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内分泌・代謝・糖尿病内科「SGLT-2阻害薬の使い方」【臨床実習を味わうケアネット動画Café】第5回

動画解説臨床研修サポートプログラムの研修医のための内科ベーシック5内分泌・代謝・糖尿病内科より、 前野哲博先生と岩岡秀明先生の「SGLT-2阻害薬の使い方」を鑑賞します。ジェネラリストとスペシャリストの対談って貴重でとてもわかりやすいんです!CareNeTVの大人気シリーズ!

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前夜が超高温だった日は脳卒中リスクが増大

 夜間の暑熱曝露と脳卒中との関連を調べた15年間にわたる時間層別ケースクロスオーバー解析によって、前夜が極端な暑さだった日は脳卒中のリスクが有意に高く、2006~12年と比較して2013~20年はそのリスクが増大していたことを、ドイツ・Helmholtz Zentrum MunchenのCheng He氏らが明らかにした。European Heart Journal誌2024年6月21日号掲載の報告。 都市部のヒートアイランド現象により、ここ数十年で夜間の気温は昼間の気温よりも急速に上昇している。夜間の暑熱曝露の増加は、睡眠や体温調節などを妨げて健康に重大なリスクをもたらす可能性があるが、脳卒中リスクに及ぼす影響を調査した研究はない。そこで研究グループは、ドイツのアウクスブルク地域における夜間の暑熱曝露と脳卒中リスクとの関連性を調査し、15年間にわたる時間的変動を調べた。 対象は、2006年1月1日~2020年8月31日にアウクスブルク大学病院神経科に入院した脳卒中患者2万2,284例であった。そのうち、寒い季節に室内暖房によって引き起こされる大幅な温度差を避けるために、5~10月に発生した脳卒中症例に限定して解析を行った。平均気温、相対湿度、気圧などの1時間ごとの気象データは地元の気象観測所から取得した。分布ラグ非線形モデルを用いた時間層別ケースクロスオーバー解析によって、日中の最高気温やその他の気候変数を調整したうえで、高温夜間過剰(hot night excess[HNE])指数で測定した極端な夜間の暑さ(extreme nighttime heat:HNEの97.5パーセンタイル)に関連する脳卒中リスクを推定した。なお、本研究において、「夜間」は前日の夜の始まりから当日朝の夜の終わりまでであった。 主な結果は以下のとおり。・2006~20年の5~10月に脳卒中のために入院した1万1,037例(平均年齢:71.3歳)を解析に含めた。2006~12年は5,343例、2013~20年は5,694例であった。・2006~12年から2013~20年にかけて平均気温は0.3度上昇し、最高気温は0.7度上昇した。極端な夜間の暑さの日は79日から82日に増加した。・調査期間全体では、極端な夜間の暑さの日に脳卒中リスクが有意に増加していた。オッズ比(OR)は1.14(95%信頼区間[CI]:1.01~1.32)であった。・期間別では、2006~12年は夜間の極端な暑さの影響はみられなかったが(OR:0.99[95%CI:0.91~1.08])、2013~20年は有意な影響がみられた(OR:1.33[95%CI:1.18~1.50])。・2006~12年では、夜間の極端な暑さは年間2例の脳卒中の過剰発生に関連していたが、2013~20年では33例の過剰発生と関連していた。・高齢者、女性、軽度の脳卒中患者では、脳卒中リスクが顕著に増大していた。 これらの結果より、研究グループは「昼間の最高気温を考慮しても夜間の暑熱曝露が脳卒中リスクの上昇と関連していて、2006~12年と比較して2013~20年ではこのリスクが大幅に増大していた。日中の温暖化よりも夜間の温暖化が著しく進むと予測される状況において、夜間の暑熱曝露が脳卒中イベントに及ぼす影響を軽減するための予防措置が必要である」とまとめた。

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産婦人科「産科外来での研修」【臨床実習を味わうケアネット動画Café】第4回

動画解説臨床研修サポートプログラムの研修医のための産婦人科ベーシックより、柴田 綾子先生の「産科外来での研修」を鑑賞します。妊娠週数ごとの注意点を知っておかなければ妊婦さんを診ることはできません。産科診療のすべての基本となるレクチャーです。

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腎機能低下RAへの生物学的製剤、安全性・有効性が明らかに

 血液透析(HD)患者を含む慢性腎臓病(CKD)を併存する関節リウマチ(RA)患者の治療薬についてのエビデンスは限られている。今回、虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らはCKD患者における生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)の有効性・安全性を明らかにした。腎機能低下群においてもbDMARDの継続率はおおむね保持され、とくに、インターロイキン-6(IL-6)阻害薬は、推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者で薬剤継続率が有意に高く、無効による中止が少なかったことから、IL-6阻害薬はほかの bDMARDと比較し、単剤での治療がより有効であることを示唆した。Annals of the Rheumatic Diseases誌オンライン版2024年7月4日号掲載の報告。 本研究は、国内のHD患者を含むCKDを伴うRA患者において、最初に用いられたbDMARDの有効性・安全性を評価することを目的に、2004~21年に2つの医療機関でbDMARDを新規処方されたRA患者425例を対象に後ろ向きコホート研究を実施した。対象患者を腎機能レベルと処方されたbDMARDの作用機序別(TNFα阻害薬、IL-6阻害薬、アバタセプト[CTLA-4 Ig])で分類し、bDMARDの初回処方日から(1)最初のbDMARDの中止、(2)全死因死亡、(3)中止(追跡不能による打ち切り/2021年12月末の観察期間終了に伴う打ち切り)のいずれか早い日まで追跡調査した。 主要評価項目は薬剤の36ヵ月継続率で、副次評価項目は疾患活動性評価-C反応性蛋白/赤血球沈降速度(DAS28- CRP/ESR)の変化、プレドニゾロン投与量、薬剤中止理由(無効、感染、副作用、その他)などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・CKDステージはG1:165例、G2:140例、G3a:36例、G3b:14例、G4:27例、G5:43例だった。・処方の内訳はTNFα阻害薬347例(インフリキシマブ:112例、エタネルセプト:98例、セルトリズマブ:65例、ゴリムマブ:45例、アダリムマブ:27例)、IL-6阻害薬36例(トシリズマブ:34例、サリルマブ:2例)、アバタセプト42例だった。・eGFR(mL/分/1.73m2)区分を≥60、30~60、<30の3つに分け、薬剤の作用機序別に36ヵ月継続率を調査したところ、全bDMARD(45.2%、32.0%、41.4%)、TNFα阻害薬(45.3%、28.2%、34.0%)、IL-6阻害薬(47.4%、66.7%、71.4%)、アダパセプト(42.9%、37.5%、33.3%)であった。・腎機能低下群においてもbDMARDの継続率はおおむね保持されたが、eGFR<30患者のTNFα阻害薬の継続率はGFR≥60と比較し有意に低かった。・一方、IL-6阻害薬はeGFR<30患者において最も継続率が高く、無効による中止率も最も低かった (ハザード比:0.11、95%信頼区間:0.02~0.85、p=0.03)。・eGFR<30の患者のサブ解析において、HD患者と非HD患者でbDMARDの36ヵ月継続率に有意差を認めなかった。・全bDMARDは、すべてのグループにおいてDAS28-CRP/ESRを改善し、プレドニゾロンの投与量を減らした。・CKDが進行してもbDMARDの薬剤継続率は大幅に低下しなかった。 研究者らは「本研究結果より、HD患者を含むCKD合併RA患者に対する効果的かつ安全な治療選択肢として bDMARD、とくにIL-6阻害薬の検討を支持する」としている。

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日本人で増加傾向の口腔がん、その最大要因とはー診療ガイドライン改訂

