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第15回 認知症患者でも飲めるようになる服薬カレンダー【週刊・川添ラヂオ】

動画解説残薬の原因を突き止めたら、その原因ごとに対策を打ちます。例えば、薬袋や一包化された薬の印字が見えていなかったということも。気になる場合は「見えていますか?」「袋を破れますか?」と尋ねてみましょう。認知症患者でも劇的に飲めるようになる服薬カレンダーもご紹介!

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第12回 びまん性汎細気管支炎にマクロライド系抗菌薬が長期投与されるのはなぜ?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗菌薬は必要なときに短期間処方されるのが一般的ですが、例外もあります。その代表的なものが、マクロライド系抗菌薬の長期投与です。COPDや非嚢胞性線維症性の気管支拡張に対して行われることも多い治療法ですが、今回はびまん性汎細気管支炎(Diffuse panbronchiolitis:DPB)に対するマクロライドの少量長期療法について紹介します。DPBは呼吸細気管支と呼ばれる細い気管支を中心に慢性炎症が起こり、咳や痰、呼吸困難が生じる疾患で、ほとんどの場合で慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を合併するのが特徴的です1)。日本人を含む東アジア人に多く、男女差はなく、40~50代が好発年齢です2)。もともとは未治療の場合、診断から5年以内に約50%が死亡するというきわめて予後の悪い疾患でしたが3)、マクロライドの少量長期療法が行われるようになって死亡率が急速に低下しました4)。日本発の治療法で、その効果が判明したのは1980年代になってのことです。それでは、数ある抗菌薬の中でもなぜマクロライド系抗菌薬がDPBに有効なのでしょうか。その説明として考えられているのが、その抗炎症作用です。抗菌作用も期待できるとは思われますが、DPBにおける投与量は通常よりも少なく、一般的な重感染症最小発育阻止濃度を下回っているので、主に抗炎症作用を期待しての治療なのでしょう。抗炎症作用といっても多くの説があり、バイオフィルム形成、免疫調整、肺胞マクロファージによる食作用の亢進作用などが知られています。一般にマクロライド系抗菌薬は、肺胞マクロファージによって細胞内に濃縮されやすく、血清濃度よりもクラリスロマイシンで約400倍、アジスロマイシンで約800倍高いレベルになるとされていて、これが比較的低用量で奏効する理由と考えられています5)。コクランのシステマティックレビューにおいてもDPBに対するマクロライド少量長期療法の効果が検証されています6)。システマティックレビューといっても、レビューへの組み入れ基準は「DPBに対するマクロライドの効果と安全性を検討したランダム化比較試験(RCT)ないし準ランダム化比較試験」で、RCTではない観察研究や対照群のない研究が除かれた結果、最終的に残ったRCTは1件だけでした。その内容は、20~70歳(平均年齢50歳)のDPB患者19例のうち12例をエリスロマイシン600mg/日の長期投与群、7例を無治療群に割り付けて比較したというものです。エリスロマイシン群の全例において、CT画像はベースラインからの改善がみられた一方、対照群では71.4%が悪化、28.6%が変化なしという結果でした。レビュー内でエビデンスの質は低いとされていますが、予後の悪い疾患でこれほどの差が出ていることは注目に値するのではないでしょうか。14員環、15員環なら有効性は高いが、16員環は無効エリスロマイシン以外の長期療法についても紹介しましょう。10例のDPB患者を組み入れ、クラリスロマイシン200mg/日で4年間治療したオープンラベルの研究です。肺機能検査などの項目は、ほとんどの被験者で6ヵ月以内に有意な改善がみられています。また、重大な副作用は認められず、長期間安全に服用できることが示唆されました7)。エリスロマイシンやクラリスロマイシンは14員環のマクロライドですが、15員環のアジスロマイシンにおいてもDPBに対する効果を検討した試験があります。51例のDPB患者を対象とした研究では、アジスロマイシン500mg/日を静注で1~2週間投与した後、1日1回経口服用で3ヵ月継続し、さらに週に3回経口服用を6~12ヵ月継続したところ、臨床的治癒は27.5%、改善は70.6%で、5年生存率は94.1%でした8)。また、別の研究では、アジスロマイシンを60例の患者に250mg/日を週2日3ヵ月間投与したところ、多くの被験者で喀痰量および呼吸困難が減少し、有効率は84.6%でした9)。なお、16員環を有するマクロライド(ジョサマイシンなど)はDPBに無効と考えられており、ガイドラインにおいても推奨されていません2)。長期療法と言われると気になるのはどのくらい長期かということですが、その最適な期間は明確には定まっていないようです。紹介してきた臨床試験においては、ほとんどの患者さんにおいて最低6ヵ月程度は継続され、大部分は治療開始2年後までには中止に至っています。基本的には、臨床症状、X線写真所見、および肺機能測定値が改善または安定するまでということになるようです。もちろん中止後も、呼吸困難、咳、痰の程度についてモニタリングすることが望ましく、再び気管支拡張症や副鼻腔炎のような徴候が出た場合には治療が再開される可能性があることには留意しておくとよいでしょう。また、マクロライド系抗菌薬にはモチリン様作用が知られているので、低用量であっても下痢が生じる可能性があります。モチリンは消化管の蠕動運動を活発にするホルモンですが、マクロライドも同様に消化管運動を活発にすることが報告されています10)。したがって、腸内細菌叢のバランスが崩れるという以外の理由で下痢や腹痛が生じることがあり、とくに服用当日など早期に生じる下痢はこの作用による可能性が高いとされています。便秘の方には逆によいケースもあるかもしれませんが、服薬指導時に説明しておくほうが安心かと思います。1)日本呼吸器学会 びまん性汎細気管支炎2)JAID/JSC感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―3)Kudoh S, et al. Clin Chest Med. 2012;33:297-305.4)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1998;157(6 Pt 1):1829-1832.5)Steel HC, et al. Mediators Inflamm. 2012;584262.6)Lin X, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD007716.7)Kadota J, et al. Respir Med. 2003;97:844-850.8)Li H. et al. Intern Med. 2011;50:1663-1669.9)小林 宏行ほか. 感染症学雑誌. 1995;69:711-722.10)Broad J, et al. Br J Pharmacol. 2013;168:1859-1867.

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第5回 再診料CT検査での査定/セルベックス処方での査定/カデュエット配合錠処方での査定/強力ネオミノファ-ゲンシ-増量処方での査定【レセプト査定の回避術 】

事例17 再診料CT検査での査定再診料で、他院の撮影したフィルムについて診断を行い、コンピュ-タ-断層診断料を請求した。●査定点コンピュ-タ-断層診断料が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」のコンピュ-タ-断層診断に、「当該保険医療機関以外の医療機関で撮影したフィルムについて診断を行った場合には、区分番号「A000」に掲げる初診料(注5のただし書に規定する2つ目の診療料に係る初診料を含む)を算定した日に限り、コンピュ-タ-断層診断料を算定できる」と記載されています。再診料での請求は認められていないのです。事例18 セルベックス処方での査定慢性胃炎の急性増悪でテプレノン(商品名:セルベックス)50mg 3カプセルを先月まで処方していたが、今月の請求から「急性増悪」を外して請求した。●査定点セルベックス50mg 3カプセルが査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」に「下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善」として「急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期」と「胃潰瘍」が対象になっています。慢性胃炎から急性増悪期を外すと査定となります。このケ-スでは、「胃潰瘍」の病名に変更可能か検討することが必要です。事例19 カデュエット配合錠処方での査定他院から紹介され、狭心症でアムロジピン・アトルバスタチン配合剤(商品名:カデュエット配合錠)1番を処方した。●査定点カデュエット配合錠1番が査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」に「本剤(アムロジピン・アトルバスタチン配合剤)は、アムロジピンおよびアトルバスタチンによる治療が適切である以下の患者に使用する。高血圧症または狭心症と、高コレステロ-ル血症または家族性高コレステロ-ル血症を併発している患者。なお、アムロジピンとアトルバスタチンの効能・効果は以下のとおりである」と示し、●アムロジピン・高血圧症・狭心症●アトルバスタチン・高コレステロ-ル血症・家族性高コレステロ-ル血症となっています。カデュエット配合錠を処方するときは、「高血圧症または狭心症」+「高コレステロ-ル血症または家族性高コレステロ-ル血症」の病名が求められています。事例20 強力ネオミノファ-ゲンシ-増量処方での査定C型肝炎でグリチルリチン・グリシン・システイン配合剤(商品名:強力ネオミノファ-ゲンシ-)20mL 3Aの請求をしていたが、今月から強力ネオミノファ-ゲンシ-20mL 5Aで請求した。●査定点強力ネオミノファ-ゲンシ-20mL 2Aが査定された。解説を見る●解説添付文書の「用法・用量」に「通常、成人には1日1回5~20mLを静脈内に注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。慢性肝疾患に対しては1日1回40~60mLを静脈内に注射または点滴静注する。年齢、症状により適宜増減する。なお、増量する場合は1日100mLを限度とする」となっています。このケ-スのように60mL以上で請求するには、増量した理由の「症状詳記」が求められます。

