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離島に代診で行ってみた その2【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第20回

前回から引き続き、代診のお手伝いに行ってきた甑(こしき)島のお話をしたいと思います。心臓外科も空手も関係ない世界のお話ではありますが…。2020年も大きな台風がたくさん発生しましたが、幸い本州を直撃したものはありませんでした。しかし、中でも最大級だった台風10号は、狙いすました様に九州西側に位置する甑島を直撃しました。ちょうど甑島へ行く1週間前のことだったので、「まさか診療所、吹っ飛んだりしていないよな…?」と不安になったりもしました。実際に島に着いて散策をしていると、写真のように痛々しい傷跡があちこちに認められ、台風の威力を物語っていました。直接的な人的被害はほとんどなかったそうですが…何ぶん高齢化の進んでいる地域ですので、住民たちが自力で補修作業に当たらなければならないことも多くあります。その結果、腰痛が発生したり、屋根から落っこちたり…副次的な影響が沢山出てきていました。では、すっかり島は落ち込んだ空気かと言うと、そういうことはなかったです。台風直後のとある土曜日に、集落にある小学校で運動会が開かれました。小学生だけだと人数が少ないので、中学生と合同で行われていました。と言いますか、それでも人数が足りていないので、何かしらのチームを作って、大人も参加したりします。お婆さんが大漁旗を振って応援していたり、予想外の盛り上がりをみせていました。診療所からも、地域研修で島に来ていた研修医を中心としたチームで出場しました。平均年齢は若かったのですが、4チームで走って2位と、残念な結果に終わりました。その後、夜は(一人で)焼肉屋に行ったのですが、周りは運動会後の反省会をしている家族ばかりでした。「何で、あそこで諦めたんだ!」とか、「お前、勉強もできないのに運動でも負けてどうすんだ!」とか、あちらこちらから辛辣な言葉が飛び交っていましたが、まあ子供たちは適当に親の言うことを聞き流している様子だったので、問題ないんだろうな~と思いました。台風の傷痕が完全に癒えるには、まだまだ時間が必要だと思うのですが、悲観的な空気を感じることはほとんどありませんでした。今後も大きな事故が起きることなく、元の状態に戻っていけるように祈っております。

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尿失禁への骨盤底筋トレーニング、筋電図バイオフィードバック併用は?/BMJ

 緊張性・混合性尿失禁の女性に対する、骨盤底筋トレーニング(PFMT)への筋電図バイオフィードバックの併用は、24ヵ月後の尿失禁重症度の改善に対し効果が認められるというエビデンスはないことが示された。英国・Glasgow Caledonian UniversityのSuzanne Hagen氏らが、600例を対象に行った並行群間比較無作為化試験の結果明らかにしたもので、BMJ誌2020年10月14日号で発表した。これまでにコクランレビューでは併用の有益性が示される一方、メタ解析では有益性は認められないとの結果が示され、その後の2件の小規模単施設試験では治療直後の評価では有益性が認められるなどの報告が寄せられていた。今回の大規模試験の結果を踏まえて著者は、「PFMTへの筋電図バイオフィードバックのルーチンの実施は推奨すべきではない。PFMTの効果を最大化する他の方法を検討すべきだ」とまとめている。自宅でもPFMTと筋電図バイオフィードバックを使用 研究グループは2014年2月~2016年7月に、緊張性または混合性尿失禁を新たに発症した、18歳以上の女性600例を対象に試験を行った。 被験者を2群(各群300例)に分け、一方にはPFMT+筋電図バイオフィードバックを(筋電図バイオフィードバック群)、もう一方にはPFMTのみ(対照群)を行った。 両群ともに、16週間で6回の失禁療法士(continence therapist)との対面療法を行った。筋電図バイオフィードバック群には、指導管理を伴うPFMTと自宅で行うPFMTに加え、筋電図バイオフィードバックを診察時と自宅で行った。対照群では、指導管理PFMTと自宅PFMTのみを行った。PFMTプログラムは、診察を重ねながら進行した。 主要アウトカムは、24ヵ月後の自己申告による尿失禁重症度で、国際尿失禁評価質問票簡易版「ICIQ-UI SF」(0~21)で評価した。副次アウトカムは、完治または改善、その他の骨盤底筋症状、質調整生存年などだった。24ヵ月後の重症度、両群で同等 24ヵ月後のICIQ-UI SFスコア平均値は、筋電図バイオフィードバック群8.2、対照群8.5で有意差はみられなかった(平均群間差:-0.09、95%信頼区間[CI]:-0.92~0.75、p=0.84)。 筋電図バイオフィードバック群は、介入費用(平均群間差:121ポンド[154ドル、133ユーロ]、95%CI:-409~651、p=0.64)、質調整生存年(-0.04、-0.12~0.04、p=0.28)のいずれも両群で同等だった。 48例が有害事象を報告。そのうち23例が治療に関連したもしくは関連していた可能性があるものだった。(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)専門家はこう見る:CLEAR!ジャーナル四天王筋電図バイオフィードバックは女性尿失禁に対する骨盤底筋訓練に有効なのか?:多施設共同研究(解説:宮嶋 哲 氏)-1313 コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏東海大学医学部外科学系泌尿器科学 主任教授

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COVID-19拡大下、2型糖尿病血糖コントロールの実態/日本糖尿病学会

 10月5日(月)~16日(金)、Web開催された第63回日本糖尿病学会年次学術集会の緊急特別シンポジウム 「COVID-19~我が国の現状と糖尿病診療との関わり~」において、山﨑 真裕氏(京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学)が「COVID-19感染拡大下における糖尿病診療」と題して、外来における糖尿病患者の行動の変化、入院における糖尿病を持つCOVID-19患者の治療について講演した。COVID-19による2型糖尿病患者のストレス、生活習慣への影響を明らかに 糖尿病患者のストレスや血糖コントロールの悪化は、これまでの台風や地震などの災害時にも報告されてきた。同様にCOVID-19蔓延も糖尿病患者のストレスの要因であり、血糖コントロールや行動への影響が報告されている。 今回、山﨑氏らは2型糖尿病患者の生活習慣の変化を調査するため、自施設にてアンケート調査を実施。対象者は2020年4月16日~5月1日に来院予定であった564例で、電話診療を行った患者や来院しなかった患者などを除外し、最終的に203例(平均年齢67.4歳[男性:126例、女性:77例]、平均糖尿病歴は14.4年、経口薬の使用は170例、インスリンの使用は135例、運動習慣ありは133例)へ聞き取りを行った。調査項目は、ストレス、睡眠時間、運動量、食事量、間食、野菜摂取量、惣菜摂取量などで、 その変化をVASスコアで自己評価してもらった。 主な結果は以下のとおり。・ストレスが増加した方は41.2%、運動量が減った方は53.7%だった。・ストレスの増加と運動量の減少、食事摂取量・惣菜摂取量の増加が関連した。・運動量の減少と間食、惣菜摂取量の増加が関連した。・体重変化をストレスや睡眠時間などで分析したところ、運動量の減少と関連がみられた。・HbA1cの変化については睡眠時間の減少と間食の増加が関連し悪化していた。 これらの結果について同氏は「コロナ禍の下で外出回数の減少、外出への不安があり、自宅にいる時間が長くなった結果」とし、またサブ解析では「65歳未満と運動習慣のない患者において、運動量の減少での体重増加、間食や惣菜の増加で体重やHbA1cが増加した」と結論付けたが、「病院に来られなかった患者はもっと不安を感じていたのではないか。“全体として悪くなっている”という評価ではなく、悪くなっている人と良くなっている人がいることを踏まえ、個々の対応が必要。そして、コロナ禍後にどのようにつなげていくかが課題である」とコメントした。コロナ禍の入院患者の血糖コントロール、real-time CGMが有用 COVID-19の糖尿病合併例では、その他感染症と同様、厳密な血糖コントロール、低血糖リスクの回避が求められる。そのため血糖測定の頻度は通常より多くなり、それが医療者側の不安につながる。そこで同氏は改善策として遠隔で血糖値が確認できるよう自施設でreal-time CGMを導入した。その結果、持続インスリン静脈内投与をこまめに調節することで重症患者の血糖値を安定化させ、低血糖を起こさないようにコントロールすることができた。海外文献*でも「血糖値を140~180mg/dlに保ちやすい、低血糖を予防できる、限られたpersonal protective equipment(PPE)の節約、Health care workerの接触の機会を減らす」可能性が示されており、糖尿病専門医としての責務を果たすため、今後もコロナ禍が続き入院患者増を予測される中で対応の検討が必要と話した。

