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第7回 p値(probability)とは何の確率を示す?【統計のそこが知りたい!】

第7回 p値(probability)とは何の確率を示す?薬剤の効果を調べる場合、その薬剤を必要とするすべての人に薬剤を投与してみれば効果はわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬剤を投与して、そこで得られたデータが世の中の多くの人たちにも通じるかどうかを検証します。ここでは、例として「解熱剤である新薬Yは母集団において解熱効果がある」という仮説を立て、検定的手法を用いてこの仮説が正しいかどうかを確認します。確認する方法を「仮説検定(hypothesis test)」と言います。仮説検定は、母集団検定、統計的検定とも言われます。今回は、仮説検定、そしてp値(probability)とは何の確率を示すのかについて解説します。■帰無仮説と対立仮説統計的仮説検定で最初にすることは、帰無仮説と対立仮説を立てることです。まず、帰無仮説と対立仮説についてご説明します。製薬会社は、多大な時間と開発費を投じて新薬を開発します。よって新薬Yは自信をもって開発された薬剤ということになります。ですから、新薬Yは解熱作用に優れている、つまり、低下体温は0℃より大きいと言えそうです。したがって、母集団における低下体温を0℃と仮定すると、その仮説はほとんど起こらない事象であると言えます。低下体温が0℃という仮説を「無」にしたいという、この仮説が帰無仮説です。帰無仮説は、棄却されて「無」に帰する仮説という意味です。帰無仮説の反対の仮説を対立仮説といいます。解析目的で明らかにしたかったことが対立仮説になります。帰無仮説がほとんど起こらない事象であることを示す、つまり帰無仮説を棄却することができれば、対立仮説が採択されます。■仮説検定の手順仮説検定の手順は次の手順によって行います。1.帰無仮説と対立仮説を立てる。2.基本統計量を計算する。調査データについて、平均値、標準偏差、標準誤差(SE)を算出する。3.検定統計量を算出する。仮説検定の公式に標準誤差(SE)を当てはめ、検定統計量を算出する。検定統計量は、t値、p値、信頼区間の3つである。4.有意差判定を行う。t値やp値と統計学が決めた値(有意水準という)とを比較し、有意差判定を行う。■p値による仮説検定の仕方p値による仮説検定の仕方を説明します。p値はt値と密接な関係があります。t値が大きくなるほど、p値は小さくなるという関係があります。p値とは「probability(確率)」の頭文字です。pの値は0~1の間の値です。p値は小さくなればなるほど、誤る確率は低くなり、母集団において効果がある(違いがある)という結論の確からしさが高まります。p値と統計学が定めた基準の値を比較し、「p値<有意水準」であれば、帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択します。すなわち、「新薬Yは母集団において解熱効果がある」と判断します。有意水準は通常0.05の定数を適用します。体を屈めてバーをくぐるリンボーダンスを例にすると、屈んだ高さがp値、バーの高さが有意水準です。バーをくぐればセーフ、くぐれなければアウトです。検定では、p値が有意水準0.05を下回れば差がある(効果がある、有意差あり)と判断します。p値が有意水準0.05(5%)よりも小さいときは、差がある(効果がある、有意差あり)と判断できますが、この判断はもしかしたら間違っているかもしれません。つまり、p値(probability)とは、仮説が正しい場合にこの手順を多数回実施して検定を行うとき、間違って帰無仮説を棄却する割合が5%未満であるということです。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション4 仮説検定の意味と検定手順セクション10 p値による仮説検定第4回 ギモンを解決! 一問一答質問1 p値は小さければ小さいほど差がある(よく効いた)といえるのか?

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薬機法改正で明文化される「薬局薬剤師の役割」の方向性【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第7回

以前にもご紹介しましたが、来年(2019年)、医薬品医療機器等法の改正が予定されており、現在、医薬品医療機器制度部会において議論がされています。いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上になる2025年をめどとして、地域包括ケアシステムを構築することを前提に、テーマの1つである「薬局・薬剤師のあり方・医薬品の安全な入手」について、先日、以下の問題点が取り上げられました。薬局・薬剤師のあり方、医薬分業のあり方(その1)(平成30年10月18日 第7回医薬品医療機器制度部会 資料2)20ページから抜粋薬剤師による情報提供及び薬学的知見に基づく指導の強化【現状と課題】現行法では、薬剤を販売等の目的で調剤した時に、薬剤師が薬学的知見に基づく指導を行うことが義務づけられている。有効で安全な薬物療法の提供のためには、患者の服薬状況等を継続的に把握し、その情報を処方医等に情報提供を行うことが必要であるが、薬局の薬剤師はこれを必ずしも十分実施できているとは言えない実態がある。【主な意見】病院の薬剤師は患者が薬を服用した後の状況を見ているが、薬局の薬剤師はそれができていない。服薬状況の継続的な把握が重要。薬局の薬剤師が処方箋に記載された情報のみで調剤、薬学的知見に基づく指導を行うことには限界がある。疾患名や検査値等、調剤や服薬指導に必要な患者に関する情報を共有する仕組みが必要。処方箋への疾患名記載については慎重な議論を要する。服薬情報の一元的・継続的把握のためには、外来と入院での情報の連携(薬薬連携)が必要。処方(レジメン)提案は薬剤師の業務として重要。ただし、チーム医療として医療機関の中で行われる場合と、医薬分業の中で薬局薬剤師が処方医に対して行う場合について整理すべき。薬を受け取るときだけではなく、その後の安全管理もかかりつけ薬剤師が適切に担うことを検討すべき。【論点】薬剤師の職能発揮のため、以下の内容を法令上明確にすべきではないか。・調剤時のみならず、医薬品の服用期間を通じて、服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行うこと・患者の服薬状況等に関する情報を、必要に応じて処方医等へ提供するよう努めることにより、薬物療法の最適化に寄与すること「服用後の管理」も役割として明文化へこの資料の「論点」によれば、服用期間を通じて服薬状況の把握や指導を行うこと、医師への情報提供に努めることの2点を法令上明確にすることについて議論されています。以前から、薬剤師は、薬剤を交付する時だけでなく、服用後のフォローが重要と言われていましたが、これが条文に明記されることには大きな意味があります。このような議論になるということは、服用後の管理を薬剤師が担うことに対して期待されていると考えられるので、薬剤師はそれに応えていきたいところです。一方、仮に、このような義務が医薬品医療機器等法に記載されれば、服用後の管理が薬剤師の義務であることが明確になりますので、服薬期間中に、薬剤師が適切に患者の管理をしていなかったために、健康被害などが起こってしまえば、薬剤師や薬局の責任問題にもなることが想定されますので、その覚悟は必要でしょう。また、医師への服薬状況に関する情報などの提供については、努めることとあるので努力義務としての検討のようですが、薬物療法の最適化に寄与するとありますので、必要に応じた処方提案なども含まれると考えれば、これも今後さらに大きな役割になっていくのではないでしょうか。実際にどのような改正になるかはわかりませんが、仮にこのような条項が加われば、薬局や薬剤師の機能として、大きな影響のある改正かと思います。また、改正がどのような形になるとしても、国が現状でこのような問題意識を持っているということについて、薬剤師として理解しておく必要があります。今後も、医薬品医療機器等法の改正の議論には注目しておきたいところです。参考資料1)厚生労働省 厚生科学審議会 平成30年度第7回医薬品医療機器制度部会 資料

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第13回 若い薬剤師よ、先輩に遠慮するな!【週刊・川添ラヂオ】

動画解説今回は岡山県キラきら薬局の明石宙郎先生とキャンプ場からお届け。院長回診に付き添っていた病院時代から、在宅ケアに注力する現在までの薬剤師人生を振り返ります。他職種連携で、地域住民の健康に責任を持つのが薬剤師としてのポリシー。そんな明石先生から若い薬剤師へのメッセージは意外にも…。