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第15回 内科からのエリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Campylobacter coli属・・・11名全員Salmonella Enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス)・・・1名Escherichia coli(大腸菌)・・・1名Arcobacter属・・・1名Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)・・・1名腹痛、下痢、鶏肉から 奥村雪男さん(薬局)カンピロバクター属が原因菌と予想されます。下痢と腹痛から市中腸管感染症で、加熱不十分の鶏肉を食べたこと、検査はおそらくグラム染色だったのではないでしょうか。カンピロバクターのグラム染色での感度は30%程度のようですが、特異度が高いので確定診断に至ったのだと考えます。カンピロバクターは一般的には補液などの対症療法で自然軽快することがほとんどとされていますが、早期治療による菌の排出期間短縮と症状軽減があったとの報告があります1)。キノロン系薬剤への耐性化が進んでいるため、マクロライド系薬剤が第一選択であり、下記が推奨されています1)。クラリスロマイシン経口 1回200mg 1日2回 3~5日間アジスロマイシン経口 1回500mg 1日1回 3~5日間エリスロマイシン経口 1回200mg 1日4回 3~5日間Q2 患者さんに確認することは?どのような検査をしたか わらび餅さん(病院)できればどのような検査をしたか聞きます。培養ではっきり菌を特定するには、通常は数日かかるからです。下痢と腹痛が主訴ですが、可能なら血便など重症だと判断する情報があるのか聞きたいです。潰瘍性大腸炎の可能性も? 中堅薬剤師さん(薬局)併用薬と副作用歴です。また、可能であれば潰瘍性大腸炎の除外診断を医師がしているかどうかも確認したいです。今回は検査結果があるので可能性はあまりないと思いますが、開業医が第六感で「感染性腸炎」と誤診し、潰瘍性大腸炎が重症化することが非常に多い、と広域病院の消化器科医の講演を聞いたことがあります。必要に応じて、潰瘍性大腸炎の可能性も考慮して対応することが重要だと考えます。併用薬について 荒川隆之さん(病院)併用薬を必ず確認します。エリスロマイシンはCYP3A4で代謝される薬剤と併用した場合、併用薬の代謝が阻害され血中濃度が上昇する可能性があります。また、P糖タンパクを介して排出される薬剤と併用した場合、併用薬剤の排出が阻害され血中濃度が上昇する可能性があります。ピモジドなどの併用禁忌の確認 奥村雪男さん(薬局)エリスロマイシンはマクロライド系抗菌薬の中でもCYP3A4 阻害作用が強いので、ピモジドなどの併用禁忌薬剤を服用していないか確認します。マクロライド系抗菌薬のCYP3A4阻害様式はMBI(Mechanical based inhibition)で、服用開始から数日程度で阻害作用が最大になり、服用終了から数日程度で阻害作用は消失すると考えられます2)。そのため、服薬終了後も併用薬に注意が必要です。自炊かどうか 児玉暁人さん(病院)可能なら鶏肉をどこで食べたか確認します。飲食店なのか自宅で自炊をしてなのか。一人暮らしで自炊しているのであれば、しっかり加熱する、二食肉は他の食品と調理器具や容器を分けて処理や保存を行う、食肉を取り扱った後は十分に手を洗ってから他の食品を取り扱う、食肉に触れた調理器具などは使用後洗浄・殺菌を行うなどのアドバイスができるかもしれません。Q3 疑義照会する?する・・・5人エリスロマイシンの用量 キャンプ人さん(病院)エリスロマイシンの1 回用量が多いように思うので、確認します。ガイドラインでは1回200mg 1日4回 3~5日間1)とされています。重症でなければ自然軽快する場合が多い 清水直明さん(病院)カンピロバクター腸炎の場合、重症でなければ抗菌薬の投与なしで自然に軽快する場合がほとんどです。処方医と信頼関係ができていれば、説明した上で「抗菌薬は不要かもしれません」と提案するでしょう。他剤への変更 JITHURYOUさん(病院)本症例は、重症感がなくカンピロバクター自体は自然軽快することが多いため、抗菌薬は不要ではないかと感じます。それでも医師が抗菌薬は必要だとするなら、現時点で消化器症状があるのでクラリスロマイシンに変更提案します。エリスロマイシンより消化器作用が少ないこと、添付文書上の適応のためです。併用薬がある場合には、相互作用の少ないアジスロマイシンに変更提案します。可能なら抗菌薬処方なしにもっていきたいです。しない・・・6人3日間投与は適切 中堅薬剤師さん(薬局)ガイドラインには、カンピロバクターは世界的にキノロン系薬の耐性化が進んでおり、マクロライドを第一選択にすると記載されています1)が、マクロライド耐性も問題化しつつあるようなので、まず3日間投与は適切ではないでしょうか。エンピリック処方かどうか わらび餅さん(病院)患者さんの聞き取りを踏まえ、カンピロバクターと予想した上でのエンピリック処方だと判断できれば、疑義照会しません。ただし、原因菌と特定されていればエリスロマイシンの用法を確認します。もし、アドヒアランスなどを考慮して用法を1日3回としていたら、アジスロマイシン1日1回でもよいのでは、と聞ければ聞きます。海外での使用例やPAE※も考慮 ふな3さん(薬局)エリスロマイシンは半減期が1.5時間程度と短めのため、1日3回ではちょっと不安ですが、カンピロバクターへの適応はないものの米国などでは1,000mg/2×などの処方もあるようです。PAEも期待できることから、疑義照会はしないと思います。※post-antibiotic effect。血中や組織中から抗菌薬が消失しても、一定期間、病原菌の増殖が抑制される効果1日3回が難しければ処方提案 児玉暁人さん(病院)エリスロマイシンの1回量が多く、回数も3回ですが、適宜増減の範囲内と考え、疑義照会はしません。ただし、1日3回の内服が難しそうであればクラリスロマイシン1回200mg 1日2回 3日分の処方提案をします。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?しっかり飲みきること キャンプ人さん(病院)指示されている期間しっかり服用することです。また、エリスロマイシンのモチリン様作用(消化管運動亢進作用)により、消化管の蠕動運動が活発になることを説明しておきます。服用時間について ふな3さん(薬局)1回目の分はすぐに飲み始めること。2回目は6時間程度あけて服用。1日3回、3日間飲みきることを伝えます。下痢についての説明 清水直明さん(病院)「今回、下痢止めは出されていませんが、下痢止めを服用しなくても数日で回復してくると思います。治りを遅くすることがあるので、市販の下痢止めは服用しないでください。」脱水に注意 JITHURYOUさん(病院)現時点で重症感はなさそうですが、水分補給して脱水に注意し、安静にするよう伝えます。はっきりと重症化しないとはいえませんが、年齢的に考えてみても整腸剤だけで経過観察でもよかったかもしれませんね。他院受診時にお薬手帳を持参 奥村雪男さん(薬局)今回の抗菌薬は服薬終了後も数日間程度飲み合わせに注意が必要なので、他院にかかる場合はお薬手帳を持参することを伝えます。Q5 その他、気付いたことは?ボツリヌス毒素の可能性も? ふな3さん(薬局)「古いパックの食品も疑われた」という言葉から、ボツリヌス毒素の疑いもあったのかもしれません。また、カンピロバクターからのギランバレー症候群の発症のリスクもあるため、下記のような症状が出たら、すぐに医師に連絡するよう伝えたいです。口内乾燥、嚥下困難、複視、視力低下(ボツリヌス中毒)四肢の脱力(ボツリヌス中毒、ギランバレー)エリスロマイシンの処方意図 柏木紀久さん(薬局)今回の症例はあまり抗菌薬の必要性を感じませんが、排菌の促進や消化管運動の促進を期待して3日分の処方かな?と思いました。ギランバレー症候群と菌血症 奥村雪男さん(薬局)カンピロバクター感染症の合併症に、ギランバレー症候群と菌血症が知られています。0.1%以下でギランバレー症候群の報告があり、感染後2~3週後に発症するようです3、4)。発症はまれなので不安をあおらないように伝えません。菌血症は1%程度に報告があり4)、高齢者に多いようです。若年では検査陽性になるころには自然治癒するようで、あまり心配ないかもしれませんが、知識として持っておく必要があると思います。後日談(担当した薬剤師から)調剤した日の閉局間際に「薬を飲んだら、余計にお腹の調子が悪くなりました。どうしたらいいですか?」と電話がかかってきました。実は、薬を渡すときにモチリン様作用の説明をするのを忘れていたことに気付きました。「原因の菌を退治するだけでなく、胃腸の動きを活発にさせる作用もあるお薬ですので、自然とその症状は治まります。菌の排出も早まりますので、辛抱して内服を続けてください」と返事をしました。無事治療が終了したのか、後日の来局はありませんでした。1)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015―腸管感染症―. 一般社団法人日本感染症学会、2016.2)鈴木洋史監. これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践. 東京、じほう、2014.3)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.4)酒見英太監. ジェネラリストのための内科診断リファレンス. 第1版. 東京、医学書院、2014.[PharmaTribune 2017年6月号掲載]

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添付文書改訂:タミフル/スタチンとフィブラート併用の原則禁忌解除/リンゼス錠【下平博士のDIノート】第13回

タミフルカプセル75、タミフルドライシロップ3%画像を拡大する<Shimo's eyes>2007年に、オセルタミビルを服用した10代の患者が転落して死傷する事例が相次いで報告されたことから、緊急安全性情報の発出や添付文書の警告欄の新設によって、10代の未成年患者への使用は原則として差し控えられていました。しかし、2018年8月に、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知にて、オセルタミビル服用と異常行動について、明確な因果関係は不明という調査結果が報告され、インフルエンザ罹患時には、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無または種類にかかわらず、異常行動が発現する可能性があることが明記されました。そして、オセルタミビルを含めたすべての抗インフルエンザウイルス薬について、異常行動に対する注意喚起の記載が統一されました。今年は経口抗インフルエンザ薬のラインアップに変化が生じており、2018年3月には新規作用機序であり、1回の経口投与で治療が可能なバロキサビル錠(商品名:ゾフルーザ)が発売され、同年9月には顆粒製剤が承認されています。同じく9月には、オセルタミビルの後発医薬品も発売されています。患者さんに合わせて処方薬が使い分けられるようになりますが、どのような薬剤が処方されていたとしても、異常行動の可能性があることを念頭に、小児・未成年者を1人にしないことや住居が高層階の場合は施錠を徹底することなどを指導しましょう。スタチン系とフィブラート系併用の原則禁忌が解除画像を拡大する<Shimo's eyes>2018年10月に、腎機能低下患者へのフィブラートとスタチンの併用が添付文書の原則禁忌から削除され、「重要な基本的注意」の項で、腎機能に関する検査値に異常が認められる場合、両剤は治療上やむを得ないと判断する場合のみ併用することという旨の注意喚起が追記されました。欧米では腎機能が低下している患者でもスタチンとフィブラートの併用が可能であること、わが国においても併用治療のニーズがあることなどから、日本動脈硬化学会より2018年4月に添付文書改訂の要望書が提出されていました。さらに、2019年4月に施行される予定の医療用医薬品の添付文書記載要領の改訂において、「原則禁忌」および「原則併用禁忌」が廃止されることを踏まえた対応と考えられます。なお、原則禁忌が解除されたとはいえ、腎機能が低下している患者では、スタチンとフィブラートの併用による横紋筋融解症のリスクについて、引き続き十分な注意を払う必要があるでしょう。リンゼス錠0.25mg画像を拡大する<使用上の注意>治療の基本である食事指導および生活指導を行ったうえで、症状の改善が得られない患者に対して本剤の適用を考慮します。重度の下痢が現れるおそれがあるので、症状の経過を十分に観察し、漫然と投与しないよう、定期的に本剤の投与継続の必要性を検討します。<用法・用量>通常、成人にはリナクロチドとして0.5mgを1日1回、食前に経口投与します。なお、症状により0.25mgに減量します。<Shimo's eyes>慢性便秘症は高齢者に多いため、超高齢社会となったわが国では、近年便秘治療薬の領域が活気を帯びています。従来、慢性便秘症の薬物治療には、酸化マグネシウムやセンノシドなどが主に使われてきましたが、近年新薬が相次いで発売されています。便秘は「本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義され、腸そのものの病変(腫瘍や炎症、狭窄など)によって起こる「器質性便秘」と、消化器官の機能低下によって起こる「機能性便秘」に分類されます。「慢性便秘症」は機能性便秘のうち、便秘の状態が日常的に続くものです。リナクロチドは、2017年3月に「便秘型過敏性腸症候群」の適応で発売されましたが、今回「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」が追加されました。同適応を有するものとしてすでに、ルビプロストンカプセル(商品名:アミティーザ)、エロビキシバット錠(同:グーフィス)が発売されており、さらに2018年9月にはマクロゴール含有製剤(同:モビコール)、ラクツロースゼリー(同:ラグノスNF)が承認されました。なお、食後投与の薬剤や食前投与の薬剤、服用時点の定めのない薬剤があるため、監査・服薬指導の際には注意が必要です。

