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処方薬が自主回収に 処方理由を掘り下げた代替薬の提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第16回

 製薬会社からの「自主回収のお知らせ」は、ある日突然アナウンスされます。「代替薬はどうしますか?」と医師に丸投げするのではなく、服用理由や副作用リスクを考慮しながら代替薬を提案しましょう。患者情報80歳、男性(在宅)基礎疾患:慢性心不全、心房細動、高血圧症、糖尿病、症候性てんかん、甲状腺機能低下症既 往 歴:1年前に外傷性くも膜下出血で入院服薬管理:一包化処方内容1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.アゾセミド錠60mg 2錠 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.トルバプタン錠7.5mg 1錠 分1 朝食後5.レボチロキシンナトリウム錠50μg 1錠 分1 朝食後6.カルベジロール錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後7.メトホルミン錠250mg 2錠 分2 朝夕食後8.リナグリプチン錠5mg 1錠 分1 朝食後9.テルミサルタン錠20mg1錠 分1 朝食後10.ラメルテオン錠8mg 1錠 分1 夕食後11.ミアンセリン錠10mg 1錠 分1 夕食後本症例のポイントこの患者さんの訪問薬剤管理指導を始めてから3ヵ月目に、MSDよりミアンセリン錠10mgの自主回収(クラスII)のアナウンスが入りました。理由は、安定性モニタリングにおいて溶出性が承認規格に適合せず、効果発現が遅延する可能性があるとのことで、使用期限内の全製品の回収と出荷停止が行われました。そこで、医師にミアンセリンから代替薬への変更を提案することにしました。服用契機は、入院中にせん妄が生じたため処方されたと記録されていました。また、以前からこの患者さんには不眠傾向があり、睡眠薬の代替としていることも考えられました。高齢者では、ベンゾジアゼピン系睡眠薬により、せん妄や意識障害のリスクが懸念されるため、5HT2a受容体遮断作用により睡眠の質を改善するとともに、H1受容体遮断作用により睡眠の量も改善するミアンセリンが代替薬として少量投与されることがあります。なお、ラメルテオンもせん妄リスクのある患者で有効とするデータもあり、ベンゾジアゼピン系睡眠薬のリスクを回避しつつ、せん妄と不眠症の両方の改善を目指していると思われました1)。これらの背景を考慮したうえで、代替薬としてトラゾドンを考えました。トラゾドンは、弱いセロトニン再取り込み阻害作用と、強い5HT2受容体遮断作用を併せ持つ薬剤です。睡眠に関しては、全体の睡眠時間を増加させ、持続する悪夢による覚醒やレム睡眠量を減らす効果を期待して処方されることもあり、せん妄と不眠症を有するこの患者さんには最適と考えました。処方提案と経過医師に「ミアンセリン自主回収に伴う代替薬」という表題の処方提案書を作成し、トラゾドンへの変更を提案しました。標準用量では過鎮静やふらつき、起立性低血圧など薬剤有害事象の懸念があると考え、少量の25mgを提案し、認知機能や運動機能低下の有害事象をモニタリング項目として観察することを記載しました。その結果、医師の承認を得ることができました。処方変更後、過鎮静やふらつきなどはなく、せん妄の再燃や入眠困難、中途覚醒などの症状もなく経過しています。1)Hatta K, et al. JAMA Psychiatry. 2014;71:397-403.2)山本雄一郎著. 日経ドラッグインフォメーション編. 薬局で使える 実践薬学. 日経BP社;2017.3)Sateia MJ, et al. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2017:13;307-349.doi: 10.5664/jcsm.6470.

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日本初、1日2回の抗ヒスタミン点眼薬「アレジオンLX点眼液0.1%」【下平博士のDIノート】第44回

日本初、1日2回の抗ヒスタミン点眼薬「アレジオンLX点眼液0.1%」今回は、「エピナスチン塩酸塩点眼液」(商品名:アレジオンLX点眼液0.1%、製造販売元:参天製薬)を紹介します。本剤は、薬剤を高濃度化したことで抗アレルギー作用が長時間持続する1日2回点眼の薬剤であり、アレルギー性結膜炎患者のアドヒアランスと治療満足度の向上が期待できます。<効能・効果>本剤は、アレルギー性結膜炎の適応で、2019年9月20日に承認され、2019年11月27日より発売されています。<用法・用量>通常、1回1滴、1日2回(朝、夕)点眼します。<副作用>本剤の臨床試験で安全性解析対象となった総症例189例において、本剤との因果関係が否定できない臨床検査値異常変動を含む副作用として、結膜充血1例(0.5%)が認められました(承認時)。なお、アレジオン点眼液0.05%で報告されている刺激感、異物感、羞明、眼瞼炎、眼痛、流涙、点状角膜炎、そう痒感、眼脂が、その他の副作用として注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、アレルギー症状や炎症を引き起こすヒスタミンの働きを抑えるとともに、炎症を誘発する物質の放出を抑えます。2.1日2回の点眼でかゆみを減らします。防腐剤が含まれていないので、コンタクトをつけたままでも使用可能です。3.点眼時に刺激を感じることがあります。症状が強い場合や継続する場合は、医師または薬剤師に相談してください。4.ほかの点眼薬を併用する場合には、少なくとも5分以上間隔を空けてから点眼してください。<Shimo's eyes>本剤は、2013年から発売されているアレジオン点眼液0.05%の高用量製剤です。「LX」は、Lasting extendという造語に由来し、持続性を意味しています。薬剤の高濃度化により、持続性を向上させたことで、わが国で初めての1日2回点眼の持続性抗ヒスタミン点眼薬となりました。また、防腐剤フリーの点眼薬ということも特徴に挙げられます。アレジオン点眼液0.05%も、防腐剤としてコンタクトレンズへの吸着や角膜上皮障害が問題となる塩化ベンザルコニウムではなく、ホウ酸を使用しています。本剤は、防腐剤フリーでありながら、保存効力試験に適合しているため、開封後28日間は安全に使うことができ、患者さんへの負担が少ない製剤になったと考えられます。参考1)PMDA アレジオンLX点眼液0.1%

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喫煙者の高い認知症リスク、禁煙3年で軽減~大崎コホート研究

 禁煙と認知症リスクの変化について米国のARIC研究の結果が報告されているが、今回、東北大学のYukai Lu氏らが、日本の前向き研究である大崎コホートにおける縦断的分析の結果を報告した。本研究では、3年以上禁煙した場合、認知症発症リスクは非喫煙者と同じレベルまで低下することが示唆された。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年2月15日号に掲載。 本研究の対象は65歳以上の日本人1万2,489人で、5.7年間追跡調査を実施した。2006年に喫煙状況およびその他の生活習慣の情報を質問票にて収集した。認知症発症に関するデータは、公的介護保険のデータベースから取得した。Cox比例ハザードモデルを使用し、認知症の多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・6万1,613人年の追跡調査の間に、認知症が1,110例(8.9%)に発症した。・現在喫煙者は非喫煙者に比べて認知症リスクが高かった(HR:1.46、95%CI:1.17~1.80)。・元喫煙者の認知症リスクは、禁煙2年以下では依然高かった(HR:1.39、95%CI:0.96~2.01)が、禁煙3年以上では喫煙による認知症リスクの増加が軽減された。禁煙年数ごとの多変量HR(95%CI)は、禁煙3~5年で1.03(0.70~1.53)、6~10年で1.04(0.74~1.45)、11~15年で1.19(0.84~1.69)、15年以上で0.92(0.73~1.15)だった。

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035)患者さんが言うことを聞かない理由【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第35回 患者さんが言うことを聞かない理由しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆先日のこと。顔全体の紅斑・鱗屑症状がわりと強いシニアの女性が来院しました。分布や皮疹の状態から脂漏性皮膚炎を考え、生活指導・外用薬の指導を行いました。2週間後、再診に現れたその方は、鱗屑はなくなっていたものの、紅斑が明らかに残っており、ぱっと見て「あれ?」と感じる所見でした。よくよく話を聞いてみると、どうやらステロイド外用薬を自己判断で塗らなかったことが判明。しかし、ステロイド以外で炎症を抑える塗り薬を出そうか尋ねたところ、「経過に満足しているから、今のままがよい」とのこと。ニコニコの笑顔のまま帰宅され、また数週間後に来院してもらうことになりました。今はインターネットが普及し、患者さんが自分でさまざまな情報を取得できる時代です。なかには、インターネット上の情報に影響されて、こちらの指導通りに治療をしないなど、自己判断で行動される患者さんもいます。そういったケースは、残念ながら、誤った情報をうのみにしてしまっていたり、書いていることを正しく理解できていなかったりする場合がほとんどです。みていて思うのは、やはり「専門のことは専門家に任せるのが一番」ということ。餅は餅屋といいますが、医療に限らず、専門外のことは、専門家の意見に耳を傾けることが大切です。自分で調べたり考えたりももちろん大切ですが、そればかりに気を取られて行動してしまうと、自らの選択肢を狭める結果につながりかねません。自分で調べようとする姿勢は尊重しつつも、間違った認識は正していくように努めているデルぽんです。人生、日々勉強!それでは、また~!