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在宅医療で使う漢方薬の役割と活用法

 2018年10月24日、漢方医学フォーラムは、都内で第138回目のプレスセミナーを開催した。当日は、在宅医療における漢方薬の役割について講演が行われた。在宅医療は患者のレジリアンスを高める 講演では、北田 志郎氏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 准教授/あおぞら診療所 副院長)を講師に迎え、「地域包括ケアシステムと漢方~“暮らしのなかでいのちを支える” 在宅医療で発揮される漢方薬の役割~」をテーマに講演が行われた。 同氏は、内科ローテートを修めた病院で東洋医学を専攻。以降、精神医学の診療に従事するとともに、中国に短期留学をし、漢方専門外来に従事するなど、漢方薬には深い造詣を持つ。 講演では、少子高齢化、多死化、高齢者の独居化が増加する日本社会で、地域包括ケアの重要性を強調。最新の治療機器、治療薬などで医療を提供し、健康長寿国であるにも関わらず、受益者である患者の医療制度への満足度は低く、提供している医療者は疲弊しきっていることに言及し、その原因を医療需要(患者の思い)と供給(医療者の思い)のミスマッチにあると指摘する。たとえば、終末期の患者を病院で看取ることは、本当に患者が望んでいることなのか、医療者の思いだけで医療の提供をしているのではないかと疑問を呈した。 具体的例として、80代の認知症患者を挙げ、自宅での終末期の過ごし方が患者の病状緩和やQOLの向上に役立ったと自験例を説明した。これを同氏は「レジリアンス(復元力・打たれ強さ)」と呼び、古い記憶をたどる傾向のある認知症では自宅だからこそ医療・介護に役立つ利点があると語る(ただし、在宅医療に拘泥することなく、病の軌跡の局面に応じて使い分けるべきだとも指摘する)。 また、在宅医療では、先端医療の導入が困難であり、治療手段も限定される中で、患者の暮らしと乖離しない技術として伝統医学との親和性を提案する。とくに高齢者の在宅診療では、「虚弱に対する補法」として、代替医療が真価を発揮する場になるという。高齢者への5つの漢方薬の使い方 『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015』(日本老年医学会 編集)では、「漢方薬・東アジア伝統医薬品」と別章を作り、クリニカルクエスチョンとして5剤について有効と記載している。 ガイドラインでは、「半夏厚朴湯」につき、「誤嚥性肺炎の既往をもつ患者における嚥下反射を改善させ、肺炎発症の抑制に有効である」とされている。また、エビデンスについても「有意に肺炎発症を減少させただけでなく、自力経口摂取維持にも有効」とされる。その他の方剤として、「抑肝散」が(アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性)に伴う行動・心理症状のうち易怒、幻覚、昼夜逆転、興奮、暴力など、いわゆる「陽性症状」に、「大建中湯」は脳卒中後遺症における機能性便秘ならびに腹部術後早期の腸管蠕動運動促進に、「麻子仁丸」は高齢者の便秘に、「補中益気湯」は慢性閉塞性肺疾患における自他覚症状、炎症指標および栄養状態の改善にそれぞれ有効とされている。 在宅医療で漢方を用いる意義について同氏は「老いること、死ぬことは生活に属し、現代医学による管理を緩めつつ、医療者に見放されることなく、在宅の生をまっとうする契機を得ることができる」と説明し、最後に「在宅医療における漢方の導入は『医療の根幹部とは何か』を模索する思考につながる」と思いを語り、レクチャーを終えた。

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第18回 「地域枠」の流用で医学部「一般枠」増の実態【患者コミュニケーション塾】

きちんと別枠で募集していた「地域枠」は58%現在、医学部入試を巡っては、不正な裏口入学や、女子学生や多浪生の合格者数が少なくなるような操作があったなど、水面下で横行していた問題が表面化してきています。そこに、医学部定員に「地域枠」を設けながら、一部は「一般枠」になっていたという実態が先日明らかになりました。厚生労働省は、2015年から「医療従事者の需給に関する検討会」を設置し、その下に「医師需給分科会」「看護職員需給分科会」「理学療法士・作業療法士需給分科会」という分科会を設けて、将来必要となる医療従事者の需給を推計したり、医師偏在問題の対策を話し合っています。私は親会と3つすべての分科会で構成員を務めています。とくに医師需給分科会では、医療法の改正を受けて、ようやく医師偏在対策について突っ込んだ議論が始まったところです。その中で、厚労省が全国の都道府県を対象として「自県が奨学金を貸与する地域枠等の医学部生・医師の勤務状況等」の調査(2018年9~10月、回答率100%)1)を行ったところ、驚くべき事実が判明したのです。それは、「地域枠」の学生の選抜方法です。私はこれまで、「地域枠」というのは一般枠とは別に設定し、その別枠の中で学生を募集して選抜しているのだろうと思っていました。ところが2018年度の募集数でみると、それは全体の約58%に留まっていることが判明したのです。実効性のない「手挙げ方式」が横行今回の調査結果によると、地域枠での学生の選抜方法には「別枠方式」と「手挙げ方式」がありました。別枠方式の中にも、「先行型」といって地域枠選抜を一般枠選抜に先立って実施する方法と、「区別型」という願書などに地域枠か一般枠かの希望を記載させ、地域枠と一般枠を区別して選抜する2つの方法があったそうです。これはいずれであっても、本来の目的を達成するための地域枠の選抜方法だと思います。ところが、問題は「手挙げ方式」です。これも2つに分かれ、1つは願書などに地域枠か一般枠かの希望は記載させますが、希望を区別せずに成績上位者から選抜する「事前型」。これは成績上位者に地域枠の希望者が入っていなければ、「地域枠」で学ぶ学生がいなくなります。そして、もっと問題なのが「事後型」です。地域枠や一般枠の希望も聞かずに選抜し、入学後に「地域枠を希望する学生はいるか?」と募集しているというのです。つまり「地域枠」という名の元に入学定員数を増やし、結果として一般枠で教育しているという実態です。現に、別枠方式は募集数の91%で奨学金が貸与されていた実績がある(つまりあらかじめ決めていた地域枠の募集定員の91%は埋まっていた)のに対し、手挙げ方式では79%しか貸与実績がなく、21%は地域枠が正しく履行されていないというわけです。奨学金を貸与された学生は地域で働く義務年限(卒後9年)が設けられていますが、別枠方式では年間離脱率が0.37%なのに対し、手挙げ方式では0.98%と高くなっています。また、義務年限終了まで地域に留まって仕事をする推定義務履行率も、別枠方式は95%なのに対し、手挙げ方式では86%と低くなっています。大学の“自治”と国としての施策この調査結果は、10月24日に開催された医師需給分科会で明らかにされました。前回9月28日には、オブザーバーとして会議に出席していた文部科学省の医学教育課長が「地域枠の具体的な選抜方法は大学独自に決定していただく。それは大学の“自治”なので、国として強制することはできない(要旨)」という発言をされていました。しかし、これはもはや“自治”と看過していい問題ではないのではないでしょうか。「地域枠」そのものは以前から各大学で設けられていましたが、2006年に医師が不足している地域の大学医学部における、実効性のある地域定着策の実施を前提とした定員の暫定的な調整の必要性が示され、「地域医療に従事する明確な意思を持った学生に奨学金を給付する」という要件で、2010年から新たな「地域枠」が設けられました。2010年から2017年の間にこの名目のもと設けられた「地域枠」は、全国で610名に及びます。2)他の構成員からは、「閣議決定までして医学部定員を増員したのに、有効に機能してこなかった部分があることを検証する必要がある。大学ごとのデータを出してもらいたい」という発言も出ていました。私はこれらを受けて、「実態が見えないと議論ができないのではないか。これまでの議論の中で、『地域枠』というのは当然ながら『別枠方式』を念頭に置いてきた。それなのに、この実態に非常に驚いている。『手挙げ方式』などと、さも正当化したような名前を付けているが、これでは『ズル方式』ではないか。『地域枠』という名前で確保した学生を『一般枠』として教育してきたということ。前回、文科省の医学教育課長が『大学の自治』だと発言されたが、もはや自治では済まされない。地域枠の流用ではないか。文科省はこのような方式を認めてきたのか」と発言しました。医学教育課長からは「2010年からの約10年間で、選抜の仕方については別枠方式でないとダメとは申し上げてこなかった。『枠を増やそう』ということでずっとやってきたので、実際に何人の学生がいるかフォローアップも十分ではなかった。厚労省の調査で明らかになったので、文科省としても大学に現在調査を依頼しているところ。今後、結果を報告していきたい」という趣旨の返答がありました。10年以上の議論の結果、何が変わったのかなぜこのように「地域枠」が問題になるのかというと、海外も含めて、地方で教育された地方出身の医学生は、卒業後、地元に定着する確率が高いことが根拠を持って示されているからです。日本でも、地元出身の医学生が卒業後に地元に留まって医師として働いている割合が高いことが明らかになっています。そのため、どのように地域枠を設けたら実効性があるのかをずっと議論してきたのでした。現在、医師需給分科会では、一般枠の中に「地元出身者枠」を作り、奨学金を貸与する「地域枠」とは区別していく方向性を打ち出しています。そして、「地域枠」「地元出身者枠」ともに、都道府県知事が大学に対してその創設や増加を要請できるのは、都道府県内に医師少数区域がある場合に限定するという案が出されています。そして今回の調査結果と医師需給分科会の議論を踏まえ、原則、手挙げ方式は認めず、別枠方式による地域枠を求めていく方向性です。講演などで、医師不足地域に伺うことも少なくありません。医師不足地域の実態をお聞きしていると、同じ日本にあって、十分な医療を受けられる地域とそうでない地域があることに非常に疑問を覚えます。そして、医師偏在問題については、これまで10年以上も議論してきて、何も解決できていないのです。たとえば、2014年のデータを見ると、人口10万人に対する医師の数は、全国平均では233.6人です。しかし、最も少ない地域では79.1人、最も多い東京都区中央部は1,181.7人という開きがあります3)。そもそも「地域枠」といってもさまざまで、その都道府県の出身者に限定している大学もあれば、出身地をまったく問わない大学もあります。今回のような実態が明らかになった以上、きちんと整理して改善し、本来の医師偏在解消につながる方法へと結びつける議論を展開したいと、思いを強くしています。1)厚生労働省「第23回医師需給分科会 資料3-2」2)厚生労働省「平成29年度第2回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会 資料1-2」3)厚生労働省「第2回医師需給分科会 参考資料」