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HFpEF患者への亜硝酸薬吸入、運動能への効果は?/JAMA

 左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者において、4週間にわたる無機亜硝酸塩の吸入投与はプラセボと比較して、運動能の有意な改善に結びつかなかった。米国・メイヨークリニックのBarry A. Borlaug氏らによる無作為化試験の結果で、JAMA誌2018年11月6日号で発表された。HFpEF患者に対する効果的な治療法はほとんどない。無機亜硝酸塩や硝酸塩製剤は、一酸化窒素シグナリングを強化することが示されており、HFpEF患者の運動能を改善する可能性が示唆されていた。4週間投与、プラセボ対照の無作為化クロスオーバー試験で検討 研究グループは、HFpEF患者に対する噴霧吸入による無機亜硝酸塩の4週間投与について、運動能改善への効果を調べるため、多施設共同二重盲検プラセボ対照試験を行った。検討は、HFpEF患者を2治療群に割り付け6週間の介入をクロスオーバーにて行い評価した。被験者の登録は、全米17施設で2016年7月22日~2017年9月12日に行われた。フォローアップ最終日は2018年1月2日。 無機亜硝酸塩またはプラセボの投与には、マイクロネブライザデバイス(I-neb AADネブライザ[Philips製])が用いられた。6週間の介入において、2週間は試験薬を投与せず(ベースライン/ウォッシュアウト期間)、その後に試験薬(亜硝酸塩またはプラセボ)46mg×3回/日を1週間、80mg×3回/日を3週間投与した。 主要評価項目は、最大酸素消費量(mL/kg/分)。副次評価項目は、日常生活活動量(加速度測定法で評価)、健康状態(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaireで評価[スコア範囲:0~100、高スコアほどQOLが良好])、機能分類、心充満圧(心エコーで評価)、NT-proBNP値、その他の運動指標、有害事象、忍容性などであった。平均最大酸素消費量、介入群13.5 vs.プラセボ群13.7mL/kg/分 105例(年齢中央値68歳、女性56%)が無作為化を受け、98例(93%)が試験を完了した。 亜硝酸塩投与中の平均最大酸素消費量は、プラセボ投与中の同値と比べて有意な差はなかった(13.5 vs.13.7mL/kg/分、群間差:-0.20[95%信頼区間[CI]:-0.56~0.16]、p=0.27)。また、日常生活活動量(5,497 vs.5,503、群間差:-15[95%CI:-264~234]、p=0.91)、健康スコア(62.6 vs.61.9、群間差:1.1[95%CI:-1.4~3.5]、p=0.39)、機能分類(2.5 vs.2.5、群間差:0.1[95%CI:-0.1~0.2]、p=0.43)、心エコーE/e′比(16.4 vs.16.6、群間差:0.1[95%CI:-1.2~1.3]、p=0.93)、NT-proBNP値(520 vs.533pg/mL、群間差:11[95%CI:-53~75]、p=0.74)は、いずれも有意な差はなかった。 心不全増悪は、亜硝酸塩投与中に3例(2.9%)、プラセボ投与中に8例(7.6%)で認められた。

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第14回 残薬問題は「なぜ」から始めよ【週刊・川添ラヂオ】

動画解説残薬に対する施策が各所で行われていますが、川添先生が思う薬剤師としてまずやるべきことは、患者さんがなぜ飲めないのかという原因を考えること。薬が飲めない理由は一人ひとり違い、理由がわからなければ、対策を打つことはできません。今回は残薬の原因となる3つの因子についてお話しします。

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高血圧・喫煙・糖尿病は、男性以上に女性の心筋梗塞リスクを増加/BMJ

 心筋梗塞の発生率は、男性が女性の約3倍だが、心筋梗塞とそのリスク因子である高血圧、喫煙、糖尿病との関連は女性のほうが強いことが、英国・オックスフォード大学のElizabeth R C Millett氏らの調査で明らかとなった。さらに、心筋梗塞とリスク因子の関連の強さは、男女とも加齢とともに減弱するものの、女性における過剰なリスクは相対的に低下しないことも示された。研究の成果は、BMJ誌2018年11月7日号に掲載された。心筋梗塞の発生率は、若年時には女性が男性よりも低いが、加齢に伴いその差は小さくなる。以前のメタ解析において、心筋梗塞といくつかのリスク因子の関連に性差があることが示されているが、解析に含まれた試験には交絡因子調整の水準にばらつきがあり、年齢層別の性差の検討を行っていない試験も含まれたという。英国の心血管疾患の既往のない47万人の前向きコホート研究 研究グループは、心筋梗塞のリスク因子の性差について調査し、年齢別の変動を評価する目的で、人口ベースの前向きコホート研究を行った(英国医学研究審議会[MRC]などの助成による)。 UK Biobank(2006~10年に、英国の22施設から40~69歳の50万2,628例を前向きに登録)の参加者から、心血管疾患の病歴のない47万1,998例(平均年齢:56.2歳、女性:56%)のデータを収集した。 主要評価項目は、致死的または非致死的心筋梗塞の発症とし、心筋梗塞の6つのリスク因子(血圧、喫煙状況、糖尿病、BMI、心房細動、社会経済的地位)の評価を行った。同じ20本の喫煙でもリスクは2倍、治療・予防策へのアクセスは男女同じに 平均フォローアップ期間7年の間に、5,081例(女性は1,463例[28.8%])が心筋梗塞を発症した。1万人年当たりの発生率は、女性が7.76(95%信頼区間[CI]:7.37~8.16)と、男性の24.35(23.57~25.16)に比べて低かった。心筋梗塞の発生率は、1型糖尿病を除くその他すべての因子について、女性よりも男性のほうが高かった。 男女ともに、血圧、喫煙強度、BMIの上昇および糖尿病の存在が、心筋梗塞のリスク増加と関連したが、これらの関連の強さは加齢に伴い減弱した。 女性は男性に比べ、収縮期血圧の20mmHg上昇(男女のハザード比[HR]の比:1.09、95%CI:1.02~1.16)、血圧120~129/<80mmHg(1.83、1.33~2.52)、現喫煙(1.55、1.32~1.83)、20本以上/日の喫煙(2.01、1.57~2.57)、1型糖尿病(2.91、1.56~5.45)、2型糖尿病(1.47、1.16~1.87)が、心筋梗塞の発症と、より強く関連した。これらのHRの比はいずれも、年齢の上昇とともに低下するとのエビデンスは認められなかった(p>0.2)。 著者は、「人口の高齢化が進み、生活様式に関連するリスク因子の有病率が上昇するにしたがって、女性の心筋梗塞の発生率は、男性の発生率に近づく可能性が高いだろう」と指摘し、「糖尿病および高血圧のガイドラインに基づく治療と、減量および禁煙を支援するリソースには、中高年の男女とも同じようにアクセスできるようにすべきである」としている。