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「抗菌薬はウイルスをやっつける」5割が依然として誤解【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第56回

感染症への関心がかつてないほど高まっていますが、一般の方の感染対策や抗菌薬に対する意識は昨年から変化したのでしょうか。抗菌薬に対する知識や理解について調査した「抗菌薬意識調査レポート2020」が公表されましたので紹介します。国立国際医療研究センターは10月8日、抗菌薬意識調査レポート2020を発表した。調査結果によると、普段処方された抗菌薬・抗生物質を飲みきらない人は34.6%。そのうち「途中で忘れてしまい飲みきっていない」人は8.9%、「治ったら途中で飲むのをやめる」人は25.7%だった。同センターは、飲み残しを取っておく人も多いことも指摘した上で、「抗菌薬の正しい使用法を積極的に広めていく必要がある」とした。(2020年10月12日付 日刊薬業)この調査は、2020年8月に10代以上の方を対象として行われたインターネット調査で、700人が回答しました。同様の調査は昨年も行われているため、昨年と今年の変化もみていきたいと思います。まず、「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」と回答した人は、昨年の調査では64.0%、今年は49.7%でした。また、「抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある」と回答した人は、昨年は45.6%、今年は34.3%でした。まだまだ間違った知識の人が多いじゃん…と思いますが、どちらも昨年よりは減っています。風邪の原因の多くはウイルスで、多くの場合は抗菌薬が効かないということが普及してきたのでしょう。次に、耐性菌で悩ましい抗菌薬飲み切り問題についてですが、昨年の調査において、「処方された抗菌薬・抗生物質はすべて飲み切る必要がある」と回答した人は63.4%でした。今年の調査は多少質問や選択肢が異なっているのですが、「普段、処方された抗菌薬・抗生物質を飲み切っていますか」という実際の行動を尋ねる質問に対し、「普段からできるだけ飲まない」と回答した人が20.3%、「最後まで飲み切っている」が45.1%、「治ったら途中で飲むのをやめる」が25.7%、「途中で忘れてしまい飲み切っていない」が8.9%で、結果的に飲み切っていないと回答した人は34.6%でした。抗菌薬の飲み切りについて誤った行動をとっている人もまだ多くいるため、服薬指導の重要性を感じます。ただ、「普段からできるだけ飲まない」と回答した人のスタンスはわからなくもないのですが、医師から処方されても飲まないというニュアンスが含まれているのだとしたら、それはちょっと別の問題かなと思います。コロナで感染対策への意識高まる今年は新型コロナウイルス感染症が流行したこともあって、コロナ関連の項目もありました。「新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから、感染症や感染対策に関する情報を以前よりも気にするようになりましたか」という質問では、30.7%が「大変気にするようになった」、36.7%が「少し気にするようになった」と答えており、67.4%が以前よりも気にしていました。また、「現在感染症予防として取っている感染対策は、今後も日常生活で続けていけそうですか」という質問に対して、「このまま続ける」と答えた人は65.6%で、「新しい生活様式」がすっかりなじんだことがわかります。対策を続けていくことで、そもそも風邪にかかる人が少なくなるのではないでしょうか。今年はなかったのですが、昨年は「朝起きたら、だるくて鼻水、咳、のどの痛みがあり、熱を測ったら37℃でした。あなたは学校や職場を休みますか?」という興味深い質問があり、「休む」と答えた人が37.1%、「休みたいが休めない」「休まない」のように結局休まないと答えた人が60%以上となりました。今思うとこの“頑張り”はとても怖いですよね。新型コロナや働き方改革などを考慮して、これまで風邪をひいても「働くために」症状を抑制することを促していた風邪薬のCMが、「かぜの時は、お家で休もう!」「大切ですよ、無理しない勇気」などと、無理をせずに家で休もうというメッセージに変更されました。今年こそこの休むかどうかの質問を実施してほしかった!と思うのですが、今年の質問にはなく比較できませんでした。間もなく新型コロナ・風邪・インフルエンザのトリプルパンチになる恐れがあります。感染予防や感染後の対応、抗菌薬の使用について正しい知識を伝えて、これまでとは異なる冬を乗り切りましょう。

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外傷性脳損傷への入院前トラネキサム酸投与に有益性なし(解説:中川原譲二氏)-1306

 中等度~重度の外傷性脳損傷(TBI)は、外傷性死亡および障害の最重要の原因であるが、早期のトラネキサム酸投与がベネフィットをもたらす可能性が示唆されていた。そこで、米国・オレゴン健康科学大学のSusan E. Rowell氏らが、多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を報告した(JAMA誌2020年9月8日号掲載の報告)。入院前トラネキサム酸投与の有益性を対プラセボで評価 試験は2015年5月~2017年11月に、米国およびカナダの外傷センター20ヵ所と救急医療機関39ヵ所で実施された。適格患者は、Glasgow Coma Scaleスコア12以下および収縮期血圧90mmHg以上である15歳以上のTBI入院前患者(1,280例)で、受傷2時間以内に治療を開始する以下の3つの介入が評価された。(1)入院前にトラネキサム酸(1g)をボーラス投与し、入院後に同薬(1g)を8時間点滴投与(ボーラス継続群、312例)、(2)入院前にトラネキサム酸(2g)をボーラス投与し、入院後にプラセボを8時間点滴投与(ボーラスのみ群、345例)、(3)入院前にプラセボをボーラス投与し、入院後にプラセボを8時間点滴投与(プラセボ群、309例)。 主要アウトカムは、複合投与群とプラセボ群での6ヵ月時点の良好な神経学的アウトカム(Glasgow Outcome Scale-Extendedスコア4超[中等度障害または良好な回復])とされた。非対称有意性の閾値は、有益性が0.1、有害性は0.025とされた。副次エンドポイントは18項目で、本論文ではそのうち5つ(28日死亡率、6ヵ月時のDisability Rating Scaleスコア[0:障害なし~30:死亡]、頭蓋内出血の進行、発作の発生、血栓塞栓症イベントの発生)が報告された。6ヵ月時の良好なアウトカム、投与群65% vs.プラセボ群62% 参加1,063例のうち、割り付け治療が行われなかった96例とその他1例(登録時に収監)が除外され、解析集団は966例(平均年齢42歳、男性255例[74%]、平均Glasgow Coma Scaleスコア:8)となった。このうち819例(84.8%)について、6ヵ月フォローアップ時の主要アウトカムが解析できた。 主要アウトカムの発生は、投与群65%、プラセボ群62%であった(群間差:3.5%、有益性に関する90%片側信頼区間[CI]:-0.9%[p=0.16]、有害性の97.5%片側CI:10.2%[p=0.84])。副次エンドポイントの28日死亡率(投与群14% vs.プラセボ群17%、群間差:-2.9%[95%CI:-7.9~2.1]、p=0.26)、6ヵ月時のDisability Rating Scaleスコア(6.8 vs.7.6、-0.9[-2.5~0.7]、p=0.29)、頭蓋内出血の進行(16% vs.20%、-5.4%[-12.8~2.1]、p=0.16)については、有意差はみられなかった。トラネキサム酸の有効性に関する詳細な分析が必要 本研究では、中等度~重度のTBIに対する受傷2時間以内の入院前トラネキサム酸の投与は、Glasgow Outcome Scale-Extendedスコアで評価された6ヵ月時点の良好な神経学的アウトカムを有意に改善しなかったと結論された。一般に、中等度~重度のTBIでは、発症早期に頭蓋内出血(硬膜上出血、硬膜下出血、クモ膜下出血、出血性脳挫傷)の増大やびまん性軸索損傷に伴う微小出血などの出血性の頭蓋内病態を軽減することが、転帰の改善につながると想定され、本研究では、発症早期(入院前)に抗線維素溶解薬であるトラネキサム酸を投与することの有効性が検証されたと思われる。しかしながら、中等度~重度のTBIでは、頭蓋内圧亢進や低酸素症、低血圧症など虚血性の頭蓋内病態を引き起こす要因が転帰に大きく影響することが知られており、トラネキサム酸(2g)の入院前投与で、出血性の頭蓋内病態がどの程度軽減されたのか、虚血性の頭蓋内病態が増悪する(長期投与で指摘されている)ことはなかったのか、など詳細について分析する必要があると思われる。 