 『口腔癌診療ガイドライン2023年版 第4版』が昨年11月に4年ぶりに改訂された。口腔がんは歯科医も治療を担う希少がんだが、口腔がんを口内炎などと見間違われるケースは稀ではないという。そこで今回、日本口腔腫瘍学会学術委員会『口腔癌診療ガイドライン』改定委員会の委員長を務めた栗田 浩氏(信州大学医学部歯科口腔外科学 教授)に口腔がんの疫学や鑑別診断などについて話を聞いた。 本ガイドライン(以下、GL)では、日常的に出くわす臨床疑問に対してClinical Question(CQ)を設定、可能な限りのエビデンスを集め、GRADEアプローチに準じ推奨を提案している。希少がんであるがゆえ、少ないエビデンスから検証を行っていることもあり、FRQ(future research question)やBQ(background question)はなく、すべてがCQだ。同氏は「アナログな手法ではあるが、システマティック・レビューで明らかになっているCQの “隙間を埋める”ように、明らかにされていない部分のCQを作成し、全部で60個を掲載した」と作成経緯を説明した。口腔がん、日本人で多い発生部位やその要因 口腔がんとは、顎口腔領域に発生する悪性腫瘍の総称である。病理組織学的に口腔がんの90%以上は扁平上皮がんであり、そのほかには小唾液腺に由来する腺系がんや肉腫、悪性リンパ腫、転移性がんなどがあるが、本GLでは最も頻度が高い口腔粘膜原発の扁平上皮がんを「口腔がん」として記している。 口腔がんの好発年齢は50歳以降で加齢とともに増加し、男女比3:2と男性に多いのが特徴である。これまで国内罹患数は年間5,000~8,000人で推移していたが、近年の罹患数は年間1万人と増加傾向にあるという。これについて栗田氏は「もともと世界的にはインドや欧州での罹患率が高いが、日本人で増えてきているのは高齢化が進んでいることが要因」とコメントした。部位別発生率については、2020年の口腔がん登録*の結果によると、舌(47.1%)、下顎歯肉(18.4%)、上顎歯肉(11.9%)、頬粘膜(8.6%)、口底(6.6%)、硬口蓋(2.6%)、下顎骨中心性(1.7%)、下唇(0.8%)で、初診時の頸部リンパ節の転移頻度は25%、遠隔転移は1%ほどである。*日本口腔外科学会および日本口腔腫瘍学会研修施設における調査。扁平上皮がん以外も含む。 また、口腔がんの場合、口腔以外の部位にがんが発生(重複がん)することがあり、重複がんの好発部位と発生頻度は上部消化管がんや肺がんが多く、11.0~16.2%に認められる。これはfield cancerizationの概念1,2)で口腔と咽頭、食道は同一の発がん環境にあると考えられているためである(CQ1、p.80)。 これまで、全国がん登録を含め口腔がんの統計は口腔・咽頭を合算した罹患数の集計になっていたため、口腔がん単独としては信頼性の高いデータは得られていなかった。同氏は「咽頭がんと口腔がんでは性質が異なるので別個の疾患として捉えることが重要」と、口腔がんと咽頭がんは別物であることを強調し、「本GLに記されている罹患率は口腔がん登録のものを記しているため、全国がん登録の罹患状況とは異なる。その点に注意して本GLを手に取ってもらいたい。今後、口腔がんに特化したデータの収集を行うためにも口腔がん登録が厳正に進むことを期待する」と説明した。口腔がんが疑われる例、現在の治療法 口腔がんが生じやすい部位や状態は、舌がん、歯肉がん、頬粘膜がんの順に発生しやすく、鑑別に挙げられる疾患として口内炎、歯肉炎、入れ歯による傷などがある。「もし、口内炎であれば通常は3~4日、長くても2週間で治る。この期間に治らない場合や入れ歯が合わないなどの原因をなくしても改善しない場合、そして、白板症、紅板症のような前がん病変が疑われる場合は歯科や口腔外科へ紹介してほしい。またステロイド含有製剤の長期投与はカンジダなど別疾患の原因となる可能性もあり避けてほしい」と話した。 口腔がんの治療は主に外科療法で、口腔を含む頭頸部がんにも多くの薬剤が承認されているが、薬物療法のみで根治が得られることは稀である。再発リスク因子(頸部リンパ節節外進展やその他リスク因子)がある場合には、術後化学放射線療法や術後放射線療法を行うことが提案されている(CQ33、p.146)。外科手術や放射線療法の適応がない切除不能な進行がんや再発がんにおいては、第1選択薬としてペムブロリズマブ/白金製剤/5-FUなどが投与されるため、がん専門医と連携し有害事象への対応が求められる。口腔がんの予防・早期発見、まずは口腔内チェックから 口腔がんの主な危険因子(CQ2~4、p.81~85)として喫煙や飲酒、合わない入れ歯による慢性的な刺激、そしてウイルス感染(ヒトパピローマウイルス[HPV]やヒト免疫不全ウイルス[HIV]など)が挙げられるが、「いずれも科学的根拠が乏しい。早期発見が最も重要であり、50歳を過ぎたら定期的な口腔内チェックが重要になる」と強調した。 現在、口腔以外の疾患で入院している患者では周術期などの口腔機能管理(口腔ケア、栄養アセスメントの観点からの口腔内チェックなど)が行われており、その際に口腔がんが発見されるケースもある。健康で病院受診をしていない人の場合には、近年では各歯科医師会主導の集団検診や人間ドックのオプションとして選択することがリスク回避の場として推奨される。同氏は「歯周病検診は口腔機能をチェックするために、口腔がん検診は生活習慣病の一貫として受けてほしい。口腔がん検診は目に見えるため容易に行えるほか、前がん病変、口腔扁平苔癬、鉄欠乏性貧血、梅毒による前がん状態などの発見にもつながる」と説明した。 最後に同氏は「口腔がんは簡単に見つけられるのに、発見機会が少ないがゆえに発見された時点で進行がんになっていることが多い。進行がんでは顔貌が変化する、食事は取りづらい、しゃべることが困難になるなど、人間の尊厳が奪われ、末期は悲惨な状況の患者が多い。そのような患者を一人でも減らすためにも早期発見が非常に重要」とし、「診察時に患者の話し方に違和感を覚えたり、食事量の低下がみられたりする場合には、患者の口腔変化を疑ってほしい」と締めくくった。

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卵巣がんリスク、卵巣子宮内膜症/深部子宮内膜症では9.7倍/JAMA

 卵巣がんのリスクは、卵巣子宮内膜症や深部子宮内膜症を有する女性で顕著に高いことを、米国・ユタ大学のMollie E. Barnard氏らが、ユタ州住民データベース(Utah Population Database:UPDB)を用いたコホート研究の結果を報告した。子宮内膜症は卵巣がんのリスク増加と関連しているが、子宮内膜症のサブタイプと卵巣がんの組織型との関連は十分に明らかになっていなかった。著者は、「卵巣子宮内膜症ならびに深部子宮内膜症を有する女性は、卵巣がんのリスクと予防に関するカウンセリングによって恩恵を受ける可能性がある。スクリーニングと予防研究の対象として重要な集団となるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年7月17日号掲載の報告。1,100万人以上の住民データベースを用い子宮内膜症と卵巣がんのリスクを解析 研究グループは、ユタ州の1,100万人以上の情報を含むUPDBを用い、1992~2019年に子宮内膜症と診断された18~55歳の女性7万8,893例を同定し、出生年と出生地(ユタ州/それ以外)に関して1対5の割合でマッチさせた子宮内膜症を有していない女性37万9,043例(対照群)から成るコホートを構築した。 主要アウトカムは卵巣がんで、子宮内膜症の各サブタイプと卵巣がんの組織型との関連について、ロバスト分散推定によるCox比例ハザードモデルを用い、対照群に対する症例群の補正後ハザード比(aHR)とその95%信頼区間(CI)を算出するとともに、一般化線形モデルを用いて1万人当たりの補正後リスク差(aRD)を推定した。 子宮内膜症は、電子健康記録を用いて腹膜病変、卵巣子宮内膜症、深部子宮内膜症、卵巣子宮内膜症と深部子宮内膜症の併存、またはその他の5つに分類した。 また、卵巣がんについては、I型卵巣がん(類内膜がん、明細胞がん、粘液性がん、低異型度漿液性がん)、およびII型卵巣がん(高異型度漿液性がん)に分類した。子宮内膜症群では卵巣がんのリスクは4.2倍 解析対象は、初期コホートからベースライン時点でがん罹患歴のある症例、死亡、両側卵巣摘出およびindex date以前に卵巣がん診断歴のある症例を除外した45万906例(子宮内膜症群7万8,476例、対照群37万2,430例)で、子宮内膜症群の初回診断時の平均年齢は36歳(SD 10)であった。 子宮内膜症群は対照群と比較して、卵巣がんのリスクが高く(aHR:4.20[95%CI:3.59~4.91]、aRD:9.90[95%CI:7.22~12.57])、中でもI型卵巣がんのリスクが高かった(7.48[5.80~9.65]、7.53[5.46~9.61])。 子宮内膜症のサブタイプ別では、深部子宮内膜症および/または卵巣子宮内膜症を有する女性で卵巣がんのリスクが高く、全卵巣がん(aHR:9.66[95%CI:7.77~12.00]、aRD:26.71[95%CI:20.01~33.41])、I型卵巣がん(18.96[13.78~26.08]、19.57[13.80~25.35])、およびII型卵巣がん(3.72[2.31~5.98]、2.42[-0.01~4.85])であった。

