血止血法は1回の算定しか認めないとして査定となった。このように算定回数に制限のある診療行為に対しては、レセプト点検時に回数過剰となっていないか確認を行うことが必要となる。

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第5回医療法学シンポジウム 開催のご案内

 現在、全国の医療機関において、医療安全を目的とした院内事故調査が行われています。また、2014年6月、紆余曲折を経て、いわゆる医療事故調査制度が創設されることとなり、2015年10月以降には、医療事故調査・支援センターにおいても事故調査が行われることとなります。 これらの調査において行われる聞き取り調書や事故調査委員会での議事録、内部検討のための意見書といった内部文書や事故調査報告書といった各種文書は、医療安全のために収集、作成されたものであり、責任追及や説明責任など、目的外に使用されることが許されないのは当然のことです。 しかし、その一方で、民事訴訟における文書提出命令のように、法律に基づく強制的な文書開示手続が存在します。これらの手続きを用い、責任追及等のために内部文書や事故調査報告書が用いられることとなれば、せっかくの医療安全のための制度が崩壊してしまいます。 本シンポジウムでは、個人情報保護法、民事訴訟法、刑事訴訟法上、どのように文書開示手続が定められており、判例はどのように考えているのかを明らかにし、院内事故調査や医療事故調査制度が円滑に進むためにはどのような対応が必要かを検討します。 司法と医療の相互理解の促進という「医療法学」の世界にぜひ、触れてみてください。【テーマ】 医療事故調査報告書、及び、聞き取り調査書等内部資料と文書提出命令等証拠開示手続との関係■開催概要 【日時】 2015年2月15日(日) 【時間】 13:00~17:00(レセプション 17:30~[有料3,000円]) 【会場】 東京大学(本郷キャンパス)医学部附属病院 入院棟A15階 大会議室      (〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1) 【費用】 無料 【対象】 医師、看護師、医療従事者、医学生など〔プログラム〕 ・医療事故調査の実際 医療安全を目指す上で必要な事項  (山田 奈美恵[東京大学医学部附属病院総合研修センター特任助教:医師]) ・個人情報保護法に基づく開示請求  (小島 崇宏[大阪A&M法律事務所:医師、弁護士]) ・民事訴訟・保全において用いられる開示手続  (山崎 祥光[井上法律事務所:弁護士、医師]) ・刑事捜査・訴訟において用いられる開示手続  (大滝 恭弘[帝京大学医学部准教授:医師、弁護士]) ・患者側弁護士からの視点  (米山 隆一[おおたか総合法律事務所:医師、弁護士]) ・各手続に対する対応方法  (大磯 義一郎[浜松医科大学医学部教授(医療法学)、帝京大学医療情報システム研究センター客員教授:医師、弁護士])--パネルディスカッション--●参加をご希望される方は、氏名、所属、連絡先、レセプション参加希望の有無を記載のうえ、事務局宛(lawjimu@hama-med.ac.jp)までお申し込みください。

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2014年 医療ニュース「いいね!」ランキング

2014年にCareNet.comに掲載した医療ニュースのなかで「いいね!」ボタンが押され、Facebookでシェアされたもの、トップ20を発表します。最新の医学情報はもちろん、食事や運動など私たち自身の健康に関わる話題も多くランクインしました。 1位 タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA (2014/1/16) 2位 体幹を鍛える腹部ブレーシング、腰痛に効果 (2014/5/7) 3位 歩数を2,000歩/日増加させれば心血管リスク8%低下/Lancet (2014/1/8) 4位 緑茶が認知機能低下リスクを減少~日本の前向き研究 (2014/6/3) 5位 認知症のBPSD改善に耳ツボ指圧が効果的 (2014/10/28) 6位 コーヒーを多く飲む人は顔のシミが少ない (2014/8/7) 7位 タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究 (2014/6/18) 8位 うつ病と殺虫剤、その関連が明らかに (2014/7/9) 9位 変形性股関節症への理学療法、害あって利なし/JAMA (2014/6/5) 10位 食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究 (2014/9/12) 11位 なぜコーヒーでがんリスクが低下? (2014/7/31) 12位 糖尿病予防には歩くよりヨガ (2014/8/4) 13位 原因不明の慢性腰痛は姿勢制御の障害が原因か (2014/4/2) 14位 回復期リハ退院後の30日再入院率は11.8%/JAMA (2014/2/24) 15位 アトピー性皮膚炎患者が避けるべきスキンケア用品 (2014/2/6) 16位 牛乳1日3杯以上で全死亡リスクが2倍/BMJ (2014/11/13) 17位 日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究 (2014/6/20) 18位 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 (2014/5/8) 19位 骨折リハビリ後の高齢者に在宅運動療法は有用か?/JAMA (2014/3/6) 20位 コーヒーをよく飲む糖尿病者はうつが少ない (2014/11/18) .dl_yy {width: auto;} .dl_yy dt{width: 50px;}

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医師が選んだ2014年の10大ニュース! 1位はやはり、あの騒動 【CareNet.com会員アンケート結果発表】