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引き継げると思っていた患者が来ない!?「特殊診療」のワナに注意せよ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第3回

第3回 引き継げると思っていた患者が来ない!?「特殊診療」のワナに注意せよ漫画・イラスト:かたぎりもとこ買い手側からすると、引き継ぐ診療所の患者数は多ければ多いほどありがたいものです。診療所を引き継いだ当初から黒字経営でき、集患対策などの間接業務に手を取られず、診療に集中できるからです。しかし、ここにも落とし穴が…。都心エリアのように、周囲に診療所(競合)が多いのにもかかわらず、際立って外来患者数の多い診療所は注意が必要です。こうしたケースには大きく分けて2つの要因が考えられます。(1)標榜科目が複数あり、幅広い患者を診ているケース(2)専門性が高く、一般的な診療圏を超えて患者が来院しているケース(1)のケースは、とくに外科出身の院長が運営している診療所でよく見られます。内科の慢性疾患の患者が多いことに加え、小児や皮膚科も診ており、かつ外科として手術などにも対応している、というケースです。このような場合、買い手側は、現在の患者のすべてを引き継げるのか、引き継げない場合はどのくらいの患者が離反してしまうのか、科目別で患者層を確認することが必要です。(2)のケースは、通常は診療所の患者は近隣住民であることがほとんどですが、例外もあります。たとえば「整形外科の中でも手のひらを専門で診ている(とくに専門性が高い)」、「美容外科の分野でよくメディアに出ている(とくに知名度が高い)」などの理由で、「どうしてもこの医師に診てほしい」というニーズが強い場合、一般的な診療圏を超えて、遠方から患者が来院しているのです。一般的な診療圏の定義は科目や都心or地方などで異なりますが、都心部の内科系診療所であれば半径500m~1kmとするのが一般的です。旧院長と面談で会話する際などに、遠方からの外来数の割合を確認し、それらが2割を超える場合は一度専門など、その理由を確認することをお薦めします。

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第40回 降圧薬は就寝時服用でより心血管イベントリスクを低減の報告【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 痒みなどのアレルギー症状や喘息発作、片頭痛発作など、特定の時間に症状が出やすい疾患では、日内リズムや薬物の時間薬理学的特徴に応じて薬剤の服用タイミングが設定されることがあります。血圧にも日内変動がありますが、こうした時間治療(chronotherapy)は高血圧に対しても有用なのでしょうか。今回は、降圧薬の服用タイミングと心血管イベントについて検討したHygia Chronotherapy Trial1)を紹介します。対象は、スペイン在住の18歳以上の白人で、普段は日中に活動して夜間は就寝し、1剤以上の降圧薬を服用している高血圧患者1万9,084例(男性1万614例、女性約8,470例、平均年齢60.5歳)です。夜勤のある人やほかの人種では結果が変わるかもしれない点には注意が必要です。降圧薬を就寝時に服用する群9,552例、起床時に服用する群9,532例に分け、中央値6.3年追跡しています。ランダム化の方法は厳密には本文からは読み取れませんが、結果的に振り分けられたベースラインでの群間の特徴は似通っているため、おおむね平等な比較とみてよいかと思います。試験期間を通して定期的な血圧測定を行い、さらに年に1回は2日間にわたり携帯型の自動血圧計を装着して、自由行動下の24時間血圧も測定しています。服用薬の内訳は、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、β遮断薬、利尿薬で、評価者のみを盲検化するPROBE(Prospective Randomised Open Blinded-Endpoint)法を用いて評価しています。アウトカムは、主要なCVDイベント(CVDによる死亡、心筋梗塞、冠動脈再建術、心不全、脳卒中)の発生でした。医師と患者のいずれも治療内容を知っているためバイアスは避けられませんが、実臨床に近いセッティングともいえるでしょう。判断に揺らぎが出やすいアウトカムだと評価者の判断が影響を受けかねませんが、心筋梗塞や死亡など明確な場合は問題になりづらいと思われます。結果としては、追跡調査期間中に、1,752例で主要なCVDイベントがあり、就寝時服薬群の起床時服薬群と比較してのハザード比は次のとおりでした。 心血管イベントの複合エンドポイント 0.55(95%信頼区間[CI]: 0.50-0.61) 心血管死亡 0.44(95%CI:0.34~0.56) 心筋梗塞 0.66(95%CI:0.52~0.84) 冠動脈再建術 0.60(95%CI:0.47~0.75) 心不全 0.58(95%CI:0.49~0.70) 脳卒中 0.51(95%CI:0.41~0.63)降圧薬を起床時に服用した群と比べて、就寝時に服用した群では、心血管死亡リスクは56%、心筋梗塞リスクは34%、血行再建術の施行リスクは40%、心不全リスクは42%、脳卒中リスクは49%、これらのイベントを併せた複合アウトカムの発症リスクは45%と、それぞれ有意に低いという結果でした。これらの結果は、性別や年齢、糖尿病や腎臓病といったリスク因子の有無にかかわらず一貫しています。就寝時服薬群は24時間血圧で夜間の血圧が低下本文では著者らは相対ハザード比のみを報告し、絶対リスク減少率(ARR)や必要治療数(NNT)を報告していませんでしたが、批判を受けたためコメント欄に補足する形で各アウトカムのARRとNNTを追記しています。それによると、全CVDイベントは起床時服用群で1,566、就寝時服用群で888、ARRは 7.08(95%CI:6.13~8.02)、NNTは14.13(95%CI:12.46~16.30)でした。24時間血圧の測定値からも、就寝時服用群では睡眠中の血圧値が有意に低いこともわかっており、心筋梗塞や脳卒中のリスク因子である夜間高血圧の改善が結果に寄与したのではないかと仮説が述べられています。現時点では高血圧症診療ガイドラインに服用タイミングについて明確な言及はありませんが、就寝時の処方が増えてもおかしくない結果ではないでしょうか。もちろん、夜間の血圧が昼間に比べ20%以上低くなるようなextreme-dipper型などでは注意が必要です。利尿薬を夜に服用することを避けたいという患者さんもいれば、一部のCa拮抗薬は朝食後服用となっているものもあります。そうした個別の事情を踏まえつつ、用法提案の1つの選択肢として覚えておいて損はないかと思います。1)Hermida RC, et al. Eur Heart J. 2019; ehz754.