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感謝の気持ちは寿命を延ばす

 感謝の気持ちを持つことは長生きの秘訣となる可能性が、新たな研究で示唆された。Nurses’ Health Study(NHS)に参加した4万9,000人以上の女性を対象にしたこの研究では、感謝の気持ちを測定する質問票での得点が高かった女性では、低かった女性に比べてあらゆる原因による死亡(全死亡)のリスクが9%低いことが明らかになったという。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のYing Chen氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Psychiatry」に7月3日掲載された。 Chen氏は、「感謝の気持ちを持つことで精神的苦痛が軽減する一方で、感情的ウェルビーイングと社会的ウェルビーイングは向上する可能性のあることは、過去の研究で示唆されている。しかし、感謝の気持ちと身体的健康との関連について分かっていることは少ない」と話している。 今回の研究では、NHS参加女性4万9,275人(ベースライン時の平均年齢79歳)を対象に、感謝の気持ちと全死亡および原因別死亡との関連が検討された。対象女性は2016年に、感謝の気持ちを評価する質問票に回答していた。この質問票は、「私の人生には、ありがたいと思うものがとても多い」や「感謝の気持ちを感じるものをリストアップすると大変長くなる」などの6項目の質問に、1(全く同意しない)から7(強く同意する)で回答する内容だった。対象者の死亡(全死亡、原因別死亡)については2019年12月まで追跡された。 平均3.07年にわたる追跡期間中に4,608人の死亡が確認された。最も多かった死因は心血管疾患(1,364人)であり、そのほかの死因は、呼吸器疾患、がん、神経変性疾患などだった。質問票の回答を総計したスコアに応じて対象者を高・中・低の3群に分け、ベースライン時の社会人口学的特性や社会・宗教的参加、メンタルヘルスなどを調整して解析した結果、高スコア群では低スコア群に比べて全死亡リスクが9%低いことが明らかになった(ハザード比0.91、95%信頼区間0.84〜0.99)。また、死因別に解析したところ、心血管疾患による死亡と感謝の気持ちは逆相関の関係にあり、高スコア群では低スコア群に比べて同死亡リスクが15%有意に低い(同0.85、0.73〜0.995)ことが示された。そのほかの死因(がん、呼吸器疾患、神経変性疾患、感染症、外傷、その他)でもリスク低下は認められたが、統計学的に有意ではなかった。 こうした結果を受けて研究グループは、「これらの結果に基づくと、人は感謝の気持ちを抱くものに心を傾けることで、健康を改善できる可能性がある」と述べている。またChen氏は、「先行研究では、週に数回、感謝していることを書き出したり話し合ったりするなど、意図的に感謝の気持ちを育む方法があることが示されている。健康的な老化の促進は公衆衛生の優先事項である。今後の研究で、長寿を増進する心理的資源としての感謝の気持ちに対する理解が深まることを期待している」と述べている。

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コロナ罹患後症状の累積発生率、変異株で異なるか/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染後に生じる罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)は多くの臓器システムに影響を及ぼす可能性がある。米国・退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らは、パンデミックの間にPASCのリスクと負担が変化したかを調べた。感染後1年間のPASC累積発生率はパンデミックの経過に伴って低下したが、PASCのリスクはオミクロン株が優勢になった時期のワクチン接種者においても依然として持続していることが示された。NEJM誌オンライン版2024年7月17日号掲載の報告。各株優勢期別に、SARS-CoV-2感染後1年間のPASC累積発生率を推定 研究グループは、退役軍人省の健康記録を用いて、COVID-19パンデミックのプレデルタ株優勢期、デルタ株優勢期、オミクロン株優勢期におけるSARS-CoV-2感染後1年間のPASC累積発生率を推定した。 試験集団は、2020年3月1日~2022年1月31日にSARS-CoV-2に感染した退役軍人44万1,583例と、同時期の非感染対照474万8,504例で構成された。ワクチン接種者のオミクロン株優勢期とデルタ株優勢期の差は-1.83件/100人 ワクチン非接種のSARS-CoV-2感染者において、感染後1年間のPASC累積発生率は、プレデルタ株優勢期では10.42件/100人(95%信頼区間[CI]:10.22~10.64)、デルタ株優勢期では9.51件/100人(9.26~9.75)、オミクロン株優勢期では7.76件/100人(7.57~7.98)であった。オミクロン株優勢期とプレデルタ株優勢期の差は-2.66件/100人(-2.93~-2.36)、オミクロン株優勢期とデルタ株優勢期の差は-1.75件/100人(-2.08~-1.42)であった。 ワクチン接種者では、1年時点のPASC累積発生率は、デルタ株優勢期では5.34件/100人(95%CI:5.10~5.58)、オミクロン株優勢期では3.50件/100人(3.31~3.71)で、オミクロン株優勢期とデルタ株優勢期の差は-1.83件/100人(-2.14~-1.52)であった。 1年時点のPASC累積発生率は、ワクチン接種者が非ワクチン接種者よりも低く、デルタ株優勢期では-4.18件/100人(95%CI:-4.47~-3.88)、オミクロン株優勢期では-4.26件/100人(-4.49~-4.05)であった。 分解分析の結果、オミクロン株優勢期ではプレデルタ株優勢期とデルタ株優勢期を合わせた時期よりも、1年時点の100人当たりのPASCイベント数が5.23件(95%CI:4.97~5.47)少ないことが示された。減少分の28.11%(95%CI:25.57~30.50)は、優勢期に関連した影響(ウイルスの変化やその他の時間的影響)によるものであり、71.89%(69.50~74.43)はワクチンによるものであった。

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monarchEとPOTENTの適格性の有無と予後の関連/日本乳癌学会

 再発高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がんに対する術後補助療法として、アベマシクリブおよびS-1がそれぞれmonarchE試験およびPOTENT試験の結果を基に保険適応となっている。しかしその投与対象は一部が重複しており、またPOTENT試験の適格基準はStage I~IIIBと幅広い。名古屋市立大学の磯谷 彩夏氏らはmonarchE試験およびPOTENT試験の適格/不適格症例ごとの予後を検討することを目的に、単施設の後ろ向き解析を実施。結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究では、1981〜2023年に名古屋市立大学病院で根治的手術を実施したStage I~IIICのHR陽性HER2陰性乳がん2,197例の診療録を後ろ向きに解析した。主要評価項目は無病生存期間(DFS)であった。S-1、CDK4/6阻害薬、PARP阻害薬のいずれかの投与歴のある患者98例が除外され、本研究に適格とされた患者2,099例のうち、両試験適格群は275例、monarchE試験(コホート1)のみ適格群は64例、POTENT試験のみ適格群は810例、両試験不適格群は950例であった。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢(平均56.7歳)、性別(99.6%が女性)、閉経状況(49.6%が閉経後)に各群で大きなばらつきはなかった。化学療法歴はmonarchEのみ適格群(82.8%)および両試験適格群(74.5%)で高く、再発についてもmonarchEのみ適格群(65.6%)で高い傾向がみられた。・観察期間中央値28.5年における全体集団の5年DFSは88.79%、10年DFSは78.71%であった。・各群の5年DFSは、monarchEのみ適格群59.8%、両試験適格群75.0%、POTENT試験のみ適格群89.8%、両試験不適格群94.8%であり、monarchE適格患者は有意に予後不良であった(log-rank検定のp<0.0001)。・POTENTのみ適格の患者の予後は、POTENT不適格の患者と比較するとリンパ節転移の有無によらず不良であり、とくにリンパ節転移陽性の場合は晩期再発も多くみられ、S-1の上乗せはより妥当と考えられた。・POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者における予後因子を単変量解析で検討した結果、Gradeが高いほどまた腫瘍径が大きいほど予後不良であることが明らかになった。・POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者において、Gradeと腫瘍径別に予後を検討した結果、Grade2では腫瘍径2cm以上3cm未満と比較して3cm以上では有意に予後不良(p=0.001)であった一方、2cm未満と比較して2cm以上3cm未満では有意な差はみられなかった(p=0.51)。またGrade3では腫瘍径2cm未満で比較的予後良好な傾向がみられた。・そこで、POTENTのみ適格でリンパ節転移陰性の患者において、Grade2かつ腫瘍径2cm以上3cm未満およびGrade3かつ腫瘍径2cm未満の患者(予後検討群)を、その他のPOTENT適格患者と比較した結果、予後検討群で有意に予後良好であった(p=0.007)。 磯谷氏は、後ろ向き研究であること、1980年代の症例が含まれていることなどの本研究の限界を挙げたうえで、monarchE適格患者にはアベマシクリブの投与が妥当であり、POTENT試験の適格患者のうち、Grade2かつ2cm以上3cm未満およびGrade3かつ2cm未満の患者は比較的予後が良好であり、S-1の上乗せ効果は限定的である可能性が示唆されたとまとめた。一方で、予後良好患者においてもS-1の上乗せ効果を否定できないため、今後はS-1投与患者における予後調査が必要としている。