1位 STAP細胞の発表論文に不正発覚 STAP細胞は、一度分化した細胞に外部刺激を加えることで再び分化能を獲得したという生物界の常識を覆す大発見であった。論文筆頭著者である小保方 晴子氏が若い女性であったこともあり、大きな注目を集めた。 しかし、世界中の研究者が追試をしてもSTAP細胞を作製できなかった。そのような中、論文の共著者である若山 照彦氏(山梨大教授)が、論文と理化学研究所(理研)発表文書の矛盾点や画像の誤りを発表し、論文の撤回を呼び掛けた。その後、理研の調査委員会が本論文に対する不正を認定、7月2日の論文撤回に至った。 その後、理研の検証チームおよび小保方氏独自の検証実験が行われたが、STAP細胞を再現できなかった。これにより、STAP細胞が存在しない可能性がさらに高まった。 2位 エボラウイルスの感染拡大 エボラ出血熱がギニア、シエラレオネ、リベリアなど、西アフリカで蔓延した。スペインやアメリカにおいても、この地域からの帰国者が感染していることが確認された。現在、エボラ出血熱に対する治療薬やワクチンが臨床試験中であり、WHO、国境なき医師団など、世界中から支援の手が差し伸べられている。 出典:国立感染症研究所 3位 消費税が5%から8%に 4月1日、消費税が5%から8%に引き上げられた。消費税引き上げは17年ぶり。当初、政府やエコノミストは、増税当初の経済活動はいったん落ち込むが夏場から回復すると見込んでいた。しかし、回復は遅れ、来年10月に予定されていた10%への引き上げは、17年4月に延期された。 4位 臨床試験の不正が相次ぎ発覚 製薬会社社員の関与、不適切な資金提供、データ捏造など、臨床試験の不正が相次いで明らかとなった。ディオバン問題では逮捕者も出て、日本発臨床研究の信頼が大きく揺らいだ。 5位 ノーベル物理学賞を日本人が受賞 ノーベル物理学賞を赤崎 勇(名城大教授)、天野 浩(名古屋大教授)、中村 修二(カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)の3氏が受賞した。授賞理由は、実用的青色発光ダイオード(LED)の開発。日本人のノーベル賞受賞は、22人となった。 6位 デング熱が日本で流行 7位 御嶽山が噴火 8位 ソチ五輪開幕 羽生選手が金メダル 9位 テニスの錦織選手が全米オープンで決勝進出 10位 朝日新聞が吉田調書と慰安婦問題で謝罪 #feature2014 dt{width:50px;}

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第15回

第15回:医療通訳士がいると外国人患者に対する医療の質と安全が高まる監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 近年、日本への外国人観光客が増えており、日本政府観光局によると2014年1月から10月までの訪日外客数は前年同期比27%増の1,100万9,000人で過去最高を記録しています1)。また、仕事や留学などで一定期間滞在する外国人も同様に増えており、法務省によると2014年6月末での在留外国人は前年同期比1.8%増の208万6,603人 です2)。そのため医療機関を受診する外国人は今後、都市部を中心に増えていくことが予想されます。しかし、国内では医療現場における通訳を専門とする「医療通訳士」について厚生労働省が作成した「医療通訳育成カリキュラム」はあるものの3)、統一した医療通訳養成課程や国家資格、また通訳登録システム等は存在せず、ボランティアやNGOの活動に頼っているのが現状です4)。また、言語の壁や習慣の違いから生じる医療トラブルも報告されており4)、外国籍の人に対する医療の質と安全、患者満足度を高めるためにも医療通訳について理解を深めたいところです。 以下、American Family Physician 2014年10月1日号5) よりアメリカには2,500万人以上の「英語をうまく話せない」人がおり、これらの人は適切な医療を受けることができず健康状態が悪くなる、または医療現場での患者満足度が低下する等の悪影響を認めている。このような問題に対して医療通訳士を介入させた場合、次のような有益性が報告されている。◆医療通訳士がもたらす有益性 患者医療者間のコミュニケーションエラーを減らす 患者満足度を向上させる 患者と医療者の双方が病状や説明について的確に理解できる 患者が医療を適切に利用できる 医療過誤を減らす 入院期間と30日以内の再入院率を減らす 一方で、医療通訳を専門的にトレーニングされていない者(家族や友人など)が通訳した場合には、次のような問題が報告されている。◆医療通訳士ではない者が通訳した場合の問題 小児は内容を理解できないことがある 家族は個人的な問題を抱えていることがある 医療者が伝えていない事を通訳士が勝手にアドバイスしたり、余計なアドバイスを与えることがある 守秘義務が保証されていない 入院期間の長期化や再入院のリスクが高くなる 通訳者と患者の間で不要な会話が生じて問診に支障が生じることがある 家族や友人に通訳させる場合は、患者のプライベートなことや性的なことについて十分に聞けないことがある 医学用語に不慣れなため誤解や誤訳が生じることがある また、医療通訳士を介入させた場合でも、次のような問題がよくみられるため注意が必要である。 問題:通訳に話しかけてしまう 対応:患者に直接話しかける 問題:通訳者と患者の間で会話や質疑が続いてしまう 対応:一文ごとに通訳してもらい、患者と直接コミュニケーションを図る 問題:複数の難しい問題についての議論に陥ってしまう 対応:要点を3つ以下に絞って話を進める 問題:話が横道に逸れてしまう 対応:一文ごとに通訳してもらう 問題:通訳者の技量不足に影響を受ける 対応:可能な限り有資格者の医療通訳士に依頼する 問題:患者から離れた場所に通訳者が座っている 対応:患者の隣、あるいはすぐ後ろに座ってもらう 問題:通訳者に同意書へ署名してもらう、治療に関わる同意書へ通訳者が署名する 対応:通訳者ではなく患者関係者に同意書へ署名してもらう 問題:家族や友人に通訳してもらう 対応:可能な限り有資格者の医療通訳士に依頼する 問題:通訳者が「彼は~といっている」など三人称を用いて話をしてしまう 対応:通訳者に「私は~です」と一人称を用いて話をしてもらう 以上のことから、英語を十分に話せない外国人患者に対してはコミュニケーションエラーを減らし、臨床経過を改善させ、患者満足度を向上させるために訓練を受けた医療通訳士を介入させる必要がある。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本政府観光局.統計発表 平成26年 訪日外客数・出国日本人数 (2014年11月19日公表) 2) 法務省.在留外国人統計(旧登録外国人統計)2014年6月末 (参照:2014年11月22日) 3) 厚生労働省.医療通訳に関する資料 (参照:2014年11月22日) 4) カレイラ松崎順子・杉山明枝.東京未来大学研究紀要.2012;5:21-29. 5) Juckett G, et al.Am Fam Physician. 2014; 90: 476-480.