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血液透析患者には高用量鉄剤静注が有効/NEJM

 血液透析患者において、積極的な高用量鉄剤の投与は、低用量鉄剤投与に対して非劣性であり、赤血球造血刺激因子製剤投与が少量になることが認められた。英国・キングスカレッジ病院のIain C. Macdougall氏らが、成人維持血液透析患者を対象に、高用量鉄剤の低用量に対する安全性および有効性を検証した多施設共同非盲検無作為化試験「Proactive IV Iron Therapy in Haemodialysis Patients:PIVOTAL試験」の結果を報告した。鉄剤の静脈投与は透析患者の標準治療であるが、臨床的に有効なレジメンに関して比較検討したデータは限定的であった。NEJM誌オンライン版2018年10月26日号掲載の報告。血液透析患者2,141例で、積極的高用量鉄剤静注と低用量鉄剤静注を比較 研究グループは、2013年11月~2018年6月に、成人維持血液透析患者2,141例を、積極的に高用量のスクロース鉄を静脈投与する群(高用量鉄剤群:1,093例)と、反応をみながら低用量のスクロース鉄を静脈投与する群(低用量鉄剤群:1,048例)に無作為に割り付けた。高用量鉄剤投与は400mg/月(フェリチン値>700μg/Lまたはトランスフェリン飽和度[TSAT]≧40%でなければ投与)、低用量鉄剤投与は0~400mg/月(鉄剤投与の指標であるフェリチン値<200μg/LまたはTSAT<20%で投与)であった。 主要評価項目は、非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心不全による入院・全死因死亡の複合エンドポイント(評価者盲検)とし、原因別Cox比例ハザードモデルを用いて主要評価項目の初回イベント発生までの時間を解析した。これらの複合評価項目は、再発イベントについても解析が行われた。その他の副次評価項目は、全死因死亡、感染症の発現率、赤血球造血刺激因子製剤の投与量などであった。 高用量鉄剤群の低用量鉄剤群に対する非劣性は、主要評価項目のハザード比の両側95%信頼区間上限値が1.25を超えない場合と定義した。血液透析患者への高用量鉄剤静注の非劣性が認められた 追跡期間中央値2.1年において、血液透析患者への鉄剤投与量中央値は、高用量鉄剤群264mg/月(四分位範囲[25th~75thパーセンタイル値]:200~336)、低用量鉄剤群145mg/月(同:100~190)であった。赤血球造血刺激因子製剤の投与量中央値は、高用量鉄剤群2万9,757 IU/月、低用量鉄剤群3万8,805 IU/月であった(群間差:-7,539IU、95%信頼区間[CI]:-9,485~-5,582)。 主要評価項目のイベントは、高用量鉄剤群で333例(30.5%)、低用量鉄剤群で343例(32.7%)確認された(ハザード比:0.88、95%CI:0.76~1.03、非劣性のp<0.001)。再発については、高用量鉄剤群で456件、低用量鉄剤群で538件のイベントが確認された(率比:0.78、95%CI:0.66~0.92)。感染症の発現率は両群で変わらなかった。

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第11回 レジパスビル/ソホスブビルの8週、12週、24週投与による有効性の違いは?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 C型肝炎の治療薬は近年急速に充実してきました。そのはしりがアスナプレビルとダクラタスビルの併用療法ですが、すぐにソホスブビル(商品名:ソバルディ錠)がインターフェロン無効例でも高い奏効率を示したことから、画期性加算が100%上乗せされて同薬剤には高額な薬価が設定されました。次いでレジパスビル/ソホスブビル(商品名:ハーボニー配合錠)が発売され、「ジェノタイプ(遺伝子型)1型のC型慢性肝炎において、リバビリン併用なしでSVR12を100%達成」と大きな話題になりました1)。レジパスビル/ソホスブビルも高額な薬価が設定され、IQVIAジャパンの調査によれば、レジパスビル/ソホスブビルは2016年の売上金額第1位でした。その後も、2017年にグレカプレビル/ピブレンタスビル(商品名:マヴィレット配合錠)が発売され、こちらも2018年の第1・第2四半期で売上金額第1位となっています2)。何かと話題に事欠かないC型肝炎治療薬の中から、今回はレジパスビル/ソホスブビルに関する研究を紹介します。レジパスビル/ソホスブビルの第III相試験には、多施設オープンラベルのランダム化比較試験のION-1、ION-2、ION-33-5)の3つがあります。いずれも18歳以上のジェノタイプ1のC型肝炎患者を対象としており、未治療例、他剤無効例、肝硬変例などの属性の患者ごとにレジパスビル/ソホスブビルあるいはレジパスビル/ソホスブビル+リバビリン併用の効果を、SVR12をプライマリエンドポイントとして検討しています。なお、SVRとはsustained virological response(持続陰性化)の略で、服用終了から12週後にC型肝炎ウイルス陰性(検出限界未満)が確認された場合にはSVR12となり、24週後も陰性が確認された場合にはSVR24となります。それぞれの試験の結果は下表のとおりです。結果から、インターフェロンが無効であった例でも高い奏効率であること、肝硬変例においても有効であることが読み取れます。また、ION-3において肝硬変なしの未治療例の研究では、8週服用と12週服用で大きな差はみられませんでした。本邦では12週服用が原則ですが、英国のNICEガイダンスにおいては、肝硬変を伴わないジェノタイプ1のC型肝炎については8週服用が推奨されています6)。国民保健サービス(NHS)により原則公費負担で提供される英国の医療制度においては、診療ガイドライン作成時に費用対効果も厳しく査定され、期待できる効果に大差がなければ8週で終了というのは経済的にも副作用予防の側面でも合理的なのかもしれません。なお、比較的多くみられた有害事象は、倦怠感や頭痛に不眠、吐き気、無力症、下痢、発疹などでした。これらの試験は肝がんへの進展や総死亡をプライマリエンドポイントとしているわけではないため、厳密には総死亡や肝がん発生率を語ることはできないのですが、SVR12の達成率が高いということはウイルス陰性が長く続くということなので、肝障害の進展抑制が期待できるものと推察されます。ただし、事例として多いわけではないものの、インターフェロンと異なり免疫活性作用が期待できない直接作用型の抗ウイルス薬治療で肝細胞がんの再発が増えた事例も報告されていますから、一定の認識はあってもよいかと思います7)。飲み忘れ時は「気づいた時点で服用」が原則経験上、レジパスビル/ソホスブビルは自己負担の上限はあれど薬価がきわめて高いことや、肝硬変や肝がんに進行させたくないという治療目的から、患者さんが普段以上に相互作用や飲み忘れ時の対応などで慎重になるように思います。レジパスビルは胃内pHの上昇により溶解性が低下するため、添付文書にはH2ブロッカー併用時は同時投与または12時間の間隔を空け、PPI併用時は空腹時に同時服用となっています。酸化マグネシウムは本邦の添付文書には具体的な服用間隔の指示はありませんが、米国の添付文書では4時間の間隔を空けるとあります。飲み忘れて慌てて連絡してくる患者さんもお見かけしますが、メーカーに問い合わせてみると「一般的に飲み忘れに気付いた時点で服用し、その日の服用はそれのみとして、その翌日から従来通りの服用時点で服用する。同じ日に2回分を飲まないという原則を守る。薬を体内から切らさないようにすることが大切」という回答を得たことがありますので参考にしていただければと思います。1)ギリアド ・サイエンシズ株式会社プレスリリース(2015年8月31日付)2)IQVIAジャパン トップライン市場データ3)Afdhal N, et al. N Engl J Med. 2014;370:1889-1898.4)Afdhal N, et al. N Engl J Med. 2014;370:1483-1493.5)Kowdley KV, et al. N Engl J Med. 2014;370:1879-1888.6)NICE guidance Ledipasvir-sofosbuvir for treating chronic hepatitis C7)Reig M, et al. J Hepatol. 2016;65:719-726.8)ハーボニー配合錠 添付文書(2018年2月改訂 第7版)、インタビューフォーム(2018年7月改訂 第8版)9)HARVONI package insert