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生成AI、医師がChatGPTのほかに利用しているのは/医師1,000人アンケート

 2022年11月の対話型AI「ChatGPT」の公開を皮切りに、さまざまな生成AIサービスがリリース&アップデートされ、活用が進んでいる。論文検索や翻訳、スライド作成など、医師の仕事にも活用の可能性が広がる中、CareNet.comでは会員医師1,026人を対象に、生成AIの現在の使用状況についてアンケートを実施した(2024年6月25日実施)。「現在使用している」と回答した医師は約2割、年代による差も 生成AIの現在の使用状況について聞いた結果、「現在使用している」と回答したのは21%。「使用経験はあるが、現在は使用していない」が22%、「過去、現在ともに使用していない」が57%であった。年代別にみると、「現在使用している」と回答した割合は20代・30代では28~29%だったのに対し、40代では19.8%、50代では15.2%と年代が高くなるごとに減少した。 診療科別にみると、「現在使用している」と回答した割合は救急科(50.0%)、総合診療科(36.4%)、神経内科・血液内科・リハビリテーション科(いずれも33.3%)で高かったのに対し、腎臓内科(3.2%)、耳鼻咽喉科(7.1%)、産婦人科(11.1%)などでは低い傾向がみられた。使用していない理由で最も多かったのは「使いこなすのが難しそう/難しいと感じた」 「現在使用していない」と回答した医師に対し、その理由を聞いたところ、「使いこなすのが難しそう/難しいと感じた」が44.5%と最も多く、「習得に時間がかかりそう/かかると感じた」が28.0%、「必要性を感じない」が25.2%と続いた。 「現在使用している」と回答した医師に対し、生成AIを実際どんな作業に活用しているかについて聞いたところ、「論文検索・データベース化」が45.8%と約半数を占め、「論文要約」(44.4%)、「翻訳」(36.0%)、「文章校正」(31.3%)、「抄録・論文の文案作成」(22.9%)と続き、その他の自由記述欄では「アイデア出し」や「シフト表作成」なども挙がった。 一方で「現在使用していない」と回答した医師に生成AIをどんな作業に活用したいかについて聞いた結果、「論文検索・データベース化」(11.9%)、「論文要約」(11.6%)、「翻訳」(10.8%)、「文章校正」(7.1%)と現在使用している医師と同様の傾向がみられたが、その次に多かったのは「スライド作成」(5.9%)であった。実際使用している生成AIサービスは? 「現在使用している」と回答した医師に対し、実際使用しているサービスを聞いたところ、「ChatGPT」は87.4%とほとんどの医師が使用しており、「Microsoft Copilot」(18.2%)、「Claude」(12.1%)、「Gemini」(11.7%)、「Perplexity」(8.4%)と続いた。「LUMIERE」、「Runway」、「Midjourney」、「Stable diffusion」などの動画・画像生成系は使用者が少なかった。 「現在使用していない」と回答した医師に使用したいサービスを聞いた結果、同じく「ChatGPT」が56.0%と最も多く、「Microsoft Copilot」(6.5%)、「Gemini」(5.0%)、「Claude」(4.6%)とおおよその傾向は現在使っている医師と同様であったが、「使ってみたいサービスはとくにない」との回答も37.8%みられた。有料版は使用していないとの回答が6割、一方で月額1万円以上との回答も 「現在使用している」と回答した医師に対し有料版使用の有無を聞いたところ、64.2%が「有料版は使用していない」と回答した一方、月額3,000円未満を支払っていると回答したのは15.1%、3,000円以上5,000円未満が14.2%、5,000円以上1万円未満が4.7%、1万円以上が1.9%だった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。「生成AI、いま実際どのくらい使っていますか?」 医師1,000人に聞きました

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なぜ子どもはコロナが重症化しにくいのか

 子どもというものは、しょっちゅう風邪をひいたり鼻水が出ていたりするものだが、そのことが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症化から子どもを守っている可能性のあることが、米イェール大学医学部准教授のEllen Foxman氏らの研究で示された。この研究結果は、「Journal of Experimental Medicine」に7月1日掲載された。 COVID-19パンデミックを通して、子どもは大人よりもCOVID-19が重症化しにくい傾向があると指摘されていたが、その理由は明確になっていない。Foxman氏は、「先行研究では、子どもの鼻腔内の自然免疫の亢進は、小児期にのみ見られる生物学的なメカニズムによって生じることが示唆されていた。しかし、われわれは、子どもにおける呼吸器系ウイルスや細菌感染による負荷の高さも鼻腔内の自然免疫の亢進に寄与している可能性があると考えた」と言う。自然免疫系は、生まれつき体に備わっている、細菌やウイルスに対する防御システムだ。体は抗体を作り出すことで、より標的を絞った免疫反応を起こす一方で、自然免疫系は抗ウイルス性タンパク質と炎症性タンパク質を速やかに産生して、感染から体を守る働きを担っている。 Foxman氏らは今回、子どもでの頻繁な呼吸器感染症への罹患が鼻の自然免疫を高めるかどうかを調べるため、467点の鼻腔ぬぐい液検体の再分析を行った。これらの鼻腔ぬぐい液は、COVID-19パンデミック中の2021年から2022年にかけて、手術前のスクリーニング検査を受けた子どもや救急部門で診療を受けた子どもから採取されたものだった。研究グループは、上気道感染症の原因となる16種類の呼吸器系ウイルスと3種類の細菌について調べるとともに、自然免疫系によって産生されるタンパク質の量を測定した。 サンプルから最も多く検出されたウイルスは、2021年6〜7月ではライノウイルス(176検体中43点、24.4%)であり、2022年1月では新型コロナウイルス(291検体中65点、22.3%)であった。しかし、同時期にその他のウイルス感染が確認された検体も一定数あり、全体でのウイルス陽性率は、2021年6〜7月で38.6%、2022年1月で36.4%であった。また、RT-PCR検査でウイルスまたは病原性のある細菌、あるいはその両方について陽性と判定された検体に5歳未満の子どもの検体が占める割合は高く、2021年6〜7月で66.2%(51/77点)、2022年1月では53.3%(155/291点)であった。さらに、呼吸器系ウイルスや細菌の量が多い子どもでは、鼻腔内の自然免疫活性レベルも高いことが示された。 Foxman氏らがさらに、乳児健診時とその7〜14日後に健康な1歳児から採取された鼻腔ぬぐい液を調べた。その結果、いずれかの時点で何らかの呼吸器系ウイルスの感染が陽性と判定されていた子どもが半数以上を占めており、そのほとんどのケースで、自然免疫活性は、感染時には高まり非感染時には低下することが明らかになった。Foxman氏は、「このことから、低年齢の子どもでは、鼻の中でのウイルスに対する防御機構は常に厳戒態勢にあるのではなく、呼吸器系ウイルスの侵入に反応して活性化すること、そのウイルスが症状を引き起こしていない場合でも活性化することが明らかになった」と話す。 これらの結果は、子どもはライノウイルスのような比較的無害な呼吸器系ウイルスに感染することが多いため、自然免疫系が頻繁に、強く活性化されることを示している。 Foxman氏は、子どもが季節性ウイルスに頻繁に感染するのは、感染により得られる抗体が築かれていないのが理由ではないかとの考えを示している。新型コロナウイルスは新型のウイルスであったため、パンデミック発生時に感染を防御する抗体を持つ人は1人もいなかった。Foxman氏らは、「このような状況で、他の感染症によって子どものウイルスに対する防御機構が活性化され、これが新型コロナウイルスへの感染を初期段階で阻止することに寄与した可能性がある。さらに、そのことが、成人と比べて子どもでは重症度が低いという転帰につながったと考えられる」とニュースリリースの中で述べている。 Foxman氏は、季節性ウイルスや鼻腔内の細菌がCOVID-19の重症度にどのような影響を与えるのかについて、今後さらなる研究で検討する必要があると話している。

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認定薬剤師のウェブ研修がオンデマンドでも可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第135回