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法人設立のススメ【医師のためのお金の話】第14回

法人設立のススメこんにちは、自由気ままな整形外科医です。これまで1年にわたって資産形成のお話をしてきました。各論の最後は起業で締めくくりましたが、先生方は自分に合った資産形成ツールを見つけられたでしょうか?さて、今回は「法人」についてお話をしたいと思います。資産形成というフレーズを聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、やはり株式投資、投資信託、不動産投資だと思います。もちろん正しいのですが、これらはあくまで投資対象やツールにすぎません。有用なツールを利用して殖やした資産を、どうやって維持していくのかを考えることも重要です。資産形成を実践する中で、その資産を所有する主体は個人でよいのか、家族名義がよいのか、もしくは法人が望ましいのか。私や周囲の資産家の事例から、このことについて検証したいと思います。税・社会保障費用負担率の動向先生方もご承知のように、日本の財政状況は1,000兆円を軽く超える財政赤字のために窮迫しています。このため、政府は財政赤字解消のため、国民に負担を求めざるを得ません。国民負担といっても多岐にわたりますが、私たちの生活に直結するものとしては個人の所得税増税が挙げられます。とくに、医師のような高額所得者層は、増税対象の筆頭に位置付けられています。私は医師になって20年以上経ちますが、この間に税・社会保障の負担率が上がったことはあっても、下がったことは一度もありません。ほぼ一本調子に高額所得者の負担は増えているといえます。おそらく、この傾向は今後も変わることはないでしょう。一方、法人税に関してはこの限りではありません。経済がグローバル化した現在では、多国籍企業は世界中で税負担の最も少ない国を探して血眼になっています。多国籍企業が、法人税の高い国から低い国へ移転することは当たり前になりました。この結果、国家間の法人税引き下げ競争が激しくなり、日本もこの状況から逃げることはできません。グローバル企業と日本国内でとどまっているドメスティック企業の税率を変えれば問題は解決すると考える人もいるかもしれません。しかし、グローバル企業のみを優遇する政策が受け入れられる訳はなく、またIT技術が発達した現在では、このようなダブルスタンダードを採ることは実質的に不可能です。このため、国家間の税獲得競争に勝ち抜くためには、法人税を減税せざるを得ない状況です。このように、個人は税・社会保障負担が漸増する一方で、法人は漸減していく動向が続くことになります。資産形成は法人でこのような状況を念頭に置いて、資産形成の戦略を練る必要があります。税・社会保障費用負担を最小にすることが、効率的な資産形成を可能にします。これらを総合的に考えると、資産形成を行う場合には、できるだけ個人ではなく法人に資産を集めて維持管理することが得策となります。このことを実践するためには、まず法人を設立しなければなりません。法人設立というと非常にハードルが高いように思われがちですが、手続きを行政書士や司法書士に依頼することで簡単に設立可能です。もちろん設立した法人を維持していく必要がありますが、こちらも決算書作成や税務申告を税理士に依頼できます。法人所得税と税理士報酬を合わせると、最低年間20万円程度の出費で法人を維持することができます。このように、法人を維持するハードルは思いのほか低いことがわかります。法人所有でできること法人を所有することのメリットは大きいです。私が最も恩恵を受けているのは、「小規模企業共済」に加入できたことです。小規模企業共済とは、国の機関である中小機構が運営する制度で、小規模企業の経営者や役員、そして個人事業主のための積み立てによる退職金制度です。掛金の全額を個人所得から控除できるため、課税所得金額1,800万円以上の人では、掛金の50%の還付を受けることができます。掛金は年間84万円までなので、最大42万円の還付となります。勤務医では利用できない小規模企業共済を利用した節税も、法人を所有することで実践可能となります。私の場合は、事業所得や不動産所得を法人所得に振り替えることで、個人所得にかかる税負担を圧縮しています。税率が20%違うと資産形成のスピードが加速することを実感します。個人ですべての資産を所有していると、重りを付けたまま走っているのと同じことになります。これ以外にも、資産を法人所有とすることで、次世代への継承、悪意ある第三者からの保護、匿名性の担保などのメリットを享受することができます。まだ法人設立をしていない方は、一度検討されてはいかがでしょうか。

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第14回 内科からのST合剤の処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Escherichia coli(大腸菌)・・・11名全員Staphylococcus saprophyticus(腐性ブドウ球菌)※1・・・8名Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)・・・3名Proteus mirabilis(プロテウス・ミラビリス)※2・・・2名※1 腐性ブドウ球菌は、主に泌尿器周辺の皮膚に常在しており、尿道口から膀胱へ到達することで膀胱炎の原因になる。※2 グラム陰性桿菌で、ヒトの腸内や土壌中、水中に生息している。尿路感染症、敗血症などの原因となる。大腸菌か腐性ブドウ球菌 清水直明さん(病院)若い女性の再発性の膀胱炎であることから、E.coli、S.saprophyticusなどの可能性が高いと思います。中でも、S.saprophyticusによる膀胱炎は再発を繰り返しやすいようです1)。単純性か複雑性か 奥村雪男さん(薬局)再発性の膀胱炎と思われますが、単純性膀胱炎なのか複雑性膀胱炎※3 なのか考えなくてはいけません。また、性的活動が活発な場合、外尿道から膀胱への逆行で感染を繰り返す場合があります。今回のケースでは、若年女性であり単純性膀胱炎を繰り返しているのではないかと想像します。単純性の場合、原因菌は大腸菌が多いですが、若年では腐性ブドウ球菌の割合も高いとされます。※3 前立腺肥大症、尿路の先天異常などの基礎疾患を有する場合は複雑性膀胱炎といい、再発・再燃を繰り返しやすい。明らかな基礎疾患が認められない場合は単純性膀胱炎といQ2 患者さんに確認することは?妊娠の可能性と経口避妊薬の使用 荒川隆之さん(病院)妊娠の可能性について必ず確認します。もし妊娠の可能性がある場合には、スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠(ST合剤)の中止、変更を提案します。妊婦の場合、抗菌薬の使用についても再度検討する必要がありますが、セフェム系薬の5~7 日間投与が推奨されています2)。ST合剤は相互作用の多い薬剤ですので、他に服用している薬剤がないか必ず確認します。特に若い女性の場合、経口避妊薬を服用していないかは確認すると思います。経口避妊薬の効果を減弱させることがあるからです。副作用歴と再受診予定 中堅薬剤師さん(薬局)抗菌薬の副作用歴と再受診予定の有無を確認し、医師からの指示がなければ、飲み切り後に再受診を推奨します。また、可能であれば間質性膀胱炎の可能性について医師から言われていないか確認したいところです。中高年女性だと過活動膀胱(OAB)が背景にあることが多いですが、私の経験では、若い女性では間質性膀胱炎の可能性が比較的あります。ストレス性やトイレを我慢してしまうことによる軽度の水腎症※4のようなケースを知っています。※4 尿路に何らかの通過障害が生じ、排泄されずに停滞した尿のために腎盂や腎杯が拡張し、腎実質に委縮を来す。軽症の場合は自然に軽快することが多いが、重症の場合は手術も考慮される。相互作用のチェック 奥村雪男さん(薬局)併用薬を確認します。若年なので、薬の服用は少ないかも知れませんが、ST合剤は蛋白結合率が高く、ワルファリンの作用を増強させるなどの相互作用が報告されています。併用薬のほか、初発日や頻度 ふな3さん(薬局)SU薬やワルファリンなどとの相互作用があるため、併用薬を必ず確認します。また、単純性か複雑性かを確認するため合併症があるか確認します。可能であれば、初発日と頻度、7日分飲みきるように言われているか(「3日で止めて、残りは取っておいて再発したら飲んで」という医師がいました)、次回受診予定日、尿検査結果も聞きたいですね。治療歴と自覚症状 わらび餅さん(病院)可能であれば、これまでの治療歴を確認します。ST合剤は安価ですし、長く使用されていますが、ガイドラインでは第一選択薬ではありません。処方医が20歳代の女性にもきちんと問診をして、これまでの治療歴を確認し、過去にレボフロキサシンなどのキノロン系抗菌薬を使ってそれでも再発し、耐性化や地域のアンチバイオグラムを考慮して、ST合剤を選択したのではないでしょうか。発熱がないとのことですが、自覚症状についても聞きます。メトトレキサートとの併用 児玉暁人さん(病院)ST合剤は妊婦に投与禁忌です。「女性を見たら妊娠を疑え」という格言(?)があるように、妊娠の有無を必ず確認します。あとは併用注意薬についてです。メトトレキサートの作用を増強する可能性があるので、若年性リウマチなどで服用していないか確認します。また、膀胱炎を繰り返しているとのことなので、過去の治療歴がお薬手帳などで確認できればしたいところです。Q3 疑義照会する?する・・・5人複雑性でない場合は適応外使用 中西剛明さん(薬局)疑義照会します。ただ、抗菌薬の使用歴を確認し、前治療があれば薬剤の変更については尋ねません。添付文書上、ST合剤の適応症は「複雑性膀胱炎、腎盂腎炎」で、「他剤耐性菌による上記適応症において、他剤が無効又は使用できない場合に投与すること」とあり、前治療歴を確認の上、セファレキシンなどへの変更を求めます。処方日数について 荒川隆之さん(病院)膀胱炎に対するST合剤の投与期間は、3日程度で良いものと考えます(『サンフォード感染症ガイド2016』においても3日)。再発時服用のために多く処方されている可能性はあるのですが、日数について確認のため疑義照会します。また、妊娠の可能性がある場合には、ガイドラインで推奨されているセフェム系抗菌薬の5~7日間投与2)への変更のため疑義照会します。具体的には、セフジニルやセフカペンピボキシル、セフポドキシムプロキセチルです。授乳中の場合、ST合剤でよいと思うのですが、個人的にはセフジニルやセフカペンピボキシル、セフポドキシムプロキセチルなど小児用製剤のある薬品のほうがちょっと安心して投薬できますね。あくまで個人的な意見ですが・・・妊娠している場合の代替薬 清水直明さん(病院)もしも妊娠の可能性が少しでもあれば、抗菌薬の変更を打診します。その場合の代替案は、セフジニル、セフカペンピボキシル、アモキシシリン/クラブラン酸などでしょうか。投与期間は7 日間と長め(ST合剤の場合、通常3 日間)ですが、再発を繰り返しているようですので、しっかり治療しておくという意味であえて疑義照会はしません。そもそも、初期治療ではまず選択しないであろうST合剤が選択されている段階で、これまで治療に難渋してきた背景を垣間見ることができます。ですので、妊娠の可能性がなかった場合、抗菌薬の選択についてはあえて疑義照会はしません。予防投与を考慮? JITHURYOUさん(病院)ST合剤は3日間の投与が基本になると思いますが、7日間処方されている理由を聞きます。予防投与の分を考慮しているかも確認します。しない・・・6人再発しているので疑義照会しない 奥村雪男さん(薬局)ST合剤は緑膿菌に活性のあるニューキノロン系抗菌薬を温存する目的での選択でしょうか。単純性膀胱炎であれば、ガイドラインではST合剤の投与期間は3日間とされていますが、再発を繰り返す場合、除菌を目的に7日間服用することもある3)ので、疑義照会はしません。残りは取っておく!? ふな3さん(薬局)ST合剤の投与期間が標準治療と比較して長めですが、再発でもあり、こんなものかなぁと思って疑義照会はしません。好ましくないことではありますが、先にも述べたように「3日で止めて、残りは取っておいて、再発したら飲み始めて~」などと、患者にだけ言っておくドクターがいます...。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?服用中止するケース 清水直明さん(病院)「この薬は比較的副作用が出やすい薬です。鼻血、皮下出血、歯茎から出血するなどの症状や、貧血、発疹などが見られたら、服用を止めて早めに連絡してください。」薬の保管方法とクランベリージュース 柏木紀久さん(薬局)「お薬は光に当たると変色するので、日の当たらない場所で保管してください」と説明します。余談ができるようなら、クランベリージュースが膀胱炎にはいいらしいですよ、とも伝えます。発疹に注意 キャンプ人さん(病院)発疹などが出現したら、すぐに病院受診するように説明します。処方薬を飲みきること 中堅薬剤師さん(薬局)副作用は比較的少ないこと、処方分は飲み切ることなどを説明します。患者さんが心配性な場合、副作用をマイルドな表現で伝えます。例えば、下痢というと過敏になる方もいますので「お腹が少し緩くなるかも」という感じです。自己中断と生活習慣について JITHURYOUさん(病院)治療を失敗させないために自己判断で薬剤を中止しないよう伝えます。一般的に抗菌薬は副作用よりも有益性が上なので、治療をしっかり続けるよう付け加えます。その他、便秘を解消すること、水分をしっかりとり、トイレ我慢せず排尿する(ウォッシュアウト)こと、睡眠を十分にして免疫を上げること、性行為(できるだけ避ける)後にはなるべく早く排尿することや生理用品をこまめに取り替えることも説明します。水分補給 中西剛明さん(薬局)尿量を確保するために、水分を多く取ってもらうよう1日1.5Lを目標に、と説明します。次に、お薬を飲み始めたときに皮膚の状態を観察するように説明します。皮膚障害、特に蕁麻疹の発生に気をつけてもらいます。Q5 その他、気付いたことは?地域の感受性を把握 荒川隆之さん(病院)ST合剤は『JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015』などにおいて、急性膀胱炎の第一選択薬ではありません。『サンフォード感染症ガイド2016』でも、耐性E.coli の頻度が20%以上なら避ける、との記載があります。当院においてもST合剤の感受性は80%を切っており、あまりお勧めしておりません。ただ、E.coli の感受性は地域によってかなり異なっているので、その地域におけるアンチバイオグラムを把握することも重要であると考えます。治療失敗時には受診を JITHURYOUさん(病院)予防投与については、説明があったのでしょうか。また、間質性膀胱炎の可能性も気になります。治療が失敗した場合は、耐性菌によるものもあるのかもしれませんが、膀胱がんなどの可能性も考え受診を勧めます。短期間のST合剤なので貧血や腎障害などの懸念は不要だと思いますが、繰り返すことを考えて、生理のときは貧血に注意することも必要だと思います。間質性膀胱炎の可能性 中堅薬剤師さん(薬局)膀胱炎の種類が気になるところです。間質性膀胱炎ならば、「効果があるかもしれない」程度のエビデンスですが、スプラタストやシメチジンなどを適応外使用していた泌尿器科医師がいました。予防投与について 奥村雪男さん(薬局)性的活動による単純性膀胱炎で、あまり繰り返す場合は予防投与も考えられます。性行為後にST合剤1錠を服用する4)ようです。性行為後に排尿することも推奨ですが、カウンターで男性薬剤師から話せる内容でないので、繰り返すようであれば処方医によく相談するようにと言うに留めると思います。後日談(担当した薬剤師から)次週も「違和感が残っているので」、ということで来局。再度スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠1回2錠 1日2回で7日分が継続処方として出されていた。その後、薬疹が出た、ということで再来局。処方内容は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩2mg錠1回1錠 1日3回 毎食後5日分。スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠は中止となった。1)Raz R et al. Clin Infect Dis 2005: 40(6): 896-898.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015.一般社団法人日本感染症学会、2016.3)青木眞.レジデントのための感染症診療マニュアル.第2版.東京、医学書院.4)細川直登.再発を繰り返す膀胱炎.ドクターサロン.58巻6月号、 2014.[PharmaTribune 2017年5月号掲載]