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Pfizer社のCOVID-19ワクチン候補、第I相試験結果/NEJM

 BioNTechとPfizerが共同で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する2つのmRNAワクチン候補「BNT162b1」「BNT162b2」について、米国・ロチェスター大学のEdward E. Walsh氏らによる第I相プラセボ対照試験の結果が発表された。米国の若年成人(18~55歳)群と高齢者(65~85歳)群を対象とした評価者盲検用量漸増評価試験で、BNT162b2がBNT162b1に比べ安全性・免疫原性について優れる結果が得られたという。若年成人へのBNT162b1についてはすでに、ドイツと米国での試験結果が報告されており、同試験および今回の試験結果を踏まえて著者は、「BNT162b2を第IIおよび第III相の安全性・有効性評価試験を検討するワクチン候補として支持される結果が得られた」とまとめている。NEJM誌オンライン版2020年10月14日号掲載の報告。BNT162b1の100μgのみ1回投与、その他は21日間隔で2回投与 研究グループは、脂質ナノ粒子製剤・修飾ヌクレオシドmRNAワクチン候補「BNT162b1」「BNT162b2」について米国で行われている、第I相のプラセボ対照用量漸増評価者盲検試験において、健康な若年成人(18~55歳)と高齢者(65~85歳)を対象に評価を行った。BNT162b1は、分泌された三重体SARS-CoV-2受容体結合ドメインをエンコードし、BNT162b2は膜結合型のSARS-CoV-2のスパイク糖蛋白全長をエンコードする作用がある。 被験者は、BNT162b1群とBNT162b2群、年齢(若年成人と高齢者)、投与量(10μg、20μg、30μg、100μg)別に13のグループ(100μgはBNT162b1の若年成人のみ投与)に分けられ、BNT162b1の100μg群には1回投与、それ以外の群には21日間隔で2回の投与が行われた。 主要アウトカムは、局所または全身性反応や有害事象などの安全性だった。副次アウトカムは免疫原性だった。両ワクチン候補群ともに回復患者より同等以上の幾何平均抗体価を誘発 合計195例が無作為化を受けた。13グループに各15例が割り付けられ、15例中12例に実薬が投与、残り3例にプラセボを投与した。 BNT162b2はBNT162b1に比べ、全身性反応の発生率と重症度が低かった。その傾向は、とくに高齢者で顕著だった。 両年齢グループにおいて、BNT162b2およびBNT162b1ともに、投与量依存性のSARS-CoV-2中和抗体の幾何平均抗体価が誘発された。同値は、SARS-CoV-2感染回復期の患者の血清パネル幾何平均抗体価と、同等かより高かった。

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喘息治療で初のLABA/LAMA/ICS配合吸入薬「エナジア吸入用カプセル中用量/高用量」【下平博士のDIノート】第60回

喘息治療で初のLABA/LAMA/ICS配合吸入薬「エナジア吸入用カプセル中用量/高用量」今回は、喘息治療薬「インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:エナジア吸入用カプセル中用量/高用量、製造販売元:ノバルティス ファーマ)」を紹介します。本剤は1カプセル中にLABA/LAMA/ICSの3成分を配合しており、1日1回1吸入で良好な喘息コントロールが得られることが期待されています。<効能・効果>本剤は、気管支喘息(吸入ステロイド剤[ICS]と長時間作用性吸入β2刺激薬[LABA]、長時間作用性吸入抗コリン薬[LAMA]の併用が必要な場合)の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には中用量(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μg、モメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1日1回1カプセル、本剤専用の吸入用器具(ブリーズヘラー)を用いて吸入します。なお、症状に応じて高用量(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μg、モメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)を1日1回1カプセル吸入することもできます。<安全性>国際共同QVM149B2302試験および国内B1304試験で本剤が投与された日本人被験者において、主な副作用として発声障害(8.7%)が認められました(承認時)。なお、重大な副作用として、アナフィラキシー、重篤な血清カリウム値の低下、心房細動(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、長時間作用する気管支拡張薬を2種類と、ステロイド薬を1種類含んだ吸入薬です。毎日同じ時間帯に規則正しく吸入することで、喘息の症状を改善します。2.専用の吸入用器具にカプセルを1つセットし、両脇の緑色のボタンを押してカプセルに穴を開けてから吸入します。うまく吸入できていたら、カラカラというカプセルの回転音が鳴ります。3.吸入が終わった後は、カプセルや粉末に触れないように気を付けて捨ててください。カプセル内に粉末が残っている場合は、再度吸入を行ってください。4.声枯れや感染症を予防するため、吸入後は必ず上を向いてうがいをして、うがいが困難な場合は口腔内をすすいでください。その際、口に含んだ水を飲み込まないように気を付けてください。5.吸入開始後に、動悸、手足の震え、尿が出にくいなどの症状が現れた場合は、すぐに受診してください。<Shimo's eyes>本剤は、喘息治療吸入薬として世界で初めてのLABA/LAMA/ICS配合製剤です。『喘息予防・管理ガイドライン2018』において、治療ステップ3~4に該当する中用量または高用量ICS/LABAによる治療でも喘息コントロールが不十分な場合は、LAMAを追加することが治療選択肢の1つとして推奨されています。しかし、これまで喘息の適応を有するLABA/LAMA/ICS配合薬は販売されていませんでした。LABA/ICS配合薬の多くが1日2回吸入ですが、本剤は1日1回でLABA/LAMA/ICSの3成分を一度に吸入できるため、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。また、複数の製剤を組み合わせて使用するよりも1日薬価が下がり、経済的負担が軽減できるというメリットもあります。専用の吸入器である「ブリーズヘラー」は、喘息治療薬として初めて適用されました。本吸入器は最大吸気流量が低下している患者でも比較的使用しやすいデバイスです。しかし、カプセルをセットする手間がかかり、カプセルの誤飲に注意する必要があります。主な副作用は発声障害なので、使用後のうがいを徹底することも大切です。本剤は、同時に発売された喘息治療配合薬「インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:アテキュラ)」にLAMA(グリコピロニウム)を加えたものです。本剤とはモメタゾンの用量が不一致ですが、効果発現が期待できるモメタゾンの粒子量としては同程度です。薬剤師にとっても、多種多様の吸入薬のデバイス操作と指導法を覚えるのは大変なことですが、2020年度の調剤報酬改定で「吸入薬指導加算」が導入されたように、薬剤師の活躍が期待されている分野です。治療方針の決定とデバイス選択は医師が行い、吸入指導は薬剤師が重要な担い手となるという密な病薬連携が吸入指導の成功の鍵になると考えられます。薬局では、処方医に指導・経過のフィードバックを細やかに行い、しっかりと情報共有することで、患者さんのよりよい治療継続を目指しましょう。参考1)PMDA 添付文書 エナジア吸入用カプセル中用量/エナジア吸入用カプセル高用量

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第30回 経口液剤AMX0035でALS患者の生存も改善