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第13回 産婦人科からのクラリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Chlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマチス)・・・全員Neisseria gonorrhoeae(淋菌)・・・9名クラミジアの可能性 奥村雪男さん(薬局)骨盤炎症性疾患(pelvic inflammatory disease;PID)の原因菌としては、クラミジア、淋菌、大腸菌などの好気性グラム陰性桿菌、Bacteroides 属やPeptostreptococcus 属といった嫌気性菌が想定されますが、今回マクロライド系のクラリスロマイシン(CAM)が選択されているので、診断された原因菌はクラミジアであると予想されます。「性感染症診断・治療ガイドライン2016」では、クラミジア感染症のPIDの治療薬として、CAM 200mg× 2 7 日間が、非妊婦では推奨レベルAとされています。Q2 患者さんに確認することは?アレルギー、併用薬と妊娠の有無 ふな3さん(薬局)CAMのアレルギー、併用薬を確認します。また、チェックすべき危険な疾患として子宮外妊娠が考えられるため、医師から妊娠の有無とその可能性を確認されたかも聞きたいです。産婦人科医からの処方であるため、子宮外妊娠の見落としはさすがにないかと思いますが、リスク管理上、医師がその可能性を確認したかだけは聞いておきたいと思います。パートナーの感染について 清水直明さん(病院)クラミジア感染は性感染症の中でも最も多く、男性・女性ともに無症状または無症候の保菌者が多数存在しています。万が一、患者さんの周囲(パートナー)に症状を呈する人がいれば一緒に治療することが必要ですが、たとえパートナーに症状がなくても治療が必要な場合もあるため、できるだけ受診を勧めてほしい、と伝えるべきだと思います。パートナーを含めて治療しないと、自分は治癒してもまた再感染を起こしてしまうからです。このことは既に医師から説明を受けているかもしれませんが、大事なことなので薬剤師からも伝えるべきだと思います。一方で、妊娠している可能性があるかどうかも服薬指導する上で必要な情報ではありますが、CAMは妊婦でも比較的安全とされていますので、今回はあえて確認しないかもしれません。免疫抑制薬にも注意 児玉暁人さん(病院)あまり遭遇しないかもしれませんが、シクロスポリンやタクロリムスなどの血中濃度のコントロールを必要とする薬剤を服用しているかどうかも聞きます。シクロスポリンやタクロリムスは、CAMとの併用で血中濃度が変化する可能性があるからです。薬剤以外の質問はデリケートなことなので聞きにくいですね。患者さんが話しにくそうなら女性薬剤師に対応してもらう 荒川隆之さん(病院)パートナーの治療についても確認したいところですが、言いにくそうとのことなので、職場に女性薬剤師がいれば、その人に尋ねてもらうかもしれません。再受診について 中西剛明さん(薬局)まず、男性薬剤師が説明をしてもよいかを事前に聞いた上で、再受診するよう指導されているか、専門医に受診するよう指導されているかを確認します。Q3 疑義照会する?しない・・・10人ガイドラインとは異なるが ふな3さん(薬局)「性感染症診断・治療ガイドライン2016」では、CAMは7日間投与となっており、10日間の処方はやや長めかと思いますが、次回受診タイミングなども考慮して、特に疑義照会はしません。する・・・1人CAMの投与期間 JITHURYOUさん(病院)特にしなくてよいかもしれませんが、あえて言うなら、通常ガイドラインで7日間とされているCAMの投与期間を確認します。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?自己中断せずしっかり飲み切ること 中堅薬剤師さん(薬局)処方分は飲み切ることを説明します。副作用がひどく継続困難なときは、自己中断せずに医師に相談するよう助言します。症状がひどくなったら再受診を キャンプ人さん(病院)しっかり服用することの大切さと、下腹部痛がひどくなった場合はすぐに受診する点を説明します。治りきらない場合のリスクも説明 清水直明さん(病院)「指示された通りしっかり服用しないと、治り切らない場合があります。もしも、治り切らないまま放置すると、卵管通過障害を起こしたり、異常妊娠や不妊症の原因になりうるため、指示通りきちんと服用するようにしてください。また、次回の受診が指示されているなら、(治療効果判定のため)必ず受診するようにしてください。」他の医療機関の受診時の注意点 わらび餅さん(病院)相互作用についてチェックが必要なので、服用中に他の医療機関にかかる場合は、CAMを服用していることを必ず申し出るように伝えます。結膜炎への注意喚起 柏木紀久さん(薬局)「クラミジアの場合、手指を介して結膜炎を起こすこともあるので分泌物に触れた手で目などをこすったりしないようにしてください。」まだ25 歳で将来の妊娠のことを考えると、クラミジアによる卵管狭窄など、不妊の恐れもあり「服用後にちゃんと治癒しているかどうかを再診して確認してもらうようにしてください」とも伝えます。飲み忘れた場合の対処法 中西剛明さん(薬局)飲み忘れに気が付いたら、すぐに服用するように指導します。次回の服薬時間が迫っていても、服用するように指導します。市販薬を勝手に服用しないように JITHURYOUさん(病院)CAMはガイドラインでは投与期間が7日間なので、その時点で再診の予定があるのかを確認します。パートナーが受診・治療をしていなければ、受診するように話します。痛み止めの市販薬などを勝手に服用しないように説明します。既に医師から説明を受けているかもしれませんが、自己判断で服薬をやめたりしてきちんと治療を完遂しないと、クラミジアが残存し将来の不妊や流産、早産の危険性が高くなることや、仮に妊娠していた場合には産道感染のリスクが高まることも伝えます。Q5 その他、気付いたことは?アドヒアランスを考慮 児玉暁人さん(病院)アドヒアランスという点ではアジスロマイシン1,000mgの単回もありかなと思いました。踏み込んだ質問は難しい 柏木紀久さん(薬局)性的パートナーの有無、特定パートナー以外との性交渉、コンドーム使用の有無などの聴取は女性でも男性でも難しいと思いますが、女性薬剤師に交代することも考慮します。薬剤師の患者さん対応について わらび餅さん(病院)抗菌薬とは論点が違いますが、対応するのが女性薬剤師であっても、こういった処方や患者さんの対応に神経を使うのは男性と変わらないと思います。私が何歳であっても、相手が何歳でも。初対面の患者と考えると、誰であってもコミュニケーション取るのは難しいかと。私は病院勤務のため、産婦人科や性感染症科のクリニックの処方箋を多く応需している薬剤師の意見を聞いてみたいです。患者さんにどんなことを聞くのか、どのように聞き出すのか、どこまで指導するのか。このような処方のときには女性薬剤師が対応する、性感染症の男性患者だったら男性薬剤師が対応するなど、ルール決めをしている薬局はあるのでしょうか。個人的には、そのようなルール決めをしてしまったら業務が回らないし、薬剤師のレベルアップにはならないのですべきではないと思いますが、そういう配慮が必要なのでしょうか?女性薬剤師でも普通に前立線がんや精巣がんを扱う泌尿器科担当になりますし、男性薬剤師が卵巣がんや子宮がん、子宮脱など扱う婦人科も担当するのですが、以前、授乳しているところに出くわすとバツが悪いという理由で、産科病棟の担当を拒否する男性薬剤師がいたことに違和感を感じたことを思い出しました。「医師から十分な説明は受けていますか?」「何か聞いておきたいことはありますか?」 中堅薬剤師さん(薬局)私は泌尿器の処方箋を応需する薬局で数年、1人薬剤師として勤務したことがあり、若い女性の性感染症にも関わったことがあります。 女性患者さんだと確かに対応には困るのですが、「医師から十分な説明は受けていますか?」「何か聞いておきたいことはありますか?」の2点はどの患者さんにも聞いていました。聞きたい、知りたいということであれば、「男性の私が対応しても大丈夫ですか?」と確認し、必要な説明、助言をしていました。男性患者さんの場合は、ストレートに(配慮しながら)説明していました。ただ、女性事務員には距離をあえて置いてもらい、プライバシーには配慮していましたね。わらび餅さんが言う通り、薬剤師は患者さんの性別を問わず、全ての投薬ができるように努力することは大切だと思います。後日談(担当した薬剤師から)ちょうど2週後に再来局。薬の飲み忘れがあり、今日まで薬が残っていたとのこと。医師には怒られはしなかったが、治療が成功しないかもしれないと言われ心配になりました、と聞き取りました。念のためなのか、今度はミノサイクリン錠100mg 1 回1 錠 1 日1 回 朝食後 10 日分の処方が出ていました。これで治療は完結したのでしょうか、以降の来局はありませんでした。[PharmaTribune 2017年4月号掲載]

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周期投与と連続投与が選択できる月経困難症治療薬「ジェミーナ配合錠」【下平博士のDIノート】第12回

周期投与と連続投与が選択できる月経困難症治療薬「ジェミーナ配合錠」今回は、「レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール配合剤(商品名:ジェミーナ配合錠)」を紹介します。本剤は、周期投与と連続投与の2つの服用パターンが選択でき、月経困難症に悩む女性のQOL改善が期待されています。<効能・効果>本剤は月経困難症の適応で、2018年7月2日に承認され、2018年10月4日より販売されています。<用法・用量>下記の2つの投与周期が規定されています。1)1日1錠を毎日一定の時刻に21日間連続経口投与し、その後7日間休薬(28日周期)2)1日1錠を毎日一定の時刻に77日間連続経口投与し、その後7日間休薬(84日周期)いずれの場合も出血の継続の有無にかかわらず、休薬期間終了後の翌日から次の周期を開始し、以後同様に繰り返します。<副作用>月経困難症を対象とした臨床試験では、全解析対象241例中214例(88.8%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました(承認時)。主な副作用は、不正子宮出血、希発月経、月経過多、下腹部痛、悪心、頭痛などでした。<患者さんへの指導例>1.この薬は、黄体ホルモンと卵胞ホルモンを補充することで、月経時の下腹部痛や頭痛などを改善します。2.薬を飲んでいる途中に不正出血が起こることがあります。通常は飲み続けるうちに少なくなりますが、長期間にわたって出血が続いたり、出血量が多かったりする場合は、医師に相談してください。3.血栓症の主な症状である足の急激な痛み・腫れ・しびれ、突然の息切れ、胸の痛み、激しい頭痛などが現れた場合は、服用を中止して救急医療機関を受診してください。これらの症状が軽い場合や体が動かせない状態、脱水になった場合も服用を中止して医療機関を受診してください。4.28日周期の場合に、2周期連続して月経が来なかった場合は妊娠している可能性が疑われますので、すぐに医療機関を受診してください。5.他の医療機関から処方されている薬剤やサプリメントなどを服用する際は、本剤を服用中であることを伝えてください。6.飲み忘れたときは、当日に気付いた場合は気付いた時点で服用し、翌日以降に気付いた場合は、前日分(1日分のみ)を気付いた時点で服用し、当日分をいつもの時間に服用してください。1日に2錠を超えて服用することはできません。<Shimo's eyes>月経困難症は、月経に随伴して起こる病的症状を言い、激しい下腹部痛および腰痛を主とした症候群です。卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤が、非ステロイド性抗炎症薬と共に月経困難症治療の第1選択薬となっています。本剤は月経困難症治療薬として、わが国で初めて第2世代黄体ホルモンであるレボノルゲストレルを含有した超低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤です。本剤の特徴は、同じ製剤で周期投与(28日周期)と連続投与(84日周期)の両方に使用できることです。2種類のシートが用意されており、周期投与は21錠シート1枚分を服用した後7日間休薬し、連続投与は28錠シート2枚と21錠シート1枚分(計77日分)を服用した後に7日間休薬します。既存薬は処方された製品によって投与周期がわかりますが、本剤ではどちらの周期で使用するのか、しっかり患者さんに確認する必要があります。国内第III相長期投与比較試験において、連続投与群の月経困難スコア合計は、周期投与群と比べて、1~11周期のいずれにおいても有意な低下を示しました。また、連続投与では服薬期間中に少量の出血(不正子宮出血)が認められることがあるものの、休薬期間(月経予定)が減ることによって月経痛が生じる頻度が下がるため、一般的な月経周期で月経があるほうが望ましいと考える患者さん以外では、連続投与が選択されると考えられます。なお、連続投与群の副作用発現率が86例中85例(98.8%)と高いのは、服薬期間中の不正子宮出血や希発月経などが含まれているためです。卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤に共通の重篤な副作用である血栓症の発症に注意が必要です。ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠(商品名:ヤーズ配合錠)は、2014年に血栓症に関するブルーレターの発出があり注意喚起されています。そのため本剤も類薬であることから、医薬品リスク管理計画書において、重要な特定されたリスクとして血栓症が設定されています。しかし、レボノルゲストレルを含有する配合剤は、他の黄体ホルモンを含有する配合剤に比べ、血栓症の発現リスクが低かったという海外での報告もあります。既存の卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤と同様に、禁忌薬や併用注意薬が大変多いため、処方監査の際には薬歴やお薬手帳を必ず確認しましょう。服薬指導では、休薬期間ではない日に少量の出血があっても、基本的にはそのまま服用するように伝え、喫煙により静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、脳卒中などの危険性が高まることから、禁煙の厳守を理解してもらいましょう。また、生活習慣病に罹患すると血栓症のリスクが高まるため、適切な生活習慣の改善も必要です。さらに、万一飲み忘れに気付いた場合の対応が避妊薬とは異なるので、しっかり説明しましょう。