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プロピオン酸血症〔PA:Propionic acidemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義生体内で生じる各種の不揮発酸が代謝障害によって蓄積し、代謝性アシドーシスを主徴とする各種の症状・異常所見を呈する疾患群を「有機酸代謝異常症」と総称する。主な疾患は、分枝鎖アミノ酸の代謝経路上に多く、中でもプロピオン酸血症(Propionic acidemia:PA)は最も代表的なものである。本疾患では、3-ヒドロキシプロピオン酸、メチルクエン酸などの短鎖カルボン酸が体液中に蓄積し、典型的には重篤な代謝性アシドーシスを主徴とする急性脳症様の症状で発症するほか、各種臓器に慢性進行性の病的変化をもたらす。■ 疫学新生児マススクリーニング試験研究(1997~2012年、被検者数195万人)による国内での罹患頻度は約45,000人に1人と、高頻度に発見された。ただし、これには後述する「最軽症型」が多く含まれ、典型的な症状を示す患者の頻度は約40万人に1人と推計されている。■ 病因(図)バリン・イソロイシン代謝経路上の酵素「プロピオニオニル-CoAカルボキシラーゼ(PCC)」の活性低下に起因する、常染色体劣性遺伝性疾患(OMIM#606054)である。PCCはミトコンドリア基質に発現しており、αサブユニットとβサブユニットからなる多量体である。各サブユニットは、それぞれPCCA遺伝子(MIM*232000、局在13q32.3)とPCCB遺伝子(MIM*232050、局在3q22.3)にコードされている。図 プロピオン酸血症に関連する代謝経路画像を拡大する■ 症状典型的には新生児期から乳児期にかけて、重度の代謝性アシドーシスと高アンモニア血症が出現し、哺乳不良、嘔吐、呼吸障害、筋緊張低下などから、けいれんや嗜眠~昏睡など急性脳症の症状へ進展する。初発時以降も同様の急性増悪を繰り返しやすく、特に感染症罹患が契機となることが多い。コントロール困難例では、経口摂取不良が続き、身体発育が遅延する。1)中枢神経障害急性代謝不全の後遺症として、もしくは代謝異常が慢性的に中枢神経系に及ぼす影響によって、全般的な精神運動発達遅滞を呈することが多い。急性増悪を契機に、あるいは明らかな誘因なく、両側大脳基底核病変(梗塞様病変)を生じて不随意運動が出現することもある。2)心臓病変急性代謝不全による発症歴の有無に関わらず、心筋症や不整脈を併発しうる。心筋症は拡張型の報告が多いが、肥大型の報告もある。不整脈はQT延長が本疾患に特徴的である。3)その他汎血球減少、免疫不全、視神経萎縮、感音性難聴、膵炎などが報告されている。■ 分類1)発症前型新生児マススクリーニングで発見される無症状例を指す。そのうち多数を占めるPCCB p.Y435C変異のホモ接合体は、特段の症状を発症しないと目されており、「最軽症型」と呼ばれる。2)急性発症型呼吸障害、多呼吸、意識障害などで急性に発症し、代謝性アシドーシス、ケトーシス、高アンモニア血症、低血糖、高乳酸血症などの検査異常を呈する症例を指す。3)慢性進行型乳幼児期からの食思不振、反復性嘔吐などが認められ、身体発育や精神運動発達に遅延が現れる症例を指すが、経過中に急性症状を呈しうる。■ 予後新生児期発症の重症例は、急性期死亡ないし重篤な障害を遺すことが少なくない。遅発例も急性発症時の症状が軽いとは限らず、治療が遅れれば後遺症の危険が高くなる。また、急性代謝不全の有無に関わらず、心筋症、QT延長などの心臓合併症が出現・進行する可能性があり、特に心筋症は慢性期死亡の主要な原因に挙げられている。一方、新生児マススクリーニングで発見された87例(最長20歳まで)の予後調査では、患者の大半が少なくとも1アレルにPCCB p.Y435C変異を有しており、疾患との関連が明らかな症状の回答はなかった。したがって、この群の予後は総じて良好と思われるが、より長期的な評価(特に心臓への影響)には、さらに経過観察を続ける必要がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)一般血液・尿検査急性期には、アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスをはじめ、ケトーシス、高アンモニア血症、低血糖、汎血球減少などが認められる。高乳酸血症や血清アミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)、クレアチニンキナーゼの上昇を伴うことも多い。2)タンデム質量分析法(タンデムマス、MS/MS)による血中アシルカルニチン分析プロピオニルカルニチン(C3)の増加を認め、アセチルカルニチン(C2)との比(C3/C2)の上昇を伴う。これはメチルマロン酸血症と共通の所見であり、鑑別には尿中有機酸分析が必要である。C3/C2の上昇を伴わない場合は、異化亢進状態(=アセチルCoA増加)に伴う非特異的変化と考えられる。3)ガスクロマトグラフィ質量分析法(GC/MS)による尿中有機酸分析診断確定に最も重要な検査で、3-ヒドロキシプロピオン酸・プロピオニルグリシン・メチルクエン酸の排泄が増加する。メチルマロン酸血症との鑑別には、メチルマロン酸の排泄増加が伴わないことを確認する。4)PCC酵素活性測定白血球や皮膚線維芽細胞の破砕液を粗酵素源として測定可能であり、低下していれば確定所見となるが、実施しているのは一部の研究機関に限られる。5)遺伝子解析PCCA、PCCBのいずれにも病因となる変異が報告されている。遺伝学的検査料の算定対象である。※ 2)、3)は「先天性代謝異常症検査」として保険診療項目に収載されている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性代謝不全の治療タンパク摂取を中止し、輸液にて80kcal/kg/日以上を確保する。有機酸の排泄促進に静注用L-カルニチンを投与する。未診断の段階では、ビタミンB12反応性メチルマロン酸血症の可能性に対するヒドロキソコバラミン(商品名:フレスミンS)またはシアノコバラミン(同:同名、ビタミンB12ほか)の投与をはじめ、チアミン(同:塩酸チアミン、メタボリンほか)、リボフラビン(同:強力ビスラーゼ、ハイボンほか)、ビオチン(同:同名)などの各種水溶性ビタミン剤も投与しておく。高アンモニア血症を認める場合は、安息香酸ナトリウムやカルグルミン酸を投与する。速やかに改善しない場合は、持続血液透析(CHD)または持続血液透析濾過(CHDF)を開始するか、実施可能施設へ転送する。■ 亜急性期〜慢性期の治療急性期所見の改善を評価しつつ、治療開始から24~36時間以内にアミノ酸輸液を開始する。経口摂取・経管栄養が可能になれば、母乳や育児用調製粉乳などへ変更し、自然タンパク摂取量を漸増する。必要エネルギーおよびタンパク量の不足分は、イソロイシン・バリン・メチオニン・スレオニン・グリシン除去粉乳(同:雪印S-22)で補う。薬物療法としては、L-カルニチン補充を続けるほか、腸内細菌によるプロピオン酸産生の抑制にメトロニダゾールやラクツロースを投与する。■ 肝移植・腎移植早期発症の重症例を中心に生体肝移植の実施例が増えている。食欲改善、食事療法緩和、救急受診・入院の大幅な減少などの効果が認められているが、移植後に急性代謝不全や中枢神経病変の進行などを認めた事例の報告もある。4 今後の展望新生児マススクリーニングによる発症前診断・治療開始による発症予防と予後改善が期待されているが、「最軽症型」が多発する一方で、最重症例の発症にはスクリーニングが間に合わないなど、その効果・有用性には限界も看取されている。また、臨床像が類似する尿素サイクル異常症では、肝移植によって根治的効果を得られるが、本疾患では中枢神経障害などに対する効果は十分ではない。これらの課題を克服する新規治療法としては、遺伝子治療の実用化が期待される。5 主たる診療科小児科・新生児科が診療に当たるが、急性期の治療は、先天代謝異常症専門医の下、小児の血液浄化療法に豊富な経験を有する医療機関で実施することが望ましい。成人期に移行した患者については、症状・病変に応じて内分泌代謝内科、神経内科、循環器内科などで対応しながら、小児科が並診する形が考えられる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本先天代謝異常学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本マススクリーニング学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)タンデムマス・スクリーニング普及協会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)先天代謝異常症患者登録制度JaSMIn(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)島根大学医学部小児科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)福井大学医学部小児科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会「ひだまりたんぽぽ」(患者とその家族および支援者の会)1)日本先天代謝異常学会編集. 新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン. 診断と治療社;2019.2)山口清次編集. よくわかる新生児マススクリーニングガイドブック. 診断と治療社; 2019.公開履歴初回2020年03月02日

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オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第11回

第11回 オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで1)Leonetti A, Sharma S, Minari R, et al. Resistance Mechanisms to Osimertinib in EGFR-mutated Non-Small Cell Lung Cancer. Br J Cancer. 2019;121:725-737.2)G.R.Oxnard, J.C.-H.Yang, H Yu, et al. TATTON: A multi-arm, phase Ib trial of osimertinib combined with selumetinib, savolitinib or durvalumab in EGFR-mutant lung cancer. Ann of Oncol. In press.FLAURA試験の結果、EGFR変異陽性例に対する初回治療はオシメルチニブというコンセンサスが得られたものの、日本ではサブセットに関する賛否両論もある。一方、今後の治療戦略を考えるうえで、オシメルチニブの多彩な耐性機序を整理しておくことは非常に重要であり、今回British Journal of Cancer誌によくまとまったレビューが掲載されているので紹介したい(論文1 Fig 1は必見)。本稿では耐性機序をOn-target / Off-target /組織型の転化に分け、頻度は初回治療・既治療(T790M陽性)に基づいて記載した。末尾にそれぞれに関する治療戦略も付記しているが、多くの治療が前臨床・治験レベルであることはご了解いただきたい。1. On-target(EGFR遺伝子)の獲得耐性頻度 初回治療 7%(FLAURA)   既治療 21%(AURA3)いずれにおいてもC797X変異が最多であり、それ以外にもL792X、G796X、L718Qなどが報告されている。L792Xは他のEGFR変異と併存することが多く、逆にL718QはC797Xとは独立して生じるようで、これらが今後の薬剤選択にどのように影響するのかは現時点で不明。FLAURAでは、T790Mの出現は認められていない。T790M陽性例では、治療期間が短い一因として、耐性時にT790M変異が消失している例が挙げられ、こうした症例ではKRAS変異(最近注目のG12Cではない)やMET遺伝子増幅など他の耐性機序を生じている症例が多かった。2. Off-target(EGFR遺伝子以外)の獲得耐性Off-targetによる耐性は、初回治療としてオシメルチニブを用いた場合に多くなる傾向があり、EGFR変異は保持されたままであることが多い。これは腫瘍のheterogeneityを反映しているのでは、と考察されている。機序は多種多様だが、報告されている中ではMET遺伝子増幅が最多。頻度 初回治療 15%(FLAURA)   既治療 19%(AURA3)またMET遺伝子の近傍に位置するCDK6やBRAFなどの遺伝子増幅を同時に認める症例があるとのこと(Le X, et al. Clin Cancer Res. 2018;24:6195-6203.PMID: 30228210)。近年いくつかの薬剤の有効性が示されているMET exon14 skippingも症例報告レベルではあるが報告されている(Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。ほかにはHER2遺伝子増幅(FLAURA 2%、AURA3 5%)、NRAS変異、KRAS G12S変異、BRAF V600E変異(同3%、3%)、PIK3CA変異(4%、4%)、cyclin D1などcell cycle関連の変異(同12%、10%)、融合遺伝子変異(FGFR・RET/NTRK1・ROS1・BRAFなど3~10%、初回投与では少ない?)などがそれぞれ報告されている。3. 組織型の転化小細胞肺がんへの転化が4~15%でみられ、これらの症例では治療前からRB1やTP53の不活性化が確認されている。最近では扁平上皮がんへの転化も報告されている(治療ラインにかかわらず7%前後、Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。4. 有効な治療方針は?耐性例ではとくに、空間的・時間的な不均一性が問題になることが指摘されている(現時点で何か解決策があるわけではないが)。つまり1ヵ所の再生検のみでは全体を十分に把握できていない可能性がある。一方で上記の頻度は解析材料(組織生検か、リキッドバイオプシーか)にも左右されうることには注意が必要。耐性時点でのT790M変異消失は予後不良とする報告がある(Oxnard GR, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1527-1534.)。耐性機序が多彩であることを踏まえてNEJ009レジメンに倣った化学療法の併用について前臨床での報告がなされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2019;38:222.)。C797S変異:前臨床の段階だが第4世代EGFR-TKI(EAI045)やアロステリック阻害薬(JBJ-04-125-02)の開発が進行中(To C, et al. Cancer Discov. 2019;9:926-943.)。MET遺伝子増幅/変異に対してはクリゾチニブをはじめとしたc-MET阻害薬の併用やcabozantinibの有効性が少数ながら報告されている(Kang J, et al. J Thorac Oncol. 2018;13: e49-e53.)。HER2遺伝子増幅例に対しては前臨床でオシメルチニブとT-DM1の併用が有望とされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2017;36:174.)。その他BRAF阻害薬、AXL阻害薬、ベバシズマブ、Bcl-2阻害薬、mTORC阻害薬、CDK4/6阻害薬など多くの薬剤が検討中であるが、総じて臨床データは乏しい。最近ではTATTON試験においてc-MET阻害薬savolitinibやMEK阻害薬selumetinibとの併用が報告された。安全性は確認されたものの、対象が雑多なこともあり有効性について目立った成果は示せていない(Oxnard GR, et al. Ann Oncol. 2020 Jan 24. [Epub ahead of print])。特殊な治療として、本論文の末尾にはCRISPRを用いた‘molecular surgeon’についても紹介されていた(Tang H, et al. EMBO Mol Med. 2016;8:83-85.)。