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臨床現場に挑む新人医師たちへ

本キャンペーンは終了しましたCareNet.comでは1年にわたって研修医におすすめの医学教育動画を無料でご提供※通常は有料視聴の医学教育動画ですみんコレ!に会員登録するだけでCareNet.comの会員登録は手間なく完了!2月中旬~3月ごろにCareNet.comから無料公開動画のお知らせメールが届きます。志水太郎 診断戦略エッセンス「なぜ今、診断戦略か?」若手Dr.の支持を集める診断学の「ニューバイブル」を映像化! 「診断」というものを独自のアプローチで捉え直した書として注目された「診断戦略」(医学書院)。 医師が無意識的に行っていた診断に至るプロセスを言語化することで、意識的に、効率的にその精度を向上させることができる、まさに診断学イノベーション! 本番組では著者である志水太郎先生がその本質と、診断力をアップする具体的な方法について解説します!Dr.志賀のパーフェクト!基本手技「第4回 胃管挿入」胃管挿入は、単純そうに見えますが、決して簡単な手技ではありません。 覚醒下で行うため、患者さんにとって非常につらく、不快感があるの手技です。手技を行う際には、しっかりとした配慮が必要です。 また、頭蓋内挿入、気管内挿入、そして穿孔など、重大な事故につながる恐れもあります。 それらを避けるためのポイントとコツ、そしてトラブル対処法をしっかりと分かりやすく伝授します。この番組で、ぜひ、胃管挿入をマスターしてください。自治医大presents総合内科アップデート広範な内科領域で日々アップデートされる最新の知見をリレー講義していく新しいスタイル。各専門医が自分の診療科のなかでもとくに得意とするテーマに絞ってコンパクトに講義するから、専門的でありながら、わかりやすくて実用的。 内科全領域における最新の重要臨床トピックをクイックに学べるので、総合内科医専門医試験対策にも役立ちます。 第1回は、腎臓内科の小林高久先生が2017年にガイドラインが改訂された「急速進行性糸球体腎炎」の病態、診断、治療、早期発見のポイントをクリアに解説します。みんコレ!に会員登録するだけでCareNet.comの会員登録は手間なく完了!2月中旬~3月ごろにCareNet.comから無料公開動画のお知らせメールが届きます。

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特発性肺線維症〔IPF : idiopathic pulmonary fibrosis〕