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ACE阻害薬と肺がんリスクの関連/BMJ

 ACE阻害薬の使用により、肺がんのリスクが増大し、とくに使用期間が5年を超えるとリスクが高まることが、カナダ・Jewish General HospitalのBlanaid M. Hicks氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年10月24日号に掲載された。ACE阻害薬により、ブラジキニンおよびサブスタンスPが肺に蓄積し、肺がんリスクが高まることを示唆するエビデンスがある。この関連を検討した観察研究は限られており、結果は一致していないという。肺がんとの関連をARBと比較するコホート研究 研究グループは、ACE阻害薬の使用が肺がんリスクを高めるかを、ARBと比較する地域住民ベースのコホート研究を行った(Canadian Institutes of Health Researchの助成による)。 United Kingdom Clinical Practice Research Datalinkから、1995年1月1日~2015年12月31日の期間に、新規に降圧薬治療を受けた患者99万2,061例のコホートを同定し、2016年12月31日まで追跡した。 ACE阻害薬の累積使用期間および治療開始からの期間別の肺がんの発生率を、ARBと比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて、補正ハザード比(HR)を推算し、95%信頼区間(CI)を算出した。肺がんリスクが14%増加、5年以上の使用で関連が明確に 降圧薬別の患者の割合は、ACE阻害薬使用例が21.0%、ARB使用例が1.6%、その他が77.4%であった。全体の平均年齢は55.6(SD 16.6)歳、男性が46.3%であった。最も多く使用されていたACE阻害薬はramipril(26%)で、次いでリシノプリル(12%)、ペリンドプリル(7%)の順だった。 平均フォローアップ期間は6.4(SD 4.7)年で、この間に7,952例が新たに肺がんと診断された(粗発生率:1.3[95%CI:1.2~1.3]件/1,000人年)。 全体として、ACE阻害薬の使用により、ARBと比較して肺がんリスクが有意に増加した(発生率:1.6件 vs.1.2件/1,000人年、HR:1.14、95%CI:1.01~1.29)。 使用期間が長くなるに従ってHRは徐々に上昇し、5年以降は明確な関連が認められ(HR:1.22、95%CI:1.06~1.40)、10年後にピークに達した(1.31、1.08~1.59)(傾向検定:p<0.001)。 治療開始からの期間についても同様の関連が認められ、期間が長くなるに従ってHRが上昇した(5.1~10年:1.14、95%CI:0.99~1.30、>10年:1.29、1.10~1.51)(傾向検定:p<0.001)。 著者は、「今回、観察された影響はさほど強くないが、小さな作用が結果として多くの患者を生み出す可能性があるため、これらの知見を他の疾患でも確認すべきだろう」と指摘し、「ACE阻害薬が肺がんの発生率に及ぼす影響を、より正確に評価するために、さらに長期のフォローアップを行う必要がある」としている。

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第12回 患者さんが尊厳を持って死ぬことをお手伝いしたい【週刊・川添ラヂオ】

動画解説今回は佐賀県神崎薬局の千代延誠治先生と熊本のキャンプ場からお届け。緩和ケアとリビングウィルに力を入れているという千代延先生。どのように最期を迎えたいか、それまでに何をしたいかを真剣に考え、患者さんが最期の一息を吐く時間に寄り添える薬剤師が目標。そのために「明日死ぬつもりで全力で生きる。永遠に生きるつもりで学ぶ」熱い薬剤師です。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がん1LでORR60%(CheckMate-142)/ESMO2018