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外科手術無作為化試験の2割が早期中断/BMJ

 英国・リーズ大学のStephen J Chapman氏らは、外科手術無作為化試験について早期に中断した試験、および未公表の試験がどれくらい存在するのかを調べた。その結果、早期中断率は21%であり、完了後に結果を公表した試験は66%であったことなどを明らかにした。著者は、外科手術試験は実行に困難が伴い資金もかかるが、今回の調査で資源の浪費の証拠が見つかったとして、リスクを覚悟で協力してくれる患者への倫理的観点からも、試験の効率や透明性を高めるために、研究ガバナンスのフレームワークを変えていく必要があると指摘している。BMJ誌オンライン版2014年12月9日号掲載の報告。ClinicalTrials.govデータベースで登録、公表試験を調査 研究グループは、外科手術無作為化試験の早期中断率と未公表率を調べるため、登録された試験と公表された試験を横断的観察研究にて調べた。ClinicalTrials.govデータベースにて、2008年1月~2009年12月に登録されたインターベンショナルな試験について「手術(surgery)」をキーワードに、非小児科部門の第III~IV相臨床試験を検索した。ピアレビュー誌に発表された試験も系統的に探索した。見つからない場合はClinicalTrials.govデータベースに記録された結果を探索した。 また、中断試験および完了後未公表試験について、その理由が開示されていない場合は、担当研究者に電子メールを送った。5件に1件が中断、完了後も3件に1件が未公表 キーワード検索(手術)で818件の登録試験が見つかった。そのうち適格基準を満たした395件について分析した。 早期に中断となっていた試験は21%(81/395件)で、その理由は「被験者の充足不足(44%、36/81件)」が最も多かった。 一方、完了試験314件(79%)のうち、公表していたのは66%(208/314件)であった。試験完了から発表までの期間中央値は4.9年(範囲:4.0~6.0年)であった。 ピアレビュー誌に発表がなく、ClinicalTrials.govデータベースにおいて結果が見つかった試験は6%(20/314件)存在した。 資金提供と試験中断の有意な関連は認められなかったが(補正後オッズ比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.54~1.55、p=0.735)、資金提供は完了試験の公表率の低さと有意な関連がみられた(同:0.43、0.26~0.72、p=0.001)。 また、試験研究者の電子メールアドレスが見つかった割合は、中断試験群は71.4%(10/14件)、未公表試験群は83%(101/122)であった。しかし実際に連絡が取れて回答が得られたのは、それぞれ43%(6/14件)、20%(25/122件)にとどまった。回答が得られたのは、紙媒体で公表されていた試験11件と、その他で公表されていた5件(うち4件はピアレビュー誌のインデックスにはなし)、未公表試験では9件であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「外科手術無作為化試験は、5件に1件が早期中断になっており、3件に1件は完了後も未公表であった。そして未公表試験の研究者と接触できない頻度が高かった。今回の結果は、研究資源が浪費されている実態を示すものである。臨床データの隠蔽や、リスクを負って治験に参加した患者の協力が無駄になっており、倫理的懸念をもたらすものである」と述べ、「試験の効率性、透明性を高め、こうした懸念を払拭する研究ガバナンスのフレームワークを構築していかなければならない」と提言している。

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