世界保健機関(WHO)主催の世界30ヵ国以上での無作為化試験(Solidarity)の査読前報告が先週木曜日15日にmedRxivに掲載され1,2)、残念ながらギリアド社のベクルリー(Remdesivir、レムデシビル)やその他3つの抗ウイルス薬・ヒドロキシクロロキン、カレトラ(lopinavir/ritonavir)、インターフェロン(Interferon-β1a)はどれもCOVID-19入院患者の死亡を減らしませんでした。たとえばレムデシビル投与群の28日間の死亡率は非投与対照群の11.2%(303/2,708人)とほとんど同じ11%(301/2,743人)であり1,3)、その差は有意ではありませんでした(p=0.50)。そんなSolidarity試験とは対照的に、その発表の翌16日、脳や脊髄の運動神経が死ぬことで生じる難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬候補の良いニュースがありました4-6)。先月9月初めにNEJM誌に掲載されたプラセボ対照第II相試験(CENTAUR)でALS進行を有意に抑制した神経死抑制剤AMX0035がその試験と一続きの非盲検継続(OLE)試験で今度は有意な生存延長をもたらしたのです。米国マサチューセッツ州ケンブリッジ拠点のAmylyx社が開発しているAMX0035は昔からある成分2つが溶けた経口の液剤です。成分の1つはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬・フェニル酪酸ナトリウム(sodium phenylbutyrate)、もう1つは胆汁酸・タウルソジオール(Taurursodiol)です7)。今回発表されたOLE試験に先立つCENTAUR試験にはALS患者137人が参加し、それらのうち3人に1人はプラセボ、あとの3人に2人はAMX0035を6ヵ月間服用しました。NEJM誌報告によると6ヵ月間のAMX0035服用群の体の不自由さの進行はプラセボに比べてよりゆっくりでした7)。また、AMX0035服用は腕の筋力低下も抑制しました。今回のOLE試験にはCENTAUR試験から継続して90人が参加し、全員がAMX0035を服用し、CENTAUR試験の始まりから数えて最大約3年間(35ヵ月間)追跡されました。その結果、生存期間中央値はAMX0035を最初から服用し続けた患者(56人)では25ヵ月、当初プラセボを服用した患者では18.5ヵ月であり(p=0.023)、最初からのAMX0035服用患者は当初プラセボを服用した患者に比べて有意に半年以上(6.5ヵ月)生存が延長されました8)。細胞内小器官・小胞体(ER)へのストレスや機能障害、それにミトコンドリアの機能や構造の欠損がALSの発病要因と目されており、AMX0035に含まれるフェニル酪酸ナトリウムはERがストレスを受けて誘発する毒性を緩和し、もう1つの成分タウルソジオールはミトコンドリアを助けて細胞を死に難くします7)。米国ワシントン D.C.の隣街アーリントンを本拠とするALS患者の会・ALS Association等はAMX0035をALS患者ができるだけ早く使えるようにする請願活動を先月初めに開始しており、16日のニュースによると5万人近く(4万7,000人以上)が請願に署名しています4)。参考1)Repurposed antiviral drugs for COVID-19; interim WHO SOLIDARITY trial results. medRxiv. October 15, 2020.2)Solidarity Therapeutics Trial produces conclusive evidence on the effectiveness of repurposed drugs for COVID-19 in record time / WHO 3)Remdesivir and interferon fall flat in WHO’s megastudy of COVID-19 treatments / Science4)AMX0035 Survivability Data Adds to Urgency to Make Drug Available / ALS Association5)Amylyx Pharmaceuticals Announces Publication of CENTAUR Survival Data Demonstrating Statistically Significant Survival Benefit of AMX0035 for People with ALS / BUSINESS WIRE6)Investigational ALS drug prolongs patient survival in clinical trial / Eurekalert7)Paganoni S,et al. N Engl J Med. 2020 Sep 3;383:919-930.8)Paganoni S,et al. Muscle & Nerve. 16 October 2020. [Epub ahead of print]

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ストレスに対するSNS利用の影響~日本理学療法士協会の学生調査

 藍野大学の本田 寛人氏らは、理学療法を学んでいる日本の大学生におけるインターネット依存と心理的ストレスに対するスマートフォンを用いたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の影響を調査した。Journal of Physical Therapy Science誌2020年9月号の報告。 2~4年生の理学療法を学ぶ学生247人(19~22歳)を対象に、単一大学横断的研究を実施した。毎日のスマートフォン利用時間、スマートフォンを用いたSNS利用時間、授業以外での自己学習時間に関する情報を、自己記入式アンケートにより収集した。インターネット依存と心理的ストレスの評価には、インターネット依存度テスト(IAT)と心理的ストレス反応尺度(SRS-18)を用いた。12人を除外した235人のデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、IATスコアと性別(男性)および毎日のスマートフォン利用時間との関連が示唆された。・SNS利用目的の一つである「目的のないネットサーフィン」およびIATスコアとSRS-18スコアとの関連が認められた。・その他の変数とIATスコアまたはSRS-18スコアとの関連は認められなかった。 著者らは「大学生のインターネット依存または心理的ストレスに対し、男性、毎日のスマートフォン利用時間または受動的なSNS利用が関連している可能性が示唆された」としている。

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レムデシビル、COVID-19入院患者の回復期間を5日以上短縮/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のJohn H. Beigel氏らは、「ACTT-1試験」において、レムデシビルはプラセボに比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の回復までの期間を有意に短縮することを示し、NEJM誌オンライン版2020年10月8日号で報告した(10月9日に更新)。COVID-19の治療では、いくつかの既存の薬剤の評価が行われているが、有効性が確認された抗ウイルス薬はないという。10ヵ国1,062例のプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、COVID-19入院患者の治療におけるレムデシビルの臨床的な安全性と有効性を評価する目的で、日本を含む10ヵ国が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(米国NIAIDなどの助成による)。 2020年2月21~4月19日の期間に、COVID-19感染が確定され、下気道感染症の証拠がある成人の入院患者1,062例が登録され、レムデシビル(541例)またはプラセボ(521例)を投与する群に無作為に割り付けられた。レムデシビルは、1日目に負荷投与量200mgを静脈内投与され、2日目から10日目または退院か死亡まで維持投与量として100mgを1日1回投与された。 主要アウトカムは、登録から28日以内における回復までの期間とした。回復は、退院または入院の理由が感染管理のみ、あるいはその他の非医学的事由の場合と定義された。回復までの期間中央値:10日vs.15日 全体の患者の平均年齢は58.9±15.0歳で、64.4%が男性であった。79.8%が北米、15.3%が欧州、4.9%がアジアの患者であった。登録時に、ほとんどの患者が1つ(25.9%)または2つ以上(54.5%)の併存疾患を有しており、高血圧が50.2%と最も多く、肥満が44.8%、2型糖尿病が30.3%であった。症状発現から無作為割り付けまでの期間中央値は9日(IQR:6~12)で、957例(90.1%)が重症COVID-19感染患者だった。 回復までの期間中央値は、レムデシビル群が10日(95%信頼区間[CI]:9~11)、プラセボ群は15日(13~18)であり、レムデシビル群で有意に短かった(回復の率比:1.29、1.12~1.49、log-rank検定のp<0.001)。重症例における回復までの期間中央値は、レムデシビル群が11日、プラセボ群は18日であった(1.31、1.12~1.52)。また、ベースライン時に機械的換気または体外式膜型人工肺(ECMO)を導入されていた患者の回復の率比は0.98(0.70~1.36)だった。 8つのカテゴリーから成る順序尺度による比例オッズモデルを用いた解析では、15日の時点で臨床的改善が達成される確率は、レムデシビル群がプラセボ群よりも高かった(実際の疾患重症度で補正後のオッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.2~1.9)。 Kaplan-Meier法による推定死亡率は、15日時がレムデシビル群6.7%、プラセボ群11.9%(ハザード比[HR]:0.55、95%CI:0.36~0.83)、29日時はそれぞれ11.4%および15.2%(0.73、0.52~1.03)であった。 重篤な有害事象は、レムデシビル群が532例中131例(24.6%)、プラセボ群は516例中163例(31.6%)で報告された。治療関連死は認められなかった。全体で頻度の高い非重篤な有害事象として、糸球体濾過量低下、ヘモグロビン低下、リンパ球数低下、呼吸不全、貧血などがみられ、発生率は両群でほぼ同等であった。 著者は、「米国食品医薬品局(FDA)は、レムデシビルの初期結果を考慮して、2020年5月1日、COVID-19感染が疑われる、または確定した成人および小児の入院患者において、レムデシビルの緊急時使用許可(EUA)を発出(8月28日に修正)したが、レムデシビルを使用しても死亡率は高いことから、抗ウイルス薬単独では十分な効果は得られないと考えられる」と指摘し、「患者アウトカムを改善するには、さまざまな薬剤との併用療法が必要であり、現在、レムデシビルと免疫調節薬(例:JAK阻害薬バリシチニブ[ACTT-2試験]、インターフェロンβ-1a[ACTT-3試験])との併用が検討されている」としている。