 MSI-H/dMMの転移を有する大腸がん(mCRC)患者の1次治療として、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法が持続的な治療効果を示したことが明らかになった。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、米国・USC Norris Comprehensive Cancer CenterのHeinz-Josef Lenz氏により第II相CheckMate-142試験の新たな解析結果が発表された。 なお、米国では同試験別コホートからのデータに基づき、化学療法歴のある上記患者対象にニボルマブ単剤療法が2017年8月、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が2018年7月に、米国食品医薬品局(FDA)からそれぞれ承認されている。 今回結果が発表されたコホートでは、治療歴のないMSI-H/dMMのmCRC患者において、病勢進行、死亡、または忍容できない毒性が認められるまで、ニボルマブ(3mg/kgを2週間間隔)とイピリムマブ(1mg/kgを6週間間隔)が投与された。主要評価項目は治験担当医評価による奏効率(ORR)で、副次評価項目は盲検独立中央委員会(BICR)評価によるORR、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などであった。 主な結果は以下のとおり。・45例の患者が組み入れられ、51%が男性、年齢中央値は66歳であった。ECOG PSは0(56%)/1(44%)、診断時の臨床病期はI~III期(62%)/IV期(38%)、リンチ症候群の患者が18%含まれ、PD-L1発現率は≧1%(27%)/<1%(58%)/不明(16%)。変異の有無についてはBRAF/KRAS野生型が29%、BRAF変異型が38%、KRAS変異型が22%、その他は不明であった。・追跡期間中央値13.8ヵ月(9~19ヵ月)で、治験担当医評価によるORRは60%、DCRは84%であり、3例(7%)で完全奏功(CR)、24例(53%)で部分奏功(PR)が確認された。PD-L1発現状態やBRAF/KRAS変異、リンチ症候群の有無によらず、奏功が得られていた。・データカットオフ時点で、DOR中央値は未達であった。奏効が得られた患者の82%で効果が持続中であり、74%で6ヵ月以上奏功が持続していた。 ・PFS中央値、OS中央値はともに未達であり、12ヵ月PFS率は77%(95%信頼区間[CI]: 62.0~87.2)、12ヵ月OS率は83%(95%CI:67.6~91.7)であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は78%の患者で発現し、多くみられた項目は、そう痒症(24%)、甲状腺機能低下症(18%)、無力症(16%)、関節痛(13%)であった。Grade3/4のTRAEは16%の患者で発現したが、治療中止に至ったのは7%と低く、忍容可能と考えられた。■参考CheckMate142試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がんに迅速承認/BMSニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H大腸がんで有効性/ASCO-GI2018ニボルマブ、MSI-H転移性大腸がんに承認/FDA※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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第12回 内科からのホスホマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Salmonella enterica(サルモネラ)・・・10名Campylobacter(カンピロバクター)・・・9名Escherichia coli(大腸菌)・・・8名ノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルスなどのウイルス・・・4名大腸菌へのホスホマイシン投与 奥村雪男さん(薬局)ひどい下痢・腹痛、食事内容から、細菌性腸炎の可能性があります。起因菌は疫学的にはカンピロバクター、サルモネラ、下痢原性大腸菌の場合が多いですが、ユッケは通常生の牛肉を使用していること、ホスホマイシンが選択されていることから、大腸菌が最も疑われている、もしくは警戒しているかも知れません。「JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015─腸管感染症─」では、成人の細菌性腸炎のエンピリックセラピーとして、第一選択にはレボフロキサシン、シプロフロキサシンといったキノロン系抗菌薬、アレルギーがある場合の第二選択としてアジスロマイシンやセフトリアキソンが挙げられています。O157 などの腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli ; EHEC)の場合、溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome ;HUS)※発症が問題となりますが、「発症から2日以内のホスホマイシンの使用はHUSの発症リスク低下と関連していた(補正後オッズ比0.15, 95%CI 0.03~0.78)」という報告1)があり、処方の際、それを意識されたのかも知れません。※ベロ(志賀)毒素を産生するO157などのEHEC感染をきっかけに、下痢症状を伴った溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全を主な症状とする可能性は低いがノロウイルスかも JITHURYOUさん(病院)O111、O157などのEHEC、カンピロバクター、サルモネラ、貝類等を食している可能性を否定できないので、可能性は低いですがノロウイルス、ロタウイルスも考えられます。大腸菌がもっとも疑わしい 荒川隆之さん(病院)生肉による食中毒と思われるので、大腸菌やカンピロバクター、サルモネラなどが原因菌として考えられます。ただ、サルモネラの場合はニューキノロン系抗菌薬、カンピロバクターの場合はマクロライド系抗菌薬が第一選択となります。今回の症例はホスホマイシンを使用していることから、大腸菌が最も疑わしいかと思います。Q2 患者さんに確認することは?副作用歴、併用薬、採便をしたか 中堅薬剤師さん(薬局)抗菌薬関連の副作用歴、併用薬と、採便をしたかどうかを確認します。基礎疾患の有無 奥村雪男さん(薬局)薬(特にキノロン系抗菌薬)のアレルギーがあるか確認します。重症化のリスク因子となる免疫不全などの基礎疾患の有無も確認します。経過をもう一度確認 キャンプ人さん(病院)単なる胃腸炎の可能性もあるかもしれないので症状発現までの時間を確認します。便の培養結果はどうだったか。ノロウイルスの迅速結果はどうだったか(自費なので行わない施設もあるかもしれません)。便の色 柏木紀久さん(薬局)併用薬、便の色や状態(血が混じっているかどうか)、尿は出ているか、また尿の色などの状態はどうか、嘔吐や発熱はあるか、水分は摂取できているか。食事は摂れるか 中西剛明さん(薬局)食事の摂取が可能かどうか聞きます。用法に関連するからです。家族の情報も聞き出す わらび餅さん(病院)妻と子供の症状を尋ねます。患者と同じか、いつからか、血便や腹痛の場所、発熱の有無など患者や家族の症状詳細を聞き、家族としての原因菌や重症度の評価をします。また、妻や子供は現在、何の点滴をしているか、家族に処方箋は出たのかも確認したいです。脱水状態 JITHURYOUさん(病院)利尿薬やSGLT2阻害薬の併用確認をすることは重要だと思います。感染性胃腸炎では脱水により急性腎障害リスクが高くなり、これらの薬剤はもともとの薬理作用からそのリスクを助長する可能性があります。もしこれらの薬剤を使用していたら、一時休薬する必要性があると思います。他にも休薬すべき糖尿病治療薬はありますが、とりわけ脱水という視点で言うとこれらの薬剤になります。本症例では、現在意識清明で、脱水としても重症感はないのですが、ツルゴール反応※や尿量など確認したいと思います。※ ツルゴールとは皮膚の緊張のことで、前腕あるいは胸骨上の皮膚をつまみ上げて放し、2秒以内に皮膚が元の状態に戻れば正常と判断し、2秒以上かかるようであれば脱水症の可能性がある。Q3 疑義照会する?する・・・6人ホスホマイシンの使用量 荒川隆之さん(病院)ホスホマイシンの使用量が少ないので疑義照会します。ただEHECの場合、抗菌薬使用により菌の毒素放出が亢進されHUS発症の危険性が増すとの報告もあるので、使用量を加減しているのかもしれません。海外においては、EHECの場合に抗菌薬の使用を推奨しないことが多いのですが、国内ではホスホマイシンが有効であったとの報告1)もあり、議論の残るところです。腎障害を考慮しての減量の場合もあるかもしれませんが、もともと経口では血中濃度が上がりにくい抗菌薬ですので、ある程度ならば通常用量でよいと考えています。医師の処方意図、真意を探ることも意識して疑義照会を行います。用法の提案も 中西剛明さん(薬局)抗菌薬が必要か確認します。うっかり投与すると菌の破壊で毒素放出量が増加し、HUSを発症するかもしれないからです。個人的には、ホスホマイシンは使用しない方が安心できます。ホスホマイシンを投与するなら、食事を取れない可能性を考慮して、用法は食後ではなく、8時間ごとを提案します。抗菌薬は必要? JITHURYOUさんホスホマイシン投与量1.5g/日と投与期間について疑義照会します。仮にEHECとしても、抗菌薬治療に対しては要・不要双方の見解があります。本症例は、救急外来で点滴後に朝一番の来局ということもあり、重症感があまり感じられないこと、ホスホマイシン投与量が絶対的に少ないことなどを勘案すると、抗菌薬自体不要ではないのでしょうか。仮に必要だとして、このままホスホマイシンを続けるのか、JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015では1日2gとなっていること、第一選択薬であるニューキノロン系抗菌薬にしないのかを確認したいです。抗菌作用以外の効果(HUS予防や炎症性サイトカイン抑制)を狙っているのかも併せて確認したいです。しない・・・4人EHECの可能性の場合もあるので現状で様子見 清水直明さん(病院)疑義照会はしません。入院はしていないようなので、症状は軽症~中等症だと想定すると、カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌やノロウイルス・サポウイルスなどのウイルス性の場合、抗菌薬投与は不要であると思います。しかしながら、万が一、O157を代表とするEHECの可能性がある場合には、HUSや脳炎などを併発して重篤化することが多いので、ホスホマイシンの投与で様子を見てもいいと思います。ただし、EHECに対する抗菌薬投与の是非については、専門家の間でも意見が分かれているようです。投与量はやや少なめですが、腸管内での作用を期待しており、ホスホマイシンのバイオアベイラビリティは比較的低く(吸収率は12%)、腸管内に高濃度でとどまるのでそのままとします。用量で迷うが・・・ ふな3さん(薬局)ホスホマイシンの量が少ない(2~3g/日が適当)と思います。微妙な量なので、疑義照会をするか非常に悩ましいところです。ホスホマイシンの有効性については議論があるところなので、疑義照会はしないと思います。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?抗菌薬の服用タイミング、抗菌薬を飲みきる 中堅薬剤師さん(薬局)抗菌薬は食後である必要はなく、食事できない場合でも、普段の食事の時間に合わせて服用してよいことを伝えます。採便をしたことが分かれば、ホスホマイシンはつなぎの治療であることを説明します。もし採便しておらず、再受診指示もないのであれば、自ら再受診した方がよいと助言します。再受診の目安 柏木紀久さん(薬局)注意してもらうのは脱水と二次感染、EHECだった場合はHUSへの移行が心配です。また、「血尿、浮腫、貧血、痙攣などが出たら再度受診してください」とも伝えます。下痢止めは使用しないこと 清水直明さん(病院)「指示された通りに正しく最後まで服用してください。ただし、服用の途中であっても、便に血が混じってきたり、意識障害など普段と違った様子が見られた場合は、すぐに救急外来を受診してください。市販の下痢止めは症状を悪化させることがあるので、使用しないでください。」水分補給と二次感染予防 ふな3さん(薬局)「食欲がなく食事が取れなくても、1日3回5日分、しっかり飲みきってください。下痢によって脱水症状が心配されますので、経口補水液などで、しっかり水分補給をしてください。(外出先での排便により感染を広げる可能性があるので)下痢が治まるまでは、自宅で過ごすようにしてください。自宅に他の同居家族がいる場合には、ドアノブ・便器の消毒やタオルの共用を避けるなど注意してください。」Q5 その他、気付いたことは?検査結果までのつなぎ 中堅薬剤師さん(薬局)経験上ですが、開業医は便検査結果が出るまでの「つなぎ」として、ホスホマイシンを数日分処方することがあります。本症例でも、夜間救急で対応した医師も専門ではなく、便検査もできないため、同じような意図で対応したのではないか、と推測します。重篤化のリスクと再受診について 荒川隆之さん(病院)小児ではないので可能性は低いと思うのですが、EHECでは、5~10%の患者さんでHUSを起こし重篤化することが知られているため、元気がない、尿量が少ない、浮腫、出血斑、頭痛、傾眠傾向などの症状が見られた場合にはすぐに受診するように伝えます。時間経過の重要性 キャンプ人さん(病院)菌やウイルスにより潜伏期間が異なるため、丁寧に時間経過を聞くことが大切だと思います。原因菌や経過は分からないことが多い わらび餅さん(病院)実際、このような腸管感染の原因菌は培養提出しないとはっきりせず、ほとんどの場合分からないままです。すぐに元気になってほしいと願うばかりで、正しい選択だったのか経過の確認も難しいです。とりあえず抗菌薬? JITHURYOUさん(病院)本症例は軽症である可能性があり、前述したように抗菌薬投与が必須ではないと考えることもできます。水分を取っても吐くような状況であれば、点滴が必要となります。対症的に五苓散(柴苓湯)などの併用の提案も考慮したいです。ひどい下痢ということから、整腸剤も最大投与量を提案したいです。また考えたくないのですが、夜間診療ということで「とりあえず抗菌薬を処方しておけばなんとかなる」という考えもあったかもしれません。後日談(担当した薬剤師から)用量について疑義照会をしましたが、処方医が外部の非常勤の医師で、既に当直を終えて帰宅しており、回答が得られませんでした。本来は、疑義が解決していないのでこのまま調剤してはいけないのですが、カルテを確認してもらい、特に不自然な点もないことから、急性疾患の患者を待たせることはできないという状況もあり、やむなくそのまま調剤しました。1回きりの来局で、その後の経過は不明です。1)Clin Nephrol 1999; 52(6): 357-362. PMID:10604643