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第14回 3種の薬局で地域を未病から守る女性社長【噂の狭研ラヂオ】

動画解説今回は大分県まえはら薬局の前原理佳社長にインタビュー。OTC専門、OTC&調剤薬局、門前薬局の種類の異なる3店舗の薬局を経営するに至ったこれまでの薬剤師人生を語っていただきます。未病から関わりたいというその熱い思いは「地域に恩返ししなさい」という母の家訓によるものだった!

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これだけは押さえておかないと話にならない調剤報酬改定のポイント【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第42回

2020年2月上旬に次回調剤報酬改定の個別項目の点数や割合が決まりました。対物業務から対人業務へのシフトという大きい動きがあったにもかかわらず、例年より短冊が出てからの展開が早かったような気がします。今回は、主に保険薬局に関する変更点について、変更前後を比較しながら紹介します。全体的には、中小規模のチェーン薬局に厳しい改定になるという気がしています。とくに、後述のように調剤基本料1を算定する薬局が減ることが予想できますが、その場合は地域支援体制加算でハードルの高い要件が求められるようになります。毎回算定する調剤料も7日目と14日目を中心に引き下げられ、しかも多くの患者さんは数種類の剤が処方されるため、ジワジワ苦しくなるかもしれません。今回の改定で点数が増えたのは主に対人業務に関する項目ですので、「調剤後のフォロー」に対する加算を確実に押さえていくことの重要性を感じます。そして、この流れは次回の改定でも継続・強化されそうですので、薬局や薬剤師の仕事がガラッと変わる予感がします。それでは詳しくみていきましょう。1.調剤基本料調剤基本料は、調剤基本料2(26点)や調剤基本料3(21点 ※同一グループの枚数による)の対象範囲が拡大となります。具体的には、調剤基本料2は処方箋受付回数が1,800回/月超、集中率95%超、調剤基本料3は同一グループで処方箋受付回数が3.5万回/月超となります。これに伴い、調剤基本料1(42点)の対象範囲は縮小することになるでしょう。中小規模のチェーン薬局を中心に、点数が下がる薬局のほうが多いと思われます。また、いわゆる施設内薬局が算定する特別調剤基本料が従来の11点から9点(処方箋受付1回につき)に引き下げられ、その施設基準の集中率も95%超から70%超に引き下げられます。2.地域支援体制加算地域支援体制加算は地域包括ケアを推進する中で、地域医療に貢献する薬局を評価するために2018年度の改定で新設されました。今回の改定では35点から38点に引き上げられます。変更前は、調剤基本料1さえ算定できていればほとんどの薬局が地域支援体制加算も算定できたことから、「地域医療に貢献した実績ではなく、立地と会社規模の評価」といわれていたとかいなかったとか。それが今回の改定で、地域医療への貢献に対する実績を求めるという本来の目的に立ち返るべく、以下のように変更になります。<調剤基本料1を算定している場合の地域支援体制加算の算定要件>多少、ハードルが上がりましたね。これだけは実績として最低限あってほしいというものがピックアップされたように思います。一方、上記で紹介したように、今回の改定によって調剤基本料1を算定できなくなる薬局が増えると予想されますが、その場合の算定要件は以下のように変更になります。<調剤基本料1を算定していない場合の地域支援体制加算の算定要件>地域特性で夜間の対応が難しい、麻薬指導管理加算の実績が少ないなどの意見から、算定要件9つのうち8つ以上を満たせばよいということになりました。多少現実味を帯びたかもしれませんが、全体的な難易度は変わらないと感じます。この要件は、国が示した目指すべき薬局像といえますので、次回以降の改定でも残る、もしくはもっとハードルが上がる可能性すらあると予想できます。今回調剤基本料1から外れた薬局も、諦めずにぜひ取り組んでほしいと思います。3.調剤料調剤料は、下表のように変更になります。7日目と14日目が引き下げになるって、うまいこと考えたな…と思ってしまいますが、その他の日数の調剤料についても全体的に数点引き下げられます。これは1剤ごとの点数なので、数種類の剤があればその分減算が増えることになります。調剤料の改定理由に「対物業務から対人業務への構造的な転換の観点から見直しを行う」とあり、調剤料は対物業務とされたために引き下げられたと解釈できます。4.かかりつけ薬剤師指導料かかりつけ薬剤師指導料は全体的に点数が上がります。かかりつけ薬剤師指導料は73点から76点、かかりつけ薬剤師包括管理料は281点から291点になります。こちらは施設基準として、患者さんとのやりとりが他者に聞こえないようにパーテーションなどで区切るといったプライバシー配慮要件が追加されました。5.薬剤服用歴管理指導料今回新設された、いわゆる「服薬後のフォロー」に対して算定できる加算です。がん領域、呼吸器領域、糖尿病領域、経管投与で薬学的な支援を行った場合に、それぞれ「薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2(100点、1ヵ月に1回まで)」「同 吸入薬指導加算、(30点、3ヵ月に1回まで)」「同 調剤後薬剤管理指導加算(30点、1ヵ月に1回まで)」「経管投薬支援料(100点、初回のみ)」が算定できるようになります。要件として地域支援体制加算を届け出ている薬局が対象であり、またこれらの指導を行った場合に医師などへの報告が必要です。個人的には、この薬剤服用歴管理指導料を算定する薬局が多くなり、次回の改定で算定の対象となる領域が広がってほしいなぁと思っています。6.後発医薬品関連後発医薬品の使用促進に関しては、後発医薬品の使用割合が低い場合の加算は引き下げられ、高い場合は引き上げられます。使用割合が高い薬局を評価しており、さらなる後発医薬品の使用促進を促すという意図が読み取れます。一方で、著しく後発医薬品の使用割合が低い薬局に対する減算規程は20%から40%に引き上げられます。医療機関でもこれらと同様の対応が実施され、一般名処方加算も引き上げられますので、医療機関での後発医薬品の使用促進も加速すると考えられます。2017年に閣議決定されたいわゆる「骨太の方針2017」で、2020年9月までに後発医薬品の使用割合を80%とするという目標が決まっていますが、現時点ではまだ達していません。その期限までにテコ入れできるのは今回の改定が最後ですので、個人的にはこの点数ではまだ弱いのではないかとソワソワしていますが、この最後の一押しでどうなるか見守りたいと思います。報酬改定は決められた期間で議論し結論を出すというものですので、議論には挙がったけれど変更までに至らなかった論点もあります。今回の場合、市販薬類似品の保険適用除外とフォーミュラリーがその代表格なのではないでしょうか。これらは次回までの宿題となるでしょう。この2年間で現場の薬局がどのような結果を出し、どのような議論がなされるのか、引き続き追っていきたいと思います。

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心原性ショックのAMI、軸流ポンプLVAD vs.IABP/JAMA