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第28回 医薬分業批判で問われる薬剤師の反論姿勢

先週はドラマ化された漫画「アンサング・シンデレラ」をフックに薬剤師について触れたが、奇しくも記事公開日に私は久しぶりに飛行機に乗り、第53回日本薬剤師会学術大会の取材のため札幌に出張した。コロナ禍の最中ということもあり、リアルの会場とweb配信のハイブリッド方式。同大会は毎年厚生労働省(厚労省)の複数の幹部が講演することが慣例だ。今回はそのうちの一人として薬系技官の頂点にいる山本史・厚労省大臣官房審議官(医薬担当)が「薬機法改正における薬局への期待」と題して講演した。その中で山本氏は現在の保険調剤薬局の在り方について「点数を付けたことしかやらない」とかなり辛辣な一言を放った。実は医薬分業とその最前線にいる保険調剤薬局についてかなり厳しい指摘をする俗称「分業バッシング」は主に2つの方面から聞こえてくる。ちなみに念のため言葉の定義を明らかにしておくと、バッシングとは特定の個人や組織・集団に対する過剰あるいは根拠のない批判を指す。おおむね「分業バッシング」は過剰な批判と捉えていいだろう。その2つの方面だが、1つは日本医師会(日医)である。昨今の出来事で言えば、2014年に日医会長に当選した横倉 義武氏(前会長)が就任早々、「医薬分業が国民のためになったのか、よく考えないといけない」と発言。その後、2017年に厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会でスタートした薬機法改正議論では、日医・横倉執行部で当時副会長の地位にあり、今年6月から会長に就任した中川 俊男氏が激しい分業批判を展開した。端的に言えば、病院薬剤部と院外の保険調剤薬局で技術的な差は少ないにもかかわらず、分業の中心を担う保険調剤薬局に対する調剤報酬が高すぎるという指摘である。そしてもう1つの方面は冒頭で紹介した山本審議官のような厚労省の中の人、よりスペシフィックに言えば薬局薬剤師にとって「身内」とも言える薬系技官である。たとえば、前述の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で中川氏が分業批判を展開した際は、薬機法改正で薬剤師が患者の服薬期間中、つまり薬を渡した後の薬学的管理を法律上で明文化しようという議論が進んでいた。中川氏はこれに疑問を呈した。要は明文化するまでもなくやるべき業務であり、法律条文に書き込むのは違和感があるという主張だ。これに対し、同部会で薬系技官でもある厚労省監視指導・麻薬対策課長(現・日本薬剤師会専務理事)の磯部 総一郎氏は「本来、これは先生がおっしゃるように、薬剤師の意識でこういうものは当然やっていくものだと私は思います。ただ、なかなかうまく改革がいかないということで…」と薬剤師に批判的な視座を示している。また、2014年以降の日医方面からのバッシングが始まってからは、薬剤師が中心となる学会で講演する薬系技官は人が変われど「分業を支持するエビデンスの構築を」と繰り返し訴えている。これは激励にも受け止められるが、裏を返せば「十分にやれていない」という批判とも解釈できる。実際、私もある薬系技官から「今の状況では医薬分業に反対する人たちを説得できるに十分なデータがない」とぼやきを聞かされたことがある。ちなみにこれに加えて、私などもそのクラスターに入る医療系専門メディアも、バッシングする側の見解を頻繁に報じるという観点から、同じ穴のムジナ的に薬剤師の方々からは捉えられることがある。その意味では3方面からのバッシングであるという見方もある。医薬分業批判その1:薬剤師の本気が見えないとはいえ、医療専門メディアも含めた3方面が同じ視座で「分業バッシング」を行っているかと言えば、そうではない。やや雑駁に言えば日医の立脚点は社会保障費の中で医科診療報酬と調剤報酬をどう配分するかの陣取り合戦、下世話に言えば「俺の財布により多く」である。これに対し、そもそも医薬分業を調剤報酬で誘導してきた側の核にいる厚労省の薬系技官は「可愛さ余って憎さ百倍」あるいは「近親憎悪」ともいうべきもの。医薬分業を推進したい、あるいは薬剤師の地位向上を目指したいと思っているのに薬剤師業界全体としてはその期待値に応えていないという類のものだ。そして医療専門メディアの視座もこの厚労省薬系技官とほぼ同様と言っていいだろう。実際、私個人に関してもそうした思いはある。ちなみに中川氏が分業批判を展開した制度部会では、中川氏並に辛辣な意見を展開した委員がいる。患者団体・認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)・理事長の山口 育子氏である。中川氏が分業批判を展開する中で、日本薬剤師会(日薬)から参加していた委員である同会副会長(当時)の乾 英夫氏が、一元的な薬剤管理といったかかりつけ機能としての薬局・薬剤師のメリットを強調した際、山口氏は次のような意見を表明した。「乾委員がおっしゃったことは、かかりつけ薬剤師・薬局の機能がうまくいった場合には効果があると思いますが、その一方で、機能を果たせていない薬局が多いことが問題であり、医薬分業はかなり瀬戸際に来ているのではないかと感じています」こうした山口氏の意見もおおむね薬系技官や医療専門メディアが薬剤師業界を見る目と似ている。もっと平たく言えば、これらの人たちは薬剤師が本気になればここまでこんなことができるはずという構想・理想がある中で、現状の業界平均値はそこからあまりにも乖離が大きすぎるという苛立ちを表現したものだともいえる。医薬分業批判その2:批判を無視する薬剤師会のスタンスこういった周囲の見方には、薬剤師の世界の中でも様さまざまな意見はあるだろう。そうした意見は、いくつか類型に集約することができるように感じているが、その個々に対して細かくどうこう言うつもりはない。ただ、昨今この界隈を見ていて思うことがある。それはいわゆる分業バッシングを「単なる医師会のポジショントークだから無視しておけばいい」との考えが薬剤師業界の中にそこそこに見受けられることへの懸念である。一見するとこのスタンスは「大人の対応」とも言えるし、まったく的外れな見方ではない。もっといえば薬剤師業界の総本部ともいえる日薬がこのスタンスである。しかし、この姿勢は一歩間違えれば取り返しのつかない事態を招く危険がある。そもそも前述の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では中川氏、山口氏といった分業批判の「急先鋒」だった委員以外にも有識者、患者団体、メディアから参加した委員が、医薬分業にとくにメリットを感じていないという「漠然とした不満感」が相次いで表明された。この状態は例えて言うと、4階建ての建物の1階でガス管からシューシューガスが漏れ(中川氏・山口氏による批判)、2~4階(有識者、患者団体、メディアから参加した委員)に徐々にガスが広がり始めている状態である。このまま時間が経過し、誰かが火種を近づければ一気に大爆発してしまう。実はこれは本格的なバッシングが起こる前夜の状況である。情報流通の側にいる自分はバッシングが起こる状況は人並み以上に理解しているつもりである。大概は多くの人が明快な言葉にしきれない漠然とした不満を抱いている状況に、それを表現する明快な言葉・エビデンスを投じた時がバッシングの起こる時である。では、そうした火種は薬剤師を巡る世界にあるのだろうか?私はそこそこにあると思っている。医薬分業批判その3:ヒヤリ・ハットすら点数ノルマ化薬剤師の方々は、日本医療機能評価機構が2009年からスタートさせた「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」はご存じだろう。全国の薬局から事例を収集・分析して、広く薬局医療安全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、医療安全対策の一層の推進を図ることを目的とした事業だ。日薬を中心に各薬局に参加を呼び掛けたこの事業は、初年度の2009年の参加薬局は1774軒、報告されたヒヤリ・ハットは1460件。スタートから9年目の2017年の参加薬局は1万1400軒、報告されたヒヤリ・ハットは6084件だった。参加薬局は9年で6倍となったが、そもそも日本国内にある薬局軒数が約6万軒弱であることを考えればやや寂しい数字だ。ところが2018年には参加薬局数は一気に3倍近い3万3083軒、 2019年には3万8677 軒、ヒヤリ・ハットの報告数はそれぞれ7万9973件、14万4848件に増加した。何があったのか?単純で2018年4月の調剤報酬改定の際に地域医療に貢献する体制が有る薬局で算定できる「地域支援体制加算」の算定要件にこのヒヤリ・ハット報告が含まれるようになったからである。冒頭の山本氏の言葉を借りれば、「点数がつくからやった」のである。2019年実績から考えれば参加薬局1軒あたり年間4件弱のヒヤリ・ハット事例の報告があることになる。この数が多いかどうかはここでは評価するつもりはない。むしろ医療安全にとって極めて重要なヒヤリ・ハット情報を年4件弱報告することはお金をもらわねばやれないほど大変なことなのだろうか?ちなみに2018年からこの事業に参加した薬局・薬剤師の皆さんには敢えて次の一文を読んでもらいたい。「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」言わずと知れた薬剤師法第一条である。2018年から参加した薬局・薬剤師は、私から言わせれば、夏休み終了数日前から慌てて白紙の宿題をやり始める学生のようなもの。そこに「公衆衛生の向上及び増進に寄与し」という姿勢はみじんも感じない。薬剤師は正しくも“勝つ”戦略を考えてほしいと、ここまでかなり厳しく書いた。では、もし日医による分業バッシングが一般にも静かに浸透していった時に、今書いたような実態を一般向けに柔らかくして報じたらどうなるだろう。それは幅広いバッシングにつながり、さらにそのバッシングの核になる主張に多少の間違い・誤解があっても、まるで事実のように広がって定着する「インフォデミック」が起きてしまう危険性が十分ある。こういう動きは一旦始まったら周囲ではほぼ止めようがなくなるのが最も怖いことなのである。ところがこうした懸念を伝えてもピンとこない薬剤師は意外に少なくない。私個人の印象では薬剤師は医師などと比べおとなし目の人が多い。しかし、現在言われている分業バッシング・批判が的外れな場合は、薬剤師も個人・組織の双方から即時に反論していく姿勢が必要だと考える。嫌な言い方だが、世では常に「相手の弱いところを見つけて攻撃する」慣習は消えない。これは私がもう一つの取材領域にしている国際紛争でもよく目にする。多くの場合、開戦に踏み切る側は相手の反撃能力が低いことを見越して攻撃に映る。残念ながら弱いと思われたら攻撃を受けるのである。それでもそれにじっと耐えきれば何らかの利益が得られるならば、それも良いかもしれない。しかし、現在のように将来的な社会保障費のひっ迫が見え、各当事者が財布の奪い合いをしている中では、もし前述のような大規模なバッシングにつながるようなことが起これば、弱いところが割を食うことになり、その面でおとなし目の薬剤師業界は長期的にはかなりの浸食を受ける恐れもある。それでも「目の前の患者さんに誠心誠意接していれば…」という人もいるかもしれない。それはそうだが、これまた嫌な言い方だが、世の中は「正しいことを行う者が常に勝つ」ともならないのが現実である。よりベストは「正しいことを行う者が正しい戦略で進めば勝つ」だが、実際には「ちょっと正当性に疑問符が付くが、正しい戦略で進んだ結果勝った」というケースはごまんとある。日本の戦国時代の歴史として語られる織田信長→豊臣秀吉→徳川家康という政権変遷も、ズバリ言ってしまえば血統・系統の正当性ではなく、戦略の正当性の結果である。その意味で繰り返しになるが、今の分業を巡る議論を俯瞰すると私は嫌な空気しか感じない。私が考える最悪の想定が外れることを願いたいが、こと薬剤師の皆さんにはこうした見方もあるのだということをちょっとは心に留めておいて欲しいと思う今日この頃である。