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妊娠高血圧腎症、認知症リスクを増大/BMJ

 妊娠高血圧腎症(pre-eclampsia)は、認知症リスクを増大することが、デンマーク・Statens Serum InstitutのSaima Basit氏らによる全国コホート研究の結果、示された。とくに脳血管性認知症のリスクは、非既往女性の3倍以上高く、より高齢(65歳以上)での発症と強い関連が認められたという。また、そのリスクは、糖尿病、高血圧、心血管疾患で補正後もやや減弱する程度で、著者は「妊娠高血圧腎症と脳血管性認知症は基礎メカニズムあるいは感受性経路を共有している可能性がある」と指摘している。なお、アルツハイマー病との関連はわずかで、肥満による交絡の非コントロールによる可能性が示唆された。得られた所見を踏まえて著者は「妊娠高血圧腎症歴を女性に尋ねることは、ベネフィットが得られる女性を臨床医が特定するのに役立ち、疾患の早期兆候に対するスクリーニングや早期臨床的介入を可能とするだろう」と述べている。BMJ誌2018年10月17日号掲載の報告。1978~2015年の分娩デンマーク女性対象にコホート研究 妊娠期に高血圧障害を有した女性は、その後に認知障害や脳萎縮を示す兆候がみられる。それらは妊娠後の短期間に、または数十年後にみられる場合もある。後期発症のアルツハイマー病では、妊娠高血圧腎症の感受性を高める遺伝子異型STOX1遺伝子の過剰な発現が認められている。また、疫学研究により、妊娠期の高血圧障害と認知症には直接的な関連があることが、限定的だが見いだされていた。 研究グループは今回、デンマークの全国コホート研究により、妊娠高血圧腎症と後期認知症との関連を、全体的および認知症サブタイプ別、発症のタイミング別に調べた。 被験者は、1978~2015年に1人以上を出産または死産した全女性。主要評価項目は、妊娠高血圧腎症の既往の有無別に、Cox回帰モデルを用いて算出した認知症率を比較したハザード比(HR)であった。後期の脳血管性認知症発症リスク、罹患女性は非罹患女性の3.46倍 コホートは女性117万8,005例から成り、フォローアップは2,035万2,695人年であった。 妊娠高血圧腎症歴のある女性は、同病歴のない女性と比べて、後期において脳血管性認知症を発症するリスクが3倍以上高かった(HR:3.46、95%信頼区間[CI]:1.97~6.10)。脳血管性認知症との関連は、後期発症の脳血管性認知症のほうが(HR:6.53、95%CI:2.82~15.1)、早期発症(2.32、1.06~5.06)と比べて強いことが認められた。 糖尿病、高血圧、心血管疾患で補正後も、HRはわずかな減弱にとどまった。また、感度解析で、BMIと血管性認知症は関連していない可能性が示唆された。 一方、アルツハイマー病(HR:1.45、1.05~1.99)およびその他/分類不能の認知症(1.40、1.08~1.83)との関連の程度は、わずかであった。

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第11回 NST薬剤師キクリンの「薬より食事」なわけ【週刊・川添ラヂオ】

動画解説スタジオを飛び出した川添先生、今週から3週にわたって3人の薬剤師の友人と熊本のキャンプ場からお届けします。今回のゲストは大分県日出(ひじ)調剤薬局の菊池幸助先生。NST(栄養サポートチーム)専門療法士でもある菊池先生は、患者さんが薬よりもまずは食事をきちんと摂れるようにいう思いで仕事をしていると言います。ご自身の経験から気が付いた、ターミナル期における食事が持つ意味とは…?

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高齢者の健康長寿には魚が有益/BMJ

 高齢者における血中濃度の連続測定で、魚由来のオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n3-PUFA:エイコサペンタエン酸[EPA]、ドコサペンタエン酸[DPA]、ドコサヘキサエン酸[DHA])、EPA、およびDPA(魚由来のDHAや植物由来のα-リノレン酸ではない)の上積みが認められると、健康長寿(healthy ageing)でいられる可能性が高いことが明らかにされた。米国・タフツ大学のHeidi TM Lai氏らによる前向き長期コホート研究(Cardiovascular Health Study)の結果で、BMJ誌2018年10月17日号で発表された。健康長寿は、慢性疾患、認知・身体機能障害がない生存として定義される。魚および植物由来のn3-PUFAは、生理機能に良好な影響を及ぼし、健康長寿に有益である可能性が示唆されていた。また、自己申告に基づく食事性のn3-PUFA高値とベースラインバイオマーカーとしてのn3-PUFA高値は、心血管疾患のリスクと逆相関することが示されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「高齢者は、さらなるn3-PUFAを含む食事(魚)の摂取を、というガイドラインを支持する結果であった」とまとめている。平均74.4歳の健康長寿高齢者のn3-PUFA値を1992~2015年追跡測定 検討は米国内4地域で1992~2015年の間に行われ、n3-PUFAの連続測定値と健康長寿の関連が調べられた。参加者は、1992~93年のベースライン時に健康長寿が認められた2,622例で、平均年齢は74.4歳(SD 4.8)、女性63.4%であった。 被験者の血漿リン脂質n3-PUFA値をガスクロマトグラフィで、1992~93年、1998~99年、2005~06年に測定し、植物由来のα-リノレン酸、魚由来のEPA、DPA、DHAなど全脂肪酸を%算出した。 主要評価項目は健康長寿で、慢性疾患(心血管疾患、がん、肺疾患、重度CKDなど)や認知・身体障害のない生存、またはその他の要因(65歳以降の健康長寿アウトカムの一部ではない)による死亡と定義した。イベントについては、医療記録や診断検査に基づき中央で判定または確定した。n3-PUFAの高値群の非健康長寿リスクは18%低下 線形モデルを用いた評価において、長鎖n3-PUFAの高値群ほど非健康長寿リスクは低い傾向がみられ、時間変化曝露および共変量で多変量調整後の五分位範囲で18%(95%信頼区間[CI]:7~28%)の低下が認められた。 個別にみると、DHAでは関連がみられなかったが、EPAおよびDPAではリスク低下との関連が認められた(それぞれ15%[6~23]、16%[6~25])。植物由来のα-リノレン酸は非健康長寿と関連していなかった(ハザード比:0.92、95%CI:0.83~1.02)。

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第10回 膝痛にコンドロイチンやグルコサミンはどのくらい効くのか?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 コンドロイチンとグルコサミンは関節痛などで服用される、とてもポピュラーな成分です。コンドロイチンは、軟骨、結合組織、粘液に分布するムコ多糖の一種で、骨の形成を助けるといわれており、グルコサミンは動物の皮膚や軟骨、甲骨類の殻に含まれるアミノ糖で、関節の動きを滑らかにしたり、関節の痛みを改善したりするといわれています1)。両成分を含有する市販薬やサプリメントは多く、説明を求められる機会も多いのではないでしょうか。今回は、これらの効果を検討した文献をいくつか紹介しましょう。まずは、痛みを伴う変形性膝関節症患者へのグルコサミンとコンドロイチンの効果を検証した有名な論文のGlucosamine/chondroitin Arthritis Intervention Trial (GAIT)です2)。平均年齢59歳の症候性変形性膝関節症患者1,583例(うち女性64%)を、(1)グルコサミン1,500mg/日(500mg/回を1日3回)、(2)コンドロイチン1,200mg/日(400mg/回を1日3回)、(3)グルコサミン+コンドロイチン併用、(4)セレコキシブ200mg/日、(5)プラセボの5群にランダムに割り付け、24週間観察しました。各群、有害事象や効果の実感がなかったなどの理由により20%前後の患者が脱落していますが、intention-to-treat解析はされています。プライマリアウトカムは24週時点で膝痛が20%減少したかどうかで、結果は下表のとおりです。画像を拡大するプラセボ群と比較すると、いずれの群も痛みがやや減少する傾向にありますが、有意差が出ているのはセレコキシブ群のみでした。プラセボ群においてもかなり痛みが減少していることが特徴的で、成分を問わず何らかの製品を服用している方はある程度の効果を実感しているのではと推察されます。続いて、2007年にBMJ Clinical Evidence誌で発表された論文を紹介します3)。BMJ Clinical Evidence誌は臨床研究の結果を統合して種々の治療法を評価し掲載している媒体で、該当トピックの出版から2年経つとMEDLINEに無料で公開されるので有用な情報源となりえます。この論文における変形性膝関節症の各種治療法(非手術)の効果を整理したのが下表です。画像を拡大するコンドロイチンとグルコサミンは、変形性膝関節症に対する効果は不明ないしわずかで、とくにグルコサミンは疼痛軽減にプラセボ以上の効果が期待できない可能性が示唆されています。なお、Beneficialに分類される運動療法としては「脚上げ体操」や「横上げ体操」などの太ももの筋肉を鍛える体操が知られているので、覚えておくと患者指導で役立つと思います。可もなく不可もないので継続もアリだが、相互作用には注意が必要ここまであまり芳しい結果ではありませんでしたが、最近はコンドロイチンが有用であったという報告もあり、2015年にコクランよりコンドロイチンとプラセボまたは他の治療法を比較検討したランダム化比較試験43件を評価したシステマティックレビューが発表されています4)。含まれた研究の大部分は変形性膝関節症患者を対象としたもので、先に紹介したGAIT試験も含まれています。コンドロイチン800mg/日以上を6ヵ月服用した時点における痛みの程度で有意差が出ていて、0~100ポイントの痛みスケールで、コンドロイチン群が18ポイント、プラセボ群は28ポイントでしたので10ポイント低下しています。膝の痛みが20%以上改善した人はコンドロイチン群では100人当たり53人、プラセボ群では100人当たり47人で、その差は6名(6%)です。また、画像診断により、2年後の最小関節裂隙幅の減少は、コンドロイチン群(0.12mm)がプラセボ群(0.30mm)に比べて0.18mm少なく良好でした。Forest plotを見てもコンドロイチンまたはコンドロイチン+グルコサミンのほうがやや良しとする研究が多く、目立った有害事象はありませんでした。2017年に出た試験では、コンドロイチン800mg/日の継続がセレコキシブと同等の有用性であったという結果も出ています5)。経済面との兼ね合いもありますが、痛みが改善している方はそのまま続けてもよい場合もあるのではないでしょうか。ただし、薬物相互作用に注意が必要で、コンドロイチンは抗凝固薬のヘパリンと化学構造が似ているため、抗凝固作用を増強するのではないかといわれています。ワルファリンとグルコサミンの併用によりINRが上昇した(つまり出血傾向が強く出た)という20例の報告もあります6)。メリットがそれほど大きくないことを考えれば、ワルファリン服用中はコンドロイチンやグルコサミンの服用を避けるほうが無難だと思われます。1)国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所ホームページ 「健康食品」の安全性・有効性情報 「グルコサミン」「コンドロイチン硫酸」2)Clegg, et al. N Engl J Med. 2006;354:795-808.3)Scott D, et al. BMJ Clin Evid. 2007 Sep 1. pii:1121.4)Singh JA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD005614.5)Reginster JY, et al. Ann Rheum Dis. 2017;76:1537-1543. 6)Knudsen JF, et al. Pharmacotherapy. 2008;28:540-548.