 2015~17年に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施した心原性ショックの急性心筋梗塞(AMI)患者において、軸流ポンプ左心補助人工心臓(LVAD)(Impellaデバイス)の使用は大動脈バルーンパンピング(IABP)と比較し、院内死亡および大出血合併症のリスクを増大することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSanket S. Dhruva氏らが、機械的循環補助(MCS)デバイスによる治療を受けた、心原性ショックを伴うAMIでPCIを実施した患者のアウトカムを検討した後ろ向きコホート研究の結果を報告した。AMIの心原性ショックは、その後の後遺症や死亡と関連する。軸流ポンプLVADはIABPより良好な血行動態補助を提供するが、臨床アウトカムについてはあまり知られていなかった。JAMA誌オンライン版2020年2月10日号掲載の報告。軸流ポンプLVAD(Impella)使用例とIABP使用例で院内死亡/大出血を比較 研究グループは、2015年10月1日~2017年12月31日に、米国NCDR(National Cardiovascular Data Registry)のCathPCIレジストリとChest Pain-MIレジストリのデータを用い、PCIを実施した心原性ショックを伴うAMI患者について解析した(最終追跡期間2017年12月31日)。 患者を軸流ポンプLVAD単独使用、IABP単独使用、およびその他(たとえば、経皮的体外設置型心室補助システム、体外式膜型人工肺の使用、またはMCS併用)に分類するとともに、人口統計、既往歴、症状、梗塞部位、冠動脈の解剖学および臨床検査データに関して軸流ポンプLVAD使用患者とIABP使用患者でマッチングした。 主要評価項目は、院内死亡と院内大出血であった。Impella使用例で院内死亡/大出血リスクが有意に増大 心原性ショックを伴うAMIでPCIを施行した患者は2万8,304例(平均[±SD]年齢65.0±12.6歳、男性67.0%、ST上昇型心筋梗塞81.3%、心停止43.3%)で、このうち軸流ポンプLVAD単独使用患者は6.2%、IABP単独使用患者は29.9%であった。 傾向スコアでマッチングした軸流ポンプLVAD群1,680例およびIABP群1,680例において、軸流ポンプLVAD群はIABP群より院内死亡リスクが有意に高く(45.0% vs.34.1%、絶対リスク差:10.9ポイント[95%信頼区間[CI]:7.6~14.2]、p<0.001)、院内大出血のリスクも有意に高い(31.3% vs.16.0%、15.4ポイント[12.5~18.2]、p<0.001)ことが認められた。この関連は、PCI開始前後で患者が機器を使用したタイミングにかかわらず一貫していた。 著者は、観察研究であり、残余交絡が存在するなど研究の限界を挙げたうえで、「心原性ショックのAMI患者に対する適切な医療機器の選択について理解を深めるため、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。

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新規抗体薬bimekizumabは乾癬性関節炎に有効か?/Lancet

 活動性乾癬性関節炎患者において、IL-17AおよびIL-17Fを選択的に阻害するモノクローナル抗体bimekizumabの16mgまたは160mg投与(320mg負荷投与あり/なし)は、プラセボと比較しACR50改善率が有意に高く、安全性プロファイルは良好であることが認められた。米国・ロチェスター大学のChristopher T. Ritchlin氏らが、多施設共同48週間の無作為化二重盲検プラセボ対照第IIb相用量範囲試験「BE ACTIVE試験」の結果を報告した。今回の結果を受け著者は、「乾癬性関節炎の治療として、bimekizumabの第III相試験の実施が支持される」とまとめている。Lancet誌2020年2月8日号掲載の報告。bimekizumabの4用量による用量範囲試験 BE ACTIVE試験は、チェコ、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ロシア、米国の41施設にて、6ヵ月以上症状を有する乾癬性関節炎の成人患者(18歳以上)を対象に行われた。 被験者を、プラセボ群、bimekizumab 16mg群、bimekizumab 160mg群、bimekizumab160mg+320mg 1回負荷投与群およびbimekizumab 320mg群に1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、4週ごとに12週間皮下投与した。12週後に、プラセボ群およびbimekizumab 16mg群の患者を再びbimekizumab 160mg群または320mg群のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付け、その他の患者には当初割り付けられたbimekizumab投与量を最長48週間投与した。 主要評価項目は、1回以上治験薬の投与を受けた患者における、12週時の米国リウマチ学会分類基準の50%以上改善に達した患者の割合(ACR50改善率)であった。bimekizumab 16mgおよび160mg投与は主要評価項目を達成 2016年10月27日~2018年7月16日に308例がスクリーニングを受け、206例が5群に無作為に割り付けられた(プラセボ群42例、4つのbimekizumab群各41例)。 12週時のACR50改善率は、プラセボ群と比較して、bimekizumab 16mg群(オッズ比[OR]:4.2、95%信頼区間[CI]:1.1~15.2、p=0.032)、bimekizumab 160mg群(8.1、2.3~28.7、p=0.0012)、bimekizumab 160mg+320mg負荷投与群(9.7、2.7~34.3、p=0.0004)で有意に高かった。 12週時における試験治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は、プラセボ群で42例中24例(57%)、bimekizumab群で164例中68例(41%)であり、そのほとんどは軽度~中等度であった。重篤なTEAEは9例の患者で確認され、そのうち8例がbimekizumabの投与を受けていた。死亡や炎症性腸疾患の報告は確認されなかった。

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第43回 ホットタオルなどで目を温めるとドライアイの症状が和らぎます【使える!服薬指導箋】

第43回 ホットタオルなどで目を温めるとドライアイの症状が和らぎます1)医療情報科学研究所(編集). メディックメディア. 『薬がみえるvol.2』p.3962)Sassa T, et al. FASEB J. 2018;32:2966-2978. [Epub 2018 Jan 17].3)Lemp MA, et al. Cornea. 2012;31:472-478.4)Sim HS, et al. Ophthalmol Ther. 2014;3:37-48. [Epub 2014 Aug 26].

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服薬負担を考慮した剤形・服用回数の変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第15回

 今回は患者さんの服薬負担を考慮した処方提案を紹介します。さまざまな薬の剤形や規格を把握している薬剤師だからこそ提案できる場面は多くあります。薬学的な判断を行いつつ、患者さんの想いも実現できるように寄り添いましょう。患者情報90歳、女性(施設入居)体  重:50kg基礎疾患:心房細動、閉塞性動脈硬化症、高血圧症、糖尿病、褥瘡既 往 歴:とくになし直近の血液検査:TG:151mg/dL処方内容1.ジゴキシン錠0.125mg 1錠 分1 朝食後2.エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 2錠 分1 朝食後4.アピキサバン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後5.トコフェロールニコチン酸エステルカプセル200mg 2カプセル 分2 朝夕食後6.ニコランジル錠5mg 3錠 分3 毎食後7.イコサペント酸エチルカプセル300mg 6カプセル 分2 朝夕食後8.ポラプレジンク口腔内崩壊錠75mg 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、以前より両下肢の冷感と違和感を自覚しており、定期訪問診療で閉塞性動脈硬化症による血流障害を指摘され、イコサペント酸エチル(以下EPA)が開始となりました。EPAには300mgの軟カプセル(直径約18mm)と、300mg/600mg/900mgの3規格の小さな粒状カプセル(直径約4mm)の分包包装があります。今回、軟カプセルが処方されたのは、いつもの定期薬と一包化することで服薬アドヒアランスに影響を与えることなく治療が可能と判断されたためです。処方提案と経過しかし、実は患者さんはこれ以上薬を増やすことが嫌で、大きい薬は服用が難しいということを話されていました。また、併用注意のアピキサバンを服用していることから、EPA1,800mg/日では出血に関わる副作用を助長する可能性があり、開始用量も慎重に検討したほうがいいと考えました。そこで、患者さんの想いに沿って、負担の少ない剤形と用法用量への変更を医師に提案することにしました。医師への疑義照会を電話で行い、アピキサバンの出血リスクからEPAは900mg/日に減量し、患者さんの心理的負担を軽減するために小さい粒状カプセルに変更して1日1回服用にまとめるのはどうか提案しました。その結果、出血リスクを懸念した医師に提案を承認してもらうことができました。現在、患者さんはEPA900mgを夕食後に1包服用しており、薬剤は増えたものの問題なく服薬を続けて症状は改善傾向にあります。

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オランザピン研究の最新レビュー

 多くのエビデンスによってオランザピンは、米国で発売されている抗精神病薬の中で、クロザピンを除き最も効果的な薬剤の1つであるといわれている。しかしオランザピンは、代謝関連の副作用(とくに体重増加)の問題が報告されている。誘発される体重増加をコントロールするための戦略を明らかにすることで、オランザピンの臨床的有用性を再評価できると考えられる。米国・コロンビア大学のAmir M. Meftah氏らは、2008年と2009年に行ったレビュー以降のオランザピンに関する最近のエビデンスをレビューし、統合失調症およびその他の疾患への使用、オランザピン20mg/日超の安全性について検討を行った。Postgraduate Medicine誌オンライン版2020年1月3日号の報告。 2008年~2019年7月までのオランザピンに関する英語文献をPubMedより検索した。最初の検索で見落とした可能性のある他のレポートについて、レビュー文献を調査した。研究の有効性、安全性のデータに基づき評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・オランザピンの使用は減少している可能性があるが、全体的には一般的に用いられている。・オランザピンは、有効性および体重増加や代謝関連の副作用の両方が報告され続けている。・最近の研究では、神経性食欲不振や化学療法誘発性悪心に対する治療にオランザピンが支持されている。・オランザピン20mg/日超の高用量に関するエビデンスは限られている。・食事のカウンセリングや運動などの非薬理学的介入は、抗精神病薬による体重増加への効果的な介入であると考えられる。・トピラマート、メトホルミン、オランザピンとsamidorphanの組み合わせも有用であると考えられる。 著者らは「オランザピンは、有用な抗精神病薬ではあるが、注意深くモニタリングする必要がある。オランザピンによる体重増加を緩和するための利用可能なさまざまなオプションを比較し、薬理学的治療と非薬理学的治療の相乗効果を評価するために、さらなる研究が必要とされる」としている。

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COVID-19疑い例の来院時、具体的手順は?