薬剤師研修・認定電子システム「PECS(Pharmacist Education Certificate System)」による研修認定薬剤師の認定および更新手続きの電子化からそろそろ3年が経過します。認定薬剤師の認定期間は3年間で、その間に30単位を取得して更新申請を行うことで更新されますので、更新の必要がある薬剤師さんのほぼ全員がこのPECSによる管理および更新を経験されているのではないでしょうか。このようなシステムは、導入されたときにはちゃんとできるだろうか…と周りに聞きながら恐る恐る試してみるものですが、自転車と同じで慣れてしまうとなんてことないですよね。かえってシール集めに励んでいたころのアナログ感を思い出して、クスっと笑ってしまいます。そのPECSの実施要綱が2024年6月に改正されました。今後1年間で段階的に適用されますので紹介します。1. 2024年7月1日から適用不正を行ったなどの研修実施機関の登録取消期間を5年から3年に変更※個人への影響はほぼなし2. 2024年10月1日から適用研修の種類に「ウェブ利用研修(集合研修アーカイブ配信)」が追加(1日につき4単位まで)3. 2025年1月15日から適用更新申請と再新規申請に関して文言を変更4. 2025年4月1日から適用e-ラーニング研修の単位付与条件として1日につき4単位までを追記1に関しては研修実施機関の登録取消に関する改正なので、受講者にはとくに影響がありません。3に関しては、再新規申請(更新手続期間中であって認定期間終了後の新規申請)を行った場合は更新申請を行うことはできないとあり、更新申請と再新規申請を同時に行った人がいたということでしょうか…。重複した申請を防ぐために文言が整理されたようです。薬剤師個人の更新などに影響があるのは、2と4と思われます。改正前までのウェブ利用研修は、即時配信または学術集会のみが対象でしたが、録画のアーカイブ配信も対象になります。ただし、1日につき4単位までと制限が付きます。そして、4にあるように、従来からあるe-ラーニング研修でも、1日につき4単位までという制限が付きます。想像の域を超えませんが、1日に何単位も取った人がいたのでしょう。もちろんその人たちは真面目に受講されているのだとは思いますが、1単位がおおむね90分で設定されているので、90分×4単位=360分で6時間になります。これ以上は現実的にちょっと難しいよね…というあたりで制限が設けられたのでしょう。これらの単位制限の改正には研修実施機関側のシステム上の改修などが伴うことから適用開始に時間が設けられているのかと思われます。薬剤師個人としては、アーカイブ配信が受講可能になることで研修の幅が広がるというメリットがあります。それぞれに個人の単位取得のスタイルがあると思うので、改正の適用開始時期を確認し、単位の取得漏れなどのないようにしてください。参考サイト研修認定薬剤師制度 実施要領 (jpec.or.jp)

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救急科「意識障害」【臨床実習を味わうケアネット動画Café】第3回

動画解説臨床研修サポートプログラムの研修医のための救急科ベーシック3より、林寛之先生の「意識障害」を鑑賞します。実習中に意識障害の患者さんに遭遇することもあるかもしれません。救急医はどのように対応するのか?林先生の番組でしっかり準備しておきましょう。

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肺の空洞性病変の鑑別診断(1)[総論編]【1分間で学べる感染症】第7回

画像を拡大するTake home message肺の空洞性病変の鑑別診断は「CAVITY」で覚えよう。肺の空洞性病変を見たら、皆さんは何の鑑別を考えますか?鑑別診断は多岐にわたりますが、大まかな分類を覚えるのに 「CAVITY」という語呂合わせが有用です。CCancer がん(扁平上皮がん、肺転移)AAutoimmuneVVascular 血管性(肺塞栓症、敗血症性肺塞栓症)IInfection 感染(結核、非結核性抗酸菌症、細菌、真菌、寄生虫)※詳しくは次回説明します。TTrauma 外傷(肺気瘤)YYouth/congenital 若年性/先天性(非結核性抗酸菌症、細菌、真菌、寄生虫)重要な点は、「感染性だけではなく、非感染性の幅広い鑑別診断がある」ことを理解することです。診断には、気管支鏡検査や肺生検を要することも多いですが、その他の病歴や身体所見などを総合的に考慮し、診断のための検査を進める必要があります。1)Harding MC, et al. Fed Pract. 2021;38:465-467.2)Cho Y, et al. Am Osteopath Coll Radiol. 2019;8:18-24.

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日本における頭痛障害、片頭痛の有病率調査の正確性は

 疫学データを収集するために実施されるアンケート調査は、誤分類を起こす可能性がある。大阪・富永病院の竹島 多賀夫氏らは、頭痛に関するアンケートを分析し、どの質問が片頭痛以外の分類につながっているかを評価した。BMC Neurology誌2024年5月25日号の報告。 19〜74歳の個人医療請求データと組み合わせた匿名調査をDeSCヘルスケアより入手し、一次性頭痛障害(片頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛、その他の頭痛障害)の患者割合を調査した。片頭痛を判定する6つの基準を用いて、その他の頭痛障害を有する人が、アンケートにどのように回答したかを調査した。 主な結果は以下のとおり。・回答者2万1,480人のうち、頭痛があると回答した人は7,331人(34.0%)であった。・片頭痛が691人(3.2%)、緊張型頭痛が1,441人(6.7%)、群発性頭痛が21人(0.1%)、その他の頭痛障害が5,208人(24.2%)であると回答した。・その他の頭痛障害を有する人を分析すると、上位3つの基準は、頭痛関連症状+疼痛部位(7.3%)、頭痛関連症状+日常生活における頭痛重症度の変化(6.4%)、頭痛関連症状+疼痛部位+日常生活における頭痛重症度の変化(8.8%)であった。・頭痛関連症状は、肩こり(13.6%)、首こり(9.4%)、悪心・嘔吐(8.7%)、光恐怖症(3.3%)、音恐怖症(2.5%)であった。 著者らは、「質問票で診断された片頭痛の有病率は、予想よりもはるかに低く、その他の頭痛障害の有病率は、予想よりも高かった。これは、誤分類によるものであり、問診で明らかになるはずの片頭痛の特徴のいくつかをアンケートで特定できていなかったことが原因であると考えられる。そのため、アンケートは慎重に設計する必要があり、医師は患者との半構造化面接を行う際の質問の仕方や記録方法について教育を受ける必要があり、これを実践することで、光恐怖症や音恐怖症などの症状についてもより正確な情報が得られる可能性がある」としている。

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産後VTE予防のエノキサパリン、より高リスク例へ限定可能?/JAMA

 妊娠に関連した静脈血栓塞栓症(VTE)予防のためのヘパリン(エノキサパリン)ベースのプロトコルに、より選択的なリスク層別化アプローチを追加することで、産後VTEが増加することなく血腫が減少したことを、米国・アラバマ大学のMacie L. Champion氏らが報告した。著者らのアラバマ大学では、2016年に米国産科婦人科学会のガイドラインに基づく妊娠関連VTE予防プロトコルを導入したが、血腫の発生確率が2倍以上となり(補正後オッズ比[aOR]:2.34)、VTEは減少しなかったため、2021年に、より選択的なリスク層別化アプローチを取り入れたという。JAMA誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。標準的リスク層別化と、より選択的な産後VTE化学的予防で比較 研究グループは、ヘパリンベースの産科学的血栓予防プロトコル(エノキサパリンプロトコル)に対する、より選択的なリスク層別化アプローチのアウトカムを後ろ向き観察研究で評価した。 対象は米国南東部の3次医療センター1施設で、2016年1月1日~2018年12月31日に出産した患者(オリジナルプロトコル群)および2021年12月1日~2023年5月31日に出産した患者(選択的プロトコル群)計1万7,489例。妊娠期間中にVTEまたはVTE高リスクのために外来で抗凝固療法を受けていた患者は除外した。対象患者は、標準的リスク層別化と、より選択的な産後VTE化学的予防のプロトコルによる治療を受けた。 主要アウトカムは、出産後6週までの血腫の臨床的診断。副次アウトカムは、出産後6週までのVTEの新規診断とした。群間のベースライン特性とアウトカムを比較し、オリジナルプロトコル群を参照群として主要および副次アウトカムのaORを95%信頼区間(CI)とともに推算した。エノキサパリン投与は減少したが、VTEは増加せず血腫が減少 試験対象1万7,489例のうち、オリジナルプロトコル群は1万2,430例(71%)、選択的プロトコル群は5,029例(29%)であった。選択的プロトコル群のほうが、年齢が高く(28.5歳vs.27.7歳)、政府管掌保険の加入者が少なく(59% vs.65%)、BMIが高値で(31 vs.30)、アスピリン使用者が多く(23% vs.18%)、妊娠高血圧腎症の診断率が高かった(21% vs.16%)(すべてのp<0.001)。 エノキサパリンを投与された患者は、選択的プロトコル群(410例、8%)がオリジナルプロトコル群(1,968例、16%)と比較して少なく、選択的プロトコル群のほうが、あらゆる血腫が減少した(0.3% vs.0.7%、aOR:0.38[95%CI:0.21~0.67])。これは、主に表在性血腫の大幅な減少(0.3% vs.0.6%、aOR:0.43[95%CI:0.24~0.75])がみられたことによるものであった。 選択的プロトコル群はオリジナルプロトコル群と比較して、VTE(0.0008%[4例]vs.0.0014%[17例]、aOR:0.40[95%CI:0.12~1.36])あるいは種類別にみたVTE(深部VTE、肺血栓塞栓症、その他のVTE)について、有意な増加はみられなかった。