特発性肺線維症特発性肺線維症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる肺胞(隔)壁などに傷害と炎症が生じ、不可逆的な線維化を起こす疾患群である。この間質性肺炎には、薬剤性、膠原病性、大量の粉塵吸入など原因が明らかなものと、原因が不明な特発性間質性肺炎とがある。主な特発性間質性肺炎は7つの病型に分類されているが、そのうち患者数が最も多く、かつ予後不良の中心的疾患が特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)である。IPFは慢性、進行性の疾患であり、高度の線維化が肺底部、肺の末梢領域から肺全体へ広がって、不可逆性の蜂巣肺と呼ばれる病変を形成する、きわめて予後不良の疾患である。IPFの病理組織像はusual interstitial pneumonia (UIP)と呼ばれている所見である。従来、有効な治療法のない疾患であったが、近年、2つの抗線維化薬が治療薬として注目されている。■ 疫学近年まで特発性間質性肺炎、IPFの患者数についての正確な調査は行われておらず、まったく不明であったが、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究班」により2008年以来、北海道において詳細な疫学研究が行われ、実態が明らかにされてきた。これによると、特発性間質性肺炎の有病率は10万人あたり10.0人であり、日本全体では少なくとも約1万3千人の患者数となり、その多くがIPFであることから、少なくみても1万数千人以上のIPF患者が日本には存在すると考えられる。■ 病因定義で述べたように、IPFの原因は不明であるが、リスク・ファクターとして喫煙、職場の粉塵(とくに金属粉塵)、ウィルスなどが考えられている。家族性で遺伝的素因が強くうかがわれる例もある。■ 症状IPFはゆっくりと進行する疾患であるが、個々の患者によって比較的急速に進行する例もある。主な症状は労作時の呼吸困難とさまざまな程度の乾性咳嗽である。労作時の息切れは、来院する6ヵ月~数年前から存在しており、聴診ではほとんどの例で、背部下肺野に捻髪音(fine crackle)を聴取する。半分~1/3の例で「ばち指」を認める。進行し末期に至ると、肺性心、末梢性浮腫、チアノーゼなどがみられてくる。■ 分類背景因子として、粉塵吸入の目立つ例、C型肝炎例、糖尿病合併例、膠原病が疑われる症状のある例、過敏性肺炎との鑑別が難しい例、家族性の例などさまざまなサブタイプの存在するheterogeneousな疾患といえる。近年、欧米からの指摘により日本でも再注目されているのが、上肺に気腫が存在し、下肺に線維化がある「気腫合併肺線維症」(CPFE:combined pulmonary fibrosis and emphysema)である。本病態は喫煙と強い関係があり、呼吸機能上、気腫と線維化が相殺されて、1秒率 (FEV1/FVC)は一見正常に近いが、肺拡散能が低下しているという特徴を有する。本病態では、肺がんの高率合併や症例によっては強い肺高血圧症を合併することからも注意が必要である。分類ではないが、IPFの病態としてきわめて重要なものに「急性増悪」と肺がん合併がある。急性増悪を一旦起こすと、死亡率約80%ともいわれ、きわめて予後不良である。■ 予後IPFはきわめて予後不良の疾患で、わが国のある調査では、初診時を起点とした平均生存期間は約5年であった。また、欧米での診断確定後の平均生存期間は28~52ヵ月とされる。しかしながら、IPFの予後にはきわめて多様性があり、数ヵ月で急性増悪などにより死亡する例から10数年以上生存する例までさまざまである。ただ、全体的にはきわめて予後不良の疾患であることは間違いのないところである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)IPFの診断については基本的には図1の「IPF診断のフローチャート」に沿って行われる。まず、原因の明らかな他の間質性肺疾患を除外し、つぎにHRCT所見で典型的なUIPパターン(表1)を示す場合には、臨床的にIPFと確定診断される。外科的肺生検が実施された例では、HRCT所見と病理所見の組み合わせで判断していく(表2)。HRCTで典型的なUIPパターンを示さない場合でもpossible UIPパターンで、臨床経過がIPFに合致するような肺機能低下を示す(disease behavior)例ではIPFと臨床診断されることも可能である。こういった診断の際には間質性肺疾患の診断経験を十分に積んだ呼吸器専門医、画像診断医、病理診断医がMDD(multi-disciplinary discussion:多職種による合議)を行い、総合的に判断していくことがIPFの正確な診断に重要とされている。血液検査所見としては、従来LDHのみであったが、近年、新しい間質性肺炎マーカーとしてKL-6、SP-D、SP-Aが導入された。これらは、診断と共に活動度の判定にも有用である。呼吸機能としては、通常肺活量(VC)や全肺気量(TLC)の低下がみられ、拘束性換気障害のパターンを示し、また同時に肺拡散能の低下も認められる。ただし、気腫合併肺線維症ではこの限りではないことは前述した。IPFとの鑑別が必要な主な疾患として、表3のようなものがあげられる。画像を拡大する■MDD(multidisciplinary discussion)の取り扱いMDD:下記のとおり、呼吸器内科医、画像診断医、病理診断医が総合的に診断するMDD-A:画像上他疾患が考えられる場合、気管支鏡検査あるいは外科的肺生検で他疾患が見込まれる場合MDD-B:外科的肺生検は積極的UIP診断の根拠になる場合が多いため、患者のリスクを勘案の上、可能な限り施行するMDD-C:IPF症例で非典型的な画像(蜂巣肺が不鮮明など)を約半数で認めるため、呼吸機能の低下など、進行経過(behavior)を総合して臨床的IPFと判断する症例があるMDD-D:病理検査のない場合の適格性を検討する各MDDにおいて最終診断が変わりうる可能性がある画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療今まで、IPFの生存率や健康関連QOLに対して明らかな有効性が証明された薬物治療法はなかったが、2008年に新しく上市された抗線維化薬ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)、さらに2015年に上市されたニンテダニブ(同:オフェブ)が大きく注目されている。IPFは治癒が期待できない難治性疾患であるため、その治療目標は改善ではなく、むしろ悪化防止(現状維持)が現実的である。予後不良因子である急性増悪の予防(感冒・心不全などの予防、無理をしないなど)、合併症の肺がん、肺高血圧症の早期発見と対応が求められる。後述する薬剤治療に関しても、治療効果と副作用を考えて選択することが重要である。次に、薬剤治療について述べる。1)N-アセチルシステイン(NAC:N-acetylcysteine)は、グルタチオンの前駆物質であり、抗酸化作用を有すると共に、活性酸素のスカベンジャー作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用などがある。IPFの病変部ではグルタチオンが減少し、レドックスバランスの不均衡が生じていることからも、NACの有用性が考えられる。NACの経口薬については欧州を中心とした臨床試験において効果が示されていたが、近年PANTHER試験で経口薬は無効とされた。しかし、日本ではNACはすでに吸入薬の形で去痰薬として長い歴史がある。吸入薬の形によるNACのIPFに対する検証がわが国でも厚生労働省の研究班を中心に行われ、一定の効果が示されている。NACの利点は副作用が少ない点であるが、吸入療法のため、アドヒアランスに欠点がある。吸入薬のNACについては、抗線維化薬との併用を含めさらに検討が必要である。2)抗線維化薬ピルフェニドンピルフェニドンは米国で創薬された薬剤であり、TNF-αなどの炎症性サイトカイン抑制、線維芽細胞のコラーゲン産生抑制といった抗炎症、抗線維化作用を有する薬剤である。わが国において軽症および中等症のIPFを対象とした第II相試験が行われ、歩行時低酸素血症の改善、呼吸機能の悪化抑制が認められた。さらに第III相試験が行われ、%VC悪化の有意な抑制、無増悪生存期間の改善が認められ、2008年12月に世界初の抗線維化薬として市販された。副作用として当初は光線過敏症が注目されていたが、実際に使用してみるとむしろ問題になるのは胃腸障害である。その後の研究でピルフェニドンはIPF患者のVC/FVCの低下を抑制し、無増悪生存期間の延長、6分間歩行距離の低下抑制を示した。とくに軽症例においてVC低下抑制、無増悪生存期間の延長が際立っていた。いくつかのトライアルの統合解析において、ピルフェニドンはIPF患者の全死亡率、疾患関連死亡率の低下を示したという。3)抗線維化薬ニンテダニブニンテダニブは、ベーリンガーインゲルハイム社によって開発された経口薬である。肺の線維化に関係する3つの分子、VEGF受容体、PDGF受容体、FGF受容体を阻害する低分子トリプリチロキンシナーゼ阻害薬である。わが国では2015年に第2の抗線維化薬として承認され市販された。ニンテダニブは全世界的規模のトライアルにおいてIPF患者の呼吸機能の年間低下率を約50%抑制した。主な副作用は下痢であり、その他肝機能障害などがみられる。4)ステロイド、免疫抑制剤これらの抗炎症薬のIPFに対する効果は基本的に否定されているが、IPFの終末期など症例によっては一定の効果をみる場合もある。また、急性増悪の際の治療としては、頻用されている。その他、進行例では在宅酸素療法が行われ、呼吸リハビリテーションも重要である。進行例で基準を満たせば肺移植の適応でもある。4 今後の展望前述の2つの抗線維化薬に対して、今後どのような重症度から投与するのか、長期の安全性、2つの薬の使い分けまたは併用の可能性などの多くの明らかにすべき課題がある。5 主たる診療科呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性間質性肺炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本呼吸器学会(医療従事者向けのまとまった情報)1)日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編. 特発性間質性肺炎診断と治療の手引き.改訂第3版:南江堂;2016.2)「びまん性肺疾患に関する調査研究」班特発性肺線維症の治療ガイドライン作成委員会編. 特発性肺線維症の治療ガイドライン2017. 南江堂;2017.3)杉山幸比古編.特発性肺線維症(IPF) 改訂版.医薬ジャーナル社;2013.4)杉山幸比古編、特発性間質性肺炎の治療と管理.克誠堂出版;2013.公開履歴初回2013年02月28日更新2018年11月13日

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患者さんにうまく説明できない医師へ送る本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第11回

【第11回】患者さんにうまく説明できない医師へ送る本先日、ある気管支腫瘍の患者さんに「腫瘍によって気管支が狭窄しているようです」と説明したときのこと。「先生、キョウサクってのは何だい?」と聞かれました。そりゃ当然です。日常生活で「狭窄」なんて言葉を使う場面はほとんどありませんし、もはや医療用語と化しています。「気管支が狭くなっているということですよ」と説明しながら、「なぜ狭窄などという難しい用語が使われているんだろう」と、今さら疑問に感じました。『病院で使う言葉がわかる本』和田 ちひろ/著 中川 恵一・蓮岡 英明/監修. 実業之日本社. 2010今回紹介する本は、一般向けの書籍であって、決して医療従事者向けの医学書ではありません。かれこれ8年前に出版された本なのですが、良い本だと思います。この本の面白いところは、どの用語がどういう意味かを記しただけではなく、どういう用語が患者さんに誤解されているかを細かく紹介している点です。たとえば「貧血」という言葉は、血液検査におけるヘモグロビン値の低下を指しますが、一般の人はそれよりも立ちくらみのほうをイメージします。同様に、「ショック」という言葉は、驚くほど病気が重症であるためショックを受けるようなイメージを持っている人が多いです。まぁ、「ショック」イコール重症であるというおおまかな解釈は間違っていないんでしょうけど。医師の使う言葉はわかりにくい。しかし、私たちはそれに慣れきってしまっているため、そもそもどの用語が難しいと思われているのか、感覚が麻痺しちゃっていることがあります。「標準治療」という用語は、熟語の構成そのものは難しくありませんが、標準的でありきたりな治療をされては困ると思う患者さんはたくさんいます。また、「縫合不全」という用語も、外科的な知識がない患者さんにとっては、「医療ミスをされた」と誤解しかねないでしょう。この本は、難しい用語から誤解されやすい用語まで、合計250ページ以上にわたっておそらく100以上は掲載しています。一般向け書籍ですから、1,500円(税別)という安さ。出版年月日が古いので、もしかするとリユースでしか手に入らないかもしれません。患者さんに対する説明がなんだかうまくいかないなぁと思っている人は、一度この本を手に取ってみてはいかがでしょうか。病状説明に慣れたベテランドクターにも、ぜひ一読いただきたいと思います。『病院で使う言葉がわかる本』和田 ちひろ/著 中川 恵一・蓮岡 英明/監修出版社名実業之日本社定価本体1,500円+税サイズA5判刊行年2010年

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「かかりつけ薬剤師になりたくない」薬剤師は8割超!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第12回