 日本国内で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が増えつつあり、大きな懸念の一つとされているのが院内での感染の疑いが出ていることだ。中国国内でも14日までに1,716人の医療従事者が感染し、6人の死亡が報告されている。 2月7日に行われた日本感染症学会・日本環境感染学会主催の緊急セミナー(司会は日本感染症学会理事長 館田 一博氏、日本環境感染学会理事長 吉田 正樹氏)において、菅原 えりさ氏(東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科感染制御学 教授)が「感染対策の再確認」と題し発表を行った。 菅原氏は「感染対策は基本の徹底が重要。だが、状況が刻々と変わる中で現場に応じた柔軟な対応も必要となるだろう」と説明。接触感染予防・飛沫感染予防を中心に、場合によっては空気感染予防が必要となり、その標準予防策は手指衛生と咳エチケットになる、という基本を確認した後、「疑い患者が来院した場合」を想定したシミュレーションを提示し、重要な以下のポイントを伝えた。外来診察時・帰国者、接触者を中心とした疑い患者と一般患者は受付から動線を分け、その旨を入口のポスターでしっかり注意喚起する。中国語・韓国語・英語表記も必要。・受付で症状を訴えた患者には、すぐにマスクを着用させる。・外来診察は個室を確保。窓があって換気のできる部屋がよい。・近距離で対応する医療者はPPE(個人用防護具)着用。PPEは着脱が難しいので事前にトレーニングを。とくに脱ぐときの感染防止が重要。・検体採取時にはN95マスク・アイシールドを着用。・診察後はしっかりと換気を行う。入院時・個室を確保。陰圧管理はできればベスト。・気管内装管などエアロゾルが発生する場合は、医療者は空気感染の可能性も踏まえたフルPPEを着用。・ICU管理の場合は、相当の負荷がかかる医療者へのケア(シフト等)も必要。環境衛生管理・院内の消毒。WHO(世界保健機関)推奨は通常の環境消毒薬、CDC(米国疾病管理予防センター)推奨はCOVID-19に効果のある消毒薬、となっているが、現状では院内で通常使っている消毒薬でよいだろう。その他・勤務先が「特定感染症指定医療機関」「第一種感染症指定医療機関」「第二種感染症指定医療機関」に当てはまる場合は、それぞれの役割を確認する(厚労省の指定医療機関一覧)。・厚労省や医師会の情報から「患者届け出基準」の最新動向を確認する。・院内モニタリング体制を確認する。・医療従事者の健康チェック体制を見直す。・面会ルールを見直す。・高齢者施設等を行き来する医療者がいる場合は、立ち入りルールを見直す。 菅原氏が理事を務める日本環境感染学会では、オリンピック・パラリンピック前の輸入感染症対策教育を目的としたDVDを制作しており、動画の一部を公開している。「COVID-19を想定したものではないが、感染対策の基本は共通なのでこれも参考にしてほしい」と述べた。

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12年ぶりの新規キノロン系経口抗菌薬「ラスビック錠75mg」【下平博士のDIノート】第43回

12年ぶりの新規キノロン系経口抗菌薬「ラスビック錠75mg」今回は、「ラスクフロキサシン塩酸塩錠」(商品名:ラスビック錠75mg、製造販売元:杏林製薬)を紹介します。本剤は、呼吸器と耳鼻咽喉科領域の感染症治療に特化し、低い血中濃度ながらも、口腔レンサ球菌や嫌気性菌に対して良好な活性を示します。<効能・効果>本剤は、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の2次感染、中耳炎、副鼻腔炎の適応で、2019年9月20日に承認され、2020年1月8日より発売されています。《適応菌種》本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、プレボテラ属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)<用法・用量>通常、成人にはラスクフロキサシンとして1回75mgを1日1回経口投与します。<副作用>感染症患者を対象とした国内臨床試験における安全性評価対象の531例中62例(11.7%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、下痢、好酸球数増加各7例(1.3%)、ALT上昇5例(0.9%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、白血球減少症(0.2%)、間質性肺炎(0.2%)、ショック、アナフィラキシー、QT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、低血糖、偽膜性大腸炎、アキレス腱炎・腱断裂などの腱障害、肝機能障害、横紋筋融解症、痙攣、錯乱・せん妄などの精神症状、重症筋無力症の悪化、大動脈瘤、大動脈解離(いずれも頻度不明)が注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、細菌の増殖を抑えることで感染症を治療します。2.腹部、胸部、背部の痛み、空咳、息切れ、息苦しさなどが続く場合は、すぐに受診してください。3.冷汗が出る、寒気、動悸、手足の震え、疲れやすいなど、いつもと異なる症状がみられた場合は、すぐに医師または薬剤師にご連絡ください。<Shimo's eyes>12年ぶりに新しいキノロン系経口抗菌薬が登場しました。本剤は、肺炎球菌への抗菌活性と肺への組織移行を強化したレスピラトリーキノロンであり、適応症は呼吸器と耳鼻咽喉科領域に特化しています。誤嚥性肺炎の原因菌として知られている嫌気性菌のプレボテラ属にも適応を有しています。投与方法は1日1回1錠とシンプルで、腎機能低下患者に対する用量制限もありません。初期のニューキノロン系抗菌薬は、DNAジャイレース阻害作用が主でしたが、本剤はDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼIVを同程度阻害するデュアルインヒビターであり、これらは殺菌作用の強さと耐性変異の起こしにくさを併せ持つといわれています。既存のニューキノロン系抗菌薬と同様に、重大な副作用であるQT延長、心室頻拍、低血糖、偽膜性大腸炎、アキレス腱炎、痙攣などには注意が必要です。とくに、本剤は世界に先駆けてわが国で承認されていますので、市販後の安全性情報の収集に注力しましょう。参考1)PMDA ラスビック錠75mg

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神経疾患は自殺死のリスクを高めるか/JAMA

 1980~2016年のデンマークでは、神経疾患の診断を受けた集団は、これを受けていない集団に比べ、自殺率が統計学的に有意に高いものの、その絶対リスクの差は小さいことが、同国Mental Health Centre CopenhagenのAnnette Erlangsen氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年2月4日号に掲載された。神経学的障害は自殺と関連することが示されているが、広範な神経学的障害全体の自殺リスクの評価は十分に行われていないという。約730万人で、神経疾患の有無別の自殺死を評価 研究グループは、神経疾患を有する集団は他の集団に比べ、自殺による死亡のリスクが高いかを検証し、経時的な関連性を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(デンマーク・Psychiatric Research Foundationの助成による)。 1980~2016年に、デンマークに居住していた15歳以上の730万395人を対象とした。1977~2016年に、頭部外傷、脳卒中、てんかん、多発ニューロパチー、筋神経接合部疾患、パーキンソン病、多発性硬化症、中枢神経系感染症、髄膜炎、脳炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、認知症、知的障害、その他の脳疾患で受診した124万8,252例のデータを用いた。 主要アウトカムは、1980~2016年の期間に発生した自殺死とした。Poisson回帰を用い、社会人口学的因子、併存疾患、精神医学的診断、自傷行為で補正した発生率比(IRR)を推算した。ALSとハンチントン病で自殺死率が最も高い 1億6,193万5,233人年の期間に、730万人以上の集団(男性49.1%)で3万5,483人(追跡期間中央値:23.6年、IQR:10.0~37.0、平均年齢:51.9[SD 17.9]歳)が自殺死した。 自殺死の77.4%が男性で、14.7%(5,141人)が神経疾患の診断を受けていた。自殺死の割合は、神経疾患群が10万人年当たり44.0、非神経疾患群は10万人年当たり20.1で、補正後IRRは1.8(95%信頼区間[CI]:1.7~1.8)であり、神経疾患群で有意に高かった。診断からの期間によって、補正後IRRには違いがみられ、診断後1~3ヵ月が3.1(95%CI:2.7~3.6)と最も高く、10年以降は1.5(1.4~1.6)であった。 自殺死の補正後IRRが最も大きい疾患は、ALS(補正後IRR:4.9、95%CI:3.5~6.9)およびハンチントン病(4.9、3.1~7.7)であった。多発性硬化症の補正後IRRは2.2(1.9~2.6)、頭部外傷は1.7(1.6~1.7)、脳卒中は1.3(1.2~1.3)、てんかんは1.7(1.6~1.8)だった。 非神経疾患群と比較して、認知症(補正後IRR:0.8、95%CI:0.7~0.9)、アルツハイマー病(0.2、0.2~0.3)、知的障害(0.6、0.5~0.8)は、自殺死の補正後IRRが低かったが、認知症では診断から1ヵ月以内の補正後IRRは3.0(1.9~4.6)と高い値を示した。 また、神経疾患群では、神経疾患による受診回数が増えるに従って自殺率が上昇した(受診回数1回の補正後IRR:1.7[95%CI:1.6~1.7]、2~3回:1.8[1.7~1.9]、4回以上:2.1[1.9~2.2]、p<0.001)。 神経疾患群の自殺死は、1980~99年の10万人年当たり78.6から、2000~16年には10万人年当たり27.3に減少し、同様に非神経疾患群では26.3から12.7に低下した。 他の死因による競合リスクを考慮すると、アルツハイマー病を除く神経疾患群は非神経疾患群に比し、診断から1~3ヵ月に自殺死の累積発生率(絶対リスク)が増加していた。神経疾患群における30年間の自殺死の絶対リスクは0.64%(95%CI:0.62~0.66)であり、そのうちハンチントン病は1.62%(1.04~2.52)、筋神経接合部/筋疾患は1.19%(1.11~1.27)だった。 著者は、「ALSとハンチントン病の自殺死リスクが最も高いが、より頻度の高い疾患である頭部外傷や脳卒中、てんかんでも高い値を示した。認知症の診断直後のリスク増加は、引き続き注目に値する」としている。

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「COVID-19、世界は収束の方向だが日本の状況を不安視」WHO進藤氏

 2月14日の第35回日本環境感染学会総会・学術集会では、冒頭の会長講演に代わり、「新型コロナウイルス感染症の対策を考える」と題した緊急セミナーが開催された。この中で、WHO(世界保健機関)のメディカルオフィサーとして危険感染症対策に当たる進藤 奈邦子氏が、これまでのWHOの取り組みと世界からの最新情報、そして日本への期待について語った。 冒頭、進藤氏は「現在、WHOは新型コロナウイルス(COVID-19)根絶を目指したオペレーションを展開中だ。中国では既に新たな症例数が減りつつあり、その他の国からの報告例も減っている。その中で唯一、新たな症例数が増えているのが日本だ」と懸念を示した。 これまでの中国の対策については、「SARS・鳥インフルエンザ流行を経験し、対策を積み重ねてきた結果、現在の中国の呼吸器感染症対策は世界トップレベル。今回も情報提供の速さや科学者のオープンネスに信頼を寄せている」と評価した。さらに、武漢を中心とした中国の最新情報として、中国CDCのサイトのデータを参照し、「疑い例も確定診断例も減少の方向にある。武漢に入っている医師からも『新たな病院も完成し、状況をコントロールできつつある』という報告をもらっている」と述べた。続けてCOVID-19の死亡率について、「最新のモデリングを使った計算によると、臨床症状のある人を母数として1%、確定診断の人を母数として4%を切りつつある」、ウイルスの感染しやすさを示す基本再生産数(R0)について、「これまでに発表された論文を総覧するとおおむね2以上となっており、インフルエンザよりは高そうだ。排菌は発症から3、4日後がピークではないかと見ている」と説明した。 日本の状況について、「世界中が収束に向かう中で、新規の感染者が出続けていることを不安視している。とくにクルーズ船の問題は世界の関心を集めている。患者の人権を守り、拡大を食い止める医療を行うことは前提として、臨床とアカデミアが協力し、得られた貴重なデータを世界に報告してほしい」と述べた。最後に、会場を埋めた医療者に向け、「ここで日本が感染を食い止められなければWHOはCOVID-19根絶を諦めねばならない。日本は2009/10年の新型インフルエンザ流行に最もうまく対応した国。今回もできるはずと信じている。専門家の皆さんに期待している」と激励した。 WHOサイトでは、世界から集まったCOVID-19の症例情報等を集約して毎朝9時にレポートを更新、関連する論文データベースを構築するなど、COVID-19の関連情報をまとめ、発信している。