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第221回 名古屋第二日赤の研修医“誤診”報道に医療界が反発、日赤本社の医療事故に対する鈍感さ、隠蔽体質も影響か(後編)

山開き直後の富士山で遭難死が相次ぐこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。7月10日に山開きした富士山で遭難死が相次いでいます。各紙報道によれば、7月14日までに4人の死亡が確認されています。疲労死、滑落死など死因はさまざまですが、日頃登山をしない人は3,000メートル級の山を少し舐めているような気がします。体力が若者ほどなく、高度順応力が低下している中高年の遭難はこれからも増えそうです。山では100メートル標高が上がるごとに0.6度気温が下がります。仮に標高0メートルの海岸部の気温が30度だとすると、3,776メートルの富士山山頂付近の気温は7~8度です。天候が悪く風も強ければ、体感気温は0度近くになるでしょう。もはや冬山です。そう考えると、ご来光を目的に気温が下がる夜や深夜に登ること自体が大きなリスクです。そもそも3,000メートルを超える北アルプスなどでは、深夜に登る人はほぼいません。これから富士山を目指そうという方は、天気が良い日に昼間の日帰り登山をお勧めします。山梨県側からの吉田ルートは登山規制が始まったとはいえ激混みなので、静岡県側からの富士宮ルートが最短でいいかもしれません。大体の所要時間は頂上往復で9時間前後。朝イチに登山口を出発すれば、夕方前には下山が可能です。医療メディアに「研修医は悪くない」といった論調の記事や、組織体制の不備を指摘する記事さて、今回は前回に引き続き、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院(以下、名古屋第二日赤)が先月公表した、研修医がからんだ医療事故を取り上げます。腹痛などを訴えて名古屋第二日赤に来院した男子高校生(当時16)について、SMA症候群を研修医が急性胃腸炎と“誤診”して治療が遅れるとともに、高度脱水への対応も不十分で心停止に至り死亡した事件について、前回は同病院が公開した公表用資料1)を基に経緯を概説しました。そして、病院の記者会見直後、全国紙などで「研修医が誤診」といった見出しの報道が行われたことを巡り、日経メディカルなど一部医療メディアにおいて「研修医は悪くない」といった論調の記事や、病院の組織体制の不備を指摘する記事が掲載され、医療界で少なからぬ反発が起きていると書きました。そうした反発や批判は概ね納得できるものです。公表が事故から1年後であったことや、遺族コメントを病院が代読するという異常さなどからも、事故直後から遺族と名古屋第二日赤とのあいだで厳しいやりとりがあったと想像されます。名古屋第二日赤という一病院で起きた事故ではありますが、日本赤十字社本社自体の医療事故に対する鈍感さ、隠蔽体質、事なかれ主義もその背景にありそうです。マスコミに対して公表された資料の“おそまつさ”からも、それを感じます。「公表用資料」の中の事案の検証結果が時系列で、“誤診”が冒頭に私は、「公表用資料」の中の事案の検証結果(いわゆる「どの段階でミスがあったのか」のまとめ)が時系列になっている点がまず気になりました。具体的には、次の5つが問題点として挙げられています(資料の詳細な記述は割愛)。1)CT画像の評価が不十分で、急性胃拡張に対する減圧治療ができていなかった。2)脱水症の評価が不十分で、治療の開始に遅れが生じていた。3)救急外来において研修医が診療する場面での報告・相談体制に不備があった。4)職員間において患者さんの情報を正確に共有できていなかった。5)患者さんの容態変化時に、院内で定められた緊急体制が活用されなかった。1)で研修医の「CT画像の評価が不十分」と書き、さらに「上級医に相談するべき画像所見でしたが相談していませんでした」と続きます。これでは、その後に過誤のその他の原因が記述されたとしても「評価が不十分」、すなわち「誤診」が一番の原因だ、と読む側(マスコミなど)が解釈してしまう危険があります。こうした事故報告書では、往々にして発生したことを時系列に書きますが、「検証結果」も時系列に記述してしまっては、患者が死に至った真の原因が明確にならず、覆われてしまいます。加えて、資料全般に渡って「臨床上のミス」と「組織体制上の問題点」が同列に記述されている点も気になりました。「研修医が上級医に相談する体制になっていなかった」ことや、「入院後のスタッフ間の情報共有の不備」などは、明らかに病院の組織体制上の問題であり、今回の事故の最大の原因とも考えられます。しかし、検証結果ではそうした問題点が、「誤診」や「鎮痛剤倍量投与」「心電図モニター未装着」といった「臨床上のミス」と同列に記述されています。その結果、臨床上のミスの根本原因とも考えられる組織体制上の問題点への切り込みが弱く、責任の所在も曖昧になっています。「かもしれません」という文章でお茶を濁し、「体制や組織風土が根本的な問題だった」と断言もせずその曖昧さは、「事案の検証結果」の後に記された「当院の問題として表出したこと」の以下の記述からもうかがえます。――当院は高度急性期病院として、どのような病気にも24時間365日絶え間なく応えることを使命としており、業務の繁忙や切迫感が常態化している背景があります。そのような業務環境のなかで、疾患の重症度、緊急性を優先して患者さんを診てしまう傾向があったのかもしれません。忙しさを理由に、患者さんに対しての職員の思いやりや丁寧さが欠けていたのかもしれません。今回の事例には、病院全体の体制や組織風土が根本的な問題ではないかと考えています。――事故から1年以上経っているにもかかわらず、「かもしれません」という文章でお茶を濁し、「病院全体の体制や組織風土が根本的な問題だった」と断言できていないのです。患者が死亡に至った原因を真剣に検証したのかどうか、疑問に感じます。「『なぜこの事例で記者会見を開いたのか』と正直、疑問を持ちました」と医療訴訟専門弁護士そんな風に考えていたら、「研修医は悪くない」という論陣を張った日経メディカルに興味深い記事が掲載されていました。7月2日付の「インタビュー 医療事故公表のあり方を考えるマスコミの目線が“研修医誤診”に向いてしまった原因は」というタイトルの記事です。同記事は医療機関側の弁護士として医療訴訟に携わってきた仁邦法律事務所所長の桑原博道氏にインタビューしたものですが、なんと桑原氏はその中で「最初に、メディアの報道と公開されている調査報告書を読んだとき、『なぜこの事例で記者会見を開いたのか』と正直、疑問を持ちました」と話しているのです。桑原氏は「過誤があると思われる事例でも、あるいは、医療事故調査・支援センターに報告されるような事例でも、多くの場合、記者会見は開かれていません。私の経験でも、記者会見を開くのはデメリットがそれなりにあることから、『それでも会見が必要だ』と感じる事案はほとんどない印象です」と語るとともに、「記者会見は、病院が世間に発したいメッセージとして、目的や信念を持って行うべきものであり、一般論として言えば、ご家族などから求められたから行うというものではありません。また、医療事故調査制度の対象事案だから行うというものでもありません」と、名古屋第二日赤の記者会見について、病院側に行うに足る明確な目的があったのかどうかに疑問を呈しています。さらに、先述した「公表用資料」の中の事案の検証結果の記載の順番について桑原氏も問題があったと指摘しています。加えて、「研修医は上級医に相談すべきだった」といった個人の責任を追及するような記述についても問題があるとしています。同記事2)は、医療事故が起きたときの記者会見開催の是非や、事故報告書の記載の仕方などについてわかりやすくまとめられており、医療関係者には参考になるでしょう。京都第一赤十字病院の度重なる過誤で明らかとなった日赤の隠蔽体質前回、「日本赤十字社が、医療事故や医療過誤に対して鈍感であり、隠蔽体質も有していることは、この連載の『第199回 脳神経外科の度重なる医療過誤を黙殺してきた京都第一赤十字病院、背後にまたまたあの医大の影(前編)』、『第200回 同(後編)』で詳しく書きました」と記しましたが、この点を簡単におさらいしておきます。京都市は今年1月、患者に対する手術の説明や診療記録の取り扱いが不適切だったとして京都第一赤十字病院に対し、改善を求める行政指導を行いました。不適切とされた事例はいずれも同病院の脳神経外科で確認されたものでした。2020年に行われた脳腫瘍の手術では、その後、予定外の再手術となった理由について、患者や家族に説明した記録が見つかりませんでした。さらに同年、手術後に死亡した別の患者の死亡診断書には「手術なし」と、事実と異なる記載をしていました。また、2021年には、研修医の医療処置を受けた患者が死亡していますが、遺族には処置を施した説明をしていませんでした。こうした事例の中には、病院の医療安全管理委員会に適切に報告されず、事後の検証も十分行われていなかったケースもありました。以上の3件のほか、2019~21年に手術後などに9人が死亡し、ほかにも3人の患者で不適切な対応があったとの情報が2023年、公益通報によって市に寄せられていました。実はこの公益通報が行われる3年も前に、脳神経外科で事故が多発していることを、当時、同病院に勤務していた医師が日本赤十字社本社に伝えていました。「月刊Hanada」(飛鳥新社)の2023年11月号の記事、「京都府立医大の深い闇 正常脳を誤って摘出 第一日赤脳外科部長が謝罪」によれば、「A医師と部下である第一脳神経外科副部長(注:事故が頻発していたのは第二脳神経外科)のB医師は11月19日、連名で日赤本社の医療事故担当の医療事業推進本部長宛てに嘆願書を提出。医療事故防止措置と医師の再教育の必要性、関係者の処分を求めた。すると11月11日、日赤本社の部長は電話でこう告げたという。『(中略)日赤本社で医療事故調査委員会を立ち上げるので待ってほしい』。ところが、本社は結局、調査委員会を立ち上げず、事故の当事者である第一日赤に丸投げし、第一日赤内部に院内事故調査委員会を立ち上げて処理するように命じた」。その結果、一連の事故は表沙汰にならず、死亡した患者遺族にも真実は伝えられず、事故を起こした医師たちに処分も下されず、3年後の公益通報まで日赤本社、第一日赤は事故を隠蔽し続けることになったわけです。多発する傘下の病院の医療事故に対して日赤本社は何かアクションを起こしたのか?日本赤十字社の各病院は、地域の基幹病院であり、地元の大学医学部の主要なジッツ(関連病院)となっています。各病院で起こった医療事故への対応が個々の病院に任されること自体はとくに不自然ではありません。ただ、病院自体が隠蔽しようしている事案について、現場からの通報を無視し、対応をその病院に丸投げする、というのは異常としか言いようがありません。事故を起こされた患者や家族は二の次に、日赤という組織や病院、あるいは医師を派遣する大学医局をまず守ろう、という姿勢は決して許されるものではないでしょう。今回の名古屋第二日赤の事故と、京都第一日赤の事故との間にはとくに関連性は見出だせません。しかし、昨年5月に名古屋第二日赤の事故が起こり、今年の6月17日に記者会見が開かれるまでのあいだに、京都市による京都第一日赤への立ち入り検査、行政指導が行われています。次々と明らかになる傘下の病院の医療事故に対して、日本赤十字社本社は組織として何かアクションを起こしたのでしょうか。少なくとも記者会見や公表用資料の内容からはまったく感じ取れません。日本赤十字社の闇は深そうです。参考1)SMA症候群を適切に治療できなかったことにより死亡に至らせた事例について/日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院2)マスコミの目線が“研修医誤診”に向いてしまった原因は/日経メディカル