「かかりつけ薬剤師・薬局制度」が始まり、2年半が経ちました。この主体である薬剤師は現時点でかかりつけ薬剤師・薬局制度をどう思っているのでしょうか。今回は、女性の健康管理と疾病管理によるQOLの改善を提言しているNPO法人HAPが行った調査を紹介します。この調査は、株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートサイトに登録している薬剤師を対象としたWEBアンケートで、2018年9月に実施されました。全国の薬剤師398人が回答し、うち、かかりつけ薬剤師経験者が111人、かかりつけ薬剤師未経験者が287人でした。まず、かかりつけ薬剤師・薬局制度の導入で薬剤師自身にとってどのようなメリットがあると感じるか、という質問についてです。全体では第1位の「患者に接する意識が変わる」が34.9%で、かかりつけ薬剤師になることで、患者さんとの関わりが強くなり、モチベーションや責任感が増すことがわかります。ただし、この質問をかかりつけ薬剤師経験者と未経験者で分けてみると、「患者に接する意識が変わる」という回答は経験者では45.0%と高く第1位ですが、未経験者では31.0%で第2位であり、14%の差がついています。では未経験者の第1位はというと、なんと「薬剤師にとってメリットだと思うことはない」で32.8%という衝撃の結果となっています。薬剤師自身にとってデメリットだと感じることは、多いものから「接客に時間がかかり過ぎる」「責任が大きくなってしまう」「生活バランスに支障を来す」「患者と密にコミュニケーションをとらなければならない」という回答になりました。時間がかかることや責任が大きくなることをデメリットと考える薬剤師がある程度いることは想定内だと思いますが、コミュニケーションをとること自体をデメリットと考える人もいるようです。かかりつけ薬剤師になりたくないのは時間や組織の仕組み不足が原因?では、皆さんは、どのくらいの人が「かかりつけになりたい!」と答えたと思われますか? かかりつけ薬剤師未経験者に対して、「あなたは今後、かかりつけ薬剤師になりたいと思いますか?」という質問をしたところ、なんと「なりたい」「ややなりたい」を合わせて18.1%でした。初めてこの結果を見たときには、えっ? 18%って逆では!? と思いましたが、「なりたくない」「あまりなりたくない」の合計は81.9%であり、大差がついています。薬剤師の仕事の幅が広がり、仕事のやりがいにつながると感じていても、自分がなりたいかと言われるとそうではないということなのかもしれません。かかりつけ薬剤師にはなりたくないという理由がわかりそうな質問もあります。「勤務している薬局にはどのような問題・課題がありますか?」という質問です。第1位は「人材不足」で59.0%と圧倒的でした。2位以下は「従業員の働き方に関する取り組みが充実していない(21.9%)」「教育制度が充実していない(20.6%)」と続きます。時間的な余裕や組織の仕組みなどが整っておらず、かかりつけに前向きになれないのかもしれません。このアンケートを通して、全体的にかかりつけ薬剤師の必要性や効果を経験者はポジティブに捉えていることに対して、未経験者はそのようには捉えていないことがわかりました。かかりつけ薬剤師は、実際にやってみたら自身や患者さんにとってのメリットを感じるというものなのでしょう。まずは、かかりつけ薬剤師になりたいという人を増やすために、職場環境や教育制度をどう整えるか、ということから始める必要があるのかもしれません。

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第7回 p値(probability)とは何の確率を示す?【統計のそこが知りたい!】

第7回 p値(probability)とは何の確率を示す?薬剤の効果を調べる場合、その薬剤を必要とするすべての人に薬剤を投与してみれば効果はわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬剤を投与して、そこで得られたデータが世の中の多くの人たちにも通じるかどうかを検証します。ここでは、例として「解熱剤である新薬Yは母集団において解熱効果がある」という仮説を立て、検定的手法を用いてこの仮説が正しいかどうかを確認します。確認する方法を「仮説検定(hypothesis test)」と言います。仮説検定は、母集団検定、統計的検定とも言われます。今回は、仮説検定、そしてp値(probability)とは何の確率を示すのかについて解説します。■帰無仮説と対立仮説統計的仮説検定で最初にすることは、帰無仮説と対立仮説を立てることです。まず、帰無仮説と対立仮説についてご説明します。製薬会社は、多大な時間と開発費を投じて新薬を開発します。よって新薬Yは自信をもって開発された薬剤ということになります。ですから、新薬Yは解熱作用に優れている、つまり、低下体温は0℃より大きいと言えそうです。したがって、母集団における低下体温を0℃と仮定すると、その仮説はほとんど起こらない事象であると言えます。低下体温が0℃という仮説を「無」にしたいという、この仮説が帰無仮説です。帰無仮説は、棄却されて「無」に帰する仮説という意味です。帰無仮説の反対の仮説を対立仮説といいます。解析目的で明らかにしたかったことが対立仮説になります。帰無仮説がほとんど起こらない事象であることを示す、つまり帰無仮説を棄却することができれば、対立仮説が採択されます。■仮説検定の手順仮説検定の手順は次の手順によって行います。1.帰無仮説と対立仮説を立てる。2.基本統計量を計算する。調査データについて、平均値、標準偏差、標準誤差(SE)を算出する。3.検定統計量を算出する。仮説検定の公式に標準誤差(SE)を当てはめ、検定統計量を算出する。検定統計量は、t値、p値、信頼区間の3つである。4.有意差判定を行う。t値やp値と統計学が決めた値(有意水準という)とを比較し、有意差判定を行う。■p値による仮説検定の仕方p値による仮説検定の仕方を説明します。p値はt値と密接な関係があります。t値が大きくなるほど、p値は小さくなるという関係があります。p値とは「probability(確率)」の頭文字です。pの値は0~1の間の値です。p値は小さくなればなるほど、誤る確率は低くなり、母集団において効果がある(違いがある)という結論の確からしさが高まります。p値と統計学が定めた基準の値を比較し、「p値<有意水準」であれば、帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択します。すなわち、「新薬Yは母集団において解熱効果がある」と判断します。有意水準は通常0.05の定数を適用します。体を屈めてバーをくぐるリンボーダンスを例にすると、屈んだ高さがp値、バーの高さが有意水準です。バーをくぐればセーフ、くぐれなければアウトです。検定では、p値が有意水準0.05を下回れば差がある(効果がある、有意差あり)と判断します。p値が有意水準0.05(5%)よりも小さいときは、差がある(効果がある、有意差あり)と判断できますが、この判断はもしかしたら間違っているかもしれません。つまり、p値(probability)とは、仮説が正しい場合にこの手順を多数回実施して検定を行うとき、間違って帰無仮説を棄却する割合が5%未満であるということです。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション4 仮説検定の意味と検定手順セクション10 p値による仮説検定第4回 ギモンを解決! 一問一答質問1 p値は小さければ小さいほど差がある(よく効いた)といえるのか?

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薬機法改正で明文化される「薬局薬剤師の役割」の方向性【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第7回

以前にもご紹介しましたが、来年(2019年)、医薬品医療機器等法の改正が予定されており、現在、医薬品医療機器制度部会において議論がされています。いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上になる2025年をめどとして、地域包括ケアシステムを構築することを前提に、テーマの1つである「薬局・薬剤師のあり方・医薬品の安全な入手」について、先日、以下の問題点が取り上げられました。薬局・薬剤師のあり方、医薬分業のあり方(その1)(平成30年10月18日 第7回医薬品医療機器制度部会 資料2)20ページから抜粋薬剤師による情報提供及び薬学的知見に基づく指導の強化【現状と課題】現行法では、薬剤を販売等の目的で調剤した時に、薬剤師が薬学的知見に基づく指導を行うことが義務づけられている。有効で安全な薬物療法の提供のためには、患者の服薬状況等を継続的に把握し、その情報を処方医等に情報提供を行うことが必要であるが、薬局の薬剤師はこれを必ずしも十分実施できているとは言えない実態がある。【主な意見】病院の薬剤師は患者が薬を服用した後の状況を見ているが、薬局の薬剤師はそれができていない。服薬状況の継続的な把握が重要。薬局の薬剤師が処方箋に記載された情報のみで調剤、薬学的知見に基づく指導を行うことには限界がある。疾患名や検査値等、調剤や服薬指導に必要な患者に関する情報を共有する仕組みが必要。処方箋への疾患名記載については慎重な議論を要する。服薬情報の一元的・継続的把握のためには、外来と入院での情報の連携(薬薬連携)が必要。処方(レジメン)提案は薬剤師の業務として重要。ただし、チーム医療として医療機関の中で行われる場合と、医薬分業の中で薬局薬剤師が処方医に対して行う場合について整理すべき。薬を受け取るときだけではなく、その後の安全管理もかかりつけ薬剤師が適切に担うことを検討すべき。【論点】薬剤師の職能発揮のため、以下の内容を法令上明確にすべきではないか。・調剤時のみならず、医薬品の服用期間を通じて、服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行うこと・患者の服薬状況等に関する情報を、必要に応じて処方医等へ提供するよう努めることにより、薬物療法の最適化に寄与すること「服用後の管理」も役割として明文化へこの資料の「論点」によれば、服用期間を通じて服薬状況の把握や指導を行うこと、医師への情報提供に努めることの2点を法令上明確にすることについて議論されています。以前から、薬剤師は、薬剤を交付する時だけでなく、服用後のフォローが重要と言われていましたが、これが条文に明記されることには大きな意味があります。このような議論になるということは、服用後の管理を薬剤師が担うことに対して期待されていると考えられるので、薬剤師はそれに応えていきたいところです。一方、仮に、このような義務が医薬品医療機器等法に記載されれば、服用後の管理が薬剤師の義務であることが明確になりますので、服薬期間中に、薬剤師が適切に患者の管理をしていなかったために、健康被害などが起こってしまえば、薬剤師や薬局の責任問題にもなることが想定されますので、その覚悟は必要でしょう。また、医師への服薬状況に関する情報などの提供については、努めることとあるので努力義務としての検討のようですが、薬物療法の最適化に寄与するとありますので、必要に応じた処方提案なども含まれると考えれば、これも今後さらに大きな役割になっていくのではないでしょうか。実際にどのような改正になるかはわかりませんが、仮にこのような条項が加われば、薬局や薬剤師の機能として、大きな影響のある改正かと思います。また、改正がどのような形になるとしても、国が現状でこのような問題意識を持っているということについて、薬剤師として理解しておく必要があります。今後も、医薬品医療機器等法の改正の議論には注目しておきたいところです。参考資料1)厚生労働省 厚生科学審議会 平成30年度第7回医薬品医療機器制度部会 資料

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第13回 若い薬剤師よ、先輩に遠慮するな!【週刊・川添ラヂオ】

動画解説今回は岡山県キラきら薬局の明石宙郎先生とキャンプ場からお届け。院長回診に付き添っていた病院時代から、在宅ケアに注力する現在までの薬剤師人生を振り返ります。他職種連携で、地域住民の健康に責任を持つのが薬剤師としてのポリシー。そんな明石先生から若い薬剤師へのメッセージは意外にも…。