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第11回 内科クリニックからのミノサイクリン、レボフロキサシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1予想される原因菌は?Q2患者さんに確認することは?Q3疑義照会する?Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?抗菌薬を飲みきる キャンプ人さん(病院)母子ともに、指示された期間きちんと服用するように説明します。服用時の注意や改善しない場合の対処 清水直明さん(病院)レボフロキサシンもしくはミノサイクリンの処方が確定している場合の説明例です。「牛乳などの乳製品や一部の制酸薬や下剤、貧血の薬(鉄剤)とともに服用すると効果が弱くなる可能性があるので、抗菌薬服用の前後2時間はそれらの摂取を避けるようにしてください」「3日ほど服用しても全く症状が改善しないか、悪化したと感じる時は、服用の途中でも一度ご相談ください」「ミノサイクリンを服用中は、めまい感があらわれることがあるので、車の運転など危険を伴う機械の操作、高所での作業などは行わないでください」「ミノサイクリンは、もしも食道にくっついてそこで溶けてしまうと食道に潰瘍ができることがありますので、多めの水でしっかり服用してください」尿の色 奥村雪男さん(薬局)ミノサイクリンは尿が青~緑に着色する場合があるので、あらかじめ伝えておいた方が無難だと思います。カルシウムと難溶性のキレートを形成するので、牛乳はミノマイシン服用後2時間程度あけて摂取するように、とも説明した方がよいでしょう。解熱鎮痛薬との併用について ふな3さん(薬局)母については、ひどいめまいや悪心・食欲不振が出た場合には、医師に相談するよう伝えます。子には抗菌薬を飲みきることと、服用期間に発熱・頭痛等が起きた場合、一部のNSAIDs で痙攣が誘発される可能性があるので、自己判断でのNSAIDsの使用を控え、重い症状であれば医師に相談するよう伝えます。飲み忘れた場合の対処 中西剛明さん(薬局)母には頭痛、めまい、倦怠感が起こる可能性について伝えます。おそらくすぐに良くなると思われるが、これらが起きたとしても途中で服用を中止しないこと、倦怠感の場合は、薬剤性肝障害の可能性もあるので受診をするように説明をしておきます。また、朝は乳製品の摂取をできるだけ控えることを伝えます。食道刺激作用があるため、服用後すぐに横にならないように、とも伝えます。子には短期間であれば関節障害の発症は心配いらないものの、アキレス腱などの腱断裂の危険があるので、治療中は激しい運動を避けるように説明します。また、朝の服用となっていますが、飲み忘れたときはすぐに飲むことと、夕から寝る前にかけて服用すると不眠や悪夢を経験する可能性があることを付け加えます。Q5 その他、気付いたことは?肺炎マイコプラズマの治療方針 奥村雪男さん(薬局)15歳以下の小児の場合日本マイコプラズマ学会の「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」では、マイコプラズマ感染症で、「マクロライド系薬が無効の肺炎には、使用する必要があると判断される場合は、トスフロキサシンあるいはテトラサイクリン系薬の投与を考慮する。ただし、8歳未満には、テトラサイクリン系薬剤は原則禁忌である」とされています。マクロライドが無効との判断は、服用2~3日で解熱しなかった場合でなされるようです。必要があると判断された場合と言うのは、年齢や流行状況、重症感で判断されるのではないかと思います。ちなみに、マクロライドで症状の改善が無い場合の耐性率は90%以上、一方でマクロライドの前投与がない場合の耐性率は50%以下に留まるとの報告があります(IASR Vol.33 p.267-268:2012年10月号)。他の医療機関で治療を受けていたとの事から、すでにクラリスロマイシンなどのマクロライドを服用していたのかも知れません。小児呼吸器感染症ガイドライン2011では、全身状態が良好で、チアノーゼがなく、呼吸数正常、努力呼吸なし、胸部X線陰影が片側の1/3以下、胸水なし、SpO2>96%、循環不全なし、人工呼吸器管理不要の全てを満たす場合、外来でフォロー出来る軽症と判断するようです。治療期間は、「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」に従うと、トスフロキサシン、テトラサイクリンの場合7~14日とされるようです。5日間はやや短く、治療への反応を見ているのかも知れません。成人の場合次に母親の方ですが、親子で同じような症状であり、息子さんからの感染が考えられます。「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」によれば、成人のマクロライド耐性マイコプラズマの第1選択はテトラサイクリンとされます。成人に対するマイコプラズマ肺炎の適切な治療期間についてはエビデンスに乏しいが、エキスパートオピニオンとして7~10日間が適当であると考えられるとしています。学校で広まっている可能性も キャンプ人さん(病院)乾いた咳はマイコプラズマ肺炎の初期症状でもあり、きちんと抗菌薬を服用すること。そして他の部員にも広がっている可能性があり、学校保健法を考慮して出席停止になる可能性もあることを伝えます。小児へのミノサイクリン投与について 中西剛明さん(薬局)本来は「肺炎の場合に抗菌薬を使う」が原則ですから、肺炎に至っていたのかどうかが気になるところです。おそらく、前医でマクロライドの投薬を受けてきたのでしょう。マイコプラズマは免疫系から逃れて増殖するので、免疫に作用するミノサイクリンは、最小発育阻止濃度(MIC)はマクロライド系抗菌薬に劣るものの、十分な効果が期待できます。小児の場合、1回の服用で歯の黄染の痕跡が残るとされているので、ミノサイクリンはできるだけ避けた方がよいと考えます。ニューキノロン系抗菌薬とのリスクとベネフィットのバランスを考えると、禁忌とはいえ、必要なこともあると思います。この症例ではレボフロキサシンが選択されていますが、本当は適応症を持っているトスフロキサシンの方がよいでしょう。ニューキノロン系抗菌薬は耐性ができやすいので、できるだけ避けたいですね。鎮咳薬は必要? 中堅薬剤師さん(薬局)母子ともにデキストロメトルファン2週間の処方は、必要なのかな? と思いました。咳喘息もあるようなら、吸入薬を導入するほうがよい気がします。子に抗菌薬は不要では JITHURYOUさん(病院)子は解熱しており、レボフロキサシンが必要か疑問です。必要な場合も当然あるとは思いますが、アキレス腱炎や断裂、また動物レベルで関節異常の副作用の報告があり、成長期の子供に使用が必要か吟味することを考えました。仮に肺炎マイコプラズマによる呼吸器感染であるならば、咳の症状は強いかもしれませんが解熱していること、改善しても咳症状のみ遷延することがあるからです。結核菌を考慮すると、症状をマスクするので菌の同定がされていないうちに投与することはリスクが高いのではないのかと考えました。加えて、マスク着用、水分補給をして安静を心がけることも指導したいです。後日談2週後の時点では来局なし。3 週間後、母にだけ「麦門冬湯9g 分3 毎食前 7日分」が処方された。抗菌薬の処方はなかった。聞き取りの結果、「割と早く咳は楽にはなった、咳は続くが特に抗菌薬によるトラブルはなかった」とのことだった。[PharmaTribune 2017年2月号掲載]

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019)外来勤務での腰痛予防【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第19回 外来勤務での腰痛予防しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆長引きがちな皮膚科外来には、長時間椅子に座っていることで起こる腰痛、肩こりがつきものです。若い頃には腰痛など気にしたこともありませんでしたが、最近では地味にメンタルが削られる要因となっております…。腰痛対策どうしよう!?と考えた結果、今心掛けているのが、下記の2つ。腰に負担のかかる姿勢(主に足を診察するときの前傾姿勢)を取らない→足台を高くし、自分が屈むようにする(背筋はまっすぐ伸ばす)。こまめに動く→背中や頭を診察する際は立ち上がるチャンス! その他、こまめに体を動かす。忙しい外来中に小休止してまで、ストレッチを挟むことはできませんが、患者さんから見えない背後などで、地味に体を動かすようにしています。※ただし看護師さんからは見える!(笑)現在は勤務医のため、ハード面の改良までは手が付けられませんが、将来、自分の城を持ったあかつきには、立派な社長椅子と、腰痛対策グッズを買いそろえようと思います☆そして、車椅子用の低反発クッションもオマケにつける…(妄想)。日々、腰痛に悩む皮膚科医の戯言でした~☆それでは、また~!

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