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新型コロナの抗原検査は発症から2日目以降に実施すべき

 今や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどの迅速抗原検査はすっかり普及した感があるが、検査は、症状が現れてからすぐに行うべきなのだろうか。この疑問の答えとなる研究成果を、米コロラド大学ボルダー校(UCB)コンピューターサイエンス学部のCasey Middleton氏とDaniel Larremore氏が「Science Advances」に6月14日報告した。それは、検査を実施すべき時期はウイルスの種類により異なるというものだ。つまり、インフルエンザやRSウイルスの場合には発症後すぐに検査を実施すべきだが、新型コロナウイルスの場合には、発症後すぐではウイルスが検出されにくく、2日以上経過してから検査を実施するのが最適であることが明らかになったという。 Middleton氏らは、呼吸器感染症の迅速抗原検査がコミュニティー内での感染拡大に与える影響を検討するために、患者の行動(検査を受けるかどうかや隔離期間など)やオミクロン株も含めたウイルスの特性、その他の因子を統合した確率モデルを開発した。このモデルを用いて検討した結果、新型コロナウイルスの場合、発症後すぐに迅速抗原検査でテストした際の偽陰性率は最大で92%に達するが、発症から2日後の検査だと70%にまで低下すると予測された。発症から3日後だとさらに低下し、感染者の3分の1を検出できる可能性が示唆された。 この結果について研究グループは、「すでにほとんどの人が新型コロナウイルスへの曝露歴を有しているため、免疫系はウイルスに曝露するとすぐに反応できる準備ができている。そのため、最初に現れる症状は、ウイルスではなく免疫反応によるものだと考えられる。また、新型コロナウイルスの変異株は、ある程度の免疫力を持つ人に感染した場合には、オリジナル株よりも増殖スピードが遅い」と説明している。 一方、RSウイルスとインフルエンザウイルスに関しては、ウイルスの増殖スピードが非常に速いため、症状の出現後すぐに検査を実施するのがベストであることが示唆された。 Larremore氏は、最近では新型コロナウイルス、A型およびB型インフルエンザウイルス、およびRSウイルスへの感染の有無を1つの検査で同時に調べることができる「オールインワンテスト」が売り出されるようになり、また、薬局や診察室でも複数のウイルスを一度に調べるコンボテストが行われていることを踏まえ、「これは悩ましい問題だ。発症後すぐの検査だと、インフルエンザウイルスとRSウイルスについてはある程度のことが明らかになるが、新型コロナウイルスについては時期尚早だろう。だが、発症から数日後では、新型コロナウイルスの検査には最適のタイミングだが、インフルエンザウイルスとRSウイルスの検査には遅過ぎる」と話す。 また、Larremore氏は、「新型コロナウイルスの抗原検査の場合、疑陰性率が高過ぎると思うかもしれないが、抗原検査はウイルス量が多く、周囲の人にうつす可能性のある人を検出する目的で作られたものだ」と指摘。その上で、「感染者の3分の1しか検出できなくても、最も感染力の強い3分の1を診断できれば、感染を大幅に減らすことができる」と説明している。 一方、Middleton氏は、最近、米疾病対策センター(CDC)が検査と予防のガイドラインを、「仕事や社会に復帰しても安全かどうかを判断する前に、もう一度、検査をするべき」という内容に改訂したことについて、「より理にかなった内容になった」との見方を示す。同氏は、「以前の方針の『発症後5日間の隔離』は、ほとんどのケースで必要以上に長かったと思う」と話している。

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週1回投与の基礎インスリン製剤「アウィクリ注フレックスタッチ総量300単位/同700単位」【最新!DI情報】第19回

週1回投与の基礎インスリン製剤「アウィクリ注フレックスタッチ総量300単位/同700単位」今回は、週1回持効型溶解インスリンアナログ注射液「インスリン イコデク(遺伝子組換え)(商品名:アウィクリ注フレックスタッチ総量300単位/同700単位、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は、世界初の週1回投与の基礎インスリン製剤であり、QOLやアドヒアランスの向上が期待されています。<効能・効果>インスリン療法が適応となる糖尿病の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人では1週間に1回皮下注射します。初期は通常1回30~140単位とし、患者の状態に応じて適宜増減します。他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1週間あたり30~560単位ですが、必要により上記用量を超えて使用することもあります。<安全性>重大な副作用として、低血糖やアナフィラキシーショック(頻度不明)があります。低血糖は臨床的に回復した場合にも再発することがあるので、継続的な観察が必要です。とくに、本剤は週1回投与の持続性がある薬ですので、回復が遅延する恐れがあります。その他の主な副作用として、糖尿病性網膜症、体重増加(1~5%未満)、注射部位反応、空腹、浮動性めまい、悪心・嘔吐、多汗症、筋痙縮(0.2~1%未満)などがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、生理的なインスリンの基礎分泌を補充する目的で使用される自己注射薬です。週1回投与する注射薬ですので、同一曜日に投与してください。2.自己判断で使用を中止したり、量を加減したりせず、医師の指示に従ってください。3.高所での作業や自動車の運転など、危険を伴う作業に従事しているときに低血糖を起こすと事故につながる恐れがありますので、とくに注意してください。4.他のインスリン製剤と併用することがあります。この薬と他のインスリン製剤を取り違えないように、毎回注射する前にラベルなどを確認してください。<ここがポイント!>本剤は、世界で初めてとなる週1回投与の基礎インスリン製剤です。従来のインスリン製剤では、1日1回もしくは2回の皮下注射が必要だったので、投与回数が大幅に減少し、患者さんの負担軽減により、生活の質やアドヒアランスの向上が期待できます。インスリン イコデクは、投与後に強力かつ可逆的にアルブミンと結合し、その後、緩徐にアルブミンから解離することで、血糖降下作用が1週間にわたって持続します。インスリン治療歴のない2型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験(ONWARDS 1試験)において、主要評価項目であるHbA1cのベースラインから投与後52週までの変化量を、本剤とインスリン グラルギンで比較しています。本剤とインスリン グラルギンの変化量はそれぞれ-1.55%および-1.35%(群間差:-0.19[95%信頼区間:-0.36~-0.03]、p<0.001)であり、本剤のインスリン グラルギンに対する非劣性が確認されました(非劣性マージン:0.3%)。同様に、HbA1cのベースラインから投与後26週までの変化量について、基礎インスリン療法で治療中の2型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験(ONWARDS 2試験:インスリン デグルデクとの比較)、基礎・追加インスリン療法で治療中の2型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験(ONWARDS 4試験:インスリン グラルギンとの比較)、1型糖尿病患者を対象とした第III相国際共同試験(ONWARDS 6試験:インスリン デグルデクとの比較)において、いずれも既存の持効型インスリン製剤に対する非劣性が証明されています(非劣性マージン:0.3%)。