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アレキサンダー病〔Alexander disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義最初の報告は1949年にAlexanderが記載した精神遅滞、難治性痙攣、および水頭症を認めた生後15ヵ月の乳児剖検例である。この症例の病理学的特徴は、大脳白質、上衣下および軟膜下のアストロサイト細胞質内に認められた多数のフィブリノイド変性で、後にこれはローゼンタル線維と同一であることが判明した。以後約50年間にわたりアレキサンダー病は「病理学的にアストロサイト細胞質にローゼンタル線維を認める乳児期発症の予後不良の進行性大脳白質疾患」と認識されてきた。しかし、2001年にBrennerらによりローゼンタル線維の構成成分の1つであるグリア線維性酸性タンパク(GFAP)をコードする遺伝子GFAPが病因遺伝子として報告されて以降、乳児期発症例とは臨床像がまったく異なる成人期発症で緩徐進行性の経過を示す症例が相次いで報告された。現在ではアレキサンダー病は「乳児期から成人期まで幅広い年齢層で発症するGFAP遺伝子変異による一次性アストロサイト疾患で、病理学的にはアストロサイト細胞質のローゼンタル線維を特徴的所見とする」と定義される。■ 疫学新生児期から70歳以上の高齢者まで幅広い年齢層で発症がみられる。わが国の有病者率は270万人あたり1人と推定される。しかし、未診断の症例や他の神経変性疾患(パーキンソン症候群や脊髄小脳変性症など)と診断されている症例が、少なからず存在すると思われる。臨床病型別頻度は、延髄・脊髄優位型が約半数と最も多く、大脳優位型が1/4強、中間型が1/4弱である(臨床病型については後述の「症状・分類」を参照)。わが国での全国調査によると延髄・脊髄優位型の約65%で常染色体優性遺伝形式を示唆する家族内発症がみられるが、遺伝学的あるいは病理学的検査により確定診断された家系の報告は非常に少なく、浸透率も不明である。一方、大脳優位型はほぼ全例がde novo変異である。■ 病因GFAP遺伝子変異による機能獲得性機序が考えられているが、病態には変異GFAPの発現量増加が重要と考えられている。これは、(1)ヒト野生型GFAPを過剰発現させたトランスジェニックマウスにおいてGFAP発現量に比例した寿命の短縮とローゼンタル線維の出現を認める、(2)変異GFAP遺伝子を単一コピーのみ導入したモデルマウスは臨床表現型を十分に示さない、という動物モデルの知見に基づく。ヒトのアレキサンダー病においてはGFAP遺伝子のmultiplicationの報告はなく、変異GFAPの量的変化に影響を与える遺伝的および環境因子の存在が示唆される。変異GFAPによるアストロサイトの機能障害としてプロテアソーム系の機能低下、ストレス経路への影響、異常なカルシウムシグナル変化、炎症性サイトカインの増加、グルタミン酸トランスポーターの発現低下と機能異常などが報告されている。もう1つの病理学的特徴である脱髄については、モデルマウスの研究からK緩衝系の異常によるミエリン形成や維持の障害が推測されているが詳細な機序は不明である。■ 症状・分類発症年齢により乳児型(2歳未満の発症)、若年型(2~12歳未満の発症)および成人型(12歳以上の発症)に分類されるが、近年、神経症状および画像所見に基づいた病型分類が提唱されており、本稿ではこの新しい病型分類を記載する。1)大脳優位型(1型)主に乳幼児期発症で、機能予後不良の重症例が多い。痙攣、大頭症、精神運動発達遅延が主な症状である。痙攣は難治性とされるが、コントロール良好で学童期ごろには軽減する症例も散見される。大頭症は乳児期に目立つ。経過とともに痙性麻痺、構音障害、発声障害、嚥下障害などの延髄・脊髄症状が顕在化する。新生児期発症例では水頭症、頭蓋内圧亢進、難治性痙攣を来し、生命予後は不良である。2)延髄・脊髄優位型(2型)四肢筋力低下、痙性麻痺、四肢・体幹失調、構音障害、発声障害、嚥下障害、自律神経障害(起立性低血圧、膀胱直腸障害、睡眠時無呼吸)といった延髄・脊髄症状が、種々の組み合わせで認められる。筋力低下にはしばしば左右差が認められる。上記以外の症候として約20%に筋強剛、約15%に口蓋振戦を認める(自施設解析データ)。大頭症、精神運動発達遅延は通常認めない。前頭側頭型認知症に類似した認知症を呈する症例もある。一過性の「反復性嘔吐」が唯一の症状で、MRIにて両側延髄背側に結節状病変を示す小児の報告がある。3)中間型(3型)発症時期は幼児期から成人期まで幅広い。大脳優位型および延髄・脊髄優位型の両者の特徴を有する。大脳優位型の長期生存例、および精神運動発達遅延を伴う延髄脊髄優位型のパターンが含まれる。精神運動発達遅延については、初診時まで医療機関で評価されず、小学生時に学力低下により支援学級に編入したなどの経歴をもつ症例がある。また、熱性痙攣やてんかんの既往歴をもつ症例も少なからず存在する。複視や側彎などの脊柱異常を伴うことも多い。■ 予後大脳優位型の生命予後は約14年と報告されている。新生児期発症例は、生後数週~数ヵ月で死亡することが多い。難治性痙攣や栄養障害、感染症などのため学童期までに死亡する症例が多いが、一方で学童期までに痙攣などが消失するなど、大脳症状が安定化する症例も少なからず認められる。このような症例は、学童期以降に歩行障害や嚥下障害などの延髄・脊髄症状が緩徐に進行して中間型に移行する。延髄・脊髄優位型の生命予後は、約25年と大脳優位型と比較すると良好だが、無症候あるいは非常に軽微な異常にとどまる症例から運動麻痺・球症状・呼吸症状が急激に増悪する症例まで症例差が大きい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)頭部および脊髄MRI検査による特徴的な所見がアレキサンダー病を疑う手がかりとなる。確定診断は遺伝子検査および病理学的検査による。近年は、遺伝子検査にて確定診断が行われる傾向にあるが、新規変異や非典型例では慎重な判定が必要となる。■ MRI検査1)大脳優位型前頭部優位の広範な大脳白質異常が特徴的である。その他、脳室周囲の縁取り(T2強調画像で低信号、T1強調画像で高信号を示す)、基底核と視床の異常、脳幹の異常(特に中脳と延髄)、造影効果がみられうる。2)延髄・脊髄優位型延髄・頸髄の萎縮・異常信号が特徴的である。典型的には橋が保たれた延髄・上位頸髄の著明な萎縮が認められ、その形状はオタマジャクシ様の特徴的な所見を示す(tadpole appearance)。高齢者や軽症例では延髄・頸髄の萎縮が目立たないことがあるが、このような症例では延髄錐体の異常信号と延髄外側および最後野付近の萎縮を伴い、水平断にて延髄にメダマチョウの眼状紋様の所見がみられる(eye spot sign)。大脳・中脳・橋の錘体路の異常信号は通常認めない。10代前半から20歳代の若年例では延髄の結節・腫瘤様異常がみられることが多い。その他、小脳歯状核門の信号異常やFLAIR像にて中脳の縁取り(midbrain periventricular rim)も高率にみられる所見である。大脳MRIではT2強調画像にて“periventricular garland”と表現される側脳室壁に沿った花弁状の高信号が認められる。この病変は造影効果を示すこともあり、この部分にはローゼンタル線維が多いとされる。3)中間型大脳優位型と延髄脊髄優位型の両者の特徴をもつ型と定義した通り、比較的広範な大脳白質病変と延髄・頸髄の萎縮・異常信号を認める。成人症例では大脳白質病変は嚢胞化を伴う傾向があり、延髄・頸髄の萎縮は高度である。■ 遺伝子検査これまで100種類以上のGFAP遺伝子変異が報告されている。大多数がミスセンス変異であるが、インフレーム挿入/欠失変異、終止コドン近傍のフレームシフト変異およびスプライス変異の報告もある。CpGが関与するR79、R88、R239、R416が置換される変異は、人種を越えて認められる。前3者が置換される変異は、大脳優位型および中間型に認められ、R416が置換される変異はすべての型で報告されている。一方、延髄・脊髄優位型において頻度の高い変異は特に存在しない。■ 病理学的検査大脳白質、上衣下および軟膜下のアストロサイト細胞質内に特徴的なローゼンタル線維を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現時点では対症療法にとどまる。痙攣に対する抗てんかん薬の投与、栄養管理、併発する感染症に対する抗菌薬の投与、学習障害や認知機能障害に対する療育・ケアが行われる。痙性麻痺に対して抗痙縮薬や抗てんかん薬の投与が使用されることがある。4 今後の展望変異GFAP発現抑制を治療標的としたアンチセンス核酸とドラッグリポジショニングに関する動物実験レベルの報告がある。アンチセンス核酸を投与したモデルマウスの報告では安全性、髄液中のGFAP蛋白量の劇的な減少、ローゼンタル線維の消失が確認されている。近年、核酸医薬の技術発展は目覚ましく、神経難病領域においても脊髄性筋萎縮症では実用化されている現状を鑑みると、本症に対する治療開発も期待される。一方、ドラッグリポジショニングの候補薬剤としてセフトリアキソン、クルクミン、リチウムが報告されているが、いずれも現時点では臨床応用には至っていない。5 主たる診療科小児科(小児神経科)、脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 「遺伝性白質疾患・知的障害をきたす疾患の診断・治療・研究システム構築」班 ホームページ(診断基準や典型的な画像所見なども掲載)難病情報センター アレキサンダー病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Alexander WS. Brain. 1949;72:373-381.2)Brenner M, et al. Nat Genet. 2001;27:117-120.3)Yoshida T, et al. J Neurol. 2011;258:1998-2008.4)Prust M, et al. Neurology. 2011;77:1287-1294.5)Messing A, et al. Am J Pathol. 1998;152:391-398.6)Hagemann TL, et al. Ann Neurol. 2018;83:27-39.公開履歴初回2020年02月17日