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コロナ禍の医療者への不当な扱い、励ましの実態とは/医師500人の回答結果

 ケアネットと病院経営支援システムを開発・提供するメディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、医師・病院関係者が新型コロナウイルス感染症に対応する中で、どのような体験をしたかを調べる共同調査を実施した。その結果、医師・病院関係者の子どもが登園・登校を控えるよう要請されるなど誤解や過剰反応からの体験があった半面、地域住民や企業からの応援メッセージが届き、励まされるなどの体験が倍以上あったことが明らかとなった。励ましが差別や不当な扱いを大幅に上回る この調査はWEBを通じて実施し、ケアネットは会員医師511人(アンケート期間:9月30日のみ)、MDVは110病院(同:9月30日~10月7日)から回答を得た。  「コロナ禍の下でどのような体験をされましたか」という質問について、ケアネット会員医師は、「差別や不当な扱いと感じる体験をした」が7.4%(38人)、「周囲から励まされるなどの体験をした」が27.6%(141人)、「とくになし」が66.3%(339人)だった。差別や不当な扱いと感じる体験をした方の内訳は、本人が6.7%(34人)、家族が2.2%(11人)で、本人・家族いずれもと回答したのは6人(1.1%)だった。また、自由記述で聞いた体験内容は以下のとおり。・実際には(PCR検査)陰性だったが、あたかもコロナに感染したかのような扱いを受けた・医療関係者かどうかを尋ねられた・アルバイト先から出勤を断られかけた・発熱外来をやるといったら、秘書が近寄らなくなった。1週間放置された・近所、子供の学校の先生に疎んじられた・国内での流行期前に海外渡航していたために職場で不当な差別をされた 「周囲から励まされるなどの体験をした」と回答した方は、本人が24%(123人)、家族が2.9%(15人)で、本人・家族いずれもと回答したのは2.3%(12人)だった。自由記述で聞いた体験内容は以下のとおり。・タクシー運転手に励まされた・医療に携わり、この時期大変ですねぇと励まされました・往診中にご苦労様と見知らぬ方より挨拶あり・外来の患者さんから声をかけられ、差し入れをもらうようになりました・患者から体調を気遣われた・患者さんからの感謝状・企業からの飲料水や消毒用具等の提供があった・地域の小学校、会社などから救急医療へのエールが届いた病院関係者向け調査では半数以上が励ましを受けていた MDVが行った病院関係者(本人、家族、同僚含む)向けアンケートでも同様の質問を行ったところ、「差別や不当な扱いと感じる体験をした」が24.5%(27施設)、「周囲から励まされるなどの体験をした」が51.8%(57施設)、「とくになし」が38.2%(42施設)、その他が9.1%(10施設)だった。また、差別や不当な扱いと感じる体験を自由記述で聞いたところ、「看護師の子どもさんが保育園から預かりを拒否された」「親が医療関係者なので飲食関係のアルバイトのシフトから外された」「配偶者が出勤停止となった」「病院の職員でなくてよかったなどの言葉が聞こえてきた」といった声があった。 また、「周囲から励まされるなどの体験をした」の自由記述の回答では、地域住民や企業からの激励のメッセージや寄付などが相次いでいることも明らかになった。

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非転移性去勢抵抗性前立腺がんでダロルタミドは転移無再発期間を延長(解説:宮嶋哲氏)-1297