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ASCO2024 レポート 乳がん

レポーター紹介2024年5月31日~6月4日まで5日間にわたり、ASCO2024がハイブリッド形式で開催された。昨年も人が戻ってきている感じはあったが、会場の雰囲気はコロナ流行前と変わりなくなっていた。一方、日本からの参加者は若干少なかったように思われる。これは航空運賃の高騰に加えて、円安の影響が大きいと思われる(今回私が行ったときは1ドル160円!! 奮発した150ドルのステーキがなんと24,000円に…。来年は費用面で行けない可能性も出てきました…)。さて、本題に戻ると、今回のASCOのテーマは“The Art and Science of Cancer Care:From Comfort to Cure”であった。乳がんの演題は日本の臨床に大きなインパクトを与えるものが大きく、とくにPlenary sessionの前に1演題のためだけに独立して行われたセッションで発表されたDESTINY-Breast06試験は早朝7:30のセッションにもかかわらず、満席であった。日本からは乳がんのオーラルが2演題あり、日本の実力も垣間見ることとなった。本稿では、日本からの演題も含めて5題を概説する。DESTINY-Breast06試験トラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)は日本で開発が開始され、現在グローバルで最も使われている抗体薬物複合体(ADC)の1つと言っても過言ではない。乳がんではHER2陽性乳がんで開発され、現在はHER2低発現乳がんにおける2次化学療法としてのエビデンスに基づいて適応拡大されている。20年近く乳がんの世界で用いられてきたサブタイプの概念を大きく変えることになった薬剤である。T-DXdのHER2低発現乳がんの1次化学療法としての有効性を検証したのがDESTINY-Breast06(DB-06)試験である。この試験では、ホルモン受容体陽性HER2低発現の乳がんにおいて、T-DXdの主治医選択化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)における優越性が検証された。この試験のもう1つの大きな特徴は、HER2超低発現(ultra-low)の乳がんに対する有効性についても探索的に検討したことである。HER2超低発現とは、これまで免疫組織化学染色においてHER2 0と診断されてきた腫瘍のうち、わずかでもHER2染色があるものを指す。本試験では866例(うちHER2低発現713例、超低発現が152例)の患者がT-DXdと主治医選択治療(TPC)に1:1に割り付けられた。主要評価項目はHER2低発現におけるPFSで13.2ヵ月 vs. 8.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.51~0.74、p<0.0001)とT-DXd群の優越性が示された。ITT集団においても同様の傾向であった。HER2超低発現の集団については探索的項目であるが、PFSは13.2ヵ月 vs.8.3ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.50~1.21)とHER2低発現の集団と遜色ない結果であった。一方、全生存期間(OS)についてはHER2低発現でHR:0.83、HER2超低発現でHR:0.75であり、いずれも有意差はつかなかった。有害事象は既知のとおりであるが、薬剤性肺障害(ILD)はany gradeで11.3%であった。2次化学療法の試験であるDESTINY-Breast 04試験ではOSの優越性も示されているため、OSの優越性が示されていない状況で毒性の強い薬剤をより早いラインで使うかどうかは議論が必要であろう。また、HER2超低発現の病理評価の標準化についても課題が残される。postMONARCH試験こちらも待望の試験である。日本国内で使えるCDK4/6阻害薬であるアベマシクリブのbeyond PD(progressive disease)を証明した初の試験である。これまでMAINTAIN試験で(phase2ではあるが)、CDK4/6阻害薬の治療後のribociclibの有効性が示されていたが、ribociclibは日本国内では未承認なため、エビデンスを活用することができなかった。postMONARCH試験では、転移乳がん、もしくは術後治療としてホルモン療法(転移乳がんはAI剤)とCDK4/6阻害薬を使用後にPDもしくは再発となった368例の患者を対象に、フルベストラント+アベマシクリブ/プラセボに1:1に割り付けられた。術後CDK4/6阻害薬後の再発が適格となっていたが残念ながら全体で2例のみであり、プラクティスへの参考にはならなかった。前治療のCDK4/6阻害薬はパルボシクリブが60%と最も多く、ついでribociclibで、アベマシクリブは両群とも8%含まれた。主要評価項目は主治医判断のPFSで、6.0ヵ月 vs. 5.3ヵ月(HR:0.73、95%CI :0.57~0.95、p=0.02)とアベマシクリブ群で良好であった。盲検化PFSが副次評価項目に設定されていたが、面白いことに12.9ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.55、95%CI:0.39~0.77、p=0.0004)と主治医判断よりも良い結果となった。有害事象はこれまでの臨床試験と変わりはなかった。この試験の結果をもって、自信を持ってホルモン療法の2次治療としてフルベストラント+アベマシクリブを実施できるようになったと言える。JBCRG-06/EMERALD試験さて、日本からの試験も紹介する。研究代表者である神奈川県立がんセンターの山下 年成先生が口演された。本試験はHER2陽性転移乳がんの初回治療として、標準治療であるトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン(HPT)療法に対して、トラスツズマブ+ペルツズマブ+エリブリン療法が非劣性であることを証明した。446例の患者が登録され、1:1に割り付けられた。ホルモン受容体は60%が陽性であり、PSは80%以上が0であった。初発StageIVが60%を占めていた。主要評価項目のPFSはHPT群12.9ヵ月 vs.エリブリン群14.0ヵ月(HR:0.95、95%CI:0.76~1.19、p=0.6817)で非劣性マージンの1.33を下回り、エリブリン群の非劣性が示された。化学療法併用期間の中央値はエリブリン群が28.1週、HPT群は約20週であり、エリブリン群で長かった。OSもHR:1.09(95%CI:0.76~1.58、p=0.7258)と両群間の差を認めなかった。毒性については末梢神経障害がエリブリン群で61.2% vs. HPT群で52.8%(G3に限ると9.8% vs.4.1%)と、エリブリン群で多かった。治療期間が長いことの影響があると思われるが、less toxic newと言ってよいかどうかは悩ましいところである。HER2陽性乳がんにおけるエリブリン併用療法は1つの標準治療になったと言えるが、実臨床での使用はタキサンアレルギーの症例などに限られるかもしれない。ER低発現乳がんにおける術後ホルモン療法こちらはデータベースを使った後ろ向き研究であり臨床試験ではないが、実臨床の疑問に重要なものであるため取り上げる。米国のがんデータベースからStageI~IIIでER 1~10%の症例を抽出し、術後ホルモン療法の実施率と予後を検討したものである。データベースから7,018例の対象症例が抽出され、42%の症例が術後ホルモン療法を省略されていた。ホルモン療法実施群と非実施群におけるOSは3年OSが92.3% vs.89.1%であり、HR:1.25、95%CI:1.05~1.48、p=0.01と実施群で良い傾向にあった。後ろ向き研究ではあるが、ER低発現であっても術後ホルモン療法に意義がある可能性が提示されたことは、今後の術後治療の選択にとって重要な情報である。PRO-DUCE試験最後に日本からのもう1つの口演であるPRO-DUCE試験を紹介する。これは治療薬の臨床試験ではなく、ePROが患者のQOLに影響するかを検証した試験である。関西医科大学の木川 雄一郎先生によって発表された。本試験はT-DXdによる治療を受ける患者を対象として、ePRO+SpO2/体温の介入が通常ケアと比較してQOLに影響するかを比較した。主要評価項目はベースラインから治療開始24週後のEORTC QLQ-C30を用いたglobal health scoreの変化であり、ePRO群では-2.4、通常ケア群では-10.4であり、両群間の差は8.0(90%CI:0.2~15.8、p=0.091)と統計学的に有意にePRO群で良好であった。その他の項目では倦怠感はePRO群で良好であったが、悪心/嘔吐は両群間の差は認めなかった。この研究は日本から乳がんにおいてePROが有効であることを示した初の試験である。ePROは世界的にも必須のものとなっており、今後の発展が期待される。

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