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ASCO- GI 2020レポート 消化器がん

インデックスページへ戻るレポーター紹介今回、2020年1月23日~25日に米国・サンフランシスコにおいて開催されたASCO GI 2020に参加し、すでに現地速報という形で注目演題を報告させていただいているが、音声などが乱れたこともあり、補足とともにそこで取り上げることができなかった演題を報告させていただきます。DAY1 Cancers of the Esophagus and StomachOral SessionRESONANCE試験:The Randomized, Multicenter, Controlled Evaluation of S-1 and Oxaliplatin (SOX) as Neoadjuvant Chemotherapy for Chinese Advanced Gastric Cancer Patients.(abstract #280)Chen L, et al.中国から発表された局所進行胃がんに対する術前S-1/オキサリプラチン併用療法(SOX)の有効性に関する無作為化第III相試験である。本試験はStageII/IIIの切除可能胃がんおよび接合部がんを対象とし、手術+術後SOX療法(AC群:adjuvant group)に対する術前SOX療法+手術+術後補助化学療法(NC群:Neoadjuvant group)の優越性を検証した。AC群は術後補助化学療法としてSOX療法を8サイクル施行し、一方NC群は術前SOX療法を2~4サイクル施行後に手術を行い、術後SOX療法は術前投与を含め計8サイクル施行する。SOX療法は共にS-1(80~120mg/day、day1~14、3週ごと)およびオキサリプラチン(130mg/m2、day1、3週ごと)である。主要評価項目は3年間の無病生存割合(3y-DFS)であった。772例が登録され、各群に386例が割り付けられた。両群間の患者背景に偏りはなく、cT3はNC群:AC群=64%:66%、cT4はNC群:AC群=12%:13%であり、cStageIIはNC群:AC群=39%:42%、cStageIIIはNC群:AC群=61%:58%であった。NC群において術前SOX療法は91.9%において投与完遂し、術後補助化学療法を含め8サイクル投与が53.2%において完遂可能であったのに比し、AC群における8サイクル投与完遂率は47.7%であった。R0切除率はNC群においてAC群よりも有意に良好であり(94.8% vs.83.8%)、NC群では46.4%にダウンステージングを認め、術後病理学的完全奏効(pCR)を23.6%に認めた。コメント中国で実施された局所進行胃がんに対する術前SOX療法の有効性を検証した第III相試験の第1報である。主要評価項目である3y-DFSの結果はいまだ不明であるが、術前SOX療法を施行することによりR0切除率の向上とダウンステージングが示唆された。ただし、抄録とR0切除率や治療奏効割合(pRR)の結果が異なるなどいくつか気になる点があり、評価には最終的な報告を待つ必要があると考える。POSTER SessionAPOLLO-11試験:Feasibility and pathological response of TAS-118 + oxaliplatin as perioperative chemotherapy for patients with locally advanced gastric cancer(abstract #351)Takahari D, et al.進行胃がんに対するTAS-118(S-1+ロイコボリン)とオキサリプラチンの併用療法(TAS-118/L-OHP)は、2019世界消化器がん会議(WCGC)においてS-1/CDDP併用療法との比較第III相試験(SOLAR試験)として公表されているが、今回、局所進行胃がん症例に対する周術期化学療法での忍容性を検討する単群第II相試験であるAPOLLO-11試験(UMIN000024688)の第1報が報告された。本試験はリンパ節転移を伴うcT3-4局所進行胃がんを対象とし、術前治療としてTAS-118(80~120mg/日、day1~7、2週ごと)およびL-OHP(85mg/m2、day1、2週ごと)併用療法を4コース施行後、胃切除+D2郭清が実施され、術後補助化学療法としてTAS-118単剤x12コース(Step1)もしくはTAS-118/L-OHP併用療法x8コース(Step2)が行われた。主要評価項目は(1)術前TAS-118/L-OHP併用療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性と(2)術後補助化学療法の忍容性であり、今回の報告では(1)術前TAS-118/L-OHP併用療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性結果が報告された。45例が登録され、術前TAS-118/L-OHP併用療法4コースが完遂されたのが40例(89%)であり、最終的に43例(96%)において外科的切除が完遂可能であった。患者背景は年齢中央値=64歳、男性=82%、胃原発/接合部がん=89%/11%、腸型/びまん型=69%/31%、cT3/4a=29%/71%、cN1/2/3=56%/38%/7%、臨床病期IIB/IIIA/IIIB/IIIC=24%/36%/33%/7%であった。術前化学療法における各薬剤の相対薬物濃度(RDI)中央値はTAS-118=91.7%、L-OHP=100.0%であった。術前TAS-118/L-OHP併用療法におけるGrade3以上の有害事象として、下痢(17.8%)、好中球減少症(8.9%)、食欲不振(4.4%)、口腔粘膜炎(4.4%)、白血球減少症(2.2%)、悪心(2.2%)、倦怠感(2.2%)を認めた。R0切除率は95.6%(90%CI:86.7~99.2%)であった。術後標本による病理学的治療効果(Grade1b-3)を62.2%(90%CI:48.9~74.3%)に認め、うち病理学的完全奏効割合(pCR)は13.3%であり、ダウンステージが68.9%(90%CI:55.7~80.1%)の症例において得られた。コメント局所進行胃がんに対する術前TAS-118/L-OHP併用療法に関する初めての報告であり、術前化学療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性が確認された。今後、術後補助化学療法パートの忍容性結果が報告予定であり、長期予後と合わせてその結果が期待される。EPOC1706試験:An open label phase 2 study of lenvatinib plus pembrolizumab in patients with advanced gastric cancer(abstract #374)Kawazoe A, et al.KN-061試験(胃がん2次治療)やKN-062試験(胃がん1次治療)の結果よりPD-L1陽性胃がんに対するペムブロリズマブ単剤療法の奏効割合は約15%と報告されている。一方、マルチキナーゼ阻害薬であるレンバチニブは腫瘍関連マクロファージを減少させ、CD8陽性T細胞の浸潤を増強することによる抗PD-1抗体の抗腫瘍効果増強が報告されており、進行胃がんに対するレンバチニブ/ペムブロリズマブ併用療法の単群第II相試験であるEPOC1706試験(NCT03609359)の結果が報告された。本試験は進行胃がんを対象とし、レンバチニブ(20mg/日内服)とペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)の併用療法を病勢進行や毒性などの理由による治療中止まで継続するスケジュールで実施された。主要評価項目は担当医判定による全奏効割合(ORR)である。29例が登録され、患者背景は年齢中央値=70歳、男性=90%、腸型/びまん型=52/48%、初回治療/2次治療=48/52%、HER2陽性=17%、dMMR/pMMR=7/93%、EBV陽性=3%、PD-L1 CPS≧1/<1=66/34%であった。腫瘍縮小効果は非常に良好であり、主要評価項目である担当医判定によるORRはCR1例を含む69%(95%CI:48~85%)、病勢制御割合(DCR)は100%(95%CI:88~100%)であった。無増悪生存期間中央値は7.1ヵ月(95%CI:4.2~10.0)、生存期間中央値には至っていなかった。レンバチニブによる有害事象としてGrade3以上の高血圧(38%)、蛋白尿(17%)を認め、ほとんどの症例においてレンバチニブの1段階以上の減量が必要であったが、減量により毒性はマネジメント可能であった。コメント進行胃がんに対する、非常に切れ味良好な腫瘍縮小効果を認める新規併用療法である一方、immatureではあるがその効果の継続が治療継続期間中央値6.9ヵ月(範囲:2.8~12.0)、PFS 7.1ヵ月と限られており、今後の追加報告が期待される。ATTRACTION-2試験 3年フォローアップ:A phase 3 Study of Nivolumab in Previously Treated Advanced Gastric or Gastric Esophageal Junction Cancer(abstract #383)Chen LT, et al.2レジメン以上の化学療法に対して不応の切除不能進行再発胃がん・接合部がんを対象にニボルマブの有効性をプラセボ比較で検証した第III相試験であるATTRACTION-2試験の3年追跡結果報告である。2017年のLancet誌報告時のニボルマブ投与群の生存期間中央値(mOS)は5.26ヵ月、1年生存割合(1y-OS)は26%であり、2018年のESMOで発表された2年追跡結果における2y-OSは10.6%、2年無増悪生存割合(2y-PFS)は3.8%であった。今回新たに1年間の追加観察期間を設けた報告において、ニボルマブ群の3y-OSは5.6%、3y-PFSは2.4%であった。ニボルマブ群の15例とプラセボ群の3例が3年以上の長期生存を認めており、プラセボ群の3例のうち2例は病勢進行後にニボルマブによる加療を受けていた。ニボルマブ群のうち、最良効果(BOR:best overall response)がCRもしくはPRであった32例(9.7%)の生存期間中央値は26.88ヵ月であり、1y-OSは87.1%、2y-OSは61.3%、3y-OSは35.5%であった。BORがSDであった76例(23%)の生存期間中央値は8.87ヵ月であり、1y-OSは36.1%、2y-OSは7.4%、3y-OSは3.0%であった。ニボルマブ群のうち55.5%の症例において免疫関連の有害事象を認め、これら免疫関連有害事象を認めた症例のmOSは7.95ヵ月であり、認めなかった症例のmOSは3.81ヵ月であった(HR=0.49)。コメント今回、3年の観察期間を設けた報告によりニボルマブ投与によって3年以上の長期生存を得られる症例が5%程度いることが示唆され、またBORがCRもしくはPRとなりえる約10%程度の症例においては、約3分の1において3年以上の生存が得られる可能性が示唆された。毒性に関して、ほとんどの場合、既報のごとくニボルマブによる治療開始後3ヵ月以内に発生していたが、なかには治療開始後2年以上の経過の後に免疫関連有害事象として肺障害や腎障害が出現したケースも認め、ニボルマブ投与に当たってはその投与終了後にも免疫関連有害事象の出現に関して引き続き注意が必要であることが示唆された。MSI status in > 18,000 Japanese pts:Nationwide large-scale investigation of microsatellite instability status in more than 18,000 patients with various advanced solid cancers.(abstract #803)Akagi K, et al.