 ダロルタミドは独自の化学構造を持つアンドロゲン受容体阻害薬であり、非転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として承認されている。 本報告は、二重盲検プラセボ対照試験で1,509例をアンドロゲン除去療法を継続しながらダロルタミドを投与する群(955例)とプラセボ投与群(554例)に2:1の割合で無作為に割り付けるARAMIS試験の主要解析に注目している。第III相試験で計画されていた主要解析では転移無再発期間中央値がダロルタミド群で40.4ヵ月とプラセボ群(18.4ヵ月)よりも有意に延長していた。主要評価項目の結果が肯定的であることが判明した後、治療割り付けの盲検を解除し、プラセボ群からダロルタミドの非盲検投与へのクロスオーバーを許可している。最終解析は約240例が死亡した後に行うこととし、その時点で全生存期間とその他の副次評価項目を評価した。 追跡期間中央値は29.0ヵ月であり、データの盲検を解除した時点でプラセボの投与を継続していた170例全例がダロルタミド投与にクロスオーバーし、盲検解除前にプラセボを中止していた患者のうち137例がダロルタミド以外の延命治療を1種類以上受けていた。3年全生存率はダロルタミド群で83%、プラセボ群で77%であり、死亡リスクは、ダロルタミド群のほうがプラセボ群よりも有意に31%低かった(HR:0.69、p=0.003)。ダロルタミドは症候性の骨関連事象発現までの期間(HR:0.65、p<0.001)や細胞傷害性化学療法開始までの期間(HR:0.58、p<0.001)など、その他すべての副次評価項目で有意に良好な成績を示していた。投与開始後の有害事象発現率は両群で同程度であった。 非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者において、投与開始して3年の時点での生存率は、ダロルタミドの投与を受けた患者のほうがプラセボの投与を受けた患者よりも有意に高かったことと、副作用の発現頻度がプラセボと同等であったことは注目に値する。 現在、アンドロゲン受容体阻害薬としてわが国でも数種類使用されているが、副作用を含めた患者QOLの面を考慮すると、薬剤の選択は慎重にならざるを得ない。本薬剤の効果を考慮すると、mHSPCを対象とした試験結果が待たれるところである。

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離島に代診で行ってみた その1【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第19回

中島みゆきさんの『銀の龍の背に乗って』を口ずさみながら、最寄りの串木野港から高速船で70分。9月の日本帰国時に、鹿児島県は甑(こしき)島の手打診療所に代診のお手伝いに行ってきました。甑島は、漫画やドラマでおなじみの『Dr.コトー診療所』(作者・山田 貴敏)のDr.コトーのモデルになった瀬戸上健二郎先生が診療に携わっていらした島で、今は私の先輩であり、CareNet.comの「一般内科医が知っておきたい他科の基本処置」の監修をされている齋藤 学先生が後任として勤務しています(もっともドラマのロケは沖縄の与那国島で行われたみたいですが)。実は甑島を訪れるのは今回で2度目、15年前の研修医の頃、1ヵ月の地域医療研修で訪れたことがあります。15年ぶりに訪れた診療所はまったく変わっておらず、懐かしい気分に包まれました。診療所の中に入るとあちこちから「先生、久しぶり~!」の声が。いや~懐かしいなぁ…見覚えのある顔がここにもそこにも…。いや、知ってる人、多すぎないか?そっか、皆ずっとここで働いてたんだ…。お世辞じゃなくて、見た目もあんまり変わっていませんでした。ただ、島には新しくスーパーができていたり、オシャレなカフェができていたり、多少の変化も見られましたが…。15年前、できたばかりの駐車場のアスファルトに、バイクのスタンドで開けちゃった穴が今もしっかりあったりして。「ああ、俺は確かに15年前、ここに来てたんだな~」と感慨に浸った気分になったりもしました。真ん中の水色が筆者です。後ろに見えるのは甑島が誇る「ナポレオン岩」です。ある日、ご近所のおじさんに夕食へ招待されました。さすが島だけあって、魚は絶品! ドイツではけっして口にすることができない料理が山ほど並べられていました。ふっと部屋の片隅に目をやると、同じ銘柄の焼酎が山積みにされて置かれていました。「ああ、先生。そいつは飲む用だよ」と言いながら、おじさんは床の間に並べられた高級そうな焼酎を指差し、「あっちの焼酎は寝かせる用」と言いました。「どんな焼酎でもさ! 15年も寝かせたら、トロ〜っとして、たまらん味になるんよ!」とうっとりした顔で語ってくれました。そうか…焼酎は15年、寝ているだけでトロミが出ておいしくなるのか…。俺は15年、アクセク働いてきたけどな~。まだトロミが出てきた実感はないな~。ドイツへ行く前も、行った後も、いつも悩んでばかりいたのですが…。焼酎が美味しくなることを15年待てるおじさんをみていると、「俺はちっせぇ男だな」と思わざるを得ませんでした。バタバタした帰国でしたが、離島でのお手伝いはいい気分転換になりました。時間ができたら、また、元気をもらいに遊びに行きたいなと思います。

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第28回 再生医療の協議会発足と“山中バッシング”に通底する官主導政策への懸念

政府の健康・医療戦略推進本部に設けられ、9月に初会合が開かれた「再生・細胞医療・遺伝子治療開発協議会」。日本再生医療学会の役員は「構成員を見ると、上から目線のメンバーばかり。政府がコントロールしようという意図が透けて見える」と話す。その一方で沸き上がっている“山中バッシング”と共に、研究者から上がるのは、再生医療の行く末を案じる懸念の声だ。厚生労働省のホームページを見ると、協議会の構成員は以下の通りだ。▽内閣官房健康・医療戦略室長(議長)▽文部科学省研究振興局長▽厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官▽厚生労働省医政局長▽経済産業省大臣官房商務・サービス審議官▽五十嵐 隆・国立研究開発法人成育医療研究センター理事長▽岩間 厚志・東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター教授▽越智 光夫・広島大学学長▽金田 安史・大阪大学理事・副学長▽齋藤 英彦・独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター名誉院長/国立研究開発法人日本医療研究開発機構再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクトプログラムディレクター▽畠 賢一郎・一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム代表理事会長。政府によるコントロールの動きは、すでに昨年から見られた。議長の和泉 洋人・首相補佐官は、不倫相手と目された大坪 寛子・厚労省大臣官房審議官(当時)と共に昨年夏、京都大学iPS細胞研究所を訪問。所長の山中 伸弥教授に対し、iPS細胞ストック事業への政府補助金削減を通告した。ストック事業を巡っては、折しも文部科学省の有識者会合で継続が認められたばかりというタイミングだった。しかも、事業の存続にかかわる重要な決定が3人だけの面談で告げられたため、山中教授は昨年11月、「透明性の高い議論で決めてほしい」と日本記者クラブの会見で訴えた。しかし、このことが永田町や霞が関の一部から反感を買った。「京大に研究費が流れ過ぎ。大坪審議官は公平にしようとした」「山中教授の人間的な魅力のなさのため、人が離れたり、資金的な援助をしようという企業や人が現れなかったりしている」という声まで上がった。“山中バッシング”の背景の一つに、iPS細胞ストック事業が日本初の試みでもあり、なかなか思うようにいかなかったことが考えられる。このような中、山中教授は研究資金集めに奔走している。2018年と2019年にはチャリティーコンサートを開き、今年4月には、iPS細胞研究所の細胞備蓄事業を引き継ぐ新財団も発足させた。ある再生医療の研究者は「山中教授は良い人だが、ストイックなので下の人が付いて行くのが大変だとは聞いている。ただ、資金はキャラクターに付くのではなく、成果に付くもの。キャラクターへの攻撃は間違った批判」と話す。“山中バッシング”と軌を一にするかのような協議会の発足。ノーベル賞で一躍脚光を浴びた日本の再生医療だが、政府がコントロールする研究の行く末は果たして…。

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