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在宅医療で使う漢方薬の役割と活用法

 2018年10月24日、漢方医学フォーラムは、都内で第138回目のプレスセミナーを開催した。当日は、在宅医療における漢方薬の役割について講演が行われた。在宅医療は患者のレジリアンスを高める 講演では、北田 志郎氏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 准教授/あおぞら診療所 副院長)を講師に迎え、「地域包括ケアシステムと漢方~“暮らしのなかでいのちを支える” 在宅医療で発揮される漢方薬の役割~」をテーマに講演が行われた。 同氏は、内科ローテートを修めた病院で東洋医学を専攻。以降、精神医学の診療に従事するとともに、中国に短期留学をし、漢方専門外来に従事するなど、漢方薬には深い造詣を持つ。 講演では、少子高齢化、多死化、高齢者の独居化が増加する日本社会で、地域包括ケアの重要性を強調。最新の治療機器、治療薬などで医療を提供し、健康長寿国であるにも関わらず、受益者である患者の医療制度への満足度は低く、提供している医療者は疲弊しきっていることに言及し、その原因を医療需要(患者の思い)と供給(医療者の思い)のミスマッチにあると指摘する。たとえば、終末期の患者を病院で看取ることは、本当に患者が望んでいることなのか、医療者の思いだけで医療の提供をしているのではないかと疑問を呈した。 具体的例として、80代の認知症患者を挙げ、自宅での終末期の過ごし方が患者の病状緩和やQOLの向上に役立ったと自験例を説明した。これを同氏は「レジリアンス(復元力・打たれ強さ)」と呼び、古い記憶をたどる傾向のある認知症では自宅だからこそ医療・介護に役立つ利点があると語る(ただし、在宅医療に拘泥することなく、病の軌跡の局面に応じて使い分けるべきだとも指摘する)。 また、在宅医療では、先端医療の導入が困難であり、治療手段も限定される中で、患者の暮らしと乖離しない技術として伝統医学との親和性を提案する。とくに高齢者の在宅診療では、「虚弱に対する補法」として、代替医療が真価を発揮する場になるという。高齢者への5つの漢方薬の使い方 『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015』(日本老年医学会 編集)では、「漢方薬・東アジア伝統医薬品」と別章を作り、クリニカルクエスチョンとして5剤について有効と記載している。 ガイドラインでは、「半夏厚朴湯」につき、「誤嚥性肺炎の既往をもつ患者における嚥下反射を改善させ、肺炎発症の抑制に有効である」とされている。また、エビデンスについても「有意に肺炎発症を減少させただけでなく、自力経口摂取維持にも有効」とされる。その他の方剤として、「抑肝散」が(アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性)に伴う行動・心理症状のうち易怒、幻覚、昼夜逆転、興奮、暴力など、いわゆる「陽性症状」に、「大建中湯」は脳卒中後遺症における機能性便秘ならびに腹部術後早期の腸管蠕動運動促進に、「麻子仁丸」は高齢者の便秘に、「補中益気湯」は慢性閉塞性肺疾患における自他覚症状、炎症指標および栄養状態の改善にそれぞれ有効とされている。 在宅医療で漢方を用いる意義について同氏は「老いること、死ぬことは生活に属し、現代医学による管理を緩めつつ、医療者に見放されることなく、在宅の生をまっとうする契機を得ることができる」と説明し、最後に「在宅医療における漢方の導入は『医療の根幹部とは何か』を模索する思考につながる」と思いを語り、レクチャーを終えた。

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第18回 「地域枠」の流用で医学部「一般枠」増の実態【患者コミュニケーション塾】

きちんと別枠で募集していた「地域枠」は58%現在、医学部入試を巡っては、不正な裏口入学や、女子学生や多浪生の合格者数が少なくなるような操作があったなど、水面下で横行していた問題が表面化してきています。そこに、医学部定員に「地域枠」を設けながら、一部は「一般枠」になっていたという実態が先日明らかになりました。厚生労働省は、2015年から「医療従事者の需給に関する検討会」を設置し、その下に「医師需給分科会」「看護職員需給分科会」「理学療法士・作業療法士需給分科会」という分科会を設けて、将来必要となる医療従事者の需給を推計したり、医師偏在問題の対策を話し合っています。私は親会と3つすべての分科会で構成員を務めています。とくに医師需給分科会では、医療法の改正を受けて、ようやく医師偏在対策について突っ込んだ議論が始まったところです。その中で、厚労省が全国の都道府県を対象として「自県が奨学金を貸与する地域枠等の医学部生・医師の勤務状況等」の調査(2018年9~10月、回答率100%)1)を行ったところ、驚くべき事実が判明したのです。それは、「地域枠」の学生の選抜方法です。私はこれまで、「地域枠」というのは一般枠とは別に設定し、その別枠の中で学生を募集して選抜しているのだろうと思っていました。ところが2018年度の募集数でみると、それは全体の約58%に留まっていることが判明したのです。実効性のない「手挙げ方式」が横行今回の調査結果によると、地域枠での学生の選抜方法には「別枠方式」と「手挙げ方式」がありました。別枠方式の中にも、「先行型」といって地域枠選抜を一般枠選抜に先立って実施する方法と、「区別型」という願書などに地域枠か一般枠かの希望を記載させ、地域枠と一般枠を区別して選抜する2つの方法があったそうです。これはいずれであっても、本来の目的を達成するための地域枠の選抜方法だと思います。ところが、問題は「手挙げ方式」です。これも2つに分かれ、1つは願書などに地域枠か一般枠かの希望は記載させますが、希望を区別せずに成績上位者から選抜する「事前型」。これは成績上位者に地域枠の希望者が入っていなければ、「地域枠」で学ぶ学生がいなくなります。そして、もっと問題なのが「事後型」です。地域枠や一般枠の希望も聞かずに選抜し、入学後に「地域枠を希望する学生はいるか?」と募集しているというのです。つまり「地域枠」という名の元に入学定員数を増やし、結果として一般枠で教育しているという実態です。現に、別枠方式は募集数の91%で奨学金が貸与されていた実績がある(つまりあらかじめ決めていた地域枠の募集定員の91%は埋まっていた)のに対し、手挙げ方式では79%しか貸与実績がなく、21%は地域枠が正しく履行されていないというわけです。奨学金を貸与された学生は地域で働く義務年限(卒後9年)が設けられていますが、別枠方式では年間離脱率が0.37%なのに対し、手挙げ方式では0.98%と高くなっています。また、義務年限終了まで地域に留まって仕事をする推定義務履行率も、別枠方式は95%なのに対し、手挙げ方式では86%と低くなっています。大学の“自治”と国としての施策この調査結果は、10月24日に開催された医師需給分科会で明らかにされました。前回9月28日には、オブザーバーとして会議に出席していた文部科学省の医学教育課長が「地域枠の具体的な選抜方法は大学独自に決定していただく。それは大学の“自治”なので、国として強制することはできない(要旨)」という発言をされていました。しかし、これはもはや“自治”と看過していい問題ではないのではないでしょうか。「地域枠」そのものは以前から各大学で設けられていましたが、2006年に医師が不足している地域の大学医学部における、実効性のある地域定着策の実施を前提とした定員の暫定的な調整の必要性が示され、「地域医療に従事する明確な意思を持った学生に奨学金を給付する」という要件で、2010年から新たな「地域枠」が設けられました。2010年から2017年の間にこの名目のもと設けられた「地域枠」は、全国で610名に及びます。2)他の構成員からは、「閣議決定までして医学部定員を増員したのに、有効に機能してこなかった部分があることを検証する必要がある。大学ごとのデータを出してもらいたい」という発言も出ていました。私はこれらを受けて、「実態が見えないと議論ができないのではないか。これまでの議論の中で、『地域枠』というのは当然ながら『別枠方式』を念頭に置いてきた。それなのに、この実態に非常に驚いている。『手挙げ方式』などと、さも正当化したような名前を付けているが、これでは『ズル方式』ではないか。『地域枠』という名前で確保した学生を『一般枠』として教育してきたということ。前回、文科省の医学教育課長が『大学の自治』だと発言されたが、もはや自治では済まされない。地域枠の流用ではないか。文科省はこのような方式を認めてきたのか」と発言しました。医学教育課長からは「2010年からの約10年間で、選抜の仕方については別枠方式でないとダメとは申し上げてこなかった。『枠を増やそう』ということでずっとやってきたので、実際に何人の学生がいるかフォローアップも十分ではなかった。厚労省の調査で明らかになったので、文科省としても大学に現在調査を依頼しているところ。今後、結果を報告していきたい」という趣旨の返答がありました。10年以上の議論の結果、何が変わったのかなぜこのように「地域枠」が問題になるのかというと、海外も含めて、地方で教育された地方出身の医学生は、卒業後、地元に定着する確率が高いことが根拠を持って示されているからです。日本でも、地元出身の医学生が卒業後に地元に留まって医師として働いている割合が高いことが明らかになっています。そのため、どのように地域枠を設けたら実効性があるのかをずっと議論してきたのでした。現在、医師需給分科会では、一般枠の中に「地元出身者枠」を作り、奨学金を貸与する「地域枠」とは区別していく方向性を打ち出しています。そして、「地域枠」「地元出身者枠」ともに、都道府県知事が大学に対してその創設や増加を要請できるのは、都道府県内に医師少数区域がある場合に限定するという案が出されています。そして今回の調査結果と医師需給分科会の議論を踏まえ、原則、手挙げ方式は認めず、別枠方式による地域枠を求めていく方向性です。講演などで、医師不足地域に伺うことも少なくありません。医師不足地域の実態をお聞きしていると、同じ日本にあって、十分な医療を受けられる地域とそうでない地域があることに非常に疑問を覚えます。そして、医師偏在問題については、これまで10年以上も議論してきて、何も解決できていないのです。たとえば、2014年のデータを見ると、人口10万人に対する医師の数は、全国平均では233.6人です。しかし、最も少ない地域では79.1人、最も多い東京都区中央部は1,181.7人という開きがあります3)。そもそも「地域枠」といってもさまざまで、その都道府県の出身者に限定している大学もあれば、出身地をまったく問わない大学もあります。今回のような実態が明らかになった以上、きちんと整理して改善し、本来の医師偏在解消につながる方法へと結びつける議論を展開したいと、思いを強くしています。1)厚生労働省「第23回医師需給分科会 資料3-2」2)厚生労働省「平成29年度第2回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会 資料1-2」3)厚生労働省「第2回医師需給分科会 参考資料」

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