本邦におけるMSI-Hの頻度に関して、2018年12月~2019年11月の1年間にMSI検査キット(FALCO)による解析が実施された2万5,789例を対象に検討。2万5,563例(99.1%)で解析可能であり、うち959例(3.75%)がMSI-Hであった。MSI-Hは10~20代の若年者(7.43%)および80代以上の超高齢者(5.77%)において認める傾向が強く、また既報のごとく早期病期(StageI~III)に比べ進行期(StageIV)においてその頻度は少なかった(StageI~III:StageIV=6.02%:3.05%)。がん種別のMSI-Hの頻度は子宮体がん(17.00%)、小腸がん(9.23%)、胃がん(6.73%)、十二指腸がん(5.79%)、大腸がん(3.83%)、NET/NEC(3.60%)、前立腺がん(3.04%)、胆管がん(2.26%)、胆嚢がん(1.55%)、肝がん(1.15%)、食道がん(1.00%)、膵がん(0.74%)であった。コメントMSI-H腫瘍に関して、既報と照らし合わせても最も多くの対象で検討した非常に貴重な報告であり、日本人MSI-H腫瘍の状況を反映していると考える。DAY2 Cancers of the Pancreas, Small Bowel, and Hepatobiliary TractOral SessionPROs from IMbrave150試験:Patient-reported Outcomes From the Phase 3 IMbrave150 Trial of Atezolizumab + Bevacizumab Versus Sorafenib as First-line Treatment for Patients With Unresectable Hepatocellular Carcinoma.(abstract #476)Galle PR, et al.切除不能肝細胞がんの1次治療例を対象に、標準治療であるソラフェニブに対するアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)/ベバシズマブ(抗VEGF抗体)併用療法の優越性がESMO-Asia 2019において報告されており、主要評価項目である生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の両エンドポイントにおいてアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法が有意に良好であった(OS-HR:0.58、p=0.0006、PFS-HR:0.59、p<0.0001)。今回、副次評価項目である患者報告(PRO:patient-reported outcomes)によるQOL評価、身体機能評価、症状評価(疲労感、疼痛、食欲低下、下痢、黄疸)の結果が発表された。評価はEORTC QLQ-C30およびQLQ-HCC18により行われ、治療中は3週ごとに、治療中止後は3ヵ月ごとに1年間実施された。92%以上の症例においてアンケートが回収可能であり、QOL、身体機能、症状の悪化までの期間(TTD:time to deterioration)はいずれもアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法においてソラフェニブより良好であった。コメント切除不能肝細胞がんに対する1次化学療法において、新たな標準療法であるアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法のソラフェニブに対する有効性および安全性が報告された。本邦においても早期の臨床導入に期待したい。Poster SessionStudy117:A Phase 1b Study of Lenvatinib Plus Nivolumab in Patients With Unresectable Hepatocellular Carcinoma(abstract #513)Kudo M, et al.切除不能肝臓がんに対する標準治療の一つであるレンバチニブと、ソラフェニブ治療後の治療選択肢であるニボルマブの併用療法の至適投与量を検討した第Ib相試験である。本試験はBCLC(Barcelona Clinic Liver Cancer) Stage B(肝動脈化学塞栓療法が不応)またはStage C、Child-Pugh分類Aの切除不能肝臓がん症例を対象に、レンバチニブ(12mgもしくは8mg/day)+ニボルマブ(240mg、2週ごと)併用療法を投与した。本試験はPart1とPart2で構成され、Part1では用量制限毒性(DLT:dose-limiting toxicities)を評価目的に6例登録し、Part2はexpansion cohortとして全身化学療法歴のない切除不能肝臓がん患者が24例登録された。主要評価項目は忍容性および併用療法の安全性である。患者背景は年齢中央値=70歳、男性=80%、BCLC Stage B/C=57%/43%、Child-Pugh 5/6=77%/23%、B型肝炎/C型肝炎/アルコール性/不明/その他=20%/20%/30%/23%/6.7%、肝外病変あり/なし=43%/57%である。レンバチニブによる毒性中止を2例(6.7%)に認め、ニボルマブによる毒性中止を4例(13.3%)に認めた。頻度の高い有害事象として手足症候群(60%)、発声障害(53%)、食欲低下(47%)、下痢(47%)、蛋白尿(40%)を認めたが、Grade3以上の有害事象は手足症候群(3.3%)、発声障害(3.3%)、食欲低下(3.3%)、下痢(3.3%)、蛋白尿(6.7%)であった。担当医評価による腫瘍縮小割合(ORR)は76.7%であり、Part2登録例における腫瘍縮小が得られるまでの期間は1.87ヵ月であり、無増悪生存期間(PFS)中央値は7.39ヵ月であった。コメント切除不能肝臓がんの治療に関して、マルチキナーゼ阻害薬(レゴラフェニブ、レンバチニブ)と免疫check point阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)の併用療法が検討されており、本学会においてもほかにレゴラフェニブ/ペムブロリズマブ併用療法に関する発表があった(#564)。その中でもレンバチニブ/ペムブロリズマブ併用療法に関しては、AACR2019で発表された第Ib相試験であるKEYNOTE-524/Study 116試験(#CT061/18)の中間解析結果に基づき、切除不能肝臓がんの1次治療としてFDAよりBreakthrough Therapy指定を受けており、今後の追加報告が期待される。PACS-1 study:A Multicenter Clinical Randomized Phase II Study of Investigating Duration of Adjuvant Chemotherapy with S-1 (6 versus 12 months) for Patients with Resected Pancreatic Cancer. (abstract #669)Yamashita Y, et al.本邦における膵がん術後補助化学療法としてのS-1至適投与期間を検討した無作為化第II相試験。本試験は膵がん切除後例(T1-4、N0-1、M0)を対象とし、術後補助化学療法としてS-1内服を半年間投与する群と1年間投与する群に1:1の割合で割り付けされた。主要評価項目は2年間の生存割合(2y-OS)である。両群間の患者背景に偏りはなかった。術後S-1半年投与群は64.7%において治療完遂が可能であったが、1年間投与群においては44.0%が完遂可能であった。生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)において、統計学的有意差はないものの術後S-1投与期間は半年間群のほうが1年間群より良好な傾向であった。(2年OS:半年間群 vs.1年間=71% vs.65% [HR=1.239、 p=0.3776 ])、( 2年DFS:半年間群 vs.1年間=57% vs.51%[HR=1.182、p=0.3952]) コメント膵がん術後補助化学療法としてのS-1至適投与期間は6ヵ月と考える。DAY3 Cancers of the Colon, Rectum, and AnusOral SessionJCOG1007(iPACS):A randomized phase III trial comparing primary tumor resection plus chemotherapy with chemotherapy alone in incurable stage IV colorectal cancer:JCOG1007 study(abstract #7)Kanemitsu Y, et al.切除不能StageIV大腸がんのうち無症状症例に対して、原発切除を化学療法に先行して行うことの優越性を検証した無作為化第III相試験である。本試験は腫瘍による狭窄などの症状を有さず、待機手術としての原発切除を予定できる治癒切除不能のStageIV大腸がん初回治療例を対象とし、標準治療であるA群:オキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)+ベバシズマブ併用療法群とB群:原発切除後にオキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)+ベバシズマブ併用療法を受ける群に無作為割り付けされた。主要評価項目は全生存期間である。当初770例を目標に試験が開始されたが、症例登録が伸びなかったために統計設定が見直され280例を登録目標とされたが、160例登録時の初回中間解析の結果、試験群であるB群の生存曲線が対照群であるA群を下回っていたため途中中止となり今回結果が発表された。両群間の患者背景に偏りはなかった。主要評価項目である全生存期間においてA群:B群=26.7ヵ月:25.9ヵ月(HR=1.10、one-sided p=0.69)であり、B群の優越性は認めなかった。副次評価項目であるPFSはA群:B群=12.1ヵ月:10.4ヵ月(HR=1.08)であり、原発切除先行群(B群)において術後死亡例を3例(4%)に認めた。コメント今回の結果より、腫瘍随伴症状を有さないStageIV大腸がんに対して、一律に原発切除を化学療法に先行して行うことは推奨されず、同症例に対しては化学療法の先行を検討すべきと考える。同様の対象に対して、欧州において無作為化比較試験(SYNCHRONOUS試験-ISRCTN30964555、CAIRO4試験)が進行中であり、今後これらの報告にも注意が必要と考える。BEACON CRC QoL:Encorafenib plus cetuximab with or without binimetinib for BRAF V600E-mutant metastatic colorectal cancer:Quality-of-life results from a randomized, three-arm, phase III study versus the choice of either irinotecan or FOLFIRI plus cetuximab(abstract #8)Kopetz S, et al.治療歴を有するBRAF V600E遺伝子変異陽性進行再発大腸がん例に対する治療としてMEK阻害薬であるビニメチニブ、BRAF阻害薬であるエンコラフェニブおよび抗EGFR抗体であるセツキシマブの3剤併用療法と、エンコラフェニブとセツキシマブの2剤併用療法、セツキシマブと化学療法の併用(対照群)を比較する第III相試験であるBEACON CRC試験における患者報告によるQOL評価と最新の生存データが発表された。本試験の結果はすでに2019年9月にNEJM誌において報告されており、全生存期間の中央値は対照群で5.4ヵ月、3剤併用群で9.0ヵ月(HR=0.52、pレポーター紹介インデックスページへ戻る

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